「最大の首都移転効果はどこに出る?」(2019年10月18日)

ライター: プサントレン「トゥブイレン」主宰者、サラフディン・ワヒッ
ソース: 2016年8月11日付けコンパス紙 "Jakarta, Jawa, dan Indonesia"

イドゥルフィトリの日がやってくると、われわれはたいへん興味深い、しかも同時に悲し
むべきできごとを目の当たりにするのである。そのできごととは、重度の交通渋滞のため
に自動車専用道で起こる、ジャカルタから出て行く自動車の大行列だ。2015年には二
度もそれが起こった。イドゥルフィトリだけでなくクリスマスでも同じことが起こったの
だ。

2016年イドゥルフィトリの帰省を前にして、自動車専用道がブルブスBrebesまで開通
していたことが交通渋滞問題の楽観視を政府にもたらしたように見える。ところが実際に、
2016年帰省交通は悲劇的な様相を示した。いくつかの自動車専用道料金所で大渋滞が
発生したのである。ジャカルタからヨグヤカルタまでの所要時間は24時間を超えた。

異常な交通渋滞の発生は運転者に激しい疲労をもたらし、急病に陥ったかれらは渋滞のた
めに病院への到着が遅れて死亡した。政府は実情を調査して改善することを約束した。政
府はどうやら、トランスジャワ自動車専用道網が完成すれば交通渋滞は解消する、と見て
いる節がある。それは本当に現実的な姿勢なのだろうか?それとも希望的な夢に過ぎない
のだろうか?

< ジャカルタはマグネット >
帰省時に起こる交通渋滞は莫大な帰省者が一斉に帰省を行う結果である。50万台を超え
る自動車がジャカルタから自動車専用道を東に向かう。ジャカルタに大量の自動車がある
のは、ジャカルタに経済・政治・その他の活動が集中しているからだ。ある外国の雑誌が
ジャカルタの巨大な位置付けについて1980年代にこう書いた。インドネシアはふたつ
の部分から成っている。ジャカルタとそれ以外だ。

国内流通通貨のおよそ7割がジャカルタに集まっている。インドネシアを代表する大企業
のほとんどが本社をジャカルタに置いている。最初は本社を他の州に置いていた会社も、
ジャカルタへ移さざるをえなくなる。入手できる借入金の額をはじめとして、地方とジャ
カルタではまったく異なる扱いがなされているからだ。歌手・バンド・映画スターたちも、
その分野で名を高めようとする者はたいていがジャカルタへ上る。政治家までもが、ジャ
カルタで活動することでキャリアの階段を上って行く。

毎年毎年、新車販売台数のマジョリティはジャカルタが占めている。ジャカルタのほぼす
べての道路が就業時間帯に激しい交通渋滞に陥るのは、何の不思議もない。場所によって
は、深夜まで渋滞が続く。帰省する自動車の数も年々増加の一途だ。そのために西ジャワ
や中部ジャワの町々につながる自動車道料金所での交通渋滞は、トランスジャワ自動車道
がバニュワギBanyuwangiまでつながった後でも決してなくなることはないだろう。

ジャワ島にとっての重要問題は、住民人口が莫大なことだ。2010年国政調査はその数
が1億3千6百万人に達していることを明らかにした。年率およそ1.4%の人口増加率
で行けば、現在その数は1億4千6百万人になっているはずだ。ジャワ島内の町々は相互
につながりあっていて、スマトラとは異なっている。ましてやカリマンタンやパプアとは
もっと大違いだ。

交通渋滞とは別に、莫大な人口は環境面でネガティブな影響をもたらすだろう。開発政策
の誤りがジャワ島の環境収容能力劣化を煽った結果、今やジャワ島住民が災害リスクナン
バーワンの位置にある。災害対策国家庁データによれば災害の52%がジャワ島で発生し
ており、その事実を裏書きしている。プルウォレジョ・クブメン・バンジャルヌガラや他
の場所で水害やがけ崩れが発生したニュースをわれわれは頻繁に耳にする。2002年か
ら2016年までの間に天災による死亡者数は12,191人、怪我人は203,354
人あった。

ヨグヤカルタ国家開発大学エコ・トゥグ・パリプルナ地質学専門家は、現在行われている
開発は環境収容能力への配慮がなく、むしろそれを弱めている、と述べている。逆に言う
なら、それは災害リスクを高めているということなのだ。ジャワの、特に鉱業分野におけ
る採掘業許可は依然として搾取型開発パラダイムになっていることを示している。ジャワ
島は既にエコロジーサポート能力の限界を越えているのだから、採鉱活動にはモラトリア
ムがなされるべきだ。

インドネシア全体として水の需給ステータスは余剰があるのだが、ジャワ・バリ・東西ヌ
サトゥンガラはマイナスである。2003年の水需給状況データによれば、ジャワ・バリ
・東西ヌサトゥンガラの水需要量は384億立米にのぼる。人口増や経済活動の上昇に伴
って、マイナスの需給バランスは将来拡大の一途をたどるだろう。

インドネシアの水資源潜在力は年間一人当たり1.5万立米と見られており、世界平均の
8千立米よりもはるかに高いレベルにある。1930年のジャワ島は4千7百立米の能力
を持っていたものの、2020年には1千2百立米まで低下すると見込まれており、それ
は35%の経済適性しか保有していない。

< ジャワ島外の開発 >
上述の諸問題への解決策は、ジャワ島外の開発がカギを握っている。工業団地の7割はジ
ャワ島にあり、西ジャワが最大の45%を占めている。ジャワ島外の工業団地は、リアウ
州・リアウ島嶼州・東カリマンタン州などの限られた少数の地域に集まっている。工場を
ジャワ島外に移転させるにはインフラ不足が障害になっているのだ。道路や港湾ばかりか、
電力やエネルギー供給もそこに含まれる。

加えて、妥当な数とクオリティの労働力が不足している問題もある。それはつまり、ジャ
ワ島外の多くの地域で質の高い教育を実施しなければならないことを意味しているのだ。
同時に保健医療サービス体制も充実させていかなければならない。

ジャワ島の人口増は毎年2百万人であり、数十年後には2億人に達することだろう。その
巨大な数字は環境収容能力を超過している。それに追い討ちをかけて、ジャワ島の陸地面
積は海面上昇によって2050年に大幅な縮小が起こることが予想されている。

山積されているそれらの急を要する大きな問題への対応策として包括的なステップが求め
られている。ジャカルタに集まっている通貨量が莫大すぎて、それが強力な磁石の役割を
果たしていることから、首都のジャワ島外移転の検討は急務である。優先チョイスはジャ
ワの四倍の面積を持つカリマンタンだ。人口も1千4〜5百万人しかいない。

首都移転はジャワ島の負担を軽減させると同時に、70年間に渡って力の入らなかったジ
ャワ島外の開発を促進させることになるだろう。首都移転はたくさんの国で普通に行われ
てきたことだ。米国はニューヨークからワシントンDCに、オーストラリアはシドニーから
キャンベラに、ドイツはボンからベルリンに、ブラジルはリオデジャネイロからブラジリ
アに、日本は京都から東京に。

首都移転は詳細且つ巧みに計画がなされるべき大仕事だ。言うまでもなく、その実施には
巨額の予算が必要になる。その原資は税金と税外国庫収入だ。国税総局上層部を含めて諸
方面は、政府が国税総局を大蔵省から外に出して大統領直属にし、その国家機関にもっと
大きい権限を与えて任務を遂行させるという体制を作り、真剣な姿勢で徴税任務を推進さ
せて行けば税収の増加は可能だと考えている。

もし上で述べたような努力をわれわれが適正に行っていけるなら、本論のタイトルは
Jakarta, Jawa, dan IndonesiaでなくてIndonesia, Jawa, dan Jakartaにひっくり返るだ
ろうつまり重要性はインドネシアがトップの位置にあり、それがジャワ島に降りてきて、
最終的にジャカルタに達するというのが本筋だからだ。わたしが付けたタイトルがもたら
している「まずジャカルタありき」という印象とはまるで正反対なのである。