「農業を滅ぼすニュータウン(後)」(2019年11月27日)

実は、ジャボデタベッ地区の辺縁村落部では、同じような現象が進行している。たとえば
タングラン県パグダガン村でも、ほとんどの土地が開発会社の所有に変わった。開発会社
はそこを住宅地区にしようとしている。まだ残っているレンコンクロン村は従来営んでき
た家畜飼育と畑作ができなくなりつつある。生業のために運営できる土地が激減している
ためだ。

タルマヌガラ大学の用地都市計画学科教官は、都市における住宅開発の歴史は1984年
ごろから始まった、と語る。そのころ、ジャカルタ周辺部の地域開発を民間に行わせるた
めに、許認可が続々と下ろされた。国土庁データでは、その時期にジャボデタベッの9万
2千Haが開発事業のためにデベロッパーの所有になったと言う。

1998〜1999年に地方分権が行われ、また通貨危機にも襲われた。デベロッパーの
開発計画は停止し、それどころか倒産の危機に直面したところも多かった。それを乗り越
えようとしてデベロッパーは都市部の商業施設への投資に切り替えた。商業中心・スーパ
ーブロック・高層高級住宅・高級オフィスビルあるいはそれらの組み合わせといったもの
だ。

2000〜2005年の時期にジャカルタに建てられたショッピングセンターは床面積が
3百万平米に達した。中でも業界ではスーパーブロックに腕の冴えを見せようとする競争
が激化し、2010年にピークに達してからも、その傾向はほぼ10年間維持されている。
2002〜2007年はジャカルタで低所得層向け積層住宅の開発に焦点が当たった時期
だ。しかしコスト的にフィットしないと判断された案件が高層高級住宅に転向した例も少
なくない。

そして今、ふたたび首都圏辺縁部でのニュータウン開発の波が押し寄せている。インドネ
シアリアルエステート会のデータによれば、デベロッパーが運営している33のニュータ
ウンがジャカルタを取り巻いており、総面積は50,328Haで、ジャカルタの面積66,
150Haに接近しつつある。


2017年3月の全国社会経済サーベイで、首都ジャカルタ住民のほぼ半分が自己所有住
宅を持っていないことが明らかになっている。住居を所有している世帯は282万世帯の
うちの136万世帯でしかない。146万世帯が自分の家を欲しているのである。その状
況が33のニュータウンによって軽減されているわけでないというのがそれらのデータか
ら得られる推測だ。

社会政策におけるミスマッチングをわれわれはそこに見ることができる。都民の住居自己
所有率向上と首都圏辺縁部における住宅開発がフィットしていないこと、そして首都圏辺
縁部での住宅開発が生産的な農業用地を減少させていることである。

学術界はその現状に対して、首都圏辺縁部での大規模住宅開発に関する見直しを早急に行
うよう政府に提言している。また同時に地方自治体に対しても、大規模住宅地開発の許可
を下す際に、生産的農業用地の減少を防ぐことをもっと真剣に検討するよう求めている。
[ 完 ]