「失敗民族(前)」(2020年02月19日)
ライター: 社会政治問題オブザーバー、スラストモ
ソース: 2014年2月22日付けコンパス紙 "Bangsa yang Gagal"

ダロン・アセモグルとジェイムズ・A・ロビンソンの共著「国家はなぜ衰退するのかWhy 
Nations Fail」は、どうしてある民族は進歩し、どうしてある民族は後進的なままなのか
を解説している。

われわれのだれもが目の当たりにしているように、世界には一人当たり個人所得のたいへ
ん大きい国があり、同時に貧困に覆われているたくさんの国がある。そのために現代世界
の姿は、高所得国家と低所得国家の間での幅広い社会較差に彩られているのである。その
較差は国家間だけでなく、地域間にもあり、隣り合う村落間にすら見出すことができる。


その北部がアメリカ合衆国アリゾナ州に入り、南はメキシコに属しているノガレス地方の
社会がどのようになっているかを著者は例に引いた。北部では一家族の年収が3万米ドル
に上っている一方、南部はその三分の一しかない。その差は子供への教育環境に影響を与
えている。北部はすべての子供が学校教育を受ける機会を得ているのに比べて、南部の子
供たちは多数が学校へ行っていない。中等教育でさえ、そんな状況だ。

著者はまたもっと大きいスケールで、朝鮮半島の南と北で顕著な違いが見られることに触
れている。アフリカ大陸の大部分の国がいまだに貧困で、おまけに飢餓に苛まれているの
はどうしてか?アメリカ大陸の南と北では?その違いは、数百年もの長い歴史を経たもの
なのである。

一民族、地域、村などの進歩と退歩は国家や地域や村の行政統治がどのようになされてい
るか次第だと言うことができよう。その鍵は社会の参画がイノベーションを実現させるイ
ンセンティブとチャンスをどのようにして生み出しているのかという点にある。エジソン
やビル・ゲーツが米国で、韓国ではサムスンやヒュンダイがどうしてイノベーションを行
うことができたのかということについての秘密がそこにある。イギリスで産業革命が生ま
れたのも同様だ。政体が王国であっても、イノベーションを実現させるためのインセンテ
ィブは広く開放されているのである。明治維新以後の日本、フランス革命後のフランスで
も変わりはない。


国家・地域・村の行政統治が抱擁的であれば、それらは起こりうるのである。まず、抱擁
的政治システムが抱擁的な経済システムへの影響をもたらす。抱擁的な政治経済システム
によってすべての国民は、出身・種族・宗教の違いに拘泥されずに同じ権利と義務と機会
を付与される。その環境の中では、プルーラリズムが政治経済システムの主要基盤となる
のである。

そのような状態がひとびとをして、世間から称揚され、且つ経済面を含めた進歩のチャン
スを得るために、イノベーションを実行させることになる。ビル・ゲーツはかれのイノベ
ーションによって世界随一の富裕者になった。それは言うまでもなく米国経済に影響をも
たらしている。サムスンもトヨタも韓国や日本の経済成長に多大な役割を果たしているの
である。

とはいえ、その理論が百パーセント正しいわけでもない。その例が中国だ。1979年の
トン・シャオピン?小平改革以後今日まで、中国は三十年間にわたって高い経済成長を示
している。ところが政治システムは抱擁的なものになっていないのだ。同じことは198
5年ゴルバチョフ改革前の冷戦時代のロシア(ソ連)にも当てはまる。しかし最終的にロ
シアは破綻してしまったことを歴史は記録している。抱擁的でない政治システムは維持さ
れ続けえないことが明らかになった。中国も同じ運命に見舞われるのだろうか?われわれ
はそれがどうなっていくのかを今後も見守り続けることになるだろう。[ 続く ]