「持続的なインドネシアのイスラム(前)」(2020年03月12日) ライター: シャリフ・ヒダヤトゥラ国立イスラム教大学教授、アジュマルディ・アズラ ソース: 2015年8月3日付けコンパス紙 "Islam Indonesia Berkelanjutan" 世界がインドネシアのイスラムにますます強い希望の目を向けていることは一層否定しに くい状況になりつつあるようだ。コンフリクト・暴力・戦争に揺れ続けているアラブや南 アジアのイスラムと違って、インドネシアのイスラムは平和である。世界のあちこちにあ るイスラム世界を絶えず揺さぶっている過激主義や急進主義はインドネシアで顕著な現象 になっていない。 それゆえにデヴィッド・キャメロンイギリス首相がそれに関してひとつの考えを持ったこ とは不思議でない。ジャカルタ訪問の中でかれは5人のインドネシアのイスラム著名人と 会見した。ムハマディア中央指導部会長ディン・シャムスディン、ナフダトゥルウラマ有 力者アルウィ・シハブ、ワヒッ研究所理事イェニー・ワヒッ、スンダクラパモスク執行会 長アッサ・マッムッ、そして筆者がその5人だ。キャメロン首相はインドネシアのイスラ ムがどうして過激主義や急進主義から免れているのかを知りたいと表明した。 キャメロン首相によれば、インドネシア国民2億5千5百万人のうちのおよそ5百人がイ ラクとシリアのイスラム国(ダエシュ)に参加している。一方、イギリスのムスリム国民 はたった250万人程度しかいないというのに、ダエシュに参加した者は1千人を超えて いる。急進主義の思想と運動を抑え込み、その影響の拡大を防ぎ、インドネシア国民をダ エシュ思想にかぶれさせないことにインドネシアが成功している鍵は何なのか?(201 5年7月29日付けコンパス紙) < イスラムヌサンタラ、インドネシアのイスラム > その成功の大きな鍵のひとつがインドネシア全土をカバーしている中道イスラム諸団体の 存在と威勢であるのは疑う余地のないことだ。インドネシア最大のふたつの団体、ナフダ トゥルウラマとムハマディヤは今、大規模な祭典を行っている。ナフダトゥルウラマは第 33回全国大会を東ジャワ州ジョンバンで2015年8月1日に、ムハマディアは第47 回全国大会をマカッサルで2015年8月3日に行っている。ナフダトゥルウラマとムハ マディヤの全国大会はイスラム文明、すなわち全宇宙にとっての神の恩寵であるラッマタ ンリルアラミンRahmatan lil 'alaminに即した進歩的イスラムのための中道イスラム勢力 を強化するモメンタムに他ならない。 ムハマディアとナフダトゥルウラマにとっての基本パラダイムと実践形態をなしている中 道イスラムは長い伝統と化してイスラムヌサンタラを形成している。イスラムヌサンタラ の用語は学術界で使われている、インドネシア・マレーシア・ブルネイ・パタニ・ミンダ ナオが構成するムスリム地域を指す東南アジアイスラムに関連している。 イスラムヌサンタラエリアは植民地前史の文書に、風下の地negeri bawah anginと記され た。16世紀末以来、アラブ語文書ではイスラムヌサンタラエリアをもっとスペシフィッ クに、ジャウィムスリムの地negeri Muslim Jawiを意味するアラブ語bilad al-Jawiと呼 んでいた。それは東南アジアを指している。ヌサンタラのイスラム教徒はashab al-Jawiy ynまたはjama'ah al-Jawiyynと呼ばれた。 イスラムヌサンタラエリアは八つのイスラム宗教文化地域のひとつである。他の七つとは、 アラブ・ペルシャ/イラン・トルコ・インド亜大陸・中国イスラム・ブラックアフリカ・ 西洋世界だ。信仰と勤行に同一の教義と基本原理を共通に持ってはいても、それぞれは異 なる宗教色と文化を有しているのである。[ 続く ]