「糞尿文学(1)」(2020年05月26日)

ライター: ジャカルタジャカルタ写真記録センター社員、セノ・グミラ・アジダルマ
ソース: 2001年5月13日付けコンパス紙 "Tinja dalam Sastra"

文学者・思索家にしてParakitri Tahi Simbolon理事のウィマル・ウィトゥラル氏はフリ
ーランス記者のインタビューに対して、その機関名称の真ん中の単語は/T/を省略するの
だと答えた。なぜならジャワ島でその単語は/h/を省略されるのが普通であり、taiは
tinja(いずれも糞便、tahiはムラユポリネシア語源でtinjaは語源不明、tahiは比喩表現
が豊かでtinjaは即物的用法が多い。ちなみに、ほくろはインドネシア語でハエの糞tahi 
lalat)を意味するのだから、と氏は言う。しかしながら、ジャワ人がはっきり/h/を付け
て発音したとしても、その意味はやはりtinjaなのである。スタルジ・カルズム・バッリ
Sutardji Calzoum Bachriが2001年に発表した短編集Hujan Menulis Ayam内の一作品
のタイトルTahiと違いはない。バタッBatak文化におけるTahiがtinjaを意味しないことは
明らかだ。

ところが、/h/があろうがなかろうがtinjaを意味するtahiは、インドネシア文学の中で常
に同じ意味であるとはかぎらない。誰もが同じように美について格闘している文学者たち
も、あのおぞましいイメージのtinjaを扱っていたのだ。わたしがイメージと述べたのは、
デノテーションで糞便とは植物の育成や魚を太らせることばかりか、エコロジープロセス
で重要な一部分に位置付けられるからだ。語義のそのような良否の間の分裂が、tinjaを
話題にすることを可能にしているのである。文学が知識の源泉であることを求められるの
なら、文学は科学的理論を言葉で表現しなければならないという意味でなく、その反対に、
物理学から文献学に至るいかなる理論であれ、どこまで深く文学の意義付けや文学作品の
中に込められた知識を取り出して明示を行うツールになれるかという点にあるのだ。たと
え込められているものが糞便であっても。インドネシア文学におけるtinjaについては、
たくさんの簡潔な文章が存在する。


プトゥ・ウィジャヤPutu Wijayaが出しもののひとつにTaiという題目を付けて、センセー
ションを求める行為だと諸方面から批判されたのは確か1983年のことだった。かれ自
身はそのタイトルについて、吐き気を催す情勢を表すものだとコメントした。オルバ治政
への吐き気を意図していることは明白だ。あるレジームをイメージ化するために糞尿論が
使われたのがそれだ。文学というのはどうやら、審美とロマンを常に追求しているもので
なく、だれかを卑しめるためのあからさまな方法にもなりうるようだ。しかしプトゥがア
メリカでその芝居を上演する機会を得たとき、かれはそのタイトルTaiがあまりにも下卑
ているため英語のshitに翻訳することができず、別の言葉に変えた。「インドネシアはア
メリカよりも自由だったんだ。」とかれはそのとき語ったが、それは皮肉以外の何もので
もない。

真の学者然とした顔の一見謹直なる文学博士兼教授である文学者ブディ・ダルマBudi 
Darmaは1988年の小説ラフィルスRafilusの中で、糞便を素材に扱った。その68ペー
ジには次の文章が見られる。
しばしば、わたしは妊婦が排便するのを隠れて密かに観察した。昔からわたしの地方の人
間はよく川で排便していたのだ。かの女らのtaiがどのように排出されるのかがよく見え
るように、わたしはいつも最適な場所を探した。それでも、尻の穴から赤ん坊がtaiと一
緒に飛び出して来るシーンを見ることはなかった。

インドネシア文学におけるtinja現象は確かに存在するようだ。糞便大王と呼ばれてしか
るべきはハムサッ・ランクティHamsad Rangkutiだろう。少なくともかれのふたつの短編
作品は、いかにかれがその物質をこねくり回すことに長けているかを示している。タマン
イスマイルマルズキのオープンシアターで朗読されたこともある1982年の作品Pispot
(室内用便器)では、ネックレスをひったくって呑み込んだ容疑をかけられた男の話が物
語られている。警官は男の腹の中身を排出させようとしてパパヤから下剤まであれこれ使
い、やっとpispotの中に出た汚物を調べた。しかしそれで見つからなかったために、別の
pispotを用意し、また排出させた。汚物をかきまわす警官のセリフはこうだ。
「まだ見つからん。またテンペの残りばかりだ。糸状のものがあったが、ありゃ、茹でシ
ンコンの芯だろう。」

そこまで読んで、わたしは隣にいた詩人アドリ・ダルマジ・ウォコAdri Darmadji Wokoが
こう叫んだのを思い出した。「ハムサッ、gila!」
[ 続く ]