「グヌンマスでワリニ茶を(後)」(2020年08月04日)

オランダ植民地時代にヌサンタラのあちこちに開かれた農園のすべてをインドネシア共和
国は国有化した。各地にオランダ時代の遺産である農園を運営するための国有会社が作ら
れ、紆余曲折を経た末に現在のヌサンタラ農園会社システムができあがった。ちなみに、
その内容は次のようになっている。ヌサンタラ農園会社はPTPNという頭字語に省略さ
れるのが普通だ。(社名:所在地:主製品)
PTPN I :アチェ特別州Langsa : パームヤシ・ゴム
PTPN II  : 北スマトラ州Medan :パームヤシ・タバコ・サトウキビ・ゴム
PTPN III  : 北スマトラ州Medan :パームヤシ・ゴム
PTPN IV   : 北スマトラ州Medan :パームヤシ・紅茶
PTPN V : リアウ州Pekanbaru :パームヤシ・ゴム
PTPN VI   : ジャンビ州Jambi   :パームヤシ・紅茶・ゴム
PTPN VII  : ランプン州B.Lampung : パームヤシ・ゴム・サトウキビ・紅茶
PTPN VIII : 西ジャワ州Bandung :紅茶・ゴム・パームヤシ・キニーネ・カカオ
PTPN IX   : 中部ジャワ州Semarang :ゴム・コーヒー・紅茶・サトウキビ
PTPN X : 東ジャワ州Surabaya :サトウキビ・タバコ
PTPN XI   : 東ジャワ州Surabaya :サトウキビからの砂糖とアルコール
PTPN XII  : 東ジャワ州Surabaya :ゴム・コーヒー・カカオ・紅茶
PTPN XIII : 西カリマンタン州Pontianak :ゴム・パームヤシ
PTPN XIV  : 南スラウェシ州Makassar :サトウキビ・パームヤシ・ゴム・カカオ・コ
コナツ・畜産

PTPN8はグヌンマス農園の中にアグロ観光施設を設けて観光ビジネスを行っている。
宿泊施設があり、食堂があり、カフェがあり、土産物屋があり、企業の従業員慰安や教育
訓練のための会議場や運動施設も用意されている。プールもあれば乗馬しての散歩も可能。
更にキャンプ場まで設けられている。

売り物はティウオークtea walk (インドネシア語はtiwok)と呼ばれる、茶農園を何キロ
も渡渉するハイキングで、ガイドが付いて朝夕の涼しい高原の空気を吸いながらの軽い運
動が人気を呼んでいる。茶葉の加工工場で工程見学もさせてもらえる。ただし20人グル
ープ単位でガイドがひとり付く。乾燥作業の内容や、茶葉の選別作業などを見学者は学ぶ
ことになる。茶葉の製造工程をもっと深く知りたい客には、茶摘みから始まって選別や加
工作業の詳細に至るすべての工程を教えてもらうこともできるそうだ。グヌンマス農園の
アグロ観光プログラムは徹底していると言えるだろう。

農園ではふだんから老若の茶摘み娘たちがどこかで作業しており、そんな場所にうまく出
会えば写真のモデルになってもらえる。モデルになってもらったお礼にみんなチップをあ
げているようだから、外国人も真似した方が良いだろう。何しろ、かの女たちはそのため
に毎日化粧して茶摘み作業に出て来るそうだから。かの女たちは手弁当で仕事に出て来る。
弁当にお茶。茶葉は自分たちが摘んだものだ。スンダ人はたいてい砂糖を入れないお茶を
飲む。


グヌンマス農園で生産される茶葉はワリニWaliniのブランドが付けられて輸出されている。
ワリニブランドの茶葉はPTPN8がこのグヌンマスやバンドン近郊のチウィデイCiwidey
などで栽培しているもので、工場で仕上げられた茶葉はさまざまなグレードに選別される。
一級品:broken peko 1 (BP1), peko fanning 1 (PF1), peko dust (PD), dust 1 (D), 
fanning
二級品:dust 2, fanning 2
三級品:broken mix, pluff

プンチャッ街道は既にあらかた開発されつくして既に商業街の態をなしているが、一歩奥
に入ればまだまだ自然は残されている。グヌンマスの茶農園はなんと、サファリパークと
ほとんど背中合わせになっているのだ。休日のプンチャッ街道を苦行のためにだけ登るの
はもったいないだろう。温かいワリニ茶を飲みながら茶農園の中で一泊するのも、思い出
深い体験になるかもしれない。[ 完 ]