「ヌサンタラのフランス人(35)」(2020年09月13日)

ところがほんの数年前までヨーロッパ人がめったに話題にしたことのない日本という国が、
世の関心を集めるようになった。それまで日本人というのは何人かの個人的知り合いや、
曲芸師、娼婦しか見たことがなかったというのに、今やその数は急激に増加している。曲
芸師はまだいるにはいるが、娼婦は激増し、商店を開く商人も増加し、経済面以外の分野
にまで不安を拡大させている。

日清戦争で日本が勝利したことにヨーロッパ中が驚き、他国を征服したことでその極東の
民族が西洋パワーのレベルを突然凌駕したことを認識した。ヨーロッパ人は警戒心を向け、
心は不安に包まれた。

ジャワには強力な軍隊がおり、知性豊かな指導者がいて、要塞と軍事基地が散在し、鉄道
線路網が走っている。2万5千人であろうが5万人であろうが、いかなる敵が進攻してき
ても、ジャワ島を奪うことはできない。それはわたしひとりの意見ではない。とはいえ、
欧亜混血のリーダーたちが日本を特別な位置に祭り上げる可能性も計算に入れなければな
らない。日本人への監視を強めることは、十分に理由のあることなのだ。しかしまた、別
の要素もある。

最近日本は通商分野でいくつかの大国と重要な条約を結んだ。日本人はヨーロッパ人並み
の待遇を受けることになった。その条約の結果、日本はヨーロッパ諸国と相互に拘束し合
える立場に立った。こうして日本人が滞在しに来たり、会社を設立しに来ることを阻む理
由がなくなり、日本人に特別の課税をすることも、日本人の活動分野を制限することや大
っぴらに監視を行うことすらできなくなった。オランダは日本と条約を結んだ国のひとつ
である。

日本が台湾を併合したことに関連して、その状況は特別の意味を持つようになった。台湾
が日本領になったために、台湾の中国人が日本国籍を持てるようになった。その中国人が
日本と条約を結んだ国に滞在するとき、かれらは日本人として契約を行うことができるの
である。相手が原住民でもヨーロッパ人でも同じように。

台湾に住んでいる一部中国人が、在来の中国人と同じような性格とプロセスとチャンスを
持ってジャワにおけるビジネスを行うとき、中国人に対して行っているような取締りをか
れらには行えなくなり、ヨーロッパ人と同じ取扱いをしなければならなくなる。ジャワに
近い台湾は危険な場所になった。


ジャワに1万7千人、外島部に8千人いるアラブ人は経済分野でも宗教分野でも不運を嘆
いている。経済分野については、いくつかの点を華人と比較することができるだろう。農
業や商業で成功する者もある。かれらが何も産しない土地に住んでいたとはいえ、それで
も資金の運用はできるのだ。物品を仕入れ、金利を乗せてそれを売るクレジット販売で利
益を増やす。時に金利はとてつもなく高かったりする。かれらはヨーロッパ人に依存する
こともあるが、ジャワ人への依存はもっと確実だ。そのどちらの状況においても、宗教が
役立つツールになる。かれらアラブ人のほとんどはイエメンから移住して来た。イエメン
はメッカに近く、宗教的な意欲はたいへん強い。かれらは自分を有利にする教義を前面に
押し出して、あらゆる分野に宗教をからめる。

宗教に対するかれらの信仰はあまり純粋なものでないようだが、イスラム社会において宗
教は、それが正統であろうが異端であろうが、自分たちが上位に立つためのツールである
ということが熟知されており、それがために敬虔な信徒である姿をかれらは情熱的に誇示
しようとする。経済と商業の分野でそれは大きなチャンスをかれらにもたらす。

プリブミはあのような暮らしをしており、教義実践を厳格に、時にはファナティックに行
っている。それは時としてヨーロッパ人支配者に不安をもたらす元凶になっている。
[ 続く ]