「マジャパヒッの祝宴(3)」(2020年10月05日)

クンストクリンパレイスで行われた集いでは、ハヤムルッ王の祝宴を模して料理や飲み物
が大きな板に載せて運ばれ、男性店員がモスグリーンの制服に槍と盾を持ってマジャパヒ
ッ王国の兵士に扮し、女性店員はバティックのカインクバヤ姿で踊り子になって店内の雰
囲気を盛り上げた。

その日用意されたメニューは10種類。参会者がナシトゥンプンに群がる方式は取られず、
みんなはテーブルに座って給仕されるのを待つ。出て来たメニューのほとんどは、いまも
ヌサンタラのどこかでだれかが食べているのと大差ないものだった。

前菜はグルシッ地方特産のバンデンbandeng魚のオタコタotak-otak。滑らかに練られたバ
ンデン(ミルクフィッシュ)の肉にスパイスとココナツミルクを混ぜて円筒形に形作り、
シンコン(キャッサバ)の葉を使って海苔巻きのように包んで切り分けたもの。

続いてトゥバンの魚スープ。トゥバンはマジャパヒッ王国の初期に服属した地方だ。この
スープは見かけも味もタイのトムヤムによく似ている。スープの具は魚・海老・イカで、
トマトが加えられているためフレッシュな酸味が楽しめる。そしてそれからフルコースが
始まった。

フルコースは紅白二色飯に6種類のおかず。勇気と聖性を意味する紅白二色はインドネシ
ア国旗に使われているのだが、マジャパヒッ王国の国旗は5本の赤線と4本の白線の横じ
まになっていた。マジャパヒッ時代の方が勇気と聖性が豊富だったのかもしれない。


紅白二色飯は赤米と白米を炊いた通常の飯で、おかずの内の三種類は沿海地方の郷土料理
を代表するものだった。ロブスターのスパイス焼き、イカの墨煮、サンバルワドゥルウィ
ルウォティカsambal wader wilwatika。ロブスターとイカはトゥバンの郷土料理と思われ
る。イカ墨を使う料理は8世紀に興ったシャイレンドラSyailendra王朝の時代に既に行わ
れていたようだ。

淡水魚を使うサンバルワドゥルウィルウォティカはマジャパヒッ王国の王都トロウラン
Trowulanのものだそうだ。14世紀から16世紀ごろまで、マジャパヒッの王都では運河
やため池などで捕れる淡水魚が頻繁に食卓に載っていたらしく、現在でもモジョクルト地
方では地元で簡単に捕れる淡水魚がよく食されている。

サンバルワドゥルのレシピーは次の通り。
材料
ワドゥル spotted barb 2袋
ジュウロクササゲ kacang panjang 10本
赤トウガラシ cabai merah 2個
キダチトウガラシ cabai rawit 12個
トマト tomat  1個
レモンバジル kemangi 適量
砂糖 gula 適量
塩 garam 適量
揚げ魚スパイス bumbu ikan goreng 適量
蝦醤 terasi 適量
作り方
魚はきれいにし、洗い、乾かす。
揚げ魚用スパイスと塩を適度にふりかける。
キャッサバ粉をまぶしてから揚げにする。
トウガラシ、トマト、塩、砂糖、蝦醤をすり鉢でつぶし混ぜる。
全部をまとめ、レモンバジルを載せる。
[ 続く ]