「スマトラトラ(10)」(2021年02月16日)

森林大臣はインドラギリヒリル県で起こった住民によるトラ四頭の殺りく事件を重く見て、
首謀者に対する法的措置を執るよう命じた。トラの棲息地域に隣接する場所で生活してい
る住民は、自分の立場を弁えなければならない。トラは保護されなければならない動物で
あり、トラが自分の棲息領域を狭められたために人間の領域に侵入してくることは当然の
因果関係なのだ。家畜を殺されたのなら届け出て公的措置を仰ぐのが筋道であり、私怨を
晴らすようなことをしてはならない。大臣の主旨はそのようなものだった。


2009年3月には北スマトラ州北タパヌリ県でトラが部落に侵入して家畜の豚を何頭か
食ったために、住民が二輪車のブレーキワイヤーを使った木製の罠を仕掛けてトラを生け
捕りにした。場所はメダンから4百キロほど離れた中部タパヌリ県との県境に近い。タパ
ヌリ県警に事件が通報され、州天然資源保存館が出動して生きているトラを収容した。

北スマトラ州でのトラの人間領域への侵入は2007年に3件、2008年に4件発生し
ており、豚や犬が犠牲になっているが人間の死者は出ていない。


2010年3月21日23時半ごろ、ジャンビ州ブルバッ国立公園内の小屋に住んでいた
25歳の青年が小屋の外でトラに襲われて死亡した。その小屋は7人のグループが建てた
もので、被害者はそのひとりであり、7人はそこで盗伐を行っていたらしく、国立公園内
での活動に関する届出は一切なされていなかった。

仲間の6人は被害者がトラに襲われたのを見るが早いか、全員が即座に逃走した模様だ。
被害者の死体は翌朝、そこから近いムアロジャンビ県スポンジェン村の住民が発見して通
報した。ジャンビ州天然資源保存館が行った現場調査によれば、被害者は小屋の外で涼ん
でいるときに襲われたらしく、遺体はあちこちが引き裂かれ、頭はつぶれていたそうだ。

3月10日には別の被害者がトラに襲われており、21日の事件がブルバッ国立公園でこ
の月二度目の襲撃事件になった。最初の被害者は一命を取り留めていて、病院で治療を受
けている。

ブルバッ国立公園内にはトラの調査を目的にして監視カメラが設置されており、画像は8
頭が棲息していることを示している。別の場所に設置されている監視カメラの画像分析が
なされたなら、頭数はもっと増加するだろう。トラの棲息領域に人間が侵入すれば襲撃が
起こる確率はたいへん高いことを人間は理解しなければならない、と保存館長はコメント
した。

2010年5月8日、ジャンビ州ムコムコのトゥンガン村でクリンチセブラッ国立公園の
トラを狩るのを生業にしていた一族のふたりが県警察と天然資源保存館が編成したチーム
に逮捕された。

二カ月前からチームは本格的に密猟を行っている者があることを突き止め、その捜査を進
めていた。その大物密猟者の正体が判明したのは最近で、57歳と33歳の村民ふたりが
犯人であることを確信したチームが5月8日にふたりを罠にかけて現行犯逮捕した。ふた
りは親族関係にあった。

ふたりはトラの通り道に罠を張って捕まえ、捕らえたトラの頭を叩き割って殺し、皮・骨
・牙などをブンクル・パダン・リアウなどに売りさばいていた。逮捕されたとき、ふたり
は長さ138センチほどのトラ皮1枚と骨や牙をブンクルの買い手に売り渡すために持っ
ていた。トラ皮は1千万ルピアで売り渡すことになっていたそうだ。

2002年からジャンビ州が開始した密猟者密売者粛清方針で、少なくないひとびとが逮
捕されている。かつてはクリンチセブラッ国立公園内に密猟者が張った罠はいつも40カ
所くらいにあったが、最近では20カ所ほどに半減した。それを全滅させたときにトラが
絶滅していなければよいのだが。


2011年3月3日夜、ランプン州天然資源保存館と森林警察合同チームがバンダルラン
プン市内のレストランで保護動物の解体パーツをレストラン客に売っていたふたりの男を
逮捕した。51歳と41歳のふたりの男がそこに持って来ていた商品は、トラの皮の端切
れ、象の牙で作った煙草パイプ、クジラの骨などで、トラの皮は5x7.5センチが70
枚、13x13センチ9枚、また18x15センチの黒豹の皮も6枚混じっていた。
[ 続く ]