「ヌサンタラの渡り鳥(2)」(2021年03月25日)

西バリのトゥリマTerima湾で再び全員集合すると、バトゥルBatur湖を経て多分アグン山
を越え、バリ島東端のスラヤSeraya山に至る。そこからいくつかのグループが分離してロ
ンボッLombok海峡を越え、ヌサトゥンガラに入って行く。

西ヌサトゥンガラの肉食鳥渡り鳥のルートがちょっと不明だが、東ヌサトゥンガラではコ
モドKomodo島・スンバSumba島そしてフローレスFlores島のマンガライ県ゴロルサンGolo 
LusangとマウメレMaumereでアカハラダカAccipiter soloensisの到来が観測されている。

タカサゴダカAccipiter badiusとクロカッコウハヤブサAviceda leuphotesは小グループ
がアンダマン・ニコバル諸島経由でスマトラ西岸のニアスNias島⇒ムンタワイMentawai島
に下ってから、南スマトラ・ランプンの一帯にやってくる。クロカッコウハヤブサがボゴ
ール県チャリギン村・バンジャルサリ村で観測されているので、ジャワ島まで足を延ばす
ものがいるようだ。一方、アカハラダカがニアス・ムンタワイで観測されており、マレー
半島経由で来たものの個体がそこまで流れたのかもしれない。


フィリピン経由のルートはパラワン島を越えてカリマンタン島北部に向かうものと、ルソ
ン島を縦断してスラウェシ北端のサ~ギヘSangihe・タラウッTalaudに向かうものに分裂す
る。

パラワン島からサバへ入って来たものは、そこでふたつに分かれて行く先を変える。ハイ
イロチュウヒCircus cyaneus、チャイロカッコウハヤブサAviceda jerdoni、トビMilvus 
migransなどの小グループはサラワクに向かう。チャイロカッコウハヤブサはカリマンタ
ンの現地種として亜種が棲息しているものの、かれらは渡り鳥としてそこにやってくるの
だ。サラワク方面に向かったかれらは、パルンPalung山、センタルムSentarum湖、バリト
Barito地方奥地のカハヤンKahayan川上流一帯に散らばる。

一方、サラワク方面へ向かうグループよりもっと大きい集団と見られているハヤブサFalco 
peregrinus calidusなどの一行は、南下してブラウBerauに入るとクタイKutai海岸、マハ
カムMahakamデルタ、スロルSelor岬、ジュンパンJempang湖を経てバンジャルマシンのリ
アムカナン湖に達する。

それらより大きいメイン集団はルソン島を縦断してミンダナオ島の南端からサ~ギヘ・タ
ラウッ諸島に至る。一部はそこで分離して北スラウェシ州ドゥモガ経由でトミニTomini湾
のトゲアンTogean諸島ポアPoa島に向かう。ポア島まで来たものの多くは、東南スラウェ
シ州のラワアオパRawa Aopaに向かい、ボネ湾を通過してパレパレPare-pareから対岸のカ
リマンタン島にあるラウッLaut島まで飛ぶ。そこからさらにバンジャルマシンのリアムカ
ナン湖に到着してバリッパパンの海岸部やジュンパン湖で日常生活を送るのである。

またポア島から東のタリアブTaliabu島に向かい、ブルBuru島にたどり着いて冬を越える
ものもいる。

サ~ギヘ・タラウッ諸島からの本流はテルナーテTernate、バチャンBacan、ビサBisaの諸
島に向かい、オビObiからセラムSeram島を越え、最終的にタニンバルTanimbar諸島に達
する。アカハラダカやチュウヒCircus spilonotusの中に、セラムからパプアに向かうも
のがいると見られている。パプアにはチュウヒの在留種もいる。[ 続く ]