「アチェ料理(終)」(2021年07月16日) 業務や用事のために州外からアチェにやってきたひとたちをアチェ人ホストたちが接待す るとき、このメニューは絶好の小道具としてよく使われる。みんなが同じひとつの皿から 食べ物を取るという作法は親睦を高める効果を持ち、しかもアヤムを葉陰の中から探すと いうゲームじみた面白さが付随するのだから、たいていのひとは面白い趣向だと思うだろ う。「客人をここに誘うと、みんな喜んでくれますよ。」と、とある国有事業体アチェ支 店に勤務する男性は手放しでほめている。 この料理の作り方はまず、アヤムゴレンを作る。アチェ風アヤムゴレンは、鶏肉にスパイ スをまぶし、親指大に切って熱した油で揚げたものだ。スパイスはニンニク・コショウ・ キャンドルナッツ・しょうが・塩を練って作る。鶏肉が十分揚がるのに5〜10分かかる。 それを待つ間、頃合いを見計らって、適当な大きさに切った大量の葉野菜をそこに放り込 む。葉野菜はpandanとsalam kojaの葉である。 パンダンとは英語でパンデイナスpandanus、日本語はタコノキで、その葉は良い香りがす る。サラムコジャはカリによく使われる葉であるためカリの葉daun kariの異名を取って おり、英語でもcurry leafと呼ばれている。インドネシア語でもtemuruiという別名を持 っていて、日本語ではオオバゲッキツと言うそうだ。 できあがると、少し大きめの皿にアヤムゴレンを置き、その上に油で揚げられた大量の葉 をかぶせてアヤムゴレンが見えないようにする。これを食べるとき、葉っぱをひっかきま わしてアヤムを探すために、ayam sampahと呼ぶことを一部のアチェ人が始めた。しかし それは別称であって、標準名称ではない。 2013年3月13〜15日にコンパス紙がジャカルタ・バンドン・スマラン・ヨグヤカ ルタ・スラバヤ・デンパサル・メダン・パレンバン・バンジャルマシン・ポンティアナッ ・マナド・マカッサルの住民798人に電話インタビューでアチェ料理に関する調査を行 ったことがある。アチェ料理を食べたことのあるひとは四人にひとりしかいなかった。 質問:アチェ料理を食べたことは? ある:27.8% ない:72.2% 質問:(食べたことがある人に)気に入った料理は? ミーアチェ 68.9% グライアチェ 3.2% ナシカリ(カリご飯)2.7% クママ 2.3% アヤムタンカップ 2.3% その他 20.5% アチェを訪れる機会のなかったひとの大部分は、ミーアチェしか比較のまな板に載せられ る対象がなかったのではあるまいか。[ 完 ]