「スラウェシ島の食(2)」(2021年09月08日)

全国的にはチョトよりも人気の高いコンロも肉を使う汁料理だが、コンロはあばら肉が使
われる。チョトが実のたっぷり入ったスープの印象であるのと違って、コンロは骨付きあ
ばら肉が汁と一緒に出て来る印象であり、スープの量は大幅に異なる。汁は黒っぽい茶色
をしたスパイスあふれるもので、チョトと同じようにクトゥパッやブラスなど葉で包んで
炊いた飯と一緒にいただく。

汁が黒っぽいのはクルワッkeluwakが使われているためだ。東ジャワのスラバヤ一帯で有
名な郷土料理になっているラウォンrawonの真っ黒な汁もこのクルワッの賜物である。他
のスパイスはチョトに似ていて、コリアンダー・ナツメグ・ウコン・バンウコン・シナモ
ン・タマリンド・レモン葉・クローブ・サラムリーフなどが使われる。

骨付きあばら肉の脂こってりが昔は贅沢品だったのだろうが、現代人にはコレステロール
が怖ろしい。そんな現代人の人気を集めるためには、脂の処理に工夫をしなければだめな
のだということをコンロ食堂の店主たちは十二分に理解している。


ジャカルタにコンロの店を数店出しているマミン・ダエン・タタ氏によれば、骨付きあば
ら肉をまず大鍋に入れて数時間茹で、水面上に層をなすまで脂を搾り出し、そのあと新し
い水を入れた鍋に骨付きあばら肉とコレステロールを中和させるスパイス類を入れて煮る
そうだ。コレステロールの心配なしにコンロを愉しんでもらいたい、とかれは語っている。
最初は煮物だったコンロもその後、焼きコンロkonro bakarをバリエーションに持つよう
になっており、食の楽しみがまた増えている。

マミン氏の店には、アレンヤシのトゥアッが用意されている。マカッサルでバッロballo
と呼ばれているその液体をコンロに混ぜるとコレステロールが多少とも中和されるそうだ。
一方、やはりジャカルタに店を出しているコンロカレボシ店主は、発想を転換させている。
コンロはスタミナ食なのであり、病気上がりやそれ以外でもスタミナを付けたい皆さんは
どうぞコンロを召し上がれ、と宣伝しているのだ。店主は語る。

「コンロは死んだ細胞の新陳代謝を活発化させる。コンロは身体を健康にするものなので
す。コンロを食べたら、身体がすぐに反応して汗をかき始めます。」インドネシア人はた
いてい、食事で汗をかくのは健康の証明であると信じている。もちろん、コンロカレボシ
も骨付きあばら肉を最初に茹でて脂を搾り出すことは同じようにしている。


supあるいはsop konroは骨付きあばら肉のユニークな食べ方の極地だろう。肉の付いた大
きなあばら骨がスパイスに満ちた汁と共に供される。骨を手づかみにしてあばら肉にかじ
りつく野趣満点の醍醐味がコンロの食べ方だ。ちょっと深めの皿に四本のあばらと適量の
スパイス汁が入り、コメの飯と一緒に供される。

このコンロ食堂というのは骨付きあばら肉専門食堂なのであり、客はみんなあばら肉を食
べに来るのだ。一日に客が5百人来るなら、一体何頭分の牛が必要になるだろうか。

コンロカレボシ店主のハナピンさんは、一頭の牛から8人前のあばらが取れると言う。最
初、あばらの調達は何も問題がなく、十二分の余裕があった。ところが後から後からコン
ロ食堂が店開きし、西洋料理店もリブステーキの販売を増やして行ったから、あばらの需
要がどんどん増加して、ジャカルタ店の材料調達は西ジャワからランプン果てはパレンバ
ンまで延びて行った。それでも足りない時は、割高な輸入品を仕入れざるを得ない。需給
関係による値上がりだけでなく、輸送費も上昇するから、コスト変動がたいへんだ。
[ 続く ]