「イ_ア東部地方料理(6)」(2021年10月06日)

このレストランの発端は市内のムクティアサ職業高校の実習施設であり、シスター・マル
ティ二CIJがそこをレストランにして運営した。地元料理の実習施設なのだから、メニュ
ーは地元料理になって当然だ。地元民にとって地元料理は家で普通に食べるものなのだか
ら、わざわざレストランへ食べに行こうとは考えない。そのためにこのレストランを利用
するのは外来客と客人を連れて来る地元民に限られていた。それが今では、エンデの人気
レストランリストの上位に食い込んでいるのである。

記者ふたりは夜遅い時間に、竹網壁の高床家屋に入った。パンダンのござの上に低いテー
ブルが置かれ、レセハンlesehanスタイルの質素な店内は客をリラックスさせるに十分な
雰囲気だ。

時間が遅いのでメニューは限られるため、トウモロコシ飯と魚の酸味スープでどうですか、
とシスター・マルティ二がオファーした。魚はekor kuningだと言う。サウ海Laut Sawuで
獲れた新鮮なエコルクニンを味わえるのは願ったりかなったりだ。ちょっと量が足りない
かもしれないと思った記者はマハタの焼き魚も頼んだ。


客が注文してから、厨房ですべてが開始された。魚は奥の薪の炉で焼かれる。ブンブを含
めて、前もって作ってあったものなど、何ひとつない。新鮮な素材をブンブに加工する仕
事も始まる。付け合わせのパパヤの花とサツマイモが細かく刻まれる。フローレス島にだ
け生えている伝統スパイスのゴラゴサgoragosaも使われた。ゴラゴサはチガヤの一種で、
さわやかな酸味を持っている。タマリンドやブリンビンウルが手に入らなくても、ゴラゴ
サがあれば酸味の問題は解消する。

45分くらいして、料理が食卓に並べられた。トウモロコシ飯は黒い焼き物の器チャンブ
ンcambungに盛られ、魚の酸味スープは小型のチャンブンに入ってそれぞれの前に置かれ
た。焼き魚はパパヤの葉が敷かれた大皿に置かれ、二枚に開いたマハタの身がキュウリと
バジルを載せて湯気を噴いている。ゴラゴサ・ウコン・赤バワン・ニンニクが溶け込んだ
油のブンブが焼き魚の身にしみ込んで、トウガラシの辣味とさわやかな酸味が新鮮な魚肉
の旨味を引き立てている。パパヤの花・芋の葉・ココナツ果肉のフレークを混ぜて炒った
グタngetaも供された。トウガラシとトマト・バジルから成るサンバルトマトも欠かせな
い一品だ。

食べ始めたとたんに記者ふたりは驚いた。エンデのトウガラシがこんなに辣いとは、思っ
てもいなかったのだ。焼き魚が辣い。そしてサンバルはもっと辣い。飲み物のホットジン
ジャーも結構辛い。食べ始めてまだ間もないというのに、身体から汗がにじみ出てきた。


このレストランにはセットメニューがあり、赤飯nasi merah・魚の酸味スープ・グタ・サ
ンバルそして一種類の飲み物で構成されている。飲み物はローカルコーヒー・ジンジャー
ティ―・パンダンティ―・スレーティー・バジルティ―のいずれかひとつ。それで値段が
たったの22,500ルピアだと言うのだから、利益などないのではあるまいか。そう尋
ねると、シスター・マルティ二もうなずいた。

飯もトウモロコシ飯と赤飯の他に豆飯がある。豆飯には緑豆kacang hijauでなく、エンデ
のローカル産の黒豆が使われる。

またヌサンタラの伝統的な調理法である竹詰め方式の飯nasi bambuと肉daging bambuのメ
ニューもあって、注文に応じることができる。竹詰め調理法は何時間も時間をかけて作る
ものだから、事前の予約が不可欠だ。

このレストランの客は外国人観光客ばかりであり、料理は注文してから作られることを知
っているから、みんな先に予約を入れて食べに来る。既に16カ国の観光客がエンデの地
元料理を食べた。一番多いのはイタリア人で、たいてい団体でやってくる。米国人やドイ
ツ人も来ているとのことだった。[ 続く ]