「ジャワ島の料理(11)」(2021年11月18日)

さて、ソロとヨグヤカルタはマタラム王家の親族という関係にあるため、文化的な共通性
がベースの中に存在することは言うまでもない。ところが明白な違いも存在している。た
とえば上でグドゥッはヨグヤのものという印象の書き方をしたが、ソロのひとびともヨグ
ヤのグドゥッを好んで食べる。ところがそこにチェケルを載せる食べ方が出現し、ソロで
は十分な人気を得たがヨグヤではそれほどでもない、という違いが生じているというよう
なことをわたしは指摘している。

住民が示している大きい傾向として、ソロ人は外食が大好きである一方、ヨグヤ人は自宅
で調理された食事を家で食べる方を好むという現象がある。それが嵩じてソロ人は朝食ま
で家の外で食べるようになったのだろう。だからソロでは一家一族の大集団が朝から食堂
にやってくるようなシーンが見られるのである。

両親と5人兄妹の一家が、「いついつ朝食をどこそこで食べよう」という父親の提案一下、
子供の全員が既に独立して世帯を持っているにもかかわらず、指定された日時に指定され
た場所に続々と集まって来る。大勢で行くと、他の者が頼んだ料理を少し分けてもらって
食べることができて愉しいとかれらは言う。その一家は一週間に三回くらい、朝か昼か晩
の食事をどこかで一緒にしている。

別の一家は、同居している家族だけで頻繁に朝食を食べに出る。行き先はソト食堂が多い。
夜の食事であれば肉ステーキや牛タン、あるいは麺やチャプチャイの食堂へ行く。サテカ
ンビンは健康のために月に一度くらいとのこと。全員一緒に外に出ない時には、外で買っ
て帰って家で食べることもしばしばだ。

もっとすごい例は、母親が子供の朝ごはんを作って食べさせ、子供が学校へ行ったあとに
母親はご主人とどこかの食堂へ朝食に出かけるという話すら語られている。この一家は週
末や学校休みのときに、子供たちを連れて朝食に出る。

かの女は自分の両親のスタイルをそっくりそのまま実践しているのである。自分が子供の
ころに両親はそのような暮らし方をしていた。子供たちはソロの市内のどこでどんな美味
しい料理が食べられるのかを知らなければならない、とかの女は語っている。


そのようなすさまじさをヨグヤ人は持っていない。ヨグヤ人の性向は、自宅の台所で作ら
れた料理を、家族がみんなそろって自宅の中で食べる傾向が強いことである。だから主婦
は家族全員のための料理を、おまけにそれぞれが好きな料理を、心を込めて作る。家族の
人数が多いと、たくさんの種類の料理が冷蔵庫の中に詰め込まれることになる。多めに作
っておいて、数回の食事の都度温め直すのだろう。

生粋のヨグヤ人女性ヤユッさんは、子供たちが家族を連れて帰省して来ると、嫁や婿と孫
たちの食事を作っておくから自宅の冷蔵庫2台で足りなくなり、冷蔵庫をレンタルすると
語る。

家族生活の暖かみと温もりは家の食卓にあるという信条の発露として、食事は必ず自宅で
摂るのがマジョリティヨグヤ人の習慣だ。子供たちがまだ大学生だったころも、夕方まで
キャンパス活動があっても昼食は家に帰って食べていた。ご主人は毎朝、弁当を持って出
勤していた。ご主人も外食は好みでなく、外で食べて来るということをほとんどしない。
ヤユッさんが覚えている家族連れでの最後の外食はなんと、半年前の新年の祝いを兼ねた
ものだった。
「台所は女の領分です。台所はいつも暖かくなっていなければなりません。暖かい料理が
家にあることはとても重要なのです。家で食事をすることは女の存在を尊重していること
に他なりません。わたしの友人たちもみんなそうですよ。外で食事をしてはいけないと言
っているのではありません。時にはやむを得ない事情もあることでしょう。でも、家で食
事が用意されているにもかかわらず外で食べてくるなんてことをされたら、誰でもきっと
自分がないがしろにされているという気持ちになるでしょう。」[ 続く ]