「ヌサンタラのお粥(13)」(2022年06月20日)

[Bubur Kebuli]
ブブルクブリは別名syurbah bil Lahmとも呼ばれる。シュルバビラームはアラブ風の粥で
あり、オートミールの粥になっている。牛乳と一緒に作るおやつ的な軽食としてしかオー
トミールを見ていなかったひとには、新しい世界が開けるかもしれない。羊肉がアラブの
風情をかきたててくれるこの料理は、朝食や夕食によく食べられている。

作り方は、まず赤白バワンと玉ねぎを少量の油で炒め、熱が通ったらトマトを加える。そ
こに水を足してから羊肉を入れ、塩とグライのブンブを入れて煮る。肉が煮えたら取り出
し、それを細切れにする。羊肉を出した後の鍋にオートミールを入れて粥を作る。

粥が出来上がったら皿に入れ、その上に羊肉・トウガラシ・セロリ・チャクウェ・バワン
ゴレンを載せて供する。


甘粥はたいてい米でない素材を使って作られるものが多い。だが、米を素材にした甘粥も
もちろんある。黒モチ米が使われるbubur ketan hitamや米の粉を使うbubur sumsumがそ
れに該当するだろう。あるいはいかにもインドネシアっぽいbubur merah putihという粥
もジャワにある。これは独立インドネシア共和国の国旗にちなんだものでなくて、むしろ
その国旗の源流として存在していたものと捉えられるべきだろう。ここからは、おやつと
して食べられている甘粥をご紹介しよう。

[Bubur Ketan Hitam]
黒モチ米を使うブブルクタンヒタムはジャワ人が昔から慣習祭事のときに作っていたそう
で、ジャワからヌサンタラの各地に波及したのではないかと見られている。ジャワ人とは
中部東部ジャワ州とヨグヤカルタ特別州の土着民だ。

ムラユ文化の影響が強い地方ではこれをbubur pulut hitamとも呼び、またバリや東ヌサ
トゥンガラではbubur injitと呼んでいる。

作り方はいたって簡単で、一時間ほど水に浸した黒モチ米をパンダン葉と一緒に鍋で煮る。
沸騰したら火を弱めて、粥状になるまで煮込む。軟らかくなったらヤシ砂糖を混ぜ込む。
ヤシ砂糖の代わりに白砂糖を使っても良い。

食べるときにそれを器に入れ、上から濃いココナツミルクをかける。ココナツミルクは普
通のものにパンダン葉と塩を混ぜて煮るだけ。出来立ての熱いのもおいしいし、冷めたも
のでも、あるいは冷やしたものでもおいしい。

バリエーションとして、白モチ米と黒モチ米を混ぜたり、トウモロコシ粒・食パン・サツ
マイモの細切れを混ぜたりする。

このブブルクタンヒタムは後で述べるブブルカチャンヒジャウとセットにして食べること
もよく行われており、ブブルカチャンヒジャウを売っているところではブブルクタンヒタ
ムが必ず用意されていると言っても過言でないから、ブブルクタンヒタムだけを食べたい
ときにはブブルカチャンヒジャウ売りを探せばきっと手に入るだろう。

またブブルクタンヒタムとブブルスムスムをセットにして食べることもよく行われている。
もっとさまざまな甘粥をセットにして、それに別の名前を付けて販売されているものもあ
る。bubur Maduraやbubur kampiunがその例だ。

[Bubur Sumsum]
スムスムというインドネシア語は骨髄を意味する。わたしがインドネシアではじめてブブ
ルスムスムを供されたとき、その言葉からホンモノの骨髄で作ったものと思ったが、実は
そうでなかった。骨髄に似ているからそう名付けられたという話だ。[ 続く ]