「ヌサンタラのお粥(15)」(2022年06月22日)

こちらも、チャクウェを一口大に切るときにハサミを使うからグンティンの名前が付けら
れたという由来譚になっている。このブブルは朝食や昼食に食べることが多い。

ブブルグンティンのワルンでは、チャクウェもたいてい自家製だ。ブブルカチャンヒジャ
ウは緑豆・パンダン葉・白砂糖と水で作られる豆粥であり、濃い粥がお好みならそこにカ
ンジ粉が加えられる。これを作るのは時間がかかり、またときどき混ぜてやらないといけ
ないから、時間とエネルギーをとられるのは間違いないだろう。ワルンの中には、緑豆を
蒸してから粥にする店もあれば、ただ煮るばかりというところもある。

[Bubur Kacang Hijau]
カチャンヒジャウとは英語のmung beanのことだ。この緑豆は栄養豊富なので、甘粥にし
て食べられている。朝食に食べるひともいるくらいだ。あるいは夜食として食べるのもよ
い。作り方はたいへん簡単で、豆を一晩室温で水に浸けておけば煮る時間が短くて済む。
熱い湯に30分間浸けておくだけでも効果がある。

水を入れた鍋によく洗った緑豆を入れて煮る。食べられない豆粒は前もって取り除いてお
かなければならない。豆が軟らかくなったらパンダン葉を入れ、ココナツミルクと一緒に
煮る場合はココナツミルクを入れて、最後に砂糖を入れる。砂糖が汁に溶け込んだら出来
上がりだ。

ココナツミルクを一緒に煮ないで、食べるときにブブルにかける食べ方もある。熱いブブ
ルカチャンヒジャウを食べるのもおいしいし、冷めたものを食べてもおいしい。ブブルク
タンヒタムと一緒に食べることもよく行われている。食パンと一緒に食べるひともいる。
ブブルを作るときにショウガを加えると、味に深みが加わる。

[Bubur Candil]
ジャワ人はブブルチャンディルのことをjenang grendulと呼ぶ。バリ島ではjaje batun 
bedil、スラウェシではkatiri mandiと呼ばれている。bubur hintalu karuangというのが
南カリマンタンでの呼び名だそうだ。

ブブルチャンディルにはまず、常に団子が入っている。サツマイモで作ったこの団子は
biji salakと呼ばれている。時にフルーツスネークとも呼ばれるあのサラッの実の中に入
っている種の意味だが、サラッの種からこの団子への連想は、わたしには少々困難だ。
ともあれ、そのためにこのブブルはbubur candil biji salakあるいはbubur biji salak
とも呼ばれる。ビジサラッを使ったブブルチャンディルは一瞥すると、ブタウィの甘いお
やつであるkolak biji salakとそっくりに見える。

それらは同じ物ではないかとたいていのインドネシア人も思うそうだ。コラッというのは
あまり甘くない果実を甘く食べるための料理法であり、バナナやドリアンあるいは芋など
がヤシ砂糖とパンダン葉を混ぜたココナツミルクの中で煮られる。十分に甘い果実はその
まま食べる方が美味しいので、コラッにするにはもったいないということだろう。コラッ
ドゥリアンなどは、蒸したモチ米飯の上にかけて食べれば腹にたまるおやつになる。

言うまでもなく、コラッとブブルは違うものなのである。では、なぜブブルビジサラッと
いう名称が出現したのだろうか?そこには歴史がからんでいる、と料理文化研究者は語る。

コラッビジサラッはブタウィ料理であり、ブブルビジサラッはジャワ料理だった。ブタウ
ィのコラッビジサラッはこのようにして作られる。

まずサツマイモを蒸してから潰し、サゴ粉あるいはカンジ粉と混ぜる。多少の水と塩を使
って団子に成形する。形は球形より少し長めにするのが普通だ。次に、ヤシ砂糖と白砂糖
・水・塩・パンダン葉を鍋で沸騰させる。不純物が混じっているだろうから、一度濾した
方がよい。団子は別の鍋に水を入れて加熱する。出来上がると浮き上がって来るから、そ
れをさっき沸騰させた砂糖水に入れて加熱し、色が茶色になるまで煮る。最後にココナツ
ミルクを鍋に加えて沸騰させれば出来上がる。[ 続く ]