「ヌサンタラの麺(17)」(2022年08月02日)

リアウ州プカンバルでサゴ麺はどこのパサルでも売られている普通の食材だ。サゴ麺は炭
水化物の含有がたいへん少ないために、血糖値を気にするひとたちの間で特に人気が高い。

朝食や昼食にサゴ麺を調理したミーサグを食べる住民もたくさんいて、郷土の美味い物と
して認知されているために祝い事の宴にもしばしば登場するし、地元行政が高官の訪問を
歓迎して行われる公式行事にまで顔を出すありさまだ。

プカンバルの市内に、サゴ麺を調理して供している店がある。コピベンカリスという名の
ワルンだ。料理としてのミーサグは基本がミーゴレンになるものの、もちろんミールブス
のバラエティもある。地元ではミーサグルブスのことをミーサグルチャmi sagu lecahと
呼んでいる。料理に使われる他の素材は生エビ・チリメン魚のビリス・モヤシ・白菜・ネ
ギ葉あるいはニラ葉、そして言うまでもないトウガラシ。

コピベンカリスの利用客は店でノンクロンする傍ら、よくミーサグを注文して食べている。
店主は品質に気をつかっていて、サゴ麺はムランティ群島の生産者からできたての製品を
送ってもらっているそうだ。そのワルンでは、新鮮なサゴ麺を使ったミーサグがほんの1
0〜15分で客の前に置かれる。

常連客のひとりは、ときどきムランティ群島まで行くので、地元のミーサグを食べたこと
が何度もあると語った。「しかしコピベンカリスで作られるものもムランティ群島で作ら
れるものとたいした違いがないから、ミーサグを食べたくなったらわたしはいつもここへ
来る。わざわざ遠くまで行く必要はない。いつでもここで食べられるんだから。」


スラウェシ島マカッサルには、また独特の麺料理がある。mi keringと呼ばれているその
料理はジャカルタでifu miと呼ばれているものによく似ている。クリンは「乾いた」とい
う意味であり、麺は油でカリカリに揚げられた状態で供される。たいてい具とドロッとし
た汁がその上からかけられて、客のテーブルに運ばれてくる。ところが客の中には、汁と
具は別皿に入れて、カリカリ麺をそのまま持って来るよう注文するひともいる。麺だけを
味わいたい嗜好を持つ人があちこちにいるようだ。

マカッサルのミークリンの麺は米粉と他の粉を合わせ、更にウコンと卵を混ぜた黄色い麺
で、細麺に成形されているためにイーフーミーの麺よりもクリスピーな食感になる。


そのイーフーミーと呼ばれる麺についてイ_ア語ウィキは、茹でた麺をカリカリに揚げて
鳥の巣状にし、その上からチャップチャイをかけたものと説明している。イーフーミーは
普通の中華麺を使うから、マカッサルのミークリンとは自ずと異なるものになる。

中国語維基百科によれば、インドネシア語yifumiは伊府?のことであり、中国では大陸で
伊?、台湾で意麺と通常書かれるそうだ。そのそれぞれに由来譚がある。

広東・広西・香港では清代の官吏だった伊bingshou氏が発明した麺の調理法がそう呼ばれ
たとしていて、いつ大勢の客が来ても麺で饗応できるように、麺を日持ちさせることを目
的にして麺をから揚げさせて保存するよう考案したのが発端だそうだ。伊ビンショウ氏に
敬意を表して伊府麺とも呼んだらしく、インドネシアにはその尊称が伝わったにちがいな
い。

台湾では明代に福建人兵士が多数台湾に入ってきて麺を紹介した。台湾人はそれを福州意
麺あるいは塩水意麺と呼んだ。明代の台湾は寒冷だったために小麦が栽培されていて、台
湾人も麺を作るようになったが、かれらが作った麺は細麺だったために幼麺と呼ばれたそ
うで、結局は音が似ているために意麺という文字で定着したということらしい。[ 続く ]