「グラメラ(3)」(2022年11月23日)

ニラトゥブも同じような方法でグラメラに作られる。ただしサトウキビの幹を搾ってサト
ウキビ汁を作らなければならないから、加熱工程の前に搾り行程が必要になる。サトウキ
ビが原料として好まれるのは、一時に大量に原料を得ることができるために量産が可能に
なる点にあるのだろう。おまけに搾り滓を乾燥させて家畜飼料にでき、あるいは燃料に使
え、その灰が肥料になるという副産物が得られることもメリットになっている。製糖工場
の中には最終廃棄物を利用して自動車や電車車両のブレーキキャンバスを商品化したとこ
ろもある。


東ジャワ州クディリ県ガディルウィ郡ドゥク村にあるブディ・サントソさん所有のグラメ
ラ製造作業所では、4人の男性がグラメラ作りに励んでいた。運び込まれたサトウキビの
重量を計り、記録する。レンデメン算出のために不可欠な作業だ。サトウキビの幹を搾り
機にかけて汁を取り出す。汁から不純物を除去した後、大鍋に入れて加熱する。水分が減
ると丈の低い鍋に移し替え、空にした大鍋に次の汁を入れて熱する。何度か移し替えを行
ったあとに残った茶色い濃厚な汁が型に入れられて冷やされる。

クディリ県庁は1995年から県民にサトウキビでグラメラを作らせて、毎年5百トンを
日本向けに輸出していた。日本からの要請に応じて行っていたので、日本向け輸出専用に
作っていたそうだ。この茶色いグラメラを日本のひとびとはたいへんに好んでいると県広
報課長は語った。

地元のグラメラ作りは昔からの伝統工法で行われており、白亜を使って漂白する製糖工場
のような工程は行われない。生産者はほとんどが潤沢な原資を持っておらず、それが時に
生産活動に円滑さを欠く事態をもたらすこともある。

毎年生産量は5百トンぴったりで、売り上げは5.5億ルピアになった。梱包形態は日本
側の依頼によって、30キロを油紙カートンに入れている。県民生産者にとっての苦労は
原料サトウキビの入手にあり、県内で栽培されているサトウキビは製糖工場用だからとて
も5百トンの砂糖を得るだけのサトウキビが手に入らず、仕方なく県外からサトウキビを
取り寄せているとの広報課長の談だった。

県下のサトウキビ栽培面積は1995年が1.97万Ha、1996年1.96万Ha、19
97年1.97万Haで生産量はコンスタントに年間120万トンを達成しているとのこと
だ。


東ジャワ州マラン県ワジャッ郡に伝統製法によるサトウキビ汁のグラメラ製造所が数十軒
集まっている。毎年乾季のさなかにスコリロ村やチョド村にある伝統的な製糖作業場から、
時を合わせるかのように一斉に甘い砂糖製造の香りが立ち上って来る。それは大型製糖工
場が作業期に入るのと同期している。サトウキビの収穫期が同じなのだから当然の話だろ
う。

スコリロ村のポニジャンさんは1974年からサトウキビを原料にしてグラメラを作る事
業を開始した。広い作業所の中に大きな炉が据えられて、深さの違う平たい大鍋が9つ並
んでいる。炉自体も小さい段差が付けられて、左から右へ降りていく階段状になっている。
サトウキビ汁は左端の一番深い鍋から段階的に右端の鍋へ移されて行くのだ。もちろんそ
の作業は人力による。この作業所では5人の男たちが働いている。

最後の鍋で煮詰まったサトウキビ汁はグラリと呼ばれる。まだ熱いグラリはそのまま成形
されるものもあり、あるいは木製の盆に移されて冷却と乾燥の最終プロセスとなる。成形
されないものは粉末状態で袋詰めされ、バラ売りされている。

別の一画ではサトウキビの幹を搾る作業が行われている。搾り機を回転させるのに最初は
人力が使われたが、そのうち牛力に変わった。しかしそんな方法では効率が悪い。結局ジ
ーゼル機を使うようになり、今ではジーゼル機関の調整能力を持つ人間が必ず従業員の中
にいる。

この作業所では搾り機に掛けられるサトウキビが最高で1日10トン、上がって来る製品
は1トンというレンデメンだそうだ。製品は品質によって二等級に分けられる。一級品は
型に入れてグラメラにされ、市場に売られる。二級品は袋詰めされて低価格で売られる。
このような二級品の需要家は東ジャワでケチャップマニスやプティスを作っている小規模
生産者たちだ。[ 続く ]