「グラメラ(7)」(2022年11月29日)

このグラメラという品物は、いったいどうした理由なのかよくわからないのだが、粒状の
白砂糖とは異なるものとして常に扱われてきた。それらを同じひとつの砂糖壺にいれて、
一緒くたにして使おうとする人間がいなかったということだ。いや変わり者の存在は世の
常だから、きっとどこかにはいたのだろうが、麗しき世の常識にそぐわないものとして全
否定される振舞いだったのではあるまいか。読者のあなたは麗しき世の常識を覆すこの意
識改革に挑戦する意欲をお持ちだろうか?

ウィヨノプトロのリニさんは、その常識に挑戦した。グラメラには単なる甘味だけでなく
旨味が含まれている。甘さ一辺倒の白砂糖とは奥行きが異なっているのだ。それらを混ぜ
合わせてみたところ、甘味が一層引き立つことが明らかになった。味覚が強まれば、使用
量を減らすことができる。リニさんはこのアイデアが大成功だったと評価している。

他にもグラメラに関する種々のアイデアが製品に生かされるようになってきた。たとえば
グラメラのサイズだ。太古の昔からグラメラの茶碗の底型成形品はおよそ150ccのサ
イズがエバーグリーンになっていた。ひょっとしたら一回の料理に使う量として妥当な大
きさだったのかもしれない。しかし現代では家族構成に変化が起こり、あるいはまた味覚
の変化が起こって一般的な消費量を変えてしまったようだ。買って来た成形品一個を使い
切ることができず、かけらを次の使用時のために残さなければならない。時代の変化はど
うやらグラメラの形とサイズにもイノベーションが起こるのを促すようになっていた。も
はやそれは時間の問題だったようだ。


ニラクラパで作ったグラメラをGula Semutの名称にして高級品市場に参入した人物がいる。
ヨグヤカルタ州クロンプロゴ県ハルゴレジョ町のスギヨさんは1997年に粗粒のグラジ
ャワを作るのに成功した。そして翌年、それを事業化するために会社UD Sumber Rejekiを
興した。

粒状でアリがたかっているように見えるから、かれはそれをグラスムッと呼んだ。しかし
グラスムッは元々が一般名称のはずであり、粉末状のグラジャワはとてもアリに見えない
というのに一部の人たちはグラスムッと呼びならわしてきた。地中のアリの巣に似ている
からそう命名されたという説明もあるのだが、どこが似ているのかわたしにはよく解らな
い。いずれにせよ、研究室など存在しない場所でグラジャワの粒状化が成功したのである。
高卒の学歴しか持たないひとりの男が5年の歳月を費やして成し遂げた快挙だった。

説明によれば、ニラクラパを加熱し、沸騰しかかったころに火からおろして冷ます。それ
を薄く平らに均してやると、小さい粒が出てくる。その粒をふるいにかけてからオーブン
で熱して乾燥させると粒状のグラスムッになるという話だ。

しかしスギヨ製グラスムッが世の中にブレークスルーを起こしてからは、ニラクラパで既
に作られた粉末状のグラジャワをグラリに還元してアリ粒を作る方式が世の中に一般化し
た。その方式だと世の中で市販されている商品を別工程の仕掛品として使うわけで、ニラ
クラパを煮詰める作業が不要になるから燃料費も大助かりだ。だからコストさえ折り合う
なら、その方が手っ取り早いし、ヤシの花が咲かない季節でも生産が可能になる。

スンブルルジュキではそんな方法を採らないで、最初から今日までニラクラパを採集して
アリ粒のグラジャワを作っている。スギヨはそのアリ粒のグラスムッにショウガ、ウコン、
バンウコンなどの味を付けたものを12種類作って市場に流した。グラジャワには、コー
ヒーの中に入れないで、コーヒーの友としてブラックコーヒーを飲みながら甘い砂糖を舐
める使い方がある。味のバリエーションがあれば、きっと楽しいコーヒーの友になるだろ
う。[ 続く ]