「餅(12)」(2023年01月25日)

もちの皮で包む餡はたいていの生産者が破砕ピーナツを使っている。シエンニオはピーナ
ツを挽いて練りあげ、油精分を丸ごと取り込むものにした。どうやらそこのアイデアが勝
敗を決めたようだ。「これだ!」の品質を維持するために、シエンニオは材料選別に厳し
い目を光らせている。モアチグミニは一週間日持ちするとかの女は語る。

娘のデウィ・プスパワティさんは「ママは何かある物をどこかいじくって新しい物に改造
するのが大得意なんですよ。」と母親を評した。6人の子供の母親、9人の孫のおばあち
ゃんは日々、新しいものを生み出そうとエネルギッシュにいろんなテーマに取り組んでい
る。今は人体の健康を増進させるために薬草をどのように使えばよいだろうかというテー
マに取り組み、スマランやジャカルタで催されるセミナーに参加しているそうだ。

スカブミのモチとスマランのモアチはどちらも大福系であるものの、明らかに違いがある。
それに関する2022年1月23日付けコンパス紙ネットサイトの記事で、その違いが次
のように説明されている。

1.外見
モアチの方がモチよりも明らかに大型。スカブミの籠入りモチはあの小さい箱に5〜7個
も入っている。モアチの方が大きくて、食べ応えがある。モアチは普通、炒りゴマが表皮
を覆っている。モチはたいてい粉をまぶして粘りを抑えている。とはいえ、モアチにも粉
まぶしバージョンがないわけでもない。

2.味と肌理
モアチの方がもちの肌理細かさでは優っている。味にも違いがある。モチには香りが付け
られているが、モアチは香料を使わない。

3.製法
モチはもち米粉を一回蒸すだけだが、モアチはもち米粉が二回蒸される。モアチの餡もグ
ラメラを混ぜて二回加熱される。モアチの外皮には炒りゴマがびっしり貼り付けられる。
モチの場合はもち米粉を蒸してから砂糖が加えられ、それを皮にして餡を包み込む。餡は
どちらもピーナツや緑豆で作られる。

ヨグヤカルタで有名なブランドは Sakura Mochi という名称だ。名前はサクラモチでも品
物は大福だ。餡はチョコ・チーズ・ティラミス・イチゴ・ブルーベリー・ココクランチな
ど大変多彩なバリエーションになっている。


インドネシアのモチ、つまり日本の大福は、日本で饅頭(まんじゅう)と呼ばれている食
べ物に形態がよく似ている。しかしそれらの定義には違いがあり、餡を包む皮がもちにな
っているものが大福、もち以外の素材だと饅頭という名称になる。製法にも違いがあって、
饅頭は形を作ってから蒸すのが最終工程になる一方、大福はもちを作ってから餡を包み、
成形して作業が終わる。

インドネシアのピアは餅という漢字に由来しているにもかかわらず、日本人にとっては「
もち」と無縁の饅頭に該当するように思われる。ただしピアは焼いて作られるから、蒸す
という作り方の定義に合致しない。日本の饅頭の中にも焼いて作られるものがあることを
斟酌するなら、その点は大目に見てよいのかもしれない。

饅頭という言葉と現物は中国から日本に伝来した。現代中国語を調べると、北京語読みの
マントウは中身のない蒸しパンとなっている。呉語ではモエドゥと読むが、実物は餡の入
った蒸しパンであり、包子を意味している。ミンナン語はマンタウという発音だ。中国古
語は餡の有無にかかわらず、蒸しパン全般を指していた。

中国の「マントウ」は多分、腹を満たすものという基本コンセプトになっていたのだろう。
それが日本でおやつとしての甘いものに変化した。まんじゅうが伝来したころの13〜1
4世紀における、肉食を忌避する当時の日本文化がそれを促したにちがいあるまい。
だいぶあとの時代になって、大正時代に豚饅頭が日本に登場した。華人のマントウコンセ
プトがそのまま日本人に受け入れられるために、それほど長い年月が必要とされたという
ことのように私には見える。[ 続く ]