「ヌサンタラのドゥリアン(13)」(2023年03月17日)

バニュワギのブラウィジャヤ通りにKebun Agro Banyuwangiがあり、そこでも赤ドリアン
を買って賞味することができるが、需要が圧倒的に大きいために予約をして自分が呼ばれ
る日を待つのが昔の姿だった。そこでは2012年まで、買った赤ドリアンを持ち帰るこ
とが許されず、そこで果肉を食べるだけで帰宅しなければならなかった。客の残した種を
アグロガーデンが発芽させて苗を大量に作るために実施された措置だ。苗が大量にできて
県下各地に分配され、各地で県特産品の生産が励行されるようになったのを見計らって、
その措置は解除された。

園芸有識者フォーラムの研究開発リーダーが2014年に語ったところによれば、バニュ
ワギにある63種の赤ドリアンのうち11種の栽培が成功し、県下各地で2百本の樹に果
実が続々と結実しているそうだ。

その11種は、色がすばらしいもの、果肉がボリュームたっぷりのもの、甘さと旨味が抜
群のもの、苦味が混じっているものなど、消費者が好む要素を最大限に満たす種が選択さ
れた。すべてにわたって共通ベースに置かれたのは食べて美味しいものであり、いくら色
がすばらしくても美味しくないものは除外されている。

バニュワギ県は赤ドリアンの主体を担う種としてドゥバンを選択した。赤ドリアンは商品
価値を持っているのだから、他県の中にも興味を抱くところが出てくる。西ジャワ州ボゴ
ールに18ヘクタール、東ジャワ州ブリタルに6ヘクタールの赤ドリアン園が設けられて、
バニュワギ特産の赤ドリアンが栽培されている。そうやってすそ野を広げ、赤ドリアン宇
宙の頂点にバニュワギを位置付ける戦略がそこに働いているという話だ。


パプアのマノクワリで赤と黄色のグラデーションに彩られた虹色ドリアンが2009年に
発見された。マノクワリのプラフィ村はマノクワリの町から72キロも離れている。そこ
はジャワ島からのトランスミグラシ農民の村だ。その村に住むスナルトさんの土地に生え
ているドリアンの果肉が赤い色をしているため、村民たちはbuah hantuと呼んで忌避して
いた。食べてみようと思った村民はひとりもいなかったそうだ。

そのドリアンはスナルトの父親がジャワから持ってきて植えたものだ。マノクワリの土地
に植えられたジャワのドリアンは、みんなジャワそのままの白い果肉を作っているという
のに、その樹だけが血のような色の果肉を作ればだれしも異変を感じるだろう。


南スマトラのプラブムリで生まれたカリム氏は園芸専門家であり、ヌサンタラドリアン財
団を興したひとりでもあってドリアンにかける関心は人並を超えている。1995年以来
パプアのジャヤプラに定住してパプアにおける園芸界でさまざまな仕事をしていたかれが、
虹色のドリアンの噂をキャッチしたのだ。

幽霊ドリアンの話を聞きつけた園芸専門家のカリムがすぐさまプラフィ村に駆けつけて現
物を検分した。持ち主のスナルトから話を聞き、現物を見るために幽霊ドリアンの樹に向
かった。ちょうどいくつか実が生っている。かれは持ち主に果実を取ってくれと頼んだ。
スナルトが樹に登って実を切り落とした。地面に落ちた果実をカリムが割り開いたとき、
無意識のうちにかれの口から言葉が洩れた。Wah, pelangi!

赤と黄色のグラデーションがまるで虹のようだった。これは大きい商品価値を持つたいへ
んすばらしいドリアンだとかれは判断したのだ。タイのチャンタブリで開かれた第一回国
際ドリアンシンポジウムでヌサンタラドリアン財団がこの果実を紹介したところ、各国の
ドリアン専門家たちが驚愕の表情を示したそうだ。[ 続く ]