「ヌサンタラのドゥリアン(15)」(2023年03月21日)

ドリアンの大収穫期になると、産地では商業適正数量を超えるドリアンを保存食にするこ
とが行われる。あり余った果実を放置すれば腐るだけであり、そんな不経済を容認できる
ものではない。どこの土地でも行われている簡単な処理方法はlempokだ。

レンポッはドリアンの果肉に砂糖を加えて煮込むだけ。一見ドドルのようなものができる
が、本来のドドルは米粉とココナツミルクにグラメラを加えて煮詰めたものだ。そのドド
ルを作る際にドリアンの果肉を混ぜたものがドドルドリアンと呼ばれている。

リアウ州ベンカリス県のベンカリス島もドリアンの産地であり、ここでもドリアンシーズ
ンにレンポッが作られる。ベンカリスでそれはlempukと呼ばれている。ベンカリスでレン
プッが商品化され、Citra Rasaのブランドで販売されるようになった。生産者は月産2ト
ンから3トンの生産を行っている。生産に使用されるドリアンの果肉は地元産のもので、
落ちたばかりのドリアンだけが使われているそうだ。落ちてから日数の経過したものは商
品の原料に使わないと生産者は語っている。


あるいはあり余ったドリアンの果肉を発酵させてtempoyakにする。酸味のあるテンポヤッ
を白飯の薬味にしたり、サンバルに加えたり、魚料理に使ったりする。テンポヤッで魚を
くるみ、バナナ葉で包んで焼いたペペスは人気のあるおかずだ。

このテンポヤッは樹上完熟ドリアンで含水度の高い果肉を使うのが良い。果肉に塩を混ぜ
てブレンダーにかけ、滑らかになったものを密閉容器に入れて3〜5日、冷暗所に保存す
る。発酵すると強い臭いが出て、柔らかいテクスチャーになる。


ドリアンの果肉の美味いものはそのまま食べるのが最高だから、美味い果肉とブラックコ
ーヒーで夕方のおやつを楽しむのは、これぞ南国風[食]の愉しみのひとつに該当するにち
がいあるまい。
しかし中にはその両者を混ぜてみようとする人間もいる。ランプン産のロブスタコーヒー
にドリアンの果肉を一片加えるのである。それがドリアンホットコーヒーだ。ドリアンコ
ーヒーには濾したコーヒーの方が良く合う。カップに入れた粉に熱湯を注ぐコピトゥブル
ッでドリアンコーヒーを作るのはやめたほうが良いだろう。

だが果実を丸ごと数個買って来たものの中に、いざ割り開いてみると中身が低品質で甘味
がわずかしかないようなものに出会うことも必ず起こる。そのような食欲をそそらないも
のが出現した場合は、どの家庭でも加工して食べるのが普通だ。多分もっとも一般的な処
理方法がkincaだろう。

キンチャという言葉は元々砂糖水やサトウキビ搾り汁のような甘い水を指していた。たい
して甘くないドリアンの果肉を砂糖水に溶かして煮詰め、こってりした甘い液体にして口
に入れたのがキンチャドリアンの事始めだったのだろうか?

キンチャはドリアンの果肉とグラメラとココナツミルクを混ぜて煮たもので、甘いスープ
状のものになる。イモ類をそこに加えて、腹にたまるおやつにすることが多い。
あるいはモチ米にドリアンの果肉を加えてココナツミルクで炊くと、ketan durianという
美味しいおやつができる。


ドリアンの果肉は実にさまざまな甘い物に使われている。美味しくて新鮮なものは生食が
最高ではないかとわたしは信じているのだが、かと言って加工品に使われるものがすべて
品質的に劣るものということでもないようだ。ドリアンの果肉を使ってさまざまなおやつ
を作っている甘党の店があちこちにある。そのような店では各種ドリアンの一級品が使わ
れていて、生食では味わえない付加価値の付けられたバリエーションを愉しむことができ
る。ドリアンの果肉が混ぜられた菓子類にはこのようなものがある。[ 続く ]