「ジャワ人の起源(11)」(2023年05月19日) プタガンは人間と霊的存在との関係に関する教えと超越的支配者が人間に対して非直接的 に姿を現すための補助的媒体なのである。プタガンは希望と平安、そしてパワーをもたら す。ジャワ人はこのプタガンを四種類に分類している。 pawukon: バドウィの衆が用いるプタガン ngelmu: トゥ~グルの衆が用いるプタガン tengeran: ティアンパセッの衆が用いるプタガン primbon: イスラム教徒が用いるプタガン プタガンはさまざまなエンティティの存在を教えており、ジャワ人はそれらを四つの階層 に区分した。 1.仏教とヒンドゥ教にある主要な男女神と他の神々や霊的存在 バドウィの衆や祖先が仏教徒・ヒンドゥ教徒だったジャワ人の間でこの観念が信仰されて いる。 2.神としてあがめられている天体の諸物と魔術や二元教に由来するもの この観念はペルシャヒンドゥ教徒がジャワに伝えたものだ。ティアントゥ~グルにとって たいへん重要な教えであり、ペルシャヒンドゥ教を抱いたかれらの子孫たちの間で維持さ れている。 3.自然信仰に由来するセタン・ジン・妖怪など ジャワ島原住民であるティアンパセッの固有観念であり、イスラム教徒になったその子孫 たちもこの観念を維持している。イスラムの教えとは別に、かれらはこの自然崇拝に由来 するセタン・ジン・不可視生物たちを怖れ、かれらに尊重姿勢を示すことに努めている。 4.アルクルアンやイスラムの諸文書に記されている霊的存在 ジャワのイスラム教徒はそれらの超常的存在を怖れ、重要視している。 ファン・ヒンは自著「ジャワ人の霊的世界」の中で、ジャワ人の神秘主義に関する諸観念 を詳細に体系化した。最後に、ティアンパセッが持っている人間創造譚をご紹介して本稿 を終えようと思う。ファン・ヒンによれば、これはイスラム勃興前の古代アラブの人間創 造譚であり、ジャワのアニミズムの中に生まれたものではないそうだ。この話の中で粘土 をこねて人間を作った者はアッラーと呼ばれず、Rijal al-Ghaibと呼ばれていることがそ れを示しているように思われる。この話がどのようにしてティアンパセッのお咄文庫の中 に入ったのかについては言及されていない。 天、天体の諸物、そして地球をリジャラルガイブが作ったとき、地球に住民を置こうと考 えて人間を作った。そのために粘土をひとつかみ取るとたっぷりとこねて人間の形を作っ た。そして先に作っておいた霊魂をひとつもってきて、粘土の人型を頭の上に載せた。と ころが粘土の人型がかなり重かったからたまらない。霊魂はそれを頭で支えきれずにひっ くり返ったから、そのときに粘土が粉々に砕けた。しかしそのとき霊魂はもうそれらの破 片に移ってしまっていたから、破片はてんでんばらばらに地球のあちこちに散らばった。 創造主は知っていた。それらの破片は人間として地上で生きるための要素をまだ完備して いないということを。こうしてその破片どもはiblisと呼ばれる悪霊になった。 仕方がない。やり直しだ。リジャラルガイブはまた同じように人型を作った。さすがに二 度目は最初のものより見栄えが良かった。作った形は男だった。人間には生命と霊魂の他 に精神・人情・嫌悪も与えられた。プロセスがすべて終わったとき、この男は地上で活動 を開始した。創造主は、これだけでは足りないなと思った。ひとりぼっちで生きるのは困 難だし、繁殖することもできない。この男に女を与えなければ不完全だ。[ 続く ]