「ジャワ人の幽冥界(2)」(2023年05月24日)

リンガサリラは入っていた人間の死後40日目までコモロコにいて、そのあと第一天上界
に移動する。コモロコには5人の自然界の霊が交代で詰めており、地上界とコモロコの維
持管理を行っている。コモロコでは、やってきたリンガサリラへの束縛や制御がまったく
なされないから、いつでも好きなように地上界とコモロコの間を行ったり来たりすること
ができる。コモロコから出たり入ったりするたびにシラタルムスタキンを通らなければな
らないというのが唯一の義務になる。

コモロコにいる間、リンガサリラはいつでも星気体を膨らませる方法で自分の姿を人間に
示すことができる。リンガサリラがまだ地上界との関係を保ちたかったり、星気体と離れ
なかったり、欲望や願望を統御できなかったりすれば、自分の姿を人間に示すことは一層
容易に行われる。


生前に欲望の統御が行えていた者であれば、第一天上界への移動は緩やかに続けられて霊
魂はリンガサリラから離脱し、星気体は滅びる。その結果、Chayalが第二の遺体として残
される。ハヤルは影のようなものだ。ハヤルはマナスとジウォを持たないが、リンガサリ
ラが残した意欲と欲望を持っており、ジウォを持たせようとすれば持つこともできる。

両親、祖父母、さらにその祖先たちのハヤルはLeluhurと呼ばれる。兄弟姉妹のハヤルで
あればSedulur、そして他の者たちのハヤルはLelembutと言う。それらのハヤルは生前に
住んでいた自分の居所を棲み処にする。かれらはそこに住んでその家の守護霊になり、ま
たその家で生まれた子供たちの守護霊になる。それはその子供たちが自分の知っている一
族の人間と似ていて、同じような性質・姿・振舞いを示すからだ。ということは、その家
を借家した赤の他人が生んだ子供は対象外になるということなのだろうか?


リンガサリラから霊魂が離脱するプロセスがMokshaだ。第一天上界に移った霊魂は、そこ
で第二天上界に進むための準備を行う。そのようにして段々と上位の天上界に進み、最後
にSwargaという名の第七天上界に達する。第一・第二・第六天上界は自然界の霊が番をし
ている一方、第三・第四・第五天上界は専任の天女が番をしている。第七天上界には全能
の主たるGhaibが支配者として君臨していて、天女がガイブに仕えている。

霊魂は人間の死が起こってから40日後に第一天上界に入ると、しばらくそこにとどまっ
てから死後百日超あとに第二天上界に移る。そこから第三天上界への移動は死後1千日超
あとになる。そのあとの上層界へのステップアップは、第四天上界が5年後、第五天上界
が6年後、第6天上界が7年後、スワルガへは8年後の移動になる。


一方、いくつかの古いジャワ史伝には、第四から第五天上界へ、そしてさらにその上の階
層への移動は、それぞれの移動の中で輪廻が何回か行われなければならず、決して容易な
ことではないと記されている。第六天上界はSuralayaとも呼ばれていて、そこには自然界
の諸霊が住んでおり、かれらはときおり地上界に降りてきて人間を保護するためにさまざ
まな兆候を示して災いの襲来を予知させたりする。また時にはガイブに命じられて宗教の
教えを人間に悟らせたりもする。だから自然界の諸霊や天女たちには供物を捧げて悦ばせ
てやり、そのようにする人間に親しみを持ってもらわなければならない。

何度かの輪廻を終えて第五天上界に移動すると、霊魂には完璧な法悦の暮らしが与えられ
て輪廻の勤めから解放されるという説もある。しかし子孫に何かを伝えたり宗教上の教え
を覚らせるようにガイブが命じることもあるから、自由気ままというわけにもいかない。


カディラ~グの書は次のように記している。
肉体にまだ欲望や願望を抱えていて、罪を償ったあとでもまだその肉体から離脱できなか
った霊魂はコモロコあるいはナロコの定住者になる。コモロコの定住者になってもまだそ
こから地上界に行ける者は、恐怖を与えたり、ちょっかいを出したり、驚かせたりといっ
たさまざまな方法で人間に復讐しようとする。星気体の欲望や願望が増加すれば、霊魂は
たとえコモロコに戻りたくとも自動的にナロコに落ちることになる。

だから、どうせコモロコに戻ろうとしてもナロコに落ちるのだから、と考える者たちが大
勢地上界に居座ることになる。しかしそんな自分の状態を改悛した者はナロコに戻って自
己を清めることに専念するのである。[ 続く ]