「ジャワ人の幽冥界(4)」(2023年05月26日)

別の古文書には、善き生を送った者は自分の星に戻って住むことが許され、自分に似合っ
た住居が祝福を込めて与えられると記されている。ところが次の世代までそれが実現され
ないと、その者は力なく頼りない女になる。そんな状態で悪行をなせば、悪い性質を持つ
野獣のひとつに変身して、苦難災厄がその者を襲う。そんな変化のプロセスの中では、火
・風・水の三元素が混乱をきわめる。その三元素が善としての天然の形態にもどって本来
の性質を取り戻すとき、その混乱は収拾される。

別の説では、自殺者、悪行をなしたあと突然死した者、断頭された者、刑殺された犯罪者
などの霊魂、吝嗇な者たちの霊魂、とりわけ隠れて悪事を行なったり他人を災厄に落とし
入れた者の霊魂は、天上界に昇る前に長い間地上に居残る。コモロコに入る道程でナロコ
に落とされるのを恐れるからだ。そのためにかれらは地上界を去ろうとせず、家屋や土地
を棲み処にして徘徊する。かれらは害をなそうといつも人間を狙っている悪霊になる。


ジャワの古文書の多くは、自分の住んでいる村から近い高山の上に天上界があると語って
いる。同時にその火口にナロコがある。この見解はジャワ島南部海岸地方に多い。人間は
死去してから7日目あるいは40日目に霊魂がそれらの場所に到達する。

既に亡くなった先祖の霊は、その先祖が昔住んでいた場所、つまりそのころ邑があったエ
リア一帯、並びに子孫の家族への保護を行う。ジャワのアニミストが持っているこの思想
はさまざまな宗教や信仰の中に述べられているものが混じりこんで形成された観念だ。そ
の結果、理路整然としない矛盾を含んだものになっている。


ティアンパセッは霊的存在を確信し、畏敬し、かれらに額づく。霊は人間に由来するもの
と人間に由来していないものがある。人間に由来する霊は四つのレベルに区分される。
1.皮
2.影
3.悪素
4.黒魔術を持つ者

1.皮
死者の身体の一部であり、遺体から放出されたものだ。これは星気体とも呼ばれていて、
具象物である遺体とつながっている。この皮または星気体は人間が死ぬとゆっくりと気化
していくため、墓地でそれを目にすることもある。setan kuburanと呼ばれているものが
それだ。ティアンパセッはこの皮と遺体が呪文によって悪霊になることを確信している。

2.影
死後三日目に、心情・欲望・願望を持つ星気体は皮からはずれて具象物である遺体から分
離する。純化プロセスによって欲望・願望・意欲が消滅すると、星気体は霊界に移動する。
その移動に際して二度目の死が起こる。そのプロセスの中で地上界に影と呼ばれる星気体
の複写物が残される。
この影は思惟しないものの、星気体が持っていた欲望・願望・想念が付着することも起こ
り得る。影は空中に浮遊し、最終的に蒸発する。だが呪文や術を持つ者によって蒸発が止
められ、その者に操られて善霊あるいは悪霊になることもある。

3.悪素
三つ目の霊的存在は四大素に由来している。悪の生をなした者の星気体から霊魂が抜け落
ちた形姿素だ。生前、この者は欲望・怒り・願望を統御できなかったために星気体が霊界
に移動できず、永遠に地上にいて徘徊するように呪われた。この種の霊には、自殺者、刑
殺された者、暴力や突然死によって時期が来る前に死んだ者などの星気体が含まれている。
[ 続く ]