「人間と支配欲(2)」(2024年08月09日) インドネシアでは昔から、社会生活は男性支配女性服従、家庭生活は夫唱婦随という価値 観が普通だったから、多くの夫婦がそれに従って家庭を築いた。ところが夫より賢い妻は 掃いて捨てるほどいて、世間一般の価値観に従ったように見える家庭生活を世の中に示し ながら夫に対する覇権をしっかり握った妻たちもたくさんいたようだ。鼻の下を長くして いる新婚の夫に対して水面下の覇権争いを新婦がしっかり行っていたという事例もいろい ろとあったのではあるまいか。 男は社会制度を盾に取っていれば形式的な覇権を振るうことができたのだから、水面下の 闘いなどする必要がない。闘いを仕掛けるのは女の方であり、男はその切っ先をさばいて いればよいだけとも言えるのだが、新妻が自分に対して示す態度振舞いの裏にそんな意味 が隠されているなどということの見える新夫がいったいどれほどいたことか。 たとえ社会制度が妻に夫のコンチョウィンキンになることを命じても、そのような形式的 なことがらだけで家庭生活のすべてが終わるわけがない。妻は生活形式を社会制度にしっ かりと合わせた上で実質的な自分のメリットを手中にするため、夫の首を縦に振らすべく 覇権を握ることに努めた。つまり水面下の闘争というのは夫婦の間でその必要性が生じた ときに繰り返されることがらという性質を持っていたと言えそうだ。新婚時だけ行って勝 てば一生もの、などというシンプルなものでは決してないのである。 コンパス紙に心理学フォーラムを主宰するサウィトリ女史が読者からの悩み相談の手紙を 紹介した。42歳の女性Lさんからの手紙には、43歳の夫Dさんの妻に対する態度に関 する不満と苦情が記されていた。手紙にはこう書かれていた。 サウィトリ先生、わたしの夫は何かうまく行かないことがあって気が滅入ったりすると、 いつもわたしや他の誰かを悪者にして悪口を言うのです。夫はたいへん頑固で、自分に悪 いところや足りない点があることなど絶対に認めません。いつも自分は完全無欠であり、 且つ最高に偉いと感じているのです。 わたしの夫はまったく筋の通らないことがらでわたしをよく非難します。夫はこんなこと を言ってわたしを責めるのです。わたしが自分の父親のことを大切に思っているから父の 世話ばかりしに行って家を留守にする。とあるモールにわたしの妹がカフェを開いたので わたしがその手伝いに行くと、家で夫の世話をするべき妻が家にいない。子供の学校友達 の親御さんとの交際も、妻が夫に仕えるための時間を奪っている。お前はわたしの妻なの に、夫のことなんかちっとも考えていない。大切に営まれなければならない家族生活が、 家族の周囲を取り巻いている環境から干渉されて家族生活がないがしろにされており、自 分はとても不幸だ。妻は夫よりも友人・父親・妹など家族の外にいるひとばかり大事にし ているのだから。 わたしに怒って散々苦情を言い、それに疲れると夫はわたしに対して沈黙の行に入るので す。短いときは数日間、長いときは10日間もわたしに一言も口をききませんでした。そ んなことをされると、わたしの気持ちはクサクサします。そんな時でもわたしは夫に食事 やコーヒーを用意したり、服を用意したりして務めを果たしているのに、夫はわたしがま るで空気にでもなったかのような態度を示すのです。わたしのことなんか何も考えていな いのでしょう。 いつまでもそんな態度を続けさせないよう、わたしは夫を慰めて機嫌を直してもらうので すが、そのときは機嫌を直しても決して長続きせず、また何日かしたら同じようなことを 言い出して喧嘩が始まります。夫のわたしへの非難は絶えたことがありません。 わたしはこんな暮らしが嫌でたまりませんが、どうすればよいのか見当もつきません。夫 の態度にはもううんざりしており、わたしの心もへとへとです。わたしの結婚生活を修復 するために、わたしは何をしたらよいのでしょうか?[ 続く ]