「人間と支配欲(3)」(2024年08月12日)

夫婦生活に発生するコンフリクトの原因についてサウィトリ女史はこう解説する。
*夫婦のどちらかが適切な感情表現を行わず、あるいは不十分であるために相手の心を傷
つける
*お互いに内面的なコミュニケーションを怠り、正直な自分の姿を相手に示そうとしない
*家庭生活を運営するための経済的マネージメントの問題
*性生活における心理的な不適応
*家事分担の合意
*夫あるいは妻に恋人ができる
*精神性の深みの差が夫婦間に存在している
*子育てパターンの差が夫婦間に存在している

夫婦生活の中で幸福が感じられないという場合、現在直面している諸問題への主観的関わ
り合い方の不一致にその根があり、それは結婚関係そのものを揺さぶるものになりうる。
そのせいで夫婦間のコンフリクトの中にさまざまな感情表現が現れ、そこに発生する意見
の衝突によって片方がある種の情緒反応を発現させると、両者のそれぞれが精神の平衡を
妨げられて痛みを感じることになる。

たとえば、自分の方が正しいという考えを頑なに維持しながら相手に口をきかない態度を
取ったり、折れて出るものの不満足な気持ちを抱き続けたり、積極的に対決的姿勢を取っ
たり、相手に服従的姿勢を示すものの自分の正当性を絶対視し、相手を打ちのめす機会を
狙うようなことが夫婦の間に起こる。たとえ相手に口をきかない振舞いに入っても感情的
な対立と緊張を掻き立てて相手の気持ちを傷つけようとする。


夫婦の双方に感情的障害を引き起こす上のようなコンフリクトは、双方が口喧嘩で相手を
負かそうとする方向に動くと必ずエスカレートする。攻められた方は自分の正当性を守ろ
うとして相手を攻撃し始める。このエスカレーションサイクルに入ってしまうと、離婚に
行き着く可能性が高まる。

コンフリクトの一方が相手の考え方や感情・振舞いなどに対して蔑視を抱くと、相手に対
する人格不尊重が起こり、相手の自信や自尊心が崩れていく。普通、双方が相手に見下さ
れるのを避けるために自分を維持しようとして自分の意見に固執することが原因のひとつ
になっている。結婚相手に対する人格否定が起きるか起きないかは、両者の結婚生活の行
く末を占う大きなカギになる。

コンフリクトが現実化するのを嫌って相手との衝突を避けようとするとき、相手と関わる
ことをやめる逃避行動が起きることもある。相手が何を言おうが自分の口を閉じ、目をぐ
るぐる回し、果ては相手と一緒にいる空間から自分の身体を別の場所に移す。相手に対す
る消極的な人格不尊重と言えるだろう。攻撃的か消極的かという差しかそこにないのだか
ら、お互いの感情が傷つくことは目に見えている。


コンフリクトの中で互いに自分の主張を述べ合うとき、相手が現実をニュートラルに把握
しようとせず、ネガティブな色をそこに塗り込めていると感じられることがある。ふたり
の間に類似の体験が既にあった場合、ふたりは互いに相手の真意を探るための推測に頭を
使うようになる。このような疑心暗鬼に絡まれる事態になれば、両者間の建設的な意見の
交換はたいへん困難になる。[ 続く ]