「クレテッ煙草(2)」(2026年04月22日) ところでインドネシア人はタバコ葉のことをtembakauと言い、製品になったタバコの総称 としてrokokという語を使っている。やはり品物が外来のものであったために、外国語が その語源になった。トゥンバカウは明らかにスペイン語/ポルトガル語のtabacoに由来し ていると直観できる。オランダ語は語尾の「オ」音のないtabakなので、オランダとイベ リア勢のどちらに軍配が上がるかは察しがつくだろう。 一方のロコッはオランダ語のrokenが語源だ。オランダ語で煙を出す意味の動詞ローケン は英語のsmokeと同じように喫煙の意味を持っている。航空会社KLMの飛行機に乗れば、 Niet Rokenという文字が機内のどこかに見つかる。 喫煙方式に関して、イベリア勢はタバコ葉を丸めてそのまま火を点けるシガースタイルだ ったのに対してオランダ人やイギリス人は刻んだ葉をパイプに詰めて吸うスタイルが一般 的だったという解説がネット内に見られる。アジアのたいていの地方ではパイプやキセル による喫煙スタイルが主流になっていたそうだから、アジア人はあまりポルトガル人の真 似をしなかったように思われる。どうやらその辺りに、喫煙行為にオランダ語を用いるよ うになったインドネシアプリブミの歴史が垣間見られるような気がしないでもない。 ところが、インドネシアにはパイプ喫煙の歴史がほとんど見当たらない。上の解説に従え ば、植民地時代にヌサンタラにいたオランダ人や他のヨーロッパ人はたいていパイプ喫煙 をしていたというのに、プリブミはほとんどそれを見倣おうとしなかった。それはプリブ ミが喫煙自体をしなかったからだったのだろうか?それともプリブミはポルトガル人の真 似をしてそれ以前からタバコ葉を口にくわえる喫煙方法を採っていたのだろうか? 1650年ごろからヌサンタラの一部地方でタバコの栽培が始まっていたそうだ。ポルト ガル人が来たこともない地方にまで栽培が広がったとその説は物語っている。やってくる ヨーロッパ人が買ってくれるためにその栽培が行われていたのであって、自家消費を目的 にした栽培ではなかったような印象が解説から感じられるものの、ヌサンタラのプリブミ は古い昔からタバコを嗜んでいたという話もいろいろと語られているのだ。初期の時代の タバコ葉の産地はジャワ島のクドゥ・バグレン・マラン・プリアガンであるというのがネ ット内に見つかる情報だ。 今のインドネシアで、タバコ葉の有力な産地は次のようになっている。 デリ種: 北スマトラのデリ地方 スリンティル トゥマングン種: ジャワ島トゥマングン、パラアン、ガディルジョ等 フォルステンランデン種: クラテン、スレマン フィルジニア フォルステンランデン種: クラテン、スレマン、ボヨラリ等 マドゥラ種: マドゥラ島 ブスキフォルオーフスト種: ジュンブル ブスキナオーフスト種: ジュンブル フィルジニア ロンボッ種: ロンボッ島東部 フィルジニアとはVirginiaと綴られる単語のオランダ式発音であり、インドネシア語正書 法に従えばフィルギニアという発音になるのだが、多くのインドネシア人もタバコ葉につ いてはフィルジニアと発音しているようだ。 フォルオーフストとは雨季に植えられて乾季のはじめに収穫されるもの、ナオーフストは 雨季に植えられて乾季の終わりに収穫されるものを指している。[ 続く ]