「クレテッ煙草(3)」(2026年04月23日)

スリンティルとはスンビン・シンドロ・プラフの山稜で収穫される最高品質種で、サラッ
の実のような独特の香りを持っており、たいへんな高額で売買されている。スリンティル
種の木に成る葉がすべてスリンティルになるのでなく、高値で売れるのは頂点に付く葉で、
しかもそれは一番最後に摘まれ、多少の油気を帯びて良い香りが出るようになったものだ
けがスリンティルになる。

だからこの葉の生育期間は長い。4月に植えるとスリンティルの収穫は半年後の9月にな
るのだ。そのような対処法を執ることによって葉が成長して熟成する期間が最大限になる
ためらしい。熟成した葉から香りのよい粘液が出てきた時にはじめて、その葉がスリンテ
ィルと呼ばれる高級品になるのである。しかも標高9百メートルを超える土地でだけ、ス
リンティルが穫れるとも言われている。

二週間熟成させるとカビが生えて素晴らしい香りが出てくる。この葉は千切りに刻んで乾
燥させることができない。細く切ろうとしても形が崩れて見苦しくなってしまうからだ、
と農民のひとりはその特徴を述べている。


中部ジャワ州トゥマングン県トゥロゴムリヨ郡ルゴッサリ村はスンビン山の麓にある。標
高1千5百メートルのこの村には320戸の家庭があり、総戸数の9割がタバコ農民だ。
もちろん土地持ち農民がいて、土地の無い農業労働者もいる。土地持ちは最低が0.5Ha、
最高は5Haの畑を有し、Ha当たりの収穫量は乾燥タバコ葉で9百KGにのぼる。これは20
10年6月のコンパス紙に掲載された記事だ。

土地持ち農民のひとり、スハルトヨさんは2Haの土地をすべてタバコ栽培に使っており、
3カ月の収穫期間にヘクタール当たり1億ルピア超の収入を得ている。他の農民も似たよ
うなものだ。タバコ葉にも品質グレードがあって最低のA級から最高のFやGグレードま
で、仲買人はそれぞれに異なる買値を付ける。

収穫シーズンの初期に穫れるものはたいていA級であり、シーズン末に向かって上級グレ
ードが増える。FやG級がスリンティルと呼ばれる高価なタバコ葉であり、乾燥葉1キロ
当たり30〜50万ルピアの値が付く。さらにその上のsrintil istimewaともなれば、乾
燥葉がキロ当たり85万ルピアで買い取られることも起こる。

別の住民、ストポさんの住んでいる字は戸数170だが、そのうちの96家族は四輪車を
3〜4台持っている。その上でどの家庭にも二輪車が1台は置かれている。そういう豊か
な家庭はたいてい土地持ち農民だ。土地の無い農業労働者ももちろん大勢住んでいて、2
千人近くいると見られている。土地持ち農民はそれぞれが7〜20人の労働者を日当3万
ルピアで使っている。そんな農業労働者でもたいてい自分のオートバイを持っている。


スリンティルタバコの収穫期は8月から11月まで。収穫期になるとウレリ・トゥガル・
プカロガン・マグラン・ヨグヤ・バンドゥンなどからセールスマンがこの村に押し寄せて
来る。かれらはたいてい衣料品・靴・家庭用品・二輪車・四輪車まで携えて村に来ると、
村の集会所・住民の家の庭・あるいは空地などに商品を並べて商売する。

タバコ葉から大きい収入が得られるために、この村は1971年に住民の拠出金で小学校
を建てた。県庁は隣村に小学校を建ててこの村の小学校建設ができるようになるまで子供
たちをそこへ通学させたから、住民はいつやってくるか分からない日を待つよりは、と自
力でそれを行った。古くなったその校舎を2001年に再び村民が改修した。そのときは
県からの支援金も出たそうだ。

道路舗装や生活用水設備の設置なども村民のリーダーシップで行われ、1980年には発
電機が村に据え付けられて夜を明るくした。国有電力会社PLNの送電線がこの村まで届
いたのは1985年であり、それら村民の生活レベル向上の原資はすべてタバコ葉が生み
出したものだったのだ。[ 続く ]