「クレテッ煙草(4)」(2026年04月24日)

ルゴッサリ村のタバコ栽培がいつごろから始まったのかを知っている者はいない。村人の
中にはワリソゴ時代から始まったと語る者もいる。イスラム教の9聖人であるワリソゴが
ジャワ島に登場して活躍した時代は15世紀初期から16世紀前半までの時代だった。

その論によれば、トゥマングンの有力なウラマでタバコ葉の初期栽培者だったキアイ マ
ククハンがワリソゴのひとりであるスナンクドゥスと約束を交わした。その約束とは、タ
バコ葉栽培はトゥマングンが行いクドゥスはそれをしない。クドゥスはタバコを生産する
だけだ。トゥマングンはタバコを生産しない。

現実に、長い歴史の中でトゥマングンにタバコ生産者はちらほらと出現したものの、その
事業が成功したり、長続きした者はひとりもいなかったそうだ。ちなみにスナンクドゥス
は1500年に生まれて1550年5月5日に没している。

昔は国内のタバコ工場から買い付け人がトゥマングンに来てタバコ葉を購入していたが、
今では流通経路がシステム化されている。サブグレーダーが村に来て買い付けたものがグ
レーダーに売られ、グレーダーが工場に納める形ができあがった。

買い付け活動は8月初め頃開始され、工場はその年の購入価格をA級からG級までグレー
ダーを集めて発表する。グレーダーは売買関係を持つサブグレーダーに標準価格を提示し、
サブグレーダーはそれに基づいて栽培農民から乾燥タバコ葉を買い上げる。


農民の収穫が開始されて、最初はキロ3万ルピア程度のA級の商売が行われる。葉を摘む
時期が後になって行くほど、グレードの高いものが増えていく。9月になると、スリンテ
ィルと呼ばれるFやG級のものが混じるようになる。スリンティルはたいてい色が黒っぽ
くて油気が感じられる葉だ。そして収穫期の最後の最後にスリンティルイスティメワが手
に入ればたいへんな幸運ということになるのである。

スリンティルイスティメワには標準価格が存在しない。生産農民とグレーダーの間で価格
交渉が行われる。他の等級はすべて工場が出してくる価格に基づいて取引されるのと違っ
て、これだけは農民が価格を交渉することになっている。10グラムのスリンティルイス
ティメワは10KGのA〜E級に匹敵するのである。

スリンティルイスティメワはルゴッサリ村でしか穫れない。工場から政府に至るまで、さ
まざまな農業研究所がその秘密を解明しようとしたが、いまだにわからない。あるタバコ
工場はルゴッサリ村の苗と土を他の土地に運んで実験栽培を行ったことがある。しかし別
の土地にスリンティルイスティメワが出現したことは一度もない。[ 続く ]