インドネシア「保健衛生2009年」


「運動の一番人気はジョギング」(2009年1月22日)
インドネシア人も運動が自分の健康にとって重要なものであることを理解している。そしてまた、集まってコミュニティを形成するのがきわめて得意なので、スポーツを軸にしてすぐに仲間作りが始まり、人間関係の拡大とビジネスの拡大が同時進行する。他の国ではひとりかせいぜい親密なふたりで走るのがほとんどであるジョギングにしても、インドネシア人は仲間で群れて走るのが大半だ。コミュニティのメンバーたちはどうやら走ることよりも連帯行動としての位置付けを優先しているように見受けられる。ジョギングがトップの座を占めているのはそれが自宅周辺で手軽に行なえ、また金がかからないという点も魅力のひとつになっている。しかし金に糸目をつけないでスポーツクラブやフィットネスセンターに通って汗を流し、上流ステータスの旗印を降るひとたちも少なくない。
2008年12月3日4日5日にコンパス紙R&Dがジャカルタ・ジョクジャ・スラバヤ・メダン・パダン・ポンティアナッ・バンジャルマシン・マカッサル・マナド・ジャヤプラの最新版電話帳からランダム抽出して電話インタビューした17歳以上の369人に対する国民の運動実施状況調査で下の内容が明らかになった。
質問1)普段あなたが行なっている運動は何ですか?
ジョギング 45.8%
体操・フィットネス 15.7%
バドミントン 6.2%
サッカー 5.7%
水泳 4.3%
フットサル 4.1%
アスレチック 3.8%
サイクリング 2.2%
質問2)どのような頻度で運動していますか?
週一回 22.6%
週三回 13.0%
毎日 12.7%
週二回 8.1%
不定期 43.6%


「病室が一杯だから救急患者はよそへどうぞ」(2009年1月28日)
2008年6月27日付けコンパス紙への投書"Pelayanan Buruk RSCM"から
拝啓、編集部殿。2008年5月27日、わたしは事故で骨折して骨が皮膚から突き出した友人をチプトマグンクスモ病院(RSCM)に連れていきましたが、そこで二度と忘れることの出来ない不愉快な体験をすることになりました。
友人は18時ごろ救急治療室に入りました。それからレントゲンを5枚撮り、その支払いやら何やらで病院内を行ったり来たりし、次にラボ検査のために病院内を行ったり来たりし、その支払や必要な器具の購入、そして検査結果をもらうためにまた病院内を行ったり来たりし、手術のための薬剤や資材を買いに行ったり来たりしました。そのあと入院のための病室を探して入院患者受付に行ったり来たり。ところが結局病院側は23時30分に別の病院へ行くようわたしたちに言いました。病室が無いというのがその理由です。
その理由を聞いてわたしは友人の治療にあたっていた医師のひとりに苦情しました。その医師はわたしの不満に同情的でしたが、そのそばで別の患者を縫合していた医師がわたしの抗議に対して突然怒り出したのです。「自分たちは最善を尽くしたのだから苦情されるいわれはない」と手にしたはさみを振り回しながら。
6時間もの間、患者の状態を改善させることもせず、レントゲン・薬剤・ラボなどの費用に何百万ルピアも支払わせておいて、患者側に対して医者が取る態度がそれですか?おまけに患者側に用意させた薬剤は、別の病院へ移るときにも患者側に返してくれませんでした。しかたなくわたしたちは別の公立病院へ移りましたが、深夜24時だったにもかかわらず、その病院では親切なサービスを受けることが出来ました。[ ブカシ在住、スイ・シオン・ハサン ]


「有害食品はこれ、と虚偽情報」(2009年2月24日)
市民の間で不審なビラが流されている。食品薬品監督庁が60アイテムの食品と医薬品を有毒で健康を損なう物質を含んでいると断定したという内容のそのビラには、危険とされる商品名が列挙されている。それについて食品薬品監督庁は、そのアジビラの内容は根も葉もない偽りの情報であり、その60種の商品は既に検査が行われて安全性が確認されているため市民はそれを消費しても健康に問題ない、との声明を発表した。その商品名は下の通り。
医薬品: Paramex, Contrex & Contrexin, Inza & Inzana, Nature E, Super Tetra, Bodrex & Bodrexin, Stop Cold
食品: Hemaviton, Hemaviton Action, Hemaviton Energi Drink, Neo Hemaviton, Segar Sari, Pop Ice Blender, Sari Vit C, M150, Aqua Splash of Fruit, Energen Sereal, Mogu-Mogu, Oki Bolo Drink, Inako Jely, Happy Dent White, Naturade Gold, Alloy Jely, Donna Jely, Lotte Juice Fresh, Jas Jus, Disney Segar, Jangle Juice, Zestie, Frutilo, Forti Plus, Hemaviton Jreng, Naturade Bolo, Finto, Fresh Mix, Pop Ice, Nidhi Orange Drink, Oki Bolo Drink, Amazone, Mizone, Zhuka Sweet, Arinda, Copy Pop, Jely Cool Drink, Nutri Sari Hangat, Segar Dingin, Aqua Rasa Buah, Catta Zone, Amico Sweet, Okky Jely Drink, Zporto, Jelly Juice, Extra Joss, Boy Zone, Buah Sari, Mari Teh Instan, Teh Susu, Vidoran Fres, Ice Milk Juice, Marimas
この種のアジビラは2003年と2007年に食品に関して市民の間に流されたが、今回また類似のことが行なわれており、市民に無用の不安を与えている。食品薬品監督庁は警察と協力してこの虚偽情報の出所を探り、ある病院の警備員チーフがその犯人であることを突き止めた。しかしその警備員はもちろん保健や有害物質に関する専門知識など皆無であり、その警備員にその行動を使嗾した犯人を探しているがまだ手がかりがつかめていない。
それとは別に海兵隊内部でも根拠のない有毒物質に関する偽情報アジビラが流れており、そのビラでは有毒物質を含んだ飲料品のリストがあげられ、それらの飲料品を飲むと脳に障害を起こして10歳の子供の顔がまるで60歳の老人のようになる、と書かれている。海兵隊側はそのビラについて、海軍病院研究室とは何の関係もないと否定している。食品薬品監督庁はこのビラに書かれている飲料品も消費して何の問題もないものだ、と表明している。


「診察室も藪の中」(2009年3月11日)
2008年7月27日付けコンパス紙への投書"Berobat, Malah Dihina"から
拝啓、編集部殿。これは2008年7月2日13時半にバンドンのラジャワリ通りにあるラジャワリ病院で治療を受けた際の苦い物語です。わたしは痔が悪化したので家族に連れられて病院へ行き、そこでDという名の医師から非人間的で不愉快な出来事を体験させられることになりました。受付を済ませて診察室へ行くと、D医師が出てきて簡単に患部を見ただけで、それから軽い口調でわたしに麻酔を打つよう看護婦に命じました。わたしは尋ねました。「先生、麻酔って何のために?」
すると医師は甲走った口調でわたしに言いました。「あんた、治療したいんじゃないの?けちけちするな!治りたかったら金を惜しむんじゃない。」
わたしがここへ来たのは治りたいからに決まっています、とわたしが言うと医師はその言葉で更に感情を激昂させ、ここには書けないような言葉を口にしました。「じゃあもういい。あんたは他の医者を探すんだな。バンドンにはわたしみたいな医者が1千2百人いるんだから。」医師はその場から立ち去りながら、男性の助手にわたしが払った受付費用をわたしに返すように言いました。苦痛の中にあって医師の助けをたいへん必要としている一介の市民としては、その医師の態度にたいへん傷つけられたことは言うまでもありません。まるでゴロツキのような性分の医師が患者を追い払ったのです。医者が自分に何をするのかを患者は知る権利がないとでも言うのでしょうか?麻酔を何のためにするのかということを患者にわかりやすく説明するのは医師にとって義務になっているのではありませんか?もしその麻酔が手術のためであるなら、その医師はどうしてわたし本人や家族の承認を得ようとしなかったのでしょうか?[ 東ジャカルタ在住、シャフルル・ダルウィン ]
2008年8月2日付けコンパス紙に掲載された病院側の回答
拝啓、編集部殿。シャフルル・ダルウィンさんからの2008年7月27日付けコンパス紙に掲載された投書について、次の通りお知らせします。その患者は「アドゥ!」と呻きつつ泣きながら診察室に入ってきて、診察台に斜めに寝そべると泣き声を高くしました。その様子から容態がかなり深刻であることを理解した医師はそのまま診察を続けるのが可哀想だと思い、診察の際の痛みをやわらげるために麻酔をしてはどうかと提案しました。それを行なうのはもちろん麻酔専門医です。患者は尋ねました。「麻酔はここでやるのか?」と。「いいえ、手術室で行ないます。」と医師が答えると、患者はまた尋ねました。「じゃあ手術をするのか?」。医師は説明しました。「可能性はあります。診察してどのような状態なのかを見た上で決まります。」
患者と付き添ってきた奥さんは声をそろえました。「血液検査やあれこれの検査をする通常の手術プロセスも踏まないでどうしてすぐに麻酔を打って手術しようとするのか?患者は今日中にジャカルタに戻らなければならないのだ。」
医師はそれに応えて、患者に使用するのは短時間麻酔であり、夕方には帰ることができるので心配はいらない、と言いました。そのあと、この医者は医療倫理を知らず、プロセスをわかっていない素人だ、といった批難の言葉が患者側から投げかけられて口論となりました。医師は「ただ診察をしようとしているだけで、その診察が痛くないように麻酔をかけようと提案しただけなのに、どうしてそんなふうに怒り狂って批難するのか?」と患者に尋ね、「麻酔をかける理由は単に診察時に痛くないようにするためであり、麻酔なしで診察すれば患者はとても痛がってその痛みに耐えられないだろうから診察もできなくなってしまう。だから麻酔が嫌なら他の医者にかかってくれ。」と言って救急治療室にいる急患の処置をしにその場を去りました。医師はその場を去る際に患者に向かって、「他の医者を探してください。申し訳ないが麻酔せずにあなたを診察することはわたしにはできない。」と言い、看護助手に患者が支払った費用を返却するよう言いつけたのです。[ ラジャワリ病院役員、デミン・シェン ]


「中国産食品原料に流通禁止措置」(2009年3月30日)
食品薬品監督庁が中国産ミルク・重炭酸アンモニウム・鶏卵パウダーとそれを使った製品の国内流通を禁止する通達を出した。2009年3月17日付け食品薬品監督庁回状第PO.01.02.51.0499号によれば、中国産のそれら原料あるいはそれを使用した製品は国内流通が認められず、また中国産でないものについても輸入時に原産地証明書の添付を命じている。対象原料が中国産である中国以外で作られた製品についても、中国産と同様にML番号が与えられない。この回状は2009年1月5日付けで出された食品薬品監督庁公示第PO01.02.51.0001a号を補足するものだ。
しかし飲食品事業者連盟は、食品薬品監督庁の通達が具体性を欠いているため業界はどう対処して良いのかよく分からない、と語る。「輸入という局面においては、HSコード番号を示してもらわなければ具体性が伴わず、実際の効果が期待できない。また市場では原料でなく具体的な商品名を言われなければ、販売者も何が対象なのか分からず、ましてや消費者に原料に関するチェックができるはずもない。そしていちばんよくわからないのは、中国産食品原料がどうして国内流通を禁止されるのか、その理由が今回出された回状に説明されていないことだ。」トーマス・ダルマワン連盟会長はそう批判している。


「ジャカルタ糞尿譚」(2009年4月13・14日)
世銀の『水と衛生プログラム』最新リサーチ報告によれば、インドネシアの首都ジャカルタ住民は一日当たり714トンの大便と7千立米の小便を排泄しているとのこと。問題はその処理に対する住民の意識と世の中に設けられたインフラ能力にあり、排泄される糞尿の三分の一に当たるおよそ214トンの大便と2,100立米の小便が妥当な汚物処理の流れに乗っておらず、あるべからざるところに垂れ流しされている。世銀の報告はそのような内容だ。
総面積740平方キロに750万人(2006年データ)が密集して生活しているという環境にそれだけの汚物が流されていることを世銀報告は意味している。その垂れ流し排泄量を1年分溜めると、ブンカルノ陸上競技場4つがその中に埋もれてしまうそうだ。垂れ流しされている糞尿は家庭排水路や住民居住地区の側溝などを通って街中を貫通している川や水路に流れて行く。川や運河が排泄物を流す肥溜めだったのはバタビア時代から変わらない。バタビア時代に建てられた古い建造物を見ればわかるが、コタにあるジャカルタ歴史博物館(Museum Fatahillah)も国立公文書館(Gedung Arsip Nasional)も、古来からある建物の中にはトイレがない。昔のヨーロッパ人は部屋に桶を置いてそこに排泄を行ない、桶の排泄物は下男がどこかご主人様の知らざるところへ持って行って処理したようだ。屋内にトイレが設けられるようになったのはヨーロッパでも19世紀に入ってからのことらしい。
バタビアの街はチリウン川と運河が縦横に流れており、桶の排泄物を捨てる場所には困らなかった。ただ、真昼間からてんでんばらばらに捨てるのはだめで、夜の特定の時間を過ぎてからはじめて捨ててよいという規則をバタビア市行政当局が決めた。おかげで時報がそのときを告げると、バタビアの市中を流れる運河は一斉に下水に変わり、すさまじい臭いがバタビアの街を覆ったようだ。その川や運河の水を大多数のバタビア住民は生活用水にし、水浴し、そして排泄も行なっていた。ヨーロッパの北海沿いならいざしらず、熱帯のバタビアで糞尿の川流しをやられた日には病気にまとわりつかれる人間がどれほど出たことだろう。
昔のバタビア時代はいざしらず、現代ジャカルタの衛生環境はもっと進んでいてもらいたいところだが、どうやらそれは高望みのようだ。現代ジャカルタの糞尿の三分の二は一応妥当な汚物処理の流れに乗っていると世銀は言うのだが、これとて油断は禁物だろう。ジャカルタでは一家にひとつ汚わい溜めであるセプティックタンク(インドネシア人はセプティタンと発音する)を地中に埋めることが義務付けられている。最近建てられた家はモダンな成形品を使うところが増えているが、昔の家は大きな土管を縦にして地中に埋めるだけだった。だから中味が洩れないはずがなく、そしてバンジルの時期になれば流水が中味の一部をさらって行くことさえ起こった。ましてやバンジルは川や運河に流された糞尿をまた陸上まで拡散させてくれるため、バンジル後にさまざまな病気が蔓延するのは疑いなしに当然と言える。
ジャカルタ都民の汚わいを処理するためにブカシ市バンタルグバン(Bantar Gebang)に汚物処理場が作られて各家庭のセプティタンからバキュームカーが糞尿を運び込むことになっているのだが、不心得なバキュームカー運行者は金がもらえるセプティタンからの吸引を行なうものの、汚物処理場まで走るためのガソリン代を惜しみ、汚物処理場で要求される徴収金を惜しむあまり、車のタンクに入った汚わいをどこかに捨てようとする。昔報道された記事の中に、都内クニガン(Kuningan)地区ラスナサィッ(Rasuna Said)通りの雨水排出用側溝にホースを突っ込んでバキュームカーがタンクの中身を捨てていたのが捕まったというものがあった。かれらは再三それを行なっていたというから、ジャカルタというのはどこになにが転がっているかわからないミステリーに包まれた場所だと言うことができる。


「殺虫剤浸けのインドネシア人」(2009年4月15日)
二年前には市場で流通している農業用殺虫剤が450種あったが、いまやそれが1,702種に膨れ上がっている。これは行政認可を得たものだけだから、得ていないものを含めればどれだけの数に上っているのか、想像しただけでも気が遠くなりそうだ。殺虫剤国家コミッションは363種の殺虫成分に農薬として使用許可を与えている。農民が生産した食材に残留してそれらの殺虫成分は消費者の体内に入る。加えて消費者は日常生活の中で蚊・ハエ・ゴキブリなどに向ける殺虫剤を使っている。住居の中で使われたら、それが体内に吸引されないはずがない。中部ジャワ州ソロ市でのサーベイによれば、一家庭で二種類の殺虫剤が使われており、需要のトップは蚊取り線香で第二位が蚊取り噴霧剤だった。加えて最近は町内でデング熱患者が出ると殺虫剤噴霧を行なう方針が徹底してきており、それが行なわれると町内の大気は激しく殺虫剤に汚染される。インスタント性を好む国民性は蚊の退治を日ごろから着実に行なうことよりも人体に有害な殺虫剤をばら撒く方を選択しているようだ。
インドネシアの食用植物で殺虫剤の残留がないものはまずない、とバンドン工大環境技術学教授は語っている。インドネシア人の体内には食物連鎖・呼吸・皮膚から殺虫剤が多量に侵入している。体内に入った薬物は他の要素と反応してガンの発生を促がす。また殺虫成分の中には人間のホルモン・生殖・胎児に障害をもたらすものがある。カリマンタンで1960年代にマラリア撲滅プログラムが進められ、DDTが使われた結果多数の猫の死骸が随所に転がる始末となった。
ソロを中心に農村の支援を行なっている財団は、農民の間では咳・疲れやすい・体液不足・めまいなどの症状が一般的になっており、農作業での殺虫剤多用が原因と考えられる、と報告している。政府はDDT、アルドリン、ディルドリン、マイレックス、エンドリンなど残留性有機汚染物質の使用を禁止しているが、現場での法確立は例によって国民生活のすべての相と同様に弱い。一般家庭もそうだが、殺虫剤が人体に及ぼす影響に関して農民が持っている知識も意識もまったく低いレベルでしかない。


「インドネシア人がもっとも怖れる病気はガン」(2009年4月16日)
コンパス紙R&D部門が2008年3月26〜27日にジャカルタの電話帳からランダム抽出した在住者503人に対して電話インタビュー方式で行ったサーベイで、国民がどんな病気をもっとも心配しているのかが明らかになった。
運動をし、食事の内容に留意し、十分な休息を取ることが健康の維持に欠かせないことだとたいていの国民は理解しているものの、自分ではそれを十分に励行していると思っていても病魔はひそやかに歩み寄ってくる。国民が一番怖れているのは、完治するのが困難なガン、そして突然われわれをあの世に運んで行く心臓疾患だった。インドネシア人が恐怖を抱いている病魔の番付は次のようになっている。
1位 ガン 24.7%
2位 心臓疾患 13.1%
3位 デング熱 11.9%
4位 鳥フル 9.3%
5位 エイズ 8.7%
6位以下の病名集計は19.3%で、ガンが圧倒的強さでトップにいることがわかる。
なお、怖い病気などないという回答は6.4%、わからないという回答が6.6%あった。


「発ガン性物質浸けのインドネシア人」(2009年4月20〜23日)
共和国独立後間もないころインドネシアに来て何年か暮らしたアメリカ人医師の語った「インドネシア人はきれい好きだが、衛生観念がない」という言葉は今も変わっていないようだ。ゴミを路上や河川にポイ捨てするインドネシア人を見て、かれらのどこがきれい好きなのかと疑問を抱くひともいるようだが、それはかれらの持っている公共観念に由来している問題であって、かれらが自分の本領と見なしている自宅やファミリーの環境は整理整頓清掃が行き届いているのが普通である。つまりインドネシア人も見た目のきれいな生活環境を好むのはほかの民族と同じであるものの、かれら大半は強いファミリー主義社会の枠の中で生活しており、ファミリーの枠の外はジャングルなのでそこをきれいにするという必然性を感じないのだとわたしは思う。
それはともあれ、衛生観念について言うならトイレで用足しをしたあと手を洗うインドネシア人が少ないというのもその例証のひとつだろう。道端に屋台を置き、その場で料理して食べさせてくれる食べ物屋台も、使った食器はバケツに溜めた水で洗い、流水は使わない。もっと言うなら、川でマンディし、用足しし、洗濯し、その川の水で歯を磨き口をゆすぎ、水を汲んで飲食に使うという古来からの南方民族の習慣はほんの二三十年前までジャカルタの中でさえ見られた。コタのハヤムルッ(Hayam Wuruk)通りとガジャマダ(Gajah Mada)通りにはさまれた運河で毎朝周辺に住む住民が用足しとマンディに洗濯、子供たちは素っ裸で水遊びというバタビア時代から変わらない情景を目にすることができたのを、最近のひとたちは信じることができるだろうか?
衛生観念というのは人間が健康で長生きをするための保健思想をバックアップするものだとわたしは思う。人間がすこやかに生きることを実現させるためのものごとの価値観や考え方が保健思想であり、それは現代という時間の中でわれわれがどのように堅実な生き方をするのかという人生観と密接に絡み合っている。であるなら、衛生観念がないと言われるひとびとの人生観はわれわれのものとかけ離れているという論理の展開ができるような気がわたしにはするのだが、その点に関してインドネシア人と身近に接している異文化人たちのご意見をうかがいたいものだ。
インドネシア人の日常生活は保健思想から見てネガティブな物質に満ち満ちている。それらの健康に害を及ぼす物質が商品の売行きを良くするというだけの理由で恐れ気もなく使われ、消費者はそのようなことに関心を払わずにそのような商品を消費して体内に摂取している。これは民族の災厄だ、とハンドラワン・ナデスル医師は言う。インドネシア人の実際の寿命は生物学的に妥当な年数よりも短いのだそうだ。アッマジャヤ大学医学部を1970年代に卒業したハンドラワン・ナデスル医師は保健行政畑を歩みつつ国民への保健知識啓蒙に健筆をふるった。かれの著作やマスメディアに掲載された評論の多さとそれがカバーしている領域の広さで、インドネシアでかれの右に出る者はいないというのが世間一般のハンドラワン評だ。インドネシア人の日常生活にあふれている有害物質をわれわれはこんなところでお目にかかる、と医師は書いている。かれの評論を読んでみよう。
保健省が最近報告した家庭保健サーベイは、インドネシアでガン罹患者が2千万人に達したことを伝えている。インドネシア国民が塩魚を常食にし人生の長い期間にわたってそれを摂取していることから、ガン罹患者の増加はきわめてありうることだと思われる。塩魚に含まれているニトロサミンは豆腐・ケチャップマニス(甘ソース)・トラシ(エビ醤)などに使われているフォルマリンに劣らない悪性発ガン物質なのだから。ガンは下痢のように一晩で罹患するものではない。
学童は繊維染料のロダミンBで染められたシロップ・トマトジュース・クルプッ(せんべい)などのおやつを口に入れる。大人になったかれらにガンが発症する可能性は小さくない。繊維染料は造ガン物質のひとつだ。
昔は調味料を扱う際に木の特製スプーンを使った。今バソ(肉団子入りスープ)売りはプラスチック袋からそのままどんぶりに注ぐ。だれがそれを禁止できよう。何十年もグルタメートを過剰に摂取したら、ひとはガンの恐れから免れることができなくなる。家庭で買っているおやつ類に安全でない防腐剤がどれほど含まれていることだろう。歯ごたえのよいクリピッ(チップス類)やべたつかない麺に使われている化学物質。レストランの熱い汁を入れたスタイロフォームから溶け出した物質。いまや珍しいものでなくなったそれらの化学物質が国民の胃腸に押し寄せる。道端の揚げ物屋は、商品がカラッと揚がるように、高温の油の中にビニール袋を放り込む。あるTV局のドキュメンタリー番組でそれが明らかにされた。コストが安いという理由で揚げ物屋はレストランで使い切った廃油を使う。すべて発ガンを促進させるものだ。ミネラルウオーターの空き瓶の再使用は大勢のひとが行なっているのだが、それも同じようにあぶないことだ。
インドネシア産大豆を日本が拒否したことがあった。収穫方法と貯蔵方法が不適切だったために肝癌を発症させるアフラトキシンを生むカビに汚染されていたのが原因だ。アフラトキシンはジャワの家内工業製ジャムゥの原料からも見つかっている。原因はやはりカビだった。いまだに国民の日常食になっているテンペボンクレッ(tempe bongkrek =油を搾った後の大豆で作ったテンペ)にも、さまざまな毒素に加えてアフラトキシンが含まれていることがある。何年もシリ(噛みタバコ)の習慣を続けてタバコ葉を口にふくめば、口内ガンがやってくる。
国民の砂糖消費はうなぎのぼりだ。砂糖の結晶はサトウキビの搾り汁に化学物質を加えて作られる。この物質も実は、おやつに使われている人工甘味料と同様にあぶないガンの芽だ、と批判されている。小麦から小麦粉をつくる際に使われる化学物質も健康によくない。先進国では消費者が白色パンよりも無漂白パンを選択している。
それと自覚されないまま、数百いや数千の化学物質が飲食品産業に浸透して国民の胃腸を押し包んでいる。殺虫剤は野菜や果実と一緒に体内に摂取される。ウジがわかないように塩魚は殺虫剤が噴霧される。輸入果実の皮には防腐剤がへばりついている。家畜や家禽には成長ホルモンが注射され、エビには抗生物質が与えられる。氷の値段が上がればフォルマリンが鮮魚の保存に使われる。
輸入化粧品は村落部にも押し寄せた。化粧品に含まれた水銀はガンの萌芽だ。繊維染料が口紅や頬紅に使われ、安物の練り歯磨きやシャンプーには有害な化学物質が混入されている。
黄金採鉱場近辺の川や海の水銀濃度は許容量を超えている。国民はそんな水の中にいる魚を食べ、飲み水を入手する。カドミウムなどの重金属汚染もある。体内に蓄積される重金属はモニターされない。その中には発ガン物質もあればフリーラジカルもある。フリーラジカルは現代人の敵であり、現代病の大半はその汚染によって引き起こされている。
国民は週に何回燻製や焼いた食品を口にしているだろうか?焦げた魚・肉あるいはサテなどを食べれば発ガンが促進される。燻製食品も変わらない。不正な生産者は売値が高くなるように、食用油に化学物質を混ぜ、米に漂白剤を使い、魚に赤色染料を塗る。安物壁用ペンキにはフォルムアルデヒドが含まれており、健康によくない。子供の玩具に塗られている塗料も同じだ。
発ガン性物質を全身で受け止め、あふれるフリーラジカルの洪水に身をさらしている国民の健康は劣化するばかりだ。おまけに国民全員が生まれながらにして健康の元手を与えられているわけでもない。栄養不足で生まれ、不健康な育て方をされ、それらが蓄積されて大人になったあとの日々の生活は脅威に満ち満ちている。貧困者は豊かな他人が取り上げたあとの産業廃棄物や汚染といった残り物を引き受けた上に自分の弱点も担わなければならない。それに加えて現代的なライフスタイルが農村にまで侵入する。ステーキ・バーガー・ホットドッグなどは人体メカニズムに適合したメニューではないのだ。
栄養不良の母から生まれた子供は糖尿病をもらう。魚や卵を潤沢に食べている子供に比べて、その摂取が足りない同年代の子は脳の働きが弱い。幼児期を過ぎてからミルクを飲まなくなれば、骨の成長は厚みを欠き骨粗鬆症になる。大きくなったらソーダ飲料を飲んでもだれも禁止しない。既に薄い骨はさらにもろくなる。疲労や身体の凝りを自分で治そうとする国民は、骨をもろくし糖尿病や高血圧といった副作用をもたらす化学薬品が混ぜられた悪徳ジャムゥを用いる。
あらゆるものが国民に長命を与えない。これは民族的な災厄だ。本来なら、国民の健康の元手は生まれたときから投資され、老齢になるまで貯蓄されて老後の生活を豊かにするべきものではないか。ところがその元手は生まれて以来減少するばかりで、人生の旅路の中で失われてしまう。わが国民の平均寿命は生物学的に可能な年数より短い。もし国民の体内のブラックボックスを開いて見ることができるなら、国民災厄の元凶のひとつを目にすることができるだろう。生後まだ小さいころからガンの芽が植えつけられているということを。


「インドネシア人看護師の将来はバラ色」(2009年6月2日)
海外での看護師需要は増加の一途であり、インドネシアからは現在4千人がクエート・日本・オランダなどで働いているもののアメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリアなどには大きな需要があるというのにインドネシア人看護師はなかなかそれらの国で職を得るのがむつかしい。それはインドネシアの看護師資格認定が国際的に認められていないのが原因であり、その対策としてそれを管掌する機関を設置し、国際レベルの看護師資格認定制度を早急に整備する必要があるとインドネシア全国看護師ユニオン会長が国会公聴会の場で表明した。国会の法令審議スケジュールに看護師法案が入っており、公聴会はそのために開かれたもの。
看護師資格に関連する諸活動を管掌する機関の設立はそれをバックアップする法令を必要としており、ユニオン会長は国会に対して法案審議から国会承認にいたるプロセスの迅速な展開を要請している。インドネシア人看護師が外国の医療機関に雇用される際の問題点として、外国ではインドネシア人看護師の能力が疑問視されている点を会長は指摘し、国際スタンダードをクリヤーする国立の看護師資格認定機関を設立した上で諸外国との間に相互承認協定を結べばその障壁は取り除かれる、と会長は力説している。会長によれば、現在国内には学士レベルの看護師教育機関が200、ディプロマ3レベルは400あって、毎年3万人の卒業生を送り出している。しかし国内では看護師の職業に明確な給与規準が設けられておらず、実態は千差万別で不公平な状況になっている、と会長は訴えている。会長によれば、看護師は初任給で300万ルピア、第5レベルになれば職歴による勘案が加わるものの1千5百万ルピアのラインが望ましい給与体系であるとのこと。それでも外国で働く場合との給与格差は避けがたく、日本では月給17万円、クエートでは2千2百万ルピア相当、アメリカでは4〜6千万ルピア相当と国によっても大きい開きがある。国内の看護師需要も病院ごとにバランスが取れていないのが実態だそうだ。
労働省海外出稼ぎ者保護配備国家庁海外協力局長は、インドネシア人看護師にとってたいへん大きい市場が海外にある、と発言した。日本はこの先数年間にわたって6万人の外国人看護師受入れを計画しており、インドネシアに対しては2年以上の実地経験者に受入れの機会を開いている。今年はインドネシアから104人を日本に派遣する計画であるとのこと。アメリカは2015年までに100万人の受入れ計画を持っており、また政府は現在イギリスと1千人を送り込む交渉を進めている。


「看護師が全国一斉スト?!」(2009年6月23日)
インドネシア全国看護師ユニオンに所属する5千人の看護師が看護法の年内制定を求めて2009年6月17日、首都ジャカルタで陳情行動を展開した。デモ隊は国会や保健省本庁の前でシュプレヒコールをあげたが、これは2009年5月12日に行われた看護師全国行動に次いで二度目。「保健相もわれわれとともに国会に対して看護法の年内制定をプッシュしてほしい。われわれの要求が通らないなら、全国一斉ストも辞さない所存だ。」保健省へのデモ隊を率いていたユニオンの現場コーディネータはそう述べている。
5月の全国運動で国会はその要求に応じて看護法案を一旦2009年度国家立法プログラムの中に含めたものの、その後の国会指導部と政府間の調整会議で看護法案は年内制定優先対象から外されてしまった。ユニオンの現場コーディネータはそれに関して、「国民はグローバル時代の保健サービスをカバーする適正な法的保護がいつまでたっても享受できず、一方医療現場にいる看護師はますます勢いを増す外国からの看護師進出によって職場を危うくされる傾向を深めていくことになる。早急に看護法案を審議しょうとしない国会は国民寄りでないことを露呈している。」と語っている。
インドネシアの看護師はいま50万人を超えており、これは医療・保健セクター現場従事者全体の6割を占めている。インドネシア政府はアセアン加盟9カ国との間で看護師の相互承認協定を既に結んでいるが、その9カ国中で看護法が制定されていないのはインドネシア・ラオス・ベトナムの三ヶ国だけ。


「有害偽ブランド化粧品に要注意」(2009年6月26日)
食品薬品監督庁が有害化学物質含有化粧品70種の市場回収と流通禁止を命令しその該当品のリストを公表したが、その中にPond'sとOlayというブランド名が入っていたことから、そのブランド所有者がそれらは偽ブランド商品であるとの公式声明を出した。
食品薬品監督庁が有害な化粧品と指定したPond'sブランド製品5種は次のようなもの。
Age Miracle day and night cream
Detox complete beauty care make up kit
Detox eye shadow blusher & lip gloss
Creme powder No.1
Creme powder No.2
Age Miracle day and night cremeはタイとシンガポールから輸入されたもので、生産者はMillot Laboratory Co.Ltdとなっている。ユニリーバインドネシアはその5種の製品について、それらすべてはユニリーバインドネシアの生産品でなく偽ブランド品であり、純正ブランド品には決して人体に有害な物質が含まれていないので商品に付された国内流通承認番号であるCD番号を確かめて購入するようにし、値段の異常に安い商品は避けるようにと消費者に呼びかけた。
同じリストにあったOlayブランド化粧品のブランドオーナーであるP&Gインドネシアも、国内販売しているOlay Total WhiteシリーズにはOlay TW Extra Fair CreamとOlay TW Spot Lightening Creamの二種類しかなく、Olay TW Cremeは一年以上前に販売をやめているのでリスト内の商品はP&Gインドネシア製品ではない、と表明している。


「お寒い保健医療器具市場」(2009年7月27日)
年間25.7兆ルピアという国内保健医療器具市場の99%が輸入品で占められており、国内製品のシェアはわずかに1%でしかないため国内生産者の多くが閉業の危機に直面しており、国内に参入した外資系生産者の中には撤退したところや職種換えを行って生き延びているところがある、とラボ保健医療器具会社連盟事務局長が発言した。
そのわずか1%シェアという状況はもう5年以上続いており、その間この事業セクターへの投資は完璧なゼロが並んでいる。このセクターに参入してきた外資系は再び国外に去っていったところや、国内生産をやめて輸入だけ行なうようになったところがある。この市場は8割を占める政府調達に支えられており、国産品シェアが小さいのは政府が国産品をなおざりにして輸入品を歓迎しているからだ、と同事務局長は政府に批判を向けた。ラボ保健医療器具会社連盟会員1千5百社のうちで自社工場を持っているのは75社しかなく、さらにエレクトロニック技術を用いた製品を作っているのは20社に満たない。
国内市場開拓が困難であるため国内生産者は輸出市場の開発に努めるのだが、海外市場で受け入れられているのは血圧計・聴診器・医療用寝台やマットレスなど非電子技術製品に限られている。今年業界は、保育器・歯科治療ユニット・電動車椅子など簡易テクノロジーを使った製品を世に出そうとしている。インドネシア製血圧計の中にはドイツに輸出されているものがあるが、それはドイツの血圧計メーカーが調達しているもので、そのメーカーの商標がつけられて再輸出されており、インドネシアにも輸入品として入ってきている。
政府は2009年大統領規則第2号を制定して政府調達品に対するローカルコンテンツ条件の規制をかけたために外国製品は政府調達の対象から外される傾向を強めているというのに、このセクター保健省関係者がその規則を無視して輸入品調達を続けており、反外国姿勢の強い保健相もこの点についてはスローガン止まりだ、と事務局長の舌鋒は鋭い。省高官の中には昔から行ってきた逸脱行為を続けている者がおり、かれらは中国製品をグラントだと称して調達ルートに乗せる一方購入支払票が作られて高官のサインがなされているものもざらにあるし、欧米で5年以上使用された中古品の再調整品が国内に輸入されていることを事務局長は指摘している。国内の著名な病院の中で、再調整中古品がひとつも置かれていないところはないそうだ。しかし、シティ・ファリダ・スパリ保健相はそれに対して「調達入札で規則に違反した行為がなされることはありえない。また自分が大臣の責にある過去5年間で中古品輸入を許可したことは一度もない。」と反論している。
ともあれ、国内市場がそんな状況であるため、フランス系1社を含む同連盟会員会社2社がまたこのセクターに見切りをつけたとのこと。そのうちの1社はオートバイビジネスに転業するそうだ。


「医師へのリベート」(2009年7月28日)
製薬業界から医師に支払われているリベートは年間9千億ルピアに達している、とインドネシア医療消費者援護財団理事長が発言した。リベート金額は製薬業界の売上と利益の上昇に伴って増加しているとのこと。このリベートは医師が患者に与える処方箋に特定メーカーの医薬品を記載させるためのもので、医師と製薬業界の癒着は強さを増している、と理事長は述べている。「しかし9千億ルピアという金額は7〜8兆ルピアにのぼる業界の年間利益額に比べて小さく感じられる趣がある。そのバランスはリベートのアップでなく業界利益のダウンという方向ではかられるべきであり、つまり製薬業界がインドネシアで国民から徴収している膨大な利益を引き下げる政策が取られる必要があるという意味だ。医薬品の消費者価格はもっと引き下げられなければならない。
2009年蔵相規則第104/KMK.03/2009号で販売と販促の費用に関する新規則が制定されたが、それは産業界のあまりにも巨大な利益を国庫に一部取り込むことを目的にしたものであり、製薬業界にもそのまま当てはまる。医師と製薬会社の癒着を弱め、医薬品の過剰な宣伝をもっと倫理的なものにするためのものという意見にわたしは賛成しない。企業はこの規定に則して利益の一部を国庫に提出だけであり、リベートを含めた販促行為は従来どおり続けられるだろうし、かれらは利益高を確保するためにあらゆる努力を払って国庫に提出した増税分を取り戻そうとするだけだ。」財団理事長はそのように語っている。


「医薬品小売価格を政府が規制」(2009年7月30日)
ブランド付き一般用医薬品の市場販売価格を政府がこれまで統制していなかったことから世上でさまざまな議論を呼んできたが、この問題は現在国会審議中の保健法案の中に織り込まれており、法制化が確定した暁にはその実施規則によってブランド付き一般用医薬品価格に統制がかけられ、問題の解決に迫ることになるだろう、と保健省医薬品保健機器育成総局長が表明した。
インドネシア医療消費者援護財団と事業競争監視コミッションは、ブランド付き一般用医薬品の消費者向け価格を生産者は何の規制を受けることもなく自由に決めていたため、一般消費者にとって高すぎるものになっていると指摘している。これまで生産者は消費者の利益を考慮することなくあまりにも自由に価格を決めてきており、中には特許薬より高く値付けされているものすらあって、常識の枠を超えた状況すら出現している、と医療消費者援護財団理事長は述べている。事業競争監視コミッションも、市場で生産者がブランド付き一般用医薬品の価格をあまりにも高く決めているケースがあり、異常な姿を示していると表明している。たとえば抗生物質のアモキシシリンは特許薬が1,940ルピアだというのに後発医薬品の中には最高が2,475ルピア、最低は259ルピアとなっている。セフィキシムも同様で、特許薬は13,733ルピアだがブランド付き一般用医薬品の最高は14,500ルピアとなっており、異常な価格体系が形成されている事実が浮かび上がっている。
その対応策として財団もコミッションも、早急にブランド付き一般用医薬品に上限金額の規制をかけて国民一般消費者が高すぎる医薬品から蒙っている経済負担を軽減させるよう政府に要請している。妥当な価格レンジは最高と最低の間がせいぜい3倍であるとのこと。保健省医薬品保健機器育成総局長は、この問題が法制化された暁には現行の消費者価格統制制度である上限小売価格(HET)システムをブランド付き一般用医薬品の価格統制に用いることになるだろう、と語っている。


「どっちが本当の話?」(2009年7月30日)
2008年12月31日付けコンパス紙への投書"Ambulans RS Omni Tak Mau Melayani"から 拝啓、編集部殿。2008年11月4日16時15分、わたしは27歳の息子を東ジャカルタ市プロマスのオムニ病院救急治療室へ連れて行きました。病院側の診断によれば、息子は急性心臓疾患とのことでした。救急治療室で処置がなされたあと医師は、オム二病院の設備が不十分なのでハラパンキタ病院へ移るよう奨めました。わたしの兄はすぐにオムニ病院の診断書を持ってハラパンキタ病院の入院手続をするためにそちらへ向かいました。ハラパンキタ病院はすぐに息子を連れてくるよう言ったのでそうしようとしましたが、オムニ病院の救急車は運転手がいないという理由で使うことができません。オムニ側は20万ルピアの費用で118番救急車を使うよう奨めました。そのときオムニ病院駐車場には病院の車が3台停まっていました。
オムニ病院が息子の移送に協力してくれなかったため118番救急車が来るのに時間を浪費し、息子はハラパンキタ病院への到着が4時間も遅れたために状況が悪化して一命を失いました。オムニ病院は数日後に治療請求書を出してきましたが、その中にはなんと遺体安置室の費用2万5千ルピアが含まれていたのです。実に奇妙なことに、オムニ病院はわたしの息子のために救急車を用意することを惜しんだ一方、使ってもいない遺体安置所の費用を請求してきたのです。[ 北ジャカルタ在住、エディソン・タンブナン ]
2009年1月17日付けコンパス紙に掲載されたオムニ病院からの回答
拝啓、編集部殿。エディソン・タンブナンさんからの2008年12月31日付けコンパス紙に掲載された投書について、次の通り説明申し上げます。患者は急性心臓疾患で救急治療室を訪れたので、ICUで状態を安定させてからハラパンキタ病院に移送しました。救急状態の患者を移送する場合は通常、118番救急車を利用します。状態が安定してからハラパンキタ病院に患者を移送する場合、オムニ病院の医師一名と看護師一名が同乗し、またオムニ病院の業務用車両が一台伴走して、患者はハラパンキタ病院に送り届けられます。遺体安置所の費用2万5千ルピアは遺族とコンタクトして解決しました。[ プロマスオムニ病院広報マネージャー、ヘルディ・ナジル ]


「年間に少女70万人が堕胎」(2009年8月5日)
インドネシアでは年間260万件の妊娠中絶が行なわれており、そのうち70万件は年齢20歳未満少女たちの望まれない妊娠によるもので占められている、と専門家が報告した。
中部ジャワ州ブロラで女性活力化担当国務省・児童保護庁・国家家族計画統括庁が共同で開催した「女性と未成年女子保護対策」に関するセミナーで女性活力化担当国務省女性社会問題担当副デピュティは、全世界で年間1千9百万から2千万件の安全でない妊娠中絶が行なわれており、その97%は発展途上国で占められ、安全でない堕胎手術が原因で6万8千人が死亡している、と述べた。別の発言者は、望まれない妊娠が中絶手術を増加させており、その原因は少女に対する保護の欠如にある、と語った。女性、中でも少女たちは男友達の性的にぶしつけな扱いを受けたり、兄弟・隣人はては実の父親からレープされるといった性的暴力の被害者になることも少なくない。そのような現実が望まれない妊娠を増やし、結果的に妊娠中絶に走るという現象を生み出している。
少女たちに対する保護の欠如は性的問題だけに限定されず、麻薬覚せい剤の常用者になるという面のベースにもなっている。女性活性化国務省データによれば、2007年の麻薬覚せい剤中毒死亡者は1万5千人と記録されている。女性活性化担当国務省は全国135県市に女性保護機関を設立して女性に対する保護活動に従事させている。


「19歳、未婚の親が赤児を埋める」(2009年8月13日)
2009年8月2日午前6時過ぎボゴール市タナバルの公共墓地で、正式な赤児の墓とは思えない形で土中に赤児の死骸が埋まっている、との報告がボゴール市警に入った。ネコが墓地で土をほじくっているうちに土中に埋まっている何かが出てきたのに気付いた住民がその何かを掘り出したところ、プラスチック袋の中に布にくるまれた赤児の死骸があったのに驚いて警察に届け出たもので、赤児は土中50センチもない深さで埋められていた。赤児の死骸はすぐに検死解剖のためボゴール赤十字病院に送られた。
市警犯罪捜査ユニット長は、死産だったのかどうかが赤児殺害かどうかの決め手になる、と語っている。また死産であっても、だれにも知らせずに密かに赤児を埋めるのは不法行為であるとのこと。捜査員はすぐに現場で聞き込み捜査を開始し、午前10時に容疑者を割り出して連行した。警察が重要参考人としたのは北ボゴールのタナバルに住むニナ・アグスティナ19歳とカマルディン19歳の恋するふたりで、ふたりはその赤児の両親であることを認めた。ふたりの自供によれば、臨月近いニナは8月1日の夜自宅にいて、便意を催したので浴室へ行ったところ赤児が出てきたとのこと。生まれた赤児はピクリとも動かなかった、とニナは述べている。たまたまその夜ニナの家は両親がおらず、ニナはひとりきりだったのでカマルディンに電話した。カマルディンはすぐにやって来た。相談の結果赤児を墓地に埋めようということになり、カマルディンはニナの家の隣人から鍬を借りてタナバル公共墓地に赴き、赤児を埋めた。時間は深夜12時ごろだった。


「国有薬局会社がフランチャイズを展開」(2009年10月2日)
国有医薬品会社PTキミアファルマ(Kimia Farma)の子会社PTキミアファルマアポテッ(Kimia Farma Apotek)が全国に薬局店網の拡大を図っており、来年はフランチャイズ方式でネットワーク拡大を展開させる意向。2009年7月のトップブランドアワード表彰で、ドラッグストア部門のトップブランドに輝いたキミアファルマアポテッは年間百店の新店舗開設を目標に据えており、2010年にはその目標推進に向けてフランチャイズ方式を取り入れようとしている。
キミアファルマアポテッが展開するフランチャイズは医薬品小売事業におけるビジネスリスク回避のためと言うよりも妥当な利益のあがる永続的な事業展開ができる薬局ビジネスにいかに投資家を誘致するかというポイントを主眼にしている、と同社代表取締役は述べている。そのような基本コンセプトからは、キミアファルマの名に恥じないフランチャイジーとなる投資家をいかに選別するかというフランチャイザー側の審査が重要な位置を占めるし、赤字フランチャイジーを出さないというコミットメントに関連して店舗ロケーションを含めたさまざまな条件の厳しい検討も欠かせない。
2009年のトップブランド受賞は同社の拡張方針に思いがけない追い風をもたらした、と代表取締役は語る。中下級マネージメントから従業員ひとりひとりに至るまで社内には新たな業務推進意欲が高まっており、そして新規フランチャイジーにはためらいを捨てさせる好機がそこに誕生している。
トップブランドアワードはフロンティアコンサルティンググループが雑誌マーケティングと共同で毎年行なっているブランドコンテストで、ジャカルタ・バンドン・スマラン・スラバヤ・メダン・マカッサルの6都市住民3千人が選択したカテゴリーごとのトップブランドが受賞のベースになっている。


「73歳が平均余命最高値」(2009年10月20日)
2004年に中央統計庁が行なった全国社会経済調査でインドネシア人の平均余命は62歳から73歳という数字が明らかにされた。地方別の調査結果は次のような内容になっている。
南スマトラ州 男65.5歳 女69.5歳
同州オガンコメリン県 男64.4歳 女68.5歳
同州パレンバン市 69.9歳 女73.5歳
西ジャワ州 男63.8歳 女68.0歳
同州クニガン県 男63.4歳 女67.7歳
同州バンドン県 男70.0歳 女73.6歳
東ヌサトゥンガラ州 男62.9歳 女67.2歳
同州東フローレス県 男63.5歳 女67.8歳
同州北中部ティモール県 男62.6歳 女67歳


「公衆トイレを清潔に」(2009年12月4日)
観光文化省は観光地における公衆トイレの規準を2004年に定めたが、トイレに関する苦情は絶えたことがない。スカルノハッタ空港でさえ、空港運営会社からのパッセンジャーサービスチャージ値上げ申請を運通相が却下したとき、トイレがその理由のひとつにされたくらいだ。
「規準を定めたから、みんなこれに従ってやれ」と書き物を与えただけでは何もはじまらないのがインドネシア。会社の中でもその原理はついてまわる。推進担当者が全関係者を呼び集めてその書き物を逐一読んで聞かせ、質疑応答のステップを踏んではじめてみんなはそれを理解するという段階に立ち至る。このプロセスがインドネシアでソシアリサシ(sosialisasi)と呼ばれるものだ。決まったことが実行されない場合、ソシアリサシが足りないというのが実行されないことへの免罪符となる。これは多分にインドネシアにおける情報伝達が古来から口承を基本にしてきたこと、そして人間が人間に関わっていくという依存性文化を強く持っていることなどに由来しているように思われる。だから社内掲示板に何を貼り出したところで、みんなを集めて説明会を催さなければ何もはじまらないのである。
だとすれば、ソシアリサシを済ませれば全員に理解と認識を持たせる段階に入ったと言うことになるのだが、正しい理解をしている者と歪んだ理解をしている者、ほんとうに認識を抱いた人間とそのつもりになっているだけの人間が混在しているから、みんなのやっていることをお任せスタイルで放り出してはならず、やっていることをモニターし評価してかれらにフィードバックするというプロセスも不可避となる。『中学生でもわかることだ・・・』と考えて本人にお任せしたらあとで軌道修正が難しくなるので、モニター・評価・フィードバックのサイクルを回し続けなければならない。
ともあれ、これは公衆トイレの話だから軌道修正しよう。やはり観光文化省はスタンダードを定め、インドネシアトイレット協会の協力を得て国内各地のトイレ管理者にソシアリサシを行なった。それからしばらくは意識の高揚があったようだが、常習的に監督されていなければ盛り上がった意識も時の流れの中に風化していくのが人間世界の常であるらしいのはだれもがご存知のことだろう。レベルが低落したトイレに観光地現場の意識を向けさせようとして観光文化省観光先地開発総局とインドネシアトイレ協会が組んで全国観光地のトイレを質量共にスタンダードまで引き上げる運動をはじめた。この運動によってトイレ施設の向上だけでなく、国民の保健衛生意識も向上するようにと環境衛生界関係者は要望している。