インドネシア地理気象情報2004〜12年


「雨は5月まで続きそう」(2004年5月1日)
さる4月21日に首都を洗った雨が起こした水害に、「はて、雨季は終わったはずなのに・・・」と怪訝な思いを抱いた住民も多かったようだが、雨季から乾季への移行期にはまだまだ雨が降り、そんな状況は5月も続く、と気象専門家は述べている。ヘンドロ・プルノモによれば、先日の雨はインド洋側にできた低気圧の影響であり、そのような豪雨と酷暑とが交替しながら乾季へと向かっていくそうだ。「季節の変わり目は暑い日と雨の日がかわりがわりやってくる。これは例年のことで、先日の雨はインドネシア西部地域の海水温が上昇しているために豪雨となった。太陽の赤道通過は毎年4月23日頃だが、今年は3月末に通過しており、そのために酷暑の日が増えている。ジャワ島の空気は基本的に湿っており、海抜2千メートルあたりまでの湿度は70%を超えるのが普通で、雲ができやすい性質を持っている。今の季節移行期はジャワ島南側やスマトラ島西側のインド洋に低気圧ができやすく、そのせいで数日の酷暑のあと土砂降りが来るという現象が引き起こされている。
5月に移行期が終わると乾季に入るが、今年の乾季は昨年より5割増のひどさが予測されており、高温のせいで水不足はより深刻になるだろう。」とコメントしている。


「首都圏で嵐」(2004年5月24日)
23日午後1時ごろ、ジャカルタとタングランの一部で突風を伴った激しい雨が降り、出水と同時に樹木が倒れるという被害が出た。出水はひどいところで70センチの深さに達し、また樹木が倒れて道路をふさいだために一部で交通渋滞が出たほか、チルドゥッ地区にあるラジオ・バラタの送信鉄塔が民家三軒の上に倒れるという被害も出た。
タングランのリッポカラワチやボロブドゥルラヤ通り、チルドゥッやスルポンで木が倒れたり枝が折れたりして道端のテント屋台にたくさんの被害が出た。都内での出水は西ジャカルタ市とタングランの境にあるジョグロラヤ通りで70センチ、またブンドゥガンヒリル、ガトッスブロト、クバヨランバルのブミ通りやパクブウォノ通りが浸水した。プルマタヒジャウ地区のアルテリ通りでは倒木で道路の一部がふさがれた。
インドネシア気象オブザーバーのアグス・ウィナルソは、「このような激しい嵐は6月中旬ごろまでにまたやってくるかもしれない。近年の気象は定常パターンと異なっており、4月は乾季に入る時期なのに雨量はかえって増えている。これだと今年の乾季は短いかもしれない。」とコメントしている。


「24日も首都圏に嵐が再来」(2004年5月25日)
24日、首都圏をふたたび突風を伴う豪雨が襲い、出水と樹木の枝が折れたりして道路がふさがれたために多くの場所で交通に障害が起こった。24日夜9時までに判ったところでは、カサブランカとジャティヌガラカウムで樹木の折れた枝が道路をふさいだほか、クレンデルでは大型看板が外れて落下した。西ジャカルタ市とタングラン市の境では、日曜日の70センチに達する出水が徐々に引いていたが、24日の雨でふたたび水かさが増し、通行不能となった。ポンドックインダの大通り、都内循環高速のグロゴルからチャワン方面行き、カサブランカ通りのブカシ方面行き、ガトッスブロト通りのパンチョラン交差点周辺などでは大きな渋滞が発生した。
また23日の暴風雨で、タングラン県カラワチにあるふたつの小学校の校舎が風で倒れた木にのしかかられて崩れるという事故が報告された。事故があったのは午後1時半ごろで、日曜日だったために生徒がいなかったのが幸いだった、と学校関係者は述べている。同様にカラワチ地区の高速道路では、道路わきに植えられていた樹木の多くが根こそぎたおれて道路をふさいだために、市当局の作業員が撤去作業を行っている姿が見られた。


「ブロモ山が噴火」(2004年6月9日)
東部ジャワ州有数の観光地である海抜2,392メートルのブロモ山が、8日午後3時半頃噴火した。ブロモ山の前回の噴火は2000年に起こっている。
最初の噴火では黒色の溶岩が湧きあがり、黒煙と火山礫が吐き出されて火口の淵まで上がる階段の下にいた観光客を直撃したため、シンガポール国籍の13歳の少年とスラバヤ在住の21歳のインドネシア人ふたりが死亡し、そのふたつのグループの5人が負傷した。その後で起こった噴火では、火山礫・砂・灰がおよそ8百メートルの高さに噴きあがり、東風に乗ってマラン市方面に流された。マラン市周辺では、折からの曇り空を細かい砂のような赤みがかった茶色の火山灰が覆い、路上をはじめ家屋や自動車の屋根に積もったが、午後4時半ごろには降ってくる灰も下火になりはじめた。
西部地区火山観測課は、二三日前から小規模地震が地震計にとらえられていたが、人間には感じられない程度のものだったので、地元民にはわからなかったようだ、と述べている。一方、ブロモ+テンゲル+スメル国立公園管理所は、8日午前8時半頃平常では見られないほどの硫黄の強い臭いが感知された、とコメントしている。


「ブロモ山はまだ要注意警報下」(2004年6月10日)
突然の噴火で観光客二人が死亡したブロモ山はすでに鳴動をやめているが、火山警報4段階の第三番目にあたる要注意ステータスが適用されており、火口近くはもとより、まるで異界を思わせるカルデラ内の砂の海に入ることも禁止され、観光客はパスルアン県側のプナンジャカン(Penanjakan)山またはプロボリンゴ県側のチュモロラワン(Cemoro Lawang)部落、ホテルラバビュー(Hotel Lava View)、ムンティグン(Mentigen)にある火山観測所(Pos Vulkanologi)から怒れるブロモ山を遠望するしかない。
9日午後6時の観測では、溶岩の湧出はまったく見られず、ただ茶色の煙が立ち昇っているばかりだった。1980年から数えればブロモ山は2年から4年の間隔で6回の噴火が記録されており、その期間で規模が大きかったのは1980年と2000年で、2000年には7回から8回火山噴出物が吐き出されている。
ところで全国に129ある火山の中で、4段階のトップにあたる警戒警報が出されている山は、ドゥコノ火山、イブ火山、ロコン火山、イジャン火山、スメル火山の5箇所となっており、さらにアウ火山とブロモ火山がその下に置かれている。またジョクジャ特別州ムラピ山の南麓にあるトゥルゴ部落では、ここ二日間硫黄臭がたいへん強まっている、との報告も出されている。


「水不足がジャカルタを狙う」(2004年6月24日)
7月には首都圏も乾季に入る。都庁生活環境管理局コサシ・ウィラハディクスマ局長は、首都の乾季は毎年水危機と隣り合わせだ、と語った。これは都内の雨水浸透域が減少しているため降雨が地下水に戻らず、ますます多くが流出してしまうのが原因とのこと。
都内の水危機地区は、地下水面が地中12から16メートルで6から8メートルの変動幅をもっているエリアであり、それに該当するのがプタンブラン、クブンジュルッ、クンバガン、タマンサリ、ガンビル、メンテン、タナアバン、スティアブディ、スネン、マトラマン、チュンパカブティ、ジョハルバル、プロガドン、チャクンなどの地区。2000年のデータでは、首都面積661.62平方キロの中でオープン緑地は28%にあたる181平方キロしかなく、理想値の40%に対してまったく不足している。1998年に作られた地方別生活環境バランスシートによれば、首都の淡水貯蔵量は雨水28.8億立米、地表水34.7億立米、地下水2.8億立米の合計66.2億立米だが、生活利用が可能なのは地下水と雨水の一部を合わせた7.3億立米しかない。JICAは2010年にジャカルタ都民の上水不足が起こると予測しているが、地下水への海水浸透や河川の水質汚染だけでなく地下水の衛生レベルも悪化しており、都内5市の地下水は90%が人間の排泄物からの赤痢菌で汚染されているなど、首都の水危機をいっそう険しいものにしている。


「パパンダヤン山の火山活動が活発化」(2004年7月19日)
西ジャワ州ガルッ県チスルパン郡にあるパパンダヤン山の火山活動が盛んになっており、地元郡役所は不測の事態に備えて、観光ポイントを閉鎖するとともに、地元住民への状況告知徹底に努めている。
火山観測所が記録しているデータによれば、7月15日から活動の活発化が見られ、15日はA型火山性地震が2回、B型火山性地震が9回発生したが、16日にはA型7回、B型50回に激増した。しかし17日にはA型2回、B型21回に減少し、更に18日夕方5時ごろまでではA型1回、B型8回と沈静傾向を示している。地震データとは別に火口の気温測定も行われており、第一新火口では通常の84度から88.5度に、第二新火口では89度から102度と気温の上昇が観測されている。
当局側は警戒を継続する必要があるとして、状況の監視と噴火が起こったときの避難等に関する住民への指導を続けている。パパンダヤン山の前回の噴火は2002年11月11日に発生し、そのときは地元5か村から数千人が避難している。


「パパンダヤンの次はクラカタウ」(2004年7月21日)
火山学自然災害対策局西部ジャワスマトラ地区火山観測課のイシャ・ダナ課長は、スンダ海峡に位置するランプン州アナックラカタウ山の火山活動が活発化しているため、ノーマルレベルから警戒レベルに入ったので、住民はこの火山の周辺に近付かないようにと注意を促すとともに、セラン、パンデグラン、南ランプンの各県に対して住民への広報告知を徹底するように要請した。
イシャ課長によればアナックラカタウの火山活動が活発化しはじめたのは7月5日で、A型火山性地震が30回、B型が28回発生したが、7月10日にはA型6回、B型4回と鎮静し、またガスと蒸気が噴出したのが観測されたとのこと。ところが11日にはA型地震14回、B型5回、テクトニック地震が2回発生し、12日にはそれがA型17回、B型8回に増えている。そのために、不測の事態を警戒して要注意度が高められた。
クラカタウ島は1883年8月25日に世界規模の大爆発を起し、スンダ海峡沿岸部の住民3万6千人が死亡した。アニエルやチャリタの海岸へ行けば、今でも残された溶岩を目にすることができる。山は吹き飛ばされて、島は沈んだが、1927年に新しい島が成育してきたので、その島はアナックラカタウと命名されている。


「地図測量調査統括庁が州地図需要への対応を促進」(2004年8月21日)
地図測量調査統括庁(Bakosurtanal)のスケンドラ・マルタ情報サービス実施センター長は、同庁が制作した国内各地のデジタル地図は既に十分整備されており、各州政府がウエッブサイトを作るときに有益な資料として使えるものである、と推奨した。そのラインナップには地勢図や資源図などもそろえられており、さまざまな用途に役に立つこと疑いなし、と宣伝している。
「州政府のウエッブサイトには、州の地理的境界線や州の持つ天然資源などが正確で適正な形で紹介される必要があり、投資家の役に立つ資料として利用されなければならない。また本庁の州境測量センターは50万分の1スケールの海上州境図や5万分の1の国境回廊図、2万5千分の1の国境特殊図、そして州・県・市の地域計画図などの製品を用意しており、陸上資源調査センターは石油天然ガス、水資源、海産品、陸産品、マングローブ林などの全国空間図や北スラウェシ州陸産品空間図を完成させている。そのほかにもハイパーセクトラルデータを伴った生物図表、百万分の1スケールの全国陸海包括測量、天然資源テーマ別データベース制作、25万分の1スケールのテーマ別測量や調査などの注文を受けることもできる。」との同センター長の談。
デジタル地形図はスマトラ、ジャワ、ヌサトゥンガラ、、カリマンタン、スラウェシ、マルク、イリアンジャヤをカバーして25万分の1スケールで96枚、5万分の1で561枚、2万5千分の1で1,649枚、1万分の1で396枚が既に制作されている。


「首都でも水欠乏不安高まる」(2004年8月26日)
乾季たけなわのいま、首都でも一部地域で地下水位の低下が深刻さをましている。中央ジャカルタ市生活環境監督局天然資源保護課シャフルディン課長は、いま起こっているのは水クライシスではなく上水クライシスだ、と語る。同課長によれば、地下水が飲用や料理の使用に適さなくなっている一方、水道会社からサービスを受けている都民はやっと51%しかない、というのが実態とのこと。「中央ジャカルタ市域内でも、地下水は既に塩分を含んでおり飲用に適さなくなっている。場所によっては地下水が飲用に使われているが、全体としては不適だ。また渇水状況のひどい地区はジョハルバルとタナアバンで、地下水位は8メートルから12メートルの範囲まで低下している。一方まだほとんど影響が出ていないのはサワブサールとクマヨランの二地区で、ここの地下水位は2メートル。ただし海水浸透のために塩分が増している。市では居住地域インフラ省の援助で貯水槽をガルル、タナティンギ、カランアニャルの三地区に設置する。」と同課長は述べている。
都庁鉱業局が報告している地区別地下水位状況は下の通り。
要注意地区
プンジャリガン、東パドゥマガン、タンジュンプリウッ、コジャ、チュンカレン、タンボラ、タマンサリ、サワブサール、クラパガディン、クマヨラン
警戒地区
グロゴル、クンバガン、プタンブラン、ガンビル、クブンジュルッ、チャクン、マカサル、チランダッ、メンテン、プロガドン、チュンパカプティ
重度警戒地区
タナアバン、ジョハルバル、クラマッジャティ、パサルミング、ジャガカルサ
渇水地区
クバヨランラマ、パサルボ、スティアブディ


「都民に雨季入り準備を呼びかけ」(2004年10月1日)
地学気象庁が雨季を前にして、都民に雨季に入る準備にかかるよう呼びかけた。
同庁は先に、9月の第三週に首都南部地区は雨季に入り、北部地区は10月初から雨季入りと予報しており、シーズン入りたての時期は、降雨は散発的で、また大雨はあっても限定された地区に夕方から夜にかけて短時間降るだけだそうだ。日数が経つにつれて南ジャカルタの降雨は増加し、また北ジャカルタも降雨がはじまって都下全域の雨量が増えていくが、12月から1月のピークシーズンまでは、豪雨はほとんどないかあっても短時間だろうし、そのために10月中に出水が起こる可能性はきわめて小さい、との同庁の予想。最期に起こった首都大洪水のさいは一日当たり120から170ミリリットルという雨量が4日間連続したために大きな災害となったが、今回の雨季ピークシーズンの雨量は一日100から150ミリ程度と予測されている。
同庁はこの雨季への備えとして都民に対し、排水路の確保と樹木の枝葉落としを呼びかけている。都内の川や側溝など降った雨を排水するルートが泥やごみで狭められていれば、排水能力が低下して降雨が滞留し、大きい水溜りができれば生活の障害となることから、都民の自助努力が勧められている。また大きい樹木の枝葉を落とすのは低気圧が突風をもたらすことがあるためで、樹木の枝が折れたり、また根こそぎ倒れたりすることから、その対策として樹木を身軽にしておくよう都民に警告している。突風による倒木災害は、特に首都南部地区に毎年多く発生している。加えて、乾季から雨季への変わり目には雹が降る可能性があり、雹の直撃で場合によっては怪我人も出ることから、同庁は警戒を呼びかけている。雹は雷を伴った嵐が起こったときに発生する可能性があり、稲妻と強風のときに雨が降ると警戒が必要とのこと。ただし雨雲の下の温度が高ければ大きい雨粒となって地表に落下するだけで、その温度が冷たいときだけ雹となる。そのような現象は午前10時ごろから夕方までの間にしか起こらず、日没後に発生することはないとのこと。


「政府は陸上国境線の再確認作業中」(2004年10月11日)
政府が陸続きの隣国マレーシアとパプアニューギニアの両国との間で、国境線の確定作業を行っている。今国際法上で有効な国境線は1891年にオランダ政庁が定めたものだが、百年以上たったいま、現場の状況はかなり変化しており、規準を設けなおさなければならなくなっている。それを目的に編成されたインドネシア=マレーシアとインドネシア=PNG国境線確認技術委員会は国軍兵士を現地に派遣して120日間のサーベイを行い、すべての派遣員が無事ジャカルタに戻ったので、来年検討委員会を編成して詳細を決定することにしている。その結果を各関係国にはかり、共同で国境線規準柱を建てる予定。
マレーシアとの国境線は西カリマンタン州から東カリマンタン州まで19,328本の規準柱が建てられており、そのうち7本が無くなっているので現在はそれを再建中とのこと。PNGとの国境には52基のメリディアンモニュメントを建てることで合意している。


「首都圏の熱帯夜はまだしばらく続きそう」(2004年10月25日)
最近の夕方から夜にかけての暑さは、太陽の放射熱が生んだ熱波に直撃されているためだ、とアフマッ・ザキル地学気象庁公共気象情報課長が次のように説明した。10月は太陽が既に南に動いているが、9月21日に赤道の真上を通った際の熱放射の影響がまだ残っており、例年の気温は摂氏31から32度あたりなのに今年は35度にも達している。赤道の南側はまだ低気圧の発生が不十分であるために雨が降らない状況が続いている。南半球側に低気圧の中心ができれば雨が増えるが、今はまだ北半球に強い低気圧の中心があるので、水蒸気はスマトラ側に吸収され、そちらで熱帯暴風雨が多く発生している。南半球にあるジャワ島西部はそのせいで雲ができにくい状況にある。一方南半球の高気圧はオーストラリア大陸中央部の乾燥地域にできており、インドネシアに流れてくる空気は熱く乾燥している。これがジャワ島東部、カリマンタン東部、スラウェシ、東ヌサトゥンガラ一帯に乾燥した東風をもたらしており、このため、インドネシア全般に雨が少なく、風雨はスマトラに集中しているように見える。この状況は10月いっぱい続く見込みで、ジャワ島西部は11月中旬頃までは雨が少ないだろう、と同課長は気象予報を解説した。


「正確・詳細なインドネシアの国土地図ができるのはいつ?」(2004年11月13日)
インドネシアに島はいくつあるのだろうか?2004年の最新公式データによれば17,504となっている。この数字は海軍測量調査センターから得られたものだが、満潮時に海面上に陸地があることという島の定義を厳密に適用していくと、その数字はかなり減るものと見られている。一方内務省が収集した島の名前は8千ほどあるが、その名称がいくつかの島をまとめて呼んでいるものがないとは言えず、一対一対応していないものが混じっているとすれば、名前を持つ島が8千あると断言することも難しい。国土の明確なデータをまとめるのは内務省の仕事だが、検証作業が実施されている気配はいまだにない。
世界各国は5年に一度、島の名前と位置を国連に報告する義務を負っているが、インドネシアが検証されたデータをいつ提出できるのか、まだめどが立たない状況だ。とはいえ、2009年には海洋法に関する国連コンベンションが予定されており、2007年にはインドネシアが正確なデータを整えていることが要請されている。


「首都の水害ピークは12月から始まる」(2004年11月30日)
29日は終日雨という首都の天気。28日にできた都内各所の水溜りがまだ干されない間に、水溜りが更に増加した。一級道路でも容赦はなく、ガトッスブロト通り、Aヤニ通り、Sパルマン通り、ポンドッインダ大通り、マスマンシュル通り、ガジャマダ通りでも道路脇に水が溜まり、自動車に徐行を強いている。
29日にはスカルノハッタ空港有料道路にも渋滞が発生した。空港向け市内向けの双方でノロノロ運転。空港入り口ゲートの手前ではおよそ5キロの渋滞になった。原因のひとつは雨が激しかったこと、そしてもうひとつは空港ゲートを越えたところで黒色トヨタプラドが道路脇に止まっているのをみんなが見物しながら通ったため。道路脇に植えられていたパーム椰子の幹が倒れて後部トランクにのしかかった状態で止まっていた車はきっと見ものだったにちがいない。
首都ではまだ、川の水が溢れての出水報告はない。行政のトップから、雨季に雨が降り、川が氾濫し、出水のために水害が起こるのは当たり前だ、との発言が出るほど年中行事となっている首都ジャカルタの水害対策は、完璧に災害を押さえ込むということに関して行政側もいまひとつ確信が持てないでいるよう。出水危険地区、出水要注意地区などのデータは完備されており、河川の氾濫場所での24時間監視態勢も整え、排水ポンプは107基を用意して、それでも出水すれば避難するまで、というのが現実の対応。
川には要所要所に水門が設けられて流水をコントロールしている。たとえば北ジャカルタ市の水害コントロールに大きい影響を持つプロガドン、スンテルフル、スンテルの三つの水門では、29日13時現在の水位はまだノーマルで、プロガドンは海抜530センチ、スンテルフルは川底から62センチ。プロガドン水門の水位が海抜550センチを超えると、ヨスダルソ通りには必ず水がたまる。550センチ未満は安全圏でシアガ4という警戒レベル。550センチを超えて700センチまではシアガ3。その先は770センチまでがシアガ2で、それを超えると第一級警戒レベルのシアガ1となる。規準数値は水門の地理的状況を反映するために、各水門で異なっている。プロガドン水門でシアガ3になれば、北ジャカルタ市では出水が起こる。
地学気象庁は、きたる12月から1月にかけての降雨量が大幅に増加するために、首都の水害リスクは大きく高まる、と予報している。そのために出水危険地区や要注意地区の住民は警戒と対策をレベルアップするようにと呼びかけている。


「モナスの巨木が倒れる」(2004年12月1日)
ムルデカバラッ通りのモナス公園に植えられている樹齢数十年のマホガニーの巨木が30日深夜、その一帯を襲った強い風雨のために倒れた。場所はちょうど国営ラジオ局RRIの向かい側。倒れたのは直径60センチの樹が一本だけだったが、道路に並行する方向で倒れたために、その隣にあったもう一本も巻き添えとなって倒れた。道路を遮断する形では倒れなかったものの、大きく枝を広げた巨木のために道路の一部がふさがれ、翌朝にはそれが渋滞の原因となるおそれが大であるため、都庁公園局は朝5時前からその撤去作業を実施したので、バスウエーの運行にも障害が起こらず、交通の混乱も避けられた。
例年都庁公園局は、雨季が始まる前に街路樹の刈り込みを行って風雨による倒木予防措置を取っているが、それが十分に行われているとは言えない。中央ジャカルタ市公園課によれば、メンテン地区をメインに多くの年経た巨木が立っており、アンサナ、タンジュン、マホニ、アサムなどの樹種がその半分を占めていて、数千本あるそれらの巨木はまだリストアップしきれていない、とのこと。中でもメンテン地区のラトゥハルハリ通り、ゴンダンディア地区、タマンスラパティ地区などに警戒を必要とする巨木が多いそうだ。


「ボゴール県は雷王国」(2004年12月2日)
国有電力会社PLNボゴール支社は雷による送電障害がほかの地区に比べてもっとも多く、雷雨が降ると必ず送電設備のどこかに障害が発生する、と同支社は物語っている。同支社のネットワークサービスユニットはチトゥルッ、チパユン、チレンシ、ルウィリアン、ボゴール市、東ボゴール、パクアン、スンプラッと八つに分かれており、その中ではルウィリアンで雷害頻度が一番高い。
高温多湿の熱帯性気候を有するインドネシアは世界のほかのエリアに比べて雷の発生率が高く、雷発生日が年間1百から2百日というレベルにあり、中でもチビノン地区は1988年のギネスブックに、年間322雷日という大記録で登場している。落雷密度も年間12平方キロという大きい数字で、これは一平方キロごとに年間12発の落雷があることを意味している。ひとつの落雷が生むエネルギーは55Kwh。雷のほかに強い風雨による倒木もPLNボゴール支社の敵だ。地区内送電網の7割が高架中圧送電のために、木や枝が電線に引っかかれば、故障の発生につながる。
PLNボゴール支社は、落雷を予測して送電を止めるということは行っていない、と言う。送電ストップは、送電系のどこかで故障が起こった場合だけ行われる。言うまでもなく各変電所にはアレスターが設置されており、落雷によって過電流が流れると過剰分は地面に流される仕組みになっていて、それに加えて短絡が起こったさいの対策として、各変電所にはヒューズも設置されている。雷雨のさいに家庭や職場でコンピュータやテレビをつけるのは、それら電気製品が壊れるリスクをはらんでいるので、建物内の電気系統に使用される電気器具は電気抵抗が正しい規格のものを使うこと、そして避雷針を立てることでそのリスクを減らすように、とPLNはアドバイスしている。


「ジャカルタは今年一杯雨続き」(2004年12月27日)
気象学的には1月末から2月に掛けてが首都の降雨ピークになるが、今年一杯の数日間、ジャカルタと周辺のボデタベッ地区は雨が降り続くだろう、と地学気象庁が予報した。実際にクリスマスイブから首都は降雨量が増加し、これまでの局地的なものから首都一円を覆う大規模なものになっており、東ジャカルタ市チリリタンではチリウン川の出水でおおよそ百軒の家屋に浸水が発生し、また西ジャカルタ市クドヤのグリーンガーデン住宅区北側の住宅地でも浸水が起こっている。
地学気象庁は雨量についての細かい予報はきわめて困難としながらも、西風がもたらしているここ数日の降雨は西ジャカルタ市と北ジャカルタ市に多かったが、今後は東ジャカルタにも広がって行くだろうと述べている。また南ジャカルタは夕方の雨が多くなるだろう、とも語っている。
降雨による道路や住宅地での冠水で地面が水没する個所は増加しており、床上浸水が年中行事の住宅区では住民が屋根裏に棚を作って貴重品を守る準備を進めている。


「海の異変はまだ続く」(2004年12月30日)
津波大災害発生後のインド洋とそれにつながる海域では依然として不穏な状況が続いており、各地の行政当局は住民に対して海岸部での異変を警戒するように警告を発している。
例年、年越しを祝う大勢の人出があるジョクジャ特別州南部のパラントリティス、バロン、グラガなどの海岸では、住民であれ国内外の観光客であれ、今年は海岸での年越しの祝いをとりやめるよう州警察長官が要請している。住民に対しては、当面海岸でのレクレーションを避けるように呼びかけている。しかしパラントリティスでは依然として大勢の人出を毎日迎えており、同海岸訪問が土着信仰に関連した行事となっていることから、どれだけの住民が州警長官の要請に従うのかはまだ確信されていない。
スンダ海峡に面したジャワ島西端のバンテン州アニエル海岸では29日、強風と大波で海上が荒れ続けているため、漁民は出漁を控えている。チコネン村の灯台守は、ここ数日同地域一帯を雷を伴う強風が荒れ狂っており、灯台の回転灯用ケーブルが落雷を受けて停電した、と語っている。またチレゴン市海岸部では29日午前4時ごろから潮位が上がって数か村に出水が起こった。前夜その一帯は激しい雨に見舞われ、その後海側で潮位が異常に高まったために山側からの水が海に流出できず海岸部にたまったのがその原因で、水は深いところで2メートルに達し、多くの家庭では家具調度品の避難ができなかったために損害を蒙っている。出水は午前9時ごろから徐々にひき始めた。またジャワとスマトラを結ぶムラッ=バカウニ間高速艇も、スンダ海峡の波浪が高いために午後1時運行を停止した。高速艇は波が1.5メートルを越えると走行に支障をきたすので運航を止めるが、フェリーは運行を継続している。
西ジャワ州スカブミ県プラブハンラトゥ海岸では、津波大災害発生以来地域一帯のホテルやバンガローへの予約取り消しが相次いでいる。同じような状況はアニエルでも起こっており、ホテルソルエリートマルベラでも続発するキャンセルに頭を抱えている。今後二週間以内にジャワ島西岸部でも地震と津波に襲われる、という情報が市民の間に流れていることが予約取り消しの一端を担っているとそれら地域のホテル業界者は見ているが、地学気象庁は、そのような予報を出したことはない、との公式表明を出した。


「ボゴール市内の街路樹に要注意」(2005年1月17日)
ボゴール市公園課は、市内の街路樹の中に樹齢が40年を超えて枯れてしまっているものが2百本以上あり、10メートルを超える高さのそれらの街路樹は風雨や雷によって倒される可能性が高いために、通行車両はそのような場所を通る際には十分な注意を払うように、と呼びかけている。
リリス・スカルティ二公園課長は、「ボゴール市内一級道路にある9,555本の街路樹の中で既に枯れているものが2百本あまり見つかっており、その中で55本は2004年12月までに倒れていますが、残りはこの雨季の風雨や雷のために倒れる確率が高く、市民は強風や雷雨などの際にはその可能性を念頭に置いて、道路の通行に万全の注意を払うよう気をつけてください。」と説明している。同課は倒木発生に備えて特別チームを編成し、24時間勤務体制でピケに当たっている。公園課は対象木の枝葉を切り落とし、また状態のひどい木は事前に切り倒すなどの対応を既に取っており、古くなった街路樹の植え替えのために、クナリとマホニの若木1,175本を用意している。クナリはボゴールのシンボルで、またマホニ(マホガニ)は組成構造が強く、老齢による倒木が起こりにくいために、同課は今後その二種類だけを街路樹に使うつもりだ。今一部の場所で街路樹として植えられているフランボヤンとアンサナは樹齢15年程度で強度を失い、倒れる可能性が高いので、今後それらの樹種は街路樹として使わないことに決めている。


「インド洋津波大災害で、国民の目はブラウン管に釘付け」(2005年1月18日)
ニールセンメディアリサーチが定期的に行っているテレビ視聴者調査で、12月26日から1月1日までの期間に視聴者数が急増したことがあきらかにされた。ジャボタベッ、バンドン、スマラン、ジョクジャ、スラバヤ、メダン、パレンバン、マカッサル、デンパサルの9都市で行われた調査結果では、それ以前の平均15.6%からその週は17%に増大している。あるテレビ局が継続的に災害の状況を報道し続けたことから、その一週間のテレビ視聴者シェアは通常の5倍に増えた、とリサーチ報告の中で述べられている。12月5日からの一週間、12日からの一週間は1.6%のシェアしかなかったそのチャンネルは、26日からの一週間に8.5%までシェアを伸ばしたとのこと。
26日からの一週間はテレビ放送時間が前週から17%増え、視聴者のテレビ視聴時間は38%増加した。中でもあるテレビ局の定常ニュース番組ブレイキングニュースが特に災害関連の情報を集中して報道していたことを同レポートは報告している。


「暴風雨警報は商売がたき」(2005年2月14日)
2月4日、オーストラリアの北西部と南東部にひとつずつの熱帯暴風雨が衛星観測によってはっきりと確認され、ジャワ島の真南に位置するその暴風雨が北上すればジャワ島南海岸部は影響を避けることができないために、地学気象庁はバントゥル、クロンプロゴ、グヌンキドゥルの各県に警戒警報を出した。ジョクジャ特別州にあるそれら各県の海岸部は、回教暦新年のシュロ月1日の前夜と当日、大勢の人出で賑わうのが伝統行事となっており、今年のその日はちょうど2月10日に当たっていた。そしてご丁寧なことに、ジョクジャ特別州知事もが住民に対し、暴風雨襲来への備えを呼びかけたのである。
地学気象庁によれば、インド洋に発生する熱帯低気圧は1月から3月ごろまで赤道の南側に集中しており、北半球が夏になれば赤道の北側が発生の中心となる。その熱帯低気圧がジャワ島に近付けば、まずジャワ島海岸部が暴風雨と高潮の危険にさらされるし、その影響は山岳部にも水害や地滑りの危険をもたらすことになる。また雲が熱帯低気圧の中心に引き寄せられるため、危険地区住民は午後から夕方にかけてできる雲の動きに注意するように、とも同庁は呼びかけている。なぜなら午前中や夜に雲はできないからだそうだ。
そんな警報発令をものともせず、チラチャッやクブメンの漁民は連日出漁していたが、シュロ月1日の人出を当て込んでいた商人たちは、大変な失望を味わうことになった。毎年、人で埋まるパラントリティスやバロン海岸の今年2月9日から10日にかけては閑散としたありさま。バロン海岸の駐車番は昨年徹夜で50万ルピア稼いだが、今年の収入はわずか4千ルピア。
ところがジョクジャ特別州南海岸部のそんな閑散としたありさまをよそに、ソロやウォノギリの住民は例年のようにインド洋に面した地元海岸に詣でる伝統行事を励行したためこちらはたいそうな人出で、同じ海岸線のあっちとこちらでくっきりとした明暗が見られた。腹の虫がおさまらないのはジョクジャ南海岸部の商人たちで、「暴風雨など結局来なかったではないか。無意味な空騒ぎで住民や観光客をこわがらせ、伝統行事さえ霞んでしまった。おかげで肝心の商売も今年の稼ぎ時は腰砕けだ。」と暴風雨警報におかんむり。
このためジョクジャ州知事のハムンクブウォノ10世は13日、ジョクジャ南海岸部を視察に回って住民に説明し、問題の暴風雨は結局ジャワに来ないことが明らかになったので、漁民は出漁して大丈夫だが、天候の急変には警戒するように、と発言した。またシュロ月元日の稼ぎが当て外れに終わった商人に対しても陳謝し、災害で貴重な人命が失われないようにとの配慮によるものであり、まったく他意はなかったとも説明した。しかし今後も熱帯暴風雨が発生してジャワ島に近付く可能性は常にあり、警戒警報は今後も出されることになる、とも付け加えている。


「自然災害予報をSMSで」(2005年4月21日)
情報通信担当国務省は携帯電話SMSを使った自然災害予報のシステム化を目指して、来週から地学気象庁を巻き込んでのトライアルを開始する予定。自然災害発生が予測される地域の住民に対する政府広報として計画されているこのシステムでは、地域住民の携帯電話保有者の80から90%に情報が伝わると見込まれている。ソフィアン・ジャリル国務相は、インドネシアの情報技術システムはそんな企画を十分サポートしうるレベルにあり、たとえばスマトラ島西海岸部一帯という地域を対象として地学気象庁からのメッセージを携帯電話保有者に送信することは可能だ、と説明している。それを可能にするための設備購入が地学気象庁に必要とされるため、政府は今年度予算の緊急項目から460億ルピアを引き当てることにしている。州政府、州警察、県庁、市庁、県警察などの行政機構は地学気象庁からの災害予報を受けると、すぐに必要な措置を住民に対して取らなければならない。またラジオ局テレビ局にも情報は流され、その情報を受けた放送局はその内容を報道する義務を負う。住民広報には域内に点在するモスクも動員され、拡声器で地元住民に対して予報が伝達される。予報の伝達から住民の避難まで、各地ではその訓練が行われることになっており、地学気象庁の広報システムが完備されれば、予報発信から住民避難にいたるメカニズムの実地訓練が各地で展開されることになる。


「ジャワ島西部はいま乾季への移行期」(2005年5月20日)
インドネシア西部地方はいま、雨季から乾季への移行期に入っている、と気象専門家が解説した。地学気象庁ワシト・アディ情報データシステムセンター主幹は「一部地方で突発的豪雨が降るのは、雨季から乾季への移行期に入ったことを示すものだ。ジャワ島は東部から中部にかけて既に乾季に入っている。エルニーニョ現象もノーマルな状況への傾倒が顕著で、海面温度が摂氏0.5度から1度ほど逸脱していたのが、ここ一ヶ月ほど前から平常値に戻っている。」と述べている。スマトラ島西側の海域での海水温上昇とマダガスカル島海域での水温低下はここ一週間ほどインド洋の水温が上昇しているために温度差が解消されつつあり、特にスマトラ島西側からジャワ島南側にかけての海水温上昇で海水の蒸発作用が活発さを増しており、雨雲ができやすくなっていることから雨が降りやすい状況が形成されているとのこと。


「クラカタウ島が噴火するとの噂が盛ん」(2005年5月23日)
スンダ海峡に浮かぶアナックラカタウ火山が噴火するという風聞が、ランプン州海岸部の住民をパニックに陥れている。最初は津波が起こるという噂が流布したが現実のものとならず、次いで火山の噴火に関する噂が19日ごろから大勢の住民の耳に入るようになった。その後毎日毎日噂が高まる一方であることから、住民の中にはひょっとして本当なのでは、とそれを信じて高所に避難を始める人もでている。噂の中には、アナックラカタウは5月24日から30日の間に噴火する、というものもあり、政府の公式発表が何もないことから、「政府は何をしているのか?」と批判を口にする人もいる。
南ランプン県カリアンダのハルゴパンチュラン村にあるアナックラカタウ火山観測ポストでは、5月20日に80回以上の火山型地震が観測され、同山の警戒ステータスはノーマルから注意に引き上げられている。


「ジャワ島西部の雨はまだ続きそう」(2005年6月16日)
ここ数日、首都一帯はまた雨季に逆戻りした観がある。激しい風を伴う雨が降り、場所によっては立ち木が倒れたり、屋根が飛ばされたりしている。この散発的な激しい雨は、地学気象庁の予報によれば、この先8月ごろまで続く見込み。
それに関して地学気象庁は、インド洋双極モード現象のひとつとしてスマトラ島西方海域の海面温度が平常より0.5から1℃上昇していて海水の蒸発活動を活発化させているため、平常より雨が多くなっていることと、雨季から乾季への移行時期にあたっていることがその原因だろう、と分析している。その結果スラウェシ、ヌサトゥンガラ、バリは水不足に陥っている一方、本来ならもう乾季の只中にあるべきスマトラ、カリマンタン、ジャワは散発的な雨に見舞われている。インド洋双極モードは太平洋側のエルニーニョやラニーニャと必ずしも同時発生するはずのものではないが、その稀な現象が今起こっていて、これは1959年以来のことである由。ただし、リアウ、北スマトラ、アチェ、カリマンタン北部の多雨はむしろ、太陽が赤道の北側に傾いたために発生する低気圧によるものだそうだ。


「ブカシ市を強風が襲う」(2005年6月22日)
21日15時ごろ、ブカシで突風による被害が出た。そのころブカシ市一帯を、強風を伴った強い雨が襲い、ブカシ屋内運動競技場ではドアや窓のガラスが割れ、建物裏の壁が崩れるとともに建物中央部の屋根もはがれて穴があいた。競技場では市内レスリングトーナメントが開催されていたが、休憩時間に入っていたため怪我をした者はいない。そのあと、トーナメントは場所を代えて続行された。
ブカシ市スタジアムの立ち木も倒れ、近辺にいたカキリマ商人は屋台が飛ばされないように必死で抑えていた、と物語っている。スタジアム向かいのブカシ土地建物税第一サービス事務所前に停めてあった自動車3台も、風で倒れた看板や柱で被害を受けた。Aヤニ通りの大看板や広告柱は吹き飛ばされ、たまたま倒れてきた巨木の下敷きとなって大破した自動車が一台あったと報告されている。またブカシジャヤインダ住宅区でも民放FMラジオ局の送信塔が倒れ、二軒の家屋に被害が出た。


「今年の乾季はウエット乾季」(2005年7月18日)
スマトラ島西方海域の海面温度が平常より上昇していてインド洋西側より高いというインド洋双極モードネガティブ現象のために海水の蒸発活動が活発化し、また風がスマトラ島に向けて吹いているため、スマトラ島全域、ジャワ島西部、スラウェシ北部、カリマンタンで降雨が続いている。東ヌサトゥンガラ南方を冷水塊が西に向けて移動しており、インドネシア西部地域は8月まで今のような気象が継続するだろう、と地学気象庁が今年のウエット乾季に関する予報を出した。雨雲は広範に空を覆うが、降雨は狭い地域に限られる。しかしそれに雷と突風が付随するので、市民は警戒を怠らないように、との警報。
また季節離れしたこの天候から地学気象庁は、年間の降雨量はほぼ一定で場所と時期が変化するという原理に従えば、昨今の大きい降雨量の結果、インド洋双極モードポジティブと太平洋側のエルニーニョの影響を受けて次ぎの雨季は到来が大きく遅れ、また降雨量も小さくなることが懸念される、と述べている。


「南の島に雹が降る」(2005年8月9日)
南国にエキゾチックな雹が夜な夜な降り注いでいる。7月半ば頃から頻繁に雹が降るようになったのは中部ジャワ州バンジャルヌガラ県のディエン高地で、天空からその氷粒が降ってくるのは午前1時から午前4時までの間。海抜2,093メートルのディエン高地はその時間帯になると気温が0℃まで低下し、住民はあまりの寒さに衣服を3枚から5枚も重ね着しているとのこと。昼間でも気温は15℃くらいまでしか上がらない。この南国では珍しい自然現象は国内観光客誘致に使えるセールスポイントにはなるが、地元でジャガイモやキャベツを栽培している農家にとってはとんだ災難。多量の氷粒に打たれたあげく、氷に埋もれた発育中の野菜は、無事では済まない。7月末には8ヘクタールの畑が壊滅しており、その後一週間で被害はもっと増えているはずだ、と地元の病害虫観察ラボ館長は述べている。


「今年の雨季入り予報」(2005年9月9日)
今年の雨季は10月から11月にかけてはじまる、と地学気象庁が発表した。しかし、スマトラ、ジャワ西部、ジャワ東部、バリの一部地域では、9月中に雨季に入るところが出る模様。
全国220地区の気象予報によれば、今年の雨季開始は平年並みもしくは早まる地区がある。雨量に関してはインド洋双極モードとエルニーニョが影響を及ぼすが、エルニーニョはノーマルで降雨は弱いものと見られている。一方インド洋双極モードはネガティブ傾向にあり、インドネシアの西部中部で雨雲の発生が盛んになりそうだが、それでも今年の雨季に異常な豪雨はあまり発生しないだろう、との予報。
9月中に雨季入りする地区は、バンテン西部と南部、西ジャワ州南海岸、スカブミ、バンドン北部、チアンジュール北部、プルワカルタ南部、カラワン南部、ジュンベル中部西部、大アチェ、リアウの一部、北スマトラ中部、ジャンビ東部中部、ブンクル西海岸、バドゥン北部、ギアニャル北部となっている。10月は、セラン、タングラン、ジャカルタ、ブカシ、スバン、プリアガン、西ジャワ東部、中部ジャワのほとんど、ジョンバン、プリタル、マラン、ジュンベル、バニュワギ南部、アチェ東部のほとんど、北スマトラ北部、ジャンビ西部、プンクル東部、南スマトラとランプンのほとんど、東カリマンタン、中部カリマンタン南部、西カリマンタン南部、南カリマンタン西部北部、北スラウェシ北部東部、ゴロンタロ北部、西スラウェシ西部、ゴワ、マロス、エンレカン、バリ西部南部、西ロンボッ中部、中部ロンボック北部、フローレス西部、ジャヤプラ、パプア中部が雨季に入る。その他はおおむね11月に雨季入りするものと予想されるが、東南スラウェシ南部、ブトン、バリ北岸部、スンバワ南部、西スンバ南部、東スンバ北部、東ヌサトゥンガラ東部、セラム北部、北マルク、メラウケは12月になる。


「今年の雨季はまだ本格化していない」(2005年11月15日)
ここ数週間、ジャカルタでは、厚い黒雲が空を覆い、強風と雷を伴った土砂降りの雨が降る毎日だ。午前10時ごろから雲は空に満ちはじめ、午後に向かって徐々に厚い黒雲に成長し、激しい雨がやってくるというこの天候は、11月いっぱい続くだろう、と地学気象庁が予報している。
強風と雷を伴うこの豪雨は局地的な対流雲がもたらすもので、北半球と南半球の二つの気団が接触するところで広範囲に発生する雨とは異なっており、長時間降り続く雨季の雨ではない。広範囲に長い時間降る雨季の雨は、今年は12月から2006年1月にかけて始まると見られており、それまでは局地的な短時間の暴風雨が各地を襲うだろうとの地学気象庁の予測。ジャカルタでは垂直方向に成長する積乱雲が強風と雷を伴う激しい雨を何度も降らせ、巨木の枝が折れたり、幹が倒れたりという事故がここのところ相次いでいる。
今年の雨季は、インドネシア海域の海面温度が例年より0.5〜1.5℃高いことから海水の蒸発が活発化しており、例年より雨量が多いだろうと見られている。12月以降では雨量が増加するため、出水やがけ崩れが起こりやすくなる。スマトラ、ジャワ、カリマンタン、NTB、NTT、スラウェシ、パプアの一部では、今年は例年より雨の多い雨季になりそう。


「首都を嵐が襲う」(2005年12月8日)
7日夕刻、雷を伴う激しい雨と風が首都東南部を中心に猛威をふるい、都内の交通をずたずたに寸断した。突風が吹き荒れた地区では街路樹が倒れたり枝が折れたりして道路をふさぎ、また豪雨のために道路上が出水で覆われたため、道路交通に障害を引き起こした。
都庁公園局がまとめた報告によれば、街路樹が倒れたのはカリバタ地区が最大で、次いでオティスタ通りが10本倒れ、ドゥレンサウィッ、クラマッジャティ、パガデガンでそれぞれ3本、MTハルヨノ通り5本、チリリタン2本、ラワジャティ2本、ハリムプルダナクスマ、アセムバリス、ブロッカー、ジャティヌガラでそれぞれ1本倒壊した、とのこと。特に大きい交通渋滞が発生したのはチカンペッ有料道路のチャワン〜ジャティブニン区間で、樹木の枝が何本も折れて路上を塞いだために自動車の通行できる車線が減り、上り下りとも這うような運転が長時間続いた。またチャワンからタンジュンプリウッ方面に北上する有料道路もその影響を受けて渋滞が引き起こされた。
嵐の被害を最大に蒙ったのはチャワンを中心とするエリアで、同地区では激しい雨に見舞われただけでなく、およそ2分間という短時間ではあったが、とうもろこし粒大の雹が降ってきたのを何ヶ所かで住民が観測している。地学気象庁は、雹の観測はできていないが、雨量はタングランで30mm、ジャゴラウィ地区で20.5mmだったと報告している。雨は午後1時ごろからタングランを洗い、その後南ジャカルタエリアに移った。また一部地区で停電が発生したが、夜半前には復旧している。


「1月のジャカルタはまたバンジルか?」(2005年12月12日)
11日夕方、都内をふたたび嵐が襲った。突風を伴った激しい雷雨が都内東南部を広い範囲で襲い、街路樹が倒れたり枝が折れたりして道路を塞ぎ、出水が交通を阻害し、道路網がずたずたにされた。また折れた枝が電線にひっかかって架線を切り、いくつかのエリアで停電が発生した。
道路交通がもっともひどく影響を受けたのは東ジャカルタ市ドゥレンサウィッのインスペクシカリマラン通りで、街路樹が三本倒壊し、また折れた枝が道路をふさいだ。このため川沿いのブカシに向かう道路で大渋滞が発生し、多くの車が迂回を余儀なくされた。そのエリアでは同時に架線が切れて停電となったため、住民の家屋も電気が来なくなり、また交通信号も消えたために渋滞の混乱に拍車をかける結果となった。ボゴール街道でも類似の状況が発生し、ボゴール方面からチャワンに向かう車線で数珠繋ぎの自動車がのろのろ運転を続けた。タマンミニ前の道路も同じような状況で、チェゲルからガルーダに向かう道路が倒木でふさがれ、交通がほとんど麻痺した。チャワン地区では、いくつかの家屋で風と雨による被害が出たことが報告されている。
しかしこの12月に何度が発生している首都圏の嵐は雨量がまだ30ミリ程度であり、1月には降雨量がピークに達すると見込まれているため、都民は出水警戒態勢を強めるように、と地学気象庁が警告した。12月の嵐は範囲が広いといってもまだ局地的なものであり、1月になると雨雲はもっと広い領域をカバーし、降雨時間も長くなるため、降雨量は50から100ミリに達するようになるとのこと。しばらく前に都内タムリン通りで一部道路が水没したが、あのときの降雨量は30ミリしかなく、それが二倍から三倍になればより広範囲での冠水は避けられない。地学気象庁では、都内のテレビ局やラジオ局に出水に関連する気象情報をSMSで流す体制を組んでおり、マスメディアから都民へのタイムリーな情報伝達を期待している。


「首都圏でまた嵐」(2005年12月26日)
12月25日夕方、また強風を伴った豪雨が首都圏を襲った。都内からブカシ・デポッ・タングラン一円に渡って広範囲に強風の被害が出た。中央ジャカルタ市カリバル地区では、直径70センチのアンサナの巨木が夕方4時ごろ激しくなった雨とタイミングを合わせて倒壊し、近くの住宅に倒れこんだために住宅が大破したが人的被害はなかった。サワブサールやメンテン地区でも街路樹の枝が折れたり幹が折れて道路をふさぎ、交通に障害を引き起こした。南ジャカルタ市で被害が目立ったのはドゥレンティガ、マンパンプラパタン、スティアブディ、クニガン地区などであり、西ジャカルタ市はトマンやパルメラ、東ジャカルタ市はジャティヌガラなどに街路樹の被害が見られた。都庁公園局は、突風の被害を受けやすいのはアンサナの木であり、雨季前には枝を払って被害を減らすよう予防に努めているが、予算と人手の兼ね合い、ならびにいずこも週日は交通が激しいために作業が行いにくく、土日に限定して作業を行っていることから、枝払いが済んでいない地区がまだ多い、と街路樹に関する情況を説明している。
一方ブカシでは、折れた樹木が電線を切断したため、いくつかの地区で停電が発生した。またチカンペッ有料自動車道から近いジャイアントハイパーマーケットでは、来店客の車に風で飛ばされた鉄柱が落ちてきて被害が出た。ブカシのモールメトロポリタンでも屋根が割れて雨水が浸入してきたために、一部来店客がパニックになった。都内からブカシに向かうカリマラン通りでは、停電のために交通信号が機能しなくなり、大渋滞が発生した。


「大雨・洪水の季節到来」(2006年1月5日)
2006年1月5日から9日まで、ジャカルタ、デポッ、ボゴール、ブカシ、中部ジャワ、南スラウェシ、東ヌサトゥンガラでは強風を伴う豪雨に警戒するように、と地学気象庁が警告した。強風は時速20〜30キロ程度で、時速60キロのいわゆる暴風ではないが、街路樹や塔などが被害を受ける可能性はある。雨量は一日50ミリ程度で大雨と言える。この気象はインド洋とジャワ海で作られた雨雲が、西風によってオーストラリア方面に移動することで引き起こされるもので、3月ごろまでは循環的にこの気象が出現する。特に首都圏では水はけの不良から、大雨が出水をもたらすのが例年の行事になっており、出水警戒地区の住民は出水情報によくよく注意するように、と地学気象庁は呼びかけている。


「この1月は大雨に注意」(2006年1月13日)
地学気象庁が1月の大雨に警戒するようにと注意報を出した。東インドネシア地域西部、インドネシア中部と東部の海水表面温度が平均より摂氏0.5から1度高いため、一部多雨地区では5百ミリを超える雨量がもたらされるほか、多くの地区でも3百から4百ミリの降雨に達する可能性があるとのこと。特に、マリンピン、スカブミ、チレボン、中部ジャワ一円、ジュンベル、マラン、ブリトゥン、パダン、シボルガ、南スラウェシ一円、マナドなどでは豪雨に警戒する必要がある。また今月初に起こった土石流の災禍の生々しい記憶を新たにして、ジャワ島の、とりわけチレボン、スメダン、マジャレンカ、スマラン、クンダル、クドゥス、プロボリンゴなどの住民は土砂崩れと出水への警戒を怠らないようにと同庁は呼びかけている。一方、南カリマンタンでは、マルタプラ、アスタンブル、バンジャルバル、カランインタン、南スラウェシでは、バジェン、パランガ、ポロバンケン、マガラボンバン、タマラテア、ティンギモンチョン、ジュネポント、ゴワ、タカラル、ママサなどでは高い浸水の発生に警戒するように、とのこと。
今年1月の降雨最盛期は最大級の潮位上昇を招くことが想定されており、タンジュンプリウッ、プラウスリブ、チレボン、スラバヤ、スマラン、レンバン、べラワン、マナド、パダン、ムラボ、マウメレ、サマリンダ、トゥルッブトゥンなどが高潮位の被害を受ける可能性についても同庁は言及している。


「首都圏でバンジルはじまる」(2006年1月16日)
12日にボゴールで降った雨が下流に流され、ボゴールからの送り水が河川の水位を高め、更に首都圏でも地区によってかなりの雨が降ったために、川沿いの一部地域で水があふれて13日にかなり広範な地域で出水が発生した。首都のバンジルの幕開けだ。
1月14日から17日までの間、首都圏住民は豪雨に警戒するようにとの警報を地学気象庁が出した。ジャカルタ・ボゴール・タングラン・ブカシ・デポッ一帯はその間、雷を伴う豪雨に見舞われるおそれが高く、雨量は一時間当たり20ミリから50ミリで、雨は数時間降り続くだろうとのこと。南ジャカルタ・ボゴール・デポッは夕方から夜にかけて雨が降り、北・東・西ジャカルタ地区は雨雲が北から下ってくるため、夜から明け方にかけて雨が降るという傾向にある。
今年1月いっぱいで、洪水のおそれのもっとも高い地区はチャワンとブキッドゥリ。その次のレベルは都内各所に散らばっており、東ジャカルタはチピナンムラユ、カンプンムラユ、クブンパラ、チラチャス、クラマッジャティ、南ジャカルタはマンパンプラパタン、トゥガルパラン、チプテウタラ、プジャテンバラッ、チランダッティムル、ラグナン、西ジャカルタはドゥリコサンビ、タンジュンドゥレン、ジュランバルバル、カプッ、クダウン、カリアンケ、スマナン、ラワブアヤ。もっと低いレベルではタングランのパサルクミス、ラジェッ、クレセッ、マウッ、クロンジョ、ルゴッなどがあがっている。北ジャカルタは潮位との兼ね合いになるが、パドゥマガン、カプッムアラ、プンジャリガン、クラパガディンなどが警戒を要する地区として挙げられている。


「首都の水害体制」(2006年1月18日)
16日の雨で都内の川は各所で水位が上がり、いくつかの場所では水害シアガレベルが?に上がった。都庁は水害対策として4段階の警報システムを設定しており、シアガ?が出ると都民は、対応行動はまだ不要だが、避難計画を心に留める必要がある。シアガ?は、ジャカルタ・ボゴール・プンチャッなどで強い雨が降り、都内を流れる川の水位が上昇してくると出される。シアガ?が出された地区では、住民は貴重品等を持ち出せる状態にし、いつでも指定の避難場所に移るための準備にはいる。シアガ?は、豪雨とともに河川の水位観測点で限度を上回る水位に達したときに出され、住民はただちに避難場所に向かわなければならない。水害対策要員は総数の3分の2が出動して出水に備える。シアガ?は、ジャカルタ・ボゴールあるいはその周辺で降った雨が6時間以上引かない浸水を引き起こし、また全河川の水門であふれるほどの水位に達したときに、都知事が緊急事態として発動するもの。都知事を指揮官とする緊急対応体制が動き出し、都庁が擁する全水害対策機構が動員される。
16日は終日ジャカルタで雨が降り続いたが、ボゴールやデポッ地域での雨量があまりなく、そのためまだあふれるほどの水位には達していない。マンガライ水門は760センチまで上がったので、750〜850センチのシアガ?レンジに入ってしまった。カレッ水門も500センチまで上昇したため、450〜550センチのシアガ?レンジに入った。プロガドン水門も600センチで、550〜700センチのシアガ?レンジに入っている。ところがチアウィのカトゥランパ水門は30センチでシアガ?レベル、デポッ水門も115センチでシアガ?レベルにとどまっている。シアガ?から?に上がった地区では、水位観測点の監視責任が市長に移される。更にシアガ?に上がると都庁官房に移され、そしてシアガ?になれば都知事に代わる。都庁は水害対策設備としてゴムボート256隻、テント126帳、自動車442台、救急車134台、ヘリコプター4機、共同キッチン242を、また要員として1万5千人近い人員を既に用意している。また指定避難場所として都下5市に333ヶ所を設けている。
17日も都内の数ヶ所で浸水が発生し、またタングラン県トゥルッナガで数百軒の家屋が床上浸水の被害を受けた。地学気象庁の最新予報は、ジャワ海における雨雲発生が南に下って来ているため、首都圏では2月半ばごろまで多量の雨が降り続くだろうと述べている。


「火山警報最高レベルはひとつだけ」(2006年1月19日)
火山学自然災害軽減センターが、国内の火山警報状況について公表した。インドネシアの火山ステータスはnormal(レベル1)、 waspada(レベル2)、 siaga(レベル3)、 awas(レベル4)、の四段階に区分され、レベル3のsiaga ステータスが出されると住民は避難態勢に入り、レベル4のawas ステータスで早急に危険エリアから出なければならないことになっている。
現在インドネシア国内でsiaga ステータスとなっているのは北スラウェシ州のGunung Karang Etang だけ。waspada ステータスは10火山あり、西スマトラ州のGunung Merapi とGunung Talang、ジャンビ州のGunung Kerinci 、スンダ海峡のGunung Anak Krakatau、西ジャワ州Gunung Papandayan 、東ジャワ州Gunung Semeru 、フローレスのGunung Egon 、北スラウェシ州のGunung Lokon とGunung Soputan、ハルマヘラのGunung Dukono がそのリストに挙げられている。ジャワ島最高峰のスメル山(3,675メートル)は小爆発を繰り返しており、大量の火山灰が噴出されて近隣の野菜園に損害を与えているが、スメル山の危険エリアは住民居住地区からたいへん離れているため近々人的被害が出るほどのリスクがなく、活発な活動の割には低いレベルに置かれている、と同センターは説明している。


「インドネシア南部地域は強風高浪が続く」(2006年1月23日)
オーストラリア大陸北西海上に新しい熱帯低気圧が発生し、東ヌサトゥンガラ(NTT)からジャワにかけての南海岸部で強風と大波のおそれが高いことから、地学気象庁スマラン気象学ステーションが警報を発した。19日に観測された衛星画像によれば、サイクロンの目が新たに確立され、中心部の風速は時速70キロメートル前後であるとのこと。ダリルと名付けられたこのサイクロンはオーストラリア北西海上つまりNTT南方海上にあって北西方向に動いており、インド洋を進んでジャワ島南部に達する見込みが高い。オーストラリア大陸は12月から2月まで真夏で暑くなるため気圧が低下し、そこに西方から大気が流れ込んできて暴風を生み出す。
18日にNTT海域で船が沈没し、またランプンやマカッサルで強風のために船が流されるという事故が起こったのも、南方海域にできた暴風の影響だろうと同ステーションは推測している。このダリルの影響で、インドネシアの海上海岸部では時速50キロの暴風に見舞われる可能性が高い。波浪は高さ3メートルに達するものと見られ、またいくつかの地区で雷を伴う暴風雨に襲われるおそれも出ており、浸水や土石流、がけ崩れなどの被害につながる可能性も小さくない。中部ジャワ州北海岸部では一時間当たり降雨量30ミリを超える豪雨の可能性があり、ブルブス、トゥガル、プマラン、ジュパラ一円でそんな豪雨が二時間続くかもしれない、と出水や地滑りへの警戒を呼びかけている。ダリルの影響はこの先5日から8日間継続するものと同ステーションは予報している。オーストラリアが夏シーズンの間、北西海域でサイクロンは発生し続けるため、今後も継続して影響が出るのは避けられない。


「首都圏でまた風雨の被害」(2006年1月24日)
23日は首都圏一帯で終日雨が降ったりやんだりの天気が続いたが、夕方には一部地区で突風を伴う豪雨となり、数ヶ所で大きい被害が出た。最大の惨事となったのは西ジャカルタ市クブンジュルッに建設中だったTV7送信用鉄塔の倒壊事故。高さ3百メートルの鉄塔が120メートルまで組み上げられていたところで23日の事故となり、倒れた鉄材が周辺の民家を直撃した。このためフィラアルテリ住宅地区の8軒の家屋に被害が出たほか、巨大な鉄材に破壊された家屋の下敷きとなって8歳の少年ひとりと40代の夫婦ふたりの合計三人が死亡し、14人が重傷を負って病院に運び込まれた。死亡した少年の母親の話では、16時半ごろ雨が激しくなってきたので、子供たち三人と自分も家の中に入ったが、洗濯物を取り込むために自分だけまた外へ出たところ、ガサッガサッという音と共に巨大な鉄塔が倒れ込んできた、とのこと。
もうひとつ大きい被害は、スナヤン地区の西北端に位置する林業省マンガラワナバクティコンプレックスの大形広告塔の倒壊。この広告塔は西側を走っている鉄道線路とそれに沿ったグロラ1通りをふさぐ形で倒れ込んだため、タナアバン〜パルメラ間の鉄道が不通となり、またプジョンポガン〜プルマタヒジャウ間の道路交通も分断されてしまった。
都庁公園局の集計したデータによれば、18本の街路樹が倒れ、その大半がアンサナの木で、場所はスディルマン通りブンカルノスポーツコンプレックス前、チキニ病院、KSトゥブン通りジャサラハルジャ前、カサブランカ通り、チピナンラヤ通りカンプンムラユ方面行き、メンテン地区チレボン通り、パフラワンレボルシ通りなど。倒木と雨による道路の冠水で23日の帰宅ラッシュは都内のほとんどの場所で大渋滞となり、渋滞が解消するまで7時間が費やされた。
またボゴールとプンチャッ地区では終日雨が降り続いたためにジャカルタに向かう河川の水量が大幅に増加し、午後6時のカトゥランパ水門では平常上限水位からすでに100センチ近く上昇している。このため、24日には都内の一部地区で降雨の有無にかかわらず、出水があるものと予想されている。


「アンチョルで高波の被害」(2006年1月31日)
今はアンチョルジャカルタベイシティと名を変えたアンチョルドリームランドが高波の被害を受けた。1月28日から29日にかけて起こったこの異変は1962年にアンチョルドリームランドが開設されて以来始めての出来事で、ドリームランド経営陣は開闢以来初の事件に驚いていた。園内にいた職員のひとりは、海水が陸地に入り始めたのは28日の朝からで、そのときは嵐のような強風が吹きつのり、突然波が堤防を越えて陸地内に押し寄せ始めた、と語っている。海水が園内に入って深さ20センチほど浸水したために、ドゥファンは午前中一杯閉館した。土曜日の夕方には、浸水をポンプで汲み出したために一旦水はなくなったが、翌29日朝にはふたたび強風に煽られた高波が園内に押し寄せてきた。そんな状況にも関わらず、29日には通常の休日の二倍に達する4万数千人が同園を訪れたため、園側では堤防を高くしたり、海水を汲み出したりといった応急対応に精を出し、午後1時ごろにはほとんどの場所から海水が汲み出された。ちょうどイムレッの祝日ということもあって、ドゥファンやパンタイインダではバロンサイやリオンの催しが行われ、来園者はアンチョルの休日を楽しんでいた。
高波に洗われて最も被害が大きかったのはマリナ海岸で、木造埠頭の一部が破壊され、またジェットスキーやサーフボードを収納していた場所も波で被害が出た。アンチョルジャカルタベイシティを運営しているPTプンバグナンジャヤアンチョル側は、通常1月2月は波が高いので海岸での遊泳は禁止しているが、今回の高波はたまたま満月であり、強風が吹いたために起こったことだろう、と説明している。


「ジャカルタ北海岸部で浸水」(2006年2月1日)
1月28日から29日にかけてアンチョルドリームランドで高浪の被害が発生したが、今度はジャカルタ北岸部で1月31日、高潮のために海水が陸上に侵入し、カリバルで162軒、マルンダで100軒、チリンチンで7軒の家屋が浸水の被害を受けた。また運河沿いのグヌンサハリ通りでも、運河の水位が高まって水が路上にあふれ、通りが浸水する結果となった。
北ジャカルタ市長の説明によれば、海の満潮が平常値をはるかに超える高さに達しており、その状況が1月28日から続いている、と地学気象庁が報告している由。この状況は、河口の水位が上昇すれば、更に悪化するだろうと予測されている。31日14時現在の海水位は180センチで、ムアラバルの魚市場での平常海水位は100センチ未満であり、最大許容ラインは170センチとされているため、180センチはシアガ?に該当する。同じ時間のマンガライ水門は700センチで平常値内、デポッ観測点でも140センチで平常値内となっている。このため、都内北岸地域一帯で起こった浸水は、降雨の影響とは無関係の異常な高潮によるものとの見方が強い。
地下水汲み上げと海水の内陸部への地下浸透がかなり以前から問題視されているが、首都北岸部はモナス地区を規準に見ると年々2センチの低下を見せており、今後も海水の浸入がますます起こりやすくなっていくことが懸念されている。


「タマンミニで嵐」(2006年3月6日)
3月5日午後、行楽客で賑わうタマンミニが一過性の暴風雨に襲われ、たくさんの被害が出た。午後1時ごろから東ジャカルタ市南部は厚い雲に覆われ、低気圧特有の突風が舞い、雷を伴った激しい雨が降り始めた。風は旋風となって吹き荒れたため、タマンミニ内施設のいくつかで被害で出たほか、駐車中だった来園客の自動車に立ち木が倒れて屋根がつぶされ、あるいは別の立ち木が何本も倒れて園内の道路をふさぎ、一部エリアが閉鎖されるといった混乱が発生した。園内で被害のもっとも大きかったエリアは、西スマトラパビリオン、タナアイルク・シアター、バリパピリオンなどだが、他の施設でも屋根瓦や屋根板がはがれるという被害が大半を占めた。突風や落雷で倒れた立ち木は20本以上を数え、幸いにして巨木が施設に倒れこむという事故はなかったが、道路がふさがれて来園客のパニックを煽った。中でも園内を走るロープウエーは、雷雨の際には電源を切らなければならないことになっており、天候の悪化が急速だったことから、乗客がまだゴンドラに乗って空中にいるときに電源が落とされてしまった。事情のわからない乗客は、強風にもまれる宙吊りのゴンドラ内でパニックになったにちがいない。しかし電動から手動に切り替えられて動き出し、乗客はすべてのゴンドラから無事地上に降り立った。人的被害は一件も発生していない。タマンミニに隣接するアグロエキスポや周辺地区一帯でも、旋風のために家屋等に被害が出たほか、電話線が切断されるなどの障害を蒙った。地学気象庁によれば、この突発性の悪天候は積乱雲がもたらしたもので、突風や旋風を伴う激しい雷雨が特徴だが、現象は局地的で且つ短時間に過ぎ去るのが普通。半径10から30キロという地域で30分から60分間荒れ狂いながら移動していくケースが大半とのこと。5日の嵐も14時半ごろにはたくさんの爪あとを残したまま通り過ぎ、そのあとは雲の隙間から陽光がこぼれる天気に回復している。


「中部ジャワの一部は4月から乾季入り」(2006年3月17日)
雨季から乾季への移行期は、中部ジャワ州北岸部東側で暴風雨に警戒するように、と地学気象庁スマラン気象学ステーションが警告を発した。3月に季節の移行期に入るのはブロラ、ルンバン、パティなどの地区で、住民は雷を伴う暴風雨に警戒するように、とのこと。移行期に起こる暴風雨は、雷と強風の混じった豪雨だが、たいていは短時間で終わる。移行期も北岸東部地方はまだ降雨が多く、雨量は2百ミリ程度になるものと予測される。
4月に乾季に入る地区は、ドゥマッ、ジュパラ、クドゥス、パティ、グロボガンなどで、中部ジャワ州のほかの地区よりも降雨量が少なくなるため、住民はこの移行期に降る雨をなるべく蓄えて、乾季に備えるようにしなければならない、と同気象学ステーションは勧めている。また例年よりも早く乾季に入る県はブルブス、トゥガル、プマラン、プカロガン、バタンなどであるとのこと。


「今年は4月に乾季入り」(2006年3月28日)
2006年の乾季は4月から始まる、と地学気象庁が公表した。ジャワ・スマトラ・カリマンタンの半分の地方では、平常雨量を下回る可能性が高いとのこと。だがそれでもって今年は異常乾季となるという判断をするのは、時期尚早である、と同庁は言明した。今年は異常乾季になりそうだという噂が既に流れているが、その噂は地学気象庁が出した2006年乾季予報に基づいて農業省異常気象検討部会が出したイシューであり、その断言はまだできない、と地学気象庁側はそのイシューの内容を否定している。
ジャワにおける地表水ストックはまだ十分な状況にあり、4月に異常乾季が襲ってもまだ安全圏内にある、とのこと。5月については4月の状況を見なければなんとも言えず、ジャワでは5月から多くの地域で乾季に入るとの予報であるため、4月の状況如何では5月に水不足をきたす地域が出ないとも限らないため、今から貯水に配慮するように、と農民に対して呼びかけている。


「首都を嵐が襲う」(2006年4月12日)
11日午後2時ごろから強風を伴った豪雨が首都を襲い、重度の出水と街路樹や広告看板の倒壊等で広範なエリアにわたって交通が大きく混乱した。中でもモナス北側にある大統領宮では排水が追いつかずに構内に水が溜まり、建物内の床が5センチほど浸水した。折りしも大統領宮では限定閣僚会議開催時間前で、集まっていた副大統領をはじめ閣僚たちが水を避けて避難する騒ぎとなったが、会議は二階で催されたため浸水騒ぎは大過なく終わった。副大統領宮でもブリギンの巨木が風に吹き倒されている。
嵐はおよそ二時間近く都内を荒れ狂い、巨木や広告塔あるいは交通信号柱が倒壊したり深い水溜りができたりしたために、道路交通は大きく混乱した。タムリン通りでは、深い水溜りを避けようとして自家用車やオートバイがバスウエイ専用車線に侵入したため、トランスジャカルタバスは専用車線内で発生した渋滞に巻き込まれてノロノロ運転を続ける結果となった。南ジャカルタのレンテンアグンでも深い水溜りができたために、多くのオートバイがJORR自動車専用道路に入り込んで路肩の端を一列縦隊で通行する姿が見られた。深い水溜りはスマンギ立体交差下でおよそ50センチ、タムリン通りの東を通るサバン通りも50センチ、スリピ交差点で40センチといったところ。
中央ジャカルタ市チキニラヤ通りでは、街路樹の枝が折れたり幹が倒壊して道路をふさいだ。アブドゥルムイス通りではマホガニーの巨木と電柱が倒れ、その下敷きとなったタナアバン〜コタ路線のミクロレッ08に乗っていた乗客3人が死亡しほかの4人が怪我をするという事故も起こっている。チキニ通りに面したTIMでも立ち木が三本倒れて駐車場にあった車を押し潰した。交通麻痺状況がひどかったのはタムリン・スディルマン・クニガンが囲む黄金三角地区、南ムルデカ通り、グロゴル地区、スネン・クウィタン地区等で、交通渋滞の余波は都内全般にわたって夜まで続いた。


「首都圏はもうしばらく雨続き」(2006年4月17日)
首都圏をはじめ、ボゴール、バンテン、西ジャワの各地でまだ強風を伴う豪雨が繰り返される可能性があるため、土砂崩れのおそれがある地域はまだ警戒を緩めないようにと地学気象庁が警告した。インド洋の気圧が低いために風向きが変化しており、乾季が始まりかかっていたジャワ島西部に雨雲ができている。この気象は徐々におさまってきつつあるが、完全な乾季型に移行するまでに豪雨が襲来する可能性があるとのこと。ジャカルタ、ボゴール、ブカシ、ルバッ、カラワン、タングランなどは4月中旬から5月下旬までに乾季が本格化すると地学気象庁は予測している。ジャワ島西部のこの気象の変化はジャワ島中部東部、スマトラ島、インドネシア東部地方に影響を及ぼすものでなく、ジャワ島東部からヌサトゥンガラにかけては乾季が既に始まっている。一方スマトラ島は5月ごろまで雨季が続くものと見られている。


「リングオブファイヤー」(2006年4月28日)
環太平洋火山帯の一部をなすインドネシアの島々には129の活火山がスマトラからマルクまで連なっている。この数は世界の総活火山数の13%にあたる。それこそ、インドネシアが世界最大の火山国であることを示す数字であると言える。ジャワ島を含むインドネシア南部地域にある火山群はオーストラリアプレートとユーラシアプレートがせめぎあう隙間に吹き出た溶岩の堆積で、一方北側の火山群は太平洋プレートとユーラシアプレートのぶつかり合う隙間を破って噴出したそれだ。そのためプレートの動きでテクトニクス型地震が発生すると火山活動にも影響を与えて火山性地震を誘発することも稀でない。こうして129の活火山は休止状態が永続することはなく、地下プレートの状況やマグマの状態という複合的な要因でいつ活動を活発化させてもおかしくない状態を続けている。インドネシア政府火山学自然災害軽減センターはそのときどきの状況に応じて住民の生活に危険を及ぼす火山活動の予知を行っており、危険度のレベルによって四つの段階に分類している。まず最も落ち着いている第一レベルの状態をAktif Normal と称している。つまり活火山の平静状態という意味だ。次の第二レベルはWaspada と名付けられ、第三レベルがSiaga で、最高の第四レベルがAwas となっている。
ジョクジャと中部ジャワ州の州境にあるムラピ山はAwas 警報が発令されており、危険が予想される地域への人間の立ち入りが禁止されているが、山麓に居住している住民の一部は噴火の危険が近付いているというのにまだ山を下りていない。今Awas 警報が発令されている火山はもうひとつあり、北スラウェシ州のカラングタン山も危険な状態が続いている。その下のSiaga 警報の対象になっている火山は11あり、スマトラからマルクまで幅広くカバーされている。その11とは西スマトラ州のマラピ山とタラン山、ジャンビ州のクリンチ山、ランプン州のアナックラカタウ山、中部ジャワ州のディエン山、東ジャワ州のスメル山、北スラウェシ州のロコン山、ドゥコノ山、ソプタン山、フローレス島のエゴン山、ハルマヘラ島のイブ山となっている。


「ムラピ山に噴火観測ツアーはいかが?」(2006年5月10日)
噴火を目前に控えたムラピ火山を見学するために、観光客がスレマン県を訪れている。県庁では、安全で眺望の良い場所を選んで、噴火観測観光見学地点を県下の8ヶ所に指定した。Tempel郡 Trumpon部落に一ヶ所、Turi郡は Garongan部落一ヶ所とBalerante部落に二ヶ所、Pakem郡 Pasartani部落一ヶ所とTanen部落一ヶ所、Cangkringan郡は Panggung集落と Grogol集落各一ヶ所に見学ポイントがある。
ところでムラピ火山は連日のように溶岩の盛り上がりが成長を続けており、高さ5メートル幅7メートルの規模に至っている。湧き上がってきた溶岩は15万立米に達しているものと見られている。今のところまだ煮えたぎる溶岩が山を下ってくる気配はなく、また懸念される熱雲の発生も切迫している様子はない。


「今年の乾季入りは遅れそう」(2006年5月23日)
地学気象庁が予報した今年の乾季入りは多くの地区で裏切られている。3月に公表された今年の乾季気象予報では、220の気象予報地区の中で101地区が例年より早く乾季入りし、乾季入りが遅れるのは49地区だけであるという内容だったものの、4月末時点でも降雨量が依然として平均値を上回っており、ほとんどの地区で例年以上の降雨が6月まで続きそうだと同庁が新たな予報を出した。降雨量から見ると、既に乾季に入ったのは東ヌサトゥンガラ東部西部、ジャカルタ周辺ではチュンカレン地区とタンジュンプリウッ地区で、一方乾季到来が遅れそうなのは、ジャワ島北岸地区、東ジャワ東部南部の大部分、バリ、西ヌサトゥンガラなど。今年1月から8月までの期間は太平洋とインド洋の海水表面温度分布の影響を受けやすく、インドネシア海域はそれが例年より高い温度になっているために海水の蒸発が盛んで、雨雲が例年よりたくさん作られている、とそのメカニズムを説明している。


「ジョクジャ大震災」(2006年5月29日)
2004年12月にスマトラ島北西部、特にアチェ州を壊滅状態に陥れたインド洋津波大災害のあと、2005年3月には少し南下してニアス(Nias)島が大型地震の被害を受け、そして2006年5月27日、ヨグヤカルタ(Yogyakarta)特別州が地震災害の次の犠牲者となった。27日午前5時53分、同州南部のパラントリティス(Parangtritis)海岸南方38キロの海底、深さ33キロ地点で、5.9リヒタースケールの地震が発生した。今回の地震もテクトニクス型のものであり、南のインドオーストラリアプレートがジャワ島のあるユーラシアプレートの下に潜り込んで行く際にたまった歪のエネルギーがもたらしたもの。地震の被害は震源に近いバントゥル(Bantul)県とグヌンキドゥル(Gunung Kidul)県が最大で、28日午前0時15分までに集められた状況報告では死者2,195人負傷者3千4百人を数え、死者総数3,098人の大部分を占めている。家屋やインフラ設備の損害は3,824軒に達し、送電所は機能を停止し、テルコムセルの移動電話用ベーストランシーバーステーション40基も破壊された。アディスチプト(Adisutjipto)空港では国内線ターミナルビルが崩壊し、搭乗前だったジャカルタ行きアダムエアーの乗客ふたりが落ちてきた建物構造物の下敷きになって死亡した。同空港は急遽全施設を閉鎖したためその日出発予定だった31便乗客3千4百人の足が奪われた。ただし前夜から機体を同空港に駐機させていた3便だけはその日同空港を出発している。27日のジョクジャ行き旅客航空便の多くはソロあるいはスマランに目的地が変更された。鉄道は全線の状況がチェックされた後、正午過ぎに一部徐行運転ながら運行を再開している。PLNは、クラテン(Klaten)県プダン(Pedan)にある主変電所が損害を受けたために中部ジャワジョクジャ地区への電力供給量が23MW減少したので、27日午後5時から巡回停電を実施すると発表した。
古代遺跡が集まっているジョクジャ周辺部の史的遺産損害状況は、ボロブドゥル(Borobudur)寺院は特に被害は見つかっていないが地層構造が影響を受けた可能性があるとボロブドゥル寺院保存研究院が表明した。プランバナン(Prambanan)寺院は一部が崩れて大きい被害が出ており、修復に時間がかかりそうだ。クラテンにあるプラオサン(Plaosan)とセウ(Sewu)の二寺院、マグラン(Magelang)にあるソジワン(Sojiwan)寺院、スレマン(Sleman)のラトゥボコ(Ratu Boko)寺院などにもかなりの被害が出ているもよう。
なお、この地震で津波を怖れた南海岸部住民のパニック行動が路上での事故を誘発して怪我人を増やしたものの、津波は皮肉にもまったく発生していない。またここ数ヶ月、ジョクジャ州北部州境にあるムラピ(Merapi)山の噴火活動が活発化しているが、今回の地震が噴火活動を更に激しくする可能性についても専門家が懸念を表明している。


「ジョクジャ文化遺産の被害状況」(2006年5月30日)
政府はジョクジャ地区一帯にある史的文化遺産の地震による被害状況調査を開始した。大きい被害を受けたのはプランバナン(Candi Prambanan)とプラオサン(Candi Plaosan)で、プランバナン遺跡群の中のメイン建造物であるチャンデイブラフマ(Candi Brahma)はひびが入り、頂上は崩れ落ちている。南第三門は完全に崩壊しており、修復にはかなりの期間を要するものと見られている。プラオサンも同様で、頂上が崩れ、門にひび割れが入っている。チャンディセウ(Candi Sewu)でもひび割れが発見されている。ジョクジャ王宮のタマンサリ(Taman Sari)で損壊が起こったことが報告されているが、王宮関係者しかまだ立ち入りが許されていない。イモギリ(Imogiri)墓地も王宮関係者以外の立ち入りが禁止されたために、状況がまだ判明していない。
文化観光省は史的文化遺産の周辺を一般者立ち入り禁止としたので、観光客を含む一般人はそれらの遺跡建造物に接近してはならないことになった。政府は被災者救援活動が一段落してからそれら史的文化遺産の修復に取り掛かる予定にしているが、年間1百万人の外国人観光客を招いてバリに次ぐインドネシア第二の観光地となっているジョクジャの文化遺産が完全に修復されるまでには数ヶ月の期間が必要とされている。
ジョクジャ市一円にある110のホテルはその半分ほどが大きい被害を蒙った。今営業している星級ホテルはHotel Sahid Jaya, Inna Garuda, Mercure, Saphir, Hyatt, Yogya Plaza, Puri Artha などの12軒だけで、他のホテルは電気や水の設備修復あるいは建築物の修理に取り掛かっている。6月7月の学校休み観光ピークシーズン直前に発生した今回の大震災はジョクジャの観光業界に大打撃を与えそうだ。シーズンの予約は7割方埋まっていたが、全国各地からのキャンセルが続々とジョクジャの観光業界に届き始めている。


「中部地方はまだ豪雨のおそれ」(2006年7月4日)
最近スラウェシやカリマンタンで発生している水害に関連して地学気象庁が、大雨が発生する可能性は8月まである、と公表した。インドネシアは既に大部分の地方が乾季に入っているが、8月までは大雨が降る可能性が存在しており、インドネシア中部地方のカリマンタン・スラウェシ・パプアで大量の降雨が発生するかもしれない、とのこと。この状況は今年一月から始まっている異常気象の影響によるもので、インドネシア海域からインド洋のスマトラ島西方一帯までの海水表面温度が高まっている一方、インド洋アフリカ東岸部の海水表面温度は冷たいためそこに高気圧ができている。そのためインドネシア側の高海水温地域では海水の蒸発が活発化しており、インドからパプアまで赤道を斜めに横切る雲の列が形成されている。そのような気圧配置のために北側および南側から冷たい空気が流れ込み、一部地域で対流が起こっている。海水の蒸発はまた太陽の位置に従って移動するものであり、今の時期だと太陽は赤道の北側に位置しているので、そのためインドネシア中部地方の北スラウェシ、ゴロンタロ、中部スラウェシで豪雨のおそれがあり、またマルクでは雨量は少量ながら雨が多い傾向にある。


「ムラピ山の志士、ンバ・マリジャン」(2006年7月10日)
ムラピ山の火山活動が活発化して今年3月には警戒ステータスがnormalからwaspadaに引き上げられた。4月10日、全山閉鎖が指示され、12日にはステータスがsiagaに上がり、更に5月13日朝、ステータスは最高のawasが発令された。インドネシアの火山警報は4段階になっている。平常レベルがレベル1でaktif normalと呼ばれ、レベル2はwaspada、レベル3はsiaga、最高レベルは4でawasと称される。awasが発令されたら、火口から特定の距離の中にいる住民はすべて即時避難退去しなければならず、また外からその距離の中に入ることも禁止される。ところが、火山学自然災害軽減センターが発令したアワス警報に、危険区域内にいる住民たちの一部が従わなかった。避難したらいつ戻って来れるかわからない。毎日世話している作物を放り出して避難すれば収穫がゼロになる可能性があり、もしそうなれば農民たちにとっては死活問題となる。家畜もそうだ。毎日餌を与えなければ生命の保証はない。そしてもうひとつ、農民たちには不安があった。ゴーストタウンと化した農村を誰が盗賊たちから守ってくれるというのか?家財道具が掠奪されたら農民たちにはそれを買い直す余裕などどこにもない。こうして住民の中の一部は行政機構が出した人命安全のための命令に違背した。ムラピ山の山守である老爺ンバ・マリジャン79歳もそのひとりだった。
ンバ(mbah)というのはジャワ語で老人に対する尊称だ。レストランなどで店員のお姉さんを呼ぶときに使う女性への尊称であるンバッ(mbak)と取り違えるとたいへんなことになるので気をつけなければならない。ムラピ山はジョクジャ王家にとって特別の意味を持っている。マジャパヒト王国滅亡後の群雄割拠時代に終止符を打って16世紀末にジャワ島を再統一したパヌンバハン・スノパティは、南海の女王ニャイ・ロロ・キドゥルの支援を得たためにその偉業をなしとげることができたとされている。そのためスノパティが興したマタラム王朝はニャイ・ロロ・キドゥルを守護神とし、スラカルタに即位した歴代の王はかの女を妻とした。そしておよそ二百年後にVOCがギヤンティ協定に則ってマタラム王国を分割したとき、それまでのスラカルタの宮廷と別にジョクジャにハマンクブウォノ王家が建てられた。ハマンクブウォノ一世はニャイ・ロロ・キドゥルを妻にすることを含めた神事に関連する諸権利の相続をスラカルタ宮廷に要求したが、ニャイ・ロロ・キドゥルはスラカルタの王だけを自分の夫とすると答えたそうだ。しかし分家であるハマンクブウォノ王家に対する守護は本家のススフナン家と同じように与えるという約束を得たためにハマンクブウォノ王家もニャイ・ロロ・キドゥルを祭っており、南海の女神へのお供え物を献上する祝祭の日にはパラントリティスに近いパランクスモの海岸とムラピ山、ラウ山、そしてンドレピの四ヶ所でその儀式が行われる。パランクスモでそれが行われるのは南海の王宮の表門にあたる大門がその場所に位置しているからで、一方ムラピ山にも霊界の王宮があり、南海の海中にあるニャイ・ロロ・キドゥルの王宮と結ばれている。その二王宮の間では霊的存在が頻繁に往来しており、35日ごとに夕方になると川の水音がざわめくのは大勢の霊が馬や馬車に乗って一方から一方へ移動している音なのだと老人たちは物語っている。
だからムラピ山には山守が置かれており、人間としてムラピ山の世話をする任務がジョクジャ王宮から山守に与えられているのだ。1974年に山守に任じられたンバ・マリジャンはムラピ山の火口から7.5キロ離れたウンブルハルジョ村キナレジョ部落でその務めを果たしている。火山活動が活発化し始めてもこの山守老人は山に登って瞑想し、プアサを行って心身を清め、ムラピ山の守護霊と波長を合わせてその声を聞こうと努めた。ついにはアワス警報が出されてすべての住民に山から降りるよう行政側からの命令が出されたが、ンバ・マリジャンはキナレジョ部落には危険がなく、自分の山守の務めには客が多いためもし自分が避難キャンプに入れば客たちがたいへんな不便をかこって気の毒だ、という理由をあげて下山を拒んだ。住民の中にもムラピ山の守護霊と波長を合わせることができる者もおり、あるいは山守の言葉とその行動を見て安全であると確信する者も出たため、行政側が出した非難退去指示に従わない者が多数にのぼった。しかしジョクジャ特別州知事のスルタン・ハマンクブウォノ10世はそれを許さず、すべての住民は行政指示に従わなければならないと命じたために、ンバ・マリジャンをはじめ残っていた住民は一旦山を降りた。
ウンブルハルジョ村はムラピ山の南麓にある。山を降りようとしなかった住民たちはこう語った。「大爺さん(ムラピ山のこと)はいまちょっとした祭りを営んでいる。溶岩や地震を起こしたところで、ごみで前庭(ジョクジャ王宮を指している)を汚すようなことはしない。」別の霊能者は「こわがらなくてよい。山縁にいる兄弟たちに災いをもたらすようなことはしない。周りをきれいにし、形を整えるためにしばらく時間をくれ。仕事している間にごみがでるかもしれないが、それは置かれるべき場所に置くことになる。迷惑を蒙ったと思う者も、肥沃と繁栄で報われる。」と山の守護霊の声を代弁している。確かに1960年代以来、ムラピ山が出す火山性物質は常に西あるいは南西の方角に捨てられており、南麓を下ったことはない。
ンバ・マリジャンは山を降りて王宮を訪れ、スルタンに報告した。自分の信念に従って生きるこの老臣を前にして、スルタンはどんな思いをかみしめたのだろうか。しかし6月に入って状況が変わり、山頂の溶岩ドームが崩れ落ちて噴出物は山の南麓にも下るようになった。その後火山活動が沈静化したために火山学自然災害軽減センターは6月13日に警報レベルをシアガに引き下げた。ところが皮肉なことに、その翌日にムラピ山が噴出した大規模な熱雲が南麓を襲い、カリアデム村で逃げ遅れたボランティアふたりが地下壕に入って難を逃れようとしたものの高熱のために死亡している。
信念の人ンバ・マリジャンは一躍国民的著名人となり、ジャムゥメーカーのシドムンチュルが自社製品の精力増強ジャムゥ「ククビマエネルギー」のCMに起用した。そのビデオ撮影は6月26日にムラピ山で行われ、テレビでは7月10日以降に放映される予定になっている。ンバ・マリジャンはそのCM出演料の一部をキナレジョ部落住民やバントゥル県の地震被害者に対する救援費用として提供している。


「ジョクジャ地震被災者のための家屋建築の中止を州知事が要請」(2006年7月17日)
ジョクジャ中部ジャワ大震災被災者のための援助として家屋の建築が計画されているが、住民の間で社会的妬視を煽ることになるのが懸念されるためその計画は中止してほしい、とジョクジャ州知事であるスルタン・ハムンクブウォノ10世が表明した。中央政府からジョクジャ特別州に交付される再建リハビリ基金7,490億ルピアは36型住居の建築に充てることになっているが、1軒2千万ルピアのコストがかかるため3万5千軒しか建てられない。一方ジョクジャ特別州だけで倒壊家屋は20万6千軒あり、雨季に入る前までに突貫工事で3万5千軒を建てたとしてもまだ17万世帯がテント生活を余儀なくされる。雨季の雨の中でテント生活を続ける17万世帯と新しい家屋に入った3〜4万世帯の間で社会的な嫉妬が生じれば各地元行政区の首長に重い負担が生じるため州知事は、限られた家屋数を建設するのでなくその基金を20万6千軒の住居を建てるための耐震構造コンクリート基礎と屋根と壁を一斉に工事したい、と語った。
被災者援助として住居を失った州民に家を建て与えるという行動を諸方面が行っており、国民住宅担当国務省がバントゥル県イモギリ郡に565軒の家屋建設プロジェクトを表明した矢先に上のような州知事表明がなされた。世銀も公共事業省と共同で各村に10軒の家屋を建設しようとしているが、各県令と市長は州知事にはかってそれらの家屋建築に同意しないことを決めた上での州知事の表明になっている。


「イ_アの気象区分はジャワ偏重?!」(2006年7月21日)
今は乾季たけなわのインドネシアなのに、6月下旬に南スラウェシ州シンジャイで洪水と土砂崩れ、7月に入って南カリマンタンでも大規模な水害が発生した。これは天候異変なのだろうか?地球温暖化に伴うグローバルレベルでの天候異変が喧伝されているが、地学気象庁情報課長は「違う」と語る。黄道はこのシーズン赤道の北を通っており、そしてスラウェシもカリマンタンも赤道の北にある。そのためスラウェシとカリマンタンのローカルレベルでの気象状況は雨が降りやすい状態にある、と言うのだ。熱帯の太陽が直下にある海水の蒸発を促すため、雲が作られて雨が降りやすいという局地的な気象状況がそこに作られている。これは毎年繰り返されている状況であるため、特に今年が珍しいというものでなく、今年が珍しいのはそれによって大きな気象災害が発生したという点だ。「なぜ今年に限って大規模災害が発生したのか?それは皆さんに考えていただかなければならない問題だ。」同課長はそう述べている。
インドネシアの4月から9月は乾季だという『常識』は、必ずしも全域で一様に雨が降らないことを意味していない。たとえばいま、ランプンの一日当たり降水量は100〜150ミリでスラウェシとパプアは150〜400ミリ、ところがジャワやヌサトゥンガラは多くて20ミリ。だから単に雨季と乾季という分け方でなく、少なくとももう二つの区分を持ち込む必要があるだろう、と同課長は説明する。モンスーン型地域ではアジア大陸から吹いて来る西風が雨をもたらし、オーストラリアから吹いて来る東風が乾燥した空気をもたらしている。その影響下にある地域の雨季のピークは1月から2月にかけて。もうひとつの赤道型地域では、雨のピークが一年に二回ある。12月と7月〜8月だ。この地域の雨のシーズンは太陽の公転に従っていて、太陽が真北にある時期は乾季であっても雨が多い。そして太陽が真南にあっても雨が多い。赤道直下地帯は風向きが変わる場所であるため、雨が集中する傾向が生まれる。赤道直下地帯の風速は毎時10〜36キロで南西から北西に吹くが、赤道南部地域は東風が優勢なため雨が少ない。
南スラウェシ州シンジャイで起こった土石流は一日百ミリを超える雨量がもたらしたものだが、昨年6月7月にもそれくらいの雨が降った日はある。またこの時期フィリピン海域で熱帯性暴風雨が発生するのも例年のことだ。この熱帯性暴風雨によってバンダ海から吹く風はインドネシア北部の雲の動きを早める。それらすべては毎年繰り返されている定例的な気象状況だ。そして今年起こった災害はこれまでなかったものだ。「だから原因を気象だけに求めるのでなく、何がそれをもたらしたのかをわれわれは考えなければならない。」同課長はそう強調している。


「チアウィダム建設計画」(2006年8月16日)
首都への上水供給の源泉となっているジャティルフルダム(Waduk Jatiluhur)に次ぐ水源を求めている首都水道会社PAM Jaya が、ボゴール県チアウィ(Ciawi)にダムを建設する企画を公にした。同社によれば、PAM Jaya の上水処理場へのジャティルフルからの取水は西ジャワ州水源管理上水道会社Perum Jasa Tirta に代償を支払った上で行っているが、今や地方自治を名目に西ジャワ州政府もその水に対する権利を主張しはじめている、とのこと。ジャティルフルからの取水が一定コストで安定的に行えなくなる事態に備えて、PAM Jaya が次の水源を求めるのは自明の理となっている。
そのためにボゴール丘陵のチアウィ地区にダムを建設する案が浮上し、PAM Jaya はそのプロジェクトを中央政府に申請した。企画では、建設工事が2007年に開始され、完成は2011年が予定されている。総工費は用地買収を含めて1兆ルピアが見込まれており、都庁も自己資産のために一部金額を投資する計画。建設予定のダムは幅90.5メートル、長さ1,340メートルで、204ヘクタールの人造湖が作られることになる。プンチャッ(Puncak)地区を源流とするチリウン川とチサダネ川で雨季に降った降雨が例年ボゴールからの送り水(kiriman dari Bogor)として都内特定区域に洪水を起こさせていたが、このダムが完成すればその過剰雨水は水門による小規模なコントロールでなくこのダムに一旦貯えられることになるために下流までそのまま走ることがなくなる。雨季の雨水を貯めて乾季に首都圏に放水するという機能が持たされる計画であるため雨季乾季の首都への水供給が平準化されることになるので、乾季の水不足、雨季の洪水というこれまでの状況に対する抜本的改善が期待されている。
地形的にこのチアウィダムは長大なものにならず、またそのエリアは従来から貯水地域としての性格が強かったために、今回のダム建設企画にふさわしいものだとPAM Jaya は説明している。このダムは完成すればプンチャッ街道からその人造湖の景観を目にすることができるため、観光資源としての効果も期待できて一石三鳥であり、加えて水力発電と農地灌漑にも利用されれば三鳥が五鳥にもなる、とその効用をPAM Jaya は指摘している。ダム運営は公共事業省、民間会社、ボゴール県庁が合同で行うことになっている。またこのダム建設に合わせてPAM Jaya はチブブル(Cibubur)地区に上水処理場を建設することにしており、この処理場から都内上水道網への供給量は毎秒1万リッターが計画されている。今のジャティルフルからの供給量は毎秒1.6万リッターであり、その両方を合わせれば都民の需要を満たして余りある、とPAM Jaya側は述べている。


「今度の雨季は雨が少なめ」(2006年9月12日)
近付いている今度の雨季は雨量が少ない見込みであることを地学気象庁が発表した。2006年10月から11月にかけてイ_アの大半の地区が雨季に入るが、全国220の気象予報地区の中で雨量が平年を超えると予想されているのは19地区、平年並み116地区、平年以下85地区という分析結果が出されている。今月9月の降雨状況では低雨量の地区が依然としてまだ多く、そのため今年の雨季は雨があまり多くないという予測をもたらしている。現在まだ雨の少ない地区はランプン南部、バンテン北部、首都ジャカルタ、西ジャワ、中部ジャワ、東ジャワ、バリ、東西ヌサトゥンガラ、バリッパパン、パル、ポソ、ハルマヘラ、ブルなど。10月に入ればほとんどの地区で雨量が100ミリ以上に増加するが、西ジャワ北部、ジョクジャ、中部ジャワ東部などはまだ乾燥が続く。降雨量に警戒が必要な地区は北スマトラ西部、西スマトラ西部、アチェ北部、南スマトラ東部、南カリマンタンの一部、北スラウェシの一部などで、雨量は3〜4百ミリに達するおそれがある。
2006年10月から2007年3月までの今度の雨季は、非気象予報地区での累積雨量が1〜2千ミリ程度になるものの、中には北スマトラ東岸部、ボネ湾以外のスラウェシ、セラム南部とブル南部のように1千ミリに達しないところも出る。また2千ミリを超えるところは、西スマトラ西部、ランプン西部、エナロタリ周辺とワメナ南部。太平洋側に発生するエルニーニョはこの雨季の海水表面温度を0.3〜0.8℃程度しか上昇させないものと予想されており、インドネシア東部地域と中部地域はその影響で雨が少ない。一方西部地域はエルニーニョの影響をあまり受けない代わりにインド洋双極モード現象の影響をより強く受けるが、この雨季にはスマトラ島西方海域の表面温度が0.1〜0.5℃高まる程度でこちらも強い影響を及ぼさないため、モンスーンの影響が最も強くなる。インド洋で空中に昇った水蒸気はスマトラ・ジャワに向かって流れてくるが決して強いものにはならず、多くの地区で雨は少なめだろう、と地学気象庁は予報している。


「暑い乾季末」(2006年9月21日)
これまで赤道の北にあった太陽が南に下りつつあるため、太陽光の日射角が直角に近付いていくことで地表に加わる熱量も大きくなる。太陽はこの9月23日にちょうど赤道の真上に来る。赤道周辺地域ではそのため、平均気温の22〜23℃から日中の気温は1℃〜10℃高くなる。しかしここ数週間、いくつかの地方で気温が大変高くなっているのはそのせいだけではない、と地学気象庁が表明した。その理由は大気中の水蒸気がたいへん少なくなっているためで、それはジャワ島南部からランプン西部にかけてのインド洋側で海水表面温度が低いことが大きい要因をなしている。水蒸気が少ないために太陽熱は一層効率よく地表に達し、また夜になると地面からの熱放射も効率が良いために気温が下がる。いくつかの地方で日中煎られるような高熱に焼かれ夜は寒さに震えるという気象がここしばらく続いているのはそのためであるが、そんな気象も11月に入って本格的な雨季が到来するまでのことらしい。


「雨季への移行期がはじまる」(2006年10月31日)
煎られるような暑さが続いていた乾季末もいよいよ終りを告げるもよう。首都圏周辺ではルバランが終わってから随所で局地的な降雨がはじまった。まだ軽い驟雨といった感じの雨はせいぜい5〜10ミリ程度の雨量で、1時間もしない間に雨はあがってしまう。雨が降るのは夕方から夜中にかけて。
地学気象庁が公表したところでは、これまで雨雲の形成を妨げていた気象条件が変化し始めたためにインドネシアは乾季から雨季への移行期に入ったとのこと。太陽が南半球に傾いたことで海水表面温度が上昇し、これからは蒸発が活発になって雨雲の形成が促進されるが、今の移行期の雨雲は海水の気化よりも陸水の熱放射による蒸発のほうが主体をなしており、そのエリアで日中に起こった蒸発が上空で凝結したあと付近に雨を降らせるというパターンである由。そのために雨域は狭く、雨量は少なく、降雨は短時間という特徴を持っている。空気の対流が発生して上空に雨雲が作られるのは午前10時以降であり、そうやって形成された雲が雨になって落ちてくるには3時間以上の時間が必要であるため降雨は早くても夕方になる、と地学気象庁は説明している。


「来年も首都圏の雨季のピークは1〜2月」(2006年11月14日)
この雨季のピークは2007年1〜2月になると地学気象庁が発表した。現在ジャワ島一円は10月末以来乾季から雨季への移行期に入っており、雨季への進行が進むに連れて夕方や夜に突然大きい雨が降り、ときには雷や強風が伴われるのがこの移行期の一般的な特徴。首都圏の雨季入りは11月中旬から遅くとも12月初旬にかけてで、遅れる可能性があるのは海水表面温度が26℃以下と低いために雨雲の形成が活発でないためだと同庁は述べている。しかし一旦雨季に入れば雨量は大きくなり、5百mmレベルに達する可能性は大きいとのこと。スマトラ・ジャワ・バリ・西と東ヌサトゥンガラ地区の水蒸気源となっているスマトラから東ヌサトゥンガラにいたる海域の海水表面温度が低めであることから、水蒸気発生が抑制されているためにそれら地区での降雨は少なくなる傾向にある。
現在既に雨季に入っているのはスマトラ島北部で、アチェ、北スマトラ、西スマトラなどが9月〜10月にかけて雨季入りしている。しかしジャンビ、リアウ、南スマトラなどはまだ雨が少なく、森林火災の煙を消し去る天候はもう少し先になりそう。一方ヌサトゥンガラやスラウェシはまだ乾季が続いている。


「ジャカルタの雨季予報」(2006年11月20日)
インドネシアは平野部でも雹が降る。イ_アで氷の雨(hujan es)と呼ばれる雹は季節の移行期に、稀にではあるが発生する。たいていは限定された狭いエリアに数分間、どんなに長くてもせいぜい10分という時間に氷の粒が天から降ってくる。もうひとつ季節の移行期の特徴的な気象現象は猛烈な突風で、イ_アではputng beliung と呼ばれている。この突風に襲われると多くの建物が破壊されるほど大きな被害を生むことがある。これは雲が地表に近いところから上空に向かって層状に作られるために引き起こされる気象であり、広さは3〜5キロ四方といった程度。
ジャカルタの本格的な雨季突入は11月中旬から12月初のころと地学気象庁では予報しており、普通なら10月には雨季がはじまるのに今年は少し遅れ気味。これは海水表面温度が低いために雨雲の発生が抑えられているのが原因だが、いざ本格的に雨季入りすれば今年の雨量は月間350〜400ミリ程度の降雨量となる見込み。予報によれば、南ジャカルタと西・東ジャカルタの南部は11月中に降雨が増え、北・中央ジャカルタと西・東ジャカルタ北部は12月に多雨となる。雨量は南で月間350ミリ、北で月間400ミリ前後と見込まれ、豪雨の可能性は小さいので出水は小さい規模で収まるのではないかと期待されている。しかし一日の雨量が百ミリを超える場合には十分な警戒が必要とされている。雨季のピークは2007年1月20日ごろから2月初にかけてで、この峠を越せば首都のバンジル(洪水)はひと安心できそうだ。


「ジャワ〜バリの本格的雨季入りは12月半ば」(2006年11月28日)
インドネシアではブルの付く月に雨が降ると言われている。September-Oktober-Nevember-Desember が語尾にブルの付く四月で、実際にその四月の間に雨季が始まるのがふつうだ。早い年は9月、遅くとも10月には雨のシーズンとなるものだが、今年の雨の到来は遅かった。11月末が近付いた今でも雨はまだあまり降らず、降っても雨量は少ない。今年は異常気象だ、と地学気象庁が表明している。
地学気象庁は全国を220の気象予報区に分けており、この区分けの線引きは行政区分とまったく関係がない。今年平年並みに雨が始まったのはスマトラ島北部とパプアで、他のエリアでの降雨状況は平常値から30%低く、気象予報区の6割が雨不足となっている。その原因の最大要因はインド洋双極モード現象によるスマトラ島南部、ジャワ、ヌサトゥンガラ一帯を包む海域からジャワ海〜カリマンタン西部海域の海水表面温度が平常値から1.5℃も低いことだ。低温のために海水の蒸発が妨げられて、降雨のための原料が不足しているといったところ。もうひとつその状況に手を貸しているのが弱いエルニーニョの影響で、パプア東方の海水表面温度がやはり低めになっており、反対に太平洋の中央海域で温度が上昇している。エルニーニョは弱く、パプア東方海域の温度は0.5〜1.0℃程度しか上がっていない。その双方が海水蒸発を活発化させていないために今年のインドネシアは雨不足に襲われている。スマトラ島南部、ジャワ島西部から中部、バリ、ヌサトゥンガラでその影響がもっとも強く、カリマンタンの西部から中部にかけてとスラウェシ南部は11月末から12月第一週あたりで雨が始まるだろうが、上述の地域は12月半ばにやっと本格的な雨季に入るのではないかと地学気象庁では予測している。
マルクとパプアは平常で、マルクに限って言えば6月が雨のピークにあたり12月は降雨が減少する。インドネシア西部地方と中部地方は雨のピークが12月になる。エルニーニョはイ_アの海水蒸発量の10%を左右するほどの影響力を持っている。今年は弱いエルニーニョが5月から始まっており、これが来年まで継続すれば今回の雨季はきわめて短期なものになる。イ_アの気象はエルニーニョ南方振動、インドネシア通過流、 インド洋双極モード、南シナ海対流、アジアモンスーンという5つの要因に影響されており、それらがこの地域一帯の気象状況に多様な性格を与えている。


「インド洋のサイクロン」(2007年1月9日)
新年早々インドネシア各地は強風と豪雨に見舞われ、地方によっては洪水と土砂崩れに襲われまた海でも海難事故が続発した。国内の海上交通に足止めを食わせたこの悪天候はインド洋で生まれたサイクロンの影響だが、オーストラリア西方のインド洋で勢いを強めたこのサイクロンは1月3日夜には早くも勢力が衰えはじめた。サイクロンの卵が生まれても、それが常に成長して猛威をふるうとは限らず、卵のまま短命な生涯を終えることもある。この季節、インドネシアの気象はサイクロンに大きく影響される。
スマトラ島南西海上で発生するサイクロンは大きい雨雲を形成してスマトラ島西部北部に流れこんでくるために激しい雨が降る。一方ヌサトゥンガラ南部のサイクロンは高い波浪を発生させ、また南と北からの雲が収束して強風を発生させる。そうなると海と空の交通にさまざまな問題が引き起こされる。
インドネシアの気象に影響を与えるサイクロンの発生は例年3月ごろまで続くので、次のサイクロンの卵が生まれるのを十分警戒していなければならない。インドネシアは南北からの雲が収束して強風を生む世界でも有数の地域であり、さらに豪雨を伴うのが普通であるため災害に至る確率が高い。


「雨季真っ只中の異常気象」(2007年1月16日)
1月第一週の嵐による強風豪雨から一転して首都圏ではカンカン照りが続いている。ジャワ島の多くの地域で降雨は1月第3週以降になるだろうと地学気象庁が予報した。それまでジャワの5大都市の中ではバンドンだけが降雨があり気温は20〜30℃になるだろうとのこと。ジャカルタでは例年1月の気温が31〜32℃になるというのに、ここのところ36℃まで上昇している。しかしジャワ島の外では状況が異なっていて、カリマンタンの一部、スマトラ東部、スラウェシの一部、マルク、パプア、ヌサトゥンガラなどでは平均以上の降雨になっている。
ブンクル西方海域からジャワ島南部海域にかけて海水表面温度が0.5℃低下し同時にジャワ島上空3千〜1万3千フィートをモンスーン型西風が15〜25ノットという平均以上の風速で吹いているために雨雲の形成が難しくなっているのが首都圏の猛暑の原因。上空に水蒸気あるいは雲の層がないために太陽熱が地表に直接降り注ぎ、乾季末の猛暑が繰り返されている。雨季の真っ最中のこのような異常気象は十年に一度というレベルのもので、例年だとせいぜい二三日あるかないかだ、と同庁職員はコメントしている。強い雨はジャワ海にあって南に向けて移動しており、一月中旬を超えればジャワの各地でまた雨が降り始めるだろう、と地学気象庁では予測している。


「首都に水危機」(2007年1月19日)
雨季真っ只中の異常気象で全国一般的に雨不足になっており、その影響が首都の水供給源であるプルワカルタのジャティルフルダムを襲っている。ジャティルフルダムは平常水位105メートルだが1月第二週からぴたりと止まった雨のために83.99メートルまで水位が低下し、放水量が減っている。都営水道公社PAM Jaya代表取締役は、降水量不足とジャティルフルからの放水がブカシ川へも分流しているために首都圏の上水道に供給される水量が不十分になっており、都内の多くの地区で断水が起こっていることを明らかにした。給水不足のためにプジョンポガン第一第二浄水場からの給水量は第一が平常時毎秒4千4百リッターに対して1月16日は2,948リッター、第二は平常時が毎秒5千5百リッターに対して3,827リッターと大幅な不足を示している。そのために水道会社PT PAM Lyonnaise Jaya の担当地区で19郡10万契約者、PT Thames PAM Jaya の担当地区では11郡9.3万契約者が上水道サービスを受けられない状況になっている。断水が起こっている地区はスマンギ、トマン、タムリン、カサブランカ、ハルモニ、ラトゥメテン、サワブサール、ムアラカラン、ウジュンメンテン、スネン、ジョハルバル、クマヨラン、チュンパカプティ、クラパガディン、チリンチン、タンジュンプリウッ、パドゥマガン、チラチャス、パサルボなど。同代表取締役は先行き見込みに関して雨が降らなければ現状が続くだろうと表明しており、それは水不足になっている西タルム水路沿線の農地に対する灌漑用水供給義務をジャティルフルダムが負っていることを考慮してのものだが、ジャティルフルダムの放水は国が管理しているため現状に対する調整を行って欲しいと同取締役は政府に要請している。都内パサルスネン地区やクマヨラン地区の住民は、水道からもう一週間以上水が出ないと苦情を述べている。
ジャカルタの東半分を営業地域にしているテームズパムジャヤ社は2006年12月の漏水率は51%に達していると報告している。同社は漏水防止に努力を払っているが克服はきわめて困難であるとのこと。供給水量の26%は住民が給水パイプ網に無許可でつないだパイプによって盗まれており、水道会社はそれらの無許可取水パイプをカットして塞ぐが数日すればもとの木阿弥になっている。加えて水道利用契約者が無許可で非契約者に水を分配している事実も発見されている。また水流メーターの故障や破損、あるいは盗水などを利用契約者が行っており、実消費量の23%は水道会社の請求から漏れている。電力会社PLNと同じ苦渋を水道会社も味わっているわけだが、上水に関してはジャカルタ北部の漏水が一番多いとテームズパムジャヤの広報担当取締役は述べている。


「ジャカルタ水害はバンドンも一蓮托生」(2006年2月15日)
2月に入って首都圏を水没させた大水害で首都圏の経済活動はほとんど麻痺状態となったが、それによって西ジャワ州の産業も首都に劣らない大打撃を受けることになった。自動車専用道路開通でジャカルタから近くなったバンドンは毎週末になるとジャカルタナンバーの自動車が市内を埋め尽くす光景に変わるのが当たり前になっていたものの、バンドン一円にある宿泊施設やレストランあるいはファクトリーアウトレットといった観光産業はジャカルタの水没と時を同じくして閑古鳥が鳴いた。バンドンだけでなくプンチャッやボゴールあるいはスカブミのリゾート地でも来客数の減少や客室稼動率の激減で水のない水害の被害をかこっている。
普段は衣料品を買い漁る観光客でごった返すファクトリーアウトレットも客の入りが半減し、売上は4〜6割減少した。宿泊施設も2月1日から既に客足が遠のき、2月最初の週末は客室稼動が4割減になっている。週末にバンドンを訪れる観光客の85%が首都圏住民であることから、首都圏における市民生活の混乱が西ジャワ州の観光産業に与えた影響はきわめて大きいと言える。中にはジャカルタの自宅が浸水したためにバンドンのホテルへ避難したというケースもあるそうだが、そのようなことのできる人数がどれほどあるかは想像にかたくない。
西ジャワ州商工会議所によれば、バンドン周辺地区から首都圏へ定常的に配送されている製品が工場から出荷されたあと配送車輌がボゴール地区から先へ進めないという状態に陥り、衣料品から工業用部品原材料にいたるまで西ジャワの実業界もビジネス活動が停滞する結果となっている。ジャカルタ〜バンドン間鉄道も首都圏内の多くの個所で線路が冠水したために列車の徐行運転が避けられず、ダイヤが大幅に乱れたことから運行取消しが続発した。中でもブカシ〜ジャティヌガラ区間の線路水没の影響が大きく、1メートルを超える浸水場所では列車の進行が完全に停止してしまった。中にはバンドンからジャカルタまで通常の2倍以上の7時間という時間をかけてやっと到着した便もある。2月5日時点でパラヒヤガン号14便とアルゴグデ号10便のうち75%がやっと運行できるところまで回復している。


「首都圏水害の保険求償は2億ドル超」(2007年2月19日)
首都圏を水没させた大水害が引き始めた2月7日、今回の水害被災者が起こす保険求償は2億ドルを超えるだろうとインドネシア一般保険協会会長が発言した。2002年のジャカルタ水害ではおよそ2億ドルの損害補償が発生したが、今回の水害はそれを上回るのは確実だと見られている。2002年の保険求償は75%が工場やオフィスビルからのもので、残りは住居や自動車などで占められている。その傾向は今回も繰り返されるだろうが、今回は2002年の大水害よりもはるかに広範に浸水が発生したため、これまで浸水を免れていたエリアにコストをかけて高価な資産を置いていた被保険者がついに水と泥に浸かってしまった高額資産に対する求償を行う可能性が高く、求償額は今のところ目途が立たない状況であるとのこと。
これまでも往々にして問題となっていたのは、被災者が保険会社に対して即時の被災報告を行うのに手がまわらずかなりの日数を置いてから事故報告が届けられるというケースが頻発することで、今回のような災害では免責条項を適用することなくフレキシブルに対応するべきである、と同会長は保険会社に対して警告している。また被災した工場やオフィスビルに対しては、求償に対する支払は3〜4ヶ月先になることから機械設備の補修や交換等の対応はその資金繰りを見込んで行う方がよい、と警告している。


「首都圏水害のパターンは太陽が生んでいる」(2007年2月27日)
ジャカルタは5年ごとに水浸しになる、と巷で人口に膾炙している。その根拠を検討分析していた地学気象庁R&Dセンターは、ボゴール・プンチャッ・チアンジュルのいわゆるボプンジュルにおける降雨ピークのサイクルが4〜6年おきにやってくることを発見した。ただし雨水が海に流れ込むルートが妥当なものであれば、ジャカルタで洪水が発生することには必ずしもならないと同センター長は述べている。1950年以来の降雨量サイクルを綿密に調査した結果、ボプンジュル地区には4〜6年という大量降雨のサイクルが見つかった。ジャカルタ自身にはそのようなサイクルが見られない。
その4〜6年という降雨量ピークの間隔は太陽の動くパターンと連動しており、インド洋で海水が大量に蒸発することがボプンジュル地区に大量降雨をもたらしす原因であるとのこと。ボプンジュルに過剰に降った雨水はジャカルタ湾目指して陸上を走り、その対策が十分に取られていないジャカルタ平野を水浸しにする。「水害が定期的に起こるということでなく、太陽の動きが作る循環パターンが本当の原因であり、それが引き起こす大量降雨がジャカルタでの水害を生むという天然現象がこれだ。だから1996年の水害は2002年に繰り返され、そして2007年にまた起こった。6年と5年という間隔があいている。かならずしも5年ごとというものではない。」
同センター長は地球温暖化のジャカルタ水害に与える影響を懸念している。温暖化は海水の蒸発を促進する。雲の中に蓄えられる水蒸気の量が増加すれば降雨量は更に増大する。次回の首都圏水害は今年に輪をかけたものになるかもしれない。


「スラメッ火山が噴火するか?」(2007年3月27日)
中部ジャワ州の最高峰であるスラメッ火山がしばらく前から噴火の気配を漂わせはじめているとして近隣住民の間に不安が広がっている。スラメッ山で起こった最大の爆発は1772年のもので、そのさいには半径8キロにわたって被害が出たと推測されている。この山はこれまで15年周期で噴火を繰り返してきたが最期の噴火は1988年でそれ以来19年が経過しており、いよいよ休眠状態が限界に達しているのではないかとバニュマス住民たちは見ている。住民たちが噴火の徴候として不安を感じているのは山頂から噴出している硫黄煙が濃くなっていることだが、地元鉱エネ局地学課職員によればその現象は最近の多雨で火口付近の崖が崩れて火口内に崩落し、火口の一部がふさがれた結果ではないかとのこと。もしスラメッ山が噴火しようとしているのであればパンチュラントゥジュやバトゥラデンなど数ヶ所にある泉の水温が上昇するはずだが、観測結果は水温がまだ平常であることを示している。たとえ噴火が起こったとしても、火口が浅いためマグマの量は小さいので大きい爆発にはならないだろう、と同職員は説明している。


「無名島はまだ6千以上ある」(2007年4月2日)
インドネシアには17,504の島がある。ところがそのうちの6,702は名前を持っていない。領土の辺縁にある島が名前を持っていなければ、他の国が自国領であると主張したときインドネシア側はたいへん不利になる。そのため政府は2006年第112号政令ですべての島に名前をつけるための国家チームを編成して命名作業にとりかかっている。しかし中央政府は地元行政府が管理しないものを認知するわけにはいかず、ボトムアップによる届出が一刻も早くなされることを鶴首で待っているところだ。州別に見ると次のような状況になっている。
リアウ島嶼州: 2,408島中394島が無名
西イリアンジャヤ州: 1,917島中968島が無名
北マルク州: 1,525島中897島が無名
マルク州: 1,399島中631島が無名
東ヌサトゥンガラ州: 1,192島中685島が無名
バンカブリトゥン州: 950島中639島が無名
今現在名前が付けられていないのはそれらの島が地元民の生活にあまり影響を持っていないからであり、必然的に地元行政府もそれらの無人島に対する管理意識は低い。そのためこの無名島に対する命名プロジェクトの促進のために2.5〜3億ルピアのインセンティブが州政府に対して用意されている。一方、地元民が必要性から名前を付けている島々も、似たり寄ったりの名前が全国にたくさんある。異なる地区へ行けば同じ名前の島が必ずある、というような島の名称も存在している。そのために同チームでは島やその他の国土の命名に関する基本原則を同時に編成し、それに応じて名称の整理を行う予定にしている。同チームはできるだけ早く命名を完了させて2007年9月には国連に届け出るようにしたいとの目標を設定している。これまで67島に関して隣国から自国領であると主張されて係争のタネになっており、そのうちの12島はインドネシア側が負ける可能性が高い。シパダンとリギタンに続く島々が今後もまだ現れるかもしれない。


「くわばら、くわばら」(2007年4月5・6日)
日本では昔、雷のことをイカヅチと呼んだ。イカヅチに打たれると生命が危ういため、雷除けのために「くわばら、くわばら」とおまじないを唱えた。「くわばら」というまじないの語源は菅原道真説からインド語説までさまざまにある。
雷は太古の昔からこの地上のあらゆる場所に存在していたものであり、熱帯のインドネシアから北欧のフィンランドまで「くわばら、くわばら」を何千人何万人で大合唱しようと落ちるものは落ちてくる。だから世界中のほとんどすべての文明では、この放電現象を地元の荒ぶる神に結びつけてさまざまな神話を作り出してきた。古代インドネシアはインド文明の傘の下にあった。ヒンドゥ教や仏教の文化を身にまとったインド人たちがスマトラ・ジャワ・カリマンタンに渡ってきてさまざまな事物を伝えた。コメやコショウの栽培もそのひとつだそうだ。古代の支配者が民に対して掟を定め、その掟を破る者には神が天罰を下すと嚇かしたが、神が下す天罰は雷で象徴されたようだ。その観念は現代にまで引き継がれており、「わたしの言うことがもし嘘だったら天罰がくだってもいいよ。」と言うときにたいていsambar geledek が引き合いに出されている。
雷は恐ろしいものだ。わが家の愛犬タローは雷が鳴り始めると尻尾を巻いてガレージにあるキジャンの下にもぐりこむ。わたし自身も幼稚園のころ、よく悪夢にうなされた。恐怖心に満ち満ちた夢の中をひたすら歩き最後にどこか得体の知れない異界に流されていきつつあるときにふと目をさますと、必ず雷鳴が轟いていたことを覚えている。インドネシアで体験する雷は格別のもので、近くに落雷したときに視界一面が黄色やオレンジ色に染まるのは実に感動的な体験だと言えば叱られるだろうか?
雷は言うまでもなく自然現象だ。バンドン工科大学気象学研究プログラム教官によれば、雷は雨が降りそうなときあるいは雨が降っているときに発生するが、雨のときに必ず雷が発生するわけではないとのこと。積乱雲がある場合だけ雷が発生するのだとかれは言う。地上が暖まることで地表から大気の上昇が起こり、多量の水蒸気を含んだ上昇気流が上空に上がっていったときに積乱雲が作られる。積乱雲の中では上層と下層で電位差が生じ、その間で放電が起こる。それが雷のメカニズムだと同教官は説明している。遠くから見ると積乱雲はすぐに見分けがつくが、積乱雲の下にいると上の雲が何なのかよくわからない。上空が暗くなり風が強くなった場合は積乱雲の下にいると思ってよい、とのこと。もし朝に雨が降れば、その日は雷が発生しない。なぜなら雨で地表が冷やされるために雷雲が形成されないからだ。インドネシアの雷はたいてい午後から夜にかけて暴れまわる。13時から19時の間がもっとも多い。それは地表が十分に熱せられて雷雲が十二分に育つから。一方海上では、雷は朝発生するのが普通だ。それは朝陸地がまだ冷えているときに海面の方が温度が高いためにそこで雷雲の発生が起こるという仕組みだからだそうだが、頻度から言えば陸上の雷は海上より7倍も多い。
雷雲の形成は予知できる。朝から酷暑で湿気も高い場合、午後には間違いなく積乱雲ができる。積乱雲は地表と密接に関連しているため、局地的な性質が強く、だから雷も局地的でありその広がりは半径7キロメートル程度のエリアに留まる。そんな雷の性質が、雷多発地区とそうでない地区の違いを生んでいる。実は、インドネシアは世界最大の雷発生国なのである。
一年間で雷の発生した日が何日あったかを数えたところ、インドネシアは200日、ブラジルは140日、アメリカ合衆国100日、南アフリカ60日などという結果が見られた。中でも世界ナンバーワン地区は西ジャワ州ボゴール県チビノンの322日で、この世界記録は1988年にギネスブックに登録された。雷発生密度を見ても、インドネシアは1平方キロあたり年間12日となっている。
雷は必ずしも天空から地上に打ち付けてくるものとは限らず、雲と雲の間で放電することもあれば、地上から空中へ放電することもある。ただしインドネシアでは地上から空中へという雷はない。雲間放電は飛行機がそこを避けている限り良いとして、対地雷の場合は市民生活に被害が出る。雷の経路は一瞬一瞬の地表の状況に影響されるため予測は不可能だ。地表のどこに、あるいは何に落雷するのかは先駆放電の大小によっても変わる。先駆放電が大きければ避雷針、塔、木、ビルなど突き出たものに落ちるが、小さければより低いものめがけて落ちてくる。
2007年3月のある日の午後、デポッ市で子供が落雷のために死亡した。その子は家の中でテレビを見ていたのだ。そしてテレビのアンテナに落雷し、雷は屋内に侵入した。そのとき空は雲に覆われて小雨が降っていた。雷の被害を避けるために言われているティップスがいくつかある。午後、空がにわかに暗くなって風が吹き始めると、雷雲が頭上にいる可能性が高い。
*すぐに家屋や建物内に入り、ドア、窓、水のある場所から離れること。
*広い平坦な場所にいる場合、すぐに高いものの近くに移動すること。高いものから遠ざかろうとしてはいけない。ただし近寄りすぎてもだめで、2.5メートルほど距離を取ること。高いものから離れれば離れるほど雷に撃たれるリスクが高まる。
*広く平坦な場所では、脚を閉じてしゃがむという対策でもよい。その場合、近くに落ちた電流が人体を流れることはない。しかし両脚を開いていると電流が人体に飛び移ってくる。
*雨のときに木の下に立って雨宿りするのは危険。木に落ちた電流が人体に飛び移ることがある。木の枝も電流を人体に誘導することがある。
*駐機中の飛行機の下での雨宿りも危険。翼の下や車輪の近くはアブナイ。垂直尾翼は雷が落ちやすく、落ちれば電流は一瞬のうちに機体を流れる。鉄塔などの金属製構造物の近くにいる場合は構造物の中に入ること。しかし金属に触れてはならない。
*船に乗っている場合、帆柱から離れること。
*丘や山稜、遠隔地や農村部では直撃のリスクが高い。都市部では人が多いために確率が低下する。
*プールも落雷のリスクが高いので、雷雲がやってきたらすぐにプールから上がること。
*電線や電話線に過電流が流れて接続されていた機器類を壊すことはよく起こる。電気製品は壁のコンセントからコードを抜くこと。電話機も本体につながっている電話線を抜いておくこと。テレビのアンテナも雷を誘導しやすい。
*建物自体を保護するために高価な避雷針を装備するのはあまり意味が無い。インドネシアの家屋はたいていレンガの間に鉄筋を埋めたコンクリート壁になっており、雷を地面に流す機能は備えられている


「旋風発生のおそれは当面まだ高い」(2007年4月18日)
地学気象庁は、しばらく前各地に被害を引き起こしたような強風の発生する状況がランプン〜ジャワ〜バリ地区で5月初旬まで継続するだろうと予報した。その地域では、対流雲が発生したエリアで雨が降る前後に旋風が発生する可能性が高い。対流雲が太陽の熱放射による地表面温度の均一化を妨げるため部分的に高温で強い上昇気流が発生し、そこに向かって激しい空気の流れが生じる。4月いっぱいその地域では破壊的な強風を生む対流雲の発生がまだ顕著だろうと地学気象庁は予報している。
そのような対流雲が作られるとどこに旋風が起こるかということはわかるが、対流雲がどこに生じるのかということは前もってわからない。対流雲が作られれば局地的に短い時間内に旋風が吹き荒れる。そのために旋風予報はたいへん困難だと地学気象庁は説明している。4月11日の気象予報では、スマトラ・ジャワ・カリマンタンの都市部の予報はほとんどが雨で、一方スラウェシ・マルク・ヌサトゥンガラ・パプアは曇りになっており、インドネシア東部地方が雨季から乾季への移行期に入ったことを示している。首都圏は軽い雨の予報だがまだしばらくは強い雨が降る可能性もある。


「今年の乾季入りは遅れ気味」(2007年4月25日)
地学気象庁が4月20日に発表した気象予報によれば、インド洋南部で発生する低気圧は今現在姿を表していないが、5月初旬まで強い低気圧が発生する可能性はまだ十分にあり、それがインドネシアの天候を乱して雨を降らせるためにエリアによって今年の雨季明けは遅れ気味になりそうとのこと。インドネシアの乾季入り予想では気圧変化の影響が最大の要因をなしており、インドネシア南部で熱帯性暴風雨が発生すれば各地の降雨量が増大し、特にジャワ・スマトラ・カリマンタンでその影響が強くなるものと見込まれている。一方東西ヌサトゥンガラならびに東ジャワ南部地方ではすでに乾季が始まっている。しかし2007年4〜9月の乾季における降雨予測は、アチェ西部中部、パサマン東部、ソロッ、タシッマラヤ、チアミス、カリマンタン西部や東部の一部、ゴロンタロの一部などで例年より雨量が多くなる見込み。広域概況分析では、乾燥をもたらすエルニーニョは弱まっているが、一方太平洋に雲を呼ぶラニーニャも現れていない。そのため2007年乾季予報によれば太平洋の海面温度は平常で、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も出現しないとされている。2007年のエルニーニョ季は2007年1月はじめに終わっており、ジャカルタではその時期2週間にわたって高温が猛威をふるい、平常期の32℃をはるかに超える37℃に達したことが記録されている。
地学気象庁が設けている全国220の気象予報ゾーンにおける2007年乾季突入予測は、3月3.6%、4月23.6%、5月35.5%、6月25.9%、7月9,6%、8月1,8%となっており、今年の乾季入りが遅れ気味であることを示している。


「乾季はもうすぐ」(2007年05月25日)
5月中旬の雨はカリマンタン南部、スマトラ北部、ジャワ北部で多く降り、これは局地的な水分の蒸発で作られた対流雲が起こしたものである。水分蒸発の活発化はカリマンタンでの不法伐採によるエコシステム破壊とジャワの大気汚染で気温が上昇したことが影響している。6月はじめ頃までは太平洋西部海域から赤道に向かって北東の風が吹くため、カリマンタンとスマトラで降雨の機会が多くなるが、これはラニーニャ現象でないため太平洋の海面温度は比較的低めである。しかし風向きはその間に変化し、南東からの風に変わっていく。南東からの風はオーストラリア大陸から吹いてくる風で、空気が乾燥しているためカリマンタン北部、ヌサトゥンガラ、ジャワ島南部などに乾燥と気温の上昇をもたらす。それに対して雨はジャワ島北部からカリマンタン南部にかけてのエリアで発生する。地学気象庁は乾季への移行期にあたるこの時期の気象状況をそのように報告した。乾燥と気温上昇、そして森林火災のリスクをもたらす乾季の到来は目前に迫っている。


「湿った乾季は10月まで続きそう」(2007年6月8日)
太平洋海域で海水表面温度をやわらげるラニーニャ現象が起こっていることがインドネシアのいくつかの地方に涼しい乾季をもたらしている『湿った乾季』現象の原因である、と地学気象庁が説明している。太平洋側の海面温度は通常平均温度22.5℃より一度低く、このラニーニャによる異常気象は2007年10月ごろまで継続すると推測されている。海面温度が下降したためにそのエリアで気圧が上がり、それがインドネシアを通過してより気圧の低いエリアに向かうためにインドネシアの気象を不安定にする変動がもたらされている。今現在地学気象庁は太平洋の中部西部における海面温度の異常がまだ十分に解析できておらず、そのためこのラニーニャのあとにエルニーニョが到来するかどうかについてまだ明言できない状態だ。エルニーニョはインドネシアに乾燥をもたらす要因のひとつである。
太平洋からアジア大陸に向かう強い風によって海面のうねりが高まっている。海域によっては時速18〜36キロの風によって波浪が2〜3メートルと高くなっているため漁船をはじめとする民衆航海に危険を及ぼしていて、その影響が顕著な海域はアラフラ海南部や東部ジャワの南方海域からヌサトゥンガラ一帯にかけてのエリアである。一方中部ジャワ南部海域からスマトラにかけてのエリアは波浪の高さが1〜2.5メートル程度になっている。その他の海域では波は比較的穏やかだ。


「ジャカルタにも大地震の可能性」(2007年6月27日)
ジャカルタを含めてジャワ島を大型地震が襲う可能性を地質学者が懸念している。インドネシア科学院ジオテクノロジー研究センターの地震専門家は、ジャワ島のたくさんの人口稠密地帯を活性断層が走っており、大規模地震は大惨事を引き起こすことが予想されるため政府はより深い関心を払ってほしいと要請した。活性断層のひとつであるチマンディリ断層はプラブハンラトゥ〜スカブミ〜チアンジュル〜パダラランにいたるもので、この断層に沿って1900年にプラブハンラトゥ地震、1910年パダララン地震、1948年チョンゲアン地震、1973年にチバダッ地震、1982年ガンダソリ地震、2001年スカブミ地震が点々と発生している。レンバン断層はバンドンの10キロ北から22キロの長さで横たわっていて、地盤の動きは年間0.2〜2.5ミリあり、5百年という歪回復周期を持っている。1972年にはタンジュンサリ地震が発生しており、バンドン市に大きい影響を与える地震が発生すれば甚大な被害が出るおそれが高い。
ジャカルタについてもチラチャッ〜クニガン〜マジャレンカからジャカルタに至る活性断層があるが、ジャカルタはチリウン川の土砂堆積によって断層の位置がはっきり把握できない状態になっている。オランダの古い記録では1699年にジャカルタで大きな地震が発生したとされており、ジャカルタも地震と無縁ではない可能性を考慮しなければならない。


「東部インドネシア海域に強風波浪注意報」(2007年7月3日)
全般的にインドネシアは乾季に入っているが、東部インドネシア地域では雨と高波が観測されている。オーストラリア北部地域にある高気圧がインドネシアに向かって強い風を送り込んできており、同時に東部インドネシアの海水温は平均より0.5℃高くなっているため、高い水温と強い風が雨雲の形成を促している。NOAAの衛星観測によれば、アラフラ海・バンダ海・マルクやパプアからカリマンタン北部にかけて海水表面温度は平均より0〜5℃ほど高くなっている。一方西部インドネシアの海は温度がもっと低い。雨雲は風の収束点や屈曲点で形成されやすい。そのような場所で上空に上る大気団が強まり、雨を降らせるのだ。降雨は地域的な影響も局地的な影響も受ける。丘陵や山地が与える影響も小さくなく、南スラウェシ東部・パプア・スマトラの一部ではそのために雨が多い。概してジャワ島南部は降雨量が減少し、スマトラ・バリ・ヌサトゥンガラは平常でスラウェシ・ハルマヘラ・マルク・パプアでは平均以上の雨となりそう。
オーストラリア北部の高気圧が送り出す強風は、アラフラ海・バンダ海・ティモール海・バリ島南海域で高い波を作り出している。それらの地域での風速は20〜40ノットに達し、波高は2〜4メートルになっている。そんな状況はタンカーのような大型船にはあまり問題ないものの、伝統的漁船や渡海機船にとっては危険だ。西部インドネシアの海はもっと穏やかで、ジャワ海やインド洋の風速は10〜20ノットだが例外はアチェ北部の海で、こちらは20〜40ノットの風速に見舞われている。東部インドネシアの強風と波浪は7月第一週まで続きそう。


「次の雨季は2008年2月から」(2007年7月9日)
地学気象庁の長期予報によれば今年の本当の乾季は2007年11月に始まり、その次の雨季は2008年2月からとなる。2007年11月から2008年2月までの間はエルニーニョ現象の発生が懸念され、そうなれば国内各地に異常乾燥気象がもたらされる。
気象状況の影響を受けるのは稲の作付け時期で、普通は雨季のはじまりから三ヶ月ほど前に稲を植付けており、平年だと10月に雨季がはじまるために6月ごろから作付けが開始されていた。しかし今年は長引く乾季の影響で雨季の開始が来年2月と予報されているため稲の植付けはもっと先まで延期されることになる。そこで浮上してくるのが貯水問題で、今現在各地の貯水池や溜池の水位が高いからといって安心してはならず、今から節水に努めなければならない、と農業省食用植物総局長は関係諸方面に注意を呼びかけている。


「カリマンタンで森林火災発生の可能性は高い」(2007年7月10日)
太平洋側で海水の蒸発を盛んにさせるラニーニャ現象がまだ活発であるとはいえ、乾季になるたびに森林や泥炭地の火災が発生しやすくなるカリマンタン地方をはじめとしていくつかの地区では水不足に警戒しなければならないと地学気象庁R&Dセンター長が表明した。カリマンタンは全般的に湿った乾季の只中にあって降雨量は平常を超えており、それはラニーニャの影響で発生しているもの。いまラニーニャは沈静傾向を示しており、その結果通常の乾季になれば火災発生の可能性が高まる。そしてもしラニーニャからエルニーニョに移行すれば乾燥と火災はさらに激化することになる。
地学気象庁気象学部長は、地学気象庁が次の雨季開始の公式予報をまだ出していないことを強調した。いまインドネシアは乾季に入っているが、それがいつまで続くのかまだ予測できないでいるためだ。ラニーニャ現象がまだ続いていることに加えてジャワ島西部からスマトラ島南部にかけての湿った乾季はインド洋双極モードの影響も受けている。双極モードがポジティブであるためインドネシア西側から南側にかけてのインド洋で海水の蒸発が盛んになっている。その状況は2007年10月ごろまで継続すると見られているが、それがカリマンタンの乾季に与える影響は小さいためにカリマンタンでの火災発生懸念は小さくない。


「サラッ山でキャンプ中の中学生6人が火山性ガスで死亡」(2007年7月10日)
2007年7月7日、西ジャワ州サラッ山に登山した南ジャカルタ市ミナンカバウダラム通りにある国立第67中学校生徒がラトゥ火口から放出された火山性有毒ガスのために死亡した。同中学校が企画したボースカウト活動でおよそ50人の生徒が7月6日から8日までキャンプを行うためにサラッ山に登った。同校ではこれまでもこの活動を何度も行っており、事故が起こったのは今回がはじめて。生徒たちは火口に降りてそこにできた水溜りで手足や顔を洗ったりする体験を楽しんでいた。火口は3メートルほど降りたところで、水溜りには冷水や温水がある。火口の水で顔を洗ったりマンディすると永遠の若さを保てるという言い伝えを耳にしている生徒たちは嬉々としてその体験を楽しんでいたとのこと。そのとき突然火口にある割れ目の底からガスが噴出し、その近くにいた15歳の女子生徒が意識を失って倒れた。それを見た10人ほどの学友が助けようとして集まって来たが、ガスを吸ってばたばたと倒れていったとその状況を目撃した教員や生徒は証言している。それら倒れた生徒の中で15歳の女子生徒がふたり、17歳の男子生徒ふたり、17歳の女子生徒ふたりの合計6人が死亡した。そのキャンプ活動を企画した学校側は、事前の現場サーベイも実施しておりキャンプ場所も安全を確認して選定してあったので、このような事故が発生したことはたいへん遺憾だ、と哀悼の意を表明している。


「台風4号がジャワ島南部にも影響」(2007年7月16日)
熱帯性暴風MAN-YI(マンニィ)が発達して台風4号となり日本の南西海域で強い影響を及ぼしはじめたここ数日、ジャワ島南海岸部でも強風が発生している。インド洋沖合いでは風速毎時50キロ、海岸部でも45キロという強風が吹き、それにあおられて波高は4メートルに達している。
中部ジャワ州チラチャッの地学気象庁観測ステーション専門職員によれば、マンニィの影響は広くジャワ島南部にまで及んだがその台風はいまや遠ざかりつつある、とのこと。ジャワ島南部海域では13日から風が強まり、普段東風の季節には3メートルが平常である波高が4メートルに上っている。マンニィは普通のモンスーン季節風ほど風圧が高くなく、その両者間の気圧の差がジャワ島南部の気流を北に吸い寄せているのだ、と同職員は説明する。
この状況は7月16日ごろまで継続すると予測されており、地学気象庁では漁民に対して海の荒れがおさまるまで出漁を見合わせるよう警告している。また中部ジャワ州チラチャッやバニュマスで観測されている気温低下もマンニィがもたらしたもので、気温は22℃から30℃で湿度は高めの65〜94%となっているため平常より涼しい気象であり同時に風が強いことから、住民は健康にも留意するようにと地学気象庁では呼びかけている。


「ジャワは干ばつ、外島は水害」(2007年7月27日)
2007年7月も終盤に差し掛かっているいま、カリマンタン・スマトラ・スラウェシの各地で豪雨による水害や土砂崩れの被害が続出している一方でジャワ島では旱魃が進行しており、各地の貯水池では水量が低下しまた飲用水の水源も涸れはじめている。地学気象庁R&Dセンター長はそれについて、北アフリカの異常気象が平均気温27〜28℃を1〜1.5℃ほど高くしているためオーストラリアの乾燥した空気が北アフリカに向かって動いており、ジャワ・バリ・ヌサトゥンガラやスマトラ南部を含む赤道南部の乾燥を厳しいものにしている、と説明している。
中部ジャワ州スンポル貯水池の水量はすでに1千8百万立米を下っており、これは潅漑地域への給水量で計れば50日分しかないことになる。それに関してクブメンの鉱エネ省水資源局潅漑課長は、5月に行われた人工降雨によって貯水池の水量が1千2百万立米も増加した実績を鑑みて、政府は早急に人工降雨を実施してほしい、と希望を語っている。スマラン県でも百Haほどの水田が干上がりかかっている。トゥガル県とトゥガル市では農民たちが地中から水を汲み上げようとして浅層ポンプを設置するのが今ブームになっている。しかしポンプを動かすためにはガソリンを購入しなければならず、農民に予想外の経済負担を強いている。農民の一人は一回ポンプを動かすのにガソリン代として3万ルピアを支出していると語っている。
西ジャワ州チアンジュルのチラタ貯水池も同様で、水位は海抜217メートルから215メートルを切る位置まで下がっている。バンドン県にあるサグリン貯水池から流れてくる水の流入量も平常期の毎秒203立米からいまは158立米に減少している。そのサグリン貯水池自身の流入量は平常の毎秒250立米から5立米まで落ちているのだ。そんな貯水状況は西ジャワ州の8千Haの水田に旱魃をもたらしうるもので、6月の旱魃リスクが2千8百Haだっただけに状況は大きく悪化している。
東ジャワ州ガウィ県では8千Haの天水田が旱魃に襲われており、クワドゥガン村農民は深層ポンプ管理人から水を購入している。一部農民が持っている浅層ポンプからはもう水が出てこないありさまだ。マディウン県でも旱魃が進行している。
その一方でカリマンタン・スマトラ・スラウェシなど外島では各地で土砂崩れのために大きい被害が出ている。北スマトラ州タパヌリスラタンでは土砂崩れで3人が死亡し、中部スラウェシ州モロワリの土砂崩れは31人の死者と30人あまりの行方不明者を出している。北スマトラ州・西スマトラ州・ジャンビ州を襲った洪水と土砂崩れでは1千5百世帯以上が家を捨てて避難した。西スマトラ州パサマンバラッの水害は水深1.5メートルに達し、数百軒の家屋が水に浸かった。北スマトラ州ではニアス・マンダイリンナタル、タパヌリスラタンで家屋の浸水が発生している。ジャンビ州ではスマトラ東岸街道が10キロ区間の数ヶ所で土砂に埋もれ、復旧工事は始まっているものの車両の通行はまだできない。
西カリマンタン州ではシンカワン市で水害が発生し、家屋347軒水田40Haが水没し1,532人が避難している。これは豪雨に加えて満潮のためにセダウ川が氾濫したことが原因であるとのこと。


「ジャワ海沖で地震」(2007年8月10日)
2007年8月9日午前0時4分に西ジャワ州北方のジャワ海海底286キロを震源とする強い地震が発生した。震源地はインドラマユ北西75キロの南緯6度17分・東経107度66分の海中で、マグニチュ−ドは7.0リヒタースケールであると地学気象庁は発表している。
もっとも最近ジャワ島西部地域で発生した地震は2007年8月4日14時17分のバンドン北西40キロを震源地とするもので、そのときの地震は地底深度185キロで発生しマグニチュードは5.5リヒタースケールだった。今回の地震はかなり広い地域にわたって揺れが感じられたが、地震による被害は報告されていない。特にジャカルタでの揺れが近来稀なレベルだったことから、多くの都民に驚きをもたらしたことが地震学者の警告よりも効果を高める結果になるかもしれない。[ 参考記事「ジャカルタにも大地震の可能性」(2007年06月27日) ]
地学気象庁が公表した各地におけるメルカリ震度によるレベルは次のようになっている。
レベル III MMI (弱い): Jakarta, Bekasi, Bandung
レベル II - III MMI : Tangerang, Citeko, Kebumen, Liwa, Pacitan
レベル II MMI (非常に弱い): Padang, Tretes, Bali, Blitar


「インドラマユ地震の影響を懸念」(2007年8月15日)
2007年8月9日午前0時4分に西ジャワ州インドラマユ北西75キロ南緯6.17度東経107.66度のジャワ海海底286キロを震源とする7.0リヒタースケールの地震が発生し、ジャカルタで比較的長い時間にわたって揺れが続いたために大きい話題となった。しかし地学気象庁の報告によれば、その後もジャワ島西部では下のように地震が継続している。
8月10日20時17分マグニチュード5.4リヒタースケール、震源地ウジュンクロン北西51キロ南緯6.77度東経105.03度、深度33キロ
8月11日午前6時56分マグニチュード4.6リヒタースケール、震源地タシッマラヤ南西97キロ南緯8.15度東経107.90度、深度39キロ
ところで8月9日の強い地震が西ジャワ州・バンテン州の活断層に影響を及ぼしたために陸地での地震周期が早まるおそれがあると研究者が警告を発した。この地震は深発地震であるが規模が大きくまた海洋地殻が振動の伝播媒体となるため、大きい破壊力を持つ。そのため西ジャワ地方の活断層を活発化させる可能性を持っている。とりわけ活断層で岩盤の耐久力限界まで圧力がかかっている場合はその影響が早く出現することになる。チマンディリやレンバンなどの活断層調査はまだ十分なデータが蓄積されていないが、チマンディリ断層のずれは左に向かっており、その先端は南海岸部のグンテン湾にあって西ジャワ中央部のレンバン断層まで渡っている。バンドン工科大学測地学科の研究グループは8月9日のインドラマユ地震の影響を計るためにバリビスパガンダラン断層でGPSを用いたサーベイを開始した。続いてチマンディリとレンバン断層でもサーベイが行われることになっている。その三つの断層には既にGPS装置が設けられており、サーベイ結果は8月末に公表される予定。
ところで大規模な深発地震にもかかわらず8月9日のインドラマユ地震の被害は報告されていなかったが、震源地から遠く離れたスカブミ県南海岸部に被害が出ていたことが明らかになった。深層で起こった地震は海洋地殻を伝わって効率よくはるか離れた場所に被害をもたらした。結果的にユーラシアとインドオーストラリアのふたつのテクトニクスプレートが衝突している場所に近いエリアで海洋地殻に近い場所が最大の被害を受けたことになる。
ジャワ島北岸では深発地震の発生頻度が高い。マグニチュード5レベルの地震はほぼ二ヶ月おきに発生しており、もっと強い地震は6.1が1996年に30年周期で起こった。また7.5という記録上最大のものは40年前に発生している。深発地震の影響が強く現れるのは陥没層や堆積層であり、またマグマの活動も強まることが懸念されている。


「乾季さ中の豪雨、首都の異常気象」(2007年8月23日)
8月21日午後、首都を激しい雨が洗った。雨はおよそ30分間降り続いただけだが、排水の弱い首都の道路はたちまちその被害を蒙った。都下の全域でほぼ一様に土砂降りが起こり、随所にできた水溜りは自動車の通行を妨げ、交通渋滞があちらこちらにもたらされた。
タンジュンプリウッ(Tanjung Priok)港第1ポスト前では、排水溝がゴミで詰まったために排水が道路にあふれていたところを豪雨が襲い、道路の水没はひどいありさまとなった。東ジャカルタ市コカコーラ(Coca Cola)交差点でも立体交差工事のために排水溝の機能が停止していたところに大量の雨が降ったためおよそ20センチほどの水没となり、交通量の多いこの交差点でのろのろ運転が長時間続いた。14時ごろ水位はだいぶ下がって大人のくるぶしほどの深さになったが渋滞は継続してクラパガディンまで達した。クマヨラン(Kemayoran)・グヌンサハリ(Gunung Sahari)・マンガドゥア(Mangga Dua)でも渋滞が発生し、特にジュンバタンティガ(Jembatan Tiga)での高架下火災後遺症による都内環状自動車道の渋滞とその周辺一般道の渋滞が雨のためにさらに悪化した。タンジュンプリウッから自動車専用道をプルイッ(Pluit)回りでスリピ(Slipi)に達するまで2時間半というたいへんな苦行を多くの車が強いられた。
乾季のさなかに首都圏で19日・21日と突発的に降った強い雨は異常な暑さと風の影響を受けたものであると地学気象庁が報告した。このような雨は今週いっぱいまだ継続する可能性があるとのこと。数日前から続いている暑さのためにジャカルタ湾の海面や陸上で気温は32〜34℃に達し、大量の水分が蒸発して上空に昇っている。そのようなヒートアイランド現象はジャカルタで頻繁に起こるものであり、ジャカルタが海岸に位置しているため対流雲が作られて豪雨になったとの由。
その対流雲とは別に、首都圏ならびにスマトラの数ヶ所に雨を降らせた要因として風の影響があげられる。東から吹いてきてジャワ島西部やスマトラ島で南に湾曲する風の影響も見逃すことができない。この風もたっぷりと水蒸気を含んでいるため雨を降らせやすい状態になっており、この風がインド洋側からスマトラやカリマンタン西部に向かって吹く湿った風とジャカルタ周辺でぶつかったことで雨が強くなった。東南方向からもバンダ海の水蒸気を含んだ風がやってきており、首都圏は今たいへんな雨含みの状態になっている。
乾季の最中に起こっているこの雨模様について地学気象庁は、特に水蒸気の激しい蒸発と対流雲生成が豪雨の主要因となっており、これは首都圏の不安定な気温上昇に起因するもので人間の活動に関連する大気汚染と土地利用に関連する緑地の減少が局地的な温暖化を煽っているためだとコメントした。陸地の温度上昇のためにインドネシアの乾季雨季の転換が将来ますます異常な様相を呈するのではないかと地学気象庁は懸念している。


「クニガン地区で地面沈降のおそれ」(2007年9月13日)
南ジャカルタ市クニガン(Kuningan)地区の地下水位が2〜5メートルも低下しており、商業施設による過剰な地下水の汲み上げが原因だとして地域住民からの苦情が激しくなっている。生活用水として住民が汲み上げている浅層地下水が涸れるケースが増加しまた地面の沈下すら起こっているのはラスナサイッ(Rasuna Said)通りをはさんで建てられている商業施設・オフィスビル・ホテル・アパートメントなど多くの大型施設がその需要を満たすために大量の地下水を汲み上げているのが原因である、と水道会社統制庁役員が発言した。クニガン地区やスディルマン通り地区では大量の上水需要を抱えていながら都内の水道会社が満たしている供給量は首都総需要の50%でしかないためそれらの地区では地下水汲み上げが膨大な量にのぼっており、高層ビルの多くは深層地下水だけでは足りずに浅層からも汲み上げていることから地域住民がこれまで利用していた水が涸れ始めるという現象を促している。
ファウジ・ボウォ首都副知事はその状況に関して、地下水汲み上げは既に過剰採取のレベルに達しており地面の沈降が懸念されている、とコメントした。「都庁鉱業局はビルがどれだけの地下水を汲み上げているのかを突き止めることのできる最先端機器を調達しようとしている。ビル運営者が複数持っている井戸をひとつしか報告せず他の実態を隠してしまうためにこれまでの監督方式では有効性に欠けると判断している。ビルひとつは一日1百立米の地下水利用が認められており、それを超える分に対して土地税の形で課徴金が課されているもののこの抑制方式は正しく機能していない。2007年の監督状況は、ホテル一軒とモダンショッピングセンター一軒の井戸を過剰取水のために封印し、別のホテル一軒も同様の疑惑のためにモニター中だ。各ビル運営者は水利用について、再利用・天水浸透井、天水利用などの対策を実行しなければならない。ただ水を使ってそのまま捨てるというようなことでは駄目だ。」都庁鉱業局長はそう語っている。都議会第D委員会議長は首都の水道会社二社に対し、上水の増産をはかって供給量を早急に増やす対策を取るように、と語った。「商業施設向け供給量を増やせば一番高いタリフが適用できるのでビジネス効果は高いはずだ。」との弁。


「クバヨランラマでも地下水枯渇」(2007年9月14日)
南ジャカルタ市ポンドッキンダ(Pondok Indah)地区から北上する幹線道路スルタンイスカンダルムダ(Sultan Iskandar Muda)通り北部一帯をカバーするクバヨランラマウタラ地区で、これまで何年も使ってきた井戸の水枯れ現象が広がっている。2006年の長かった乾季も何の問題もなしに乗り越えた井戸がここ4ヶ月ほど前から水位の低下や水枯れに直面しており、数百世帯がその被害を蒙っている。住民のほとんどは豊かで澄んだ地下水の恩恵を享受してきたために水道を引いている家庭はあまりない。それが地下水の入手に困難を蒙るようになったことから住民の多くはスルタンイスカンダルムダ通り沿いにある公衆トイレに水を求めて日参するようになり、毎朝公衆トイレに容器を提げた群集の長い行列ができるようになっている。しかし公衆トイレの水も出方が細いために容器を満たすのに時間がかかり、住民は水を得るために苦難の日々を送っている。
クバヨランラマウタラ地区第7字長はこの現象が今年4月から着工されたガンダリアメインストリート建設工事に関係していると見ている。住民の井戸(揚水ポンプ)は25〜30メートルの深さだが、地下水枯渇が建設工事の開始とともに始まった点を字長は指摘する。ガンダリアメインストリートはガンダリア地区に6万平米のスーパーブロックを建設するプロジェクトで、そこには高級アパート、ホテル、ショッピングセンター、オフィスビルなどが建設される予定になっている。中でもスーパーブロックのベースメント建設のためにデベロッパーは地下水汲み出しを行っており、住民が利用している地下水がその影響を蒙ったのは間違いないとして住民はデベロッパーに対し責任を求めているものの、デベロッパー側はコンサルタントが分析した地下水汲み出しの影響予測を盾にして住民の抗議を拒否している。コンサルタントの分析によれば、地下水汲み出しがプロジェクトエリアの西側百メートル先にある住宅地区に影響を与えることはなく、南側で1メートルほどの水位低下が引き起こされるだけであるとのこと。地下水減少はガンダリアメインストリート工事開始のはるか以前から首都で一般的に発生していることがらであり、同プロジェクトとの直接的関連性はないために補償はできない、とデベロッパー側は住民に対して主張している。


「今年の雨季入りはもっと先」(2007年10月30日)
10月に入ってから首都圏では雨が多くなっており、必然的に曇天時間も増えているために年齢のせいか寒い夜に震えることも起こるようになった。しかし地学気象庁の言うところでは、雨季はまだ始まっていないそうだ。
インドネシアの2007年雨季入りは平均して20日ほど遅れるだろう。降雨は赤道の北側で平常以上、南側で平常以下という異常気象が起こっており、これは赤道付近の太平洋とインド洋の海面温度が平常期から逸脱しているのが原因だ。10月26日、地学気象庁R&Dセンター長官がそう発表した。
太平洋赤道海域の海面温度が高くなるラニーニャ現象は2008年2〜3月ごろまで継続すると見られており、結果的に赤道北側でのこの先3〜4ヶ月間の降雨量を増加させる。一方赤道南側のインド洋では双極モードポジティブ現象のためにインドネシアに近い海域で海面温度が低下しており、蒸発が抑えられて高気圧になっている。スマトラからジャワ・バリ・ヌサトゥンガラの島々南側では0.5〜1.0℃ほど海水温が平常より低目で、昨年の気象状況と類似のものが再現されている。風はインド洋のさらに西側にある海水温の高い場所に向かって吹き出しており、インドネシアの赤道南側では降雨が低目になっている。しかしこのような気象はあまり長続きせず、1〜2ヶ月経過すれば大きく変動する可能性が高い。そのような気象状況にテクトニクス性・火山性地質活動による表面温度上昇が影響を加えていると考えられており、気圧や温度の異状が起こりやすくなっているとの懸念が強い。
2007年9月の降雨は全国的に概して平均もしくは高めだった。しかしバンテン・ジャカルタ・西ジャワ州西部・中部ジャワ・東ジャワ・マドゥラ・アチェ北部・南スマトラ南部・ランプン・南カリマンタン南部・中部スラウェシ東部・東南スラウェシ南部・南スラウェシ南部・バリ・西ヌサトゥンガラ・東ヌサトゥンガラ・北マルク北部・マルク南部では雨が少ないという状況になっていた。10月の降雨は赤道北側で増加するものの、バンテン・ジャカルタ・西ジャワ東部・中部ジャワ・東ジャワ・ランプン・南スラウェシ南部・マルク西部・バリ・東西ヌサトゥンガラ・パプア南部では貯水量がさらに低下するだろう。地学気象庁はそう予報している。


「北ジャカルタ市で高潮による浸水」(2007年11月2日)
北ジャカルタ市海岸部で2007年10月29日、潮位が異常に高まったために海水が陸上に浸入してタンジュンプリウッ(Tanjung Priok)、パドゥマガン(Pademangan)、ムアラバル(Muara Baru)など一部地区を水浸しにした。夜明けごろから始まった浸水は場所によっておよそ50センチの深さに冠水して水溜りを作り、住民生活に障害を引き起こした。REマルタディナタ通りは海面から1メートル前後しか高くなく、潮位が上がったために排水口から逆流して陸地に侵入してきた。陸水を海に流し込むためのそれら排水口はほどんどがゴミ・泥・砂で詰まっており、海水はすぐに陸上に広がって行った。インドゥストリ2通りはマルタディナタ通りとの交差点からドックに向かっておよそ2百メートルが海水下に没した。
浸水がもっともひどかったのはムアラバル港と低所得層密集住宅地区で、潮位は0.8〜1メートルまで高まりプルイッラヤ(Pluit Raya)通りから港に向かうオートバイ・バジャイ・ピックアップなどの小型車両は通行ができなくなった。グドゥンパンジャン(Gedung Panjang)通りから港までの5百メートルほどのエリアを埋めている密集住宅では大人の太もも辺りまで水没し、多くの住民が生計の糧を得ている港に出かけられないありさまとなった。海水は12時から13時にかけて引き、午後には水溜りもなくなった。


「風が吹けば木が倒れる」(2007年11月7日)
ジャカルタに雨の季節がまたやってきた。この時期の雨は強風を伴うことが多く、街路樹や立ち木の枝が折れたり樹木自身が倒れるといった事故が頻発する。都庁公園局は雨が始まる前に街路樹のよく茂った枝を切り落として風雨に揺さぶられる負担を小さくしようとするのだが、例によってこのような公共的性格の作業はよく目立つ場所でのみ忠実に行われるもののマージナルな場所ではほとんど無視されるという慣習が何十年も昔から続けられており、先例主義の国民文化はブレークスルーが起こりにくい土壌を形成している。
11月1日夕方南ジャカルタ地区を襲った風雨はチルドゥッラヤ(Ciledug Raya)通り・イスカンダルムダ(Iskandar Muda)通り・スペノ(Supeno)通り、そして南ジャカルタ市庁の前を通るプラパンチャ(Prapanca)通りで倒木を発生させた。それらはすべて街路樹であり、木が倒れる方向によって道路がふさがれたり電線が切れたり、あるいは建物に損壊を与えたりする。道路がふさがれれば数時間にわたって通行不能による渋滞が発生し、電線や電話線が切れたら停電や通信不通が起こる。さらにそのせいで交通信号機が機能を停止すればその周辺地区一帯は交通麻痺状態になる。
倒れる木の多くはアンサナ(angsana)で、この樹は成長が早く大きい枝ぶりのために街路樹として選ばれたそうだがその反面もろく折れやすいという欠点を持っている。オルバ期の開発の波に乗って道路建設が進められる中でアンサナがあちこちに植えられてきた挙句にそのほとんどが老木となったいま、もろさ・折れやすさは従来よりもはるかに高まっていると言える。おかげでレフォルマシ時代に住んでいるわれわれはオルバの軽挙の迷惑を社会生活の中で存分に蒙っているのだと町内の有力者は物語るのだが、レフォルマシ時代の今でも先見の明の感じられない方針決定はいくらも行われているようにわたしには思える。それはさておき、南ジャカルタ市公園局によれば市内10郡のうち倒木発生の可能性がもっとも高いのはクバヨランラマとクバヨランバルであるとのこと。


「インドネシアでも気象異変」(2007年11月16日)
インドネシアを含む東南アジアに長期にわたって干ばつをもたらす太平洋のエルニーニョ現象が徐々にインド洋に浸透しており、はじめての企画として2007年11月12〜19日に実施されているインドネシア=中国海洋学術調査隊がその現象を究明するためのデータ収集に乗り出した。「最近はインド洋でエルニーニョに類似の現象が起こっており、エルニーニョもどき(El Nino Modoki)と呼ばれている。インドネシアの北部では水害が起こっているのに南部では干ばつになるという最近の気象はそれに起因しているようだ。エルニーニョもどきはインド洋東部の乾燥気団が西に向かって移動するときにインドネシアを横断することで発生している。今現在インドネシア北部は太平洋のラニーニャ現象の影響を受けており、長期間にわたって雨天が続いている。インドネシアの大部分は雨の季節に入ったが、2008〜2009年の乾季はラニーニャが徐々に弱まる一方でエルニーニョもどきは継続するだろうから異常に長引くかもしれないことに警戒しなければならない。インド洋東部で海水温が低下し高気圧を発生させるエルニーニョもどきがどうして起こっているのかはまだ解明されておらず、その謎に挑むためにインドネシア=中国海洋学術調査チームが今回この調査航海を行う。」学術調査隊隊長はこの企画の主目的についてそう説明した。
このエルニーニョもどき現象は従来からインド洋双極モード現象として知られていたもので、双極モードポジティブ現象の場合海水は東から西に向かう。最近はポジティブ現象とラニーニャが同時に発生するというこれまで稀にしか起こらなかった状況が出現しており、明らかに気象異変を感じされるものだ。最後にそれが起こったのは1967年で、今から40年も昔になる。インドネシア=中国海洋学術調査隊は海洋漁業省漁業海洋調査庁が企画したもので、技術実用研究庁の調査船バルナジャヤ3号が使用される。調査隊はプラブハンラトゥ南海域にひとつ、またカリマタ海峡に三つ、深度2千メートルの深海ブイを設置して水流・水温・海藻などの観測を行うことにしている。この調査隊には中国から10人インドネシアから10人が参加して観測を進めている。


「風が吹けば広告塔も倒れる」(2007年11月19日)
2007年11月14日午後、突風を伴った雷雨が首都圏を襲った。この日の風はそれまでにも増して強力だったらしく、都内の要所に設けられた超大型広告塔3基が倒壊した。人的被害を出したのは南ジャカルタ市ブロッケム(Blok M)に近いCSW交差点の広告塔で、倒壊時に道路を通行中のブルーバードタクシーを直撃したために車両は大破し乗っていた運転手と乗客の計三人が重傷を負ってプルタミナ病院に運び込まれた。ホテルインドネシア前ロータリーに設けられていた数十メートルの広告面積を持つ巨大広告塔も突風のために道路側に倒れ、通りかかったニューコンコードタクシーのエンジン部分を直撃したことから車両は中破したが人的被害はなかった。南ジャカルタ市スティアブディのカレッ(Karet)市場に設置されてあった大型広告塔も倒れて食品ワルンと電話ワルンを破壊したがこちらも人的被害はなかった。しかし広告塔が倒れる際に電線を切断したためそのエリア一帯はその日夜中まで停電が続いた。それ以外にも中央ジャカルタ・東ジャカルタ・南ジャカルタの数十箇所で小型の広告塔や看板あるいは道路標識などが吹き飛ばされた。
タングラン市カラワチではベッド用スプリング製造工場のトタン屋根が吹き飛ばされて近隣民家の屋根に落ちたため、15軒の民家の瓦屋根が損壊して穴が開く事態となった。都内では26本の樹木が倒壊し、中には道路を塞いで交通渋滞を引き起こしたところも少なくない。南ジャカルタ市トゥベッ(Tebet)の倒木を避けて多くの自動車が都内環状自動車道に入ったためグロゴル〜チャワン区間はのろのろ運転が継続してその日の退勤交通に影響を及ぼした。首都近郊鉄道のマンガライ駅交通管制設備は落雷を蒙り、列車運行モニターができなくなったために3時間にわたって70便の運行がストップした。
このような強風を伴う強い雷雨は局地的に発生する普通の天候であり、不均等に起こった強い日射のために地表水の激しい蒸発が限られた区域で積乱雲を作り、上空に溜まった水蒸気が雷と豪雨を地表に降らせるという現象で降雨の際に強風を誘う場合が多い。この天候は10〜30キロ平米ほどの広さでしか発生せず、そのため1〜2時間程度で天候は回復する。このような天候は今年12月初旬まで継続するだろうと地学気象庁は予報している。


「ジャワ島は1月まで少雨」(2007年12月6日)
過去数週間、ジャワ島で降雨が盛んになったのはクルッ(Kelud)・スメル(Semeru)・アナクラカタウ(Anak Krakatau)などの火山活動によって大気中に排出された微小煙霧質が凝結を促進して雨を降らせたからであり、基本的にジャワ島は雨の少ない気象状況になっている。それはジャワ島周辺海域の海面温度が平常より0.3〜0.5℃低下しているため海水蒸発が平常より少なくなっていることが原因であり、スマトラ南部・バリ・西ヌサトゥンガラでも状況は似たようなものだ。今年の雨季はそのため雨が少な目でこの気象状況は2008年1月まで継続すると推測される。一方赤道の北側地域ではラニーニャの影響を受けて降雨は平常より多くなっている。またフィリピン北部で発生した熱帯性暴風の影響でインドネシアの雲が少なくなっていることも最近の気象をもたらしている原因のひとつだ、と地学気象庁はこの雨季予報を発表している。


「この雨季は例年より多雨」(2007年12月31日)
2008年1月2月の降雨は過去30年間(1971〜2000年)の平均降雨量を上回るものになりそうだ、との予報を地学気象庁が発表した。西スマトラ・ブンクル・バンテン・ジャカルタ・西ジャワ・中部ジャワ・ジョクジャ・東ジャワ・バリ・南カリマンタン・北スラウェシ・南スラウェシの各州は1月2月の間、水害に十分警戒するようにとのこと。地学気象庁の予測によれば、2008年1月は全国の半分の地方で降雨量が月間150〜200ミリに達し、2月にはそれが全国一律に拡大する。3月には月間50〜100ミリの平常値に戻るがラニーニャ現象は4月ごろまで継続するものと見られている。
2008年1月第3週には、大型大気団が衝突する熱帯間収束帯がジャワ島上空にできた場合朝から昼まで豪雨が続くおそれがある。2007年初に大洪水が発生した際にはきわめて強い熱帯間収束帯がジャワ島上空で観測された。赤道周辺の気圧パターンは不安定なために収束帯も固定的でなく、時には赤道の北と南にふたつ発生することもある。2007年クリスマス前後に発生した強風と時化で全国的に海上陸上で被害が出たのは東ヌサトゥンガラ南のインド洋に発生したサイクロンに育ちうる強い低気圧のせいで、3〜7メートルの高波がスマトラ西岸をはじめリアウ〜ジャワ海〜スラウェシ一帯で荒れ狂った。バリ〜ヌサトゥンガラ諸島南の海域は大気団が衝突して旋風が生まれる場所であり、それが引き起こす強風波浪はこの時期特に警戒を要するものだ。2008年1月はじめにはナトゥナ海、ジャワ・バリ・バンダ、アラフラ海、ロンボッ海峡で2.5メートルほどの高波が生じ、1月いっぱいは4メートルを超えて海上が荒れるおそれがある。3メートルを超えるとすべての船にとって航行が危険になることから、関係者は十分に警戒しなければならない。地学気象庁は海上活動関係者に対してそう呼びかけている。


「年頭の水害はメラニーの影響」(2008年1月12日)
オーストラリア大陸とジャワ・バリ・ヌサトゥンガラの列島にはさまれたインド洋海域はこの時期、熱帯性低気圧の孵卵場と化す。2007年12月28日から発達したサイクロン「メラニー」は1月1日に弱まって消滅するまでインドネシア全域に豪雨、波浪、強風を撒き散らしてスマトラ・ジャワ・カリマンタン・ヌサトゥンガラ一帯に洪水と地滑り、そして暴風の被害をもたらした。今年のサイクロンが例年以上の豪雨をもたらしているのは、2007年12月11日以来マッデンジュリアンオシレーションがアクティブになっていて通常サイクロンは西進するところその影響で逆向きに動いているために西方インド洋の湿った空気が大量に吸い寄せられているのが原因であるためらしい。例年は2月ごろまでこの海域で続々とサイクロンの卵が孵化することから、インドネシア全土は継続的に自然の猛威にさらされることになる。特にいま活性化しているマッデンジュリアンオシレーションは3月ごろまで継続することが見込まれており、サイクロンの「しっぽ」がかかった地方では大雨の被害が繰り返される可能性が高い。地学気象庁のデータによれば、12月にその海域で発生するサイクロンはひとつだが、1月から2月にかけては3〜4回作られるとのこと。
ジャワ島南北の海とスマトラ南西海からマカッサル海峡〜アラフラ海一帯の海は時化が続いており、漁民の多くはこの時期出漁を取り止めるために日銭が稼げず困窮が甚だしくなる。ジャワ島南岸はスンダから東部ジャワにかけて時化と暴風雨のため漁村が壊滅し、住民が行方不明になることが昔から繰り返されてきた。ひとびとはそれをニャィ・ロロ・キドゥルに結びつけて言いならわしている。
海が荒れて困るのは漁民だけではない。海洋国家インドネシアの海上交通は国内の動脈路でもある。海を通る人や貨物の移動はこの時期所要日数が大幅に増加する。困るのはエネルギー問題で、国内諸地方へタンカーを使って行なわれている石油燃料供給や、カリマンタンの石炭を発電燃料に用いているジャワ島各地の発電所でタイミングが狂えばガソリン不足、停電の発生も起こりうるためだ。


「プティンブリウン」(2008年1月15日)
2008年1月8日、ジャワ・バリ南部のインド洋にまた新しいサイクロン「ヘレン」が誕生した。ヘレンの尻尾はシンガポールまでかかっており、サイクロンは通常西進してインド洋沖合いに消えていくのだが、今年はマッデンジュリアンオシレーションのために逆方向に動いているためサイクロン「メラニー」のようにインドネシア各地で大雨による災害が繰り返されることが懸念されている。
雨季のこの時期に特徴的な気象のひとつとして、インドネシア語でputing beliungと呼ばれる竜巻現象がある。この竜巻はインドネシア東部にも西部にも襲来し、島嶼部の漁村が襲われて何軒もの家屋が破壊されるという災害はほとんど毎年発生している。これはこの時期に赤道の北と南で大きな気圧差が生じるのが原因で、特に冬場の中国大陸の高気圧とオーストラリア大陸北側とジャワ・バリ・ヌサトゥンガラ列島にはさまれたインド洋の低気圧が極端な気圧差を作り出すためそれによって北から吹き込んでくる大気の流れとヌサンタラ各地の複雑な気象がからみあって局地的な旋風を生み出す現象であると説明されている。各地の漁村がこのプティンブリウンに襲われる場合は、海上で吹き荒れていた風が陸地に上陸したあと、その上陸地点一帯を動き回って近辺の漁村に大きい被害を出すというパターンが多い。
ところでインドネシアで天気予報を行なっている機関は地学気象庁で、それ以外には国家航空宇宙院も折に触れて予報を行なうことがある。ところが地学気象庁の天気予報能力は84時間先までであり正確度は30%だとされている。先進国では10日先までの天気予報を知ることができ、その正確度は90%となっているのに比べて段違いの格差がある。地学気象庁は天気予報能力が劣っていることを認めており、その能力強化のために予算を10倍増にして観測機器の増強を図っている。しかし赤道周辺の気象は高緯度地域よりも条件が複雑であるため先進国レベルに達するのは容易でないとも語っている。特にインドネシアは太平洋とインド洋というふたつの巨大な海にはさまれた地域にあり、このふたつの海は地球の気象ダイナミズムの駆動力であることからすぐそばでそれらの強い影響を受けるインドネシアの気象変動はきわめて予測が困難であると世界の気象学者も語っているとのこと。


「首都水没」(2008年2月4日)
2008年2月1日金曜日。首都圏で前夜から降り始めた雨は、激しい勢いこそなかったものの終日降り続いたことで全都に麻痺をもたらした。首都5市では35町に散らばる130地区で地面や道路が20〜100センチの深さに水没したために首都圏住民の多くは家屋内浸水の被害を受け、また道路の水没は人や物資の移動をストップさせる結果をもたらした。住民の日常生活は非日常性に塗り替えられ、経済活動は停止して巨額の社会損失をもたらすことになった。
地学気象庁によれば2月1日0時から15時までの都内の降雨量は171ミリに達したとのことで、ジャカルタ大水害を生じさせるに十分大きい雨量だったと都庁公共事業局水利次局長は述べている。スマトラ島南部からジャワ島西部一帯にかけて雨雲形成は継続して起こっており、今後も大量の降雨がその地域に発生する可能性は高い。ジャボデタベッ(Jabodetabek=Jakarta,Bogor,Depok,Tangerang,Bekasi)地域を局地的に見ても一面に白から灰色の雨雲が盛んに形成されている。北西から南東に流れている雨雲は西から東へと移動していてジャカルタへ流れ込む川の上流で大量の雨が降るおそれが高く、都民は当分の間警戒を続ける必要がある。今年の雨季はインドネシア南方インド洋海域で風向きを西から東に向けるマッデンジュリアンオシレーションが発生しているためインドネシア西部地方での降雨が例年より多くなるおそれが強い。地学気象庁は気象状況をそのように解説している。
雨季には必ず浸水するプタンブラン(Petamburan)・カンプンムラユ(Kampung Melayu)・ビダラチナ(Bidara Cina)・チャワン(Cawang)・プトゴガン(Petogogan)・チピナンムアラ(Cipinang Muara)などでは2月1日に水深が1メートルに達した。都内の目抜き通りであるスディルマン(Sudirman)〜タムリン(Thamrin)通りでも場所によって40センチも冠水し、車両の列はスナヤン(Senayan)からタムリンを超えてハルモニー(Harmoni)更にグロドッ(Glodok)まで達して数時間をほとんど身動きできない状態のまま過ごした。トランスジャカルタバスはブロッケム(Blok M)〜コタ(Kota)間第1ルートだけが運行できたが、他のルートはすべて道路冠水で朝から運行を取り止めており、ハルモニ乗換え停留所は来ないバスを待つ乗客が歩道橋まであふれた。第4・5・6・7ルートは16時半から運行を再開したが、第2・3ルートは終日運行不可能だった。
首都中央部を横断する東西交通の要であるガトッスブロト(Gatot Subroto)通りでもパンチョラン(Pancoran)からグロゴル(Grogol)方面に向かう車がスマンギ(Semanggi)で停滞し、それが解けるまでおよそ3時間を要した。この交通渋滞はチトラランド(Citraland)前の道路が水没したため。都内環状自動車道では、一般道が水没した結果あちこちの料金所で二輪車の通行が許可されたために、ほとんど動かない四輪車の間を縫って時ならぬ二輪車の編隊が駆け抜けていくという珍事を目にすることになった。
ジャカルタの空の玄関スカルノハッタ空港も、スディヤッモ(Sediyatmo)自動車道で80センチまでの冠水のため一般車両が通行不能となり、空港へのメインアクセス路が失われた。一方喧伝されていたタングラン(Tangerang)経由の代替路も、道路改修工事はほとんどできていないところへ多くの自動車が集中したために激しい渋滞が発生している。また空港構内でも多くの場所が深い水底に没したため、構内道路交通は一時期完全に停止した。空港施設も第1第2滑走路の双方で浸水が発生し、視界が平常の6百メートルから3百メートル未満に狭まったこともあって、スカルノハッタ空港は緊急閉鎖された。午前7時から閉鎖された空港は10時に一度閉鎖解除されたが、11時に再度閉鎖されて15時に再開された。閉鎖された間航空機の発着は停止したため、国際線国内線233便がその影響を受けた。到着便54便が代替空港への着陸を指示され、179便で運行延期が行なわれた。代替空港に移されたのは、ジャカルタのハリムプルダナクスマ(Halim Perdanakusuma)空港が15便、パレンバン(Palembang)12便、スマラン(Semarang)6便、スラバヤ(Surabaya)17便、シンガポール4便となっている。空港再開は15時を過ぎてからだが、20時にスカルノハッタに到着した便の乗客は、たくさんの到着便がタクシーウエイに数珠繋ぎになったことから機外に出ることができたのは23時を過ぎてからだったと語っている。
首都近郊電車もカンプンバンダン(Kampung Bandan)・アンチョル(Ancol)・パドゥマガン(Pademangan)で17センチまで線路が冠水したため154便が運行をストップしている。ジャカルタ〜タングランでの諸所の浸水によって電力会社PLNは999ヶ所の変電所で送電を停止した。各変電所は2〜3百軒の電力利用者を持っており、一般家庭・商店・事務所などがこのため停電となった。多くの商店や事業所は停電のためにビジネス活動の停止を余儀なくされている。20時には4百ヶ所の変電所で送電が再開された。
スディルマン〜タムリンの出水はプルイッ(Pluit)貯水池に、ムルデカ(Merdeka)広場一帯の出水はクルクッバワ(Krukut Bawah)川に排水され、ポンプは順調に動いていたと公共事業局水利次局長は語っている。東ジャカルタ市のいくつかの住宅地区でも出水に見舞われ、チピナンインダ住宅地では午前9時から家屋内への浸水が始まり、ピーク時には水深が1メートルに達した。ファウジ・ボウォ都知事は首都を麻痺させた水害の状況を重く見て、2007年に首都水害対策として排水路改修工事を行なった業者を呼び集め、工事のミスを追及して改善工事を命ずることにしている。


「洪水難民と空港難民」(2008年2月6日)
ヤン・ピーテルスゾーン・クーンが1619年にジャヤカルタの街を征服するはるか以前にそこへやってきたオランダ人水夫は街のありさまを、「およそ二千世帯、約一万人ほどいる原住民の住居は竹と竹編み壁で造られたもので、沼地の上はもとより地面の上であっても、高潮や雨季の冠水に備えて立てられた竹の柱の上に建築されている。」と書き残している。クーンはその街を征服して住民をすべて街の外へ追い払ったあと、王宮をはじめ原住民の住んでいた家屋を打ち壊して平らにならし、そこにアムステルダムのようなオランダの街を作った。その街に高床式の家屋は作られず、地面からあまり離れない位置に木や石あるいはタイルの床を貼った。雨季の洪水対策としては、たくさんの水路や運河を作ってその排水能力を維持するというコンセプトが取られたようだ。そうであってすら折に触れてバタビアの街が水没するという事態は起こっている。
バタビアの街を水没させる要因は三つあり、ジャカルタ湾の高潮、バタビアに降る豪雨、そしてボゴール丘陵に降る雨でバタビアの河川が氾濫するというのがその三パターンだった。今でも「ボゴールからの送り物(kiriman dari Bogor)」という言葉は人口に膾炙している。20世紀に入って蘭領東印度政庁はバタビアの外から入ってくる水を街中へ入れないようにするためにバンジルカナル(Banjir Kanal)構想をまとめて工事にかかった。そうして西バンジルカナルが建設され、その片割れだった東バンジルカナルが次の建設目標とされたところで日本軍の侵攻〜インドネシアの独立という変化が起こり、バタビアの街の水害対策構想は中途半端のまま幕引きとなる。それから半世紀の時間をあけてインドネシア政府は今その東バンジルカナル建設工事に着手しているが、住民立退き問題に手を焼いて工事はあまり進展していない。
一方、水路や運河だらけだったバタビアがジャカルタと名前を変え、独立戦争も終焉して平和な時代がやってきたあと、地方部から首都へ続々と人の移住が始まった。急激な人口増を消化するためにオランダ人の作った水路や運河の多くは埋め立てられる結果となり、おまけにメンテナンスという概念が文化の中に確立されていなかったために水路に最大限の排水能力を持たせるというコンセプトはおざなりにされた。これが毎年雨季になると必ずいくつかの地区が水に浸かるジャカルタという街の横顔の後ろに貼り付いているストーリーだ。
この雨季も昨年来から多くの地区で浸水があり、洪水難民が発生している。都下の各市が難民キャンプを用意することもあるが、その恩恵から洩れた地区の住民たちは近くの小高い場所の道端や線路、あるいは墓地に避難し、そして今年はバスウエーのバス停までもが避難所にされた。難民キャンプでは市庁が差し入れてくれる食事や医薬品が手に入るが、その恩恵から洩れた住民たちは道路を通る車に寄付を求めて生き延びざるをえない。一方、アッパーミドル層向け開発住宅地も浸水するところがあり、そこの住民はたいてい水が引くまでホテル住まいをする。だから首都圏が洪水に見舞われると中級ホテルの客室需要が急騰する。タングラン市の洪水難民の一部はスカルノハッタ空港界隈のホテルに陣取った。そうして2月1日の首都水没でスカルノハッタ空港が一時閉鎖され、航空会社関係者や航空機乗客の一部がスカルノハッタ空港界隈のホテルに殺到することになった。空港で生まれた難民と洪水難民が奇しくも同じホテルで鉢合わせするという事態が起こったのである。
2月1日の空港閉鎖で航空会社各社の運行スケジュールは大混乱になった。空港閉鎖が解けた後、各航空会社は運行を再開したものの、冠水して通行不能となった空港自動車専用道を避けてタングラン市内一般道経由で空港に達した乗客やスカルノハッタ空港で乗り継ぎ便を待つ乗客たちは航空会社からの案内がほとんどないため空港内で難民と化すことになった。市内を抜けて空港西側にあるM1ゲートに向かう車が集中したことでタングラン市内のあらゆる道路は渋滞となり、また空港への行き先表示も一切設けられていないために多くの車が道に迷って渋滞を悪化させる結果になった。ゴロンタロから助産婦研修でジャカルタに来た51人の学生が宿舎を2月2日の午前1時半に出た後空港自動車道で前途を阻まれ、タングラン方面に迂回して午前9時5分に空港に到着したが飛行機は9時に出発したために難民になってしまったというニュースはマスメディアをにぎわした。他にも乗り遅れ乗客が大量に発生し、空港運営会社は航空会社トップに乗客の航空券焦付きは起こさないことを約束させたものの、航空会社現場職員は通常のごとくチェックインに遅れた乗客の航空券を軒並み焦げ付かせ、航空券を買いなおさなければ乗せないという対応を展開した。これは政府上層部の指令に従わない公務員とまったく同じパターンだ。空港で発生した数千人にのぼる難民たちは、空港内食堂も空港への陸上輸送路が大混乱をきたしているため食材補給が遅々としており、航空会社も飲食物提供にそこまで手が回りきらないために空腹を抱えることになった。空港難民も洪水難民に劣らず悲惨な目に会っている。


「インドネシアにもUFOはたくさん」(2008年3月18・19日)
インドネシア人の中にもUFOを見たというひとがいるし、エーリアンにさらわれてからまた地上に戻された、と語るひとがいる。ただし一般的なインドネシア人にとってUFO現象は、ほとんどあらゆるインドネシア人が信じている超常怪異現象つまり妖怪変化のたぐいと理解されることから、ごく一部のひとびとを除いてこの概念はまだ市民権を得ていない状況であると思われる。
さてUFOは妖怪変化ではなくもっと科学的なものだと主張するそのごく一部のひとたちがサークルBETA−UFOを編成してUFO関連報告を集めており、さまざまな報告がかれらの手元に集まってきているのはこのひとびとが運営しているネットサイト(www.betaufo.org)を見ればよくわかる。ちなみにUFOに対応する日本語は未確認飛行物体と言うそうだが、インドネシア語はBenda Terbang Anehでこれを縮めてBETAと呼んでいる。この言葉の名付け親は1960年代に国家航空宇宙院長官を務めたRJサラトンで、かれは当時UFO現象に興味を抱いてデータを蓄積したものの継続しなかった。BETA−UFOは2008年2月29日から3月23日までスラバヤで展示会を開催しているので、スラバヤ在住で興味のある方は訪問してみるのもまた一興。展示会タイトルは「Pameran Lukisan & Foto UFO」で場所はSupermal Pakuwon Indah - Jl Puncak Indah Lontar No.2 Surabaya - Koridor Utama lantai LG となっている。
かれらのサイトに掲載されているUFO目撃報告をいくつか紹介すると、2008年1月31日夜9時ごろ、南ジャカルタ市メガクニガンのべラジオマンションの方角でオレンジ色を発する飛行物体がまるでトンボのように垂直方向と水平方向の移動を行っているのを路上のオートバイから見たというものや、2008年2月7日の日中にバンドンのバリ通りで至近距離の飛行をしているUFOを会社の窓から見てハンディカムで録画したというもの、2008年1月19日の20時半ごろ西ジャカルタ市クンバガンの西ジャカルタ市役所近くを走っていた一家三人乗りオートバイの子供が夜空に赤色点滅灯を中心に四つの黄色光を放つ飛行物体を指し示し、その物体が奇妙な動きを見せたというもの、1月9日13時ごろ西ジャカルタ市タナアバンの陸橋の上でB737ほどの大きさの翼のない葉巻型飛行物体が飛んでいるのを友人と一緒に目撃したが、この報告者は類似の形態の飛行物体をその日17時ごろに南ジャカルタ市マンパン地区でも目にし、また別のおりにはバンドンでも目撃している。ボゴールに住んでいるその報告者の友人も葉巻型UFOを別のおりに見ているというもの、2008年1月9日夜8時過ぎごろに南ジャカルタ市ジャガカルサの自宅で夜空を赤い光点がふたつ前後に並んでゆっくりと動いているのを目にし、1月12日20時ごろにも同じ状況が繰り返されたがそのときは二つの赤い光点が前回よりも離れていたというものなどさまざま。
インドネシアにUFO研究同好会「BETA−UFO」が発足したのは1997年10月26日のこと。その10周年を記念して昨年末にはSatu Dekade Perjalanan Komunitas BETA-UFO Indonesia Melacak Fenomena UFOと題する書籍が出版された。このサークル発起者のひとりヌル・アグスティヌス41歳は、「インドネシアにUFO出現は相当に多いと思われるがデータがたいへん限られており、また政府機関もこの問題に興味を示していない。」と語る。そのためにUFO現象を科学的に取り扱おうとするインドネシア唯一の団体がこのBETA−UFOとなった。UFOに関する情報を求める国内の諸方面からBETA−UFOに投げかけられる問い合わせも増えている。このサークルは会員のためのメーリングリストも運営しており、beta-ufo@yahoogroups.comのメンバーは2008年1月19日時点で596人に達している。
スラバヤ在住の心理学者ヌル・アグスティヌスは1997年にUFOを目撃し、その年にBETA−UFOを発足させた。しかしそれがかれの動機だったのでなく、幼いころから宇宙に大きな憧れを抱いていたヌルにとってそれは契機として作用した。80年代にインドネシアで数多く出されたUFOやエーリアンに関する翻訳書籍にかれは没頭した経験を持っている。BETA−UFO発足に関係してこのサークルの牽引役を務めているひとたちもいる。バンドン出身のITデザイナーであるバユ33歳もそのひとり。かれはいまバンドン工科大学に在学中で、同大学のサイトにbeta-ufo@itb.ac.idというアドレスを開き、広く興味あるひとたちに呼びかけてUFO情報を収集している。バユは1986年に自室の窓からUFOを見たそうだ。ほかのメンバー、ガトッ・トリ31歳は頻繁にエーリアンと接触した経験を持っている。2000年から2005年の間、かれはほとんど毎日エーリアンと接触し、あるときは拉致されてエーリアンの飛行機内に連れ込まれたそうだ。かれはそのころUFO現象に関する知識をほとんど持っていなかったために自分の体験が何であるのかよく理解できなかったが、BETA−UFOと出会ってその内容を理解することができ、いまではこのサークルの熱心な活動家になっている。


「今年の乾季は湿った乾季」(2008年3月28日)
2008年の乾季予報を地学気象庁が発表した。ことしの乾季は湿った乾季になる見込みであり、全国的に乾季となるのは2008年7月とのこと。地学気象庁は全国を220の季節ゾーンに分割しており、それぞれのゾーンが乾季や雨季に入るタイミングは異なっていて広大なインドネシアが一斉に季節変化を起こすわけではない。この季節ゾーンというのは雨季と乾季のモンスーンパターン転換が同一時期に起こる地理的区画で、行政区域とは関係がない。予報によれば、2008年3月に乾季入りするのは東ヌサトゥンガラの3ゾーン、4月に乾季入りするのはジャワ・東西ヌサトゥンガラとバリの56ゾーン、5月はジャワの大半とスラウェシ・パプアの70ゾーン、6月はスマトラの68ゾーン、7月はカリマンタンとスラウェシの22ゾーンで、7月までに1ゾーンを残して全国的に乾季となる。東南スラウェシ州コラカ地方が唯一8月に乾季入りするゾーンだ。
気象学的にインドネシアの乾季と雨季の交替は東方から乾季が始まって西に移って来、雨季は西から東へと広がっていく。そのためにインドネシア東部地方は西部に比べて乾季が長いという特徴を持っており、ジャワやスマトラなどのインドネシア西部地方はその反対に雨季が長い傾向にある。
地学気象庁情報データシステム担当デピュティは、今年の乾季は過去二年の乾季に比べて雨が多い、と語った。これは太平洋赤道海域がラニーニャ現象のために海水温の低下を引き起こしているためで、平常から1.5℃ほど低い水温は今年7月ごろに平常状態に回復するだろうと見込まれているとのこと。雨が多目だとはいっても全国的に平均して降雨があるというものではなく、風土的な乾燥地区は平年並みもしくは早目の乾季入りと平年以下の降雨量に襲われる可能性もある。東部ジャワ州のPacitan, Magetan, Trenggalek, Malang, Mojokerto, Jombang, Blitar, Pasuruan, Probolinggo, Ponorogoや中部ジャワ州のRembang, Patiなど北海岸部、西ジャワ州のKarawangやInderamayu、東ヌサトゥンガラ州はManggarai, Belu, Timor Tengah Selatan, Timor Tengah Utara、 スラウェシではGorontaloやPaluなどで平年以上の乾燥が懸念されている。一方、雨季の終わりは地面の傾斜が36度を越えている場所で地滑りの危険が増大するため、山麓の住民は警戒を強めるよう地学気象庁が呼びかけている。この雨季は特に降水量が多かったために地中の含水量が増加しており、雨季が終わるまで更に含水量が上昇すれば土地の崩落する危険度はいや増しに高まっていくことから、各地で土砂崩れが発生する可能性が高いため山麓部住民は特に警戒が必要とのこと。


「ジャカルタ沈没」(2008年4月1日)
何千万年もの長期にわたる地形変化がジャワ島の姿を移り変わらせてきた。特に顕著な現象はジャワ島北海岸部の沈降で、今現在でさえ地表の沈下と海岸の浸食作用によって海岸線は南に向かって移動を続けている。その一方、ジャワ島南部は数百万年前から海底隆起がはじまっており、かつての海底はいまや石灰質の丘となって南部海岸地方に横たわっている。石灰丘に鍾乳洞ができるのは知らぬひととてない自然現象であり、ジャワ島南部一帯には人跡未踏の鍾乳洞も少なくない。「このような自然の変化の実態を通してわれわれは実際的な問題を観察しなければならない。たとえばジャワ島北岸部は自然災害に直面しているということをベースに置いて建設や人間ビヘイビヤを考察するというように。」インドネシア科学院地球地質災害専門家はそう語る。地殻変動による沈降と狭い視野でエゴイスティックに行われている人間の営みに地球温暖化がもたらす海面上昇が加われば、ジャカルタ沈没は一個の宿命と化すにちがいない。
ジャカルタ地区は地表が年間2ミリの速さで沈下していると言われている。その激しい沈下スピードは首都で続々と建設されている高層ビルの影響が大きく、ビル自体の重さによる沈降に加えて大量の地下水汲み上げが地中の空洞化を促すことから、地表面の沈下スピードはいや増しに加速されている。ガジャマダ大学地質技術学教官も同じ趣旨を物語る。「1〜2千万年前からジャワ島南部は隆起を続けている。それがジャワ島北部における沈下とどのように関わっているのかあるいはいないのか、それを実証することはきわめて難しい。それはともかくとして、今われわれが最善の努力を尽くせるのは北部の沈下を遅らせることであり、そのために地中の地層が下がるのを極力食い止めなければならない。地下水を汲み上げれば地中に空洞ができる。引力作用のためにその空洞は上にある地層によってふさがれる。つまり上にある地層が下がってその空洞をふさぐのだ。ジャワ島北岸街道の道路破損が激しいものになっていて自動車の通行に支障をきたす状況になっているのは、道路構造の問題もさることながら浸水すると膨張する傾向にある粘土質の土壌という地質学的要素も影響を与えている。粘土質の土壌は乾燥すると収縮し、水を含むと膨張する。この性質のために土地が動き、そこに建設された道路を破壊するのだ。」地質技術学教官はそのように説明している。


「首都圏で乾季の雨」(2008年6月24日)
乾季の只中にあるジャカルタとその周辺地区で降雨が見られたのは季節外れの風向きがもたらしたものだ、と地学気象庁が発表した。スマトラ島南部・ジャワ・バリから東ヌサトゥンガラに至る地域はこの時期、南にあるオーストラリアから吹いてくる乾燥した風の影響を受けるのが例年のパターンになっているというのに、今月初旬は南東からでなく東の太平洋から湿った風が吹き込んできており、それがジャワ島西部で北に向きを変える際に水分凝縮が起こって首都圏の雨となった、と地学気象庁R&Dセンター長は説明した。しかしバンドン工科大学地学研究プログラム主幹によれば、首都圏での時ならぬ雨は局地的な空気の対流が原因ではないかとの見方を示している。ジャカルタ周辺の陸地と海面では最大2〜3℃の温度差が生じており、空気の対流が起こって雨雲が形成される。陸地が高温になるのは工場や人間の諸活動で排出される二酸化炭素が過剰なために植物の吸収能力を超えているのが原因だと同主幹は述べている。


「1万7千の島々は白髪三千丈」(2008年7月8日)
名前を持たない島が大量にあることから、政府は領土内のすべての島に名前をつける地形名称標準化作業を続けてきた。インドネシアには17,508の島々があるというのが公式データとされてきたが、そのデータは1987年にインドネシア政府が国連に報告したもので、それは国連が求めたのでなくインドネシア政府がそれまでの公式データである13,667島に対する変更として宣言したものだった。しかしその1987年に政府は国内の名前を持つ島が5,707しかないことを把握しており、すべての島に名前を付ける必要性があるために地形名称標準化作業が進められてきたわけだ。作業国家チームは2005年からサーベイを開始し、2007年中盤までに6州で4,981島の名称標準化を行った。更に2008年6月までには25州で8,172の島が標準化されており、あとはアチェ・バンテン・東ヌサトゥンガラ・西カリマンタン・南カリマンタン・東カリマンタン・南スラウェシなど8州を残すだけとなっている。この状況から既に、17,508の島という数字は現実的なものでないことが十分に推測され、実際はそれよりはるかに少ないものに落ち着くだろうと作業国家チームは述べている。この作業結果は2012年に国連に報告される予定になっており、数年後には本当の数が明らかにされるにちがいない。


「今年の乾季は厳しそう」(2008年7月15日)
今年の乾季は干ばつが激しくなりそうだと地学気象庁が予報した。インド洋東海域にあたるスマトラ島西の海では平常より0.5℃ほど温度が低く、反対にインド洋西のアフリカ東岸の海は温度が0.5℃ほど平常より高くなっている。その温度差は今後9月10月あるいは11月ごろまでそれぞれ1.0℃程度に広がって行く可能性が高く、この気象状況はインド洋双極モードポジティブと呼ばれるパターンであり、インド洋の湿気を含んだ空気は西に引き寄せられていくためインドネシア側には雨が降らない。
そのため赤道南側のインドネシアでは全般的に10月ごろまで厳しい乾季に覆われ、特にインドネシア西部地方では激しい干ばつに見舞われることになりそうだ。スマトラ島南部・ジャワ・バリ・ヌサトゥンガラの降雨は平常より40〜60%減少するものと予想され、5月末から既に始まっている干ばつは8〜9月にピークを迎えるだろうと地学気象庁は予報している。


「雨季に関する公式予報」(2008年9月24日)
地学気象庁は2008/2009年公式雨季予報を出した。それによれば、赤道南側のジャワ島やその他の地区では2008年9月に強い雨は発生せず、そのエリアは10月中旬になってから雨季入りするだろうとのこと。
現在赤道南側の海面温度は北側より低く、10月中旬ごろまではたとえ激しい雨が降ったとしても長時間にわたることはない。しかしそれは洪水や土砂崩れの恐れがまったくないという意味でなく、各地の状況如何で自然災害が発生する可能性を否定することはできない。赤道南側が雨季に包まれるのは2008年12月に入ってからになる、と地学気候気象庁長官が公表した。
2008年12月初旬には強い雨がランプン〜ジャワ〜バリ〜西ヌサトゥンガラ〜東ヌサトゥンガラを襲いはじめると予測される。全国220に区分された季節ゾーン別の雨季入り予報では、2008年9月にスマトラ島北部・リアウ・ジャンビ北部・西スマトラ東部・ブンクル東部・バンカ西部・アチェ東部など11ゾーンで雨季が始まる。続いて2008年10月には220ゾーンの37%、11月には42%が雨季に入り、残ったゾーンも12月には雨季となる。1971〜2000年の30年間の記録を見ると、雨季入りが平年通りの年と遅れた年の二種類がある。また雨量も平年並みの年と少ない年があるとはいえ、いずれにせよ雨季のピークは1月終わりにやってくる。雨季ピーク時の雨量は全国的にだいたい平均しているとのこと。


「なぜ夏時間を実施しないのか?」(2008年10月6・7・8日)
世界は球体をなしており、24時間ほどで一回転する。つまり15度が一時間に対応しているわけだ。地球はロンドン市内のグリニッチを通る経線が経度ゼロとされたため、そこから東向きを東経西向きを西経としてそれぞれが180度に区切られた。更に経度ゼロがグリニッチ標準時(GMT)とされ、東向きは15度ごとに+1、西向きは15度ごとにー1という時間表示が行われるようになった。このため東経105度近辺にあるシンガポールもジャカルタもGMT+7というタイムゾーンに入るわけだが、現実にはそうなっていない。
ジャカルタの午前6時は夜が明けているというのに、シンガポールの午前6時はまだ真っ暗だ。反対にシンガポールは19時ごろまで明るいが、ジャカルタは18時前に日が暮れる。ところが世界地図を見ればよくわかるように、シンガポールはジャカルタよりも西にあるのである。この矛盾を解く鍵はシンガポールがGMT+8というタイムゾーンを採用していることにあり、シンガポールがそうした理由はアジア最大の金融市場である香港の活動時間に合わせるためというものだったにせよ、それは同時にエネルギー節減効果を持つ夏時間採用という世界の趨勢に合致するものでもあった。
DSTいわゆる夏時間システムというのは第一次大戦後高緯度の国で普及し始めたもので、夏の日照時間が長い季節に時計の針を一時間進めるというシステムだ。人間の生活時間においては夜が短くなるためにそれだけ電力消費が減るというトリックになっている。ニュージーランドの公的データによれば、夏時間によって電力消費は3%低下し、ピーク時間の電力負荷も5%軽減されている。アジア諸国を見ると、多くの国でDSTシステムに傾斜している姿が感じられる。韓国はGMT+8とGMT+9の境界あたりに位置しているが、GMT+9を採用して日本と同じ時間帯になっている。マレーシアもシンガポールも地理的にはGMT+7にあるにもかかわらずGMT+8にしている。この議論はエネルギー節減とその方策のひとつであるDSTシステム採用に関わるものだが、電力危機下のインドネシアでこの問題はどうなっているのだろうか?
インドネシアは日本軍政期に全土が日本時間に合わされた。つまりGMT+9が採用されたわけだ。独立後は6つの時間帯に分けられたが、イリアン解放闘争が勝利に終わったとき、国土は三つの時間帯に整理された。そして1987年に行なわれた西カリマンタンと中部カリマンタンが西部時間帯に、バリが中部時間帯に移されるという微調整を最後にして今日に至っている。現在のインドネシアの三時間帯はシンプルな地理的原理に従って15度=1時間の原則を忠実に守っている姿になっている。
世界の多くの国はそのシンプルな地理的原理や生活慣習面での心地よさを乗り越えて、自国にメリットをもたらす時間システムを採用している。インドネシアがそのようなあり方に追随したところで国際社会のどこからも批難されるようなことにはまったくならない。それらの地理的原理と異なる時間帯を採用している国々についてスラバヤのアイルランガ大学研究者は、学術的あるいは自然な生活における快適感といったことよりも政治・経済・社会・文化・軍事・保安などの要素が決定要因になっていると分析している。電力危機の渦中にあって製造業界や商業界の大口電力消費者に対する消費制限をやっきになって行っている政府はどうしてこのDST案に取り組もうとしないのだろうか。国有電力会社PLN内部からでさえそのような声は上がっているのである。
国内最大の電力消費地であるジャワ島と二番手のスマトラ島、つまり時間帯で言えばインドネシア西部時間帯をDST原理に従ってインドネシア中部時間帯に入れてしまおうというアイデアがそれだ。そうすればGMT+7時間帯はGMT+8となってシンガポール・マレーシアと同じになる。更に問題がなければインドネシア東部時間帯GMT+9をもGMT+8に統合して全国単一時間帯にすれば、時差があることで発生している国民の社会・経済・政治生活における非効率も解消されることになる。ロシア、アメリカ、中国など東西に長く延びた国土を持つ国でさえ経度15度=1時間という原理に従って時間帯を細かく分割してなどいないではないか。
しかし国民生活に大きな影響を及ぼすこのような政策に関してインドネシア政府はどうやら消極的であるようだ。DSTは先に述べたように、時計の針を一時間進めさせて朝まだ暗いうちから国民に活動を始めさせようとする。そうしてまだ日の明るいうちに仕事を終えて夜を待つ。国民の生活サイクルは変わらないので、国民が一日の疲れでベッドに入る時間は日没から数えて短時間となり、電力消費は低下する。PLN内の一部階層が出してきたこの提案に対して技術研究担当国務相は次のようにコメントした。
「この提案は電力エネルギー節減を盛り込んだ興味深いものではあるが、分析されているアスペクトがまだ不十分だ。社会政治面や文化面での検討がもっとなされる必要がある。政府は時間帯変更に関わる社会政治面でのコストが電力節減効果より大きいと見ており、その実施は今のところ考えられない。」
政策実施を費用対効果で計るのは当然であるとはいえ、具体的なその想定数値を大臣は一言も述べていない。政府の国民生活に関わる節電政策はこれまでのところ個人大口消費者に対する料金値上げと掛け声ばかりであり、あとはせいぜい巡回停電を広報しておいて市民が節電すれば回避できると交換条件を出し、その場限りの節電を行なわせるくらいのことしか行なわれておらず、政府の国民に対する政策はきわめて及び腰であるという印象を拭えない。
私見で恐縮だが、ジャカルタ近辺ではマグリブのアザンを合図に住宅の外部灯を点ける家庭が多いように見受けられる。マグリブは一日5回の礼拝時間のひとつで、丁度日没時間に当たる。しかし日没時間にいきなり暗くなるのは山間の盆地など限られた地域だけで、ジャカルタのような平地では日没後10分以上残照があってまだ明るいのが普通だ。つまりマグリブのまだ外がかなり明るい時間に多くの家庭が一斉に屋外灯に点灯するということが国民の間で行なわれているのである。あれだけ電力消費抑制を叫んで産業界に矛先を向けている政府がなぜこのような国民の電力浪費を放置しているのか理解に苦しむところであり、どうやら政府は金持ち層でない一般国民に対して節電の矛先を向ける意思を持っていないのではないかという勘ぐりがDST政策否定発言に重なってくるように思えてならない。そうしてやはり、政府が大多数一般国民に対してその生活習慣を変えさせるような政策をほとんど実施したことがなく、国民に対する甘い人気取り政策が連綿と続けられてきたという歴史にもわが思いは重なっていくのである。


「灼熱のジャワ島」(2008年10月17日)
ここ一週間、ジャカルタ一帯はうだるような猛暑の毎日が続いている。その前は曇り勝ちの毎日で、都内のあちらこちらでかなりの降雨があった。乾季から雨季への移行期にあたっている今、天候が不安定なのはまだしも、暑熱に炒られる日々を苦情する地元民の声は高い。
この高温はいわば天然の理である、と地学気象庁R&D部長は言う。それは太陽の軌道が赤道の南側にやってきているためで、太陽光線が真正面から浴びせかけられているため熱効率は最大になっている。普通は高温が海水の蒸発を促して雲を作り、降雨によって地上と大気が冷やされるという循環が起こるために猛暑はやわらげられるのだが、ジャワ島周辺海域は水温が低いために蒸発量が抑えられており、雲があまり作られない状況になっている。これがジャワ島の猛暑の原因だ、と部長は解説する。
インド洋双極モードがスマトラ西方海域に高気圧、アフリカ東方海域に低気圧を形成していることからインド洋の水蒸気を含んだ大気団は西に向かって流れており、インドネシアは大気が乾燥した状態になっている。インドネシア東部地方だけはラニーニャが活発なために海水の蒸発は盛んだが、スマトラ〜ジャワ〜バリ地域はその影響の外にある。
6月〜9月の間インドネシアの北に位置していた熱帯収束帯は今や南に下ってきており、インド洋双極モード高気圧との関連でスマトラ島南部東海岸に雨がもたらされている。先週メダンとランプンに降った多量の雨は、東風と西〜東南風のぶつかり合いによって生じたもので、広範に長時間に渡って多量の降雨がもたらされた。一方、ジャワ〜バリ〜東西ヌサトゥンガラでは東風と北東風の衝突するところで降雨が起こっている。この雨は局地的な豪雨だが長時間続かないもので、激しい突風を伴っている。しかし猛暑のために降った雨はすぐに乾く。今週一杯、このような気象状況が継続するだろう、と地学気象庁は予報している。


「倒木はバンジルに劣らぬ強敵」(2008年11月3日)
猛暑の日々がジャワ島を炒り焦がしたあと、先週は首都圏をほとんど毎日雨が襲った。おかげで暑熱はやわらいだものの、各所で路上冠水のため交通の足取りがまるで地を這うような勢いに変わり、おまけに倒木が道路をふさいで交通事情がますます悪化する事態を迎えた。激しい雷雨と突風は乾季から雨季への変わり目につきものの天然現象で、古来からの年中行事である。
首都ジャカルタに植わっている立ち木5百万本の30〜40%はこの時期の雨と風で倒れる潜在性を持っている、と首都公園局長は言う。特に10〜15%は激しい風雨に耐えられず容易に倒木と化す危険をはらんでいる。この「特に」という札が付けられた樹木は、高さが8メートルを超え、茂った葉を持つ枝が幹から遠くまで張り出し、そして幹自体が脆くなっている、といった条件を持つものだ。首都公園局は例年街路樹の刈り込みを行っている。今年も2ヶ月ほど前から要所要所で広がった枝を切り落とす作業が行なわれているが、この作業は徹底して行なわれるということがない。局長によれば、作業機材や予算に限りがあるためだ、とその事情を説明している。
都内の街路樹でメインを占めているのがangsanaで、これは学名がPterocarpus indicus、業界呼称でアングサナ、和名はインドシタンあるいはインドカリンといった名前だそうだが、インドネシア語発音に従ってアンサナと呼んでおこう。アンサナは成長が早く枝葉が早く生い茂り、二酸化炭素対策に効果的という理由で1975年ごろから街路樹としてたくさん植えられるようになった。スディルマン通りにはアンサナの巨木が並んでいる。ところが数十年の間に成長しきって脆くなったそのアンサナの幹がいまや都内各所で公園局の頭痛を招いているところだ。都内にはアンサナと同じ理由で選ばれた次のような樹木が植えられている。
mahoni いわゆるマホガニーで学名はSwietenia marcophylla
tanjung 学名Mimusops elengi
trembesi 学名Pithecellobium saman
sawo kecik 学名Manilkara kauki
bintaro 学名Cerbera manghas
都庁公園局長によれば、都内5市それぞれで倒木の発生しやすい地区は次の通りだそうだ。それらのエリアを通る際には前もって迂回路を考えておくのが良いだろう。
中央ジャカルタ市 メンテン地区
北ジャカルタ市 クラパガディン地区
西ジャカルタ市 クバヨランラマからダアンモゴッに至るパンジャン通り
東ジャカルタ市 イグスティグラライ通りとバスキラフマッ通り
南ジャカルタ市 アンタサリ通りとTBシマトゥパン通り、チプテ地区、ラディオダラム地区、チランダッ地区


「またジャカルタ水没か?!」(2008年11月12日)
2008年10月中旬の猛暑を過ぎてからは、首都圏はほとんど連日の降雨となって本格的な雨季入りを感じさせている。さっそく都内の道路は冠水と突風による倒木で、道路混雑と交通渋滞はひどくなる一方だ。今回の雨季に関する予報を地学気象庁が出した。
2008年12月から2009年3月まで首都圏の降雨量は増大し、特にピークとなる1月2月には月間降雨量が400から450ミリに達すると見込まれることから、首都水没が繰り返される恐れが高いとのこと。中でも都内12郡は水害発生の可能性が高いので、住民と行政機関はその対応をはかるように、と同庁は警告している。水害発生の恐れが高い都内12郡とは下の通り。
南ジャカルタ市: クバヨランバル(Kebayoran Baru)、マンパンプラパタン(Mampang Prapatan)、パサルミング(Pasar Minggu)
西ジャカルタ市: チュンカレン(Cengkaren)、グロゴルプタンプラン(Grogol Petamburan)、カリドラス(Kalideres)
東ジャカルタ市: チラチャス(Ciracas)、チパユン(Cipayung)、クラマッジャティ(Kramat Jati)、カンプンムラユ(Kampung Melayu)
北ジャカルタ市: クラパガディン(Kelapa Gading)、パドゥマガン(Pademangan)
モンスーンと山岳部に近いという要因から降雨量が大きくなるために地学気象庁はジャカルタ南部での水害発生の可能性が高いとの見方を取っている。ではジャカルタ北部は災害の確率が小さいかというとさにあらず、ジャカルタ湾の潮位に影響されて起こる水害もあるために北の方が出水がないと考えるのは間違いだ。ましてや海岸沿いのジャカルタ北部ではプティンブリウン(puting beliung)と呼ばれる竜巻の襲来にも警戒しなければならず、危険要因には事欠かない。地学気象庁によればこの時期プティンブリウンの発生する確率はかなり高く、このつむじ風は発生してから猛威をふるうまでが比較的短時間でまた移動方向が予測しにくいことから、プティンブリウン災害の予報が気象予報機関にとっての大きい課題となっている。
プティンブリウンは朝と夕方、強風を伴う短時間の土砂降りがあったときに発生しやすいので、そのような気象状況の際には警戒するよう地学気象庁は呼びかけている。


「年末から1月末までジャワ島は悪天候」(2008年12月29日)
クリスマス〜新年にかけての気象状況はあまりよくないことを地学気候気象庁が予報した。ジャワ島では1,002ミリバールの低気圧によって北向きに多量の雲が流れ、インド洋からの季節風が太平洋西岸の湿った空気とぶつかりあって雨を降らせる。これが西風の季節と呼ばれる現象で、このためジャワ海では波高3〜4メートルの大波が発生し、船舶航行を困難にする。この気象は1月末まで続き、降雨量は平地部で月間400〜600ミリ程度だが山間部では6,000ミリという大量の雨となるため、この時期は地滑り山崩れの危険がきわめて高くなる。
中部ジャワ州ではクドゥス・ドゥマッ・スマラン・バタン・プカロガン・プマラン・トゥガル・ブルブスなどの北海岸部やトゥマングン・マグラン・ウォノソボ・バンジャルヌガラ・バニュマス・ソロ・スコハルジョなどの中央高地部で400ミリを超える雨量が予測されるため、平地部では洪水、高地部では土砂崩れに警戒するよう住民に呼びかけている。中でも12月24日から1月上旬にかけては街道の交通量が増加することから、それらの災害による交通障害の発生には特に気をつけるよう警告している。
一方ジャワ島とスマトラ島を隔てているスンダ海峡は、クリスマス〜新年にかけての長期休暇に強い風雨と雷が頻繁に発生する懸念が高いため、こちらも劣らず警戒が必要だ、と地学気候気象庁が予報した。12月いっぱいは、それほどの雨量を伴わない雷雨が昼間強い風とともにバンテン州一帯を襲い風力は時速12ノットに達する。しかし夜に入ると風は衰え、雷はなく、雨が長時間降る。強風はティモール島とオーストラリアの間の海で発生した熱帯性低気圧が原因で、そのためスンダ海峡は1.2から2メートルの波が立ち、このためムラッ〜バコフニ間フェリーは高速艇の運航ができずRORO船のみに頼ることになる。高速艇は波高が0.75メートルを超えると運航休止となるため、この時期は動かないことのほうが多くなる見込み。
首都圏一円も類似の状況で、2008年12月29日から31日夜にかけては大雨が予測されており、大晦日の夜に首都圏郊外に遠出をする予定のひとは十分な警戒が必要だとの予報が出されている。この天候は首都圏だけでなく全国的にほぼ似通ったものになりそう。首都圏の2009年1月の雨量はあまり大きいものになりそうにないものの、2月にピークがやってきて3月まで衰えないので、その時期は水害対策に留意するよう地学気候気象庁は警告している。


「ここ当面は全国的な悪天候が続きそう」(2009年1月15日)
2009年1月11日以来全国的な雨風波の悪天候をもたらしていた熱帯低気圧シャーロットの勢力が1月13日やっと弱まった。オーストラリア北西のインド洋にできたこのサイクロンによってインドネシアは全国的に厚い雨雲に覆われ、また沿海部では4〜5メーターの高波が立ったために海難事故も発生した。
シャーロットによる悪天候はほとんど全国を覆ったために雨が広い範囲に分散され、局地的豪雨の発生は免れたものの、それでも各地に水害や土砂崩れの被害がもたらされている。シャーロットの弱まりによって悪天候の峠は超えたものの、この先まだ特定地域で風雨波浪の急変が起こる可能性があるため、地学気候気象庁は1月13日に住民や交通機関は十分警戒するよう呼びかけた。リスクの高いのはスマトラ島南部・西カリマンタンと中部カリマンタンの南部・南カリマンタン・西スラウェシ・中部スラウェシ南部・南スラウェシと東南スラウェシ・中部マルク・東南マルク・中部パプア・東パプア南部・ジャワ島北部西部・バリ・ヌサトゥンガラであるとのこと。この状況は1月19日まで継続する可能性がある。また現在はビアッ(Biak)とマノクワリの北方海域で風向パターンが海流に渦を発生させる形になっており、局地的な悪天候が発生する可能性を秘めていると付け加えている。
毎年1月から2月にかけてはオーストラリア北西のインド洋でひと月2〜4個の熱帯低気圧が発生するピーク期に当たっており、アジア大陸の高気圧から大気の流れを引き寄せるためそれがまき起こす風によって上空や海上での交通に危険がもたらされ、また厚い雨雲が大量の雨を降らせて土砂崩れや水害を国内各地にもたらしている。シャーロットの勢いが弱まった辺りにまた別の低気圧が発生しており、地学気候気象庁は今週はじめの天候がまだしばらく継続する可能性を予測している。特に海上の荒れは4メートルを超える高波が南シナ海南部・アラフラ海・カリマタ海峡・ジャワ海西部・スラウェシ南部海域・バンダ海東部で続くだろうと予報している。


「雨季のピークがはじまる」(2009年2月5日)
地学気候気象庁が2月の予報を公表した。首都圏では1月末から降雨のピークがはじまったとのこと。2月第一週は連日首都圏一円で広範囲な降雨に襲われる。全面的に同じ程度の降雨に見舞われるが、特に夜間の雨量が大きく、朝昼は小雨や曇天が続く。この天候では雷の発生は少なく、また突風もあまり吹かない。都民が特に警戒する必要があるのはボゴールやプンチャッに降る大雨で、チリウン川やチサダネ川を通って下流に流れ、首都圏を通ってジャカルタ湾に至る。そのため、その流域で川の水位が上がり、出水のリスクが高まる。もうひとつの要因はジャカルタ湾の高潮で、2月9〜13日の週に満月が訪れるため潮位が高まり、海水の陸地側への浸水や陸地での降雨と合わさって洪水のリスクが上昇する。
海で全国的に警戒が求められているのはジャワ海の2〜4メートルという高波で、特に西部海域でうねりが強く、漁船やバージ船の航行は危険が大きい。ジャワ海からバンカブリトゥン島海域にかけて沖合いは荒れるが海岸に近付くに従って波は低くなるため、海岸部での海遊びにはあまり不安を抱かなくとも良い、と地学気候気象庁はコメントしている。
ところで都庁は洪水警戒警報のために『洪水指標』を南ジャカルタ市トゥベッ(Tebet)のクボンバル(Kebonbaru)に設置した。ここはチリウン川の流域に当たり、流水量が堤防を越えれば周辺一帯は水没する地区だ。洪水指標とは色を塗った2メートルほどの柱で、1本は堤防の壁、1本は堤防の上、もう1本は道路脇に立てられ、その色でもって周辺住民に洪水警報を示すというアイデアにもとづいている。チリウン川の水位が50センチになれば緑色の洪水指標が立てられ、住民は貴重品を高い場所に移して保全を図ることが求められる。水位が1メートルになれば黄色の洪水指標が立てられ、住民は幼児・妊婦・老人・病人を安全な場所に避難させなければならない。水位が2メートルに達するとオレンジ色の柱になり、家が二階建てでない住民は家から避難することが求められる。さらに2メートルを超えると青色の柱となり、全住民は家を後にして避難しなければならない。そして最悪の赤色の柱になると、指定地区での住民の活動は一切禁止される。


「公認国土アトラスが発行された」(2009年2月13日)
1938年にオランダ植民地政庁が作成して以来、インドネシア共和国で作られたことのなかった政府公認インドネシアナショナルアトラス(Atlas Nasionl Indonesia)が2009年2月5日に公式発行された。2007年から2008年にかけて国土地理測量統括庁(Bakosurtanal)を中心に省外政府機関が共同で制作を進めてきたこのアトラスは全三巻が予定されており、今回2009年2月5日に完成公開されたのは第一巻だけ。
この第一巻は地形と自然環境を中心テーマとしており、気候・地形・火山・海洋・地表土・洪水土砂崩れ津波などの自然災害・自然保護地区などがその内容をなしている。図版・写真・表あるいは衛生写真も多数含まれ、地形図の大半は百万分の一スケールでたいへん見やすいものになっている。ただこの書籍は新聞紙二つ折り程度の特大サイズになっており、手軽に持ち運ぶわけにはいかない。
2009年中の完成が予定されている第二巻と第三巻については、第二巻が天然資源、第三巻は歴史・文化・デモグラフィなどが中心テーマとされている。国土地理測量統括庁はこのナショナルアトラスの内容を電子化して同庁のウエッブサイトに掲載する予定。
2月5日にお披露目された第一巻は各省庁政府機関、大使館、教育機関、全国県庁に配布されることになっている。このアトラスの入手を希望する場合はバコスルタナル情報サービスセンター(Pusat Jasa dan Informasi Bakosurtanal)あるいは電話番号021−8764613に問い合わせるようバコスルタナルは案内している。


「乾季への移行期が始まった」(2009年3月20日)
ここ数日、ジャボデタベッ地区からバンテンに至る地域で、灼熱に炒られては強風を伴う豪雨に見舞われるという激しく天候が変化する日々が続いており、炎天下に戸外に出た住民の中に頭痛や目の疲労を訴える者が増えている。地学気候気象庁はそれが雨季から乾季に移行するこの時期の典型的な特徴であると説明している。ジャボデタベッ地区北部はこの移行期が4月末まで続いてから乾季に突入するが、南部では5月に入るまでこの気象が続くとのこと。
雨季に雨をもたらしていた西風はかなり弱まってきており、今週は気温が34℃まで上昇した。しかしジャボデタベッ地区で34℃というのは特に異常な高温というわけでもない。日中首都圏で特に猛暑を感じるのは、湿度・太陽熱放射・盛んな地表水の蒸発といった局地的条件が加わったためであるとのこと。それらの局地的条件は積乱雲を作り出す条件そのものであり、そのため午後遅くなってくるとかんかん照りから一転して上空が真っ暗になり、強風を伴う土砂降りが襲ってくる。場合によっては雹が降ることもあるが、この夕立は1〜2時間で終わる。
雨季から乾季への移行期には西から北に向かって吹き抜けていた風が南からの風に変わり、インドネシアでプティンブリウン(puting beliung)と呼ばれる竜巻の発生する可能性が高まる。普段の平均風速は毎時20キロだが海岸部では30キロが普通で、それが40〜50キロにまで強まると被害をもたらすことになる。


「地下水をやめて上水道に替えれば景品が当たる」(2009年3月31日)
地下水利用者にとって、都内の7地域で今年の乾季に水不足に陥るおそれが高いエリアがある、と都庁生活環境局都市活力資源経営環境悪化防止課長が表明した。その7地域とはプロガドン(Pulogadung)、マトラマン(Matraman)、トゥベッ(Tebet)、ドゥレンサウィッ(Duren Sawit)、パサルミング(Pasar Minggu)、チラチャス(Ciracas)、パサルボ(Pasar Rebo)で、それらの地域では地下水位が地表から16メートル以上低下すると予測されている。そのほかにクンバガン(Kembangan)、クブンジュルッ(Kebun Jeruk)、タナアバン(Tanah Abang)、メンテン(Menteng)、スネン(Senen)、チャクン(Cakung)の6地域では海水浸透のために淡水が得られにくくなっている。
住民の使っている揚水井戸は平均12メートルの深さしかないため、乾季に地下水位が16メートル以上下がれば水不足が起こるのは間違いない。また海水混入が始まっている6地域も、乾季に淡水が減少すれば海水浸透が盛んになるだけに揚水井戸から得られる水を生活用水のメインにしない対応を住民は考慮しなければならない。この現象の原因は地表の雨水浸透緑地面積が建物やコンクリート・アスファルトの舗装で覆われて減少しているのが筆頭要因だ。
都民の地下水利用はこれまで深さ40メートルまでの浅層地下水を揚水ポンプで汲み上げる、インドネシア語でsumur borあるいはsumur pantekと呼ばれる方式によるものが一般的であり、その取水パイプは平均して12メートル前後の深さになっている。季節によって8〜16メートルという地下水位レベルになっているエリアはたいへん深刻な状況であり、4〜6メートルから8〜12メートルの間を変動するエリアも深刻な状況に移行するのを十分警戒しなければならない。
都庁は都民の地下水利用を減少させる方針を立てて上水道普及の推進を行なっているものの、PTアエトラアイル管轄地区上水道利用者37万8千戸のうち15%は地下水を生活用水のメインにしているようで、それらの利用者はひと月10立米程度しか上水道を使っていない。PTアエトラアイルは上水道利用契約者の地下水利用を減らすために今年景品付きの促進プログラムを実施する計画とのこと。


「4月いっぱいは夕立の毎日が続きそう」(2009年3月31日)
首都圏からジャワ島一帯にかけてここのところ夕方に雨が降るという天候が続いており、この状況は4月一杯続いて5月にやっと乾季に入るだろうと地学気候気象庁が公表した。午前中はかんかん照りだが、午後に雲が広がり夕方には強風を伴う雷雨が1〜2時間続くというこの天候は、今のような季節の変わり目には普通に起こることだと地学気象庁大気クオリティ気候分析課長は語る。「雨雲の形成を妨げる要素がなく、水蒸気の発生は大量ではないが十分盛んであり、雨雲は上空の高い位置に達する。氷点下のラインを超えるまで上昇することがあり、雲の頂点と底辺の温度差によって強風が生じる。温度差が大きければ大きいほど風力は強くなる。また雷も生まれ、上空で水蒸気が結晶すれば雨となって降って来るが、時には氷の粒のままで地表に達することもある。しばらく前にジャカルタ一円で起こった雹はそのせいだ。ジャワ島以外でも同じような天候は、スマトラ南部・マカッサル・カリマンタンの南部と東部・バリなどで起こっている。赤道の南側は概して夕立が多い。」
地学気候気象庁は全国を220の季節ゾーンに分割しており、それぞれのゾーンが乾季や雨季に入るタイミングは異なっていて広大なインドネシアが一斉に季節変化を起こすわけではない。この季節ゾーンというのは雨季と乾季のモンスーンパターン転換が同一時期に起こる地理的区画で、行政区域とは関係がない。だから乾季が始まるのは4月5月6月7月と幅広く分かれている。3月に乾季に入るのはバリ・西ヌサトゥンガラ・東ヌサトゥンガラにある8季節ゾーンだけで、反対に南カリマンタンのコタバルは乾季入りがもっとも遅く8月だ。スマトラ・ジャワ・スラウェシの季節ゾーンは多くが4月に乾季入りし、カリマンタン・マルク・パプアは5月になる。今年は平年に比べて乾季入りが早い季節ゾーンが西ジャワ北海岸部・東ジャワ・バリ・東西ヌサトゥンガラにあり、長くなる乾季に備えるよう地学気候気象庁は警戒を呼びかけている。


「タムリン通りの地面沈降は継続中」(2009年4月13日)
首都ジャカルタの中心部タムリン通り界隈では地面の沈下が進んでいる。サリナデパートのあるサリナビルでは2〜3センチ沈降しているのに加えて裏口の商品納入所で床面の傾斜が激しくなっているとのこと。サリナビルの向かいにあるムナラエクセクティフは20センチも沈んでいる由。都庁鉱業局によれば、タムリン通り〜スディルマン通り〜クニガン(Kuningan)地区一円は過去8年間で20〜40センチも地表面が低くなったと報告している。
サリナビルでは裏口の床が壊れたもののビル自体の強度は問題ないそうだ。しかしムナラエクセクティフ建物管理責任者は、地下水位の低下によって地面が沈降した結果ビル内の階段が宙ぶらりんになったためにレンガで隙間を詰めている、と語っている。「ビル建物自体は大丈夫だが、このまま放置するわけにいかない。海水の浸透が激しくなってくると建物を支えているコンクリート土台に悪影響が生じるから。」
都庁はこれまで多量の地下水を汲み上げて使用していた都内のビルに対する地下水利用規制を厳しくする方針を固め、地下水利用課金の大幅アップを行なうことにしているが、サリナビルもムナラエクセクティフも既に地下水の汲み上げは行っておらず、水道水の利用に変更した、と説明している。


「いよいよ乾季入り」(2009年4月30日)
数キロの範囲で短時間の猛雨が降り、プティンブリウン(竜巻)が限られた地域を暴れまわる。そんな天候がジャワ島のあちこちで起こり始めた。ここ数日、ジャカルタの諸所でも散発的な激しい雨が降り、モナス公園の木が倒れ、枝が折れるという被害が出たのがその一例で、これは雨季が終わって乾季への移行期に入ったことを示すものだと地学気候気象庁が公表した。
プティンプリゥンを伴うそのような気候は局地的な現象で、限られた範囲で起こる温度上昇が引き起こす局地的な収束が原因だ。このような端境期におこる猛雨は雷と突風を伴い、30分から1時間という短時間に終わって長く継続しない。この現象のプロセス進行はたいへんスピーディだ。ジャワ島とスラウェシ東南部がこの端境期に入っており、首都圏では乾季入りが北部で5月上旬、南部は5月下旬から6月上旬にかけてになる見込み。
インドネシアの雨季から乾季への季節移行は風向きの変化にも見ることができる。いまは風が東から西に吹き、スマトラの西方海上でアジア大陸に向けて北上している。このパターンはモンスーン東風からモンスーン西風への移行期に特有のものだ。この時期には、インドネシア南方インド洋でもインドネシア北方太平洋でも熱帯低気圧の発生が見られない。乾季に太陽が北半球に移ると、パプアニューギニア北方海域で熱帯低気圧が作られ、フィリピンを経て韓国や日本へと北上して行く。インドネシアでその影響を蒙るのは北スラウェシだが、インドネシア海域には強風と波浪がもたらされる。
全国の降雨状況は、赤道南部地域の雨量が減少しはじめていることを示している。ラニーニャはあまり強力でないものの、今年半ばごろまで影響が続きそうだ。5月にはバンテン・中部ジャワ西部から東ジャワ東部の北海岸部・バリ・ヌサトゥンガラにかけて雨量が減少し、アチェ中部・西スマトラ全体・西ジャワ・バンテン・ジャカルタ・中部ジャワの西部と中部・スンバワ西部・カリマンタン中部から南部にかけての雨量が平年以下になりそう。


「今年は長い乾季になりそう」(2009年6月25日)
過去数年間優勢だったラニーニャが弱まり、エルニーニョの影響が強まりはじめた。1997年インドネシアに長い乾季をもたらし、全国各地で地上水は涸れ、スマトラやカリマンタンの泥炭地での森林火災が相次ぎ、インドネシアを世界第3位の温室効果ガス排出国に押し上げたのは当時強まったエルニーニョのせいだ。
エルニーニョは太平洋東側の海面温度が上昇し反対に西方海域の海水温が低下するという現象で、そのため太平洋西部赤道海域からパプア北方海域にいたるエリアで水温低下が発生して海水の蒸発が抑えられ、インドネシア東部地方の降雨量が激減する。地学気候気象庁は6月に入って以来ラニーニャによる異常気象発生の可能性は1%までダウンし、反対にエルニーニョによる異常気象の可能性が56%まで高まっている、と警告した。ただし6月20日前後の状況は平年並みのものだ、と付け加えている。
そのため2009年乾季の予報は8月から10月に向けて乾燥度が高まる可能性が強く、異常気象発生の可能性は最高で63%までアップし、2010年4月に向けて45%へと下降していく。2009年7〜8月にエルニーニョが強まれば、11〜12月ごろまで乾燥した季節が続くだろうとのこと。
一方、国家航空宇宙院は2009年の乾季予想として、エルニーニョによる降雨量減少がインドネシア東部地方、特に東西ヌサトゥンガラ・パプア南部・マルク・スラウェシ南部そしてジャワ島北岸部・ランプンに乾燥をもたらし、またエルニーニョが1997年なみの強さになれば乾季は2009年いっぱい継続すると思われるため、水の消費を今から抑制するように、と呼びかけている。


「クラカタウの火山活動が活発化」(2009年8月8日)
スンダ海峡に浮かぶアナクラカタウの火山活動は衰えを見せないどころか活発化している。2009年7月26日は噴火136回、震動160回、火山性地震16回、ガス放出49回だったが、翌27日は噴火142回、震動77回、火山性地震1回、ガス放出32回となり、28日は噴火が89回に減ったものの震動は129回、火山性地震7回、ガス放出45回と増加している。アナクラカタウの噴火は一日50〜100回でその間隔は5〜20分であり、日によって変動が大きい。
噴火で吐き出される焼けた塵や石のために島の林や植生の一部は焼け焦げている。特に南から東へ吹いている風のために島の東側では焼けていないものがないようなありさまだ。ランプン州天然資源保護館は漁民に対し、島の周辺には近付かないよう警告している。


「暑気払い」(2009年12月31日)
冬のない熱帯に生まれたインドネシア人は少々暑いのには馴れっこになっており、灼熱の直射日光に照り付けられてもかれらは平気だと語る外国人がいるが、それは程度問題であり、かつまた個人差の問題でもある。日中によく晴れた屋外に出れば、状況が許す限りかれらも日陰を探すし、状況が許さない場合は日射病で倒れる者も出る。いわんや、ふだんはほとんど汗をかかない、という話においておやだ。発汗量はわれわれに比べたら少ないだろうが、われわれが暑いと感じる状況下で流す汗よりは少なくとも、かれらの身体にも発汗作用が起こっているのは変わらない。
昔からインドネシアの家屋は積極的に屋内の熱を外へ流出させるために通風を高めようとする方向性と直射日光が屋内に入るのを妨げて日陰になるようにする方向性のふたつの要素が設計のベースに用いられてきた。前者の典型はジャワやバリでバレ(balai)と呼ばれる天井と柱だけで壁のないあずま屋であり、後者の典型はガラスを使わないしとみ型の板窓だろうか。インドネシアのローカル建築はそんな生活の知恵をふまえた構造で建てられていたが、都市部に高層ビルが建つようになってから地元文化からの遊離がはじまった。ビル建築は北の国で発展したものであり、必然的にそこにある風土と人間生活のバランスが建築コンセプトの中に組み込まれている。それが南国に移植されたとき、異なる風土がもたらす不整合の生じないはずがなく、それを克服するために不自然な適応が施されることも少なくなかったように見える。
たとえば総ガラス張りのビルを建てておきながら、建物の外や内にシェードを設けて日光をさえぎるようにし、窓に垂らされたブラインドは一日中巻き上げられることがない。そのように対策が施されてはいても窓際の机に座る者には屋外からの熱波がガラスを通して襲い掛かってくるし、外光をさえぎる工夫がなされているから屋内は暗めになっている。だから窓際の熱波を緩和させるために冷房で対抗しなければならず、おまけに暗めの屋内を明るくするために昼間から煌々と照明を点灯しなければならない。目をそむけたくなるようなエネルギーの浪費が行なわれており、伝統文化が培ってきた暮らしの知恵はそこに少しも見当たらない。
ともあれ、モダン化の象徴であるそんな高層ビルの中での生活が一般庶民のライフスタイルに影響を与えないはずがなく、家屋建築デザインは西洋風モダン建築への指向を強めている。家屋は密閉型になりエアコンが設置されて暑さを克服するという方向性が世の中で高まりはじめ、こうして家電業界のエアコン販売にドライブがかかるようになってきた。家電業界の主力商品の中では昔からテレビ受像機が販売数では断トツの首位にあり、冷蔵庫が少し離れて追随するという図式で、洗濯機は振るわずノロノロ進行であり、エアコンにいたってはよちよち歩きの域を出なかった。それがインドネシア家電市場の特徴であり、インドネシア社会におけるひとびとの生活のありさまを如実に反映するものであったことは疑いようもない。
コンパス紙R&Dが2009年4月22〜23日に全国大都市住民636人をランダム抽出して集めた「暑気払い」に関する統計データによれば、エアコンを使っている家庭はまだマイノリティだ。
設問. あなたは家屋内の暑気払いをどんな方法で行なっていますか?
回答. 扇風機を使う 45.2%、庭に木や植物を植える 27.7%、エアコンを使う 18.9%、環境適応性の高い建築資材を使って家を建てる 8.2%
設問. あなたが家屋内の暑気払いに扇風機を使うのはいつですか?
回答. 状況次第 33.3%、昼 22.1%、夜 21.1%、一日中 16.6%、扇風機を持っていない 6.9%
設問. あなたが家屋内の暑気払いにエアコンを使うのはいつですか?
回答. 夜 33.0%、状況次第 13.7%、昼 6.3%、一日中 5.3%、エアコンを持っていない 40.7%


「ジャワ島北岸部の多くが海面下に沈む」(2010年3月1日)
気候変動による海面上昇でジャワ島北海岸線は大きくその姿を変えることになる。中でも海面下に沈む可能性の高いのは、タングランのダダップ海岸(Pantai Dadap)、北ジャカルタ市カリバル(Kali Baru)地区、西ジャワ州スバン(Subang)からインドラマユ(Indramayu)にかけての一帯、そして中部ジャワのプカロガン(Pekalongan)〜スマラン(Semarang)〜ドゥマッ(Demak)の海岸線だ。それらの地区を海面上昇が襲えば、住民居住・エコシステム・港や橋などのインフラに大きな影響が生じる。 海面上昇がもたらす影響のシミュレーションは、地形・海岸線の侵食・海岸の傾斜・相対的な海面位置の変動・平均的波高・平均的干満範囲などの要素を踏まえて行なわれる。ジャワ島北海岸部の海面上昇は年間5〜10ミリで、地形的に平らなところが多いため海面下に没するエリアも広範になりそうだ。
バティック産地として有名な中部ジャワ州プカロガン市のシミュレーションによると、今後20年から100年の間に現在の海岸線は2.85キロ内陸に移動すると予測されている。その変化によってプカロガン市は19,564ヘクタールの面積を失い、265,725軒の家屋が放棄され、1,062,900人の市民が影響をこうむる。また4,731.7ヘクタールの水産物養殖場がなくなり、4,993.1ヘクタールの潅漑水田と3,115.1ヘクタールの天水田も消滅する。 そのような海面上昇の影響をミニマイズするために政府はさまざまな対応策を検討しており、そのひとつにマングローブ植林を進める計画がある。この計画に関して700ヘクタールの植林を援助することを日本政府が申し入れている。


「今年の乾季は湿った乾季になりそう」(2010年4月21日)
エルニーニョ現象は2010年2月にやっと通り超えた。普通だと2〜6年のサイクルでラニーニャへと向かうわけだが、今年はなんと5月にもうラニーニャがやってくるという。地学気候気象庁大気クオリティ気候変動センター長は、現在インドネシアの気象はエルニーニョが3でラニーニャが0.5というインデックス値になっていると語る。「その数値は5月に向かってどんどん低下し、5月にはマイナス1を超えるようになる。そのときはもうラニーニャが太平洋に出現しているということだ。インドネシア領域に雨量を増加させるラニーニャは2010年11〜12月頃まで継続すると予測されており、今年の乾季は雨が多くまた雨季の雨量をも増大させる結果をもたらすものと思われる。この雨季に連続的に水害に襲われた西ジャワ州バンドン南部地方も次の雨季でまた同じような被害が発生する可能性が高い。ただしこの雨季に西ジャワの一部地区で発生した水害は通常のパターンと異なるメカニズムで作り出されている。5〜6日間隔でボゴールからバンドンにかけての丘陵地帯が気流の波に襲われて気温が急激に変化した。気温上昇が急激でそれが地表水の蒸発を極端に高め、局地的に大量の雨を降らせるということが繰り返された。気流のそのような波が起こった原因はまだ明らかになっていない。一方ジャカルタでは、この雨季に大規模な水害は発生しなかった。ジャカルタの水害は一般的に、アジア北部からシベリアにかけての寒気団が吹き込んでジャワ島上空の暖かい空気と衝突し、それが雨雲を形成してジャカルタに激しい雨を降らせるために起こっている。次に来る2010/11年の雨季のピークは2011年2月〜3月と予想され、ラニーニャの影響は2010年7月〜11月がピークと見られているためその相乗効果による大洪水という図式は免れそうだ。」センター長は今年の乾季が湿った乾季になりそうだと警告している。


「年中雨季になりそうなインドネシア」(2010年6月14日)
インドネシアはもう乾季に入っているはずの2010年6月だが、いまだに激しい雨が散発的に各地を襲っており、ジャカルタではバンジルが年中行事のようになってしまった。それは赤道太平洋地域からインドネシアにかけての海域で海面温度が平常より高いために起こっていることだ、と地学気候気象庁が解説している。
「インドネシア海域では5月から海水表面温度が平常より0.5〜1.3℃高いことが観測されている。海面の温度が高いと海水の蒸発が促されて大量の雨雲が形成される。一方昨年中盤から顕著になっていた赤道太平洋海域東方の海水温が高くなるエルニーニョ現象は今年2月頃からゆるみはじめ、6月初には姿を消した。いま海水温は平常に戻っている。反対に赤道太平洋海域西方で海水温が低下するラニーニャ現象に向かう徴候が観測されており、海水温の低下は高気圧を生んでインドネシア海域の高い海水温による低気圧に向かって気団が流れ込んでくる。この乾季のはじめからその現象が起こっており、全国的にきわめて湿った乾季を生み出している。西カリマンタン・中部カリマンタン北部・東カリマンタン南部・マルク中央部・パプア中央部・西パプア南部などはかなり高い雨量が続くだろう。東南スラウェシ・中部スラウェシ・北スラウェシは適度な雨量だ。ジャワやスマトラ北部・バンカ・プカンバルなどはまだ時おり激しい雨に見舞われるが、降雨時間は減少していく。ブンクルとランプンは降雨量が低下する。全国的に見て湿った乾季は7月いっぱい継続するだろうと予測される。8月以降の予報はラニーニャが強まるか弱まるかでがらりと変わる。強まれば今年の乾季は湿った乾季が継続することになる。」
テクノロジー応用開発庁災害対策地球システムテクノロジー研究室長はこの乾季の気象予報について、8月以降ラニーニャは強まるだろう、と語っている。


「雨の多い乾季」(2010年7月9日)
2010年乾季の異常気象は回復する気配がない。それは6月のインドネシア周辺海域における海水温が29.56℃となり、5月の29.2℃から更に上昇していることからも明らかだ。その結果雨雲の形成が活発になり、乾季だというのに雨は各地で降り続いている。
一方、アラフラ海からバンダ海にかけての一帯では海水温が比較的低く、また太平洋赤道部もインドネシア周辺海域より海水温度が低目になっている。そのため湿った気団が太平洋からインドネシアに向かって西進してくる状況で、エクアドルなど太平洋東岸部は乾燥状態に陥っている。その状況が変動すると、東風が起こり、アンダマン海からジャワ島南部海域およびバリからバンダ海そしてメラウケ南部に至る広範な海域で3〜5メートルの高波が発生する可能性が高い、と地学気候気象庁は予報している。


「今年の雨季予報」(2010年9月6日)
地学気候気象庁が2010/2011年の雨季長期予報を発表した。インドネシア全土を包む海域の海面温度は依然として例年よりも高く、雨雲が盛んに形成されるため降雨量がいつもより多いという状況は雨季に入っても続く見込みで、加えて今年8月から顕著になったラニーニャは2011年1月まで弱まる気配がない。海面温度の上昇が地球温暖化に関係したものであるのは疑う余地のないところだとはいえ、その直接原因についてはいまだに謎のままだ。
全国を気象面から地理的に区分した季節ゾーンごとの予報では、全体の57パーセントにあたる125ゾーンで雨季の開始が過去30年間の平均より早まると予想されている。125ゾーンの大半はジャワ・カリマンタン・スマトラに分布している。89ゾーン(41パーセント相当)は例年通りに雨季が始まり、開始が例年より遅れるのは6ゾーンだけとのこと。
雨量については、37パーセントに当たる82ゾーンで平年以上、129ゾーン(59パーセント相当)で平年並み、9ゾーン(4パーセント)は平年以下と見込まれている。この雨季はいつもよりかなり湿り勝ちの雨季になるため、洪水や土砂崩れの起こりやすい地区は警戒を強めるよう、地学気候気象庁は警告している。また噴火の続いている北スマトラ州のシナブン火山に関連して、火山灰は湿気を吸収しやすいので雨量が大きくなる傾向が強まることも指摘している。


「2011年の乾季も多雨になりそう」(2010年10月6日)
ラニーニャ現象は2011年も継続すると見られており、2011年の乾季も2010年と同様の雨の多い湿った乾季になりそうだ、と技術研究応用庁災害軽減地球システム技術研究所が予報した。これは日本との共同研究の結果であるとのこと。
地学気候気象庁によれば、平常期より海水温度が2℃高くなっているラニーニャ現象はバンダ海からインド洋、ジャワ島南部海域からスンダ海峡にまで広がっており、インドネシア周辺のその他海域でも概して1℃から2℃の間で水温が高いことから、活発な海水の蒸発は継続している。
バンダ海は太平洋とインド洋の海水が衝突するところで、半年ごとに流れの方向が代わるため海洋気象の見地から注目されている場所だ。バンダ海からスンダ海峡に至る海域で海水温が高いのは、太平洋の海水がインド洋に向かって流れ込んでいるためである由。
国内各地での降雨の可能性は一様だが、局地的に激しい雨が降るのが乾季から雨季への現在の移行期に特徴的な現象で、たとえばジャカルタ南部で大雨が降って出水しているというのにジャカルタ北部では一滴も降っていないといった最近の気象がそれにあたる、と地学気候気象庁異常気象課長は説明している。


「ジョクジャの地震は人災の方が怖い!?」(2010年12月4日)
2010年10月5日付けコンパス紙への投書"Kesalahan Fatal Prosedur Evakuasi"から
拝啓、編集部殿。2010年8月21日18時55分ごろ、わたしは家族連れでジョクジャのアンバルッモプラザへ行きました。そのとき地震が発生して来店客は大勢がパニックに陥り、みんな建物の外に走り出てきたのです。そのときわたしが感じたいくつかの問題は、まずビル管理者が来店客を外へ誘導する体制が作られていないということでした。
リフトとエスカレータは停止させなければならず、そして来店客は非常階段を通って外へ出るよう誘導しなければなりません。もっと悲惨な状況は、駐車場出口で平常通り駐車券回収業務を続けていたため、外へ出たい車が中でてんやわんやの大混乱になっていることでした。緊急事態であることがはっきりしているのですから、すぐにすべての交通路は開放して来店客が家族を外に連れ出すように便宜をはかるべきです。
地震は人命に脅威を与えるものであるため、あらゆる地震に対して真剣な対応が取られなければなりません。四輪車二輪車の駐車券回収のほうが人命より重要だなんて、実に皮肉なことではありませんか?[ ジョクジャ在住、ウリップ・スドラジャッ ]


「2011年3月まで全国的に多雨が続く」(2010年12月21日)
スマトラ島北部は今年8月〜9月ごろから雨季に入り、その他の地方も10月〜11月には雨季入りした。10月〜4月の気象は、平年ならアジアからオーストラリアに向かって吹くモンスーンの影響を受けて太平洋とインド洋を渡る大気団が水蒸気をたっぷり吸い込むためにインドネシアに雨季をもたらすのだが、今年は乾季にはじまったラニーニャの影響で太平洋西部からインドネシア近海にかけての海面温度が平常より高く、海水の蒸発が平年より活発なために平常の雨季よりも雨量が大幅に増加している。同時にインド洋東岸でも海面温度が高まっており、スマトラ島は東も西も雨量がきわめて大きく、今年の雨量は過去30年間の平均値を超えている。
ちなみにモンスーンという英単語はトルコ語のムソン(muson)に由来しており、インドネシアでもangin musonという表現になっている。そのトルコ語のムソンはアラブ語のマウシム(mausim=季節)から来たもので、mausimはインドネシアに入ってmusimという言葉にデフォルメされた。要するに季節風のことを言っている。これは閑話休題。
今年12月の国内地区の大半は雨量がアッパーミドルレンジにあり、中でもジャワ島全体・スマトラ島北部と南部・カリマンタン島のほぼ全域はその傾向が強い。今年の乾季は局地的なレベルで雨が優勢だったのに比して、この雨季は全国的なレベルで雨量が多く、この異常気象は変則的で、オーストラリア北部に生まれる熱帯性サイクロンの影響を強く受ける。雨雲はアフリカ東海岸部から太平洋西部海域に至る広範なエリアで盛んに発生し、インドネシア南部とオーストラリア北部にはさまれた海域で熱帯サイクロンが不定期に生まれる。地学気候気象庁はこの雨季の概況についてそう発表している。


「ブロモ山の噴火はまだ続きそう」(2010年12月30日)
今年のブロモ山の火山活動は過去50年間で最大のものだ、と火山学地学生物物理学地理学センター火山観測担当主幹がプロボリンゴで公表した。「ブロモ山から吐き出されているのは火山灰だけでなく砂・火山礫もあり、それにとどまらず火山弾も噴出されている。火山弾は噴火口まで上がってきた地中の溶岩がエネルギーによって空中に放出され、冷えて円形に固まり、地上に降ってくるものだ。夜になるとその弾道がはっきりと観測できる。まるで花火のように見える。」
ブロモ山の火山弾噴出は2010年12月23日以来続いている。今回の噴火はもう2ヶ月も続いており、1ヶ月で終わった2000年の噴火などに比べれば、今回のものは過去50年間で最大だと言える。噴出された火山物質は1千から1千2百メートル上空に達し、風の強かった日は2千メートルまで昇った。火山灰と火山礫はプロボリンゴから北西に向けて、パスルアン〜シドアルジョ〜スラバヤ〜マドゥラにまで達している。
地元周辺住民は屋根に積もった火山灰の除去に余念がない。住民に対しては、外出の際にメガネとマスクを着用するよう呼びかけられている。灰が口腔内に入ればざらざらし、鼻に入ると呼吸がしにくくなる。目に入ると目が痛くなる。プロボリンゴ県保健局長は、住民のほぼ4割が呼吸器系に障害を訴えている、と語っている。


「2月から3月までは雨季のピーク」(2011年2月18日)
2月から3月にかけて雨季のピークがやってくるので警戒を強めるよう地学気候気象庁が国民に呼びかけた。最近ジャカルタでは朝と夕方、そして夜中まで雨が降る。しかしその雨量はまだまだ軽いものであり、首都圏の外ではもっと激しく雨が降っている。バンテン州パンデグランでは崖崩れが発生しており、ジャカルタでもいつ類似の災害が発生するかわからない。
2月のジャカルタの出水予想は1メートル程度で、チュンカレン(Cengkareng)、グロゴル(Grogol)、チュンパカプティ(Cempaka Putih)、ガンビル(Gambir)、クマヨラン(Kemayoran)、チランダッ(Cilandak)、プサングラハン(Pesanggrahan)、パサルミング(Pasar Minggu)、トゥブッ(Tebet)、チャクン(Cakung)、ジャティヌガラ(Jatinegara)、クラマッジャティ(Kramat Jati)、プロガドン(Pulo Gadung)、チリンチン(Cilincing)、コジャ(Koja)、プンジャリガン(Penjaringan)、タンジュンプリウッ(Tanjung Priok)が特に警戒対象に指定されている。
ボゴールは40郡のうち15郡で土砂崩れのリスクが高く、その中でもババカンマダン(Babakanmadang)、チサルア(Cisarua)、スカマッムル(Sukamakmur)、チグデッ(Cigudeg)、スカジャヤ(Sukajaya)、パミジャハン(Pamijahan)の6郡が特に警戒を要するとのこと。これまでも例年大規模な土砂崩れが発生しており、同じことが繰り返される懸念は強い。2010年にもババカンマダン郡カラントゥガ(Karang Tengah)村とスカジャヤ郡キアラパンダッ(Kiara Pandak)村、チグデッ郡バニュワギ(Banyuwangi)村で大規模な土砂崩れが起こり、大きい被害を出した。ボゴール県ではこの雨季のピークに発生が懸念されている災害に備えて厳戒態勢を取っている。


「湿った乾季にはならない」(2011年3月18日)
地学気候気象庁は全国を220の季節ゾーンと73の非季節ゾーンに分けて各季節ゾーンでの雨季乾季の推移を観測している。非季節ゾーンというのは一年中同じような気候が続き、雨季乾季の明白な推移が見られない地区で、赤道周辺部・スマトラ西海岸部・トミニ湾沿岸部・マルクの一部・パプアの大部分・グデパンラゴ山系・ハリムン山などがそれに属している。
その220季節ゾーンの6割が5月から6月にかけて乾季入りするだろうという2011年乾季予報を地学気候気象庁が出した。残りはもっと早いかもっと遅いかのいずれかで、早いところはスンバワ島東南部やソロル・アロル諸島が3月に乾季入りしている。遅いほうは東カリマンタン東沿岸部や南スラウェシ東沿岸部が8月の乾季入りと予測されている。
今年の乾季入りは、ラニーナの影響で依然として太平洋の水蒸気移動が活発なため過去30年間の平均よりはタイミングが遅くなっているとのこと。ラニーナの勢力自体は下降しつつある。
ジャワ島では、東ジャワの東と南沿岸部およびマドゥラ島北部、ならびに西ジャワ北海岸部が先頭を切って4月に乾季入りし、ジャカルタは北部地域が5月中旬、南部地域は6月初に乾季入りする見込み。
先に2011年の乾季は2010年と同じように湿った乾季になるとの予報を出していた地学気候気象庁は、今年の乾季は平常の乾季となり、長引く異常乾季にもならないだろう、とその予測を覆した。この予報の有効性はこの先三四ヶ月程度だと断っている。


「今年もまた湿った乾季」(2011年6月17日)
地学気候気象庁が2011年後半の天候に関して、2010年と同じような湿った乾季が続くだろうと予報した。これは日本の海洋研究開発機構が予測した、沈静化しつつあったラニーナが7月に入るとまた強まるだろうとの予報を踏まえたもので、地学気候気象庁が先に出した2011年乾季入り予報とも関連性を持っている。
先に出された乾季入り予報で4月後半に乾季入りすると見られた地域が5月に入って強い雨が降り、洪水が発生したりして20日から40日も乾季入りが遅れるという現象が起こっている。6月にはそれらの地域も乾季に入ると同庁は公表しているが、湿った乾季がぶり返すのであれば一般国民にとって乾季という言葉が与えるイメージと現実との乖離にとまどいをもたらすだけになりかねない。
全国220の季節ゾーンと73の無季節ゾーンにおける乾季入り予報は70%に遅れが出ている。


「噴火中の火山から観測機材が盗まれる」(2011年7月29日)
全国的に火山活動が活発化している昨今、政府は火山の活動状況を綿密に観測しているが、その活動の命綱とも言える高価な観測機材の盗難が多発している。2011年1月から6月までで、5つの火山に設置された観測機材が盗人の手に落ちた。火山周辺に居住する多くの住民の安全と福祉に関わる火山観測活動に困難をもたらす盗人の公徳心の不在を観測当事者である鉱エネ省火山地質災害防災センターが非難している。
今年6月までに火山観測機材が盗難や故意の破壊にあったのは、西ジャワ州タンクバンプラフ(Tangkuban Perahu)山とグントゥル(Guntur)山、中部ジャワ州スラマッ(Selamet)山とディエン(Dieng)高原、東ジャワ州ブロモ(Bromo)山の5つ。ディエンでは火山活動が活発化している最中に盗まれたため観測にたいへん難渋する事態に陥った。ディエン高原ウォノソボ県クジャジャル郡トゥラガワルナに設置された地震計は5月30日に盗まれている。市価3億ルピアの地震計を盗んでも本人が使えるものは電池しかなく、たとえそれを売り払っても2百万ルピアにしかならない。やはり地震計の盗難は2010年に北スマトラ州シナブン(Sinabung)山の火山活動が活発化したときにも発生している。
火山活動の観測は継続的に行われなければならず、途中でデータが抜ければ不完全な観測データはたいした役に立たなくなる。「品物の価格が大きいから大損害ということでなく、なくなったから代わりを探してくるということが容易にできないのが大問題なのだ。多くの人間の生活に重要な役割を果たすものが、ひとりふたりの不心得者によって失われ、大きい社会的影響を蒙るかもしれない。盗難だけでなく、何者かが故意に機器を壊すということも起こっている。今年3月にはブロモ山で計測機器から無線発信装置につなぐケーブルが切られた。何も盗まれなかったが、故意に切断したのは明らかだ。」
なかなかなくならない破壊志向、バンダリズムを山の中にまで引っさげていく、いやそれどころか火山が活動中もものかわと悪事を行う者があることに防災センター長は首をかしげている。


「これからジャワは暑くなる」(2011年8月15日)
2011年8月から9月にかけて中部ジャワ東部ジャワは乾季の最盛期に入り、気温は平均で34℃になる見込みだ、と地学気候気象庁が発表した。過去の記録を見ると、乾季の最盛期にジャワ島北岸部で36〜37℃になったこともある。酷暑のほかに紫外線照射も激しくなり、11時から14時ごろまでは特に強く、皮膚に障害を引き起こす可能性もある。ジャワ島外では、赤道直下地域やヌサトゥンガラの島々で気温上昇が激しくなる傾向がある。とはいえ、乾季であっても雨が降らないということではない。ただし降雨量は少なく、降雨時間も短い。
乾季の最盛期を超えると雨季になり、中部ジャワ東部ジャワでは10月から雨季が始まりそう。これは雨季乾季の交替が10月〜4月、4月〜10月という平年の雨季乾季区分に戻ることを意味している。


「アナクラカタウに噴火の気配」(2011年11月1日)
2011年9月30日から火山警戒ステータスがワスパダに引き上げられたアナクラカタウ(Anak Krakatau)は、2007年の噴火のときより今回のほうが激しいものになりそうだ、と火山学自然災害軽減センターが公表した。火山性地震と硫黄ガスのボリュームが前回のときよりずっと激しくなっている。
まず今回のアナクラカタウの活動の激しさを物語っているのが地震の状況で、平均して毎分5回の地震が発生しており、一日では5千回を超える。シアガステータスの火山でも、地震は一日数十から百数十というレベルなので、アナクラカタウの活発さは異常とも言える。加えてアナクラカタウ全体が黄白色のガスの層に覆われており、地中からところかまわず噴出している硫黄ガスのありさまにも関心が集まっている。
「アナクラカタウのマグマはまだそれほど濃密でなく、薄くてガスの含有も少ない。噴火の可能性はあるし、2007年のときよりも激しい噴火になりそうだが、1883年に山全体を吹き飛ばしたほどのものにはならないので、過度の心配は無用だ。住民は危険を避けるために火口から2キロ以内に近付かないように。」火山学自然災害軽減センター長はそう述べている。
1883年の噴火では、熱雲と津波のためにランプンとバンテンの沿岸部住民3万6千人が死亡した。その名のとおりまだ子供のアナクラカタウは成長の過程にあり、大噴火を起こすことはなさそうだ。


「雨は暫定的にストップ」(2012年1月24日)
ジャカルタを含むインドネシア西部地方でいま降雨が一段落しているのは南シナ海にできた低気圧のおかげだ、と地学気候気象庁が発表した。この時期はシベリアからの寒気団が南下して大量の雲を作り、インドネシア西部地方に激しい雨を降らせるのが通常のパターンで、北からの高圧の寒波が南シナ海の低気圧で阻まれているものの、低気圧はいつまでももたないため寒波がそれを乗り越えて南下してくれば、たちどころに雨量が増加する。その寒波はまた高波をも引き起こすため、海上は荒れがちになる。
首都圏のバンジル(洪水)問題については、2012年1月19〜23日が新月で、その次は2月2〜6日に満月になるが、それら新月と満月の時期は平常時よりも水位が1.1メートルほど上昇する。潮位が上昇するそんな時期に強風を伴う大量の降雨に見舞われれば、沿岸部は海水に侵入され、また陸地側も洪水が発生する。それらの期間は大規模洪水の発生に備えて警戒を怠らないようにしなければならない、と地学気候気象庁は警告している。
なお、南シナ海にある低気圧がサイクロンに発達する可能性はほとんどない、とも補足した。この時期は太陽が南半球に下がってきており、サイクロンの発生は南半球に限られるとのこと。


「2月中旬まで悪天候は続く」(2012年2月6日)
大量の降雨と突風の多発という異常気象は2月中旬ごろまで続くだろう、と地学気候気象庁が予報した。原因は中央アジア平原から南に向かって吹く風がジャワ島からヌサトゥンガラにかけての上空にある気団と衝突するためとのこと。アジア地域だけに注目するなら、北と南の気圧差が大きく開いており、北から湿った空気が強い圧力で南に押し流されてくるため、インドネシアでの降雨量は大幅に増加する。
亜熱帯地方上空で異常な気温低下が起こり、10日から二週間で移動する。移動パターンはアメリカ中央部から西ヨーロッパ、あるいはシベリアへと広がり、マイナス20度を超える低温が激しい降雪をもたらす。シベリアに悪天候が起これば、インドネシアまで達する湿った大気団の南下が起こる前兆となる。広州〜香港は強い低気圧に見舞われて、2012年1月には北京まで含めた広範なエリアがマイナス40℃という大寒波に襲われた。その影響がおよそ一週間後にジャカルタでの大雨となって実現している。ただしそのような降雨がすぐに5年ごとの大洪水をジャカルタにもたらすわけではなく、ジャカルタ上流地域での大雨と北海岸部での高潮が一緒に起こらなければ、極端な水害にはならないとのこと。
平常は4千5百メートルほどの上空で雲が形成されているというのに、昨今はそれが5千5百メートルまで上昇しており、その結果作られる雲の層が厚くなるとともに地上から上昇する大気の流れも勢いの強いものになっている。昨今ジャワ島各地で発生しているプティンブリウン(puting beliung)はその影響がもたらしており、同時に局地的な降雨量の強まりも起こっている。
地学気候気象庁異常気象課長は、南北の気圧差が生んでいる異常気象だけでなく、熱帯収束帯で生みだされる気団の衝突にも注意を払わなければならない、と言う。この先特に雨量の多い地域は、バンテン州南部から西ジャワ州西部、中部ジャワ州南部そして西パプア州北部中部であり、またプティンブリウンの発生も、植生が薄く地肌の露出している地域で発生しやすくなるため、そのような地域では警戒が必要だ、とも述べている。


「2012年の乾季も湿った乾季」(2012年2月24日)
普通なら3月から4月にかけて乾季入りする全国の気象が、今年は10日からひと月ほど遅れそうだ、と地学気候気象庁が発表した。全国220の気象予報ゾーンの大半に乾季が訪れるのは2012年6月と予想されている。
太平洋西部の赤道周辺海水温が高めになっていることがその状況を引き起こしており、ラニーナの影響がその最大の要因であるとのこと。その帰結としてインドネシア東部地方では海水の蒸発が活発化し、異常気象を発生させている。ラニーナは弱いながらも今年は一年中持続するだろうと見られていることから、今年の乾季も降雨量が平年より多い湿った乾季になりそうだ。そのおかげで天水に頼っている地方の米作農家は3月から作付が可能になり、6月に収穫期を迎えることができるだろうと同庁気候変動大気クオリティセンター長は述べている。
2012年の乾季は、乾季らしい乾季にならず降雨が平年より多かった2010年と類似のパターンに陥ることになりそうだが、その反面2013年には太陽の黒点活動がピークを迎えることと相まって、エルニーニョが強まり激しい乾季が引き起こされるだろう、とセンター長は語っている。


「依然として雨がちの天候」(2012年3月20日)
太平洋のラニーナ現象によってインドネシア東部地域で多雨が続いているのに加えて、インド洋からのマッデン・ジュリアン振動がインドネシア西部地域でも場所によって雨の多い地域を生んでいる、と地学気候気象庁が発表した。
マッデン・ジュリアン振動はまだ完全にインドネシア域内に入ってきているわけではないものの、スマトラ島北部で洪水を発生させるほどの雨量をもたらしており、今週中には東進してインドネシア域内に進入してくるだろう、と公共気象情報課長が先週表明した。
ラニーナ現象は今年6月ごろまで継続すると見られている。今年の乾季は平常レベルのものだが、突発的に大量の降雨が起こって洪水が発生するおそれは持続しているとのこと。今現在の広域気圧配置については、オーストラリア北部海域に低気圧の中心があり、発達して熱帯性暴風雨と化すおそれが高い。それが発達すればインドネシアから大気団を引き寄せ、インドネシア各地で暴風雨が吹き荒れることになる。
この先数日間の気象予報については、激しい風雨や雷雨あるいはプティンブリウンと呼ばれる小規模な竜巻現象が発生するおそれの高いエリアは、ジャカルタとその周辺、中部ジャワ北部、東部ジャワ北部、西ヌサトゥンガラ東部、東ヌサトゥンガラ、北スラウェシ、中部スラウェシ南部、西スラウェシ、東南スラウェシ南部、南スラウェシ、マルクである由。


「首都圏ではまだまだ出水が続きそう」(2012年4月9日)
4月は雨季から乾季への移行期にあたり、ジャワとカリマンタン南部で局地的な豪雨に見舞われる可能性が高い、と地学気候気象庁が予報した。この移行期で特徴的なのは日中の酷暑と夕方から夜中にかけての降雨だが、ただし豪雨はジャワとカリマンタン南部に限定される。昨今、東西での気団の収束という大気の動きが厚い雲を生み出し、ジャワからカリマンタン西部〜南部にかけての上空で観測されているが、その変動は数日間という規模のものでしかなく、それが過ぎ去れば天候は平常化する、とのこと。
先週ジャカルタの一部地域に出水を発生させた豪雨は。南シナ海北部の暴風雨によって東南に向かう風がもたらしたもの。その暴風雨はベトナムの陸上にあがって衰えたが、そのために首都圏での降雨がかえって増加する可能性が出てきている。先週半ばごろの観測によれば、赤道南部で東や東南方向から吹いてきた風はほとんど反転する形で方向を変えており、ジャワ・スマトラ・カリマンタン上空で厚い雨雲の層を積み重ねる結果をもたらしている。雨は局地的な水の蒸発だけでなく、より広範なエリアでの雨雲の形成にも影響され、上で述べた風の急反転は、雨季から乾季あるいは乾季から雨季への移行期に頻繁に観測されている現象だ。
今は太陽の見かけの移動が南半球から北半球へ移っていく時期にあたり、海水温の上昇も南から北へと上がっていく。それによって生じる大気の動きが風の急反転を発生させる要因となる。南から北への流れはまだあまり強まっておらず、一方、北から南への流れは相変わらず続いているのが今の段階であるとのこと。


「いまが乾季のクライマックス」(2012年7月28日)
オーストラリア大陸から吹いてくる乾燥した東南モンスーンがインドネシア西部地方で優勢になっているため、スマトラとジャワおよびカリマンタンの西部中部南部は特に火災に警戒するように、と地学気候気象庁が先週末に呼びかけを行った。しかしインドネシア東部地方、特にマルク一帯は雨季に入っており、逆の現象が起きている。
インドネシアで乾季と呼ばれている季節でも、全面的に乾燥して雨が降らないということでは決してない。スマトラ・ジャワ全部とカリマンタンの半分で乾季のピークに入ったとは言うものの、そのしばらく前に出されていた乾燥注意報はジャワの大半とスマトラのほんの一部でしかなかった。それが今では広範な領域に広がっている。
しばらく前には、インド洋で起こるマッデン=ジュリアンオシレーションのウエットフェーズの影響を受けて、ジャワの一部とスマトラの大部分は乾燥注意報を出す必要のない状況だったわけだ。マッデン=ジュリアンオシレーションは40日から60日の周期で繰り返される現象で、ウエットフェーズが引いて東南モンスーンに覆われたためにインドネシア西部地方は今乾季のクライマックスに入っている。


「降れば洪水、降らなきゃ水涸れ」(2012年8月20・21日)
2012/13年の雨季はエルニーニョの影響で前年より寡雨になるおそれが強く、中でもジャワ島は地下水の欠乏する可能性が高いため雨水の利用を最大限に高める必要がある、と地学気候気象庁が発表した。全国を342に区分した季節ゾーンのうちの38%に当たる130季節ゾーンでは、雨季の開始が平年より10日から1ヶ月遅れると予想されており、また雨量も108季節ゾーンで平年を下回るだろうとされている。その130季節ゾーン中の67ゾーンと108季節ゾーンの半分以上がジャワ島にある。州別に見るなら、バンテン州・西ジャワ州北部と南部・中部ジャワ州南部・東ジャワ州北部とマドゥラ島で住民は水不足に直面することになりそう。
西スマトラ州東海岸は全国に先駆けて2012年7月に雨季が始まった。一方マルク州のブル島南部は2013年5月に全国で一番遅く雨季入りする。雨不足については、スマトラ島ではアチェからランプンまでの島の中央部、カリマンタン島では中部カリマンタン州東部地域、東西ヌサトゥンガラ州の大部分とスンバワ島全体、スラウェシ島は南スラウェシ州中央部、パプア島は鳥の頭地域の北部。 ジャワ島の地下水量低下は2012年7月から観測されており、バンテン州東南と西ジャワ州北西地域を除いてジャワ島のほとんど全体が不足をきたしている。
東ジャワ州スラバヤの西に隣接しているグルシッ(Gresik)でも、いくつかの村で生活用水が欠乏し、県庁に上水供給の要請が出されている。同じことはロンボッ島南部地域で既に起こっていたが、欠乏地区は増加の一途をたどっているようだ。東ロンボッ県ジュロワル郡や中部ロンボッ県東プラヤ郡とジョンガッ郡、あるいは西ロンボッ県中部スコトン・バトゥラヤル・クリパンの三郡、北ロンボッ県タンジュン・ガンガ・カヤガンの三郡にある村々で従来利用されてきた生活用水源の水量が細ってしまい、14,413世帯が完全な水不足に陥っている。
例年の乾季にはオーストラリアの対岸にあたるインドネシア南部地方が、オーストラリア大陸から噴き出してくる季節風の強い影響下に入る。オーストラリア大陸にできる高気圧が南東の冷たい乾燥した季節風をバリ島〜ロンボッ島〜ヌサトゥンガラ全域に向けて送り出しており、特に2012年は冷たい風を受ける日々が長期間継続して、雨があまり降らない天候が続いている。


「雨季入りは遅れそう」(2012年8月30日)
地学気候気象庁が2012年の雨季入りは遅れそうであるとの予報を発表した。地域によって差があるが、もっとも長いところでは平年パターンよりも1ヶ月遅くなるだろうとのこと。乾季が長引くのはスマトラ島南部地域からジャワ島さらに東ヌサトゥンガラにかけての一帯で、弱いエルニーニョ現象が今年中盤ごろから発生しており、年末ごろまでそれが継続する可能性は高く、上述の地域では山火事に注意し、また節水に心がけるように、と同庁気候担当デピュティは述べている。
ジャワ島では、西ジャワ州のパパンダヤン(Papandayan)山とタンポマス(Tampomas)山そして中部ジャワのシンドロ(Sindoro)山と東ジャワのクルッ(Kelud)山で山火事が発生している。標高2,262メートルのパパンダヤン山は2千メートルあたりから上が極度に乾燥しており、火災の起こりやすい状態になっていて、実際にも山火事はその辺りの15Ha以上を燃やしている。標高3,225メートルのシンドロ山も3千メートルあたりから上が同じように火災の起こりやすい状態であるとのこと。
森林を管理している国有公社プルフタニは、山火事発生の予防は一般人を山に入れないことであるとの原則を実践し、いくつかの山で登山道を閉鎖している。もともと毎年8月は乾季の最盛期であるため、全国でリスクの高い山は入山禁止措置が採られている。森林省はグデパンラゴ(Gede Pangrango)国立公園などいくつかの山を入山禁止にしている。


「ジャワ高外低の罠」(2012年9月26〜28日)
2012年9月23日に太陽が赤道を越えた。これから南半球は日射量が稠密になり、北半球は疎らになって寒い季節に向かう。インドネシアで昔から言われてきたように、名前にberの付く月は雨が多いというのはそういうことだ。名前にberが付く月とはSeptember, Oktober, November, Desemberを指している。もちろんジャカルタでバンジルが起こるのはJanuari-Februariだから話がちがう、と思われる読者がいらっしゃるかもしれないが、上の定説はあくまでも全国的に見ての一般論だ。
地学気候気象庁が既に予報を出しているように、今年の乾季は長引いている。弱いエルニーニョ現象の影響で雨が降りにくくなっており、またオーストラリア大陸の高気圧が吹き出してくる乾いた風とあいまって、空気は乾燥して山火事が頻繁に起こり、また水涸れが国内の諸地域で深刻さを増している。今年のオーストラリアから吹いてくる冷たい風は例年になく長期間継続しているようだ。
地学気候気象庁の解説によれば、スマトラ島中部地域から北にかけて、またマルクとその周辺部などはもう雨季に入ったようだが、ジャワ島北岸は雲が増えているが雨はまだで、ジャワ島南岸からバリ〜ヌサトゥンガラにかけては依然として乾季の真っ盛りだそうだ。特にジャワ島ではジョクジャから中部ジャワそして東ジャワと州境が接するエリアに重度水涸れ地区の太い帯ができており、その帯はマドゥラ島まで伸びている。
水涸れ地区では農業用水の不足にとどまらず、生活用水も十分な供給が得られず、何百年も昔の生活に逆戻りしてしまう都市住民もたくさん出現している。中には農業用水を諦め、灌漑水路を住宅地へと方向転換させて住民の生活用水を確保することを決めた地方自治体も出ており、井戸が涸れたという話などはもう各地でありふれたできごとになっている。
ジャワ島は昔から「降れば洪水、降らなきゃ水涸れ」という傾向を強く持っていた。ジャワ島は全国土の7%でしかないというのに、総人口の57%を養っている。高密度なこの島が生産するGDPは全国の59%を占め、コメ生産でも全国の55%をカバーしている。水田面積だと40%しかないというのに。
ジャワ島の年間水資源供給量は305.7億立米で、2000年のジャワ島水資源需要は833.8億立米だった。年間降雨量は2千〜3千mmで、西へ行くほど降雨量が多く、東へ行くほど雨が少ない。上を見る限りでは、水資源需要は供給をはるかに上回っていてどうしようもないありさまを思わせるが、ボゴール農大研究者は「実はそうではない」と語る。
水資源マネージメントがでたらめだからだ、とかれは言う。「雨水を地中に貯えるための植生がまったく考慮されておらず、経済換金性だけを云々して森林を農園・住宅・工場などに転換させている。そしてパームオイルブームがそれを更に悪化させている。河川流域は森林面積を30%以上残し、全域に平均化させることを法律は定めているが、ジャワ島の155河川でその条件を満たしているのは10本しかなく、一方50本の河川は森林がゼロになっている。天然林というポイントから見るなら、天然林が残っているのは3本しかない。結果的に、降った雨は地中に溜まらず、そのまま地表水として河川に流れ込み、まっしぐらに海を目指す。」
災害対策国家庁データ情報センター長は、1935年のジャワ島は住民一人当たり年間4千7百立米の水を用意することができた、と語る。ところが今は1千5百立米しかなく、2020年は1千2百立米と予測されており、国連が標準値に据えた1千1百立米ぎりぎりになってしまう。政府は河川流域の森林面積を確保する政策を1969年から開始したものの、それが成功した例はいまだにひとつもなく、反対に森林面積は減少の一途をたどっている。


「雨季が始まった」(2012年11月21日)
いよいよジャカルタに雨季がやってきた。そしてさっそくチリウン川とチサダネ川が氾濫し、近くの住宅地が浸水した。例年浸水に見舞われる住宅地では、住民に警戒警報が出されている。そんな状況に対してジョコウィ新都知事は、「いきなり救いの神が現われて手のひらを返すみたいに物事が解決されるようなことを期待してはいけない。みんなが勤労奉仕して自分の居住地のドブや小川で水が流れるようにし、その上で都庁は東バンジルカナルやチュンカレンドレイン、プサングラハン川の治水を行い、チアウィダムに水流を向けさせるのだ。」と都民に地道な活動を行うよう呼びかけている。
西ジャワ州では、河川の氾濫に加えて地滑りや土砂崩れというもっと大きな災害の予感が強まっている。週末から月曜日にかけて、十数か所で地滑りが発生し、住民ふたりが死亡したほかバンドン県南部のチウィデイ郡にある観光地とバンドン市をつなぐ道路が土砂で埋まった。スカブミでも11ヶ所で土砂崩れが発生し、125世帯が被害を受けている。
本格的な雨季入りは西風、いわゆるアジアモンスーンが活発化し始めたことから明らかで、ここ数日の雨はマッデンジュリアン波動(略称MJO)によるものだ、と地学気候気象庁が広報を出した。MJOはインド洋で西から東に気流が動くパターンを指しており、40〜60日ごとに大雨を降らせる要因になっている。アジアモンスーンが強まるまではオーストラリアモンスーンの勢力が強く、これは乾いた東風をもたらすものであるため、インドネシアの雨季入りが遅れて永い乾季が続いていたということだ。
11月中旬に入ったばかりのこの雨季の長期予報について地学気候気象庁は、雨季のピークは2013年1〜2月で、乾季が長引いて雨季入りが遅れただけで、雨季のパターンはいつもと同じようなものになると述べている。