インドネシア「腐敗の姿」情報2011〜16年


「二足のわらじを履く警察官」(2011年1月10・11日)
2010年8月31日、中央ジャカルタ市グヌンサハリ通りにあるホテルゴールデンの一室で、シャブ売人セプティアンがドニーと名乗る男にシャブ1グラムの取引を行なっていた。ドニーから金を受取ったセプティアンは携帯電話器を取り出すと、だれかに電話した。
「ああ、もう終わった。いつでもいいぜ。うん、早いほうがいいぞ。」
そしてドニーに向かってタバコを勧めた。ドニーはそれを辞退して立ち上がりかけると、セプティアンが話しかけた。どうもかれはドニーを引き留めておきたいようだ。ドニーは少しセプティアンの相手をし、そしてその場を辞そうとしたとき、突然ドアが開いて男たちが7人室内に入ってきた。
「われわれは首都警察麻薬禁制薬物局アンチナルコバ特別チームだ。あんたを犯罪容疑で拘留する。」
ドニーは怪訝な顔をした。『これはシナリオが違う。一体どうなってるんだ?』
7人はそれぞれ自分の名前と階級を名乗り、全員がドニーに向かって攻撃姿勢をあらわにした。犯罪容疑はどういう名目で、それに対する刑罰はどうなっているといったことを説明する。麻薬犯罪は最高刑が死刑であり、少なくとも長期に渡って自由な毎日の生活が失われることになる、とドニーを嚇かす。そして要求する金額を持ってくるなら、この場は見逃してやる、という話へと誘導していく。
ドニーは携帯電話器を出して、「じゃあ、その金の工面を相談しなきゃなあ。」と言いながら誰かに電話した。「これこれこういう状況になった。身柄を釈放してやるから金を出せと言ってる。急いで金を工面して持ってきてくれ。ああ、今すぐだ。できるだけたくさんかき集めてくれよな。」
終わってドニーはふてぶてしい顔を7人の男たちに向けた。
しばらくしていきなりドアが開き、4〜5人の男たちが手に手に拳銃を持って乗り込んできた。
手に手に拳銃を持ってホテルゴールデンの一室に入ってきた4〜5人の男たちを前にして、7人の男たちのほうがびっくりした。拳銃を持った男たちのリーダー格が自己紹介した。「首都警察麻薬禁制薬物局のものだ。局内にアンチナルコバ特別チームと言う名前のユニットはない。」
ドニーを威してカツアゲしようとしていた8人の顔色が変わった。ドニーは囮捜査官だったのだ。その日、ドニーはセプティアンと取引して証拠をつかみ、そのあとセプティアンの挙動を監視してシャブルートを解明し、関係者を一網打尽にするという筋書きが作られていたのに、その目論みがご破算になったのだから、本物の麻薬禁制薬物局捜査官たちがアンチナルコバ特別チームを名乗る7人に目くじらを立てたのも無理はない。セプティアンと7人は連行されて取調べを受けた。
その結果、その7人は正真正銘の警察官であることが明らかになった。かれらがドニーに名乗った名前と警部補という階級はすべてホンモノだったのである。7人の警察官は首都警察支署と国家麻薬庁に勤務する現職の捜査員だったのだ。かれらの全員が北ジャカルタ市警勤務歴を持っており、その頃からグループ付き合いをしていたようだ。
首都警察長官は、警察官と恐喝者という二足のわらじを履いていたかれらに対して数層の処罰が待ち構えている、と語っている。まずシャブ売人とつるんでシャブ購入者を強請っていた恐喝という刑事犯罪に対する一般裁判とは別に、警察官としての規律違反ならびに職務倫理違反が追及されるとのこと。


「腐敗警察?!」(2011年1月10日)
2009年6月18日付けコンパス紙への投書"Kaca Pecah di Kantor Sendiri Ditahan di Polda Jabar"から
拝啓、編集部殿。ファミリービジネスのトラブルで2008年8月22日に出した西ジャワ州警察への届出はいまだに何の対応も取られないというのに、その届出で訴えられた親族のひとりが2008年10月15日に出したでっち上げ告発は警察がすぐに捜査を開始したのです。わたしが会社オフィスのガラスを割ったという創作話のためにわたしは何度も西ジャワ州警察に出頭を命じられて取調べを受けました。わたしは素直にそのすべてに応じてきたのです。
ところが2009年5月15日21時ごろバンドン市内チアンプラスの通りを車で走行中、わたしは突然3台の車に取り囲まれました。車の中から十数人の怖ろしげな形相の男たちが出てきて、わたしを襲おうとしたのです。わたしは反射的に車を出て全力で走りました。しかし一発の銃声を背中に聞いてわたしは愕然としました。わたしはかれらの手中に落ち、かれらが西ジャワ州警察犯罪捜査局の刑事であったことをはじめて知りました。わたしはかれらに逮捕状を示すよう要求しましたが、かれらはそれに応じませんでした。それ以来わたしは、自分の会社のガラスを割ったという容疑で西ジャワ州警察拘置所に入れられたままです。
2008年6月19日付けで法務省に登録されたPTメトロガルミン取締役をまるでテロリストのように扱った西ジャワ州警察犯罪捜査局の態度は適正なものなのでしょうか?これまでわたしは警察の捜査にきわめて協力的に対応してきたというのに。
西ジャワ州警察犯罪捜査局のこの逸脱したふるまいは、ファミリー内のトラブルで利益をわがものにしようとしている人間からのオーダーによるものであることを疑う余地はありません。すべての国民は法の前に平等で、公平な法的保護と法的措置を受ける権利があると言われています。超法規人間はいないのです。[ ジャカルタ在住、ジョージ・グナワン ]


「警察の捜査は中途でうやむや」(2011年1月11日)
2010年11月28日付けコンパス紙への投書"Ragu Melapor kepada Polisi"から
拝啓、編集部殿。土地の侵奪が起こっても、国民の多くは警察に届け出るのをためらいます。それどころか土地所有権問題に警察を巻き込むと、問題解決に向かうのでなくかえって問題を増やす印象が強いのです。
三年以上経過しているのに捜査経過通知書を受取ったのはたった一回だけという事実がそれを証明しています。そのあとは何もありません。わたしが南ジャカルタ市警に出した2007年1月22日付け告訴状第Pol:162/K/I/2007/Res号に対する捜査打ち切り書も出されていません。犯罪行為を見聞きしたり、あるいはその被害者になったひとは誰でも、書面あるいは口頭で告訴を行なう権利を国民は持っているというのに。警察が何の監督も受けずに好き勝手のし放題であるなら、この国はどうなるのでしょうか?不良警官を放置したままでは、警察機構のイメージと組織員の精神は崩れてしまいます。監督が差別的であってはなりません。捜査官が他からの監督をまったく受けずに自己の権限で取調べ調書を操作する機会があることから、捜査官の監督を強化するために刑事訴訟法を改定する必要があるのです。
2006年10月、南ジャカルタ市プサングラハン郡南プトゥカガン町プルダナ?通りにあるわたしの土地が侵奪されました。侵奪者は自分の欲するところをやり放題です。法執行は流産で、正義の原理に根ざしていません。[ タングラン市在住、アグス・ヒダヤッ ]


「続・二足のわらじを履く警察官」(2011年1月12日)
タングラン市スルポンに住むデウィ・ラッナ・ウランは不倫をしていた。折に触れて、夫に隠れて恋人と情事をむさぼっていた。ある日、ふたりがデートし、人気のないうら寂しい場所に停めた車の中で睦みあっているとき、5人のパトロール警官が車に近寄ってきた。車外の様子に気付いた男のほうが、デウィの身体をまさぐる手を止めた。男の情熱が醒めたのに気付いてデウィも何が起こったのかに注意を払う。
突然運転席の窓がノックされ、ふたりは慌てて身づくろいをした。窓の外から中をのぞいているのが警官だとわかって、デウィの恋人は窓を開いた。警官はとってつけたような丁寧な口調で、何をしているのかと質問し、聞かずもがなの答えを待つこともせず、運転免許証と自動車番号証明書ならびにKTP(住民証明書)の提示を求めた。デウィの恋人がそれらの書類を差し出すと、今度はデウィにKTPを要求した。当然のことながら、KTPの住所は異なっている。不倫はインドネシアで、倫理道徳の範疇を超えた、紛れもない犯罪である。
「奥さん、あんたのトアンはどこにいるのかね?」
そのときデウィは困ったことになった、と痛感した。不倫を始めて以来、そんな感情が湧いたことは一度もなく、毎日浮き立つような気持ちで暮らしてきたというのに。デウィの表情を読んだのか、警官はたたみかけてきた。「このままでは済ませられない事件だ。本署まで同行してもらう。」
突然、恐怖がデウィを襲った。デウィと恋人は車の中に置いていたノートパソコン1台・携帯電話2台・デジタルカメラ2台そしてデウィが身に着けていた黄金装身具16グラムを警官に渡し、今回はこれで見逃してくれ、と頼んだ。すると警官は、5千万ルピアを持ってタングラン市警本部にわたしをたずねてやってこい、と言った。そうしなければさっきの甘い甘いシーンが世間に流れることになる、と言って警官は別の警官が手にしている携帯電話器を指差したのである。全部で5人いたパトロール警官たちは、前もってその取引の準備をしていたのだった。
デウィたちは必ず金を工面して持って行くから、一週間の猶予をくれと頼み込み、相手が首をたてに振ったのでそそくさとその場を後にした。それからの一週間、デウィは苦悩の毎日を送った。そしてどう転ぼうが不倫を隠し通すことは不可能であることに思い至り、反対に度胸を据えた。そのことで自分と夫との間がどうなっていくのかは、運を天に任すしかなかった。しかし恐喝警官に屈して5千万ルピアを渡す気はもうなくなっていた。デウィはタングラン市警本部に出向いて、あのときの恐喝パトロール警官を探すことはせず、住民サービス係りにその事件を訴え出たのである。
市警本部の中でそのときの警官5人が探し出され、デウィが面通しして5人が間違いないことを確認したあと、5人の一級警部補二級警部補は拘留されて取調べを受けることになった。かれらを刑事裁判と警察組織内での規律違反ならびに職務倫理違反の処分が待ち構えている。


「法権力は私腹のために使う」(2011年1月12日)
2010年11月28日付けコンパス紙への投書"Oknum Aparat Dikendalikan"から
拝啓、編集部殿。わたしの夫は正義感とヒューマニズムを逆撫でするような法的プロセスに直面しています。夫は自動車横領容疑で2010年1月から西ジャワ州バンドン地区警察に拘留されています。
わたしが捜査官に夫の犯罪行為に関する証拠のことを尋ねたところ、その答えにあがった自動車は告訴者の手元に保持されているのです。驚くべきことに、告訴者は21歳の大学生で、その男は悪徳法執行者を操り、拘留や法的プロセスなどの手口を使って夫から金を搾り取るためにその手伝いをさせ、便宜をはからせているのです。夫が拘留されている状況下にかれらは告訴者が使っている自動車に対して1億5千万ルピアとリースの残高を支払うよう要求しています。そうすれば告訴者はその車を引渡すと言っているそうで、その金額を期限までに支払わなければ、夫は犯罪者として裁きを受けることになる、と威しています。
この状況にわたしはとても大きな負担を感じており、わたしはその車に金を払わないことを決心しました。しかしそうすると夫は犯罪者として法廷に引き出されることになります。夫は事実と異なる根拠に基づいて依然として拘留されており、そして犯罪者としての法的プロセスを無理強いされているのです。[ バンドン在住、ヘルマ・ヌスティアワティ ]


「首都でクビになった警察官は年間四十人程度」(2011年1月13日)
首都警察では、月平均3人の現職警察官が懲戒解雇処分を受けている。2010年は12月21日までで38人が解雇されており、2009年の年間37人をオーバーしてしまった。解雇された警察官の階級は警部補から二級警視補まで三つの階級に渡っている。
そのうちの24人は一ヶ月以上連絡無しに勤務に就かなかった者たちで、職務放棄に対する処罰の形を取っている。8人は麻薬禁制薬物に関わったこと、7人は盗み・盗品故買・恐喝そして妻子を養うことをやめる家庭放棄が原因。刑事犯罪を行った者はまず一般裁判所で裁かれ、三ヶ月以上の実刑判決を受けた者に対して、懲戒解雇の審議が警察機構内で行なわれる。
また、警察官の職務権限悪用者は2010年で259人にのぼり、2009年の192人から大幅に増加した。警察官の不良行為はいまや都民の関心が集中する問題になっており、都民は権限悪用・不法徴収金・麻薬禁制薬物使用・銃器悪用・市民への虐待などの諸問題に特に関心を払っている。それらの諸問題の中で2010年に事件が前年から大幅に増えたのは、2人から10人にアップした麻薬禁制薬物使用や5人から16人に増加した市民への虐待行為。市民に銃を向けて威嚇したり標的でない市民を撃った警官は2009年の5人から2010年は6人に増加。それ以外にも、強奪・窃盗・詐欺などの犯罪行為が警察官によって行なわれている。首都警察長官は、「不良警官に対しては容赦ない厳罰処分を行なう。真面目な首都警察官3万人の名誉を一部の不良分子による汚辱から守るためにはそれしかない。」と語っている。


「差押さえ盗難車両を返そうとしない警察」(2011年1月17日)
2010年6月29日付けコンパス紙への投書"Nasib Kendaraan Sitaan Polisi"から
拝啓、編集部殿。警察は自動車のブレート番号から東ジャカルタ市パサルボ地区の私立病院に遺棄された暴行死体の犯人を洗い出しました。警察はまた、自動車のエンジン番号とシャーシ番号からバリ爆弾テロ事件犯人を洗い出し、テロリストを逮捕しました。
ところが警察は国民に対し、自動車検問で差し押さえた車の本来の所有者がだれなのかということに関してその実力を示そうともしません。警察署に置かれたそれら差し押さえ車両を見るたびに、わたしはとても残念な思いに駆られるのです。あのたくさんの車をいったいどうしようと考えているのでしょう?そして本来の持主はいったいだれなのでしょうか?
交通警察統合サービスセンターと協力すれば警察はすぐにでもその車の本来の持主がだれなのかを知ることができます。その気にさえなれば、すぐにでもエンジン番号とシャーシ番号を見ることができるのですから。差押さえ車両が警察に保管されていることをマスメディアを通して広報するアイデアはどうでしょうか?車が盗まれた本来の持主は喜んでその広告料金を納めると思います。[ ジャカルタ在住、マルヤント ]


「まともに職務を行なう警官に大感激」(2011年1月18日)
2010年11月28日付けコンパス紙への投書"Polisi Muda Jujur dan Baik"から
拝啓、編集部殿。2010年10月19日、わたしの手提げ金庫が何者かによって盗まれ、いくつかの貴重品と一緒に重要な書類も姿を消しました。わたしは中央ジャカルタ市警タナアバン署に被害届けを出しました。それらの重要書類再発行手続の面倒さは想像も着きません。
そのわずか二日後の10月21日、前触れもなく警官がひとりやってきました。東ジャカルタ市警ポンドッチャベ署のジョセフ・シトルス警部です。その若い警官はうれしい知らせを持ってきてくれました。姿を消したわたしの重要書類のほとんどがカリマラン川の脇で深夜に発見されたのです。わたしの書類が戻ってきました。
わたしが被害届けを出したときに応対してくれたトゥリ・トゥグ・イリヤント一級巡査部長とロニー一級巡査部長の態度も礼儀正しいものでした。正直で私心なく国民に奉仕する警察官がいれば警察のイメージは大幅に向上します。インドネシアは善良な警察官を必要としているのです。[ ジャカルタ在住、トランストト・ハンダダリ ]


「金になるなら規則はすぐ曲がる」(2011年2月8日)
2010年12月24日付けコンパス紙への投書"PKL dan Area Liar"から
拝啓、編集部殿。南ジャカルタ市スガイサンバス(Sungai Sambas)通りの一角を無法占拠しているカキリマ商人たちには住民のへいに電力メーターを取り付けるようなことが行なえるのです。電力メーターというのは合法的な建築許可書にもとづいて恒久的に家屋やビルに取り付けられるものではありませんか?ところがサンバス地区では、本来取り付けられるべきでないところに取り付けられ、カキリマ商人たちがずっと以前から使用しているのです。
その状態は住民にとって危険があること、そして照明があるために他のカキリマ商人たちがたくさん集まってくることから、われわれはそれを受入れることができません。結果的にサンバス地区はスラム化しています。
われわれはPLN側の責任者に注意を呼びかけます。その電力メーター取り付けの合法性を現場でチェックしてください。[ 住所氏名は編集部が不公開 ]


「12ある国税着服ポイント」(2011年3月23・24日)
昨年後半から世を騒がせている国税総局下級職員ガユス・タンブナンに対するマフィア捜査はこの国の文化が持っているさまざまな様相を示す典型例を見せてくれており、実に興味尽きないものがある。国税マフィアというものがあり、法曹マフィアというものがあり、それらが独立して活動しているのかというとさにあらず、国の政治経済社会活動の要所要所を手を携えて絡めこんでいる実態が明らかにされていくに連れて、利益をもたらす悪事には実に容易に参加し協力していく闇の中の姿勢が浮き彫りにされて、権力を求めていがみあう明るみの世界における姿勢との落差には驚嘆する心地である。
だれかが行なっている悪事に便宜を図ることで、その悪事から得られた収入を吸い上げようとする者が必ず出現し、そんな状況においてかれらは協力し合う。悪事の始まる前に示し合わせて行われるものではない。悪事の始まる前、かれらはたいてい赤の他人であり、接触すらなかっただろう。それが悪事の中でいとも容易に協力し合う姿は、どうしてそれが明るみの世界でできないのか、なされないのか、という強い疑問をわたしにもたらしてくれる。いや、正道でそれが皆無だと言っているわけでは決してない。あるにはあるのだが、クオリティレベルがまったく違う、まるで別の人種であるかのような動きをかれらが悪事の中で示すことをわたしは指摘しているのである。
ところで、国税マフィア捜査を政府が進めている中で、国会も独自にその状況を調査し、また監視している。国税分野を担当する国会第11委員会は国税総局の業務内にある12の汚職ポイントを調べ上げて公表した。もともと国税の徴税姿勢はいくつかの流れを秘めている。実業者を搾り上げて金を吐き出させるのが国税職員の仕事であり、搾り上げる中で合法非合法の手口が駆使される。吐き出させた金は一部しか国庫に納められず、国税組織の中で闇から闇に流される。毎年そんな対応を受けてくれば事業者も前もってそれに備えるようになる。つまり申告はほんの数分の一にしておき、贈賄で税務調査官を黙らせる。こうなると国税=加害者、事業者=被害者という図式は消えて、国税+事業者=加害者、国庫=被害者という図式に変わっていく。国税は前者にせよ後者にせよ自分が損することはなく、事業者次第でそのふたつの姿勢を使い分けるようになるだけだ。
国会が公表した12の国税着服ポイントは次の通り。
1) 税務調査
2) 検察での納税不足追徴
3) 税務法廷での悪徳判事と法廷事務官
4) 不足税額決定書に対する不服申請
5) 地裁での裁判
6) 公認会計士の財務報告操作
7) 税務法廷での上訴
8) 納税者と税務コンサルタント間の諸行為
9) 納税恩典にからむ操作
10) 脱税初期証拠と税務捜査
11) 国税高官の金銭要求
12) 税関連法規制定にからむ腐敗行為


「刑務所の不正入札」(2011年4月5日)
2011年1月25日付けコンパス紙への投書"Tender Pengadaan Makanan di LP Cianjur Bermasalah"から
拝啓、編集部殿。西ジャワ州チアンジュル社会復帰院(刑務所のこと)の2011年度予算での食材調達入札実施は従来からほとんど変化していません。つまり癒着と縁故主義にどっぷりと浸かっているということです。チアンジュル社会復帰院は過去20年間以上にわたって食材入札を実施し、落札した会社はさまざまな名前ですが全部同一人がやっているのです。
入札のたびに不正狡猾な手段が使われます。2011年度入札に応じたわたしやわたしの友人たちもそれを体験しました。入札要項の入手から応札申込みそして入札書類提出にいたるまでの一連のプロセスで、応札希望者はみんな社会復帰院事務所周辺にたむろしているゴロツキに邪魔されるのです。言うまでもなくゴロツキたちは、入札に関して書類をもらいに来たり、あるいは書類を提出に来る者に対して、その行動を邪魔し、追い返すために雇われており、雇っているのは毎回落札を得ている者です。チアンジュル社会復帰院の高官や職員たちは、正門前にたむろしているゴロツキたちにたいして有効な手が打てません。
その入札常勝者は競争相手がゴロツキに邪魔されて応札を諦めると、100万ルピアとか250万ルピアとか、あるいはもっと大きな金額を補償してやる、と約束します。
入札に参加するほかの会社は同一人の持っている会社、あるいは他人の会社でもただ名前を借りて価格対比させるための入札を行なうだけです。そのようにすることで、入札に関する規定が守られているような印象を与えているのです。[ 西ジャワ州チアンジュル在住、スプリアディ ]


「でっちあげ逮捕の毒牙は自宅にもやってくる」(2011年4月22〜27日)
夜間検問で無辜の市民を麻薬所持者にでっちあげる不良警官の悪徳行為が昨年ごろからついに槍玉にあがるようになり、警察機構内での粛清や告訴された警察官への法廷での有罪判決が相次いだことから正義の復興の兆しが見られたものの、今やそれは単なる一幕の舞台に過ぎなかったような観がある。
このでっちあげ逮捕というのは、深夜に通行する車両を止めて検問を行い、検問チームのひとりが車内を調べるふりをして片隅に置いた麻薬禁制薬物を他のチームメンバーが見つけたり、あるいは独り芝居を打ったり、またやはり深夜に廉価ホテルや遊興場近辺を歩いている歩行者を止めて身体検査を行い、最初から手に隠していた麻薬の包みを握って市民のポケットに突っ込み、「見つけた」と言ってその手をポケットから出して広げて見せるという芝居を打って市民を犯罪者に仕立て上げる、という手口だ。
麻薬所持現行犯にされた市民はそのまま警察留置場に放り込まれ、市民の家族に電話で逮捕通知がなされる。そして釈放してほしければ数千万ルピアを持ってくるように命じるのである。
そのような権力機構の腐敗行為はゆきずりの人間だけを対象にしていると思っていたが、その毒牙が一般家庭にまで侵入するという事件が起こった。
2011年3月26日土曜日、北ジャカルタ市にあるブンダマリア大学学生のW21歳がP22歳の家に泊りがけで遊びに来ていた。ふたりの青年は北ジャカルタ市プンジャリガン郡プルイッ地区にあるPの実家の2階にあるPの部屋でさまざまなことを語り合いながら時を過ごしていた。
夜20時ごろ、髪を短く刈上げた屈強な体躯の4人の男がその家の玄関に現れ、Pの母親メリーに対して自分たちは麻薬使用者であるPとWを逮捕に来た警察官だと自己紹介した。メリーは仰天した。
「そっ、そんな!うちの子に限って・・・。うちの子は行儀のよい、おとなしい子で、そんな法律を犯すような悪事が出来る子じゃありませんのよ。」
すると全員が私服の四人の男たちのひとりが「奥さん、証拠もちゃんと上がってるんだから。」と言って小さなパイプを一個メリーに示して見せた。
男たちは家の中に入ってPとWを探し、部屋から連れ出して連行した。PとWはただおとなしく引き連れられて家の外に出て行った。抗議も抵抗も示さない。
メリーは慌てて一行の後を追い、家の表に停まっていた車で待っていたふたりを加えて6人となった警官隊に向かって最後の抵抗を試みた。息子を連れ去られてなるものかと焦っていたメリーの脳裏に、とっさのアイデアがひらめいたのだった。
「あんたたちは本当に警察なの?警察だったら逮捕令状はどこよ。それを見せなさい。」
6人のリーダー格の男はグッと詰まってしまい、仕方なくPをその場で放すと、Wひとりを拉致して車を発進させた。
その逮捕劇が芝居であったことを確信したメリーは21時ごろ首都警察本部にこの事件を届け出た。それから程なく、西ジャカルタ市マンガブサール地区に住むWの両親からPの家に電話が入った。まず息子Wの安否を尋ね、メリーから事件の概略を聞いたWの両親はがっくりと声を落としてメリーに告げた。ついさっき、Wを誘拐したので身代金2千万ルピアを払えという電話が入ったばかりだ、と。
この事件もさっそく首都警察本部に通報され、首都警察は北ジャカルタ市警プンジャリガン署に捜査本部を置くよう命じた。Wの両親はプンジャリガン署捜査官にサポートされて誘拐犯一味と交渉に入る。そして身代金が4百万ルピアまで下がったところで合意がなされ、Wの両親は相手に断りなく150万ルピアだけを指定口座に振り込んだ。
プンジャリガン署捜査班は一味の足取りをつかみ、26日の夜が27日に代わる前に一味を中央ジャカルタ市ベンヒル地区で一網打尽にした。誘拐されていたWも無事に解放された。まさに急転直下の事件解決だった。
この誘拐事件を麻薬警官になりすました犯罪者一味の狂言と考えていた全員が、取調べで判明した事実に驚かされた。なんと6人のうち3人が現職警官だったのである。ひとりは東ジャカルタ市警市民指導担当の副警部正で、その階級は陸軍大尉に相当する。もうひとりは北ジャカルタ市警パドゥマガン署勤務の警部、さらにもうひとりは国家警察クラパドゥアの機動旅団所属ニ級警部補だった。残る警官でない3人中ふたりもかつて誘拐事件を起こしたことのある前科者だった。
東ジャカルタ市警本部は中級幹部である副警部正がどうしてあのような犯罪の片棒を担いだのかについてノーコメントの姿勢を示し、一切をプンジャリガン署に委ねているので取材は向こうで行なってほしい、と報道陣に説明している。
首都警察はまた、今回起こった事件に関連して、都民はなりすまし警察官が自宅を訪れた場合でも決してパニックにならず、落ち着いて行動することで犯罪者の毒牙を防ぐように、との声明を出した。警察が都民の自宅に逮捕に赴く場合、かならず当該住宅地域の自治管理機構をからめるようにしてあるため、警官隊だけが都民の自宅にやってくることは基本的に起こらないことになっている、との説明を加えている。


「違反切符を切りたくない警官」(2011年6月8日)
2011年3月4日付けコンパス紙への投書"Dengan dan Tanpa Surat Tilang"から
拝啓、編集部殿。2011年1月15日午前11時ごろ、わたしはジャカルタからソロに向かって、中部ジャワ州クラテン(Klaten)のバイパスで車を走らせていました。クラテン警察署の手前に踏み切りがあります。車列の一番先頭には積荷をたっぷり積んだトラックがいて、まるで引きずるようなノロノロ運転です。後ろにいたトラックや乗用車が対向車線を通って追い越して行きました。わたしもそれに倣いました。
わたしの後ろに警察がつきました。わたしは警察がそのトラックを捕まえるのだろうと思っていましたが、1キロほど走ったあとでかれらが捕まえたのはわたしだったのです。かれらはわたしに、白の実線をわたしの車の車輪が踏んだのは違反であると言いました。対向二車線道路の白色実線センターラインを追い越し時に車輪が踏むのは当たり前で、それはつまり追越禁止の別の表現方法なのです。しかしわたしの前にいたトラックや自家用車はみんなその違反を行なっているのに、捕まったのはわたしだけなのです。わたしの車がジャカルタナンバーだったからでしょうか?
わたしは謝罪し、これは業務出張なのでなんとか助けてほしいとかれらに懇請しましたが、かれらはわたしを道路に沿った警察詰所に連行しました。詰所にいた一級警部補は「違反したら必ず罰せられる」と言ってわたしを赦そうとせず、違反切符を切られたいかどうか尋ねました。違反切符を切られたら地元裁判所へ行って運転免許証を取り戻さなければならず、その罰金は100万ルピアだが、そのような手続をはぶいて罰金をわたしに預けるなら、6万5千ルピアで済む、とのことでした。
これが公務員の国民に対する奉仕なのですか?[ 東ジャカルタ市在住、ハシホラン・ハレファ ]


「腐敗した計量ブリッジ」(2011年6月20〜24日)
ジャワ島地方部の街道で車を走らせていると、かならずノロノロ運転のトラックに追いつく。長い車列がノロノロ走っていれば、その先頭に亀のように進むトラックがいるのはまず間違いない。そんなトラックはたいてい荷物を山のように積み、相当後ろに離れても乗用車の運転席から見える視界をさえぎってくれる。そんなトラックの尻についた乗用車の運転者たちは、そのトラックを追い越そうとやっきになる。そんな地方部の街道で自分で車を走らせる外国人は本当に稀だから、これはインドネシア人の話と思っていただきたい。対向二車線道路でのかれらの追い越し手順は、まず対向車線に自車の一部を突っ込んでそちらの交通状況を見ることにはじまる。トラックの後ろだと視界が完全にふさがれているから、対向車線の状況を見るにはそうせざるをえない。対向してくる四輪車が遠ければ、間近に二輪車が迫ってきていようがおかまいなしに対向車線に突っ込んでトラックを追い越していく。対向車線があいているのを確認してから対向車線に入るという教えに従ったなら、そんな亀トラックの追い越しは車線が増える場所まで行かなければ絶対に無理だろう。
ともあれ、追い越しのチャンスが得られないまま数台の亀トラックの尻について長時間走り、いらいらが募ってきたころ、突然トラックたちがみんな左におれて工場のようなところに入って行ったときには心から快哉を叫びたくなるものだ。その一見工場のような場所は貨物運搬車両計量ポイントなのである。一般にその場所はインドネシア語でjembatan timbang(計量ブリッジ)と呼ばれている。
東ジャワ州に近い中部ジャワ州レンバンのサラン計量ブリッジ。計量ブリッジはいずれも街道沿いにあり、長距離トラックにかならず網をかける。石炭を運んできたトラックが計量ブリッジ構内に入って計量器に載るため順番を待つ。そして自分の番が来たとき、トラック運転手は折りたたんだ紙幣をひとつ窓の外に放り投げ、アクセルをふかして計量器を乗り越え、そのまま街道に出て行った。取材のため同乗していた記者に運転手が言った。「ああやってさっさと出てかないと、職員にもっと金をせびられる。ありゃあ2万ルピア札一枚だよ。まあミニマム金額だな。」
ジャワ島北岸街道の往来をなりわいにしているそのトラック運転手ワキは、どうやらその手法を常用しているようだ。「サランの計量ブリッジが一番高いことを言う。ほかの場所だと1〜2万ルピアだが、あそこだけは4〜5万も取る。あそこの連中が一番獰猛で、プンリ(pungli=不法徴収金)も一番激しいね。」スラバヤからスマランまでトラック山盛りの石炭を届けるためトラックを走らせているワキは問わず語りにそう物語る。
ジャワ島北岸街道を走るトラックは規定重量をはるかに超える積荷を運ぶ。極端な話、規定重量上限の三割り増しを積ませれば、トラックが三台必要なところが二台ですむわけで、ビジネス効率から言えば当然事業者が追求するべきテーマとなる。もちろん規定重量遵守は法律で定められており、罰則がある。しかし利益を捨てて決まりを守ろうとする者がどれほどいるだろうか?計量ブリッジは現場でその法規を取り締まるためのものだが、違反運転手から金を取って重量オーバーを見逃してやるのは、これも計量ブリッジ職員たちにとっての常識になっている。規定を守って、非のうちどころがなくとも、職員たちはプンリをたかってくるのだ。たっだらたとえ余分に金を取られようとも、バッドビジネスガバナンスを行って利益を増やすほうが利口というものだ・・・
記者はワキの車を降りると、別のトラックを探した。スマランからトゥバンに鉄材を運ぶトラックの運転手タルムジ50歳は快く記者の同乗を許した。「このフソートラックは積載能力12トンだけど、トラックオーナーが22.5トン運ぶように言うもんだから。」かれは能力のほとんど2倍を運んでいるのだ。報酬は105万ルピアだが、燃料はトラックを走らせるクルーの負担だ。軽油60万ルピア、計量ブリッジで10万ルピア、飲食品タバコに10万ルピア、それが経費の総額で、差額が手取り収入になる。だから道中はよほど出費に気をつけなきゃいけない、とかれは言う。10本あるタイヤのひとつにでも穴があけば、パンク修理に金が出る。家に持ち帰れる金額が減っていく。
スマランからシドアルジョに接着剤を運ぶ16トントラックは、27トンの貨物を積んで走っている。このトラックは運ぶ荷の重さで報酬が変わる。キロ当たり180ルピアだから、27トン積んで届ければ486万ルピアもらえる。トラックオーナーへのストランは48%だから、トラック運行クルーふたりの手に残るのは252万なにがしだ。経費は軽油60万ルピア、飲食品タバコと計量ブリッジに20万ルピア、純益は170万ルピアで、それをふたりで分配する。「決まりに従ってやってりゃ、わしらの手取りはひとりせいぜい25万ルピアだ。」運転手のソマッが言う。
トラックが重量違反を行うから計量ブリッジ職員が金をむしるのか、あるいは計量ブリッジで金をむしられるからトラックが順法をアホらしいと思うのか、鶏と卵の循環理論がここにも出現する。いずれにせよ、ここにも悪魔の輪環とでも呼ぶべき腐敗構造が存在している。その腐敗構造を矯正しようとして東ジャワ州庁運通局は州内全計量ブリッジのコンピュータ管理メカニズムを整備した。計量ブリッジ職員が行う重量オーバートラックに関する虚偽報告の真偽をつかむためだ。中部ジャワ州庁は計量ブリッジ職員に対してプンリ厳禁通達を出している。
2011年3月、北スマトラ州デリスルダンのシボラギ計量ブリッジで事件が起こった。州高等検察庁諜報官が計量ブリッジ職員の腐敗行為摘発のため、私服捜査を行った。捜査チームからふたりがトラック助手として2台に乗り込み、不法徴収金をトラック運転手に強要している計量ブリッジ入って行った。トラック運転手は本物で、検察庁の要請に応じてこの捜査活動に進んで協力した。
深夜2時ごろ、トラックが1台シボラギ計量ブリッジに入ってきた。助手の男が職員に5万ルピア札1枚を渡すと、その職員は「おい、5万で足りるわけがねえだろう!」とその助手に追加を要求した。二人の間でしばらく口論が続き、運転手が仕方なく7万ルピアを職員に渡して計量器から出て行った。トラックの重量を表示する掲示板は電気が消されていた。
その後も何台ものトラックが計量器の上を通過し、金を置いていった。3時45分ごろ、またトラックが1台入ってきた。職員が15万ルピアを要求したが、助手は5万ルピアだけ渡して知らん顔した。
「おい、おめえは新米だろう。わからんのか?」
助手が言い返した。「そうだ。おれは新人だよ。」そう言ってポケットから手錠を出してその職員の手にはめた。職員の顔が驚愕で凍りついた。そこに捜査チームが車を乗りつけ、そのとき計量ブリッジで勤務についていた職員三人を車に乗せると高等検察庁に連行した。手錠をはめられた職員はトラックから金を集めて別の職員に渡す役、別の二人は受け取った金を調べる役と得た金を保管する役にわかれていた。このようなショック療法は各地で折に触れておこなわれるのだが、捕まった者は不運だったという理解になるのが普通で、見せしめ逮捕はかれらの私利追求を挫くまでにいたっていない。
全国の国道は貨物運送車両の車軸荷重に応じた耐久力を道路に持たせており、耐久力に応じて等級が付けられ、低い等級の道路は荷重の大きいトラックの通行を禁止するという対応が取られている。道路を通行するトラックは、その型式から積載能力はわかるものの実際にどれだけ積まれているのかは計量器に載せなければわからない。トラック運送業界にとって重量オーバーが常識になっていれば、道路はすぐに壊れて穴だらけになる。東ジャワ州の国道全長3,600kmの耐用年数は10年で、年間1.8兆ルピアの予算が維持費に計上されている。
もしも2割の重量オーバーが常態と仮定すれば、道路の耐用年数は2.5年に短縮され、道路補修に27.8兆ルピアが必要となる。定められた本来あるべき姿が一部の者によって私利追求のためにゆがめられ、それを防ぐために設けられた施設が別の者たちの私利追求に悪用され、すべての国民のために国が作った道路は穴だらけになって国民サービスのクオリティはどん底に陥っている。


「巧妙な仕組みに乗った寡頭独裁体制は超法規人間を生む」(2011年6月24日)
金銭や資産のおかげで支配的地位に就いている少数者、つまり寡頭独裁権力者にインドネシアの政治システムがいつまでも握られるなら、インドネシアのデモクラシーはいつまでたっても法治から遠いところにいることになる。2014年の大統領選挙ではそのような寡頭独裁権力者グループに属さない候補者に出馬の機会を与え、政治システムがかれら独裁権力者グループを法の前にひざまずかせるための一石を投じることができるようにするべきである、とシカゴのノースウエスタン大学政治学教授ジェフリー・ウインターズは指摘した。
2011年6月3日夜にジャカルタの高潔の家で催された公開講義に集まったひとびとを前にして教授は、インドネシアの政治システムは法に従わない少数権力者たちに支配されていることを強調した。その政治システムに変化をもたらすチャンスは大統領選挙によってもたらされると教授は言う。ただし現在の政治システムでは、大統領候補者は政党を通さなければ出馬できない。それが寡頭独裁のひずみを確実に高めている。政党内ではマネーポリティクスが決定的であることから、大統領候補者はまず少数権力者のグループに属することになる、と教授は分析する。
「そんな状況は国民が真に望んでいる、インドネシアをデモクラシー国家に導き、同時に全国民を法の前にひざまずかせるように誘う高潔な人物像の出現を困難にしている。政党を通さない個人立候補者を認めるような憲法改正がない限り、わたしはほとんど楽観性をもてない。
インドネシアにデモクラシーの実践を可能にした政治システムにおける寡頭独裁政治権力には法治主義が欠けていた。法は経済資源を持たない貧困者に関われるだけで、金と政治権力を持つ者たちをひざまずかせることには力不足だ。寡頭独裁はエリートとは別物である。プラトーやアリストテレスの時代から1895年にエリート理論が登場するまで、寡頭独裁コンセプトは常に金で権力を握る少人数グループの形をとった。寡頭独裁は富裕階層構造の存在が紡ぎ出したものだ。富裕階層構造現象はスハルト政権が一群の特定ビジネスマンにビジネスと投資のチャンスを分配してから、その出現が顕著になってきた。」
教授はそう語るものの、では憲法が政党を通さない個人大統領立候補者の出馬を許し、さらにその人物が総選挙で勝利をおさめたと仮定して、政治システムの中に根付いている寡頭独裁支配というあり方に変化が生じるかどうかについて、かれは確信を抱けないでいる。今言えることは、そのようなシナリオが実現したとき、政治システムの現状に変化を起こさせるチャンスの光明が差し込んでくるという期待が持てるに過ぎないそうだ。
66年世代で元学生運動家だったラフマン・トレンは、少数権力者グループの中には法に服従しようとする者もおり、かれらはホワイト寡頭独裁支配層と呼ばれている、と教授の説を補足した。その区分に入る者たちは、今の政治システムに変化が生じることを望んでいる、とラフマンは述べている。それでもかれらが寡頭独裁をベースに踏まえるのは、インドネシアと他のデモクラシー諸国の間の国内事情の違いによるものであるようだ。


「スリ・ムリヤニを次期大統領に」(2011年6月30日)
蔵相の椅子から世銀専務理事に転出を仕向けられらたスリ・ムリヤニ・インドラワティ前蔵相を次の大統領選に出馬させようと望んでいるひとびとが政党を結成した。独立民衆同盟党(Partai Serikat Rakyat Independen)というのが政党名で、略すとPartai SRIとなり、スリ・ムリヤニの党という意味に引っ掛けてある。
SRI党は全国33州に地方事務所を置く準備を進めており、また政党認定条件である法務人権省での検証登録も行う構え。党首に選ばれた正義のためのインドネシア社会連帯活動家ダミアヌス・タウファンは政党結成について、これまで実際の政治活動に無関係だったひとびとが集まった、と党の性格を語った。「SRI党はスリ・ムリヤニを支持する正義のためのインドネシア社会連帯活動家によって結成された。わが民族の将来はますます混迷の度を深め、栄える一方のコルプシと軟弱な社会道徳、その他さまざまな民族の問題が民衆の共同生活を貶めている。クリーンで公正な国家を実現させるのにNGOでは力不足であり、それも政党を結成した理由のひとつだ。クリーンな国を実現させようというスリ・ムリヤニの考えは政党が担わなければならない。既に大勢の活動家がSRI党に所属し、全国33州とその下の県市で政治活動の準備を進めている。2014年の総選挙に参加する政党登録が来る8月で締め切られる前にすべての条件をクリヤーする所存だ。」
SRI党自身がクリーンな政党として確立されなければならないのは言うまでもなく、SRI党によって腐敗した政治舞台に新風が吹き込まれることを期待するひとびとは少なくない。


「燃油闇商人たち」(2011年7月5〜7日)
原油国際相場の上昇に付随して補助金のつかない石油燃料国内小売価格も値上がりが続いており、価格が固定されている補助金付き燃料価格との差が大きく開いてきた。
あえて同じもの(あるいは酷似しているもの)にわざわざ高い金を払いたいという心理はインドネシア文化の中に存在しているものの、それはありあまる金を持っている人間の領分であり、たとえ貧困ラインより上のステータスであってもたいして余裕のない暮らしをしている人間にとっては、できるかぎり出費を減らしたいのは当然の欲求だ。
昨今政府は石油燃料補助金予算の順守を目指して補助金付きプレミウムガソリンの消費制限を推進しており、補助金付きプレミウムは貧困者のためのものだから裕福なひとは補助金なしのプルタマックスを使おうという精神運動を進めている。テレビニュースのインタビューをガソリンスタンドで受けた消費者はみんな、「そうだ、その通り」と相づちを打っているが、価格が倍近いプルタマックスを本気で買っているひとはどれだけいるのだろう。実際、国際原油価格の高騰と歩を合わせて、プルタマックスの販売量が激減し、プレミウムが激増するという事態になっているのは周知のことである。
一物一価原則が確立していないインドネシアでは、同じ物の値段が場所と相手によって変化する。相場はもちろん存在しているものの、相手によって変化する価格差はなみたいていのものではない。同じ物に対して金持ちは余分に金を払うのが当然という金銭観がベースをなしており、金持ちはそうすることで世の中から見上げられ尊敬される、という見返りを得る。それが上で述べた、わざわざ高い金を払いたい、という心理の裏側に存在しているものだ。だから妹が買いにいったら1個1万ルピアを払わされ、姉が行ったら1個1万5千ルピアと言われたとき、「あら、あたしは裕福な人間に見られたんだわ」という思いが胸の奥底に湧き上がって思わず相好を崩したというようなことも起こるのである。
ベンツやBMWの車体をへこませると、日本車や韓国車がまったく同じ修理をするときの費用より高いものになり、高級ビラを建てるさいには、普通の家屋でまったく同じタイルを張る仕事をさせたときよりはるかに高い賃金が請求される。それらの事実は上で述べた原則に関連している。それはともあれ、補助金のからむ石油の話に戻ることにしよう。
2011年5月、高騰している原油で一儲けをたくらんだ国内航路タンカーの船長がバリッパパンからチラチャップの精油所に運送を命じられた原油を海上で仲間の船に横流しし、仲間の船はそれをシンガポールに運んで売りさばこうとしたが、カリマタ海峡で税関の巡視艇に捕まり、大もうけははかない夢に終わった。横流しされたのは5千バレル57億ルピア相当だった。この事件にプルタミナの現職職員がからんでいたかどうかはまだ闇の中だが、昔から類似の事件は数え切れないほど起こっており、かつてプルタミナが腐敗王国と呼ばれていたことの一端を示している。
ところで、補助金なし石油燃料はシンガポールプラッツ社平均価格(MOPS)と為替レートのふたつの変数で決まる。だから国際相場が上昇すればインドネシア国内価格もそれに連動するということになる。ところがその脇に低価格据え置きの補助金付き石油燃料が鎮座しているのである。クオリティに多少の差があるとはいっても、ほぼ二倍という価格差には遠く及ばない。だから産業界は廉価石油燃料への志向が強まり、たとえ闇商品であろうとすぐに札ビラが切られる下地が膨れ上がっていく。潜在市場があるところに商品を流すのがマーチャントの真骨頂だというのは古今東西の真理だった。だからプレミウムにたっぷり利ざやを載せて産業界へ流そうとする商売人たちが続々と出現し、プレミウムの消費が輪をかけて高まっていった。プルタマックスの消費が激減したのは、自家用車族がプレミウムに切り替えただけで起こったのではなかったのだ。
そんな状況下にバタム市で2011年5月27日夜、怪しいタクシーがリアウ島嶼州警察機動旅団機動捜査班員に捕まった。
バタム市では4月ごろから補助金付き軽油(solar)の品薄が顕著になりはじめ、消費者からの軽油入手難の苦情が叫ばれるようになった。しかしプルタミナは過去の消費実績統計にもとづいた供給を行っており、特に供給を絞るという政策的な動きはしていない。これは闇商人の暗躍がからんでいるにちがいないと目星をつけた警察は、その想定を踏まえて捜査を開始した。
市内のガソリンスタンドの中には「solar habis」の看板を出すところも増えてきた。そんな看板のないスタンドのひとつに、タクシーが一台乗りつけた。タクシーに客は乗っておらず、運転手はスタンド従業員に満タンと思われる60リッターを注文したが、まだ給油前なのに車体が重そうに見える。捜査員はつかつかとそのタクシーに近寄って社内を覗き込んだ。窓ガラスには透視度の低いフィルムが貼られていて見にくいが、後部座席にはシートがなく巨大な函が取り付けられている。函の上面は窓より低い位置になっているから、通りを走っているかぎり見つかることはないだろう。ガソリンスタンドを張っていた捜査員のお手柄だった。捜査員はそのタクシーと運転手を本署に連行して取り調べた。
タクシーの後部トランクを開けると、標準燃料タンクの手前にもうひとつタンクが装備されており、さらに標準燃料タンクの向こう側、つまり車内の後部座席の位置にも大型の函型タンクが取り付けられていた。この車にはなんと360リッターの軽油を積むことができる。運転手は取り調べに対し、毎日市内のガソリンスタンドを回って軽油を詰め込み、タンジュンウンチャンにいる故買人のところへ送り届けていたことを自供した。一日にたいてい二往復していたので、660リッター前後の補助金付き軽油が故買人に買い占められていたことになる。運転手は一日520万ルピアの現金を渡され、それで660リッターの現物を故買人に納め、残った金が運転手の報酬となった。
警察は緊急出動してその故買人の本拠を急襲し、関係者を逮捕した。警察の現場検証で故買人は少なくとも三台、そのような改造タクシーを使って補助金付き軽油を集めていたらしく、4月ごろからひと月あたり4万5千リッターの補助金付き軽油を買占めてバタムにある工業団地の工場に売りさばいていたようだ。警察は補助金付き燃油の買占めと横流しという犯罪行為を行っていた故買人はタンジュンウンチャン在の者だけとは見ておらず、他にも複数の故買人が犯行を行っているものと見て捜査を続けている。バタム市商工鉱エネ局長は、2011年にプルタミナがバタム市に割り当てている補助金付き軽油は73,477,751リッターで、月割りは過去の消費実績から割り出した傾向値に従って供給されている、と述べている。


「組織のトップが承知すればプンリは合法?!」(2011年7月7日)
2011年4月18日付けコンパス紙への投書"Tarif Calon PNS di Kabupaten Tegal"から
拝啓、編集部殿。2010年11月、暮らしぶりをもっと向上させたいと考えて、わたしは高卒の子供を中部ジャワ州トゥガル県の公務員にするために情報を探しました。トゥガル県庁に勤めている知り合いに連絡を取ったところ、相手はそれに応じてくれました。たまたまそのひとは人事部門に勤めていたのです。わたしは「子供を公務員にしたいので、あなたに預けます」とそのひとに言いました。するとそのひとは、アレンジしてあげるから必須条件を満たすように、と言うのです。
その必須条件とは大卒で7千5百万ルピア、短大卒が5千万ルピア、高卒は4千万ルピアだとあっさり言います。その条件が満たされなければ、わたしの子供はテスト結果がどんなに優良であってもパスしないそうです。わたしが「こんな時代になってもいまだにプンリ(不法徴収金)ですか?」とテレビCMをまねて言うとそのひとは怒った顔で、「これはプンリじゃないよ。県令とは調整済みだし、県令が承諾しているのだから、どんどんやるばかりだ」と言い放ちました。[ トゥガル在住、ユサ・ワ ]


「現金取引を法律で規制せよ」(2011年7月8日)
贈収賄腐敗行為やマネーロンダリングは現金取引を野放しにしているから下火になる気配がまったく見られないのであり、巨額の現金取引を法律で禁止すればそれらの不法行為は影をひそめるにちがいない、とインドネシア銀行は考えている。
巨額の現金取引は渡す側にも受け取る側にもリスクが高いので、それを禁止すれば安全面からもメリットが生じる、とインドネシア銀行会計支払システム局支払システム統制チームリーダーが発言した。「現金を使わず口座間でのトランスファーを行えば取引決済がより秩序立つようになる。すべて口座間決済になれば、資金の動きを追跡するのは大変容易になるし、また取引する双方にとっても安全が保証される。何十億ルピアもの現金が手から手に渡されるようなことが現実に行われているが、わたしに言わせればそれは常軌を逸した行動だ。このコンセプトのポイントは金の動きに関する規制であり、金の使い方についての規制ではない。だからこの規制は通貨法で定めるのでなく、汚職防止法やマネーロンダリング法に盛り込まれるのが当を得ている。」
インドネシア銀行通貨取引分析報告センター法務規制局長は、現金取引の上限を1億ルピアとし、それ以上は必ず口座間トランスファーを義務付ければ贈収賄やマネーロンダリングの捜査で資金の動きが用意に解明されるようになる、と語る。「世の中で普通に行われている日々の現金取引は一億ルピアまでしない。だから1億ルピアを上限と決めても世の中に不都合は起こらないだろう。この規制が実現すれば、贈収賄はもう起こらなくなるにちがいない。」
法務規制局長は通貨法国会審議の中でこのアイデアを説明したが、国会議員はだれひとり興味を示さなかったと漏らしている。「情報が足りなかったのか、それともまるで興味がなかったのか、それともどんなわけがあったのだろうか?国会の諸先生がたはみなさん何の反応も示さなかった。」もちろん、そんなアイデアを法制化しようとする議員先生はきわめて少数派であるにちがいないのだろう。


「水心とぼったくりが一緒くた」(2011年7月14日)
2011年4月8日付けコンパス紙への投書"Bayar Pajak Kendaraan Tanpa KTP di Polda Jawa Tengah"から
拝啓、編集部殿。中部ジャワ州交通局統合管理事務所でのSTNK(自動車番号証明書)やBPKB(自動車所有者謄本)の名義人に合致したオリジナルKTP(住民証明書)の提示をしない自動車税の年次納税がここのところ激しさを増しています。手続きを行う担当官が言う非公式追加費用を申請者が払うことでそれが可能になるのです。他人から自動車を買った者は名義変更することなしに、そんなやり方で以後の手続きを済ませており、正規手続きとして義務付けられているKTPオリジナル添付をしなくとも、二輪車で15万ルピア、四輪車は50万から数百万ルピアという金を担当官に渡すことで義務を免れているのです。当然ながらその金は国庫に入るものでなく、不良官吏や特定グループのふところに入っています。
その不法徴収金は言うまでもなく、地元官庁の収入局に損失を与えているのです。本当なら自動車を買った者は中部ジャワ州収入局の定めた名義変更料を納めなければならないわけですから。中部ジャワ州交通局はまた、人気のある数字の列になっている自動車ナンバープレートに非公式追加費用を上乗せしています。納税金額に50万から数百万ルピアもの上乗せが行われているのです。自動車オーナーは別にその番号を欲しくて買い取ったわけではなく、自動車を最初に登録したときに交通局の方が出してきた番号だというのに。[ スマラン在住、ハルト・ブディ ]


「小額汚職は金を返せば赦してやろう」(2011年8月4日)
2011年4月7日付けコンパス紙への投書"Naif Melampaui Batas"から
拝啓、編集部殿。わたしは法律専門家ではありませんが、パトリアリス・アクバル法務人権大臣の汚職撲滅論をテレビで聞いて、開いた口がふさがりませんでした。わが国の法をより人間的な姿に変える方法論の中で、大臣閣下は犯罪を単なる数字の問題にしてしまっているのです。
国の金であれ、あるいは何の金であれ自分のものでない金を着服するという、いわゆる汚職に属すことがらで金額が2千5百万ルピア未満であれば、その行為を認めて金を返しさえすれば犯罪者としての扱いをしないと言うのです。どこの国であれ、犯罪であるかないかの線引きに金額を用いるようなことはありえません。
大臣閣下の生活環境や思考の中で2千5百万ルピアははした金なのでしょうが、インドネシア国民のほとんどはその金額を値打ちのあるものと見ており、そんなことをすれば犯罪が激増するのは疑いありません。わが共和国の国民生活をたいへん不快なものにしている根源である汚職に対して政府自身が撲滅の剣を振るっているというのに。
相対的な意味しかない金額の問題なのではありません。そうでなくて犯罪そのものの評価なのです。副作用はまた別で、法的帰結が大きな問題です。前科者が入るのを望まず、拒んでいる社会領域はまだ存在しています。つまり実定法の定める犯罪行為からクリーンである人間だけがメンバーに加わることのできる公務員や軍人等の共同体があるのです。
自分の行為を認めて汚職で得た金を返した汚職者に対する法的制裁をなくすことは正直さに泥をかけ、インドネシアの人間的な威厳を持つ生活秩序を破壊してしまいます。[ バンドン在住、バンバン・ヒダヤッ ]
2011年4月16日付けコンパス紙に掲載された法務人権省からの回答
拝啓、編集部殿。バンバン・ヒダヤッさんからの2011年4月7日付けコンパス紙に掲載された投書について、次の通りお知らせします。まず汚職犯罪撲滅に関する法案の編成と検討、特に2千5百万ルピアまでの立証された汚職犯罪に対する法的追及の中止条項に関連してのヒダヤッさんからのご意見に謝意を表します。
まずここで、法務人権大臣は汚職撲滅努力を弱めようとする意図を少しも持っていないことを強調しておきたいと存じます。汚職撲滅法案第51条には、立証された汚職犯罪行為に対する法的追及の中止は、犯人がその罪を認めて全額を国に返還するという条件での最高2千5百万ルピアまでの汚職に対してのみ適用される、と記されています。その条文から明らかなように、汚職犯罪行為に対する法的追及が中止されるためには、三つの条件が満たされなければなりません。(1)汚職行為で手に入れた金額は最高で2千5百万ルピア、(2)犯人が罪を認めること、(3)犯罪行為で得た金額を国に返還すること。
この規定は、国が蒙った2千5百万ルピアまでの金額を返してもらうほうが、その汚職者が監獄で罪に服す期間その費用を国が負担するよりも効率的であるという損益分析に依拠しています。「のみ適用される」ということの意味は、事件の法的プロセスを中止するか継続するかというポイントが公訴人の選択に委ねられているということであり、蚊を殺すのに大砲を使うというオーバーアクションの回避を可能にしています。概して、2千5百万ルピア未満の汚職犯罪は予算管理システムの弱さの結果であり、また普通の職員が行っているものなので、この条項をなくした場合、10万ルピアの汚職行為と10億ルピアの汚職行為に同じ刑罰を与えるのは不公平だという議論が出現します。
2千5百万ルピア超の汚職行為であれば、犯人が罪を認めて金を国庫に返したからといっても法的追及を中止することにならないのは明白です。2千5百万ルピア未満の汚職犯人への刑罰も今現在もはや理想的とはいえない状況に陥っている監獄の収容能力に負担を与えるでしょう。そのため国の負担を増やすことよりももっと効用を指向する方針が求められているのです。
とはいえ、上の条文はまだ最終決定ではありません。2011年4月5日に法案が差し戻されたあとも検討は続けられています。[ 法務人権省法務広報局長、マルトゥア・バトゥバラ ]


「不条理がいっぱい」(2011年8月18日)
2011年5月3日付けコンパス紙への投書"Samsat Gadai BPKB Mobil"から
拝啓、編集部殿。2010年6月に、わたしは自分の車1996年製ダイハツエスパス、プレート番号AA8409FEの名義を妻ヌルル・ヒダヤ・ジュニアティのものに名義変更しようとしました。
BPKB(自動車所有者謄本)を含む必要書類をすべてそろえた上、手続き費用を添えて、2010年6月5日に中部ジャワ州警察交通局の監督下にあるトゥマングン(Temanggung)統合管理システム事務所の窓口担当官である交通警察職員のAW一級警視補に提出しました。ひと月後に来るように言われたので、わたしがそこを再訪したところ、びっくりしてしまいました。トゥマングン統合管理システム事務所職員がわたしのBPKBをトゥマングンの国民貸付銀行に抵当に差し入れたため、手続きができなくなっている、と言うのです。トゥマングン警察が長時間かけて処理した結果、わたしのBPKBは証拠品として国民貸付銀行から引き上げられました。そしてわたしには待つようにとのことでしたが、いつまでという期限が何もないのです。
名義変更どころか、STNK(自動車番号証明書)の更新期限が過ぎてしまったいま、わたしの車は使うことすらできないありさまで、大損害です。[ 中部ジャワ州スマラン県在住、ムフリス ]


「衰えを知らないプリヤイ文化」(2011年8月23日)
2011年5月10日付けコンパス紙への投書"Melapor SPT Tahunan, Petugas Pesta Ulang Tahun"から
拝啓、編集部殿。2011年3月24日午前7時半、わたしは年次納税申告書を提出するために中部ジャワ州パティ税務署を訪れました。そのとき年次納税申告書提出カウンター待合所には先客が三人おり、非年次納税申告書用カウンターの待合所にもひとが三人すわって待っていました。先客の数が少ないので、わたしは8時前に用事は終わるだろうと考えました。
今会議中だからしばらく待つように、と案内係職員がわたしに言いました。ところが8時を過ぎても提出の受付が始まる気配はありません。一方、申告書を提出しにやってきたひとはどんどん増えるばかりです。しばらくして職員がひとり室内に現れたので、待っていたひとりが「まだ受付は始まらないのか?」と尋ねたところ、「プログラムはまだ終わってない。いまボスの誕生パーティをやってるところだ。」と答えたのです。なんてことだ!わたしより先に来て待っていたひとたちは落ち着かなくなり、たがいに不満を口にしあいます。なんでボスの誕生日が公共サービスより優先されるのか、と。
8時半になってやっと職員がひとり、スナックを載せた皿を手にして現れました。口をまだもぐもぐさせています。待っていたひとたちから声がかかりました。「おいしいですなあ、マス。みんなでお食事会。わたしらはみんな待ってたんですよ。」するとその職員の言い草は、「ありゃあ、どうすりゃいいの?出なかったら欠勤になるんだから」。こりゃとんでもない話です。
この国の公職高官のメンタリティに、わたしはほんとうに思いもおよびません。トップがお手本を示さないかぎり、高給が官吏の勤労文化に変化をもたらすことはありえない、と言ったひとの考えは実に正解です。[ パティ在住、マグダレナ・アンタリ ]


「公僕のメンタリティ」(2011年8月30日)
2011年6月3日付けコンパス紙への投書"Mobil Dinas Seenaknya Menyalip"から
拝啓、編集部殿。2011年5月5日22時25分ごろ、われわれの車はタングラン市スディルマン有料道路の坂をノロノロ運転で上りつつありました。そのとき突然ひとつ星でプレート番号870−0xの青色スズキバレノが右側から追い越しをかけてきました。
前方で交通整理にあたっていた警官がすぐ車線の中ほどに出てきて、その車を止めました。暗かったし、ヘルメットをかぶっていたこともあり、そしてかなり遠いところから高速で近付いてきたため、その警官は青色バレノのアイデンティティがよく分かっていなかったようです。
その車が警官にぐんぐん近付いてきたので、われわれは多大の好奇心で警官とバレノの運転者の間に何が起こるだろうか、と期待の目で見つめていました。そしてわれわれが想像していた通りのことが起こりました。警官は青色バレノがそのまま走り続けることを許したのです。交通規則を守って渋滞の中にいる一般市民の車をごぼう抜きするのにお咎めは何もありませんでした。この国の公僕のメンタリティはあんなものなのですか。並じゃありませんね![ 西ジャカルタ市在住、ラッナワティ ]


「臨機応変とチームワークは両立できるか」(2011年9月8日)
2011年6月6日付けコンパス紙への投書"Inkonsistensi Polisi Lalu Lintas"から
拝啓、編集部殿。去る5月11日17時15分ごろ、わたしは西ジャカルタ市スリピ地区を南ジャカルタ市スマンギ立体交差に向けて通行中でした。道路は渋滞しています。すると、西ジャカルタ市プラザツインビルを越えたところにある自動車道ゲートにいた交通警官ふたりが、バスウエイ専用車線に入るようわたしに手で合図したのです。わたしの前にいた車が数台バスウエー車線を走り出したので、わたしもそれに倣いました。ところがバスウエイ車線が一般道と合流する、スリピ21手前の自動車道出口ゲート脇で、警官がわたしの車をストップさせました。わたしがバスウエー専用車線に侵入したというのがその理由でした。わたしの前を走っていた車はみんなそのまま通過したし、わたしの後ろから来た車もそのまま通り過ぎて行きました。
わたしがバスウエー専用車線に入った理由を、その名札をベストで隠している警官に説明しようとしたところ、警官はまるで聞く耳を持たず、違反切符を切ると言ってわたしを威嚇しました。道路交通をコントロールしている交通警官は一貫性がないとそのとき感じました。わたしは本当に差別的な待遇を受けたのです。この問題について西ジャカルタ市警の意見を聞かせてください。交通警官は道路交通のコントロールをする際、一貫性など持っていなくて当然なのですか?それとも悪徳警官というイメージは現実に存在しているということですか?[ 東ジャカルタ市在住、フィフィアナ ]


「ヤクザとヤクニンはほぼ同類?!」(2011年9月14日)
2011年6月14日付けコンパス紙への投書"Izin Usaha untuk Truk Pribadi"から
拝啓、編集部殿。わたしの工場はバンドンにあり、ブカシのナロゴンに支社があって、コルトディーゼルの自家用エンケルトラック、プレート番号D8037FCが自社製品を支社から首都圏一帯の販売店に配送するために使われています。公共運送業のためではありません。
去る5月18日午前10時ごろ、トラックがブカシのナロゴンラヤ通りを通行中、チプンダワ交差点にある陸運交通局検問所で突然停止を命じられました。道路交通書類を調べられ、すべてそろっていたというのに、検問所職員は違反切符を切りました。運送事業許可証を持っていないというのがその理由です。
運送事業を行っているわけではないため、それはまるでこじつけとしか思えませんので、わたしはすぐにブカシに住んでいる社員を役場に行かせました。違反の理由が本当に正しいかどうか確認させるためです。その社員はイフワヌディンという陸運交通局職員(公務員基本番号19700123 199803 1003)に面会しました。
イフワヌディンは、貨物を運ぶトラックはすべて運送事業許可証が必要であると言い張ります。そして違反切符に不服があるなら、法廷で判事と議論しろ、とまで言いました。違反切符は取り下げられませんでした。
本当にトラックであればすべて運送事業許可証が必要なのでしょうか?今回のケースについては、その運送事業許可証はブカシ市統合許認可サービス局が発行しているものです。だったら、ブカシ県/市を通過するだけのトラックでも、その運送事業許可証の義務が適用されているのですか?たとえ他人の貨物を請け負って運送していたとしても?
その許可証は運送業を行う会社だけが適用されるものであり、自家用トラックは対象外とされるべきものだと思います。[ 西ジャワ州バンドン在住、ハンス・スハルジャ ]


「市民ドライバーを罠に落とす交通警官」(2011年9月30日)
2011年7月26日付けコンパス紙への投書"Masuk Jalur Bus Transjakarta atas Arahan Polisi Lalu Lintas"から
拝啓、編集部殿。警官が都内自動車道スマンギ第1料金所を突然閉鎖しました。自動車道に入ろうとして料金所まであと数十メートルのところにいた、わたしをはじめとする大勢の車は、交通警官の指示に従ってトランスジャカルタバス専用車線をスマンギ第2料金所に向かって進むことになりました。このできごとは、2011年6月18日土曜日18時15分ごろ起こったのです。
スマンギ第2料金所にバスウエー専用車線を通ってやってきた車は一台ずつ、ふたりの交通警官の検問を受ける破目におちいりました。交通警官のひとりと会話したわたしの前の車のドライバーは、手の中に何かをつかんで握り、その手を窓の外に出して警官がそれを受け、その車は放免されました。わたしの車がその次の番です。警官はわたしに、バスウエイ専用車線に入るのは交通法規違反だと言いました。わたしは、スマンギ第1料金所にいた警官がこの車線に入るよう指示したので、それに従っただけだ、と反論しました。しかしわたしに対面している警官はわたしの説明に聞く耳を持たず、違反切符を切ると威嚇しました。
その警官がわたしへの違反切符を切っている間、同僚の警官はわたしの後ろに数珠繋ぎになっている車を一台一台訪れ、ドライバーからニギニギを受けるとその場を立ち去らせたのです。
スマンギ第2料金所に入ったわたしに料金所係員が問わず語りにこう言いました。「交通警官のあの手口は最近よく使われてるよ。みんなあのニギニギ作戦に文句言ってる」。[ ボゴール在住、インドラ・タンブナン ]


「被害を警察に届け出ても無駄なこと」(2011年10月11日)
2011年7月2日付けコンパス紙への投書"Percuma Lapor ke Polisi"から
拝啓、編集部殿。2011年6月27日にコンパス紙が公表した警察の業績に関する統計調査を見ると、警察の業績は依然として多数国民に不満を与えていると評価されています。わたしの意見も同様で、小市民の利害に関わる事件を取り扱う際の警察の真剣さ、能力、意欲などのポイントが特に不満の焦点です。警察が取り扱うべき事件が起こったときでも、「警察に届け出ても無駄なことだよ」という結論に至る他人の経験談をこれまでわたしはたっぷりと耳にしてきました。
去る6月12日、スラバヤ市内スコマヌンガル郡タンジュンサリ町ダルモサテリッティンダのわたしの家に泥棒が入りました。表門の錠前が壊され、玄関と部屋の鍵も壊されて、高価な品物がたくさん盗まれたのです。電話で警察に連絡すると、10分もしないうちにすぐ警官が駆けつけてきました。ところが6人もやってきたかれらの仕事ぶりには失望させられてしまいました。事件捜査のために現場を写真に撮るでもなく、指紋採取をするでもなく、ただわたしに状況説明だけを求めたのです。何時に家を空けたのか、女中はどこにいるのか、何時に帰宅したのか、そして無くなった物は何なのか。そしてかれらは届出受領報告書を作成しましたが、それがかれらの行ったすべてでした。それ以来現在に至るまで、捜査活動として何が行われたのかさっぱりわかりません。警察が泥棒事件を取り扱う際のSOPはそんなものなのですか?
標準作業手順が本当にそんなものでしかないのなら、過去6ヶ月間にわたしの住んでいる字でかなりの規模の侵入盗がもう4回も発生している事実にうなずかざるを得ません。わたしはその第4回目の被害者で、今では本当に「警察に届け出ても無駄なことだよ」説の完全な信奉者になっています。[ スラバヤ在住、ダニエルHT ]


「みんなやってる、我田引水とえこひいき」(2011年10月17日)
2011年8月24日付けコンパス紙への投書"Melanggar Lalu Lintas, Polisi Tak Ditilang"から
拝啓、編集部殿。2011年7月16日(土)午前7時11分、プレート番号B1276HOのわたしの車はガトッスブロト通りからラスナサイッ通りに曲がったときに違反を犯したとして違反切符を切られました。曲がってそのまま高速車線に入ったというのがその理由で、わたしの運転手は無意識に前の車について走っただけなのです。警官はその二台の車を停止させました。わたしはその交通警官に、「違反を犯したのなら、違反切符を切ってください」と言いました。
ところが、その交通警官がわたしの運転手に違反切符を切っているとき、かれは前の車を放免したのです。「どうしてあの車を解放するのですか?」とわたしが警官に尋ねると、「あの車は警察車なんだ」という返事が返ってきました。そのあと、また車が一台同じことをしてその警官に停止を命じられました。そしてその車もまた放免されたのです。わたしがまた同じ質問をすると、また同じ答えが返ってきました。「あれは警察車であり、警察は放免する権限を持っている。」
この場を通してわたしは国家警察長官に尋ねたいと存じます。この国では警察官の自家用車は交通法規に違反しても特別扱いがなされるのですか?そして警察官は同じ違反を犯した者に異なる処罰を与えることができるのですか?わが国の法執行者の規則に対する理解のしかたがこんなものであるなら、わが国の法治に関連して行われているもろもろの差別は、起こって当然だとわたしは考えます。この差別の嵐はいつになったら過ぎ去るのでしょうか?[ バンドン在住、アフマッ・リザ ]


「和解金はお目こぼし金」(2011年11月29日)
2011年8月22日付けコンパス紙への投書"Denda Damai di Jalan Raya"から
拝啓、編集部殿。2011年7月19日にわたしがバンテン州タングラン市カラワチのイマムボンジョル通りをオートバイで通行中、交通警官がわたしに停止を命じました。点灯走行していなかったというのがその理由です。わたしは違反を認めました。
ところがユニークなことに、その警官は交通違反切符をわたしに切る前に、わたしに尋ねたのです。「ここで和解するか、そうしないで切符を切るか?和解するんだったら5万ルピアでいい。違反罰金は10万ルピアだから。」
その警官は驕った口調で、「自分は今日、もう30人も違反を摘発しており、その大半がその場で和解するのを望んだ」と言いました。『わが国の警官はどうしてこんなメンタリティなんだろうか?』という声がわたしの脳裏を横切りましたが・・・・。
公道で警官が行う交通違反に対する和解金行為で国庫はどれほどの損失を蒙っているでしょうか。わたしの体験を参考にすれば、ひとりの警官が30人の違反を摘発して、ひとり当たり5万ルピアのお目こぼし金を受け取っています。警官ひとりが一日150万ルピアもの現金を手にしているというのは並外れて巨大な金額ではないでしょうか。[ タングラン在住、エカ・ダルマスワラ ]


「汚職者への社会制裁はこうすれば?」(2011年12月2日)
2011年8月22日付けコンパス紙への投書"Koruptor Tidak Jera dan Tidak Malu"から
拝啓、編集部殿。わが国の汚職は実行者の数・階層・職位からくすねられる金額に至るまで、すでに常識の枠を超えたものになっています。その卑しい行為を行うことにかれらはまったく畏れを抱かず、ましてや恥だとすら感じていません。容疑者として名指しされても、それどころか獄に入れられても、依然として颯爽とした衣装に身を包み、満面に笑みを絶やさないのですから。
監獄の中でさえ、かれらは手練手管を使いまくります。贈賄し、いつでも出入りが自由で、中には病院でゆっくり安眠するために仮病を使い、あるいは監獄の中に宮殿をしつらえます。つまり監獄はかれらに対する懲罰の役を果たしていないのです。
かれらに恥を感じさせ、もうこりごりだと思わせるために、裁判で罪の確定した汚職者たちに、その人物がだれであろうと、最低30日最高365日連続しての強制労働を科すよう提案します。強制労働とは言っても、社会的な無償行為を行わせるということで、たとえば主要道路の交差点・病院・市場・学校・礼拝場所などの清掃を行わせるのです。かれらには「特別社会奉仕者」といった語句を表示した目立つ制服を着せて清掃を行わせ、一般市民の目にさらすのです。そして毎日かれらが本当にそれを行うよう、出欠記録は正確に取らなければなりませんし、そしてまた全国一律の懲罰パターンにしなければなりません。
こうすることでかれらは恥を感じ、汚職行為を行う前にそれをするかどうかを自己に問いかけるようになるのです(願わくば)。かれらの懲罰労働や出欠を監督するひとは、市民の中から無料奉仕の形で希望者を募ればよいと思います。[ 西ジャワ州ブカシ市在住、バンバン・トリジョコ ]


「警察曲技団」(2011年12月6日)
2011年9月12日付けコンパス紙への投書"Polisi Berkirim SMS Saat Mengendarai Sepeda Motor"から
拝啓、編集部殿。去る8月16日午後4時ごろ、バンドンのドクトルム通りでわたしの車はひどい渋滞に引っ掛かり、二進も三進も行かなくなりました。対向車線の方は順調に流れています。突然黒色のカブ型二輪車が時速40〜50キロで前方から走ってきました。その二輪車のライダーはなんと、完全な警官の制服にPOLISIと記載されているヘルメットをかぶっていたのです。
二輪車はどんどんわたしの方に近付いてきます。そしてその警官ライダーがしていることが、はっきりとわたしの目に入りました。右手はオートバイのハンドルを握ってアクセルを回しながら、左手は携帯電話のボタンを休みなく操作するといナガラ作業を行い、目は携帯電話の画面に向けられているのです。
わたしは呆気にとられてその姿を見つめていたので、オートバイのナンバープレートを読むことを忘れてしまいました。全国の公道利用者は他人の生命を尊重し、交通法規を遵守するべきではありませんか。四輪車を運転中に携帯電話で話をするだけでも大変危険なのに、二輪車を運転しながらSMSの操作に耽っているなんて。法執行者の大衆に対する最悪のお手本がそのシーンでした。[ バンドン在住、べニー・チャンドラサ ]


「違反行為は取締者の収入源」(2011年12月19日)
2011年9月20日付けコンパス紙への投書"Polantas Bersikeras Minta Uang Damai kepada Pasien"から
拝啓、編集部殿。2011年8月19日17時10分ごろ、バンドン市内スティアブディ通りを走行中のわたしは、ググルカロン近くで交通警官に停止を命じられました。警官はSTNKの提示を求め、それを持ってわたしを自分の車に誘いました。かれはわたしに道路標識の違反を犯したと言いましたが、そのときほかの大勢の車もその違反を同じように犯しているのです。
交通違反キップを取り出した警官はわたしに尋ねました。裁判所へ行くか、それともこの場で10万ルピアの和解金を払うか、選択するように、と。わたしはそのとき医療クリニックからの帰り道だったので、警官の要求する金額を持っていなかったため、情状酌量してほしいと頼みました。わたしは薬と医師の診断書を示しましたが、警官は取り合わずに10万ルピアに固執します。ちょうどそのときオートバイのカップルが同じ違反を犯して警官につかまり、かれらは十分お金を持っていたので警官は書類をチェックすることもせずにふたりを放免しました。
わたしは抗議しましたが、その警官は相手にしてくれません。警察の職務は市民を保護し、市民に奉仕することです。市民を怖がらせ、市民から金を取ることではありません。[ バンドン在住、クリスティアン・アディ・ウィボウォ ]


「KPKが清廉度サーベイ」(2012年1月13日)
汚職撲滅コミッション(KPK)が行った2011年パブリックサービスセクター清廉度サーベイで、7政府機関と国有事業体が調査され、大蔵省内の4機関が高得点を得た。その4機関と高得点を得た業務は次の通り。
国庫主計事務所の経費支出命令書業務
国税総局の納税事業者認定申請
競売国家サービス事務所の競売手続き
税関総局の輸入貨物通関手続き


「プンチャッのプンリを撲滅せよ」(2012年1月13日)
2011年10月22日付けコンパス紙への投書"Keluar dari Tol Jagorawi, Taksi Jakarta Kena Pungli"から
拝啓、編集部殿。今のこのSBY=ブディオノ内閣時代に、公道で大っぴらにプンリ(不法徴収金)が行われています。ジャゴラウィ自動車道を出てプンチャッ方面に向かうジャカルタのタクシーは、メル金(タクシー運転手の隠語です)を道路端にいる者に渡さなければなりません。何者かがその差配をしているのです。
2011年10月10日(月)夕方、西ジャワ州ボゴール県チサルアで業務があったため、わたしと同僚はジャカルタからタクシーに乗り、ジャゴラウィ自動車道を経由しました。チアウィ料金所を出てからプンチャッに向かう道路に入ります。ところが道路の右側でひとりの若者がわたしたちの乗ったタクシーに止まるよう、手を振って合図しているのに驚かされました。
わたしたちはその若者が何を求めているのか知るために、仕方なくタクシー運転手に停止を求めました。なんとその若者はタクシー運転手を怒鳴り付け、すぐにメル金2万ルピアを払うよう命じたのです。
そのあとで運転手が言うには、そのようなことはずっと昔からあちこちで普通に起こっているそうです。プンチャッを目指すBナンバープレートをつけたジャカルタのタクシーは、メル金を支払わなければならないのです。この不法な金の徴収は何者かがコーディネートしているみたいです。プンチャッを目指すたびにメル金が徴収されるジャカルタのタクシー運転手たちは、これまでの経験から何者かがそれをアレンジしていることをみんな知っているとわたしたちの乗ったタクシー運転手は語っていました。
このような犯罪行為を撲滅するよう、関係当局に切にお願いします。愛するインドネシア共和国にプンリなどあってはならないのです。[ ボゴール県在住、アヒヤル ]


「予算不足で捜査活動は停滞」(2012年1月17日)
2012年のコルプシ(汚職)犯罪と国際犯罪は増加するだろうと国家警察長官が表明した。ティムール・プラドポ長官は、2011年に警察が手掛けたコルプシ事件は全国で1,323件にのぼり、2010年の585件から大幅に増加したと語った。2012年はその増加傾向が継続するだろうとのこと。2011年のコルプシ犯罪解決件数は755件で、2010年の493件から5割増しになっている。警察のコルプシ犯罪捜査活動で防止できた国庫損失は2010年が3,397億ルピア、2011年は2,809.5億ルピアである由。
一方、マネーロンダリング・サイバークライム・人身売買・テロリスト・麻薬トラフィックなどの国際犯罪は2010年の発生件数が10,444件で2011年は16,138件。一般犯罪も2011年の取扱件数は355,994件で前年から13%増加している。
国家警察犯罪捜査庁は2011年の活動予算が13億ルピアしかなかったために、地方へのコルプシ犯罪出張捜査が思うに任せず、成果があがらなかったと報告している。


「マネーロンダリングの手口が拡大」(2012年2月9日)
インドネシア銀行が2011年第3四半期に行った不動産サーベイで、不動産購入を現金一括払いで行ったひとがほぼ1割いたことが明らかにされた。4人中3人は銀行の住宅取得ローンを利用している。詳細は次の通り。
不動産購入時の支払い方法
住宅取得ローン 74.6%
現金分割払い 16.2%
現金一括払い 9.3%
一方、デベロッパーの開発資金はどうかと言えば、会社が蓄えている自己資金を使った不動産建設が46.6%にのぼっており、国内金融界の高金利を避け、建設前の予約販売を用いて低コスト資金を確保するやり方が既に確立されているようだ。
ところでマネーロンダリングの防止と摘発に携わっているインドネシア銀行通貨決済分析報告センターは、自動車・不動産・貴金属の売買がマネーロンダリングの手口に利用されていることから、それらの商品販売者に対して5億ルピアを超える取引の報告を義務付けた。「マネーロンダリングの手口は従来からの銀行・保険・証券などのセクターのみならず自動車・不動産・宝石貴金属・弁護士事務所・公証人・公認会計士など広範なエリアに拡大している。金融界のみに疑惑通貨決済報告を義務付けるだけではとてもカバーしおおせないため、今回は不動産会社・自動車売買業者・宝石装身具貴金属販売業者・アンチーク工芸品販売者・競売業者などに5億ルピアを超える現金取引の報告を義務付けることになった。銀行界は2002年からその義務付けが開始されている。報告義務は一括と分割の双方に適用される。」
たとえば月収1千万ルピアの会社員が5億5千万ルピアの自動車を購入し、頭金を2.5憶ルピア、残りは3年間の分割払いというケースは疑惑通貨決済に該当するので通貨決済分析報告センターに報告されなければならない。しかしその会社員が頭金を2千5百万ルピア、残りを10年間の分割払いにするなら、5億ルピア超であっても報告する必要はない。
今回、弁護士・公認会計士・公証人などは報告義務を与えられなかったが、同センターはそれらの協会から随時情報やデータを要求することができる。また今回義務付けがなされた自動車・不動産・貴金属販売業者については、報告を怠った場合に最高5年の入獄と10億ルピアの罰金が科されるとのこと。


「選挙投票に熱心なインドネシア人」(2012年4月9・10日)
インドネシアの国政選挙に対する国民の投票意欲は驚くほど高い。レフォルマシ時代に入って最初の総選挙は、民主化ユーフォリアも手伝って投票率が90%を超えた。ところがレフルマシ時代の政治システムが国民の目にはっきりと映るようになって失望が蔓延し、投票を棄権する者が増えてきた。それですら70%以上の投票率が維持されているというのは瞠目に値する。データは次のようになっている。
項目: 総有権者数(万人)/ 投票率(%)
1999年国会総選挙 : 11,816/92.7
2004年国会総選挙 : 14,800/84.1
2004年大統領選挙(第一ラウンド) : 15,505/78.2
2004年大統領選挙(第二ラウンド) : 15,225/76.6
2009年国会総選挙 ; 17,107/70.96
2009年大統領選挙 : 17,637/72.6
それら全国レベルのものに加えて、国民は各地元自治体の首長選挙にも参加する。では、国民は何を考え、何を選択基準にして投票を行っているのだろうか。インドネシアの選挙では、露骨に金がからむのは常識であり、立候補者は票を金で買おうとし、選挙民は金をたくさんくれる者に投票してやると言って票を金で売ろうとするから、投票日が近づいてくると賄賂競争の趣を呈してくる。一方、選挙管理委員会は法律に違反する行為を取締らなければならないから、露骨な票の買収は許さない。こうして立候補者も政党も狭き門をかいくぐり、官憲の目を盗んで金や物品をばらまくという行為を展開しているわけだ。
もちろん、金を軸にして動いている層と、国政のあるべき姿を求めて動いている層が混在しているのだが、票の数から言えば金権枢軸層のほうがはるかに多いようだ。だから金を使った票の買収に立候補者や政党が血道をあげているのであり、政治信条や政治公約は表看板でしかなく、インドネシアの選挙運動の本質的な部分で最重要な位置を占めているのはマネーポリティックスであるというのが国民の常識らしい。
政党の腐敗行為はそんなマネーポリティックスの資金集めのために行われていると言っても過言でなく、選挙が終われば次の選挙に向けてせっせと資金集めを不法行為を介して行うというサイクルがずっと昔から続けられてきた。だから、国政レベルにおける腐敗行為 ⇒ 選挙資金集め ⇒ 票の買収 ⇒ 選挙当選 ⇒ 公職就任 ⇒ 国政レベルにおける腐敗行為 ⇒ ・・・・というサイクルが確立されてしまっており、サイクルの個々のステップで一斉に体質改善を行わないかぎり、いまインドネシアが抱えている腐敗体質を改めるのは難しいにちがいない。
さて、コンパス紙R&Dが2012年3月20〜22日に全国12都市(ジャカルタ・バンドン・スマラン・ジョクジャ・スラバヤ・メダン・パレンバン・デンパサル・バンジャルマシン・ポンティアナッ・マカッサル・マナド)の最新電話帳からランダム抽出した電話番号に電話インタビューを申し込み、17歳以上を条件に各都市の人口に即した人数から回答を集めて集計したものがこの統計だ。回答者合計は902人だった。もちろんこの統計に上で述べたマネーポリティックスは反映されていない。
各種選挙で回答者はだれに投票するかを決める際に、何を規準にして選定しているのかという問いの答えは次のようになった。評価規準項目に上がったものは次の通り。
A.立候補者の人物評価 クリーンな人材・汚職なし
B.イデオロギー ビジョンとミッションの一致
C.社会的要因 宗教や種族が同じ
D.心理的要因 親近感や気持ちがフィットする
E.政策の主張や公約
項目 : A/B/C/D/E (数値は%・合計が100にならないのは他のマイナーポイントがあるため)
大統領選挙 : 45.1/17.4/2.5/6.4/18.8
国会総選挙 : 37.5/17.3/1.9/9.0/14.4
州知事選挙 : 36.3/20.8/2.2/6.4/14.0
県令・市長選挙 : 34.5/19.5/2.0/6.0/10.9
さらに別の質問として、国政や自治体首長選挙に関連して次のようなことを行っているかどうかが尋ねられた。イエスとノーのパーセンテージだけを下記し、不明・無回答は省略してある。
1)マスメディアのニュースに注意する イエス73.7/ノー25.8
2)自治体首長立候補者や所属政党のキャンペーンに注意する イエス11.2/ノー88.7
3)投票所で監視員や係員のボランティアをする イエス12.7/ノー86.9
4)寄付を行う イエス5.5/ノー94.2
5)投票所で選挙権を行使するだけ イエス90.6/ノー8.4


「犯罪多発はだれのせい?」(2012年4月17日)
2012年1月15日付けコンパス紙への投書"Kejahatan dan Pungli di Jalan Ibu Kota Negara"から
拝啓、編集部殿。首都圏一円は首都警察の管下にありながら、住民が公共運送機関の中で犯罪や強姦の被害者になって路上に生命を無駄に散らせることは際限もなく起こっているように見えます。一国の首都だというのに、あばただらけのその素顔は、なんとおぞましく、背筋を凍りつかせていることでしょう。
この一国の首都の治安をあずかるトップ指導者はもはや、住民に安全感を与える能力を持っていないかのようです。ところが西ジャカルタ市トゥバグスアンケ通りで十数人の治安要員が四輪車二輪車の取締りを行っているのをわたしがこの眼で見ているように、警察はほとんど毎日同じことをあちらこちらで行っているのです。西ジャカルタ市のトマン高架自動車道立体交差下でも、交通ラッシュ時間帯になると、交通警察の罠がかけられない日はなく、罠はその場で和解金のやり取りという結末を迎えます。現場での警官のふるまいは、指導者の素顔を反映させているのです。
警察機構内での、下っ端から上役に稼ぎが納められる噴水文化は最近ますます盛んです。路上における犯罪と不法徴収金の事件発生の多さは、不思議なことではありません。首都の警察機構のトップから中堅幹部に至る指導者層の業績評価を、国家警察長官はただちに行ってください。[ 西ジャカルタ市在住、ルディ・クスマ ]


「あらゆることが不法徴収金の理由にできる?」(2012年5月16日)
2012年1月27日付けコンパス紙への投書"Petugas DLLAJ Memungli Uang untuk Beli Obat Anak"から
拝啓、編集部殿。2011年12月10日(土)10時20分ごろ、わたしは子供の薬を買うために1995年製のピックアップ車を運転してブカシのラヤナロゴン通りを走っていました。正確にはリムスヌンガル地区です。ブカシ道路交通運輸局の検問にわたしは停められました。かれらはわたしが運送許可書を持っていないことを問題にしました。路上で車を走らせるための書類はすべてそろっているというのに。
そのときの職員は胸の名札によると、AJ、IF、IAで、もうひとりは名札を着けていませんでした。そのとき、車の荷台には何も積まれておらず、キャンバス布でしっかりと覆われていました。「許可が与えられているのは運送事業のためではないか。それをあなたは私用に使っている。」とかれらは非難口調で言います。
あれこれ理由をつけたあげく、ルビーという名札のない職員はどうしても違反切符を切ることに固執しました。ブカシの道路交通運輸局で事業/荷役許可カードを作り罰金25万ルピアもそこで納めるようわたしは命じられました。ところがかれは、違反罰金10万ルピアをここで当方に預けてもいいよ、と言います。わたしは病気の子供のために薬を買うだけのお金しか持ってきませんでしたし、それを取り上げられたら薬を買うことができません。わたしはかれらの措置にまったく不満でした。しかしこのままではわたしの時間がなくなってしまうので、和解金でその場を逃れようとしましたが、かれらは紙ばさみの中に入っている何枚もの10万ルピア紙幣を見せて、そこでの検問ではそのレベルがスタンダードなのだと言い張ります。
ところがおかしなことに、その間にも規定重量を超える荷物を積んだ大型トラックをかれらはどんどん通しているのです。ピックアップやボックスなどの小型車だけがその検問で停められていました。これは不法徴収金なのですか、それともオフィシャルなものですか?[ 東ジャカルタ市在住、セリ ]


「輸入完成品自動車購入の裏金」(2012年5月22日)
2012年2月20日付けコンパス紙への投書"Biaya Rekomendasi Surat Kendaraan"から
拝啓、編集部殿。最近、南ジャカルタ市の自動車ショールームでわたしはタイで作られた輸入完成品乗用車を購入しました。政府の規定では、この自動車の購入に際して税関が発行するフォームAの取得が条件にされています。
首都警察交通局が発行するSTNK(自動車番号証明書)などの書類手続き以外に、必要もないビューロクラシーと余分な費用を発生させる手続きを終えなければ、その車の必要書類を手に入れることができません。そんな余分な手続きはすべて不法徴収金を増やすだけのものなのです。
ショールームの販売担当者によれば、その自動車の出所を示すフォームA書類は購入者の所在地を管轄する警察交通統合サービス事務所ですぐに手続きするわけに行かず、まず南ジャカルタ市MTハルヨノ通りにある国家警察交通局本部へ行かなければならないそうです。一台あたり35〜40万ルピアの不法徴収金を払って一週間後に(あるいはもっと長期に)国家警察交通局が出す証明書がなければフォームAの手続きができません。もしジャカルタとその周辺地区で一日に1千台の輸入完成品自動車の手続きが行われるなら、この非公定料金の収入はいったいどのくらいになるのでしょうか?[ 南ジャカルタ市在住、スントッ・プラウィロ ]


「腐敗の親玉は国会」(2012年6月21日)
国家機構内でもっとも色濃く腐敗しているのは国会である、という腐敗に関する最新サーベイ結果が報告された。スゲン・サルヤディ・シンジケートが2012年5月14〜24日に全国33州で2,192人の回答者から集めたサーベイ結果がそれで、このサーベイは2014年大統領選挙の情勢を予測するのが主目的だが、国民の腐敗に対する認識調査もその中で実施されている。
回答者の47%が腐敗ナンバーワン国家機関は国会であると指弾した。二位の税務署は21%、第三位は警察で11%。政治腐敗の元凶と言われている政党を指摘したのはわずか4%だった。
国会に対する国民の見解は、62%が国会を議員の金儲けの場所と見ており、国民の代表としての務めを果たしていると答えたのは21%、のこりは不明・無回答。国会議員は自分の立場をどう認識しているかということに関連して国民の印象を尋ねた質問では、国会は政党の人間が集まっている場所というのが53%を占め、かれらは国民の代表者として仕事をしていると見ているひとは29%だった。
デモクラッ党議員のひとりは、国会が最腐敗機関であるという国民の見解は妥当であり、国会予算院は腐敗の元凶である、と語っている。国家の資金をどう自己利益に結び付けようかという頭脳がそこに集まっており、予算院メンバーの中に高潔な者がいないわけでないものの実際の腐敗活動の鍵はそこに置かれている、と同議員は指摘している。しかし国会議員の中にはそのサーベイ結果に反発する者もいる。昨今の報道で国会議員や政党幹部が犯した腐敗事件に焦点が集中しているために国民がそんな印象を受けているだけであり、そのサーベイ結果は国会のポジションを転倒させようという意図が感じられないでもない、とその議員は言う。「立法機関で起こった腐敗事件に比べたら、行政機関でのもののほうが圧倒的に多い。政党中枢にいる政治エリートたちの腐敗事件はわずかしかないし、政府機関の上部構造をなしている高官たちの腐敗事件とはまるで比べ物にならない。」福祉正義党議員のひとりはそう国会を弁護している。


「金を搾る奥義はこれ」(2012年8月1日)
2012年5月30日付けコンパス紙への投書"Diskriminasi dan Birokrasi Petugas Ukur Kantor BPN"から
拝啓、編集部殿。2012年2月2日、わたしは東ジャワ州バニュワギ県トゥガルサリ郡ダスリ村の妻名義の土地について、地元の国土管理庁事務所に権利証書の申請を行いました。わたしの申請書を受理した係官は、測量担当官はSであると言い、そのひとの携帯電話番号をくれました。
その指示に従って携帯電話番号に連絡したところ、業務指示書が来ていないために何もわからない、とその相手は言うのです。このようなことに初心者のわたしは、あとで再度その電話番号にコンタクトしましたが、反応がありません。SMSを送っても、返事が来ません。仕事が忙しかったので、わたしが申請の経過がどうなっているのかを尋ねに国土管理庁事務所を再訪したのは4月25日でした。
国土管理庁バニュワギ事務所の担当者によれば、測量担当官は間違いなくSであり、業務指示書は2月3日に作成済みであるとのことでした。ところがSに連絡すると、その申請書は見たことがない、と言うのですが、控えの文書には測量担当官としてSという名前のイニシャルサインがたしかに入っているのです。
参考までに、わたしの兄は2012年2月15日に土地測量申請を出してひと月経たないうちに終了しています。兄は土地権利証書の申請を村役場と土地証書作成官を通じて行っていました。書類は既に公正証書の形になっているので、必要書類を添付して自分で国土管理庁事務所に提出したのです。申請を出す者がコネを持っていればすぐに対応されることがそこから明らかです。わたしのような、なじみのない人間が国土管理庁のビューロクラシーの厚い壁を突破するのは、きわめて困難なことなのです。
証書申請手続きを申請者本人が自ら行うのと、サービス業者が行うので、何が違うと言うのでしょう。尊敬すべき国土管理庁に一市民のわたしが問いたい質問がそれです。[ 東ジャワ州バニュワギ在住、ベクティ・スダルモノ ]


「顧客名簿はよく売れる?!」(2012年8月20日)
2012年5月5日付けコンパス紙への投書"Nama dan Nomor Ponsel Sama"から
拝啓、編集部殿。去る3月26日朝、インドネシアと4時間の時差がある国にいたわたしの携帯電話あてに、+6281298428574番から電話が入りました。わたしはその番号に心当たりがなかったので、その電話に出ませんでした。そのあとでわたしがその番号にSMSを送ると、「すみません、プラウォトさん。わたしはダナモン銀行のハリマです。クレジットカードファシリティについて説明しようと思いまして・・・」という返信が届きましたので、それに答えてわたしは「わたしの携帯電話番号をあなたはどこから手に入れたのですか?データベースから、などという返事はなし。正直に答えてください。」という文章をSMSしました。すると、「ダナモン銀行のわたしのマネージャーからです。」という返事が来たのです。もしハリマさんがわたしの名前を知らなかったなら、その通信はかの女があてずっぽうに選んだ電話番号に発信してきただけだったのかもしれません。ところがかの女はわたしの名前を知っていたのです。
わたしはテルコムセルとダナモン銀行(その双方とも、インドネシアでは著名なビッグビジネスです)に質問します。ハリマさんが言った、かの女のマネージャーはいったいどうやって携帯電話番号とその保有者の名前を手に入れたのですか?[ 西ジャワ州ボゴール在住、プラウォト・マルトディコロ ]
2012年5月21日付けコンパス紙に掲載されたダナモン銀行からの回答
拝啓、編集部殿。プラウォト・マルトディコロさんからの2012年5月5日付けコンパス紙に掲載された投書に関して、当方はその苦情されている内容を明確にしたいと望んでいますが、まだプラウォトさんとコンタクトができておりません。
ダナモンカードセントラル24時間電話サービス番号02134358888または67777に携帯電話で連絡いただけますよう、プラウォトさんにお願い申し上げます。contact.center@danamon.co.id宛てにEメールをいただいてもけっこうです。当方がフォローアップできるよう、よろしくお願い申し上げます。[ インドネシアダナモン銀行カスタマーケア課長、リタ・ロンパス ]


「被害者を加害者にすり替える手法」(2012年8月27日)
2012年5月11日付けコンパス紙への投書"Penyuapan atau Pemerasan?"から
拝啓、編集部殿。汚職容疑者国税局員ダナの話題が騒がれており、さらに贈賄容疑でKTU株式会社が舞台に上らされています。わたしがインターネットから得た情報によればKTU?は輸出入会社であり、同社とダナとの取引はPPn(販売税)還付に関わるものである可能性が高いように思われます。
輸出する場合、PPnは課税されません。輸出される物品が納税対象物品である場合、工場生産時にPPnが課税されているので、既に納税されたPPnを物品が輸出されてから還付してもらうことができます。金額は物品価格の10%です。
今から十年ほど前、国税改革が実施される前は、輸出者の権利であるPPn還付手続きが行われるとき、国税職員は還付される金額の半分を要求しました。その条件を輸出者が受けられないなら、還付は行われないのです。何も手に入らないよりは半分でもまだマシだから、輸出者は権利の半分が失われることさえガマンしていました。この種の行為は贈賄でなく搾取なのです。なぜなら、PPn還付は輸出者の権利なのですから。つまり納税者が国税職員に金を渡したら、イコール贈賄である、といういい加減な表現は正しくありません。[ 中部ジャワ州トゥマングン在住、ウイ・ホンチュン ]
2012年5月24日付けコンパス紙に掲載された国税総局からの回答
拝啓、編集部殿。2012年5月11日付けコンパス紙に掲載されたウイ・ホンチュンさんからの投書に関して、次の通りお伝えします。付加価値税(PPN)と奢侈品税(PPnBM)に関する1983年法律第8号が施行されて以来、販売税(PPn)は付加価値税に変更されています。
ウイ・ホンチュンさんがコンパス紙にお寄せになったご意見は、犯行に関わる事実や証拠にのっとらない個人的な仮説です。国税総局は現在サービス向上を目指して継続的な改善を推し進めています。国税職員の職務逸脱で立証できる案件はクリンパジャッ電話500200あるいはwww.pajak.go.id 経由で国税総局宛に通報してください。[ 国税総局指導サービス広報局長、デディ・ルダエディ ]


「権力は差別扱いするためのもの」(2012年9月24日)
2012年6月30日付けコンパス紙への投書"Polisi Lalu Lintas di Taman Suropati Diskriminatif"から
拝啓、編集部殿。去る5月12日(土)夜、わたしは友人たちと中央ジャカルタ市スロパティ公園に寄り合っていました。オートバイはいつもと同じようにスロパティ公園保安ポスト近くに停めました。22時半ごろ、突然中央ジャカルタ市警クラマッラヤ署交通警官が10人ほどやってきて、そこに停めてあるオートバイに違反切符を切ったのです。
交通警官たちは最初、公園に来て三々五々座っていました。それから突然立ち上がって散開し、オートバイをそこに停めている者に接触を始めたのです。わたしの友人は運転免許証を取り上げられ、中には自動車番号証明書を押さえられたひとたちもいます。警官の言い分は、オートバイを停める場所はスンダクラパ公園のほうだ、とのことでした。警官と違反切符を切られた者たちの間で口論が起こりました。
今まで、われわれ市民がそこにオートバイを停めても、スロパティ公園で警戒任務についている警官から一度たりとも注意を受けたことがありません。もっとおかしなことに、土曜日の夜など、パトカーや警察バイクがそこに駐車しているのをたびたび目にしています。もし交通秩序を整えようというのであれば、自分たちの車をそこに停めないのが先決ではありませんか?それともスロパティ公園の警官はみんな超法規なのですか?差別はやめてください。[ 中央ジャカルタ市在住、アロイシウス・プルマナ ]


「正邪?あるいは善悪?それとも・・・?」(2012年11月20日)
2012年8月29日付けコンパス紙への投書"Denda Damai di Bekasi Rp 500.000"から
拝啓、編集部殿。去る7月27日(金)16時半、わたしの息子は北からブカシトレードセンターに向けてオートバイを走らせていました。東ブカシのブラッカパルを通過するとき、そこではまず左折しなければならないのに、息子はそこを直進しました。その結果、息子は警官に停止を命じられ、違反切符を切るか、ここで和解をするか、という選択を迫られました。息子はそのときたまたま運転免許証を持参していなかったので、50万ルピアの和解金を支払うよう強いられたのです。このフォーラムを通してわたしが国家警察長官に訪ねたいのは、あなたの部下が行ったその行為は正しいものなのかどうかということです。その警官の名札は胸を保護しているチョッキの下に隠れて見えませんでした。おまけに鼻と口を覆っているマスクさえその警官は取ろうとしませんでしたので、顔すらはっきりわかりません。
翌28日(土)午前7時ごろ、息子はその警官の正体をはっきりつきとめようとしてふたたび現場を訪れましたが、前日と同じかっこうをしている姿を目にしただけでした。チョッキを着、マスクを付け、オートバイに乗ってもいないのにヘルメットをかぶったままだったのです。
国家警察長官・首都警察長官・西ジャワ州警察長官・ブカシ警察本部長にお願いします。そのような警官を処分してください。わたしの息子は働き始めたばかりで、まだたいした収入がありません。ところが、もう50万ルピアもの出費を余儀なくされたのです。[ 中央ジャカルタ市在住、スジャルウォ ]


「議員先生は賤業」(2012年11月23日)
たいていの国で国会議員というのは世の中から見上げられる地位にあるのが普通だが、昨今その栄誉もどうやら下り坂にあるのが世界的な現象ではないかと思われる。しかしそれが堕ちに堕ちて、一族の恥になるからあんな腐った環境に身を置くのはやめてくれ、と言われるようなことが起こっているのはインドネシアくらいかもしれない。
インドネシアサーベイサークル(LSI)が2012年に行ったサーベイ結果によると、自分の子供が議員になるのを嫌がる親は回答者1千2百人中で56.4%いた。2008年のサーベイ結果は31.3%だったから、もう少しで倍増というところだ。最大の要因は、国会議員が関与したコルプシ事件の報道が激増しているからではないか、とLSIはコメントしている。もうひとつの要因は、国民の代表者である国会議員がもっぱら私利私欲の追求に励み、国民の利益を代表しない姿勢が強まっていることだろう。「自分は国会議員になることを誇りとは思わない」と答えた回答者は69.6%にのぼった。「国会議員の業績は優れており誇りうるものだ」と答えた回答者は6%しかいない。
国会の堕落は政党が総選挙の際に党への選挙資金献金額の大小で議員候補者リストの順位を上げ下げしたあたりから始まっており、政治の根本が金で動いていることをそれが明白に示している。国会に対するアパシズムがこれ以上深まっていけば国会は有名無実なものになってしまい、三権分立という民主主義政治のあり方が障害を受けることになりかねないとしてLSIは政党に対し、政党が国会に送り込む議員はもっと厳格な人選によらなければならない、と警告している。


「金が入るのだろうから分け前をよこせ」(2012年12月12日)
2012年9月13日付けコンパス紙への投書"Biaya Surat Keterangan Ahli Waris Tawar-menawar"から
拝啓、編集部殿。2012年8月2日、わたしの母は西ジャワ州デポッ市スッマジャヤ郡アバディジャヤ町役場で遺産相続者証明書の作成手続きを行いました。名義変更のためで、遺産を売却するためではありません。ところが、町役場の男性職員が母から35万ルピアを徴収しました。
その金額はタワルムナワル(価格交渉)の結果です。最初は40万ルピアを要求されたのですから。そのあと郡役場でも女性職員に20万ルピアを徴収されました。これもタワルムナワルを行った果ての金額です。腑に落ちないのは、どうして費用がタワルムナワルできるのかということです。デポッ市長に尋ねます。上の費用に関する規則はどうなっているのでしょうか?
それとも上のケースは不法徴収金だったのでしょうか?わたしとわたしの家族にとって、35万ルピアに加えて20万ルピアという出費はとても大きな支出です。ましてや母は年金生活者の未亡人でしかなく、わたしも一介の勤め人に過ぎないのですから。考えてもみてください。遺産相続者証明書を作るだけでどうしてそんなに費用が高いのですか?ただタイプするだけで、そして高官(町長と郡長)のサインをもらうだけだというのに。
西ジャワ州デポッ市スッマジャヤ郡アバディジャヤ町役場職員は自戒してください。非公式費用をかけて小市民に負担を負わせないように。[ デポッ市在住、サヌシ ]


「軽々と行われるデータ捏造」(2012年12月18日)
2012年9月8日付けコンパス紙への投書"Citilink Tidak Bertanggung Jawab"から
拝啓、編集部殿。わたしは2012年7月5日19時40分スラバヤ発ジャカルタ行きシティリンクの航空券を買いました。当日、そのフライトの出発時間は22時10分になるという連絡がSMSで届きました。ジュアンダ空港でチェックインしたとき、わたしが係員に出発は予定時間通りかと尋ねると、「そうです」という返事でした。わたしは待合室で搭乗を待ちましたが、出発時間を過ぎた22時25分になっても搭乗案内もなければ遅延の情報もありません。
つんぼ桟敷に置かれていることに関して搭乗予定者が何人か激しい抗議を行い、「責任者が出てきて説明せよ」と要求しました。最終的にシティリンク側の男性がひとり現れて、搭乗予定者はひとり30万ルピアの賠償金が与えられると言いましたが、ただ言葉だけで実行動はなにもありません。
結局そのフライトは0時30分にテイクオフしました。わたしはシティリンクの劣悪なサービスにたいへん失望しました。5時間も搭乗を待っている間、食事の提供もありません。規則によれば、フライト出発が4時間遅延したら乗客ひとり30万ルピアの賠償金が与えられることになっています。
わたしがシティリンクのクレームセンターに電話すると、かれらは責任をシティリンクのスラバヤオフィスになすりつけるばかりです。わたしがシティリンクのジャカルタオフィスを訪問して、規定の賠償金30万ルピアについて尋ねたところ、当日現場で乗客に渡されたバウチャーを持ってこなければ賠償金は受け取れない、と言われました。
法規で定められている賠償金を被害者に渡すのにシティリンクはバウチャーシステムを用いていることをわたしははじめて知りました。シティリンクのジャカルタオフィス職員がわたしの問題にしているフライトの実施報告データを調べたところ、なんと出発時間は22時10分になっていたのです。実際のフライト出発時間0時30分とは大違いであり、このようなごまかしの手管はわたしを激怒させました。シティリンクはそんな風にして責任逃れするのですね?[ 北ジャカルタ市パドマガン在住、リンダ・プスピタ ]


「需要期の価格操作に警戒を」(2012年12月24日)
年末年始の物資需要期を前にして事業者たちが行なう生活必需品の価格操作に警戒するように、と事業競争監視コミッション分析局長が消費者保護財団事務所で記者発表した。かれらの価格操作手法の多くは、流通ルートに流す物資の量を操作して需給関係を歪め、更に口コミでその噂を増幅させて消費者の意識までも操作の網にからめていく方法が使われる。
消費量の増える需要期に入ると物流操作が頻繁に行なわれるが、たとえ供給量が潤沢にあったとしても消費者の意識を誘導することで価格を引き上げても販売量は落ちず、消費者は「高い。高い。」と言いながらその価格で買っていくということが、実際に昔から繰り返されてきた。
各商品分野で業界者は増加しており、競争が高まれば市場価格は下がるというセオリーが信じられているものの、インドネシアの実態はそうなっていない。それはカルテル行為が行われている可能性を示唆しており、一部の有力な独立生産者による供給と価格のコントロールで流通部門がそれに服従している状況が推測されている。そのような流通と価格の操作は通商・銀行・通信・医薬品その他生活必需品の分野で行なわれており、たとえば食用油はその典型だと言える。
消費者保護財団理事長は消費者に対し、カルテル行為を思わせる現象を発見したなら、ただちに事業競争監視コミッションに届け出るよう奨めている。


「ゴルカルが腐敗の親玉」(2013年1月18日)
インドネシアコラプションウオッチが2012年に集めたデータによると、政党の中でもっとも腐敗しているのはゴルカルであるとのこと。これは政党幹部の腐敗行為が法執行者によって明るみに出た事件を集めたもので、2012年は政党幹部52人が摘発された。政党別内訳は次のようになっている。
Golkar 14人
Demokrat 10人
PDIP 8人
PAN 8人
PKB 4人
PKS 2人
Gerindra 3人
PPP 2人
不明 1人
それら政党幹部は現職あるいは引退した国会議員や地方議会議員、さらに州知事・市長・県令そして大臣までもが含まれている。国会と地方議会の議員が21人、地方自治体首長21人、政党運営者2人、現職大臣1人などがその内訳だ。地方首長については予算マフィアや社会支援金あるいは寄付金さらに選挙キャンペーン資金などに関連した腐敗行為が多い。政治家が高官職に就いた場合、権力を濫用し、予算組みを行なう中で予算マフィアと癒着するケースが一般的で、腐敗行為は予算編成の中で組み立てられるために予算マフィアの徹底撲滅が難しい原因になっている。


「腐敗役人の間接殺人未遂?」(2013年5月10日)
2013年4月24日(水)正午ごろ、折りしもの雨と突風で東ジャカルタ市オティスタ通りの街路樹が倒れ、近くの4軒の家と防水布販売所およびタイヤパンク修理所が損壊した。倒れた街路樹は直径50センチもあるアンサナの巨木で、樹齢は30年とのこと。
かつてアリ・サディキン都知事が首都ジャカルタの現代化を推進したとき、街路樹として成育の早いアンサナの木が選ばれた。しかしアンサナの木は幹がもろく、老齢化した巨木は危険な存在になる。アリ・サディキン知事はアンサナを植えたことについて、成育後できるだけ早い時期にもっと折れにくい樹種に植え替えるようにとの指示を残したものの、その後の歴代知事はそんなことを知らなかったようだ。
その日、根に近い部分でポッキリと折れたアンサナの巨木について損壊の被害を受けた住民は、その木がもう危なくなっているため東ジャカルタ市公園課に木を切り倒すよう要請していた、と語る。「ところが公園課は住民の要請に知らん顔をし、不良職員は5百万ルピアを出せば切ってやると住民を抑圧した。個人の木を切ってくれと頼んでいるんじゃなくて、街路樹じゃないか。公園課の責任領域だ。なのに5百万ルピアを払おうという住民なんかいない。」
ところが、木を切るよう公園課に出した依頼はその一回だけではなかった。しばらくして再度依頼を出したら、今度は2百万ルピアに要求額が下がった。それでも、住民は金を出さない。無論、出さなくて当然なのだが。
そうしてついに倒木という事態に至った。その事故で死人が出なかったのはまだ幸いだった。道路脇に仮小屋設けて防水布を販売していた住民は倒木の直撃を受けたが、仮小屋がちょっとの間、倒木を支えてくれたために一命を助かっている。もし好運がかれを救わなかったら、コルプシ殺人になっていたところだ。
東ジャカルタ市公園課長はその話について、真偽のほどを調査しなければ、まだ何も言えない、と報道陣に語っている。公園課はその倒れた倒木の整理のために12人の現場職員が出張って手早く解体作業を行なっていた。


「石油にしがらむ悪霊の呪縛」(2013年5月27日)
インドネシアの石油関連制度実施の中から大きな利益を得ている勢力があるということを暗示する諸方面からの発言が、2013年4月28日にコンパス紙が主催したパネルディスカッションの中で提出された。その勢力はあらゆる手段を駆使してエネルギーの国家セキュリティを脆弱にさせる現行システムを維持し続けようとしており、国内の石油ガス産業を弱体なままにさせ、国家経済を蝕んでいる。
530億ドルという経済規模を有する石油ガスビジネスはレントシーカーでごったがえしている。ある者は政府/国有事業体の不良分子とつるんで輸出入分野のブローカーになり、あるいはトレーダーになり、はたまたタンカーオーナーになり、別の者は国内配送に携わり、あるいは政府の消費と補助金抑制政策を現場で腰砕けにさせる群れになる。一般国民から石油関連制度関係者やオブザーバーらが夢想だにしなかったように、政府が石油燃料価格の歪を是正しようとせず、また国内の石油ガス産業を病むにまかせるよう仕向けている石油マフィアと絶交しようとしない印象を与えているのはいったいどうしたことなのだろうか?
石油燃料補助金の撤廃に政府が消極的なのは、政治構造に跳ね返ってくる国民の抵抗と影響に直面するのを政府が嫌がっているからというだけの理由なのだろうか?他の利害はないのだろうか?
オペックの広いネットワークを持つインドネシアが、中東の大型産油国からインドネシアに有利な価格で石油を供給してもらおうとしないのはどうしてなのか?産油国であるインドネシアが、他の産業分野に広範に役立つ製品を生み出す石油精製産業を過去一度も構築しようとしなかったのはどうしてなのか?
これまでの石油燃料補助金における綱引きと精油所建設に関する政策を見れば、そこに利害のしがらみをまとわりつけている複数の勢力が存在していることを観取できるだろう。関連諸勢力には、補助金で利益を得る富裕な都市階層のみならず、原油や石油燃料の売買に携わっている者たちも含まれている。
<昔からのプレーヤー>
この石油売買シンジケートのメンバーの大半は、オルバ期以来居座り続けている昔からのプレーヤーだと見られている。パネリストのひとりの言を借りれば、かれらこそが真の敵なのである。ガンから免れている健全な国家経済を生み出す最大最高の民族利益を蝕む敵なのだ。かれらの手によって、もっと低価格になりうる原油や石油燃料製品の価格が高くなっている。その結果、消費者にとって妥当で国民に負担をかけない石油燃料価格にするための補助金支出はますます巨額にならざるを得ない。シンジケートはまた、国内石油産業が成長することを望まない。なぜなら、効率のよい石油産業や石油商業統制ができあがれば、かれらの存在が脅かされるからだ。石油に関わっている監督省や国有事業体がわが国でもっとも腐敗している機関のひとつだと言われている現状から、国民石油ガス産業やエネルギー国家セキュリティにどのような期待をかけられるというのだろうか?これまでに暴かれた石油関連事件やプルタミナの巨大汚職事件では、上級高官や自身の子会社がその腐敗行為に深く関わっていた。
そのマフィアネットワークは、プリマドンナの化石エネルギーを代替する再生可能エネルギー開発や石油燃料生産のための新石油精製所を国内に建設するといったことがらの実現を打ちこわし、政策策定から効率的な石油燃料調達方法に至るまでのあらゆる段階で影響をふるうことができる。
ほんのわずかしか石油精製所を持たないため、われわれは外国からの石油燃料輸入に頼らざるをえない。限られた石油精製所しか国内にないということは、国内で生産された原油をシンガポールに売って、そこで精製させるという方式を採らざるをえない。その石油燃料をプルタミナの子会社が輸入するのだ。
結果的に、ますます長い連鎖が発生するばかりか、価格マークアップや不正入札の機会が激増して石油燃料調達コストが押し上げられるのである。これは石油燃料調達の話に関するものでしかなく、原油生産の話はまた別にあるのだ。
マークアップや不正入札の疑惑が起こるのは、子会社からプルタミナが調達する価格が国際相場から10〜30%も高いということが頻?に起こっているためだ。一日50万バレルの原油を輸入する場合と、同量の加工済み石油を輸入する場合とで、どのくらいの金額差が起こるかを想像してみればよい。
石油精製所問題において、マージンが小さいという理由で精製所建設議論は日の目を見たことがない。国内に精製所を持つということは、その経営における経済性の問題だけでなく、産業戦略に対する価値を持っているのである。特にインドネシアのような原油資源保有国にして石油燃料の高い国内消費を行なっている国にとっては。
その産業戦略の中には、国内の原油供給が保証されて石油燃料の輸入依存度が低下すること、さらに石油化学産業のような下流産業の発展する機会がもたらされるといった国内における付加価値の向上なども挙げられる。シンガポールが国内に原油資源をまったく持たないにもかかわらず自国内に石油精製施設を建設しているのは、その考え方に拠っているのだ。
<不安定への貢献者>
今現在、国内の石油燃料生産はガソリン換算で全国消費量の4割を満たしているだけだ。ガソリン消費の増加傾向を見るなら、2025年には日製30万バレルの能力を持つ精製所が新規に10ヶ所以上造られていなければならない。国内需要が増加し続けている現状で、自国内に精製所を建設しようとしない限り、輸入への依存はますます深刻化していく。そこに生じるのは、安定的な供給と価格への不安だ。
昨今、インド・中国・韓国など多くの国で石油精製の余剰能力がますます高まっていることが国内の精製所建設案を一層困難な状況に導いている。国内に精製所を建設するよりも外国で加工させて輸入するほうが廉いということになるのだ。
エネルギー資源の経営能力を持たず、エネルギー管理政策はつぎはぎだらけで、石油関連制度は完全に石油マフィアの手中に落ちている現状を見るにつけ、エネルギーはインドネシア民族の有力な資産ではなくなっており、反対にわが国経済の不安定さと将来への危惧をもたらす貢献要素になっていることがわかる。埋蔵原油はまだたっぷりあるという思惑は石油燃料ビジネスを上流から下流までコントロールしているネットワークに政府が無能であることへの無知によって、国民を蒙昧の中の平安という危険に浸している。
問題は、はたしてわれわれが、著名政治家や権力中枢周辺部に座すひとびと、さらには政府部内の高名な高官など多数の不良分子を擁しているこのマフィアネットワークのしがらみの糸を断ち切って、自らを解放することができるかどうかということなのである。
ソース: 2013年5月3日付けコンパス紙、スリ・ハルタティ・サムハディ署名記事 "Rente Ekonomi BBM"


「たかり警官」(2013年6月15日)
2013年2月20日付けコンパス紙への投書"Petugas Patroli Polisi Kutip Uang Tukang Parkir"から
拝啓、編集部殿。これは、2012年12月16日(日)13時20分ごろ、東ジャカルタ市ジャティヌガラのブカシ通り1番地にある食堂「ブ・ハジ」で食事しようとしていたわたし自身が目撃した出来事です。
わたしが自分の車から降りようとしていたとき、わたしの車のすぐ後ろに警察のパトカーが停まりました。パトカーはわたしの駐車を誘導していた駐車番のすぐそばに停まったのです。周辺にいる一般市民の目に映っていることなど気にもかけず、パトカーの警官ふたりはただの小市民でしかない駐車番にストラン(筆者注:説明が長くなるので、本サイト内でグーグル検索してください)を要求しました。わたしがそこで聞いた話によれば、不良パトロール警官は一日に5回以上、その地区にいる駐車番からストランを取り立てにやってくるのだそうです。駐車番が渡すストランは一回に5千あるいは1万ルピアだそうです。
不良パトロール警官のストラン取り立ての対象は、ジャティヌガラ市場からバスターミナルそして国鉄ジャティヌガラ駅に至る広範なエリアにいるすべての駐車番だそうで、その一帯には駐車番が10人くらいいますから、駐車番ひとりが一回5千ルピアを渡したとして一日に2万5千ルピア、10人からだと25万ルピアに上ります。
その事実を知って、わたしは現場にいる不良警官の悪行にとても腹が立ちました。かれらは国民の目に映る警察機構のイメージを破壊しているのです。[ 南ジャカルタ市在住、ブディ ]


「交通違反者は現場警官の玩具?!」(2013年6月18日)
2013年2月11日付けコンパス紙への投書"Sita SIM di Cikampek, Petugas PJR Menghilang"から
拝啓、編集部殿。2012年12月29日15時ごろ、州間長距離バス会社スンブルアラムのヨグヤカルタ〜ジャカルタ路線運転手であるわたしは、西ジャワ州チカンペッのジョミン交差点でハイウエイパトロールの公式車両を運転していた警官から不当な扱いを受けました。警察の制服の上に交通警察と書かれたベストを着けていたパトロール車のふたりの警官がわたしに停車を命じたのです。交通渋滞している中でわたしが右車線に割り込みをしたというのがその理由でした。
警官はわたしを怒鳴りつけながら、道路脇にバスを寄せるよう命じました。バスを寄せると次に、わたしにバスから降りるよう命じました。そしてわたしへの怒鳴りつけをやめずに、運転免許証を出すよう命じたのです。警官のひとりは、平手でわたしの頭を叩きました。わたしがさからったという理由で。
運転免許証とバスの公式書類を取り上げると、ふたりはわたしについて来るよう命じてパトロール車の方へ向かいました。わたしにはそれらの書類の預り証つまり違反切符を渡すからと言いました。わたしがふたりの後ろについてパトロール車の近くまで行くと、ふたりはそのままパトロール車の中に入り、そしてわたしに違反切符を渡すこともせずにそのまま走り去ったのです。
わたしの運転免許証は違反切符もくれずに持ち逃げされ、バスの公式書類は窓から投げ捨てられました。わたしはジョミン交差点の警察詰所へ行ってそのふたりを探しましたが、見つけることができませんでした。
わたしが働いているバス会社の管理者はわたしの運転免許証を探していますが、わたしのB?種一般運転免許証を取り上げたことを認める警官にいまだに出くわしていません。[ 中部ジャワ州プルウォレジョ在住、ディディ・ワヒユ・プルモノ ]


「地方に腐敗を転移させる地方分権」(2013年6月19日)
2013年2月5日付けコンパス紙への投書"Validasi Pajak Perumahan Jadi Ajang Korupsi"から
拝啓、編集部殿。2012年以来、土地建物権利取得税の納税が国税事務所から都庁に移管されています。西ジャカルタ市域内の有効化承認スタンプがダアンモゴッの統合サービス事務所に握られており、それが新たな汚職の扉を開いています。
納税金額決定は、取引価格もしくはその年の土地建物税課税対象販売価額のいずれかのうちでより高額なものが適用されるというダブルスタンダードになっており、そのために土地建物税課税対象販売価額が適用されるのがほとんどになっています。そのせいで、有効化承認部門が自分の想定した推定市場価格を課税対象金額に使い、実際の取引価格より三倍も大きな金額になっているのです。
都民がそれに難色を示すのは当然です。その金額を苦情した者には有効化承認部門職員が交渉の相手になり、最終的に円滑金を苦情者に払わせて問題を処理するということが行なわれているのです。円滑金の額は決まっていませんが、一件当たり5百万から1千万ルピアの間です。実に不公正です。国民は一生懸命働いて稼いでいるのに、承認スタンプを持つ有効化担当官吏がそんな大きな金額を国民から搾り取るなんて。
税法はどうして納税金額決定を単一スタンダードにしないのですか?そうすれば官吏が税法の間隙をぬって国民から搾取するための知恵をあれこれ絞り出すことなど起こらないでしょうに。そんなことをする官吏が有効化承認スタンプを握っているために、影響はより大きくなります。公証人たちは、有効化承認や土地権利証書の名義変更の手続きに頭を痛めています。住宅取得ローン供与銀行は本当に納税しなければならない金額がいくらになるのかわからず、さらに売買当事者の間でも頻?に喧嘩別れが起こっています。[ 西ジャカルタ市在住、スヘンドロ ]


「盗難届けと錯綜する思惑と」(2013年6月27日)
2013年3月21日付けコンパス紙への投書"Biaya Lapor Kehilangan Sepeda Motor Rp 500.000"から
拝啓、編集部殿。2013年2月5日、わたしの個人雇用の運転手が、オートバイが盗まれたと言って電話してきました。かれの2012年製ヤマハオートバイは西ジャカルタ市クブンジュルッのクドヤにある借家の前で盗まれたのです。
西ジャカルタ市警クブンジュルッ署にいると言ってふたたびかれから電話が入りました。オートバイの盗難届けを出しに行ったのです。そして盗難届けを受け付けている警官のひとりが、この手続きの費用は50万ルピアだと言っている、と運転手が言うのを耳にして、わたしは驚いてしまいました。
それは普通に、誰に対しても同様に、行なわれていることなのでしょうか?オートバイを盗まれて困っている人間が警察に届け出をすると、あれこれ理由をつけてそんな巨額な金を取ろうとするのです。公僕の国民サービスを向上させなければなりません。モラルと高潔さは不可欠なのです。[ 西ジャカルタ市在住、ケヴィン・サプトラ ]
2013年4月15日付けコンパス紙に掲載された首都警察からの回答
拝啓、編集部殿。2013年3月21日付けコンパス紙に掲載されたケヴィン・サプトラさんからの投書に対して、事情を明らかにしたいと存じます。2013年2月5日午前3時にジュマリさんが西ジャカルタ市警クブンジュルッ署警察サービスセンターを訪れてオートバイ盗難届けLP/056/K/II/2013/SEKTOR KB JERUK号を作成しました。その盗難届けのプロセスを行なったサリプディン一級警視補の報告によれば、その話の内容は正しくありません。警察は盗難届けに対する費用徴収を行なっていません。
サリプディン一級警視補が口にした50万ルピアというのは、ジュマリさんからの、オートバイ盗難の保険クレーム処理の費用はいくらか、という質問に答えて述べたものです。そうやって得たオートバイ盗難保険クレーム費用に関する情報にもとづいて、ジュマリさんはケヴィン・サプトラさんからその費用のお金を借りようとしましたが、貸してもらえませんでした。[ 首都警察広報部長、リクワント警察長 ]


「警察の評判」(2013年7月17日)
たいていの国で、物理的な力、いわゆる武力の保持を公認されている国家機関はふたつある。軍隊と警察がそれだ。インドネシアは独立以来、警察が軍隊の中にあって、陸海空に次ぐ第四軍と呼ばれてみそっかす扱いされていた。スカルノ時代にはインドネシア共産党が人民軍を持とうとし、第五軍構想が議論を呼んだが、それは実現することなく930事件で霧消してしまった。
ともあれ、民衆の日常生活に直結している警察がみそっかすでは、国民からの評判はガタ落ちになる。警察が民衆を搾取し、ごろつきを手なずけ、公認されている武力をふりまわし、腐敗のかぎりを尽くしていたのも、そんな心理の裏返しが影響していたにちがいない。
武力をふりまわす伝統はいまだに残っており、学生デモへの発砲は減少してきたが、地方での土地係争のもつれから起こる村民と開発企業間の実力闘争における発砲行為など、実例はいまだに数多い。
庶民の搾取となると、昔でも都内にはあちこちに一方通行道路があり、フェルボーデンと呼ばれる自動車進入禁止を示す道路標識がいつの間にやら場所を変えて見えにくい位置に移され、罠とも知らずに前日と同じようにそこへ入ってきた車を捕らえて罰金を搾るという、悪辣な金儲けが行なわれていた。わたしも何度かそれに引っかかっている。
コンパス紙R&Dが2013年5月30日から6月14日まで全国34州から17歳以上の1,404人を対象に面談調査したサーベイ結果が報告された。
質問1)警察のイメージは良いか悪いか?
回答1)良い20.8%、悪い77.3%
質問2)社会の治安と秩序の維持に関する評価(最低1最高10の10段階評価)
回答2)
対応の早さ 6.5ポイント
措置の信頼性 6.2ポイント
真剣な対応 5.8ポイント
SOPに沿った業務遂行 6.2ポイント
目に見える業務成果 7.0ポイント
質問3)警察のイメージはポジティブかネガティブか?
回答3)ポジティブなイメージ 20.8%
この20.8%というのは、過去11年間で最低になった。
過去11年間の動きは次の通り。
2003年 41.8%
2004年 32.4%
2005年 55.2%
2006年 51.1%
2007年 46.9%
2008年 46.7%
2009年 57.1%
2010年 49.1%
2011年 53.0%
2012年 46.1%
2013年 20.8%
最後に、回答者のカテゴリー別で警察の業績に対する満足度の状況を見てみよう。(満足/不満の%)
1.年代 若年42.4/57.6 中年50.9/49.1 老年57.1/42.9
2.性別 男性47.9/52.1 女性53.1/46.9
3.居住地域 都市部45.3/54.7 村落部52.4/47.6
4.学歴 初等教育56.8/43.2 中等教育42.2/57.8 高等教育38.8/61.3


「食い物にしようと虎視眈々」(2013年7月22日)
2013年3月31日付けコンパス紙への投書"Tiket Garuda Dikenakan Pajak Bandara di Bandara Soekarno-Hatta"から
拝啓、編集部殿。2013年2月18日、わたしとふたりの外国人駐在員が所用のためにジャカルタからメダンへガルーダ航空GA184便で移動しました。スカルノハッタ空港でのチェックインの際、かれら外国人ふたりはエアポートタックスを支払うよう求められたのです。わたしはそのような要求をされませんでした。そのチェックインのとき、わたしはかれらふたりと一緒でなかったため、そんなことが起こっていたのをわたしはまったく知らなかったのです。わたしがそれを知ったのは、わたしたち三人がメダンのポロニア空港からジャカルタへ戻ろうとしているときでした。
2013年2月21日、ポロニア空港でわたしたち三人がジャカルタ行きGA193便のチェックインをしようとしていたとき、かれら外国人ふたりはエアポートタックスを支払うためのお金を用意しようとしていました。わたしはかれらに、ガルーダ航空のチケットはエアポートタックスを含んで販売されているので、二重払いはしなくてよい、と説明しました。するとかれらは、ジャカルタからのフライトに乗るときにエアポートタックスの支払いを要求されたと言って、そのときの搭乗券に貼られたエアポートタックス証憑のステッカーを示したのです。
2012年9月28日以来、ガルーダ航空券価格はエアポートタックスつまりパッセンジャーサービスチャージを含んだものになったはずです。かれらが外国人だったから支払いが要求されたのでしょうか?それとも外国人の無知につけこんで、ガルーダ航空地上職員が利を得ようとしたのでしょうか?エアポートタックスが4万ルピアでしかないとはいえ、このようなことは特に外国人に対して恥さらしなできごとです。ガルーダ航空に説明を求めます。[ 南ジャカルタ市在住、A ファリダン ]


「こうして規則が捻じ曲げられる」(2013年7月31日)
2013年4月9日付けコンパス紙への投書"Masuk Bandara Pekanbaru pada Dini Hari"から
拝啓、編集部殿。去る3月9日(土)わたしはプカンバルのスルタン・シャリフ・かシム二世国際空港から朝一番のフライトでジャカルタへ飛ぶべく、「国際級空港を目指す」というビジョンを掲げたその空港へ、ドゥマイからトラベルの車で向かいました。ドゥマイを発ったのは3月8日20時です。
3月9日午前2時ごろ、車は空港正門に到着しました。話では、ジャカルタのスカルノハッタ、メダンのポロニアに次ぐ第三位のビジーな空港ということになっているこの空港の正門で、わたしの前の車が中へ入れてもらえず立ち往生しているのです。別々のトラベルの車でドゥマイからやってきた出発予定者6人が空港内に入れてもらえないのです。徒歩で中へ入ることも許してもらえません。朝一番のフライトの出発予定時間の二時間前に正門が開かれるという規則が上から指示されているというのがその理由でした。
そうこうしていると、空港正門責任者だという話の空軍のブディさんがやってきました。そのひとも、同じ理由でわたしたちを中に入れてくれません。いろいろと事情を説明し、わたしたちはプカンバル住民でなくドゥマイから来たのだということを酌量して、やっと中に入ることがOKされました。ただし人間は良いが車はだめということで、空港パトロールの車にターミナルまで送ってもらいました。するとどうでしょう。ターミナルには大勢のひとがおり、車もたくさん来ているのです。
あとで友人から聞いた話では、かれもその空港に午前2時ごろよく到着していますが、自動車一台ごとに正門を通る際に特別料金を払っているのだそうです。特別料金を払ったらトラベルの車であろうがレンタカーだろうが、問題なく中へ入れるとのことでした。[ リアウ州ドゥマイ在住、ブラスト・ヌグロホ ]
2013年4月19日付けコンパス紙に掲載された空港運営会社からの回答
拝啓、編集部殿。2013年4月9日付けコンパス紙に掲載されたブラスト・ヌグロホさんからの投書について、プカンバルのスルタン・シャリフ・カシム二世空港運営者は次の通り説明申し上げます。
まずブラスト・ヌグロホさんのご不快に謝罪するとともに、当方は喫煙室から登場ブリッジに至るまで空港施設の改善と充実を行い且つ飛行機を利用する市民のみなさんへのサービス向上に努めていることをお知らせいたします。
スルタン・シャリフ・カシム二世空港は午前6時から深夜24時まで操業しており、まだ24時間空港になっていません。空港運営者PTアンカサプラ?は空港内全施設と全活動の保安責任を預かっているため、毎日の最初のフライトの出発予定時間から2時間前に空港をオープンすることにしております。空港閉鎖時間に空港内にいるひとは、乗り遅れやフライト取消しなどさまざまな理由でその夜に出発しなかったひとたちです。また駐車場に自動車があるのは、オーバーナイト駐車をしているからです。
スルタン・シャリフ・カシム二世空港に入る自動車は駐車料金だけが徴収され、人間に対して支払いが課されることはありません。投書にあった、自動車に対する不正な特別料金について、当方はまだ調査を継続中です。[ PTアンカサプラ?スルタン・シャリフ・カシム二世空港支所業務課長、ハストゥルマン・ユヌス ]


「檻の中でのハンティング」(2013年8月7・8日)
日系S社のスポンサーで国内各地のカーレースに出場し、今は西ジャワ州デポッ(Depok)市に本社を置きメダンやマカッサルにまで支店網を広げて盛んなレーシングショップ事業を営んでいるアセップ・ユスフ・ヘンドロ・プルマナ氏が贈賄容疑で汚職撲滅コミッション(KPK)の取調べを受けた。国税による税務調査の行き着く先が往々にして税務調査官から納税者への恫喝ゆすり行為と納税者から税務調査官への贈賄という、どっちが被害者なのか判然としない渾然一体となった泥沼の中に流れ込んでいくのは、インドネシアの納税現場に付着している、昔から絶えたことのない光景だ。
言うまでもなくそんなことは知り尽くしているKPKは、2013年4月9日、それまでの捜査で得られた情報から、税務調査官と店側の人間との間で行なわれることになっていた中央ジャカルタ市ガンビル駅での2千5百万ルピア現金受渡し現場を包囲し、受渡しを終えたふたりの人間を逮捕して取調べを進め、そして汚職犯罪法廷における税務調査官プラゴノ・リヤディに対する公判が2013年8月1日に開始されたのである。
プラゴノ税務調査官が2012年9月に上からの指令で開始した調査は、PT PCKが発行した納税インボイスは取引先のために作られた架空取引による脱税目的のものだったのではあるまいかという疑惑を糾明することを目標にしていた。疑惑の色に染まったPT PCKの納税インボイスはアセップ氏にも渡されている。アセップ氏はその納税インボイスを使って2006年度年次納税申告書(SPT tahunan)の訂正申告を行なった。しかしその訂正の中では、納税不足分が発生したとして3億3千4百万ルピアの追加納税を行なっている。
プラゴノ調査官率いる税務調査チームがアセップ氏の事業所を訪れたとき、かれは税務担当者のルキミンと経理マネージャーのスディアルトに対応を指示して一任した。2012年12月、プラゴノ調査官はアセップ氏を呼び、PPN月次納税申告書のオリジナルとPT PCK発行の納税インボイスおよびオリジナルに対する訂正申告書をそろえて提出するよう命じたので、アセップ氏はその作業を担当者に指示し、それは要求どおりになされた。しかし、そんなことで一度喰らい付いた餌から牙を離すようなことは、税務調査というアフェアーの伝統的な本質を理解している人間には起こりえないことだ。
役人は民に困難を与えるのがその役得になっている。民衆は自分がやりたいこと、あるいはしなければならないことが、人為的とはいえ障害によってせき止められると、インドネシアではその障害を取り除いてもらおうとして民が何らかの代償を携えて交渉に来る。今回のような税務調査においては「おまえは犯罪者になる」と脅かされることも同じカテゴリーに入る。国民総犯罪者化社会のベースがそれだ。昔から腐敗役人の言うセリフ"Kalau bisa dipersulit, ・・・・"という言葉は実に翻訳のむつかしい表現ではあるまいか?
2013年3月、プラゴノ調査官はスディアルト経理課長に電話し、「アセップ氏の立場は軽いものであるとも言えるが、重いものであるとも言える」という、相手の腹芸を求める会話を始めた。「アセップ氏は容疑者にもなりうるし、単なる証人で終わることもできる。どっちがお望みかね?」
「証人で終わらせてくださいよ。」
「アセップ氏は脱税金額の4倍の罰金を科される刑事罰に連座することになる。総額は12億ルピアだ。どんな解決方法をお望みかな?支払がなされたら受取証を被告の手に渡すようにしてあげよう。」
罰金を半々に山分けすれば、犯人も逮捕者も同じように得をするというロジックがそこに登場するのがインドネシアの常だ。だから調査官は経理課長に、6億ルピアを用意しろ、と言った。その報告を経理課長から聞いたアセップ氏は直々に調査官にコンタクトした。そんな金額を右から左に動かせるようなビジネスはしていない。調査官も最初から期待していなかったと見えて、言い値はすぐに2億5千万ルピアに下がる。しかし昨今のビジネス状況は悪化する一方だ。アセップ氏はしつこく粘り、最終的にその半分の1億2千5百万ルピアで両者の手が打たれた。アセップ氏は自分個人の金から1億ルピア、そして税務担当者のルキミンにも責任を取らせて2千5百万ルピアを負担させることにした。
第一回の現金5千万ルピア受渡しが中央ジャカルタ市ガンビル駅で3月27日になされ、そして第二回目の受渡しのとき、プラゴノとルキミンが現場でKPKに逮捕されたのだった。プラゴノ調査官の贈賄強要が完全に自分の個人利益を目的にしたものとして行なわれたことが公訴人検察官の起訴事実説明の中で明らかにされている。税務署内管理機構のまったくあずかり知らぬところだったことから、この公判の結末は容易に想像のつくものだと言えるだろうが、税務調査における企業強請りが常に個人プレーで行なわれているわけでないことを書き添えておこう。 ちなみに、記事タイトルの「檻の中でのハンティング」というのは、まるで檻の中にいるように逃げ場も回避する術も持たない企業を狙い撃ちする国税調査官の強請り行為を世論が評したものである。


「ノルマ稼ぎの架空契約をする代理店」(2013年10月01日)
2013年6月25日付けコンパス紙への投書"Pemalsuan Tanda Tangan oleh Perusahaan Asuransi"から
拝啓、編集部殿。わたしはプルーデンシャルのカスタマーサービス部門とスラバヤの代理店グループのひとつに属している複数の店から損害を蒙りました。かれらはわたしのサインと住所を保険証券上に偽造し、わたしが同意していない証券を取消すことを妨害したのです。証券番号は09821953です。
2012年12月、プルーデンシャルの代理店をしている友人のEOから助力を求められました。わたしのKTP(住民証明書)を貸してほしいと言うのです。ターゲットを達成させるのに使うのだと言いました。短期間借りるだけだという約束だったので、わたしはそれに応じました。そのあと、EOからは何の連絡もありません。
2013年3月、保険料をまだ払っていないという督促状がプルーデンシャルからわたし宛に届きました。しかし、わたしは保険証券にサインもしていないし、必然的に証券も受け取っていないのです。わたしはEOに連絡して説明を求め、わたしのデータが無断使用されているので、その証券を取消すよう求めました。EOはわたしの要請を請け負いました。
数週間後、また手紙が届きました。わたしの住所が変更され、そして証券はいまだに取消されていないのです。わたしはEOの所属する代理店グループのリーダーであるLに連絡しました。Lは自分が得た外国旅行の恩典を失いたくないので、証券の取消しはやめてほしいとわたしに要請したのです。
わたしはこのできごとをプルーデンシャルのカスタマーサービスに連絡し、5月はじめにそれに関する経緯書を提出しています。しかしその証券の処理がどうなっているのかはっきりせず、まだ取消されていないことだけは明らかです。[ 東ジャワ州プロボリンゴ在住、イネ・ファッマワティ・チャンドラ ]


「マネーポリティクスって悪いこと?」(2014年4月11日)
議会総選挙投票が終わった。クイックカウント結果を見る限りでは、「ジョコウィを大統領に!」のスローガンをキャンペーン期間直前に打ち出したPDIP党の戦略的大勝利の印象が強い、しかし例によって、不正行為が数限りなくクイックカウント結果の中に含まれているようだから、開票最終結果でどのようなどんでん返しが見られるか、期待わくわくという悪戯心がないわけでもない。妻が立候補した夫が、妻に一票も入っていなかったことをクレームした事件が報道された。夫と仲間たちが妻のキャンペーンサクセスチームになって運動し、少なくとも夫は妻に一票を入れたというのに、得票がゼロとはどういうことだ、というのがそのクレームの内容。
今年のキャンペーンでは、選挙権のない子供をキャンペーン活動に動員するのは選挙違反であるという規則がマスコミで大いに取り上げられ、どの政党がその違反を犯したという報道が飛び交ったものの、あらゆる政党が違反しているのだから、厳しい措置の取りようもないというのが実態のようだ。キャンペーンは一種のお祭りであり、お祭りは家族ぐるみで楽しむのがインドネシア庶民の常識であるため、親が子供をキャンペーン会場に連れてくるのは当然の行為ということになる。政策スピーチという堅苦しいものもあるにはあるが、あとはダンドゥッ女性歌手がステージに上がって歌い狂い、庶民たちも踊り狂うというお楽しみがついてくる。おまけにお開きのときにはご祝儀がキャンペーンに来た者に渡されるのが普通だから、親は子供の手も借りようとするのが当たり前だ。庶民の生活感覚として祭りにご祝儀は付き物であり、庶民が住んでいるそういうアジアの伝統的な感覚の中に西洋的な選挙という催しが投げ込まれたとき、マネーポリティクスは西洋的な忌避や弾劾の感覚から遠く外れたものになるだろうということを、このインドネシアの例が示しているにちがいない。
マネーポリティクスを批判する声はインドネシア国内にも多いが、それに関して一般庶民を啓蒙するためにクリーン選挙を求める階層が掲げたポスターには「1.金は受け取れ。2.一票を与えるな。3.落選するよう祈れ。」と書かれており、日本文化にある潔癖さと相容れないインドネシア人の精神性をここにも垣間見ることができる。金を受け取るよう勧めているのは、不正選挙行為を行なう連中を貧乏におとしいれ、しかも落選させて支出した金の回収すらできないように懲らしめてやれ、という不正撲滅への攻撃性に由来しているものだ。レフォルマシ期に入って以来、議員や自治体首長などの公職者になるのは金儲けのためという風潮がますます顕著になり、金儲けのためには先行投資としてマネーポリティクスを行なって票を買うのが近道というロジックがほとんど常識化してしまった。投資と投資回収の道に邁進した公職者たちが行なう行政がどんなものになるのかは言うまでもないだろう。
2014年3月16日から4月5日までの議会総選挙キャンペーン期間中に行なわれたマネーポリティクスの実態について、インドネシアコラプションウオッチ(ICW)が各地で実見されたできごとを報告した。各地で政党が行なったキャンペーンは、集まってくれたひとびとに一票を与えてくれるようお願いするためのものであり、政党自身がそれを無料でもらえるものとは考えていない。どんな高尚な公約をしようが、実利がなければ庶民は動かないことをかれら自身がよく知っている。こうしてキャンペーン参加有権者にひとり5千ルピアから20万ルピアまでのご祝儀がふりまかれたのである。いや、現金ばかりではない。衣類・米などの生活基幹物資・家庭用品などの現物、あるいは医療奉仕・音楽演奏などの娯楽・即席セミナー・散髪やマッサージそして政策公約でなく金をやるという公約に至るサービス商品も。
マネーポリティクスをもっとも盛んに行なったのは、県市議会議員候補者とその選挙チームで60件、国会37件、州議会31件、地方代表議会7件というのがICW本部に集まった報告。しかし政党と候補者がマネーポリティクスを働きかけたのは有権者ばかりではない。かれらは各地の投票所や総選挙運営事務局にも不正投票や買票あるいは集計結果の操作などの依頼を働きかけており、反対に現場の運営関係者の中にも政党にその種の行為を売り込む人間がいて、利を求める者同士の提携が闇の中で活発に営まれている。
それらの得票にからむ常識的な不正行為のほかに、今年新たな現象としてICWが発見したのが、MLM方式の票取りまとめ行為だ。政党や候補者が自分たちに近い筋に取りまとめを依頼する。たとえば10票集めたら2百万ルピアというタリフが合意されると、直接の窓口になった者がタリフを変えてそれを下に降ろしていく。親子関係がどんどん下に広がっていけば、ひとり2〜3票を集めただけで金が入ってくることになる。おまけに自分が作った子や孫から票が集まってくるわけだから、大枚が自分の収入になるという寸法だ。
議会総選挙キャンペーン期間外でも、候補者が個人的に金一封や米などを住宅地区に配って回っている。封筒の中には、5万ルピア紙幣が一枚入っている、というケースが多い。そのような行為は、選挙に関連しない宗教的な慈善行為としても日常的に行なわれているから、そこには異文化人が抱く感覚とは異なるものが流れているのである。「金銭や食糧の授受〜票の買収〜有権者が約束を守って買収者に一票を入れる」という義理堅いロジックはインドネシアであまり一般的ではないようだ。マネーポリティクスがらみでいろんな政党と接触する庶民は「XX党はいくらくれたけど、あんたの党もくれるんじゃないのか?XX党に負けたくなかったら、ちょっと上乗せして出してくれや。」と自分の投票権を売り物にして駆け引きする。そしてあげくの果てに、いざ投票所ではまったく別のお気に入りに投票するようなことをしているのだ、とある地方大学政治学教官は物語っている。インドネシアで行なわれているマネーポリティクスとは、いったい何なのだろうか?


「腐敗した巨大シナリオはまだ健在」(2014年6月16日)
2014年1〜4月のソラル(補助金付き軽油)消費が予想を超えて大きな数値になったことから、政府は今更変えようのないその数値に裏付けを与えるため、消費量が計画に対してまだ小さいプレミウムガソリンの割当量を減らしてソラルに付け替えることを決めた。ソラルの年間計画消費量は1,414万klで、1〜4月実績は515万kl。プレミウムガソリンは計画が3,232万klに対して実績が950万klで、まだ十分射程内にある。
ソラルの消費が急増したのは、どうやらソラルを購入してはならないことになっている産業界に対して闇販売が行なわれているのが原因のようだ。この種の闇販売はプルタミナのデポやガソリンスタンドが直接行なうのでなく、何者かがブローカーになってその間を取り持っている形態が普通だ。かれらは普通乗用車を改造して外から見えない高さのタンクを装備し、ガソリンスタンドでソラルを買い集める。また国内島嶼間での石油燃料配送は小型タンカーが使われており、船の運航クルーが横流しするケースもある。この方式のほうがはるかに大量の補助金付石油燃料を入手できる。そういう大きい商いをするのはたいてい資金力のある組織であり、闇ブローカーも組織的な大手と個人的な悪徳商人が入り混じっているということのようだ。
タンカーに積んだ石油を抜くやり方は、インドネシア領海外まで出て、そこで待っていた船に積荷を移し変える方法が多い。2014年6月3日に税関総局リアウ地方事務所は、シェブロンのドゥマイ油井で汲み上げられた原油59,507トン4千5百億ルピア相当を積んでインドラマユのバロガン精油所に向かうはずのプルタミナがチャーターしているタンカーMTジュリタバグース号が、ビンタン島北部のシンガポール海峡で別のタンカーMTオーシャンマジュ号に積み荷を移し替えている現場をおさえて拿捕した。
税関高速パトロール艇が不審な二隻を臨検したとき、既に原油800トンがオーシャンマジュ号に移しかえられていたという。税関の調べによると、オーシャンマジュ号はこのような目的のためにしばしば使われているタンカーだったようだ。税関総局長は、この種の行為が後を絶たないのは、法執行が下っ端の者に対する措置だけで終わっているからであり、そのようなことをやらせている会社の中の人間あるいは会社そのものに対する措置がこれまで一度も取られたことがないのが原因だ、と心情を吐露した。
「原油や精製された石油燃料が海上で盗まれている。それが補助金付き石油燃料の消費量を増やし、国の補助金支出が増えて国民生活に不利益をもたらしている。税関はインフラが不足しているために、その種の犯罪をすべて抑えることができない。しかし、せっかく捕らえた犯罪者や摘発した犯罪行為に対する法的措置が厳格に行なわれていないことが、その種の犯罪を保護し増加させる結果を生んでいる。裁判にかけられるのは、捕らえられた現場の実行者だけであり、かれらの上にいる計画者には法のメスが入れられたことがない。そして捕らえられた船長や乗組員に対する判決も1〜2年の入獄という軽いものでしかなく、拿捕した船も最終的にそのまま船会社に返されている。会社の管理責任を追及したり、また船会社にそれを行なうよう命じている勢力を暴き出すことなど、一度も行なわれたことがない。」
船に乗っている者たちの一存で貨物の横流しが行なわれているのでないことは言うまでもなく明らかであり、大掛かりなシナリオに即して行なわれている組織的な犯罪行為であるのは間違いがない。この種の腐敗行為がいまだにはびこっていることが、インドネシアが世界トップレベルの腐敗国のひとつであるという現状を維持させ続けているにちがいない。


「腐敗経済の流れ」(2014年6月18日)
政府は基本的に鮮魚の輸入を禁止しており、国民の魚食需要は漁民の収穫でまかなうのを原則にしている。ところが海産物加工産業の原料確保にまで漁民をからませることができない。海が荒れる不漁期には工場を閉めて待っていろと言うわけにはいかないのである。ましてや、小規模がメインの捕獲漁業から安定的な収穫を期待するのも無理な話だ。必然的に海産物加工工場は輸入による原料確保を要求する。こうして輸入の道が開かれると、加工工場は行政監視の目を盗んで禁止されている国内市場に輸入品を流すようになる。国内が不漁期であれば、生産に必要な量を超えて輸入し、それをそのまま国内市場に流せば、自社製品を製造販売するより大儲けができることもある。この種のアンコンプライアンスのために、政府の原則は腰砕けになっている。そういう横流しが行なわれているのとは別に、もっと大きな腐敗した経済の流れが起こっていることを推測させる兆候もある。
UNコムトレード2014年度版の報告によれば、インドネシアの魚類輸入は2012年に対前年比で17%ダウンしたが、2013年には反転上昇している。特に中国からの輸入が44.5%、マレーシアからは8.2%アップした。輸入のメインを占めるのは冷凍魚で62.6%、甲殻類は31%。一方、インドネシアからの輸出は、2012年の成長率12.9%、2013年は3.7%しかなかった。
水産業界オブザーは、インドネシアの輸入増加は2010年以来の中国アセアン自由貿易協定の影響を強く受けており、輸入された冷凍魚が缶詰などの製品に加工されて輸出されることなく、非合法に国内市場に流されている可能性が高い、とその現象を分析している。
中国とインドネシア間の海産物貿易を細かに見ると、2012年の中国側輸出統計ではインドネシアへの輸出総額が1億6千5百万米ドルとなっている一方、インドネシア側の輸入統計は6千3百万米ドルでしかなく、インドネシアでの輸入通関申告が中国側での輸出申告と異なる統計品目番号でなされていることを強く匂わせている。「インドネシアには統計数値が山ほどあるが、信用できるものはひとつもない」と一般に言われているせりふを支えている要素のひとつを、われわれはそこに見出すのである。
輸入者が海産物加工工場であれば、わざわざそのような虚偽申告をして摘発されるリスクを背負い、不法通関を通すために余分な金を使う必要はないように思えるのだが、どうだろうか?反対に、もし輸入者がそういうライセンスをまったく持たない一般輸入者であるなら、虚偽申告を行なって不法通関を通すために金を出すという手法しか考えられない。一般輸入者が国内市場に流すことを最初から意図して冷凍魚を輸入しており、その不法輸入が厖大な量になっているということをそれは意味しているのである。
そのようにして不法輸入され、国内のトラディショナルマーケットあるいはウエットマーケットに流された解凍魚の中から、フォルマリン浸けのものがかなりの量で発見されている。おまけに、それらの魚が更に零細小規模事業者の手に渡って燻製魚や煮魚に加工され、パックされて食品市場で流通している。
国家方針を踏みにじり、国家機構を腐敗させ、漁民から市場を奪い、おまけに国民の健康まで蝕んでいるその腐敗経済の流れが撲滅される気配はいまだにない。


「汚職撲滅と秘密レジーム」(2014年7月16日)
この国に深く根をおろし、撲滅のきわめて困難になっている汚職問題の根幹のひとつは、国民主権ということがらの本質が一度も執り行われたことがないという点にある。国民主権はただ5年に一度、公共利益よりも政治エリートの利益をはかることを実態とする総選挙というモメンタムとして姿を現すだけ。
国民主権の発現形態のひとつである、行政監視プロセスにおける国民の積極的関与が行われているわけではない。国民が政策の実施や分析プロセスをコントロールし、公共機関や公職者の責任を問い、あるいは調査するのを目的にして、政治的手段や法的メカニズムが国民ひとりひとりに与えられるということを国民主権という概念が意味したことはかつて一度も無い。
われわれの眼前に展開されているのは、国民の現実がどうであるかということには関係なく、それ自体になろうとしてきた国家という現象だ。国家の権力行使をコントロールするための、それに拮抗しうる代替パワーは存在しない。なぜなら、閉鎖的・排他的・且つ保護的な官僚機構を持つ政府はきわめてパワフルなのであり、行政執行プロセスがパブリックの関与から隔絶され、政府がそのような障害を排除できるようにするための条件、メカニズム、法規が連綿と作られてきたのだから。
官僚機構の業績、政策策定の実態、公的資源の経営、公職高官の責任などを国民がほとんど知りえないのも当然なのだ。われわれが対面しているのは専制レジームであるのに加えて秘密レジームでもあるのである。
その秘密レジームを支える構造的文化的状況が継続するかぎり、汚職撲滅の努力が効果的に進展することはありえない。汚職撲滅の努力は単に汚職者を何人かヌサカンバガンに送り込んだり、「汚職撲滅国民運動」のスローガンを叫んだりするような単純なものではない。汚職撲滅というのは、過去数十年間、国民の関与と監視が不在なまま行政の車輪を回転させてきたシステムと風土を改変させることを意味しているのだ。
< 官僚文化 >
文化風土に関しては、植民地時代のコスモロジーにおけるパンレプラジャというプリヤイメンタリティにいまだに染まっている公職者全般のふるまいがわれわれの眼前にある。端的な例が、2001年から2002年を通して情報自由化と透明性の原則を多くの民間団体がキャンペーンし続けたさいに公職者たちから出された言葉、「国民が情報を得る権利を持っていると思うのなら、政府にも持っている情報を知らせない権利がある」「国民にだけ保護される権利があるというのはおかしい。政府の権利も守られなければならないのだ」等々。
VOC時代のパンレプラジャのように、公職者は国民との間に精神的紐帯を持っていないのである。オン・ホッカムの言葉を借りれば、かれらは自分を国民より上位にある支配階級と見なしている。その結果、かれらが国益と考えるものが国民に何の効用ももたらさないことは十分に起こりうるのである。公職高官たちは、より大きな利益を守るための犠牲にはし得ないある種のプライバシーを持っている。
そのようなメンタリティのために公職者たちは、自己をオープンにし、国民に情報アクセスを開放する必要があるとは考えていない。公職者になることが、プライバシーの一部を失い、公私を分離する義務を負い、調査や捜査に応じなければならない、といった帰結を含んでいることをかれらは理解しようとしない。国会議員や大臣その他の公職高官が公職者資産調査コミッションに資産リストの提出をいやがるのがその実例だ。
プリヤイ精神が現代民主国家に不適切なのは明白だ。民主国家は社会契約原理にもとづくとジョン・ロックは表明した。政治を行なうための委託が国民に由来していることを、その原理は強調している。帰結として出てくるのは、その委託の実践の中で政府は、政府を監督する政治的権利を含む個人の権利を侵してはならないということなのだ。行政者が行なうことは国民の利益を反映しなければならない。それについては、インドネシアも例外ではないのである。
< 法令の足かせ >
上のような公職者のメンタリティは汚職撲滅努力に対して明らかに反誘導的である。他面、一般的にそのメンタリティが法令によって強化される傾向にあることから、次のような問題はますます紛糾の一途をたどることになる。今現在ですら、書類やデータの公開を阻む多くの法令が存在している。たとえば、刑法典、公判に関する1970年法律第14号、公文書保存に関する1971年法律第7号、銀行界に関する1998年法律第36号、通商秘密に関する2000年法律第30号、テロ犯罪撲滅に関する2003年法律第15号などがその例だ。
きわめて一般的な範疇であるとはいえ、より広範な公共利益を配慮していないそれらの法律は、国家秘密、行政秘密、政府機関秘密、職務秘密に関する条項を定めている。実に多くのケースで公職者たちは、国民への情報公開を拒んだり、取調べプロセスを避けるための理由にそれらを使っている。汚職疑惑の的になった公職者は、事件捜査を免れるために頻?に国家秘密や行政機関秘密を主張するのである。
反対に、政府機関の情報公開を明確に義務付けた法規はない。実際、情報を得る権利が国民にあることを認めているのは1945年憲法第2次改定版中の第28F条と、基本的人権に関する国民協議会決議第XVII/MPR/1998号第21条第22条だけなのである。情報に対する国民の権利を示すセクター別の法令はある。報道に関する法令や消費者保護法のようなもの、あるいは情報に対する国民の権利保護の必要を認めた規範的な国家開発プログラムに関する1999年法律第25号などだが、それら諸法令は情報に対する国民の権利を認めているだけで、公的機関の情報公開義務を明確に定めているのではない。それらの法令は、国民が何の情報にアクセスでき、それを得るメカニズムや手続きがどうであり、どの政府機関に要求することができ、情報公開を拒む機関にどんな制裁が加えられるか、といったことを総合的に定めているのではないのだ。言い換えるなら、情報公開要求に応じない公職者に対する国民からの強制力は存在しない。
たとえば、報道に関する1999年法律第40号は、特定汚職事件に関連する情報公開を政府機関や公職者に強制する効力を持っていないので、公職者は報道法を怖れない。かれらは刑法典やその他の法令にある国家秘密・職務秘密・個人秘密などに保護され、それを盾にしている。それどころか、かれらは反対に、国家秘密を犯し、個人の名誉を毀損したとして報道者を告発することができるのである。
言い換えれば、行政者の責任や業績を知るための公的権利を法が包括的に定めていないことが、この国で汚職を繁茂させている原因だ。そのために、汚職撲滅努力は法改革と並行して進められなければならず、そうすることでそれらの法令は秘密レジームから去ってオープンレジームを成立させるようになるのである。
ライター: 情報公開連合コーディネータ、情報流通研究院研究者、アグス・スディビヨ
ソース: 2004年12月11日付けコンパス紙 "Pemberantasan Korupsi dan Rezim Kerahasiaan"


「恐喝警官の手口はこれ」(2014年7月24日)
2014年1月21日付けコンパス紙への投書"Perampok Mengaku Polisi Menguras Isi Dompet"から
拝啓、編集部殿。比較的最近の話です。ブカシのアナンダ病院近くで車を運転していたわたしは、左のサイドミラーが内側にたたまれているのに気付いて驚きました。すぐに道路脇に車を寄せて、サイドミラーを戻しました。ちょうどそのとき、灰色の車がわたしのすぐ後ろに停まったのです。その車の助手席から男がひとり降りると、わたしの車に近寄ってきてサイドミラーの脇の窓ガラスをノックしました。わたしが助手席の窓ガラスを下ろすと、その男はわたしがさっき通行人を引っ掛けたと言うのです。そして助手席のドアを開くなり、すぐに車内に滑り込んできました。「群衆のリンチが危ないので、事故現場には戻らないように」とその男はわたしに忠告しました。
男は左胸の警察徽章を示して、自分は首都警察所属の警察官アルフィアンだと名前を名乗りました。わたしは20万ルピアを男に渡そうとしましたが、男はわたしに財布を目の前に出すよう要求するのです。わたしが財布を開いて見せたとき、男は財布の中身を全部抜き取りました。腰の拳銃を引き抜き、威嚇の言葉を吐きながら。
わたしは苦情して、しばらく論争が行なわれましたが、最後に男はわたしに「感謝の心を持たないのか!」と怒鳴りつけてわたしを抑圧しました。財布から抜かれたのは30万ルピアです。その間、わたしの車はふたりの男に囲まれていました。そのうちのひとりは色黒の肌をした45歳くらいの年齢で、ジーパンをはいていました。[ 西ジャカルタ市在住、アンディ ]


「汚職が勢いを盛り返す」(2014年9月1日)
2010年に警察・検察・KPK(汚職撲滅コミッション)が取扱った汚職事件は448件、2011年は436件、2012年は402件、と下降傾向が見られた。ところが、2013年は560件、2014年は下半期だけで308件に達している。また汚職容疑者数は2010年1,157人で、2011年〜2012年は下降したが、2013年は1,272人にアップし、2014年はさらにそれを上回ると見られている。
その現象を、汚職摘発が活発化したために水面上に浮かび上がる件数が増加しているのだと見ることもできるが、そうでなくて汚職が再び広範に蔓延しているのだと見るひともいる。ICW(インドネシアコラプションウオッチ)副コーディネータは、汚職が再上昇傾向に入っている、と警告する。
汚職が勢いを盛り返してきたことはいくつかの要因に支えられている。まず、汚職者への刑罰が懲罰効果を果たしえず、汚職者たちを怖れさせるものがないという現状がある。ICW調査では、裁判所の判決はたいてい入獄二年という刑罰しか与えておらず、判決が出されるまでの拘留期間がそこから削られ、さらに恩赦が与えられてほんのわずかな期間でかれらはまた娑婆に舞い戻っている。次に、法曹側が汚職者を貧困化させる努力がまったく不足していること。マネーロンダリング条項を適用するなら、汚職者はほぼ確実に貧乏人になってしまう。KPKはその方針を進めているのに、警察と検察はマネーロンダリング条項を適用しようとしていない。その結果、短期のつとめを果たせば不正に蓄えた財産であとは優雅に暮らせる。そんなチャンスがあるのなら、やらない方が損だという気にかれらをさせることになる。三つ目の要因は、予算執行に関する中央と地方の行政システムを改善して汚職を行いにくくするという予防努力が見られないことで、意志さえ持てば汚職はいつでも行えるという状況が継続している。だから対策としては、裁判所がもっと刑罰を厳しくして汚職をすると怖いという印象を世の中に植え付けること、またマネーロンダリング条項をもっと積極的に汚職刑法犯罪者に適用して元も子も失うことになるという意識を持たせること、が汚職防止につながるのだとICW副コーディネータは語っている。
2014年上半期に摘発された汚職事件の明細を見ると、容疑者の42.6%が行政高官や行政官吏で占められている。あとは民間会社取締役や監査役、国会・地方議会議員、地方行政府の局長や地方自治体首長などと続く。中でも2013年上半期と比較すると、地方自治体首長の増加は目に余るものがある。2013年上半期に摘発された地方自治体首長は11人だったが、2014年上半期は25人に増加した。政治取引にかかる費用が大幅に増加しているため、チャンスさえあればあらゆる違法行為に手を出す背景が出来上がっていると言える。そういう環境の中で政治手腕を発揮するためにブラックマネーへの強い希求がかれらを汚職に駆り立てている。行政官僚の汚職が繁茂する最大の畑はインフラセクターであるとのこと。
SBY大統領の時代になってKPKの汚職摘発行動がたいへん活発化し、またそれ以前のレジームでは地方首長が行った汚職の摘発がなかなか行えないでいたが、今の時代はそういう足かせが大幅に弱まっていることが地方首長の汚職摘発増加につながっている、という声もある。


「民族が直面している大問題」(2014年10月9・10日)
大統領が交代することが確定してから、コンパス紙は全国の主要都市でマラソンディスカッションを開催した。新政権に何をしてもらわなければならないのかを国民知識層が再確認するという意味合いがそこに置かれた討論会であり、そこで討議された内容が七つのテーマにまとめられた。その内容は次の通り。
1)法執行
2)重複と錯綜の中で混乱し、おまけに1945年憲法の精神から逸脱している法規
3)国家機関同士の間ばかりか、個別の機構内ですら部門間で劣悪なコーディネーション
4)国民の人材クオリティの低さ。能力だけでなく、保健衛生面でも同じ
5)デモグラフィコントロール、居住エリアの分散、住民管理行政のレベルなど、国民の量的コントロールレベルの低さ
6)持続的で最大効果をもたらすべき天然資源の経営が拙劣である
7)国家予算執行における継続性をもったデザインの不在
それらの中で、法執行問題がもっとも根本的な問題とされた。それについては歴代政府がさまざまな対策を講じてきたものの、国民の法執行に関する評価はいつも不満足であり、常に落第点であることをあらゆるサーベイが示している。法執行機関の体制が妥当なレベルにまでアップし、法規もかつてアンタッチャブルだった分野まで差別なしに手が入れられるように改定されてきてはいるが、現場での法執行実施という点を見るなら、もっと厳しい腕がふるわれてしかるべきだという印象を拭うことができない。公的法執行機関である警察と検察の動きが明らかにそれを示している。このふたつの機関は往々にして、自己の物質的利益や外部からの諸分野に渡る影響のために、ニュートラルな法治を実践する力を失っている。法執行要員に起こるその現象は、かれらの忠誠度合いあるいは誠実さの問題に加えて、法執行要員の独立性に関わっているようだ。法執行要員はかれらの組織内でも法執行に失敗している。捜査活動予算が不足しているという理由で、かれら自身が非合法収入をいつまでも維持しようとしていることがその筆頭だ。収賄や汚職の根もいまだに絶たれていない。
警察と検察の国家機関としての法執行システムを構成している業務モデル・コーディネーションパターン・監視アプローチ・命令系統などが問題を内包しているという評価が強い。それどころか、組織統率システムさえ統合的システムを樹立することにポイントが置かれていない。たとえその中にそんなポイントが見出されたとしても、ほとんどは日常性の中で形骸化している。現段階では、警察と検察の法治マネージメントをまず確立させなければならない。かれら自身の業務分野における法執行が行える力をつけさせなければならないのであり、そこでもっとも需要なのは、マネージメント従事者がその職務を利用して搾取や他の物質的利益を得ようとするのを防ぎ、あるいは対抗措置を取ることなのだ。
2004年以来、大型汚職事件の摘発を散発的に行う汚職撲滅コミッションが稼動しているのはラッキーだった。ただし、ある日ある省で事件が摘発され、その翌日にはまったく別の事件が別の政府機関で摘発されるというようなありさまであり、監視と捜査の権限を持つ国家機関相互間の協力が円滑に営まれない実態は、国家最高指導者たる大統領が関心をもっと多量に注がなければないらいものであるに違いない。
大統領の法執行改革アジェンダとしてもらいたい提案がいくつかある。国家警察長官と最高検察庁長官に測定可能な業績目標を与えることがひとつ。そこには成否に関連する帰結がなければならない。もうひとつは、警察国家コミッションと検察コミッションの監督機能を実質的に活性化させること。三つ目は忠誠問題で、誠実さの涵養をトップから進めていかなければならないこと。最高検察庁長官と国家警察長官は自分の個人資産が合法的に得られたものであることを証明しなければならない。
大統領は大臣や国家機関の長官に、KKN行為にまみれない具体的で測定可能な目標を与えなければならず、そして業務成果を監督し、評価しなければならないことがもうひとつ。インドネシアの法執行に関して悲観的な意見の持ち主は数多い。もちろんそれは容易なことではないのだ。しかし決して不可能事でもない。新大統領が腕をふるうべきチャンレンジがそれなのだ。
法曹分野での民族的問題をまとめると次のようなものになる。
(一)
警察と検察: 法執行者の独立性欠如と不誠実さ 相手を見て対応を決めている
大統領: 法執行者の独立性欠如と不誠実さ 発生事件のフォローが消極的
[ 実例 ] 総選挙時のマネーポリティクスへの対策が尻切れトンボ、 不良警察職員の高額アカウントや免許証シミュレーター汚職の捜査放棄
(二)
警察と検察: 法執行マネージメント 指導システムとコーディネーションパターンが誠実さ涵養のためのものになっていない
[ 実例 ] 最上位から最下位までの職員が行っている、外部に対する収入増加の諸手口
(三)
警察と検察およびスペシフィックな監督と捜査の機能を持つ国家機関: 国家機関相互間の協力が円滑に営まれていない 総選挙監督庁・通貨取引分析報告センター・人権国家コミッション・オンブズマン・少年国家コミッションからの警察と検察への報告
[ 実例 ] 人権国家コミッションが警察と検察に報告した人権違反事件がフォローされていない
(四)
大統領: 法律違反の防止 省や国家機関の汚職防止の面が消極的
[ 実例 ] 汚職撲滅コミッションが摘発した事件の多さと省庁の再発防止のための措置の不在、地方首長が法規に違反して鉱業事業許可を与えていること、国庫収入セクターに対する汚職


「腐敗行政にメスが入るか?」(2014年11月11日)
ジョコ・ウィドド大統領を首班とする勤労内閣の官僚効用改善大臣に就いたユディ・クリスナンディ氏は、国民行政の改善に精神革命がきわめて重要な役割をもたらすとして全文民公務員446万人に対し、プリヤイ精神からの即時脱却を指示した。
「プリヤイ官僚の時代はもう終わった。これまではボールが自分の前に来るのを待っていればよかったが、これからは自分からボールを拾いに行かなければならない。昔は国民に渋い面を見せていればよかったが、今後はスマイルを忘れてはならない。国民からのサービスを望んではならないのだ。国民がご主人様なのだから。」
公文書館・開発会計監査庁・国家行政院など直轄官庁の公務員に対して訓示を与えた大臣は、その精神革命が組織機構改編のように簡単にできるとは思っていない、と語る。その歩みは上位者の率先垂範によってはじめて推進されるものであり、ジョコウィ大統領の真意を大臣が身をもって示すことにつきるため、それが自分の第一の使命である、と大臣は強調する。この内閣は国民生活のあらゆる局面において必ず国が国民を庇護する立場に立つことを目標にしており、これまで国民が揶揄してきた「国家不在の国民統治」を完璧に断ち切ることを決意している。それはつまり国民が発する訴えを国家行政が24時間中いつでも受ける態勢に入ることがまず第一ステップであり、そのスピーディな解決のための対応姿勢を整えることがそれに付随する。
行政活動・国政政策・公共サービスに関する国民からの苦情を受け付ける苦情受付箱5000の制度が2014年10月末に再開された。批判や苦情は行政のサービスクオリティを向上させるために不可欠のものだ。他にも、国民からの訴えを聞くために、SMS番号081288694333、電話番号(021)7246374または(021)7398381(内)2236、eメールhalomenpan@menpan.go.id、また同省ホームページwww.siduta.menpan.go.id、更にツイッターアカウント@kemenpanrb でも訴えを送ることができる。
それらのルートを経由して国民が届け出る訴えは必ず迅速に対応がなされ、内容によっては調査チームが現場に赴いて調査を行なうことも行なうと大臣は約束する。届出を受け付ける部門が届出を放置するようなことがあってはならないため、監察部門が必ずチェックを入れるシステム作りもなされている。
同省が抱えているもうひとつの大きなポイントは腐敗行政の撲滅だ。行政側と実業側のどちらが誘いをかけたのかということが問題なのでなく、行政側は誘いをかけることも、かけられた誘いに乗ることも禁止されている。行政側の内部にKKNが存在しているかぎり、行政の腐敗行為はなくならないのであり、KKNは官僚機構から完全に閉め出さなければならない。だからこの方針は実業界に向けられたものでなく、完全に行政側内部の問題として取扱われる。
中央政府官僚効用改善省直轄管区から地方自治体の州や県市の管区まで全国に6百の行政管理区があって、そのうちの216が腐敗行為のないインテグリティゾーンに認定されている。大臣は三ヶ月以内にそれを倍増させるよう、行政改革担当デピュティに指示した。新内閣の百日評価で行政にどこまでの変化が起こったのかが示されるにちがいない。


「最高裁判事が身分を偽装」(2014年12月3日)
ある最高裁判事の所業に対する国民からの不信任の訴えを調査していた法曹国家コミッションが、本筋とは異なるところでその判事が行なっていた倫理規定違反行為疑惑を発見した。国民から不信任の訴えが出されていたのは、汚職犯罪犯人に対する再審判決内容に関連してのもので、その再審請求は犯人が逃亡中に犯人の妻が出したもの。
その判事はその再審判決問題とは全く無関係な場、つまり自分のプライベートな行為の場で、身分証明内容を偽造していたことをコミッションが発見した。職業・年齢・婚姻ステータスが偽られており、年齢は数十年も若返っていた。既に熟年の最高裁判事がそのようなことを行なったのは、年若い女性を二人目の妻にすることが目的だったのである。
コミッションはその判事からの説明を求めて召喚したが、最初判事はそれを無視した。リマインダーが繰り返された結果、判事はしぶしぶコミッションを訪れて公式に事情説明を行ない、そして身分偽装の意図が判明したということだ。
身分証明書に虚偽内容を記載するのは、違法行為である。ましてや住民証明書偽造は犯罪だ。しかし最高裁判事にとって、そういう小さな犯罪による処罰よりは倫理規定違反で審判を受け、免職されることのほうが打撃ははるかに大きい。そういうきわめて人間的なアプローチがインドネシアで厳然として用いられていることは、インドネシア文化内にある国法服従意識レベルの低さとの関連を思い出させて実に興味深い。コミッションは、至急委員総会を開いてその悪徳判事に対する処遇を決定させたいとしている。
裁判官行動基準と倫理規定の第6条には、高潔さが行動規範として特筆されており、今回取り上げられた行為は重度違反と中級違反の中間に当たるとコミッション委員のひとりは語っている。判事は、「正は正、悪は悪」であることを正直に勇気をもって表明する誠実さを持たなければならない。日常行動でもその誠実さを世の中に示さなければならず、その原則を汚し、あるいは汚した印象を与えることは慎まなければならないというのが、判事という公職に就くための人格的要件であるとされている。
学術関係者のひとりは、たとえ世間ではありふれた行為と見なされていても、公職高官が嘘をついたりひとを騙したことが判明すれば、容赦なく責任を追及しなければならない、とコメントした。判事は個人や公衆の運命を決めるというきわめて重大な職責を担っており、嘘や詐欺で世間を欺くような人間にそんな重責を託すことはできない。法曹国家コミッションはこの問題を重視し、適当な線で手を打つようなことは絶対にしてはならない、とこれから行なわれる審判に釘を刺している。


「汚職犯罪者は超法規」(2014年12月4・5日)
汚職撲滅コミッション(KPK)が摘発した汚職犯罪事件で、取調べの焦点が当たった公職高官は、取調べを受けるためにKPKビルにやってきたり、あるいはKPKビルから帰宅するとき、満面のスマイルで報道陣に手を振るというセラブリティビヘイビアを全員が申し合わせたように行う。それは既に習慣化しており、KPKがその高官を容疑者に指定してオレンジ色の容疑者と書かれたハッピを着せ、留置場に拘留したあとでも変わらない。
マスメディアの注目を浴びるのはセラブリティであり、何が原因でそうなったのかということは完璧に意識の外に追い出してセラブリティビヘイビアを示して見せるかれらの姿を見るかぎり、それが変わらなければインドネシアは世界腐敗番付の上位を占め続けるにちがいないという気がするのはわたしだけではあるまい。グローバルスタンダードを用いた腐敗観は国政トップとKPKだけが実践しているものでしかなく、司法立法行政一般の腐敗観はまた異なる次元の中に置かれており、社会全体の価値観から見るならKPK的観念の方が異分子であって、社会はそれに完璧な賛同を与えておらず、それがゆえにKPK解散論が耐えることなく世論の波間に出現する結果をもたらしているにちがいないように思われる。
南ジャカルタ市グントゥルのKPK留置場に拘留されている高官のひとり、リアウ州知事アナス・マアムンの房に厚さ10センチもある書籍がある。A Journey to the memory of Old Greeceという背文字のあるその書籍は、実は偽装金庫であり、金庫の鍵までついている。このようなものは、きっと一般家庭にも需要が高いものなのだろう。たくさん市販されていて、だれでも容易に買うことができる。
アナスの房友である西ジャワ州カラワン県令アデ・スワラは、留置場にプラスチック製のラックを持ち込んだ。数段重ねの分解組立て可能なラックで、中空の柱で組み上げるようになっている。アデはその中空のプラスチック柱の中に、総額240万ルピアの紙幣をしのばせていた。アデはそれだけでなく、留置場の庭の土中に、ビニール袋で包んだスマートフォンを埋めていた。
他にも何人か、外部との通信用に携帯電話機を土中に埋めていたし、パワーバンクまで土中から発見された。ひとりで電話機を数台隠していた者もある。それらの違反行為は2014年10月8,9,10日と15日に行われた抜き打ちチェックで見つかったものだ。抜き打ち視察団がいきなり踏み込んできたので、持っていた携帯電話機を慌てて排水溝に捨てた者もいる。
KPKビル内留置場でも、規則に従わない違法持込物品が発見されている。デモクラッ党一大汚職事件の立役者だったアナス・ウルバニンルムは浴室の天井裏に携帯電話機と電池を隠していたし、憲法裁判所長官アキル・モフタルはワイファイモデムを隠し持ち、堤防建設汚職のテデイ・レニュッは最初携帯電話機を取り上げられたというのに、二日後にはまた携帯電話機を持っていたのを取り上げられている。
KPK留置場に拘留される者は所持品が規制される。犯罪容疑者として拘留され、また容疑者がその取調べに対して有利なポジションに着くことを可能にするものごとから隔離しなければならないのだから規制があって当然なのであり、そういう規制を与えることをヒューマニズムにかこつける声が出ること自体、社会の犯罪観念を疑わせるものではあるまいか。
拘留者が現金を持ち込んでならないのは、だれもがすぐ容易に金で動く国民性を知るかぎり、当たり前の規制だろう。また外部との通信ツールを持ち込むことが禁止されなければ、犯罪者に証拠隠滅を推奨しているようなものだ。書籍新聞の持込については、書籍は五冊まで許されているが新聞はだめで、新聞の閲覧は留置場の中に用意されているものを読むことができるから、情報を得る権利を損なっているわけではない。インドネシア法曹界の重鎮アドナン・ブユン・ナスティオン氏は新聞書籍の持ち込み禁止規則について、それはオルバ政府の政治犯に対する処遇よりも暴虐な、基本的人権をないがしろにするものであり、だからKPKは解散させなければならないのだ、と持論を繰り返している。
規則違反が発見された拘留者には、一ヶ月間の親族面会禁止が罰則として与えられる。もちろん、弁護士はその対象にならない。ところが、汚職犯罪者たちの根性も、そんなものに容易に屈するものではなかった。KPKビル内留置場にいる6人が連名で留置場管理者に対し、待遇への不服を主張する要求書を提出したのである。曰く「KPKの拘留者に対する規制はオランダ植民地時代の罪人に対する処遇よりもひどいものである。」
その要求書はccとして、KPK長官、国会第三委員会、法務人権大臣にもコピーが提出されている。KPKスポークスマンはその告発に対抗して、発見された違反の内容や事実を捻じ曲げた針小棒大な主張への説明を公表し、かれらはまるでオランダ植民地時代の刑務所の内容を体験したようなことを言っている、とのコメントを出して幕引きにした。
国家機構上層部にいるひとびとが決まりに服従しようとしないそのような姿勢は、言うまでもなく腐敗行為を行なったことと表裏一体の関係にあるわけだが、かれらが持つ超法規的姿勢はやはりかれらが国法を見下していることを示しているように見える。インドネシア建国の意志であり誓いであった世俗国家の設立は、国法を上位に置いて宗教法をその下につけるというものであったはずなのに、篤信のムスリムという姿を示すかれらが諾々と国法を犯し、行政管理上の規則を破ることに罪悪感すら抱かないという姿を、われわれは遠い昔から今日に至るまで間断なく目にしている。この国はきっとそんな矛盾をこれからも抱え続けて行くことになるのではないだろうか。


「海にも腐敗の波」(2014年12月16〜19日)
領海侵犯密漁ベトナム漁船3隻の爆沈で火蓋を切ったインドネシア海軍の国家主権護持行動は、この先一層の活発化が進むにちがいない。去る11月初旬に海軍艦艇イマムボンジョル号がリアウ島嶼州アナンバス県タレンパ島北方海域で拿捕したベトナム漁船3隻はタレンパ島海軍基地に抑留され、海軍の取調べで罪状が明らかにされた上で検察庁に法的プロセスが移管された。船長三人には最長6年の入獄刑と最高20億ルピアの罰金が求刑されることになるが、刑罰内容は裁判所が下す判決が最終決定となる。3隻の乗組員は42人いて、国外追放の判決が下されることが確実と見られている。漁船の処置は2009年法律第45号漁業法第76条Aの記載に従って行なわれる。「漁業犯罪に使われた物品やツールあるいは収穫は没収することができ、さもなければ裁判所の承認のもとに廃棄することができる。」というのがその条文であり、今回の3隻については、ナトゥナのラナイ地方裁判所が廃棄の決定を下したことにより、海軍はそれを根拠にして爆沈を実施した。
ジョコウィ政権の密漁外国漁船へのハードな方針が動き出したことを確認した最高裁は、これから外国漁船に関連する審判が増加することを予想して、アンボン地裁・メラウケ地裁・ソロン地裁に漁業法廷の設置を行なった。漁業法廷は2007年に北ジャカルタ・メダン・トゥアル・ビトゥン・ポンティアナッの5地裁に設けられ、その後二ヶ所増やされていたので、今回の追加で全国に漁業法廷が10ヶ所できたことになる。
ところで北スラウェシ州警察は、リアウ島嶼州で行なわれた爆沈の後を追って、先に拿捕したフィリピン漁船3隻をタラウド島のトゥレ海岸で焼却処分にした。焼却に立ち会った北スラウェシ州警察長官は、法律では沈めることになっているが問題はない、とコメントしている。海洋漁業大臣は政府のこの方針について、これは国家間の戦争ではなく、国家主権を侵した密漁船の経済犯罪を裁く国内法執行の厳格化である、と説明した。近隣諸国の漁船が大量にインドネシア領海を侵犯するのは、明らかに魚影が濃いからだ。船を爆沈されたベトナム漁船船長も、インドネシアの海で魚を獲ると、漁獲量がまるで異なると述べている。ベトナムやタイの漁船が頻繁に捕まっているという話を聞いているが、その魅力には勝てないことをかれは告白している。
インドネシア官憲はもちろんこれまでも領海内のパトロールを定常的に行ない、一年に12回実施される密漁外国船取締りキャンペーンも励行して、2014年に実施されたキャンペーンで海軍西部方面艦隊は78隻の密漁船を拿捕している。ジョコウィ大統領が密漁船を撃沈せよと言ったのは、インドネシア政府が取ってきた生やさしい姿勢をやめて、外国漁民に恐怖心を植え付けるようにすることが主旨だったようだ。インドネシア官憲自体が厳格な対応を避けるがゆえに、外国漁民につけあがらせる態度を取らせてきたこととそれは表裏一体のものであるにちがいない。
元海軍参謀総長はその周辺事情について、インドネシア官憲を自縄自縛の状態にした原因が政府自身にあったことを次のように明かしている。外国密漁船を沈めることはメガワティ大統領時代に行なわれていた。海軍はそのころ、20隻を超える漁船をメラウケ、アル諸島、北スラウェシ、アナンバス諸島などで沈没させていた。インドネシアの領海内に入った外国船はインドネシアの法規に従わなければならないという原理に照らして、その処置に間違った点はなにひとつない。そうすることで国家主権が護持されるわけであり、世界中の国家はすべて国家主権を護持するために、国内に不法侵入した外国人や運送機関に厳格な対応を取っている。インドネシアの国家主権を犯し、他国の主権を侮辱してないがしろにする行為を許すことはできないのだ。
あるとき、中国の密漁船をインドネシア艦艇が拿捕しようとしたとき、その漁船はインドネシアパトロール艦艇に体当たり攻撃をしかけてきた。他国に不法侵入したあげく法執行を行なおうとするパトロール艦艇を攻撃してきた外国漁船を怖れて逃げるわけにはいかない。その艦艇は当然発砲し、漁船に命中して死者が出た。その事件のあと、在インドネシア中国大使館が政府に厳重な抗議を申し入れてきた。そして何が起こったかと言えば、発砲したパトロール艦艇の艦長が左遷されたのである。その2004年を境にして、インドネシア海軍の外国密漁船に対する厳格な対応が姿を消した。元海軍参謀総長はそのように当時の政府が採った方針を物語っている。
インドネシア海軍東部方面艦隊と西部方面艦隊は待ち構えていたかのごとく、あちこちで領海侵犯外国密漁船の拿捕を活発化させはじめた。2014年12月8日15時には、アラフラ海で中国漁船22隻が拿捕された。それぞれが3百GTの中国漁船は、インドネシア領海内に入ってからインドネシア漁船であるように偽装して捕獲漁を行なっていた疑惑が高く、政府は外務省を通じて在インドネシア中国大使館に抗議を申し入れた。両国は密漁廃絶の相互覚書を交わしており、中国政府側が高みの見物で済ますことはもはやできない。
それとは別に、マルク海域ではパプアニューギニア船籍漁船2隻が拿捕された。250GTの一隻はタイ人船長と45人の乗組員がバンコック港から出漁してマルク海域で漁を行い、43トンの収穫をあげていた。もう一隻の200GTの船もタイ人船長と17人の乗組員によってバンコック港から出漁し、マルク海域で20トンの収穫をあげていた。その二隻はマルク第9海軍基地に護送されて抑留された。
またパプア島メラウケ空軍基地から飛び立ったB737型インドネシア空軍哨戒機がマルク諸島を北端とするアラフラ海で、百隻を超える大型船が洋上活動を行なっているのを発見し、写真撮影を行なった上で基地に帰還し、報告を行なった。それらの船はインドネシア国旗を掲揚していたが、単なる偽装である可能性が高く、海軍東部方面艦隊は空軍と共同でアラフラ海へ出動したものの、大量の大型船は早々と姿を消していた。実は、インドネシア側にも弱みがある。広大なアラフラ海は外国密漁船の領海侵犯と海産物掠奪の刈り取り場になっているのだが、そこでの防衛の任にあたる海軍艦艇が燃油不足で動きにくい状況になっているのだ。日常作戦行動を行なう際に海軍艦艇は一隻3万から5万リッターの軽油を消費する。海軍基地の貯油タンクに燃油がかつかつになっていれば、出動できない艦艇が名乗りをあげることになる。アラフラ海での作戦行動に適した艦は6隻あるが、そのうちの4隻は燃油が足りないために基地に係留されたままであり、やっと2隻が出動したものの、広大な領海を2隻で分担しなければならないために各艦が単独で行動している。多数の領海侵犯船を捕まえても、そのうちの1隻を臨検して船内捜査している間に他の漁船は全部その場から逃走してしまうというスタイルになるのが普通であり、一網打尽の戦果などほとんど不可能だ。
海洋漁業省のつかんでいる情報によれば、アラフラ海で操業する認可を得て、その通りの漁獲活動を行なっている船は数えるほどしかなく、アラフラ海で数百隻にのぼる大型漁船が現実に操業しているものの、その大半は無認可あるいは認可内容を無視している船である由。そういう船が年間に8,484隻見つかっているとのこと。そんなアラフラ海に外国から直接忍び込んでくる密漁船は、インドネシア官憲の目をくらますために次のようなテクニックを使っている。そのタイ漁船の船長によれば、まず最初はタイの国旗を掲げて出漁していくが、アラフラ海に近付いてきたらパプアニューギニアの国旗をはためかせながらパプアニューギニア漁船を装ってインドネシアの領海内に入って行く。領海内に入ったらインドネシア国旗に変えて仕事を行い、十分な収穫を得たならまたパプアニューギニア国旗に変えて船首をパプアニューギニアに向ける。インドネシアの領海を脱したら、そのパプアニューギニアの国旗をまたタイのものに付け替えるそうだ。
現政権の海洋産業保全方針は、ただ外国密漁船に向けられているだけではない。国内水産会社の中に、許認可内容をまったく無視して漁を行なっている不良経営者がいないわけでは決してないのである。そして、そのような不良会社は外国船が行なう密漁に協力して礼金を受取り、密漁の実態をカバーするだけでなく、自らも政府監督機関から得た許認可に違反して利益をむさぼることに努めている。海の上にも腐敗の波が打ち寄せているのだ。
既に明るみに出ている海産物捕獲セクターでの腐敗行為は次のようなものがある。
1.漁船の排水量を小さく虚偽申告して、漁民所有の小型漁船に偽装する。許認可が通りやすくなると同時に、大手を振って補助金付き石油燃料を購入できる。
2.トロール網をはじめとして、禁止されているあらゆる方法を使って根こそぎの収穫をはかる。
3.定められている漁場ではない場所で漁を行なう。
4.不良役人を手なづけておき、違法漁労を行なう国内漁船の出漁時には、官憲パトロール艇がその周辺に行かないようにする。
無法者の一語につきる不良水産業者は、更に貪欲に外国勢と手をつないで違法行為を行なっている。
1.船主や漁船オペレータは、国際水産マフィアや国内水産マフィアと手を結ぶ。これは国内水産会社であれ、密漁外国船であれ、違いはない。
2.外国の密漁船の船主や漁船オペレータは、インドネシアの水産事業許可を持っている会社でかれらに協力するところを探し、その会社名義の海産物捕獲漁許可書を利用する。
3.その会社の所有漁船が集団で出漁する中に、外国密漁船を紛れ込ませる。
4.そしてその船団はあらゆる違法行為を行なって根こそぎの収穫をはかる。
5.インドネシア語の船名をつけ、外国人船長もインドネシア人の偽名を使う。その船が領海内にいる間は、船にインドネシア国旗を掲げる。
6.官憲パトロール艇の臨検を受けた際には、贈賄して見逃してもらう。
インドネシアは現在カボタージュ政策を実施している。カボタージュというのは自国領海内におけるビジネス活動を自国船籍船にのみ許可するという政策で、さらにその船は船長から乗組員まですべてインドネシア国籍者でなければならないという条件にも縛られている。だから外国の船会社が外国船籍船を使ってインドネシアの国内ビジネスに参入することができず、そのような事業を行なう場合は持ち船の船籍をすべてインドネシアに移さなければならない。インドネシアのカボタージュは国内海運事業だけでなく、海上や海底の建設作業から漁労までもが含まれており、外国船籍船が顔を出せる余地はない。もちろん国内水産会社が期限付きで外国船籍漁船をチャーターし、監督官庁がその理由を承認するようなことが起こる可能性はある。そんな場で腐敗行為が行なわれることはありうるのである。
その船籍という制度にも抜け穴がある。インドネシアの水産会社が外国漁船を買い取ってインドネシア船籍に転換するのは常識の域内だ。ところが船籍転換申請書類上は購入されたことになっているのに、現実には外国船主が依然としてその船のオーナーであり続け、インドネシアの水産会社は単にその偽装を手伝っただけというものも稀ではない。そういう船に海産物捕獲漁許可を取るケースもあれば取らないで出漁させるものもある。許認可証の偽造や改ざん、闇での二重船籍保有、外国人船長と船員を働かせる、そういった種々の違法行為のはてに、その船はインドネシア海域で得た収穫を持って船主が指示する漁港に収穫を運んでいったり、あるいは迎えに来た別の船に洋上で積荷を移し替えるのである。水産事業主のレントシーキングが国家経済を蝕んでいる一例がそれだろう。
それを一悪徳水産事業主が個人の範囲で行なっているというケースは、インドネシアではあまり考えられない。ありとあらゆる産業にマフィアが取り付いているインドネシアでその種の個人プレーが成り立つ可能性はたいへんに低く、「みんなで渡れば怖くない」心理をベースに置いたゴトンロヨン精神がその種の犯罪の世界にも行き渡っているのである。それは明らかにインドネシアの国民性が方向付けている文化パターンであると言えよう。
一部の核になる人間が違法行為によって厖大な利益を得る方策を考え付けば、その違法行為を実現させるために邪魔をするどんな機関がどういう場で監視・捜査・摘発を行なうのかを調べ上げ、それを骨抜きにするためにだれにどういう人間関係の中でアプローチすれば仲間になるかということに配慮しながらその人間を手中に落としていく。そういう手法が使われるからこそ、そしてきわめて社会的に広範囲な機構を抱き込んでいくからこそ、それがマフィアと呼ばれているのだとわたしは理解している。
元海洋漁業省漁業海洋資源監督総局長は、広範囲な国家行政機構の中に不良担当官から悪徳高官に至る総合的なマフィア組織が作られており、違法行為を行なう犯罪者をかれらがサポートしバックアップしている、と語る。業界を監督する行政機構から現場での違反行為を取締る法執行部門、そして逮捕された違反者に法的措置を与える法曹界・・・。起こりうるあらゆる流れのすべてにマフィアの手が混じりこんでいる。
許認可の審査と交付の領域では、認可を求める申請に添えられたサポート書類が不足していたり矛盾があったり、その他ストレートに許認可を交付できないような内容であっても、審査担当官は上からの圧力に屈してその申請に許認可を与えざるをえない体勢が作られている。業者の中に違反行為を行なっているものがあることを担当官が発見して報告しても、上部からの反応はまったくなく、それにどう措置を取るかということの指示があいまいでいつまでたっても明確なものがなにひとつ降りてこなければ、担当官の業務遂行は牙の抜かれたものになってしまう。腐敗行政の一番危険な状況がそれだ。そして、既に退職した上級高官がいまだに影響力を振るい、影で行政の一部を操っている。
操業現場でパトロール艦艇が違法行為を行なっている漁船を拿捕しても、別の法執行要員が上からの指示だと言ってその抑留を解除し、放免してしまうことが起こる。それは国内漁船であろうと、領海侵犯密漁外国船であろうと、何もちがいがない。違いがあるとすれば、マフィアの一員で高官職に就いている人間の手に渡される金額だけだろう。
あるいは違法漁労が行なわれる日には、パトロール艦艇の出動がその海域を避けてまったく異なる方向に出て行くことも起こっている。おまけに、漁業犯罪事件の起訴が増加するようになれば、漁業法廷の増加にともなって関連人員も膨れ上がっていく。マフィアは多分、そうなる時期を待っているにちがいない。
インドネシアの漁業が抱えている問題は、領海侵犯密漁外国船というカテゴリーの中にあるだけではないのだ。国内水産業界がそこにつながっており、それを監督している国家行政機構がその周囲を取巻いて犯罪をサポートしているのである。「わたしは総局内の悪徳管理者がマフィアと関わっているのを立証したことがある。その状況を改善していかなければ、インドネシアの漁業がかれらの食い物にされ続けることを免れる日はやってこない。密漁外国船を沈めることばかりに焦点が当てられていては、根本解決に近付くことはできない。システム自体に総合的な大改革をもたらすことを決して忘れてはならないのだ。」
元海洋漁業省漁業海洋資源監督総局長は現政権の国内海洋産業保全方針がその原則から逸脱せずに地道な改善努力を持続させることに強い期待を表明している。


「公費削減に音を上げるホテル業界」(2015年1月14日)
政府は公費削減を目的に、公務員がホテルで会議を開くなど公費を使ってホテルで活動を行なうことを2014年11月から制限した。その影響がじわじわと全国のホテル業界に押寄せつつある。インドネシアホテルレストラン会は2015年1月6日、ユスフ・カラ副大統領と会見して窮状を訴えるとともに、業界への支援を求めて新政策についての提案を行なった。現状がどう変わってきたかと言えば、地方によってはホテル業界の客室稼働率が35%まで低下しているところがあり、MICEの売上も顕著に減少しているそうだ。
ホテル業界にとっては公務員の利用を観光客に置き換えなければならないために、国内のひとの流れをより円滑化させるためのコネクティビティ向上が最優先条件となり、更に電力問題、そして観光業界の人材クオリティ向上、また既に飽和状態になっている地方での新規ホテル建設禁止といった政策を厳しく実践してほしい、とホテルレストラン会会長は要請した。
しかし情報によれば、窮状をかこっているのは国営ホテルであり、中下流ホテルは公務員とは無縁のビジネスをしてきたところが大半であるため、まったく影響は出ていないとの内輪話も流れている。
反対に、公務員がホテルで会議や催し物を開いたりした場合、開催担当委員はさまざまな手を使ってホテル側に水増し領収書を用意させているとのこと。ホテル側担当者にも分け前が出るようだから、両者つるんでの汚職ということになる。たとえば会議の参加者がホテルに部屋を取るが、一泊なのに三泊分の領収書を作らせた上に10%上乗せさせたり、あるいは参加者が150人なのに300人分の領収書を作らせたり、食事はケータリングに注文しておきながらホテルのレストランからの領収書を出させたり、はてはホテルのブランク領収書フォームを要求したりして腐敗を増長させており、ホテル従業員の中には腐敗行為の巻き添えを免れることができるため、いつまでもその方針を続けて欲しい、とかえって喜んでいる者もあるとのこと。


「海上捕獲漁業は腐敗の世界」(2015年3月23日)
アラフラ海で無許可操業を行い、鮮魚800トンと冷凍エビ100トンをパプア州メラウケ県ワナム港に運んでいたと見られる3,830GTの大型漁船パナマ船籍のHai Fa 号が海洋漁業省と海軍の合同パトロール作戦で拿捕された。船長以下、船内で働いていた23人は全員が中国人だった。この漁船は漁労活動の許可や外国籍船舶ならびに乗組員が外国人であるといったことがらに特別裁量を与える証明書などが一切ないために違法漁労現行犯として捕えられたもので、漁船監視システムに所在地を知らせるトランスミッターをオフにして航行していたことも官憲からの強い疑惑を招いた。
この違法漁労事件に対する刑事事件裁判がアンボン地方裁判所の漁業法廷で開かれ、判事団は船長のチュー・ニエンルーに8年間の入獄と10億ルピアの罰金判決を下した。アンボン高等裁判所判事であるこの法定の判事団長は判決について、去る12月26日にパプア州メラウケ県ワナム港で臨検されて捕らえられたハイファ号はそのときPTアヴォナミナレスタリ社の貨物を輸送するために使われていたが、船長は船舶稼動適性認可証を所持しておらず、法規違反を行なっていたため有罪判決が下されたと語っている。この船はまた、漁船監視システムに最後に記録されたのが12月22日で、漁船が操業中にスイッチを入れておかなければならないトランスミッターが意図的にオフにされていたことも違反のひとつに採り上げられている上、積んでいた鮮魚の中に捕獲が禁止されているシュモクザメとクロトガリザメが多数混じっており、複数の違反行為が行なわれたことが明らかにされた。被告の船長と証人として出廷したハイファ号の中国人船員三名が起訴事実を認めたので、裁判は円滑に終了した。ハイファ号はアンボンの海軍第9メイン基地に係留されている。
スシ・プジアストゥティ海洋漁業相は、インドネシア国内で操業している漁船の99.99%は違反行為を行なっている、と非難した。漁労活動における諸法規への違反・許認可書類の偽造や不作成・そして国税や課金納入義務に対する違反・・・
中でも、外国から国内に持ち込まれてインドネシア船籍を取得した船の運用がそういった不法行為に満ちていることが原因で、政府海洋漁業省は輸入漁船の操業を一定期間棚上げする方針を採り、調査チームを編成して徹底的な行状追及を行なった。結果は、軽度の違反だけを冒しているのは良いほうで、重度の違反行為を顕著に冒している船も多数見つかっている。調査チームは既に1千3百隻に対する調査を済ませているが、調査された船の5割がインドネシア領海の外に姿を消したそうだ。それらの船は例外なく二重船籍を有し、インドネシア領海内では一見インドネシア船の姿を見せているが、それはインドネシア領海内で操業するための方便でしかなく、船主は外国人でその船を広大な海洋で国境の障害なしに好きなように使用している。
また、30GT超の漁船オーナーの納税状況の調査で、1,444隻のオーナーのうち1,010人がNPWP(納税者番号)を取得していないことが明らかになった。つまり、漁船オーナーは昔から納税を行なったことがないのである。正直者が損をしている構図がここにも見られる。
なお、バタム島沖の領海上で27GTのベリーゼ船籍船と62GTのシンガポール船籍船が海上で貨物の積み替えを行なっているのを運輸省パトロール艇が発見し、その両船を拿捕したことを運輸省海運総局長が3月5日に明らかにした。両船共に偽造書類で領海内海上活動を行なっていたとのことだ。


「クビになる検察官は毎年数十名」(2015年4月24日)
2012年から2014年までの三年間に105人の検察官が免職措置を与えられた。職務違反行為のために最高検察庁監督ユニットが措置を与えたもので、理由は規律違反・ナルコバ使用・証拠品横領・汚職など。そのうちでは規律違反がもっとも多い。2015年に入っても、既に11人が免職になっている。その多くは無断欠勤で、欠勤理由の説明もなく処分限度日数の46日を超えて出勤しないため、規定通りの措置が取られている。監督担当副長官代行によれば、そのような現象を示す者の多くは、まず業務が片付かず、麻薬に溺れ、職務を忘却してしまうというパターンである由。文民公務員服務規律に関する2010年政令第53号第10条(9)項には、明確で公正な理由なく46日間あるいはそれを超えて欠勤した文民公務員は免職処分を受ける、と記されている。
2014年に職を失った検察官は25人いた。中のひとりはナルコバ使用、他の5人は証拠品横領や汚職など。2,013年も25人で、免職理由の多くは権限逸脱。2012年の免職者は55人いた。検察官のナルコバ使用を防止するために、今では全国で抜打ちチェックが行なわれている。


「一定でない役所手続き費用」(2015年8月21日)
2015年3月4日付けコンパス紙への投書"Biaya Domisili Usaha, SIUP dan TDP di Bekasi"から
拝啓、編集部殿。西ジャワ州ブカシ市で新規事業を始めようとしているわたしは、事業所所在証明をジャティラハユ町役場で作ってもらうプロセス中です。そのために30万ルピアを支払いました。
この手続きの公式料金はいくらなのでしょうか?さまざまなひとがさまざまな金額をこの手続きに支払っています。町役場職員が請求した上の金額を支払ったわたしに対して、公式な領収書は発行されませんでした。
事業を開始するために必要なSIUP(商業事業許可書)とTDP(会社登録証)の発行手続きについても同様です。ブカシ市庁の担当部門でその料金を尋ねても、職員によって言うことが異なっているのです。ある職員は150万ルピアだと言い、別の職員は70万ルピアだと言いました。
SIUPとTDPの発行手続きは三週間かかり、費用は非行政課金に該当するものだという説明をわたしは耳にしました。ということは、わたしが支払う金は国庫に入らないということなのでしょうか?この手続きと公式料金に関する説明を、当局にお願いしたいと存じます。[ 西ジャワ州ブカシ市在住、サルン ]


「食糧マフィア壊滅作戦」(2015年8月28日)
「食糧市場流通機構の中で隠匿を行なう者は刑罰に処する」という国家警察布告が出された。2015年国家警察長官布告第1号がそれ。この措置は、最近市場での価格操作が目に余る状況を呈している牛肉と米で行なわれている商品マフィアの動きを封じるための法的根拠を用意するのが目的。
マフィアは商品を市場流通のパイプに流している生産者〜流通者の一部を支配し、流通量を制限して卸価格を引上げ、在来パサルが大半の小売業界はほとんどが小資本商人から成っているためそれに対抗することができず、必然的に消費者は急激な価格の変動に翻弄されることになる。これはインドネシア独立以来培われてきた構造的弱点であり、行政はいかにマフィアを手なずけて国民生活に大きな影響が出ない範囲にそれを押しとどめるかというのが基本方針となり、このマフィアシステムに乗っかって行政が腐敗利益を得た上でそれを政党に還元するというような官民癒着構造にまで練り上げられてきたものだ。
国民は生きていくために食糧を消費せざるをえない。つまり食糧は絶対に売れるという保証がついている。だから市場を品薄にして価格をつり上げても、国民は必ず買う。もちろん平常価格で一日2キロを消費していた家庭は、価格が倍増すれば消費量を一日1キロに減らし、家族のみんなが空き腹を抱えて仕事や学業に励むということになり、販売量も当然激減するわけだ。だがマフィアはそんなことに少しも困らない。なにしろ平常時よりも数倍の利益が得られるのだから。
ジョコウィ政権はしばらく前にこの商品マフィアに宣戦を布告している。漁業マフィア、石油マフィア、牛肉マフィア、米マフィア、その他さまざまな日常消費物資にからみついているマフィアを壊滅させて国民の福祉増進をはかるのがその目的だ。だがしかし、生産流通分野での隠匿というのはその定義が難しく、半ば灰色がかってくるのは疑う余地がないだろう。手柄を上げて成績評価を高めたい法曹関係者がその状況を悪用する可能性もそこに潜んでいる。
そもそも、個人が金儲けをして一大分限者になればその過程など無視してかれを大成功者にして偉人であると見上げる価値観を持つ社会で、自分個人の利益などそこそこにして公共利益の増進に貢献し、国民みんなと繁栄を楽しもうという理想論を本気で実践する人間は希少価値であり、個と家族と仲間という空間の外にいるのはヨソモノであって互いに滅ぼしあおうとするのが当然というホモホミニルプス原理が昇華されないまま根強く残っている社会が精神性を変革していかなければ、そんな理想論は地に着いたものにならないだろう。
ともあれ、国家警察長官はその布告について次のように説明した。その布告にはふたつのポイントがある、と長官は言う。
「利益を高めるために商品を故意に蔵置し、その結果市場で生活基幹物資が値上がりあるいは暴騰するようなことを事業者はしてならない。同じように、ある物資の供給量が減少したり、市場で価格が大きく値上がりしたり、あるいは流通分野に障害が起こったようなときにも、その物資を在庫から市場に出し惜しみしてはならない。この布告は国民の生活基幹物資が常に市場にあり、市場供給が安定して価格暴騰が起こらないことを国民に保証するためのものである。」
違反者には、「食糧」に関する2012年法律第18号第133条が適用される。入獄最長7年罰金最大1千億ルピアが刑罰だ。同時に2014年法律第7号「商法」第107条も適用される。こちらは入獄最長5年罰金最大5百億ルピア。
牛肉の市場価格が暴騰している中、政府と警察は牛肉国内生産流通機構を取調べ、市場供給量の操作を行なった二社を摘発した。警察はその責任者らを刑法犯として送検したい意向で、事件概要のまとめを急いでいる。


「食糧カルテル」(2016年3月23・24日)
ライター: ボゴール農大教授、、インドネシア農業技術種苗バンク協会会長、ドウィ・アンドレアス・サントサ
ソース: 2016年3月11日付けコンパス紙 "Kartel Pangan"

食糧価格の激動はインドネシアで定常的なできごとだ。そうではあっても、2015年初から16年初までの間に起こった食糧価格上昇は、インフレ率が3.35%という低率で、食糧を含む世界の商品価格が暴落していることを思えば、はなはだ激しい部類に入る。
国内中級米の平均値上がり率は13.2%でインフレ率のほぼ4倍、鶏卵9.5%、牛肉6.1%、鶏肉3.0%。インフレ率が8.36%に達した2014年よりも、食糧の平均値上がり率は大きかった。
食糧価格上昇は零細農民の福祉向上を伴わなかった。新内閣最初の6か月間に、57万農民が貧困ライン下に落ちた。2015年2〜3月の収穫期に生産農民レベルのモミ米価格は3,100〜3,300ルピアで、政府が定めた乾燥モミ新米公定価格である3,700ルピア/キログラムを大きく下回った。
今年の収穫期にも同じことが繰り返された。収穫はまだ全国的でなく、各地で散発的に行われているにすぎないとはいえ、インドネシア農業技術種苗バンク協会に入った各地からの報告によれば、今日この頃のモミ米価格は最低2,900から3,700までの間で、中部ジャワから東部ジャワ一帯の平均値は3,400ルピア/キログラムになっている。2016年3月7日時点で全国的に中級米市場価格が10,933ルピア/キロにまで上昇してきたことに対比するなら、たいへん皮肉な状況だと言わざるをえない。2015年12月が10,744ルピア、16年1月10,799ルピア、2月10.801ルピアというのが値上がり状況だ。
2月28日に大収穫祭セレモニーのアナウンスがあったとき、わずかに値下がりを見せたが、その翌日には即座に値上がりが起こり、27日の価格を上回った。そのような米市場価格は生産農民レベルのモミ米価格がキロ4,500から5,000ルピアであるときに妥当性を持つものだ。価格の激動は米ばかりか、トウモロコシ・牛肉・鶏肉・鶏卵でも起こっている。赤バワン(エシャロット)やトウガラシは生産に季節性があり、また貯蔵がきかないため、価格の激動ははるかに凄まじい。このような傾向に意を向けた諸方面が、舞台裏でマフィア・投機者・カルテルが暗躍しているとの結論を下している。
さまざまな既存の論説によれば、食糧価格の変動はいくつかのファクターが主要原因とされている。すなわち、(1)食糧消費に対するストック比率、(2)石油価格、(3)通貨交換レート、(4)金利率、(5)気候不順、(6)税と通貨政策、(7)食肉需要を高めるミドルクラス人口の増加と所得増、(8)先進国での食糧のエネルギー化(バイオ燃料)、(9)商品市場における金融投機などがそれだ。
消費に対するストック比率、石油価格、通貨交換レートが食糧価格を形成する主要原因である(Baffes and Dennis, 2013)。消費に対するストック比率は食糧生産レベル、食糧のバイオ燃料転換、国民所得によって決まる。
< カルテルの暗躍 >
食糧価格形成の用語の中に、金融投機という言葉がある。2011年にニューイングランドコンプレックスシステムインスティテュートのMラギと友人たちは、2007/8年と2011/2年の食糧危機の原因は金融投機であると結論付けた。しかしながら、その説はノーベル経済学賞を得たポール・クルーグマンの反論を受けた。「食糧投機者は食糧価格形成への影響力を持たない。なぜなら、先物市場の投資家は現物を持たないからだ。」というのが反論内容だった。
金融投機とカルテルは異なる。カルテルとは癒着した寡占行為が作り出す市場構造なのだ。癒着した寡占行為とは、同じまたは類似の製品やサービスを取り扱う複数の事業者が市場で独占行為を行う寡占市場モデルだ。市場の大部分を支配する企業の間で寡占行為についての合意が結ばれる。協力と共同行為に関する合意がカルテルと呼ばれる市場構造を作り出すのである。
カルテルの合意には、独占的な同一生産価格、生産数量、市場地域の分配などが含まれている(Severova and Bendi, 2013)。利益を最大限にするために、カルテルは価格の引き上げや生産数量の抑制を行う傾向を持つ。
鶏ストックの談合を行ったとの容疑で12社から成るカルテルが集中捜査を受けているわけだが、食糧カルテル現象をインドネシアの食糧価格分析のメスに使うのは、それゆえにむつかしい。
米については、脱穀所が米価格形成の重要な連鎖の一つだ。182,184か所ある脱穀所の大部分は、能力が時間当たり3トンを下回る小規模事業である。大規模事業所は、2016年配給事業庁データによれば、2,075社あり、そのような多数の会社が米のカルテルを結成するのはむつかしいだろう。
< 生産データ >
そうであるなら、何が食糧価格を決めているのだろうか?消費に対するストック比率は米だけでなく、他の食糧商品にとっても市場価格形成の優勢なファクターであるように思われる。消費に対するストック比率というのは、まず国内生産と輸入で構成される。
上のような分析のメスでインドネシアの食糧価格の動きを理解しようとすると曖昧なデータに行き着くのはたいへん残念なことだ。中央統計庁が公表した暫定数値によれば、乾燥モミ米生産は7,536万トンで、6.37%アップした。そこからモミ利用2%と5%のロスを差し引くと4,404.5万トン相当の米生産量という結果が得られる。そこに86.2万トンの輸入量と年初ストックの550.1万トンを加えると、2015年の米総ストック量は5,040.8万トンとなる。一人当たり年間米消費量124,89キログラム(農業省データ)、その他用途0.9%、喪失量2.5%が米総ストック量から消費されると、2015年末には1,680万トンという余剰が残り、2016年初への繰越ストックとなる。
この異常に大きなストック量が加われば、消費に対するストック比率計算式を使うと2016年初の米価格は2015年の中級米価格キロ当たり3,858ルピアから6割ダウンしてしまう。
カルテル理論からは、1,680万トンのストックの存在を理解するのは困難だ。それだけの米が脱穀所もしくは流通業者の手中に本当に存在するのなら、かれらは大損を抱えていることになる。それを市場に流せば米価格は大暴落を起こすから、かれらはそれを抱え込まなければならないのだ。ましてや、大収穫期がこれから始まろうとしているのである。他面、同じ生産傾向が今後も継続するなら、5年後にインドネシアは5,200万トンの余剰米を持つことになる。理解を絶する数値だ。
このように、この新聞紙上でもよく取り上げられている食糧生産データに関する大問題にわれわれは遭遇することになるのである。このようなデータの誤りのためにインドネシアの食糧価格の変動を分析するメスは鈍刃となり、同時にインドネシアの食糧運営管理システムは混乱の道を邁進しているのだ。
カルテル行為がもし立証されるなら、生産者と消費者に損失を与え、またインドネシアの食糧システムの秩序を狂わせている張本人には、厳しい処罰が下されなければならない。政府は今、食糧生産者の保護に的を絞ることが求められている。米生産農民のモミ米価格保護を通して零細農民に支援を与えることだ。米生産農民のモミ米政府公定価格は引き上げられなければならない。なぜなら、2012年以来、それは10〜12%程度しかアップしていないが、インフレ率は25%に上っているのである。
消費者レベルの価格を保護することは、政府の食糧ストック向上と正確なデータを踏まえた国際通商という二つの価格安定政策を通して実施できる。他にも、現在すでにぎりぎりの線まで落ち込んだ民間事業者と政府間の相互トラストを再構築しなければならない。それらの努力の果てに、2015年の食糧激動は単なる歴史の一ページとなり、将来の食糧管理の重要な教訓となるように期待されているのだ。


「ムショはシャバの縮図」(2016年4月13〜18日)
西ジャワ州のとある刑務所の獄舎内にある囚人房のひとつ。4x6メーターの房内には20人の服役者が起居している。寝るだけでも、そのせまっ苦しさといったら、ない。毎朝、魔法瓶2本の湯が配給されるが、20人がそれで済むはずもない。金がある者は金で自分の不足分を補うことができるが、金のない者に同じことはできない。するとどうするか?飲用水の空き瓶プラボトルを集めてきて、それを燃料にするのだという。
しかしそういうのは、庶民服役者にとってのもの。金が物を言う世界であるのは、娑婆もそこも変わりない。権勢を張って来たナルコバの胴元や、大物コルプトルともなれば、庶民と同じような真似をする必要などまるでない。インドネシアは上下社会なのである。
金があるなら、たとえ1.5x3メーターの狭い独房であっても、浴場・机・タンス・厚手のマットレスなど、豪勢(?)な生活環境がしつらえられる。特にありがたいのは、電気コンセントがついていることだ。携帯電話機のチャージも、ノートパソコンの使用も、自由自在に行える。
ナルコバ事件に連座して服役しているA氏は、娑婆にいたころの恰幅の良さは消え失せ、やせ細っているものの、獄舎内では自由に活動していると物語る。
「携帯電話機のチャージはモスクとか、どこででもできるし、プルサも大勢の服役者が販売しているから、簡単に手に入る。」
犯罪者に入獄の懲罰を与えるのは、社会生活から隔離して不便さを味合わせ、もう懲り懲りだと実感させることが主要な目的になっている。それが携帯電話機やパソコンでいつでも好きなときに娑婆と交信でき、娑婆で行われている活動に間接的にでも関わっていけるのなら、当初の目的など消滅してしまう。要するに、基本観念が服役者たちに金で買われているのである。おまけにナルコバ胴元は刑務所内をマーケットに変えてしまう。刑務所内でナルコバを製造していた胴元がいたくらいで、作られたナルコバは刑務所内マーケットばかりか、娑婆のマーケットにまで流されていたほどであり、ムショ入りしても才覚次第で大金持ちになれるという実例のひとつがそれだったようだ。
看守がそれを知らないわけがない。巨額の金が流れる太いパイプの傍に寄れば寄るほど、飛び散るしぶきを見に浴びることが容易になる、というインドネシア特有の金銭思想の姿がそこにある。
刑務所管理者は服役者たちにとって支配者だ。支配者が服役者たちをそのように自由にさせているのは、それが支配者の金づるになっているからだ。刑務所長が休暇を取る。すると所長はナルコバ胴元たちを呼び集めて休暇費用を拠出させる。インドネシアで特徴的なのは、「bersama 姿勢」だ。たとえ上下関係があるにせよ、同じ職場仲間たちとの人間関係を大切にしようとするのは、所長も変わりない。こうして、所長が集めた拠金のおこぼれが、末端の看守にまで流れてくる。インドネシアのコルプシはぐるみ形態になるのが当たり前のことなのであり、その習慣は組織内に根付くことになる。するとその組織のトップが交代しても、組織は従来からの習慣を新トップに要求するようになる。清潔でいたいと思う新トップも、組織を動かしていくためにはその要求をすべてはねつけることができないにちがいない。
刑務所内は完全に金の社会だ。面会人が来れば、看守が服役者である自分を呼んでくれるようにしなければならない。それには数万ルピアの金。金持ち服役者は何も問題ないだろうが、金のない庶民服役者は困る。だからかれらは刑務所内の作業場で何かを作ったり修理したりして金を稼がなければならない。刑務所内を出入りしている物売りもいる。たいていは飲食物を売り歩いて獄舎の房から房へ自由に出入りしている者たちだ。そこでも、金がなければただ指をくわえるしかないことになる。
ジェロ・ワチッ鉱エネ相はコルプシ犯罪で有罪判決を受け、今はチピナン留置場暮らしだ。頭は丸坊主にされ、青色の囚人服を着、1.5x2.5メートルのセルに入っている。マンディも6分間に制限されている。元KPK長官アンタサリ・アズハルはタングラン刑務所に入ってもう9年近い。「刑務所内の実情は、普通言われているようなイメージほど悪くない」とかれは言う。もちろん一般化できないことがらではあるのだが。大勢の服役者たちは、娑婆にもどったときの前科者に対する扱いをいろいろ耳にする結果、刑期を終えて娑婆でやり直すということに対する意欲がはなはだしく減退している、とかれは述べている。人間に烙印を押し、自分より劣った人間なのだという見下しと侮蔑をこってりと塗りたくり、その人間をいたぶっていく社会的ないじめが大手を振って横行している社会に戻って、かれらがいたぶられながら正業で生きて行こうとすることは厳しい茨の道であるにちがいない。
では、刑務所管理者側の事情はどうなのだろうか?刑務所内の服役者監視活動は24時間制であり、看守はシフト勤務になっている。今や全国の刑務所が定員を53パーセント上回る服役者を収容しており、ひとりの看守が一回のシフトで担当する服役者の数は50〜60人になっている。つまり看守は理想数値を5割オーバーするワルたちを監視しなければならないわけだ。
看守は刑務所学アカデミーを卒業すると、IIC級国家公務員として刑務所に配属される。月給は350万ルピア程度だ。
法務人権省刑務所総局広報官は、人口に膾炙している刑務所内がすべて金の世界だという話しのエピソードの中には真実でないものが混じっている、と物語る。服役者の中に、自分は看守のだれそれと親しい関係にあるのだということを服役者仲間に吹聴する者がいる。つまり支配者の威を借りてムショ内で上位に位置しようというわけだ。そして、その威を使って実利を得ようとする。つまり、「看守のだれそれに祝い事があったから、おめえたちみんな祝儀を出さなきゃならねえ。だれそれさんは俺に手伝うように頼んだんだよ。」
本当に頼まれもしないことでも、うまく立ち回れば金も入るし当の看守からの覚えもめでたくなろうというものだ。それがミドルクラス服役者の間のことなら、金のあるクラスの服役者の間では、一介の看守でなく刑務所長の名前が使われることもありうる。
服役者の間でそういう話が通用すること自体、刑務所内での本質を裏書きするものであるのは間違いないのだが、広報官はそれらの話に出てくる人物の行動が事実でない可能性があると言っているだけだ。2015年には全国で87人の看守が規定違反で懲罰を与えられ、62人が刑務所内のナルコバ事件で即座に解雇された。
看守が刑務所内の支配者のひとりだとはいえ、看守も服役者に監視されているのだ。おかしなふるまいをしている看守を大勢の目が見ている。刑務所に入ってしばらくした服役者は、たいてい個々の看守の性格を見抜くようになる。
「チピナン刑務所の1ブロックを夜間ピケットでたったひとりの看守が見張ることも起こりうる。そのブロックにいる4百人の服役者が、その看守の一挙手一投足を見つめていることを忘れてはならない。」広報官はそう述べている。
とはいえ、刑務所内の仕組みを動かしているのが金である以上、新人看守がどれだけ自分はクリーンでいたいと思っても、職場の不文律にさからって生きていけるわけがない。シャバの世界が悪に寛容であり続けるかぎり、ムショの中も同じことが続けられるにちがいない。そう思うのはわたしばかりだろうか?


「民間実業界に対する腐敗粛清」(2016年5月4日)
インドネシアの実業界は賄賂と搾取の傾向がきわめて強く、その流れの行き着くところはハイコスト経済であり、そして汚職・贈賄・礼金などの犯罪発生だ。インドネシアの実業界からダーティビジネスをそぎ落としていくことを全国商工会議所とインドネシア汚職撲滅コミッション(KPK)が合意した。全国商工会議所会頭によれば、インドネシアのビジネス界に健全な風土を育成していくために、商工会議所はKPKと近日中に合意覚書を結ぶ予定であるとのこと。
許認可プロセスや事業拡張において事業者は賄賂や汚職に巻き込まれるのが常であり、商工会議所は事業者層に対して賄賂・礼金・搾取のイシューをもっと真剣に取り上げ、事業者ひとりひとりがその問題に正しい意識を向けるよう呼び掛けていくことを決意した。そのために本部と全国各支部は、実業界の見解が法執行者と同期するよう、社会啓蒙プログラムを実施していく計画だ。
もし事業者が許認可や事業拡張プロセスで贈賄強要や搾取の被害を蒙れば、すぐにKPKに届け出るような環境作りがこれから進められていく。特に、特定集団が許認可や事業拡張プロセスの中でわざと問題を作り出し、プロセスの進捗に困難をもたらすようなことが行われるようなケースもそこに含まれる。その点についてはKPKとの話合いがついているので、役所側がプロセスを困難にする行為が明らかになれば、その届出をKPKが拒むことはない由。
現実には、役所側の腐敗行為の被害者になっている事業者がいる一方で、儲けのためにはあらゆる手段を使うことを辞さない事業者が役人に腐敗行為を誘いかけるケースもある。後者のケースが明るみに出た場合、その事業者が商工会議所会員であるなら、会員権ははく奪されることになる。
KPKによれば、国家行政機構の腐敗撲滅は民間をも含めた対策を講じていかなければならず、民間実業界はKPKのターゲットのひとつに既に位置付けられている由。メインターゲットはマフィアと呼ばれる勢力で、かれらは民間の流通販売機構を支配しながら国政上層部の政策策定に影響を与え、政界上層部を陰で操ろうとする犯罪者集団であり、その流れを下まで降ろせば贈賄で末端行政機構を動かそうとする腐敗事業者にたどり着く。
政府省庁や政策策定機関、地方行政府、大衆組織はそれぞれが、インドネシアの政治経済システムのために民間からの腐敗行為の働きかけに対して弱点を抱えている。地方行政府などは特定プロジェクトへの予算配分を地方議会の言いなりになって行っている。議会に地元有力事業者がからんでいるのは、全国的にありふれた図式だ、とKPK役員のひとりは語っている。


「鈍化する恥の意識」(2016年8月2日)
生活共同体、つまり世間あるいは社会、が集団主義的であるアジア諸民族は、社会秩序の統制に際して恥の文化を主要ツールにしてきた。ところが、ベースの異なる文化から輸入された個人主義は在来的な集団主義を蝕むばかりで、社会統制ツールである罪の文化は価値構造の差異ゆえに、適用可能なツールとしての位置づけがなされないまま、恥の文化を色褪せさせている。その結果、恥の意識が鈍化していくのも当然のことだろう。
インドネシアで行政高官や政治家のコルプシ犯罪が明るみに出て、かれらが刑罰を蒙って監獄暮らしをしているというのに、コルプシ事件は後から後から暴かれて、果てしない泥沼と化している。
「コルプシ意欲を抑制する力を恥の文化に求めることはもうできない。恥という社会制裁はクリーンで透明な行政倫理の下であってこそ、はじめて機能するのだ。
コルプシを行うことに対する恥意識は、既に避けるべきものの座から外れてしまった。KPK(汚職撲滅コミッション)の待合室は、コルプトルたちにとって偉大さを見せびらかしあう展示会場と化している。コリドーオブシェイムでなく、コリドーオブフェイムになっている。」ロッキー・グルン、インドネシア大学文化学部哲学科教官はそう語る。
昨今のコルプシ界は更にソフィスティケートされて、立法・行政・司法の三分野がカルテルを組む方向に進んでいる。実際には、協議や合議などなしに、相互に状況をうかがい、暗黙のうちに協調態勢を取っていくスタイルで、いざ獲物が手に入れば恩恵が参加者に行き渡るようになっている。
「これは、政治活動がハイコストであることに由来している。政党は有能な幹部を養成することができず、マネーポリティクスを容認することになる。いや政党ばかりか、国も同じ軌道の上を歩いている。タックスアムネスティ政策にしても、政府は脱税者を含む法律違反者への罰を軽減させて、国家予算の穴埋めに使おうとしているではないか。」
一方、バンドンのインドネシア教育大学名誉教授は、インドネシアがこのような状況になったのは、人格教育がしっかりなされていないからだ、と国の教育方針を批判する。「初等中等教育も高等教育も、プラグマティズムの影に包まれている。教育現場は結果主義に傾き、過程を顧みない。ショートカット精神も旺盛だ。」
教授は、立法・司法・行政分野のコルプトルが5〜10年前から世代交代を起こし、若年コルプトルが増えていることを指摘している。かれらの学歴はますます向上し、修士・博士がざらだ。かれらは最高の教育レベルにある者たちだが、奇妙なことに、報道陣を前にして恥ずかし気なそぶりなど微塵も見せず、ニコニコと笑顔を振りまいている。


「運転免許手続場で抜き打ち取締」(2016年10月13日)
首都警察監察部門が管区の運転免許手続場で行われている警察員の腐敗行為に対する抜き打ち取締りを行った。16年10月5日に行われた取締りでは、ブカシ市警運転免許証手続場で警部ひとりと副警部正ひとりが現行犯逮捕された。所持していた現金310万ルピアと新規免許証作成が75〜80万ルピアというワッツアップの記載が証拠になっている。
またデポッ市警では一級警視補ふたりがA種とC種の白紙免許証60枚と現金1,630万ルピアを所持していたため逮捕された。南タングラン市警でも、20万ルピアの見返りで運転免許試験をパスさせようとした二級警部補ひとりが逮捕されている。西ジャカルタ市ダアンモゴッの運転免許統合手続場では二級警部補ひとりが、外部チャロの依頼を受けて試験に便宜を与えようとしていたことが判明して逮捕された。所持していた運転免許試験受験者カード2枚が証拠品となっている。
その一連のできごとについて、インドネシアオンブズマンメンバーのアドリアヌス・メリアラ氏は、運転免許証に関わる警察員のチャロ行為は既にインドネシアの警察文化の中に定着しており、違法ではあるが必要悪として受け入れられてしまっている、とコメントした。
「今回の取締でチャロ行為はしばらく鳴りを潜めるだろうが、ほとぼりが冷めれば必ずまた復活して来る。この文化はたいへん強靭で確固としたものだ。警察の上層部も職権を悪用しており、上が金稼ぎをするから下もするというロジックに覆われている。下の者が行っている運転免許手続に関わる金稼ぎは上の者の承知のことがらだ。その分野は下の者の稼ぎの場だという認識を上の者はしている。だから国家警察が運転免許手続の場における取締をするのであれば、上の連中が行っている謝礼や汚職のような職権悪用にもメスを入れなければならない。下の者が不公平感を抱く限り、抜本解決は不可能だ。」
首都警察広報官は今回の取締について、「チャロとプンリを撲滅するとのコミットメントを首都警察は実践した。今回の取締はそれを証明するものだ。明白な証拠によって逮捕された者は、倫理規定違反の罪に問われる。懲戒免職処分が与えられることになるだろう。」と述べている。


「腐敗入国審査官?」(2016年11月8日)
2016年7月14日付けコンパス紙への投書"Visa On Arrival"から
拝啓、編集部殿。わたしのふたりの甥姪はアメリカ国籍者です。2016年6月26日(日)16時半、ふたりはシンガポールからプカンバルのスタン・シャリフ・カシム空港にジェットスターのフライトで到着しました。イミグレーションカウンターでMさんという担当官の入国審査を受け、ひとりずつ35米ドルの到着時ビザ代金を支払わせられました。ところが、領収書はくれなかったのです。一年前に同じ空港で入国したときは領収書がもらえたというのに。
米国パスポート所持者はいまだに到着時ビザの取得が義務付けられているのでしょうか?2016年3月2日にジョコ・ウィドド大統領が訪問ビザフリーに関する2016年大統領規則第21号を制定したのではなかったのでしょうか?後日に誤解を起こさないよう、この問題について説明をお願いします。[ 西ジャカルタ市在住、リダリニ・アグスティアニ ]


「警察はプンリの巣窟?」(2016年12月09日)
2016年8月5日付けコンパス紙への投書"Pelayanan Samsat"から
拝啓、編集部殿。2016年7月22日にわたしはバンジャルヌガラ県統合サービスセンターで自動車税を納めました。ナンバープレートを更新するため、車両チェック手続で車体番号やエンジン番号がチェックされ、5万ルピアの費用を払わされました。わたしが受取りを求めると、係員はSTNK(自動車番号証明書)に記載されている、と言います。
わたしはすぐにSTNKを調べましたが、そんな項目はどこにもありません。そのことを再度係員に言うと、係員は当惑したようでしばらく考えていましたが、最終的に無言で5万ルピアを返却してきました。
わたしは去るラマダン月にプカロガン県統合サービスセンターで類似のできごとを体験しています。そこでも車両チェック手続きの際に3万2千ルピアが徴収されたのです。わたしの質問に答えて係員は、そのお金は保険に使われるのだと言いました。わたしが証憑を求めると、係員は応じることができず、3万2千ルピアは任意の寄付金だと言い出したのです。
ガンジャル・プラノウォ中部ジャワ州知事とバンジャルヌガラ県令およびバンジャルヌガラ県統合サービスセンター長に要請します。不良職員を粛清して厳しい制裁を与えてください。納税者の皆さんも、十分に用心し、係員にいかなる寄付金も与えることのないようにしましょう。[ プカロガン県ボジョン郡在住、S アナ ]