インドネシアビジネス経済環境情報2004〜05年


「中部ジャワの外資企業がインドネシアから撤退」(2004年5月17日)
中部ジャワ州にあるPMA企業で構成されている中部ジャワ州外資企業協会のルイジ・リベロ会長は、家具や木材加工品分野で操業している会員企業の多くが、原料入手難のためにほかの国に事業を移転させている、と語った。この傾向は、不法伐採と外国への闇販売の横行による木材原料危機が深刻化するにつれて顕著となり、工場の中には原料調達が保証されそうにないとの予測からインドネシアでの操業に見切りをつけ、マレーシア、ベトナムなど他の東南アジア諸国に移転するところが増えていて、過去三ヶ月ではジュパラにあった4工場がインドネシアを去っている。リベロ会長は「その状況は木材原料に関わる業界でのみ起こっていることで、中部ジャワ州の外国資本投資環境が悪い状況になっているというのでは決してなく、たまたま中部ジャワ州に家具業界が集中しているために拡大された印象を与えているにすぎない。いまは治安状況も良好だ。」と述べて一業界の特殊現象であることを強調した。


「米、砂糖の次は鶏卵、不法輸入品の洪水に国内産業への打撃は深刻」(2004年5月19日)
家電品は業界と政府が対策を講じ、インドネシア語取扱説明書と保証書の添付を義務付けるという規制をほどこしたが、監視や違反者の摘発がほとんど行われなくなっていて腰砕け状態。繊維製品は古着衣料が輸入禁止であるにもかかわらず国内市場に大量に出回っており、既に青息吐息の繊維製品産業界にヘビーなボディブローを与えている。さらに米、砂糖は、不法輸入品が国内相場より安い価格で市場に出回り、生産者をどん底に突き落としている。プラウスリブの海域に投棄されたコンテナ162台分3,450トンの密輸入砂糖はほんの一部に過ぎない。国内生産者の国内販売に廉価な不法輸入品をぶつけて市場を奪うだけでなく、家具木材加工業界にとっては原材料にあたる木材を、不法伐採闇輸出を行って入手困難を生じさせ、操業不安を与えているのは数日前のニュースにあった。そこにきて、こんどは鶏卵の不法輸入が問題に上がってきた。
家禽産品市場情報センターのハルトノ理事長は、毎日60トン(推定2百万個)の鶏卵がマレーシアからインドネシアに不法輸入されている、と語る。鶏卵の全国生産は一日6千万個2千8百トンなので、不法輸入品は約2%にあたるが、その鶏卵は自国内市場に品質面あるいは過剰生産で流通させられないためにインドネシアに捨て値で流されているのではないか、と推測されている。通貨危機前の1997年には、国内生産が3千6百万トンに達していたが、今は減っているとはいえ国内で完全自給が達成されており、鶏卵を輸入しなければならない状況ではない。ところが不法輸入鶏卵が国内市場にたいへん廉価で流され、キロ当たりRp.8,300からRp.8,500という相場よりはるかに安いRp.4,000からRp.5,000で売られているため、生産者は不安を感じている。
中古自動車から古着そしてこんどの鶏卵まで、さまざまな不法輸入品が送り出されてくるのは、マレーシア西岸にある、ポートクラン、マラッカ、ムアル、バトゥパハ、ベヌッ、ククッの諸港。一方それを受け入れるインドネシア側は、ドゥマイ、スラッパンジャン、タンジュンバライカリムン、タンジュンバトゥ、ビンタン、バタムの諸港。船は1百から3百トンのものが使われ、一回に持ち込まれるのは8百個から1千6百個で、陸揚げされるとそのままパサルに直行している。一方カリマンタンでは陸路を通り、国境をトラックで越えると、ポンティアナッでそのまま高速フェリーに乗り込み、ジャカルタを目指す。あるいはバンカ・ブリトゥン島に揚げられてから、海路をジャカルタのスンダクラパ港に送られている。


「鶏卵不法輸入イシューは、価格操作を目的にした流通業者の謀略」(2004年5月21日)
1日60トンの不法輸入鶏卵が半値近い価格で国内市場に出回っているとのイシューが広まったとたん、キロ当たり8千ルピア台だった鶏卵価格がRp.7,100からRp.7,300に落ちた。ところがそんな不法輸入の実態などなく、そのイシューは流通業者の価格操作謀略だ、との声が出されている。
全国家禽事業者連盟(GAPPI)前中央指導部事務局長アフマッ・ダワミは、不法輸入の事実は見当たらない、と言う。「そのイシューを語っているサンバスの養鶏業者を問い詰めたが、何の証拠も出されなかった。それどころかかれは、4千万ルピアで買われた当局者がバックについており、われわれに対抗するすべはない、と言う。だからわたしは、そんなことはない。じゃあこっちが1億2千5百万でその当局者を買えば良い、と言ったが、かれはとてもそんな度胸はなかった。だいたい国内生産一日80万トンに対して60トンでは影響を与えようがないが、ところがあのイシューだけで国内市場価格はもう下降している。ともあれ、あのイシューは中味のない空話だとわたしは確信している。」と同事務局長は述べている。


「陶磁器生産者に燃料用ガス供給危機」(2004年5月24日)
国営ガス公社PT Perusahaan Gas Negaraからの燃料用ガス供給が悪化しているために、陶磁器生産者の経営が揺るぎはじめている、と全国陶磁器雑貨産業協会が表明した。ズルフィカル同協会事務局長は、2003年下半期以降今年4月に至るまで、燃料用ガス供給の悪化で生産能力稼動は60%まで低下し、品質は3割減となっており、ボゴール工業団地入居会員企業7工場の試算によれば損失は2,640億ルピアに達するとのこと。同協会会員企業は60社あり、床壁用タイル、セラミック瓦、衛生陶器、テーブルウエアー、食堂設備などの分野で操業している。ガス公社から送られてくるガスの圧力が不安定で、陶磁器産業に必要とされる最低圧を下回ることが多いために、業界では事業の継続に不安を感じ始めている。ボゴール地区では陶磁器製造のほかにもガス公社からの燃料供給を頼みの綱としているセメントや製紙業の工場がある。
国内市場には廉価な中国産陶磁器が大量に入ってきており、国内での燃料用ガス供給の不安定は競争相手の中国側にとってもっけの幸いという状況を生んでいるため、業界の不安は特に強い。同協会は国営ガス公社との契約内容が一方的なために、国内産業界にとって大きな負担を抱える結果となっている、とも言う。「ガス公社はミニマム使用契約を行っているために、ガス使用が少なくても一定料金を払わされる。支払い遅延に対しては、ルピア建てで月3%、米ドル建てで月2%の延滞金利をかけてくる。使用コミットメントより少ない使用料に対してはミニマム料金を徴収するのに、公社側のトラブルで供給がおかしくなっても、補償要求などせずに状況を受け入れるように言われる。これが独占サービスのリスクだ。」とのズルフィカル事務局長の談。
国営ガス公社側は、ガス需要が急激に膨らんだために不満足な現象が起こっている、と説明する。アグス・ディハルジョ広報官は、「石油燃料補助金の削減で、需要家が相対的に安いガスにシフトしてきた。ところが供給増加のためのガス開発にはまだ数年の時間がかかる。グヌンプトリ、チレンシ、チマンギスには17社の陶磁器業界顧客があるが、公社のジャボタベッ地区割り当て供給量一日1.55億標準立方フィートは地区総需要にほど遠い数値になってしまっている。プルタミナやBPなどからの供給追加を検討しているが、施設の建設整備には二年かかる。そのような状況のために、供給増に向けて努力しているものの、今すぐの状況改善というのはむつかしい。契約について言うなら、双方の合意において相互の権利と義務がうたわれているはずだ。もし供給側の問題で使用料がミニマムを下回った場合は支払い料金が下げられることになっている。また一部消費者が契約をたがえたガス量を使用すればガスパイプネットワークが混乱し、ほかの消費者に対するガス圧が影響を受ける。」と説明している。


「6月のガソリン料金は据え置き」(2004年6月1日)
国際市場での原油価格高騰にもかかわらず、インドネシアでは6月の石油燃料消費者価格が据え置かれる。5月31日にプルタミナが定めた6月の石油燃料市場価格は、産業用のC重油が5月のリッターあたりRp. 1,590からRp.1,600に上がったほかは、5月と同じ料金になっている。ちなみに国内消費者向け価格は下の通り。
Premium      ガソリン    1,810ルピア/リッター
Minyak solar  軽油     1,650ルピア/リッター
Minyak diesel  A重油     1,650ルピア/リッター
Minyak bakar  C重油     1,560ルピア/リッター
(PPNとガソリン税を含む)
プルタミナの国内市場価格計算は、MOPS(Mid Oil Plats Singapore)の平均価格とルピア為替レートという変動するふたつの要素をもとに算出される。6月の価格算定は4月16日から5月15日までの期間に取られたデータに基づいてなされているが、その計算によれば、ガソリン6.8%、A重油16.5%、軽油10%、C重油7.1%のアップとなっているものの、ルピア為替レートはその期間14%低下している。
一方6月のリッター当たりバンカー価格は国際航路船舶用軽油価格が10.2%上がってUS$30.20、A重油価格は9.8%上がってUS$29.10、C重油価格が7.0%アップしてUS$19.80となる。この国際バンカー価格は課税されないが、販売対象は外国籍船舶、国際航路を運航するインドネシア籍船舶、ならびにバンカー販売業者に限られる。


「政府が未加工水産品の輸出禁止を検討」(2004年7月23日)
海洋漁業省のフスニ・マンガバラニ漁獲総局長は、国内水産加工業の保護育成のために一部の魚種について、加工なしの輸出を禁止することを検討している、と表明した。どの魚が漁獲されたままの状態での輸出を禁止されるのか、その明細はまだ検討中とのことだが、鮮魚のまま丸ごと輸出される方が冷凍や加工済みより価格が高いというものもあるため、検討には時間をかけなければならないとの談。その典型例はツナで、鮮魚は冷凍ものより価格が5〜6倍になっている。一方かつおはその反対に、加工済みのほうが値段が高い。同総局は近々この法規の草案を完成させて国会の承認を得たい、としている。
ちなみに2003年の水産品全国総輸出量は69万6千トン、金額ベースでは2百万ドルとなっている。


「EU向けインドネシア産ツナ製品にエンバーゴ」(2004年7月30日)
インドネシア産ツナ製品からヒスタミンと重金属が発見されたとして、EU当局はインドネシア政府に対し輸入禁止措置を取る予定であることを通告してきているが、スンペノ・プトロ海洋漁業省制度販売能力向上総局長は政府として、製造から輸入国の港に陸揚げされるまでの間、汚染やその他の国際規定違反にインドネシア産ツナ製品は関わっていないことを保証する旨の説明書を既に送った、と語った。EU市場はツナ製品に輸入割当制を適用しており、クオータ全量2万5千トンのうちタイに1万3千トン、フィリピンに9千トン、インドネシアに2,750トン、アフリカ、カリブ、太平洋の諸国に250トンが割り当てられている。
政府海洋漁業省はEUからの輸入暫定停止措置あるいはその他の厳しい対応は避けられないと見ており、国内のEU向けツナ製造輸出者13社に対して調査ならびに指導措置を取るほか、問題のある工場に対しては輸出許可を取り消す姿勢で臨むとしている。
インドネシアのツナはそれ以前にも日本政府から、インドネシア漁船が漁獲を他国に水揚げし、それが日本へ輸出されているという非合法、非報告、非統制漁業実施問題を指摘されており、日本政府は製品ボイコットを示唆しているが、それに対してインドネシア政府は、外国の密漁船がインドネシア国旗を掲げて漁をするケースが多く、日本政府がインドネシア漁船と言っている船の実態を明らかにするべきだ、と反論している。


「EUの電子決済拒否提案でインドネシアに危機」(2004年8月12日)
IT関連の法令がないために国際電子決済システムへの参加も許されず、反対にサイバー犯罪の多発から国際インターネット社会で厳しい対応を受けているインドネシアだが、期待されている『電子情報と決済に関する法案』は去る4月に編成が終わり、7月に国家官房に提出されているというのに、国会審議にかけるための大統領承認書がいまだに降りないままになっている。8月9日の限定閣議でその議題が予定されたが実施できず、来週再度閣議に諮られることになっている。そんな状況の中で、インドネシアのIT関係者にはきつい言葉がヨーロッパから聞こえてきた。
EUがIT法令を持たない国との電子決済を拒否するよう警告したのがそれ。EUのその表明は国レベルでの決済を対象にしており、プライベートレベルでの決済を目標としているわけではないが、民間がそれに追随するのは大いにありうることで、インドネシア=ヨーロッパ間のEコマースがストップされれば、年間数十億ドルの収入が霧消することになりかねない、と政府筋は危機感を高めている。


「新規契約者からの保証金に頼るPLN」(2004年8月12日)
これまで電力公社PLNから新規に電力供給を受ける契約者はPLNに保証金を預託しなければならなかったが、それを廃止してはどうか、との声に対し同社のスング・アンワル・アリトナン顧客サービス担当重役は、その保証金は同公社の資金繰りに不可欠なものになっており、それを廃止することはできない、と語った。
「それがなくなると、オペレーション資金に問題が起こる。多分必要なのは、保証金の使用目的を透明にすることだろう。名称はいま社内で、顧客保証金から使用料前受け金に変更することを検討している。」との談。この保証金は顧客との売買契約における基本ポリシーであり、顧客からは電力供給開始時に接続工事費と一緒に支払ってもらっている、とのこと。


「女性中小事業主は全体のほぼ半分」(2004年8月20日)
インドネシア女性実業家の会(IWAPI)のスリヤニ・モティッ会長は、中小事業主の中で女性が占める比率は中央統計庁データよりはるかに高い、と語った。
「2003年には、49%が女性なのではないでしょうか。なぜなら、本当は女性が事業を行っているのに、登記上は夫や長男の名前を使っているという例は数知れないのです。」大統領選挙後の女性経済と中小企業の将来と題した討論会の合間に同会長はそう語った。中央統計庁データによれば、2000年の中小事業所3,472万ユニットは2003年には4,329万に増加しており、また雇用者数は7,041万人から7,909万人に増えている。GDPに占める中小企業セクターのシェアも、2000年の54.5%から2003年には56.7%に増加しており、非石油ガス産品輸出統計内でも2000年の754億ルピアが873億に増えている。
国有事業体や銀行界から中小企業への援助ローンを増やすという最近の動きに関連して同会長は、無担保適正クレジットは上限が5百万ルピアに過ぎず、そのような金額では事業運営に大して役に立たない、と語る。「これは社会保全網(Social Safety Net)と同じようなもので、大統領選挙を前にした政治プログラムのひとつでしかありません。国有事業体の利益の一部を銀行界に流し、中小企業の事業活性化のために条件の良いローン資金を用意するというこの企画は、結局銀行界が自分の利益のために運用しており、実際に中小企業に貸し出されているのは微々たるものです。」と同会長は述べている。


「国有電力会社が請求料金情報をSMSで通知」(2004年10月21日)
国有電力会社PT PLNが、I−SMSによる請求料金通知サービスを開始する。同社はこれまで請求書、コールセンター、ウエッブサイトなどを使った契約者への請求料金通知を行っているが、「いくら払えばよいのかが支払い窓口へ行ってはじめてわかる」という顧客からの声がいまだに多く、今回の新サービス導入に踏み切った。
このサービスはテルコムセル、インドサット、モバイル8、テルコムフレクシとの協力で行われ、PLN顧客はI−SMSプログラムから早く正確な情報が得られるようになる、とスング・アンワル・アリトナンPLNカスタマーサービス商業担当取締役は述べている。それら4携帯電話オペレータのカードを使っていれば、このサービスが受けられる、とのこと。


「政府が有名ブランド保護を検討」(2004年12月15日)
2000年以降、商標登録件数は年々増加の一途をたどり、今では年間4万件を超えている。この商標登録審査もかつてはマニュアルで行われていたために、たまに二重登録というミスも起こっていた。エマワティ・ユヌス人権法務省知的財産権総局商標局長は、これまでは何万件とある登録済み商標にダブらないかどうかをマニュアルチェックしていたから、ヒューマンエラーは避けようがなかったが、今では出願登録システムが自動化されてその問題は解消している、と語る。
しかしある品目分類で登録されても、別のカテゴリーに別の人が同じ商標を登録するのは可能だ、と同局長は言う。たとえばヒルトンというホテルがあり、ヒルトンというタバコがあったとしても、現行制度上その両立は可能だ、というのだ。「しかし外国のブランドオーナーはそのような事柄に関して、既に有名になった自分の商標権が侵されたと感じ、その商標名は自分しか使えないものだ、と主張してきます。そんな場合は商業法廷を通して取り消し請求手続きを取ってもらうことになります。ともあれ、政府は有名ブランドのエクスクルーシブな権利を保護する方向で法規を制定する考えであり、政令の形で公布する予定にしています。」という同局長の説明。
しかしWIPO世界知的所有権機関すら「有名ブランド」の定義はしていない。政府は世界に稀なその定義付けを行って、有名ブランドに該当する登録商標名の、他のすべての品目カテゴリーに対する商標オーナー以外からの登録申請を一切排除する方向で法制化を進めている。


「工業団地への新規入居はまだ少ない」(2005年1月7日)
1989年以来工業団地事業許可は、203ヶ所総面積6万7千ヘクタールに対して下ろされているが、今現在操業しているのは64団地2万ヘクタールだけで、しかもおよそ6千の団地入居者が占有している地所はそのうちの4%に過ぎない。そしてインドネシア工業団地会会員団地に入っているテナント5,110社の90%がジャワ島に集中している。
バスロニ・リザル同団地会名誉会長は、現在工業団地で操業している企業の多くはフランチャイズのようなサービス事業やコンサルタントサービス会社で、製造会社が生産ベースを置くという事例が減少している、と語る。団地会では、依然として減らない不法徴収金や労使係争問題といった要因が投資意欲に水をかけている現状で、投資金額や雇用人数が段違いに大きい製造業を工業団地に呼び込むための方策を、団地自身では解決しようのない上のような要因に政府が手を下して援助するようにと要請している。工業団地自身は、地元政府との協力態勢を整えて地元の許認可手続きや産業廃棄物処理対策などできることは進めている。とはいえ、製造業の新規建設がまったく途絶えているというものでもなく、今年は50から100ヘクタールの土地にテナントが入るだろうと予測している。


「津波後のアチェ、醜聞」(2005年1月24日)
需要が高まれば値段が上がるのは経済原則だとはいえ、それを買うことを余儀なくされている人に対して値段をつり上げるのはあこぎな悪徳商法だと評価されるのが世の常。1998年五月暴動の際、ジャカルタから出国しようとする外国人に対して出国フィスカル窓口がいきなり数倍に金額をつり上げた事件は決して珍事ではないことが、今回アチェで立証された。
バンダアチェのスルタンイスカンダルムダ空港は、旅客輸送能力を超える出発希望者でごった返している。この需給アンバランスが航空会社職員の商機として利用されているという情報が流れている。多数の民間航空会社が国内航路に参入して、旅客航空運賃は全国的に前代未聞の低価格レベルに下がっているというのに、国営航空会社アチェ支店はアチェ発ジャカルタ行き片道切符をまったく割引のない公定料金である105万ルピアで販売している。そして予約満席状況の中でキャンセル待ちをしようとして空港に来ている、既に航空券を持っているウエイティングリスト乗客に対してその国営航空会社は、40万ルピアの追加支払いを行えばシートがある、と競りを行っているという証言がいくつか出されている。おかしなことに、予約満席と言っている便の搭乗時間が来て、予約の取れている乗客がゲートに並んでいるその脇で、同航空職員がキャンセル待ち客に対して大声で「105万ルピアの片道切符を買えば、今この便に乗れる」とオファーしているとのこと。
アチェ州議会議員アドナンNSはそんな証言について、アチェ民衆の苦難を搾取のチャンスに変えている悪徳職員を国営航空会社は粛清するべきだ、と主張する。「国営航空はアチェ民衆と深い縁でつながっている。1949年、アチェ民衆が醵出した資金で購入された二機の旅客機が、インドネシア共和国が保有するはじめての飛行機となった。そしてそれがガルーダ航空の原点だったのだ。」と同議員は歴史を解説する。12月26日の大災厄以来、アチェを去ることのできるアチェ人は故郷を離れ、一方他州から続々とアチェ人を援助しようと人々がやってきている、という状況の中で、ガルーダ航空のアチェにおけるオペレーションはジャカルタから送り込まれた職員が行っているそうだ。


「クリスタルジェードの屋号争い」(2005年2月9日)
クリスタルジェードグループの子会社であるシンガポールのタングスウエー・フードビベレッジホールディングが、ジャカルタのクリスタルジェードパレスインターナショナルレストランの所有者PTイスタナプアラムクリスタル社を相手取って、クリスタルジェードの名称とその意匠の使用を差し止める訴えをジャカルタ商業法廷に起している。
クリスタルジェードの名称を使った屋号はPTイスタナ社が先に登録しており、クリスタルジェードパレスインターナショナルレストランは人権法務省知的財産権総局に1997年9月18日付第391124号で、またクリスタルジェードキッチンは2004年2月28日に第560742号で登録されている。それに対してタングスウエー社は第J002004 34003、34348という番号で人権法務省にクリスタルジェードの屋号と意匠登録申請を提出している。
タングスウエー社は商業法廷に対し、PTイスタナ社の登録は公正なビジネス倫理に反したものであり、同社の「クリスタルジェード」名称使用は即刻禁止されなければならない、と訴えており、既に事前審理は終って公判に入っている。PTイスタナ社の法律代理人ベニー・ポント弁護士は、「タングスウエー社の訴えは昨年末に出されており、既に時期が遅すぎる。商標登録の異議申し立ては登録日から5年が限度なのだから。」とコメントしている。


「鉄工所が強制封鎖される」(2005年2月14日)
住宅地区内にある鉄工所を地元住民か封鎖した。南ジャカルタ市トゥベッ地区のスポモ通り37番地には昔、映画館ウィラが開業していたが、その土地建物は転売され、今ではそこが鉄製品を加工する工場にされている。住宅地区の中で鉄工所が稼動していれば、騒音や震動、あるいはペンキを塗るシンナーなどの臭気が近隣に広がり、住民は穏やかな暮らしができないとのことから、西トゥベッRW03RT012の住民がその工場を封鎖するという実力行使の挙に出た。不測の事態に備えて警官が派遣され、その行動の監視に当たった。
十数人の住民は12日、「不法工場はトゥベッから出ていけ」と書いたポスターや垂れ幕を持って工場の前に集まり、建物内にいた工場主と自称するウォンドと従業員らしい男に、建物を封鎖するので敷地内から出ろと迫った。ウォンドは、自分はハッタから工場操業のためにそこを借りているだけで、その土地建物が工場稼動許可を得ているかどうかはハッタに責任を追及するべきことだ、と主張したが、ルスナンダル隣組長は「住宅地内での工場操業は許可されない。ここは産業地区でないため、工場の存在は認められない。」と語って平行線をたどった。CV Steel Safeの看板を掲げたこの鉄工所に対する近隣住民の抗議は昨年8月から開始され、以前から昼夜をわかたず住民の生活をわずらわしてきた機械の騒音や震動、カッターやグラインダーの甲高いうなり、臭気や煙、飛び散る火花への苦情行動に住民は立ち上がった。この工場の不法操業に対しては、住民の陳情もあって町役場からの警告書も発行され、住民とオーナーとの間で話し合いがなされて、ハッタは法規遵守を励行するため工場操業許可手続きを行い、工場稼動は2005年1月16日以降停止して許可が取れるまで再開しないとの覚書を記している。しかしウォンドは、ハッタと住民間のいざこざがあることは知っていたが、問題は解決したと聞かされており、自分が操業を停めるということに合意した覚えはない、と述べている。結局住民は強制的にその鉄工所を封鎖するのに成功した。


「エクストラジョスが商標権侵犯告訴」(2005年2月18日)
栄養ドリンク剤Extra Jossの大ヒットで好成績をあげている製薬会社PT Bintang Toedjoe社が、商標権を犯されているとしてやはり栄養ドリンク剤Enerjosを製造販売しているPT Sayap Mas Utama社を相手取り、商品名変更の訴訟を起した。
同社のアントニウス・プリヨフトモ法務課長は16日都内にあるサンティカホテルで、この訴訟に関する背景と主旨説明のための記者会見を行なった。それによれば、『ジョス』という言葉は同社のイマジネーションとクリエーティビティが誕生させた商品名であり、1992年には既に商品名の登録が行なわれ、2002年に延長手続きもなされている。それを用いたエクストラジョスという商品は1994年から使用実績を有しており、同社はこの商品名の普及を時間と費用をかけて行なってきた結果、国内外で知られるに至っている。商品がエネルギードリンクであることから、スポーツイベントを主体にスポンサー活動にも積極的に取り組んでいて、そのようにして確立してきた『ジョス』という言葉は、たとえスペルが少し違うとはいっても発音も同じで本質的には同じと見ることができるために、PTサヤップ社がエネルジョスという名前で別の商品に勝手に使用するのは商標法上の違法行為である、というのが今回の訴訟の本旨。「商品イメージを損ない、消費者の誤解を誘うようなPTサヤップ社のネーミングは変更していただかねばならない。」と同課長は述べている。ビンタントゥジュ社はサヤップ社に対して話し合いでのアプローチを取ったがサヤップ社が折れないため、15日、中央ジャカルタ商業法廷に告訴状を提出した。しかし同社収益のほぼ半分を占めるエクストラジョスの売上がエネルジョスのためにダウンしているという徴候はなく、一方は缶入りと粉末、他方は瓶入りという形態の違いのために消費者の混乱が避けられているのではないか、とも見られている。


「商標権侵犯告訴が今度はホンダに」(2005年3月17日)
PTアストラホンダモトルを、二輪車生産者と称する事業家チェン・セン・ジアン、グナワン・チャンドラがジャカルタ商業法廷に告訴した。2月16日付の告訴内容について原告側法律代理人アムロース&パートナーのマネージングパートナーであるアマリア・ローセノは、「原告はクリスマ(Krisma)ブランドの二輪車生産者で、製品は国内のいくつかの地域で広く販売されている。アストラホンダモトル社が自社製品に使用しているカリスマ(Karisma)の名称は知的財産権局に登録されている文字様式や配色に一致していないため、原告はその登録商標取り消しを訴え出た。取り消しがなされれば、ホンダは二度とカリスマの商標を使えなくなる。」と説明している。
登録商標に一致しない商標使用について2001年度第15号法令「商標法」の第61条第2項bでは、「登録申請に記された物品・サービスとは異なる種類のものへの使用、登録された商標に一致しないものの使用、が行われた場合は登録済み商標の取り消しが行なえる」と謳われている。ホンダ側は今回の事件を、既に警察に届け出たスプラとカリスマのデザイン盗用事件に関連したものと推測している。ホンダの商標権を犯した側が、ホンダが警察に訴えたことからその交渉材料として打ってきた手が今回の告訴ではないか、というのだ。ホンダ側はこの挑発を受けて立つ構えでおり、それどころかクリスマブランド使用という事実を逆手にとって逆告訴しようという考えも洩らしている。


「2005年1〜2月の投資状況」(2005年3月18日)
投資調整庁は、今年1月2月の外国投資(PMA)実施状況は7.7億ドルにのぼっており、前年の5.4億ドルから43%増加していることを明らかにした。一方国内投資(PMDN)は今年が2.4兆ルピアで、2004年の2.6兆から8%減少している。投資実施は恒久事業認可交付時点でとらえたものであり、今年1月2月に交付された恒久事業認可はPMAが129件、PMDNは37件となっている。PMAの恒久事業認可を地域的に見ればジャカルタが45件4.9億ドル、西ジャワ州1.0億ドル、リアウ島嶼州0.6億ドル。北スマトラ州2千7百万ドル、東カリマンタン州2千7百万ドルといった内訳であり、セクター別を見ると運輸・倉庫・通信が2.6億ドル、その他サービス2.1億ドル、自動車等製造0.4億ドルなどとなっている。PMDNはトップが食品セクターの0.8兆ルピア、次いで繊維0.4兆、金属機械電子0.3兆、運輸機器0.2兆といった明細。
それとは別に投資認可交付状況を見ると、今年1月2月のPMAは213件32億ドル相当で、前年同期の8億ドルから4倍増。PMDNも30件6.7兆ルピア相当で、前年同期実績の3.2兆から2倍増となっている。PMDNが投資場所に選んでいるのはバリ、東カリマンタン、北スラウェシ、リアウ、東ジャワといったところで、セクター別にはサービス業、食品製造、食用植物栽培・農園業など。


「外為市場の荒れは国有事業体のせい」(2005年3月26日)
23日に米連銀が預金金利を2.75%に引き上げる表明を行ったことで世界的なドル高基調となったが、24日のジャカルタ外為市場でもルピアは1ドル9,395ルピアで閉め、前日の1ドル9,356ルピアから軟化した。ところで、今月後半に入って始まったルピアレートの低下は大口の米ドル需要を持つ国有事業体のドル買いが原因だったことから、イ_ア銀行は国有事業体に対し、毎日のドル購入予定をイ_ア銀行に前もって提出するよう要請した。今回米ドル大口調達を起こしたプルタミナとテルコムをはじめ外貨支払いの予定を持っている国有事業体は、イ_ア銀行に対して毎月の一日あたり平均外貨調達予定額を報告しなければならない。イ_ア銀行はそれを見ながら市場でルピアレートが大きく揺れないよう制御していくことになる。オルバ期の外為市場は一日120億ドルが取引されていたが、今では3〜4億ドルというレベルに落ちており、ちょっとした大口需要が出ればレートは敏感に大きく揺れるためだ、とブルハヌディン総裁は強調している。


「オフィスとアパートの販売価格がダウン?!」(2005年4月19日)
イ_ア銀行が行っている商業プロパティサーベイで、ジャボデタベッ地区2月のオフィスとアパート販売価格が前年同月実績からダウンしていることが公表された。イ_ア銀行が242の不動産会社に対して行ったサーベイでは、今年2月のオフィス販売価格は平米あたり平均1,084.7万ルピアで昨年2月から0.7%ダウン、またアパートメントは681.4万ルピアで昨年2月から6.3%の低下となっている。ところが賃貸料金は反対に上昇しており、オフィス賃貸は平米当たり平均11.9万ルピアで一年前から7.4%上昇、またアパートメントも11.8万ルピアで一年前から29%アップしている。イ_ア銀行はその現象に関して、市場における流動資金の限界がそれら不動産の販売価格と賃貸料金のアップダウンに影響を与えているとコメントしている。
一方、インドネシアプロパティ研究センターのパナギアン・シマヌンカリッ専務理事は、より正確な状況把握はこうだ、と反論した。「イ_ア銀行サーベイの対象になっているのは2000年までに建設された物件で、2000年以降に供給されたものの販売価格はもっと価格上昇が大きい。2000年以前のものは既に老朽化しており、競争の中で太刀打ちできないために販売価格に影響が出ている。」との同専務理事の分析。同センターのデータによれば、2005年1月から建設されたオフィスは床面積5万平米、アパートメントは4千ユニットとなっている。


「イ_ア銀行がルピアレート暴落に歯止め」(2005年4月27日)
26日のジャカルタ外為市場は、前日急激に低下したルピアレートを受けて1ドル9,750ルピアで始まり、大きく乱れて一時は9,795ルピアまで落ちたが、通貨当局の諸施策が効を奏して夕方の終値は9,695ルピアまで回復した。
イ_ア銀行が金融界に対して打った手はまずネットオープンポジションを最大30%から最大20%にしぼらせたこと。続いてファインチューンコントラクションを実施して銀行界から1.7兆ルピアの流動資金を引き上げた。更にドル建て国債入金分から10億ドルを市場に放出してルピアの建て直しを図った。市中金融界に対するオープンマーケットオペレーションとして今回実施されたファインチューンコントラクションは、オーバーナイトから最高14日までを期限とする確定利付き債券を発行するものであり、イ_ア銀行は今回償還期限三日で利率3.625%という債券の発行を行った。この競売は26日14時から16時まで実施され、16時30分に結果が公表されて1.7兆ルピアが集められた。期限を三日としたのは、この三日間を押さえ込めば市場は沈静化するだろうとの読みから。この競売に参加が許されたのは自己運用目的に限定した市中銀行とその市中銀行から代理指名を受けた通貨市場業者のみ。
イ_ア銀行は金融界の過剰流動資金状況を克明に把握し、状況に応じて過剰資金の吸い上げを行っている。これ以外にもイ_ア銀行は外貨スワップとフォワード取引の新スキームを準備している。


「ルピアレートは依然軟調気味」(2005年5月3日)
5月2日、イ_ア銀行は再びファインチューンコントラクションを実施し、市場から5,530億ルピアを吸い上げた。ブディ・ムリア通貨運営担当理事の説明では、市場に依然として資金過剰流動性が見られたため、償還期限4日利率5.75%の債券を発行したとのこと。イ_ア銀行預託金のうちミニマム強制預託金以外のものは1.5〜2兆ルピアをノーマルとしており、ノーマル状態を超えている場合は投機行動を抑制するためにイ_ア銀行がそれを吸い上げるというメカニズム。イ_ア銀行債券競売はひと月2回に減少していたが、今月からまたウイークリーに実施されることになる。
それとは別に2日の外為市場では、イ_ア銀行は国営銀行を通してドル売り介入を行い、米ドルレートは昼間一時1ドル9,525ルピアまで下がったが、最終的に9,548ルピアまで戻して2日の商いを終えた。


「補助金支出などもともと存在しない」(2005年5月9日)
3月に行われた石油燃料市場価格値上げの最大の理由とされている補助金削減という大方針について、補助金支出などもともと存在していない、と自説を主張してきたクイッ・キアンギ前国家開発企画庁長官は次のように語っている。
三種類の会計簿記システムをわれわれは知っている。まず単式簿記システム、そして複式簿記システムで、どちらも発生原理が使われている。もうひとつは現金ベースの簿記システムで、政府会計の記帳にはこれが使われており、その金額の現金が国庫に納入されない限りいかなる数字も帳簿に上がってこない。同時に現金での支出がないかぎり、帳簿上の支出はゼロだ。国家予算はキャッシュベースを採用しているが、石油ガス関連の部分だけは違っている。これは奇妙だ。政府予算の歳入部門には毎年石油ガス収入という名称の項目があり、そこの数値はバレル単位のボリュームに国際市場での価格を掛けたものが記入されるが、国庫はその金額を受け取ったことがない。なぜなら政府と国会の合意で国内消費者への販売から得た金額が決められるのだから。そのため、予算に記された国庫に入ったことのない国際相場の金額と国内消費者から得た金額の間で必ず差異が生じる。その差は政府予算支出項目に補助金という名称で記帳される。どうして納められた現金だけを記帳しないのだろうか?
会計システムの中で、現実のコストとは異なる標準コストというものが使われる。その標準コストは常に実際のコストとなるべく近いものとなるように計算される。それは他でもなく、帳簿をできるだけ早く締めて実態にできるだけ即した結果をマネージメントに示すためであり、マネージメントはできるだけ早く実態に即して諸決定を下すことを必要としているからだ。標準コストと実際コストの差異は後になって差額として調整される。ほとんどが現金ベースの政府予算では補正予算というものがあるけれども、石油ガス関連ではまったくその必要がない。石油市場価格は単一であり、収入はそれに従って記帳できるのだ。しかし石油ガス収入はそうではない。石油ガス収入項目を国内消費者からの実際の収入に近づけようという意図はなく、むしろ国際相場にできるだけ近付けようとしている。その両者間の差額はきわめて大きい。
標準コストに規準要素を取り込めば、達成されるべきコストという意味合いの規準コストが生まれる。1バレル50米ドルに1ドル8,600ルピアの為替レートをかけた3,240ルピアをプレミウムガソリンが販売されるべき価格だとし、政府に国民の購買力を斟酌する義務がないものとしよう。現実にはリッターあたり1,810ルピアで売られているため、そこには機会損失が発生するが、現金の損失は何もない。国民に機会損失を示して見せる必要がどこにあるのだろう?インドネシアコラプションウオッチや、政府会計がキャッシュベースでなければならないとする2003年度法令第17号に逆らった会計簿記を行ってまで。だれがそうしろと言っているのか?IMFか、それとも世銀か?どういう意図で?
国際相場価格を基準値とする石油ガスのように、政府歳入は基準値を使わなければならないのであれば、どうして税収もそうしないのか?妥当なタックスレーシオで普通に徴税され、よその国のようにそこそこの汚職レベルで国庫に入る金額を歳入予算にすればよい。現実は大勢が税金を納めず、また大勢が腐敗しているのだから、政府会計支出項目の中に「税金隠し者と徴税掠取者への補助金」項目を作ってバランスを取ることができる。石油ガス部門だけがそのようにしているのは、なぜなのだろう?石炭、黄金、銅、ウラニウムなど他の鉱物資源はどうして石油ガス部門のようなシステムを取らないのか?このきわめて奇妙な現象についての思想基盤を、一般国民にわかりやすいように大蔵省の官僚テクノクラートは説明しなければならない。その説明では、すべてのデータや情報を公開しなければならない。石油天然ガスは国民みんなのものだ。国民が自分の所有物に関するあらゆることがらを知ってはならないとはどういうことか?石油燃料値上げ方針の本当の理由を明示し説明することではじめて国民はその値上げを納得するだろう。


「ハイオクガソリンの消費が激減」(2005年5月25日)
プルタミナのハイオクタンガソリンPertamaxとPertamax Plusの需要が激減している。2004年12月19日にそれまでのリッターあたり2,450ルピアから4,000ルピアに値上がりしたプルタマックスと2,750ルピアから4,200ルピアに値上がりしたプルタマックスプラスは、値上がり前の一日1千キロリットルという消費レベルが6百キロリットルにまで低下してしまった。プルタミナは家庭用プロパンガス価格をやはりキログラムあたり3,000ルピアから4,250ルピアに値上げし、当座の売上はダウンしたが時間の経過とともに盛り返して一日3千5百トンという消費レベルに復帰している。
一方需要がダウンしたままのハイオクタンガソリンは、バレルあたり65ドルという国際原油価格の上昇にあわせて今年また近い将来の値上げが計画されている。昨年50%以上の値上げを行ったそれらのハイオクガソリンは、今年リッターあたり5千から5千5百ルピアまで、25から30%程度の値上げ幅が想定されているが、その値上げを実施してまた消費量を減らすことになるかどうか、深い検討が必要とされている。


「都庁が節電方針を公表」(2005年5月27日)
5月23日から6月6日までムアラカランとタンジュンプリウッの発電所で行われるガスパイプ連結工事でジャワバリ送電系の電力供給量が減少することに鑑み、都庁は夜間のネオンサイン点灯時間の短縮を決めた。ネオン広告塔の点灯は18時から22時までと定められているが、その時間帯を20時から22時までに短縮して電力消費を半減させることを狙っている。
それと同時に都庁のすべての建物やオフィスは、17時になるとエアコンと照明が消される。都内のすべてのショッピングや娯楽施設運営者もぜひ同じようにしてもらいたい、とファウジ・ボウォ副都知事は都民に呼びかけた。さらに都内の街灯で必要でないと判断される場所では消灯がなされ、ナイトスポットや病院はできるだけ発電機で自力供給を行うよう期待されている。
ジャカルタの夜が暗くなることに関連して副都知事は、「状況を利して悪事を行う犯罪者の増加があってはならない。首都警察にも治安強化要請は出してあるが、都民も警戒を高めるように。また負荷ピーク時間帯は17時から22時までなので、都民はその間アイロン、揚水ポンプ、洗濯機やその他の家電品を使わないよう、協力していただきたい。」とも述べている。


「首都のオフィス賃貸料は微増」(2005年5月28日)
2005年第一四半期のオフィス賃貸状況について、家賃が前期から3%上昇していることをジョーンズラングラサールのルシ・ルマンティル取締役が明らかにした。ここ一年間の経済状況好転で大企業の拡張やビジネス統合が活発化しているため、オフィス需要が向上しており、家賃も上向き傾向にある。ジョーンズラングラサールがアジアオーストラリアの14都市で行ったサーベイによれば、ジャカルタの需要の伸びはトップグループに入っているとのこと。
オフィススペース賃貸と同様、小売スペース賃貸も相変わらず根強い伸びを見せており、購買力の伸びている地方の小売業界は好況に入っている。インドネシアは中国に次ぐアジア域内ナンバー2の巨大小売市場であり、おまけにモダンマーケットがトラディショナルマーケットより小さいという現状であるだけに、モダンマーケットの今後の伸びは当面果てしないものになるだろう、と同取締役はコメントしている。


「商標登録審査が厳しくなる」(2005年6月3日)
有名ブランドに関する政令の制定を目前に控えて、人権法務省知的財産権総局はその政令に則った登録審査を近々開始する予定。同総局のエンマワティ・ユヌス商標局長は、欧米や中国・インド・韓国などを近いうちに訪問して比較調査を行い、政令草案の完璧化を図る予定であることを明らかにした。「インドネシアとしてのコンセプトは既に練り上げられているが、もう一度諸外国の状況を調べた上で、国際的にも問題がない、完成されたものに仕上げたい。この対応は早急に行う必要がある。従来からアメリカを中心に国内での商標管理が問題視され、圧力を招いていた事態から脱却しなければならない。この動きは商標権保護を弱めることでなく、有名ブランドの新規登録に際して審査基準を厳重にし、ブランドオーナーの利益を守るのがその趣旨である。」と同局長は説明している。
今後は、他者所有の有名ブランドに類似の部分があれば、商品クラスやカテゴリーが別であっても登録申請は却下されることになる。これまでは、商品クラスやカテゴリーが同じである場合に限って却下され、それが異なっていれば必ず承認されていたが、今後はそれができなくなる。政令が未制定であるいま、同局がそれを実施するに当たって法的根拠とするのは商標法第4条にある「悪意を持った商標登録」条文で、これをたてに申請は却下されることになる。
この政令が制定されれば、国内の中小事業主への影響は避けられない、と同局長は見ている。現実にはこれまで、かれらが有名ブランドを別クラス別カテゴリーで登録していたからだ。そのため同局は、オリジナリティのある商標を登録していくよう、かれらを指導していく計画。国内外からの商標登録件数は増加しており、2003年実績の38,648件は2004年に49,311件になっている。商標というものは単なる生産者を区別するものというレベルを超え、市場競争の中で重要な資産になりつつあることを大勢の国内事業者も理解し始めているからだ、と同局長は分析している。


「職場恋愛は可?不可?」(2005年6月5日)
「不義はお家のご法度」はもう昔語り。違法行為でなければ個人の自由。たとえその恋愛が不倫であっても、それは個人が責任を持つべきことであって、会社がそれに対してどうこう指図するのはおかしい、という意見は増加している。しかし会社にとっては、その通りと言うわけにはいかない。社会がまだまだ封建的価値観を色濃く残しているインドネシアでそれはどうなっているだろうか?
学校を終えて就職する。若い男女が職場で毎日顔を合わせる。そのうちに心と心が触れ合い、恋に落ち、結婚する。そんなケースが起こらない方がおかしい。国有電話会社インドサットはかつてそんなケースが起こった場合、カップルのどちらかひとりは退職しなければならなかったが、今は違う、と同社の人材開発担当副社長は言う。
「ふたりとも会社で働いてもらって構わないが、職場は別にしてもらう。直接上司と部下の関係になっては困るので。そういうオープンなケースはまったく問題ないが、中には人目をしのんで、という関係が生じることもある。その対応として労使協約の中に『倫理に背く行為の禁止』条項が盛られており、社員のそんな行為が明らかになれば、警告書、降格、最悪の場合は解雇といった制裁措置が取られる。倫理に背く行為とは、アフェアを含んでいる。」そう副社長は説明するが、制裁措置のレベルはもちろん、社内でどれほどのショックと影響を与えたかで違ってくる。セクハラは社内に不安をもたらすし、アフェアが起これば本人の家庭が動揺し、本人の業績に悪影響を及ぼさないはずがない。会社内組織での調和の取れた業務運営に障害をもたらす社員の行為を放置しておくことはできない、という会社の論理がそこに明確に表れている。
PT IBM Indonesiaもこの問題に関しては似たような姿勢を取っている。社内に悪影響を及ぼすようなアフェア事件はまだ起こったことがないそうだが、男であれ女であれ社員の家族がそのような問題を会社に訴えてきたときには、その状況が業務の支障になると見られた場合は本人を呼んで注意を与えるようにしているとのこと。しかし問題解決は社員にゆだねるしかなく、会社がそれ以上その問題に干渉することはない。
一方、ホテルニッコーの広報担当者は、オフィスアフェアが起こっても、会社業務に悪影響を及ぼさないかぎり、会社側がそれに口をさしはさむことはしない、と語る。個人のプライベートな問題に属すことがらであるため、たとえその恋愛が不倫の色彩を帯びていたとしても、会社がそこに干渉する権限は持っていない、とかれは説明している。
弁護士たちの職場恋愛に関する意見は、おおむね常識的。セクハラは往々にして一方通行の恋愛で、命令系統を利用して上位者が下位者を威嚇する犯罪行為だが、ボスが部下を恋人にするようなことも起こる。職場の調和を乱し、組織運営に障害をもたらすそれらの行為とは別に、双方向の恋愛も起こる。そんなオフィスラブアフェアは、本人の業務に悪影響をもたらさない限り、それが不倫の恋愛であっても本人の権利だ、と弁護士たちは見ている。軍・警察はちょっと違い、隊内部に規定がある。「妻の階級が夫より上であってはいけない。夫婦が同じ隊(部署)にいてはいけない。」の二つ。民間会社で前者の規定は不似合いだが、後者を内規に持っているところは多いようだ。


「首都のオフィス賃貸価格は値上がり」(2005年6月10日)
イ_ア銀行のサーベイは、2005年第一四半期に首都のアパートとオフィスの販売価格が2%以上上昇したと報告している。オフィススペースの平均販売価格は平米当たり1,146.8万ルピアとなり、2.4%上昇した。特にセントラルビジネスディストリクトと呼ばれているプライマリーエリアは、1,249.9万から1,286.8万へと3%近いアップ率を示したが、セカンダリー地区では平米当たり764万ルピアで変化が見られない。賃貸価格もそれに平行して2.3%上昇しており、前回の平米当たり月98,052ルピアは今回100,319ルピアになっている。プライマリーエリアでは130,660ルピア、セカンダリーエリアは90,795ルピアという内訳。
首都のオフィススペース需給状況については、Plaza ABDA, Wisma Bisnis Indonesia, Menara Bank Megaなどの稼動開始で今年第一四半期の総供給は4,386,225平米となり、1.4%の増加を示した。内訳を見るとプライマリーエリアで0.6%増、セカンダリーエリアで3.4%増となっている。
一方のアパート市場については、今年第一四半期で販売価格は平均2.1%上昇し、前回の平米あたり764.3万ルピアから780.7万ルピアとなった。総供給数は33,130ユニットで、前回から4.3%増えている。この増加のメインはApartemen Pavilion Tower 3とApartemen Royal Tower Riversideを主体とする1,351ユニットの新規供給に負うもの。


「ルピア暴落!」(2005年6月10日)
6月9日のジャカルタ外為市場でルピアは再び1ドル9千6百ルピア台に乗り、グローバル市場でのドル下降傾向とは裏腹にルピア安が進行している。銀行間スポットレートは8日終値が1ドル9,580〜9,585ルピアというレベルだったが、9日夕方には9,620〜9,625ルピアというレベルにダウンした。
イ_ア銀行ブルハヌディン・アブドゥラ総裁はこのルピア安について、「原油価格上昇などのいくつかの要因のためにルピアレートが圧迫され、短期でのインフレ圧の高まりが懸念される。タイトマネーポリシーの維持は不可欠で、イ_ア銀行債金利アップトレンドは強まるだろう。」と述べている。今イ_ア銀行が目指している中期目標は年間インフレ率3%の実現で、これを3〜5年以内に達成しようというもの。
昨日のルピア暴落についてフォレックスクラブのパルディ・クンディ会長は、外銀が大量のドル買いを行ったためだ、と指摘する。今週はじめにグリーンスパン米連銀議長が出したペシミスティックな発言でドルは世界的に下落しているが、外為ディーラーは米国経済の成長を促す新たなパワーをグリーンスパンが言及するだろうとの期待半分に、今はルピアよりも米ドルを買う傾向を見せている、と同会長は述べている。


「曲がり角に立つ産業構造」(2005年6月16日)
1993年の世銀レポートはインドネシアの産業構造に関するいくつかの問題点を論じている。
1.保護的な市場の中で明白なあるいは隠された独占が優勢であり、経済の集中度が高い
2.レントシーキング(利権狙い)ビジネス層優位が、国際マーケット競争のための資金力と生産スケールの中で活用されていない
3.多数のビジネスクライエントを効率よく結びつけるスペシャリスト的企業の少なさが示している産業間連結の弱さ
4.中規模産業セクターが少ないという点で、底の浅いインドネシアの産業構造
5.技術開発推進者として、あるいはその注入者としての国有事業体の非柔軟さ
6.外資企業の多くがいまだに国内市場重視傾向にあり、事業目標はほとんどが保護的マーケットに向けられている

ガジャマダ大学博士課程教官でJurnal Ekonomi & Bisnis編集長でもあるムドラジャッ・クンチョロによれば、それらのポイントとは別に、インドネシアの製造産業は次のような問題を抱えている。
1.原材料・半製品・部品調達が輸入に頼る比率の高さ。1993年から2002年までの統計で全産業平均で28〜30%に達している
2.テクノロジー取り込みや実践の弱さ。国内製造業はいまだに『お針娘』や『組立屋』タイプが多い
3.人材クオリティの低さ。国内労働力の学歴データを見よ
4.大規模工場といっしょになって付加価値連鎖を形成するべき中小企業があまりそのチェーンに連なっていない
5.独占(もしくは寡占)に近い状況で操業するサブセクターの多さが生む不健全な競争環境。これついては二社集中指標が0.5を超えるサブセクターが50%以上に達している事実が証明している

さてグローバル市場におけるインドネシアの産業競争力はどうだろうか?顕示比較優位指数(RCA)を見てみると、過去からあまり変化していないことがわかる。1982年以来のブロードベースインダストリー構想で非石油ガス産品輸出品目の多様化は進んだが、国際市場でシェアを伸ばしたインドネシア原産製造品目の大半はゴム、プラスチック、テキスタイル、皮革、木材、コルクなどの簡易テクノロジー産品で占められていた。ところが1992年以降、インドネシアの競争力は下降を始めた。その主な要因のひとつは、インドネシア輸出産品が非熟練作業者を使った天然資源集約型産品に集中していたことがあげられる。
非石油ガス産品輸出構造は、インプットファクターインテンシティに基づけば、下の5つに分化している。
a.天然資源集約
b.非熟練作業者集約
c.現物資本集約
d.人的資本集約
e.テクノロジー集約
1993年から95年まで、インドネシアの輸出は低下したが、その間上昇を見せたのは家電、化学、通信機器等の非家電機器、コンピュータとその部品などで、それらのいずれもが輸入コンテンツは比較的低い。
このコンテキストでの国際市場競争を論じるなら、公正な競争を妨げている歪はなくさなければならず、不効率産業保護や『檻の中のチャンピオン』は撤廃が難しいにせよ、ウエートを低めて行かなければならない。ハイコスト経済を生む法規、徴収金、保護などは廃止し、世界市場での輸出産品競争力を高めるための制度、インフラストラクチャー、スーパーストラクチャーを整備することだ。民衆経済基盤としての中小企業と協同組合の振興はきわめて戦略的なステップであり、政治レトリックに堕すことなくフォローアップが続けられなければならない。健全な競争力を国内産業界に持たせるために、寡占的で集中的な産業構造は変えられなければならない。そうでないために国内産業構造は底が浅く、外からの衝撃で動揺しやすく、テクノロジーの包含度が低く、資本財と外国からのインプットへの依存度が高く、業際間の結びつきが弱いという状況が作り出されていたのだから。
政府の産業政策が経済成長促進のために大中規模産業をサポートする傾向にあったことは歴史が示している。
オルバ期の開発5カ年計画でスハルトは;
1.輸入商品の国内生産化で外貨を蓄える産業
2.大規模に国内で原材料の処理を行う産業
3.労働集約産業
4.政治と戦略目的の国有事業体
への育成にポイントを置いた。国は製造産業において、投資家、オーナー、レギュレーター、資金準備者の役割を兼ね備えたが、発展途上国でそんなスタイルは目新しい話ではない。ところがネオリベラル層の目からは、利権屋の影がつきまとい、国家開発と輸出強化という面から妥当性に欠けるとの論が投じられている。大型国有事業体は別人がより生産的に活用できる資源を浪費しており、基幹産業やサポーティングサービス産業は資源の不足を来たし、込み入った許認可と規制システムは国家目的でもあるかのように作られ、小企業育成プログラム・下請けプログラムは20年以上もかけて微々たる効率改善と均等化という結果しかもたらさなかった。メガワティ政権では商工相が、政府の政策を遂行するに当たって反動的アプローチを取った。現内閣に求められているのは、国内外の環境変化により対応できる洞察的、積極的な産業政策だ。インドネシアの産業政策はこれまでスペースレス的性格を持っていた。つまりその産業セクターの地理的位置はほとんど無視されていたということであり、クラスターベースの産業開発という視点がこれからの産業政策の鍵を握るものなのである。


「カリスマ商標裁判でホンダが敗訴」(2005年6月23日)
ホンダが二輪車の商標として取得しているKarismaが登録されたデザイン通りに使用されていないので、登録されている商標を取り消せとの訴えを起こしていたチェンセンジアン、グナワン・チャンドラ側の言い分を認める判決をジャカルタ商業法廷が下した。判事団が20日下した判決では、人権法務省知的財産権総局商標局に登録されているKarismaのデザインとPTアストラホンダモトル(AHM)が商品に使っているデザインは一致していないことが立証されたとして、原告側の言い分を100%認め、ホンダ側が出した「原告側はそのデザインに利害を持っていない」との異議申し立てを却下した。
今回の裁判は、それ以前にKrismaという商標を用いた二輪車生産者であるグナワン・チャンドラとAHMとの間で展開されていた係争の延長線上のもの。Krismaブランドの二輪車は国内のいくつかの地区で販売されている。登録商標取り消しの訴えは当事者間で争われるのが一般的であり、第三者が取り消しを求めた今回の裁判はまったく異例のものだと法曹オブザーバーはコメントしている。


「法的確定不在」(2005年6月27日)
本サイトの最新ニュース、6月22日付け「国内航空会社に燃料調達の危機」と題する記事の中に見られる、従来PPN課税対象外とされていたジェット航空機燃料国内販売へのPPN課税を5年前までさかのぼって実施するよう大蔵大臣が命令したことも、過去に既に終えてしまった事業決算の確定性が覆されてしまう法的確定不在の一例だ。
それとは多少性格が異なるとはいえ、債権の抵当に取った株式の売却を南ジャカルタ国家法廷の承認を得て行ったドイチェバンクがまるで知らない間に、債務者側のベケットPte.Ltdがジャカルタ高等裁判所にその判決の差し止めを求め、高裁はその言い分を認めて南ジャカルタ国家法廷の判決無効を決定するということが起こっている。裁判所の決定にもとづいて行った処理が、それから三年もたって突然根拠を失ってしまうという現象は、法的確定の不在を示す明白なサンプルだ。
1997年10月、ドイチェバンクAGはPTアスミンコバラウタマに対し1億ドルの貸し付けを行うことを了承した。
翌11月、両者は株式抵当契約を結ぶ。抵当に入ったのは、PTアダロインドネシアの全株式の40%。その際、ベケット社とPTスワバラマイニング&エナジーが保証人となり、アスミンコのデフォルトに対する保証を行っている。アスミンコの99.9%シェアはスワバラマイニングが所有しており、またスワバラの74%シェアはシンガポールのベケットが所有している。
1998年8月、債務返済期限が来たがアスミンコは返済を行わない。
1999年10月、ドイチェバンクはアスミンコに書面で返済をリマインド。
2000年5月、両者は2001年6月まで返済期限の延長を合意。しかし期限になっても返済は実現しない。
2001年12月、南ジャカルタ国家法廷は、抵当に入っているPTアダロインドネシア内アスミンコ所有株式の処分、抵当になっているPTインドネシアバルクターミナル内アスミンコ所有株式の処分、抵当になっているベケットとスワバラの株式処分、抵当に入っているアスミンコ内スワバラ所有株式の処分を決定。
2002年2月、ドイチェバンクは抵当処分として、アダロの総株式の40%であるアスミンコのシェアを4,420万ドルで、またPTインドネシアバルクターミナル内アスミンコ株を100万ドルでPTディヤニラスティヤムクティに売却。スワバラ内のベケット所有株式74%をPTムルヘンディセントサアバディに80万ドルで売却。
2005年2月、ベケット社法律代理人の訴えにより、ジャカルタ高裁が南ジャカルタ国家法廷の決定をすべて取り消す判決を下す。
2005年3月、ドイチェバンクはジャカルタ高裁の判決に対する不服申し立てを最高裁に提出。
ジャカルタ高裁の判決は、そのケースは債権者債務者が争う係争であり、任意裁判ではないので、損害を受けたと認める側が相手を告訴する形で公判が争われるべきものである、との考えにもとづいており、そのために国家法廷が下したすべての判決は法的に無効である、としている。
PTアダロは南カリマンタン州で石炭採掘を行っており、年間2千万トンを生産し、埋蔵量は20億トンあると言われている。アダロのオーナーシップに関連して今回の係争に発展してきている可能性は大いに感じられるが、裁判機構が係争者の間で自己の利益のために利用されている現状では、インドネシアの法的確定が地に付くのはまだ先が長いように思われる。


「前内閣期に87製造企業が事業閉鎖」(2005年6月30日)
アンドン・ニティミハルジャ工業相が29日の国会第6委員会で、2000年から2004年までの5年間に87社の製造企業が操業を止めたのは、廉価輸入品の市場流通、ハイコスト経済、労働者の低クオリティが生産品の競争力を低下させたためだ、と報告した。主に中国から輸入される激安価格の商品が国内市場をひどく歪めており、それらの商品は公正に輸入通関のなされていない不法輸入品が大部分を占めている。
生産事業を撤退したその87社とは、履物関連が29社で6万1千人を解雇し、繊維・繊維製品は47社で解雇者3万8百人、家電品11社解雇者1千3百人などといった明細になっている。最近話題になった三菱自動車のタンジュンプリウッ工場閉鎖については、国内の事業状況云々というよりもグローバル市場戦略をコントロールしている外国のプリンシパルが決断したことがらである、と工業相はコメントしている。
同相はまた、最近インドネシアに生産拠点を復活させようとして投資の動きを示している履物や家電メーカーがあり、数年前に撤退したのは過去のことであって今回新規に投資認可を得ようとしているがもう撤退はしないと宣言している、と物語っている。
不法輸入中国産品への対応措置として工業相は、輸入を監督する政府機関と協力して密輸入を抑制することとは別に、いくつかの非関税障壁を活用して国内市場から密輸品を排除する方針であることを説明した。その中には履物の船積地における船積前検査実施、さらにセーフガード適用措置、繊維と繊維製品に対しては、これも船積前検査実施や国内で販売される製品に対する品質ラベル添付義務付け、家電品はインドネシア語取説と保証書添付の励行ならびにインドネシア品質基準(SNI)適用拡大などを予定しているとのこと。


「イ_ア産業の性格を分析する」(2005年7月1〜4日)
イ_アの経済成長を支えているのは生産セクターでなく消費セクターだ。その結果は、いつまでたっても投資拡大や民間セクターの動きが鈍いこと。ナイーブなことに、成長を続ける消費セクターは高度な輸入依存。そのため、ファーイースタンエコノミックリビューが選出したアジアの200ベストカンパニー中にノミネートされたインドネシアの10トップ企業は、自動車、即席麺、携帯電話、マルチメディアなどの消費型産業だ。工業界は産業構造の深い根をはることもなく、高い輸入依存度に頼っている。
インドネシアで得られる高い付加価値は、徴税セクターを別にすれば安い賃金で労働者が雇用できるチャンスの外には存在しない。そんな状況はもう何十年も続いている。その間、自動車産業が、即席麺産業が、電気通信産業や家電産業が継続的に裾野を拡大していくための刺激を与えられただろうか?その答えは現状の中に示されている通りだ。マーケッタブルなマスの人材開発も行われなかった。信頼できる技術開発やリサーチ機関もなく、国内外で売り込める強力なナショナルブランドも存在しない。唯一得をしているのは、国税、税関、サービス、そして労働集約セクターのマス労働力だけ。
誘導的になったためしのない投資環境下で国内事業家から生まれてくるのは近道スピリットばかり。安全を求め、工場は建てるが産業を興すことはしない。それも当然、工場を建てるのは、産業を興すよりはるかに簡便で安上がりだから。産業を興すのは、経済的なものにせよ信用にせよ、大きな資本を必要とする。計画的に専門家を雇い、テクノロジーやリサーチ機関を持ち、広範なネットワークを打ち立て、コミットメントを保持し、高い貢献度を保持しなければならない。産業を興すのにインスタントの道はない。
それゆえに、工場を建てるというだけであれば、その生産的活動期間は両手の指で数えられるくらいのものにしかならない。生き残っている工場もいくつかはあるが、その工場機能はインドネシアあるいはアセアン市場での利益を求めるプリンシパルの手先としてのものでしかない。数百の工場がずっこけた例は中国製二輪車工場が雨後のたけのこのように出現した時期に見ることができる。日本製二輪車が圧倒的に優勢な国内マーケットに、廉価二輪車が侵入できる隙間を埋めようとして実に多くの工場が現れた。そして何が起こったか?わずか三年の間に、それらのすべてが沈没していった。自然な市場競争の中で消えて行ったのだ。あれほどさまざまなマスメディアを賑わしていた中国製二輪車の広告はぷっつりと絶え、もはやそれらのブランド名を見聞きすることはめったにない。インドネシアが受け入れなければならない現実がそれだ。産業を興したいという希望をインドネシアの経済人は持っているが、何を興してどう発展させていけばいいのか、明確な方向性に欠けている。バティック産業がある、ハンディクラフト産業がある、部品産業がある。しかしすべてがそんなふうに動いている。特許を持ち、狭い市場の中でせめぎあう。あるいはたいていが利権屋で巨利を求める外国バイヤーの手先になるだけ。
グローバル市場に入って行けたとしても、インドネシアができるのは原材料供給だけ。原材料に大きい付加価値を付けた製品を作り出す能力はない。マレーシア、タイ、ベトナム・・グローバル市場の新期参入プレーヤーの伸びは瞠目するべきものがある。一方、インドネシア市場に前から進出している日本やヨーロッパの企業は停滞している。かれらはインドネシアで国内マーケットをエンジョイしているだけで、事業拡張、サポート産業設立、あるいは新ブランドの創設などを要求されたことがない。かれらはマレーシア、タイ、ベトナム、中国、インドなどにリロケして、そこで生産した商品をインドネシア市場に送り込んでくる。理論的には、巨大市場インドネシアにリロケしてくるはずなのに。豊かな天然資源、豊富な労働力は生産活動への大きいサポート要因となるのだから。ところが現実は正反対で、今ある企業の中に、国外へリロケしようという会社がある。
どうしてそうなるのだろうか?答えを探すのは難しくない。そうなるのは健全な事業環境が存在していないためだ。非誘導的な投資環境、劣悪なパブリックサービス、法的確定の不在、コストと生産性の不調和・・・。誘導的ビジネス環境を規定する第一の要因は、労働力と生産性、地域経済、物理インフラ、政治社会状況そして行政機関。ところが、2001年からはじまった地方自治がインドネシアの投資環境を悪化させているといずれの調査も声をそろえている。公共サービスの低劣さ、法的確定の不在、ビジネスを抑圧する地方条例などは、そこにあるのが非誘導的ビジネス環境だということを証明している。ため息の出る公共サービスは特に許認可や行政手続きでの費用の不確定性と時間の長さのせい。そしてそんな不満に、企業が担当官や高官あるいはやくざ者に払わなければならない合法不法の諸徴収金が追い討ちをかけてくる。インドネシアに投資してビジネスを行うのが不安な事業家の言い分は、マクロ経済の不確定、政府政策の不確定、中央地方行政府の汚職、複雑な事業許認可、労働関連の諸規制などをその理由にあげている。
原材料を探し、インプットからアウトプットを出すプロセスの間、企業が支払わなければならない不法徴収金、奉納金、エクストラ費用などといった円滑金と呼ばれるものもそのひとつ。事業投資家がインドネシアを避けるのも当然なら、製造会社が製品を原材料の形で輸出市場に流すのも当然だ。面倒がなく、利益も大きい。籐加工や木材、金属、カカオ、水産物や果実製缶業、基礎化学品などの産業は原材料が不足しており、その一方で行われている原材料輸出のおかげで他の競争相手国は力をつけ、国内産業は崩壊に向かっている。チョコレート産業では、原材料のカカオは輸出市場に向けられる。国内売買にはPPNが課税され、輸出は非課税だから。海老も木材も籐も、みんな同じだ。おかげで日本やタイの海老加工産業はインドネシアよりも格段の進歩を遂げている。インドネシアで産した原材料なのに、実に奇妙なことだ。
パーム原油産業の状況も似たりよったり。マレーシアの同じ産業と比べるとまるで昼と夜。インドネシアではたくさんの省がこの産業の世話をしているが、マレーシアではただひとつの省がAからZまでを指導監督する。商業省が輸出ドライブを計画したら、他の省は輸出税のアップを図ろうとした。インドネシアの輸出税はトンあたり4.8米ドルで、マレーシアの3.95米ドルより既に高いというのに。もっと奇妙なのはこれだ。政府はパーム油生産を高めようとする一方でパーム椰子農園面積を制限した。ある県では県庁が地元収入アップをはかるために椰子の実に課金をかけた。
他県がかけている課金はせいぜいその10分の1以下なのに。外国投資を呼び込みたい一方、投資意欲に水をかける政策も行われている。土地の農園事業利用権は35年しか与えられておらず、しかも住民の反対から守られる保証もない。マレーシアは99年間でしかも保証されている。そのため、インドネシアで事業のために所有している農園で、『本来の地主』たちに現実の農園面積の三倍もの補償金を支払わされた事業主が出たという話は、決して法螺話ではない。こんなビジネスに参入しようというのは、ハイリスクテーカーしかいないだろう。パーム椰子が油を産出してくれるのは植えてから三年以降なのだから。
インフラの話をまだしていない。農園インフラは悲惨そのものだ。道路の名前はかっこよくトランスカリマンタンだのトランススマトラなどと付けられているが、道路はいたるところに水牛が水浴びできるほどの穴があいている。農園へのアクセス路は、農園事業者が造ることになっているのだ。


「首都にもガソリン欠乏がやってきた」(2005年7月4日)
「石油燃料供給調整は大都市を最後にする。」とのプルタミナの表明にもかかわらず、2日の夜から3日の日曜日にかけて、都内随所でガソリンスタンドに長蛇の列ができたり、あるいは売り切れ表示をして店を閉めているところが見られた。欠乏が出たのはプレミウムガソリンで、ハイオクタンのプルタマックスや軽油の供給は問題がない。長蛇の列が見られたのは、ラワマグン、パルメラ、スナヤン、クバヨランバルなど一部の地区にあるガソリンスタンド。
プルタミナは今年のプレミウムガソリン消費量が急激に増加しており、このままでは2005年度の1千5百万キロリットルという割り当て量を30%も上回るおそれがあるため、配給抑制を実施している、と説明している。プルタミナ社内では営業部門に対して毎週末10%の供給カットを要請しているが、ジャカルタで実現しているのは5%程度とのこと。
このプレミウムガソリン供給削減で、一部の週末ドライバーはプルタマックスやプルタマックスプラスに燃料油種の変更を強いられることになりそう。


「石油燃料供給制限は全国方針」(2005年7月5日)
プルタミナがガソリン供給抑制方針を実施していることを、プルノモ・ユスギアントロ鉱エネ相が明らかにした。鉱エネ相は過去5ヶ月の消費量が、政府の定めた2005年の割当量からすでに10%程度超過している事実をあげ、当初予定されていた5,960万キロリッターの石油燃料クオータは年末着地が6千3百万キロリッターになる可能性が高いことから、プルタミナは石油燃料消費を抑制するために週末の供給量を制限する方針をはじめたと説明した。地区によって超過状況は異なっているものの5から10%という範囲の中にあり、ジャカルタは10.8%に達している由。
プルタミナの開始した抑制策では、ジャカルタ、スラバヤ、パレンパン等の都市部で先週末から5%の供給削減がスタートしている。一方、一部地方ではそのような政策とは無関係に燃料供給が減少しており、ガソリンスタンドに長蛇の列ができ、あるいはガソリン切れの立て札を出して閉店しているところも見られた。この供給減について鉱エネ相は、リアウ州ドゥマイの精油所が数日前から故障しているため、供給量が減っていると説明している。
年間割当量は政府予算内の石油燃料補助金項目と関連しており、割当量を超えれば補助金がつかないため、プルタミナは高いコストをそのまま抱えることになる。原油生産国でありながら国内石油エネルギーのかなりの部分を輸入に頼り、原油国際価格の高騰が招いた自国通貨のレート危機を綱渡りし、四輪二輪自動車販売台数の激増と、やはり石油燃料を消費している発電といったエネルギー消費面での統合的国内政策がまだ不十分な実態を、石油燃料備蓄が標準の21日から17日にまで落ち込んでいる現状をふまえて、これからどうやりくりしていくのかが政府の重要な課題になっている。


「ビジネスセンター兼用カフェ」(2005年7月7日)
カフェスタイルのビジネスセンターが都内中央ジャカルタのメガクニガンで営業している。その名もPlanet Bizcafeと命名されているこのカフェは、仲間や恋人と溜まっておしゃべりに時を忘れる場所とはひとあじ違う。ここにはミーティングルーム、ボードルーム、プライベートルームまでそろえられており、ミーティングルームは最大150人まで収容可能。
利用料金は1時間35万ルピアで、インターネット、会議用文房具、スクリーン、ホワイトボード、AV設備などが無料利用できる。そしてカフェ兼レストランとして、飲み物や食事のオーダーもばっちりというところ。これからビジネスを開始しようという方、契約を結ぼうという方、商談に華麗な雰囲気を求める方など、さまざまな顧客が既に利用しており、一日の利用者は1千2百人前後だとの同店の話。Taman Kantor A9, Jakarta Pusatを住所とするこの店は午前9時から夜22時までが営業時間。


「ISO認定証が取り消される」(2005年7月7日)
ISO認定者に指定されているPTスコフィンドが、ISO14001:2004認証に関連して、今年三社の認定を取り消し、また検定中の12社に対する認定証交付を保留していることを明らかにした。6ヶ月に一度行われる検証で問題が発見されたのがその理由。
認定を取り消された三社は、二社が製造業、一社がサービス業だが、かれらはすでにコミットしているISOマネージメントシステムに違反しており、さらに住民からの訴えも出されているためにその措置を受けている。
スコフィンド国際認定サービス担当副社長は、認定を受けてもその後で環境問題を忘れるようではその資格がない、と同社の姿勢を説明している。環境保全に関連してスコフィンドは政府に対し、ISO14001:2004取得を全産業界に義務付けるよう提案しており、特に鉱業セクター関連企業への条件は厳しくする必要がある、と付け加えている。
現在ISO14001:2004の認定証を受けているのは製造業とサービス業の49社だけであり、また279社が申請中となっている。


「都庁が節電計画」(2005年7月9日)
石油燃料危機、電力危機という複合危機に見舞われている状況下に、都庁は節電の努力を強めるとスティヨソ都知事が表明した。先にユスフ・カラ副大統領が全行政機構に対し、役所内の冷房は25℃とし、スーツ着用は避けるようにとの指導を出しているが、スティヨソ都知事はそれに加えて照明の節約も必要であり、役所だけでなくビルやモール、さらには一般家庭にまで推進する必要があると述べた。また都内公共施設では、街路照明だけでなくHI前ロータリーやモナスの噴水、モナスのライティングなども節電の対象とするよう、検討を要請した。4階建て以上のビルについてはリフトの運転を4階からに限り、1階から4階までのフロアは階段を使うこと、出勤時退勤時以外の時間帯でリフトの運転は一部だけにし、他はスイッチを切って使用を制限すること、ショッピングセンターやモールでは閉店1時間前にエアコンやエスカレータの運転を止めることなどのアイデアも出されており、実施のための検討に入っている。


「省エネに関する大統領命令」(2005年7月11日)
7月10日付で省エネに関する大統領指令第10号が発布された。この指令が下された対象者は、団結インドネシア内閣全閣僚、最高検察庁長官、省外政府機関長官、国軍総司令官、国警長官、国家機関事務局管理者、知事、県令、市長で、全国の政府機関と国有・地方自治体所有事業体に省エネ対策を実施することを指示した。その詳細として、照明、空調、事務機器や建物内設備など政府機関が管理運営する場におけるエネルギー節減、ならびに官公庁公用車の利用効率を高めることがあげられている。
一方、州知事・県令・市長に対しては、行政機構内での省エネに加えて、地元の民間社会における省エネ推進の指導と振興が指示されており、6ヶ月毎に地方行政機構は指導推進と進行状況をモニターして鉱エネ相に報告するようになっている。その中に、地元で消費される石油燃料の節減が含まれているのは言うまでもない。


「168の商標が取り消される」(2005年7月11日)
Polo, Dunhill, Davidof, Drakkar, Cherokee, Camel, Samsung, Hitachi, Ferari, Crocodile, Popeye, Testoni, Benettonなどの商標登録を、人権法務省知的財産権総局が取り消した。取り消された登録は、海外のそれらオリジナル商標所有者ではない者が、オリジナルブランド対象カテゴリー以外のカテゴリーに対して登録したもので、同総局は裁判所の判決をもとにして取り消しを行っている。
過日、登録された商標と異なる意匠を登録者が使用しているとして、さるオートバイメーカーの登録機種名に関連して係争が行われたが、商標登録管理については、既に社会的に認知された商標と同じものあるいは類似のものの登録はオリジナル商標保有者でなければできず、自分が登録した商標と異なる意匠等を使ってはならず、また三年間連続して商業利用されない場合も取り消し対象となる。同総局商標局のデータでは、2002年の登録件数は30,004件だったが、2003年には36,340件に増え、2004年は49,311件と激増している。一方商標に関する係争事件は、2002年が29件、2003年44件、2004年は31件となっている。


「ジャボタベッの工場新設は停滞気味」(2005年7月12日)
イ_ア銀が公表したコマーシャルプロパティサーベイによれば、ジャボタベッ地区の工場用地入居状況は今年2月以来5月まで変化していない。そのデータでは、入居率は87.8%となっている。工場用地の平均借地料については、5月が平米あたり24,386ルピアで、前月から0.4%の低下を示している。特にジャカルタに関しては、入居状況は88.6%で安定しており、借地料は平米あたり25,553ルピアで0.5%前月からダウンした。一方、ボゴール、タングラン、ブカシ地区は入居率87.6%でこれも変化なく、借地料は平米平均22,483ルピアで0.2%の低下。
年間で見れば、前年同月実績は20,618ルピアだったことから、18.3%の値上がりを示しており、また入居状況も前年の84.7%から今年は3.1%の上昇となっている。


「輸入禁止の中国産エビがインドネシアを通ってEU市場へ」(2005年7月18日)
中国産エビをインドネシア産と偽ってEUに輸出していたインドネシアの輸出業者7社がOLAF(EU反不正行為事務局)に摘発された。EUは中国産のエビから人体に有害なクロラムフェニコールを発見したため、食肉、はちみつ、エビ類などの輸入を2002年1月に禁止している。ところがインドネシアの輸出業者がその間に入って中国産のエビをインドネシアに輸入し、それをインドネシア産として原産地証明書を取得し、EUに輸出するということを行なっていた事実をOLAFが2003年と2004年の貿易実績から突き止めた。その調査の仕上げとしてOLAFは6月29日から7月13日まで、違反行為を行なっていたと見られるエビ輸出業者への訪問調査をインドネシアの各地で行い、事実を究明することに成功した。EU側が違反者と断定した7社のうち5社はその事実を認めているが、他の2社はその容疑を否定している。
インドネシアは先進諸国からGSP(特恵関税制度)適用恩典を与えられており、エビの場合だとEU輸入関税率は一般税率が12%に対しGSP適用税率では3.5%になるため、この恩典を利用できればEU域内での市場価格がたいへん有利になる。
しかしGSPが適用されるためには、インドネシアのローカルコンテンツが定められた割合を満たしていなければならず、それを満たしていれば商業省地方事務所に申請して原産地証明書フォームAを発行してもらい、その書類で輸入者が輸入通関時に恩典適用を申請できる仕組みになっている。中国産エビを用いた場合、インドネシアのローカルコンテンツがフォームA発行条件を満たせるようにするのはまず不可能に近く、輸出者は商業省への発行申請に虚偽データを使うことでそれを手に入れていた。
OLAFが摘発した7社は2003年から2004年までの間に1万2千トン、6千5百万ドル相当をEU域内に輸出している。この違反事件でインドネシア政府は窮地に立たされており、商業省は原産地証明書発行手続きをより注意深く行なうよう各地方事務所に指示するとともに、今回の問題に対する認識を徹底させるよう指導を強める方針であると表明した。一方EUに対しては、違反を行なった輸出者をEUは当然排除するだろうが、全国185のエビ輸出者全部を排除することのないようにと要請している。ディア・マウリダ商業省外国通商総局長は「政府は虚偽行為を行なった7社の処罰を行なう予定はなく、警告と統制を行なうことにしている。かれらはEUの輸入者から既に非難を浴びているから。」と述べている。


「インドネシアのエビ不正輸出追究が今度はアメリカから」(2005年7月21日)
EU反不正行為事務局によるインドネシアのエビ輸出業者摘発に続いて今度はアメリカが、やはりインドネシアからのエビ輸入に関する不正行為の調査を行なう。このアメリカ側の不正調査は、EUのフォームA虚偽作成とは異なり、アメリカ政府が反ダンピング申し立てを適用しているタイ、ベトナム、インド、中国、エクアドル、ブラジルなどの産するエビをインドネシアのエビ輸出業者がアメリカへ輸出しているという疑惑に関わるもの。それらの適用対象国はアメリカへの直接輸出に際して輸出保証金を積まなければならず、この手続きはそれらの国からインドネシアへ、またインドネシアのエビ輸出者がアメリカへ輸出する場合は不要となる。
このインドネシア原産と偽った迂回輸出に関与しているインドネシア輸出業者として合衆国税関は4社のデータを持参し、7月19日から23日まで、それらの輸出者を訪問調査して白黒をつける予定にしており、中部ジャワ州の1社、東部ジャワ州の3社がその間調査を受けることになる。商業省外国通商総局長はアメリカの今回の疑惑調査に関しても、EUへの要請と同じ調子で、違反行為を行なった輸出業者への措置はおまかせするが、他のインドネシアのエビ輸出業者への制裁措置は取らないようにお願いしたい、と提言している。
アメリカの今年第一四半期の輸入元国はインドネシアが中国を抜いて二位に躍進しており、トップは依然としてタイ。インドネシアからアメリカへのエビ輸出は、1999年の1万6千トンから2004年は4万7千トンにまで伸びており、2005年は5万トンに達するだろうと見込まれている。


「ピーク時間帯の電力使用は割高になる」(2005年7月22日)
国有電力会社PLNがエネルギー節減のために時間別電力使用料金システムを検討している。17時から22時までの電力ピーク時間帯に、電力使用契約者が平均使用量よりたくさん電力を消費した場合、ピーク時間帯の料金を割高にしようというアイデアで、その詳細についてはいま検討中。ベースになるのは2004年に定められた電力基本使用料でその二倍までPLNは料金を引き上げることができ、通常時間帯は1倍、ピーク時間帯は1.4倍といった決め方になる。PLNが供給している電力は45.8%が製造産業向けで、一般家庭向けは33%、オフィスやサービス業が15%という割合。一方電力生産コストは石炭を使うとkWh当たり137から180ルピア、天然ガスだと211から250ルピアだが、石油燃料を使うと5百ルピアを超える。PLNはこれまでピーク時間帯の需要に合わせて供給を増やしており、その増加分は石油燃料を用いて発電してきた。
去る6月に行なわれたムアラカランとタンジュンプリウッの発電所におけるガスパイプ連結工事で、期間中の発電量が低下するため都内に巡回停電が起こるとして都民に節電が呼びかけられ、その期間は結局停電が発生しないまま乗り越えることができた。それ以来PLNによれば、電力消費は下降フェーズに入ったらしく、ピーク時間帯の消費量は従来から100〜500MW程度減少している。PLNによれば、ピーク時間帯に700MWを4時間にわたって節減できれば、軽油消費が1千万キロリッター節減でき、それは220億ルピアの経費節約に相当するとのこと。
ところで、PLN西ジャワバンテン給電事務所は、大口電力消費者であるクラカタウスチールとインドセメントからピーク時間帯電力消費節減の協力を得て、電力消費は大幅に減少していると公表した。既に産業界に対する電力使用時間帯の非ピーク時への移行が要請されているが、その二社はピーク時間帯から平常時間帯に電力消費を移した。その結果クラカタウスチール社は通常の200MWから大きい低下を示し、またインドセメントも通常の40MWから10MWへとダウンしている。


「バタムに7月政策パッケージ」(2005年7月25日)
政府は7月21日付で、バタム・ビンタン・カリムン三島地区における事業投資の促進を目的に、保税手続きに関連するファシリティを強化する政策パッケージを制定した。このパッケージは大蔵大臣令第60/PMK.04/2005号(保税集積場に関するもの)、大蔵大臣令第61/PMK.04/2005号(通関と税制の取り扱いに関するもの)、商業大臣令第14/M-DAG/PER/7/2005号(数種輸入物品規定に関するもの)から成っており、エディ・アブドゥラフマン税関総局長はその三大臣令を「フリートレードゾーンの魂にあたるもの」と表現している。この政策パッケージによって、バタム・ビンタン・カリムン三島にある保税地区は国内の他の場所にある保税地区よりも緩和された規定を享受できることになる。その詳細は下の通り。
?.許認可関連
1.KB(保税地区)は蔵相の承認、GB(保税倉庫)・TBB(免税店)・ETP(保税展示場)は税関総局長の承認だが、三島地区では地元税関サービス事務所長が承認する。
2.TPB(保税集積場)設立許可変更承認、DPIL(内国企業)からの下請け作業許可、ホワイトリスト認定は税関総局長承認だが、三島地区は地元税関サービス事務所長が承認する。
3.TPBの入出荷ゲートの追加は税関総局長の承認だが、三島地区では入出荷ゲート追加に承認不要。
4.TPB間あるいはTPBとDPIL間の物品貸出しは税関総局長承認だが、バタムでは承認不要。
?.手続き関連
1.LDPからTPBへの物品移送は税関が封印するが、三島地区では封印が行なわれない。
2.単一税関サービス事務所管内TPB間物品移送は税関が封印するが、三島地区では封印が行なわれない。
3.TPBからDPILへの出荷には通関書類が使われるが、三島地区ではTPBから地区内DPILへの出荷には、関税その他輸入税が賦課される物品に対するケースを除いて、通関書類が使われない。
4.TPBでの入出荷は通関書類BC2.3号が用いられ、TPBからDPILへの出荷だけはBC2.0号が使われるが、三島地区ではLDPからTPBへの物品移送は専用BC2.3、TPBからの物品移出は専用BC2.5が使われる。それらの専用書式は記載内容が簡素化されたもの。
5.KB生産品をDPILに出荷するには輸出実績が先になければならず、自立的に機能する物品は輸出実績価額の50%まで、更に加工が必要な物品は輸出実績価額の100%まで出荷できる。三島地区では先に輸出実績がなくともよく、また輸出実績価額との関連は問われない。(全生産品をDPILに出荷してもよい。)
6.輸入からTPBでの加工そして製品出荷までを税関が監督するが、三島地区ではTPBの移入移出に関連して港湾エリアでのみ税関が監督する。
7.原材料使用状況や半製品と完成品に関する四半期報告を税関サービス事務所に提出することが義務付けられているが、三島地区でその義務付けはない。
8.TPBには税関職員が駐在して監督を行なうが、三島地区では監督が行なわれない。
?.税制・通関ファシリティ関連
1.TPBのサービス授受はPPNが課税されるが、三島地区ではサービス授受にPPNは課税されない。
2.輸入関税計算は原材料の関税に基づくが、三島地区では原材料あるいは製品の関税率の小さい方に基づく。
3.KB内工場からDPILへの出荷は関税その他輸入税が賦課されるが、三島地区では地区内DPILへの出荷は、自動車、タバコ製品、アルコール飲料、家電品(現行規定による)の四品目を除いて、課税は行なわれない。
4.KB内工場からDPILへの下請け作業、貸出し、修理を目的にした出荷は保証金提出が義務付けられているが、三島地区では地区内DPILへの出荷に対する保証金は不要。
?.通商ファシリティ
1.中古資本財輸入(工場移転を含む)には商業省の承認とサーベイヤによる稼動検査証明書が必要だが、三島地区では商業省の承認と稼動検査証明書は不要。
2.TPBからDPILへの中古資本財移出は商業省の承認が必要だが、三島地区では地元商業局の承認があればよい。
また非保税ではあっても、ビンタン島とカリムン島の開発プロジェクトを行なう会社には、物品輸入にあたって関税免除が与えられる。大蔵大臣令第61/PMK.04/2005号(通関と税制の取り扱いに関するもの)の施行は今年10月1日からとなっており、税関総局はあと二ヶ月ほどでその開始を目指す準備を完了させなければならない。


「環境保全対策評価ランキングが公表される」(2005年8月9日)
企業ランク評価プログラム、略称Properは、生活環境担当国務省が製造企業の環境保全対策を審査し評価するプログラム。与えられる評価は5つに色分けされており、ゴールドはきわめて満足できる成果を出している企業に与えられ、グリーンは基準をクリヤーしており、ブルーはミニマム基準値にすれすれ合格で、レッドは活動あれど成果なし、そして最悪のブラック評価は何ら意味あることをしていない、というもの。
ラフマッ・ウィトゥラル大臣は8日、2004年1月から2005年5月までの同プログラム結果を報道機関に公表した。審査された466社の中で、グリーンは23社、ブルーが221社、レッド150社、ブラック72社という内訳。その72社のうち特に悪質と見られる14社に対して同省は、今後改善への誠意が見られない場合は法的措置を取る、と警告した。悪質ブラックランクとしてマークされた14社の名前も下のように公表されている。
会社名 / 所在地 / セクター
PT Torganda / リアウ州 / パームオイル
PT Perdana inti Sawit / リアウ州 / パームオイル
PT Aspex Kumbong / 西ジャワ州 / 製紙
PT Indonesia Asahi Kasei / 西ジャワ州 / テキスタイル
PT Papertech Indonesia / 西ジャワ州 / 製紙
PT Naintex / 西ジャワ州 / テキスタイル
PT Kertas Bekasi Teguh / 西ジャワ州 / 製紙パルプ
PT Inti General Yaja Steel / 西ジャワ州 / 精錬
PT Batamtex / 中部ジャワ州 / テキスタイル
PT Damatex / 中部ジャワ州 / テキスタイル
PT Kertas Blabag / 中部ジャワ州 / 製紙
PT Surabaya Mekabox / 東ジャワ州 / 製紙
PT Jatim Taman Steel mfg / 東ジャワ州 / 精錬
PT Hanil Jaya Metal / 東ジャワ州 / 精錬


「ISPM#15」(2005年8月10日)
シュクル・イワントロ農業省検疫庁長官が、今年9月16日からアメリカがISPM#15をすべての輸入貨物に適用する、と公表した。木箱や木製パレットあるいは木製ダンネージなどに対する消毒処理を義務付けるこのISPM#15適用措置によって、インドネシアの多くの輸出者に影響が出るものと見られている。同長官によれば、フミゲーション処理をしていない木製梱包材が使われた場合、アメリカの監督機関はその梱包材を外して廃却するか、もしくは積出国に送り返す措置を取ることになっている由。
ISPM#15に関して、その消毒処理業者として既に20の梱包材業者が登録申請を検疫庁に提出している。検疫庁が認定すればそれらの業者は、梱包材に国際植物保護条約のシンボルマークと特定コードの描かれた消毒済みスタンプを押すことができるようになる。この業者認定は一年ごとに行われる厳しい審査をクリヤーするのが条件になっている。ただし消毒方法が、EUは臭化メチル燻蒸を禁止しているがアメリカは禁止していないというように、国別のバラエティがあり、輸出業界に混乱を招くことが懸念されている。
一方、インドネシア政府自身もこのISPM#15を輸入貨物に適用する計画であり、実施は2006年になる。検疫庁は来年の適用実施に備えて社会告知を進めていく予定にしている。
ところでその消毒プロセスに関連してインドネシア害虫コントロール事業者会(Ipphami)役員のひとりは、グローバルなISPM適用に対応するためにはインドネシアで行われているフミゲーションのクオリティを高める必要があり、コストアップにつながるのは確実だ、とコメントした。「40フッターコンテナへのコンテナフミゲーション料金は、1コンテナあたり80万から100万ルピアだったものが、140万から160万に上がる。もうひとつの問題は臭化メチル燻蒸に使われるメチルブロマイドの輸入割当で、年間250トンでは不足が生じることになる。すくなくともその2倍は必要だ。」と同役員は述べている。この割当問題は生活環境担当国務省、殺虫剤委員会、商業省の管掌下にあり、同国務省と殺虫剤委員会からの要請で商業省が国際監視機構に割当変更を申請するというプロセスになる。
陶器製品製造者であるPT KIAは月間コンテナ3百台分を輸出しているが、梱包材消毒は臭化メチル燻蒸よりも熱処理の方が安上がりだ、と同社社長は表明している。20ftコンテナを燻蒸すると1台あたり15万ルピアになるが、熱処理方式だと10万ルピアを切るとのこと。
工業省化学農林産総局長は、この木材消毒に関わる規制はグローバルなものであり、インドネシアだけに課されたものではないので、この規制の対象となる業者はコストアップを呑まなければならないが、世界中が同じ条件なので、市場競争における条件は変わらない、と語った。この問題に関して政府が業界を擁護できるポイントはないが、業界への広報周知徹底をはかっていく、との談。


「誘導的投資環境を目指して商業省が見直し」(2005年8月11日)
77種の事業関連許認可に対する整合性と簡素化を目指して、商業省が見直しチームを編成した。新規投資、特に外国からの投資を誘致するにあたってのクラシックなハードルは許認可、税制、通関、労働の四つであり、それらのポイントは互いにからみあって中央政府から地元県担当局レベルにまでつながっている。同チームは、商業事業許可書(SIUP)、会社登録証(TDP)、環境保全許可から輸出に際しての原産地証明書にいたる多種多様な手続きを統合的に再検討する予定。
一方、チーム7という名称で知られる法規検証チームは、事業許認可に関連する州条例や州知事令が国法と矛盾したりダブっているものをいくつか発見しており、そのフォローアップが期待されている。たとえば中央政府の定めたTDPとは別に地元行政機関が会社登録証明作成を義務付けているものがあり、そこで徴収される課金の法的位置付けが不明瞭になっている。会社登録は単なる届出であり、許認可プロセスを伴うものではない、と同チームは述べている。


「ナイキが中国からインドネシアに工場移転」(2005年8月16日)
履物メーカーの世界的ブランドであるナイキが中国からインドネシアに工場を移す計画をしている、とマリ・パゲストゥ商業相が語った。15日ジャカルタで開かれた「インドネシア独立60年の経済」に関する討論会で同相は、強いプレッシャーから逃れるために、ナイキは今中国にある工場を移転させる計画をしている、と述べた。
移転先はインドネシアとベトナムが選択肢に選ばれているが、インドネシアの方がサポート産業がベトナムより優れているので、ナイキ経営者はリロケ先をインドネシアに決定する方に傾いている、との談。ところがインドネシア側に問題がないわけでもない、と商業相は続ける。ナイキはリロケ先を履物産業のセンターであるタングランもしくはスラバヤのどちらにするか検討したが、全体としてはタングランに傾いているものの、タングランとタンジュンプリウッ港を結ぶ道路インフラの損壊が激しいことが難点になっている。ナイキ側はインドネシア政府にその道路インフラ改善を要請しており、政府としてもわずか15キロの道路改善ができないでみすみす大規模産業誘致に失敗するのも残念な話だ、とのこと。同相は、インドネシアの経済発展に外国からの投資はきわめて重要であり、その投資誘致には誘導的投資環境が作られなければならず、道路インフラ整備はその中でも屈指の重要性を持っている、と関係諸方面に呼びかけた。


「SMSでの交換レート情報サービス」(2005年8月18日)
ビジネスインドネシア紙が、外貨交換レートのリアルタイム情報サービスを始めた。
これは電話番号3033にSMSを送ると、その時点の最新レートを知らせてもらえるというサービス。このサービスの対象通貨は下の10種類。
US Dollar (USD), Australia Dollar (AUD), Hongkong Dollar (HKD), Singapore Dollar (SGD), Euro (EUR), Sterling Pound (GBP), Malaysia Ringgit (MYR), Indonesia Rupia (IDR), Japanese Yen (JPY), Chinese Yuan (CNY)
1.外貨のルピアレートを知りたい場合は、下のようにSMSをタイプして3033に発信する。
  Bisnis
  ワンスペースあけて
  ルピアレートを知りたい外貨の三文字コード(たとえばユーロならEUR)
  例 : Bisnis EUR
2.外貨同士の間の交換レートを知りたい場合は、下のようにSMSをタイプして3033に発信する。
  Bisnis
  ワンスペースあけて
  対象外貨の三文字コード(たとえば米ドルならUSD)
  ワンスペースあけて
  換算目標外貨の三文字コード(たとえば日本円ならJPY)
  例 : Bisnis USD JPY
3.毎日自動受信を希望する場合は、下のようにSMSをタイプして3033に発信する。
  Bisnis
  ワンスペースあけて
  Reg
  ワンスペースあけて
  対象外貨の三文字コード(たとえば米ドルならUSD)
  ワンスペースあけて
  換算目標外貨の三文字コード(たとえば日本円ならJPY)
  ワンスペースあけて
  名前(たとえばKoizumi)
  例 : Bisnis Reg USD JPY Koizumi
  この登録を行えば、毎朝問い合わせをかけなくとも、一日一回午前10時にそのときの交換レートが受信できる。
4.自動受信を解除したい場合は、下のようにSMSをタイプして3033に発信する。
  Bisnis
  ワンスペースあけて
  Unreg
  ワンスペースあけて
  登録した名前
  例 : Bisnis Unreg Koizumi
このサービスはすべてのGSMオペレータとテルコムフレクシを通してアクセスが可能。なおSMS一件あたりの料金は2千ルピアとなっている。


「産業用エネルギー価格政策は失業増のもと」(2005年8月26日)
中部ジャワ州ボヨラリで操業しているPTハンイルインドネシア社が、政府の産業向けエネルギー料金値上げを撤回しなければ、同社は事業を閉鎖せざるを得ず、今雇用している2千人の従業員が職を失うことになる、と政府の政策に苦言を呈した。
韓国資本の同社は製品の9割を輸出し、残りは国内市場に供給している。パク・チャンジュン社長は同社製品のマージンについて、キロ当たり0.1〜0.2米ドルしかないのに、軽油がこれまでのリッター当たり2,200ルピアから一気に5,480ルピアに2.5倍もアップしたため、その影響で0.19米ドルもコストが上がり、国際市場での競争力はなくなってしまった、と語った。いきなり2.5倍も石油燃料価格が上がるのは、製造業界に大きい負担をもたらすもので、事業継続に障害が出れば失業者が増えて社会問題につながることは明白ではないか、と同社長は憤懣を洩らす。韓国は1960年から国が経済開発を推進し、労働集約的製造セクターの競争力をつけることを目標に、諸政策を実施した。政府は産業発展のための資金不足を国外から借り入れて補うことまでした。産業界向けには石油燃料をより低い価格で供給して、競争力向上をサポートした。そんなやり方のおかげで韓国の製造業界は発展したのだが、インドネシア政府はまるでそれと正反対のことをしている。インドネシア政府のこのような政策が続けられるなら、紡績繊維業界はさらに大きい危機に直面し、ばたばたと閉鎖することになるだろう。こんな状況の国に外国から新規投資が入ってくるとも思えない。同社長はそう述べている。


「製造業は砂上の楼閣」(2005年8月30・31日)
腐朽。インドネシアの製造業を一言で言えば、きっとそれがもっともぴったり来る言葉だろう。クライシス前には、アジアの虎候補生、アジアの彗星、新興市場、新工業国家群の雄などという誉め言葉を聞かされたものだが、われらが誇るインダストリーは歴史の流れの中で芯が腐り落ちた棒切れとなり、脆弱で、方向性がますます曖昧になってきている。航空機、船舶、重工業などの資本集約的ハイテク産業は、ほとんどすべてがクライシスの到来で地に落ちた。これまで花形だった家具、繊維・繊維製品、履物などの労働集約産業とゴム、パーム油、合板など天然資源ベースの産業は、競争力を失い、競合する隣国に太刀打ちできなくなりつつある。
独立60周年を迎えたインドネシアの製造産業の歴史を振り返って見ることにしよう。ことの始まりは、1970年前後の第一次石油ブームに端を発する。オルデバル期の最初の10年、インドネシアの製造産業はお寒いばかりの状況だった。東アジアから南アジアにかけての域内14カ国の中で、インドネシアはミャンマーに次いで第二位の後進国だった。非石油ガス産品製造業はGDPに9%の貢献しかしておらず、製造業の付加価値はひとりあたりわずか10米ドルしかなかった。その時代の製造産業は生まれたばかりの赤児であり、そのほとんどが農産品の加工をメインにしていた。重工業については、インドや中国からかなり引き離されていたと言える。
国連工業開発機関UNIDOは、独立から経済危機までの間のインドネシア工業化の流れを三つのフェーズに区分している。安定革新期(1965〜1975)、石油収入に頼る工業化期(1975〜1981)、輸出牽引型工業化期(1982〜1997)がそれだ。インドネシアの工業化はその第二フェーズに、輸入品代替産業に主眼を置いた国内指向政策をベースにスタートした。当時オイルボナンザによる爆発的収入のおかげで政府は、鉄鋼、天然ガス、精油、アルミなど鉱業や重工業を中心に、国内産業への融資、保護、補助を積極的に展開した。その期間、製造業セクターは年平均8%の成長率を達成した。そのあとやってきた石油価格暴落で、政府は石油収入への依存比率を下げるために、輸出指向産業育成政策へと舵取りを修正する。1983年4月の28%ルピア切り下げとともに政府は輸出振興政策パッケージを打ち出した。低利の輸出クレジット、投資規制緩和、金融界規制緩和、借入限度廃止、特定セクターへの融資割当優遇制度、国税関税管理システム再構築、製造輸出者に対する特別関税率などといったもので、この政策をさらに押し上げるために1986年の30%ルピア切り下げや毎年5%程度のルピアレート逓減なども実施された。
1985年の日米間プラザ合意は、インドネシアの工業化プロセスに重要な影響を及ぼした。日本の家電品や自動車業界が国外生産へと動き始め、東アジア周辺から東南アジアまで徐々にその波をかぶることになる。それにならって韓国、香港、シンガポールから衣料品や履物など労働集約産業が国外へと移り始めた。急激な投資の増加は国内資本の投資を誘い、1985年から1988年までは平均増加率年13%だった投資高は1989年からの5年間、平均20%に跳ね上がった。製造セクターはGDPの回復に優れた働きを示し、12%未満のシェアは1986年から1994年の間30%にまで拡大し、百億ドルだったボリュームは280億ドルと三倍近い上昇を示した。成長の牽引力が大規模資本集約産業だった80年代の前半にくらべて、86年以降の成長が労働集約産業に負っているのは大きい違いだと言えよう。顕著な構造
変化も同時に起こった。80年代中盤から輸出指向は大幅に強まり、製造産業の輸出成長率は平均30%、アウトプットの中の輸出比率も20%近くに倍増した。86年以降の製造セクター成長に輸出は40%以上の貢献をし、85年までの期間の貢献度13%とは隔絶したものとなった。非石油ガス全体の輸出成長の中で製造セクターはその四分の三を担っており、製造セクターの輸出が非石油ガス産品の輸出に占めるシェアは38%から63%に、また総輸出の中でのシェアも12%から50%へとアップした。
上で述べたような、目を見張る成果をあげたとはいえ、インドネシアの産業開発は不能率であり、それがハイコスト経済を招いている。あまりにも急速で計画性に欠けた産業開発は、底の浅い産業構造ときわめて狭い多様化を生む結果となった。クライシス前までの輸出増の80%近くは天然資源基盤産品に由来している。つまり、木材、ベースメタル、繊維・衣料・履物などの集約産業といった低労働賃金に頼るものだったのだ。この分野でもインドネシアは、より低い生産コストを謳う中国、インド、ベトナムなどの競争相手に打ち負かされようとしている。産業アウトプットと雇用も、多数のミクロスケール企業と少数の大企業の両極に集中していて、中小企業の役割も域内諸国に比べて劣っており、特にNIEsの中小企業が果たしている役割と比較すれば、お粗末な限りなのである。ミクロとコングロマリットが重点をなしている一方、強い中小企業が出てこない産業構造には空洞化が起こる。
インドネシアの工業化パターンは、同じレベルにあるほかの諸国に比べてたいへん異なっている。インドネシアのローテクノロジー産業の規模は、1985年から1998年までの期間で、特に労働集約産業の急速な伸びと食品・紙・木材など天然資源基盤産業の拡大のために44%から48%に増大し、その一方で、ゴム・プラスチック・セメント・ベースメタル・簡易メタル加工などミドルテクノロジー産業の貢献度は38%から34%へと低下した。これはインドネシアだけにしか見られない現象だ。
輸出に対するローテクノロジー産品の貢献度は向上し、プラスチック材料、ゴム製品、肥料、紙パルプ、鉄鋼など資本集約産品は下降した。インドネシアのハイテク産業は他の発展途上国の中で最低であり、フィリピンやインドの半分しかない。クライシス以来ハイテク産業は没落の一途をたどっている。
雇用面でも製造業の没落は明白だ。クライシス前の1990年から1995年までの期間、総雇用の半分を製造産業が創出していたが、クライシス後にはそれが極度に縮小した。2000年から2003年までの間に、製造産業雇用者は9.8%下がって109万人になった。履物産業は労働問題や地域別最低賃金の高騰の結果閉鎖や外国移転が多発し、雇用者数は6割減となった。
UNIDOアドバイザーによれば、インドネシアの産業競争力は1997年クライシスの三四年前から既に低下が始まっていたと言う。90年代初期の年間30%近い成長のあと、輸出売上は激減して7%までダウンした。インドネシアの産業が直面することになる困難の兆候は、そのころから現れ始めていた。1993年から1997年まで、インドネシアの四大優良輸出品だった合板・繊維・衣料・履物の輸出は停滞した。ルピアレートの暴落も国際市場におけるインドネシア非石油ガス産品の競争力を改善することができなかった。クライシスの前後でインドネシアの競争力を失わせしめたファクターがいくつかある。まず、同じものをより低コストで作ることのできる競争者が出現したこと。同一市場での同一商品の競合は激しさを増し、インドネシア主要輸出品の価格は低下を続けた。次に、輸入原料や部品への依存度の高さゆえに、インドネシアの生産者たちは市場競争に勝つための生産コスト圧縮を行うことができなかった。製造業界の総輸入の半分は資本財である。製造産業の総付加価値に対する資本財産業の貢献度はわずか2%しかない。ブラジル、中国、インドは1997年でそれが8〜9%もあった。総じてミクロな産業規模も製造産業の付加価値の低さに影響を与えている。製造産業の能力を高めるための生産設備のほとんどが輸入品なのだ。三つ目、量の小さい製品への巨大な依存度。総体的にインドネシアの製造産業はローテクノロジーセグメントにしがみついたままで、他の発展途上国に比べてその時々のテクノロジーステータスの改善が見られない。1997年のクライシス後、国内投資、外国投資は雲散霧消した。クライシス後の産業政策は方向を見失い、政府と産業界の関心は借入れと企業の再編ならびに投資家の信頼回復に集中した。とはいえ今日に至るも、投資再誘致はまだそれほど成功したとは言えない。
インドネシアは東アジアの競争相手から大きく取り残され、優良30輸出商品のマーケットシェアは中国、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムに奪われ、1998年の生産はマイナス7%成長となり、1999年も2%にしかならなかった。
ここ数年、経済の中での製造セクターのシェア低下は、インドネシアに非工業化現象が起こっているという懸念を経済専門家層にあおっている。全製造業に対する労働集約産業のシェアは1995年の17%から2000年には13%まで落ちている。ここ数年の輸出の成長も、アジアの他の諸国に比べて低く、世界の通商成長と比較してすらインドネシアの方が低い。
それだけではなく、インドネシアの生産能力が日増しに低下していることを示す兆候もある。中でもそれは、インドネシアのハイテク産業が生み出す付加価値の重要な要素に対して家電品組立てが大きく貢献しているという事実に反映されている。組立て家電製品は、ローカル部品が総部品の10%を切っているありさまであり、そしてここにも地元のデザインつまりローカルエンジニアリングはほとんど見当たらない。こうしてこれまで産業と呼ばれてきたものが、実態は単なる部品組み立て工場(しかもその大部分は輸入品)でしかなかったことが露呈される。
最近のデータは輸出が増加していることを示しており、それどころか2004年9月には史上最高の70億ドル台に乗ったという実績が話題を呼んだ。そしてその後何ヶ月も、60億ドル台の実績が続いている。しかしその華麗な成功も、持続性が疑われている。中央統計庁の記録の取り方が変更されたことでそんな華やかなデータが現前しているということ以外にも、それら一部商品の輸出増が、他の多くの優良輸出品の没落をカバーする段階にはまだ至っていないことも確かなのである。


「石油政策の基礎」(2005年8月31日)
石油燃料市場小売価格は上がった。今期待されているのは、その値上がり新価格ができるかぎり長期間維持され、実業界が新価格をベースにした計算と計画にもとづいて事業活動を継続できること。2009年まで値上げがない、という政府の保証が得られれば、実にありがたいものだが、さて、それは可能だろうか?
わたしを含めて大勢のひとが何度も尋ねている。石油産出国であるインドネシアの大衆消費者向け価格と石油国際価格との間にどんな関係があるのだろうか、と。国内石油燃料価格が国際相場で編成される価格とまったく同じでなければならないという視点を政府がいつまでも変えないなら、原油国際相場が値上がりを続けている中で、国内石油燃料価格がもうアップしないなどとは誰にも言えない。将来の政策に対する規準を持つために、基本的なことがらについて再考するのは悪くない。

原油はゼロバリューではない。
まず、国際価格で示さないなら、インドネシアの原油のバリューはゼロだという見方を訂正する必要がある。プレミウムガソリンが1リッター1,810ルピアだったとき、原油は1リッター1,270ルピアと評価されていた。つまり、リフティング、精製、輸送のコストとして540ルピアを売値から引いた残りの1,270ルピアが原油価格となる。1リッター2,400ルピアの売値になったら、原油価格は1リッター1,860ルピアだ。ゼロではない!

どの市場メカニズムか?
インドネシアで行われている経済システムが共産主義経済システムでないなら、すべての物品は市場メカニズムの中で価格が決まる、と人は言う。つまり価格とは、需要曲線と供給曲線の交点だというのだ。需要曲線も供給曲線も、全員が販売を望み、全員が購買を望むのが前提で、購買者の点の塊から中線が引かれるとそれが需要曲線だ。
供給曲線も同じ。問題はその需要曲線と供給曲線の交点を求めるために、どの場所で重ね合わせるかだ。ニューヨーク。そこでインドネシアの原油は売られているだろうか?インドネシアの原油は国民の需要をまかなうことにさえ不足しているので、そこにはない。世界の石油総生産のうちどれだけがニューヨークで売買されているだろうか?わずか30%。残り70%は巨大石油会社が上から下まで独占している。
市場形態がたくさんあることをわれわれは知っている。完全競争、独占的競争、寡占、二者独占、独占。ニューヨークの市場形態は完全競争に近い。インドネシアの石油市場形態は言うまでもなく独占。そして独占はプルタミナに与えられ、政府が価格を決めている。政府が決める価格は、独占私企業で常識のできるだけ高いというものでなく、購買力のきわめて低い貧困層がマジョリティである国民にも手が届くように、その反対のできる限り低いものになっている。
つまり政府の独占は最大限の利益を得るために使われているのでなく、憲法第33条の精神通り、社会的機能遂行に使われている。だから供給曲線は、利益最大化行為でないため教科書のようなカーブを描かない。だったら政府の経済チームはどうして独占私企業のような振る舞いをするのだろうか?そして国民のものである石油価格決定の中で、社会機能を忘れてしまうのだろうか?インドネシア産石油ガスに対して働いているのは市場メカニズムの見えない手ではなく、利益、イデオロギー、政治パワーの見えない手なのではあるまいか?
より大きい収入が国民にとってよりよい目的のために使用できることをわたしは理解している。しかし、政府が国民を教育や保健面で優遇するために石油で締め付けてもよい、といった優先順をいったい誰が決めたのか?だから、国民大多数が抗議する政策で、政府は公平を広げようとしている。

公平
あまりにも安いガソリンは金持ちだけに得をさせていると人は言うが、それは正しくない。プレミウムガソリンをもっともたくさん消費しているのは、オートバイ、バジャイ、ミクロレッ、貨物運送ピックアップやトラック、アンコッ、オジェッその他まだいろいろある貧困層あるいは経済的余裕のない階層の乗り物だ。金持ちはプルタマックスやプルタマックスプラスを使っている。公正、明白、具体的で図星を射た政策を望むなら、特定排気量を超えるセダン車やトレンディMPVに可能な限り高い課税をすることだ。なのにどうしてつぎはぎだらけのことをするのか?国民を締め付け、補償と呼ばれるものをその薬として与え続けている。
飢えるほど腹を干上げられた者に安い教育と医療サービスが与えられる。極度に貧しく飢えている者にとって教育は、それが長期的にどれほど重要なものであろうとも、アブストラクトだ。極度に貧しい者は、より良い教育を与えても、長期的にその中途で飢え死にする。廉価な医療サービスも与えられるだろうが、その前にどうして生活必需品の値上がりによって食うに困るような、不健康な状況にしてしまうのか?

『補助金』という言葉の意味
原則的にニューヨークの市場メカニズムに従わねばならないため、インドネシア政府が定めた価格とニユーヨーク市場での価格の差を補助金と呼ぶ。これは当惑を招く。ガソリン価格はとても低く定められているが、原油価格はゼロを意味していない。現行プレミウムガソリン価格1リッター2,400ルピアに対し、原油は1,860ルピアと評価される。政府は自動的に、インドネシアの土地から自分で掘り出したガソリン1リッターに対して1,860ルピアの利潤を得ている。だから『補助金』とは出費ではないのだ。
ところが慣習的には、『補助金』という語は出費があるのが普通であり、意識するしないに関係なく政府は補助金が出費であると信じてしまう。これは大変奇妙で当惑させる表現である。
最新の政府表明に見られる「ガソリン値上げをしなければ、政府は60兆ルピア前後の損失を蒙るが、もし値上げができれば、貧困層に対して17.9兆ルピアの補償を与えることができる。」という文章を解析してみよう。プレミウムガソリン価格は1リッター1,810ルピアから2,400ルピアに上がった。この値上げで政府は、貧困層への補償として分配される17.9兆ルピア以上の余剰資金を得たのだろうか?わたしは補助金が出費と同義だという理解をしている多くの人に尋ねた。かれらが言うには、2,400ルピアでも政府はまだ赤字だそうだ。ただし、その赤字は60兆ルピアという大きなものではない。たとえばその赤字が60兆から20兆になったとしよう。それでもまだ20兆ルピアの赤字だというのに、貧困層に17.9兆もの補償を出そうとしている。国会議員の一部がトータル的で正確な状況把握をするために国会喚問を行いたがっているのはその点にある。
原油から作られる製品は多種多様であるため、それはもちろんたいへん複雑だ。それがゆえに、証人喚問を通してすべてを明らかにしようとしている国会議員には高い評価を与えたい。

キャッシュベースかそれとも発生ベースか
もうひとつの奇妙なことがらは、政府予算内の石油燃料収入項目がボリュームに政府が決して受け取ることのない国際市場原油価格を掛けたものになっているという事実だ。どうしてか?インドネシア国内での市場価格を政府がはるかに安く決めるから。そのため、そのバランスを取るために政府予算歳出の部に石油燃料補助金項目が置かれることになる。この項目の金額も決して支出されることのないものだ。このような政府予算編成方式はキャッシュベース原理から逸脱している。国家会計に関する2003年度第17号法令の第36条は発生原則が取られることを示しているが、それは5年の猶予を持つ規定であり、それが既に実施に移されているとは思えない。この法令は、石油ガス関連の『補助金』という言葉の意味に対する考えが混乱しているので、正しいキャッシュベースと発生ベースを分析し説明することができない。

ネット輸入
60兆ルピアの赤字は、原油やガソリンを輸入しなければならないので実際に出費されるものだ、との説明をよく耳にする。生産は消費に追いついていない。もちろんだが、しかし需要の百%を輸入しているわけでもない。輸入されているのは、消費とインドネシア側の権利となっている生産分との差だ。しかしそこで支出されるべき金額は、インドネシア側の権利となっている生産分でバランスが取られる。単なる例としてプレミウムガソリンで示してみるなら、上で述べているように1リッター1,860ルピアの資金が得られている。その金額が正確にいくらで、また輸入をまかなうのに必要な金額が正確にいくらなのかは、いまだかつて表明されたことがない。それは原油から作られる石油製品があまりにも多岐にわたっているためだ。[ 経済オブザーバー クイッ・キアンギ ]


「不思議だろうか?」(2005年9月1日)
ルピアレートが暴落すると、大勢の人がまるではじめてそれに直面したかのように驚き、不思議がる。わが国のエリート、中でも団結インドネシア内閣経済チームはとても早く歴史を忘却してしまう。それがあまりにもひどいので、みんなは記憶喪失について話し始めている。ルピア暴落は何度も起こった。スハルト大統領政権期の32年間で通貨切り下げは三回行われたし、『スマルリンショック』と呼ばれた超通貨引き締め政策で経済が麻痺したことも一回ある。
ルピアが高騰し、介入幅が引き上げられたことは八回もある。その後、介入幅は完全に解消されたおかげで、ルピアは1ドル2,300ルピアから16,000ルピアまで跳ね上がった。いまわれわれは、ルピアが心理バリアーの1万ルピアを超えたといってまた驚いている。そんな状況がパニック買いを招いている。

IMFのしもべ
マフィアのようでいて組織は形をとらないが何世代も手下を増やしていくので権力は永続的という一群の経済専門家たちがいて、インドネシアの大統領が誰であろうと仲間を政策決定メンバーの中に入れて常に経済を牛耳ろうと必死になっている。IMFというカルテルに具現されている国際パワーのしもべになるようその権力を使うというのがかれらの目的であることは明らかだ。かれらが権力をふるうときは、インドネシアの経済ファンダメンタルと名付けられているもののきわめてお粗末な弱点を覆い隠してしまう。経済政策のキーパーソンにかれらの仲間でない者が就けば、その業績がどれほど優れていても声高らかに非難譴責する。アブドゥラフマン大統領内閣にかれらが加わらなかったというだけで、いまこの国の経済がどれほど衰亡したかは想像にあまりある。この衰亡は、IMFカルテルがインドネシア政府に押し付けた政策の直接的な帰結だ。要は、ジョン・ピルガー、ブラッド・サムソン、ジョン・パーキンスらが語っているように、返済不能なまで対外債務を膨らませることであり、そのあと、イ_ア銀行流動資金援助ローンや銀行界再投資証券などの形で必要でもない国内債務を作り出すことだった。流動資金援助ローンや銀行界再投資証券は国家会計を破産させた。その影響で、政府は通貨交換レートを安定させることができなくなり(切り下げやレートダウン)、また国内では通貨購買力のコントロールすらできなくなった(インフレ)。すべてのファクターがインドネシア経済の衰亡にどれほど影響を与えたか、タイバーツと比較すればよくわかる。1969年、タイバーツは1ドル20バーツだったが、今では1ドル40バーツになっている。その同じ年、ルピアは1ドル378ルピアだったのに、今では10,300ルピアだ。36年間でタイバーツは100%下落したが、インドネシアルピアはなんと、2,625%もダウンした。そんな軌跡を経てIMFは最後に、インドネシアの外貨交換システムは完全自由でなければならず、また完全交換可能でなければならない、とインドネシア経済チームに命じた。その命令を出したのは、当時IMFのナンバーツーで、今はイスラエル中央銀行総裁となっているスタンレー・フィッシャーだ。こうしてインドネシアの外貨交換システムは完全自由であり、ルピアは完全コンバーティブルとなっている。1999年、わたしが経済産業統括大臣の座にあったとき、スタンレー・フィッシャーと激しい討論をしたことがある。それは、1967年以来システマチックに世界中から外貨で借り入れをさせられ、返済不能な残高に達している上に凄まじいクライシスに襲われたばかりという状況下に、まったく整然さに欠け生産性の低いインドネシアの経済と通貨のありさまで、外貨交換システムは完全自由、ルピアは完全コンバーティブルを命ずることが信じられなかったからだ。そのときわたしは、IMFカルテル自身がスハルト大統領政権期の32年間、マネージドフロートと呼ばれる外貨運営システムに賛成していた事実をあげて、かれに議論を突きつけた。衰弱したインドネシア経済がルピアレートの安定を維持するのは不可能であり、だから32年間で三回のデバリ(通貨切り下げ)とスマルリンショックという超タイトマネーが起こったのだ。定期的にデバリを行う方がまだましだ。というのは、デバリのあと三四年間は鎮静期が訪れるので、実業界は生産に障害を受けることなく新たな計算を行えるから。今のような完全自由システムでは、数ヶ月ごとに不確定が起こる。そして今起こっているような混乱の最中では、それが毎日になる。挙句の果てに実業界はドル決済に換えていくだろう。いまは多くの物品が米ドル建てで値付けされている。このような崩壊の谷底にインドネシア民族全体を落とし込んだ裏切り者エリートたちの罪深さはどんなに大きいことか!
自国経済力の中での外貨保有高の推移が収支バランスに反映されるのはみんな知っている。スハルト大統領期の32年間、年間収支が黒字になったのは、1973年、1979年、1980年の三回を除いてまったくない。その黒字の原因は第一回と第二回のオイルショックのおかげだ。外資受け入れと外国借款のために、外貨は常にある。そのために常に緊張が起こり、何回もデバリが実施された。1997年クライシス後、年間収支はいつも黒字になった。これは経済ファンダメンタルが良いからではなく、経済活動がたいしたものでなくなったために輸入が激減したせいだ。経済が少しでも勃興すると、キャピタルフライトが増えて年間収支は低下している。

バークレーマフィア
不思議だろうか?全然そうじゃない。
ところが不思議なのは、バークレーマフィア所属の経済家たちが、団結インドネシア内閣経済チームに対して非難譴責をはじめたことだ。かれらはSBY大統領が内閣を再編成するよう要求している。どうしてか?
IMFカルテルが望んだ三人がもう内閣に入っているではないか。統括大臣までがかれらの仲間でなければならないのか?内閣経済チームを交代させなければならないのは本当だ。しかし経済チームの全員がバークレーマフィア一派で占められてはならない。まず自立を勝ち取り、KKN行為を目立って減少させないかぎり、何をいじくろうとうまくいかない。キャピタルフライトはもう長い期間行われてきた。どうしてか?なぜなら定期預金金利率がインフレ率より小さかったからだ。
こうして、インドネシアの銀行に預けた資金の購買力はインフレで蝕まれ、いまではルピアレートダウンが加わっている。外国資本ももちろん入ってきている。しかしそれは盗人コングロマリットたちが自分の会社を15%の価格で銀行界再建庁から買い戻すために入ってきている金なのだ。[ 前開発企画庁長官 クイッ・キアンギ ]


「9月の産業用石油燃料価格」(2005年9月1日)
9月1日から産業用石油燃料価格がまた変更された。MOPS(Mid Oil Plats Singapore)+15%+PPN(付加価値税)10%という計算式で毎月算出される産業界向け価格9月分は、上がったものも下がったものもある。国際原油価格高騰にも関わらず下がったものが出たのは、域内市場で供給過剰による値下がりが起こったため。政府補助金をなくした産業界向け石油燃料価格は今後も国際相場の動きに連動して変更を余儀なくされる。ちなみに今年7月からの価格推移は下の通り。
燃料油種 / 2005年7月 / 2005年8月 / 2005年9月
ガソリン(Premium) / 4,060 / 4,640 / 5,160
灯油(Minyak tanah) / 4,940 / 5,490 / 5,600
軽油(Minyak solar) / 4,740 / 5,480 / 5,350
A重油(Minyak diesel) / 4,560 / 5,240 / 5,130
C重油(Minyak bakar) / 2,900 / 3,150 / 3,150
(数字は1リッター当たりのルピア金額)
なお、一般販売用ハイオクタンガソリンも9月1日から補助金が廃止され、大幅値上げとなる。新価格は下の通り。
燃料油種 / 2005年8月 / 2005年9月
Pertamax / 4,000 / 5,700
Pertamax Plus / 4,200 / 5,900
(数字は1リッター当たりのルピア金額)


「LPガス値上げ」(2005年9月3日)
PTプルタミナはLPG(液化プロパンバス)国内消費者向け小売価格をこの年末に25%程度引き上げる意向であることをほのめかせた。アリ・スマルノ同社営業担当取締役は、国際原油価格高騰がガス価格膨張を誘っている現状での生産コスト圧縮はほぼ不可能であり、今はコスト計算と値上げ時期の検討を行っている、と述べている。現行価格はキログラムあたり4,250ルピアだが、5千から5千5百ルピアの価格にならなければならず、25%程度の値上げは必至だろう、とのこと。消費者への影響を緩和するための方策も同社経営陣は考慮しており、その場合は第一段階として2〜3百ルピアの値上げが来年1月中にはなされなければならない、と同取締役は補足している。


「自宅を事業所として使うにも規定がある」(2005年9月5日)
都内の建物、特に住居が事業所として使用されているという用途許可違反が南ジャカルタで多いことから、ジャンガ・ルビス南ジャカルタ市建築監督整備局長が法規整備と現場での違反摘発の必要性を訴えている。同局長は建築許可に示された住居用途から逸脱して事業所となっている家屋がポンドッキンダで29軒、クバヨランバルには3百軒あると述べており、同局は更に実態調査の範囲を広げている。その中で問題となっているのは、町役場が住居に対して事業所開設の許可を与えていることで、町役場はその許可を与えることで課金徴収ができるため、本来の許認可条件が無視されている。都条例によれば、都市整備計画で定められた住宅地区にある住居のうち25%はその地域住民が必要としているサービス事業のための事業所を開いて良く、事業内容は地域住民に対するものとして限定されており、さらに事業規模にも条件があって、雇用従業員は5人までとなっている。しかし実態はそのような規定から逸脱しているものが多く、ましてや建物建築許可すら、承認された図面通りに実行されていないものが大半とのこと。最近の例として、クマン通り20番地の建物は建築許可が2階建てだったにもかかわらず、3階の工事が進められていたので、工事停止が命令された。住居としての建築許可申請だったが、その3階のうちの一フロアは事業所としての使用が予定されていたらしい。同局長は、町役場等の事業所開設承認を与える機関が現行規定の監督と施行を正しく行うように法規を整備しなければならない、と主張している。


「メクラ判の原産地証明書発行」(2005年9月6日)
中国の繊維産業は半分以上が国有事業体であり、廉価な労働力を使っている上に国から補助金を得ている。中国から輸出される廉価な衣料品はいまやインドネシア国内市場を覆い尽くそうとしているのみならず、グローバル市場をも席捲しつつある。2002年1月に輸入割当制を廃止したアメリカ市場での中国産繊維製品輸入は増加の一途だが、インドネシア国内繊維業界が事業継続に青息吐息のこんな状況下にも関わらず、アメリカでのインドネシアからの繊維製品輸入も増加している。これは中国製品がインドネシアに輸入され、ラベルが取り替えられてあたかもインドネシア産のような外見を持たせられ、さらに原産地証明書までが添えられてアメリカに船積みされていることをうかがわせるものだ。
2003年12月のインドネシア繊維業協会役員と当時の商工相の発言を記した記事はそう述べている。実はアメリカの輸入割当制度廃止以前から、同じようなことが行われてきた。アメリカのクオータを受けたインドネシア政府が国内繊維業界にそれを割り当てるが、クオータは毎年期限があり、そして業界各社の生産が予定通りにできないことも起こる。その場合、クオータ自体が商品となり、売買される。その取引が国境を越えてもおかしいことはない。そんな流れの中である国の商人がインドネシアのクオータを買い、自分の商品をアメリカに輸出するためにインドネシアに向けて船積みする。インドネシアの受け入れ側はそれをアメリカ向けに船積みするさいに、必須条件であるインドネシアの原産地証明書を役所から取る。インドネシアでそれは難しいことではない。
クオータが廃止され、数量が無制限に変更されたとはいえ、反ダンピングやセーフガードはいつでも適用される態勢にある。そしていずれの国も、リスク管理の大原則であるリスク分散を行わないはずがない。
8月31日の国会第6委員会公聴会で繊維業協会のベニー・ストリスノ会長は、いまや中国側輸出者は商品をインドネシアに送る必要がまったくなくなり、かれらはインドネシアからの原産地証明書が届くのを待ってアメリカに直接船積みしているという事実をすっぱ抜いた。これまでもアメリカの輸入統計とインドネシアの輸出統計との間の大きい差が問題になることはあったが、今後は米国税関との間で電子式検証システムELVSを実施し、違反行為を減らす努力を政府は行わなければならない、と同会長は提案した。
国会第6委員会イルマディ・ルビス副議長は、従来は貨物がインドネシアでトランシップされたことから、まだ付加価値がインドネシア側にはあったが、そのような書類だけの問題に変わってくると何のメリットもなく、国内産業のポテンシャリティを損なうものでもあるため、政府は早急に対応を取るように、と発言した。現状は、商業省が行っている原産地証明書発行業務がメクラ判行政であることを意味している、
とのこと。それにたいしてベニー会長は、いまや原産地証明書発行業務は地方自治体の商業局に委ねられており、どこでも輸出者がマニュアル作成したあと最後に役所責任者のサインとハンコが押されて輸出者に渡されるだけであり、実際に貨物があるかどうかといったことの検査もなく、また発行者の業務を監督することも困難がある、と現行行政メカニズムの問題を説明している。


「事業所管理行政ビジネスはますます盛ん」(2005年9月12日)
KKNや不法徴収金撲滅の掛け声は声高に鳴り響いているが、地方自治体が行っている事業所管理行政にそのメスはまったくと言っていいほど入っておらず、それどころか官吏のビジネス界に対する搾取行動は高まりこそすれ、優しくなるそぶりなどかけらもない。
公害法の遵守は地方自治体が事業所に義務付けるものだが、それに関連する項目別公式タリフが存在しないために、役人は好き勝手な料金を吹っかける。
都庁からの事業許認可手続きでは、75万ルピアから2百万ルピアという、理解に苦しむ金額が徴収される。事業所の所在を町役場が証明するドミシリ証明書発行も、末端行政役人のビジネス界の上前をはねる刈り取り場にされている。タングランのパムランでは40万ルピア、南ジャカルタのトゥベッでは45万ルピア、中央ジャカルタのスナヤンでも45万ルピア。ドミシリ証明書は税務署でNPWP(納税者番号)取得手続きを行うために必要とされているが、国民が税金を納めるために搾取の扉を抜けてこなければならないというこの実態は、じつに不合理きわまりない。外国人外資事業所の徴税を扱う税務サービス事務所でもNPWPを取得するのにプンリ(不法徴収金)が行われているが、町役場が取るプンリよりもそちらのほうがよっぽどたちが悪いと言える。
ビジネスが盛んになり、多くの雇用が創出され、民衆の人並みの暮らしが成り立ってその利益や収入から納税が行われるという社会経済サイクルに、行政のプンリや搾取が障害として立ち塞がっている。行政が事業所を、共に分かち合う収穫をもたらすものとは見ず、自分が食い尽くすための餌だと見ているかぎり、ビジネスは国際競争力を失い、失業者は減少せず、貧困国民が国の繁栄の足を引っ張ることになる。地方自治体高官職者が部下にノルマを課して行政ビジネスを行いながら、その一方で国費公費の横領着服にも熱中しているなら、「この国にガバンメントはあるのか?」との問いがまた繰り返されるにちがいない。


「チビトンの工業団地内企業にガス供給停止」(2005年9月14日)
ブカシ県チビトンにある工業団地内の外資系企業が、8月25日以来、生産に使うガスの供給を断たれて苦慮している。ガスが入手できなくなっているのはPT LG Philips Displays Indonesia, PT Indonesia Daeyang Korea, PT Kayaba Indonesia, PT Essar Indonesia, PT URC Indonesiaをはじめとする数社で、問題はチビトンとチレゴン地区の工場にガス供給を行ってきたPT Igas Utama社が供給を停止したため。
PT Igas Utama社のイレネ・ラッナワティ・ルスリ取締役は、同社に対してガス生産者の立場にいるプルタミナが、従来の一日2百万立方フィートの供給を止めたから、と説明しており、この問題で生産に障害を受けている工場は、同社に対して120万ドルの損害賠償を要求している由。
プルタミナ側の説明では、PT Igas Utama社が支払いを行わないため、ガス供給はストップせざるを得なかった、とのこと。


「調達物流コストは製品デリバリーのほぼ二倍」(2005年9月15日)
インドネシアの製造会社は物流費に総生産コストの14%を割いている。これは日本のケースである4.88%に比べて三倍近い比率だ。またタイの場合は、市場販売価格の中で22%が物流費となっている。イ_ア大学経済学部社会経済調査院のハティブ・バスリ理事が明らかにしたこの調査結果では、製造会社の物流コストを物資が工場に届くまでのフェーズ、工場内で生産加工されるフェーズ、完成品出荷以降のフェーズに三分類した場合、そのそれぞれが7.22%、2.82%、4.04%という内訳になっており、先進国に比べてかなり高いこの物流費負担のために、インドネシア輸出製品の価格競争力が弱められているのはまちがいないことだろう。
2001年に生産コストの10%だった対行政機構費用は、5年かかってやっと6.4%まで降りてきた。しかし弱いインフラが引き起こしている非能率と、喧喧囂囂たる声ばかりが先行していて実態の伴われていない不法徴収金(プンリ)問題は、依然として物流費用の中にがっしりと食い込んでいる。
イ_ア大学経済学部社会経済調査院にJBICが協力して、首都圏・マカッサル・スラバヤ・メダンで操業している自動車、家電、飲食品、繊維衣料業界の75社に対して行われた今回の調査結果によれば、製造会社がもっともハイコスト経済を蒙っている都市はメダン、また物流費の比率が高いのは自動車産業であることが明らかになった。自動車産業は輸入コンテンツが高いために必然の結果と言えなくもない。
しかし上で述べた、調達に関わる物流コストが製品デリバリーの二倍近いという実態は、スマートな調達が企業利益に大きく貢献する余地をたっぷり持っていることを示唆している。


「謎、欺瞞、それとも『だからどうした』?」(2005年9月16日)
9月9日のニュースで、内閣経済チームが大統領と副大統領にそれぞれ異なる石油燃料値上げ幅を進言したことが報じられた。最終的には、例によってそれは否定されたが。
大勢が言うように、経済チームの業績と協調はお粗末なものだ。経済チームの態度や言動は、多くの人たちにもはやまじめに受け止められていない。かれらが何をしようと、最近の流行り言葉である『だからどうした?』というコメントが待ち受けている。
民族の将来を思えば、わたしはしらけ族の真似をしてはいられない。だから石油燃料問題に関して、『補助金』定義問題をはじめ、不明瞭なあるいは不十分な説明に対して疑問を投げかけ続けるのだ。

不明瞭
わたしは適格機関からいくつかの資料を入手している。その中にたくさんの、不明瞭なことがある。国会議員の皆さんにとっては、政府との討議材料としてきっと興味深いものとなるにちがいない。
まず原油1バレル当たり60米ドル、為替レート1米ドル1万ルピアを前提にしたいくつかの石油関連資料の中に、原油生産の内容が、日製112万5千バレルの原油を政府・プルタミナ分66万3千5百バレル、生産分与契約コントラクター分46万1千5百バレルと分割しているものがある。その比率は59対41だが、国民はインドネシア側85%、外国コントラクター15%だったはずと理解している。この顕著な差はどう説明してもらえるのだろうか?
別の資料では、インドネシア側シェアの66万3千5百バレル中でプルタミナが精製するのは56万3千2百バレルとなっている。残る3万3千2百バレルはBPMigasが輸出し、6万7千バレルは輸出交換と呼ばれるものに充当される。ところがこの輸出収入が資料のどこにも出てこない。
原油価格60米ドルで一日10万3百バレルが輸出されたら、100,300x60x10,000x365=21.96兆ルピアの収入となる。政府のキャッシュフロー資料を見ると年間5.7兆ルピアのサープラスとなっているので、本当はこの輸出分を加えて27.7兆ルピアのサープラスになるのではあるまいか?この数字は、かつてわたしが試算した数値からあまり離れていない。
次の資料では、プルタミナが政府から価格の異なるさまざまな名称で原油を買っていることがわかる。MM Prorata, MM Prorata KPS, MM in kind Pertamina, etc., etc.。バレル当たり価格は10.35ドルから51.77ドルまでさまざまで、どうしてそんな購入の仕方をするのかが不明だし、おまけにプルタミナが政府から購入すれば、支払い代金は大蔵省のどこに収入として計上されてくるのだろうか?政府会計予算の中ではどうなっているのだろうか?政府予算では、輸入は出てくるが輸出はどこにも見あたらない。
石油関連の政府キャッシュフロー資料に戻ると、ここで政府には5.7兆ルピアもの黒字が出ている。原油価格60ドル、交換レート1ドル1万ルピアでそれだ。もうひとつ、ここではどうして原油価格が一律60米ドルで計算されているのだろうか?どうしてプルタミナの原油購入資料と同じさまざまなカテゴリーと価格が使われないのだろうか?

今後の宿題
今後の宿題として、ひとつの仮定を述べておこう。そこでは、似非知識人のロジックは使わず、素人一般庶民の論理を使う。そのベースに置かれるものは、もしプルタミナ、BPMigas、大蔵省、シンガポールのPetralの会計帳簿をひとつにまとめたら、どんな絵があぶりだされてくるのか、ということだ。現状は奇妙だ。プルタミナは大蔵省から原油を高く買わされている。国有事業体だから損失は補填される。それが補助金というものだが、その金はどこから来ているのか?大蔵省がプルタミナに高く買わせていることで、プルタミナが支払う金はどこへ行くのか?それらの問題に対して『それがどうした?』と言わなければならないのだろうか?
プルタミナの原油精製能力は国内需要を満たすに十分な石油燃料生産能力からほど遠い。ところが原油の一部は輸出され、おまけにその不十分な精製能力にもかかわらず原油が不足するために輸入までしている。輸出収入は公的資料のどこにも現れてこない。政府キャッシュフロー資料の中にあるオペレーションコスト21.1兆ルピアとは、いったい何なのか?[ 前開発企画庁長官 クイッ・キアンギ ]


「バタム島」(2005年9月16日)
シンガポールの真南に位置するバタム島は広さ415平方キロ。シンガポールからフェリーで40分という距離にあるこのバタム島は、シンガポール経済の中に組み込まれたシンガポール産業にとっての飛び地だと言う人もいる。
もともとこの島は、無人島に近い島だった、とバタム島からおよそ15分の距離にあるブラカンパダン島の住民たちは回顧する。当時はバタムがブラカンパダン郡の行政区域に入っており、バタムの海岸部にある集落から住民たちが行政手続きのためにブラカンパダン島まで来ていたそうだ。ところが1978年、スハルト大統領が大統領令第41号でバタム島をボンデッドウエアハウスに指定したことで、この島の運命は激変した。1978年のバタム島住民人口は3万1千8百人だったものが、5年後には4万3千人に増加した。しかし25年後の2003年にはそれがなんと562,661人という人口を数えることになった。当然ながらその間に、島内の原生林は伐採され、モダンなビルや道路を持つ現代都市が建設され、工業団地が開発され、周辺部には合法非合法の住宅が軒を連ねる景観が生み出されてきた。
スハルト政権がもくろんだ外資誘致は着々と進展し、道路、空港、海港、通信ネットワーク、電気、水道などのインフラ建設から工場、倉庫、そしてショッピングセンターに至る産業基地が作り上げられていった。そこに観光産業も抱き合わされて、都市ホテルとは別にリゾートホテルも作られ、ゴルフ場や他の観光施設も整備されてバタム島は工業・商業・観光そしてトランシップメントという四種の産業をパッケージにしたインドネシアきっての産業ゾーンへの道を邁進したのである。
バタム開発庁のデータによれば、2005年初までにバタムへの外国投資は761プロジェクト総額38億ドルに達している。2004年の投資受入実績は総額1.8億ドルで、新規外国投資が62プロジェクト6千2百万ドル、追加投資が12プロジェクト1.2億ドルという内訳だ。2003年末時点でのセクター別投資内訳は、工業70%、商業サービス業15%、住宅建設8%、ツーリズム6%となっている。一方就業人口統計を見ると、56万人という総人口中187,842人はフォーマルセクター、7万6千人が非フォーマルセクターの労働人口となっている。フォーマルセクターでは、製造業が14万人、建築1万7千人、商業1万5千人という雇用人口だ。
2003年末時点の投資総額36.3億ドルのうち4.4億ドルがシンガポール資本で、国別投資高でトップの座に就いている。二位は日本の1.3億ドル、そしてマレーシア0.4億ドル、台湾0.3億ドルと続く。中国からの投資はまだわずか1百万ドルに過ぎない。シンガポール系企業が256社もあることがそこからもうなずける。
バタムがシンガポール経済の駒のひとつになっているという表現は、しかしそれだけが理由なのではない。かつてはありとあらゆる物資がシンガポールからバタムに流れ込んできた。机、椅子、コンピュータ、冷蔵庫、洗濯機、自動車に至るまで。それらはもちろん新品ではない。シンガポールでほとんど価値のなくなった中古物資がバタムに流れてきたのだ。これは単なる購買力差の問題ではなく、バタムが保税地区であるために実現したことである。いっとき、バタム島内を走る多くの高級車はほとんどがXの文字をナンバープレートに付けており、そしてSTNK(自動車番号証明書)には赤色の『バタム専用』というハンコが押されていた。これはその自動車が免税で島内を走っていることを意味しており、言うまでもなく島外持ち出しは禁止されていた。だがその時期、多くの中古家電品がバタムに入った後、税関の監視の弱さのおかげでそれらの中古品がスマトラやジャワの諸都市に流れていたことも事実である。
ところがバタム島の保税ステータスについては、30年近いその発展の歴史を通じて、常に曖昧さにつきまとわれてきた。1978年大統領令第41号はバタム島の工場地区はすべてボンデッドウエアハウスであると規定している。1984年大統領令第56号と1992年大統領令第28号はバタム島の工業団地開発にあわせてボンデッドゾーンを拡大した。一方バタム市議会は2001年5月にバタム全島をフリートレードゾーンに指定するよう提案し、その法案を用意している。しかし当時のリニ・スワンディ商工相はこの問題に関して、バトゥアンパル、バタムセンター、カビル、ムカクニン、サグルン、タンジュンウンチュン、セクパンの七工業団地を飛び地FTZと認めるとしてそれに応じた。もともと工業基地として保税メリットを活用しようと考えたコンセプトにもかかわらず、バタムは商業エリアになってしまっている、というのがその理由だった。おまけにその一方で、2003年政令第63号が制定され、バタム島内の保税地区外におけるPPNとPPnBM課税が定められた。そして最終的に、バタム島内の保税地区はボンデッドゾーンプラスというステータスが定められ、2005年7月に出された政策パッケージで一応落着の形を見せることになる。「バタムに7月政策パッケージ」(2005年7月25日)を参照いただきたい。


「原産地証明書発行規定を政府が見直し」(2005年9月22日)
虚偽データによる原産地証明書発行が問題になっていることから、商業省と工業省は発行手順の見直しを進めている。現状は原産地証明書発行主体が地方自治体になっているため、悪徳事業者や不良輸出者が盛んにそれを悪用しているのが実態だ。中国からの繊維製品をインドネシアで積み替え、それをアメリカへ再輸出するさいにインドネシア産品として原産地証明書を作成したり、やはり中国産のエビを同じようにしてインドネシア原産品と偽ってEUに輸出している。アメリカが中国産繊維品に適用しているセーフガードを潜り抜け、あるいはEUが適用している中国産エビの輸入禁止措置をかわすために取られている手段だが、その結果中央統計庁の輸出統計で外国の物品がインドネシアの実績に計上され、産業政策策定の場で混乱をきたすことも招いている。各業界団体が異常な輸出統計を折に触れて表明してきているが、政府当局はそれら被害国からのクレームを待って重い腰をあげるという、昔から似たような行動パターンが続けられている。
最近では実際に貨物がインドネシアへ送られてくることもなしに原産地証明書だけが作成され、貨物が中国からアメリカに船積みされるのにあわせて書類だけが送られるという事態すら起こっている。国際貿易の場でインドネシアがそのような違反行為に荷担している事実は、被害国からの対抗措置を招くことが予想され、インドネシアの産業に不利な事態が生じるのは間違いないことから、商業省と工業省はそんな違反行為に歯止めをかけるための措置を講じることを余儀なくされている。
工業省金属機械繊維雑貨総局長は、検証と監視の可能な港湾インフラを持ち、工業団地がひかえている県市に限定して原産地証明書を発行すること、発行実績の中央政府に対する報告義務を励行させること、などがその対応措置として提案されている、と洩らしている。既に全国で2百あまりの県市が証明書発行に妥当であるとの検討結果に至っているとのことだが、もうしばらく検討を重ねることになっている、と同総局長は述べている。


「オフィススペース需要が急増」(2005年9月26日)
1998年経済危機後の7年間で、今年上半期の需要の伸びが最大だった、とジョーンズラングラサールのリサーチキャピタルマーケットマネージャー、アントン・シトルスが公表した。2005年上半期で大きく膨らんだ需要とは、首都圏の賃貸オフィススペース需要。
特に銀行セクターが、オフィス拡張、支店開設、バックオフィス新設のために積極的にスペースを確保している。支店とバックオフィスは業務と保安の要因から分離される傾向が生まれており、バックオフィスは必ずしも都心ビジネス地区(CBD)に置かれる必要がないため、都心から周辺部へと移される傾向にある。今年上半期のオフィススペース新規入居は6万平米にのぼり、前年同期から二倍という成長ペース。
このため空室スペースは総供給の21%にまで減ってしまっている。銀行セクター以外でも、保険、トレーディング、ITなどが概して3百平米以下のオフィスをCBDに新設している。
今年上半期の総供給は311万平米で、今10件のオフィスビルプロジェクトが進展しており、それが完成すれば首都圏の総供給は350万平米となる。新供給分の24%はストラタタイトル。今CBDではテナント入居率が78.6%で、平均賃貸料は平米あたり6万5千ルピア。しかし周辺部での需要も増加しており、特に南ジャカルタ地区でのビジネスが活発で、石油ガス関連と銀行のバックオフィス需要が大きい。


「バタムのボンデッドゾーンプラス施行準備は?」(2005年9月27日)
税関総局バタムサービス事務所は、島内の保税地区に置かれている17の税関オフィスを閉鎖する準備に入っている。バタムでは、ボンデッドゾーンプラスという名称で、他地域よりも緩和された税関監督方式が去る7月21日の蔵相令で定められた。新方式の施行は今年10月1日からとなっている。
現場税関オフィスの閉鎖準備に入ってはいるものの、総局本庁からの閉鎖指示や新プロセス詳細手順指示はまだ届いていない。バタムサービス事務所は、今月末までにはそれらが届くものと予測している。


「石油燃料値上げに対する救済パッケージ」(2005年10月3日)
政府は9月30日に石油燃料新価格を発表したが、それと同時に一般消費者向けおよび産業界向けの恩典政策をあわせて発表した。その内容はまず、一般貧困家庭1,550万世帯への補助金直接支給で、総額4.6兆ルピアが計上されている。税務上のインセンティブとしては、所得税非課税限度月額100万ルピアから110万ルピアへの引き上げと農産品のPPN非課税で、これは2006年1月からの実施。米作農家へのインセンティブは、もみ米政府買上げ価格の見直しと補助金直接支給の検討。
重機類製造業界への免税措置とコンバーターキット輸入関税免除。陸上貨物運送業界への、車両計量ブリッジを現状の170ヶ所から64ヶ所に減少させ、また地方自治体の運送にかかわる36法規取り消し措置を早める、などといったものになっている。


「石油消費が34%減」(2005年10月14日)
今年10月1日以降の石油燃料消費は大幅な減少を示している。もっとも大幅に減少している油種はプレミウムガソリンで、値上がり前の一日5万5千キロリットルから3万2千キロ台に低下している。国内需要が一日3万7千キロリットルとされているのに比べても、今の消費量はきわめて少ない。軽油やその他の油種はプレミウムガソリンほど激しい減少を見せていないが、国内備蓄は十分確保されており、石油燃料全体で見るなら、平常期には一日18万5千キロリットルあった消費量は、いま12万2千キロリットルしかなく、値上がり直前のラッシュ時に一日20万キロリットルに達したのを思えば、ほぼ半減状態。プルタミナはこの状況を考慮して、予定されている石油輸入を先延ばしできるものはそのようにする計画であり、10月に輸入が予定されていたタンカー15隻分の灯油、軽油、プレミウムガソリンの一部を11月まで延期するように変更中。
プルタミナが広報したところでは、すでに3隻分の輸入が終わっており、シンガポールからこれから輸入される予定の12隻のうち7隻が11月に繰り延べられるとのこと。ペトラル社を含めて長期購入契約下でのデリバリー分は繰り延べに大きい支障はないが、スポット市場で買い付けられたものは計画通りに受け入れざるを得ないとも説明している。このため12月の石油燃料供給計画中、輸入ポーションはかなり減少するものと見られている。プルタミナは毎月1千万バレルの石油燃料と国内製油所で精製するために1千2百万バレルの原油を輸入しているが、値上がり前には膨れ上がった需要に応えるために1千7百万バレルの石油燃料が輸入されている。今月も当初計画では1千5百万バレルが輸入されることになっていた。


「インドネシアの事業開始手続き所要日数は180日」(2005年10月19日)
今年4月から6月にかけて、イ_ア大学社会経済調査院が調べた会社設立プロセスの所要日数は151日で、タイ33日、マレーシア30日、中国41日、フィリピン50日、オーストラリア2日、シンガポール6日、ベトナム56日に比べてけた違いの長さだと最悪評価が出されていたが、実はその中にセクター別地域別の許認可やBKPMの投資認可は含まれておらず、更に環境保全許可、建築許可、立地許可、基本許可、汚染対策許可、労働安全許可などを加えていけば、あの151日という日数は180日になる、と同院インフラ地域担当デピュティが明らかにした。
これについて行政機構活性化担当国務相代理は、地方自治体のマインドセットを変えなければならない、と述べている。「地方自治体の行政官は、投資や事業の許認可をいまだに地元収入確保の狩場と見なしている。だからそれを改善して、許認可手続きを早く経済的に済ませるという発想が出てこない。これがいつまでも継続するなら、失業者減など期待すべくもない。」地方自治体が、公私にわたって懐を肥やしたいとして許認可手続きを長引かせ、またさまざまな難題を吹きかけて公式非公式の金を手中にするやりかたは過去から連綿と続けられてきている。
実業界は、許認可にまつわる裏金があまりにも多く、それがインドネシア産業の競争力を削いでおり、このため産業界と行政機構活性化担当国務省が協力し、同省はKKN絶滅にために飴と鞭を使い分けて地方行政を正していかなければならない、とコメントしている。


「繊維業界の没落続く」(2005年10月21日)
バンドン県の繊維業界では、今年9月末以来、すでに10社が操業短縮を行って4千5百人の従業員を解雇もしくは自宅待機処分にしていることを、全国労連(SPSI)同盟バンドン県支部指導評議会のアイ・スハンダ副議長が明らかにした。その十社とは、Panasia Indosyntec, Muwatex, Kayamatex, Daliatex, Pamatex, Famatex, Gladiatex, Kistex, Vonex などで、全従業員を解雇して閉鎖した会社もあれば、一部を人員整理して事業を縮小した会社もある。同副議長によれば、今年3月に行われた石油燃料値上げから積算すれば、バンドン県の労働者解雇は3万人に達しているとのこと。
かつて一世を風靡したバンドン県の繊維業界は業績が急速に没落しており、同支部は9月中旬、労働大臣に対してその詳細に関する報告を行っている。10月1日の石油燃料大幅値上げによって原材料コストは25%も上昇し、生産コスト急騰のために人件費に金が回らなくなっている、と操業短縮と一部従業員の自宅待機を行った事業主は述べている。事業継続の障害になっているのは石油燃料値上げ問題のみならず、中央政府が予定している産業用電力料金再値上げ、不法徴収金を主体とする幽霊コスト、繊維産業育成に手を差し伸べない地方法規などが手を携えて産業発展の行く手をふさいでいる、とも事業者たちは付け加えている。


「記録済み光学ディスク輸入に制限」(2005年10月24日)
知的財産権侵害でも世界のトップクラスに入っているインドネシアは、アメリカ政府の特別ウオッチリストに他の11カ国と共に名を連ねており、通商や外交面で折に触れて厳しい対応を受けているため、政府はその状況を改善することを目的に、光学ディスクの製造と流通に関する法規をすでに制定した。インドネシアはまた海賊版ディスク生産国にもなっており、政府は不法複製製造者および都内グロドッやマンガドゥアなどの市場で営業している不法複製品販売者に対するスウィーピングを頻繁に行って汚名挽回に努めている。それら国内での取締まりと共に、水際での取締りも欠かせないものであるため、VCD,DVD,CD,CD−ROMなどの記録済み光学ディスク輸入に関して、政府が承認した登録輸入者だけに輸入を行わせる制限措置の準備が進められている。従来この品目は輸入者制限対象外だったが、上の法規によって制限されることが定められている。
法務省知的財産権総局は今般、登録輸入者候補として31社を商業省に推薦した。この31社は、登録輸入者になることを希望する民間業者から厳しい規準の審査と評価をパスした者が選択されているが、登録輸入者ライセンスを得るためには更に商業省が持つ規準に合格しなければならず、推薦された31社が最終ゴールに到達できるかどうかはまだわからない。知的財産権総局は、登録希望者に制限は設けず、来る者は一切拒まず、しかし厳しい審査で厳選したと説明している。最終的に商業省からライセンスを得る登録輸入者は、合法的光学ディスクだけを輸入することを声明しなければならず、それに違反すれば処罰が待ち受けている。この輸入者制限によって政府当局は、輸入者が実体を持つ会社であることが確認でき、違法複製記録済み光学ディスクの流通監視が容易になり、市場で非合法品が発見された場合の追跡に効果があがるものと期待している。


「コンパス紙への投書から」(2005年10月25日)
拝啓、編集部殿。当方は専門技術アイテム商品ディストリビューターで、あるときかなりの量を受注しました。商品納入に中型トラックを使わなければならないほどの量です。納入日が来て、いざブカシ県チビトンにあるMM2100工業団地内の会社に納入しようとしたとき、いったい何が起こったかというと、同工業団地内のごろつきが警護費用と称して要求する金の交渉に直面することになったのです。発注会社の協力を得たとはいうものの、延々と時間を取られてしまい、結果的に商品納入は数日の遅延を見ることになりました。
納入は工場渡しなので、運送トラック料金は当方負担ですが、それに加えて警護と荷下ろし費用として30万ルピアも当方の負担するところとなりました。このレフォルマシ時代に、そのような不法徴収金・ごろつき行為がいまだに存在していることが不思議でなりません。物品納入者を保護するべき立場にある工業団地警備員はいったいどこへ行っているのでしょうか?今のこの時代に無料のものなんか何もないことは当方も理解していますが、あまりにも不自然なものは納得しようがありません。
このようなことが放置されれば、インドネシア産業の競争力は失われ、ハイコスト経済を生み、最終的に工業団地で操業しているインベスターが一社また一社と撤退して行くことが懸念されます。ディストリビューターである当方にしてみれば、そのような不測の経費を慮って販売価格の中に織り込まなければならず、そんなことをすれば当方の販売価格が競争力を失います。MM2100工業団地運営者の対応をお願いしたいと考えます。[ 東ジャカルタ在住、マクスミリアン・マガ ]


「コンパス紙への投書から」(2005年10月26日)
拝啓、編集部殿。マクスミリアン・マガ氏の投書にコメントしたいと存じます。今後、ブカシ県西チカランのMM2100工業団地内で問題に直面したなら、いつでも工業団地運営者に電話してください。電話番号(021)8981001、またはカスタマーサービス89982100、もしくはMM2100工業団地警察詰所、電話(021)68244094です。
ごろつき行為はもう決して起こらないことを当方が保証します。マクスミリアンさんには、いつ、どの会社に関連してその事件があったのかを当方に連絡するようお願いします。事件を明確に把握し、今後の参考とするためです。
MM2100でのごろつき行為はここ二年間で、特に国警長官がごろつき・賭博・麻薬の撲滅指令を出したおかげで、減少しています。MM2100工業団地でのごろつき行為を百パーセント無くすことは、団地入居企業のベンダーやサプライヤーをはじめ、すべての関係者がごろつき行為に機会を与えないように相互支援と一致協力することなしには実現しません。[ MM2100工業団地運営会社カスタマーサービス係り、エニン・アスティティ ]


「どうしてかれらは失敗したか?(ケース1)」(2005年11月4日)
大学時代から意気投合していた三人の仲間は、一緒に事業を興そうと以前から話し合っていた。卒業後三人は情報技術コンサルタントの会社を始めた。仲間の一人の自宅に使っていないガレージがあったので、そこに事務所を開いた。そしてそれぞれが、机や椅子、コンピュータや電話機などを持ち寄って、事務所の体裁を整えた。仲間の一人に事業家のおじさんがいて、その会社の情報システムを手直ししてくれという注文が程なく入った。続いて、スポーツセンターからスケジュール編成システムの相談が入る。三人は相談しながら仕事を分担して精力的にそれらの注文に応えていった。こうして、三人が始めた事業の将来はバラ色に染まっているように見えたが・・・・・
それから三年経たないうちに、三人の事業は空中分解してしまった。決して注文がなくなったわけでもなく、三人の誰かが問題を起こしたのでもないのだが。ではなぜそんな結末に到ったのだろう?それは三人が単に仲間意識で結ばれていただけだったからだ。この三人は性格も能力も考え方も生活習慣もさまざまで、事業という切り口から選抜された人間ではなかったのだ。三人がその事業に対して持っていたビジョンは同一だっただろうか?三人は互いに足りない部分を補い合いながら、事業継続を最優先しようという決意を共通に持っていただろうか?三人の仲間意識の中に、自己犠牲やアンカー意識はどれだけ強かっただろうか?
事業が空中分解したとき、三人の仲間意識も色あせていったことが、かれらの失敗の原因を説明しているように思われる。この三人は一隻のボートに乗って、川に漕ぎ出していったようなものだ。目的地をどこに選ぶかについて、三人の間で徹底的な議論がなされなかったのは、かれらがまだ若かったせいかもしれない。最初はみんな、精一杯まじめに仕事に立ち向かった。三人が一生懸命ボートを漕ぐから、ボートはすべるように走る。中のひとりが、鼻の頭がかゆいので、漕ぐ手を止めた。そして鼻を掻きながら思った。「オレがあんなにしゃかりきに漕がなくても、ボートは進んでるじゃないか。」かれの手から力が抜けた。
別のひとりは漕ぐ手を緩めないものの、目はきょろきょろと落ち着かない。かれは自分が到達したい地点を明確に意識していたが、それはほかの仲間の希望とはちがっていた。ボートがそこに向かっていないことが明らかになると、かれは通りかかった別のボートがそこへ行こうとしているのを見て、そちらへ飛び移ってしまった。会社の中でかれのような人間は、往々にして上からの信頼を得、かなり中枢的な機能をまかされているケースが多い。そして突然、「明日からもう来ません。」と宣言して別の会社へ移って行く。部下にそんな人間を持った上司はたいへんだ。
もうひとりのほうは、気のよい、仲間を大事にする人間だが、きっとあまりにも育ちが良すぎたのだろう。かれの半生にはチャレンジと呼べるようなものはいまだかつてなく、言い換えれば職業に関連したところでの人生の夢や希望、あるいは目的といったものに欠けていた。かれがボートに乗ったのは、仲間と一緒にやっていきたいという、成り行きの色彩が強かった。会社の中にもかれのような人間は少なくない。毎日会社へきちんきちんとやってきて、与えられた仕事を果たしてはいるが、仕事に対する責任感つまり自分の業績への欲があるようには見えないというタイプ。かれにとって自分の仕事が部門の業績にどう関わっているか、ましてや会社の業績が良いのやら悪いのやら、そんなことには関心がなく、それどころか、自分がクビになるかならないかという修羅場ですら、かれの姿勢は投げやりに見られる。
明確な目的を持つ組織は、きわめて合目的的なメンバーをそろえなければならず、そのための人材選抜が欠かせない。ところが非合目的的なメンバーグループが、プレーヤーどころかマネージメントに就いた場合、その将来は頼りない。ファミリービジネスもメンバーの選抜が行われにくいというところに発展の限界があるにちがいない。


「国をあげての長期休みに不満の声」(2005年11月5日)
中央銀行が11月2日から8日まで完全に業務を停止することに対して、実業界から不満の声があがっている。国内有力企業PT Indofood Sukses Makmur のフランシスカス・ウェリラン副社長は、イ_ア銀はクリアリング活動の窓の一部を開いておくべきだ、と語る。
「イドゥルフィトリの長期休暇に入っても、非コンピュータライズサービスを必要としている一部の国民がいる。国際社会が一斉にその間休みになるわけでもない。つまりビジネスはその間も回転しているということだ。銀行セクターが8日間も休むという方針は、国家的非効率を生む。その期間に支払い期日がくる債務は、クリアリングができないために支払い遅れとなり、金利負担が生じる。国際ビジネスを行っている企業は国際クリアリングサービスをたいへん必要としているのだ。ルバラン休み中、あらゆるビジネス活動が休止するわけではない。カキリマ商人は丁度そのルバランがかきいれどきになっている。」と同副社長は説明する。
昨年も実業界はこの問題についてイ_ア銀行に申し入れ、国会もそれに口添えをしたが、今年も何の変化も見られなかった。長期休暇であってもイ_ア銀行はシフト方式を取って外貨クリアリングの窓を開けておくことが可能なのに、なぜそれをしようとしないのか、と同副社長は不満を訴える。
APINDOのジマント事務局長は、世界中でイドゥルフィトリは祝われるが、8日間という長いイドゥルフィトリ休暇を取って仕事を閉めてしまうのはインドネシアだけだ、と語る。「政府は連続休日や一斉休暇などをまとめて長い休みにする方針を廃止するべきだ。企業業績にとって何も良いことはない。ましてや、イドゥルフィトリにせよクリスマスにせよ、国際ビジネスに影響を及ぼすようなことでは困る。」と政府の反ビジネスポリシーを批判している。
イ_ア銀行は11月2日から8日まで、クリアリングを含むすべての業務を停止する、との回状を出しており、クリアリングが再開されるのは11月10日で、国内のすべての銀行は自動的に中央銀行の業務開閉に従っている。


「総就業人口の半分近くが一次産業に従事」(2005年11月9日)
産業別労働人口構成に関する中央統計庁の最新サーベイ結果を示した『インドネシアの主要職種と労働時間』と題する報告によれば、2005年2月時点での就業人口94,948,118人中44%が、農業・林業・漁業・狩猟という基礎労働セクターに従事しているとのこと。続いて20%が商業・小売業・レストラン・ホテルなどのセクターに従事し、オルバ期以来の工業化推進にも関わらず製造業が吸収している労働人口は12.2%しかない。パブリックサービスセクターは11.4%、運輸・倉庫・交通セクターは5.8%といった内訳になっている。残る10%強は、鉱業・採掘業、電気・ガス・水道、金融、保険、土地建物賃貸等に散らばっている。ちなみに今年10月時点の総就業人口は2月から0.8%増加して、95,730,800人となっている。


「欧米企業が南ジャカルタにオフィスを移転」(2005年11月14日)
テロリストの巣窟のひとつと欧米諸国から目されているインドネシアの首都ジャカルタは、爆弾テロの不安が絶えない場所。そんなジャカルタで働かなければならない駐在欧米人は、少なくとも会社やオフィスを極力テロリスクの小さいところに置きたいと思うのが人情。こうしてかれらは、都心部のビジネス地区から周辺部に、中でも南ジャカルタ地区にオフィスを移転する動きを進めている。もちろん検討要因はひとつだけではない。通勤時の渋滞も大きいファクターだし、なによりも賃貸料などの費用合理化が結論を左右するファクターにならないはずがない。
「かれらが注目しているエリアはTBシマトゥパン地区だ。」コールドウエルバンカーコマーシャルインドネシアのCEO、トム・グラシアノは語る。「今、南ジャカルタにオフィスを構えている企業は石油会社や情報技術関連の会社だが、今後は他業界も都心部からの移転が進むのではないか。」そうかれは予見している。TBシマトゥパン地区はジャカルタ外環状有料道路が通っていて、交通網インフラでは有利な位置にあり、また通信ラインも新たな接続がますます容易になっている。
家賃が高く,整備が行き届き、そこにオフィスを持つことでそれなりのステータスを入手できる都心部ビジネス地区がさびれることはありえないが、入居者は入れ替わっていく傾向がどうやらまた生まれているようだ。


「ブカシ県チカラン地区の市昇格構想」(2005年11月15日)
工業団地数で全国最大規模であるチカラン地区の地方自治体昇格をブカシ県が検討している。チカラン地区はブカシ県の三分の一の広さを占め、東西南北中央の5チカラン郡で構成されている。オルバ期以来全国屈指の商工業地区となったチカランは、住民人口、地域経済力などの面から、他の二級自治体と肩を並べてなんらおかしくない力を持っていることは疑いない。そのためブカシ県では、県開発企画庁に命じてチカラン地区自治体昇格検討を開始させた。県当局のラフな日程計画では、開発企画庁の検討は1年足らずで終了し、政治レベルでの検討を加えた後、問題がなければ三年以内にチカラン市として完全自治権を持つ地方自治体に昇格させたい、と考えている。チカラン地区はいまや、日本をはじめ海外からの事業投資先として、人気を集めている地区のひとつ。


「どうしてかれらは失敗したか?(ケース2)」(2005年11月19日)
1980年代末ごろ、10年もたたない間に急上昇してきた建設会社のオーナー社長が、社内のモラールがおかしくなる一方だ、と愚痴をこぼした。かれはある工科大学の大学仲間4人とその会社を新規に設立した。仲間の一人の自宅にあるガレージが新会社の基地となった。80年代の国土開発期の波に乗ったその会社は急成長したが、会社の規模が拡大して都心ビルにオフィスをかまえ、従業員は増えたものの会社の業務時間が終わればあっという間にオフィス内は空っぽになる。日々の問題を抱えて帰宅し、翌日その解決提案や意見を持って出勤してくるような社員はひとりもいない。
昨日やりかけていた仕事すら、5時を過ぎると頭からすっぽ抜けてしまうらしく、翌朝それを思い出させてやらなければその仕事はやりかけのまま宙吊りだ。社員たちは上司に信服しないで疑心暗鬼を抱き、協調的でなく対立的であり、給料や手当てが増えるなら仕事をするという現金さを露骨に示し、ハードワークなどは他人事で勤労エトスを持たない怠け者ばかりが集まっている。経営陣の目に、社内の風土はそう映った。創業時代に自分たちが抱え、行ってきたハードワークやデディケーションのたまものが今の会社だというのに、それをさらに発展させていこうとする中堅幹部などまったく見当たらない。
創業者たちはその原因が、草創期に雇われた従業員にあるのだということに気がついた。ガレージから始まった事業でも、受注量に応じて人手が必要になってくる。だが、まだたいした給料は払えない。工業高校を出た製図工をふたり、秘書をひとり、そして運転手をひとり雇ったが、そのときの採用は業務に最適な従業員の選抜ではなく、会社が支払える給与額でも働きますというポイントでの選抜だった。要するに能力は二の次にされ、劣る条件でも働きたいという人間が集められた。職場はガレージだ。そこに経営者と従業員がひとかたまりとなり、昼食もコーヒーもおふざけも、経営者と従業員間のけじめがあやふやな中でオフィスライフが営まれた。業務の分担も責任もあやふやで、経営者たちが忙しいときには、建築材料発注、集金、あるいは受注のさいの価格交渉まで従業員が狩り出されることもあった。
会社が発展してビルにオフィスを構えるようになってから、やっと固定的な組織の編成がはじまった。そして部門ごとのスペックに最適な人材の採用がはじまり、高学歴の若い人材が部門長に据えられ、先輩でも学歴の低い、専門分野での能力もありきたりな初代従業員たちは、そんな部門の中に押し込まれた。そして功労者と自負しているかれらが、会社の自分たちへの扱いに対する不満と憤りから、ネガティブな動きを開始したのだ。
草創期の人間関係がもたらした経営陣との親しさが、悪い方向に作用した。勤労意欲が減退してしまったかれらは、新入り上司にたてつき、反抗し、非協力的となり、仕事を避ける。もっと悪いことに、かれらは新規採用された従業員に先輩顔して近付き、自分の手下にするということまで始めた。こうして社内の風土はどうしようもないほど荒れてしまった。
原因はわかったが、対策はどうすればいいのか?かれらを解雇すればよい、と経営陣のひとりはあっさり言うが、草創期の功労者をあっさりクビにする非人情な会社という印象を従業員に持たせるのは得策でない。ではかれらのポジションを上げてやるか?能力のない人間を高いポジションに就けることは、本人の将来を含めてすべてをぶち壊しにする。一番穏当な方法は、子会社を作ってかれらをそこへ移籍させ、本社の業務オペレーションから切り離してやることだが、それはそれで問題を子会社に移しているだけと言えないこともない。
この会社は社内風土を改善するのに大きいエネルギーと時間を費やしたものの、その後やってきた経済危機の中に埋没していった。


「中国へのトールマニュファクチャリング」(2005年11月25日)
飲食品製造業界の22社が中国の厦門地区にある同業メーカーに対してトールマニュファクチャリングをオーダーしている。全国飲食品事業者連合のトーマス・ダルマワン会長は、政府が誘導的な投資環境を育成していない状況下にあるため、トールマニュファクチャリングはいまや国内製造業界にとってトレンドになりつつある、と下のように語った。
「中央・地方政府がハイコスト経済をはぐくむ政策を維持する限り、国内生産者がもっと誘導的な環境を提供する国に生産活動を移すのは理の当然だ。トールマニュファクチャリングはインドネシアの事業家だけが行っているのでなく、グローバルに行われているものであり、安い生産コスト、巨大な市場、インドネシアを含めてアジア域内各国から地理的に近い距離にあることなどの理由で、インドネシア産業界が抱えているそのような要求に対する答えを中国が出している。インドネシア側のブランドを維持しながら、中国の生産者と共同で生産するこのトールマニュファクチャリングで、インドネシア企業は業績の向上と投資費用の抑制が実現できると期待している。今のまま推移すれば、インドネシアの飲食品生産者はすべての生産を国外で行い、製品を輸入して国内ディストリビューションを行うだけになってしまうかもしれない。そんな製造業の空洞化を防ぐよう、政府は対策を講じなければならない。」
インドネシアの対中国貿易は、2004年実績が輸出70億ドル輸入60億ドルという出超ではあるが、今後の傾向を見るなら予断を許さないものがある。実績中30%近くが飲食品だと語るトーマス会長は、これから進展していく中国との経済協力の中で、国内生産の空洞化が高まらないようにと、政府に警鐘を鳴らしている。


「工業団地入居率はまだ低い」(2005年11月26日)
首都圏の工業団地入居率は65.7%だ、とコールドウエルバンカーコマーシャルインドネシアが公表した。これはジャボデタベッ地区における2005年第三四半期のデータ。つまりは工業団地が整備してある土地の34%がいまだに休眠状態であることをそれは意味している。その原因としてインフラ整備が不十分であるため、その面での改善を工業団地運営者は続ける必要がある、とコールドウエル側はコメントしている。
ところで既存の工業団地がまだ飽和状態でないというのに、新規工業団地開発は進められており、今のところこれは2007年まで続くことがはっきりしている。首都圏では、タングランのミレニウムインダストリアルエステートが40Ha、ブカシのジャバベカ3が100Ha、デルタマスの250Haが2006年に新規供給され、さらにカラワンのブキッインダエクステンションが2007年に完成して265Haが供給に加わるという予定。それだけでなく、2005年末にはブカシファジャルインダストリアルが65Ha、モデルンチカンデが2006年に80Ha、という新たな供給も予定されている。


「PMA750社への調査継続」(2005年11月28日)
5年間連続赤字計上して法人所得税納税額ゼロを続けている750のPMA企業は、日本、韓国、シンガポール、台湾、オーストラリアそしてヨーロッパ数カ国の企業で、メインはアジアだと国会第11委員会のドラジャッ・ウィボウォ議員が語った。
しかし大蔵省は各企業の詳細調査をまだ続けており、その結果が出るまで会社名等の詳細は公表できない、と大蔵大臣は述べている。蔵相は先に、「調査で脱税が明らかになれば、国庫が受け取る権利が侵されていることになる。こんな仕事は人に好まれないものだが、国家は確立され、法は施行されなければならない。システムは回転しなければならない。」と語っている。このPMA750社に対する調査は、国税総局が税務について調べるだけでなく、税関総局、国家債権競売総局および大蔵省監督局も独自の調査を進めている。
PMA企業の赤字計上は外国の関連会社との間での価格移転問題をはらむものであり、従来からこの問題についてはむしろ及び腰できたインドネシア国税当局が、これまでに準備できた価格移転摘発への対応手法が効果を発揮できるものかどうかを試す試金石の機会とも言えるものの、マネーロンダリングの中で行われている会計上の諸トリックや価格移転に関する会計監査の包括的な手法がまだ確立されていない時点ではじまった今回のイシューがどのような成果をもたらすことになるのか、興味津々といったところ。中でも、公認会計士による会計監査を細かく規定する法的インフラが未整備で、また風土的に企業と会計士との癒着が起こりやすい背景を抱えながら今日に至っている税務監査システムから膿が掘り返されれば、また法規改正の嵐に見舞われる可能性も懸念されている。


「日本の時代から韓国の時代へ」(2005年11月29日)
11月18〜19日、釜山でのAPEC指導者会議のあと、SBY大統領は韓国経済界のリーディングポジションにある韓国電力公社、韓国道路公社、コリンドグループ、エスケイ・コーポレーション代表者と個別に会見し、インドネシアへの投資を促した。それら4社はより具体的な調査のためにインドネシア訪問を約束し、SBY大統領は韓国実業界からの投資に対して便宜をはかることを約束した。
最近のイ_ア〜韓国の経済関係は進展著しいものがあり、2004年の貿易高は100億ドルという史上最大規模を実現したし、韓国からの直接投資先としてインドネシアは、中国、アメリカに次ぐ第三位の地位を獲得し、投資高は68億ドルにのぼった。インドネシア国内には1千社の韓国企業が進出して百万人以上を雇用しており、60億ドルを輸出している。インドネシア国内には3万人の韓国籍者が居住していて、ビジネス居住者として最大勢力をなしており、韓国レストランの数は今では日本レストランの数をしのいでいる。一方韓国では2万5千人のインドネシア人が働いている。それほど緊密な関係を築いているイ_ア韓国関係の追い風に乗せて、インドネシア側は韓国からの更なる投資振興を呼びかけ、インドネシアを投資先に選ぶ理由が6つある、とSBY大統領が韓国経済界に対してPRした。すなわち;
1)インドネシアは世界でもっとも変化している国であるばかりか、憲法危機、種族コンフリクト、自然災害、テロ襲撃などを乗り越えることができた強靭な民族である。津波をものともせずに復興に努め、世界第三のデモクラシー大国になっている。
2)アチェ独立派との和平合意を筆頭に、国内の治安と安定が目覚しく向上している。インドネシアは依然テロリズム行動の影につきまとわれていると言われているが、治安機構は撹乱者の追及に大車輪の働きをしている。
3)インドネシア政府は成長重視、雇用重視、貧困国民擁護、ビジネス重視を方針としており、投資家の貢献を高く評価する。
4)さまざまな自然災害や原油価格高騰のような国際変動に見舞われていても、インドネシアは経済安定に努めている。今年上半期の経済成長は5.9%で、年間の5.8%成長が維持できることを政府は確信している。
5)政府は対汚職戦争と行政クオリティ改善を優先項目にあげている。いま政府は、州知事、国会議員、政府高官、市長・県令、銀行家、実業家たちを巻き込んだ大型汚職事件をいくつか調査中で、かれらのうちの何人かは犯した悪事に対して高い代償を支払うことになる。他の者も必ずかれらの跡を追うことになるだろう。
6)政府は投資家にとってよりベターな投資環境を醸成する努力を行っている。国会に提出された新たな投資法案がそれを示している。この法令は;
*国内外の投資家が同じ待遇を受ける
*利益本国送金の自由と外資企業のインドネシア化が実施されないことを保証する
*係争解決の特別条項がある
更に重要なこととして、民間投資が解放されている事業分野に関する詳細完全な規定、明白な投資インセンティブスキーム、事業許認可手続の簡素化も鋭意実現させていく、とSBY大統領は説明している。


「インドネシアのGCGは最低」(2005年12月2日)
アジアコーポレートガバナンス協会のデータによれば、アジアパシフィック域内の調査対象10カ国中インドネシアは最低という評価が2001年以来続いており、インドネシアはコーポレートガバナンス向上努力を少しも示していない、と有識者に見られている。2000年はタイやフィリピンと一緒にローエンドグループにいたインドネシアは、その後タイもフィリピンも1ランク上に上がってしまったというのに、いまだに同じレベルを低迷しているのだ。
GCG評価採点公式は、GCG政策や法規15%、法規執行25%、政治政策環境20%、国際会計と監査規準20%、GCG実施慣行20%という配分で、評価されるポイントは、規律、透明性、独立性、責任能力、責任遂行、オープン性、社会責任の七つ。規律あるいはけじめをつけることは、経営ディシジョンや債務マネージメントに反映される。債務を増やすのは返済がうまくいく確信がある場合にしか行われないはずだ。透明さは企業のさまざまな情報やデータを公表することで実現される。一般投資家やアナリストがそれらに容易にアクセスできるものにしなければならないが、アナリストとの話を重視し、メディアに写真が掲載されるのを好む会社経営者であれば、企業業績よりも株価のことしか考えていないと見られても仕方ない。GCG遂行は百%会社経営者次第であり、政府の問題ではない。インドネシアの事業経営者は法の隙間を泳いで利を求めようとする傾向がいまだに強く、そのためにいつまでたっても評価が向上しない。
ガバナンス政策国家委員会議長は、インドネシアのGCGはパブリックガバナンスとの相関関係の中で進められなければならない、と分析する。つまりGCGはクリーンな文化環境の中で遂行される必要があることを、それは意味している。同コミティはGCG推進活動をいくつか行っており、会社取締役と監査役に対する検定プログラムもそのひとつだ。


「光学ディスク輸入規制」(2005年12月2日)
知的財産権保護と海賊版排斥を目的に掲げた光学ディスク輸入規制として2005年商業省外国通商総局長令第747号の施行が始まっているが、CD、VCD、DVDなどの光学ディスクが外国から送られてくる場合、税関の厳しい手続を通らなければ入手することができず、その手続を完璧に満たすために輸入者はさまざまな負担を余儀なくされており、実業界から不満の声があがっている。その規定によれば、輸入される光学ディスクはまず税関に留め置かれ、合法なものか不法複製版かをチェックされる。合法であれば、不法複製の対象になりやすいかどうかがチェックされる。輸入者は、その光学ディスク内のコンテンツを複製せず、また使用は自家用途に限る、という誓約書を作成しなければならず、その手続きのために輸入者は自分でジャカルタに赴かなければならない。
「この問題が引き起こす結果は致命的だ。外国から送られてくるディスクの中味がすべて不法複製されるようなものというわけでもない。社内用データとか個人や会社が購入した合法ソフトウエアだったり、あるいはデモ用ソフトや広告宣伝材料、結婚式ビデオというようなものも数多い。手続を規定した総局長令に従えば光学ディスク受取者は、それを複製せず個人用途として使うだけである、という誓約書を提出しなければならない。その誓約書は印紙を貼ってサインし、ジャカルタの外国通商総局輸入局長の承認を受けなければならず、その手続に受取者がみずからジャカルタに赴かなければならない。光学ディスクはコンパクトディスク、メモリーカード、USBストレッジなどの形態も含まれる。上のような規則のために、最もスピーディーに入手できるクーリエサービスを使っても税関に留め置かれ、ジャカルタで誓約書の手続をしてこなければ、いつまでたっても受け取れない。外国から送られてくる物は国内のあらゆる場所に届く。ジャカルタからとても離れているところもある。」そう訴えるのはサンジャヤ・コサシ、コンピュータ事業者協会東カリマンタン支部長。
このために広告デザイン作業の進行が遅れたり、社内用データが期日までに届かなかったりして業務が混乱し、おまけにジャカルタへの交通費として余分な費用が発生している。光学ディスク正式複製業者さえもが、この規定のおかげでたいへんな目にあっている。ディスクの内容チェックをサーベイヤインドネシアが行うが、その費用に一枚数百ドルが請求されるため、最終利用者はたいへんなコストアップを抱えることになる。このチェックはオープンソースソフトに対しても行われているとのこと。


「みんなやってる社内コルプシ:経理編」(2005年12月5日)
いずこの会社も、原則的には支払期日を決めている。そうでなければ売る側は値付けに困るし、資金回収計画も立たなくなる。しかし「決まりは破られるためにある」と豪語するインドネシア社会で、何をさておいても支払い期日優先をモットーにしている経理マネージャーはどのくらいいるのだろうか?ましてや、品物は入れるが請求書はいつまでたっても送ってこない管理ルーズな納入業者がひしめいていれば、いくら社内管理が素晴らしく回転している会社であっても、入荷データだけをもとに業者別支払い処理を行うわけにも行かず、ただでさえ忙しいのに他人のためにそんなことまでしてはいられず、社内規定の支払期日を何ヶ月もすぎてからポロリポロリとやってくる請求書の支払い処理が当たり前になって、モットーはただの紙切れと化すのである。そんな状況の中に置かれた経理マネージャー氏にとってみれば「社内規定の支払い期日が守られないのは、なにも自分が悪いからじゃない・・・・」。
さるメーカーXYZ社の経理マネージャーを訪ねて納入業者ABC社のオーナー社長が面会に来た。「まことに申し訳ありませんが、一月半前に納入した資材の支払いをお願いできませんか?」そう言いながら社長は請求書のコピーを差し出す。日付は一月前のもので、資材納入日は一月半前となっている。同社の購入資材支払い条件は納入日から30日後。
「今月は支払い申請がまだわたしのところに来ていないんですがねえ。」
「なんとかお願いしますよ。期日をもう半月も過ぎてるんだから・・・」
「いや、わたしにできるかぎりのことはもちろんやりますよ。」と言いながら経理マネージャーはデスクの上に山をなしている書類をほじくり返す。
「ああ、これだ。金額は・・・、2億8千万!」
経理マネージャーの目つきが変わったのを、社長氏は見逃さなかった。
「じゃあ、来週また来てくれませんか?今週中に片付けますから。」
「来週?いやあ、もう二週間も遅れているんで、とても待ってはいられません。電話で面会をお願いしたときに事情を話し、今日来いと言われたので今日まで待っていたんです。なんとか今日お支払いを・・・・」
「いや、そう言われても。いま会計士が休暇を取っているもので、わたしがその仕事もやってるわけで。ほれ、そのように。」と机上の書類の山をマネージャーは指差す。
「何とかわたしの支払いを優先してもらえませんかねえ。」
「ああ、なんとかなりますよ。」マネージャーは笑顔を見せるが、目は笑っていない。オーナー社長は合点した。
「本当は、うちの請求には即金の場合、マーケティングフィーとして1%の口銭がついてるんです。」
「そりゃ、どういう意味ですか?」
「つまり、キックバックがあるってことですよ。」
「オフィシャルなもの?それとも非公式に?」
「もちろん非公式でOK!書類なんかなにも出ません。もし今日現金をもらえるなら、そこから直接1%引いてくれていいですから。」
やっとマネージャーの目が笑った。
「今日すぐに、というのは無理だ。でもお役に立てるように努力しますから。そうですねえ、約束はできないが、二三日以内に。」
オーナー社長は仕方なくXYZ社を後にした。だが内心、かれは集金に成功したという確信を抱いていた。280万ルピアのためにあのマネージャーは大至急振り込み手続きをするだろう。
二日後、ABC社の口座に2億8千万ルピアが振り込まれているのが確認された。そしてほどなく、XYZ社の経理マネージャーから、振り込んだという連絡の電話が入った。キックバックの念押しと共に。
"Kalau bisa dipersulit, buat apa diberi kemudahan." 「困難にしてやれば金が転がり出てくる」という原理は、社内だけでなく、社会生活の中にも満ち溢れている。


「製造セクターへの外国投資は大きい伸び」(2005年12月5日)
今年1月から10月までのPMA投資実施の中で、製造セクターへの投資は32.7億ドルにのぼり、顕著な増加を示している。中でも最大は化学医薬品セクターで11.2億ドル、食品が5.3億ドル、家電機械金属セクターが4.4億ドルといった内訳。一方PMDNの方は9.2兆ルピアで、筆頭が飲食品の3.4兆ルピア、続いて繊維産業1.6兆、化学医薬品が1.5兆という上位三役。いずれも今年は昨年実績を上回るものと予想されている。ちなみに2004年年間実績は、PMAが28億ドル、PMDN10.5兆ルピアという数値。
アンドゥン・ニティミハルジャ工業相は、産業界から強く要請されている事業環境改善とハイコスト経済抑制を鋭意推進している、と語る。製品競争力アップと効率改善を事業者は行い、政府は誘導的な事業環境を育成していくことが課題であり、この年末には第二回目の輸入関税率ハーモナイゼーションが行われ、国内産業界の総合的な調和がさらに高められる予定になっている、と同相は述べている。


「経済閣僚リシャッフル」(2005年12月6日)
内閣リシャッフルの話題が続いており、やっとひとりの名前が登場した。経済チームの顔ぶれを変えることでイ_ア経済は好転するのか、というのが世間の関心だが、イ_ア経済の破壊は長い時間をかけて行われてきた。その発端は1967年、イ_ア人でない人たちによって経済建設の青写真が作られたときだ。1967年11月のジュネーブ会談の中で、インドネシアは安い値段で多国籍巨大企業にバギバギされた。
「フリーポートは西パプアの山を銅鉱脈と共に手に入れた。アルコアはボーキサイトの最大鉱区を手に入れ、アメリカ・日本・フランスの企業グループはスマトラ・西パプア・カリマンタンの熱帯林を手に入れた。スハルト大統領のサインが慌てて求められた外国投資法が、それらの掠奪行為を5年間無税にした。明白だが表向きは秘密裏に、インドネシアの経済コントロールはアメリカ・カナダ・ヨーロッパ・オーストラリア、そして忘れてならないIMFと世銀が根幹をなすIGGIの手に渡された。」
ブラッド・サムソンの発見を引用してジョン・ピルガーはそう書いている。
石油ガス以外の天然資源が国庫にもたらす2006年の収益は5.4兆ルピア(3.7%)。わずかこれだけの収益というのは、1967年のバギバギの結果なのだろうか?そして豊かな国々がイ_ア政府に借款を与えるためのIGGIが供与国からマジョリティの物品サービス購入をインドネシアに条件付け、マークアップされた価格で買わされたためにわれわれは高い買い物をした。借款の80%がその供与国に現金のまま還流した。借款は1,820億ドルの元利が既に支払われ、残高は800億ドルだと計算する者もいる。

自由化の影響
1988年の10月政策パッケージの結果、見る見るうちに銀行が2百も増加した。払込資本金100億ルピアで誰でも銀行が設立できることをこの政策パッケージが許したため、その2百近い銀行は、金融事業の背景を持たない大商人が設立し、所有し、経営した。国民が委ねた資金をそれらの銀行は、自己企業グループ内で会社を設立することに、しかも水増し金額で設立するという形で悪用した。銀行は当然債務不履行を抱えた。ところが中央銀行はそれらの銀行オーナーを罰するどころか、第一手形割引ファシリティを与え、それでも債務の改善されない銀行には更に第二手形割引ファシリティを提供した。それでも救われない銀行はラッシュに襲われ、取り付け騒ぎを鎮めるために政府は、中銀流動資金援助ローンと名付けられた資金注入を144兆ルピアも行った。その対象となった銀行の監査を行った会計監査庁は、資金の90%は回収見込みなし、と評した。
金融騒乱が鎮まったとき、多数の銀行が重度の経営難に陥っていることが明らかになった。政府は資本再建ボンドを銀行界に渡して援助した。その総額は元本430兆、金利600兆ルピアだ。それらの銀行は政府の所有に移され、その後政府は安い価格でそれらを売却した。政府に対する巨額の債権がそれらの銀行の中に抱えられているというのに。たとえばBCA。政府の資本再建ボンド60兆を持ったまま、政府は10兆ルピアでその所有権を売り渡した。つまり買う方は、10兆ルピアを払って政府の負債60兆を手に入れたことになる。政府が負債を完済するまでの金利負担は、10兆ルピアではきかない。2006年度政府予算内で政府借入れの影響額は140.2兆ルピア。金利76.6兆、元本返済分63.6兆ルピアという内訳になっている。

絶対自由化
「大衆生活の必要を満たす生産分野と国にとって重要な物品は国が掌握し、最大の国民福祉の用に供する」という45年憲法第33条規定の具体的な内容は、イ_ア共和国成立以来1967年まで存在しなかった。規定として編成された具体的な明細は、外国投資に関する1967年第1号法令に盛り込まれたものが最初だ。その法令第6条1項には、「外資に対する完全閉鎖事業分野は、国にとって重要でまた大衆生活の必要性を司る次のものである。a。港湾 b。公共用電力生産・送電・配給 c。電気通信 d。教育 e。航空 f。飲用水 g。公共用鉄道 h。原子力発電 i。マスメディア 」と記されている。そしてそれらのサブカテゴリーでの外資シェアは5%を超えないこととされていた。一年後、第68号法令は憲法第33条の文言とその詳細を繰り返したが、外資シェアは49%にまで引き上げられている。1994年第20号政令はまたまた同じことを繰り返したが、外資は95%までのシェアで所有し、掌握し、経営できることにされた。暫く前にアブリザル・バクリ経済統括相がインフラサミットを開催したとき、イ_ア団結内閣はあらゆる生産分野における外資百%所有を許可する、と述べている。それから程なく、スギハルト国有事業体担当国務相が国有事業体サミットを開催したとき、政府は基本線で事業体を持つべきでないとしており、民営化は継続して進められる、と語っている。これは政府が資金を求めているためでなく、思想的原則の問題だ、と言うのだ。インフラ実現は政府が行わず民間に委ね、民間は損益計算をベースにインフラ建設を行うかどうかを決定する。インフラ利用者は使用料(toll)を支払う。使用料は投資者に妥当な利益をもたらさなければならない。これはインドネシアにハイコスト経済をもたらすのに一役買うことになる。
国民は石油燃料を、ニューヨークマーカンタイルエクスチェンジが決めた価格で買わなければならない。だから石油燃料大幅値上げが行われた。そのベースは「石油ガス燃料価格は市場メカニズムが決める」と宣詔している石油ガス法だ。憲法法廷は石油ガス法のその規定を憲法第33条違反と認定したが、政府はそれを何事もないかのように無視している。

コルプシ
コルプシ行為は一層猛り狂って持続的に行われている。コルプシは単に他人の財産を盗むという枠を超え、思考法を蝕んでいる。もはや思考や理性は捻じ曲がってしまっているのだ。古代ギリシャの思想家が言ったコラプティッドマインドである。インドネシアでの応用は、なじみのない用語の使い方に表れている。理由なしに人を逮捕することを「保全する」と言い、ひっぱたくことを「教育する」と言う。外国借款を「開発収入」と呼び、債権国を「援助国」と称する。イ_ア消費者が支払う石油燃料価格とNYMEX価格との差を「補助金」と名付け、それに続く思考の流れは、政府が支出するべき現金という内容に置き換えられていく。

この評論は、イ_ア経済に対する適正な解決のための診断を描くことを意図したものだ。その解決はこれまでのところ、インドネシアの大臣たちがアシスタント兼実行者として手助けしているCGI、世銀、ア開銀、IMFによって与えられているものである。[ 前開発企画庁長官、クイッ・キアンギ ]


「産業政策履行における歪み」(2005年12月8日)
繊維・衣料・履物などの労働集約産業がシステマチックな没落の道を歩んでいる。日々の生活にそれらを必要とする2億2千万もの人口を抱えたインドネシアでそのような現象が起こるのは、実に不思議なパラドックスと言える。まして労働賃金は比較的まだ安いインドネシアだというのに。まだ十分に開花しないまま、それらの産業が斜陽の道をたどっているのはどうしてか?産業政策通りにそれらの業界が発展していれば、このような事態にはならなかったのではないか?つまりこれが、イ_アの産業開発は計画的開発ではなく、偶発的開発という要素の方が強かった、ということのあかしのひとつなのだ。
インドネシアの産業はグローバルな現象に対して脆弱で、動揺に対する抵抗力に欠けている。インドネシアの産業発展段階から見れば、上であげた諸産業は、少なくとも国内市場でメインのシェアを享受できているはずだというのに。インドネシアの産業政策はどうなっていたのだろうか?インドネシアの工業化戦略はほかの発展途上国とそれほど違ったものではなかった。輸入代替産業がパイオニアとされた。当初は手厚い保護政策が取られ、パイオニア事業者たちがあるレベルまで成育するよう支援される。その後徐々に保護が弱められ、規制緩和が始まって輸出型産業へと転換していく。そうして究極的に、国内産業は自由市場を原理とするグローバル化に直面する。
この流れは多くの発展途上国が経験し、そしてかれらはそれを乗り越えるのに成功している。だから政策が正しいのに結果がそうなっていないのであれば、政策履行に問題があることが考えられる。政策実現レベルが低いということは、政府の産業界に対する指導が弱い、つまり政策が求めている行動を産業界が取っていないということではあるまいか。言い換えれば、事業者はただ奔馬のように方向性を無視して駆け回っているだけで、だからインドネシアでの政策履行には大きい歪みがあるいうことだ。
30年前に描かれた産業開発青写真の結末が依然として遠いところにある。自動車産業はいまだに保護の中におり、インドネシア産自動車は実現していない。部品産業も成長しておらず、輸入コンテンツの高比率がそれを証明している。世界ではグローバリゼーションの波が揺れ動いているのに、イ_ア産業界は執拗に保護と補助金を政府に求め続けている。工業化の初期段階のままの、政府の保護下でしか製造産業が進展しないという形が、いまだに国内を覆っている。製造業界のR&D経費は総生産コストのわずか0.2%。競争力をつけるための技術革新がそれでどれだけ行えるというのか?イ_ア国内産業の崩壊原因のひとつは間違いなく技術面での後進性にある。
産業政策履行レベルの低さをもたらしている要素が五つある。
1)政策自体が部分的で、統合的包括的でない。製造産業セクターはほとんどあらゆる経済セクターと密接に関連しているというのに。そのために他のセクターで往々にしてボトルネックが引き起こされ、結局政策自体が完璧に機能しない。
2)告知社会化の不足。大規模な政策も、それに直接関連する側、特に事業経営者、に十分伝わっていない。これは役所側が十分な予算を持っていないことにも関係している。関連省庁間のコーディネーションも弱い。一般的に業界への通知は行政現場職員が手の届く範囲で行っているのが実情。
3)コルプシの激しさ。行政機構内での猛烈なコルプシで、経済政策が往々にして骨抜きにされている。他の国での立証済み成功例を持ってきても、腐敗国では一片の実績も残さずに過ぎ去ってしまうことが起こる。コルプシは政策策定の場から始まり、その履行や監督面にもついてまわる。
4)利害が政策履行を歪める。保護は成長する見込みのある産業に対して与えられるべきであり、期間の限定と発展段階の測定および進度評価がなされなければならない。崩壊を遅らせるための保護は癒着でしかない。
5)事業者の視野が、短期間に利益を手にすることを優先している。イ_アの事業家は産業人というよりもむしろ商人であり投機家だ。真の産業人は発明と改革精神を豊かに持っている。イ_アでは利益を求める際に財務面の操作に走り勝ちで、効率アップのためのメカニズム操作にあまり向かわない。
これからの産業は、各事業者が決めていくことになる。事業者は長期的視野と成熟した観点から、不確定な将来を洞察し、進歩的に立ち向かわなければならない。今後政府に保護と補助金を求めるのは一層難しくなる。グローバル化を踏まえた政府であればあるほど、国内産業保護政策から離れていくのが趨勢だから。


「みんなやってる社内コルプシ:倉庫編」(2005年12月12日)
MHG社は家庭用品組立メーカーで、製品の半分以上を輸出しており、そのためほとんど毎日、製品をコンテナ詰めする作業が行われている。平均10本以上のコンテナが毎日、MHG社の製品倉庫からタンジュンプリウッ港あるいはチャチン地区にある通関業者契約倉庫に送り出されているのだ。同社が輸出向け生産量を増やす計画を立てたことから、輸出担当マネージャーは通関業者をもう一社増やした。MHG社が新たに契約を結んだ通関業者は万全の業務態勢を整えて、初出荷の日を待った。そしてその日がやってきた。
初日の作業計画は日本向けコンテナ3本。倉庫プラットフォームにトラック運転手がコンテナを着けると、倉庫担当者がフォークリフトを使って貨物を積み付け、そのあとコンテナ扉を封印する。そして出荷OKの指示が出たら、トラックが港に向けて出発する、というのが業務の流れ。トラック運転手は通関業者の社員でもある。そして当日の午前9時ごろ、空コンテナが倉庫の前に勢ぞろいした。ところがMHG社倉庫担当社員たちはいつまでたっても作業を始めない。出荷される予定の製品はプラットフォームの奥に山積みされており、フォークリフトも少し離れた倉庫の隅に置かれていて、積み込み準備は整っているようにしか見えないのだが、作業員たちは別に何かで忙しいという雰囲気もなく、みんながなんとなくリラックスしている。作業は開始されず、時計は10時そして11時と無為な時を刻む。
その日が初仕事だということで、通関業者側のマネージャーが情況を見にやってきたのが11時過ぎ。何一つ仕事がなされていないのを見て驚き、運転手に尋ねた。
「到着が遅くなったのか?」
「いいえ、朝9時過ぎに到着したあと、こうやってじっと待ってますよ。」
「工場側がまだ準備してるのかな?」
「準備は整っているようにしか見えませんが。ほら、ここの倉庫の作業員はみんなああやってぶらぶらしてるばかりです。」
「むむ・・・。」
通関業者マネージャーは、既に顔合わせを終えていた倉庫の出荷担当主任を探した。
倉庫事務所に入って行くと、お茶を飲んでいた出荷担当主任が目ざとくかれを見つけて手招きした。握手し、お定まりの社交辞令を交わしたあと、主任がひそひそ話しに切り替えた。当惑顔が一瞬通関業者マネージャーの顔をよぎったが、その後は終始にこやかな顔で会話が続けられた。帰り際に通関業者マネージャーの言葉がちらりと聞こえた。「・・・・いやあ、今日はうっかりして用意してこなかったので。明日、今日の分も持たせますから、今日はなんとかお願いしますよ。・・・・」
翌日から、MHG社にコンテナを運んでくる運転手のポケットには、例外なく封筒が収められていた。


「アセアンシングルウインドウ協定成立」(2005年12月12日)
12月9日、クアラルンプルで開催された第11回アセアンサミットで、非公式経済大臣会議から三つの協定が公式に生まれた。2010年のアセアン自由市場実現を支える主要メカニズムの一部がこれだ。この三協定とは、アセアン域内統合通関システムに関するアセアンシングルウインドウの確立と実施、電気製品電子部品標準化、建築分野におけるプロフェッショナル活動標準化。アセアンシングルウインドウは、1998年3月1日のアセアン通関協定に新たな幕開けをもたらすもので、2005年9月28日にビエンチャンで開かれた第37回経済大臣会議決議のフォローアップでもある。
このアセアンシングルウインドウ方式が始まれば、アセアン域内に外から入ってくる輸入品は、加盟国のひとつが輸入通関を行ったあとは域内での動きが自由に行えるようになる。そのため各加盟国での輸入通関の規準とレベルが均一化される必要があり、加盟各国は早急にその標準化に着手する予定になっている。今現在イ_ア国会で審議されている改定通関法案の中には、第三者による通関を承認する条項が含まれている。加えて政府は、この新システムのためのパイロットプロジェクトを行う予定にしており、そのプロジェクト場所としてバタムが選ばれる可能性が高い。2006年にバタムでのトライアルの修正を行いながら、状況が許せば他の港への展開が進められる見込み。
電気製品電子部品標準化については英語名称がAgreement on The ASEAN Harmonized Electrical and Electronic Equipment Regulatory Regime となっているもので、そのカテゴリーアイテムの域内通商に対する障害を取り除く際の基本となるもの。


「合板産業が衰退」(2005年12月13日)
南カリマンタン州の合板産業が衰退の一途をたどっている。かつては活況を呈していた18の合板工場のうち5つが既に操業を止めた。原材料である材木供給が下降傾向を続けていること、そして中国やマレーシアなどの競合国に価格的に引き離されてしまったことなどのために、同州からの合板輸出は10%も低下している。国際市場における価格競争で、中国やマレーシア産はM3あたり240から260米ドルに対してインドネシア産は280から300米ドルであり、また船積み経費が競合国は25ドルなのにインドネシアは40ドルもかかっている。おまけにインドネシア産合板は防黴処理が不十分とのクレームも折々発生しているようだ。インドネシア森林ソサエティ南カリマンタン副支部長は、政府からの税制インセンティブと実業界が負担している不法徴収金の抑止推進がなされなければ、業界の下降トレンドは更に激しくなるだろう、と予測している。中でも既に構造的問題になってしまった木材密輸出防止を政府が真剣に行わないかぎり、競合国は潤沢な木材資源をインドネシアから廉価に調達し、国際市場でますますシェアを拡大していくのは疑いもない。同副支部長はそうコメントしている。


「みんなやってる社内コルプシ:購買編」(2005年12月19日)
ある工場では、メイン原料入荷の安定を図るためにサプライヤーを増やした。生産量が急激に増えているこの工場は、従来のように一社だけに頼っていると、そこの納入遅れで工場のアウトプットが大きい影響を受ける。突発的市場調達をすればコストがあがる。一定コストで安定的供給を受けるには、長期契約が一番良い。こうしてこの工場は、同一原料のサプライヤーをもう二社増やし、一挙に三社とした。
サプライヤー選択は工場経営陣がすべての決定を下した。その手足として動いたのが購買部門であるのは言うまでもない。その原料がサプライできそうな相手を十社ほど洗い出し、サンプルと見積もりを取り寄せたうえ、経営陣が選び出した候補者四社に対して契約書を示しながら交渉し、こうして最後に残った二社と購入契約が結ばれた。残念ながら価格は、従来からのA社と新規のB社は同じだが、もうひとつのC社は少し高い。だがC社は生産設備に大きい投資をしており、そのおかげで生産ロットごとの品質バラツキがきわめて小さいことを経営陣が理解していたため、価格高に対する抵抗はほとんどなかった。言い換えれば、A社とB社の原料を使ったときは製品不良率が高まる可能性が高いことを、それは意味している。
新サプライヤーからの納入が始まる前に、工場の購買と受け入れ倉庫のマネージャーが頻繁に相手方と業務の進め方についてコンタクトを持った。そして例のごとくひそひそ話しが交わされた。お互いに自分の会社の職務をつつがなくこなしていくためには、相互の理解と協力が必要であり、そんな関係を打ち立てるためには円滑費なしには済まない、というインドネシアの常識がそこでまた語られた。B社の営業担当者は即座に諒承した。ところがC社の方は、個人的には十分理解しているものの、現実にそれを行うのは難しい、と言う。C社経営陣はこの種の行為にきわめて否定的で、会社からそのための経費が出る可能性はゼロに近い、とC社の営業担当はこれまでの経験を物語った。その後納入が開始され、ニ三ヶ月は順調に過ぎた。B社からは期待通りのものが実現しているのに、C社からはなにもない。C社の担当者にほのめかせても、色よい話がない。こうしてある日、工場の購買マネージャーと倉庫マネージャーの間で、短い会話が交わされた。「そろそろやるか?」「よし、やろう。」
B社からの10.3トンの納入があった月、倉庫の受け入れ帳簿には10.5トンと記された。その月、C社からの10.5トンの納入は帳簿に10.3トンと記された。そんなことが数ヵ月繰り返された後、購買マネージャーはB社を訪れ、円滑費がもって出てもおかしくないのではないか、と要求を出した。要求はすぐに呑まれ、B社は納入時に発行する送り状の水増しを即座に始めた。水増し量は、誤差と思える程度にとどめること。実態は不足しているというのに、検収はすべてOKになった。誤差と思える程度の不足が毎回発生するC社から苦情が来たが、それをコルプシ策謀だと立証することは、だれにもできなかった。


「事業投資が直面する四問題」(2005年12月22日)
「既に何度も起こっている爆弾テロや、このクリスマスから年末にかけてのテロリスクは、インドネシアにいる外国インベスターの行動に影響を与えており、かれらは投資した資金が大きな被害を蒙らないように神経を使っている。しかしテロリストの脅威はどこの国でもありうることであり、かれらはインドネシア政府に何らかの保証をしてくれという要求は出していない。」12月15日にバリのヌサドゥアで開催されたインドネシアインベスターフォーラムの合間に、ムハンマッ・ルッフィBKPM長官がそう語った。
また同長官は、投資家が直面している問題が四つあり、それは法確定、国税と通関、インフラ、労働構造である、とも説明している。法確定については国内外の事業者が事業を行う上での不確定性をいまだに強く感じていること、国税と通関についてもさまざまな役所が同じものに対して何度も税課金を徴収するため、製品の競争力が低下すること、などをインベスターたちはあげている。それらに対する答えのひとつが今検討中の投資法案であり、これが制定された暁にはインドネシアに誘導的な投資環境が醸成されるベースとなる。投資認可手続きには30日もかかっているものが、新規定では最大6稼働日で完了されることになる、とのこと。


「みんなやってる社内コルプシ:生産〜品管編」(2005年12月26日)
「昨日の生産分1,382個はそこに置いてあるから、よろしく頼むよ。うちの取り分は24個だ。」
「よし、こっちの分け前はいつも通りだな。こっちは現金さえもらえりゃいいんだから。」
生産部完成工程の職長が品質管理の職長と会話している。はて、何をしようと言うのだろう?この工場では家庭用電圧安定器を製造している。
後で品質管理の職長が部下に、生産部の職長の言葉を繰り返した。その日の夕方、品質管理部門から生産部に35個の不合格品が戻された。本当に規準を満たさない11個と、まったく問題のない24個が逆戻りし、日報には不合格品35個が生産工程に戻されたことが記載された。
35個を受け取った生産部は11個を修正のためにまたラインに戻し、24個は部品置き場がいっぱいだという理由で製品倉庫に預けた。製品倉庫主任もこのコルプシ策謀に一口乗っているため、倉庫がどんな状況であろうとノーは決して言わない。こうして二ヶ月ほどがたち、生産部完成工程の職長が倉庫主任に連絡した。
「X月X日の24個は今日、出荷できるかな?」
「ああ、今日はOO方面にトラックが三つ出る予定になってる。かなりの量だから、分割する必要もない。」
「じゃあ、いつもの住所にその24個を下ろしといてくれ。謝礼はいつもと同じだ。」
倉庫主任はオッケーの言葉と共に行動を開始した。配送係りから今日の予定を確認する。そして4百個というロットが積まれるトラックに24個の追加を指示した。大手電気店の倉庫と中級卸販売店という二ヶ所に加えてもうひとつ別の行き先が運転手に指示される。配送伝票が付かない24個がそのトラックに積み込まれた。会社の正門ゲートを通る際、警備員は配送伝票の数字を見、トラックの荷台を一瞥しただけで、OKを出した。
こうして白昼堂々と闇から闇に移された一級品質の製品は、市場小売価格の50%から80%引きで一般商店に持ち込まれたり、あるいは住宅地をピックアップで回る巡回商人に売り渡され、超廉価で最終消費者の手に渡っている。


「来年の保険業界」(2005年12月28日)
ロスレーシオの増大が事業利益の大幅な減少を招いていることから、保険業界は来年から保険引受をセレクティブに行う傾向を強めようとしている。「利益確保のためにあらゆる支出を抑えること、特にクレーム支払いを減少させて費用効率を高めることは重要なステップであり、リスク選別を厳しく行い、また競争力のある保険料率を設定することも避けられない戦略だ。」と業界者は語る。リスク選別とは保険加入申し込みから証券発行までのプロセスを、厳しいチェックをかけて行っていくことを意味している。
2005年の保険クレーム多発は、保険料率設定ファクターであるロスレーシオの増大をもたらした。今年の自然災害の多さのために、ロスレーシオは40%をはるかに超えている。ロスレーシオポジションが上がっているために引当金が増加し、結果的に利益が削り取られているのが実態で、ロスレーシオが50%を超えれば利益がほとんどないも同然となるのは人件費をはじめとする事業経費が高いから、とのこと。
大蔵省のデータによれば、保険業界が2004年に支払ったクレームは5.2兆ルピアで、2003年の5.3兆とほとんど横ばい。また一般保険協会のデータは、2000年が5.1兆、2001年は跳ね上がって5.7兆、2002年5.2兆という推移を示している。一方でプレミアム収入は顕著な増加を見せており、2000年6.9兆ルピア、2001年10.3兆、2003年14.5兆、2004年16.7兆という上昇カーブを描いている。