インドネシアビジネス経済環境情報2006〜08年


「みんなやってる社内コルプシ:生産〜営業編」(2006年1月4日)
MDFを素材にスピ−カーボックスを製造していくつかの組立メーカーに納めている木工工場G社は、しばらく前からテレビ用キャビネットの生産を始めた。営業担当が中級家電メーカーとの商談で手に入れてきた成果だ。原材料はほとんどがスピーカー用のものを使える。生産技術部門がSOPを作って現場に流した。だが、計画された製造プロセスには弱点があった。MDFの板からテレビ用キャビネットのパーツだけを取るように計画されたため、歩留まりには無駄があった。しかし工場内ではそれが標準となってしまったので、投入資材量と生産アウトプットの比率はその公式が使われることになった。
生産ラインはすぐにその無駄に気付いた。日によって流す製品を変えるだけの単一生産ライン方式だから、そのようなことは良くわかる。現場のリーダーと幹部たちが額を寄せ合って相談した。キャビネットパーツとスピーカーパーツをうまく組み合わせて同じ一枚の板から取れば、全体のアウトプットは増加する。じゃあ、どのように取ろうか?アイデアを出し合って最大効率の板の取り方が考案された。さあ、これで行こう。与えられた木取り図面は二度とファイルから取り出されることがなくなり、しかしそれに代わる図面も作られなかった。生産ラインは図面を作ったりしない。このアイデアは生産管理者にも生産技術担当者にも秘匿された。
こうしてひと月にスピーカーボックス3千個とテレビ用キャビネット3百台が生産計画数量であるこの工場の中に、スピーカーボックス3千5百個ができあがるようになった。その5百個は従業員たちの合理化の成果だが、会社の管理の外にある。この成果をどのように自分たちの実利に結びつけるか?それがかれらの次の課題となった。だがその5百個は言ってみれば「ただの箱」でしかない。苦労して会社の外に持ち出したところで、売れるかどうかもわからない。それを確実に買ってくれるのは、その工場から毎月それと同じものを買っている組立メーカーだ。そこまで考えが煮詰まってきたとき、解答はもう眼前にあった。営業を巻き込むこと。営業担当者は二つ返事でその計画に乗った。
営業担当者が選んだ組立メーカーはL社。ここはすべての決裁がワンマン社長の手に握られており、その社長は儲かることなら清濁に遠慮しない性格をしている。K社からの1,000個の注文に1,300個が出荷された。納品書の記載はもちろん1,000個。納付した翌日、営業担当者がワンマン社長に電話を入れた。
「社長、実は昨日の納品にちょっとした手違いがありました。1,000個のご注文に1,300個が出てしまって・・・」
「おお、そうか。ありゃプレゼントじゃなかったのか?」
「いえいえ、滅相もない。わたしと出荷担当の連中は会社から大目玉ですよ。」
「じゃあ、引き取りに来るかい?」
「いやあ、そのためにトラックを動かすと、また上が好い顔しません。どうです社長、特割で引き取りませんか?」
「そうか、プレゼントだったらよかったのになあ。何割引だ?」
「3割引でどうですか?」
「そんなもの、割引と言えん。少なくとも半額だな。」
「じゃあそれで、わたしの口座番号xxxxに300個分だけ振り込んでください。あとでわたしが会社と決済しますから。1,000個口はインボイス通りで。」
それ以来、この形の取引は延々と続けられている。自ら行った合理化の成果を享受している生産と営業の従業員たちは、会社の物を盗んだわけではないから、これはコルプシに該当しない、と胸を張って語っている。


「プルタミナ独占に終焉の年」(2006年1月5日)
従来プルタミナの看板だけだったガソリンスタンドに、外資企業の看板が加わった。2005年10月末、カラワチにオープンしたシェルのガソリンスタンドを皮切りに、12月20日にはチブブルでマレーシアのペトロナスがガソリンスタンドの営業を始めた。石油ガスに関する2001年第22号法令で方向付けられた石油燃料川下事業自由化の目に見える姿がそれだ。
30年以上にわたって国が行ってきた国民に対する石油燃料供給が自由化される。法令では、完全実施が2005年11月23日とされていたが、準備不足ということで2006年1月1日に延期された。国が石油燃料を独占的に取り扱う機関を作り、プルタミナと命名したのは1971年第8号法令による。当時、国内石油消費はまだ数百万キロリットルだったが、今それは6千万キロリットルにまで膨らんでいる。プルタミナは国民に対する石油燃料供給システムを全国規模で作り上げた。一日百万バレルの能力を持つ七つの製油所、全国に散らばる2百以上のトランジットターミナル・移送施設・ストレッジデポ、数千のガソリンスタンド・ガソリン軽油パッケージディーラー・ガソリン軽油パッケージエージェント・消費者貯油所・基地、そして数百隻のタンカー・バージ・タグボートと港湾施設。そのシステムを動かしてきた数千人の人材とサプライチェーンマネージメントのノウハウ。しかし年々4〜5%の伸びを示す消費量増大で七製油所の能力は限界に達し、1990年代末ごろから製油所新設の必要性が叫ばれるようになった。それに呼応して投資の意思を表明した民間インベスターは24社にのぼる。だがそれはひとつも実を結ばず、プルタミナは輸入を増やす方向で需給バランス対応を図った。今や輸入分は総需要の20%を超えている。輸入量の増大で超大型タンカーが使われる方向に向かったが、既存港湾施設でその船は使うことができず、海上ストレッジを設けることになる。ランプンのスマンカ湾とシトゥボンドのカルブッにフローティングストレッジが作られた。そこから製油所へはパイプラインでの油送が理想的だったが、その設置はご破算になり、結局トゥバンに国が製油所を設けることになった。海上油送もそうだ。1990年代はじめまでは国民系海運による石油運送の確立が企画されていたが、これもうまく行かず、今では40%が外国系タンカーで運搬されている。プルタミナが計画した石油燃料供給から小売ネットワークにいたる構想の多くが実現せず、つぎはぎだらけの政策と化してしまったことで、国民消費者への石油燃料供給は多くの歪みを包摂してきた。そしてこのきわめて長大なサプライチェーンの包括的コントロールがうまく経営できなかったことから、闇流通ルートが作られ、闇マーケットが成育するのを防ぐことができなかった。
2006年1月1日から構造的な変化が生まれる。石油燃料供給事業に32社が参入する予定だ。16社は大規模販売、10社が中間販売、3社が製油加工、3社が運輸業の認可を既に得ている。2001年第22号法令では、川下事業認可は、精製、輸送、貯蔵、販売の四事業が認可の対象となっている。かれらに与えられている条件の中には、インフラファシリティを自分で設けること、燃料調達と流通を自分で行うこと、遠隔地への供給を行うこと、国の燃料備蓄の一端をになうこと、などの義務付けがある。
国の燃料備蓄安全基準が23日分の消費量というこれまでプルタミナが保持していたものは、自由化によって変貌していくにちがいない。これまでのやり方、見方、考え方が2006年に大きい変化に見舞われるであろうことを、インドネシアは十分に予期しなければならない。


「2006年もインドネシアは優先監視リスト国」(2006年1月6日)
国際知的財産権同盟(IIPA)が米国通商代表部( USTR )に対し、インドネシアを優先監視リスト(Priority Watch List)対象国に据え置くよう、2005年12月2日に書面でリコメンドした。USTRは昨年4月にインドネシアを優先監視リスト対象国に指定したが、知的財産権保護活動に進展があったとして12月に定例外見直しを実施した。その際USTRは知的財産権保護に関わる法執行でインドネシアが達成したことについての報告を12月2日までに提出するよう求めたが、IIPAは傘下メンバーからの、法執行が効果的でなく犯罪行為を防止するのが不十分である、との報告を得たことから、USTRに対してそのリコメンデーションを出したもの。IIPAの書面には、インドネシアで2004年に1.97億ドルの推定損害額を出したCD・VCD・DVD・CD−ROMなどの光学ディスク海賊版は依然として横行している、と記されている。
定例外見直しに関してIIPAが提出した分析では、三つのポイントが問題視されている。(1)法執行者による光学ディスク製造施設への監視は行われているが、オーナーあるいは経営者に対する摘発は行われておらず、また政府も製造施設リストを持っていない。(2)インドネシア政府はUSTRに対し、知的財産権タスクフォースを編成すると約束したものの、2005年12月2日現在いまだにそれは実行されていない。(3)不法コピーソフトを使っている消費者に対する法的摘発がいまだに行われていない。IIPAはそれらのポイントを実施不十分と判断し、インドネシアを従来通り優先監視リスト対象として据え置くよう、主張している。


「みんなやってる社内コルプシ:管理職編」(2006年1月9日)
中間管理職は会社の側に立って働くものという考えはほとんど幻想。会社は資本家が金儲けのために資本を投下し、そこで行う事業から利益を手中に収めるためのツールという考え方はいまだに根強く、会社経営者=オーナーが社会公器である自分の会社からどれだけ財を自分の懐に抜けるかということを一生懸命努力するというのがこの地における一般的会社経営コンセプトであり、資本主義黎明期のそんなコンセプトが根強い基盤をなしているため、組織をどれほどモダンな形態に作ろうが、労使関係は伝統的な不信と敵対のメンタリティに彩られ、事業の中にGCGは定着せず、国税もいっしょになってその社会公器からどれだけ収奪できるかをオーナーと競争しているような現象がひきもきらずに出現する。
中間管理職たるマネージャーはそんな構図の中で、下っ端従業員と同様にオーナーに使われている者という自分の立場を基盤に据え、時と場合によってこうもりよろしく鳥になったり獣になったりしながら、オーナーが行う会社の財を抜くことをお手本にして、自分もオーナーの目障りにならないよう努めながら会社の財を抜くことに専心するというのが普遍的。今はさすがに、人夫頭のような職務の与え方をされるマネージャーはほとんど見かけず、限られた範囲の中で5つの経営要素を自由に駆使できる権限を与えられているが、それでも上級経営陣からのアカウンタビリティ要求とそのチェックは避けることができない。5つの経営要素とは言わずと知れた、人・物・金・時間・ファシリティだが、この地に伝統的に存在する「表と裏の使い分け」「他人の内懐に踏み込まない」「表の顔を立てる相互尊重」「整えられた外面に敬意を払う」といった文化に影響されて、与えられた権限がその限界の範囲内であればどれだけ公私混同されようとも上級経営陣はそれをあまり問題にしないという傾向がある。おかげでマネージャーたちは権限に固執し、さまざまな失敗や不手際、積もり積もった腐敗などの澱の掃除がマネージャーの首切りの時という一面もそこから生まれているように思える。切磋琢磨し、互いに批判しあって、正しくより優れた方向に人間を伸ばしていくという価値観はそこから生まれにくい。
さて、組織内上級者の公私混同は、程度問題とはいえ、どこにでもあるもの。ジャカルタで働くマネージャーが自分の副業のためにチアンジュルの土地を買い、そこで人を使って養鶏を行うために、土地購入手続きや役所への手紙、あるいは契約書作成などを会社で、しかも自分の秘書に手伝わせてやっていた、ということも稀でない。それをするための事務用品・事務機器の使用はすべて無料だ。秘書も、会社の仕事よりも自分の上司の私用を優先していたりする。それが公序良俗に反していても、良き人間関係を維持することはそれ以上に大切なことなのである。
マネージャーが、ジョクジャ支店で会議があるからということで出張した。出張旅費清算の中に、かれの名前の記された月曜日のフライトの航空券コピーが添付されていた。戻りは火曜日で月曜の夜一泊した三星級ホテルの領収書も付いている。ところがかれはなんと、土曜日から一家総出でバスに乗ってジョクジャに遊び、支店には月曜の夕方数時間会議に出席したあと、また夜行バスでジャカルタに戻ってきたというのが事実。
外国からバイヤーが出張して来たので、マネージャーが夜の接待を務めた。普段はまったく手の届かない高級レストランにご案内し、豪華な食事に舌鼓を打った。バイヤー側はふたりだったので、かれはそのチャンスを逃すことなく、自分の副業の商売相手をそこに招いた。こうして会社とは無関係の人間を交えた接待側は大いに飲み食いし、外国人と談笑して楽しい一夜を過ごした。すべての請求が会社に回されたことは言うまでもない。


「中古品」(2006年1月11日)
barang bekas、略称 babe あるいは rangkas 。意味は中古品。
インドネシア政府は中古品の輸入を禁止している。貿易法令で、輸入品は新品に限る、と謳われている。ところが実態は、日本からの中古市バスや電車をはじめ、工場の機械類から工事機材、コンピュータ、家電品から古着、はては古紙から廃棄ゴミにいたるまで、中古品で満ち溢れている。法令で禁止されていても、それなりの理由があれば監督官庁の承認を得て合法的に輸入できるのだが、国内市場はいまだに価格重視であまり品質にはうるさくないため、再販用中古品は国内産業の首を絞めることになるので承認はほとんどおりない。ところが商人たちは、だから中古品を国内に入れないのでなく、そうだからあえて密輸入を行っている。
国内には中古品流通ルートが確立しており、そこで大勢が定職を持ち、日々の暮らしを成り立たせている。オルバ政権瓦解以後、一般庶民の経済性は概して下降の一途をたどり、貧困者数は突然減少したかと思えばまた突然増加する。経済的余裕のない一般庶民に、中古品というものに対する感情的な排斥感はあまり見られないようだ。
空を中古旅客機が飛び、線路を中古電車が走り、中古車が街路を埋めている。中古の四輪二輪車もショールームの片隅に置かれ、新車と同じようにローンが組まれる。貧困層は新車に絶対手が届かないから、中古品は貧困者だけが買うという考えは間違っているようだ。四輪や二輪の部品やアクセサリーも、解体中古品が数多い。解体された車はほとんどが盗品だろう。衣料品、履物、家庭用品、家電品、文房具、家具、什器など、新品はあるが中古品はない、という商品はないのではあるまいか。壊れたラジカセをあなたが表のゴミ箱に捨てれば、それは回りまわってどこかの廃品市に顔を出す。
首都ジャカルタにも、いくつかの廃品市がある。東西南北ジャカルタ市のいずこにも、廃品売買センターとなっている廃品市がある。南ジャカルタではタマンプリン、西ジャカルタはチュンカレンのカマル、東ジャカルタはカンプンムラユなど、各地区で名の知れたエリアが存在しているのだ。ところがそのそれぞれが異なる性格を持っていると、この世界を股にかけて十数年の商売人が説明してくれる。「そのエリアに合わない、間違った品物を持って行っても、ほとんど売れない。ところがそのエリアに合う品物を持って行けば、右から左だ。」と語るかれが引き合いに出したものはモンブランのボールペン。チュンカレンに中古の本物を持って行っても、そんなものに何十万も払うやつはいない。だから贋ブランド品を持って行って安く売る。ところが南ジャカルタだと金があって物がわかるから、中古の本物が35万ルピアで売れる。チュンカレンの特徴は、テレビ、ラジオ、VCD、冷蔵庫などの部品が2千から1万5千ルピアで飛ぶように売れていること。中古スピーカーでも1万から10万ルピア。ところがマエスティッ市場に近いタマンプリンでは、2百万ルピアと値付けした中古のブランド品を買う客がいる。こちらではカーラジオ、コンピュータ、カメラ、携帯電話、骨董品までが売られていて、他の廃品市との違いを見せ付けている。東ジャカルタだと古本や古カセットテープ、履物、揚水ポンプからアンテナなどと、また性格が違っている。
そんな廃品市に並べられている中古品が機能するかどうか、それは何の保証もない。売っている方は屑拾い屋から集めてきただけであり、修理どころかテストすらしていないというものが大半。ところが、この廃品市をはじめ、中古品に対する国内需要は伸びる一方で、新品需要に拮抗する市場を形作っている。


「みんなやってる社内コルプシ:人事編」(2006年1月16日)
金あるいは縁故が従業員採用の決定要因となっているのが当たり前という状況の中で、P社は従業員採用に人材リサーチ会社を使っている。求人広告には会社名を出さずにリサーチ会社に応募させ、集まった応募の中から人事部門との合議下にふるいわけを行い、網に残った者に面接や心理テストなどを実施してさらにふるい落とし、求人数の二倍から三倍の人数を推薦させて最後にP社経営陣の面接に至る。本来なら社内でもできることをわざわざ高い金を払ってリサーチ会社にやらせているのは、自社の社員に汚職のチャンスを与えないようにしたいという経営者の親心だが、親の心子知らずはここにも出現している。
物品やサービスを業者から買う場合、買う側の担当者が手数料を要求するのはインドネシアで常識。その手数料は買う側の会社から支払われる金を源泉としているから、ハードネゴをしてそんな金銭的余裕をなくしてやれば手数料は支払えなくなるかと思ったところ、しばらくすると納入する物品やサービスの手抜きコストダウンを行って帳尻を合わせようとするので、ゆめゆめ油断は禁物。
P社の人事部門はリサーチ会社から十分な上納金(手数料)が入ってくればそれで十分なので、採用応募者を搾ろうとまではしない。応募者を搾る役割はリサーチ会社に回される。それはP社の人事部門も承知の上だ。リサーチ会社は何をするかといえば、かれらがP社に推薦する成績優秀な応募者たちに約束を求める。もし採用されたら、給料の20%を三ヶ月間リサーチ会社に支払うこと。P社経営陣の最終面接をパスして採用されたのは誰で、その者の給料はいくらなのかをリサーチ会社はP社人事部門から入手するので、最後がどうなったかは筒抜け。コルプシ行為でつながっている両者は密接な提携を展開しているのだ。採用された新入社員たちは、口入れの世界で常識になっている給料のピンはねを、たった三ヶ月のことだから、と諦めて受け入れる。その金がまわりまわって人事の同僚たちの懐をうるわしていることを知る者は少ない。


「電力負荷ピーク時の電力利用制裁に諸方面から批判」(2006年1月18日)
PLNが2005年10月1日から始めた電力負荷ピーク時の過剰電力使用に対するディスインセンティブのために、ショッピングセンターの電力使用コストは4割増しになっている。そのコストダウンのための対応として、標準屋内気温を高めることや冷気触媒にフレオン使用をやめて炭化水素に代えるといったことが行われている。インドネシアショッピングセンター経営者協会のステファヌス・リドワン副会長は、電力使用コストが平均40%も増加した、とブロッケムプラザを例にとって説明した。「2005年9月の電気代コストは8.9億ルピアだったが、10月は12.2億、11月は11.3億、12月は11.2億とアップしている。10月以降少し下がったのは、コストダウン対応を取ったからだが、10月のアップのようなドラスチックな節減はできない。」と副会長は述べている。
アルファマートは電気代が総オペレーション経費の4割を占めている、と言う。「ディスインセンティブスキームが開始されて以来、経営者は電気代以外の経費を締め付け、電気使用量を減らすという努力につとめている。エアコンのフレオン使用から炭化水素への転換も行われており、フレオンだとひと月4回の再充填が炭化水素だと月一回で済むから、エアコン1台あたりひと月10万ルピアの節約になる。アルファマート全体で見るなら、店舗数1千3百店で一店あたりエアコン使用4台だから、ひと月5千2百万ルピアの経費削減が実現する。」同社のPRマネージャーはそう語っている。


「みんなやってる社内コルプシ:就職編」(2006年1月23日)
金あるいは縁故が従業員採用の決定要因となっている状況は、経済危機以降定着した現象ではない。オルバ期盛んなりし頃どころか、オルラ期、いや植民地時代からVOCレジームにまでさかのぼってしまう。もともと植民地行政府内の官職を売買する売官システムを東南アジアで始めたのは、ポルトガル人だったそうだ。ポルトガルにせよ、VOCにせよ、南海島嶼部への進出は通商権の掌握が目的で、港湾と海上交通の支配、商品作物の支配あたりがその限界であり、植民地原住民に対する搾取は地元支配者にまかせていた。
本国行政府のほとんど目の届かないところで、外国の通商盛んな支配地からどれだけ収奪してくるかが第一の関心事であった時代に、正直にすべての上がりを本国に提出し、自分は本国が定めた取り分だけを給与としてもらうようなことを行う人間は稀だったにちがいない。現代ジャカルタのトゥカンパルキルがそれとまったく同じ構図の中にいる。こうして汚職がはびこり、熱帯の疫病と土人の襲撃という猛威に命がけではあっても、大金持ちになれるチャンスが転がっている南海の地の役職に就きたい人間が金でその職を買うという習慣ができあがった。植民地支配から独立を果たしたインドネシアでも、その基本構造に変化はない。独立後のインドネシアで、国家公務員が定年退職するときは、公務員雇用枠を埋めるためにその者が自分の後任者を指名する権利を持っていた。一種の慣習法だ。だから親子何代かにわたって、学歴はお話にならないようなものであっても、下級国家公務員を務めている家庭は数多い。普通は自分の子供や親類縁者を指名するが、たまたま該当者がいない場合、そのポジションが売りに出される。
ところが時代が下がってくると雇用拡大が起こるところでは、組織的な売官が行われるようになる。警察・裁判官・検事などの法曹部門でも活発にそれが行われ、大枚を投じて新採用となった者たちがその元手を取り返し、さらに投資リターンを追及するから、汚職は広く深く進展するようになり、今では社会生活の大半を覆ってしまっている。
公の部分がそうなっていれば、民間がそれに追随するのはある面当然だと言える。草創期の国はまず官が金を持ち、国内の優秀な人材を集め、国営企業が事業を行うという形からスタートし、民間を育てながら徐々に肩代わりさせていくのが普遍的な歴史だった。インドネシアでも同じようにそれが行われたが、オルラ期の共産主義型経済体制からオルバ期の公主導型管理的資本主義体制に移っても、民間の育成はほとんど進展せず、搾取のやりやすさという面もあいまって官高民低が継続し、政府経済閣僚がゼミを持つインドネシア大学で成績優秀者が官僚にリクルートされていたような背景もあり、民間で働く者のレベルは並以下という時代が90年代半ばまで続いた。
公務員雇用は商品化され、一部の人間だけが知っていてそれを少ない人間に口コミで洩らし、仲介者を使って金もうけの手段にするという方法が盛んになった。1992年の高卒者価格は2〜3百万ルピア、大卒者料金は3〜5百万ルピアだった。当時の為替レートが1ドル2千ルピア程度だから、どうしてなかなかの金額だ。当時、元手は今無いが、採用されたら毎月の給料から分割で支払うから、という逆オファーをしてもまず相手にされなかった。「求職者ははいて捨てるほどいるんだ。いつでもあんたに代わる人間は手に入るんだよ。」というせりふがその答えだったようだ。民間銀行界などはもっと実利的な方法を取った。選考が終わって採用候補者になった者に対し、250万から500万ルピアのレベルで定期預金を組むように求めた。悪徳人事担当者の汚職を防ぎ、自行の業績に反映する巧みな手法を経営者はよく思いついたものだ。そこでさっそく借金してでも定期預金を作れば、本採用の通知がやってきた。
そんな売官システムに割り込んでくるのが縁故利用者。かれらは高級官僚からはては大臣まで利用し、メモを一枚もらってやってくる。そこにはファミリー主義・地縁主義・種族主義が色濃く反映されている。ファミリーの成員をこのようなやり方で援助するのは、賞賛される行為なのだ。それはKKN行為だからと敬遠し、自分で試験を受けてパスするようにがんばれ、などと突き放せば、まず確実と言っていいほど惨憺たる結果に遭遇する。試験は形だけのものであり、何の本質も持っていない。採用される人間はみんな金や縁故を使ってその結果を得ているのであって、ファミリーを助けない人間に将来どのような災厄が降りかかってくるかは想像にあまりある。
KKNの大饗宴はこのように花開いているのだ。そうして、同じ手法が民間にも適用される。だから、公務員は腐りきっているが、わが社は違っているだろうと安易に考えていると、落とし穴に落ちる。人間はみんな自分と同じように正義感や潔癖さを持っているはず、と日本人が頭ごなしに考えていると、間違いを犯してしまう。インドネシア人はインドネシア文化が産み落とした子供であり、インドネシア文化と日本文化の価値観の相違は一言で言えないほど食い違っているのだから。


「産業政策を省みる」(2006年1月25・26日)
パーム油、茶、コーヒー、ゴム、カカオ、丸太・・・インドネシアが国際市場に売っているものは一次産品かせいぜい半加工品。ビジネス形態は散発的で、注文があったりなかったり。一貫性なく、価格交渉力も低い。繊維衣料品・履物・家電・玩具などの工業製品も性格は似たり寄ったり。国産著名ブランドなど存在せず、単なる請負加工業者に終始している。あふれるばかりの農業漁業資源、石油・ガス・石炭や鉱物などの天然資源に満ちた国なら、世界的レベルの企業がいくつもいくつもできておかしくないというのに。
今国内で活動している企業のほとんどが、輸入コンテンツに高く依存している。独占やカルテルをベースにし、あるいはコネや保護を楯にする事業者たちが市場を歪んだものにしている。地元における比較優位というコンセプトをもとに開発が支援されるべき産業セクターのチョイスが客観的に行われず、構造的強さを持っているかどうかに目も向けないで、輸出指向、市場追随、生産活発などに依拠する思考パターンで開発支援産業が選択されてきた。その本質は今でも変わっていない。
事態の紛糾は、その度を深めるばかり。政府はフォーカスを絞ろうとせず、また本当の意味での支援を行わず、おまけに事業の確定や法確定を作り出すことすらできなかったことがその原因だ、とMSヒダヤッ商工会議所会頭もファイサル・バスリ、イ_ア大学経済オブザーバーも異口同音に語る。インドネシア産業構造の弱点をブルハヌディン・アブドゥラ中央銀行総裁は、国内経済活動が輸入に依存する度合いが高いために、外的要因の影響を受けやすいことだ、と述べている。投資関連法規の整備が不完全で、インフラ建設も順調でなく、おまけに昨年10月の石油燃料大幅値上げで生産コストが大きくアップしたために経済成長が鈍化し、国民購買力がダウンした上に金利上昇が加わったため国内消費も後退してしまった。生産コストのジャンプは多くの産業に悲鳴をあげさせ、その解決として撤退か冬眠かという二者択一の選択を迫った。サバイバルを積極的に求める企業は撤退を選んだ。かれらは中国をその避難先に選んだのだ。食品産業でトールマニュファクチャリングが流行し、中国の生産者に作らせた自社ブランド品を輸入して国内市場に流す方針が取られ、国内産業空洞化が始まった。そして早速政府の声がかかった。外国での生産は国益を損なうことであり、政府はそれを許すことはできない、と。
自動車産業もイ_ア的性格を持つ産業の典型例である。何十年にもわたって、ブランドオーナー企業はさまざまなファシリティとプロテクションを与えられてきたが、いまだに真の意味での自動車産業はイ_アに育っていない。タイでは数多くの著名ブランドが部品から完成品まで生産しており、タイを域内生産拠点に位置付けいる。年産70万台市場のタイに比して、50万台市場に伸びてきたイ_アではあるが、イ_アはいまだに組立が専門の、底の浅い産業構造のまま。
パーム原油産業も同工異曲。世界のパーム原油供給のジャイアントはインドネシアとマレーシアだが、インドネシアが世界市場を支配したことはない。価格決定はメダンのべラワン港で行われることがなく、クアラルンプルかロッテルダムで決まる。インドネシアは他所で決められた価格で販売するだけ。おまけに世界への供給を二分しているパーム原油からイ_アが作る二次製品は食用油・オレインしかなく、もっと川下の消費市場向け商品は何一つ作られていない。
イ_ア政府は本気で製造産業を育成する気があるのだろうか?自国の歴史から、そして近隣諸国の活動から学べるものはたくさんある。ところが製造産業を強く大きくするための諸要因のほとんどが、むしろその足を引っ張るあり方で製造産業を取巻いている。順風より逆風の方が多い製造産業から事業者がドロップアウトするのも必然の成り行きにちがいない。かれらは物作りをやめて商人になる。労働者にわずらわされることもなく、消費者の需要を追いかけるだけでよく、ビジネスに入るのも抜けるのも容易で、利益も見積もりやすい。その帰結は、イ_ア国内が廉価輸入品の大海と化したこと。安物玩具、廉価布帛衣料品、家庭用品、文房具、セミ先端技術家電品、二輪車などが中国から怒涛のように押し寄せ、国内家電品のメッカとして知られたグロドッ地区でさえ、韓国・日本・欧州のブランド品は陳列棚の上に祭り上げられ、マジョリティは中国製品で占められてしまった。
国内製造業が壊滅し、国内市場が廉価中国産品で満たされ、失業者が国内に満ち溢れて、国内のすべてが破壊し尽くされる前に、何らかの包括的な対策が取られなければならない、と産業界の識者は熱弁する。しかし奇妙なことに、そんな情況を目にしていながら、政府上層部は涼しい顔をしているのだ。外国からの事業投資も、決して怖気をふるうような市場ではない、と日系家電業界者は語っている。問題は、政府のバックアップが足りず、レント経済が盛んであり、そして部品産業の開発が最大限に活用できないことだ、とかれは批判している。もうひとつの問題は、政府の政策がビジネスフレンドリーでないこと。その最適例が今審議中の改定税法案で、その内容は実業界寄りでなく、政府は自分の懐を膨らませることだけを考えており、そしてそんな姿勢が実業界にどれほど嫌悪されようと気にも留めていない、との批判を浴びている。
国内にあふれているエネルギー資源の利用も産業界寄りでないことが大きな問題を形成している。政府は外貨取得を目的に外国への販売に力を注ぎ、産業界の需要に対するバランスを二の次にしている。天然ガスは日本・韓国・北米の諸都市に活力を与え、石炭は中国の発電器を動かしているが、国内産業へのガス供給は肥料産業への生産と供給の遅れを招いて農業界の生産にしわ寄せを起こし、また石油からガス・石炭への燃料転換を図っているPLNの計画進展に水をさす結果を呼び、PLNの産業向け電力料金高騰と供給制限を引き起こして産業界にディスインセンティブを与える結果となっている。政府のエネルギー政策・エネルギー経営が国内産業にとってどのようなものであるかを示す実例がそれだ。原油869億バレル、天然ガス384.7兆立方フィート、石炭570億トンという巨大な埋蔵資源量を誇り、石油5億バレル、天然ガス3兆立方フィート、石炭1.3億トンを年々生産している国で、そんな状況なのである。国際市場で石油価格が前代未聞の高値に上昇した昨年、そして今年もその傾向が継続することを誰もが想定している。もはや安い石油はないという時代に入った産油国インドネシアが、自国産業の育成を二の次にして多量の外貨を稼ぐことを喜ぶ思考パラダイムを続けていくのだろうか?イ_ア共和国成立後半世紀を超えたいま、イ_アはかつて遭遇したことのない重要なエネルギー政策の局面を迎えている。
経験は最良の師だと言われている。これまでイ_ア政府が経験したのは、従来イ_アの経済パワーを支えてきた天然資源に政策の焦点を当ててこなかったこと。政府が優良セクターとしてピックアップしてきたのは、輸入依存度の高い製造産業だった。そのために強い基盤を持った真の優良セクターが存在しなかった。政府が製造産業をどこまで盛り上げていくことができるかは、製造産業を取巻く諸要因をどれだけ産業寄りのものに変えていけるか次第だ。包括的政策推進がその鍵を握ることになるだろうが、政府部内での協調と統制がその成否を決めると言っても過言ではあるまい。


「外国借款の国外逆流を小さくせよ」(2006年1月27日)
外国借款による国内プロジェクトのコンサルタント経費は70%が外国系コンサルタントに支払われている、とパスカ・スゼッタ国家開発企画庁長官が述べた。
「官民の双方ともにプロジェクトへの外国勢の関与が拡大しており、その結果、対外サービス収支の悪化と国内物資利用の減少で対外支出が増加し、国家経済に大きい損失を与えている。」コンサルティングサービス事業チャンスと題するジャカルタで開かれたセミナーで国家開発企画庁筆頭セクレタリーが読み上げた長官の基調スピーチの主旨がそれ。
これは単なる経済面だけの問題でなく、社会経済的価値観も民族的なものの中に外国的なものがどんどん侵入してくるのを容易にしている。そのため政府は国民系コンサルタントが国内でのチャンスに最大限に活用されるための努力を払う所存である、とそのスピーチ原稿には記されている。この分野で国内競争力をつけるために、業界育成からコンサルタント選定がどのように行われているのかといったことまで、支援と便宜を政府が図ろうというのだ。
国民系コンサルタント会社は、外国人専門家を雇用してテクニカル面でのクオリティ強化を図ることができるし、外国借款プロジェクトに外国人専門家が加わるという条件を満たすこともできる。しかし問題は経費の分配にあり、コンサルタント事業者会ジャカルタ支部長はそれについて次のように語っている。
2006年の借款プロジェクトは世銀、ア開銀、JBIC、イスラム開発銀からの総額31.9億ドルで、これは二年間のものであるため2006年だけだと16億ドルと計算される。通常コンサルタント経費は5%なので、8千万ドルが今年のパイとなる。このうち70%は外国系コンサルタントのものとなり、国内に落ちるのは2千4百万ドルだけ。ただこれは単なる仮定計算でしかなく、JBIC借款プロジェクトの場合は5%でなく10%以上になるため、もっと大きくなるだろう。このような構図になっている大きい要因のひとつに、ビリングレートの大きい格差があげられる。外国人コンサルタントはひとり月間1万8千ドルに達するというのに、国内コンサルタントは2〜2.5千万ルピアが相場になっている。コンサルタント事業者会はその格差を是正するよう、最低でも3〜4千万ルピアのレベルまで引き上げたい、との弁。今後もますます増加の方向にある外国借款ベースプロジェクトに関連して、国内コンサルタント業界は意欲に燃えている。


「みんなやってる社内コルプシ:生産編」(2006年1月30日)
生産現場で、時おり残業時間の操作が行われる。現場の職長と作業員との間の癒着がそれを可能にしている。そこで稼ぎ出された残業手当は会社から一旦各作業員の手に渡されるが、それが職長の手に回収されて関係者の間で再配分されるのを、工場経営者は知らない。
「ドゥル、明日残業できるか?」ある日の夕方、職長が自分の右腕としている部下に尋ねた。
「ええ、できますよ。何人必要ですか?」
「あと5人。全部で6人必要だ。メンバーを探しといてくれ。第三シフトで6時間だから。」
「わかりました。」
「実際は3時間もやりゃあいい。仕事はそのくらいで終わるから。他のメンバーにもそう言っといてくれ。」
「わかりました。」
「ドゥル、メンバーは古い連中だけにしとけよ。事情がわかってて協力的なやつにするんだ。」
「もちろんですよ。注意深く選びますから。」
「新人を入れる場合は、よく調査しろ。」
「ええ、よくわかってますよ。」
「大勢の連中に協力してもらわなきゃならんが、みんなが本当に協力してくれるわけでもないから。」
「この前の新人にはびっくりしましたね。われわれの秘密が会社に洩れそうになった。」
「おべっかと言うやつだ。新しいやつは自分の立場をよくしようとして告げ口できることを探し回る。会社側の覚えがよければ、試用期間は優秀な成績でパスし、その後もとんとん拍子。」
「われわれの仲間が多ければ多いほど、強い立場に建てるんですがね。」
「わしが前から言ってることだ。われわれの同志を増やしておけば、われわれに盾突こうというやつはいなくなる。」
「それでも、もしも会社にチクろうとするやつが出たらどうします?」
「みんなして黙らしゃあいい。大勢でリンチすりゃあ、捜査は難しい。誰がやったか特定しにくい。」
「損害賠償は来ませんか?」
「誰に要求する?やったのは群衆だ。だからわれわれの残業は、みんなが合意し、みんなが得をするようにするんだ。」
「そうですね。われわれもコングロマリット並みの生き方を実践するわけですよ。ちょっとだけ働いて、たっぷり金をもらう。」
こうして3時間残業した作業員たちは、ひっそりと深夜の工場を後にした。一人残った職長は、ひと眠りしたあと6時間後に起き出して、明かりや機械の電気を消してまわり、残業した作業員たちのタイムカードを押し、虚偽の作業報告書を書いてから帰宅した。インドネシアの労働法では、週当たりの標準労働時間を超えた残業時間に対し、最初の1時間は時給の1.5倍、2時間以降は2倍の手当てがもらえることになっている。6時間残業すれば、一週間分の収入のほぼ3割増となる計算だ。部下を利用して余分な残業手当てを会社から出させた職長は、その残業手当の再配分で自分の懐を大きくうるおしている。


「食品の輸入関税率引き上げ」(2006年1月31日)
関税率ハーモナイゼーションで2月1日から変更される品目の中に、税率が引き上げられるものがある。アグロ産品の多くが関税率5%から10%に引き上げられ、2009年まで継続されることになる。値上がり必至の輸入品目は次の通り。
0%から5%に: 畜産飼料製品
5%から10%に: 練乳、ヨーグルト、肉製品(ソーセージ、コーンビーフ)、ビスケット(パン粉、冷凍ペーストリードウを含む)、とうもろこし・タピオカ粉、加工果実・ジュース、ソース、飲料水・ソーダ水、魚缶詰、キャンディ、
5%から15%に: カカオ加工品、チョコレート
特にアルコール飲料については: モルト使用ビールは40%据え置き、ワイン・ウイスキー等は170%から150%に


「出稼ぎ者の外貨獲得は25億ドル」(2006年2月6日)
オルバ期から外貨獲得のヒーローとされてきた海外出稼ぎ者の本国送金が、2005年は25億ドルに達した、と世銀が予測数値を公表した。経済危機後は国外に職を求める傾向が強まり、1998〜1999年の送金額は12億ドルだったが2001年には20億ドル、2002年21億ドルと上昇したものの、2001年から2003年の時期には中近東や台湾への出稼ぎ者送り出し停止が行われたために減少し、2003年15億ドル、2004年10億ドルと減少していた。
ただし公的機関が把握できる送金額は、やはり銀行などの公的機関が受け付ける送金のデータをベースにしたものに限られるため、インフォーマルなルートを使ったものの実態は闇の中にある。インフォーマルなものというのは、出稼ぎ先国で開いているインドネシア人所有の商店が非公式にサービスを提供するものや、店は構えないが非公式に仲介サービスを行う者、あるいは帰郷する友人、親族、兄弟などに委託するといった方法。送金費用は国によって大きく異なっており、2003年のデータによれば、マレーシアは2万5千ルピア、アラブでは1万2千5百から2万ルピア、ブルネイは10万ルピア、台湾6万2千5百から7万5千ルピア、香港2万から3万5千ルピアといった内容。インフォーマルなサービスだと比較的廉価になっており、マレーシアでは5千から1万2千5百ルピア、香港は2万から4万ルピアとなっている。ただし送金費用は送られる金額にも関係しており、公的機関での送金は少額だとかえって費用が高くなる。公的機関を使う場合の送金額は1〜5百万ルピアといったところだが、インフォーマルルートでの送金だと25万から2百万ルピア程度のものが多い。
しかし経済評論家のファイサル・バスリは、世銀の見込み数値は小さすぎる、と批判する。「マレーシアのメイバンクだけで年間10億ドルの本国送金がある。データ収集の中に含まれなかったものがあるのではないか?従来、公的ルートを通して本国送金すると、不法徴収金の高い搾取を受けることが多かった。だからかれらの多くは不法出稼ぎを行っている。」海外出稼ぎ者送り出しの局面でも、政府が言う公的費用金額と出稼ぎ者が支払っている金額にかなりの差があることをファイサルは指摘する。香港への出稼ぎに政府に納める金は1千8百万ルピアとなっているが、女性出稼ぎ者は2千1百万ルピア払っているし、台湾の場合は2千4百万なのに実際には3千6百万ルピアを支払わされている。搾取の巣窟と化している海外出稼ぎ者の環境について、ファイサルはそのように述べている。


「コンパス紙への投書から」(2006年2月27日)
拝啓、編集部殿。わたしの子供は5ヶ月前に亡くなりましたが、BNIライフ保険へのクレームはいまだに支払われず、保険料はいつまでも引き落としが続いています。安い保険料でかなりのレベルの健康保険を享受できるというBNIライフ保険セールスマンの口説きに言いくるめられて、わたしの一家は2004年11月にその保険に加入しました。そしてわたしは、家に送られてきた申請フォームに記入して申し込みを行いました。6ヵ月後、わたしの子供は病に罹り、11日間入院したので、その入院治療費の求償をしました。およそ1ヵ月後、一日20万ルピアで総額220万ルピアの保険金支払いがなされました。2005年8月、わたしの子供はまた具合が悪くなり、東ジャカルタ市プロガドンのメディロス病院で治療を受けましたが、治療が不適切だったために死亡しました。8月末と9月にわたしは子供の保険金死亡求償をBNIライフに提出しましたが、いまだに保険金が支払われていません。一方、わたしの子供の分を含めてわが家の保険料は、わたしのクレジットカードからこれまで同様に引き落とされているのです。
わたしはBNIライフ保険に苦情を伝えましたが、相手は責任を他部門になすりつけるばかりなのです。保険料部門は、クレーム部門が保険料引き落とし停止の指示をしないからと言いますし、クレーム部門は、引き落としを続けているのは保険料部門のミスだと言うだけです。そのように責任を他人になすりつけるだけで、保険料は引き落とされ続けているのです。[ カラワン在住、ジャルディン・シマルマタ ]


「コンパス紙への投書から」(2006年3月1日)
拝啓、編集部殿。いつまでも回復しない経済状況が石油燃料大幅値上げで悪化の衝撃を受けているさなか、一握りの人々を雇用できている小規模事業の存続は祝福されてしかるべきものではないかと思います。ところが役人の中に、いまだに職務遂行の合間に私利をむさぼるチャンスを追求する者がいるのです。それを行っているのは東ジャカルタ市ドゥレンサウィッ郡役所社会保護秩序安寧課長A某です。
事業所実態調査という名目を振りかざし、A某は事業所(特に華人系商店)を、ブルーの制服を着た数人の秩安職員が乗った業務車輌を引き連れて熱心に訪問し、事業主にあれこれ許認可関係の些事を尋ねまわり、調査用紙を置いて行きます。尋ねられることは事業所所在証明、建築許可証、建築物使用許可証、環境保護認可(対象になっていない事業に対しても要求します)、会社登録証、土地建物税納税書、建物ステータスと賃貸契約書(秩安職務と全く無関係)などで、添付された職務要件書類はA某本人がサインし、町長、市長あるいは行政職員の活動を監督する政府機関への写しは何もありません。調査用紙にも出頭命令が記され、他機関への写しは何もなく、奇妙な内容であることは否めません。行政官僚の誰でもが住民に出頭命令を出せるわけではなく、ましてや郡役所の秩安課長ではそのレベルに達しません。
東ジャカルタ市庁のレターヘッドが使われ、関係部門への写しが何も出ていないというのはたいへん危険な状況です。それは上司あるいは監督機関の統制から離れ、公的業務が悪徳職員の私的用件に摩り替えられることを可能にするものであるためです。2005年11月にある市民が体験したことがらが、そのおそれを強く感じさせています。その市民は出頭命令に応じて郡役所に出かけましたが、役所職員の誰一人としてその出頭命令を知っている者がおらず、副郡長に尋ねてもまったく知らなかったという事実があるのです。また調査用紙に添付された許認可手続きの要件について、必要書類や手続き詳細、公定費用などの説明は何もなく、単にこの許可はいくら、あの認可はいくら、と非常識な金額を言うだけです。これは公職者のチャロ行為に該当するものであり、東ジャカルタ市長の対応措置をお願いしたいと思います。[ 東ジャカルタ市在住、エン・チンホン ]


「需要ベース価格」(2006年3月4日)
工業化社会では、大量生産大量販売という原理に沿って、コストベースの販売価格算定が行われるのが一般的だ。そこで決められた市場小売価格は一定で、大金持ちが買おうが貧民が買おうが、同じ価格で売られるという平等が存在している。しかしインドネシアはいまだに商業文化の色合い濃い社会であり、価格は売り手と買い手の関係、つまりその場その場での状況に沿って決まるケースの方が多い。Aさんは交差点の物売りから玩具一個を売り手の言い値である1万ルピアで買ったが、Bさんは巧みに値切ってその同じ商品を1万ルピアで三個買った、といったことを、それは意味している。そんな実態を、イ_ア人はアンフェアで、人の足元に付け込む、と感じる人も多いが、そのように異なる文化的背景が存在していることを外国人は認識するべきではないだろうか。ここにも、インドネシア社会を厚く包み込んでいる『不確定』という性質が顔をのぞかせる。一概に需給関係と言っているが、マクロでのそれは市場のトレンドを示しているだけであり、実際に売買を行う当人同士にしてみれば、ミクロ要因に強く影響されるのは言うまでもなく、買う側にとってもそのときどきの状況で同じ商品の値打ちが異なることも否定しきれない要素なのだから。たとえばジョギングで喉がからからの人は、よく冷えたカップ入りアクアに5千ルピア払っても良いと思うかもしれない。だがレストランから出てきたばかりであれば、その人はカルフルで売られている値段以下でなければ見向きもしないのではあるまいか。金銭で測ったモノの値打ちもそのように変化する。だから売り手は、買い手が評価する値打ちに即して値段を決める。その結果、買い手が別の人なら値段が違っていて当たり前、という原理に帰結して行く。そこでは、一物一価原理は存在せず、品物のコストは利益の幅を計る規準として機能しているだけ。
ジョクジャ特別州の各県で、文民公務員採用試験が行われた。スレマン、バントゥル、クロンプロゴ、グヌンキドゥルそしてヨグヤカルタ市。試験結果、つまり合格発表は、各県庁に張り出されるだけ。受験者は結果を知るためにそこまで行かなければならない。ところがこのご時世、交通費は安いものでもなく、無職の身には軽くない負担。そんな環境の中で、情報売買ビジネスを行う者が出現する。いわく「情報はただではない」。
ジョクジャ市郊外の街道にCPNSと大書した張り紙が目に付く。CPNSとは文民公務員応募者の意味。8ページから成る各県市の合格者名簿がそこで売られているのだ。ジョクジャではフォトコピー1枚50から60ルピアなので、ステープラーでとめられた8枚の紙のコストは5百ルピアしないはず。隣人が結果を知りたがっていたので、バントゥルに住むムリヨノは、バントゥル県の名簿を買って帰ろうとした。せいぜい1千〜2千ルピアだろうと思ったムリヨノは、期待を裏切られて唖然とした。なんと売り手の中年女性は1万ルピアを要求したのだ。「あら、あたしゃ頼まれて売ってるだけだけど、毎日飛ぶような売れ行きだよ。毎日売り切れ。」
そう言われてみれば、そうだ。ムリヨノはそう思った。県庁までそれを見に行き、ガソリン代やら、あれこれの出費を思えば、確かに1万ルピアは高くない。ジャワでさえこれだ。スマトラ、カリマンタン、スラウェシなどの奥地だと、そんなものじゃすまないだろう。たいへんな道のりを踏破し、何度も船を乗り継ぎ、場所によっては何日もかけ、おまけにフォトコピー屋のある場所までさえ何キロも離れている。そんな地方だと、これはきっと数十万ルピアするに違いない。スラウェシで小学校教員をしている友人の話しをかれは思い出した。県庁へ月給をもらいに行くだけで、交通費に30万ルピアも使わなければならない、という話を。
ムリヨノの胸の中は、非能率と無関心の行政に対する思いがわだかまっていた。県庁はどうして群役所にその名簿を張り出させようとしないのだろうか?さまざまな事情から、受験者の中でそれを見に行けない者が出るかもしれない。そして本当は合格しているにもかかわらず、その事実を知らないために採用された役所に出頭しないことが起こるだろう。おかげで、せっかく行った採用試験の結果は『無』。せっかく出した結果を大事にしようとしない行政の非能率に、ムリヨノは無念の思いをかみしめた。


「プルタミナのハイオクガソリンはここで買えば安い」(2006年5月5日)
5月2日のヘッドラインに記されている、プルタミナが生産しているハイオクタンガソリンPertamax とPertamax Plus の価格に不審を抱いたのは本サイトの読者だけではなかった。プルタミナが公表した5月のハイオクタンガソリン価格は下のようになっている。
バタム     PP 5,650-
アチェ・北スマトラ・リアウ・西スマトラ   PP 6,150- PX 6,000-
ジャンビ・ブンクル・南スマトラ・ランプン  PX 5,900-
ジャワ     PP 6,050- PX 5,800-
バリ      PP 6,000- PX 5,800-
カリマンタン  PP 6,150- PX 6,000-
スラウェシ   PP 6,000-
競合スタンド  PP 5,300- PX 5,000-
(PPはPertamax Plus、PXはPertamax  数字はリッター当たりのルピア価格)
上にあがっている首都圏5ヶ所の競合スタンドとは下の5つのプルタミナ直営ガソリンスタンドを指している。
都内では
Jl Kemanggisan Utama Raya にあるSPBU 34.114.03
Jl Kapten Tendean のSPBU 34.127.02
Jl Mampang Prapatan Raya 8-9 のSPBU 34.127.06
Jl Imam Bonjol 63
タングランでは
Karawaci にあるSPBU 34.151.07
チブブルでは
Jl Bumi Perkemahan のSPBU 34.169.15
それらのスタンドではジャカルタを含むジャワ島内のほかの場所に比べてリッターあたり8百ルピア前後も価格が違っている。昨年末から国内のガソリン小売市場への参入が許された外資系スタンドを見ると、都内にあるシェルのスタンドではシェルスーパー92がリッターあたり5,700ルピア、シェルスーパーエクストラ95はリッター当たり5,900ルピアで売られており、競合スタンドでの価格はそれに対する激しい競争意識を垣間見せてくれるものの、フランチャイズスタンドとの差別はいったい何なのかという疑問を感じざるを得ない。
石油ガス下流事業活動監督庁(BPH Migas)は、地方別に細かく料金を分けたからには配送コストに応じた分類がなされるべきで、バロガン精油所からの距離で区分されるべきであり、プルタミナ経営者が決めた5月の価格体系は整合性がないので同社に公式説明を要請している、と述べている。同庁が懸念しているのは、プルタミナが政府から得ている補助金が非補助金対象となっているPertamax とPertamax Plus に流用されることであり、一般消費者向けの補助金付きプレミウムや軽油のコスト計算が将来的に歪められることを防ぐ意図が最大の目的。一方プルタミナ側は、これはシェルやペトロナスのガソリンスタンドに近い位置にある競合スタンドに与えるインセンティブであって、商業上の一般的慣習に従っていることであり、決して違法な行為ではない、と説明している。


「工業団地も人食い狼が住むジャングル〜コンパス紙への投書から」(2006年5月11日)
拝啓、編集部殿。ケータリング事業を行っているわたしどもは、ブカシにあるEjip、ヒュンダイ、デルタシリコン、リッポチカランなどの工業団地にケータリングの食事を届けるたびに、地元に巣くっているごろつきに金を脅し取られて困っています。それどころかごろつきたちは、工業団地内企業が貨物を出し入れする際に、その量に関係なく金額を決めて貢納金を納めさせているのです。言うことを聞かなければ、ありとあらゆる脅しや手段でその貨物の出し入れができないようにさせるのです。
スタント国警長官がずっと前に国内のあらゆる場所からごろつきを退治するという檄を飛ばしましたが、工業団地周辺にいるごろつきはわたしどものような零細事業者から金を搾り取ることをいまだに続けています。工業団地入口にはルマアバン警察の派出所があり、陸軍の行政管理事務所もあり、おまけに団地内には警備ポストもあちこちにあるというのに、悪徳保安要員がいるためか、ごろつきどもはビジネスを行う者へのたかりや搾取に臆する風もありません。
ケータリング事業者は、小規模とはいえ地元政府の仕事である雇用促進を手助けしているし、また地元政府の税収にも貢献しているのです。わたしどものビジネス活動に脅威をもたらしているごろつき行為をわたしどもから遠ざけるよう関係当局にお願いします。ごろつきたちがわたしどもに要求する貢納金の金額は常識を超えており、とても非人道的なものです。わたしどもはかれらの搾乳牛になりたくありません。そしてわたしどもは同じ民族の奴隷になりたくもありません。[ ブカシ在住、ロサニ ]


「不法ビジネス者はサービス精神満点〜コンパス紙への投書から」(2006年5月16日)
拝啓、編集部殿。中国産衣料品はもう三年も前から国内市場にあふれています。そして国内繊維産業がそれと競合する中で徐々に敗退の色を濃くしているのが強く感じられます。問題の本質は価格で、中国産衣料品は多彩なデザインに加えて価格が大変安いため国産品はほとんど対抗できないありさまになっています。そのために地元衣料品生産事業、中でも家内工業的縫製ビジネスは大打撃を蒙っています。マスメディアのニュースにあるインドネシアの繊維衣料産業はじわじわと死んでいくという話は決してほら話ではありません。そんなことになれば、わが国の失業者増加はいったいどうなることでしょう。たとえばプカロガン地方には数百の縫製事業者が数万人の労働力を使って事業していますが、かれらが事業を閉鎖すれば労働者はどこへ行けばいいのでしょうか?
政府は衣料品輸入の監視を強化するというニュースが最近流されていますが、それは本当に実効性を持つものなのでしょうか、それとも単なる政治発言でしょうか。実態はいまだに中国産衣料品が減少するどころか、むしろ激しさを増しているのです。噂では、いつも中国産衣料品を輸入している業者は政府の方針などまったく心配ないと言っているそうです。なぜなら輸入品が目的地に届くまで、それを担当する人間があらゆる世話をするそうで、港の事細かな問題から貨物の輸送に至るまで、あらゆる障害を解決してそれが最終目的地に達するまでをケアしてくれるのです。合法非合法、公式非公式などの斟酌は一切なしに。
重要なのは、そのビジネスマンたちはコンテナひとつひとつに対して、配送者や腹心の部下たちに臆することなく何億ルピアもの資金を渡す用意があるということなのです。そして貨物が流通機構に流されて行きます。渡した資金が国庫に入るのか、それとも税関・警察・関連官庁の悪徳職員のポケットに分配されるのか、そんなことに頭を悩ますことをかれらはしません。重要なのは貨物がバリヤーを潜り抜け、順調に目的地に届くことなのですから。[ 中部ジャワ州バタン在住、ファウジ ]


「自動車タイヤ規格適用に水漏れ」(2006年6月14日)
今年3月23日から自動車用タイヤにインドネシア製品規格(SNI)適用が始まったが、一部輸入者が合格マーク使用決定書(Surat Putusan Pemakaian Tanda)を偽造して品質チェックを免れる一方国内市場にその粗悪な商品を流しているため、制度の運用精度をもっと高めなければならない、とタイヤ事業者協会が表明した。同協会のアジズ・パネ(Aziz Pane)総長によれば、タイヤ輸入者の中に多種のタイヤを輸入しているが認証機関には品質規準を満たす一部のものしか届出をせず、合格サーティフィケートを得た後で基準をパスしない他の種類に対して虚偽のサーティフィケートを作っている者があるとのこと。そのため国が品質規準を定めたにもかかわらず、実際には市場に品質の粗悪な商品が流通しているということが起こっている。 消費者購買力が底をついているいま、国内メーカーが品質規準を満たすものを出荷している一方で品質のはるかに劣る廉価なタイヤが市場に出回っていて国内メーカーのシェアが食われており、規格適用がかえって違反者の行為を保護している形を出現させている。実は偽造なのだがサーティフィケートがあるためにかえってだれも品質に疑問を抱かないという状況が作り出されているというのである。タイヤの製品規格認定機関はいま、TUV, BPPT Serpong, Pusat Standardisasi Depdag, Balai Penelitian Mutu Yogyakarta, B4T Bandung, Pusat Standardisasi Depperinの6ヶ所が稼動している。粗悪な密輸入品がスマトラに大量に陸揚げされているのに加えて、正式に輸入されたものでさえ品質が国の規格に合わないものが素通りして市場に出ている実態に、国内タイヤ業界は大いに不満を表明している。


「統計数値の信憑性」(2006年9月5日)
今年8月16日にSBY大統領が国会で第61回目の独立記念日を前に施政方針演説を行った。そこで述べられた政府の業績報告の中で貧困者数に関する統計数値に多くの学者専門家が眉根を寄せた。国民の中の貧困者比率は1999年の23.4%から2005年の16%へと大きく低下したと大統領は印象付けたが、その二日後からさまざまな反論と大統領批判がマスメディアをにぎわした。どうしてか?
大統領が述べた数値に大勢が不審を抱き、また驚いた。それは事実の転倒だと言う者も出た。2005年10月1日の石油燃料大幅値上げが国民の大多数に困窮をもたらしたというのに、そんなことがあるはずはない、と。さらに続いて、SBY大統領が我田引水自画自賛をしているのではないか、という反発が出現した。大統領は数字を弄び、自分の政府が業績をあげている印象を国民に与えようとしている。どうして1999年という6年も前の数値を引き合いにだすのか?2005年というのは3月時点なのか、それとも12月なのか?
大多数国民が2005年10月1日石油燃料大幅値上げ後の国民の貧困化がどのようになっているのかを知りたいと望んでいる一方で、大統領は数字を弄んで我田引水を行ったという印象を受けた人々が大統領に反発しないわけがない。
イ_アの統計数値を毎日扱っているひとは、同じ項目に対する数値がいくつかのバリエーションを持っていることを知っている。行政機構の中で国家の統計数値を公表管理しているのは中央統計庁だが、経済や民生についての統計数値は国家開発企画庁も持ち、そして各担当省も持っている。それぞれが常に独自にサーベイを行っているわけではないにしても、サーベイ結果を特定の条件でプロセスし、得られた数値を自分のデータとして持つ。中央統計庁が、国家開発企画庁が、経済統括省が、オルバ期以来家族計画調整庁までもが、そして大学が、世銀が、貧困デモグラフィについてめいめいの自信作を公表してくれる。めいめいが使う貧困の規準も単一ではない。ましてや情報がパワーであれば、特定政治用途に適した数値が用いられる場に合わせて口の端にのぼる。中央統計庁の数値は確実だ、と誰が言えるだろう。オルバ期に公表された中央統計庁の数値は既に操作されたものであったと大多数国民が考えているのだ。SBY団結内閣でもオルバ期ほどの規模でないとはいえ、類似の光景が最近も展開されている。中央統計庁が公表した貧困世帯率が異常であるとして経済統括相が中央統計庁と「協議」している。中央統計庁も人の子であれば誤りを犯さない保証もないのだが、統計の独立が確保されている姿はそこにない。
貧困統計における定義もイ_アの貧困状況をさまざまな姿に見せている。2001年11月世銀はイ_ア国民の60%が貧困で、そのうち十数パーセントが絶対貧困者だと表明したが、そのときの定義は一日ひとりあたり2米ドルの収入というものだった。2002年2月に中央統計庁は一日ひとり当たり食糧摂取2千1百カロリー未満を定義として,2000年の国内貧困者数は3,730万人で全国民の18.95%にあたると表明した。いま中央統計庁は都市部の27品目地方部の26品目合計52種の食糧非食糧にたいする支出と消費データに基づいて貧困ラインを定めている。一方家族計画調整庁はもっと実際的な規準をもとに国民の福祉レベルを、未福祉、福祉1・2・3と福祉3+という5段階に区分したが、その区分で貧困者とされた世帯数の三分の一は中央統計庁の貧困区分に入らない。
2003年3月27日、当時のユスフ・カラ国民福祉統括相は、貧困者数は18.2%、3,480万人と公表した。2005年1月23日、世銀は一日2米ドルの定義にしたがって、イ_アの貧困者数は1.1億人だと述べた。2005年10月1日の石油燃料大幅値上げを前にして中央統計庁は9月13日、貧困者は3,720万人16.9%であるが、もし石油燃料値上げがインフレ率を15%に押し上げるなら貧困ラインは17万5千ルピアとなり、6千2百万人が貧困ライン下に落ちると進言した。もしも値上げが二倍近い95%アップとなるなら貧困ラインは19万から20万ルピアの間のラインに上り、貧困者は8千万人になる、とも述べている。126%の石油燃料値上げが行われたあとの2005年11月9日に中央統計庁は、貧困ラインが月額17万5千ルピアとなり、貧困者は860万人増加して2,410万になったと公表した。それらの数値を見る限り、中央統計庁の公表数値に一貫性が感じられないのは明らかだ。イ_アの真の姿を統計数値から見ることはいつになれば実現するのだろうか?


「バタムでIMFと世銀への反対集会」(2006年9月13日)
9月14日から18日までシンガポールでIMFと世銀の会議が予定されている。そしてIMFと世銀に対する抗議陳情を示すために外国の3百民間団体と国内民間活動家1千5百人がバタムに集結してセミナーを行うことが予定されている。「シンガポールで行われている会議への反対表明をどうしてバタムで行わなければならないのか?反対デモをしたければシンガポールで行えばよい。イ_アの関わっていない会議が他国で行われているのに、イ_アがそのとばっちりを受けるいわれはない。」スタルマン、リアウ州警察長官はバタムでそう語った。バタムでデモを行うというのは見当はずれで妥当性がなく、かえってバタムの投資環境を悪化させる以外のなにものでもない、というのが州警長官の意見。そのため、もしデモが行われるようなら州警察はすぐにそれを解散させる、との意向を明らかにしている。シンガポールでのその会議に呼応して、対岸のバタムでそれに対抗するNGOの国際セミナーが企画されており、国家警察本部はそのセミナーに承認を与えているため、州警察も許可を出している。
一方NGO側は、IMFと世銀への抗議としてセミナーの実施と陳情表明を行う予定だ、と説明している。「デモというのは受け取り方次第であり、セミナーを行うこと自体もデモと言えないことはない。しかし大規模な街頭デモなどは考えておらず、セミナーや陳情行動はアスラマハジで実施することにしている。」インフィド専務理事はそう述べている。


「ブランド訴訟が頻発」(2006年9月18日)
海外で著名な商標が国内で既に登録されており、イ_アに進出しようとした海外の商標オーナーが事業推進をためらうという事態が起こっている。モナコに本拠を置く化粧品会社Harby's Corporation は既にチカランの工業団地に工場を建設し、Musk by Alyssa Ashley ブランドの化粧品を製造してイ_ア国内市場に販売しようとしている。ところがそのブランド名をイ_アで既に登録した者がおり、同社はジョコ・D・クスマ名義のその登録を取り消す訴訟をジャカルタ商業法廷に起こした。しかし一審判決で同社の告訴が却下されたため、同社は最高裁に原判決破棄を訴えて勝訴した。ところがジョコ・クスマ側は再審を請求して最高裁判決を覆そうとしており、いつまでも続くごたごたに同社は生産が開始できないでいる。同社はこの商標問題が確定しないうちに生産を始めればたいへん大きなリスクを抱えることになるため、駄目なら駄目でしかたないがともかく早く結論を出してほしい、と同社の法律代理人は述べている。
類似の問題は日本の麒麟麦酒株式会社も蒙っている。同社はイ_アで医薬品バイオテクノロジー製品の販売を行うために2004年から国内の病院や大学と提携してリサーチや臨床検査などを行ってきたが、第5類で既にKirin の商標名がスマラン在住のスリヤナ・ハリム名義で1998年4月20日に登録されていたことが判明し、同社の事業計画は頓挫した形になっている。その第5類の商標登録問題に関して同社はハービーズ社と同じように取り消し訴訟を起こしている。同社の主力製品であるビールに関する第32類の商標登録はイ_アを含む多くの国で同社自身が行っている。


「インスタントオフィス賃貸需要上昇中」(2006年9月19日)
都内の一等地にオフィスを構えたい?でも最近はフロアを細切れにしてくれるオフィスビルは多くない。大資本の巨大企業なら都内一等地の新造オフィスビルのワンフロアを借り切ることも問題ないだろうが、中小資本にはちと荷が重過ぎる。だがイ_アには圧倒的多数の中小事業者が正しく許認可手続を踏んで事業を行っているのだ。最初はサラリーマンとしてその業界で働き、数年してノーハウを身に着けたら自分でビジネスを興すというのがイ_アアントレプレヌールの常道で、だから覇気があって有能で、クリエーティブで高いエトスに満ちた人間ほど会社を去っていく傾向が高い。もちろんヘッドハントという要素もあってすべてが独立するかどうかはわからないが、ともあれそれまで一生懸命目をかけてきた有能な部下の口から「退職します」という言葉をある日突きつけられてあたふたする駐在員諸氏も少なくないのではあるまいか。
中央統計庁データによれば1996年から2006年までの間に国内には630万の会社が設立された。その630万社の中に農業セクターは含まれていない。増加率の最大はサービス業で63%も増加しており、次いで運輸通信が54%、商業・ホテルレストランセクターが42%といったところ。それらはいずれも中小資本にとって事業を開始しやすいセクターと言えるだろう。言うまでもなく630万もの会社にいったいどれだけ大資本が混じっているだろうかと想像しただけでも、イ_アのビジネス風景の特徴が想像できようというものだ。
アイデアはあり、ビジネス企画もしっかりしており、それなりのレベルの客層を相手にしたいという会社は都心のビシッとしたビルにオフィスを構えたいところだが、いかんせん広すぎるスペースを借りて費用を垂れ流しするような事業家はおらず、そして資金も限られているのだから、かれらは仕方なく古臭いくすんだビルの細切れスペースを借りるか、さもなくばルコと呼ばれる集合店舗を借りる方向に流れて行く。これはそこにひとつの潜在需要が形成されていることを意味しており、言うまでもなくその需要を刈り取るべく鋭いアイデアで新ビジネスが誕生している。その名もインスタントオフィスCEOスイート(CEO Suite)。場所はスディルマン通り沿いのジャカルタ証取ビル第二タワーとスマンギ立体交差の北西角にあるウィスマGKBIに用意されている。
2006年6月の商業プロパティサーベイは都内ビジネス地区非ビジネス地区のオフィスビル入居率が88.5%だと報告している。賃貸料は平米あたり月123,535ルピアだ。一年前と比較したYear on Year 比は入居率が102.0%、賃貸料は101.5%という数値だ。ジャカルタの家賃は決して安くなく、そして相場に従って大家はいつでも値上げを言ってくる。
スディルマン界隈のオフィスビルは、賃貸料が平米月33.6米ドル。電話はついておらず、自分で引かなければならない。ビル全体の清掃や補修メンテナンスのためのサービスチャージはまた別にかかる。それに対してオフィスの中味をすべて用意し、ready for use を売り物にしているのがこのインスタントオフィス。それどころか帳簿付けからコレポン、ビジネス管理、スケジュール管理などの業務すらお世話しましょうというのだから、本当にCEOひとりでそこを借りてもビジネスは回っていくにちがいない。4本の電話回線に最新テクノロジー通信インフラ、受付、秘書、オフィスボーイまでがオフィスレンタルとセットになっている。オフィスレンタルは客の都合に合わせて行うことができ、必ずしも年間契約ということではない。4人まで入れるオフィス一部屋で家賃は月7百米ドルから4千米ドルまで。地代家賃と設備什器費および人件費が他にかからないという点を考慮するなら、これは安いという判断もできそうだ。初めて訪問した客が眉をひそめそうな環境とは違って、きれいで明るいビルに入っているというメリットは顧客アプローチに大きな利点を生む。このCEOスイートをジャカルタで始めたのは韓国人で、かれはこのビジネスをクアラルンプル、シンガポール、上海、北京でも展開している。
都内スリピ地区にあるジャカルタデザインセンターにも類似のコンセプトを持ったインスタントオフィスがある。オフィスは14ユニットあり、もともとは新進デザイナーに支援を与えることを目的に設立されたものだ。ここを借りる場合は賃貸料が月198万から225万ルピアで、やはり事務や接客面での支援が得られる。ジャカルタから離れると、タングラン県ブミスルポンダマイでも類似のサービスを求めることができる。ドイツ政府が2千万ドルをかけて建設したジャーマンセンターがそれ。ここのオフィス賃貸料は平米月4万4千ルピアで、それとは別にサービスチャージが平米月2万6千ルピアかかる。ジャカルタの都心部に比べると2割くらい安い、と同センターの責任者は言う。ここにはメディアセンターがあってインターネットからビデオコンファランスに至るまで最新設備が用意され、入居者はその恩恵に浴すことができる。基本的にはドイツ本国とのコミュニケーションの便宜を図るのが目的であるため、ドイツの会社とビジネス関係を持つ人にはたいへん有利であるにちがいない。


「統計データ提出を拒む事業主は監獄行き」(2006年9月28日)
中央統計庁地方局のデータ収集活動に応じない事業主は監獄行きだ、とデポッ市地方局長が発言した。同局は2006年度経済センサスのデータ収集を9月末日を期限として進めているが、会社と事業に関するデータ要請に応じない会社が少なくなく、中でも非協力的な会社が40社あることからそれらの会社があくまでも無視するなら最後は強硬手段に訴える、と局長は警告している。統計に関する1997年第16号法令は、中央統計庁からのデータ要請には応じなければならないこととされており、それに違反すれば18ヶ月の入獄と2千5百万ルピアの罰金が科される。
データ提出を避けようとしている会社はそのデータが税徴収に使われることを怖れているためと同地方局長は見ているが、中には本社がデポッ市外にあって経営者は皆本社にいるという理由でデータ提出を拒む会社もある。2006年5月時点でデポッ市にある会社数は11万8千となっている。


「補助金付き軽油を使っていた工場が摘発される」(2006年10月3日)
石油燃料監視統合チームがジャボデタベッ地区で補助金付き家庭用石油燃料を産業用途に使っていた企業46社を摘発した。政府は一般国民向けに家庭用として補助金の付いた石油燃料を廉価で販売する一方、産業用には補助金の付かない石油燃料を販売してその使用を義務付けていた。産業用価格はシンガポールの石油市場価格に沿って毎月定められる形を取り、家庭用は昨年10月の大幅値上げ以来価格が据え置かれている。ちなみに軽油価格を比べてみると、9月の産業用価格はリッター当たり6,486ルピアとなっているが補助金付き軽油は4,500ルピアで大きい開きがある。
会社工場など事業所は補助金なしの石油燃料を使用しなければならないが、好き好んでコストを高くしようという企業人はあまりいない。従来から補助金なし石油燃料が産業界に横流しされている気配が濃厚に漂っていたため、監視統合チームは抜き打ち企業調査を首都圏の97社に対して行い、その中から46社が法規に背いて補助金付き石油燃料を事業オペレーションに使っていたことを発見した。監視統合チームの調べでは、それら46社がひと月に使っていた補助金なし石油燃料は2,320キロリッターで、軽油が2,125キロリッターとそのほとんどを占めている。その量に価格差を掛けると月62億ルピアとなり、年間に直せば739億の損失を国庫に与えていたことになる。
監視統合チームが摘発した46社のうちPT Nusa Multi Sentra Lestari, PT Harindo, PT Kostec, PT Jembar Bersama の4社は警察に届けられて取り調べを受けている。残る42社はその後の処置がプルタミナに委ねられた。その中にはKecap Bangoで有名なPT Anugerah Setia Lestari, PT Danone Biscuit Indonesia, PT Hankook Colour, PT Dong San Indonesia, PT Darisa Inti Mitraなどの名前も見られる。それら46社は、公共ガソリンスタンド、合法燃料プールや灯油販売代理店、違法燃料プール、違法燃料運搬車などを通して補助金付き石油燃料を入手していた。
そのような不法行為の基盤をなしているのが一般庶民向けとして高額の補助金が付けられている灯油の存在で、関係者の中には補助金付き灯油があるかぎり石油燃料水増し混合油はなくならない、と断言する者もいる。石油燃料流通網にがっちりと食い込んだ水増し混合油製造者が違法燃料プールを持って行っているビジネスの相手になった会社工場も摘発されたものの中に少なくないようだ。政府は一般庶民向け灯油を補助金付きLPガスに転換する方針を決めており、来年から実施されることになっている。


「Intel 商標訴訟」(2006年10月19日)
2006年9月13日13時、中央ジャカルタ商業法廷の中はうだるような暑さ。狭い法廷内でうなりをあげるエアコン1基でその暑さを鎮めるには無理があった。スドラジャッ・ディムヤティを団長とする三人の判事団がかわるがわる判決文を読み上げる。サウンドシステムのない法廷に流れる生の声に、集まっているひとびとが一言も聞き漏らすまいと耳を傾けている。マイクロプロセッサー製造会社Intel Corp. からPT Panggung Electric に対して出された商標権取消し告訴に関する判事団の判決が読み上げられているのだ。
Intel Corp. の告訴はふたつのポイントに渡っていた。PT Panggung Electric 社がテレビ、DVD、ハイファイ等に関して持っているIntel の商標は過去三年間使用されていないこと。家電品、医療機器、音響機器など5つのカテゴリーに対して登録された商標は一度も使用されていないこと。パングン社が持っているIntel 商標の登録取消しを求めるIntel Corp. がその根拠として主張しているのが不使用条件。インテル側はその根拠を得るために独立したふたつの調査機関にリサーチを行わせた。2006年5月5日から5月26日まで480の販売店に対する実地調査が行われ、パングン社製Intel ブランド商品はもはや販売されていないという結果が得られた。多くの店はIntel ブランドをまったく知らないと返事し、いくつかの店はIntel ブランドのパングン社製テレビがあったことを記憶していると答えたが、そのテレビが販売されたのは2001年より古い時期だった。もうひとつの調査機関はメダン・ジャカルタ・スラバヤにあるパングン社の工場と都内のAgis やElectronic Solution など大手家電スーパーを対象に調査を行い、Intel ブランド商品は既に長い間パングン社による生産販売が行われていないことを突き止めた。パングン社はいま、Akari ブランド家電品生産に力を注いでいる。登録商標不使用は、ある商標を冠した製品が過去三年間生産されていないかもしくは過去に生産されたことがない、という事実に基づく。
公判でパングン社の弁護人はIntel Corp. が提出したそれらの調査結果に対し、告訴人みずからが見出した事実でなく伝聞が使われているに過ぎない、と反論した。判事団は読み上げた判決文の中で、告訴人が求めている登録商標取消しの法的根拠が曖昧であると表明した。Intel 商標が何年からパングン社の生産品に使われていないのかということを告訴人ははっきりと示すことができない。そのためにこの告訴は却下された。Intel Corp. は1993年に一度Intel 商標に関する告訴を行ったが敗訴しており、今回の告訴は二度目に当たる。Intel Corp. の法律代理人は判事団が下したその判決について、法の解釈が狭量すぎる、とコメントしている。


「今年7月のオフィススペース状況」(2006年11月6日)
インドネシア銀行のプロパティサーベイによれば、今年7月のジャカルタのオフィスビル入居状況は入居率が1.1%アップして89.5%となった。7月のオフィススペース新規供給はCBDも非CBDもゼロで6月と同じ供給量3千9百平米が維持されている。対前年比では賃貸スペース稼動が2.7%、賃貸料金は0.4%の増加となっているが。供給量は0.8%減少している。ちなみに今年7月の平均賃貸料金はひと月平米当たり123,534ルピアとなっている。


「首都のオフィススペース需要は上向き」(2006年11月29日)
インドネシア銀行のサーベイによると、ジャカルタの今年第3四半期のオフィス賃貸状況は上向きだった模様。オフィススペース稼動は第2四半期の84.99%から86.08%にアップし、家賃も平米あたりの月額が平均109,086ルピアで維持されている。今年第3四半期のオフィススペース需要は、IT、通信、石油ガス、金融サービス、貨物運輸などの業界が拡張、移転、新規オープンなどのために新たにオフィスを求めたことで伸び上がった。今年の第1四半期ではオフィス需要が低迷したため、ビル運営者はテナント料金の引き下げを行っている。
今年第3四半期のオフィススペース市場は下のようになっている。(CBD=Centeral Business District)
ストック: CBD316万平米 非CBD204万平米 合計520万平米
稼働率: CBD84.7% 非CBD88% 全体86.08%
空室スペース: CBD48.6万平米 非CBD24.4万平米 合計73万平米
2006〜2007年供給量: CBD63.8万平米 非CBD31.4万平米 合計95.2万平米


「儲かる、パサルの売り場投資」(2006年12月26日)
不動産売買はさまざまだ。土地や建物の売買で儲けるひともインドネシアには数多い。都市周辺ではいまだに多くのひとびとが土地への投資を行っている。一方、パサルの売り場を売買しているひともいる。人通りの繁華なパサルの表通りに面した売り場スペースなどは、他人に高額で賃貸しているひとも多い。わずか2x2メートルというスペースなのに、土一升金一升という世界がそこにある。
やはり人の集散激しいパサルタナアバン。数層の建物の中の薄暗い通路に面した2x2メートルほどの狭い売り場。それが毎年億という金額の金を生んでくれるのは、タナアバンが年商90兆ルピアという巨大なエコノミーを抱えているからだろう。タナアバン市場のブロックA一階にある売り場2ヶ所のオーナーは年間で1億5千万ルピアの家賃収入を得ている。オーナーはその2ヶ所を20年間の使用権で10億ルピアを払ってデベロッパーから昨年購入した。つまり投資回収は6.7年で完了し、残る12年ほどは儲けが転がり込むのを待つばかり。まったく経費ゼロというわけにもいかないが、毎月出て行く金は平米あたり6万ルピアというサービスチャージ程度。どうして自分で商売に使わないのか、との問いにそのオーナーは、自分は少し離れた場所に売り場を持って商売しているよ、と返事した。
一方売り場の売買で儲けているひともいる。やはり同じブロックAの一階にある売り場を最近19億ルピアで売却したひとがいる。ところがその14ヶ月前にかれは16億5千万でその売り場を購入したのだ。それも42回の分割払いで。売り場を四ヶ所持っているかれがそのひとつを売却したのは突然資金が必要になったため。デベロッパーの販売価格から2億5千万も高い売値をつけたにもかかわらず、購入希望者は何人もコンタクトしてきたそうだ。パサルの中の売り場はその位置によって価値が大幅に違ってくる。人気の高いのは一階で、エスカレータに近い場所や出口のそば。パサルタナアバンでも同じフロアなのに場所によって賃貸料に年間7千5百万ルピアもの差がつく。ブロックFでは人気のある場所で年間賃貸料は1億ルピアにも達する。しかし通路に囲まれた建物の真中あたりだと年間2千5百万ルピアで借りられる場所もある。賃貸料が高い場所はそこがいくら高くても十分にお釣りがくるだけの売上があがるからで、反対に安い場所は売上も小さいからたいして儲からないということのようだ。


「PLNが強制前受けシステムを開始」(2006年12月28日)
国有電力会社PLNが電力利用料金請求金額算定システムを変更した。PLNは電力利用者から契約加入時に保証金を取るシステムをこれまで行ってきた。この保証金(Uang Jaminan Langganan)は加入時に一ヶ月分の利用料金見込みを算定してその二倍を保証金とするというシステムだが、保証金という名目だから契約解消時には清算されるべきものなのにいったいどうなっているのかわけがわからず、権利意識を持つ消費者でも泣き寝入りするしかないという状況が続いており、PLNへの批判が投げかけられていた。
PLNは今回その保証金を前受け金(Uang Muka Tagihan Listrik)という名称に変更し、その前受け金が毎月常に存在しているような形態に改めることにした。この方針はPLN取締役会決定書番号341.K/010/Dir/2003号で定められている。その前受け金額は過去三ヶ月間の利用料金の平均値の二倍という計算で、一度受け取った前受け金額残高を上下させて毎月あるべき残高にさせようという仕組み。このロジックに従えば、初回は巨額の前受け金額が請求されるが毎月同じ利用料金が請求されていれば翌月以降の前受け金追加請求はないことになるし、翌月以降で電力利用料金が下がれば前受け金額は低くなるために払い戻されなければならず、電力利用料金と相殺されてPLNへの支払い金額が減るということになる。この前受け金残高は利用者への請求書の中に表示されるので、PLNと利用者の双方にとって同じ資料で貸借管理ができるようになる。PLN側は従来から不透明で横領着服の巣窟として問題になっていた保証金システムをこの前受け金システムで解決できるとして西ジャワ州デポッ市でトライアルを開始した。デポッ市が選ばれたのはこの地区に停電発生がきわめて少ないという実績のため。
PLNの説明によれば、利用電力料金請求システムは前々月15日から前月14日までの利用分を当月1日に請求するというメカニズムであるため前月15日から支払日までの電力供給コストを利用者からの前受け金で賄うのだとのこと。この前受け金請求を開始する際には過去に納められた保証金の清算もそこで行われるようにするとの方針になっており、利用契約者ごとの保証金計算のために前受け金システム開始が遅れているのが実情だと経営陣はコメントしている。この新システムは全国一斉実施はなされず、各地区を担当するPLN支社が個々に時期を決めて開始することになっている。


「デポッ市のほぼ1万軒が2005年に盗電違反」(2007年1月9日)
デポッ市で2006年にPLNが摘発した盗電は2,970件で被害電力量は1,030万Kwhにのぼり、それを金額換算すれば56億ルピアになる、と国有電力会社PLNのデポッ市送電サービス管区が表明した。これは2005年の9,798件1,900万Kwh107億ルピアからは大幅に減少しているが、同管区はこれからもまだまだ摘発の手は緩めないと述べている。盗電を行っているのは住宅地区にある民家がメインだが、今年はリモ地区の2工場も摘発された。ビン詰め飲料水を製造しているPT SWグループは送電線から許可なく工場内にケーブルを引き込んでおり、電力メーターの数値が合わなくなっていた。この盗電でPLNは8億ルピアの損失を蒙ったと見積もっており、既に裁判所への告訴が行われて審判が始まっている。
2006年の送電ロス節減活動については、ロス比率が8.27%で2005年の8.97%とほぼ同レベル。ロスの発生は送電ネットワークにおける設備不良が原因のほとんどを占めており、メンテナンスレベルを高めることでロスが節減できるが8%を切るためには大掛かりな設備補修が必要になるため容易ではないとのこと。デポッ市の電力販売状況は2006年11月までで41.4万契約者を数え、売上高は5,920億ルピアに達している。2005年年間では契約者数39.6万軒売上5,946億ルピアだった。
ところでデポッ市の2006年火災発生件数は12月26日時点で84件に上り、そのうち23件が電気のショートによるもので最大シェアを占めている。次いで灯油レンジの爆発、ゴミ焼却、ガソリンといった順位。デポッ市消防署は市民に対し、家庭や事務所で使われている電気配線の中で古くなった巻き線には十分注意するようにと指導している。


「企業のコンピュータシステムへの妨害が増えそう」(2007年2月15日)
インターネット利用者にとって2007年はコンピュータセキュリティに対するリスクがますます高まっている、と専門家筋が語った。詐欺、ファイジング、スパムなどが利用者を脅かす以外に、ウイルスやスパイウエアも負けじと活発化している。PT Vaksincom のアンチウイルス専門家アルフォンス・タヌジャヤが、今年1月に新種のウイルスが登場して汚染被害発生者のトップの座についたと語った。このW32/VBWorm.MPT はPendekar Blank と呼ばれる種類のウイルスで、国内全域に幅広く拡散して数千台のコンピュータに被害を与えている。そのウイルスはPendekar Blank 1 と自称しているため、制作者はシリーズで続々と新しいものを作り出す意図を持っているのではないか、と専門家は見ている。このウイルスは他のローカルウイルスを根こそぎ退治すると謳いながら、実際には他のウイルスに何かをするどころか自分自身が入り込んだコンピュータの機能に障害を及ぼしている。
サイバークライム専門家は、犯罪者は従来よりもっと組織だった体制でサーバーとクライエントへの襲撃を開始してくるだろう、と予測している。ブラウザーにセットされたアンティファイジングツールバーをオープンにした企業はセキュリティ対策メカニズムの弱点を突かれたりコードを盗まれたりすることが起こるかもしれない、とのこと。今年はウイルスを使ってコードを破壊するという事件が多発する可能性をも専門家筋は示唆している。


「工場が麻痺しても、出勤できる労働者は出勤せよ」(2007年2月16日)
2月の月明けから始まった首都圏の大水害は北ジャカルタ市チャクンにあるヌサンタラ保税工業団地(KBN)を水没させた。総面積4百Haのこの工業団地の90%は水に浸かり、団地内の主要道路は大人の腿までの深さに水没し、深い場所では水深が2メートルに達している。およそ125の工場は一週間にわたって操業が停止しており、そこで働く3万人の工員は勤務に就けない情況で、2月9日までの一週間で発生した損失は1兆ルピアに達するものと見積もられている。
この工業団地で操業している工場の8割方は繊維衣料品関連工場で製品をアメリカやヨーロッパに輸出している。ある工場では輸出するためにダンボールに箱詰めされた製品が泥水に浸かって商品価値を失っており、出勤してきた一部従業員はすねまで水に浸かりながら工場建物に入ったものの水をかぶることは免れた機械も電気が来ていないために生産活動は行えず、仕方なく軽く冠水した床の掃除に精を出しているありさま。大多数の従業員は出勤もままならない状況だ。ある衣料品工場では生産活動再開の目途がまだ立たない一方、アメリカのバイヤーがさっそく船積遅れに対するペナルティの要求を出してきた、と経営者が打ち明ける。一日の生産能力6百ダースというこの工場はアメリカとヨーロッパ向けに出荷準備が整っていた製品が水を浴びて輸出できなくなってしまった。一週間の操業ストップと製品のロス、おまけに原材料も水に浸かったために百億ルピアの損失だ、とその経営者は言う。海外バイヤーからのペナルティクレームに対抗できるよう、政府は何らかのコミュニケを出して外国の輸入者に天災であったことを理解させてほしい、と事業主たちは要望している。中には重要書類が破損したり紛失した工場もある。電気が来ていないために輸出入通関のオンラインEDIも思うにまかせない。税関は特例的にマニュアルプロセスを認めるべきだ、と要望を語る事業主もいる。KBNチャクンの麻痺は同じような水没を免れたタンジュンプリウッやマルンダのKBNにも影響を及ぼしている。保税工業団地同士で、入居している工場間での取引がストップしてしまったためだ。
インドネシア福祉労組同盟のレクソン・シラバン議長は、今回の水害で会社に出勤できなかった労働者に対して勤怠制裁を加えることのないようにしてほしい、と実業界に要請している。「それでも無断欠勤を行った従業員を解雇するようなことが起これば、労使係争法廷の判事はそれを取り消させなければならない。」との弁。また国民労組のバンバン・ウィラヨソ全国指導部議長も、「企業は水害被害者にならなかった従業員に対してまず出勤するよう警告するべきであり、それでも警告を無視して出勤しようとしない従業員があれば厳格な措置を取ればよい。水害を免れて出勤できる状態にある従業員は、どうせ会社へ行っても生産活動は行われないだろうから行くだけ無駄だという理由で勝手に欠勤することなく、出勤できるなら出勤しなければならない。」と労働者に対して怠慢を戒めている。


「PLNが保証金システムを再検討」(2007年3月2日)
「PLNが強制前受けシステムを開始」(2006年12月28日)で報道された新前受け金システムは昨年12月からデポッ市がパイロットプロジェクト地区に選ばれ全国に先駆けてトライアルの口火を切ったものの、電力利用者からの支払金額激増に関する苦情があまりにも多かったために全国実施に関してPLNは方針の再検討を行っている。
一般家庭からビジネス界まですべての利用者に対して保証金を前受けの形で納めさせる新システムはPLN取締役会決定書第341.K/010/DIR/2003号で三年前に定められている。デポッ市でのトライアル開始に際しては4百社にのぼる工場など大口ビジネス利用者への戸別訪問説明を西ジャワバンテン配電支社が実施したため実業界からの反発や苦情はあまり出ていないが、およそ40万に達する一般家庭利用者への社会告知があまりなされていなかったために苦情続出という事態になってしまった。その状況にPLN西ジャワバンテン支社はデポッ市に続いてほかの地区で予定していた実施計画を急遽取りやめて再検討結果を待つことにしている。デポッ市で既に行われた社会告知はマスメディア広告やチラシ配布などで、マンツーマンの説得が重視されるインドネシア社会ではやはりいまひとつ説得力に欠けていたもよう。
電力供給契約新規加入時には必ず保証金が取られており、前受け方式も保証金額としては変わらないのだが、電力タリフ変更時に保証金額変更が連動して行われたことがなかったために古くからの利用者にとって苦情のタネになってしまったとPLN側は述べている。PLNは電力利用者からの保証金を預かり金の形で4.07兆ルピア計上しており、2007年中にそれを4.35兆までアップさせることを目標にしている。
ちなみに2005年時点でのPLN全国顧客数とカテゴリー別収入は下のようになっている。
一般家庭  32,174,922軒  収入23.2兆ルピア
工場         46,475軒  収入24.2兆ルピア
事務所    1,455,797軒  収入11.8兆ルピア
社会施設     716,194軒  収入1.4兆ルピア
政府官公庁     89,533軒  収入1.3兆ルピア
公道照明      76,432件  収入1.4兆ルピア
合計    34,559,353件   収入63.25兆ルピア


「省間で縄張り争い」(2007年3月5日)
鉱業資源エネルギー省が扇風機・テレビ受像機・冷蔵庫・洗濯機・エアコンなど6種類の家電製品に対してSNI(インドネシア製品規格)の適合義務付けを課した。工業省はそれに対し、家電品に対する義務付けは工業省の担当分野であるとして鉱エネ省に対し釈明を求めている。工業省電子産業局長によれば、工業省と鉱エネ省の総局長クラスの合意によって鉱エネ省は安全規格を作成し、家電品の製品パフォーマンスは工業省が管轄することになっている、とのこと。「鉱エネ省の領域は電力供給から電気製品が接続されるコンセントまでであって、家電製品そのものは工業省の領域になっている。確かにそれら6製品分野に対するSNI対策は遅れているが、その隙に工業省を出し抜くようなことをされては困る。」同局長はそう語る。
ところが現実に、1989年政令第10号を改定した電力供給とその利用に関する2005年政令第3号24条には、電力利用に関してSNI義務付けは鉱エネ省が行うという文章が盛り込まれている。「大臣(鉱エネ相)は強制的規格として電力分野でSNIを実施することができ、SNIを満たさなければならない電気器具にはSNIマークの記載が義務付けられる。SNIマーク記載手続きの詳細は大臣令(鉱エネ相令)で定められる。」というのがその条文だ。工業省は早急に、この問題についての一級エセロンレベルでの話し合いを鉱エネ省と行う予定にしており、場合によっては経済統括省にこの問題の仲介を求める可能性があるとも言及している。国会からもこの問題に関して便宜を図るとの申し出が来ている、と同局長は述べている。アセアン域内はおろか諸先進国でも家電製品のパフォーマンス管理は通商産業担当省が扱っていることを同局長は例にあげている。
鉱エネ省電力兼エネルギー活用総局長は、SNIを国内に実施する任務を行政は負っている、と語る。「SNIというのは国家規格庁が作るもので、われわれは政令によってその実施任務が与えられている。国民消費者の安全のために独立ラボで検査され、それをパスしたものが市場で販売されなければならない。当方が出し抜いたというようなことではない。これは職務なのだ。」総局長はそう説明している。SNI実施で省に特定のプロフィットが入るわけではない。工業省がこの職務を行いたければ政府にそう命令してもらえばよい、とも総局長は述べている。


「海外出稼ぎ者の外貨稼ぎは年間65億ドル」(2007年3月9日)
海外出稼ぎ者が2006年に公的機関を通じて行った本国送金は45億ドルにのぼった、とインドネシア銀行副総裁が語った。銀行や送金サービスを行う金融機関以外に未届け送金サービス業者や私的なサービスを使ったものを含めれば、総額は65億ドルに達するのではないか、と同副総裁は述べている。2005年にインドネシア銀行が記録した海外出稼ぎ者本国送金の公的機関取扱分は11億ドルで、最大シェアはマレーシアが45%、続いてサウジアラビア30%、台湾9%、クエート5%、香港とシンガポールが各3%、残りはアジアと中東のそれ以外の国々、という内訳だった。過去5年間のデータを見ると、海外出稼ぎ者の本国送金は年平均24億ドルになっている。インドネシア銀行は海外出稼ぎ者の送金に関連した状況を整理するために昨年12月5日に中銀令第8/28/2006号を制定し、海外出稼ぎ者の送金を取り扱う法人個人はすべてインドネシア銀行から取扱い認可を得なければならないことを定め、2009年から無許可サービスの取り締まりを行うことを決めた。労働省によればいまインドネシア人海外出稼ぎ者は270万人おり、同省は300万人という目標に向かって邁進している。


「PCレンタル」(2007年3月15日)
ノート型パソコン、LCDモニター、プロジェクターなどをレンタルするビジネスが広がっている。Gudang Rental 社は7年も前からこのビジネスを始めた。ここではノート型パソコンもデスクトップ型もレンタルしている。ノートパソコンは30万〜300万ルピア、LCDは25万〜100万ルピアというレベル。ノートパソコンはDell, Acer, HP, Compaq, IBM, Toshiba などの諸ブランドが取り揃えられており、料金はそれぞれ異なっている。レンタル料金は一日単位あるいは一月単位に分かれており、たとえば一日だと15万ルピアでも一月で契約すれば200万ルピアというようにたいそうお得な値付けがなされている。
Optima Computer 社の場合はやはり同じようなシステムだが、中古商品の販売やコンピュータ教室も行っている。レンタル希望者は同店に電話すると店員が希望する機種を持って家や会社までやってくる。その場で支払えば即使用が可能。あるいは頭金を払って残りはレンタル期限満了日に後払いということもできる。利用者が個人客の場合は保証金を置かなければならない。そしてレンタル品が気に入った場合は頼めば売却してくれる。もちろん中古品のお値段で。
レンタルコンピュータの利用者は学生から企業までさまざまだが、やはり上顧客は企業ということのようだ。Aneka Tambang, Ernst & Young, Trimegah Securities, Tugu Pratama, Sultan Hotel などがGudang Rental 社のお客さん。レンタルコンピュータを行っている上記二社のコンタクト先は下の通り。
* PT Optima Computer Bisnis Integra 住所Rasuna Office Park LO-09 Tel. 21-93709410, 70922600 www.optimacomputer.com
* Gudang Rental 住所Jl Majapahit Blok Y No.26 Jakarta 10160 Tel. 21-3857216, 21-3857217, 21-68683198 Fax 21-3501149 www.gudangrental.com


「仕事は手抜きがあたりまえ」(2007年3月26日)
2006年11月10日付けコンパス紙への投書"Pendebetan oleh Cigna International"から
拝啓、編集部殿。わたしはシグナインターナショナルのユニケアヘルスアンドファンド保険に加入しています。この保険は2000年12月1日から2007年12月1日までの期限で、保険料支払は毎月153,875ルピアをわたしのBII銀行クレジットカード口座からシグナインターナショナルが引き落とすという方法で行ってきました。ところがシグナの引き落としは2006年7月が最期となり、8月からシグナは引き落としをしなくなったのです。2006年10月にわたしがシグナに問い合わせるとカスタマーサービス担当者は、8月の引き落としができなかったのでわたしの保険は取り消されたと言うのです。そしてわたしに、BII銀行に確認するようにと言いました。BII銀行に確認したところ、銀行側が8月の引き落としに応じなかったのは保険会社が引き落とし申請にわたしのクレジットカード期限を6月7日と記載したからだという説明を得ました。当初わたしのクレジットカードの期限はその日付でしたが、わたしはBII銀行から11月7日までの期限延長を得ていたのです。
シグナ側がわたしのクレジットカード期限に関してどうしてわたし本人もしくはBIIクレジットカードセンターに問い合わせをしなかったのかとても遺憾です。8月にわたしのクレジットカード口座からの引き落としをBII銀行がリジェクトしたとき、本来ならシグナはわたしにそのことについて問い合わせしてくるべきではありませんか?それ以前にもシグナ側は実際に、わたしのクレジットカード期限とその延長についてわたしに問い合わせてきたことがあるのですから。
そうして2006年11月3日、シグナインターナショナルはわたし宛に、この保険証券が無効になったことを公式文書で知らせてきました。シグナインターナショナルの顧客取扱いはこんなやり方なのですか?自分がちゃんと仕事をしないでおいて、有効期限がまだ17ヶ月も先の保険契約を一方的に取り消してしまうなんて。シグナインターナショナルと関係を持つ場合は皆さん警戒するように。[ 北スマトラ州メダン在住、シャプリ・チャン ]
2006年11月16日付けコンパス紙に掲載されたシグナインターナショナルからの回答
シャプリ・チャンさんからの11月10日付けコンパス紙への投書に関して次のようにお知らせします。シグナ保険会社はシャプリ・チャンさんにコンタクトして事情を説明いたしました。シャプリ・チャンさんのクレジットカードの期限が延長されたことを確認したので、ご本人の保険証券は無効が解除されてふたたび有効となりました。効力を戻したことを通知する公式文書は既にご本人の住所宛てに発送されています。[ シグナ保険カスタマーサービス課長、リリ・ワティ ]


「毎日行方不明になるサービス技術者」(2007年3月27日)
2007年2月24日付けコンパス紙への投書"Teknisi Kabelvision Menghilang"から
拝啓、編集部殿。わたしは顧客番号206406番のカブルビジョンの顧客です。2007年2月2日にジャカルタが大水害に襲われて以来、インターネットケーブルもつながらなくなってしまいました。わたしは故障の状況を調べるために技術者を派遣してもらおうと思い、2007年2月6日カブルビジョンのカスタマーケアにコンタクトしました。技術者は2月7日午前中にやってくることになりました。ところが12時になってもまったく姿を現さないため再度カスタマーケアにコンタクトすると、15時まで待ってくれと言うのです。このようにしてわたしは2月13日まで待ちぼうけを続けさせられています。2月6日から今日まで、わたしはカブルビジョンのカスタマーケアにコンタクトし続けているのです。少なくとも一日に5回は電話し、スティアワン、ヌルル、アプリル、リア、ディア、ウリ、アンワル、ラストリなどさまざまな担当者にお願いしましたが、毎回聞かされる返事は「そちらを訪れるスケジュールになっている技術者はいま連絡が取れません。」「そちらにまだ伺っていない理由についての技術者からの報告がまだありません。」という定型文章ばかりです。
毎日そんな返事を聞かされていますがおかしなことに、かれら自身が技術者はハンディトーキーと携帯電話を持っていることをわたしに明かしているのです。論理的には、顧客の家を訪問するよう指示された技術者がその日なんらかの事情でその業務を遂行できなかった場合、その技術者は事実を報告して翌日にその顧客の家を訪問するよう努めるものではありませんか?不思議なのは、毎回技術者に訪問業務を命じたあと、その技術者がどこで何をしているのかをまったく会社側は関知していないということです。この会社の技術者はオフィスを出るとそのまま雲散霧消してしまうのでしょうか?当社のサービスは他の会社よりも最高のものです」なんてカブルビジョンはどうして言えるのでしょうか。自社の技術者がどこへ霧消したのかをかれら自身が説明すらできないというのに。[ 南ジャカルタ在住、リディア・ワティ ]


「ガードマンの世界にもヤミ会社」(2007年05月22日)
セキュリティサービス会社の団体「インドネシアセキュリティ企業サービス協会」が無許可で活動している会社や財団法人の取締りを行うよう政府に要請している。セキュリティサービス会社の内容は労働大臣・内務大臣・国家警察長官の共同大臣令で定められており、保安警備を行う警察のパートナーという位置付けのために各州警察から認可を得なければならない。警察側からの指導や合同訓練なども実施されていて、テクニカル面での標準化は厳しく行われている。同協会会長はその点を重視しており、無届無認可の闇セキュリティサービス会社は保安警備面で標準化ができておらず野放しにしておいてはいけない、と政府の対応を求めている。
企業や個人のセキュリティ保全はいまや完全な外注化の時代に入っており、セキュリティビジネスは大きな市場を形成している。インドネシアには現在、公認セキュリティ会社が3百社あり、そのうちでアクティブに活動しているのは1百社とのこと。警備員需要は月間50万人もあり、さらに膨張傾向にあるのは言うまでもない。警備員の給与は月130万〜150万ルピアというレベルだそうだ。


「エグゼキュティブクラブ」(2007年6月21日)
ジャカルタのエグゼキュティブたちはどこに集まってネットワーキングを展開しているのだろうか?ジャカルタのエグゼキュティブクラブはあまり多くない。老舗のひとつはマーカンタイルクラブ(Mercantile Club)。20年という歴史を誇るこのクラブはウィスマBCAのペントハウスに居を構え、事業主・プロフェッショナル・エグゼキュティブビジネスマンそしてエクスパットたちがそこに集まってくる。定期的に催されるビジネスフォーラムランチオンは有益な情報収集と交換の場だ。ワールドトレードセンター18階とペントハウスを使っているマーカンタイルアスレチッククラブ(Mercantile Athletic Club)も時おり開かれるパーティで盛り上がる。
スディルマン通りのグラハニアガ27・28階にあるファイナンシャルクラブ(Financial Club)もエクスクルーシブな会員制クラブ。ここにも朝・昼・晩と会食が可能なレストランがある。やはりスディルマン通りのウィスマBNI46にあるのはジャカルタアメリカンクラブ(Jakarta American Club)で、ここの会員はエクスパットの方が多い。南ジャカルタ市クマン地区にあるクラブアズール(Club Azur)も外国人会員の方が多い。ビマセナクラブ(Bimasena Club)は石油ガス業界者をメインの会員にしている。バリに最近オープンしたエクスパットに受けているクラブはチャングークラブ(Canggu Club)。
ジャカルタにも新しいクラブがオープンした。ウィスマバクリ2の20階にあるのがザコマースクラブ(The Commerce Club)。このクラブは外国に姉妹クラブを持っており、会員の相互乗り入れが行えるために好評を博している。政治家が実業界要人や高級官僚とメディア関係者の目をかわしてひそかに会談を行う場合にも利用されている。ザコマースクラブではテレコンファランス設備やワイファイ設備を整え、ミニマリストデザインのインテリアで最新トレンドを演出しており、クラシックスタイルが多いほかのエグゼキュティブクラブよりもトレンディなエグゼたちに受けがよい。
エグゼキュティブクラブ会員がクラブ施設を利用するのは、クライエントたちとの会談に高級ホテルより高いコンフィデンシャルが得られるから。クライエントと会食し、情報交換をし、ビジネスディ−ルを話し込むのは、プライバシーが守られた落ち着いた雰囲気のクラブならではのものだ。


「通貨危機の再来はない、と中銀副総裁」(2007年7月10日)
7月5日のインドネシア銀行総裁会議でBIレートはふたたび25ベーシスポイント引き下げられて8.25%となり、一時期に比べて5%近くも金利率が低下してきたというのに海外からの資金流入はまったく勢いが衰えない。その事実は2007年第二四半期の国際収支暫定数値が37億ドルの黒字という予想外のものである点に反映されている。それは11億ドルという当初見込みの3倍を超えるものとなった。投資の流入が依然として旺盛であるのは、7月5日にジャカルタ証券取引所総合株価指数が過去最高の2220.93ポイントに達してことからも見ることができる。インドネシア銀行がBIレートの引き下げを発表してからも証取では活発な商いが続けられて株価指数は1.13%に相当する24ポイントアップした。為替レートは4日の1ドル9千ルピア台から5日は9,017ルピアに落ちている。2007年4月時点での外資の中銀債投資残高は13.6億ドル、国債には8.5億ドル、株式市場で6.2億ドルという投資状況だ。外貨準備高もその影響を受けて6月末には510億ドルに達し、インドネシアの歴史始まって以来の記録が作られている。為替レートも第二四半期は平均1ドル8,968ルピアで、第一四半期から1.5%ほどルピア高になっている。
しかしそんな状況はこの先徐々に低下していく、とインドネシア銀行副総裁は語る。アメリカやヨーロッパの各国政府が経済引締めの方向に傾いているためインドネシアとの金利差は縮まるばかりで、ポートフォリオ投資家にとってインドネシア市場の魅力がダウンしていくのは間違いない。外国からの盛んな資金流入は、1997年に猛然たる外貨の流入のあとで突然始まった資金の国外流出が引き起こしたクライシスを思い出されるものであり、当時のトラウマを抱える経済関係者やオブザーバーたちは「突然の大量資金流出に警戒せよ」との警告をしばらく前から発しているが、同副総裁によれば突然の巨大な資本流出が再発することはないとのこと。将来起こるであろう資本流出は段階的に行われるため国家経済がそれで大きく揺さぶられるようなことはなく、そして国内銀行界もそのような動揺に対処する力を持ったシステムを用いているのであのときのような混乱は再発しないと同副総裁は述べている。
中央銀行副総裁はそう言うものの、国内有数の経済シンクタンクであるインデフの専門家チームは十分な警戒を怠ると危険を生じる要素がいくつかあると指摘している。その要素とは資本市場での資金増大、金融セクターと実業セクターの断層、中銀債償還負担の膨張、依然として重い借入れ負担、激しい短期資金の流入などだ。資本市場での資金増大は突然巨額の資金流出が発生するリスクを増加させており、それは国際収支に重大なリスクをもたらすことになる。


「2007年8月8日、都民は休日」(2007年7月23日)
2007年から2012年までの任期を務める次期都知事を選ぶ投票日は2007年8月8日で、この日首都は休日となる。既に二組の正副都知事立候補者が諸条件をパスして公認されており、その二カップルの間で首都首長の座が争われる。都知事選挙日程は次の通り。
7月21日〜8月4日 公式選挙キャンペーン期間
8月5日〜7日 冷却期間
8月8日 投票日 (この日は現職都知事が都民を対象にして公式休日と既に定めている)
二組の正副都知事候補カップルはファウジ・ボウォ+プリヤント(Fauzi Bowo-Prijanto)組とアダン・ダラジャトゥン+ダニ・アンワル(Adang Daradjatun-Dani Anwar)組。前者は都議会議席の75%を占める20政党の支持を集め、後者は24%を押さえているPartai Keadilan Sejahtera (PKS)党を後ろ盾にして選挙戦に挑んでいる。現職副都知事のファウジ・ボウォが立場上有利なポジションを占めているとの下馬評だが、国家警察副長官のアダン・ダラジャトゥンも歴代都知事が軍人であったことから規律や決断を行政に求める階層がどう動くか予断を許さない。
ところで、ジャカルタにある会社は休みにするだけだろうが、ボデタベッ地区にあって従業員の多くがジャカルタに住んでいる会社はどうするのだろうか?


「企業向け高級プリンターはレンタルの時代」(2007年7月26日)
今年後半の国内プリンター販売は高級機種で3割増が実現するだろうと業界では見ている。中級以上のクラスの企業をターゲットにしている高級プリンターはフジゼロックス、キャノン、HPのビッグスリーがシェア争奪を繰り広げている。IDCインドネシアのマーケットアナリストは、このセグメントのピークは第3第4四半期すなわち下半期にやってくる、と語る。「そして下半期は上半期の3割増になるだろう。毎分45枚以上という高速プリンターの需要は年間成長率20%と高い。この上流企業セグメントではアップグレード機種への買い替えを控える傾向が出ており、単価の高い高級プリンターの購入はしないで契約システムを使うところが増加している。」
HPインドネシアは、レーザーとインクジェットのテクノロジーを合体させたエッジラインと称する新テクノロジー機種をこのセグメントにオファーしている。コントラクトシステムについて同社は、もう4年ほど前から銀行・保険・製造・オイルガス関連企業にそのサービスを実施しており、数千台のプリンターがそのような条件で稼動しているとのこと。2007年第一四半期HPインドネシア社の高級プリンター販売台数は前年同期比で4倍を超えたと同社販売担当取締役は述べている。


「都知事選投票日に営業してもかまわない」(2007年7月30日)
2007年8月8日の都知事選挙投票時にジャカルタ首都特別区の全官庁と民間会社はすべての従業員に対して休みを与えるように。ショッピングセンター等が営業を続けるとしても、個々の従業員には投票権行使の機会を与えなければならない。スティヨソ都知事はそう要請した。ジャカルタ総選挙コミッション長官は、投票時にオープンしている機関は病院・インドネシア銀行・刑務所・警察だけである、と語っている。
首都の休みに関するこの案件についてウィドド内相代行は行政機構効用改善担当国務相宛に意見書を送っており、いくつかの例外を除いて全官庁が休みになるのは間違いないものと見られている。2007年7月25日付のその意見書には、「都知事選挙投票日が2007年8月8日に計画されているので、その日ジャカルタ首都特別区のすべての官庁と民間会社は従業員を休ませるよう求められている。なぜなら、2004年第32号法令第86条3項で、投票は休日あるいは休みにされた日に行われると規定されているから。」と記されている。スティヨソ都知事は首都の休日に関する中央政府の通達に関して、8月8日を休日とする内務大臣令は8月5日に出されることが望ましいと語った。「地方首長選挙の成功バロメータは有権者の投票参加が高いことにある。高い投票参加率は都民が日常の活動から解放されることで実現する。日常活動が都民の時間を拘束しているからだ。」都内民間会社を一斉に休みにしたい理由を都知事はそう述べている。
しかし都内の事業者たちは会社のビジネス活動がその日完全に停止することに対して抗議している。首都外にある支店が営業しているということもその理由のひとつだ。都知事はそれらの声に対して柔軟な姿勢を示している。「もし完全な休みにするのが難しくとも、すべての従業員が投票に行けるようにアレンジしてほしい。普段と同じような就業時間を強制して、従業員が業務を離れて投票に行けないようなことをした事業者には警告が与えられることになる。就業時間のやりくりを行って全員が投票権を行使できるようにしなければならない。」都知事はそう念を押している。


「内務大臣令で8月8日の首都休日が確定」(2007年8月1日)
ジャカルタ首都特別区で2007年8月8日が都知事選挙投票日のために休日となることをウィドド内相代行が公式に定めた。それに応じて首都特別区総選挙コミッション長官が、すべての役所事業所は8月8日に職員を休ませるように、と要請した。「もし営業を行う場合、投票時間は午前7時から13時までなので営業は半日だけ行うようにしてほしい。職員には必ず投票へ行く時間を与えなければならない。その配慮をしなかった場合は投票権の行使を妨害したと見なされる。故意に他人の投票権を失わせ投票権を失った者がそれを届け出た場合、ひと月から6ヶ月の入獄もしくは20万から200万ルピアの罰金が科される。」首都総選挙コミッション長官はそう語っている。
都庁中等高等教育局は8月8日の都知事選挙投票日に都内の国立私立高校のすべてを休みにすると表明した。普通科職業科すべての高校生は学校が休みとなり、選挙権を行使することができる。初めて投票を経験する高校生は今回20万人にのぼると見られている。
実業界は概して8月8日は終日休みという方向性のようだ。コンピュータ事業者協会会長は、ジャカルタの協会メンバー5百店は各自法規に従うだろうから協会としてメンバーに通達を出すことはしない、と語っている。「一日およそ6千ユニットのパソコンが販売されているジャカルタで1ユニット350万ルピアとしても210億ルピアの売上があるが、それがロスになると考える必要はない。8月8日に買わなかった客は8月9日に買うだけだから。」と会長は語っている。


「8月8日の操業はどうする?」(2007年8月3日)
2007年8月8日は首都特別区だけが都知事選挙投票のために休日になるという内務大臣令に対して民間実業界はそれによって生じるいくつかの問題に困惑の態。概して事業主が困っているのはジャカルタのKTP(住民登録証)を持つ従業員でジャカルタ外で勤務している者もしくはその反対のケースをどう扱えばよいのかということがらで、そのため首都総選挙コミッションへの来訪や電話での問い合わせが相次いでいる。
中央ジャカルタ市チキニ地区に本社を置く外資系ジッパー製造会社では、本社スタッフ103人中でジャカルタのKTPを持つ者が48人しかいない。この本社が休業しなければならないのであればそれ自体が大した問題を引き起こすことはないだろうが、同社がデポッ市やブカシ県に持っている工場はどうすればよいのか?それらの工場はジャカルタではないので休業する義務はないが、従業員の中にいる首都の住民をどう扱えばよいのか?操業すればかれらの選挙権行使を妨害したと見なされるのか?ジャカルタの外にある事業所なのに都民を雇用しているから休業しなければならないのか?首都総選挙コミッション事務所を訪れた同社スタッフのひとりはそう疑問を語る。別の外資系大手飲用水製造会社の広報マネージャーは、8月8日の操業あるいは休業について会社はまだ結論を出していない、と述べている。今回起こっているそれらの問題は投票日が労働日である水曜日と定められたことが発端になっており、これまで都知事選挙投票は土曜日あるいは日曜日に行われていたのにと多くのひとが語っている。
首都総選挙コミッション長官はこの問題に関して、8月8日を休日にするポリシーはジャカルタのすべての機関や法人に適用される、とコメントしている。その日操業して良いのは病院・消防署・警察・中央銀行など限られた機関のみであり、それらの場所へは巡回投票所が設けられる。事業所がジャカルタ外にあってもジャカルタのKTPを持つ従業員には、たとえば午後からの出勤を可能にするようその従業員の勤務時間を調整するなどして投票権行使の機会を与えなければならない。そうすることでその従業員は出勤前に午前7時から13時まで開いている投票所へ行って投票することができる。同長官はそのように語っている。


「バティックマーク」(2007年10月2日)
「オーストラリアにはウールマークがある。インドと中国にはシルクマークがある。インドネシアにもバティックマークというものを設けることにする。このマークがついていることで商品はインドネシア産のバティックであることが公認され、またインドネシア政府が定めたSNI(インドネシア製品規格)品質規準を満たしていることも保証される。」工業省中小産業総局長は2007年9月19日にジャカルタコンベンションセンターでインドネシアバティック財団が催したGelar Batik Nusantaraと題する全国のバティック産品を一堂に会した展示会でそう表明した。政府は1989年から1996年までの間にインドネシア製バティックの品質規準をSNI制度の中で定めており、レーヨン素材バティックとシルク素材バティックに関するSNI、バティック製品サイズや手描き・プリント・組み合わせバティック布の特徴ならびに手描き・プリント・組み合わせ・モリプリミシマ(mori primissima)・プリマ(prima)・モリボアリシマ(mori voalisima)組み合わせバティック布のテスト方法に関するSNIなど21種類が既に制定されている。政府はそれら一定の基準を満たす国内バティック生産者に対して自社製品にBatik Indonesiaと記したバティックマークの貼付を奨励する方針を決めた。2007年9月18日に制定された工業大臣令第74/MIND/Per/9/2007号がこの方針の法的根拠を成している。
Batik Indonesiaという名称は2007年6月5日に著作権番号034100で登録されたインドネシア産バティックのアイデンティティを証明するもので、それはバティックマークの中に表記されて用いられる。上の工業大臣令によれば、バティックマークラベルは紙・布・プラスチックを素材とし、黒地にBatik Indonesiaの文字が記されていて文字の色がカテゴリーで異なっており、手描きバティックは黄金色、プリントバティックは白色、手描きプリント組み合わせは銀色が使われる。このバティックマーク使用認可は3年間で、期限は延長可能。認可は商標登録の済んでいる事業者に与えられ、申請手続きはジョクジャのバティック手工芸総館(Balai Besar Kerajinan dan Batik)に50万ルピアの申請料を添えて提出し同時に対象品1件あたり25万ルピアのテスト費用も納めるが、生産プロセス検査のための検査員派遣交通費・宿泊費・日当が別にかかる。検査員派遣費用は中小企業の場合半額割引が適用される。
政府のこの新企画はバティック生産者に好評で受け止められており、業界者は製品に対する市場からの信頼感がそれによって大きく向上することを期待している。今国内バティック産業は手描き・プリント・組み合わせのすべてを合わせて4万8千の事業所を抱え、生産規模は2.3兆ルピアで輸出は1.1億ドルに達している。


「ふたたび突然の長期休暇がインドネシアを襲う」(2007年10月4日)
政府は既に定められている2007年国民の休日と公務員一斉休暇に関する共同大臣令の内容を変更し、一斉休暇日を増やした。既に定められている2007年国民の休日と公務員一斉休暇の内容はインドネシア情報ライン「国民の休日情報」にある通り。公務員一斉休暇日が増やされるとの政府決定はアブリザル・バクリ国民福祉統括相が10月1日にジャカルタで発表した。この変更によって、イドゥルフィトリ後の休暇は火曜日に終わり水曜日から仕事に戻るというカレンダーからその週はまるごと休みというカレンダーに変わることになる。国民福祉統括相はこの休暇日の追加に関して、公務員有給休暇は年間12日あるので一斉休暇日を増やしても実働日数に影響を与えることはない、と説明している。
一斉休暇日変更内容は下の通り。
2007年10月12日(金) イドゥルフィトリ前日の一斉休暇 変更なし
2007年10月15日(月) イドゥルフィトリ後の一斉休暇  変更なし
2007年10月16日(火) イドゥルフィトリ後の一斉休暇  変更なし
2007年10月17日(水) イドゥルフィトリ後の一斉休暇  新設
2007年10月18日(木) イドゥルフィトリ後の一斉休暇  新設
2007年10月19日(金) イドゥルフィトリ後の一斉休暇  新設
2007年12月21日(金) イドゥル・アドハとクリスマスをつなげる一斉休暇  変更なし
2007年12月24日(月) イドゥル・アドハとクリスマスをつなげる一斉休暇  変更なし
2007年12月26日(水) イドゥル・アドハとクリスマスをつなげる一斉休暇  新設
2007年12月31日(月) キリスト教暦2008年新年を迎える一斉休暇  新設
今回の変更で公務員一斉休暇日数は先の6日から11日となるため、個別に2日以上有給休暇を取る公務員に対する処遇が疑問視される。それら一斉休暇期間中の保健所・病院・銀行・水道・電話通信・警備・消防その他一般国民に対するサービス業務を担当している政府機関は職員に交代で勤務を命じなければならない。国民福祉統括相はそれらの機関に対して、国民サービス業務が滞ることのないよう規則に従って対応して欲しいと要請している。この決定は他の国民系民間企業従業員にも適用されるとコンパス紙には記載されている。


「ルバラン明け長期休暇決定に実業界が苦情」(2007年10月8日)
10月1日にアブリザル・バクリ国民福祉統括相が突然発表したルバラン後の公務員一斉休暇日の追加に関する政府決定に対して、実業界は不満の意を表すとともに銀行・税関その他輸出入手続きに関わる機関がその間も稼動を続けるよう政府に要請した。MSヒダヤッ全国商工会議所会頭は「ルバラン明けの一週間に公務員が無断欠勤するような結果を生み出させるよりもその期間を公式に休みとしようという政府の方針はよく理解できるものだ。しかしわれわれは関連省庁が開業してくれるように要請する。公務員一斉休暇が延長されても経済活動は回転しなければならない。」と表明している。
輸出者は船積期限までに製品を完成させて船積みしなければならず、契約された船積日の遅れを容認してもらえる保証を公務員一斉休暇がもたらすとは考えにくい。物理的な輸出活動を停滞させてはならず、そのためには銀行も税関も勤務してもらわなければならない。その休暇期間中従業員を勤務に就かせるために特別なインセンティブや休暇に対する補償を与えることは実業界にとって問題ではない。商工会議所会頭はそう発言している。
今回突然発表された休暇延長に関する政府決定について実業界は、このような変更は2〜3ヶ月前に決めてもらわなければ産業界に混乱が起こり、操業計画の突然の変更のためにロスが出る、と苦情を表明している。アピンド(インドネシア事業者協会)のソフィヤン・ワナンディ会長は、ルバラン明けの一斉休暇延長はインドネシアの産業競争力と労働生産性をますます悪化させるものだ、と批判した。「われわれは賛成できない。われわれは休みが多すぎて労働生産性が低い。しかし政府決定だからそれに合わせなければしかたない。このように休暇が延長されることで事業者は休日出勤経費増を負担しなければならず、経費増によって生産コストがアップし、特に輸出商品は国際競争力を失っていく。」
アピンドのジマント事務局長は政府に対し、有給休暇というものは個人が個々の都合に応じて取るものであるためこのような一斉取得を政府が決めるようなことをする必要はない、と言う。むしろプライバシーに属すものであるため、国がそれを取り仕切るのはおかしいと事務局長はコメントしている。
10日間となった今年のルバラン休暇に関して政府は国公立保健医療機関・警察・消防に対して期間中の勤務を義務付けている。保健医療機関とは政府系病院ならびに各郡に置かれた保健所(Pusat Kesehatan Masyarakat)を意味している。都庁は消防局と秩序安寧局にシフト制での出勤を命じており、都内保安警備のために設置された防犯カメラも首都クライシスセンターでモニターされる。首都警察は休暇中279ヶ所に警官詰所を設けるほか、繁華街と住宅地区を問わず都内全域のパトロールを強化する。休暇中の勤務に投入される警官は1万7千人に上る予定。一方それらを除く住民サービス機関はすべて休みになる。国税総局税務サービス事務所は納税期限・届出期限が休みになるものは休み明けに行ってよく、それに罰金を科すことはないと表明しており、10月22日の大混雑が懸念される。


「農業用地借地料が大幅アップ」(2007年11月12日)
ジャワ島内で農業用地の地代が大幅に値上がりしている。この値上がりは籾米やとうもろこしなど農業商品価格が上がっていることに影響されているようだ。中部ジャワ州クンダル県に土地を持っている地主のひとりは、2006年の地代収入は年間1千6百万ルピアだったが今回は2千3百万ルピアになった、と語っている。かれが持っているバグンサリ村の1Haほどの土地は年額450万ルピアだったが今回の競りでは700万までアップし、別の場所の0.75Haの土地は年額380万ルピアから600万ルピアに、また0.5Haほどの曲がっている土地は場所が良いため年額250万から500万ルピアに倍増した、との談。同村ドゥクラバンの天水田は年額40万ルピアだったのに今回の競りでは70万ルピアまで上がったとかれは驚いており、地代値上がりは潅漑水田だけでなく天水田でも陸稲畑でも同じような現象になっている。「こんなに高い地代がつくとは思わなんだです。競りがはじまったら最初からみんな高い金額を出してきて・・・・」
この作付期にはブカシからカラワンにかけての西ジャワ州穀倉地帯でも地代が上昇している。バグンサリ村ほど激しい値上がりではないにせよ、一回の栽培期に対してヘクタール当たり400万ルピアが500万ルピアになっている。地主たちはみんな、この値上がりはとうもろこしや籾米の価格が好調であるおかげだと見ている。乾燥とうもろこし粒はキロ当たり2,200ルピア、乾燥籾米はキロ当たり2,500から2,700ルピアというのが最近の相場だ。とうもろこし価格は国際原油価格の暴騰とそれが世界に引き起こしている植物性燃料代替政策進展の影響を蒙っており、エタノール生産のためにサトウキビやとうもろこしの品薄が発生することが懸念される、とインドネシア農業互助会役員は言及している。


「取りやすいところから取るだけという徴税のひずみ」(2007年12月12日)
トレードセンター(卸商センター)内に店舗を構えている小規模販売業者からの徴税を本腰を入れて行えとインドネシア小売業者協会(Aprindo)が国税当局に要請した。都内にある25のデパートメントストアは事業利益の30%を所得税(PPh)として納税しているが、多数のトレードセンターに包囲されて販売高は顕著な減少を示しており、売上高はひどいところで4割減となっている。この悪化している25デパートメントストアの営業状況は毎月の納税額が3億ルピア程度減少する結果を招いており、政府はその税収減をトレードセンター内の小規模業者から取り戻さなければならない。「われわれは卸しセンターで営業している商人(小規模販売業者)たちがリテーラーとしてのNPWP(納税者番号)を与えられて確実に納税を行うことを希望している。」アプリンド税務システム技術チーム役員はそう述べている。
ジョーンズラングラサールの調査では、現在ジャカルタには30のトレードセンターがあり来年は8ヶ所であらたにトレードセンターがオープンする予定になっているとのこと。このようなジャカルタやスラバヤなど国内大都市でのトレードセンター隆盛傾向はラマヤナ(Ramayana)、マタハリ(Matahari)、ヨグヤ(Yogya)、リモ(Rimo)などデパートメントストア各社の営業を圧迫しており、デパートメントストアはトレードセンターの増加に反比例して業績の低下を余儀なくされている。
デパートメントストアとそれに近いロケーションにあるトレードセンターとの間では不公平な競争が展開されている、とアプリンドは主張する。デパートメントストアは利益の30%を納税するという収益構造を維持しなければならないのに対し、トレードセンター内販売者たちの大部分はそのような条件を負っていない。納税の負担を免れていればその分だけ販売価格の設定に自由度が増すし、ましてや不法輸入商品ともなればそれに関税輸入税の負担さえ免れることが加わってデパートメントストアにはまったく太刀打ちできない値付けが行われ、極端な低価格によって消費者がトレードセンターに引き寄せられて行く。「トレードセンター内に売り場を設けている商人たちの多くは、言ってみればカキリマ商人が商業センタービルに入ったようなものであり、そこである期間商売したあと姿を消すヒットエンドランビジネスを行っている。かれらは協会にも属さず、組織化される意思を持っていない。」アプリンド役員はそう語る。ヒットエンドランを行うのは税務署員に捕捉されないようにするためであり、かれらは永続的な事業活動を行い納税義務を果たすというフェアなビジネス姿勢を持っていない。
トレードセンターが増加し、これまで収税のひとつの柱となっていたデパートメントストアの売上が脅かされて必然的に税収が減少する。国税当局はやりやすいことだけを行っていれば、いずれ元も子もなくなってしまいかねない。政府がやりにくいことにも全力をあげて取り組んで公平さを世の中に実現しなければ、国の中のひずみはますます大きく根深いものになっていく。アプリンドの国税に対する要求は、政府がさまざまな面で抱えているこの種の弱さに向けられた警告でもある。


「電力会社がいんねんをつける?!」(2007年12月14日)
2007年10月20日付けコンパス紙への投書"MCB PLN Tidak Standar dan Meragukan"から
拝啓、編集部殿。2007年9月12日、西ジャカルタ市カリドラス(Kali Deres)サービス地区PLN職員S〜ほか数名がわが家を訪れ、女中しかいないわが家でPLN電力引き込み線と周辺器具の点検を行う電力利用取締りを実施しました。
その職員たちはわが家の封印されているMCB(電気ブレーカー)を取り外し、以前のものと同じ16AのMCBを取り付けて再封印しました。同じことがわたしの持っている隣の家でも行われ、ふたつのMCBはかれらが持ち帰り、わたしはカリドラスサービス地区PLN事務所に出頭するよう命じられたのです。指定した日に出頭しなければ発生した追加請求は翌月の電力料金支払請求書に付け加えるとのことでした。
指定された2007年9月14日にわたしはカリドラスサービス地区PLN事務所を訪れました。わたしの近所に住む隣人たちも大勢がそこに来ており、ほとんどみんなわたしと同じMCBの問題で呼ばれているのです。わたしが呼ばれて担当者のところに行くと、MCBに関する説明を聞かされるどころかわたしの二軒の家屋に対する罰金請求書の写しを渡されただけでした。しかしPLNが取り付けている電力メーター・MCB・封印などの器具類はすべて百パーセントPLN側の責任ではありませんか。
以前に他のPLN職員が設置した器具、とりわけ今回のMCBに、標準品でなく怪しいという疑念をいまPLN職員が抱くのはおかしいではありませんか。もし疑うというのなら、それを設置したPLNタングラン事務所はいまでも活動しており、わが家にはじめて電力供給が行われたときのオリジナル領収書もわたしは保管しているのです。新たに設置されたMCBこそ、それがPLNの標準品であるのかどうかといった書状が何もないためにわたしはむしろ不安を感じています。PLNタングラン事務所からの回答を求めます。[ 西ジャカルタ市在住、プアル・シャフナウィ ]
2007年11月10日付けコンパス紙に掲載されたPLNからの回答
拝啓、編集部殿。プアル・シャフナウィさんからの10月20日付けコンパス紙に掲載された投書に関して、まず2007年9月12日に電力利用取締り職員の訪問を受けたプアル・シャフナウィさんならびにその他の電力利用顧客に対しご面倒をおかけしたことに遺憾の意を表します。カリドラスサービス地区を含めてPLNは定期的に顧客の建物に設置された電力メーターやMCBなど電気設備への点検・修理・交換を行って電力損耗を減らすための電力利用取締りを実施しています。プアル・シャフナウィさんのお宅で点検を行った職員はMCBの封印が切れているのに不審を感じて新しいものに交換しました。古いMCBはタングラン配電地区PLN検定室での検定を受けるために持ち帰りました。この検定は顧客立会いのもとに行われるのですが、定められた10月25日にオーナー本人が来なかったために本人立会いなしに検定が実施され、検定結果はそのMCBが良好であるとの判定を下しました。そのためMCBを操作した場合のBカテゴリー違反と推測されて1,026,050ルピアと836,310ルピアの罰金請求が用意されていましたが、Fカテゴリー(取締り実施)で罰金なしと変更されました。[ PLN首都タングラン配電支社課長代理、アズワル・ルビス ]


「またまた長期休暇に襲われたインドネシア」(2007年12月21日)
2007年12月20日がイスラム犠牲祭「イドゥルアドハ」の休日で、それから12月26日までインドネシアはふたたび長い休みに入った。2007年10月1日付共同大臣令:宗教大臣令第97/2007号、労働トランスミグラシ大臣令第Kep.326/MEN/X/2007号、行政機構効用改善担当国務大臣令第SKB/10/M.PAN/10/2007号で公務員一斉休暇が増やされたために下のような休日カレンダーになっている。国民の休日に関する情報はインドネシア情報ライン「インドネシア国民の休日情報」をご参照ください。
2007年12月
20日(木) イドゥルアドハの休日
21日(金) 公務員一斉休暇
22日(土)
23日(日)
24日(月) 公務員一斉休暇
25日(火) クリスマスの休日
26日(水) 公務員一斉休暇
27日(木) 労働日
28日(金) 労働日
29日(土)
30日(日)
31日(月) 公務員一斉休暇
2008年1月
1日(火) キリスト暦新年の休日
2日(水) 労働日
3日(木) 労働日
4日(金) 労働日
5日(土)
6日(日)
7日(月) 労働日
8日(火) 労働日
9日(水) 労働日
10日(木) 回教暦1429年新年
11日(金) 公務員一斉休暇
12日(土)
13日(日)
公務員一斉休暇は国民の休日でないから民間企業は関係ないと言っても行政機関が基本的に休みの態勢に入るわけで、さまざまな面で普通の労働日のように行かなくなるのは想像に難くない。しかし肝心要の銀行業務については、インドネシア銀行が12月21・24・26日の公務員一斉休暇日もクリアリング・リアルタイムグロス決済・現金取扱いなど一部業務は平常通り行うことを明らかにしており、またそれにあわせて一般市中銀行の多くもそれらの日は営業する予定にしている。ただし21・24・26日のインドネシア銀行外貨取扱い部門は休みとなる。また12月31日は公務員一斉休暇と関係なく、例年通りインドネシア銀行は完全に閉店する。


「長いルバラン休暇は何も間違っていない、と副大統領」(2007年10月22日)
「政府はイドゥルフィトリ大祭に関連して2007年10月12日から19日まで8日間の長期休暇を与えたが、大祭は土曜日と日曜日であったために実際は6労働日の休みになっただけであり、一斉休暇日を延長したとはいえ実業界にとっては事業展開における生産性の維持が守られたと思われる。なぜなら一斉休暇日の延長は文民公務員だけを対象にしたものなのだから。銀行活動や公共サービスは限定的に休んだだけであり、民間はそれぞれの必要性に応じて休みを取るようにしていただきたい。もちろん公務員一斉休暇日の追加はイドゥルフィトリの二週間前という切迫した時期に発表されており、これでは事業者が休みと出勤日を適切にアレンジするのが困難だ。今後はこのようなことが起こらないように、もっと十分な時間の余裕をもって発表するよう国民福祉統括相に注意を促す所存である。」ユスフ・カラ副大統領は10月17日にパレンバンで開かれたスマトラ南部地区行政社会指導者とのイドゥルフィトリ親睦会で報道関係者にそう語った。
事業者にとっては労働者が休みであるため操業の機会を失って損失を蒙ったと感じることがあるかもしれないが、この長期休暇は観光産業と地方部の経済活性化にきわめて重大な効果を与えるものだ、と副大統領は付け加える。これを全国的に眺めれば、観光産業の隆盛と帰省者が持ち帰った巨額な資金の流通による地方部の経済活性化が大きいメリットをもたらしている。文民公務員等行政職員たちが休暇と出勤日のけじめをつけられないことが今年の公務員一斉休暇日の追加を実施した原因になっていると副大統領は認めた。これまでも、休暇が終わってもかれらは出勤して来ず、無断欠勤者に罰を与えてもかれらの性癖を変えることができなかった。その結果政府はどのセクターにもだれにも損を与えないことに配慮して検討を重ねた上で今年の休暇日追加を決定した。今年の国民の休日は14日あるがその多くは土曜日・日曜日に当たっており、労働日が休みになっているのは年間で8日しかない。その点を考慮して政府はルバラン休暇日の追加を行った。副大統領はそのように裏話を物語っている。


「オゾン層破壊物質輸入全面禁止」(2008年1月23日)
クロロフルオロカーボンやメチルブロマイドなどオゾン層破壊物質の輸入が2008年1月1日から全面禁止となったものの、検疫用途ならびに輸出船積前燻蒸に使用されるメチルブロマイドは依然として例外措置が適用される。
冷却機器に使用されるクロロフルオロカーボンは2007年末に禁止措置が適用され、メチルブロマイド(臭化メチル)も2008年1月1日から輸入禁止措置が取られた。これまでメチルブロマイドは穀物倉庫で消毒用に用いられるものがメインを占めていたが、今後はフォスフィンに代替されることになる。一方モントリオールプロトコルで定められている例外規定に従って検疫と船積前燻蒸には既存在庫がなくなるまで使用することが許されているため、政府はその用途に限ってメチルブロマイドの使用を認めることにしている。しかし生活環境担当国務省はその輸入にクオータ制を用いて輸入量を漸減させる方針であり、154メトリックトンが最新の上限とされている。ところがメチルブロマイドを船積前燻蒸に使用する輸出量が増加していることから、将来的に輸出の足を引っ張る状況が出現する可能性が懸念されている。
フォスフィンへの切り替えについても消毒サービス業者は、メチルブロマイドは24時間で効果が出ていたがフォスフィンは3日かかるために商品所有者にとってコスト上昇は避けられないだろう、と語っている。


「電気代がアップするか?」(2008年2月20日)
2008年3月から国内電力使用節減を図るためにPLNが消費抑制政策を開始する、と鉱エネ省が発表した。この抑制政策はこれまで産業界に対してダヤマックスプラスという名称で行なわれてきたもので、今回はそれを一般家庭やオフィス、社会機関などすべての電力利用契約者に対して実施する拡大方針を政府は打ち出してきた。鉱エネ省電力エネルギー活用総局長はPLNの台所事情に関連して、PLNは65兆ルピアの補助金を申請したが55兆しか認められなかったため、不足する10兆はこの消費抑制政策で埋め合わせざるを得ない、と語っている。
今年3月からPLNが全国で実施する予定のこの政策では、各電力契約者に月間使用量割り当てを定め、その割当量の80%を限度として限度オーバー分に平常規定料金の1.6倍をチャージするというもの。一方徹底的に節電を行なった契約者へのごほうびも用意され、割当量の80%を下回った契約者には電力料金の2割引が与えられる。一般家庭の中で最小カテゴリーである450VA(R1)に属す契約者はひと月の電力消費量が76kWhとされる予定なので、その80%まで電力消費量を抑制すれば電気代は安くなる。その結果は4月の請求書の中で表示されることになる。
PLNが動かしている発電所の多くはまだ石油燃料によるものが多く、高騰した石油の国際相場がインドネシアの夜を一段と暗いものにするかもしれない。ただしこの方針は鉱エネ省が国会の承認を得る前に公表したもので、これから国会で検討が進められためにそれが実現するかどうか、また時期についても確定的なところは今後の進展を待たなければならない。


「首都の賃貸料は下降気味」(2008年3月4日)
首都の不動産市場は空室・空きスペースが増加傾向にある。世界50ヶ国にネットワークを持つ不動産コンサルタントのジョーンズラングラサールによれば、セントラルビジネス地区(CBD)でオフィスビルは空きスペースが17%になっているとのこと。都内のショッピングセンターに至ってはその前年まで10%程度で推移してきた空きスペースが2007年は17%になった、と報告している。ジャカルタの賃貸アパートメント市場でも空室が増加しており、2007年は2006年の33%から36%へとアップしている。トレードセンターは昨年38%が空きスペースだった。
それにもかかわらずTBシマトゥパン通り界隈のようにCBD外での需要は上昇しており、ジャカルタの不動産需要はまだまだ悲観的になるには及ばない、とジョーンズラングラサール社調査ヘッドは見解を語る。CBDで働く勤労者は70万人にのぼっており、そのうちの少なくとも10%は同じ地区内に建てられるコンドミニアムの潜在的消費者になるはずだ、とかれは言う。つまりそれは、CBDに高級積層住宅を開発するデベロッパーにとってまだそれだけの需要があることを意味している。ましてや首都圏の通勤地獄から解放されたい勤労者たちの間にバックトゥザシティ現象が広がっているためにその潜在需要は強化されているだろうし、一方のコンドミニアム供給はまだ2万4千ユニットしか市場に投入されていないのだから。
しかし空室・空きスペース増加が分譲価格や賃貸料金の上昇にブレーキをかけるのは当然の成り行きだ。現実に、CBDのA級オフィススペース賃貸料はここ1〜2年に4〜5%低下しており、この状況は2009年まで続くだろうと見られている。高級賃貸アパートメント・コンド市場でも料金レベルは平米当たり月額12〜13米ドルで2001年以来あまり変化していない。ショッピングセンターも賃貸料は下降気味だ。商業施設運営者の中には集客力のある小売業者に破格の料金をオファーしてともかくテナントに入ってもらおうとする動きが強まっており、このトレンドも賃貸料金を引き下げる方向に作用している。それに反して工場用地では賃貸料金が昨年から1〜2%上昇して安定傾向に向かっている。


「2007年首都圏工業団地の用地販売は減少」(2008年3月11日)
ジャカルタ・ボゴール・ブカシ・タングラン・カラワン・セランの首都周辺6地域にある工業団地で2007年に販売された土地面積は2006年から減少したことをコリエールズインターナショナルが公表した。コリエールズのデータによれば、2007年の販売面積は147Haで前年の181.7Haから2割減となっている。2007年第4四半期は販売状況が好転したものの、それまでの低調な状況をカバーできるほどのものではなかった。
コリエールズインターナショナルインドネシアが調査した工業団地は上の6地域にある次の13工業団地。
Krakatau Industrial Estate Cilegon, Modern Cikande, Jababeka Industrial Estate, MM2100 Industrial Town, KIIC, Bekasi Fajar, Suryacipta, Greenland (Kota Delta Mas), KBN Cakung, Delta Silikon, CCIE, Kota Bukit Indah, Indotaisei
2007年の販売面積147Haのうちでブカシ地区は62.6Haを占めてトップの位置に就いている。この地区でもっとも好調だったのはMM2100で、ジャカルタに最も近いというポジションが幸いしているようだ。ブカシ地区に次いで好調だったのはセラン地区で44.4Haを販売し、モデルンチカンデとKIECがその実績に大きく貢献した。三位はカラワン地区で31.1Ha、KIICとスルヤチプタが貢献している。
2007年第4四半期にはトップを独走して目覚しい販売を見せたMM2100も年間を通せば第4位で、年間実績の1位2位はKIECとモデルンチカンデのバンテン州組みが占めている。3位と4位がジャバベカとMMというブカシ勢だ。昨年トップとなったクラカタウはチレゴンの飲食品製造と化学産業の発展にその成果を負っており、モデルンチカンデは日系二輪車メーカーの拡張に負うところが大きい。


「往年のビッグ投資先国への復帰は夢か?」(2008年3月21日)
インドネシアは日本の製造業界にとって海外投資先国としての地歩を少しずつ回復しつつあるようだ。オルバ体制末期の1997年には世界投資先国ランキングの三位にいたインドネシアはその後四位に転落し、2003年以降は往年の人気を失って下降を続け、2006年には九位にまで落ちた。しかし2007年のサーベイ報告によれば、インドネシアは韓国を抜いて八位に浮上している。ソフィヤン・ワナンディAPINDO(インドネシア事業者協会)会長はこの現象について、日本と韓国間の政治感情がネガティブになっているのがその原因であり、韓国側の反日感情のために日本実業界の中に韓国を避けようとする気分が生じているためだとその背景を説明しており、決してインドネシアにおける投資環境に顕著な改善が起こっているわけではないことを指摘している。それはどうあれ、インドネシア政府はそのような状況を利して日本からの投資誘致を促進したいわけで、全国商工会議所のラフマッ・ゴベル製造技術海洋部門担当副会頭は日本の実業界に対し、より多様な業種がインドネシアに進出してくることを望む、との意見を表明した。同副会頭によれば、これまで日本からインドネシアに出された投資は石油化学や石油ガスなど天然資源ベースの事業に対するウエイトが大きいため、加工業・製造業・農業・海運業・漁業などのセクターにももっと活発な投資が行われるのを期待しているとのこと。
それに対して日本の実業界は、投資誘致を図るためにインドネシア政府が解決していかなければならない問題について言及した。
インドネシア政府が示している投資環境改善努力、中でもビジネス支援の方向性を強く持った諸法規の制定は評価に値するものの、しかしながら法規を定めただけでは不十分であり、その法規の内容がその意図に沿って施行されてはじめて現実的な効果が発揮されるわけで、その点が確実に現場で実施されるよう政府はさらに努力を払わなければならない。特に税制と物流分野でさらに力強い努力が払われることが期待されている。「われわれはタンジュンプリウッ港で従来の全機能を一ヶ所に統括する税関メインサービス事務所が設立されたことを高く評価している。」須賀川誠ジャカルタ・ジャパン・クラブ(JJC)理事長はそう表明した。インドネシアに対する外国投資誘致の促進には整備されたロジスティックシステムの存在が不可欠であり、税関の体制改革に続いてロジスティック分野での改善が進展していくよう求める声は強い。
日本の産業界にとって海外投資の主目的は、かつての低い生産コストから投資先国の国内市場というポイントに移行してきている、と国際協力銀行牛田晋主任研究員は言う。「その面からインドとベトナムが新たな投資先国のスターに上昇してきている。中国は依然として日本からの最大投資先国ではあるが中期的展望は下降している。」
日本からの投資を呼び込もうとする場合、次のような要素を完備しておく必要がある。国内市場の成長性、労賃、組立に必要な資材のストック、既存市場の規模、人材クオリティ、産業開発の集中度などだ。日本の産業界にとってインドネシアの魅力はその広大な市場にある。その魅力を更に強化させるために、日本からの投資に対してインドネシア政府は奢侈品税減免インセンティブ供与契約を考慮してはどうか、とファイサル・バスリ、インドネシア大学経済専門家は提案している。日本からインドネシアへの投資産業のメインは自動車と家電品であり、奢侈品税のインセンティブはこのセクターへの投資促進に効果があるというのがその理由だ。


「西洋楽器はぜいたく品」(2008年3月24日)
インドネシアには13の西洋楽器大規模生産者があり、国内生産量の90%が輸出されていて年間輸出売上高は3.3億米ドルにのぼる。それら輸出品のほとんどは外国大手ブランドのOEMであり、世界的に著名な楽器ブランドの多くがインドネシアにも来ているということができる。ただし著名メーカーが自己資本を投下しているのもあればそうでないのも混じっており、このあたりの状況はほかの様々な製造産業商品と似たようなもの。
インドネシアの税制に奢侈品税(Pajak Penjualan Atas Brang Mewah略してPPnBM)という税種があり、国民の生活必需品に属さず高所得層をメインに特定社会階層がそのステータスを誇示するために消費する物品に対して、社会平等と所得格差是正の見地から一部の品目に対してこの税金が課されている。宝石・自動車・邸宅にはじまってゴルフクラブあたりまではうなずけるものの、家電品やスポーツシューズ、フルーツジュースから清涼飲料水までがこの課税対象品目にされており、その思いがけない事実にわれわれは驚かされる。貧困国だから国民はゴムぞうりを履き、水を飲んでいれば良い、という発想のようにも思えるが、その一方で内閣閣僚が声をそろえて貧困撲滅・貧困世帯減少を国家政策の大きい柱に据えていることとの整合性がその事実からはあまり感じられず、国政の随所に見られるダブルスタンダードの臭いが立ち上ってくる。そんなことだから西洋楽器、中でもピアノや電子式鍵盤楽器は言うまでもなくぜいたく品に位置付けられていて20%のPPnBMが課税されている。インドネシア固有の伝統楽器はもちろんぜいたく品の区分に入っていない。
国内生産者が製品を国内市場に出荷しても、PPnBMが課されるために価格は高いものになっている。その一方で外国から不法輸入された商品が安く市場に出回っている。不法輸入というのは正規の通関がなされずに僻地の海岸に陸揚げされるようなものから、国際港に陸揚げされるが関税のかからない物品として虚偽申告された上で国内に入ってくるものまで、その手口はさまざま。それが新品ならまだしも、法令で輸入が禁止されている原価が限りなくゼロに近い中古ピアノまでが市場に出回っているため、国内産品がまったく価格競争力を持てないという構図がこの業界にも及んでいる。衣料品・履物・家電品・生活雑貨品なども同じような構図の泥沼に落とされており、インドネシア国内市場をターゲットにして国内生産をするために進出しようとする製造メーカーにとって、リスク検討項目がほかの国より多くなるのは避けられないだろう。家電品業界が政府に対してPPnBM軽減要請の声を強めているのと歩を一にして、楽器業界も同じポイントを衝いた。インドネシア楽器生産者協会が工業省に依頼し、楽器に対するPPnBM対象からの除外を大蔵省に求める要請状が大臣名で出されたのである。AWスウ同協会理事は、「楽器はぜいたく品ではなくて教育設備の一部をなすものだ。そんな楽器にあのような高率のPPnBMが課されているのは妥当でない。」と語り、少なくとも単価2千5百万ルピアまでの楽器はすべてPPnBMの課税対象からはずされてしかるべきだ、との主張を展開している。


「電力大口需要家庭だけが電気代アップ」(2008年3月31日)
「電気代がアップするか?」(2008年2月20日)で報道された電力消費抑制策の実施は最終的に見送られることになった。これは鉱エネ相が3月24日に国会第7委員会業務会議の場で表明したもので、その案に代わって補助金のつかない経済性料金を全国平均より多く電力を消費している大口利用者に適用するという代替案の実施が明らかにされた。
補助金のつかない経済性料金が適用されるのは6千6百VAの電力消費契約者であるR3カテゴリーに属す一般家庭。新料金適用は2008年4月から5州でトライアルが開始される。その5州とはリアウ・バンカブリトゥン・東カリマンタン・西ジャワ・ジャカルタ。R3カテゴリーの基本料金はkWh当たり900ルピアとなっているが、PLNの供給コストは1,300ルピアとされている。鉱エネ省エネルギー利用電力総局長はその結論について、R3カテゴリーは補助金のつかない電力料金でも問題のない裕福な階層であるから、と説明している。


「プロパンガスの価格暴走」(2008年4月7日)
これまで大多数国民にとっての主燃料だった灯油のコスト上昇のために、政府は灯油に対する補助金を解消して低所得層向けに灯油からLPG(プロパンガス)への転換を進める政策を始めた。緑色に塗られた3キロ入りガスボンベが大量に用意され、貧困層向けにはガスコンロの配給すら行われた。その後、貧困層が無料配給されたガスコンロを売り払っているという話がマスメディアをにぎわした。そんな状況の真っ只中で今度は12キロ入りガスボンベが品薄となり、価格が急上昇するという事態が発生している。全国各地のLPGディストリビュータはプルタミナからの供給量が減っていると語っており、また空の12キロ用ボンベも品薄状態になっているそうだ。
空のガスボンベを販売店に持っていけばガス入りボンベを受け取ってもガス代金だけの支払で済むが、そうでない場合はガスボンベとガスを同時に買うことになる。12キロ入りガスボンベの公定価格は27万2千ルピアだが、ブカシではそれが55万ルピアまで上昇した。市場に流通しているボンベが減ったためにガスそのものの流通量も減少し、おかげで空のガスボンベを持参してガスだけを買おうとしても公定料金の5万2千ルピアで小売店は売ってくれず、クディリでは店によって7万ルピアの支払を要求しているそうだ。クディリではほとんどの小売店で6万ルピア以上のレベルに達している。このあたりは単純に市場における需給関係が価格に反映される例と見ることができる。
12キロボンベより大型の50キロ入りボンベはホテルやレストランなどの営業用あるいは工場での産業用もしくは豪邸で使われるものとされており、50キロボンベ入りガスは事業用および富裕階層向けだとしてそれまで付けていた補助金を政府が撤廃したことから、インドネシアによくある、大量に使うものは単価が高くなる、という現象がここにも登場することになった。2008年1月にそれまでキロ当たり5,852ルピアだった50キロ入りおよびバラ売りLPGが7,932ルピアに跳ね上がってから、市場に流通していた12キロ入りボンベの品薄が少しずつ感じられるようになってきた、と業界者は語っている。
政府は2007年9月1日に12キロ入りボンベ以上のガス価格をキロ当たり4,250ルピアから5,852ルピアに引上げたが、2008年1月の値上げでは12キロ入りボンベが値上げから除外された。これは12キロ入りボンベ利用者の多くが一般家庭であることに配慮したもののようだが、おかげで12キロ入りと50キロ以上との間に価格差がついた。結局、実際に大都市周辺にある工場の多くが、それまでの50キロ入りやバラ売りの使用をやめて12キロ入りを使うようになり、12キロ入りボンベの需要が激増したというのが今起こっているLPGの品薄・価格暴走の実相であるようだ。石油燃料は産業用と一般消費用を流通ルートから別々にして、産業用対象者が一般消費用のものを購入すれば罰が科されることになっているものの、プロパンガスの12キロ入りと50キロ以上のものはそのような区別がなされておらず、工場が12キロ入りを買ってもそれを違反とする規則が存在していない。だからこの現象は2008年1月の値上げの際に読めていたはずにちがいないのだが・・・・・・。


「不正保険行為がますます盛ん」(2008年4月9日)
保険セクターでの不正行為が進展拡大の一途をたどっており、業界者はその対策に頭を痛めている。「保険に関与しているあらゆる関係者が不正行為を犯す可能性を持っている。保険会社から被保険者、再保険会社・ブローカー・代理店に至るまで、それぞれが個々にあるいは結託して。そして年々、不正行為は不動産・海上・保証などあらゆる分野にわたって増加傾向にある。かれら不正行為者はどんどん知恵をつけ、業界内競争も激化の一途をたどっており、経済環境も厳しさを増すばかりという今の状況下では、どうやって保険ビジネスから金を巻き上げようかというオリエンテーションが強まるのを阻むのはむつかしい。」保険業界者の一人はそう語っている。
一般保険分野では保険引受けと保険求償で不正行為がもっとも盛んに行われている。証券上にうたわれている条件と実際の付保対象に違いがあるものが多く、たとえば自家用車だとして付保するが実際にはレンタカーとして使われているといったケースがそれ。あるいは調査をうやむやにしたり証券発行条件充足前に証券を発行してしまう。求償については架空事故による求償、求償金額水増し、保険金支払い額の中を抜いたり上前をはねる、といったもの。地震保険についても、政府の保険料補助に関連して250万ドル分だけ保険プール機関に報告するがそれ以外のものは料率の投売りを行っている。再保険に関しては、リスクの高いものをわざと再付保せず、あるいは保険料を滞納したり未払いにする。ブローカーや代理店は保険会社不良職員と癒着して賄賂を渡し、顧客から受け取った保険料を保険会社に回さず自己運用するのに目をつぶらせ、また保険会社との間の書類や情報を適当に操作する。
盛んになる一方の不正行為をまともな状態に変えていくために、すべての情報を管掌し開示する専門機関の必要性を訴える声が上がっているが、既にインドネシア銀行が行っている債務者情報管理にくらべて情報量が膨大になる見込みが高いため、同じようにはいかないのではないかとの不安も漂っている。


「インドネシアはハイコスト社会」(2008年5月7・8日)
Panturaと呼ばれるジャワ島北岸街道を通ると、目にする大型トラックの大半がGajah Olingという言葉を目立つ位置に大きく表示している。陸上運送業界の内情をあまり知らないひとはそれをトラック会社の名前と勘違いするのが当然であるとはいえ、あんなに大量のトラックを一社が独占して使っているような状況はインドネシアにない。
OlingはOlengの転訛と思われるが、その場合Gajah Olengとは「ゆらゆらと揺れる象」を意味することになる。この言葉からどんなイメージが想像されるだろうか?大型トラックを象に見立てたのかもしれないが、トラックがゆらゆら揺れては事故のもとだ。実は、Gajah Olingというのはトラック運転手たちにとって保安のための護符の役割を果たしている。ジャワの陸上運送業界でその言葉を知らぬ者はおらず、運転手も運送会社もガジャオリンの持つ霊験あらたかな効果を享受しているのだ。
ガジャオリンとは非公的な保安組織だ。保護するのは陸上運送貨物とその運送機関で、積荷が盗まれたり、奪われたり、あるいは走行中のトラックに飛び乗って積荷を盗むbajing loncat(跳びリス)と呼ばれる犯罪の被害を受けたことをガジャオリンに届け出れば、ガジャオリンは捜査チームに命じて犯人を探し出し、報復する。これはすべて私的組織が行う非合法活動である。だからこそ、ガジャオリンの保護下にあるトラックを敢えてターゲットにする泥棒はほとんどいない。組織立ったガジャオリンに対抗できるような集団にならない限り、積荷泥棒がガジャオリンに踏み潰されるのは火を見るより明らかだからだ。だからトラックに書かれたガジャオリンという表記がトラックと積荷の安全を保証するのである。トラックへのガジャオリンという表記を認めてもらうために、トラックオーナーや運送会社は毎年ガジャオリンに会費を支払う。インドネシア大学社会経済調査院が2005年から2007年までかけて行った調査によれば、その年会費はきわめて千差万別ではっきりした内容がわからないが、最高で8百万ルピアにのぼるらしい。
スマトラにはLeskapinという名の陸上運送警備団体がある。街道に出没する強盗団にトラックが積荷ごと奪われる事件に対抗するために最初スマトラの州警察士官が組織したもので、警察退役士官と無職の青年たちがトラックの道中保護のために同乗するという警護を行っていた。アメリカの西部開拓時代に駅場所に同乗したガンマンたちのようなものだ。しばらくの間は警察が中核となった半公式組織だったが、あるところで警察が手を引くようになったことからこの組織に残った者が警備事業を継続し、保安警備の押し売りや運送業者に対する搾取などといった芳しくないビジネス形態へと変化していった。北スマトラ州の陸運業者はレスカピンに120万ルピアの年会費を納めている。
このように東ジャワ州や北スマトラ州などを中心に行われている陸上貨物運送の保安警備費用は必然的に国内陸運コストを高いものにしており、インドネシアの陸上貨物輸送コストはキロメートル当たり0.34米ドルで、アジア平均の0.22米ドルより35%も高いという実態を招いている。もちろんそのハイコストはこの保安関連徴収金だけが原因でなく、街道を走るトラックが直面する警官や自治体道路行政現場担当官あるいはごろつきらが行う不法徴収金、積載重量オーバーを取り締まるための計量ブリッジで搾られる徴収金、地元行政府が定める貨物運送に関する一見合法的ながら経済活動の反インセンティブをなすばかりの許認可と課金などといった実にさまざまな要因がそんな結果をもたらしているのである。
道路運送の保安は本来警察の領分だが、貨物盗難や強奪が何百年も昔から今日に至るまで一度も無くなったためしがなく、保険料を取るだけで保険金を出そうとしない保険業界は何の保障にもならず、警察をあてにしても被害を受けるだけという陸運業者には、私的保安組織に対する大きい需要があるのは疑えない事実だ。政治行政面の権力を高く見て実業や経済活動を見下し、あらゆるレベルで権力争奪に血の道を上げるインドネシアの社会的価値観が生み出しているのはハイコスト社会であり、現政権の政治方針が国民の隅々にまで浸透しなければそんな状況に変化をもたらすのはむつかしいようだ。


「工場の産業廃棄物にまとわりつく暴力集団」 (2008年5月9日)
1990年代から西ジャワ州ブカシ県チビトン地区で操業しているPT YKKジッパーインドネシアを同社の廃棄物処理を請け負っていた業者が中央ジャカルタ地裁に告訴した。廃棄物処理業者ヘリ・ムリヤディの告訴内容は、ヘリがそれまで行ってきた産業廃棄物処理協力契約をYKK側が2006年突然一方的に破棄したというもので、そのために蒙った物質的精神的損害に対して数百億ルピアの弁償をするよう求めている。
2008年4月23日に中央ジャカルタ地裁で開かれた第一回公判のあと原告側法律代理人は、「ヘリ・ムリヤディはYKK社創立以来同社の産業廃棄物処理を請け負ってきたが、その契約がまだ継続している2006年にYKK側が一方的に契約を解消し、そのプロセスに異常な点があったために原告側がYKKを告訴した。」とその経緯を物語った。
YKK側法律代理人はその告訴について、「YKKとヘリ・ムリヤディとの間の契約は契約書に記されている通り期限を既に過ぎているので、YKKはヘリ・ムリヤディとの業務関係を解消した。YKKが一方的に契約を破棄したというのは正しくない。ともあれ、YKKは穏やかな問題解決を希望しており、オープンにこの問題に対処する意向だ。」と反論している。
原告側法律代理人は、YKKが行った一方的契約破棄の裏に産業廃棄物処理ビジネスのどろどろした争奪が隠されており、第三者からの威嚇や脅迫があったのではないかと推測している。NGOや大衆組織あるいは青年団などの仮面をかぶってブカシ地区の工場に産業廃棄物処理を請け負う権利を暴力がらみで要求する一団があることは従来から公然の秘密となっていることをかれは指摘している。「かれらは産業廃棄物処理業者やYKKのような大規模工場から巨大な利益を吸い取っている。かれらが廃棄物ビジネスからもっと大きい利益を搾り取れると考えたなら、工場にデモをしかけたりあるいは暴力をちらつかせて担当者を脅し、今回YKKで起こったように取扱い業者を一方的に変更させるようなことをする。」原告側法律代理人は、産業廃棄物という宝の山を手に入れるために手段を選ばない陰の世界の実態をそう物語っている。


「6工業団地が新規オープン」(2008年5月16日)
首都ジャカルタを取り巻くボデタベッ(BODETABEK)地区の中で工業地帯として群を抜いた発展度を示しているのはブカシ(Bekasi)であり、この傾向は更に西に向かってカラワン(Karawang)〜チカンペッ(Cikampek)へと拡大している。ジャカルタの南に位置するボゴール県もそれに次ぐ発展を見せているが、東側のタングラン(Tangerang)地区はそれに比べて冴えない状況だと言える。バンテン州タングランからセラン(Serang)〜チレゴン(Cilegon)へと東に伸びている工業地帯は多くの工業団地が合計で7千9百haという工場用地面積を抱えているものの、入居しているのは4分の1程度しかなく6千1百haはまだ空地の状態だ。
西ジャワ州ブカシ〜カラワン〜ボゴールという首都の西から南にわたる一帯にはそれよりはるかに多数の工業団地があって5千5百haの工場用地面積を擁している。こちらはその70%が埋まっており、バンテン州と比べるならその明暗は一目瞭然だと言える。
インドネシア銀行の不動産市況四半期報告を見ると、2007年第4四半期のブカシ〜カラワン〜ボゴール地区工業団地面積新規供給はゼロだったとのことだが、しかし賃貸料金は月間平米当たり30,300ルピアに上昇していてこれは対前四半期で1.9%、対前年同期で4.2%のアップとなっている。また2007年第4四半期に売却済み面積は76.3%から76.7%に上昇した。そのように需給関係がタイトになりつつあるこの地区に新たな供給が計画されるのは言を待たず、インドネシア銀行の報告では2008年中に6工業団地が新規オープンする計画であり、1,110haの用地面積が追加されることになっている由。


「没工業化に向かうインドネシア」(2008年5月26日)
政府が補助金付き石油燃料30%値上げを5月末に行うとの風聞が国内を覆っており、それに対して国内各種業界からは「その値上げが実施されれば当業界はこうなる」という悲観論が続々と出され、いまやほぼ出尽くした観がある。国民諸階層の反対デモも各地で行われ、中にはかなり荒れる事態に発展したものもあるとはいえ、そんなことで政策決定意志の揺らぐ現政権でもないようだ。
政府は例によって補助金削減の代償を貧困家庭向けに用意した。現金直接援助(BLT)と呼ばれる現金支給がそれで、全国1,910万貧困家庭に2008年6〜8月の三ヶ月間毎月10万ルピアが与えられる。政府はこのために14兆ルピアの予算を組んだ。世にも稀なとしか思えない現金直接援助政策はインドネシア独立以来何度も行われているが、その政策で貧困家庭の経済状況が好転した例を聞いたためしがない。この政策がある種の罪滅ぼし的な妬み感情の緩和を目的にして行われるものであるのならそれは無意味な国家予算の浪費でしかなく、石油燃料実コストを国際相場と定めその相場の変動に応じて国家予算から現金を支出しているのと同じレベルの奇妙な行為であるとしか思えない。
さて、政府の補助金付き石油燃料値上げ実施の決意が固いようだという雰囲気が強まっている昨今、値上げが避けられないのなら政府は実業界への支援をもっと強めるべきだ、との要請を産業界が出した。窯業・繊維衣料・履物・セメント・家電・飲食品製造の国内主要製造産業界は政府に対し、特定品目の奢侈品税(PPnBM)撤廃と付加価値税(PPN)の6ヶ月間納税猶予を求めている。石油燃料価格値上げは製造コストの大幅アップを引き起こす一方で国民購買力を殺ぐために、製造産業が背負うことになる重圧の一部を軽減してほしい、というのがその要請の根拠。「シンガポールで付加価値税は前払いも付け替えも、あるいは延滞も数回の分割も認められているので、あの国の事業者は楽だ。インドネシアでは国内の経済状況が悪化するというのに、重い負担を軽減させるよう政府が事業者に手を差し伸べてくれる気配はまだない。『納税遅れは許さない。遅れたら罰金だ。』ではあまりにもきつい。なんとかしてもらいたい。」窯業雑貨協会会長はそう述べている。飲食品事業者連盟会長は、「製品の大幅な値上がりを防ぎ、産業界の業績がドラスチックに低下しないようにするために、石油燃料値上げと同時に実業界への補償が与えられなければならない。」と語っている。
履物業協会会長は、製造業界の生産キャパシティは実働が低下してアイドル状態が広がっている、と語る。「政府は補助金付き石油燃料値上げに関していついくらという確定的な情報を出すことを避けている。おかげで業界は値上げ以降のコスト見込みを立てるのに困難をきたしており、輸出オーダーを受けることができない。政府の曖昧な姿勢のおかげで業界は生産活動が停滞気味になっている。」
MSヒダヤッ全国商工会議所会頭は2008年第1四半期製造産業界の業績がダウンしている点を指摘し、国内市場での製品販売減少と生産コストの増大が生産キャパシティの稼動低下を招いている、と語った。
「工業大臣はそんなことはないと否定するが、商工会議所としてはインドネシアが工業セクターの没落による没工業化に向かっていることを強く懸念している。」会頭はそうコメントしている。
ところがそうこうしているうちに5月23日が来て、その夜政府は5月24日0時を期して補助金付き石油燃料価格を変更すると発表した。リッター当たりの新価格は次の通り。
Premium ガソリン 4,500ルピアから6,000ルピアに
Solar 軽油 4,300ルピアから5,500ルピアに
Minyak Tanah 灯油 2,000ルピアから2,500ルピアに
その代償として貧困国民向け援助を追加することを政府は同時に発表した。上述の現金直接援助に加えて、第1類文民公務員と兵士階級軍人警察公務員3千人にひとり15万ルピアの教育費援助、5百万人労働者に生活基幹物資パッケージ廉価販売が実施されることになる。産業界からの上のような要請に対する反応はまだ何もない。


「電気代が2倍以上あがっていれば異常」(2008年5月27日)
2008年4月からPLNが開始した電力受給契約6千6百VA以上の消費者に対する補助金の付かない経済性料金適用方針がショッピングセンターやホテル業界をも対象にしたことから、それらの業界に波紋が広がっている。従来は補助金が付いていたためにkWh当たりの料金は560ルピアだったが、実際コストをベースにした経済性料金ではkWh当たり1,380ルピアになる。
インドネシアショッピングセンター運営協会会長は、「もし補助金なし料金が適用されたら、ショッピングセンターは従業員の半数を解雇しなければ生き残れない。考えても見るがいい。石油燃料が値上がりし、購買力は落ち込んで行く。そこへきて事業者は補助金の外された電力料金への値上がりに襲われる。こんな二重苦三重苦では気が狂う。もし政府が本気でこの方針を進めようと考えているのなら、大量解雇がはじまって失業者が巷にあふれることになる。そこまでの影響があるということを真剣に検討した上での措置なのだろうか?」と語っている。
PT PLNジャワ・マドゥラ・バリ担当取締役は、新方針対象顧客の中で5月に請求された4月の電力利用料金が2倍以上に跳ね上がった消費者は内容調査が行われ、不適切だった消費者には手直しが加えられる、と次のように語った。「PLN側の請求書作成で計算ミスが発生する可能性は否定しきれない。最大使用量シミュレーションに基づけば、料金増大は最高で2倍でありマジョリティは50〜60%の増加だ。」
PT PLN大ジャカルタ・タングラン配電所環境育成広報課長代理は、6千6百VA契約者の料金アップはかなり大きいものになると言う。「当方管区の330万顧客の中で、値上がり対象顧客は13万5千ある。当方はその対象者宛てにこの方針を説明する文書を配布した。これは中央政府の方針であり、消費電力の節約がその目的であるということを。6千6百VA該当顧客の一ヶ月間使用量が839kWhを超えた場合、超過分には1,380ルピアの経済性タリフがかかる。ただし839kWhまでの消費分には560ルピアの料金がかけられる。」
ホテル業界も電力消費削減のための政府の抑制策がハイコスト出現に傾いている事態を嘆いている。ホテルグランマハカムの広報担当取締役は、ホテル事業コストの最大ポーションは電気代であり、18時以降の電力消費抑制に高い単位料金が適用されることはホテル事業に反生産性をもたらす、と苦衷を訴えている。「ホテルが賑やかになるのは会社の終業後であり、18時ごろから深夜までが繁忙時間帯となる。これが工場や一般の会社ともっとも異なっている部分だ。工場は16時に操業を終えれば高いタリフから逃れることができるが、ホテルにはそれができない。この政府方針にはきわめて難渋している。」
ホテルボロブドゥルも電力消費節減対策を進めている。省エネランプを使い、セントラル冷房はレベルを下げた。エレベータ使用も23時から6時まで26基中12基だけを動かしている。庭園照明は18時から朝6時まで点灯していたが、いまは午前1時から6時までにしている。同ホテル取締役はそう話している。


「9月から一部電力利用者の電気代がまた上がる」(2008年5月29日)
石油燃料に対する補助金削減に続いて、政府は電力料金からも補助金を削減することにした。4月から始まった補助金の付かない経済性料金適用は6千6百VA電力受給契約者を対称にしたものだったが、政府は対象者を1千3百VA契約者まで拡大して2008年9月から経済性料金適用を開始する方針を固めている。
PLNから電力供給を受けている全国3千5百万契約者のうちで1千3百VA以上の契約者は450万でありマジョリティは450〜900VA受給者で占められているので、大多数の一般庶民には負担を及ぼさないと考えているにちがいない。
鉱エネ省エネルギー活用電力総局長は、2008年度改定予算の石油燃料補助金に5兆ルピアの追加が行われる場合、電力料金の補助金削減は避けられない、と語っている。2008年度改定予算の電力料金に対する補助金計算では石炭価格トン当たり45ドルが使われているものの、PLNが最近行っている補助金に関するいくつかの試算では石油燃料がバレル当たり95〜120ドル、石炭が60〜90ドルという変数に替わっているとのこと。PLN副代表取締役は石油価格が平均110ドルであれば既に決められた補助金で十分やっていけると語っているものの、政府は電力料金に対する補助金を5兆ルピア減らしたい意向で、補助金をつけない利用者層の拡大、より廉価な発電燃料への転換、そしてモールやホテルに対する電力使用制限などを実施する考えを強めている。


「インドネシアは、実はハイコスト社会!?」(2008年6月4〜6日)
2008年4月30日16時から5月1日午前10時まで18時間にわたってタンジュンプリウッ(Tanjung Priok)港在来埠頭の荷役作業が停止したことから、船舶繋留施設は離岸の遅れた船と予定通りの着岸を求める船でごったがえすありさまとなった。コンテナクレーンやフォークリフトなどの荷役作業機器が動かなくなったことがその荷役作業麻痺の原因であり、どうして動かなくなったかといえば、機器を動かすための軽油ストックが切れたためだ。ここでも「プラウスリブ観光業界が死滅の淵に(下)」(2008年6月3日)で報道されたこととそっくりの状況が起こったのである。
インドネシアの石油燃料政策は、国民低所得階層への福祉を目的にプレミウムガソリン・軽油・灯油に補助金をつけて市販されている。ところが国際石油相場の高騰によって、石油燃料実際コストを国際相場と定めているインドネシア政府はプルタミナに支払う膨大な補助金に苦しむ結果となり、補助金削減を名目に産業向け石油燃料国内販売価格を補助金のつかない経済性価格と称するものにして、同一物品が異なる購入者に別価格で売られる二本立て価格システムの実施へと進んだ。インドネシアの伝統的小売販売コンセプトは一物一価でなく購入相手によって異なる価格が当然とされているため、国民メンタリティの上からもその政策は抵抗なく受け入れられたようだ。市中のガソリンスタンドは補助金の付いた燃料を一般個人消費者に販売し、産業界はプルタミナの流通デポ等から大量に直接調達するという仕組みが作られ、産業界が市中ガソリンスタンドから補助金付き燃料を購入すれば違反行為として処罰を受ける制度まで設けられた。
さて、そのような仕組みが全国的に運用されている片隅で、タンジュンプリウッ港在来埠頭の貨物荷役オペレータや荷役機器オーナーたちはこれまで業務オペレーションに必要とされる石油燃料を市中のガソリンスタンドから購入していた。プルタミナ下級管理職がその実態を知らないはずはなく、かれらにとってそれはお目こぼしに属すことだったようだが、上級管理職にとっては知らぬがほとけの寝耳に水だったにちがいない。インドネシアの政治風土・ビジネス風土の中でこのような話はゴマンとあるありふれた話であり、レベルの差こそあれ組織の中での緻密な管理運営が他の国では期待できるのにインドネシアではそれがきわめて困難という実態のゆえんをなしている。「ホーレンソー」が他の国のように励行され、組織内上下間のコミュニケーションが風通しのよいものであれば、そんなことにはならないにちがいない。
ドラム缶や石油缶を持ってガソリンスタンドに買いに行き、港湾警察に見つかって逮捕された者は数知れないとプリウッ港在来埠頭荷役業者のひとりは語っているので、見つけた犯行には対処するというレベルであっても警察機能は正常に動いているように見える。そんな実態が明らかになったプルタミナのジャカルタ地区兼マリーン販売部門はその違反行為撲滅に動き、週初めに管下のガソリンスタンドに対してドラム缶や石油缶への給油販売を厳禁する旨の再確認指示を発した。これまでガソリンスタンドから燃料を入手していたプリウッ港荷役業界は購入してきた軽油をすべて警察に没収されてしまい、対策を講じる間もなく水曜日夕方に燃料切れが起こってしまったというのがそのとき起こった港湾荷役麻痺の顛末らしい。プルタミナはプリウッ港在来埠頭荷役業者に対して産業向け石油燃料購入プロセスを踏むよう要求しており、DO(デリバリーオーダー)手続きを行ってデポから調達せよと命じている。タンジュンプリウッ港荷役メカニック機器会社協会会長は、工場などに比べたら使用量は微々たるものでしかないのだから産業向け燃料プロセスを無理強いすることはないじゃないか、と反論しているものの、プルタミナ側は「政府決定である」として聞く耳を持たない。
そんな背景で起こった荷役作業麻痺が18時間で回復したのは決して正式プロセスを踏んで行われた対応ではなく、荷役業界が船会社の協力を仰いで船舶搭載燃料を融通してもらったおかげであって一時的な対処でしかない。おかげでその後も港湾荷役作業機器の燃料不足は継続し、稼働台数が大幅に減ってしまった。
タンジュンプリウッ港湾警察は5月7日に声明を出し、同港関連の補助金付き石油燃料売買違反で押収された軽油は25トンに上ると発表した。5月1日からの一週間で港湾警察は軽油をドラムや石油缶に積んで港内を走っていた車両6台を差し押さえた。その6台は港湾荷役機材レンタル会社6社のもので、荷役機材に使用するのを目的にガソリンスタンドで購入した補助金付き石油燃料を運んでいたために捕まえた、と警察は説明している。また、かれらに容器入り販売を行ったガソリンスタンドに対する取調べを行う、とも警察は表明している。
つまりは、港湾荷役が麻痺し、その背景が明るみに出され、政府機関が違反行為をやめよと表明したというのに、本人たちは依然として違法行為を続け、またガソリンスタンドもかれらに軽油を供給して違反の片棒を担いでいたということがこの話からわかる。
燃料欠乏で瀕死状態になっていたプリウッ港在来埠頭の荷役作業機器は、5月7日にプルタミナから供給された燃料が潤沢に回ったためにすべてが息を吹き返した。タンジュンプリウッ港荷役メカニック機器会社協会会長によれば、協会は5月7日からプルタミナでDOを入手してデポから軽油を調達するプロセスを開始したとのこと。調達は毎日行われ、一日24トンが港内に供給されている。港内のクレーンやフォークリフトの燃料消費は一日20〜30トンであるため、24トンという調達ボリュームは妥当な数値だと目されている。港内に燃料貯蔵設備がまだないことから、燃料を運んできたタンクローリーは積荷がなくなるまで港内で待機している。
ところで、違反とはいえこれまで補助金付きのリッター当たり4,300ルピアという燃料コストで荷役作業機器が稼動していたものがいきなり10,300ルピアに激増したわけで、これが荷役料金に反映されないわけがない。荷役業者は荷役作業機器をレンタルしており、荷役作業機器レンタル業者が6月1日から料金値上げ100%を表明したため、玉突き的に荷役業者も荷役サービス料金の値上げを言い出した。タンジュンプリウッ港はいまやアジアでもっともコストが高い港だと言われているところでの、この値上げ表明である。
発展途上国は一般にコストが安く、発展途上国のひとつであるインドネシアはもちろん低コストだというイメージがグローバルな常識になっているようだが、その低コストを支えているのが違法行為であるという部分も少なくない。今回のタンジュンプリウッ港在来埠頭における荷役作業機器のケース以外にも、かつてインドネシアの花形産業とされた木製家具・籐家具の例もある。家具製造業界が入手していた木材や籐はどうやらその半分がイリーガルなものだったらしく、政府が非合法木材の取締りを強化したとたんに流通ストックが激減して大幅なコストアップに見舞われた。同じようなことはインターネットワルン(Warnet)でも起こった。ソフトウエア違法コピー天国だったインドネシアに外圧がかかって警察が取締まりを強化したとき、営業が継続できなくなるという悲鳴をインターネットワルン業界が上げたのだ。それにつれて、警察はあまり厳しい取り締まりをしないように、というコメントが世の中から聞こえてきた。
国の定める法規に服従してそれを遵守することを求めるリーガルコンプライアンスの動きが世界の実業界に広がっているのは周知の通りだ。このコンセプトの前提になるのは、国が定めて行政が施行している法規が最大多数の最大幸福を実現させるためのものであり、そして最大多数者がそれを本当だと認めているところに成り立つものであると言えよう。他人を踏みつけにして私利を求めようとする狭いエゴイズムがそんな環境の中で生き続けることは困難であるにちがいない。インドネシアに進出してきている日系企業の多くも本社から厳しくコンプライアンスを求められていると聞く。しかしながら、もし上のような前提条件とはまるで異なるコンセプトで国の諸制度が構築され運営されているものであるなら、コンプライアンスは狭いエゴイズムに奉仕する結果しかもたらさず、最大多数の最大幸福にむしろネガティブなひずみを加えるものになって行くかもしれない。インドネシアは本当にリーガルコンプライアンスの前提条件を満たしているのだろうか?


「一滴の藍で鍋一杯のミルクが台無しに」(2008年6月9日)
2006年商業大臣規則第13号で5億ルピアと定められていたマルチレベルマーケティング(MLM)事業最低払込資本金が20億ルピアに引き上げられることが決まった。これはそれまで外資を閉鎖していた直販事業が2007年大統領規則第77号でシェア上限60%まで外資に開放されたことに関連しており、百%内資会社の場合は20億ルピア、外資合弁の場合は50億ルピアが会社設立の条件となる。この最低資本金引上げに加えて政府商業省が会社の業務内容を細かく監督することが定められたために、これまでMLM事業を行っていたローカル会社の中にはこの規制についていくことができずに政府が発行する事業許可が取り消される懸念を抱くところが増えている。
従来からMLM事業の看板を隠れ蓑にして消費者に損失をもたらすマネーゲームやねずみ講のような怪しいビジネスが数多く行われ、消費者からの被害に関する苦情が絶えなかったことから商業省はこの際それらの根を断つことをもこの規則改定の目的のひとつに加えていた。しかし小規模事業のすべてが怪しいビジネスというわけでは決してなく反対に悪徳事業を行っていたのはほんのひとにぎりの者たちであり、それら少数の悪事を切り払うためにまともなものも十把ひとからげにして切り捨てられるという、インドネシアで頻繁に行われている政策がここでも繰り返されようとしている。
インドネシア直販協会(APLI)副会長は、「階層販売事業許可が直接販売事業許可に切り替えられたとき61社いた協会会員は48社に減少した。最低払込資本金が四倍増になればこの業界から消えていく者はもっと増えるだろう。」と発言している。消えていった協会会員は次のような会社だと同協会はその名を明らかにしている。
会社名 / 製品名 : PT Luxindo Raya / Lux, PT Natura Astravista / NAV, PT Ultratrend Biotech Indonesia / U-Trend, PT Trias Sukses Dinamika / Javanony, PT Supreme Indo Pertiwi / SIP, PT Wilsa Makmur Lestari / Lavivaci, PT Surecoindo / Surecoindo, PT Ejolies Ampuh / Ejolies, PT Eslene Indonesia / Eslene, Fresh Herb / Fresh Herb, PT Elite Mandiri Anugrah Elite Club Ecoclean / Ecoclean, GHT / GHT


「製造産業界に新たな危難」(2008年6月12日)
欧米市場がかげりを深めている昨今、中国をはじめとする製造産業国はインドネシア市場をこれまで以上の重要度で狙い始めており、政府の的確な対応なしには、国内製造産業はただでさえ弱まっている国内市場を合法非合法の外国産品に奪われて破滅の淵に立たされることになる。政府の対応として早急に実施される必要があるのは、輸入関税調整と製品規格の適用である。ラフマッ・ゴベル全国商工会議所副会頭はそう警告した。
インドネシアは群島国家という地理的特徴を持っており、外国品にとって国内市場浸透の間口が広大な広がりを見せているという性質が外国産品流入に対する政府の厳しいコントロールを困難にしている。一方、非関税障壁となりうるインドネシア製品規格(SNI)の適用はいまだに進展していない。そして国内製造産業の市場掌握が弱いことも市場の不安定さをいやましに高めている。インドネシア繊維業協会データでは、国内製造産業の国内市場シェアは2006年の45%から2007年は22%まで落ち込んだ。家電品連盟は国内市場に流通している家電品の45%が不法輸入品であると推測している。国内産業の没工業化を示す統計数値は中央統計庁からも得られる。2008年第1四半期GDP構成要素中の物品サービス輸入は前年同期から16.8%もの成長を示しており、15%成長という輸出の数値を凌駕した。
政府の不法輸入を阻む努力だけでも国内製造産業にとっては大きい助けになると副会頭は語る。「そのためにも政府は輸入関税のハーモナイゼーションとSNI適用促進に力を注いで欲しい。製造業界自身も生産効率の向上促進と製品に付加価値をつけることで国内市場の掌握を強めていかなければならない。昔から、国内産品の市場価格が輸入品より高いということが頻繁に起こっていた。これは劣悪なインフラ、ハイコスト経済、そしてビジネスに非誘導的な税制といった要素が生産コストを膨らませていたからだ。」
昔ながらの十指にあまる問題のうちで、国際環境の変動が国内市場を更に悪化させるのを阻止するために優先順位をいきなり引き上げた副会頭のこの提案を政府はどのように受けてたつのだろうか。


「ゴルフはビジネスツール」(2008年6月13日)
インドネシアビジネスマンにとってゴルフはビジネスの一部であるという報告を香港上海銀行(HSBC)が公表した。HSBCの公表したゴルフファクターサーベイ2008によれば、インドネシアのエグゼキュティブやビジネスマンはビジネスを円滑に進めるためのツールとしてゴルフ場でゴルフを行うことをレストランでの会食などより上位に置いている。そして回答者の79%がゴルフ場で商談を成功させたことがある、と認めている。
HSBCがインドネシア・香港・シンガポール・韓国・台湾で行ったこのサーベイはそれぞれの国で3百人を超える男性女性ゴルフ愛好者および男性女性ゴルフ未経験者から回答を集めたもの。「インドネシアでゴルフは娯楽・社交・健康のためのスポーツという認識にとどまらず、ネットワーキング拡大・新ビジネス構築・顧客接待のプラットフォームという位置付けに置かれている。インドネシアのビジネスマンやエグゼキュティブがゴルフをビジネスツールとして使う頻度が高いのは、ゴルフ場へのアクセスが容易であること、ゴルフ場を利用する際の費用が他の国にくらべて格段に安いこと、またゴルフ場の環境や雰囲気が事務所やレストランといった他の場所に比べてはるかに快適であることなどが原因だ。オフィスやレストランは堅苦しい感じがする。ゴルフのプレーにもビジネスと同じ哲学が備わっている。つまり正直さと誠実さがそれであり、それをかれらは求めているのだ。」とHSBCインドネシアのパーソナルファイナンシャルサービス部長は説明した。
2007年に行われたこのサーベイの報告内容を見ると、インドネシアの回答者のうち62%が毎週ゴルフをしており、他の諸国の平均が21%しかないのに比べればインドネシアはゴルフ天国だと言える。ビジネス仲間とゴルフするのは86%で顧客とゴルフをするのは68%。これも他の諸国の平均がそれぞれ68%と51%だから、インドネシアではビジネスがらみのゴルフが圧倒的に活発であることを示している。
インドネシアゴルフ場オーナー協会役員の談によれば、ゴルフをすることで国内のビジネスが円滑になるという現象はプレイフィーが安いことの効用である由。ウイークデーのゴルフだとフィーは30万ルピア、週末で85万から90万ルピアというレベルだ。シンガポールだとウイークデーで60万ルピア、週末は150万ルピアになる。国民購買力を考慮する必要があるため、高い料金を設定するのはたいへんむつかしい、と同役員は語っている。


「公認会計士市場は先細り」(2008年6月16日)
インドネシアの公認会計士は今後10年先に極端な人手不足に見舞われるだろう、と業界者が語った。大手監査法人役職者は、インドネシア会計士同盟データにもとづくと国内で開業している公認会計士4人のうち3人は55歳を超えており、世代交替が懸念されている、と言う。経済活動の拡大が企業の会計監査需要を一層盛り上げることは確実であり、この職業の将来性はバラ色に輝いているというのに若い世代はこの職業にあまり魅力を感じておらず、そのために需給関係は極端なアンバランスに向かう可能性が高い。
インドネシア会計士同盟役員もまったく同じ危惧を表明している。同盟のサーベイで明らかになっているのは大学生の公認会計士志望がきわめて低レベルになっていることで、この状況は現勢力が老齢化したときその世代交替を支える要員が不足することを意味している。「この状況に襲われているのは、もちろんインドネシアだけではない。類似の危惧を抱えている国は他にも存在している。インドネシアについて言うなら、この職業にまつわっている一般通念がそんな状況を招いているようにわたしには思える。それは何かと言えば、この職業にはプレッシャーと呼ばれるものが常に密接にからみついているというイメージをみんなが抱いているということだ。そのため学生が職業を選ぶ際に、かれらがそのような要素からできるだけ縁遠いものを選択しようとする傾向は避けられない。
公認会計士の減少を招いている別のアスペクトがある。それはこの職業に関する法的基盤が弱いことであり、それは特に会計士がミスを犯した場合の処罰という面に見ることができる。現在施行されている公認会計士に向けられた処罰規定は大蔵大臣規則で定められたものだけで、その内容は拘束性が強くまた会計士にたいへん重いものになっている。このような処罰規定はもっと柔らかいものに変更される必要がある。公認会計士という職業から暗くつらいものというイメージが払拭されることを会計士同盟は望んでいる。」同盟役員はそう語っている。


「ジャカルタは金稼ぎの場」(2008年7月10日)
コンパス紙R&D部門が2008年5月14〜15日にジャカルタ・ジョクジャ・スラバヤ・メダン・パダン・ポンティアナッ・バンジャルマシン・マカッサル・マナド・ジャヤプラの844人に対して行ったサーベイから、行政・経済・文化・教育など国内のあらゆるファクターが一極集中しているジャカルタを国民はどう利用しようとしているのかということについて窺い知る手がかりが見出された。
このサーベイは電話帳からランダム抽出した相手との電話インタビューによるもので、集計された回答はすべて17歳以上のもの。
問い1:キャリアを積むのにどの州が最適だと思いますか?
回答 :ジャカルタ46.7%、東ジャワ6.7%、西ジャワ6.5%、北スマトラ4.9%、パプア4.9%
問い2:大学までを含めて教育を受けるのはどの州が最適だと思いますか?
回答 :ジャカルタ33.4%、ジョクジャ27.1%、西ジャワ13.3%、東ジャワ5%、バリ2.7%
問い3:休暇を過ごすのにどの州がもっとも愉しいと思いますか?
回答 :バリ61.6%、西ジャワ7.2%、ジョクジャ6.2%、中部ジャワ2.8%、北スラウェシ2.7%
問い4:あなたは老後をどの州で送りたいと思いますか?
回答 :ジャカルタ16.6%、東ジャワ10.7%、ジョクジャ8.8%、バリ8.2%、西ジャワ7.2%
金を稼ぐのにジャカルタ以外の場所は考えられず、金を稼ぐ態勢を作るための教育もジャカルタで受ける方が将来的に有利であり、世代交代後もそれまでの暮らしの延長線上でジャカルタに住むことになるだろうがあまり強くジャカルタで暮らしたいと思っているわけではない。休暇は金稼ぎから離れて生命の洗濯をするのだから、ジャカルタから離れるに決まっている。国民にとってのジャカルタはどうやらそんな位置付けになっているようだ。


「工場は週日を休んで週末就業せよ」(2008年7月14日)
電力危機がいつまでも国土を覆って少しも改善の兆しが見えない状況への対策として政府がこれまで行ってきたのは節電であり、料金を高くすることで国民の諸活動から電力消費を減らすように誘導するというディスインセンティブ、つまり電気を使う活動に不自由さを与えようと言う守りの姿勢が主体をなしてきた。とはいえ建国以来主権者の位置に置かれている大多数貧困国民をそのように扱うのには困難があり、小規模電力消費者は貧困国民という想定のもとに補助金の付いた低料金をオファーしている。ともあれ国有電力会社PLNは2005年以来17時から22時までの電力負荷ピーク時間帯の消費を減らそうとして産業界に対し、消費を減らせば料金割引、消費を増やせば割増料金という対応を実施している。さらに今年に入っては、モール・ホテル等大口電力消費者に、そして更に大口電力需要一般家庭に対してそれと類似の対応を拡大してきた。ちなみにPLNデータによれば、国内電力消費内訳は産業界が38%、一般家庭も38%、サービス業・商業・ホテル・病院20%、行政機関・街路灯その他6%となっている。
しかし補助金付き石油燃料を値上げしても消費量が減るどころか逆に増加しているという実態は電力消費にも起こっており、ジャワ・バリ送電系総供給能力2万MWに対して週日の電力需給バランスはマイナス6百MWとなっている。このようなまったく余裕のない状況下に発電所での故障やメンテナンス作業が発生したり、あるいは発電用燃料の供給が高波・大雨・水害・道路不通などの自然あるいは人為災害で停滞したりすればたちどころに広範な地域で停電が起こるという綱渡り的な危機状態が慢性化しつつある。ジャカルタで7月25日まで計画停電が実施されるのもそのひとつだ。
そんな中で週日の需給バランスがマイナスであるのに対し、土日は遊休電力量が合計で3千MWもあるということに着目した高官がいた。産業界を土日に就業させ、週日を休みにさせれば消費量は平準化されてマイナス日が減少する。「Why not!」
こうして政府は、工業相・鉱エネ相・労相・内相・国有事業体担当国務相の5大臣共同決定の形で製造セクターに対し、週日の就業日を二日休みにして土日と振り替えるよう命ずることを決めた。政府が予定している共同決定書の内容は次のようなものだ。
*月〜金の就業日の内の二日を土日に振り替えること
*24時間操業あるいは3シフト制を敷いている会社には適用しない
*PLNはこの政策を実施した会社にインセンティブを与えなければならない
*この決定書に従わない会社は処罰される
*就業日変更は3ヶ月以内に実施されること
*会社は工業分野を監督する地元政府機関に就業日変更を届け出ること
*決定書の有効期限は2009年12月31日
*政策実施状況は6ヶ月ごとに評価される
政府が表明したこの意向はインドネシアから工業産品を買っている世界中の企業に大きなショックを与えたようだ。アピンド事務局長は言う。「国内企業だけがこの就業日振り替え政策で大騒ぎしているのならまだしも、海外バイヤーまでもがこの政策にパニックになっている。インドネシアってこんなに不確定性だらけだったのか、と言って。」
電力消費平準化案をあたかも数学問題に解答を出すかのように政府はそこだけを見てひとつの答えを出したようだが、現実問題として土日就業には多くの問題がからんでくる。平日の2倍〜4倍にのぼる休出賃金問題を無視できる事業経営者はいるまい。労働者の所得増がはからずも実現するわけだが、労働者とその妻子は家庭サービス日が失われるかもしれないこの政策をどう受け止めるのだろうか。人件費アップだけでなく、会計や物流など工場の生産活動を補助する分野でその機能を平日のように稼動させようとすると平日のコストで納まらない可能性がある。あるいは土日に出勤しても仕事にならない工場内の補助的部門が出るかもしれない。そんな部門はこれまで週5日で得ていた業績を週3日で得るための対応が必要になる。それらの要素はすべてインドネシアにおける生産活動のコストを引き上げる方向に作用する。インドネシアの産業界はこうしてますますハイコストにのめりこんで行くことになるのではあるまいか。
政府は2008年7月21日からこの就業日振替政策を開始すると表明した。政策の現場展開は各地方自治体が所轄企業に指導を行う形で実施される。中高圧電力利用工場は強制、低圧電力利用工場は任意とし、市長・県令が指導対象リストならびに政策推進日程計画を7月21日までに作成するよう命じられているそうだ。ところが5大臣共同決定書作成会議の中でユスフ・カラ副大統領が、既に解答が出された数学問題の計算に不明な点があることを指摘し、計算の再検証が行われた結果、一週間中の二日を土日に振り替えるのでなく一ヶ月間で二日を振り替えればよいという結論に達した、と7月12日のコンパス紙は報道している。


「1万数千の違反会社を政府はとりつぶすか?」(2008年7月15日)
2007年法令第40号株式会社法の施行が2008年8月16日から始まる。改定株式会社法で変更された会社定款内容に関する規定に則って、古い定款に従って作成されたものはすべて変更されなければならない。国内には膨大な数の株式会社が存在し、その各会社が定款変更を公証人に依頼することになる。巨額のビジネスがこうして生み出される。
改定株式会社法第15条には、会社定款に盛り込まれなければならない要件が次のように定められている。
a)会社名称と所在地 b)趣旨と目的および事業活動 c)会社存立期間 d)授権資本金・引受資本金・払込資本金の総額 e)株式総数・株式区分・株主権利と株券額面金額 f)取締役会と監査役会の職名とメンバー数 g)株主総会開催方法と場所 h)取締役会と監査役会のメンバーの任命・交替・解任方法 i)利益処分と配当給付の方法
それらの要件は義務とされ、それ以外の条項が定款に記載されるのは法規に反しないかぎり問題ない。改定株式会社法で変更された内容は古い株式会社法が有効な時期に作られた定款と一致しないのは確実で、もし改定株式法に即していない内容が定款内にあればそれは法律違反となる。もし株式会社法違反が行われた場合、検察あるいは第三者の告発で裁判所はその株式会社を解散させることができると法令内の条文に記載されている。
リアウ州商工会議所は、1万5千会員会社のうちの85%は期限内に改定株式会社法に則した定款変更ができそうにない、と公表した。つまり12,750社が国によって解散される危機を迎えているわけだ。その理由について商工会議所専務理事は、「2006年に株式会社法に即して定款変更を行ったというのにいまや再び政府は定款変更を命じており、今回の変更に当たっては公証人に変更申請を出すだけで5〜8百万ルピアの料金を徴収されている。大会社にとっては大した金額でないだろうが、中小零細事業者にはたいへんな負担だ。みんながしなければならないから、みんな同じ条件だという考え方は間違っている。」と語っている。
その廉くない公証人への変更申請料金についてリアウ州公証人同盟は、中央からの指示による金額であり、料金明細について国庫にどれだけ入るかといった内容は公表できない、と説明した。その定款変更料金については、2007年法令第40号に従って各州に料金決定を委ねるよう人権法務省に要請する意向であることをリアウ州商工会議所は明らかにしている。


「就業日変更の規則が制定される」(2008年7月17日)
電力危機軽減策のひとつとして政府が企画していた産業界の就業日を土日に向けさせるための5大臣共同決定が2008年7月14日に制定された。施行は2008年7月21日から開始される。この共同決定書の内容によれば、すべての工場は1ヶ月のうち就業日2日を平日から土日にシフトさせなければならない。政策推進はまず金属精錬など電力消費の大きい産業を対象に進められ、追々他のセクターへと移っていく。各セクターでも大規模工場へ優先的に行政監督指導の手が入り、小規模工場は後回しにされる見込みが高い。
この政策に対する産業界の反発は小さくなく、中でも官が民に事細かく指図する政府の姿勢に驚いている外資系も少なくないようだが、依存性原理を文化にしたインドネシア社会はそれが普通の姿であり、インドネシアで事業を行うためには地元文化を尊重するのが当然であるのは言うまでもない。地元産業界はこの政策に協力的に従う際にご褒美が与えられることを期待していたのだが、PLNがインセンティブを与える姿勢をまったく示さないために政府にそれを苦情した。するとファハミ・イドリス工業相は「PLN電力生産コストはKwh当たり1千3百ルピアで、それを産業界には7〜8百ルピアで販売してきた。これまで産業界は半分近い金額に対して補助金を享受してきている。それをインセンティブとは考えないのだろうか?この料金はとても廉いものだ。それ以上に料金割引インセンティブを与えることは考えられない。」と発言して政府の最終的な姿勢を明らかにしている。一方PLNは反対に、産業界向け電力料金値上げを行うよう計画しているそうだ。
産業界が抱いている反発は別にもある。休日出勤を政府が強制する形になるこの共同決定には企業だけが不服従に対する制裁を受ける内容が記されており、労組にも制裁を与えなければ片手落ちではないか、というのがそれだ。同時に土日振替出勤を休出扱いしないように言明する規定を入れてほしいとの要求も出されている。この議論に対してインドネシア最大の労組同盟であるKSPSI(インドネシア全国労組同盟)のシュクル・サルト議長は、「労働者は祖国の電力危機を十分に理解しており、その政策実施に反対する意思は毛頭ないもののそれによって労働者の権利が冒されてはならない。政策実施は各企業における労使関係に委ねられるべきであり、労使二者間協議で合意を求めることが労使間コンフリクトの発生を防ぐことになる。」と発言している。
労働省労使関係育成総局長は、全国三者協議の場で共同大臣決定に関する話し合いが既になされ、労使各代表者は状況の理解を表明するとともに政策遂行への協力を各社が労使協約にもとづいて実施すると約束した、と述べている。「現場段階での実施に行政が細かく立ち入ることはせず、労使間協調のもとに共同大臣決定の規定を各企業が遂行するよう委ねる所存だ。一ヶ月のうち二日を土日に振替ることについては、現行労働法の規定は労働時間が週40時間であると定めているだけであり、週の休日を土日であるとしているわけではない。もし土日に出勤しても一週間の労働時間が40時間以内であれば、残業休出を根拠にして賃金割増を要求する権利は労働者にない。企業が労使協約の中で土日を休日にするような規定を定めているのなら、現行労働法に則して労働協約を変更しなければならないだろう。」
エルマン・スパルノ労相は、5大臣共同決定の制定に関連して変更される法規は何もない、と念を押している。残業休出に関する労働管理法規は現状のまま維持されて何も変化しないとのこと。


「経済連携協定にただ乗りする国が出るかも知れない」(2008年7月18日)
日本インドネシア経済連携協定施行がはじまった。相互の原産品が相手国で輸入される際に協定で定められた恩典を享受するカギになるのが原産地証明書であり、インドネシア語ではSurat Keterangan Asal略称SKAと呼ばれている。両国共にこの連携協定専用の原産地証明書フォームが用いられることになるため、昔から使われてきた発展途上国に対する特恵関税恩典供与のためのGSPフォ−ムAはインドネシアから日本向けの輸出に使われなくなる。
フォームAは申請すると翌日交付されているが、SKAIJ-EPAは交付までに三日を要すると商業省外国通商総局輸出入恩典局長が表明した。それは申告物品が本当にインドネシア原産条件を満たしているかどうかを厳密に審査する時間がそれだけ必要だからであるとのこと。インドネシアで原産地証明書発行は全国で商業省監督下の4百発行機関が行なっており、本庁とのオンラインデータ交換も進められている。それら発行機関のほとんどは各地方自治体の商工業局やその分室だ。しかし商業省は日イ経済連携協定に関する原産地証明書発行を85の発行機関に限定した。管区から日本向けに輸出される原産品があるかどうか、不正を行わず、正しい業務を行ってきたかどうか、といったことがその85発行機関選択の条件とされた。だから外国がインドネシアのSKAIJ-EPAを金で買って自国産品を日本に輸出しようとすれば、SKAは高い価値がつく、と局長はジョークを飛ばす。
アメリカやヨーロッパが中国産のエビや繊維衣料品にクオータ制を敷いたため、中国から欧米への輸出に際して輸出者はまずインドネシアに船積するというステップを取った。言うまでもなくインドネシアには金で動く仲介者がおり、インドネシアから最終目的地向けに再輸出されるときにインドネシアの原産地証明書を付けて送るということが行われたために国際問題に発展した。中国はまた二年ほど前、タイルをインドネシア経由で台湾に輸出したこともある。台湾は中国産品の輸入を制限していたためにそのような手段が取られたわけだが、この場合は原産地の詐称だけであって原産地証明書の不正作成というものではなかった。ともあれ昔から虚偽申告による原産地証明書の不正作成は絶えたことがなく、日イ経済連携協定がそのような行為から無縁でいられるとは考えないほうがよいだろう。
地方自治体では職員の配置転換が行われるため、商工業局に国際通商とは無縁だった職員が配置されることも普通に行われている。教育局や埋葬局などにいた職員が商工業局に来ることもあるし、職員の能力や適性が審査されるわけでもない。そのような職員がSKAIJ-EPAの申請に承認を与えようとするとき、そこにどのような問題が潜んでいるのかが察知されない可能性は小さくない。局長は原産地証明書作成を事前に管理することの難しさをそう洩らしている。


「事業許可交付を簡素化せよ」(2008年7月30日)
商業省は全国33州政府に対し、2007年商業大臣規則に従ってSIUP(商業事業許可)交付のための条件を特に小規模個人事業者に対して簡素化するよう求める文書を送った。全国の地方自治体はSIUP交付の条件に納税者番号(NPWP)と町役場からの事業所所在証明書(Surat Keterangan Domisili Perusahaan)提出を義務付けているが、全国事業者の90%を占める小規模事業者がもっと事業を行いやすい環境を用意するために2007年商業大臣規則第36号で定められているKTP(住民証明書)と写真ならびに申請者の自己申告による事業所所在証明だけをSIUP交付条件にするように、というリマインダーがそれ。SIUP交付条件に関連する所在証明書はその住所を管轄する行政機関でなくSIUP申請者の自己申告書でかまわないことになっている。商業省が定めた現在のSIUP交付条件は次のような内容。
株式会社(PT) : KTPのフォトコピー、事業所所在証明、事業者/責任者の写真、会社定款のフォトコピー、定款変更のフォトコピー、法務省の株式会社承認
合資会社・有限会社(CV・Firma) : KTPのフォトコピー、事業所所在証明、事業者/責任者の写真、会社定款のフォトコピー
個人事業主 : KTPのフォトコピー、事業所所在証明、事業者/責任者の写真
現場でもっとも苦情されているのはNPWPと事業所所在証明書の取得が費用と時間を消費するものであることで、SIUP交付条件からそれをはずしてほしいとの要望は以前から強い。そのため商業省が交付条件内容を変更したにもかかわらず、地方自治体段階ではそれに合致した手続きが行われておらず、個人事業者の無認可不法操業を煽っているのが実態だ。
しかし地方自治時代に入った現在、中央政府と地方行政府の間で規則制定に関する棲み分けが定められており、この問題に関して言えば商業相決定は自治体にとってオプションと位置付けられることから、全国一律にその大臣規則が実施される保証はないと行政オブザーバーは述べている。


「日本向け原産地証明書発行は快調」(2008年7月30日)
日本インドネシア経済連携協定の恩典を享受するため、インドネシアの輸出者は日本向け輸出商品の原産地証明書取得にたいへんな熱意を示している。商業省外国通商総局輸出入恩典局長は、全国85の発行機関で既に3,165件の原産地証明書SKAIJ-EPAが発行されたことを明らかにした。この協定が発効してから一週間で1,055件の証明書が発行されており、インドネシアの輸出者が活発に原産地証明書の取得を進めている実態を示している。
輸出入恩典局長はSKAIJ-EPAの運用システムについて、他の国との間で実施されている原産地証明システムよりも進歩したもので、日本側との間で行われるプロセスも詳細に及んでおり、そのために他の原産地証明書が1日で発行できるのに対してSKAIJ-EPAはより細かいプロセスを経るために3日かかっている、と説明している。商業省が発行する特恵関税供与国向け原産地証明書フォームAは一週間に8百件程度が処理されているのに比べてSKAIJ-EPAの増加はきわめてドラスチックだ。SKAIJ-EPA発行機関は日本側に認証権限を持つ官職者リスト、その署名および認証印を提出しており、バリの発行機関は認証印を変更したことから証明書の発行が暫時延期されている。
全国28発行機関中で最も発行件数が多いのは東ジャワの一週間32件。続いてジャカルタ首都特別区、北スマトラ、東ジャカルタ、西ジャカルタといった順位になっている。


「外国企業国有化論」(2008年8月11・12日)
何世紀にもわたって外国人の支配下にあった国民が、独立後も依然として継続している植民地構造の中で国政上層部が行っている内政外交の偏りに批判を向けるのも道理であることは論を待たない。とはいえ、国政エリート売国奴論や巨大外国資本による民族搾取被害者といった論調がインドネシア民族国家主権確立から半世紀を超えている今になってもいまだに止むことのない実態は、かれら自身が旗印としている国民国家建設のプロセスがどこかで道を踏み外してしまっているのではないかという印象を拭い去るのを困難にしている。国民一般に広く浸透している侵略的外国人像はオルバ政権が毎年8月17日前に流していたプロパガンダの影響を強く蒙っているものであり、そうやって涵養された外国人向け敵対感情はトライバリズムの名残と相まってこのグローバル時代にありながら世間にしばしば噴出してくるインドネシア風攘夷行動のベースをなしているようだ。この民族が引きずっているトライバリズム的精神性は日常生活のさまざまな面でも垣間見ることができ、横浜開港時の前後に似たような精神状況に陥った民族も今ではこの南洋の地で当時の西洋人と類似の視点に立っているわけで、あながち無縁の現象という気はしない。他面、政治権力闘争に「目的のために手段を選ばず」という酷薄な原理を用いるのが常識のかれらが現政権に痛手を与えようとしてそんな国民の感情を利用することは想像に難くなく、プライモーディアルな国民感情がいつどのように世論操作の手にかかって燃え上がるかは予断を許さない。
ある国内シンクタンク役員が全国紙に掲載したオピニオンは、そんな民族主義感情の不毛な燃え上がりを鎮めようとして国民を妄動に走らないよう諭す内容になっており、この民族感情はそれほど強い、安易に無視できないものであることを示している。その論説を見てみよう。
高貴な意図が常に平易に実行できるとは限らない。それどころか、その実行の途上で高貴な意図が支離滅裂になることも起こりうる。いまインドネシアで操業中の外国系企業に対する国有化キャンペーンもそんな高貴な意図のひとつだ。わが国の豊富な天然資源を国民が最大限に享受できるようにするための外国企業国有化というのは実に高貴な理想である。地中の鉱物資源を浚い尽くそうとしている多国籍企業の振る舞いに向けられた外国企業国有化唱道者たちの怒りは大いに納得できるものだ。自国の天然資源を外国企業に掌握させてかれらが利益の一部を分け与えてあげようという善意を示すのをひたすら待っているような国にわが国が成り下がっている現状がかれらには馬鹿げているとしか見えないということであり、ましてや、それら外国企業のCEOから下級職員にいたるまですべてわが民族構成員でありながら、利益の大部分は外資の本国に流出しているのだから、これ以上のナンセンスはない。この不公平な利益分配が外国企業国有化キャンペーンを煽っているトップイシューになっている。ましてや原油国際相場値上がりで概算だけでもわが国が膨大な利益を享受できるはずだというのにそれら油田が外国企業の手中にあるという皮肉な構図になっていることを思えばなおさらのことだ。
次に、戦略的重要資産が外国企業の支配下にあるために経済面ばかりか政治・社会・環境面でも甚だしい脆弱さをもたらすという問題も上に劣らないイシューである。外国企業、中でも外国の国有企業が自国の利益と保安を優先的に重視するのは疑いもなく、マイナーシェアしか持たないわが国はそれら大株主に対抗することができないのである。
わが国の資源が長期に渡って外国企業に支配されてきたのは確かなことで、VOC時代がそのはじまりだった。スカルノによる外国企業接収は外国資本優位に対抗する地元企業活性化の重要なポイントとなった。オルデバル期は多国籍企業に比して地元企業が旺盛な成長を示した時代だ。しかし1998年のクライシスが状況を滅茶苦茶にした。わが国の大企業はほとんど例外なく隣国企業に身売りすることになってしまった。国境を取り払った自由市場時代はわが国を外国企業にとっての玩具に変えたのである。もっと凄いことに、アメリカ・日本・オーストラリア・ヨーロッパなどの企業ばかりか、マレーシアやシンガポールなど同族国までもがわが国に足を踏み入れてきたのだから。
ここで疑問が起こる。外国企業国有化というのは昔からわが国に居ついているシェブロン、エクソン、BP、シェルなどの企業をターゲットとするのか、あるいは同族国の企業も含めるということなのだろうか?同時に、石油や鉱業セクターの外国企業だけでなくユニリーバ、シティバンク、トヨタ、スズキ、フィリップモリスなど異なるセクターをも含めるのか?国有化唱道者たちはアクションプランを組む前にこの質問に答えておかなければならない。優れた論理で完璧な答えが出されたなら、次の質問はもっと重要で長い答えを求めるものになるだろう。つまりそれは、外国企業国有化の後、それらの企業を誰が経営するのかということだ。国が国有事業体を通して行うのか、民間か、あるいは国有事業体と民間が合併した新たな機関になるのか?このコンテキストにおいて、その高貴な意図が途上で瓦解することも起こりうるのである。石油会社国有化というシミュレーションをしてみよう。わが国の油田コンセッションの8割は外国企業であり、大手はシェブロン、トータル、BP、エクソン、シェル、CNOOC、ペトロチャイナ、グンティンと続く。プルタミナやメドコなど地元企業のシェアは20%に満たない。外国企業コンセッション下のすべての油田を国有化したとき、さまざまな問題のからみついている石油担当国有事業体プルタミナはベストオペレータになることができるのだろうか?これまで外国企業が掌握していた採掘活動が、人材能力不足と時代遅れのテクノロジーのためにプルタミナの手によって無茶苦茶になるかもしれないし、加えてさまざまな政治的干渉によって国有化プロセスがオリエンテーションを失うということさえ起こりうるのではあるまいか。
南米でシャベスやモラレスが行ったような大規模国有化がわが国で起これば国有化イシューはカンフル剤効果をもたらすのは間違いないものの、かれらの英雄的行為が賞賛に値するのは確かだとはいえその結果としてもたらされるものを忘れてはならない。南米で行われた国有化が国民に福祉向上をもたらしたかどうかを計るのはまだ時期尚早だ。期待された結果が実現するのはまだまだ遠い将来なのだから。ロシアが行った外国企業国有化はもっと聡明で優れたものだった。プーチン大統領下のロシアにとって外国企業参入は悲劇でなく、プーチン政府は地下資源探査を行いたい外資に門戸を広く開放した。プーチン政権にとっては国家資源を独占的に掌握しながら国民のことを何も考えない地元寡占資本を打倒することが急務だったのだ。
われわれはロシアの経験から価値ある教訓を汲み取ることができる。外国企業国有化問題で頭を悩ませてみたところで、地元企業にその経営を委ねたらもっとうまく行くとはかぎらない。賄賂・汚職・倫理不在の臭いふんぷんたる地元のビジネス冒険主義者たちを根こそぎ追い払うことのほうがはるかに利口なことではあるまいか。


「星港で会社設立しイ_アで操業する内国資本」(2008年8月29日)
2008年上半期の事業投資実現は金額ベースで対前年同期比56%成長を示したが、PMA(外国投資)の103.8億米ドル153%アップという猛烈な成長に比してPMDN(内国投資)は8.5兆ルピアで70%減となっていることを投資調整庁長官が明らかにした。事業セクター別には運輸通信分野がPMAで64%シェアを占め、金属機械家電、自動車、化学、医薬品などはそれぞれ4〜5%のシェアしか取っていない。一方PMDNは食品セクターが46%、金属機械家電が22%、そして農園・商業・製紙などのセクターがそれぞれ4〜7%というシェアを占めた。
ムハンマッ・ルッフィ長官は、内国資本は国内で会社設立するよりもシンガポールで会社を設立するほうが税制上有利であることから、同じようにインドネシアで操業するとはいえシンガポール籍企業としてインドネシアで事業を行う傾向が強まっており、インドネシアの税制面での国際競争力の弱さが顕著に表れている、とその問題を論評している。
シンガポールで会社を設立しシンガポールの外で事業を行えば、法人所得税は10%しかかからない。ところがインドネシアで会社を設立すれば、法人所得税は28%になる。そのために国内実業家の多くはインドネシア国内にそのまま投資せず、シンガポールで会社を興す傾向が強まっている。税収面でこの状況は明らかにインドネシア側に不利であるのだが、雇用促進を求めるインドネシアにとってそのような会社に対してバリヤーを張る意思を持つのは不可能に近い。長官はまた、銀行界の産業界に対する貸付が昔ほど活発でなくなっており、この要因もPMDN激減に手を貸している懸念がある、と述べている。クライシス前のLDRは97%に達していたが、いまは67%しかない。もうひとつ別の要因に行政手続があり、中央政府が処理する案件と地方自治体のそれを比べたとき、中央政府が管掌する部分に投資実現金額が偏っている。「中央政府に接近すればするほど投資実現は迅速化し、中央から離れて地方自治体に近付けば近付くほど緩慢になっている。」インドネシア大学経済学部大教授はそうコメントしている。


「アメリカが熱を出したら、インドネシアは・・・?」」(2008年10月13日)
アメリカの金融界が数ヶ月前から傾きはじめて以来、発展途上国を主体にこれまで投資されていた米ドルの回収が水面下で進められてきた。インドネシアでも米ドル現金の流動性がかなりタイトになってきた挙句のここ一週間の激動で、ルピアの対ドルレートは10月10日ついに1ドル1万ルピアを超えた。今やなりふりかまわずの米ドル買い漁りが市場の気勢をあおっており、この先ルピア暴落がどこまで進むかまだ予断を許さない状況だ。
国内一般銀行界は既に枯渇しかかっている米ドル現金の動きを抑えようとしており、更に焦付きを恐れて確実な保証を手にしなければクレジットにも応じようとしない。インドネシアの輸出は世界の経済恐慌不安による購買力のかげりをもろに受けて不透明さが増しているばかりか、輸出代金回収にL/C買取を行なっても買取銀行はL/C開設銀行から入金するまで輸出者への支払を先延ばしするありさまだ。輸入のためにL/Cを開設しても、従来はせいぜい10〜20%の保証を差し入れればL/Cが発行されたというのに、今ではL/C金額の百パーセント保証を銀行に入れなければL/Cがオープンされない。「そんなことなら全額現金送金するのも同じことだ。」とインドネシア繊維業協会会長はコメントしている。
全国一般銀行会会長は昨今の状況について、「銀行界は融資を行なうに際してきわめて注意深くなっており、輸出者が米ドルのこの激動下に大きい影響を蒙るかどうかのリスクレベル評価をこれまでよりはるかに厳しくしている。米ドルの流動性が大幅に低下しているいま、外国銀行でさえも外貨貸付にはきわめて消極的だ。」と語っている。為替レートの大荒れは、市場がパニックに包まれれば更に暴走するだろう。たとえば輸入者がこの先2〜3ヶ月のドル需要を今のうちに手当しておこうと動き出せばルピア暴落は一層激しくなる。外為市場の取引を停止させるのは株式市場の取引停止とは比較にならないほどの影響を国民経済に与えることになる。輸入原材料比率の高い商品の中には、既に国内消費者価格値上げの声をささやきはじめているものすら出ており、ルピア暴落が長期化すれば国民購買力はふたたび大打撃を受ける可能性が高い。
加えてインドネシア銀行がBIレートを半年に渡って継続的に引き上げており、金利と預託金の両面から国内金融界に対するルピア通貨のタイトマネー政策が進められてきたことから産業界へのルピア貸付もここにきて一気に袋の口を縛り上げられた格好で、貸付承認が降りていたローンの支出に銀行側が待ったをかけるケースも散見されている。国民の生活苦が随所で噴出する事態に陥る日がまた一歩近付きつつあるようだ。


「消費物資の輸入規制」(2008年10月29日)
2008年上半期の消費物資輸入は中国からのものを主体に急増しており、国内生産者の市場シェアがおびやかされている。加えてアメリカを震源地とする金融危機のために先進国市場が縮小した現在、新たな市場を求めて大量の消費物資がインドネシアに流れ込んでくる懸念が強まっている。そのために消費物資の輸入はバランスの取れた形で制限を加える必要があり、最初は5%程度からはじめて継続的に引き上げて行き、国内製品が市場に吸収されるのをサポートしなければならない。ファハミ・イドリス工業相は全国商工会議所総会でそう発言した。
大臣はこの輸入規制を実施する対象品目として、繊維衣料品・飲食品・履物・自動車部品・タイル・石化製品・紙パルプ・鉄鋼・電気器具機械・家電品・農具・セメントの諸セクターをあげた。この規制と歩をあわせて政府機関をはじめとする全国的な国産品使用促進キャンペーンを推し進める必要があり、2003年大統領決定第80号で国産品使用の意志固めはできていることから近々国産品使用に関する大統領指令が出されることになるだろう、とも述べている。今回の輸入規制案は消費物資の輸入を減らして国内生産を高めることを目的にしたものであることから、国内生産に使われる原材料や生産のための機械設備に対する輸入規制はまったく考えていないことを大臣は強調している。
それについてヒダヤッ全国商工会議所会頭は、この輸入規制案は国内製造業界の生産活動に大きい支援をもたらすものであり、商工会議所は全面的に工業相の方針を支持する、と応じた。輸入規制政策は輸入関税の引き上げやセーフガード対応によって実施されることになるだろうと会頭は述べている。


「ルピア暴落!中銀の市場介入も焼石に水」(2008年11月14日)
国内に入っていた米ドルが本国にどんどん引き上げられて行く中で株式市場も外資がこそぎ落とされた裸の状態に近付き、インドネシア証券取引所IHSG(総合株価指数)は米ドル暴騰開始直前のレベルから6割程度まで下落している。しかし米ドルが流出して行ったからといって国内の米ドル需要が弱まるわけでもなく、需給関係はルピアの対米ドルレートを低下の一途に追い込んでいる。当初は一過性と楽観論を唱えていた中央銀行も下がり続けるルピアレートの安定を策して虎の子の外貨を市場に放出することを余儀なくされてしまった。
2007年を通して未曾有の外貨準備高積上げを実現させたインドネシア銀行は同年12月に569億ドルという記録を作り、その余勢を駆って2008年7月には600億ドルの大台に乗せる快挙を果たしたものの、その後は減少を続けて9月は571億ドル、そして10月末には505.8億ドルという400億ドル台への転落瀬戸際という状態に立ち至っている。中銀債に投資されていた外資は9月時点で20億ドルあったものが今や6億ドルまで減少しているから、10月ひと月間の米ドル流出の激しさを象徴する絵柄だと言えるだろう。
2008年10月のルピア対米ドルレートは6百ルピアも下落し、下旬には2005年11月以来の1ドル1万ルピア台に達して一時は1万2千ルピアをひと撫でするという事態になった。インドネシア銀行の市場介入で一旦は戻りかけたルピアも11月13日にはふたたび1万2千ルピアのラインに到達している。10月にインドネシア銀行が行なった通貨レート安定オペレーションは外貨準備高を65億ドルも減少させる結果となったのである。巨額の外貨準備高減少は決してインドネシアに限ったものでなく、台湾は10月のひと月間で29.8億ドル、韓国はなんと274億ドルも減少したそうだ。インドネシアで10月に減少した65億ドルがすべて通貨安定中銀オペレーションで放出されたものだということでは決してないのだが、これほど大きな減少はその内情を想像させてあまりあるのではないだろうか。10年前の通貨危機で米ドル・ユーロ・日本円のバランス良い外貨保有の必要性があれほど叫ばれたというのに、政府中央銀行の外貨政策はその間にどうやらあまりたいした変化を遂げなかったようだ。「喉もと過ぎれば・・・・」というのは人間の常なのだが、それにしても今回の通貨問題で中銀だけを責めるのは酷なのかもしれない。


「都庁が企業の業務開始時間を推奨」(2008年11月24日)
特定時間帯の激しい交通渋滞に悩まされている首都ジャカルタで、学校の就学時間、事業所の就業時間を分散することで交通渋滞ピークを緩和させようとのアイデアにもとづく政策が2009年1月2日から開始される。ジャカルタ都市交通政策コンサルタントによれば、都民が使用している交通機関は年平均で鉄道3%、自動車57%、そして40%は非自動車であるとのこと。首都の一日当たりの道路交通頻度は2,070万トリップであり、そのうちの48%が会社通勤、14%が教員の通勤と生徒の通学、12%がショッピング、8%がビジネス、18%がその他という明細になっている。
まず学校の開始時間がこれまでの午前7時から6時半に早められることになった。例によって外部者が自分の生活習慣に変化を強いるのを嫌うひとびとは早くも都庁の方針に不平を洩らしているが、都庁側は年末までにこの方針を都知事規則として制定することを決めている。この方針は公立であれ私立であれ、すべての学校に適用される。都庁は昔から学生生徒のために無料スクールバスを運行させており、この就学時間変更と時をあわせて1月2日から朝のオペレーション時間が変更される。スクールバスの朝の発車時間は午前5時15分からの開始とされて15分早められるが、昼の運行は11時〜15時、夕方の運行は15時〜18時と従来どおり変わらない。
続いて公務員の就業時間については、これも従来どおりの午前7時半から16時まで変わらない。そして民間事業所の就業時間については、これまでは自由として行政は何らの指図もしなかったのだがついにその姿勢を変更しなければならない時期がきた。とはいえ行政がいきなり民間事業所の就業時間を強制するのはまだ無理があるため、都庁はこの方針を広報告知の形で奨励することになる。民間事業所の都庁推薦就業時間は各市ごとに定められており、中央ジャカルタ市と北ジャカルタ市が開始時間午前7時半、西ジャカルタ市と東ジャカルタ市が午前8時、南ジャカルタ市は午前9時となっている。この方針が完全に実施された場合、計算では今の交通渋滞ピーク時の車量が34%減少するとのこと。


「資金の国外移転が始まったか?!」(2008年11月27日)
ルピアレートの低落が国内金融状況を一層悪化させている。そんな事態を背景にして、金融大崩壊のリスクに備えて一部国民の中に自分の預金を国内銀行から引き上げて外国の銀行に移す者が出始めている、と銀行経営者が警告した。
「びっくりするような金額ではないが、オーストラリアやシンガポールの銀行に預金を移す者が出始めている。個別には20億ルピアを超えている預金ばかりで、政府保証の対象外だ。まだそれほど巨額になっていないとしても、1998年の轍を踏まないよう、われわれみんなが関心を払わなければならない状況が始まっている。国民に国内の銀行に資金を置いておくのは安全だと感じさせる政策を政府は早急に取らなければならない。」BII副代表取締役はそう発言した。
金融恐慌に備えて政府が取るべき政策は、すべての銀行預貯金に一律保証を与えること、そして銀行間貸借にも一律保証を与えることだ、と同副代表取締役は提案している。現在政府の金融界に対する国民預貯金保証は預貯金保証機関が管掌しており、預貯金保証機関は銀行界最初の患者、センチュリー銀行に対する措置を最近取ったばかり。一般銀行はこれがはじめてだが、国民貸付銀行の倒産処理は既にいくつもの例がある。
預貯金保証機関発足時に定められた保証スキームに従って保証対象金額は1口座当たり上限1億ルピアというスキーム最終フェーズに至っていたものの、アメリカの金融危機が具体化してから政府は上限を20億ルピアに引き上げている。この保証条件がカバーしている銀行界第三者資金は935.95兆ルピアだけで、残る673.9兆ルピアは1口座が20億を超えているために保証スキームの対象になっていない。
銀行界が抱えているもうひとつの不安要因は銀行間貸借で、銀行界が過去三ヶ月間に獲得した73兆ルピアの第三者資金は7割弱が10大銀行に吸収されており、小規模銀行は相変わらず流動資金の手薄い状況にある。銀行界関係者が語っているように、現在銀行界が同業他社にローンを与える際に最も重視しているのは金額でなく相手銀行の経営状況であり、政府がこの分野に十分な保証を与えることで小銀行も事態の急変に備えて体力をつけることができるが、一旦突発事態が生じて疑心暗鬼が広がれば国内金融界に崩壊の起こる可能性は小さくない。
BII銀行副代表取締役の発言に対して銀行界関係者の間では、国外送金は毎日のように発生しておりそれが預金の国外移転かどうかを断言するのはむつかしいとの疑問を呈する向きもあるが、政府が国民預貯金および銀行間貸借に一律保証を与えることは国内金融界の信用を維持するために重要な対応だ、と声をそろえている。


「政府は家庭消費の伸びをはかる」(2008年12月1日)
世界を覆っている経済危機に抗してインドネシアでは2008年の5%超、2009年の4.5〜5%という経済成長をはかるため、政府は家庭消費の伸びを5%以上実現させる方針を決めてそのための推進項目9件を実行する、とスリ・ムリヤニ・インドラワティ蔵相が11月25日にジャカルタで開かれたインベスターサミット&キャピタルマーケットエクスポ2008の開会式でスピーチした。それについてハティッ・バスリ、インドネシア大学経済オブザーバーは、インドネシアのGDPは65%が家庭消費に由来しており、政府がその5%以上の伸びを実現できれば3.25%の経済成長は確保されることになるためにたいへん的を射た方針である、と賞賛している。
家庭消費の成長をはかるための対策として政府は12.5兆ルピアの税金補助や税収刺激策パッケージを用意し、また市場が完全にダウンした場合の準備金資金源も準備する計画。特に最近マスメディアで頻繁に流されている会社従業員解雇報道に政府は神経をとがらせており、解雇をミニマイズするために税金補助を用いて実業界の成長をプッシュし、また実業界が直面している需要減と運転資金不足という二問題への対策についても検討が続けられている。
蔵相が表明した9推進項目は次のようなもので、着手が一段落したもの、現在進行中のもの、今後実施されるものが混在している。
1.国庫収入の持続をはかる
2.国内の通貨流動性保全のために2008年度政府支出予算の執行を早める
3.中銀と協力して国債買戻しを行う
4.株式・国債・証券・信託投資市場の緊密なモニター
5.政府投資センターの役割と機能の活性化
6.機構的また金融セクター安定委員会の役割と機能活性化を通して、中銀との協働クオリティを向上させる
7.行政・立法・司法の各レベルで他の機関とのシナジー的効果的コミュニケーションを作り上げる
8.市場・ビジネス関係者と活発なコミュニケーションを作り上げる
9.グローバル金融危機の終結を支援するために国際金融機関の役割向上をプッシュする。