インドネシアビジネス経済環境情報2009〜11年


「都庁が民間会社始業時間変更を要請」(2009年1月8日)
2009年1月5日、都内の大半の学校は始業時間を午前6時半に繰り上げた。国立学校は一斉にそれを実施したものの、私立学校の一部はまだすべてがそれにならったわけではない。都庁の調べによれば、北ジャカルタ市では153の私立小学校中で始業時間を変えなかったのは20校、南ジャカルタ市でも121校中で7校が変えていない。しかし東ジャカルタ市は167私立小学校のすべてが、また西ジャカルタ市でも全194私立小学校が都の方針に従った。国立の学校は以前から始業時間を午前6時や6時15分にしていたところがあり、学校側は傾向として時間の繰上げにあまり抵抗がなかったようだ。
多くの学校が始業時間を早めたため、朝の交通渋滞ピークが散らされることによって緩和が実現した、とプリヤント副都知事は印象を語っている。しかし都庁運通局長は、都内の学生生徒のトリップは全体の14%に過ぎないため、その時間をずらしても交通渋滞にまだ顕著な影響はあらわれていない、とコメントしている。首都警察交通管制センターによれば、これまで交通のまばらだった午前5時〜6時半の交通量が増加し、午前7時〜9時の混雑ピーク時間帯はわずかながら混雑が緩和している、と語っている。1月5日朝の登校で顕著な影響が見られたのはスクールバス利用者の増加で、2008年12月の実績は1日平均4,114人だったがいきなりほとんど5割増近い6,041人になったと都庁運通局が発表した。黄色いボディにBus Sekolahと書かれた都庁が運行させているスクールバスは都内に散在するバスターミナルを結んで学校の多いルートを走るもので、学生生徒は無料で利用できる。
学校の始業時間繰上げ結果をポジティブだと判断した都庁は、続いて会社に対する始業時間変更の働きかけを来週から開始する。「これは義務付けでなく、従わないから罰則を蒙るというものではないが、都民を利するためのこの方針に是非協力して欲しい。」と副都知事は述べている。都庁がアドバイスする会社始業時間は各市単位で決められており、中央ジャカルタ市と北ジャカルタ市は午前7時半、西ジャカルタ市と東ジャカルタ市は午前8時、南ジャカルタ市は午前9時となっている。


「歴史は繰り返さない」(2009年1月13・14・15日)
普通のひとは体験から何かを学習する。しかし世の中には、その意味でフツーでないひともいる。巨大なできごとに翻弄されたひとはそのできごとを調査分析し、後になって類似のできごとに直面したとき、今度も前と同じようなメカニズムが働いて同じような現象が再び表れるだろうと考える。『歴史は繰り返す』が真であると見なすわけだ。10年前の通貨危機でルピアレートがどうなったから2008年の経済危機でルピアレートは云々・・・と語る声も少なくない。しかしインドネシアの経済通貨専門家はそのような姿勢を否定する。その両者の間では関与した要因がまったく異なっているとかれは言う。
ガジャマダ大学ビジネス経済学部教官でBNI銀行チーフエコノミストであるトニー・プラスティアントノは、ここ10年の間に起こった二度の経済危機を次のように分析している。かれのこの論評は2008年11月に発表されたもので、少々遅きに失した感のあるところだが、昨今の実状を参照しながらかれの説がどこまで正鵠を射たかについて検証するのも面白いかもしれない。トニーの論評はこうだ。
かつて起こった経済危機とまったく同じものが繰り返されることはない、という意見にわたしは賛成する。それぞれの経済危機はユニークで独自性を持つものだ。たとえば1930年代の世界恐慌は2008年の金融恐慌と作因・規模・連累などの面から類似性を見出そうとしても難しい。とはいえ、現在直面している危機や将来訪れるであろう危機に備えて、われわれは過去の危機から教訓を学び取ることができる。遠い昔の、異なる時代に異なるセッティングやコンテキストで起こったものであっても、現在のわれわれに依然として有効であることがらも少なくないのだ。われわれが過去の実例を学び比較し、取られるべきだったステップを裁断したとしてもそれを妨げる理由は何もない。
ルピアレートの暴落で1ドル11,000ルピアのラインが2008年11月4日に突破されたことは、好むと好まざるとに関わらず1998年の危機における苦い記憶をわれわれに呼び起こさずにはいなかった。1998年のあの悪夢がまたよみがえるのだろうか、とひとびとは問いかけはじめた。ルピアはこのままどんどん下落して、当時起こった1ドル1万5千ルピアを下回るような事態に立ち至るのだろうか、と。
2008年の経済危機と1998年の危機の最大の違いは政治要因だ。1998年危機はスハルトレジーム崩壊直前の異常な政治パニックがからんでいた。スハルト体制下の政治構造がきわめて強固だったため、それを突き崩すのに巨大なカオスという犠牲が余儀なくされた結果多くの資本が国外に逃げ出した。実際問題として、政治パニックが引き起こした大がかりな資本逃避は純粋に経済的な動機で起こる逃避よりはるかに凄まじいものになった。そのせいで、1997年半ばの1ドル2,300ルピアという交換レートは1998年1月に1ドル1万7千ルピア台という最悪のレベルにまで達した。経済パースペクティブだけでこれほど極端なルピア暴落を説明するのは困難だ。たとえその前のルピア通貨が過大評価されていたと仮定したところで、あれほど激しいレート調整は起こりえない。この疑問に対する唯一の説明は「政治上の混乱」である。政治世界のカオスの中でルピア暴落はどこまでも果てしなく起こりうる。なぜならこれは政治問題なのだから。
今の状況は違う。国内と世界の経済状況に対する不安はあるものの、これまでのところ政治要因の影響は受けていない。だからルピアレートが2008年9月15日のレーマンブラザーズ倒産前の1ドル9,200ルピアから1ドル11,000ルピア台まで下落したことの説明はつけやすい。事実、ルピアの高値は過大評価されたものだった。それを示すものが少なくともふたつある。そのひとつはインドネシアの貿易収支バランスが悪化していること。輸入は急激に増加しており、ひと月平均110億ドルにのぼっている。2008年1〜9月の貿易黒字は90億ドルしかない。2007年や2006年に貿易黒字が年間4百億ドルもあったのに比べてこれは著しい後退だ。ルピアが高すぎてつまりは米ドルが安すぎるというこの状況はわが国民を輸入品に対してたいへん消費主義的にしている。ルピア所有者にとって輸入品は割安に感じられるのだ。結果は輸入の爆発であり、そんな輸入の増加を抑えるためにルピアレートは安めに修正されなければならない。
もうひとつは、インドネシアがインフレに敏感な新興国のひとつであるという事実だ。インフレ率が最大の新興市場国はベトナムで25%、インドネシアのインフレ率は12%前後。しかしアメリカは原油価格の強い影響を受けてさえ5%、普段はせいぜい2%というところだ。他の関連要素を据え置いたとして、適正なルピアレートは7%ほど切り下がったところだろう。以前が1ドル9,300ルピアだったとすれば1ドル10,000ルピアが妥当な線となる。
このできごとはハードカレンシーを含めて多くの通貨で起こった。米ドルに対してほとんど2倍の強さだったスターリングポンドは1.5米ドルに、ユーロは1.6米ドルから1.25米ドルに、オーストラリアドルは一時ほとんど等価になっていたものが0.6米ドルまで下降した。平均して25%程度切り下がったと言うことができる。それらの国はすべて自国通貨が対米ドルで過大評価されていた時期に貿易収支に問題を抱えていた。イギリス・ユーロ地域・オーストラリアは貿易収支が赤字で、イギリスはなんと1,890億ドルという赤字幅になっていた。
この分析にもとづけば、いまは自然な調整過程に入っており、各国通貨は新たな平衡点を模索しているところだと言える。米ドルに対して過大評価されていた通貨は切り下がらなければならず、反対に安過ぎた米ドルは反転上昇しなければならない。そしていつかあるとき、均衡点に達してバランス回復プロセスは終わりを迎える。
交換レート調整とは別に、ルピア下落に関与している要因がふたつある。ひとつは2008年11月4日に起こった米国大統領選挙ユーフォリアで、米国経済の将来に新たな希望が生まれたことから、当面大勢が資産を米ドルに移すものと思われる。もうひとつは銀行預貯金に対する政府保証が1口座当たり20億ルピアまでしか与えられていないこと。預貯金保証機関によれば、銀行口座保有者の99.02%は口座残高が20億ルピア未満であるとのことで、そのため上限20億ルピアは口座保有者のマジョリティをカバーしたことになる。この対策は一見正しいように見える。しかしちょっと待ってほしい。銀行界の総口座数6万1千件の中で0.8%に総額6百兆ルピアが集まっているのだ。これは実に巨大な金額であり、おまけに国外逃避の潜在性を秘めている。中でもシンガポールとマレーシアの近隣二国は外国から短期資金を集めようとして2010年まですべての預貯金に百パーセント保証を与えた。ブランケットギャランティスキームというものが高いモラルハザードリスクを負っていることをわれわれは認識しているとはいえ、それらコンペティターを追いかけることに際してわれわれは躊躇していられないのだ。
ブランケットギャランティスキーム実施によってプルアウト圧力は弱まると思われるため、ルピアレート下降の勢いは弱まるとわたしは推測する。ルピアが強まってたとえば1ドル10,000ルピアの均衡点で安定すれば、次に着手しなければならないのは金利率引下げオペレーションだ。われわれは来年の早い時期にBIレートが8%台に戻ることを望んでいる。今こそ政府とインドネシア銀行が協力してそのモメンタムを創出するときなのである。こうして1998年のルピア暴落が繰り返される機会は閉ざされる。


「何と言おうが飲食品も輸入規制の対象」(2009年2月11・12日)
輸入品を輸出国で船積前に検査させ、その証明書を添付して輸入手続を行なうというシステムがある。船積前検査システムというのがそれだが、政府は輸入規制対象5品目にそのシステムを適用している。5品目とはエスニックスーパーや外国系ファーストフード業界を嘆かせている飲食品をはじめ、家電品、玩具、履物、衣料品がそれに当たる。この5品目の輸入プロセスについて定めた特定産品輸入規定に関する商業大臣規則第56/M-DAG/PER/12/2008号とその増補版第60/M-DAG/PER/12/2008号では、それら5品目の輸入は政府が認定した登録輸入者が指定された国内5大港でのみ輸入できるとしてあり、また2009年2月1日からは輸入時の船積前検査証明書提出が絶対条件となった。政府はこの5品目に対する輸入プロセスでの船積前検査を検証プロセス(proses verifikasi)と呼んでいるので、以後はその表現に従うことにする。
登録輸入者は検証プロセスを政府が指定する国内サーベイ会社に申請する。国有事業体PTスコフィンドとPTサーベイヤインドネシアがその指定会社だ。国内サーベイ会社は輸出国の提携サーベイヤに貨物検証を依頼する。その検証結果を示す証明書を税関に提示しなければ、輸入者は輸入貨物を引取ることができない。両国内サーベイヤによれば2009年1月30日時点で受けている検証申請は次のようになっている。
飲食品 246件、衣料品 228件、家電品 219件、履物 109件、玩具29件、合計831件
また商業省データでは、2009年1月28日時点での5品目登録輸入者申請状況は次のようになっている。
品目 / 申請件数 / 却下 / 承認
家電品 / 912 / 133 / 701
玩具 / 320 / 60 / 256
衣料品 / 303 / 60 / 234
飲食品 / 290 / 39 / 235
履物 / 242 / 26 / 211
合計 / 2,067 / 318 / 1,637
申請件数と却下+承認の数が一致していないのは、プロセス中のものがあるためだ。ただしこの5品目の中で衣料品の船積前検証義務付けは2003年に開始されており、今回新規に始まったものではない。
トーマス・ダルマワン飲食品事業者連盟会長は、この特定品目輸入手続は不法輸入品を抑制するのが目的であり、合法輸入品を制限するのが目的ではない、と強調した。「登録輸入者は生産工場から輸入する場合もあれば、外国のスーパーマーケットや流通会社から少量を輸入することもある。問題は飲食品に食品薬品監督庁での認可が義務付けられていることで、外国での船積前検査に加えて輸入時の飲食品登録も行なわなければならず、輸入コストは膨れ上がる。他の4品目に比べて飲食品だけがこのような二重のプロセスを強いられているが、飲食品の輸入が困難にされているという印象を与えることのないように政府は配慮してほしい。」会長はそう述べている。


「社員が社内機密データを盗む・・・」(2009年2月17日)
ITセキュリティは日進月歩しているITツールによっていとも簡単に破られることを企業、特に金融業界は肝に銘じるべきだ、とテレマチックリサーチ機関シェアリングビジョンが警告した。「従業員が職場環境内でフラッシュディスクを使うことを会社は厳格に禁止し、それを徹底して守らせなければならない。フラッシュディスクによって職場内にウイルス汚染がもたらされることに加えて、社内の重要機密データが窃取されることに対しても防御措置を取る必要がある。今や8ギガバイトのフラッシュディスクでさえコンピュータマーケットで比較的廉価に販売されており、どれほど膨大な量の社内機密データであってもそれ1個でいとも簡単に盗み取ることができる。小さい一般銀行の顧客データベースならせいぜい1,000キロバイト程度のボリュームしかないから、データコピーはあっという間だ。」
2009年に公表されたアメリカのサーベイデータによれば、データを窃取された577回答者のうち15%がフラッシュディスクによるものだったと答えている。最も多かった窃取ツールはラップトップコンピュータで38%、次いでワイヤレスネットワークの24%、PDA18%、フラッシュディスクはその次という内容だったが、インドネシアの国内事情からするとフラッシュディスクによる比率が優勢になる可能性が高い。シェアリングビジョンが2007〜2008年に行なった調査では、銀行界のデータセキュリティに対する侵害のマジョリティはアイデンティティ窃取で70%を占め、二位がデータクローニングの15%、更にデータが記録されている媒体現物を盗むというのが10%あった。
「職場環境内への従業員のフラッシュディスク持ち込みは厳禁しなければならないことを会社経営トップは明確に認識しているものの、その危機感は上級レベルにとどまっていて中間管理層にまでは浸透していない。経営トップの間ですらデータセキュリティの重要性に対する理解度はバラついている。従業員に対するデータセキュリティ対策は厳しく行なっているという会社でも、それが実施されているのは本社だけで、支店は半ば放任状態だ。セキュリティの度合いを高めれば高めるほど、社内の快適感が低下していく。社内の重要機密データが盗まれて悪用されるのを防ぐためにはそのような犠牲を払うのが当然の帰結となるわけだが、経営トップでない社員の大半は、中間管理層を含めて、会社にとっての重要さよりも自分の業務環境に自由と快適さが存在することのほうを優先する。だから経営トップは社内風土の中により高いITセキュリティを確立させるべく、アメとムチの方針を駆使して従業員管理を行わなければならない。銀行界に関して言えば、インドネシア銀行規則第915号が銀行内でのセキュリティレベル向上を促進させるものになっているのだが、その規則の内容に関する現場での理解は実にマチマチだ。」シェアリングビジョン調査員はそう語っている。


「会社所在証明書に55万ルピア!?」(2009年2月20日)
2008年7月17日付けコンパス紙への投書"Izin Domisili, Sumber Pungli Aparat Pemprov DKI Jakarta"から
拝啓、編集部殿。都民のわたしはジャカルタのビジネス風土を発展進歩させて失業率を低下させる意志と能力を持っているものと信じて、都知事選挙でファウジ・ボウォ氏に一票を投じました。しかし残念なことに、かれの下の公務員たちはかれを助けようとしないのです。
今でさえ、事業者はいまだに許認可手続きで困難さを味わっています。不法徴収金は一層はびこって実業界に困難をもたらしています。わたしが西ジャカルタ市西チュンカレン町タマンパレムレスタリブロックD8No.17を住所とするPT Sinar Andrea Maju Lestariの所在証明書取得手続きの際に次のことを実際に体験したのです。
町役場職員のSはわたしに、作成手続費に25万ルピア、そして郡役場の承認手続に30万ルピアの支払いを命じました。わたしは領収書もないそんな巨額な費用の支払を嫌がったので、必要な条件はすべて満たしていたにもかかわらず証明書を発行してくれません。所在証明書はたった一年間しか有効でなく、それは不法徴収金の源泉になっているのです。
多分都庁のナンバーワンは都民を玩具にする部下が懲りるようにKPK(汚職撲滅コミッション)を招いて粛清を行なわなければならないでしょう。都庁は国の首都として適正なグッドガバナンス実施し、わが国の進歩を実現させ、諸外国と肩を並べて立てるよう国内の他の自治体のお手本となってください。[ 西ジャカルタ市在住、スティアント・スリヤリ ]


「リーガルコンプライアンスは根付かない」(2009年3月23日)
知的財産権侵害大国インドネシアは米国通商代表部が定める知的財産権侵害国リスト中の監視国に分類されているが、そのレベル評価に関して国際知的財産権アライアンスが最近インドネシアを優先監視国に引き上げるよう勧告した。このリストに入れば通商上の制裁を蒙るのは避けられず、ランクが高いほど不利な扱いを受けることになる。ビジネスソフトウエアアライアンスとインターナショナルデータコーポレーションが公表した知的財産権侵害国リストでは、インドネシアは違法コピー率84%で世界第12位に置かれており、不法ソフトによる被害金額は年間4.1億ドルと見積もられている。84%というのは、コンピュータが100台あればその内84台が不法ソフトを使っているという意味だそうだ。
知的財産権侵害国リストでの評価は国際知的財産権アライアンスが米国通商代表部にリコメンデーションを与える形が取られており、悪評価を得ないようにするために政府は知的財産権保護に努めなければならず、その活動状況を世に示して保護努力に励んでいることを評価者に知ってもらわなければならない。そんな環境の中にいるインドネシア政府は著作権法の厳格な執行を命じ、2005年から2007年にかけて事業に使われている違法ソフトの撲滅を旗印にワルネッ(warnet=warung internet)と呼ばれている庶民向けレンタルインターネット業界から企業にいたるまで、国家警察による活発な摘発作戦を全国展開した。特にワルネッ業界に対しては指導と処罰という両面作戦で綿密な対応を繰り広げた結果、多くの業者が事業存続の危機に見舞われ、業界は年間3千億ルピアの損失を出したと言われている。そんな荒波を乗り越えたワルネッ業者は合法ソフトの購入とオープンソース利用という投資を行い、健全な合法事業者として生き残ったのだが、業界のコンプライアンスが実現したと思った矢先にまた正直者がバカを見る事態が出現したのである。この一事からも、インドネシアにおける法確立というのはそれほどむつかしいものだということができるだろう。
2009年に入ってから、インドネシアインターネットワルン協会所属業者が52店も続々と閉業する事態が起こっている。これは国家警察の撲滅作戦が山を越えた後開店したワルネッが相場の1時間6千ルピアよりはるかに安い1時間2千5百ルピアという料金を適用して顧客をさらって行ったからで、協会役員によれば新興業者は顧客の75%を奪っているそうだ。新興業者の中には1時間2千ルピアというアグレッシブな料金を出しているところもある。この競争が平等公正な条件をベースにした料金競争なら文句を言うほうがおかしいところだが、新興業者は一様に違法ソフトを使って事業を行っているのだ。高額な合法ソフトの購入に資金を投入した合法事業者がコスト的に太刀打ちできないのも無理はない。しかも新興業者はほとんどが大通り沿いに魅力的な店を張り、コンピュータを80台も並べて暗い闇商売という雰囲気などまったく感じさせず、接続スピードやサービスレベルは合法ワルネッと遜色ないのだから、半額以下という料金の店に顧客が移って行くのは当たり前すぎる話だ。
そのような新興業者の違法ビジネスに警察の手が入らないのは、インドネシアでベキン(beking)と呼ばれるバックアップ者がいるからで、bekingというのはもちろん英語のbackingに由来する言葉である。違法ソフトを使う新興業者たちは一店当たり毎月25万から50万ルピアをそのベキンに納めており、警察の手入れを受けないためのお守りを手に入れている。


「不確定性社会」(2009年5月1日)
2008年9月6日付けコンパス紙への投書"Biaya Tambahan Titipan Kilat"から
拝啓、編集部殿。2008年7月16日と24日、わたしと母は別々にボゴールのティキから西パプアのソロンに宛てて荷物を発送しました。運送料はキロ当たり8万ルピアでしたが、その後で料金がどんどん高くなっていったのです。後になって発送人負担費用として12万ルピアが追加され、7月26日にはキロ当たり単価8万ルピアが8万5千ルピアに引き上げられました。わたしと母が荷物を発送したときの受付係員はスリ・ワヒユニとティルタ・ラハユです。このように料金をもてあそばれたことで、わたしと母はとても不快を感じ、また損をさせられた気分になりました。わたしの知っているかぎり、ソロンからボゴールへの運送料はキロ当たり3万9千ルピアであり、発送人負担の別料金などというものはありません。ボゴールのティキを利用しようと考えている消費者は、かれらの罠にはまらないよう警戒してください。[ ボゴール在住、レッノ・ウタリ ]


「検定機関はまだまだ少ない」(2009年5月5日)
製品クオリティから組織マネージメントに至るまで国内の検定機関はまだまだ数が不足しており、将来性の高いビジネス分野になっている。国家規格庁(Badan Standardisasi Nasional)の機構外機関である国家資格認定委員会(Komite Akreditasi Nasional)が管掌している検定分野は9つある。国家規格庁はラボのような検定実施施設を用意する任務を持っているが、国家資格認定委員会はその名の通り検定機関にオーソライズを与えて資格認定を行なう。委員会が管掌している分野の中では、製品検定と品質マネージメントシステム検定の需要が大きいために需給のアンバランスがたいへん顕著になっており、この分野での検定機関増加が望まれている。国家規格庁資格認定局長は、同庁の監督下にある検定機関は分野ごとに次のようになっている、と説明した。
品質システム検定  20機関
環境マネージメントシステム検定  7機関
HACCPシステム検定  6機関
食料安全マネージメントシステム検定  1機関
エコラベル検定  1機関
製品検定  22機関
人事検定  7機関
オーガニック食料検定  4機関
製品検定22機関の多くは飲食品・家電品・建設・ゴムなどのセクターを対象にしており、70%は政府が運営している。またジャワ所在機関も70%を占めており、ジャワとジャワ島外の格差が大きく表れている。国家規格庁は製品検定機関の増加を呼びかけており、現在11件の資格認定申請を受けている。


「製造産業界で大幅な業績悪化」(2009年6月2日)
2009年第1四半期製造産業界は前年同期に比べて資金繰りが20〜25%悪化したため原材料補助材調達が大幅に減少し、その結果生産設備稼働に35〜40%の低下が起こった。中央統計庁によれば、原材料補助材支出は134.7億ドルで前年同期の233.3億ドルから42%低下している。資金繰り悪化は輸出需要の縮小と為替差損がもたらしたものだ。加えて国内市場も依然として輸入品が優勢であるため、国内販売も起死回生をもたらすにはほど遠い。第1四半期を通して国内製造産業に輸出不振がもたらした資金減は48.9億ドルと見込まれる。資金がなければ設備稼働は自動的に低下する。ソフィヤン・ワナンディ、アピンド会長はそう製造産業界の業績を解説した。
中央統計庁の発表によれば、2009年第1四半期非石油ガス産品輸出金額は25.7%減少した。その減少に最大の貢献をしたのが製造産業で、製造産業の低下は31.7%に上った。事業資金が大きく減少したセクターは四輪二輪自動車・家電・鉄鋼・プラスチック素材・有機化学素材・機械電気器具・繊維などだ。 「資金減少は資産低下を引き起こし、工場経営者は思い切った効率化を断行した。残業ゼロや生産縮小がそれだ。しかしアピンドは大量解雇を発生させないよう総力をあげて対応をはかっている。」アピンド会長はそう述べている。


「企業向け二輪車レンタルは今後伸びる」(2009年6月8日)
オートバイレンタル事業は高い将来性を持っている、と業界者のひとりが明らかにした。バリのような観光地では観光客に対するオートバイレンタルビジネスが盛んだが、ジャカルタでは四輪車レンタルほどオートバイレンタルは盛んでないように見える。だがその実態は需要の存在が適確に把握されていなかったために起こっていたことであるようだ。
オートバイレンタル会社PT Wahana Artha Motorental専務取締役によれば、企業は事業オペレーション用オートバイを購入するよりもレンタルするほうを望んでいるとのこと。購入するなら初期投資1千万ルピアでやっとオートバイ1台が手に入るが、レンタルすればその金額で20台が用意できる上、車両登録や車両税支払などといった追加手続と経費の発生がない。こうすれば会社の資金繰りを逼迫させることがなく、資金回転が楽になる。加えてレンタルの場合、車両メンテナンス・車両と運転者の保険・毎年の車両税支払やSTNK(自動車番号証明書)更新手続・減価償却などの出費や煩わしさから解放される。「レンタル車両に故障が発生すれば代車が用意されるので、会社のオペレーションが障害を受けることもない。当方はレンタル車両100台につき3台の代車を用意している。レンタル契約は1年から4年まであり、ひと月当たりのレンタル料金は1台50万ルピア程度だ。」専務取締役はそう宣伝している。


「投資調整庁広報」(2009年6月22日)
内国投資法投資会社および外国投資法投資会社の義務に関する公報

投資に関する2007年法令第25号の規定に従って内国投資法投資会社及び外国投資法投資会社がその義務を果たすにあたり、次のことを告知する。
1.プロジェクトがまだ建設段階にある会社または恒久事業許可段階に至っていない会社はLKPM1フォームを使って、恒久事業許可を得て商業生産活動段階に入っている会社はLKPM2フォームを使って、最新半期の投資活動報告書を早急に提出するように。
2.商業生産活動段階に入っているが恒久事業許可をまだ得ていない会社は投資調整庁に対して早急に恒久事業許可申請書を提出するように。
3.上記1項2項に記された義務を果たさない場合、事業活動および/あるいは投資恩典の認可取消を含む行政処罰を会社は蒙ることがある。
上述の投資活動報告書や恒久事業許可申請書は地方投資調整庁もしくは州投資機関を経由して、あるいは直接投資調整庁に提出することができる。
更なる情報が必要な場合の問合せ先は次の通り。
投資調整庁本部Bビル内投資実行統制担当デピュテイユニット
住所ジャカルタ、ガトッスブロト通り区画番号44、12190
電話(021)5202046、5225939、5225838、5275268
Eメール lkpm_admin@bkpm.go.id
または投資プロジェクト所在地の地方投資調整庁もしくは州投資機関

広範に周知されるよう、本広報を告知する。
2009年5月ジャカルタにて、
投資調整庁


「アクアが株式非公開化」(2009年7月6日)
ミネラル飲料水メーカーとしてインドネシアで草分けのアクアブランド製造会社PT Aqua Golden Mississippiが株式公開会社から非公開会社にステータス変更をする。アクア社は2009年6月4日にインドネシア証券取引所での株式取引停止を金融機関証券市場監督庁に申請し、6月5日にはインドネシア証券取引所がアクア社株式売買の停止を行なった。金融機関証券市場監督庁からの非公開企業へのステータス変更承認を待つ間、同社は公開株式の評価を行なう手配を進めている。
アクア社代表取締役によれば、同社は自己資金を十分に持っていることから公共証券市場での資金調達の必要性はそれほど高くなく、そのため同社のパブリック公開株式比率はわずか5.65パーセントでしかない。一方株式公開企業が義務付けられているさまざまな手続や管理業務の煩わしさを同社は以前から負担に感じており、2001年と2005年にも株式非公開化の提案を出したものの、株主からの強い反対で実現しなかった。現在同社株式の94.35パーセントはPT Tirta Investamaが保有している。インドネシア証券取引所での6月4日の同社株価は一株244,800ルピアという高いレベルにあり、そのため1ロット5百株を購入しようとすると1億2,240万ルピアの資金を用意しなければならない。
アクア株は公開ポーションがきわめて小さくまた会社の業績が優良であることから株式投資家はこの株を長期投資ポートフォリオとして扱っており、市場で売りに出される度合いがきわめて小さい。そんな事情もアクア株が高値を維持し続けている状況をサポートしている。証券業界者のひとりはアクアの株式非公開化について、「アクアは既に成熟した企業であるため大きな資金をパブリックから調達する必要性があまりない。また国内市場のトップメーカーであるため、業績はまだまだ伸びるだろう。非公開化方針は十分納得できるものだ。」と述べている。


「活発な外貨の流入」(2009年7月17日)
国内資本市場への外貨流入が活発化している。2008年10月のグローバル経済危機でピークを迎えた国内からの大量の外貨流出は2009年第2四半期に一転して大量の流入という流れに変わった。2009年第2四半期には中銀債に4.06億ドル、国債には7.48億ドルが投資されてそれぞれの外貨ポーションは20.3億ドルと85億ドルに膨れ上がり、またインドネシア株式市場でも15億ドルというネット買いに見舞われている。
第2四半期の流入外貨は31.8億ドルに達したものの国内需要は16.7億ドルしかなく、外貨の37%は株式市場に、21%は中銀債に、そして19%は国債に投資された。そんな状況であるため第2四半期の外為市場は従来の一日平均13.2億ドルという取引高が19.4億ドルにアップし、ルピアレートを押し上げる結果をもたらした。
これはポジティブなインドネシアの経済成長とリスク不安の低下が強い誘引力として作用しているためで、インド・中国のほかにも魅力的なマーケットが存在していることを示すものだ、と金融界関係者は述べている。


「5品目輸入規制方針は延長されない」(2009年7月22日)
2008年商業大臣規則第56号で定められた、履物・家電品・飲食品・玩具・繊維衣料品の5カテゴリー消費物品に対する輸入規制方針は当初の計画通り2010年12月31日で終了し、期限延長はなされない、と商業相が表明した。この輸入規制方針は、輸入者が商業省に登録をして定期的に輸入活動報告を提出すること、輸入通関は指定された5港で行うこと、船積地で物品検査を行い輸入通関時にそのサーベイヤレポートを提出することなどをプロセスの骨子にしている。船積前検査は衣料品に関して2009年1月から実施がはじまり、他の4カテゴリーは2009年2月から開始された。
この輸入規制方針は国内市場に流通している商品量の変化の背景を政府が把握するのにきわめて有効であり、またこの輸入プロセスを経ることで実際の輸入量が目に見えるものになってきた、と商業相は述べている。「輸入を禁止しようということでなく不法輸入品を減らすのがこの方針の狙いであり、消費者保護を含めて輸入管理の改善を行なうのが目的だ。この方針を開始した最初の月は輸入量が減少したが、翌月には復旧した。それでも前年同月比ではマイナスになっている。家電品業界者は国内需要が増加していると語っているが、不法輸入品の減少による国内生産品の需要増がその原因かもしれない。ともあれこの規制方針は輸入量の増減という面からのみ見るのでなく、対象5品目の国内生産者・小売業者のビジネスに対する影響という面にも注目しなければならない。不法輸入品との不健全な競争が低下することでビジネスに改善がもたらされるというポイントが重要だ。」
商業相はまた、5カテゴリーで輸入者登録を行なった輸入者は過去数年間の輸入活動が条件を満たしていれば優先輸入者資格を受けることができる、とも語っている。この資格を得れば種種の許認可プロセス日数が短縮されるといったメリットを享受できる。


「原産地証明書発行費用がアップする」(2009年7月30日)
これまで1千ルピアだったインドネシア輸出産品のための原産地証明書作成費用が2009年8月1日から一挙5千ルピアに跳ね上がる。この方針はインドネシア輸出品のための原産地証明書発行料金に関する2009年商業大臣規則第31/M-DAG/PER/7/2009号で定められたもので、この大臣規則はインドネシア輸出品原産地証明書フォーム発行課金に関する協同組合商業大臣決定書第155/KPT/IV/80号を改定するもの。
商業相はこの方針について、原産地証明書発行がすべて地方自治体業務に移管されたためにその作成費用の統一をはかって定めた、と説明している。輸出事業者連盟事務局長はそれについて、原産地証明書作成費用一件5千ルピアは輸出者の経費に大きい負担をもたらすものではない、と政府方針を支持する発言を行なった。金額に関することよりも、中央政府の責任である原産地証明書発行が地方自治体に委託されたことの持つ中央と地方の報告と監督の更に綿密な連携という意味合いの重要性を意識しなければならない。「中央政府は全国各地に原産地証明書発行機関指定を行なってその発行業務に関する責任と権限を委託した。地方自治体の業務になったから商業省はそこから意識を抜いてよいというものではない。発行機関は商業省への報告をおろそかにしてはならず、商業省は原産地証明書発行が自己の責任下にあるという意識で地方の原産地証明書発行機関に対する監督を行わなければならない。地方自治体への原産地証明書発行委託はその効率と効果を考えればきわめて必然的であると言える。われわれは中央政府の認知しない原産地証明書が発行されることをもっとも心配している。」輸出事業者連盟事務局長はそのようにコメントしている。


「45メートル電気を引くのに1千万ルピア」(2009年8月3日)
2008年12月23日付けコンパス紙への投書"Biaya Tiang dan Jaringan PLN"から
拝啓、編集部殿。3ヶ月ほど前わたしは財団法人事務所として木造簡易家屋をタングラン県チクパのドゥク村に建設し、あらたに電気を引くためチクパのボジョンにあるPLN事務所へ申請に出向きました。PLN窓口職員は、1,300VA以下の新規電力引き込みは部品の関係でできない、と言いました。R−1区分の2,200VAの新規電力引き込みの費用は66万ルピアに保証金222,200ルピアを加えた882,200ルピアとなり、そのほかに354,500ルピアを電気設備工事安全国家コミティ(コンスイル)に支払わなければならず、それはPLNの収入ではない、とのことでした。ともあれ、2,200VAの新規電力引き込みにかかる費用は1,236,700ルピアだということがはっきりしましたので、わたしはそれらの条件をすべて了承して2,200VAの新規電力引き込み申請を行いました。現場はいちばん近い電柱から45メートルほど離れた道路沿いです。その数日後、現場に近い場所に電柱が3本運ばれてきました。ところがその二日後家屋建築作業者が「送り先間違いだったということでその電柱は3本ともまた運び去られた。」とわたしに知らせてきました。
その後、PLN下請け業者だというひとがきて、電柱1本と架線接続サービスを6〜7百万ルピアで請け負うとオファーしてきました。その話に乗れば総費用は1千万ルピア近くになり、PLNが得る収入のほとんど10倍になるではありませんか。現場近くに電気がまったく通っていないわけでもないというのに、金を出さなければ電気は来ないのです。PLNは国の資産を使ってアングラビジネスを行い国と国民に損害を与えている、という兆しをそこに見ることができます。もう三ヶ月たちましたが電力引き込み工事はいまだに始まりません。[ タングラン在住、サフリ・サイッ]
2009年1月13日付けコンパス紙に掲載されたコンスイルからの回答
拝啓、編集部殿。サフリ・サイッさんの2008年12月23日付けコンパス紙に掲載された投書について次の通りお知らせします。コンスイルの電気設備検査費用は1,800VAが8万5千ルピア、2,200VAは9万5千ルピアで、それぞれPPN10%が加算されます。その費用はマンディリ・ブコピン・BRIの各銀行での振込み、あるいはコンスイル事務所のリセプションで領収書をもらって支払うことができます。それ以上の金額を徴収された電力利用者は最寄のコンスイルに問い合わせください。
ガンビル地区コンスイル事務所は Jl.Tanah Tinggi Timur 10A, Harapan Mulya. Kemayoran, Jakarta Pusat電話番号4252773、クラマッジャティ地区は Jl. Inpres 3, Kramat Jati, Jakarta Timur電話番号70335498、クバヨラン地区は Jl. Pertanian III No.53, Lebak Bulus, Jakarta Selatan 電話番号7693454、タングラン地区は Jl. Perdata III Blok B6 No.5 Kompleks Kehakiman, Kota Tangerang 電話番号5516499です。以上、当方よりお知らせします。[ 首都タングラン地区コンスイル実務庁長官 ]


「北ブカシ県が分離」(2009年8月3日)
ブカシ県がふたつの行政区に分割される。ブカシ県議会が2009年7月15日にその議題を総会にかけて可決したことから、近い将来ブカシ県と北ブカシ県ならびにブカシ市がジャカルタの東郊を取り巻くことになる。ブカシ副県令はこの分割について、住民へのより緻密な行政サービスを実施して住民福祉の向上を目指すのが目的である、と述べている。
ブカシ県は13年前にブカシ市を分離させた実績を持ち、現在はブカシ県(Kabupaten)が23郡(Kecamatan)、ブカシ市(Kota)は12郡で構成されている。新たに発足する北ブカシ県は現ブカシ県に所属する23郡のうち13郡を従えて分離し、現ブカシ県は県南部10郡を擁することになる。ブカシ県に残る郡は、Cikarang Pusat, Cikaran Selatan, Setu, Serangbaru, Cibarusah, Bojongmangu, Kedungwaringinなど、北ブカシ県に属す郡はCibitung, Tambun, Babelan, Tarumajaya, Tambelang, Sukatani, Muaragembongなどとなる。北ブカシ県庁はタンブランあるいはスカタニに置かれることが予定されている。


「政府が輸入監視を強化」(2009年8月4日)
プアサとルバランの時期をひかえて政府は輸入抑制対象5アイテムの輸入と国内流通に目を光らせる構え。消費アイテム特定5品目というのは、特定製品輸入規定に関する2008年商業大臣規則第56/M-DAG/PER/12/2008号で定められた飲食品・衣料品・履物・玩具・家電品で、それらのカテゴリーに該当する物品を輸入する場合は輸入者登録・輸入港指定・船積前検査などいくつかの特別な輸入手続が義務付けられている。
それら5品目は国内産業が十分な規模に成育しているにもかかわらず国内市場が絶えざる不法輸入品の侵略にさらされてきたために業績が本来あるべき姿を示していないというフラストレーションの中にあった。上の商業大臣規則は少しでもその是正を図ろうとして定められたもので、2009年1〜2月からその実施が始められている。今年それら産業界の国内出荷実績が向上しているとの感触が得られていることから、この方針は成果があがっていると見られている。
例年プアサとルバランの時期にはそれら5品目のうち特に飲食品・衣料品・履物の需要が20%増となるため、その膨張した市場を狙って悪徳流通業者があの手この手を使って関税や諸税を納めない不法輸入を行い、市場で国産品よりはるかに安く販売されて国産品を圧倒するという現象が繰り返されてきた。国が定めている流通商品の品質監督システムにのらないそれら不法輸入品がはびこるのは、消費者が品質やナショナリズムやその他さまざまな要素をほとんど考慮することなく価格をもっぱらの基準としてショッピング行為を行なっているからであり、消費者のショッピング性向が変化しないかぎり行政による強力な市場統制は自由市場という言葉とは裏腹にいつまでも継続する可能性が高い。


「木材リーガル認証システム変更」(2009年8月13日)
2009年9月1日から木材のリーガル認証システムが変わる。その変更を定めたのは木材リーガル保証システムに関する森林大臣規則第P-38/2009号で、そこでは木材認証機関として木材検証評価機関が指定されることになっており、現行の木材産業再生庁による検証を定めた商業大臣決定書第405/M-DAG/Kep/7/2008号は失効する。しかし9月1日から現場で新システムがまだ開始できない場合は木材産業再生庁が従来の業務を継続して検証プロセスに穴があかないようにすることになっている。この変更はビジネスに確定をもたらすべくなされるものだ、と森林省森林生産育成総局長が説明した。
木材産業再生庁に加えて森林経営ユニットの業績評価を行なってきた独立評価機関も木材リーガル保証システムのアクセッサーになることができる。ただしそれは国家認定委員会に認定されていることが条件だ。このシステムによって、自社製品の検証を自らおこなって木材リーガル認証プロセスをスピードアップしたい生産者はISO17020をクリヤーして国家認定委員会からの認定を申請することができる。
森林省と国家認定委員会ならびに関連業界団体は認定を得た評価機関を国内外にプロモートする計画であり、木製品のリーガル認証を義務付けている国にインドネシアのシステムの信頼性を認識させることが最大の目的になっている。アメリカはこの新方針を了承しており、近々アメリカで開催予定の森林産品合法性に関する討論会に政府は代表者を送ることにしている。


「製造産業界の業績回復」2009年8月24日)
グローバル経済危機の影響で多数製造セクターの生産指標は依然マイナスになっているが、2009年第2四半期の業績は第1四半期よりも回復傾向を示している。2009年第2四半期大中規模加工セクターの生産指標は0.38%の成長を示して2.11%となった。第1四半期の成長は0.19%しかない。中央統計庁はこの変化に関して、タバコ製造セクター28%、飲食品18%、化薬品4%、ゴム・プラスチック製品1%といった好調セクターに押されて第2四半期の伸びが改善されている、と説明している。工業省R&D庁長官によれば、経済クライシスの影響で食品・ビニール袋・防腐剤・タバコなど基本的なアイテムに支出が向けられているとその状況を分析した。
第2四半期製造産業の生産指標は第1四半期より向上しているのはそのような背景によるもので、第2四半期セクター別YOY指標は次のようになっている。
飲食品 16.8%
タバコ加工 28.0%
繊維 マイナス6.5%
衣料品 マイナス11.7%
皮革・革製品・履物 マイナス4.3%
木材・非家具木製品 マイナス6.0%
紙・紙製品 0.4%
化学薬品とその製品 3.8%
ゴム・ゴム製品・プラスチック製品 1.3%
非金属採掘品 マイナス4.4%
ベースメタル マイナス8.6%
非機械器具金属製品 マイナス12.5%
機械器具 マイナス5.2%
その他電気機械と器具 マイナス2.0%
自動車 マイナス10.7%
四輪以上自動車を除く輸送機器 マイナス2.1%
家具その他加工 マイナス6.7%
ソフィヤン・ワナンディ、アピンド会長は中央統計庁のそのデータに関して、多くの製造セクターの生産指標に対する悲観的な見方は製造産業界全体の業績回復を反映していない、と論評した。「しかしたとえ業績が向上したとしても、2009年いっぱい製造産業界全体の業績回復は顕著なものにならないだろう。今年年末時点での成長率が2008年を上回るものになるとは決して思えない。」アピンド会長はそうコメントしている。


「コンテナ3百本分の不法輸入衣料品」(2009年9月25日)
2009年7月中旬からの三週間で中国産繊維衣料品を満載した不法輸入コンテナ3百本以上が国内に入ってきており、政府が5品目に対する商業大臣規則第15/M-DAG/PER/2008号で輸入規制を開始してまだ半年ほどだというのに国内市場は早くも元の木阿弥になりつつある、とインドネシア繊維業協会副会長が発言した。不法輸入コンテナには布地と衣料品完成品が40〜50トン積まれていると想定されることから国内には既に中国産繊維衣料品が1.2〜1.5万トン金額換算で2,590万ドル相当入荷しており、それら不法輸入品は関税等輸入税や付加価値税あるいは所得税などから一切無縁であるため国内産品より低い市場価格で売られるのは確実であり、国内産業界のシェアが蝕まれるのは間違いない、と副会長は主張している。「中国産衣料品の攻勢に国内産業界はなすすべもない。中国産不法輸入品はもうタナアバン市場に出回っているとの報告が届いている。コンテナ3百本の不法輸入品というのはここ3年間で記録破りの規模だ。この時期でのこの大攻勢はインドネシアのルバラン需要を狙い撃ちしたものにちがいない。」
インドネシア繊維業協会データによれば、124万トン71.8億ドルという2008年国内繊維衣料品市場の中で不法輸入品は16%のシェアを占めた。ちなみに不法輸入品が国内市場を荒らしまわった2007年のデータと比較すると、次のようになる。
2007年 国内生産27万トン、合法輸入品8.8万トン、不法輸入品86.2万トン
2008年 国内生産87万トン、合法輸入品14.9万トン、不法輸入品19.8万トン
2009年の国内生産見込みは136万トンとなっているものの、不法輸入品の大量国内侵入で国内生産がどう変化するかは過去の実績が暗示していると言える。
グローバル不況によって中国の布地衣料品業界は2009年上半期に膨大な過剰在庫を抱える破目に陥り、情報ではアセアン諸国に2割引で在庫処分のオファーをかけているとのこと。そんな中国側の押しとインドネシア側闇商人の引きがぴったり合致したのか、巨大なインドネシアの衣料品市場で需要の最盛期となるルバランシーズンを前にこの狙い撃ちが起こったと考えるのが順当な見方だろう。
繊維業協会副会長は現状の中国産衣料品大攻勢が年内いっぱい継続する可能性はきわめて高いと見ており、もしそうなれば東南アジア最大の衣料品市場であるタナアバンの80%が中国産不法輸入品で占められ、国内製造業界は生産量大幅減のため人員整理は避けられない、と述べている。「2009年上半期の従業員解雇は5万人を超えなかった。繊維衣料品業界にとってこの雇用状況は近年稀な喜ばしいものだ。布地製造業界は50万人、衣料品製造業界は70万人を雇用しているが、不法輸入品をこのまま野放しにするなら国内製造業界では20%の人員削減が発生するだろう。つまり24万人が解雇されるということだ。政府は不法輸入がこれ以上継続しないよう、早急に阻止してほしい。」
せっかくの輸入規制方針で活況を取り戻しつつあった繊維衣料品業界の前に立ちふさがる不法輸入品の復活を阻止する最前線にいるのは税関だが、昔から様々に解明されている不法輸入ルートの実態は世間に周知のものであるにもかかわらず、そのどれひとつとして完璧にドアが閉ざされたことはまだ一度もない。


「不法コピー光学ディスクが激増中」(2009年9月26日)
アメリカ政府の知的財産権保護要求に対処して政府は光学ディスク産業に対する監督を厳しくし、事業者登録をさせて特別のライセンスを与え、事業内容の監視を励行してきた。その政策の中には特定輸入者でなければ、CD/VCD/DVDなど記録済みディスクにせよブランクディスクにせよ、ほとんど輸入できないような規定まで作られた。
全国には32の公式登録企業があるものの、そのうちの22社が海賊版ディスクを製作している疑いが濃厚だ、と工業省農業化学産業総局長が表明した。「光学ディスク登録会社の7割が海賊版を作っている。当方が行なっているルーチン夜間検査で海賊版を作っているのが明らかだと見られる会社がタングランで摘発された。コンピュータソフト・映画・音楽などの記録された光学ディスクの国内生産能力は年間4億5,720万枚あり、海賊版を作っていると見られる22社はそのうちの80%を占めている。バーニング技術を用いた機器のおかげでコピー作成は実に容易に行なえる。」
工業省農業化学産業総局が光学ディスクを管掌しているのは、それがポリカーボネートを原料に使用している下流化学産業製品のひとつだからだ。ポリカーボネートはPVCパイプなどにも使われており、国内での需要は大きい。しかし光学用グレードのポリカーボネートはまだ100パーセント輸入に頼っている。
工業省データでは、公式登録されている32社の総生産能力は年間6億384万枚であるものの2008年の総生産数は3億3,815万枚で、わずか56%の能力稼働率になっている。その国内生産の低さは輸入の多さと相関関係にあり、ブランクディスクから記録済みディスクまで輸入量の伸びは著しい。ディスク全体の2009年上半期の輸入量は1,572万枚で前年同期実績50万9千枚の30倍増という大きい伸びだ。その中で記録済みディスクは2008年の7,423枚から今年上半期は10,435枚に増加しただけであり、また原料のオプティカルグレードポリカーボネートも2,708トンが3,388トンに増加しただけだから、輸入ブランクディスクの異常な増加は何事かを物語っているようだ。ブランクディスクはマレーシアからバタムに送られており、その流れは当面衰える気配がない。
インドネシア政府は知的財産権保護に積極的でないとして米国通商代表部がプライオリティウオッチリストに長年インドネシアを置いてきたが、法整備や不法コピー摘発活動の活発化に伴って2008年に1ランク下のウオッチリストに移された。しかし現状を見るにつけ、プライオリティウオッチリストに復活するのは時間の問題であり、それは今年にも起こるのではないか、と人権法務省知的財産権総局長は述べている。


「不法ハンドキャリーはこうする」(2009年10月1・2・3日)
バタム島は昔から不法輸入の大手門だったそうだ。シンガポールのひさしに位置するバタム島を自由貿易港にして工業センターを設けるというオルバ政権の工業化構想は大筋で実現したものの、全島を保税地区にせよと要求する声と島内の一部特定地区だけを保税地区にするという政府側の声が混じりあって、法規に外れた行政対応が現地で取られたことも少なくない。
それはともあれ、バタムには新品や中古品から廃棄物と化したものに至るまでシンガポールから大量の消費物資が流れ込んできた。シンガポールで廃車になった乗用車がそのナンバープレートを付けたままバタムの大通りを走る姿も見られたし、輸入通関を経ないで島内の販売ブースに並べられている携帯電話や家電品も数知れない。政府はバタム〜ビンタン〜カリムン島をフリートレードゾーン(FTZ)と類似のコンセプトを持つ特別経済区に指定して従来現地で起こっていたさまざまな不整合を整理しようとしており、税制上での混乱は収束しつつあるようだ。 FTZに入った外国からの物品はまだ課税されない。FTZから出て国内の一般地域に移される時点で課税が発生する。だからFTZを通して国内の消費地に外国から物品を輸入しても本来的に何ら経済的なメリットは発生しない。ところがジャカルタやメダンのような国内大手消費地で販売するためにシンガポールやマレーシアからバタムに商品を入れていささかクサイ手を弄すれば、それが一向に課税されないまま国内市場に流れ込んで行くということが昔から起こっていた。オルバ期には、バタムへ旅行して帰りにバタムで大型テレビを買い、それを手荷物としてジャカルタに持ち帰って再販すれば結構な小遣い稼ぎになる、という話は何度も聞かされている。税関がバタムの保税輸入品をジャカルタで捕捉して課税するようになったのはここ数年のことであり、それは本来バタムを持ち出されるときに行なわれていなければならないことなのだがバタム税関はその業務をまだ十分行なっていない。
バタム税関は決してその業務を無視しているわけでないのだが、本庁から遠く離れた精神棒注入チャンスの薄いところでは癒着が起こりやすく、法規の執行よりも円満な人間関係が優先される地元文化がそれを促していたと言えるだろう。バタムだけでなくリアウ州やスマトラ東岸地域の地方港には目と鼻の先の対岸、つまりマレーシアやシンガポールから小型木造船がたくさんインドネシア側にやってくる。そんな船はたいてい外国産の飲食品・衣料品・家電品・アルコール飲料・家庭用品などを積んでやってくるが、インドネシア税関に輸入申告をしようとの意志を持ってやってくる船はほとんどいない。運搬者はたいていブランクのマニフェスト・B/L・インボイス・パッキングリストを2セット携えてやってくる。そのフランク書類には正体のよくわからないシンガポールの会社名を記した社印がすでに捺されている。つまり輸入通関の必要があれば受取人はそのブランク書類に好きなように内容を記載して通関せよということなのである。そんな書類を真に受けて税関が貨物を輸入者が申告するままに通しているということはありえず、『蛇の道はへび』の常道がここにも鎌首をもたげてくる。これは税関現場で発生する稼ぎのチャンスなのであり、悪徳輸入者が将来得るであろう闇利益の分け前を悪徳税関吏がそこで先取りしているのだ。さて、バタムに話を戻そう。
正規の輸入手続でバタムに保税輸入された品物にせよ虚偽申告で入った禁制品にせよ、それを売り捌くために大消費地にその貨物を送らなければならないのだ。正規の申告手続を行なえば保税貨物から一般国内貨物にステータス変更されるのに伴って輸入税を納めなければならず、これではわざわざバタムに入れた意味がなくなるのである。だから税関の目をかいくぐって保税貨物を国内市場に送り出すのにどうするか?人間の悪知恵には果てしがないようだ。実に卓抜した方法を考え出した者がいるのである。
国内客船会社Pelniの船が寄港するバタム島スクパン港では、乗船口に向かう構内の一角に20ftコンテナ一本分の荷物が大きい袋や行李に入れられて山積みされている。乗船許可が出されると、規定に応じただけの荷物を手にした一般乗船客と規定量をはるかにオーバーする巨大な袋や行李を抱えた港の荷担ぎ人足たちが先を争って船内になだれこむ。なんと荷担ぎ人足たちはジャカルタやメダンなど船の目的地までの切符を持っているのだ。コンテナ一本分の貨物を数十人の人足たちがハンドキャリーするのである。おかげで船内のエコノミー乗客スペースが手狭になってしまい、乗客から苦情を聞かされる破目におちいるのだが、ペルニ側に港内荷担ぎ人足つまりポーターたちを船内から締め出す力はない。
税関にしても、自分がハンドキャリーしている荷物が保税品なのか既に課税されたものなのかを荷担ぎ人足が知っているはずもないし、そもそも輸入手続などまったく無縁のひとびとだからかれらに通関申告させること自体、相当な困難を覚悟しなければならない。一般市民に対しては「納税証憑が提示できないならその品物はまだ保税品であるので、今すぐに納税せよ」という常套手法が使えるのだが、貧しい荷担ぎ人足にその手法は効果を持たないとだれしもが思う。一方人足の方は「目的港に着いたらだれそれに渡せ」という依頼者の指示を後生大事に守り、自分が担いでいる荷物を必至で守ろうとするので、税関が荷物を差し押さえする姿勢を示すなら強い抵抗に会うのは確実だろう。もしこの状況に対して法規の確立を行おうとすれば、税関とペルニそして多数の警官隊を動員しての大作戦を実施する必要があるのだろうが、スクパン港にいる貧しくて気性の荒い4百人の荷担ぎ人足を敵に回してそのような大作戦の音頭をだれが取るのかということになると、関連する行政機構上層部の闘争心もきっと萎えてしまうにちがいない。そのためスクパン港税関は乗船者が申告する荷物だけに対して通関手続きを行い、あとは目も耳も閉じているのが実態だ。
税関総局本庁は既にジャカルタ側でバタムなど国内諸港から送られてくるコンテナ貨物に対する検査を実施しており、不審な貨物は国内貨物といえども差し押さえるという対応を取っている。しかし知恵者の考案した客船を使って荷担ぎ人足にハンドキャリーさせるというアイデアにはなす術がないようだ。


「国内に6ヶ所以上のサービスセンター設置が義務付けられる」(2009年10月13日)
国内で販売されるテレマティクス製品と家電品は国産品と輸入品とを問わずサービスセンターを6ヶ所以上持たなければならなくなった。このサービスセンター設置はメーカーあるいは輸入者と国内流通代理店の間の契約にもとづくものでなければならず、設置場所は大都市あるいは販売権を得たエリアとされている。それとは別に、これまで地元行政府が監督していたインドネシア語版取説と保証書は商業省国内通商総局にその写しを提出すればよかったのだが、今後は国内通商総局事業育成企業登録局が監督するように変更された。地方自治の時代が来て中央集権から地方分散へと行政スタイルが変わりたくさんの監督業務が地方自治体に移管されたものの、支離滅裂な監督と本庁への報告の断絶からかえって暗黒時代が到来したため、ふたたび本庁に戻されている業務は少なくない。
この新規定は2002年商工大臣決定書第547/MPPP/Kep/7/2002号を改定する2009年5月26日付けの『インドネシア語取扱説明書と保証書に関する』商業大臣規則第19/M-DAG/PER/5/2009号で新たに定められたもので、施行は3ヵ月後の2009年8月26日から開始されている。
テレマティクス製品とは電気通信用ハードウエアとその補助機器、放送用ハードウエアとその補助機器、コンピュータと補助機器、ソフトウエアとマルチメディアコンテンツ、ITクリエーティブ産業、通信機器などであり、家電品とは家庭生活で使用される消費向け電気製品で、いまは45の製品セクターが登録されている。
取扱説明書には製造者の名前と住所あるいは輸入者の名前と住所以外にブランド・カテゴリー・機種・型番・仕様・使い方・メンテナンス方法が記載されていること、保証書には保証期間・期間内の無料修理・アフターサービスセンターの名前と住所・製造者あるいは輸入者の名前と住所が記載されていること、と規定は定めている。
テレマティクス製品と家電品のアフターサービスのために生産者あるいは輸入者はサービスセンターを国内に6ヶ所以上持たなければならず、それを行なわない場合は第三者との間に委託契約を結んでアフターサービス実施を依頼しなければならない。


「盲人特殊部隊」(2009年10月21日)
盲人は勘の働きが目明きをしのぐという公理は、座頭市を知っているひとはみんな知っている。そんな盲人の特技を水道会社が活用している。
インドネシアの上水道事業はすべて公営で、地元自治体の設けた地方水道会社が地元民に上水供給サービスを行なっているわけだが、お上と下々という感覚が以前強い文化だから公共サービスは概してあまりよくない。それは置いておくとして、中部ジャワ州クドゥスにトリヨノ(45歳)という盲人が住んでいた。
盲人の常で、かれは按摩稼ぎをしている。あるときトリヨノの自宅の水道料金がはねあがった。ふだん3万ルピア程度で済んでいるものが突然20万ルピアも請求されたのだから、おどろかないはずがない。請求金額は支払ったものの、どうにも腑に落ちないそのできごとがトリヨノの脳裏を埋めた。いろいろ話を聞いてから、かれはひとつの大きな可能性に思い至ったのである。どこかで水漏れが起こっているにちがいない。
その日の夜から、家人隣人が寝静まった深夜にトリヨノは自宅内をあちこち調べてまわった。精神を集中し、耳をすませるのである。そして何回目かの夜、かれはついに水漏れ個所を発見した。家の表庭の下を走っている幹線パイプで水漏れが起こっている。かれはそれを家人に告げ、家人は水道会社に修理依頼を出した。
水道会社職員が実地検分に来ておどろいた。地上で水漏れの徴候は皆無だというのに、本当に水漏れがしている。そしてそれを発見したのがトリヨノであることを知ってもっとおどろいた。そのときトリヨノが「めくら、めくら、とバカにしないでおくんなさい。」と言ったかどうかはわからない。
その驚異の話がめぐりめぐって水道会社上層部に達し、マネージメントは一大決断をくだした。水漏れ個所発見にかれら盲人の力を借りるのだ。こうしてトリヨノとかれの按摩仲間たちが水道会社の水漏れ発見特殊部隊を編成することになったのである。時おり水道会社から出動要請が来ると、11人の特殊部隊は調査地区に出向いて精神を集中させ、耳をすませる。行く先は大通りから住宅地区までさまざまだ。この特殊部隊の勤務時間は21時半から1時半までという交通量の少なく、そして人間の生活音のほとんど途絶えた深夜。かれらは期待に応えて、これまで14ヶ所の水漏れを発見している。


「不法輸入品天国」(2009年10月22・23日)
バタム島内ではありとあらゆる不法輸入品が店頭に並んでいる。商業省は国内市場から不法輸入品を排除して消費者を保護するために、国内市場に流通する工業製品には国内製造であれ輸入品であれ、インドネシア語の保証書と取扱説明書を添付するよう義務付けたし、SNI(インドネシア製品規格)制度を設けて規格の遵守を生産者・輸入者に義務付け、規格合格商品にはSNIマークを表記させるといった対策を講じている。つまりそれらの規定に従っていない商品はイリーガルであるということだ。
そのような規定が遵守されるよう、商業省は全国で商店を回って規定に違反する商品を摘発する業務を行なっており、不法輸入品のメッカであるバタム島は特にエネルギーを集中させて手入れを行なうべきマーケットとしてマークされている。そこで実施された不法輸入品市場手入れで調査官は数百点にのぼる違反容疑品を押収した。ラッキープラザでは携帯電話販売フロアーがターゲットにされ、ランダムに調査官が取調べを行なった販売カウンター2ヶ所で多数の携帯電話器が押収された。そこではノキアE63、E71、E75、N97、2630,6300、7220、3110、5610、3500、2608、ブラックベリー、並びに中国製携帯電話器8モデルが不法輸入品の容疑を受けている。他にもナゴヤ地区の電気店でSNI義務付けアイテムなのにSNI表示がないもの、ラデンパタ地区の自動車タイヤ卸商はTDP(企業登録証)未取得のためヨコハマブランド自動車タイヤ多数などが不法輸入品の容疑で押収された。
押収された物品については、証拠品保全証明書と証拠品預り証を調査官が店側に渡し、物品のラボ検査を行なって検査結果を店に通知するという手順が踏まれる。それらの関連情報がすべてそろったところで商業省は判定をくだし、単なる行政指導で済むケースと法的措置が取られるケースに分かれることになる。
ところでラッキープラザの携帯電話フロアーで調査官の取調べがはじまると、取調べの行なわれたカウンターを残してほかのカウンターはバタバタと店じまいをはじめた。客と商談中だったカウンターでさえ、急用ができたというような理由で店側が商談を打ち切り、店じまいを進めるありさまだ。中には店を閉めないまでも、ショーケース内の携帯電話器をすべて引き上げてしまい、売り物は突然アクセサリーやカード類だけに一変してしまったカウンターもある。手入れを受けたカウンターの店主は一様に、合法輸入された商品を公認ディストリビュータから仕入れたと主張しているがディストリビュータの名前や住所を明らかにせず、「仕入れは従業員が行なっていて自分は知らない。」「従業員はいま外に出ている。」などと語ってその場を切り抜けるのに汲々としていた。
商業省はこのような手入れを励行して市場にあるイリーガル輸入商品の摘発に努めているものの商業省自身は不法輸入商品販売者に対する法的処罰権限を持っておらず、摘発した違反者の報告を税関に提出してフォローを委ねるのが通常のプロセスになっている。イリーガル輸入品が陸揚げの際に完璧に阻止されず、いまだ収賄とお目こぼしを日常茶飯事にしている税関検査官が全国各地の港に散らばっているため、市場まで流れてきた不法輸入品をどれだけ取り締まっても根絶は不可能に近い。市場でのイリーガル輸入品手入れに関して商店主の中には、「押収したけりゃどうぞ。でも明日また同じ品物が店に並ぶのだから。」とうそぶく者があった。


「来年は電力料金が2割増」(2009年11月12日)
国有電力会社PLNが2010年に産業向け電力基本料金20%値上げを計画しているのに関連して、PLNは繊維衣料品産業界を生殺しにしようとしている、とインドネシア繊維業協会副会長が発言した。
「アセアン=中国FTA開始の初年度にそのようなことが行なわれたら、今でさえ中国産品に対する競争力に難渋している状況だというのに、FTA開始で中国産品に対する関税障壁が取り払われて困難に直面するのがわかりきっている上に、更に電力料金アップによる国産品生産コストアップのダブルパンチを受けて、業界はにっちもさっちも行かなくなる。これで業界は半減してしまうだろう。電力基本料金が20%上がれば業界のエネルギーコストは今の30%が36%になる。大半の工場ではkWh当たり700ルピアが840ルピアにアップする。それはアセアンで一番高いレベルだ。合成繊維・製糸・紡織などの産業は競争力を失って壊滅し、国内市場は輸入関税のかからなくなった中国産品で埋め尽くされるだろう。繊維衣料品製造業界が半減すれば今の1千5百社は7百社になり、雇用131万人も70万を切ることになる。PLNはいったいだれのために事業を行っているのか?国内産業のためにか、それとも自社の業績のためなのか?国有事業体という立場にありながら自国民のエネルギー需要を歪めるようなことをするのは1945年憲法第33条に反するものだ。」副会長はそう語ってPLNに批判を向けている。


「今年は日本向けウナギ輸出が好調」(2009年11月13日)
養殖ウナギの日本向け2009年輸出は7月までで2,920トンにのぼっており、対前年同期比で20%増しの好調だ、と漁業海洋省海外マーケティング局長が報告した。全世界のウナギ貿易量は年間23万トンで、日本市場はその内の12万トンを吸収している。インドネシアから日本へのウナギ輸出は2007年が2,100トン、2008年は2,310トンで、今年は3千トンを超えるのが確実視されている。
世界市場への供給国の最大手は中国で70%を供給しており、他にはインドネシア、ベトナム、バングラデシュなどが輸出国に入っている。インドネシアがはじめてウナギを輸出したのは2007年で、300キロを台湾向けに船積した。今では日本と台湾以外にインドネシアから香港・シンガポール・ドイツ・イタリー・オランダ・アメリカ向けなどに輸出先が拡大している。


「ビジネス便宜レベルが向上」(2009年11月16日)
各国政府がどれほど国民のビジネス活動に便宜をはかっているかというランキング付けを毎年行なっている世銀下部機関インターナショナルファイナンスコーポレーション(IFC)の2009年版Doing Businessで、インドネシアは昨年の129位から122位に上昇した。世界183ヶ国(あるいは地域)の中で最も評価の高いのはシンガポールで、過去4年間連続で首位の座を占めている。インドネシアの122位はフィリピンの144位よりましだとはいえ、他の東南アジアに比べてお粗末な結果であると言える。ちなみにベトナムは93位、マレーシア23位、タイ12位でインドネシアとはかなりの差がついており、中国の83位、台湾46位、香港3位などインドネシアがお手本にしている諸国とも大差がついている。
インドネシアの今年の評価では、項目ごとに次のようなランキングがつけられた。
会社設立許可 161位
建物建築許可 62位
労働法規 149位
不動産登記 95位
ローン取得の容易さ 113位
投資者への保護 41位
納税 126位
輸出入手続 45位
ビジネス係争調停 146位
倒産法規 142位
治安、マクロ経済安定、労働者の技能レベル、金融システムの強さなどは評価対象から除外された。今年のランキングアップは会社設立所要日数が16日短縮され、不動産名義変更手続日数が17日に縮まったことが評価されたためだが、ローカルレベルの中規模企業の事務業務負担を軽減させることがインドネシアにとっての今後の課題だとIFCは提言している。これは行政の事業監督とそれに関連する諸支払手続が多岐に及んでいるからで、会社設立の際に発生する支払は51件にも及び、毎月の納税事務でさえかなりの手間暇を要するものであるのがその一例だ。世銀理事は今年のDoing Businessレポートにおけるインドネシアの評価について、インドネシアはマクロ経済の成長維持に成功している国の一つであり、政治と経済の安定が投資環境のスピーディな回復を支えているとコメントしている。
世銀/IFCのそのような評価に関してBKPM長官は、ランキングが上昇したということよりも行政と法の改革がどれだけの効用をもたらしているかということのほうが重要だ、と指摘する。「かつては会社設立に154日かかっていたものが76日まで短縮された。法人設立手続の簡素化と事業登記のスピードアップは新しい中流事業者層を生み出して雇用を拡大することになる。BKPMはいま、株式会社法に定められている最低資本金に関する規定の廃止提案を検討している。この規定が会社設立の更なる増加にブレーキをかけている。」長官はそう語って次の目標への取組み姿勢を示している。


「ガソリンスタンドのコンビニは外国投資法違反か?」(2009年12月23日)
プルタミナの独占事業だったガソリンスタンド事業が自由化されてはや4年。いまや無料のタイヤ空気入れや給水サービスが一般的になって全国的にサービスレベルの底上げがかなり進んでいるように思われる。中でもガソリンスタンド地所内に設けられたカフェテリアやコンビニは大いに繁盛しているように見える。ジャワ島地方部の街道に出ても飲食品や地元の土産物を販売する売店が設けられているガソリンスタンドが増えており、ガソリンスタンドでの物品小売事業は盛んだ。
国内に進出してきたガソリンスタンド事業を行っている外資系ブランドには次のようなものがあり、それぞれが独自にコンビニブランドを持っている。
シェル(オランダ) Select
トータル(フランス) Bonjour
ペトロナス(マレーシア) Suria
プルタミナでさえBrightという屋号のコンビニを持っている。
上の外資系ガソリンスタンドが自社系列のコンビニを直営していれば、外国投資を規制する投資ネガティブリストに違反することになる。というのは、売り場面積4百平米未満のモダン小売店は内資100パーセントが義務付けられているからだ。インドネシア小売事業者協会は外資系ガソリンスタンドに併設されている小売店舗の資本内容について調査を実施することにしている。


「インドネシア人はスタート時期だけ燃え上がる」(2009年12月29日)
グローバル経済危機下に政府が行った国内主要産業5品目の輸入規制は国内市場への不法輸入品流入阻止と合法輸入品を削減してそれら5品目の国内産業保護をはかろうとしたものだが、特定物品輸入規定に関する商業大臣規則第56/M-DAG/PER/12/2008号が効果を発揮したのは最初の6ヶ月間だけで、それを過ぎて監視がゆるむにつれて不法輸入の勢いが強まった、とソフィヤン・ワナンディ、アピンド会長が発言した。「その商業相規則で不法輸入はあらかた駆逐されると思っていたが、そう甘くはなかった。どうやらわれわれインドネシア人の精神は、立ち上がり時期にだけ燃え立つようだ。いま国内市場の30%は不法輸入品で占められている。」
特定物品輸入規定に関する商業大臣規則第56/M-DAG/PER/12/2008号は家電品・衣料品・飲食品・履物・玩具の5品目に対して積出港での船積前検査や輸入通関港の限定といった輸入手続上の規制を与える内容で、輸入通関はメダンのベラワン港、ジャカルタのタンジュンプリウッ港、スマランのタンジュンマス港、スラバヤのタンジュンぺラッ港、マカッサルのスカルノハッタ海港の5港で行わなければならず、飲食品に限ってはもう一ヶ所ドゥマイ港も認められている。
商業省R&D庁長官によれば、2009年1−6月の上記5港以外の港における制限対象5品目の輸入量は大幅な減少を示しており、不法輸入品の国内流入阻止効果はあがっている、とのこと。またその期間の制限対象5品目の総輸入金額も対前年同期比で6.1%減少しており、商業大臣規則は間違いなく効果を発揮していると長官は評価している。しかし7月8月の5品目輸入金額はそれぞれ5〜10%ほど上昇しており、6ヶ月を過ぎて輸入品が増加している事実は裏付けられている。「国内市場に不法輸入品があふれていると言うのは時期尚早だろう。外国製品が国内に増加したからといって、それが不法輸入品だと即断するのは無理だ。かつての不法輸入品がいまは合法的に指定5港を通って輸入されているかもしれないのだから。」長官はアピンド会長の説にそう反論している。
制限対象5品目の輸入品は中国製がメインを占めている。履物では中国からの輸入が53%、次いでシンガポール16%、香港とベトナム各9%。家電品は中国からが32%で香港から19%、シンガポールとインドが各16%。玩具にいたっては70%が中国からの輸入で占められている。


「APIの簡素化」(2010年1月9日)
インドネシアで継続的に輸入を行なう者(法人)は商業大臣に届け出て輸入活動の許可を受けなければならない。その許可証はAPI(輸入認識番号)と呼ばれ、商業大臣規則第31/M−DAG/PER/7/2007号にもとづいて次のようなAPIの交付が行なわれてきた。
API−U (API Umum) 商社一般向け
API−P (API Produsen) 製造会社向け
API−T (API Terbatas) 資本投資会社限定
API−K (API Khusus) 石油ガス鉱業事業契約専用
商業省は2009年9月、商業大臣規則第45/M-DAG/PER/9/2009号でその4種類を2種類に簡素化することを定めた。その2種類とはAPI−UとAPI−Pで、API−Uは輸入された物品が国内で売買されるものを対象にしており、API−Pは輸入者が生産活動のために自家消費するものを対称にしている。基本的にAPI−Pで輸入された物品が加工プロセスを経ないまま国内で売買されることは禁止されている。
APIはもともとAPI−UとAPI−Pの二本立てだったものが、その後の変遷の中で他の二種類が追加されてきたという歴史を持っており、今回の簡素化で最初の形に復した、と商業省国際通商総局長は述べている。


「オフィススペース需要が活発化」(2010年2月2日)
グローバル経済危機からの不動産業界の回復はまずオフィススペースセグメントからはじまるだろう、と不動産コンサルタントPTジョーンズラングラサールインドネシアが報告している。
アパートメント・コンドミニアムなど住居セグメントや小売スペースよりもオフィススペースのほうがひとあし早く状況がよくなるのは、外国系や多国籍企業の多くが2010年はじめから事業拡大を計画しているからだ。ここ数年間のオフィス需要は外国系・多国籍企業の投資と密接な関連を示しており、それらの投資額が増減するのに連れてオフィス需要も上下するという現象となってあらわれている。これまで現状維持あるいは縮小方針をとってきた大企業の多くが、経済回復に連れて事業拡張に転じるのは明らかで、実際に拡張態勢に入っている兆候が随所に見受けられる。そのとき最初に手が着けられるのが新規オフィスの手配であり、これからオフィススペース稼動率は急速に上昇するだろう、とジョーンズラングラサールは予測している。需要の上昇が稼働率に直結するのは供給量が妥当なレベルにあるからであり、小売スペースのように膨大な供給量が首都のあちらこちらで発生していれば実質需要は高まっても稼働率に低下が起こるかもしれない。
ちなみにジャカルタのオフィススペース稼動履歴は次のようになっている。
年 : 販売(万m2) / 稼働率(%)
2004 : 6.5 / 70
2005 : 12.5 / 80
2006 : 15.5 / 83
2007 : 12.5 / 82
2008 : 19.0 / 80
2009年はグローバル危機の影響によって第3四半期までの数値は7.5万平米稼働率79%というものだ。
一方ここ数年間過剰なサプライが続いてきた首都の小売スペースは、経済状況の回復にもかかわらず稼働率の上昇が顕著でない。モールやショッピングセンターの小売スペース供給は過去常に供給が需要を上回ってきたために現在のスペース稼動は75%まで下がっており、にもかかわらず2009年のスペース供給は30万平米で、2011年までだと74万平米が新たに供給される予定になっている。そのため稼働率は2010年で77%、2011年になってやっと80%台に戻るという予測になっている。モールやショッピングセンターにおける小売スペース平米当たり平均賃貸料金は2009年に7%低下した。2003年以来の賃貸料の変遷は次の通り。(年/ルピア)
2003/37万、 2004/38.5万、 2005/39万、 2006/40万、 2007/41.5万、 2008/42万、 2009/39万 モール・ショッピングセンター小売スペース利用者のナンバーワンシェアは衣料品店が占めている。しかし最近のモール・ショッピングセンター来店客が金を落とすのはフードコートや飲食店が圧倒的で、商品小売店舗は売上が落ちているのが実態だ。
アパートメント・コンドミニアムという住居セグメントも市況回復は今ひとつというところ。2009年第3四半期の賃貸購入ユニットが前年同期の4千5百件から2千件にドロップしたように、低調な状態はあまり変化しそうにない。これは2009年を通して低所得層向け買取積層住宅(ルスナミ)の供給が継続したことに関係しており、アパート・コンド向け投資家層の中で投資対象をルスナミに移した者がかなり出たこともアパート・コンド購入低下の一要因となっている。自己使用者のアパート・コンド購入は住宅取得ローン金利率が全銀行で一斉に10%を切らなければ経済状況が回復しても活発化は難しいだろうと見られている。


「バタムは外資に好評」(2010年2月11日)
バタムのコンペティターである他国のFTZに移った外資系企業はいまだひとつもない、とかつてのバタム開発庁だったバタムFTZ地区事業庁が表明した。これはバタムの優れたFTZシステムと外国系投資企業への優れたサービスのたまものであり、バタムに投資した外国企業は依然としてバタムを信頼しているのだ、と同庁広報局長は述べている。
2009年1〜8月にバタムに事業投資を行なった国はシンガポール・イギリス・オーストラリア・マレーシア・インド・ルクセンブルグ・台湾・日本・中国・オランダ・韓国・英領バージンアイランド・ケイマン諸島・オーストリア・アメリカ・ニュージーランドと実に多彩な顔ぶれだ。バタム開発庁は1971年以来バタム開発庁の取り扱った外資は累計で53億ドルに達し、企業数は1,105社にのぼる。また内資は3.17兆ルピア172社で、全体の雇用は297,548人となっている。


「企画書作成は上手だが、その遂行はお粗末」(2010年2月15日)
事業戦略の構築や戦略分析企画書の作成を優れた形で行なう力を身に着けているインドネシア企業は多いものの、実際にその戦略を遂行できているところはわずか10%程度しかない、とGMLパフォーマンスコンサルティングが明らかにした。「戦略計画策定は多大なデディケーションを費やすプロセスであるため、その実態はあまりにももったいないものだ。」とGMLパフォーマンスコンサルティングのアジア地区責任者がジャカルタで語っている。
この事実は机上作業と現場作業のそれぞれが別の次元のことがらに位置付けられ、その相互の本質を一元的に結びつけて計画されたものごとを現実の場に出現させるという習慣が確立されていないインドネシア文化を物語る例証のひとつだとわたしは考える。
そのためにバランススコアカードというものがある、とGMLパフォーマンスコンサルティングのアジア地区責任者は続ける。このカードは戦略実施の枠組み管理ツールのひとつであり、そのほかにも計画遂行管理者を養成してプロフェッショナル認定を与えるセミナープログラムも用意されている。戦略実施管理専門家認定プログラムでは、計画作成・計画運営・予算作成そして戦略遂行管理に使われるスペシフィックなツールなどあらゆる側面を包括的に教育するカリキュラムが組まれている。せっかく作られた戦略計画が不適切に実施されて中途半端に終わったり、あるいはまったく着手されなかったりするようなことでは、計画作成に費やされた多大なデディケーションをドブに捨てるようなものであり、その成果である企画書も社内で単に雰囲気を作り出すための飾りにしかならない。企業で戦略遂行の失敗が起こる原因の一つは、株主・中間管理職・一般社員などすべてのステークホルダーに十分なコミュニケーションを行なって戦略を理解させることができない上級経営者の能力不足にある、と上記アジア地区責任者は述べている。しかし結果を求めない社会という文化的要因へのアプローチもそこに付け加えられるべき重要なポイントであることを忘れてはならないだろう。


「統計データは山ほどあるが、正確なものはひとつもない」(2010年2月22日)
2009年5月20日付けコンパス紙への投書"Data Lembaga Negara Tidak Harmonis"から
拝啓、編集部殿。2009年4月末にわたしはバリのインドネシア銀行デンパサル支店が発行した地方経済概要書を入手しました。業務評価にその内容を使うことにしてあったのです。ところがその概要書に記されたデータを中央統計庁のものと比較したところ、大幅な違いが見つかりました。
バリの経済成長データからして大違いです。インドネシア銀行のデータによると、2008年第2四半期の州経済成長率は2.5パーセントですが、中央統計庁は5.08パーセントだと言っています。第3四半期成長率はインドネシア銀行が4.9パーセントなのに対して中央統計庁は8.32パーセント、第4四半期はインドネシア銀行データで9.9パーセントだが中央統計庁データだと10.28パーセントです。セクター別成長率を比べても内容は相当かけ離れています。わたしはどのデータを使ったらよいのか困惑して決めかねてしまいました。
インドネシア銀行のデータは中央統計庁のものよりだいぶ後になって出されたものであるため、中央統計庁のデータがインドネシア銀行のデータに改定されたということなのでしょうか。しかしインドネシア銀行と中央統計庁の両方にそのことを問い合わせても、自分の出したデータが一番正しいものであるという返事が双方から返ってきました。
国の公的機関が出しているデータが食い違っており、データ報告者が自分のデータを正しいと言い張っている状況は、データ利用者に困惑と混乱をもたらします。今後中央統計庁とインドネシア銀行は発表データの突合せを事前に行い、統一されたデータを国の公的データとして公表するよう要請します。[ デンパサル在住、I G グラ・ダルタ ]


「脱工業化それとも非工業化」(2010年3月1・2日)
全国商工会議所は製造産業の対GDP貢献が低下の一途をたどっていると判断し、インドネシア経済は脱工業化の時代に入っていると定義付けた。全国商工会議所経済開発調査研究院長ファイサル・バスリによれば、製造産業のGDP内シェアは2004年の28.1%を上限としてそれを上回る成長が見られず、2007年は27.1%、2008年は27.9%といったレベルで低迷している。一般的にはそのシェアが35%に達してから頭打ちとなり、徐々にシェアは第三次産業へとシフトしていくのが脱工業化と呼ばれている現象で、インドネシアの場合は28.1%を頂点にそれが30%台に乗ることもなく早枯れしているのが実情だ。
1997年の通貨危機に至る10年間、インドネシアの製造産業は平均年率12%の成長を記録してGDPの成長率を5%も凌駕した。オルバ政権の工業化政策による黄金時代がそれだった。ところが危機以降その成長率は5.7%にダウンし、最近の5年間をとってみてもGDPの成長率より小さい数値しか上がってこない。製造産業の凋落はその成長を支えるための融資がひとつの鍵を握っており、1985年は銀行貸付総額の40%を製造産業が占めていたが2008年はそれがわずか16%まで低下している。昨今の銀行界資金貸付先のメインはサービス業・商業セクターが握っており、銀行界も返済に手のかかる製造セクターへの貸付にはあまり積極的な姿勢を示さない。
一時期、国家経済の駆動力としての役割を果たした製造産業は今も自動車・機械・家電・飲食品・化学肥料・繊維・皮革・履物などの優良セクターが並んでいるとはいえ、国家経済の中でのウエイトは軽いものになっている。
インドネシアの製造産業は昔から構造的な問題を抱えてきた。オルバ政権が推し進めた工業化政策は重層的な拡大充実を迎えないままレフォルマシ時代に突入して腰砕けになってしまったことを上に見られる数値が裏付けている。自国資本による裾野産業の広がりに支えられない浮き草のような製品加工産業ができることは限られている。脆弱な製造産業界に民間金融界が積極的な融資意欲を持たないのは当然過ぎることだろうし、大量の原材料部品が輸入されるために為替変動によって製品原価は大幅に揺れ、安定生産の維持も困難になる。おまけに製造産業とは名ばかりで実態は輸入部品組立工場とさして変わらないために製造技術開発は進まず、テクノロジーの内部蓄積も起こらない。
保護的な政府の市場政策に依存することを望み真摯な競争を忌避する事業家たちの精神構造と、産業界に寄生してプンリをたかりつくそうとする行政の精神構造は不即不離の一対をなし、絵に描いた餅に近いエネルギー政策とエネルギー供給会社の自社利益重視主義は腐敗と政策が混合した原理のなれのはてであり、タテ割りされた行政諸機関の自己満足追求はインフラ整備の低劣さとシナジー不在によって些細な貢献度しか産業界にもたらさなかった。
政府が大きなエネルギーを注入して進めたオルバ期の工業化政策によってすら重層的な産業構造が生まれなかったことについて、それが複合的な要因によるものであるのは明白だが、『ものづくり』ということがらに対する民族的な価値観がその根底に横たわっていることを指摘する声は小さい。ともあれアンチスハルト一色に塗りつぶされたレフォルマシ時代はスハルトの息がかかったあらゆることがらを一旦否定した時代であり、工業化政策継続を叫ぶ声が国民の中でマジョリティにならなかった事実がその民族的な価値観を証明しているようにわたしには思えて仕方がない。
とまれ、それがインドネシアの製造産業の実相であるのなら、産業縮小や成長の停滞といった現象を脱工業化という言葉で表現するのが本当に的を射たことであるのかどうか、わたしは疑念を禁じえないでいる。そして一部シニック層が言うように、「インドネシアには工業化が起こらなかったから脱工業化がありえるわけがない。オルバ期に行なわれたのは工業化でなく単に工場を建てて機械と工員を並べただけの工場化でしかなかったのだから。」というせりふのほうが実態に近いものであるような気がわたしにはするのである。


「超廉価テレビの輸出」(2010年3月5日)
中国産より廉価なインドネシア産テレビが輸出市場で覇を競っている。発展途上国市場に輸出されて人気を博しているテレビを生産しているのは中部ジャワ州スマラン市チャンディ工業団地内で操業しているPT Intech Anugrah Indonesiaで、同社は毎月5万台のTV受像機とコンピュータモニターを輸出している。
この会社が生産しているのはCRTタイプのもので、ローカルコンテンツは60%であり、40%は中国からの輸入部品が使われている。同社生産品の大部分は廃品テレビの部品を再生して使っているリサイクル品で、輸出市場では中国産テレビが一台29米ドルであるのに対し同社は一台25米ドルという値付けで対抗している。
同社製品はこれまでナイジェリア・トーゴー・インド・ベネズエラに輸出されているが、今後輸出先が更に増加するのは時間の問題と政府筋は太鼓判を捺している。中部ジャワ州のテレビ輸出企業は同社のほかにPT Hartono Istana Teknologiがあり、同社はポリトロンブランドの家電品を生産している。


「弱音を吐かない家電品業界」(2010年3月18日)
アセアン=中国自由貿易協定(ACFTA)の開始に伴って中国産廉価商品が国内市場を席巻する事態をほとんどの国内産業界は不安視しており、家電品や通信機器類業界でもそれは例外でない。ただしモダンマーケットの家電品売場は今年一杯かれらに占領されることはない、とインドネシア家電品連盟事務局長が表明した。「モダン小売業界とサプライヤー間のビジネススタイルは在来型市場と全然違う。モダン小売業界がサプライヤーに課しているトレードコンディションを中国産品輸入者が今すぐに満たすのは難しい。ましてや消費者の商品クオリティやアフターサービスへの要求は高まっており、ただ廉価で見映えが良いだけで消費者が簡単に財布の口を開くことは減っている。加えて政府は国内市場で販売される家電品のインドネシア語によるラベル表示とインドネシア語で印刷された取説および保証書の添付を義務付けており、この方針が厳格に監督される限り廉価輸入品におびえる心配はない。」
現在小売業界が販売している家電品の8割は国産品で、輸入品は2割という比率になっている。


「電力不足に襲われる工業団地」(2010年4月8日)
2009年に国有電力会社PLNが全国の工業団地に供給した電力量は需要の半分しかなく、工業団地運営者はその状況に対して大きい不満を訴えている。インドネシア工業団地会に所属する全国57ヶ所の工業団地は5,000MWの需要を抱えているというのにPLNは昨年2,500MWしか供給しなかった、と工業団地会会長が発言した。「今年PLNだけに供給を頼れば60%の不足が生じる。団地入居会社の増加や拡張で電力需要は高まる一途だというのに、電力は限られた量しか供給されない。特に不足が顕著なのは西ジャワ州カラワン・タングラン・北スマトラ・東ジャワで、電力供給が十分に行なわれていないにもかかわらずPLNが一方的に料金を値上げしてくるから団地運営会社は立つ瀬がない。前はkwhあたりの料金が900ルピア程度だったというのに今では1,350ルピアになっており、その結果団地内入居企業2万7千社の業績に悪影響が出ている。今年は日本・韓国・中国・ヨーロッパの企業が拡張計画を立てており、2〜3億ドルの追加投資が期待されている。そのメインは家電・加工食品・自動車・履物・下流鉄鋼加工などのセクターだが電力供給障害はその計画のレベルダウンを招きかねない。」
2009年政令第24号で工場立地は工業団地内に集中するという基本政策が打ち出されているものの、工業団地に入っても十分な電力供給が受けられないなら製造事業者にとって工業団地を工場用地に選ぶ必然性は甚だしく色あせてしまう。工業相はそれについて、電力供給事業独占権を持つPLNが十分な供給確保能力を持っておらず、あるいは全国すべてのエリアをカバーしきれない場合、民間資本を起用して工業団地向け電力供給を行なわせるように方針を転換しなければならない、と鉱エネ省の考慮を促す発言を行なっている。
工業団地会会長は政府の工場工業団地内集中政策について、電力供給がその政策の進展に大きな鍵を握っているとコメントした。「政府は工場を工業団地に集めることで製造セクターの経済効率改善を実現させようとしているが、団地に入ったら電気が足りなくなるという状況で団地外の工場を誘致させることができるわけがない。工業団地内の電力供給確保のために政府は各団地内の発電所設置を許可し、供給量や料金を団地の自主運営に委ねるべきだ。」工業団地会会長はそう主張している。


「市場優先監視品目」(2010年4月14日)
商業省は2010年の国内市場における優先監視10品目を決めた。そのうちの5品目は特定製品輸入規定に関する2008年商業相規則第56/M-DAG/PER/12/2008号で定められた家電品・飲食品・履物・衣料品・玩具の5輸入規制品目で、他にはパック詰め飲料水・安全靴・ヘルメット・タイヤ・ガスボンベレギュレータの5品目が指定された。監視品目指定は不法商品の市場浸透を阻止して国家規格に合格した正しい品質のものを消費者に供給することを目的にしており、全国にあるおよそ1千万軒の小売店への訪問調査を行って不法商品を摘発する活動が行われる。
合法品はインドネシア語ラベル表示・インドネシア語取説と保証書添付・インドネシア製品規格(SNI)義務付け対象品は合格番号表示などが整っていなければならず、調査はそのポイントからなされることになる。また輸入規制5品目の不法輸入品は往々にして陸揚げ港周辺で販売の口火が切られることから、5大港周辺の小売商店に厳しい監視の目が向けられることになる。


「オフィススペース賃貸状況」(2010年4月21日)
2009年第4四半期ジャカルタのオフィススペース占有状況は87%で、主要地区の賃貸料金は平米当たり月額141,946ルピアと安定したレベルが続いていることをコリエールズインターナショナルが報告した。ジャカルタのオフィススペースマーケティング代理店業界は2010年の成長目標を4%と置いており、経済危機の回復で市場は活気付くだろうと予測している。
2009年の新規契約で売行きの良かったのはザプラザ、セントラルスナヤン2、サイバー2の三ビルで、それぞれ次のような大型テナントを獲得している。
[ The Plaza ]
Itochu Corporation 27,800m2
IBM 52,700m2
BWM 9,000m2
Sime Darby 55,600m2
[ Sentral Senayan 2 ]
BASF 10,800m2
Chuo Senko Indonesia 10,800m2
Fortice 10,800m2
[ Ciber2 ]
Vilona 7,500m2


「電気代値上げの影響は小さい」(2010年4月30日)
国有電力会社PLNの電力基本料金が2010年6月から15%値上げされた場合、製造産業セクターは平均して0.55%のコストアップが起こる、と工業省産業R&D庁が公表した。コストアップが製品販売価格に転嫁されるのは言うまでもなく、業界の中にはコストカバー以上の値上げを行なって利益率向上を図ろうとするところも出現するだろうと予測され、輸入品との間の市場競争の兼ね合いでコストカバーができずに利益率が低下する業界と、やはりその兼ね合いで利益率をアップさせて消費者の負担を増加させる業界の二方向に分かれることが懸念されている。
産業R&D庁の試算によれば、電力基本料金アップは業界別に次のようなコストアップを引き起こすとのこと。
製氷 7.6%
発電設備 6.9%
大理石・花崗岩 5.6%
セメント 3.5%
産業用機械部品 3.3%
鉄鋼鋳造 2.4%
ゴム製品 2.3%
安全ガラス 2.1%
メリヤス 2.0%
無機ベースケミカル 1.6%
しかし事務用機器・木箱・野菜果実缶詰・医薬品・揮発性オイル・タバコ・紙・印刷物などをはじめとしてその他のセクターでは大半が0.1%程度のコストアップにおさまるものと見られており、トータル平均は0.55%で社会的な影響は小さいと判断されている。それでも工業省はPLNに対し、コストアップの大きいセクターに対して割引等の代償を与えるよう要請することにしている。


「インドネシア語ラベル表示対象品目はなかなか増えない」(2010年5月7日)
国内で流通販売される製品はすべて生産者もしくは輸入者がインドネシア語のラベルを商品に添付しなければならないという基本構想のもとに、商業省は2009年大臣規則第62/M-DAG/PER/12/2009号でラベルの義務付けに関する決まりを定めた。ところが義務付け対象の特定はやはり避けられなかったようで、その大臣規則には家電品・家庭用品・情報通信機器・建築資材・自動車用品・履物・皮革製品・電気用品・照明器具・コピー用紙・衣料品が義務付け対象品目に指定された。商業省国内通商総局長はそのリストが口火を切る意味合いのものであり、そこにない品目はラベル貼付をしなくていいということでなく、このリストへの追加は資格があると認められる方面からの提案によっていつでも行なう用意があるという表明を行ったものの、追加表明はいまだにどこからもない。
政府と国民ではものごとに対する視座が違い、視座の違いはミニマムとマキシマムという見解の違いを生み出す。政府が義務付け品目はこれだと言ったら、国民は政府が規制しているマキシマムはそこまでだと考えるのが当然だ。現在のリストには家電品・家庭用品・情報通信機器46品目107HSコード、建築資材9品目37HSコード、自動車用品24品目69HSコード、その他24品目500超HSコードが掲載されている。
商業省国内通商総局長の呼びかけに対して飲食品事業者連盟会長は、現在定められた品目に対して着実に実施を進めていくのが先決であり、それを行なう前に対象品目を増やすようなことをしても意味がないと批判している。


「インドネシアへの工場移転が盛ん」(2010年5月11日)
2009年から2010年第1四半期までの間にインドネシアに工場移転を行なった外国製造メーカーは中国を主体に日本・ベトナム・台湾が大半を占め、業種は鉄鋼・家電・履物・皮革・繊維衣料などで、投資総額は5.4億ドルにのぼったと見られている。MSヒダヤッ工業相によれば、中国産業界はインドネシアへの工場移転にきわめて熱心で、経済特別区(KEK)を建設するために1万Haの土地を物色している事業家もいるとのこと。
インドネシア繊維業協会は中国の衣料品メーカー9社が今年中にインドネシアに工場を移転する計画を立てており、投資予定額は1億ドルにのぼると表明している。家電品製造業界もパナソニックがデジタルオーディオ工場を中国から、省エネ電球工場を大阪からインドネシアに移す計画であることを公表している。特にデジタルオーディオの生産コストはインドネシアの方が中国よりまさっているとコメントしている。履物セクターでも、中国のニューバランスとミズノブランドのスポーツシューズ生産者がインドネシアへの工場移転を予定しており、また台湾の皮革製造会社が1千万ドルを投資して工場を移転する計画。
インドネシア履物協会役員は、中国と台湾で履物皮革セクターは激しい成長のためオーバーヒート気味になっており、労働力不足に見舞われている、と語っている。


「国勢調査実施中」(2010年5月11日)
全国で国勢調査が進められている。2010年5月1日から軒並みの家庭訪問が開始されているが、インドネシア東部地方の一部では4月中に開始されたところもある。
中央統計庁は今回インドネシアで行なわれている国勢調査が世界でたいへん低コストな稀な例であると表明した。2010年国勢調査の予算は3.3兆ルピアであり、米ドル換算すれば3.6億ドルに相当する。その予算で2億3千5百万国民に調査をかけるのだから、国民ひとりあたりの経費としては1.5米ドルにすぎない。これは世界でもっとも低コストな調査になるだろう、と中央統計庁長官は述べている。
家庭訪問する調査員は70万人が動員され、実態の正確な把握をするために調査員はKTP(住民証明書)やKK(家族登録証)などの証明書からデータを取ってはならず、あくまでも住民にインタビューして質問の回答を記録しなければならない。調査対象になる住民は調査時点で6ヶ月以上その住所に居住している者に限られる。調査プロセスはまず各家庭を訪れて戸主名と同居家族構成をリストアップし、日をあらためて各家族構成員に対しインタビューが行なわれる。インタビュー内容は住居や住民のデータからインターネット利用・保健・障害者などに関することがらが尋ねられる。
ファウジ・ボウォ都知事は都民に対し、国勢調査は住民管理取締りではないのであるがままに正直に事実を回答するように、と呼びかけた。たとえばジャカルタのKTPを持っていないが正直なステータスを言うとトラブルを招くのではないかと心配して作り事を答えることのないようにというのが都知事の趣旨だが、そのような住民管理上の不備を突いていんねんをつける調査員が本当にいないかどうかはわからない。RT(隣組長)・RW(字役)は国勢調査員に付き添って住民家庭を訪問するようにと政府は指示を出しているが、自分も仕事を持っているRT・RWが数日間自分の管区をめぐる調査員にぴったり付き添う時間があるのかどうか、それも保証の限りではないだろう。弱みを持つ人間を脅かして金にすることが社会の習慣になっているために上のような都知事の呼びかけが出てきたわけだが、このような事情も「インドネシアには山ほど統計があるが正確なものはひとつもない」という揶揄の背景をなすものであるにちがいない。


「新規事業開設の一番容易な都市はジョクジャ」(2010年5月15日)
世銀の下部機関インターナショナルファイナンスコーポレーションが発表したDoing Business 2010の中でインドネシアは14都市が調査対象とされ、その中ではジョクジャが新規事業開設と建築許可の手続がもっとも容易であるとの判定が下された。
調査対象となったのは、バリッパパン・バンダアチェ・バンドン・デンパサル・ジャカルタ・マカッサル・マナド・パランカラヤ・パレンバン・プカンバル・スマラン・スラバヤ・スラカルタそしてジョクジャ。ジョクジャでは事業開設許可取得手続が43日間で終了し、その費用は平均住民所得の29%でしかない。ジョクジャ特別州は全国に先駆けて事業許認可を一ヶ所で取り扱うワンストップ方式を実施し、許認可局という部門を新設した。許認可局は29種類の許認可証を出しているが、自部門だけの審査で出しているのはそのうちの8種類で、他は別の審査部門との共同作業になる。自部門だけの審査で交付する許認可証は、ホテル宿泊業許可・飲食店業許可・娯楽慰安業許可・観光事業許可・観光先事業許可・観光情報業許可・観光コンサルタント観光促進業許可・会議展示会インセンティブツアー業許可がある。ドゥイングビジネス2010の中で統計調査が行われたのは新規事業開設・建築許可・土地権利登記の三つ。


「オフィス賃貸は活況、工業団地の土地は閑古鳥」(2010年5月22日)
2010年第1四半期ジャカルタのオフィススペース新規入居状況は44,100m2に達し、対前年同期比55%、対前期比24%の上昇は2008年9月以来で最高の数値となった。全体的にこの四半期のオフィススペース入居契約はきわめて活発だった印象が強い、とカッシュマン&ウェイクフィールドインドネシア取締役が述べている。中でも銀行セクターと工業セクターが新規入居スペースの40%と25%を占め、その二セクターの旺盛な拡張に注目が集まっている。新規入居はAグレード物件が91%にのぼり、契約賃貸料は月額で平米当たり181,800ルピアだったことが明らかにされている。
2010年はオフィススペース供給が数件の大型プロジェクト完成によって増加するため、入居率は年間を通じて同じレベルが維持されるだろうとのこと。
一方、工業団地2010年第1四半期の新規入居状況は41Haしかなく、対前年同期比で36%の減少となっている。総入居率は73.1%から73.6%に微増したが、今年はたいへん低調な年になりそうだ、とインドネシア工業団地会会長が予測を語った。これは工業団地に対する電力やガスなどのエネルギー供給が需要を下回っているためで、それらの基本インフラが不足していれば事業投資家は工場を建てようという気を起こさないのが普通だ、と会長は述べている。
カッシュマン&ウェイクフィールドインドネシアが調査した工業団地の平米当たり土地価格とこの先半年間の変動見込みは次のようになっている。
ジャカルタ 135万ルピア 安定
タングラン 79万ルピア 安定
ブカシ 61万8千ルピア 上向き
カラワン・プルワカルタ 32万2千ルピア 安定
セラン 41万2千ルピア 上向き
ボゴール 50万ルピア 安定
また平米当たりの倉庫賃貸料とこの先半年間の変動見込みも次の通り
タングラン 54,510ルピア 安定
ブカシ 30,000ルピア 安定
カラワン・プルワカルタ 27,255ルピア 安定


「ジャムソステック加入義務違反会社は2万3千社」(2010年6月1日)
PTジャムソステックは2010年5月にジャムソステック制度に違反している企業の実態について次のように報告した。法令によって従業員10人以上を雇用している会社あるいは従業員給与支払がひと月100万ルピアを超えている会社はジャムソステックの加入が義務付けられている。しかし多くの事業主はこの勤労者保障制度を余計な出費を強いるものと見ており、不加入あるいは従業員や給与のデータを操作して出費を減らそうとする対応がいまだに盛んに行なわれている。不加入の23,100社が加入させるべき従業員数は383,511人にのぼる。
不加入会社数 23,100社
従業員全員を加入させていない会社 1,611社
保障スキームの一部にしか加入していない会社 547社
従業員給与データの虚偽申告 45,901社


「社内の再調整複写機はあまり自分で触らないように」(2010年6月2日)
2009年にインドネシアで販売されたフォトコピーマシーンは4万台で、そのうち3万台はシンガポールやタイから輸入された中古品を再調整した品物で占められている。輸出国で1〜2年使われたマシーンは買換えが行なわれ、古いマシーンはインドネシアの再調整流通業者に送られてくる。フォトコピーマシーンのメーカーから見ると、そんな事情のためにインドネシアはアセアン域内で販売が最低の国と位置付けられているが、実際には大きな市場があるのである。
再調整品は価格が段違いに廉く、その購入やレンタルの支出を徹底的に小さくしようとする消費者は再調整品につけるインクカートリッジも純正品でなく再生品をセットするよう望む。中味のインクも類似品が使われるのは当然の成り行きだ。
ところがインドネシアで使われている類似品のインクには人間の皮膚にとって有害な成分が含まれており、極力接触を避けるのが無難だと流通業者は洩らしている。購入やレンタルの選択権を行使する社内担当者は、安全衛生や環境汚染よりも出費が最大で唯一の検討項目になっているようだ。


「商品ラベル制度は9月1日から」(2010年6月3日)
商品ラベル記載に関する商業大臣規則第62/M-DAG/PER/12/2009号を改定する第22/M-DAG/PER/5/2010号が出され、当初2011年12月21日から実施が開始されることになっていたこの制度は2010年9月1日に早められた。
商業省はマーケットからの、早急に制度を開始して欲しいとの声に応えて一度は2010年7月からの開始方針を決めたものの、生産者業界に打診した結果最終的に9月1日で合意に達した。
この制度は消費者保護を目的に商品に関する情報をインドネシア語でラベルに表示することを義務付けるもので、家電品・情報通信機器・建築資材・自動車部品・電線など電気設備用品・履物・皮革製品・玩具・衣料品などが対象になる。商業省はこの規則の実施に際して違反者には罰則を用意しており、生産者は商業事業許可の取消、輸入者には輸入者資格の取消を行なうことにしている。
家電品連盟会長は二転三転したラベル制度開始時期に関連して次のように語った。「7月1日よりは9月1日のほうが好い。本当はもともとの予定が一番好い。なぜならこの新制度はブランド所有メーカーの本社に報告して了承をもらわなければならず、そのプロセスに長い時間がかかるからだ。この新制度がコストアップをもたらすことはない。ただ、面倒臭いことになったことだけは確かだ。」
一方、全国輸入者連盟会長は、20年も前からその提案を行なってきて、今やっと実現の運びとなった、と言う。しかしそれを喜んでいる風を会長は見せない。「われわれは商業法を持っていない。商業大臣規則だけでは外国からの違反商品が国内市場を荒らすことに対抗しきれない。罰則が規則の中に定められてはいても、外国で裁判に持ち込まれたり仲裁が求められたら、法律がないためにインドネシア側は確実に負けるだろう。」
商業法にバックアップされなければこの規則を実施しても不満足な結果に至るだけだ、と輸入者連盟会長はコメントしている。


「国民センサスは未完」(2010年6月7日)
政府は2010年5月1日から31日までの一ヶ月間、全国に70万人の調査員を動員して国民センサスを実施した。5月31日までに全国からオンラインで報告されたものを集計すると国民人口総数は2億2千8百万人で、これは90%程度の進捗状況と判断されている。調査完了日までに報告が入っていないのは東カリマンタン州北部地域、北マルク州、パプア州・西パプア州で、遠隔地という条件のためらしい。マルクとパプアでは実地訪問調査がまだ完了しておらず、5月31日時点でパプアではやっと72.8%が消化されている。ジョクジャでもまだ訪問調査が100%完了しておらず、それらの州では6月15日までに完了させるようスケジュールが調整されている。
中央統計庁は調査員が集めた原データを吟味検証する計画で、6月15日までの半月間にその検証作業が行なわれる。これは調査員の訪問洩れエリアがないことを確認し、もし未訪問の家があった場合はあらためて実施されることになる。統計庁側の検証作業で未訪問や不審なデータがあれば調査員に再調査の指示が出され、また国民に対してもまだ調査員が訪れていない家は届け出るように呼びかけが行なわれている。
しかし上であげたような訪問調査自体が遅れている州は検証が行われる期間がほとんどなくなるため、統計データの正確性は州ごとにバラつきが出るに違いない。ともあれ、今回の国民センサスで得られた人口統計の公式発表はSBY大統領が8月15日の独立記念日スピーチの中で公表することになっている。ちなみに首都ジャカルタの人口は925万人という数値が上がってきており、当初予測の923万人を超えそうな状況だ。


「不正確な人口統計」(2010年6月7日)
インドネシアにはありとあらゆる統計が山のように作られているが、正確なものは何ひとつない、と識者たちは揶揄している。それは定められた規定に厳密に即した原データ採取が行なわれておらず、さらにデータ集計作業の中でデータ原紙の取扱いが潔癖でないため紙の散逸や汚損が起こり、さらには定義の与えられていないデータの処理に統一見解が求められないまま担当者あるいは中間管理者レベルが個人で独自の判断を行なって処理してしまうといういくつかのネックポイントが重なって出現していることであるらしい。
たとえば輸出統計の元になっているのは輸出申告書だが、輸出申告書を作成する会社従業員が中南米の地理を良く知らないためにモンテビデオに向けられた船積に輸出先国をブラジルと記入したら、それが誰によって訂正されることもなく中央統計庁に送られてしまう。中央統計庁でそれが訂正されるかどうか不明だが、統計庁職員がアトラスに首っ引きで申告書上の地理データを修正するとは思えない。そのようなことをわたしは自分の目で見ている。
2010年5月1日から31日までの一ヶ月間、全国に70万人の調査員を動員して行なわれた国民センサスが完了した5月31日に中央統計庁長官が出したコメントの中に、調査企画者が意図したデータ収集が完璧に行なわれていなかったという事実が指摘されている。首都ジャカルタでの調査だけでも、規定通りの調査を行わなかったという住民からの届出によって70人ほどの調査員がお役ご免になっている。
2010年国民センサスのSOPによれば、調査員は担当地区のすべての家庭を2回訪問しなければならず、一回目は住人のアイデンティティ確認、二回目にセンサス調査項目43件を質問してデータ採取するという手順が定められており、またセンサスが終わった家庭にはステッカーが貼付される。ところが、終日何軒もの家を巡って質問をしその答えを書きとめることを繰り返すという緻密な作業のできる人間ばかりが調査員に応募したわけでなく、疲労・退屈・面倒くさいといった心身状態のためにSOPを機械のように実施することを厭って手抜きをした調査員は数多い。
調査の行なわれた同じ地域内で、調査員が質問した項目が各家庭で異なっていたり、アイデンティティだけ質問されて他の調査項目はまったく尋ねられなかった家庭も少なくない。スティッカーについても、調査員が同じように来たにもかかわらず、隣は貼られたがうちは貼られていないというケースがある。中には調査員がKK(家族登録書)のフォトコピーだけを要求し、質問や確認は一切しなかったという家もある。
しかし調査員のビヘイビヤだけが統計結果を危ういものにしているわけでもない。バンジャルマシンから届いた話によれば、調査員の訪問を門前払いする家がいくつもあったとのこと。中央統計庁南カリマンタン州事務所はそのために村役やRT(隣組長)に依頼してその住民を説得してもらわなければならず、手のかかる調査を実施する破目に陥っている。似たようなことはジャカルタでも報告されており、特に高級アパートや高級住宅で戸主ばかりか一家のだれとも面会不能という事例が見られた。つまり調査に応じていない住民がたくさんいるという事実がこの統計の正確さを疑わせるものになっている。大半のアパートは調査員が建物内に入ることを禁止した。その対策として調査員は質問書をアパート管理者に渡して住人に配るよう依頼したがアパート管理者はそれすら拒否し、何度か訪問して依頼するうちにやっと質問書の配布を受けてくれるところが出始めたものの、住民の多くが記入済み質問書を返してこないまま5月31日を迎えている。高級住宅でも似たようなことが起こっており、調査員が訪問しても忙しいという理由で面会できず、面会日時を約束して出直すものの理由を付けて約束を引き延ばすケースが多く、中には取り付く島のないストレートな拒否というものもあったとのこと。


「センサス調査員の手抜き行為」(2010年6月7日)
2010年5月24日付けコンパス紙への投書"Sensus Penduduk 2010 Berlangsung Satu Menit"から
拝啓、編集部殿。2010年5月1日(土)、政府が呼びかけた国民センサス実施の初日、わが家に三人の調査員がやってきました。かれらが質問したのは、住んでいる人数・名前・出生地と生年月日・学歴・性別・婚姻ステータスだけでした。わが家の住人はわたしと妻とふたりの子供、そして女中の計5人でしたので、調査員のデータ収集はほんの1分で終わってしまいました。センサス調査員がデータ収集する質問項目はそれだけだったのでしょうか?
わたしがメディアで読んだり聞いたりした国家統計庁長官の説明では、調査員は宗教・種族・日常生活使用言語・職業、さらに情報通信テクノロジー機器の使用・住居保有ステータス・照明と燃料のエネルギーソース・飲用水のソースなどのデータも集めるように理解していたのですが。
それら質問されなかった項目は調査員が知っていることとして直接自分で用紙に記入したのでしょうか?2010年国民センサスが政府の目的・希望・必要性に沿ったものとなるよう、関係当局は早急にこの問題を確認してください。[ 西ジャカルタ市在住、スビヤント ]


「ジャカルタでオフィススペースが増加」(2010年6月9日)
2010年末から2011年第3四半期にかけて都内ビジネスセンター地区(CBD)のオフィススペース新規供給が26万2千m2に達する見込みであることをコールドウエルバンカーコマーシャルが報告した。その時期にプロジェクトが完成して入居が始まる物件は次のようなもの。
Ciputra World Office, Jl Satrio 4万m2
Sentral Senayan 3, Jl Asia Afrika 5万2千m2
Tempo Scan Tower, Jl HR Rasuna Said 6万8千m2
Alianz Tower, Kuningan Persada 4万2千m2
World Trade Center II, Jl Sudirman 6万m2
またCBD外のエリアではTBシマトゥパン通り沿線に次の二プロジェクトが完成する。
GMK Tower 2万9千m2
Puri Ampera 2万4千m2


「日系工場のカラワン移転が進む」(2010年6月18日)
カラワン市は1万8千Haの土地を総合工業地区開発用地として準備している。その地区の一部は整備が既に進められており、7百社ほどが工場を建設している。そこへ進出した7百社の8割は日系企業とのこと。これは先にMSヒダヤッ工業大臣が日本産業界の工場移転用地要請を受けて地方自治体に問いかけたところブカシとカラワンが名乗りを上げたのが発端で、国内外の日系工場が多数カラワンの新工業地区への移転に取り掛かっている。
カラワン市側はその工業地区と関連諸地域を結ぶ動脈路の建設ならびに港湾運営国有事業体プリンド?がタンジュンプリウッの代替港として建設を計画しているチラマヤ新港などいくつかの大型プロジェクト推進に活気付いており、市長はその開発の見返りのひとつとして進出工場に対し、雇用の50%を地元民に割り当てるよう要請している。


「BPOMの審査料金が跳ね上がる」(2010年6月29日)
食品薬品監督庁が行なっている認定認可活動の料金が値上げされた。有料で行なわれている業務から国家機関が得る収入は税外国庫収入というカテゴリーで括られており、その料金表は政令の形で定められて国民に公表される。食品薬品監督庁の有料業務料金表は2001年4月16日付け政令第17号のものがこれまで適用されていたが、10年近くが経過したいまその料金見直しが行なわれ、2010年5月25日付け政令第48号が制定されて新料金適用が始まった。
医薬品の審査と登録手続の一点あたり税外国庫収入はこれまでの2千万ルピアが3千万ルピアに急騰し、一般薬の審査と登録手続はこれまで無料だったが一点あたり200万から1,250万ルピアというレンジで有料になった。薬用植物薬品の審査と登録手続は100万ルピアから600万ルピアに跳ね上がっている。
食品薬品監督庁広報法務局長は、10年近い期間のインフレや社会の経済情勢を勘案した結果の新料金である、と説明している。


「ジャムソステック社が利益を加入者に還元」(2010年7月2日)
国有事業体が株主である政府への配当を免除されたことに伴って、PTジャムソステックは2009年に獲得した純利益の72.5%にあたる1.01兆ルピアを加入者に対する福祉対策に使うことを決めた。
現在ジャムソステックに加入している企業でアクティブなものは111,825社、アクティブでない会社は83,230社で、アクティブな加入者数は837万人アクティブでない加入登録者数は2,023万人となっている。
PTジャムソステックは加入者への労働者福祉向上政策として廉価住宅建築販売・保健医療ファシリティ向上・環境改善活動などを実施している。


「国税総局の価格移転対策」(2010年7月9日)
2009年にインドネシアのPMA企業が行なった価格移転は1,300兆ルピアにのぼるとリラタックスウオッチの専門家が税務セミナーで語った。「わたしがでっちあげた数字じゃない。国税総局価格移転課からもらった数字だ。OECDも世界の貿易総額の60%以上が価格移転によるものだと表明している。2009年インドネシアの貿易高は2,100兆ルピアで、その60%は1,300兆だ。価格移転はそれほど大きな規模を持っているということだ。可哀想なのは国税総局価格移転課で、職員はたった12人しかいない。あの金額で12人、なんとナイーブな扱いだろうか。12人中で価格移転の手管を隅々まで知り尽くしているのはいったい何人いるだろう。価格移転課は2007年に設けられた。実に遅すぎる対応だ。昔からいったいどれほどの税金が価格移転行為のために蒸発したことか。
シンガポールでは、5年間に利益の出ない外資企業は帰国しなければならない。オーストラリアではトヨタが価格移転問題で告訴されたことがあるし、インドネシアでも税法廷で価格移転疑惑の審判が行なわれている。TMMIという自動車会社が2005年にAVZ車を利益マイナス14%、IN車を利益マイナス7%で輸出した結果、国内販売で得た粗利は2.7%しか残らなかった。アメリカ資本が99%で香港資本が1%という大手国際ホテルの財務報告書を見ると、いまだに借入金返済・借入金利支払・ロイヤルティ支払が行なわれている。あるビスケット会社は国内販売から40%の利益を取っているものの、輸出の利益率は6%しかない。」
そのセミナーに出席した国税総局ビジネスプロセス変移管理次局長は、価格移転はスケールの大きい問題だ、とコメントした。「これまで国税職員は法廷に提出するべき公式な証拠の入手が困難なために、問題に対する措置が阻まれてきた。そのため妥当性という側面からのアプローチをはかるためにベンチマーク方式を取り入れることにしている。」次局長は国税の今後の対応に関してそう語っている。


「農村部で所得格差が拡大」(2010年7月14日)
所得格差の指標であるジニ係数の最新版を中央統計庁が発表した。全国では0.331で昨年の0.357から低下したが、下がったのは都市部で0.362から0.352になったものの、農村部は反対に0.288から0.297に上昇しているという結果が出ている。中央統計庁の局長のひとりはジニ係数が農村部で上昇していることについて、ジャワ人がジャワ島外に移住したことで起こったものだとその現象を説明した。
一方貧困階層人口は2010年3月時点で3,102万人で一年前の3,253万人から150万人も減少したと報告された。対総人口比率は14.2%から13.3%になっている。貧困層人口も都市部の減少率が農村部より大きく、都市部は1,191万人から81万人が貧困階層を抜け出し、農村部は2,062万人中69万人が貧困者でなくなった。
中央統計庁のこの報告についてインドネシア科学院経済学者は、過去一年間政府の貧困軽減対策は何も行なわれていないので、にわかには信じがたい、と評している。経済オブザーバーたちも概して同じ論評だ。


「密輸入家電品が国内市場を席捲」(2010年7月20日)
輸入規制対象品目指定による輸入手続強化やアセアン=中国自由貿易協定による輸入関税免除にもかかわらず家電品の不法輸入は減っておらず、2010年市場予測35兆ルピアの45%は不法輸入品に奪われるだろう、と家電品連盟副事務局長が表明した。その原因は政府がいつまでたっても奢侈品税の課税を廃止しないことにあり、一部家電品にいまだにかけられている奢侈品税10〜20%は一切の納税を潜り抜けてきている不法輸入品に対する国産品の競争力を殺いでいる、と副事務局長は指摘している。現在奢侈品税の課税対象になっているのは29〜43インチテレビ・17インチを超えるコンピュータモニター・180リッター超冷蔵庫など7アイテム。
政府は輸入規制5品目の輸入通関港を基本的に全国5港に絞込み、船積前検査を義務付けて輸出地で輸出品の明細を証明させる方針を実施しているものの、最初からインドネシアでの輸入通関を度外視するなら、そのような規制が何の効力も持たないのは明らかだ。輸入通関なしに国外から貨物を国内に送り込む方法は昔から数限りなく行なわれており、加えて国のために法規を確実に執行することよりも個人や所属集団の利得を優先する公務員のメンタリティは国民のだれもが熟知していることであるため、家電品産業界は輸入規制方針の意図が税関機構の中間から下で捻じ曲げられていることへの懸念を隠さない。
家電品連盟のデータは、過去三年間に不法輸入品の国内市場シェアが急速に伸びてきた状況を物語っている。2004年は総市場16.7兆ルピアのうち国産品シェアは51%で不法輸入品シェアは20%だった。2006年は総市場22.6兆ルピア中で国産品は31%に低下し不法輸入品は40%に増大した。2007年は27.6兆ルピア市場で国産品シェアは29%に下降している。


「今年の国民消費支出は大きい伸び」(2010年7月20日)
2010年1−5月期国民の日用生活必需品購入支出は44兆ルピアで、対前年同期比では9%の増加を示したとニールセンインドネシアが報告した。2009年の年間支出は99.7兆ルピアで、これは2008年から4.7%の増加。今年5月までの成長ペースが持続するなら、今年の年間支出は115兆ルピアに達するかもしれない、とニールセンのリテーラーサービス担当理事が表明している。
日曜生活必需品とはタバコと米以外に国民が日常的に消費している基幹物資56品目を指し、ミルク・おむつ・食品・即席麺・食用油・飲物等から成っている。2009年はその中で食用油への支出が60%にのぼった。今年は食品と生鮮食材への支出が顕著に増加している。
今年は7月から電力基本料金が引き上げられたが、過去の記録によれば電力料金値上げが国民の消費行動に影響を与えることはほとんどなく、国民が引締めを行なうのは不況と石油燃料値上げに際してだけであるそうだ。
日曜生活必需品購入場所に関しては、50%以上のひとがミルク・ビタミン・ボディケア製品をモダン小売店で購入し、即席麺・食用油・ソースなどはトラディショナル商店で購入している。4種の小売フォーマットへの訪問頻度はさまざまなものの、何をどこで買うかを消費者は決めているようだ。ひと月にトラディショナルマーケットへは25回、ウエットマーケット12回、野菜マーケット19回という頻度で訪れているのにくらべてモダンマーケットは、ミニマーケットが月7回、スーパーとハイパーマーケットは2〜3回と頻度は大きく違っている。


「企業PRコンサルタントは不安定」(2010年7月21日)
外国系企業PRコンサルタントが国内5兆ルピア市場の30%を握っている。外国系はわずか8社しかなく、国民系は75社あって圧倒的な比率だが、マーケットは外国系になびくようだ。外国系はロビイングパワーが国民系より強力で、また能力と評判が高いというのが通念になっており、顧客獲得競争は完全に外国勢に水をあけられている。
このビジネスはジャカルタの市場があまりにも分厚い層をなしているため甚だしい一極集中状態で、外国系も国民系もみんなジャカルタに勢ぞろいしている。外国系のクライアントは多国籍企業が多い。外国系とはいっても従業員はほとんどがインドネシア人で、それは国民系も同じ。国民系75社は1千人を雇用し、外国人はそのうち10%程度。従業員の業務はコンサルタント・メディアリレーション・グラフィック等々さまざま。各社はだいたい10人程度従業員を擁しているが、大きい会社は75人を雇用しているところもある。
PRコンサルタント会社というのは本質的に不安定で、普通の会社はたいてい自社内にPR部門を持っているから、何か必要が生じたときに契約が起こるという関係になる。特別なPR活動が生じたときにプレスコンファランスを行なったり、あるいはリサーチをかけたりといった局面でコンサルタント会社が使われるようだ。


「玩具業界も密輸品で打撃」(2010年7月22日)
2010年上半期の玩具輸入が大幅に増加したことから、国内玩具製造業界が崩壊の憂き目に見舞われている。中国からの怒涛のような玩具カテゴリー諸製品の輸入増によって、類似の製品を生産していた国内工場は生産量に激減をきたしており、2010年下半期には閉業を余儀なくされる工場が出始めるだろうとインドネシア玩具事業者協会事務局長が発言した。2010年第1四半期の輸入高は11.05億ドルで、これは2009年第一四半期実績1.05億ドルの10倍を超えている。
乳幼児用歩行器から子供用三輪車はてはジグソーパズルなどの玩具カテゴリー製品を作っていた国内メーカーは、2010年1月のアセアン=中国自由貿易協定開始でいきなり輸入量が増加したことの影響をまだそれほど痛切に感じてはいなかったが、第2四半期には国内市場での販売が一直線に下降しだしたことから深刻なものになりはじめた。
工業省雑貨繊維機械金属総局雑貨局長は、中国産のハイエンド商品は正式な輸入手続を踏んで国内に入ってきているものの、ローエンド商品は公正な輸入通関を経ない不法輸入の方法で国内市場に流れ込んでおり、廉価商品レンジで国産品はまったく競争にならなくなっているという報告を受けていると語っている。ローエンド輸入品はこれまでなかったような廉価価格でトラディショナルマーケットに入り込んで販売されているとのこと。局長は特定品目輸入統制で輸入港が限定されているものの、ローエンド商品はそれ以外の港で別アイテムとして虚偽申告通関されたり、あるいはコンテナ内の個別の物品を輸入申告せずコンテナ一本の丸ごと通関を通して国内に入ってきているのではないか、と推測している。政府はこれまで廉価玩具商品の市場検問を行なったことがない。
コンテナ一本の丸ごと輸入通関とは、昔から税関の中下級職員が面倒な通関検査業務を嫌って輸入者のネゴを受付け、コンテナ一本丸ごとで輸入関連諸税をいくらと決めてそれを支払わせる通関方式を行っていたものを指す。これは正式な輸入通関プロセスではないため違法に該当するが、はるかな過去から行なわれていたもので一時は公然化されていた。税関内部でそれが厳格に禁止されたのはそれほど古いことではない。オルバ期には、廉い総コストでシンガポールからドアツードアデリバリーをするというオファーを出す輸送業者がたくさんいたが、それはこの方式を当て込んだもので、税関内部でのチェックがきびしくなるとすぐにデリバリーが遅れるという弱点を持っていた。


「財務報告書法」(2010年7月22日)
政府は財務報告書法案を2010年に準備して2011年の国会審議にかける意向。財務報告書に関する法律はこれまでなかったもので、現在国会審議プロセスにある改訂投資法案と既に政府部内でほぼまとまりかけている監査法人法案などを補完するものになる。
財務報告書法は株式公開企業に財務報告の社会的責任を持たせることが第一の目的になるが、この法律は一部の株式非公開企業にも適用される予定。従来企業の財務報告書に関する責任は法制度上でどこにも規定されていなかったが、この法律によって会社は財務報告書に対する完璧な責任を負わされることになり、その観念をベースに踏まえての公認会計士による財務監査と監査意見に対する責任の確立が実現することになる。
株式非公開企業に対する財務報告書責任の問題については、たとえファミリー企業であってもその規模やポジションによって国民経済に大きい影響を持つものがあり、この法律はそのような会社に対して適用することが想定されている。そのような株式非公開企業に対しては財務監査が義務付けられることになるものの、株式非公開企業に一律に適用されることはない、と法案編成チームは説明している。


「工場に転換される水田」(2010年8月4日)
2010年6月4日付けコンパス紙への投書"Alih Fungsi Lahan Sawah untuk Pabrik"から
拝啓、編集部殿。西ジャワ州サダン〜サバン街道を通ると、スバン県カリジャティ郡マニュティ村の左側道路沿いでたくさんの工事車両が水田の埋立て作業をしている姿を目にします。韓国系繊維会社の工場設立のために19Haもの生産的水田が犠牲にされつつあるのです。わたしは毎週いつもそこを通るのですが、広がる水田とシーズンさ中の落花生畑の緑は通行者の心をなごやかに解きほぐしてくれます。
工事が行なわれている土地の端は用水路になっており、水田の潅漑だけでなく周辺の村々や下流に住む農民たちに重要な生活用水を提供しています。開発用地の周辺にいた農民たちはその工場建設が地元関係官庁からの許可を得ていると述べていました。
生産的水田の用途転換は規則違反ではないのですか?その工場建設に対する環境インパクト分析は行なわれたのですか?危険な産業排水が環境汚染を引き起こし、周辺住民の生活に障害をもたらすことになったらどうするのですか?[ スバン在住、ヘルマン ]


「シマトゥパン通りがオフィス賃貸のトップ人気」(2010年8月5日)
ジャカルタの賃貸オフィススペース料金は今年いっぱいほとんど変化しないだろう、とカッシュマン&ウェイクフィールドインドネシアが報告した。CBD地区の料金は平均月額平米当たり136,144ルピア、非CBD地区は102,233ルピアというのが最近の料金。
CBD地区のストックは401万平米あり、2012年までに397,967平米が新たに供給される。一方非CBD地区のストックは137万平米で2012年までの新規供給は290,258平米となっている。
ジャカルタ5市での非CBD地区物件一番人気は南ジャカルタ市で総面積の64%を占めており、賃貸料金は月額平米当たり126,050ルピア。特にTBシマトゥパン(Simatupang)通りからポンドッキンダ(Pondok Indah)にかけてのエリアが今最高の人気で、月額平米当たり147,850ルピアはCBD地区の相場と肩を並べている。この地区のメインテナントは鉱業石油関係企業。次いで中央ジャカルタ市が月額平米当たり109,600ルピアで第二位にある。第三位は西ジャカルタ市の107,600ルピアでSパルマン(Parman)通り界隈のメインテナントは製造会社。北ジャカルタ市は第四位の103,700ルピアで海運会社陸運会社が集まり、最も賃貸料金の廉いのは東ジャカルタ市で93,500ルピア。MTハルヨノ通りには配送会社が多い。非CBD地区でのオフィススペース需要は活発で、国内企業の拡張やオフィス移転が盛んに行なわれており、全ジャカルタの入居率は84%にのぼっている。


「積極的な中小事業主は三人にひとり」(2010年8月11日)
インドネシアの中小事業主の34%は資金を投入して事業拡大を行なう計画を立てており、その他の中小事業主は現状維持を志向している、とインドネシア香港上海銀行ビジネスバンキング責任者が明らかにした。事業拡大はグローバル市場への進出がメインを占めており、そんな事業主は政府と銀行界からのサポートを切望している。
グローバル市場で取引を行なっている中小事業主は26%いて、また32%はこれからの進出を計画している。既にグローバル市場で活動している事業主の取引相手は中国が46%で最大比率を占め、東南アジア諸国は43%、オーストラリア11%、インド9%といった順位になっている。
香港上海銀行が21カ国6千3百人の中小事業主に対して行ったこのサーベイでは、41%が事業拡大のための投資計画を持っており、そして83%は自国の経済成長を確信しているという結果が出されている。


「再工業化は掛け声どまり?!」(2010年8月17日)
政府工業省は飲食品タバコ・繊維衣料皮革・履物・木工林産品・パルプ製紙印刷物・化学肥料ゴム製品・輸送機器家電情報通信機器・セメント非金属採掘品などの諸セクターに対して再工業化のてこ入れを行なうと表明したものの、例によって担当官庁のひとりよがりに終わるのではないかとの懸念の声が産業界から上がっている。
ソフィヤン・ワナンディAPINDO会長は、川下産業の発展促進を政府が計画したとしても、電力基本料金10〜18%値上げ・ガス供給量不足・事業用地利用用途の錯綜・不法輸入品国内市場流入阻止成果の低さなど、その計画の足を引っ張る非生産的要素があまりにも多すぎるため、川下産業界の製品付加価値向上目標を達成するのはきわめて困難だ、と語った。「再工業化実施は本腰を入れてかからなければならず、遊び半分でできるものではない。ところが政府自身が電力基本料金値上げや整合性に配慮しないさまざまな法規を作ってその半分を増やしているではないか。そんなことでは再工業化政策の中に盛り込まれるはずの最終目標をますますぼやけたものにするだけだ。中でも再工業化にとって最大の障害のひとつになっているのは銀行界のサポートがきわめて弱いことで、銀行界のコミットメントはいまだに机上の言葉にとどまっている。近隣諸国の融資金利率は軒並みひと桁に下がっているのに、インドネシアではまだ11%を超えている。それでグローバル自由競争の中でどうやって競えと言うのか?」
工業大臣代理も、資金回転のきわめて早い消費セクターへの融資を優先している銀行界の姿勢を批判する。「銀行界の体質はまったく変化していない。金融界の資金と支援なしで川下産業の発展が最大限の成果を上げることはありえない。インドネシアは強力無比な川下産業を構築してより大きな雇用を実現させなければならない。より多くの事業主を商売人よりも製造産業人にしなければならない。インドネシアは長期的な事業経営を行なう製造産業を育成しなければならないのだ。」大臣代理はそう力説している。


「合併・買収の届出が義務付けられる」(2010年8月23日)
企業の合併・買収が法的に有効となってから30労働日以内に事業競争監視コミッションへの届出を義務付ける政令が定められた。2010年7月20日付けで制定され即日施行された「独占と不健全事業競争を招く合併・買収・株式取得に関する2010年政令第57号がそれ。
銀行セクターは合併・買収等で資産合計が20兆ルピアを超える場合、その他の事業セクターは資産合計が2.5兆ルピアもしくは売上が5兆ルピアを超える場合にその義務付けの対象となる。
事業競争監視コミッションへの届出は同コミッションが用意するフォームを用いて行なわれ、そこには合併・買収・株式取得を行なった会社の社名・住所・経営責任者名ならびに合併・買収計画の概略と資産総額や売上総額が記載される。この政令の第6条には罰則規定が盛り込まれており、期限以内に届出を行なわなかった場合、250億ルピアを最大限度として遅延一日につき10億ルピアの罰金が科されることになっている。
届出の詳細に関する問い合わせは口頭でも文書でも受け付けられ、コミッションは無料で相談に応じてくれる。文書での問い合わせはコミッションが指定する資料を添えたコミッションの用意する問い合わせフォームが使われ、コミッションはその合併や買収に対して独占と不健全競争禁止に関する1999年法令第55号の見地からそれが承認されるか拒否されるかといったアドバイスを問合せ者に与えてくれる。ただしその問合せとコミッションからのアドバイスは、合併や買収の届出がなされたあとで行なわれるその適否の審査に何の拘束も及ぼさない。
コミッションに出された届出の審査結果によって、コミッションは既に行われた合併や買収の取消を命じる権限を持っており、取消が命じられれば合併・買収・株式取得は白紙撤回されて実施以前の状態に戻されることになる。


「商品ラベル制度の進展は遅々」(2010年8月30日)
2009年商業大臣規則第62/M-DAG/PER/12/2009号で定められた商品ラベル義務付け政策の進展がはかばかしくない。義務付け対象となった商品カテゴリーの生産者・輸入者はラベルサンプルを商業省に届け出て承認を得る決まりになっているものの、届出のなされたラベルサンプルはやっと503件で、承認されたのはそのうちの382件。
商業省国内通商総局長はその状況について、大臣規則で定められた商品の数から推測される量に対して提出されたものはあまりにも少なく、対象業界のマジョリティはいまだに準備が整っていないようだ、とコメントした。
届出のなされているラベルサンプルのほとんどは家庭用電気製品で、80%が輸入品で占められており、国内生産者からの届出はまだ微々たるもの。規則では、自動車と機械金属カテゴリーのブランド独占代理店に例外措置が認められている。バラ売りされる商品で販売時に客の眼前でパックされるものや、生産活動のために輸入される原材料・補助材はラベル規則の適用外となっている。


「飲食品もインドネシア語ラベル義務の対象に」(2010年8月31日)
インドネシア語の商品ラベルを義務付ける2009年法令第24号と商業大臣規則第56/M-DAG/PER/12/2009号は家電品・建築資材・スペアパーツ・衣料品・履物・玩具・瓶詰め飲料水・安全靴・ヘルメット・タイヤ・ガスボンベ調節器への適用開始を2010年9月1日からと命じているが、飲食品もそこに加えられる方針が新たに出されたことから商業省は関連法規の調整を行なっている。
商業省は食品薬品監督庁とそれに関する打ち合わせを行なって既に合意に達しており、商業省側が詳細規定の準備を整え次第実施に移される計画。それが9月1日に間に合わなければ、準備が整った時点で即時開始となる。
9月1日から適用されるのは新商品に限られ、適用開始以前に生産が始まっている商品には6ヶ月間の移行期間が与えられる。インドネシア飲食品事業者連盟役員は、「飲食品のインドネシア語ラベル表示は1999年の政令で義務付けが開始されていたものの現実にはまだ行なわれないままで今日に至っている。それを遂行するためには政府の強い意思と体制が不可欠だ。」と述べ、機が熟したことに対する心構えを表明している。


「激増する輸入電気製品」(2010年9月1日)
2010年6月7月は家庭用電気製品の輸入がそれまでのものから倍増した。2010年1〜5月の累計輸入金額は13.9億ドルで平均単月2.78億ドルと算出されているが、6月は5.28億ドル、7月は5.33億ドルと文字通りの倍増となった。
品目カテゴリー別に今年7月までの累計金額を見ると、携帯電話器が圧倒的なシェアを占めている。(数字は億ドル)
携帯電話器 16.47
ノート型コンピュータ 4.8
エアコン 0.75
パソコン 0.57
炊飯器 0.16
ミキサー・スライサー等 0.10
拡声機器 0.08
洗濯機 0.08
電波受信機 0.08


「民衆経済振興の道のりは遠い」2010年9月13日)
零細事業セクターに対する銀行ローン振興を進めている政府は、貸付金残高の伸びがはかばかしくないことに苛立っている。銀行界は既にその意志と態勢を固めており、零細事業セクターからの借入申請には親心で臨むつもりになっているのだが、零細事業主の多くが必要最低限の条件を満たしてくれないために進展しない、とこちらもフラストレーションに陥りつつある。
コペラシ中小零細事業省大臣デピュティは、大半がインフォーマルセクターである零細事業者の多くが取引記録や出納記録を行なう習慣をまったく持っておらず、それが借入を実現させるためのネックになっている、と語る。「銀行界はインフォーマル事業でも貸付を行なうことにしている。ただしその事業の日常記録が示されることが条件だ。零細事業セクターにはそのようなことのできる人材がきわめて限られており、それが貸付残高の伸びないネックになっている。コペラシ中小零細事業省の調べによれば、事業妥当性を欠きバンカブルでない事業者は5,070万人もいる。この問題の解決には中央政府と地方政府が共同でそれら事業主に対して密着指導を行なうことが不可欠であり、生産プロセス・マーケティングファシリティそしてキャッシュフロー管理などの研修やトレーニングを活発に実施する必要がある。ローンを与える前にそのような密着指導を実施し、事業の継続性に確信が持てた段階でローンを与えて零細事業者から中小事業者へと引き上げていく。年間15%を零細セクターから小規模セクターに引き上げるのが当面の目標だ。」
草の根経済の育成振興はまだまだ長い道のりになっているようだ。


「2年後にオフィススペースが増加」(2010年9月15日)
ジャカルタのオフィススペース供給は今後2年間で12.7%相当の740,584平米が新たに加わるだろう、とコールドウエルバンカーコマーシャルが報告した。このデータはラスナサイッ、サトリオ、アシアアフリカ、タムリン、メガクニガン、スルタンイスカンダル、SCBD、クニガンプルサダ、TBシマトゥパンなどの地区で建設中の21オフィスビルに関連して出されている。その中には、Sentral Senayan 3(5万2千平米)、Tempo Scan Tower(6万8千平米)、 AllianzTower(4万2千平米)、 World Trade Center II(6万平米)、 Ciputra Tower(6万4千平米)、 Lot 11 SCBD(3万5百平米)などの大型プロジェクトが目白押し。21ビル中の11ビルはプライマリーエリアで、10ビルはセカンドエリア。完成は2011年から2013年が予定されている。12.7%の増加によってジャカルタの総オフィススペースは688万平米となる。


「社会経済を阻害する15要因はこれ」(2010年9月30日)
ワールドエコノミックフォーラムが公表したグローバルコンペティティブネスレポート2010−2011でインドネシアは全139カ国中総合ランク第44位に着き、一年前から10ランク跳ね上がった。先に発表されたUKトレードインベストメント調査でも、インドネシアは発展途上国部門でベトナムに次いで第2位に位置している。UKトレードの2008年第8位、2009年第9位から一躍反転上昇したランキングも、先進諸国がインドネシアのマクロ経済の好調さに印象付けられて高い評価を与えているように見える。
しかしインドネシアが今置かれているグループから脱け出すために果たさなければならない宿題は山ほどある。ワールドエコノミックフォーラムのサーベイによればインドネシアのインフラサポートは第82位にあり、エネルギー供給とインフラ改善は急務とされている。政府はインフラ改善対策として公共事業省・運輸省・鉱エネ省のインフラ事業予算増額、パブリックプライベートパートナーシップ方式による民間活力起用推進、全国交通網の一層の緊密化の三方針を推進テーマに掲げた。
ワールドエコノミックフォーラムが挙げたインドネシアの社会経済発展を阻害している15要因とそのウエイトは次のようになっている。
1)官僚機構の非能率 16.2%
2)腐敗行為 16.0%
3)不十分なインフラ 8.2%
4)資金アクセス 7.8%
5)インフレ 6.7%
6)不安定な政府 6.4%
7)安定しない政策 6.0%
8)税法規 5.8%
9)知的労働力不足 5.4%
10)労働法規 5.3%
11)勤労倫理 4.9%
12)犯罪・盗難の多発 3.6%
13)税率 2.7%
14)低い保健衛生レベル 2.7%
15)外為法規 2.2%


「一日7千ルピアが貧困ライン境界線」(2010年10月5日)
中央統計庁が貧困ラインの新しいインデックスを定めた。2010年3月のデータにインフレ要素を加えて計算された全国平均値はひとり一ヶ月21万1千ルピア、一日に直せば7千ルピアというのが貧困ライン境界金額で、これは食品と非食品を合算したものになっている。食品はひとり一日2千1百カロリーを摂取するために必要な金額としてひと月155,615ルピア、非食品は保健・教育・交通などの面から見た必要金額としてひと月5,600ルピアという内訳になっており、一国民の消費合計が21万1千ルピアを上回っていてもいずれかのカテゴリーがその金額に満たなければ貧困ライン下と見なされる。ここで言っている金額は所得を意味しているのでなく、本人の収入・だれかからの援助・国や自治体からの供与などの合計が各カテゴリーごとにひと月の需要を満たしているなら、その者は貧困ラインの上にいることになる。
州別に金額は異なっており、ジャカルタ首都特別区はひとりひと月331,000ルピア、バタムのあるリアウ島嶼州は300,000ルピア、アチェは288,000ルピア、リアウ州256,000ルピア、中部ジャワ州199,000ルピアというところが地方別リストの上位を占めている。
この新しいインデックスに従うと、全国の貧困者数は3千1百万人で総人口の13.3%となる。しかし国会は中央統計庁のこの新たなインデックスが最新の国民経済状況を反映していない政治的なものであると批判している。


「ジャカルタにやっと許認可単一窓口がオープン」(2010年10月13日)
ジャカルタで事業を興す場合、会社設立に続いてさまざまな許認可を都庁から得なければならない。ジャカルタではこれまでその許認可手続に60日間の時間とひとりあたり国民所得の26%という費用を払わなければならなかった。ちなみにタイの場合だと必要な許認可手続は32日間の時間とひとりあたり国民所得の6.3%という出費になっている。
都民が事業を興せば所得を得る者が増加し、徴収する諸税も増える。その効果は許認可手続のために納める課金よりはるかに大きなものになり、都庁の収入は増加して潤沢な資金を諸政策に使えるようになる。
ということで都庁は都民の事業投資振興をはかるために事業開始時に取得しなければならない19件の許認可をひとつの窓口ですべて引き受ける統合窓口システムを開始した。この窓口で事業開始に必要なすべての許認可取得手続が行なえるので、事業を始めたい都民はそこへ来てさまざまな手続を依頼するだけでよくなる。この窓口システムでこれまで60日かかっていた19件の許認可手続は38日間で完了されるようになるとのこと。都議会議員のひとりはこの新システムによって都民の事業意欲が高まることが期待されるとコメントした。また事業開始は首都の経済に有益な効果をもたらすものであり、その許認可手続はだれにとっても平等なものでなければならない。特に外国人とインドネシア人の間の差別待遇はあってはならないものだ、とも強調している。


「製造会社の製品輸入が解放される」(2010年10月22日)
2011年1月1日から製造会社の製品輸入が公式に合法化される。従来からの法規によれば、製造会社が輸入できるのは原材料・補助材・生産設備・自家使用事務機器など自社が生産活動を行うのに必要なものに限られており、製品輸入はサンプル品あるいは自社輸出品の出戻りに限定されて、本社や自社系列の他国工場が作った完成品の輸入は特裁許可を取らない限り法規違反とされていた。
マリ・エルカ・パゲストゥ(Mari Elka Pangestu)商業大臣は2010年10月4日に出した商業大臣規則第39/M-DAG/PER/10/2010号で、製造会社が製品を輸入販売することを公式に許可した。製造会社の定義として、投資調整庁もしくは商業大臣の指示に則して商業分野の監督を行なう州政府担当局が発行した製造輸入者認識番号(API−P)を持つ会社となっている。製造会社が輸入できる製品は製造事業許可もしくは類似の許可で承認されている品目カテゴリーに限られ、また製品輸入を行う場合は商業省に登録しなければならない。また製品輸入製造会社は実績の有無にかかわらず3ヶ月ごとに製品輸入実績報告書を提出し、報告書に対するポストオーディットを受け、輸入された製品が正しい品目カテゴリーから逸脱していないこと、輸入手続上での逸脱がないことなどの調査をクリヤーしなければならない。
アピンド副事務局長はこの政府方針について歓迎の意を表明し、製造会社の製品輸入に際してはこれまで監督政府機関のリコメンデーションを得るプロセスが必須だったが、これでそのプロセスは姿を消し、費用と時間の効率化が実現する、とコメントした。「事業者はこれまでフルレンジの商品エクスポージャーを行なうのに国内工場での生産分だけでは足りないため、他国の工場から製品を輸入していた。そのために製造会社とトレーディング会社のふたつの事業エンティティを持たなければならなかったが、そんな非効率な状況はもう過去のものになる。もう製品を輸入したとして製造事業許可が取り消されるようなこともなくなるにちがいない。」実業界はこの新政策によって事業の経済体質が一層強化されることを期待している。


「オフィススペース需要が上昇」(2010年11月10日)
2010年1−10月期ジャカルタのビジネス中心街におけるスペース販売は153,700平米にのぼり、2009年同期実績の109,600平米から4割増になっていることをカッシュマン&ウェイクフィールドインドネシアが報告した。この状況は昨年のグローバルクライシスによる購買力低下と今年のクライシスから脱した購買力上昇の顕著な対比であり、且つ最近のルピアの対米ドル高の影響がそこに加わったものであると分析されている。
2010年第2四半期の販売は52,181平米で、第3四半期は更に10%伸びて57,400平米に達した。一方賃貸スペースは今年第2四半期と第3四半期はほぼ同じレベルで推移している。今年第3四半期は大型企業のオフィススペース拡張あるいは移転のために成約実績が高められている。プルマタ銀行がスディルマン通りのバークレーズハウスで5千8百平米の賃貸契約を行い、エネルギー関連企業がミッドプラザで1千8百平米、ムナラビダカラ1で1千8百平米、ヌグラサンタナビルで8百平米を賃貸するといった大型取引が起こっている。
オフィススペース需要の高まりに連れて賃貸料金も上向きとなっており、2010年第3四半期スディルマン通り地区は平米当たり月額が平均で187,371ルピア、ガトッスブロト通り174,038ルピア、サトリオ通りは193,250ルピアとなっている。サトリオ通りはアグンポドモログループとチプトラがいくつかの高級オフィスビルを建設中。また電力料金値上げのためにサービスチャージも上昇傾向にある。


「事業所の始業時間が渋滞緩和のターゲット」(2010年11月15日)
朝の出勤時間に発生している交通渋滞をやわらげるために都庁は実業界に事業所の始業時間の調整を促す意向。これは学校の始業時間を午前7時から6時半に繰り上げたことで交通渋滞の緩和が見られた実績を踏まえてのもの。
ジャカルタの交通移動の48%は出勤が占めており、特定の時間帯に出勤移動が集中しているために激しい交通渋滞が全都を覆っている。移動先地区別に時差始業を実施すれば、交通移動の密度は分散して薄められる。初期検討段階では、中央ジャカルタ市と北ジャカルタ市は出勤時間午前7時半、西ジャカルタ市東ジャカルタ市は午前8時、南ジャカルタ市は午前9時という案が提出された。これはその各市で事業所がオープンする時間のマジョリティが見比べられた結果、そのように分ければ現状維持の事業所が多くなり、賛同が得られやすいという判断にもとづいている。中央ジャカルタ市と北ジャカルタ市で午前7時半にオープンする事業所は前者が45.3%、後者は47.6%ある。西ジャカルタ市と東ジャカルタ市では、前者が59.9%、後者は64.3%が午前8時を始業時間にしている。また南ジャカルタ市では午前9時にオープンする事業所が47.98%にのぼっている。しかし公務員は役所がどの市にあろうと従来どおり午前7時半の始業時間が維持される。市民へのサービスは早朝から開始されなければならない、というのがその理由。
ファウジ・ボウォ都知事はこの方針の正式決定を、シミュレーションをいくつか行なった上で、その有効性に確信が置けることを確認してからおこないたい、と語っている。特にこれは実業界に強制できないことがらになるため、実業界の理解と協力の得られるような条件をそろえた上で呼びかけをおこなっていく姿勢を明らかにしている。
アピンド首都支部はこの都庁方針について、実業界はその方針の協議に招かれていないが、経済効率を悪化させている都内の交通渋滞を緩和させるために協力していきたい、と事務局長が発言した。交通渋滞は産業界にロスをもたらしており、渋滞緩和政策は歓迎するところだが、始業時間の変更に伴って事業所での勤務シフト時間の変更が起こると従業員がこれまで受取っていた残業代の計算方式に変化が起こる可能性がある、と労働界に向けてコメントしている。


「首都の不動産ビジネスは好調」(2010年11月16日)
2010年第2四半期首都の不動産ビジネスは、賃貸オフィススペースの成契が一等地/CBDで37,792平米、二等地で17,083平米の合計54,874平米あり、平米当たりの平均賃貸料金は月額が一等地/CBDで45,000〜206,655ルピア、二等地では45,000〜134,775ルピアだったとコールドマンバンカーコマーシャルが報告した。
賃貸小売スペースは33,600平米、売却小売スペースは3,464平米、そして住宅スペースはコンドミニアム販売が2,121ユニットで完成済み358ユニット建設中1,763ユニット、平米当たり価格は一等地で1,110万から2,350万ルピア、二等地で580万から1,560万ルピアだった。賃貸アパートメントは118ユニットで一等地58ユニット二等地60ユニットという内訳、平米当たりの月額料金は一等地が7.22〜28.02ドル、二等地は6.24〜26.81ドルだったとのこと。


「統計に載らない貧困世帯」(2010年11月25日)
ジャカルタには貧困世帯がまだ2万2千ある、とファウジ・ボウォ都知事が語った。西ジャカルタ市スリピ地区を稼ぎ場にしているくず拾いのナルシッ61歳は、毎日の平均収入は1万5千ルピアだと語る。従来使われてきた貧困ラインの指標によれば、毎日の収入が1ドルに満たない家庭を貧困ライン下と判定する。現在の1ドル9千ルピアを貧困ライン指標に使うなら、そのくず拾いは貧困者に含まれない。
しかし現実問題として、そのくず拾いは毎日の収入を食べることだけに使っており、1万5千ルピアは食べ物購入で使い果たされてしまう。ナルシッが貧困者の統計に含まれていない可能性は高いものの、かれが貧困でないと言い切れる者は果たしているだろうか?


「商品ラベル承認申請は自分で行うように」(2010年11月25日)
国内で販売される商品にインドネシア語ラベルの添付を義務付けた2010年商業大臣規則第22号の実施は進展している。ラベル添付が進められている非食品分野の商品は103カテゴリーあり、家電品46、自動車部品24、その他家庭用品等25といった内訳。メーカーや輸入者が商品に添付するラベルは商業省流通商品サービス監督局に届け出て承認を得ることが義務付けられており、監督局はその手続をメーカー・輸入者は自社で行うようにして第三者の代行サービスは使わないように呼びかけている。これは承認申請の中に確認や質問が必要な事項があった場合、代行者に尋ねても回答がおぼつかないため承認プロセスに時間がかかるという問題が生じており、標準処理日数5日をはるかにオーバーするケースが見られることから、その呼びかけが出されたもの。
また監督局は市場における実態監視と調査をNGOの協力を得て行うことにしており、現場での実態をより細かに把握できるよう準備を整えている。


「スコフィンドがSNI検査認証機関に」(2010年11月26日)
工業省がPTスコフィンドをSNI(インドネシア製品規格)検査認証機関に指定した。SNIが義務付けられた58品目の実施と監視における適合審査機関指定に関する工業大臣規則第109/MIND/PER/10/2010号で工業大臣は26品目に対するSNI認証を行なうようスコフィンドに命じている。それと同時にスコフィンドのチビトン検査場で21品目、スラバヤ検査場で7品目、メダン検査場では6品目のSNI合格検査を行なうように指示が出されている。
その認定対象26品目とは、白熱電球、省エネ電球、安全ガラス、セメント、鉄筋アスファルト鋼、小麦粉、クリスタル粗糖、一口ガスコンロ、肥料、一次電池、皮製安全靴、電気アイロン、容器詰め飲用水、ケーブル、電気ポンプ、オーディオビデオテレビブラウン管などで、またチビトン検査場で取り扱われる品目は、省エネ電球、亜鉛鋼鈑、小麦粉、クリスタル粗糖、一口ガスコンロ、肥料、容器詰め飲用水、ケーブル、ガスライター、電気ポンプ、電気アイロン、オーディオビデオテレビブラウン管など。
スコフィンドのスラバヤとメダンの検査場は、取扱い品目拡大のための能力充実に取り組んでいる。


「国内化粧品業界に危機迫る」(2010年12月1日)
アセアン域内市場開放の一環として医薬品化粧品の共通規準を設け、自国で域内共通検査基準に合格したものは輸出先国での検査と登録の義務から除外するという構想にインドネシアのジャムゥおよび化粧品業界が嘆息している。
アセアン優良化粧品製造規準の実施は2011年1月1日から開始されることになっているが、インドネシアの化粧品メーカー750社のうち60%は中小零細事業者で、製造規準で定められている工程を実施するための設備と技術をクリヤーすることができない。
インドネシアコスメティック協会役員はそれについて、「インドネシアのコスメティック製品の製造に国際スタンダードを実践するのはまだ難しい。インドネシアでコスメティックとジャムゥは同じ畑に乗っている。国際製造規格に準拠した設備や技術をその広い畑にどうやって定着させればいいのだろうか?ましてや製品検査と登録に一製品当たり億ルピアの費用がかかるのだから。これではインドネシア製品が輸出先国で受け入れられなくなる事態は目に見えており、反対に規準をパスした外国製品は何のバリヤーもなくどんどん国内市場に入ってくる。」とコメントしている。
経済統括省商工業担当デピュティはこのセクターに関して、アセアン規格への適合準備が遅れてしまったことを認める。「政府がこれから行わなければならないのは、国内コスメティック業界をサポートしてその製品が輸出先国の規準に合格するよう調整を取ることだ」とのデピュティの弁。
国内有数の化粧品メーカーであるムスティカラトゥのCEOは、アセアン規格の実施が同社の事業に与える影響は功罪相半ばすると見ている、と語る。「輸出がたいへんやりやすくなるのは明らかで、輸出者は競って域内輸出に力を入れるだろう。インドネシアの輸出者にとってもそれは同じだ。しかし国内化粧品生産者の中にはまだ外国産品とそのような条件下での競争ができるところは少ない。特に価格・経営そして資金付けのポイントが弱点になる可能性がある。」プトリ・ワルダニ、ムスティカラトゥCEOはそう国内業界の体質を分析している。


「四代目まで続く同族会社は5%」(2010年12月3日)
ファミリービジネスは長続きしないというセオリーをジャカルタコンサルティンググループのサーベイが裏付けている。
インドネシアの同族会社は二代目で61%に減り、三代目は24%、そして四代目ともなると生き残っているのは5%しかない。世代交代と共に会社が発展しているインドネシアの同族会社は、カラグループ、カルベファルマ、ムスティカラトゥ、ボソワグループ、サムドラインドネシア、シナルマス、ニョニャムネル、ダナルハディなど数えるほどしかいない。似たような傾向は世界中で見られ、四代目まで続いている会社はアメリカで3%、オーストラリア9%、アジアも9%で、インドネシアはアジアの中で政治的社会的要因が複雑なせいか、ファミリービジネスは続けにくい国になっているようだ。ヨーロッパだけは事情が違っており、四代目まで続いている会社は27%もある。中には世代が下がってそれまでのローカル規模の会社から一躍グローバル規模にのし上がっている例も少なくない。
インドネシアの同族会社の中で世代継承を計画的に行なっているところは28.8%あるとのこと。事業のほとんど9割方はもともとファミリービジネスからスタートしたもので、政府高官の子供だけが特殊例に入る。政府高官の子供は普通、友人や仲間と共同で事業を興しており、一族がそこに組織的に加わることは滅多にない。しかしファミリービジネスから出発した会社でプリブミとノンプリブミの家庭は次世代に対する姿勢が異なっている。子供が5人いればノンプリは全員がビジネスの世界に入っていくが、プリブミの場合はそのうちのひとりだけがビジネスの世界に入り、他の子供は医者や軍人になる道を選択する傾向が強い。そこにビジネス継承という面から見たときの強さ弱さが表れるわけだが、ビジネスが政治に屈服しているインドネシアでは、単にビジネス継承だけを重視してもビジネスの維持存続がそれで安泰となるわけでないことは、過去の歴史が示している。
ともあれ、インドネシアの同族会社はファミリーが会社の要職をすべて握る経営スタイルから、ファミリーは会社オーナーの位置に退いて会社経営をプロフェッショナルに委ねるスタイルへの移行が進みつつある。しかし、カラグループ総帥のユスフ・カラ前副大統領はそのトレンドに関し、ファミリー会社経営者の座から退いて経営はプロに委ねろということを言われるたびに自分は不愉快になる、と述べている。「それじゃあまるで、同族会社経営者はみんな能無しみたいじゃないか」と・・・・。


「全国の事業許認可プロセス共通化を目指す」(2010年12月9日)
事業投資促進をはかるために新規事業開設に対する許認可プロセスの日数短縮とプロセス内の審査ポイントに関する評価の一貫性構築を目的にした2010年大統領指令第1号に従って、各地方自治体は許認可プロセスを単一統合窓口で処理することが求められている。
この政策の遂行を監督するために投資調整庁が中心となって、副大統領府官房、経済統括省、内務省、商業省、官僚効用改善行政改革省から成る単一統合窓口サービス評価委員会が結成され、130の州県市行政での実態評価を行なった。
ギタ・ウィルジャワン投資調整庁長官は、全国130の事業開設許認可単一統合窓口を設けている地方行政府の中で、やっと50程度が自力で統合一貫処理を行っているだけで、残る80は単なる受付窓口機能しか果たしておらず、実際の許認可プロセスは労働局や商業局など従来からそのプロセスを行なってきた機関に回しているだけだ、と地方行政府の中でこれまでの利権を維持しようとする動きが強いことを批判した。
今回行なわれた評価で、特に優れた内容の地方自治体が選抜され表彰を受けることになった。州レベルでは東ジャワ州投資調整庁、県は中部ジャワ州スラゲン県統合許認可庁、市は西ジャワ州チマヒ市統合許認可サービス事務所が最優秀機関として表彰される。来年は260の州県市統合窓口に対する評価を行なうのを目標にする、と投資調整庁長官は語っている。


「不法輸入品が増加」(2010年12月9日)
国際港を擁するマーケットで販売されている消費物品の中に不法輸入品が増加していることを商業省流通物品サービス監督局が公表した。「特定輸入監視港周辺で異なる日に行なわれた検問調査結果によれば、不法輸入品が顕著に増加している。スラバヤではLPGボンベ用低圧調整器、多機能カラープリンター、LPG用ゴムホース、マカッサルではその他にコンピュータ用LCDモニターと携帯電話器が見つかっている。」
スラバヤの卸売りセンターで発見されたガス調整器はSNI(インドネシア製品規格)に準拠しておらず、また義務付けられているSNIマークが表示されておらず、製品登録番号もない。ショッピングセンター電気製品売場で発見された多機能カラープリンターはインドネシア語の取説と保証書がついておらず、贋札撲滅統括庁からのホログラムステッカーも貼られていない。マカッサルで見つかった様々な携帯電話器は、インドネシア語の取説と保証書がなく、ラボ検査証明書もなく、逓信総局のホログラムステッカーも貼られていない。
商業省はジャカルタをはじめ特定輸入監視港周辺のマーケットを今後も重点的に監視していくことにしている。ソフィヤン・ワナンディ、アピンド会長は、不法輸入された消費用物品は国内経済にダブルの損失を与えているとコメントしている。不法輸入された飲食品・衣料品・家電品その他消費物品は全国総輸入の30%に達しているとのこと。


「没工業化が深刻化」(2010年12月23日)
原材料の輸出が増大していることから、インドネシア銀行総裁は国内製造セクターの没工業化が進んでいるとコメントした。ダルミン・ナスティオン、インドネシア銀行総裁は、国家経済のポジティブな発展の中で没工業化の脅威はインドネシアの将来に大きなチャレンジをもたらすものになる、と述べている。「天然資源産業の役割が上昇を続けており、そのままにしておけば没工業化に襲われるのは確実で、それは産業付加価値を低下させ経済生産性を蝕んでいく。インドネシアは依然として失業と貧困のさ中にあり、そこに没工業化が起これば国家経済は損なわれる。別の要素としては、国内製造産業が旺盛な輸入活動を行なっていることだ。そのために高い経済成長は顕著な輸入増を招き、国家収支の黒字はそれによって削り取られていく。」
MSヒダヤッ工業大臣は中銀総裁のそのコメントに対し、下流化プログラムと付加価値をつける産業開発に対するインセンティブ政策の活性化に努めている、と語った。「輸出の中で天然資源のシェアは加工製品より多くなっており、明らかに没工業化が進行している。没工業化を避けるために輸出製品は天然資源そのままでなく、付加価値のついたものにしなければならない。これは全関係者に対する警告だ。パームオイル・カカオ・ゴムなどの農産物は下流化を行なってより加工度の高い形で輸出されるようにする。それを実現させるためにはインセンティブを与えなければならない。」昔から何度も語られている基本方針を繰り返して、大臣はそう述べている。


「CSRと納税軽減のジレンマ」(2010年12月24日)
企業社会責任(CSR)実施のための経費支出は法人所得税課税収入から差し引くことができる。その原則に関連して国税総局がテクニカルな諸条件を広報告知している。つまり、いくらCSRのために会社が経費を使っても、その条件を満たさないかぎり国税側はそれを非課税対象経費と認めないわけだ。
国税総局指導サービス広報局長は、所得税法は非課税CSR経費について詳細に定めているわけではない、と言う。「非課税CSR経費はISO26000に規定されているCSR基本5項目に一致している。消費者・社会発展・環境・労働・基本的人権に関わるイシューがそれだ。それには、販促経費・奨学金・職業実習や訓練・特定地域特定条件の従業員に対する飲食品券・廃棄物処理経費・全国規模災害への援助・R&D支援・社会インフラ建設・教育施設建設・スポーツ振興援助・喜捨のような宗教的寄進などが該当している。また特定セクターでは、鉱業で採鉱地埋立て準備金、林業で再植林費用、産業廃棄物処理事業で廃棄物投棄場所の整備とリハビリなどもある。それらの経費は、次のような条件に合致する場合、年間課税収入から差し引くことができる。」
まず前年度に利益計上がなされていることが前提条件になる。寄付金のために赤字になることは認められない。出費が公的な証憑で証明されなければならない。寄付金受取り者と特別な関係にないこと。そして寄付金受取り者がNPWP(納税者番号)を持っていなければならない。ただし納税者資格を免除されている法人・団体にそのNPWP保有条件は適用されない。また寄付金に関する部分では現在更に詳細な検討が加えられており、新たな条件が追加される可能性がある。
ところで国会第11委員会メンバー議員のひとりは、本来CSRは企業の純利益を使って行なうものであり、CSR出費を課税収入から削るという方針はおかしい、と現在進められている方向性を批判している。「CSRが企業の事業経費に加えられるとROA・ROI・ROEやネットマージンが低下し、企業の競争力が低下する。だからCSRを課税計算に含めるのはフェアでない。これは大きいジレンマだ。」産業界に対するCSR振興のインセンティブを納税に結びつけてしまったインドネシアのジレンマを同議員はそう指摘している。


「2010年のオフィススペース新規契約は二倍増」(2011年1月7日)
2010年の首都CBD地区オフィススペース需要は2009年の10万平米を倍増する20万平米超で、取引高も105億ルピアから210億ルピアに倍増した、と不動産コンサルタントのカッシュマン&ウェイクフィールドが報告した。首都のオフィススペース供給が2010年末時点で413万平米に達したのはセントラルスナヤン3とSCBDロット18オフィスタワー1が供給スペースを大幅に増やしたため。総供給のうち7割は賃貸で、売却用は3割に過ぎない。入居率は85%で安定している。賃貸料金はAグレード物件が平米当たり18万5千ルピア、Bグレードは14万ルピア、Cグレードは12万ルピアで、平均は15万ルピアになっている。2011年の賃貸料金予測については、新規契約と契約更新の際に値上がり賃貸料金がオファーされることになるだろうとの弁。グローバルクライシスからの脱却による経済の活況はオフィススペース需要を押し上げており、新規スペール供給は潤沢にあるものの、入居率は向上するものと見られている。
一方首都の小売店舗スペースは、購買力の向上とプロスペクト人口増のためにジャボデタベッ地区では小売店舗、中でも飲食店のスペース需要が強まるものと予測されている。2010年末の総供給は356万平米で、67.7%が賃貸用残る32.3%が売却用となっている。


「政府は四分野の政策を整備統合せよ」(2011年1月11日)
運輸・通関・税制・許認可の四分野について政府は政策整備を行なえ、とエコノミストが提言している。「2011年にクオリティのある高い経済成長を実現させるためにはその四分野を整備しなおさなければならない。インドネシアはまだ6.5%の経済成長を達成することができるが、その整備が行なわれることが前提だ。概論として政府は次の三ポイントの発展を図る必要がある。まず諸経済政策に効果的に関与する一貫的経済政策の策定と経済ボトルネックのミニマイズがあげられる。次に行政管理プロセスのスピードアップ。特に法務人権省の法人許認可プロセス、運通省と大蔵省の運輸・通関・税制、そして労働分野。三つ目は、オーストラリアで行なわれているようなビジネスプロセスの効率レベルを事業者に強制的に報告させること、そして2010年にも依然として起こっている国家指導者のからむ大規模なホワイトカラー犯罪やその他の逸脱行為をただちにやめさせることである。」政策改革のための学会理事はそう提言している。


「税関が摘発した密輸事件は3,277件」(2011年1月12日)
トーマス・スギジャタ税関総局長が、2010年に税関が取り扱った密輸事件は3,277件あったことを明らかにした。中でも件数の多かったのはタバコで980件、丸太原木や大型二輪車など貿易禁止あるいは規制品目645件、アルコール飲料357件、麻薬禁制薬物156件、その他家電品・プラスチックペレット・食糧・燃料油などが1,059件あった。一方、海上パトロールが摘発した密輸物品の中では硝酸アンモニウムが2千バッグ50トンにのぼり最大ポーションを占めた。ジーゼル油420トン、中古衣料品13,505袋の密輸も目立った。そのうち151件は法的プロセスが継続している。50件は捜査中、8件は書類送検、4件は差し戻し、94件は裁判の準備に入っている。


「タックスホリデーは2008年から行なわれている」(2011年1月21日)
外国の事業投資家はインドネシア政府にタックスホリデー政策を実施するよう求めているが、インドネシアにはタックスアローアンス制度というものがあり、これはタックスホリデーと同等か、あるいはそれ以上のメリットがあるものだ。このタックスアローアンス政策をタックスホリデーと呼んでもかまわない、とアグス・マルトワルドヨ蔵相が表明した。投資に関する2007年法律第25号にはタックスホリデー制度を設けると明言されているというのに、2008年法律第36号所得税法にはタックスホリデーという言葉はどこにも出てこず、インドネシア政府のタックスホリデーに対する不透明な姿勢が国内外経済関係者の批判をこれまで誘っていた。蔵相の発言はそれに応えたもので、それは単なる言葉の問題だという態度を蔵相は取っている。
タックスアローアンス制度とは、特定地域に新規投資する特定業種に与えられる優遇税制で、総投資額の最高5%までを6年間継続して利益から差し引くことができ、資産に対する償却は規定より早めることができ、外国株主への配当所得税は10%で、赤字決算の繰越は5年以上10年以下で持ち越すことができ、機械設備の輸入に際してはPPh22Imporが免除される。このタックスアローアンスは2008年政令第62号で定められたもので、そのときの対象業種は畜産開発業・産業用林活用事業・低質石炭採鉱と活用・地熱エネルギー産業・ミルク産業・その他食品と調味料産業・パルプ厚紙産業・石油精製業・ミニ天然ガス精製設備建設・工業用化薬品産業・医薬品化粧品その他化薬品産業・人造繊維産業・ゴムとゴム製品産業・陶器製品産業・鉄鋼ベースメタル産業・非鉄基礎金属産業となっていたが、政府はその内容を改定するため関連省庁に対してタックスアローアンス政策を適用するのに妥当な業種を提案させたところ、なんと120種もの産業セクターが名前を連ねた。
工業省は70セクター、漁業省は14セクター、鉱エネ省は10セクター、農業省も10セクター、森林省はひとけたというタックスアローアンス適用対象セクターの提案に経済統括相デピュティ代理は、恩典というものは与えられて力がつけば対象から外されて減っていくものであるはずなのに、これでは減る気配はない、とため息をついている。


「今年の十大問題」(2011年1月24・25日)
2011年1月10日、SBY大統領は閣僚だけでなく州知事から県令市長までを一堂に集めて2011年開発プログラム実施に関する政府業務会議を開催し、今年の経済開発に関する政策の意思統一を行なった。
大統領はそのスピーチの中で次のように、開発プログラムに障害を及ぼす重大な問題を10件指摘した。
1)食糧とエネルギーの価格圧に起因するインフレ
2)2011年度政府予算内の補助金膨張と支出予算執行残
3)需給の伸びが統御できていない電力を含むインフラ不足
4)事業遂行における許認可と法確定に関連する、中央と地方の各レベルに横たわる投資への障害
5)国税分野での癒着を含む行政官僚の汚職と癒着
6)環境破壊を中心にする、鉱業と林業分野での違反
7)中央政府から地方政府まで政界を蝕み続けているマネーポリティクス
8)教育・保健・マージナル階層向けサービスなど国民に対する行政サービスの遅滞
9)海外出稼ぎ者に対する保護と支援の弱さ
10)自然災害に対する行政と担当官の準備と対応の不足
大統領はまた、国家開発の基本原則8項目をあらゆるレベルの行政高官にリマインドさせ、中央と地方が各個ばらばらに動くのでなく、組織的に統制された開発政策を実施するよう訴えた。その基本原則とは次の通り。
1)環境保全と成果の均等分配に配慮した、公正で持続的な開発の実施
2)資源と学術という二分法をやめ、開発基盤としての学術・文化・資源の統合的アプローチを推進する
3)各島嶼の経済開発において、ある一州を特別扱いするのでなく、地域性という次元をふまえた開発を推進する
4)労働力優先・成長優先・貧困撲滅優先・生活環境保全優先という四本柱を統合した戦略を用いた開発推進
5)貧困国民寄りで且つ環境に優しい国際交流においてチャンスと利益を収穫する
6)機構的制度的に協力と調和を強化し、行政・立法・司法の一体化した協働パターンによって開発を成功させる
7)改造や改革を含む開発は持続的・段階的・積極的に行われなければならない。近道などなく、速成もない。年間の開発プログラムは成功させなければならない。
8)開発はセクター間と地域間でシナジーを持つものでなければならない。
その開発目標達成のためにSBY大統領は16項目の指令を発し、大統領特別指令として行政プログラム完全遂行、全関係者を糾合し地元が保有する潜在性を開発し活用する地方開発など共通的な指令が6件と、期限を守った予算執行、インフラと電力建設成功の確定、投資許認可の簡素化、腐敗行為撲滅闘争と不法鉱業林業活動の取り締まりなど限定的なオリエンテーションが10件、全出席者に指示された。


「輸入関税増収を狙う新規則」(2011年1月26日)
輸入物品に対する物品区分システムと輸入関税タリフ賦課決定に関する2010年12月22日付け大蔵大臣規則第241/PMK.011/2010号で農産物・水産物・医薬品・製造産業・アグロ産業・ハイテク産業・中小産業の輸入品に5%の関税が適用されることになった。繊維業協会西ジャワ支部事務局長はこの政府方針について、復興のレールに乗り始めた繊維衣料品業界を打ちのめすものだ、とコメントした。「業界は綿やポリエステルなどの素材値上がりで悲鳴をあげているというのに、この規則によって繊維衣料品産業への圧迫はますます強いものになる。おまけに化薬品・機械・部品などの資本財も5%課税されることになった。輸入関税適用対象にされたのが加工されて原材料となる資本財であるということが問題なのだ。資本財の価格がアップすれば、その影響の大きさが想像できるだろう。奇妙なのは、政府が中国産衣料品をはじめとする輸入製品に関税をかけないことだ。おかげでローカル製品の製造コストはアップし、そんな状態で中国産廉価製品と競争しなければならない。おまけに工業省が進めている生産機械の若返り政策とこの大蔵省の新規則は矛盾している。機械若返りに10%の補助金を与えている一方で、大蔵省はその機械に5%の関税を賦課している。資本財のコストアップで業界の進展は足止めを食う。行き着くところは雇用が停滞し、へたをすれば従業員減らしが起こりかねない。」
インドネシアオレフィンプラスチック産業協会事務局長は、モノマーとプラスチック製造機器に対する輸入関税賦課は業界の競争力を失わせ、上流下流産業を共に死滅にいたらしめる、と言う。品目コード2901.21.00.00エチレン、2901.22.00.00プロピレン、84.77ゴム・プラスチック加工機械あるいはその双方を使う製品を作る機械に対する輸入関税5%課税がそれだ。この大蔵大臣規則第241/PMK.011/2010号は2005〜2010年の輸入関税調和化の一環で行なわれているものであり、政府は2011年度関税収入大幅増を期待してその方針を打ち出してきたにちがいない、と事務局長はコメントしている。「この規則は2010年11月から前倒しで始められている。2010年12月22日船積貨物が1月8日に輸入通関されたとき、3千5百トンに200億ルピアが課税された。プラスチック産業の原材料は国内供給が需要を満たせないため、輸入に頼らざるをえない。モノマーの輸入は年間100万トンで12億ドルが支出されている。新規則で政府は少なくとも6千万ドルの関税増収を得るだろうが、それは関税引上げ前に政府が得ていたPPNと法人PPhに比べてきわめて小さいものでしかない。」
業界者は政府の方針にそう抗議を表明している。


「債権回収は赤字になるインドネシア」(2011年2月8日)
インドネシアで事業を行うのは容易なのか?世銀が発表したドゥーイングビジネス2011でインドネシアは183ヵ国中121位に置かれた。そのサーベイ結果が文頭の問いに対する回答であるにちがいない。
過去二年間、このサーベイで122位と129位に置かれたのに比べれば、インドネシアは進歩していると言えるかもしれないが、21位のマレーシア、19位のタイ、78位のベトナムなどと比較するとインドネシアの低さは一目瞭然だ。
このサーベイは調査対象国の事業者・法律コンサルタント・公認会計士・判事・政府高官らから集めた評価を集計したもので、2011年サーベイでは8千2百人が回答している。評価は(1)事業開設、(2)建築許可手続、(3)不動産登記、(4)借入金入手、(5)投資者保護、(6)納税、(7)国際通商、(8)契約履行、(9)事業終結の9項目に関するもので、各項目のそれぞれを評価したものが集計されて、それぞれの国における事業実践の難易度が測定される。インドネシアは(1)(4)(6)(8)(9)の5項目で評価が悪く、インデックスは100ポイントを超えた。
項目(1)では、手続・費用・最低資本金条件の三ファクターに焦点が当たった。インドネシアより劣る国がないわけではない。694日をかけて20のステップを踏まされる国もある。カナダのように単一窓口ですべての手続がなされる国を世銀は賞賛する。国内ではソロでそれが成功しており、投資調整庁は全国地方自治体に呼びかけてそれを推進している。それが実現することで手続円滑金がセーブされることになる。
事業開設費用は、デンマークは無料である一方、ひとり当たり平均国民所得の735.1%を必要とする国がある。最低資本金は多くの国が引下げを進めているものの、いまだに5千米ドルを要求している国もあると世銀は言う。インドネシアは2007年株式会社法で5千万ルピアと定めているのだ。
項目(6)では、納税頻度・業務時間・税率が注目された。年間135回の納税とその事務処理に2千6百時間を強いる国がある一方、スエーデンは年間2回の納税、UAEは12時間で事務処理が終わる。税率は事業利益に対して339.7%という国が最高で、最低は10.6%だった。
項目(8)は他の項目以上に改善を真剣に取り組まなければならないポイントだろう。この項目も手続・時間・費用というファクターに着目されている。インドネシアの債権回収費用は122.7%なのだ。これは債権を持つことが赤字になることを意味しており、その点でインドネシアはティモールレステ、カンボジャ、ジンバブウェ、モザンビーク、シエラレオネ、コンゴなどの同類に入っている。ルワンダで成功したような法廷改革がその改善の鍵になる、と世銀は評している。
項目(9)も時間と費用というポイントが重視される。このプロセスに8年の歳月と保有資産の76%を費用として流出させる国がある。
インドネシアが外資誘致に熱中している昨今にこのサーベイ結果が出されたのはたいへん皮肉なことである。そのサーベイ結果に外資がどのくらいのウエイトを占めているのか不明だが、投資調整庁はその結果を踏まえてこれまでの政策をさらに深めるべく検討を始めた。国会議員諸兄がこれまでのように外国へ比較研究のための見学ツアーを継続しようというのであれば、インドネシアより上位にある諸外国でその国民がビジネスをやりやすいのはいったいどうしてなのか、ということをじっくり見聞してきてほしいものである。欧米諸国に行く必要などない。アセアン近隣諸国で事足りるにちがいない。
これはインドネシア大学法学部修士課程教官アフマッ・ゼン・ウマル・プルバ氏の論評を抄訳したもの。


「価格移転問題の対応に新機軸」(2011年2月9日)
価格移転問題に関する国税総局長規則第PER-69/PJ/2010号が2010年12月31日付けで制定された。これには移転価格合意(Advance Pricing Agreement)というタイトルが添えられている。国税総局国税規則国際協力次局長はこの新規則について、インドネシアの企業が外国の特別な関係にある相手との取引において、その相手国税務機関を巻き込んで妥当な輸出価格あるいは利益幅を事前に協議し、国税側が承知したうえで実施するものであり、インドネシアの企業が特殊な取引価格を国税総局に提案して認めさせる機会を提供するものである、と説明している。これまでは価格移転問題への対応が国税の税務調査一辺倒だったために企業側にとってアンフェアな状況が出現する可能性もあったが、今後は事前協議によって承認された取引価格が税務調査官に問題視されることはなくなるにちがいない。
この移転価格合意は初期協議が最長で3ヶ月かかり、企業が適正価格を国税側に提示するとその内容検討が行なわれ、その検討の中で取引相手国の国税機関の関与が始まる。適正価格あるいは適正利益というのは、特別な関係のない相手との間の類似の取引に用いられる価格あるいは利益、もしくはビジネス慣習や妥当性原理をベースに持つ価格あるいは利益を意味している。特別な関係にある相手との取引では、その適正価格あるいは適正利益が用いられることが原則とされる。
この移転価格合意は国税総局もしくは相手国の国税機関とインドネシアの企業が結ぶ合意書の形を取り、それは特別な相手との全部あるいは一部の取引をカバーするものとなる。


「国税政策パッケージ」(2011年2月14日)
アグス・マルトワルドヨ蔵相が国税関連政策パッケージを2010年12月に公表した。その政策パッケージは8項目から成っており、それらが相互に関連し合いながら効果を発揮することが期待されている、と大臣は述べている。
8項目の第一は国庫収入の中心をなしている国税総局と税関総局での施策と遂行の機能分離で、その二総局は自ら規則を定めながら徴税を行なってきたことから、2011年1月からその両総局は徴税遂行機関としての機能に徹し、規則作成と制定は国家会計政策庁が掌握する。
第二、いつまでも奥底にまで粛清の手が届かない省職員の不正腐敗行為に断固たる姿勢を示すため、国税一般規定法第36A条にある職務違反を犯した職員に対する措置を厳しくとっていくことを強調し、その処罰に関する詳細を大臣規則の形で新ためて定めること。
第三、公認会計士との協力を深め、内容の信頼できる国家会計基準に即した財務監査報告書を活用し、納税計算の根拠として認めることを拡大していく。そのため国税総局とインドネシア会計士同盟は相互覚書を結ぶ。
第四、輸入映画と国産映画の国内流通に対するPPN課税を共通化する。また輸入映画に対しては、輸入時の関税、外国の制作者に対するロイヤルティ支払へのPPN課税も発生し、間接的な国産映画界への支援が行なわれる。輸入映画に対する課税は一律メーター当たり0.43米ドルとなる。
第五、2010年政令第93号で定められた寄付金非課税方針に関するもの。政令では災害・R&D・教育・スポーツ・社会インフラ建設に関する寄付金を利益額の5%まで非課税にすることを認めている。
第六、当年度中の非課税限度額計算とPPh納税に関する2010年政令第94号の中で、パイオニア産業での新規事業投資に対するタックスホリデイ(PPh免税)が定められている。
第七、輸入物品対象のPPh22免除手続の簡素化。従来のダブルプロセスが改善される。
第八、援助・贈与・寄付などの諸活動を活発化させるために行政手続を短縮して納税者に便宜をはかる。
その中の第六にあるタックスホリデーについて、民間を積極的に参加させてインフラ建設を促進させようとしている政府は、数多くのプロジェクトの中でリスクが高く、民間の参加意欲の低いプロジェクトに対してタックスホリデーを適用させることにしている。


「工場の完成品輸入許可」(2011年2月17日)
かつて製造輸入者(Importir Produsen)は生産活動と生産品の販売を行うことしか許されておらず、完成品を輸入することは自社製品の返品やサンプル品といった特別のものしか認められなかった。おかげでさまざまな商品の製造メーカーはインドネシアで工場を持ち、また別に製品輸入会社を持つという経済非効率を余儀なくされていた。
2010年10月に出された完成品輸入規則に関する商業大臣規則第39/M-DAG/PER/10/2010号は従来からのコンセプトの枠を取り払うものとして産業界からは歓迎されたものの、国会は強い反対の声をあげている。商業省は既に製造輸入者239社に対して完成品輸入許可を与えた。そのうち212社はBKPMが事業許可を与えた会社、27社は中央地方の監督機関が与えたもの。マリ商業相は、API(輸入者認識番号)−Pを持つ製造輸入者とAPI−Uを持つ一般輸入者は、完成品の輸入内容が異なっている、と国会第6委員会諮問会議の場で説明した。製造輸入者が輸入できる完成品は製造事業許可内に示されている物品カテゴリーに限定されており、一般輸入者とは自由度が違うと大臣は強調している。しかし第6委員会PDIP会派議員はその方針に反対し、ただちに撤廃せよと要求した。「アセアン中国自由貿易協定のために落ち込んでしまった国内製造業界にその方針は大きな脅威を与えており、国内産業はますます没工業化の坂を転がり落ちていくことになる。国内市場が輸入品で埋め尽くされたら、製造産業はどうなる?産業保護育成のためにその方針は撤廃されなければならない。」
デモクラッ会派議員は、製造輸入者が製造活動を行わず製品輸入者に成り代わることは防止しなければならず、生産数量以上に輸入させないよう規制を加える必要がある、と手直しを求めた。更にできれば品目カテゴリーを限定するようにしてほしい、とも商業相に求めている。ゲリンドラ会派議員もその意見に同調した。国会第6委員会議長は、商業省のその方針を一過性のものにするか、あるいは継続性を持たせるのかについての議論がまだ残っている、と語っている。
商業相はそれらの意見に対し、製造輸入者が輸入する完成品のコントロールは容易であり、国内市場に問題をもたらすのは一般輸入者が国内市場に流している輸入品だ、と反論した。過去に出された製造輸入者の完成品輸入禁止緩和規則は細かい条件の付されていないものであり、今回出された規則によってコントロールがより明確に行なえると大臣は説明している。輸入品に対しては、インドネシア製品規格準拠、インドネシア語ラベル規定などテクニカルな問題をクリヤーしなければならず、また製造活動を怠って輸入販売会社のような事業に移れば製造輸入者としての事業許可が無事には済まないだろう、と大臣は述べている。


「2010年輸出商品十傑」(2011年2月19日)
中央統計庁が報告した2010年全国輸出金額は1,297億ドルに達し、対前年比33%アップで古今未曾有の記録を達成した。中央統計庁の分析によれば、国際的商品市況が値上がりし、加えて不況から脱した世界各国の需要増と相まって、商品輸出国であるインドネシアに強い追い風が吹いたことがその記録達成を実現させた要因であるとのこと。
非石油ガス産品輸出商品の十傑は次のような内容になっている。
品目: 2010年1〜11月輸出金額(数字は億ドル)
パーム油: 117.3
繊維衣料品: 101.1
家電品: 96.8
ゴム製品: 84.1
林産品: 78.8
自動車: 23.0
履物: 22.4
カカオ: 19.8
エビ: 8.5
コーヒー: 7.3


「原産地証明書発行機関が増加」(2011年2月21日)
商業省は原産地証明書発行機関を新たに57ヶ所指定し、従来の28ヶ所から85ヶ所に増やした。これは貿易協定を結んだ国や地域が増加し、またそれら相手国への輸出量が増えていることから取られた措置である。2010年は11月までに全国で発行された特恵関税適用のための原産地証明書枚数データを見ると、アセアン域内向けフォームDは7,702輸出者に対し100,020枚総額82億ドル分が発行され、中国向けフォームEは3,887輸出者に対して23,217枚50億ドル相当が、韓国向けフォームAKは3,565輸出者に28,390枚25億ドル相当が、10月から始まったインド向けは75輸出者に対し240枚1.2億ドル相当が作成されている。
原産地証明書発行を申請した輸出者は中小企業も少なくなく、31%が小規模、46%が中規模、5.3%が零細で大企業は16%という割合になっているとのこと。


「KITE対象品の国内出荷時納税を厳格化」(2011年2月25日)
輸出を目的とした輸入恩典手続に関する2003年大蔵大臣決定書第580/KMK.04/2003号の三度目の改定が行なわれ、2011年1月24日付けで2011年大蔵大臣規則第15/PMK.03/2011号が制定された。KITEと通称される輸出を目的とした輸入恩典では、輸出製品を生産するための原材料部品は輸入時に納税仮免除が適用され、製品輸出実績をもって輸入時に納税猶予を与えられた原材料の納税義務が消去されるというメカニズムが用いられている。
ところが品質リジェクトや過剰生産といった理由で輸出先が船積を承認しない場合、生産者は仕方なく国内市場に商品を流す。ファクトリーアウトレットなどで廉価な衣料品が輸出残り品という名目で販売されているのがそれに当たる。
原材料部品輸入量が製品輸出量より多い場合、あるいは未納税原材料を使った製品が国内市場に出される場合、仮免除されていた輸入関税が徴収される。しかし輸入時に納めるPPNやPPnBMは同時に徴税されて当然だが、関税とは別のメカニズムになっているため、いまひとつ徹底されないまま今日に至った。その取りこぼしの網の目を塞ごうというのが今回の蔵相規則であるようだ。
リジェクト品や過剰生産分が国内市場に出されるとき、輸入部品原材料の関税率が5%を超えている場合は製品販売価格の5%が関税として徴収される。5%未満の場合はその税率が計算に使われる。チュカイ課税対象物品である場合は、当然その納税もなされなければならない。さらにPPN・PPnBMもということになるため、輸出残り分がこれまでのように廉価で販売できるかどうかは疑問になってくる。
なお、上の規則は国内に出される製品だけでなく、製造時に産出される副産物についても、国内に出されるときに課税の対象とされる。


「実業界に外部者への研修制度を義務付け」(2011年2月28日)
もはや呼びかけというレベルでなく、大臣決定書の形で義務付けていく、とムハイミン・イスカンダル労相は言う。何を義務付けるのかというと、普通科高校・技術科高校卒業生に対する業務見習い。
従来から、国内の教育システムと産業界の人材需要とは相互乗り入れがはかられないまま自己完結的に行なわれてきたため、「学校は出たけれど・・・」という失業者が全国に充満していた。産業界がそんな失業者に広く門戸を開放し、業務研修を与えて企業が必要としている人材の育成を広範に行い、一方高卒失業者は業務見習いを体験して自分の視野見聞を広めると共に技能を身に着けて産業界の需要に適合できる労働力になり、これまでのミスマッチングをミニマイズしていこうというのが労相のアイデア。
この方針は全国的な制度として、たとえば鉱業の盛んなカリマンタンでは鉱業セクター、スマトラでは農園セクターなどそれぞれ地元の特色を加味したものとし、若い国民世代を育てながら将来の事業活動の核となる候補生を確保し、外国人労働力への依存を減らして行くことをも遠大な目標のひとつに掲げている。
この国内労働者研修制度はこれまで日本や韓国で行なわれてきた海外における労働者研修と結びつけることも労相は考えている。労働省予測では、国内の業務見習い制度参加者は州別に次のような人数が期待されている。(数字は人数)
バリ/1,200、 東カリマンタン/1,000、 中部ジャワ/880、 北スマトラ/700、 ランプン/700、 東ジャワ/600、 リアウ/600、 バンテン/600、 ジョクジャ/500、 ジャカルタ/400、南スマトラ/400、 南カリマンタン/360、 西スマトラ/200、 西ヌサトゥンガラ/200、


「日本製高級乗用車の関税率がダウン」(2011年3月17日)
完成車の輸入はブランド保有独占代理店(ATPM)にも一般輸入ライセンス保有輸入者(IU)にも認められている。そして日本製完成車はローカルコンテンツ40%以上という原産地条件を満たすなら、インドネシア日本経済連携協定にもとづいて特恵関税が適用される。2011年に入って、排気量3千cc以上の日本製高級乗用車はこれまでの48%という関税率から一挙に4%という特恵関税の適用を受けることになった。IUにとっては新たなマーケット開発のチャンスが訪れたことになる。
ATPMは日本メーカーがインドネシアで生産する自動車を一手販売しており、全国に張り巡らされたネットワークを武器に国内市場を牛耳っている。加えて国内生産していない車種も完成品を輸入してそのネットワークに流している。だからIUにとっては、その間隙を縫って日本から新車完成品を輸入して独自の販売ルートに乗せるというビジネスを行なって対抗するしかなく、IUが輸入する自動車の95%は日本車で占められている。
インドネシア自動車輸入者協会会長は、ATPMは2,400ccまでの商業車と1,500ccまでの乗用車の市場を完全に牛耳っており、3,000cc以上のセグメントは互いに類似の条件で市場競争を行わなければならない、と語っている。輸入関税率にATPMとIUの間で差がつけられることがあってはならないというのが会長の主張で、インドネシアに上陸してからは差別のない条件付けが不可欠であるわけだが、現実に同一車種であってもATPMが輸入した車はIUが輸入したものよりかなり低い値付けがなされている。レクサスの同じ車種でATPMは15億ルピアで市場に出されているものの、IUは20億ルピアを下回る値付けではやっていけない、という差は避けようもなく起こっている。


「日本製高級乗用車の輸入関税論議」(2011年3月21日)
3,000cc以上の高級乗用車に対して、一般輸入ライセンス保有輸入者(IU)もインドネシア日本経済連携協定にもとづいて4%という特恵関税が適用されるという話に、ブランド保有独占代理店(ATPM)側が「それはありえないのではないか?」との反論を示した。
トヨタアストラモトルのマーケティング担当取締役は、インドネシア日本経済連携協定の特恵関税適用にはローカルコンテンツ40%以上という条件がつけられており、それを証明するための原産地証明書はメーカーが作っている。IUがメーカーからその面で協力を得ることができなければ特恵関税適用は不可能だ、との反論を開陳した。「アセアン特恵関税が適用されて関税率ゼロ%で輸入されているタイからの自動車完成品の場合も生産者が原産地証明書を用意している。日本からの完成車輸入も同じで、生産者が用意した原産地証明書をインドネシアでの輸入通関時に提示することで特恵関税率が適用される。ローカルコンテンツの明細を把握できるのは生産者だけだ。だから日本の生産者から独占代理店に指定されているATPMしか原産地証明書に関するバックアップを得ることは難しいはずだ。」
インドネシア自動車輸入者協会会長はそのメカニズムが差別的であると批判しており、ATPMもIUも同じ条件にしてインドネシアの自動車産業振興をはかれと政府に求めているわけで、工業省のある高官が特恵関税率は平等に適用されると発言したことからこの論議が起こったようだ。
ともあれATPMはトヨタに限らずニッサンも高級車ブランドInfinitiの完成車輸入を開始しており、これまでヨーロッパ勢の独占状態だったプレミアムカー市場にJカーの進出がはじまっている。


「ジャワ高外低(その一)」(2011年3月25日)
事業投資におけるジャワ高外低現象は大昔から連綿と続いてきたものだ。労働力や諸インフラが相対的に高いレベルにあるジャワ島と、層のきわめて薄い外島(非ジャワ島)は事業投資誘致の際の魅力にたいへんな違いがある。それでも2009年ジャワ島への投資は110.1兆ルピアで外島25兆ルピアだったものが、2010年はジャワ島140兆外島68.5兆という結果で、外島での伸びが目立っている。
2010年の投資誘致計画目標は160兆ルピアだったが、実績は208.5兆という目覚しい成果をあげた。対前年比54%の上昇だ。その中でPMAは148兆ルピアという大きなポーションを占めている。ちなみに、2010年投資先州ランキングトップ5は次のようになっている。
PMA(数字は億ドル)
ジャカルタ/64.2、 東ジャワ/17.6、 西ジャワ/16.9、 バンテン/15.4、 東カリマンタン/10.9
PMDN(数字は兆ルピア)
西ジャワ/15.8、 東ジャワ/8.1、 東カリマンタン/7.9、 バンテン/5.9、 ジャカルタ/4.6
2010年外島での事業投資の伸びは単なる偶然ではない。政府ならびに投資調整庁が強く意識して誘導した結果がそれだった。特定業種特定地域への事業投資に納税恩典を与えるタックスホリデー政策もそのひとつ。「輸入関税増収を狙う新規則」(2011年1月26日)で報道された2010年12月22日付け大蔵大臣規則第241/PMK.011/2010号による資本財5%課税は諸産業界から喧々囂々の非難を浴びているが投資調整庁はそれに関連して、新規事業投資に対する恩典の中に資本財輸入税免除が含まれており、新大蔵大臣規則が投資誘致の障害になるとは考えていない、と説明している。


「ジャワ高外低(その二)」(2011年3月26日)
2010年の工業団地土地販売は未曾有の好況になった。1千3百Ha12.3億米ドル相当が販売され、2009年から5割増しという大躍進となっている。
インドネシア工業団地会の報告によれば、そのうちの54%にあたる700Haはジャワ島内、スマトラは250Haで残る350Haはカリマンタン・スラウェシ・マルク・パプアに散らばっている。この空前の好況は土地価格を急上昇させ、2009年全国平均平米当たり60米ドルが2010年には95米ドルに上昇した。ジャワ島内の700Haのうち550Haはチレゴン・セラン・ブカシ・カラワン・プルワカルタ・ボゴール・バンドン・チレボン・スバンを含むジャワ島西部地方の53工業団地が占め、残る150Haは中部東部ジャワでのものだが中部ジャワには18、東部ジャワには32の工業団地がある。ジャワ島西部地方の状況をもっと詳細に見るなら、ブカシは23工業団地で250Ha、カラワンは20工業団地で300Haといったところがやはり新規産業投資家の人気のあり場所を示すデータだと言えるようだ。
ちなみに首都圏一円の地域別工業団地面積を比較すると、総面積8,662Haは次のように分配されている。
カラワン36%、 ブカシ26%、 セラン21%、 ジャカルタ10%、 タングラン5%、 ボゴール2%
コリエールズインターナショナルの調査によれば、特に首都近辺の工業団地は用地増加が需要に追いつかず、2010年には価格がうなぎのぼりの上昇を示したとのこと。現在の地価は平米当たり40万ルピアから125万ルピアのレンジにある。
ジャワ島西部地方で2010年に工業団地内で新規設立あるいは増設のための投資を行なったのは日本と韓国の企業が群を抜き、次いでインドネシア国内資本だった。業種では自動車・家電そして食品といった好調な産業が言うまでもなく新規投資をリードしている。


「ジャワ高外低(その三)」(2011年3月28日)
ジャワ高外低の緩和を推進するべく、政府は6つの投資促進コリドーを定めた。ヒダヤッ工業相は、この政策に従って国内の投資分散をはかり、工業セクターのジャワ島集中75%をもっと平準化させていく所存であり、5年後には総投資額の40%が外島に散らばることを目標にするがもっと欲を言えば理想的には60%が外島だ、と述べている。
地域別優良セクター/商品に基盤を置いた6つの優先経済コリドーは次の通り。
スマトラ経済コリドー: 全国的農産品とエネルギー資源
ジャワ経済コリドー: 全国的サービスと工業の促進
カリマンタン経済コリドー: 全国的鉱産品とエネルギー資源
バリ=ヌサトゥンガラ経済コリドー: 全国的観光メインゲートと食糧サポート
スラウェシ=北マルク経済コリドー: 全国的農産品水産品生産と加工センター
パプア=マルク経済コリドー: 豊かな天然資源の加工と繁栄する人材の場
海洋漁業省もその方針に沿ったロードマップをこれから作成していく、とファデル・ムハンマッ大臣はコメントしている。


「ジャワ高外低(その四)」(2011年3月29日)
国民の読書意欲と出版産業の盛衰は密接につながっている。インドネシアで売れる本は教科書であり、これは小学校向けから大学生が使うものまで変わらない。ただし大学生市場は著作権を無視したフォトコピー製本や不法出版との競争が加わってくるので、さらに複雑な様相を呈することになる。インドネシアの大半の子供たちが生涯で最初に接する書物は教科書であり、皮肉なことに、それが読書嫌いの国民を涵養しているのが実態だ。子供たちは本を読むということがなにやら小難しいもの、楽しくないもの、というイメージをそこで植えつけられ、書籍が愉しみを与えてくれるものという理解に達しない。
インドネシア出版社同盟会長は、「インドネシアの出版書籍は1万5千から1万8千タイトルで、人口が大違いのマレーシアでさえ1万2千タイトル、日本は10万タイトルが出版されている。ところがインドネシアのフィクション・ノンフィクション書籍の国内デイストリビューションは70%がジャワ・バリの書店網に流され、ジャワ島外へは30%しか送られていない。」と語る。
ジャワ島外での需要が小さいのは、国内ロジスティックコストが高すぎることから現地での小売価格が高いものになり、ただでさえジャワより購買力の弱い外島では需要がおのずからしぼまざるをえない。
さらに出版業界への政府の補助はさしたるものが見られない。書籍用紙の価格は市場任せにされており、たいへん高い。更に書籍はいくつもの税種が課税され、ディストリビューションも他の消費物資と同様の課税措置が取られている。執筆者への課税も小さくない。政府は国民に対して読書振興書籍普及を口にするものの、本気でそれを語っているとは思えない、と出版社同盟会長は批判している。


「中産階級が国民の過半数を占める」(2011年3月31日)
過去7年間でインドネシアの中産階級は5千万人増加した、と世銀が報告した。全国経済センサスをベースに世銀が分析した資産階級別人口は次のようになっている。
これは一日ひとりあたりの平均支出金額に従って分類されており、上流層は一日の支出が20米ドル超、中流層は2〜20米ドルの間、下流層は2米ドルまでという規準が採られている。
2003年: 上流層0.1%、中流層37.7%、下流層62.2%
という人口比構成は
2010年: 上流層0.2%、中流層56.5%、下流層43.3%
に変化した。その結果中流層の厚みが増し、人口で言えば5千万人の増加ということになる。しかし中流層の支出金額別階層を詳しく見るなら、2010年の56.5%のうちの38.5%が2〜4米ドル、4〜6米ドルは11.7%と中流層の9割が下流を多少上回るだけという層で占められていることがわかる。
世銀インドネシア事務所上級エコノミストは、インドネシアの中産階級増加は2003年から2005年が都市部、それ以後は村落部という流れが見られることを指摘している。この中産階級人口増加によって中産階級の国民総支出に占める比重は2003年の58.1%から2010年に76.7%まで上昇しており、国民経済生活に対する政府のアプローチをその実態にあわせて適正化させるなら、国民経済はもっと活発なものに成長するだろう、と世銀上級エコノミストは述べている。


「工場用地価格はうなぎのぼり」(2011年3月31日)
2010年の工場用地価格値上がり率でインドネシアは世界のナンバーワンに輝いた。カッシュマン&ウェイクフィールドが集めたデータによると、世界の上昇率10傑は次のようになっている。
1. インドネシア ジャカルタとその周辺 21.8%
2. 中国 北京 17.6%
3. ドイツ フランクフルト 15.8%
4. シンガポール シンガポール 14.97%
5. 中国 上海 14.54%
6. ポルトガル ポルト 14.29%
7. インド ニューデリー〜グラゴン 14.29%
8. エクアドル グアヤキル 13.0%
9. インド バンガロール〜ボンマサンドラ 11.1%
10. スエーデン ヨテボリ 10.7%
ところが世界ナンバーワンの上昇率を記録したからといった、インドネシアの地価が他国並みになったわけでは決してない、とカッシュマン&ウェイクフィールドのりサーチャーはコメントしている。アセアンのコンペティターは平方フィート当たり7.4米ドルで72万ルピア相当。東京は22.87米ドル、香港は16.59米ドルでアジアの最高峰に立っている。賃貸料金について見れば、カッシュマン&ウェイクフィールドは世界平均が1.2%ダウンしたと報告している。
インドネシアが2010年に世界最高の値上がり率を記録した原因は、外国資本の工場用地需要急増に対して一等地の即売用地があまり用意されていなかったことに加えて、ルピア通貨の高騰が追い討ちをかけた結果であるとのこと。過去三年間インドネシアの工場用地値上がりは世界でも高いレベルが続いており、そして2010年に爆発的な値上がりとなった。国内工業団地側も急遽用地整備に注力し始め、2010年第4四半期には即売用地が130Haを超えるまでになっている。2009年第4四半期と比較すると、需要は3.5倍にのぼっている。


「多くの工場で輸入資材に欠乏」(2011年4月5日)
震災後の日本からの原材料部品入荷が停滞しており、中部ジャワ州の日系製造会社の事業活動に困難が広がっている。特に苦しい状況に陥っているのは日系の家電・自動車工場そして繊維セクター企業だ、と中部ジャワ州保税地区事業者協会会長が表明した。
「保税地区に入っているものを含めて日系工場は資材調達に困難をきたしている。日本からの輸入コンテンツは15〜20%くらいある。全体の輸入量が減っているために輸送コストがキログラム当たり1〜2ドルだったものが4ドルにまで値上がりしており、そんなことがあいまって中国やヨーロッパに調達先を変更する動きが強まっている。ヨーロッパからの部品輸入は値段が高いのが難点で、いきおい、廉い中国産に向かう傾向が強いが、品質が劣化するのは避けられない。工場の生産性は低下しており、第三国へ輸出される製品の品質も維持しきれないようだが、背に腹は替えられないに違いない。協会はロジスティック業界に対して昔の平常時コストに戻すよう交渉を行なっており、近いうちに戻すとの回答を得ている。日本からの資本財輸入も影響を蒙っているが、台湾・中国・インドからその空白を埋めるように入ってきているので、さほど困難な状況には至っていない。輸出のほうは、保税地区に入っている衣料セクター工場が日本向け輸出に顕著な打撃を受けている。日本の輸入者で事業をストップしたところも多く、加えて日本向け輸出品の輸送コストも大幅にアップしており、輸送費を高く払う者の商品を運ぼうというスタイルになってきている。わたし個人としては、日本向け衣料品輸出は40〜50%減るだろうと見ている。中部ジャワ州衣料繊維セクターの日本向け輸出の中で保税工場からのものは金額で20〜30%を占めている。」
西ジャワ州でもアピンド支部長が類似の話を物語っている。「日系ブランド製品を作っているところは日本から入っていた資材が止まり気味で、特に自動車と家電に大きい影響が出ている。それらの工場からの報告では、資材ストックがほとんど底をついており、生産ターゲットの追及は無理な状況のようだ。資材の調達先を替えて仕掛かり品を完成させることは本社の許可が障害になっている。これまで最大の輸入先国だった日本から西ジャワ州への輸入は今年大幅に減少するにちがいない。」日本との経済関係が太くなればなるほど、突発的な変動が与える影響も大きなものになるのは避けられないにちがいない。


「魚は輸入禁止品目」(2011年4月13〜16日)
海が国の広さの70%を占めているインドネシアは、言うまでもなく海産物が自給できるはずであるため、魚の輸入は原則的に禁止されている。例外は、インドネシア海域で獲れないサーモンやはまちなど数少ない魚種で、これは輸入が許可されるものの量的に制限を受ける。もうひとつの例外は再輸出を目的にするもので、国内の保税加工場で処理されるために輸入される魚だ。国内の漁師が近海で獲っている魚種は国内漁業保護のために国内市場への流通を目的にした輸入が許可されることはまずない。そんな海産物の輸入をコントロールしているのが海洋漁業省である。
ところで、インドネシアで輸入を行なう会社はその事業内容によって輸入者ステータスが異なる。一般的な消費アイテムを輸入する者は一般輸入者、製造会社が生産用資材を輸入する場合は製造輸入者というステータスが与えられ、その間の相互乗り入れは基本的に認められない。ところが、一般輸入者が冷凍魚を輸入した。一般輸入者は消費アイテムなら何でも輸入できると考えるのは短慮であり、輸入が禁止されているアイテムの輸入が許されるはずもない。ただし何らかの特殊な事情で輸入を例外的に認めて欲しい場合は、そのアイテムを監督している省にリコメンデーションを出してもらってはじめて輸入通関が通る。魚の場合は海洋漁業省が監督省になる。
一般輸入者13社がタイ・中国・韓国・ミャンマーから輸入した冷凍魚や塩魚の入ったコンテナ200ボックスが国内のあちこちの港に分散して陸揚げされた。北スマトラ州ベラワン港に72ボックス、ジャカルタのタンジュンプリウッ港に81ボックス、スラバヤのタンジュンペラッ港に37ボックス、その他スマランのタンジュンマス港やジャカルタのスカルノハッタ空港にも少量ながら届いている。ところが、海洋漁業省の許可が取れていないため各港税関は通関申請を却下した。急遽それら輸入者は海洋漁業省にアプローチを始めたのだが、大臣は総量7千6百トンと見られる大量の魚は国内市場を乱し、漁民の活動に大きな打撃を与えることになるとして輸入を禁止し、200ボックスを輸入先国に送り返すよう命じる措置を決めた。
海洋漁業省はその13社を、無許可で輸入禁止品目を輸入しようとした悪徳輸入者であると定義付け、ブラックリストに名前を載せることにしている。たしかに国内あちこちの港に分散して陸揚げされたことは、合理的なコストでより広く市場をカバーするという意味にも取れるが、悪く勘ぐれば税関に差し止められるリスクを分散したという見方もできる。
不法輸入品の中にはインドネシア海域でたくさん獲れるサバやサワラも含まれており、国内市場でサバはキロあたり1万4千から1万5千ルピアというのに輸入物のサバが4〜5千ルピアの値付けになることを聞いた大臣は怒りをあらわにし、中でも塩魚が輸入されたことに対してその邪悪さは目に余るものだ、と強い批判を投げかけている。そして一週間以内に200ボックスの不法輸入品入りコンテナを積出し国に送り返させるよう職員に指示を与えた。
税関総局長は各港に溜まった不法輸入コンテナの処理について、輸入先国に返還するかもしくは焼却処分にするか、そのいずれかの方法が採られることになると述べているが、海洋漁業相は焼却処分に反対している。
しかし輸入通関が禁止された200ボックスのうちやっと6ボックスの輸入者が中国向けに冷凍魚の再輸出を申請しただけで、その他の輸入者はこの上さらに出費を増やす気がないらしく、強制的な執行を行なわなければ膨大な量のコンテナが各港の一角を埋める結果になりそうだ。そこまで読んで税関総局長は焼却処分のアイデアを口にしているわけで、海洋漁業相の悪徳輸入者に対するお仕置きが果たされるかどうかは担当役人の法確定意識に負うところが大きいにちがいない。
そして税関総局長が懸念したとおり、冷凍魚の入ったリーファーコンテナはやはり輸入通関が却下された食肉入りコンテナと一緒になってリーファーコンテナ置場を占拠しており、港の輸入コンテナ収容状況を狂わせている。


「放射能汚染安全証明書が義務付けられる」(2011年4月15日)
日本で発生している原子力発電所放射能汚染に関連して、政府保健省は日本からの輸入品で特に国民の健康に危険をもたらすおそれのある品目について、1987年保健相決定書第00474/B/II/87号で定められている放射能汚染安全証明書の輸入通関時の提出義務付けを発動することにした。この決定は2011年3月30日に開かれた関係諸省庁の会議で採択されたもので、商業省が主催したこの会議には流通物品監視合同チームが全員出席し、さらに海洋漁業省・原子力監督庁・原子力国家庁も参加した。
この会議では、日本から輸入されるミルクとミルク製品・生鮮果実野菜とその加工品・生鮮海産物とその加工品・食肉とその製品・ミネラルウオーター・とうもろこしや麦を含む穀物類について、2011年3月11日までに船積されたものを除き、その日以降に船積されたものに対して日本の監督当局が発行した安全証明書を輸入通関の条件に加えることが決められた。
食品薬品監督庁はその会議の中で、3月25日現在日本からの3月11日以降の船積分は13日14日17日20日付けの船荷証券(B/L)があり、食品薬品監督庁に出されたそれらの輸入分の通関承認申請にはまったく放射能汚染に対する安全証明書が添付されていないことを報告している。
この政府の決定に関して青年商工会議所会頭は、それが日本産品のインドネシアへの輸入活動に与える影響はきわめて小さいものだろう、とコメントした。「日本レストランの需要を満たすためのそれらの品目は量的に限られたものであり、他の国から輸入された代替品で十分満たすことができる。」
国民生活と国民経済にその方針が与える影響は微々たるものにしかならないだろうと国内実業界は考えているようだ。


「鉄鋼線と綿織物にセーフガード措置」(2011年4月18日)
政府は数品目に関して、国内産業に大きい損害を与えていることを理由に輸入品に対するセーフガード措置の適用を2011年3月23日から開始した。このセーフガード措置は三年間続けられ、引き上げられた輸入関税が年々低減されていく。適用対象品目の明細は次の通り。
HS番号7312 鉄鋼製のより線、ロープ、ケーブル、組ひも、スリングその他これらに類する物品(電気絶縁をしたものを除く。) 7312.12.90.00、7312.10.10.00
HS番号7217 鉄又は非合金鋼の線 7217.20.10.00、7217.10.10.00
HS番号5208 綿織物(綿の重量が全重量の85%以上で、重量が1平方メートルにつき200グラム以下のものに限る。) 5208.11.00.00、5208.12.00.00、5208.13.00.00、5208.19.00.00、5208.23.00.00、5208.29.00.00
HS番号5209 綿織物(綿の重量が全重量の85%以上で、重量が1平方メートルにつき200グラムを超えるものに限る。) 5209.29.00.00
HS番号5210 綿織物(綿の重量が全重量の85%未満のもので、混用繊維の全部又は大部分が人造繊維のもののうち、重量が1平方メートルにつき200グラム以下のものに限る。) 5210.11.00.00
HS番号5211 綿織物(綿の重量が全重量の85%未満のもので、混用繊維の全部又は大部分が人造繊維のもののうち、重量が1平方メートルにつき200グラムを超えるものに限る。) 5211.11.00.00
HS番号5212 その他の綿織物 5212・11・00.00
直径3ミリ超の鉄鋼製より線、いくつかの例外を伴う鉄または鋼製ロープやケーブルで鍍金や被覆の有無を問わないが電気絶縁のなされていないものに対しては、初年度の課税標準金額がkg当たり24,080ルピア、二年度は21,464ルピア、三年度は18,849ルピアと定められ、それに通関時点で有効な輸入関税率がかけられる。一方、ロックドコイル・平撚りワイヤ・無捻回ワイヤは初年度がkg当たり18,620ルピア、二年度17,326ルピア、三年度16,858ルピア。亜鉛鍍金の鉄線鋼線で対重量炭素含有率0.25%未満のものでいくつかの例外条件を伴う7217.20.10.00に属すものはkg当たり初年度6,658ルピア、二年度5,643ルピア、三年度4,629ルピア、鉄または非合金鋼線で被覆・鍍金がなされておらず対重量炭素含有率が0.25%未満のものはkg当たり初年度7,767ルピア、二年度7,216ルピア、三年度6,665ルピア。綿織物はkg当たり初年度116,800ルピア、二年度109,500ルピア、三年度102,200ルピアと定められた。


「産業界への震災の影響は2ヵ月後」(2011年4月19日)
日本の震災でインドネシアのコンピュータ市場に先行き不透明観が生じているものの、業界者はまだ楽観視している。インドネシアコンピュータ事業者協会会長は、コンピュータ生産のための核になる部品は多くが日本製であり、震災発生時点で国内にある在庫はおよそ2ヵ月分だったから、それが使い果たされるときに日本の供給態勢がどうなっているかが焦点になる、と震災の影響について語った。
「この先2ヶ月間、国内生産が10〜20%程度ダウンするだろう。韓国や台湾に部品の発注先を変えるところも出てくる。昨年は部品調達が20%ほど過剰だったから、当面の影響はまだそれほどない。2010年の国内販売は380万台で、2011年はその4割増の530万台が見込まれており、業界はまだその見込数値をキープしている。生産者には部品供給の障害を埋め合わせる手段がまだ残っているから。」会長はそう先行き見込を物語っている。
一方、国内家電品業界も生産の先行きが不透明になっていることを明らかにしている。部品在庫は5月生産分まで確保されており、それを超えてからの状況がどうなるかはまだ予断を許さない。家電品連盟ホームアプライアンス部会副会長は、部品供給は日本・台湾・韓国・中国など東アジア地域がメインであり、ヨーロッパからも少しあるが、日本の蒙った震災のために供給先を別に求める動きが業界内で起こっている、と述べている。


「ジャワ高外低(その五)」(2011年4月29日)
2011年3月の国内二輪自動車生産者販売台数、つまりメーカーが小売販売網におろした台数は過去新記録の713,672台となり、前年同月実績611,142台を16.8%上回った。メーカー別に見ると、ホンダ338,582台、ヤマハ319,686台、スズキ44,618台、カワサキ8,433台、TVS2,293台、カンゼン60台といったランキング。2011年第1四半期合計は1,994,245台だった。
ところで今年第1四半期地域別の販売台数を見てみると、ジャカルタがトップで291,308台と15%のシェアを占め、次いで西ジャワ・バンテンが276,949台で13.9%、東ジャワ270,039台13.5%、中部ジャワ162,930台8.2%、外島エリアで10万台を超えたのは北スマトラの146,774台ただひとつ。ジャワ島だけの合計を数えると1.001,226台でシェアは53.4%と過半数を超えている。
車種に関してもカブタイプからスクーティックタイプへの移行が一層強まっており、ホンダはいまや販売台数の55%がスクーティック型で占められている。カブタイプは38%、そしてスポーツ車が7%となっている。


「プレミウムガソリンが買いにくくなる?!」(2011年5月7日)
石油燃料補助金削減方針の重荷の一端を首都圏一円で営業しているガソリンスタンド従業員18,930人に担がせようとのアイデアが進められている。政府鉱エネ省が今回唱えたアイデアはこうだ。一般消費者が給油のために立ち寄るガソリンスタンドの従業員こそが消費者のもっとも身近にいる人間であるため、かれらに消費者を説得させて補助金付きプレミウムガソリンから補助金なしプルタマックスあるいはプルタマックスプラスに油種を変更させるための努力をさせよう、というのがその目論み。
ジャボデタベッ地区のガソリンスタンドスーパーバイザー2,524人のうち特に選抜された631人に研修を施し、かれらが各ガソリンスタンドの従業員に消費者の説得手法を教育訓練して行く。スタンド従業員は給油に来た車の運転者に対し、次のような説得を行なうことが期待されている。
*補助金付き燃料の使用はすべての国民に与えられた権利でないので、経済能力のある者は補助金なし燃料を購入するべきである。
*そのためにプレミウムガソリンの給油はやめてプルタマックスあるいはプルタマックスプラスを購入してはどうか。
*プルタマックスはオクタン価が高いためエンジンパワーが高まり、走りがより軽いものになる。
2011年の補助金付き石油燃料クオータは3,859万リッターであり、国民消費がそのクオータを超えないよう政府は消費量のコントロールをしなければならない。今回出されたアイデアはまず首都圏で成功させたあと、西ジャワ・中部ジャワ・東ジャワ・バリ・スマトラへ拡大させる計画になっている。
しかしガソリンスタンド運営者は政府のその方針にあまり乗り気でない。「プレミウムを買いに来た客を説得してプルタマックスを買わせるようにするなんて、時間とエネルギーの無駄だよ。そんなことをするくらいなら、プレミウムガソリンの値上げをしたほうがはるかに早い。従業員への教育訓練とやらで頭を痛めてる上に、客に対して従業員にそんなことをやらせても百害あって一利なし。効果はないだろう。消費者は王様なんだから、プレミウムを買いたいと言われたら売らざるを得ない。それをとやかく言えば、客はネガティブな反応を示す。結局われわれが消費者の槍玉にあげられる。垂れ幕や領収書に書かれた『プレミウムガソリンは経済能力のないひとのためのものです』という文句を消費者は読んでいるが、それでもかれらはプレミウムガソリンを買いに来る。」都内のガソリンスタンドオーナーのひとりはそう語っている。
社会的公正云々の大義名分をどれほど叫ぼうが、それだけで大多数の一般消費者を政府が動かすことは困難であるにちがいない。


「輸入関税タリフの一部に改定」(2011年5月9日)
「輸入関税増収を狙う新規則」(2011年1月26日)で報道された輸入物品に対する物品区分システムと輸入関税タリフ賦課決定に関する2010年12月22日付け大蔵大臣規則第241/PMK.011/2010号で輸入関税率を引き上げられた産業セクターは一様にその反対あるいは延期を要請し、その突き上げを受けた工業相や農業省あるいは水産省など多数の省が大蔵省に対する説得工作を行なった結果、蔵相は出したばかりの大臣規則の改定を約束した。
即座に省際会議が催されて各業界監督省の意向が協議され、各要望が検討されて改定案が編成された。しかし現場では、一度出された大臣決定はその改定が大臣決定として出されるまでは有効であり、2010年12月22日以降の輸入通関分で該当するものは、関税を納めなければ貨物を引取ることが出来ない。そんな現場の状況を横目に見ながら、改定規則の制定はずるずると日を延ばし、2011年4月13日にやっと大臣の署名を得て制定され、4月18日から施行された。
この輸入物品に対する物品区分システムと輸入関税タリフ賦課決定に関する2011年4月13日付け大蔵大臣規則第80/PMK.011/2011号は最初に出された2006年のものから数えて7回目にあたる。
2011年第80号には三枚の付表が添付されており、付表1は船舶や機械類25品目に対して2011年12月31日まで有効なもの、付表2はそれらに対して2012年1月1日以降適用される税率、付表3は製造産業用原材料157品目と水産物缶詰・飴・チョコレートなどの合計165品目をカバーしており、期限は設けられていない。


「マグロがイルカを食らう」(2011年6月9日)
和歌山県太地町のイルカ漁を告発非難したアースアイランドインスティテュート(EII)がインドネシアのマグロをボイコットする動きを進めている。インドネシアではマグロ漁のさいにイルカの肉を撒き餌にしてマグロをおびき寄せており、インドネシアのツナはイルカを犠牲にして得られたものだというのがその理由。その主張の白黒はまだついておらず、EIIはインドネシア政府に対してインドネシアのツナ産品にdolphin safe ラベル表示義務付けを求めており、この問題を2011年8月にミクロネシアのポンペイで開催される中西部太平洋マグロ類委員会に持ち込むことにしている。インドネシアがラベル表示を行わなかった場合には、米国でのインドネシア産マグロのボイコット運動に火がつけられることになりそう。
インドネシアツナ協会は、われわれは巾着網にイルカが引っかかったときにも必ず海に戻しており、言われているようなことはいっさいしていない、とEIIの主張を否定している。「はえ縄や巾着網での捕獲漁はイルカをターゲットにしていない。またインドネシアの漁民が故意にイルカを捕獲しようとすることはない。漁師はほとんどみんなイルカが海難事故に遭った人間を助けるという話を信じている。ドルフィンセーフラベル表示義務付けの要求は、その裏に何かが隠されているものとわれわれは考えている。インドネシアのマグロ産業を弱めようとする意図が働いているのではないか?」協会役員のひとりはそう語っている。
海洋漁業省水産資源局長は、イルカを含めた70種の哺乳類保護動物の捕獲許可は森林省の管轄であり、当方がイルカの捕獲許可を出すことはない、と言う。「イルカの捕獲はサーカスなどの曲芸や自閉症治療セラピーに使うのを目的にしており、捕獲許可は森林省が出している。EIIはアメリカの消費者に対し、中西部太平洋マグロ類委員会でインドネシアのドルフィンセーフラベル表示が成功しなかった場合、インドネシア製品をボイコットするよう呼びかけている。」
2010年は57.7万トンを輸出して前年から6%の上昇を示したインドネシアのマグロ産品も風当たりが強まる一方だ。


「オルバ慕懐症候群」(2011年6月27日)
スハルト一族が政治経済を思いのままに操ったオルバレジームをあれほど憎み嫌った国民の間に、それを倒して1998年に始まったレフォルマシレジームに失望して再び「昔はよかった」というオルバ期への慕懐症候群が広まっている。
2011年4月25日から5月4日まで全国33州の1千2百人に対してインドバロメテルが実施した世論調査によれば、現在のレフォルマシ時代を良いと評価しているひとは22.8%、その前のオルバ時代のほうが良かったと評価しているひとは40.9%おり、オルバ期を懐かしんでいるひとのほうがほぼ2倍多いことが明らかにされた。オルバ慕懐症候群は都市部も村落部もあまり違いがなく、都市部のオルバ派は47.7%、村落部のそれは35.7%と報告されている。
地方別に見るなら、スラウェシを除く全部の島でオルバ派はレフォルマシ派をおさえ、中でもジャワはオルバ派が48%を占めた。一方スラウェシ島だけはレフォルマシ派が41.1%でオルバ派を押さえ込んだ。政党はデモクラッ党とPAN党が当然のことながら現在のほうがオルバ期よりも優っていると考えているが、他の政党は軒並みオルバ期のほうがよかったと見ている。国民生活の諸分野では、今のほうがオルバ期より優れていると評価されたのは法曹分野のみで、政治・経済・社会・治安のすべてにわたってオルバ期のほうがよかったと国民は評価している。
インドネシア大学経済オブザーバーのファイサル・バスリは、「レフォルマシレジームは焦点を都市部に当てて政策を行っており、村落部はあまり省みられていない。その結果、経済開発の恩恵を肌に感じているのは都市部住民であって、村落部住民はそれを身近に感じることができないでいる。だから村落部では、レフォルマシ時代がオルバ期よりもよいと感じるひとが都市部よりはるかに少ないわけだ。言うまでもなく、貧困者の三分の二は村落部にいるのだから。レフォルマシ時代の政策は村落部住民の経済バックボーンである農業セクターへの支援が乏しく、農産品の国内価格政策もオルバ時代ほど力が入っていない。レフォルマシレジームの政策は自動車専用道路や空港の建設に象徴されている。」と分析している。


「インドネシアがクロマグロを違法輸出」(2011年6月28日)
2010年に日本に対して、クロマグロをキハダマグロと偽って輸出する違法通商が行われていたという報告が届いており、インドネシア水産行政関係者は頭を痛めている。クロマグロの価格はキロ当たり1,500〜3,000円、キハダマグロはキロ当たり600〜1,200円であり、その取引の損得に加えてインドネシアのマグロ漁に制裁が加えられればダブルパンチになる。海洋漁業相は違法通商の話を肯定し、詳細は調査中であるが、日本側がこの問題を摘発すればインドネシアのマグロ漁業は大きな打撃を蒙るだろう、とコメントした。
インドネシア国内のマグロ産業は、当初12社あった加工会社が今では8社に減っており、そのうちの5社は外資系だ。国民系工場が姿を消していったのは資本面での脆弱さに加えて原料入手から製品流通に至るビジネス競争力で遅れをとったためでもあるが、外資系水産会社が漁船をそろえてカツオやキハダマグロを捕獲し、自社加工分を除いてそのまま他国の加工工場に売却しているのに対し、国民系工場は原料入手が思うにまかせないという難しさを克服できないでいる。
製品流通面でも国内輸送コストの高さが市場競争力を挫いている。たとえばソロンからスラバヤに加工製品を海上輸送するとコンテナ運賃は1ボックスが7百万ルピアかかる。それはスラバヤから日本にコンテナを送る際の運賃と変わらない。
公正な水産業のための国民連合事務局長は、捕獲水産業界は国内に40%しか水揚げせず、もっぱら外国の港に水揚げしており、政府は魚船に対し国内供給クオータを義務付けて、国内水産加工業界の原料確保をはかるべきだ、と主張している。


「保税地域に免税が適用される?」(2011年6月30日)
政府は保税地域での免税輸入を認める方針を検討している。ここで言う保税地域(kawasan berikat=英語bonded areaの直訳)とは加工・製造や蔵置のために外国から物品を仮輸入し、ふたたび輸出することを前提に設けられた閉鎖的境界を持つエリアで、その中に保税加工場や保税倉庫などが立ち並んでいる。イメージ的に日本の総合保税地域に近い。また単体の工場を保税地域とし、工場敷地のフェンスをもってその境界とするものもある。この場合は保税工場になるが、インドネシアでは同じようにkawasan berikatと呼ばれている。一方、港に入ってきた国際貨物を通関前に暫定的に置いておく税関監視下の場所はkawasan pabeanと称し、直訳すると通関ゾーンとなる。
さて、そのkawasan berikat(以後はKBと略称する)に免税輸入を認めるというのはどういうことなのか?インドネシアのKBは再輸出を前提にしたコンセプトで形成されており、持ち込まれる外国品は保税で入り、加工・製造の際に消費されてから製品として再輸出されるため、免税という概念を必要としていない。そのため、最近増加している自由貿易協定による輸入関税免除はKBを対象としていなかった。自由貿易協定による関税免除恩典は非KBだけが対象にされていたということだ。角度を変えて見るなら、KBは輸入関税だけでなく、PPN(付加価値税)、チュカイ(特定品目物品税)、PPnBM(奢侈品税)などのその他輸入税も免除されている。一方、自由貿易協定による免税は輸入関税だけが対象だ。
ところがKBの中に、再輸出だけでは経営が成り立たなくなる工場が出た。会社の存続のために製品を国内で販売したいという希望が出るのは当然で、結局生産されるものはすべて再輸出という前提が覆され、特定比率以内の製品は国内市場に出してよいという規定が設けられた。だから国内市場に出されるときに輸入通関が発生し、納税が起こる。
すると今度は非KBが自由貿易協定による関税免除を享受しているのに対し、同じことをするKBがどうして同じように扱われないのかという非難が現れてきた。それは国内販売を行うKBの増加と相関関係を持っており、いまやKB生産の半分は国内に流されていると言って過言ではないようだ。KB関連法規は長年にわたって手直しに次ぐ手直しが繰り返されており、制度発足当初のコンセプトは大きな変化を遂げている。