インドネシアビジネス経済環境情報2011〜12年


「工業団地はいま・・・」(2011年7月5日)
全国の工業団地運営者が集まって組織している工業団地会に所属している団地は全国に58ヶ所ある。占有面積合計は29,062Haあるが工場用地および付属インフラとして用意されているのは11,087Haしかなく、つまり開発進度はわずか38%しかない。
そして全国の工業団地が擁しているテナント数は5,796社で、全国にある19万の会社のうちの3%でしかなく、その5,796社が雇用している勤労者数は139万人で、第二次第三次産業セクター従事者が6千万人であるならこれも2.3%という微々たるものだ。
州別の状況を見てみよう。
州: 団地数/占有面積(Ha)/開発済み(Ha)/テナント数/雇用者数(万人)
西ジャワ: 22/11,929/5,781/2,631/62
バンテン: 6/3,140/1.110/367/8.6
ジャカルタ: 3/1,089/914/491/21.0
中部ジャワ: 6/1,366/522/968/21.5
東ジャワ: 3/1,415/912/547/11.3
リアウ島嶼: 9/4,910/728/247/6.6
リアウ: 1/1,000/150/8/0.1
北スマトラ: 3/1,264/522/346/6.0
西スマトラ: 1/200/54/6/0.1
中部スラウェシ: 1/1,500/NA/NA/NA
南スラウェシ: 1/703/350/180/1.9
東カリマンタン: 1/546/52/5/0.07
合計: 58/29,063/11,087/5,796/139.1
上の表を見る限り、ジャワ高外低が顕著に示されている。2011年1〜5月の成長は前年同期から20%増えており、今年の投資誘致は良好と言うことができる。政府が新たな産業政策として打ち出した6つの投資促進コリドー政策でジャワ高外低が更に緩和されることが期待されている。


「SNI」(2011年7月8・9日)
Standar Nasional Indonesia。意味としてはインドネシア国家規格ということになるのだが、市場に出される商品の製造と品質の基準を定めているため、インドネシア製品規格と呼んでおこう。日本のJIS規格とJAS規格を合わせたようなものだと思えばよい。SNIの主管政府機関は商業省になっており、商業省によって市場での監督統制が行われている。
国が定めるさまざまな規格や基準は国家規格庁が制度化し管理している。2011年5月時点でSNIが制定された品目は7,010件あり、そのうちで適合義務付けがなされているのは83品目にすぎない。その他のSNIは政府が推奨しているが義務ではなく、つまり強制力が働いていない。妥当な品質レベルの商品を作るための目安ではあるのだが、生産者と消費者がいずれも品質より価格という姿勢を強く持っており(というか、これは相関関係という輪の中にある)、そしてビジネスが社会活動というよりも富の獲得を優先する面を強く持っている文化であるがために信義のない商道徳が一般的で、そのような土台の上にインドネシアのマーケットが成立している。
義務付けがなされているのはコンクリート鉄筋・タイヤ・肥料・セメントなど国家建設に重要なものが優先されている。中には、プロパンガス爆発事故が多発した結果ガスコンロ用ホースやガスボンベレギュレーターなども義務付けがなされ、消費者は直接損害を受けるのを恐れてSNI表示のある商品を選択するようになっている。また二輪車用ヘルメットもSNI義務付けがなされ、これは警察の検問で罰金を取られるために消費者が率先して選択している。ところがそのような背景を持たない商品は相変わらず品質よりも価格が優先されており、消費者はSNI表示の有無よりも見た目の感じと価格で選択を決めている。「いくつかのアイテムはSNI愛用運動が始まっており、ガスホースやボンベレギュレータなどがそのひとつだ。悪い出来事が連発したからということもあるが、消費者はそんな出来事が起こる前にSNIを選択するようにすべきだ。」と商業大臣は語っている。
しかしSNI義務付け商品には必ずと言ってよいほどニセモノが出現する。SNI規格適合承認と承認番号交付証書なしにSNI表示をすることは禁止されているものの、そんなことでひるむビジネスマンは少ない。ガスホースやボンベレギュレータにSNIニセモノが登場しているのは言うまでもなく、SNI義務付け家電品にもニセモノはある。前者は市場で消費者をたぶらかそうとするもの、後者は市場で商業省の監督をたぶらかそうとするのが主旨のようだ。
PT NEOは工場内に5千台の扇風機を箱詰めにして出荷を待っていたところを商業省の市場監視員に摘発された。SNI表示がなされているが承認された書類の提示ができない。それで工場経営者は、現在申請中で承認を待って出荷しようとしていたという弁解をしたが、商業省側は承認を受ける前にSNI表示を行うのは違反行為だとして法的措置を採る姿勢を変えていない。それ以外にも不法輸入した外国製品にニセモノSNIをつける輸入者も少なくない。国内産業界はこのSNIを非関税障壁のひとつとして扱い、合法輸入非合法輸入を問わず外国産品の国内市場での勢力を弱める武器に使おうと考えているが、実態はどうやら強力な武器になりえていないようだ。論理的には外国の生産者がSNIの承認を得なければインドネシアに製品を輸出できないことになるのだが、それは単に非合法輸入を増やすだけの結果になっており、輸入統計上は合法輸入が減っているのに市場では外国産があふれかえっているということが起こる。しかも輸入者がSNIのニセモノ表示を行って消費者をたぶらかすから、SNIの威光は地に落ちるばかりであり、加えて価格指向の消費者がSNIをそれほどありがたがらないのだから、国内産業界は国民にさえ見捨てられたような様相を呈する。SNIが諸外国のように用いられるようになるためには、根本的な何かが変わらなければならないようだ。


「特定品目は輸入が増加」(2011年7月11・12日)
2008年商業大臣規則第56/M-DAG/PER/12/2008号で国内有力商品5品目の輸入規制を目的にした輸入手続が定められた。最初は家電品・衣料品・玩具・飲食品・履物が対象品目で、輸入者は商業省に届け出て認可を受けなければならず、また輸出国での船積前検査が義務付けられている。それらの輸入通関はジャカルタのタンジュンプリウッ港・スマランのタンジュンマス港・スラバヤのタンジュンぺラッ港・メダンのベラワン港・マカッサルのスカルノハッタ港でのみ行なわれ、他の港では通関できない。その後2010年にリアウ州ドゥマイ港が飲食品だけを対象に追加され、また品目で化粧品ジャムゥが追加された。
2010年に入ってアセアン=中国自由貿易協定が開始されたこともあって、それらの特定品目は輸入が激増した。2010年に激増した輸入量は2011年その余勢を駆ってさらに輸入が増加している。2011年1〜5月の輸入金額と2010年同期の金額を比べると、輸入が低下する気配はまったく見られない。
品目: 2011年(百万USドル)/2010年(百万USドル)
家電品: 1,556.7/1,390.5
衣料品: 64.3/43.9
玩具: 30.9/20.1
飲食品: 89.5/76.5
履物: 56.7/42.5
合計: 1,798.3/1,573.8
それら特定品目輸入者は商業省から登録輸入者(IT)認定を受けなければならず、認定を受けたなら毎月輸入実績報告を提出しなければならない。また少なくとも6ヶ月に一度は輸入の実績を持たなければならず、6ヶ月連続して輸入を行わなければ認定は取り消される。更に輸入通関に関連して違反等が見られた場合、税関は商業省に報告を出すことになっており、商業省はそれを根拠に認定の取り消しを行うこともある。2011年1〜4月の4ヶ月間に商業省が発行した認定証は品目別に次のようになっている。
家電品IT 703
衣料品IT 255
玩具IT 182
飲食品IT 243
履物IT 181
化粧品IT 107
ジャムウIT 48
合計 1,719
2010年の有効IT認定証は5,287件あり、その年の内に1,325件が取り消されたため年末時点の有効認定証は3,962件になっていた。それが2011年4月までにまた1,719件増やされたので5,681件に増えている。今年もまた実績の審査が行われて取り消される輸入者がたくさん出てくると思われるものの、その一方で認定申請が来れば条件を満たしているかぎり認可せざるをえず、あまり生産性のないレースが展開されているように思われる。
特定7品目の中でもっとも巨大な金額を占めているのは家電品で、それを輸入先国別に見ると、中国がナンバーワンの地位に躍り出てくる。2011年1〜5月の輸入先国別金額は次のようになっている。
国: 金額(百万ドル)
中国: 559.8
香港: 353.3
シンガポール: 334.8
インド: 113.0
韓国: 72.8
マレーシア: 66.6
タイ: 44.4
日本: 2.6
アメリカ: 2.6
ロシア: 1.6
この家電品と区分されている物品の中には携帯電話やコンピュータが含まれており、2011年の5ヶ月間では総額15.5億ドルのうち49%が携帯電話機で占められ、それを追ってノート型サブノート型コンピュータが27%を占めている。その状況について家電品連盟副事務局長は、大量の輸入が起こっているのは国内産がまだあまりない分野の物品であり、国産家電品市場はまだ健在だとコメントした。「輸入金額は国内総市場の20%程度であり、しかもその大半は国産品のまだ少ない分野であるため国内の製造業界はそれほど深刻な打撃を蒙っているわけではない。」
諸国の家電品メーカーが進出してきて国内生産を行っている家庭用電化製品市場は依然として国産品が主流を占めており、合法非合法の輸入品にはまだそれほど押されていないようだ。国内市場は4月までスローだったが、5月に入ってエアコン販売が急増した結果、5月の生産者販売は2.1兆ルピアに達して前月から19%もアップした。家庭用TV受像機や洗濯機など他の家電品も4月に比べて売り上げは好調だ。4月までは対前年同期比でマイナスだったことから先行きが懸念されていた家電品業界も5ヶ月通算9.46兆ルピアとなって前年同期の9.48兆とほぼ横並びになったため、今年の業界目標である年間27兆ルピアは手の届くレンジに入った、と家電品連盟会長は安堵の表情を浮かべている。市場でのエアコン需要が伸びており、今後の販売もそれにひきずられて伸びるだろう、というのが会長の期待。
一方エレクトロニックマーケタークラブ会長は、2011年5月までの市況は10〜15%の成長が見られ、この勢いは6月中も継続する、とコメントした。中でも好調な商品はフラットTVとエアコンであるとのこと。


「ルピアと人民元が米ドルを侵食」(2011年7月13日)
対中国貿易が大幅な増加を示しているいま、中国通貨人民元取扱いの必要性が銀行界を覆っている。ダナモン銀行は早々と2011年下半期から人民元口座の取扱いを開始すると公表した。インドネシア香港上海銀行は2009年から人民元建て輸出入決済に便宜を図っており、元建てL/C開設も可能。貿易決済が元建てで行われるようになれば、必然的に元口座開設という要望が顧客の間に沸き起こる。銀行がそこまで面倒を見るのは当然と言えるだろう。その延長線上に人民元の両替や送金業務が出現する。人民元に対するあらゆる通貨サービスを用意しなければ、顧客はその銀行から去って行くにちがいない。
いまインドネシアと中国の貿易決済は年間420億ドルで、2015年には800億ドルに達すると見込まれている。評価が没落してしまった米ドルはアジアの域内貿易にもはや魅力の失せた通貨としての印象を与えており、ルピアと人民元が米ドルの地位を侵食し始めている。中国とインドネシアは中央銀行間協議で両国通貨による直接決済を相互に承認しているが、現実には交換レートの不満が影を落としているために貿易当事者はまだそれほど人民元を利用する姿勢を示していないのが実態だ。
中国はこの先2〜4年のうちに世界の発展途上国との貿易決済の半分をリデノミ元を使って行おうと計画しているとインドネシア香港上海銀行広報担当者は述べている。


「工場用地販売は好況」(2011年7月25日)
日本の企業が2011年最初の三ヶ月間に結んだ地主工業団地との契約は、本国での地震と津波による大災害にもかかわらず、インドネシアの政治的安定と経済的興隆に押されてこの先拡張が進められていく。加えて韓国と台湾の企業も中国に作った工場をインドネシアに移す流れが起こっており、日本・韓国・台湾の諸企業によるジャカルタ周辺工業団地の工場用地需要はおおいに高まるだろうとコリエールズインドネシアが報告した。ジャカルタ周辺の工業団地とは、カラワン〜ブカシ〜ボゴール〜タングラン〜セランそしてジャカルタも。
韓国系・台湾系企業は中国政府のハイテク産業育成政策のあおりを受けて、特に履物や家具製造会社がインドネシアへの移転を計画している。
その需要増によって工業団地の地価は上昇態勢に入っており、中でもこれまで平均以下だった地域の地価が上昇するものと見られている。コリエールズは既にカラワン・ブカシ・セランの地価が上がりつつあり、ボゴールとタングランは安定しているとの最新状況を報告している。
2011年第1四半期の工業団地工場用地販売では、スルヤチプタが日本の自動車セクター企業二社に81Haの用地販売を行って売り上げトップの座を獲得した。他にはデルタシリコン、ブカシファジャル、KIIC、グリーンランド、コタブキッティンダ、インド大成、モデルンチカンデ、クラカタウ、MM2100などで用地販売が行われ、総面積344Haが売れている。それら工業団地のいずれもが、2011年の工場用地販売が2010年よりよくなるとの期待感を抱いている。エリア別には、カラワンが36%、ブカシ26%、セラン21%、ジャカルタ10%、タングラン5%、ボゴール2%という配分。また地価も第1四半期に積極的に上昇しており、平米あたり60〜90米ドルとのこと。


「日本から再びリロケの波」(2011年7月26日)
日本の中小企業百数十社がインドネシアへの工場移転を計画している。ソフィヤン・ワナンディAPINDO会長は、日本の中小企業生産センターは近いうちにインドネシアに移ってくると表明した。その中心になるのは、2011年3月に発生した地震と津波の大型災害で激しい影響を蒙った、主に工業品と衣料品セクターの事業者たちであるとのこと。動機のメインはそうであっても、生産コストが上昇を続けている日本での操業よりもインドネシアで操業するほうがよりメリットがあるという斟酌も当然ながら行われている、とアピンド会長は言う。「これは両国にとってたいへんメリットのある動きだ。日本側は生産コストの低減が可能だと判断している。製品は国内市場にも出されるが、日本へも輸出される。国内労働力の就業機会が増えるだけでなく、技術移転も起こるに違いない。」
MSヒダヤッ工業相は、日本の中小企業のインドネシアへの進出は自動車産業に見られるように、これまでも行われてきた、と語る。「自動車生産者がインドネシアで事業を拡張するとき、それをサポートする中小企業がインドネシアに入ってくる。政府は国内中小企業の保護を行っているものの、現行法規では特定条件下に外資系中小企業のインドネシア進出も認められている。必要なのは、インドネシア側のパートナーと協力体制を築くことであり、インドネシア側パートナーの能力向上をコミットすることだ。たとえばホンダが工場をふたつ建設する計画をしているが、そのサポート産業は地元から選ぶことを政府は条件にしている。」工相は外国からの産業移転についてそう説明している。


「ビジネス界のインターネット評」(2011年7月28日)
ビジネスでのインターネット利用は徐々に浸透しつつあるものの、歩みは緩慢だ。情報通信省が2011年に全国16都市で1,280社に対して行ったサーベイで、会社がインターネットをどこまで利用しているかということが明らかになった。インターネットを使っていない会社はその理由を次のように答えている。
IT関連での人材がまだいない 31%
インターネットを使うビジネス戦略をまだ持っていない 25%
インターネット利用料金が高い 17%
会社に益をもたらさない 14%
電子取引が安全と思えない 5%
その他 8%
一方、インターネットを利用している会社はそれがどのくらい収益アップに貢献しているかについて、次のように答えている。
収入アップ25%未満 57%
26〜50% 33%
51〜75% 8%
76〜100% 2%
Eコマースに何を一番利用しているか?
Eメール 58%
ウエッブサイト 35%
チャット 6%
ビデオ会議 1%
支払い手段は何が一番多いか?
銀行送金 57%
現金 28%
その他 9%
クレジットカード 7%
Eコマースで買い物をしているか?
はい 24%
いいえ 76%
Eコマースを実践しているひとの中でメディアは何を使っているか?
Eメール 50%
ウエッブサイト 42%
チャット 7%
ビデオ会議 2%
Eコマースでの買い物に満足しているか?
とても満足 7%
満足 44%
普通 46%
不満 3%


「大統領選を外国勢が誘導?!」(2001年8月1日)
既に2014年の大統領選挙前哨戦が始まっている。その出馬が取り沙汰されているのは、SBY現大統領夫人の弟で陸軍戦略予備軍司令官プラモノ・エディ・ウィボウォ少将、ゴルカル党首アブリザル・バクリ、PAN党首で現内閣経済統括相のハッタ・ラジャサ、元スハルト大統領の女婿だったグリンドラ党首プラボウォ・スビアント、そして前大蔵大臣で世銀専務理事に転出した話題の人スリ・ムリヤニ。
既に火がついた大統領選挙前哨戦で、外国勢力が特定候補者の後押しをしている、とインドネシア陸軍退役軍人会会長が発言した。スルヤディ陸軍退役軍人会会長は、外国人外交官が次の大統領選挙候補者としてスリ・ムリヤニの名前を出し、かの女を補佐する副大統領には国軍から人を出してはどうか、と何人かの上級退役軍人に声をかけている、と公表した。退役軍人会は次期大統領選挙候補者にだれを推すかについてはまだ何も決めていないが、スリ・ムリヤニを支持する声は特に西洋諸国で強いものがある、と会長は語っている。
国軍はインドネシアの現状、中でも経済分野の主権が確固としていないことに大きい不満を抱いており、次の大統領選挙はもっと西洋諸国から離れて独立的な国家運営が行われるためのモメンタムとするべきだと考えている、とスルヤディ会長はコメントした。
退役軍人会会員のひとりは、外国勢の浸透は村落部にまで達しており、国家指導者は断固たる決断を下すことができる人物が求められている、と言う。「国家リーダーの誤った政策はシステマチックに遂行されるがためにきわめて危険が大きい。だからこそ、マスメディアは強い愛国心にスポットライトを当てなければならない。ところが数年前にインドサットが外資に買収されたとき、国民の間に愛国精神の流れを生み出す努力をマスメディアが怠ったのはたいへんに残念なことだ。」国軍上部層の意見は概ね、そんな色彩を反映している。


「オーストラリアへ自動車輸出を」(2001年8月1日)
アセアン=オーストラリアニュージーランド自由貿易協定が2012年初から発効するのを受けて、工業相はインドネシア産四輪車のオーストラリア市場への進出に力を入れる意向。オーストラリアの四輪車市場は100万台規模というサイズであり、今現在は日本製・韓国製・タイ製の四輪車がメインのシェアを握っている。そこにインドネシア製が殴りこみをかけるわけだが、当初の目標を工業省は5年間で5%のシェアと置いた。工業省ハイテクベース優良産業総局長は、3〜4年前にオーストラリアの市場調査が行われたとき、きわめて有望な市場であるとの結論が出されており、さらに包括的な検討を加えて四輪車輸出に拍車をかけたい、と表明した。オーストラリア市場進出計画の切り込み隊長となるのは1,800ccのSUVであるとのこと。「オーストラリアの消費者は1,800ccスポーツ車がお好みだが、インドネシアで作られているSUVは1,500ccのものだ。このオーストラリアへの進出方針に工業省はヨーロッパ系自動車メーカーを誘うことにしている。」工業省はそのようにこの進出計画の方向性を決めている。


「BNI銀行にジャパンデスク」(2001年8月5日)
「まるで1980年代の投資の波が再来したかのようだ。日本のたくさんの中小企業がインドネシアへの工場移転を計画している。そんな状況下にBNI銀行が踏み行っているステップは実に素晴らしいものだ。」ムハンマッ・ルッフィ駐日インドネシア大使はそうコメントした。HIPMI(インドネシア青年事業者会)会長から第一次SBY内閣でBKPM(投資調整庁)長官の重責を果たして実業分野の経歴に磨きをかけたこの青年大使は、日本の実業界との橋渡しに意欲満々な様子。ルッフィ大使が立ち会った2011年7月28日の協力覚書調印はBNI銀行と日本国際協力銀行との間で行われたもの。
日本の中小産業の多くは各地元で活躍している地場銀行と取引しているケースが多く、海外進出の際にまず直面するのはそれら取引銀行のネットワークが進出先国にあるのかどうかという問題だ。その問題克服を支援するために国際協力銀行が手を差し延べた。日本で操業している唯一のインドネシア系銀行であるBNIがその相手に選ばれたのは当然の帰結にちがいない。覚書は日本の地方銀行とBNI銀行の提携、ジャカルタのBNI銀行にジャパンデスクを設置、人材研修やクレジット供与などの協力を行うといった協力支援の枠組みを取り決めている。
まず最初に進められるのはジャパンデスクの設置で、ジャカルタのBNI銀行内に日本人担当者が置かれて進出日本企業への銀行業務サービスが行われる。「日本人は日本人からサービスを受けることで大きい安心感を抱くというのが日本の文化だから、ジャパンデスクに日本人スタッフを置くのは不可欠だ。」調印式に出席したBNI銀行代表取締役はそう述べている。ジャパンデスクは2012年初から業務を開始する予定になっている。


「ルバラン交通規制が終わっても、トラックはスマトラへ渡れない」(2001年8月15日)
イドゥルフィトリ前後のルバラン帰省交通統制を行う運通省陸運総局長規則で、イドゥルフィトリ前の四日間とイドゥルフィトリ後の一日、二軸以上のトラックは一般道路での通行が禁止される。これはルバラン帰省交通とその逆流がスムースに行われるよう国民に便宜をはかるのを目的としており、特定貨物の輸送に従事していない貨物車両は国民の移動を優先させてやらなければならない。特定貨物とは生活基幹物資・燃油・ガス・容器入り飲料水を指している。
一方、ジャワ島とスマトラ島を結ぶ大動脈の弁になっているスンダ海峡渡海に従事しているムラッ(Merak)〜バコウニ(Bakauheni)航路フェリーは、イドゥルフィトリの前後各7日間、トラックの乗船が受付られない。
この航路は多くの船が頻繁に故障して戦列から離れるために輸送能力が低下し、ムラッ港に乗船待ちトラックが長蛇の列をなして三日後に乗れる、四日後に乗れるといったはなはだしい不能率を実演しているが、ルバラン帰省を前にしてやっと25隻前後が戦列に復帰したものの、自家用四輪二輪車および徒歩乗船者優先方針が半月も続けられれば、またトラックの長蛇の列ができると懸念するひとびとも少なくない。
2011年7月この航路では一日平均2,688台のトラックが運ばれたが、ラマダン月に入った8月第一週は一日平均台数が2,941台に激増している。おまけにトラックの大型化が顕著になっており、2010年の平均車長12〜14メートルは昨今18〜21メートルになっているため、フェリーの運送能力は台数換算すると低下気味になっている。


「競争力と一斉休暇」(2001年8月19日)
2011年5月24日付けコンパス紙への投書"Cuti Bersama dan Daya Saing"から
拝啓、編集部殿。政府は経済面での競争力強化のために資金とパワーを最大限に利用して生産性を高めることを優先するべきだとわたしは考えます。だから2011年5月16日月曜日がワイサッ休日と日曜日にはさまれたとき、全国的に一斉休暇を行うと公表したようなことを、政府はしないほうがよいのです。
もし一斉休暇をどうしてもしなければならないのであれば、それはどの役所が行うのかということを明確にし、今のように国中がそうするような曖昧なことはやめなければなりません。新聞・ラジオ・テレビで一斉休暇の公報が報道されるため、民間企業従業員までが一緒に会社を休みにするよう要求してきます。
民間企業と官公庁は明らかに別物です。たとえば中小企業の2割は、アセアン中国自由貿易協定が2010年1月から施行されたのに伴って大量に流入してくる関税免除の輸入品と競争し得ず、倒産の危機に直面しています。中国産品はけっこう品質がよく、価格も国産品より廉価であり、加えて許認可行政にハイコストがまとわりついているのですから。「できるかぎり困難にしてやれ。なんで便宜をはかってやるんだ?」という風土はいまだに克服されていません。
ガソリン価格が値上がりすれば、問題がまた増えます。政府は各セクターに応じて資金とパワーを最大限に向上させるべきです。もはや避けることのできないグローバリゼーション時代を前にして、一斉休暇はわれわれの競争力を強化するというコンテキストで見直しが行われるべきときが来ているのです。[ 全国中小零細事業商工会議所会頭、エリアス・ルンバントビン ]


「2012年からEMC規格義務付け開始」(2011年8月22日)
政府は家電品の電磁環境適合性(EMC)標準規格実施義務付けを2012年から開始する意向。国家認定委員会は、家電品のSNI(インドネシア製品規格)義務付けの次のステップがEMCである、と公表した。EMCの内容については現在工業省と商業省が協議を重ねている段階である由。「国産品にせよ輸入品にせよ、国内にある検査施設はさまざまな家電品のEMCに関する検査を行う能力を持っている。バンドンの技術素材物品総館やスルポンにあるインドネシア科学院の品質システム検査技術研究センターではEMCに関するあらゆるアスペクトの検査を行うことができる。」
インドネシアのEMC標準規格はアセアン統一基準であるHarmonized Electrical and Electronic Equipment Regulatory Regimeに合致するものでなければならず、そうすることでインドネシア産品を域内市場に輸出する場合規格面での問題を免れることができる。電気電子製品規格のアセアン統一基準は動かすことができないものであり、そのため国内規則もその標準をクリヤーしなければならない。そして国内規則の実施も2012年から開始される必要がある。それらの条件が整備されていなければ、域内諸国製品は何ら障害を受けることなくインドネシア市場に流入できる一方、インドネシア製品はそれらの国で規格をクリヤーするまで販売できなくなる。
しかし工業省国際産業協力総局長は、アセアン統一基準が設けられているすべての項目をインドネシア国内で義務付けする必要はない、と語る。「その統一基準は域内での物流円滑化を目的にしたものであり、個々の項目を義務付けするかどうかは各国政府の意向次第だ。」
家電品連盟会長はそれに関連して、家電品のEMC規格を取り入れるかどうかは各社の方針次第だ、とコメントする。「国によって義務付け対象品目が違っていても生産者にとって問題にならない。その国に輸出されるものだけが規格に合致するよう作られればよいことであり、国内市場にのみ販売されるものならSNIをクリヤーすれば済むことだ」会長はそう述べている。


「新植民地主義と狡猾な外国勢」(2011年9月2〜15日)
国民生活に大きいウエートを占めている主要経済セクターで外国勢がどんどん優勢になっている。たとえば金融セクター。2011年3月時点の銀行界資産総額3.06兆ルピアの50.6%は外国勢の手中にある。2008年6月はまだ47.0%だったが、いまや過半数を超えた。国内銀行セクターは15銀行が85%のシェアを持っている。そのトップ15銀行へも外国資本は流入している。121一般銀行のうち47行が外資シェアを持っている。
保険業界も類似の構造をしている。国内で操業している47生保会社のうち、インドネシア資本が百パーセントというのは半分に満たない。純資産が7千5百億ルピアを超える会社は外資が入っていると思ってまず間違いない。保険料収入高のトップファイブの中に国民系は一社もない。それらが政府の外資規制方針と密接に関連しているのは言うまでもあるまい。銀行は99%、保険会社は80%まで外資シェアが認められているのだから。
株式市場もそうだ。インドネシア証券取引所上場株の60〜70%は海外からの投資資金で買われている。株式公開した国有事業体でさえそうなってしまう。公開株の60%は外国人が購入しているのだ。
石油ガスセクターはもっとひどいありさまで、国民系採鉱会社は四社に一社しかない。鉱エネ省は2025年までにその比率を50%に引き上げることを目標に置いている。
通信セクターはどうだろうか?携帯電話オペレータのほとんどに、既に外国資本が入っている。外資シェアは次の通りだ。
Natrindo 95%, XL Axiata 80%, Indosat 70.14%, Hatchison 60%, Telkomsel 35%, SmartFren Telecom 22.91%
あるいはインドネシアの主要輸出産品のひとつパームオイル。外国企業が国内の広大な土地のコンセッションを得てパーム林農園を造る。かれらが得ているパーム林用地は広大な面積を占めている。
インドネシアの経済開発の中でアンチ外国になる必要は必ずしもないのだが、国民が往々にして外国勢優遇と感じる政策も少なくない。主権国家としての経済活動を行うためにそれぞれの経済セクターで、国民系企業がもっと力をつけて外国企業と互角に競い合うようにならなければ、国と国民の発展を手中にするのはむつかしい。紛れもない実力差があり、国の経済活動の大半を外国企業に委ねているのでは、本当に国民のための福祉を支える経済活動ができるのかどうかは確信が持てないのも当然だ。ユスフ・カラ前副大統領は、われわれインドネシア国民が成功に向けて一貫的に政策を遂行してこなかったことに原因がある、と語る。「われわれ自身が実力をつけなければならないということを忘れてはならない。簡単に結果を求めればいい、という習慣は見直されなければならない。身を粉にして働らいて何かを作り出すということをせず、外国から買えばいい、という安易な姿勢が現状を招いているのだ。」前副大統領はそう辛口の批判を行っている。
製造産業をはじめとして、他の経済セクターでは外資受入れに厳しい条件が付けられる。国民産業がいまだに柔弱であるためにそれを保護する必要があるというのが基本のコンセプトをなしており、国民系業界者も政府に強くその種の保護を求めている部分がある。その一方で、資本力の強化を外国勢に求める国民系業界者もいる。その典型が銀行界と言えるかもしれない。
一般銀行界の121行は2千3百兆ルピアを超える資金を国民から集め、3千兆を超える資産を有しており、全国に1万4千店を超える店舗を設けて国民へのサービスを行っている。インドネシアの銀行界は[1]政府系の国有銀行4行と[2]地方政府が擁する地方開発銀行26行、[3]百パーセントインドネシア資本の民間銀行が44行、[4]外資合弁銀行16行、[5]もともと百パーセント国民資本だったところに外資が入ってきた民間銀行21行、[6]百パーセント外資の外国銀行支店10行という内訳になっている。
上の6種類の中の、外資が関わっている[4][5][6]というのはそれぞれ異なる要因が発端になっており、スタート時期が違うものが現在併存しているということなのである。これぞユスフ・カラ前副大統領が言う「一貫的に政策を遂行してこなかった」実例のひとつだと言えよう。[6]の外銀支店はまだ国内金融資本が育っていなかった時代の政策によるものであり、[4]の外資合弁はオルバ期後半の銀行産業外資開放政策で国内資本と合弁を組ませたものであり、[5]のケースはグローバル通貨クライシス以降、崩壊しそうになった百パーセント内資銀行のサバイバルのために外資の流入を大幅に認めたというのが裏側にある事情だ。
インドネシアの銀行界が99%まで外資シェアを認められているのは[5]のケースの名残りであり、1999年政令第29号第3条にその内容が謳われている。これも過渡期の対応策と見るのであれば、外資シェアをもっと小さいものに改定するのはお手の物であり、そうするよう要求する国民知識層からの声も強いが、政府側にそのような動きはない。中央銀行は[6]の外銀支店を現地法人化させようとする動きを示しているものの、内外資本比率の再統制に向かうのかどうかについて中銀はそれをしないと表明している。政権が変わればその保証はなくなるかもしれないのだが。
ちなみにインドネシア銀行界の外資開放99%というのを近隣諸国と比較した場合、アセアン加盟国平均は33%、マレーシアは投資銀行とイスラム銀行は70%だが国民へのサービスをメインにする一般商業銀行は30%、シンガポールは地場銀行40%、タイは資本比率の高さに応じて行政機構内でより高位の機関が特別裁可を与える方式を採っている。この比較からもインドネシアが国民生活を外資に委ねているという印象は強くにおってくる。
1997〜1998年のグローバルクライシスが外資の流入をもたらしたのは銀行業界のみならず、通信業界にも同じことが起こった。今や携帯電話オペレータが持っているアクティブなSIMの数は国民人口を超えている。Telkomselは1億3百万、Indosat4千4百万、XL4,350万のトップスリーをはじめ、中小オペレータの顧客を合計すると2億4千3百万になり、国民人口2億3千7百万をオーバーしている。エリア別に利用者数を見るなら、スマトラ3,572万、ジャカルタ&バンテン3,261万、西・東・中部ジャワとジョクジャ4,289万、バリ・ヌサトゥンガラ723万、カリマンタン1,111万、スラウェシ・マルク・パプア1,262万という内訳になる。
さて、国内ナンバーワンオペレータであるテルコムセルの資本比率はどうなっているだろうか?最初はテルコムとインドサットが主株主になって設立されたテルコムセルは現在、テルコムが65%、シンガポールのシンテルモバイルが35%のシェアを持っている。
インドサットはインドネシア政府が14.29%、パブリック15.33%、カタルのQtel Asiaが65%、ノルウエーのSkagen AS Entities5.38%という資本構成だ。
民間のXLはマレーシアのIndocel Holdingが66.7%、UAEのEtisalat Int'l Indonesia13.3%、パブリック20%で、今や社名もXL Axiataと名乗り、外資会社と変わらない。
AXISブランドのNatrindoはサウジアラビアのSaudi Telecomが80.1%、マレーシアのMaxis Communicationsが14.9%、インドネシア企業が5%という比率。
元々テルコムセルもインドサットも政府資本で興した国策会社であり、クライシスの嵐が過ぎ去ったいま、政府は元の姿に戻したいとやっきになっていて、2007年の投資ネガティブリストでは無線通信オペレータの外資比率を65%以下、有線通信オペレータは49%と改めた。それを背景にして国内携帯電話オペレータに買い取られた株を買い戻す交渉を続けているものの、前途洋々たるインドネシアの携帯電話市場に入り込んだ外資オーナーにそれを手放す気配はさらさらない。嵐を乗り越えたらもう手を貸してくれなくていいという姿勢に付き合ってくれる優しい外資ばかりではないにちがいない。
化石燃料の値上がりによってパーム油に脚光が当たっている。世界最大のパーム油産出国であるインドネシアも、この期に乗じて輸出を増やしたいという希望がみなぎっている。2010年のパーム油生産は2,160万トン、輸出量は1,550万トンだ。その生産を支えるのがパーム椰子農園で、農園用地は790万Haあり、そのうちの570万Haで作付けが行われている。インドネシアとマレーシアの二国で世界の植物油需要の87%を供給しているのだが、インドネシアのパーム油生産がインドネシア人の手で行われているわけではないことに注意しなければならないだろう。外国の農園会社にコンセッションが与えられている状況の詳細は次のようになっている。
マレーシア系
ガスリーグループ 22万Ha
クリムマレーシア 9.7万Ha
ゴールデンホーププランテーション 9.6万Ha
クアラルンプルクポン 9.1万Ha
イギリス系
REAホールディング 6.6万Ha
MPエバンス 4.7万Ha
アングロイースタンプランテーション 3.8万Ha
ベルギー系
SA シペフ 6.6万Ha
ルクセンブルグ系
ソクフィナシアーノードスマトラ 4.5万Ha
シンガポール系
ウィルマーホールデイングス 19.8万Ha
米国系
ヒンドリ=カーギル 1万Ha
スリランカ系
カーソンカンバーバッチ 2.8万Ha
国有事業体大臣によればパーム油農園の50%は外国企業が経営しており、インドネシアが世界最大の生産量であるとは言っても、単なる地主でしかないという見方も起こりうる。政府はその空洞状況を更に悪化させないために外国企業への新規コンセッション供与を停止しているが、国民系資本の新規投資が起こらなければ停止を解除せざるを得なくなる可能性は高いと言えよう。
飲食品産業も国民福祉に密接に関わっているセクターである。この分野にも外国多国籍企業が滔々として参入している。生産〜流通〜小売という流れの中で最初外国企業は流通分野に入ってきた。続いて原料生産に関わるようになり、種苗の開発と生産を行なって国民系製造業界に原料供給の首根っこをおさえる立場に立つ。国民系製造会社の中に身売りをする会社が出てくると、それを買い取った多国籍企業はついに飲食品製造事業に参入していく。
世界でいま農業セクターのインプット産業は多国籍企業10社から独占的に供給を受けており、10社の年間売り上げは4百億ドルにのぼっている。そのトップファイブはシンジェンタ、モンサント、バイエル、BASF、ダウアグロ。一方、農民は製造業界と原料買付け者に依存している。4,090億ドルの食品販売市場を支配しているのも10多国籍企業で、そのうちのビッグファイブはネスレ、カーギル、ADM,ユニリーバ、クラフトだ。
世界の食品小売業界はウォルマート、メトログループ、テスコ、セブン&アイ、カルフルのビッグファイブに握られており、インドネシアにもそれら巨大多国籍企業はしっかりと食い込んでいる。ネスレは世界のカカオ取引の最大手だ。カーギルは畜産飼料の第一人者で、ユニリーバは加工食品の王者だ。インドネシアでは、ダノン、ユニリーバ、ネスレ、コカコーラ、ハインツ、キャンベル、ヌミコ、フィリップモリスなどが下のように国民系食品生産者をあれこれ買い取っている。
ABCブランド(ケチャップ・シロップ・ソース)生産者PT ABC Central Foodはハインツ(米国)が65%シェア
Sari Wangi(茶)生産者PT Sari Wangiはユニリーバ(英国)の100%シェア
Bangoブランドケチャップ生産者PT Sakura Aneka Foodもユニリーバ(英国)の100%シェア
Taroブランドスナック菓子生産者PT Rasa Murni Utamaもユニリーバ(英国)の100%シェア
Aquaブランド容器詰め飲用水生産者PT Tirta Investamaはダノン(仏国)が74%シェア
Helion, Nyam-nyamブランドビスケット生産者PT Helios Arya Putraはキャンベル(米国)が100%シェア
Adesブランド容器詰め飲用水生産者PT Ades Alfindo Putra Setiaはコカコーラ(米国)が100%シェア
SGMブランド(ミルク・ベビーフード)生産者PT Sari Husadaはヌミコ(蘭国)が82%シェア
Dji Sam Soe, A Mildタバコ生産者PT HM Sampurnaはフィリップモリス(米国)が100%シェア
インドネシアのアグロインダストリー政策は一部特定グループに支配されており、そのグループはインドネシア政府へのロビー活動に強いだけでなく、国会にも強いネットワークを持っている、と農業大臣は洩らしている。
インドネシアは国際タバコ資本の餌食にされている、とタバコ抑制国家コミッション顧問評議会議長が発言した。国内の青少年マーケットはすでにかれらの手中に落ち、次のターゲットにされているのは女性と児童で、そのため効果的な保護ツールを政府は早急に用意しなければならない、との要望が出されている。
喫煙は国民の健康に有害であるという事実は理解されつつも、政府がタバコ産業に対して断固たる措置を取れないのは、そんなことをすればタバコ関連諸税のロス・失業者の増加・タバコ農民の所得ダウンによる貧困化が発生するという神話に政府がとらわれているからだ、と議長は主張している。「われわれはそんな話を真に受けて愚者にされており、一方タバコセクター大企業のあげる利益は外国に流出している。そのオーナーは外国企業なのだから。おまけに、インドネシアで生産されるタバコに使われているタバコ葉の4割は米国から、1割はその他の国から輸入されている。インドネシアのタバコ農民が作る原料は5割にしか使われていない。米国は国内のタバコ消費を極度に制限する一方、米国資本がインドネシアのタバコセクターに進出して以来、自国で産出するタバコ葉をインドネシアに輸出するようになり、平気な顔でダブルスタンダードを行っている。タイのように他の東南アジア諸国は米国のやり方に面と向かって対抗している。言いなりになっているのはわが国くらいのものだ。」
サヒッ・サヒルマン病院の報告によれば、メディカルチェックアップを受けに来た各社従業員2,654人の中に非喫煙者は69%おり、残る31%は一日11〜20本ペースの喫煙者だった。喫煙者の94%は糖尿病・心臓や肺の不順といった慢性病を抱えているとのこと。
外資流入は手工芸品セクターでも起こっている。15年前から始まったこのセクターへの流入はいまや地元生産者を押しのける勢いで優位に立っており、合弁を義務付けて国内生産者の存在を維持させる政策を政府はなぜ採らないのかという批判の声があがっている。
「最初かれらは単なるバイヤーだったが、そのうち生産分野に進入して来た。流通を掌握した者もいる。そして年々かれらのビジネスは強力さを増している。それがこのまま進んでいけば、国民系生産者はこのセクターで生き残ることができなくなる。だから外資を国民系生産者と提携させる規則が出されなければだめだ。そうしなければかれらは狡猾なビジネス手法を行って弱小資本の生産者を廃業させてしまうだろう。かれらの在留許可や事業許可も監視されなければならない。かれらは市場への理解が深く、そして市場をよくつかんでいる。市場の好みに応じてデザインを適応させていくことも巧みだ。だからかれらはインドネシア市場でその分野に力を発揮するだけにさせ、生産は国民系生産者が受け持つように政府は業態をまとめるべきだ。」インドネシア家具工芸品産業協会会長はそう語る。
観光産業も例外でない。外資は風光明媚な一等地を独占して大型リゾートを建設し、それに合わせて外国旅行会社が直接インドネシアに出入りしている。この線からこちらは地元旅行者に客をゆだねてほしいと期待していた国民系旅行代理店は肩透かしを食らって閑古鳥が鳴いているところもある。その限界を明確に線引きし、実施を厳格に監督するよう政府に求める声は強い。
ロンボッ(Lombok)やバリの小奇麗なビラや宿泊施設あるいは豪壮な民家が外国人の所有になっているところも少なくない。往々にして短期間しか滞在しないそのオーナーは、自分が滞在しない期間その建物を宿泊ビジネスに利用する。
外国人個人に土地所有が認められないインドネシアの法規も、かれらは巧みにすり抜けていく。西ロンボッ県スンギギ(Sengigi)ビーチの土地は外国人が所有者になっているところが多い。そして現地のひとびとの間でそれは周知のことになっているにも関わらず、法曹機関が本腰を入れてその取締りを行った話を聞いたことがない。行われるのは狙い撃ちであり、行うのはゆすりたかりを目指す悪徳役人であるというケースばかりだ。役人は国家行政意識が低く、あるのは私腹を肥やす意欲ばかりという実態の一例だろう。
1986年、スンギギビーチ観光開発の国策が開始された。それ以来、外国人がやってきて地元民の土地を買いあさりはじめた、と元スンギギ村長は物語る。外国人への名義変更が通らないためインドネシア人の名前が使われる。名前を貸したインドネシア人はその土地とそこに建てられた家屋の管理者として月給が与えられる。ひと月の報酬は50〜70万ルピア。水道光熱費は外国人オーナーの負担。管理者が一家でそこに住んでいるというケースも少なくない。だいたい一年に二回のホリデーシーズンにオーナーはやってくる。特に冬の休暇シーズンは欠かさない。イタリア・ドイツ・オランダ・オーストラリアの人間が多い、と村長は言う。スンギギ村に隣接するバトゥラヤル(Batu Layar)村やスントゥル(Sentul)村にはそんな外国人所有のビラや邸宅が5〜10軒あり、中には地所が1Haという広壮なものも混じっている。その建物は一泊60〜75万ルピアで貸し出される。
バリ島南部を中心にして広がっていったこの流れは、いまやバリ海峡を越えた東ジャワ州バニュワギ(Banyuwangi)のプルンクン海岸にまで達している。オーストラリア人とアメリカ人がリゾート開発の投資申請を出しているが、州政府はまだその影響を考慮してペンディングのままにしているようだ。インドネシア東部地方の大型リゾート開発は外資にとってまるで処女地そのものであり、たいへん魅力的であるにちがいない。ところがそのリゾートにホテルを建て、外国人観光客誘致を行うために旅行会社を設立するというあたりからインドネシア側観光業界の思惑との衝突が始まる。呼び込んできた外国人観光客を丸抱えで世話し、現地資本とまったく接触しないまま観光客は帰国するということになるなら、地元観光産業はリゾートが作られるたびにこれまで少なかった観光客がもっと減っていくだけになる。
「シンガポールやマレーシアにわれわれが観光客を連れて行き、現地で案内すると捕まってしまう。かれらは観光ガイドを自国民にさせるよう義務付けており、その規則に違反すればすぐに措置を受ける。ところが外国の団体ツアーを連れて外国人ガイドがやってきても、かれらは現地側を巻き込まないで自由にそれを行っており、地元官憲の取締りなどまったく行われていない。」観光旅行代理店協会副会長は政府の姿勢に批判を洩らしている。
1998〜1999年のGDPに対する外国勢のシェアは7.62%あったが、2010年は2.82%になっており、国民系資本の貢献度は大きく高まっている、とハッタ・ラジャサ経済統括相が表明した。しかし経済評論家ファイサル・バスリは次のように反論する。
インドネシア経済への外国勢の浸透がますます激しくなっていることに疑いはない。だから経済統括相が外国勢のシェア減少などをわざわざ表明してその事実を否定したところで何の役にも立たない。中央統計庁はGDPへの貢献内容を国籍別に報告したことなど一度もないから、そのデータの源泉はいったいどこなのだろうか?たとえ中央統計庁がそんなデータを持っていたとしても、外国勢と言っている中味はいったい何なのか?海外生産ファクターの純利益か、あるいは各経済セクターの外国所有分なのか、明らかにされるべきことがらは数多い。
1998年経済クライシス以降銀行界改整庁の管理する資産の多くが外国勢の手中に落ちたのは明白な事実だ。メガワティ・スカルノプトリ政権以来大々的に進められてきた民営化で、インドサットのような直接買収にせよ、証券市場を通しての間接的なものにせよ、たくさん外国資本が参入してきたではなかったろうか。ほとんどすべての経済セクターに外国勢が入るのを政府は十分意識して便宜をはかっているではないか。1967年外国投資法よりはるかに外資に優しい投資法を用意したことに明らかなように、政府はより一層たくさんの外資を誘致しようとしているのではないのか。インドネシア銀行はその銀行界構成図をもって、国民系民間銀行界に向けられた外国勢の支配をつつがなく整えたではないか。
外国勢のシェアが上昇していない経済セクターはほとんどないと言って過言でない。農業セクターはマレーシア・フィリピン・中国資本の存在が重みを増している。鉱業セクターも小規模から巨大規模に至るまで、外資が猛威をふるっている。製造産業セクターでは、拡張しているのは外資系企業だけだ。加えて韓国が製鉄セクターへというように新参者も出現している。国民系民間製造業界の多くは外国勢に身売りしてしまった。
サービスセクターもほとんどすべてのラインで外国勢が大手を振っている。小売業から空運業、ホテルから港湾、保険から通信、ガソリンスタンドから病院に至るまで。外国銀行は国内諸都市に容易に支店を開くことができる。外国銀行の新設・拡張の許可にたいへん厳しい姿勢をとっている中国とは対照的だ。
政府がそれらを否定したところで何の意味もない。外国勢の存在は政府が主張している成功の一ファクターではなかったのか。投資調整庁は外国投資をできるかぎりたくさん誘致するのが任務だったのではなかったのか。
外国勢は汚物ではない。単純に比較して見よう。アンチ外国勢として名前の知られた国ですら、外国直接投資(FDI)はインドネシアよりはるかに大きい。たとえばボリビアだ。2009年のFDI累計総額はGDPの36.6%に該当する。共産主義国であるにもかかわらず、ベトナムは57.1%でもっと大きい。シンガポールはFDIのおかげで国が繁栄し国民は福祉を享受している。GDPの二倍もあるFDIのおかげでなければ一体何だと言うのだろう。
その反対に外国勢を追い出し、あるいは外国企業を強制的に接収した国の経済は衰退の一途だ。その明白な例がベネズエラ。GDPに対するFDIのパフォーマンスは2000年の30.3%から2006年は24.9%、そして2009年は12.2%に、と低下の一途を示している。いまやベネズエラは年間成長率1%程度という、世界の最低グループのひとつになっている。インドネシアはどうだろうか。2000年から2009年までの平均は14%前後で、中国の12%に近いレベルにある。過去数十年間外資に対して閉鎖的だったインドは最近積極的な外資誘致に切り替えた。その結果2000年の3.5%は2006年に7.8%、そして2009年には13.3%まで上昇しており、インドネシアと肩を並べている。おかげでインドは高い経済成長率を謳歌しているありさまだ。ここ数年の経済成長率は8%に達している。
FDIの総固定資本形成に対するパフォーマンスはインドネシアで10%を超えたことがなく、世界でも最低グループに属している。バングラデシュ・スリランカ・パキスタン・インドなどの諸国に比較してすらインドネシアは劣っている。ベトナム・カンボジャ・ボリビアなどの共産主義社会主義諸国と比べてさえ劣っているのだから、フィリピン・マレーシア・タイなどに対してはなおさらだ。だからどうして今頃になって外国勢がインドネシアにいることを嘆くようになるのか?その理由は三つ考えられる。
[1]外国勢が食料・エネルギー・金融の三分野におけるわれわれの経済主権を脅かしはじめたから。[2]外国資本のパフォーマンスが最大限になっていないから。われわれは厳選しないで外資を受け入れてきた。下品な言い方をするなら、外資でありさえすればゴミですら誘致してきたということだ。[3]国内での加工を義務付けないまま、天然資源セクターで外資を自由に振舞わせてきたから。FDIは工業化戦略の中に一体化されたものになっていない。政府はもちろん工業化戦略を持っていないのだから、この推断が的外れである可能性は高い。
次のイロニーを見るがいい。われわれはボーキサイトを原石で輸出し、アルミニウムを作るためにその加工品であるアルミナを輸入する。われわれが生産したアルミニウムの大半は輸出され、その一方で国内製造業界はアルミニウムを海外から輸入している。われわれは後になってやっと気がついた。新しい鉱物石炭法は採鉱物の国内加工を義務付けたが、その施行開始は2014年だ。しかもその開始に向かっている現在、2014年のゴールに至るまで採鉱会社が採鉱物の輸出を激増させている状況に目をふさいでいる。これまでボーキサイトの輸出は年間100万トン程度だったというのに、2010年の輸出量は2千万トン以上に膨れ上がった。
外国勢の国内進出がますます顕著になっているのは、国民の持っている潜在力を具現させることに政府が失敗しているからだ。国民のパワーは国内にいる外国勢よりもはるかに強力なものであるというのに。2009年の全国有事業体保有資産総額はGDPの半分に近い。外国勢の存在とは比べ物にならない。ところが皮肉なことに、全国有事業体が計上した利益は88兆ルピアしかなく、マレーシアの一国有事業体であるペトロナスが同じ年に計上した148兆ルピアにすら及ばない。
政府が取扱いを誤れば、外国勢の風味は不味いものになる。蜜さえ毒に変わるのたとえ通りだ。大統領が先日発表したインドネシア経済開発促進拡張マスタープランがその解決方法でないのは明らかだ。


「環境汚染、貧すれば鈍す」(2011年9月29日)
2011年6月24日付けコンパス紙への投書"Bau Busuk dari Pengolahan Ikan di Permukiman Warga"から
拝啓、編集部殿。ブカシ県南チカラン郡スカレスミ村とパシルサリ村のタマンスントサ住宅地区に住んでいるわたしどもは、パシルサリ村カルヤデカ工業団地にある魚加工工場PTパハラバハリヌサンタラ社から出る魚の腐敗臭に悩まされています。
この環境汚染が明白になったのは2009年4月以来で、わたしどもは公式非公式に住民代表と工場経営者側との間で協議を持ち、またその工場への住民デモも2009年7月4日と2010年11月13日の二回行われました。ところがデモの際、住民に立ち向かってきたのは会社従業員でなく、腕力で雌雄を決しようという態度を露骨に示すひとびとでした。
そのとき工場経営者は、魚の腐敗臭が解決されるまで操業をストップすると約束し、問題解決がなされて操業が再開されるときには住民に連絡するという約束をもらいましたが、工場側の問題解決の努力は実を結ばず、協議結果はしばしばおざなりにされました。魚の腐敗臭はいまだに変化がありません。工場の操業時間は昼間から夜間操業に変わっただけで、早朝まで作業が続けられています。この問題の報告書はパシルサリ村とスカレスミ村の村長、ブカシ県令、生活環境局、警察、県議会に届け出てありますが、現在に至るまで結果はまだありません。[ パシルサリ村とスカレスミ村在住、ファハミ・マジュデイ、パシルサリ村ムフリ、ワヒッノ]


「10月に内閣再編」(2011年9月30日)
SBY大統領が、10月に入ってから第二次インドネシア団結内閣のリシャッフルを行う意図を明らかにした。強力な指導力を打ち立てた共和国初期の大統領たちは別にして、レフォルマシ期に入って以来、歴代大統領はゴトンロヨンとムシャワラの民族精神を基盤に据えた挙国一致内閣を諸有力政党間の勢力均衡の上に築くということを行ってきた。
その結果国会勢力図が内閣の中にも反映され、政党上部層の人間が閣僚に送り込まれて行政分野でミスマッチングを起こす状況は普通のことになっているし、加えて政党の資金確保が行政機構の外でほとんど機能しないため必然的に行政機構が政党の資金源となり、腐敗行為がはびこる要因と化している。
そんな状況を正常化させようとしたグス・ドゥル大統領は、その最後の内閣編成後に大統領の座からひきずりおろされてしまった。その先例が与えている教訓は一連の後継諸大統領が重々心の奥底に刻み込んでいるにちがいない。
調査機関リンカランサーベイインドネシアが2011年9月5〜10日に行ったSBY=ブディオノ政権に対する国民評価調査で、政府の業績に不満を表明する回答者が激増していることが明らかにされた。
満足している回答者は37.7%しかおらず、2010年1月の52.3%から大幅な減少を示している。おまけに都市部住民は29.6%と30%を割り込んでしまい、地方部は43.9%とまだ高いレベルにあるものの、これは情報流通の時差によるものだろう、とサーベイ実施者は分析している。
不満を表明した回答者は44.7%で、不明・無回答は17.7%あり、SBYの個人的な人気は閣僚に対するメリハリの効いた指導力が見られない昨今の姿勢に蝕まれ、イメージと人気取り政策を振り撒いても回復は難しい段階にさしかかっているようだ。
国民の不評をかこっている第二次団結内閣の拙劣な政策の中には、汚職犯罪入獄者への恩赦、生活基幹物資や住宅の値上がり、国外出稼ぎ先で死刑になった出稼ぎ者への対応、低所得層向け小型ボンベ入りLPGに関する不徹底な対応、マイノリティ宗派に対する保護の欠如、低モラルと国民が見ている政府高官に対する曖昧な対処などがあげられている。


「日本へのカニ肉輸出」(2011年10月3・4日)
南スラウェシ州タカラル県ガレソンの沿岸部住民たちは、これまでカニの肉を輸出するための活動を行ってきた。漁民が海に出てカニを採ってくると小資本加工業者に売る。加工業者はカニを解体して肉を取り、輸出する形態にまとめて輸出業者に売り渡す。輸出業者は受注しているオーダーに応じて輸出手続きを行い、送り出す。インドネシアでは、一般民衆の行う経済活動はたいていこのように細かく分断された活動の流れを多数の人間が分担する形を取る。かれらは個々に独立した事業者として活動を営んでおり、だれかから賃金をもらってその仕事をしているわけではない。
そのように零細事業主が狭い事業領域を自分の分野として管掌しているのがインドネシア民衆経済の特徴と言えるだろう。どうしてそのような形になるのかについては、そんな民衆経済の場に大きな資本が存在していないのが直接的な原因のような気がするが、ほかにも社会全般に流れている個人の掌握分野を狭い範囲で限定する傾向や、技術面の習得を畑違いの分野に拡大することの困難さなども関わっているように思われる。人間の活動領域を狭い範囲に限定する傾向は、大きな会社の中でも、商店やレストランでも、極論するなら家庭プンバントゥ(女中)を台所係りと雑用洗物係りとでも言えるコキとチュチに分けるといった事例にいたるまで、顕著に見出すことができる。大会社に採用された大学卒の者は、常にその専攻分野に関連付けて配属されるのが常識になっており、畑違いの部署に配属されたなら、自分はこの部署の同僚たちの平均以下で当然なのだという心得違いがかれら自身をさいなむようだから、会社の人事部門もそれを十二分に理解しているような対応を取る。それら人間の経済活動の狭窄化の底流にあるのは、労働性悪説とでも呼べそうな労働観であるにちがいない。
一般民衆経済に資本が不足しているのはインドネシアだけでもあるまいが、インドネシア国内に資本が足りないという意味では決してない。巨大資本もあれば、金融界にも貸付資金はうなっており、巨利を求めてせめぎあっている。問題はそれら巨大な資金が一般民衆の行う経済活動にほとんどまわってこないということなのだ。金融界を含めて巨大な資本を動かしているひとびとは、投資効率を最優先にする。つまり金を借受け人に渡し、利回りがよければよいほどどんどんと更に金を注ぎ込もうとするのである。借受け人の事業にかみこんで行こうとする傾向は小さい。もちろん、借受け人の側も金と一緒に口を出されるのは厭う傾向が強く、「金の授受ですべてを終わらせたい。ビジネスの内容はわたしにすべてまかせろ。」という姿勢が一般的だ。俗っぽく言うなら、だれもがお山の大将になりたがり、共同利益の向上を求めて協力しあおうという精神的態勢が十分に育っていない、ということにちがいない。カニ肉輸出にもどろう。
南スラウェシ沿岸部の海で採れるカニ肉の輸出先は日本なのだ。ここ数年、日本からの受注は旺盛で、2007年の輸出実績584トンは2010年に774トンまで上昇した。ところがその乱獲の結果に今頃かれらは直面することになる。
最盛期は漁船が出漁して1キロほど海を回ってくると、15〜20キロのカニを水揚げしてきた。ところが今では、そんな距離をまわっても、採れるのは1〜2匹しかない。おかげで漁船は遠出するしかなくなり、パンケップやバッルまで足を伸ばすが、そうなると持ち帰る獲物の鮮度は低下する。漁民の持つ小型漁船にコールドストレッジを装備させるのは中途半端なものにしかならず、資金の浪費に終わるばかりだ。加工業者の中には漁民に500万ルピアの金を投資してパンケップまで遠出させてみたものの、その投資回収は完全な失敗に終わった実例もある。その業者はカニの取扱いをあきらめ、今はトビウオの卵の輸出に関わっている。
タカラル県ガレソンのボントスング村は日本向けカニ肉輸出で栄えてきた村だ。2百隻の漁船があり、10軒の解体加工業者があり、多数の輸出業者に製品を供給してきた。ところが近海からカニが姿を消したために、今まだ活動を続けている解体加工業者は3軒になっている。
そんな状況に起死回生のカンフル剤を与えようとして、マカッサルのハサヌディン大学漁業海洋学部が乗り出してきた。これからは養殖カニに切り替えて、日本向けのカニ肉輸出を継続させるのだ。かつて一世を風靡したエビでできていたことが、カニでできないはずはない。大学指導チームを迎えてボントスング村は早々に体勢の整備にとりかかった。かつてエビの孵化と養殖に使われていた2x5メートルの水槽はあちこちにごろごろしている。指導チームは水槽を使った海カニの孵化トライアルを既に成功させており、村が日本向けカニ肉輸出で潤う日が戻ってくるのも時間の問題と関係者は考えている。


「今年の不作水田は平年以下」(2011年10月11日)
2011年1〜8月間の不作水田は55,638Haに達したが、旱魃が原因の水田は3,713Haしかなく昨年ほどひどい状態ではなかった、と農業相が公表した。ちなみに今年の旱魃は全国各地で総面積95,891Haにのぼる水田を襲い、収穫が得られなかったのは上であげた3,713Haだけだった。2010年の記録によれば、総面積96,721Haが日照りにやられてそのうち20,856Haで収穫が失われている。
旱魃以外の不作の原因は洪水や害虫害獣によるもので、今年洪水の被害を受けたのは115,851Haでそのうち16,471Haで収穫なし、また害虫害獣被害は577,015Haで35,454Haが収穫を奪われている。
過去5年間の平均は年間10万Haが収穫なし水田であり、今年は被害が平均以下で終わることが期待されている。政府農業省はそれら不作水田オーナーに対し、Ha当たり260万ルピアの農地改良援助とやはりHa当たり110万ルピアの肥料援助を与えるために3,740億ルピアの予算を計上した。
政府は2014年に1千万トンの生産余剰米を確保することを目標に据えている。


「SNI改定」(2011年10月20・21日)
国家規格庁が827品目のインドネシア製品規格(SNI)を改定する意向。改定予定リストに上がっている品目はカテゴリー別に次のような数にのぼっている。
機械・器具 38
鉄鋼 55
アルミニウム 48
家電品 51
プラスチック 21
繊維と繊維製品 44
石化品 128
飲食品 318
農産品 88
玩具 4
履物 32
それらのSNIを科学技術面および市場での発展にキャッチアップさせるのがこの改定の目的で、改定は形式面および内容面の双方で行われる。改定作業はそれぞれの品目に検討委員会が設けられ、品目担当省にその事務局が置かれる。農産品だけは農業省で、他のカテゴリーはすべて工業省になる見込み。
改定と呼ばれているものの、飲食品48品目・繊維と繊維製品9品目・プラスチック5品目は現行SNIが廃棄されてまったく新しいものが作られることになっている。
改定リストに上がらなかった157品目は現在内容的に妥当なものと見なされており、2007年以前に作られた73品目は形式の改定だけが行われ、他は現状のままとなる。
SNIは国民消費者保護ならびに国内産業保護のふたつの面を合わせ持ったものであるが、法規の執行が徹底しないために法規を遵守する者が馬鹿を見ているケースは枚挙にいとまがない。
特にSNIの強制適用対象になっている品目は、理屈の上では市場にSNI認可のない製品があってはならないことになっているものの、SNI適合のための品質投資と認可取得のための経費支出があいまって製品コストは高くなっており、SNIを無視した廉価製品との市場競争は消費者に廉価志向が強いことから互角に競えない状況が出現している。SNIを無視した製品は非合法になるわけだが、市場でよく売れることからその流通や小売を行う者が必ず出現し、当局側の統制がやりおおせないまま市場で勢力を持つということが続けられてきた。市場で行われる摘発(撲滅)キャンペーンはキャンペーンという名前が示すとおり一過性であり、のど元を過ぎればまたもとの木阿弥ということはインドネシアのあらゆる非合法事項で共通の現象だ。
たとえばメラミン製品は人体に害がおることからSNI強制適用対象品目になっているものの、産業協会所属の年間生産能力が6千トンを超える大企業は7社あるがSNI適合認定を得た生産者はやっと三社のみで、現在もう一社が認定審査中。それ以外の大企業から中小の数多くの生産者、そして中国製をはじめとする輸入品でSNI認証のない製品が市場に横溢しており、国内シェアの4割は非合法品に握られている。このまま推移すれば市場シェアが逆転するのは時間の問題であり、協会側は政府に市場からの非合法品排除を強く訴えているが政府の統制活動が目に見える効果をあげるような状況にはなっていない。


「内閣リシャッフル」(2011年10月24日)
SBY大統領の第二次インドネシア団結内閣リシャッフルが2011年10月18日に行われた。閣僚の座から降りたひと、新たに閣僚に迎えられたひと、そして担当責務が変わったひととさまざまだが、いくら政党の党利党略が強く反映される閣僚人事とはいえ、優れた業績を上げてきたひとの起用は担当を替えても続けられている。大統領が2014年までの任期で最後の閣僚再編だという意気込みで作ったリシャッフル内閣の大臣の入れ替えが行われた省と大臣交代は次の通り。なお、名前の後に[1]がついているひとは閣僚退任、[2]がついているひとは新任閣僚。
法務人権省:パトリアリス・アクバル[1]からアミル・シャムスディン[2]に
官僚効用改善行政改革省:EEマギンダアンからアズワル・アブバカル[2]に
商業省:マリ・エルカ・パゲストゥからギタ・ウィルジャワンBKPM長官に
鉱物資源エネルギー省:ダルウィン・ザヘデイ・サレ[1]からジェロ・ワチッ文化観光相に
観光クリエーティブエコノミー省:ジェロ・ワチッからマリ・エルカ・パゲストゥ商業相に
国有事業体省:ムスタファ・アブバカル[1]からダフラン・イスカン[2]に
運輸省:フレディ・ヌンベリ[1]からEEマギンダアン官僚効用改善行政改革相に
研究技術開発省:スハマ・スラプラナタ[1]からグスティ・ムハンマッ・ハッタ生活環境相に
海洋漁業省:ファデル・ムハンマッ[1]からシャリフ・チチップ・スタルジョ[2]に
国民住宅省:スハルソ・モノアルファ[1]からジャン・ファリズ[2]に
生活環境省:グスティ・ムハンマッ・ハッタからベルト・カンブアヤ[2]に
また、文化観光省は観光クリエーティブエコノミーに省務が変更され、文化分野は国民教育省に移されて教育文化省と省名が変更された。


「産業界に重荷を与える10政策」(2011年10月25日)
全国工業協会横断フォーラムに参加している22セクターの産業団体が、現在政府が進めている政策や法規制定準備は国内産業の競争力を弱めるものであるため、それらの内容をもっと産業界にフレンドリーなものにしてほしい、と要請した。フォーラムが改善を要請しているものは次の通り。
1)2012年電力基本料金値上げ:10〜15%の引き上げは産業界と大口需要一般家庭がターゲットにされており、節減か巨額の代償かという姿勢は国家開発を妨げるものである
2)国内産業界へのガス燃料供給:ガス燃料需要家322社は生産ダウンもしくは廃業の危機に直面している
3)ゴミ処理に関する政令案:プラスチックゴミの処理責任を産業界に負わせようとしており、生産コストの膨張が懸念される
4)母乳に関する政令案:授乳室を設けること、母乳を搾るための時間を従業員に与えること、搾った母乳を保管するための冷蔵庫を用意すること、従わない会社には行政処分から最高は事業許可取り消しの罰則
5)貧困者法案:CSR引当金を準備する。無責任な第三者がハイコスト経済を引き起こす
6)ハラル法案:ステッカー形式のハラル認定証を定期検査で与える内容だが、これを強行すると中小零細事業者に倒産する者がでる
7)公定エージェント制度:航空貨物の安全検査を民間業者が行う。検査作業SOPがなく、検査料金は三倍増。貨物量と検査能率のバランスが取れておらず、検査業者がスピードアップをする保証もない
8)納税インボイス:PPNを徴収した購入者のNPWPが記載されていないインボイスは不適正申告と見なされ、罰則を蒙る。生産者・販売者は罰則をおそれて国内販売を避けようとするようになる
9)中銀債に関する通貨政策:生産コストに影響を与え、また実業界、特に製造セクターの事業誘導性が最大効果を持たなくなる
10)タンジュンプリウッ港での滞留コンテナ保管料累進制:輸入コンテナ搬出許可書が交付されて三日以上ターミナルに滞留させると、保管料金が巨額になる。プリウッ港のYOR低下策のひとつだが、いかなる規則も競争力を損なうコストアップを発生させてはならないというSBY大統領のコミットメントに反する
しかし産業界からのそれらの苦情に対し、消費者保護の見地から事業者の希望を鵜呑みにすることのできないものもある、との批判の声も上がっている。


「工場用地販売が倍々ゲーム」(2011年10月25日)
全国の工業団地が2010年に入居者に販売した工場用地面積は543Haあったが、2011年は第3四半期までにそれを大幅に凌駕する897Haが販売されており、今年は1千Haの大台に乗って昨年から倍増するかもしれない、とコリエールズインターナショナルインドネシアが報告した。工場用地購入者をセクター別に見ると、自動車産業およびその関連産業が大量に土地を購入していることがわかる。自動車産業だけで45%に達している由。それ以外のセクターはコンシューマー商品産業が7.7%、飲食品産業が6.8%で目立っており、また化薬品・鉄鋼・医薬品も健闘している。
工業団地別では、スルヤチプタ工業団地が220Haでトップ、デルタシリコン150Ha、ジャバベカ120Ha、チレゴンクラカタウ工業団地110Ha、ブカシファジャル100Haといった順位。需要の急騰が価格に影響を及ぼさないはずがなく、後追いで工場用地を探しはじめた会社は選択肢が狭まっていて、おまけに価格も高くなっており、ダブルパンチの様相だ。四工業団地を擁するカラワン地区の2011年第3四半期工場用地価格は対前年同期比で32.1%も値上がりしている。
全国工業団地内の用地販売は2007年150Ha、2008年・2009年が200Haで、整備をしてあるものの売れない区画がかなりあったために用地整備は控えめになされていたが、2010年には550Haもの販売が実現し、2011年は1千Ha台に乗るだろうとの予想を招く事態になっていて、突然始まった倍々ゲームに用地供給が不足する状況に至っている。その結果、用地価格の上昇傾向は来年も継続することが見込まれており、工業団地ビジネスは花盛りを迎えようとしている。


「首都のオフィススペース稼動も好況」(2011年10月26日)
2011年第3四半期までの都内CBD地区におけるオフィススペース新規入居は34万?にのぼり、対前年同期比182%のアップとなっている。この大幅な需要の伸びは、インドネシア経済の好転にあわせて事業拡張を進めている既存大会社ならびにインドネシア市場への新規参入を開始した外国企業の需要に支えられたもので、今年の対前年成長率は過去10年間で最大のものであり、1990年代中盤の不動産黄金時代の再来を思わせるものがある、とジョーンズラングラサールインドネシアプロコンが報告した。
好況はCBDエリアだけでなく非CBDでも見受けられ、特に南ジャカルタ市と西ジャカルタ市が高い人気を集めている、とコリエールズインターナショナルインドネシアがコメントしている。非CBD地区も需要がうなぎのぼりに上昇しているが供給は増えておらず、第3四半期の供給量は186万?で前四半期の横ばいだ。そしてその87%は賃貸用として供給されている。
南ジャカルタ市ではシマトゥパン(TB Simatupang)通り沿いのエリアが新興オフィス地区になっており、ポンドッキンダ(Pondok Indah)と並んで今後は二大エリートオフィス地区の座に就きそうだ。2012〜2013年の新規オフィススペース供給プロジェクトの7割がその二地区にある。同時にその両者は外国人向け高級積層住宅を多数備え、またショッピングセンターも設けられており、在留エクスパットたちの居住エリアとしての条件を満たしている。
西ジャカルタ市は開発が一時先細りとなり、最近になって再開された地域で、随所で住宅地区の開発が進められ、オフィススペース供給も活発化しようとしている。2010年末のスペース供給は240?だったが、2011年末には300?を突破する見込み。
西ジャカルタ市から近いスルポン(Serpong)も企業がオフィススペースを求める地区として人気がある。コンシューマープロダクツと鉱業関係の大企業が最近オフィス用地を購入し、そこに自社ビルを建てる計画になっている。
これまで都内スディルマン通り界隈のCBDがオフィスを求める大企業の人気を一手に集めていたが、ジャカルタの交通渋滞のもっとも激しい部分がそこに集中するという問題を副産物として発生させていた。オフィスが非CBD地区に分散されるようになれば、通勤時の交通渋滞が軽減されることにつながる。大企業がオフィスを構えるのにふさわしいエリアが非CBD地区にもできつつあるという現状は、ジャカルタのビジネスインフラの充実を示す指標でもあると言えそうだ。


「インドネシアはビジネスフレンドリーでない!?」(2011年11月2日)
IFCのドゥーイングビジネス2012が発表された。総合評価でインドネシアは183ヵ国中の129位となり、前回から3ランクダウンした。同じアセアン加盟国の中では、シンガポールが1位、タイ17位、マレーシア18位、ブルネイ83位、ベトナム98位のあとにやっとインドネシアが続き、フィリピン136位、カンボジャ138位などより少し上にいる程度。個別の評価項目は次のような推移を見せている。
項目: 2010年⇒2011年⇒2012年(数字はその年の順位)
事業開始: 159⇒155⇒155
建築許可: 60⇒60⇒71
資産登記: 94⇒98⇒99
ローンファシリティ: 109⇒116⇒126
投資者保護: 41⇒44⇒46
納税簡素化: 125⇒130⇒131
国際通商: 49⇒47⇒39
契約遵守: 153⇒154⇒156
事業終息: 141⇒142⇒146
電力アクセス: − ⇒ − ⇒161
上の評価推移を見る限り改善が感じられるのは国際通商、つまり貿易に関わるシステムが国際級レベルでビジネス寄りが進んでいるという点だけで、他の分野は足踏み状態と言えそうだ。
しかしこのサーベイが法律事務所から集めたプロセス処理日数の評価でしかなくて実態を精密に反映したものとはいえず、現実に外国投資のトレンドとこのサーベイ結果は連動していない、と批判する声もある。ビジネス投資者はそのレポートを見て投資先国を選んでいるわけではない、と経済評論家ホティブ・バスリは言い切っている。


「大統領の人気は下降傾向」(2011年11月28日)
SBY大統領の業績に不満を抱く国民が増加している。中でも汚職撲滅に関する失望が特に顕著だ。2011年10月10〜15日にサーベイ機関「インドネシアの声ネットワーク」が全国の1千2百人から集めた調査結果では、回答者の61.8%がSBY大統領の汚職撲滅実績に対する不満を訴えている。
マルチステージランダムサンプリング方式で行われたこのサーベイは2.9%の誤差を含んでいるとのこと。SBY大統領に対する満足度は53.2%と報告されたが、2010年1月のインドネシアサーベイ研究所の報告では70%もの高率だった。インドネシアサーベイサークルも2010年1月の63.1%から2011年10月には46.2%に低下していることを報告している。
SBY内閣の汚職撲滅姿勢に関して、センチュリー銀行事件での政府援助金の決着の不透明さに71.5%、デモクラッ党執行部役員のパレンバンでの東南アジア競技大会予算汚職事件に65.9%といった高率の声が失望したひとびとのかけひきのない反応である。大統領諮問団メンバーのひとりは、オルバ期の汚職のメインは行政汚職だったが、最近増加しているのは政治汚職であり、政治汚職はスケールもリスクも格段に大きく、またあからさまに国庫の金を蝕むので影響が大きい、と説明している。
デモクラッ党国会議員のひとりは、SBY大統領の政治業績への不満の高まりとは別に、経済面での不満も高まっていることを指摘する。経済面での不満が政治体制を揺るがす第一の原因となるため、両方の面で注意を強める必要がある、とかれは語っている。


「最大輸出品目は労働力か?!」(2011年12月3日)
2011年10月19日から23日まで、5日間にわたって開催された今年のインドネシアトレードエクスポは26回目という長い歴史を誇る。そして今年の成約金額は目標の3.8億ドルを大きく上回る4.645億ドルの実績となった。ところがその内容に首をかしげる向きが少なくない。というのも、輸出産品成約は2.26億ドルしかなく、それを上回る2.385億ドルがなんと労働力輸出の見込み報酬金額だったからだ。つまり今年のエクスポで受注した労働力派遣を一年契約と仮定し、その間に海外出稼ぎ者が本国送金するであろう金額を算出したものがそれなのである。エクスポで受注した労働力はフォーマルセクターのもので、インフォーマルセクターは含まれていない。
もちろん国によって報酬レベルは異なる。マレーシアは月額300米ドル、クウェートは月額900〜2,500米ドル、オーストラリアは時給20米ドル。受注した派遣要請人数は14,990人でそのうちオーストラリアが1万人を占め、最大の需要国となった。
一方、肝心の国産優良輸出産品のほうは、前回受注実績2.248億ドルからわずか0.5%アップしただけ。10大輸出品目のトップは家具で40.8%のシェアを占めた。個々のシェア明細は次の通り。
家具 40.8%
農産品 10.3%
工芸品 9.4%
アクセサリー装身具 7.8%
繊維と繊維製品 5.6%
化粧品とハーブ製品 4.9%
コーヒー 2.6%
飲食品 2.5%
木製品 2.5%
化学製品 1.8%
今年のトレードエクスポには、海外バイヤー勧誘に応じて92カ国から8,311人がやってきた。政府のその努力は評価に値するものだ。従来のトップ貿易相手国である日本・アメリカ・韓国などのバイヤーはたったの13%で、インド・マレーシア・サウジアラビア・エジプト・バングラデシュ・イランなど、政府が新たな貿易先として開発している諸国からやってきたバイヤーが87%を占めた。昔からのお得意さんはみんな不況にあえいでおり、2008年のグローバルクライシス以来、インドネシア政府の新しい貿易先国開発は順調に進展しているようだ。


「輸出と借入の外貨受取規制」(2011年12月5日)
オルバ期以来インドネシア国民が海外に置いている資金問題は通貨当局にとって頭の痛いことがらだった。オルバ末期には1千億米ドルが国外に置かれていると言われ、外貨準備高の実力がそがれてルピア交換レートがきわめて動揺しやすい体質を持つ原因をなしていた。もちろんオルバ期はルピア交換レートが政府のコントロール下にあったから激しい乱高下が起こることはなく、時折実施されるデバリに驚かされるということしかなかったわけだが・・・。
インドネシア銀行は2010年の企業輸出代金および企業外国借入の資金がどのように国内に入ってきているのかを調べ上げ、輸出代金は290億米ドル、外国借入は25億米ドルが国内に入ってきていないと結論づけた。そして昔から行われてきたこの悪弊を改善するため、インドネシア銀行は3種類の統制規則を新たに定めたのである。輸出売上外貨と外国借入の取得に関する中銀規則第13/20/2011号、外貨トラフィック活動監視に関する中銀規則第13/21/2011号、外国借入取得届け出に関する中銀規則第13/22/2011号がそれだ。新規に定められた主要ポイントは次のようになっており、2011年9月30日から実施がはじめられている。
*輸出売上外貨は輸出申告書(PEB)の日付から90日以内に、輸出者が国内の外為銀行を通して受領する。
*ユーザンスL/C等々の90日以上の決済期限の取引の場合は、決済期限日から14カレンダー日以内に輸出者が国内の外為銀行を通して受領する。 *輸出者は輸出売上外貨に関するPEBの情報を中央銀行に届け出るため、3稼働日以内に取引外為銀行に報告する。
*輸出者が受領する輸出売上外貨はPEBで申告された金額と一致すること。PEBの金額に満たない場合、サポート書類を添えて文書でその説明を届け出ること。
*下請け・補修サービス・リーシング等が理由で一致しない場合でも、サポート書類を添えて文書でその説明を届け出ること。
*外国借入について、借入者は借入資金全額を国内の外為銀行を通して受領する。
*毎月1日から10日までの間に、借入者は前月の状況を月次報告書で中銀に提出する。
上の規定によって、これまで国内に引き入れられていなかった一部の外貨もすべて国内に一旦入るようにはなる。しかしそのポイントだけをクリヤーすれば、企業はふたたびこれまでのように自分の資金の一部を国外に、しかも今度は合法的に置くことができる。一旦国内に入れてその1〜2日後に国外に送り出すことについては、まったく規制がされていないということだ。通貨当局がその点を考慮しなかったわけでもあるまいが、銀行界にしてみれば今回の規制はいまひとつ徹底さを欠いているという印象を免れないにちがいない。


「他部門社員のミスは当方の責任に非ず」(2011年12月21日)
2011年9月25日付けコンパス紙への投書"Petugas Pencatat Meter PLN Malas"から
拝啓、編集部殿。わたしはPLN顧客番号538655950004番で、2010年12月からコタウィサタ住宅地区の家屋に居住を始めました。その最初から、契約電力量が2,200ワットであるということにわたしは不審を抱きました。というのは、請求金額がとても小さかったからです。そのことについては、わたしは特に誰にも何も言いませんでした。そして三ヶ月が経過し、請求金額が相変わらず小さかったので、わたしは西ジャワ州ボゴール県チルンシ郡グヌンプトリのPLN事務所に電話しました。
わたしが問題を説明すると、電話の職員はただ、自宅に常にだれかひとがいるかどうかを尋ねました。わたしの家がある一帯はクラスター方式になっており、家屋の一軒一軒がへいに囲まれていないので、いつでも電力メーターのチェックができることを説明しました。ところがそれに続く月々も請求金額は小さいままで、2010年10月から2011年2月までは毎月一律に75,059ルピアが請求されただけでした。
それらの状況から、PLNのメーター検針員は正しくメーターのチェックを行っておらず、仕事をサボって適当な数字を報告していたことがつぶさに感じられます。5ヶ月間もまったく同じ請求金額というようなことが、どうして起こり得るでしょう?そして2011年7月、不愉快きわまりないことがついにやってきました。ATMに表示されたPLN請求金額はなんとファンタスティックなことに、370万ルピアだったのです。
わたしはもちろんPLNにこの異常な金額の請求を抗議しました。ところがPLN側は自分のミスを棚に上げ、謝罪の言葉もさらさらなく、分割払いを勧めただけです。わたしの気持ちは収まらなかったので、2011年8月にPLNチルンシ事務所を訪れました。わたしに応対したアブドゥラフマンさんの返事もまったく同じ調子で、それ以前の支払金額が不足していたため不足額が7月の請求書に上乗せされているのだ、と言うばかりです。
そんな対応はまったく公正さを欠くものではありませんか?現場の検針員が怠けて業務を正しく行わなかったのが原因であり、その結果消費者が極端な請求を受けることになったのです。たとえ分割払いが認められているにしても。PLNは消費者に迷惑をかけないよう、もっとプロ意識に徹してください。[ コタウィサタ在住、イェ二・マルリアニ ]


「大統領選は既に前哨戦突入」(2012年1月4日)
政党PANの設立者で初代党首であり、国民協議会(MPR)議長の職に就いた経験を持つアミン・ライス氏が2014年の次回大統領選挙についてコメントした。
大統領候補者にだれが出馬するだろうかという話題は、一般庶民の関心だけにとどまらず、特定候補者を推そうとするグループがあの手この手で話題つくりをするという有権者誘導選挙対策を既に開始しており、前哨戦の火ぶたは切って落とされている。アミン・ライス氏はまず、この6人はそれぞれが国政に関する練られた方針を持っているとともに、自分の所属組織での経験を十分に積んでいて、名実ともに大統領候補の資格は十分だと語る。その6人とは;
1)現PAN党首で現職の内閣経済統括相でもあるハッタ・ラジャサ
2)政党グリンドラ党首のプラボウォ・スビヤント
3)前蔵相で在任中に世銀専務理事に転出したスリ・ムリヤニ
4)政党ゴルカル党首のアブリザル・バクリ
5)政党ナスデム創設者でメディアインドネシアやメトロTVなど情報ビジネスの巨魁であるスルヤ・パロ
6)政党PDIP首脳で現職国会副議長であるプラモノ・アヌン
しかし2014年大統領選は、かれらであろうがほかのだれであろうが、国民を経済面からどのように導いていくのかという明確なコンセプトを選挙民に提示できなければ、評価は低いものになるだろう、とアミン・ライス氏は語る。
「ハッタ君が出るのであれば、自分の経済政策はこうであるというハッタノミクスを持たなければならない。プラボウォ君ならプラボウォノミクスを用意することだ。この時代、先進国はみんなそのようにしている。ともあれ、次回の選挙は世代交代のモメンタムであり、旧世代国家リーダーは若い世代に道を譲るべきだ。年齢が70歳代になろうというひとには、もう出る幕はないだろう。たとえばわたし自身とか、アクバル・タンジュン、ウィラント、メガワティ・スカルノプトリなどのような。かといって、キャンパスから出たばかりとかNGO活動家だとか、あまりにも若すぎるひともまだ出馬は早すぎる。大統領候補者の公約がこれまでのように、法治の確立などと言っているようでは、もう国民はついてこない。経済開発コンセプトを提案し、それで国民福祉をどのように向上させるか、というのが国民の投票時の大きな決定要因となる。」
しかし大統領選挙の行方については、たとえそれが国民投票で決まるとはいえ、もうひとつ別の要因が大きい影響を持つことになる。つまり国会議員総選挙が正副大統領候補者の出馬姿勢に変動をもたらす要因になるということだ。イデオロギーや政治主張を超えた選挙戦のテクニカルな対策の問題となるだけに、大統領候補者の人物評と公約だけで結果がもたらされるわけでもなく、流動性は大統領選候補者登録が終わるまで予断を許さないものになりそうだ。


「植物密輸入者に入獄7ヶ月」(2012年1月5日)
2011年3月3日、農業検疫庁職員が西バンドン県レンバンのアディワルタ通りにある一軒の民家にあった白菜とセロリの苗2百パックを検疫法違反の容疑で押収し、持ち主の台湾人ヤン・チユアンを逮捕した。ヤンはそれが台湾からスカルノハッタ空港を経由して送られてきたものであることを認めた。それらの苗は自分が個人的に使用するものであり、他人に販売しているものではないとヤンは言い張ったものの、多数の納品書や価格の貼られた展示板などもその家で見つかっており、植物検疫の違反のみならず、不法ビジネスが行われていた疑いを濃厚に感じさせている。
2011年11月22日、バンテン州タングラン地方裁判所でヤン・チユアンの不法輸入裁判の判決文言い渡しが行われ、動物水産物植物検疫に関する1992年法律第16号第31条に対する違反により、7ヶ月の入獄が言い渡された。
スカルノハッタ空港植物検疫総館長は、判決が軽すぎる、と批判している。ヤンは即座に上告手続きを取ったため、身柄の拘束はされていない。


「賃貸オフィススペースは値上がり傾向」(2012年1月6日)
2012年ジャカルタのCBD地区にあるAグレードオフィススペースの賃貸料金は、2011年から5〜10%アップするだろうとカッシュマン&ウェイクフィールドインドネシアのリサーチチーフが報告した。
2011年の需要は2010年から63%増えているが、それはオフィスビル建設プロジェクトが完成を2011年から2012年に遅らせたことが影響している、とかれは語る。
「需要が高いのに供給が十分増えていないため入居率がアップしており、一部デベロッパーは2011年第4四半期に家賃を上げた。まだ上げていないところも来年値上げすると言っている。2012年のオフィススペース需要は銀行界・保険業界・IT業界・石油鉱業界の事務所移転もしくは拡張によって高騰する。2006年以来ジャカルタCBD地区のスペース供給は低下しており、2012年には一挙に93%増加する見込みだ。一方、買い取りスペース価格は、こちらも需給関係が一層タイトになるため、2011年から15%アップする見込みだ。」
2011年のオフィススペース供給は次の通り。
Allianz Tower A grade 28,000m2
K-Link Tower B grade 25,000m2
Tempo Scan Tower A grade 43,100m2
Multi Vision Tower B grade 21,000m2
2012年完成予定物件は以下。
SCBD Lot 18 Office B grade 24,350m2
The H Tower B grade 7,000m2
Office B@Senopati A grade 49,800m2
The City Center Tower I A grade 88,800m2
AXA Tower A grade 60,000m2
World Trade Center II A grade 54,000m2
Eighty8 @Kasablanka A grade 58,000m2
Menara Merdeka A grade 38,500m2
Ciputra Tower A grade 64,000m2


「静岡銀行がジャパンデスクに」
CIMBニアガ銀行のジャパンデスクで静岡銀行顧客へのサービスが取り扱われる。同行はこれまで日系企業顧客への貸付を70社に対して行っており、その貸付総額4兆ルピアは全貸付残高122兆ルピアの中でまだ微々たるものでしかない。
静岡銀行はインドネシアに進出している顧客へのサービス態勢を強化するため、CIMBニアガ銀行と提携してインドネシアの出先機関に対するサービス向上をはかる意向。
CIMBニアガ銀行取締役社長は、静岡銀行顧客86社がインドネシアで当方の潜在顧客になる、と言う。「そのうちの多くは自動車セクターの大企業とその協力会社で占められている。是非当行に口座を持って、当方の資金を利用してもらいたい。」
同行は日系企業顧客への貸付金が全体の6%シェアを持つことを目標に掲げている。


「輸入関税率引き上げ」(2012年1月9日)
政府は2012年1月1日からこれまで輸入関税率ゼロパーセントだった食糧11品目と機械類11品目に対し5パーセントの税率適用を始めた。この税率変更は輸入物品に賦課される関税率と物品区分システムの規定に関する2011年大蔵大臣規則第213/PMK.011/2011号で定められている。
HS番号 : 品目
1001.99.90.90 : 小麦とメスリン、その他
1102.90.90.00 : 小麦・メスリン以外の穀物粉、その他
1201.90.00.00 : 割ってあるか否かを問わない大豆、その他
2302.30.00.00 : 小麦の皮・胚・その他残滓物
2302.40.90.00 : その他の皮・胚・その他残滓物
2304.00.10.00 : 搾油後の大豆粉、食用
2305.00.00.00 : ピーナツ搾油後の滓と他の固形残滓物
2306.30.00.00 : ひまわりの種の滓と他の固形残滓物
2306.50.00.00 : ヤシの実あるいはコプラの滓と他の固形残滓物
2306.60.00.00 : 油ヤシのタネあるいは実の滓と他の固形残滓物
2306.90.90.00 : その他の滓と他の固形残滓物
8445.11.20.00 : 非電動式の繊維加工機械・カード機
8445.12.20.00 : 非電動式の繊維加工機械・コーマー
8445.13.20.00 : 非電動式の繊維加工機械・粗紡機
8445.19.20.00 : 非電動式の繊維加工機械・その他
8445.20.20.00 : 非電動式精紡機
8445.30.20.00 : 非電動式合糸機
8445.40.20.00 : 非電動式糸巻機
8453.10.20.00 : 非電動式皮の加工機械もしくはなめし機
8453.20.20.00 : 非電動式履物の製造機械及び修理機械
8453.80.20.00 : 非電動式その他機械
8453.90.00.00 : 機械部品


「果実と野菜の輸入規制」(2012年1月12日)
園芸生鮮果実と野菜の輸入手続きに関する農業大臣規則が改定された。2006年大臣規則第37号を改定する2011年12月に出されたインドネシア領土内への生鮮果実野菜の輸入に対する検疫措置と実施条件に関する農業大臣規則第89号では、これまで8港だった輸入港が4港にしぼられた。北スマトラ州メダンのベラワン港、南スラウェシ州マカッサル港、東ジャワ州スラバヤのタンジュンぺラッ港、そしてジャカルタのスカルノハッタ空港でしか輸入通関ができなくなる。また輸入される生鮮果実と野菜はすべてリーファーコンテナに収められ、指定された温度が保たれなければならない。この新規則は3ヶ月の猶予期間を経て実施に移されるため、適用開始は2012年3月20日となる。
同時に出された、2009年大臣規則第38号を改定する植物性生鮮食料輸出入に対するセキュリティ監督に関する2011年農業大臣規則第88号では、化学薬品・重金属・アフラトキシン・微生物・フォルマリン等の汚染に対する監視措置対象品目がこれまでの39アイテムから100アイテムに増やされた。
ところで全国商工会議所農産品市場開発常設委員会議長は、農産品輸入がきわめて偽装的に行われており、農民保護のための規制は名のみのものと化している、とSBY大統領に訴えた。輸入規制がなされているはずの農産品にもかかわらず市場で輸入品が大量に横行しており、農民に大きな損失を与えている。その輸入の動きは、輸入許可交付から輸入通関にいたるまで、諸方面が団結し狡猾な手段で法の網をかいくぐって行っており、輸入者が単独で悪事を行っているようなものでなく、しかも特定有力勢力がそれをバックアップして動かしている、と議長は述べている。「ジャガイモ・シャロット・フルーツ類など農民がセンシティブになっている産品はすべてそうだ。輸入申告の中でHSコードは10桁記載されなければならないはずなのに、書かれているのは4桁しかない。だから消費市場向けか、工場向けか、あるいは種苗なのか、それらが明確に区別されないまま国内に流入している。この状況を統制していくためには、ひとつの機関が監督しているだけでは駄目で、ナショナリズムに基盤を置く挙国一致の対応が不可欠であり、大統領は自らその指揮を取らなければ、インドネシアの農業は発展の芽を封じられてしまう。」
農業国の農民が貧困にあえいでいる現状が改善される日はいつやってくるのだろうか?


「プレミウムガソリンが買えなくなる」(2012年1月16〜23日)
政府は石油燃料補助金削減にいよいよ取り掛かる。補助金付きプレミウムガソリンとソラル(solar)と呼ばれる軽油の販売を特定消費者だけに限定するという政策がそれだ。プレミウムガソリンは公共運送機関・公共サービス用車両・オートバイだけに限定され、自家用車を含むその他の自動車は一切それを購入することが許されない。プレミウムは開始が間近に迫っているので上の区分が最終決定となるが、ソラルのこの政策開始はもっと先になるため、対象者について見直しが行われる可能性が高い。
ところで上の定義の中に灰色の部分がある。公共サービス用車両とはいったい何だろうかということだ。基本的には政府機関が国民に対するサービスを行うさいに使用される公用車ということになるのだろうが、数多くの報道が既にそれを赤色ナンバープレートという言葉に置き換えている。ガソリンスタンド従業員にとってはわかりやすくていいのだが、赤色ナンバープレートは政府機関所有の自動車に着けられるもので、公共サービス用車両とそうでない車両を含んでいる。この部分は政策策定者の意図と異なる現象が現場で展開されることになるにちがいない。統計に基づいて政府が決めたこととは異なることが行われる可能性がきわめて大きいわけだ。インドネシアによくある理論と実践の構造的食い違いがここにも顔をのぞかせている。
最新の補助金付きプレミウムガソリン年間消費の実態は次のようになっている。
自家用四輪車 1,330万キロリッター シェア53%
オートバイ  1,004万キロリッター 40%
貨物運送業車両   100万キロリッター 4%
乗客公共運送車両  75万キロリッター 3%
消費のシェアを見る限り、自家用四輪車にプレミウムを使わせないようにすれば、補助金はこれまでの半分に減少するという計算になる。それにしてもインドネシアのオートバイ過保護は常軌を逸している気がわたしにはする。四輪車オーナーは金持ち階層であり、二輪車オーナーの80%は貧困層だから、というのがその理由にされているが、貧困者統計とは異なる貧困の定義がここに顔を出しており、ダブルスタンダードの印象が強い。
もちろん、オートバイの年間販売台数8百万と四輪車の90万台を比べれば、国民の足としての重みは文句なしにオートバイに軍配が上がるわけで、だから国民保護の見地からオートバイの使用を国民に奨める方針の根拠はそれなりに理解できるとはいえ、オートバイはせいぜいふたりしか乗れず(警察は3人以上の相乗り行為を禁止している)、運べる荷物にも限界がある。少ない輸送機関が大量の貨物大勢の人間を運んでこそ経済効率が上昇していくのが理屈だから、この方針は経済性という面から見るならまったくの反生産的なものではないかと思われるものの、政府はその矛盾する方針をてらいもなく行っている。
都市部では住民の多くが公共運送機関利用をやめてオートバイに乗り換えており、かえって路上の交通渋滞をますます激しいものにしている。これも反生産的行為にはちがいない。オートバイ優先はそんなことだけでなく、道路交通の秩序からマナーにいたるまで、すみずみに浸透している。四輪車が二輪車に道路上で通行を譲らなければならない国はインドネシア以外にどれくらいあるのだろうか?
プレミウムガソリンを買えなくなった四輪車は、プレミウムよりハイオクではあるが、価格が国際相場に連れて半月ごとに変動するプルタマックスかプルタマックスプラスを買わなければならなくなる。軽油も同様で、ソラルを買えなくなった車はプルタミナデックスを購入しなければならない。原油国際相場が高騰しているおりから、それらの油種の消費者販売価格はプレミウムやソラルの二倍前後だ。
しかし市場に流れている商品でひとつは人為的な低価格、もうひとつは無作為価格で、その間に二倍もの差がつけば、闇市場が作られるのはインドネシアで当たり前のことだ。普段の給油のさいには1〜2リッターしか買わないオートバイライダーがプレミウムを満タン買うようになる。住宅地区の自宅にタンク車のタンクを置いてオートバイからプレミウムを買い上げる仲買人が出現する。仲買人は集めたプレミウムガソリンを石油缶に入れて売り子に渡し、売り子はここぞと思う道路脇にガソリン缶を並べて通りかかる自家用車族に販売する。そんな流通サイクルはインドネシアのいたるところでこれまでも起こっている。これまでに起こっているのはもちろん今回のものとは異なる事情によるもので、闇燃料の多くはションベン行為による分捕り品だ。それはともあれ、闇プレミウム価格がリッターあたり6〜7千ルピアならきっと飛ぶように売れるにちがいない。ただしそのような闇商品にはどんなマゼモノが加えられているかわかったものでなく、昔あった不正行為の中には闇軽油に灯油が混ぜられているというものがあり、エンジンが焼けついたトラック運転手も少なくなかった。
アグス・マルトワルドヨ蔵相が去る1月5日に発表したプレミウムガソリン購入禁止の実施スケジュールは次のようになってる。
<ジャワ〜バリ
プレミウム 2012年4〜12月
ソラル 2013年7〜12月
<スマトラ
プレミウム 2013年1〜6月
ソラル 2013年7〜12月
<カリマンタン
プレミウム 2013年7〜12月
ソラル 2013年7〜12月
<スラウェシ
プレミウム 2014年1〜6月
ソラル 2014年1〜6月
<マルクとパプア
プレミウム 2014年7〜12月
ソラル 2014年7〜12月
その実施スケジュールを前にして、ガソリンスタンドの体制は準備できているのだろうかという疑問をだれしも抱くに違いない。いまはどのガソリンスタンドへ行っても、プレミウムのポンプが主流を占めている。それをまるごとプルタマックス用にしなければならない。
副鉱エネ相によれば、消費の半減するプレミウムは特別扱いがなされ、その購入が許されている車が来たときは専用給油ポンプに誘導し、将来定められることになっている一回当たりの上限給油量を限度として給油サービスを行うようになるとのこと。オートバイに対する給油もそれと似たような形になる。その専用ポンプに自家用車が紛れ込んで給油を要求した場合、スタンド従業員はそれを拒否しなければならず、それを怠った場合は罰を受けることになる。
ところで、自家用車オーナーは裕福な階層で、オートバイオーナーは貧しい国民である、という見方がインドネシアにはある。そのコンセプトを使って自家用車のプレミウムガソリン購入禁止方針が作られたわけだ。ところがなんと、貧しい自家用車オーナーが存在することを前提にして、自家用車族への支援政策を政府は打ち出してきた。石油燃料でなくガス燃料を使えばどうか、という国民への提案だ。そのためのガス燃料として、CNG(圧縮天然ガス)とLGV通称Vi-Gasを政府は用意する考え。自動車用ガス燃料はリッター当たり4,100ルピアで4,500ルピア/リッターのプレミウムガソリンより廉いというのが第一の推奨理由。
もちろん一般消費者だけでなく、公共運送機関に対してもガス燃料への転換を政府は進める意向。1986年に政府は公共運送機関に対してCNGを使用するプログラムを行ったことがある。タクシーの20%がガス燃料に転換し、自動車のためのガススタンドが都内14ヶ所に誕生したものの、国有ガス会社からのガス供給が不安定だったり、爆発事故が起こったりして、そのうちに熱がさめてしまった。ガスの使用を続けているタクシーをときおり見かけるものの、かなりのタクシーがガソリン使用に戻り、ガススタンドも減ってしまったようだ。
政府は自家用車にプレミウム消費を禁止し、公共運送車両にはガス燃料の使用に誘導して、プレミウムガソリンの供給をごっそり減らしたい意向だが、その公共運送車両対策にも乗り越えなければならないハードルがある。ガソリン車をガス車に転換させるためのコンバーターキットを政府が用意して公共運送車両に無料で取り付けさせるという対応案が出されているものの、百パーセント転換させるのであれば250万個必要になると言う。とりあえず政府は4万4千個の無償供給を決めたが、一個の市場価格は1千2百万から1千5百万ルピアで、膨大な資金が必要となる。5年間で100兆ルピアの予算が必要だとの声も出ているが、まだまだ予断を許さない状況であるのは間違いない。
このコンバーターキットの生産は航空機製造会社PT ディルガンタラインドネシアが引き受けることになったものの、月産4千個でやっと経済スケールに載せることができるため、発注者である政府との更なる煮詰めが必要となる。もしこのガス車転換方針を徹底的に行うのであれば、まず公共運送業界との調整が避けられない。しかしガス車のためのインフラがどうなるのかということがはっきりしなければ、公共運送業界も楽観的なことを言うわけにもいくまい。ガソリンスタンドに代わるガススタンドをどうして行くのか、自動車修理業界の対応はどうなるのか、さらにコンバーターキットはよいとしてもガス車に転換するのに燃料タンクはどうなるのか、他の変更要素はないのか。それらの要素の先行きが見えてこなければ、公共運送業界も安易に首をたてにふらない可能性が高い。政府はジャワ〜バリにガススタンドを110ヶ所設け、そのうち19は首都圏に作る計画を立てていると言うのだが。
一方、自動車燃料用ガス価格を政府は早急に調整することにした。CNGは現在3,100ルピアとなっているのを4,100ルピアに値上げする。一方LGVは5,600ルピアで経済性価格より1千ルピア低くなっており、その補填は補助金で行われる。CNGはプレミウムより廉く、LGVはプルタマックスより廉いという構図にするわけだが、CNGのガス事故リスクはLGVよりはるかに高い由で、経済性が危険対策よりはるかに高い位置におかれる慣習がここにも顔をのぞかせている。


「工業団地外保税工場に移転義務」(2012年1月24〜27日)
新しい工場建設は工業団地でしか認められなくなっているが、工業団地のまだあまりなかった時代に政府が決めたエリアに工場を設けた会社も多い。その後、工業団地がたくさん増えてきたことから、生活環境問題やインフラ問題また土地利用計画との整合性などの諸問題をクリヤーする方策として工業団地外にある工場に対し、工業団地への入居を命令しようとする話題が政府部内に起こったが、産業界からの猛反対にあってリコメンデーションにトーンダウンするということがかつてあった。ところが今また、その話がぶり返している。
ただし今回の話は保税工場だけを対象としており、その動機はまた違ったところにある。2011年9月6日にアグス・マルトワルドヨ蔵相がサインしたボンデッドゾーンに関する2011年蔵相規則第147/PMK.04/2011号第4条は、「ボンデッドゾーンは工業団地内に置かれなければならない」と規定している。第59条には、「この規則は2012年1月1日から発効する」と書かれており、産業人たちの関心を集める2011年暮れの大きな話題となった。このボンデッドゾーンというのは、保税地区開発運営会社が用意した保税地区に入居している保税の工場や倉庫と、保税地区外にある工場や倉庫がその敷地を特に保税場所に認定してもらうものという両方の形態を含んでいる。
ちなみに蔵相規則第147号で改定された他の規定は、次のようなものがある。
第27条: 第26条(1)項eに規定された内国の他の場所へのボンデッドゾーン生産品の出荷は、前年の輸出売上実績と前年の他のボンデッドゾーンへの納入実績合計の25%を上限とする。
第39条:(1)保税工場は生産工程内の副次的作業の一部を他の保税工場もしくは内国の他の非保税工場に外注することができる。
(2)上の(1)項にある外注可能な作業は、初期検査・選別・最終検査・梱包を含まない。
その蔵相規則第147号を素直に解釈するなら、これまで工業団地外で保税工場として活動していたところは、2012年1月1日からそのような活動が認められなくなるという意味になる。産業界が騒然となるのは当たり前だが、例によって実施の直前に騒ぎ出すというのも産業界の伝統ある姿には違いない。
制定された日に騒ぎ出したところで結果が変わるわけでもないが、「あと一ヶ月もないのにどうやって工場を工業団地内に移転させろというのか?」という政府への怒りの声が産業界に充満し、陳情を受けた国会もその声に唱和した。
大蔵省というよりこれは税関総局になるわけだが、ボンデッドゾーンというのは輸入関税やその他の諸税を納めないまま国内に輸入品を入れて加工し、その製品を再度輸出するということが行われる場所であることから、その場所から国内に流れ出ると未納税品の密輸ということになり、税関はそのような違法行為が行われないよう監視する立場に立つ。ところが全国に2,033もあるボンデッドゾーンの監視がSOP通りにやりおおせないことに総局上層部は頭を痛めていたのである。
アグン・クスワンドノ税関総局長は、2,033あるボンデッドゾーンの10%は資格を悪用して密輸入を行っている、と語る。「本来ボンデッドゾーンというのは輸出指向が前提になっているのだが、そうでない者に認可が与えられているケースがかなりある。10%は外国産品を無税で通すための通路に使われていると思われる。」
総局長によれば、本来の条件から言えばボンデッドゾーンは海岸や港の近くに設けられるのが自然だが、街中やら離島の隅にまでボンデッドゾーンが存在しているとのこと。住所がジャカルタのタナアバン市場の中になっているものや、その住所に行ってみたら墓地の中だったというものまである。密輸入の手口は、外国から高価な物品を輸入し、国内からそれと類似の安物を仕入れ、取り替えて輸出する。外国産の高価な物品は無税で国内市場に流れていく。
これまで、あまりにもイージーに認可を与え過ぎている、と総局長は言う。今では全国に工業団地はたくさんある。だから保税工場は全部工業団地の中に入ってもらうのが解決策だとの弁。
港から保税でボンデッドゾーンに搬入された輸入貨物が、ほどなくして国内流通業者の倉庫に移されて国内市場に流されるというのは、密輸入品が通っているありふれたルートのひとつだ。国内市場にあふれかえっている密輸入品の動きに末端の税関職員が手を貸しているということが言える。ただでさえ腐敗体質の役人が、税関だけが例外ということはありえない。総局上層部があまりにも信頼の置けない職員を現場に出したくないと思っても、どんどん増加する一方のボンデッドゾーンに職員を置かないわけにはいかないという台所事情がそこにある。
そのため税関総局は意を決して今回の動きに出た。ボンデッドゾーンを減らすというのが税関の目的であり、そのために工業団地内への移転と1Ha以上の敷地面積というふたつの条件を定めたのだ。小規模保税工場は保税工業団地に入ってもらうのが最善の解決となる。
国会や産業界から蔵相規則第147号の撤廃を求める声も上がっているが、税関はあくまでもそれをつっぱねた。しかし移転はすぐにできないという議論を無視するほどでもなく、移転のために2年間の猶予を与えるので、第4条の規定は2014年から執行すると宣言している。
ところが2012年1月中旬になって、全国商工会議所とアピンド、繊維業協会やその他の産業団体などが執拗に政府にアプローチを続けた結果、大蔵省もついに妥協した。蔵相規則第255号が後追いで出され、147号の条文がいくつか改定されたのである。
まず、保税工場の工業団地への移転は2016年12月31日まで猶予が与えられ、2017年1月1日から工業団地外の保税工場は存在が認められなくなる。また外注作業についても、第147号の規定は2013年1月1日から施行されるよう期限が延長されたため、今年いっぱいは現状のまま継続することが可能になった。
今回の事態の進展を見ると、政府が業界の統制を行うために出す大臣規則は出されてから実施日が近づくと突然火がついたような騒動になり、妥当性の低い、無理な内容ともなれば業界は執拗に反対の陳情を継続する。結果的に政府が定めた実施開始日はいつの間にか過ぎ去ってしまい、実施の実現がないまま日を送ることになる。これは実に頻繁に起こっているパターンだ。効率というものが重視されないインドネシアンプラクティスをわれわれはここでも目にするのである。


「自家用車族は二輪ライダーに移行する」(2012年1月24日)
2012年4月1日から自家用車族はプレミウムガソリンが買えなくなる。とは言っても、年内いっぱいかけてジャワ〜バリで段階的に進められる予定だから、最初は首都圏の政府の威光がもっとも届いている地区で開始され、徐々に周辺に向かって広がっていくというシナリオになっている。だから4月以降でもちょっと郊外に走れば買えるというスタイルになる可能性が高い。
しかし政府が補助金付きガソリンの使用を一部階層だけに限定して消費量抑制を行う方針が、そのもくろみの足をすくう要因がたっぷりあるという批判の声が高まるにつれて、政府は逡巡の面持ちを深めているようだ。なにしろ鉱エネ相が、計画のシナリオが50%成功すればいいところだと言っているそうだから、この政策も闇ガソリン市場を盛んにする結果に終わる可能性は高い。消費量抑制をしないのであれば、補助金付きガソリンの値上げということになる。政府は今回のモメンタムをとらえてガソリンからガスへの自動車燃料転換を進めたい意向だが、プレミウムが値上がりされるのであれば燃料転換政策のインパクトは弱いものになるだろう。
ところで、プレミウムが買えなくなったら自家用車族はどうするだろうか、というサーベイを運通省R&Dが行った。自家用車オーナードライバー510人に尋ねた今回の政策に対する対応予定は、なんとオートバイに乗り換えるというのが最大ポーションを占めた。価格が二倍もするプルタマックスなんか買っていられない。公共運送機関は快適でなく、乗りたいと思わない。
昔から何度も何度も繰り返されてきた公共運送機関のレベルアップは、結局のところ、同じ場所を堂々巡りしている。公共運送機関の快適さは車両が新しいうちだけで、そのうちに暴力的運転と車内の犯罪多発の闇に溶け込んでしまう。サービスとは見ず知らずの他人に対する友愛をベースにしたケアだということが実践されなければ、堂々巡りは止むことがないにちがいない。


「工場用地は4割値上がり」(2012年2月1日)
2012年はジャボデタベッ地区で工場用地が4割値上がりするだろう、と不動産業界者が予想している。工場新設は工業団地内でという方針が既に実施されているが、工業団地開発会社も土地を無限に持っているわけでなく、またいますぐに既存の団地を周辺に拡張するのもそう簡単にできるものではない。一方で昨今のインドネシアへの工場移転の波がそんな工業団地にもろに押し寄せている。「土地が限られているのに反して需要が高い。そんな状況がもうここニ年続いている。その結果顕著な工場用地の値上がりが起こっており、今年は40%の値上がりになりそうだ。」コリエールズインターナショナルインドネシアの産業サービス副理事はそう語る。
コリエールズの集めたデータによれば、2011年首都圏工業団地販売はカラワンが36%の最大シェアを占めた。次いでブカシ26%、セラン21%、ジャカルタ10%、タングラン5%、ボゴール2%という配分になっている。2011年の首都圏工業団地土地販売は1,238Haで、2010年の543Haから倍増した。販売価格はブカシが平米当たり150.33米ドル、タングラン117.56米ドル、ボゴール108.33米ドル、カラワン108.22米ドル、セラン83.33米ドルといったレベル。団地別ではスルヤチプタが250Haでトップ、グリーンランドがニ位の205Ha、デルタシリコン155Ha、ブカシファジャル150Haといった順位。
2011年に工場用地の手当てを行った最大産業セクターは自動車製造で52.2%を占めた。産業セクターの中では自動車に次いで食品・化薬品・日用品・医薬品が今年は伸びるだろうとコリエールズは見ている。
一方、カッシュマン&ウェイクフィールドインドネシアは、2011年の工業団地土地販売は5百Haに達し、1998年のクライシス以来最大の記録を作ったと報告した。需要のマジョリティは外資で自動車セクターであるとのこと。外国投資が滔々と流入してくる中で、供給不足気味の工場用地販売は売り手市場が継続する。用地供給は昨年が516Haあったが、2012年は微減して500Ha前後に留まりそうだとのこと。


「輸入部品・原料に免税恩典」
2012年4月1日から政府は、輸出される製品のために輸入される部品・原料の輸入関税免除を期間限定で行う。輸出目的の他の物品に加工・組立・取付られる物品や原料の輸入に対する関税免除に関する大蔵大臣規則第254/PMK.04/2011号はその恩典を最長12ヶ月間としているものの、生産期間の長いものについては特例で12ヶ月を超えるケースでも認められる由。この免税対象はかならず輸出製品の一部となって輸出されるものに限定され、製造工程の中で消費されてなくなってしまうものや補助材は免税恩典が与えられない。
この恩典を求める生産者は所轄の税関地方事務所あるいは税関メインサービス事務所に申請して免税会社基本番号を取得し、第一回目の免税輸入通関の日から12ヶ月間その恩典が使えることになる。
また免税適用は保証金を税関に置くことが絶対条件で、保証金は免除された関税額相当になる。免税で輸入されたものを使った製品の輸出状況と過去の輸入実績の関連を説明する報告書も税関に提出しなければならない。免税輸入された貨物は免税会社基本番号に明示されている場所に運んで積み下ろし、そこで保管されることになる。そして生産された製品は最長で6ヶ月以内に輸出されなければならない。免税輸入された部品・原料の加工・組立・取付は輸入者が自社内で行わなければならず、下請け会社にその作業をさせることは禁止になっている。生産された部品・原料の残り分は売値の5%を関税として納入しなければならない。
免税輸入された部品・原料を含んだ製品が品質不合格になったり、輸出ができなかった場合は、それに用いられた部品・原料の関税額を税関が保証金から引き落とすことになり、また罰金が科されるとのこと。
インドネシアの工業製品は依然としてローカルコンテンツが低く、セクターごとの輸入依存率は次のようになっている。
通信機器 63.7%
家庭・事務所用機器 56.7%
化薬品 30.1%
金属製品 16.6%
繊維衣料品 14.5%
ゴム・プラスチック製品 13.5%
紙と紙製品 10.9%


「現代ビジネスに不向きの文化?!」(2012年2月3日)
インドネシアでビジネスを行う場合に、何がビジネスをやりにくくさせているか、障害になっていることがらのウエイトはどうか。世界経済フォーラムが発表した国際競争力レポート2011−2012版には、ビジネスの足を引っ張っている要因がランク順に並べられている。
そのトップは言うまでもなく汚職。コルプシが国民生活の隅々まで大きい影響を及ぼしているため、ビジネスだけが無縁でいられるわけがない。順位とパーセンテージは次の通り。
汚職 15.4%
不能率な行政 14.3%
インフラ供給の不適正 9.5%
不安定な政策 7.4%
資金アクセス 7.2%
妥当でない労働者の教育レベル 6.3%
劣悪な労働倫理 6.2%
不安定な政府 6.1%
インフレ 6.1%
税制 6.0%
税率 4.2%
労働法規 3.6%
犯罪頻発 2.7%
劣悪な公衆保健サービス 2.5%
外為法規 2.3%
ビジネスへのマイナス要因はインドネシア人が日々どっぷり浸かって暮らしているかれらの文化そのものだと言えば、言い過ぎになるのだろうか?


「メガワティ支持がトップ」(2012年2月25日)
CSIS(戦略国際問題研究所)がサーベイした次期大統領選候補者の国民からの支持状況が発表された。2014年大統領選挙に出馬しうる人物20人の名前を回答者に示して支持者の選択を求めたのがその調査で、第5代大統領メガワティ・スカルノプトリが10%を獲得してトップとなった。
CSISのこのサーベイは2012年1月16〜24日に全国23州で行われた。得票率が1%を超えた人物は12人、1%に満たなかった人物は8人で、下馬評でその名がささやかれているスリ・ムリヤニ・インドラワティはその8人のひとりだった。
12人の成績は次の通り。
Megawati Soekarnoputri 10%
Prabowo Subianto 6.7%
Jusuf Kalla 5.6%
Aburizal Bakri 5.2%
Sri Sultan HB X 3.1%
Ani Yudhoyono 3.0%
Hatta Rajasa 2.3%
Hidayat Nur Wahid 2.2%
Mahfud MD 2%
Wiranto 1.7%
Dahlan Iskan 1.2%
Anas Urbaningrum 1.2%
PDI−Pはこのサーベイ結果を重く見て、これまで進めてきたメガワティから娘のプアン・マハラニへの世代交代のお膳立てを見直す声も上がっているとのこと。


「メーカーのサービスセンターはそんなの?!」(2012年2月29日)
2011年11月22日付けコンパス紙への投書"Purnajual Asus"から
拝啓、編集部殿。わたしはAsusブランドのラップトップコンピュータを使っています。故障したので、9月8日に中央ジャカルタ市バリッパパン通りにあるVayaというところに修理に出しました。品物を持ち込んでから二週間以上経つのに、連絡が何もありません。わたしが自主的に先方に電話したところ、修理はまだ終わっておらず、完了したら電話するから待つようにと言われました。
三週目が過ぎようとしているのにまだ連絡がないので、わたしは電話して修理担当につないでもらいました。するとアルドさんが出てきて、修理費は45万ルピアだが部品が届くのを待っているところだ、と言いました。かれはその修理を10月前に終わらせる、と約束しました。
ところが10月11日になってもまだ連絡がないので、わたしのほうから電話しました。ところが状況を説明できるひとがだれもいないのです。電話を切ったあとほとんど間もなく、アルドと名乗るひとが電話してきました。かれは修理費が150万ルピアかかり、しかしいつ完了できるのかわからないと言います。
最終的にわたしはデポッ市でコンピュータ技術を持っている友人の店にそのコンピュータの修理を依頼し、費用7万5千ルピアで1日でなおってきました。Asusの修理って、どうなってるんですか?[ 南ジャカルタ市在住、アイ・プトリ ]


「輸入関税政府負担制度」(2012年3月2日)
政府は2012年も特定セクターに対する輸入インセンティブを与えることにした。これは輸入関税政府負担(BMDTP)と呼ばれる制度で、輸入者が国庫に納めるべき輸入関税を政府が負担してくれるため、この制度利用恩典を認められた輸入者は輸入通関申告書にその旨を明示するだけでよく、納税を行う必要がない。
この法的根拠は、特定産業セクター競争力向上と公共利益のための物品および/あるいはサービス生産のための物品原料輸入に対する政府負担輸入関税2012年度予算分に関する2012年蔵相規則第23/PMK.011/2012号で、2012年2月2日から施行されている。
対象とされている工業セクターは、自動車用部品、家電品、造船、建機、蒸気火力発電所用トランス、肥料、通信機器、文房具、光ファイバー、カーペット、プラスチック容器、特殊インク(トナー)、鉄道車両、合成樹脂、航空機補修維持、点滴液の16種類。
この恩典は輸出目的輸入恩典(KITE)との併用や保税工場による利用が認められておらず、また社会告知も大々的に行われたことがないため、実業界の認識は浅い。2011年度もこの恩典が16産業セクターに対して与えられたものの、政府支出予算内に用意された1.5兆ルピアはほとんど使われず、5千億ルピアに引き下げられた。2012年度予算内で政府は一旦1兆ルピアの枠取りをしているが、実績を持つ工場で併用の認められないステータスに移ったところも出ており、予算枠の引き下げが行われることになりそう。


「サービスドオフィス事業が活況」(2012年3月13・14日)
2011年は首都ジャカルタのCBD地区でサービスドオフィスのスペースが激増した年だった。2011年末の総面積は21,696平米にのぼり、2010年末から倍増した。この先二年間でスペースはさらに50%増加するだろうと見込まれている。
サービスドオフィスというのは入居者が即座にそこでビジネス活動を開始できるというコンセプトで設けられているもので、受付や電話交換手付きになっており、IT完備で会議室まで用意され、賃貸期間も借り手にとって自由度の高い条件が設定されている。
インドネシアで本格的に事業を開始する前の調査段階に、サービスドオフィスはきわめて有効なツールとなる。いまCBD地区のサービスドオフィス顧客のほとんどは外国系企業だ。インドネシアへの事業進出あるいは工場移転が大きい波を形成しているいま、この種のサポート事業は強い需要を引き当てるのに成功している。CBD地区でサービスドオフィスを経営しているオペレータには、Regus, CEO Suite, Executive Center, Marquee, Fortice, Nomad Offices, Jakarta Serviced Office, Prestige, HQ Global などがあり、スペース稼働率はほぼ90%に達しているとのこと。
CBD地区にあるオフィススペースの中に占めるサービスドオフィスの比重はわずか0.5%でしかないが、その貢献度はきわめて大きい、と不動産コンサルタントは述べている。
CBD内でエリア別の分布を見ると、サービスドオフィスのもっとも多いのはスディルマン通りで50.2%を占め、次いでタムリン通り26.6%、クニガン地区23.2%という配分になっている。
サービスドオフィスの87.3%は賃貸用オフィスビル内にあり、12.7%は賃貸売却ミックスのビル内に入っている。入居者はクニガン地区がお気に入りのようで、同地区は92.3%、タムリン通り90.7%、スディルマン通り86.0%というのが入居率。入居者のプロフィールは外国系が7割、国内企業が3割、事業セクター別では保険、ファイナンス、会計、石油ガス、鉱業、情報通信などがメインを占めている。
CBDに次いでいまオフィス需要の高い南ジャカルタ市TBシマトゥパン通り界隈も、この先ニ年以内にサービスドオフィスが拡大するだろう、と不動産コンサルタントは語っている。
サービスドオフィスの広さはひとりが5平米を使って2〜3人がそこで事務所作業を行うという想定になっているのがほとんどで、賃貸料金はひと月800万から2,300万ルピアくらいまで。ただしこれも地域差があり、スディルマン通り界隈で900万〜2,300万。クニガン地区では800万〜1,500万、タムリン通りエリアは900万〜2,000万という料金レンジだそうだ。


「ローン頭金最低比率がアップ」(2012年3月26・27日)
消費者向け金融の猛烈な伸びが過熱してバブルを生み、空中分解が起こって国民生活に動揺が発生するのを懸念して、政府と中央銀行が抑制の手を強めている。消費者向け金融の中では不動産購入ローンと自動車購入ローンがその双璧をなしており、マルチファイナンス業界がマジョリティの自動車分野と一般銀行界が行っている住宅取得ローンという傾向の違いがあるにせよ、政府にはその双方に有効な手を打つ必要性が生じている。
マルチファイナンス業界の動きは先に限度を超えたとして過熱状態に水をかける動きがはじまっていたが、今度は一般銀行界にも予防線を張る必要が出てきたようだ。インドネシア銀行の一般銀行界に対する貸付金利率引下げ誘導政策の結果まず引下げが先行したのは住宅取得ローンで、ローン残高は2011年を通して顕著な上昇が見られていたが、金利引下げによって残高増加に拍車がかかるおそれが強まってきた。皮肉なことに、インドネシア銀行が期待している実業界に対するローン金利率の低下は遅々として進展が見られない。
2012年1月の貸付金残高は不動産向けが305.3兆ルピアで前月の301.3兆から4兆ルピアの増加、自動車向けは104.9兆ルピアで前月実績の106.7兆からは下降しているが、それぞれを前年同月実績と比較すると、不動産向けは27.6%、自動車向けは29.3%の増加を示している。
過熱抑制のために政府大蔵省と中銀が採ったのはローン資産価値比率を高める方針であり、頭金の最低基準が引き上げられた。2012年3月15日付けで定められたインドネシア銀行規則は一般銀行界が遵守するべきローン与信時の頭金の比率を次のように定めている。
70平米を超える住宅に対する取得ローンの頭金はその住宅の価格の30%を超えていなければならず、自動車の場合も非生産用四輪自動車は30%、生産用四輪自動車は20%、そして二輪車は25%がミニマムとなるというもの。
一方、マルチファイナンス業界に対する同じ規制は大蔵省が定めた。その内容は、非生産用四輪自動車が25%、生産用四輪自動車が20%、二輪車が20%となっている。
不動産業界者によれば、政府中銀のその方針は実態の的を射ていないそうだ。「70平米を超える住宅を購入しているのは、ここ数年大きい現金収入を得るようになったミドルクラスから上の階層であり、かれらの住宅購入パターンは現金による分割払いが主流を占めている。また地価の高い一等地にある70平米未満の住居をアッパークラスは数十億ルピアという金額で購入しており、70平米という物件の面積を規準に取るのは的外れではないか?その一方、銀行界も住宅取得ローンの貸付承認に厳しい条件をつけているところが多く、平均してローン金額は物件価額の30〜50%程度しか与えていない。」
今回定められた頭金の最低比率は2012年6月15日から適用されることになっている。


「プレミウムガソリン値上げはお流れ」(2012年4月2〜4日)
狂乱が激しさを増す社会を鎮静させる決定が最終的に下された。政府が国会に承認を求めていた2012年4月1日からの補助金付き石油燃料値上げ案に承認が与えられなかったのだ。2012年度国家予算を定めた法律の改定に関する議論が国会で続けられている間、全9会派中の8会派が4月1日からの値上げに反対の姿勢を表明し、政府は実質上1日からの値上げ実施は無理と判断して3月30日夜、値上げ計画の取りやめを決めた。
これでアナーキーさが激化しつつあった全国的な値上げ反対デモはすべて腰砕けになるかと思いきや、この機会をとらえて現政府を徹底的に叩こうと国民を煽っていた勢力は、まだ不完全燃焼だったのだろうか、もう一押し進めようとしているように見える。ただ状況がこう展開してしまえば、これまでデモの影から油を注いで燃え盛らせていたアンチ現政権勢力の執拗な示威行動はかえって国民大衆の気持ちを離反させることになるにちがいない。
社会に狂乱の度合いを深めさせていたのは、アナーキズムだけではない。値上がりするのだから、いまのうちに買い占めておき、値上がり後に市場に放出すれば大もうけになる、と考えるのはだれしも同じだ。こうして山師根性を持つ人間が取締りの目をかいくぐって、買占め、買い溜め、隠匿、売り惜しみなどさまざまな言葉で表現される行為を行うようになる。たとえ自家消費のためであっても、石油燃料を備蓄する場合は認可が必要であり、認可もなしに中身の入った石油缶を山のように積み上げれば違反行為として摘発される。もちろん、自分が持っている自動車の燃料タンクを満杯にしておくのをだれもとがめることはできないから、ふだんはガソリンを1リッターしか入れないで走り回っている二輪ライダーも、こんなときばかりは満タンにしておくよう努めるようになる。それだけで満足すればまだしも、中には燃料タンクからガソリンを吸いだして石油缶に移し、また満タンにしにガソリンスタンドに走るというピストン運動を行う者さえいる。その結果、家の中に持ちなれない可燃物を置き、火の不始末から火事を出すということもよく起こっている。儲けどころか自分の住居を失うという愚かな結末を迎える者もいるわけで、インドネシア人はそのようなことを「mau untung jadi buntung」と表現している。
おかげで2012年1月の全国消費量は340万キロリッター、2月は350万キロリッターと、これも狂乱傾向が続いている。2011年1月実績が230万キロリッターだったから、異常な増加は誰の目にも明らかだろう。ただし、その消費量の増加がすべて実消費に回ったわけでもあるまい。上述の買占め・買い溜め・・・・に回されて4月以降の実消費の一部になるものが出てくるはずだが、それがどのくらいあるのかはわからない。
ガソリンスタンドは、隠匿・売り惜しみの最前線にいる。PTプルタミナは中部ジャワ・東ジャワ・西ジャワ・北スマトラ・南スマトラにあるガソリンスタンド30店に対し、小売用石油燃料の二週間供給停止を通告した。それらのガソリンスタンドは、プルタミナから供給を受けた燃料を貯油タンクから吸いだして別の場所に隠匿し、値上がりしたらまた戻して消費者に高く売ろうとしていたのが摘発されたもの。
西ジャワ州タシッマラヤでは、ガソリンスタンドからトラック燃料タンク満杯分の軽油を購入し、持ち帰ってドラム缶に移すということをしていた60歳と40歳の男三人が警察に逮捕された。かれらは砂鉄採鉱場にそれをリッター1万ルピアで売却しようとしていたのだ。補助金付き軽油はリッター当たり5千5百ルピアだ。警察がかれらから押収した軽油は1.8キロリッター。
東ジャワ州ガウィでは、中部ジャワとの州境に近いマンティガン地区のある村で灯油小売販売業を営んでいる女性が逮捕された。その自宅からは、8本のドラム缶に補助金付き石油燃料が溜められ、また灯油にその廉い燃料を混ぜた水増しものもドラム缶2本半分が見つかっている。隠匿量は21キロリッターあった。
中部ジャワ州ソロでも、石油燃料流通業者の自宅からドラム缶5本に入った軽油1キロリッターが発見され、事業条件を超える量であることから隠匿燃料として警察に摘発されている。
バリでもバンリ県グロガッ郡住民が他県を含めた各地のガソリンスタンドで補助金付きプレミウムガソリンと軽油を購入し、自宅のドラム缶5本に蓄えていたのが摘発されている。差し押さえられたのは1.9キロリッター。それとは別にバリ東部地方で4.9キロリッターを蓄えていた者も捕まっている。
西カリマンタン州警察が2012年中に摘発した石油燃料の隠匿や不法貯蔵事件は57件あり、容疑者は67人で、差し押さえられた燃料は軽油161.5トン、プレミウム27.6トン、灯油17.6トンとなっている。
しばらく前にタクシーの後部座席をガソリンタンクに改造してガソリンスタンドから大量に燃料を買いまくっていた事件が報道されたが、その上を行く凄まじいことが東ジャワ州で行われていた。摘発されたのはプロボリンゴに登録されている長距離定期バス一台。大掛かりに改造されたそのバスは、車内に大型タンクを置いて外からはわからないようにし、あちこちのガソリンスタンドで軽油を買い集めてはそのタンクに貯蔵していた。そのバスはジュンブルのガソリンスタンドで給油したが、いつまで軽油を注ぎ込んでも満タンになる気配がないのに給油メーターは1,887リッターを表示していたためにスタンド従業員が怪しんで警察に通報したもの。
警察は運転手を含む運行クルー4人を逮捕した上そのバスを差し押さえて改造状態を調べ、20キロリッター入りのタンクが据え付けられているのを確かめた。このバスはパスルアンからバニュワギまで幅広くガソリンスタンドに立ち寄っては補助金付き軽油を購入し、補助金付き軽油を公的に購入できないことになっている工場に販売していたことが、運行クルーの証言から明らかになっている。警察は大型バスを改造して不法ビジネスを大掛かりに行っていたバスオーナーを追っている。
あれだけ全国民が大騒ぎしている石油燃料値上げをうまく利用して私利をむさぼろうとする人間がいかに多いかということが上の事実からよくわかる。インドネシア人が持っている公私感覚の天秤の傾きがどのあたりにあるのかということをそれが示しているようにわたしには思える。
ともあれ、国民大多数が諸物価高騰の根源となる石油燃料値上げに反対するのは当然だが、補助金削減という政府の意向を実現させるものは、なにも値上げに限られたことではない。補助金付き燃料の出荷枠を減らせば補助金支出は減少する。それはこれまでに何度もプルタミナが行ってきたことであり、各地のガソリンスタンドで在庫切れが起こり車が長蛇の列を作る姿をわれわれはこれまでも頻繁に眼にしている。石油燃料の値上げがなかったから諸物価高騰は切り抜けたと考えるのは時期尚早ではないだろうか。問題の根源は政府が補助金削減を必達事項としていることであり、政府が国民に与えている経済的援助がカットされたら国民がその分を自ら補填しなければならなくなるのは当然のことではあるまいか。もともと補助金削減にそのポイントから反対する声が多かったにもかかわらず、どうやらその感覚は長い年月の間に風化してしまったかの印象を受けているのはわたしばかりではあるまい。


「国民の声にバイアスのかかる劇場国家」(2012年4月5・6日)
鉱エネ省石油ガス総局のデータを元に運通省陸運総局が2011年のセクター別補助金付き石油燃料消費を算出した。政府の補助金は次のように享受されたことになる。
自家用車 77.9兆ルピア 53%
オートバイ 58.8兆ルピア 40%
貨物運送車 5.9兆ルピア 4%
乗客運送車 4.1兆ルピア 3%
合計  146.7兆ルピア 100%
自家用車を持つ階層が貧困層でないのは明らかであり、真の貧困層はオートバイすら持つ余裕がない。だからその面で政府が行っていることは的外れであるという批判は以前からあった。ところが現政権が補助金付き石油燃料の小売価格を引き上げようとしたら全国民の猛反対を受けた、というのが今回のストーリーだ。補助金付き石油燃料の供給量操作が行われるくらいなら、値上げのほうがはるかに国民経済にとって健全ではないかと思うのはわたしだけだろうか。
石油燃料値上げのデッドラインである2012年4月1日が近付くとともに、反対デモは激しさを増した。昔から国民の間で政策反対の声が盛り上がると、政権保持者の体面を粉砕して政府への不満を国民に植えつけようとするアンチ政権派の画策が盛んに行われた。今回のように全国的に広がったビッグイシューでは、民衆デモに不穏分子が潜入してアナーキー行動へと向かわせる「煽動」と呼ばれる行為が活発化するのがならわしだ。破壊と暴力のアナーキー行動が発生すれば、治安と社会秩序を維持しなければならない政権保持者に対して国民生活を保護する能力がないという批判をぶつけることができる。
実際、今回行われたジャカルタでのデモに際して、デモ隊側に火炎瓶を用意している者がおりその火炎瓶を押収したと首都警察が公表しているから、国民の陳情行動を巧みに利用しようとする勢力が確かに存在しており、表面にあらわれた現象はそんな勢力が演出した部分が少なからずあるという認識をわれわれは持たなければならないだろう。テレビが映し出しているデモの光景を単純に国民の声だと認識するのは、インドネシアの場合、あまりにもナイーブな見方だということになる。
大勢の人間がデモに参加したが、今回のデモでも参加するとひとり10万ルピアがもらえるという話が膾炙していたから、金で動員された人数が相当数混じっていたものと思われる。クリフォード・ギアーツはバリに関連して劇場国家という言葉を考案したらしいが、真実とは無関係に別の姿を現実社会に映し出してみせる演出に関しては、インドネシア人は世界有数の演出家であるにちがいない。
4月1日を間近に控えた2012年3月28〜30日、コンパス紙R&Dがジャカルタ・バンドン・スマラン・ジョクジャ・スラバヤ・メダン・パレンバン・マカッサル・マナド・バンジャルマシン・ポンティアナッ・デンパサルの12大都市で最新電話番号簿から711人をランダム抽出して電話インタビューを行った。17歳以上の男女711人から集めた回答は次のようなものになった。
質問A:石油燃料値上げに反対する学生のデモ行動にあなたは賛同しますか?
回答A:する62.0%、しない35.4%、不明・無回答2.6%
質問B:石油燃料値上げに反対する政党の姿勢にあなたは賛同しますか?
回答B:する65.8%、しない26.4%、不明・無回答7.8%
質問C:石油燃料値上げ方針は国家経済を救うためだという説明をあなたは信じますか?
回答C:信じる28.1%、信じない67.1%、不明・無回答4.8%
質問D:政府が貧困層に現金直接援助を与えるのと地域インフラを建設するのとどちらをあなたは選びますか?
回答D:現金直接援助19.8%、インフラ建設74.5%、不明・無回答5.7%
質問E:次にあげる政府の政策にあなたは満足していますか?
回答E:
1.全国エネルギー政策:満足12.2%、不満足68.4%、不明・無回答19.4%
2.大多数国民に手の届く石油燃料価格と供給の確保:満足3.8%、不満足61.7%、不明・無回答34.5%
3.各地での石油燃料欠乏と密輸事件の克服:満足4.1%、不満足78.6%、不明・無回答17.3%
4.生活基幹物資価格のコントロール:満足3.0%、不満足75.2%、不明・無回答21.8%


「貧すれば鈍す産業界」(2012年4月9日)
国内市場に輸入品が激増して国内生産者の事業が苦しくなっているセクターは枚挙にいとまがない。国内産業が苦しいのは競争力に欠けているからであり、生産コストが明らかに隣国、特に中国より高いものは数多い。製造業界の部品の6割は完全に外国製に負けている。「国内で作ったらいくらでできるか、国外で作ったらいくらになるのか。その比較表をわたしは持っている。部品の6割が国外で作るほうが廉い。」ヒダヤッ工業相は全国商工会議所主催のセミナーでそう語った。国産工業製品の競争力を向上させるために工業省は2012〜2014年工業化促進プログラムを用意し、製造コストの大幅カットを計画している。その中には、銀行貸付金利率引下げや時間のかかりすぎている許認可の迅速化なども織り込まれている、
しかし短期戦略の中での有力な武器はSNI(インドネシア製品規格)だ。政府は製造業界の実力を見ながらSNIを義務付けるか任意にするかを決めている。業界がSNIを自家薬籠中のものにできるなら、SNI未取得の外国産品を市場から相当に排除できるが、国内産業界が義務付けに対応できなければSNIを盾に外国品の国内流入を規制することはむつかしい。
政府は2012年にSNI521件、技術規定43件、合計564の製品に対して規格を義務付ける計画だ。その明細は次のようになっている。
家電品: 31/31
家具: −/6
金属: 8/−
基礎化学: 5/−
下流化学: 12/4
食品: 7/−
玩具: 15/−
繊維と繊維製品: 436/2
自動車: 5/−
海事: 2/−
合計: 521/43 (SNI/技術規定)
しかし一度SNIが義務付けられて、関連セクターの工場が続々と規格承認を得ればめでたしめでたしかというと、決してそんなことはないと商業省流通物品サービス監督局長は語る。
生産者の中には、一度承認を受けた品質を維持しようとせず、長い時間が経つうちに品質を低下させてマージンを増やそうとする者が出る。だから常に製造工程に対する当局の監督は続けられなければならないが、品質検査を行うラボラトリーが国内に不足していることが監督業務に足かせをはめているとのこと。「生産者は最初規格に適合して承認を受けようと努力する。そしてしばらくはその品質を維持するが、そのうちに少しずつスタンダードを落とし始める。そうやってコストを減らせば、儲けが膨らむからだ。だから規格の監督は継続的に行われている。問題は、検査ラボが不足していることだ。たとえばオートバイ運転者用ヘルメットの検査ができるラボはひとつしかない。自転車もひとつしかない。だから検査結果が出るまで時間がかかり、たとえばある工場の製品で不合格が発生した場合、すでに欠陥品が市場に大量に出回ったあと、ということが起こりうる。」
生産者が低コスト低クオリティ製品を指向するのは、国民消費者の中に高品質指向を持たず価格だけを購入規準としている層があることと密接に関連している。国内生産者がSNIに準拠せずに低品質のものを作っていれば、低品質でもっと低価格の品物が外国から入ってきて市場を奪われる。それを防ぐためにはSNI規格を順守して品質指向に向かうのがゴールデンウエイであることに間違いはないのだが・・・・


「ジャカルタのオフィススペースが値上がり」(2012年4月27日)
2012年第1四半期ジャカルタのビジネスセンター地区(CBD)のオフィススペース賃貸料金は10%値上がりした。コリエールズインターナショナルインドネシアの調査部長は、新規スペース供給が南ジャカルタ市ラスナサイッ通りのマルチビジョンタワー(Multivision Tower)一ヶ所しかなかったことがその主要因だと説明した。
「2012年第1四半期CBD地区Aグレードオフィススペース賃貸料金は10%上がった。今年中にビルオーナーが最値上げを行う可能性は大いにある。第1四半期の新規スペース供給はマルチビジョンタワーだけだったが、それも70%は完成前予約受注で埋まっており、実際に市場に出たのは30%しかない。賃貸料金が売り手市場になっているのは、優良クオリティスペースが限られていることと、需要が成長を続けていることに由来している。たとえばメガクニガン(Mega Kuningan)周辺ではMenara DeadとMenara Primaが15〜30%、Tempo Scanは11%値上がりしたし、Chase Plazaは50%、Graha Niagaは30%もアップしている。」
同じコリエールズのオフィスサービス部長は、売り手市場状態は2013年まで続くだろうと語る。「この先、新規に完成して供給を増やすはずのオフィスビルのほとんどは完成前予約でスペースに顧客の手がついている。需給バランスが安定するのは2014年まで待たなければならないが、それには総選挙が平穏に行われるという条件がつく。料金値上がりに関して言えば、今年が最大の値上がり幅になるだろうと予測されている。具体的な数字を言うのは難しいが、同規模同クオリティのビルなら30〜50%くらいは上がるのではないか。」
CBDのオフィススペース需要は保険・金融・鉱業・農園業などのセクターで事業拡張の著しいところがメインを占めている。かれらが求めているのはストラテジックなロケーションにあるハイクオリティの物件だ。供給の限られている市場では、かれらのアグレッシブな需要が必然的に値上がりを生む。しかも需要の7割は内国資本だから、賃貸スペースビジネスに関する限り欧米の不況などどこ吹く風だ。Aグレード物件の値上がりにつれてBグレードやCグレードでもCBDにある限り値上がりの波が押し寄せるのを避けることはできない、と同部長は述べている。


「工業団地の土地価格が急上昇」(2012年4月30日)
カッシュマン&ウェイクフィールドインドネシアの報告によれば、2012年第1四半期ジャカルタとその周辺地区の工業団地における土地価格は65.8%値上がりした。乏しい供給のために需要は前年同期から半減して152.5Haに低下している。首都圏工業団地に強い需要の波が押し寄せてきたのは2010年後半からで、グローバル経済状況が不透明さを増し、インドネシアの状況が光彩を増した結果諸外国からインドネシアへの事業投資の意欲が高まったのがその原因だ。おかげで、それまで安定した需給バランスと価格が大きく変動することになった。いまや工業団地の土地価格は平均132万ルピアに達している。
地域別にはブカシ〜カラワン〜プルワカルタのチカンペッ自動車道沿線がトップ人気で、2012年第1四半期首都圏販売の85%がそこに集中している。特に外国系企業はそのエリアが妥当なインフラを持っているという判断をしており、かれらの選択肢はそのエリア内でのものになっている。
工業団地運営者もその需要を捕まえようとして用地整備を行っており、供給も継続的に起こっている。用地整備は半年から一年の期間を要するとのこと。
首都圏各地区の入居率と土地価格は次のようになっている。
ジャカルタ: 86.5% 250万ルピア/?
タングラン: 67.1% 126万ルピア/?
ブカシ: 80.2% 143.2万ルピア/?
カラワン・プルワカルタ: 83.5% 95.9万ルピア/?
セラン: 65.6% 72.5万ルピア/?
ボゴール: 72.2% 135万ルピア/?
平均: 78.6% 132.6万ルピア/?


「やはり、プレミウムガソリンが買えなくなる」(2012年4月30日)
補助金付きプレミウムガソリンの値上げを国民と国会から拒絶された政府は、やはり供給制限を行うことにした。とは言っても供給パイプの口を問答無用で狭めようというのでなく、消費者側に条件をつけて「お前は買ってよいが、お前は買ってはいけない」という形にすることにした。その条件とは、四輪車で赤色ナンバープレート(公用車)はすべて、そして黒色ナンバープレート(自家用車)はエンジン排気量1千5百ccを境にしてそれ以上の車は補助金付きガソリンを購入してはならない、ということにしたのだ。ここでも二輪車は除外されている。国民に対するこの種の差別的政策は専制国家でもないかぎりうまくいったためしがないとわたしは思うのだが、和気藹々たる対人関係の中で和解と平和を愛好する軟弱国民と自他ともに認めるインドネシア人がうまくやりおおせるのかどうか・・・・?
エンジン排気量1千5百ccちょうどという自動車はなく、1千4百9十なにがしという車が一般に1千5百ccと呼ばれている。鉱エネ大臣はその1千4百9十なにがしから購入不可の対象になると言っているが、鉱エネ省石油ガス総局長は規準以下だから対象に入らないと述べており、早くも曖昧さが露呈されている。
政府がそのような方針を確定させる前のまだ噂が飛び交いはじめた4月24日、中部ジャワ州スマランで開かれた中古車即売会で1千5百cc未満の車がバカ売れに売れた。普段の販売台数の200%を超えたと言っているから、たいへんな売れ行きだ。スマランだけでなく、ソロでも1千5百cc未満の新車中古車需要が激増している。インドモビル社社長は1千5百cc未満の車は年間販売の5〜6%しかないと言っているから、もしこの方針がうまく遂行されたなら大幅な市場シフトが起こり、各メーカーは競って小型車の生産を増やすようになるにちがいない。
ともあれ、ガソリンに関する補助金算出メカニズムがあまり精緻に作られていないことに加えて補助金削減を掛け値なしの至上命令にしてしまっている政府。プレミウムガソリン値上げを反対した結果、最初からわかりきっている現物供給削減のためにプレミウム価格の2倍以上もする補助金なしプルタマックス購入に追い込まれようとしている多数国民。プルタマックスが6千ルピアくらいだったころにこのようなことが行われていればまた状況は違っていただろうが、明らかに最悪のタイミングにもかかわらずそれを強行しようとしている政府はそれによって国民からますます非難と憎しみを買うことになる。このような政治状況を何者かが演出しているとすれば、狡猾な陰謀と騙しあいや煽動に彩られた宮廷政治の伝統はこの国でいまだに生きていると言えるにちがいない。


「富裕層を断罪する」(2012年5月3日)
わが国で最近強まっている、正されなければならない見解がある。たまたま金を持つようになった階層が石油燃料補助金支出増加のスケープゴートにされているのだ。おまけにこのニューリッチ層への反感からだろうが、かれらが補助金付き石油燃料を買うのはハラムであり罪悪であるという声明をインドネシアウラマ評議会が出した。その前には世銀さえこの議論に首をつっこんでおり、総額126.59兆ルピアにあたる2011年度予算内石油燃料補助金の80%はインドネシア人富裕層の50%が享受していると表明した。一方、貧困層は16%、極貧層はたったの1%しか補助金の効用が行き渡っていないと言うのである。しかし別のデータは世銀のその計算を疑わせている。つまり補助金付き石油燃料の40%はオートバイが消費しており、60%が四輪三輪など他の自動車によるものだというのである。
ところがいまや異なるイシューが広まりつつある。自家用車のうち排気量2千ccを超える車や車齢が10年未満の車を持っている裕福な階層に補助金付き石油燃料を買わせないようにしようというのがそれだ。
<同権>
他人より少しばかりラッキーでやっと金持ちになったら災厄の源泉だと言われたなんて、実にひとを驚かせるにあまりある。国家予算に穴をあけた立役者などと言われれば、だれでも嫌な気分になる。
金持ちになるのが無料でできたわけではない。昼夜を分かたない臨戦態勢を経て金持ちになれた者もその中にいる。そこまで努力したのだから、かれらが金持ちになれたのもうなずける。得られた財がコルプシ(腐敗行為)や銀行口座破りの結果であれば、話が違ってくる。そのような者たちは補助金を享受するのがハラムであるばかりか、その金で生活するだけでも許されないことだ。しかしインドネシアの大金持ちの中にコルプシがその源泉という者はいるのだろうか。そんな人間はいないことがわかった。それはつまり、インドネシアの法曹システムがそれを証明する能力を持っていないことを意味しているのである。だから、それを明言する法的ステートメントが存在しないために、コルプシはただの噂話に終わってしまう。
であるなら、貧困者にせよたまたま金持ちになった者にせよ、この共和国では同等の権利を持っているはずだ。かれらは同じ国民であり、権利と義務を国が保護しなければならない同じ対象なのである。かれらは二等国民でもなければ、金持ちになったというだけの理由で権利をないがしろにされてよい国民でもない。それどころか、かれらは国の負担を軽減させることに貢献したことで、国はかれらに感謝するべきなのである。富裕層はまた、現行政府が機能していることを示す国家シンボルとなりうるし、国内外に政治商品やプロパガンダツールあるいは効果的なイメージアップとして売り込むこともできる。この階層はまた、国家経済の回転に重要な役割を果たすことがありえないわけでもない。数百人、いや数千人の貧困者が毎日の暮らしをかれらに頼っている。かれらが用意する仕事のおかげで貧困家庭の台所は毎日火が消えることがない。金持ち階層の役割の重要さは決して劣るものではあるまい。
<ミスリーディングな統計>
石油燃料補助金の的はずれ問題に対する政府の怖れは過剰なものであり、根拠がない。政府の公式統計ツールである中央統計庁は貧困者人口が年々減少し続けていると発表している。中央統計庁によれば、昨年の貧困者人口はたったの3,002万人だった。その前の2010年は3,102万人だったから、政府は胸を張って繰り返しそのことを表明した。中央統計庁は貧困者人口が2009年は14,2%、2010年は13.3%、2011年は低率になったとはいえ3.2%と低下し続けていることを堂々と発表している。
貧困者人口が全国民の12.5%であるのなら、国民の87.5%は裕福な繁栄している階層だということになる。中央統計庁の統計数字に強い確信を抱いているのなら、政府の対策はきわめて容易なものになるはずだ。世銀の規準にしたがうなら、国際的な貧困ラインは一日の収入が2米ドルなのであり、3,002万人が貧困者と呼ばれないようにしたければ、かれらに一日2米ドルを与えればよいのである。
貧困者人口がたったの3,002万人ならば、政府は年間に194.5兆ルピアを用意すればよいだけだ。それを節約したければ、一日2米ドルは一家族単位にすればよい。一家族が平均三人だとすれば、政府は年間に64.8兆ルピアを用意するだけで済む。2012年度改定予算内の石油燃料補助金額はエネルギー補助金総額225.4兆ルピア中の137.4兆なのであり、それよりもっと大きい数字なのだ。このシンプルな計算に従って、全貧困層家庭への現金支給を政府は行い、その代わりに石油燃料補助金はゼロにしてしまうのだ。その負担は64.8兆ルピアでしかなく、そうしたところでまだ72.6兆ルピアの余剰金が残るのだから。
それはもちろん、政府が中央統計庁の計算データが正確であると確信している場合のことだ。もし政府自らでさえその貧困者人口データの正確性に半信半疑でいるのなら、政府は補助金予算総額がたとえ137.4兆ルピアを超えたとしても、それをゼロにする勇気は持てないだろう。
証明は眼前に示されており、石油燃料補助金は依然として存在している。それはつまり中央統計庁の言う数値の正確性を政府自らが信用していないことを意味している。国民暫定直接援助(BLSM)支給を受ける権利を有するのはだれなのかという議論もまったく不明瞭だ。政府の方針の中に求められているのは、何らかのアイデアを実現させようとする場合に特定集団を抑圧するやり方が採られてはならないということである。富裕層・非富裕層・貧困層あるいはどんな区分であるにせよ、国民は共通の権利を持っている。政策は広く一般国民に共通して適用されるのだから、政策が何であろうと国民は同じように恩恵を享受する権利を共通して持っているのだ。
<代替案>
補助金付き石油燃料消費ターゲットが的外れであるという疑念は、政府自身がインフラを整えていないことに由来している。いまや混乱のきわみに達している公共輸送を石油燃料補助金の恩恵を受けるターゲットの中心に置きたいというのなら、ターミナルの中にガソリンスタンドを設けよ。金持ちの自動車はそんなエリアに入りたがらない。漁民をターゲットにしようとするなら、同じようなやり方が効果的だ。小規模漁民が集まっている個々の漁港にガソリンスタンドを設けるのだ。そこで石油燃料に横流しなどの水漏れが起こったとしても、まだ妥当な範囲内である。
今は口角泡を飛ばして議論に騒ぐ必要などない。公共輸送従事者が生き返れるよう、ファシリティを改善するのだ。かれらにできるかぎりの補助金を与え、かれらのエリアの中にガソリンスタンドを設けることだ。補助金を減らそうと言うのなら、安全・廉価で秀れた公共輸送を作り上げ、そうすることで今起こっている過度な道路交通渋滞を緩和させるのがよい。
この石油燃料問題において国民が望んでいるのは、値上げに反対されたから現物を市場から減らす、という二律背反などでは決してない。そんなことをされたら、値上げによるものなど比較にならない物価上昇が起こるのは明白だ。それは国内のあちらこちらで既に起こっているのである。これが政府の新手の焦土作戦でないことを祈るばかりだ。
ライター: エルランガ大学経済学博士課程、エフヌ・スピヤント
ソース: 2012年4月20日付けコンパス紙 "Menghakimi Si Kaya"


「ジャムソステックをごまかす不正事業者」(2012年5月4日)
中部ジャワ州とジョクジャ特別州を管轄しているPTジャムソステック第5地方事務所の報告によれば、ジャムソステック加入事業所23,321のうちの30%は不良加入者であるとのこと。2011年の第5地方事務所の業績は次のようになっている。
加入総数  23,321事業所 加入勤労者2,219,097人
2011年の新規加入  2,256事業所 勤労者263,769人
加入義務を負っているが未加入  1,091事業所 勤労者1万人
地方事務所副所長の談によれば、不良加入者は事業所負担掛け金を小さくしようとして従業員全員を加入させず、あるいは実際の賃金給与より低く申告して加入勤労者の権利を損なっている。そのような不良加入者は繊維・履物・皮革など労働集約型産業に多い。
第5地方事務所はそのような不正行為を正すための対応を執りたい考えだが、疑わしい事業所に対してオーディットを実施する権限が与えられていないために白黒をはっきりさせることができず、フレンドリーなアプローチでの警告しか行えないでいる。
ジャムソステック加入義務の対象になっているのは、雇用者が10人を超えているか、あるいは従業員ひとりあたり月額100万ルピアを超える賃金・給与を与えている事業所となっている。


「やはり差別的政策はお流れ」(2012年5月8〜12日)
政府が補助金付きプレミウムガソリンの消費を抑えるために、赤色ナンバープレート四輪車はすべて、そして自家用四輪自動車でエンジン排気量1千5百cc以上のものにプレミウムガソリン購入を禁止するという方針は2012年5月1日から開始された。7日の猶予期間を置いてから官庁・国有事業体の公用車への適用が始まり、自家用車に対しては90日後からジャボデベッ地区で開始され、120日後にジャワ・バリ全域へと拡大するというスケジュールに従って、プルタミナはガソリンスタンドへの対応を指導し、プルタマックス用ポンプを増やし、補助金なしガソリン利用車種はこちらへ、といったボードを設置したり、とその準備におおわらわだったが、5月3日になって政府は突然、自家用車への購入禁止方針を取りやめると発表した。理由は、実施現場でその方針遂行に多くの困難が出現するから、というもの。
結局政府は国民への強制を諦め、政府機関と一部産業セクターを巻き込んでの石油燃料補助金抑制を行う腹を決めたようだ。国民にプレミウムガソリン消費抑制を強制してもうまくいかない、と最初から懐疑的だったジェロ・ワチッ鉱エネ相は5月3日の記者会見で、政府の方針はこう変わった、と5つの最終案を発表した。
鉱エネ相が発表した5つの最終案とは、
1)首都圏を含むジャワ・バリ地域のすべての官公庁(中央と地方自治体)および国有事業体・地方事業体の公用車は補助金付き燃料購入禁止。
2)鉱業セクターと農園セクターの事業に従事する車両は補助金付き燃料購入禁止。
3)ジャワ島内で石油燃料からガス燃料への転換を促進する。
4)国有電力会社PLNは石油燃料を使う発電所の新規設立を行わないこと。また既存の発電所も、水力・ソーラー・地熱・石炭への転換を促進すること。
5)官公庁建物の節電プログラムを実施する。
上の1)に関しては、官公庁の車両であるのに黒色ナンバープレートのものがあるため、そのような車両にはステッカーを貼って補助金付き燃料の購入禁止車両であることを表示させる意向だが、ナンバープレートが赤であろうとステッカー付き黒であろうと、かえって公務員や国有会社社員の小遣い稼ぎの穴を増やすことになる懸念がある。現在この案は四輪車だけになっているが、どうせなら二輪車にも適用してはどうかとの意見も出されている。しかし閣僚会議での統一意見にはまだなっておらず、賛成派と反対派の綱引き段階というところだろう。二輪車に適用すれば小遣い稼ぎを増やすだけだと反対派が思っているのかどうかはまだわからないのだが。
2)については、会社が自家消費のために貯油タンクを用意し、プルタミナがそこへ直接給油するようになりそうだ。ただしこの方針遂行を監督するのは地方自治体であり、両セクター民間会社と監督官の癒着が懸念されるところでもある。
3)のプログラムは、政府が1万4千個のコンバーターを輸入して公共運送機関に設置させる計画が先行する。自家用車も希望に応じてということになるが、国産コンバーターが市場に出回るようになれば、政府がその転換促進を行うだろう。どのようなインセンティブがつけられるのかは今のところ不明だ。
ところで、1千5百cc以上の自家用車に対する規制を政府が取りやめたからと言って、自家用車族はこれまでのようにプレミウムを湯水のごとく消費できる状態が続くと思ったら間違いだ。政府はもっとソフトな形で国民のプレミウムガソリン消費量を減らすスタイルを取ろうとしている。
つまり、プレミウムガソリンの給油ポンプを市場から減らせば、供給量はおのずと減ることになる。プレミウムからプルタマックスへのポンプ転換はもうずっと以前から進められており、それにあわせてプルタマックスの輸入量も増やしたから、今年インドネシアの石油輸入量は大幅増になりそうだと懸念する声も上がっている。金持ち層が住んでいるエリート住宅地に近いガソリンスタンドはプレミウムの給油ポンプをミニマイズさせ、可能なかぎりゼロにするという方向性も打ち出されている。あるいはジャボデタベッ地区で一週間に一度、補助金付き石油燃料の販売を止める日を設けるという案も出されている。政府はそれらの案の実施要領をまとめた上で、2012年5月末にその内容を公表する意向。
ところでこの石油燃料補助金抑制のための方策が朝令暮改の様相を呈し、政策決定すら覚束ないふがいない政府という印象を国民が批判しているが、これは閣僚間で起こっている綱引きのせいであるにちがいない。
2012年1〜4月にプルタミナは補助金付き石油燃料を1,410万キロリッター市場に供給した。プレミウムガソリン890万kl、ソラル軽油490万kl、灯油41万klという内訳だ。その供給量は政府予算で計画されている1,320万klの7.4%増になっている。
計画出荷量を超えたので、プルタミナは出荷を遅らせようとし、いくつかの地方で品薄状態が起こった。ランプン州もそのひとつだ。ガソリンスタンドでプレミウムガソリンは売り切れのボードが立てられた。すると付近の道端にガソリン売りが現われる。値段を尋ねると、リッターあたり6千5百ルピアだと言う。何のことはない。国民と国会が猛反対したプレミウムガソリン値上げがそこで実質的に行われているわけだ。
そこで売られているガソリンが3月末以前に隠匿されたものなのか、それとも品薄になったために石油缶を持ってスタンドにやってくる人間が増えたのか、それはわからない。隠匿・買占め・売惜しみで出荷量が増え、プルタミナが出荷を抑制し、市場で品薄になると闇に隠したガソリンを高値で市場に出す。このような物資の市場操作は石油燃料に限ったものではなく、コメ・砂糖・肥料など数多くの商品で昔から行われており歴代政府はそれを統御する力を持っていない。そしてマスコミはそのような商人たちをマフィアと呼ぶのだが、石油燃料だけはまだマフィアという声がかからないようだ。
補助金付きガソリンや軽油が今のようなメカニズムで販売される限り、為政者が意図している貧困層への援助という意味合いは小さい。中産階層が大部分を占めている国では、国民生活の安定という名目で済むのだろうが、インドネシアのように極端な金持ちから極端な貧困層まで幅広く広がっている国では、やはり対象となる社会階層を限定しなければ国民が納得しないにちがいない。社会経済オブザーバーのアリフ・ブディスシロ氏は、いったい誰が補助金付きガソリンと軽油を大量消費しているのかという問題を喝破した。それはコングロマリットたちだ、とかれは言う。コングロマリットの中にマスメディアを持っている者がいる。その代表はテレビ局だ。ハリー・タヌスディビヨ、ハイルル・タンジュン、アブリザル・バクリ、フォフォ・サリアッマジャ、スリヤ・パロ・・・。かれらの持つテレビ局の業務用車両は、全部で数百台いや一千台を超えるかもしれない。それが毎日ジャワ島内を走り回ってプレミウムやソラルを消費している、とかれは指摘する。そしてかれの指摘にうなずく知識人も数多い。そもそも的外れな石油燃料補助金制度は、コンセプトを変えるか、あるいはメカニズムを抜本的に改善しなければ、生半可な対策で解決する問題ではないにちがいない。


「ハイコスト体質のインドネシア産業」(2012年5月21〜24日)
インドネシアは労賃が廉く原材料も廉いから生産コストは低いだろうと考えるのは間違いのもとであり、実はインドネシアはハイコスト経済の国だったのである、という認識は現地の裏表を体験したひとびとの熟知しているところだ。製造産業の発展が遅々としてはかどらず、いつまでたっても未加工一次産品の輸出に終始し、すこしでも加工して付加価値をつけたものを輸出するよう政府が入れ替わり立ち代り政策規則を定めるものの、産業界の動きは緩慢だ。それは関係者たちの理解や意欲をさておき、「政府の言うとおりに行動したら本当にビジネス繁栄がもたらされるのか?」という不信感に裏打ちされたものであり、産業遂行現場における行政の搾取という実態を踏まえたものであるためだ。
行政が企業の発展を支援して国家経済の基盤を固めていこうとせず、国民の支配者として企業の利益の上前をはねることを行っているかぎり、国家経済の基盤が強固なものになることはない。企業の行う事業・納税・さらに外国人が雇用されていれば外国人管理など、さまざまな面から行政は企業にからんでくる。そして役人が企業から取り立てる不法徴収金は、製造会社にとって不測の追加コストになる。合法的な徴収金はその他のすべてのコストと一緒に製造活動開始前に既に計算されているのであり、悪徳役人の振り回す公権力で奪い去られる不当な金に予算を立てられるはずがない。
いやそればかりか、許認可を申請しても処理がなされないため承認を早く得ようとして贈賄せざるを得なかったり、こじつけたような理由で事業活動を規制しようとするため役人に金を渡して障害を取り除こうとするのは枚挙にいとまがなく、あるいは原材料輸入に際して港で貨物の移動のたびに公定料金以上の金が支払われ、いざ港から工場や倉庫に運搬すると路上で不法徴収金の餌食となる。もっと拡大すれば、補助金政策の混乱から政府は産業界に補助金なしの石油燃料を国際相場で買うよう命じ、道路補修やインフラ工事がおざなりであるために貨物運搬車両の寿命が短く、また車両の修理コストも想定外に費用を食っている。
インドネシアでは、その不測コストが全製造コストの20〜30%を占めている、と全国商工会議所所属の女性経済専門家が指摘した。その事態は業界の収入と利益を減らし、同時に生産品の競争力を弱めている、とかの女は言う。「不測コストが巨額になっている原因は、行政腐敗・非能率なビューロクラシー・劣悪なインフラの三つだ。上流から下流まで全製造プロセスの総合的な見直しを行って本当に製造のために必要な裸のコストがいくらなのかを見極めなければならない。」
やはり全国商工会議所所属の別の経済専門家は、インドネシアの取引コストが生産性を阻害し、製品価格を高いものにしていると言う。中央統計庁2009年データによれば、加工産業セクターの取引コストは年間70.6兆ルピアにのぼり、生産コストの6%を占めている。普通、企業の取引コストは接待費・管理費・出張経費・調査費・環境汚染防止費などの科目に分類されている。総生産コスト中の取引コスト総額6%という比率は労賃の6.7%と大差なく、燃料費の3.2%を大幅に凌駕している。ある企業は、自社の取引コストが会社設立公式費用の1.5倍になったと報告している。そんな状況の裏側にあるのは、会社設立に当たって手続き内容と所要日数および公式費用などの情報が明確なものになっていないために起こっていることだ、とその専門家は分析している。「その面での改善がなされないなら、行政による不法徴収金は止むことがなく、さらに行政手続きの便宜を提供しようとアプローチしてくる第三者への需要も消滅しないだろう。」
しかし中央統計庁がそろえたデータの中に企業内で贈賄や使途不明の形にされている出費が計上されることはないため、現場で実際に発生している支出は6%よりもっと巨額なはずだ。
インドネシアでの加工製造事業活動にからんでいるインドネシア特有の問題とは、行政機構・ビューロクラシー・政府行政・政治活動の四つのファクターであり、行政改革が行われないかぎりそれらは永遠の課題であり続ける、と経済専門家ディディッ・ラフビニは語る。「もしそれらのくびきを断ち切ることができれば、国家経済はもう1.5〜2%アップするだろう。」
生活苦の海の中に沈んでいる勤労者たちで構成されているインドネシアの労働市場で勤労者福祉が向上せず、また新規雇用もあまり伸びないのは、企業経営がそのような取引コストに締め付けられているためだ。企業の成長が低いために新規雇用がなかなか起こらず、また勤労者に配分されるべき利益も横取りされる形になっている。不測コストに出費した費用の調整を事業経営者はもっともやりやすい労賃に反映させるのが普通であり、勤労者はそんな流れの中で一番の疎外を味わっている、と経済専門家たちは分析している。


「SNI違反輸入品のほとんどは中国産」(2012年5月22日)
国内市場で販売されているさまざまな製品の中で、SNI(インドネシア製品規格)義務付け対象物品であるにもかかわらず販売商品にSNI表示のない違反品の摘発が商業省の指揮下に各地方自治体担当局によって行われており、2012年1〜4月に市場で発見されたケースは303件にのぼっている。輸入品186件、国産品117件がその内訳で、違反輸入品のほとんどは中国産だ。
最大の商品カテゴリーは家電品・電気部品で68件、そしてスペアパーツ33件、繊維衣料品25件、飲食品18件、建築材料17件といった順。それらの違反行為に対する措置は、送検済み6件、調書取りまとめ段階のもの12件、市場からの回収命令8件、事業者の自主回収1件、警告103件、証拠集め段階174件といった内訳になっている。
SNI違反輸入品問題について副商業大臣は、輸入通関メカニズムがその原因だと評した。「輸入通関でグリーンレーンを与えられた貨物は書類の検査だけが行われ、現物を調べられることがない。レッドレーン通関で現物が調べられたとしても、サンプルを抽出して調べるだけだ。コンテナ内の全品を調べたらたいへんな時間がかかり、貨物輸入プロセスがなかなか終わらなくなる。だから国内市場に違反輸入品が流通するのは当然のことだと言える。」
欧米が経済クライシスでダウンしたにもかかわらず、インドネシア経済は好調だと世界中が思っている。すると欧米で需要が減ったためダブついた商品をインドネシア市場に投入しようとする生産者が増加する。中でもインドネシアの消費者は「安かろう悪かろう」商品への志向が強いと見られているため、低品質で廉価な商品が津波のようにインドネシアに押し寄せてきている。特にそのような商品はインドネシアの一級国際港を通りにくくなっているため、三流四流の小さい港から密輸入されるケースが増加している、と実業界者のひとりは語っている。
そうやって国内市場に流入した品質違反輸入品を、市場を足で回って摘発するのが商業省文民捜査官の役割だが、各地方自治体の物品流通許認可は地方自治体が掌握しているため、地方自治体の担当局が商業省の協力を得て市場での検査を行うべき立場にある。この分野での文民捜査官は全国に770人おり、そのうち27人は商業省に所属しているため、地方自治体にいるのは750人に満たない。商業省は地方自治体の文民捜査官養成を鋭意進めているものの、せっかく養成した捜査官が地方自治体の人材異動で他部門に移されるような例は頻発しており、市場での違反商品摘発がなかなか十分な効果を伴わないことに商業省標準化消費者保護総局長は不満を訴えている。


「マカッサルに刺身工場を」(2012年5月23日)
海産物の豊富な南スラウェシ州が日本政府に、刺身製造工場を設けてはどうか、と投資誘致を行っている。「当方は土地と認可を用意するので、どんな形で応じてもらえるのかは日本側におまかせする。当方は日本との経済協力、特に刺身を生産する工場を稼動させてもらえるよう、期待している。」南スラウェシ州知事は在マカッサル日本領事を前にしてそう語った。
南スラウェシ州は生鮮海産物の豊富なところであり、その材料を活用して日本側が日本食品を製造するという互恵協力を実施したいと日本政府に働きかけてきている。日本領事はその申し出をポジティブに受け止め、早急に日本大使に伝えることを約束したとのこと。


「輸入皮革素材が廃却処分」(2012年5月23日)
農業省スラバヤ検疫総館が塩漬け皮革の違法輸入分34.3トンを廃却処分した。廃却されたのはオーストラリア・ドイツ・イタリー・ポーランド・オランダ・フランスから輸入されたもので、工業原料用として輸入されたが実際に国内市場に流された場合、クルプックリッ(krupuk kulit 茹でた牛皮に調味料をつけ、天日干しにしてから油で揚げる食品)の原料にされるものもあり、輸出国で既に薬品処理がなされているため食べると人体に害がある。また工業原料用は輸入時にシート状になっていなければならないが、コンテナ内に必ず頭皮をはじめ諸部位の皮でシート状になっていないものが混じっており、輸入許可を得るために農業省畜産総局から交付されたリコメンデーションの条件に違反している。
それらの理由でスラバヤ港検疫総館が輸入検査時に差し押さえたものが2012年1月から3月までの間に34.3トンという量になった。東ジャワ州は輸入塩漬け皮革を加工する工場がたくさん集まっており、2011年全国輸入総量7千万シートのうち3千4百万シートはスラバヤ港で輸入通関されている。
衣料品素材に加工するためドイツから塩漬け皮革をコンテナ8ボックス輸入した業者の輸出入責任者は、毎回コンテナの中に5%ほど輸入条件を満たさないものが混じっており、輸入者が損させられている、と不満を述べている。


「うなぎの生魚は輸出禁止」(2012年5月25日)
2009年海洋漁業大臣決定書第18号で、うなぎの生魚輸出が禁止された。国内漁業資源の多様化と国内需要を満たすことがその目的とされている。
ところが現実にその規制は少しも守られていない、と海洋漁業ソサエティフォーラムが指摘した。毎月うなぎの稚魚が3百トンもスラバヤのジュアンダ空港から韓国・日本・タイ・台湾向けに輸出されていると言うのである。その違法行為を取締るべき漁業検疫事務所はまったく機能を発揮しておらず、観賞魚と表示された貨物をどんどん通しているありさまだ、とフォーラム議長は批判している。


「地名入り商標11件が承認される」(2012年5月26日)
法務人権省知的財産権総局が次のような地名入り商標11件を承認した。
Kopi Arabika Kintamani Bali (バリ)
Mebel Ukir Jepara (ジュパラ)
Lada Putih Munthok (バンカブリトン)
Kopi Arabika Gayo (アチェ)
Tembakau Hitam Sumedang (スムダン)
Tembakau Mole Sumedang (スムダン)
Susu Kuda Sumbawa (スンバワ)
Kangkung Lombok (ロンボッ)
Madu Sumbawa (スンバワ)
Beras Adan Krayan (東カリマンタン)
Kopi Arabika Flores Bajawa (フローレス)
総局長は、それらの商標はある特定地域でのみ作られているという特徴があるためだと説明した。
地名入り商標の申請が始まったのは2007年9月で、最初に出されたものはキンタマニコーヒーだった。このような地名入り商標が表示された商品は、原産地がその地名の場所でなければならず、その意味で消費者保護も同時になされることになる。
地方自治体からの地名入り商標取得希望は強く、たとえばジャンビ州にはikan soma やkopi kayu aro などその地特有の産品があるため、知的財産権総局は現地に赴いて可能性のある地名入り商標のリストアップを行うことにしている。


「バタムで労使紛争リスクが増大」(2012年5月28・29日)
最近バタムでますます増加している労使紛争はせっかくフリートレードゾーンに指定された地の利を外国企業誘致に活かすことを阻む障害要因になりかねない、とバタム市工業団地会会長が表明した。
バタム島内では最近、企業と労働者の間での紛争が増加しており、デモやストが頻繁に発生している。工業団地運営会社は外国系入居企業から労使問題に関する問い合わせや苦情に追われる毎日に変わってきている、と会長は言う。中でも多いのは他社で起こっているストやデモの元になっている労使紛争の内容に関する問い合わせで、多くの入居企業がそれらの実例を踏まえて自社で取るべき対策の指針にしようとしているのは明白だ。
多くの工業団地運営会社が似たような立場に追い込まれており、団地会にそういった苦情の声が届いていることも会長は明らかにしている。
2011年からバタムで操業している外国系企業で労使紛争を経験したのは、Unisem, Epson, Toyocom, Panasonic, Shikoku, Nutuneなどで、今はPT Varta Microbattery Indonesia が紛争の舞台になっている。それら外国系企業の中には、マレーシアやベトナムに工場移転を検討しているところもあるとのことだ。それとは別に、造船業界でも下請会社で散発的なストやデモが継続している。
「不安を抱きながら操業せざるを得ないような立場にかれらはいない。バタムはリスクが高いと思えば、かれらは容易に工場を別の国に移すだろう。しかしそんなことが起これば、バタムは大量の失業者を抱えてたいへんなことになるのが目に見えている。最近バタムでの新規工場設立は影をひそめ、労働者の大量雇用も起こらなくなっている。バタムがこういう状況になって得をするのは近隣諸国だ。危険なバタムから逃避した工場が移転してくれば、かれらは大いに実質的な利が得られる。労働者福祉の向上は必ずしもデモやストでしか勝ち取れないものではない。関連諸方面は今起こっている状況をもう一度見直していただきたい。現状は既に警戒するべき状況になっており、こんな状況が継続すれば外国系企業が続々とバタムを去って行くのは想像に余りある。せっかくのフリートレードゾーンが活かされず、外国企業が利用しようともしないのでは、国辱に近い。諸方面は労使紛争が起こった場合にもっと賢明な態度で対応するよう、妥当な配慮を加えてほしい。」強い危機感に襲われているバタム市工業団地会会長はそのように関連諸方面に対して呼びかけている。


「再び、大統領選挙予想」(2012年6月15〜20日)
2014年大統領選挙の下馬評トップはプラボウォ・スビヤントで25.8%の支持を得、二位はメガワティ・スカルノプトリ、三位ユスフ・カラ、四位アブリザル・バクリといった順位になっている。。
これはスゲン・サルヤディ・シンジケートが2012年5月14〜24日に全国33州で2,192人の回答者から集めたサーベイ結果で、ちなみにこれまでに発表された次期大統領を占うサーベイ結果を通して見ると、次のような姿が見えてくる。
*2011年8月9〜20日インドパロメテル、回答者1千2百人
1)メガワティ 21.8%
2)プラボウォ 15.5%
3)ウィラント  8.7%
4)アブリザル・バクリ 5.6%
5)ムハイミン・イスカンダル 3.5%
6)アニー・ユドヨノ3.4%
*2011年10月10〜15日ジャリガンサーベイインドネシア、回答者1千2百人
1)メガワティ 19.6%
2)プラボウォ 10.8%
3)アブリザル・バクリ 8.9%
4)ウィラント 7.3%
5)スルタン・ハムンクブウォノ10世 6.5%
6)ヒダヤッ・ヌルワヒッ 3.8%
*2012年2月1〜12日ルンバガサーベイインドネシア、回答者2,050人
1)メガワティ 15.2%
2)プラボウォ 10.6%
3)ユスフ・カラ 7.0%
4)アブリザル・バクリ 5.6%
5)スルタン・ハムンクブウォノ10世 4.9%
6)ウィラント 3.9%
*2012年5月14〜24日スゲンサルヤディシンジケート、回答者2,192人
1)プラボウォ 25.8%
2)メガワティ 22.4%
3)ユスフ・カラ 14.9%
4)アブリザル・バクリ 10.6%
5)スルヤ・パロ 5.2%
6)ウィラント 4.5%
パネリストとして出席したアブドゥラフマン・ワヒッ元大統領の息女であるイェ二ー・ワヒッはそのサーベイ結果について、大統領の交代のたびにそれまでの大統領のアンチテーゼが毎回出現するとコメントする。「2014年の大統領選挙で国民はそれまでの柔弱な大統領とは反対の、断固たる人物を国家最高指導者に選ぶでしょう。スカルノは革命的でカリスマ的と見られ、かれの政府は政治的な激動に満ちていたので、落ち着いていると見られたスハルトを国民は支持しましたが、結局は専制的だったのです。
それを後継したアブドゥラフマン・ワヒッはきわめて民主的でした。ところがかれは口数が多かったので、国民はその後継者に寡黙なメガワティ・スカルノプトリを選びました。その後には聡明なユドヨノが選ばれたのですが、かれは決断を下すことに難点があったのです。国家指導者の出現にメディアは重大な働きをします。マッフッMDやダフラン・イスカンはメディアに親しくまたオープンなので、国政の舞台で顕著な存在になっています。そしてかれらも流れに流されないで行動を起こす勇気を持っています。」
今回のスゲン・サルヤディ・シンジケートのサーベイでは、三つの有力正副大統領候補の組み合わせが僅差で国民の支持を得ていることも報告された。プラボウォ・スビヤント+ユスフ・カラ14.6%、メガワティ・スカルノプトリ+ユスフ・カラ13.4%、プラボウォ・スビヤント+マッフッMD12.4%というのがそれだ。更に支持政党を見ると、デモクラッ党、ゴルカル党、PDI−P党に加えて新進のナスデム党に対する国民の期待も感じられる。政治評論家Jクリスティアディは、2014年総選挙でのダークホースはナスデム党だと言い切っている。
ナスデム党は次の大統領選挙候補者としてユスフ・カラを担ぐ意向を表明しており、十分に強力な政治パワーを持つゴルカル党が党内分派行動でその力を殺がれ国政の鍵を握る立場に立てない昨今の党内事情を象徴する出来事だ、とインドネシア研究院の調査員はコメントしている。ただし今回のサーベイでは、回答者の支持政党と支持大統領候補者の政治基盤の間の不一致が目立っている。


「空港で貨物の盗難?」(2012年6月26日)
2012年4月14日付けコンパス紙への投書"Barang Lewat Kargo AirAsia Raib"から
拝啓、編集部殿。2011年10月14日、わたしはバンドンからデンパサルに衣料品1梱包の貨物をエアエイシアで送りました。午前7時半バンドン発のフライトで、エアウエイビル番号は97502322795、名宛人はヘルマン氏です。
ところがグラライ空港エアエイシア航空貨物部門にその貨物が届きませんでした。わたしはその日のうちにバンドンのエアエイシア事務所にこの問題を届け出ました。エアエイシア側はその貨物をトレースすると約束しました。ところがその次の日も、次の日も、わたしは毎日エアエイシアに問い合わせているというのに、エアエイシア側はいつもトレース中だという返事ばかりです。今日に至るまで、バンドンエアエイシアカーゴ部門は誠意を示さず、わたしの貨物がどこにあるのかについて何の情報もくれません。わたしが得た情報では、わたしの貨物はカーゴマニフェストに書かれているものの、ローディングチェックリストには見当たらないということでした。わたしは犯罪行為の被害者になったという結論を抱いています。[ バンドン在住、カサミリウス・ワロン ]


「輸出される国産ドラムバンド製品」(2012年6月27日)
インドネシアの学校では、課外活動としてドラムバンドが盛んに行われている。小学校では鍵盤ハモニカ鼓隊が普通だが、中学校から高校と上がっていくとドラムコーやブラスバンドへと発展し、ドラムメジャーやバトンが加わってショー的要素を高めた見て楽しいバンド活動に上昇していく。全国的に有数の、この世界における有力校は、アメリカからインストラクターを招聘して実力を高めることまで行っており、その熱の入れ方は驚嘆するほどだ。
そこまで行けば楽器は世界的に定評のあるブランド品が購入されるわけだが、地方部のフツーの小中学校では高価な輸入ブランド品を持つのは経済的に無理がある。それでも田舎の学校では放課後にドラムバンドの練習音が聞こえてくるから、廉価なドラムが売られているのは間違いない。
バスドラム一個が輸入品だと850万ルピアもするというのに、指揮杖・シンバル・小太鼓や大太鼓などおよそ50点をそろえて800万から1,100万ルピアで国産品のセットが購入できる。いったい国内のどこにそんなドラム製造工場があるのか、と不審を抱くのもごもっとも。じっさい、大工場も町工場もありはしない。それらを作っているのは家内工業なのである。東ジャワ州パスルアン県レジョソ郡で家内工業的に作られているものがそれだ。
ドラムは木製の胴と金具で構成されているが、インドネシア人にとって木材加工はお手の物。金具も廉価な故鉄を鋳直して、地元で作っているから、コストは廉い。それが輸入品との価格差を10対1という大きなものにしている。
レジョソ郡産のドラムバンド製品はジョクジャから中部ジャワそして東ジャワの東端まで販売されており、おまけにマレーシアへの輸出も始まった。輸出はジョクジャの輸出商が行っており、自分で販路を持たないレジョソ郡は今のところジョクジャを頼っているわけだが、そのうちにチャンスをつかんで直接輸出をはじめたい、と生産者は意欲を燃やしている。


「インドネシアのデモクラシー」(2012年6月28日)
デモクラシーを唱えたら、いきなり全国民階層、中でも中下流層に社会正義が実現するというようなものでは決してない。デモクラシーは闘い取らなければならないものだ。ところが過激派やコングロマリットが国政を牛耳ろうとしてデモクラシーを乗っ取ることが起こりうる。オーストラリアのパースにあるマードック大学のリチャード・ロビソン政治学教授が、ジャカルタ訪問中にインドネシアの政治情勢についてそうコメントした。
「インドネシアの国政はいまだに寡占グループに握られている。民主化移行プロセスの中では、超リッチエリート層と過激イデオロギー集団もその闘争に参加している。だから理想的なデモクラシーを実現させる鍵は、市民グループが主導権を握れるかどうかにかかっている。アメリカでは富裕層がデモクラシーを通して国を支配しようとしている。インドネシアではデモクラシーと行政改革がたくさんの問題に解決を与えるだろう。しかしインドネシアはエジプト・リビヤ・チュニジアなどと同様、旧勢力がデモクラシーの中に根をおろしている。大勢の財界人が政治の世界に関わっている状況は警戒しなければならないことのひとつだ。
一方、西欧や工業国でも政治経済クライシスが起こっているが、それはポスト工業化時代から金融資本時代への移行が起こっているからだ。デモクラシーは闘い取られなければならず、デモクラシーを信奉する市民集団が自己を政治勢力に作り上げて行かなければならない。」
同教授はそのように、建国以来国政を牛耳っている政治エリートと国政を自己利益のために専断するエリートに従順に導かれている国民の間のギャップを指摘した。


「イスラム政党への支持が激減」(2012年7月5・6日)
次期2014年総選挙の予想に国民の関心が盛り上がっている今日このごろ、そんな情勢を背景にして独立NPOの国民サーベイ院が政党への支持状況のサーベイを行った。このサーベイは2012年6月10日から20日までマルチステージランダムサンプリング方式で全国33州から住民1,230人を抽出して回答を集めたもの。
今回のサーベイによれば、イスラム政党への支持を表明した回答者はわずか15.7%で、内訳はPKS5.1%、PAN3.8%、PPP3.5%、PKB3.3%。過去の総選挙におけるイスラム政党の得票状況を見てみると、2009年29.1%、2004年38.3%、1999年36.5%で、逓減傾向が基調であることに間違いはない。
政党ばかりか、イスラム基盤の政治家も支持離れが起こっているようだ。大統領候補にだれを推すかという問いに対しては、ヒダヤッ・ヌル・ワヒッ4.6%、ハッタ・ラジャサ3.9%、ユスリル・イーザ・マヘンドラ3.2%、ムハイミン・イスカンダル2%、スルヤダルマ・アリ0.9%というのがイスラム基盤の政治家であり、メガワティ・スカルノプトリ18%、プラボウォ・スビヤント17.4%、アブリザル・バクリ17.1%、ウィラント10.2%というようにナショナリストへの支持とは雲泥の開きがある。
そのサーベイ結果について、イスラム政党の一番老舗であるPPPのムハンマッ・ロマウルムジ事務局長は、その現象をイスラム政党の問題と表現するのはひとを惑わすものだ、と批判した。
PPP事務局長は言う。「それはイスラム政党でなく中流政党の問題なのだ。その問題が起こる要因は四つある。まず中流政党は強烈な人格を持つ国家リーダーを生み出す能力が弱いことがあげられる。中流政党はトップクラス政党に比べて妥当な政治履歴を持つ人物を世に送り出す能力が乏しい。トップクラス政党のリーダーはたいてい3回の総選挙を体験しており、政治履歴は永い。そして選挙民のほとんどは政党を党首で選ぶ傾向が高い。中卒学歴選挙民の59%はそのタイプだ。だからトップクラス政党で党首の世代交代が遅れがちであることは、問題よりもむしろ選挙で有利に作用するメリットを持っている。
二つ目は、議会で少数派であり、しかも連合しようとしないから、中流政党は政治の駆動力を持てない。三つ目、デモクラシーの本質がハイコストをかけるイメージ的粉飾に満ちた形式デモクラシーに乗っ取られており、資金力に劣る中流政党はその面でも対抗する力がない。第四の要因として、世俗的政治へのオリエンテーションが強い評論家・オブザーバー・学術層をマスメディアが大きく取り上げている。そこでの意見がパブリックオピニオンに特定の色づけを与えることは避けられない。」
イスラム系を標榜する最大政党PPPの事務局長はそうコメントしているが、では中流政党の支持が衰えているのかというと、そういうことでもない。ハヌラ党は3.2%、グリンドラ党は4.5%で支持率は維持されており、新たに出現したナスデム党は4.8%という目を見張る支持率を獲得した。国民サーベイ院理事はそのサーベイ結果について、「さまざまな要因がからんでいることに疑いはないが、総体的に見てイスラム政党は選挙民の変化を掌握しきれておらず、一方で選挙民は政治の分野において宗教イデオロギーの影響から脱け出しはじめている。選挙民が手がかりにしているのは、候補者像・方針や理念の広報・政党の業績といった要素だ」とその分析を開陳している。


「失敗国家は目と鼻の先」(2012年7月9〜11日)
失敗国家2012世界ランキングでインドネシアは178ヶ国中63位に置かれ、昨年の177ヶ国中64位からさらに一歩転落して失敗国家の群れ目がけて歩みを進めている。失敗国家指標というのは、米国在NPOのザファンドフォーピースと雑誌フォーリンポリシーが共同で評価を行っているもので、過去一年間のインドネシアの評価については12の評価分野の中の3分野の悪化が影響を与えていることがコメントされている。その三つとは、デモグラフィプレッシャー・マイノリティ社会集団への抑圧・基本的人権擁護。その三分野は過去5年間で悪化傾向が強まっているとのこと。
2012年失敗国家ナンバーワンの評価を得たのはソマリアで、反対に逆失敗国家として178位の座に着いたのはフィンランド。東南アジアを見ると、失敗国家群の上位にいるのはミャンマーの21位、ティモールレステ28位、カンボジア37位、ラオス48位、フィリピン56位。他のアセアン諸国はタイ84位、ベトナム96位、マレーシア110位、ブルネイ123位、シンガポール157位といったポジション。
インドネシアはここ数年の経済成長とデモクラシーの成長が評価ポイントを得ているものの、その足を引っ張る悪要因のほうがはるかに多い。インフラ建設・失業・汚職・宗教マイノリティグループに対する暴力・教育・保健・環境保全そして生活用水など低評価ポイントは数多い。
上で指摘されている三つの劣悪評価分野を個別に見てみると、近隣諸国との評点比較は次のようになっている。評価スケールは1から10で、点が高いほど失敗のレベルも高い。
<1.基本的人権と法確立>
タイ 7.2
インドネシア 6.8
マレーシア 6.3
インド 5.8
シンガポール 5.0
<2.デモグラフィプレッシャー>
タイ 8.2
インドネシア 7.4
インド 7.3
マレーシア 5.7
シンガポール 2.6
<3.マイノリティ社会集団への対応>
インド 7.9
タイ 7.8
インドネシア 7.1
マレーシア 6.4
シンガポール 3.0
この評価について、国民有識者の多くは当たっている評価だとして首をたてにふる。政治オブザーバーのユディ・ラティフ氏は、失敗国家の特徴は劣悪な公共サービス・政治腐敗・社会サービスの失敗といったものであり、それらすべてはインドネシアにぴったり当てはまっていると言う。「政府は政策の成功をG−20の成功スタンダードに沿って評価する一方、失敗の評価にはアフリカサブサハラ諸国のスタンダードを用いている。トップレベルの失敗国家と比較して、インドネシアの失敗はまだマシだと言う姿勢はまったく的外れなものだ。」
インフラについても、道路や港湾のインフラがいまだにお粗末なものでしかないことを、各界オブザーバーが発言しているし、生活環境省は河川の水質が劣化の一途をたどっていることを指摘し、生活排水が結局は住宅地の側溝を通って河川に垂れ流しされている事実をインフラ建設に結び付けて批判している。
保健省は国民生活が非伝染性疾病に急速に冒されていることを指摘した。非伝染性疾病による死亡は1995年の41.7%から2001年には49.9%に達して伝染病と拮抗し、2007年には59.5%まで上昇している。


「工業団地に黄金時代、その1」(2012年7月16日)
2012年の工業団地内工場用地需要は昨年から2割増しになりそうだと工業団地会会長が発言した。工業団地会のデータによれば、会員工業団地は2011年10月時点で全国に60ヶ所あり、総面積は27,576.86Haとなっている。そして総面積のうちの11,087.24Haが稼動しており、テナント7,354社が利用している。しかし全国の工業団地は232ヶ所あり、総面積は78,976Haを占めて東南アジアで最大規模を誇っており、工業化の受け皿として今後さらに拡大していく可能性を秘めている、と会長は語る。
政府が定めた経済基本政策であるMP3EI(経済開発促進拡張マスタープラン)2011−2015とMPA(メトロポリタン優先地区)は更に工業団地の新規設立をうながすものであり、おまけに全国的な分散活動が今後活発になることを予測させている。その動きに呼応するかのように、10以上の地方自治体が工業団地設立を工業団地会に働きかけてきている。
リアウ州タンジュンブトン、西スマトラ州トゥルッブグス、北スマトラ州、バンカブリトゥン州、東カリマンタン州カリアゴ、北スラウェシ州ビトゥン、南スラウェシ州タカラル、そしてジャワ島内でもクンダル・ソロ・ボヨラリあるいは東ジャワの数ヶ所などがそれだと会長は述べている。


「工業団地に黄金時代、その2」(2012年7月17日)
2011年10月から2012年3月までの間にカラワンとブカシの工業団地で起こった工場用地の値上がりはアジア太平洋地域の平均を上回った。労賃が低いこと、そして国内経済成長が輝かしい実績を示していることがインドネシアに工場を設けることの強い誘引として作用しているとコリエールズインターナショナル役員は述べている。その半年間でカラワンでは38.6%、ブカシでは24.9%の値上がりが起こったが、アジア太平洋地域全般について言えば価格維持もしくは下降傾向になっている由。
カッシュマン&ウェイクフィールドインドネシア役員は首都圏の工業団地価格について、2012年第1四半期に対前年比で65.8%の値上がりが起こったと報告している。これは即納可能な用地があまりなく、そこに激しい需要の波が襲い掛かってきたためであるとのこと。そのために2012年の需要は半減して152.5Haどまりだろうと同役員は予測している。


「工業団地に黄金時代、その3」(2012年7月18日)
ジャバベカ工業団地のテナント増は6割が国内工場の移転によるものだとジャバベカ株式会社取締役は語る。スンテルやプロガドンにあった工場がジャバベカに移っている由。もちろん外国からの移転もある。天災に見舞われた日本、許認可と課金に関する政策が嫌われたベトナム、経済成長著しい中国などからもジャバベカに移ってきた工場がある。まったくの新規設立は2〜3割であるとのこと。
中央政府は新規設立工場に対して必ず工業団地内に所在することを2009年に義務付けたが、地方自治体の中にはその方針にそぐわない対応をしているところも散見され、工業団地でない場所での工場建設に許可を与えているケースもあるようだ。


「工業団地に黄金時代、その4」(2012年7月19日)
東ジャワ州の工業団地では、2012年1〜5月の間に工場用地価格が30〜50%も上昇した。これはレディストックが限られているところに大きい需要の波が襲ってきたことが原因で、州内のすべての工業団地で値上がりが同じように起こっているとのこと。そのあおりを受けて工業団地運営者はサービスチャージの値上げを計画し、現在平米あたり120から800ルピアという料金を30〜60%アップさせることにしていたが、補助金付き石油燃料と電力基本料金値上げが起こらなかったことから、サービスチャージ値上げも見合わせられた。
ジャワ島にある工業団地は、島西部に110、中部ジャワ州は19、そして東ジャワ州は32あり、東ジャワ州の大手としては次のようなところがある。
スラバヤ Surabaya Industrial Estate Rungkut 832Ha
パスルアン Pasuruan Industrial Estate Rembang 500Ha
グルシッ Maspion Industrial Estate 450Ha
グルシッ Gresik Industrial Estate 135Ha
モジョクルト Ngoro Industrial Estate 400Ha


「工業団地に黄金時代、その5」(2012年7月20日)
ブカシファジャル工業団地は2012年第1四半期の土地販売が30Haにのぼり、前年同期実績の26Haから大幅なアップとなった。しかし売上高は2,560億ルピアで前年同期実績の1,320億ルピアからほとんど倍増になっており、単価の上昇が大きかったことを示している。
同工業団地は昨年80Ha近くを販売したが、今年の販売目標は80Haで、売上高は1.03兆ルピアとのこと。単価は昨今の値上がり状況に沿って昨年の平米あたり80米ドルから今年は130〜140米ドルにアップしている。
今年は200億ルピアの資本支出を行って用地面積を拡大する計画であり、5月までに40億ルピアを支出して土地買収を行った。現在手持ちの用地在庫816Haのうち580Haを整備して販売用在庫にする意向。


「工業団地に黄金時代、その6」(2012年7月21日)
工業団地会副会長によれば、激増している工業団地への工場移転はこの先もまだまだ続きそうである由。100人を超える日本の事業者が工場移転を検討しており、インドネシアへの移転が実現する場合は2013年から2014年にかけてになりそうだ、と表明している。このように工業団地需要が今後も継続しそうな状況に対して、団地運営者はジャパンクラスターやコリアクラスターを用意して誘致を有利に展開させることを考えるべきだ、とかれはアドバイスしている。
ところで、国内諸地方に工業団地設立需要が広がっているいま、パル、バリッパパン、バンカブリトゥン、リアウなど地方部で20人ほどの事業者が工業団地設立の意思表示をしていることを工業団地会会長が明らかにした。
それに加えて大手不動産デベロッパーが相次いで工業団地ビジネスへの参入を表明している。
PT Bumi Serpong Damaiの子会社となっているPT Duta Pertiwi、西カラワン地区に342Haの工業団地用地を持つPT Sumber Air Mas Pratamaを買収したPT Agung Podomoro Land、ジャワ島・東カリマンタン・スマトラ・インドネシア東部地方に工業団地開発を計画して子会社PT Bakrie Eco Investaを設立したPT Bakrieland Developmentなどが、ここにきて工業団地事業に業容を拡大する姿勢を見せている。


「経済活動のもっと奥底を見よ」(2012年7月20日)
2012年5月インドネシアの貿易収支は4.9億ドルの赤字だった。その前月も6.4億ドルの赤字だった。この貿易赤字はいったいいつまで続くのだろうか?
赤字が発生したのは、輸出の業績が悪化したことだけでなく輸入の激増もそれに一役買ったわけで、ボクシングにたとえるなら、インドネシアはふたつの打撃を同時に蒙ったのである。小市民は足をふらつかせていない、などと言えるはずがないのだ。
輸出の悪化に対して商業省は四方針を打ち出した。輸出促進への全力投球・付加価値をつけた輸出アイテムの優先・新市場の開拓・国内市場の強化。しかし、競争相手国も同じことをしていないだろうか?
貿易構成を見ると、輸入増は機器・機械・電気器具に起こっている。国民にとっては不思議でもなんでもない。市場を見てみるがいい。日常家庭用品は全部中国製だ。安全ピン・定規・ねじまわし・ナイフ・Oリング・電球・電線・扇風機・テレビ受像機・携帯電話機・ボタン・靴・鎌・のこぎり・その他何千種もの日常生活用品が中国製なのである。
わが国のトップエンジニアたちはどこへ行ってしまったのだろう?信頼できる経済家たちはどこにいるのか?わが国のマクロ政策はどうなっているのか?バケツ・掃除道具・コップ・皿・そしてほうきに至るまで、われわれに生産する能力が欠如しているのだろうか?原材料は国内にあるではないか。輸入品の洪水が起これば、労働力の雇用は減少して購買力は低下する。国家経済を侵食されて貧困者や失業者が大勢作り出されるのが嫌であるなら、購買力が低下すればするほど、国産品の競争力が強く求められるようになる。
何をどうひっくり返してみようが、今おこなわれているような自由市場システムの中では鍵はひとつしかない。競争力だ。他国の産品に対して競争力が強まれば強まるほど、わが国の経済力は一層コンペティティブになる。人民元のレート引き上げを要求した米国に屈服しなかった中国政府の断固たる姿勢は自国輸出産品の競争力を維持し続ける努力のあらわれである。
競争力を有することによって、インドネシア産品は国際市場で用意に受け入れられるようになる。それどころか、たとえ順番待ち行列に並ぶようになってさえ、諸外国はそれを購入しようとしてやってくるのだ。競争力のパワーがそれなのである。現代風コンテクストの中では、競争力というのは三つの分野に分かれる。品質・価格・納期、いわゆるQCDがそれにあたる。
クオリティについては、その保証はないにしてもわれわれは勝てるだろう。納期についても同様だ。しかしコストはどうだろうか?われわれに競争力はあるのか?この競争力問題に関して、政府機関や行政機構は同じ意識の中にいるだろうか?いや、そもそも事業者はいったいどうしているのか?事業者たちすらレントシーキングを行い、言うまでもなく政治家・官僚・政党、あまつさえモラル指導者であるべき政府機関までもが同じような精神の中にいるのをわれわれはふんだんに目にしている。
かれらはインドネシアの貿易赤字の渦中で、実は甘い汁を享受しているのではあるまいか。そうでないなら、かれらは貿易収支改善にもっと活躍を示していいはずなのに。
ライター: ヘルマス・E・プラボウォ
ソース: 2012年7月5日付けコンパス紙 "Mengabaikan Detail"


「2014年のオフィス探しはシマトゥパン通りで?!」(2012年8月8日)
南ジャカルタ市TBシマトゥパン通り沿いに建設中のオフィスビル9ヶ所が2014年に完成すれば、同地区のオフィススペース供給量は780,358平米に達し、現在の284,948平米から2.7倍の増加になることを、コリエールズインターナショナルインドネシアが報告した。現在この地区の都内総供給量に対するシェアは14%だが、2014年に予定されている都内オフィススペース総供給量に対してだけでも60〜70%を占めており、必然的にシェアも大きく伸びて都内非CBD地区では筆頭の地位を揺るぎないものにするだろうと見られている。
2014年完成予定のオフィスビルは次の通り。
第1四半期
The Manhattan Square 37,699m2 賃貸と売却
Beltway Office Park Tower B 9,600m2 賃貸
Gedung Aneka Tambang Tower 2 16,000m2 賃貸
第2四半期
South Quarter Tower 1 40,778m2 売却
South Quarter Tower 2 40,778m2 賃貸
South Quarter Tower 3 40,778m2 賃貸
Graha Elnusa 2 40,000m2 賃貸
18 Office Park (Cityland Tower) 36,627m2 売却
第4四半期
Plaza Oleos 39,778m2 賃貸と売却
コリエールズによれば、シマトゥパン通り地区の弱点は道路交通渋滞にあり、現在計画されている外環状自動車道W2区間の開通やルバッブルス(Lebak Bulus)〜HI前ロータリー間のMRT開通はシマトゥパン通りの混雑を軽減するものにはならない、との見解を示している。
2008年のグローバルクライシスでデベロッパー界は同地区でのビル建設を見合わせる姿勢を採ったが、現実には需要の低下が起こらなかったことから、多くのデベロッパーは建設を再開した。その押せ押せムードが現在までも続いており、2012年下半期にはビルがふたつ、2013年には4つがオフィススペースのオファーを開始する。もしも供給過剰に陥った場合料金・価格に影響が及ぶことは疑いもなく、2014年になっても現在のレベルが継続し、せいぜい5%程度しかアップしない可能性もある、とコリエールズは分析している。


「またまた、プレミウムガソリンが買えなくなる?」(2012年9月14日)
2012年度改定予算で定められている石油燃料補助金支出の枠が残り少なくなっており、全国各州別の割当量は年度末より早く使い果たされてしまう見込み。その筆頭はジャカルタ首都特別地区で、プレミウムガソリン消費レースの先頭を走っており、9月15日に今年度割当量は使い尽くされるとの読みになっている。
似たような状況はジャカルタを取り巻く首都圏一円やスラバヤを擁する東ジャワ州、そしてバリ州からヌサトゥンガラ州一帯も同様で、今年度割当量の先食い競争でかれらは先頭集団の中にいる。
政府は割当量を増やす方向でこの問題に対応しようとしており、国会の承認を得て今年度予算内の別の準備金を石油燃料補助金に回す考え。一方、石油天然ガス下流事業活動統制庁は予算執行の責任を果たすべく、プレミウムガソリン消費抑制のためにまず自動車専用道内と高級住宅地区のガソリンスタンドでプレミウムを販売しない方針を徹底するようプルタミナに指示した。加えて自家用高級車にプレミウム購入を禁止する規則の準備を進めている。自家用高級車というのはエンジン排気量2千cc超のカムリ・アルファード・BMW・ホンダアコードなどの車種で、2005年以降生産されたものを対象にし、まずジャボデタベッ地区内でこの規則をスタートさせようとの腹積もり。例によってその後はジャワ〜バリに展開させるというのが常套スケジュール。また他の自家用車に対しても首都圏では一日一台当たりプレミウムは10リッターに制限するようにしたいとも述べている。
政府は国民に対し、中流層はプレミウムガソリンを使わないようにせよと要望を出しているものの、プレミウムとプルタマックスの価格差が大きく開いている昨今、高級自家用車さえもがプルタマックスの購入をやめてプレミウムに走っており、いくら心構えを説いても国民の行動には影響が見られない。
そもそも石油燃料消費政策の要をなす鉱エネ大臣が、これまでもいろいろ出されているプレミウム消費抑制方針に半身で構えていることが、この政府方針の大きな特徴をなしていると言えよう。政府は今年中盤から、公用車のプレミウムガソリン購入を禁止し、更にそれを鉱業と農園セクターにも広げたが、大臣はその方針が完璧に成功したとしても補助金削減へのたいした効果は上がらず、ましてや国内のあちこちで失敗している事例が散見されるため、あまり意味を持たない、とコメントしている。そこへきて、石油天然ガス下流事業活動統制庁の首都圏におけるプレミウム消費削減実践の掛け声がかかったのだが、リアリストである大臣は「それらの方針を徹底遂行するためには都内の全ガソリンスタンドに治安要員を配備しなければならず、現実性に欠けている」としてまだ実施スタートの時期ではないと表明した。
政策、というよりも決まりごとに対する国民の不服従はこの民族の性向のひとつであり、自家用高級車オーナーが禁止されたプレミウムガソリンをスタンドの係員と喧嘩してまで車のタンクに入れさせることは火を見るよりも明らかで、警官や治安要員をスタンドに配備してそういう出来事を抑止しなければならないのがインドネシアの大衆政策が持つ弱みであることをリアリストたちはみんな承知している。もうひとつ言えば、隠匿・横流し・密売買から密輸出といったことがプレミウムガソリンや補助金付軽油でいまだに絶え間なく起こっており、国会はプレミウムの割当量追加を承認する前にそのような正規の流通ルートから洩れる水漏れ現象を抑制するよう政府に警告したい考えだが、昔からほとんど実質的に統制の手が届かない領域であるため、国会に叱咤されたとて現行政府がもっとマシなことを行える見込みは薄い。
水漏れ現象は今でも相変わらず起こっており、市中の流通量が減少すれば隠匿されていたものが高値で市場に流れ出す。補助金減らしのためにプレミウムガソリンの供給を減らすのはかれら隠匿者たちにとって思う壺であり、市場はますます歪を強めることになる。これもリアリストたちのだれもが承知していることのひとつだろう。


「都知事選投票は明日」(2012年9月19日)
明日9月20日は都知事選第2ラウンド投票日。首都総選挙コミッションは企業やショッピングセンターあるいは行楽施設などに対し、従業員に投票所へ行く機会を与えるよう要請した。都庁は既に9月20日を休日とすることを決定しているが、営業をその日するしないは事業所が決めることであり、営業する事業所も午前7時から13時までの投票時間に従業員を投票所へ行かせるよう重ねて要望している。
勤労者たちは事業者が午後からの出勤や私用外出に罰則や報酬カットなどの措置を与えるのを怖れて投票所へ行かない傾向があることから、この選挙を成功させるために会社側が従業員を投票所に行かせるような措置を採ってほしいというのがコミッションの要望。
職場と自宅が離れている者は、職場に近い投票所で投票することができるが、事前にA8フォームという投票所変更に関する書類を自宅付近の指定投票所からもらっておかなければならない。


「バブル崩壊がインドネシアを襲う?!」(2012年9月20日)
過熱状態に陥っているというインドネシアの経済リスクについてのレポートを投資機関クレジットスイスが最近公表した。過熱状態どころか、ルピアレートの大暴落に始まって2013年はじめには経済バブルが破裂するだろう、とかれらは確信している。参照されているインジケータの中にはインフレ・賃金・株式や債券などの資産価格・経常収支・流通通貨量や貸付残高の予測がある。クレジットスイスによれば、唯一のプラスインジケータは実質インフレ率だそうだが、それも石油燃料市場価格が値上がりしなければ、という条件が付けられている。
インフレが低いのは補助金負担に支えられているためだ。2012年度改定予算の中で、石油燃料補助金は167兆ルピア、電力補助金は64.9兆ルピアが計上されている。一方エネルギー歳入リスク準備金割当は23兆ルピア、石油燃料値上げ差益は30.6兆ルピアでしかない。もしも補助金を解消して石油燃料価格が暴騰すれば、インフレは言うまでもなく跳ね上がる。歳入負担・インフレ・マクロの安定に関わるリスクのひとつがそれだ。ある意味で、経常収支赤字見込みは真実であるものの、国内や海外の経済オブザーバーが2013年に激動が起こるとの読みを入れているのはオーバーではあるまいか?
別の投資機関、たとえばバークレーはインドネシア経済をオーバーヒートとは見ていない。経常収支の赤字幅が増大しているとはいえ、生産的な投資の上昇によるものと確信されている。総括的には、経済は依然バランスのとれた成長をしていると見られている。
ではあっても、冒頭の論説をインドネシア経済の将来を展望する初期インジケータと見なすのも悪いことではない。経済危機の論説の中で、乱高下と脆弱性という語は区別されている。たとえ不安定なフェーズに入っていなくとも、経済リスクの兆候は始まっているかもしれない。だからこそ、先を読むために警戒を強めることは必要だ。
<ローンの成長>
クレジットスイスが注目していることのひとつに、金融緩和方針の結果、貸付金が増加しているというものがある。コメントは、あまりにも長期にわたりすぎているから緩和過剰だと言うのだ。実際にインドネシア銀行は貸付残高の増加に警戒を強めており、そのクオリティ向上をはかっている。2012年6月までの平均貸付金上昇率は対前年同期比25.9%前後であり、中庸だと言えよう。他の発展途上国と比べると、貸付金の対GDP比は小さい。マレーシア・ベトナム・中国などはだいたい百パーセントを超えている。
とはいえ、問題がないというわけでもない。消費向けローンは貸付残高全体の上昇率を上回る勢いなのだから。消費向けローンは不動産・自動車・クレジットカードの三セクターに集中している。しかし総合的に見るなら、過去一年間の貸付残高上昇は事業資金向けが最大になっている。2011年6月の事業資金向け貸付残高は940兆ルピアだったが、2012年6月は1,200兆ルピアに達した。設備投資向けが400兆ルピアから525兆ルピアにしか増えていないのと比べてみればよい。一方消費向けは同じ期間に600兆から721兆ルピアに増えただけだ。事業資金向けの増加は、国内外からの事業投資の活発化を受けて生産能力が上昇している状況を示すものだ。
経済論説の中で、貸付金の上昇サイクルはクライシスインジケータのひとつとされている。融資現場における問題のひとつは、セクター間で爬行性があることだ。不均衡なクレジットブームは経済激変を煽る。トレーダブル(T)セクターよりもノントレーダブル(N)セクターへの融資が大きくなれば、経済は過熱する。その理由は、Nセクターは雇用能力が小さいため、大きい成長が平均的な所得分配に反映されないためだ。Nセクターの持続レベルはTセクターよりも低いのが普通だ。一方、インフラ・ロジスティックシステム・エネルギー・原材料・行政の援助などの要素を含む競争力の向上に依存するTセクターは、成長がたいへんむつかしい。
2012年第2四半期経済成長率6.4%の中で依然として顕著なのは、商業・ホテルレストラン・運輸通信そして諸サービスや金融などのNセクターである。農業や製造産業など雇用人口の大きいTセクターの成長が停滞していることを考えれば、経済成長のクオリティに問題があると言える。
<経常収支>
年度会計には一切の物品・サービス・資金・贈与の取引が計上される。赤字であるということは、収入よりも支出のほうが大きいために外貨準備高が削り取られていくことを意味している。それが長期にわたって継続した場合、国際収支は恒久的な赤字となり、それは双子の赤字を招来してきわめて危険な状態になる。
われわれにとってまだ安心できることがひとつある。経常収支赤字はポートフォリオ投資や海外直接投資で構成される資本収支のバランスでカバーできるということだ。インドネシアは外国人投資家が短期長期の投資先国として高い優先度を置いている国のひとつなのである。
一方、会計収支赤字はここのところ国際価格が暴落している一次産品に依存しているために輸出売上がダウンしているのが原因だ。一方、投資の急成長によって輸入の急騰が起こっている。外国投資会社のひとつアライアンス・バーンスタインも、インドネシアはまだまだ国際収支クライシスなどと言えない状況だ、と楽観論を表明している。
だといっても、シリアスな問題がないというわけでもない。一次産品輸出への依存と、国内の没工業化への懸念だ。オルバ期以来、わが国経済は強い産業基盤の構築に一度も成功していない。競争力は、インフラ建設・教育レベル・国民保健などの構造的機関的要素の脆弱さによって、継続的に侵蝕されている。
ここ当面、わが国経済は短期的にまだ十分安全だからとはいえ、気を緩めてはいけない。2013年初に起こると言われる大混乱を伴った経済オーバーヒートのおそれは無視してかまわないが、中長期の予測が深刻な不安をもたらしていることも確かなのだ。国内消費の強さを好運とすることはできても、基本的に経済が現在の消費に依存することは決してできず、将来生産されるものを頼りにしなければならないのである。最大の宿題は、国内生産を整備することだ。
ライター: ジャカルタアッマジャヤ大学社会奉仕調査院主事、プラスティヤントコ
ソース: 2012年8月30日付けコンパス紙 "Perekonomian Kelewat Panas?"


「工業団地用地価格がほぼ倍増」(2012年9月20日)
ジャカルタ・ボゴール・ブカシ・カラワン(まとめてジャボベカ地区と呼ぶ)の工業団地内用地販売価格が一年前からほぼ倍増して、平米あたり194万ルピアに達している。この急激な値上がりは、まず土地建物税課税評価額の上昇、さらにメンテナンスフィーのアップ、そして需要の集まるロケーションといった要因がもたらしたものだ、と工業団地会事務局長は述べている。
一方、インドネシア銀行の2012年第2四半期商業プロパティ開発サーベイ報告では、急激な値上がりは需給バランスが大きく傾いているためだと分析されている。第2四半期のジャボベカ地区用地新規供給はゼロ平米であるため供給量6,570Haに変化なく、そのうちの63.4%はブカシ〜チカラン地区に集中している。インドネシア銀行報告によれば、首都近郊地区の工業団地内用地販売価格は次のようになっている。
ブカシ地区: 150.5〜225.8 平均175.1
カラワン地区: 107.5〜150 平均127.5
ボゴール地区: 50〜161.3 平均105.6
セラン地区: 107.5〜107.5 平均107.5
タングラン地区: 60〜161.3 平均114.2
(数字は?当たりの米ドル建て販売価格。最低〜最高)
需給関係がタイトで値上がり傾向の強いのはジャボベカだけでなく、パル、バリッパパン、バンカブリトゥン、リアウなども同様だとインドネシア銀行サーベイは報告している。
需要者のメインは日本・韓国・マレーシア・シンガポールなどで、需要の64.4%は倉庫、35.6%は工場であるとのこと。


「今年も玩具輸出は好調」(2012年9月21日)
2012年の玩具製造業界総売上は2010年以前の業界実績平均から二倍に当たる4.5億ドルに達する見込みであることをインドネシア玩具事業者協会会長が明らかにした。いきなり5億ドルに達した2011年の好景気には及ばないものの、昨年並みの好調は維持されそう。おかげで国内玩具製造業界はあふれんばかりの受注に対応するために猫の手も借りたいありさま。
これは、中国の玩具輸出が減退しているためにこれまで中国産品の市場だったところがインドネシアに発注をシフトさせていることがもたらしている現象であり、中国の玩具輸出が傾いてきているのは、生産者が資金問題に足をすくわれていることに加えて、労賃がうなぎのぼりに上昇していることなどが原因である由。「輸出オーダーが激増しており、また2013年には世界の大手玩具ブランドが生産拠点をインドネシアに設けることになりそうだ。インドネシアが持っている生産リソーシズはけっこうすぐれている。」会長はそう語っている。
インドネシアの玩具輸出が前代未聞の好景気に沸いているのは、中国の玩具生産が顕著な減退を示しているためだ。これまで世界市場への玩具供給は中国がトップを握り、インドネシアは第二位の地位にいた。インドネシアの玩具生産は木や布を素材に使ったものが強く、中国はプラスチックや電子装置を使う玩具が無敵だった。だから中国の十八番分野をインドネシアがすぐに取って代わるというのも難しい話だ。
インドネシアの玩具製造業界は製品の6〜7割を輸出し、残りを国内市場に流している。輸出先のメインはアメリカ・ヨーロッパ・日本で、昨今はアメリカからの受注が激増しており、ヨーロッパや日本からの注文は下降傾向が現われている。


「インドネシアの出張経費は低コスト」(2012年10月1日)
インドネシア人がビジネストリップの際に支出している宿泊費は平均81米ドルで、アジア太平洋地域においては最低のレベルであることが統計調査から明らかになった。
アコーホテルズグループのアコーアジアパシフィックが2012年上半期に行ったビジネストラベラーリサーチの調査結果によると、各国の平均支出金額は次のようになっている。
オーストラリア 173米ドル
シンガポール 156米ドル
インド 133米ドル
香港 129米ドル
ニュージーランド 128米ドル
タイ 107米ドル
マレーシア 105米ドル
中国 98米ドル
インドネシア81米ドル
インドネシアは一年前の調査結果が92米ドルだったので、今回はそれが更に低下したことになる。シンガポールは宿泊費で第二位だが、一回のビジネストリップに支出される総額は468米ドルで、もっとも大きい。


「出張先のトップはシンガポール」(2012年10月3日)
アコーホテルズグループのアコーアジアパシフィックが2012年上半期に行ったビジネストラベラーリサーチの調査結果によると、インドネシア人ビジネスマンの国外出張目的地はシンガポールが群を抜いており、シンガポールとのビジネスが両国を緊密に結び付けていることがわかる。サーベイ結果では、シンガポールをビジネスで訪れるのは71%、二位はタイの20%、意外にもマレーシアは第三位で19%となっていた。現在進行形である2012年下半期もシンガポールは60%で首位に立ち、二位はマレーシア42%、三位中国20%となっている。しかし2011年は香港がシンガポールを抑えて首位に就いていたので、決して「シンガポールが伝統的に」ということでもないようだ。
国外出張回数はひとり平均10回だった。これは2011年下半期の6回からほぼ倍増している。インドネシア人ビジネスマンが支出している宿泊費用の低下は、マネージャークラスを中心に中間管理職レベルの出張が増加しているためとアコーアジアパシフィックは解説している。


「納税用外貨交換公定レートは水曜日から」(2012年10月9日)
貨物の輸入通関に当たって、まず自主的に算出した関税やその他輸入税を納税しなければならない。税関は納税した事実を元に通関申告書の審査を行うので、納税が終わっていないのに通関申告書を提出(今は電子化されてオンライン通関になっている)しても相手にしてもらえない。納税はルピアで行うから、外貨建ての輸入インボイスは外貨交換レートが示されていなければ納税金額を算出できず、したがって輸入通関が行えないということになる。
そのための外貨交換レートは関税算出基本レートという名前で大蔵省税関総局が定め、その一週間有効なものを週頭に公表するのだが、公表される時間は月曜日の昼近くになるのが普通で、急いで港から引き取りたい輸入貨物があっても月曜日の朝一から通関プロセスを始めるのはまず無理な話になっている。しかし産業界はそんな悠長な話では済まないのが現実だ。
タンジュンプリウッ港に国際航路コンテナ船が入るのは木曜日から日曜日までの間が多く、週明けの月曜日には先週後半に陸揚げされたコンテナの引き取りに血眼になるケースも少なくない。それが税関の悠長なメカニズムのために腰砕けになるという不満は昔からつぶやかれていた。
その不満を取り上げた税関総局は、これまで週単位で行われていた関税算出基本レートの決定と公表を、週をまたぐ形に変更することを決めた。2012年10月8日から16日までをその準備期間とし、10月17日水曜日に決定と公表を移し、そのとき定められたレートは翌週火曜日まで有効で、以後は毎週水曜日に決定と公表を行うというサイクルに切り替わる。この関税算出基本レートは輸入関税だけでなく他の納税の場でも同様に使われるものであるため、貿易分野以外でもメリットが現われるかもしれない。


「オフィス賃貸料金に顕著な値上がり」(2012年10月17日)
ジャカルタのオフィススペース賃貸料金は2016年まで年率12%で上昇を続けるだろうと見られている。持続しているインドネシアの経済成長は諸方面のビジネス参入を促し、オフィススペース需要は増加の一途をたどるため、オフィス賃貸料金はこの先も上昇し続けるだろうというのが不動産リサーチ機関DTZが公表した上昇見込みの根拠だ。
2011年末から2012年第2四半期まで、ジャカルタの平均賃貸料金は14%上昇して152,281ルピア/?に達した。ナイトフランクインドネシアのシニアリサーチマネージャーも、インドネシア経済が上昇を続けるかぎり、その見込みが実現する可能性はある、と語っている。しかしかれは2014年の大統領選挙が国内経済をどのような方向に向けるかわからないという大きい要因を無視することはできない、とその予測に冷水を浴びせている。「経済がかげりを見せればその見込みは足元をすくわれる。もしも成長が持続するなら、オフィススペースどころか住宅や工業団地まで激しい不動産価格の上昇に見舞われる。」
ジャカルタのオフィススペース賃貸料金はここのところドラスチックな上昇を示してはいるが、まだまだ十分手の届くところにある。一方香港やシンガポールでは反対に値下がりが起こっている。香港では2011年第3四半期に最高値に達したあと、ヨーロッパでのクライシスの影響で15%程度ダウンした。しかし低下はそろそろ底を打つ感触で、再びリバウンドするのは時間の問題と見られている。


「2013年には大暴落?!」(2012年10月22日)
工業団地内の工場用地需要は、年間1千から1千2百Haという需要を迎えたここ二年間がピークだったが、2013年の需要は5百Ha程度に暴落するだろう、と工業団地会会長が表明した。既に産業界の移転先用地探しは熱が下火になってきており、過去二年間の意欲は来年まで続きそうにないと会長は見ている。「ここ二年間の需要は、ジャワ島と外島が3対2という比率になっている。来年もその比率が継続するだろう。来年の需要というのは今年オーダーされて来年取引されるものがメインを占める。」
工業団地会副会長は最近、日本の中堅企業が昨年の災害後国外移転を検討し始め、そのうちのおよそ百社がインドネシアに移転してくる見込みなので、2013〜2014年ごろまでインドネシアの工業団地は大うけに入る、と語ったばかりだ。
工業省産業地域開発総局長は、2012年1〜7月の工業団地内工場用地販売実績は4百Haしかなかったが、年間見込みの1千Haは達成するだろうと述べている。
最近の工場用地販売状況についてコリエールズインターナショナルは、2012年第3四半期の首都圏での状況は、レディユースの土地が限られていることから53Haしか実績があがらず、全国販売162.37Haの32%でしかなかった、と報告している。デベロッパーの中にはレディユースになっていない土地を販売し、テナントはそんな状態の土地であっても購入しているところがあるとのこと。需要の54%は外資系企業からのもので、自動車セクターと飲食品セクターがメインを占め、ほかには石油や鉱業セクターと続いている由。地域別の?当たり平均価格は次のようになっている。
ジャカルタ 300万ルピア
ブカシ 180万ルピア
ボゴール 160万ルピア
タングラン 138万ルピア
カラワン・プルワカルタ 135万ルピア
セラン 90万ルピア


「デモクラッ党に顕著な支持離れ」(2012年10月23日)
サイフルムジャニリサーチ&コンサルティングが2014年の総選挙に関して最近行ったサーベイ結果を公表した。それによればデモクラッ党支持者は65%から21%に減少したとのこと。デモクラッ党の支持が下降した原因のひとつはマスメディアで報道されている党幹部の汚職問題で、回答者の53%は汚職に関するメディア報道をフォローしており、52%はデモクラッ党幹部の汚職が事実であることを確信している。2009年にデモクラッ党に票を入れた支持者の中の61%は、党幹部の汚職報道に接したことで、次の選挙にデモクラッ党に投票することはしない、と述べている。
デモクラッ党支持者が大量にその党を見限ったものの、どの政党に支持を移すかという質問に対しては「まだわからない」という回答が多かった。支持の移動先を表明したひとの間では、ゴルカル12%、ナスデム8%、グリンドラ7%、PDIP6%という比率になっていた。


「ビジネス便宜レベルはあまり変わらず」(2012年10月29日)
2011年6月から2012年6月まで世界185カ国で政府がどれだけビジネス活動に便宜を与えているかについて10項目のインジケータを用いて世銀下部機関インターナショナルファイナンスコーポレーション(IFC)が測定した結果を報告するDoing Business2013年版でインドネシアは昨年の130位から128位に上昇した。電力へのアクセス、不動産登記、輸出入、契約履行、倒産処理の5項目で改善があると評価されたのがその上昇の根拠になっている。一方、建築許可、融資入手、投資者保護、納税の4項目は悪化していると評価された。
順位が上昇したことだけを見て喜んでいてはいけない、とインドネシア科学院経済学者は言う。「マレーシアやタイなどインドネシアのコンペティターとの比較をしなければ。かれらと依然として差があるようであれば、ビジネス風土改善という政府のコミットメントが十分果たされているとは言えない。」
今回の報告で東南アジア諸国の順位を見ると、シンガポールが世界第1位、マレーシアは第2位、タイ18位、ブルネイ79位、ベトナム99位で、インドネシアはやっとカンボジャ・フィリピン・ラオスより上にいるというところ。


「プレミウムガソリンはどうなる?」(2012年11月13・14日)
轟々たる議論の果てに、政府は石油燃料の補助金削減を消費節減の結果として実現させるという姿勢をますます明白に示している。政府は補助金支出予算を組み出荷割当まで行ない、市場でも補助金なしのプルタマックスガソリンを用意するスタンドを増やすといった対策を行ったものの、現実に割当分がオーバーしたら他の項目に財源を求めて石油燃料支出予算を増額し、出荷調整という消費者が嫌がるに決まっている施策の強行を避けた。
2013年のエネルギー補助金政策に関連して、産業界と大口消費家庭の電力料金値上げが計画され、産業界が電力料金値上げよりも小幅のプレミウム価格値上げを行うよう政府に提言したものの一蹴されてしまった。プレミウム値上げのほうが物価上昇に与える影響がはるかに大きいというのがその理由になっている。更には、農産物に対する補助金すら切り詰めて石油燃料補助金に回そうとする動きも見られる。
しかし消費節減の結果として補助金削減を、という持って回った明快さに欠ける政府方針に対する不審の声は強い。畢竟、国際原油価格とプレミウムガソリン現行価格の差があまりにも大きいためにプレミウム消費は増えこそすれ、減ることはあるまい、という見方が専門家筋の間では一般的だ。
消費節減のために政府が2012年に行ったのは、6月1日から首都圏で政府公用車のプレミウムガソリン購入禁止、その延長線上で8月1日からジャワとバリの全県市への拡大、9月1日から農園と鉱業セクターで使われている業務用貨物運搬車両の補助金付軽油「ソラル」の購入禁止だった。
公用車にはプレミウムガソリン禁止というステッカーを貼らせて、不良職員がプレミウムを買いにくくするような手を打ったが、公用車の中に黒ナンバープレート車両が混じっていることや、鉄面皮にも赤プレートをものともせず、ステッカーを貼っていない車両などが入り混じって、発案者の思惑が現場では通用していない事実がある。加えて民族病のひとつである、言いっ放しで実施の監督がなく、結果が問題にされず、違反は犯す者が得をするという不公正が横行している社会という性格から、上の政府方針に従わない公務員や役所にどのような罰を与えるのかが明白に定められていないために政府の消費抑制方針は徹底して実施され得ないと見ているオブザーバーは少なくない。
2013年にその方針の次のステップとして政府が実施を予定しているものが三つある。まず、1月から中央政府・地方政府・国有事業体・地方政府所有事業体の全公用車に対して補助金付石油燃料の使用を禁止する。次に、自家用車の補助金付石油燃料使用については、1月に統制規則を定める。三つ目、自家用車の補助金付石油燃料消費は7月から規制を開始する。ということが2013年の石油燃料補助金対策として現在決まっていることだが、一般国民に何をどうさせようとしているのかはまだ闇の中だ。プレミウムガソリンはこの先どうなるのだろうか?


「ジャカルタの賃貸料金値上がりは世界最大」(2012年11月21日)
2012年第3四半期のジャカルタにおけるAグレードオフィス賃貸料金値上がりは世界最大の8.1%を記録した。ジョーンズラングラサールが発表したグローバルオフィスインデックスとグローバルマーケットパースペクティブによれば、世界の賃貸オフィスマーケットの値上がりはアメリカが0.6%、アジア太平洋0.5%、ヨーロッパはマイナス0.4%で世界平均は0.2%となっている。そういう世界的な沈滞ムードの中で、アジアではジャカルタと北京がトップランクに着いた。その欧米アジア太平洋の90都市を比べた番付のトップ10は次のようになっている。
1.ジャカルタ 8.1%
2.メキシコシティ 7.7%
3.リオデジャネイロ 6.0%
4.北京 5.1%
5.サンフランシスコ 3.9%
6.デンバー 3.2%
7.ブエノスアイレス 3.1%
8.バンコック 2.5%
9.ストックホルム 2.4%
10.東京 2.3%
カッシュマン&ウェイクフィールドインドネシアは2013年のジャカルタCBD地区オフィススペース新規供給は37万平米になると報告しており、これは1996年以来最大の供給量である由。しかし高級物件が限られていることから、値上がり傾向は依然として継続するだろうとコメントしている。現実に、デベロッパーは賃貸用と買取用を織り交ぜてオフィスビルを建てているものの、買取用スペースを投資家が買って賃貸に出す傾向が強まっており、賃貸スペースは大きく増加する可能性が高い。


「英国人の見るインドネシアでのビジネス」(2012年12月8日)
インドネシア英国商工会議所(British Chamber Indonesia = Britcham)の出しているブリチャムビジネスコンフィデンスインデックスには、インドネシアでビジネスを行っている英国人実業家36人の目に映ったインドネシアにおけるビジネス界の性向が映し出されている。その2012年版を見ると、インドネシアの過不足はこんな形になっているようだ。
かれらが口をそろえて嘆くのはスキルドワーカー(熟練作業者)の絶対的な不足。スキルドワーカーに対する需給関係が国内で過少供給になっているため、少ない人材はときに他社との奪い合いとなり、あるいは非インドネシア人をそこに配置しようとすると異常に高い人件費支出を余儀なくされる。インドネシアが外国人就労に厳しい規制をかけていることも、その問題を増幅させている。ホワイトカラーワーカーから中間管理職に至る人的需要の高まりに直面した多国籍企業はその状況が深刻さを増していると嘆いている。インドネシアでもビジネスの高度化が進展しており、それがスキルドワーカーの需要を高めているのだが、インドネシアの教育機関人材育成機関がそれに応じる力を持っていないことを、その事実が示している。
ハティッ・バスリBKPM長官はその状況を率直に認めており、外国企業のインドネシア移転が続々と押し寄せてきている昨今、技術/知識の移転ももっと高いレベルで行われなければならないのだが、そのためにはスキルドワーカーの層がもっと厚くならなければ技術/知識移転は形ばかりのものとなって実効が伴わない、と語っている。長官はその対策を、政府がインセンティブを与えて民間企業が人材育成をはかるという形で考えている。
労働関連イシューに関して問題視されているポイントとそのレベルは次のようになっている。
熟練作業者のコスト 59%
外国人就労規制 58%
熟練作業者の供給 52%
労組活動 49%
最低賃金 38%
従業員教育訓練費 25%
従業員の忠誠心 25%
とはいえ、回答者の83%がインドネシアでのビジネスは依然としてプロスペクティブだと答えており、2013年も投資や新規採用を行うし、収益向上も期待できるとしている。ただし、ビジネス容易度に関する低評価がその楽観の裏側にまとわりついていることも無視できない。
この報告書では、英国人実業家のインドネシアにおけるビジネス容易度の感触は65%で、障害をなしている項目としてはビューロクラシー74%、インフラキャパシティ64%、腐敗63%、法不確定63%といったものがあげられている。


「政府自身が認めるお粗末な行政」(2012年12月18日)
2012年の中央政府と地方政府の責務遂行実績が劣悪であることを官僚効用改善行政改革省が報告した。同省が行なった評価判定では、企画・測定・報告・評価・達成された業績という要素が評価対象とされ、総合点で最高がAA、最低がDという6段階の評点がつけられた。中央政府も州政府もAA評価を得たところは皆無であり、中央政府の諸機関でA評価を得たのは三つの省庁だけで、33州政府ではA評価をもらったところすらなく、B評価を得たところが6州だけだった。2009年以来の成績は次のようになっている。
中央政府 (2009年 2010年 2011年 2012年)
省庁総数: 72 79 82 81
審査された数: 72 79 82 81
評点AA(満足できる): 0 0 0 0
評点A(大変よい): 0 0 2 3
評点B(よい): 7 11 17 26
評点CC(かなりよい): 29 39 49 48
評点C(少し低い): 33 27 14 4
評点D(低い): 3 2 0 0
州政府 (2009年 2010年 2011年 2012年)
州総数: 33 33 33 33
審査された数: 27 29 30 33
評点AA(満足できる): 0 0 0 0
評点A(大変よい): 0 0 0 0
評点B(よい): 0 0 2 6
評点CC(かなりよい): 1 9 17 17
評点C(少し低い): 20 18 11 9
評点D(低い): 6 2 0 1
全体に低評価なのは、中央政府地方政府の双方に優れた行政運営を実現させようというコミットメントが欠けているからだ、と同省はコメントしている。ちなみに中央政府で2012年にA評価を得たのは、大蔵省・会計監査庁・汚職撲滅コミッションで、一方B評価を受けた州政府はジョクジャ特別州・中部ジャワ州・東ジャワ州・南カリマンタン州・東カリマンタン州・南スマトラ州だった。


「輸出売上代金全額国内受領方針は成功」(2012年12月28日)
オルバ期以来、輸出実績があがって国家会計は潤っているはずなのに相応の外貨が手元にないという事態は常に継続していた。基本的にルピアに対する国民の信頼感が薄く、資産保全のために財産の一部を国外に置くのは常識化しており、企業までもが輸出売上代金の一部を常に国外に置いてさまざまな用途に使っていた。
その状況を改善するためにインドネシア銀行は輸出売上外貨と外国借入の取得に関する中銀規則第13/20/2011号を制定して試行を開始し、一年間の試行期間が終了したところでその規則を実態に近づけるべく検討を行なった。この規則の詳細に関しては「輸出と借入の外貨受取規制」(2011年12月05日)の記事が参照いただけます。
インドネシア銀行によれば輸出申告で報告された売上代金が9割近く国内に入ってくるようになっており、規則の実施は成功したとの判定が下されている。2012年11月までに輸出売上代金報告をインドネシア銀行に提出した輸出者は1万1千社、外貨取引活動報告を提出した銀行は120行、ノンバンクは2,419社にのぼっている。
去る7月にインドネシア銀行は報告を出してくる輸出者が少なすぎるとして、報告のない2千6百社に質問状を出したことがある。それに回答してきたのは1千社のみだった。
輸出現場の実態についてインドネシア銀行は、輸出者の住所が不明瞭であるなど中央銀行と外貨受領銀行が行なう検証に困難をもたらすテクニカルな要因があり、また小規模輸出者は輸出代行会社のサービスを使う傾向があって輸出申告の輸出者と代金受領者が異なるといったこともあるため、規則をその実態に即したものに変更するつもりであると表明している。新規則は2012年12月末に出される予定。


「検疫による輸入不可判定貨物が減少」(2012年12月28日)
インドネシアに輸入される生鮮野菜果実の中で、残留農薬上限オーバーのため輸入が拒否される件数が増えている。2011年に発生した輸入不可物品はピーナツ・とうがらし・とうもろこし・ニンニクで発生頻度は7回、貨物量は289トンあった。2012年も余すところわずかとなったいま、検疫検査で輸入が拒否されたものはピーナツ・にんじん・ねぎ・とうがらし・セロリで頻度は8回、貨物量は196トンとのこと。
農業省農業検疫庁の記録では、2012年9月までに発生した輸入不可判定はピーナツとニンジンだけで、インドから輸入されたピーナツ137.9トンから許容量を超えるアフラトキシンが検出された。またニンジンは中国からの輸入分57トンからサルモネラ菌が検出され、またドイツからの輸入分0.5トンからは重金属が検出された。農業検疫庁生物植物検疫センター長は、国外の輸出者がインドネシアの検疫制度の理解を深めている状況がその大幅な輸入拒否貨物量の減少から推察できる、とコメントしている。
今年廃却された輸入植物は、オーストラリアとロシアから輸入された小麦の実、日本からの菊の種、アメリカからのタバコの苗、タイからのトウモロコシ・メロン・スイカの苗があった。昨年の廃却はジャガイモ、ゆり、トウモロコシ・稲・小麦の苗、小麦とトウモロコシの実など。
2012年1〜10月の野菜果実輸入は144万トン13億ドルで、2011年の年間実績は206万トン16.9億ドル。2011年国内産園芸作物輸出は12.5万トンしかない。
この分野での貿易収支は毎年大幅な輸入超過で、平均年間9億ドルの赤字となっている。このため農業省は輸入量を抑制するために2012年農業大臣規則第42・43・60号を制定して種々の方策を講じている。