インドネシアビジネス経済環境情報2013〜14年


「ミドルインカムトラップ」(2013年1月4日)
インドネシアもミドルインカムトラップに陥る兆候が現れ始めた、という経済専門家の声が出され始めている。経済調査機関インドネシア持続開発の研究者ドラジャッ・ハリ・ウィボウォやガジャマダ大学公共政策経済研究センター長のトニー・プラスティアントノの発言はそのポイントを指している。
中進国の罠と訳されているその現象とは、ほとんどの中進国がクラスアップして先進国の仲間入りをすることがなかなかできない実態についてのもの。ひとりあたり年間所得3,600米ドルというインドネシアは下流中進国であり、先進国の仲間入りをする前に中進国の中級から上級へと上って行かなければならない。ドラジャッ・ハリ・ウィボウォは、インドネシアは下流から中級に入ったばかりであり、中級以上の中進国が陥るミドルインカムトラップに襲われたわけではまだない、と語る。「とはいえ、ミドルインカムトラップに陥る初期兆候は既に現れている。中でも、労働生産性の向上が賃金上昇にくらべて劣っていることだ。他の兆候としては、インドネシアにイノベーションとテクノロジーの強固な基盤がまだないことだ。イノベーションとテクノロジーは先進国になるための鍵だというのに。インドネシアが下流から中級に躍進できたのは、天然資源と低賃金のたまものだ。ところが中級から上級に上がるために天然資源と低賃金というふたつの要素をいつまでも競争のツールとして使うことはできない。更に上にあがるための基盤として必要なのはイノベーションとテクノロジーなのだ。」
一般的に、中所得国から高所得国に躍進できるのは生産性の高い国だ、とプラスティアントノは言う。「だから、賃金上昇よりも労働生産性向上が低いというのは、ミドルインカムトラップの初期兆候になる。それを回避するには、政府が労働生産性を高めるように努めることだ。その方法は人的資源の質的向上とインフラ建設になる。」
インデフ専務理事アフマッ・エラニ・ユスティカは、ミドルインカムトラップを回避するには教育がメインファクターになる、と語る。今現在、インドネシア人労働者の7割は学歴が中学卒以下だ。これからの経済は原材料をベースにするものではない、とかれは強調している。


「工場移転はスカブミへ」(2013年1月21日)
ブカシ県の工業団地に入った多くの製造工場が予測もしなかった激しい労働騒乱の嵐にもろに浴びて、そこが安住の地ではないと考えるようになったとしても何ら不思議はない。しかしジャボデタベッと呼ばれる首都圏一円はいずこも似たような環境にあり、タングランにも労働騒乱の風は吹いているし、チカンペッ自動車道沿線の工業団地も交通の便が幸い(災い?)して労働騒乱の波は容易に押し寄せてくる可能性が高い。そこで脚光を浴び始めたのが西ジャワ州スカブミ県だ。
ジャゴラウィ自動車道はいまチアウィが終点になっているが、それをスカブミまで伸ばす計画は以前からある。更にスカブミの2013年最低賃金は120万ルピアであり、ブカシ〜カラワンの200万ルピア台に比べて6割程度でしかない。スカブミ県にはチアンバル第1第2工業団地があり、総面積は7百Haにのぼる。日本からの工場移転先、更にはブカシ〜カラワンの工業団地からの引越し先としても有望なようだ。第1工業団地のほうは既に外資系の予約が多数入っているそうで、新規の予約は第2工業団地のほうになる。
日本のリロケ希望工場が2013年2月に視察団を組んでスカブミを訪れる予定になっており、スカブミ県投資統合許認可庁はその来訪を待ち望んでいるとのこと。


「胸焼け薬の憂鬱」(2013年1月24日)
三足印(cap kaki tiga)という商標がある。むねやけを鎮める飲み物が代表製品で、たいていのドラッグストアで目にすることができる。2012年3月に、食品薬品監督庁がメーカーに対して市場からそのlarutan cap kaki tigaを回収するよう命じたという報道が流れた。保健飲料として商標登録がなされているにもかかわらず医薬成分がまったく検出されず、その製品はただの水でしかない、というのがその理由。ところがその報道はしばらくしてガセネタであったことが判明した。食品薬品監督庁も法務人権省知的財産権総局も、そのような市場回収命令は出していないという表明を出し、煙が出て大騒ぎしたものの火の気はなかったという空騒ぎに終わった。どうやら空騒ぎの根源は、ミネラル飲料・ソーダ水・果汁などを対象にする水製品が分類される項目に製品登録分類カテゴリーを当てはめる確認書を知的財産権総局がインドネシア代理権者に送ったことにからんでいたようだ。いかにもそれらしく捏造されたニュースという感触は否めない。
商標権を持つ生産者は1937年創業のシンガポール在Wen Ken Drug Pte.Ltd.で、インドネシア市場での代理権は1978年にPT Sinde Budi Sentosaが得て販売を始め、2011年に契約が切れたためにPT Kinocare Era Kosmetindoが代理権を引き継いでいる。
ところが三足印の受難はまだ続くのである。英国人ラッセル・ヴィンスが三足印商標はマン島の国章(独立国家ではないので正確には英国王室属領マン島章と呼ぶべきかも)を無断使用しているものであるため、その商標登録を取消せとインドネシア共和国法務人権省知的財産権総局に要求した。インドネシア代理権者にも告発状が送られている。商標権侵害があれば、その商標を使っている製品は市場から回収されなければならない。代理権者法律代理人は、告発状が来たばかりなのでまだコメントできる段階ではないと述べている。
三足印を観察すると、三本の足は右向きに走っているが、ヨーロッパで一般的に使われているトリスケリオン(三脚ともえ紋)は左向きに走っているように見える。ギリシャ語に由来するトリスケリオンはそのまま英語にもなっており、トリスケリオンをシンボルに使っているのはマン島だけに限らず、シシリー島もドイツのフュッセンもそうだ。


「輸出入通関の課金廃止」(2013年1月28日)
政府は輸出入に関連して徴収されているすべての国庫収入を廃止することを決めた。輸出や輸入あるいは保税エリアを出入りする物品貨物の通関申告や航空機船舶が行なう積荷のマニフェスト申告などにはこれまで2003年政令第44号で定められている税外国庫収入が課されている。輸出入通関申告は一件3〜6万ルピア、マニフェストは一件25〜45万ルピアといったタリフだが、通関申告オンライン化やシステム作成といった投資が開始当初に発生したことから、当時の政府はその行政サービスを有料化すればよいと考えたようだ。実際にはその有料化によって輸出入者に課金納入の管理業務が発生し、そのために従業員を増やすような対応が起こっていた会社も多く、納税のために操業コストが増大するという状況が貿易分野にまで拡大していたわけだ。
今の政府は、輸出入者が円滑に事業を行なうことで法人税や付加価値税などの納税が増大することのほうが優先度が高く、このような課金徴収はこれから統合アセアン自由市場に向かう中でインドネシア企業の域内競争力を高めることの足を引っ張る要素になるとの判断を下したにちがいない。税関総局収入通関チュカイ規定局長によれば、輸出入関連で国庫に入っている課金収入は年間1千2百億ルピア程度でしかなく、150兆ルピアという国家予算にとってその存在はたいした意義の感じられないものであるとのこと。廃止提案は2009年に始まっており、現政府の大統領直属作業ユニットがその提案をプッシュして税外国庫収入に関する2003年政令第44号の改定に漕ぎつけた。政令改定案は法務人権省での検討を終えて国家官房まで上がっており、大統領の署名がもうすぐなされる段階に至っている。
輸出入関連税外国庫収入が無料化されれば輸入通関のスピードアップが可能になることから、政府がいま取り組んでいる輸入貨物の港内滞留日数短縮に効果をもたらすことが期待されている。実業界は一様に、国庫収入にたいした効果はなく単に輸出入者のコストを増やすだけだったこの課金が廃止されるのはありがたいことだ、とコメントしている。


「国境の島を運営委託」(2013年1月29日)
島嶼国家であるインドネシアは領土(つまり領海)の境界線にもっとも近い島を最外島(pulau terluar)と称している。その名称からして、国民の生活領域からもっとも遠い場所という意識が貼りついているように感じられる。つまり国家統治行政における関心があまり高くない事実がそこから匂ってくるのである。だから国防面できわめて重要なそれらの最外島がただ無人島のまま捨て置かれ、領海侵犯が起こっても国家主権者がそれを知らないというようなことは多々あったようだ。国防セキュリティ上で重要な島には駐屯部隊を置くようなことが行なわれるようになってはいるが、まだほんの一部に過ぎない。
海洋漁業省はそんな最外島92ヶ所を民間に委託することにした。最外島で国民が居住し、何らかの活動を行なってくれれば、領土保全と国家主権遂行上大いに役に立つ。無人島にして捨て置けば、かつて隣国がふたつの島をもぎ取ったようなことが再発するかもしれないのだから。
ナトゥナの小スビ島とヌサカンバガン島はボゴール農大、スバティッ島はマカッサルのハサヌディン大学、プトゥラン島とマラトゥア島はスラバヤ工大、バトゥ島はカルパッマ財団が既に受託者になっている。この話には国有事業体省・ディポヌゴロ大学・ブンクル大学・ガジャマダ大学・バンドン工大などが受託者になろうと名乗りをあげており、ドイツの大学を巻き込んでという話まで上がっているそうだ。
この委託プロジェクトは「預けるから好きに使ってください」というのでなく、どのような活動がその島で行なわれるのかという企画を海洋漁業省が審査し、合格したものだけが受託者になれる。島の使われかたは、海洋観光・生態系保存・漁業や観光産業開発などが期待されている。言うまでもなく、民間受託者は最外島でビジネス活動を行い、利益を上げることも認められし、企業社会責任というテーマでその島を利用してもかまわない。
「たとえば、小さい島で海亀の産卵地である場合だったら、環境保存活動を行なえばよいし、観光地として発展させてもよい。それなりの広さがあれば、観光ゾーンと水産養殖ゾーンに分けて活動を行なうのも可能だ。海洋漁業省側は各島の経済ポテンシャリティを数値化する予定だ。」海洋漁業省小島活力化局長はそう説明している。


「最低賃金高騰で引越し屋が儲かる?!」(2013年2月6日)
高騰した最低賃金の対策として労働集約産業を中心とする工業界はジャボデタベッ地域からの工場移転を検討しており、かれらが希望する移転先としては中部ジャワ・西ジャワ・東ジャワの人気が高い、と工業省工業環境クオリティ政策分析センター長が発言した。非公式ではあるが移転の決意を漏らしている工場もいくつかあり、中部ジャワ州はそれらの移転を受け入れようとして4ヶ所の工業団地の整備を進めている。センター長は、ここ二年くらいの間に工場移転が増加するだろうとの予測を述べている。
工場の多くは総生産コストの中に賃金給与が13%以上の比率を占めることになった状況に困惑を強めており、繊維衣料品関係労働集約型工場の中にはそれが13%を超えて15%、あるいは20%に達しているところも出ている。インドネシア繊維業協会会長は、最低賃金・電力料金・ガス料金が継続的に雪だるまエフェクトを製品価格にもたらして製品価格の上昇に到るだろうと言う。「人件費とエネルギーコストは生産の重要な要素であり、それらが同時に上昇すれば生産者の負担は跳ね上がる。」
苦境に陥ったジャボデタベッの労働集約産業が工場移転をはかるとの読みは同地域外の工業団地運営者も抱いており、スバン(Subang)・ボヨラリ(Boyolali)・マグタン(Magetan)・マジャレンカ(Majalengka)の工業団地はその態勢に入っている。それらの工業団地は、用地に大きい余裕があり、天然資源が豊かで、地元最低賃金も首都圏よりはるかに低く、工場運営者にとってあまり負担をかけないレベルにあるという共通条件を持っている。工業団地会会長はジャボデタベッ地域からの工場移転の話が盛り上がり始めていることを肯定している。他州、特に中部ジャワ州への移転希望の声が高く、工業団地運営者に対して中部ジャワに工業団地を建設するよう求める声も出ているとのこと。


「インドネシアの景況感は依然良好」(2013年2月7日)
最新の事業動向調査でインドネシアは74%という高い指数を獲得し、世界平均の54%を大きく上回った。このサーベイは26ヶ国で3万1千人の事業者を対象に行なわれたもので、インドネシアでは1千2百人から回答が集められた。インドネシアにいる事業者たちの好景気に対する信頼が強く反映された結果だと言うことができる。
テクノロジー産業と自動車産業がそれぞれ指数94%と93%で最高位にあるが、次いで銀行界が指数90%で高く評価されているのがインドネシアの特徴だ。銀行界の世界平均は50%でしかない。エネルギー産業は昨年の71%から今回の調査では84%に跳ね上がっている。公共の政府に対する信頼度は47%で、世界平均の48%と変わらない。回答者の71%は、汚職の受容・権限悪用・誤ったインセンティブに支えられた政策決定などの理由で71%が政府の信頼性を否定している。


「収入の増加を確信している消費者たち」(2013年2月14日)
クレジットスイスの最新サーベイによれば、この先12ヶ月以内に自分の所得がアップすると確信しているインドネシア人は64%いて、サウジアラビアの53%、中国42%、インド26%の上を行っていることが明らかにされた。このサーベイはジャワ島と外島の都市部および村落部に住む1,531人から回答を集めたもので、具体的には、メダン・デリスルダン・ジャカルタ・ボゴール・タングラン・ブカシ・バンドン・シドアルジョ・グルシッ・ラモガン・スラバヤ・ゴワ・マカッサルといった地方が選ばれた。特に低所得層と中所得層で、前者が83%、後者77%という数値になっており、最低賃金大幅上昇がかれらの確信を支えている。
2012年国民の消費生活について言えば、収入の28%が飲食品購入に充てられ、26%がその他の生活必需品購入、そして貯蓄には11%が回された。それ以外では、保健のための支出が7%、身体ケアのために5%、教育と自動車6%、娯楽3%、家具什器4%となっている。昨年から目立って伸びたのはファッション製品で支出金額が25%増加し、また携帯電話購入が8%、スマートフォンの購入は5%伸びている。
購入された飲食品の内容を見ると、インスタントラーメンとビン詰め飲料がメインを占めており、過去三ヶ月間にインスタントラーメンを食べたひとは95%、ビン詰め飲料を買ったひとは90%に上った。


「LPG値上げ」(2013年2月25日)
プルタミナが12kgボンベに入っているプロパンガス(LPG)の価格を3月に引き上げる計画。もともと12kgボンベに入っているLPGは一般庶民用として補助金付価格で販売されていたのだが、原油国際価格の激しい高騰で補助金付灯油販売での補助金負担に音を上げた政府が3kg入りボンベをプルタミナに発売させて国民に灯油からガスへの転換を勧めた。当然ながら3kgボンベに入っているLPGに補助金をつけたため12kgボンベに入っているLPGの補助金は撤廃された。ところがプルタミナが12kgボンベの価格を生産コストまで引き上げようとしても政府や国会が反対してなかなか実現できない。2005年以降に実現した値上げは、2008年7月にkg当たり4,250ルピアから5,250ルピアに、2009年8月には5,750ルピアに、2009年10月には5,850ルピアにという上がり方で、プルタミナが今現在の生産コストと言っている10,064ルピアに対しては大赤字になっている。
石油もそうだがLPGも国際相場を原価計算に使っており、アラムコのコントラクトプライスが上昇を続けているためプルタミナのLPG原価も上昇を続けるという状態になっている。プルタミナは3月にボンベ一本当たり25,400ルピアの値上げを行なって現在の70,200ルピアを95,600ルピアに持っていきたい意向。つまりkg当たり単価で言えば、ほぼ8千ルピアに引き上げるということで、つまり36%もの値上げになる。それでも生産原価にはまだ追いつかず、赤字がやっと半減する程度だ。
12kg入りLPGは年々消費量が激増しており、コスト割れは極力小さくしておかないとプルタミナの経営にとって重荷になっていくにちがいない。2010年の消費量は85万トンだったが、2011年は88.6万トン、2012年91.8万トンという増え方になっている。
政府も国会もプルタミナが出してきたこの値上げの話にまだ態度を決めておらず、すんなりと通るかどうかはまだ予断を許さない。


「レント経済」(2013年3月18日)
2013年2月のインフレ率は暴騰して5%を超えた。過去20ヶ月間、インフレ率は3.6%から4.8%の間で収まっていたというのに。それ以前でもっとも高い記録は2011年6月の5.5%だ。往々にして食材が物価高騰の元凶となる。今回もそうだった。2013年2月の食材インフレ率上昇は前年同月比で10.3%に達し、全支出カテゴリーの中で最大だった。
2013年2月のインフレ率高騰原因のほぼ三分の二は未加工の食材に由来している。食品物価問題は既に構造的なものになっているものの、その対応は表面的で、威勢よく見えるが実質内容は貧相だ。2007年以来インドネシアは食糧赤字に見舞われてきた。食糧輸入は食糧輸出に比べてハイスピードで増加しているため、赤字はどんどん広がっている。
エコノミストインテリジェンスユニットが公表した2012年グローバル食糧セキュリティインデックスに基づけば、インドネシアの食糧セキュリティインデックスは既に0〜100スケールの中間点である50を下回っており、105ヵ国中の64位に就いている。マレーシア・タイ・ベトナム・フィリピン・中国など隣国諸国はインドネシアより優良だ。先進工業国でさえ、得ている評点の高さに見られるように、食糧問題への配慮を欠かしていない。たとえば米国は89.5という評点を獲得して番付のトップにいるし、日本は80.7ポイントで16位、韓国は77.8ポイントで21位という栄誉ある順位をつかんでいる。インドネシアの食糧に対する主権は腐食が進み、世界的に異常さを増している気象変動によって振り回される国際価格の動きに対して過敏な反応を示す度合いが高まっている。
問題の根を探し当てるのは難しくない。ルバラン前といったタイミングでなく、長い期間に価格が上昇を続けるのであれば、問題は品物の供給面にある。国内の牛肉供給が十分であるなら、牛肉価格が暴騰するなどということがどうして起こりえようか?肉牛の数が正確につかめていなければ、正しい生産計画をどうやって作ることができるだろう?肉牛の数があやふやであるなら、必要輸入量もあやふやなものになるにちがいない。であるなら、問題解決は牛肉輸入クオータ入札メカニズムの改善では得られないはずだ。入札メカニズムをオープンにすることが輸入を透明性の高いものにすることは疑いもないが、とはいえ、それが顕著な牛肉価格の低下を招くことにはならない。的確な牛肉生産に支えられない限り、輸入クオータ制度はレントシーキング行為を繁茂させるだろう。クオータによる輸入量規制よりも、政府が牛肉輸入関税を調節するほうがはるかに効果的だ。その関税収入で政府は国内畜産業、特に若牛を太らせる牧畜業の振興をバックアップすることができる。反面、輸入クオータ制度を続ければ、利益グループ間でのレントシーキングを活発化させるだけになりかねない。
大豆・とうもろこし・ニンニク・シャロット・砂糖など他の品目にも同じ方法を適用することができる。収穫期以後の対応が農民保護の鍵になる。野菜果実に対して行なわれたような、突然に輸入規制をかけるのはだめだ。生産面での障害を全部取り払ってやれば、インドネシア農民の生産品は輸入品と互角に太刀打ちできることをわれわれは確信している。それどころかインドネシア産果実の多くが美味でエキゾチックであることを考えれば、すべての障害が克服された暁には国際市場で人気を博す大きいチャンスすら開かれる。市場開放というものを脅威でなくチャンスという見方でとらえる必要がある。われわれにとっては、国際市場へのアクセスを容易にしインドネシア産農産物のトレーディングハウスを各国に設けることが宿題なのだ。貿易セクターと海空運輸セクターの国有事業体にこの方針を支援するよう命じたらどうだろうか。そうすることでインドネシアインコーポレーティッドが誕生する。
しかしながら、種苗に1千億ルピアしか出さず、一方石油燃料には240兆ルピアもの補助金を出すとき、政府は農民の活性化と生活福祉向上よりも自動車産業の興隆をはるかに強く推進していることになる。政府はあらゆる便宜を整えた工業団地のための土地を用意することに大きな関心を払うにもかかわらず、生産的農地や灌漑施設が非農業用途に転換されるのを抑制するための努力を何もしない。最大の就業人口を擁する食糧生産農業セクターと農民に対する支援を政府は最優先するべきではないのだろうか。見栄えの良い人気集めはレントシーキング行為を盛んにさせるだけだ。それは砂糖供給問題にもっともはっきりと表れている。さとうきび農民を保護するために、政府は砂糖入札基準価格を引き上げた。ところがさとうきび農民にとっての問題の根は、砂糖工場がかれらに向けている抑圧だったのである。政府は砂糖の商業統制をいつまでたっても改善しようとしない。砂糖の流通が一握りの大資本業者に握られていることは公然の秘密だ。だから砂糖の価格引上げはさとうきび農民よりかれら流通業者をはるかに喜ばせることになった。
政府はインドネシア経済開発促進拡張マスタープラン(MP3EI)を打ち上げた。その先に包括的開発を前面に押し出した農民の進歩と民衆ベースの食糧セキュリティ強化を目指すシステマチックな努力が用意されているのだろうか?まるで遠く離れて火にあぶっているみだいだ。食糧生産農業はスラウェシ・パプア・マルクのコリドーに集中される。壮大で大規模な食糧生産事業でないのなら、いったい何を発展させようと言うのだろうか?
ライター: 経済学者 ファイサル・バスリ
ソース: 2013年3月4日付けコンパス紙 "Ekonomi Rente"


「ジャカルタから90社が移転」(2013年3月25日)
ジャカルタの労働集約型企業90社がもっと妥当なレベルの賃金コストを求めて2013年中に地方へ工場を移転させる準備を進めている、とソフィヤン・ワナンディAPINDO会長が表明した。
首都圏の労働集約型企業、特に内国資本の会社は、2013年最低賃金が220万ルピアに高騰したため、事業がますます苦しさを増している。移転を望んでいる企業の多くは中部ジャワ州の県市最低賃金が83万から120万ルピアという手ごろなレベルにあることから、移転先の見当をほぼつけた上、今は土地探しを進めている段階だそうだ。東ジャワ州に見当をつけた会社も5社あるとのこと。外資系の中にも、移転を決意したところがないわけではない、と会長は続ける。「韓国とインドの労働集約型企業はバングラデシュ・ミャンマー・ベトナムに移転する態勢に入っており、今は退職金支払いプロセスを進めている。家電品業界からも何社かマレーシアに移転する計画だ。」
一方、全国労働者支援フォーラムのコーディネータは産業界で起こっている工場移転の動きに関連して、生産コストを抑えることのできる場所を求めて工場を移転させようとしているかれらの、最大限の利益を得るためにはなんでもしようという姿が丸見えになっている、とコメントした。「有名な国際ブランドの製靴会社は今年クドゥスに工場を増やし、最初に作られた工場も操業を続けている。こういうのは工場の生産能力拡張なのであって、移転とは言わない。つまり、本当のところは賃金上昇が問題なのではないということだ。ボゴールのある家具製造工場の分析によると、労賃は総利益の7%でしかなく、幽霊コストが30%に達している。労賃を口実にはできないということをそれは意味している。それでも賃金支払い能力がないというのなら、最低賃金適用保留申請制度があるではないか。」コーディネータはそう語って、事業家の姿勢を批判している。


「中部ジャワ州に工業団地を増やせ」(2013年3月26日)
首都ジャカルタや西ジャワ州の首都近郊地域からの工場移転あるいは事業拡張計画の多くは中部ジャワ州を目当てにしているため、中部ジャワ州は工業団地の増加にもっと本腰を入れなければならない、と同州地方投資庁長官が発言した。
中部ジャワ州には35の県市があるが、工業団地は6ヶ所しかない。チラチャップに1ヶ所で、残りはすべてスマラン近辺に集まっている。他のエリアに工場地区が用意されていないわけではないが、そのほとんどは5〜10Haの広さしかなく、しかも製造活動を支援する統合的なインフラを備えていない。中部ジャワ州に移転したいという希望を受け止めるために、10Haを超える面積を持ち、統合的なサポートインフラを持つ工業団地を早急に増やす必要がある、と長官は語っている。
工業団地運営者が州庁から委託を受けて許認可交付を代行するなら、工場移転者は工場建設や従業員採用といった製造活動のための準備に没頭でき、それが終わり次第操業を開始することができる。おまけに広大な工場用地が確保されていれば、将来の工場拡張に何の不安もない。それらの準備を整えて首都圏から工場が移転してくるこのチャンスを州庁は確実に捕捉するべきだ、というのが長官の主旨。
2012年には中部ジャワ州への新規投資申請が40社からあり、その6割は新たに子会社を設けて事業を拡張するというものだった。そのうちの19社はすでに計画を実践して7千人の新規雇用を実現させている。中部ジャワ州の2013年最低賃金はボヨラリで100万ルピア、スマラン周辺でも120万ルピアでしかなく、ジャカルタの220万ルピアとは大きな開きがある。
反対に、衣料品をはじめ多くの労働集約型工場が中部ジャワへの移転準備を進めていることについてプリブミ事業者会首都支部長は、この動きがどんどん拡大していけば、あらたに3万人といった規模の失業者がジャカルタに誕生することになる、との懸念を表明している。しかしジョコウィ都知事は、それらの工場移転がジャカルタの投資環境全般に影響を及ぼすことにはならないことを確信している、と語っている。


「スカルノハッタ空港でシングルウインドウシステム開始」(2013年3月30日)
一件の輸出あるいは輸入の申告に対して複数の政府機関が個々の監督対象についての許可を与えており、そんな状況がこれまで輸出入物流のスピードを緩慢にさせていた。物流のスピードアップをはかることは物流コストの削減と経済活動の盛り上げに効果があるとの観点から、政府はその改善策として一件の輸出あるいは輸入の申告に対して監督機関がそれぞれその許可をオンラインで行い、税関はその許可を踏まえて通関と船積許可あるいは通関と搬出許可を与える統合通関方式が進められている。この方式はIndonesia National Single Window(INSW)と名付けられ、国内主要港では既に実施が進められている。このシステムは統合アセアン経済コミュニティの中で加盟各国が域内の貨物移動自由化のためにデータ交換を行なう際の母体として使われるようになるものであり、数ヶ国の間で既にそのトライアルも実施されている。
2013年3月13日から、スカルノハッタ空港でもINSWの使用が開始された。スカルノハッタ空港でのINSWは貨物の内容から輸出入プロセスにおけるステータス、貨物トレース、保管リスト、エアライン情報、仕向け先情報、積込許可などの各ポジションをリアルタイムで照会できる。このシステムによって空港貨物物流に関わる空港当局・エージェント・輸出者/輸入者・その他関連諸方面が同じデータで会話できるようになる。運輸大臣はこのシステム開始に当たってのスピーチで、従来は21キロ程度の輸入貨物の搬出許可を得るのに二日かかっていたが、今後は一日で貨物が引き出せるようになることが期待されている、と述べている。スカルノハッタ空港に続いて、国内の四大空港でも近々INSWが開始される予定。


「逆転したか?補助金の目的」(2013年4月1〜4日)
石油燃料補助金は240兆ルピアに達した。補助金削減方針を謳っている政府が他のエネルギーやさまざまな方面の補助金減らしを行なって最下所得層の生活をますます苦しいものにしている一方で、石油燃料補助金は膨張の一途をたどっており、一貫性が感じられないどころか、補助金というものの本質がすりかえられている印象は否めない。国民の生活福祉が補助金の目的であるのなら、自家用四輪二輪車など持つ余裕のない最下所得層国民にとってこの補助金政策は目的がさかさまにされているということになるはずだが、最下所得層国民というのはどこの国へ行っても沈黙を守るひとたちであるようだ。
政府も石油燃料補助金削減のためにさまざまな規則やプログラムを公表しているものの、実コストと小売価格の差を縮めて補助金を減らす方法はあくまでも拒否し、だれは買ってよいがだれは購入禁止といったもっとも実行が困難で且つ成果のあがりにくい方法に固執している。
2013年初、ジュロ・ワチッ鉱エネ相が定めた大臣規則第1号で、補助金付き軽油を使ってはならない車の詳細が定められた。その中には、農園・鉱山・森林で産する物品を運ぶ四輪を超えるトラックが名指しされている。その関連で、現場で何が起こったか?名指しされなかった車も一緒くたにされて権利が侵されたのである。
ガソリンスタンド従業員がトラックの積荷を調べて規則に該当するか免れているかを判断し、その上で自分の仕事である給油を行なうかどうかを決めるようなことが実行されうると一体だれが想像したのだろうか?「お上が相談もなしに決めたものごとを、なんでわれわれが実現させてやらなければならないのか?それを実現させてやったら報奨金でも出るのかね?」とガソリンスタンド経営者が考えるのはインドネシアならではでないだろうか?ガソリンスタンドに入ってきて補助金付き軽油の給油ポンプに横付けされたら、給油してやる以外に何ができるだろう?積荷云々で客ともめるくらいなら、最初から補助金付き給油ポンプに近付かせないようにしてやればすっきりして楽だ。積荷を調べて、あっちへ行けこっちへ行けなんてことはできゃしない。
こうして積荷が何であろうが関係なく、トラックは補助金付き軽油ポンプに近付くことができないガソリンスタンドが増えた。インドネシアロジスティック協会会長は2013年鉱エネ大臣規則第1号について、「積荷で分けるようなことをせず、積荷が何であろうが一律に大型トラックはすべてが補助金付き軽油購入禁止対象と定めるべきだ。そうすることで確定性が生じ、運送業界はその要素を運送料金に織り込むことができる。2013年鉱エネ大臣規則第1号のような内容だと確定性が生じないために料金に反映させるのがむつかしい。」と語っている。
反対に対象品を運送するトラックは、積荷が荷台にあるときは給油をしなければよい、というだけの話になる。荷を積み込む前に、あるいは荷を降ろした後で、いくらでも補助金付き軽油を購入することができるわけだ。
補助金付き石油燃料価格値上げを行なう、あるいは補助金を完全撤廃するといった方針を採る勇気を持たず、しかし政府予算が補助金垂れ流しになるのも嫌だと言うのであれば、政府はもっと的確な方法を採らなければならない、と陸運機構首都支部長は語る。「たとえば黄色ナンバープレートの車にだけ補助金付き石油燃料の使用を許可するのだ。赤や黒のナンバープレートは補助金付き石油燃料の購入を禁止する。黄色ナンバープレートの車は商業車であり、つまり公共運送に携わっているのだから。こうすれば実施とその監視はたいへん容易になる。それでさえうまくやりおおせないと言うのであれば、石油燃料補助金は全廃し、商業車にだけその代償としての自動車税・名義変更税・その他税務上の恩典を与えて補助金の代わりにすればよい。ガソリンスタンドからみでの別のやり方は、たとえばこういうものがある。補助金付き石油燃料を販売するガソリンスタンドの数を、地域ごとに限定させる方法だ。5〜10ヶ所でだけ補助金付き石油燃料が販売されるようにし、それらのスタンドでは24時間営業させない。他のスタンドでは補助金付き石油燃料が一切販売されていないようにする。すると補助金付き燃料を買いたい車がそこに集中して長い行列ができる。時間がもったいない、と考える者は自然と補助金なしの燃料を買うようになる。他にもやり方はいろいろあると思う。なにしろ240兆ルピアなんだ。1割減らしただけでも24兆ルピアの予算が浮く。ジャカルタのMRT建設予算は16兆ルピア、国内6大主要貨物港のモダン化大改装が15兆ルピア。もし半減させることができれば、トランススマトラ自動車道2千7百キロの建設予算は99.88兆ルピア。国のインフラ建設のための財源はゆうゆうとまかなえるではないか。」陸運機構首都支部長は補助金垂れ流しを早く切り上げてインフラ建設に邁進するよう、政府に求めている。
一方、政府にもアイデアはある。政府はまず、これまでの消費量をプルタミナのデポから出荷されたデータで測っていたが、もっと実態に近いものにするため、ガソリンスタンドで給油された量を測定する方式に変更する。そしてガソリンスタンドで給油された内容はコンピュータデータ化されてコントロールシステム内に蓄積される。給油量だけでなく自動車のデータもそこに入る。このデータはコントロール地区内の他のガソリンスタンドでもチェックすることができる。次に各自動車に対して一日当たりの給油量の割当がなされる。そのあとは給油がコンピュータで管理され、その自動車がその日の給油割当量を超えたら、同一地区内のどのガソリンスタンドへ行こうが、補助金付き燃料ポンプの給油ホースの口から燃料は一滴も出なくなる。
これは多くのトラックがあちこちのガソリンスタンドを回ってガソリンタンクを補助金付き軽油で満タンにし、それを工場に売るという不法行為が幅広く行なわれている現状への対応策でもある。
政府は2013年の石油燃料補助金コントロールのために補助金付き燃料使用をそんな形で抑え込みたい意向だが、まず都内でこの方式を実施するとしても、コンピュータシステムを設置しなければならない給油器が9万8千台あり、都内5千ヶ所のスタンドに散らばっている。機器の設置はもとより、各スタンドの従業員教育も不可欠だ。政府はこのトライアルを2013年4月からジャカルタで実施すると発表している。
今回のアイデアは、2008年に出た自動車運転者にスマートカードを持たせて販売量をコントロールする方式と似たような案だ。そのときは、実施があまりにも複雑になり、その割にはたくさん穴があいて効果が期待できないという理由で立ち消えになった。今回のアイデアは果たしてその轍を踏まずに実現するだろうか?


「家庭用LPG値上げ」(2013年5月3日)
かつては補助金がつけられていた12キロボンベ入り家庭用LPGは、灯油の激しい値上がりのために貧困庶民の燃料をガスに転換させる方針が出されて3キロボンベが発売されたときに補助金が打ち切られた。プルタミナは実コストのおよそ半値で売られていた12キロボンベをコストリカバーさせるべく、折に触れて値上げを唱えているものの、インフレ昂進を懸念する政府はなかなかOKを出さない。
去る3月7日に値上げ計画を政府に蹴られたプルタミナは4月21日夕方に、4月22日0時を期して12キロボンベ入りLPGを1万2千〜2万ルピア値上げすると公表したが、夜になって鉱エネ相が値上げを延期せよとプルタミナに迫ったため、ほんの数時間後に訂正表明が出された。ところが、ああよかった、と消費者が胸を撫で下ろしている場合ではなかったのである。
プルタミナは次の手を打ってきた。LPGは空になったボンベが回収されてプルタミナのLPG充填ステーションに運ばれ、再充填されたものが大卸を通してまた市場に流されて行く。プルタミナの販売価格には大卸との間の運送費とステーションでの充填作業費用が含まれている。それらの費用をプルタミナは今後負担しないと言い出したのだ。大卸は充填作業費用をプルタミナに支払い、自分でボンベを運ばなければならなくなった。その費用が消費者にまでツケ回されるのは当然のことだ、というのがプルタミナの姿勢だ。プルタミナが経費を大卸に付け替えたから、いくらプルタミナの販売価格が据え置かれても、大卸が負担するようになった経費は消費者にまで回ってくる。
プルタミナはそのトライアルをバンカ・ロンボッ・ポンティアナッ・バンジャルマシン・クンダリ・パルで開始すると表明しているが、市場では全国的に早くも値上がりが始まっている。プルタミナはそれらの経費付け替え分が1万2千〜2万ルピアになると想定しており、プルタミナの卸価格7万8百ルピアは大卸段階で8万2千8百ルピア、辺鄙な地方では9万8百ルピアになり、あとは流通ポイントでのマージンが載せられるため、辺鄙な地方でなくとも消費者の小売購入価格は9万ルピアを超える金額になりそうだ。


「首都ジャカルタの産業構造」(2013年5月16・17日)
ジャカルタの経済は第三次産業が71.4%を占めている。それを支えている主要セクターは通商・運輸・金融・サービスなど。製造・電気・上水・建設などがメインを占めている第二次産業は28.0%、そして農業や鉱業などの第一次産業は0.6%しかない。ところが首都ジャカルタの総労働力540万人が各分野にどう吸収されているかを見ると、第一次産業4万3百人、第二次産業88万8千9百人、第三次産業390万人という内訳であり、2013年4月に中央統計庁首都支所が発表した年間生産性は、第一次産業1億6,466万ルピア、第二次産業3億5,018万ルピア、第三次産業1億6,416万ルピアで、第三次産業の生産性がいちばん低い。
経済学者ファイサル・バスリはその原因を、第三次産業のメインがカキリマ商人や巡回散髪屋あるいは道端のタイヤパンク修理屋などといったインフォーマルビジネスで占められているからだと分析する。もちろん一部の労働者はフォーマルセクターで働いているものの、契約社員が多く、雇用の永続する保証がない。かれはまた、ジャカルタ経済を支えているもうひとつの柱が小零細規模の製造産業であることを指摘する。衣料品や菓子作りなどがメインの小零細製造産業は発展を示している一方、大中規模製造産業は用地不足といった都市の限界要素のために発展は期待できない。2012年第4四半期データでは、小零細製造産業の成長は5%だったが大中製造産業は4.35%だった。
ジャカルタの第三次産業が低生産性であることが、首都経済の二重構造を生んでいる、とファイサル・バスリは語る。「巨大都市ジャカルタの第三次産業は通商・娯楽・会計サービスなどのモダンフォーマルサービスセクターがメインを占めるべきであり、そうなることによってそのセクターで働く労働者が高い給与を得ることになる。それは労働者がジャカルタで妥当な生活を送るための一助となる。ところが実際の経済構造は異なっており、巨大都市ジャカルタにおけるモダン経済の形成が障害を蒙っている。ジャカルタはかれら低購買力グループと今後もさまざまな軋轢を経なければならない。低所得者向け積層住宅を建設しても、低購買力階層の手が届かない。その結果、川岸や鉄道線路沿いなどにスラム地区がますます増加する。加えて、低購買力階層はありとあらゆる価格上昇を拒絶する。国鉄が首都圏近郊電車のエコノミー列車を廃止しようとしたとき、猛烈な抗議に遭ったのがその例だ。
そのような状況の是正に当たっては、都庁は周辺自治体に対して首都が持っている経済求心力を分散してやる政策を採るのがよいだろう。たとえば、モールなどの商業施設を周辺地域に設けさせることを推進するといったことだ。そうすれば、店員をはじめインフォーマルセクター就業者も周辺地域に移っていく。中央統計庁が出したこのデータは都内のモール建設に対して知事が与えたモラトリアム政策が正しいことを証明するものだ。ましてや、モールの被雇用者がみんな最低賃金を得ているわけではないのだから。」
首都ジャカルタの第三次産業は75%がインフォーマル事業で占められている。ところが、その構造が持っている問題のひとつに、インフォーマル事業者の事業会計と個人の生活会計が分離されていないという問題がいつまでも継続しており、インフォーマル事業セクターが発展しにくい基盤をなしている、と首都商工会議所副会頭は語っている。


「石油燃料中毒」(2013年5月24日)
エネルギー源に石油燃料を使うことに関して、インドネシアは甚だしい中毒症状を呈している。インドネシア国内の多くの機関が代替エネルギーの研究を行なってきたというのに、石油燃料から代替エネルギーへの移行は難しいどころか、ほとんど起こりえないように見える。ヨグヤカルタやバンドンで交通渋滞に巻き込まれ、あるいはスカルノハッタ空港で座って待っているとき、インドネシア社会が石油燃料中毒にかかっているとの思いがひたひたと意識の上に押し寄せてくる。その行過ぎた消費の歩調は蝸牛の歩みを呈している代替エネルギーの開発とバランスが取れていない。
<生産者補助金>
その中毒症状は、既に全国GDPの一割を超えた消費者補助金に明白に見てとれる。そこで発生している多くの問題は、生産者補助金から始まる。経済・国庫収入・エネルギーなどの分野で生産者補助金という術語は一般的でない。インドネシアで補助金という言葉は一般に下流分野を対象にしており、石油燃料価格補助金と言われる場合は特に国内価格と国際市場価格の差を指している。
インドネシアの規則はそのふたつの補助金の違いを説明していない。会計・国庫収入・エネルギーの分野で生産者補助金的性格の強いものも、本来あるべき形に区分されていないのだ。消費者補助金と生産者補助金の境界線が溶け合っているために、インドネシアでは生産者補助金の分析がきわめて困難になっている。
インドネシア社会での理解の落差を橋渡しするために、生産者補助金は時に「上流分野における政府のインセンティブ/恩典」と表現されることがある。最近の石油や鉱業セクターへの外国直接投資の低下は、政府のインセンティブが減少しはじめたために外国資本家への魅力がダウンしたのだという理解を国民に持たせることになるだろうが、それは皮相な政治イシューでしかない。石油鉱業セクターへの補助金(インセンティブ)イシューは、来たる大統領選・石油天然ガス上流事業活動実施庁解散・未加工原材料への輸出税・採鉱採掘契約権などの政治イシューが2014年に終了したあと、更なる展開を示すにちがいない。
ともあれ、情報とデータが不足している石油燃料生産者補助金の論議よりも消費者補助金の論議のほうがはるかに盛り上がっている。ここ数年間、経済専門家およびIMFや世銀などの機関が石油燃料消費者補助金削減の推進に注力しているのだが、言うまでもなく、消費者補助金削減ほどのウエイトを持たないまでも、生産者補助金の削減方針も起こりうる。それは多分、政治的影響や石油・鉱山会社の政府や業界諸機関に対する大規模なロビー活動によって起こるにちがいない。
そうではあっても、既に公約した消費者補助金を白紙撤回するわけにはいかない。インドネシアとナイジェリアで昨年見られたような、価格引上げ等の補助金政策変更努力は期待通りに進まなかった。この政策変更はかえって騒擾や警察との間のコンフリクトを引き起こした。特に天然資源の豊かな国で、石油燃料補助金政策はいまや国民ひとりひとりに関係するものになっている。ところが、ポンティアナッやマナドで生きるための闘いに浸っている社会状況とはまるで正反対なロンドンやウイーンなどで、交通渋滞や洪水のない快適な環境下のオフィスで働く人々に対して石油燃料が持つ意味合いは大違いだ。現実は既存の理論どおりに運ばないのである。
工業セクターへの石油燃料価格補助金は2005年に廃止された。はじめ、この政策はたいへん有益であるように見えたが、内容の異なる意見が輩出し、何年たっても議論が果てない。いったいどうしたことか、今現在に至るも工業界は一般大衆に与えられるべき補助金付き石油燃料を入手している。たとえば、最初、インドネシア政府は政策遂行の中で、量的にはわずかなものでしかないのだが、特定辺地への交通機関に補助金付き石油燃料を供給するという例外を設けた。このポイントはあまり議論されていない。
次に、難易度の高い工業セクターに区分されるものを選別した。工場が持っている貨物運搬トラックは工業セクターのトラックという区分がなされるべきではないのだろうか?実際にそれらのトラックには補助金付き軽油が与えられたのである。輸送とロジスティックのためのツールの解釈と分類はスペシフィックになされなければならない。同工異曲で、インドネシアは補助金付き軽油を貨物船と小型船に供給した。産業用船舶と小型船についての解釈と分類が明確になされなければならないというのに。
インドネシアで最大の石油燃料・ガス補助金は利益分配契約の相手方に与えられている。ところが、その実態についての情報は容易に得られず、それどころかたとえ情報が手に入ったとしても不完全なものしかない。1945年憲法第33条(3)項および2012年11月に決定された石油天然ガス上流事業活動実施庁解散などに従うなら、そのようなことが起こる必然性はない。
利益分配契約の運営と展開のための法規および手続きに関する詳細と契約コントラクターの完璧なリストを備える義務がインドネシア政府にある。利益分配契約コントラクターへの補助金がインドネシアにおける鉱物燃料市場の理解への落差の中に埋もれているために、それはきわめて重要なことなのである。利益分配契約の限度と規定のリストがあることがわかっていれば、国民はそこに規準を求めようとするため、更に有益なものとなる。その規準は利益分配契約の限度と規定に関する政策決定のベースにすることができるのだ。
利益分配契約のみならず生産者への補助金も税インセンティブからオフショー採鉱保有株式・融資・経費補填・国内市場価格政策・優遇関税率・国有事業体専用株・地元自治体への優遇などをカバーしている。補助金というカテゴリーに括られていない上の恩典が消費者補助金に容易に影響を与えることは、ご覧の通りだ。
このイシューは、他の諸国と異なり石炭発電所を建設して自立度を高めているインドネシアにおいて、石油燃料だけの専売特許ではない。石炭発電所は汚染性がきわめて高く、非健康的なのである。付け加えるなら、石炭での目に見えない事実上の補助金が環境に関する地方条例と保安の執行を骨抜きにし、政府に納めるべきロイヤルティと納税をないがしろにするイリーガル採鉱を誘発させている。
<電力補助金>
インドネシアの電力補助金についても、検討してみるにふさわしい。インドネシアの電力浪費の具体例はスディルマン通りやチランダッ地区で見ることができる。それらの地区には、大量の電力を消費するハイアール・サムスン・キャリアクラスのエアコンを完備した高層ビルが多い。オーストラリアやカナダのロワーミドル経済階層はエアコンのために電力を消費し、エアコンを生活必需品の位置に置くことをしない。インドネシアで起こっていることとは正反対だ。インドネシア社会で、電力使用コストはかれらの購買力を上回っているにもかかわらず、電力は過剰且つ非効率な使われ方をしており、そしてインドネシア政府はそれに補助金を頑固に適用している。それは生産者への補助金供与とは矛盾するものを生んでいる。国有事業体への巨額な補助金・化石燃料エネルギー資源を特定国内企業に市場価格より廉価に売る・資源に対する税金とロイヤルティを徴収しない・資源を国内証券市場に移転させる・生産コストの縮小・不正確な価値評価といったものがそれだ。矛盾と水漏れの多さという結果が腐敗・密売・癒着の扉を反映していることは言うまでもない。
そんな状況に対応して政府は何を行ってきただろうか?残念なことに、政府は短期的な政治安定のために、豊かさに頼って法規を取扱うことを優先してきた。ジャサマルガの最新建設、豪華な空港、そして化石燃料を消費する発電所のますますの増加は、本当は依存度の上昇を示しており、低下ではないのである。インドネシアの化石燃料市場はまったく効率に欠けている。
そうではあっても、消費者補助金をスケープゴートにする前にまったく無駄な生産者補助金の実態を見極めるほうがよいだろう。莫大な金額に上っていることがもうはっきりしている生産者向けの恩典を。
ライター: 韓国大田広域市ソルブリッジ国際大学准教授国際経営学主任 ウイル・ヒッケイ
ソース: 2013年4月29日付けコンパス紙 "Kecanduan BBM"


「プレミウムガソリン消費抑制システム開始」(2013年6月4日)
政府はついに補助金付き石油燃料販売抑制システムの開始に着手する。この抑制システムの詳細は2013年5月20日から23日までインドネシアジャカルタジェイピープル< http://www.j-people.net/ >に連載された「大掛かりな補助金付き石油燃料販売抑制手法が間近に」を参照いただければ幸いです。
5月31日にプルタミナ社企業広報担当副社長が公表したスケジュールによれば、新システムはまずジャボデタベッ地区および西カリマンタンと東カリマンタンの二州で2013年10月から本格スタートする由。ガソリンスタンドで給油の自動調整を行なうための機器設置は6月中盤から始められて二週間で完了させる予定。
一方、ジャボデタベッ地区と東西カリマンタン州のすべての自家用車にRFIDタグを設置する作業は7月から段階的に進められる。この措置に関連して石油天然ガス下流事業活動統制庁からその法的根拠となる規則が出される。
首都圏でその作業は二輪・四輪自家用車1千万台を対象に行なわれるが、自家用車へのRFIDタグ取り付け作業はガソリンスタンド・モール・バスターミナル・役所などで実施されるとのこと。ガソリンスタンドでの機器設置は都内で276ヶ所、ボデタベッと東西カリマンタンで570ヶ所。それが完了すれば住民への社会告知が三ヶ月間実施されて10月からの本格開始へとつながる。
このパターンは上記以外の州でも順を追って開始され、2014年半ばには全国34州のすべてに一律の補助金付き石油燃料販売メカニズムが定着するというスケジュールだ。その段階に至れば、全国にある1千1百万台の四輪乗用車、8千万台の二輪車、3百万台のバス、6百万台のトラック、そして5,027ヶ所のガソリンスタンドはすべて必要な機器が備え付けられ、政府のプレミウムガソリン・ソラル軽油コントロールメカニズムが網の目のように全国を覆う。その網の目を自分の車にからませないかぎり、補助金付き石油燃料は二度と買えなくなるにちがいない。
この消費抑制システムプロジェクトの現場での遂行を請け負ったPTインティは、設置される機材は国産品もあるが多くは輸入品であり、海外に発注したものが到着しだい設置作業を進めていく、と語っている。


「もう同じことは起こらないだろう」(2013年6月5日)
2013年2月24日付けコンパス紙への投書"Banjir dan Premium SPBU Pertamina"から
拝啓、編集部殿。2013年1月17日21時34分ごろ、わたしは東ジャカルタ市バスキラフマッ通りにあるプルタミナのガソリンスタンドでプレミウムガソリンを購入しようとしました。わたしの住居一円が洪水で水に浸かったためにPLNが給電を止めたので、わが家の発電機を動かすのが目的でした。ところが、わたしが持って行った石油缶にプレミウムガソリンを入れることをスタンド従業員は拒否しました。わたしはそのスタンドのマネージャーを探して事情を説明しましたが、石油缶では売れないの一点張りです。
再販の怖れがあるから、プレミウムガソリンを石油缶に入れてはならないという規則はわたしも知っています。しかしそのときは、都内全域が浸水しそうな緊急事態だったのです。わたしは小さな缶にでもよいから、少しでも売ってくれるよう何度も頼みましたが、洪水の被害を蒙っている都民を憐れむ心は持ち合わせていなかったようです。
現実に、道路脇では大勢がビンに入れたガソリンを小分け販売しています。プルタミナのガソリンスタンドからでなくて、かれらはいったいどこからそのガソリンを入手したと言うのでしょうか?多分かれらはガソリンスタンドの従業員と知り合いなのか、あるいはチップをもらってえこひいきをしてもらっているのでしょう。後部座席の左右に大きな石油缶をくくりつけたオートバイがプルタミナのガソリンスタンドで補助金付きプレミウムガソリンを給油してもらっている姿をわたしは何回も目にしています。その中味は1リッター容量のガラス瓶に入れられて道路脇で売られているにちがいありません。
結局わたしは仕方なく、そのガソリンスタンドで価格がプレミウムの二倍もするプルタマックスを買わざるをえませんでした。洪水の被害を蒙って苦しんでいる同じ都民が発電機に使うだけの燃料を入手するのに二倍もの金額を支出させて、少しも意に介さないのです。[ 東ジャカルタ市プロガドン在住、ハリス・ビナルディ ]


「ルピア軟化の黒幕はだれ?」(2013年6月17日)
昨今のルピア安の原因を投機家の動きのせいだと非難する政府の姿勢は正しくない。今週はじめには心理バリアーの1万ルピアを突破したものの、中銀の市場介入で1米ドル9,830〜9,880ルピアに戻っている。その結果、インドネシアの外貨準備高は激減した。中銀データによれば、2013年4月30日の外貨準備高1,072.69億ドルは5月31日に1,051.49億ドルに低落し、一ヶ月間に21.2億ドルも減少した。外貨準備高の大きさは輸出支払いや対外債務返済の能力を示すものだというのに。
1米ドル1万ルピアの線を割らないようにルピアの価値を保つべく外貨が市場介入に使われるなら、インドネシアの経済状況は深刻なものになっていく。つまり、ルピアの価値を弱める投機の動きはインドネシア経済の能力、特に対外債務返済や輸出支払いの能力をきわめて危険なものにしていく。
ならば、ルピアの価値を弱めている投機行為を裏で操っている黒幕はいったいだれなのか?市場の実態に目を通し、オブザーバーや国際信用格付機関が数ヶ月前に出した発言を思い返すなら、そんな投機行為の黒幕として指差される場にいるのは政府自身なのである。補助金付き石油燃料値上げの実施に逡巡し続けている政府の姿勢が市場関係者の投機行為を煽っているのだ。
格付け機関のスタンダード&プアーズは政府の補助金政策に関連付けて、インドネシアの経済見通しをポジティブから停滞へと引き下げた。この見解は3百兆ルピアに達する政府の補助金政策に関連している。インドネシアは経済改革のモメンタムを打ち捨てているのだ。
つまり政府は、早急に補助金政策、中でも既に常軌を逸してしまっている石油燃料補助金政策、政府会計のポジションを危険にさらしているその政策を改善するよう警告されているのである。原油と石油を輸入するための予算は大きい負担になっている。廉価な石油燃料価格は石油消費を統制不能なものにし、大部分が輸入されている原油と石油の需要が米ドルの需要を膨れあがらせているのだ。
昨日は政府の高官たちが、ルピア安は国民が政府の補助金付き石油燃料値上げを待っているのが原因であることを認めた。米国政府の政策に見られるように、世界情勢が米ドル流動性緩和を再び厳しい方向に向けなおしていることも確かに影響をもたらしている。だとしても、石油燃料補助金値上げにおける政府の優柔不断な姿勢こそがメインファクターを成しているのだ。
補助金付き石油燃料価格値上げをいまだに実施しようとしない政府の姿勢が対米ドルルピア価額の軟化を促進していることは明白だ。世の中に出現している種々の投機的動きの裏にいる黒幕は政府自身なのである。ユニークなことに、政府はその姿勢の欠点を自覚しているというのに、明瞭で確固としたステップをまったく踏み行なおうとしない。昨日現在でも、政府はいまだに議会や連立政党に対して補助金付き石油燃料価格値上げ政策への支持を呼びかけている段階だ。
だから、ルピアレートの急落の原因であるとして投機的動きを行なう諸方面を政府が非難するのは的外れなのである。ずっと以前から諸方面は政府に対し、石油燃料を含むさまざまな対象への補助金政策が経済の健全化を妨げていることを警告してきた。間違った監督が芝居を演出している。
ライター: ピーテル・ゲロ
ソース: 2013年6月13日付けコンパス紙 "Dalang Spekulasi"


「家庭用プロパンガスにブライトガスを」(2013年6月17日)
零細庶民の営業用を含む家庭用プロパンガスは、まったく同じものが3キロ入りボンベに入れば政府の補助金がつき、12キロボンベに入れられたら補助金はつかない、という状態になっている。つまりキロ当たり単価が3キロ入りと12キロ入りでは大違いだということだ。
緑色の3キロボンベがまだ世に流通していないとき、青色の12キロボンベ内のガスには補助金がついていたため、プルタミナは補助金で赤字補填する形の赤字販売を行なってきた。ところが3キロボンベが世に登場して補助金対象が12キロボンベから3キロのものに移されて以来、プルタミナは12キロを売れば売るほど赤字になるという状況に追い込まれた。その対策は値上げしかないため生産者のプルタミナは12キロボンベ入りLPGの単価を赤字のないレベルに引き上げたいと政府に要請してきたものの、その要請は何度も政府に蹴られており、小幅の値上げが数回行われただけだ。
そんな状況下に、プルタミナは2013年5月15日に新種の家庭用LPGを発売した。新種と言っても中身は従来のものと変わらず、容器のボンベが違っているだけ。
そのBright Gasと銘打った新商品は12キロ入りで、ボンベにはダブルスピンドル技術を使ったセキュリティシールキャップや衝撃によるガス漏れを防ぐ保護ラバーなどが装備されるなど、従来のボンベに比べていくつかの改善が施されている。ボンベの色はメタリックな青・緑・紫・マルーンの四色が用意され、台所の雰囲気をより明るいものにする工夫もこらされている。この12キロ入りブライトガスは最初ボンベと中身を448,500ルピアで購入しなければならないが、二回目からは空になったボンベと中身入りボンベを交換するために中身だけの価格である115,000ルピアを払えばよいということになる。
しかしプルタミナ側は既存の青色12キロ入りボンベ利用者がブライトガスに移行することを期待しており、その誘致策として空になった青色12キロボンベを下取りするので初回購入時でも中身の代金だけを払えばよいという呼びかけを消費者に対して行なっている。
ブライトガスはまず首都圏ジャボデタベッ地区で発売され、2013年末までに全国12都市でも販売がスタートする計画。メダン・パダン・パレンバン・バンドン・スマラン・ヨグヤカルタ・スラバヤ・バリ・ポンティアナッ・バリッパパン・サマリンダ・マカッサルがその12都市。
しばらく前に首都圏で青色12キロボンベ入りのものに品薄が起こり、エージェントが小売価格を上昇させて暴利をむさぼったという非難の声が出るような現象が起こった。プルタミナは暴利をむさぼったエージェントに制裁を与えるという発言を公表しているが、ブライトガスへの移行を促進させるために類似のことが今後も再発するにちがいない。
ところでプルタミナは更に、プロパンとブタンを混ぜた家庭用混合ガス燃料を9キロ入りと14キロ入りの二種のボンベに入れたものも発売した。このガスはEase Gasと命名され、Cocoガソリンスタンドとインドマルッ店で販売され、更に購入者の電話注文に応じて希望する住所に直接配達するサービスも開始される。
イーズガスのボンベは他のものに比べてずっとエレガントでクリーンであり、ボンベに使用されている鋼板は最高品質のものだそうだ。安全性を高めたシールキャップに加えてエキストラセーフティキャップも装備されている。
イーズガスの購入に際しても、空になった青色12キロ入りボンベの下取り交換が可能で、新しいイーズガスの初回購入は中身の価格である9キロ入りが95,000ルピア、14キロ入りは148,000ルピアを支払うだけでよい。
配達希望の消費者は下のコールセンターへ連絡すればよい。ジャボデタベッ地区内であれば、24時間以内に無料で配達してくれるとのこと。
PSTN : (021) 500 000 (all cities)
SMS : 0815-9500000
Fax : (021) 29495333
Email : pcc@pertamina.com


「ルピアの生殺与奪を握るもの」(2013年6月18日)
ルピアが激動している。二週間前、ルピアの対米ドルレートは9,800ルピア未満だったが、今週の火曜日2013年6月11日の中銀データでは、1米ドル9,860ルピアになった。ノンデリバラブルフォワード市場では心理障壁の1米ドル1万ルピアに達した。それと同時にジャカルタ証取のその日の商いで、総合株価指数は4,777ポイントから4,609ポイントへと3.5%ダウンした。
5月16日以来、対米ドルルピア交換レートがまだ9,800ルピアまで下がっていないときに、総合株価指数は累計で9.2%も低下している。債券市場でも売りの圧力が高まった。国債の10年もの20年ものは一日で利回りが35ベーシスポイント高まり、売値はダウンした。その売値低下は外国資金がインドネシアから引き戻されたのが原因だ。インドネシアの石油燃料価格政策の不確定さと米国経済の改善がその動きを誘っている。
<市場が報復を開始>
実のところ、その状況は何ら驚くべきものではない。筆者は2013年2月16日付けコンパス紙に掲載された「石油燃料で火遊び」と題する論説で、石油燃料価格が今すぐに修正されなければルピアレートがこうなるとの予測を示している。石油燃料問題のボールをスナヤンにパスすることで政府が示した暢気さは市場に落ち着かなさをもたらした。いくつかの点で市場は政治を理解しているとはいえ、市場が政治的な計算にかかずらわることはない。市場は数字と傾向しか見ないのだ。
問題は、国家経済に対する市場の期待の悪化速度と競争しなければならないことを政府が感じていない点にある。そして今や市場がインドネシアに報復を開始した。かれらにとって、資金を投資する先はインドネシアだけではないわけで、こうしてインドネシアから資金が引き上げられ始めたのである。インドネシア経済の発展に市場は十分な猶予を与えたように見える。それは、格付け機関のスタンダード&プアーがインドネシア経済の展望に対する評価を下げ、しばらく蔵相の座が空席になり、経常収支と2013年第1四半期の経済成長が落ち込んだにもかかわらず比較的安定していたルピアレートや総合株価指数の動きが示している。政府がパニックになっていないように見えるから、市場はパニックになった。落ち着いている政府の政策姿勢が市場に戸惑いを招いているのだ。政府は現実状況を本当に理解しているのだろうか、と。
政府は実際に鳴り続けている警報ベルを感知していない、と市場が考えてもおかしくはない。たとえば、経常収支の赤字は2012年第1四半期の31億ドルから2013年第1四半期には70%アップの52億ドルに増加した。もっとひどいことに、2012年第4四半期まで黒字で経常収支を補填していた資本収支がいまや13億ドルの赤字に転落したのである。資本収支の赤字転落はインドネシアの対外バランス維持が崩れたことを示しており、経常収支と資本収支の赤字を埋めるものは外貨準備高しか残されていないことを意味している。
<対外バランス>
2012年の外貨準備高は1,127億ドルで締まった。ところが三ヵ月後にはそれが1,048億ドルにまで低下している。それは短期対外債務の対外貨準備高比率が前四半期の48.5%から50.6%に上昇したことを意味している。つまり、市場がパニックに襲われて短期対外債務を外国投資家が全部引き上げたら、インドネシアの外貨準備高は半減して520億ドルになってしまうということだ。その外貨高は政府の対外債務と輸入決済の三ヶ月分にしか相当しない。政府がインドネシア経済についてどんなことを言おうが、インドネシアの対外バランスの悪化を示すそれらの数字は決して嘘をつかない。
それらの一連の流れが、外国投資家が遅かれ早かれ資金をインドネシアから引き上げることを促すだろう。去る火曜日に起こったように、それが急激且つ大量に行なわれたら、2001年以来さまざまな辛苦を乗り越えて打ち建てられてきたインドネシア経済は、再び崩壊してしまう。大半のひとびとにとってこの予想はあまりにも悲観的で、こじつけがあるように思えるかもしれない。しかしここ一週間に起こっていることは、単なる警告以上のものだと見てしかるべきだろう。
そして、この問題のすべてが石油燃料に端を発している。2008年以降、原油価格は大きく上昇したというのに国内石油燃料価格は据え置かれたままにされ、低廉な石油燃料価格は全国の石油燃料消費の膨張に貢献した。石油燃料の大半は輸入されているのである。こうして2013年第1四半期の石油輸入は前年同期実績99億ドルを上回る108億ドルに達し、石油収支に65億ドルという赤字を生み出した。
一群の政党や政治家がその石油燃料イシューを選挙のための舞台に利用しだしたことが投資家を更なる不安の中に投げ込んだ。それら政治家たちは、石油燃料価格を値上げしなくとも国家財政が破綻することはないと信じている。石油燃料値上げは諸物価を高騰させて庶民の生活を苦しめるというロジックがかれらの論拠になっている。しかし実態は石油燃料補助金政策自身が誤りを内在しているのであり、それは改善されなければならない。つまり本質問題は、政府が補助金を支払うための原資を十分持っているかどうかということではもはやないのだ。そればかりか、この国家予算クライシスを克服するための即効性を持つ完璧な代替案など他にないのである。石油燃料価格値上げ以外には。
ライター: ガジャマダ大学経済ビジネス学部教官、デニー・プスパ・プルバサリ
ソース: 2013年6月13日付けコンパス紙 "Nasib Rupiah di Tangan BBM"


「東アジアの緊張とインドネシア」(2013年6月20日)
大韓民国の国民はインドネシアに対して朝鮮民主主義人民共和国との外交や経済関係を断絶せよと求めてはいない。しかしインドネシア政府と国民に対し、その共産主義独裁政府とその体制に対してもっと強硬で厳格な姿勢を取るよう求めている。インドネシア政府はそれにどう答えるのだろうか?承諾、拒否、それとも沈黙?
その答えのいかんとは関係なく、インドネシア政府はこの時期を無為に過ごしてはならないのだ。現在そして将来に向けてインドネシアの国家利益に関わっている東アジアでの平和と安全保障を維持することへの貢献という一層広義なコンテキストにおいて、インドネシアは建設的実質的でアクティブな役割を果たさなければならないのである。
<インドネシアの利害>
ジオポリティックおよびジオエコノミーの概念における東アジアは世界有数の戦略的エリアをなしている。インドネシアにとっては特にそうだ。それゆえに、このエリアが不安定になることは、インドネシアの通商経済に大きな障害をもたらすことになる。
これまでインドネシアはそのエリアのすべての国と親しい関係を築いてきた。インドネシアが日本・中国・韓国などアジアの経済センターへの接近に努めてきたことは論をまたない。たとえば、日本との関係では、インドネシアは日本からの援助供与の形で資金を得るとともに、国内建設と経済発展のためにたいへん重要な投資を獲得してきた。一方、中国や韓国はインドネシアにとって重要な貿易相手国になっている。結局のところ、東アジアにおける安全保障が生み出されることにインドネシアは大きな利害を持っているのである。もしそのエリアで緊張が破れて衝突へと発展したなら、それは東南アジアに大きな影響をもたらす可能性が高く、インドネシアはもちろんその中に含まれているのだから。
米国・日本・中国・ロシアなど大国の利害がからまる東アジア地域の種々の緊張に対してインドネシアができることは何なのかというのが問題になってくる。その問いに答える前に、その地域に安定と平和をもたらすのを促すためにインドネシアが使えそうなものは何があるのかということを見てみるのも悪くない。
まず第一に、東アジア地域における広範なグローバリゼーションと相互依存があげられる。地域内諸国が緊張とコンフリクトに陥っていても、実際にかれら同士は通商経済面で互いに依存しあっている。あえてその面での損失を引き起こしてまで力の衝突を実現させようとすることはないために、その相互依存は緊張の高まりを緩和させる効果を持っている。それが中国による台湾の侵略を抑止している要因のひとつなのである。今や中国は台湾の輸出の四分の一を受け入れているという事実がそれを物語っている。1900年代初期に比べれば、その比率は二倍以上になっている。
一方、グローバリゼーションは少なくとも三つの方法で域内統合の進展にひと役買っている。(a)深化を増す統合は共同マネージメント、よりスペシフィックには国家の専権行為である法規や行政という形態でのマネージメントを必要とする諸問題を引き起こしている。(b)域内全般への影響が感じられる問題の多発。(c)グローバル経済の一体化は、通商経済競合パターンの激化を通して経済地域主義発展に強い刺激を与えていると思われる。
第二に、インドネシアはその地域に起こっている緊張に関わっている諸国と友好関係を結んでいる。インドネシアは日本・米国・韓国そして最近は中国・ロシアとも親密な関係にある。その友好関係が、北朝鮮の核問題や中国の台湾侵略問題といった域内の緊張を緩和させる場においてインドネシアがより大きな役割を演じるための元手になることは言うまでもない。
第三に、域外諸国から一目置かれている地域間協力の一形態としてのアセアンの存在があげられる。東アジアエリアの通商経済センター諸国がアセアンプラススリー(中国・韓国・日本)というメカニズムを通してアセアンと通商協力関係を結んでいる事実がそれを証明している。
<インドネシアの役割>
それらの潜在性を明らかにすることで、インドネシアはどのような方法で東アジアでのより大きな役割を演じることができるかがはっきりする。
第一に、インドネシアは二国間・多国間・地域間協力を通して継続的に東アジアにおける経済統合を促進させることができる。日本や中国など通商経済センターとなっている国々との友好関係を確立しているがゆえに、インドネシアはその種の役割を演じる力を持っている。たとえば日本との間でインドネシアは経済連携協定を結んだ。この種の経済協力は域内経済統合を一層促進させることが期待されている。それによって、より広範な規模における諸国のコンフリクトにブレーキがかかる。
第二に、インドネシアがその中でより大きな役割を演じることのできるアセアンプラススリー協力体制の強化がある。インドネシアはアセアンプラススリーをより大きな枠組み、すなわちメンバー諸国間の対話と協力を促進させて東アジアで進行しているコンフリクトに関する認識を共通化させるように押し上げていくことが可能なはずだ。
第三に、北朝鮮の核問題についてインドネシアは、東アジアに強い利害を持っている中国・日本・韓国・米国・ロシアなどの大国との友好関係を活用できる。それら諸国との友好関係は対話の拡大を促進させ、状況を悪化させるような姿勢や行動を防ぐことに活用できる。言い換えれば、インドネシアは域内のコンフリクトに関わっている諸国に対して、戦火の発生は極めて危険であり、すべてを崩壊させることになるのだということを確信させることができなければならないのだ。
要するに、インドネシアにとって東アジアはたいへん戦略的な役割と地位を持っている。特に中国のように比較的高い経済成長を有する国が持っている市場チャンスや投資機会は東アジアを他に代替できるエリアのない地位に据えている。そこで力の衝突が発生すれば、インドネシア経済は深刻な影響をこうむる。
そのためにインドネシアは関係諸国間の対話を促進し、力の対決は一切を崩壊させるがゆえに外交交渉の手段が採られるべきであるということをかれらに確信させるという、より大きな役割を演じなければならないのである。別の面からもそれが言える。1945年憲法が命じているようにインドネシアは世界平和を推進するという使命を帯びているのだから。
ライター: ガジャマダ大学社会学部政治学部国際関係政治学教授、ブディ・ウィナルノ
ソース: 2013年6月10日付けコンパス紙 "Kepentingan Indonesia di Asia Timur"


「ガソリン購入制限はまずジャカルタでトライアル」(2013年7月10日)
RFIDシステムを使った補助金付き石油燃料消費制限政策がいよいよ着手される。政府の計画はそのトライアルを2013年7月に実施することにしており、プルタミナは首都ジャカルタにある276ヶ所のガソリンスタンドに給油自動制御装置を取り付ける作業を進めている。プルタミナの通商販売担当取締役は、7月第一週中にもオンライン接続が完了すれば即時トライアルを開始することになる、と語っている。
その準備はおよそ三週間の遅延を見たが、それは装置の輸入に遅れが出たのが原因であり、都内の全ガソリンスタンドに装置が設置されれば今度は自動車のほうにRFIDタグを装着させてトライアルに入ると同取締役は説明している。
自家用車に対するRFIDタグ装着の義務付けは個人資産に対する義務付けという性格を持っていることから、それについての法的根拠が必要になるため政府は現在その規則を出すための準備に入っている由。しかし中央と地方の政府機関や国有事業体あるいは地方政府事業体の公用車はその限りでないため、まずジャカルタで登録されている公用車に対する装着はその規則発効を待たずに装着作業が行なわれているとのこと。プルタミナはその筆頭で、都内で稼動している3百台の公用車には7月1日から装着作業が開始されている。続いて全国のプルタミナ公用車および鉱エネ省公用車およそ1万台がそれに続くことになる。
その次に控えているのが国民の自家用車1千数百万台への装着作業で、それをどのように具体的に行なっていくのかについてはまだ標準作業プロセスが決められていないようだ。もうひとつ現時点ではっきりしていないのは購入制限量で、それを中央政府が全国一律で決めるのか、それとも地方政府が決めるのか、そのあたりもまだ明確な線が打ち出されていない。一方でカリマンタンでは、既に自家用車の補助金付きプレミウムガソリンとソラル軽油の一日当たり購入量上限を定めたところもある。
ともあれ、このトライアルがジャカルタで行なわれるということから、ジャカルタに登録されている自家用車のマジョリティにRFIDタグが装着された暁に都庁が購入制限量を定めるという手順は大いに想像できるところだ。このような方式が採られることになるなら、全国地元行政府が出してくる住民への案内にアンテナを高く張っていなければならないにちがいない。


「外島のほとんどがお粗末な競争力」(2013年7月18日)
2013年4月に北カリマンタン州が分離して34州になっているが、その前段階の全国33州が個別に持っている競争力についてシンガポール国立大学リークアンユー公共政策大学院が行なったサーベイ結果をまとめた書物が2013年6月25日に出版された。
この競争力の評価については、マクロ経済安定度・行政機関の企画・財務ビジネスと労働状況・生活クオリティとインフラ建設という四大項目に含まれる91のインジケータに関するサーベイにもとづいてなされたもので、データ収集ソースは三つあり、アピンド会員と経済学経営学教官へのサーベイ、州政府とのインタビュー、中央統計庁・中銀・投資調整庁などからの公表資料から集められた。
総合評価での上位は、ジャカルタ、東ジャワ、西ジャワ、東カリマンタン、リアウ島嶼、中部ジャワ、バンテン、バリ、リアウ、北スマトラ、パプア、南カリマンタン、バンカブリトゥンという順位になっており、それらの州は全国平均値を超えている。上のグループに入らなかった諸州は平均点を下回っており、インドネシア東部地方をメインとするそれら諸州は競争力が弱いという結論になる。数字を見ると、ジャカルタが飛び抜けて高い3.2ポイントを獲得して断トツの地位を占め、二位の東ジャワ0.911ポイントを大きく引き離している。西ジャワは0.908、東カリマンタン0.62、リアウ島嶼0.39、中部ジャワ0.29、バンテン0.26、そこからあとは0.1台の数字が並び、どんぐりの背比べになっている。
ソフィヤン・ワナンディ、アピンド会長はその格差について、経済開発が不均等であり、地方自治の時代になってその格差が一層激しくなっている、とコメントした。2004年から2012年までのGDPはジャワ島、特にジャカルタ・東ジャワ・西ジャワだけで全体の6割シェアを握っているありさまだ。競争力の低い地方は投資を盛んにする以外に経済建設を行なう道はないにもかかわらず、公的資金力は弱く、政府予算の6割が公務員人件費に使われているのが実情になっている。


「インドネシアは低成長時代に耐えられるか?」(2013年7月24日)
グローバル市場で競争力のある優れた品質の製品をインドネシアはいまだに効率よく生産することができない。政府の税制や金融政策も競争力向上を促進するものになっていない。APEC活用におけるインドネシアの戦略イニシアティブと題する討論会でアンワル・ナスティオン、インドネシア大学経済学教授が発言した。
教授は討論会の中で、インドネシア製品の競争力は弱く、テクノロジー活用も同様に貧弱であることを指摘した。一方で貸付金利率は高く、国有銀行ですら低利融資は見られない。その結果、国内市場でさえ国産品は中国産品に対抗しきれないでいる。品質規準に沿っていない中国産品が国内に入ってくるのは、インドネシア側の法確立ができていないからだ。消費に支えられてインドネシア経済は好調に見えるが、消費に頼りっぱなしではそのうちに破綻してしまうことになる。
マヘンドラ・シレガル副大蔵大臣は国際市場における一次産品価格の軟化について言及し、インドネシアの輸出をリードしている一次産品がこれから陥る暗い将来性がインドネシア経済を不安なものにする可能性について述べた。世銀の分析によれば、一次産品と原材料の国際市場価格は2025年まで低迷し、その間2011/2012年のレベルを超えることはない由。グローバル経済が低成長期に入ったことでインドネシアはその強い影響を蒙るだけでなく、インドネシア経済自身も既に低成長期の初期段階に踏み込んだというコンセンサスが醸成されつつある、と副大臣は語っている。
ギタ・ウィルジャワン商業大臣は、非常に強力な消費センターであるインドネシアはAPEC諸国にとって、たいへんセクシーな市場であると見られている、と言う。そのため、供給サイドの構想をこの先10〜30年後を見通して組み立てなければならない。大臣は特に米国の経済回復とエネルギー転換について強調し、それが持続的な経済変革だけでなくグローバルなジオポリティック地図をも画きかえるだろうとの予見を表明した。
バユ・クリスナムルティ副商業大臣は、1994年ごろの自由貿易時代と現在とでは大きな違いがある、と語る。現在はファンダメンタルな思考法が必要とされ、更に二国間や域内の協議が一般化している。1994年ごろの販売姿勢は輸出に大きなウエイトが置かれていたが、現在は国内市場が大きなターゲットに浮上している。ますます多くの国が国内市場保護の傾向を強めており、自由貿易を推奨している国ですらそんな状況に陥っている。
インドネシア経済がこれから進んでいく道程に関する分析を各スピーカーはそのように語ってこれからの方針に関する示唆を提示している。


「保税工場の国内出荷は50%まで可能」(2013年09月25日)
保税工場で生産される製品は輸出されるのが本筋ではあるものの、グローバルな経済状況如何でなかなかその原則を維持するのがむつかしい。国際市況が悪化しても、工場が生産高を維持して生き延びなければならないのは明白であり、そのバッファーとして国内市場への出荷をも国は認めている。
インドネシアには保税地区もしくは単体の保税工場が1千6百あり、立地はインドネシア領土内にあるのだが国外にあると仮想して輸出入時に賦課される諸税や課金が免除されている。それらの保税工場はこれまで、製品の25%まで国内市場への出荷が認められていたが、2013年大蔵大臣規則第120号で国内への出荷可能枠が50%に増やされた。それどころか、50%を超える製品を国内に出荷したい保税工場は、工業大臣のリコメンデーションを得ることで望むがままの数量を国内市場に出荷することも許される。言うまでもなく国内市場への出荷時には輸入手続きが義務付けられていて、最初から国内市場のために製品輸入を行なう場合との条件的差異は起こらないようになっている。
保税工場では、原材料であれ製品であれ、生産財であれ消費物資であれ、基本的に税関職員がその出入りを監視しているのだが、悪徳事業者が昔から往々にして入出荷手続きをごまかして税金を納めないまま国内市場に製品を流すことが行なわれてきた。今や税関本庁はその対応として、その工場が持っているはずの部品原材料や製品の在庫をオンラインモニターできるシステムを持ち、同時に保税工場のゲートも監視カメラでモニターできるようにしており、輸入税のかかっていない原材料や製品が闇にまぎれて国内市場に流されるのを防止する態勢が整えられている。


「工場用地価格は頭打ち」(2013年10月28日)
ジャボデタベッ地域で2013年度最低賃金が激しく上昇したことから、工場の首都圏離れというモメンタムが生まれた。その需要を受け入れようとして西ジャワ州ではプルワカルタやカラワンあるいはスバンへの工業団地開発の動きが起こったものの、需要はむしろ中部ジャワや東ジャワへと向かうベクトルが強まったようだ。
工業省データによると、西ジャワのプルワスカ(PURWAkarta-SUbang-KArawang)エリアにおける新規工業団地開発計画は5,150Haとなっている。一方中部ジャワではボヨラリ(Boyolali)で282Ha,クンダル(Kendal)の経済特別区(KEK)が796Ha、ドゥマッ(Demak)300Ha、スマラン(Semarang)451Ha。東ジャワではジョンバン(Jombang)818Ha、グルシッ(Gresik)3,285Ha、トゥバン(Tuban)200Ha、ラモガン(Lamongan)950Haといった内容。
しかし過去数年間継続した好況は既に下火になりつつあるのが明らかで、2013年第3四半期の全国工業団地成約状況は77.7Haしかなく、完全に息切れを起こしている感がある。その数値を報告したコリエールズインターナショナルインドネシアは、グローバル経済の軟化とそれに影響された国内経済のトーンダウンで新規需要が低下していることと、進出や拡張計画を持っていた企業が用地の手当てを既に終えていることの結果ではないかと分析している。
価格は需給関係から見て値上がりが起こるはずのない形になっているため横ばいだが、ブカシとカラワンだけは例外的に価格の上向きが続いている。これは用地ストックに余裕がなくなっているためである由。
インドネシア工業団地会会長によれば、2011年の工業団地入居実績は1,200Haあったが2012年は650Haに半減し、2013年はそれが500Haまで下がるだろうとの予測になっている。2013年第1四半期はそれでも350Haの実績があった。入居者の顔ぶれにも変化が起こっており、かつて需要の強かった自動車・家電・飲食品・その他消費アイテム製造セクターから最近は自動車や家電の部品や資材製造セクターに移ってきている由。


「オフィススペース需要も減退」(2013年10月29日)
工場用地需要が激減したのと同様に、都内一等地のオフィス需要も顕著な低下を示している。コリエールズインターナショナルインドネシアはそれについて、経済の悪化と価格・料金の過剰な上昇がその原因だろうと分析している。
2010年から2012年にかけての好況期に都内のオフィススペースは30万から36万平米の成約があったが、コリエールズは2013年の予測について、過去の半分を下回る15万平米程度ではないかと見ている。景況がよくないのに加えてルピアレートの軟化が多くの企業に事業拡張のタイミングを見合わせるよう強いているとのこと。スペースオーナーが売値あるいは賃貸料金を強気で引き上げてきたことが企業側の躊躇を色濃いものにしている。
都内CBD地区のプレミアム賃貸物件は平米当たりひと月40〜50米ドルで、売却物件の場合は平米当たり4千〜5千米ドルになっている。2012年は、平米当たり43米ドルを超える賃貸物件はなかったし、売却価格も最高で4千万ルピアだったものがそれぞれ大幅な値上がりを示しているのは、供給量が底をつきかけている状況への思惑がらみという印象が強い。しかし消費者はそれと異なるカードをつかんだようだ。都心部よりもまだ廉価な周辺部、中でも南ジャカルタ・西ジャカルタ・タングランのスルポンといったビジネス地区への志向が消費者の間で高まっており、コリエールズは大々的なエクソダスが起こる可能性を否定しない。
ところが今年後半になって明確化しはじめたMRTやモノレールの建設計画が都心部での新たなビル建設を促しはじめており、スディルマン通り界隈の古くなったビルを取り壊して土地利用効率のもっと高いビルに建替える方針を決めたオーナーも出現している。築後20年を超えるビルの建替え計画を出してきているのは、スディルマン通りで2件、ラスナサイッ通りで1件の合計3件だ。


「プロパンガス市場価格のメカニズム」(2013年11月04日)
2013年7月6日付けコンパス紙への投書"Harga Isi Elpiji Pertamina"から 拝啓、編集部殿。2013年6月8日付けコンパス紙19ページの「LPGがまた品薄」という記事によれば、プルタミナの企業広報担当アリ・ムンダキル副社長が「12kg入りLPGの価格を7万5千ルピア超に値上げした複数の代理店を処分した」と述べたそうです。
皮肉なことに、わたしは2013年6月8日朝12kg入りLPGを8万2千ルピアで買いました。領収書もあります。LPG販売店はいずこも8万2千から8万5千ルピアの価格をつけており、二週間前からその価格に値上がりしているのだと言っています。ところが政府は12kg入りLPGの価格値上げを承認していません。政府のその表明はマスメディアを通じて公表されています。ところがプルタミナや小売店はひそかにその値上げを行なっているではありませんか。関係当局の注意を喚起します。[ 西ジャワ州ボゴール在住、イェ二ー・ルスディ ]
2013年7月31日付けコンパス紙に掲載されたプルタミナ社からの回答
拝啓、編集部殿。イェ二ー・ルスディさんからの2013年7月6日付けコンパス紙に掲載された、12kg入りLPGのプルタミナ代理店価格上限7万5千ルピアを超える8万2千ルピアで小売購入されたという投書に対する回答は次の通りです。
プルタミナ製12kg入りLPGには政府の補助金がついておらず、販売価格は製造コストを下回っています。つまりLPG利用者はこれまで、プルタミナからの補助金を享受していたということになるのです。すべてのプルタミナLPG公認代理店はPTもしくはCVの社名を記載したサティフィケートを持っていますが、多くのケースで消費者は小売業者を公認代理店と混同して表現されるので、混乱してしまうのが普通なのです。
プルタミナはその公認代理店レベルでの販売価格上限が7万5千ルピアであることを保証しており、現場での厳しい監視と違反者に対する厳格な処罰を継続して行なっております。しかし公認代理店から仕入れて再販している商店や小売販売業者の消費者に対する価格はその市場の特性と状況次第であり、プルタミナの統制が及ぶところではありません。消費者の皆さんが12kg入りLPGを購入される際には、最寄のプルタミナ公認代理店、プルタミナと提携しているミニマーケットあるいはガソリンスタンドで購入することで公的な価格が適用されるようになります。
市場で12kg入りLPG価格の乱高下が起こればプルタミナはいつでも価格安定オペレーションを行ないますし、12kg入りLPGが市場で品薄にならないよう、供給の安定化に努めております。[ プルタミナ企業広報担当副社長、アリ・ムンダキル ]


「いよいよRFIDタグ取付けを開始」(2013年11月26日)
石油燃料補助金軽減政策の一環で政府とプルタミナが進めているすべての四輪二輪自動車への消費抑制方針がいよいよ次の段階に入ったようだ。その政策の内容については、「プレミウムガソリン消費抑制システム開始」(2013年06月04日)をご参照ください。
プルタミナがこの方針の現場での実施者に指定したPT INTIは既に276ヶ所あるジャカルタのガソリンスタンドで制御機器の設置を終え、次のステップである自動車に対するRFID( Radio Frequency Identification)タグ取り付け作業を開始した。全国で1億台を超える車両への取り付けがなされるのだが、その一億台は8千万台の二輪車、1千1百万台の乗用車、トラック6百万台、バス3百万台などで構成されている。全国にあるそれだけの車両に、これまた全国に5,027ヶ所あるプルタミナガソリンスタンドと150ヶ所のPT INTI事務所で取り付け作業が行なわれる。
計画では、国家の死命を制する首都圏からその取り付け作業実施が始まることになっており、当初の日程計画だった2013年9月9日から12月31日までという首都圏でのスケジュールがそのまま踏襲される。スタートの遅れから、四ヶ月という計画期間が一ヶ月に短縮されるわけだが、これはまあ、エンディングが先延ばしされる可能性を含んでのものだろうと見ることもできる。ともあれ、タテマエでは年内で完了させることになっているわけだから、プレミウムガソリンやソラル軽油の購入を続けたい車両オーナーは、早めにRFIDタグ取り付け作業を最寄のガソリンスタンドで済ませるにこしたことはなさそうだ。
このタグ取り付け作業は消費者のほうから申請しなければならない形を採っており、政府側は「申請しないひとは補助金付石油燃料の購入を希望しないひと」という姿勢で臨んでいるから、申請者が結果的に少なければ、それは政府にとって望むところという結末になる。
申請は、自動車税納税証明書とプレート番号の証明書を兼ねているSTNK(自動車番号証明書)の原本とKTP(住民証明書)を持参して、最寄のガソリンスタンドで設置を申請する。STNKに記載されている名義人とKTP上の名前が異なっても、問題なく受け付けてもらえるそうだから、代理申請が保証されているということだ。取り付け作業場所では、申請者が提出するSTNKのデータをRFIDのチップに記録してから、RFIDを車両の給油口に取り付ける。一度取り付けたRFIDは外すと破壊されるようになっているそうで、別の車両に移すことは不可能とプルタミナ側は言っているが、知恵豊かなインドネシア人はきっとそれを克服する方法を見つけ出すことだろう。
全プロセスは5〜10分で終わるらしい。取り付け作業手順には5Dという名前が付けられた。Datang - Didata - Diprogram - Dipasang - Dibacaというのが手順の詳細。data はSTNKデータのコンピュータへのインプット、program はRFIDのチップへそのデータを焼付けることを意味しているようだ。使われるRFIDはUL−94をクリヤーしている品質のもので高い安全機能が持たされており、熱や火あるいは化学物質への露出による劣化がきわめて小さいとのこと。
PT INTIは既に78万台分のRFIDを在庫しており、11月最終週に250万台分、更に12月初には150万台分が入荷して来るので、ストック不足は絶対にない、とインティ社は太鼓判を押している。


「LPG消費者価格に値上がり」(2013年12月11日)
昔は消費者に対する政府の補助金がつけられていた12キロ入りボンベに詰められたLPG(プロパンガス)は、メロンと愛称される3キロ入りボンベのものが補助金付きで発売されて以来、補助金の対象から外された。12キロ入りボンベに詰められたLPG(以後12キロボンベLPGと略す)は実コストの4割前後の補助金が付けられていただけに、プルタミナとしては時間をかけてでもそれだけの値上げを行なわざるをえない。ところが、政府はその値上げをなかなか承認しないまま長い年月が経過しており、プルタミナはついに正面攻撃から搦め手へと戦術を変化させた。価格はそのままにしてコスト削減をはかり、赤字を減らそうというものだ。そこまでは世界中のどんな会社でも同じ発想をするのだが、プルタミナの場合は製造プロセスにおける合理化でなく、プロセスの中で発生しているコストを消費者に付け替えるという手段が採られた。要するに、自分が負担していたコストを他人に負担させようというものだ。
プルタミナのLPG販売ネットワークでは、ガスが消費されて空になったボンベが回収されて再充填場まで届けられる。そこで再充填がなされると、ガスの詰まったボンベはプルタミナと契約している代理店に卸される。これが大卸に該当する。そしてこの代理店が市場における核となり、その代理店と契約している販売店に回されて消費者に小売される。政府が定めている12キロボンベLPGの市場販売価格というのはプルタミナの代理店が購入者に販売する価格であり、消費者のほとんどはそこから卸を受けた販売店から買っているため、その価格と消費者購入価格は別物になっているというのが現実の姿だ。おまけに販売店の再販価格は完璧に政府の統制を免れているから、ガス燃料も石油燃料と同じで、政府が消費者価格を統制しているのは補助金付きアイテムだけに限られているのが実態だ。それでも補助金の付かない石油燃料は政府が消費者向け販売価格を決めているからまだ政府の意志が織り込まれていると言えるが、ガスのほうはプルタミナと関係を持たない小売販売店に委ねられているから、政府の意志などどこにも漂っていないということになる。
プルタミナは契約代理店の12キロボンベLPGの販売価格を7万から7万5千ルピアと定め、厳格にそれを守らせている。ところが、2013年12月1日から再充填費用のキロ当たり213ルピアと配送費用のキロ当たり250〜500ルピアを契約代理店に上乗せ請求することにした。言うまでもなく、契約代理店はその付け替え費用を販売価格に上乗せしてよいことになっている。つまり、この時点で既に、プルタミナ契約代理店は市場の一般販売店に対し、12キロ入りボンベ一本を5千5百から8千5百ルピア上乗せして売ってよいことになったということだ。販売店はさらにそれをマークアップするに決まっているから、消費者は今後12キロボンベLPGをこれまでの価格に1万ルピア前後上乗せして買わざるを得なくなるに違いない。


「農業離れは先進国への移行指標」(2013年12月27日)
10年間で全国の農業セクター従事家庭が510万世帯減少した。2013年の中央統計庁農業センサスによれば、全国の食糧・園芸・農園・牧畜・養殖魚業・捕獲漁業・森林・農業サービスの諸セクターを生計のための活動にしている家庭は2,614万世帯あり、2003年実績から16.3%に該当する510万世帯が減少したことをそれは示している。各セクターごとの世帯数推移は下の通り。
セクター: 2003年⇒2013年
食糧栽培: 1,871万⇒1,773万
園芸: 1,694万⇒1,060万
農園: 1,413万⇒1,277万
牧畜: 1,860万⇒1,297万
養殖漁業: 99万⇒119万
捕獲漁業: 157万⇒86万
森林: 683万⇒678万
農業サービス: 185万⇒108万
一軒の農家はたいていが複数の活動を行なっているため、上の合計は総世帯数をオーバーしている。
一軒の農家は平均2Haの農地を使っているが、食糧栽培セクターに限っては0.5Haしかなく、稲作農民が狭い土地にひしめきあっている状況がそこから推し測られる。
農業大臣は世帯数の減少について、先進国型への移行を示すものであり、ポジティブな現象だ、とコメントした。用途転換による農業用地の減少とそれは表裏の関係にあり、二次産業三次産業の興隆が一次産業従事者の職業移動を促していることは論を待たない。
たとえば中部ジャワ州では、過去十年間に零細農家132万世帯が非農業セクターに移った。かれらが持っていた狭い土地は他の農家に賃貸あるいは売却されている。2003年の農家数577万世帯は2013年に429万世帯まで減少し、年率平均は2.6%になっている。
用地転換の顕著な西ジャワ州でも、過去十年間に430万世帯から306万世帯に、およそ三割近くの減少が起こっている。


「投資ネガティブリスト改定」(2013年12月30日)
政府は投資ネガティブリストを改定する意向で、特にインフラ建設への外国投資拡大のために基礎インフラへの外資百パーセントを認める計画。2013年12月24日時点で政府は、投資分野における閉鎖事業区分と条件付開放事業区分に関する2010年政令第36号の改定内容が既に固まったことを明らかにした。
まずエネルギーと鉱物資源区分では、政府民間協力事業の枠内で10MWを超えない発電事業に外資百パーセントがコンセッション期間中に限って認められるようになる。政府民間協力事業の枠外であれば外資上限は95%まで可能になる。政府民間協力事業の枠内でコンセッション期間中であれば、発電以外にも送電や配電事業で同じ扱いがなされる。
公共事業区分では、上水道事業や自動車専用道事業が外資95%まで、また運輸区分ではバース、コンテナターミナル、液体とドライバルクターミナル、ローローターミナルなど港湾施設が外資95%まで認められることになる。陸運ターミナルは49%まで外資に開放され、他にも製薬事業は従来の外資枠75%が85%に引き上げられ、広告宣伝事業は外資最大51%、またベンチャーキャピタル事業は外資枠が80%から85%に引き上げられる。
一方、流通事業分野では反対に外資への規制が強められる。外資は最大シェア33%でスマトラ・ジャワ・バリでの倉庫・配送・コールドストレッジ事業だけが可能になる。
中小事業への外資受入れは今回の改定でも行なわれないことが確認された。小規模事業に関する1995年法律第9号によれば、小規模事業の定義は次のようになっている。
1)事業所土地建物を除く純資産が2億ルピアを超えない
2)年間売上高が10億ルピアを超えない
3)インドネシア国籍者の所有
4)大中規模事業と直接あるいは間接の関係にある支店や子会社でなく、自立している事業体
5)個人事業・非法人事業・法人事業で、協同組合形態を含む
しかし中小零細事業に関する2008年法律第20号ではそれぞれのクリテリアが次のように定義されている。
零細事業 資産5千万ルピア以下 年間売上高3億ルピア以下
小規模事業 資産5千万〜5億ルピア 年間売上高3億〜25億ルピア
中規模事業 資産5億〜100億ルピア 年間売上高25億〜500億ルピア
また各省庁ではそれぞれ異なる定義がなされているので、省庁ごとの許認可はその定義にあわせられることになる。
ともあれ、投資ネガティブリストの中で中小規模事業者に限定されている事業区分から外資は完全に排除されており、それらの事業はインドネシア国籍者しか操業できないため、外国人がその事業に関与できる余地はない。


「西ジャワから中部ジャワへ工場移転の波」(2014年1月14日)
西ジャワ州諸県市の最低賃金が決定されてから、州内の多くの企業がもっと賃金の低い地方に移転することを決めた。ただし生産を一日たりとも止めることができないため、まず現在ある工場はそのままにして移転先の土地に新規に工場を設けるという拡張形式をとり、新工場での生産を増やすのにあわせて旧工場の生産を縮小させ、最終的にすべての生産を新工場で行えるようになった時点で旧工場を閉鎖するというパターンを踏むのが一般的になりそう。西ジャワ州だけでなくバンテン州タングランにも同じようなパターンで工場移転を行なうことを決めた企業がいくつか出ている。
アピンド西ジャワ州支部長は、移転を決めた会社は30社あり、大半は中部ジャワ州スラカルタを移転先に選んだとのこと。州外に出ない企業はマジャレンカを移転先に選択したところが多く、およそ10社が既にマジャレンカの工業団地で工場建設を開始しているという話だ。
西ジャワ州知事が定めた2014年州内県市別最低賃金の最高はカラワン県の2,447,450ルピア、最低はマジャレンカの1.000,000ルピアとなっている。
人件費上昇の影響が特に大きい労働集約産業のひとつである繊維業界では、5社が移転を決めたとのこと。繊維業協会西ジャワ支部事務局長は、移転先にマジャレンカを選んだところもある、と語る。「ボゴールで操業していればひとりに224万ルピアを支払わなければならないが、それが100万ルピアになれば競争力に格段の差がつく。各工場とも合理化は既に実施済みであり、残された対策はこのようなものになってしまう。」
西ジャワ州知事はこの工場エクソダスの波について、州政府は工場移転を望んでいないが、賃金が高すぎるという理由であればいたしかたない、とお手上げの表情。「どうしても移転するというのであれば、他州でなく州内の別県市に移転するようにしてほしい。」と希望を語っている。


「攻めから守りに転じた不動産業界」(2014年1月15日)
不動産業界は景気のかげりと選挙の年が重なったことから慎重の上に慎重を加えはじめており、新規着工はもとより、これまで進めていた建設プロジェクトですら可能なものはスローダウンさせる傾向が生じている。特にルピアレートの軟化は米ドル建てのコストを多く含むプロジェクトの継続を困難にしており、嫌応なしに工事が中断するものも出てきそうだ。業界のこの姿勢は、少なくとも政治新体制が確定するまで継続するものと見られている。
コリエールズインターナショナルインドネシアのリサーチ部門参事によれば、金利率上昇とルピアレート軟化のためにオフィス・小売・工業団地の新規スペース供給は2013年から停滞状況に陥っており、不動産業界のスローダウンは今にはじまったことではないとのこと。そんな状況であるため、2014年の不動産販売価格や賃貸料金は2012〜2013年のような高騰は起こらないだろうと予測されている。「政治体制がどのようになり、経済活動にどのような変化が訪れるかというポイントが見極められるまで、業界各社は方針の腰が定まらないだろう。それがはっきりするまで業界は攻めの姿勢を抑えて守りの態勢に入る。」
ジャカルタのCBD地区における2013年のオフィススペース総供給量は470万平米で、そのうち81%は賃貸スペースだ。そのうちのAグレードは、ルピア建ての場合平米当たり35〜60万ルピアで96〜98%が入居済み。値上がりについては、前年から34.2%もアップしている。米ドル建ての物件が値上がり率10%で納まっているのは、既に高くなりすぎているという認識が共通項になっているためだろう。
2014年の賃貸料金値上がり予測は、ルピア建てが15%、米ドル建て10%となっている。一方販売価格は2014年も2013年と横並びの平米当たり6千万ルピア前後となりそう。非CBD地区では2〜4千万ルピアというレベルが続く見込み。


「日本からの牛肉輸入が解禁」(2014年3月3日)
インドネシア政府は日本からの和牛肉の輸入を認めることを決めた。インドネシアでもWagyuという名称で知られている世界最高級牛肉の和牛肉は近年高い人気を集めており、国内需要は年々10%の伸びを示している。これまで国内市場に流れていた和牛肉は少量の国内産品とオーストラリア及びニュージーランドからの輸入品に限られていたことから、日本の畜産界からの要望に今回インドネシア政府が応じる姿勢を示した。国際獣疫事務局(OIE)が日本を口蹄疫非汚染国に認定したことも、インドネシア側にとって日本からの和牛肉輸入に関する障害を大幅に軽減する効果をもたらしている。
日本の畜産界は単に和牛肉の輸出だけに限定せず、インドネシアでの和牛飼育も視野に入れており、大型投資が見込まれることからインドネシア側にとってメリットは大きい。おまけに日本側がインドネシア産家禽肉加工製品の輸入に扉を開くことを約束したことで、インドネシア政府にとっては更なるおまけ付きといったところ。


「ケンペ工業団地がオープン」(2014年3月19日)
ジャワ島からバリ島に渡るフェリー港クタパン(Ketapang)を指して東行すると、シトゥボンド県のバルラン(Baluran)国立公園西側をかすめながら道路は南行きに変り、山越えが終わればそこはジャワ島東端バニュワギ(Banyuwangi)県最北端のウォンソレジョ(Wongsorejo)郡だ。そこからクタパンまでおよそ20キロ、クタパンからフェリーに乗れば、一時間後にはバリ島ギリマヌッに到着する。バニュワギ県はそのウォンソレジョに県最初の工業団地をオープンした。
総面積718Haのケンペインダストリアルエステート(Kempe Industrial Estate)は国営農園会社PTPN XIIの所有地作られ、この工業団地にはコンテナ港が設けられて、物流はスラバヤ港を中継して国内各地あるいは国際航路への接続がなされるという構想だ。陸路を走ればおよそ250キロの距離になるスラバヤへのトラック輸送は、将来的に自動車専用道がスラバヤ〜パスルアン〜プロボリンゴ〜シトゥボンド〜バニュワギと延長されてくる計画の進捗状況と道路事情の悪化に伴って一般道での走行効率が低下する速さの兼ね合いになる可能性が高い。
このケンペ工業団地は、地主の第12国営農園会社、港湾管理国有事業体プリンド?そしてスラバヤインダストリーエステートルンクッ(Surabaya Industri Estate Rungkut)の共同事業として営まれる。港湾管理国有会社がそこに誘われたのは新規に作られるコンテナ港の建設と運営のため、スラバヤの工業団地会社は工業団地経営面の実務のためとなっている。
工場用地のステータスは20〜30年のHGU(土地耕作権)にもとづく契約となる予定。国有事業体相によれば、この工業団地構想は三年前からバニュワギ県庁が進めていたもので、三つの国有事業体がその構想を受けて前向きに取り組んだ結果今回実現の運びとなった由。工業団地が必要とする電力はジャワ=バリ送電系に頼ることになり、水は団地から10キロ離れたバジュルマティに建設中のダムから得られることになる。
ケンペ工業団地への入居を希望する会社が既に名乗りをあげている、とバニュワギ県令は語る。バニュワギ県は農業生産が経済の主体を占めており、農作物ベースの食品加工業はたいへん有望で且つ有利な産業になるだろう、との県令の弁。


「電力会社の強奪サービス」(2014年3月19日)
2013年10月23日付けコンパス紙への投書"Petugas PLN Berhak Beraksi Lompat Pagar Rumah"から
拝啓、編集部殿。去る9月3日に123PLNコンタクトセンターに連絡したわたしは、わたしが南ジャカルタに持っている空家の電力メーターと設備一式が、家主への連絡も地元町内世話役の許しもなく取り外されたことを確認して驚きました。町内世話役の家はその目と鼻の先だというのに。
わたしが家主であるその空家は交通繁華な大通りに面しており、塀も高く、そして完璧に戸締まりがなされていたのです。設備が取り外されたというのに表門の錠前は壊れていないことから、PLN職員の行なった取り外し作業は、塀を乗り越えて中に入った上で行なわれたことのように思われます。PLN職員は対顧客サービスを行うにあたって、もっと妥当で上品な行動が選択できなかったのでしょうか?
PLN123の電話の相手は「済みません」と言いながらも作業は規則に則ったものであることを強調していましたから、PLNは職員が必要に応じて泥棒の真似をするのを承認していることになります。しばしば発生する巡回停電への理解をわたしや他の消費者に求めている一方で、空家の電気代146,036ルピアの滞納が書面での通知も確認も許可もなしに勝手に塀を乗り越えて電力メーター設備一式を職員が持ち去ることをよしとするというその神経はいったいどういうことなのでしょうか?
123PLNコンタクトセンター職員はわたしの苦情に対して傲岸な口調で、新しい設備の設置を申請するように言いましたが、その費用はなんと2百万ルピアを超える金額なのです。PLNが収入増をはかる新手の手口がこれなのでしょうか?[ 東ジャカルタ市在住、ミア・ファウジア ]


「インドネシア海域は本当に危険?」(2014年3月27日)
インドネシアの水域は海賊や盗難の多発する危険海域であるとする国際海事機関の判定はもう数十年の間、完全に定着した観がある。しかし、その判定は本当に正しいものなのだろうか?妥当性のない根拠が使われているのではないのだろうか?インドネシア海軍西部方面艦隊海上保安グループ司令官が疑問を呈した。なぜなら、外国船あるいはその乗組員が事件の報告を行うものの、インドネシア官憲の取調べや検証が頻?に拒否されているからだ。「国際海事局などに被害届は出すのに、インドネシア政府がその詳細を取調べようとしても、船が泊地を変えていたり、あるいは乗組員がインドネシア官憲の要請に応じようとしない。」
国際海事局は受けた届出をすぐに公表するため、インドネシア政府はそれから事態の調査に取り掛かることになり、届出を行なった船あるいは乗組員がインドネシア政府に非協力的であるために事件の調書が作られないことになる。結局、本当にあった出来事なのかどうかの確証がないまま、インドネシア政府が国際社会にアピールを出さないために、届出だけが事実としてひとりあるきしている。
そのためインドネシアの水域はハイリスクエリアとされ、航行する船は高い保険料を支払わなければならない。インドネシアの船は軒並みその対象になってしまう。
また国際社会からの悪評価も、国益をそぐ結果をもたらしている。国際航路がその領海を通っているというのに、インドネシア政府は自国領海の保安を確立させる力もない、というのがその悪評だ。その事態は西部方面艦隊司令官にとって、きわめて不本意な現象である。「われわれは国際航路を保全するために、最大限の努力を払っているというのに・・・。」
調書の作られない事件の届出がある一方、インドネシア官憲が取調べを行なうことのできたケースでも、乗組員の証言が曖昧なため事実かどうか疑わしい印象を受けるものも少なくない。「海賊や盗難などの犯罪行為の被害者になったという届出が出されていながら、事件発生の場所や日時のデータすら乗組員が明白に証言できないケースや犯人の人数や特徴が細かく証言できないケース。眠っていて目が覚めたら船内の物品がなくなっていた、というような事件が多い」海上保安グループ諜報アシスタントは述べている。


「原子力発電所はバンカブリトゥンに建設」(2014年4月2日)
国家原子力庁がいよいよ原子力発電所の建設にとりかかる。人口3千万人に満たないマレーシアが28ギガワットの電力を国民に供給しているというのに、人口がその8倍もあるインドネシアは40ギガワットしか供給できておらず、慢性的な電力不足を克服するためにも原子力発電は見逃しておくことのできないファクターである、と国家エネルギー評議会もその方向性を支持している。
インドネシアで計画されているはじめての原子力発電所は、まだ実験段階であることおよびリサーチを主目的にしているといった理由から、発電能力10メガワットという小型のものになる。それをどこに設けるかということについても、安全を最重視した立地条件を求めなければならず、地学的要素並びに住民の受入れ姿勢をもとにバンカブリトゥン州が選択された由。
国家原子力庁にも国民にも、2011年3月に日本で起こった福島原発事故がもたらした教訓が重くのしかかっており、今回インドネシアで作られる原子力発電所は最新テクノロジーを駆使した第4世代のものにして安全性を高める一方、国内で産出するトリウムが使用できるというメリットをも追及する構えだ。このプロジェクトを是非成功させて、国家原子力庁は国民に原子炉の運転と管理を行なうことができることを実証し、またインドネシアがそれを遂行する能力を持っていることを世界に向けて示したい、と国家原子力庁核エネルギーシステム研究センター長は抱負を述べている。


「海底に住むカニはラジュガン」(2014年4月4日)
海中でのみ棲息しているカニはラジュガン(rajungan)と呼ばれる。ラジュガン加工品のアメリカ向け輸出が受注を満たせない状況になっており、近海産ラジュガンの水揚げ増が期待できないことから、政府は輸入クオータを大幅に増やす意向。
現在、ラジュガンの水揚げ量は年間7万トンで、加工産業界総需要の65%を占め、残りは中国やベトナムを主体に年間3万7千トンが輸入されている。海洋漁業省水産品加工販売総局長は、2014年の輸入クオータを9千から1万1千トンほど追加する予定だと語った。ラジュガンの大生産国である中国からの輸入増の検討が現在進められている由。
アメリカ向けインドネシア水産加工品輸出のナンバーワンは海老で、カニは第二位に位置している。第三位がツナだ。2013年アメリカ向け水産加工品輸出は14万トンで14億米ドルを稼ぎ出した。金額の明細では、9億ドルが海老、1.9億ドルがカニ、1.15億ドルがツナとなっている。カニ加工品の中では缶詰が8割を占める。海洋漁業省は2014年のアメリカ向け輸出高を一挙に17億ドルに伸ばそうとしており、カニ加工品の生産量を高めるには、シーズン製の高いラジュガンの国内捕獲だけに頼ってはいられない、というところがホンネのよう。これまでカニ加工産業の使っている素材はガザミやズワイガニがメインを占めている。
インドネシアの産業構造で普遍的な一次産品の未加工輸出というのは水産業界でも同じで、インドネシアからの水産品輸出は生鮮品と冷凍品がもっぱらになっており、加工して付加価値のついた商品は総量の25%しかない。政府は水産加工品輸出を年率5%で伸ばしていきたい方針で、特にカニ・ツナ・海老・フエダイに力を注ぐことにしている。


「未加工の貴石原石は輸出禁止」(2014年4月9日)
2013年6月から11月までの間に、貴石原石の密輸出で税関が押収した貨物はコンテナ6本とクレート3梱包にのぼる。メインを占める貴石類の明細はカルセドニー、碧玉、水晶など。現行輸出規則では、未加工のまま原石を輸出することは禁止されており、加工したものは輸出できるが、輸出関税が20%かけられることになっている。税関によれば、それら押収した物品の輸出税は4,850億ルピアと見積もられている。
貴石類の輸出については、だれでも輸出できるというものでなく、輸出者登録をしてライセンスを取得していなければならない。さらに輸出するに際しては、輸出承認書とサーベイヤの貨物検査報告書も添付されなければならない。税関が押収した貨物の輸出者は5社あり、密輸の手口は虚偽申告で、自然石などと偽って申告しており、また貨物も合法品の間にこっそりと隠された状態になっていた。船積先は台湾・中国・アメリカ。
それらの貴石類はスカブミ、タシッマラヤ、ボゴール、プルバリンガ、チラチャップで産出するもの。輸出者は1995年法律第10号を改定した2006年法律第17号「通関法」の規定に違反しており、虚偽申告で国庫収入に損失を与えた者は損失額の最低百倍から最高千倍の罰金を納めなければならない、とされている。税関総局長は、押収した貴石原石は国の所有に帰するものとして取扱いたいとその処置を提案している。


「遅々として進まない石油消費削減」(2014年4月16日)
補助金付き石油燃料の消費量削減を目的にして、全国にあるすべての車両の燃料購入をコントロールしようという壮大な計画は、実際蝸牛の歩みに近い。RFIDタグをすべての車両に取り付け、全国のガソリンスタンドにタグデータ判読とデータセンターが発する給油可不可の信号に応じて給油ノズルを開閉させる設備を取り付け、毎月の購入データに応じて割当量の残りしか給油できないように強制するシステムはもともとプルタミナの発案で、政府がそれに乗って実行準備を進めさせているわけだが、パイロット地区となっているジャボデタベッでのRFID取り付け作業はやっと31万台の四輪車に取り付けがなされたところであり、3百万台を超える登録車両台数から見るなら、前途はあまりにも長いと言えるにちがいない。ましてや、都内40ヶ所で行なわれている取り付けサービスは、台数制限を行なって大量の車がその地域一帯を塞がないような非生産的な配慮をしながらというスタイルになっており、この壮大なトライアルがいつ開始されるのかは依然として先の見えない状況にある。
ランダムに自動車を運転しているひとに尋ねたところ、この壮大な計画のことをまったく知らないひとがいた。また中には、RFIDタグを取り付けたのはいいが、おかげでタンクの注入口を壊されたというひともいた。
高級車が補助金付きガソリンを使っているのはおかしいという話が昔から出されており、テレビでの啓蒙CMやその種の垂れ幕もガソリンスタンドに掲示されているものの、ガソリンスタンドで観察してみれば、高級車もプレミウムガソリンやソラル軽油をはばかりもなく買っている。インドネシア人の見栄の心理に訴えようというのであれば、ガソリンスタンドにチアグループを配置しておき、プルタマックスを購入した車を拍手喝采でどっと囃し立てるような工夫が必要なのではあるまいか。
世間は高級車に対して憧れの目で見上げてくれるのであって、燃料に何を使っているのかは関心の外であり、また実際にも路上を走ったり駐車している車のタンクに入っている油種が何かということまではわからないのだから。


「オフィス賃貸料に大きい価格差」(2014年4月17日)
2013年中盤から沈滞気味だったオフィススペース需要が、2014年第1四半期に伸び上がりを見せ始めたとコリエールズインターナショナルインドネシアのリサーチ担当参事が報告した。それによれば、経済の軟化、ルピア安、上がりすぎた賃貸料金や不動産価格のために昨年末ごろまで各社はオフィス拡張や移転を抑えてきたが、選挙年の経済活発化を期待してこれまでの自粛を解き放ったことでオフィススペースビジネスが復活し始めたというのがその分析。
しかし2014年第1四半期ジャカルタCBDのスペース新規供給はきわめて少なく、これからの需給関係が懸念されている。2014年のAグレードスペース供給は年間20万平米の予定で、建物は未完成だが既にその半分は売約済みになっている。賃貸料金や販売価格が今後もますます上昇する可能性は高く、そして高いことがスペース稼動を低下させることにつながらず、反対に稼働率はますます高まっていくだろうと同参事は予想している。
昨今の賃貸料金相場は平米当たりひと月36米ドルだがルピア建ての場合は25万ルピア、売却スペースは平米当たり5千米ドルでルピア建てなら4千5百万ルピアとのこと。首都圏CBDの2014年第1四半期は未使用スペースが総供給量の3.5%で年内に2.5%を下回るようになると見込まれている。
需要の増加は景況の向上とルピアレートの上昇に押されて高まる模様。既にジャカルタのMRT建設プロジェクト関連で日本から来ている企業が増加している。こうして需要が増加しているものの、CBD地区は既に供給を増やす余地がなくなっており、必然的に新規供給のマジョリティは都心部から周辺部へ移行することになる。それに関してコリエールズのオフィスサービス担当ダイレクターは、スルポン・カラワン・チカラン・ブカシなど首都周辺部のオフィスエリア開発はきわめて盛んだと論評する。「スディルマン〜タムリン〜クニガンの都心CBD地区は土地の余裕がもはやなくなり、賃貸も売却も高価格に移行している。加えて都心部の交通渋滞も激しさを増す一方で、MRTが動くようになるのはまだまだ先のことだ。このような状況下にデベロッパーがオフィス開発を居住地区に近いエリアに設けようと考えるのは自然なことだ。都内でも、南ジャカルタや西ジャカルタでのオフィス地区成長ぶりはたいへん顕著であり、オフィスビル建設は南ジャカルタのシマトゥパン通りが筆頭の勢いを示している。」
都心CBD地区のオフィススペース賃貸料金や売却価格は過剰上昇をきたしている感があり、ジャカルタ周辺部での相場はまだその半分程度でしかないとのこと。


「ビトゥン〜マレーシア直行貨物船運行開始」(2014年4月22日)
国際コンテナ海運業界の巨人マースクラインが、東南アジアのハブ基地としているマレーシアのタンジュンプルパス港と北スラウェシ州マナドのビトゥン港をダイレクトに結ぶ航路をオープンし、2014年4月14日にコンテナ船ヴェガ・フィネン号がビトゥン港を発して初航海の途に就いた。これまで北スラウェシ州の輸出品は一度スラバヤ港あるいはジャカルタ港に積み出され、そこからシンガポールやマレーシアの国際ハブ港に送られるルートをとっていたが、ダイレクト航路が開かれたことによって従来のパターンから航海日数で7日、海上運賃は30%が合理化されることになる。
今回マースクラインが開設した新航路はタンジュンプルパス〜ビトゥン〜パプアニューギニアを2週間で周航するもので、この航路には2隻のコンテナ船が投入される。この初航海でビトゥン港から積み出されたのは70TEUSの輸出品諸アイテム。北スラウェシ州からの輸出有力品目のひとつに椰子殻黒炭があり、ヨーロッパ諸国向け輸出は年間5千トンに達している。輸送費の低下は市場競争力の強化につながることから、これから輸出量の増加が期待できると業界者は強気のかまえ。北スラウェシ州庁商工局データでは、輸出品目は71種あり、世界77カ国に向けて船積されている。


「インドネシア産焼き鳥と唐揚げが日本へ」(2014年5月1日)
日本政府がインドネシア産鶏肉加工品の輸入の門戸を開いたことで、インドネシア政府と鶏肉生産業界はこの新たな機会を確実にわがものにしようと対応を進めている。インドネシアの家禽類全国生産は次のような状況だ。(年:肉/卵、2013年は暫定値、数字は千トン単位)
ayam kampung 地鶏 
2011年: 264.8/186.99
2012年: 267.5/197.1
2013年: 287.4/200.6
ayam petelur 卵用鶏
2011年: 62.2/1,027.9
2012年: 66.1/1,139.95
2013年: 70.7/1,223.7
ayam pedaging ブロイラー
2011年: 1,337.9/−
2012年: 1,400.5/−
2013年: 1,479.8/−
itik カモ
2011年: 28.2/256.2
2012年: 33.6/275.9
2013年: 34.6/278.4
国内総生産の8割は企業が産するものであり、国民の飼育によるものは2割しかない。ところが国内市場では、国内総販売のうちの8割が伝統型パサルで売られており、スーパーなどモダンマーケットでの販売は2割しかない。
焼き鳥と唐揚げの形で日本への輸出の道が開けたことに関連して、取引を開始する前に日本からインドネシアへ監査チームが訪れることになっており、農業省は日本向け輸出品の生産を計画している企業と一緒にその受入れ準備に取り掛かっている。監査が行なわれるのは、遅くとも5月中とのこと。
日本はこれまで中国から焼き鳥と唐揚げ、タイから唐揚げを輸入しており、その市場にインドネシアがこれから参入することになるが、鳥フルなどのネガティブ要素については中国もタイも同じ問題を抱えており、またその対処方法も似たり寄ったりであるため、衛生問題と品質問題でインドネシアが遅れを取ることはないだろうと農業省牧畜動物保健総局長はコメントしている。
インドネシア産鶏肉加工食品が日本市場に入るようになれば、日本資本がインドネシアでの生産分野に進出してくる可能性が大きいため、インドネシア政府はその面での波及効果に期待をかけている。


「金になる間違いはなおさない」(2014年5月12日)
2014年1月2日付けコンパス紙への投書"Tagihan PLN dan Korban Salah Catat"から
拝啓、編集部殿。2013年10月7日、わたしはPLNの2013年9月分電力料金請求をチェックし、1,282,980ルピアが請求されていることを知りました。それは普段支払っている35〜40万ルピアの三倍なのです。すぐに123番に電話したところ、電話の相手が言うには、検針者の書き間違いだろうということでした。その相手は、PLNブカシのメダンサトリア事務所に必ず電話して再検針させるからと約束し、K531300700657をわたしのクレーム番号としてくれました。
10月20日に再度チェックしたところ、請求金額は相変わらずそのままです。10月24日にわたしは再度123番に電話しました。電話の相手はわたしに、とりあえずその請求金額を払っておくようにと言いました、翌月の請求金額が小さくなるからと言って。
わたしがその請求を払いたいとか払いたくないとかいうのが問題ではなくて、その金額はあまりにも巨額であるため、わたしに支払い能力が無いことなのです。結局電話相手はブカシのメダンサトリアPLN事務所に電話してこの問題をチェックさせることを約束しました。
一週間してから、わたしはまた請求金額をチェックしましたが、依然として金額に変化がありません。仕方ないので、わたしはその請求金額を払いました。PLNの現場検針者が間違って数字を書いたとしても、PLN利用者が全員そのような間違った請求を支払う余裕のあるひとばかりではないのです。[ 西ジャワ州ブカシ市在住、ユリウス・グナワン ]


「低い労働生産性」(2014年6月5日)
インドネシアの労働生産性はアセアンの有力三カ国に比べて低いため、2015年のアセアン経済コミュニティ開始時までになんとか底上げを果たさなければならない、と工業大臣が語った。アジア生産性機構が公表した2013年の国別生産性評価によれば、インドネシア人労働者の一人当たり年間生産高は1億450万ルピアであり、交換レートを11,000-Rp/USDとするなら9,500米ドル相当となる。シンガポールは92,000米ドル、マレーシアは33,000米ドル、タイ15,400米ドル、アセアン平均は10,700米ドルであり、インドネシアは平均値にすら達していない。
インドネシアの2013年製造産業セクター雇用労働者は1,573万人で、そのうちの440万人を雇用している飲食品煙草製造サブセクターが雇用者数でナンバーワンになっている。労働者の学歴は中学校卒が979.5万人で全体の62%を占め、また労働者の87%は現場作業者で、管理者になっている者は3.5%しかいない。
中でも、厖大な数を占めている家内工業や小規模町工場などの中小零細規模製造セクターはこのような統計数値の中で統計結果を下方に引き下げる原因になっており、協同組合と中小零細事業所を管轄するコペラシ中小事業省にとってはこの分野のテコ入れが急務の課題とされている。
工業大臣は労働生産性引上げ方針について、労働者の教育訓練を促進するために職業能力認定制度の活用を進めていることを明らかにした。全国職業能力スタンダードの制定と、それを各地の現場で実施する職業認定機関の指定、そして各業界団体の支援を得て各地に設ける認定試験場の設置は継続的に行なわれている。職業能力スタンダードは50種の製造分野に対して制定されており、さらに15分野を追加する作業が進められている。職業認定機関は25ヶ所が活動しており、近々もう10ヶ所増える予定になっている。
コペラシ中小事業大臣は、製造セクター労働者および経営者に対する人材レベルアップを目的に政府の教育訓練方針をきめ細かく現場に展開することに注力する、との決意を表明している。


「7月から電力料金値上げ」(2014年6月17日)
国有電力会社PLNに対する補助金の削減をはかって、政府は利用者カテゴリーの中の6種に対する電力料金を補助金なしにすることを計画した。その明細は次のようになっている。
1)I−3株式未公開工場対象:2ヶ月おきに平均11.57%の値上げ
2)R−2契約使用量3千5百〜5千5百VA家庭対象:2ヶ月おきに平均5.7%アップ
3)P−2契約使用量200KVA超の政府機関対象:2ヶ月おきに平均5.36%アップ
4)R−1契約使用量2千2百VA家庭対象:2ヶ月おきに平均10.43%アップ
5)P−3一般道路照明対象:2ヶ月おきに平均10.69%アップ
6)R−1契約使用量1千3百VA家庭対象:2ヶ月おきに平均11.36%アップ
それらの電力料金引上げが実現すれば、政府は今年度予算の電力補助金支出を8.5兆ルピア削減できると計算している。しかし国内零細小規模産業のほとんどは自宅を作業場に使っており、PLNとの契約は家庭用電力使用というカテゴリーに入っている。上の4)と6)のR−1カテゴリーがそれだ。また、道路照明架線から管理者同意のもとに電気を引いている者、あるいは政府施設の一部を借りて作業を行なっている者などさまざまな要素もあって、3)のP−2や5)のP−3カテゴリーの値上がりも製品コストに影響を及ぼすことになる。
たとえば巷でフォトコピーサービス業を営んでいる者は、毎月電気代を60万ルピア支払っており、それは月間営業収入の11%を占めている。その60万ルピアが2ヶ月ごとに10%以上アップしていけば、採算面の痛手は大きい。
家庭内で10台の電動ミシンを動かして月間4千本のズボンを縫製している者は、月々の電気代が50万ルピアを超えている、と物語っている。また中高生をメインの顧客にしているワルネッも、今の料金のままだと赤字操業になることがほぼ確実だ、と述べている。
しかし2014年6月10日に国会第7委員会で行なわれた政府方針の審議で政府案は承認を得たため、2014年7月1日から2014年11月まで三回に渡って電力料金タリフが引き上げられることが確定した。これまで低所得層の需要を満たしていた零細小規模家内工業産品がこぞって値上がりを起こす可能性は小さくない。
一方、政府の2014年度予算見直しでエネルギー補助金支出は110兆ルピアの予算超過が見込まれており、電力料金値上げとは別に、肝心の石油燃料補助金削減にも注力するとの意気込みは強い。現在政府が挙げているのは、既に定められている官公庁と鉱業・林業の業務用車両に対する補助金付き石油燃料使用禁止を徹底して行うこと、石油天然ガス下流事業活動統制庁による監督強化、石油からガスへの移行、ガソリンスタンドの補助金付き燃料ポンプの給油ノズル口径を変更する方針の促進という四つの対策で、もっと効果的な対策が始まらなければ意気込みだおれになりそうな状況だ。


「補助金付LPGが品薄」(2014年6月18・19日)
エネルギー補助金のケアがエネルギー政策の最重要事項と化してしまった観のある政府とプルタミナは、もちろんその両者の目的は大違いなのだが、補助金の付けられている商品の消費を減らすという点ではぴったりと一致している。
プルタミナが取扱っているLPGで、3キロ入りガスボンベに詰められたガスは政府が補助金をつけているのだが、このメロンと呼ばれている3キロ詰めボンベの出荷が2014年に入ってから半減していることが報道された。
都内のあるプルタミナLPG販売代理店によれば、通常は一日に2,240個のメロンが入荷するのだが、5ヶ月くらい前から1,100個しか入らないようになってしまったとのこと。どの代理店も入荷量が半減しており、インドネシアの市場の特性であるきわめて敏感な価格変動をその需給関係が煽るために、自ずと価格は上昇傾向に入っている。プルタミナが代理店販売価格を政府に承認してもらい、その販売価格を代理店に義務付けているという、本質的には公定価格制度が適用されているものの、実態は供給薄になるとすぐに市場で値上がりが起こるという消費者に厳しい社会構造になっているわけだ。
だから、この鉄製メロンは1個13,500ルピアで代理店が販売しなければならないのだが、代理店から卸しを受けている巷のプロパンガス販売店が品物を探し回るために価格は自ずと上昇し、今では14,000ルピアが相場になった。雑貨商がメインの巷のプロパンガス小売販売店はプルタミナとの契約など何もないために市況に従って好きなように値付けすることができるものの、市場競争の制御を受けて地域ごとの相場が決まってくる。今、都内の販売価格は1万7千ルピアで、これからのプアサ〜ルバラン期に2万ルピアまで上昇するという声がそれら巷の販売店から聞こえている。
この報道に応じて、プルタミナの首都地区LPG販売シニアマネージャーは、出荷制限など何もしておらず、都内にある230の3キロ詰めボンベ販売代理店に対する一日33万個の出荷は平常どおり行なわれている、と語った。
「プルタミナからの出荷は平常通りであるが、代理店やデポが何かをしている可能性はある。市場で品薄であるなら、各代理店向けの出荷をそれぞれトラック1台分増やすことにする。これは6%の供給量アップになる。」プルタミナの首都地区LPG販売シニアマネージャーはそう述べている。
都内でLPG代理店を持っている事業者がひとり一店ということはない。同一事業者が東西南北中央の各市に複数の代理店を持っていることは十二分にある。従来、それらの代理店間での商品融通は事業者の腕次第という自由が与えられていたが、プルタミナは特定地域の需給状況と出荷量との関係を明確にしようとして、管理地域を越えての代理店間の商品融通を禁止した。事業者の間からは、それが市場での品薄を招いているのだという声が聞こえるのだが、正鵠を射ているようには思えない。
ともあれ、例年物価がうなぎ登りになるラマダン〜イドゥルフィトリシーズンに対する予防措置として、LPGの供給不足は解消させておかなければならない大きい問題である。プルタミナはジャカルタ・西ジャワ・バンテンの三州に関して3キロ詰めボンベ入り補助金付きLPGの供給を確保する方針を公表した。首都ジャカルタについては、一日当たり割当供給量33万8千個を50万6千個に増やし、西ジャワ州は一日当たり供給量115万個を200万個に、バンテン州は28万個を41万9千個に増やすよう対応が取られることになる。また市場価格の不正操作を目的にして隠匿その他の不正行為を行なう者に対する取り締まりを地元行政府および地元警察と協力して行なうことをプルタミナは表明している。
プルタミナはこの供給アップ方針を上の三州だけでなく、東ジャワ・バリ・西ヌサトゥンガラ・東ヌサトゥンガラの四州でも行なうことにしており、その四州では平常期から10〜12%増加した月間91,600トンが出荷量として割り当てられることになっている。


「最新の財政問題点はこれ」(2014年6月30日)
インドネシアの社会経済状況がますます階層間の歪を強めている現在、歪がどこにどのように生じているのかを的確にマッピングする必要がある。それを目的にしたセミナーが2014年6月17日にジャカルタで開催された。タルマヌガラ大学教授でもあるインドネシア科学院研究者は、2013年のジニレーシオが0.413と上昇していることを指摘する。農家収支率も2004年の117ポイントから2013年は107ポイントに低下した。現在行なわれている補助金制度や補助金カットの代償に現金をばら撒くようなことは早急にやめなければならない、とかれは言う。
「補助金を解消して、インフラ建設の目標管理だけでなく教育と保健医療に関する予算管理にもっと焦点を当てなければならない。2004年から2013年まで、年間成長率は平均5.8%だったが、それを支えたのはサービスセクターに対する家庭消費支出であり、輸出指向の製造産業や農業ではなかった。」
一方、過去10年間の国家財政は不適切な補助金政策がだれをターゲットにしているのか曖昧模糊としており、本来のターゲットであるはずの貧困者がその恩恵に浴す度合いが低下していることをパジャジャラン大学教授は指摘した。かれも政府の財政政策をもっと教育と保健医療分野に厚いものにし、人材クオリティ向上のための予算を増やさなければならない、と語る。「貧困者が納める税金のほうが多くなっており、今や国の役割はひっくり返ってしまっている。教育の均等が成長を促す革新につながるのだから、予算をもっと見直さなければならない。エネルギー補助金を維持しようとする政府の姿勢は国民生活改善のための支出予算に枠をはめており、その歪は速やかに是正されなければならない。2014年度当初予算の補助金支出282兆ルピアは改定予算で382兆にふくれあがっている。」
このセミナーを開催した調査機関スメルの理事は、政府の石油燃料補助金は貧困者との間の格差を累積的に拡大させる金持ち層に対する支給に成り果てており、そのための石油輸入がルピア交換レートを弱くしている、と述べた。「石油燃料関連支出をどうやって引き下げるのか?貧困層へのネガティブな影響を緩和させるための、補助金削減のスマートな戦略が必要になっている。」
国家経済コミティメンバーのひとりは、貧困者人口削減プログラムのクオリティが今われわれの直面しているチャレンジだと言う。「現状を更に悪化させることなく、そのプログラムのための資金をどうやって増やすのか、それが問題だ。」
実業界を代表してアピンド専務理事は、投資誘致にもっと誘導的な環境を与えるために、労働法規の整備が不可欠であると語った。農業セクターから工業セクターへの構造変革を推し進める強力な政策が必要とされている。インフォーマルセクター従事者をフォーマルセクターに移すこと、そのために雇用拡大をサポートする労働法規への転換が必要なのであり、そうすることによって貧困問題の底上げも進展することになる、と専務理事は産業界の意見を表明している。


「内職で作られる高級グローブ」(2014年7月7日)
英語のbaseball gloveをインドネシア語訳するとどうなるだろうか?日本人にとっては、gloveが手袋とグローブというイメージの大違いなものに対して同じように使われていることに違和感をおぼえるだろうが、インドネシア人はそうでなかった。インドネシア語で野球のグローブはsarung tangan bisbolと言う。baseballという英語が転訛してbisbolとなったのは、やはり類似のsoftballがsofbolになっているのと対をなしているようだ。野球のボールをインドネシア語ではbola bisbolと呼ぶので、まるで電球の球のようだ。ちなみに、サッカーは言わずと知れたsepak bolaだが、サッカーボールはbola sepakと言い、bola sepak bolaとは言わないので、ご注意を。sepak bolaとbola sepak。さあ、どちらがサッカーゲームでどちらがボールのことか、混乱してきませんでしたか?
中部ジャワ州スマラン県東ウガラン(Ungaran Timur)にある一軒の家の中で、古いテーブルの上に野球のグローブが山になっている。30個以上あるそのグローブは、しっかりと見栄えよく作られた輸出クオリティ品。なにしろ一個で5百米ドル近い金額になる。輸出先はアメリカとオーストラリア。
作っているスミさん45歳は支給された材料を使ってグローブの最終仕上げを行なう賃作業労働者だ。内職であり、時間は自分の好きなように使えるのだが、そんな高額品を作っても自分が得られる金額は一個わずかに850ルピア。「オーダーをもらうたびに労賃は少しはあがりますよ。でも50ルピアくらいじゃあねえ。そしてその見返りが、作るのにもっと手がかかるようになるんですから。穴をふたつ増やすだとか、皮ひもをもっと複雑な形に挿し込むとか。一日で作り終えるのは8個くらい。」
厚手の牛皮でほぼ8割がたできあがっているグローブに穴をあけるのも容易な作業ではない。かの女は夜の十時ごろまで仕事をすることもしばしば。だからかの女は家族からときどき冷やかされる。「そんな夜遅くまで根詰めて仕事してるから、見てごらん、顔がグローブみたいになってきた・・・」
スマラン県アンバラワ郡に住むルミナさん47歳も家でグローブの仕上げ作業を行なっている。ルミナさんの本業はパサルでのニンニクやワケギの販売で、その仕事を終えてからグローブ作りにいそしんでいる。隣組の婦人グループがその仕事の声をかけてくれた。どうせ他にすることはないので、遊んでいるよりは金になることを、と考えてその仕事を始めたそうだ。毎月の追加収入が18〜20万ルピアになり、自分の作っている品物が一個数百万ルピアの値打ちものだということを知って、かの女はいま、誇りを感じてその仕事に取り組んでいる。
グローブ生産者は最後の仕上げ工程を、地方村落部の婦人たちの手を使って行なう体制を組んでいる。最後の工程は、穴をあけて皮ひもを通し、締め上げる。そしてアクセサリーをつければできあがりだ。生産者はスマラン県カランジャティとゴボに工場があり、最終工程だけを外に出す。外注先は一般家庭の内職であり、インフォーマル労働であって雇用関係は生じない。県内のそういう家庭との連絡係としてコーディネータがいる。労賃の支払いは二週間おき。県内の村ごとに20軒から50軒の作業者がいるから、コーディネータも多忙だ。賃金が廉すぎるという苦情は、ほとんどすべての作業者がしている。ただし、要求金額は一個一千ルピア、といたっておとなしい。そこまで賃金が上がっていく頃には、きっと貨幣価値がまた相当変動しているにちがいない。


「物流ロスはまだ大きい」(2014年7月10日)
タンジュンプリウッ港のコンテナ港内滞留日数が平均5.98日になっているのは、港内での諸手続きに関連するすべての機関が週7日、一日24時間稼動を行っていないからだ、と運輸省海運総局長が発言した。総局長によれば、ドゥエリングタイムと呼ばれているその滞留日数が一番短いのはJICTが運営しているターミナルで平均4.97日、反対にもっとも長いのがMTIのターミナルで7.23日である由。
コンテナが陸揚げされてから港のゲートを出るまでに要するドゥエリングタイムが長いことは貨物の動きが緩慢であることを意味しており、経済が余計なロスを含んでいるために物流コストが膨張する結果を生む。必然的に高いコストは商品価格にしわよせされ、商品の価格競争力は低下する。
2013年1月の日数は8.8日だったので、そこからは改善されているとはいえ、目標数値である4.0日にはまだまだ遠い。海運総局長はその原因の筆頭として、タンジュンプリウッ港の貨物荷役や情報管理、税関などは24時間7日稼動を実施しているものの、他の貨物処理プロセスをサポートしている銀行界などいくつかの関連機関がそれに追随できていないことが更なる日数短縮を難しいものにしている、と語っている。


「農家が商品作物生産にシフト」(2014年7月17日)
2013年に行なわれた農業センサスで食糧作物生産者が減少し、商品作物の生産にシフトしていることが明らかになった。中央統計庁長官によれば、該当する食糧作物は大豆・トウモロコシ・米であり、地域別にはスマトラ・カリマンタン・マルク・パプアでのシフトが顕著である由。一方、大きい増加になった商品作物はパーム椰子・ゴム・カカオであるとのこと。
2003年に行なわれた農業センサス結果と比較すると、大豆生産農家は10年間に98.6万世帯から67.2万世帯に、トウモロコシは635万から506万世帯に、米は1,421万から1,415万世帯に減少している。他にもミカン生産農家が97.3万から55.4万世帯に低下した。
大豆生産農家の減少が最も多かったのはジャワ島で29%減、トウモロコシもジャワ島で19%減、米はスマトラ島で11%減。
反対に増加した商品作物はパーム油をとるパーム椰子が67.8万から145.8万世帯に、ゴムは168万から289万世帯に、カカオは190万から219万世帯に増えている。
この現象について西カリマンタン州クブラヤ県自立農村農業研修センターコミュニケーションフォーラム幹事は、「食糧作物や生鮮果実野菜は価格変動が激しく、経済性が劣っており、政府からの小規模農家に対するアテンションも低いのがその原因だ。生活を安定させるために農家がもっと条件のよい商品作物にシフトして行くのは当たり前のことであり、現状が変わらなければその傾向はこれからも続くだろう」とコメントした。
INDEF理事は、政府はその実態を警告として受け止め、農業政策の抜本改善を行なわなければ、国民の食糧防衛に大きな穴があく、と批判している。SBY大統領の二期に渡る任期の間に食糧輸入は大幅に増加した。国内市場で輸入品が場を得るなら、国内生産は後退するに決まっている。
たとえば、2000〜2004年の砂糖輸入は平均で9.3%減少したが、2005〜2009年は平均46%上昇し、2010〜2014年も平均64%の増加となった。1999年の輸入実績は170万トンだったが、2013年実績は379万トンに達している。トウモロコシも同じだ。1999年の輸入は123万トンで2004年は54万トンに落ちたが、2009年は132万トン、2013年は280万トンに暴騰した。
大豆にしても米にしても、国産品が国内需要を支えているかぎり、その生産を減少させるようなファクターが起こるはずがない。農家の作物取扱の変化が農業生産構造の合理化によるものという雰囲気は見当たらないないようだし、農民はきわめてシンプルに、売れるものを作ろうとしているだけなのだから。


「5日間の物資配送停止」(2014年7月17日)
水害と重量違反トラックによって無惨に破壊されたジャワ島内の交通動脈路であるジャワ島北岸街道が、今年もルバラン帰省に合わせて修復された。修復完了宣言がなされたばかりで、ルバラン帰省の波はまだ始まっていないというのに、さっそく北岸街道の上を大量に貨物を満載した大型トラックが往き来している。
それは、一年で最大の消費物資販売シーズンとなるラマダン〜イドゥルフィトリのために、島内の隅々にまでたっぷりと商品ストックを築き上げて売り逃しを避けようとする商魂のたくましさが底流にあり、さらにルバラン帰省ラッシュが始まると貨物輸送トラックの島内通行禁止規制が行なわれるため、それ以前に商品配送を終わらせてしまおうとするテクニカルな事情を反映していることがらなのである。
2014年ルバラン交通期の貨物輸送車両と交通の規制に関する陸運総局長規則第SK.2529/AJ201/DRJD/2014号は、2014年7月24日0時から2014年7月28日24時までの間、貨物輸送車両はランプン州、ジャワ島、バリ州の国道を走行してはならない、と定めている。ここで言う貨物輸送車両というのは、建築資材輸送車両・トレーラー・セミトレーラー・コンテナおよび二軸を超える貨物輸送車両を指している。ただし例外が認められており、石油とガス燃料・家畜・生活基幹物資・肥料・鮮乳・郵便物を運送するものは規制の枠外とされる。生活基幹物資というのは、米、砂糖、小麦、料理用油、赤トウガラシ、エシャロット、落花生。牛肉、鶏肉、鶏卵のこと。
ただしルバラン交通期というのは2014年7月21日0時から8月5日24時までの期間となっており、そのルバラン交通期に各地元自治体が州道・県道・市道に関して必要に応じた規制を行なうことは中央政府の統制できない部分だ。ジャカルタ・スマラン・スラバヤなど大きい港を抱える地元自治体が、ルバラン帰省の波を妨げないために輸出輸入のコンテナ輸送に規制をかけるのは例年行なわれていることであり、基本線では禁止するが各社工場がどうしても必要としているものについては特裁許可を与えるというスタイルが採られる。
たとえ5日間とは言え、長距離貨物配送が完全に停止するのだから、その間に売行きのよかった商品はその地方で品薄が起こり、価格が暴騰するのは自明の理である。都市居住者には試練の時期となるにちがいない。


「補助金付き燃料削減に新施策」(2014年8月7・8日)
第二次団結内閣の任期満了の時が近付いてきた。熱狂的と呼んでよいほどの人気を博す人物が次期大統領に選出されたこともあって、現行内閣が積年の課題として抱えてきた石油燃料補助金削減への施策も、継続性への見通しが明るくなったように感じられる。ともあれ、現SBY内閣が自己の責任において2014年度国家予算内の補助金支出上限を死守するための新方針を石油天然ガス下流事業活動統制庁が打ち出してきた。何しろ、国民生活の最大の祝祭であったイドゥルフィトリの宴はもう終わったのである。
石油天然ガス下流事業活動統制庁の表明したところによると、2013年の政府補助金予算は210兆ルピアで、そのうちの92%が陸上運輸を対象にしていた。その陸上運輸対象の補助金は53%が自家用車によって消費された。補助金は貧困国民の経済生活を援助するためのものであるという定義に戻るなら、貧困者が自家用車を持つというのはありえないことであり、それは補助金が間違った対象に支給されていることを意味する。おまけに100兆を超える金額がそれに使われているのである。過去三年間に補助金のつけられたガソリンと軽油の消費は、2010年の3,827万klから2013年は4,965klへと30%も増加した。
補助金付き石油燃料消費削減の狙いは国家予算の健全化であって、資源や環境問題にあるのではない。付けられている補助金の比率を市場販売価格から減らしてやれば、補助金支出金額は減る。それはつまり、国民が購入するガソリンと軽油が値上がりするということだ。それを行えばたちどころにインフレ率が昂進する。それを回避しようとするなら、市場価格は据え置いたまま消費量を強制的に制限していくしかない。十分な代替策がないまま燃料消費を削減させれば、国民の経済活動も停滞して経済成長に影響が出る。本質的な解決策は値上げしかないのだが、それによって引き起こされる経済崩壊が政府の命取りになりかねないという不安から、これまで政府はその大手術を避けて消費の制限という小手先の対応に終始してきた。国民の大人気を博す新政権が誕生すれば、これまで目の上のたんこぶになっていた本質的な対策を行うモメンタムがやっと訪れるという見方が外目には可能だが、新政権がその火中の栗を本気で拾うのかどうか、それはこれから明らかになっていくにちがいない。補助金のおかげでインドネシアのガソリンは廉い。今、プレミウムガソリンはリッター当たり6,500ルピアだ。ブルネイとマレーシアを除く近隣諸国と比べてこれほど廉い国はない。シンガポール15,995ルピア、ベトナム14,553ルピア、カンボジア13,298ルピア、タイ12,453ルピア、ラオス13,396ルピア、ミャンマー10,340ルピア、フィリピン11,500。インドネシアでプレミウムガソリンを仕入れ、それらの国に持ち込めばいい商売になる。ガソリンの密輸出や海上で国内配送タンカーが行う闇販売が絶えない理由がそこにある。
政府はとりあえず国民の経済生活に影響の小さい軽油に補助金付きのものと補助金なしのものという価格区分を設け、現在は補助金付きソラルリッター当たり5,500ルピア、補助金なしソラル12,800ルピア、ユーロ3スペック適合の高級軽油プルタミナデックス13,150ルピアという三本立て価格体制を作っている。
石油天然ガス下流事業活動統制庁が発表した補助金付き石油燃料補助金削減のための国民の購入制限政策は5つの項目から成っている。 1)特定地区における補助金付き軽油(ソラル)販売を毎日午前8時から18時までに限定する。実施はカリマンタン・スマトラ・ジャワ・バリのプルタミナが指定する地区で2014年8月2日から開始。
2)全国の自動車専用道内にあるガソリンスタンドでの、プレミウム販売廃止。2014年8月6日から開始。
3)中央ジャカルタ市内のガソリンスタンドで2014年8月1日から補助金付きソラル販売廃止。
4)プルタミナが優先指定地区で高級軽油プルタミナデックス販売普及促進を2014年8月1日から実施。
5)2014年8月1日から漁船対象の補助金付きソラル供給量を全国で2割削減。大型漁船への補助金付きソラル販売は禁止されているが、これまで認められていた小型漁船のうちで漁業会社の傘下にある小型船も今回排除の対象になった。30DWT以下の船だけが購入可になる。しかし30DWTを超えるすべての船がそういう立場にあるわけではない。人や貨物を遠く離れた島に運ぶ民衆航海船は数多い。そういう中型船の燃料費が倍増すれば、国内コネクティビティを叫んでいる政府の方針も蝕まれる可能性が出てくる。
ともあれ、それらの方針を受けてプルタミナは具体的な作業を開始した。しかしソラルに関して言うなら、まず1)の時間制限への苦情が乗合いバスの業界から出された。バスの運行は午前5時から22時ごろまで行われており、給油はバスプールから午前4時前後に出た後50リッタータンクを一杯にして運行にかかり、日中の時間帯はその50リッターが残り少なくなったときにはじめて再給油するため、かなりの確率で補助金付きソラルを買うタイミングを逸することが起こりそうだ、とかれらは言うのである。50リッターで一日持つ場合、日中は乗客輸送に専念するのが当たり前であり、大勢の客を乗せたままガソリンスタンドで給油車両の列に並ぶのでは客からの苦情が絶えなくなる、という理由をかれらは訴えている。一日持たない場合はそういうことをこれまでも行っているわけだが、二回の給油のうちの一回は必ず制限時間外になるし、そのときの価格が二倍もするのであれば、現在のバス料金を維持するのは困難になる。
また3)についても、中央ジャカルタ市でわざわざ高いソラルを買う運転者はおらず、ちょっと走るだけで市外のガソリンスタンドへ行けるのだから、まるで意味の無い施策だという批判が出されている。プルタミナの首都圏販売担当者によれば、補助金付きソラルの一日の販売量は6klで、補助金なしソラル購入が義務付けられている官庁公用車以外はほとんど買わないのだから補助金なしソラルは一日1.5klしか売れていないそうだ。補助金付きソラルのガソリンスタンドへの配送は三日おきに16kl、補助金なしソラルは11日おきに16kl、プルタミナデックスは8日おきに2klという供給スキームであるとのこと。中央ジャカルタ市内にプルタミナ系ガソリンスタンドは18ヶ所あるが、かれらの売上が低下するだけに終わるかもしれない。
2)については、まず首都圏から開始されることになるようで、ジャゴラウィ、チカンペッ、チプラランの自動車道にガソリンスタンドは14ヶ所あり、プレミウムの一日平均販売量は2万リッターにのぼる。そこでのプレミウム販売をプルタマックスに油種変更するだけだから、それは容易に行えそうだが、自家用車族は自動車専用道に入る前にゲート近辺のガソリンスタンドで満タンにするよう行動パターンを変えるだろうから、これも購入場所が移るだけの結果に終わるかもしれない。


「プルタミナ社広報」(2014年8月11日)
政府の補助金付き石油燃料規制方針に関連して、プルタミナ社が具体的活動内容を国民に広報告知しました。2014年8月6日付けコンパス紙に掲載された告知広告は次の通り。

補助金付き石油燃料規制方針の実施に関する広報
補助金付きソラルとプレミウムの規制に関する2014年7月24日付け石油天然ガス下流事業活動統制庁回状第937/07/Ka BPH/2014号に則して補助金付き石油燃料流通事業者のひとつであるPTプルタミナは、補助金付き石油燃料規制方針の実施を下のように開始します。
■ 2014年8月1日から中央ジャカルタ市の全ガソリンスタンドでは補助金付きソラルが販売されません。その代替品としてプルタミナは補助金なしソラルとプルタミナデックスを供給します。
■ 2014年8月4日からスマトラ・ジャワ・カリマンタン・バリの特定地区(工業団地・鉱業事業場所・農園事業場所・港近辺)で、ガソリンスタンドでの補助金付きソラル販売時間が08.00から18.00の時間帯のみに制限されます。一方、ロジスティック配送幹線ルートにあるガソリンスタンドでは、ソラル販売時間の規制は行われません。
■ 2014年8月4日から漁民対象流通機関(SPBB/SPBN/SPDN/APMS)に対する補助金付きソラル割当量が2割削減され、その流通量は総排水量30トン未満の漁船を主対象とします。
■ 2014年8月6日から自動車専用道にあるすべてのガソリンスタンドは補助金付きプレミウムガソリンの販売を行わなくなり、補助金なしの特別燃料(プルタマックスとプルタマックスプラス)のみ販売します。
そのために、プルタミナはこの方針に関係するすべてのガソリンスタンドに大型広報垂れ幕を掲げます。
プルタミナは、2014年度改定予算に関する2014年法律第12号に定められている補助金付き石油燃料割当量4千6百万キロリッターの規定に従って2014年12月31日まで補助金付き石油燃料のストックが維持されるよう、この方針実施に対する国民の支援を期待しています。


「朝令暮改に振り回される民間事業」(2014年8月18日)
補助金付き燃料消費削減方針の一環として、中央ジャカルタ市のガソリンスタンドで補助金付きソラル(軽油)の販売が打ち切られ、地域内で購入できるのは補助金なしソラルもしくは高品質のプルタミナデックスに限られることになり、2014年8月1日からそれが実施された。ところが、二週間も経過しないうちにその方針が部分修正された。
中央ジャカルタ市内の二ヶ所のガソリンスタンドに、補助金付きソラルを販売するよう命じたことを石油天然ガス下流事業活動統制庁長官が8月12日に明らかにした。その二ヶ所とは、クラマッラヤ通りにあるガソリンスタンド番号34.104.01とスプラプト中将通りにあるガソリンスタンド番号34.105.06で、スネン〜パンカランアスムとスネン〜マンガライの二つのルートを運行する公共運送機関だけが対象であり、他の自家用車や運送トラックあるいは違うルートを運行する公共運送機関に販売しても政府の補助金は下りない。対象となったふたつのルート以外のルートを運行するバスには補助金なしソラルが販売されなければならないのである。そして更に、もっと困難な条件が追加された。バス会社メトロミニのそのルートを運行するバスには一日当たり100リッターという上限が与えられのだ。
この方針一部修正は、今回の方針の影響をもろにかぶったバス会社が業界団体である陸運機構に経費の膨張に関する強い危惧と不満を訴えたことが陸運機構から石油天然ガス下流事業活動統制庁に伝えられたためで、そのふたつのルートは中央ジャカルタ市内だけを走っているため運行車両が燃料費を抑えようとすれば市外まで補助金付きソラルを買いに走らなければならず、それを行えば反対に実質上の営業時間が短縮されて収入に影響が出るという二律背反状態に直面していることへの救済措置として採られた由。
普通、補助金付き石油燃料は、プルタミナからガソリンスタンドに供給されるロット単位で単価が確定しており、それに従って支払い決済が行われるわけだが、中央ジャカルタ市内のソラル供給はプルタミナからの全ロットが補助金なしの単価になっていることから、指定されたふたつのガソリンスタンドは条件に合致した販売を行った分に対して補助金が支給される方式になる。
スプラプト中将通りにあるガソリンスタンド番号34.105.06のマネージャーは、メトロミニ社のバスに与えられた一日100リッターの上限に関して、メトロミニの当該ルートを運行している各車両への毎日の販売量監視と管理をどのように行えばよいのか、まだ考えがまとまらない、と苦衷を訴えている。ガソリンスタンドが政府に補助金請求を行っても、政府が条件に外れていると判定すれば補助金がもらえず、バスには既に補助金価格で販売しているため大赤字になるのは必至だからだ。


「見かけだおしのインドネシア経済」(2014年8月22日)
10,100兆ルピアに達そうというGDP(2014年インドネシア銀行予測)は世界トップ経済20カ国、いわゆるG−20レベルに肩を並べる地位をわが国にもたらすことになる。5.2%という年間経済成長率は、わが国を世界有数の高度経済成長国のひとつという地位に格上げする。
だがインドネシアのそういった経済ステータスに疑問の影がつきまとう。最近の11四半期、つまり2年9ヶ月というもの、経常収支の赤字は深刻さを増している。インドネシア銀行は2012年の赤字が244.2億ドル、2013年は291.2億ドルと推移し、そして2014年の見込みは284.6億ドルになるだろうと予測した。この経常収支赤字は石油ガス収支がもたらしているもので、2012年の赤字は146億ドル、2013年184億ドル、2014年見込みは209億ドルになっている。非石油ガス収支も2012年97億ドル、2013年106億ドル、2014年見込みは74億ドルだ。
貿易収支を見るかぎり、業績は決して悪くない。2013年の黒字は60億ドル、2014年見込みは51億ドル。非石油ガス分野だけを取れば、大幅な黒字であることがわかる。2012年実績は157億ドルで、2014年は176億ドルが見込まれている。ところが石油ガスの貿易収支がそれを食いつぶしているのである。2013年の赤字97億ドルは2014年に121億ドルに膨張すると見られている。国内の石油ガス生産が下降し、国内石油ガス需要のために輸入が激増しているのがその原因だ。
世界最大のパームオイル生産国で無尽蔵の地熱エネルギーを持つような、優位にある多くの天然資源産物を擁する大国が貿易赤字に陥っているなど、ありうべからざることだ。経常収支についても同じことが言える。巨大な国内消費があるなら、国内工業も成長するはずだ。
実情は、外貨取引金額を見るかぎり、インドネシアは強国ではないのである。一日の外貨取引高は50億ドル程度しかない。マレーシアが120億ドル、タイが160億ドル、シンガポールは3千億ドルで、圧倒的な差をつけられている。50億ドル程度の取引高のために、インドネシアの外為市場は底が浅く、脆弱だ。大量のドル需要が起これば、ルピアの価値は簡単に没落してしまう。1.070億ドルという外貨準備高では、外為市場を支えうることはできない。だからこそ、外貨を浪費している諸経済活動を早急に整理しなければならないのである。
はっきりしているのは、政府が国家予算を拘束している石油ガス分野の輸入を統御しなければならないことだ。国家経済が活力を失わないよう、国庫収支の健全化が必要とされている。総予算の3割近くにのぼる5百兆ルピアの石油燃料補助金予算には健全という言葉がもはや当てはまらない。外貨維持のために国内天然資源に付加価値をつける政策も重要だし、輸入製品にとって代る国産工業品の振興もたいへん重要なことだ。インドネシアの経済ステータスが本物になるためには。
ライター: ピーター・ジェロ
ソース: 2014年8月1日付けコンパス紙 "Status Palsu"


「インドネシア産インゲンが日本に」(2014年8月25日)
東ジャワ州を本拠にする国有第十ヌサンタラ農園会社(PTPN X)の傘下にあるミトラタニドゥアトゥジュ株式会社が日本にインゲンの輸出を開始する。日本側輸入者は既に同社が提供したサンプルをチェック済みで、日本の衛生基準もクリアーしており、量はいくらでも受け入れるとの反応を得ているとミトラタニ取締役がスラバヤで明らかにした。ミトラタニは日本向けインゲンの第一回収穫を80トンと計画しており、収穫されたものは2014年9月から日本へどんどん輸出されることになる。
ミトラタニのインゲン輸出計画は一年がかりで行われたもので、東ジャワ州ジュンブル(Jember)県でさまざまなインゲンの品種のテスト栽培が行われ、一方日本国内のインゲン需要に関する調査も踏まえたうえで、今回の輸出開始につながった。
ミトラタニは先にやはりジュンブル県で栽培された枝豆の日本向け輸出の実績を持っており、インゲンは同社の商品多様化方針の一環をなしている。ミトラタニは輸出向け冷凍農産品生産者で、大豆・オクラを日本・ヨーロッパ・中東向けに、またバイオエタノールをフィリピン向けに輸出している。同社の輸出は8割がたが日本向けで占められており、日本市場で活躍している加工食品生産者・モダンマーケット卸し業者・高級ホテルレストラン向けサプライ業者など22社がミトラタニの輸出品に対する需要を支えているとのこと。同社はジュンブル県とボンドウォソ県に1千1百ヘクタールの栽培用地を擁しており、2014年の総輸出は大豆6千7百トン、オクラ1千5百トンという目標量にしている。
インゲンに続く日本向け商品として同社はサトイモと 紅あずま(ベニアズマ)種のサツマイモの開発に取り組んでおり、きわめて意欲的な姿勢を示している。もちろん輸出ばかりでなく、国内市場への出荷意欲も旺盛で、全国各地で140店のアウトレットを擁するコンビニチェーンのセブンイレブンにも毎週8百キログラムの枝豆を供給している。2014年の国内外市場向け大豆商品出荷目標は1千トンを狙っている、と同社取締役の鼻息は荒い。


「ビトゥン高雄間にコンテナ船就航」(2014年8月27日)
2014年4月からマースクラインが北スラウェシ州ビトゥン港にコンテナ船を寄港させるようになったのに続いて、この8月末からビトゥン港と台湾の高雄を結ぶ新航路がオープンする。就航するのは2千6百GTのコンテナ船カナカ(Kanaka)号で、120TEUSの搭載能力を持ち、ビトゥン〜フィリピンのダヴァオ(Davao)〜中国の広州〜台湾の高雄という航路をひと月に二回周航する計画。
この新航路開設によってインドネシア東部地方の中国と台湾向け物産輸出に日数短縮と輸送費削減の大きいメリットがもたらされる。ミナハサ県商工会議所会頭は、もう既にダヴァオからたくさんの輸入者がマナドに物産の買い付けにやってきている、と語っている。
1990年代にインドネシア政府はビトゥン〜ダヴァオ間の航路をオープンしたものの、二年間で閉めてしまった経緯がある。今回それを中国まで伸ばしたのははるかに将来性の高いアイデアであり、北へ向けて貨物の流れを作ることで安定した貨物量が確保されるだろう、とフィリピンのジェネラルサントス市事業者協会会長は今回の計画を賞賛している。ビトゥン港をインドネシア東部地方における国際ハブ港にするという政府の方針は着実に進展しているようだ。


「中国向けシガリロ輸出が急増」(2014年9月2日)
東ジャワ州を本拠にする国有第十ヌサンタラ農園会社(PTPN X)のシガリロ輸出が顕著な増加を示している。輸出を開始した2009年の実績は5千万本だったが、今や2億5千万本にまで成長した。ビッグシガーと呼ばれる通常の葉巻タバコは世界的に人気が低下し、小型のシガリロと呼ばれる葉巻の人気がうなぎのぼりになっている。シガリロ生産は東ジャワ州ジュンブル(Jember)県の工場で行われている。
メインの輸出先はヨーロッパで、年間2億4千万本がスイス・ドイツ・デンマーク・オランダ・スペイン・イタリア・フランスに送り出され、1千万本が最近上昇中の中国向け。人口14億人を擁する中国人の三割は喫煙者と見られ、ミドルクラスの増加による購買力上昇と、世界的なライフスタイル変化によって普通のタバコ(シガレット)からシガリロへの移行が中国にも起こっていることから、PTPN Xは中国向け輸出をさらに伸ばすことを計画している。
ヨーロッパ向けの輸出は包装が紙パックになっているが、中国では缶入りのものに人気が高いため、市場の嗜好にあわせた包装のものが作られて輸出されている。PTPN Xタバコ部長は中国向け輸出について、中国はタバコ事業が国の独占になっており、従来は国有タバコ事業体の代理店が所轄地域で販売するための輸入を行い、インドネシアからはそのルートで中国に輸出されていたが、総元締めの国家機関が輸入して国内の流通網にのせることができれば輸出量が桁違いに増加することから、同社は中国政府との直接取引を進めたいと考えている。必然的にその商談は国家間トレードの形を採ることになるため、同社は政府商業省との打ち合わせを密に行っている。


「貨物鉄道輸送も上昇中」(2014年9月4日)
首都圏コミューター電車利用者が大幅に増加しているのに歩を合わせて、鉄道を使う貨物輸送も上昇傾向にある。ジャワ島内の諸生産者が島内各地に商品を配送するのに鉄道を利用してもらおうというコンセプトでインドネシア国鉄が進めている貨物輸送サービスを受け入れ、これまでのトラック一本槍からトラックと鉄道の併用に向かっている生産者は増加傾向にある。たとえば、アクア飲用水を生産しているPTティルタインヴェスタマ。同社のスカブミ県ムカルサリにある工場から出荷される製品の一部はチチュルッ駅からフラットデッキの貨物車8両に積み込まれてジャカルタのアンチョル地区にあるジャカルタグダン駅まで毎日運ばれている。一日の輸送量は2万1千ガロン。計画では、次のステップで輸送量を倍増させ、貨車16両を毎日使う予定にしており、国鉄側もその対応準備を済ませている。
アクアインヴェスタマ社企業広報担当取締役はそれについて、「その量はやっと同工場生産分の5%でしかないが、今はまだスタート段階なのだ。今後はトラックの使用をもっと減らして、大気汚染や地球温暖化、および道路交通渋滞や道路破損などへの低減に協力していく所存である」と語っている。
国鉄は諸企業に対してキメの細かい対応を続けており、鉄道を利用する貨物輸送の増加を実感していることが更なる輸送能力増強への進展を推進させている。国鉄の発表によれば、近々積載能力42トンのフラットデッキ型貨物車を6百両増やし、また2015年には機関車50台を増やす準備を着々と進めている由。ジャワ島内だけでなく、スマトラ島でも貨物車1,213両が増やされることになっている。
鉄道に比較すれば少ない量の貨物しか運べないトラックが、排気ガスを大量に撒き散らし、また重量過剰で道路の耐久性を損ないながら、貨物輸送の王座を占めている現状を下支えしている理由の一つに、トラックはドアツードアで貨物が発着するのに比べて、鉄道だとトラックで駅まで送り、目的地でまたトラックで駅から運び出すというダブルハンドリングが避けられず、それが経済効率を悪化させるために事業者がなかなか鉄道に目を向けてくれないという弱点がある。国鉄はその問題に焦点を当て、どうそれを乗り越えるかということに経営陣が知恵を絞っている状況だ。


「新政府よ、革命を・・!」(2014年9月10〜12日)
「わが共和国の最大の脅威は目に見えない政府だ。それはあたかも巨大なタコのようにわれわれの都市、州、国家の上にスリムな足を広げている・・・強力な国際バンカーの一派がかれらの利己的な目的のために米国政府を実質的に動かしている。」マイケル・スナイダー、2013年
たくさんの異なるソースにも見られ、またクロスチェックできるデータや証明がそこに盛り込まれていることから、上の陳述がただの出まかせとは思えない。
チューリッヒにベースを置くスイス連邦工科大学チューリッヒ校が4万3千の国際企業から集めた情報の分析結果もそのデータのひとつだ。その4万3千の企業のオーナーをたどっていくと、わずか147の母体企業に行き当たる。そしてその147社の総資産の6割以上がわずか25銀行に握られている。
グローバルエリート界の財産を見るなら、世界総人口の半分である35億人が得ている収入とトップエリート85人の資産が拮抗している。それらトップエリートたちの資産はケイマンアイランドのような税金が負担にならないオフショーの銀行に置かれており、その合計は32兆USドルにのぼることを上述のリサーチは告げている。各国は2千8百億USドル分の税収を遺漏しているのだ。世界最大の経済を有する米国の総国家収入と全借入の合計が31兆USドルでしかないのに比べて、それはなんという規模の金力であることか。
1千8百兆ルピアというインドネシアの国家予算と比べて見るなら、グローバルエリートたちが持つ資産は2億4千万国民を2百年間近く食いつながせることができるのである。これは、読者が想像を絶するイメージをそこから受けて、さまざまな逸話やファンタジーを作りだせるに足る話であるにちがいない。読者のイメージ空間がそれを収めるだけの広さを持っているのが前提ではあるのだが。
他の山なす歴史的データから見ればまったく些細なものでしかないそんなデータですら、キャピタリズムとその血を分けた兄弟であるデモクラシーの鉄の法則が、いかに草の根大衆レベルの福祉を保証し、あるいはそれを実現するのに失敗しており、それどころか、反対に偽りをもたらしているかということを証明している。現代の大勢の専門家や実務者たちの間では、経済分野に限定されない議論の一部としてそれが使われている。
この地上に作られた民族国家のひとつふたつどころか大多数が、国が行う外国借入から矛盾を生む経済格差に至るまで、激しい依存を強いる上述の巨大グローバルキャピタルが生む経済メカニズムの網にかけられている。クリティカルリミットを超えているものもあれば、自国のGDPすら超過している国、そして永遠に返済不能なレベルに至るまで、発展途上国ばかりか、先進国ですら借入を抱えていない国はない。
< インドネシアの現実 >
GDPの6割を国家借入のクリティカルリミットとするなら、最近そのリミットを超えて経済クライシスに陥っているヨーロッパ諸国だけでなく、その救済者と見られている安全な国々にしてもたいした違いはないのだ。たとえばドイツの国家借入総額は57.7兆USドルでGDPの142%にのぼり、スイスは1.5兆USドルでGDPの229%、世界最大エコノミーの米国は17.3兆米ドルでGDPの106%、日本はIMFデータでGDPの200%とされている。
ところが奇妙なことに、アセアン諸国はクリティカルリミットの面から見るなら、それらの先進国より借入レベルが概して低い。一番大きいラオスで借入総額56億USドルであり、GDP比は91%だ。インドネシアは2014年3月時点で2,428兆ルピアであり、一年前から155兆ルピア増加した。その金額は、SBY政府が吹聴しているように、GDPの25%でしかない。これは他の諸国よりまったく安全度の高いレベルである。アセアン域内諸国を見ても、マレーシア31%、フィリピン32%、ベトナム32%、そしてシンガポールは突然暴騰して480%などという数字と比較して見るがよい。
とはいえ、インドネシアの外国借入に関して注意するべきことはある。第一に、その金額は1997年にオルバレジームが終焉したときの552兆ルピアからほぼ5倍増になっているということだ。SBY政権の9年間に借入は1,496.2兆増えた。スカルノ時代スハルト時代という長い年月に生じた借入よりはるかに大きな金額だ。
第二に、継続的な借入を強いるかのように財政赤字がまとわりつきはじめたこと。2014年の財政赤字は360兆ルピアと予測されている。第三に、借入増の勢いに比べて、240〜270兆ルピアという返済レベルはあまりにも小さいという印象だ。ましてや、金利支払いと元本返済の内訳がほぼ均等にならされているのにおいておや。つまり、元本返済が毎年125兆ルピアだと仮定するなら、現在ある借入が完済されるまでに20年間を要することになる。その一方で借入増加の勢いを見るなら、国民は借入完済を一生涯待たなければならず、それどころか、返済額は年を追って増えていくことになる。
その事実が痛ましいものであっても、それによって国民福祉が向上するのであれば、国民の心はまだ慰められる。ところが現実はそうでないのだ。国の借入状況は、グローバルエリートの後をみならうかのように、国内ローカルエリートが個人の財産を倍増させることに利用されている。過去10年間にジニ係数が急上昇していることがそれを証明している。3.0前後にあったものが、今や4.3にまで上昇しているのだ。このジニ係数の上昇については、わが国のみならず世界中に同じ傾向を見出すことができる。豊かで繁栄している先進国とわれわれが思っている国でさえそうだ。隣国オーストラリアは4.68、米国は4.69、ヨーロッパの強国ドイツは5.32。われわれはここに、グローバルキャピタリズムが地球上の人類にもたらしているものを再び目にするのである。グローバルキャピタリズムは一握りの巨大資本家たちを富ませているだけにとどまらず、反対に貧困を人類にもたらし、人類を文明のカオスの淵に一層深く沈めている。
< 指導層よ、答えを! >
上で述べた世界に起こっている一連の事実は、民族国家としてのインドネシアに高貴な目的をもたらすためにこの国を統率し、政策を運用し、法規を制定するすべての人物が幅広い視野を持つために重視しなければならないことがらなのである。たとえば大統領候補者がどんなビジョンを撒き散らそうとしても、直近の人類の実相に対する認識の欠如した世界観しかそこに収められていなければ、そのビジョンはピン呆けにしか感じられない。そのような感覚のずれは計画されているすべてのプログラムを無意味なものにし、すべての公約を既に夢見ることさえ困難になっている民衆にとっての子守唄に変えてしまう。そんな状況下で一番重要なのは、経済・政治・文化の主要三分野における国民生活と国民の幸福追求に関わる計画とイメージさらには夢とが切り離せないということなのだ。
もちろんその三分野はブンカルノのトリサクティ政策の中で謳われた平行線を離れ、政治と経済が生活ラインにとどまらずインドネシア民族の次世代の未来を定めることにおける主要パワーとしての二要素であるという確固たる事実と化している。とりわけ、その二パワーがシナジー効果を発揮すれば、他のあらゆる生活要素を搾取して求心円の中に引きずり込むような方法でエリートたちの安全地帯を保証している現状凍結と闘うための新たなハイブリッド政権を生み出すにふさわしいものになる。
上の二パワーと比較してたとえどんなにマイナーなポジションにあろうと、その中で搾取される他の要素あるいは権力が生むすべての肩書きや産物からの意義の創造あるいは価値の顕現における単一のオーソリティになるために、文化はそこで役割を獲得することになるのである。わたしが思うに、どこの政府であれ、文化なしには干からびた空疎な物質的成功を祝うことしかできない。なぜなら、そこでは物質をわれわれの現実生活における意義に変化させている精神なるものが征服され、あるいは麻痺させられるからだ。
残念ながら、重ねて残念ながら、立法と行政の双方における立候補者たちが口にしたほとんどのプログラムにおいて、上に述べた世界の現実を踏まえた世界観あるいは視野を持つビジョンの中味との出会いを、われわれは体験していない。われわれのエリートたちの思考方法は、例証論型であれ認識論型であれ、きわめて保守的な姿を採り、それどころか、30年から半世紀も昔の様相に満たされている。冷戦時代、いや第二次大戦前の市場ロジックとデモクラシー思想を、純粋にして不可侵であり、机上の法則に沿って動いている、と依然として頑なに見ているのだ。
事実、時は転変しており、人間に起こっているのは生物学的進化でなく欲望と思想の革命なのである。今現在、そして将来、一部の人間が自分をカリフどころか、何を、誰を、更には人間の生死すら決める神だと思う世になっていることだろう。そしてインドネシア、母なる大地にしてわれらの血を注ぐ祖国は、われわれの文化を踏みにじって身を飾り立てている文明犯罪者たちの靴を縛るために繊維の一本一本までもが引き抜かれ、搾り続けられて色あせ、染色前の白布だけになったただの擦り切れたバティック衣服のようなものに成り下がっているのである。
ライター: 文化人、ラドハル・パンチャ・ダハナ
ソース: 2014年6月19日付けコンパス紙 "Tantangan Kabinet Mendatang"


「密輸入品に蝕まれる化粧品・ジャムゥ市場」(2014年9月11日)
現在インドネシアには化粧品会社が760あり、工場をメインにする製造分野での直接雇用者が7万5千人、流通販売分野での間接勤労者は60万人にのぼっている。2012年の国内市場は9.7兆ルピアで、2013年には11.2兆ルピアに拡大した。化粧品輸出は2011年の3兆ルピアから2012年は9兆ルピアと三倍増している。しかし2011年4月から2014年3月までの三年間に輸入された化粧品は32,950トン1.17億米ドルで、そのうち96%がタイからの輸入となっている。正式ルートで輸入通関されていない化粧品の量は統計が存在しないわけだが、普通のパサルのあちこちにまで行き渡っており、どれだけあるのか想像がつかない。
一方、ジャムゥ・伝統薬品の分野では、129社のモダン工場以外に1,118の中小零細規模の生産者がいる。この分野は伝統的なジャワ文化に立脚したものであることから、生産地はジャワ島内が圧倒的に多い。伝統薬品寄りのジャムゥが3百万人、そして飲食品・化粧品・スパ・アロマテラピー寄りのジャムゥで1千2百万人の雇用が行われている。2013年のジャムゥ伝統薬品市場は14兆ルピア、2014年は15兆ルピアに達すると予測されている。
ところがジャムゥ市場ではイリーガルな製品が多数流通している。医療効果を印象付けようとしてジャムゥの名にそぐわない化学薬品素材が混入されており、加えて食品薬品監督庁の安全審査を受けていないために人体への安全性に疑問のあるものが少なくない。国内でそのような違法製品を作っている者の中には、製造事業の許可すら得ておらず、完全に政府の監督外にある業者もいて、消費者に対する責任の管理という面ではまったくゼロということすら見受けられる。
輸入品についても同様で、インドネシア国内で安全審査を受けていないものを別の物品として虚偽の輸入通関申告を行う密輸入品もあれば、国境近辺の外港でない小さい港に闇にまぎれて陸揚げされる密輸入品の中に混じっているものもある。それらの密輸入品は税関が水際で統御していかなければならないものであるわけだが、絶え間なくそのような闇ルートを監視できるだけの人的能力が大蔵省税関総局にあるわけではないため、密輸入品対策というのはどのセクターの商品によらず、ザルになっているのが実態だ。ジャムゥ伝統薬品事業者連盟会長によれば、密輸入品は毎年2兆ルピア相当が国内に流入してきている、とのこと。


「国内フランチャイズ事業は停滞気味」(2014年9月11日)
2015年アセアン経済コミュニティ発足に当たって、国内フランチャイズ事業の域内進出を活発化させるために、政府はより高いレベルでの標準化をはからなければならない、と商工会議所が提言した。全国商工会議所フランチャイズ・ライセン全国委員会委員長は、事業クオリティ標準化が急務であり、国内レベルのものにとどまらず、国際競争を視野に入れたもっと高いものが用意されなければならない、と政府に要請した。国内資本フランチャイズの年間成長率は2%しかないのに、国内で活動している外資フランチャイズの成長率は9%にも達しているため、国内フランチャイズの競争力が強くないことをその事実が証明している。
内資フランチャイズはおよそ2千社あるが、公式に政府が定めたフランチャイズと認定されうる条件を満たしているのは100社ほどしかなく、残りはビジネスオポチュニティのカテゴリーに入るものだ。ここ数年、その数はあまり変化しておらず、一方、外国系フランチャイズは4百社に達している。業界関係者からは、国内フランチャイズが決してクオリティの劣っているところばかりというわけでなく、内容の優れたものもあるのだが、国内消費者は外国ブランドに惹かれる傾向を強く持っており、外国のものは磨きぬかれてきたものだろうから間違いないとして選択される傾向が高いことが原因のひとつになっている、とその背景を説明している。
商工会議所は政府に対して更に、国内フランチャイズの人材育成メカニズムを構築する一方、国内フランチャイズが域内進出するに際して、法律専門家とファイナンシャルコンサルタントを相手との交渉の場につけてやるような支援体制を組む必要がある、とも要請した。
現在フランチャイズビジネスに関する法律は「モダン商店事業関連フランチャイズ」に関する2012年法律第68号と「飲食サービス事業関連フランチャイズ」に関する2013年法律第7号があり、商業省はその改定を計画している。現行法では、飲食サービス事業でフランチャイザーが持てる自己資本の店は250店、モダン商店事業は150店となっているが、商工会議所はその数が多すぎると判断しており、より多くのローカル資本に事業チャンスを提供し、ローカルの人材育成がはかられるように、自己資本店舗数はもっと減らされなければならない、と委員長は主張している。ローカルコンテンツ条件が80%になっている現状は妥当なものであり、これは優れた内容である、とも委員長は述べている。


「継続するジャワ高外低」(2014年9月17日)
経済のジャワ島集中を外島に分散していくという掛け声はただこだますばかりで、実質的な変化はほとんど見られない。過去5年間のGDPにおけるジャワ島のシェアは58〜59%から下がろうとしない。経済開発促進拡張マスタープラン(MP3EI)はそのお題目とは裏腹に、外島部の天然資源を既存の経済地区に結び付けているだけであり、その結果外島部の資源搾取が加速されているのが実態だ。エコソックライツインスティテュート研究員はそう発言した。経済開発促進拡張マスタープランは全国をいくつかのコリドーに分け、既存経済地区と資源供給地区を組み合わせて地域別経済較差を縮めていくことを目標にしている。
2014年第2四半期のGDPは2,480兆ルピアで、ジャワ島のシェアは58.7%、スマトラ島23.7%、カリマンタン島8.3%、スラウェシ島4.8%、バリ・ヌサトゥンガラ2.5%、マルク・パプア1.9%というのが地域別シェア。2009〜2013年の年間GDPにおける地域別シェアも似たようなもので、経済のジャワ島集中は少しも緩和されていない。一方、ジャワ島以外の島々では鉱業や農園業など天然資源の搾取が経済活動の主要部分となっている。
2010年中央統計庁データでは、第一次セクターの74.2%が外島にあり、ジャワ島は25.8%しかない。2013年は外島シェアが73.8%に微減しただけ。
しかし経済統括相デピュティは、外島でのサイト建設に三年、さらに生産開始から三年を経過しなければ目に見える成果は現れないため、MP3EIが失敗したという見方は時期尚早である、と反論した。「開発のパイがジャワ島に積み重なれば重なるほど、環境問題や社会問題など非効率を引き起こす問題も増加する。ジャワ島の経済集中は必ず対応措置が採られなければならない問題である。」と経済統括相デピュティは語っている。


「メーカーSCのエゴいサービス」(2014年10月1日)
2014年6月3日付けコンパス紙への投書"Pelayanan Sony Indonesia"から
拝啓、編集部殿。わたしの妻はソニーインドネシア取扱商品であるノートブックを2013年以来使用しています。最近、ハードディスクが開けなくなりました。すべてのフィーチャーがオートコレクションになります。
このトラブルをどうしても解決できなかったので、妻はそのPCをバンドンのナリパン通りにあるメーカーのサービスセンターに持ち込みました。
一週間を過ぎても連絡が無かったので、サービスセンターに電話したところ、ハードディスクに問題があったことを教えられ、再インストールしなければならないと言われました。ところが、その費用が130万ルピアだと聞かされて、わたしは驚きました。なぜなら、ハードディスクの値段はせいぜい60万ルピアくらいであり、ノートブックへのOSのリインストールは、そのOSのシリアル番号の費用が購入時に追加されているのだから、無料のはずです。同意も取らずに修理を行い、当方に何の連絡もしてこなかったことに、わたしどもはとても失望しています。[ バンドン在中、アレクサンドル・プリヨ・プラトモ ]


「鳴り物入りの政策は失敗か?」(2014年10月8日)
国内の総合的経済開発、中でもこれまで後進地域とされていた東部インドネシア地方やジャワ島南部地域の経済性を引き上げることを目的にして組まれた経済開発促進拡張マスタープラン(MP3EI)の成果がまるで見られないとの批判が上がっている。経済先進地域と後進地域を結びつけてコリドー化を行い、コリドー内での開発の平準化をはかることを意図したその政策は失敗したのが明らかだ、という声も既にあがっている。
各コリドーに結び付けられた183の後進県市では、見るにたる経済成長がまったく起こっていない。この政策が進められている間にジニ係数はむしろ上昇しており、経済平準化どころか、較差が広がっているのが実情だ。ジャワ島では、昔からの経済先進地区だった北岸地域にさまざまな新規投資が増加しており、ジャワ島南部地域にその恩恵は届いていない。スマトラ島も同様で、従来からの経済先進地区である東岸地域とあまり活発でない西岸地域の較差は拡大している。
促進と拡張を両建てで進めようとしたこの政策は促進ばかりが先行し、拡張は置き去りにされている。しかも促進が実現されているのは先進地域ばかりで、促進の焦点が当たるべき東部インドネシア地方は旧態然のままになっている。ソフィヤン・ワナンディAPINDO会長は、過去三年間のこの政策遂行からの成果はあまり見られない、と語る。「目立つのはプロジェクトの開始ばかりであり、それがどれだけの成果を生み出したかについてはあまり語られるべき材料がない。会議ばかりが頻発している印象だ。各省も地方自治体も、この政策にあまり興味惹かれていないように見える。プロジェクトの土地収用からして、あまり進展していない。それは政府の意志がこの政策に及んでいないことを意味している。コミットメントに欠けているのだ。」
しかし経済統括相デピュティはそれらの批判に対して、経済活動が依然としてジャワ島内に集中しているのは事実だが、プロジェクトのほとんどは認可を得てから稼動までに三年程度の期間を必要とするため、その間に顕著な成果が出ないのは当然だと反論している。
2013年3月までのインフラ投資状況とGDP内の地域別シェアは下の通り。
経済コリドー: プロジェクト件数/金額、地域別シェア2009年/2013年
ジャワ: 188/9,224、 58.1/58.0
スマトラ: 219/4,221、 23.5/23.8
スラウェシ: 197/1,868、 4.5/4.8
カリマンタン; 102/1,656、 9.2/8.7
マルク・パプア: 98/1,214、 2.0/2.2
バリ・ヌサトゥンガラ: 95/703、 2.7/2.5


「中小事業もジャワに集中」(2014年10月8日)
国内中小零細事業セクターの発展は、大きなバラつきに見舞われている。全国5,650万事業所を擁するこのセクターの半分がジャワ島内に集中して活発な経済活動を行っている反面、外島部の中小零細事業は労働力不足のために経済活動が伸びない。おまけに、改善意欲の強い青年層が労働力のメインを占めていないことから、外島におけるこのセクターの事業発展は緩慢なものになっている、と工業省中小産業局長が明らかにした。
外島部の中小零細事業が青年層に人気のないのは、長時間労働の割りに報酬が小さいことが原因になっている。たとえば北スマトラ州バタッ族の伝統織物であるウロスの生産は、一枚織り上げるのに三日かかり、販売価格は40〜60万ルピアにしかならない。そしてその布が売れたときに織り手が受け取れる金額はわずかその20%でしかない。結局、青年層は故郷にいてそんな仕事しか得られないのなら、他の土地へ仕事を求めて去って行くことになり、青年層労働力が希薄になってしまうのだ、と局長は述べている。
クリエーティブ産業であるウロス職布ブティック「マルタウロス」の事業主マルタ・シライッさんは、製造場所をジャワ島に移した。「ジャワには労働力がいくらでもあるので、事業は勢いよく発展しています。」とかの女は語っている。
中央統計庁データによれば、2013年インドネシアの就業人口は110,801,648人で、そのうち11,872,428人が中小零細規模のクリエーティブ産業セクターに雇用されており、そのうちの6割がジャワ島に在住している。工業省はその爬行的な状況を改善するために、外島部の青年層をメイン対象にして、職業指導や実習あるいは資金援助などを実施している。


「劣悪な工業団地へのアクセスインフラ」
2014年8月20日付けコンパス紙への投書"Kemacetan di Pintu Masuk Kawasan Industri Cikarang"から
拝啓、編集部殿。わたしは西ジャワ州ブカシ県チカランのMM2100工業団地で働いており、リッポチカラン工業団地へ頻繁に業務で訪れます。自動車専用道をまたぐ橋が二方向の対面交通に十分な広さを有していないため、その地区の入口にたどり着くまで猛烈な渋滞に苦しめられる毎日です。
そこを通る従業員送迎バスは大量にあります。その橋の通行を順番に一方通行にして交通整理している警官のご苦労はたいへんなものと察します。二輪車はそんな状況にお構いなしに、そこを突っ切ろうとして双方向から突っ込んできます。雨が降ろうものなら、かなり深い水溜りができるため、状況は更に悪化します。
MM2100工業団地とリッポチカラン工業団地を往復しようとする場合、その両地区を結ぶ橋がまだ使えません。MM2100工業団地運営者が団地入口の橋を拡張するよう希望します。
またリッポチカラン工業団地運営者に対しても、ふたつの工業団地をつなぐ橋を完成させることを希望します。もちろんその実施には、地元自治体政府のバックアップが不可欠であり、その両工業団地は地元政府に多大の税収を供しているのですから。[ ブカシ県チカラン在住、ディラ ]


「相変わらず首都圏工業団地に人気が集中」(2014年11月3日)
2014年第3四半期までの工場用地販売状況は総面積325Haにのぼり、2013年通年の450Haに肉迫する状況になっている。インドネシア工業団地会会長によれば、ブカシが人気のトップになっている由。タンジュンプリウッ港に近いという地の利が最大要因だろうと会長は語る。
工業団地別に見るなら、やはり即売可能なストックを多く抱えているところが販売状況も好調で、デルタシリコン、リッポチカラン、グリーンランドインターナショナルインダストリアルセンターなどが上位にある。
地域別の第二位はバンテン州セランで、タイの食品企業がモデルンチカンデ工業団地に110Haの土地を買ったことが第二位の地位をもたらすことになった。
西ジャワ州カラワンでは工業団地の建設が活発化している。新設団地はArtha Industrial Hill、拡張工事はKarawang International Industrial CityやSurya Ciptaで行なわれている。カラワン地区はメトロポリタンプライオリティエリアに入っており、その総合的なプログラムによる発展が期待されている地区だ。
工業省データによると、2009年から2013年までの内国投資の伸びは年率27.39%だが、外国投資の伸び率は年間42.65%となっている。


「村落部の製造セクターが天下分け目」(2014年11月5日)
アセアン域内市場開放でインドネシアはどう競争するのか?村落部で個人事業主の層を厚くし、そこでの生産性を高めることで国内市場を輸入品から守るのが最善の方策だ、と中小事業コペラシ省が提言した。
これまで労働生産性の話が出ると、工場や企業の勤労者の生産性ばかりが取り上げられてきた。しかし、インドネシア国内経済を支えているのは中小事業者とコペラシであり、その分野における生産性に目を向けなければインドネシア経済のトータル方針は成り立たない。そのために同省は村落部における自営業者の育成と発展に注力しており、特に食品・エネルギー・水の三セクターを優先して対策を行なっているとのこと。その三セクターが国内ファクターで確保されるなら、外国産品の国内市場への浸透は国家経済にも国民生活にも大きな影響は生じない。
実際に、製品については2010年以来、アセアンメンバー国の産品はインドネシアに輸入関税ゼロで入ってくるようになっており、今現在の状況が2015年にも継続するだけだが、2015年に警戒しなければならないのはサービスセクターと小規模製造業が新規に国内に入ってくることだ。それらの分野でインドネシアは競争力を持っているのだろうか?
国内労働力を学歴別に見てみるなら、94.4%が高卒以下で占められており、60.8%が中学以下、17.8%が普通科高校、15.8%が工業高校という内訳だ。既に報道されている通り、労働力一人当たりの生産高を域内諸国と比較すると、2013年データでインドネシアは9千5百ドルしかなく、シンガポールの9.2万ドル、マレーシアの3.3万ドル、タイの1.54万ドルなどを見る限り、桁違いの様相を呈している。工業省は村落部における製造セクターの人材を育成するため、全国2百県市から1千3百人の普通科と工業高校の卒業生をリクルートし、工業省関連の17教育機関(9大学を含む)で三年間教育してから故郷へ戻し、地元の製造セクター振興に従事させるとともに、かれら自身がその世界で個人事業主になるよう支援する政策を行なっている。


「投資高の伸びと雇用の伸びが逆比例」(2014年11月4日)
2014年第3四半期、内資外資による新規直接投資が生み出した雇用は349,377人で、通年累計は960,336人となった。2013年実績と比較すると、第3四半期は411,543人、通年累計は1,399,843人で、投資総額の伸びに対し、雇用数は減少するという反比例現象が起こっている。ちなみに、2014年第3四半期の投資高は119.9兆ルピア、通年累計は342.7兆ルピアであり、対前年同期比は前者が19.3%アップ、後者が16.8%アップだ。投資調整庁長官はそれについて、資本集約事業が増加し労働集約事業が減少していることが原因だと述べている。
2014年第3四半期の投資状況を産業セクター別に見ると、内国資本は電気ガス水道が5.6兆ルピア、基礎化学医薬セクター5.6兆、住宅工業団地オフィス5兆、交通通信倉庫4.9兆、非金属鉱物産業4.7兆など。外国資本は交通通信倉庫12億米ドル、鉱業10億、基礎化学医薬10億、ベースメタル金属機械家電7億、その他交通運輸6億となっている。外資を国別に見るなら、シンガポール15億米ドル、オランダ9億、イギリス8億、日本5億、アメリカ3億といった並びになる。
投資先地域別では、ジャワ島62.2兆ルピア、外島57.7兆ルピアだが、通年累計はジャワ島193.3兆外島149.4兆で較差は依然大きい。ジャワ島に集中している投資を平均化させるために政府は種々の政策を用意してそれを推進している。工業省データでは、2013年の比較はジャワ島72%外島28%であり、2025年までにその比率をジャワ島60%外島40%まで平均化させることが目標になっている。


「プレミウムガソリン値上げはいつ?」(2014年11月10日)
2014年度予算内に定められている補助金付石油燃料消費を正しくコントロールするために、プルタミナはふたつのシナリオを用意した。プルタミナのデータでは、2014年度の補助金付石油燃料割当量4,600万klに対して10月末日までに3,907万klが消費されており、既に予定の86%に達している。このまま推移すれば消費量が割当量をオーバーするのは目に見えており、割当量を超えて出荷することが禁止されているため、必然的にプレミウムガソリンとソラル軽油の補助金付価格での販売は停止される。プルタミナの読みでは、プレミウムガソリンは12月20日、ソラル軽油は12月23日にその事態が訪れるだろうとのこと。補助金付灯油に至っては、12月7日がその日になりそう。その日から12月31日までの期間にそういう事態に立ち至ったなら、それが社会的混乱を誘発することが大いに懸念される。プルタミナは政府の指導下に大きな混乱の発生を防止し、また国民生活に支障が出るのを最小限にとどめることに努めなければならない。
その対策としてプルタミナは、消費者の一回当たり購入量を制限する方針を出した。ガソリンスタンドは補助金付プレミウムガソリンを自家用四輪車には10万ルピア、公共運送車両には15万ルピア、二輪車は2万ルピア以上販売してはならないというのがそれで、この方針はジャンビ州、リアウ島嶼州、南スラウェシ州で既に開始されている。その実施に際しての法的根拠は地元自治体首長が出す決定書であり、首長がその方針に賛成しない州では実施がなされないのは言うまでもない。
補助金付石油燃料の出荷が停止されれば市場で燃料不足が起こり、群衆の不満に火がつくと暴動もありえないことではない。そのため市場には潤沢に燃料がストックされているようにする必要があり、プルタミナは補助金なしのプレミウムガソリンとプルタマックスを市中のガソリンスタンドにたっぷり供給する計画を立てている。補助金なしプレミウムガソリンのリッター当たり価格は8,500〜9,100ルピアのレンジになる見込み。
リアウ島嶼州では、補助金付石油燃料の販売制限が行なわれている。バタム市商工エネルギー天然資源局エネルギー天然資源担当デピュティによれば、その販売制限は2011年にバタム市長が出した消費削減方針に従うものであるとのこと。バタム市では、非大型車両のソラル軽油購入は一日30リッターが限度とされている。ソラルを買い集めて隠匿し、工業界に補助金なし軽油より廉い価格で販売したり、あるいは外国の買付人に洋上で密売する違法行為への対策を意図した方針がそれだった。その制限方針が実施に移されてからは、ソラル消費がかつての一日480klから430klにダウンし、一日250klという最低消費記録も残された。それに追い討ちをかけるかのように、2014年9月18日から、プルタミナはBRI銀行と提携してノンキャッシュによる非公開販売方式を開始した。つまり市内のガソリンスタンドで、現金で補助金付ソラルを購入しようとしても売ってもらえないという状況になったのである。その結果、一日当たり消費量は230klから200klのレベルにまでダウンした。
インドネシアの民族性向を知っているひとは、バタム市内のすべてのガソリンスタンドが一件の例外もなくそれらの制限方式を一様に厳守しているとは思えないだろう。その通りで、100%完全実施はなかなか実現できず、まだ水漏れはあちこちで起こっているにせよ、制限方針は目を見張るような効果をあげている、と同デピュティは手放しのありさまだ。国家経済企画庁長官は石油燃料補助金削減方針に関して、補助金付石油燃料の消費者価格値上げは、さまざまなアスペクトに関する議論をしつくした上で実施されることになると表明しており、単なる国家予算国家財政の問題を超越したエネルギー消費削減という大命題に新内閣は手をかけているようにも思える。


「プロガドンはインドネシア初の工業団地」(2014年11月20日)
インドネシアで最初に作られた東ジャカルタ市プロガドン工業団地は40歳を超えた。作られた当時は周辺が水田や空地だらけだったが、今ではびっしりと人間が居住する空間で埋め尽くされている。プロガドン工業団地運営会社JIEPが、団地内道路インフラ改修工事を開始した。
団地内を貫通する14キロのメイン道路の改修と排水路の掘り下げ、そして入居している工場や倉庫が従業員用のキャンティンを設けるための指導と支援がその主要プログラム。入居企業の多くはこの工業団地の立地条件のよさが、インフラや運営のクオリティの悪さで大きく損なわれていることを強調する。
「道路インフラが劣悪なだけでなく、団地内秩序の監督もいい加減だ。土日にここへ来てみればわかる。工業団地内の道路脇は物売り屋台に占拠されている。ここは工業団地なのか、それともパサルなのか?」
中央政府と東ジャカルタ市庁が合弁で興したJIEPの代表取締役は、40年間で総合的な改修工事は一度もなされたことがない、と認める。そのために、団地内のメイン道路を14キロに渡って幅7メートル、コンクリート厚30センチのものに整備することにした。更に、ジャカルタが水害に見舞われたら、この工業団地も水没するのが普通だったから、そのために、幅4メートルだった排水路二本は2キロにわたって幅が12メートルに拡張されている。しかし、その水路はカリスンテルに注いでおり、カリスンテルの容量が見合っていないために団地内の排水路が十分な効果をあげていないのが実情だ。都庁は近々、その対策をはかることにしている。
外部からカキリマ商人が入ってきて公共スペース内で営業していることについては、まず団地入居者が従業員用キャンティンを設けることを徹底させる、と代表取締役は語る。入居している375社のうちで、キャンティンを持っているところは極めて少ない。従業員が食事や買物に外へ出ることがなくなれば、カキリマ商人たちは他に移っていくようになる。またJIEPも、かれらのための営業場所を用意して、公共スペースでの営業をやめさせるように指導していく所存である由。
首都ジャカルタの中に工場は無用であるとして閉鎖と西ジャワ州への移転が求められた時期を乗り越えたJIEPは、アセアン自由市場時代に向かって体勢を整えつつあるようだ。


「ガソリン値上げは野党の武器になるか?」(2014年11月21〜25日)
2014年11月18日午前0時をもって補助金付き石油燃料の値上げが実施された。ジョコウィ大統領による値上げ発表はその前夜だ。新料金はプレミウムガソリンが8,500ルピア/リッター、ソラル軽油7,500ルピア/リッターで、いずれも2千ルピアのアップになっている。これまでその的外れの補助金垂れ流しが続けられてきたのは、理性的に考えれば値上げ方針が最善の対応であることがわかりきっているのに、一部国民からの値上がりに対する問答無用の反発と、国内の物価メカニズムを掌握しきれていない政府が懸念するインフレの爆発、そして政治権力と癒着して国内市場を支配しているマフィアの逆襲などが社会不穏をかきたてて現政権の合法性を脅かす事態に立ち至るのを怖れたためだったようだ。
国民の精神革命を標榜し、国民と国家の指導者として合理的な政策を勇気を持って進めてくれるべき大統領に選ばれたジョコウィ氏が、就任後すぐその値上げに着手したのは当然だったと言える。そして案の定、現政権の政敵となっている野党連合がこの機をとらえて大統領失脚の動きを示した。国会の議席過半数を占める野党が一斉に値上げの是非を問い、またそれを強行したジョコウィ政府を非難し、巷では値上げ反対デモや公共運送機関のストなどが世の中で顕示されたが、国民にとっての最大の問題は生活基幹物資、いわゆる食糧の値上がりだ。また民間企業経営者にとっても、すでに大部分が確定している地方別最低賃金を労働界が白紙撤回交渉新規巻き直しの要求でぶち壊す動きが活発化することへの怖れもある。
運輸大臣は補助金付き石油燃料値上げを理由にする公共運送機関の料金値上げは10%を上限にする方針を表明しているが、都内の公共運送業者は値上げの発表と共に千ルピア単位の値上げをして利用者から追加料金を徴収しはじめた。実際にたとえば3千ルピアの料金をとっていたバスが3百ルピアの追加を消費者に要求したところで、乗客のほとんどは1千ルピア(あるいはせいぜい5百ルピア)を最低銭貨とする生活を送っているため、杓子定規にそれを守れば運送業者はつり銭の手配で大変な仕事を強いられることになる。庶民感情としては、3百ルピアの値上げが現実性を持っていないことをむしろ同感するにちがいない。
数十パーセントに当たる千ルピア単位の料金値上げでむしろ得をする公共運送業者が、どうして値上げ反対ストを行なわなければならないのだろうか?ましてや、毎日の水揚げで翌日のかつかつの暮らしを維持しているかれらがストを行なえば、翌日は妻子を断食させなければならないはずだ。この種の社会現象を本人たちが自分の自由意志で行なっているように見る外国人の視点は、その現象の裏側にあるインドネシア特有のファクターがまったく視野に入っていない独善的な思い込みでしかないと言われてもしかたあるまい。
庶民がもっとも嫌悪する食糧食材値上がりは、石油燃料値上げ発表前から天候不順を理由にして起こっていたが、値上げ発表で都内の各パサルでは軒並み価格が上昇した。インドネシアの物価に関して言うなら、日常生活物資の価格は現実に請求コストが上昇したから販売価格を値上げするという後追い方式でなく、コスト上昇が決まったから即時販売価格を値上げするという先取り方式が普通だ。その心理傾向は更に、コストアップが起こりそうだからという見込み値上げを誘発するのが常識と化している。国内経済がいかに売り手の意向によって支配されているかということを如実に物語る一例がそれだろう。
そして行政が自由市場自由経済の初歩原理を謳ってあたかもフェアなメカニズムが動いているようなことを言い、市場でなく流通業者が価格を牛耳っている事実などおくびにも出さない姿も、知識層には周知のことがらになっている。一方的に搾取の対象にされている国民消費者を保護するべき政府が流通業界とつるんでその搾取利益の一部を掠め取っているなら、国民は永遠に救われない。インドネシアでは、その行政と実業の溶融状態がマフィアと呼ばれている。巨大な需要を持つ商品には必ずマフィアがついており、行政サービスまでが商品となってマフィアの支配に服しているしまつなのである。法曹界にまでマフィアがいるのは、法律や裁判が商品になっているからだ。
東ジャカルタ市クラマッジャティ中央市場では、補助金付き石油燃料値上げ発表の翌日にIR−64の一級米がキロ当たり8,900ルピアから9,100ルピアに上昇した。二級米は8,400から8,700ルピアに、三級米は8,100から8,500ルピアに上がった。赤トウガラシはキロ当たり44,000から52,000ルピアに、赤チャベラウィッ(キダチトウガラシ)は36,000から41,000ルピアに上昇。パサルの商人たちの話では運送費も6〜8%値上がりしており、東ジャワ州バニュワギ県からこの市場まで11トンのトウガラシを輸送するトラック費用は450万から480万ルピアに上がっているとのこと。
ジャガイモの産地、中部ジャワ州ディエン高原からクラマッジャティ市場までの運送料金は220万から280万ルピアにアップした。しかし市場での商品価格変動が石油燃料値上げだけを要因としているわけではない。トウガラシの入荷は平常期から4割減になっており、トウガラシはとどまるところを知らない値上がり現象を呈している。一方、東ジャカルタ市チピナン米中央市場では、米のストックが2千3百トンあるので、需給関係で値上がりが起こる心配はない、と関係者は見ている。
長引いた乾季でジャワ島内の各地に水不足が起こり、農産品の生産に起こった異状が生活基幹物資の値上がりのベースになっているわけだが、そこに加わった石油燃料値上げが消費者の印象を吸い上げていく可能性は小さくなく、報道操作によって因果関係の付け替えを行なうことは難しくないように思える。この種の混乱をマフィアが利用しないはずがない。ましてや、需給関係が容易に商品価格を変動させる習慣に染まっているインドネシア経済は、市場で混乱が起こるやいなや生産者や流通者が商品出荷の手綱を操作し、市場で品薄を起こさせて値上げを誘導することもビジネスの常道の中に含まれているのである。
そのような市場であればこそ、歴代の為政者はそういった混乱の発端になりかねない公共料金値上げ、特に石油燃料値上げ、を現状凍結させながら、任期を安泰に通過するほうを選んできたと言えないだろうか?
各地方自治体は、中央政府が石油燃料値上げを行うことをあらかじめ知っており、それが行なわれたあとの対策を前もって練ってきた。首都ジャカルタでも、物価統制対策チームが作られ、市場での価格・インフレ昂進状況・物資供給などの実態を詳細に把握する作業が開始されている。物資供給で流通者の故意の出荷操作が見つからなければ、都庁は物資調達を行なって都内市場に廉価放出する市場オペレーションを実施することになる。そのために、ランプンや東ヌサトゥンガラなどの食糧生産州と合意覚書を結び、緊急事態の物資調達に協力してもらう体制が作られている。その体制を組んだのは、都知事時代のジョコウィ現大統領だ。
都内の在来型パサルを統括している都営会社PDパサルジャヤ代表取締役は、物資供給の監視に最大のエネルギーを注いでいる、と語る。「パサルの商品に激しい値上がりが起こるのは、供給が激減することが原因だ。供給が顕著に減少した場合、流通業界にその状況にまつわる説明を求める。石油燃料値上げの影響がどうなのか、あるいはどのような原因が供給量の低下に関わっているのか。その内容次第で、供給をどのように確保していくのかという対策を講じることになる。今のところ、石油燃料値上げが原因でパサルにおける物価が大きく変動するということは起こっていない。供給量もそれほど変化していない。」
各地方部でも、特に庶民の生活必需品として米と似たような位置づけにあるトウガラシの値上がりは激しい。それにどう対処していくのかというのが、各地方首長の腕の見せ所だろう。住民が満足できるまでの成果をあげることが可能かどうかは不明だが。
そういう国民の不満を為政者に向けさせて反政府パワーを作り出すことは、太古の昔から現代の革命思想に至るまで、伝統技術として継承されている。現政権を失脚させてそれに取って代りたい野党連合が今回の政策をどのように自分の武器に変えて現政権に痛打を与えることができるか、そこまでの策謀をふるえるブレーンが果たしているのかどうかということも興味深いポイントだ。
昔から、多数の政党が争いながらも政権保持者が確定すれば、「昨日の敵は今日の友」よろしく挙国一致内閣が作られていたインドネシアの伝統は、インドネシアの社会風土を強く反映した「野党のない、あるいはあっても微力でほとんど何もできない」政府と国会という政治構造を育んできた。
今回、圧倒的な国民の期待を集める人材を手駒に持ったかつての単独野党政党がその人材を大統領に擁する国会トップ政党になったとき、インドネシアの政治風土は他の多くの国にあるものと似たような形に変化してしまった。この先、その形がいったい何を生み出すのか、あるいはその形が一時のものとして昔からの伝統に回帰していくのか、実に興味尽きないものがあるとわたしは思う。


「政府がミャンマーへの進出を実業界にプッシュ」(2014年12月5日)
ジョコウィ大統領が国内実業界にミャンマーへの投資を奨めている。ミャンマーは将来性の高い市場であり、インドネシア資本の進出先として格好の国だ、と在ミャンマーインドネシア大使も裏書する。農業や鉱業などの産業界にミャンマーへの進出を奨めるよう、大統領は関係閣僚に指示を出したそうだ。そして、その交通の便を確保するべく、国有航空会社ガルーダ航空とミャンマー国際航空が協力覚書を2014年11月25日に交わした。
ジャカルタからミャンマーに向かう航空機旅客はひと月6千人にのぼる、とエミルシャー・サタル、ガルーダ航空代表取締役は語る。その移動に利用されているのは、インドネシアの航空会社でもなく、またミャンマーの航空会社でもない。今回、両航空会社間でコードシェアリング協定が成立したため、両国間の移動にシンガポールもしくはバンコックで互いの航空機への乗り継ぎが容易になった。ミャンマーとの間に相互乗入を行なっているアセアン加盟国はまだ一部でしかない。ミャンマー側は路線網の拡大を強く望んでおり、ひとの移動を促進させるべくビジネスビザの発給に便宜をはかる方針だそうだ。インドネシアのビジネスマンに対してはとりあえず、100人に対してビジネスビザ発給に優遇を与える予定であることを、インドネシア駐在ミャンマー大使は表明している。公共事業省直轄国有事業体PTウィジャヤカルヤはミャンマーから建設工事を受注したため、そのプロジェクトに就くインドネシア人3百人をミャンマーに送り込むことになっている、と駐ミャンマーインドネシア大使は物語っている。