インドネシア市場情報2008〜09年


「首都にパリジャンデパートが新規オープン」(2008年1月4日)
インドネシアの小売業界でトップクラスのPTマタハリプトラプリマ社がアッパーミドル購買層を対象にして新たな百貨店タイプの小売販売チェーンをオープンした。この百貨店チェーンはParisianと命名され、西武やデベンハムなど外資系百貨店と直接競合する新百貨店チェーンと位置付けられている。第一号店は西ジャカルタのモールタマンアングレッ(Mal Taman Anggrek)内に2007年12月22日にオープンした。PTマタハリプトラプリマ社企業広報担当取締役によれば、2008年にはパリジャンデパートがジャカルタ2ヶ所スラバヤ2ヶ所にオープンする予定になっている。パリジャンのマジョリティシェアはリッポグループの手中にあり、リッポグループはシンガポールを本拠とするロビンソン百貨店のシェアを持っていることから、シンガポールの高級品がパリジャンに流れてくる可能性は否定できないもののようだ。
パリジャンはインドネシアローカルブランドで、ロワーミドル層をターゲットにしているマタハリデパートとは経営が分かれている。マタハリプトラプリマ社はかつて上級購買層を対象にしてGaleriaデパートをオープンしていたがこの店は最近、時の流れの中に姿を没しつつある。モールタマンアングレッにオープンしたパリジャンはマタハリデパートのフロアーに入れ替わったもので、チトスやプルイッ、あるいはスラバヤでの新規開店はそのパターンが継承される模様。パリジャンデパートでは2百件のブランドが取り扱われ、そのうちの25%は海外の著名デザイナーブランドで占められている。


「トリンプ」(2008年1月17日)
PT Matahari Putra Prima社が新しくスタートさせた高級百貨店チェーンについては「首都にパリジャンデパートが新規オープン」(2008年1月4日)で報道されたとおり。このパリジャンが世界でトップクラスのネームバリューを持つ女性下着ブランド「トゥリユム」のインドネシアにおける独占販売権を手に入れたことを発表した。
「トゥリユム」とはTriumphのインドネシア発音で、日本では「トリンプ」と呼ばれている。トリンプはここ2年間インドネシアから姿を消していた。かつては衣料品業界トップグループの地位を誇ったPT Great River Internationalが Arrow, Triumph, Jockey, Saville Row, HOM, Kenzo, Leeなど世界一流ブランドのライセンスを持って国内での生産販売活動を行ってきたが、GRI社は財務報告書の不正問題によって株式上場停止処分を受け、社債の金利支払いに失敗し、操業停止処分を受け、そして一部従業員による破産告訴の対象にされるというさまざまな災厄にしがみつかれてしまった。その結果GRI社が自社で製造し国内市場に出荷していたトリンプ女性下着は2年前から市場に姿を見せなくなってしまった。しかしGRI社が数多く持っていた国際一流ブランド衣料品の中でトリンプが同社にとっての稼ぎ頭だったという事実はそれだけインドネシアにトリンプファンが数多くいたということを意味しており、そこに注目したパリジャンデパートがその独占権を手に入れて国内にトリンプを復活させる動きを始めたというのがこの裏話である。
パリジャンはドイツのトリンプブランドオーナーから、インドネシアの著名企業5〜6社との競合の果てに、インドネシア国内独占販売権を直接手に入れたとマタハリ社役員は語っている。しかしパリジャンが販売するトリンプ製品がGRI時代のようにインドネシア国内生産されるのかどうかといったことについて同役員は明確な回答を避けている。ともあれ、インドネシアにたくさんいるに違いないトリンプを愛する女性たちに対して「請うご期待」との前宣伝に同役員は努めている。


「お気に入り小売店のトップはカルフル」(2008年2月22日)
モダン商店の中でハイパーマーケットのカルフルがナンバーワンの人気を博しており、いずこのモールもカルフルをアンカーテナントに得ようと望んでいる、とニールセンインドネシアが最新の小売業界状況を報告した。ニールセンインドネシアがジャボデタベッ地区の消費者を対象に実施したサーベイによれば、最大多数がカルフルを買い物場所に選んでいる。そのためモールはカルフルを呼び込むことで集客性を高め、他のテナントの売上にも好影響をもたらそうと考えている。商品サプライヤーを対象に行なわれたサーベイでも小売販売場所としてトップの座に就いているのはカルフルで、取引規模の大きさが最高の魅力になっている。
サーベイデータを見ると、首都圏消費者の23%がカルフルを常連買物場所と定めている。17%はカルフルをお気に入り買物場所、そして20%は親戚や知合いに推薦する買物場所としてカルフルをトップに位置付けている。
一方、マカッサルでは少し状況が異なり、PT Matahari Putra Primaが経営するHypermartがトップの座に就いている。ヒプルマルは首都圏におけるカルフルとほとんど同じような背景の中にあり、興味深い地域性を現出させている。


「国民購買力が回復?!」(2008年2月28日)
2007年は国民購買力が回復の兆しを見せており、それは二輪車販売台数が2006年から6%しか増えなかったのに反して四輪自動車販売は43万台を超え、前年から35%も増加したことから窺い知ることができる、と自動車業界者が語った。インドネシアオートバイ産業協会(AISI)のグナディ・シンドゥナタ会長は、一部消費者が二輪車購入から四輪車購入に購買対象を変えたのは国民購買力が回復してきていることを示すものだ、と発言した。2007年は四輪車の買換え需要に加えて、新規購入件数が顕著に増加しているというデータが業界に流れている。これは四輪自動車生産者が中国産超廉価ものを含めて低価格品を市場に投入したことと関連しており、購買力が向上してきた二輪車プロスペクトが手の届く四輪車に購買対象を切り換えたことを反映するものだと見られている。これまで四輪車を持っていなかった消費者の四輪車購入は特に廉価機種で顕著に見ることができる。2007年には市場価格が1.5億ルピア未満のChery QQ, Hyundai Avega, Proton SavyそしてDaihatsu Xenia, Toyota Avanzaの新バージョンが新発売されている。


「ロイヤルドルトンがインドネシアに生産を集中」(2008年3月4日)
デパートの食器売り場を訪れると、高級陶磁器の食器セットが並んでいる。ロイヤルドルトンとロイヤルアルバートという二つの著名ブランドを製造販売しているロイヤルドルトンはイギリスの高級テーブルウエアメーカーで、ウオーターフォードクリスタル、ウエッジウッド、ローゼンタールと共にウオーターフォードウエッジウッドグループを構成するブランドのひとつ。2005年にウオーターフォードウエッジウッドが8千万ポンドでロイヤルドルトンを買収した結果がそれだ。
ロイヤルドルトンは1994年にインドネシアに進出してきた。東南アジア最大の衛生陶器メーカーMultifortunaグループと提携してバンテン州タングランで生産活動を開始し、既に費やした投資総額は1.5億ドルに達すると言われている。その事業は2002年に持ち株比率の変更が行われ、ロイヤルドルトン95%、ムルティフォルトゥナ5%という構成でPT Doulton Indonesiaが発足した。そしてウオーターフォードウエッジウッドは最近になって、ロンドンにあるロイヤルドルトンの生産本拠をすべてインドネシアに移転させることを決めた。このため数年後には、ロイヤルドルトンのグローバル生産拠点がインドネシアになる。
移転計画は5つのフェーズに分けられ、完了は2010年でそれまでに1億米ドルがこのプロジェクトに注ぎ込まれることになっている。インドネシアを生産センターにするという白羽の矢を立てた理由についてウオーターフォードウエッジウッド役員は、インドネシアの事業環境が将来性を持っていることに加えてインドネシアの労働者は優れた技能を持っており、その能力はこの会社が国際的に認められた高い品質を維持して商品の生産を続けるためのたいへん重要な基盤となるからだ、と語っている。同社役員によれば、インドネシアの労賃はアジアの他の国に比べて低く労働者のクオリティもロンドンは言うに及ばずベトナム・インド・中国など他のアジア諸国より優れているとのこと。
移転プロジェクトの第1フェーズであるデキャルプリンティング工場はタングラン県バララジャでの建設工事が進行中で、竣工は2008年末が予定されている。この工場が完成すれば1千4百人という今のPTドルトンインドネシア従業員数は2千2百人に増加することになる。更に同社は2008年2月20日に次の工場の起工式を行って建設工事を開始した。これは移転プロジェクトの第2フェーズに当たり、5.8Haの土地に3千5百万米ドルをかけて食器製造工場が建設される。
2009年PTドルトンインドネシアの生産予定は2,250万ピースで、そのうち98%はヨーロッパ・アメリカ・オーストラリア・アジアなど世界中に輸出される。2007年の同社売上高は2,650万ドルにのぼり、2006年の1,613万ドルから大幅に上昇している。


「世界的高級ブランド品がイ_アに溢れる!」(2008年3月13日)
個人が身に着ける商品を生産・販売している国際的一流ブランド業界がインドネシア国内市場に照準を当てている。中国やインドに肩を並べる人口大国インドネシアでA級とBプラス級消費者階層の成長が著しいことから、一流ブランド業界は大きいポテンシャリティがそこに成育していると見ている。加えてインドネシア人の消費性向の中に、貧富を含めた社会ステータスを誇示するために高額であるのが常識の一流ブランド品を身に着ける傾向がアジア各国の中で図抜けて強く存在していることが、国際一流ブランド業界にインドネシア市場の奥深い潜在性を大きく印象付けている。インドネシア文化では、社会ステータスの高さは富裕さと密接に貼り合わされており、経済的に貧しいのに社会的に高いポジションにいるということができない社会構造になっている。更に社会的に高いポジションにいる人間はより低い人間から見上げられ、専横に振舞うことすら許される社会慣習であるために他人に対して高いポジションにいることを誇示する必要があり、貧しい経済力では手の届かないライフスタイルを他人の目に露出することで社会ステータスを主張するというあり方が昔から続けられてきた。その傾向はタイ・インド・シンガポール・マレーシアなどにも見られるとはいえインドネシアの比ではなく、インドネシア人の激しい金の使いっぷりはまるでかれらがそんな自分自身の姿に酔っているかのように見える。
ニールセンインドネシアは国際一流ブランドのインドネシア小売市場への浸透が、ジャカルタ・スラバヤ・スマラン・メダンを中心に今後一層強まるものと予測している。国内上流層が一家をあげて外国旅行し、行く先々でその国の人間すらあまり訪れない国際一流ブランドブティックに入って高価な商品を買い漁る姿は何年も前から世界中で高級品小売業界者の話のタネになっている。ニールセンの調査によれば、インドネシアで販売される一流ブランド商品の小売価格はシンガポールやマレーシアでの価格より低目に値付けされることになりそう。しかし、そうであっても、インドネシア人上流層の一流ブランド品ショッピング国外観光旅行がそれで減少することにはなりそうもない、とニールセンインドネシアの上級クライエントソルーション担当取締役は述べている。
ニールセンインドネシアによれば、インドネシア人お好みの高級ブランドは、イヴ・サンローラン、ラルフローレン、ジョルジオ・アルマーニ、グッチ、ヴェルサーチ、クリスチャン・ディオール、DKNY、ルイビトン、エンポリオ・アルマーニ、シャネル、プラダ、ジバンシー、セリーヌ、エルメス、フェンディ、フェラガモなどで、靴・財布・ベルト・めがね・ビジネスバッグ・文房具・ハンドバッグ・旅行カバン・キーホルダーなどの商品購入が多い。
一方インドネシア人が持ちたいと憧れる高級ブランドには、グッチ、ジョルジオ・アルマーニ、ヴェルサーチ、イヴ・サンローラン、ラルフローレン、ルイビトン、クリスチャン・ディオール、プラダ、エンポリオ・アルマーニ、DKNY、シャネル、エルメス、ジバンシー、フェラガモ、セリーヌ、フェンディ、マックスマーラ、ボッテガ・ヴェネタなどの名前が挙がっている。


「パサルからトコへ新たな商人の流れ」(2008年3月19日)
汚い・暗い・臭い・しかし安い、が謳い文句だった伝統型パサルは若い消費者をひきつける魅力が出せないまま没落の道をたどっており、そんな背景を着実にとらえた首都パサル運営者の都庁公営会社PDパサルジャヤは都内各地にある伝統型パサルのモダン化を進めている。都行政が転換を進めているモール式高層ビル型パサルは当然ながら大型投資プロジェクトであることからハイコスト経済へと向かうのは火を見るよりも明らかであり、ブロッケム(Blok M)やタナアバン(Tanah Abang)で既に現実のものとなっている問題はパサル商人たちが入居するさいの地代家賃がかつてのレベルからあまりにも高いものに変化していることで、パサル商人の中にはモダンパサルに入るだけの経済力がないためにカキリマ商人に脱落する者が少なからず出ている。全国市場商人協会によれば、パサル商人の20%が既にカキリマ商人に転換しているとのこと。この転換が激しいのは都市部で、ジャボデタベッやランプンあるいはスラバヤで顕著である由。かれらがパサル内の売り場を捨てたのは、2004年ごろの売上に対してここ数年はその半分程度にまで売上が落ちていることが主な原因で、売り場を維持するための費用とバランスが取れないためにカキリマ商人に転換するケースが多い。
カキリマ商人というのは恒久的店舗を持たず、道端に屋台やテーブルを置いて商品を陳列販売する者を指している。一方で恒久的店舗を運営する者は、取扱い商品が専門化しているものをトコと呼び、住宅地で住宅の一部を店にしてありとあらゆる日常生活物資を取り扱う雑貨店はワルンと呼ばれている。ニールセンインドネシアの調査によれば、そのトコ・ワルンが急激に増加している。
2004年全国のトコ・ワルン店舗数は1,745,589、2005年1,787,897、2006年1,846,752、2007年1,900,332というのがその推移で、年々5〜6万店の増加が見られる。これについてニールセンインドネシアのリテーラーサービス担当取締役は、勤め先のなくなったインドネシア人にとってトコ・ワルン営業はもっとも入りやすいビジネスであることは変わらないが、最近の傾向はパサルでの商売が非誘導的になっており、更にパサルがカキリマ商人に包囲されて小さくなったパイの争奪が厳しさを増すばかりであることから、商人の間には道路沿いにトコを開きあるいは住宅地にワルンを開くという傾向が強まっている、と説明している。パサルから脱落した商人がカキリマ方式に営業形態を変えるが、あまりにも競争の激しいカキリマビジネスに対して差別化をはかるためにトコ・ワルンを開店するという流れが作られているようだ。
ニールセンインドネシアがジャカルタ・デポッ・タングラン・ブカシ・バンドン・スラバヤ・マカッサルで行ったサーベイによれば、伝統型パサルの顧客はいまや中年を過ぎた世代の主婦がほとんどで、若い世代の主婦は快適さや保安に弱さを持つ伝統型パサルを嫌ってモダンマーケットで安全快適な買物をする傾向が著しい。加えて2006〜2007年に高まった危険な成分を含有する飲食品の話題も伝統型パサルの顧客離れを進めるのに力を貸したことは疑いもない。


「モダン小売業界は寡占状態」(2008年3月26日)
ハイパー・スーパー・ミニマーケットなどを中心とするモダンマーケットは2007年に80兆ルピアの売上を達成したが、そのうちの70%は10小売業者が稼ぎ出したもので、政府はこの寡占傾向に歯止めをかける必要があり、小規模商店の育成強化を図らなければならない、とインドネシア競争力コミュニティ会長が発言した。その10小売業者とは次の通り。
商号 / 業態 / 会社名 
Matahari / Department Store / Matahari Putra Prima
Makro / Hypermarket / Makro Indonesia
Alfa / Hypermarket+convenience store / Alfa Ratelindo
Ramayana・Robinson / Department Store /Ramayana Lestari Sentosa
Carrefour / Hypermarket / Carrefour Indonesa
Hero Pasar Swalayan / Supermarket / Hero Supermarket
Indomaret / Convenience Store / Indomarco Prismatama
Indo Grosir / Supermarket / Inticakrawala Corporation
Goro 33 / Hypermarket / Goro Bahtera Sakti
Super Indo / Supermarket / Lion Super Indo
インドネシア最大の小売企業マタハリはその売上が80兆ルピアの13.5%を占めている。二位マクロは12%、アルファ8.5%、ラマヤナ8.5%、カルフルは7.6%だ。それら大規模小売業者が売上を伸ばしていくのを阻むことはできない。政府はそれら大規模小売業者とのバランスを図るために小規模販売者に手を貸さなければならない、というのが同コミュニティ会長の趣旨。それをしなければ大規模小売業界は容易に市場を寡占してしまうことになる。なぜなら小規模小売業者は概して店舗を魅力的なものに改装する資金力を持っておらず、また商品販売価格も高い。そして巨大な資金力を持つ大規模小売業者は強い小規模小売業者を買収して競争に終止符を打つことができる。それに関してニールセンインドネシアは、インドネシアの地方部には地元の小売業界の天皇になっている小売店が必ずいる、と言う。しかしそれは狭い地域での狭い競争に勝って地元の王者になったに過ぎないのであって、大手小売企業が出店してくればそれに太刀打ちできるようなところは数少ない。ニールセンインドネシアのリテーラーサービス担当取締役はそう語っている。


「ヘローがジャイアンに転換」(2008年4月15日)
かつて一世を風靡したヘロー(Hero)スーパーマーケットは時代の波に押されて後退の道を歩んでいる。2006年12月末時点で全国に99店あったヘロースーパーマーケットは2008年2月末で71店に減少した。その一方で、ジャイアン(Giant)スーパーマーケットは2007年以来34店を数えるようになっている。
英国系ハイパーマーケットのジャイアントと提携してヘローグループは、首都圏を中心にしてハイパーマーケット「ジャイアン」をあちこちに開店させた。もともとはハイパーマーケット市場に切り込んだ形のジャイアントだったが、ヘローグループは従来からあったヘロースーパーマーケットチェーンを同一規模のままジャイアンに店名変更する方針を打ち出してきた。これは従来へローがアッパーミドル層を対象としたスーパーマーケットコンセプトで営業していたものの、ロケーション周辺の所得階層にフィットしていない店に対する経営方針転換が必要となったためで、それらミスマッチングなヘローをロワーミドル層対象の「ジャイアン」スーパーマーケットに変更する企画がいま進められている。最新データによれば、ヘローは68店まで減っており、一方「ジャイアン」スーパーマーケットは37店に増えている。ヘローとジャイアンの比率はどう想定しているのか、との問いに答えてイプン・クルニア代表取締役は「各店とロケーションの関係分析を継続的に行っており、ジャイアンに変更する必要のある店はどんどん変更していく。」と語っている。


「ジーゼル車需要が上昇」(2008年4月18日)
国際市場における原油価格の高騰で自動車の燃料経費節減の波は世界中に浸透しており、1990年代からヨーロッパで普及し始めたジーゼルエンジン搭載乗用車への移行がインドネシアでも2007年ごろから顕著になりはじめている。ヨーロッパでは、ジーゼル車の販売台数比率は1990年に13.8%しかなかったものが2006年にはその5割増にまで達しており、その傾向はインドネシアを含めて東南アジア一円に広がっている、とガイキンド(インドネシア自動車産業連盟)役員は語っている。
インドネシア国内市場でもジーゼルエンジン搭載乗用車は2007年から販売の上昇が実感されるようになっている。ジーゼルエンジンの耐久性と信頼性に関する消費者の知識が向上してきたことと歩を一にしているようだ。各自動車メーカーも環境汚染防止と燃費向上を実現させるために最新テクノロジーを駆使したジーゼル車のバリエーションを広げているため、消費者に与える魅力もより強いものになっている。
GMはシボレーキャプティバのジーゼル車をリリースすることにしており、またトヨタはキジャンイノバのジーゼル車を既に市場に投入している。更にタイ製のフォーチュナージーゼルも既に発売されており、2ヶ月で151台が売れている。フォルクスワーゲンはイギリスからカラベル完成車を輸入し、フォードもエベレスト完成車をタイから輸入している。ちなみにGMのインドネシア独占代理店であるPT GM Auto World Indonesiaが比較検討に用いた経済性に関する資料では、ジーゼル車のメリットが下のように浮き彫りにされている。
ケース1
ジーゼル車 燃料Pertadex使用
燃料消費 百キロ当たり7リッター Rp70,700/100km 燃料費Rp14,140,000-
メンテナンス  燃料フィルターRp500,000- 、点火プラグ - 、カタリティック -
年間費用合計  Rp14,640,000-
ケース2
ガソリン車 燃料Pertamax Plus使用
燃料消費 百キロ当たり10リッター Rp85,000/100km 燃料費Rp17,000,000-
メンテナンス  燃料フィルターRp450,000- 、点火プラグRp500,000- 、カタリティック -
年間費用合計  Rp17,950,000-
ケース3
ガソリン車 燃料Premium使用
燃料消費 百キロ当たり12リッター Rp54,000/100km 燃料費Rp10,800,000-
メンテナンス  燃料フィルターRp450,000- 、点火プラグRp1,000,000- 、カタリティックRp4,000,000-
年間費用合計  Rp16,250,000-
*すべて年間走行距離2万キロを想定


「消費者は寒いのがお好き」(2008年5月2日)
政府が国民に対して行っている省エネの呼びかけに応じて、モール運営者は館内冷房温度を22℃から25℃に引き上げることを合意した。この省エネによってモール運営経費は12%ダウンすることが期待されている。
インドネシアショッピングセンター運営者協会会長はその合意について、都内有力モール運営者との会合で館内冷房温度の引上げを合意したので、近いうちに全国2百ヶ所のモールに対しその新方針を通知する、と語った。「この方針はすべてのモールが足並みをそろえて実施しなければならない。そうしなければ消費者はより温度の低いモールに足を向けることになるためだ。消費者は温度がより低い建物内でショッピングするのを快適に感じる傾向を持っている。これまでモール業界は館内温度を22℃から23℃に設定してきた。テナントの中には、自分の売り場の温度を18℃にするよう要求する店主もいる。協会は温度に関してのみならず、モール内の照明についてもコンサルタントを起用して省エネに関する提案を求めることにしている。」インドネシアショッピングセンター運営者協会会長はそう表明している。


「インドネシアにもっとモダン小売店があってよい」(2008年5月10日)
人口比から見るとインドネシアは世界的なハイパーマーケット・スーパーマーケットの過疎市場だ、とニールセンヨーロッパの理事が語った。同理事によれば、人口1百万人当たり10ハイパーマーケットと100スーパーマーケットがその消費需要を満たすのが理想の状態であるとのこと。その公式を人口2億4千万人のインドネシアに当てはめれば、インドネシアには23,320店のハイパー・スーパーマーケットが必要となるが、現実には1,125店しかないため達成率は4%でしかない。
国別達成率を見ると、チェチェン127%、ハンガリー82%、ポーランド81%、韓国74%といったところが上位にあり、インドは3.4%でインドネシアと同じく低位にある。近隣諸国ではマレーシアが26%、タイは13%でインドネシアを引き離している。達成率の低い発展途上国は国際的小売ビジネスが事業進出を狙うものだが、ATキアニーが公表した情報によれば、国際的小売ビジネスが照準を当てている10ヶ国はインド・ロシア・ベトナム・ウクライナ・中国・チリ・ラトビア・スロべニア・クロアチア・トルコで、インドネシアはその中に含まれていない。
中国政府はモダン小売業界の新店舗開設を積極的に奨励する政策を取り、既に4万点を擁して対人口比理想店舗数の28%を占めているものの、インドは大型小売店舗の開店計画が出されるたびに小規模商人層から強い反対運動が起こるために新店舗開設がなかなか増加しない。インドネシアもインドと類似の事情を抱えており、そんな状況が低達成率の原因をなしているようだ。しかし国民購買力もモダンマーケット店舗数成育に強く関係しており、単純に人口比から店舗数を増やしても購買力が追いつかなければ店は自滅するだけだ、とニールセンインドネシアのリテーラーサービス担当理事はコメントしている。


「ショッピングセンターの営業時間カット」(2008年5月13日)
2008年5月2日、ユスフ・カラ副大統領が行った電撃発言にモール運営者業界が反応した。モールの営業時間を1時間減らすことを命じる大統領決定が近々出されるというのがその発言内容で、この措置によって国内エネルギー消費削減は十分な効果を得ることができるという理由が添えられた。
ステファヌス・リドワン、インドネシアショッピングセンター運営者協会会長は5月5日その政府方針に関連して、営業時間の1時間短縮はエネルギー消費削減効果よりはるかに大きい営業収入減をもたらすものだ、と次のように発言した。「モールの営業時間を一時間短縮すれば電力料金は月間1千4百万ルピア節約できるものの、モール側は10億ルピアの収入を失うことになる。モール運営者の事業コストは60%が電力料金で残りは従業員給与・定常費用・臨時出費などから成っている。臨時出費というのは、たとえばモールの近辺でデモが行われたときに警備を増強するための出費といった類のものだ。収益は税金・投資リターン・追加投資や設備資産買換え準備金などに当てられる。電力コストを対売上比で見ると、スーパーマーケットは2〜3%、百貨店は4〜5%という数値になっている。」
ハイパー・スーパー・百貨店などの営業時間は「モダン商店・ショッピングセンター・在来型パサルの育成と整備」に関する大統領規則の中で定められており、月〜金曜日は午前10時から22時までの12時間、土日は10時から23時まで13時間、そして特定の祭日や特別の日に関して地元政府は22時を超える営業時間を許可することができるとされている。モール業界が試算したコスト節減案を見ると、12時間から11時間に営業時間が減少するために電力使用は基本的に8%ダウンする。テナントの電力使用・館内照明・冷房装置等は昼夜を問わず8%ダウンし、もし夜の営業時間短縮が行われれば駐車場・敷地内庭園灯・建物エクステリア照明などが25%削減される。それらの電力コスト節減合計は営業時間短縮が朝の場合は5.26%、夜の場合5.37%で、それを対売上比で見るなら0.8%という数字が導かれる。短縮時間を朝にするか夜にするかという問題については、夜にしたほうがエネルギー消費削減効果は高いだろうとたいていのひとは考えるようだが、実際には上で示されているようにほんのわずかな差しか得られない。他面、ウイークエンドは別にして、ウイークデーの場合モール来店客は夕方ごろまでわずかしかいないが会社就業時間が終わったあとの18時ごろから22時の閉店時間まで来店客数は大幅に増加するのが実態になっており、夜の営業時間短縮はエネルギー消費節減効果とは比べものにならないほど大きくテナントの収入減を膨張させる効果を持っている。
一方、モールをはじめとするショッピングセンター運営者はテナントとの間にスペース利用に関する諸条件を規定した契約を結んでおり、インドネシア小売事業者協会は今回の政府方針に関連して、モール運営者が政府の方針に従った場合はテナントである小売業者に対して営業時間短縮の弁償を行わねばならず、スペース賃貸料やサービスチャージの金額が一部カットされるのは必然の対応となる、とショッピングセンター運営者業界に呼びかけている。モール運営者はそのカットされる金額が対売上比で6.9%に達すると試算している。現在全国では2百軒前後のモールが営業しており、一軒当たりの平均月間収入は45億ルピアあるため9千億ルピアという業界総収入から6.9%が失われれば毎月619億ルピアの収入減が発生する。モール運営者は従業員給与と定常オペレーション支出をサービスチャージでカバーするという基本スタンスを取ってきているものの、昨今は賃貸収入までがそこに注ぎ込まれるという状況に喘いでおり、6.9%という収入減は経営面に大きな痛手を与えることになる。
そのような状況からモール運営者は政府の計画しているエネルギー消費削減案に強い反対の姿勢を示している。PLNが先に打ち出している目標電力使用量を用いたインセンティブ・ディスインセンティブ政策だけで十分に効果的なはずであり、政府が出してきた今回のアイデアは逆効果をもたらして国民経済を悪化させるおそれが高いために実施は見合わせてほしい、と業界は政府に要請している。


「キッザニアは世間の縮図」(2008年5月19日)
2008年1月31日付けコンパス紙への投書"Waktu Terbuang di Kidzania"から
拝啓、編集部殿。ジャカルタのパシフィックプレースにあるキッザニアで遊んだ7歳の子供に着いて5時間を過ごしたわたしは、その施設が遊びながら現実社会について学ぶ機会を子供に与えてくれる場所であることを実感しました。実に物凄いことに、キッザニアでの体験は本当にジャカルタにおける日常生活でわれわれが直面する現実に子供たちを適応させてくれるのです。
キッザニアでは、時間にあまり価値が置かれていません。たとえばフォーミュラワン自動車を運転しようと列に並び、やっと自分の番が来たところ係員が尋ねました。「テストドライブはもう済んだ?」もしまだだと、もう一度テストドライブの列の最後尾に並びなおしです。時間の空費なんて問題じゃないのでしょう。だったらそういうことはどうして最初から、フォーミュラワンの運転に必要な条件(免許証とテストドライブ)として告知しないのでしょうか?子供の時間はそうやって無駄に削り取られて行くのです。
決まりがあるのにそれが守られていません。たとえばそこで遊ぶのに身長制限が表示されていますが、その制限をオーバーしている子供も問題なく参加が許されるのです。また子供が列に並ぶのに、あっちとこっちでピンポンです。つまり係員のひとりがAに並べと言ったのでAに行くと、そこにいた係員はBに並べと言うのです。そして待ち行列は整然さを失い、大きい子が小さい子を押しのけても係員は知らん顔です。
係員の数が少ないために十分な情報を得ることができず、入場客の間で情報交換しなければわからないことだらけ。そして客の立場から係員に何か提案しても従業員たちは、当方はもっとも優れたシステムを使っているので当方の行っていることはすべて正しいのだという態度がふんぷんです。
キッザニアは本当に凄いところです。時間は価値を持っておらず、決まりなど土足で踏みにじるようなことが行われているジャカルタの日常生活を子供に体験させて将来に備えさせてくれるのですから。[ 中央ジャカルタ市メンテン在住、サンドラ・ハミッ ]
2008年2月6日付けコンパス紙に掲載されたキッザニアからの回答
拝啓、編集部殿。2008年1月31日付けコンパス紙へのサンドラ・ハミッさんからの投書に関して、従業員が入場客に十分な情報を与えていないことがありましたら、当方はご迷惑をかけたことについて陳謝いたします。実のところ、どこの町へ行っても法規で定められているように、自動車を運転する者は運転免許証をまず取得しなければなりません。そしてフォーミュラワン自動車レースに参加する場合、まずテストドライブをした上でレースを楽しむのが適切ではないでしょうか。
サンドラさんのおっしゃる通り、ジャカルタでは列に並ぶということが尊重されないために入場客に整然と並んでもらうのはきわめて困難です。ジャカルタの日常生活の中の現実がそれだとおっしゃるサンドラさんに当方は同意します。現在わたしどもはキッザニアインドネシアの大統領に対して、国家議会で早急に検討するよう依頼している事項があります。それは待ち行列の割込み者に懲らしめのため黒色のブレスレットを着けさせようというものです。[ ジャカルタキッザニア市長代理、デッキー・アドリアン ]


「アルファがカルフルになる」(2008年5月21日)
カルフルがアルファスーパーマーケットのオーナーであるPT Alfa Retailindoの株式の75%を2008年初に取得したことから、アルファスーパーマーケットの屋号はすべてカルフルに付け替えられることになった。アルファレタイリンド代表取締役はそれについて、2008年のイドゥルフィトリ大祭までに全国29のアルファはカルフルならびにカルフルエクスプレスとして再出発する、と語っている。その第一店はスラバヤのパンジャンジウォ通りにあったアルファで、ここは2008年5月14日にカルフルエクスプレスとしての立上げが行われた。売り場面積が3千平米を超えていればカルフルとして、また面積が足りない場合はカルフルエクスプレスとして再オープンすることになっているため、29店あるアルファ系列店舗は12店がカルフル、17店がカルフルエクスプレスとなる。それらの間では基本的に販売される商品は同一価格とされるが、アイテム数が大きく違ってくる。
カルフルによるアルファの買収は業界内に波紋を呼んでいるが、特にサプライヤーの引継ぎに問題が生じるおそれが出ている。カルフルとアルファではサプライヤーとの取引条件が異なっており、アルファとの取引コストがカルフルに替わることで大幅増となる負担を厭うサプライヤーからは、アルファと結んでいた取引条件をカルフルが引き継ぐよう求める声が少なくない。


「カルフルの独占審査を行え」(2008年5月22日)
商号 / 形態 / 社名 / 2005年売上 / 2006年売上
1.Carrefour / ハイパーマーケット / Carrefour Indon / 5.7 / 7.2
2.Ramayana / 百貨店 / Ramayana Lestari Sentosa / 4.3 / 4.8
3.Matahari / 百貨店 / Matahari Putra Prima / 4 / 4.3
4.Hypermart / ハイパーマーケット / Matahari Putra Prima / 1.7 / 3.5
5.Giant / ハイパーマーケット / Hero Supermarket / 2.4 / 3.2
6.Indomaret / ミニマーケット / Indomarco Prismatama / 2.2 / 3
7.Alfamart / ミニマーケット / Sumber Alfaria Trijaya / 1.9 / 2.8
8.Alfa Supermarket / スーパーマーケット / Alfa Retailindo / 1.8 / 1.9
9.Super Indo / スーパーマーケット / Lion Superindo / 1.7 / 1.8
10.Hero / スーパーマーケット / Hero Supermarket / 1.6 / 1.5
11.Sogo, Java, Debenhams / 百貨店 / Mitra Adi Perkasa / 1.3 / 1.5
12.Gramedia / 書店 / Gramedia Asri Media / 1.3 / 1.4
13.Electronic City / 家電品 / Graha Sudirman Centre / 0.8 / 1.1
14.Toserba Yogya / 百貨店 / Akur Pratama / 0.8 / 0.9
15.Kimia Farma / 薬局 / Kimia Farma Apotek / 0.8 / 0.9
16.Ace Hardware / 道具雑貨 / Ace Indoritel Perkakas / 0.6 / 0.8
(売上は兆ルピア単位。出典リテールエイシア誌,2007年)
インドネシアのモダン小売業界番付は上のようになっている。カルフルのインドネシア市場浸透は突出しており、「アルファがカルフルになる」(2008年5月21日)で報道されたようにアルファがカルフルに買収されたことで巨人が更に巨大化する姿をさらしているため、全国商工会議所は事業競争監視コミッションに対してカルフルが行ったアルファの買収を審査するよう求めた。外資系のカルフルが国内市場を支配するようになれば小売市場における国内資本はますます窮地に立たされるわけで、国内資本が政府に保護を求める気運は高まっていると言える。
カルフルは全国に24店舗を擁し、二位ラマヤナは89店、三位マタハリは95店という販売網だ。独占と不健全競争に関する1999年法令第5号では、一社で市場の50%あるいはニ〜三社で75%のシェアを握る場合にその事業者は優位ポジションにあると定義されている。インドネシアモダンマーケットサプライヤー業者協会会長は、アルファのサプライヤー業者がカルフルの取引条件を強制されるのはアルファの低かった取引コストがカルフルの高いコストに切り替えられることを意味しており、これはアルファを買収することで外資系巨大リテーラーが国内サプライヤーから更に利益を吸い上げる素地を広げることに他ならない、と論評している。


「モールの電力消費が最大」(2008年5月28日)
ユスフ・カラ副大統領のモールの営業時間削減発言は「ショッピングセンターの営業時間カット」(2008年5月13日)で報道されている通りだが、技術応用研究庁がその根拠となる調査結果を公表した。2007年10月に西ジャワ州のビル40ヶ所でエネルギー消費状況を調査したものがそれで、調査対象の中でモールとスーパーマーケットのエネルギー消費がもっとも激しいという結果が出た。40ヶ所のビルの用途別電力消費量は次の通り。数字は月間の平米当たり電力消費量で、単位はkWh。
行政機関  60〜80
事務所 160〜180
病院   200〜220
スーパーマーケット 260〜280
モール  400
同庁エネルギー最適化分析課長は、モールは30%のエネルギー節減ができるはずだ、とコメントした。モールのテナントは消費者誘致のために競って店内照明を目立たせようとするために電力消費が激しい。また冷房も不可欠でないエリアまで含めたものになっている。中でも建物オーナーでない者が館内運営をしている建物のエネルギー消費量は増加する傾向にある。モールのようにテナントにエネルギー消費を委ねているところは必然的にそうなっていくようだ。古い建物だと30%、新しいものでも15〜20%の節減ができる、と同課長はアドバイスしている。またビル建設に当たってデベロッパーは自然採光に留意するとともにエネルギー浪費型素材の使用を控え、ビルデザインは省エネ型にして館内冷房も弱くすることを検討するように、と警告している。
ちなみに2007年の電力消費量は次の通り。
家庭  34.1gWh
工場  33.8gWh
事務所 14.7gWh
その他  5.4gWh
合計  87.9gWh


「クレジットカードをカタにして車椅子を借りる」(2008年6月9日)
2008年2月6日付けコンパス紙への投書"Pinjam Kursi Roda dengan Jaminan Kartu Kredit"から
拝啓、編集部殿。2008年1月20日午前10時、北ジャカルタ市モールクラパガディン(MKG)の表門が開いてすぐ、ファームマーケットで買物するためにわたしと母とふたりの妹が中に入りました。母は老齢のために普通に歩くことができず、杖か車椅子の助けを必要としているのです。ときどきモール内で車椅子に乗っている来店客を目にしていることから、モールが車椅子を用意しているかどうか尋ねるためにふたりの妹はインフォメーションデスクに行きました。インフォメーションの係員は妹に、MKG3の1階にあるカーコールデスクで尋ねるよう言いました。ところが、車椅子は運転免許証もしくはSTNK(自動車番号証明書)を持っているひとにのみ貸し出すのだと言われて驚きました。わたしども一家はクラパガディン地区でもう20年も暮らしており、自宅からMKGは近いので自家用車で来ないことのほうが多いのです。
わたしの妹ふたりは運転免許証を持っていないので、免許証もSTNKも預けることができません。妹は礼儀を失しない態度でそっとカーコールデスクの女性職員ふたりに言いました。「そんな規則は差別的だから、やめたほうがいいんじゃありませんか?」
すると職員のひとりが妹に言いました。「じゃあ、KTP(住民証明書)ともうひとつ何かカードを預けてくれたら車椅子を貸してあげますよ。そうねえ、たとえばクレジットカードとか。」クレジットカードのオーナーが、たとえどんな些細なことのためであれ、自分のカードを他人に預けたりするでしょうか?まともな感覚の人間にとって、それはありえないことのように思えます。預かったカードを第三者が悪用して犯罪行為を行なったなら、その職員は責任を取る用意があるのでしょうか?MKG職員の振る舞いにうんざりした妹はもうそれ以上車椅子を借りようとしませんでした。でもカーコールデスクの職員のひとりは椅子から立ち上がり、ラミネートされた紙を手にして妹に突き出しながら言ったのです。「規則を読みなさいよ、お姉ちゃん!」[ ジャカルタ在住、アグネス・モレーン ]


「ヤッピーとコンビニ」(2008年6月11日)
コンビニエンスストア事業が活況を呈している。ニールセンインドネシアの調査によれば、2007年末全国にあったコンビニエンスストアは148店だったが2008年3月には163店に増えており、この年末には200店に達するだろうと推測されている。コンビニエンスストアというのはミニマーケットと同じ200〜300平米の売り場面積を持つ商店で、販売品目が飲食品やファーストフードに絞られているという特徴を持つ。国民ライフスタイルの変化におされてこの形態の商店が今年は30%増になるだろう、とニールセンインドネシアは見ている。「インドネシアでこのビジネス形態が伸びているのは中高生が夜仲間同士集まって時間を過ごすというライフスタイルに誘発されており、若者たちが店内で飲食品を買ってからたむろする場所にコンビニエンスストアの表が使われているという現象からそれがよくわかる。もうひとつの要素は金を持っている独身者が増加しているということがらで、この階層は週単位や月単位でハイパーやスーパーあるいはミニマーケットで買物して日用品を貯蔵するということをあまりしない。かれらはアパートメント近辺の24時間営業コンビニを利用するほうを選ぶ。アパートメント暮らしのヤッピー族の増加がコンビニ事業の活況を誘っている要因だ。」ニールセンインドネシアのリテーラーサービス担当理事はそう分析している。


「セブンイレブンはインドネシアに入らない」(2008年6月12日)
日本のコンビニチェーンジャイアントのひとつであるセブンイレブンのインドネシア市場参入は立ち消えになった。日本インドネシア経済連携協定の実施は2008年7月1日から開始されるが、国内小売市場への外資参入に対するインドネシア政府の壁はまだまだ厚い。
商業省国内通商総局長によれば、セブンイレブンの国内市場参入に関する条件として完全フランチャイズ制もしくは1千2百平米を超える売り場面積を持つ大型店舗小売店のふたつを提示したものの、セブンイレブン側は自己資本による小型店舗小売店の構想を譲らなかったことからこの交渉は折り合いがつかないまま決裂してしまったとのこと。
現実にセブンイレブンは積極的なフランチャイズ方式の出店を世界各地で行っており、米国系大手などを抑えて業界内でもっともアグレッシブな拡張を展開していると評価されている。2006年ニールセンデータによれば、アジア太平洋諸国でセブンイレブンは日本11,454店、台湾4,385店、タイ3,798店、韓国1,421店、マレーシア845店、香港746店、オーストラリア368店、シンガポール336店、フィリピン279店という店舗数を誇っている。
インドネシア政府が出した上のニ条件に対してセブンイレブン側はフランチャイズ制でなく自己所有店舗を出したいこと、売り場面積についても通常同社が採っている2百平米の店舗面積にしたいことを主張し、インドネシアでフランチャイズ方式を取りたくない理由は明らかにしなかったとのこと。またこの交渉の中で日本側からの圧迫などは特に見られなかった、とも総局長は語っている。
インドネシアライセンスフランチャイズ会のアミル・カラモイ指導部会長は別の場で、セブンイレブンが市場参入にフランチャイズ方式を採りたくないのは豊穣なインドネシア市場のより大きな可能性を手中にしたいためだろう、と次のように語った。「フランチャイズ方式を採る必然性がある原因は、資本が不足していることと人材が足りないことのふたつだ。強大な資本を持つセブンイレブンにとってフランチャイズを行う意味はあまりない。自己資本でビジネスを完全に統御することをかれらは選択しているにちがいない。」同会長はそう分析している。


「中国製携帯電話器に人気」(2008年6月13日)
しばらく前までは中国産携帯電話器がほとんど見向きもされず、消費者はブランド物を追い求めていたというのに、いつの間にやら市場の構図は変化していた。最近ではデュアルSIMカードやアナログTV機能のついたモデルに人気が集まっている。デュアルSIM方式電話器需要はCDMA用電話器の激安価格が需要を煽っているようだ。特に効率性と実用性を意識する消費者はデュアル方式がお気に召すのは想像に難くない。最近はディストリビュータの意識も高まっているため、このタイプのアフターサービス網も充実して国内の諸都市に散らばり、市場シェアを虎視眈々と狙っている。
FORSEL誌がジャカルタの3大マーケットで集計したデータによれば、中国製携帯電話器トップ10は次のようになっている。都内3大携帯電話マーケットとは、西ジャカルタ市ITCロキシーマス、南ジャカルタ市モールアンバサドル、南ジャカルタ市ITCファッマワティ。
1位 Hi-Tech H39 TV : このTVフォーンが発売されたのは2007年。トップフェースの3分の2を占めるワイドスクリーンはシャープでクリヤー。このTVフォーンはフラットTV技術を使っており、解像度は320x240ピクセルでTFT QVGA26万2千色。
2位 K-Touch V908 : 自動チューニングモードでTVを見ることができるほか、さまざまなマルチメディア機能を持っている。音楽プレーヤー・ビデオプレーヤー・カメラ・録音・FMラジオレシーバーそしてDIY。ブルートゥースにサポートされたデータ転送は高速。
3位 Hi-Tech H38 : 似たりよったりのフィーチャーを持つ携帯電話に飽きた消費者向けに絶妙のタイミングで登場したのがこの機種。度数を使わないでどこでもテレビを見ることがこれでできるようになった。
4位 D-One DG718 TV : 1GBという巨大なメモリーを持つ。大型スクリーンのおかげでテレビを見るのは快適。お気に入り番組を見るのに料金を払う必要なし。
5位 Taxco TX80 TV : Taxcoのインドネシアへの参入は最初GSMとCDMAが同時に使えるデュアル方式電話器市場を狙ったものだった。ところが無料テレビ付き携帯電話器市場が過熱してきたために、このモデルが投入された。
6位 D-One DM289 : この機種が持つフィーチャーは良好に稼動するが、そのうちのいくつかはメモリーカードを使って動かさなければならない。フォーンブック内のコンタクト番号をインポート・エクスポートする場合、ファイルマネージャーにアクセスする場合、カメラを使う場合にその必要が生じる。
7位 My-G 660 TV : My−Gの斬新なデザインは市場の関心を集めている。スクリーンサイズはワイドTVスクリーン35x62mmで対角線では2.6インチ。9センチのアンテナはスタイラスペンと一体化している。だからテレビを見ているときにタッチスクリーン機能が使えないのが弱点だ。テレビ局を15のチャンネルに割り当てることができる。
8位 Star Tech ST21 : このトップ10の中では最廉価機種。60グラムというウエイトのこの機種は100SMS SIMフォーンブックと100SMSメモリーを貯えることができる。ポリフォニックリングトーンとスピーカーフォーンは評判のフィーチャーだ。
9位 K-Touch A615 : 周波数帯900/1800MHzのGSM用電話器はブランドものと十分に対抗することができる。中国産ブランドはたいていが最強のTVフォーンあるいはデュアルSIMフォーンを市場にオファーしているのに比べ、K−Touchは豊かなバリエーションを消費者にオファーしている。
10位 Mito Coolpad 288 CG : Mitochiba製のこの機種は魅力的なフィーチャーを備えている。ビジネスとエンターテイメントアプリケーションに加えてデュアル方式と2インチスクリーンというフィーチャーを持ち、2MPカメラはMP4や2GPフォーマットのビデオ録画にも使える。音楽再生もMP3、AAC、MIDI、WAV、AMRなどのフォーマットを受け付けることができる。


「ディスカウント販売の定義が間違っている」(2008年6月19日)
年がら年中の割引セールはディスカウントセールとは言えない、とジャカルタ商工会議所会頭がモダンマーケットで行われている販売方針に反対する論陣を張った。全国あちこちの都市でディスカウント販売フェアが行なわれているが、モダンマーケット業界が年中休みなしの割引販売を行っている限り、そのようなフェアは成功しないだろうとのこと。そのためモダン小売店は毎日割引商品があるという印象を与えないようにしてディスカウント販売プログラムを特定の機会にだけ行うように合意が結ばれる必要があると主張している。「一年中割引販売というのは正しいものでなく、廃止されるべきだ。ディスカウント販売を一年中行うのはやめるように。一年中それを行うのならもはやディスカントとは呼べない。ショッピングセンターへ行けば毎日割引販売があるのであれば、一市をあげてディスカウントフェアを行っても消費者は新鮮味を感じない。ある店ではいつでもディスカウント商品が買えるのであれば、消費者は年一回のディスカウントフェアを待ち望むということもなくなる。そんな状態であればシンガポールで行われているグレートセールのようなインパクトは期待するべくもない。おまけにプロモーションも特に目を引くようなことが行われないのだから。」
ジャカルタでは毎年、首都創設記念月間にジャカルタグレートセールが行われて都内のショッピングセンター、デパート、小売店、ホテルなどそれに協賛する商店がディスカウントセールを行っている。しかしジャカルタ商工会議所はこの催しが盛り上がらないのは上のような状況が影響しているからだろう、と見ている。
年中行事化しているモダン商店のディスカウントセールに対して商工会議所はまた、生産者の事業経営を圧迫するものでもあるとしてその習慣を撤廃するよう小売業界に呼びかけている。「販売店がディスカウントセールを行うのを理由に仕入れ価格の割引を要求する。生産者は販売店に販売してもらうために生産しているが、いざ販売するときに割引が求められて製造原価が確保できなくなることが起こる。一年中割引販売が行なわれれば、生産者の収益が危うくなる。」会頭は販売店のディスカウント販売戦略をそのように批判する。
生産者は小売業界のディスカウント合戦をやめるよう呼びかけているものの、それが実現する見込みは薄い。衣料品アクセサリー類販売店の協会であるインドネシアアクセサリー衣料品サプライヤー協会会長は、当初あった15%の利益率は販売店の割引合戦でいまや1〜5%まで下落してしまった、と語っている。


「女性用高級下着は10兆ルピア市場」(2008年6月20日)
世界の女性用下着ブランドが競ってインドネシア市場への進出を図っており、高級モールでの販売合戦は激化の一途をたどっている。これまで中流所得層から上のクラス向けに国内で販売されていた有力ブランドはWacoalとSorellaだったが、いまではWomen Secret, Pierre Cardin, Marks & Spencer, Maiden Form, Elle, Bratalk, Possesions, Aimeer Feel, BSC, Lavenzaなど30を超えるブランドが花盛り。一点が10万から50万ルピアもするそれら高級下着類は主にヨーロッパと日本からインドネシアに入っているとインドネシアアクセサリー衣料品サプライヤー協会会長は語っている。それら高級ブランド品は年間10兆ルピアという巨大なインドネシアの中上流層向け下着市場でメインシェアを獲得しようと販売戦略を磨いている。各ブランドはそれぞれ大きく分けてベーシックタイプとファッションタイプを取り揃えており、その比率は6対4の割合である由。ファッションタイプは魅力的な色やデザインで20〜30代消費者をターゲットにしたものだが、消費者は価格や着心地などの面から厳しい選択を行うのが常で、ひとつのブランドが抜きんでて人気を集めるということはほとんど起こっていない。
一方、ロワーミドル以下の所得層向けは国産品や中国製品がひしめきあっており、数え切れないほどのブランドがパサルなどを中心に販売されている。


「ゴキブリ味のチョコ」(2008年7月16日)
2008年2月27日付けコンパス紙への投書"Serangga dalam Cokelat"から
拝啓、編集部殿。2008年2月14日のバレンタインデーに、わたしの姪は黄色い包装のリッタースポーツチョコレート(コーンフレーク入り)をプレゼントしてくれました。翌日わたしはそのチョコを食べました。最初そのチョコはゴキブリの味と香りがしたのですが、わたしはブレンドされているコーンフレークのせいだろうと思って食べ続けました。ところがわたしが食べているチョコの中にアリくらいの大きさの羽虫が入っていたのです。最初に見たときはそれをチョコの滓かと思いましたが、よく見ると小さい虫の屍骸だったのでびっくりしました。それで残ったチョコを砕いて細かく調べたところ、同じ小さい虫がたくさん入っていたのです。
ゴキブリのような味がしたのはそれらの虫のせいでした。リッタースポーツチョコはたいていのスーパーマーケットで売られている高価な輸入品で、包装には輸入者がPT Nirwana Lestari, Bekasiと表示されており、quality in quadratと印刷されたスローガンには皮肉を感じました。ドイツの会社が製造したリッタースポーツチョコってこんなものだったのですか?非衛生的なこんなチョコをバレンタインデーに愛する人にプレゼントしたらと思うとゾッとします。[ 北ジャカルタ市在住、ヘンドラ・リム ]


「耐久消費財が売れなくなりそう」(2008年7月16日)
2008年下半期の国内小売市場はルバラン〜イドゥルフィトリとクリスマスがあるため極端な沈没は免れるだろうが、高額耐久消費財をはじめ非飲食品の小売販売は鈍化する傾向が高まるとニールセンインドネシアが発表した。
2008年下半期の小売状況は下降するもののルバラン〜イドゥルフィトリとクリスマスは値段が上がっても購入を差し控えようとしない国民の習慣から年々の販売量は維持され、通期の販売状況はあまり落ち込まない。ただし低価格商品に向かう傾向は強まるので、アッパーミドル層をターゲットにしていたブランド商品はつまずくだろう。国民購買力が大きな打撃を受けていることから一般消費者は、同じ商品なら価格の安いものを、また可能な限り消費量を減らして再購入の時期を引き延ばそう、とさまざまな対策を講じている。それに応じて生産者はサイズ重量を小さくして商品価格を下げ、市場で受け入れられやすいものを投入しようと知恵を絞っている。値上げせざるをえない生産者がないわけではないものの、その命運がどうなるかを云々するのはまだ時期尚早だ。
上流層はまだ十分な購買力を持っているので、これまでの購買消費パターンは概ね維持されるだろう。ただし耐久消費財について買い控えが起こるであろうことは疑念をさしはさめない。2008年4〜5月にニールセンインドネシアがインターネット経由で行ったサーベイによれば、高額電子製品・家電品・携帯電話などの購入予定は先延ばしするとの回答が多く、高収入知識階層の対応がそこからうかがえる。収入の一部を安易に物品購入に回していたかれらはその資金を貯蓄に回すようだ。ニールセン調査によるインドネシア消費者の支出目的とそのウエイトは次のようになっている。
支出目的 / 2007年上半期 / 07年下半期 / 08年上半期
貯蓄 / 63 / 65 / 61
株式投資 / 47 / 48 / 51
ホリデー行楽 / 31 / 33 / 30
借金返済 / 28 / 31 / 30
ハイテク品購入 / 37 / 33 / 29
娯楽スポット訪問 / 23 / 25 / 22
住居改築 / 20 / 21 / 19
衣服購入 / 19 / 17 / 18
老後用貯蓄 / 11 / 13 / 10
なお、アジアパシフィック地区で経済悪化を最も強く感じているのは韓国民で、次いでタイ・インドネシア・日本・台湾・フィリピン・ニュージーランド・マレーシア・インドという順であるとニールセンは報告している。


「高級デパートが交代」(2008年7月21日)
ミトラアディプルカサが高級デパートの再編を行っている。さまざまな国際著名ブランドのインドネシア国内代理権を持っているPT Mitra Adiperkasa tbk. は都内一等地にあるプラザインドネシアで17年間営業を続けたそごうを昨年閉鎖し、代わってその向かいに建設されたモールグランドインドネシアに2007年5月西武デパートをオープンした。同社は今年9月、同じモールに英国系高級デパートのハーベイニコルズを開店させる予定にしている。
同社は更にプラザインドネシアで開店していたイギリス系デパート「デベンハムズ」を2008年6月30日にクローズした。デベンハムズはより庶民的なデパートに衣替えしてタングランのスーパーモールカラワチに今年8月再オープンすることになっている。プラザインドネシアで3千7百平米の売場を占有していたデベンハムズは新拠点に移って1万5千平米の売場面積を擁することになる。
またマカッサルにあったデパート「JAVA」も6月15日に店じまいし、マカッサルの別の場所とランプンに新店舗をオープンする計画になっている。


「インドネシア人の大半は衣服を買う気がない?!」(2008年7月24日)
インドネシアの消費者は衣料品購入にあまり興味を示さない、という奇妙なデータをニールセンインドネシアが報告した。「耐久消費財が売れなくなりそう」(2008年7月16日)で報道されたように、インドネシア消費者の支出目的は貯蓄がきわめて大きく衣服購入は20%を切っているというデータがニールセンインドネシアのサーベイで明らかにされている。同社役員はそれに関して、インドネシア庶民はアフターファイブや休日にショッピングセンターを家族や友人と訪れるのを好むが、その活動の中では衣料品を買うことよりも食事をすることに重点が置かれているということである、とこのサーベイ結果を説明した。同役員はさらに加えて、インドネシア人の衣料品購入を支出目的にしているひとが18%しかないのはアジア太平洋地域で最低である、と地域諸国比較をも提示した。その結果は次のようになっている。ベトナム51%、中国46%、フィリピン37%、インド34%、タイ34%、マレーシア32%、韓国30%、シンガポール30%、香港29%、オーストラリア25%、台湾23%、ニュージーランド21%、日本19%、インドネシア18%。域内のサーベイでは7,637人の回答者からデータが集められた。
この内容はわれわれの常識を覆すものだ。しかしこのサーベイがインターネット経由で行われ、インドネシアでは532人の回答者からデータが集められたという点に留意するなら、これは高収入知識階層というひとつのセグメントに対してだけ当てはまるものなのではないかとも思われる。それが証拠にインドネシア衣料品アクセサリーサプライヤー協会会長によれば、業界売上は年々20%の増加を示しているということであり、国民の5分の4に購入意欲がなければそんなことが起こるはずはないに違いない。


「カルフルで不法輸入品を買った?!」(2008年8月1日)
2008年3月14日付けコンパス紙への投書"Elektronik BM di Carrefour"から
拝啓、編集部殿。2006年1月29日にわたしはカルフルの南ジャカルタ市ルバッブルス(Lebak Bulus)店でLGブランドのブラズマTV(型番42PX3)を16,599,000ルピアで購入しました。購入時にLGのオリジナル保証書がついていたので、わたしはそのテレビの由来がまともなものであると考えて疑念を抱きませんでした。カルフルでそんな高額な電気製品を買ったのは、わたしの家がそこに近かったからです。
2008年1月15日、購入してから満2年未満であるのにこのテレビは突然機能しなくなり、まったく点かなくなりました。それでわたしは、カルフルからもらった保証書に書かれているLGサービスセンターにコンタクトしたのです。LG技術者がわたしのテレビを調べたあと、なんということでしょう、このテレビがブラックマーケット品であることが判明したのです。つまりインドネシアに正式輸入されたものではなかったのです。それはプラズマTVに記されている401HJF52244というコードがLGの製造コードでないことから明らかだということでした。
その結果、インドネシアLGが組み立てたものでないそのテレビの修理をLGサービスセンターは受け付けられないと言われたのですが、そこをなんとか無理を頼み、2,515,205ルピアで修理してもらうことで合意に達しました。わたしは2008年2月13日にカルフル経営者に苦情レターを出し、その出来事が消費者に大きな損害を与えたことおよびこの不法輸入テレビをLGのオリジナル製品と交換することを要求しましたが、今日に至るもいまだカルフル経営者からの反応はありません。PT.LGエレクトロニックインドネシア(LGEIN)の説明によれば、カルフルはLGEINと消費者に損失を与えて自分にたくさん利益が入るよう、そのようなことをしているのだそうで、カルフルの被害を受けた消費者は少なくないとのことです。LGEINは既にこの問題をカルフルに提起して、カルフルはその行為を繰り返さないと約束したのだそうです。[ 南ジャカルタ市在住、リタ・マリナ ]
2008年4月7日付けコンパス紙に掲載されたLGEINからの回答
拝啓、編集部殿。南ジャカルタ市ルバッブルスにあるショッピングセンターのひとつで問題のあるLGブランドのプラズマTV型番42PX3を購入されたリタ・マリナさんからの3月14日付け投書に関して申し添えたいと存じます。リタさんが購入されたのはブラックマーケット品でした。ブラックマーケット品の販売は明らかに消費者と当方生産者ならびに流通者の利益を損なう行為であることから、LG Electronics Inc.の子会社であるLGEINはそのショッピングセンターに対してブラックマーケット品販売を取り止めるよう求めていました。しかしきわめて残念なことに、リタさんの投書からその行為がいまだに続けられていることが判明したのです。今回の事件は決してはじめてのものでないし、いまだにブラックマーケット品が依然として国内市場で数多く流通していることを当方は確信しています。LGEINが社内で行った調査結果は、国内の著名ショッピングセンターのいくつかでブラックマーケット品の販売が行なわれていることを示しています。消費者として損害を蒙ったリタ・マリナさんがブラックマーケット品をLGEINの正式生産品と交換するようショッピングセンター経営者に求めた行動は、販売者にそのようなことをやめさせるだけでなく消費者の権利を確立させるためにも、ブラックマーケット品を買わされた消費者が見習うべきものであると思います。[ LGEIN広報ヘッド、ウィディ・サヒブ ]
2008年4月5日付けコンパス紙に掲載されたカルフルからの回答
拝啓、編集部殿。3月14日付けコンパス紙に掲載されたリタ・マリナさんからの投書について説明申し上げます。当方はブラックマーケット品を販売しておりません。問題のLGブランドプラズマTV型番42PX3は2006年1月27日から29日まで行われたビックリ価格プロモーションの商品のひとつでした。その期間のプロモ商品としてそのテレビは一般輸入者が置いたものでした。その商品に問題がある場合は直接その相手にクレームを出すことができます。そのプロモ期間以外で当方が販売しているLGブランド商品はすべてLGEINから仕入れています。ビックリ価格プロモーションはお客様にベスト価格を提供する場なのです。
当方がだれかに損失を与えて自分の利益が大きくなるようにしているという話は正しくありません。当方とそのTVを販売した会社はリタさんにお会いして問題を明確にし、この案件は落着しました。ご不満を与えたことに対して謝罪申し上げます。[ PTカルフルインドネシアコミュニケーション課長、レタ・ドトゥロン、 ]


「密輸入タイ高級米が都内スーパーに」(2008年8月4日)
市民からの通報にもとづいて都内各所のショッピングセンターを調査していた商業省流通物品サービス監督局は、不法輸入されたタイ米が出回っていることを発表するとともにその処分を行った。商業省が輸入許可を与えているタイ米はAyam JagoブランドとApple ブランドのふたつだけで、割当量は三ヶ月に一回それぞれ500トンと250トンを限度としている。ところがタイの高級米とされているホンマリ米がGolden Phoenixというブランドをつけて都内のあちこちのスーパーマーケットに出回っている事実が市民の通報から明るみに出た。市場調査を行った流通物品サービス監督局はその不法輸入米がプルマタヒジャウ(Permata Hijau)やハヤムルッ(Hayam Wuruk)あるいはSCBDにあるゴールデンラッキーなどのスーパーで販売されている事実を確認して対応措置を取った。調査によればタイの輸出者はBangsue Chia Meng Rice Millで輸入者はシンガポールのYamakawa Co. (Pte) Ltdとなっており、シンガポールに輸入されたそのタイ米がどんなルートでインドネシアに入ってきたのかはまだ不明。


「小型中古車人気が急上昇」(2008年8月7日)
キジャンを代表格とする乗車人数8人以上の大型乗用車が三十年も昔から国民大衆車として人気を集めてきたのは、インドネシア人の生活習慣が大家族を基本にしていたためだ。しかしKB(家族計画)キャンペーンによる少子化観念の普及やライフスタイルとしての核家族化の広がりによって従来の価値観がすこしずつ蝕まれつつあるところに加えて、現政権が二度にわたって行った石油燃料消費者価格大幅値上げの結果、国民の自動車選択基準が顕著に変化してきた。
中古自動車販売センターMobil88チランダッ店の業務マネージャーの話では、2千ccを超える車はぱったり売れなくなってしまったとのこと。購買客は1千5百や1千3百、あるいは1千ccの車を求めてやってくるばかりで、大排気量車は全然売れないそうだ。エンジン排気量の小さい車を消費者が求めるのは、ガソリン消費が小さく、価格も1億ルピア未満という手の届きやすいレベルだから。マンガドゥアWTCの中古車販売店でも2千cc未満で価格1億ルピア未満という車の需要が大幅に増加している。おかげでこのクラスの需要が供給をはるかに上回る事態になっていることから販売業者は血まなこになって売り玉を探しているが、自分の車を中古車市場に放出しようとするカーオーナーはあまりいないために完全に売り手市場になっており、中古車価格と新車価格があまり違わないという現象の発生を招いている。2千cc未満乗用車のオーナーは新車購入に際して引渡し期間が長くなっていることと新車にかかる自動車税が高くなるだろうという不安にとらわれており、おのずから買換え意欲が低下している。一方で小型中古車需要が高まっているのは、子供が目標の学校に入学できたことのご褒美を親が与えようとしてエキストラの需要を盛り上げていることや、それまで持っていた排気量の大きい乗用車が燃料を浪費することからそれを売ってもっと小さい車に買換え、その差額を子供の入学費用に宛てる家庭が増えているといった要因を業界者たちはもらしている。
モビル88チランダッ店は月間5百台レベルの販売実績を誇っているが、石油燃料値上げ後販売数は10〜15%むしろ増加している、と同マネージャーは語っている。値上げで販売数は大幅ダウンするだろうと覚悟していたところ、値上げ幅が平均28%ということがはっきりしてから中古車需要はむしろ伸び上がり気味となり、6月の販売台数は575台、7月は600台近くになる見込みだと語っている。今年9月から始まるプアサそして10月のイドゥルフィトリ期間中さらにこの傾向が強化されるのは間違いないだろうとかれは確信している。


「高級米の輸入はあって当然、と大臣発言」(2008年8月12日)
密輸入米が国内に出回っているとのイシューをマリ・エルカ・パゲストゥ商業大臣が否定した。「密輸入タイ高級米が都内スーパーに」(2008年8月4日)で報道されたGolden Phoenixブランドのタイ産ホンマリ米が都内のあちこちのスーパーマーケットに出回っている事実に関して国民からの批判が強まっていたが、ホテル・レストラン消費用で国産品がまだない高級米の輸入は承認されていると大臣が説明した。そのため10キロ袋入り21万ルピアで販売されているゴールデンフェニックス米は不法輸入品に該当しない。大臣によれば、もち米、ジャポニカ米、 他の粘り気のある米やタイホンマリ米の輸入はあっておかしくない、とのこと。
2008年商業大臣規則第12/M-DAG/PER/4/2008号に定められている米の輸出入に関する規定によれば、外国からの米の輸入は、保健(ダイエット)目的、特殊消費あるいは特定セグメント向け、種苗調達、国内で満たせない産業需要に応じるため、といった内容に限って輸入が認められる。そのような米の輸入者になれるのは製造輸入者(Importir Produsen)のみだが、国民生活安定をはかるために緊急事態対応、市場価格安定、凶作対応などを目的に配給事業庁(Bulog)が米輸入を行うこともある。
全国各地で採れた米が集まってきてはふたたび全国に散っていく東ジャカルタ市チピナン(Cipinan)米中央市場における米相場は7月第一週にキロ当たり100ルピア、そして7月第4週にもキロ当たり100ルピアの値上がりがあったものの、それ以降8月第一週の相場は変化していない。9月はじめに断食月がはじまり、10月はじめにイスラム断食明け大祭イドゥルフィトリが訪れるためこの期間に物価は毎年大きく上昇する。その時期伸び上がる食材の需給バランスを崩さないよう商業省は例年力を注ぐにもかかわらず、物価上昇が起こらなかった年は一度もない。今年も昨年程度の物価上昇で乗り切りたいと大臣は語っている。


「物価暴騰を支えるためのルバランボーナス」(2008年9月10日)
毎年ルバラン時には物価が暴騰する。政府はそれを予期してルバラン時に物価が安定するような政策を行っていると言うものの、物価が暴騰しなかった年は一度もないと言って過言ではないだろう。インドネシアは物価が市場の需給関係にきわめてセンシティブに反応する国であり、セメントにせよ、ガス石油にせよ、農薬肥料にせよ、それぞれ政府が標準価格を定めているものの供給が安定することが物価安定の絶対条件であり、供給が乱れれば政府の公定価格など雲散霧消してしまうのが常だ。需要が供給を上回ればすぐに物価が上昇し、その状況に流通機構従事者が隠匿・売り惜しみといったテクニックを重ねていくため、市場価格の暴騰が容易に発生する。市場価格の暴騰に政府が強権を用いて抑制をはかるということは行われず、政府ができるのは市場供給を増やすための政策を取るばかりなのだがこれはまったくの隔靴掻痒的効果しか発揮しない。こうして結局のところ、市場供給量を高めるために産業界に増産を行わせるという政策が物価安定政策のメインを占めるようになる。
ルバランシーズンとて何ら変わりはないものの、昨今の電力危機で製造業界は増産が容易にできなくなっているのだ。加えて労働者の間ではルバラン日が近付くにつれて休暇を取る者が増加し、増産したくともかえって減産の憂き目にあう工場も少なくない。工場の生産品を配送するロジスティックセクターも同じで、ルバラン日が近付くと帰省してしまうトラック運転手が続出し、ルバラン前の一週間は物価暴騰の諸要因があちこちで爆発することになる。ともかく、ルバラン日に向かってうなぎ登りとなる需要を満たそうにも、供給を高めるための条件がすべて逆方向を向いているという実態をわれわれは目にすることになるのである。
飲食品製造業界もごたぶんに洩れない。そんな状況に対処するために業界者は釈迦力で増産に大わらわだ、と全インドネシア飲食品事業者連盟のトーマス・ダルマワン会長は語る。ルバラン日が近付くに連れて需要はふだんのものから20〜30%上昇する。その需要を満たすために業界は今増産に励んでおり、製品在庫を倉庫に積み上げて国中がルバラン態勢に入ったときに需給バランスが崩れないようにしようという戦略がそれだ。特にビスケット・シロップ・パン・缶詰・ジュースなどはラマダン〜ルバランのための普遍的な贈答品とされているため、その時期の需要は大きく膨れ上がる。一方、飲食品製造業界はルバランの一週間前から従業員にルバラン休みを与えるため、生産が完全にストップしてしまう。
電力危機や従業員休暇などの障害を乗り越えて業界は倉庫に貯えたストックを休みに入った期間でも市場にどんどん流して行く態勢を整えており、品薄による物価暴騰は必ず予防する、とトーマス会長は語っている。市場価格の暴騰を抑制する要因はもうひとつあり、それは廉価輸入品が増大する需要を求めて市場に大量に流されることで、これは市場供給の安定には役立つものの国内産業にとっては市場シェアを奪われることからありがたくない状況をもたらすものにもなる。
砂糖・肉・鶏卵・ピーナツその他もろもろの商品が市場での需給関係という綱渡りのロープに乗っており、供給を司る生産・流通分野の状況如何で物価暴騰が発生する。そこに非合法輸入品がその混乱から利益を得ようと控えており、そしてまた輸入ビジネスと結託した政治家がその混乱を利して合法的形式を取った輸入の蛇口を開こうと手ぐすね引いて待ち構えている。しかしながら年に一度の狂乱物価を大半の国民はルバランボーナスを吐き出して乗り切ろうとし、需要を減らすことで物価暴騰に対抗しようとはしない。これが金持ちをさらに金持ちにしている社会の一断面であるのは間違いないだろう。


「携帯電話器販売の8割が単価1百万ルピア未満」(2008年9月13日)
2008年第2四半期国内携帯電話器販売は564万個に達したことをIDC(International Data Corporation)が報告した。モバイルデバイスのトータル販売は600万個で携帯電話器は94.3%のシェアを占めている。第2四半期で特に顕著だったのは、価格が100万ルピア未満の携帯電話器が480万個あってトラディショナルデバイスの85%シェアを取ったことだ。インドネシアの移動通信サービスオペレータは相変わらずGSMシステムが主流を占めており、この第2四半期におけるネットワーク利用者の70%はGSM、残る30%がCDMAとなっている。
携帯電話器商品カテゴリーはトラディショナルデバイス、コンバージドデバイス、ハンドヘルドデバイスの三つに区分されており、トラディショナルデバイスとは通話というベーシック機能に特化した電話器を指している。ハンドヘルドデバイスはPDAに代表されるもので、電話機能は持っていない。コンバージドデバイスはPDAに電話機能がついたものやスマートフォーンなどが該当する。コンバージドデバイス市場は中国産多機能携帯電話器のおかげで大いににぎわっている。その中国産廉価機種はテレビやデュアルSIMカード機能などさまざまなフィーチャーが満載された廉価携帯電話器だが、そのフィーチャーを持つ商品群の市場での人気がピークに達したときでさえ携帯電話器大手メーカーはその流れに追随しなかったようだ。
2008年第2四半期の携帯電話器販売は前年同期実績から75%成長を示した。しかしコンバージドデバイスに関して言えば、このカテゴリーは前年同期から17%減少しているがそれでも2008年第1四半期からは21%の上昇となっている。IDCは第2四半期の販売好調が全カテゴリーに渡る技術と性能の向上によってもたらされたものだとコメントしている。コンバージドデバイスに属するブラックベリーの市場導入はそのカテゴリー販売状況が示しているようにまだあまり受け入れられているとは言えず、普及は都市部、中でもジャカルタに限定されている感がある。トラディショナルとコンバージドに比べてハンドヘルドの販売は安定しており、これはメイン利用者が会社関連であることに関係している。


「バティック生産も活況」(2008年9月25日)
ルバラン日を前にして中部ジャワ州プカロガン(Pekalongan)やトゥガル(Tegal)などバティック生産地に大量のバティック布注文が殺到している。注文が増加しているバティック布はルバラン日に着るための新しい衣服を作るための素材であり、また親族や知人へのルバランプレゼントなどにも用いられる。
プカロガン市クラデナン町のバティック生産業者は今年8月ごろから注文が増加しはじめ、作ったバティック布は一枚残さず市場に吸収されている、と語る。かれはひと月で100コディ(1コディは20枚)のバティック衣料品をジャカルタ・ジョクジャ・スラバヤ・サラティガに出荷しており、ジャカルタはタナアバンやチュンパカマスがメインで、人気商品はムスリム衣装、バロン、キモノなどだと言う。注文があまりにも多いため人手を普段の6人から16人に増やして増産に努めているが針子が不足しており、需要を完全に満たすのは無理であるとのこと。縫製の手間賃はコディ当たり5万から9万ルピア。注文が激増しているというのにバティック衣料品価格は値上がりが起きておらず、価格は一着当たり4万から数十万ルピアのレンジ。
プカロガン同様、トゥガルでもバティック注文が増加している。トゥガル市カリニャマッウエタン町のバティック生産業者も受注に応じるのに大わらわで、在庫が空になったと語っている。トゥガルバティックは昔から手描きだけが生産されてきた。生産者が作るのは一週間に1枚で、20人の手描きバティック職人を擁するそのバティック業者は月間に80枚しか販売できない。ルバラン日直前には一週間に40枚もの注文が入ってくるがそれに応じきるのは難しい。結果的に価格は上昇気味で、これまでの1枚11万ルピアは12万5千ルピアに上がるだろうとその業者は述べている。


「日本食品はいずこへ?」(2008年10月13・14日)
保健省食品薬品監督庁は2008年9月のラマダン月に入ってから、飲食品需要が一年で最高に膨張するこのシーズンに違法商品が流通するのを阻止するため市場の監督を強化するよう全国地方自治体の下部組織である食品薬品監督館に指令したことは、「消費期限超過飲食製品取締り」(2008年9月20日)で報道されている通り。
その指令に応じて各地方自治体では商業局や警察と食品薬品監督館がチームを組んで、地元のパサルやモダンマーケットの商品を対象に現場調査を開始した。チェックのポイントは、店頭で販売されている商品の中に賞味期限や有効期限を超えているものがないかどうか、そして届出がなされた商品に食品薬品監督庁が与える国内流通認可に該当する承認番号がついているかどうかといった点。食品薬品監督庁の職務は飲食品・医薬品・化粧品・医療器具など人体に直接摂取されたりあるいは接触するものの安全性を確保することにあるところから、現場調査のターゲットが飲食品だけに限定されていたわけではない。
9月の第2週目に入ると、各地から続々と現場調査の戦果を伝えるニュースが聞こえてきた。北ジャカルタ市クラパガディンのハイパーモールとカルフルでは、賞味期限を過ぎた飲食品や輸入品で国内流通認可番号がついていない商品が総計80種類も発見された。同様に、ジョクジャやマカッサルでもスーパーマーケットをはじめ地元モダンマーケットで数十種類の期限切れや未認可商品が見つかっている。カリマンタンやスマトラなど、マレーシア・シンガポールと国境を接している地方は特に近隣諸国で生産されている飲食品がダイレクトに国内に持ち込まれて商品流通機構の流れに乗るため、国内流通認可番号のない外国産品が多数発見されている。
発見された違法商品は当局側が没収して廃棄処分に付すことになっており、調査班は店側に命じて即座に全数を店頭から回収させて一時保管させた。違法商品が発見された以上、1個たりとも国民に販売してはならない、という姿勢が明確に打ち出されている。調査班はラマダン月中ほとんど毎日市場での現場調査を継続し、多数のモダンマーケットが調査班の来訪を受けた。ところが中国産メラミン汚染ミルク問題が突然脚光を浴びる事態に陥ったため、現場調査班は新たにもうひとつの課題を抱えることになったのである。つまり外国産商品でミルクを使用しているものを発見するという宿題だ。外国産商品が集まっている場所はどこだろうか。答えは容易に想像できるにちがいない。中国人がたくさん集まるスーパー、日本食品や韓国食品専門スーパーなどがそれだった。
9月の最終週に入って、突然奇妙なニュースが乱れ飛んだ。食品薬品監督庁が大量の日本産・韓国産・中国産の飲食品・医薬品・化粧品などを押収したというニュースがそれだ。南ジャカルタ市クバヨランバルのムラワイ通りにあるスーパーマーケット「パパイヤ」で国内流通認可番号のついていない日本産飲食品568種、化粧品128種、常備薬74種が発見されて即座に没収され、またやはりクバヨランバルのウィジャヤセンターにあるスーパーマーケット「コスモ」では、国内流通認可番号のない日本産飲食品1,376種と化粧品113種が没収された。同じくクバヨランバルにある韓国スーパー「ムグンホワ」も調査班の来訪を受けて855種の未認可商品が没収され、中央ジャカルタ市ハヤムルッ(Hayam Wuruk)にあるスーパーマーケット「レジュキ」では中国産飲食品859種と化粧品206種が没収された。流されている報道の中には、それらのスーパーマーケットは大量の無届け輸入品を販売していたために営業禁止(顧客立入り禁止)処分を蒙ったと伝えているものがある反面、違法商品の販売禁止(没収)処分を受けただけであり店は営業を続けているという報道もある。上のカルフルの例を見る限り、後者の処分のほうが妥当性は高いように思える。
食品薬品監督庁長官は、「それら無届け商品は含有物や成分などがすべて生産国の言語で表示されているためインドネシアの消費者には内容がまったくわからない。このようなことではそれらの商品の安全性を当方が保証することはできない。」とコメントしている。ところが10月8日になって、また続編ニュースが報道された。それはコスモでふたたび違法輸入品没収事件があったというもので、総額10億ルピア相当の日本産飲食品等が食品薬品監督庁に押収された。首都警察特殊犯罪ユニット捜査官はこの押収劇のあと報道陣に対し、「それらの違法輸入品にメラミン汚染があるかどうかはまた別問題だが、このスーパーはルバラン前に一度商品を大量に没収されており、これで二度目だ。よく懲りないものだ。」と述べている。没収されたそれら大量の日本食品等々は廃棄されることになっている。


「ノートブック型コンピュータが爆発的な売行き」(2008年10月22日)
2008年のコンピュータ販売は第3四半期までに累計で180万台に達しており、年間累計は目標を上回る240万台に上るものと期待されている。2008年の実績は第1四半期が25%、第2四半期35%、第3四半期40%という顕著な上昇を示しており、年間240万台は確実視されている。中でもノートブック型の伸びは40%のシェアを占めるまでになっており、単価4〜5百万ルピアのものがその主流になっている。その結果ノートブックコンピュータ市場ではその価格帯が無視できないものになっているため、各社の商品と価格政策はその影響を強く受けているのが実態だとインドネシアコンピュータ事業者協会は説明している。2008年9月までの国内市場カテゴリー別シェアは、ノートブックが既出の40%、デスクトップが50%、ミニノートブックが10%弱といった様相を呈している。特にノートブックはジャカルタでの販売が60%という爆発的な売行きにあり、国内ブランドと外国ブランドは数量で6対4の比率になっているものの金額ベースでは外国ブランドがマジョリティを握っている。協会側はアメリカの経済崩壊によってアメリカ産コンピュータのダンピング攻勢がインドネシアにも波及してくる恐れを強く抱いており、国内業界は戦々恐々たる心理状態に陥っている、と不安を物語っている。
因みに同協会が組んだ2008年国内市場予測の内容は次のようになっている。
教育分野 5万台
政府機関 14万8千台
家庭用 75万4千台
大企業用 26万1千台
中企業用 31万5千台
小企業用 77万6千台


「高級ブランド品の売行きは2〜3割減」(2008年10月24日)
国際著名ブランド輸入品の国内販売はこのグローバル金融危機下に20〜30%ダウンするだろうと業界者が語った。インドネシア衣料品アクセサリーサプライヤー協会会長は、国民が消費支出にブレーキをかけて買物を減らそうとすれば、高額商品は言うに及ばず商品販売が全般的に縮小することになるため、それによってもっとも顕著な影響を蒙るのは高額の有名ブランド品になるだろうとの予測を語った。一方有名ブランド商品販売店の対応は、ルピア暴落という通貨状況にありながらそれを価格転嫁するのは困難であり、勢い価格を据え置いて既に在庫になっている商品の販売に力を注ぐようになるにちがいない。アメリカを中心にそれら有名ブランド生産者が事業の効率化と足固めを進めようとして生産アイテムの厳選と生産縮小を図るであろうことは、アメリカ国内市場で起こっている購買力低下を考えれば当然の対応だと言える。アメリカの消費者は衣料品アクセサリー類の支出を半減させており、アメリカ市場の冷え込みは先にインドネシアの衣料品アクセサリー生産者に出されていたオーダーが20%から50%というレンジで減らされているところからも窺い知ることができる。
そんな状況のためにアメリカの著名ブランドオーナーが従来行なっていた世界各国への輸出も大きい影響を受けて、数量とアイテムの減少は間違いないものと見られている。インドネシア衣料品アクセサリーサプライヤー協会によれば、いまインドネシア国内の衣料品アクセサリー市場は30%が輸入品、70%が国産ブランドものというシェアになっている。その輸入30%シェアのうちの20〜30%はアメリカ製品だった。アメリカ企業の生産縮小はインドネシア国内市場での国産ブランド品シェア回復に機会を与えるものであるとはいえ、これまでアメリカへ輸出していた諸国が集中豪雨的にインドネシアに商品を回してくる懸念が強く、国産ブランド品がかえってそれらの輸入品にシェアを奪われる可能性も大いにありうる。インドネシアに方向転換した輸入品は従来インドネシアに入っていた外国産品と同じように合法非合法のあらゆる道を通って入ってくるであろうことは疑いなく、その対応として税関が輸入通関の厳格化を図れば輸入プロセススピードの低下という副作用が発生するのも間違いないところだろう。
全国商工会議所役員のひとりは、中流上流経済層が持っていた株式や証券の価値の暴落によってかれらも貧困の度合いが増すことから、すべての経済層が支出を抑制するためにインドネシア国内を含めたグローバル経済が不況に向かうことになるのではないか、と分析している。


「アバンザは注残2万5千台」(2008年10月24日)
ルピアレートの急落が四輪車国内販売価格に影響し始めている。各メーカーの国内独占代理権オーナーがこぞって値上げ姿勢を示しはじめた今、国内金利率指標であるBIレートが既に9.5%まで引き上げられている状況と相まってこの先国内四輪車販売のスローダウンは確実視されている。ルピアレートが早急に1ドル9千2〜3百ルピア台に復旧しなければ輸入コンテンツのコスト上昇を避けることができないため、生産者は工場出し価格にそれを転嫁しなければ経営状態を維持するのが困難になる。トヨタ・三菱・ダイハツ・GMなどの大手国内生産者は軒並み値上げの意向を表明しており、中でもダイハツは既に、ゼニア250万ルピア、テリオス200万ルピア、グランマックスミニバス250万ルピア、グランマックスピックアップ150万ルピアという幅で10月中に値上げを行なうことを公表している。
そんな状況の中で4x2LOWセグメントのリーダー車種であるトヨタアバンザは新モデルを発売した。価格はバリエーションによって1億1,680万ルピアから1億5,310万ルピアの範囲。アバンザは発売後5年間で合計273,203台という驚異の販売台数を記録してこのセグメントの49.8%シェアを誇っている。生産台数は年々増加の一途で、2004年の月産3千台レベルは今や3倍近くまで上昇した。そんなアバンザの市場人気はまったく衰える気配がなく、全国での注残は2万5千台を超えていてトヨタ側は注残減らしに没頭している。2004年発売当初はトヨタとダイハツの共同プロジェクト下に生産が開始され、最近になってトヨタ工場での生産もはじまった。トヨタ工場での生産増強には力が入っており、2008年のアバンザ総販売台数は7万5千から8万台が目標とされている。2007年の62,010台からは大幅な増加と言えよう。


「アクアが買えない」(2008年10月27・28日)
首都圏でアクアが品薄になっている。飲用ミネラルウオーター市場でトップブランドのAquaが首都圏の流通機構で影を薄くしており、需給関係が容易に価格に反映されるインドネシアであることから価格は暴騰している。この状況は19リッター入りガロン瓶からプラスチックカップ入りに至るまでほとんど同じで、ルバランの1週間ほど前から品薄の気配がはじまり、ルバランを過ぎたあと一層深刻な品薄となって現在に至っており、品薄解消まではまだまだ時間がかかりそう。
ガロン瓶はあらゆる物価が上昇するルバラン前で最高1万2千ルピアだったにもかかわらず、ルバランから長い時間が経過しているというのに価格は一向に下がらず、いまは最高で1万7千ルピアに達している。西ジャカルタ市タンボラ地区のアクア代理店は、通常230本のガロン瓶が入荷すれば一週間で掃けるのに、今や1日半で飛ぶように売れてしまい品切れ状態が続く、と語る。ブカシのジャティムリヤにある商店は通常アクアのガロン瓶を1百本在庫しているが、ここでも売り物がすぐに姿を消して後が続かない、と最近の状況を嘆いている。この状況はルバランの1週間前から始まった由。アクアだけでなく別メーカーのVitも似たような状況だ。量販店で品薄になってもあちこちに散在する小さい店やワルンなどにはたいてい商品が残っているものだが、10月半ばごろにはそれらの店でも在庫が払底してしまった。ジャボタベッのアルファマート(Alfamart)やインドマルッ(Indomaret)などスーパーでもガロン瓶は手に入らない。流通代理店にも商品がない。
タングラン市チルドゥッ(Ciledug)に住む消費者のひとりは、近郷ではどこへ行ってもガロン瓶は品切れで、ポンドッカレン(Pondok Aren)まで遠出してやっと見つけたが、値段は1万4千ルピアになっていた、と語る。南ジャカルタ市トゥベッ(Tebet)でLPGとアクアガロン瓶を売っている小売業者は、プアサ月の直前から供給は注文の50%しか来ないようになった、と語っている。
アクア生産者PT Tirta Investamaの企業秘書は、イドゥルフィトリ前後のルバラン交通ピーク時貨物運送規制の影響がいまだに続いている、と語る。政府運通省は毎年、ルバラン帰省交通の円滑さを支援するために一定期間貨物の道路運送を禁止する規定を出しており、2008年はジャワ島内で2008年9月27日から10月1日までの間、貨物運送トラックの道路運行が禁止された。建築資材運搬車両、三軸以上の貨物車両、セミトレーラー、トレーラー、コンテナトラックなどがこの禁止措置の対象となるが、石油燃料、家畜、米・砂糖・小麦粉・食用油・唐辛子・肉・卵など生活基幹物資9品目、肥料、未加工牛乳、郵便物などを運ぶ車両にこの禁止措置は適用されない。ところがアクア生産者側は、地元政府がイドゥルフィトリの10日前から7日後まで同社の商品配送トラックの路上運行を禁止した、と言う。その結果三週間近くにわたって全国の配送業者や代理店向け出荷が全面ストップしてしまった。おまけに10月半ばには猛暑が各地を襲ったことから飲用ミネラルウオーターの消費量が増加して流通段階にある在庫が激減してしまった。同社は市場の状況にあわせて増産体制を組んでみたものの、生産品の貯蔵容量が限られていることや空き瓶ストックを急速に増やすことが難しいといった障害のために実現できないでいる。商品が消費されたあとの空き瓶が同社工場まで戻ってくるのは長いチェーンを経るためきわめて長期間を要しており、流通ストックの過剰消費でやせ細ってしまった供給体制が安定を回復するまでにはまだかなりの時間がかかりそうだ。


「ブランドもの新品コンピュータの大安売りが起こるか?」(2008年10月30日)
外国産コンピュータ、中でも中国製品が欧米市場の冷え込みによって販売先をインドネシアに求め、輸出し残った在庫を一掃処分するためにダンピングが行なわれて国内市場が荒らされる可能性が高いことから、政府は従来にも増して不法輸入を阻止する努力を強めて欲しい、と業界者が発言した。
Zyrexブランドコンピュータ生産者であるPT Zyrexindo Mandiri Buana社代表取締役は、アメリカを中心にして起こっている金融危機に由来する市場縮小で大量のコンピュータがインドネシアに行先を変更してくることが予想されることから、国内市場を荒らされないよう政府はダンピング行為を厳しく排除し、違反輸入者には厳罰をもって臨むようにしてほしい、との要望を表明した。
年末の販売シーズンを目前に控えた時期でもあり、中国に生産をオーダーされていた国際ブランドコンピュータがブランドオーナーに引取られない以上、中国のOEMメーカーは在庫を掃くために超安値で売り捌こうとする。ブランドものがたいへんな低価格で市場に出てくれば国産品が大打撃を受けるのに疑問の余地はなく、そのあげくに国内生産者が倒産すれば失業者が増大して国内経済は更に悪化する。「国内にはいまおよそ1万軒のコンピュータ組立業者があり、それぞれが5〜10人の従業員を使っている。5万人を超える雇用がそこに実現しているわけで、その大量の労働力が失業者に加われば政府の負担はまたまた増大することになる。」代表取締役はそうコメントしている。


「小売商品の仕入れルートをデータ化させろ」(2008年11月4日)
日系や韓国系中国系スーパーで発見されたような非合法輸入品の入荷ルートがすぐわかるようにするため、政府はモダン小売業界に対して商品供給者とその供給商品のリストアップを命じる意向。食品薬品監督庁(BPOM)の認可を得ないまま商店で販売されていた多数の飲食品輸入品が日系や韓国系のスーパーマーケットで発見されたことで政府はその対策を検討していたが、商業省は国内の全モダン小売店に対し、自店舗で販売しているすべての商品とそのサプライヤーに関する管理帳簿の作成を命じる方針を立てた。この方針は当局が行なう市場モニターでBPOMの認可を得ていない商品が発見された場合、そのサプライヤーから生産者あるいは輸入者までたどっていくのを容易にするためのものであり、反対に供給商品のML番号やMD番号まで管理帳簿で管理させればそれらの番号が付けられていない商品は小売店側が入荷を拒む姿勢を持つようになることまで期待してのもの。モダン小売店というのはハイパー・スーパー・ミニマーケットやデパート・コンビニなど外来の経営コンセプトを持つ商店を指しており、古来からあった在来型商店と区別されている。またML番号やMD番号とはBPOMが行なう安全性審査をパスした飲食品に与えられる登録番号で、MLは外国からの輸入品、MDは国内で完成品となったものを意味している。
モダン小売店業界団体であるインドネシア小売業者協会(Aprindo)は政府のその意向に関して、それを内容とする法規が制定されれば協会はその実施と実現に支援を惜しまない、と表明した。インドネシアでは従来から小売店とサプライヤーとの間にそれほど固い契約関係はなく、小売店の多くは相手がだれであれ売りやすい商品が十分利益の上がる価格で持ち込まれればたとえ一限でもそれを仕入れるケースが一般的であり、その両者の間は利益共有という共通項で結ばれているだけでそれ以上に相互を縛る要素はあまりなかった。もちろんリスティングフィーなどを取っているところはその限りではない。ともあれ同じ商品を何人もが異なる価格で小売店に持ち込むことも現実に行なわれている。それについてAprindoは仕入れルートの健全化明朗化を企図しており、将来的にはサプライヤーが小売店に商品を納入する前段階でサプライヤーの審査を行い、協会がオーソライズしたサプライヤーが協会会員会社と取引するような形に変えていこうと考えている。最終的にサプライヤーはAprindoに認定され登録された者だけとなり、小売段階で問題が起これば協会が容易にサプライヤーに措置が取れるようにしたいというのがその狙いのひとつであるようだ。このパターンが機能するようになれば、イリーガルな商品を小売店に納めるサプライヤーはなくなり、小売店は合法的な商品だけを仕入れて販売に専念できるというメリットを享受することができる。おまけにモダンマーケットへのサプライヤーの全貌がそこまで把握されるようになれば、在来型マーケットへの商品サプライをだれがおこなっているのかということについても推測がつきやすくなる。
しかしサプライヤーの協会であるインドネシアモダンマーケットサプライヤー協会は、そのような登録システムはブランド品を扱っている業者だけに限定してほしい、と言う。この業界では6千社が活動しており、その2割程度がブランド商品を扱っている。ブランド商品については、どのサプライヤーがどんな商品を扱い、さらにその生産者はだれかということまであらゆるデータが既に整えられているし、輸入品についても輸入元がだれで、それが5〜6社のサプライヤーを使って市場に流しているという状況はデータがそろっている。だからブランド品のデータは短時日のうちに提出できるが、非ブランド品までを強いられるといつ提出できるようになるか先が見えない、とサプライヤー協会会長は述べている。


「WTCマンガドゥアの中古車市」(2008年11月5日)
ジャカルタのマンガドゥア通りは最初、タナアバンに次ぐ繊維関係のセントラル市場として名を上げた。通りの北側に並ぶITCマンガドゥアや繊維卸売市場などがその中心地だ。その後ドゥシッ(Dusit)マンガドゥアホテルに隣接するモールマンガドゥアがコンピュータソフトや携帯電話のセントラル市場として知名度を高め、また98年5月暴動で燃やされたグロドッ(Glodok)から家電品商店を移転させて第2のグロドッを作ろうとしてハルコ(Harco)マンガドゥアが開発されたが残念ながら移転した商店は期待したほど増えず、そのためここは今ひとつ不完全燃焼の感が強いもののスリーインワンや交通渋滞そして駐車スペース難などの困難を抱える本家グロドッよりは訪れやすい場所ではある。
その後グヌンサハリ通り脇を流れる掘割に面して超大型モールが作られた。WTCマンガドゥアとマンガドゥアスクエアだ。そのWTCマンガドゥアに中古車市場がある。WTCと書けばだれしもWorld Trade Centerを思い浮かべるのに不思議はない。だがジャカルタにはタムリン通りにすでにWTCがある。マンガドゥアにあるのはWorld Trade CenterでなくWholesalers Trade Centerなのだが大勢のマスメディア関係者もそれをWorld Trade Centerと思い込んでいる。
さてWTCマンガドゥアの中古車市には270軒の中古車ディーラーがおり、122ロット366台の陳列車両を置き、一週間の販売台数は500〜600台にのぼる。その中古車販売戦線では国際金融危機で価格レンジがシフトしている、とディーラーたちは言う。ルバラン前までは上限1億5千万ルピアだった購買者の予算が今では1億ルピアに低下してしまったらしい。ほとんどが一億以上の車に食指を動かさず、小型廉価高燃費のシティカーが目玉商品になってきている。恐慌の影響はファイナンシング側が車種を選び始めた点にあらわれており、日系車種はいまでもほとんど抵抗ないものの、従来あまり抵抗を示さなかった韓国系や欧米系車種にはクレジットを与えないケースが増えている。中古車リーシング会社は韓国系車種にまったく興味を示さなくなったらしい。ローンの割賦返済にしても、頭金が20〜30%に引き上げられ、金利率もアップしている。3年返済の場合、BCA銀行は年利11%、Otofinanceは12.95%、Verenaは14.25%といった高金利率で、購入を諦める客も少なくない。ルバラン後のここでの中古車販売は大幅な低下を示し、中でもローン販売の減少がもっとも著しい。ルバラン前で月間5百台、今年7月は月間1千5百台というピークを記録した。当面その活況は戻りそうにない。


「携帯電話器を探すならここ」(2008年11月5日)
首都ジャカルタの携帯電話器のメッカは昔から中央ジャカルタ市のロキシーマス(Roxy Mas)と相場が決まっていたものだが、携帯電話器があまりにも巨大な市場に成長したことから、都内のあちこちにセントラルマーケットが生まれ出た。2006年の全国6,380万番号は2007年に9,641万番号にふくれあがり、一年間で5割増の上昇率を達成している。それほど巨大化した携帯電話器市場であるため、ジャカルタに携帯電話器のセントラルマーケットが複数あっても十分にペイするわけだ。だからいまでは、中央ジャカルタ市のモールマンガドゥア(Mal Mangga Dua)、南ジャカルタ市のモールアンバサドル(Mal Ambasador)とITCクニガン(Kuningan)など携帯電話器のセントラルマーケットがあちこちに出現しており、都民にとっては買物がしやすくなっている。
それらの中央マーケットを訪れれば、広大なフロアを埋め尽くす携帯電話器売場の層の厚さに圧倒される。それぞれの売場はつまり個々の商店であり、多数の店をはしごして価格を尋ねまわれば、中には安い値段を言う店に行き逢うこともある。均一価格を押し通すならこれほど膨大な数の店が軒を接して並んでいる必然性はないにちがいない。この巨大なマーケットでは、物珍しい中国産のものやブラックマーケット商品にもお目にかかることが出来る。
もちろん都下には多数のモールやショッピングセンターが建てられ、多くの携帯電話販売業者がそこに出店して特定アイテム中央マーケットのひとつとしての座を得ようと覇を競うのだが、上で登場している数ヶ所以外は客足というか客の混み具合のレベルが違っている。それら名前の確立しているセントラルマーケットは自然淘汰に勝ち残った実力派であるようだ。


「アストロTV顧客はどこへ流れる?」(2008年11月7日)
有料TVのアストロが2008年10月20日0時に放送を停止した。インドネシアでアストロTVの放送サービスを行なっていたのはリッポグループが100%シェアを持つPT Direct Visionで、アストロはマレーシアのAstro All Asia Networks Plcから放送コンテンツの供給を受けてインドネシア国内契約者に有料放送を行なっていた。ところがマレーシアのアストロとリッポグループの間でビジネス係争が発生したことから、コンテンツ供給がストップする事態を迎えることになったのである。
アストロは放送停止時、すでに9万8千の顧客を擁して国内業界第4位の地位を築いていた。ちなみに国内の有料TV業界番付によれば、業界各社の位置付けはIndovisionが顧客数43万でダントツ、Telkom Vision16万、First Media14万5千、Astro TV 9万8千、Aora TV 2万、IM2は3千となっている。アストロの放送再開がありえないことを知った顧客は続々と競合他社に鞍替えしていった。インドビジョンを運営しているPT MNC Skyvision社コーポレートセクレタリーは、アストロの放送停止以来それまでの新規契約数一日6〜7百件が1千2〜3百件に跳ね上がった、と語る。インドビジョンは2008年の顧客拡張目標を50万件の大台に乗せるとしており、同社はアストロが転んだことでその実現はかたいだろうとの期待に弾んでいる。
2008年8月から事業を開始した業界最若年のアオラTVもアストロの顧客が流れてくることを期待している。ただこのアオラTVはスポーツ放送に特化しており、顧客層がスポーツ愛好者に限られるために膨大な集客は困難と最初から見限っている。こちらは年内の契約者総数最低2万5千が目標であるため、アストロの放送停止は良い影響をもたらすだろうと期待している。
有料TV事業は大きい将来性を持っており、上であげた現行オペレータに加えてさらに21社がこの業界に参入しようとして政府に認可申請を進めている。有料TV顧客には、料金低下とサービスクオリティ向上が待たれるところだ。


「アストロTVにクラスアクション」(2008年11月11日)
契約途中にもかかわらず2008年10月20日0時にいきなり放送サービスを終了した有料テレビのアストロTVを相手取って、5人の顧客が訴訟を起こした。この5人はアストロTVの視聴契約者で、ジャカルタ首都特別区・ボゴール・デポッ(Depok)のアストロTV利用者を代表して2008年10月28日にクラスアクションの訴状を南ジャカルタ地方裁判所に提出した。
この5人が告訴したのはアストロTV運営会社PT Direct Vision、同社代表取締役、同社取締役二名、Astro All Asia Networks Plc、All Asia Multimedia Networks FZ-LLC、Measat Broadcast Network System Sdn Bhdの七者で、かれらを第一被告から第七被告までとしており、有料テレビ放送のサービス終了に関連して法律違反が行われたことを告発している。告訴人が訴状の中で被告に要求したことがらはふたつあり、ひとつはテレビ放送の即時再開、もうひとつは失われた時間・労力・費用そして顧客が享受すべき慰安等の物質的精神的損害に対する弁償となっている。物質的損害については、顧客ひとり当たり20万ルピア、そして他のオペレータを解約してアストロTVに移ったために他のオペレータが科したペナルティ50万ルピアの弁償、前払いした料金の返金などで、加えてまた精神的損害への弁償としてひとり当たり100万ルピアを告訴人は被告に請求している。
原告側法律代理人はその請求の根拠を、法律違反行為に関する民法典第1365条に関連する1366条に関連する1367条、消費者保護に関する1999年法令第8号、クラスアクション告訴に関する2002年最高裁規則第1号に置いていると説明している。別の原告側法律代理人はこの告訴について、他の有料TVオペレータが類似の行為を繰り返さないようにするためにきわめて重要なものだと述べているが、この告訴自体は告訴人が代表する被害者の全貌がはっきりしないという弱点を抱えていることを認めている。
アストロTVの放送サービス終了はマレーシアのアストロとダイレクトヴィジョン社の100%オーナーであるリッポグループ間の株式シェアに関する諍いに端を発したもので、これまで放送コンテンツを供給していたマレーシア側が供給をストップしたためにダイレクトヴィジョンは2008年10月20日0時をもって放送サービスを終えた。ダイレクトヴィジョン社はすでに、3万6千人の顧客に料金の払い戻しを行なうと公表している。


「ダブル携帯電話器の時代」(2008年11月13日)
ひとりでふたつ以上の電話器を持ち、またふたつ以上の電話番号を使っている携帯電話利用者が増加していることをテレマチックリサーチ機関のシェアリングビジョンが報告した。シェアリングビジョンが過去2年間に行なったサーベイ結果を見ると、複数の電話番号を使っている者は2007年2月が36%、2007年8月28%、そして2008年4月には61%に激増している。このサーベイはジャカルタとバンドンで133人を対象に調べたもので、最新サーベイ結果によると、ふだん携帯電話器を2個持ち歩いている者が89%にのぼり、1個しか持ち歩かない者はGSMオペレータを利用している傾向が顕著に見られた。
携帯電話器複数組みはたいていGSMとCDMAの両システムを使い、その両者間では音声通話もSMSも特に偏りはない。GSMオペレータを使う場合は相手もGSMの場合がもっぱらで、おまけに国際通話すら家庭にある固定電話器よりもこちらを使う傾向にある。CDMAを使うのは相手もCDMAのときで、オペレータが同一でも別でもあまり斟酌していない。
さて電話器複数組みが支出している通信費はいったいどうなっているだろうか?GSMオペレータへの支出の方がCDMAオペレータへのそれより多いと答えた者は52%、反対にCDMAの方が多いという回答者は28%に過ぎなかった。実態としてGSMオペレータへの支払が金額的に大きいにもかかわらず、利用者の大半はGSMの方が料金レベルが高いという認識を持っている。だったらどうして高いGSMを利用するのだろうか?GSMのほうが柔軟性を持っており、カバーしているエリアが格段に広いというのがその答えだった。
携帯電話利用者の月間支出額を金額ブラケット別に見ると、下のようになっている。
調査時期 / 10万ルピア未満 / 10〜30万ルピア / 30〜50万ルピア
2007年2月 / 7% / 66% / 26%
2007年8月 / 27% / 59% / 10%
2008年4月 / 39% / 43% / 17%


「サリナデパートが上海に進出」(2008年11月18日)
初代大統領スカルノが1962年8月17日に首都ジャカルタの中心地タムリン通りにオープンさせたサリナデパートは国有小売販売会社PT Sarinah (Persero)が運営する小売商店で、かつてはインドネシアのモダンマーケットセクターで頂点の一角を占めていた。民間ショッピングセンターが続々オープンした今となっては、往時のステータスも遠いものになった感がある。とはいえPTサリナは国有事業体の面目にかけて小売事業のモダン化に取り組んでおり、一時は全国にデパートやミニマーケットの販売網を広げたもののその後は経営健全化を目指して販売網整備が行なわれ、今ではデパートがジャカルタとマランに各1店、バティックとスーベニア専門店がジョクジャにひとつ、そしてミニマーケットをバリ・バンドン・東ジャワに各1店とスマランに2店の合計5店擁している。
PTサリナの事業収益は小売事業が76%、流通事業11.1%、賃貸業12.5%という配分で、また小売ビジネスはデパート93%、ミニマーケット7%というシェアになっており、ミニマーケット事業は手がかかるにもかかわらず会社への貢献度がきわめて小さいことから同社はこの事業を外部委託することを決めた。その委託相手に選んだのはミニマーケット業界の大手Indomaretで、サリナ社はインドマルッとの間でいくつかの条件を織り込んだフランチャイズ契約を結ぶことにしており、両者間で検討が続けられている。その条件の中には店名を変更しないというものがあり、インドマルッが運営を開始しても「サリナ」ミニマーケットはこれまでと同じ名前で営業が続けられる。
ミニマーケット事業を外部委託したあと同社の小売事業はデパート営業に専念することになる。国内中小事業者の製品アウトレットとしての使命は依然として継続されるので、廉価な国内産品の品揃えが更に充実することが期待されている。サリナデパートはまた2009年に上海への進出を計画しており、中国に在住している印華系事業者にこのプロジェクトに参加するよう呼びかけている。


「フランチャイジーを求めないフランチャイザーがいる」(2008年11月21日)
「セブンイレブン」のインドネシア上陸が確実になったとのささやきが聞こえているものの、フランチャイズ方式を求めるインドネシア政府側と自社運営店を主張するセブンイレブン側との折り合いがどうついたのかということに関する情報はまったく聞こえてこない。そんな状況下にインドネシアライセンスフランチャイズ会の顧問会議長が、フランチャイザーのブランド独占を禁止する法規を制定せよ、と政府に訴えた。フランチャイザーがひとつのブランドの販売網をすべて自己資本による店舗で運営し他者との共同事業を行わないのは独占禁止に関する1999年法令第5号に違反している、というのがその論拠。現在インドネシア国内にはそのような形態で事業を行っているグローバル著名ブランドフランチャイズがかなり存在している。PT Sari Coffee Indonesiaが所有しているスターバックスコーヒー、PT Fast Food Indonesiaのケンタッキーフライドチキン、PT Wendy Citrarasaの持つウエンディズレストラン、PT Mitra Selaras Sempurnaが展開しているマークス&スペンサーデパートなどがそれに該当している。おまけに国際的大手コンビニエンスストアまでがそんな形態で国内市場に参入してくるようなことになれば、国内市場の歪みはますます膨れあがる、というのが顧問会議長の論陣だ。
「多数の著名ブランドを輩出したアメリカでさえ、すべて自己資本による運営で独占的に行なわれているフランチャイズは存在しない。自己店舗はせいぜい30%程度で、70%以上がフランチャイジーによって運営されている。すべて自社で事業展開を行なうというのはフランチャイズという概念が持っている原理にそぐわないものだ。ひとつのブランドを市場で拡張させていくのに別の者の資本参加を促すことを通して事業独占を拝し、事業利益の分配を図りより多数の者に利益共有を享受させるのがフランチャイズ事業の持つ社会的意義なのである。ところがフランチャイズに関する2007年政令第42号と2008年商業大臣規則第31号にはフランチャイズ独占を禁止する条項が含まれていない。だから早急にそれを禁止する法規が必要とされている。」アミール・カラモイ顧問会議長はそう主張している。


「市場流通商品調査が励行される」(2008年11月28日)
市場における流通商品の監督をまるで食品薬品監督庁だけが行なっているような印象が拭えなくなってしまった昨今、食品医薬品化粧品以外にもさまざまな義務が与えられている商品がたくさんあることから、政府はこれまで各監督官庁が個別に行なっていた商品調査をモダンマーケットに対してまとまって行う方針を立てた。経済統括省商工業調整担当デピュティはそれに関して、「国内の消費者を保護するために産業界に義務付けられた規則実施に関する現場調査について、モダンマーケットに対しては商業省にタスクフォースを置き、各担当監督官庁と地元行政府を交えた混成チームによる現場調査を行う方針が決まった。」と説明している。
政府が産業界に定めている国民保護のための規定は、まず食品薬品監督庁が飲食品化粧品医薬品の人体に対する安全基準遵守の監視、農業省が肉やミルクなど食材の衛生基準に関する遵守の監視、国家規格庁がインドネシア製品規格(SNI)対象物品の品質規準遵守の監視、税関がチュカイ対象物品(アルコール飲料とタバコ)のチュカイシール貼付の監視、商業省が家電品のインドネシア語保証書と取説添付の監視、といった内容になっている。現場に出る見回り調査チームには警察官が加わることになる。各行政機関の監視は国産品と輸入品の差別をしてはならず、まったく同じ規準にもとづいて行われなければならない。
経済統括省デピュティはこの方針について、アメリカや先進諸国ではルーチンで行なわれている活動であり、商店は正しい相手から正しく仕入れている限り怖がる必要はまったくない、と言い添えた。「調査官は店側に協力的であり、ましてやそれぞれがばらばらにやってくるのでなく、チームを組んで来るので店の営業に障害を与えることもない。異常が見つからないのが当たり前であり、もし見つかれば商品回収といった措置が取られることになる。」とのデピュティの談。


「国内バティック市場は好景気」(2008年12月2日)
ルバランに向かって注文が激増したあげく受けきれない状態になっていた中部ジャワの国内市場向けバティック製造業界は、ルバラン後もそのまま好景気が持続していてグローバル金融危機による世界不況などどこ吹く風という様相を呈している。
プカロガン(Pekalongan)のバティック事業者は毎日平均5百着の絹や綿を素材とするバティック衣料品をバリ・ジャカルタ・スラバヤ・ソロ・ジョクジャ・マカッサルに出荷しており、一日5千万ルピアの売上がもたらされている、と語る。「グローバル危機が出現してからも売上は落ちていない。それどころか、ルバラン直後から見ると受注は4倍増だ。この好景気はバティックブームがアーティストや政府機関に起こっているためだろう。」
プカロガンにあるバティック販売店でも売上は安定しているそうだ。「売上は一日平均1百万ルピアだけど、週末には3百万ルピアにアップしますよ。」そこの店員はそう語る。この店には、バンドン・ジャカルタ・スラバヤ・スマラン・ソロ・マドゥラなどから購入客がやってくる。
ブルブス(Brebes)出身のバティック事業者も、グローバル不況の影響はまったく見られない、と言う。「少し前までは売上がひと月2千5百万ルピアだったが、いまでは3千万になっている。バティック衣料品が好景気なのは、公務員や民間会社員がバティックを業務用の制服に採用して注文してくるからで、公務員は独自のデザインを注文してくる。」
インドネシア市場にバティック風デザインの中国産プリント地衣料品が大量に流入しており、国内バティック業界は国内市場の一部がその中国産品に奪われていることから政府に規制を求めている。


「ブームにつけ入る中国産バティックもどき」(2008年12月3日)
かつてバティックを頻繁に着用していたのは王侯貴族たちや政府高官などいわゆる上流階層に限られ、庶民にとってのバティックは赤児・幼児をだっこするための布がもっとも一般的だったようだ。ところが今や一般庶民からセラブリティ、若者から下級公務員までもが国内のバティックブームを煽っている。
バティック(batik)の語源はniba(ろう)nitik(点々と滴る)だと言われている。バティック制作はインドネシア社会が長い歴史の中で築き上げた高度な伝統アートだ。バティックを描くための布地の選択にはじまり、制作品を最高のものに仕上げるために使われる道具や技法の研鑽が重ねられてきた。チャンティンは下書きされた布に溶けたろうで模様を描くための専用道具であり、この道具を巧みに使いこなすことはだれにでもできるというものでもない。
かつては王宮の女性たちがひとりひとり1〜3ヶ月という時間をかけて制作していたバティックが近代に入って商業化されるとともに生産性が高められたとはいえ、ここ数年国内でブームになっているバティック熱の巨大な需要を満たしきるのはまだ難しい。バティックのお家元であるインドネシアに湧き起こったマーケティングチャンスを狙って中国産のバティックもどきプリント布やそれで作られた衣料品がインドネシアに大量に流れ込んできた。大勢のインドネシア人消費者がそれを輸入されたバティックもどきだと気付かないまま買っている。
インドネシアバティック財団役員のひとりは、その見分け方を次のように教えている。インドネシアの本物バティック生地はろうが使われているため、独特の臭いがある。中国産プリント地はバティック模様の見た目がたいへん整然としており、本物バティックの特徴である人間の手が作り出すために意外な場所に意外な色や形が現れるという不ぞろいさがまったくない。本物バティック布は裏表の両面が使えるが、中国産のものは片面であるため裏がすぐわかる。中国産バティックもどきはインドネシア側輸入者が希望するデザインの布を作ってくれるが大量に買い取らなければならず、そのため小売店段階まで巻布の形で売場に置かれているのがほとんどだ。そして中国産プリントバティックは色がはるかに鮮明である。
インドネシア産手描きバティック衣料品は卸売り市場で一着20万から35万ルピアの値がついているが、中国産プリント地の衣料品は一着4万ルピアで手に入る。インドネシアの消費者が見た目の鮮やかなバティックもどき輸入品に目を奪われ、廉価であるがために財布のひもをゆるめるようなことになれば、国内にたくさんある中小バティック生産者は市場を奪われることになるだろう。インドネシアの地元文化財を外国が自分のものだと主張するのに激しい怒りを示すインドネシア国民が国産バティック産業の維持発展のためにどのような行動を示すのだろうか?


「中古車市場が落ち込み」(2008年12月12日)
ドル高ルピア安で四輪車生産者の新車市場出荷価格が値上がりするため、それにつられて上昇するものと見られていた中古車価格が反対に値下がりしている。2008年11月の中古車販売は平常月の3割減になったようだ。「具体的な数字はまだわからないが、大幅な販売低下が起こっているのは間違いない。市場の購買力が著しく落ち込んでおり、消費者は車よりもっと他のものに金を使うことを優先している。ローン金利は年率12%に跳ね上がり、多くの会社が自動車購入予定を見合わせている。中古車の売り手はこれまでのように高めの売り渡し価格を期待しており、状況の変化をまだ認識していない。そして新車販売網が魅力的なプロモパッケージをつけて起死回生を図っているために中古車市場は急速に減退している。中古車ディーラーはおかげで在庫がダブついており、高価買取は不可能な状況だ。中古車販売価格は既に下降傾向に入っており、下がり方はモデルと年式で違っている。」大手中古車ディーラーMobil88南ジャカルタ支店長はいま中古車販売が直面しているいくつかのネガティブ要因をそのように説明した。
Mobil88はジャカルタの中古車ディーラー最大手のひとつで、月間6百台の販売能力を持っているが昨今の購買力低下のために350台程度に落ち込んでいる由。この逆境の中で今も根強い需要があるのは2004年以降に生産されたミニバスと小型セダン車だそうだ。国内の中古車市場は今年中盤ごろから急激に膨張した。中でもジャワ島外の農園・鉱業の好景気によって高まった自動車購入意欲にダイハツゼニアとトヨタアバンザの新車配達二三ヶ月待ちという状況が作用したため、しびれを切らせた消費者が中古車購入に走ったのが中古車好景気のベースになっていた。この特需もグローバル不況で農園鉱業産品の景気がしぼんでしまったために続いていない。


「携帯電話器市場は半減」(2008年12月17日)
2008年10月以来のルピア安の影響で国内携帯電話器販売は売上が半減している、と業界者が語った。360の小売店を擁しているノキアの公式ディストリビュータ代表取締役は「ルピアレートダウンと税金アップのためコストが25〜35%上がっており、卸値を引き上げざるを得ないために30%値上げを行なったが、今度は小売店が購買力の落ち込んだ消費者に対してどのように5〜10%の税引き後利益を確保しつつビジネスを回して行くかに四苦八苦のありさまだ。マーケットは半分に縮小している。ファッションとしての購入需要は激減し、ハンドセットを買い換える必要があるから購入するという消費者ばかりになってきている。メーカーがルピアレートを1米ドル当たり1千〜1千5百ルピア補助してくれる価格政策を取っているIT業界を携帯電話器業界も見習ってくれればよいのだが、それはまだ実施されていない。」と現在の苦境を物語っている。
中国産廉価機種を扱う輸入代理店マネージャーは売上が半減したと言う。「商品コストは1個20〜60米ドルだが、今は1ドル当たり3千ルピアも引き上げなければならない。この値上げで消費者が買い控えする。通常のサイクルパターンもそんなものだ。ディストリビュータは市場で売り捌くのが不可能だから、経済スケールに即した量の仕入れができない。機種によっては市場からストックがなくなったものもある。小売店はどうやって消費者を納得させうる値付けを行なうかに頭を痛めている。当面はルピア暴落前に入荷した在庫を流しながら様子眺めで行くしかないだろう。」
インドネシアの携帯電話器市場は70%が低価格レンジ商品で占められている。ルピア安に襲われたこの価格帯商品はきわめて価格にセンシティブな中低所得層の買い控え現象を誘い、急激な冷え込みがいま携帯電話器市場に立ち込めている。


「優良インドネシア国産品」(2008年12月22日)
ビジネスインドネシア紙が毎年主催しているインドネシア国産品アワード(Anugerah Produk Asli Indonesia)で今年も各カテゴリーに国産品として誇れる製品が指名された。学術界・産業界・広告宣伝業界・法曹界・ビジネスコンサルタント業界などを代表する9人の審査員が選出した2008年のインドネシア優良国産品は次の通り。
カテゴリー / 製品名 / 生産者
粉ミルク / SGM / PT Sari Husada
液体ミルク / Cimory / PT Cisarua Mountain Dairy
スナック / Biskuit Gery / PT Garudafood Putra Putri Jaya
衣料品 / Hammer / PT Wama Mardhika
医薬品 / Stimuno / PT Dexa Medica
ジャムゥ / Sariayu / PT Martina Berto
化学製品 / Asap Cair Deorub / PT Global Deorub Industry
朝食素材 / Meises Ceres / PT Ceres
インスタント食品 / Pilihan Bunda / PT Subafood Pangan Jaya
生鮮食品 / Ayam Probio Pronic / PT Pronic Indonesia
サプリメント / Kuku Bima / PT Sido Muncul
宿泊施設 / Hotel Santika / PT Grahawita Santika
飲物 / Kopi Kapal Api / PT Santos Jaya Abadi
住宅用設備 / Meter air Linflow / PT Multi Instrumentasi
デスクトップ型パソコン / Mugen / PT Multicom Persada International
ノートブック型パソコン / Zyrex / PT Zyrexindo Mandiri Buana
データプロセスソルーション / Cardnetic / PT Intisar Primula
宅配ロジスティクス / Layanan YES / PT Tiki JNE
バイオテクノロジー / Biotama / PT Utomodeck


「貧困は庶民から活力を奪う」(2008年12月31日)
雨季に入って食材等の供給不足から値上がりと品薄が続いており、庶民向け食堂や食品販売者は値段を据え置いて量を減らす対応を取っている。ラモス(Ramos)やセゴン(Sengon)あるいはムンチュル(Muncul)やパンダンワギ(Pandan Wangi)などの中級米はキロ当たり4千から7千ルピアという高値にあり、量り売り食用油はブランド物でリッター当たり12,000から13,000ルピア、非ブランド物はキロ当たり8,500〜9,500ルピアといまだに下がる気配がない。ジャガイモ・ねぎ・トマトなどの野菜もキロ当たり平均1千ルピア値上がりしている。産地で収穫期に雨季に襲われたために出荷前に腐ったものが多く、在庫が不足気味なので価格がなかなか下がらない、と市場の商人は語っている。加えて今年5月の石油燃料値上げ後に高騰した運送料が物価高を下支えしているため、食材や生活基幹物資は値段が下がるあてがない。
そんな状況であるため首都圏の庶民向け食堂や食品販売者は客の低下した購買力を逆撫ですることを恐れて値上げするのを差し控えているため、取れる対応はこれまでの量をもっと少なくして販売する以外に方法がない。北ジャカルタ市クラパガディンのチョトマカッサル(coto Makassar)食堂も東ジャカルタ市チュンパカマスの飯ワルンも、南ジャカルタ市クバヨランラマのウルジャミ(Ulujami)でもクバヨランバルのブロッケム(Blok M)でも、従来のひとり分の料理が小さくなっている。「小さくする以外にしようがないんですよ。ルバラン前に食材が値上がりしたから一度値上げしたんで、今更また値上げしようってわけにはいかないもんだから・・・・」食堂のおかみはそう語る。飯におかずを数品添えたナシチャンプル(nasi campur)は飯の密度が違ってきているし、おかずのサイズも小さくなっている。ロントン(lontong)やクトゥパッ(ketupat)も一片の長さが短めだ。貧困は食事の量にしわ寄せをもたらし、生産的な世代のひとびとが十分なエネルギーを持つことを困難にしている。虚弱な身体で生産性を高めることはそう簡単にできるものでもあるまい。マラス(malas=怠惰)だと批判される原因ははたして精神にだけあるのだろうか?


「四輪車の値上げがはじまる」(2009年1月9日)
需要が30〜40%減少するだろうと予想されている2009年に入ったいま、自動車メーカーはこぞって市場小売価格を値上げしている。国内自動車市場のリーディングメーカーであるPTトヨタアストラモトルは、2009年1月1日から小売価格を5〜20%引き上げた。これは鉄鋼・プラスチック・ゴムなどの値上がりで膨張した製造コストとのバランス回復と日本円と米ドルに対して大幅に低下したルピア為替の差損圧縮を目的としたもので、イノバ、アバンザ、フォーチュナーなど国内組立車は5〜8%の値上げ、完成品輸入車は10〜20%の値上げ幅になっている。カムリ、クラウン、カローラアルティス、ビオス、リモ、ヤリス、ハイラックスなどが完成品輸入車であり、そのメインはタイから輸入されるものだそうだ。アバンザはこの値上げで1億1千6百万ルピアだった最廉価機種が6百万ルピアアップする。しかしトヨタはこの1月の値上げで収益状況が復旧できるわけでもなく、翌月の再値上げも検討しているとのこと。
一方ダイハツも近々値上げを行なう構えで、売れ筋モデルであるゼニア、テリオス、グランマックスの3機種は4〜5%値上げする意向。
国内の乗用車機種別販売台数ベストファイブは次の通り。台数は2008年1〜11月の累計。
アバンザ 76,826台
キジャンイノバ 47,865台
ゼニア 29,969台
ジャズ 23,918台
リビナ 23,718台


「アジア太平洋地区のトップ小売業者はマタハリ」(2009年1月16日)
リテールエーシア誌に掲載された2007年アジアパシフィック地区モダン小売業者売上高上位5百傑にインドネシアから15社が入った。この調査はユーロモニターインターナショナルによるもので、対象国はオーストラリア・中国・香港・インド・インドネシア・日本・マレーシア・ニュージーランド・フィリピン・シンガポール・韓国・台湾・タイ・ベトナム。インドネシアの15社は次のような顔ぶれで占められている。
国内順位 / 屋号 / (業態) / 2007年売上高(兆ルピア)
1)Carrefour (ハイパーマーケット) 9.1
2)Matahari Dept Store (百貨店) 5.07
3)Alfamart (コンビニストア) 5.02
4)Ramayana (百貨店) 4.75
5)Hypermart (ハイパーマーケット) 3.95
6)Indomaret (コンビニストア) 3.91
7)Giant (ハイパーマーケット) 3.56
8)Debenhams, Java, Seibu, Sogo (百貨店) 1.8
9)Gramedia (書店) 1.71
10)Alfa Supermarket (スーパーマーケット) 1.67
11)Electronic City (家電製品マーケット) 1.43
12)Super Indo (スーパーマーケット) 1.42
13)Hero (スーパーマーケット) 1.41
14)Kimia Farma (薬局) 1.16
15)Toserba Yogya (百貨店) 1.09
同誌はまた各国別に売上高とビジネスマネージメントで優れた小売業者に金銀銅のランキングを与えて比較することも行なっており、それを見るとまた上と異なる構図が目に入ってくる。
インドネシアは金がPT Matahari Putra Prima、銀PT Carrefour Indonesia、銅PT Hero Supermarketで、全国に百貨店Matahari Dept Store83店、ハイパーマーケットのHypermart43店、スーパーマーケットFood Mart27店、ゲームセンターTimezone97店、書店Times Bookstores4店を擁する小売業界ジャイアントのマタハリプトラプリマ社が国内ナンバーワンの座を占め、おまけにアジアパシフィック地区でも首位の栄冠を獲得した。


「パリジャンデパート廃業」(2009年1月27日)
PT Matahari Putra Prima Tbk.がハイエンド消費者向けの高級デパートとして発足させたパリジャンデパートが姿を消す。それまでアッパーミドル層向けデパートとして営業していたガレリアは2008年3月に高級デパートパリジャンに路線変更されることが決まって廃業した。ところが衣替えをしたパリジャンデパートはまだ一年を経ない間にマタハリデパートに逆戻りすることになった。といっても、昔からのマタハリデパートに戻るところと、新規に発足する靴・化粧品などファッション商品をメインに据えたマタハリニュージェネレーションに転身するところに分かれることになっている。
パリジャンデパート開設は西武・デベンハムズ・メトロ・そごう・ハーベイニコルズなど外国系高級デパート市場への参入を目論んだものだったが、中流所得層をターゲット顧客として大きな成功を収めてきたマタハリにとってパリジャン経営に従来培ってきたノウハウを生かす余地があまりなかったということらしい。特にルピア=米ドル交換レートの変化によって輸入品が極端な割高感をもたらしはじめたことがモメンタムとなり、更にジャカルタの高所得層は十分大きいパイを形成しているわけでないため、マタハリはより巨大な中流所得層に焦点を当てていくほうが得策であるとの経営判断がそこに加わったようだ。パリジャン向け商品としてオーダーされていた輸入品は高額商品がマタハリニュージェネレーションに回され、別の一部はマタハリデパートで販売されることになっている。


「新車価格は毎月値上がり」(2009年1月28日)
トヨタ自動車の国内独占代理店PT Toyota Astra Motor(TAM)は2009年1月に新車価格を引き上げたのに続いて、為替レート調整のために今後も毎月1〜3%の範囲で小幅な値上げを行なうことを明らかにした。他の自動車メーカーも同じような価格政策を取る予定にしているため、新車購入予定者はできるだけ早急に購入手続きに入って値上がりを避けるのが賢明だと同社代表取締役は語っている。
ダイハツ国内独占代理店PT Astra Daihatsu Motor(ADM)のマーケティング担当取締役は、従来価格見直しは三ヶ月単位だったが、今のような為替変動の激しい時期は毎月見直しをする必要がある、と言う。「三ヶ月も期間をあけて価格を見直すととんでもない値上がり幅になって消費者を驚かす結果になりかねない。」
2009年1月はじめ、ダイハツは売れ筋のゼニア・グランマックス・テリオスの三車種を4〜5%値上げした。ダイハツ側は消費者の反応を探っているところで、もし状況が許すなら次の値上げの検討にかかる意向だ。現在ダイハツ製品の販売価格は規準ルピアレートを1ドル9,800ルピアとしているが、できるだけ早く実勢の1ドル11,000ルピアに近づけたいと考えている。「もし政府が1ドル9,500ルピアの線までレートを引き下げてくれれば、自動車業界としてはたいへんありがたい。小売価格は値下がりするだろう。」取締役はそう述べている。
スズキ自動車独占代理店PT Indomobil Niaga Internationalも為替レートの変動に苦慮している。2008年ルバラン明け以来、同社も毎月販売価格の調整を続けているが、9,000ルピアから12,000ルピアまで動いた米ドルや82ルピアから125ルピアまで動いた日本円をカバーできるまでの価格調整がいつ終わるのか、まだ予測がつかないそうだ。
今年の新車需要についてTAM代表取締役は、消費者購買力低下と自動車購入ローン返済金利高が総需要を冷え込ませる一方で、従来2億ルピアを中心にした価格帯が主流をなしていた国内市場で価格センターが1億5千万ルピアにシフトするだろうとの予想を語っている。インドネシア銀行がBIレートを8.75%に引き下げているにもかかわらず、自動車購入ローン返済金利率は年利18〜20%という高率にある。ディーラーからメーカーへのオーダー時頭金は20%になっており、これも購入者の負担を重いものにしている。ビジネスインドネシア紙の調べた2009年1月の車種別値上がり幅は次の通り。金額は百万ルピア単位。
車種 / 値上がり幅 / 新価格
Suzuki APV / 7.5 / 120.5〜157.5
Suzuki Swift / 13.5 / 153.5〜176.5
Suzuki Minibus Real Van / 5.25 / 97.25〜105.25
Toyota Avanza / 9.3 / 136.95〜162.4
Toyota Kijang Inoba / 12 / 183.05〜270.1
Toyota Yaris / 12.3 / 162.2〜195.2
Daihatsu Gran Max / 6.8〜8.25 / 90.3〜121.65
Daihatsu Xenia / 6.9〜9 / 108.8〜132.3
Hyundai Avega / 5 / 118〜142.85


「エスニックスーパーの次は外国系ファーストフード」(2009年2月2・3日)
ラマダン月に増加する賞味期限切れ飲食品販売の監督を主眼に、合わせて国内流通認可を得ていないイリーガル商品も摘発しようと、食品薬品監督庁は2008年9月に季節的取締作戦を開始した。たまたま中国で発生したメラミン混入ミルク問題が世界的に注目を浴びたことから、汚染疑惑のある商品の発見にも同庁市場監督調査官は精を出した。
こうして食品薬品監督庁登録国内流通認可であるML番号の付けられていない外国産飲食品が摘発されてエスニックスーパー受難の季節が幕を開けた。イリーガル商品に対する市場からの排除という実に単純な事件でしかないものがこの国における生活に大きい不便をもたらすようになるこの実態は、この国の日常生活がいかにリーガルコンプライアンスから遠いところにあるのかということを示す実例のひとつと言えるだろう。ビジネス活動から日常生活にいたるきわめて広範な分野では、リーガルコンプライアンスを遵守するとそれを遵守する人間の側にさまざまな困難が招き寄せられてくる。この事実はもっと注目されてよいとわたしは思う。
さて食品薬品監督庁の飲食品監督業務推進強化方針に苦しめられはじめたエスニックスーパー業界は、グローバル不況がもたらした政府の輸入規制政策で二発目の打撃をこうむることになった。国内市場に強固な地盤を培ってきた労働集約産業5セクターに対する国内産業保護を名目にして政府は輸入引き締め政策をその5セクターに実施すると決めたが、なんと飲食品産業がその5セクターの中に入っていたのだ。輸入者と輸入港を限定してモニターとコントロールを容易にするコンセプトが取られたこの輸入引き締め政策はマス輸入マス流通を優先させる性格のものであることから、弱小輸入者が少量の輸入を行なう道をふさぐ結果をもたらし、在留外国人をマーケットにしているエスニックスーパーはその政策によってはじき出されるカテゴリーに属していたために棚に載せる商品がなくなるという状態に陥ったのである。こうしてエスニックスーパーは瀕死状態になった、と業界団体役員は表明している。ところがその余波がこんどは外国系ファーストフード業界に及び始めた。
エスニックスーパーを瀕死状態に陥れた食品薬品監督庁の業務推進強化方針と政府の輸入引き締め政策のあおりは次に外国系ファーストフード業界に襲い掛かった。外国系ファーストフードフランチャイズは概して個性を持たした商品を売り物にしており、その独特の味付けはグローバルスタンダードを維持するためにブランドオーナーが企業秘密として自社生産し、世界中のフランチャイジーにそれを買わせるというビジネス方針を取っている。その特性ソースや調味料も2009年1月に政府が飲食品輸入手続きに厳しい条件を課すようになってから、入荷がストップしてしまった。業界関係者は、それらのストックが3カ月分ほどしかないので、今の状態が続けば店を閉めるフランチャイジーが出始めるだろう、と予測を語っている。業界は、シンガポールで行なわれているような市場で販売される製品に対する監督を厳重にして、輸入はもっと自由に行なえるようにしてほしい、と政府に訴えている。商業省に登録されている外国系ファーストフードフランチャイズには次のようなものがある。
ブランド   代理店
A&W PT Biru Fast Food Nusantara
American Chilis PT Pasindo Tata Boga
Black Angus PT Resto Indonesia
California Pizza PT Panca Pilar Kencana
Gloria Bean's PT Fenta Fill Investama
Hartz Chiken PT Sierad Pangan
Italianis PT Sri Saga Sarana
Kentucky Fried Chiken PT Fast Food Indonesia
King of Thai PT Cipta Rasa Prosperindo
Loy Kee PT Alliance Investment Group
McDonald's PT Ramaco Gerbang Mas Plaza
Popeye PT Popindo Selera Prima
Pizza Delarte PT Sierad Bujana
Pizza Hut PT Sari Melati Kencana
Roundtable Pizza PT Selera Cipta Dharma
Soup Restaurant PT Viswa International
Texas Chiken PT Cipta Selera Murni
The Spagethi House PT Pasta Mas
Wendy's PT Wendy Citrarasa


「インクジェットプリンタ販売台数が大幅増」(2009年2月4日)
2008年のインクジェットプリンタ国内販売は210万台にのぼり、2007年実績の160万台から31%も上昇した。第1四半期は50万5千台、第2四半期64万5千台、第3四半期56万台と好調に推移したあと、第4四半期は世界不況の影響を受けて40万台にダウンしてしまった。インターナショナルデータコーポレーション(IDC)とダタスクリプ(Datascrip)のデータによれば、210万台中の172万台は単機能プリンタで多機能型は18%の35万台しかない。
2009年予測についてキャノンプリンタのインドネシア代理店であるダタスクリプ社の取締役は、インクジェットプリンタ販売は190万台に低下し単機能タイプはそのうちの140万台を占め、一方多機能型は50万台にアップするだろう、と述べている。キャノンプリンタについては2008年の市場シェアが45%で、2009年は53%を目指すと同取締役は語っている。それは台数ベースで100万台を意味しており、そのうちの75%は単機能タイプになる見込み。


「インドネシアのデパートは業績が悪い」(2009年2月6日)
リテールエーシア誌に掲載されたユーロモニターインターナショナルの2008年調査結果によれば、アジア太平洋地区におけるインドネシア百貨店の業績はきわめて低調だ。平米当たりの年間売上高を米ドル換算した数値による比較なので各国通貨の対米ドルレートがもたらす影響は避けれらないが、さらに国民購買力に配慮した価格や地元での地代家賃および人件費等のコストカバーという要因も商品の価格設定に影響を及ぼすものであることから、番付の下位にひしめいているインドネシア百貨店業界の販売力が他国に比べて劣っていると一概に言うのはむつかしい面がある、と国内小売業界団体役員はその番付についてコメントしている。たとえば上位に並んでいるシンガポールの百貨店業界について、シンガポールは地代家賃がインドネシアの10倍に達しており、従業員給与もひと月1,300Sドルでこれはルピア換算すれば9百万ルピアとなる。インドネシアの百貨店で働く一般従業員で月給9百万ルピアの者はいない。下の表は百貨店名/国/平米当たり米ドル建て年間売上を示している。
Mustafa シンガポール 18,579−
Lotte 韓国 10,859−
Hyundai 韓国 10,313−
Takashimaya シンガポール 10,055−
Isetan シンガポール 9,861−
Shinsegae 韓国 9,696−
John Little シンガポール 6,424−
Tangs シンガポール 6,281−
OG, Urban シンガポール 4,686−
Isetan マレーシア 3,628−
BHG シンガポール 3,455−
Paragon, Emporium タイ 3,202−
GS Square 韓国 2,186−
SM フィリピン 1,843−
Central タイ 1,564−
Matahari インドネシア 1,372−
Ramayana インドネシア 1,176−
Debenhams, Java, Seibu, Sogo インドネシア 919−
Parkson Grand マレーシア 871−
Yogya インドネシア 761−


「2008年広告宣伝売上は41兆ルピア」(2009年2月10日)
ニールセンメディアインドネシアが報告した2008年国内広告宣伝市場は、テレビ業界が2007年の23.05兆ルピアから26.24兆に14%増加したものの成長率のトップは新聞業界の33%で、総額では前年の35.09兆ルピアから41.71兆へと20%近くアップした。一方、セグメント別の支出金額は次表の通りとなっている。
順位)セグメント  2008年金額  対前年比アップ率
1)電気通信  4.4兆ルピア  58%
2)政府・政治  2.2  66% 
3)企業・社会サービス  1.67  27%
4)自動車  1.65  13%
5)ヘアケア  1.43  −6%
6)タバコ  1.39  −8%
7)パーティライン・星占い  1.33  117%
8)フェイシャルケア  1.12  −1%
9)銀行・金融  1.11  7%
10)メディア・プロダクションハウス  1.07  6%
11)ランドリー  0.8  4%
ニールセンのシニアマネージャーは、2008年の広告宣伝売上増は広告宣伝料金が上がったせいだ、とコメントした。スポット広告件数は2007年の493万件から536万件に8.7%しか上昇していないにもかかわらず金額は19%もアップしていることが単価アップを物語っている、とマネージャーは言う。
しかしニールセンの報告は広告件数に価格表料金をかけたグロスレートであって、実際の取引時に行なわれている料金ネゴは反映されていないので、実際の広告宣伝市場はそれよりもっと小さいものだ、と言う業界者もいる。「41兆ルピアという市場規模は見せかけのものでしかない。19%も金額がアップしたとしてもその10%はインフレに食われており、実質成長は9%程度しかない。」業界者のひとりはそう語っている。


「ランボルギーニがインドネシア上陸」(2009年2月16日)
イタリアのトップクラススーパースポーツカーがインドネシアに上陸した。2009年2月6日南ジャカルタ市チランダッ(Cilandak)に最初のショールームをオープンしたPT Lamborghini Jakarta は白塗りのムルシエラゴLP640とガヤルドLP560を展示してマーケティングを開始した。公称6,496cc12気筒のLP640はオフザロード価格が79万8千米ドル、5,200ccV10のLP560は56万8千米ドルという値付けがなされている。購入者はその価格に上乗せして75%の奢侈品税や巨額の名義変更料を負担しなければならない。それらの価格は競合メーカーフェラーリの対抗車種より10%高く、インドネシアで一番高い自動車が新たに誕生したというわけだ。
このグローバル経済危機下にそのような高額自動車を発売することは国民の経済格差を一層目立つものにして階層間の反目を煽るだけだと批判する声も投げかけられているものの、PTランボルギーニジャカルタは、そのような高額自動車を購入する経済力をインドネシアが持っていることを示すものだという見方をしてほしい、とその批判に応じている。同社の2009年販売目標は12台だそうだ。
ランボルギーニジャカルタ社がドイツのアウディグループ傘下にあるランボルギーニのインドネシア誘致を始めたのは2年前で、2年越しの努力が実を結んで今回のショールームオープンとなった。この誘致に関連してセールス・サービス・スペアパーツの3Sディーラー開設やその他のインフラのために総額100万米ドルの投資が行われている。言うまでもなくその投資のマジョリティシェアはインドネシア資本なのだが、その金主の名前はいまだに秘匿されている。
ランボルギーニという会社はこれまでに何度も身売りが行なわれており、その歴代オーナー名簿にはインドネシア人資本家がふたりも名を連ねているそうだ。ひとりはスティアワン・ジョディ、もうひとりは元スハルト大統領の息子フトモ・マンダラ・プトラ通称トミーだと言われている。


「総選挙特需は経済悪化を救えない」(2009年2月23日)
グローバル経済危機で国民購買力が低下したため、2009年1月の全国小売販売は大幅に減少した、とフロンティアコンサルティンググループが公表した。その減少状況は業界で大幅に違っており、食品は1〜5%、家電品10〜20%、自動車は30〜40%の減少であるとのこと。今年上半期はそのレベルが継続するだろうと同グループ会長は見ている。下半期はまだ予測もつかないが、国民が半年間の耐乏生活というショックと適応の時期を過ごした後、多少ともかつての生活パターンに戻ろうとする傾向が生じて消費行動を高める可能性が期待できること、更にグローバル経済が少しでも回復の兆しを見せ始める期待感があることから、小売販売は少しは改善されるのではないか、と会長は語る。
「2009年は総選挙の年であるため選挙関連費用が特需を生み、グローバル不況による経済悪化はかなり救われるだろうとの声が諸方面からあがっているが、その特需は国民消費に対して1〜2%程度の効果しか持っていない。年間の家庭消費は800〜900兆ルピアに達している一方、議員候補者たちが使う資金は10兆程度と推測されている。つまり総選挙で市場に流れ出る金は年間家庭消費の1〜2%程度しかないということだ。その程度であるなら、それは2009年1月に起こった小売販売減少の比ではないということだ。1月の急激な小売販売の冷え込みで企業は広告宣伝費を2008年実績から10〜20%削減している。下半期の小売販売回復が起こる場合は7月の広告宣伝費が上向きになることが期待されている。」フロンティアコンサルティンググループ会長はそう述べている。


「没収されたML未取得商品は100億ルピア超」(2009年2月26日)
飲食品事業者連盟の報告によればイリーガル輸入飲食品が国内生産者にもたらしている損害は3億ドルとなっているが、不法輸入品はもはやかなり市場から姿を消したのでそのデータは見直してもらう必要があるだろう、と食品薬品監督庁長官が語った。先に報道されているように食品薬品監督庁は飲食品・医薬品。化粧品1,504非合法アイテム、物量にしてトラック百台分を超える没収品を近々廃棄処分に付す計画。ところがそれら没収品は食品薬品監督庁が横暴なやり方で小売店から取り上げたものであり、小売業界はそのために100億ルピアを超える損失を蒙っている、とインドネシア小売事業者協会が食品薬品監督庁を非難する発言を行なった。
「メラミン汚染ミルク事件が発端になった食品薬品監督庁の流通認可未取得商品取締りはほとんど毎日行なわれており、飲食品のみならず今では洗剤やシャンプーにまで対象が拡大されている。これほど厳しい取締りに直面して非合法商品を販売しようという小売店はもうない。いま商品陳列棚に非合法商品が見つかるとすれば、それはほんのひとにぎりの商品の最後のストックくらいなものだ。すると食品薬品監督庁は店頭だけでなく小売店のストック倉庫まで調べ始めた。倉庫にはサプライヤーに返却する商品も置いてある。モダン小売店はサプライヤーから買い取った商品と委託販売商品の二種類を扱っているが、委託販売商品の所有権はサプライヤー側にあって小売店にはない。そのような斟酌など何もせず、食品薬品監督庁は店頭であろうと倉庫であろうと、どこで見つけようが問答無用で没収していく。おかげでモダン小売業界には100億ルピアを超える損失が食品薬品監督庁の取締りで発生している。トラディショナルマーケットには非合法商品が山のように流通しているというのに、取締りはモダン小売店業界だけをターゲットにしており、トラディショナルマーケットは放ったらかしのままだ。昨今のような不況下に陥ったわれわれ業界を政府は指導育成しなければならないはずだ。解決策を探そうともせず、損失を与えて放り出すようなことをするべきではない。」協会流通品部会議長はそう批判を語っている。


「小売店の陳列商品が減少する」(2009年3月11日)
グローバル不況で消費者の購買力が落ち込んできており、売れ残りを恐れて取扱い商品を絞り込む傾向が小売業界に広がっている。特に多種類の商品を陳列販売している百貨店にこの不景気下のサバイバル対応の要求が強く、売行きの良い商品は陳列商品が6〜10倍というレベルにあったが、それを5倍以下に減少させる方針が進められている。この方針は各種陳列品の絞込みだけでなく、たとえば衣料品部門ではズボンの陳列品を減らしてブラウスを増やすといったバリエーションも行なわれている。RimoデパートメントストアやRamayanaデパートはこれまで売上を伸ばすために在庫の滞留にそれほど神経質になっていなかったが、いまは在庫を減らしながら売上の低下を軽減させるのにどうしようかという戦略を真剣に検討しているとのこと。
特に仕入れ部門の責任が従来以上に重みを増しており、仕入れ商品の厳選が上から下まで鋭く注目されているありさまに加えて低下している売上げは仕入れのちょっとしたミスにも余裕を与えない情況になりつつあるようだ。業界ジャイアントのマタハリグループ取締役のひとりは昨今の状況について、売上低下には明確な方針転換が必要であり、1998年通貨危機の際に同社が取ったような方針が繰り返されることは十分に考えられることだ、とコメントしている。当時マタハリグループは買取仕入れ商品を減らして自社ブランド商品の拡充を図った。この方針が拡大すれば生産者に与えるインパクトはまた異なる彩りに染まっていくに違いない。


「ここにもリーガルコンプライアンスの矛盾が」(2009年3月19・20日)
4百件を超えるミニマーケット事業許可申請の処理を都庁が止めている。都庁が公式許可を与えた都内のミニマーケットは149件だが、現実にはその数倍にのぼるミニマーケットが非商業地区をはじめ都内の各所で営業している。ミニマーケット商店はいわゆるモダンマーケットに属し、伝統型小売商店とバッティングするのに加えて仕入れや流通あるいは在庫管理に合理的な経営手法を取り入れたモダンマーケットに伝統型商店が太刀打ちするのは難しいことから、同一エリア内にモダンマーケットが開店すれば伝統型商店に閉業のリスクがもたらされる事態が多発することを政府は懸念しており、モダンマーケットに対する強い管理姿勢を取るのが一般的な地元政府のあり方になっている。
都内では、ミニマーケットの多くはインドマルッ(Indomaret)、アルファマート(Alfamart)、シルクルカー(Circle K)などのフランチャイジーになっており、特に事業許可も得ないまま非商業地区である住宅地の住居が商店に転換されるという二重の違反行為によって雨後のたけのこのように店舗が増加しているのが実態だ。そのため今のような状況下にミニマーケットの事業認可を交付するのは適切でないとして都庁は申請されている事業許可の処理をストップしているわけだが、正直に事業許可を申請すればその処理が行われず事業者は事業を始めることができないのに反して、イリーガルで事業を興せばすぐに利益を手中にできるという不公平がここにも発生しており、リーガルコンプライアンスの矛盾が相変わらずあちらこちらに噴き出るインドネシアのありさまだ。
もともと都庁行政では機能転換した建物に対する取締り措置に関する2005年都知事決定書第44号とミニマーケット許可延期に関する2006年都知事指令第115号に従ってミニマーケット許可の処理を停止する状況が出来上がっており、にもかかわらず許可申請を出した4百件というのはいかに行政手続に不確定が浸透しているかを如実に示すものと言えるだろう。都庁は二年前に制定されたフランチャイズに関する政令に応じた都条例の制定を計画しており、処理が停止しているミニマーケット事業許可申請はそれが実現した暁に即座に再開される、と都庁コペラシ中小ミクロ事業商業局長は述べている。局長はまた、都内5市の市長に対してミニマーケット事業許可取得のために申請者にリコメンデーションを発行すること、都内の全郡長と町長に対して事業許可取得条件になっている事業所所在証明書(surat keterangan domisili perusahaan)を好き勝手に発行することをやめるよう警告した、とも語っている。一方都議会第B委員会議員のひとりは、ミニマーケット事業許可の交付は止めて同じ商品を販売している個人商店や個人販売者にビジネスチャンスを与えるよう支援するべきだ、とコメントしている。
コペラシ中小ミクロ事業商業局長によれば、都内にある小規模事業所10万2千件のうちで公式事業認可を持っているのは40%に過ぎず、6割は監督行政機関への届出をまったく行なっていないそうだ。届出もしくは事業許可については、商業事業許可(SIUP)と会社登録証(TDP)の書類交付を受けているかどうかを規準にしている。


「新車台数の半分を呑み込むジャカルタ」(2009年3月19日)
ジャカルタへの一極集中は四輪自動車販売にも現れている。国内で販売された新車の半分はジャカルタに吸収されているのだ。2008年の四輪車生産者国内販売台数607,805台が全国のどこへ売られたかというデータは求めにくいが、警察の四輪車登録台数データを見れば、その輪郭が浮かび上がってくる。警察データは2008年全国登録台数を546,000台と報告しており、2007年の400,800台から30%近く上昇した。2008年の地方別登録台数明細は次のようになっている。
ジャカルタ首都特別区 243,000台 全国シェア44.5%
スマトラ 97,000台 17.7%
東ジャワ 72,800台 13.3%
西ジャワ 39,000台 7.1%
中部ジャワ 36,800台 6.7%
カリマンタン 30,864台 5.6%
スラウェシ・パプア 25,800台 4.7%
ジャカルタのシェアが高いことについて業界者のひとりは、大都市の購買力と人口そして道路インフラの高さがおのずと四輪車市場を作り出している、と分析する。しかしそれは既に社会問題と化している首都圏の交通渋滞と深い因果関係にあり、その状況を改善してジャカルタ一極集中からジャワ島外に向けて平準化を進めることが業界にとっても社会生活においてもきわめて重要なことであるため、政府は地方部のインフラ建設と経済開発を促進させる一方でジャカルタ集中の緩和を図るモメンタムを作り出すようにしなければならない、とガイキンド(インドネシア自動車産業連盟)会長は提言している。
四輪車メーカー中堅幹部は、しばらく前はジャカルタが50%シェアを持っていた、と言う。「2008年は地方部が好況でジャワ島外での売上が伸びた。その結果がジャカルタの45%シェアというところであり、これはつまりジャカルタのシェアがたいへん安定しているということを意味している。不況になれば販売はまたジャワ島に集中するようになると関係者は皆そう言っている。ジャワ島外はパーム油や石炭などコモディティの好不況で購買力が上下に大きく振れるが、ジャワは製造産業の層が厚いためそれほど大きな振れが起こらない。」地域別経済格差はインドネシアに特異な構造をもたらしており、ジャカルタ一極集中はその上に咲いた仇花であるようだ。


「英語書籍市場は拡大中」(2009年3月24日)
英語の書籍を主体に販売しているTimes Bookstoresは小売業界ナンバーワンのマタハリグループ系列に属す書店だ。シンガポールを本拠とするタイムズブックストアをインドネシア市場に呼び込んだのはマタハリグループで、同社はインドネシア国内の洋書販売が好調であることから2009年に販売網を10〜15店増やす計画を立てている。
国内の英語書籍市場が成長してきたのは2000年以来のことで、その嚆矢はQBブックショップが担った。QBというのはQuality Booksを略したもの。この書店は英語を主体にした輸入書籍をメインにして、さらに国内在留エクスパトリエートたち向けのインドネシア書籍も織り交ぜた商品ラインナップを備えていた。QBブックショップの想定顧客は、だから国内在住外国人という印象が強かった。そのQBもいまや店を閉めてしまったわけだが、その一方でAksara, Kinokuniya, PERIPLUS, Times Bookstoresなどの輸入書籍専門店が地歩を固めつつ勢いを伸ばしているのは時代の変転というものかもしれない。
フロンティアコンサルティンググループ会長はこの輸入書籍専門市場の堅実な発展について、洋書購入者は有益な書籍を知識形成の投資と考えているので経済の好不況にあまり影響されない、と分析する。「衣料品やアクセサリーなどは支出だが、書籍は投資だ。だから不況だと支出は削るが投資は続けるから昨今の不況でも勢いを伸ばしている。市場が拡大した要因は海外留学から戻ってきた知識層が増加してきたことに加えて国内の大卒者が増加し公的教育で英語を教える学校も増えているためで、2000年以降の輸入書籍販売の向上はそんな市場形成が支えているものだ。今最大の問題はドル建てで輸入されている洋書の価格がルピアレートの低下で上昇していることであり、販売の障害要因はそれくらいだと言えるだろう。」
タイムズブックショップの看板を掲げているマタハリグループのPT Times Prima IndonesiaでCEOのポジションに就いているシンガポール人は、この4〜5年間にインドネシアの輸入書籍販売市場で起こった成長は目をみはるばかりだ、と印象を語っている。中でもマンダリンや英語の言語教育だけでなく授業の媒介言語として英語を使う学校が増えていることが、英語書籍販売の拡大に大きなサポートを与えている。この階層は学校で教科書や参考書に使われる書籍の需要を高めており、生徒たちはそこから更にライフスタイル関連書籍に興味を拡大して行く。学生や大人の消費者にはフィクション・ノンフィクション小説やビジネス・マネージメント関連、さらに建築・会計など専門職に関わる書籍も売れ筋であるとのこと。


「高級ブランドがいまや重荷に」(2009年4月9日)
グローバル不況による消費者購買力低下とドル高ルピア安で20%の値上げというダブルパンチを受けた輸入ブランド品の売上が悪化しており、ブランドライセンスが売りに出され始めている。これまで国際ブランドライセンスを持っていた店の多くはライセンスフィー支払に困難をきたすようになっており、既に7ブランドが国内小売業界で売り物になっていると業界者が述べている。特に売上の低下に加えてライセンスオーナーが要求する高級ブランドイメージを生み出すためのハイコストに耐えられなくなったところが重荷を投げ出そうとしているようだ。
1個100万ルピア以上の高級品を買うのに躊躇しない高所得層は依然として買物のために香港やシンガポールに出かけるのを好むため、この階層は従来のように出費を続けているものの国内小売業界への恩恵はなく、かえって外貨流出を増やしているのが実態だ。世界の高級ブランドライセンスを70以上も一手に集めているPTミトラアディプルカサも苦しい状況に変わりはないようで、安く売りに出ているライセンスを買い取る動きを示していない。同社インベスターリレーション担当は、同社は毎年ブランドライセンスを増やしてきたがこの2009年は現状凍結の方針だと述べている。因みにPTミトラアディプルカサが保有している代表的なブランドは次の通り。
Calvin Klein, Chloe, Dorothy Perkins, Emporio Armani, Giorgio Armani, Kipling, Loewe, Lacoste, Max Mara, Merks & Spencer, Mexx, Massimo Dutti, Next, Nine West, Nautica, Oasis, Principles, Pull and Bear, Salvatore Ferragamo, Top Shop, Top Man, Tumi, Zara。


「商品の少ない場所へ行くのが究極の倹約法」(2009年4月15日)
経済危機で出費を引き締めなければならないインドネシア人はハイパーマーケットへの足を遠のかせることがその対策になっているようだ。5万種もの商品を取り揃え、割引の巨大表示やSPG(Sales Promotion Girl)の誘い声に目も耳もくらみ、ついつい棚の商品に手が伸びて必要以上のものを買ってしまいあとでほぞをかむ、という衝動をがまんできない破滅体質の自分を自覚しているにちがいない。 日用生活必需品54カテゴリーの購入をどこで行なっているかということに関するニールセンインドネシアの調査では、2008年11月にハイパーマーケットを利用した消費者は45%で1年前から2%低下した。一方、ミニマーケットやコンビニエンスストアの利用者は増加しており、消費者はより狭い店舗で陳列商品も限定されたところを選択する傾向を強めている。ミニマーケットでの訪問一回当たり平均支出金額は1万から2万ルピアの間で、明らかにハイパーマーケットでのショッピングとは異なる様相が浮かび上がってくる。ハイパーマーケットでの訪問一回当たり支出金額は2007年が108,150ルピアで、2008年は117,098ルピアに8%上昇した。これはインフレと買物量の増加によるものであるとニールセンインドネシアは説明している。
業界全体の売上については、2008年11ヶ月間の日用生活必需品54カテゴリー売上高上昇率はインドネシアが20.6%で中国の22.7%を追ってアジア太平洋地域で第二位のポジションを占めた。三位はインドの18.4%、更にシンガポール11.9%、マレーシア11.8%と続いている。インドネシアは2008年年間上昇率が21.1%で、2007年の15.2%を大きく凌駕した。


「LCDモニターのサイズ移行がこれから進む」(2009年4月16日)
2008年第4四半期コンピュータモニター販売は予想外の低調さだったとインターナショナルデータコーポレーション分析員が語った。インドネシア国内2008年第4四半期販売台数は291,828台であり、これは第3四半期より39%減で前年同期からは32%のダウンとなっている。過去3年間の実績とは逆転した2008年の状況について、コマーシャルプロジェクトの購入延期と個人消費者の買い控えの結果だと分析員は述べている。グローバル不況の影響で、ベンダーは市場での販売促進がたいした効果をもたらさないことを承知しており、それは第3四半期から繰り越されたストックがなかなか捌けてゆかない実態が雄弁に物語っている。市場セグメント別に見ると、コマーシャルマーケットは前四半期から35%ダウンし、個人消費者マーケットはもっと惨憺たる42%の低下であるとのこと。またコンピュータとセットで販売されるバンドリング販売は前四半期から26%低下し、バラ売りの非バンドリング販売は44%も落ちた。バンドリングのシェアは全体の35%で、非バンドリングは65%を占めている。
ところで急激にLCDタイプにシフトしつつあるモニターについては、2008年第4四半期のLCDシェアが77%でCRTタイプはわずか23%となった。2008年第3四半期のCRT型シェアは29%あったから、縮小具合は相当に激しい。第4四半期は総数で減少しているわけだが、モニタータイプ別を見るとCRT型が前四半期から52%も減り、LCD型は33%しか落ちていない。CRTのこの急激な縮小傾向からCRT型は年内に市場から姿を消すのではないかと見られており、早ければ今年半ばにはなくなるだろうという声もある。LCDタイプの売れ筋は以前として17インチ型で、4:3タイプとワイドスクリーンタイプがLCD全体の40%を占めている。一方19インチはこれから伸びるだろうと予測されており、LGとサムスンが17インチから18.5インチへの移行を価格差を小さくする方向で進めていることから、モニターの大型化はこれから進行するにちがいない、と同分析員は指摘している。


「嘘を言っているのはどっち?」(2009年4月23日)
2008年9月11日付けコンパス紙への投書"Kantong Plastik di Carrefour"から
拝啓、編集部殿。わたしは2008年8月28日、中央ジャカルタ市ドゥタメルリンのカルフルで大きい缶入りビスケットを3ダース買いました。従業員へのルバランプレゼント用で、かれらが帰省する際に持ち運びやすいよう、一缶にプラスチック袋一枚をつけてくれるようカルフル店員に頼んだところ、粗野な応対に直面する結果になりました。男性店員Cは「買物一個にプラスチック袋一枚をつけることはできません。」と言い、さらに、カルフルで買物をするな、とまで言ったのです。
道端のごろつきのような口を聞く店員はほんとうに大したものです。その店員はもっとすごいことに、わたしをにらみつけたうえ自分の身分証明書をつかんでわたしに突き出しながらわたしを挑発したのです。そんなことを言うところをみると、カルフルはもう客に来てもらいたくないのですね。カルフルはプラスチック袋の倹約をそんな方法で行なうのですか?わたしは自分が買ったものに対してプラスチック袋を要求したのであって、余分にくれと言ったわけではありません。カルフルは店員にお客への対応をそんな風に教育しているのですか?[ ジャカルタ在住、レニー・ステジョ ]
2008年10月9日付けコンパス紙に掲載されたカルフルからの回答
拝啓、編集部殿。レニー・ステジョさんからの2008年9月11日付けコンパス紙に掲載された投書についてお知らせします。カルフルのドゥタメルリン店はレニー・ステジョさんにお目にかかって説明しようと努めましたが、どうやら住所が不正確だったようで、コンタクトすることができませんでした。カルフルはお客様がお買上になった商品に対して、プラスチック袋とダンボール箱のいずれかを選択していただく方針を採用しています。その両方を差し上げることはできません。プラスチック袋にせよダンボール箱にせよ、差し上げるのはお買上の数量に応じたものです。この方針は、リサイクルのできないプラスチック袋の使用を減らそうというカルフルの環境への配慮についてのコミットメントの表れなのです。
当方従業員がお客様に申し上げた言葉について、その従業員から事情聴取を行ないました。当方従業員がお客様に対し「カルフルで買物をするな」とは一言も申し上げていないことを訂正させていただきます。[ PTカルフルインドネシア広報マネージャー、レタ・ドトゥロン ]


「国内産業界を潤した総選挙特需は14兆」(2009年4月24日)
総選挙特需で潤った飲食品製造・繊維衣料品・履物の三セクターは、総額14.55兆ルピアを享受した。この金額は前回2004年総選挙のときの2割増だが、5年間の物価上昇を考慮すればむしろ萎んでいる趣が強い。各業界団体が把握しているセクターごとの特需収入は、飲食品製造産業が7兆ルピアで2009年第1四半期の総売上高に対しては6%の貢献、繊維衣料品は6.35兆ルピアで35%の貢献、履物は1.2兆ルピアで18%の貢献となっているものの、飲食品の7兆は2008年第4四半期からの累計であるため実際の貢献度はもっと低い。
候補者はひとり当たり平均で衣料品を1千着購入した。立候補者は1万人いたから、その特需の凄まじさが目に見えるようだ。立候補者と政党は選挙キャンペーン用小物としてTシャツ・垂れ幕・旗・ポスターなどをばら撒いた。その中で数量が圧倒的に多かったのはTシャツと垂れ幕であり、この傾向が繊維衣料品市場を特に潤す結果をもたらした。
ひとが集まれば飲食品を供するのが礼儀になっているインドネシア文化では、キャンペーンで集まる人間に飲み食いさせるのは当たり前のことと見なされる。金品供与はマネーポリティックス行為として選挙違反に該当すると規定されていても、飲食品の供与をやめようとするものなどひとりもいない。ましてやそれが礼儀に反する行為であるなら、有権者が抱く候補者や政党への悪評はまず疑いないものとなるにちがいない。何しろ、金を含めてものをもらうのが大好きな国民性であってみれば、政治方針や公約のスピーチなどよりも金品供与のほうがはるかにキャンペーンの効果を高めるものであるのは明らかだ。おかげで飲食品産業界は総選挙特需で潤うわけで、この傾向は7月の大統領選挙が終わるまで継続間違いなし、と業界者は見ている。
総選挙特需は上のように国内産業を潤しているとはいえ、はたして支出された資金がすべて国内産業の手に入ったのかどうかという疑問はなくならない。言うまでもなく、不法輸入品を国内に入れてその特需の恩恵にあずかろうとする人間がいないはずがないからだ。インドネシア飲食品事業者連盟役員によれば、2009年3月から4月にかけて、北スマトラ州各地のパサルではマレーシア産や中国産でML番号が付いていない牛乳パック・ビスケット・キャンディ・スナック食品などが大量に流通しており、バタムやリアウでも不法輸入された飲食品が37種も発見されているとのこと。各種生活用品が市場で廉価な不法輸入品に蝕まれて国内製造業界が苦境に追い込まれているこれまでの実態を見るかぎり、不法輸入品商人たちが総選挙特需を指をくわえて見ているだけということは考えにくい。もし国内産業の潤いが前回よりも萎んでいるということであるなら、特需資金は不法輸入品をもっとたくさん潤していないとだれが断言できるだろうか?


「セブンイレブンはカキリマと勝負」(2009年4月28日)
セブンイレブンのインドネシア上陸はスムースに行きそうだとの観測が関係者の間でささやかれている。セブンイレブンとマスターフランチャイズ契約を結んだのはモデルングループのPT Modern PutraIndonesiaで、この会社はフジイメージプラザなどフジフィルム関連の事業を行ってきており全国に2千店のネットワークを擁している。同社は年内にセブンイレブン第一号店を南ジャカルタにオープンする計画で、その後はジャワ島内の諸都市に販売網を展開していく予定であるとのこと。
ところで、インドネシア既存のコンビニエンスストアは強敵との競争のおかげで販売網拡大の勢いがいまひとつ弱い、とニールセンインドネシアが報告した。ニールセンが言う既存コンビニは、Indomaret(全国3,093店)、Alfamart(全国2,736店)、Circle K(全国210店)、Yomart(全国162店)などを指している。YomartはYogyaスーパーマーケット系列のミニマーケットだが、ニールセンのカテゴリー区分ではコンビニエンスストアに入っている。それら有力ブランドの販売網拡大が、ニールセンによれば、遅いということなのだ。
ニールセンが分析したその問題の原因は、コンビニがカキリマ屋台、中でも街中のいたるところに店を出しているタバコ売り屋台と競合している点にあるとのことだ。コンビニが24時間営業なら、タバコ屋台も24時間やっているところが多く、タバコ屋台は何しろ店主があの小さな屋台に寝泊りしているというのだから、店主をたたき起こして数千ルピアの買物をすることだって不可能ではない。店舗を構えている商店にとって、タバコ屋台のそんなサービス性にはなかなか太刀打ちできるものではないだろう。エアコンのきいた店内の陳列棚の商品を吟味するような楽しみはタバコ屋台から望むべくもないのは確かだが、家から出てちょっと歩けばあちこちにタバコ屋台があり、ちょっとした日用品ならたいてい何でもそこで手に入る。この勝負、最後に笑う者はどっちなのだろうか?


「ランボルギーニの受注は好調」(2009年4月29日)
2009年2月に南ジャカルタ市チランダッ(Cilandak)にオープンしたランボルギーニの受注は、この不況下にもかかわらず好調だ。大金持ちたちは腐敗行為や悪事を犯しても法的措置から免疫であるように、不況にも免疫であるかのようだ。どうやら好況不況という波にもてあそばれるのは中級経済階層だけなのかもしれない。
ムルシエラゴLP640はオフザロード価格が79万8千米ドル、ガヤルドLP560は56万8千米ドルという価格で、購入者はその価格に上乗せして75%の奢侈品税や巨額の名義変更料を負担しなければならない。そんな目の玉の飛び出しそうな価格にもかかわらず、ランボルギーニのインドネシア独占代理店PTランボルギーニジャカルタの2009年販売目標である毎月1台はオーバー気味で推移している、と代理店マネージャーが語った。2009年4月で受注は3台を超えたというのだ。状況がうまく進めば年間20台という可能性も視野に入ってきた、とかれは言う。
イタリーのランボルギーニ本社は世界の販売代理店に対して割当システムを適用しており、今年目標以上の受注をしてもオーバー分の生産は来年になるため来年のターゲットを増やす形で対応しなければならない。超高級価格商品がたくさん売れる驚異の国、インドネシア。


「7割引激安セールはまだ続く」(2009年5月18日)
今回のクライシスは1998年のものと様相が違う。98年クライシスは大企業を打ちのめしたが、一般国民は輸出が継続したために金回りが悪化せず、ましてやルピアレートが大きく変動したとはいえ国民購買力の低下は大して起こらなかった。しかし今回は国民購買力が顕著に悪化したことから、ほとんどの小売業者は事業の維持に腐心することになった。特に売上ダウンがキャッシュフローに大打撃を与えており、各店は資金繰りの維持に頭を痛める毎日だ。
そんな中でデパートメントストアに売場を持つテナント小売業者は、ただでさえ店内デコレーションを百貨店運営者の意思に反してレベルダウンさせるわけに行かず、固定経費負担はかなりの金額にのぼっている。家賃・従業員賃金・電気代等の固定費は売上の30%を占めるそうだ。そんな事情からか、デパートでの7割引販売が頻繁に行なわれている。購買力の落ち込んだ消費者を誘店して商品を買ってもらうために、損失は承知の上で資金回転だけはなんとしても止まらないようにし、店の維持存続を図っていくという背水の陣の中にかれらはいるわけだ。
これまでのところ、7割引セールはまだ日を限って行なわれているものの、そのような大型割引の日が増加していけば小売業界が破滅の淵に至るのは確実だ、とインドネシア小売事業者協会会長は語る。「平常価格から20%以上のディスカウントを与える状況になると、店は健全な小売ビジネスから脱落してしまう。店を維持するための総コストがカバーできなくなってしまうからだ。」
しかしクライシスを生き延びるためには現実の泥にまみれなければならないにちがいない。7割引激安販売はまだまだ続きそうだ。


「デパートの衣料品大安売りはテナントのせい!?」(2009年5月19日)
自己ブランドの店を持つ一方でデパートにも納品している衣料品販売業者はデパートに対してアンフェアな販売方針を取っている、とインドネシア小売業者協会顧問会役員が表明した。「デパートは小規模小売店にかきまわされている。特に自分の店で商品を販売しているサプライヤーのデパート対策は不当だ。売れ筋商品は自店で販売し、デパートに持ってくるのは売りにくいものや売れない商品だ。そのようなやり方で消費者を自店に誘致するから、デパートは大幅値引きで客寄せしなければならない。そのような影響を最も蒙っているのは中流所得層を対象にするデパートで、割引セールは60%、70%、果ては80%。こんなビジネスは明らかに不健全だ。」
しかし衣料品アクセサリーサプライヤー協会会長はそんな批難を否定する。デパートの客層や自店での販売方針に応じて販売商品を振り分けているのだとかれは言う。「同じブランドの商品を買う場合でも、デパートとブランド店に来る客層は異なっている。ブランド店にやってくるのは若者層であり、店側としてはアッパーミドル層の誘店を狙っている。自分の店は売場面積が70〜120平米あるがデパートは10〜30平米程度で、使えるスペースが全然ちがう。自分の店は陳列商品も充実できるがデパートはスペース面で難しく、加えてデパート運営者の意向がいろいろ入るため自由度が低い。陳列商品も3ヶ月未満で入替えなければならない。自己ブランドを持つ販売者は専門店を持つことでブランドの強化をはかることができる。デパートやモールはブランド力の強い商品を置こうとする傾向を持っているため、必然的にそのような現象が起こる。これは一種の循環現象だ。」
ショッピングセンター運営者協会会長はブランド衣料品販売店の増加が顕著になっている、と語る。政府の衣料品輸入規制方針の影響で輸入品が減り、衣料品生産者が国産ブランドの生産を再開しているようで、国産品販売店を開こうとしてモールに賃貸を申込みに来る販売者が増加している。衣料品販売店はモール内売場面積の60%に達する勢いであるとのこと。


「小売店の取扱い商品が減少」(2009年5月20日)
購買力が低下すれば、人間は持っている資金をまず飲食品の確保に当てようとする。その原則に従ってモダン小売業界に出現している現象は、飲食品陳列棚の増加であり、非飲食品のスペース縮小だ。その影響を蒙ったのは非飲食品生産流通業界で、小売店が取扱い商品レンジを狭めたことから売れ筋ブランド以外は店内に見当たらないという傾向へと進んだ。客にとっても商品選択の幅が狭まったことをそれは意味している。
ならば飲食品産業は大盛況になったのかというと、そうでもない。まず売上総額のダウンで店側は資金繰りが厳しくなった。ハイパー・スーパー・ミニの三モダンマーケットはサプライヤーからの買取が8割を占め、デパートメントストアのようにサプライヤーの委託販売が8割という業態とは大いに違う。おまけに支払期日は納品から30〜45日が普通であり、商品の回転スピードが切実な問題になっている。ましてや昨今、市中金利率の引下げが鳴り物入りで囃されているというのに銀行界の金利率低下は牛歩に近いありさまであるため、借入資本比率が70%というのが普通のモダン小売業界にとって金利負担も軽いものではない。そんな背景から店側は在庫回転の速い商品への強い傾斜をなりふり構わず行なっているのが実態だ。
そんな場では、従来から巨額の広告宣伝費をかけてメディア広告を行なってきた大手企業の製品が知名度という点でたいへん有利になる。知名度の低いブランドは商品を店に置いてもらうところで不利になり、モダン小売店で取り扱ってもらえるかどうかの瀬戸際に追い詰められている。ましてや小規模生産者の中には食品薬品監督庁が市場流通の必須条件のひとつと定めている消費/賞味期限日の表示を忘れるところも少なくなく、同庁が継続して行っている市場調査で摘発されれば店側は損失を蒙ることになる。そんなリスクを背負ってまで知名度の低い小規模生産者の商品を置こうとする小売店があるとは思えない。
飲食品事業者連盟会長によれば、食品カテゴリー中の売れ筋商品は即席麺・ビスケットとウエファス・チョコレート・小袋入りコーヒー等であり、それらの商品は著名ブランドに絞ってバリエーションを厚くしているものの、知名度の低いブランドはその中に入っていけないという現象を呈しているとのこと。一方、ニールセンインドネシアが公表した最近の小売市場で売上を伸ばしている商品カテゴリーのトップ5位は次のようになっている。
モダンマーケット
1)使い捨ておむつ
2)コーヒー
3)スナック菓子
4)料理油
5)液体ミルク
在来マーケット
1)使い捨ておむつ
2)食器用液体洗剤
3)シリアル
4)料理油
5)コーヒー


「肉や魚を買うのはパサルで」(2009年5月21日)
ニールセンインドネシアの2008年調査によれば、国民の過半数は食肉の購入をウエットマーケットで行なっている。ウエットマーケット(pasar basah)というのは精肉・鮮魚・生鮮野菜などいわゆる生ものが売られている市場で、床がいつも水で濡れていることからその名がつけられている。ちなみにインドネシアで設計されるモダン家屋の中にはウエットキッチン(dapur basah)とドライキッチン(dapur kering)というふたつの台所を持つ様式のものがあり、先進国の家屋で通常見られる台所はドライキッチンに該当する。肉や魚をさばいたり、においの強いスパイスやトラシ(蝦醤)などを処理するのはウエットキッチンで、ウエットキッチンは女中が活躍する場であり、ドライキッチンはその家の奥方が来客の前でポーズを取る場所だ。さらに浴室やトイレでも床を濡らさないタイプのものはドライ、マンディ場のように床をびしょびしょにするものはウエットと呼び分けるひとがいる。kamar mandi keringやkamar mandi basahなどという表現をはじめて耳にするひとはきっと面食らうにちがいない。さて、食肉購入場所に関するニールセン調査の結果は次のようになっていた。
ウエットマーケット 62%
伝統型商店 13%
ハイパーマーケット 11%
野菜売り屋台 8%
スーパーマーケット 5%
ミニマーケット 1%
野菜売り屋台はさまざまな食材を屋台に積んで住宅地を巡回する物売り業のひとつで、たいていは「サユール、サユール!(sayur=野菜)」と叫びながら回るのでtukang sayurとも呼ばれているが、屋台には野菜をメインにしながらも魚や肉、卵に豆腐やテンペなど幅広い食材が載せられているから、家庭の主婦の中には毎日野菜売り屋台で食材を調達し、滅多に外へ買物に出ないひともいる。
では魚を買うのはどうだろうか?魚については次の通り。
ウエットマーケット 53%
伝統型商店 17%
ハイパーマーケット 7%
野菜売り屋台 20%
スーパーマーケット 2%
魚を野菜売り屋台で買う人は肉を買う人の2倍以上だ。モダンマーケットの利用率は肉に比べて半減しているが、それでもハイパーマーケット利用者は2007年の6%から上昇した。ウエットマーケットで魚を買う人は2006年の61%から大きく減少している。


「ハイパーマーケットは中世の領主様」(2009年5月22日)
「モール運営者はハイパーマーケットがアンカーテナントとして入居してくれることで集客に大きなメリットを受けることを知っている。だからハイパーマーケット様様であり、かれらに最優遇措置を与えているのが普通だ。ところがかれらはその強い立場をいいことに、何を約束してあろうが自分の利益になると思えばあっさりと踏みにじる。まるで周囲の者たちはみんな自分にひれ伏して当たり前という中世の領主様そのままだ。」インドネシアショッピングセンター運営者協会会長はそう語る。かれが言うハイパーマーケットはカルフル(Carrefour)、ジャイアン(Giant)、ハイパーマート(Hypermart)などの超大規模小売業者を指している。
モール側はハイパーマーケットとの入居契約に際して占有面積の5%を第三者に又貸ししてよいとの許可を与えるのが一般的だが、現実にハイパーマーケットが第三者に又貸ししている面積は20%にのぼり、しかも自分がモールに支払っている賃貸料の10倍で又貸ししているありさまだ。又貸しの対象で多いのは、靴修理業、スペアキー作製業、靴バッグ販売業、家庭用品販売業、運動保健器具販売業、電話付属品販売業、海賊版ディスク販売業、飲食品販売業、簡易レストランといったところ。アンカーテナントに対する賃貸料は平米当たりひと月11米ドルというのが10年前の相場だったが、その料金を適用できるモールは既になくなっており今では平米当たりひと月5万ルピアがいいところだそうだ。そしてそこまでダウンした賃貸料の10倍をかれらは又貸し先から徴収している。
一般的に、ハイパーマーケットから売場フロアの又貸しを受けている第三者はモール側がテナントにふさわしくないとして入居を拒んだ店がほとんどで、店の装飾やレイアウトがモールのランクにそぐわない、モール内に同種の販売店が多すぎる、法制度上で問題があるといった店が、ハイパーマーケットが用意するスペースを利用してモール内で営業している。
カルフルをはじめとする超大規模小売業者がその強い立場を背景にして商品サプライヤーにまるで搾取とも見えるような重い販売条件を課し、それがここ数年来国内流通ビジネス分野に波紋と軋轢をもたらしている。モール運営者もそんな商品サプライヤーと大同小異であり、ビジネス上の命運はハイパーマーケットにがっちりと握られている。この原因のひとつにハイパーマーケット業界の寡占体制がもたらしている要因があるのは疑いようのないものであり、ハイパーマーケット業界内部でビジネス競争が高まることは今かれらが示している異常なパワーを和らげる効果を周辺関連産業にもたらすはずである。だから政府は大規模モダン小売業に対する諸規制を緩和して、ハイパーマーケット産業にもっと盛んな競争原理が働くようにしてほしい。インドネシアショッピングセンター運営者協会会長はそう政府に要望している。


「消費者の買物減らしが進行」(2009年5月25日)
2009年第1四半期の国内小売産業売上は対前年同期比8.1%の上昇を示したものの、日常生活必需品54品目の販売数量は16.4%も低下した。ニールセンインドネシアの調査では、回答者の72%が買物に不適切な時節だと述べており、大勢が支出をしぼって貯蓄に回しているようだ。販売量が低下した商品の筆頭は料理油で16.4%、他にも浴用石鹸10.6%、ビスケット9.6%、即席麺9.1%、洗濯洗剤3%、練乳1.4%と軒並み低下している。


「アンドレ・ヴァレンティノ」(2009年5月27日)
国産高級靴Andre Valentinoがアウトレットを拡大している。アンドレ・ヴァレンティノ生産者PT Cipta Sumber Sejahteraは自社アウトレットを2010年までに3店増やして合計11店にする考え。同社は現在ジャカルタ・バンドン・スマラン・スラバヤ・バリッパパンなど国内諸都市に8店を構えており、また西武・メトロ・そごう・デベンハムズなど高級デパートにも18ヶ所の売場を設けている。新規オープン予定の3店はジャカルタが2店でバリッパパンに1店とのこと。
同社はこれまでもバリ・マラン・ジョクジャ・マカッサル・マナド・プカンバルに開店したが、市場が期待していたものと異なっていたために店を閉めた。国内高級靴市場はたいへん競争が激しく、デパートの履物売場では国内外の30ブランドと競合しているとのこと。しかし同社製品は人気が高く、どのデパートでもトップ5ブランドの中に入っているそうだ。
同社はアンドレ・ヴァレンティノブランド以外に、ミドルクラス向けの靴Studio One、ライセンス生産で婦人靴Elleや子供靴Lego、また男性下着グンゼを生産しており、いまはサンリオ子供靴のライセンス生産を検討しているとのこと。


「一回の買物にクレジットカードを二枚要求される」(2009年5月27日)
2008年10月16日付けコンパス紙への投書"Waspadai Kartu Ditolak di Carrefour"から
拝啓、編集部殿。2008年10月4日日曜日正午頃、わたしは南ジャカルタ市ルバッブルス(Lebak Bulus)のカルフルで953,144ルピアの買物代金支払にカルフルBCAカードを使おうとしました。カードを読取器に通して買物金額を打ち込んだレジ係は、カルフルカードがリジェクトされたので別のカードを使うようわたしに求めました。ただそう言うだけで詳しい説明はなにもありません。レジの順番を待ってわたしの後ろに並んでいるひとたちを気にしたわたしは、仕方なく別のクレジットカードを出してレジ係に渡しました。
恥ずかしいし気にもかかったので、わたしはカルフルルバッブルス店建物内のカルフルBCAカード支払カウンターを訪れました。カウンター職員がハローBCAに電話して調べてくれたところ、さっきのカルフルBCAクレジットカードによる953,144ルピアの決済は成立していたことがわかりました。これはつまり、一回の買物に対して支払が二度なされたことを意味しています。
かなり長時間のプロセスで待たされてから、カルフル担当者はカルフルBCAカードの決済処理が『引っかかった』のだと言い、ふたつの決済のうちのひとつは取り消すことができると表明しました。カルフルBCAカードカウンター職員は、わたしが今回体験したようなことはよく起こっていると言っていました。もしわたしがレジ係を信用してそのまま帰宅し、翌月のクレジットカード請求書のチェックをおろそかにしたら、カルフルで行った一回の買物にわたしは確実にダブルで支払を行なう結果になっていたでしょう。読者のみなさん、「クレジットカードがリジェクトされた」とカルフルのレジ係が言ったら警戒しましょう。[ タングラン在住、トゥティ・ヌルハン ]
2008年11月4日付けコンパス紙に掲載されたカルフルからの回答
拝啓、編集部殿。トゥティ・ヌルハンさんからの2008年10月16日付けコンパス紙に掲載された投書について、次の通り説明致します。カルフル・ルバッブルス店はその問題のフォローアップのためにトゥティさんにお会いしました。問題になっている支払金は実際にはまだ決済されておらず、その日の決済プロセスが完了すればデビットされた金額は自動的に戻されます。不快な体験をなさったことについて、たいへん申し訳なく思っております。[ カルフルインドネシア広報マネージャー、レタ・ドトゥロン ]


「家電品小売業界の近況」(2009年6月4日)
総合家電品大型販売店が割引攻勢をかけているため在来型家電品販売店3千店が店をたたんだ。残っているのは2千店ほどしかない。「市場での競争が激しくなっており、値引き合戦が多くの在来型家電品販売店の息の根を止めた。小売業界はいまや5百万ルピアで仕入れた商品から5万ルピアの利益が上がればいいというビジネス方式に変わってきているようだ。広くネットワークを張って大量に販売するモダン大型販売店がまだほとんどいなかった時代に在来型販売店の利益率は10%あったが、いまでは1%の利益率で生き延びなければならなくなっている。結果的に在来型販売店は高い固定費をまかなうことができずに自転車操業に向かい、挙句の果ては倒産だ。このような状況の変化は5年くらい前からはじまり、去年のグローバル経済危機でピークに達した。通貨が暴落した国からの正規外ルートによる不法輸入品が市場を破壊して在来型販売店は大きな打撃を受けた。在来型家電品販売店はほとんどが公認ディストリビュータから卸を受けている。」国内の大手家電品流通業者シナルエレクトロニック社上級マネージャーはそう語っている。
シナルエレクトロニック社はかつて2千5百の在来型販売店と取引を行なっていたが、過去5年間でその数は1千店に減少した。そのため同社は自力で小売販売事業に乗り出し、セミ在来型店舗をオープンしている。かれは今起こっている値引き合戦を不健全ビジネスだと見ており、多数の在来型販売店が閉業を余儀なくされている事態を政府は放置するべきでなく、最低価格を定めるなどの保護政策を展開して国民系小売業界を保護するべきだと主張している。かれはパナソニックがモダン大型販売店より低い卸価格で在来型販売店を優遇してそのサバイバルを助けていることに触れ、業界の手本とされるべきだとコメントしている。家電品小売市場におけるモダン総合大型販売店としては、Best Denki、Electronic Solution、Electronic City、Raja Electronic Superstoreの四社があり、かれによればそれらの店は大割引の広告を出して客寄せするものの来店客にはもっと高い金額の商品を買わせようと誘導に努めるのだそうだ。驚異的な安売り価格を広告で示しておきながらそれを目当てに来店した客にその商品を売ろうとせず別の商品を買わせようとする商法が行なわれている一方で、消費者はその広告を持って在来型販売店にもやってくる。消費者の勢いに押されて在来型販売店は同一商品を出血価格で売らざるをえないケースも起ころうというものだ。
在来型販売店の閉業は資金力の弱さに由来しているのではないかとの質問に同マネージャーは、流通会社は2〜4週間の支払猶予を販売店に与えているので、単価1千万ルピアの商品を仕入れることは決して販売店に負担をもたらすものでなく、最大のガンは値引き合戦にある、と語っている。


「これから中古車価格はアップする」(2009年6月23日)
2004年発売当時1台8千万ルピアだったアバンザがいまでは中古車価格1億5百万ルピアになっている。2009年5月1日のアバンザ新車価格は、当然昔のものとは別仕様だが、1億3,210万〜1億6,840万ルピアだ。つまりアバンザの中古車はハイデマンドであるため新車に近い線で価格が維持されており、中古車価格の暴落を食い止める役割をはたしているのである。首都圏最大の中古車ディーラーであるMobil88の月間販売数500〜650台中27%がアバンザで占められていることがそれを裏書している、とモビル88のジェネラルマネージャーが語った。モビル88はアストラグループの中古車取扱い会社だ。
経済危機がもたらしたルピアレート安のために輸入コンテンツの大きい国産製造品は小刻みな為替調整が小売価格に反映されてきた。自動車製造業界もその例に漏れない。新車価格が上がれば同一車種の中古車も相場の上昇傾向に見舞われる。それは、新車を買いたかった層の一部が中古車に方向転換するために中古車需要を高めて価格相場に影響を及ぼすということもあるし、品物の価値の金額評価が日本に比べてはるかに相対的流動的な文化に根ざした総体的な自動車価格のレベルアップという要素も影響を与えている。国内中古車市場価格相場は今年最初の4ヶ月間で10%上昇した。
今年6〜7月には収穫期と大統領選挙のおかげで国民の金回りが向上するものと期待されており、中古車需要のアップはまちがいない、とモビル88のジェネラルマネージャーは語っている。つまり中古車の値上がりする季節が目の前に来ているのだ。


「百貨店化するハイパーマーケット」(2009年6月30日)
消費者が広大な売場でワンストップショッピングを求める傾向を強めていることから、ハイパーマーケットは販売商品レンジをますます拡大させて百貨店の立場を一層苦しいものにしている。その現象は化粧品トイレタリーセクターで最近顕著になっており、インドネシア化粧品産業組合理事長は次のように状況を指摘した。「消費者がハイパーマーケットで化粧品を買い求める傾向が強まった結果、多くのサプライヤーは百貨店からハイパーマーケットにビジネスをシフトさせている。百貨店でのビジネスは減少し、ハイパーでのビジネスが盛んになった。百貨店で販売されていた商品の85〜90%は既にハイパーで販売されている。ハイパーはいまや衣料品から下着類、アクセサリーから化粧品まで販売するようになり、極端な言い方をすれば消費者は輸入衣料品・アクセサリー・化粧品など希少な商品を探す場合に限って百貨店を訪れるようになっている。」
ハイパーの集客力のほうが百貨店より優れているため、サプライヤーには強い百貨店だけを相手にする傾向が生じている。百貨店は1ブランド当たり2〜4人の販売員人件費負担をサプライヤーに求めるため、サプライヤーは販売員ひとりひと月100万ルピア前後の経費負担を抱えなければならない。その経費をカバーできるだけの売上があがらなければ、百貨店に商品を置く意味がなくなる。百貨店のほうがそれだけ利益を蝕まれる体質を持っているということだ。
衣料品アクセサリーサプライヤー協会会長によれば、百貨店サプライヤーは月間売上の20%程度を販売員人件費にあてているとのこと。だから月間売上が2千万ルピアを下回るデパートでの営業は効率面から大いに疑問視されることになる。サプライヤーにとってはどのデパートに商品を納めるかというのが重大問題であり、売上が不十分ならそこをやめて他に移るほうがマシだと考える。
インドネシア最大の百貨店チェーンを誇るPTマタハリプトラプリマ社副社長は、インドネシア女性消費者の70〜75%はデパートが豊富に用意する衣料品・アクセサリーのショッピングを好む、と語る。「ハイパーマーケットはいまやワンストップショッピング場所として一世を風靡しているものの、百貨店の用意する商品に対する需要はライフスタイルによって維持され続ける。」
ところがマースインドネシアの調査によれば、消費者がハイパーマーケットに買物に来る目的商品のトップは衣料品であり、日常生活必需品はその後塵を拝しているという結果が出ている。しかし実はハイパーマーケットを消費者が訪れる目的のナンバーワンはジャランジャラン(jalan-jalan)つまりぶらぶらとうろつきに行くというものであり、第2位が衣料品購入、第3位が日用品購入というのが消費者のハイパーマーケット利用目的順位ということである。


「ジャカルタの金回りの良さはここにも」(2009年6月30日)
月々の家庭支出金額に関する調査結果をマースインドネシアが公表した。国内主要都市で今年行なわれた家庭支出金額についての調査結果によれば、平均金額の最高は言うまでもなくジャカルタで300万9千ルピアとなっている。都市別平均金額の高い順に並べると、次のようになる。
ジャカルタ 300.9万ルピア
バンドン 236.6万ルピア
マカッサル 221.6万ルピア
メダン 215.6万ルピア
スラバヤ 204.3万ルピア
バリッパパン 198.3万ルピア
パレンバン 189.5万ルピア
スマラン 188.6万ルピア
全国平均は246.8万ルピアでその線はジャカルタとバンドンの間にあり、ジャカルタの金回りのよさを裏書している。また家庭支出金額は月収と近いと考えられることから、各都市のミドルクラスが毎月得ている月収を推測することも可能だ。


「中古車の売行き好調」(2009年7月9日)
中古車販売が活況を呈している。例年、年央の学年末休みシーズンは消費者が資金を行楽と新学期の教育費に回すために自動車をはじめ耐久消費財の販売は低下するというのが一般的なパターンになっているが、今年6月の中古車販売は5月から2割増しの実績が上がっていることを業界者が明らかにした。
アストラインターナショナルの中古車事業子会社であるモビル88の南ジャカルタ店は5月販売台数が563台だったが6月には750台に達しており、また全国各地の販売状況も好況が報告されているとのこと。この勢いはルバランに向けて持続しそうだと同店責任者は述べている。通常のパターンによればルバランのピークに向けてラマダン月に販売増が進展するというものであるため7月から右肩上がりが顕著になりはじめるのだが、今年は6月から早くもそのカーブがはじまっている。
人気車種はアバンザ・イノバ・ゼニアの三つで、その三種だけで65%のシェアを占めており、残りはさまざまなセダンタイプとなっている。価格は5月以来安定しているが、これからの需要期に需給バランスが崩れると値上がりする車種が出る可能性は高い。モビル88南ジャカルタ店販売責任者はそう語っている。


「インドネシア人の買物は近所のワルンで」(2009年7月10日)
モダンマーケットの旺盛な集客力とは裏腹に、国民は買物のためにせっせと在来型商店を訪れていることをニールセンインドネシアが明らかにした。2008年国内小売セクター総売上高は94.56兆ルピアであり、そのうちの60.4兆ルピアは在来型小売店のシェアになっている。現実に過去5年間でいわゆるワルンと呼ばれる在来型雑貨品小売店の数は著しい伸びを見せており、いまや在来型商店は2百万軒に迫る勢いであるとのこと。
そんな状況を支えているのが消費者のビヘイビヤで、インドネシアの消費者はほとんど毎日在来型商店を訪れていることをニールセンインドネシアが報告した。アジア太平洋諸国の消費者が月間に在来型商店を訪れる回数を示したものがこれだ。
インドネシア 25.4回
フィリピン 23.9回
タイ 19.4回
スリランカ 11.9回
マレーシア 10.5回
ベトナム 9.7回
韓国 6.8回
インド 5.8回
中国 5.1回
シンガポール 5.0回
香港 4.8回
台湾 3.5回


「割引セール詐欺まがい商法を取り締まれ」(2009年7月13日)
『ビッグセール7割引!』という広告につられて買物に来てみたものの、広告の品などどこを探しても見当たらず、結局2割引という類似商品を買って帰って騙された気分になる消費者は少なくない。そんな悪徳商法を政府は厳重に取り締まれ、とインドネシア消費者保護財団が要請した。割引販売に関する詐欺まがい商法について同財団役員は、通常行なわれている手口には次のようなものがある、と紹介した。
1)大型割引を行なう商品の平常価格を引上げておき、そこから7割引という割引価格を表示する。これだと実質7割引にならない。
2)広告されている商品が売られていない。
3)7割引と表示されたワゴンに割引率の小さい商品を混ぜておく。消費者はレジでそれに気付き、期待したより高い金額を仕方なく支払うことになる。
そのような悪徳商店に対して政府商業省は、シンガポールやマレーシアで行われているような取り締まり措置を行なえ、とインドネシア消費者財団が要請している。
ところでインドネシアの消費者は割引セールに目がなく、特に高級ブランド品のセールには一も二もなく飛びつくというビヘイビアが一般的らしい。マースインドネシアの2009年調査によれば、消費者が割引セールに押しかけて買物をする動機について、次のような理由があがっている。圧倒的にトップを占めたのは『割引だから』の70.8%。第二位は『まだその商品を買ったことがない』で23.1%、残る6.1%のひとは『割引があろうがなかろうが、買うものは買う』というものだそうだ。


「農村部で買物減らし」(2009年8月4日)
ニールセンインドネシアの調査報告によれば、2009年第1四半期消費者の買物品数と支出金額の変動は農村部で減少傾向を示した。商店を訪れた際の買物金額と品数について、一回当たりの平均データは都市部と農村部で次のようにちがっている。
都市部 (金額 / 品数) 
モダン小売店  9.3%↑ / 4.5%↑
伝統型マーケット  7.8%↑ / 2.2%↑
伝統型商店/ワルン  8.0%↑ / 1.6%↑
農村部 (金額 / 品数)
モダン小売店  4.1%↑ / 1.9%↓
伝統型マーケット  0.7%↓ / 2.4%↓
伝統型商店/ワルン  6.1%↑ / 0%
この変化は物価の値上がりと消費者の支出節減を反映するものだ、とニールセンインドネシアは解説している。


「豚フルのおかげで保存のきく食品がバカ売れ」(2009年8月12日)
毎年6月7月は消費者の新学期支出負担が上昇するため、モダンマーケットでは学用品を除く他のカテゴリーの販売がローシーズンを迎える。ところが今年はプアサとルバランを前にしたこの時期の飲食品販売が顕著な増加を示している。
2009年のモダンマーケット売上は対前年比で3割ダウンを示していたが7月後半から飲食品販売が急上昇を始め、プアサ期の売上増なら今年は8月半ばに起こるはずなのに時ならぬこのバカ売れ現象はいったい何が原因なのかと市場関係者の首をひねらせていた。理由はともあれ、店側は販売急増対応として商品ストックを増やすという反応を示し、サプライヤーの中には突然オーダーが70%増しの量に跳ね上がった、とうれしい悲鳴を上げているところもある。大規模商店では配送トラックが長蛇の列を作り、遅れてきたトラックはその日納入が出来ずに翌日出直すという状況も発生している。
この突然の販売増の原因をインドネシアモダンマーケットサプライヤー事業者協会が豚フルの影響だと分析した。新学期の時期には公務員に新学期手当が支給されるため、一部国民の購買力はアップするが、それが今起こっている現象のように大規模に飲食品に支出が振り向けられることの原因とは考えにくい。では原因は何かというと、大多数国民が豚フルの伝染を怖れてできる限り外出しないよう努めており、家庭内で飲食品の備蓄を高めて外出を減らすような対策を取っているからだ、と協会会長は言う。プアサとルバラン期の需要高騰はイドゥルフィトリの1ヶ月前に起こるものであるため、この時期はずれの販売増をムスリム国民最大の祝祭に関連付けるのも的外れだそうだ。特に販売が急増したのは長期保存のきく魚や鶏肉の缶詰および即席麺だから、協会会長の分析は的を射ているにちがない。インドネシア小売事業者協会役員のひとりは、2009年7月中旬以降の販売増は今年1月〜5月の販売状況から30%もアップしているとのこと。
国内の豚フル陽性罹患者は7月29日時点で累計444人にのぼっており、バリ・バンテン・ジョクジャ・ジャカルタ・西ジャワ・中部ジャワ・東ジャワ・南カリマンタン・リアウ島嶼・北スラウェシ・南スマトラ・北スマトラ・東カリマンタン・南スラウェシ・ジャンビの15州で罹患者が報告されている。


「カルフルがメガモールプルイッから撤退」(2009年8月14日)
北ジャカルタ市のメガモールプルイッ(Mega Mall Pluit)に入居しているカルフルが2009年8月2日23時に閉業してモール運営者に店を明け渡した。メガモールプルイッ運営者のPTドゥタウィサタロカは2009年7月1日にカルフルを法規違反で北ジャカルタ地裁に告訴しており、その判決が下る前にモール運営者がテナントに売場明け渡しを命じる形となった。
ドゥタウィサタロカの告訴内容は、小売業の規定を行なった2002年都条例第2号と2007年大統領規則第112号に定められている売り場面積やトラディショナル市場からの距離にカルフルメガモールプルイッ店が違反しているというもので、最寄のムアラカラン市場からは2.5キロ以上離れておらず、売り場面積も8千平米を超えているというのが原告側の主張。その事実はこれまでも地元の小零細小売販売者がカルフルメガモールプルイッ店に対して撤退を求める動きを煽ってきており、何度もデモが繰り返されている。
カルフル側はこの事態について、「誘導的になってきた投資環境を維持推進するための法確定がこの国に存在していないことをこの事件は明白に証明する実例のひとつだ。都庁は早急にこの問題の解決に乗り出してほしい。」と表明している。一方、都庁通商中小零細事業局長は「あれはただの内部問題だ。大規模モダンマーケットに対しては法規を関係両者間の契約条件に合わせて適用するようにしており、都庁に仲裁が求められれば問題解決のお手伝いをするのに吝かでない。」とコメントしている。
メガモールプルイッは都有不動産デベロッパーPTジャカルタプロペルティンドがドゥタウィサタロカと組んで建設したもので、1997年から30年間の運営権が与えられている。カルフルは1998年から20年間の入居契約を運営者と結んでいる。


「Heroは死なず」(2009年8月15日)
1971年創業という古い歴史を持つスーパーマーケット業界の老舗「ヘロー(Hero)」はここ数年来起こっているハイパーマーケットとミニマーケットの隆盛に押されて販売網を縮小しているが、ヘロースーパーマーケットをなくしてしまうことは絶対無い、と同社マネージメントが表明した。かつて全国に100店を超える店数を擁したヘローは今年30前後まで減少する見込み。ヘロースーパーマーケットは対象消費者が整理されておらず、Aプラス(高所得層)からC・Dクラス(低所得層)まで店のロケーションによってさまざまに分かれており、ブランドポジショニングが不明瞭になっている。
2008年にヘロースーパーマーケットは24店をジャイアン(Giant)スーパーマーケットに転換して52店となり、2009年7月末ではそれが42店まで減った。PTへロースーパーマーケット社が擁しているモダン小売店販売網は2009年3月現在で次のようなラインナップになっている。
Giant Hypermarket / 28, Giant Supermarket / 55, Hero Supermarket / 51, Starmart Minimarket / 121, Guardian / 181
同社は顧客対象の不明確なヘロースーパーマーケットを低価格商品スーパーと性格付けたジャイアンスーパーマーケットに転換する方針を進めている。しかし同社のヘローとジャイアン二本立てというスーパーマーケット方針には、特に外国人在留者が求める商品をヘローが取り揃えてきた実績から見て、特定地域にあるヘローは従来のまま維持される必要があるという要素がからまっている。その分野におけるヘローのブランド力はたいへん強く、ヘローブランドを維持することで得られるメリットは大きい。
ハイパーとミニの隆盛で3年前に予測されたスーパーの死滅は杞憂であったことが今や明らかになっており、地方都市でもスーパーを訪れる消費者は十分な数が維持されている。


「クマンからアートギャラリーが移転」(2009年8月26日)
絵画彫刻などアートビジネスのメッカだった南ジャカルタ市クマン(Kemang)地区を多数のギャラリーが去ろうとしている。インドネシアアートギャラリー協会会長によれば、この分野でかつて一世を風靡したクマン地区は地代高騰・交通渋滞・地域整備の遅れなどの結果往時の名声が色あせてしまい、いまでは購買客が二の足を踏む訪問先と化しつつあるとのこと。加えて北ジャカルタ市クラパガディン(Kelapa Gading)や西ジャカルタ市クブンジュルッ(Kebun Jeruk)、中央ジャカルタ市グヌンサハリ(Gunung Sahari)などの新興アートビジネス地区が活況を呈しているためにクマン地区で開業していたアートギャラリーの多くが新たによりよい立地条件を求めてクマンを離れることをおよそ半年前に決めた。
かれらは中央ジャカルタ市ホテルインドネシア前ロータリーに面したモールグランドインドネシアを移転先に決め、2009年12月に同モール内でアートビジネス街をオープンすることにしている。当初は大規模なアートビジネス街を設ける構想でスタートしたものの、立地条件の優れたモールグランドインドネシアでは現在1千平米のスペースしか手当することができず、アートギャラリー側はとりあえず9軒が第一波としてグランドインドネシアに移転することになった。その9軒とは、Galeri Canna, Nadi Gallery, Edwin's Gallery, Puri Art Gallery, Semarang Gallery, Vanessa Art Link, Langgeng Gallery, Mon Decor Gallery, Andi's Gallery。
当初は9軒のギャラリーによるアートビジネス街として出発するが、鋭意機会をとらえてこのアートビジネス街を拡張して行く、とアートギャラリー協会会長は述べている。


「マタハリデパートが一番有名」(2009年8月26日)
消費者の間でもっとも知名度の高いデパートはマタハリである、とリサーチ機関フロンティアコンサルティンググループが報告した。フロンティアコンサルティンググループがジャカルタ・スラバヤ・バンドン・スマラン・メダン・マカッサルで150人を対象に行った調査では、半分近い消費者がマタハリデパートの知名度の高さをトップにあげた。これはマタハリの販売網が全国津々浦々まで広がっているためで、二位のそごうが特定都市でのみ開店していることとの違いが圧倒的なシェアの差となってあらわれている。明細は次の通り。
Matahari 48.4%
Sogo 11.5%
Ramayana 10.5%
Yogya 5.8%
Metro 4.3%
Centro 3.9%


「高所得層はハイパーマーケットがお好き」(2009年9月26日)
インドネシア人消費者のビヘイビアに関するマースインドネシアのサーベイ結果によれば、高所得層は日用生活必需品をモダン商店で月間250万超ルピア購入しているとのこと。高所得層は買物場所をもっぱらモダン商店にしており、中低所得層がトラディショナル商店をよく利用するのと好対照をなしている。モダン商店の中ではハイパーマーケットが高所得層のお好み買物サイトで、訪問頻度も高い。普通ハイパーマーケットは日用生活必需品が他より廉く買物できる場所と理解されているため、手持ち資金にあまりゆとりのない階層が利用者のメインを占めているように見られているが、インドネシアでそのロジックは成り立っていないようだ。
ハイパーマーケット訪問頻度を所得層別に見ると次のようになっている。
所得層 : 2週間に一回/1ヶ月に一回/1ヶ月に一回未満
A : 12.2 / 30.8 / 33.1
B : 8.5 / 23 / 38.5
C : 5.3 / 18.2 / 33.4
D&E : 2.8 / 11.6 / 26
数字はパーセンテージ


「インドマルッが販売網を積極拡大」(2009年9月30日)
ミニマーケットIndomaretのブランドオーナーであるPT Indomarco Prismatamaは2009年末の全国販売網目標を4千店と定めており、その目標達成のためにフランチャイズを主体にした新規販売ポイント設立に注力する構え。現在ジャワ・バリ・スマトラに13支社を持ち、全国に3,531店の販売網を擁するインドマルッは、目標達成に向けて今年中に469店を開設する必要があり、フランチャイズを主体にした新店舗開設のために従来の口コミ方式から一転してフランチャイズエキスポなどで積極的なフランチャイジー募集を図ることにしている。現有3,531店のうちでフランチャイズ店は1,533にのぼり、2009年末のロードマップでは4千店中の45%をフランチャイズ店が占める計画だ。フランチャイズ店はジャワ・バリ・マドゥラ・ランプン・メダンにあり、今後はパレンバンやマカッサルを募集の中心に据える作戦を立てている。
国民の消費行動の中で、日曜生活必需品の購入をミニマーケットで行なうスタイルの盛り上がりが顕著になっており、全国のインドマルッでは月間4千万件の販売が行なわれ、一件当たり平均販売金額は2万8千ルピアとなっている。
インドマルッがマンディリ銀行と提携して開始した前払いショッピングカードIndomaret Cardのトライアルは2008年11月にジャボデタベッ地区で実施され、そのときのカード所有者に対する一回当たりの販売平均金額は4万2千ルピアにのぼった。そのトライアルの統計データによれば、6万人のカード保有者が9万1千回の買物を行い、売上総額は50億ルピアに達した。現在インドマルッの愛顧者は7百万人おり、そのうちの7万人がインドマルッカードを持っている。インドマルッカードはマンディリ銀行との提携下に運営されているものだが、カード利用者は必ずしもマンディリ銀行に口座を持つ必要がなく、また残高補充もインドマルッの店でいつでも行なうことができる。補充金額は10万から100万ルピアとなっている。


「衣料品輸入者のビッグ10」(2009年10月2日)
商業大臣規則第56/M-DAG/PER/12/2008号で国内主力産業5品目に対する輸入規制が行なわれたことが不法輸入品の国内市場荒らしを低下させているとしてインドネシア繊維業協会は喜びを表明している。規制5品目の輸入が登録輸入者に制限されたことから、これまで正式に商業省に登録しないまま輸入活動を行っていた衣料品輸入者が登録を余儀なくされたため、規則施行前は160社しかなかった繊維衣料品登録輸入者が今では400社に増加した。
2009年1〜5月に輸入通関を行った登録輸入者は120社あり、その中でのビッグ10は次のような顔ぶれになっている。
Sarimode Fashindo Adiperkasa
Mitra Adiperkasa
Mitra Artha Raya
Mitra Selaras Sempurna
Nike Indonesia
Agung Putra Indonesia
Sukses Grahatika
Multitrend Indonesia
Levis Indonesia
Keris Gallery
1〜5月にその120社が輸入した衣料品の積出国は中国が最大シェアの38%を占め、次いでイギリス16%、香港15%、シンガポール12%となっている。5品目輸入規制条件の中には輸入通関を政府が定めた5港で行なわなければならないというものもあり、2008年にはその5港以外で行なわれた繊維衣料品輸入通関が全体の19%を占めた。政府が商業大臣規則を実施しはじめてからは、5港以外での輸入通関が消滅したかというとそうでもなく、いまだに8%が5港以外の港で輸入されている。とはいえそのパーセンテージの低下は目覚しいものがあり、商業大臣規則の実施で衣料品輸入はまともな姿に変わりつつあると繊維業協会は評価している。


「衣料品販売市場にハイパーマーケットが参入」(2009年10月5日)
ハイパーマーケットを訪れる消費者の購入品が日用生活必需品から衣料品へと移りつつあることをマースインドネシアが報告した。マースインドネシアの最新サーベイによれば、ハイパーマーケットを訪れる消費者の目的は次のようになっている。
物見遊山 19.2%
衣料品購入 18.7%
日用品購入 13.8%
この数字を見る限り、ハイパーマーケットはかつてのような日用品購入場所から衣料品購入場所へと変化しているようだ。消費者は一ヶ所であらゆる必要品を調達できるワンストップショッピングの便宜を求める傾向をますます強めており、ハイパーマーケットこそがその欲求を満たしてくれる場所であるという認識が強まっている、とマースインドネシア代表取締役は説明している。
しかし衣料品業界がその流れに同調しているわけでは決してない。ハイパーマーケットとの取引は実にさまざまな条件がつけられ、それらの条件が納入業者側の負担を増やすものであることから、ハイパーマーケットに商品を納入している業界者は決して多くない、と衣料品アクセサリーサプライヤー協会会長は述べている。「ハイパーマーケットは実にさまざまな取引条件をつけてくるので販売経費が跳ね上がる。サプライヤーのマージンはほんの少ししか残らない。ブランド衣料品はハイパーマーケットを避けるべきだ。上流中流モールで販売されているブランド品をハイパーマーケットに流しても得にはならない。ブランドイメージを維持するほうが得策だ。」
しかし現実問題として衣料品業界はハイパーマーケットでの衣料品販売増の風潮を軽視できないでおり、業界者の多くはいかにマージンの低下を避けてその販売ルートに乗るかという検討にかかっている。インドネシア小規模産業協同組合理事長は、ハイパーマーケットへのムスリム衣料品納入をやめた、と言う。「生産者は事業維持のために20%のマージンを必要としているが、ハイパーマーケットとの取引では15%がハイパー側に取られるために5%のマージンしか残らず、それでは事業が維持できない。おまけに委託販売方式なので支払は納入から2〜3ヶ月後になる。そのような事業を行うにはよほど強大な資本を持たなければならない。資本金が2億ルピアなら運転資金は4億ルピアを用意する必要がある。2億の資本金で製品を用意してもその回収が3ヵ月後なら、その間の原材料調達資金がなければ生産はストップしてしまう。これでは事業継続がむつかしい。」
ハイパーマーケットのひとつであるハイパーマートを傘下に持つマタハリデパートの企業広報担当副社長は、衣料品と飲食品は消費者の購入ビヘイビアが異なると言う。「飲食品購入者は空腹であればどのブランドの何をということをあまり強く要求せずに結局はどれかを買っていく。衣料品はどのブランドが自分の好みに合うのかということを消費者は徐々に確信して行く。中小企業の製品もそれぞれブランドがつけられているものの、まだ消費者のなじみは薄い。だから店側は買い取りがむつかしく、委託販売方式が使われている。」ハイパーマーケット側のリスク回避について同副社長はそう説明している。


「ビジネス謀略か?カルフルが窮地に」(2009年10月7日)
「カルフルがメガモールプルイッから撤退」(2009年08月14日)で報道されたカルフルの追い出し事件は裏に陰湿なビジネス競争がからんでいたようだ。カルフルが出た後の売場に競合ハイパーマーケットのひとつハイパーマートが入居するという話が飛び出してきた。よく似た話は南スマトラ州パレンバンでも起こっており、パレンバンスクエアで開業していたカルフルの後をハイパーマートが取って代わるというほとんど同じ筋立てが展開されている。最初カルフル反対デモを地元中小規模商人たちが行なってカルフル撤退の下地を醸成してから続いてカルフルの売場で停電が頻発するようになっていった手口はまったく同じものだったそうだ。
メガモールプルイッでのそんな進展のありさまにカルフル側はモール運営会社ドゥタウィサタロカの一方的な契約破棄を裁判所に告訴しており、またフランス最大手の小売販売業者であるカルフルが駐インドネシアフランス大使を動かしてインドネシア政府にこの問題をクレームするのも当然の成り行きだったようだ。一方リッポグループのメンバー会社であるドゥタウィサタロカは、カルフルが法令に違反しているためカルフルと結んだ賃貸契約は法的に無効になるので一方的な破棄に当たらないと主張している。メガモールプルイッにせよパレンバンスクエアにせよカルフルの賃貸契約は20年間で、プルイッは1999年から、パレンバンは2003年にカルフルの営業が開始された。
リッポグループの小売事業分野を担うマタハリプトラプリマ社が運営しているハイパーマートがカルフルとのビジネス競争で有利に立とうとして画策しているのがそのカルフル追い出し作戦であるとカルフル側は見ており、他にもリッポグループのモール運営会社が5ヶ所でカルフル追い出し作戦を実施するだろうとの感触を得ているとカルフル側は述べている。
因みに首都圏でリッポグループが運営しているモール・ショッピングセンターは次の通り。
北ジャカルタ市 Pluit Village 通称Mega Mall Pluit
西ジャカルタ市 Gajah Mada Plaza
中央ジャカルタ市 Plaza Semanggi
南ジャカルタ市 Pejaten Village, PX Paviliun
東ジャカルタ市 Tamini Square, Kramat Jati Indah
ボゴール Eka Lokasari, Belanova Country
デポッ(Depok) Depok Town Square, Cibubur Junction
タングラン Metropolis Town Square, Matahari
ブカシ Lippo Cikarang, Bakasi Trade Mall
カルフル側のその発言に関連してPTリッポカラワチの取締役は、自社グループが運営しているモールからカルフルを追い出して自社グループのハイパーマーケットであるハイパーマートを後釜に据えるという計画など立てたことがない、と否定する。カルフルは大規模小売事業を統制するさまざまな法規に違反しており、そんな問題がなければこのような事件は決して起こらなかっただろう、との取締役の反論だ。カルフルが違反している法規とは、2002年都条例第2号、2007年大統領規則第112号、2008年商業大臣規則第53号などで、大規模小売事業者の売り場面積制限、大規模小売事業場所の既存在来市場との距離などが条文に即していないのも事実だが、カルフルの事業を監督する行政機関はカルフルに自由な事業を許しており、取り締まりは行なわれていない。


「モールでフィットネスを」(2009年10月8日)
かつてはホテルやオフィスビルの中で隆盛を謳歌していたフィットネスセンターがいまではモールの中に開店する傾向を強めていることをインドネシアショッピングセンター運営者協会会長が指摘している。消費者のライフスタイルの変化がここにも反映されている、と同会長はコメントした。「かつて、消費者はホテルでフィットネスを行なうことを好んだ。しかし今はモールのほうがお好みだ。モールのほうがアクセスが容易であり、そしてガラスを多用したオープンなデザインに消費者は魅力を感じている。」
同会長はモールにオープンしているフィットネスセンターのトップスリーをCelebrity Fitness, Fitness First, Gold's Gymだと評しているが、それはフロンティアコンサルティンググループのサーベイ結果とぴったり一致している。
フィットネスセンターの知名度に関するフロンティアコンサルティンググループのサーベイ結果では、消費者が知っているフィットネスセンターのブランド名は次のようになっていた。
1.Celebrity Fitness 33.6%
2.Fitness First 11.9%
3.Gold's Gym 7.7%
4.My Body Gym 5.9%
5.The Body Fitness 5.4%
6.Atlas Fitness Center 3.3%
7.Fit Plus 1.4%
8.Fit & Chic 1.4%


「ロッテハイパーマーケットは2010年にオープン」(2009年10月14日)
ミニマーケットがモールやショッピングセンターに入らず独立店舗で営業しているように、ハイパーマーケットも同じ道を歩むようになるだろう、とインドネシア小売事業者協会会長が発言した。従来はモールが続々と建てられる一方でハイパーマーケット業界は寡占状態だったことから、モール側がアンカーテナントとしてハイパーマーケットの入居を求める際にその両者の共生関係はむしろハイパーマーケットに有利な形で展開されてきた。平米当たり家賃月額2万ルピアといった最優遇対応さえ取られている。その需給関係とは別に、モール内でのハイパーマーケット開業は独立店舗に比べて集客力・投資額・運営費のいずれの面でも有利であり、おまけにモール内にいればモールを目指してやってきた消費者がハイパーマーケットに立ち寄って予定外の購入行動を取る可能性もきわめて高く、モール内開店のメリットははかりしれないものがある。
しかしそんな状況は決していつまでも続くものではない、と小売事業者協会会長は予測している。「2010年には韓国系ハイパーマーケットのロッテが市場参入してくる。卸センター『マクロ』を買収したロッテは南ジャカルタのモールガンダリアに一号店を開くことが確定した。ハイパーマーケット業界は既存のカルフル・ハイパーマート・ジャイアンにロッテが参入してますます賑わうようになる。ハイパーマーケットはそれぞれが2010年までで2〜3店の新規オープンを計画しているものの、ジャカルタでオープンが計画されているモールはせいぜい6ヶ所だ。つまりモールとハイパーマーケットは同じペースで増えていかない。需要が圧倒的に多くなるから需給関係に影響が出て、それがこれまで行なわれてきたモールとハイパーマーケットの共生条件に変化をもたらすだろう。今でさえ既存ハイパーマーケットのモール内開業はますます困難になっている。ロッテがモール内開業方針を打ち出しているのはよくわかるが、モール・ショッピングセンター業界はすべての需要を受け入れるだけの素地を持っていない。結局ハイパーマーケットが販売網を増やそうとするなら、独立店舗で開業せざるを得ないことになる。マクロはかつて独立店舗で営業していたから、ロッテがその路線を引き継ぐ余地はある。今国内のハイパーマーケット業者はみんなそれぞれ独立店舗を構えるのに十分な資金力を持っているのだから。」
しかしインドネシアショッピングセンター運営者協会会長はその発言に対し、ハイパーマーケットが独立店舗での開業を増やすようになれば、周辺にいる中小の小売業者から激しい抵抗が沸きあがることになるのではないか、とそれが引き起こすであろう問題を予想している。


「新聞の安売り広告は人気絶大」(2009年10月14日)
リサーチ機関マースインドネシアの最新調査は新聞広告の効用が依然として高いレベルにあることを物語っている。中でも割引販売広告は新聞読者の関心を集める大きな柱となっており、消費者層の割引販売を求める欲求の高まりとの相関関係を示しているようだ。求人広告と割引販売広告に関心を注ぐ新聞読者は35%を占めている。
新聞読者の新聞広告に対する態度に関するマースインドネシアの調査結果は次のようになっている。
1.特定の探し物について調べる 39.0%
2.求人と割引販売の広告を見る 35.4%
3.広告は見ない 15.9%
4.すべての広告に目を通す 9.7%


「赤字販売は不正行為である」(2009年11月21日)
ラマダン月に売上が伸びるのはシロップ飲料と缶入りビスケットで、昨今の経済状況に関連して販売者はこの時期に最大限の売上をあげようと激しい特価販売でしのぎをけずった。どうやら缶入りビスケットはその競争の度が過ぎたようで、目に余る投売り競争にモダンマーケットサプライヤ事業者協会が警告を発し、政府に事態を統制するよう要請した。
それに関連して事業競争監視コミッションは、商品を赤字販売できるのは資本力が強く財務状態の堅い会社であり、それを行なっても損失が事業経営に障害をもたらさず、一方そのような販売戦略によって消費者を惹きつけ競争相手にダメージを与えるというメリットが得られるからである、とそのメカニズムを解説した。「しかし小売店が赤字販売を行うのはそれが競争相手を倒して市場を支配するための手段と判断されるために、反不健全事業競争法に違反する行為である。競争相手のビジネスを封殺したり排除する意図をもって行なわれる赤字販売あるいは極端な低価格を設けることは独占行為や不健全事業競争を招くために1999年法令第5号第20条はそのような行為を禁止している。そして違反者に対する処罰は同法令第48条で、50〜250億ルピアの罰金もしくは最高5年の禁固刑と定められている。そもそもモダン商店の再販価格が仕入れコストより廉いというようなことがどうして起こりえようか?商売人の哲学は利益追求であり、損失を求めようとする者などいないのだから。しかるに赤字販売が行なわれるというのは、そこに何らかの意図が潜んでいるわけだ。つまり競争相手を没落させて市場を一手に握ろうとする寡占独占の意図が。だからモダン小売店は事業競争の中で赤字販売を発見したら当方に届け出てほしい。当方は内容を調査した上で赤字販売実施者に処罰を与える。モダン小売店は競争相手を互いに食い滅ぼそうとするのでなく、健全な事業競争を行なって相互繁栄相互利益を享受するようにしてほしい。」事業競争監視コミッションコミッショナーはそう発言している。


「週一回モールへ行く人は10%未満」(2009年11月21日)
国民の半分は月一回しかモールを訪れておらず、モールはまだまだ国民にとって遠い存在である。その距離をもっと近いものにするため、モール側は割引販売などさまざまな催事をもっと積極的におこなわなければならない。
マースインドネシアが行なった消費者調査で国民の月間モール訪問回数統計が明らかにされている。
月一回 53.4%
月二回 25.9%
月三回 10.4%
月四回 7.7%
月五回以上 2.6%


「12州でスペシャルティコーヒー振興」(2009年11月24日)
バリエム(Baliem)コーヒー、トラジャ(Toraja)コーヒー、マンダイリン(Mandailing)コーヒー、アチェ(Aceh)コーヒー、キンタマニ(Kintamani)コーヒー・・・・・。インドネシアの様々な地名を冠したコーヒーはそれぞれ独特の風味と香りを持っており、国際的にも知名度を得ている。政府農業省はそれら優良種コーヒーの生産流通振興をはかって12州をスペシャルティコーヒー振興地区に指定した。ブンクル・北スマトラ・バリ・西ヌサトゥンガラ・南スラウェシ・西パプアなどがその振興地区に入る。
政府は将来的に国内にコーヒーの商品市場を設ける計画を立てており、そこで活発な商いが展開されるようになれば従来国際市場での取引で単に従属的な立場にあったインドネシアのコーヒーがより自国の生産者流通者に有利なものになるであろうことを政府は狙っている。インドネシアのコーヒー生産はロブスタ種が昔からメインを占めていたが、国際的な嗜好がアラビカ種に傾いていることからアラビカ種への転換を長年かけて進めてきている。今年の全国生産予測は689,140トンでロブスタが557,190トン、アラビカが131,950トン。そのうちの469,000トンが輸出に回される見込み。
しかしブラジル・ベトナム・コロンビアに次ぐコーヒー生産国インドネシアの国民コーヒー消費は微々たるものでしかなく、ブラジルやコロンビアがひとり年間3〜4キログラムを消費しているのにくらべてインドネシアはわずか500グラム前後しかない。インドネシア人がブラジルやコロンビア並のコーヒー消費国になるのはいつのことだろうか?


「コスメティック購入はミニマーケットで」(2009年11月26日)
コスメティックをミニマーケットで購入しているひとが一番多いことをマースインドネシアが報告している。インドネシアでもっとも層の厚いCランク経済層以下の消費者はミニマーケットで販売されている手の届きやすい価格帯のコスメティックを主に購入しているとのこと。マースインドネシアのコスメティック購入場所に関する調査報告は次の通り。
1)ミニマーケット 26.9%
2)スーパーマーケット 21.7%
3)商店 18.2%
4)自宅近くのワルン 16.2%
5)ハイパーマーケット 10.8%
6)パサルのワルン 3.8%
7)ウエットマーケット 2.2%


「カルフルで見世物にされる」(2009年11月28日)
2009年3月19日付けコンパス紙への投書"Didakwa Mencuri di Carrefour"から
拝啓、編集部殿。2009年3月2日19時45分ごろわたしはタングランのカルフルチココル店で買物しました。レジで支払いを済ませてそこを通り抜けようとしたところ、万引き警報機のブザーが鳴りました。すると警備員がやってきてわたしの買物をチェックし、その買物を持ってもう一度警報機を通るようわたしに命じました。わたしがそれに従うと、今度はブザーが鳴りません。次に警備員は、わたしに買物を持たないで同じところを通るよう命じ、わたしがその通りしたら今度はブザーが鳴りました。警備員はわたしの財布を調べ、わたしにもう一度警報機を通るよう言うので、わたしがその通りにするとブザーは鳴りませんでした。
すると警備員はわたしを事務所で取り調べると言い出したのです。支払のなされていないカルフルの商品はなにひとつ見つからなかったというのに。これはつまりわたしが泥棒の嫌疑をかけられていることを意味しています。わたしは警備員のそれ以上の取調べを強く拒否しました。そのときカルフル店内は混雑しており、わたしはカルフル来店客の見世物になっていたのです。
しばらくしてからカルフルチココル店のマネージメントがひとりやってきて、先に警備員がわたしに対して行なったのと同じことをしました。つまり万引き警報機の横を何度も通らせたのです。そしていい気なもので、わたしを大勢の来店客の見世物にしておいてから、わたしを残してその場から立ち去ったのでした。[ タングラン在住、エフィ・コー]
2009年4月3日付けコンパス紙に掲載されたカルフルからの回答
拝啓、編集部殿。2009年3月19日付けのコンパス紙に掲載されたエフィ・コーさんの投書に関して次の通りお知らせします。タングランのカルフルチココル店側はエフィさんにお会いして事情説明を申し上げました。警報機が鳴ったときカルフルチココル店警備員は保安規定に則して対応措置を取りました。その目的とするところは、事態を明確にするためだったのです。エフィさんの体験された不快なできごとに関してお詫び申し上げます。[ PTカルフル広報マネージャー、レタ・ドトゥロン ]


「フランチャイズ方式への移行が盛ん」(2009年12月1日)
消費者向けビジネスで成功している国内大手企業の多くがビジネススタイルを変えつつある。自己資金による事業拡張というコンセプトを捨て去ってフランチャイズ方式へと転じる傾向を強めているというのがその変化だ。
グローバル経済危機で銀行借入が難しくなるだろうという予測から生じたこの傾向はいまやブームになりつつある、とインドネシアフランチャイズ協会会長が指摘した。「大規模会社だけでなく小さいところも同じようにしている。フランチャイズ化することで資金がスピーディに入手できる。ブランド名の通った国内大手企業の場合、フランチャイズ店のオープンに一ヶ所あたり5〜7.5億ルピアの資金をフランチャイジーに用意させている。この方式を積極的に進めているのは、Holcimの建材店、Astra Otopartsの自動車部品販売店、Panorama Toursの旅行代理店、Kimia Farmaの薬局などだ。」
同協会のデータによれば、現在ある国内フランチャイズブランド1,100件中で国産ブランドは900件にのぼっており、外国ブランドは200件しかない。しかし現行フランチャイズ法に従えば、フランチャイザーになるためには独立会社として事業に成功している、つまり親会社や同系会社に支えられて成功しているわけでないということ、事業にユニークさがあること、成功例のプロトタイプを示すことができる、などの条件を満たさなければならない。一方フランチャイジーになるための投資金額は、小規模フランチャイザーの場合一店5百万から5千万ルピア、中規模で5千万から5億ルピア、大手ブランドの場合は5億超で最高は20億ルピアに達するというののが最近の相場である由。


「靴の国際市場進出」(2009年12月25日)
インドネシア製のフォーマルシューズとサンダルが外国の百貨店に進出している。高島屋・伊勢丹・OG・Metro・Robinsonなど、シンガポール・マレーシア・ベトナム・日本そしてヨーロッパの数カ国にネットワークを持つ国際デパートチェーンがインドネシア国産ブランドのAndre ValentinoやRotelliを店内で販売するようになったとインドネシア履物業協会役員が明らかにした。しかも外国産ブランド品と価格的にも拮抗しており、たとえばアンドレ・ヴァレンティノはElleと同じ一足70〜80万ルピアで販売されている。
言うまでもなくインドネシア製靴サンダルの国際市場進出はその売行きいかんで国内履物製造業界に大きなリスクをもたらすものでもある。一ヶ所の百貨店で3ヶ月後に20%以上の在庫が残った場合、それ以後の売り込みは成功がおぼつかなくなるのはほぼ確実とのこと。
インドネシアの履物製造業界が開始した積極的な海外市場への売り込みは1998年のクライシスに端を発しており、それまで国際メジャーブランドの運動靴下請け生産に徹していたインドネシア履物工場がオーダーの激減で自社ブランド品の生産を開始するようになったことに由来している。フォーマルシューズとサンダルの国内市場は国産品が60%シェアを占め、Elle, Hush Puppies, Clark, Pierre Cardinなどの外国ブランド品が残りを埋めている。国内市場で成功しているブランドにはYongki, Fladeo, Studio Nine, Andre Valentino, Rotelliなどがある。


「おつりをキャンデーで出した小売店は処罰される」(2009年12月26日)
スーパーマーケットやハイパーマーケットなどモダン小売店で買物したさい、つり銭に小銭がないためにキャンデーが出されたり、「差額は寄付してください」と寄付を強要されることが昔から頻発していた。消費者からの苦情の声は昔からも出されていたが、2009年11月になって政府はやっとその対策に重い腰をあげた。
「今日2009年11月25日から、おつりにキャンデーを出す店はなくなる。かならず金銭でおつりを出さなければならない。どんなに少額であってもおつりは必ず金銭で出すことをかれらは約束した。」11月25日にモダン小売店業界者とインドネシア銀行との間で持たれた会議で小銭のつり銭に関する合意が結ばれたのを受けて、商業省国内通商総局消費者保護局長がそう表明した。その約束に違反した小売店は政府が処罰するとのこと。
その会議に出席した小売店はAlfamart, Indomaret, Giant, Hero, Dunkin' Donuts, Naga, Tip Topで、銀行界からはBukopin, Mandiri, BCAが列席した。これまで小銭の入手が完璧に行なえないため苦肉の策を採っていたと言う小売店業界に対してインドネシア銀行は、今後は少なくとも3日前に取引銀行に対して小銭両替依頼書を提出することで必要な小銭の確保が保証される、とそのプロセスを説明した。
1999年法令第23号に従えば、インドネシア共和国内での支払ツールはインドネシアの通貨であるルピアと定められており、支払にはルピアを使わなければならず違反者は最高3ヶ月の禁固と最高6百万ルピアの罰金が科されるとされている。現実にはこの法令に無知なために世の中でルピア以外の通貨による支払や、おつりにルピア通貨を出さない小売店が存在しているが、消費者はそのような対応を受けた場合消費者係争調停庁に訴え出ることができる。
小売事業者協会はキャンデーのおつりについて、50・100・200ルピアコインの入手が困難なために採った対応であって不当な利益をあげるためではないと表明し、これまでは消費者に割安感を与えるために29,900ルピアといった値付けをしていたが、今後は500ルピアや1000ルピアの倍数で値段をつける商店が増えるだろう、とコメントしている。


「小売業界で引き抜き合戦」(2009年12月28日)
モダン小売業界の積極的な販売網拡張戦略に妥当な能力を持つ管理職養成が追いついていないことから、業界内で中級管理職の引き抜き合戦が起こっている。G&Pリテールコンサルティングの報告によれば、モダン小売業界中級管理職は人材需要の急速拡大に対して供給がまったく追いつかない状況であるため、小売事業経営専門家としてマネージャーやスーパーバイザーの需要が高騰し、かれらの給与を押し上げる結果を生んでいる、とのこと。
「モダン小売業界のマンハントブームは2002年に取締役のレベルで起こった歴史がある。今度はそれがスーパーバイザー・ディビジョンマネージャー・デパートメントマネージャー・マネージャーなど中級管理職に降りてきたという雰囲気だ。ディビジョンマネージャーの給与レベルはこれまで月額6百万ルピアだったが、今や1千万ルピアが要求されるようになったし、デパートメントマネージャーは月額3百万ルピアから4〜8百万ルピアを指向している。今回のマンハントブームはふたつの要因がからんでいる。ひとつは販売網拡張戦略で新店舗の経営を担う人材の需要が高まっていること、もうひとつは自社内中級管理職の能力レベルをトップ経営陣が頼りないと見ており、競合他社の人材をより高く評価していることだ。国内小売業界にとってこのような人材の横移動はポジティブな効果を持っている。大手モダン小売店のいくつかは外国小売事業者とのつながりを持っており、グローバルな小売店経営ノウハウを獲得しているところも少なくない。中級管理職の横移動はそんな経営ノウハウの拡散と均等化を業界にもたらすことになるし、おまけに給与アップというチャンスもついてくるのだから。」G&Pリテールコンサルティング役員はそう語っている。
ちなみにモダン小売業界の管理職給与月額は次のようなレベルにある。(数字は百万ルピア)
取締役 40〜70
仕入れマネージャー 8〜20
ショップマネージャー 8〜20
ディビジョンマネージャー 6〜10
デパートメントマネージャー 4〜8