インドネシアの銀行金融界情報2014〜16年


「金利率上昇の気配」(2014年2月5日)
2014年第1四半期に市中金利率が上昇する見込み。預貯金金利率はおよそ128ベーシスポイント、貸付金利率は6〜27ベーシスポイントアップするだろうとインドネシア銀行が42一般銀行に対して行なったサーベイ結果を披露した。サーベイ対象に選ばれたその42銀行はすべてジャカルタに本社を置く銀行で、貸付残高合計は全国総貸付高の8割を占めている。
それらの銀行の読みの平均を見ると、この第1四半期には運転資金用貸付金利率は27ベーシスポイント(bps)上がって年利率12.97%となり、設備投資用は16bpsアップして年利率12.88%、消費向けは6bps上がって14.45%になるとのこと。
BIレートが上昇していることが銀行界に金利率引上げ意欲をもたらしているのに加えて第三者資金獲得競争がますます激しさを増しており、定期預金金利率がもっとも大きく上昇することが見込まれている。インドネシア銀行がBIレートを引き上げ始めた2013年下半期に銀行界の多くは一斉に貸付金利率を引き上げたが、第三者資金の維持や獲得のために資金コストが上昇する結果、それが貸付金利率にふたたび影響を与えることになる。2013年に資金コストがまだ低かった銀行は貸付金利率の引上げを手控えていたが、資金獲得競争がますます激化している現在、もはやその姿勢を続けることは無理になってきている、と全国一般銀行会会長はコメントしている。


「ビットコインは黄金と同じ」(2014年2月26日)
インドネシア銀行はビットコインを国内の正式支払いツールとは認めないと表明した。インドネシアの正式支払いツールはルピアしか認められていないのだが、バーターのツールとしては使用できるため、ビットコインを取引ツールに使う法人は通信情報省に届け出て政府の監督を受けなければならない。
インドネシア銀行は先にビットコインというものの存在に関連して、ビットコインをはじめあらゆるデジタルマネーは公式通貨として使うことができず、その使用者は保管あるいは使用におけるリスクを自分で引き受けなければならない、というコメントを出している。つまり、ビットコインの流通を政府は禁止しておらず、国内で流通すること自体は合法であるものの、その使用は自己責任で行なわなければならず、国民はそれらのリスクに対する政府の保護が得られると考えてはいけないということのようだ。
「政府はそれを正式な支払いツールと認めないため、それはバーチャル商品のカテゴリーに入ることになる。つまり投資やバーターに使える黄金と同じようなものと考えればよい。そして政府は国庫収入を増やすために、それに課税することもできる。」ビットコインインドネシアのCEOはそう発言している。
インドネシア銀行の下部機関であるインドネシア支払いシステム協会会長は国内の支払いシステム監視について、同協会が国民の行う支払いシステムの実態を綿密にフォローし、国民生活の場で従来のシステムから新しいシステムへの移行が見られたならそれを政策にどう反映させるのかについて協議を進めていくことを表明した。「バーチャル支払いシステムの発展が見られたなら、国民に対してその正しい利用方法を告知していかなければならない。当方はそのシステムを利用するコミュニティとの対話を励行し、それら新種の支払い方式を野放図にすることなく、可能な限り迅速にコントロール下に置くように努める意向だ。」政府諸機関はビットコインの出現に気を引き締めているにちがいない。


「オンラインショッピングが増加」(2014年5月9日)
VISAが2013年7月に行なったクレジットカード(CC)保有者のオンラインショッピング状況調査で、オンラインショッピング実行者が増加していることが明らかになった。創発的という説明の付けられている第1カテゴリー人口は23%いて年間平均ひとり382米ドルを航空券や旅行あるいはファッションに支出し、進化的と形容される第2カテゴリーは29%いて年間に503米ドルを創発的ユーザーと同じものに加えて宿泊費・家電品・ソフトウエア・書籍などに支出している。三番目の成熟的と称される第3カテゴリーは48%おり、年間にひとり当たり640米ドルをきわめて多種多様な商品に支出している。
この調査は過去12ヶ月中に一回以上のオンラインショッピングを行なった18歳以上のCC保有者516人を対象にして行なわれたもので、そのうち4割がジャカルタ居住者、バンドンとスラバヤが各1割、そして残る4割がタングラン・ブカシ・デポッ・スマラン・マカッサル・その他数都市の居住者で占められている。この調査で、ジャカルタ以外の都市居住者がジャカルタのサイトでショッピングするケースの顕著な増加が見られた。かれらは商品の豊富なジャカルタでのショッピングを、自宅にいながらにして行なえるこのシステムのメリットを享受している。オンラインショッピングの増加についてサーベイ実施者は、買物のしやすさ、往々にして価格が小売店より廉い、交通渋滞の中を外出する必要がない、といった利点からオンラインショッピングが今後もますます盛んになるだろう、とコメントしている。


「銀行口座破りはひっきりなし」(2014年6月3日)
2013年11月13日付けコンパス紙への投書"Tabungan Nasabah Dibobol"から
拝啓、編集部殿。わたしはマンディリ銀行北スマトラ州シボルガ支店の利用者です。2013年7月1日に口座から給料を引きだしたとき、43,819,225ルピアあるはずの残高が4,540,589ルピアに減っており、39,015,885ルピアもの金額が失われていました。
わたしはすぐに口座を開設したマンディリ銀行シボルガ支店に届け出ました。わたしの届出の処理が終わってから、銀行側は損害額の半分である19,507,942ルピアを弁償してきました。銀行側が言うには、弁償は銀行側の同情表明であり、この事件はビザインターナショナルが調査中であるということでしたが、調査結果の連絡はいまだにありません。それでわたしはマンディリ銀行経営陣に手紙を送りましたが、その返事はSMSバンキングに関してわたしの落ち度があったという表明でした。マンディリ銀行に預けた金が盗まれたというのに、銀行側はあれこれと口実をもうけて正義と真実を覆い隠そうとしているように、損害を蒙った利用者であるわたしは感じました。
マンディリ銀行はわたしの口座を破った犯人を捕まえるべきなのに、御者の議論をしかけてくるだけなのです。メダン市のジャムソステックブラワン支社従業員であるわたしのマンディリ銀行口座は給与振込み口座であり、わたしは一年前にシボルガから転勤してきているのです。この投書にしたがって、マンディリ銀行がわたしの盗まれた金を全額弁償するよう希望します。[ 北スマトラ州シボルガ在住、バフリ・ハラハップ ]
2013年12月4日付けコンパス紙に掲載されたマンディリ銀行からの回答
拝啓、編集部殿。バフリ・ハラハップさんからの2013年11月13日付けコンパス紙に掲載された投書に関して、ご不快を与えたことをまずお詫び申し上げます。2013年8月30日付けの当方からの手紙の内容をここにもう一度お伝えいたします。ハラハップさんが苦情なさっている取引の100パーセント弁償を行うことはできません。なぜならすべての取引がご本人の携帯電話番号にSMSで通知済みであることが当方のシステムに記録されているからです。当方からのSMS通知の主目的は、マンディリデビットカードを用いた取引についての通知と確認を口座オーナーに対して行なうことであり、それは口座オーナーが行なっていない取引がもしあった場合にその損失を最小限に食い止めるために行なっているものなのですから。[ マンディリ銀行企業秘書、ニクソン・ナピトゥプル ]


「国際郵便電信為替サービス」(2014年7月1日)
インドネシア国有郵便会社PT Pos Indonesiaとマレーシアの国営郵便会社Malyasia Post Berhadの提携で、二国間での国際郵便電信為替サービスに大きな進歩が起こった。Pos Transferと名付けられたIntenational Express Money Orderサービスを利用することで、マレーシアからの送金をインドネシア側受領者は1時間以内に現金で受け取ることができる。
マレーシアでこのサービスを利用するのは、マレーシアの公式データで現在1百万人いてマレーシア在住外国人労働者の5割を占めているとされているインドネシア人出稼ぎ者が主体になると考えられている。しかしインドネシア側は合法非合法あわせて4百万人の出稼ぎ者がいると見ており、はるかに大きなマーケットであることが期待されている。世銀の推測では、マレーシアからインドネシアへの出稼ぎ者の送金額は年間26億米ドルにのぼっており、また郵便小包みでインドネシアに物品を送ることも年間2万5千回に達しているとのこと。インドネシア政府のデータによれば、2013年海外出稼ぎ者の国内への送金は総額74億米ドルで、マレーシアからはそのうちの25億ドルとなっている。
しかしこれまでマレーシアからインドネシアへのフォーマル・インフォーマル出稼ぎ者の送金は公的金融機関を使うものが5%しかなく、ほとんどは帰国する知人や友人を介したり、あるいは私的な委託仲介者を使うといった非合法なもので占められていた。それら非合法なルートを使えば、委託した金が中途で紛失するリスクを避けることができない。
実は、国際郵便局間での電信為替サービスは万国郵便連合が国際ファイナンシャルシステムに沿って開発したものであり、在来型郵便為替よりはるかに効率がよいことから、郵便連合はこの推進を世界の加盟国に奨めている。インドネシア国有郵便会社はマレーシアとの提携を皮切りに、これから韓国・サウジアラビア・UAE・日本の各国との間でこのサービス提携に関する二国間契約を結ぶ方針。


「政府保証対象銀行預金は55%」(2014年8月6日)
国内銀行界に国民が預けている預貯金のうちで、政府の保証条件に合致しているものは全体の55%しかない。取引銀行が事業を停止しても政府の保証が受けられる預貯金であれば口座保有者がその資金を取り戻すのはたいした困難がないのだが、保証対象外の預貯金は口座保有者と銀行間で決着がつけられるべき問題になるために、自分の金を取り戻せたとしても長い期間を要する可能性が高い。現在政府の保証が受けられる預貯金は、口座残高が20億ルピアを超えないもので、且つ銀行側が与えている金利率が7.75%p.a.以下となっている。
預貯金口座政府保証業務を行っている預貯金保証機関(LPS)の2014年5月データによると、国内銀行界の第三者資金は前月から1.9%増加した3,822.6兆ルピアで、総口座件数151,087,388件から成っており、残高50億ルピア超のものが前月からの増加のメインを占め、そのカテゴリーの口座残高は1,741兆ルピアにのぼっている。一方、政府保証条件に合致しているものは2,090兆ルピアで、これは前月から7.2兆ルピアの上昇となった。
預貯金保証機関が定めた2014年5月15日から9月14日までの保証対象預金上限金利率は一般銀行ルピア建てが7.75%であり、一般銀行外貨建ては1.5%、また国民貸付銀行のルピア建ては10.25%となっている。
銀行界は貸付の伸びが顕著であるのとは裏腹に第三者資金残高の伸びが鈍化しており、特に低コスト資金である当座預金と普通預金の伸びに不安が高まっている。預貯金保証機関データによれば、2014年5月の第三者資金推移で、当座預金は増加して残高合計910兆ルピアに達した一方、普通預金は1%弱という減少を示した。普通預金残高は1,157兆ルピアになっている。銀行界の第三者資金集め競争はさらに激しさを増す勢いだ。


「10万ルピア紙幣デザイン変更」(2014年8月21日)
2014年8月18日にデザインの新しくなった10万ルピア紙幣がお目見えした。改訂版紙幣発行日は2014年8月17日となっている。デザインは一見これまでと同じように見えるものの、贋札防止セキュリティ対応が更に新しくなったことに加えて、もal"っとも目立つのは表紙幣左下のBANK INDONESIAという一段文字からNEGARA KESATUAN REPUBLIK INDONESIAという二段文字に替わったこと。そのため今回のデザイン改訂版はuang NKRIと呼ばれている。他にも、スカルノとハッタの人物像の下に記されている名前の肩書きが増やされており、また表紙幣右上のガルーダに黄金色の背景がついた。
これまで通貨発行はインドネシア銀行の専権業務だったのだが、2011年法律第7号通貨法で政府とインドネシア銀行の共同業務に変更され、インドネシア銀行という一政府機関でなく、インドネシア政府が発行するものであるという意味合いがそこに付与されたと説明されている。こうして新紙幣にはNKRIという国家名称が記載され、またこれまではインドネシア銀行総裁と総裁デピュティのサインがなされていたが、今回からは総裁と大蔵大臣がサインするように変わった。
わざわざこの時期にデザイン変更版を発行したことについてインドネシア銀行総裁デピュティは、国内唯一の通貨として国が保証を与えている実体の形を整えるために行われたと述べている。これまで陸上国境線に近い地域で隣国の通貨が使われていたり、あるいは大都市でも外貨建ての値付けに対して外貨で支払いがなされるようなことが行われていたが、国内で外貨を使った決済は非合法であると通貨法で定義付けられたため、その政策の推進に裏付けを与えるという意味合いが強いようだ。
10万ルピア紙幣に続いて5万、2万、1万、5千、2千、1千といった金種もウアンNKRIに変更されるが、タイミングは来年以降ということだそうで、詳しい時期は発表されていない。
ところで、政府とインドネシア銀行が計画しているデノミに関しても、新紙幣デザインに関する情報がインターネットに流れている。たとえば、次のようなサイトでそれを見ることができる。しかしインドネシア銀行はその図柄になるかどうかはまだ決まっていないとしてそのネット情報を否定している。
http://bisniskeuangan.kompas.com/read/2014/06/24/1323239/Desain.Uang.NKRI.Beredar.Ini.Klarifikasi.Bank.Indonesia
ともあれ、図柄がどうなるかは別にして、現行紙幣⇒移行期に現行デザインのままで金額が3桁ダウンするもの⇒新デザインで3桁ダウンした金額のもの、というプロセスは間違いないようだ。移行期には現行紙幣の図柄で金額が現在のままのものと3桁ダウンしたものが市場で混在し、消費者はそれらを同じものと認識して使うようになることを政府当局は期待している。


「外国のATMから現金詐取」(2014年9月24日)
2014年6月3日付けコンパス紙への投書"Saya Tidak Bepergian ke Rusia"から
拝啓、編集部殿。2014年4月2日、CIMBニアガ銀行からSMSが届きました。4 x eq Rp 2,418,565 (ルーブル通貨で)の現金引き出しがロシアのセントペテルスブルクのとあるATMで行われたと言うのです。ATMカードはわたしの手元にあり、そしてわたしはロシアへなど行っていないというのに。
わたしがロシアにいないことは確認できます。その同じ日の違う時間にわたしはジャカルタでクレジットカード決済を行い、CIMBニアガ銀行からSMSでその確認を受け取っているのです。セントペテルスブルクとジャカルタという、たいへん遠い場所で同じ日にふたつの取引が行われたことをそれが証明しています。そのひとつ、ロシアでのもの、はわたしが行ったのではありません。
わたしの口座にアクセスする権利のない人間が外国にあるATMでわたしの口座から現金を簡単に引き出すことができるなんて、わたしの口座の安全が保証されていないとしか思えません。わたしはこの事件をCIMBニアガ銀行に届け出ましたが、その届出が処理されるまでに30日プラス45日もの日数がかかりました。同じことが繰り返されるのを防ぐために、暫定的にわたしの口座はブロックされたのです。[ 南ジャカルタ市在住、アデ・ヌグラハ・ジャヤ ]
2014年6月23日付けコンパス紙に掲載されたCIMBニアガ銀行からの回答
拝啓、編集部殿。アデ・ヌグラハ・ジャヤさんからの2014年6月3日付けコンパス紙に掲載された投書について、アデさんが当方のサービスにご不満を抱かれたことにまずお詫びいたします。当方はこの問題についてフォローし、アデさんに直接コンタクトして事情説明を申し上げました。CIMBニアガ銀行は2014年6月4日にアデさんの口座に被害金額の補填を行っていることをお知らせします。[ CIMBニアガ銀行企業秘書、ルディ・フタガルン ]


「預金金利率規制がスタート」(2014年10月13日)
1983年6月1日、インドネシア銀行は国内銀行界に対し、金利率を自由に設定することを許可した。そして今回、インドネシアの金融サービスオーソリティは2014年10月1日から、コア資本が5兆ルピアを超える銀行に対し、定期預金金利率に枠をはめる規制を開始した。自由化の時代は31年間で終わったのである。
問題の本質は銀行界の事業効率の悪さ、具体的に言うなら、事業コストの比率が高すぎるという点にある。高いコストをまかなうためには高い利益が必要だ。利益を生むのは第三者資金をたくさん集め、そこからチャージを得ることと、集めた資金を貸し付けて利ざやを抜くことに尽きる。第三者資金を集めるには、魅力的な金利率を預金者に与えなければならない。必然的に集まる資金のコストは高くなり、その資金を貸し付けて利益を得るために貸付金利率も高くなる。貸付金利率が低いほど国家経済の回転は高まるのだから、肝心の銀行界が持っている体質が国家経済に悪影響を及ぼしているということが明白だ。
金融オーソリティは定期預金金利率に枠をはめることで、その悪循環を断とうと考えたようだ。今回定められた規制枠の内容は下の通り。
第3種事業活動一般銀行(BUKU III コア資本5〜30兆ルピア)BIレートから2.25%以内
第4種事業活動一般銀行(BUKU IV コア資本30兆ルピア超)BIレートから2.0%以内
2014年10月初のBIレートは7.5%だから、BUKU III 銀行は最高が9.75%、BUKU IV 銀行は最高で9.5%という規制値になり、それ以上に高い金利率を与えて定期預金を集めることはできなくなる。
2013年末から現在に至るまで、銀行界は第三者資金集め競争に入り、銀行界の定期預金平均金利率は8.67%でしかないというのに、現実には11%もの利率をオファーする銀行も出現している。そういう特殊な金利率は少なくとも預金金額が50億ルピアを超える定期預金に対して銀行がそれを呼び込むために与えるものであり、銀行が獲得している第三者資金の45%はそういう預金で占められている。逆に言うなら、大きい資金を持つひとびとは、そういうやり方で銀行から利益を得ることに努めており、銀行界の資金コストを高いものにしているのである。だから金融サービスオーソリティがその悪循環の鎖を断つために伝家の宝刀を抜いたということになる。
銀行界は貸付金が増大してLDR比率が高まっているため、資金流動性はきわめてタイトになっている。金融サービスオーソリティの最新レポートによれば、2014年7月の第三者資金は3,787兆ルピアで、貸付金総額は3,495兆であり、LDRは92.2%だった。2014年に入ってから銀行界の資金流動性はタイトなままになっており、インドネシア銀行と金融サービスオーソリティは今年の貸付金総額の増加率を15〜17%と規定した。2013年の伸び率は21.7%だ。貸付金の伸び率が低下すれば、国の経済成長率も鈍化する。
2013年の貸付金総額は一年間で21.7%増えたのに対し、第三者資金は13.6%しか増えなかった。銀行界が預金金利率を高くしても、それは一定のパイの奪い合いにしかなっておらず、バイを大きくすることができないのであれば、資金コストを高めるだけ国家経済にとって愚行を犯していることになる。この政策が効果をあらわして、早い時期に貸付金利率が低下することが期待されている。


「クレジットカード規制本格実施はもうすぐ」(2014年10月16日)
インドネシア銀行が2012年に定めたクレジットカード発行に関する規制では、月間収入が3百万ルピアに満たない者はクレジットカードが持てず、また3百万から1千万ルピアの者は二枚までしか持てないことになっている。この規定は2015年1月1日から完全実施されることが定められており、その実施に際して全国の消費者が持っている45万枚のクレジットカードが取消される予定。
銀行界のほとんどはその規定が定められてからクレジットカード発行に新しい条件を加味するようになっているものの、それが制定される以前の放縦な環境下に収入もろくにない人間が得た4枚も5枚ものクレジットカードは、今現在も依然としてその命脈を保っているのが実情だ。その規制開始以前の状態に秩序をもたらすために、規定の枚数を超えてクレジットカードを持っている消費者に対してその放棄が命じられる。もちろんカード所有者には、どのカードを残したいかという選択の自由が与えられる。
インドネシアクレジットカード協会GMによれば、三枚以上クレジットカードを持っている消費者は多くない、とのこと。規定が定められてから条件を超えるクレジットカード枚数は減少しており、今残っているのは45万枚程度である由。2014年8月のカード発行枚数は1,580万枚でYOY11%の増加となっているが、カード枚数規制が完全実施されれば、5%程度の伸びにダウンするだろうと見込まれている。
この規制にはカード枚数以外にも、カードごとのクレジット上限が月収の3倍までといったものも含まれている。月収が1千万ルピアを超えれば、クレジットカード所有枚数は規制を受けないが、カード発行者はそのカードを持たせることで所有者に発生するクレジット返済リスクを十分考慮したうえで発行するよう義務付けがなされている。
この規制とは別に、クレジットカード使用の際にPIN番号が必ずインプットされなければならないという規則も2015年1月1日から開始される。各銀行ではクレジットカード保有者に対し、個別にPIN番号を与える事務活動を年内に完了させるべく拍車がかかっている。PIN番号のない取引や番号不一致の取引は1月1日から完全に認められなくなるため、PIN番号をもらいわすれたカード保有者は、カード発行銀行から番号をもらうまでクレジットカード決済ができなくなるとインドネシア銀行副総裁は付け加えている。


「マーケットでもユーフォリア」(2014年10月22日)
首都ジャカルタで沸き立つような新大統領就任式とその祝祭が行なわれているとき、あたかもそのユーフォリアに魅せられたかのように、インドネシア国内に大量の外資が流入してきた。インドネシア証券取引所のデータによれば、2014年10月20日の外資流入高は7,606億ルピアにのぼり、2014年初以来沈滞気味だった外資売買ネット差は43.1兆ルピアの黒字に引上げられた。
9月に入って以来、アメリカの景気回復の掛け声に動かされてインドネシア市場から引き上げられる外資が流れの基調を形成し、暴落を懸念する層がそれにつられて流れを膨らませるという状況に陥っており、そんな状況下にあったため、インドネシア証取は20日の大統領就任式を祝って休みにするという声を排し、「そんなことをすれば景況の一層の下降を煽るだけだ」との判断から証券取引の場を立てたわけで、実に的を射た判断だったと言うことができる。この日は久方ぶりの快挙を大勢の証券取引関係者が感じたにちがいない。
20日の証取では、取引開始から40分後にIHSG(総合株価指数)が5,100ポイントの心理バリヤーを突破し、外資の流入に応じて国内投資家が利食い売りに出るという活発な売買が展開された。一日の取引高は7.5兆ルピアに達し、従来の単日平均取引高6.1兆ルピアを大きく引き離した。24万回行なわれた取引件数の58%が国内投資家で占められ、20日の取引終了時のIHSGは前日からむしろダウンした。
一方で外為市場は外資の流入によるルピア需要の高騰から、ルピア高が誘導された。中央銀行の対米ドルセンターレートは12,222ルピアから12,041ルピアに1.5%上昇した。スポット市場でも12,033ルピアに達して10月初のレートから1.2%アップしている。
証券市場専門家は一様に、この値動きはムードによって引き起こされているものでしかなく、インドネシアの経済ファンダメンタルズに応じたレベルへとこれから調整されていくのは確実であり、さらにグローバルな経済情勢がそこに絡みこんでくるため、状況の推移を注意深く観察しなければならない、とコメントしている。


「銀行預金金利率に低下の予想」(2014年10月27日)
2014年8月末の銀行界保有第三者資金は流動性が高まっており、適正レベルに据え置くために銀行界の預貯金金利率はダウンする可能性が出てきた。LDRは90.6%で前月の92.2%から低下し、国内実業界の資金借入が沈滞傾向に向かっているため、この状況は2014年内いっぱい継続するものと見込まれている。
金融サービスオーソリティが公表した2014年8月末時点の金融界資金状況は、実業界への貸付高3,352兆ルピアに対して第三者資金取得高3,699兆ルピアにのぼっている。貸付高の伸びが低下し、第三者資金取得高が増えていけば、金融機関内部で抱える資金流動性は過剰になる。
インドネシア銀行は銀行界のLDRを78〜92%という枠内に置くのを目標にしており、現在それに沿った状況になっているとはいえ、セクター別にはバラつきがある。在来系外国銀行は143.9%、在来系合弁銀行は132.6%というのが8月末の数字だ。
インドネシア銀行が行なった2014年第3四半期サーベイで、2014年第4四半期の貸付高伸び率を14.4%と銀行界が予測していることが報告された。前回の数字では、2014年末まで18.2%の成長と見込んでいた銀行界は、その予測を大きく修正したことになる。それに関連して国民銀行会会長は、この先の景況の見込みが立つまで実業界と借入希望者たちが借入を抑制しているために、銀行界は貸付高成長率の予測を厳しくしているとコメントした。「実業界は新規借入契約や既存契約の増額を抑えて待ちの姿勢に入っている。今後の景況を注意深く見極めようとしているためだ。短期的には新内閣の経済政策の動向、少なくともどのような百日評価が出るのかを見極めた上でこの先の予測を立てるまで、借入の方針が決まらないだろう。」
去る10月1日から金融サービスオーソリティは、銀行界の預金金利率に規制をかけた。資本金2千億〜5兆ルピアの銀行はBIレートを大きく外れた預金金利率を顧客に与えることが禁止されている。この規制が開始されて一ヶ月間の様子を確認し、各銀行の経営にどのような影響が出ているのかについてのオーソリティと銀行界の話し合いが持たれる予定になっている。現在のところ、この規制によって銀行界から第三者資金の大掛かりな資金エクソダスが起こるような兆候も、懸念する声も出されていない。
ジャカルタのアッマジャヤ大学経済オブザーバーは、第三者資金の継続的増加が見込めないために銀行界が貸付の増加を抑制する方向になっている、と語る。「タイトマネーポリシーは維持されており、銀行界は貸付を増やすことよりもネット金利マージンを高めることの方に傾いている。タイトマネーポリシーで貸付成長率が鈍化すれば、輸入の勢いも低下する。それも狙いのひとつだ。国家収支の悪化を緩和させるためにそれは行われる必要があるのだ。」
2014年の経常収支赤字はGDPの3.1%と見られており、発展途上国では2.5%を超えないことが健全性の指標とされているため、政府が赤字の拡大防止に努めていることをそのコメントは指摘している。


「両替商への事業規制」(2014年11月6日)
ルピアの対外貨交換レートを安定させることを重要方針に掲げているインドネシア銀行が、外貨両替ビジネスの統制を更に強化した。2014年インドネシア国内で外貨両替ビジネス界の外貨購入は実質ひと月7.94兆ルピアにのぼり、2012年の5.8兆ルピアから大幅に上昇している。言うまでもなくそういうデータが出せるのは、事業認可を中央銀行から受けている全国914の公認両替商からの報告があるからであり、その数をはるかに超えている無認可両替商がどれだけの外貨を世の中で購入しているのかは闇の中だ。公認外貨両替商はジャカルタに349社、デンパサルとバタムにそれぞれ122社、メダンに49社などとなっている。
山のようにある無認可両替商は、通貨オーソリティが行なう政策の元になる現状把握を曖昧なものにしているばかりか、国内に多発している腐敗行為に多大の便宜を与えている。マネーロンダリングの摘発を行なっている通貨取引分析報告センターによれば、汚職犯罪者が逮捕されたとき、持っている現金の中に外貨が含まれているのが普通であり、その外貨の出所はまず例外なく無認可両替商を経由しているとのこと。
贈収賄犯罪者や麻薬あるいは恐喝を行なう犯罪シンジケートが巨額の金を取扱うとき、ルピア現金を何万枚も運べば物理的に大きなものになるが、外貨を使えばはるかに小さな形で持ち運びできる。インドネシア国内に外貨が存在することのメリットは、他の諸国とは比較にならない大きなものになっており、そのようなアングラ経済に外貨が深くからみこんでいるために中央銀行の経済コントロールを難しいものにしているのは疑いがない。
無認可両替商が公認の外貨取扱事業者とまったく無関係に独立してビジネスを行なっているかと言えば、決してそんなことはない。銀行であれ公認両替商であれ、大量に外貨需要を持ってくる人間を逐一スクリーニングにかけてなどいられないし、公認両替商の中にも客の素性と事情を知りながら自分が儲けるためにそれを受け付けている不良従業員が混じっていない保証もない。
2014年9月11日付けインドネシア銀行規則16/15/PBI/2014号は、外貨両替事業活動を行なうに際して、無認可両替商との取引を禁止した。外貨現金とトラベラーズチェックがその対象だ。また、公認外貨両替商の中に、外貨送金事業許可をあわせて持っているところが31社ある。そういう公認両替商の不良従業員が銀行から巨額の外貨を買いつけ、交換レートが高くなったときに無認可両替商に売却する投機活動が行なわれていることをインドネシア銀行はつかんでおり、この規則によってそのふたつの機能は完全に分離させることが義務付けられた。そのため、上の31社は外貨送金事業のための別会社を興さなければならない。この規則は2015年1月1日から施行されるため、公認外貨両替商はその日に外貨送金事業認可が取消される。


「イージーに行なわれる犯罪」(2014年11月7日)
2014年7月8日付けコンパス紙への投書"Deposito Raib, Dicairkan Bukan Pemilik"から
拝啓、編集部殿。中央ジャカルタ市のBNI銀行チキニゴールドセンター支店に預けた50億ルピアの定期預金が無くなりました。奇妙なことに、その定期預金証書を持っているわたしの指示もサインもないまま、赤の他人がその預金を引き下ろしたのです。BNI銀行出納事務所責任者によると、2014年2月21日にBNI銀行チキニゴールドセンター支店長がそれを行なったということでした。わたしはBNI銀行マネージメントにこの問題を明らかにするよう求めましたが、即応などなく、反対にあちらこちらにとたらいまわしされる始末です。
チキニゴールドセンター支店はこの問題をスナヤン支店で解決するように言い、スナヤン支店は地区統合事務所に届け出るよう言い、そこへ行ったら本店に行くように言われましたが、本店ではまたチキニ支店へ行けと言われたのです。BNI銀行は顧客サービスに関するSOPを持っていないのですか?
わたしの預金が消滅してからもう5ヶ月が経過しているというのに、銀行側はわたしの預金を戻そうとする意思が見られません。わたしが提出した要請状にはまったく反応を示さず、回答はひとつも得られません。その預金の中には、新たなビジネスを開始するための従業員としての、また友人たちの権利が含まれているのです。[ 北ジャカルタ市在住、ダダン・スティアワン ]
筆者注)この事件は銀行内部者と外部者がつるんで行なった犯行で、BNI銀行内部者は解雇されたことが報道されている。


「クレジットカード詐欺もいっぱい」(2014年11月13日)
2014年7月20日付けコンパス紙への投書"Kartu Kredit BCA Dibobol"から
拝啓、編集部殿。2013年7月16日10時ごろ、BCA銀行分析員ヘルマンと名乗る人物から電話があり、わたしのクレジットカードは一週間以内にプラチナカードに変更されるので、今わたしが持っているカードはBCAメッセンジャーがもらい受けにお宅に伺います、という連絡をもらいました。電話の主はわたしの電話番号・住所・その他個人情報をBCA銀行からもらったそうです。BCA銀行は顧客の個人データを守秘しないのでしょうか?
14時ごろ、わたしはそれまで使っていたクレジットカード裏側のサインをマジックインキで塗りつぶし、カードにはさみを入れて完全に切断し、それをメッセンジャーに渡しました。メッセンジャーはBCAのロゴがついた受領証を置いていきました。
その日夕方、わたしはハローBCAからSMS連絡を受けました。わたしのクレジットカードがエラフォンで22,497,000ルピア、SBS SMBで3,499,000ルピア、ブカシのアフマディヤニ通りにあるガソリンスタンドで400,000ルピアという取引に使われたとのことでした。
わたしはこの事件を警察に届け出るとともに、BCA銀行に対してもそれらの取引を否認する表明を出しています。その不良マーチャントが誰でどこにいるのかがまったく明白だというのに、この事件はいまだにプロセス中で決着していません。2014年2月5日、BCA銀行は一方的に、わたしの口座から2千1百万ルピアを引き落としています。[ 南ジャカルタ市在住、フアンリン・ワンサディルジャ ]


「ラッフルズプレイスで強盗事件」(2014年11月18日)
2014年11月14日午後1時ごろ、シンガポールの人通り繁華なMRTラッフルズプレース駅B出口で強盗事件が起こった。駅から外へ出るためにやってきた男カン・ティーティーが、その後ろについて歩いていた別の38歳の男アルンに刃渡り12.5cmのナイフで右の腰と臀部合計三ヶ所を刺されたのだ。アルンはカンが持っていたバッグを奪って逃走しようとしたが、血まみれのカンは気丈にも犯人を追いかけて組合い、周辺にいたひとびとが協力してアルンを取り押えた上で警官の到着を待ち、犯人を引き渡した。シンガポールの報道ではそうなっているが、インドネシアでの報道の中には、警官がアルンに発砲したことになっており、アルンが何発の銃弾を撃ち込まれたのかは不明なのだそうだ。警察はすぐにカンとアルンを病院に送って治療を受けさせたという内容はインドネシアとシンガポールで同じものになっている。
シンガポール警察の調べで、カンもアルンもインドネシア国籍であることが判明し、またアルンがカンから奪ったバッグには現金15万8千米ドルと2万30ブルネイドル、そして総額60万7千米ドルのキャッシュチェックが入っていたというのがインドネシア側の報道だが、シンガポールではキャッシュチェックが60万7千Sドルとなっている。
ラッフルズプレースは今やインドネシア・マレーシア・シンガポールの外為キャッシュマーケットと位置付けられており、各国の両替商のメッカになっている。どのような金種であれ、まっさらな新札から擦り切れてくすんだ紙幣に至るまで、おこのみの金がそこで手に入るのだそうだ。カン・ティーティーはこれからそこで両替しようとして巨額の金をバッグに入れて持ってきたようだ。カンがその巨額の金をどこから持ってきたのかということに、インドネシアの官憲は今焦点を当てている。
2002年10月10日付けインドネシア銀行規則第4/8/PBI/2002号によれば、インドネシアから1億ルピア相当を超える金を国外に持ち出す者はだれであれ、インドネシア銀行から許可を得なければならない、と規定されている。その許可は、国外での金銭機器テストのため、国外での展示会のため、インドネシア銀行が公共利益のための必然性があると判断したもの、にしか与えられない。反対に国外から持ち込む場合は、税関による真贋検査を受けなければならない。
1億ルピア相当というのは、外貨にも適用される。外貨の場合、インドネシア銀行の許可が得られていないものは、税関が当日の交換レートを適用して判断を下すため、不確定要素がついてまわることになる。違反者への罰金は最大3億ルピアになっており、最悪の事態が発生すれば大きな金がパーになりかねないおそれがある。
カンがインドネシアの両替商従業員もしくはオーナーであれば、その金がインドネシアから持ち出された可能性が高まり、中央銀行が処罰に動き出すことになるだろう。
インドネシア人両替商関係者がラッフルズプレースで被害者になった事件は、2012年8月にバタムの両替商従業員スハルディ・タンが持っていた6億ルピアの現金を奪われて殺害されたのが最終のものだ、


「巨額預金口座が増加」(2014年11月19日)
預貯金保証機関が発表した2014年8月末国内一般銀行界第三者資金状況は3,913兆ルピアで、7月末の金額から81.27兆ルピア増加した。そのうちの79.74兆ルピアは一件で50億ルピアを超える口座の預貯金であり、預金者が有利な条件を狙って巨額の預金交渉を銀行との間で行なっていることを推測させるものだ。8月末、一件50億ルピアを超える口座の残高合計は1,750兆ルピアで、全体の44.7%を占めている。
8月末一般銀行界預金者口座件数は154,154,607件にのぼり、7月末から1,281,090件増加した。
なお、預貯金保証機関が実施している国民預貯金に対する国家保証システムに参加している一般銀行は119行あり、国有銀行4、州政府保有銀行26、国民系民間銀行65、合弁銀行14、外国銀行支店10となっている。
この国民の預貯金に対する国家保証システムでは、保証対象となる預貯金に制限があり、また最終的に銀行が自ら保険をかけて消費者に保護を与えることを究極目標にしているため、対象預貯金が段階的に減らされていくスキームが定められている。現在の保証対象預貯金は口座保有名義人当たりの残高総額が20億ルピアまでで、また預貯金保証機関が定める適正金利率を超えないもののみとなっている。2014年9月15日から2015年1月14日まで有効な適正金利率は、一般銀行のルピア建て7.75%、外貨建て1.5%、国民貸付銀行のルピア建て10.25%と定められている。


「銀行界のサービスは不評」(2014年11月26日)
インドネシア国民消費者2千人を対象にして消費者保護国家庁が行なったサーベイで、96.6%が銀行のサービスに不満を持っていることが明らかになった。銀行は扱っている商品の説明を顧客に詳細且つ分かりやすく行なうことがない。たとえばローンを組む場合でも、銀行職員は単に契約書を顧客に差し出してサインを求めるだけであり、契約書の内容を説明したり、顧客が知っておかなければならないことを確認するようなことをしない。また金利の上乗せや送金あるいはATMの使用に関することも、顧客や一般消費者に正しく教えようとする姿勢をほとんど示さない。
このサーベイは消費者保護国家庁が北スマトラ・南カリマンタン・南スラウェシ・西ヌサトゥンガラ・東ジャワの5州で地元大学と共同で各州4百人の小学校から大学院を卒業した住民に対して行なったもので、消費者保護国家庁・消費者保護民間団体・消費者係争調停庁などの機関に銀行サービスに関するクレームを出したことがないひとは3.4%しかいなかった。またクレームを提出する際に銀行のコールセンターではあてにならないので、ほとんどの消費者は銀行に赴いて直接苦情を申し立てている。
2014年1月1日から9月30日までの間に消費者保護国家庁に届け出られたクレームは250件あり、そのうちの87件が銀行関連のものだ。高学歴高所得者ほど権利に対する意識が高く、関連する不満を相手にぶつけていく傾向が高い。ただし、内容次第で銀行からの情報を消費者がまったく相手にしていないという分野もあるため、銀行界のサービス改善はめりはりをつけた形で行なわれることが期待されている。


「キャッシュレス社会」(2014年11月28日)
2014年7月時点での流通通貨が3,891.4兆ルピアにのぼるインドネシアで、キャッシュレス取引は31%程度しかない。インドネシアはやっとキャッシュレス時代に足を踏み入れ始めた赤児のようなものだ。類似の国は少なくない。インド32%、ロシア31%、ケニヤ27%、サウジアラビア19%・・・・
アセアンメンバー国と比較すると、インドネシアが大きく水をあけられていることが判る。タイ42%、マレーシア45%、シンガポール69%。世界のトップクラスだと、ベルギーが93%、フランス92%、カナダ90%。だが世界全体を眺め渡して見るなら、キャッシュに依存するリテール取引はいまだに85%を占めている。キャッシュ経済はGDPの1.5%という現金の回転や犯罪のリスクに由来する社会コストを負担させていると言われており、為政者がキャッシュレス社会への心的傾斜を持つのは自明の理であるにちがいない。
インドネシア政府とインドネシア銀行は、キャッシュレス国民運動を開始した。政府自身も予算執行の9割と、中央から地方自治体への資金引渡しの百パーセントをキャッシュレスにした。そして各地方自治体に対し、キャッシュレス予算執行の早期実現をさせるべく尻を叩いている。予算執行をキャッシュレスにすれば、支払いプロセスは簡便で、透明で、責任の所在も明白になる。口座間移動のトレースも簡単に行なえるし、現金が誰かの手からどこかへ洩れるというようなことも起こらず、不正行為の発生は最小限に抑えることが可能だ。汚職・贈収賄・恐喝などの金の動きは、トレースされることを考慮して現金が使われるのが常識になっている。キャッシュレス社会への移行で、そのような付随効果も期待できる。新政府は貧困者への支援金供与を、従来行なわれてきた現金方式からキャッシュレスカード方式に変更した。
元々インドネシア人は現金への畏敬の念が強く、テレビのクイズ番組やバギバギウワン形式の番組では画面に出てくるひとびとの間で現金が飛び交うのが通例であり、貧困者も現金をもらうほうを好んだのだが、現金を手にしたかれらは短期間にそれをパッと使い切るのが普通だったそうだ。ところがカード方式に代ってからというもの、受給金額を一度に全部引き出すひとよりは小出しに引き出すひとのほうが圧倒的に多いということが報告されており、現金はかれらにとって麻薬の類のものだったのではないかと思わせる新発見になっている。
巨額の現金が動くとき大勢の人間がそのしぶきを少しずつ手に受けるのが風習になっていたインドネシア経済のありさまがキャッシュレス化によって変化するのは明らかであり、その種の膨張がなくなることで見かけの経済規模は縮小する可能性が高いように思われる。実質経済がどう影響されるのか、興味深いことがらであるにちがいない。


「ジャカルタでキャッシュレス運動が先行」(2014年12月1日)
現金に熱い欲望をたぎらせてきたインドネシア人がキャッシュレス時代に足を踏み入れつつある。金は天下の回り物であるがゆえにイージーカムイージーゴーであり、宵越しの金は残さず、太いパイプで流入するのを好み、出て行く金には未練を持たない。そういう金銭観に関わるインドネシア文化の中の美徳は、キャッシュレスシステムと相容れないのが明らかだ。
だがしかし、政府と中銀が推進するキャッシュレス国民運動は着実に進展しつつある。それが伝統的なインドネシア人の現金憧憬文化をくつがえすことになるかどうか、それはこれからのお楽しみというところ。
キャッシュレス国民運動のゴングが打ち鳴らされたのが2014年8月14日で、この運動にはDKI銀行、マンディリ銀行、BCA銀行、BRI銀行、BNI銀行、メガ銀行が協賛した。現在のキャッシュレス取引は1,586億ルピア、バーチャルアカウント取引は11億ルピアとなっている。
キャッシュレス化運動の先頭を切っているのは首都ジャカルタで、都庁は公費での購入や諸プロジェクトの支払いなど、さまざまな取引をキャッシュレス化している。その取引を支えているのがDKI銀行であり、72の企業や官公庁がDKI銀行とキャッシュレス取引を行なっている。都庁が低所得層向けに用意した積層住宅賃貸料金支払いは8.3億ルピアがキャッシュレスで行なわれ、また駐車料金も3.1億ルピアがキャッシュレスで入金されている。都庁は都民の現金好きを変化させなければならないのだ。
その動きに合わせて、トランスジャカルタバスは2014年11月1日から乗車料金支払いをキャッシュカードの一本立てにし、キャッシュレス社会への方向付けを行なった。実際の一本立て開始はルートによってタイミングが異なるが、遅かれ早かれ現金ではトランスジャカルタバスに乗れなくなる。
ごくたまにしかトランスジャカルタバスを利用しないひとからはキャッシュレス方針への苦情が芬々だが、大半の利用者はその便利さを受け入れてカードを使うことをむしろ喜んでいるようだ。まだ全ルートでキャッシュレスが開始されたというわけではない段階で、総利用者中の6割がもうカードによる支払いに切り替わっているとのこと。
低所得層向け賃貸積層住宅の家賃支払いも、バーチャルアカウントを使ったカードによるATMでの支払いが進んでいる。そのカードには所有者の名前と写真が描かれており、身分証明のために使うことも可能になっている。


「他人あての請求書が送りつけられる」(2014年12月17日)
2014年9月18日付けコンパス紙への投書"Kerahasiaan Data Nasabah Bank"から
拝啓、編集部殿。わたしは2008年からメガ銀行のクレジットカードを使っています。三年ほど前から、クレジットカードの月次請求をeビリングで受け取るようにしました。PDFフォーマットで作成された請求書が、毎月28日にわたしのeメールアドレス宛に送られ、PIN番号を使わなければ開けないようになっています。
2014年8月29日にeビリングで送られてきた請求書を開こうとしてPIN番号を入力したところ、出てきたのは他人名義の請求書でした。もしわたしのPIN番号で誰か他人の請求書を開くことができるのなら、わたしへの請求書も同じようになっている可能性が高いように思われます。
2014年9月1日、わたしはメガコールにこのトラブルを届け出ました。受付者はトリスタさんです。かれは単に届出を受け付けているだけであり、届出は関係部門に伝達される、と気軽に言いました。この日進月歩の時代にコールセンターがただ苦情を受け付けるだけで、何の救済措置も取らないなんて、本当に残念です。[ 西ジャワ州デポッ市在住、シンタ・イェニアル ]


「1億ルピア未満のRTGS決済廃止」(2014年12月19日)
国内の他行間銀行送金は、手形決済システムが使われる。インドネシア銀行が現在行なっている手形決済システムはふたつあり、ひとつは全国手形決済システム(SKNBI)もうひとつはリアルタイムグロスセトルメント(BI−RTGS)で、RTGSは発生の都度決済がなされるのでその名の通りリアルタイムで送金と入金が行なわれるが、SKNBIは決済が毎営業日の10時12時14時16時の4回行なわれ、最長で送金の二時間後に相手銀行の管理業務の手に渡る。それらのシステムを使う送金は、銀行のテラー窓口で受け付けられた他行送金に限られ、手形あるいは口座振替サービスが対象になっている。
ところが市中銀行でのRTGSサービスが平均して一件あたり2万5千ルピアのチャージを徴収しており、高すぎるという声が消費者や業界内でも出されていた。その解決策としてインドネシア銀行は、RTGSサービス対象を一件1億ルピア以上の送金に限定し、2014年12月15日から全国でその適用を開始した。つまり1億ルピア未満の送金はSKNBIの決済時間にしばられるということになったわけだ。ならば数千万ルピアのリアルタイム決済ができなくなって困るではないかという不安が湧いてくるのだが、中銀は反対に「そのために銀行の窓口へわざわざ行くのか?」という問いかけを出してくる。
実態としては、はるかに多くの決済がATMやeバンキングあるいはモバイルバンキングで行なわれており、それらのシステムではリアルタイムに口座間の振替がなされているため、国民の経済活動はもはやそういう別機能での経済活動に移しかえられている面が強い。だから今回の変更で国民経済活動にマイナス要因を与えることはないだろうという中銀の判断が今回の方針決定を支える基盤に置かれている。中銀はまた、この条件を導入することで銀行内での資金流動性の向上に効果があるだろうとも予測している。
今回の方針決定は2014年11月28日付けインドネシア銀行回状第16/18/DPSP号で定められている。2014年11月のRTGS決済件数は1,508,874件、金額合計は10,290兆ルピアとのこと。


「クレジットカードPIN方式は半年間延期」(2014年12月22日)
インドネシア銀行が2015年1月1日から開始を予定していた、クレジットカードの本人検証にPIN番号入力を使う方針は、現場の開始準備がまだ整っていないとの判断から半年間延期され、2015年7月1日からの開始に変更された。社会告知と利用者に対する教育がもう少し必要とされている、とインドネシア銀行支払いシステム政策監督部長は述べている。
PIN番号入力による本人検証システムは、新規に発行されたクレジットカードおよび既存カードの有効期限が来たために新しいカードに取り替えられたものが対象になっており、まだ期限が来ていない既存カードは期限切れになるまで従来のサインによる本人検証システムが使われる。2020年7月1日まではクレジットカードのステータスによって本人検証システムが入り混じるが、その日以降はPIN方式でないクレジットカードの存在が認められなくなる。
部長は更に、2015年1月1日の開始をめどにして準備が終わっている部分はPIN方式を開始してまったく問題ないので、その開始すら半年間延期するということでは決してない、とも言い添えている。この本人検証方式の変更は、クレジットカード利用者と発行銀行が単にPIN番号での管理を開始するだけでなく、カードデータとデータ読取機ならびに管理システムがすべて整わなければ開始することができず、無理にそれを強制するとクレジットカード利用者がトラブルを引きかぶることになる。インドネシア銀行の延期決定はそういう配慮を踏まえてのものである由。
インドネシアクレジットカード協会GMはPIN方式への移行状況について、どの銀行も平均してクレジットカードオーナーの二三割がPIN方式に映りつつあると説明している。現在インドネシアで発行され、インドネシアで使われているクレジットカードは1,590万枚あり、2014年は10月までで2億6百万回の取引がなされ、金額は204兆ルピアにのぼっている。


「シンガポールに3千兆ルピアが置かれている」(2015年1月23日)
インドネシアのリッチマンたちが国外に置いている金は2億5千万米ドルにのぼる。そのうちの2億ドルはシンガポールにある、というマッキンゼーグローバルバンキングプールズの研究結果が報告された。それによれば、インドネシアのトップリッチマン60人とのインタビュー結果から、83%が外国の銀行口座を持っていることが明らかになっていて、政治スタビリティがかれらのリスク分散の重要な検討ポイントであるとのこと。11%は、インドネシアの政治舞台でこの先何が起こるのかがわかる人間はひとりもいない、と語っている。
かれらが外国の銀行に口座を開いて資金を置いているのは、その国のビジネス相手との取引の効率を高めることが第一目的になっている。シンガポールに置かれている2億ドルのうちの5千万ドルは不動産をメインとする非投資資産であり、1億5千万ドルが定期預金や有価証券などの投資資産である由。
インドネシア国内の資金需要というコンテキストから見れば、それらの在外資産は大きな潜在性を持っている。しかしインドネシアの銀行界がそれらの在外資産を国内に移転させるためには大きな困難が横たわっており、反対にインドネシアの銀行界はそのカウンターパートとして外国人が資金をインドネシアに置くことを促す商品を生み出すほうが早いかもしれない。その対象顧客セグメントはインドネシア在住のプロフェッショナルやビジネスマンたちであり、基本的にかれらは利回りの良い商品への志向が強いのだから。マッキンゼー社参事はジャカルタで開かれた経済界討論会でそう提案した。その話は国債二次市場での外資シェアが40%近くあることを討論会出席者に思い出させたようだ。そこに、更にどのような商品が上乗せできるのかということになってくるのだろう。
ところで、リッチマンだけでなくその他大勢のビジネスマンたちもシンガポールを筆頭に、国外に資金を置いている。インドネシア政府は輸出売上代金をすべて一旦国内銀行界に入れることを義務付け、百パーセントは実現していないもののそこのポイントは大幅に改善された。しかし一度入れた外貨をまた国外にある口座に送るのは自由であり、そうやって国外に出た金が利益を生んでもその把握に困難があるために徴税でロスが起こっている。
バンバン・ブロジョヌゴロ蔵相はインドネシア国民が3千兆ルピアを置いていると見られるシンガポールを訪問して二国間租税協定の内容を改定することの打診を行なった。シンガポール政府との間で特定国民納税者に関する経済活動内容の情報交換は従来から行なわれており、インドネシア国税総局が外国に情報要請する中でシンガポールは36%を占めている。シャンムガラッナム、シンガポール蔵相はインドネシア側の申し出に快く応じ、相互の国民納税者に関する情報を更に詳しく容易に交換し合うことを約束した。
バンバン蔵相は、インドネシア国民がシンガポールに置いている3千兆ルピアのうち2千兆はシンガポール金融界で証券等への投資に使われていると見ており、税収への潜在性は大きい。インドネシア政府は国外に置かれている資金を国内に引き戻すことで国内流動資金が増大することを望んでおり、その方策として次のふたつの政策が検討のまな板に載せられている。
ひとつは、国内のどこかに投資特別区を設け、シンガポールが持っている機能をその特別区で代替させれば資金が国内に戻ってくることが可能になること。もうひとつはその前提として、国民納税者が国外に置いてある資金に対して過去の徴税は行なわないことを約束しなければ、納税者の心理に足かせをはめることになる。前者については、国際投資金融機関をその特別区に誘致しなければならないこと、後者については国会の了承を得なければならないことなど、必要なステップの道のりは長いため、政策実現にはまだ時間がかかりそうだ。


「国内市場で資金がダブつき」(2015年2月10日)
インフレ抑制のために市場の資金流動性を抑制するツールとして中銀が設けている仕組みに銀行界から大量の資金が流れ込んでおり、銀行界が本来の社会的使命を忘れて中銀のツールで利殖にはげんでいるのではないかという皮肉がオブザーバーの口から洩れている。
中銀のインドネシア銀行界統計によれば、業界が中銀に預けている過剰流動資金は2013年11月の467.9兆ルピアから2014年11月は588.1兆ルピアに大きく増えた。2013年11月は市場の資金流動性が逼迫していた時期であり、そのときの過剰流動資金は2012年11月の524.4兆ルピアから大幅に低下している。
中銀総裁によれば、銀行界の資金ダブつき状況は12月も2015年1月も似たようなもので、顕著な変化は出ていないとのこと。総裁によれば、過剰流動資金現象の理由は貸付金が伸びていないのが主因であり、貸付金残高総額は2013年11月の3,081兆ルピアから2014年11月は3,448兆へと、わずか11%しか増えていない。
アッマジャヤ大学経済学教官は、中銀が設けている通貨コントロールのための諸手段は、本来の目的から外れた使い方へとシフトしているのではないか、と語る。「2014年は産業界への貸付があまり増加しなかった。中銀のデポジットファシリティは年利5.75%もの金利がつけられている。銀行界が資金ソースの中の低コスト部分に与えている金利率は年間2〜3%だ。産業界への貸付を押し上げることが容易にできないなら、その金利差はたいへんな魅力になる。」
しかし銀行業界者がそのようなうがった見方を肯定するはずもない。貸付にあてる資金を支出までの期間、ただ遊ばせておくような経営者はいないから、少しでも利を得るために短期資金として運用できるファシリティに流されるのは当たり前だ。中銀ファシリティはその目的にかなったものであり、他にも銀行間通貨市場(PUAB)やミニマスターレポ(MRA)といったツールがある。PUABは一日の取引高が10兆ルピアにのぼり、MRAは6千3百億ルピアになっている。銀行界はMRAの利用を増やしており、2013年は一日当たりの取引高が1千8百億ルピアだったから、凄まじい増え方になっていると言える。


「1万Sドル紙幣流通廃止」(2015年2月16日)
シンガポール政府は1万シンガポールドル紙幣を発行しているが、国民の日常生活における有用性は感じられない。その存在はむしろ贈収賄などの腐敗行為やマネーロンダリングのための便宜をインドネシア人に提供していると見たインドネシア政府がシンガポール政府にその廃止を要請し、シンガポール政府がそれに同意して1万Sドル紙幣の廃止を決めた。
腐敗行為における金のやりとりは現金が使われるのが普通だ。銀行や公的金融機関を介在させれば、政府の監視機関が不審な取引を即座に見出して捜査の手が入り、またその経路をたどって関係者が芋づる式に網にかかる。それを避けるには現金取引がベストだが、数億や数十億ルピアの現金受渡しをしようとするなら、トランクが必要になってくる。それもまた人目を引くものであり、世間の疑惑を招くことになる。1万シンガポールドル紙幣なら1枚がほぼ1億ルピア相当だから、封筒にそれを10枚入れただけで9億数千万ルピアになり、取扱はきわめて便利になる。
マネーロンダリングや腐敗行為関連取引の摘発を行なっているインドネシア銀行金融取引報告分析センター(PPATK)は、ガユス・タンブナン事件をはじめいくつかの汚職犯罪事件でその事実を発見している。もうすこし金額の小さい腐敗行為の場合では、1千シンガポールドル紙幣が使われるケースが多い。PPATKセンター長は、シンガポール政府の理解と協力でインドネシア国民の腐敗行為に障害が増加し、腐敗撲滅に貢献するのは間違いがない、とシンガポール政府の勇断を称賛した。
巨額の現金取引が禁止されたなら、腐敗行為はたいへんやりづらくなる。それを狙ってPPATKは通貨当局に対し、1億ルピアを超える取引は現金を使わず、すべて銀行送金・口座振替にするよう義務付けることを以前から提案しているものの、具体的な動きはまだない。
PPATKセンター長によれば、5億ルピアを超える現金取引は腐敗犯罪の背景を持っていることが十分に推測される、とのこと。なぜなら、まともな人間はそのような巨額の現金取扱に強奪や贋札のリスクを感じ、あえて現金でそれを行なおうとはしないのが普通だからだ。2003年から2014年までの5億ルピアを超える現金取引は、法人が行なったもの総額2百万兆ルピア、個人が行なったもの総額9万2千兆ルピアにのぼるとのデータが報告されている。
腐敗行為撲滅民間団体は一様にPPATKからの現金取引禁止法令制定案に賛同しているが、その内容を盛り込んだ現金取引の制限に関する法案はいまだに国会での審議も始まっていないありさまだ。


「社内他部門の無責任業務は他人事」(2015年2月26日)
2014年11月20日付けコンパス紙への投書"Uang Rusak di ATM, Tukar di BI"から
拝啓、編集部殿。わたしは2010年3月にBNI銀行ランプン州メトロ支店に口座を開設した利用者です。2014年11月7日18時半ごろ、わたしはBNI銀行カリバタシティ支店のATMから現金5百万ルピアを引き出しました。そして出てきた10万ルピア紙幣50枚の中の1枚が、真ん中に穴があいているものだったのです。
その日は金曜日だったので、わたしは週末に開いているBNI銀行を探してそのキズモノ紙幣を交換してもらおうと考えました。翌日わたしはBNI銀行ITCマンガドゥア支店を訪れました。テラー窓口でわたしがキズモノ紙幣とATMカードを示したところ、キズモノ紙幣は受け取れないと担当者が言います。テラー窓口スーパーバイザーも同じことを言い、わたしにインドネシア銀行へもって行くように言いました。
何と言うことなのでしょうか?その紙幣の出所はBNI銀行のATMだったというのに。[ ランプン州メトロ市在住、ムティアラ・アディンダ ]


「外貨での国内支払い禁止はザル」(2015年3月12日)
国内でのあらゆる取引支払いはルピアしか認めないことが通貨法で定められており、インドネシア銀行が昨年からその全面施行を開始したものの、依然として爬行性があって、一部の場面では相変わらず昔ながらの外貨による支払いが行なわれている。
バリ島では商品サービスの9割が外貨での値付けになっているため、それをルピア建てにさせるよう努めている、と中央銀行は語っているが、それはちょっとオーバーにしても、バリ島でいまだに米ドルをそのまま受け取ってくれる店がないわけではない。
インドネシア国内で働いているインドネシア人の中に、外貨で勤労報酬を得ている者がいる。リアウ島嶼州バタムでは、フォレックスなどにまったく無縁の一庶民であるにもかかわらず、毎日シンガポールドルの交換レートを気にかけているひとが少なくない。ふたりの子供を抱える主婦アンドリアニさん32歳は、夫が得てくるSドルの給料をどのタイミングでどこの両替商でルピアに換えるかという問題が毎日頭から離れない。同じような境遇にあるバタム在住インドネシア人は数多く、中央銀行もバタム島内のいたるところに外貨があることは十分に承知済みだと表明している。インドネシア国民にとって外貨を持つことはまったく自由だ。禁止されているのは、国内で外貨を支払いツールに使うことだけなのである。
しかしバタムでは強いSドルと弱いルピアというパワーの差、ジャカルタや他のビジネス都市では米ドルとルピアの差、がビジネスの場で外貨に向かう心理的傾斜を誘うのも事実なのである。ほんの数ヶ月前まで、バタムとシンガポールやジョホールバルを結ぶフェリーの港でのサービス料金がSドル建てになっていた。それは既にルピア建てに変更されている。バタムでビジネス用不動産賃貸はSドル建てが普通で、それはいまだに大勢が継続しており、支払いがルピアで行なわれるのであれば合法だが、使われる交換レートが売り手の恣意を色濃く溶け込ませていることが買い手のSドル支払いを煽る結果をもたらし、売り手の中には外貨支払いを受ける者が少なくない。
通貨法に定められているルピアだけの国内支払い方針の全面施行を政府が開始したときに、全国的にキャンペーンが行なわれたものの、国民のすべてにその情報が行き渡ったかどうかは疑問だ。自分の都合で法規に違反し、それを摘発されると「知らなかった。国民への広報告知を徹底的に行なっていない政府の責任だ。」という言い訳が通るのがインドネシアなのである。Sドルとルピアの二本立て経済が何十年にも渡って自由に行なわれてきたバタムでそれを急激に一本化させることが住民の嫌悪感を招くのは間違いないだろう。
バタムはフリーゾーンであり、国境が国外に開かれている特殊な国内エリアなのだ。そして住民の持つ国際感覚の高さは国内トップクラスだと言える。外国の品物が自由に入ってくることと、政府が持つ国民の福祉に対する責任との衝突がそこで起こる。バタム住民は外国産消費物資への嗜好がたいへん高いため、食品薬品監督庁の検査を通っていない人体に摂取される飲食品や医薬あるいは化粧品も広く流通している。外貨にせよ消費物資にせよ、その統御に政府が手を焼くのも当然なのかもしれない。


「下げ止まりを見せないルピアレート」(2015年3月18日)
2015年3月6日に1米ドル1万3千ルピアの心理バリヤーを突破したルピア交換レートは、依然としてじわじわと低下の傾向を示している。2008年の経済危機でわずか三ヶ月間に9,073ルピアから12,650ルピアまで暴落したときに国内に起こったパニック状況に比べて、今回のルピア廉にあまり悲愴感が見られないのはどういうことなのだろうか?
政府は既に、政府会計の安定を目指して国内の外貨需要をひとつひとつ軽減させてきた。最大のガンだった石油燃料輸入のための米ドル需要は、国内での燃料消費削減と燃料輸入にからんでいた腐敗の抑えこみ、そして燃料国際相場の低下といった追い風に助けられて効果が上がってきている。昨今話題になっているのは、船会社が港で輸出入コンテナにチャージしているターミナルハンドリングチャージが米ドル建てで行なわれているというもので、企業が貨物の輸出入を行なう際に必然的に米ドル需要が発生し、年間生み出されている1千万TEUSのコンテナのための9億5千万米ドルは国内の米ドル相場を押し上げるのに一役買っているという見解だ。やはり米ドル需要を抑えこむために、国内での米ドルによる支払いを政府は禁止したが、これもいまだ百パーセント実践には至っていない。
ともあれ政府が2015年度改定予算の算出に使った基礎数値の中の対米ドルルピアレートは12,500ルピアで、3〜5%の許容度を含んでいるため、まだその限界の中にあるという安心感が漂っているにちがいない。
もうひとつの要素としては、インドネシア経済のファンダメンタルズは決して悪化していないということに加えて、世界中の通貨に対して米ドルがワンサイドで上昇を続けている事実があり、それらの状況のためにあまり深刻な心理パニックが招き寄せられていないということが言えそうだ。
2008年の経済危機で三ヶ月間に起こった暴落は39%という激しいものだったが、今回のルピア廉は三年半かけて8,500ルピアから13,000ルピアに下がるというスローペースのものであり、年間平均低減率は15%でしかない。
ちなみに、2015年の三ヶ月間で米ドルがどう強まっているかという状況を見てみることにしよう。(通貨名: 2015年1月2日のレート/3月15日のレート [低減率])
オーストラリアドル: 1.22/1.31 [6.95%]
香港ドル: 7.76/7.77 [0.13%]
インドネシアルピア: 12,474/13,191 [5.75%]
日本円: 119.71/121.41 [1.42%]
マレーシアリンギット: 3.51/3.71 [5.96%]
NZドル: 1.28/1.36 [6.17%]
シンガポールドル: 1.32/1.39 [5.21%]
韓国ウォン: 1,094.17/1,138.77 [4.08%]
ユーロ: 0.83/0.95 [15.27%]
(上のデータはコンパス紙掲載数値から転載)


「金利率が高いのはなぜ?」(2015年4月1・2日)
銀行が国家経済に果たさなければならない使命を帯びているのは言うまでもないことだが、民間銀行であるかぎりは利益追求姿勢を持たないわけにも行かない。国有銀行は違うのかと言うと、インドネシアではその違いなどなく、国が国有事業体からの利益と配当を強く求めているから、国有銀行も勢い利益追求姿勢を強めることになる。一般庶民からはまるで雲の上のような給与をもらっている経営陣は、業績如何で首の心配をしなければならないのだから、民間型利益追求精神を持つのは当然の帰結となる。ちなみに、2014年の上位国有銀行4行の純利益は56兆ルピアにのぼった。BRI銀行24.2兆ルピア、マンディリ銀行19.9兆、BNI銀行10.8兆、BTN銀行1.1兆といったところ。年間経済成長が5.02%という厳しい状況の中でのその業績は、親方メラプティでは覚束ないものと評価される。銀行界貸付残高成長率は11.4%、第三者資金伸び率は12.2%だった。
BOPOと呼ばれる、事業活動経費と事業収益の比率は大きいほど収益性が劣っていることになる。国内一般銀行界のBOPOは2014年12月が76.3%で、2015年1月は82.2%に上昇した。一方、国有銀行界は69.6%から81.6%に大幅にアップしている。その改善は経費を下げることと利益を高めることのふたつの方向性を持つ。ところが経費は容易に下がらない。業界者によれば、インドネシアは広大な面積を持ち、おまけに多島国家であって、多くの都市が海に阻まれており、国民へのサービス浸透に支店網を拡大しなければならないが、なかなか廉くはあがらない、とのこと。一支店を設けるのに20〜30億ルピアが必要で、設けたあともその運営のために巨額の経費が必要になる。
銀行支店網のカバー率あるいは銀行普及率という問題のほかにも要因があることではあるが、国民の銀行へのアクセス率は低い。インドネシア人の大人では5人にひとりしか銀行口座を持っていないのだ。ちなみに、インドネシアの20%に比べてフィリピンですら27%という数字だし、マレーシアは67%、タイは78%と段違いの数字になっている。つまり一般庶民から第三者資金を集めて産業界に流すという銀行産業の使命が行なわれにくいという根本的な問題を銀行界が抱えていると言うことができるだろう。
別のデータを見ると、国民の68%が貯蓄しており、32%は貯蓄をしていない。銀行を含む公的機関に貯蓄しているひとは48%だから、あとの20%の貯蓄は社会性が低いものになっていると言える。一方、資金融通つまり借入をどこから得ているのかというポイントでは、銀行界が17%、インフォーマルな金貸しの類からが36%、インフォーマルを含む金融機関からの借金は無縁だというひとが40%いる。
そんな状態の中で銀行界が第三者資金を集め、貸付を行い、利益を追求するということの結果が現在の金利率を構成していると見てよいのではないだろうか?
ちなみに、インドネシア銀行の2015年1月データでは、銀行界の平均貸付金利率(p.a.)は、事業運転資金12.76%、投資資金12.29%、消費向け13.62%、零細事業向けは22.4%。そして一般在来銀行のNIMは4.24%だった。2014年12月の定期預金金利率はひと月もの8.57%、三ヶ月もの8.95%。2014年の定期預金金利率年間平均を見るなら、一ヶ月8.24%、三ヶ月8.75%、六ヶ月8.82%という数字が並んでいる。
産業界にとって、銀行界の貸付金利率が高いことは、事業戦略の足を引っ張るものだ。銀行界の利益追求が欲張りなのだという声もあるが、そればかりでもない。どの産業も似たようなもので、経費圧縮というのはストレスを精神に及ぼすものであり、できることならこれまで続けてきた待遇を維持したいとだれしも思うものだ。経営の中核から遠ざかるほど、爪に火をともすような惨めな勤労生活を厭う気持ちは強まるだろう。その方向性よりも、収入と利益を高めて行くほうが、ある種のひとびとにははるかにポジティブなことであるにちがいない。中央銀行は数十年にわたって銀行界に経費圧縮と健全体質の構築を指導しているが、現実に顕れている方向性はやはりポジティブなベクトルになっているようにわたしには思える。
ともあれ、産業界は高金利率借入で諸外国と対等な競争力を持てるとは思っておらず、勢い、金利率の低い外貨借入が盛んになる。低金利資金を手に入れて製品競争力を高めることはよかったが、借入返済のために外貨を調達しなければならない。ルピア安に加担するこの下地が更に輸出力を強化するというのは企業レベルの話であり、未加工一次産品が圧倒的マジョリティを占めるインドネシアの輸出体質では、国力強化につながっていかない、というインドネシア経済の構造的悪循環がそこにも起こっているようだ。
2014年は年間を通して銀行界の資金流動性がタイトになった。LDRが上昇したことで銀行界は第三者資金集めの金利率競争や一般消費者向け景品つき資金集めを活発化させた。競争が歯止めを失うことを防ぐために、金融サービスオーソリティが最高金利率の規制を加えたのも昨年のことだ。
特に巨額の資金を持つ預金者を勧誘するために、定期預金金利率交渉が激しくなった。その傾向は昔から現在まで持続しており、巨額の資金を持つ者は銀行が決めている金利率を上回るレートを獲得するために交渉に励む。2015年に入ってから資金流動性は軟化したが、大口定期預金者に対する金利率は相変わらずバラバラだ。
2014年には、銀行界が持つ第三者資金の42%が1億6千万近い総口座件数の中の1.6%に集まっていた。現在、国民が公的金融機関に預けた預貯金の国家保証は、預貯金保証機関が行なっている。インドネシア銀行が定める市中金利率指標であるBIレートを踏まえて、預貯金保証機関は妥当と見なされる保証最高金利率を定め、その金利率を超えている口座は保証対象外となる。おまけに、預金者ひとりあたりの総額が20億ルピアを上限としているため、口座をいくつに分割しようが、巨額の資金を預けた銀行が破産すれば、国からの保証は得られない。大口定期預金者はハイリスク・ハイリターンの真髄を実践しているにちがいない。


「インドネシアから貨幣の輸出」(2015年4月23日)
インドネシアの貨幣は造幣公社が作っている。インドネシア共和国造幣公社(Perusahaan Umum Percetakan Uang Republik Indonesia 略称Perum Peruri)がそれだ。その発端は1971年で、政令第60号によって国営会社クバヨラン印刷と国営会社アルタヤサが合併され、貨幣製造を使命とする公社が設立された。
この公社はインドネシア銀行が注文する貨幣の生産を主務としているが、有価証券用紙やパスポート、収入印紙・チュカイ納付証憑・土地権利証書用紙なども作っている。つまり、インドネシア銀行だけでなく、政府大蔵省や法務人権省も定常顧客であるということになる。
国家が国民の使用に供するために用意するものを実際に製造しているということではあるが、事業活動が決してその使命だけに限定されているわけでなく、インドネシアの造幣公社は2006年以来その特殊技術を生かして諸外国からの製造オーダーを積極的に受注している。贋造防止のセキュリティ技術が、その分野では鍵になる。
西カラワンの造幣工場には、紙幣製造機41基、硬貨製造機25基、チュカイ納付証憑製造機8基、収入印紙製造機5基、パスポート製造機2ライン、車検証明書製造機2ラインが配置されている。年間生産能力は紙幣が70億枚、硬貨は16億個とのこと。
これまでもマレーシア、タイ、スリランカ、ネパールなどからセキュリティ書類用紙の製造を受注して製品を納入しており、スリランカにはパスポート、タイには航空券を輸出している。そして今般、ついに外国の通貨生産の受注にも成功した。ネパールから1千ルピー紙幣3億枚、ソマリアからはシリング紙幣、アルゼンチンからはペソ硬貨といったところ。インドネシア銀行からのルピア貨幣発注は量と納期が大きく変動するため、造幣公社は他からの注文を取って生産の均等化を図りたいのだが、製品が製品だけに通常の消費物資のようにいかないのが難しいところだろう。
外務省が在外公館経由で各国政府に対して行なっているオファーをフォローするため、公社は現在、フィリピンとティモールレステに対して商談を進めている。


「疑惑通貨取引が激増」(2015年4月30日)
インドネシア銀行通貨取引分析報告センターが公表した2015年第1四半期の疑惑通貨取引件数は13,277件で、前年同期実績の9,050件から47%も増加した。
疑惑通貨取引とはその口座オーナーのプロフィールと通常の金銭出納パターンにそぐわない取引を意味しており、マネーロンダリングや犯罪行為の資金バックアップなどが疑われる取引と、普通の社会生活では必然性が感じられない巨額の現金の出し入れという異様な通貨取引のふたつの現象が含まれている。金融界はそれらの不自然で疑惑をもたらす取引を分析報告センターに届け出ることが義務付けられているのだが、この届出は言うまでもなく、口座オーナーの知らないところでなされているものであるため、普通の庶民がいつ疑惑の中に投げ込まれないかわからない環境に置かれていることは間違いないだろう。特にインドネシア社会はそういう環境を悪用して恐喝稼ぎをしようとする人間が少なくないのが怖いところだ。
巨額の現金出し入れというのは5億ルピアを超える金額を基準にしており、金の流れがトレースできないようにするために汚職取引で普通に使われている手法だが、もちろんマネーロンダリングのために使われることもある。
通貨取引分析報告センターによれば、2015年第1四半期でメインを占めた疑惑通貨取引は、コンサルタント、軍警察公務員、行政界立法界高官職者、国有事業体職員や地方政府事業体職員が行なったもので、ジャカルタ・東ジャワ・西ジャワで行なわれたものが多い。
インドネシア大学法学部インドネシア公正監視ソサエティコーディネータはその増加の原因を、新政権発足後のさまざまな政治的社会的不安定がコルプトルの安全感覚を助長している点にあると分析している。たとえば国家警察長官選任プロセスに端を発して国家警察犯罪捜査庁が汚職撲滅コミッション(KPK)つぶしを開始するという汚職捜査への大妨害が始められたことや、汚職犯罪服役者への恩赦計画などがかれらの心理を犯罪実行に向けさせている、というのがその分析だ。加えて汚職犯罪者に対する裁判所の判決は相変わらず軽いものに終始しており、インドネシアコラプションウオッチの統計調査では、2014年に出された判決の服役期間平均値は2年8ヶ月でしかない。服役中に恩赦がどんどん与えられれば、その半分くらいで出所できる者も増えるにちがいない。
汚職犯罪は巨額の現金が使われるのが常識化している。それができないようにすることで犯罪実行を抑止する効果があると通貨取引分析報告センター長官は確信しており、既に提出されている現金使用制限法案の検討を国会と政府が早急に開始するよう待ち望んでいる、と発言している。


「銀行が汚職の片棒を担ぐ」(2015年5月22日)
リアウ島嶼州アナンバス県職員の汚職資金の移動経路を捜査していた州高等検察庁が、アナンバス島のBNI銀行タルンパ支店で住民の当座預金口座が経路内にある事実を発見して住民に疑惑のメスを入れたところ、それを操っていたのは銀行職員で口座オーナーの地元民は無関係であったことが判明した。
県職員の汚職は2011年地方インフラ建設促進資金の使い残りを架空支出にして着服する手口が使われ、総額48億ルピアが掠取されたものと見られている。その金を移すためにBNI銀行タルンパ支店が協力し、住民の口座数件がその用途に使われた。
悪用された口座オーナーのマルズキ氏は高等検察庁の取調べに応じて事の経緯を供述したが、悪用されたと見られる口座オーナーたちの中で状況を明らかにしたのは、これまでのところマルズキ氏ひとりだけ。その話から、銀行職員がどのようなことをしていたのかが判明している。
2013年、BNI銀行タルンパ支店職員Rはマルズキ氏に新しい当座預金口座を開設するよう要請した。銀行職員が自分の業務成績に関連して、知り合いの顧客に口座開設を依頼するのはよくあることだ。その要請に応じて、マルズキ氏は口座開設手続きを行なった。ちょっとの間、金を動かすために使いたいのなら、今ある口座を使ってもよいとマルズキ氏はRに譲歩したものの、Rはどうしても新規口座が必要なのだと言って譲らない。
口座が開設され、マルズキ氏の手に小切手帳が届いたが、Rはその中の数枚にマルズキ氏のサインを求め、小切手帳そのものもマルズキ氏に渡さないで自分で保管した。口座の出納内容を示すステートメントもまったくマルズキ氏の手に渡らず、すべてをRが握った。マルズキ氏は折に触れてRにステートメントを渡すよう要求したが、Rがそれをマルズキ氏に見せたことすら一度もない。
こうして、2015年5月にマルズキ氏の取調べが高等検察庁で行なわれ、事の異常さにマルズキ氏は驚愕した、というストーリーだ。検察側はアナンバス県庁とBNI銀行タルンパ支店の要職にある者各一名を拘留して取り調べており、また銀行職員数名にも取調べのための出頭命令が出されている。


「銀行って何をするところ?」(2015年5月22日)
2015年1月19日付けコンパス紙への投書"Menkeu, Gubernur BI, dan Biaya Administrasi Bank"から
拝啓、編集部殿。大蔵大臣とインドネシア銀行総裁に教えていただきたいことがあります。銀行が預金者の口座から管理費を毎月引き落とし、そうやって預金者の口座残高をゼロにしてしまうような規定を実施している銀行のあり方は、倫理にかなったものなのでしょうか?
諸銀行の年末決算の結果報告がさまざまなメディアで報道されているのを、われわれは目にします。その黒字利益は数千億ルピアから数兆ルピアという、ものすごいものです。それを問題にしようと言うのではありません。事業というものの本質は利益追求なのだから。
わたしが問題を感じているのは、口座残高が最低残高規定金額に至った場合のことです。最低残高規定は銀行によって異なっています。5万ルピアとか10万ルピアというような金額です。
残高の小さい口座に対して銀行は一律一様に管理費を徴収するべきではない、とわたしは考えます。貧しい口座保有者を更に貧困化させることは倫理に反しているように思えます。理想を言うなら、そのような口座は管理費の対象から除外されるべきでしょう。口座を閉めてはいけません。将来、口座保有者がその口座をまた利用できるような経済状況になったときのために、1ルピアも取り上げることなくいつでも使えるようにしておくべきです。
銀行職員は景品を餌にしてだれかれなく5万ルピアで口座を開くよう誘い、口座を開いた者が口座を閉めて自分の金を取り戻そうとすると、最低残高規定に引っかかって銀行に取り上げられてしまうのです。何という行為なのでしょうか、これは。[ リアウ州ベンカリス在住、パンドゥ・シャイフル ]


「国内での外貨支払い全面禁止」(2015年6月11日)
ルピアの対米ドルレートは回復の兆しが見えず、今や1万3千ルピア台を堅持しているように見える。2011年には8千5百ルピア台を動いていたことを思えば、この変動の激しさは大きなリスクをもたらすものであり、それを裏返しにするなら好運のチャンスもまたとてつもない大きさであるように思われる。
このルピアレートの安定と、そして経済力に応じた妥当なレベルへの回復を実現させようと躍起になっているインドネシア銀行が、インドネシア領土内におけるルピア通貨使用義務に関する2015年6月1日付け回状第17/11/DKSP号を出した。この回状は先にインドネシア銀行が定めた中銀規則第17/3/PBI/2015号の実施細則に当たるもので、その中銀規則はインドネシア共和国統一国家の領土内で取引と支払いを行うインドネシア国籍者および外国籍者に対してルピア通貨を使うことを義務付けている。
そもそも、インドネシア国内で使われる公式通貨はルピアだけと2011年法律第7号「通貨法」で定められているにもかかわらず、現実には国内で月間60億米ドルにのぼる現金と非現金の外貨取引がいまだに行なわれている。この金額は、本来ルピアでできる取引なのに、一部国民が恣意的に外貨(主に米ドル)を使って行なっているものであり、貿易等国際取引に関わるようなものはそこに含まれていない。国内で発生しているそういった余分な外貨需要をなくしてしまえば、米ドルのワンサイド的な上昇は多少ともブレーキがかかるだろうというのが中銀の読みのようだ。
これまで中銀は、習慣的に外貨建てを使っている業界に対し、建値表示は変えなくて良いが支払いはルピアで、という指導をスタートさせ、次いで建値表示はルピアと米ドルを並行表記してよい、という言い方に変え、そして今回最終的に米ドル建て価格表記は一切まかりならない、という明確な方針を打ち出した。おかげでスッキリしたのは、わたしだけではあるまい。
そのため、商品の値札・価格表・サービスチャージ・賃貸料金・港湾荷役料金や空港貨物関連料金・契約書・見積書・領収書など、これまで米ドル建てのものが混じりこんでいた分野に対して、ルピアの一本建てが義務付けされたのだと強調して念を押している。
またこの関連で、国内取引において支払い者がルピア通貨で支払う場合に、何びともそれを拒否してはならないことも明確に謳われている。拒否してよいのは、支払いに使われる現金の中に贋造ルピア貨幣が混じっている疑いがある場合にかぎられる。
ところで、中銀が国内の取引と支払いのルピア通貨一本建てを強化しているからといって、外貨を所持することを怖がる必要はまるでない。国内で取引と支払いにそれを使わないかぎり、インドネシアは従来どおり自由通貨の国なのである。また6月1日付け回状でも、ルピア通貨一本建てが適用されない5分野について、念押しがなされている。すなわち、国家予算執行の枠内でのもの、贈与の授受、外国との貿易取引、銀行での外貨預金、国際ファイナンシング取引、の五つは外貨建てと外貨支払いが認められる。
実はもうひとつ話題になっている問題があり、これは2011年通貨法制定時から声高に叫ばれているものでもある。つまり、外国人勤労者に対する米ドル建て給与支払いの問題で、給与の米ドル支払いは通貨法違反であると法曹関係者は一様に主張している。ただ現実問題として、それをだれがどう取締るのかという点については、具体的な政府の動きはまったくないようだ。そもそも政府労働省自身が外国人勤労者の雇用主から取り立てている専門技能開発基金(DPKK)もいまだにルピア建てになっておらず、このまま行けば行政法廷問題になりかねない。
ともあれ、外国人勤労者との雇用契約で給与がルピア建てのルピア払いとなったとき、冒頭で述べた激しいルピアレートの変動がエクスパットにとって怖ろしい罠になる可能性は小さくない。そんなリスクを自ら引き被って、はたしてあなたはインドネシアで働きたいと考えるだろうか?


「銀行は営利企業」(2015年7月1日)
2015年1月30日付けコンパス紙への投書"Perbankan Kini Tidak Lagi Bersahabat"から
拝啓、編集部殿。銀行の管理費徴収が口座残高を削り取っていくことを苦情する2015年1月15日付けコンパス紙に掲載されたパンドゥ・シャイフルさんからの投書"Menkeu, Gubernur BI, dan Biaya Administrasi Bank"(「銀行って何をするところ?」(2015年5月22日)ご参照)がわたしの関心を引きました。
1984〜85年、わたしは中央ジャカルタ市クブンシリのある国有銀行でタバナス(国家建設貯金)に加入し、貯金していました。最終残高は2万ルピアなにがしだったのですが、貯金通帳がどこかに紛れ込んでしまい、そのままになっていました。1987年にその通帳が見つかったので、残高がどうなっているのかを確かめるために好奇心混じりでクブンシリの銀行を訪れて記帳してもらいました。最終残高が7万ルピアなにがしと記載されたことに、わたしは心中で狂喜した記憶があります。なにしろ当時1米ドルは2千ルピア台だったのですから、その金額は十分に大きいものだったのです。
そのような銀行での預金や投資の黄金時代は、いまや過去のものになりました。わたしの見るところでは、銀行の一般口座に関連して銀行が徴収している費用は少なくとも9種類あり、それが口座残高を削り取って行くのです。クレジットカードやシャリアバンキングに関わるものをそこに加えたら、そんな生やさしいものではなくなってしまいます。
それらの銀行徴収フィーは顧客の口座から銀行の資産に移し変えられ、決算報告書の利益高を膨らませていくのです。その9種類のフィーとは、管理費、貸し出し金利、手数料、印紙(銀行は一般売店でバラ売り印紙を買っているという理由で印紙額面に1千ルピアを上乗せしています)、ペナルティ、評価費、保険、保険リファンド、抵当権抹消手続き費です。[ 西ジャワ州ブカシ在住、ズルキフリ ]


「新札需要シーズン」(2015年7月9日)
ルバランになると子供たちは「お年玉」への期待に胸弾ませる。ルバランを回教正月と呼ぶのは、そういう日本の正月の習慣に類似したものが多々あるがゆえなのだが、ルバランつまりイドゥルフィトリというのは回教歴元日ではない。ともあれ、お年玉を臭く汚い札でもらうのは有難味を消滅させてしまうこと疑いもなく、お年玉を与える側すら、めでたい日を汚すようなことをして気持ちの負い目を感じることになってしまう。
だから、ルバランの日が近付くに連れて、新札需要が全国的に膨れ上がっていく。全国的にルバラン帰省者をもっともたくさん抱えるジャカルタとその周辺地区で、新札需要が最大になるのは言うまでもないことだ。ジャカルタのインドネシア銀行本店は、国民のその需要に応えるために自ら新札両替サービスを行っている。もちろんインドネシア銀行の両替サービスというのは、コインや1千ルピアなどの小銭を市中の一般銀行があまり取扱いたがらないという実態を考慮して、小銭を必要とする低経済層庶民向けのサービスを普段から行っているのだが、ラマダン〜ルバランシーズンになると「お年玉」需要が更なるサービスの追加を要求するという現象なのである。
2015年は6月17日から7月15日までの毎日9時から13時までインドネシア銀行はモナス公園駐車場に両替サービス車を繰り出し、さらにそれに協力する14の市中銀行がそこに加わってルバランのための新札両替サービスを実施している。7年前から開始されたこのサービスは、インドネシア銀行の現金管理方針に齟齬が出るのを避けるために、金種ごとにひとりあたりの交換枚数の上限が設定されている。2千ルピア札、5千ルピア札、1万ルピア札、2万ルピア札のそれぞれがひとり百枚までしか交換してもらえない。つまり、ひとりが交換できる金額は370万ルピアまでということだ。そしてその金種内容から、お年玉に使われる紙幣はその4種が標準になっていることがわかる。
この種の需要が起これば、一般庶民がそこにビジネスチャンスを見出して金儲けに励むのがインドネシア文化だ。銀行での両替にコミッションはいらないから、汚い紙幣と新札が等価で交換される。その新札を他の市民に交換してあげるとき一割をさっぴけば利益が出る。そういうビジネスが大昔から行なわれており、バスターミナルには両替おばさんが大勢出没するのがルバラン帰省シーズンの風物詩だった。政府機関がそういう歪んだ個人ビジネスの道具に使われるのは正しいあり方ではないため、インドネシア銀行が金額制限をしている理由はひとつではないということが言えるにちがいない。
インドネシア銀行の両替サービス車はモナス以外にも都内数ヶ所に出ており、はしご両替を避けるために両替者のKTP番号が管理されている。モナス駐車場に並ぶ両替サービス車の中にいるBCA銀行サービス車の責任者は、今年の人気金種はランクアップしたと印象を語る。「今年人気の高いのは5千ルピアと1万ルピアですね。昨年は2千ルピア紙幣が一番たくさん両替されていたのに。」
モナスで両替サービスを利用していた38歳のご夫婦は、実用的でイージーだから毎年そこで両替していると語る。「帰省して故郷の親族や知り合いに2百万ルピアくらいをバギバギするんですよ。」
銀行以外にも、国鉄が帰省者のために新札両替サービスを行なっている。タナアバン・パサルスネン・チキニ・ガンビル・ジャティヌガラ・ジャカルタコタの6駅で午前11時から12時までの一時間だけ。ひとりあたりの交換金額は75万ルピアが上限になっている。


「奇妙なサービス姿勢」(2015年7月10日)
2015年2月12日付けコンパス紙への投書"BTN ke BRI Via ATM Bersama"から
拝啓、編集部殿。2014年11月24日にわたしはBTN銀行ATMカードを使ってBRI銀行の口座に2百万ルピアを送金しました。利用したATM機は共同ATMです。送金結果を示すATMの証憑は、送金が成功であったことを示していました。
BTN銀行の口座からその2百万ルピアは引き落とされましたが、BRI銀行の口座をチェックしたところ、入金がなされていないのです。わたしはこのできごとを12月12日にBTN銀行ブキッドゥリ出納オフィスに届け出て、14稼働日間その処理を待つように言われました。その後BTN銀行から連絡があり、BTN銀行はBRI銀行と調整を取ったので、お金はBRI銀行口座に入っている、と知らせてきました。ところが、わたしがこの問題の経緯を示すすべての資料を携えて東ジャカルタ市パンジャイタン通りのBRI銀行プルムナス支店を訪れると、また処理を待つように言われたのです。
BRI銀行の通帳をチェックしましたが、BTNから送った2百万ルピアは依然として記帳されません。それでクレーム電話窓口の7420847番に電話すると、BRI銀行本店へ行くように言われました。BRI銀行カスタマーサービスによれば、わたしはBTN銀行をもう一度チェックしたほうがよいそうです。というのは、伝票処理が終わっているだけで実際の資金移動がまだなされていない可能性があるからだと。
このような銀行間のプロセスに、わたしはたいへん当惑しています。銀行顧客であるわたしには銀行間の送金決済の手続きなどわかりませんし、こうやって何の成果もなく「あっちへ行けそっちへ行け」とピンポン玉にされるのではたまりません。
どちらもが有力国有銀行であるBTNとBRIにお願いします。この問題を早急に解決してください。被害を蒙っている銀行顧客のわたしは、いつまでも曖昧な海に漂わされることを好みません。[ 南ジャカルタ市在住、プルワリニ ]
2015年2月25日付けコンパス紙に掲載されたBRI銀行からの回答
拝啓、編集部殿。プルワリニさんからの2月12日付けコンパス紙に掲載された苦情について、次の通りお知らせします。
共同ATM経由で銀行間送金を行なった場合のトラブルの苦情先はカード発行銀行になりますので、今回のケースではBTN銀行になるわけです。苦情を受けたカード発行銀行は問題の解決をはかるためにフォローします。この原則について当方は、1月27日にご本人がコールBRIにコンタクトなさった際に説明申し上げております。[ BRI銀行企業秘書、ブディ・サトリア ]
2015年3月2日付けコンパス紙に掲載されたBTN銀行からの回答
拝啓、編集部殿。2月12日付けコンパス紙のプルワリニさんからの投書について回答します。銀行間送金がうまく行なわれなかったためにプルワリニさんがご不快を抱かれたことについて、まずお詫び申し上げます。当方はこの問題についてフォローし、問題解決は既になされました。お金は送金時にBRI銀行口座に入っています。当方はプルワリニさんに状況を説明し、ご本人はそれをご了承くださいました。[ BTN銀行企業秘書代行、エコ・ワルヨ ]


「よくある行き違い」(2015年7月16日)
2015年1月22日付けコンパス紙への投書"Data Bank Kacau"から
拝啓、編集部殿。2006〜2007年にわたしはユダバクティ銀行から無担保融資を受けました。返済が完了する前に、わたしの債務はそのときオープンしたばかりのシナルマス銀行に移されました。わたしが働いている会社のグループ会社でもあったからです。そしてわたしは会社の従業員だったので、わたしの年金が担保に当てられました。
2008年にわたしは会社を辞め、わたしの債務はわたしの年金の一部がその返済に充てられて引き落とされました。2013年にある別の銀行に住宅取得ローンを申請したところ、わたしはコレクト5のカテゴリーに区分されていることを理由に申請が却下されました。そのできごとを調べて行ったところ、シナルマス銀行に問題があったのです。
わたしは2014年10月にシナルマス銀行タムリン支店とマンガドゥア支店を訪れました。ところが銀行側には、わたしが債務を持って銀行と取引していたことの記録が一切ないのです。その年12月にわたしはインドネシア銀行にコンタクトし、シナルマス銀行が提出したわたしの債務状況に関する報告を知ることができました。それによれば、わたしは2008年以降シナルマス銀行に5百万ルピアほどの債務があり、金利計算は継続していることになっているのです。
それで、わたしは問題解決を求めるためにシナルマス銀行タムリン支店を12月に訪れました。銀行職員のティアさんは、「わたしとの間に取引はなく、わたしに対する債権もありません。」と言いました。そしてわたしがインドネシア銀行から入手した資料を示したところ、その事実をはじめて知ったそうです。シナルマス銀行のシステムの混乱は驚くばかりです。[ 西ジャワ州デポッ市在住、ヘンドラジャヤ・クリスティアン ]
2015年2月3日付けコンパス紙に掲載されたシナルマス銀行からの回答
拝啓、編集部殿。ヘンドラジャヤ・クリスティアンさんからの2015年1月22日付けコンパス紙に掲載された投書へのフォローに関して、次の通りお知らせします。ヘンドラジャヤ・クリスティアンさんは確かにシナルマス銀行の債務者であり、その債務はいまだ完済されておりません。ご本人とシナルマス銀行は既にその件で話し合いを行い、ご本人はシナルマス銀行の説明を了承してくださいました。
15年1月26日にヘンドラジャヤ・クリスティアンさんは債務を完済され、シナルマス銀行は問題の債務が消滅したことを明らかにする証明書をお渡ししました。ヘンドラジャヤ・クリスティアンさんの苦情に対する当方の回答は以上の通りです。ありがとうございます。[ シナルマス銀行マンガドゥア支店長、イラワティ・ルスリ]


「お粗末なクレジットカードセキュリティ」(2015年7月24日)
2015年2月14日付けコンパス紙への投書"Hak Konsumen Korban Pencopetan"から
拝啓、編集部殿。南ジャカルタのポンドッキンダモール(Pondok Indah Mall)1内にある履物店アマンテで財布がなくなったことを、2015年2月8日(日)14時ごろ、わたしはモールの警備員に届け出ました。財布には、BNI銀行ビザゴールドカード・シティバンククレジットカード・マンディリ銀行ATMカード・BNI銀行ATMカード・BCA銀行ATMカード・ジャカルタのKTP(住民証明書)・A種運転免許証・インヘルス保険カード・NPWP(納税者基本番号)カード・公務員身分証・そしてさまざまなショッピングカードが入っています。警備員のわたしに対する応対は的確で丁重でした。
警備員事務所で、なくなったクレジットカードとATMカードをすぐにブロックするよう銀行に連絡するのに事務所の電話を使ってかまわないと勧められ、わたしは電話番号14000、500888、6999、021500888、50046、0150046、021252999、02152999888へ逐一電話して、カードのブロックを要請しました。
それらの電話がまだ終わりきっていない14時9分に、わたしの携帯電話に連絡が入りました。PIM1からそれほど遠くないルバッブルスのポインススクエア内携帯電話センターで8,499,000ルピアのビザゴールドカード使用があったことをBNI銀行が通知してきたのです。続いて14時20分にシティバンクが、ポインススクエア内のJMセルラー店でわたしのマスターカードが8,703,500ルピアの買物に使われたことを通知してきました。
そのあとシティバンクは15時20分に、メトロ貴金属店でシティバンクのクレジットカードが11,505,000ルピアの買物に使われたが、カードに既にブロックがかけられていたため、二度トライして二度とも取引は不成功だったことを連絡してきました。わたしは自分のカードが使われたポインススクエアの店を訪れて、犯行の状況を尋ねました。それらの店は犯人が偽造サインした取引証憑を示してくれましたが、どの店もレジ近辺の状況を写す防犯カメラが設置されていませんでした。
19時17分に帰宅してから、必ずPIN番号を使うマンディリ銀行ATMカードが間違いなくブロックされていることを確認するために、わたしはふたたびマンディリ銀行に電話しました。すると、わたしがPIM1の警備員事務所から連絡したブロック要請が霧消していたことが判明したのです。わたしは再びブロック要請の手続きを強いられました。更に出納記録をチェックしたところ、犯人は15時13分にメトロ貴金属店での11,505,000ルピアの買物支払いをマンディリ銀行ATMカードで行なっていたことが明らかになりました。次いで16時57分にはベベッゴレンレストランで117,500ルピアのお食事支払い。
犯人は身長165cmくらいの50代女性で、慎ましやかな服装をしていたそうです。犯人は更にわたしのBNI銀行ATMカードをターゲットにして口座内のわたしの金を使い続けました。PIN番号がわからなければできないはずのことを。
BNI銀行クレジットカードとマンディリ銀行ATMカードの使用者検証セキュリティ対応とプルーデンシャルバンキング原理実践姿勢をわたしはまったく残念に思います。行なわれているのはそのカードが金額いくらの取引に使われたというSMS連絡だけであり、異様な支払いに使われようとしているので承認を求めるという姿勢が皆無なのですから。
もっと残念なのは、BNI銀行とマンディリ銀行のATMカードについて、本人以外には知ることのできないはずの守秘保護されているPIN番号を使って犯人が容易に他人の口座の金を使うことができた事実です。今回わたしの身にふりかかった犯罪行為によって引き起こされた損害を負担することをわたしは拒否します。[ 中央ジャカルタ市在住、アニー・スチプト ]
2015年2月28日付けコンパス紙に掲載されたマンディリ銀行からの回答
拝啓、編集部殿。アニー・スチプトさんからの2015年2月14日付けコンパス紙に掲載された投書に関して、不愉快なご体験に対してまずお詫び申し上げます。当方が調査したところでは、アニー・スチプトさんは14時45分にマンディリコールセンター14000に届出をなさいましたが、受付サーバーのところで止まっており、マンディリケアサービスオフィサーのところまで届いていませんでした。マンディリケアサービスオフィサーはカードをブロックするに当たって、カードオーナーの確認を必要としているのです。マンディリコールセンター14000宛てにアニー・スチプトさんが19時11分になされた二度目のコンタクトによって、最終的にカードブロックはなされました。一方、苦情の対象になっているカード使用は15時13分と16時57分に起こっています。
規定では、マンディリデビット(ATMカード)がブロックされる前にマンディリ銀行が受け付けたカード使用はカードオーナーが全責任を負うことになっています。この説明は2015年2月16日に口頭と書面でアニー・スチプトさんにお伝えしております。
マンディリ銀行顧客からのご質問・ご提案は当方カスタマーサービス宛てに、24時間サービスのマンディリコール14000あるいはウエッブサイトwww.bankmandiri.co.id のcontact us メニューを経由してご連絡いただけます。またmandiricare@bankmandiri.co.id 宛てにeメールをご利用いただくことも可能です。[ マンディリ銀行企業秘書、ロハン・ハファス ]


「定期預金金利率が下降」(2015年7月30日)
大量の資金を持っている階層が、景況の悪化を先読みして資金運用先を定期預金に振り向ける傾向が強まっている。2015年Q1に始まった銀行界第三者資金の定期預金シェア拡大は続伸中だ。2015年5月の定期預金シェアは48.8%で、前年同月の46.55%を追越している。銀行界第三者資金は定期預金・普通預金・当座預金の三種から成っており、その中で定期預金は預金金利率がもっとも高いために銀行界にとってはハイコスト資金となる。コスト負担を軽減させるためには、定期預金金利率を引き下げなければならない。
銀行界は定期預金金利率の引下げにとりかかっている、とBCA銀行分析室長は語る。「2015年上半期の資金流動性はたいへん緩く、2014年のタイトの状況とはまるで正反対だ。昨年は資金集めのために業界は定期預金金利率を争って引き上げたが、今年はそんな必要性がさらさらなく、各行は金利率を下げ始めている。」2014年末の平均金利率8.5%はいま8.1%に下がった。
2015年4月時点のルピア建て定期預金残高総額は1,741兆ルピア、普通預金は1,102兆、当座預金は6,390億となっている。同じ時点の外貨建ては、定期預金3,180億ルピア、普通預金1,010億、当座3,149億ルピア。一年前の状況と比較するなら、ルピア建て定期預金1,641兆ルピア、普通預金1,188兆、当座預金6,050億。外貨建ては定期預金2,980億ルピア、普通預金969億、当座預金2,840億というデータだ。預貯金保証機関は最近の銀行界第三者資金の傾向について、普通預金・当座預金に入れていた資金を定期預金化する動きが強まっている、とコメントしている。「資金を短期回転させて利益を得る機会が狭まっていることから、資金運用を定期預金に集中させる傾向が強まっている。一方で、銀行界の貸付金利率も低下傾向に入っており、資金流動性も下降している。」
金融界ペンション資金運営者は、景況の鈍化が資金運用を定期預金に振り向けることを促している、と述べている。諸外国の株式市場の動向も不確定さを増しており、投資先の選択が厳しさを増すために安定的なものの魅力が高まっているとのこと。


「銀行界の脱路は金利収入からの脱皮」(2015年8月17日)
銀行界顧客が銀行に置いている資金を定期預金に振り向ける傾向が強まっている。普通預金や当座預金をできるだけ定期預金に切り替えたいのは、預金金利率に大きい差があるためだ。景況のスローダウンによる流動資金量の変化がその傾向を支えている。
銀行界の状況は、数ヶ月前から第三者資金残高伸び率が貸付金残高伸び率を上回る状態が続いており、LDRは低下の一途をたどっている。金融サービスオーソリティの2015年4月データは銀行界の定期預金総額が一年前の1,684兆ルピアから2,059.9兆ルピアに22%も増加したことを示している。同じ期間に当座預金は845兆から954兆に13%増えたが、普通預金は1,165兆から1,203兆へと3.2%しか増えていない。
資金コストの増加と収益基盤となっている貸付金利収入の停滞が銀行界の事業収益を悪化させている。なにしろ15年4月の銀行界総事業収入210.2兆ルピアの中で、金利収入は74.7%を占めているのだ。14年12月には24%の金利収入伸び率を記録したものの、15年4月の伸び率は18%に減った。収入の大黒柱が停滞する一方でコストが上昇するため、事業収入に対するコスト比率は2014年4月の77.2%から79.9%へと上昇した。
既に数十年前から、銀行界の収益基盤を金利率スプレッドに頼ることなく、フィーベースインカムに転換せよという行政指導が鳴り響いていたにもかかわらず、実態は上で見たような状況が相変わらず継続しており、国家経済推進のための低金利というコンセプトは不完全燃焼のまま旧態然として維持され、グローバル経済の中で相対的な高金利率国としてインドネシアが世界各国の投資家を引き寄せる原動力となっている。
収益性悪化の抑止をはかるために銀行界は非金利収入を伸ばすことに注力しなければならない。各行経営者は非金利収入増をどのようにして実現させるかということに頭を痛めているところだ。マンディリ銀行企業バンキング担当取締役は、顧客が金を動かすことが銀行サービスの利用につながるのであり、サービスが利用されることで銀行にフィーが入ってくる。つまり、銀行顧客にもっと頻繁に取引をしてもらうことがその解答であるのだから、そのために銀行に何ができるのかを創造的に考えて行きたい、と語っている。


「通貨レート戦争とルピア」(2015年8月31・9月1日)
ソース: 2015年8月24日付けコンパス紙 "Rupiah dan Berkecamuknya Perang Kurs"
ライター: ガジャマダ大学公共政策経済研究センター長、Aトニー・プラスティアントノ
内閣リシャッフルでポジティブな感情の醸成に努めている最中に、ルピアは再びふたつのネガティブな感情に翻弄された。ひとつは中国元のデバリであり、それは通貨レート戦争を煽るとともに石油国際価格を暴落させた。元のデバリは2%で、石油国際相場はバレル当たり40米ドルに下がった。ルピアレートもほとんど1万4千ルピア/米ドルに接しかかっており、先週末のインドネシア証取平均株価指数は4,335ポイントにダウンしている。
通貨レート戦争は今回始まったことではない。2009年のグローバル経済クライシスで米ドルを弱めるために米国政府が意図的に紙幣の増刷をしたことから、ルピアは2011年7〜8月に8,600/米ドルにまで上昇し、外貨の洪水に見舞われて外貨準備高は1,247億米ドルにアップした。
今、状況は変わった。通貨レート戦争が再燃したが、その原因は中国が故意に元を弱めたためだ。中国の競争力がおかしくなってきたための、テコ入れ措置だ。労働者賃金と土地価格は上昇を続け、輸出パワーが弱まった。元のデバリはインドネシア向けを含めて中国の輸出力を再起させるだろう。両国間の貿易バランスはまたインドネシア側の入超を広げるにちがいない。こうしてルピアに対するネガティブ感情がまとわりつく。
その一方で、米国連銀は現在0.25%である指標金利レートの引上げをにおわせ続けている。金利率の実勢が変化しなくとも、市場はそれに反応して米ドルレートを上昇させており、その影響を蒙ってルピアの軟化が継続している。
元のデバリは他国の通貨レートの軟化を誘うものと見られている。少なくともベトナムはドンを意図的に軟化させた。インドネシアもそのレート戦争に加わって、1万5千ルピア/米ドルのレベルまで放置しておけばよいのだろうか?
そんなことは絶対にない。今現在ルピアは大きく沈んでおり、実力に対して激しいアンダーバリューになっているのを認める声は多い。現実に、インドネシアはルピア安の効用を得ていないのだ。中国やベトナムのような工業製品を輸出の主力にしている経済構造の国々とは、条件が異なっている。元やドンが引き下げられれば、かれらの工業製品に対する輸出注文は増えるだろう。
インドネシアは反対に、輸出の主力は一次産品だ。ルピアが安くなったといっても、インドネシアのパーム油・石炭・ゴム・錫などの輸出注文を世界の消費者が増やすようなことにはならない。ましてや、今世界の石油価格は暴落しており、石炭やパーム油のような石油を代替する一次産品の価格は押し下げられるものと予想されている。
ルピア安は貿易バランスを黒字に転換させたが、忘れてならないのは、その黒字が機械などの資本財輸入の減少に由来していることだ。それはインドネシアへの投資が落ち込みつつあることを示している。
他面、ルピア安は企業や政府の外国借入の返済を困難にするだろう。現在、インドネシアの外国借入総額は3,040億米ドルだ。もしレート戦争に巻き込まれたなら、悪影響の方がはるかに大きい。
いったい何ができるのか?まず、中銀が投機の余地を狭める方針を採ったことは正解だった。2万5千米ドルを超える外貨購入にその必要性を示す証拠書類を添付させるよう義務付けたこと。投機目的に使われないよう、外貨購入はその用途が明白に存在していなければならない。
次に、政府が国債と国有事業体株式を株式市場で買い戻すという議論は、実行されなければならない。2009年クライシスで米国政府が行ったのと類似の政策だ。米国は紙幣の増刷をしたが、インドネシアは政府の国家予算と国有事業体の資金で行なう。価格安定と市場のパニックをやわらげるのがその目的だ。
株価の暴落は現実世界でなくバーチャル世界で起こっていることだから、捨て置いてかまわない、という意見にわたしは反対だ。その見解は正しくない。株価が激しく暴落し、証券市場が停滞すれば、企業活動に障害が起こる。事業拡大が難しくなり、雇用増の道が狭まってしまう。事業拡大の資金は証券市場で調達されているのであり、証券市場は実業セクターと固く結び合わさっているのだ。
みっつ目、政府は米ドル支出をもっと注意深く、選択的に行なわなければならない。外貨準備高は1,070億ドルにまで減少している。よっつ目、中銀は金利政策をコンサーバティブに行なわなければならない、今年のインフレ率は4〜5%にコントロールできるように見えても、それだけの理由でBIレートを引き下げることはできないのだ。ルピアレートの軟化がもたらすリスクの監視は持続的に行なわれなければならない。
最後に、わたしはまだ、現在のパニック状況が一時的なものであると信じている。資本家の大半は米ドルを握りたいようだが、それがルピアを谷底へ転落させているのだ。そんな状態がいつまでも続くわけがない。その証拠に、ニューヨークのダウジョーンズインデックスはいま16,459だ。しばらく前は18,300台にあったというのに。あらゆるものごとには限りがある。ルピアの暴落もそうだ。リミットが必ずあるのだ。


「口座破りの裏にあるビジネス」(2015年9月1日)
銀行口座主が引き出していないのにATMカードで巨額の預金が別口座に移されたり現金が引き出され、口座残高はひどい場合ほとんどゼロという金額しか残っていないという事件は引きも切らずに起こっている。そんな顧客の苦情をBCA銀行と国家警察機動捜査次局が掘り下げ、スキミング被害ではないかという予測のもとに捜査が進められて、警察はついに犯人を突き止めた。
主犯のE41歳はスキマーを使ったATMカードデータスキミング実行犯として逮捕され、最近出獄したばかりだ。前科では自分でスキミングを行なったが、今ではそんな小者仕事などしない。ムショ入りすれば人間が大きくなって堂々たるワルになるというのは、そういうことを指しているのだろうか?
Eは服役中に、ATMカードのデータをPINを含めて販売しているサイトを発見した。警察はその違法サイトを伏字を交えて報告している。www.k*****h.com、www.v*******p.su、www.t********a.ccというのが、Eにデータを売ったサイトだ。支払いは1ATMカードにつき300から700米ドル相当のビットコインでサイト管理者に支払う。それらのサイトのオーナーはインドネシア国内でなく、外国にいる。つまり、真の黒幕がインドネシアにいるインドネシア人であったとしても、インドネシアの警察がネットサイトの線をたどって状況を解明することをたいへん困難な形にしているということが言えるだろう。
Eは服役中に27件のデータを購入し、ATMカードの形で送らせた。支払いや受取りはシャバにいるEの手下が行なった。そして出獄してから、さっそく口座破りに取り掛かったのである。27の口座は、BCA銀行だけでなく、ダナモン銀行、HSBC銀行、その他いくつかの著名銀行のものが混じっている。いくつかの銀行で口座破り事件が続発し、それらの事件に関わったEとその手下4人を警察は8月の三週間にあちこちの場所で逮捕した。
問題は上の三つのネットサイトを含めて、他にもあるかもしれない違法ネットサイトに、まだ何の措置も採れていないことだ。インドネシアの銀行の中に秘められているはずの口座主のデータがグローバルネットワークで売買されている。警察は上の三つのネットサイトがどのようなルートでインドネシアの口座主のデータを入手したのか、その謎の解明に取り掛かっている。


「借金人を減らしてなるものか」(2015年9月1日)
2015年3月17日付けコンパス紙への投書"Tak Mau Menemui Nasabah"から
拝啓、編集部殿。わたしはシティバンクの口座保有者で、KTPはジャカルタですが現在東ジャワ州シドアルジョに住んでいます。
しばらく前にわたしはスラバヤ市スンコノ少将通りにあるシティバンクでクレジットカードをクローズし、債務を完済しようとしました。ところが、そこの職員はわたしの手続きを行なおうとせず、コールセンターに電話するよう求めたのです。
それで、しばらく後にコールセンターに電話しました。すると電話を受けたのはボイスマシーンで、まず何番を押せ・次に何番を押せ、そして最終的に16桁のクレジットカード番号を押せ、と指示してきました。わたしが機械の指示通りに行なったところ、「あなたの入力した番号は誤りです」と言ってきたではありませんか。わたしは一旦電話を切り、そしてもう一度あの長くてややこしいプロセスを最初からやり直しました。そして最後に機械が答えたのは、再び「あなたの入力した番号は誤りです」。
それで、わたしはまた同じプロセスを行い、今度はわたしが持っているもう一枚のクレジットカード番号を入力してみました。そしてまた「あなたの入力した番号は誤りです」という同じ言葉を聞かされました。次にわたしは、三枚目のクレジットカード番号を入力してみました。すると今度は「しばらくお待ちください。当方担当者は今ビジーです。」と答えたではありませんか。この銀行サービス現代化はヒューマンアスペクトを無視しています。
わたしは2015年2月にシティバンクに手紙を送り、わたしの三枚のクレジットカードをすべて閉めたいので、債務を完済するために訪問したい、と連絡したところ、がっかりする返事が戻ってきました。シティバンクはわたしに直接サービスするのを拒否し、またまた電話でその手続きを行なうよう求めたのです。ボイスマシーンとの対話はもううんざりです。人間であるわたしは、その提案に従う気がありません。[ 東ジャワ州シドアルジョ在住、ヘンキ・ヘルワント ]


「犯罪抑止と意地悪と」(2015年9月3日)
2015年4月23日付けコンパス紙への投書"Perjuangan Mengurus Uang Pensiun di Bank"から
拝啓、編集部殿。わたしの夫は2003年以来、西ジャワ州デポッ市の国民年金貯蓄銀行(BTPN)マルゴンダ支店の預金者です。夫は今68歳で、老齢で卒中を病み、転んで腰の骨を折ったので、自分で年金を引き出しに行くことができません。
2015年4月6日、わたしはBTPNに本人以外の者が引き出す際の手続きを尋ねました。銀行の窓口担当者は、「本人からの委任状をもらい、それを居住地の隣組長と町役場で証明してもらうように」と言いました。
4月7日、わたしは言われた通りの書類を作って銀行に持参しましたが、失望させられました。銀行側は、本人の疾病証明書が期限切れになっており、またKTPも指紋が載っているKTPでなければいけない、と言うのです。KTPの手続きが容易でなく、また時間もかかることを銀行は知らないのでしょうか?わたしは年金受給者の妻であり、もう66歳になるのです。そして、薬代や水道・電気の支払い、また使い捨ておむつの購入などに年金を引き出さなければやっていけないというのに。
年金の口座を別の銀行に移すのも、手続きがあって容易ではありません。三ヶ月もかかるそうです。わたしが妻として夫の権利を代行して年金を引き出す別の方法はないのでしょうか?もう二ヶ月間、夫の年金を引き出すことができないままです。[ 西ジャワ州デポッ市在住、ユリザ・ザキル・シャフルル ]


「懲りないデットコレクターたち」(2015年10月16日)
2015年6月18日付けコンパス紙への投書"Teror Penagih Utang Bank"から
拝啓、編集部殿。2015年5月21日、わたしの携帯電話にBank Bumiputera のコレクションエージェンシーであるPT Tegar Bersama のアルフォンソと名乗る人から電話がかかってきました。電話の主は081514863705/06/07/08/09/10、08551840700、08881317532 といった電話番号を使い、また087880670027からレイノルドという名前でSMSが送られてきました。
フィエンディ・ハプサリという人がブミプトラ銀行に作った未返済クレジットの回収がそのアルフォンソ氏の目的ですが、わたしはそんな名前の人とはまるで無関係であり、またブミプトラ銀行とそのひとの債権債務問題もわたしの関知するところではありません。
その日以来、この投書を作った5月27日まで、わたしと妻、わたしの家族、妻の両親に至るまで、そのデットコレクターは何度もテロ電話をかけ、悪口雑言を並べ立て、ひとを怒鳴りつけ、無礼の限りを尽くしています。おかげで、わたしどもの家庭生活も職業生活も、不安に満ちた不愉快なものに変わってしまいました。
平穏だったわたしどもの暮らしを破壊したそのテロ行為に関して、わたしはブミプトラ銀行とそのコレクションエージェンシーであるトゥガルブルサマ社に対し、わたしとわたしの一族への謝罪を要求します。謝罪がなされない場合、わたしは告発を行なう所存です。金融サービスオーソリティとインドネシア銀行は、この種の事件を確実にモニターしてください。[ 東ジャワ州スラバヤ市在住、ヤヌアル・ファウジ ]


「疑惑通貨取引が激増」(2016年1月12日)
2015年の11ヶ月間に発見された疑惑口座取引は前年同期比で4割増、そして疑惑現金取引も対前年同期比で3割増になっていることを通貨取引分析報告センターが明らかにした。同センターはその原因が15年12月9日に行われた全国一斉地方首長選挙に関わっていると見ており、15年12月はその状況が更に増幅されるのではないかと懸念している。
地方首長の座が手に入れば、その公職報酬として5年間に60億ルピア前後が手に入る。ところが選挙運動への出費総額を見ると、最高で250億ルピアもの出費をいとわない候補者がいる。5年間でその出費に利益を生ませるための闇ビジネス計画がそこにからんでいないわけがない。そして、出費が大きければ大きいほど、闇ビジネス計画の実現に何歩も近づいていくことになるわけだ。
疑惑口座取引というのは、その口座の平常の資金出入りパターンを外れた巨額の出入りを指している。たとえば国家公務員である口座オーナーの毎月の入金高は1千万ルピアなのに、突然数億から数十億という金額の出入りがある、というような現象だ。疑惑現金取引も、普通の市民生活の中ではまず行われないような金額の取引を口座振替でなく現金支払いで行うようなケースを意味しており、口座からそういうレベルの現金引出しが行われた場合に疑惑現金取引の容疑がかかる。不正な目的で行われる現金取引は、口座振替で資金の流れがトレースされるのを防ぐためであるのが明白だ。
通貨取引報告分析センターはコルプシ犯罪抑止を目的にして、国内で行われる現金取引の上限金額規制を行うよう、以前から提唱している。いまだにそれが実現していないために、コルプトルは自由に現金を移動させることができ、腐敗した資金を不動産や宝石貴金属に変えて犯行を擬装させている、とセンター長は強調している。
同センターがリサーチしたところでは、腐敗行政高官や腐敗地方首長はたいてい悪徳コンサルタントをブレインに雇い、所有資産の異様な増加が見えないように対策を講じているそうだ。そういう専門家として雇われているのは、法律事務所・公証人・公認会計士などで、中にはトンネル会社を設立して腐敗所得のマネーロンダリングを行い、会社の事業活動として記録されているのはすべて架空のものばかり、というケースすらあった。
通貨取引報告分析センターは、クロと判定された分析結果を法執行機関に届け出るまでがその職務であり、法執行機関はそれをフォローしていかなければならないが、戦果がそうそう簡単に上がるものでもない。特に地方首長のコルプシ犯罪については国税総局に届け出て腐敗所得に課税させ、その所得を大きく目減りさせるような方針が立てられているが、その分野はあまり新聞種にならないので、一般国民からよく見えない部分だ。
通貨取引報告分析センターに入ってくる疑惑通貨取引報告は、報告を義務付けられている国内金融界からの届出に拠っている。その中でクロと判定された案件の資金が何によって作り出されたか、という面白いレポートをお知らせしておきたい。最大ポーションを占めているのは、コルプシでなく詐欺なのである。
    2014年(年間) 2015年(11ヶ月)
詐欺   58.0%     46.6%
コルプシ 17.8%     15.4%
賭博    8.1%      8.1%
ナルコバ  2.8%      3.5%
銀行不正  2.4%     14.7%
横領    1.6%      1.8%
賄賂    1.5%      1.3%
税務不正  1.4%      4.7%
テロ    0.3%      1.4%
その他   6.1%      2.6%


「ババを引くのは人間だけ」(2016年1月20日)
2015年6月3日付けコンパス紙への投書"Uang Berlubang"から
拝啓、編集部殿。大手銀行であるBCA銀行は顧客に妥当なサービスを提供するべきであり、顧客に負担をかけるようなことをしてはならないのではありませんか?これは北ジャカルタ市プルイックンチャナ地区のBCA銀行ATMでしばらく前にわたしが体験したできごとです。
およそ三ヶ月前、わたしはATM機から現金を引き出しました。するとその中に、まるで虫に食われたような穴だらけの5万ルピア紙幣一枚が混じっていたのです。その紙幣が通用するかどうか不安になったので、わたしは入金専用ATMにその紙幣をもどそうとしました。ところが、どうでしょう。機械はその紙幣を拒否したのです。
今週はじめ、わたしは同じATM機でまた現金引き出しを行いました。今度は10万ルピア紙幣ですが、中の一枚にインクがべったりかかったものがありました。わたしは再度それを入金専用ATMに戻そうとしましたが、またまたATM機はその紙幣を拒否しました。
入金用ATM機が受けつけない紙幣が出金用ATM機から出てくるのです。BCA銀行はどうしてそんなことをするのですか?[北ジャカルタ市プンジャリガン在住、プラコソ・エコ・スティヤワン・ヒマワン]


「銀行のシステムセキュリティがアブナイ」(2016年2月2日)
2015年10月15日付けコンパス紙への投書"Penipuan Mobile Banking"から
拝啓、編集部殿。わたしはスラバヤのCIMBニアガ銀行ディポヌゴロ支店の口座保有者です。わたしの口座は普通預金口座で、モバイルバンキングもインターネットバンキングも行っていません。2015年8月10日、CIMBニアガ銀行だと名乗るひとから電話があり、モバイルバンキングをアクティブにしますという連絡をしてきました。わたしは拒否しました。しかしそのあと、1418番からSMSでパスワードを送ってきたのです。さっきの人はもう一度電話をかけてきて、そのパスワードをインプットするよう求めました。
わたしはモバイルバンキングを使う気がないし、わたしの携帯電話器にニアガ銀行モバイルバンキングのアプリケーションも入っていないから、それはできないと拒否しました。ところが一週間後、わたしの口座残高が空っぽになっているのに驚かされました。
CIMBニアガ銀行に事件を届け出ると係員は、犯人は既にわたしの口座のユーザーIDを作ってモバイルバンキングをアクティブにしていると説明し、一ヶ月間待つよう言いました。
カスタマーケアからも連絡があり、待つよう言われましたが、その後何の連絡もありません。わたしが不思議に思うのは、どうして犯人は銀行のシステムに潜入してユーザーIDを作り、モバイルバンキングをアクティブにするためにパスワードを送ってこれたのかということです。もしあれほど簡単にそれができるのであれば、CIMBニアガ銀行は顧客のお金をどうやって保全できるのでしょうか?[ 東ジャワ州シドアルジョ在住、デンティ・フェブリアナ ]


「金を盗ったのはだあれ?!」(2016年2月11日)
2015年10月9日付けコンパス紙への投書"Siapa Ambil Uang?"から
拝啓、編集部殿。わたしはサウジアラビアへの女性出稼ぎ者です。2015年6月1日、わたしはウエスタンユニオン経由で故国のサムスディン宛に送金しました。金額は18,946,300ルピア、PIN番号は312−600−xxxxです。
西ジャワ州チアンジュル県タングラン郡の郵便局で指定受取人がお金を受取ろうとしたとき、係員はPIN番号に間違いがあると言いました。翌日わたしの息子がパグララン郵便局を訪れた際、そのお金はもう誰かに払われていたことが判明しました。
わたしはサウジアラビアのウエスタンユニオンに確認しましたが、答えは同じでした。お金は既に支払い済みだと言われました。わたしはインドネシアの郵便局/ウエスタンユニオンに、そのお金を受取った者がだれかを調べるようお願いします。わたしの息子はいまだにお金が受取れないままでいるのです。[ サウジアラビア在住、スミヤティ・ビンティ・ザエヌディン・クルディ ]


「デットコレクターもタワルムナワル」(2016年4月1日)
2015年11月9日付けコンパス紙への投書"Teror Penagih Utang"から
拝啓、編集部殿。知り合いでないひとが妻を尋ねてやってきました。色黒で上背のある、がっしりした体躯の巨漢で、メガ銀行クレジットカードのデットコレクターであるヘンドリだと名乗りました。かれはもう十回もやってきているのです。
わたしと妻はBSDシティRT001RW007に住んでいます。2015年10月15日、かれが我が家へ三度目に訪れたとき、へいを乗り越えて無理やり敷地内に侵入し、大声でわめきたてました。1億1千3百万ルピアを払え、と言うのです。
しかし、わたしも妻もその男とは何の関係もないし、メガ銀行に金を借りているわけでもないので、妻は相手にしませんでした。するとヘンドリ氏は要求を2千万に下げ、さらに1千万ルピアまで落としました。妻はガソリン代を100万ルピアあげるから帰るように言いましたが、かれは頑強に1千万ルピアに固執しました。
要求する金を素直に出さないのに業を煮やしたヘンドリ氏は、あんたの夫の命はないものと思え、と言い出しました。妻は、「この問題は法的解決にゆだねましょう」と言いました。
この事件の発端は、2014年5月5日にメガ銀行発行のわたしのVISAカードでオンライン取引が5回発生したことです。もちろん、わたしの知らないうちに。わたしの持っているもう4枚のビザカードでも同じことが起こりました。シティバンク、ニアガ銀行、ダナモン銀行、BNI銀行がそれぞれ発行主のVISAカードです。
2015年2月15日付け首都警察犯罪捜査局発行のSP2H(警察証明書)番号B/365/II/2015/Dit Reskrimsusには、「わたしがそれらのオンライン取引を行った証拠がなく、またわたしのものでないeメールアドレスと電話番号が使われており、わたしはクレジットカード犯罪の被害者である。取引発生時点でメガ銀行と他の4銀行はそれぞれの銀行に登録されているわたしのeメールアドレスと電話番号の確認を怠った」と明記されています。
警察のSP2Hが発行される前の14年6月と8月に、シティバンク・ニアガ銀行・ダナモン銀行はその事件を既に決着させています。先月BNI銀行も三銀行のあとを追いました。メガ銀行はどうしていつまでもわたしどもへのテロを続けるのですか?わたしはこの事件を既にインドネシア銀行へ届け出ています。[ 南タングラン市BSDシティ在住、サトリオ・サスラ・ヌグロホ ]


「ひとつの規則に複数のビヘイビア」(2016年5月12日)
2016年1月17日付けコンパス紙への投書"Penarikan Dollar AS"から
拝啓、編集部殿。2015年12月21日9時半、わたしは中央ジャカルタ市のCIMBニアガ銀行クブンシリ支店へ行きました。米ドル現金を引き出すためです。しかし窓口職員はわたしに、外貨当座預金口座からの現金引き出しは口座を開設した支店でしかできないと言います。
わたしは12月18日にその口座開設支店から、外貨現金引き出しは全国どこの支店でもできるという情報を得ているのです。わたしはその窓口職員に、あなたの言っている規則はいつ出されたものなのかと尋ねました。
すると、要するに口座開設支店からの委任が取れたらできるという話しに変わりました。ところが、そのあとがまたたいへん。ただ待たされているだけなので状況を尋ねると、口座開設支店にeメールを送っているが、その返事がまだこない、という話しです。何度尋ねても同じ返事を聞かされるので、わたしが自分で口座開設支店に電話すると、向こうからはeメールの返事はもう出してある、という話しでした。いったいどちらが本当の話なのやら・・・・
結局、米ドル現金をわたしが手にしたのは12時45分でした。CIMBニアガ銀行マネージメントにお願いします。全支店で一様な業務プロセスが行われるよう、管理システムを向上させてください。顧客は現場職員のそれぞれ異なる言葉に振り回されるばかりであり、待ち時間の無駄を含めて顧客の側が損害を受けているのですから。[ 西ジャカルタ市在住、ネネン ]


「ルピア硬貨はどこにある?」(2016年5月18日)
インドネシア銀行が発行した硬貨の8割は10年間の適正流通期間を過ぎても回収されないままだ。つまり、コインは紙幣ほど頻繁に市場⇒銀行界⇒中央銀行という流れに乗ってこないことをそれは示している。発行されたコインは市場の中に溜まっている可能性が高く、それが国民の必要に応じて回転しているのであれば、よからぬ想像は杞憂となるのだが、ほんとうに杞憂なのかどうかは調査しなければ判然としない。実際、1997〜98年に起こった通貨クライシスの際、暴落したルピア価額に対して硬貨素材の価値が大きく上昇したため、各地でコインを集めて金属隗に熔かすという犯罪が横行した。その対策も含めてのことだろうか、その後発行されるコインはほとんどアルミ素材を基本にしている。
実態を調べるため、インドネシア銀行は都市部のパサルや商業センターで両替活動を活発化させ、また北スラウェシや北マルクなどの辺境地区でも両替巡回車を運行させて、国民の経済活動に使われている貨幣の実情を把握しようと努めている。
インドネシア銀行北スラウェシ支店は古くなったり汚損した貨幣の両替を行い、古い硬貨を29万個回収した。合計金額は8千6百万ルピアにのぼる。フィリピンに近いサギヘ諸島では1千万ルピア相当のコインが集まった。同支店はその活動を近隣の島々にまで拡大していく方針だ。
インドネシア銀行通貨運営局長は、国民の経済活動から姿を消した硬貨がいったいどこにあるのかを見極める所存であると表明した。局長は「経済活動から姿を消した」という表現を、前述のサイクルに乗ってこないという意味で使っている。「硬貨が国民の取引活動に使われているなら問題はないが、それがどこかに溜め込まれているなら、中央銀行は毎年、紙幣より高いコストをかけてその補充をしなければならない。」
インドネシア銀行が市場に供給しているルピア貨幣は総額580兆ルピア相当で、そのうちの2%がコインで占められている。50、100、200、500、1000ルピアコインの総額が11.6兆ルピアに達するということだ。
北スラウェシ州マナドのサム・ラトゥラギ大学教官は、硬貨が取引に使われることを嫌う者が国内各地におり、マロレ島やミアガス島では住民が硬貨の入った大きい袋をいくつも持っている姿を実際に目にしている、と語っている。それらの硬貨が支払いに使えないため、かれらは仕方なくそうしている、との談。


「また、小銭はお金じゃない」(2016年5月18日)
2016年1月30日付けコンパス紙への投書"Uang Kecil Tidak Laku"から
拝啓、編集部殿。わたしは仕事の都合で最近ジャカルタに移って来た者です。ここでもわたしは毎日、これまで行ってきたのと同じように合法的支払いツール、すなわちルピア貨幣を使って商品の売買を行っています。
ところが、ここ、首都ジャカルタでは、100ルピアや200ルピアのコインを使って支払いをしようとすると、しばしば困難に遭遇します。それらのコインは通用しないのだと言って、支払い相手の多くは受け取りを拒否するのです。ワルンの店主や在来パサルですら、そんな状況です。特にスンテル地区でそれが激しいようです。
ルピア貨幣はインドネシアの合法通貨であり、この国の隅々まで通用するはずのものではありませんか。わたしはこのような現象をとても残念に思います。中央銀行であるインドネシア銀行は、この現象を説明できるのでしょうか?[ 北ジャカルタ市在住、ギファル・マウラナ ]
2016年2月26日付けコンパス紙に掲載されたインドネシア銀行からの回答
拝啓、編集部殿。ギファル・マウラナさんからの「小銭が通用しない」という投書が2016年1月30日付けコンパス紙に掲載されました。この機会にインドネシア銀行は、100ルピアコインも200ルピアコインもインドネシア統一国家の全領土内で使用できる合法支払いツールであることを言明しておきます。贋造ではないかという疑念以外の理由で、取引にルピア通貨が用いられるのを拒むことは許されません。2011年法律第7号「通貨法」第33条にそのことがらは明記されています。
統一インドネシア国家領土内の需要に応じてルピア通貨を作り配給することをインドネシア銀行はコミットしています。100ルピアや200ルピアを含むすべての金種に渡って、そうしているのです。100ルピアコインや200ルピアコインが欠乏すると、売り手が取引額をその上の位に丸めようとするため、インフレ率が押し上げられる可能性があります。
必要なら、銀行や各地のインドネシア銀行支店で両替することができます。あるいはテクノロジーの発展を享受して、国民が取引を行う際に現金の代替としてクレジットカード・ATMカード・デビットカードなどを使うキャッシュレス取引も可能であり、インドネシア銀行はキャッシュレス化を推奨しています。
インドネシア銀行へのコンタクトは、インドネシア銀行コンタクトセンター宛てに行うことができます。出勤日は電話(021)131に、またいつでもeメールbicara@bi.go.id宛てにコンタクトください。[ インドネシア銀行専務理事ティルタ・スガラ ]


「ATM機から現金を盗む」(2016年6月10日)
首都警察特殊犯罪捜査局が2016年6月3日、ATMの機械内部に納められている現金を盗んだ三人の男を逮捕した。44歳のブカシ住民と38歳と35歳の東ジャカルタ市住民ふたりがATMから現金を盗んだ窃盗者。警察の調べでは、38歳の男が他の二人に窃盗の手口を教えたらしく、三人はそれぞれがあちらこちらのATM機から金を盗んでいた。
その手口の先生になった38歳の男は総額で2億ルピア、44歳の男は2.98億ルピア、35歳の男は3千9百万ルピアを盗んでいた。かれらが使った手口というのは、ATMで現金を引き出す際に普通に使われるプロセスを踏む。つまり、ATMカードを挿入し、モニターで現金引き出しの指示をするのだが、機械が現金を数えはじめると、紙幣を吐き出す口が開かれるので、そのチャンスに機械内にある現金を文字通り引き出すという手法だそうだ。
警察は銀行界に対し、ATM機の仕組みをもっと防犯性の高いものにモディファイするよう呼び掛けている。


「ラマダン〜イドゥルフィトリ期の新札需要」(2016年6月27日)
国民の新札需要が新札販売という違法行為を誘発していることは中央銀行も熟知しており、国民の新札需要を国が満たせないのは国政の怠慢であるということを中銀も承知している。違法行為の抑止措置という面からだけでなく、国が義務を果たすという趣旨で、インドネシア銀行は全国44の地方事務所ばかりか、市中銀行を糾合して移動銀行車を仕立てさせ、一般国民により近い場所で新札両替サービスが行われるよう指揮している。
たとえば、ジャカルタではモナス公園南縁のムルデカスラタン通りに面するIRTI広場に銀行車が出動してくる。この企画では2016年6月6日から30日まで月〜金曜日の9時〜13時の間、市民への両替サービスが実施される。
両替とは言いながら、インドネシア銀行は国民に対してキャッシュレス普及を奨めている方針に即して、市中銀行のATMカードとKTP等のアイデンティティカードを持って来ればよい、と呼び掛けている。現金を持って来ればその収受に時間がかかるが、ATMカードであれば口座引き落としにたいした時間はかからず、希望する新札を市民は持ち帰ることができるという寸法だ。
IRTIには12銀行の車両が並び、両替希望者は各銀行車の前に列を作る。両替金額はひとり一日370万ルピアまでに制限されている。2千・5千・1万・2万ルピア紙幣がそれぞれ百枚までという内訳。インドネシア銀行データによれば、両替需要の92%は5万ルピアと10万ルピア紙幣であり、8%が2万ルピア以下だそうだが、これは金額によるシェアのようだ。紙幣枚数であれば、比率はもう少し変わってくるにちがいない。というのも、子供へのお年玉という需要に限って見るなら、小額紙幣がやはりメインを占める?ように思われるからだ。身内の子供には2万あるいは1万紙幣、カンプンコミュニティの子供がやってくれば5千あるいは2千ルピア紙幣という辺りが昨今の相場ではあるまいか。10万や5万ルピア紙幣はファミリーの中の未婚の大人に渡すものだろう。
IRTI広場でコンパス紙記者がインタビューした市民の話も紹介されている。二人連れのご夫婦は100万ルピアを2千ルピアと5千ルピアの新札に交換した。
別の女性は「毎年チラチャップへ帰省する前にここへ両替に来る。ここでは費用がかからない。」と語った。費用というのは、巷の新札売りの場合だと一割目減りすることを言っているようだ。
BCA銀行の銀行車職員の談によれば、2千と5千ルピア紙幣の需要がもっとも大きいとのこと。


「銀行口座破りの新手口」(2016年7月14・15日)
都内のモールやショッピングセンターで制服を着た数人の男女が通りかかる消費者を待ちかまえ、クレジットカード(CC)顧客を増やそうとして銀行界が盛んにマーケティング活動を行っている状況は、今でも変わりがない。だが、信用経済の華たるクレジットカード誘客をしているからといって、あるいは大銀行の看板を背負って業務にいそしんでいるからといって、それらの男女を頭から信用してよいものだろうか?なにしろ、ここはインドネシアなのだ。
かれら制服を着た男女が正社員に率いられたアルバイト契約者であるケースは少なくない。クレジットカード詐欺師が仲間をそういう仕事に送り込むのは、赤児の手をひねるようなものだろう。
モールやショッピングセンターで得たCC申請者の申込書を、送り込まれた詐欺一味の人間は密かにコピーして残しておく。申請が審査を通ってCCが作成されると、カードの写真を撮ってから申請者に送られる。
一方、一味の別のメンバーがCCオーナーの偽造KTP作成にかかる。精巧な偽造書類作成を商売にしている人間が掃いて捨てるほどいるから、その作業を自分で行う必要はない。偽造KTPはCCオーナーのデータと一味のメンバーの顔写真で作成される。その偽造KTPを持ってメンバーは携帯電話オペレータ会社に行き、自分のSIMカードが盗まれたので、古いものをブロックし、同じナンバーで新しいカードを作ってほしい、と依頼する。その結果、本来のCCオーナー宛てには、銀行からのCC使用確認通知が届かず、CCに関連する通知はすべて一味のメンバーの手元に入って来るという寸法だ。しかしもちろん副作用があり、本来のCCオーナーが使っていた携帯電話が突然使えなくなるのだから、かれが携帯電話オペレータにクレームをつけるのは明らかで、どうしてそうなったかということが判明する。
それが判明し、犯罪者の黒い手が自分の銀行口座をかき回していることにCCオーナーが気付き、オーナーが銀行に自分の口座をブロックする申請を出すまでの間に、詐欺師一味はオーナーの口座から全財産を抜き取ってしまわなければならない。
そしてほとんどすべてのケースで、その競争は詐欺師一味が勝利している。そこにサービス業に従事するインドネシア人の体臭を嗅ぎつけるひとは、きっと少なくないにちがいない。
GSという男が首謀者のそのCC詐欺師一味を首都警察特殊犯罪捜査局サイバークライム次局第4ユニットが逮捕した。逮捕された一味のメンバーは、標的を探してデータを入手し、また一味がCCオーナーの口座から抜き取った金をたくわえる手配を行っていたAとAH、そしてCCオーナーの偽造KTPを作ってその携帯電話SIMカードをすりかえることを行っていたPSの三人。
首領格であるGSは、一味のメンバーがそうやってお膳立てを整えると、入手したデータを使ってオンライン賭博やオンライン株式売買?あるいはオンライン送金などを行ってCCオーナーの口座残高をはした金に変えていた。一味はその詐欺稼ぎを2014年に開始し、2016年6月下旬の犯行摘発時までに50億ルピアの金をかき集めていたとのこと。
一般的なCC詐欺は、オーナーが持っているカードに記録されたデータを盗んで偽造カードを作成したり、?あるいは銀行のコンピュータセキュリティをかいくぐり、ハッキングを行って銀行顧客の口座を破るような手口が使われてきたが、そういう特殊技能を持たない人間であっても同じような犯行がやすやすと行えるのだということを今回の事件は浮彫にするものであったと言えるにちがいない。
今回の事件摘発は、上で述べたように使えなくなった自分の携帯電話番号のクレームを被害者が電話オペレータに出し、その経緯が明らかになるとともに自分の銀行口座も破られたことが当然結び付けられ、首都警察だけで数百件の被害届が集まった。警察はPSの顔写真を手がかりに捜査を進め、中央ジャカルタ市ムルデカバラッ通りにあるインドサット本社に偽造KTPを持ってSIMカードのすりかえにやってきたPSを逮捕し、そのあと北ジャカルタ市スンテルに巣くっている一味を網にかけた。
ところが、警察の取調べでつじつまの合わない事態が起こった。警察は被害者や銀行界から集めた情報から、この手口のCC詐欺は1,614件のCCが被害を受けたとしているのだが、逮捕した一味の供述では5百件ほどしかかれらの餌食になっていない。ということは、異なるグループが類似の手口で犯行を行っている可能性があるわけで、警察はその線から更に捜査を進めようとしている。
被害状況の全貌を知るためにも、警察は未届けの被害者に届け出るよう呼びかけると共に、銀行業界および携帯電話オペレータ業界に対して、業務セキュリティをより高めるように求めている。
しかし言うまでもなく、今回明らかにされた犯行手口は、広範な社会機構内で行われている人間の行動の中に弱点を見出した犯罪者の智力のたまものであって、各業界がセキュリティ向上を怠って来たために起こったものでないのは明白だ。銀行内では、契約アルバイト社員であろうが正社員であろうが、その一挙手一投足を監視させるような体制を組むことなど不可能に決まっている。また、同じ番号のSIMカード再発行を顧客が依頼してきたとき、携帯電話オペレータが何らかの条件をつけてそれを満たせなければ依頼を拒否するようなことも、インドネシア社会のメンタリティとビジネス心理の傾向を知るなら、それが不可能事であることがわかる。
社会全体がセキュリティというものに対する感受性をもっと高めていく以外に対応策はないようにわたしには思えるのだが、どうだろうか・・・・


「また米ドル紙幣の贋札」(2016年8月12日)
首都警察一般犯罪捜査局は、中央ジャカルタ市チキニラヤ通りの民家で百米ドル紙幣の贋札流通者を逮捕し、その家から贋札1千2百枚を押収した。逮捕されたのは42歳・47歳・32歳の男3人で、そのうち32歳の男は国軍伍長だったため、軍憲兵隊に身柄が引き渡されている。この3人の逮捕も市民からの通報が引き金になり、おとり捜査の果てに一味が摘発された。
三人の供述によれば、贋札は国軍伍長が供給したもので、42歳と47歳のふたりがそれを売りさばいていた。かれらは贋札1枚を50万ルピアでオファーしていたが、仕上がりが粗雑であまり精巧でなかったためおとり捜査員が1枚30万ルピアを逆オファーし、双方合意して商談成立となったところで「御用」となった。
国軍伍長は贋札をバタムに住むEなる男から入手したものの、どこで作られたものなのかは情報を持っていなかった。警察はEを指名手配している。
去る16年5月にも首都警察一般犯罪捜査局はジャカルタで米ドル紙幣の贋札販売者を総勢8人逮捕し、贋札3,277枚を押収している。


「金になるなら、ダメ元でも」(2016年9月16日)
2016年3月8日付けコンパス紙への投書"Penagih Utang Salah Sasaranから
拝啓、編集部殿。わたしの夫は自動車製造会社に勤めています。夫の部下の一人Fさんは、西ジャカルタ市チュンカレンのカマルカプッを所在地とするデットコレクター会社アムケイによれば、メガ銀行ビザクレジットカードの返済をもう一年間も怠っているそうです。
納得できないのは、わたしの夫が、それどころかわたしども一家が、どうしてSMSによる不愉快なテロの標的にされなければならないのかということです。そのようなSMSや電話を最初に受けたとき、夫は「これは会社のこととは関係のないF個人のことがらなので、この問題に関する手伝いは何もできないから、本人に直接請求してください」と表明したにも関わらず、とても粗野で失礼な返事が返ってきました。以後も、ルリと名乗るひとからの督促のSMSが不愉快で威嚇的な調子で当方に入って来ます。メガ銀行さん、当方をこのようなことに引きずり込まないでください。[ 南ジャカルタポンドッラブ在住、スリタ ]
2016年3月28日付けコンパス紙に掲載されたメガ銀行からの回答
拝啓、編集部殿。16年3月8日付けコンパス紙に掲載されたスリタさんからの投書について、不快な目に会われたことにまずお詫び申し上げます。
投書の内容に細かい情報が見られないので、当方ウエッブサイトwww.bankmega.comの顧客苦情フォームに必要事項を記入して、当方からコンタクトできる電話番号を添えて送っていただければ幸いです。
ご協力に感謝します。[ メガ銀行本店企業秘書、クリスティアナ M ダマニッ ]


「新しいルピア通貨が年内に」(2016年9月19日)
2016年9月15日に、インドネシア銀行が新貨幣発行計画を公表した。今回の発行は「通貨」に関する2011年法律第7号で定められた内容をすべての通貨に適用するもの。通貨法に従った紙幣発行は2014年に10万ルピア紙幣で行われているが、今回の新貨幣発行計画はすべての貨幣をその法律の内容に適合させるものになる。
従来からのものとの大きな違いは、Negara Kesaturan Republik Indonesia (NKRI=インドネシア統一国家)という文言が入ること、署名はこれまで中銀総裁会の名義で総裁とデピュティのサインが入っていたが、新しいものは政府と中銀を代表する者のサインとなること、発行年だけでなく印刷年度も記入されるといった内容。
現行ルピア通貨は、額面が10万・5万・2万・1万・5千・2千・1千ルピアの7種類の紙幣と、1千・5百・2百・1百ルピアの4種類の硬貨があり、その11種類のルピア通貨に対して新しいデザインのものが発行される。10万ルピア紙幣もデザインが変更されるとのこと。
新紙幣のデザインは紙幣と硬貨のすべてにインドネシアの民族英雄の肖像が描かれることになっており、肖像人物の選定は既に案が決まっている。その案に対して政府の承認を得た上で最終的な細かいデザインを完成させ、国有造幣公社での印刷が行われてから新貨幣が市中に出回ることになる。インドネシア銀行はその流通時期を2016年中と計画している。硬貨はこれまで民族英雄の肖像でなく花や鳥などを図案化したものがデザインされていたので、今回の新規発行におけるひとつの特徴をなすものになるだろう。
新貨幣が出されたら現行のものは舞台を退くことになるわけだが、インドネシア銀行はその時期をまだ決めていない。新貨幣が市中の需要をまかないきれるだけのサプライに達したと判断されたときに、旧紙幣の回収が開始される。そのため中銀はその状況を見ながら動きをコントロールする意向であり、回収開始時期の予定は立てない方針のようだ。
回収開始時期というのは流通停止時期を意味しており、流通停止が公表されてから5年間はいつでも一般銀行で旧貨幣を新貨幣に交換することが可能なため、流通停止とは言うものの、市中ではこれまでと同じように流通する。
その5年間が終わると、次の5年間はインドネシア銀行の各地の支店でしか新貨幣に交換することができなくなる。つまり一般銀行が受け付けてくれなくなるわけで、そのせいで、この時期に入ると市中でもあまり取り扱われないようになる。だから最初の5年間を過ぎると流通しなくなると考えるのが順当だろう。
つまり旧貨幣は10年という流通停止期間を持っており、その期間を超えるとただの紙切れや金属片に化すということだ。そして流通停止期間内では、その額面の価値を政府が保証しているのだが、最初の5年間は同じ額面の新旧両貨幣が市中で混在する時期であり、次の5年間は消費者の手元に残った旧貨幣を狭い窓口を通して新貨幣に交換するための猶予期間という性質を帯びる。そのため、この猶予期間に突入する前に、旧貨幣はすべからく手放しておくのが上策のようだ。


「銀行のビジネスライクでない家族的解決方法」(2016年9月21日)
2016年5月28日付けコンパス紙への投書"Salah Kirim Uang"から
拝啓、編集部殿。16年3月8日、当方はMさん宛ての送金4百万ルピアを間違ってRAさんの口座に入れました。そのふたりはアチェのBRI銀行タパトアン支店スブルサラム補助支店の利用者です。
Mさん経由で当方はその間違いを3月10日にタパトアン支店に連絡しました。同じ日にMさんは同銀行支店長同席のもとに、RAさんにその間違いを連絡しました。RAさんは病気だったためその妻が連絡を受け、「入金したかどうかは知らないが、BRI銀行がそのお金を送金者に戻すのなら、どうぞそうしてかまいません。」という返事を得ました。
ところが奇妙なことに、スブルサラム補助支店長が難色を示したのです。RAさんはBRI銀行に未返済ローンがあったため、RAさんの口座に入金したお金は自動的にローン返済に充てられたそうで、当方がRAさんに返済を請求するよう提案しました。もちろん当方はその提案に従う気はありません。
同じ3月10日に当方は、メダンのBRI銀行イスカンダルムダ支店カスタマーサービスに届出て、この問題の解決を仲介してくれるよう依頼しました。この問題はBRI銀行本店にも連絡がなされていますが、いまだに問題解決に至っていません。
この問題の早期解決にお骨折りくださるよう、当方はBRI銀行本店にお願いします。銀行界で2015年利益高トップの座を獲得したBRI銀行だというのに、当方が犯したミスに乗じて自行の利益を確保し、当方を問題解決の当事者にさせようとするのは、とてもふさわしいやり方とは思えません。[ メダン市在住、シクツストゥス・フタウルッ ]
2016年7月9日付けコンパス紙に掲載されたBRI銀行本店からの回答
拝啓、編集部殿。シクツストゥス・フタウルッさんからの5月28日付けコンパス紙に掲載された投書について、BRI銀行はRAさんにコンタクトし、誤って送金された金額をシクツストゥス・フタウルックさんに戻すことに賛成するよう依頼しました。RAさんが同意されたので、当方は2016年6月6日に当方は口座間の振替を行いました。こうしてこの問題は円満に解決いたしました。
BRI銀行は顧客にたいするサービスの向上に努めております。問題や質問あるいは提案などがございましたら、24時間サービスのCallBRI 1417/500017/021-57987400のカスタマーサービスまでお寄せください。[ BRI銀行企業秘書、ハリ・シアガ・アミジャルソ ]


「銀行コールセンターもアブナイ」(2016年9月22日)
BCA銀行コールセンターで働いていた男がクレジットカード詐欺を行って逮捕された。トラブルが起こった銀行利用者からの電話をコールセンターが受け、電話の主の個人データをあれこれ入手する。それを悪用するのは、いくらでも可能だという実例がこの事件だろう。
詐欺男Yは、手に入れた個人データを使ってその名義人になりすまし、BCA銀行コールセンターに電話する。クレジットカードを紛失したので、口座をブロックしてほしい。再発行されたクレジットカードの送り先はYの住所。
こうして他人名義のクレジットカードを手に入れたYは、思うがままにカードを使いまわる。そんな手口でYは数億ルピアを手に入れた。
ところが、Yが手に入れた他人名義のクレジットカードの中に、既に死去した人のものがあった。そんなこととは露知らず、Yはそのカードもほしいままに使った。
その遺族の家にクレジットカード使用金額の返済請求が届いたから、詐欺の被害を受けたことはすぐにわかる。遺族の届出で首都警察が動き出し、捜査の末に犯人Yが逮捕された。そのような偶然が関与しなければ、Yはまだのうのうと犯行を続けていたかもしれない。