インドネシア税労働情報2004〜07年


「納税は免罪符か…」(2004年7月21日)
中古衣料品の輸入は2002年度商工大臣令第642号で禁止されているが、北スマトラ州にはモゴンシディプラザ(Mongonsidi Plaza)という名前で世間に隠れもない中古衣料品販売センターが存在する。中古衣料品売買をいとなむ5万人以上の商人たちで編成しているAPPB(中古衣料品販売者協会)のアグス・ガワント・マニッ会長は19日メダンで、「われわれは中央政府にいつでも納税する用意がある。われわれは、非合法だという理由で、海上でも陸上でも、絶えず悪徳保安職員に搾取されてきたが、中央政府がわれわれから徴税できるようにすればいまの歪んだ状況は改善され、国庫にその金が入るようになる。」と表明した。 商工省が古着の輸入を禁止しているのは国内衣料産業界を保護するのが目的だが、実態は大量の古着が不法に輸入され、国内繊維産業は青息吐息どころか、風前の灯火という状況になっている。アグス会長は、メダンからおよそ180キロ離れたタンジュンバライ地区に数百ある小さい港経由でインドネシア国内に入ってくる中古衣料品は一日平均1万袋だと言う。二年前に中古衣料品輸入が認められていた時期の一日当たり5百から1千袋から、非合法化されたいま1万袋まで量が膨らんでいるのは皮肉としか言いようがない。アグス会長に従えばひと月の中古輸入品密輸量は30万袋になるが、これは北スマトラ州商工局が考えている10万袋よりはるかに多い。
「タンジュンバライの非開港に入ってくる船が運んでくる中古衣料品は一回に2千袋程度だが、船が港に着けられるようにと、保安職員は海上で4千万ルピアを搾り取る。陸揚げされた荷物がメダンまで無事に届くために、荷物の所有者は20万ルピア以上を陸上で保安職員に渡している。そんな事情のせいで、荷物を手に入れたい商人は、出来る限り大量に中古衣料品を注文するようになる。政府は中古衣料品から税金を取るべきだ。公式な税金なら国庫に入る。そのようにして合法化するほうが、現状悪徳役人に非合法だからという理由で搾り取らせているよりもずっと健全ではないか。」とのアグス会長の弁。
政府はさまざまな政策で不法輸入の締め出しと国内産品の国内市場での販売を後押ししてきたが、ジャワ島から入ってくる国内産衣料品は、地方マーケットであまりパッとした人気が得られない。「品質は悪く、値段が高い。北スマトラの消費者はあんなもので満足するわけがない。」とアグス会長は述べている。


「首都の徴税吏にインセンティブ」(2004年8月19日)
1981年に制定されていた徴税機関への現金インセンティブに関する第1号条例に代わるものとして都庁は、行政機構内で直接徴税に携わる機関と徴税の補助的役割を担う補佐機関の担当職員に対して給与外報酬を与える案を作成して議会にはかり、都議会はその案を承認した。その案が盛込まれているのは地方税の徴税費用支出に関する都条例案で、対象となるのは自動車税、自動車名義変更税、電力公社PLNが徴収する公道照明税、プルタミナが徴収する自動車燃料税などだが、他に地下水採取利用税、水上乗物税、C種掘削税、看板税、レストラン税、ホテル税、駐車料金税、慰安税も対象になりうると見られている。デデン・スプリヤディ都庁地方収入局長は、「総徴税額の最大5%を徴税費用とし、徴税担当職員に給与外報酬として与えるこの案は、税収の水漏れを抑制し、またKKNの発生を防ぐためのものとして提案された。これが承認されたのはわれわれみんなにとってハッピーなことだ。」と語っている。一方都議会側は、「都庁はごほうびの面だけを見るのでなく、ご褒美と平行して罰も用意されなければならない。徴税吏の勤労エトスを高めるには、その両輪が正しく機能しなければならない。」と都庁に釘を差している。
都庁案によれば、徴税費用の分配は次の通り。
自動車税・自動車名義変更税は、70%が徴税吏、30%が補佐機関でその内訳は2.5%が中央育成チーム、7.5%が警察、20%がその他サポーティング職員となっている。自動車燃料税は80%が徴税部門で内訳は20%が徴税機関60%がプルタミナと製造者、20%は補佐機関で内訳は5%が中央育成チーム、15%がその他のサポーティング職員であり、また公道照明税は94%が徴税機関で内訳は54%がPLN本社、20%がそれぞれジャカルタとタングランのPLN配電会社、残り6%が中央育成チームとなっている。


「最低賃金は上がっても・・・」(2004年11月16日)
首都ジャカルタの2005年最低賃金は711,843ルピアだ、とスティヨソ都知事がコメントしている。2004年は671,550.45ルピアだから、上昇はわずか4万ルピア強だ。2003年に制定された労働法第89条では、最低賃金は適正生活需要を満たすことを志向するとなっているが、首都の適正生活需要873,945ルピアどころか、最低生活需要の759,953ルピアすら満たしていない。ましてや、労働者が希求する120万ルピアは夢のまた夢。
4万ルピアの上昇で、労働者の暮らしは多少とも改善されるのだろうか?「まあ、とんでもないわ。今でさえわたしの賃金は月67万ルピアもないっていうのに。」北ジャカルタ市カプッにある輸出向け履物工場で働くラストリは吐き出すように言う。かの女の週給は15万6千ルピア、月に直せば62万4千ルピアだ。「1日1千ルピアの食事手当てを加えるとそうなるかもね。」ラストリの同僚メリーが助け舟を出す。しかし食事手当てがもらえるのは、7時半から15時半まで仕事した日だけ。会社は30人から成る1ラインに1日あたり靴350足のノルマを課しており、不足すれば会社に借りができることになる。借りは翌日返さなければならない。一方そのノルマを超えたときは、ひとり3百ルピアほどのボーナスが与えられる。
やはりカプッ地区にある衣料品工場で働くウィウィンは、月48万ルピアの手取りで生き延びている。かの女も最低賃金の恩恵に浴していないひとりだ。借り部屋の家賃が月10万ルピア。毎日の食費はどんなに切り詰めたところで30万ルピアはかかる。工場まで通う往復の交通費が1日1千4百ルピア。加えて乾季になると、生活用水を買わなければならない。1日5千ルピアはその水代に当てられる。赤字の穴埋めをウィウィンはどうやっているのだろう?「新しい穴を掘っちゃあ、古い穴を埋めるわけ。あっちに借金、こっちに借金の連続よ。」2メートル四方の窓もない小部屋に住んで、モールに目の保養にも行けないウィウィンはそう言う。遊びは日曜日にパンタイインダカプッで朝のジョギングだ、と笑いながら物語る。労働者へのオルグの真似事までしているウィウィンは、そんな厳しい条件でも労働者たちはしかたなく働いているのだ、と言う。「賃金が安すぎるからって、よそへ移ることもできない。職探しはたいへんなのよ。タングランじゃ、仕事にありつくのに、やくざ者の手を借りる以外に方法がなくなってるの。どっかの工場に入れてもらって、やくざ者に50万ルピアを払わなくちゃいけない。ところが3ヶ月間は試用期間だっていうのに、やくざ者はつきまとってくるんだから。」
最低賃金とは無縁の世界がそこにある。


「インドネシアから日本への研修生派遣が停止される」(2005年3月16日)
労働省キルナディ国内労働力配備育成総局長は、「日本の中小企業国際人材育成事業団(IMM)が実施している技能実習プログラムの中で、自動車生産を行なっている会員工場に配属されたインドネシア人研修生19人が自動車シート製造工程で実習を受けるべきところ、その会社の別の部門で仕事をさせられていたのを日本の入国管理局が摘発するという事件があったため、日本への実習生派遣プログラムは2月からストップしている。」と表明した。その事件は当のIMM会員工場が違反を行なったのだが、入国管理局はIMMの会員会社に対する選択・監督・指導に問題があるとしてそれらを厳格に行なうよう求めており、IMM側は、実習生派遣は継続されるが、受入がいつから再開できるかはまだ不明である旨、同総局に伝えて来ている。
折しも出発を待つばかりになっている実習生候補者が7百人おり、かれらに対する研修は終了している。その中にはアチェ住民でインド洋津波災害の被災者が25人含まれている。当初アチェからは36人がこのプログラムに参加する予定だったが、津波のために26人に減少し、さらに一人が辞退したので25人になった。この25人に対してはIMMから資金と手続の全面的援助が与えられている。労働省側は、1993年から既に2万3千人の実習生を送ってきた実績を持つこのプログラムが停止されるのはきわめて遺憾だ、と述べている。ここ数年のこのプログラム実施状況は、2004年の送り出し人数1,789人帰国者数1,815人、2003年は送り出し2,183人帰国2,255人、2002年は送り出し1,697人帰国1,720人。


「ブカシ県の就職戦線も甘くない」(2005年6月6日)
インドネシアで最大の工業団地数を有するブカシ県は就業労働人口も巨大で、他地方からの求職者を引き付ける強力な磁力を持っている。企業の求人は自由であり、マスメディアから口コミまであらゆる方法で採用募集を行い、自社独自に採用審査を行うところや、人材選抜サービス業者を使うところまでさまざま。そんな中で、県の行政機構を利用する方法もある。
ブカシ県労働トランスミグラシ局では、ブカシ県住民に対する求人募集の仲介を行っている。求職者は同局に登録してイエローカードをもらい、企業からの求人要請が同局に入るとテストを受ける。ところが同局を通してのリクルートメントは年間わずか30%しか実現していないとの批判が上がった。2004年の求職登録者は22,453人で、一方、契約社員条件のものも含めて2004年に企業に雇用された人数はそのうち7,390人しかいない。アユブ・ヒダヤッ、ブカシ県労働トランスミグラシ局長はその状況について、県内のすべての企業が求人の依頼を当方に持ってくるわけではなく、そうしているのは全体の10%程度だ、と説明する。ましてやその職種への適性審査が行われるから、求人数だけ採用されるというものでもない。「だから当局は求職登録者には職業訓練を施して、できるだけ自営自立化を推奨している。」と同局長は語っている。そのプログラムの内容は、各村に失業者を糾合した自立職業技能訓練機関を設置し、自動車修理サービスや縫製技術などを教えるコースを作らせている。今年は工業省、商業省、コペラシ省などを巻き込んで、そのプラグラムのサポートをしてもらうよう、企画を進めているとのこと。
中央チカラン郡チカマヒ村にある県労働局ビルには、求職者がひっきりなしにやってきてイエローカード手続きや求人案内を調べており、毎日かなりの混雑を見せている。求職者のひとり、タンブンの住民で22歳の女性サンティは「求人があり、本人がイエローカードを持っていれば、テストを受けることができるの。わたしは契約社員に合格してある会社で6ヶ月働いたけど、契約延長されなかったのでまたここで仕事を探してます。」と語っていた。しかし労働力アウトソーシング機関が行っている人員派遣に対する批判の声も強い。「契約システムは非人間的です。わたしたちが生産的である間は使ってくれますが、歳を取ったら捨てられるんですよ。これって本当に、『甘い汁がなくなったら粕は捨てられる』ってことわざそっくりだわ。」と別の求職者のひとりは語っていた。


「収入印紙デザイン変更」(2005年6月8日)
黄色地に国章ガルーダが左上に置かれている現行デザインの収入印紙(Meterai Tempel)は2002年版で、2005年4月1日から2005年版に取って代わられた。新デザインは地色が青系に変わり、国章ガルーダは右中央に移っている。ホログラム、インビジブルインクなど、偽造対策も2002年版より進化している。
旧デザイン印紙の使用は今年9月30日まで有効とされており、10月1日以降のものに使われても印紙としての効力を持たないので、注意が必要。
ちなみに収入印紙が貼付されなければならないものは下の通り。
Meterai Tempel Rp 6000-
1.契約書、委任状、寄贈書、証明書など、民事的性格の行為、事実、状態などに関する証明として使われるために作成されるもの。
2.公証人の作成する証書とその写し
3.土地権利証書作成官が作成する証書とその写し
4.100万ルピア以上の金額を記載した書類(領収書、銀行の記帳証明や残高証明、借金返済証明など)
5.法廷で証拠として使用される書類
Meterai Tempel Rp 3000-
1.25万ルピア以上100万ルピア未満の金額を記載した書類(領収書、銀行の記帳証明や残高証明、借金返済証明など)
2.額面金額が25万ルピア以上100万ルピア未満の手形、約束手形、引受手形などの有価証券
3.額面金額が25万ルピア以上100万ルピア未満の株券や債券で名称や形式を問わない
4.小切手や銀行間振替小切手(額面金額は問わない)


「コンパス紙への投書から」(2005年6月10日)
拝啓、編集部殿。わたしは民間企業の社員として20年間、年次納税申告書(SPT Tahunan)を毎年作成してきました。老齢に達したので、1994年4月1日に定年退職し、収入はありません。それでわたしは納税者番号(NPWP)廃止と年次納税申告書提出義務を終わらせるよう、税務署に申請をしたが拒否されました。これは納税額がゼロであっても、わたしは死ぬまで年次納税申告書を提出し続けなければならないことを意味しています。
2003年1月に放送されたTVRIの番組Kafe Pajakでは、税務職員(ペトルス・タンブナンさん)が、「老齢で退職したサラリーマンで収入のない人は年次納税申告書を出さなくて良い」と発言しています。
いまわたしは67歳で所得はありません。このレフォルマシ時代に国税総局長は、もうカビの生えたオルバ時代の徴税規則を捨て去ることができるのではないでしょうか?


「シドアルジョ県の労働監督状況」(2005年6月13日)
東ジャワ州シドアルジョ県。2,133の大中小規模製造加工工場が立ち並ぶジャワ島東部筆頭の工業地帯だ。事業所数を見れば14,523軒もある。履物業界の大手、PT Kasogi Internationalがタイへの生産拠点移転を理由に2,064人を雇用していた工場を閉めたのは2004年6月。その後の労使間退職金交渉は決着を見ないまま今日に至っている。
2005年に入って最初の四ヶ月間で発生した労使紛争は9件を数える。労働ストあるいは陳情行動という雇用者に対する従業員の抗議行動は、件数は減ったものの継続的に起こっている。最新のものはCV Fajar Kimia別名PT Aneka Kimiaの従業員40人が4月20日から4月25日まで、雇用者の労働規定違反を問題にして行ったハンスト形態の陳情行動。労働者たちは雇用者の違反とは別に、県労働局の労働条件監督の弱さを合わせて追及している。
県議会もこの問題に関心を寄せており、第D委員会は昨年10月から今年3月まで、県下にある50工場をランダム抽出して視察を行った。その結果12工場で重度の労働法規違反が発見されている。そのうち9工場は社内労働規定を作っておらず、3社は地方最低賃金に違反し、そして12工場全部がジャムソステックへの加入義務を怠っていた。第D委員会は、軽度の違反は数知れず、法規を遵守するよりも違反している工場の方がはるかに多い、とコメントしている。シドアルジョ県の1万5千近い事業所のうち、ジャムソステックに加入しているのはわずか803軒しかない。しかもPTジャムソステック、シドアルジョ支店は今年2月、9ヶ月以上プレミアム支払いを滞納している103社に対して、40億ルピア相当の未払い分帳消しを行っている。
CV Fajar Kimia別名PT Aneka Kimia社の紛争では、従業員が公式にどちらの会社名で労使関係を持っているのかよくわからない状況で、2004年2月に起こったPT Panca Duta Rubberが309人の従業員を無給で自宅待機させたケースと類似点がある。このケースではPanca Duta Rubber従業員が会社オーナーと見なしているPT Panca Duta Foam Industri社長アグス・サントソが、自分はその309人とは関係がないとして退職金の支払いに応じようとしていない。
シドアルジョ県労働局長は、労働監督員が9人しかいない現状では県下の全製造加工工場を監督するだけでひとり237工場を持たなければならず、物理的に不可能な状況だ、と説明する。そのため労働局は、各事業所の労働法規違反を労働組合に監視させようとのアイデアを現在進めているところ。数十万人の労働者人口を抱えるシドアルジョ県は労使紛争が社会騒擾を発生させる可能性が高く、県当局は限られた人員ながら早め早めに紛争の芽を把握して問題解決を図ることを目標にしている。


「ジャムソステックによる医療サービスレベルを改善せよ」(2005年6月24日)
西ジャワ州事業者協会(APINDO JABAR)がPTジャムソステックに対し、サービス面、中でも医療サービスの改善をはかるよう要請している。デディ・ウィジャヤ同協会会長によれば、多くの勤労者がジャムソステックの医療サービスレベルの悪さに不満を述べているとのこと。「ジャムソステックによる医療サービスは劣悪だとして、その利用を拒む勤労者が増えている。事業家層は労働保険の独占時代が早く終わるよう、保険法案の早期実現を待ち望んでいるありさまだ。多くの従業員を抱える会社は従業員への医療サービスが保証されることを望んでおり、良いサービスが受けられないからと会社が従業員の抗議を受ける現状では困る。労使の円滑な関係が築かれることを事業家層は望んでおり、労働保険に選択の幅ができれば優れた保険会社が良いサービスを提供してくれるようになるにちがいない。ジャムソステック加入者がまだ少ないとバンドン市労働局は言っているが、それは良いサービスを提供していないためだ。」と同会長は批判を展開した。
2004年度のバンドン市労働局データによれば、管下の事業所は4千あり、従業員をジャムソステックに加入させているのは40%しかない。市労働局はジャムソステック加入推進を継続して行っており、今年は150社が新たに加入したとのこと。


「労働者はあまりにも政治的」(2005年6月28日)
インドネシア労働者の業務能力が低いのは、労働組合があまりにも強く政治的色彩を帯びているからだ、と政府は見ている。労働トランスミグラシ相専門スタッフのシャウフィ・シャムスディンは、85ある労組連合のすべてが社会政治的方向性を持っているという事実から、その見解は明らかであると述べている。それはつまり、労使関係の中で労働者の力を伸ばしていこうとする方向性の不在を意味している。きわめて政治的な労働組合であるため、労働者の質的競争力は近隣諸国と比べてたいへん劣っている。特に産業技術面での知識や技能がお粗末であり、他国の労働者に負けている。
生産に携わる労働者としてのパワーが要求されているいま、社会政治勢力として存在してきた労組は、生産向上と人材養成という方向性に方針を切り替えなければならない。インドネシアの労働者が諸外国と競合し、また労使関係の中でバーゲニングポジションを得るためには、人材養成が不可欠だ。国内労働者の能力不足と社会保証の弱さは、いまだにストや解雇が多いところに反映されている。


「ジャムソステックは本当に必要か?」(2005年7月5日)
政府労働省とPTジャムソステックが強制的に進めている勤労者社会保障制度ジャムソステック。だが貧困労働者にとってジャムソステックの労災補償は本当に意味があるのだろうか?
カルタはある工場の従業員で、残業後に帰宅途上で怪我をした。オジェッ引きのエランは仕事中に怪我をした。ふたりは同じ国立病院の三級病室で隣り合わせに寝ている。ふたりとも骨折箇所を金属でつなぐ手術をした。カルタの会社はもちろんかれをジャムソステックに加入させている。エランは自営だし、自営者が自らジャムソステックに入る風潮はインドネシアにまだない。このふたりはいったい何が違ってくるのだろうか?
カルタは親戚や知り合いを駆け回って借金し、といってもかれの家族がだが、手術や入院の費用を工面した。その費用は、あとでカルタが病院の領収書を会社に出すと、会社はジャムソステックにそれを請求し、その金が戻ってくるのだ。しかしエランにそんなことはできない。すると病院側がエランに薦めた。貧困家庭認定を受ければ、すべての病院代は政府が支払ってくれる、と。エランの家族がその手続きをすぐに行ったことは言うまでもない。ならばカルタにとって、ジャムソステックはいったいどんな意味を持っていたのだろう。会社は毎月給料の一部を天引きしてジャムソステックに納めている。会社に雇用され、毎月の収入がはっきりしているために、ジャムソステックに入らなければならないのだろうか?最低賃金からあまり離れていないカルタの月給で、貧困家庭認定はできないのだろうか?
1992年第3号法令は、ジャムソステック加入勤労者が労災を被れば、すべての費用はジャムソステックが負担すると明記されている。ならばカルタはジャムソステックの費用で一級病室に入る権利を持っていたのだ。ジャムソステックに関連していまは、労働省もPTジャムソステックも、対象者を加入させることを必死になって追いかけているが、対象者が権利を振るう面でのサービスがほとんどケアされていないとの批判が諸方面から投げかけられている。ましてや、政府が貧困家庭に対する医療費無料化政策をその一方で進めているのは、貧困勤労者にとって大きい矛盾と言える。
ジャムソステック加入者は、労災に関連して一級病室待遇が受けられるのだという権利を、政府労働省、PTジャムソステック、地方自治体がすべての関係者に広報告知しなければならない。病院はそうすればより大きい収入が得られ、そのマージンはジャムソステック非加入の貧困患者に対して活用することができる。毎日二輪車の交通事故はひきもきらず発生しており、そして労災の60%が出勤退勤時に路上で発生しているという事実がある。ジャムソステックの加入者に対する医療サービスを向上させれば、加入者は放っておいても増加するのではないだろうか。法令を定め、その執行を強圧的に遂行するよりも、その方がはるかに効果的なのではないだろうか。
ジャムソステック加入者の増加とその運用の充実で、政府の貧困家庭医療負担は軽減されるに違いない。赤字の続く政府会計にとってもこれは好循環をもたらすものであるにちがいない。


「今年上半期の税収は順調」(2005年7月9日)
今年上半期の税収は改定今年度予算の48%を消化した、と当局者が語った。ハディ・プルノモ国税総局長は、6月30日時点での同総局税収額は129.4兆ルピアであり、目標額の285.3兆の45%に相当する、と国会第9委員会2006年度予算検討会議の合間に記者団に語った。非石油ガス部門の所得税は67兆ルピア、付加価値税43兆、石油ガス部門所得税13兆、都地建物税不動産取得税は5兆、その他1兆といった明細。一方エディ・アブドゥラフマン税関総局長は、同総局担当の上半期の税収総額は22兆ルピアで、明細は関税7.5兆、チュカイ14.4兆となっており、それぞれ今年の改定税収目標に対して64%、50%の達成率となっている、と述べている。


「会社を従業員が議会に告訴」(2005年7月11日)
ジャムソステック掛け金を滞納している会社を労組が議会に訴えた。ブカシ市バンタルグバンにある家具製造会社PT ASWIは1997年にジャムソステックに加入していたが、2004年4月以降、ジャムソステックへの支払いを行っていない。問題が大きくなったのは、同社従業員のひとりがその娘に子宮ガンの手術を受けさせようとしたところ、ジャムソステック側が会社の掛け金滞納を理由にその補償を拒んだことによる。その従業員は1千2百万ルピアを借金してかき集め、手術は終えたが医療補償金がおりないため、借金を抱えたままになっている。
339人の従業員は賃金支給の際に勤労者負担分が天引きされているのに、会社はそれに会社負担分を加えてジャムソステックに納入することを怠っており、その総額は2億ルピアを超えている、と同社労組議長は市議会に陳情している。同社従業員の賃金は一月71万ルピアだ、とも同議長は述べている。市議会はその陳情に答えて、問題をクリヤーにした上、もし会社側に落ち度があれば厳しい処置を取ることになる、と語っている。


「解雇手続き違反を従業員が警察に訴える」(2005年7月13日)
国内化粧品業界でサリアユのブランドを持つPT Martina Berto社の東ジャカルタ市にある工場従業員数十人が、合理化を理由に解雇した会社側の行為は違法だとして国家警察本部に訴え出た。同社は5月末から6月初にかけておよそ80人の従業員を解雇したが、解雇対象になった従業員たちの中で37人が、その解雇プロセスの中で違反が行なわれた事実を司直に訴えることに合意し、今回警察に届け出るはこびとなった、と従業員たちは説明している。
届け出られた内容は、会社側は従業員データをごまかして労働省に従業員解雇申請を提出したため、それに応じて労使紛争調停委員会が出した『効率のための従業員解雇許可番号926/1277/265-6/IX/PHK/6-2005号』は無効であるはずだというもの。解雇された従業員のひとりは、会社側が行なった総従業員数や従業員データのごまかしなどの虚偽データ提出と、そして対象従業員に対して行なわれた強制や威嚇は許されるものではない、と語っている。最終的に70人は、会社からの賃金3.5か月分にあたる手当金が失われないよう、解雇同意書にサインせよと脅かされて仕方なくサインしたとのことだが、10人は最後までそれを拒み、その状況に意を強くした27人が既にサインした解雇同意書を破棄して会社側との徹底抗戦に加わった、とかれらは物語っている。


「労使紛争件数は下降傾向」(2005年7月14日)
2004年の労使係争事件は8万2千件で、2003年の9万1千件、2002年の11万4千件から顕著な下降をたどっている。労働省はこの状況を、労働者と会社経営者が労使間の問題をオープンで透明に解決しようとする傾向が生まれているためであると見ている。しかし社内労組が労使二者間協議を長引かせる傾向も見られることから、紛争解決を二者間で行なうよう推進している労働省もまだ息が抜けないところ。
ところで労使紛争解決のためのステップは法規ですでに用意されているが、当事者間あるいは三者間協議での解決がこじれた場合は、労使係争法廷で処理されることになる。この労使係争法廷の専門判事任命作業がいま進められており、労働省は既に219人の実業界、労働界出身適任者を最高裁判所に推薦し、その審査を待っている段階だ。その任命は、法令によれば大統領もしくは最高裁長官の推薦によるとなっており、プロセスにはまだ時間がかかる見込み。
労使係争解決に関する2004年度法令第2号は2005年1月14日から施行されることになっているが、2005年度法令代用政令で1年間その開始が延期されている。


「ブカシで建設中のホンダ工場に地元民が押しかける」(2005年7月15日)
14日朝、ブカシ県チビトゥン郡西チカラン町のMM2100工業団地内に建設中のPT Astra Honda Motor社工場に、県内のいくつかの大衆組織を代表して数百人が押しかけた。それら数組織のいくつかはそこに集まった目的について、工場の保安や工事完了後の廃材等に関する処理を地元民に委ねてほしいため、その要請にきたと語っている。
かれら数百人の群集はブカシ警察とチビトン警察署から派遣された治安要員の厳重なガードに迎えられ、各組織代表者が会社側建設プロジェクトリーダーと交渉する間、デモを繰り広げるでもなく、工場前道路の緑地帯に腰をおろして成り行きを見守っていた。ブタウィ人会ブカシ県地方指導部事務局長は「地元民として、工場建設の最初から操業開始後の廃棄物処理まで、地元の経済発展に関わりを持つ中で、工場に協力したいと強く希望しており、事業投資が行なわれる際にはぜひ地元民にも声をかけてもらいたい。」と主張を述べている。
ブカシ県内には多くの工業団地があり、団地周辺地元民は折に触れて雇用要求を団地管理者や入居工場に訴え、時には道路閉鎖などの実力行使を伴ってそれが行なわれてきたが、学歴をはじめいくつかの採用条件が満たせる人は既に雇用されており、いまだに雇用を要求している人の大部分は条件が満たせずにふるい落とされた人たちだ。そのような体験を経て、地元民の地元民であることを理由にした雇用要求はいまや減少傾向にある。
ある工業団地管理者は、工場に雇用されるだけが生計を得る道ではなく、工場で採用されなくとも、ワルン(屋台飲食店)を開いたり、工場の近くに下宿屋を開いたりすることで暮らしている人も数多い、と地元民に対して説明している。


「NPWP非保有者の税率が高くなる!?」(2005年7月19日)
国税総局が、所得税に適用する税率の変更を計画している。といってもこれは国民のNPWP(納税者番号)取得を推進させるための方策で、国税側のアイデアは、NPWP既取得者は現状のまま、未取得者にはより高い税率を適用するというもの。この対象となる所得税はPPh Pasal 21、PPh Pasal 22、 PPh Pasal23の三種類。
PPh Pasal 21は主に給与賃金所得者がその対象になるもので、雇用者に源泉徴収と納税の義務が負わされている。税率は規定の控除金額を所得から引いたあと、2千5百万ルピアまでが税率5%、それを超えて5千万ルピアまでが10%、それを超えて1億ルピアまでが15%、それを超えて2億ルピアまでが25%、2億を超た部分には35%が課税される。税務当局はNPWP未取得者に対する課税率としてそれを20%引き上げようとしているが、それと同時に税率ブラケットをひとつ減らして5千万ルピアまでを最低税率の5%にする考え。このため税率ブラケットはNPWP既取得者の場合5%、15%、25%、35%の四段階、未取得者の場合は6%、18%、30%、42%となる。もしこの案が実施に移される場合、従業員のNPWP保有ステータスによって源泉徴収税率が異なってくるため、従業員に対する給与金額表示はこれまでの慣習だった手取り金額から税込みのグロス金額への変更作業が避けて通れなくなる見込み。
一方、輸入に関連して関税等の支払い時に前納することになっているPPh Pasal 22はAPI(輸入者番号)保有者に対する税率は2.5%、非保有者への税率は7.5%となっており、今回の提案ではNPWP非保有者の場合それぞれが5%と15%にアップする。金利、配当、ロイヤルティなどから得られる収入に課せられるPPhPasal 23についても同様で、NPWP非保有者に対する税率は保有者の二倍にされる。政府がいま検討中のこの改定税法は8月に国会提出が予定されている。


「ジャムソステックがNIBシステムを開始」(2005年7月20日)
PTジャムソステックと7銀行およびPTアスケスが共同でNIB(共通認識番号)システムを開始する。このNomor Identifikasi Bersamaシステムはジャムソステック潜在加入対象者数6千万人分のデータベースを用意して単一認識番号での管理をしようというもので、加入者、ローン借入者、証券保有者の商業分野外のデータがそこにインプットされる。
国有事業体担当国務相の糾合下に行なわれたこのシステム打ち上げに参加する銀行は、マンディリ銀行、BNI銀行、ブコピン銀行、ムアマラッ銀行、マンディリシャリア銀行、BTN銀行、BRI銀行の七行。このシステムでは、登録者にNIBが記されたカードが発行され、このカードはATMカードやクレジットカード、病院での保険証明カード、保険クレーム手続き等の証明、はては出勤退勤時の記録用などに使用されることができる。同時にこのシステムは、国税総局が中心になって進めている国民シングルアイデンティティ番号コンセプトの先駆けとして位置付けられている。


「デポックで最低賃金違反が13社」(2005年7月23日)
デポック市内にある13社の従業員2,835人が最低賃金を下回る給与しか与えられていないことをPTジャムソステック・デポック支所が明らかにした。その13社はジャムソステックに加入しているため、掛け金計算データからPTジャムソステック側は加入者の給与を知ることができる。2004年以来、同支所は最低賃金に満たない給与をもらっている加入者に関するデータを市労働局に提出して注意を促しているが、期待する結果となって戻ってきたことがない、と同支所長は述べている。
2005年のデポック市最低賃金は、2004年11月22日付け西ジャワ州知事令第561/Kep/11.32/Bangsos/2004号でRp. 681,804.- が定められ、2005年1月1日から施行されている。ところが上記2,835人は平均で月額35万ルピアしかもらっておらず、中には月9万5千ルピアという者もいる。同支所は自らそれらの会社を訪問し、また市議会議員を同行して会社経営者に違反警告を行なっているが、それらの会社は「もっと高い給料を払わなければならないのなら、会社を閉めた方がましだ。」という姿勢を示しているとのこと。デポック市には649の事業所があるが、そのうち397事業所はまだジャムソステックに加入しておらず、また加入者のうち53社が滞納している。そのため最低賃金を下回る給与で人を雇用している会社はその13社だけではないだろう、と見られている。またデポック市庁自身も、陸運局や公園清掃局の契約社員に対して保険加入をまだ行なっておらず、同支所はデポック市が早急に義務を果たすよう、苦言を呈している。
ちなみに、最低賃金違反を犯している事業所は下の通り。
RS Bhakti Yudha (Rp 528,402.-), PT Genggong Village (Rp 514,000.-), PT Central Star (Rp 260,000.-), PT Tramotex Industrial (Rp 300,000.-), PT Mayer Crocodile (Rp 417,000.-), PT Mayer Indah Indonusa (Rp 300,000.-), PT Dewa Citra (Rp 429,000.-), PT Citra Dinasti (Rp 510,000.-), PT Karyana Plastik Industri (Rp 137,250.-), PT Minuman SAP (Rp 95,000.-), PT Golden Agin (Rp 576,196.-), PT Jupiter Semesta Utama (Rp 576,200.-), PT Indira Mustika (Rp 300,000.-)


「ミニマム所得税」(2005年7月27日)
税法改訂案の煮詰めを行なっている税法案見直し検討チームは、納税忌避を行なう大企業に対して国税総局長がミニマム所得税を決定する権限を持つこと、外国間決済において納税忌避の試みがあることを国税総局長が一方的に断定できる権限を持つこと、が提案されている事実を明らかにした。ミニマム所得税というのは、事業が実際に利益を上げているのに赤字と称して納税を忌避しようとする会社に対する措置で、その不自然な事態を正すためにはまず各事業セクターにおける損失の限度が設けられる必要があるにせよ、そのような会社には1億から2億ルピアの範囲でミニマム所得税を課すことになる、とのこと。このため、1983年度第7号法令の所得税第17条による請求を受けている会社は、それがミニマム所得税より小さい場合はミニマム所得税を納めなければならなくなる。この案に関連してイ_ア大学専門家は、セクター別に納税者の損失限度を明確にした上での納税額に関する議論が順当であり、その数字が決められるのを待ちたい、とコメントしている。
海外送金による納税忌避とは、密接なあるいは特別な関係にある海外の会社に利益を送金することは、その利益が後で当該納税者に還元されるものであるため、それを納税忌避であると国税総局長が断定できるようにするもの。
ところで、ユスフ・アンワル蔵相はいま検討が進められている税法案、通関法案は8月17日依然に大統領に提出できるようにしたい、と日程に関する希望を語った。その後国会での審査を経て早急に制定に持ち込みたい考え。


「配当金所得に確定課税案」(2005年7月28日)
配当金に対する所得税を分離確定課税方式に変更する考えであることを、税法改訂案の煮詰めを行なっている税法案見直し検討チームが表明した。ただしこれは提案であり、蔵相〜大統領〜国会のすべてを通らなければこの提案は実現しない。
この対象者は個人納税者であり、この提案が実現すれば個人投資家にとって煩わしい納税申告の面倒が省かれることになって、証券投資を一層活性化させる誘因ともなりうることから、証券界ではもろ手をあげて歓迎している。
現行税制によれば、金利所得や配当所得はPPh Pasal 23適用対象とされている。PPh Pasal 23はさまざまなサービス業の所得あるいは資本運用による所得に対して固有の税率を定め、支払い者が源泉徴収して納税するものだが、これは当該年度に発生する所得者の所得税の一部予納ということになっており、年度の締めを行なって確定納税計算するときに再度計算しなおされる。所得税はブラケット型累進課税で、法定控除後2億ルピアを超える所得には35%という最高税率が課税される。言うまでもなく予納した税金は総納税額から引くことができる。
今、配当金の所得税第23条は税率15%となっているため、配当金支払い者が総額から15%を源泉徴収して納税し、納税証憑を配当金受取者に渡す仕組みになっているが、新税法でそれをファイナルにしてしまおうと検討チームは提案している。一方、国外納税者についてはこれまでと変わらず、所得税第26条の規定に従って、総額の20%が源泉徴収されてファイナルとなる。ただし二重課税防止条約をインドネシアと結んでいれば、その条約の規定に従う。その税率はたいてい10%だ。


「オンライン納税申告がはじまる」(2005年7月29日)
オンラインによる納税申告手続きが今年から始まる。国税総局はその手続きの詳細について決定と公表を行なった。社会告知がこれから進められていくことになる。このシステム利用を希望する納税者はまず、所轄の税務サービス事務所に申請し、electronic filer identification number(EFIN)を取得しなければならない。
このEファイリングのシステム運用には、国内のアプリケーションサービスプロバイダー(ASP)が使われる。たとえばLaporanpajak.comという当局指定ASPを納税者が選ぶ場合、納税者はそのASPと契約することになる。ASPはオンライン税務申告のアプリケーションパッケージを提供し、またユーザーIDやパスワード、更にデジタルサーティフィケートを与える。
納税者は税務申告時にそのアプリケーションを開き、オフラインでデータを記入してからオンライン接続を行なってデータを送付する。使用されるコンピュータ端末はデジタルサーティフィケートがインストールされたものに限られる。デジタルサーティフィケートは申告者のアイデンティティ確認と送付データのランダム化を行なって、データ盗難を防止する。またASPは契約者のデータ守秘を保証する義務を負わされている。
このオンライン納税申告は一日24時間、一週7日間、いつでも行なうことができる。ただし時間は西部インドネシア標準時間が使われるので、時間が先行する東部地方では締め切り翌日でもまだ期限内申告ができる可能性が生まれる。納税者が申告を行なうと、国税総局からデジタル受領証が戻ってくる。Nomor Transaksi Penyampaian SPT(NPTS)というのがその受領証の名。
この新システムの社会告知はASPが行なうことになっており、上述のLaporanpajak.com社は8月1日から5日までEファイリングトレーニングを行なう予定になっている。


「銀行にもPPN課税」(2005年8月1日)
国税総局が金融界へのPPN課税変更を提案している、と改定税法案検討チームが表明した。国税総局シャリフディン・アルシャPPNその他間接税局長によれば、金融界の銀行とノンバンクを区別することなく、すべてのマネタリーサービスはPPN非課税とし、一方銀行が行なっていてもマネタリーサービスではないものに対してはPPN10%を課税しようというのがその提案。今現在、銀行が行なっているビジネス活動はすべてがPPN非課税とされており、一方ノンバンクが行なうマネタリーサービスにはPPNが課税されている。現状はバンクとノンバンク間に公平感がなく、同様の金融サービスを行なっても公正な競争になっていないため、その歪を是正するのがこの提案の目的とされている。この案ではノンバンクが行なう金融サービスからのPPN収入が減少することになるが、協同組合の積立貸付から得られているPPN収入は全体の5%に満たないものであり、大きい影響は出ない、と国税側は見ている。
一方銀行が行なっている金融サービス以外の事業には今後PPNが課されることになる。銀行が所有するビルのフロアを借りているテナントリース者や銀行の貸し金庫利用者などはPPNを負担しなければならなくなる。
また保険に関しては、生命保険は積立と同じであることからPPN非課税は従来と変わらず、生命保険以外のあらゆる損害保険にPPNが課税されるのもこれまでと同じ。


「労組は事業経営を理解する能力を持て」(2005年8月2日)
7月28日、クドゥスで開かれたタバコ飲食品労組連合第3回全国大会開会式でファハミ・イドリス労相は、労働者は会社経営や事業会計が理解できるようにならなければならない、とスピーチした。同相によれば、労使間コンフリクトの中には会社の経営状態に関する理解が労使間でまったく食い違っているというものも少なくない。おまけに会社側が財務報告書の操作、あるいはそこまでしなくとも労働者の無知につけこんで会社側に有利になるよう印象付けるといった手管を使うことも行なわれていないとは言えない。だからこそ労組は、経営者と同じ土俵の上で財務報告書が正しく会社の経営状態を反映していることをモニターするとともに、その会社がどれだけの福祉を従業員に与えることができるかについて経営者と同じ理解を持つようにならなければならない。そのような形で会社の中に透明性と相互理解がもたらされれば、労使間コンフリクトは大幅に減少するだろう。そのために会社側は会社の事業に関する情報へのアクセスを労組に開放しなければならず、また労組側は組合員が会社の財務報告書など経営に関する情報が理解できるよう、学習と訓練を施さなければならない。
労相は、会社が作成する事業報告に対して労組がその有効性をチェックするというレベルに達することをこの面における理想としている。


「6種の経費が所得税課税対象金額から控除できる」(2005年8月3日)
税法案見直し検討チームが、所得税課税金額から新たに6種類の経費を控除できるようにする案を提出している。ハディ・プルノモ国税総局長は、この控除を認めても即税収減につながることにはならないだろう、と述べている。その6種類とは、外貨差損、損失引当金、奨学金、石油ガス産出経費、社会開発経費、自然災害への寄付金。
損失引当金は金融界が貸倒れに備えて設けるものや積立金貸付を行なう機関が行なうもの。奨学金については、受取者は非課税であり、授与者もこの措置で非課税になる。石油ガスは国民が廉価な燃料を求めているこの時期、その方向付けを支援するもの。社会開発プログラムに資金を提供する会社はその資金が非課税にされる。自然災害への寄付は昨年末の津波大災害でスタートしているが、国家的規模の災害に対して法制化しようとするもの。


「タングランで労働争議」(2005年8月4日)
タングラン市ジャティウウンにあるPTコーリョーインターナショナルインドネシアで2日、数千人の従業員によるストと陳情行動が行われた。同社は3千5百人の従業員を抱える履物生産工場。
同社では7月から、注文が激減したために全従業員の半数を超える2千人ほどを自宅待機にしたが、デモを行っている従業員たちによれば、会社側は自宅待機決定の際従業員に対し、給料はこれまでと同じように支払われると約束したとのこと。ところが7月終わりごろになって会社側は、7月から9月までの給料を10月はじめにまとめて支払うことを決めたために、今回のデモとなった。1994年から同社に働いている従業員のひとりは、一方的に従業員を自宅待機させる根拠は何か、と鬱憤をぶちまける。「会社はひとり勝手に従業員をこんなふうに扱い、やめて行くように仕向けて人員削減を行おうとしている。話では、会社はもう最低賃金を守るだけの給料支払いができないそうだ。」との談。
会社側は全国労組コーリョー支部との交渉の結果、8月4日に7月分の給与支払いを約束してこのストは決着した。


「西ジャワ繊維産業界で50万人解雇が起こるか?!」(2005年8月8日)
斜陽からの再起に対してエネルギーの値上がりと供給制限は大きい障害になっており、かつて昇竜の勢いを誇ったインドネシア繊維産業はその規模をますます縮小している。繊維産業の中心地バンドンを擁する西ジャワ州繊維業協会(API)は、いまだに市場にあふれている不法輸入品の一掃を行うどころか、産業向け石油燃料や電力を値上げして省みない現政府の政策ではこれまでの操業を維持することができないとして、年内の早い時期に50万人にのぼる大量解雇が発生するだろう、と表明した。
リリ・アスジュディルジャ同協会西ジャワ支部長は、「今の状況下にAPI傘下の多くの事業主がフラストレーションに陥っており、すぐにでも事業をたたんで従業員を解雇する気持ちになっている会員も少なくない。2001年から累計して、事業を取り止めた会社は既に273社に達しており、今月ですらもう4社が生産活動を止めている。西ジャワ州繊維産業が抱えている2百万人雇用のうちの25%は近いうちに解雇の憂き目を見るだろう。しかしその数字はまだ良いほうだ、と考えなければならない。事業継続に意欲を燃やしている事業主もまだまだいるのだから。」と語っている。
石油燃料消費制限に関してAPI本部は、大型企業の燃料消費が月平均5百キロリッターまでは市場価格を適用するというプルタミナの決定は不公平だと言う。繊維産業では月平均1千5百キロリッターが消費されているのだから。産業向け石油燃料価格高騰によってインドネシア繊維産業はますます競争力を失って行き、ドミノ効果が最終製品セクターまで及ぶことになる。繊維産業のコストアップは35%になるだろう、とAPI本部は表明している。


「税務法廷での納税者側勝訴件数は敗訴の二倍以上」(2005年8月15日)
税務監査で税務職員の査定した税額は、すんなり呑むことのできないものになるのがほとんどだ。さてどうするか、というのが納税者の悩みだが、明らかに税務職員の方がおかしいと思えるなら、税務法廷に訴えるのもひとつの手段。というのは、過去数年間、税務法廷では、訴え出た納税者側が勝訴する比率が高まっているからだ。2004年の納税者側勝訴件数は426件で全体の44%を占め、2003年は267件で42%、2002年は263件で42%、2001年232件44%という高い比率となっている。国税側勝訴は2004年148件15%、2003年159件25%、2002年118件18%、2001年82件16%と敗訴件数の半分にも満たない。勝訴敗訴以外の件数は納税者側が部分的に主張を認められたもので、言い換えれば国税側も部分的に追加徴税に成功しており、五分五分という判決と考えればよい。
インドネシアでは納税に関してセルフアセスメント主義が貫かれているが、国税職員あるいは通関職員がそれをチェックして税額査定を行い、その算定根拠を提示して不足金額を追徴する仕組みになっている。追徴が発生すれば、ほとんどのケースで罰金が科される。この追徴に不服があれば、その50%を納税した上で法廷に訴えることができる。
税務法廷における上述の数値は、ある意味で当然の結果だ、とある税務コンサルタントは語る。税務職員の査定が本当は正しいことを知っている納税者は、決して法廷に訴えることはしない。自分の方が正しいと確信しているから納税者は訴え出るのであって、それでもその2〜4割は負けているということなのだ。税務監査で追徴が発生するケースが多いのは、納税者があまり完璧な資料を用意しないという要因もある。ところが裁判になれば、一生懸命完璧な資料をそろえるので、勝訴を得る可能性が高まる。しかしそのようなこととは別に、納税者にも脱税をトライする悪徳者がおり、そして税務職員の中にも悪徳者がいるという事実もあげられる。
税務監査の実施は税務職員が恣意で行っているのでなく、SP3と呼ばれる税務監査命令書に基づくもので、たとえば2004年にはSP3が100,518件出されたが、監査実施済みは67,492件、残りは未完となっている。2003年はSP3が117,521件で、実施済み72,576件、未完44,945件だ。このように税務監査実施が必要性に追いつけない実情を一方で抱えながら、細かいミスを捜し出して手っ取り早く監査を終わらせようとする空気が職員側に流れているのも疑いない事実だろう。誤った査定を下した税務職員にお咎めなしは片手落ちだ、というセンチメンタルな批判も納税者側にはあるが、もっと大きい枠組みの中での徴税レフォルマシが進められることが重要なのではないだろうか。


「改定税法案内に税務職員への制裁規定が盛り込まれる」(2005年8月19日)
2000年税法の改定案を検討している政府は、権限悪用や納税者に対する権利侵害を行う税務職員への制裁を厳しくする考えであることを明らかにした。18日に開かれたセミナーでイ・マデ・グデ・エラタ大蔵大臣専門スタッフは、税務職員が行った不当行為は、大蔵省内部機関に訴えるチャンスが開かれる、と語った。税務職員は納税者の接待をうけることすら本来は禁止されるべきことであり、税務職員が納税者に対して権限を悪用したり、法律で定められている納税者の権利を侵したりすれば、納税者は大蔵省監察総局調査担当監察チーム(Tim Inspektorat Bidang Investigasi, Inspektorat Jenderal Departemen Keuangan)に届け出ることができるようになる。
そしてその不当行為が明らかになれば、その税務職員には制裁が加えられる。それとは別に、税務職員は国税総局が定める服務倫理規定を遵守しなければならない。服務倫理規定遵守の監視と訴え受付のために、そのためのコミッションが設けられる。国税総局と税関総局はいまその服務倫理規定を編成中であり、その規定がオーソライズされればこのコミッションは活動を開始することになっている。この国税と税関のそれぞれの服務倫理規定コミッションは大蔵省官房総局長が委員長、監察総局長が副委員長に就き、監察総局がその事務局となる。税法改定案検討チームはその税務職員・税関職員に対する制裁規定で、納税者と徴税官の地位対等が実現し、法の確定が向上すると見ているが、中立対等原理から見ればまだまだ不足している、とフアッ・バワジル国会第11委員会議員はコメントする。なぜなら、納税者が訴え出るのは大蔵省内部機関であり、納税者の不利になるようなことを徴税官にさせるアレンジは省内でいくらでも可能になるため、それだけで問題が決着することにはならないからだ、との同議員の意見。「国税総局内には職員の不当行為に対する罰則がこれまでも用意されているが、それが公平に運用されていると国民納税者は見ていない。」同議員はそう述べている。


「首都の失業対策に日本での実習」(2005年8月19日)
都庁労働局が首都の失業対策として、日本への実習生派遣を行う計画を建てている。対象者は都民で高校・短大(D3)・大学(S1)卒の学歴を持つ心身健全な者。この学歴条件については、機械系技術高校、D3、S1の卒業証書を持っている者、普通科高校卒であれば480時間以上の技能研修を受けた特定技能保有者に限定される。他の条件は身長160センチ以上、体重50キロ以上、医者の診断書や警察の素行無犯罪証明など。中でも健康な者という条件については、志望者は15キロを走り抜いてそれを証明しなければならない。
合格した実習生は日本に送られて会社に配属され、プロフェッショナルな技能訓練を受ける。また十分な報酬が実習生には与えられることになっている。
このプログラムは2005年から三年間続けられる予定だが、何人まで日本側に受け入れられるのかはまだはっきりしていない。


「税法改定作業は大詰めに」(2005年8月23日)
内閣税法改定検討チームが進めてきた改定案はかなり大詰めに向かっており、近々大蔵省内で最終ドラフトをまとめて国家官房に提出される予定になっている。今月末には国会審議に上程される予定で、この審議が順当に進められれば、2006年1月1日から新税法が施行されることになる。
この改定税法案では多くの市場寄り変更が盛り込まれており、現行税法よりは経済活動実施者に優しいものになるという印象を与えている。最終ドラフトには次のようなファシリティの改善が見られる。
項目 / 現行法 / 改定案
1.株式公開企業 / ファシリティなし / 税額算定簡素化
2.年次納税報告(SPT)提出最終期限 / 3月31日 / 4月30日
3.税金還付迅速化 / 優良納税者のみ / 対象者拡大
4.所得税非課税限度額 / 288万ルピア / 1千2百万ルピア
5.寄付金 / 経費算入不可 / 奨学金・国家的災害・研究開発・インフラ・教育ファシリティは経費算入可
6.非課税所得 / − / 奨学金・BPJSNからの援助・公式教育機関の余剰残高
7.法人所得税率 / 最高30% / 2007年に28%、2010年に25%へと引き下げ
8.中小企業所得税率 / 最高30% / 10%
9.個人所得税率 / 最高35% / 2007年に33%、2010年に30%へと引き下げ
10.個人受領配当金税率 / 予納非最終課税のため35%課税がありうる / 分離式最終課税15%
11.農産品の付加価値税(PPN) / 課税 / 非課税
12.鉱業産品の付加価値税 / 非課税 / 課税、輸出は還付される
13.観光客の付加価値税 / 還付不可 / 還付可能
中でも株式公開法人に対する優遇措置はバラエティに富み、財務報告書に対する公認会計士監査報告書で無限定適正意見もしくは限定適正意見を得た場合は、限定的税務監査だけしか行われない。加えて優良納税者認定を得た場合、PPN還付は1ヶ月以内、PPh還付は3ヶ月以内に行われる。PPh Pasal25は毎月納税する必要がなく、半期・四半期決算にあわせて実施すればよい。このファシリティは既に国有事業体と銀行に適用されている。さらに法人所得税率の最高税率逓減は、上記7.より早められる可能性がある。


「実業界が労働法改正を要請」(2005年8月24日)
外国からの投資誘致に誘導的環境を醸成するのに障害になっているのが、2003年第13号法令「労働法」内で定められている退職金関連条項だ、とソフィアン・ワナンディ事業者協会(APINDO)会長が語った。「この問題はもう何回も事業者、労働界、労働行政の三者間で話し合われ、改定に関する検討も繰り返されてきた。問題の労働法は早急に改正される必要がある。」との談。マリ・パゲストゥ商業相も別の場で、ファハミ・イドリス労働相に対し、労働関連政策と法規に関する包括的な考えを示してほしい、と要請している。現行政府の外国投資誘致方針に労働政策は即していなければならない、と商業相もコメントしている。
2003年労働法に対する改正意見としてはたとえば156条に、雇用関係の解消が起こった場合事業主は、退職金や勤続報奨金、取得するべき権利の代償金を支給しなければならないとなっているが、自己希望による退職、5日以上連続しての無断欠勤、不正行為を行った場合は例外とする、といった補足を加えるというもの。


「税法改定案の変更点はもっとある」(2005年8月25日)
大蔵省は現行四税法に対する最終改定案を国家官房に16日提出した。国家官房のドラフトチェックを経て8月末には国会に提出され、年内に国会を通って2006年1月1日から施行されるというのが、政府が描いているスケジュール。四税法とは、PPN法、PPnBM法、PPh法、一般規定法。改定内容の大半は8月23日の記事「税法改定作業は大詰めに」に見られる通りだが、それ以外にも次のような変更が加えられている。
1.登録事業所所在地外で事業を行っている場合、事業所所在地にもとづいて発行されたNPWP(納税者番号)とは別に、事業場所にもとづくNPWPを持たなければならない。(前者はNPWP domisili、後者をNPWP lokasiと称する)2.証券市場で売買される国債の金利には、所得税20%を課税。
3.所得非課税限度はこれまでの年間864万ルピアから1、680万ルピアに引き上げられる。
4.NPWPを持たない納税者に対するPPh Pasal21の税率は、持っている納税者より20%高くなる。
5.NPWPを持たない納税者に対するPPh Pasal22の税率は、持っている納税者より100%高くなる。
6.奢侈品税PPnBMの最高税率は現行の75%から200%に引き上げられる。
7.外国籍パスポートを持つ個人が物品を国外に持ち出す場合、納税額50万ルピア以上に対して税金還付が行える。


「ブカシで契約社員制度反対デモ」(2005年8月27日)
SPSI(全国労連)ブカシ支部に所属する数万人の勤労者が24日、契約社員制度への反対を表明して陳情行動を展開した。契約は一年間であり、雇用主は一年たつと契約を更新しないやり方で解雇するので、何万人もの契約社員が将来の生活が定まらなくて苦しんでいる。特にラマダン月前にはさまざまな理由で契約延長を拒むケースが多いのは、単にルバランボーナスの出費を減らそうという考えでのことだ。そのような状況は勤労者に損失をもたらす不健全なものであり、公的機関は勤労者の福祉に配慮してそのような問題を解決しなければならない。最悪の結果に備えて、ブカシ市と県の労働局は事業者側と十分な協議や指導を行い、一年だけの契約というシステムを行わないようにさせてほしい、というのがSPSIの要求。それに対してオタン・サトノミ、ブカシ県労働局労働監督課長は、SPSIの要求を支持し、2003年第13号法令違反を見つけ次第、SPSIは当局に連絡して欲しい、と応じた。当局は違反会社に対して措置を取るとのこと。


「製造業の人員整理がはじまる」(2005年8月29日)
産業用石油燃料値上がり、電力料金値上げ予定、おまけに産業用需要家へのガスや石油燃料供給不足など、産業界へのさまざまな逆風のために、一部製造業では解雇の波が打ち寄せはじめている。少なくとも、陶器、繊維衣料、履物の三セクターが今危機に直面している。事業欠損を極小に抑え込むために打てる手は、人員合理化しか残っていない、と危機的状況にある事業主は述べている。アフマッ・ウィジャヤ陶器雑貨産業協会会長は、ガス供給減と歩を一にして東ジャワとバンテンの生産者が人員整理を行った、と言う。東ジャワでは三工場が8万人をすでに自宅待機にしており、タングラン地区の工場は自宅待機が10万人に達するだろうとのこと。「東ジャワの三工場のうち二つは日産8万平米の陶器タイルを生産する大規模工場だが、業界は生産できないために客を失いつつある。三週間前にも輸出指向の工場が一軒、閉めてしまった。2万人以上の雇用者が影響を受けている。それどころか、トルコの大手陶器メーカーが、インドネシアからの調達をほかへ移そうとしている。」同会長はそう語っている。
API(繊維業協会)のイスミ事務局長は、繊維業界も合理化のために人員整理は避けられない、と語る。「エネルギー節減をしようにも、24時間フル稼働のため、時間の調整がきわめて困難だ。電力負荷ピーク時間帯に従業員の作業時間を組み直すか、それともその時間だけ作業を外へ出すしかないが、機械を止めることはできないので、作業員を合理化するしか手はない。」との談。
Aprisindo(履物事業者協会)のユディ事務局長も、2001年からの四年間で業界の雇用者数は5万5千人減少したが、今年も減少は継続せざるをえない、とコメントしている。


「解雇者はすでに5万6千人」(2005年9月3日)
2004年のはじめから2005年7月までに、ジャワ島では少なくとも56,250人の失業者が発生した、と国民労連(Serikat Pekerja Nasional)が公表した。バンバン・ウィラヨソ国民労連議長は、「西ジャワ・バンテン・首都ジャカルタ・中部ジャワの四州にある繊維・衣料・履物業界63社は5万6千人を超える解雇を行っており、ここ暫くは失業者が増加の一途をたどるだろう。」と述べた。その5万6千人以外に自動車組み立て、籐家具、建築などの業界でも解雇は起こっており、それらの数をすべて集計すると、おそろしい数字となることが懸念される、と同議長は表明している。
国民労連は解雇を行った事業主と対話を持っているが、事業主の大半は「製品が市場競争力を失い、これまでのような事業の継続はもう不可能だ。」とその理由を告げている由。他の理由としては、外国バイヤーがオーダーを競合国に移した、原材料コストやエネルギーコストのアップで工場がつぶれた、といったもの。同議長は政府に対し、石油燃料コストや電力料金の負担増、ましてやルピア為替の暴落を軽減させるだけのビジネス環境の改善が実現されないかぎり、解雇の波は拡大こそすれ、鎮まることはないだろう、と真剣な対応を要請した。
ところで、北スマトラ州労働局はすべての事業体に対し、燃料コストの高騰やルピアレートの暴落で経営状態が極度に悪化していても、従業員解雇は最後の最後まで自制してもらいたい、と産業界に要請した。北スマトラ州ではほとんどの事業体で大幅なコストアップが発生しており、一部では従業員に自宅待機を命じている。労働局側は、効率化、残業休出カット、作業シフト減らし、賃金カットなど、従業員解雇を行う前に打てる手はすべて打つべきであり、それでも結局どうしようもなくて・・・ということではじめて解雇がなされるようにしてほしい、と指導している。


「2006年最低賃金のベースは適正生活需要」(2005年9月5日)
ファハミ・イドリス労働トランスミグラシ相が、2006年の最低賃金は適正生活需要をベースにしなければならないとして、そのための算出基準を整備し、労相令第Per-17/Men/VIII/2005号として8月26日付で制定したことを明らかにした。この制定に伴って、従来最低賃金のベースとされていた最低生活需要構成要素に関する労相令第81/Men/1995号は廃止される。適正生活需要はこれまで最低生活需要構成要素だった飲食品、衣料、住居、教育、医療、交通にレクレーションと貯蓄が加えられて46種の需要がカバーされることになる。従来は6構成要素43種の需要がカバーされていた。労働省ムスニ・タンブサイ労使関係育成総局長は、「適正生活需要とは独身労働者ひとりひとりが、肉体的精神的社会的に一ヶ月間妥当な生活を営むために満たされるべき需要の標準であり、そこではひとり一日3千キロカロリーの食物摂取がひとつの基準をなしている。」と述べている。この適正生活需要は、生産性と経済成長とともに、毎年定められる地方別最低賃金確定のための基本要素となる。適正生活需要は市長、県令あるいは賃金評議会が労働界・実業界・行政の三者ならびに中央統計庁を巻き込んだサーベイチームを編成して地元の物品サービス価格調査を行った上で決定され、最低賃金は従来どおり州知事あるいは地方自治体首長が決定する。
インドネシア事業家協会のソフィアン・ワナンディ会長は最低賃金について、「最低生活需要から適正生活需要への規準変更そのものを受け入れることに問題はないが、従来の最低賃金確定プロセスでは、労働者はできる限り高い金額を要求し、事業家側はできるだけ低い金額を望み、調整がうまくいかなければ争議に至ることの繰り返しだった。最低賃金はニ三年に一回制定するように変更してはどうか。」と提案した。イディン・ロシディン全国福祉労組連合事務局長は、従来の最低生活需要から適正生活需要への変更は、質量ともに顕著な上乗せをもたらすことはないだろうが、この変更はたいへんよいことだ、とコメントしている。
ところでムスニ・タンブサイ労使関係育成総局長は、2005年の最低生活需要基準最低賃金が適正生活需要ベースに変われば、13〜15%の賃金アップが可能になる、とも発言しているが、ソフィアン・ワナンディ事業家協会会長もそれを受けて、そのベース変更が可能な企業は今すぐにでも賃金アップを行ってはどうか、とアドバイスしている。


「ブカシで労使紛争」(2005年9月9日)
ブカシ市バンタルグバン郡ナロゴン街道にあるPT GPGM社の労使紛争は長引いている。
2004年11月1日に労使間で結ばれた労働協約で、ブカシ市最低賃金遵守のために各従業員の給与が引き上げられ、上乗せ給が行われたが、会社側がそれを実行しないために、今年3月からデモが繰り返されてきた。ところが会社側はそのデモを行った従業員211人に謹慎処分を加えるなど厳しい措置を取ったために労使間紛争は激化の度を強め、最近では同社労組がブカシ市議会に陳情を行っている。その陳情は全国民主労働者労連と全国労連がバックアップして行われたものだが、会社側はその陳情に参加した161人を解雇処分にした。このため、同社労組はふたたび、不当解雇であるとして、市議会に陳情している。


「高学歴失業者が増加」(2005年9月13日)
2001年から2005年までの失業者データによれば、高学歴失業者が増加傾向にあり、低学歴失業者は就職の機会がますます狭まっている、とのコメントを中央統計庁が出した。
「高卒失業者は2001年の3百万人が今年は390万人になっている。それ以上の高学歴者だと、2001年の54万人が今年は70万8千人になっている。この傾向は国民が教育の重要性をますます理解していることを証明するものであり、一面それは当然のことと言える。しかし高学歴失業者の増加は、それが増えれば増えるほど社会不穏のもとになり、早急に対応が取られなければ反生産的事態を生みかねない。」アデン・グルトム中央統計庁労働統計次局長はそう述べる。
低学歴失業者は変動が激しく、特定傾向が見えない。2001年では274万人だったが、今年2月の調査では355万人となっている。これは低学歴者の大半がインフォーマルセクターで働いており、きわめて容易に労働市場に出入りしているためだ、と同次局長は分析している。


「企業の大量解雇に労相が警告」(2005年9月20日)
政府が予告している10月1日からの石油燃料再値上げを前にして、ファハミ・イドリス労働相が実業界に対し、事業合理化の中で従業員解雇が行われる場合は、規定の手続きを正しく踏むように、と警告している。
「従業員解雇は、それを回避するための三つのステップが踏まれた後でなければならない。まず残業を全廃すること。交代制のシフト就業。そして自宅待機。その三つにも手続きとステップがあり、実業界が財務状況の悪化を防ぐ努力の中で勤労者が一方的に損失を蒙らないようにしなければならない。交代シフトというのは、たとえば会社が従業員を二分して、ひとつは偶数日に出勤し、もうひとつは奇数日に出勤するといった方針を行うことを意味している。自宅待機は、たとえばメインの従業員は出勤させて残りを出勤させないという方針だ。これが大量解雇防止の労働省方針になっている。」と労相は述べている。
労相は更に、日本で行われているような給与カット方針も考えられる、と語る。日本ではたとえば一般従業員は15%の賃金カットを行い、管理職は20〜25%の給与カットを行うというものだが、インドネシアでは労使間の賃金格差があまりにも隔たっているため、ただでさえ小さい勤労者の賃金をカットするのは問題をはらんでいる、と労相はこの方針に懐疑的。


「ジャムソステックの活動報告」(2005年9月21日)
PT Jamsostekは、今年上半期の老齢補償クレームに対して1.25兆ルピアを支出した、と公表した。クレーム件数は376,228件。一方、死亡補償は376億ルピア、6,302件、保健医療補償は1,819億ルピア、571.8万件、労災補償は1,102億ルピア、49,148件となっている。イワン・ポンチョウィノト同社社長は、今年上半期のその実績を見るかぎり、国内の労働災害はまだまだ高いレベルにある、と評している。労災発生件数は月平均8.191件であり、これは一日当たり372件になる。
国内独占のこの労働者補償機関は、今年上半期末で35兆ルピアの資産が計上されており、前回から7%の増加となっている。同社は労働者のための国民住居建設プログラムをサポートする方針を立てていて、およそ7兆ルピアをそれに充当する考えでいる。今年上半期のジャムソステック加入者が納めた掛け金は2.8兆ルピアに上っている。


「新最低賃金の実態は従来とあまり変わらない」(2005年9月28日)
最低賃金をこれまでの最低生活需要ベースから適正生活需要ベースに引き上げるための周辺整備として、今年8月に労相令第Per-17/Men/VIII/2005号が制定された。これまでの43アイテムにレクレーションや貯蓄が加えられ、適正生活需要は46アイテムとなった。貯蓄ファクターは45アイテム合計額の2%と計算される。その46アイテムは、地元トラディショナルマーケットで、断食や宗教祭事、新入学、新年などの時期を避けて物価や商品供給が安定している時期に価格調査が行われる。こうして算定された適正生活需要をひとつの指標として、会社の支払能力と地元における生計費とが勘案されて地元の最低賃金が定められる。地域一般の最低賃金とは別に産業セクター別最低賃金も認められており、実態としては一般とセクター別の間に5%ほどの差がつけられている。
インドネシア事業者協会(APINDO)のジマント事務局長は、セクター別最低賃金がその決定プロセスにおいてよりフェアである、と語る。これは労使と行政を交えた三者協議により、企業の支払い能力に基づいて決められるもので、だから電気業界と繊維業界が違っているのは当たり前だ、とのこと。新しい最低賃金は職歴一年未満の独身社員に理想的なものであり、労相令第17号では、地元地域のもっとも能力の劣る会社、経済成長、労働市場の三つの状況が勘案されて決められる、と語る。かれによれば、たとえば貯蓄ファクターは、これまでジャムソステック老齢保障が最低生活需要算定の中に織り込まれており、新しく増えたとは言えない、とのこと。会社によって従業員慰安旅行を定期的に行い、ジャムソステック保障を励行している会社は、最低賃金算定からそれらを差し引いてもかまわない、との意見が表明されている。
ブラウィジャヤ大学の労働賃金オブザーバーであるウマル・ウィドド教官は、最低賃金とは企業が賃金体系を設定するさいの参考指標として使われるものでしかなく、賃金体系が定められれば地方別最低賃金は数年に一度の改定で充分だ、とコメントしている。毎年繰り返される最低賃金紛争は、外国からの新規投資意欲に水を差している色彩が強く、ポジティブな効果はあまり見られない、と実業界も同意を表明している。


「税務署のサービス改善」(2005年09月29日)
リサーチ会社ACニールセンが行った税務署サービスに対する満足度調査結果が公表された。それによると、納税者の税務サービス事務所に対するサービス度平均ポイントは75だが、大企業担当税務サービス事務所については、81ポイントという大きい評価になっている。
同種のサーベイは他の国でも行われており、オーストラリアは74ポイント、香港71、シンガポール76、インド78といった数値。公的機関の国民に対するサービスを国民が評価するものであるため、先進国ほど辛い点がつけられるのは大いに予想されることであり、それらのポイントを一律に並べるには難がある。
大企業担当税務サービス事務所に関しての利用者のコメントは、78%が職員の姿勢に大きい変化が生じており、84%は納税手続きがやりやすくなったと評価している。一方、13%は変化なしと答え、2%が反対に納税がやりにくくなったと回答している。
ところで、国会第11委員会は、改正税法審査が年内に終わらないと予測されることを表明した。パスカ・スゼッタ第11委員会議長は、税法通関法パッケージを国会はすでに受け取っているが、9月一杯国会が休会に入っており、年内審議完了は日数的に見てきわめて悲観的である、と述べている。


「地方ごとの一律最低賃金方式は不合理」(2005年9月30日)
インドネシア事業者協会(Apindo)東ジャワ支部は労相に対し、来年の最低賃金制定は産業セクター別にしてほしい、と要請した。生産コスト上昇に伴って人件費支払い能力が極度に低下している企業があるためとのこと。東ジャワ州では、現在一番高い最低賃金がスラバヤ市の578,500ルピアで、他の地区はもっと低い。10月1日に予定されている石油燃料値上げは産業界へのコストアップを引き起こし、同時に世間一般に対して価格高騰を引き起こす。それがもたらすインフレで従業員は賃上げを要求するようになるが、コストアップに痛めつけられた会社は、すでに従業員の賃上げ要求に応える能力を失っている。コストアップが製品価格に転嫁されても、市場は購買力が弱まっているため、会社は十分な利益があげられない、といった悪循環に呑み込まれてしまう。しかしその状況はセクター別に異なっており、従来のようにそれを一律に括って地方別最低賃金を決めるのは、実態を無視した暴挙となる。だから来年の最低賃金はセクター別に制定する必要があり、特に履物・繊維・プラスチックなど重病にかかっている業界は軽減措置が与えられてしかるべきだ、とのアピンド東ジャワ支部副会長の談。
労働集約型産業の総生産コストに占める人件費比率は30%に上っており、多くの会社が立ち行かなくなって操業を止めている。アピンドは、今検討中の来年度セクター別最低賃金を早急に取りまとめて労相に提案する予定にしている。労働集約産業で、輸入原材料を多用している会社は閉鎖し、またPMAはベトナムや中国にリロケした。一方、テクノロジー集約産業やローカルコンテンツシェアの高い会社はまだ健全な経営状態を維持しているところが多い。食品やタバコ産業はそのカテゴリーに入っている。「労働者の賃金は会社にまかせてほしい。高技能保有者は必ず高い賃金を得ている。あらゆるセクターの賃金を一律にするような考えは決して合理的ではない。」同副会長はそう要請している。


「労働界は30%賃上げを要求」(2005年10月6日)
石油燃料大幅値上げの影響で、適正生活需要に基づく勤労者賃金は最低30%の引き上げが必要だ、と全国労組連合が表明した。バンバン・ウィラヨソ全国労連議長は、運輸セクターの値上げは30〜70%に達し、生活基幹物資も大きい値上がりを示しているのを見るにつけ、最低30%の賃上げは当然と思われる、と語った。だからといって、これは百%賃上げを要求しないという保証ではない、との談。新賃金は、勤労者がハリラヤボーナスを10月後半に支給されることを考えれば、公共運送機関のように今すぐというほど切羽詰ったものでもなく、2006年1月からの実施という線は十分納得できるものだ、とも同議長は譲歩している。
10月1日の石油燃料値上げを産業界が賃金据え置きの口実に使おうとしていることについて、政府は絶対に賃金据え置き、ハリラヤボーナス支給延期をかれらに許してはならない、と要請している。


「バンドンの繊維業界はルバラン後に大量解雇」(2005年10月7日)
イドゥルフィトリが終わった頃に、バンドンの繊維業界や衣料品販売業界で26万8千人の解雇が起こりそうだとバンドン市労働局長が語った。
石油燃料値上がりの影響は、燃料コストが製造コストの60%にのぼる繊維業界に大きい打撃を与えることになる。しかし今のところ、イドゥルフィトリ需要のおかげで繊維業界はまだ生き延びていられるが、その季節需要が終わればハイコストのバランスを取るために人員整理は避けられない。
同じことはバンドン市内に散らばるファクトリーアウトレットにも言える。
イドゥルフィトリまでは高レベルの販売が続くだろうが、そのあとは売れなくなり、人減らしをせざるを得なくなる。繊維と繊維品製造産業では15%、ファクトリーアウトレットは5%が人員整理の対象となりそうで、総数は268,179人となる、と市労働局長は述べている。
そんな成り行きは、最近の労使問題に関する訴え件数が増加している事態からも推察される。訴えられている問題の内容はさまざまで、残業代や退職金の不払い、労働時間短縮、一方的解雇などがあがっている。


「都庁が来年の最低賃金検討を開始」(2005年10月10日)
都庁労働局は2006年度の最低賃金検討作業を開始した。
新最低賃金は2006年1月から適用されるが、新最低賃金適用保留を申請したい会社は11月以降、申し出てかまわない、とアリ・ズベイル労働局長は語る。
「保留申請をする会社は公認会計士の監査を受けなければならない。監査費用は申請者が自分で負担する。小規模会社は監査を受けなくてよいが、最新二年間の財務報告書を提出しなければならない。新最低賃金適用能力がない会社は保留申請ができるが、保留は四ヶ月間のみであり、それを過ぎれば新最低賃金を支払わなければならない。」との談。
ファウジ・ボウォ副都知事は、新最低賃金の検討を賃金評議会が開始した、と語る。
きわめて多種多様な要素が織り込まれなければならず、そして利害の対立する労使間での調整もからむために、最低賃金決定は一筋縄では行かない。政府はその両者の要求を調整しなければならない。」との弁。いまジャカルタには2万5千の会社があり、250万人を雇用しているが、石油燃料値上げの影響から人員整理予定を報告してきている会社はまだない、とのこと。
一方都議会は都庁に対し、来年の最低賃金は適正生活需要に合わせて決定するように、との要望を出した。今年の適正生活需要はRp 759,953ルピアであり、最低賃金よりほぼ5万ルピア高い。


「ボゴール県で賃上げ要求陳情」(2005年10月11日)
ボゴール県議会に対しボゴール県国民労組(Serikat Pekerja Nasional)に所属するおよそ百人の労働者が賃上げ要求を行った。次のボゴール県最低賃金決定に際して勤労者の要求をインプットするのがその狙い。
「実業界は石油燃料値上げを賃金据え置きやハリラヤボーナス支給延期の口実に使っているが、石油燃料値上げは勤労者の経済生活にも大きい影響を与えている。だからそれを事業主が人員合理化や操業停止の口実に使うのは不公平だ。ましてや、それらが労組との協議なしに一方的に行われる場合はなおさらだ。」と国民労組ボゴール県支部長は述べている。
「労働者の生活を保証するために、2006年の最低賃金は適正生活需要サーベイ結果の数値を百%満たす必要がある。その適正生活需要はさらに2006年1月までのインフレ率を加味した調整幅を30%持たせる必要がある。中央統計庁にはただちに適正生活需要サーベイを開始してもらいたい。いまは明らかにバンドン、ブカシ、ジャカルタに比べてボゴールの賃金は大きい格差を持っている。」同支部長そのように語っている。ボゴール県の最低賃金はいま656,500ルピアだが、バンドンはサーベイ結果に基づいて2006年の最低賃金を788,280ルピアに引き上げた。
ブカシは別の基準を持っており、ジャカルタの最低賃金から1千ルピアさげたものを自動的に最低賃金にしている。


「バタム島では年内いっぱい従業員解雇なし」(2005年10月12日)
10月1日の石油燃料大幅引き上げ以後のバタムでは、事業主による従業員解雇はまだ起こっていない。Apindo(インドネシア事業者協会)バタム支部が会員企業に呼びかけた、この先三ヶ月間は従業員解雇を行わない、とのスローガンを破る企業はまだないようだ。
バタム市労働局労使関係次局長は、公的従業員解雇報告はまだひとつも報告されていない、と裏書している。しかし情報によれば、バタムセンターやバトゥアンパル工業団地では、外資系企業で何件か従業員解雇が起こっているとも言われている。バタムのある労働運動活動家は、バトゥアンパルの地元企業が合理化を名目に45人を解雇したとも語っている。
一方、インドネシア金属労連バタム支部長は、10月1日以降で解雇が行われたとの報告をしている労組はまだない、と述べている。


「10月27日までにハリラヤボーナスを支給せよ」(2005年10月14日)
ハリラヤボーナスは遅くともイドゥルフィトリの一週間前に支払うように、と労働大臣が警告した。
すべての事業主は法令遵守をまっとうしなければならず、その規定を守り、決して従業員にデモやストを起こさせないようにしなければならない、との談。「希望はそうであるが、すべての事業主がそれを行える状況にあるとは限らないことを労働省は理解しており、あるいは支払いが遅れるどころが、支払いそのものに対する能力のない事業主もいるにちがいない。そのようなケースについては、労働省への届出を怠らないようにするとともに、事業主は従業員にその理由を説明しなければならない。」ファハミ・イドリス労相はそのように語っている。
ところで、最低賃金検討が各地で始まっているが、地方自治体はできるかぎり労働者と事業主間の二者間協議に結論をゆだね、その結論をオーソライズするという機能にとどまるように、とムスニ・タンブサイ労使関係育成総局長が語った。「適正生活需要に関する労相令第17号の施行は、能力のある会社は今すぐにでも適正生活需要ベース賃金に切り替えるように、ということを意味している。最低賃金とは、適正生活需要ベース賃金以上のものを支給できない会社が最低限支払わなければならない規準である。」との総局長の談。
金属労連バタム支部は2006年のバタム市最低賃金について、2005年の635,500ルピアから70%アップした1,059,000ルピアとなるよう要求している。その数字はバタム金属労連がしばらく前に行った適正需要サーベイ結果を反映するもの。2004年には適正生活需要が728,000であったが、事業者側が5.45%のアップを強く主張したために現行最低賃金の数字が決まっている。


「バンテン州で賃上げ要求陳情」(2005年10月14日)
バンテン州セランで、国民労組所属の数百人のデモ隊が州庁に最低賃金37%アップの要求を掲げて陳情行動を行った。2004年10月29日付けバンテン州知事令第561/Kep-246-Huk/2004号で、州最低賃金は585,000ルピア、県市最低賃金はセラン690,000ルピア、チレゴン713,000ルピア、タングラン693,000ルピアとなっている。バンテン州国民労組事務局長は、石油燃料値上がり後、諸物価は平均37%上昇しているので、われわれも37%の賃上げを要求する、と語っている。賃上げのほかに、石油燃料値上げを理由にした従業員解雇が行われないよう事業者を監督すること、また実業界を対象にした不法徴収金を撲滅することなどもあわせて要求している。


「バタムの事業主は従業員にインセンティブを支給せよ」(2005年10月15日)
全国金属労連バタム支部執行部はバタム市長に対し、石油燃料値上げの影響に対処するためのインセンティブを従業員に与え、また人員整理は行わないように事業主に呼びかけるように要請する文書を提出した。ヤディ・ムリヤディ執行部委員長は、交通費をはじめ食品などの生活基幹物資値上がりは大きいものがあり、勤労者の生活需要に強い影響を与えているため、燃料値上がりに比例した新交通料金を早急に定めて公共運送従事者の負担を軽減するとともに、運送サービス利用者である勤労者に対する収入確保に努めるよう、市当局は速やかに行動を起こさなければならない、と述べている。
同労連では外資系企業内労組に対して、誘導的労使関係を維持しながらも諸物価高騰に対応するための交通費食費手当ての調整を早急に雇用者側と協議するよう指示している。


「首都の最低賃金は69%アップ」(2005年10月17日)
1,203,015ルピアを2006年の最低賃金にするよう要求することを首都の労働界が決議した。10月15日に首都の17労連が合同で決議したこの最低賃金は、今年8月9月に都内の7ヶ所のパサルで行われた適正生活需要サーベイ結果である1,102,020ルピアに今年10月から12月までの予想インフレ率を加味したもので、2005年の最低賃金からは69%の上昇となる。セクター別最低賃金は地域別最低賃金より5%高いものとされてきているため、これまでセクター別最低賃金が決められていた業種はさらに5%が上乗せされるものと期待されている。
労働界からのこの要求を前にして都議会第D委員会のダニ・アンワル議長は、10月1日の石油燃料大幅値上げの影響で諸物価が高騰しており、勤労者・労働者の生活を守るためには今すぐにでも最低賃金が引き上げられるべきだ、とコメントする。「最低賃金変更を年度代わりまで待つか、それとも今すぐに行うかは、政府の同意を得なければならないが、今現在、都議会での分析検討はまだ始まっていない。」と同議長は述べている。


「デポッ市で最低賃金引き上げ要求のデモ」(2005年10月28日)
およそ1千人のデポッで働く勤労者が、2006年のデポッ市最低賃金を月額1,203,015ルピアに設定するよう要求してマルゴンダ通りをデモ行進し、そのあとデポッ市庁を訪れて要求を突きつけた。
デポッ労働者勤労者同盟所属を標榜する1千人ほどのデモ隊は26日午前10時からおよそ5キロにわたってデモ行進を行い、デポッ市庁で市長や労働局長など産業労働問題当局者に面会を求めたが、市長は不在のため市長代理ならびに局長レベルとの話し合いに終わった。要求内容は、適正生活需要に関する2005年労働大臣令第17/Men/2005号反対、石油燃料値上げ反対、電力料金値上げ予定反対、最低賃金を今の681,200ルピアから1,203,015ルピアに引き上げもしくは隣接する首都ジャカルタと同一最低賃金とすること、セクター別最低賃金を設けることなど。
この日の陳情は労働界からの一方的な要求提示におわったが、デモ隊代表者は市長不在をはじめ、不満な会見だった、と述べている。


「バタムの正社員は十人にひとり」(2005年10月29日)
バタム島で働いているおよそ18万人のフォーマルセクター勤労者中90%が契約労働者であり、正社員雇用者はわずか10%しかいないことを人材開発業界者が警告している。
それによれば、島内ほとんどすべての外資系民族系企業に労働力を契約社員として使う現象が見られ、これはその地区での人的資源のクオリティがいかに低いかということを示すインディケーターでもあり、バタムの労働市場のそんな状況は避けることが難しく、一方企業の多くは労働力の自社雇用を避けて安全な道を選択する傾向が高い、とのこと。労働法では二年間の契約と一年間の延長というパターンが認められているが、中には受注の季節変動にあわせて三ヶ月間だけの契約を行う会社もある。
これは労働者の人材育成と質的向上をきわめて困難にするものであり、長期にわたる質的クオリティ向上の障害となるだけでなく、労働者自身も断続的で生活保証のない境遇にあるために長期的生活設計を立てるのが難しい。バタム島の特徴は、シンガポールとの地理的関係をベースにした、外国からの注文に応じるための組立て工場が主流を占めるフットルーズ産業であり、その意味で今のバタムの状況は企業側に合目的的ではあるが、労働者に対する福祉という面での労働政策に何らかの手が打たれる必要がある、とコメントしている。


「国会が改定税法案の問題点を指摘」(2005年10月31日)
国会税法案審議特別委員会は、政府から提出された改定税法案の内容審査を終えて、いくつかの問題点を公表した。パスカ・スゼッタ同委員会議長は、税制と一般規定に関する法案の5点、所得税に関する法案の4点、PPNに関する法案の1点、合計10ポイントは修正されなければならない、としている。この修正で改定税法案が大幅に変更されることは大いにありうるものと見られている。
最初に問題視されたのは、税務調査官にあまりにも大きい権限が与えられることで、税務違反容疑を受けた納税者の銀行やノンバンクの口座凍結を求める権限を持つというもの。これは調査官個人の抱いた疑惑に基づいて個人法人の口座が凍結できることを意味しており、納税者の経済活動を倒産・破産に至らしめる可能性が高く、悪徳調査官の私利のために悪用されるリスクが大きいことから、この条項は完全に削除されなければならない、との見解を同委員会は示している。
次の問題は所得税納税申告に個人の生活費を申告させる義務付けに関するもので、それが所得税計算での控除対象に使えるわけでもなく、また個人が細かい出費をいちいち帳簿付けしているわけでもないため、このような義務付けはないほうがよい、と提案している。
きわめてアンフェアな条項は、納税者が過剰納税したばあいに、税金還付を申請するさい、その申請が承認されれば百%の罰金を納めさせるというもの。過剰納税を返してもらうのは納税者の当然の権利であり、それに罰金を科すのは不自然であると批判している。また納税不足についても、国税総局は一方的に追徴決定書を送りつけて罰金百%を科すが、罰金百%は大きすぎるのに加えて、このような規定を国税側は納税者が請求をしたりしないよう抑え込むための威嚇の手段に使うことができる、とコメントしている。
もうひとつ納税者の権利が保護されていない条項として、国税側の納税額決定に不服がある場合、請求額を全額納めなければ裁判所への訴えができない制度になっていることが取り上げられた。これは上訴のさいの請求不足額50%納税と同じで、国税総局悪徳職員が好き勝手に巨額の追徴決定書を納税者に送り付けてくるというリスクを持続的に抱えることになり、納税者を税務職員の搾取から保護しない規定である、との見解。
そのほか、ホールディングカンパニーへの二重課税防止、一親等間での贈与に対する所得税課税の削除、税額計算から控除できる広告宣伝費の明確な定義、NPWPを持たない納税者への保護、などについても、改定税法案内での修正が求められている。


「改定税法案批判に物申す」(2005年11月1日)
各界から噴出している改定税法案への批判に対して、ハディ・プルノモ国税総局長が国政の屋台骨である徴税実行者としての立場から果敢にその批判への応酬をこころみた。下はその一問一答。
問: 怠慢によるミスでさえ三ヶ月以上の入獄だと威嚇されており、国税総局長は横暴だとの批判がある。
答: 税法の中で納税者のミスは二つに分類されている。実務上でのミスと、怠慢もしくは故意に納税義務を果たさないミスだ。実務上のミスに対して納税者は金利・罰金・税額追加などの管理制裁が与えられる。一方、怠慢もしくは故意の納税義務回避には刑事罰が与えられる。刑事罰は税務関係者からでなく、法廷で判事の判決として与えられるものだ。この規定は1984年にはじめて税制改革が行われたとき以来存在しているものであり、なんで今になってみんな騒いでいるのか?
問: 税務調査について、国税総局が過去の納税行為に対する調査権を持つということに不服なひとがいる。現行税法とどうちがっているのか?
答: 納税申告が毎年調査されるわけではない。だから国税総局は過去の納税について調査する権限を持つ。現行税法では、国税総局は10年前までさかのぼって不足納税確定書(Surat Ketetapan Pajak Kurang Bayar)を発行することができる。つまり時効は10年だ。改定税法案ではそれが5年になっている。
問: 古典的な質問だが、納税者が不服あるいは上訴プロセスの中でさえ、国税側は納税者を追い掛け回す。どうしてか?
答: 世界中どこの国でも税法はたいてい、不服や上訴のプロセスが納税請求の延期を認めるようにはなっていない。これは、公職者の決定はそれと反対の決定が下されるまでは正しいという原理にもとづくコンセプトだ。納税額が納税者の計算に従わなければならないとすれば、いくつかの帰結が生じる。まず年次納税申告書は、不服や上訴の結果を示す判決が出されるまで、その内容は正しいことになる。すると納税者は判決が下りるまで納税しない。税務調査の中で納税者は常に自分が正しいことを言い張るようになる。二つ目に、納税者はみんな過剰納税を言い立てるようになるかもしれない。税務調査をしてそれが間違っていることが判明してもだ。三つ目、国税総局の監督機能が効果を持たなくなる。最後に国庫への税収が無くなってしまう。
問: 不服プロセスの中で出された新しいデータは考慮されないという改定税法案内の条項を商工会議所も問題にしている。法的根拠は何か?
答: 法的根拠と言われれば、改定税法案が可決したとき新税法がその根拠になる。考え方の基盤はこういうことだ。年次納税申告書が提出されたとき、納税者の帳簿はすでに完結し、証憑が完備されているはずだ。税務調査のときになんでそれを提出しないのか?それとも証憑などなかったのか?ところが時の流れの中で、不服プロセス中に突然証憑が出てきたとでも言うのか?Time goes by, so slowly, and time can do so much.
問: 税務職員は本人の主観的な疑惑をベースに書類を封印できるので、専横なことができる。これについては?
答: その表現は不完全だ。正しいのは、納税者が第29条3項の義務を果たさない場合、国税総局長が帳簿を保管している特定の場所やスペース、動産不動産、等々を封印する権限を持つというものだ。納税者が帳簿や書類を見せる義務を果たすなら、いったい何のために封印しなきゃならないのか?
問: 調査官が納税者の銀行口座を凍結できるという問題は?
答: 納税者が税務上の刑事犯罪行為を行っていることを証明するためには、証拠が必要になる。まず、観察し、税務上の犯罪行為を示す導入証拠の報告があってはじめて捜査が開始される。納税者の銀行口座凍結に税務上の犯罪行為実施が立証されるのを待っていると、口座にある金がなくなってしまう。下級法廷、上訴、上告、見直しまで、法的プロセスはとても長いから。
問: 税務調査の時効10年が5年に短縮されたのに、納税者が税務上あるいは他の犯罪行為を行った場合は時効が保留されるのはどうしてか?
答: 国税総局に権限があるのは税務上の犯罪行為捜査だ。一方他の犯罪、たとえば納税書偽造など国庫収入に損失を及ぼすものでも、国税総局の権限外になっている。しかし納税書偽造は本来納税者が納めるべき金額を減少させるため、国税総局は金利48%を管理制裁として不足納税確定書を発行する。


「来年の首都最低賃金は819,100ルピア」(2005年11月2日)
2006年の最低賃金を検討している都庁賃金評議会は、労働界と実業界との間のあまりにもかけ離れた金額の調整をすすめてきたが、結局11月1日に行われた都庁・労働界・実業界の三者協議で、2006年1月から適用される首都の最低賃金は819,100ルピアという結論に落ち着いた。首都圏の労働界が要求していた月額Rp1,203,015 はまた遠のいた格好で、反対に今の711,843ルピアからは815,000に引き上げるのが精一杯だと強く主張していた事業者協会(Apindo)もその線まで譲歩した形。労働者側は、最低賃金は少なくとも最低生活需要を満たして欲しいとして890,000ルピアの線を要求したものの、労働省が公認した首都の適正生活需要は831,336ルピアであり、今年も最低賃金が適正生活需要を満たすのはまだむりだとの結論となった。都内には350の大中小規模事業所が散在して350万人を雇用しており、最低賃金支払い能力のない事業所は2006年1月1日から10日前までに届け出ると3月までは新賃金適用が免除されるが、従業員との合意が必要。ただし雇用が1千人を超える大規模会社は公認会計士の監査を受けなければならない。
都議会はこの決定について、15%というアップ率はいまの諸物価高騰の中では小さいように思われるが、行政側も民間の投資誘致や現存事業所の移転防止などを考慮しなければならず、首都の実態を反映したものではないだろうかと述べて、強硬姿勢を示していない。
セクター別最低賃金は行政が関与しない労使二者間協議で決められるものであるため、都庁はその話し合いには一切口を出さない、としている。例年セクター別最低賃金は地域別最低賃金より5%以上高いものという慣例になっており、都庁も都議会もその方向で労使間合意がなされることを期待している。


「西ジャワ州2006年最低賃金」(2005年11月7日)
西ジャワ州2006年最低賃金が、2005年の408,260ルピアから11%アップした447,654ルピアと定められたが、その決定プロセスは疑わしい、と全国労働者連盟(SPN)のバンバン・ウィラヨソ委員長が疑念を表明した。バンドン県やボゴール県がまだ最低賃金を決めていないときに、市別最低賃金のもっとも低いものを参照して定められる州最低賃金が決められること自体、その決定手続きが正しく踏まれていないことを意味しているのではないか、との同委員長の談。「ダニー・スティアワン西ジャワ州知事が下した決定は、行政と実業界、そして労働者の本心を理解しないで政府のハンコ係になった労組代表者のなれあいの結果だ。最低賃金は適正生活需要に近付かなければならないが、石油燃料大幅値上げが行われたあとで適正生活需要の再調査を行った各地区賃金評議会はないようだ。それでは最新の適正生活需要が反映された最低賃金にならない。州最低賃金が先に決められることは、スバンやバンドン県の農園経営者たちに不正の種を与えることになるのをわれわれは懸念している。州最低賃金が出た後でそれより高い地区最低賃金が定められても、かれらは州最低賃金しか払わないのだから。」同委員長はそう批判している。
一方西ジャワ州労働局は、手続きが正しく踏まれていないとの批判に反論する。「州内適正生活需要の低いチアミス県、バンジャル市、マジャレンカ県、スカブミ市、スカブミ県、クニガン県、チアンジュル県、チレボン県のデータを集めて検討した結果、その8地区中最も適正生活需要が低かったのはチレボン県だ。最新のサーベイ再実施も行ってある。一部の地区はたしかにまだ結果を提出してきていないが、提出済みのほうがはるかに多い。」と労働局長は述べて、州知事決定の合法性を強調している。


「過酷な税」(2005年11月8日)
2004年に行われたワールドエコノミックフォーラムのサーベイで、インドネシアにおける事業にとっての主な問題は、非能率な行政、政策が安定しない、汚職、劣悪なインフラ、高率な徴税、税制、資金調達、労働法規という順に並べられていたが、2005年のサーベイでは非能率な行政、劣悪なインフラに次いで税制が三位に浮上し、徴税レベルは8位に下がった。改定税法案はまだ国会審議プロセス中であるというのに、この国際フォーラムではインドネシアの税制が実業界にさらに重い足かせをはめるのではないかという懸念で満たされている。実際インドネシア実業界は、改定税法案の内容が国民個人の独立性を脅かすものになるのではないかとの不安を抱いているのだ。一方それとは別に、インドネシア経済は以前から税の重圧にあえいできた。それについて世銀は、インドネシアの税は多種・高額であり、経済非効率を生み出している、とコメントしている。平均60人を雇用する中規模企業は52種の税を課され、粗利の38.8%が納税にあてられるが、中央政府地方政府に納める行政課金や社員個人に課される税、そして税務コンサルタントへの支払いまであわせれば、粗利から吸い上げられる率はそんなものの比ではなくなる、と世銀は指摘している。
中規模事業の粗利に対する納税額比率を近隣諸国と比べてみれば、インドネシアの位置が見えてくるにちがいない。マレーシア11.6%、香港14.3%、シンガポール19.5%、台湾23.6%、タイ28.2%、韓国29.6%、ベトナム31.5%、日本34.6%、中国46.9%。インドネシアは中国より下であるものの、労働生産性は中国の方がはるかに上だ。次に税の種類を見てみると、香港10、台湾15、シンガポール16、日本26、韓国26、マレーシア28、中国34、タイとベトナムは各44で、種類の豊富さではインドネシアがダントツであり、更に税務処理事務にかける時間を比較するなら、税がどれほどの非能率を事業の中に持ち込んできているかがはっきりするだろう。シンガポール30時間、タイ52時間、香港80時間などは例外としても、アジアパシフィックの平均である251時間の二倍を超える560時間がインドネシアなのだから。
税に関わるその現実に加えて、非能率との評価高い行政が行っている国家経営の中での財務の透明さとその効果を見るなら、汚職や不法徴収金によるハイコスト経済といった非合法なものとそれらの合法なものがあいまって、実業界に異常なまでの負担を強いていることがあからさまに見て取れる。きわめて合法的な政府補助金が、ブラックコングロマリットたちに与えられた中銀流動資金援助ローンやBPPN監督下に行われた銀行界資本再建、さらには不正用途使用や国外密売を放置しながらも貧困層向けを名目に付けられていた石油燃料などのありさまを目にする限りでは、実業界と税と経済政策というひとつのサイクルが断ち切られていることに気付くにちがいない。この国で人は税を納めるために働き、納めた税は自分たちの暮らしを豊かにするために還元されず、多少とも国民生活の基盤を支えるためのインフラは外国借款が使われて借金のツケが国民に回される。
国内におけるビジネスの構造がそのようであるため、インドネシアの労働力が向かっている職業が次のようになっているのもひとつの帰結であるにちがいない。(1)フォーマルからインフォーマルセクターまで、国外へ出て働く(2)政治家や官僚になって、他人が納める税金を定め、徴税する(3)援助供与国出先機関のコンサルタントやスタッフになって高給を楽しむ(4)法執行界に保護される犯罪者となる(5)反グローバリゼーション(反市場)のプロフェッショナルになる(6)自営ビジネスやビジネス開発に関係しない職業につく。
庶民の本音は遠慮会釈がない。どの職業を選ぶかは、それが与えてくれるインセンティブとディスインセンティブのバランスの上に乗る。それがインドネシアでどうなっているかは、上の職業番付が答えを述べている。インドネシアにおける政治優位や官高民低は単なるパワーやガバナンスの問題ではないのだ。


「南スマトラ州2006年最低賃金」(2005年11月11日)
全国労連(SPSI)南スマトラ州支部は、最低賃金を現状から27.7%アップして欲しいと表明したが、州賃金コミッションが提案しているアップ率は13.3%。数週間前に行われた賃金コミッション会議でコミッション側から出された提案が13.3%だったが、労働界はそれがあまりにも小さいアップ率であるために、州全体に適用されるべきものではない、として強い反対姿勢を表明し、まだ決着がついていない。南スマトラ州2005年のインフレ率は14%と予測されており、それにも満たないアップ率では、労働者の生活がますます困難になるだけで、妥当な生活から遠ざかるばかりだ、とSPSIは主張している。
「2005年の最低賃金が適正生活需要に対して99%の達成率になっていたことを考えれば、100%達成は難しいとしても、労働者が適正レベルに近い生活を営むために27.7%アップは絶対に必要である。だから53万ルピアから27.7%アップした653,349ルピアが次の最低賃金とされなければならない。」エディ・トゥランゴウSPSI南スマトラ支部長はそう述べている。
一方州賃金コミッションのエフェンディ・バフティアル委員長は、13.3%というアップ率は石油燃料値上げ後のインフレが考慮されていない、と言う。「9月までの全国のインフレは6%だったが、それが15%にも跳ね上がった。地方にその影響が出ないはずはない。ルバラン明けに賃金評議会会議が再開されることになっており、その会議の場で最新状況を煮詰めた話し合いが持たれることになる。実業界も労働界も一方が損をするという決着には絶対ならない。」と同委員長は語っている。


「東ジャワ州2006年最低賃金」(2005年11月16日)
2006年の最低賃金について、東ジャワ州の30県市賃金コミッションは最高で20%アップの提案を州庁に提出している、と州労働局長が明らかにした。未提出なのはスラバヤ市、シドアルジョ県、モジョケルト県・市、パスルアン県・市、マラン県、バトゥ県。ところでスラバヤ市賃金コミッションは、当初予定されていた568,800ルピアに代えて、30%アップした71万5千ルピアを提案する予定だとささやかれているが、一部労働団体は100万から150万ルピアというレベルを頑強に主張している。州労働局は未提出の県市に対し、早急に州知事令の発行ができるよう、11月28日までに結論を提出するよう呼びかけている。


「バンドンで大規模デモ計画」(2005年11月17日)
全国労組(SPN)西ジャワ支部が来年の州最低賃金額に抗議して大規模デモを計画している。この計画は、135企業労組代表者が12日にバンドンで開かれた会議に集まった中で決定されたもの。同支部副支部長は、州政府が既に定めた447,654ルピアという最低賃金に対する労働界からの圧力を示すためのこのデモは14万5千人の全メンバーの50%が既に参加の意思表示をしている、と述べている。「労働者は石油燃料大幅値上げのために生活苦に陥っており、労働者の福祉を勝ち取るためのこのような行動は、賃金が適正生活需要を百パーセント満たすまで続けられる。」との副支部長の弁。
11月20日に実施が計画されているその大規模デモに関連してファハミ・イドリス労相は、会社の経営状況が従業員の給与アップに関して要求に応じるだけの能力を本当に持っているかどうかを、ストを行う前に検討しなければならない、とコメントした。「その検討は企業の存続維持に必要なことであり、事業リロケーションを防ぐためにも不可欠だ。会社が倒産するまでさまざまな要求を会社に求め続ければ、労働者も合理化という反撃をくらうことになる。最低賃金の規準を最低生活需要から適正生活需要に変更するためには条件が三つある。労働者の生産性が向上すること。会社の事業が発展すること。地元地域経済が興隆すること。それらが満たされれば、適正生活需要を会社が満たさない理由がなくなる。それらの要因とは無関係にただ賃金アップを要求しても、バランスの取れた良い結果は実現しない。かえって労働者の解雇あるいは会社の没落という結果に向かうだけだ。」労相はそのように述べている。


「今月末に全国スト」(2005年11月18日)
各地で2006年度最低賃金が続々と決まりつつあるが、その金額レベルの不満足さに抗議して、労働界は11月末に全国規模でストを行う予定にしている。全国勤労者労連(FSP)・全国労働者労連(FSB)は15日、ジャカルタに34団体からの代表者を集めて来年の賃金状況に関する会議を行い、そのきわめて不満足な状況に強い抗議姿勢を表明するため、今月終わりごろに広範囲にわたる大規模なストを行うことを決定した。来年の最低賃金決定プロセスの中で、賃金を低く抑えることを意図した適正生活需要数値の操作が行われていることに抗議し、労働界は各地方自治体で決定した2006年最低賃金額を拒否する、との声明が出されている。首都の最低賃金は819,100ルピアと決められたが、都知事はそれを904,138ルピアとするように、また首都を取り巻く隣接地区も首都と同じ金額にするように、と要求している。
事業者協会(APINDO)のジマント事務局長は労働界の要求について、石油燃料大幅値上げの影響による労働界の賃上げ要求は当然のものであるが、実業界は失業者を出さないためにも会社の存続を優先しなければならない、とコメントしている。「アピンドは会員会社に対して2006年の経費を10〜12%アップするようアドバイスした。ただし従業員の賃金給与については、各会員会社に百パーセントゆだねることにした。既に多くの事業主が従業員の食費・交通費をアップしている。」との事務局長の弁。
経済オブザーバーのウマル・ジュオロは、事業者にとってたいへん厳しい状況になっている、と語る。「石油燃料大幅値上げのためにコストが大きくアップしている。一方で激しいインフレが生まれており、社会の購買力も低下している。賃上げが5〜10%程度であればどうということはないが、それ以上になると会社の経済パワーが弱まってしまう。地方自治体は勤労者の購買力アップを考慮して、来年の最低賃金を決めている。」そうウマル・ジュオロは述べている。


「バタム2006年最低賃金」(2005年11月21日)
18日にバタム市で行われた最低賃金検討三者会議で、労働界と行政側が69万〜70万ルピアという実業界の提案を相手にしなかったために、実業界は三者会議の場からウオークアウトを行った。それに関してインドネシア事業者協会(アピンド)バタム支部長は「2006年バタムの最低賃金アップ率要求が50%というのは不合理だ。今企業の内実は10月の燃料費大幅引き上げの影響で身動きならない状況にあり、会社が従業員解雇を行わざるを得なくなったとき、その責任を負う者はだれもいない。それは人道性に欠ける。実業界は現状63万5千ルピアから10%引き上げて、せいぜい70万ルピアまでと提案しているが、労働界は適正生活需要102万8千ルピアの96%である988,260ルピアを2006年最低賃金に要求しており、あまりにも大きな開きのために歩み寄りのしようがない。労働界が主張をやわらげようとしないために、当方はウオークアウトした。」と語っている。
一方労働界代表の全国労組(SPSI)バタム支部長は、労働界の要求は最終数字という意味ではない、と語る。「州最低賃金が定められてから、バタム市最低賃金をそれ以下ではなく、またあまりそれからかけ離れて高いレベルにしないよう調節することができる。そのためにまず州最低賃金の検討がなされなければならない。実業界がウオークアウトしたとはいえ、三者協議は来週結論を下す最終会議が行われる。実業界がそれに出席しなければ、二者で結論を下すだけだ。」同会議での労働界代表者のひとりはそのように述べている。またバタム市労働局長も、実業界のウオークアウトは三者フォーラムに対する侮蔑である、とコメントしている。


「タングラン市2006年最低賃金」(2005年11月22日)
2006年の最低賃金を決めるタングラン市賃金評議会での三者会談は労使間での歩み寄りがなく、膠着状態になっている。今の市最低賃金である月額693,000ルピアに対しアピンド(事業者協会)は、今年9月に行われた適正生活需要サーベイ結果の761,000ルピアを来年の最低賃金に、と主張しているが、労働界は最初112万9千ルピアを提案したあと、何回かの会談のあとで最終的に、10月に労働界がサーベイした適正生活需要である840,000ルピアにその後の年間7%のインフレ予測を加えた903,000ルピアを2006年の最低賃金にせよ、と要求して互いに譲らないまま、会談は暗礁に乗り上げている。
その解決をどうするかについて三者間で話し合いが持たれ、アピンドの主張と労働界の主張の双方をリコメンデーションとしてタングラン市長が州知事に提出し、州知事に決めてもらってはどうか、という労働界側の提案が三者会談の合意に達し、州知事に下駄を預けるかっこうになっている。


「専横な税務職員」(2005年11月23日)
ニクマ・アルブギスさんは、都内チュンパカプティインダ住宅地にある土地156平米、建物総床面積200平米の住居のオーナー。この家を建てたのは2000年で、それ以来土地建物税を滞納したことがない。土地建物税は毎年10〜15%アップしており、それはそのエリアのほかの住民も同じ。
ニクマさん宛て2005年の土地建物税請求額が、目の玉が飛び出るほどアップした。2004年納税額は31万ルピアだったのに、2005年の税額通知書には77万3千ルピアと記されており、算定根拠のデータも変化している。建物面積は200平米から260平米に変わり、建物等級もA.05タイプからB.19タイプに移されているのだ。昨年から、いやそれ以前から、かの女は自分の家の造作を変えてもおらず、何の変化もないというのに、その間だれが調査に来たこともないにもかかわらず、このような変更がなされる。
かの女は税務署に抗議した。するとサーベイに人が来るという。税務署から人が来てサーベイしたあげく、間違ったことへの罪悪感もそぶりすら見せず、その調査官は260平米を210平米に訂正した。ところが建物等級については、直そうともしない。そして倣岸にもその調査官は「年間70万ルピア払うだけで奥さんはぎゃあぎゃあ言うが、あっちのメンテンに住んでるひとたちは何千万ルピアも払って平然としてるよ。」とニクマさんの面前で啖呵を切った。税務職員の倣岸さはその「公務員が国民にサービスするのでなく、国民が公務員にお仕えし、サービスするものだ」という姿勢に露骨に見てとれる。意を決したニクマさんは所轄税務署の役職者に何度も面会し、その不公平で非公正な徴税への不服を申し立てたが、最終的にかの女が得たのは、ジャカルタ第二セントラル税務サービス事務所長からの不服申し立て却下の公文書だった。理由はなにひとつそこに記されていない。おまけにその文書は日付が2005年6月24日となっていたのに、ニクマさんの手にそれが渡ったのはなんと9月6日で、それも所轄税務署にかの女が出向いたときに手渡されたものだ。その文書をもらうまで、かの女は何度も所轄税務署に電話で問い合わせたが、返事はいつも「プロセス中」。6月24日にプロセスは本当は終わっていたのに、事実など関係なく、その場その場で追及の矛先をかわせばよいという、その場限りの対応姿勢。公務員が、汚職、無責任、非能率、国民搾取、暴虐な権力者、といった汚点からきれいになるのはいつの日か?


「最低賃金に関するデモが活発化」(2005年11月24日)
首都圏をはじめ各地で23日、来年の最低賃金に対する不満を表明する労働者のデモが繰り広げられた。都内ではホテルインドネシア前ロータリーからタムリン通りを北上してモナスの独立宮殿に向かったデモ隊が道路を埋め尽くす整然とした陳情行動を示した。このデモは全国金属労連、首都労組、全ジャボタベッ労組連合とカラワン、セラン、チレゴンからの労働者を糾合して行われたもの。同じ日、別のデモ隊数百人が来年の首都最低賃金819,100ルピア見直しを迫って都庁に押しかけたが、しかしスティヨソ都知事は、「賃金評議会の中で三者が合意したことをわたしが変えるわけにはいかない。その協議の中に労働者代表も参加したではないか。」と固い姿勢を示した。都庁のデモ隊を統率していた全国金属労連議長は、2006年最低賃金があのような金額になっている事情を都知事もしくはその代理者に説明してもらいたいと要求したが、都庁側はそれに応対しなかった。
バンテン州セランでは、来年の最低賃金のアップを要求して数千人の労働者が州議会を包囲した。デモ隊の要求は州最低賃金を今の585,000ルピアから789,460ルピアにアップすること、ならびに県市最低賃金は26〜36%アップすることで、具体的にはチレゴン972,496ルピア、セラン891,234ルピア、パンデグラン836,445ルピア、タングラン県878,596ルピア、タングラン市903,000ルピアを要求している。
ブカシ市では、今の710,000ルピアから15%アップした816,500ルピアを来年の最低賃金に、という市労働局からの推薦を市議会第D委員会がすでに承認したが、労働界は20%アップを要求してそれに反対している。市議会議員第D委員会メンバーのひとりは、関係双方の要求の中間を取った15%アップが双方に受け入れられる結論ではないか、とコメントしている。


「首都最低賃金を見直せ、と都議会」(2005年11月28日)
都議会議員がスティヨソ都知事に対し、既に制定された2006年最低賃金に関する都知事令第2093号を改定するよう要請している。インガル・ジョシュア、ゴルカル会派議長、ムハンマッ・ルスリPPP会派副議長、アグス・ダルマワンPAN会派議員らが表明した見解は、2006年最低賃金に関する都知事の決定は労働者の苦しい生活の実態に目を閉じて事業家ばかりを擁護するものであり、部下から上がってきた報告だけを信じるのでなく、自ら労働者の生活実態を見聞し、また一度決めたからといって頑なにそれを押し通すことのないようにしなければならない、というもの。
「月額819,100ルピアという金額で独身者の生活は維持できず、月額90万ルピアを超えているのが妥当な線で、できればバタムと同じ月額1百万ルピアになるのがよい。首都の教員に1百万ルピアの追加手当が出されるようになっており、労働者も同じように扱ってやるべきだ。また今後は最低賃金決定も、公共輸送料金や水道料金と同じように、制定前に都議会の承認を得るべきである。」議員たちはそのようにコメントしている。


「バンテン州2006年最低賃金」(2005年11月29日)
2006年最低賃金の内容検討が終わった、とバンテン州労働社会局長が明らかにした。州最低賃金は585,000ルピアから661,613ルピアに13%アップする。一方、県市別最低賃金は各地元からのリコメンデーションをそのまま承認した、とのこと。このためセランは796,000ルピア、チレゴン835,937ルピア、ルバッ750,000ルピア、パンデグラン755,000ルピア、タングラン県800,000ルピア、タングラン市802,500ルピアとなる。しかしこの決定に労働界は大きい不満を表明しており、労働者の要求に配慮を示さなかった州政府の姿勢に反発して、全国労組セラン支部では労働者の大規模デモを実施すると予告している。


「動産も封印対象にできる、と税法案検討チーム」(2005年11月30日)
税法案検討チームが、税務監査に非協力的な納税者の動産に対する封印措置権限を税務側に与える項目を追加することができる、と政府に提案した。現行法規内で税務側は、事務所など不動産に対する封印措置権限を与えられているが、狡猾な悪徳納税者は帳簿や書類など税務監査員が必要とする資料をトラックなどの移動性を有する動産に保管しておき、事務所が封印されてもそれらが監査員の手に渡らない工夫をするため、その対抗措置として提案されたもの。
新法案の中では税務監査において納税者は、少なくとも事業展開、資金と物品の流れ、毎月の銀行取引明細、株式、国内外の価格といったことに関する資料を監査員に提供しなければならず、それら必要な提出書類は税務監査実施が通知されてから一ヶ月以内に準備しなければならない。国税側の権限が増加することにバランスを取るため、監査内で発見された誤りを、手続を踏んで訂正する機会が納税者側にも与えられることになる。また国税側は監査結果を納税者側に知らせる義務を負い、また国税側の最終検討会議に納税者が出席する権利を持つ。監査結果をまとめる期限も設けられる。最終検討会議が行われなければ、税務監査結果は公式のものでなく、納税者は監査結果が公式なものかどうかを監視することができるようになる。この税務監査に必要な資料を提出せず、国税側の監査に非協力的な納税者に対しては、国税側が職務権限で納税額を決定することになる。


「大規模職場放棄が12月に起こる?」(2005年11月30日)
バンテン州連帯労組が11月26日付けの回状で、全バンテン州の労働者勤労者に大規模ストを呼びかけた。全国労組セラン支部のプジ・サントソ事務局長は、バンテン州2006年最低賃金に関する労働者の希望を無視した決定を行った州当局に対し、すでに予告した通り州内全労働者勤労者を糾合して12月中に大規模ストを行うことを決めた、と表明した。
「州内全企業の労働者勤労者は、仕事をストップしてデモに集まることになる。特定の日に一斉に業務ボイコットを行うこともあろうし、また職場を離れて州政府、県市庁舎などに大規模デモを行うこともあるだろう。」との事務局長の談。


「来年の最低賃金決定はやっと6州」(2005年12月1日)
11月26日時点で州別最低賃金が定められているのは、全国33州のうちまだ6州だけ。1999年労働大臣令第1号によれば、最低賃金は施行から60日前に定められなければならないと定められているが、律儀にそれを守ったのは西ジャワ州、バンテン州と首都ジャカルタのみ。ちなみにその6州とは:
西ジャワ州  2005年10月28日付け州知事令  最低賃金額447,654ルピア
首都ジャカルタ  2005年10月31日付け都知事令  最低賃金額819,100ルピア
バンテン州  2005年11月1日付け州知事令  最低賃金額661,613ルピア
NTT州  2005年11月11日付け州知事令  最低賃金額550,000ルピア
南スラウェシ州  2005年11月14日付け州知事令  最低賃金額612,000ルピア
中部ジャワ州  2005年11月21日付け州知事令  最低賃金額450,000ルピア
既に定まった35県市中で最低賃金の一番低いのは中部ジャワ州チラチャッ市の45万ルピア。州内各県市から最終リコメンデーションが知事のデスクに既に上がっているのは、バンカブリトゥン、ジョクジャ、東カリマンタン、中部カリマンタンの4州。


「SPT修正ができるようになる」(2005年12月1日)
改定税法案では、納税者にSPT(年次納税申告書)修正の機会が与えられる、と税法案編成チームリーダーが語った。これは優良納税者に与えられるチャンスであり、これを通して納税者が正しいSPT作成を行うようになることが期待されている、との談。インドネシアでこの種のチャンスが与えられるのは前代未聞のことだ、とも同リーダーは述べている。納税者が作成したSPTに誤りがあることが指摘された場合、これまではそれによって発生する不足納税額に加えて金利と罰金が納税者に課されていたが、新税法が施行されれば、納税者は税務署に提出したSPTを一年以内に修正することができ、不足納税額を納めるのは言うまでもないが、罰金と金利が免除される。このインセンティブの主旨はSPT確定期限が10年から5年に短縮されることと軌を一つにしている。新税法が2006年に施行されれば、2000年以前のSPTはその内容が確定されることになり、国税側の監査や納税不足追徴は行うことができない。
ところで、ハディ・プルノモ国税総局長は、税務面でのKKN発生は正しくないSPT作成がその原因だ、と語る。「正しくないSPTが作成され、納税申告者と税務職員との間に癒着が起こる。SPTが正しく作成されれば、KKNが生じる場が消滅する。」総局長はそう述べている。


「久方ぶりの巨額脱税事件」(2005年12月6日)
東カリマンタンのバリッパパンにあるPT チャトゥルボルネオ社取締役のひとりを、脱税容疑で国税総局が取り調べている。容疑内容は1千億ルピアを超える架空納税インボイスを発行し、その金を着服したというもので、およそ3百枚のインドネシア各地のKTPとNPWPを用いて3ヶ月ほど前から違法行為を続けてきたと見られている。容疑者はスラバヤで捕らえられ、国家警察犯罪捜査局で留置された後、国税総局に身柄を引き渡されて取調べが行われている。
納税インボイスには、バンドン、ジャカルタ、マカッサル、バリッパパン、スラバヤ、メダン、スマランなどにある会社名が使われ、きわめて広域に渡るこの犯罪捜査に国税総局側はため息をついている。この種の犯罪に対する罰則は、最高6年間の入獄ならびに脱税金額の4倍の罰金となっている。当局側はこの容疑者の後ろに犯罪組織が絡んでいるものと見て、捜査を続けている。


「従業員60人にひとりは麻薬常習者」(2005年12月7日)
全国の労働者・勤労者150万人以上が麻薬違法薬品を常用している、と国家麻薬庁防止支援センター長官が明らかにした。今年2月の政府統計では労働者人口94,948,118となっているため、およそ60人にひとりが麻薬違法薬品を使っていることになる。トミー・ヤコブス同センター長官は「勤労者・労働者に対する生産性要求から会社内のコンフリクトまで、従業員にかかるプレッシャーがかれらを麻薬違法薬品使用に走らせる要素をなしている。よくある話は、労働意欲が高まるという口実で違法薬品が使われていることだ。」
状況をそう説明した上で同長官はNGOと企業に対し、会社職場内に麻薬違法薬品をはびこらせないよう、対応措置を取ってほしい、と要請した。地域によっては、予算がないためになんら措置が取られていないというところもあるが、NGOと企業が協力して反麻薬違法薬品キャンペーンを職場環境の中で実施し、その利用者を減らす努力を行って欲しい、と同長官は要望を語り、さらに、これまでの違法薬品製造所摘発で明らかになったことのひとつに、工場からの産業廃棄物が不法薬品の製造原材料にリサイクルされているという事実があり、企業は廃棄物にも注意を払ってほしい、とも述べて注意喚起と協力を要請した。


「首都来年度最低賃金見直し」(2005年12月7日)
既に2005年10月31日付け都知事令で確定した首都ジャカルタの2006年最低賃金819,100ルピアが揺れている。スティヨソ都知事は、賃金評議会に対してその最低賃金額見直しを指示したことを明らかにした。都知事令が制定されて以来、都庁には連日のように労働者諸団体が陳情に押しかけて、騒然たる日々が続いている。労働団体マジョリティの主張は、今年のインフレ率に来年の見込みを加えた分だけの引き上げが当然だとして、現行最低賃金から25%のアップを要求しており、その要求金額は889、804ルピアとなる。都知事はそれに関し、既に定めた都知事令の内容は賃金評議会がリコメンドしたままのものであり、今回も賃金評議会が見直しを行うので、わたしが口を出す筋ではない、とコメントしている。一方、アデ・スプリヤッナ都議会議長は都庁職員の昇給率を指摘し、「25%にも満たない最低賃金アップ率では公平さという観点からおかしいと言わざるをえない。見直し結果が出れば、まず議会に提出してもらい、議会の承認を経た上で都知事令にしてもらうことになる。」と述べている。


「現行労働法が投資を阻んでいる、とBKPM長官」(2005年12月13日)
法確定を生み出すこと、労働に関する2003年第13号法令を変更すること、の二点がインドネシアの投資環境改善にとって最重要ポイントである、とムハンマッ・ルッフィBKPM長官が述べた。「その二点が改善されれば、投資環境改善の道程の半分を踏破したことになる。その二点は投資環境改善にとっての絶対条件だ。」同長官はそう断言している。
外国からにしろ国内からにしろ、投資が行われる際に投資者は法的インフラの保護下に入る。法的内容が明らかになってはじめて、投資者は事業計画における労賃計算を始める。イ_アでは、そのステージに影響を与えるふたつのポイントが、投資者にとって誘導的環境を作り出していない。その点での改善がなされれば、次に必要になるのは事業運営の上での確定、そしていくつかの政策的インセンティブという順番になる。政府は内外実業界からの要望を現在人権法務省で検討中の新投資法案にできるだけ盛り込んで、それに応えようとしている。
改定投資法案の中では、法確定実現のひとつとして、資産国有化が決して行われないことが保証されているし、ビジネス上の係争で国際法の関与が必要とされる場合は事業者にそのための道を開く条項も用意されている。
投資促進について同長官は、事業開始までの所要日数が、監督官庁で151日、自治体レベルで180日、合計331日もかかっていることに言及した。投資調整庁での手続きは最大でも、そのうちのわずか10日だけだ、と語る。そこでなされる手続きは、投資者からの投資届出だけとのこと。同庁は新規投資に関連して、投資者の企画段階での情報需要に応えるため、投資マップを作成する予定にしている。


「破れかぶれか?納税者拡大」(2005年12月14日)
タックスレーシオは今の13.6%から19%に。納税者は360万人から1千9百万人に。税収は3百兆ルピアから6百兆に。国税総局が2009年に実現しなければならない目標がそれだ。国庫収入の8割を背負っている国税総局に与えられているこの常軌を逸したとさえ思える重荷に、「信じられない」と頭を振る人は多い。ここ数年常に大きい上昇カーブを描く年間税収目標をこなし続けてきた国税総局は、しかしこれまでと同じようにクールな雰囲気を漂わせている。
納税者番号保有者の多さが税収増を保証するものでないのは言わずもがなであるにせよ、少なくとも税というものに対する国民の意識向上には大きく貢献するにちがいない。おまけに納税者番号というひもが付いていれば、徴税の場に引き出すのもやりやすくなろうというもの。国税総局は、納税番号受給者1千万人を当座の目標として、その対象者を網ですくった。土地や高価な建物を持っている者、高級乗用車オーナー、ヨット所有者、国内外にいる株主、外国人居住者、そして非課税限度額を超えた収入を得ている正社員、モール・プラザ・商店街などの経済活動センターにいる事業主、高所得者向け住宅地区住人、・・・。そのリストから既に納税者番号を持っている者を消去して残った者に納税者番号を送りつける。総局はそれとは別に、パスポート受給者はかならず納税者番号を持つことを法務省移民局に協力要請し、クレジットカード保有者についても納税者番号保有を必須とした。9月1日からはじめられたこの納税者拡大で、10月20日には番号保有者1千万人目がSBY大統領から表彰状をもらうという式典まで行われた。しかし国税総局が行ったその納税者番号送りつけで、大勢の国民が当惑をあらわにした。三つも番号をもらった者。退職して悠悠自適の老後を送り始めた者。失職してほとんど収入のない者。そうでない者にしても、ほとんどすべてが、「番号をもらったあと、何をどうすればいいのか?」と当惑している。法規によれば、番号をもらった者にはSPTと呼ばれる年次納税申告書作成提出の義務が生じる。納税額がゼロでも、収入がゼロでも、義務は果たされなければならない。義務を怠れば、罰則が待ち受けている。
国税総局は、納税者番号送り付けを行うに当たって間違いも起こるだろうと考え、送られてきた納税者番号返却の機会も用意したが、返却できる理由にあげられたのは「既に納税者番号を持っている」「既に死亡している」のふたつだけ。
納税自主申告を原則にしているインドネシアで、政府が国民総申告方針に切り替えはじめたのはここ数年のこと。納税者番号非保有者は保有者より高い税率にして給与所得者全員に納税申告をさせようとのアイデアも改定税法案に盛り込まれているようだが、納税番号保有者1千9百万人を実現した後、何が行われることになるのか、なかなか興味深いことではある。1983年の税制改革以来、納税者番号は360万件発給された。262万が個人納税者、残りは法人納税者という内訳だ。ところがアクティブにSPTを提出して来るのは、そのうちの三割だけ。まずそれから手をつけなければならないという気がするのだが、はたして360万中10万そこそこがSPTを提出している事実から、それを1,000万に増やしてやれば、30万以上のSPTが提出され、納税額も3倍になるはずだ、というロジックが国税総局を動かしていなければいいのだが。


「新最低賃金を制定した州はやっと半分」(2005年12月15日)
今年12月12日時点で、州別最低賃金に関する地方首長令が制定されているのはやっと16州であり、全国33州のうちまだ半分に満たないレベルであることを、労働省賃金次局長が明らかにした。1999年の労働大臣令では、最低賃金は施行の60日前、つまり10月31日には制定されていなければならないことになっており、この遅れに関して労働大臣は11月25日に関係州知事宛てのリマインダ−を出している。既に制定された州別最低賃金一覧は下の通り。
州名 / 2005年最低賃金 / 2006年最低賃金 / 州知事令制定日(2005年)
リアウ諸島 / 557,000 / 760,000 / 11月23日
バンカブリトゥン / 560,000 / 640,000 / 12月6日
西ジャワ / 408,260 / 447,654 / 10月28日
首都ジャカルタ / 711,843 /819,100 / 10月31日
バンテン / 585,000 / 661,613 / 11月1日
中部ジャワ / 390,000 / 450,000 / 11月21日
ジョクジャ / 400,000 / 460,000 / 11月1日
東ジャワ / 340,000 / 390,000 / 12月8日
バリ / 447,500 / 510,000 / 10月27日
NTT / 450、000 / 550,000 / 11月11日
西カリマンタン / 445,200 / 512,000 / 10月31日
南カリマンタン / 536,300 / 629,000 / 11月29日
東南カリマンタン / 523,698 / 634,260 /
東カリマンタン / 600,000 / 684,000 / 11月10日
東南スラウェシ / 498,600 / 573,400 / 11月10日
南スラウェシ / 510,000 / 612,000 / 11月14日


「中部ジャワ州の斜陽産業で解雇が始まる」(2005年12月15日)
中部ジャワ州では、今年3月の石油燃料値上げ以来、21の繊維関係ならびに家具関係の会社が7,724人という大量解雇を実施している。もっとも顕著なのは繊維衣料品業界で、そのあとを家具業界が追随している。12月に入ってまたいくつかの企業で解雇が進められており、スコハルジョのPT Tyfountex社は235人の従業員を解雇した。同社は早期退職制度を設けて退職者を募り、予定人数に満たない部分は会社側の説得で減員を行った。この解雇は労使とも合意の上で進められていることで、同社はこれで総従業員数9千人から今年775人を減らしたことになる。プカロガンでもバティック産業が灰色の雲に覆われており、10月の石油燃料大幅値上げで数千人の解雇者が出てもおかしくない状況になっている。プカロガン市にある17のバティック製造会社では、二社がかなり大きい人数の解雇を行い、ほかはまだ少人数しか解雇されていない。


「大企業が大量解雇」(2005年12月16日)
世界最大の即席麺生産者であるPT Indofood Sukses Makmur 社が、年内に現従業員数5万人を4万6千人程度に減らしたい考えであることを明らかにした。この3千5百人から4千人規模の減員のために同社は今年1千3百億ルピアの退職金を用意しているが、この人員合理化は同社にとっても8百から1千億の人件費セーブをもたらすものである、とフランシスカス・ウェリラン同社副社長がジャカルタ証券取引所における企業情報公開発表の場で語った。同社は今年10月、2千9百人への自宅待機措置を既に実施している。今年同社は営業利益の黒字確保に困難な状況に直面しており、当初予定されていた子会社PT Bogasari Flour Mills の株式公開を延期することもその席上で公表した。
一方、大型繊維会社だったPT Texmaco Jaya も3千9百人の従業員に対する解雇を会社側が予定している。同社の生産設備稼働は大幅に減少しており、その状況に即した人員体制としては6百人で十分と判断されている。生産設備遊休状況は運転資金不足がもたらしているものであり、資金注入がなされれば再び人員を増やして生産増強にかかることにしている、とラビ・シャンカル同社代表取締役は述べている。


「改定税法案を診断する」(2005年12月16日)
既に国会に上程されている改定税法案は法案審議委員会が、2006年実施は無理であり、2007年から実施するように、と政府に勧告している。この改定案と2000年税法との間で何がどのように変わっているのだろうか。大きい変更点をまとめてみよう。
1)所得税タリフ: 個人所得税累進税率上限が35%から30%に下がる。法人所得税は30%の単一税率が段階的に引き下げられる。配当金法人所得税は35%から15%に下がる。
2)課税金額: 寄付金をはじめいくつかの経費項目が利益から控除できるようになる。非課税限度額が年間1千2百万ルピアとなる。
3)税務調査期限: 時効10年が5年に短縮される。
4)年次納税申告書(SPT)提出: 法人所得税SPT提出期限が延長される。オンライン申告が可能になる。
それら国民に緩和をもたらしてくれる変更とは別に、国会税法案審議委員会が問題視し、修正を要求している条項がいくつかある。飴ばかりをしゃぶらせてやろうという法案では決してないようだ。
1)納税者番号を得るための登録に関する手続では、納税者に便宜が図られなければならない。ところが第2A条(1)(2)(3)項を読む限りでは、納税義務が生じているにも関わらず遅れて登録申請をしているかどうかが調査され、もしそうであれば刑事罰を適用する、といった納税者をおびえさせる内容になっている。
2)国税職員が捜査権と口座凍結権を持つ問題。第44条2項kに職員の個人的推測だけを根拠にそれを行うことが可能にされており、この条項は納税者への圧迫ツールとして悪用される可能性が高いことから、消去するよう国会側が要請している。
3)封印に関しても、税務調査から帳簿・文書・書類などを隠そうとして置いてある場所、スペース、動産不動産を、推測を根拠に封印できることにされている。
4)第35条(1)(2)項では、銀行、公認会計士、公証人、税務コンサルタント、行政オフィスあるいはそれら以外の第三者に、捜査や調査を受けている納税者に関連する情報や証拠を求める権限が国税総局に与えられている。これは職業上の秘密に関連する職業倫理に反するものと判断される。
5)税関連刑事犯罪について、第13条(4)(5)項に、未納税金額に関連する刑事罰と行政罰が規定されているものの、税関連刑事犯罪が何を意味しているのかについて説明が何もなく、また時効以後の税額査定を許すその他の刑事犯罪についても、内容が不明。
6)モラルハザードの懸念。第38条には怠慢への罰則、第39条には故意でない事務的ミスへの罰則が定められており、怠慢でSPTを提出しなかった者、SPTを提出したが内容に誤り、不備、あるいは正しくないデータを添えた者が国庫収入に損失を与えた場合、3ヶ月から1年の拘留および、納税不足金額の1−2倍の罰金を納めることとなっている。この条項も悪徳職員による納税者犯罪化のツールにされる可能性が高い。
7)SPTに生活費明細を添付するよう個人納税者に義務付ける第3条(1)項の内容は、日常の家計を記帳する習慣を持たないため実際にどのくらいの支出をしているか正確に知らないインドネシア国民に余計な事務作業を強いるもので、納税者の基本的人権に対する侵害である。おまけに生活費は所得税課税計算から控除できるものでなく、まったく関連性がない。
8)納税者が過剰納税分の還付を求め、その内容が国税総局によって修正された場合、行政罰として罰金100%が科されるという第17D条(3)項について、罰金100%はあまりにも大きく、またこじつけを行っている印象がある。またこの条項は、納税者に還付申請をしないよう脅かすツールに使われる可能性が高い。
9)国税総局の査定に不服のある納税者に対するペナルティに関する第25条(7)項は、納税者にその不服分をまず納税するよう命じている。条文では「不服申し立ては納税義務と納税督促実施を遅らせるものではない」と記されており、この条項は悪徳職員による納税者への搾取に、あるいは国税総局への不服申し立てをしないよう納税者を脅かすことに利用されうる。不服申し立てを行う前にまず納税せよという内容は、悪徳税務職員の毒牙に納税者をさらすものである。悪徳税務職員が好き勝手に巨額の不足納税確定書を発行すればどうなるか・・・?このコンセプトは潔白前提原則に反しており、また発生税額の50%だけを納めることを義務付けた税務法廷に関する2002年第14号法令第36条(4)項の精神にも反している。
10)国税総局の決定に対して税務法廷に上訴しようとする納税者に、まず決定額の50%納税を命ずる条項は、国税総局が恣意的に巨額の不足納税額を決定する機会を与える。これも上述のポイント9)と同じで、悪徳税務職員によってもてあそばれる機会を作るのみならず、潔白前提原則に反している。
11)税務調査に関する問題。第29条(1)項、第31条(2)(3)項では、納税者の遵法性を試験するため、あるいは税法規の規定実施の枠内における他の目的のために、国税総局は調査を行う権限を有する、と記されているが、「他の目的のため」という言葉はあまりにも幅広い解釈が可能であることから、モラルハザードのリスクを生んでいる。おまけに税務調査官は調査結果を納税者に知らせる義務がなく、その調査に納税者が列席するのも納税者の権利でなく、国税側のお情けのような印象を与える。
12)税務職員による納税者の権利侵害について、第36A条(2)項では単に、故意に権限を悪用した職員、納税者の権利を侵害した職員は大蔵省内部部門に訴えることができる、とだけ記されているが、その内部部門とはいったい誰を指しているのか、国税総局から独立したものであるのかどうか、何の規定もない。


「今年11月までの解雇者数」(2005年12月19日)
労働省の集計によれば、今年11ヶ月間の解雇件数は3,481件で、解雇者数は109,382人。昨年の年間データは件数4,099件、人数153,851人となっているが、そのいずれにせよ全国総数とは言えない、とガンディ・スガンディ労使紛争調停局長は語る。地方自治法が施行されて以来、全国レベルの正確な数値がつかめなくなった、と同局長は言う。州政府から中央政府へという流れだけでなく、県レベルから州レベルへという地方自治体の中でさえ、報告や情報の流れが的確に行われていない。「2005年11月の解雇に関する数値は、件数11解雇者9,511人となっているが、30州中わずか8州があげてきた報告数値の集計がそれだ。他の22州でまったく解雇が行われなかったはずがない。」
ソフィアン・ワナンディAPINDO会長は、2006年の前半6ヶ月は、実業界にとって守りに入る時期だ、と語る。「石油燃料大幅値上げが引き起こした諸問題に加えてこの先、電力料金値上げ、銀行金利上昇、最低賃金アップなどの要因が待ち構えている。新規投資や事業拡張などアグレッシブな手を打つのは難しい。反対に事業を縮小して力を蓄える企業の方が多くなるかもしれない。だからこそ、政府は投資環境の改善を強く推し進めなければならない。」同会長はそう語る。
イ_ア大学経済専門家ファイサル・バスリ教授は、30兆ルピアを超える今年の政府予算残高を農村部での労働集約プロジェクトに使用せよ、とアドバイスする。30兆が農村部に賃金として流れたら、その90%が消費物資の購入にあてられ、そのほとんどは国内産品であるため、一部産業で需要増が発生する。労働力がそこへ吸収されるようになって、3千億ルピアの経済効果を生むことになるだろう、との談。


「スラバヤで最低賃金反対デモ」(2005年12月20日)
2006年の最低賃金を定めた東ジャワ州知事令第188/286/KPTS/013/2005号の撤廃を要求して19日、スラバヤ周辺から集まった労働者が市内で大規模なデモを展開した。陳情行動はパハラワン通りの州庁舎からぺルニビルまでを埋め尽くして行われ、デモ隊は州知事への面会を要請したが、イマム・ウトモ東ジャワ州知事は州議会に出席していたため、デモ隊に顔を見せることは実現しなかった。州知事はこのデモに関して、各県市の首長と賃金コミッションが訂正を申し出てくれば州知事令の変更はありうるが、いくらデモ隊から懇請されても、わたしが自主的にそれを変更することはありえない、とデモ隊のターゲットがお門違いであることをほのめかせた。
数千人にのぼるデモ隊が道路をふさいだために,市内の州庁舎周辺は交通渋滞が発生した。昨日のこのデモに参加したのは、スラバヤ、パスルアン、モジョケルト、シドアルジョ、グルシッなどにある企業で働く労働者で、中にはルンクッにあるUDSolihin, PT Chiyoda, PT Inpex, PT Rajasa、またPT Maspion IVからも全従業員がこの行動に参加した。陳情行動が始まったあとも、しばらくするとルマジャンやジュンベルなど地方部からの労働者が続々と詰め掛けてきた。全国労連スラバヤ支部長は、スラバヤだけで8千から1万人が参加しており、最終的には2万人を超えるだろう、と大規模動員の成功を訴えていた。


「来年の昇給はインフレ率確保を」(2005年12月21日)
州別最低賃金は、その州内の会社にとって支払能力の下限をベースにする賃金保証であるため、最低賃金の算出方式にはその州のインフレ率と会社の支払い能力を要素として盛り込まなければならない。最低賃金算定はそのような方向で整備される必要がある。新任のエルマン・スパルノ労相は20日の経済閣僚会議のあとでそう語った。地元のインフレ率が最低賃金上昇の基本要素とされるため、その算定方式に基づけば、最低賃金の上昇は州のインフレ率より低くなることがない。
一方、既に州知事令が出されている2006年度最低賃金に対して、東ジャワ、西ジャワ、バンテン、バリ、南スラウェシ、中部スラウェシの諸州で20日、労働団体による見直し要求のデモが繰り広げられた。中部スラウェシ州パルでは、月額49万ルピアと定められた来年の最低賃金では生きていけないとして、地元福祉労組連盟がコーディネートしたデモ隊が65万ルピアへの改定を要求して気勢をあげた。デンパサルでもバリ労働者連帯に所属する労働者が州庁舎と州議会に陳情し、14%の賃金上昇では生活に困るとの要求を示した。バンドンではおよそ1千人のデモ隊が西ジャワ州庁舎前でデモを繰り広げ、閉鎖された表門を揺すったためにフェンスが破壊された。
2006年の最低賃金額に対する労働者の不満表明が相次いでいる中で、ソフィアン・ワナンディAPINDO会長は、実業界も困難な状況の中にいることを、労働者は理解して欲しい、と呼びかけた。「会社がまだ存続し、解雇が行われないというだけで、ありがたいことだ。金利率、石油、労賃、運送費、電気代、ありとあらゆるものが値上がりしているのだから。最低賃金は、実業界、労働界、政府が集まって、賃金評議会の中で協議され、合意されたことがらであり、問題は、労働者グループがあまりにもたくさんあり、労働者代表として協議に参加できず、またその結果を受け入れられないグループが存在していることだろう。実業界はインフレ率だけ従業員の賃金を上げてやってほしい。その上でまだ余力があれば、上乗せをしてあげればどうか。」同会長はそのように述べている。


「改定税法案に見る国税の暴虐」(2005年12月21日)
既に国会に上程されている改定税法案パッケージ内のひとつ、改定所得税法案の中に、国会が反対している問題が四つある。
まず第4条3項にある、一親等間での贈与に対する所得税課税だ。現行税制内でこれは非課税になっているため、課税対象への変更ということになる。この変更は、所得税を納めて入手してある資産を、一親等の家族に対する援助に使う際にまた課税しようというものであり、公平さが感じられず、また二重課税と考えられる。この規定は反対に、不当な方法で入手した資産を安く合法化する手段に利用される可能性もある。汚職などで入手した土地家屋を、親から贈与されたと称して納税すれば、一見合法的なものにしか見られず、また分離式最終課税であるため累進式の高税率は適用されない。
二つ目は、ホールディングカンパニーに対する二重課税問題で、第4条3項f(2)は株式会社が得た配当金や利益の一部が繰り返し課税されることを可能にしている。国会税法案審議委員会はこれを国税の暴虐と呼んでいる。
三つ目、販売と販促に関わる費用。法案では、この経費は税額計算から控除できるものにされていない。他の国ではたいていが控除できるものにされているというのに。
四つ目は、納税者番号を持たない納税者に対する制裁があげられている。同じ者が納税者番号を持っているかいないかで納める税額が違ってくるというのがこの条項で、税種によっては納税額が二倍も違ってくる。この条項は社会不穏を招く惧れがある。
というのは、今納税者番号を持っていない者の大部分は中下級所得層で、人数は数千万人にのぼる。かれらが納税者番号を持とうとしないのは、その意味合いを理解しておらず、また国税総局の悪イメージを怖がっているからであり、この社会層は容易に国税総局悪徳職員の搾取と圧迫の餌食になりかねない。インドネシアの勤労者の多くも所得税を納めているものの納税者番号を持っていない。かれらを雇用する会社が所得税を源泉徴収して納税しているため、自分自身で税務署と関係を持つ必要がなく、だから納税者番号を持とうとしない。改定税法案では、そんなかれらが納税者番号を持っていないというだけで高い税率が課され、納税額が増加し、手取額が減る。
大きく焦点の当たっているのはそれらのポイントだが、SBY大統領以下が諸階層からの提案を受け入れると述べているにもかかわらず、法案内の条項や規定に対して頑強に自分の主張を言い張っている。国税総局は、納税者の呼称を従来のwajib pajak(納税義務者)から提案されているpembayar pajak (税金支払い者)に変える意思を持っていない。


「ブカシ県2006年最低賃金」(2005年12月22日)
ブカシ県・市の2006年度最低賃金に関する西ジャワ州知事令第561/Kep.1392-Bangsos/2005号が2005年12月19日付で制定された。2006年1月1日からの実施と定められたブカシ県・市の最低賃金は産業セクターによる分類で、下のようになっている。
ブカシ県
a。最低賃金 Rp824,026.34
  対象セクター : 自動車完成品、化学医薬品、生ゴム製造、製紙、発電と石油ガス鉱業、ベースメタル、自動車部品、家電製品。
b。最低賃金 Rp822,073.67
  対象セクター : 楽器、通信機器部品、自動車サブ部品、家電品用部品、建設、商業サービス。
c。最低賃金 Rp820、121.00
  対象セクター : 木材、衣料品、銀行・保険、星級ホテル・レストラン、輸出入業、家庭事務所用プラスチック・ガラス、家電品用サブ部品、紙プラスチック包装、繊維。
ブカシ市
a。最低賃金 Rp824,000.00
  対象セクター : 自動車完成品、化学医薬品、生ゴム製造・製紙・プラスチックシート、自動車部品、ベースメタル、飲食品、金属加工、包装・ベースケミカル、家電品用部品、木材輸出、三分の二以上を輸出している繊維衣料品。
b。最低賃金 Rp820,500.00
  対象セクター : 銀行・保険、星級ホテル、輸出入業、卸売業、国内販売を主にしている繊維衣料品、玩具・アクセサリー、履物、畜産、家具、印刷・出版、家庭事務所用品用プラスチック加工。
c。最低賃金 Rp795,000.00
  対象セクター : 修理サービス、商店・小売業、学校・病院等社会サービス
この決定に対して、労働界も実業界もそれぞれが「低すぎる」「高すぎる」と反対を表明している。


「税収目標達成に大口納税者を追え!」(2005年12月23日)
今年の改定予算税収目標国税総局分302兆ルピアに対して、12月1日時点での税収実績は51兆不足していた。しかし15日間で26兆が回収されたため、あとは15日間で25兆ルピアが確保され、今年度税収予算がまっとうされることを最大限に期待している。国税総局長から各税務サービス事務所に対して檄が飛んだ。中でも期待されているのは、産業センター地域に集まっている大口納税者からの税収確保。
21日、バタムで新たに開設されたメディアムタックスオフィス(MTO)は、大型納税者を担当するラージタックスオフィス(LTO)に対応するものだが、最先端の設備とプログラムを使った29のタックスオフィスは全国の税収の65%を担っており、バタムのMTOはジャカルタ外ではじめてのもの。バタムMTOの税収はリアウ州全体の1.9兆ルピアのうち30%を占めている。
「バタムMTOは初年度10%増、二年目は20%増を実現しうるものだ。その担当下には193のPMA企業と107の大型企業があり、担当地区の税収源泉となっているのだから。」国税総局長はバタムMTO開所式典の場で、税収確保業務のターゲットをそのように示唆した。


「また大量解雇1千5百人」(2005年12月23日)
養鶏をコアビジネスにしているシエラッ・グループが1千5百人を解雇した。PTシエラップロデュ−ス社はコアビジネスに関わっていない子会社ニ社を売却する予定にしており、その二社の従業員8百人に加えて人員合理化を目的に7百人を過去二ヶ月間で解雇した。このため、従来は6千人いた同グループの従業員は4千5百人に減少している。エコ・サンジョヨ、シエラップロデユース社取締役社長は、この解雇で毎月20から30億ルピアの経費節減が可能になる、と述べている。同グループが売却を予定している子会社とは、医薬品と動物用ビタミンを生産するPT Biotek Indonesia および国際レストランチェーンWendy'sのインドネシアにおけるライセンスを保有しているPT Wendy Citarasa 、そしてHartz Chicken Buffet Restaurant を経営しているPT Sierad Pangan の三つ。それらの会社は過去二年間で黒字転換ができず、経済状況も悪化していることから来年の売却が決断されたもので、購入希望者は既にある、とのこと。ウエンディズは来年初に売り渡したいと同社は希望しているが、ライセンス保有者のウエンディズインターナショナルの了承がおりなければならず、思うに任せない要素があることを同社長はほのめかしている。


「東ジャワ州2006年最低賃金見直し」(2005年12月24日)
スラバヤで今週初めに労働者の大規模な2006年最低賃金反対デモが行われた。イマム・ウトモ東ジャワ州知事はそれに反応して、既に制定した州知事令第188/286/KPTS/013/2005号の中に定めた655,500ルピアの施行を保留し、見直しを再度行うように各地方首長に差し戻した。その州知事の姿勢に対して、実業界が強く反発している。
アピンドを代表して賃金評議会のメンバーになっているジョンソン・シマンジュンタッは、「賃金評議会の席に連ならなかった勢力からの圧力で、既に制定された州知事令が変更される、というのは根拠に欠けることだ。このようなことが行われれば、東ジャワ州産業界に悪しき前例を残すことになる。州庁舎前でデモを行い、655,500ルピアの最低賃金に反対し、更に上乗せを要求したいくつかの労働団体は、国民労組(SPN)、民衆労組(SBR)、および非労働者グループなどであり、賃金評議会に参加しなかった者たちだ。」と正規の場での協議に加わらず、力ずくで横車を押すような勢力に譲歩する州知事の姿勢に不満を表明した。賃金評議会に参加し、州知事に対するリコメンデーションにサインしたのは、SPSI、Sarbumusi、SBSI、Gasbiindo、SP-BUNなど。


「労働5問題の解決を」(2005年12月26日)
現行労働法改定に関するエルマン・スパルノ新労働相のコメントに関連してアピンドは、労働法改定だけでなく、労働関連5問題の解決も劣らず重要であり、政府は2006年中にそれらを解決するための十分な努力を払って欲しい、と要請した。その5問題についてアピンド=全国事業者評議会の法制度労使関係部会長は、こう再確認している。
1)2000年法令第21号が数万の労働組合誕生を推し進めた元凶であるため、早急に改正されなければならない。わずか10人のメンバーがいれば組合が編成でき、労働界との統一が取れた話がまったく進められなくなってしまっている。ある組合とAという交渉がまとまっても、別の組合がBでなければだめだと言ってそれをご破算にする実態が生まれている。
2)2003年第13号法令「労働法」の、解雇の際の事業者側に対する重すぎる補償と、解雇に行政が干渉することを許している条項は改定されなければならない。労働界はその条項がなくなれば、事業者が好き勝手に従業員の首切りを行うという不安を抱いているが、現実にはそんなことは起こっていない。
3)最低賃金に関する1999年労働大臣令第1号のシステムはロスが大きい。毎年定めなければならないので、毎年全国的な大騒ぎを繰り返している。ところが最低賃金というのは、勤続1年未満の独身者を対象にしたものであり、大半の労働者はそのカテゴリーにあてはまらない。
4)スト・職場放棄問題。ストは交渉が合意に達しなかったときに労働者が振るう権利だが、公正な規則に従って行われなければならない。
5)従業員に対する保険をはじめとする、投資環境に対して不健全な地方規則を、政府は指導整備するべきである。雇用者は従業員を労働保険に加入させているが、それに上乗せして地元自治体が別の保険加入を強制しているようなケースが多く見られる。
最後にアピンドは労働省に対し、勤労者労働者に対する技能訓練を充実させ、より高いレベルに引き上げるプログラムを実施してほしい、と要請した。技能サーティフィケートを持つことで、高い競争力と生産性を身に付けた人材が雇用されるようになれば、産業界の業績向上に大きい助けとなるに違いない、と実業界は期待している。


「2006年度州別最低賃金」(2005年12月27日)
労働省のデータによれば、12月26日現在で2006年最低賃金を定めた州は全国33州中25州となった。最低は東ジャワ州の390,000ルピア、続いて西ジャワ州447,654.28ルピア、中部ジャワ州450,000、ジョクジャ特別州460,000、バリ州510,000といった順。最高はアチェ特別州の82万ルピアとなっている。例年最高の首都ジャカルタは81万9千1百ルピアで第二番目。
アチェは775,000ルピアという適正生活需要を100%以上満たしている。一方東ジャワ州は、適正生活需要が580,054ルピアなので、最低賃金はそれより33%低いことになる。
ところで東南スラウェシ州は、2003年労働法および2005年労相令に反して、適正生活需要ではなく最低生活需要を指標として2006年最低賃金を定めたことが明らかにされた。最低生活需要算出要素は43品目だったが、適正生活需要の場合は46品目を用いるよう増やされている。同州知事が定めた2006年最低賃金は573,400ルピアで、2005年の498,600ルピアから15%アップしている。労働省はこの問題について、最低賃金決定は法規通りに行われなければならないが、東南スラウェシ州知事が行ったことはそれなりの情況に迫られてのことと思われ、労働省は規定違反という面を重視することはしない、との姿勢を打ち出している。


「税務環境は誘導的か?」(2005年12月27日)
複雑で錯綜した法規。多種多様でダブっているものすらあるように思えるし、税率も大きい。税務署との手続やそのための事務作業に要する時間も半端なものじゃない。インドネシアに投資して事業を行っている外国人ビジネス層が一番頭を悩ましているのがインドネシアの税制。「更に投資を拡大するなんて、とんでもない。」と洩らす人もいる。
さまざまな国際機関が行っている調査も、似たようなメロディを奏でている。投資環境に関して世銀が行ったサーベイ結果を報告しているドゥイングビジネス2005は、インドネシアの税制に関する状況はアジアの中でかなりひどいという印象を与えている。税務手続のために消費する時間について見ると、他の国に比べてインドネシアはなんと二倍。イ_アを除くアジア諸国の平均249.9時間に対し、インドネシアは560時間。OECD諸国の平均は197.2時間に過ぎない。税の種類を数え上げてみれば、インドネシアは52種類もある。イ_ア以外のアジア平均は28.2、OECDは16.9。粗利益に対する納税額比率は、インドネシア38.8%、イ_アを除くアジアの平均は31・2%。ところがそんな内容にもかかわらず、GDPに対する税収額の比率であるタックスレーシオは13.6%しかなく、国連がまとめた1996-2002年の先進国23カ国の平均値31.3%、中進国19カ国平均25.4%、発展途上国69カ国の平均でさえ15.7%という中で、異様に低い
印象を与えている。ハディ・プルノモ国税総局長は、13.6%とはいえ、石油関連税収の80兆ルピアをそこに加えれば、近隣諸国と遜色ない数字になる、と説明しているが、果たして合理的な見解なのかどうか。
税を管掌する国家機関のパワーについて、諸外国ではタックスオーソリティの権限がどれほど強力であっても、妥当なレベルに置かれるようアレンジされているが、インドネシアでは国税総局長というひとつのポジションに、政策策定と施行、税収目標設定、徴税、納税額決定、罰金額決定などの諸権限が集中している。経済専門家ファイサル・バスリは、6つのキーポジションを一手に握っている、と表現している。デモクラシーのより進んだ法治国家では、制限を受けないパワーの存在はありえない。ところがインドネシアには国税総局長が持つそれらの権限を明確に制限している法規はひとつもない。そして今国会で審議されている税法案が実現すれば、そのパワーは更に強大になるだろうと見られている。
ところで、高額納税者税務サービス事務所(LTO)に関してACニールセンが行った調査がある。その調査報告は、高額納税者の同税務サービス事務所に対する満足度が極めて高いことを示している。税務職員の姿勢が顕著に改善されていると認める納税者は78%もおり、また84%は納税義務遂行がやりやすくなったと述べている。納税規模のもっと小さい納税者を対象に同じ調査をした場合は、いったいどのような結果がでることだろう?
税率が事業活動と企業発展の障害になると考えている事業家は、世銀の調査ではインドネシアに29.5%いた。スリランカの19.1%、インドの27.9%より悪いが、フィリピンの30.4%、中国36.8%、パキスタン45.6%などに比べれば悪くない。税務環境に不満を覚えている事業家の率について、世銀のサーベイ対象になった51カ国中インドネシアは少ない方で17番目であり、国税総局長を喜ばせてはいるものの、インドネシアが事業を行う場所として諸外国から憧れの目で見られているというものでは決してないのも周知の事実だ。複雑で錯綜した税制法規のおかげで、インドネシアで事業を行っている企業はたいてい納税を避け、税務職員に金を渡すという方向に傾いている。税務職員自身が、「まじめに法規通り税金を納めれば、会社は早晩破産するに決まっている。」と平気な顔で述べているくらいだ。会社が10あればそのうち9が税務上でタックスオーソリティとの間にトラブルを抱えている。贈賄をする事業者たちが、もっとフェアで、ビジネスフレンドリーで、シンプルで、腐敗のない税務環境を望んでいる、と語っているのは、ただの体裁をつくろう
ほら話なのだろうか。それとも数多いインドネシアのパラドックスのひとつなのだろうか?


「東カリマンタン州で最低賃金見直し」(2005年12月28日)
東カリマンタン州知事令第561/K.348/2005号ですでに684,000ルピアと定められた2006年最低賃金を見直すよう、州知事が賃金評議会に指示した。その2006年最低賃金決定に際してはインフレ率基準値として14%が使われているが、現実には同州のインフレ率11月累計実績は16%、そして12月末では18%が見込まれており、その開きがかなり大きくなっていることから、州知事が見直しを指示したもの。ちなみに同州の2005年最低賃金は630,000ルピア。
州内の適正生活需要を見ると、もっとも低いのはサマリンダの764,000ルピア。しかし中には100万ルピアを超える地区もある。2006年最低賃金に関する州知事令が制定されると、労働団体は反対デモを行って州最低生活需要である754,000ルピアへの改定を要求していた。実業界はこの改定問題について、賃金評議会が規定のメカニズムに従って算定することに反対する意図は無いが、算定規準は最低生活需要にせよ、適正生活需要にせよ、インフレ率にせよ、それだけが決定要因ではなく、会社の支払い能力つまり客観的な会社の情況も考慮されなければならない、とコメントしている。


「従業員が強盗に早変わり」(2005年12月29日)
勤続四年になるが、一週間に三日くらいしか出勤しない規律欠如の運転手に解雇を言い渡したところ、その運転手が事務所で強盗をはたらいてから逃走するという事件が27日早朝に起こった。その舞台になったのは、南ジャカルタ市マンパンプラパタン地区にあるムルティカビル4階406号室を事務所にしているPTクレイシンインドネシア社。同社は携帯電話アクセサリー取り扱い事業を行っている。
27日午前7時45分ごろ、クレイシンの従業員サンドラワティがいつものように出勤したところ、解雇を言い渡されたヘル・ウィディアントが事務所の中にいた。ヘルはサンドラに刃物を示して抵抗しないよう脅し、一緒にいた覆面姿のヘルの仲間ふたりがサンドラの手足をコンピュータマウスのケーブルでしばり、口にガムテープを貼って同社取締役韓国人イン・ソーチョンの執務室に閉じ込めた。その後出勤してきた従業員ひとりひとりを同じように縛り上げ、総勢9人が取締役室に閉じ込められた。その中には、オフィスボーイをしているヘルの実の兄と弟も含まれている。言うまでもなく、イン・ソーチョン取締役も9人の中のひとり。
従業員を全員閉じ込めてから事務所の表扉に「会議中」の札をかけ、中から扉の鍵を閉める。スリ・ワヒユニ取締役代理の戒めを一旦解いて、金庫を開けるよう命じた。金庫の中に眠っていたのは7万5千米ドルと2千5百万ルピア。それを手に入れた三人の盗賊は、被害者たちが身に着けていた貴金属装身具や携帯電話を取り上げ、全員が縛り上げられているのを確認してから姿を消した。警察はその三人を追っている。


「最低賃金は毎年提示されなければならない、と労組連盟」(2005年12月29日)
インドネシア福祉労組連盟が最低賃金の廃止に反対している。エルマン・スパルノ労相がしばらく前に表明した、基本給・地区のインフレ率・企業の支払能力に基づく最低賃金算出公式に関連して、同連盟が要望したのがこれ。レクソン・シラバン同連盟議長は、最低賃金に従って賃金給与をもらっている従業員は全国で13%しかいない、と実情を物語った。フォーマルセクターで働く4千4百万労働者のうちわずか13%しか最低賃金制度の恩恵をこうむっておらず、残りの労働者は会社の支払能力と大量の失業者という現実の中で、最低賃金に満たなくとも失業するよりはマシとして低賃金に甘んじている。そんな状況であるがために、州別最低賃金が定められなくなれば、87%の労働者には手がかりが消滅し、社会保全上の混乱が労働者に抑圧をもたらすことになりかねないため、これまで通り毎年、最低賃金の提示がなされる必要がある、とその理由を説明している。
最低賃金にまつわる問題について同議長は、今の定例的な陳情騒ぎはシステム上の欠点があるため、改善されなければならない、とその方策を示唆した。同議長の提案によれば、現行制度では、支払能力が一様でない実業界に対し、それを無視して一様の義務付けを行っていることに不合理があるとのこと。「輸出指向の大企業と国内市場を専門にしている中小企業の区別がなされていない。有名ブランドの靴を生産している輸出指向の会社と国内向け生産者、5星級ホテルとジャスミン級ホテル、大手チェーンレストランと小規模飲食店を同じように扱えるわけがない。最低賃金が給与の指標として扱われるなら、労働者の福祉達成は決して実現しないだろう。州別最低賃金は全労働者の中でもっとも少ない賃金をもらう者にとってのものであるべきだが、今は賃金支払いの平均参照値という意味を持たされている。」同議長はそう語っている。


「続・東カリマンタン州で最低賃金見直し」(2005年12月30日)
東カリマンタン州知事が賃金評議会に対して2006年州別最低賃金の見直しを指示したことは既に報道されているが、労使政府の三者協議機関である賃金評議会の事業者側代表がその修正を拒んでおり、既に評議会が都知事に提出した推薦金額である684,000ルピアは変更しないことを主張して協議は硬直している。マスリ・ハディ同州労働局長によれば、既に評議会が決定した2006年最低賃金がむりやり引き上げられれば従業員解雇は避けられない、と事業者側が強く主張しており、仲介の糸口がつかめないでいるとのこと。一方同州労働団体は、州知事令の数字は絶対承服できないとして、引き上げがなされないなら一斉大規模職場放棄が起こる、と宣言している。労働者側はこの罷業を来週から開始する予定にしているため、1月早々からの就業に異変が起こることが予想されている。


「パスルアンでも最低賃金上方修正要求」(2005年12月31日)
29日、東ジャワ州パスルアン県で、およそ2千5百人の労働者が県庁前で陳情行動を展開した。デモ隊が要求したのは、2006年最低賃金を適正生活需要である739,000ルピアまで引き上げること。既に定められた2006年パスルアン県最低賃金は665,000ルピアとなっている。
要求を掲げたデモ隊代表とそれに応対した県令代理との間の議論は紛糾したが、最終的に県庁側は県の適正生活需要である739,000ルピアが県最低賃金候補であることに同意した。しかし県側は、同県事業者協会が2006年最低賃金の665,000ルピアを変更する意思がないことも明らかにしている。


「労働者に甘すぎる労働法規の改正を、とBKPM」(2006年1月23日)
外国からの事業投資に関連して、外国事業家の苦情の中に、インドネシアの労働法規があまりにも労働者偏重であるとの意見があるため、BKPMは労働省に対して外国投資受け入れの障害になる法規の改善を要請した。中でも歪みの大きいのは2000年労相令第150号で、この規定によれば勤続3ヶ月の雇用者が退職金を与えられることになっている。この法規は結果的に、労働者の気ままな転職を促す原因となっている、とBKPMインフラ資源潜在性開発局長が述べている。同局長によれば、労働法規がインドネシアの外国投資誘致の障害になっており、おまけに政府の労働規制政策で、労働者・従業員が何か欲することがあれば労使協議を行うよりもデモなどの実力行使を手段に選ぶ傾向を助長してきた。賃金問題もバランスを失しており、毎年行われている最低賃金検討の中で常に労使間の果てしない平行線が続けられる傾向を生んでいる。
インドネシアの経済成長に外国からの事業投資は不可欠のものであり、労働問題を今のまま放置すれば投資促進が円滑に進展せず、将来の経済成長に赤ランプが点灯しかねないので、労働省に労働法規に関する見直しを要請した、と同局長は述べている。その改善によって投資が進展し、2千2百万失業者に雇用の機会が与えられることが優先問題ではないか、とのコメント。BKPMはまた、外国事業者の側にも事業利益の労働者への分配についてオープンにすること、会社利益と労働者・政府との間の橋渡しを務める外部アドバイザーを使うことなどを要請している。
もうひとつの問題は地方自治で、地方自治体の中に地元の問題は地元の利害だけを基準にして好きなように規制を行ってよいと考えているところがあり、そのために事業環境に非誘導的な歪みを生じさせる結果を生んでいるため、考え方を再度リフレッシュしなければならないとも述べている。


「会社の送迎バスを擁護してロングマーチ」(2006年3月1日)
ブカシ県ナロゴン街道KM125にある繊維会社PTスギンテックス・シオエン・インドネシアの従業員数百人が、抗議の意思表示を行うために2月27日朝、ロングマーチを行った。グリーンの制服を着た数百人の従業員たちが午前6時半から行ったこのロングマーチは、ナロゴン街道に時ならぬ交通渋滞を引き起こした。
従業員たちが行った抗議は、会社へ向けられたものでなく、ブカシターミナルとバンタルグバンを結んでナロゴン街道を走っている小型乗合バス、アンコッK11に対するもの。従業員の話によれば、会社は従業員送迎バスを用意しており、アンコッを使えば一日一万ルピアが飛んでいくため、従業員たちはその送迎バスを使うのが普通だが、アンコッ運転手たちは乗合バスを使って欲しいために、送迎バスへの威嚇や妨害を三週間くらい前から始めた、とのこと。しばらく前には、バブランに住んでいる従業員たちがアンコッに止められ、アンコッに乗るように強制された、と従業員のひとりは語る。K11の監視員は、威嚇や妨害を行ったという話を否定したが、シオエン社は送迎バスの乗降場所を限定し、その場所以外で乗り降りさせないようにしてほしい、と語る。「今は従業員が街道のどこの道端にいようと、送迎バスがかれらを乗せている。ブカシ県交通局は三ヶ所の送迎場所を提案しており、送迎バスに乗りたい従業員はそこまで来るようにしてほしい。そうすればアンコッ利用者も増え、公平な状況になる。今のような状況のままだと、アンコッの乗客は減ったままだ。」と事業が先細りとなれば、公共運送事業が続けられなくなることを懸念して、監視員はそのように述べている。
ロングマーチは陸軍行政管理司令部前KM12からバンタルグバン警察署KM7まで行われ、5キロを踏破したようだがそのとき時計は10時30分を指しており、会社の始業時間である8時30分はとっくに過ぎていた。


「地下水利用税を引き上げよ」(2006年3月10日)
都議会第B委員会で、地下水利用税をもっと高くするべきだとの提案が出された。地下水の過剰採取は海水の地下浸透を促進させており、モナス地区まで海水が浸透していることは以前から問題として取り上げられてきたが、最近ではクバヨランバルまで海水が来ていて、モナスの地下水は正真正銘の鹹水になっている、とのこと。地下水の過剰採取をやめさせれば、水道会社の経営状態も改善されて一挙両得だというのがこのアイデア。
地下水地上水税実施に関する1998年都条例第10号によれば、地下水を利用しようとする者は、三ヶ月期限の井戸掘削許可を1百万ルピアで取得しなければならず、許可の期限延長は50万ルピアを納めることとなっている。地下水利用に関しては、非商業目的の場合はリッターあたり25ルピア、商業目的の場合はリッターあたり500ルピアが徴税される。その後1999年都条例第3号で都に納める課金額の改定がなされたが、地下水税に関しては変更されていない。
都議会第B委員会は地下水利用許可に関連して、三ヶ月単位の利用税を次のように提案している。
非石油ガス 1〜5百万ルピア
小規模商業 2.5百万ルピア
小規模工業 3百万ルピア
大規模商業 4百万ルピア
大規模工業 5百万ルピア
委員会は既に内務省に対してこの提案の実現性を打診しているが、内務省側は上位の法規に矛盾してはならないため、まだ検討段階であるとして態度を明らかにしておらず、都議会はその結論を首を長くして待っている。


「都内で労働者デモが破壊行動に」(2006年4月6日)
4月5日、労働法改定反対の労働者デモは、ジャカルタ、スラバヤ、マラン、グルシッ、シドアルジョ、バンジャルマシン、メダン、パレンバン、ジャヤプラなど全国18州の広範な地域に渡って行われた。労働界は大規模な反対デモを今月一杯続けてメーデーにつなげる予定にしており、また4月21日に全国ストを実施するとも表明している。ジャカルタでは5日、ジャボデタベッばかりかバンドンやチレゴンからもやってきた数万人のデモ隊が朝から大統領官邸前に参集したが、大統領はパプアへ業務訪問を行っていたためデモ隊は副大統領執務宮に流れた。副大統領執務宮では十名のデモ隊代表者が副大統領との会見を許されて中に入り、残されたデモ隊は南ムルデカ通り一帯を埋め尽くした。ところがデモ隊の中に血が騒ぐ者たちが多数混じっており、代表者と副大統領の会見をじっと待っていることのできない連中がそのうち暴れ始めた。オルバ期以前からも、大群衆が集まると必ずアナーキー行動へ発展して破壊の限りを尽くすというのが定例パターンとなっていて、組織化もされず命令指令も飛んでいないにも関わらず全員が一致協力し、嬉々として破壊行動に邁進するありさまは、それが暗黙の了解を内に秘めたひとつの民族文化であることを証明しているような気がしてならない。かれらは副大統領執務宮に隣接する都庁のフェンスを押し倒し、騒擾は広がってモナス周辺の緑地、交通標識や信号機、表示板などを破壊し、アナーキー行動はタムリン通りまで波のように伝わって行った。タムリンでは鉢植えを投げ倒したり、街路樹を折るなどの狼藉が行われ、インドサットビル前のロータリーにある噴水やアルジュナの像へも破壊の手が伸びた。トランスジャカルタバスが一台デモ隊の中で身動きできなくなり、デモ隊騒乱者がバスを破壊して放火しようとしたが警官隊がそれを防いで事なきを得た。このため首都の目抜き通りであるタムリン〜スディルマン通りは交通往来が大混乱に陥り、騒擾が鎮まったあとも巨大な鉢植えポットが路上に転々と散乱し、また太い木が折られて路上を塞ぐなど交通の障害となったために、後遺症は夕方まで残った。首都警察は騒擾の主役を演じた者たちの中で11人を逮捕した。公共施設を破壊して大いに暴れまわった者たちの物語るところでは、大統領は労働者の陳情行動を相手にせず、副大統領の方に回されたら副大統領は形式的な反応しか示さず、本気で労働者の運命に関心を持とうとしてくれないため、失望と怒りをぶつけたのだとの説明だが、実態がかなり感情的にデフォルメされているようだ。これも群衆行動の特徴のひとつに違いない。


「5月1日の首都は第一級警戒態勢』(2006年4月29日)
今年のメーデーは単なる労働者の祭典に留まらず、政府が計画している労働法改定に反対する姿勢を労働者が表明するための舞台として使われようとしている。現SBY内閣は9年前の経済危機以来沈没してしまったインドネシア経済立て直しのための諸政策を、今年3月2日に投資環境改善政策パッケージとして大統領指令の形で明示した。その中には労働者に過保護で事業主に過剰な負担を課しているとして実業界から不評を買っている労働法をより公平なものに改定するという課題も含まれている。その課題推進のために政府労働省が法令改定プロセスを始めたものの、当初労働者側は改定協議を先延ばししようと努め、労働省が叩き台として作った改定案が漏洩して急進派労働団体が改定そのものへの反対姿勢を強めたため、労働界はそれに引きずられる形で改定断固拒否の色に塗りこめられてしまった。この経緯の詳細はインドネシア業務支援情報で配信されています。
労働界は県市レベルの地方議会に支援を求めて働きかけ、全国各州の下部議会から支援表明を集めた上で州議会に姿勢表明を求め、それらの反対表明を5月1日に国会に提出して政府が行っている労働法改定プロセスを流産させようとの戦略を進めており、このため5月1日の都内における労働者デモのメインストリームはスナヤンから国会議事堂にかけてのエリアが主舞台となるだろうと予測されているものの、人間の大海原を示威することで労働界の意志を強くインパクト付けるという示威行動の原理から行けば、タムリン通りからモナス周辺地区を明渡しておく必然性は何もない。インドネシアの三大労組同盟のうちインドネシア労組同盟は10万人動員を呼号しており、もうひとつのインドネシア福祉労組同盟ともども5月1日に示威行動を展開する予定にしているが、国内最大の組合員を擁するインドネシア全国労組同盟は5月1日の行動に参加せず、別途5月3〜5日に首都で行動を展開する予定を組んでいる。
大勢の群衆が集まると、どこからともなく破壊行動が発生するのが当地社会の性格であり、その事例は今月5日に証明されている。(「都内で労働者デモが破壊行動に」(2006年4月6日)参照)首都の治安を預かる首都警察は、4月28日から5月21日まで三週間にわたって第一級警戒態勢下(シアガ1)に入った。特に重点警戒地区としてスマンギ〜国会〜グロゴルの線ならびにスマンギ〜HI前ロータリー〜モナス(正副大統領官邸)の二方向が挙げられており、厚い警戒配備がなされる見込み。また首都周辺部から都内に入ってくるルートでもコンボイの大集団が通過することが予見されるため、一般市民は極力それらの地区を避けるよう警察はアドバイスしている。シアガ1態勢では国家警察1万2千人、国軍5千人、都庁行政警察4千人の合計2万1千人が都内の要所に配備され、また民間団体や自警団6万人が暴動に備えて地元の警戒に当たることになっている。今回の治安警戒配備では武器の携行をできるかぎり減らし、治安部隊はデモ隊の人の流れを誘導的な方向へ導くことを対応の主眼にしているが、もしアナーキーな破壊行動を行う者が出た場合は士官級職員が即時発砲する可能性もある、とフィルマン・ガニ首都警察長官は表明している。首都警察はまた、重点警戒ラインとして挙げた上のふたつのエリアにある建物には監視カメラを設置し、デモ隊がやってきた際には表門を閉鎖して構内に入れないよう警戒し、もし不法行為を働く者が出現した際には監視カメラやハンディカム、写真機などを使って犯人を録画しておくように、と指導している。
ともあれ、都民は要注意地区を避けるよう努めることを忘れないかぎり普段行っている活動を取りやめる必要はなく、平常通り経済活動にいそしめばよい、とも首都警察長官は述べている。しかし従業員がデモに参加する可能性の高い首都圏の工場は、自社従業員が混じっているかどうかには関係なく、デモ隊が工場施設や工業団地内施設に対して破壊行動を行う心配を抱えている。北ジャカルタ市チャクン地区にあるヌサンタラ保税工業団地では北ジャカルタ市警に対して、工場従業員たちが行うデモ行動の中に外部から煽動者が混じりこんで破壊行動を煽るケースが多いために、その点に関する予防措置を要請した。北ジャカルタ市警は所轄内にある同工業団地、アルタガディンモール、クラパガディン地区、マンガドゥアのITC、WTC、マンガドゥアスクエア、アンチョルドリームランドなど一連の要所における警戒を強める計画であることを明らかにしている。しかしそのような状況を考慮してアピンド(事業者協会)は、5月1日月曜日の操業をやめて休日にするよう全傘下企業に指示を出した。これは従業員の休暇や職場放棄によって生じる生産性ダウンや、最悪の場合デモ隊に襲われて社内設備に損傷を受けることを防ぐための措置で、この休みを振替にするかそれとも単なる休日の追加にするかは各会社に一任するとしている。


「雨将軍がデモを解散」(2006年5月2日)
3百万会員を擁するインドネシア労組同盟が主体となり、また会員50万人のインドネシア福祉労組同盟も多数を動員して、首都で労働法改定断固拒否の一大デモンストレーションを展開するという労働界の行動は5月1日早朝から始まった。このメーデーを頂点として計画されている労働界の一大行動に対して、それを政治利用しようとする一派の蠢動はその準備段階から始まっており、5月1日の行動そして3日以降に予定されている行動に煽動者を潜入させて破壊行動を煽ろうとする動きは労働界指導部も国家警察も既に探知している。またインドネシア全国労組同盟が明らかにしたところでは、労働者闘争のシンボルである鎌とハンマーを描いたアジびらが同盟事務局に宅配便で大量に送りつけられてきたとのことで、このアジびらには『5月1日行動に参加しよう。虐げられた労働者は団結せよ!』と書かれており、これは共産主義者の烙印を押されることを怖れて労働者が行動に参加しないようにさせるための謀略である、と同盟指導部はコメントしている。
ともあれ、労働界は現政府が労働法改定を取りやめることを5月1日行動の目的としていることから、デモ隊の中から大統領退任といったアピールや物理的破壊行動が発生するのを強く警戒しており、数千人の警備担当員を隊列の中に配備してデモ行動を秩序立てる準備を整えていた。こうして5月1日早朝からボデタベッに散在する工場地区に集まった労働者たちは、チャーターしたバスやトラックに分乗してコンボイを仕立て、幹線道路を経て都内に集まってきた。デモ隊は国会議事堂と大統領宮を目的地としてデモ行進を行ったが、北ジャカルタ市庁舎にもおよそ2千人のデモ隊が詰め掛けて示威行動を展開した。ところが午後に入ってから、モナス周辺を埋め尽くした労働者たちの頭上に一段と凄まじい豪雨が降り始めたため、デモ隊は誰に命じられるともなく散り散りになって雨を避けようとし、そのうちにデモは自然解散してしまった。ユスフ・カラ副大統領は1日夕方、労働者デモが解散した後で声明を発表し、数万人の労働者が参加した今日のデモはたいへん整然と秩序立って、また高い規律に則ってなされたことに対し、外遊中のSBY大統領ならびに自分は高い敬意を表する、と賞賛した。
ところでタングランの一部労働団体は、スカルノハッタ国際空港でデモ行動を実施すればアピールにより強いインパクトを与えることができるだろうと考え、タングラン市から空港に通じる通称M1ゲートから空港敷地内に入ろうと集まってきた。午前9時ごろ集まってきた1千人を超えるデモ隊は空港警察と空港職員の警備に阻まれて空港内に入ることができなかったが、ゲート周辺の交通が完全に麻痺したために乗客や乗務員の到着が大幅に遅れ、スラバヤ・ジョクジャ・ジャンビ・バタム・メダン行きの5便が欠航する結果となった。国際線への影響はなかった。
都内でも午前9時半ごろからHI前ロータリーにデモ参加者が集まり始め、バスウエー車線が人で埋められたためにトランスジャカルタバスは運行を中止した。運行を中止したのは第一ルートだけで、第二第三ルートは終日運行を続けたが、ハルモニージャンクションを避けてガンビルを通るというルート調整を行っている。第一ルートも17時ごろ運行が再開された。都内中心部は都民が近寄るのを避けたため、予定外に早く終了してしまったデモ行動の結果、都内目抜き通りはガラ空き状態となった。また中心部のショッピングセンターも大通りに面した店舗はシャッターを下ろしていたが、一歩中に入れば多くの店が営業中だったものの、外出や買い物を控えた都民が多かったためにいずこのショッピングセンターも平常日に比べて大幅な売上減になったようだ。
またジャカルタと呼応して地方都市でも労働者の労働法改定反対デモ行動が実施されたが、ランプンでのみデモ隊と警察との衝突があっただけで、マラン・スラバヤ・バンドン・スマラン・メダン・バタム・マカッサル・マナド・サマリンダ・デンパサルなどで行われたデモ行動は平穏のうちに終了した。


「デモに雨将軍が来なければ・・・・」(2006年5月4日)
メーデーに参加しなかった480万会員を擁するインドネシア全国労組同盟が計画通り、5月3日に首都スナヤン地区を労働者の洪水にした。ジャカルタ、タングラン、ブカシ、バンドン、カラワンそしてはるばるスラバヤからも一群の労働者が集まってきたこの日のデモ行動は、国会からの労働法改定拒否表明を手に入れることを最大の目的にしたため、エクスポージャーはスナヤン地区に集中した。国会議事堂周辺に午前9時半ごろ集まってきた労働者たちは議事堂前の一般道路と都内循環自動車専用道路を埋めたために一般車輌の往来が完全にブロックされ、その結果スナヤン地区に流れ込む都内の道路はほとんどすべて交通が麻痺してしまった。プルイッからグロゴルを経てSパルマン通りに達するルート、ポンドッキンダからプルマタヒジャウを経てプジョンポガンに達するルートなどは、片面がぎっしり詰まって動かない車輌の列、もう片面はがら空き、という好対照を見せていた。
デモ隊が国会議事堂周辺を埋めた後、10時45分ごろインドネシア全国労組同盟指導部役員たちが労働者代表として国会に迎えられ、PDIP会派のスタルジョ・スルヨグリッノ副議長、ビンタンレフォルマシ会派のザエナル・マアリフ副議長と会見したが、交渉は簡単に折り合いがつくものでなく時間が空転していった。労働界は先に5月1日の国会陳情で第9委員会PDIP会派議員から国会の名前で出された改定拒否表明文書を手に入れたが、それはその議員の個人的表明であって機関としての国会表明ではないと副大統領が断じたように労働界も同じ見解を持っている。3日のデモでは、機関としての国会表明文書を今すぐ作ってほしいと要求する労働界代表者たちに対し、応対した国会代表者たちは、国会総会を経なければ機関としての国会表明は出せないという制度を説明して交渉はかみ合わない状態が続いた。
国会の外では、進展を待ちあぐんでいた労働者たちの中から忍耐心が少なく血気の多い者たちが動き始めた。午前11時半ごろ、閉ざされていた国会議事堂表門の外を埋めていたデモ隊が鉄製フェンスに取り付いて押し倒そうと行動を始める。破壊衝動はまたたくうちに人間の海を伝わり、一般道路と有料自動車道を隔てているフェンスもかれらの破壊行動のターゲットとなった。この騒擾を鎮めるために警察が放水車を先頭にして暴徒の排除を開始すると、入り乱れての立ち回りに発展した後、現場を一旦離れたデモ隊からの投石が展開されてしばらく衝突が続いた。この衝突で報道陣2名、警官2名、市民5人の怪我人が出た。
国会ではこの日のデモ隊の心理をやわらげようとして夕方4時ごろ、PDIP会派のスタルジョ・スルヨグリッノ副議長とリブカ・チプタニン第9委員会議長が国会の徽章が印刷された用箋に反対表明を記したものを労働者代表に渡した。都内の交通状況は夜まで混雑が続いた。インドネシア全国労組同盟指導部はこの日デモ隊が行った破壊行動について、緊急事態であるために通常の手続きを変更してでも国会の意思表明ができたはずで、国会は感受性が欠如している、と批判した。「労働界の希望は既に承知のことであり、国会各会派代表者を集めて署名させることで国会としての意思表示が行えたはずだ。国会の外ではデモ隊が既に過熱状態になっており、煽動者が潜入して発火させればすぐ暴動になることは目に見えていたではないか。」5月3日行動総責任者であるアリフ・スジト、インドネシア全国労組同盟議長はそうアピールしている。


「5月3日デモの影響」(2006年5月5日)
都内の公共施設を管理している各機関が、5月3日の労働者デモ隊が行った破壊行動被害金額を見積もった。有料自動車専用道路管理会社ジャサマルガは、デモ隊の道路占拠7.5時間による通行料金損失5.4億ルピア、道路南側北側フェンス各3百メートル破壊、東行きゲート点滅灯一基と植木等の鉢植え2百個の破壊で4.6億ルピア、総額10億の損害を蒙ったと表明した。
クライシスセンターに届いた報告によれば、デモ隊はBNI銀行表門を壊し、歩道橋の広告看板を燃やしたとのこと。スティヨソ都知事は、都民のための公共施設を破壊した者は必ず逮捕して責任を取らせなければならない、とコメントしている。
産業界はそれらの物理的な破壊行動とは別に、労働者デモが警官隊と衝突して暴動に発展したと見てインドネシアの保安維持能力崩壊という印象を諸外国が受取っている可能性を重視しており、5月3日のデモ責任者に対する責任追及とタングランや西ジャワで労組を名乗る者たちが行った工場従業員に対する就業妨害行動についてもその責任者に対して法的責任を追及するよう政府治安機構に対して要求している。繊維業界では既に欧米の発注者が7月から先の注文を取り消したところも出ており、今後の経済状況はまた不穏な風が吹き始めている。
3日の国会前事件に関して開かれた政治治安分野閣僚会議で国防相と国家諜報庁長官は、ここ数ヶ月間労働法改定に関連して、労働界を煽り国内情勢を混乱させようと策動している勢力がある、と発言した。この勢力は2004年総選挙で勝利を得られなかった者たちで、今回の労働者デモ動員はそこからの資金が使われているとのこと。中東を外遊中のSBY大統領がヨルダンでその内容を踏まえたと思われるメッセージを国民に出したが、政界非主流勢力はほぼ一様に大統領の声明に反発している。
問題の根である労働法改定に関して、労働界の断固拒否の姿勢に対し挑戦的な言辞を表明したユスフ・カラ副大統領や、改定はあくまでも行うと発言しているエルマン・スパルノ労相の姿勢が労働者の暴力行動を煽った原因であるという意見が非主流勢力からの発言のメインをなしている。国会第4委員会のPDIP会派議員は、3日の暴動は政府が労働者の声を聞き入れようとしない姿勢を示したために道を閉ざされてしまった労働者たちが暴力行動に走ったのであり、国会までもが政府の走狗という烙印を民衆に押されてしまった、と発言した。またPDIP会派で国会第9委員会議長でもあるリブカ・チプタニン議員は、「労働問題を管掌する第9委員会が改定拒否を決めたので、これは国会が改定拒否を決めたことと同じであり、労相がいくら改定すると言っても何もできはしない。にもかかわらず労働者を刺激する発言を続ける労相を来週国会喚問する予定だ。」と語っている。アグン・ラクソノ国会議長も、労働者デモがいつまでも継続しないよう、政府はしばらく労働法改定に関する発言を慎んでもらいたい、と水を差している。


「大企業は採用不合格者でも本人が満足するまでテストせよ」(2006年9月29日)
2006年9月15日付コンパス紙への投書"Seleksi di SQ"から
拝啓、編集部殿。わたしの姪は大卒で外国に暮らしています。シンガポール航空に就職を希望し、採用試験に呼ばれたので自費でジャカルタに戻ってきました。必要な書類は原本とコピーをそろえ、心の準備を整え、2006年8月31日におよそ2時間かけて試験場に赴きました。到着し、受付に届け出たあと身長体重を計られ、他の9人の応募者と面接室に入りました。そこではひとりひとりが、名前、年齢、スチュワーデスになりたい理由を5人の試験官の前で英語で言うよう求められました。しかし試験官は全員が名札も着けず、また自己紹介すらしないのです。それが終わるとその場で、だれが次のステップに進みだれが落ちたかを言い渡されました。
最初の選考はただそれだけ。ほんの二三分でした。他のテストは何もなく、学歴や本人の個人的バックグラウンドを尋ねたり、持参した証明書類を見ることすらしません。そんなに短い時間にしかも他の受験者がいる前で自己紹介させただけで330人ものインドネシア人大卒者を不合格にするようなことをシンガポール航空がするなんて、いったいこれはありえることなのでしょうか?シンガポール航空の人事部は、人を一瞥しただけでだれがキャビンクルーになるにふさわしく、だれがそうでないということを見分けられるほど物凄いひとたちなのですか?
常に顧客を優先することをモットーとしていると聞くシンガポール航空の採用選考システムの傲慢さにわたしは驚くとともに腹が立ちました。思いもよらずシンガポール航空は従業員候補者を、それも初めて就職試験を体験したと言ってよい若者をそれほど残酷に扱うのです。大卒で、英語が達者で、アピアランスがよいという条件の従業員採用にそんなシンプルなテストしか行わないなんて、シンガポール航空ほどの大企業にとってふさわしいことなのでしょうか?単なる娯楽でしかないインドネシアンアイドルの選考プロセスと比べても雲泥の差です。[ ブカシ在住、イルマ・プルマナサリ ]
2006年9月22日付コンパス紙に掲載されたシンガポール航空からの回答
拝啓、編集部殿。9月15日付コンパス紙に掲載されたイルマ・プルマナサリさんの投書について説明します。スチュワーデスの場合は面接を受ける応募者に5つの選考ステップがあります。今回の募集には7百人の応募があり、公表した採用基準に合致した応募者4百人が初期面接をパスしました。
最初の面接はグループ面接方式を取り、10人1グループの応募者に交替で自己アピールを行う機会が与えられます。このフェーズで当方は各応募者に、個性、自信、英会話能力などに関する初期評価を下しました。その段階をパスした応募者は次に英語の能力テストを受け、更にその後、より深く人柄を見るための面接を同じ日に受けました。それらの関門をパスした応募者はその後スチュワーデスの制服を着用してもらい、最後に用意されたマネージメントとの面接を受けてはじめてシンガポール航空のスチュワーデスに採用されたのです。[ シンガポール航空ジャカルタオフィス広報マネージャー、グローリー・ヘンリエット ]


「ハリラヤボーナスは一週間前までに支給せよ」(2006年10月6日)
エルマン・スパルノ労相は9月29日付け回状番号SE479/MEN/PHI-JSK/IX/2006号で、すべての会社は従業員に対し給料1ヶ月分相当のTHR(ハリラヤボーナス)を宗教大祭日の遅くとも7日前までに支給することを命じた。労働省は全国の州知事と県令市長に対し、勤労者へのTHR支払が期限を超えないよう地区全企業の監督を行うべく指示している。また全国の県市労働局は勤労者からの労働問題に関する訴えを受け付けるための窓口を設けるように、とも求めている。
会社従業員のための宗教大祭日のTHRに関する1994年労相令第Per04/MEN/1994号第3条1項には、勤続期間が12ヶ月を超える従業員は給料1ヵ月分のTHRを受け取る権利があると記されている。勤続期間が12ヶ月に満たない従業員は勤続月数を12で割ったものに給料1ヵ月分を掛けてTHR金額を算出する。給料1ヵ月分の定義は第2条にあり、それは基本給と固定手当てから成るとされており、またこのTHRは期限を守って支給されなければならないとも記されている。イ_ア福祉労連のレクソン・シラバン議長はTHR支給期限を大祭日の14日前にするよう希望しており、またTHR支給の際に最低賃金を下回る給与額が使われないよう当局は監督を行うよう要請している。他にも、資金繰りが難しいという口実でTHR支給を遅らせる会社がよくあるため、労働省は従業員からのクレームを迅速に対応するメカニズムを用意せよ、とも同議長は労働省に対して求めている。


「アングラ経済」(2006年12月27日)
今年の歳入は28兆ルピアの税収不足となりそうだと公表した国税総局が突然338兆ルピアの税収回復を努力すると宣言したのに驚かされたひとは多い。それだけの潜在税収をインドネシアのアングラ経済が持っているというのだ。不法輸出入、不法伐採、密漁、麻薬違法薬品、賭博、売春・・・それら非合法経済活動をアングラ経済という言葉が指している。
だれがそれを行っているのか?それら犯罪行為の周辺でささやかれている名前を法執行者たちが知らないわけではない。それらの名前を集めてリストさえ作ることができる。大蔵省はそのリストをSBY大統領に提出し、かれらに対する措置を取るという決意を明らかにした。大統領はコメントした。「すべての国民は法規に従って納税しなければならない。」その言葉に国税総局は外堀が埋まったと理解した。なぜなら、そのリストにある名前は過去連綿と国家政治権力に関わってきた者あるいはその庇護を受けている者たちなのだから。かれら大物に対して法執行官は手が出せないできた。へたなことをして逆鱗に触れようものならいつ職を失うかも知れないし、最悪の場合は大物の身辺にいるガードマンたちに家族を含めて何をされるかわからない。だから大物たちはいつの間にか法の手の届かないアンタッチャブルに祭り上げられていたのである。新国税総局長はそのアンタッチャブルに対して宣戦を布告し、国税総局内に国税捜査局を設置して文民捜査官の数を現状の二倍にする方針を据えた。
国税総局のこの動きにはいくつかの根拠がある。まずターゲットが把握されており、公権力がかれらからの徴税を認めたのだ。国軍と国家警察がかれらのボスの意向を支持しなければならないことは明白である。次に徴税ポテンシャリティ金額の大きさがある。半分が実現されたとしても、国家財政にとってきわめて大きいポジティブな影響を及ぼすことになる。会計収支は一転して黒字になり、対外債務の減少がもたらされ、貧困・失業・保安対策が好転し、豊かな国土貧しい政府は昔語りとなるだろう。さらに国税総局はその源泉が何であるかを問わずすべての経済能力のアップに対して徴税するということをポリシーにしている。だからもちろん、源泉がどんな名称でどんな形態で、そして合法であろうと非合法であろうと、経済活動が利益を生んだらそこから税金を徴収しなければならない。それがこの国の制度なのである。犯罪行為で得た収入はそのもの自体が否定され、犯罪者は罰せられまた収入は一切を国が没収するといったコンセプトはよその国の話なのだ。国税は犯罪者から税金を取り立てる。その犯罪者を裁き収入を取り上げるといったことを行うのは国家統治機構の別の部門の職務であり、国税の職務とは関係がない。そこには税金を納めたから経済活動の内容が国から公認されたという考え方もない。
そんな巨額な潜在税収を放置してきた事実そのものが、この国の税務に公平さが欠如していることを示している。納税を避けるために事業の許認可など一切届け出ず、NPWP(納税者番号)も取らなければSPT(年次納税申告書)を提出したことすらない者に税務署はほとんど何もせず、反対にそれらのすべてを正直に行っている者が過剰納税のために還付を申請すると税務調査を仕掛け、重箱の隅をつつくようにしてあら探しを行い、あることないこと問題を創作しては巨額の納税不足額と罰金を示して威嚇し、最終的に金額ネゴを納税者に誘って少額の国庫に入る金額分だけ受領証を出し、残高は領収書もなしに現金を鷲掴みにして帰って行く。アドリアヌス・メリアラ、インドネシア大学教授はそんな不公平な国税総局の行動を政府の犯罪行為と呼んでいるが、いつになれば犯罪がなくなるのだろうか。アンタッチャブルに対する国税の宣戦布告が公平さへの一里塚であることを期待したい。


「ジャムソステックが給付金アップを提案」(2007年6月4日)
国有勤労者保障制度運営会社PTジャムソステックが補償給付金の内容アップを提案している。同社代表取締役によれば、ジャムソステックプログラム加入者に対するより手厚い保障が実行可能でありまた加入者に対するフェアな対応を同社は望んでいるので、労働省に対して補償給付金アップを同社はすでに提案しているとのこと。労働省がその提案を了承すれば現行規定である2005年政令第64号に取って代わる新たな政令が定められることになる。
ジャムソステック社が提案している新たな保障内容は、労災死亡が現行の月給42ヵ月分から48ヶ月分に、死亡補償プログラム給付金はひとり6百万ルピアから1千万ルピアに、埋葬手当てはひとり150万ルピアから200万ルピアに、労災補償プログラムではひとりあたり上限医療補償金額が8百万ルピアから1千2百万ルピアになどとなっている。現在ジャムソステック加入企業数は82,753でアクティブな登録勤労者総数は7,719,695人だが、同社は2007年中にさらに1万2千社199万9千人を追加させる意欲的なターゲットを設定している。また保障プログラム拠出金運用の中で同社は2006年にポートフォリオ投資で6兆ルピアの利益を上げ、2007年第1四半期には50.1兆ルピアを運用して1.5兆ルピアの利益を手に入れている。


「郵便局で納税もできる」(2007年7月27日)
国有郵便会社PT Pos Indonesia 略称Posindoは年内にオンライン支払いポイントを2千ヶ所まで増やす予定。System Online Payment Point(SOPP)は1997年から同社が開始したオンライン支払いサービスシステムで、今現在すでに1千8百ヶ所の郵便局でこのシステムが稼動しており、今年中にそれを2千ヶ所まで拡大させる計画が進行している。ポシンドは全国に3千6百ヶ所の郵便局ならびに多数の代理店や移動郵便局を擁して国民に郵便サービスを提供している国有独占事業体だ。オンラインシステム網拡張はふたつの戦略を用いており、ひとつは自社資金による投資でもうひとつは外部者との提携方式であり、後者の場合はソフトとハードの調達からオペレータ養成まで含めて一ヶ所1千3百万ルピアの投資になる。
全国各州の県・市中央郵便局はすべてオンライン化され、郡レベル郵便局は2008年中にオンライン化されるよう日程が組まれている。郵便局でのオンライン支払いと提携している会社は30社ほどあり、電話オペレータ、水道会社、電力会社、さらにマルチファイナンス会社も顧客に対して郵便局経由の返済を認めているところが少なくない。たとえばAdira Financeは郵便局扱いが3千5百件、Federal International Financeは2百件、Bussan Auto Finance は150件、Otto Summit Finance も150件、そして新しいところではFinansia Multi Financeが郵便局との提携を開始している。郵便局はまた納税場所としての機能も有しており、多くの納税者が郵便局への納税を行っている。ひと月の支払い受付件数は納税が40万件、それ以外は180万件という膨大な数に達している。納税受付金額は年間15兆ルピア、そして納税以外の支払いは1兆ルピア前後にのぼるのではないかと同社では見ている。


「10月15日からの週に操業しても休出にならないらしい」(2007年10月9日)
当初定められていたルバランに関連する公務員一斉休暇10月12〜16日が政府の突然の決定で12〜19日に延長されたのは「ふたたび突然の長期休暇がインドネシアを襲う」(2007年10月4日)で既に報道されている通り。民間もそれに従え、と鶴の一声を出したもののやはりこれはうまくないと気が付いたのか、国民福祉統括省は民間企業が従業員に対して休暇を与えるかどうかは各社が労使間で協議する労使協約に委ねられるとの声明を出した。これは国が民間に対して国民の休日でもないのに事業を休むことを強制するのは無理があるとの判断に基づいたものであり、政府が公務員に有給休暇の一斉取得を命じるのは問題ないものの政府が民間企業従業員に一斉有給休暇取得を命じるのは国が国民に命じることがらとして筋が違うとの理解に達したものと思われる。
国民福祉統括相専門スタッフは、2007年国民の休日はこれまで通り13日で休日が増えるわけでなくまた公務員も年間12日の有給休暇が増えるわけでもない、と公務員一斉休暇延長に関わる基本的考え方を説明している。そのため民間企業は10月15日からの一週間、事業を休んで従業員に休暇を与えるのも、あるいはそれを公務員と同様に一斉有給休暇に振り替えるのも自由であり、またその間に従業員を出勤させても休日出勤には該当しないという理解を持ってよいようだ。
アブリザル・バクリ国民福祉統括相は、この一斉休暇延長が経済活動を活発化させ同時に交通費の節約をもたらすのに効果的だ、と発言した。「われわれは一斉有給休暇取得を行う。その効果のひとつは交通費の節約だ。休暇が短ければ交通費は大きくなる。一斉休暇が延長されることで経済活動は活発化する。銀行は営業するのだから。運転手・オジェッ・食べ物売りやその他の販売活動が行われて全員が経済活動に携わる。だから経済活動は発展する。この一斉休暇延長に苦情する者はいない。」大臣はそのように語っている。


「長すぎるルバラン休暇はありがたくない、と労働者」(2007年10月22日)
2007年のイドゥルフィトリ大祭に関連させて10月12日から19日まで一斉休暇を実施した政府の政策は労働者を利するものではない、との声があがっている。その政策によって全国で大半の職場が操業を停止したことから、労働者の多くにとってはその期間に追加収入を得る機会が途絶えてしまった。工場も生産活動をサポートする外部活動が休止するために操業を止めている。社会学院労働事務局員はそう発言した。同局員によれば政府の長期休暇方針は既に当初の目的から外れているとのこと。「最初この方針が出されたのはバリ爆弾テロ事件後の経済停滞状況を観光セクターを中心に回復させるのが目的だった。国内の観光活動を活発化させてイメージの回復を図り、国民や外国人にバリを中心にして観光誘致を勧めるのが第一目的だった。」しかしその時期はもう過ぎてしまった。政府は国民の休日だけを定めればよい。民間企業の活動に影響を及ぼす公務員一斉休暇を定めて国民の休日に付け加える必要はない、とかれは言う。
南スマトラ州商工会議所会頭は、長すぎるルバラン休暇は民間企業に必要な政府機関とのコンタクトの扉を塞いでしまう、と語る。「民間企業同士のコンタクトは何の問題もないが、政府との諸手続きが進まなくなる。国税・許認可・港湾荷役などが動かない。ルバラン休暇は3日かせいぜい4日で十分であり、もっと休みたい勤労者は有給休暇を取ればよい。一年の中で連休や飛び石連休は相当たくさんあり、それ以上長い休みを増やす必要はない。休みがあまりにも多いために産業界の生産性は低下傾向にある。ところが従業員は昇給を求め続ける。昇給要求を受けるためには生産性が高いことが条件になる。」
ジマント(Djimanto)アピンド事務局長も同じトーンのコメントを語る。「政府は国民の休日だけを制定すればよい。一斉休暇を指定するのなら、それは文民公務員だけを対象にしたものだ、と明確な定義を添えてもらいたい。国民に追加の休みを与えるかどうかについては民間企業に委ねられるべきだ。今回のような長期休暇で一番問題になるのは輸出入貨物の通関手続きが不十分になることにある。」
ルバラン期の公務員一斉休暇に関して大臣クラスが民間企業も従業員に休暇を与えよという発言を行うために民間従業員は休暇の権利を得たと考え、その時期に出勤させると休出賃金計算をするよう会社側に要求するという歪んだ管理が昔から当然のように行われてきたが、今年は10月4日に国民福祉統括相専門スタッフが声明を出し、2007年国民の休日はこれまで通り13日で休日が増えるわけでなくまた公務員も年間12日の有給休暇が増えるわけでもない、と公務員一斉休暇延長に関わる基本的考え方を説明した。そのため民間企業は10月15日からの一週間、事業を休んで従業員に休暇を与えるのも、あるいはそれを公務員と同様に一斉有給休暇に振り替えるのも自由であり、公務員に対する政府方針が民間を強制するものではないとの見解を明らかにしている。


「ジャカルタ大晦日夜のホテルレストラン一斉ストは回避」(2007年12月31日)
都内のホテルやレストランなどで働く観光セクター就業者が大晦日の夜に一斉ストを計画していたが、事業者側がより高い最低賃金の実施を承諾したことでストは回避された。自立労組連盟首都支部に所属する数千人の観光セクター就業者は、首都最低賃金より高く定められる優良セクター最低賃金を観光セクターに適用することを求めて何年も前から要求を続けてきた。そして今年は観光セクターを首都優良産業に指定し首都最低賃金より10%高い金額を適用せよと都庁と業界団体に要求し、それが呑まれない場合は大晦日の夜に一斉ストを行なうと表明していた。
それに対して業界団体であるホテルレストラン会首都支部は12月28日に回答を出し、2008年首都最低賃金である972,604ルピアより5%高い1,021,234ルピアをセクター別最低賃金とする旨承諾すると表明した。このため自立労組連盟は、要求した10%が実現しなかったことは遺憾であるがそれは今後の課題とし、まずセクターが首都優良産業に指定されること、さらに最低賃金が一般のものを5%上回ることは十分な成果だと考え、大晦日の夜の一斉ストは取り止める、と表明した。
首都の優良産業に指定されて一般最低賃金より5〜8%高いセクター別最低賃金を適用されているのは、繊維衣料皮革・飲食品・自動車・保健医薬品など。