インドネシア税労働情報2008〜10年


「青年層向け民間主導の職業訓練が始まる」(2008年2月13日)
2007年全国失業者数1,160万人の6割は25歳未満の青年層であり、これはインドネシアの公教育が国民を適正な労働力に育てるという使命を果たしていないことを意味している。インドネシアの若い世代に労働市場で求められている資質と能力を与えるための教育訓練を施す場が必要とされているものの、政府が設けた職業訓練館はその目的に十分な効果をあげていない。それは職業訓練館の教官やそこで用いられている設備と教育内容が時代の変化に適応できていない点に表れている。たとえば職業訓練館に置かれている自動車エンジンは1960年代のものなのだから。ソフィヤン・ワナンディ、インドネシア事業者協会(Apindo)会長はアピンドが後援する青年層向け自動車職業訓練オープニングでそのような趣旨を表明した。
同じようなことは、2007年2月の中央統計庁データで学士失業者が409,890人おり、ディプロマ?・?・?資格者の失業数を加えると740,206人という膨大な数の高学歴失業者が全国に存在しているという事実にも当てはまる。高学歴失業者の増加傾向は、高学歴者の能力が産業界で求められているレベルに達しておらずあるいは産業界の需要にフィットしていないことが第一の原因と考えられ、それ以外にも高学歴者の労働市場における需給関係がバランスを欠いたものになっていて特定学部卒業生が供給過剰もしくは飽和状態になっていることをうかがわせている。たとえば社会学・経済学・政治学・法学にその傾向が強く感じられている。高等教育就学者数は年々高い上昇を示しており、19〜24歳という対象年齢ブラケット人口全国2千4百万人の中で就学率は17%に達している。しかし州別に見ると高等教育就学状況は千差万別で、州によっては就学率が6%しかないところもある。
さて、アピンドはILOインドネシア事務所の協力を得て2008〜2010年青年向け職業訓練パイロットプロジェクトに着手した。2008年の主目標は自動車と小売業分野の職業訓練をジャワ島内の職業高校卒業生に施すことで、このプロジェクトは青年層を職業の世界に導き同時に就業を促進させるための橋渡しと位置付けられている。2月1日に西ジャワ州ブカシでスタートした自動車職業訓練には機械技術学校卒業生75人が訓練生として集まり、訓練費用10億ルピアはILOとPT Astra Internationalが寄贈した。訓練期間を満了した訓練生にはアストラの子会社であるPT Yutaka Manufacturing Indonesia, PT Showa Indonesia Manufacturing, PT Astra Honda Motorに就職できる機会が与えられる。また小売業セクターの訓練生はジャワ島内の職業高校を卒業した100人の女子で、この分野の訓練には小売企業数社が協力している。


「ホテル従業員がオーナー会社を告訴」(2008年3月5日)
都内中心部ホテルインドネシア前ロータリーに面してホテルグランドハイヤットが建っている。このホテルグランドハイヤットジャカルタのオーナーであるPTプラザインドネシアレアルティを同ホテル従業員が告訴した。中央ジャカルタ地裁労使係争法廷に訴えられたこの事件はホテル従業員873人中の808人による告訴で、その内容によれば2007年従業員昇給を行うさいに会社が労働協約に違反したというもの。会社側が2007年1月から行った従業員昇給は6.6%のアップ率であり、これはインフレ率分しか考慮されておらず、労働協約に述べられている消費者物価指数の変動と会社の業績状況のニ要素を考慮して決めるという規定に違反している。なぜなら、2006年の会社業績は売上高2,405.9億ルピア粗利益729万ドルという数値で、中でも粗利益高は2002年以後で最高を記録している一方、2005年は利益がはるかに小さかったにもかかわらず17.11%という高率の昇給が2006年に行われているからだ、と原告側弁護士は説明している。そのため従業員側は会社が既に出した6.6%という2007年昇給決定を取り消した上、再度9.9%という昇給決定を出しなおして2007年1月から適用することを会社側に命令するよう法廷に求めてこの告訴を行っている。
この裁判では独立労組連盟が原告側法律代理人を務め、2008年2月28日に開かれた公判で原告側は都庁労働局員と同社公認会計士を証人として喚問した。都庁労働局員は、賃金差の縮小は違法行為の一形態である、と法廷で証言している。


「税務担当社員はもう雇わなくて良い?!」(2008年3月28日)
2008年2月6日付けで制定された大蔵大臣規則第22/PMK.03/2008号は企業の税務責任者が顔をしかめるような内容を定めている。この大臣規則は2007年に制定された改定税一般規定法の実施規定である2007年政令第80号の第31条に関連する施行細則でもある。この規則は納税者から委任を受けて税務代理人として税務署との折衝に当たる者の条件を定めたもので、つまりは税務署が誰を相手にし、誰は税務署から相手にされないかが定められているというわけだ。
この税務代理人の条件については、従来から手のひらを返すように内容が目まぐるしく変更されているため税務署はまるで自分の意見を持っていないようだと税制オブザーバーが批判している。2005年10月13日まで用いられていた条件は税務分野での法規を完全に理解した者で国立あるいは公認された民間の税務教育機関の公的教育を修了した証書を持つ者とされており、納税者からの委任状で税務代理人として税務署との折衝が行えるとされていた。ただし公的教育機関修了証書はなくとも、税務コンサルタント同盟が行ったテストをパスして国税総局長から免許を受ければそれでもよいことになっていた。ところが2005年10月13日からは大蔵大臣規則97/PMK.03/2005号で公的教育機関の修了証書は問題にされなくなり、国税総局長の免許がメインストリームにされてしまった。おかげで免許はないが公的教育機関の修了証書で税務代理人になれていた者を税務署側が拒否する事態になってしまった。しかし2007年になって、政令第80号で公的教育機関修了者の復権が実現し、国立私立税務教育機関でD3以上の修了証書を持ち、評点がAである者は総局長の免許なしに代理人になれるようになった。ところが今度ふたたび2008年2月6日の変更となったのである。
この最新変更では、納税者の税務代理人は税務コンサルタントだけが行えることになった。ただし税務コンサルタントでない者も次のような特定納税者の代理を務めることができる。
1) 自由業でない個人納税者
2) 年間総収入が18億ルピアを超えない自由業個人納税者
3) 年間売り上げが24億ルピアを超えない法人納税者
国立私立税務教育機関でD3以上の修了証書を持ち、評点がAである者は上のような納税者の代理人を務めることができる。ただし会社の税務担当社員は税務署に相手にされなくなった。税務署が相手にするのは納税者本人あるいは会社代表者、そして税務署が認める税務代理人だけなのである。年間売り上げが24億ルピア以上の会社は重役が自ら税務署に赴かない限り、税務コンサルタントを雇うしか方法がない。国税総局退職者が大半を占めている税務コンサルタント業界にとって、これほど強力な援護射撃はないと言える。「大蔵大臣はひょっとして勘違いを犯しているのではないだろうか?2007年政令第80号第31条には、税務コンサルタントの条件および権利と義務の詳細は大蔵大臣が定めると規定されているが、税務コンサルタントと税務代理人とは明らかにまるで別ものではないか。」税制オブザーバーはそう疑念を語る。
この新規定のために年間売り上げが24億ルピア以上の法人は、税務担当スタッフ・スーパーバイザー・マネージャー・税務専門家を雇っても肝心の税務署との連絡や折衝業務が行えない。そのような人材を抱えていながら税務コンサルタントを雇わなければならないというのも不効率な話だ。「納税者が代理人に誰を選ぼうが、政府は納税者の自由にさせればいいではないか。どうしてこんな細かいことまで政府が国民の行動を規制しようとするのか?」インドネシア納税者協会会長はそう批判している。


「納税させたいのに手続きを困難にしている税務署」(2008年4月4日)
2007年12月8日付けコンパス紙への投書"Wajib Pajak Sulit Membayar"から
拝啓、編集部殿。わたしは北ジャカルタ市スンテルに住んでいる、15年以上のキャリヤを持つ忠実な納税者です。政府は国民の納税を盛んにしようと大々的にキャンペーンを行っていますが、それに反して納税するのがどんどん難しくなっているのはオドロキです。毎月わたしは納税書(SSP)で納税を行います。最初は郵便局で納税していましたが、納税オンライン化がなされたので銀行で納税するようになりました。たいていの銀行はオンライン時間に合わせて午前8時半から11時まで、だれの納税でも受け付けていました。ところがそのうちに、口座保有者は午前8時半から10時まで、非口座保有者は10時から11時までというように細かく時間制限をするようになり、さらにそのうちに銀行は口座保有者の納税しか受け付けないようになったのです。それはまあ、口座を開けば納税できるわけで、たいした制限ではないのかもしれません。しかしその時間がいつもフルに使えるわけでもないのが問題です。たとえばオンラインが途切れてオフラインになったり、停電したり。銀行へ行くだけでも至る所交通渋滞ですから、時間とエネルギーの消耗はたいへんです。
イドゥルフィトリ大祭前はたいへんでした。わたしは2007年10月10日に銀行へ行きましたが、オフラインでした。翌11日に再度銀行へ行きましたが、今度は銀行が納税を受け付けてくれません。銀行はもうイドゥルフィトリ休暇に入っているわけです。結局わたしは10月23日に納税することができましたが、納税期限日を超過することになってしまいました。このことを嘆息している納税者が他にも大勢います。
銀行で納税者間の話から、スンテル地区を管区とする税務サービス事務所がエンガノ通りからプルンパンのワランバル通りに移転していることをわたしははじめて知りました。それが初耳だったひとが大半で、みんなワランバル通りというのがどこにあるのか一生懸命情報を求めていました。もうひとつ困ったことは、スンテル地区のコードが0042から0048に変更されたらしく、納税書をまた作り直さなければなりませんでした。このように何度も手間をかけさせられるのですから、納税者はみんなガックリです。
国税総局は好き勝手にそのような変更を行って納税者の手続きにエネルギーをかけさせ、納税者をウンザリさせることを平気で行っているのが実に不思議です。たとえばATMで納税できるというように、納税者がもっと簡便に納税が行えるようなシステムを作ったらどうでしょうか。納税書を持ってお金を納め、その納税書を持ってまた税務サービス事務所へ行き、毎回順番待ち行列に並んでたいへん時間を消耗しているのですから。[ 北ジャカルタ市在住、アント ]
2007年12月19日付けコンパス紙に掲載された国税総局からの回答
拝啓、編集部殿。アントさんからの12月8日付けコンパス紙に掲載された投書の内容について説明する必要があると存じます。銀行や郵便局での納税時間は2007年1月1日から国庫収入に関する大蔵大臣規則第99/PMK.06/2006号で定められており、納税銀行・外為銀行・納税郵便局は金額の如何に関わらず現金出納実施時間中に納税者や納付者が納める国庫収入金を受領しなければならないことになっています。
特にイドゥルフィトリ休暇に関連して当方は、2007年10月3日付けで納税納付締切日と当月納税分の申告締切日に関する規定第PER-143/PJ./2007号を出しており、2007年10月の公務員一斉休暇に合わせて納税と申告の締切日を別途定めてそれを2007年10月5日のコンパス紙とコンタン紙のふたつのマスメディアで広報しています。
税務サービス事務所管区の分割は国税モダン化の一貫として行われたもので、一部納税者の納税者番号(NPWP)内に記された税務サービス事務所コード番号が変更されます。これについては、納税者宛てに新しい登録証明書が発行されます。ジャカルタスンテルプラタマ税務サービス事務所管区の納税者には2007年11月2日の同プラタマ税務サービス事務所が稼動を開始する前に登録証明書が送られています。しかしその内のいくつかで、郵便が届かずに発信人戻りになったものがあり、登録証明書がまだ届いていない納税者には遺憾の意を表します。まだ登録証明書を受け取っていない納税者は税務サービス事務所宛てにその証明書を要請してください。[ 国税総局P2広報局長、ジョコ・スラメッ ]


「現行労働法は早急に改定される必要がある、と元労相」(2008年4月17日)
メガワティ政権末期にヤコブ・ヌワウェア労働大臣が与党PDIP党の援護射撃の中で制定させた2003年第13号法令労働法に関して、その法令内容は労働状況を非誘導的なものにしているため改定される必要がある、と労働大臣経験者が表明した。
コスマス・バトゥバラ元労相は現行労働法について、労働力アウトソーシングでの売り手側ポジションが弱いことに加えて事業者が重すぎると感じている退職金問題、特に退職金金額・勤続褒賞金・医療や住宅の負担金などに柔軟性が欠如している、とコメントした。「2003年第13号法令の内容はインドネシア経済の吸収力や事業環境に影響を及ぼしており、改定は急を要する。誘導的な法規を作り出すために関係諸方面は協力して内容検討を行わなければならない。これまでの労使間コンフリクトは労働者と経営者の視点が一致していなかったのが原因だ。たとえば労働者は勤務時間が長すぎると感じたり、支払われない残業や従業員の有給休暇取得権が尊重されないといったことがらで、いまは労働者と事業者が考え方の枠組みを一致させて誘導的な労使関係を作り出し、より大きな投資を誘致するよう努めることが重要である。ある国に投資をしようと思っても、その国で従業員解雇に巨額の出費が必要になることを知れば、外国の事業者は二の足を踏むだろう。最近では、組織が決めたということで多くの労組が頻繁にデモを行っており、インドネシアへの投資を考え直させるような事態が続いている。もっと柔軟性が持てる用になれば、外国の事業者はインドネシアへの投資に魅力を感じて引き寄せられて来るにちがいない。関係者全員が広い心で解雇問題をもっと深く見つめなければならないときが今来ている。また政府にとっては、グローバル市場で太刀打ちできるクオリティの人材を育成するという仕事が待ち受けており、政府・労働者・事業者という三者間の調和した労使関係実現を速める努力と並行してそれが進められなければならない。」元労相は解雇問題に関連した経営研修フォーラムの合間にそう語っている。


「ジャムソステックは不人気」(2008年5月13日)
「ジャムソステック加入が義務付けられているフォーマルセクターでさえ完全遂行は夢のまた夢であり、ましてや義務付けされていないインフォーマルセクターに加入機会を提供したが大した効果は得られなかった。2006年労働大臣規則でインフォーマルセクター勤労者を対象にしたスキームを組み、各地元行政府の協力を得て促進活動を行ったものの、二年間で加入登録を行ったのは20万人しかおらず、そしてその半分以上が継続せずに非アクティブ加入者となっている。」ホッボナル・シナガPTジャムソステック代表取締役はインフォーマルセクター勤労者向けジャムソステック加入勧誘プログラムが期待されたほどの成果をあげていない実態をそう認めた。
インフォーマルセクターとは会社や工場の正式雇用者でない勤労セクターを指している。フォーマルセクターには産業別協会や労働組合などそこに所属するひとびとを統括する組織があるものの、インフォーマルセクターはまったく個人個人がばらばらに類似の仕事を行なっているものからボランタリーな組織はあっても統制力がたいへん緩いものなどさまざまで、ジャムソステックのインフォーマル勤労者向けスキームがあまり効果を上げていないのは普及促進活動が対象者をマスでとらえられないことも影響しているようだ、と代表取締役はコメントしている。
インフォーマルセクター勤労者でジャムソステックに加入しているひとの多くは商人・漁師・ベチャ引き・地域共同体役員・家庭プンバントゥ・麺巡回屋台などであり、かれらが加入しているプログラムの多くは労災保障・死亡保障・健康保障の三つ。


「仕事を世話したら、給料の一部をもらうのが常識」(2008年6月4日)
2008年1月23日付けコンパス紙への投書"Potongan Biaya oleh Agen Tenaga Kerja Memberatkan"から
拝啓、編集部殿。わたしの妻は台湾向け海外出稼ぎ家政婦の仕事に申し込みました。あまり詳しい情報が得られないので、東ジャカルタ市チャクン地区の自宅から近い海外出稼ぎサービスエージェントに登録しました。そのエージェントでいろいろ尋ね、さまざまな角度から検討し、夫のわたしの承認を得て、妻はそのエージェント経由で海外出稼ぎ者になることを決心しています。
しかし、たいへん気にかかる不公平な問題をわたしは感じています。仕事を始めたあとで妻が本当に手にすることのできる給料は24ヶ月という契約期間中の15ヶ月しかないというのはまともなことなのでしょうか?もし雇い主に気に入られたらもう一年間延長がありうるという話ですが、収入の一部をそうやって取り上げられる海外出稼ぎ者はなんと可哀想なのでしょう。たくさんの時間と労力を使い、家族を残して遠くへ離れ、それでもまだそんなふうに選択の余地もなく追い込まれるのです。外貨稼ぎの英雄と呼ばれている海外出稼ぎ者に対するそのような仕打ちに関して、苦情をどこへ訴えればよいのかわたしにはわかりません。
妻が登録したエージェントのスタッフに聞いてみましたが、海外出稼ぎ者は健康診断・パスポート・ビザ・調書・食費・言葉の実習などさまざまな手続きがあるので、その費用は出稼ぎ者本人の収入から回収することになるから当然の帰結だという返事が返ってきました。しかしエージェントへの登録時にわたしは2百万ルピアを納めているのです。エージェントが海外出稼ぎ者の給料をそんなに巨額に長期にわたって取り上げるのは当たり前のことであり、それはエージェントの当然の権利になっているということですか?そのエージェントが印刷したパンフレットによれば、出稼ぎ者の給料はひと月1万5千台湾ドル、420万ルピア相当です。出稼ぎ登録者は良いも悪いもすべてのリスクを一身に背負わされ、選択の余地などなにひとつ残されていません。海外出稼ぎ者の送り出し機関やエージェントの中で、貪欲に利益をむさぼろうとせず廉価に手続きを行ってくれる評判のよいところはないのでしょうか?[ 東ジャカルタ市在住、スリヤディ ]


「賃上げ要求には応じられない、と実業界」(2008年6月10日)
インドネシア全労働者機構のヤヌアル・リスキ総裁は、補助金付き石油燃料値上げで食費が20%交通費が15%上昇し、労働者の生活コストが窮迫の度を深めているため、事業者は労働者の賃金を25〜30%引き上げるべきだ、と次のように語った。「石油燃料値上げがなくとも労働者の生活は50%の赤字になっている。賃金は生活をカバーできていないのだ。ましてや石油燃料値上げがなされたなら、その差はもっと大きくなる。だから実質賃金は25〜30%アップしなければならない。」
しかしインドネシア民族事業者会は、労働者賃金を引き上げる余力はない、と言う。「石油燃料値上げは事業者にも打撃を与えた。事業者は事業の保全を図るためにビジネス戦略の手直しを行っている。労賃を引き上げる力はまだない。事業者会は労働界に対し、賃金引上げ要求はしばらくの間行なわないよう理解を求めて説得を続けている。これは労使間交渉がデモに発展するのを前もって鎮めることを目的としており、そのような事態の発生は労使の双方に損失をもたらすだけであるため極力避けるようにしたい。」事業者会会長はそう発言している。ヤヌアル・リスキ総裁はそれに対して、事業者が賃上げ能力を持っておらず賃上げが不可能であるなら、政府の石油燃料値上げ政策は労使双方にとって間違ったものであるわけで、労使は共同でその間違いを訴えたい、と述べている。特にアピンドと商工会議所所属事業者の中で政府のその政策を支持する者がいるなら、従業員の賃金を引き上げる形で具体的にそれを示せ、とも語っている。
事業者は政府の呼びかけに応じて、従業員解雇を行わないでこの危機を乗り越えるべく検討を続けている。政府は実業界に対し、「解雇は避けるように」「商品の市場価格アップを極力抑えるように」とさまざまな呼びかけを行った。実業界はそれに従って人員合理化や解雇を行わず、商品値上げは5%以下に抑える、といった検討に余念がない。そこへきて労働界が賃金値上げを迫ったなら、解雇の発生は避けられないだろう。
「石油燃料値上げは没工業化を推し進めることからそれだけでも解雇の発生を促進させる。そこに燃料値上げが加わるのだから、労賃引上げがなくとも解雇に傾くのは避けようがない。2005年の燃料値上げのせいで、インドネシアの純固定資産形成はマイナスになった。こうなったら解雇は確実だ。政府は労賃引上げと解雇防止のためのシステマチックな政策を遂行しなければならない。これは呼びかけなどというレベルの問題ではない。呼びかけというものは実質的関連性を持っていない。労働者が賃金アップを要求すれば事業者は労働者に対し、アピンドにそれを言ってくれ、と言うだろう。」民族事業者会会長はそう述べている。
石油燃料値上げ直後にエルマン・スパルノ労相は事業者層に対して、従業員の食費交通費を増やすよう呼びかけた。しかし国内各地では労働界が地方自治体に対して、最低賃金改定を行うよう求める動きが活発化しており、地方議会もそれを支持する発言を活発に行っている。


「実業高校教育を高めるのが政府の新労働政策」(2008年6月18日)
実業高校卒業生の求人が国内外で増加しており、いまやかれらは引く手あまたの高い労働力需要を謳歌している、と国民教育省実業高校育成局長が表明した。「いま実業高校卒業生に対する求人が殺到しているのはビジネスマネージメント、テクノロジー、ホスピタリティ、鉱業などの分野で、ポスピタリティ産業向けには2百人の求人がカタル・クエート・ロンドンから来ている。具体的な職種は料理人アシスタント、バーテンダーアシスタント、フロントオフィススタッフなどだ。また自動車技術者にはジェッダ・カタル・韓国から4百人の求人が来ている。しかし残念なことに、政府はそれらの求人をフルに満たすことができない。それは候補者の英語力が不十分であるためで、語学能力の涵養は今後も力を入れて推進しなければならない重点項目のひとつだ。その対策として国民教育省は国際レベル実業高校の充実強化を計画しており、国立私立合わせて4千教室を2008年中に増設することにしている。1教室の開設予算は7千5百万ルピアで、この全国方針の実施には膨大な金額が必要とされるため中央と地方政府の予算を使ってこの方針の実現を進めている。地方にある私立普通科高校の多くは既に実業系に転換している。」
政府の計画によれば、実業系高校生と普通科系高校生の2008年人口比は6対4となっており、今年は中学卒業生150万人を実業高校に入学させるべく対応に努めている。普通科系高校卒業生の大学進学率は30%であり、残る70%の大半は卒業後クオリティの低い職業に就くのが普通だ。それが就職を希望する普通科系高校卒業生に向けられた現実なのである。一方実業高校卒業生75万人のうちで工科大学に進学するのは15%だけで残り85%は卒業後ただちに就職しているが、かれらには普通科高校卒業生の就く職種よりはるかにクオリティの高い職業がオファーされている。いま政府は実業高校教育を労働政策のひとつの眼目に取り上げはじめている。


「高額所得者ほど納税を厭う」(2008年6月26日)
2007年に所得税の納税を行った個人納税者は848,331人しかおらず、これは納税者番号(NPWP)発行総数1千万件のわずか8.5%でしかない。これはNPWP交付を受けた国民の中にその所得が非課税限度内にある者が少なくないことを示す証明だと見ることもできる。収税ベースの拡張強化をスローガンに国税総局はNPWP交付者拡大に努めており、たとえ納税額はゼロだったとしてもNPWPを与えた国民がSPT(納税申告書)を提出する中で資産と負債のデータが集められることから、国税総局は将来的にNPWP保有者の経済状況を納税面からモニターする資料としてそれらを利用することができる。
いま国会審議の渦中にある改訂所得税法案の検討を行っている税法案パッケージ特別委員会メンバー議員のひとりは、個人所得税の税率は5%から30%まで累進制になっているものの実効税率は21〜23%であり、高額所得者が納税を忌避して税率17%のシンガポールに居住するようなことを行っているため税収に影響がもたらされている、と金持ちのエゴで国益が蝕まれている事実に批判を向ける。ある国に183日以上滞在すればその国の居住者と見なされる規定を金持ちは巧みに利用しているとのこと。
納税額が年間5千万ルピア以下の納税者は67万6千人おり、このブラケットの税収総額は4,590億ルピアとなっている。更に1億ルピアまでのブラケットには6万7千人いて税収総額は5,790億ルピア、その上の2億ルピアまでは6万4百人で総額1.3兆ルピア、その上3億までは1万8千人で9,500億ルピア、5億までは1万3千1百人で1.3兆ルピア、10億ルピアまでは8,243人で総額1.7兆ルピア、20億までは3,276人で総額1.5兆ルピア、50億までは1,901人で総額2.9兆ルピア、50億を超えたのは411人で総額1.4兆ルピアというのが税額別納税者構成で、納税を励行している高額所得者はきわめて少ない、と同議員はコメントしている。


「アウトソーシング労働力が60%に達する」(2008年7月2日)
労働界が断固廃絶を叫んでいる企業の労働力アウトソーシングは、そんな声もものかわと上昇の一途をたどっている。いまや大中規模の外資内資企業では、必要としている労働力の60%が派遣会社から送り込まれた非正社員から成っている。この傾向はまだまだ強まり、来年にはその比率が80%まで高まるだろうと学術界関係者が予測している。
ビナヌサンタラ経営学院理事のひとりは、グローバル労働市場で起こっているこのトレンドの影響からインドネシアが無縁であることはできず、また国内独自の事情ともあいまって国内企業のアウトソーシング利用は年々20%の上昇が起こっていると次のように語った。「インドネシアの企業の大半は既にアウトソーシングを利用しており、この傾向は今後も強まる。この傾向は国内に多数の労働力派遣会社を誕生させた。一方では、このシステムが公正さに欠けていると考える労働界からの抵抗もますます強くなっている。現実問題として、アウトソーシングシステムの適用を国内労働市場にあおったのは2003年法令第23号労働法の従業員解雇規定であり、それが従業員解雇の際の企業の負担をあまりにも重いものにしたために企業はそのリスクを避けようとしてアウトソーシングの利用に走った。インドネシア企業の労働力アウトソーシング利用は、他の国で多く見られる生産性の向上を第一の目的にしたものでなく、従業員解雇時の法的手続きの面倒さと巨額の費用発生を避けるのが主目的になっており、要は雇用面での効率を求めたものだ。しかし労働力アウトソーシングは新規雇用者への教育訓練が定常的に発生するため、別の面で非効率を抱えることになる。」
労働界は、アウトソーシングが労働者の生活安定を保証せずまた雇用者の都合を一方的に優先するシステムであるとして強い抗議表明を続けてきた。ここ数年、労働者デモが行われる都度、アウトソーシング反対は要求表明の中に例外なく顔を出している。2008年5月初、労働界の要求に応じてSBY大統領はそのシステムの廃絶を検討すると約束したものの、政府は具体的な動きをまだ何も起こしていない。レクソン・シラバン、インドネシア福祉労組同盟総裁は政府のアウトソーシングシステム廃絶に関連して三つのオプションを提起した。
1)契約社員システム廃止に際して解雇時退職金を引き下げること
2)契約社員システムを使ってはならない職種を明確に規定すること
3)契約社員システム勤労者の賃金給与を高額にすること


「今年、労災件数は半減するか?」(2008年7月7日)
2007年から労災件数が大幅に減少しており、ことしは2007年から半減するだろうと労働省は胸を張る。ちなみに2004年以来の全国労働災害発生件数推移を見ると、2004年95,418件、2005年99,023件、2006年95,624件と毎年10万件近い事故が起こっていたが、2007年は65,474件、2008年は最初の5ヶ月間で2万5千件の実績であり、この調子でいけば2007年の半分に抑えることは可能だとして省をあげてその目標に取り組む構えでいる。
政府はK3と呼ばれる労働安全衛生の啓蒙普及を産業界に対して進めており、K3監視員を養成して18万4千の対象企業を監督する予定にしているが、3千4百人という必要数に対して現状は1千3百人しかまだ用意されておらず、さらに1千6百人を養成して戦力強化に努める意向。K3監視員の指導によってK3管理システム運営が優れたレベルに達していると判断された会社には労働省からK3管理システム証書が交付される。最近ではPT Epson Batam, PT Vetco Gray Indonesia, PT Bintang Toejoe, PT Coca Cola Bottling Indonesia, PT Perkebunan Nusantara III, PT Wijaya Karya Beton, PT Perusahaan Listrik Negaraなどがその表彰を受けている。


「今年、従業員解雇は半減するか?」(2008年7月7日)
経済危機がインドネシアを襲ってからというもの、さまざまな産業セクターで企業の経営悪化が相次いだために従業員合理化の波が吹き荒れた。政府トランスミグラシ労働省が得た従業員解雇に関する情報では、2005年でも3,481件解雇者数10万9千人という数字が残されている。ところがその後大量解雇の波は影をひそめ、2006年は件数が増加したものの解雇者数は3万8千人、2007年も2,980件解雇者数2万7千人という『落ち着き』を見せるようになっている。
2008年最初の5ヶ月間では、解雇件数432、解雇者数1,535人というこれまでとは打って変わって低い数字が報告されており、5月の石油燃料値上げが実業界に与えているネガティブな影響は今後の予断を許さないものであるとはいえ、労働省は今年の解雇者数を1万3千人に抑えたいとしてそれを今年の目標に据えている。エルマン・スパルノ労相はその目標について、従来からともすれば対立的な様相が濃かった労使関係が政府を交えた三者協議の場で協調的な姿勢を示すよう変化しており、今後事業者と労組間で更に調和の取れた関係が育成されるようになれば従業員解雇は減少するにちがいない、とコメントしている。そのような労使間の協調的姿勢の強まりについて労相は、ここ2年間で発生した解雇に関する係争問題の大半は労働省や地元自治体労働局の仲介による労使双方の歩み寄りで事業者と労組間に合意が形成される事例が増加しており、労使係争法廷に持ち込まれるケースが減っている事実がそれを証明している、と語っている。
全国商工会議所の中で労使関係を担当主分野にしているアピンド(インドネシア事業者協会)の事務局長は、解雇件数の減少は事業者・労働者・政府間の相互理解にもとづいたものだ、と言う。労使間問題が発生した場合に会社と労組が協調的に問題の解決を協議するのは、状況をかき混ぜて利を得ようと介入してくる外部者の干渉を防ぐための最適な手段のひとつであることは言うまでもない。「しかしそのような状況に進んでいるからといって現状を良しとするのでなく、政府は更に一歩踏み込んで現状をベースにしつつビジネス投資の拡大による雇用拡張を図るにはどうすれば良いのかということを主体的に企画して遂行するべきだ。」事務局長はそう政府に要望している。
今年5ヶ月間で発生した解雇件数の中で271件は労使間協議で決着し、41件は行政による仲介で決着しており、20件だけが労使係争法廷に持ち込まれている。


「日本への研修生派遣を強化」(2008年8月5日)
政府労働省は今年、日本向け研修生派遣を昨年実績の1、663人から8%増やして1,800人台に引き上げたい考え。国内の失業者数を抑制し、有能で熟練した労働力を育成するための政策推進のひとつがこれである、と労働省研修局研修情報次局長が語った。「海外で訓練を受けながら働くというこのプログラムはインドネシアの人材クオリティと能力向上にたいへん有益なものであり、国内で必要とされている経験と能力を持つ人材が育成される。」日本への研修生派遣は2003年に2,183人に達したがその後は2004年1,816人、2005年1,212人、2006年1,804人、2007年1,663人と一年置きに1千8百人台に上っている。
日本への研修生派遣はインドネシア政府労働省と財団法人「中小企業国際人材育成事業団」(IMM-Japan)が提携して行っている活動で、1993年にスタートして以来既に27,849人の研修生が育てられてきた。労働省はまたIMM-Japanとは別に財団法人「国際研修協力機構」(JITCO)とも提携して日本派遣の間口を広げており、日本向け研修生派遣は今後ますます増加するものと期待されている。日本研修経験者たちは国内で多くの会社に雇用され、日系企業で働く者も少なくない。中には個人事業主として成果をあげている者もある。
しかしインドネシア側のその期待と裏腹に、派遣研修生が研修期間中に失踪する事件が起こっているためIMM-Japanは失踪研修生を送り出してきた州に対して暫定的派遣停止措置を与えており、いまこの措置を受けている州はスラウェシ・西スマトラ・ジャンビ・西ヌサトゥンガラ・東ヌサトゥンガラ・西カリマンタン・東カリマンタン・北マルクなど多数にのぼっている。それらの州は失踪事件件数が多いためにその措置をこうむっているとのこと。


「理想の職業」(2008年8月15日)
コンパス紙が2008年3月26〜27日に行ったサーベイで都民の職業観が明らかにされた。このサーベイは首都ジャカルタの電話帳からランダム抽出した回答者に対して17歳以上を条件に電話でのインタビューを通して行われたもので、回答者503人からデータが集計された。
問い1:自分が一番就きたい職業は何ですか?
オフィス勤め 26.0%
事業経営者・自営業者 24.9%
教員・教官 6.4%
アーティスト 5.4%
わからない 20.0%
群小カテゴリーが残りを占めている。
問い2:自分が一番就きたくない職業は何ですか?
オフィス勤め 19.5%
くず拾い・ゴミ回収 8.9%
技術工・自動車整備工・採鉱夫 3.2%
家庭プンバントゥ(家政婦) 1.8%
わからない 58.4%
群小カテゴリーが残りを占めている
サラリーマンになりたいひとがもっとも多く、またサラリーマンにはなりたくないというひとももっとも多い。これは一件矛盾しているように見えるが、同じような現実はたいていの国にも存在しているのではないだろうか。


「企業の従業員解雇に政府はもっと干渉せよ」(2008年8月21日)
労働係争解決に関する1957年法令第22号では、企業の従業員解雇は必ず政府の承認を取ることが義務付けられていたというのに、その法令を改定した2004年法令第2号では労使係争解決が政府の管掌を離れて法廷の手に委ねられており、このような構図が企業の安易な従業員解雇を招き寄せる原因になっている。そもそも2004年法令第2号編成プロセスの最初から政府が労働者解雇のコントロールを放棄する姿勢を見せていたのは明白なことであり、政府は実業界を利して労働界を損なう姿勢を強めて労働者が事業者に対抗できない体制作りを目論んでいた。本来この法令は迅速・的確・公正・廉価の原理に則った事業者と労働者間の公正な裁判システムつまり労働裁判所システムを保証するために設けられたものであるというのに、今行われている労働裁判所システムは高価で適切さを欠き、公正さは失われ、審議はだらだらと時間を重ねるばかりのものになっている。このように労働裁判所システムが労使係争の完全決着を困難にしているために労働者は残された労使間協議の道を求めざるを得ず、立場の弱い労働者が不利な解決を強いられる状況を普遍化させている。政府が手を引いて労働裁判所をその代替に据えたが、労働裁判所が信用できないために労働者の中には不当解雇でさえ訴え出ようとしない者がいる。従業員解雇ケースが実際にどう推移しているのか不明だが、解雇される労働者数が顕著な増加を示しているのは確信をもって断言できる。このような状況が起こっているのは、政府が解雇を抑止しようとするかつての姿勢から手のひらを返してしまっているためであり、政府は企業が好き勝手に従業員を解雇しないよう、かつてのようにもっとこの問題に干渉しなければならない。インドネシア全労働者機構(OPSI)副委員長はそう発言した。
労働省データによれば、2008年1〜5月の解雇件数は432件で、271件が労使間協議で決着し、141件が調停、労働裁判所に訴えられたものは20件しかない。2007年年間データでは総件数1,689中1,216件が労使間協議、調停は408件で法廷に持ち込まれたものは65件。エルマン・スパルノ労相は、ここ数年法廷に持ち込まれるケースが激減して労使二者間協議で決着する件数が増加しているのは労使係争解決の本来あるべき当然の姿を示すものであると評しているが、労働界は異なる見解を持っているようだ。


「働けど働けどわが暮らし・・・・・」(2008年9月2日)
経済状況は2006年以来上向いていることを指標が示しているにもかかわらず、労働者の実質所得はほとんどその恩恵を蒙っていないというインドネシアの実態をILOが公表した。国の経済状況が好転しているのに下層労働者の所得は改善されていないというこの事態はきわめて特異なものであり、政府は中小事業者の活動をもっと振興して雇用促進をはからなければならない、とILO役員はアドバイスしている。
現在一日2米ドル(18,500ルピア)未満の賃金しか得ていない労働者がインドネシアには5,210万人いる。中央統計庁データによればインドネシアの労働人口は1億205万人であり、つまりは労働者のふたりにひとりが貧困者のカテゴリーに入っているということになる。2002年の類似データでは一日2米ドル未満の賃金を得ている労働者人口が5,280万人おり、当時と今とほとんど変化が生じていない実態がそこからわかる。この問題を克服する方法は労働者の生産性を高めることだが、インドネシア人労働者の生産性は2000年から2007年までに30.2%上昇した。総合で年平均4.3%の生産性向上があり、一番高いセクターはサービス業で4.7%の成長を記録している。労働者の所得は2000年から倍増した。ところが実質賃金を見る限り2003年以降の成長は停滞している。また2007年インフォーマルセクター実質賃金はフォーマルセクターの55%しかない。
インドネシア全労働者機構が四半期毎に4都市で1千人を対象に行っている労働者購買力指標と労働者認識指標サーベイ結果も、実質賃金の弱まりのために購買力が低下していることを同じように示している。


「高学歴失業者数が増加」(2008年9月3日)
全国顕在失業者総数は2005年11月調査時の1,190万人をピークとして2006年2007年と低下を続け、2008年2月には943万人まで減少したというのに、大学卒業失業者数は2006年2月の38万人から2007年2月41万人、2008年2月63万人とうなぎ登りの増加を示している。2008年2月調査時の普通科高校・職業高校・短大・大学という高学歴層の失業者は452万人を数え、総失業者数の5割を超えている。さらに年齢ブラケットで見ると、15〜24歳の失業者は566万人にのぼる。これはいったい何を意味しているのだろうか?
上の統計データに重ねてエルマン・スパルノ労相は興味深いポイントを指摘した。「2006年から各地で活発に行われるようになった就職フェアで、求職者は求人数をはるかに超える人数がやってくるというのに求人数の30%は採用者がいないままフェアが幕を閉じてしまう。これは求人側が求めるレベルに合致する求職者がいないためだ。求職者の能力が求人側の希望するレベルに達していない。」
高校以上のフォーマル教育が産業界の求める能力を持つ人材を育成するよう政府はもっと的確にポイントを合わせる必要がある、とインドネシア大学経済学部民勢統計学院研究者が建言した。「政府はまだ在学中の若い世代が将来労働市場に入ったときに必要とされる能力を育成することにポイントを置かなければならない。かれらは労働市場で求められている能力や専門性を向上させる力と可能性を秘めているのだから。」
それについて労相は、労働省はスリーインワンプログラムの実施を2007年から実施していると表明した。スリーインワンとは訓練・認定・配備の三要素で、2006年から立て直しを進めてきた全国162ヶ所の職業訓練館をその実践の場としてフル活用する方針を打ち出している。中央統計庁長官統計分析バランス担当デピュティは、1%の経済成長で70万2千人の雇用創出がなされる、と語る。ところが昨今の傾向はフォーマルセクターよりもインフォーマルセクターの雇用が増加する姿を見せており、今では総勤労者数の70%がインフォーマルセクターで働いている。これは経済成長が1%上昇して70万2千人の雇用創出がなされた場合、フォーマルセクター就業人口増は21万人にしかならないことを意味している。フォーマルセクターでもっとも多く労働力を吸収しているのは加工業であり、一方インフォーマルセクターは農業・商業・運送業が主流を占める。インドネシアの製造業は構造的なひ弱さを抱えており、いまの経済状況下ではサービス産業に経済成長を頼らざるを得ないのだが、通信や金融といったサービス産業は大きい雇用を生み出し得ない。製造業がインドネシア経済の立役者になる日が来るまで、インドネシアの失業状況に大きな変化は訪れないかもしれない。


「2009年のアウトソーシング市場は4割成長」(2008年9月9日)
前政権期に国会第一党出身の労働大臣が改定した労働法がアジアでもっとも高い解雇時退職金を定めたことから、事業者層はなだれを打って正社員を減らし、その穴を非正社員で埋めるという対応に走った。民間といっしょになって国有事業体も走ったそうだから、その規定がビジネスシーンにおいてどれほど異様なものであったかという印象がその事実からうかがえる。労働界名士だった当の大臣は、事業者が恣意にまかせて従業員解雇を行う悪弊をやめさせるために極力解雇をさせないようにすることを労働政策の柱に据え、解雇時退職金をやたら高くすれば解雇するより雇用を続けたほうが経済的に有利になるため解雇は減るだろうとの目論みでそうしたらしいのだが、その結果として労働者をもっと悲惨な世界に追いやる下部構造を作ってしまったようだ。もちろん労働政策の中に非正社員雇用を無制限で許すような条項はなく厳しい条件が課されているにもかかわらず、実態はだれもが違反を冒す方向になだれ落ちて行ったのである。法執行が確立されていない社会が持つ弱点が巧みに衝かれたわけだ。労働界は事業者の違反を声高に叫び、政府も処罰すると威しながらも、すべての事業者をしょっぴくわけにもいかない。
前政権期の労相はその傍らで、人材派遣業の業態整備をもあわせて行った。インドネシアではその人材派遣業がアウトソーシングと呼ばれており、本来の意味よりも狭い意味で使われている。ともあれ、それまで日陰者の立場にあった契約社員制度が晴れて公の立場に立つことになり、アウトソーシングエージェントたちも社会から認められる事業としてインドネシアアウトソーシングビジネス協会という業界団体まで設けられた。
さて、2008年メーデーで労働界が政府に要求する声を高めた項目の一つにアウトソーシング制度廃止がある。法規によれば、企業はその核となる事業の運営を正社員で行わなければならず、非正社員つまり派遣社員あるいは契約社員は補助的な業務分野しか担当させてはならないことになっている。そうなるとたとえば製造会社の生産ラインに就いている作業者は全員が正社員でなくてはならず、また銀行のクレジットカードマーケティング者も正社員でなければならないことになる。これはやはり異様なことだ。インドネシアにおけるリーガルコンプライアンスの難しさはこのようなところに現れてくる。
解雇時退職金の問題はさておき、インドネシア国内ですでに走り始めたアウトソーシングの流れはグローバル社会の動きと歩を一にしてますますその強まりを高めており、2009年のアウトソーシングエージェントビジネスは今年の30〜40%増しになるだろう、とアウトソーシングビジネス協会会長が発言した。この急激な膨張はアウトソーシングメカニズムに吸収される労働者数の増加、アウトソーシングを利用する企業数の増加、企業内で非正社員を使おうとする業務の増加、そしてアウトソーシングを利用する産業セクターの増加といった諸要因がサポートしていることを同会長は分析している。「国内でアウトソーシングを利用している企業はまだ10社に1社しかなく、世界の趨勢である10社に3社というレベルに向かってインドネシアも歩を進めている。歴史的には採油や鉱業を筆頭にして最近まで人材派遣のメインを占めていたセールスやマーケティングなどフロントライナー以外にも、金融・通信・運輸・諸サービスなどの分野から人材派遣を求める動きが盛んになってきている。アウトソーシングエージェントは2千社を超えていると見られているが、市場の膨張とともにそれはもっと増加するだろうし、世間での否定肯定ふたつの声のはざまで自己エクスポーズを避けていた会社も勇気を持つところが増えるだろう。」会長はそうコメントしている。


「現場業務のアウトソーシング化は73%」(2008年9月10日)
アウトソーシングビジネス実施状況に関する調査をPPMマネージメントのリサーチ部門が首都圏44社を対象に行った。その調査結果によれば、多くの企業が非核分野でアウトソーシングを行うのは核分野に専念するためだとコメントしている。アウトソーシングを行う理由としてそれを筆頭にあげた企業は33.8%、オペレーションコスト削減が28.8%、従業員の退職率低下15%、実業界のモダン化11.3%などがそれに続く。どうやら企業マネージメント層の多くはアウトソーシングを行えば核ビジネス分野における事業競争に専念できて競争力がアップすると考えているようだ。中でも68.2%の企業は、アウトソーシングはたいへん効果があるため今後も継続して利用するとの見解を表明しており、実にアウトソーシングにぞっこんというありさま。非核事業分野の中でアウトソーシング化がもっとも進んでいるのはクリーニングサービス(56.8%)で、さらにセキュリティサービス(38.6%)、運転手(25%)、秘書(22.7%)、カスタマーサービス(13.6%)、女性販売促進員いわゆるSPG(セールスプロモーションガール)(9.1%)と続く。
アウトソーシングサービス会社選択の基準は「料金」が従来の「評判」を覆してトップになった。料金は22.6%、評判は21.4%、そして要求レベルを満たす人材を擁しているという要素は19.1%で第三位。サービス利用者の満足度はほとんど全企業が50%を超えているものの、それらの企業にお勤めするアウトソーシングワーカーたちの忠誠度は35%と低く、かれら自身がそのステータスに満足していないことを示している。
さて、当然の成り行きともなるべき現場業務内での非正社員利用は既に73%がそれを行っている。これは国民系民間企業、国有事業体、外資系などのすべてにわたっている。非核分野を完全にアウトソーシング化しているセクターは金融・製紙・教育サービス・ゴムプラスチック加工などであり、医薬品・基礎化学は80%、通信やITは60%、そして50%は建機・機械・輸送機器製造であるとのこと。


「ルバランボーナスは7日前が支給期限」(2008年9月15日)
都庁労働局は所轄の全事業所に対し、従業員へのTHR(ルバランボーナス)はルバラン日の7日前までに支給されなければならない、と通達した。首都の事業所に雇用されているすべての勤労者もしくは労働組合は、事業者がこの規定に違反した場合は労働局に届け出るようにとアドバイスしている。
事業者が規定を遂行しなかった場合、労働局は公式警告書を事業者に送り、さらに必要と思われた場合は刑事犯罪として処置する可能性もある、と労働局長は語っている。THR支給規定に違反した事業者に対する刑罰は三ヶ月の拘留と定められている。とはいうものの都下で発生したこの規定違反事件はまだひとつもなく、今年も問題が起きないよう期待しているとの局長の弁。
THRについての現行規定は1994年労働大臣規則第4号で、THR金額は基本給一ヵ月分プラス固定手当と定められており、現物支給は労使間で合意した場合に限り承認されしかもTHR金額の25%相当を限度としている。THR支給義務はフォーマルセクターが対象とされており、家庭プンバントゥなどをはじめとするインフォーマルセクターは義務とされていないものの、フォーマルセクターに準じることが望ましいとされている。


「ジャカルタ女性の職場進出はますます盛ん」(2008年10月16日)
中央統計庁が公表した2007年2月と2008年2月のジャカルタ都民就業状況を比較すると、まず労働力人口は2007年の408.5万人から2008年は455.9万人に増加している。その中で就業人口は2007年が354.3万人、2008年は405.5万人で就業者比率は増加していることがわかる。さすがジャカルタは働きたいという意思を持っていれば何らかの仕事に就けるようで、働きたいのに仕事がないというひとは1割強にすぎない。
就業者数は2007年から2008年までに14%増加したが、これを性別で見ると女性は38万人増えたのに比べて男性は13万人しか増えておらず、女性の増加がきわめて顕著だ。このため2007年の就業者男女比は1.9対1だったものが2008年は1.5対1となり、男女比5分5分という方向に向かって邁進しつつある。失業者比率の男女差は2007年の男<女が2008年は男>女に逆転しており、首都の男たちはうかうかしていられなくなりつつある。


「国税総局広報」(2008年10月20日)
大蔵省国税総局広報(第PENG-05/PJ.09/2008号)
「納税者番号(NPWP)取得」
2009年1月1日から施行される改定所得税法と税務罰則不適用恩典(サンセットポリシー)に関連して、次のことを告知する。
1.国民は納税者番号取得を次の方法によってただちに申請することができる。
  a.従業員/公務員である納税者は雇用者あるいは政府会計機関を通して集合的に
  b.www.pajak.go.idでオンライン方式(e-registration)
  c.pojok pajak(税務サービスコーナー)あるいは巡回税務サービス車がたまたま近くで業務している場合
  d.商店・アパート・住居など不動産を所有する納税者が土地建物税課税対象調査に際して
  e.最寄の税務サービス事務所(KPP)で
2.納税者番号を持っていない個人は2009年1月1日から:
  a.標準税率より高い税率が所得税源泉徴収に適用される。
  b.出国する際に出国フィスカルを納税する。
3.国税総局の行なうすべてのサービスは費用を徴収しない。
4.税務サービスを受ける際に困難を与えられた国民は最寄の税務サービス事務所あるいはKring Pajak 500200もしくは021-5251234に直接届け出てください。
2008年10月9日、ジャカルタにて
広報・サービス・指導局長
署名
ジョコ・スラメッ・スルヨプトロ
公務員基本番号 060044562


「サンセットポリシーは成功」(2008年10月20日)
「国税総局の進めているサンセットポリシーは効果をあげている。それは今年1〜9月の収税状況が昨年に比して46%成長を実現していることで証明されている。平均成長率は18%なので、サンセットポリシーによる影響が28%も出ていることがそこからわかる。また納税者のコンプライアンス姿勢も向上しており、SPT(年次納税申告書)提出者の増加がそれを示している。」国税総局収税遵法潜在性局長はそう語った。
局長によれば、税務署は今後納税者の資産について、それを入手した資金の源泉を尋ねることはもはやなく、その資産から得た収益についての追究が行なわれるようになるとのこと。家を10軒持っている納税者がいたとして、サンセットポリシー実施前にその納税者はその事実を認めようとしなかった。しかし過去のSPT未申告や不正確な届出内容がサンセットポリシーで正されたあとは、その10軒の家からどんな収入を得ているのかを税務署は追及することになる。
2008年1〜8月期国税収入は、石油ガス産品所得税を除いて318.7兆ルピアにのぼり、対前年同期比で146%を記録した。石油ガス産品所得税を加えた国税収入総額は367.6兆ルピアで、これは前年同期実績245.9兆ルピアの50%増しになっている。


「才と魂はいずれも大切」(2008年10月21日)
インドネシアからの研修生受入れに関して日本側は西スマトラ州出身者にブラックリスト措置を取った、と西スマトラ州庁トランスミグラシ労働局長が明らかにした。「日本側関係機関は政府労働省経由で西スマトラ州庁に抗議を申し入れてきており、日本での研修に応募して日本へ渡った研修生の中のひとにぎりの人間が犯した誤った行動のために後続の研修候補者をはじめ諸方面に多大の損失がもたらされる結果を招いてしまった。日本側がこのような措置を取ったのは数人の西スマトラ州出身研修生が当初の契約とコミットメントを破って別の会社へ移ったからであり、かれらがそのような行動を取ったのは別の会社の報酬がより高いものであったからかもしれない。しかし規律を重んじる日本側にとってはそんなひとにぎりの者が取った行動でも赦すわけに行かず、政府労働省と州庁に抗議してきた。それどころか、研修生に別の会社へ去られた会社は研修生のその行動がもたらした損害を弁償するよう研修生の親に請求してきている。日本側はまた、西スマトラ州出身者に対して当面研修機会の門戸を閉じることも通告してきている。」
局長は今回問題を起こした研修生らの規律を欠き約束を反故にした姿勢に対して強い遺憾の意を表明している。最初に行なった約束を守って2年間決められた会社で働けば8億ルピアの金と専門技能を身につけて帰国することができるというのに、そのひとにぎりの研修生はそんな成果を全うする努力を怠り、おまけに大勢いる西スマトラ州の日本研修候補者に道を閉ざすという結果すら招いてしまった。
西スマトラ州庁は今回の事態について、問題を起こした研修生は2006年派遣組み125人中のひとにぎりの者たちだと労働省に対して状況説明を既に行っている。西スマトラ州庁は今回の事件を奇貨とし、今後の国外派遣労働者の選抜に当たってはテクニカルな能力ばかりでなく人格的な資質も劣らず重視して評価するよう意を新たにしている。


「2009年最低賃金は30%増?!」(2008年10月28日)
グローバル金融恐慌で繊維衣料・家電・自動車部品・飲食品・鉄鋼などの製造セクターは生産縮小を余儀なくされており、その後に従業員解雇が控えているのは疑問の余地がない。ところが多くの工場ではいきなり操業が低下したわけでもないため、ほとんどの労働者は会社がそんな状態にあることを理解しておらず、経営者との対話もいきおい焦点ずれが起こっているありさまだ。
折りしもインドネシアは2009年の地方別最低賃金策定時期に入っており、クライシスへの認識を欠く最低賃金を各地方行政府が決めれば体質の弱まっている産業界に多くの倒産を招く懸念が強いため、中央政府は2009年最低賃金決定に関する方針を打ち出した。2008年10月24日に工業大臣・商業大臣・内務大臣・労働大臣の四大臣が署名した共同大臣決定書では、会社が倒産して従業員解雇が発生するのを極力防止することを目標の柱に据え、最低賃金はできるかぎり低く抑えて会社ごとに支払能力に応じた賃金アップを労使二者間協議で決定するという方向性を指向している。ファハミ・イドリス工業相はそれについて、「会社が存続できて従業員解雇の発生が防止されるべく、最低賃金が操業コストを圧迫しないように検討しなければならない。政府は最低賃金上昇率が現在6%という経済成長率を超えないように忠告する。工場を閉めるよりは賃金を会社の能力に応じたものにするほうがよい。この共同大臣決定は2003年法令第13号「労働法」に違反するものではない。政府が介入しなければ恐慌の影響は最悪の結果をもたらすかもしれないのだから。」とコメントした。ソフィヤン・ワナンディ、アピンド会長は、労働法に従ったなら2009年最低賃金は15〜30%になるだろう、と言う。「そのアップ率は各州の賃金評議会が言ってきている数字だ。そのようなアップ率で決定されたなら、多くの会社が操業困難に陥るだろう。」
繊維衣料品セクターでは既に来年初15万人解雇の声があがっている。インドネシア繊維業協会会長は、経済成長率より低くとも最低賃金上昇を確定させるような共同大臣決定を出されてはこまる、と語る。「解雇を避けるのは不可能と思われる。だから問題は最低賃金上昇をどう抑制するかということではない。協会は半年ほどの間、最低賃金の現状凍結を希望している。政府の仲介は最低賃金問題よりむしろ銀行融資促進の方でお願いしたい。」との弁。
一方国民労組連盟総裁は政府方針に対して、最低賃金決定の内容を定める法令があり、そして最低賃金を適用できない会社に不適用申請を行う道もあるのだから、従来の法規に従っていればよいではないかという意見を述べている。しかしインドネシア福祉労組同盟総裁は、会社の状態を理解しようとせずに賃金アップを強要する労組があるのは残念なことだ、と言う。「しかし輸出を行っている会社や政府プロジェクトを受注している会社はインフレ率以上の賃上げをしなければならない。物価サーベイ結果では、適正生活需要の上昇率は6〜12%となっている。」とコメントしている。


「ジャカルタ2009年最低賃金は100万ルピア超」(2008年11月3日)
首都ジャカルタの2009年最低賃金が決まった。2009年1月1日から適用されるジャカルタ首都特別区最低賃銀は月額1,069,865ルピアで、これは2008年から10%のアップ。
ファウジ・ボウォ都知事はこの決定について、2009年首都最低賃金は労・使・行政の三者および学術分野専門家の代表で構成されている賃金評議会で合意された結論であり、市場の諸物価、マクロ経済状況、企業のキャッシュフローなど総合的な検討が加えられた上でのもので、国民購買力を維持する面からも妥当な結論が出されたものと確信している、と説明した。国民購買力の維持は実業界に事業存続のバックグラウンドをもたらし、その結果都下の諸企業は従業員解雇がミニマイズできる上さらに一層の雇用促進を実現させる機会が出現し、最終的に都民の失業者がますます減少するであろうことを期待している、と都知事は結んでいる。
都庁労働局長はその2009年最低賃金額決定について、2008年10月31日に行われた首都賃金評議会最終会議が全会一致の結論を出したわけではない、と会議の進行状況を物語った。労働者側と事業者側との間で金額に大きい開きがあったことから、結論は多数決によって決められた。当初、労働者側は2009年最低賃金を適正生活需要と一致させるよう求めたが、2008年とほとんど変わらない980,000ルピアを主張する事業者側はその月額1,314,059.7ルピアに強い難色を示して交渉は長期戦の様相を呈した。その後双方は交渉を続けて1,069,865ルピアの線まで歩み寄ったものの、強硬な反対者がその妥協案をあくまでも容認しようとしなかったために、最終的に多数決が取られた。こうして賃金評議会の場で金額が決まったものの、例年と同じように労使双方からその結論に対する不賛成発言が出されている。アピンド(インドネシア事業者協会)役員のひとりは、「来年の事業環境は販売の低迷と諸コスト高騰が間違いないものと見られている現在の経済状況下にこのような賃上げはたいへんな重圧を企業にもたらすものであり、労働集約型産業セクターは小規模も大規模も区別なく事業存続の岐路に立たされるだろう。」と10%アップ高すぎ論を唱えた。一方の労働者側はと言えば、国民労組議長も反対表明を出している。「グローバル金融危機下の事業者側の困難は理解するが、労働者賃金は適正生活需要を最低線に置くのが当然と労働界は考えている。だから123万ルピアが首都の最低賃金とされるべきだ。インフレ率程度の値上げというコンセプトは間違っている。」
しかし賃金評議会の出した結論は地方別最低賃金決定の法的プロセスに準拠したものであり、それは2008年11月3日に都知事決定書の形で定められる予定になっている。


「1万米ドル以上の外貨売買にNPWPが必要」(2008年11月19日)
銀行におけるルピアでの外貨購入に関するインドネシア銀行規則第10/28/2008号で中央銀行は投機のための外貨購入規制方針を2008年11月13日から開始した。この規則によれば、インドネシアの個人・法人ならびに外国系はスポット・フォワード・デリバティブの取引を通して自由に外貨の購入が行なえるが、月間10万米ドル相当を超える外貨の購入を行なう場合には、その外貨購入の根拠となる取引の存在が必要とされ、外貨購入者は銀行に対してその根拠を提示しなければならない。更にインドネシアの個人・法人はNPWP(納税者番号)の提示が義務付けられ、外国系の場合はスポット取引のみに限定される。インドネシアの個人・法人に対するNPWP提示義務は1万米ドル相当以上の外貨売買にも適用され、こちらの規則は銀行だけでなくマネーチェンジャーでも実施される。
NPWP提示義務はインドネシア銀行と国税総局の間で合意された方針で、将来的にインドネシア銀行に集まった高額外貨交換者のデータは国税総局に提供されて高額資産保有者分析の資料に加えられる。この外貨交換にNPWPを提示させる方針は先に公表されているNPWP保有者の出国フィスカル免除方針と相まって国税総局の進めている納税者拡大ポリシーの援護射撃となることが期待されており、また高額資産保有者分析データが豊富になることで納税金額の妥当性がより適確に検証できることに加えて当該納税者の活動状況も把握しやすくなることから、国税総局のもうひとつのポリシーである納税者掘下げにも効果があるのは疑いないところだろう。
ところで、「根拠となる取引の存在」というのはその金額の外貨を調達する必然性を証明することを意味しており、そのような要素を持たない投機買いはこの規則によって排除されることになる。必然性は貿易決済や債務返済などビジネス関連のことがらに限定されておらず、病院への支払・学資・プロパティ購入などであっても構わない。インドネシア銀行はこの方針を定めることで、今はむしろ米ドルの本国引揚げから国内投機筋の通貨売買に重点がシフトしつつあるルピアレートの下落を抑え込もうとしている。この規則を遵守しない銀行には罰金が科されることになっている。
インドネシア銀行上級副総裁はこの中銀規則について、これは1999年法令第24号に定められた自由外貨制度に背くものでなく、外貨売買は依然として自由に行なえるがその手続きに多少の条件が付されるようになっただけであり、インドネシアが依然として自由通貨制度の国であることに変化はない、とのコメントを出した。一方金融界オブザーバーのひとりは今回の中銀規則を高く評価しており、従来からあまりにも自由すぎたインドネシアの通貨制度は投機すら自由に行えるようになっていたがやっと中銀は投機取引を規制する勇気を持った、と賞賛した。外資の流入促進を国是としてきたインドネシア通貨行政は自由通貨を維持することによって国是の実現をサポートしてきたが、折に触れて投機によるルピアの乱高下に悩まされてもいた。そのために投機を抑える方針は的を射たものであるとはいえ、国内に米ドルが流入しなければ今のルピアレートを以前のレベルに回復させるのは難しく、既に大幅な外貨準備の減少を蒙ったインドネシア銀行に更なる外貨の市場放出を求めるのはむつかしいのではないか、と業界関係者のひとりは語っている。


「配当金納税は馬鹿馬鹿しい!?」(2008年11月20日)
国税総局は2009年4月にインドネシアのリッチ1千人を担当する税務事務所を設けて税収向上を図る計画。先進国はどこでも所得税収入のマジョリティが個人納税者からのものであるのに、インドネシアではいつまでたっても法人所得税が大部分を占めており、法人と個人の税収比率は5対1になっている。個人納税者の比率を高めるために国税総局は各個人納税者に適正な納税規準を定めて正しい納税を奨励する方針である、とダルミン・ナスティオン国税総局長が発言した。
この企画はまず全国330の税務サービス事務所に金持ち納税者2百人のデータを出させ、その6万6千人のビジネスプロフィールとPPhおよびPPN納税内容に関する分析を実施する。そしてその中からビジネスグループオーナーであるリッチを1千人抽出し、リッチ対象特別LTO(ラージタックスオフィス)がその納税をモニターしていく。
このような形での分析を通してその個人と会社の納税金額が正当なものになっているかどうかに関する評価を行い、経費の形で会社が処理している本来課税対象となるべき金額を税収に結びつけることに結実させるというのがこの方針。
現在企業がもっとも盛んに行なっている納税回避操作は配当の不払いだ、と国税総局長は語る。企業は利益の配当を株主に支払うのをやめて、その資金を個人のための支出に充当して会社の経費として記帳する。そのために配当所得税収入が激減するという現象が起こっており、政府はそれに焦点をあわせて収税の回復に努めている。そのような行為も含めて、企業の納税回避操作で失われている税収は年間2百兆ルピアに上っていると国税総局長は見ている。


「ジャカルタの適正生活需要は131万ルピア」(2008年12月4日)
2009年度最低賃金決定について中央政府が2008年10月24日に工業大臣・商業大臣・内務大臣・労働大臣の四大臣による共同大臣決定書で示した指針は「2009年最低賃金は30%増?!」(2008年10月28日)で報道されている通り。ところが全国各地で労働界がその決定書に強い反発を示した。最低賃金上昇率は全国経済成長率を超えないようにという指針は労働者の所得レベルを見る限り非人道的であるという論拠が叫ばれた。実際に多くの州はその政府方針に従わないではるかに高率の最低賃金アップを定めており、この共同大臣決定書が軽視されている実態を浮き彫りにしている。
そんな実態にもかかわらず労働界がその決定書に反対のラッパを高々と吹き鳴らして各地でデモ行動を展開したため、政府は閣議で「経済成長率」を「インフレ率」という言葉に置き換えることを決めた。すると今度は実業界が政府の態度に強い批判を向けた。政府が取った行動は、労働界に屈した姿を開けっぴろげに国民に示したものである、と。
「政府はご自由に四大臣の共同大臣決定書を改定すればよい。アピンドはこの問題を会員各社の意思にゆだねる。各社は社内労組と交渉して賃上げ幅を決めるように。もし会社側が強ければ共同大臣決定書の数字を労組に了承させればよい。強くなかったら労組との二者間交渉を行なう。労組は雇用者側との交渉を必ず受ける用意がある。雇用者側との話し合いを嫌がるのは働いていない連中だ。共同大臣決定書反対デモを行なっているのもそのような連中だ。全国にある2,270万の零細・小・中・大企業のうちで地方別最低賃金に従う能力を持っているのは0.97%しかいない。」アピンド事務局長はそう表明している。
一方、インドネシア福祉労組同盟総裁は四大臣の共同大臣決定書について、何の効果も持たないその決定書は廃止すればどうか、と提案した。「経済成長率からインフレ率に変更したところで、かえって混乱を深めるだけだ。インフレ率は各地方ごとに異なっているから不平等を発生させる。共同大臣決定書には罰則規定がないため強制力に欠ける。おまけに企業倒産防止のための決定書が労賃だけを統制しようとしているのは、まるで政府が労賃を最大コストと認識しているような印象を与える。実際効果のない決定書は廃止したほうが良い。」
インドネシア全労働者機構総裁は、3年前から最低賃金を適正生活需要のレベルに合わせるという目標が置かれており、上昇率云々の話より先にこの目標をクリヤーせよ、と発言している。ちなみにジャカルタ首都特別区における2008年後半の適正生活需要は次の数字であることを首都賃金評議会が公表している。(数字はルピア)
飲食品 389,416.77
衣料品  95,400.80
住居  552,130.63
保健   33,501.62
交通  180,000.00
レクレーションと貯蓄 26,815.11
合計 1,314,059.07


「社内労組が同意すれば労働局への届出は無用」(2008年12月11日)
「2009年度最低賃金の適用保留申請を政府労働省に出す必要などない。社内労組と協議して合意が取れていれば、政府に申請して頭を痛くするようなことをしなくてもよい。事業環境がこんなに難しくなっている上に、共同大臣決定書の数字に従うのか州知事決定書に従うのか、それすらはっきりしていないのだから。」ソフィヤン・ワナンディ、アピンド会長は実業界に対し、労使二者間協議で合意に達したなら、行政に逐一お伺いを立てるようなことをせずにそのまま実行すればよい、とアドバイスした。
従来から最低賃金適用保留申請は12月初から15日ごろまでに地元労働局に申請し、審査を経た上で承認あるいは却下されるというプロセスが踏まれている。今年の申請状況をエルマン・スパルノ労相は、適用保留申請はまだひとつも出されていない、と語っている。ところがアピンド会長は、その申請は法的な義務付けがない、と主張している。
既に労使双方から何の効果も持っていないと見切りをつけられた2009年の最低賃金上昇率の指針を定めている四大臣の共同大臣決定書は、経済成長率の6%を超えないようにという内容を労働界からの猛反対によってインフレ率の6.2%を超えないようにと言い換えられただけで、廃止を求める諸方面からの声に対して政府は堅い拒否の姿勢を続けている。
最低賃金問題を実業界は労使間合意だけで十分とし行政側には届け出ないという姿勢を強めているが、その流れは解雇問題にまで及んでいる。ソフィヤン・ワナンディ会長は、「解雇問題は労使間で決着すればよい。第三者に届け出る必要はない。」と語っている。アピンドの推定では、諸セクターで既に数十万人の契約労働者が解雇されているが正社員はまだ解雇されておらず、正社員は給料を確保されて自宅待機段階にあるとされている。一方労相は、12月初時点で解雇者数を3千5百人自宅待機1万4千人と発表しており、アピンドの把握との間に大きい差を見せている。これは実業界が行政側への届出を励行していない実態を反映しているものと思われる。


「来年はほぼ全家庭がNPWP保有者になりそう」(2008年12月29日)
国税総局がNPWP(納税者番号)保有者の増加を目指して行なっているサンセットポリシーは2008年12月31日で締め切られるが、その大詰めが近付いているいま全国の税務サービス事務所が25日から29日まで連休に入ったために残されている日は12月30日と31日しかなく、いつもその日が迫ってきてから騒ぎ出す国民は「期限をつけて行なっているくせに、その期限直前に長期休みを取るとはなにごとかッ?」と批難の声をあげている。それに対して国税総局は「この12月は土曜日を三回出勤しており、また12月31日は19時まで業務するので、ご理解ご協力を乞う。」との声明を出している。
さて本題のNPWP保有者拡大方針はサンセットポリシーが12月に入ってから大ヒットの様相を呈しており、これまでNPWP申請は全国で一日7〜8千件だったものが今月は5〜10万件、一日で20万件あった日もあるという状況に直面して国税総局はうれしい悲鳴といったところ。2008年はNPWP保有者が350万人増加して1千万人を超えるのは確実と見られている。NPWP発行も長足の進歩を遂げており、これまで申請から1ヶ月かかっていた発行プロセスはいまや3日でクリヤーされている。
外貨売買時のNPWP保有条件、NPWP保有者に対する出国フィスカル免除、パスポート発給時のNPWP提示、NPWP非保有者の所得税率アップなどさまざまな政策によって国民のNPWP保有意識は大幅に向上すると国税総局長は見ており、2009年に保有者増2千万人という期待を掲げている。そうなれば全国5千5百万戸の40%がカバーされて非課税限度額を超える収入を得ている戸主はすべて網羅されることになる、と国税総局長は述べている。


「一部NPWP保有者にサンセットポリシー期限延長」(2008年12月30日)
国税総局が進めているサンセットポリシーは余すところあと数日で締め切りとなるが、2005年に国税総局が納税者の申請なしに職務上で交付したNPWP(納税者番号)を持つ納税者もこのポリシーに応じて2008年に登録された納税者と同じ扱いを与えることを国税総局が約束した。その対象となるのはNPWP番号の頭2桁が17,18,19,27.28.29,37,38のいずれかに該当するもので、番号がそうなっていれば税務サービス事務所は納税者の背景を自動的に把握するので心配する必要はない、と総局側は説明している。この対象者は2007年以前のSPT(年次納税申告書)提出を2009年3月31日までに行えば、罰則は免除されることになる。この方針は2008年12月23日に国税総局が出した広報番号第PENG-10/PJ.9/2008号で定められており、2005年に交付されたNPWP保有者に対するサンセットポリシー適用に関する質問が多かったためにそれへの回答として出されたものだ。
それ以外の既NPWP保有者に対するサンセットポリシー適用は、2006税務年度以前のSPTに対する修正版提出およびそれに付随して発生する納税不足分の支払を2008年12月31日までに行なうことがその条件とされている。


「サンセットポリシー期限延長」(2009年1月5日)
納税者が自主的に正しい申告を行なうなら、過去の申告漏れや間違いの違反を問わないというサンセットポリシーの期限を延長する、と政府が発表した。これまでも再三にわたって期限延長はしないと強い態度を続けていた大蔵省側も、不足納税分の処理を銀行が期限内にやりおおせないという実態に直面して態度を軟化せざるを得なくなったようだ。「『国庫に納税しようというのにたいへんやりにくい。届出をするにも開いている時間がほんのわずかだ。』と実に大勢からお叱りを受けた。銀行に納められた納税分の処理も銀行内で山積されており、終わっていないものがまだたくさんある。そのため大統領に指示を仰いでサンセットポリシーの期限を2009年2月28日まで延期するよう決めた。」スリ・ムリヤニ・インドラワティ経済統括相代行は2008年12月30日にそう表明した。サンセットポリシー期限が延長されたことで新規NPWP申請者および既保有者のこれまでの違反に対する修正の機会が増加したことになる。
インドネシアの税法は、国民が非課税所得限度を超える収入を得たら直ちに国税総局に届け出てNPWPを取得するよう義務付けており、それを怠れば国民は法律違反者となる。しかし国民の大半はひとに使われて給料賃金を得ているのが一般的で、おまけに給与賃金支払者が雇用者の所得税源泉徴収義務を負わされているために被雇用者がわざわざ面倒なNPWP届出を行い、個人納税者として毎年SPT(年次納税申告書)を作成して税務署に提出するという習慣がまったく確立されていなかった。これも国民総犯罪者化という文化が織り成している姿のひとつだろう。国民に法律違反をさせないという配慮をそこに感じることができない。
サンセットポリシーによって免除される未申告・未納税に対する罰金と金利については、サンセットポリシー期限日までに自主的にNPWP申請を行った課税所得者の場合2007税務年度以前のSPTを2009年3月31日までに提出すれば適用対象となる。


「国税総局に税務調査のネタが増加」(2009年1月8日)
国税総局は納税者の自動車所有データを完備したので、SPT(年次納税申告書)の中の本人資産データに対するクロスチェックを2009年から励行することになる、と国税総局指導サービス広報局長が表明した。国税総局は政府や民間の諸機関から個人資産に関するさまざまなデータを入手しており、納税者データベースの内容が一層豊富になっている。億ルピアレベルの中上級クラス自動車所有データは全国から集められたもので、今後は個人納税者がSPT中の資産報告に国税側のデータベースと一致しない内容を記載した場合は納税者に質問の矢が射込まれる可能性は高い。2008年12月はじめに国税総局長は個人所得税SPT内のデータや情報に関する活用方法を通達する回状を全国の税務署宛てに出しており、それによれば納税者が提出したSPT中の資産内容について国税総局が持っているデータや情報との不一致があった場合、税務署は納税者に対して税務調査を行うことになるようだ。


「都庁が新車購入者にNPWP保有を義務付け」(2009年1月9日)
一台2億5千万ルピアを超える高級車の新車を購入した者はSTNKとBPKBの第一回登録時にNPWPデータを盛り込むことが必須条件となる。BPKBは自動車所有者の名義を証明する自動車所有者証書、STNKは自動車のナンバープレート交付と自動車税納税に関する自動車番号証明書。資産価値が車一台家数軒という対応をなしているインドネシアでそれらは相当に価値のある書類だと言える。都庁は国税総局とこの方針について既に合意を固めたことから、近々に都知事決定書でこの方針を法制化した上、都内各所にある首都警察交通局統合サービスセンターにこの新規則の発動を指示するかまえ。
一方、個人納税者拡大方針を推し進めている国税総局は都庁のこの方針で上記統合サービスセンターにNPWP登録需要が発生することを予期して、その新規則発動時にはサービスセンターに国税のサービス窓口を設けるか巡回サービス自動車を置かせる計画を組んでいる。国税総局拡大掘下げ局長はまず首都でスタートを切ったこの自動車購入者とNPWPの関連付けについて、これは低所得層向け積層住宅の駐車場に高級車がたくさん停まっている現状に向けられた公平化回復の措置である、と説明した。ルスナワやルスナミ(「ルスナワとルスナミ」(2008年12月11日・12日参照)を夜回ってみると居住者のものと見られる高級車が数多く見受けられ、低所得層に混じって徴税の矛先をかわしながらも大きい所得を得ている人間のいることが感じられる。どんな所得層にいると本人が言おうが、実際に非課税限度額を超える収入を得ている者は所得税納税の義務があるわけで、そのためのプロセスとしてNPWPを保有しなければならない。国税はこのような努力を通じて国民に納税という枠内での公平感を培っていくのだ、と同局長は述べている。 都庁は先に、ひとりで何台も自動車を持っている者はその二台目三台目の自動車税に累進制を適用する考えを表明しており、その方針は今回定めた方針中の対象自動車価格の下限を引き下げていくことで実施の可能性が高まるにちがいない。今回の都庁決定は将来の思惑を暗示させるものだ。


「国家職業能力認定証明書発行制度」(2009年1月12日)
ホテルレストランセクターをはじめとして国内外のいくつかの業界は優秀なフォーマルセクター勤労者を求めているが、職業能力認定証を発行している職業認定国家庁副長官は、認定証受給者に関するデータはあるものの能力や遂行レベルの問題に関連する場合は全国でいったいどのくらいプロフェッショナルな力を持つインドネシア人勤労者がいるのか判然としない、と語った。さまざまな国際会議で職業能力を認定されたフォーマルセクター労働力がインドネシアにはどれだけいるのかということをよく問われるが、そのような質問にどう答えてよいのか戸惑ってしまう、と副長官は言う。能力というのは「知識」「スキル」「姿勢」という三つの要素が関わっているし、職業の場でレベルアップを実現させるには「労働生産性」「物品にせよサービスにせよ生産品のクオリティ」「安全性」「サービス力」などの要素に支えられなければならない。職業能力認定が一連の講義と実習ならびにテストで与えられた場合、それがその人間の業績を保証するものにはならないということを副長官は指摘しているのだろうが、それはインドネシアだけのことでもあるまい。インドネシアと他の国との違いは、果たしてどこにあるのだろうか?
インドネシア政府は2004年から職業能力認定証明書発行制度を開始し、既発行枚数は35万枚にのぼっている。そのうちの20万枚は海外出稼ぎ労働者向けだ。職業認定国家庁が1年前に発足してからは6万枚が発行された。同庁はジャカルタ・バンドン・スラバヤ・デンパサルに10事業セクターをカバーする32の職業認定機関を設け、それらの機関からの要請にもとづいて証明書を発行している。証明書発行費用は1枚50万ルピアだが、2009年からは2万人に発行費用補助が与えられる計画で、割当人数分はほぼ全額が公費でまかなわれる予定。同庁は近々、ホテルレストランセクター向けに5百人分の証明書を発行する予定になっている。


「国内就業者総数は1億255万人」(2009年1月14日)
中央統計庁が公表した2008年8月の国民労働力概況によれば、総就業者のうち61%がインフォーマルセクターで働いており、フォーマルセクターは31%しか労働力を吸収していない。ここで言うフォーマルセクターには、労働者や従業員に雇用されて働いている者と人を雇用して自営している者が含まれている。事業セクター別就業者数は次のようになっている。
農業 4,133万人、 工業 1,255万人、 建設 544万人、 商業 2,122万人、 運輸・倉庫・通信 618万人、 金融 146万人、 生活サービス 1,310万人、 その他 127万人、 合計1億255万人
生活サービスに含まれているのは、家庭プンバントゥ(女中・下男)、清掃業、木工や石工などだ。このセクター就業者はアウトソーシングが多く、中でも清掃業でその比率がいちばん高い。この生活サービス分野は2008年2月の1,278万人、2008年7月の1,202万人から顕著な増加を見せている。また商業セクターも就業者の伸びが大きい。
しかしソフィヤン・ワナンディ、アピンド会長は中央統計庁のデータに関して疑問の声を隠さない。「解雇は簡単に行なえないため、フォーマルセクターの人減らしですら企業は目立たないように行なっている。そんな状態で就業者数推移が容易に把握できるものではない。ましてやインフォーマルセクターに吸収されている人口がどれだけあるのか、いったいどのようにしてとらえることができるのだろう?もちろん2008年最初の9ヶ月は経済状況が好調だったから、中央統計庁の数字は傾向として納得できるものであるには違いないが。」
中央統計庁の2008年8月総就業者数は1億255万人で同年2月から50万人増加し、顕在失業者比率は2月の8.46%から8月は8.39%に低下した。それについてインドネシア全労働者機構総裁は、「1日4時間しか働らいていない者やアウトソーシング労働者までが含められているデータをもって就業者が増えたと言っているが、それらは恒久的な就業と言えるものではない。だからこのデータのクオリティには疑問が残る。ともあれ、生活サービス分野でアウトソーシング労働者が増加していることは国内労働市場のクオリティ低下を意味するものだ。」とコメントしている。


「フィスカル免除目当てのNPWP申請は4万人」(2009年1月20日)
国税総局が企画したサンセットポリシーは大ヒットを示して2008年12月のNPWP申請は一日5〜10万件にものぼった。ところが古いSPT(年次納税申告書)の修正で発生した不足納税分の処理を銀行界が期日までにやりおおせないことが明らかになったため、蔵相はそれを理由にサンセットポリシー締切り日を延期した。こうして2009年1月の新規NPWP申請は従来からの1日8千件レベルに逆戻りした、と国税総局拡大掘下げ局長は述べている。
2009年1月5日現在のNPWP登録件数は既に1千50万件に達しており、1月末には1千1百万件が見込まれている。1月に入ってから早々に4万人がNPWPを申請しており、そのメインは出国フィスカル免除を目的としたものである由。1月の申請は12月に比べて低調になったが、2月にはいればふたたび急増するものと多くの関係者は見ている。それは2009年1月からNPWP非保有者の所得税源泉徴収に使われる税率がNPWP保有者のそれより20%高くなるからで、多くの給与所得者が1月の跳ね上がった税金に驚いてNPWP申請に列をなすだろうとかれらは予測している。


「所得税控除額が増加」(2009年1月23日)
政府は給与所得者等個人納税者の所得税源泉徴収時に控除される職務経費の限度額を引き上げた。PPh Pasal21(21条所得税)と呼ばれるこの所得税の計算に際しては、PTKP(非課税限度額)という本人控除額年間1,584万ルピア、妻と子供3人までそれぞれ年間132万ルピアの扶養控除に加えて職務経費(biaya jabatan)5%が控除できるが、昨年までこの職務経費5%は年間129万6千ルピアが限度とされていた。その職務経費5%の限度額を政府は2008年12月31日付け大蔵大臣規則第250/PMK.03/2008号でひとり年間600万ルピアに引き上げた。これですべての控除額が2009年に引き上げられたことになり、国税総局は個人納税者に関する納税状況を適確に把握して不正納税を減少させるという任務にますます励まなければならなくなった。


「PPh23源泉徴収税率が変更された」(2009年1月27日)
政府はさまざまなサービス売買の際に購入者に義務付けている所得税源泉徴収の税率を変更した。このPPh Pasal23(23条所得税)と呼ばれているサービス授受に関連して発生する税金は、金利所得・配当・ロイヤルティ・動産賃貸などのほかにその他諸サービスというカテゴリーがあり、2008年12月31日付け大蔵大臣規則第244/PMK.03/2008号で変更が加えられたのはその他諸サービス27項目に対するもの。この手続きでは、サービス購入者はPPN(付加価値税)を除外した支払料金から特定パーセンテージを差し引いてサービス提供者(販売者)に支払い、差し引かれた金額はPPh Pasal23として納税する。納税証憑はサービス提供者に渡され、サービス提供者はそれをSPT(年次納税報告書)の中で前払いPPhとして相殺できる。
これまでサービス購入者が差し引くPPh Pasal23は項目によって支払い金額の1.5〜4.5%となっていたが、政府は2009年1月1日からそれを一律2%とした。従来1.5%だった項目は引き上げられたことになるが、それは27項目中の4項目でしかない。さらに政府はこのシステムにNPWP保有条件を持ち込み、NPWPを持たないサービス提供者への支払に差し引かれる源泉徴収税率は平常の百パーセントアップとするよう決めた。そのためNPWPを持たないサービス提供者に対しては2%でなく4%を支払時に差し引かなければならない。
このその他諸サービスカテゴリーには人材派遣サービスが含まれており、これまで税務署によっては人材サービス派遣会社に支払われる金額がすべてPPh Pasal23源泉徴収の対象であるという拡大解釈を行なうケースが散見されていたが、この税金はサービス料金に課されるのが主旨であって派遣された労働力に対する報酬はその課税対象から除外されるべきだ、と投資ビジネス勧告センター役員は述べている。ただしこの問題に対する国税総局本庁の見解はまだ示されていない。


「年次SPT届出の電子化がはじまる」(2009年1月30日)
国税総局が電子データによるSPT Tahunan(年次納税報告書)提出システムを開始した。2009年1月20日付けで制定された電子データ形式のSPT提出プロセスに関する国税総局長規則第6/PJ/2009号で国税総局は、e-SPTと命名された電子データによる所得税納税申告プロセスの詳細を定めた。この方式によるSPT提出を望む納税者はまず所轄の税務サービス事務所に登録しなければならない。登録が受け付けられると納税者は無料でe-SPTアプリケーションを与えられ、そのアプリケーションプログラムで作成したSPTをCD・ディスケット・フラッシュディスク・その他の電子データ記録媒体に書き込んで登録の行なわれた所轄税務サービス事務所に届け出るのである。
上の国税総局長規則制定日より前に登録がなされていた納税者は2009年7月1日から、制定日より後に登録が行なわれた納税者は登録日から6ヵ月後にe-SPTの提出が認められる。上で登録日と言っているのは、登録されたことを証明する国税総局長決定書の日付のこと。この有効日条件を満たさないe-SPT提出は提出されなかったと見なされ、有効日後再度提出を行なわなければSPT提出義務を果たしたことにならない。また有効日条件を満たさないe-SPT提出者には罰が与えられる、と国税総局は警告している。
NPWP保有者が1千万人を超えたいま、国税側はSPT内容チェックをいかにスピーディに行なって大量の報告書をさばこうかとてぐすね引いて待ち構えているようだ。


「労働省の就職サービスセンター」(2009年2月9日) 労働市場に対する大学の関わり方は最低限のものでしかない。それは労働市場に関する情報が完全でないこと、そしてそんな情報を得るためにかなりの出費を必要とすること、加えて労働市場で求められている労働力の資質が就職希望者の持っている資質と異なっており、更に労働市場での需要に学卒者供給がフィットしていないことがそんな状況を生んでいる原因だ、とエルマン・スパルノ労相が発言した。「現在労働市場の学歴別比率を見ると、ディプロマやストラタ1以上といった高学歴者は7%しかおらず、反対に小学校卒は53.9%を占めている。このような状況を改善するために労働省はEmployment Service Centerを設けた。これはいくつかの大学と協力して開設された労働力を育成訓練するための機関であり、労働市場の就職希望者に基礎的な能力を持たせるための訓練を施すと同時にかれらの就職機会を提供することを主目的にしており、オンライン求人情報提供、就職希望者登録、能力開発指導と訓練、履歴書作成やインタビューに関する諸アドバイスなどの活動が予定されている。このセンター活動によって2009年には260万人の就職を実現させたい。大学新卒者だけでなく、卒業してから何年も就職ができずにいるひとびとにも就職チャンスが提供されることを期待している。」労相はエンプロイメントサービスセンターの概略についてそう説明した。

「法人所得税予定納税分に軽減措置」(2009年3月2日)
政府は2009年2月11日付け国税総局長規則第PER-10/PJ/2009号で、グローバル経済クライシスの影響を受けて業績が悪化している企業に対しPPh Pasal 25(第25条所得税)を最大で25%まで軽減することを決めた。第25条所得税というのは当年所得税の予定納税で、その金額は前年のSPT(年次納税報告書)の内容によって決まる。年間所得税確定額は一年間の会計を締めたあとで決まるのだが、それが予定納税合計額より大きければ不足分はPPh Pasal 29として納税され、反対に予定納税合計額より小さければ過剰納税分は戻税される。2009年は2008年より業績が悪化するのが確実という企業は、2008年の業績見込計算を行なって毎月納めなければならないPPh Pasal 25の減額を最大25%まで国税総局に申請できる、という救済措置が上の国税総局長規則で打ち出されたのである。ただしこの救済措置は、銀行、国公有事業体、株式市場上場企業、法規によって定期決算報告義務が与えられている企業には適用されない。
国税総局によれば、この救済措置適用を望む企業は2009年1〜6月の軽減措置に関して2009年4月30日までに、2009年7〜12月の軽減措置は2009年6月30日までに納税者登録を行なった所轄の税務サービス事務所に届け出ることとなっている。
2009年上半期の軽減措置申請については、2008年SPTの法人所得税計算もしくは2008年の法人所得税仮計算を添付して2009年の推定所得税計算を記入した付表Iと?を添えて希望軽減額を明記した申請書を提出する。申請書には経営者/取締役が署名する。
2009年下半期の軽減措置申請は、申請時までの2009年収益高にもとづく所得税見込み金額の計算を添付し、2009年12月までの推定収益高を記入した付表?と?を添えて希望軽減額を明記した申請書を提出する。
申請を受けた税務サービス事務所は申請会社の事業状況を審査して15日以内に決定を下さなければならない。申請者は承認もしくは却下の回答を期限内に税務サービス事務所からもらうことになる。期限内に回答がなければ申請は承認されたと見なされるので、申請者は税務サービス事務所に対して承認書を要求する必要が出てくる。
しかし、今回出されたPPh Pasal 25軽減措置は2009年1月にさかのぼって適用されるものでないため今年1月2月の納税分は諦めるしかなく、また納税期限は毎月15日であるためそれまでに申請の承認回答が手に入らなければ3月も軽減を受けることはむつかしい。「この方針は優れたものだが、迅速に実施されなければ効果は薄い。どうしてもっと早くから用意されないのか?」と経済オブザーバーのひとりは鈍感な行政を批判している。


「徴税者が店の会計をオンラインモニター」(2009年3月12日)
都庁は地方税であるホテル・レストラン税や遊興税ならびに駐車場税の対象事業者に対する本業収入を直接モニターするために2009年からpajak onlineと称するオンラインでの収入データ報告システムを実施する計画を進めてきた。設備インフラやソフトウエアなどシステム開始準備のために都庁は80億ルピアの予算を計上しており、このシステムのトライアルにはイジービザ、スターバクスカフェ、ホテルトロピカル、マクドナルド、バーガーキング、ブリッツメガプレックスなど11納税者が参加している。
都庁税務サービス局データによれば、都内にはレストラン5千7百軒、ホテル4百軒、遊興事業8百軒という多数の対象事業所があるが、システム開始初年度はそのうちの8百軒がシステム実施対象に選ばれる。モニターシステム運営はITシステム会社に委託され、指名入札は近々実施される予定。しかしこのオンラインモニターシステムにスピーディネットワーク、コンピュータインストールプログラム、リアルタイムオフラインシステムのどれを使うかまだ結論が出されていない。
ところで業界者側は都庁が計画している事業会計データのすべてをモニターする方針に強い危惧を表明している。「基本方針に反対しているわけではない。しかしすべての金の動きを徴税者がモニターするのは行き過ぎではないか?われわれはその中で事業利益を手にする権利を持っているのだ。都庁はすべての金の動きをモニターするのでなく、その一部だけに限定するべきだ。地方税として売上の10%を得る権利を持っているのだから、その部分だけをモニターすればよいではないか。それ以外の部分はわれわれが自分のシステムで管理するようにしたい。この要請は既に都庁に申し入れてある。」ホテルレストラン会首都支部長はそう語っている。一方ホテルレストラン会中央役員会会長は次のようにコメントしている。
「地方自治が行なう地方税の税収向上は収入喪失要因に配慮したもっとフレンドリーなアプローチで行なわれるべきだ。現金収入に記帳してもその時点で入金していないものが少なからずある。外国のトラベルエージェントからの回収コストや金を払わないでドロンする宿泊客のケースはどこでもいくらも起こっている普通の事柄だ。ホテル会計の中でそれらの要素は現金科目に入れられる。地方自治体はそのような実態を理解しなければならない。都庁が実施しようとしているパジャッオンラインが開始される前に都庁は業界とさまざまな問題を話し合い、最善の解決策とそのインパクトおよびメリットの明確な理解を持ってシステム実施に取り掛かってほしい。」
しかし都庁観光局長はホテルレストラン会からの申し入れについて、都庁と業界の双方にポジティブで有益な結果をもたらすパジャッオンライン実施に必要なのは双方の真摯な合意である、と語った。「この企画は納税者に税額計算の手間を省かせて便宜を供与するものであり、納税者の使っているシステムとの調整は当方が行なうので、決して事業者に面倒をかけることはない。」
税務サービス局長も、「都庁担当職員がパジャッオンラインシステムを歪んだ形で使うようなことは絶対しない。納税者側のシステムを損なったり会計を混乱させるようなことは決してない。」と保証している。


「2009年税務調査ターゲットが指示される」(2009年3月16日)
国税総局長は2008年度年次納税報告書(SPT Tahunan)に対する2009年税務調査からの追加税収目標を13兆ルピアと決めた。2009年調査終了計画と戦略に関する2009年2月24日付け国税総局長回状第SE-02/PJ.04/2009号では、税務調査の方針として全国ターゲットと各税務サービス事務所ごとのローカルターゲットに分けられた重点調査対象が設けられている。法人納税者対象調査フォーカスは、GDPデータ、調査結果修正バリュー、所得税収入、オーディットカバー率、一般市民からの通報などに基づくこととされ、このカテゴリーでは次の14事業セクターが全国調査対象ターゲットに指定されている。石油ガス鉱業と鉱業サービス、セメント・石灰・ギプスおよびセメント・石灰加工品、ベースメタル産業、建設業、四輪車二輪車販売・修理・メンテナンス業と自動車燃料小売販売、国内大規模商業で四輪車二輪車を除くもの、四輪車二輪車を除く小売業と家庭用個人用物品修理業、四輪車二輪車以外の輸出貿易、四輪車二輪車以外の輸入貿易、星級ホテル、レストラン・食堂・バー・ケータリング、電気通信、不動産と広告サービス業。
一方、個人納税者対象調査フォーカスは、合計が5億ルピアを超える投資金額を持つ投資家、レストラン・建材店・四輪車二輪車修理業のオーナー、法律コンサルタント・医師・公証人、セラブリティと社会的著名人、現職あるいは退職した中央政府・地方政府の行政高官、現職あるいは退職した中央・地方法曹界の高級官職者、現職あるいは退職した中央・州・県・市の議会役職者と議員候補者。
さらに各税務サービス事務所は上の全国ターゲットに加えて所轄地区の特色に応じた特定事業セクターをローカルターゲットとして設定しなければならない。ただしローカルターゲットとされるのは法人納税者に限られる。2008年以前のSPTに対する税務調査は2009年第3四半期までに完了させるようその回状では指示されており、また2009年に発行された調査命令書は年末時点で70%が調査を完了していることという作業目標も設けられている。


「JKDKはお恵み思想か?!」(2009年3月17日)
ジェーカーデーカー(JKDK)と呼ばれている労働制度が首都ジャカルタとバンテン州セラン県およびタングラン市、西ジャワ州ボゴール県で実施されている。Jaminan Kecelakaan Diri dan Kematian(本人事故被害と死亡補償)というのがJKDKの意味で、首都ジャカルタでは2006年8月28日に都知事規則第82号として制定され同年9月7日から施行された。セラン県ではもっと古い2004年に県令決定書第4号で「セラン県所在企業の従業員に対する就業時間外・会社業務外の本人事故被害補償」制度が定められている。
地方法規として定められたこの制度は従業員福祉という観点から雇用主が従業員を丸抱えで保護せよと求める行政側の思想を反映したものと思われるが、就業時間外・会社業務外で従業員を管理監督する責任が雇用主にはないのに従業員の生活福祉のためにただ保険料を出せと命じる行政の労使対等観念不在をあらわに示す思想の産物であり、労使関係が強者弱者関係という観念の中に置かれていることに加えて強者は弱者を保護するのがうるわしい社会のありかたであるという社会観がその底流にあるにちがいない。要は、持てる者が物乞いをする貧者に理屈なしにお恵みを与えるのが人間としてのあるべき姿という人間観に根ざすものだろう。ラマダン月がくるたびに大都市で物乞いビジネスが盛んになるのは、この人間観が依然として民衆の生活の中に強く根を張っていることを証明する以外のなにものでもあるまい。対等な人間関係をベースにする社会がこの地に出現するのはまだまだ遠い先なのかもしれない。
さて、このJKDK制度をアピンド(インドネシア事業者協会)は、国際スタンダードから見て普遍性を持っていない制度であるとともに地方法規で義務付けられるのは国民平等の権利に反するものであるとして制定当初から反対姿勢を続け、施行が開始されたあと最高裁に司法審査の訴えを起こした。JKDK制度を施行された地方に所在する会社は従業員を国が義務付けたジャムソステックに加入させなければならず、おまけに地方自治体が義務付けるJKDK制度にも加入させるという二重構造が形成されたわけだ。首都ジャカルタではJKDK制度運営が厳しく実施されたものの、都庁はJKDK保険の取扱い会社を一社だけ指定したため独占事業の環境を生み出し、おまけに都庁労働局はすべての許認可交付条件の中にJKDK加入を証明する書類の提出を定め、また労働協約の中に会社側のJKDK加入義務が盛り込まれていなければ労働局は認証を与えないという対応すら取っている。
ところが最高裁は司法審査でアピンドの申し立てを支持し、JKDKに関する地方法規の廃止を命じた。その判決が出されたのは2008年9月17日だったが、アピンド上層部がそれを知ったのはなんと2009年3月に入ってからだった。最高裁判決文には、地方自治体はこの判決文送付後90日以内に当該法規を破棄しなければならない、と命じられているのだが、自治体側からのそのような動きはいまだなにもない。ソフィヤン・ワナンディ、アピンド会長はJKDKが施行されている四地方所在企業に対し、JKDK保険料支払をやめるよう呼びかけている。


「SPTを期限内に提出しなければ罰金」(2009年3月18日)
国税総局は今年から年次納税報告書(SPT Tahunan)の提出に関して違反者に対する罰則適用を励行する意向。年次納税報告書を期限内に提出しなかった場合には、それを遅れて提出してもまったく提出しなくても、罰金として法人納税者は100万ルピア、個人納税者は10万ルピアが科される、と国税総局広報サービス指導局長が言明した。年次納税報告書を期限内に提出しない場合の罰則は税務手続と一般規定に関する2007年法令第28号第1章第7条に定められており、故意でない場合の罰金は最低で納税額の1倍で最高は2倍、体刑は入獄3ヶ月が最低で最高は1年となっている。更に同法令第39条には故意に提出しなかった場合の罰則が規定されており、こちらは罰金が最低で納税額の2倍で最高は4倍、入獄は最低6ヶ月最高6年となっている。
2008税務年度の年次納税報告書提出期限は、個人納税者が2009年3月31日、法人納税者は2009年4月30日とされている。愉しいことはすぐにでも行なうが、そうでないことがらは最後のぎりぎりになるまで行動を起こさないインドネシア人の特性に従って年次納税報告書提出も締切日の数日前から全国の税務サービス事務所は大混雑となり、申告書提出受付の順番を待つ納税者たちが長蛇の列をつくるのが年中行事になっている。国税総局長は毎年「もっと早く提出するように」と国民に要請するものの、できれば避けたいことがらはもう後がないという状態になってからはじめて動くという国民性を変えるのは並大抵でできるものではない。国税総局は今年、その習慣を変えさせるべく新機軸を打ち出した。締切日の2週間ほど前から全国の税務サービス事務所に年次納税報告書投函箱を設置して長蛇の列をなくそうというのがそのアイデアで、また年次納税報告書提出者は自分が登録されている税務サービス事務所に提出する必要がなくなり、どこの税務サービス事務所へ持っていっても受け取ってもらえることになった。納税者に対する年次納税報告書提出の習慣付けを国税総局は狙っているようだ。


「偽造NPWPカードがバタムに登場」(2009年3月24・25日)
国税総局が個人納税者拡大を目的にしてNPWP保有者に出国フィスカル免除の特典を与えたことから、がぜんNPWPに焦点が当たるようになった。NPWPというのは納税者基本番号のことで、居住地を管轄する税務サービス事務所(日本で言えば所轄の税務署)に納税者登録を行なうと小型のNPWPカードとA4サイズのSurat Keterangan Terdaftar(登録証明書)という書類が与えられる。このNPWPというのは税務署が納税者を管理するための基本番号であり、逆に言えばNPWPがないと納税を行っても納税義務を果たした人間が税務署で管理されない、という状態になる。これほど国民にとって馬鹿げた話はない。インドネシアの行政非能率はあらゆる政府機関に蔓延しており、昔は納税者登録にたいへん長い日数を要したため「普通の人間は払いたくないと思っている納税をあえて行おうとしたのに、その意欲に国税が水をかける。国税総局は国民の納税を望むのか望まないのか?」と心ある国民たちが怒りの声をあげたことがある。
インドネシアの税法では、Penghasilan Tidak Kena Pajak(略称PTKPつまり非課税所得)を超える所得を得た場合はすみやかに納税を行なう義務を国民に負わしている。PTKPとは納税金額算定の際に年間所得から控除される金額を意味しており、これは本人控除分と既婚者控除分から成っている。2009年はこの控除金額が増やされた。過去の控除金額の変遷は次の通りだ。
期間 / 本人控除(千ルピア) / 既婚者控除(千ルピア)
1983〜1994年 / 960 / 480
1985〜2000年 / 1,728 / 864
2001〜2004年 / 2,880 / 1,440
2005年      / 12,000 / 1,200
2006〜2008年 / 13,200 / 1,200
2009年〜    / 15,840 / 1,320
給与所得者はこのほかに職務経費(biaya jabatan)5%も控除されるが、この詳細については「所得税控除額が増加」(2009年01月23日)を参照ください。ともあれ、PTKPをオーバーする所得が発生すれば国民はすみやかに税務サービス事務所に届け出て納税手続を開始しなければならないというのが税法の趣旨であり、言うまでもなく国税側はNPWPを付与した人間をそれ以降管理していくから、翌年は所得がPTKP以下であっても税務申告は続けていかなければならない。一度与えたNPWPの管理は対象者が死ぬまで続けられるので、所得のない年であっても税務申告はしなければならず、定年退職者に対しても同じロジックが用いられる。国税側は、定年退職したからと言って所得がゼロというのはありえず、生活を営んでいる以上は所得があるはずであるからそれを申告せよというロジックで向かってくる。もちろん納税すべき金額欄にゼロが記載されていてもかまわない、とかれらは言う。インドネシアの税法はセルフアセスメントを基本コンセプトにしており、納税者が給与所得者で他に所得が一切なくとも年次納税申告を行なわなければならない。
給与支払者は源泉徴収義務を負わされているので毎月従業員の給与から税金を天引きして納税しているが、あれは給与支払者が自分に与えられた税法上の義務を果たしているだけであって、従業員の納税手続を代行しているわけではないのである。だから個人納税者はすべて、給与所得者であろうとなかろうと、給与所得以外の収入があろうとなかろうと、必ず自分の年次納税申告書(SPT Tahunan)を期限内に提出しなければならない。
そのような原理になっているため、今年からNPWPと出国フィスカルが関連付けられたので、所得はないがNPWPをもらっておけば得だ、という軽挙妄動はやっかいなお荷物を背負い込むことになるという気がする。出国フィスカル制度が2011年1月1日をもって廃止されることは所得税に関する法令最新改訂版である2008年法令第36号第25条(8a)項に明記されており、得をする期間ははなはだ短い。一方で年次納税申告書を期限内に提出しなかった納税者への罰金措置励行を国税総局が言い出している昨今、罰金額が今後どう膨らんで行くのか、われわれに先は読めないのである。NPWPを申請するというのは、自分にPTKPを超える所得がありそして納税をしたいので自分を納税者として管理してほしい、と税務署に『自主申告』することと同じ意味であることを忘れてはならない。
しかしダメ元でヤバイ橋を渡ろうとする人間も少なくないのがインドネシアだ。バタムセンターフェリーターミナルでシンガポール向け出国者がフィスカル免除手続の際に示したNPWPカードの中に偽造品が含まれていたことをバタム市筆頭税務サービス事務所が公表した。偽造NPWPカードはバタム市筆頭税務サービス事務所が発行した形を取っているものの、税務サービス事務所にはそれに該当する登録データがない。また書類上の表示も公式のものはコンピュータプリントであるのに、ニセモノは電動タイプのフォントになっており、また書類のブルーの色合いが異なっている。フェリーターミナルの出国フィスカルNPWP免除窓口担当職員によれば、3月に入ってから半月間で偽造NPWPを5枚発見し、それを提示した出国者にはフィスカル免除を与えなかったとのこと。NPWP偽造は公文書偽造犯罪に該当するわけで窓口職員はそのことを理解していなかったわけでは決してないものの、偽造書類を使おうとした者に対する措置に関する指示を受けていなかったために、偽造公文書使用犯罪者に対してはフィスカル免除を拒否しただけで終わっている。しかし例によって、犯罪行為が時に成功しまた時にはしょっ引かれるという不確定性の中にあるインドネシアだから、出国フィスカル免除用偽造NPWPの試用が今後全国の出国場所で発生し続けるのか、それとも国税の標準手順書に犯罪行為者への対応が既に記載されていて窓口職員がてぐすねひいて詐欺犯の登場を待ち構えているのか、いったいどちらなのだろう。


「個人納税申告期限は明日」(2009年3月30日)
個人納税者の年次納税申告書(SPT Tahunan)提出期限があと一日と迫った。昨今、街中の税務サービス事務所前を通ると多数の車が一車線だけ残して歩道から車道までを埋め尽くしている状況に接することがある。国民がコンプライアンスを行なおうとする姿勢は清々しいものなのだが、道路交通の快適さが損なわれるのは残念としか言いようがない。何かを良くすればどこかがおかしくなるというのはここの社会の宿命なのかもしれない。
ダルミン・ナスティオン国税総局長は、今年のSPT提出率目標を35%に置いたことを明らかにした。今回のSPT提出は昨年から個人納税者が大幅に増加し、統計上は1,270万の個人法人納税者が国税納税者データベースで管理されている。過去例年のSPT提出率は35〜40%というレベルだったので、今年は環境が激変していることから35%を目標に据えたと総局長は語っている。期限を守るということの不得手なインドネシア人だから、今年から期限遅れ罰金を科されてもこれまで同様に遅れて提出されるものが多数に上るだろうと総局長は見ている。なぜなら、納税者の多くは罰金10万ルピアが軽い金額だと考えているからだ。だから総局長の言っている35%というのは3月末と4月末の期限日までで締め切ったものでなく、年間を通じての提出と定義付けられている。期限遅れで提出されるSPTは今回も多数にのぼるだろうが、それでも3月31日の個人納税者提出締切日と4月30日の法人納税者提出期限日には全国の税務サービス事務所は相当混雑するだろう、と総局長は予測を述べている。


「税務調査メインターゲットは外資内資の大型企業」(2009年4月3日)
2009年調査終了計画と戦略に関する2009年2月24日付け国税総局長回状第SE-02/PJ.04/2009号で2009年税務調査からの追加税収目標が13兆ルピアと定められたことは「2009年税務調査ターゲットが指示される」(2009年3月16日)で報道されているが、2009年度税務調査は追加税収獲得を目的としたものでない、と国税総局広報サービス指導局長が表明した。「年間税収目標を達成するために国税総局は内部外部での税収増を図らなければならず、税務調査も当然その中の一要素である。しかし追加税収ターゲットが示されたからといって、税務調査官はそのターゲット達成を最重点原理に置くわけではない。調査結果としての年次納税申告書訂正は税法規に則ったものでなければならず、だから焦点は藁しろの中で針を探すような行為に向かわない。調査の焦点は税務面でコンプライアンスが低いセクターに向けられる。もしも調査官が一方的に訂正を命じるようなことがあれば、納税者は抗議を行い税務調査発見事項の検証を求めることができると税手続一般規定法で定められている。」
税務調査による追加税収のうち9.47兆ルピアはジャカルタに割り当てられている。首都ジャカルタの税収実績が予測から大きくはずれていることを国税上層部がひしひしと感じている実態を示すものだと言えよう。ジャカルタの諸地方事務所はそれぞれに割当が与えられており、全国ターゲットに加えてローカルターゲットを設定してその割当を消化しなければ、各地方事務所上級官職者の勤務評定に関わってくるのは言うまでもない。そのような仕組みが変化しない以上、いくら国税総局本部がべき論を主張しても実態に変化は起こらないだろう。ともあれ、各地方事務所の金額予算とローカルターゲットを下記しておこう。
1)中央ジャカルタ地方事務所 5,950億ルピア 金融仲介サービス:陸上運送とパイプ経由の供給:出版・印刷・記録媒体コピー:ゴムとゴム製品・プラスチック製品製造
2)西ジャカルタ地方事務所 2,700億ルピア 空運:観光サービスと運送及び補助補完サービス:映画・ラジオ・テレビその他娯楽:スポーツその他レクレーション
3)南ジャカルタ地方事務所 5,700億ルピア 保健と社会活動サービス:映画・ラジオ・テレビその他娯楽:スポーツその他レクレーション:金融仲介サービス:保険と年金資金運用
4)東ジャカルタ地方事務所 2,350億ルピア 金融仲介サービス:その他金融仲介:保険と年金資金運用:医薬品とジャムゥ製造 5)北ジャカルタ地方事務所 2,370億ルピア 陸上運送とパイプ経由の供給:観光サービスと運送及び補助補完サービス:四輪以上の自動車を除く自動車製造:金融仲介サービス:その他金融仲介
6)ジャカルタ特殊地方事務所 1.9兆ルピア 価格移転による納税回避を行っていると見られる納税者:グループ会社
7)大規模納税者地方事務所 5.66兆ルピア 価格移転による納税回避を行っていると見られる納税者:グループ会社
6)7)の外資系および内資系大型企業がターゲット金額のメインを占めていることがよくわかる。


「国税総局広報」(2009年4月21日)
インドネシア共和国大蔵省国税総局
広報サービス指導局告知
(第PENG-06/PJ.09/2009号)
「法人納税者所得税年次納税申告書提出」
2009年4月30日の法人納税者所得税年次納税申告書提出期限に関連して、次の通りお知らせする。
1.法人納税者(WP Badan)に対し、長い待ち行列を避けるために上述期限日より早めに所得税年次納税申告書(SPT Tahunan PPh)を提出するよう、理解と協力をお願いする。
2.法人納税者が作成しなければならない所得税年次納税申告書はフォーム1771であり、そのフォームはすべての税務サービス事務所(KPP)・税務指導相談サービス事務所(KP2KP)・繁華街にある税務コーナー(Pojok Pajak)から、あるいはウエッブサイトwww.pajak.go.idからダウンロードして入手できる。
3.所得税年次納税申告書は正しく明瞭に不足なく記入し、経営者・取締役が、あるいは署名を委任された者は専用委任状を添付して署名する。
4.納税不足があった場合、納税銀行あるいは郵便局にて納税を行うように。
5.記入された所得税年次納税申告書は最寄の税務サービス事務所や税務指導相談サービス事務所に直接あるいは書留配達サービスで、もしくは税務コーナー経由で提出するように。
6.国民に対するサービス向上のため、全国の納税銀行・郵便局・税務サービス事務所・税務指導相談サービス事務所は次の通り業務する。
a.2009年4月18日と25日(土曜日)は現地時間12時(正午)まで。
b.2009年4月30日(木曜日)は、納税銀行と郵便局が現地時間17時まで、税務サービス事務所と税務指導相談サービス事務所は現地時間19時まで。
7.更なるお問い合わせは、税金電話500200番、繁華街にある税務コーナー、国税総局地方事務所、税務サービス事務所、税務指導相談サービス事務所にどうぞ。
国民に周知されるよう、上の通りお伝えする。
2009年4月14日、ジャカルタにて
広報サービス指導局長
署名
ジョコ・スラメッ・スルヨプトロ


「4百万人がSPTを提出」(2009年4月22日)
2009年3月31日の個人納税者所得税年次納税申告書提出期限日までに提出された所得税年次納税申告書(SPT Tahunan PPh)は4,153,736通で、これは2008年12月31日時点でのNPWP(納税者番号)保有者合計880万人の47%に当たる。2009年3月31日時点でのNPWP保有者総計1,170万人に対してなら37.2%というレベルだ。
この提出された申告書数というのは、提出申告書に対して出された受領書の数を数えたものであり、提出された申告書そのものが数えられたわけではない。申告書そのもののカウント作業は税務職員が個々の申告書内容をチェックしながら行なわれるため、正確な数字はもっと後になる。ドロップボックスに入った封筒に複数の申告書が入っているケースも多々見受けられることから、実数は上のクイックカウントよりも大きくなるものと見られている。ダルミン・ナスティオン国税総局長は目標を35%と置いていたためこの成果は予想外の好成績であり、2006年の実績は29.6%なので国民の納税意識はこの数年で大きく高まったと見ることができる。
ところで国税総局長は、所得税年次納税申告書の期限を守らなかった納税者に対して10万ルピアの罰金を科すことを先に公表していたが、一部の対象者は除外するとの方針変更を発表した。除外対象者は2008年1月1日から2009年3月30日までの間にNPWPの交付を受けた納税者で、かれらは納税申告のプロセスをまだ十分に理解していないために罰金適用だけは除外すると総局長はその理由を明らかにした。この罰金不適用は2009年末で打ち切られるため、除外対象者であっても提出が2010年に入れば罰金は適用される。しかし納税遅れに課される金利ひと月2%は国税総局の権限外であるため、この免除はできないとのこと。申告書提出は登録した税務サービス事務所に限定されないこと、また提出時に税務署員の内容チェックを受ける余裕がない場合はドロップボックスに投入して構わないこと、などは今後も継続されるので、それらの便宜を最大限に利用して申告書の提出を怠らないようにしてほしい、と国税総局側は納税者に要請している。


「NPWP未保有者狩りは継続」(2009年4月23日)
国税総局のサンセットポリシー、NPWP保有者への出国フィスカル免除政策、昔から継続されている納税者拡大掘下げ方針などの複合的な成果が2009年1月〜3月の三ヶ月間に出現した。2008年末のNPWP保有者数8,807,966は2009年3月末時点で11,167,285に増大したのである。3ヶ月間での2,359,616という増加は、会社経営者・監査役・オーナー・株主および会社従業員を対象に行われている個人納税者拡大方針の成果が2,007,277にのぼり、土地建物税個人納税者に対するNPWP交付が17,723に達した。
国税総局は2009年の新規NPWP交付目標を170万としていたが、それは今年最初の3ヶ月でオーバーしてしまった。おかげで目標は更にアップされ、今現在の暫定目標は280万になっている。全国の地方事務所は今年のターゲット見直しを求められており、それが集計された時点でことしの目標が更に上増しされる可能性は小さくない。ともあれ、国税総局の全組織は今年いっぱいNPWP保有者拡大方針を継続しなければならない。ダルミン・ナスティオン総局長は、納税義務を負う個人納税者をひとりでも多くデータベース管理したい意向であり、その納税や納税申告の遂行は時間をかけて追い込んで行く方針を立てているようだ。
NPWP未保有納税者の発掘を総局長は、ザハイエストビルディング方式を用いて行なう、と示唆した。これはつまりオフィスビルを、中でも入居者の多い大型ビルを優先ターゲットにして、そこに入っている会社に戸別訪問調査を行い、会社のオーナーや株主あるいは役員、更に雇用されている従業員のNPWP保有状況を確認して抜けがあれば確実につぶしていこうとするもの。また都内ではメンテン(Menteng)やトゥベッ(Tebet)などの高級住宅地区で、居住者のNPWP保有状況を洗い出す作業も行なわれている。国税側のこの調査は2009年を通して実施される予定。
ところで所得税年次納税申告書(SPT Tahunan PPh)の期限内提出が47%に向上したことについて国税オブザーバーのひとりは、「申告を期限内に行なわなかった納税者の中には、今年の総選挙・大統領選挙で国内の政治態勢が変化し、万が一にも申告書の提出をしなくてもよくなることを期待している者がいる。」という意見を述べている。国家経営の基本である納税のベースがそうコロコロと変わるものでは・・・・とわれわれ外国人は考えるのだが、あながちそう言い切れない要素が存在しているのも確かだ。実にインドネシアならではの指摘ではないだろうか。


「国税総局広報」(2009年4月30日)
インドネシア共和国大蔵省国税総局
広報サービス指導局告知
(第PENG-07/PJ.09/2009号)
「個人大規模納税者税務サービス事務所開設」
税務行政モダン化の一環として、2009年4月1日付け大蔵大臣規則第62/PMK.01/2009号にもとづき、個人大規模納税者税務サービス事務所が開設された。それに関連して、次の通りお知らせする。
1.個人大規模納税者(WP Besar Orang Pribadi)税務サービス事務所は南ジャカルタ市トゥベッラヤ(Tebet Raya)通りNo.9を住所として2009年5月1日から業務を開始する。
2.個人大規模納税者税務サービス事務所は、国税総局長決定にもとづいて定められた個人大規模納税者の納税管理を行なう。
3.個人大規模納税者税務サービス事務所が取り扱う税種は、所得税(PPh)、付加価値税(PPN)、奢侈品税(PPnBM)、その他間接税である。。
4.更なるお問い合わせは、税金電話500200番、またはウエッブサイトwww.pajak.go.idにどうぞ。
国民に周知されるよう、上の通りお伝えする。
2009年4月16日、ジャカルタにて
広報サービス指導局長
署名
ジョコ・スラメッ・スルヨプトロ


「12州で失業状況赤ランプ」(2009年5月11日)
失業問題に関して状況のよくない12州に対し、エルマン・スパルノ労相が赤ランプであるとの警告を発した。これは失業者数の多さと失業率の高さの両面から警戒を要するとして取り上げたもので、失業者数最大の西ジャワ州は率でも10%を超えているが、失業者数第二位の東ジャワ州は率が西ジャワの半分しかない。労相が警告を与えた12州の詳細は次の通り。(失業者数は2008年2月の中央統計庁データで、失業者率は住民就業者数に対する失業者数の比率。)
州 / 失業者数(人) / 失業者率(%)
1)西ジャワ / 2,262,410 / 12.3
2)東ジャワ / 1,255,890 / 6.2
3)中部ジャワ / 1,234,650 / 7.1
4)バンテン / 601,840 / 14.2
5)北スマトラ / 566,480 / 9.6
6)ジャカルタ首都特別区 / 504,130 / 11.1
7)南スラウェシ / 343,760 / 10.5
8)南スマトラ / 292,050 / 8.5
9)ランプン / 230,390 / 6.3
10)リアウ / 208,930 / 9.4
11)西スマトラ / 206,740 / 9.7
12)アチェ / 163,870 / 9.2
政府は失業対策のひとつとして、従業員解雇に関連して労使二者間協議を奨めているが、場合によっては労使行政三者間協議を行なう形で介入することもある。その場合でも行政はあくまで仲介者の位置に自分を置くことを原則にしていると労相は強調している。また労働現場におけるコンプライアンス向上のために労働監督官制度が設けられているものの、地方自治の時代に入ってその不足が顕著になってきた。現在全国で稼動している監督官は3千人で、これは必要数の半分以下だと診断されている。早急に4千人の追加が必要とされているにもかかわらず、一年間に養成できるのは1千5百人だ。
失業者対策として政府が取っている政策の中には国民教育を職業に結びつける方針があり、職業高校を充実させるとともに実業界と教育界を結び合わせる就業機会提供に力を注いでいるのもその表れのひとつだ。しかし国民教育分野では依然として関係者の思考がアウトプットオリエンティッドになっており、ジョブオリエンティッドへの意識変革はまだ時間を必要としている。就職紹介ビジネスやフェアの開催も盛んに行なわれるようになってきているものの、実態は求人トータルの30%しか採用が起こっていない。これは求職者の持っているフィーチャーが求人側の求めるスペックにフィットしていないことが主因であり、人材レベルアップのための教育の必要性が叫ばれている。


「青年労働力に失業が蔓延」(2009年5月20日)
労働市場の需要にフィットしていない知識技能に加えて妥当性を欠く賃金水準のために15歳から24歳という青年労働者層の失業状況は目を覆うようなありさまになっており、労働省データによれば、その年代でフォーマルセクターに吸収されている人口はわずか28.6%にすぎない。失業者数を比較するなら青年層はその上の世代よりも人数で5倍以上に達していると見られている。
2008年2月の中央統計庁調査では、15〜19歳労働人口7,532,910中の失業者数は1,798,582人で、20〜24歳は労働人口14,095,779中失業者数2,763,203人となっている。
若い時期に適切な勤労機会を得ることの出来なかった勤労者はその後の能力開発で十分な発展が困難な傾向を示していることから、現状が長引けば将来の勤労者クオリティ低下は避けられないのではないか、と労働行政関係者は懸念している。


「金持実業家が税務調査のターゲット」(2009年5月25日)
国税総局が2009年5月1日に都内南ジャカルタ市トゥベッラヤ(Tebet Raya)通りNo.9で開設した個人大規模納税者税務サービス事務所は1千2百人の富裕個人納税者が行なう納税の監督を励行するのを使命としている。当初この税務サービス事務所が管理する対象納税者としては、1)企業の株主、大株主、設立者、専門職従事者で株主、2)100億ルピアを超える二つ以上の資産と経済資産や不動産を所有する者、3)所得源泉が給与以外で、年次納税申告所得が10億ルピアを超える者、の3カテゴリーが予定されていたが、ダルミン・ナスティオン国税総局長はその業務開始に際して3カテゴリーの内で企業関連事業者に焦点をしぼるとの方針を明らかにした。本来なら巨大な資産を持つ専門職従事者や元国政高官なども管理対象とされるべきだが、今回は実業家に焦点をあてることにした、と総局長は述べている。かれら富裕事業者が関係している企業あるいは企業グループの年次納税申告書がほぼもれなく国税側の手中にあり、企業とその経営者や中核になっている個人納税者との間の資金の流れがたいへん調査をかけやすい状態にあるためその背景を活用するのが総局長の狙いであるようだ。大型企業の年次納税申告書はほとんどが法人を取り扱っている大規模納税者税務サービス事務所にあることから、クロスチェックが容易に行なえる、と総局長は語っている。「企業は配当を払っていると申告しているのに本人の年次納税申告書にはそれが記載されていないといったことは、クロスチェックですぐにそのシロクロが判明する。」
トゥベッの個人大規模納税者税務サービス事務所が管理対象として抱えた個人納税者は今のところジャカルタ在住者だけになっており、総局長は東ジャワと中部ジャワにも類似の事務所を発足させる計画があることを明らかにしている。国税オブザーバーによれば、国民の納税に対するコンプライアンスはまだまだ低く、脱税は盛んに行なわれている由。ここ数年来よく使われている手口は配当の隠蔽行為で、株主に対して債権債務関係を発生させて会社の利益を供与したり、あるいは物品を購入してそれを株主に使わせるといったものだ。もうひとつはタックスヘイブンに作った子会社に利益移転を行なう方法で、国税側は特にこのタイプの利益移転摘発に注力する意向。


「収益過少申告が脱税手口の主流」(2009年5月26日)
4月30日の法人SPT(年次納税申告書)提出期限を終えて国税総局はさっそく提出されたSPTの調査に取り掛かっている。従来からの傾向としてインドネシアの法人納税者は、事業収入と経費を小さく申告して課税価額をできるだけ小さくし納税金額をミニマイズするという手法を使うのが一般的であり、それに関して国税総局捜査次局長はその手口を使った法律違反の摘発を真剣に行なっていることを明らかにした。「その手口によって国庫収入は数兆ルピアの取りこぼしになっていると推測されるため、当方は真剣な調査を行っている。全国の国税総局地方事務所はその調査を進めて摘発された納税者に法律違反に対する厳格な措置を取るよう指示が出されている。脱税行為の刑罰は最短6ヶ月最長6年の入獄と不足納税額の2倍以上4倍までの罰金だ。」
各地から摘発された法人に関する報告が既に入っている。マカッサルではCV ASTKが過少申告によって41億ルピアの納税不足を発生させたとして取締役が容疑者に指定され、検察側は法廷告訴の態勢に入っている。ジャカルタではPMAのPT FSLが130億ルピアの納税不足額を出したとされて最高検察庁がその取調べを行なうことになっている。デンパサルでは地元スーパーマーケット業界最大のTDGグループが7,129兆ルピアの国庫損失を引き起こしたとされ、スマランではPT RPPが過少申告で48億ルピアの納税不足だとして取締役ふたりが容疑者になっている。他にも全国各地でSPT調査から脱税捜査へとステータスが代わっている事件は多数あるとのこと。国税側は、まずSPTと外部からの入手情報をクロスチェックして脱税行為が行なわれている徴候を見出したなら調査から捜査へとステータスが切り替えられる、と説明している。外部からの入手情報とは、情報データ、報告、訴えなどで、この分野でも密告が重宝されているようだ。


「49ホテルで納税額の68%を負担」(2009年6月1日)
2009年第1四半期首都ジャカルタのホテル数は、都庁データによれば270軒ある。ホテルはその規模と施設内容でクラス分けがされており、スター(星)級ホテルは1級から5級まで、1星級より下のレベルのいわゆるロスメンはジャスミン級ホテル(hotel melati)と称されて1級から3級まで階層が分けられている。首都ジャカルタのジャスミン級ホテルは135軒、1〜3星級ホテルは86軒、4〜5星級ホテルは49軒という内訳だ。
さてそれらのホテルが2009年第1四半期に都庁に納めたホテル税は1,447億ルピアとなっており、2008年第1四半期実績が1,400億ルピアだったから2.8%アップしたことになる。これはグローバル不況にもかかわらず業績が成長していることを示すものであり、ジャカルタのホテル業界は不況の影響を受けていないと見ることができる。しかし実際には総選挙特需がホテル業界をも潤したのは疑いないことであり、総選挙関連での会合・会食・宿泊が不況による業績悪化を救った可能性は大きい。ホテル業界からの総選挙特需に関する分析は特に出されていないようであり、数字の詳細は神のみぞ知ることがらであるようだ。ただしこの総選挙特需が高級ホテルに傾いたきらいがあるのは容易に想像できる。
今年第1四半期の納税額1,447億ルピアの内訳は圧倒的に4〜5星級ホテルのシェアが高く、わずか18%のホテル数で納税額の68%を占めた。数の上では32%の1〜3星級ホテルは納税額が24%、そして総ホテル数の半分を占めるジャスミン級は納税額が8%しかなかった。


「低レベルのデータセンター」(2009年6月29日)
インドネシアのデータセンターは世界のレベルに遠く及ばない、とテレマチックリサーチ機関のシェアリングビジョンが報告した。企業内データ処理機能が一般的なインドネシアのデータセンターはきわめてレベルが低く、国際的に使われている7段階区分に従えばインドネシアのデータセンターは2か3である由。レベルが向上しない原因はいくつかあり、たとえば外部者の入室を遮断しないという保安上の問題がある。54社を対象に行われたシェアリングビジョンの最新サーベイで、インドネシアの企業内データセンターは利用度がきわめて高く重要な役割を担っていることが明らかになっている。データセンターが果たしている機能のトップは取引記録で87%、次いで顧客管理69%、従業員管理63%、財務報告63%、在庫管理54%、第三者データ42%という明細だ。ところがそのような重要データを処理しているデータセンターに入室権限のない鍵を持たない人間が自由に出入りしているのが実態だ。
インドネシアのデータセンターが持っている他の欠点は、グローバルトレンドに即したシステマチックな作業プロセスが実行されていないためデータ保存にエネルギー非効率がついてまわっている。データセンター間の接続はすべて非同期接続を使っており、これはコスト高だ。使われるネットワークの利用バリエーションは見られない。サーバーの仮想化プロセスもすべてのデータセンターで完全に行なわれているわけでなく、そのためにサーバー台数の利用度はきわめて高い。ところが回答者の大半は自社のデータセンターがホットスタンバイ方式を採ることを望んでいることを示している。
多くの会社が97%未満の効率レーシオでUPSを使っているもののデータサーバーとストレージのシステム一体化を行なっておらず、また最善のクーリングシステムを使っていない。インドネシアのエネルギー供給、とりわけ電力供給はたいへん不安定であるにもかかわらず、データセンターの運営には節電がまったく考慮されていない。だから多くの会社がデータセンターをシンガポールに置いているのだ。シェアリングビジョンはそう現状分析をしている。


「奢侈品税が変更される予定」(2009年7月1日)
2009年に入って以来、奢侈品税(PPnBM)収入が前年同期から半減していると国税総局長が発言した。付加価値税(PPN)も前年同期比で24%減少している。PPnBMの半減は国民が奢侈品購入を抑えていることのあらわれだと総局長は見ているが、それでも政府は奢侈品税課税対象物品の減少方針を継続して行なうことを確認した。
ダルミン・ナスティオン国税総局長によれば、従来PPnBM課税対象物品に関する基本的でジェネラルな定義がなかったとのこと。ただし現行システムを一気に変えてしまうのは影響が大きいため困難なので徐々にその変更を行なっていくようにし、基本方針としては国民消費の進行に沿った形で対象品目を減らしていくことになる。品目の減少だけでなく税率のレンジも引き下げて国内市場の活気をもっと盛んにさせることを狙っている。「たとえば国内ではPPnBMがかかるバッグを国民はシンガポールへ買いに行く。だから国内でもその購入ができるようにする。国内での販売が増加すれば、少なくとも国内のバッグ生産者が高級バッグというものに直に触れる機会を得、それに負けないものを作ろうとするだろう。当面PPnBM課税対象から外すものはバッグ・エアコン・オーディオなど比較的サイズの小さいものを考えている。最高税率の200%が課税されるものは数量の少ない本当の意味でのぜいたく品にするつもりだ。」
国会はPPnBMの内容変更について政府の方針に承認を与えた。もちろん作成された政令案は国会にはからることが条件とされている。政府はPPN・PPnBM法に則してPPnBM課税対象物品と税率に関する政令を出すことになっている。その最高税率200%の課税対象が高級乗用車に向けられることを懸念する自動車製造業界と輸入業界は、政府のその方針に対してかなりネガティブな反応を示した。プレミアムカーと呼ばれる高級乗用車の販売にネガティブな影響が及ぶのを怖れてのことだが、PPnBMの改定内容はまだ五里霧中である。


「納税者アカウント制度」(2009年7月2日)
2009年2月のサンセットポリシー実施期限満了で政府の税制改革フェーズ1が幕を閉じた。フェーズ1で国税総局が展開したさまざまな方針は成果をもたらしたものもあれば失敗だったものもある。ダルミン・ナスティオン国税総局長が認めているように試行錯誤的な面がたいへん広範に及んだことは疑いないものの、納税基盤拡充を目指した納税者番号(NPWP)保有者の拡大は大きい成功を示したと言えるだろう。NPWP保有者数の変遷がそれを雄弁に物語っている。
2002年 320万人
2003年 364万人
2004年 305万人
2005年 435万人
2006年 481万人
2007年 710万人
2008年 1,068万人
2009年(5月現在) 1,408万人
フェーズ1は幕を閉じたが、その中で効果の薄かったものの内容をレベルアップさせるフェーズ2がこれから開始されようとしている。このフェーズ2は2009年から2013年までのタイムレンジで、システムと人材の開発をはじめとするさまざまなプログラムが計画されている。スリ・ムリヤニ・インドラワティ蔵相は、国税総局長がだれになろうとフェーズ2は実施される、と政府の方針を表明した。「税制改革の狙いを実現させることの出来る者が国税総局長になる。インドネシアの税制が逆戻りすることがあってはならない。税制改革の精神は国税総局の基盤に浸透しており、それを継続させてモダンな国税システムを実現させていくのがわれわれの使命だ。これはダルミンやわたしのプロジェクトではないのだ。」蔵相はそのように述べてインドネシアの税制が政権の変動とは無関係に目指すべき方向性を強調した。現国税総局長が中銀上級副総裁に転任することが既に確定している状況でのその発言だ。
ソフィヤン・ワナンディ、アピンド会長はそれに関連して、「政府は税制改革フェーズ1の実績を維持しながらフェーズ2でその完成度を高めてほしい。人材とシステムのレベルアップにはたゆまぬ研鑽が必要だ。特に納税者と税務職員のマンツーマンコンタクトを完全に遮断する必要がある。」とコメントしている。
税制改革フェーズ2の中で、個々の納税者の納税履歴が納税者アカウントの形で管理されるようになることをダルミン国税総局長が明らかにした。これは国税総局内で管理されるタックスペイヤーアカウントシステムで、個々の納税者の納税履歴が一目瞭然となり、納税者自身がこのアカウントにアクセスして納税状況を確認し納税の自己管理を図る手引きとなる。このシステム構築には1.45億ドルの予算が見込まれており、世銀からの借り入れでまかなわれる予定。「納税者アカウント制度は銀行アカウントのようなもので、納税実績がすべて記録され、納税者もそれを参照できる。これは国税管理プロジェクトの一部をなしており、プロジェクトが完了すればただちにアカウントシステムが開始される。いつから開始されるかということはまだ言える段階でないものの、2013年までかかることはない。」国税総局長はそう述べている。


「住居への奢侈品税課税が拡大される」(2009年7月13日)
政府はこれまで建物面積400平米以上としていた奢侈品税(PPnBM)課税対象住宅を350平米以上という条件に拡大した。2009年6月10日に制定されて即日施行となった大蔵大臣規則第103/PMK.03/2009号によれば、非ストラタタイトルの住宅やタウンハウスは建物面積が350平米以上あれば20%のPPnBM課税対象となる。それまで有効だった大蔵大臣規則と比較すると、その変化がよくわかる。
2004年大蔵大臣規則第620/PMK.03/2004号
1)建物面積400平米以上の店舗住宅・オフィス住宅を含む住居、あるいは土地を含まない建物販売価格が平米当たり300万ルピア以上の住居
2)床面積150平米以上のアパートメント・コンドミニアム・タウンハウスあるいは同種のもの、あるいは土地を含まない建物販売価格が平米当たり400万ルピア以上の住居
2009年大蔵大臣規則第103/PMK.03/2009号
1)建物面積350平米以上の非ストラタタイトル方式の住居やタウンハウス
2)床面積150平米以上のスタラタタイトル方式アパートメント・コンドミニアム・タウンハウスあるいは同種のもの
アパート等については変更ないが、戸建住居は上のように変更された。この変更について国税総局は、住居の総面積が300平米以上のものは高額でぜいたくな住居であるとの見方が社会的に一般化しており、またデベロッパーも最近の傾向として中小規模の住宅建設を増やしていることから、今回の対象拡大が一般消費者の負担を増すものとはならない、と説明している。また旧規則にあった販売金額を課税対象条件のひとつにするコンセプトは今回廃止された。これは単純明快に建物面積次第で課税対象になるかどうかが決まることによって消費者にもデベロッパーにもわかりやすい課税規準を実現させるものである、と国税側はコメントしている。


「タバコ税新設は闇タバコを増やすだけ」(2009年7月14日)
地方税課金に関する法案の中で政府はタバコ税を新設することを計画している。当初その税率は10〜15%となる見込みだが、政府が国民のタバコ消費抑制と税収向上を目論んで計画しているこのタバコ税は狙った効果よりも国民経済を悪化させる方向に向かうだろう、とタバコ生産者団体役員が表明した。
インドネシアタバコ工場同盟連盟会長によれば、タバコは今現在さまざまな税課金の重圧にさらされているとのこと。輸入関税40%、PPN8.4%、大規模生産者は機械製クレテッタバコ専用チュカイ(特定品目物品税)として1本290ルピア(一箱5,800ルピア)、葉巻タバコのチュカイは1本100ルピアといった税課金が課されており、そこに各州政府が10〜15%のタバコ税を課税すればタバコの市場価格は急騰し、大手タバコ生産者の販売は激減する。「それは市場が縮小するという意味ではない。消費者はこれまでのようにタバコの消費を継続する。市場で何が起こるかと言えば、消費者は合法的に税課金を納めている商品を見放して圧倒的に低価格の非合法タバコを買うようになるだけだ。タバコ税新設はイリーガルタバコ市場を拡大させる以外の何ものにもならない。市場構造がそのように変化することで、タバコ関連産業は年間10兆ルピアの損失を蒙ることになる。」
工業省データによれば、2006年から2008年までの三年間インドネシア国内タバコ製造セクターは次のような進展を遂げている。
タバコ製造会社数 3,961 − 4,793 − 4,900
生産本数(億本) 2,187 − 2,255 − 2,422
雇用者数(万人) 59.95 − 62.95 − 66.0
チュカイ税収高(兆ルピア) 36.96 − 42.03 − 45.80
タバコ生産者業界はタバコ税新設に強い反対を表明しており、大蔵省・国会・内務省にその見直しを求める公式文書を送っているものの反応はまだ何もない。一方業界寄りの方針を取っている工業省はこの問題について、タバコ生産地を抱える地元政府の中にタバコ税新設に反対を表明するところが増えている、とコメントしている。


「労働界はSBY政権支持」(2009年7月16日)
19の労働団体が政府に対し、労働者福祉の向上を図るよう要求している。労働者賃金が労働者に福祉をもたらさないレベルにますます落ち込んでいるばかりか、労働法で定められた最低賃金と適正生活需要との関連も乖離を深める一方である、と全国労働団体指導者フォーラムコーディネータが発言した。「生活福祉面でも労働組合結成の自由という面でも、労働者の状況を悪化させている問題はまだまだたくさんある。だから次期政府はこの基本的な問題に本当に深い関心を寄せなければならない。ジャムソステックの資金にしても、それは百パーセント労働者に帰属するものであるため、政府はその資金が労働者に対して最大限の利益をもたらすべく委託運営者を指定しなければならない。」全国労連総裁でもある同コーディネータはそう政府に要請した。
同時にかれは労働監督行政についても触れ、大統領に直接責任を負う全国労働監督コミティを中央政府内に設けるよう進言した。現在のSBY政権は既存労働法規を真剣に確立推進する強いコミットメントを持っていると労働界は評価しており、各労働団体は現政権に対する支持を下部組織に対して呼びかけている。
労働界は先に、労働監督行政を中央政府が掌握するよう要求した。これは地方自治の時代に監督機能が中央政府から地方自治体に移されたことによって労働監督行政のレベルが低下していることへの労働界からの不満の表明であり、地方自治体が行なっている労使関係の監督は完璧な実施からほど遠くまた逸脱する傾向を持っていることを労働界は指摘している。地方自治体の労働局にいる監督官の多くは労働行政出身者でなく、労働監督のバックグラウンドをあまり持っていないことが監督行政の効果を高めることを困難にしている、と労働団体は政府に訴えている。


「労働者実質賃金が低下」(2009年7月17日)
中央統計庁が公表した2008年第4四半期の製造産業労働者実質賃金は240,460ルピアで、第3四半期の241,528ルピアから0.44%低下した。一方名目賃金は第3四半期の109.5万ルピアから109.6万ルピアへと微増している。労働者実質賃金とは労働者が得た賃金を使っての実質的な購買力を示すもので、名目賃金は労働報酬として労働者が受取った金額を指している。中央統計庁のデータは次のようになっている。
製造産業労働者名目賃金 
2007年第4四半期 105.0万ルピア
2008年第3四半期 109.5万ルピア
2008年第4四半期 109.6万ルピア
製造産業労働者実質賃金
2007年第4四半期 25.8万ルピア
2008年第3四半期 24.2万ルピア
2008年第4四半期 24.0万ルピア


「税務署に見込まれるとたいへん」(2009年7月21日)
2008年11月18日付けコンパス紙への投書"Ancaman dan Teror Petugas Pajak, Rekening Bank Diblokir"から
拝啓、編集部殿。口座保有者であるわたしに確認も通知もなく、北ブカシ税務署長の要請の真偽を確かめもせずに口座凍結を行なったBCA銀行ブカシプロイェッ支店の行為は横暴の限りです。BCA銀行が口座凍結要請状を受取ったのは2008年10月28日14時10分で、口座凍結はその翌日即座になされました。2008年10月24日付け北ブカシ税務署長文書番号S-86/WPJ.22/KP.0104/2008号にはわたしが税金を滞納しており、その保証としてBCA銀行ブカシ支店にあるわたしの口座を凍結すると記されています。ところがその滞納税金は、わたしのブカシにある事業所の看板差し押さえが2003年4月16日当時の税務署長によって解除されたことが示しているように、既に解決済みになっているのです。しかるに北ブカシ税務署はわたしがいまだに税金の滞納をしているとしてBCA銀行ブカシ支店に対し、わたしの口座凍結を命じたのです。
わたしは北ブカシ税務署の悪徳職員に騙され欺かれたように感じており、その口座凍結はわたしに大きな損失を強いています。北ブカシ税務署職員は妥当性を欠く方法で何度もわたしを訪問し、わたしの従業員は税務署職員の威嚇的な調子の電話を受けておびえています。ダナモン銀行のわたしの口座も同じ理由で2005年に税務署長文書番号第S-02/wpj.22/KP.0108/2005号で凍結され、そして第S-035/wpj.22/KP.0108/2005号で解除されました。銀行口座を凍結したり解除したりという税務署の行為はひとを戸惑わせるものです。本当のところは一体どうなっているというのでしょうか?わたしの税金滞納問題は本当に解決しているのでしょうか?わたしのところには、2008年3月2日付けの文書番号第S-35/wpj.22/KP.0104/2008号で滞納している税金を納めるために出頭せよという手紙がいまだに送られてきています。国税不良職員が国家任務を実施するという口実で国民から金を搾り取ろうとする方法がこれなのでしょうか?[ ブカシ在住、ルスリ・ワヒユディ ]
2008年11月25日付けコンパス紙に掲載された北ブカシ税務署からの回答
拝啓、編集部殿。ルスリ・ワヒユディさんの11月18日付けコンパス紙に掲載された投書について、次の通りお知らせします。ルスリ・ワヒユディさんは北ブカシ税務署の管理データが示しているように2001年の税金滞納があり、未納税のままになっています。その未納税分に関して、納税を証明するもの、未納税額決定の取消あるいは減額を決定したもの、税務法廷の判決、未納税額を消去するための最高裁の再審判決といったものは何ひとつありません。その未納税額決定に関する税務調査と確定プロセスは現行規定に則したものです。
2000年12月26日付け強制執行状での未納税金徴収における銀行預金差し押さえと凍結に関する大蔵大臣決定書第563/KMK.04/2000号と2006年6月14日付け税金徴収における口座凍結に関する中央銀行上級副総裁から全一般銀行に宛てられた通達第8/3/DGS/DPNP号に従い、銀行の口座凍結は十分な法的基盤を持っています。
ルスリ・ワヒユディさんの税金滞納問題について問題をクリヤーにするため、当方は国税総局ジャワ西部第?地方事務所から当人宛てに2003年4月21日付けで出頭要請を行い、更に2005年7月28日付けの国税総局西ジャワ第?地方事務所からの召喚状も送りましたが、ルスリ・ワヒユディさんは一度もそれに応じて当方を訪問していません。その後2008年9月1日付けで国税総局西ジャワ第?地方事務所が法的保護要請の訴えに対する説明回答を送付していますが、ルスリ・ワヒユディさんはこの問題をハリム・スワンディさんに委任しました。この問題に関する経緯書にはルスリ・ワヒユディさんが滞納税金督促の現行法規に則したプロセス実施に同意することが表明されています。
ルスリ・ワヒユディさんが当方lの更なる説明をご希望であれば、北ブカシ税務署にコンタクトされるようお奨めします。また当方の説明が全体的に誤りなく理解していただけるよう、代理人でなく当人が当方にお越しいただくよう望んでやみません。[ 北ブカシ税務署長、イェへスキル・ティランダ ]


「6月はインフォーマル賃金が上昇」(2009年7月28日)
2009年都市部インフォーマルセクターの労働者名目賃金は前月から上昇したと中央統計庁が公表した。それによれば建設作業者は5月の一日当たり賃金55,059ルピアから55,090ルピアに、女性理容師は取扱い客ひとり当たり15,829ルピアが15,916ルピアに、家庭プンバントゥは月額268,488ルピアから268,524ルピアにそれぞれアップしている。


「税務署監査のできない会計監査庁」(2009年9月28日)
会計監査庁の監査が国税総局の税収と外国借款によるプロジェクトから締め出されているのは法規違反であり、また国際慣行にも反するものである、とオランダ政府会計監査庁がインドネシア会計監査庁に対する親善検査報告の中で表明した。『業務実施の中でインドネシア会計監査庁は税務署の税収情報を得るのに困難があり、2006年法令第15号の実施が不十分であることをその実態が示している。』と報告書の中に記されている。やはり1997年に国家監査機関国際機構がメキシコ宣言の中で表明した原則にもその実態は即していない。メキシコ宣言では、法規で定められた責務を果たすために情報公開に制限があってはならない、とされている。
インドネシア会計監査庁はその責務を果たすために監査情報の制限に対する真剣なアテンションを表明し、政府大蔵省・国会・借款供与者などとの建設的な対話を通してその問題の解決を図らなければならない。この問題に関して国会第11委員会副議長は、「税収にせよ外国借款プロジェクトにせよ、政府内部で会計監査システムが正しく機能するための改善に最大の支援を与える。会計監査庁はすべての国家資産を正しく把握しなければならない。また会計監査報告がどのような姿でなければならないかについても認識しなければならない。国家資産に対する経済運用を監査する権限を持つ唯一の国家機関が会計監査庁である。それは憲法で定められているのだ。」と述べている。
アンワル・ナスティオン会計監査庁長官は、オランダ政府会計監査庁の報告書に基づいて2ヶ月以内にそれをフォローするアクションプランを作り、オランダ会計監査庁と国会の同意を得たいと語っている。同報告書には中央と地方政府の会計マネージメントの弱さと不正腐敗行為の強さに関する指摘もある。その状況を改善していくために会計監査庁は政府と国会との間で対話を深め、政府の会計マネージメントを向上させるにはどうするかという命題を基本に置いて、業務マニュアル改正・監査官の能力向上・国や国際機構との協力を通して不正・腐敗行為を摘発する能力を高めることが重要である、とオランダ会計監査庁はアドバイスしている。


「提出された納税申告書は530万件」(2009年10月6日)
2009年7月までに税務署に提出された所得税年次納税申告書(SPT−PPh)は530万件で、総登録納税者1,270万人中のやっと4割。1,270万人というのはサンセットポリシーが終了した2009年2月時点のもので、2008年の納税申告はこの数が対象になっている。今現在では総登録納税者数がさらに増加して1,400万人に達しているとのこと。税務署に提出された年次納税申告書が530万件というのは昨年から大幅に増加した数字だが、総登録者数が圧倒的に増えているため率としては小さいものになっている。


「国税のPINTARシステム導入は2012年」(2009年10月26日)
Project for Indonesia Tax Administration Reform略称PINTARというプロジェクトを大蔵省国税総局が進めている。これはコンピュータ化された納税者情報管理システムで、世銀からの借款1.45億ドルを使って構築され、2012年に全面稼動させるスケジュールになっている。このPINTARシステムは全国の法人個人納税者に関する情報とデータを一元化させて統合的に納税者の姿をひと目で示すことができるのに加えて、納税者のコンプライアンスレベルまで判断する機能を持っている。システム内でハイリスク納税者を選び出すことができるので、税務調査のプログラム作成がたいへん容易になる。現在それはマニュアルで行なわれているため、そこで発生する正確さと迅速さは税務調査に大きい効率をもたらすだろうと期待されている。「納税者のコンプライアンス状況が早く正確にわかるようになる。これまで2ヶ月かかっていたとすれば、PINTARを使うことで2分間に短縮される。また国税地方事務所や税務サービス事務所の不良職員を巻き込んで行なわれていたデータや情報の虚偽・操作もシャットアウトされる。PINTARのデータ管理はすべて本庁で行なわれるので、下部レベルでのデータ入力が発生しないからだ。」PINTARプロジェクト担当局長はそう説明している。
このPINTARは四つの柱から成っている。まずITベースのコアタックスシステムがより高度化されることで、登録・リターンプロセス・納税者アカウント・書類管理・システム構築などがそこに含まれる。次に税務職員監督がより細かく行なわれるようになり、給与システム・職員履歴管理・教育訓練・ジョブディスクリプション・職員配置方針・採用などがそこでカバーされる。三つ目は納税者コンプライアンス管理の向上で、リスク・方針・調査プログラム評価システムや納税者サービスのレベルアップが可能になる。四つ目の柱は管理職が内部コントロール・内部コンプライアンス・質的バックアップなどをより細かく行なうためのシステムがPINTARでサポートされること、また変化に対するマネージメントパワーの強化が得られることとなっている。
国税総局はこのPINTARシステム全面稼動が開始される2012年を期して納税者のコンプライアンス向上がはかられることを期待している。


「KEK制度は労働者への脅威」(2009年11月4日)
政府は特別経済区(Kawasan Ekonomi Khusus 略称KEK)制度を3年前から打ち出しているが、現在公認KEKはバタム・ビンタン・カリムン地区のみとなっている。各州政府はそれぞれKEKを設けるべく意気込んでいるものの中央政府の公認条件が難しいために第二第三のKEKはまだ登場していない。
そのKEKは労働界にとって新たな雇用機会創出という面よりも求職競争の激化と労働組合の抑圧というネガティブな面をより強く内包している、と労働界関係者が表明している。求職競争の激化によって大勢の就職希望者は職を得ることができず、さらには現在職に就いている者ですらその地位は安泰でなくなる可能性が強まる、とティンブル・シレガル、トレードユニオンライトセンター研究員が発言した。KEKという制度がそれ自ら持っている性質がそうであり、加えて中央政府はKEKへの進出企業誘致条件として誘導的な労働環境整備を公約しており、労組の活動が政府から強い締め付けを受けるのはほぼ間違いないものと労働関係者は見ている。インドネシア福祉労組同盟のレクソン・シラバン議長によれば、政府は労働争議対する刑事犯罪化を昔から行なっており、毎年5〜6件が法廷に持ち込まれて労組役員を刑法犯にしているとのこと。
同研究員の主旨に従えば、インドネシアの労働者、中でも地方部に設けられるKEKの地元労働者はKEKがもたらす激しい競争に直面する準備ができていないために就職戦線からはじき出される可能性が高い。KEKがもたらす競争激化は就職戦線だけでなく、周辺にいる、これまた厳しい競争に直面する準備のできていない地元中小産業にも悪影響を及ぼすようになるし、まして外資系企業の多くはテクノロジーを多用する結果労働力需要はあまり大きくなく、さらに外国人がほぼ間違いなく雇用されるためにインドネシア人勤労者の就労機会を狭めることになる。加えて外国人がKEK周辺に居住するようになれば、かれらが持ち込んでくる地元伝統文化にそぐわない生活習慣も地元民の暮らしに脅威をもたらすものとなり、経済生活と文化生活面で地元勤労者とその家族は生活福祉レベルの後退を味わう可能性が高い。
その発言に関連してインドネシア大学中国研究センター調査員は、FTZの中国人勤労者が貢献した生産性向上はたいへんハイレベルだ、と語る。「中国の勤労者生産性はたいへん高い。それは8.7%であり、日本の1.9%インドの4.1%と比較しても圧倒的なものだ。中国の勤労者は規律正しく、そして政府の決めた規則に篤実に従っているものの、現実に起こっているのは大規模な搾取である。」インドネシア大学調査員は中国の状況についてそう述べている。


「PPNとPPnBM税法が改定される」(2009年11月17・19日)
付加価値税(PPN)と奢侈品税(PPnBM)に関する税法改定が所得税(PPh)から一年遅れでやっと行なわれ、2009年9月16日の国会総会で可決されて2010年4月1日から施行されることに決まった。この改定税法ではPPN税率が当面は従来どおり10%のまま継続されるが、政府は一律税率を原則として5%から15%までの間の税率に変更できる権限を与えられた。また無形課税物品としてのサービスや用役の保税地区からの輸出についてもPPNゼロパーセントが確認されている。加工前段階の精肉・未加工卵・搾乳・生鮮野菜や果実など生活基幹物資はPPN非課税だが、生産場所から直接採集された農産品はPPN課税が発生する。
一方PPnBMについては、その課税対象物品に関する定義が明確化された。ぜいたく品に分類されるものがこの税種の課税対象となるわけだが、その課税定義として1)生活必需品でないもの、2)特定社会階層だけが消費するもの、3)高所得層に消費が集中するもの、4)ステータスを誇示するために消費されるもの、という四つの定義が添えられており、またPPnBMは下限税率10%上限税率200%という範囲の改定も設けられている。輸入物品に課される場合PPnBM課税は輸入者がだれであるかを問わず、一回限りか継続的かを問わず、またその対象物品の引渡し時点で過去に既に課税されたことがあるかどうかという経歴をも問わないとされている。
この法令が2010年4月1日に施行されると同時に政府はアルコール飲料に対してこれまで行っていたPPnBM課税を廃止する意向。これはアルコール飲料をぜいたく品という区分に入れないという政府の考えに即したものだが、アルコール飲料を国民から遠ざけておこうとする従来の方針に変化はないため、他の税種の税率を高めることでこれまで続けられてきた国民消費の抑制という方針を続ける考えが政府内で大勢を占めている。その結果チュカイ税率の大幅アップは避けられないものと見られているが、チュカイ税収担当部門である税関総局は、アルコール飲料のチュカイ収入はこれまでわずかに1%を占めているだけであるため、税率がどう変化しようと国庫へのチュカイ収入に大きい影響がでることはない、とコメントしている。
ところでPPnBMの上限税率が200%に引き上げられたことが自動車産業界に波紋を投げかけている。現在四輪自動車に課されているPPnBMはエンジン排気量に従って次のように課税されている。
セダン車
1500cc未満 30%
1500〜3000cc ガソリン車:40%
2500cc以上のジーゼル車:75%
3000cc以上のガソリン車:75%
MPV(4x2タイプ)
1500cc未満 10%
1500cc以上 20%
2500cc以上のガソリン車:40% ジーゼル車:75%
300cc以上のガソリン車:75%
SUV(4x4タイプ)
1500cc未満 30%
1500〜300ccのガソリン車:40%
2500cc以上のジーゼル車:75%
3000cc以上のガソリン車:75%
自動車業界者はこれまで75%の最高税率が課されていた車が200%という上限に引き上げられるものと予想しており、さっそく反対キャンペーンを開始している。特に完成品輸入されている大型高級車がその影響を受ければ大幅な値上がりになるため、自動車産業界は深刻にこの問題に眼を向けている。アセアン諸国で自動車にかけられている奢侈品税は最高税率がタイで50%、マレーシア100%、フィリピン60%などであり、もし200%がインドネシアで適用されればインドネシアは最大の重税国になると危惧を訴えている。


「8ヶ月間で就職者数は3千人たらず」(2009年11月26日)
首都ジャカルタの求職者は2009年8月までで15,418人と報告されているが、イドゥルフィトリ大祭が明けると3割増しになるだろう、と都庁労働局長が表明した。イドゥルフィトリ大祭が明けると都庁諸機関や民間会社が求人を行なうために求職者も増加するというメカニズムが働いていることを局長の発言は示している。都庁労働局の把握している求職者は労働局に就職斡旋を依頼するひとたちで、就職の斡旋をしてもらうためには労働局に登録してイエローカード(AK1フォーム)を交付してもらわなければならない。イエローカードの交付条件は地元住民であることで、これは2003年法令第13号と2008年大臣規則第7号で定められており、法令であるために全国一律に適用されている。しかし労働局に集まってくる求人数と就職した求職者数は一致しておらず、求人側が求めるスペックを満たせる求職者が不足しているという要素は見逃すことができない。2009年1月〜8月の求職者/求人/就職者のバランスは次のようになっている。
東ジャカルタ市 9,009/2,675/1,748
南ジャカルタ市 1,281/587/482
北ジャカルタ市 3,382/620/485
中央ジャカルタ市 1,049/56/26
西ジャカルタ市 697/0/0
2009年8月31日までの総求職者数は15,418人で求人数は3,938人分あるものの、就職できた人数はわずかに2,741人というのが上の明細のまとめだ。中央統計庁データによれば、首都ジャカルタ2009年の失業者数は59万人と予測されており、2008年実績の53万人から大きい上昇になりそうだ。


「減価償却規定が緩和される」(2009年12月30日)
国税総局は減価償却のための非建物有形資産に対する実耐用年数の申請と決定プロセスに関する2009年10月2日付け総局長回状第PER-55/PJ/2009号で建物以外の有形資産の耐用年数を納税者が決めてよいという方針を打ち出した。ただし納税者はその実耐用年数を申告してそれが正しいことを説明した上、国税側からの承認を得なければならない。申告は納税者が登録されている税務サービス事務所を管轄する国税総局地方事務所長を通して国税総局長あてに提出することとなっている。


「労働者の低賃金問題の根」(2010年1月5日)
実業界の生産コスト内に占める労働者勤労者コストの比率がインドネシアではあまりにも低いため、労働者の購買力がいつまでも上昇しない、とインドネシア全労働者機構総裁が発言した。
マネージメント報酬を含めた労働者コスト比率は7〜11%の間にあり、産業セクターごとにばらついている。これは諸外国の20〜25%というレベルに比べて、極端に低いものだ。その中で金融セクターは高給セクターであるため最高の比率になっているが、たくさんの労働者を抱えている製造産業は7%前後でしかない。金融セクターは他の産業界とかけ離れているために全体像にバイアスがかかって見えるものの、金融セクターを除外して見れば実態はあまりにも低いことがわかる、と同総裁は述べている。全労働者機構が行なったこの分析はインドネシア証券取引所上場企業の財務報告を用いたものだ。
労働界の上述の指摘に関連してインドネシア労働力保護配備国家庁長官は、ハイコスト経済への企業の出費が労働者に対する所得配分を蝕んでいる、と語る。「政府と企業がハイコスト経済をなくし、企業が労働者への福祉に配慮した所得配分を行なうなら、すべての労働者がいま受取っている給与賃金は80%アップする。東南アジアでは労働者コストが総生産コスト内で21%を超えると購買力上昇が起こるが、インドネシアはまだ8〜10%というレベルにあり、購買力はなかなか上昇しない。」
全労働者機構総裁は、インドネシアが直面しているハイコスト経済のために企業の出費は大きく膨らんでいると指摘する。「総生産コストの中で直接生産に関わらないその他費用に膨大な金額が計上されている。かつてこの問題に関する調査を行ったさい、それは総コストの25〜30%を占めていた。諸外国ではせいぜい5%でしかないというのに。中でも鉱業セクター・農業セクターの企業はそれが45%にのぼっており、特にその大きさが目立った。このような状況を改善する鍵は政府の手中にある。政府は役人の規律を統制できるし、また政府は国内金融界に貸出し金利率の方向付けを行なうことすらできるではないか。」労働報酬が役人に掠め取られている状況を同総裁はそう描き出している。


「脱税捜査中止申請手続き」(2010年3月2日)
脱税犯罪事件の捜査中止を申請したい納税者のためにエスクロアカウント方式の保証金手続を国税総局が定めた。罰金管理制裁に従う納税とエスクロアカウント方式の保証作成ガイドに関する2009年12月11日付け国税総局長規則第PER-65/PJ/2009号にそれが定められている。エスクロアカウントには未納税額あるいは納税不足額あるいは還付されるべきでなかった税額とその4倍の罰金が入っていなければならない。
この国税総局長規則について税務専門家のひとりは、年末という時期にそのような規則を国税が出したのは2009年の税収確保プッシュの一手段という臭いが強い、と語る。「いま金はないが、将来のある時期には全額完済できるという納税者にとってこれはまったく意味のない規定だ。脱税したから必ずその金を持っているはずという見方は徴税者の一方的な見解だ。」
このエスクロアカウントプロセスについては、まず納税者と国税総局長(諜報捜査局長あるいは国税地方事務所長が代行できる)との間で運営契約書が交わされ、アカウント開設銀行がそこに承認サインを加えた上でそのエスクロアカウントが開設される。エスクロアカウント運営契約書には、契約両者ならびに開設銀行のアイデンティティ、契約作成日時と場所、保証金額、開設費用、保証金出金プロセス、係争終決プロセスなどが盛り込まれる。開設費用は納税者が負担し、エスクロアカウントで得られる収益は納税者側に受け取る権利がある。保証金の出金手続は、捜査中止申請に対する最高検察庁の承認が国税総局に届いてから行なわれることになる。


「自力で家を建てても課税される」(2010年3月30日)
個人法人が自力で家屋建物を建てるとPPN(付加価値税)が課される。これは昔からあった規則で、従来は建物面積が200平米以下なら課税免除となっていたが、2010年2月に大蔵大臣規則で課税免除枠が300平米以下に拡大されたため、話題となった。付加価値税とは、仕入れたあるいは製造した物品を販売した場合にその利益に課税されるもので、インドネシアでは一律10%の税率になっている。
現実には、売買される物品の売値と仕入値の差をその都度計算して納税するというひも付き方式は取られていない。それはPPN納税が発生月の翌月と定められているためで、たとえば1月に仕入れた商品のPPNは2月納税分から差し引かなければそれを使う機会が失われてしまう。一方その商品が3月に売れれば購入者から預かったPPNを4月に納税するわけだが、その仕入時のPPNはもう使用済みだからまた使うというわけにいかない。そういう時系列上の前後関係が無視される仕組みになっているから、ひも付き計算はありえないのである。
自分の力で家屋建物を建てるというのは、建築業者を使わず、自分が資材を購入し、自分の力であるいは人を雇って家屋建物を建築することを指しており、建てられた家屋建物は販売するのでなく自分が住居あるいは事業施設として使うためのものだ。販売のために建てられる家屋建物はPPN制度の対象に含まれており、この規則の対象ではない。この規則の対象となる家屋建物の定義は、地面あるいは水面の上に切り離せない単位として恒久的に設けられたひとつ以上の技術的建造物で、木材・セメント・レンガ・鉄鋼などをメインの材料にしているもの、とされている。
このPPN納税は毎月行わなければならないもので、その計算方式は、当該家屋建物を建てるために支出したすべての費用の40%を課税対象金額とし、その10%をPPNとして納税する。課税対象金額の中に土地取得コストは含まれない。また家屋建物の資材を購入したときに納めたPPNは上の計算から差し引いてはならない。このPPN課税は新しい建築物だけでなく、古い家屋建物の増築や改修もその対象となる。


「大学生の87%がサラリーマン志望」(2010年4月3日)
毎年数万人の新卒大学生が就職戦線に登場するものの、かれらの87%はオフィスワーカーいわゆるサラリーマンになることを夢見ており、起業家になろうという意欲を持っている者はわずか17%しかいないことをコペラシ中小企業担当国務省中小零細事業人材担当デピュティが明らかにした。政府は高学歴者失業問題解決方策のひとつとして高学歴者を若い事業家に育てる方針を立てており、総人口2億3千5百万人のうち2%を起業家に育てれば国民経済は大幅に進展し、現在いる62万6千人の高学歴失業者に対する救済がかなりのレベルで実現すると考えている。
コペラシ中小企業担当国務省は政府のその方針の実施を担当しており、いかにして新卒大学生を起業家に仕立て上げるかということに腐心している。その方策のひとつに全国各州で起業家養成対策を実施し、各州1千人の候補者を獲得するという目標が掲げられている。既に7州が1千人リクルートの選抜を進めており、候補者が優れた企画を提出すれば政府からの資金貸付を得て事業を始めることができる。このプログラムのプロモーションで候補者勧誘を受けた4,075人のうち1,953人は強い興味を示した。首都ジャカルタでは60人が起業プロポーザルを提出しており、内容の審査が行なわれている。


「最近の労働界」(2010年4月9日)
「事業者の中にいまだに労働組合活動を理解しない者がある。反対に労働者の中にも会社の実情など知ったことじゃないという姿勢の者がいる。そのようなことが労使係争の発生を煽っている。もっと誘導的な労使関係を築くために、互いに相手の事情に理解を持つのはたいへん重要なことだ。その一助としてアピンドはトレーニングモジュールを現在作成中であり、それを元に職場における双方の権利と義務についての相互理解を育成させるよう努めたい。会社経営に関する諸問題に加えて労使関係についてのトレーニングを労働者に与えるだけでなく、事業者に対しても労組活動に関するあらゆることがらを学習する機会が用意される。」ソフィヤン・ワナンディ、アピンド会長はそう語った。
だがインドネシアの労働界はいくつかの組織に分かれており、すべての労組を一堂に集めて協議するのはほとんど不可能だ。おまけにそれらの組織も主義主張が違っているために労働界の声は複数の意見に分かれてしまい、それを統一するのに骨が折れる。労働省データによれば、2008年末時点で全国には10,786の労組があり、3,405,615人が組合員になっている。更にそれらの労組は連盟(federasi)を組み、複数の連盟が集まって同盟(konfederasi)を作っている。
現在インドネシアで最大の勢力を持っているのは160万労働者を糾合しているインドネシア全国労働者同盟(Konfederasi Serikat Pekerja Seluruh Indonesia)で、その他にも45万8千人を擁するインドネシア労組同盟(Konfederasi Serikat Pekerja Indonesia)や33万8千人を抱えるインドネシア福祉労組同盟(Konfederasi Serikat Buruh Sejahtera Indonesia)があり、それらの同盟に所属しない連盟も55団体ある。
労働問題専門家は、その状況を整理してひとつの同盟にまとめるほうが労働運動の成果はより大きなものになるとしてその方向性を呼びかけているものの、政党を丸写ししたような事情から、現在の労働界を一体化させるのは至難の業になっている。


「労働法規改定のモメンタム」(2010年4月9日)
アセアン域内自由市場の一環で2015年にはサービスに関する枠組み協定が実施され、加盟国間で労働市場の開放が行なわれる予定になっており、政府はその前に労働者への保護を目的に労働法規の改定を行なう意向。労働者への保護には二面あり、インドネシアで就労する外国人労働者に対して法確定を与えることおよび外国人労働者との競争に直面するインドネシア人労働者にはその競争の中での保護を与えるということが目的とされる。職業能力認定を得ていないインドネシア国民は外国人労働者との競争で困難な立場に立たされることになるため、政府にとっては国民に対してどのように就労機会を確保するかということが問題の焦点になるようだ。
2003年法令第13号労働法や取締役・監査役に外国人を就任させる事業者に対する外国人労働者雇用許可規定に関する労働大臣決定書第34/Men/IX/2006号などはその改定の焦点となる。たとえば労働法第42条4項の「外国人は特定職種に特定期間雇用することができる」という条文は、枠組み協定をベースにした二国間協定の内容に従って職種も期間もバラエティを持つことになり、職種や期間の制限は一律に行なうことができなくなる。
アセアン各国はGDPの40〜50%をサービスセクターが占めており、アセアンから世界へのサービス輸出は1998年548億ドル、2004年967億ドル、2006年1,209億ドルと急速な成長を示している。 


「人材派遣業は今年も伸びる」(2010年5月3日)
2010年のアウトソーシングビジネスは4.2%成長するだろうとインドネシアアウトソーシングビジネス協会事務局長が表明した。2009年の成長率はもっと高く、今年の見込みが低いのは従来から需要の30%を占めてきた製造セクターが派遣労働力の扉を狭めていることが原因だ。ちなみにセクター別需要は次のようになっている。
職種 : パーセンテージ
工場オペレータ・清掃員 : 51%
警備員 : 16%
セールスマン・カスタマーサービス : 15%
コールセンター : 9%
ITサポート : 4%
その他 : 5%
最近アウトソーシング利用が盛んになってきたセクターは銀行・通信・保健・行政などで、それぞれ19%を超える成長を示している。その他に成長が持続すると見られているものに運輸・電気ガス水道などユーティリティ・鉱業などがあり、平均して10%を超える伸びを見せている。しかしそれらの中で一番の成長株と目されているのがホテル・レストランなどいわゆる観光セクターだ。インフラと環境が観光産業の発展を促し、都市生活者の消費志向ライフスタイルに変化が生じないかぎり、ホテルレストラン業界のアウトソーシング需要は20%を超える成長が期待できる、と事務局長は予想している。
専門能力を持つアウトソーシング派遣者は有名大企業で働く機会が得られ、そこで作られるネットワーキングによって将来のキャリアに新たな展望が開かれるチャンスを手に入れることができる。その意味でアウトソーシングは使う側だけでなく使われる側にもメリットのあるシステムだと事務局長は語るものの、現実は上で見られるように単純作業者が大部分を占めており。そんな夢のあるケースは依然として限られているようだ。


「いまの賃金システムで生産性は高まらない」(2010年5月4日)
現在の労働者賃金システムは経済的持続性がなく、政治的なリスクに満ちており、賃金決定要因は市場メカニズムまかせになっている、とレクソン・シラバン、インドネシア福祉労組同盟総裁が指摘した。
「加えて、それは生産性や帰属意識を高める力がなく、労働者が勤労意欲を持とうが持つまいが、報酬には影響がない。賃金決定は妥協や実施遅延スキャンダルのリスクを持ち、おまけに賃金評議会にKKNがある。将来の労働者賃金制度は保全ネットワーク式最低賃金と労使間協議による賃金のふたつのコンセプトが考えられる。保全ネットワーク式賃金は政府が労働者に対する責任として最低賃金を保証するものであり、労使間協議による賃金は生産性にもとづいて労使間で定める賃金だ。労使間協議式賃金が保全ネットワークと同じものになってはいけない。問題は全国20万7千の会社のすべてに労働組合があるわけでないこと、更に労組があったとしても会社レベルの賃金交渉を行なう力を持っていないことなどがある。会社の財務報告書の読み方を知っている労働者は限られている。」アピンドが主催した「生産性ベースの国民賃金システムを樹立する」と題するセミナーで総裁はそう発言した。
ソフィヤン・ワナンディ、アピンド会長は、州別最低賃金引上げへの対応を含めて企業は毎年人件費予算を増大させている、とスピーチした。「労働者の賃金や福祉手当の財源は企業が生み出す付加価値だ。付加価値は製品販売から得られるが、生産性のレベルにも大きく影響を受ける。」
アピンドは従来から持論としていた生産性と労働者賃金の明確な関連付けを推進しようとしている。


「国税総局が個人事業主への徴税管理態勢を整える」(2010年5月6日)
徴税対象として大企業ばかりを相手にしており、まるで檻の中で狩りをしているようだ、という批判に応えて国税総局は今年から、インフォーマルセクターでビジネスを行なっている個人納税者に対する徴税を進めていく方針を明らかにした。コスコサンや個人ベースの商品販売あるいはサービス業などがその対象になる。
国税総局は街中やモールあるいはモダンマーケットなどに事業場所を置いてビジネスを行なっている個人に対する徴税を進める意向で、店や売場に軒並み調査をかけて事業主を洗い出し、事業者の納税を監督していく態勢を既に整えた。従来この種の納税者に対する管理規準は2ヶ所以上の事業所を持っているものと規定されていたが、いまやそれはご破算としてすべての個人事業主に徴税の網がかけられることになる。


「看護師・介護士の勤務期間延長をインドネシア政府が要請」(2010年5月17日)
労働省インドネシア労働力保護配備国家庁が日本政府に対し、看護師・介護福祉士資格試験の受験機会を増やすためにインドネシア人看護師・介護福祉士候補者の勤務期間を現在の3年間から5年間に延ばしてほしいと要請した。
「政府間契約下に日本の各地の病院や介護施設で勤務している看護師・介護福祉士は勤務のかたわら資格試験の勉強をしなければならないが、そのための時間が十分にとれない。資格試験は年一回催されるので、三年間の勤務期間中に受験機会は三回しかない。その限られたチャンスに失敗すればかれらは帰国せざるを得なくなる。もしチャンスが5回与えられたなら、より大勢のインドネシア人看護師・介護士が日本で長期の勤務に就くことができる。その証拠に、2008年8月5日に日本に派遣された254人の第一期生の中で、資格試験に合格したのはまだふたりしかいない。ジャカルタのポリティクンディアカデミー出身のヤレッ・フェブリアン・フェルナンデスとインドネシア大学医学部出身のリア・アグスティナがそのふたりだ。」労働力保護配備国家庁長官はそう期限延期要請の理由を説明している。日本の資格試験に合格したリア・アグスティナは日本で勤務している同期生たちの悩みについて、勉強する時間が十分取れないので大勢の仲間たちは日本語の修得だけでさえ困難だとみんな言っている、と状況を物語っている。


「失業率が低下」(2010年5月20日)
中央統計庁は2010年2月に行なった全国失業状況調査の結果を報告した。それによれば労働力人口1億1千6百万人中の顕在失業者数は859万人で2009年8月調査時の896万人から8%減少し、失業率は7.87パーセントから7.41パーセントに改善された。
これまで言われていた1%の経済成長で50万人の雇用が実現するという指標はフォーマルセクターだけをとらえた場合40万人が妥当な線で、インフォーマルセクターまで含めて50万人というこの指標は誤解を招きやすい、との見解を中央統計庁長官が今回表明している。
今回報告された2010年2月度調査結果の中に珍しい現象が注記されていた。それは農業セクターで20万人、運輸セクターで13万人の就業人口移動があったというもので、農業人口は特に若い世代で多少とも現金収入が得られる仕事の機会があればすぐに移るが、せいぜい建築労働者程度の職にしか就けない。そして建築産業が下火になるとまた農業に戻ってくるという特徴を持っている。一方運輸セクターはオートバイオジェッ(ojek)運転手が需給関係のアンバランスからこれまで行なっていた仕事を廃業したというもので、一般消費者のオートバイ所有がきわめて容易に行なえるようになったことがオジェッ利用者の激減を招いている事態を反映するものであるとのこと。
地域的な状況については、首都ジャカルタの失業者が2009年2月の570,560人から3万3千人減って537,470人となった。それにあわせて顕在失業率も11.99%から11.32%に低下している。3万3千人の性別内訳は男性26,370人女性6,720人で男女比は4対1だ。一方労働力率は一年前の67.88%から66.84%に低下し、男性は83.2%女性は51.5%になっている。労働力人口は475万人と報告されている。
北スラウェシ州は失業率が悪化して顕在失業率トップ4の仲間入りをした。労働力人口1,074,256人中の失業者数は112,608人で、失業率は10.48%。またマルク州では大学卒業者の失業がたいへん多く、都市部で失業者の29.78%地方部で10.02%を占めている。


「納税者の訴えが増加」(2010年5月20日)
2010年3月に国税総局に届けられた納税者からの訴えは155件に達し、1月の31件、2月の27件から大幅に増加した。3月の155件の内容を見ると、国税職員による妨害や素人もどきのサービスに関する苦情が88件を占め、横領着服疑惑48件、権限逸脱や公務員規律違反15件、恣意的税法規適用4件などとなっている。
国税総局指導サービス広報局長はその現象について、公務員階級?Aの国税職員ガユス・タンブナンが事件ブローカーとして腐敗行為を行なっていた事件が明るみに出て全国的なニュースとなったことから、納税者の国税関連改革要求の意識が急速に高まったためではないか、と述べている。ガユス・タンブナン事件では一部納税者が納税ボイコットを全国民に誘いかける反応すら起こっているが、納税ボイコットはたいした動きにならなかった。
国税総局への訴えは2010年第1四半期で213件にのぼり、そのうちの103件はインターネット経由で届けられている。


「国税職員の階級意識」(2010年6月11日)
国税総局の業績に関連してスリ・ムリヤニ前蔵相は在任中に、大金持ちに対する国税職員の徴税対応がきわめてお粗末であることの不満を公にした。大金持ちの住居を訪れて税務調査を行う度胸を持つ国税職員がほとんどいないこと、それをいいことに大金持ちも法律条項を歪曲して国税側のアプローチの腰を折ることに努め、これまではそれに成功してきた。大金持ちの脱税をなくすことができれば、国税収入は大幅に上昇する。蔵相はそんな趣旨のコメントを行なって国税職員に対し法規に則した徴税行動を行なうよう督励した。
「大金持ちは今後もどんどん増加して行くであろうし、大邸宅を構えて警備員や大型犬を門に配置しているような家に入っただけで気後れし、言いたいことも言えずに相手の言うことだけをうけたまわって帰ってくるような仕事をしていては年々の税収アップはおぼつかない。国税職員が大金持ちを自分とはかけ離れた上位の階級の人間であると見なし、恐れ入りかしこまって自分の主張すら言えなくなるという精神構造は税務職員としての職務遂行をおろそかにするだけでなく、それは納税者に徴税難易度を規準に持つ階級構造をもたらし、徴税アンタッチャブルを作り出す。更に法人税徴収の中で関連する個人の所得税が正しく徴収されないという国税側の職務不履行問題を引き起こすことになる。このような問題はインドネシアにだけあるのでなく、トルコの大蔵大臣と談話したときにも話題になったことがある。」
蔵相はそう語って、社会生活の中で個人に植え付けられたビヘイビヤを乗り越えて職務を果たすために税務職員はどうしなければならないのかをより深く検討するよう求めた。


「通商自由化は労働崩壊をもたらす」(2010年7月23日)
在インドネシアILO事務所のプログラムオフィサーが、通商自由化はインドネシアに雇用創出よりも労働崩壊をもたらしている、と警告した。勤労者の失業はインフォーマル労働者を増加させているものの、かれらは社会保障を得ることもなく貧困化の道を邁進しているとの弁。
「通商自由化の結果を政府は予測しておくべきだ。特に労働面での影響について。自由化はいくつかの産業に解雇を増加させており、政府は失業者に対して雇用機会を増やす政策を行わなければならない。失業者が失業者のままでいるわけがなく、かれらはインフォーマルセクターに就業する。しかしそこには社会保障もましてや外国にあるような失業保障も存在しない。フォーマルセクターにいた勤労者が失業して失業者が増え、かれらがインフォーマルセクターに就業して失業者が減る。失業者が減ったからそれでよいということにはならない。フォーマルセクターから離れたことによってかれらは社会保障と将来の展望を失うのだから。」
通商自由化によって多くの産業は打撃を受けている。国内繊維産業の市場シェアは2005年の57%から2008年は23%に低下した。グローバル経済クライシスの結果2008年から2009年10月までの間に42,584人が失業している。2008年12月31日時点の解雇者数は23,752人だったが2009年10月時点の解雇者総数は66,334人になった。それに対して政府は解雇の抑制をはかるため、賃金や外国人勤労者雇用に関連する法規の見直しを進めている。


「PPN納税に関する規定」(2010年8月3日)
2009年法令第42号PPN・PPnBM法では、低リスク資格を得た納税者は遵法納税者や特定条件付納税者と同じように事前還付恩典が与えられる。罰則は事後監査で発見された不一致分に対して月2%が上乗せになるだけ。この低リスク納税者資格を得るためには、納税者は税務署に申請を出さなければならない。資格を得ることのできるのは、インドネシア証券取引所で発行株式の40%以上が公開されている会社、もしくは国有公有事業体で輸出を行っている会社であり、いずれの場合も過去1年間に月次PPN納税報告書提出が期限に遅れたことがないこととなっている。また合併PPN納税はこれまで報告先税務署を申請して承認される必要があったが、今は自己申告で自由に行えるようになっている。 国税総局長は2010年7月5日付け総局長規則第31/PJ/2010号で低リスクあるいは遵法PPN納税者の資格取消プロセスに関する規定を出した。事後監査でその資格条件を満たさなくなったことが判明した場合それらの優遇資格は取り消されるが、資格条件を満たさなくなったことの確定判断が出される前の初期兆候が見つかった段階で、調査実施を待つことなく事前還付などの優遇措置はホールドされることになる。


「1月が求人求職の最盛期」(2010年8月4日)
インドネシアでは1月に求職が激増し、求人も激増する。それは勤労者の多くが12月のボーナスを入手してから会社を辞めるからで、会社を辞める決意をいつしようがその実行は1月まで先延ばしされる。辞めたかれらは次の会社を求めて求職戦線に参入してくる。一方、従業員に辞められた会社側もその穴埋めをするために求人募集を行なう。1月にそれが重なるのは偶然ではない。会社側もそのあたりの事情は知り尽くしている。だから1月に入ると求人がいきなり5割増しになる。オンライン就職サイトを運営しているJobsDB.ComのGMはそう説明した。
2010年第1四半期の求人は8千件にのぼり、昨年の5千件から激増した由。一方大学生が卒業して就職戦線に参入する7〜8月の時期にこのサイトへのアクセスは20〜30%増加する。アジア太平洋地区のプロフェッショナルリクルートサイトへのクリック数は一日7万にのぼるそうだ。そのうちの2万7千から2万8千人が履歴書を送ってくる。しかしこの時期の求人はあまり変動せず、新卒者にとっては決して好運な時期とは言えないとのこと。


「NPWP発行件数は目覚しい伸び」(2010年8月10日)
国税総局の個人納税者拡大プログラムは続けられている。かつて個人納税者は労多くして功少ないとされ、徴税活動は企業を、特に大中規模企業をもっぱらの対象にしていたため、檻の中で狩りをすると揶揄されていた。しかし大量の個人事業者・個人投資家はかなりの財源になるという実利と、モダン税制は個人納税者をベースにしているという理想論に押されて国税総局は個人納税者拡大へと歩を進めるようになった。
2005年のNPWP発行総数435万件は2006年に480万件となり、2007年713万件、2008年1,068万件、そして2009年は1,591万件という目を見張らせるカーブが描かれ、2010年上半期には1,844万件にまで到達した。下半期にはもう百数十万件増やして2千万の大台に乗せようと国税総局は意欲を燃やしている。個人納税者1,629万件、法人納税者168万件、政府会計機関45.8万件というのが最新の明細。
個人納税者拡大プログラムで国税総局は4つのメソッドを用いている。まず法人納税者にNPWP未保有従業員のデータ提出を求めること。次いで医師会・弁護士会・公認会計士団体・株式ブローカー団体などポテンシャリティの高い専門家職種の団体へのアプローチ。三つ目は不動産所有データからのアプローチ、そして四つ目に電気・電話・水道・クレジットカード支払データからのアプローチという方式がそれだ。全国の国税事務所はそのような納税者拡大活動を実施しており、NPWP発行は目覚しく進捗しているのだが、国税オブザーバーはNPWP発行件数を増やすことが最終目的ではあるまい、と個人納税者からの徴税額の伸びがぱっとしないことに不満を表明している。


「個人事業主への徴税の網が張られる」(2010年8月11日)
国税総局は個人事業主に対して納税を迫る方針を開始した。大量に獲得したNPWP発行済み個人納税者の中に給与所得以外に何らかの収入を得ている者は少なくない。それが家内工業であれ、ワルン経営であれ、あるいはコスコサンであれ、非課税限度を超える収入があれば納税の義務が生じる。
国税総局は総局長規則第PER-32/Pj/2010号で特定事業主個人納税者の納税義務遂行の便宜をはかるため、2008年法令第36号所得税法にもとづいて事業所一ヶ所ごとに毎月の収益の0.75%を第25条所得税として納税するように、との規定を定めた。第25条所得税は当年分の税金を毎月予納するシステムで、その年が終われば年次納税申告書を作成して清算を行うことになる。しかしひと月の収益が非課税限度額を月割りにした132万ルピアに満たなければ、第25条所得税の納税を行う必要はない。
とはいえ、総収入から経費と非課税限度額を差し引いた課税総額に対する税額が総収入の0.75%になるという国税総局の想定に疑問を発する国税オブザーバーも少なくない。


「退職金所得税に変更」(2010年8月12日)
政府は蔵相規則第116/PML.03/2010号で退職金に対する課税規定を変更した。退職金・老後手当・老齢保障金・年金の受給者に適用されるこの新規定では、5千万ルピアまで所得税が非課税となった。5千万ルピアから1億までは税率5%、1億から5億までは15%、5億を超える場合は25%が分離課税される。この所得税はこれまでのように支給者が源泉徴収することも可能だが、本人が自分で納税することも認められるようになった。
従来の税率は非課税限度2千5百万ルピアで、2千5百万ルピア超から5千万ルピアが5%、5千万から1億は10%、1億〜2億15%、2億超は25%となっている。
政府はまた蔵相規則第112/PMK.03/2010号でコペラシ(協同組合)貯金の非課税限度額を24万ルピアと定めた。ひと月24万ルピアを超える場合は所得税10%が分離課税される。これは政府のコペラシ育成を目的にした優遇政策であり、定期預金金利の20%、証券金利の15%より低い税率になっている。


「厳しい国税疑惑職員への調査」(2010年8月24日)
徴税の場は立場と権限をかさにきた徴税吏の狩場として国民納税者から蛇蝎のごとく忌み嫌われていた。税務サービス事務所での一般国民納税者に対する対応はたいへんソフトに変わってきているものの、税務調査とその結果発生する納税不足に付随する徴税にはあまり変化が起こっていないような印象がいまだにある。 だからといって、国税職員の不当行為や権限逸脱を同僚職員がみんな見て見ぬふりをしていたのは昔の話で、昔はそれが同じ公務員同士の連帯という美名の羽織を着ていたのだが、昨今では国税総局内での内部告発が盛んになってきている。2010年上半期の内部告発は56件あり、25件は処理済みで5件が大蔵省監察総局調査部に回されている。
公務員の不正行為を刑事事件として告訴するためにはふたつ以上の証拠が必要という決まりではあるものの、国税総局は証拠がひとつだけでも疑惑職員として組織内取調べの対象にするようになった。職員の不良行為がマスメディアに採り上げられただけでも取調べが行なわれる、と国税総局内部遵法職員改善局長は語る。国税の名を汚したということで職務宣誓への違反というとらえ方が行なわれるようになった。昔はクロ判定が出されるまで「疑わしきは罰せず」原理が用いられていたのだが、今ではわずかな煙が立つだけでも疑惑職員のステッカーが貼られるように変わってきている。
内部告発の提出先である内部遵法職員改善局では、他局で上級管理職だけが行なっている職務を忠実に守ることを表明する誓約書への宣誓署名を、上は管理職から下はヒラ社員まで実施している。こうすることで総局職員は安心して内部告発を行なうことが出来る。なぜなら被告発者の仕返しや復讐行為を恐れては内部告発が十分なされない懸念が生じるため、告発者の名前を遵法改善局は徹底的に秘匿する決まりになっているからだ。
遵法改善局に告発された国税職員は5人の監視員に朝から夜までつきまとわれる。本人の趣味・ライフスタイル・家庭環境から時には経済状況までがあらいざらい調べ上げられ、それらの調査データから不審な点が察知されたら取調べが始まる。告発はそれ自体が何かの証拠にされるということでなく、告発された職員を調査するための引き金にすぎない。その引き金が引かれると、たいへん手間と金のかかる身辺調査が開始されるという寸法だ。


「厳しい国税職員への監視体制」(2010年8月25日)
国税総局地方事務所や税務サービス事務所では、職員がインターネットで何を見ているのかを所長がモニターしている。国税総局の情報テクノロジーシステムであるマルチメディアスーパーコリドーに組み込まれているこの監視システムを使うことで、部下が行っているオンライン情報へのアクセスをトップ責任者はいつでもチェックすることができるのである。
国税総局は全国にいる総勢3万2千人の職員の半分を、納税者を個別に担当するアカウントリプリゼンタティブに任命して割り当てた個々の納税者の詳細情報をデータベース化しようとしている。know your customerコンセプトの応用がそれだ。各納税者のプロファイル分析が行われてデータベースが作られていく。
各税務サービス事務所は毎月1千2百人の納税者プロファイルを作成するようノルマが与えられており、それをこなすために国税職員は納税者のデータ集めに勤務時間の大半を割いている。そんな多忙のさなかにヤフーやグーグルあるいは納税者データベースにアクセスして業務に取り組んでいるのが当然の職員が業務と無関係なサイトに没頭していれば上司からお目玉のひとつも飛んでこようというもの。加えて、自分の担当していない納税者のデータを探りまわっている職員にも不審の目が向けられることになる。
国税職員の業務監督は、そんな内容面に関するものだけではない。昔から公務員は時間コルプシが当たり前で、仕事をしないで公務員給与をもらうのが世の中の常識になっていた。だから行政の非能率というのは何世紀もの間つちかわれてきた真理であり、国政上層部がシャカリキになろうが一朝一夕に変わるものではない。つまり国政上層部と行政機構はまったく異なる生命体として異なる価値観やロジックにもとづいて存在しているものだという現象がそこに生じているのである。だから行政改革が昔から叫ばれてきたのは行政機構を国政上層部の手足にするためなのだが、その成功への道はまだ遠いにちがいない。


「金で釣る国税職員の出勤規律」(2010年8月26日)
昔から公務員は朝出勤して出勤簿にサインするとまず机で新聞を読むか、あるいは役所構内にあるワルンに出向いてコーヒーをすすりながら仲間と雑談し、そしておもむろに時間を見計らってから事務所を飛び出して行く。役所の者はだれもその行く先を知らない。かれらは役所の現場業務を持っている現場担当者ではない。自分の職務とまったく関係のない自分の副収入を求めるための行動がそれなのである。だから行なっていることはそれぞれに異なっており、まともなところでは他人の資産売買の仲介やら政府プロジェクトの口利き、あるいは自分が参加して行なっている個人事業、ひどいのになると商店や中小事業所をまわってたかりやゆすりといったことを行なう者もいる。そのような行為にはオブイェカン(obyekan)という言葉が用意されており、KBBI第四版には「収入を増やすためにサイドジョブのターゲットとなる事柄・事件・モノ」と説明されている。オブイェカンを行なうのは役人に限らず民間会社従業員にもたくさんおり、インドネシアにおける社会経済構造と人間のビヘイビヤの特色を映し出している。
そんな慣習を改革するため、国税総局は出勤規律を高めようとしてインセンティブとディスインセンティブを設けた。まず業務時間への遅刻は一回40万ルピアの手当カット。出勤簿は一日三回サインする。朝7時半の出勤、昼休みが始まる12時15分、そして午後の始業時間となる13時45分。それぞれに一回当たり40万ルピアがかかっているということらしい。一方、遅刻なしに出勤簿にサインすれば反対にインセンティブが与えられる。インセンティブは一回あたり8万ルピアで、午後の業務開始まで真面目に事務所にいれば毎日24万ルピアの追加収入になるというわけだ。これだと13時45分を過ぎてオブイェカンに出かける者は丸儲けということになる。ともあれ、しなければ金を失い、すれば金が手に入る、というこのようなシステムを見る限り、インドネシア人はありとあらゆることを金のためだけに行なうという仮説がどんどん真相に近付いてくると感じるのは、はたしてわたしだけだろうか?


「タングランで工場労働者のデモ」(2010年9月7日)
2010年8月30日、タングラン市で大勢の労働者が路上をデモした。タングラン市ジャティウウンで操業するPT Woneel Midas Leathers従業員8百人がハリラヤボーナスに関する不満に抗議する陳情行動を展開したのがそれで、会社側はボーナス支給日に不測の事態が発生するのを恐れて警察に特別警備を要請した。 翌31日、今度は1万4千人という大規模なデモがまたタングラン市の路上を埋めた。これはタングラン市カラワチでアディダスブランドの履物を製造しているPT Panarubの従業員によるもので、デモ隊はハリラヤボーナス支給に関連した会社への不満をぶちまけていた。
不満の第一はボーナス支給がルバラン祝祭日の前日である9月9日に行われること。
第二は、ボーナス支給額から会社がひとり当たり16万〜20万ルピアを源泉徴収所得税PPh21としてカットしようとしていること。これは会社側にすれば国税からの指示を実行しているだけのことだが、デモ隊は国と会社が労働者を苦しめているとして抗議している。
第三は、世間一般が一週間のルバラン休暇を従業員に与えているというのに、会社はわずか4日間しか従業員に休暇を与えないこと。
工場前の道路を埋めたデモ隊の抗議行動に会社経営陣がだれひとり応対しようとしなかったため、デモ隊は閉鎖されている工場正門を叩いたり揺さぶって中へ乱入しようとした。その結果警備に出ていた警官隊とのもみあいになったが、最終的にデモ隊は破壊行動に移ることなく解散した。
その後の報道によれば、PT Panarub社は9月2日に声明を出し、会社側は8月19日に労組と合意した内容に沿ってハリラヤに関する対応を行なっており、ボーナス支給は8月31日に従業員の口座に振込みを行い、またルバラン休暇も5日間の一斉休暇が予定されていて、ボーナスのPPh21源泉徴収は2009年の国税総局長規則に則したものであって会社が一方的にカットしているわけではない、と説明した。9月1日にはおよそ1千人を動員した従業員デモがタングラン市西部地区税務サービス事務所に向けて行なわれている。


「個人納税者を追え」(2010年9月22日)
たいていの国では税収の大半を個人納税者が支えているが、インドネシアは法人税が税収の大半を占めている。タックスレーシオがいつまでたっても上昇しないのはそのせいだ、との批判に応えて国税総局は、2014年に税収総額の70%を個人納税者のシェアにするべくプロジェクトを開始した。
個人納税者のシェアが低いのは納税者が納税を通じて国政の遂行に参加するという意識が低く、同時に正直な納税を行おうとする順法意識が希薄なためだと分析されているが、国民を教化してその状況を変えるのにどうするかというマクロの話とは別に、国税総局は個人納税者に対する税務調査実施推進のため、2010年総局長規則第10号を定めて個人納税者が納税義務を果たしているのかそれとも避けているのかを判断するためのチェック規準を明示した。
しかし一般企業にはきつく当たる税務調査官も社会的にエライひとの前に出ると借りネコになってしまうことが多い。立法・行政・司法の有力公職者は庶民と桁違いの高額報酬を得ている上に、その地位に絡めての余得を本人もしくは親族あるいは取り巻きが得ているのは常識で、かれらのほとんどは納税忌避努力を怠ったことがなく、申告書を出していてもそれがどこまで本当なのかはわからない。そこに税務調査の必然性が生じるのだが、三つ子以来植えつけられてきた封建体質に埋もれている調査官たちは政治権力社会権力の一端につながるエライひとの前にでると言いたいことも言えずに退散してくることが多く、その部分は税務調査官の泣きどころになっていた。
今回国税総局が個人納税者に対する税務調査励行のターゲットに掲げたのは次の7カテゴリー。
1.5億ルピア以上の資本金を投資している事業家
2.レストラン・建築資材・二輪四輪自動車修理工房の事業主
3.弁護士・医師・公証人
4.アーティスト・社会的著名人
5.中央と地方の行政高官と元高官
6.中央と地方の司法高官と元高官
7.中央と地方(州・市)の立法機関メンバーと元メンバーおよび候補者
国税総局は金持個人納税者を一括で取り扱うHigh Wealth Individual(HWI)担当税務サービス事務所を2009年4月に開設した。いまは全国の高額資産家1千2百人がその管理下に入っているが、インドネシアの金持がそんな少人数であるはずがない。その対象階層とかれらの納税を監督する体制をこれからどうして行くか、国税総局は検討の真最中。


「求人応募者から金を取る会社」(2010年10月6日)
2010年7月16日付けコンパス紙への投書"Biaya Psikotes Dibebankan Kepada Para Pelamar Kerja"から
拝啓、編集部殿。求人応募者に性格テストを受けさせてその費用を本人に支払わせるような会社があるんですね。都内クニガン(Kuningan)地区のティラビルに入居しているPTアルタミンドインドネシアでわたしはそのことを体験しました。わたしは7月3日のコンパス紙求人広告を見てその会社に応募し、7月9日にその会社へ面接に来るよう呼ばれました。面接の後、70万ルピアを払って性格テストを受けるように言われたのですが、どうしてわたしがお金を払わなければならないのでしょう?
そのときわたしは50万ルピアを払っておき、残りは性格テストに合格したら払うということにしました。テスト結果は夕方3時〜4時ごろ公表されるということでした。家に帰ってその会社のプロフィールを調べたところ、PTアルタミンドインドネシアに騙されたと不満を表明しているひとが2009年以来大勢いることにびっくりしました。
15時半ごろ、その会社からわたし宛に電話が入り、性格テストの結果はたいへん満足できるものだったと知らせてきました。それで7月12日にブリーフィングを受けるためにまたその会社まで来るように、と言われたのです。わたしがインターネットから得た大勢の求職者の不満についてそのひとに質問したところ、「なにしろ競争相手がたくさんいますからね。」という返事が返ってきました。[ ブカシ在住、フィトリ ]


「政府が労働法改定に着手」(2010年10月13日)
世界の実業界から悪評紛々だった2003年法律第13号労働法の改定に政府はいよいよ取り掛かった。現行労働法に関する労働界と実業界の意見要望を取りまとめるよう政府労働省はLIPI(インドネシア科学院)に要請したことを明らかにした。LIPIは学術答申として両者の意見要望を三ヶ月間でまとめ、政府に改定の方向性を進言することになる。ムハイミン・イスカンダル労相は、一方に偏しない中立透明な答申を期待してLIPIを起用した、と説明している。
利害の対立する労使間の要望の合意点を探るのはきわめて困難な作業であり、労働分野のどの問題にせよ昔から明快な見解の一致がストレートに誕生したことはない。政府のこの動きに対して労働界の一部では疑惑に満ちた噂が流されており、政府は事業者寄りの改定内容を既に決めているが、形式的にLIPIの学術答申を作らせて改定の参考資料という位置に置くだけだ、という見方を労働界の一部は取っている。ともあれ労働界の中でも意見はさまざまに分裂するのが普通で、どの労働団体の意見を主流と捕えるのかが問題になる。政府と実業界は労働界に対して、まず意見を統一してから三者協議に臨んでほしいと要請しているものの、労働界代表として述べられた発言に同じ労働界のあちこちから批判の声がいつも付随するため、労働界内部での意見統一は不可能という感が強い。
労働界の中では、今回予定されている改定で労働者が現行法から得ていた次のような労働者寄りの規定が改悪あるいは廃止されるのではないかと懸念する声があがっている。
1)県市最低賃金制度
2)アウトソーシング契約に対する制限
3)退職金規定
4)外国人労働者への就労規制
5)年次有給休暇日数
6)労働者側のスト権執行のメカニズム


「インフォーマルセクター就労はその場しのぎ!?」(2010年10月21日)
鉱業・通信・銀行など資本集約型産業での投資は活発だが、製造業をはじめとする労働集約産業の発展は相変わらずスローな状況で、政府の雇用拡大政策には困難がまとわりついている。フォーマルセクターでの労働力需要の伸びが低いことから、国民の就業傾向はおのずとインフォーマルセクターに向かう。そんな状況が政府の労働福祉政策の成果を薄いものにしている。
ソフィヤン・ワナンディ、アピンド会長は、過去10年間の政府の政策が労働集約型産業の投資意欲を減退させたため労働力需要が狭まり、新参入労働力はインフォーマルセクターに活路を見出さざるを得なくなった、と語る。「2010年2月の中央統計庁データでは、国民労働人口1.16億人就業人口1.07億人となっているが、就労者の69%にあたる7,360万人はインフォーマルセクターで働いている。国家予算は10年間で4百兆ルピアから1千2百兆ルピアに増大したというのに、どうしてインフォーマルセクター就労人口を減らすことができないのか?この状況は改善されなければならない。政府は政治ステートメントを出すことばかりせず、現場の実態を直視しなければならない。2008年はインフォーマルセクターの平均月収が80万ルピアで、フォーマルセクターは300万ルピアだった。国民の間の貧富の差を拡大させることにその状況は手を貸している。」
駐インドネシアILO代表はインフォーマルセクター就労者問題についてこうコメントした。「グローバルクライシスのために2008年8月から2009年2月まででインフォーマルセクター就労者は2百万人増加した。一方中央統計庁が公表した失業者貧困者データでは2008年8月の939万人が2009年2月には925万人に減少している。これは失業者が定収入を得るように変化したことを意味しているが、その定収入はインフォーマルセクターを源泉としている。インフォーマルセクター労働は、低賃金・社会保障欠如・適切な労働環境の不在・そして最悪の職種選択といった劣悪な労働風土の中に置かれている。政府は失業者の多寡や貧困者の増減だけを話題にするのでなく、インフォーマルセクター労働の再定義を行なって、新たな公式のもとに失業者貧困者データを作り直す必要がある。その中でインフォーマルセクター就労は恒久的なものなのか、それとも過渡的なものなのか、という点の理解のしかたはたいへん重要な問題だ。」 インドネシア政府のインフォーマルセクターについて抱いている観念が労働福祉の観点から見てズレているのではないかというポイントをILO代表は指摘しているようだ。


「観光産業従事者に職業能力認定制度」(2010年10月28日)
政府は2014年までに観光セクター従事者5万人に対して職業能力認定証を持たせる計画を立てており、2011年は1万5千人が目標数とされている。観光セクターと一口で言ってもその職種は多岐にわたっているため、まず国家職業能力認定庁が既に規準を定めてあるものが優先されるので、ホテルレストラン・スパ・旅行代理店・ツアーリーダー・観光ガイド・ダイビング観光ガイド・エコツーリズムガイド・ラフティングガイド・ミュージアムガイドなどの職種がメインを占めることになる。観光セクターの多くの職種は専門性に加えてプロとしての技能が強く求められているにもかかわらず、事業主は就労者が職業能力認定証を持っているかどうかをあまり重視していない、と文化観光省観光地開発総局長は述べている。
この観光セクターへの職業能力認定制度の振興普及は業界就労者の質的向上と共にアセアン域内市場開放に備えてのものでもある。アセアン諸国の観光セクター就労者がインドネシアで働く場合、インドネシアの国家規準をクリヤーしなければならなくなる状況を作り出すための布石がこの職業能力認定証の振興普及であるようだ。
政府は先に第二次SBY内閣百日評価ターゲットのひとつとして観光セクター従事者4千人に職業能力認定証を持たせることを計画し、2009年10月から12月までの3ヶ月間でホテルレストラン業3,420人、スパ業580人に認定証を授与している。このプロジェクトには観光職業認定機関・ホテルレストラン職業認定機関・スパ職業認定機関などが動員されて各地で実施されたが、主要都市では順調だったものの地方部には認定機関がまだあまり育っていないため、地方部での認定証交付はペースが遅かった。2011年のプロジェクトでは、リアウ島嶼州・北スマトラ州・西スマトラ州・南スマトラ州・東カリマンタン州・北スラウェシ州・南スラウェシ州・西ヌサトゥンガラ州・東ヌサトゥンガラ州・西パプア州に焦点が当てられる。インドネシアの観光産業従事者の国際競争力は133カ国中の40位であるとのこと。


「労働者への理解が薄い国有会社」(2010年11月18日)
国有事業体141社の内で20社が労働協約を持っていないことを労相が明らかにした。その20社の活動セクターは銀行・保険・農園・農業・鉱業・運輸・医療などに分布しており、業種とそれとは関係がないことを示している。
近年、労使間での労働条件に関する理解の齟齬が多発する傾向が顕著に見られており、円滑な会社運営のために労働協約を持つことは急務である、と労相はその緊急性を訴えている。「さもなければ会社経営に障害が起こり、会社の業績を悪化させてひいては国家経済に悪影響をおよぼす元となる。国有事業体は労使間協議を更に活発化させて増加傾向にある労使間対立を軽減させなければならない。国有事業体に勤める国民は70万人にのぼり、国が国家の発展と国民の福祉向上を目指して設けた国有事業体で調和のある労使関係が育まれなければその使命ははたせない。国にとってそれはきわめて残念な状況だ。」
国有事業体労組連盟委員長は労働協約締結について、それらの国有事業体の中には既に新しいものが労使間で合意され、その内容は労働省に対して届出がなされているところもある、と言う。「ところが経営者がいつまでたってもそれにサインしない。国有事業体省が労働協約へのサインに待ったをかけており、進展が完全にストップしてしまった。」会社経営者だけの判断では進まない国有事業体の台所事情について同委員長はそう話している。


「ジャカルタの最低賃金が7%アップ」(2010年11月24日)
首都ジャカルタの2011年最低賃金は1,196,269ルピアで、2010年の1,118,009ルピアから7%アップする。例年定められる地方別最低賃金は各地方自治体が編成している賃金評議会の中で、労使行政を主体に学術・統計など関連する諸機関からの代表者が集まって討議し、結論が出される。この賃金評議会は基本的に諮問機関であって、決定者である地方首長に提案するという形を採るものの、地方首長が特別な政治配慮をしないかぎりその提案が州知事決定書の形で法制化されるのが普通だ。
10月末に賃金評議会が合意に達した7%アップに関しては、労働界代表者は当然ながら最低賃金と適正生活需要1,401,828ルピアの一致を要求したが、事業者側代表であるアピンド首都支部のとてもその能力はないという主張に押し切られた形で7%アップに落ち着いた。
労働界は、労働者がいなければ事業経営は成り立たず、事業者が利益を得るのに貢献している労働者が適正な賃金を得るのは当然なことであり、独身者が妥当な生活を送るための適正生活需要に満たない賃金で妻子を養うことには無理がある、と主張したのに対してアピンドは、最低賃金の上昇は企業の生産性と財務状況に合わせなければ企業の存続維持は難しく、企業が経営難に陥れば労働者が賃金を得るどころではなくなるとの主張をぶつけて議論が白熱した。労働界はまた行政に対し、労働者保護の立場から最低賃金と適正生活需要が一致するように努めて欲しいと要請したのに対し、実業界が2008〜2009年のクライシスから立ち直り始めたいま、重い負担を与えるのは業界の体力を弱める以外の何物でもないため、労働界の希望に添うにはもう少し時間が必要だ、と説得して7%を支持する姿勢を示した。
中央統計庁ジャカルタ支所は2011年最低賃金7%アップという結論を理想的であるとして支持した。ジャカルタのインフレ率は2010年の10ヶ月間で5.06%であり、それを超える最低賃金上昇率は都民の所得に余裕を持たせるものになる。反対に7%を超えればジャカルタでの事業が採算バランスを崩すため、事業継続に困難をきたす事業所が増えるおそれが高い。だから7%アップは理想的な結論だと支所長は述べている。
アピンド首都支部長は労働界に対し、賃金評議会で労働界代表が合意したアップ率を拒否する反応は民主的でなく、またセクター別最低賃金が地方別最低賃金より高く設定されることや勤続年数に応じて賃金がスライドアップするため、多数の労働者は実質的に適正生活需要をオーバーする収入を得ているので、最低賃金7%アップを受入れて、それを拒否する反対行動は取らないようにしてほしい、と語っている。


「もっと非給与所得者を追え!」(2010年11月24日)
2010年9月30日時点での国税総局データによれば、納税者拡大成果はもっぱら給与所得者に集中しており、非給与所得者を納税者にしていかなければタックスレーシオは向上しない、と国税オブザーバーが発言した。納税者拡大努力の成果は今年286万人に達しているものの、そのうちの253万人は個人給与所得者になっている。非給与所得者は19万人、法人は11万社というのがその明細。
経済研究機関「インドネシア持続発展」のエコノミストは、非給与所得者を納税者にできていないことがインドネシアのタックスレーシオが上昇しない原因である、と大蔵省国税総局を批判した。「GDP形成の中で家庭消費の役割がきわめて大きくなっている点に注目するなら、国民の家計は税収の大きな財源になっているはずだ。家庭消費のソースは家庭の収入ではないか。国税総局の納税者拡大プログラムはもっと非給与所得者をターゲットにしなければならない。そして非給与所得者へのNPWP発行増に比例して税収が伸びていかなければならない。その活動はまずジャカルタ・スマラン・バンドン・メダン・マカッサルなど大都市で集中的に実施されるべきだ。その問題とは別に、国税総局は医師・コンサルタント・商業・教官などを副業としている国家公務員を細かく洗い出す必要がある。国家公務員はたいてい自分の所属する政府機関で給与所得者としてNPWPを取得しているから、所得税は免除されている。しかし公務員としての所得に対する納税免除が副業収入に適用されるわけではない。」
国税総局9月末時点の収税成果は402.02兆ルピアで、2010年度改定予算税収606兆の66.3%となっている。これに石油ガス分野の収税を加えると444.2兆ルピアとなる。非石油ガス税収明細は、PPh219.2兆ルピア、PPN・PPnBM154.2兆ルピア、PBB・BPHTB26.1兆ルピア、その他諸税2.5兆ルピア。国税総局は高額資産家の納税奨励と納税額の正確さ向上を専門に取り扱うハイウエルスインディビジュアル担当税務サービス事務所を全国に10ヶ所年内に設けることにしている。


「最低賃金要求デモで工業団地が麻痺」(2010年12月6日)
首都ジャカルタの2011年最低賃金を1,197,946ルピアとすることが首都賃金評議会で合意された。従来から謳われてきた最低賃金と適正生活需要の一致という国の方針に従って、ブカシ市とブカシ県はそのふたつを一致させたが、ジャカルタの適正生活需要は1,401,829ルピアであるため15%ほどちがっている。都庁労働局は1,201,890ルピアを最低賃金として推薦したものの、賃金評議会のリコメンデーションは結局実業界の希望する線に落ち着いた。
賃金評議会の中で労働界代表はその結論に合意したとはいえ、それを不満とする労働者が2011年の給与ベースを適正生活需要とするよう求めて、2010年11月25日にヌサンタラボンデッドエリア(Kawasan Berikat Nusantara)略称KBNでデモを行い、工業団地表門が通行不能になった。
北ジャカルタ市チャクンにあるKBNで働く勤労者1万人以上が25日朝から団地内にある工場で勤務に就くのを拒否し、都知事に対して適正生活需要を最低賃金とするよう団地内でデモを行なった。デモ隊はその日操業している工場を回って従業員にデモに加わるよう求め、その誘いかけに応じてそれらの工場では従業員が会社側に対してデモに参加する許可を求めた。しかし会社側がその要求に応じなかったために従業員は工場の中で暴れ、PT Bina Busana Maju, PT Gunung Abadi, PT Gudgues, PT Tainan 3, PT Daijo, PT Fokus, PT Hansolindo, PT Goldenなど8社のうち6社はフェンスが壊され、他の2社は従業員更衣室のロッカーが破壊されたりした。そのため会社側はしかたなく、その日の操業を取り止めた。
デモ隊はチャクン(Cakung)=チリンチン(Cilincing)大通り通称チャチン(Cacing)街道に直接面した工業団地表門に集まって気勢をあげたため団地を出入りするコンテナトレーラーが通れなくなり、ブカシ方面から来たトレーラーが数珠繋ぎになってチャチン街道を塞ぎ、交通の流れが止まってしまった。また団地内から輸出貨物をタンジュンプリウッ(Tanjung Priok)港に運ぶため団地を出ようとしていたトレーラーも人の波に阻まれて動けなくなり、多数の貨物運送に影響が出た。


「ジャカルタの最低賃金確定」(2010年12月7日)
都庁労働トランスミグラシ局長が2011年最低賃金は129万ルピアに決まったことを発表した。2010年最低賃金からは15.4%の上昇となる。局長によれば、2011年最低賃金はインフレ率や失業率など諸要素を考慮した結果であるとのこと。最低賃金は雇用主が勤続期間1ヶ月未満から12ヶ月までの独身従業員に支給しなければならないもので、既婚者や勤続が12ヶ月を超えている従業員にはそれより高額の報酬を与えなければならない。上乗せ分がいくらになるかは労使間の合意で定められる。
ジャカルタの2011年最低賃金はまだ適正生活需要に一致させることができない、と賃金評議会労働界代表者は語る。「現状を見る限り、経済成長・インフレ・首都圏周辺部の状況そして中小零細事業というマージナル経済界の状態を考慮するなら、適正生活需要を最低賃金にすると都内経済界に困難が生じる。中小零細事業を廃業の波が襲うことになるだろう。2010年には6社が最低賃金適用除外申請を出したが、承認されたのは2社だけだった。その審査には現場視察を含めた厳重なチェックが行われている。」
都庁労働トランスミグラシ局長は、「首都圏周辺地区ではブカシ市とブカシ県が最低賃金を適正生活需要に合わせた。しかしジャカルタの最低賃金は少なくとも、それらよりも高額になっている。また産業セクター別最低賃金の検討も、各産業界との間で検討が進められている。」とコメントしている。


「セクハラ防止が労働監督行政の一項目に」(2010年12月10日)
労働省は職場でのセクハラ防止の手引きとして大臣決定書の形で規則を制定する予定。職場でのセクハラはだれもがその被害者になりうること、そしてそれは従業員本人だけでなく会社の業績に悪影響を及ぼすことから、厳格に排除されなければならない、と大臣は説明している。「この大臣決定書は労使関係の中での会社・経営者・労働組合に初歩的規準を与えるもので、セクハラ問題を生じさせる重要ポイントのいくつかを認識してもらうためのものだ。セクハラは従業員の勤労意欲を失わせ、出勤しなくなり、最終的に退職してしまう。会社にとっても、生産低下、従業員減少、イメージダウンなどをもたらす。だからセクハラを規制するための規則が必要であり、その防止はたいへん重要である。大臣決定書は、セクハラの発生を防止するために、理解しやすく、包括的で、よりテクニカルなポイントに重点が置かれたものになる。インドネシアはこの種の規則をたいへん必要としている。それはセクハラのターゲットになる女性勤労者の教育レベルがまだまだ低いために政府が保護を与えなければならないという観点にもとづいている。2009年8月時点の女性勤労者の57%にあたる3,975万人は学歴が小学校卒あるいは中退となっている。」
大臣はジャカルタで開催された職場でのセクハラ防止セミナーでそう語って、今後セクハラを労働問題のひとつに取り上げることを表明している。


「労働監督行政は地方自治体にまかせておけない」(2010年12月20日)
レフォルマシ時代に突入したあと、地方自治・地方分権が国家方針として進められた。ところがそれまで中央政府の行政機構が全土に地方事務所を設けて現場の監督指導を直接行なっていた部分が分権によって地方政府に移管されてからというもの、国家行政の中で現場の状況がよくわからなくなる分野が続出するようになったのである。なにしろ全国には33州403県94市あり、5百人を超える末端行政責任者がすべて同じレベルでものごとを見、同じビジョンで行政に携わっているわけでなく、さらにその責任者を監督する地方政府の上層部にも同じことが当てはまるため、同じタイミングで同じように正確なデータが全国から集まってくれば、それは奇跡のようなできごとと言えたにちがいない。こうして地方と中央の行政管理コラボレーションが進められた結果、現場状況の把握技術は向上してきている。
ところがここにきて、労働監督行政が逆戻りの動きを開始した。労働監督に関する2010年大統領規則第21号が出されて末端現場における労働監督行政の主導権を労働省が直接握る方向に進み始めた。労働監督官は全国に2,308人しかおらず、207,813社の労務管理の実態をそれだけの人数で調査し監督できるわけがない。労働省は監督官を3,480人に増員するため労働分野の文民公務員を育成するのに大童になっている。マレーシアでは20万社を8千人の労働監督官が常日頃見回っているとのことで、インドネシアは1万人体制を目標に掲げたものの、3千5百人にするだけでも涙ぐましい努力を強いられているようだ。


「公共運送にPPN免除」(2010年12月21日)
国税総局は2010年11月16日付けで道路公共輸送サービスの提供に対する付加価値税(PPN)の処置に関する総局長回状第SE-119/PJ/2010号を出し、路上の公共輸送サービスは黄色地に黒色文字のナンバープレートを着けた自動車が使われるかぎりPPNは課税されないことを明らかにした。そのサービスにはチャーターやレンタルも含まれる。
この総局長回状はこれまで公共輸送サービス業者に対するPPN課税の対応が税務署員の間で統一されていなかったために出されたもので、国税総局指導サービス広報局長は「今後は異なる理解による徴税対応が行なわれることはないだろう」と語っている。
一方、道路公共輸送サービス業界は、国税側の灰色PPN問題に解決をもたらした決定を評価するもののそれによって公共運送料金がさがることはない、との声明を出した。全国商工会議所陸上河川湖沼渡海輸送常設委員会委員長は、業界者の事業コストが大幅にアップしている現在、10%のPPNが削除されても料金引下げにはつながらない、と述べている。「PPN10%の削減は重い負担の一部が軽減されたという性格のものであり、理想的な40%という操業コストが現実には80%に達しているため、料金を引き下げる余裕はそこから出てこない。ガソリンが操業コストの30%を占めており、ガソリン経費が低下するなら料金引下げの可能性は出てくるかもしれない。」
委員長はそう語って政府のガソリン補助金政策にもう一考を加えるよう求めている。


「農業商業に頼る労働力吸収」(2010年12月23日)
2010年から2014年までの国内労働力需要の概略を労働省労働力育成配備総局労働市場開発局長が公表した。国民の大多数が就業分野として関心を持っている事業セクターは農業・商業・ホテルレストランなどであり、逆にそれらのセクターは4年後も大きい労働力需要を抱えているものと見込まれる。2014年の農業セクター労働力は4,288万人、商業とホテルレストラン業はあわせて2,520万人となる見込み。農業労働力需要が大きいのは農村部人口が大きいことと相関関係を持っている。2010年の農業セクター人口需要4,219万人は総労働力1億766万人の40%近い。2014年には農業セクター人口需要が4,288万人に増加するものの総労働力人口1億1,758万人中のシェアは低下する。
一方商業とホテルレストラン業は2010年の2,250万人から4年後に2,520万人と年率2.9%の上昇を見せる。商業セクターの労働力吸収は諸規模流通と小売分野での伸びが期待され、中でも中小零細分野におけるインフォーマル事業での労働力吸収が大きくなるものと推定されている。


「労働違反取締りは軟弱」(2010年12月28)
ジャムソステック制度に対する企業の違反行為は連綿と続けられている。そして数少ない労働監督官がやっと発見して起訴した違反行為に対する有罪判決があまりにも少なく、そんな状況が違反行為を恐れない経営者の増加を招いている。
労働省が把握している会社数は全国に207,813あり、大企業19,986、中企業45,196、小企業142,631という内訳。その膨大な数をわずか2,089人の労働監督官と621人の文民捜査官が企業の犯している法規違反を発見し、調査し、起訴している。労働省2009年データによれば、捜査対象になった115件のうちわずか2件しか判決が下されていない。地方別の最大は東ジャワの40件、次いで北スマトラの30件となっており、その2州で61%を占めている。
労働監督官の絶対数不足に加えて地方自治制度による地方ごとのバラつきや労働裁判所の判事が労働問題を十分理解していないことなどの結果が上のような状況を招いており、労働省労働育成監督局長は各企業で違反行為があったとしてもその実態把握ができる体制にまだなっていない、と現状についてコメントしている。
「労働法改定に対する労使の姿勢」(2010年12月28日)
政府が進めている2003年法律第13号労働法改定に対してインドネシア全国労組同盟が反対を表明している。現行の退職金規定が弱められれば労働者は不利益を蒙るというのがその理由だ。一方労働界は現行労働法の中のアウトソーシングと契約社員に関する条項に反対しており、その改定は望むものの改定が退職金規定にまで広がればとても受け入れることができず、痛し痒しという状況になっている。「事業者側は退職金条項の適用を避けるために、アウトソーシングや契約社員のシステムを使っている。それらのシステムは労働者をきわめて不利な立場に追い込んでいるため、労働界は大きな不満を抱えることを余儀なくされている。それらのシステムを使えば事業主は労働者をいつでも好きなときに解雇でき、巨額の退職金を支出しなくともよい。労働界はそれらのシステムがきわめて大きな問題をなしていることから、それらシステムに関する専用法規が作られることを希望している。」全国労組同盟臨時委員長はそうコメントした。
一方ソフィヤン・ワナンディAPINDO会長は、現行労働法は事業者側と労働者側の双方に害をなしている、と言う。「月給の十数倍にのぼる退職金は事業者にとって重過ぎる負担だ。これは世界で最大だろうと思われる。一方、労働界はアウトソーシングや契約社員制度をやめるよう望んでいる。事業者も本当はアウトソーシングや契約社員システムを好んで行なっているわけではない。このシステムは労働者に明るい未来を与えないものだし、そのシステムでは従業員がどんどん回転していくために熟練労働者の人材構築や育成もうまくいかなくなる。ところが退職金があまりにも重いものであるために事業者はそれらのシステムを使わざるをえない。それが会社内で正社員構成や長期勤続の実現をはかろうとする意欲を破壊している。反対に会社側が社内犯罪を犯したと見られる正社員を解雇しようとしても賃金を支払い続けなければならないので、それらの面から現行労働法は事業者に重過ぎる負担を課しており、その対策が労働者に不利な状況を生んでいる。」
アピンド会長はそう語って、労働者を過保護に扱っている現行労働法が改定されなければならないことを主張している。