インドネシア税労働情報2014〜16年


「最低賃金適用開始」(2014年1月13日)
2014年1月から全国の県市で新しい最低賃金が施行された。2013年の大幅アップに追い討ちをかけるようにして、2014年も決して小幅と言えないアップが行なわれたところもある。そういう県市で操業している労働集約産業にとっては、既に存亡の危機に立たされている会社もあるにちがいない。
最低賃金適用義務の免除を申請する会社が出てきて当然という面は確かにある。2013年度最低賃金決定のモメンタムで、インドネシア政府が低賃金国から脱皮するという大見得を切って異常な引上げを行なったはいいものの、労働者のほとんどは賃金と同じように大幅に上がった物価のおかげで実質的な豊かさの実現はまったく感じられない状態だと政府を非難している。結局、だれがいちばん得をし、だれが貧乏くじを引いたのかということを考えたとき、オルラ〜オルバ〜レフォルマシと続くインドネシアの政治体制の推移の中でレフォルマシ期というのはそういう時代なのだという思いを抱くのはわたしだけではないだろうと思う。
全国で1,593,792人を雇用している2,510社から成る労働集約産業界で、417社が最低賃金適用義務免除申請を出した。2013年は949社だったから大幅減ということになるのだが、賃金上昇にスライドしたものと見てよいのかもしれない。2013年に免除申請が認められたのは489社あった。
2014年の申請者417社の地域別は西ジャワ州214社、バンテン州101社、ジャカルタ50社、東ジャワ州46社、ヨグヤカルタ特別州6社。免除申請の承認は各州政府が州知事の名前で出すものだが、ムハイミン・イスカンダル労相は各州政府に対し、申請各社の事業継続を優先させて倒産〜失業という事態を避けることを重点事項ととらえてほしい、と要請している。
アピンドのソフィヤン・ワナンディ会長はこれまで提唱してきた労働集約産業界への最低賃金適用除外制度を設けて欲しい、とふたたび政府に呼びかけた。会長によれば、駐インドネシア韓国大使がジャカルタ、西ジャワ、東ジャワの各州知事宛に送った要請状の写しを入手したとのことで、各州知事がその三州にある韓国資本の労働集約工場に対して最低賃金適用免除を与えるようにしてほしいと韓国大使が要請する内容になっていた由。その援助が得られなければ、韓国系の繊維・衣料・履物製造工場はインドネシアから撤退せざるを得ないとのこと。毎年250万人の求職者が出るのに、フォーマルセクターはそのうちの150万人しか吸収できておらず、企業の倒産や閉鎖が起これば失業者の増加は避けられない、とソフィヤン会長は語っている。


「4月9日は労働者の休日」(2014年4月4日)
2014年4月9日(水)は総選挙投票日。この日は全国一斉に国会と地方代表議会そして各地元地方議会の議員を選出する投票が行なわれる。投票時間は午前7時から13時まで。
投票が行なわれる日が平日の労働日であるため、国民の参政権行使が平等になされなければならないことから、雇用されている国民が投票権を行使する機会を平等に得ることができるようにとの主旨で、労働トランスミグラシ相がその日を全勤労者/労働者にとっての休日に指定した。
国民の休日(Hari Libur Nasional)というのは宗教大臣、労働トランスミグラシ大臣、行政機構効用改善行政改革大臣の三大臣が共同大臣令で定めるものであり、今回労働トランスミグラシ相が単独で出した国会・地方代表議会・地方議会議員の総選挙投票実施の際の勤労者/労働者のための休日に関する2014年3月26日付け大臣回状第Se.2/Men/III/2014号はその条件を満たしていないため、2014年4月9日は国民の休日ではない。
その回状は全国の行政ルートを通じて事業主と勤労者/労働者およびその他の関係者に通知するよう全州知事・県令・市長に要請するもので、2013年総選挙コミッション規則第26号が定めている「2014年4月9日の投票日は休日とする」という条項を根拠にしている。さらに、その日どうしても勤務しなければならない従業員に雇用主はかれらが投票するための時間調整を行なわなければならず、また勤務に就いた従業員は通常の休日出勤の際に与えられる賃金その他の恩典を受ける権利を有しているのであるとのリマインドも雇用主に与えている。
国民の社会生活に関わっている諸機関でも、勤労者/労働者は雇用されている。それらの諸機関が営業するのかしないのか、それに関する政府からのコメントや指示はまだ何も出されていないようだ。


「韓国への出稼ぎ希望者は数千人」(2014年4月21日)
韓国で働きたいインドネシア人は、EPS−TOPIK(employment permit system - test of proficiency in Korean)テストに合格しなければならない。韓国への労働研修生派遣制度は最初民間レベルで始まったが、さまざまな問題が発生したことから最終的に政府間事業に移され、2004年からトライアルが開始されて2006年に本格実施の運びとなった。インドネシア政府労働省管下の海外出稼ぎ者配備保護国家庁は今年韓国への労働者派遣選抜をジャカルタ・バンドン・ソロ・マランで実施するが、2014年4月14〜17日に東部インドネシア地方居住者を対象にしてマランイスラム大学で開かれた応募受付に数千人に達する希望者が殺到した。今回の応募受付は応募者が規定条件を満たしているかどうかという受験資格審査が主体で、選抜試験は6月に行なわれることになっている。
同庁配備サービス局長は韓国が国民に人気のある出稼ぎ先のひとつであることを強調する。「韓国は外国人労働者への待遇がしっかりしている。老齢保険・健康保険・労災保険・帰国保険の四つの保険がひとりひとり全員に与えられる。また四年間韓国で品行方正に働いた者には優良勤労者ファシリティが適用されて、再び韓国で働くための諸条件に優遇措置が与えられる。インドネシア人出稼ぎ労働者が契約期間を終えたあとでまた韓国に戻って働きたい場合にも、このシステムはたいへん大きい便宜をその者に与えてくれる。韓国への労働者派遣を両国政府が管掌していることも出稼ぎ者たちに安心感を与えており、韓国が人気の高い出稼ぎ先になっている一因だ。」
局長は韓国への出稼ぎ希望者が国内に多いことをそのように分析している。


「平穏なメーデー」(2014年5月5日)
メーデーが国民の休日になった今年、労働者たちは心置きなく労働者の祭りを祝った。労働者の祭りがデモの形を採るのは、ある意味で常識的すぎるほど常識的なことにちがいない。例年行なわれていた、操業中の工場に押し入って、勤務中の工員を強制的に路上デモに参加させるために連れ出すという操業妨害は、休日にするという方法で抑えこまれた形ではあるが、法治の確立が弱い国が問題解決をはかると新たな問題発生に向かうという通例を、ここにも見出すことになる。
今年も都心部タムリン〜スディルマン〜モナスという恒例ルートで労働者デモが行なわれ、首都圏各地から動員されてきたデモ参加者を運ぶバスがスディルマン通りを埋め尽くして一般車両を通行できなくしたのは、他人に君臨しようとする勝者願望の表れだろう。今年のメーデーはあくまでも祭りに徹し、例によってのダンドゥッステージやら、植樹等の環境保護活動など、多彩な催しが全国で行なわれた。と言っても、労働者デモで要求が掲げられないはずがない。全国の労働者デモで掲げられた要求は10項目あった。
1.2015年最低賃金アップ率は30%、適正生活需要は84アイテムに増やすこと
2.最低賃金適用保留申請制度を拒否する
3.勤労者に対する強制老齢年金制度を2015年7月から実施せよ
4.2013年保健大臣規則第69号を廃止して全国民に対する無料健康保険制度を実施し、保健社会保障催行庁と労働社会保障催行庁の監査を行なえ
5.国有事業体をメインにした、アウトソーシングシステムの完全廃止
6.家庭プンバントゥ法案を成立させ、2004年法律第39号海外出稼ぎ者保護法を改定せよ
7.非政府組織法を廃止し、協会法案を成立させよ
8.非正規公務員と教員160万人を正規公務員に昇格させ、非正規公務員はひとり毎月100万ルピアの補助金を国家予算から支払え
9.勤労者用廉価住宅と公共運送機関を用意せよ
10.労働者子弟のために12年義務教育完全実施と大学までの奨学金制度を実施せよ
警察はアナーキーな暴力デモの発生に備えて、全国各地で治安部隊を動員したが、ほんの一部で小規模な衝突があったのみで、メーデーは平穏に一日を終えた。


「賃金と生産性」(2014年5月12日)
2014年5月1日の万国労働者の日に関連して、興味深い疑問がひとつある。インドネシアの労働者は本当に生産性が低いのかというものだ。世界経済フォーラムの2013〜2014年グローバル競争力レポートはインドネシア人労働者の賃金と生産性について、タイやカンボジアと同じ4.4というスコアを与えている。ベトナムは4.7、ラオス4.8、マレーシアはシンガポールと同じで5.2。インドネシアより劣るのは4.2のフィリピンだけだ。その状況を見る限り、インドネシアの労働者は厳しいポジションにいる。もっとひどいことに、他のファクターがインドネシアの競争力を劣化させており、アセアン経済ソサエティにおけるインドネシアの競争力はかなり悲観的だ。フィリピンは生産性スコアがインドネシアより低いにもかかわらず、中央銀行の参照金利率は3.5%であり、インドネシア銀行の7.5%というBIレートとは比較にならない。インドネシアとタイの生産性が同じスコアであっても、インフラはタイの方が高スコアであり、カンボジアもビジネス環境が改善されたことを反映して23位もランキングが急上昇しており、軽く見ることはできない。
賃金と生産性が経済に与える影響は大きい。賃金と生産性の改善は国民総生産や投資の増加を引き起こし、それは国民所得を上昇させて国内需要を高める。そのサイクルは再び生産増をもたらし、賃金上昇を引き起こす。反対に、生産性のアップがない賃金上昇はスタグネーションを引き起こす。国民総生産と投資は停滞して雇用が減少し、国民所得や国内需要が弱まる。
問題は、政治社会的ダイナミズムにおいて毎年最低賃金が変更されることだ。首都ジャカルタの最低賃金は2013年に44%引き上げられ、今年労働者は30%から50%もの賃上げを要求している。
実業界にとってはまったく常識はずれなのだが、労働者の目からはそのような大幅賃金上昇でさえ、置き去りにされてしまった収入への回復はまだ程遠いということになる。乖離の持続する矛盾を抱えた状況の中で、賃金政策は複雑で錯綜したものになっている。
1991年から2013年までの間に、ひと月当たり国民平均賃金は1千5百パーセントもアップしている。最高は製造セクターの1千6百パーセントだが、製造セクター労働者の額面賃金は、農業セクターだけを例外にして、他のいかなるセクターよりも低い。だから、大幅賃金上昇をかれらが求めるのは、ある意味で当然だと言うことができる。2013年製造セクターの額面賃金は160万ルピア前後であり、鉱業セクターの280万ルピアや金融セクターの260万ルピアから大きく引き離されている。80万ルピアという農業セクターよりもマシなだけだ。
セクター間で賃金の平均レベルが大幅にちがっていることが問題として表面化している。賃金レベルの爬行性はセクター間だけでなく、同一セクター内でも起こっているのだ。製造セクター内では、資本集約産業のほうが労働集約産業よりも賃金レベルが高く、また資本集約産業や大資本労働集約産業のほうが、中小資本労働集約産業よりも賃金上昇に柔軟性を示している。総生産コストの4割を人件費が占めている工場で20%の賃金上昇が起これば、どんな影響に見舞われるかは想像にあまりあるだろう。
大資本の会社が労賃の上昇圧に見舞われたら、機械の導入を進める。オートメ化が広範に起これば、雇用問題が起こる。だから、大幅な賃金上昇は求職者にネガティブな影響を与えるという意見は間違っていない。将来の賃金政策は各産業ごとの特徴に応じたものにしていかなければならない。たとえば、特徴の違いにウエイトを与えるような方式を構築するということだ。
賃金・労働者・生産性・爬行性の問題は動的な弁証法で対処するべきだ。インドネシアのボーナスデモグラフィのおかげで国民の大部分が生産性のある活動を行なっているのはラッキーだ。国民老齢化が進む一方で、凄まじいクライシスに襲われている先進国でも生産性と爬行性は大きな問題になっている。
グローバル経済が繁栄のピークにあった1970年代(ベビーブーマー)の世代は、あと25年ほどで年金生活に入る。かれらは経済的に安定し、十分な教育を受けてきた世代だ。かれらの年金生活入りは先延ばしされるだろうから、新世代の就職機会を減らすことになる。経済クライシス期に生まれた世代は教育コストや他の社会コストへの配分が減らされるために生産性の劣る世代になる。
先進国のいくつかは、絶望的な悪循環が起こっている。国民老齢化と経済停滞が社会貯蓄のレベル低下を引き起こしているという問題だ。それを防ぐために金利率を高めなければならない。金利の引上げはさまざまな資産の価値を低下させる。すると投資が冷却する。こうして先進国はセキュラースタグネーションと呼ばれる状態に落ち込みつつある。
いまインドネシアはボーナスデモグラフィーを享受している。とはいえインドネシアも、労働者の生産性向上が国家国民の将来を決めるという重大な局面に入っている。マッキンゼーグローバルインスティチュートは、インドネシアが2030年に世界第7の大国になると予言した。年間経済成長率は7%以上で、労働者の生産性が6割アップするという条件で。
労働者の生産性向上は、次の5年間を治める政府が意を払わなければならない最重要テーマのひとつだ。真剣な注意が向けられなければ、次のより高い局面に向かう経済移行期においてインドネシアは失敗国家になるおそれが高い。われわれは意味のある進歩を実現できない中級生産国家という罠に落ちて脱け出せなくなる可能性が高い。
ライター: アッマジャヤ大学教官、Aプラスティヤントコ
ソース: 2014年5月5日付けコンパス紙 "Relasi Upah dan Produktivitas"


「PPN納税インボイスの電子化」(2014年5月19・20日)
2012年のGDPは8,242兆ルピアで、そのうち家庭消費は54.6%にあたる4,496.4兆ルピアだった。付加価値税(PPN)が10%であれば、単純計算で行けばその年のPPN税収総額は449.64兆ルピアになってしかるべきだが、実際には337.41兆ルピアで112兆もの差額が出ている。2013年も、家庭消費はGDPの55.8%にあたる5,071兆ルピアだったが、PPN税収総額は383.4兆ルピアしかなく、差額は拡大している。
国庫収入の最大ポーションは所得税(PPh)で、PPNは第二位を占めているのだが、それらのメイン税種のいずれもが理論値と実態の間に大きな乖離を抱えており、つまりは不公平な税執行の一つの柱をなしていると言うことができる。
PPNの乖離を発生させている大きな要素のひとつとして、PPN納税手続き免除制度が挙げられる。PPN手続きとは、商品や原材料の仕入れに際して仕入先に取引金額の10%のPPNを渡して納税証憑である納税インボイスを受取り、製品の販売に際して取引金額の10%をPPNとして受取ってその金額の納税インボイスを購入者に渡し、そのインとアウトの納税インボイスの差額を毎月PPNとして税務署に納税するという手続きを指している。
年商6億ルピア未満の事業者はPPN手続きが免除されていたが、2013年にその限度金額が48億ルピアに引き上げられ、年商に対する1%の見なし課税が適用される方式に変更された。しかしセルフアセスメントを原則としているインドネシアの徴税方式で、理論値通りの税収が上がることを期待するほうが無理であるにちがいない。ましてや会計帳簿すらつけていない小規模家内事業やカキリマ商人が納税のことまで考えながらビジネスを行なっているわけがないと考えるのが順当だろう。国税側もまだその時期にあらずとしてその分野は放置しているのが実態だ。
もうひとつの要素として、PPN非課税対象の問題がある。産業振興を理由にする業界団体からの要請でその物品のすべての取引を非課税にするものから、特定の売り手あるいは買い手との間の取引を非課税にするものまでさまざまだ。その内容が厖大なリストになっており、それを整備しなければPPN税収理論値と実際の数字は乖離していくばかりだ、と国税総局第一税法規局長は述べている。
それ以外にも納税インボイスの虚偽作成問題があり、架空仕入を起こして納税額を増やしておけば、インとアウトの差額が小さくなって納税金額は減少する。この問題は企業コンプライアンスが依然として低い社会環境と、違反摘発までに時間がかかることなどから、毎年のPPN税収金額が理論値に追いつかない要素のひとつに数えられている。
だから国税総局は納税インボイスを発行できる事業者を資格審査した上で指定するというPKP(課税事業主)制度を実施して納税インボイス発行者の監督を厳しく行なっているのだが、通常そういう架空納税インボイスを作るのは税務署の監督下にあるPKPでなく、偽造運転免許証を作っているような犯罪者であるのが普通だ。かれらは山っ気のあるPKPの依頼を受けてそれを作り、相手に売り渡す。
一ヶ月間にPKPが発行した納税インボイスは月次の納税申告時に税務署に提出され、受け取った税務署はその内容を総洗いしてデータをクロスチェックするというプロセスを行なっていると国税側はSOPを説明するが、期限をつければプロセスが簡略化され、期限をつけなければプロセスがどんどん遅れていくのが通例のインドネシアで、この種の問題に楽観的になれないのはわたしばかりではあるまい。
毎月行なわれるPPN手続きで上がってくる納税インボイスの裏付けチェックが迅速詳細に行なわれていればニセモノ納税インボイスがすぐにはじきだされて来るだろうが、昔から報道されている架空取引納税インボイスの発覚はたいてい数年経過してからのことであり、当年度に発覚した例は寡聞だ。加えて、何か事件が起こってニセモノ納税インボイスが発覚することが少なくなく、ラッキーなニセモノはひょっとしたら国税書類倉庫の中に何千枚も埋もれていて、ひそかに税務調査期限を迎えて闇の中に消えて行っている可能性もなきにしもあらずだろう。
そんな環境の中で国税総局は、PPN納税インボイスのオンライン申告化に踏み切ることを公表した。この電子化納税インボイスは書類としてプリントアウトできるフォーマットになっている。
これまでは発行されるすべての納税インボイスに税務署に届け出てあるサイン者の肉筆サインをしなければならず、おまけに地位のある者がサイン者として登録されるのが普通だから、PKPの責任ある役職者が何百枚という厖大な数の納税インボイスにサインしなければならないという効率の悪い現象が起こっていたが、この電子化ではPKPのアイデンティティを示すバーコードが使われる予定で、そのような非効率が解消されることになりそう。電子化納税インボイス方式になれば、書類保管の義務が適用されなくなり、事務管理効率向上や事務用文房具の出費削減にもなる。また国税総局のシステム内で申告された電子化納税インボイスのまとめが自動的に行なわれるようになっており、PKPの月次納税申告にそれが利用できることからPKPの事務作業も軽減されることが期待されている。
このプログラムの第1ステップは、ジャカルタの大規模納税者国税総局地方事務所および特殊国税総局地方事務所管下の税務サービス事務所と中級税務サービス事務所が監督している100PKPを対象にして2014年7月1日から開始され、一年間のパイロットプロジェクト実施で得られた問題の改善を加えて第2ステップが2015年7月1日から開始される。この第2ステップはジャワ・バリ地区に拡大されて300PKPが対象になり、2016年7月1日に全国での全面展開というスケジュールになっている。


「韓国向け労働力派遣は一万人」(2014年6月24日)
インドネシアと韓国は政府間で労働力派遣の相互覚書を2004年7月に結び、国内産業界の外国人労働力需要を政府が取りまとめてインドネシア政府に人材送り込みを依頼する形を採っている。2013年12月18日までにインドネシア政府は累計で50,538人のインドネシア人労働力を韓国に送り込んだ。
かれらを受け入れる韓国側の企業はかれらに安全と法的な保証を与えることに加えて、かれらに月額9百〜1千1百万ルピア相当の給与を与えている。
2014年に韓国が要請している派遣者数は10,200人で、インドネシア政府はそれを労働市場で公開募集している。2014年6月14〜15日にジャワ島の四会場で行なわれた選抜テストには、総数で30,596人が受験した。中部ジャワ州スラカルタ会場には11,886人、西ジャワ州スムダン会場は7,981人、ジャカルタ会場4,064人、東ジャワ州マラン会場6,665人というのが会場別の明細。ジャワ島外からの応募者はそれら会場のどこかで受験している。
韓国の製造産業と水産業で働くことになる応募者たちは韓国語の能力を持っていることが前提条件とされており、テストではハングルの読解力と韓国語の聴き取り能力が韓国人専門家によって審査された。この選抜をパスした者は、政府の指示に従って韓国行きのフライトに乗ることになる。


「ルバラン休暇前倒し」(2014年7月3日)
2014年のルバラン祝祭日は月曜と火曜であるため、ルバラン帰省者の移動はその直前の週末に集中するおそれがあり、国中で起こる密度の高い混雑が社会生活に障害をもたらすことが懸念されるため、雇用者は従業員にもっと早いタイミングで休暇に入らせるべくケアするように、と西ジャワ州警察長官が州内の企業や工場に呼びかけた。
「2013年のルバランは祝祭日から6日前から休暇に入ったため、帰省者の混雑は分散されてあまり激しいレベルにはならなかった。しかし今年は土日がその直前に来るため、帰省者の移動がその二日間に集中する恐れが高い。各工場や事務所が従業員にもっと早いタイミングで休暇を与えれば、極度の集中は緩和されるだろう。だから工場責任者はその点を考慮して休みを前週の早めに開始し、従業員の帰省のためにバスを用意してやることもできる。」
西ジャワ州警察長官はまた、同じように公務員に対しても前週の早めに休暇を与えるよう官僚効用改善行政改革大臣に提案した。
西ジャワ州地方自治体の労働局長の中には、その提案に賛成を表明する発言もあがった。ただし、警察長官の呼びかけだけでは法的拘束力が足りないため、労働大臣や官僚効用改善行政改革大臣が通達を出す必要があるだろうと述べている。
州警察長官はまた、ルバラン帰省に使われる州内主要道路の状態を調査したとのこと。最大の動脈であるジャワ島北岸街道は三割がいまだに工事中であり、ルバラン帰省が始まるまでにはそれらの工事を完了させるよう、各県市自治体は十分に監督してほしい、と長官は呼びかけた。橋を架け替えているところや、道路舗装の最中であるところが目立っている由。西ジャワ州内には北岸街道、中央道、南街道の三本があり、いずれも何らかの工事が行なわれているとのこと。


「最低賃金、法執行の大穴」(2014年9月30日)
最低賃金は適正生活需要を満たすべく方向付けられている。賃金基準が労働者の繁栄を目的にしていることを労働法規は明確に規定している。ところがその善意は、その基準を満たすのが困難な小規模事業にとって打撃を与えるブーメランとなりうるものなのだ。
過去数年間に最低賃金額は急上昇した。国家経済にとってそれはポジティブな兆候をもたらすものである。労働者の最低賃金が上昇すれば、かれらの購買力が高まって経済成長を促す。購買力の高まりは労働者の福祉改善を同時に意味するものでもある。
多国籍スケールの大規模企業はたいていが最低賃金規定に則して従業員賃金をアップさせた。ところが残念なことに、中小零細規模事業所にとってはこの最低賃金メカニズムに対応することが困難だった。中央統計庁データは、2010年から現在に至るまで、中小零細規模セクターの賃金上昇率が年平均1.6%しかなかったことを示している。法定最低賃金のその期間の年平均上昇率は13%だったというのに。
中小零細規模セクターの賃金上昇スピードと法定最低賃金の上昇スピードの差は、その両者間の較差の隔たりをますます大きなものにしている。2013年地方別最低賃金の全国平均は130万ルピアだったが、中小零細規模セクターの全国平均賃金額はその半分に満たない。その較差が始まったのは、地方自治の実施に伴って中央政府が最低賃金決定メカニズムを地方自治体の手に握らせた2000年以来のことだ。そのとき、中小零細規模セクターの平均賃金は最低賃金から10%ほど低いレベルにあった。それから5年経って、その較差は33%まで拡大した。
中小零細規模セクターの賃金が低いのは、生産性に関係している。中小零細規模セクターの生産能力は一人当たり年間4千5百万ルピアしかない。大規模企業の一人当たり年間生産能力が10億ルピアだと言えば、それ以上何も言うことはあるまい。中小零細規模セクターの生産性の低さは事業主の売上高と利益が発展するのを困難にしており、その結果、事業主が最低賃金上昇に応じて従業員の賃金をアップさせることを難しいものにしている。
一方では、2003年法律第13号労働法第1条5項と第90条1項で、最低賃金は事業規模の大小に関わらず同じように適用されることを義務付けている。大規模であろうが零細規模であろうが、最低賃金規定に違反した事業主は1〜4億ルピアの罰金と入獄という実刑を与えられることになっているのだ。そのような刑罰を与えられたなら、小規模事業は土台を揺るがされ、結局は死滅してしまうだろう。ところが、中小零細セクター事業は国家経済の大きな部分を背負って立っている存在なのである。2012年現在のデータでは、5千6百万事業所がこのセクターに属し、GDPの58%をかれらが担っているのだ。ベトナム・タイ・マレーシアなどの状況を見るなら、それらの国の中小零細規模セクターの国家経済に対する貢献度は50%を下回っている。国民雇用の面を取り上げても、1億7百万人の労働力をこのセクターが吸収しているのである。
最低賃金に関する法執行が条文どおりに行われたら、国家経済がどれほど大きな損傷を受けるかは想像に余りある。かれら弱小セクターに対する最低賃金のダブルスタンダード制を政府は検討するべき時期にさしかかっている。
ライター: コンパス紙R&D、ビマ・バスカラ
ソース: 2014年9月17日付けコンパス紙 "Standar Usaha Kecil"


「脱税者が逮捕される」(2014年10月7日)
中部ジャワ州スマラン市検察庁は合資会社「スティアサントサ」取締役のルシアナ・サントサを税金着服容疑で拘留した。スティアサントサは顧客への商品販売に付加価値税(PPN)をかけていたが、会社が税務署から納税事業者に認定されていなかったために国庫への納税を行っておらず、そのためこの処置がとられたもの。
スティアサントサはジュパラ・クドゥス・ヨグヤカルタの顧客から付加価値税を徴収し、2008年から始められたその行為で3億8千4百万ルピアの金額をPPNとして入手したと見られている。言うまでもなく、顧客はスティアサントサから納税インボイスを入手しており、問題はスティアサントサが税金を着服したという点にある。
スマラン市検察庁は、国税総局中部ジャワ第一地方事務所からの捜査結果の届出とともに法執行措置が委託されたのを受けて、ルシアナ・サントサを逮捕してスマラン二級女性刑務所に拘留した。この事件は2009年法律第16号現行税法の違反に該当するものであり、検察庁は裁判所に告訴するための公訴資料の準備を進めている。
国税総局中部ジャワ第一地方事務所長の談によれば、ルシアナの行為は国税側の捜査によって察知されており、法定罰金である未納税金額の二倍を付加した滞納分を全額納税するよう命じてその実行を待っていたが、期限までにそれが行われなかったために法的措置を取った、とのこと。
第一地方事務所長の話によれば、2014年は管区内で横領着服等の税金犯罪が8件摘発されており、そのうちの一件が送検されている。その中には、納税インボイス偽造、インボイス金額虚偽申告、年次納税申告時の所得隠しといったものが含まれている。過去一年間に全国で摘発された大型税金犯罪は次のようなものがある。
2013年10月8日、ジャカルタでPPA納税事業者がトゥブッと南ブカシの納税事業者登録済み会社を使って架空取引の納税インボイスを発行し、およそ120億ルピアの納税金額をごまかしたもの。
2013年10月30日、2010年から3年間にわたって架空の会社名で納税インボイスを発行していた者を国税総局が逮捕した。その犯行のために公正証書をはじめとする多数のアイデンティティ証明書類が偽造されていた。国税側は550億ルピアが脱税されたと主張している。
2014年5月13日、東カリマンタン州で合板事業を行なっている事業者が帳簿内容をごまかし、また取引に使われた書類を故意に捨てて年次納税申告書の所得と利益を過少申告していたことが摘発された。国税側は脱税金額を64億ルピアと見積もっている。
2014年5月23日、2004年と2005年の所得と利益をごまかして過少納税していたヨグヤカルタの事業者が摘発された。国庫の損失額は12億ルピアと見られている。


「人材開発なくして経済成長なし」(2014年10月9日)
インドネシアの経済構造は昔からたいした変化を体験しないまま今日に至っており、近隣諸国に水をあけられている。経済成長は相変わらず天然資源に依存しており、人材クオリティと経済運営制度は進歩がなく古い体質が続いている。持続的な経済成長を実現させる鍵となるのが、その人材クオリティと経済運営制度だというのに。インドネシア経済学士同盟全国セミナーで副大蔵大臣はそう表明した。
副大臣によれば、インドネシアの経済成長ポテンシャリティは7%あることが諸計算から判明しているが、過去数年間における現実の成長率は5〜6%にしかなっていない。「その原因は、これまでの経済活動が天然資源などの生産ファクターやデモグラフィボーナスに支えられていただけという点にあり、付加価値のあまりない伝統産業で占められていたからだ。天然資源がいつかは枯渇するのが常識であり、デモグラフィボーナスも2030年にはわが国から消滅する。われわれはいつまでも従来のやり方を続けて行けないのだ。われわれがいま最も必要としているのは、長期的に持続する経済成長を実現させるために、われわれが持っている潜在要素をどのようにしていくか、ということなのである。人材への資本投下・イノベーション・知識などが持続的な経済成長に重要な鍵をにぎっている。中でも、フェアで持続的な経済成長にとっての第一の要因が人材クオリティにあるのだ。事実は、インドネシアの人材クオリティが隣国のそれに比べて劣っている。技能を持つ労働力の供給がわずかしかないことが、経済成長を阻害する要因になっている。インドネシア政府はリサーチと開発のための予算をGDPの0.15%しか配分していない。マレーシアですら0.63%あり、日本は2.7%、韓国は3.4%に達している。
インドネシアの人材クオリティの低さは労働力が有する生産性の低さにも反映されている。さらにさまざまな労働関連諸データにも、同じ弱点が影響を及ぼしている。
2014年2月の完全失業者総数 715万人
2014年2月の不完全就業者 1,057万人
2014年3月の貧困国民数 2,828万人
インドネシアの貧困国民数(世銀データ)1億1,700万人
2014年3月の貧困ライン(一人当たり月間) 302,735ルピア
2012年貧困家庭直接援助金供与 1,850万ルピア/家庭
ヨグヤカルタのガジャマダ大学経済ビジネス学部教授は経済運営制度に関して、近隣諸国との間に大きな遅れが起こっていることをひしひしと感じるとコメントした。この制度ということについては、単なるメカニズムだけを指しているのでなく、それを監督するための法規からスタンダードとしてのレベルの高低までを含めたものであるとのこと。


「最低賃金決定協議は進行中」(2014年10月27日)
首都ジャカルタの2015年最低賃金決定協議が行われている中で、労働界が陳情デモを活発化させている。最低賃金は適正生活需要の金額をベースにして決められるため、まずは適正生活需要の数字を固めなければならない。2014年最低賃金の240万ルピアは2013年にサーベイされた適正生活需要220万ルピアが根拠になっている。この適正生活需要は60品目の市場価格を調査し、その結果をまとめたものとなる。60品目の内容は労働省が定めており、2012年労働トランスミグラシ相決定書第13号にその詳細が示されている。労働界は労働者のまともな生活が60品目で足りるわけがなく、84品目に増やすよう政府に求めており、労働界が主張する最低賃金はその84品目の適正生活需要を使ったものであるため、協議の場で使われるものとはすれ違いが起こる。
都庁労働トランスミグラシ局長は、2014年6月に行なわれた都内10在来型市場でのサーベイ結果の適正生活需要が230万ルピア程度であったので、2015年ジャカルタ最低賃金決定の根拠に使われる金額はそれになるだろう、と表明した。8・9・10月の適正生活需要も検証の上で確定されることになっており、その一連の数字の扱いも都庁賃金評議会が決定することになる。協議は現在適正生活需要の確定プロセス中であり、10月第4週から11月1日にかけてその決定がなされるスケジュールになっている。
ジャカルタ労働者フォーラム事務局長は、240万ルピアでジャカルタでのひと月の生活を支えることはもうできない、と言う。「その240万ルピアというものですら、一方的に決められたものだ。サーベイ数値と市場での実態からして乖離がある。都知事は勇気を持って最低賃金を適正生活需要の百パーセント増しにしなければならない。首都ジャカルタ特別区は特別なのだから。」
しかしバスキ・チャハヤ・プルナマ都知事代行は、適正生活需要があまり上がっていないのなら、最低賃金も大幅には上がらない、と語る。「最低賃金は適正生活需要にあったものになる。適正生活需要が独身者を対象にしていることをわれわれは理解しなければならない。高校生の子供がいる家庭では、それが不十分であるのは言うまでもあるまい。ましてや、子供が国立高校に入れなかった家庭ならば。だから都庁は公共交通機関やジャカルタピンタルカードでそういう家庭に支援を与えているのだ。」
賃金評議会実業界メンバーのひとりは、労働界が出してきた適正生活需要の品目に香水と映画鑑賞が入っているのに呆れた、と述べている。「適正生活需要の内容は労働大臣決定書で定められており、それを関係者全員が決まりとして使うのが当然なのに、労働界はそこにいろいろ付け加えて都庁にそれを認めよと迫ってくる。言うべき相手は労働省であって、われわれ全員は規定に従うしかないというのに。」
最低賃金3割アップを要求する労働界は都議会にデモを行い、副議長がかれらを迎えて会談した。


「大卒失業者」(2014年11月4・5日)
「大学は出たけれど」という映画がヒットし、その題名が流行語になるという現象が日本で起こったのは、大卒の学歴が就職を有利にしない時代のことだったにちがいない。インドネシアでもそれと同じ現象がいま起こっている。
1970年代ごろまでは、インドネシアで大卒はDrs. という称号を名前に付けるのが一般的で、事情を知らない外国人がそれをドクトル(博士号)と勘違いして大いに敬意を払ったが、あとでドクトランドゥス(大学卒)のことであると知らされて大笑いしたというような話が人口に膾炙した。そのころまでのインドネシア社会というのがいかに大卒が少数派であり、そしてかれらが数少ない社会の知識層を形成していたかということを証明するものと見ることができるだろう。ちなみに、Drs. ドクトランドゥスは男性、Dra. ドクトランダは女性であり、性別がそこに加えられているのも、当時の社会が持っていたジェンダー意識の傾向を示しているように思える。
国民の経済力の向上と政府の国民教育の向上方針が相まって、オルバ期には大学卒業者が増加した。大卒者は知的活動が優れているという見解が本当なのかどうか、わたしにはわからないが、オルバ期の経済発展は国内に知的労働者の大きな需要を巻き起こし、大卒は引く手あまたという時代が訪れ、そういう流れが一段落したあと、継続的に世の中に出てくる大卒者に対する就職口が不足する時代がやってきた。きっとそれが「大学は出たけれど」現象であるにちがいない。
2014年2月中央統計庁の労働状況に関するデータでは、失業者総数7,147,069人中の398,298人が大卒失業者となっている。しかし9月末の報道によれば、大卒以上の失業者数は60万人で、そのうちの42万人が大卒(学士)と短大卒で占められている由。
これまで行なわれてきたさまざまな調査では、実業界側に大卒者への求人がないわけではなく、求められている戦力を満たせる人材が出現しないために採用率が低いのだ、という説明が繰り返されてきた。それに対応するため、政府労働省と教育省が求められている人材を作り出すための教育プロセス改善を進めているが、2015年のアセアン自由市場開始によって域内での就労の自由化が始まるため、政府は大卒者の競争力向上にいま躍起になっている。
域内ではスチューデントモビリティシステムが開始されることになっており、メンバー国の大学で一学期以上学んだ学生はその単位が域内で共通に認められるようになる。また、看護師、助産婦、医師、歯科医師の資格認定も域内で共通化される予定だ。
そういう変化にインドネシア人大卒者は太刀打ちしていけるのだろうか?大卒者の実態をより明確に把握するため、教育文化省は大卒者に対するトレーサースタディを行なっている。これは大卒者の職歴を調査してかれらが身に着けた学問と実業界での役割がどう関連しているのかを調べるもので、各大学がその調査を命じられているものの、あまり進展していないようだ。
大卒失業者は反対に、未就職状態にそれほど焦っていないように見える。自分の修めた学問と能力そして希望する分野の職にすぐにありつけるとは思っていないようだ。そういう求人に出会うために一年間でも二年間でも無職の暮らしをするのはかまわないと考えている者がいる。「わたしが修めた学問をスペシフィックに必要としている職業はまだあまりありません。わたしは銀行や民間企業のような一般的な仕事に就く気がないのです。」ガジャマダ大学で国際関係学を修めた24歳の学卒者はそう語る。ガジャマダ大法学部を卒業した者も、かれが希望する職業の求人は数年に一度出るだけなので、凄まじい競争を乗り切らなければならない、と語っている。そういうチャンス待ちに入っているかれらは、その間に英語などの実際的な能力を身に着けるために塾や教室に通っている。加えて、これから入って行きたい職業分野での人脈作りを狙って、ネットワーク作りも怠らない。
もちろん、数十万人という大卒失業者がすべてそういう者たちではない。政府はかれらに対し、雇用されることがすべてではなく、自営業を行なって他の人間に職を与えることもたいへんビューティフルな生き方だと呼びかけ、それを推進するためにさまざまな支援を与えている。
インドネシア私立大学協会会長は大量の大卒失業者の存在について、これまで大卒者を作り出すことと実業界が欲している大卒者の内容をフィットさせることを怠ってきた政府に責任がある、と語る。「教育界はただトレンドに従って教育コースを用意しているのがほとんどだ。今は教員養成がトレンドになっており、どこでも教員養成コースが花盛りになっている。経済学コースも同じだ。経済学コースを持たない大学などほとんどない。しかし、それに見合う求人がなければ大卒失業者が増えるばかりであり、政府と実業界および大学教育界がもっと密接に関わりあってシナジーを高めなければ、改善はおぼつかない。」
しかし、域内各国における就労の開放というまだ見通しの立たない要素がこれからからんでくるわけで、インドネシア国内で具体的な行動に移れるようになるのはもっと先になるのではないだろうか。


「2015年最低賃金を22州が決める」(2014年11月10日)
2014年11月1日が期限日となっている2015年州別最低賃金の決定は、11月最初の一週間が過ぎたところで下の22州分が出揃った。2014年からのアップ率はさまざまだ。残る11州のうちの7州は、賃金評議会での合意にまだ達しないところや、州知事決定書作成プロセス中でまだ制定に至っていないところなど理由もさまざま。そして、西ジャワ・中部ジャワ・ヨグヤカルタ・東ジャワの4州は州別最低賃金を決めないという昨年の方針を継続している。州別最低賃金を決めないということは、労使が協議して好きなように決めてよいということを意味しているのでは決してない。
インドネシアの最低賃金制度では、州が最低賃金を決め、同時に州内にあるすべての県市も最低賃金を決める。州の最低賃金というのは所属県市がそれより低い金額を最低賃金にしてはならないという基準を定めるものであるが、州がそういうガイドラインを与えて賃金評議会の協議の方向付けを行うのは労使協議を優先させている賃金評議会での活動に悪影響を与えるため、実際には全県市が出してきた最低賃金の中のもっとも低いものにあわせて決めるという運用方法に変わっている。つまり州別最低賃金とはそういう形骸化したものでしかないということだ。だからジャワ島内の上記4州は、実質を重んじて無意味な形式主義を避けているという姿勢を採っている。州知事決定書が出された2015年州別最低賃金は次の通り。(州名 金額 2014年からのアップ率)
アチェ特別州        Rp 1,900,000-  8.57%
西スマトラ州        Rp 1,615,000- 8.39% 
  リアウ州          Rp 1,878,000- 10.47%
ジャンビ州         Rp 1,710.000- 13.83%
南スマトラ州        Rp 1,974,346- 8.15%
バンカブリトゥン州     Rp 2,100,000- 28.05%
ブンクル州         Rp 1,500,000- 11.11%
バンテン州         Rp 1,600,000- 20.75%
バリ州           Rp 1,621,172- 5.09%
西ヌサトゥンガラ州     Rp 1,330,000- 9.92%
東ヌサトゥンガラ州     Rp 1,250,000- 11.11%
南カリマンタン州      Rp 1,870,000- 15.43%
中部カリマンタン州 Rp 1,896,367- 10.00%
東カリマンタン州      Rp 2,026,126- 7.41%
マルク州          Rp 1,650,000- 16.61%
北スラウェシ州       Rp 2,150,000- 13.16%
ゴロンタロ州        Rp 1,600,000- 20.75%
東南スラウェシ州      Rp 1,652,000- 18.00%
中部スラウェシ州      Rp 1,500,000- 20.00%
南スラウェシ州       Rp 2,000,000- 11.11%
西スラウェシ州       Rp 1,655,500- 18.25%
パプア州          Rp 2,193,000- 7.5%


「ジャボデタベッの2015年最低賃金」(2014年11月17日)
かつて最低賃金は適正生活需要金額を少し下回るレベルで連動するのが一般的だった。ところが今では、大きい労働力を抱える経済センターで逆転現象が続出するようになり、全国平均値はどんどん接近しつつある。労働省データによれば、適正生活需要対最低賃金の比率は2012年が86.6%、2013年91.7%、2014年95.96%で、2015年は2014年11月12日までに決定したものを見ると99.5%になっていて、これまで政府労働省が目標に掲げてきた最低賃金イコール適正生活需要という図式がついに実現されそうな勢いだ。
首都ジャカルタの2015年最低賃金決定プロセスは、首都賃金協議会で2,538,174.31ルピアという適正生活需要数値が2014年11月6日22時に確定した。続いてその数値を参照しながら、2015年最低賃金を決めるための協議が続けられて、先週中に賃金協議会推薦数値は既に都知事代行の手に渡されたという情報が流れている。最低賃金を決めるのは地元行政府の首長であって賃金協議会ではなく、賃金協議会の中で労使行政および学術界が参加して協議し算出する妥当な金額というのは推薦値というステータスになり、地元首長がそこに加減を斟酌して最終決定を行なうわけで、賃金協議会が事業者側寄りの推薦値を決めれば労働界が、反対に労働者寄りの推薦値を決めれば実業界が、それぞれ地元首長にデモや声明を示して圧力をかけるのが毎年恒例になっている。
首都ジャカルタの2014年最低賃金は240万ルピアで、適正生活需要220万ルピアを上回るものになっていた。賃金協議会が都知事代行に既に提出した推薦値は、情報によれば実業界が主張する2,693,764.4ルピアと労働界が要求する3,574,179.36ルピアというふたつのものが出されているそうだ。そこから先はバスキ・チャハヤ・プルナマ都知事代行におまかせということらしいが、代行は270万ルピアのレベルが妥当だとの考えを以前からもらしており、最終結末は多分今週中に出される都知事決定書で明らかになる見込み。
首都ジャカルタを取巻くボデタベッの最低賃金プロセスはどうなっているだろうか。ブカシ市の適正生活需要は250万ルピアという数値が賃金協議会の中で合意された。ところが最低賃金推薦値決定に際して、労働界は最初320万ルピアを要求していたが、行政側が中を取った290万ルピアを提案し、票決で最終決定にしようとしたために実業界は投票を棄権した。労働界は290万ルピアの推薦値に賛成したため、それが西ジャワ州知事への2015年最低賃金推薦値になっている。もし西ジャワ州知事決定書でその金額が2015年最低賃金に定められた場合、実業界はその決定を行政裁判所に告訴して取消し判決を求めることにしている。
ボゴール市賃金協議会では、220.5万ルピアという適正生活需要が合意された。ところが労働界は2014年最低賃金の235.2万ルピアを一挙に3割増しした305.8万ルピアを死守する態勢に入っており、実業界との折り合いがまったくつかないために硬直状態に陥っている。
ボゴール県賃金協議会のほうは、220.8万ルピアという数値が適正生活需要として合意されたが、こちらも労働界が2014年最低賃金の224.2万ルピアを一気に三割増しにせよとして強い姿勢を示しており、協議は一進一退を繰り返している。
タングラン市の場合は適正生活需要の合意さえまだ達成されておらず、最低賃金の協議に入っていけない段階だ。しかし労働界は370万ルピアという2015年最低賃金要求金額を掲げてそのアピールに努めており、実業界の求める240〜250万ルピアとの開きがあまりにも大きいため、その協議も難航するのが確実と見られている。


「バタムの最低賃金決定は紛糾」(2014年11月17日)
バタム市賃金協議会で2015年最低賃金の決定が難航している。2014年最低賃金は240万ルピアだったが、バタムの勤労者は平均して280万から370万ルピアの月収を得ており、その実態は直近の適正生活需要250万ルピアを超えているため、勤労者の生活は余裕があるという判断が一見して成り立つ。ところが労働界は2015年最低賃金を330万ルピアにせよと要求して、賃金協議会の中で折り合いがつかない状況になっている。
労働界に言わせれば、適正生活需要というのは定められた物品の市場における価格の統計によって定められるものであり、その金額には2015年に起こるインフレがまだ含まれていない。補助金付石油燃料の値上げが確実視されている今、燃料費値上げは運賃輸送費に直接反映されるとともに、それによる生活物資の値上がりが起こってインフレが昂進するのは確実であり、最低賃金はそういう要素を含んだものにしなければ労働者の生活防衛はできない、という説明が4割近い賃上げ要求の下支えをしている。
国内の経済センターはどこでも物価が高い。それはジャカルタでもスラバヤでもデンパサルでも同じだ。経済センターに職を求めてやってくる上京者はたいてい、家族を物価の低い故郷に置いてくる。結局二世帯経済になるため、上京者がそこで得る収入の大きい部分が故郷の家族への仕送りにあてられ、本人のその地における生活費はかつかつになってしまうというのが実情なのだが、実業界がそこまで従業員の都合を丸抱えしなければならないのか、という異論は当然のように出されている。
たとえば中部ジャワ州チラチャップからバタムに来たハルディさんは、300万ルピアの月収から170万ルピアを故郷に仕送りしており、バタムでご本人がひと月130万ルピアで生活しなければならないというのが大変に厳しいのは言うまでもないだろう。食事は食べ物作り売り屋台で食べる即席麺が一杯7千ルピア。魚や野菜のおかずをつけた飯だと一皿1万3千ルピア。給料日前の二週間はおのずと即席麺だけの食事になっていく。
北スマトラ州から来ているパルリンさんも、今の月収350万ルピアで妻と子供ふたりをバタムに呼ぶのは難しいと考えている。戸建て住居を一軒借りれば、家賃はひと月100万ルピアを超える。今独身暮らしのかれは借室で寝起きしており、家賃はひと月42万ルピアですむ。
全国各地の最低賃金決定は、それぞれの地域特性を織り込みつつ、今最終コーナーを曲がろうとしている。


「優秀な人材ほど会社に居つかない」(2014年12月9日)
グローバルワークフォーススタディ2014の報告によれば、インドネシアの企業は優秀な人材を獲得して維持することがたいへん困難な状況にあるようだ。インドネシアの勤労者1千人を対象に行なわれた最新調査によると、三人に二人が二年間勤めた会社から他に移る傾向を持っているとのこと。
その理由としてあげられているのは、その会社におけるキャリアに不満があり、希望する職種に新たなチャンスを見出したい、というのがメインを占め、具体的には給与、上司のビヘイビア、職場の状況などがその主要動因になっている。その傾向は40歳未満の年代に高く、40歳を超えると低下する。
交通費など公共料金が値上がりすると即座に給与に対する不満が上昇するし、上司が部下の創造性にくびきをかけて型にはめようとするような使い方をすると、かれらは早々に、会社に見切りをつけるようだ。
異なる文化に見られる就職の目的は、文化が違えばまた異なるものになる。企業忠誠心よりは人間関係を、というのがインドネシアの労働観であるにちがいない。


「漁船乗組員は引く手あまた」(2015年1月7日)
海洋水産系職業高校生徒に世界各国からリクルートの声がかかっている。既に大勢が日本・台湾・韓国・ロシアなどで働いており、それらの国からは毎年漁業会社がインドネシアを訪れて生徒たちをヘッドハントしていく。
西ジャワ州チレボン県ムンドゥ第一国立職業高校長は、海洋水産系の生徒は外国から引く手あまたであり、政府がこの分野の教育にもっと力を入れることで顕著な雇用促進が実現することは間違いない、と語る。東ジャワ州ジュンブル県プグル海洋水産職業高校長も、施設・設備・専門教員などあらゆるものが不足しているにも関わらず、インドネシアの海洋水産系高校卒業生はその分野の世界労働市場で決してひけを取らない競争力を持っている、と認めている。「人材クオリティについて言うなら、インドネシアの生徒たちのクオリティはまったく疑う必要のないものだ。卒業生の多くは、日本・台湾・韓国・ロシアなどで働くことを選択している。かれらは卒業する前に3〜6ヶ月間外国船に乗務して見習い活動を体験する。その間、かれらに給料が支給されるが、その金額は9百万ルピアにも達する。インドネシアの船に乗ったら、とてもそんな金額をもらうことはできない。」
外国の水産会社も毎年1月に生徒たちをリクルートするため、海洋水産職業高校にやってくる。学校側の推薦の上位に入りたいために、生徒たちの学習態度もきわめて良好になるという効果があることを学校長も特筆している。しかしインドネシアの海洋漁業産業にとってそれは痛し痒しの問題となる。優秀な人材が外国に取られていくため、国内産業は旧態然たる貧困漁民が非効率で環境保全レベルの低い旧来型漁法をいつまでも続けることになる。
海洋水産職業高校の教育レベルが高いこと、そして卒業後の進路に大きい希望が見出せることなどから、優秀な生徒たちがますますこの分野に飛び込んでくる。外国にせよ国内にせよ、海洋水産業に参加する人材の層が厚みを加えることは、国内産業をも盛り立てることになる。
反対に、商業航海分野の生徒たちは困難な状況に直面している。乗船勤務を行なうために必要なライセンスを取得するためのハードルが海洋水産系よりはるかに高い、と生徒たちは言う。たくさんのテストをパスしなければならず、さらに満たさなければならない条件も少なくない。西ジャワ州スバン第二国立商業航海職業高校生徒は、卒業生であっても国内船のデッキで仕事するためには四等航海士のライセンスを取らなければならないし、機関室で働くには四等機関士のライセンスが必要になる、と語る。そしてライセンス発行までの手続きと事務管理はたいへん能率が悪く、1.5〜2年かかってやっと証書をもらうことができるそうだ。ジャカルタの海運総局事務所だけで手続きが終わらず、タングランにある航海学教育訓練庁と中央ジャカルタ市にある人材開発庁にも手続きをしに行かなければならない。あちこちたらい回しさせるのは費用を落とさせるためだが、金をかける上に時間もかかることになる。2年間も船に乗るのをおあずけにされては、陸上で手当たり次第の仕事をして生計の一時しのぎをしなければならない。そのような比較をするなら、優秀な者ほど国内航路船に乗るよりは外国漁船に乗ることを選ぶようになる可能性が高まるのは言うまでもあるまい。


「税滞納者に拘禁措置」(2015年2月2日)
オランダ語で債務者拘禁を意味するヘゼリン(gijzeling)措置を国税総局が企業の外国人税務責任者に取った。拘禁されたS61歳は皮革事業を営む外資系PT DGPの外国人役員で、税務の責任者でもあったことからその責任が問われたもの。国税側は責任者がふたりいるとしてもうひとりの外国人にも拘禁措置を発令したが、その者は国外からインドネシアにまだ戻っておらず、今回の拘禁措置は免れている。PT DGP社は過去5年間一度も納税したことがなく、国税側の督促納税額は60億ルピアに上っている。
オランダ植民地時代にインドネシアに持ち込まれたヘゼリン措置は、公的義務に違反して税金等を納めない人間を一定期間拘禁し、納めるまでの間その者を人質に取るということを内容にしており、納めないことへの罰というものではない。オランダ語の第一義的な意味は「人質にとること」あるいは「誘拐」であり、「債務者拘禁」はその派生意義にあたる。現行税法の中の納税督促と強制執行について定めた1997年法律第19号の中にこのヘゼリン制度は生きており、厖大な未回収税金を抱える国税総局がついに法執行の鉄の腕をふるいはじめたということのようだ。法執行は形だけ行なわれ、その成果についてはだれもが真剣に責任を取ろうとしなかった従来の行政のあり方を根底から変換させようとするジョコウィ大統領の方針がここにも反映されていると見ることができる。
法令によれば、ヘゼリン措置は納税義務等に服従しない者を拘禁して、債務者側もしくは拘禁者の家族が判事の決定に従うよう仕向けるのが目的であり、あるいは民事裁判で敗訴した側が判決通りに支払いを行なうように仕向けることも目的のひとつになっている。ヘゼリン措置が取られるための条件は次の通り。
1.滞納税額が1億ルピア以上あって、その納税を行なう誠意が疑われる場合。
2.ヘゼリン措置実施は拘禁命令書にもとづいてなされなければならず、その拘禁命令書は大臣もしくは州知事から書面で承認を得た高官職者が発行する。
3.拘禁期間は6ヶ月間で、延長は最長6ヶ月間の期限で行なうことができる。
4.拘禁者は次の場合に釈放される。
 *滞納税額と手続き費用の全額が納めらる。
 *拘禁命令書にある拘禁期間が満了する。
 *法的強制力を有する裁判所の判決。
 *大臣もしくは州知事の裁量。
今回のPT DGP社役員債務者拘禁は国税総局が大蔵大臣の承認を得て作成した拘禁命令書9件の中のひとつだ。個人納税者ひとりと法人納税者税務責任者8人がこの第一波をなしている。この強制措置が実を結べば、政府は136億ルピアの滞納額を回収することができる。第二波は4法人が対象にされ、155億ルピアの回収が期待されている。さらにその後は第三波として27法人総額1.2兆ルピアと7個人71億ルピアが控えている。法人の場合、会社株主・取締役・監査役から複数の人間が拘禁対象に指名されることも起こりうる。
S61歳の逮捕は2015年1月30日(金)昼ごろ、中央ジャカルタ市タナアバンで、国税総局担当官・諜報職員・警察・差押え執行職員の合同チームが行った。Sはその足でタムリン病院に連行され、入獄措置を与えても健康状態に問題がないことを確かめるために健康診断が行なわれた。結果はOKであり、Sはそこからサレンバ刑務所に護送されて刑務所の鉄格子の中に収容された。Sが入れられたのは、三人用の共同房だ。もちろんSは拘禁者として刑務所に委託されただけであり、受刑者ではない。
国税総局検査督促局長はSの拘禁に関して、この段階に至るまでにたくさんのステップが踏まれたことを明らかにしている。納税督促状、強制執行状、差押え命令書、拘禁対象者の個人資産凍結、そして2007年11月には出国禁止ブラックリストに名前が載せられた。出国禁止措置には期限があり、その期限を超えてブラックリストから名前が消えると、Sは再び頻繁に出国を繰り返したが、税務署からの督促には一度も誠意を示したことがない。ヘゼリン措置が実施される前には、拘禁者本人の個人資産が調査され、換金性のレベルが調べられる。というのは、支払い能力を持っているから拘禁が行われるのであり、支払い能力のない人間を拘禁しても目的達成に至らないのが明らかなためだ。
サレンバ刑務所に拘禁委託されたSは、S側の人間が60億ルピアとその他の行政費用を全額納めれば即時釈放されるが、それがなされなければ6ヶ月間そこに収容され、国税側は更にSの拘禁を6ヶ月間延長する意向である由。


「重労働危険労働に就く子供」(2015年2月5日)
インドネシアには児童労働者が170万人いると言われてきた。その大半はインフォーマルセクター就労者だ。そして政府はそれらの子供たちを学校に連れ戻すことに努めたものの、2008年から2014年までの間に連れ戻しに成功したのはやっと63,055人でしかない。労働省データによれば、児童労働者が多い州は東ジャワ、中部ジャワ、西ジャワ、バンテン、東ヌサトゥンガラがトップファイブを形成している。
労働省児童労働者女性労働規範監視局長によれば、児童労働者の多くは農業・農園・建築セクターで働いているとのこと。「普通、子供たちは親に連れられて労働に従事するようになる。貧困が親をそうさせているケースがほとんどだ。農業・農園・建築セクターで働く親が子供をそこに誘って行く。」
中央統計庁2014年8月度統計では、農業・農園セクター就労者は3,890万人となっており、一年前の3,920万人から減少している。とはいえ、セクター別就労人口の首位は依然として健在だ。ところが国内のいくつかの地方では、若者が都会へ出て行ったり他地方に移って働くのを好み、代々続いてきた家業を継ぐ者がいなくなっている。後継ぎを失った親は老体を鞭打って田畑に出るが、まだ小さい子供の手を借りなければならないため、子供に学校をやめて親の手伝いをするよう命じる。建築セクター就労人口は2013年の630万人から2014年は720万人に増加した。このセクターでも親が子供に手伝いを命じ、子供の中には石や建築資材などを運搬する重労働を行なっている者もいる。
貧困と児童労働が相関関係にあることは、たとえば中部ジャワ州に実例を見ることができる。483万人という全国第二位の貧困者人口を抱える中部ジャワ州では、スラカルタ、カランアニャル、ウォノギリ、クラテンなどでクズ拾い・建築現場労働・花火工場・小規模繊維製造などの仕事をしている子供の姿が増えている。2013年に花火工場で働いていた子供は40人だったが、2014年は60人に増加したそうだ。
全国の工業団地入居工場の中にも、子供を雇用しているところがいまだにあると労働大臣は語る。そのため労働省は、各工業団地で子供を雇わないよう企業に呼びかけるキャンペーンを実施している。ジャボデタベッ・スラバヤ・東カリマンタンのクタイなどが特にその重点ターゲットになっている。マカッサルの工業団地では児童労働者全廃宣言を行ない、キャンペーン優良地区に位置付けられた。他の地方自治体がマカッサルに続くのを待っている、と大臣は述べている。
児童労働者ゼロの目標に至る労働省のロードマップは、2022年を最終年にしている。2015年の「学校へ戻す児童数」目標は1万6千人だ。労働省は児童労働者ゼロ地域プログラムに加えて、子供を働かせている家庭への資金援助と職業技能習得支援を行なっている。


「条件が厳しさを増す海外出稼者」(2015年2月12日)
政府は海外出稼ぎ者の送り出し条件を厳しくする意向。特にこれまで圧倒的なシェアを占めていた家事労働者に対して、職業能力認定を絶対条件にすることが決まった。職業能力認定国家庁長官はそれに関して、それらインフォーマルセクターの海外出稼ぎ者も職業能力の枠をはめてクオリティ充実に向かわなければならないのであり、これまでのやり方を大幅に変更する必要があると表明している。
家事労働者は従来、個人アイデンティティ証明書類と村役人の添え状があれば求職者になることができ、一定期間の職業訓練を経て送り出される形になっていたが、今後はまず職業訓練を受けて能力試験に合格し、合格証書を示してはじめて求職者になることができる。職業訓練と能力試験は職業認定国家庁が定めたカリキュラムを実施する全国の職業訓練所で行なわれ、資格認定を得ていない職業訓練所の合格証書では通用しなくなる。
家事労働者というカテゴリーには、家庭と住居の世話、老齢者介護、家庭料理人、赤児子供の世話、家庭運転手、家庭向け庭師などの区分があり、複数の資格を得るために同時に複数のコースで訓練と試験を受けることはできない。
労働省がこの分野で定めた方針では、女中の仕事に海外で就こうとする者は職業能力認定を必須とする職業人になることが求められており、単に主人の言うことをすれば良いだけという意識で誰でもが安易に海外に職を求める時代はもう過ぎ去ったことを強調している。職業認定国家庁は教育カリキュラムとその指導要綱であるシラバス、および能力試験内容の規定を用意しており、全国の職業訓練所に普及させていく計画になっている。


「日本に2千人の研修生を派遣」(2015年3月16日)
中小企業国際人材育成事業団(略称アイム・ジャパン)の協力のもとに、インドネシア政府労働省は日本に2千人の研修生を派遣する。研修生は日本各地の約5百社に配属されて三年間勤務することになる。
研修生は日本での研修で勤労エトスの吸収と職業技能の向上に努め、三年後に帰国した暁には、より優れた勤労者国民として、いやそれどころか自ら起業してアントレプルヌールとなり、国家経済に貢献することが期待されている、と労働大臣は述べている。研修参加者の間で特に希望の多い、自動車整備・技能工・食品加工などの分野に関して、政府は研修生に事前の学習準備の手助けを行なう予定にしている。
2014年時点での労働省統計データによれば、政府は35,351人を日本への研修に送り出し、そのうち32,062人は研修を終えて帰国しているとのこと。


「税務職員手当て大幅アップ」(2015年4月6日)
公務員の低給与が腐敗行為に走る言い訳になっていることを重視した政府は、コルプシの巣窟部門に勤務する公務員の手当てを大幅に引き上げて言い訳ができないようにし、それでも腐敗行為を行なう者を確信犯として処遇するという構図に向かって邁進している。
国税総局では2007年に公務員基本給と一緒に与えられる手当て金額の大幅引上げが行なわれた。もちろん、それでもコルプシ事件発覚は続いており、国税職員の何人かが逮捕されている。ともあれ、既に長期間経過したため、国税職員の意識を再度揺り動かす必要があると見たのだろうか、政府は2015年4月1日支給分から再び手当の大幅引上げを行なった。国税総局管下の職員業績に関する2015年大統領規則第37号が、今回の措置の法的基盤となっている。
この業績手当てとは職員の業務成果がどうだったかという評価に対して与えられるもので、年々業績が低下すれば手当て金額も下がっていく。「あっ!」と目をみはるような今回のアップ明細をご紹介しよう。
職位(階級)     2007年の金額/2015年の金額(万ルピア)
総局長(エセロン1級a) 2,000/1億1,737.5
官房総局長・局長・地方事務所長(エセロン2級a)1,660/8,194
次局長・課長・スタッフ長・サービス事務所長・実務担当ユニット長(エセロン3級a) 1,080/4,647.8
係長・班長・税務サービス指導相談事務所長(エセロン4級a) 720/2,875.7
税務調査官補 760/2,516.3
税務調査監視官 720/2,223.5
不服審理追加手当 560/1,541.8
特定納税者監督追加手当 560/1,231.7


「まず国内で有能な勤労者になれ」(2015年5月28日)
国際競争力を持つ人材になる前に、国内産業界で優れた勤労者にならなければならないのが順番なのではないだろうか?そして、国内産業界で求められている条件を満たす人材を育成することが、教育界に求められている最大の役割だろう。つまり、教育界に国際競争力という成果を求めるのは、それより前にあるいくつかのステップを踏まえた上でのことになるのではないかということだ。
その視点からもう一度状況を眺め渡して見れば、インドネシアの教育界が抱えている弱点が浮かび上がってくる。学歴の問題以前に、インドネシア人労働力は勤労意欲と実際的な技能が劣っているという評価が、インドネシア国内産業界で常識となっているのだ。全国商工会議所副会頭は、「中等から高等レベル学歴者の理論知識修得レベルは決して悪くないのだが、技能と勤労意欲に欠ける面がある。」と語っている。
いや、国内産業界ばかりか、外国人の目にもそのポイントは同じように映っている。世界経済フォーラムのグローバル競争力レポートの中で分析されているビジネスへの障害ファクターの中でも、その勤労意欲がインドネシアで行なわれるビジネスの足を引っ張っているのだ。グローバル競争力レポート2014/15年版によれば、勤労意欲は16障害ファクター中の第8位に置かれている。2012/13年版では4番目に大きな障害となっていたから、多少の改善は起こっているようだが。
労働大臣は勤労意欲に関して、「責任感・クオリティ向上・規律・チームワーク能力涵養・潔癖な労働観などのベースを支える重要な要素であり、それを踏まえた上で身に着けた技能が産業界で評価されるものになっているため、そこに焦点を当てた国民教育が行なわれなければ、産業界はいつまでも優れた労働力を確保することができない。」と語っている。労働省が全国で実施している職業訓練所に来ている学生の3割は職業高校卒業生であり、職業高校を修了すればそのまま労働力市場に入って行けるはずの構想が、現実にはそんな実態になっている、と大臣は現状を憂いている。
しかし教育文化省がただ手をこまねいているわけではない。教育文化省は1990年代から国民教育の成果と産業界の実需要をどのようにマッチさせるかということの検討を続けてきた。その焦点はまず職業高校に当てられ、また普通科高校にも広げられているが、顕著な成果がいまだに見られないのが実情であり、大学レベルまでその翼を広げるのが難しい情勢になっている。大学卒失業者の数は依然として比率が高く、大卒者には自営業を勧める方針を広げ、高卒失業者の救済にやっきになっているのが現状だ。
職業教育制度オブザーバーは、教育文化省が打ち出している職業教育方針の現場への展開を本気になって行なっている地方自治体があまりにも少ないこと、そこで涵養されるべき実務的な技能がなかなか卒業生の身に着かないこと、職業高校卒業生が更に知識技能を深める場が用意されていないこと、そして職業能力資格認定制度は18歳以上を対象にしているため、在学中に資格を得て卒業後すぐに労働市場に入っていくのに困難があること、など現在行なわれている制度が統合的に状況を改善させる方向に動いていない実態を指摘している。
「高校にせよ大学にせよ、学校教育を修了して学歴を得た者の多くは、快適で収入が容易に確保される職業に就くことを望んでいる。たとえば国家公務員のような、仕事は楽で、高給あるいはミニマムが確保されるというような仕事を探す。その結果、学歴でなく技能の高さが求められ、それに応じて高所得が約束されるような就業のチャンスをつかもうとする者が少なくなる。こうして産業界が求めている職に就こうとする人材が得がたくなって産業界の需要は満たされず、一方では、学校を出た失業者が増加の一途をたどる。」
インドネシアの職業教育と産業界のリンク&マッチがなかなか結びつかない現状を同オブザーバーはそう分析している。


「一部物品に奢侈品税廃止」(2015年6月22日)
これまで奢侈品税(PPnBM)課税対象になっていた品目の一部が対象からはずされた。はずされたものの詳細は次のようになっている。
家電品:冷蔵庫・温水器・洗濯機・TVモニター・エアコン・カーエアコン・ビデオカメラ・写真機・映写機・調理用レンジ・皿洗い機・乾燥機・電子レンジ
スポーツ用品:魚釣り・ゴルフ・潜水・サーフィン・射撃の用具
楽器:ピアノ・電気式楽器
ブランド品:香水・馬具・バッグ・衣服・時計・貴金属製品・履き物
家庭事務所用品:カーペット・クリスタルガラス・椅子・クッション・照明・壁と床タイル
なお自動車、家屋、船舶、航空機、銃火器は従来どおり課税対象のまま据え置かれる。
上の対象品目を見ればわかるように、はずされたものはいわゆる消費物資がメインを占めており、市場価格を引き下げることで国民の経済活動に活を入れようとする政府の意図が見て取れる。特にブランド品は国内価格が国外より高いレベルになっているものが多く、国民がそのショッピングのために外国旅行をしたがる傾向をこれまで育んでいた。今回の措置はその要素の是正を狙ったものとも受け止められるが、政府の思惑通りに市場が動くかどうかはまだ闇の中だ。
今回奢侈品税の課税対象からはずされた品目については、輸入品は輸入時に納める税額が引き上げられる。とは言っても、それはコスト算入しなければならないものでないため、コスト追加要因として扱われなければならないわけでもない。
インドネシアの輸入税制の中には法人所得税前納制度が設けられており、一般にPPh 22 Impor と呼ばれている。これは輸入関税等を納めるときに同時に国庫に納入しなければならないものだが、輸入者が法人所得税の年次申告を行なう際に前納分として調整できるため、輸入者は想定利益率にこの要素を盛り込む必然性がない。
今回の政府の措置でPPnBM 課税対象品からはずされたものについては、PPh 22 Impor の税率が2.5%から10%に引き上げられる。例外的に7.5%を納めていた輸入者もあるが、その場合の影響は小さいだろう。2.5%から10%へのアップは大きいため、そのための資金コストを輸入者はカバーする必要があるにちがいない。


「不法出稼ぎ者は死と隣り合わせ」(2015年10月9日)
東ヌサトゥンガラ州で農林畜産業に困難をもたらす気象が起こると、州民の多くがマレーシアへ不法出稼ぎを行う。その人数は合法出稼ぎ者を上回る勢いだ。
不法出稼ぎ者は普通、ハイリスクの仕事に就かざるをえず、健康を害したり、あるいは仕事中に生命を失うことも稀でない。死亡すると、遺体はマレーシアで埋葬されるか、あるいは故郷で埋葬するためにクパンのエルタリ空港へ送られてくる。
遺体はガルーダ航空カーゴ部門が取扱うケースがほとんどで、マレーシアからスカルノハッタ空港に国際線で到着してから、国内線でクパンへと送られる。その空輸は遺体ひとつにつき8百から1千万ルピアかかり、さらにエルタリ空港から故郷の村までの陸送は運送車両のチャーターにまた別の費用がかかる。故郷の村が陸続きでない場合は運送車両がフェリーを経由することになるが、そのフェリー代金だけは無料になっている。しかし、運送車両チャーターの費用が遺族の予算と合わないことも再三起こり、そうなると遺体はクパンに足止めということになる。ただし、ティモール島内だけは、ある政党の寄付で州政府所有の救急車が遺体を無料で運んでくれる。
だから、遺体を故郷へ戻す費用が手の届かない一族は、最初からマレーシアで埋葬という結論を出すのが一般的だ。ところが、ガルーダ航空クパン空港支所貨物部門責任者によれば、一年間に送られてくる遺体はおよそ50体で、ひと月平均4体前後となるわけだが、一日に10体送られてきたことがあるそうだ。しかし1体も来ない月はない、と責任者は語っている。
遺体のほとんどは男性で、パスポートをはじめとするイミグレ書類は添付されておらず、マレーシアの医師あるいは警察が発行する死亡証明書が添付されている。その遺体が不法出稼ぎ者であることを、イミグレ書類の不在が証明していると言うことができる。医師の死亡証明書には死亡原因となった疾病が記載され、警察からの証明書は、樹木伐採作業中に倒木による事故だとか、高所からの転落事故といった死因が記載されている。中には死臭を強く漂わせているものがあり、そうでないものもある。たいてい遺体は丁重に包装されているそうだ。
合法的にタワオへ出稼ぎに出たひとの話しによれば、東ヌサトゥンガラ州からの出稼ぎ者の中で、毎年20人くらいがマレーシアで埋葬されているとのこと。その多くは、出稼ぎ者のマレーシアでの暮らしに随行した妻や子供あるいは親などで病気のために亡くなったケースであるとの話だった。
東ヌサトゥンガラ州海外出稼ぎ取扱業者協会事務局長によれば、不法出稼ぎ者は妥当な労働保護を与えてもらえない傾向が高く、労災死亡出稼ぎ者のほとんどは不法出稼ぎ者から成っているそうだ。かれらはパーム農園や森林地区で伐採作業に従事したり、野菜園や果樹園の作業や家畜の世話といった仕事に就くのが一般的である由。街中の仕事に就けば警察やイミグレーションの手入れに引っかかりやすくなるため、そういうリスクの小さい職場を求めるとなると、自然の中での肉体労働という労災リスクの高い仕事に就かざるをえず、そのうちに事故がかれの生命を奪うという皮肉な結末に至ることになるらしい。


「最低賃金制度に変化」(2015年11月10・11日)
2015年10月23日、ジョコ・ウィドド大統領は「賃金」に関する2015年政令第78号にサインし、その内容の施行が即日スタートした。この政令第78号は2003年法律第13号「労働法」の実施要領として制定されたものであると政府は表明している。
インドネシアの最低賃金制度では、毎年1月1日から新たな最低賃金が施行されるために州最低賃金は施行開始の60日前、県・市最低賃金は施行開始の40日前に州知事が決定しなければならない。そのために11月1日をデッドラインにして労使行政三者による賃金評議会の最終提案が州知事に提出されるのだが、そこに至るプロセスの中で労働界の示威デモや労働争議が発生し、国民生活に混乱が及ぶ事態も頻繁に起こっている。あるいは別の要因として、首長選挙を視野に入れた市長・県令・知事が労働界に甘い汁を用意しようとする姿勢も目立つことから、最低賃金決定プロセスの改善がこれまでも叫ばれてきた。
最低賃金という概念についての改正から最低賃金決定プロセス内における参照要素や計算方式などを総合的に練り上げたこの政令は、従来のパターンからもっと測定可能な性質を持たせるよう配慮されている。
まず、勤労者にはその生活が維持できるだけの妥当な収入が与えられなければならない、という基本思想をもとにして、「妥当な所得」とは自分自身と扶養家族の適正な生活需要を満たすことのできる所得を労働の対価として与えられることという定義が盛り込まれた。
この妥当な所得は賃金と非賃金のふたつに区分され、次のような項目に依拠してその実現がはかられる。
A.最低賃金
B.残業代
C.障害があって出勤できないときの欠勤賃金
D.職務外の活動のために出勤できないときの欠勤賃金
E.職務時の休憩権利を遂行するときの賃金
F.賃金支給の形態と方法
G.罰金と賃金カット
H.賃金が計算根拠に使われるもの
I.バランスの取れた賃金構成とスケール
J.退職金支払いのための賃金
K.所得税納税額算出のための賃金
賃金とは、手当のつかない賃金、固定手当てと基本賃金、あるいは固定手当て/非固定手当てと基本賃金といった区分から成っている。
手当てのつかない賃金とは、勤労者が定期的に一定の金額を受け取るもの。その金額はハリラヤボーナス・残業代・退職金・社会保障掛金などを算出する際の根拠に使われる。
固定手当てと基本賃金というのは、職務のレベルや性質に即して労使の合意によって定められる基本賃金と、勤怠や業績とは関係なく定常的に支払われる固定手当から成っている。このパターンが使われる場合、基本賃金は総支給額の75%以上を占めなければならない。
固定手当て/非固定手当てと基本賃金というのは、上の固定手当てと基本賃金に非固定手当てが加えられたもので、こちらのケースでも、基本賃金は基本賃金プラス固定手当ての75%以上を占めていなければならない。で、非固定手当ての定義としては、勤労者本人の条件に即して直接間接に非固定的に支払われるものであり、基本賃金算定期間と同期していない。たとえば、出勤日数にもとづいて支給される交通費と食費というようなものがそれに該当する。
非賃金とは、宗教祝祭の手当て、ボーナス、勤労ファシリティ代償金、特定業種でのサービス金などが該当する。
最低賃金の定義を今回の政令は次のように改定した。最低賃金は、生産性と経済成長に留意し適正生活需要に基づいて知事が毎年セーフティネットとして決定するものであり、手当てのつかない賃金あるいは手当てを付加した基本賃金から成る最少金額の月間賃金である。
最低賃金はその会社に雇用されてまだ一年が経過していない勤労者にのみ適用され、勤続一年以上になった勤労者の賃金は労使間で協議される。そこでは会社内の職分・職位・勤続年数・学歴・能力といった要素のマトリクスが作られることになる。
最低賃金算出公式は次のように定められた。翌年1月1日からの最低賃金を当年10月ごろに決めるというタイミングメカニズムをお忘れなく。
UMn = UMt + {UMt x (Inflasi t + % ? PDB t )}
UMn = 翌年の最低賃金
UMt = 当年の最低賃金
Inflasi t = 前年9月から当年9月までのインフレ率
? PDB t = 前年Q3Q4と当年Q1Q2という一年間でのGDP成長率
また、零細中小企業の最低賃金を別建てにするべきだという意見が数年前から提起されているが、今回の政令でその問題は取り上げられておらず、これまで通りすべての事業所に同じものが適用されることになっている。
労働界はこの政令案を政府が公表したとき、最低賃金は適正生活需要と一致させるよう求めて陳情した。ところが、内容が確定されて政令として制定されたとき、最低賃金は適正生活需要を根拠にすると言いながら実際の最低賃金計算公式の中に適正生活需要は顔を見せていないことに面食らった。政府の考えによれば、適正生活需要は5年に一度サーベイを行って確定させるだけであり、他の四年はインフレ率とGDP成長率だけで決めていく方針になっていて、その方法が使われるなら現実の適正生活需要と最低賃金の間に乖離が起こる可能性が懸念される。適正生活需要がインフレに影響されて変動していくのは疑いないにしても、サーベイ品目が完全に同一でない以上、数値が一致するかどうかは判らない。
一方、知事・県令・市長が賃金評議会の提案を恣意的に歪めることのできる要素の排除されたこのような公式が定められた以上、地域行政首長は単に計算結果を決定書として作成するだけの存在になってしまう。実業界にとっては、ひとによって結果が変化することのない明瞭で明朗な形になるわけだが、上述の状況を踏まえた上で労働界は「最低賃金は知事が定める」という現行労働法の条文を盾に取り、この政令の廃止を要求している。
10月末に近づくころに制定されたこの政令は、全国の州県市が何ヶ月も前から進めてきた2016年度最低賃金決定プロセスに冷水を浴びせかけた。それに対する反応はふたつに分かれた。政令の内容に即して既になされた賃金評議会のプロセスを凍結しようとするものと、今回限りという内意を含んで従来のメカニズムを踏襲しようというものに。
ジャカルタ都知事は後者の姿勢を示した。ジャカルタ首都特別区賃金評議会はバスキ・チャハヤ・プルナマ都知事に対し、どこまで行っても平行線をたどる労働界の要求3,133,477ルピアと実業界が主張する3,010,500ルピアをそのまま提示して都知事の決済を仰いだ。適正生活需要は298万ルピアという数字が賃金評議会で合意されており、都知事はそれを踏まえた上で2016年首都ジャカルタの最低賃金を310万ルピアと宣言した。労働界も実業界も不服を訴えたが、中でも実業界は中央政府が定めたばかりの計算公式に従えと都知事を批判した。公式に従うなら、UMt = 2,700,000、Inflasi t = 6.83%、? PDB t = 4.67%で解は3,010,500となる。
同じように、ボゴール県でも15年11月3日に県令が2016年最低賃金を決定した。県内労働界が1千人を動員して行った375万ルピアを要求する陳情デモが解散した直後の決定で、現在の最低賃金265.5万ルピアから12.05%アップする297.5万ルピアが来年の最低賃金になった。しかし2015年政令第78号の公式を使うなら、アップ率は11.6%にならなければならない。
そのような不統一と混乱を避けるためにハニフ・ダキリ労相は15年11月6日中部ジャワ州ドゥマッで声明を出し、全国の地方自治体は中央政府が定めた2015年政令第78号を遵守するよう要請した。中部ジャワ州知事はそれに応じて、2016年度最低賃金は定められた算出公式を使うことを表明している。


「バタムの海は波高し」(2015年12月11日)
まだ夜が明けやらぬ暗い海を、一隻の木造船がマレーシアの領海から出てきて、リアウ島嶼州バタム島に向かっていた。哨戒中だった税関総局パトロール艇BC−10022号がその船影をとらえた。密輸品を運んでいるにちがいない。
パトロール艇はその船に接近した。船上には人間が満ち溢れている。その木造船は密輸品でなく、密入国者を運んでいたのだ。パトロール艇はその木造船に対し、カリムン島の税関地方事務所本部に向かうよう命じて伴航した。
その定員30人の木造船には、運航クルー3人、インドネシア人70人、子供1人の合計74人が乗っていた。インドネシア人70人はマレーシアへ出稼ぎに行き、今回帰国の途に着いた者たちだった。マレーシアを密出国してインドネシアへ密入国しなければならない理由を持っている者もいれば、わざわざこの非合法ルートを選んだ者もいる。少なくとも、70人の全員がパスポートなどの海外渡航書類を持っておらず、それが第一義的な理由であることはたしかだ。
合法的にマレーシアへ入国した者でも、マレーシアで雇い主が雇用時にかれらのパスポートを取り上げたため、その返却交渉、あるは大使館に訴える、といった手続きを踏まなければ合法的な帰国はできない。むしろ反対に、契約期限が近づくと雇い主の方が無体な扱いをしかけるようになり、出稼ぎ者はいたたまれなくなって逃げ出すということが一部で行われている。パスポートどころではなくなるということだ。そういうひとたちのために、手っ取り早くしかも廉価にインドネシアに帰国する方法を、マレーシアのシンジケートが用意している。どこにも看板は出ていないが、人づてに闇渡航ルートを探せばチャロ(仲介者)に行き当たる。チャロは金を取り、いついつどこそこへ行って船に乗れと言うだけだ。
シンジケートはマレーシア人の船主から船をチャーターし、船の乗組員に何人乗せてバタム島へ運べという指示を出す。30人乗りの船に74人がぎゅうぎゅう詰めになったのは、シンジケートがそう指示したということだ。
密航者たちが言われた場所で夜中に出発を待っていると、少し沖に一隻の船がやってきて止まった。シンジケートの下端と思われる人間がやってきて、バタム行きはあの船だ、と言う。密航者たちは荷物や大切な金が入っているバッグを持ったまま海中に進むと、船に向かって泳ぎ始める。そのときに力尽きて海流に流されたら、それっきりとなる。今回の70人は全員が無事に船までたどりつくことができた。しかし船上は立錐の余地もないくらいのすし詰め状態だ。スマトラ島へ渡ろうとしていたすし詰め密航者運搬船が沈没して50人を超える大勢の死者が出た事件はまだ記憶に新しい。
70人の中で一番高い金額をこの闇渡航トリップに払った者は、1千5百リンギットを支出した。ただしその者は西ヌサトゥンガラ州出身者で、その金額はバタムからロンボッ島マタラムまでの切符代がそこに含まれているのだと述べている。合法的にバタム島に渡る場合の支出金額は3千リンギット前後になるため、闇ルートを使えば大割引になるのだが、官憲に逮捕され、あるいは身体生命を毀損する機会は満ち満ちている。


「バタムに集まる非合法出稼ぎ者」(2015年12月14日)
バタム市社会局と警察がジョド地区で不法海外出稼ぎ者収容場所を摘発した。収容場所から保護されたのは男性92人女性63人の合計155人で、かれらはマレーシアへの密航準備が整うのを待っている状態だった。
収容場所に使われていたのは三階建ての住居店舗で、その中は仕切りもベッドもなく、全員がすし詰め状態で雑魚寝していた。その住居店舗は表のシャッターが常におろされており、表には会社名が表示されているが、海外出稼ぎ者派遣サービス業者というニュアンスを示すものは一切見受けられない。
保護された155人の多くはジャワ出身者で、パスポート等はバタムですべて準備するから、郷里からは身一つで出ればよい、と故郷でチャロ(仲介者)に言われた者がほとんどだった。チャロに支払った金額はひとりあたり2百万ルピアから6百万までさまざま。東ジャワ州サンパン出身者は、故郷での年間収入は1千万ルピアに満たないため、マレーシアへ出稼ぎに行けば数千万ルピアになるから出稼ぎを決意した、と述べている。かれは3年前にマレーシアで働いたことがあり、収入も大きく、日常生活も豊かなマレーシアに戻ることを強く希望している。しかし、今回その夢は潰えた。かれらは警察で調書を取られた上で故郷に送り返されることになる。


「労働者は自衛せよ」(2016年2月18日)
2015年10月6日付けコンパス紙への投書"Jokowi dan Buruh"から
拝啓、編集部殿。ジョコウィ政権は労働者が解雇された際に老齢保障金を受取る自由を認めました。解雇の波に襲われるかもしれない灰色の世界経済への不安を思えば、その措置は重要なことです。
労働者社会保障催行庁代表取締役は、1万2千人が解雇されるだろうと推測しています。ところが9月末の報道によれば、解雇者数は10万人に近づいているのです。与えられた自由に賢明に対処するには、どうすればよいでしょうか?
もしあなたが雇用されて2年未満であるなら、雇用解消が避けられなくなったとき、会社側に解雇されるように努めなさい。重度違反や自主退職での雇用解消は、退職金を受取る権利を失います。退職金構成要素の三件は、賃金の三倍に上ります。一方、受取れる老齢補償金は賃金のおよそ1.3倍です。
雇用主にしかたなく解雇された場合はその流れに従い、老齢補償金はたいへん切迫した場合に受取ればよいのです。たとえば出産費用とか治療費用などに。インドネシア保健カードは解雇後6ヶ月間使えます。
もし自営のための資本金が必要であれば、国民事業ローンの可能性を探ってみなさい。コペラシ中小事業省、労働省、協力銀行が解雇された労働者に、30兆ルピアの予算が用意されている国民事業ローンの道を開いてくれれば、素晴らしいではありませんか?
雇用されて二年間経ったときの老齢補償金はいくらになっているでしょうか?二年間で賃金のおよそ1.3倍になります。もしそれを維持しておくなら、老齢補償金は金利が金利を生み、定期預金よりも高い金利率をエンジョイすることができます。
4千万の勤労者はほぼ9割が徐々に老齢化して、退職年齢に近づいていくことをお忘れなく。わが国の経済建設は余命を永くし、老人はますます増加します。老齢補償金と老齢年金保証の長期目的はそこにあるのです。[ 南ジャカルタ市ビンタロ在住、オダン・ムフタル ]


「労働者実質賃金が低下」(2016年2月29日)
中央統計庁が発表した賃金統計によれば、2016年1月末の建設労働者名目賃金は81,221ルピア/日で、全月末の81.002ルピア/日から0.27%上昇したことになっているが、西ジャワ州ボゴール地区の建設労働者は賃金相場のアップを否定している。全国統計と一地方のものを比較しても、あまり意味がないのも確かなのだが・・・・。
一方、統計上の実質賃金65,702ルピア/日は前月末の65,861ルピア/日から低下した。1月のインフレ率0.51%が実質賃金低下の原因であるとの分析になっている。
ボゴール地区に住むある建設労働者によれば、かれの日当は一日10万ルピアで変化がなく、一日当たりの支出は米1キロ8,500ルピア、子供三人の養育費に35,000ルピア、残る56,500ルピアは他の食材購入で消費されるとのこと。
家庭プンバントゥ(女中)について中央統計庁の賃金統計では、16年1月末家庭プンバントゥの名目給料は357,550ルピアで前月末の356,481ルピアから上昇しているが、実質額は289,845ルピアから289,233ルピアに低下している。
バンテン州南タングラン市に住む家庭プンバントゥは給料の低さに愚痴をこぼしている。南タングラン市ビンタロジャヤ地区で働いている家庭プンバントゥ52歳によれば、かの女の給料は月額100万ルピアで変化がなく、統計のような額面のアップはまったくない由。一日の食費は雇い主からの現物支給になっているため生活費の支出は小さく、かの女は毎月その所得から50万ルピアをスマランの母親に仕送りしている由。


「言うは易い脱税対策」(2016年4月1日)
外国投資法に従って設立されたPMA企業およそ2千社が、過去十年間まったく納税していない。政府はおよそ5百兆ルピアの税収を取りこぼしており、それら外資系企業に対してもっと真剣に調査のメスを入れなければならない、と蔵相が閣議で報告した。
大統領はそれに対し、金融取引報告分析センター、国家警察、最高検察庁、国税総局に向って、一致協力して脱税とマネーロンダリング事件に対処するよう求めた。大統領はまた、ナルコバ関連やイリーガル通商あるいは価格移転などが頻繁なセクターに対しては、中銀と金融サービスオーソリティを交えて事に対処していくよう指示した。「現場では全関連部署が協力的に働かなければならない。セクターエゴを出して摩擦や衝突を起こしていては、わが国の法確立はおぼつかない。」
蔵相はPMA企業の納税状況について、ほぼ2千社が赤字を理由に法人税の納税をしていないが、大蔵省の税務調査や想定計算によれば、それらの企業は平均一社250億ルピアの納税が毎年なされてしかるべきだ、と説明した。この状況も脱税問題の一部を占めており、何らかの手を打たなければならない、と蔵相は表明している。
個人納税者についても、複数の所得源を持っている者が5百万人いるが、それを正直に申告している者は90万人しかおらず、そこから上がっている税収は9兆ルピアしかない、と語った。所得のごまかしによる脱税を何百万人もの個人納税者が行っている、との蔵相の弁。
中でも、海外に口座を持って財産の一部を秘匿しているインドネシア人は6千人おり、ブリティッシュバージンアイランドが一番人気が高い由。大蔵省はその口座や名義人を調べ上げており、インドネシア国民の資産を納税に結び付ける方策を講じる意向。


「ハリラヤボーナス規定に変更」(2016年4月12日)
THR(Tunjangan Hari Raya)とは、各宗教の最大の祝祭日に、その信徒に与えられるボーナスを指している。言うまでもなく、宗教最大の祝祭日というのはインドネシア文化の中での最大ということなので、もちろんユニバーサルなものと異なるケースはありうる。現実にインドネシアでは、ムスリム最大の祝祭日はイドゥルフィトリ(ルバラン)であり、キリスト教徒はクリスマス、ヒンドゥ教徒はニュピ等々とされており、雇用主は従業員の宗教に応じてTHRの時期を管理することができる。つまり、ルバランの時期に会社が雇用している全従業員にTHRを支給するのは、その意味から的外れのことをしていると言われても仕方ないことになるわけだ。THRは各宗教祝祭日の7日前までに支給されなければならない、と定められている。
ただし、国民の9割近くがムスリムだから、世間一般はルバランとTHRを結び付ける傾向がきわめて高く、政府ですらそのような対応をしているために、上述の的外れが起こりやすい状況をかれら自身が仕組んでいると言うこともできそうだ。
さて、今年のイドゥルフィトリ大祭は2016年7月6・7日の予定。そして政府労働省は3月8日付けで「労働者/勤労者のための宗教祝祭日ボーナス」に関する2016年労働大臣規則第6号を定めた。この規則は1994年労相規則第4号に取って代わるもの。
この新規則で新たに打ち出されたものは、第2条(1)項に述べられている;
勤続期間が一ヵ月の従業員は勤続期間に応じた比率のTHRを与えられる権利を有する、という条文で、これまで有効だった1994年労相規則第4号に定められているTHR受給資格の勤続三か月以上という内容が変更されている。 THR金額については、勤続12か月以上の者には賃金一か月分と定められている。
新大臣規則ではまた、この大臣規則がすべての雇用関係にある従業員に対して一律に適用されることを義務付けており、正社員はもとより、期間を限定した契約社員であっても同じようにTHRを与えなければならないことになっている。
もちろん、労使間で合意され、労働監督機関で承認された労働協約の内容に新労相規則と食い違っている点がある場合は、労働協約が尊重されることになる。


「クレジットカード取引明細を税務申告の傍証に」(2016年4月13日)
複数の所得源を持つ個人納税者が5百万人いて、4百万人を超える者が所得隠しを行っている、と蔵相は語ったが、納税者の経済状況を確認するための資料として蔵相は大臣規則を新たに制定し、クレジットカード取引明細の提出を銀行界に義務付けた。2016年3月23日付けで出された蔵相規則第39号には、クレジットカードビジネスを行っている22銀行と1金融サービス機関に対するクレジットカードオーナーの月々の取引データ明細提出義務が盛り込まれている。
国税総局広報担当によれば、この方針は半年間にわたって国税総局と金融サービスオーソリティの間で協議が進められてきたテーマであり、最終的に2016年蔵相規則第39号の形で実現したとのこと。金融サービスオーソリティは、クレジットカード取引明細は銀行の顧客に対する守秘義務の対象ではないとの見解を表明している。
税務プロセスと一般規定に関する2007年法律第28号の第35A条には、各政府機関・ビジネス機関・業界団体その他の機関に対して税務関連のデータと情報を国税総局に提出する義務が定められている。その一方で、銀行界に対しては顧客の情報に関する守秘義務が定められており、国税側が納税者の経済状況を容易に把握することを困難にしていた。
銀行界は中央銀行と金融サービスオーソリティを交えて、今回出された方針に関する詳細検討を進めており、もしそこで蔵相規則が支持されたとしても、データ提出に関する諸手続きの詳細が規則として定められなければ現実の実行は不可能であるため、その方針が現場で遂行されるようになるまでにもう少し時間がかかるだろう、と見ている。


「アセアン域内で最低賃金制度を」(2016年7月11日)
ユスフ・カラ副大統領がアセアン最低賃金制度を提案した。大企業による低賃金の労働搾取を防止するのが目的であると副大統領は述べている。アセアン域内でメンバー国の賃金状況が異なっているとき、そこに大企業が低賃金戦略を持ち込んでくれば、域内諸国で不健全な競争を招くことになりかねない。各国政府間でそのような要素を排除するシステムを用意しようというのがその意図であり、ベトナムとカンボジャはその提案に賛成したとのこと。副大統領はそれに関する域内共同合意を設けるために、アセアン事務局に対してメンバー国労働大臣会議の議題とするよう要請する意向。
繊維産業や履物産業で、従来から域内メンバー国間の競争は激しく行われている。たとえばインドネシアとベトナムの間では、生産インプットはたいした違いがなく、労賃の差が競争力の違いを生んでいるだけ、という状況になっている。大企業が低賃金戦略を持ち込んでくれば、労働者が搾取を受けるだけでなく、その国の産業界も影響を受け、更には国家行政にもその影が及んでくることになる。だから各国間でその問題に即応できるような体制を構築しておくことは、よい効果をもたらすにちがいない。このような体制を構築しておくことによって、賃金格差に引きずられて大企業が低賃金国に生産をシフトさせることを予防する効果もある。
これは事業競争を緩和させようという意図でなく、あくまでも不健全な競争を抑え込むのが目的であり、事業競争それ自体は健全なあり方で活発化させなければ、効率の向上は期待できない、と副大統領は念を押している。


「署名偽造を勧める役人」(2016年9月23日)
2016年4月13日付けコンパス紙への投書"Saran Memalsukan Tanda Tangan"から
拝啓、編集部殿。祖父名義の家の土地建物税軽減措置を申請するために、わたしは16年4月1日に南ジャカルタ市庁舎を訪れ、ご婦人の職員が応対してくださいました。わたしは前日の3月31日に既にそこを訪れており、そのときは背の高い、清潔で丁寧な中年の男性が応対してくださいました。
わたしが持参した書類をチェックされたその男性は、滞納はなく、また書類もほぼ完ぺきだが、課税対象になっている家屋の写真が付いていないので、それを持ってきてください、と要請しました。それでわたしは家屋の写真を持って4月1日に再度市庁舎を訪れ、そのご婦人に相対したということです。ところがそのご婦人は、昨日提出した表明書のフォームを新しいものに変えろと言うのです。
「どうしてそれを昨日言ってもらえなかったのでしょうか?こうやって毎日行ったり来たりするのは大変なんですよ。」とわたしが苦情すると、その婦人はいとも簡単に言いました。「新しいフォームに書き込んで、おじいさんのサインはなぞり書きすればいいんですよ。」
それは署名を偽造せよということではありませんか。
公務員である市庁職員が何という大それたことを言うのでしょうか?バスキ・チャハヤ・プルナマ都知事が体質改善を強力に進めているというのに、首都の役所はほんとうに腐りきっていますね。[ 南ジャカルタ市在住、アルヨ・ヌグロホ ]


「最低賃金の季節」(2016年10月17日)
首都ジャカルタの2017年最低賃金決定プロセスが始まっている。労使代表・行政・学識経験者などからなる都庁賃金評議会では、既に労使双方から希望する最低賃金案が提示された。それによれば、労働者側は月額380万ルピア、事業者側は335.1万ルピアとなっている。
規則では、翌年の最低賃金は当年11月1日に州知事が知事規則で定めることになっており、賃金評議会で協議され合意された金額がリコメンデーションとして知事に上申され、知事は必要に応じてそこに斟酌配慮を加えた最終決定を下すことになる。そこに歪んだ思惑が込められることも過去に何度も起こっており、その種の思惑に油を注ごうとして労働界が暴力デモを工業団地に仕掛けることすら頻発した時期がある。地方首長のそのような暴走を中央政府がどうコントロールしていくのかということも、この国が抱える不安定要素のひとつに数えることができるにちがいない。
事業者側代表の核になっているのは全国商工会議所内の労使問題対策機関であるアピンド(インドネシア事業者協会)で、アピンド首都支部は提案金額について、2015年政令第78号に定められたアップ率8.11%に従って算出したと説明した。政令として定められたそのアップ率は労使双方の希望を踏まえて定められたものであり、労働者側にとっても妥当性のあるものと考えて差し支えないはずだ、と強調している。しかしアピンドは年々の最低賃金決定について、その地域の経済成長率とインフレ率をベースにした公式を用いて算出されるのが最善である、とも理想を述べている。
そうなることによって、労働者も経済の成長が自分の所得を増加させるという因果関係を理性的に受け入れることができるわけで、確実性あるいは確定感はこれまでよりはるかに高いものになるとのこと。
一方労働者側は、2003年法律第13号労働法が定めている適正生活需要(KHL)に準拠して最低賃金が定められるのがあるべき姿であるとして、既に在来パサルとモダンマーケット2ヵ所で物価サーベイを行い、更にジャカルタの経済成長率とインフレ率を加味して2017年の最低賃金を算出した、と380万ルピアの根拠を説明した。
11月1日の都知事規則確定を目指して都庁賃金評議会での協議は更に続けられることになる。一方、ジャカルタ労働者運動総裁はしばらく前に、ブカシとカラワンの最低賃金は現在のジャカルタ最低賃金より30万ルピア高い340万ルピアになるだろう、と語った。去る9月に在来パサル7ヵ所とモダンマーケット2ヵ所で行ったKHL物価サーベイ結果が340万ルピアに達したのがその根拠。ただしKHL物価サーベイ対象物品には、教育・保健・情報通信などの項目が加えられている。


「最低賃金の決め方で悶着が拡大」(2016年10月31・11月1日)
賃金に関する2015年政令第78号は翌年の最低賃金決定方法について、その年の最低賃金に経済成長率とインフレ率を掛けて算出することを定めており、また適正生活需要をクリヤーすることになっている。
その政令に従わない州知事17人に対し中央政府が警告書を送ったことを内務大臣が明らかにした。地方政府に関する2014年法律第23号は地方首長にすべての法規を遵守する義務を定め、また中央政府の戦略的プログラムを推進することも義務付けている。そのためにジョコウィ政権が上の政令で定めた最低賃金のついての方針にも従わなければならない。ところが2017年最低賃金決定に際しては、上の政令に従って州最低賃金を定めた知事は34人中14人しかおらず、17人は従来からの方法で2017年の州最低賃金を定めたため、中央政府がかれらを鞭打った、というのが今回のできごと。
その17州知事の中にバスキ・チャハヤ・プルナマ、ジャカルタ都知事も含まれている。都知事は2017年最低賃金を310万ルピアと定めたが、賃金評議会の中で労働界代表者は「政令第78号に従えば330万ルピアが定められるべき2017年最低賃金だ」と主張している。
2014年法律第23号は、中央政府が違背行為のあった地方首長と副首長に対して警告書を2回与えることができ、その警告書をも無視して義務を全うしない場合は一番厳しい制裁措置として三ヵ月間の暫定免職が命じられる。
しかしインドネシア全労働者機構事務局長はそれについて、知事はもっと高いパーセンテージを使って最低賃金を決定することを任意裁量として定めることができる、とコメントしている。
2015年政令第78号が伝統的に行われてきた賃金評議会の労使行政三者間協議をなしくずしにするものであることから、労働界はその政令を廃止するよう求める陳情行動を活発化させはじめている。インドネシアの最低賃金というのは全国一律のものでなく、州最低賃金があり、県市最低賃金がある。実際に企業は事業所が所在する県市の最低賃金に従っており、州最低賃金というのは州内県市最低賃金中の最低のものが定められてきた。それは、州内県市の最低賃金は州最低賃金を下回ってはならないという規則になっているためだ。
もともと州最低賃金というのは最低線を保全することを目的にして州内の最低ラインを定めるものであり、各県市に対するガイドラインの機能を持たされていたようだが、各県市の最低賃金も個々の賃金評議会が協議した金額が州知事に推薦金額として提示され、州知事の斟酌がそこに加えられて州知事決定として法的に確定される。であるなら、州最低賃金の決定と州内県市最低賃金の最低のものへの知事の斟酌というのは、同一のことをしている趣にならないだろうか?
そういう見方をするなら、州最低賃金の決定というのは、屋上屋を重ねることをしているというように見えてくる。州内県市の中のもっとも低いものですら、地元の賃金評議会が適正生活需要サーベイを行った上で協議して決めたものであり、そういう自治の精神を尊重するなら、州知事がそこに州の方針にもとづいて斟酌を加えるとしても、提出された推薦金額からかけ離れた数字を知事がひねり出すようなことはできないにちがいない。
16年10月27日にバンドン市内で行われた労働者デモで労働界は西ジャワ州知事に対し、州最低賃金という制度を廃止するよう求めた。同時に中央政府に対しても、2015年政令第78号を廃止するよう要求している。
東ジャワ州スラバヤでは10月28日に、2015年政令第78号に従って州知事が定めた州最低賃金の取り消しを求める労働者デモが行われた。もちろん、2015年政令第78号の内容を拒否する声明も忘れていない。
東ジャワ州知事が定めた2017年州最低賃金は、州内県市の最低額であるポノロゴ、パチタン、トレンガレッ、マグタンの2016年県最低賃金に8.25%を掛けた1,389,000ルピア。一方、州内産業地区であるスラバヤ、グルシッ、シドアルジョ、パスルアン、モジョクルトの2016年最低賃金は320万ルピアになっており、2017年州最低賃金が140万ルピアレベルに定められたことによって、多くの労働者が2017年は所得が半減するという危惧を抱いてしまった。労働者のこの反応は、雇用者である実業界が県より上位にある州の最低賃金に従うと言い出し、県の最低賃金を反故にしてしまうことへの怖れが根底に横たわっているらしい。
東ジャワ州労働界は州知事に対し、2015年政令第78号による州最低賃金決定は無用のことであり、各県市が賃金評議会の推薦する適正生活需要にふさわしい県市最低賃金だけを州知事は取り扱うようにせよ、と要求している。
それに続いて中部ジャワ州労働界も、2015年政令第78号の計算方式を県市最低賃金算出に使うことはやめるよう要求の声をあげた。現在の最低賃金が適正生活需要をクリヤーできていない県市で算術的な最低賃金決定方式に変えられると、労働者の福祉は永遠に訪れない、と全国労連ユニオンのコーディネータは主張する。中部ジャワ州の33県市で、2016年の最低賃金が適正生活需要より低いところは20県市もあるのだ。だから州レベルも県市レベルも最低賃金決定は2015年政令第78号に従うのでなく、適正生活需要のサーベイを行ってそれをベースに決定プロセスが行われるのがあるべき姿だ、とコーディネータは述べている。
一方、アピンド中部ジャワ支部長は2017年最低賃金決定について、算出方法は2015年政令第78号に定められたものが使われなければならず、それ以外の方法が使われたなら、法規違反になる、と言明している。
中部ジャワ州知事は、2017年最低賃金決定に当たって労働界が2015年政令第78号の使用を望まないなら、適正生活需要運用法と適正生活需要実現ステップに関する2014年知事規則第65号を用いることができる、とのアドバイスを出している。


「賃金に関する政令は不徹底」(2016年11月30日)
労働者は何年その会社で働いていようが、最低賃金しかもらえない状態が依然として続いている。ひどい場合は最低賃金すら満たしてもらえない。いつまで経っても適正な報酬がもらえないのは賃金構成とスケールを会社が作ろうとしないからだ。賃金に関する2015年政令第78号は会社に賃金構成とスケールの作成を命じ、またそれを全従業員に示す義務を負わせているにもかかわらず、この政策はまだまだ徹底していない。インドネシア全労働者機構事務局長はそう発言した。
2014年に中小企業百社を対象にしたサーベイを全労働者機構が行ったところ、ほぼ6割が最低賃金もしくはそれ以下の給与を従業員に与えていることが判明した。最低賃金というのは勤続期間が1年以下の者に適用されるものであり、1年を超えた者に対する昇給の要請は年々激化している。
会社が賃金構成とスケールを作成して従業員に開示することで、労使関係の透明さは大幅に改善され、相互信頼が高まるのは言うまでもないことだ。しかしその推進のための材料がまだ用意できていない。労働省はそのモデルパターンを作成して実業界に対し、その方針の実践を求める計画にしているものの、モデルパターンは現在制作中であるため、まだ行動に移せないでいる、と労働大臣は述べている。
一方、労働省は2015年政令第78号に従って2017年最低賃金の上昇率を8.25%と定めて公表しており、各州の2017年最低賃金決定作業がどれだけ政令に沿ったものになっているかに関する番付を近々発表することにしている。


「最低賃金の異常な上昇はなくなるか?」(2016年12月1日)
ビジネス確定、もっと広く言うなら法治の確定、というものが長い間風前の灯だったインドネシアの欠点を改善して外国からの直接投資を高めることを望んでいる現政権は、2015年10月23日に「賃金」に関する2015年政令第78号を制定して、最低賃金の変動を先が見えるものにした。
その内容は、これがインドネシア>インドネシア税労働情報2014〜15年>「最低賃金制度に変化」(2015年11月10・11日)をご参照ください。
ところが、各地方自治体で今年行われた2017年最低賃金決定プロセスでも、2015年政令第78号の内容に無条件で服従することを躊躇する姿勢が多くの地方で見られたことから、政令に従えという労働大臣や内務大臣からのリマインダーが再三流されていた。
全国の34州は2017年州最低賃金を16年11月中に定めた。政令で定められている計算公式では、インフレ率と経済成長率分だけ現行最低賃金がアップすることになっており、政府は中央統計庁が提出したインフレ率3.07%と経済成長率5.18%を足した8.25%のアップを各州知事に命じたのである。
中央政府にとっては、各州政府がどれだけ指示に従っているかということが地域行政評価のひとつのポイントになる。政府がこの最低賃金決定に関する状況をチェックしたところ、34州のうち30州が政令を遵守していた。政令通りにしなかった州は四つあり、アチェ州がアップ率18.01%、南カリマンタン州8.29%、パプア州9.39%、東ヌサトゥンガラ州7.22%という結果になっていた。全国で2017年最低賃金の一番高い州はジャカルタ首都特別区で、3,355,750ルピアと定められている。
これは新方針開始年の2016年最低賃金決定の際に起こったものよりはるかに統制が効いてきていることを示すものだ。前年ではアップ率が11.5%と定められたが、指示通り行ったのは14州、指示に従わなかったのが17州あり、残る3州は州最低賃金を定めなかった。州最低賃金を定めなかったのは東ジャワ・中部ジャワ・ヨグヤ特別州の3州で、州内ですべての県市が州最低賃金以上にしなければならないという原則に従い、州知事が最も低い県市の最低賃金を承認することがすなわち州最低賃金の決定であるという理解のもとに、別途州最低賃金を定めない慣例がそれらの州で続けられてきたということだ。しかしそれらの州も、2017年州最低賃金を別途定める姿勢に戻っている。
一方では、従来から問題視されてきた最低賃金が適正生活需要より低い現象があり、今現在最低賃金がそうなっていれば、政令の計算公式を遵守しているかぎり、未来永劫同じ状態が続く。つまりそういう州は可及的速やかに最低賃金を適正生活需要に追い付かせるために、政令の計算公式など使っていてはならない、ということになる。そういう州には「政令を遵守するな!」という檄が飛ばされることになるわけだ。
労働省労使関係育成勤労者社会保障総局賃金ファシリティ標準化次局長は、西ヌサトゥンガラ・ゴロンタロ・マルク・北マルクの4州がそういう州に該当していることを明らかにしている。


「バタム市最低賃金も8.25%のアップ」(2016年12月2日)
リアウ島嶼州バタム市が2017年最低賃金を324.1万ルピアとして州知事に提出し、承認を求めた。バタム市長によれば、そのリコメンデーションは「賃金」に関する2015年政令第78号に沿ったものであり、この先は知事が州賃金評議会に諮ってその可否を決めるばかりであるとのこと。
バタム市はそれに先立って一度、労働界の要求する数字と実業界の主張する数字をふたつ並べて州知事に提出したことがあり、上位者に下駄を預けるそのような行為は認められないとして州知事はそれを差し戻している。
州知事はバタム市長が今回出した二度目のリコメンデーションについて、文書自体はまだわたしの手元に届いていないが、それが「賃金」に関する2015年政令第78号に従っているものであれば間違いなく承認されるだろう、とコメントした。
一方、バタム市賃金評議会で実業界と労働界の折り合いがつかないまま硬直したためにバタム市長がしかたなくその両者をそのまま上位者にあげたことで州知事の不興を買った事実が示すように、双方は政令の最低賃金算出公式を使ってバタム市長が出した数字を依然として拒否している。
労働界が求めている2017年最低賃金は349万ルピアで、更にそれを15%アップさせたセクター別最低賃金を2017年も設けることを要求している。「バタムの産業界はセクターごとに大違いの性格をしており、セクター別最低賃金システムが行われて当然だ。」とインドネシア金属労連バタム支部顧問は述べている。
一方アピンドバタム支部長は、2017年の最低賃金が324万ルピアになれば、重すぎる負担が実業界にのしかかってくる、と市長の方針に反対する姿勢を示した。すぐ隣のビンタン島は2017年最低賃金を260万ルピアで提出しており、昨今落ち込んでしまったバタム島の経済状況にふさわしい最低賃金にしてもらいたい、と実業界は食い下がっている。


「ジャカルタの最低賃金は二転三転する?」(2016年12月05日)
選挙キャンペーンに入るため現職都知事の座を臨時代行者に譲って休暇に入ったバスキ・チャハヤ・プルナマ都知事が最初定めた2017年ジャカルタ首都特別区の最低賃金が「賃金」に関する2015年政令第78号に従っていなかったために中央政府が警告を与えた結果、結局その政令に定められた算出公式に即した金額である335.5万ルピアに変更して都知事決定書が再度作成された。
ところが先週後半に行われた労働界の陳情デモでデモ代表団と都知事代行者が会談したあと、都知事代行者が労働大臣に対して、政令に定められている算出公式の変更を提案する手紙を出したことが明らかになった。
実業界は行政側のその措置に対し、既に確定したものをまた変更させる道を開く都知事代行者の動きは後退である、との批判を表明している。
労働界の陳情デモでは、2017年最低賃金は383.1万ルピアが労働者の生活福祉を支えるための最低線であり、ブカシ県353万ルピア、ブカシ市360.1万ルピア、カラワン県360.5万ルピアなど周辺各地の新最低賃金に比較しても見劣りのしないものだ、という主張がなされた。
首都特別区賃金評議会で実業界を代表するメンバーは都知事代行者が行ったその措置に対し、ジャカルタの賃金が国内で最高でなければならないような決まりなどどこにもないし、各県市は独自の事情を抱えているために個別の要素を斟酌して独自の賃金を定めているのであり、結果だけを比較して高い低いを言うのは見当違いである、とのコメントを発した。
全国ほとんどの州知事が2015年政令第78号に従って最低賃金を決めており、バスキ都知事も一度出したものを撤回して政令に従うようにした。それを今更、また変更するための扉を開こうとするのはいったいどういうことか、と知事代行者の動きを批判している。
スマルソノ都知事代行はその労働大臣に宛てた提案書について、基本線は既に定められている都知事決定書通りであり、2015年政令第78号に従った最低賃金を変える意図は少しもない、との事情説明を行っている。
「労働大臣に出した提案書は労働界の意欲を伝えることを目的にしており、その諾否は労働大臣にお任せしている。」
中央政府が最低賃金算出公式の使用を命じて来たのだから、その公式に不満があるなら中央政府にそれをぶつけるしかない。その橋渡しはするが、結果についての責任はわたしにはない。もしも算出公式が変更されたら自分はそれに従うだけであり、変更されなければ現状を維持するだけだ、というロジックがどうやら、そこに流れているようだ。
しかし生活基幹物資価格の変動で、労働者を含む一般庶民の生活福祉が落ち込んでいく傾向は確かに感じられる、と青年商工会議所西ジャカルタ支部長は労働者の陳情行動に対する同情を表明している。
中央統計庁ジャカルタ支所のデータでは、2016年11月インフレ率は0.24%で、全国インフレ率0.47%の半分でしかない。ジャカルタのインフレ率にもっとも大きい影響を与えたのは食材で、赤トウガラシ・エシャロット・チャベラウィッの値上がりが最大要因になっている。