適正生活需要構成表


最低賃金は各県市行政の中にある賃金評議会が合議して県令・市長に推薦し、県令・市長はそれを審査した上で州知事に推薦し、州知事が独自の判断を加えて決定する。州知事決定書の中で、州内の全県市の最低賃金がリストアップされ、またそこに州の最低賃金も記載されることがある。州最低賃金というのは、州内全県市がそれを上回っていなければならない最低基準であり、州の賃金評議会が推薦するものであるが、実質的な機能は持っていないため、州最低賃金は州内全県市中の最低の数字という考え方が増加しており、州最低賃金を設けない州知事も増えている。

賃金評議会は実業界代表・労働者代表・行政当局・学術界や労働専門家などが参加して、毎年の妥当な最低賃金を合議する。賃金評議会の大きい仕事は、最低賃金の参照値となる適正生活需要の市場サーベイを行うことで、合議の上でそれを確定させる。サーベイは複数回行なわれるのが普通。

ある年に確定した適正生活需要という実態がその翌年の最低賃金の参照値として使われるということであり、タイムラグがそこに存在している。

最低賃金の規定は次のようになっている。
*最低賃金とは月間賃金のもっとも低いもので、基本給と固定手当てから成っている。
*地元知事の最低賃金決定は、次のことがらにもとづく。
1.適正生活需要
2.経済成長率
3.マクロ生産性
4.労働市場の状況
5.能力の劣る事業セクターの状況
*独身勤労者の適正生活需要算出ファクター
1.飲食品・衣料品・住居・教育・保健・交通・レクレーション・貯蓄
2.各カテゴリーの個別の要素については、市場サーベイを行なって決定する
3.市場サーベイは州・県・市の各賃金評議会が実施する
労働大臣の定めた最低賃金に関する基本方針の中に、最低賃金は適正生活需要をクリアーしなければならないという一項がある。しかし、従業員に適正と考えられる生活レベルを与えたら会社は破産し産業は死滅したということになっては何にもならないので、雇用主の支払能力に関する考慮は不可欠だ。
最低賃金と適正生活需要との関係は昔から最低賃金が適正生活需要を後追いする形で続いてきている。毎年の全国平均値を見るとそれがわかる。
年 : 適正生活需要平均値 / 最低賃金平均値 /充足率
2005 : 530,082 / 507,697 / 95.8
2006 : 749,306 / 602,701 / 80.4
2007 : 766,360 / 672,480 / 87.8
2008 : 849,179 / 745,709 / 87.8
2009 : 1,010,372 / 841,530 / 83.3
2010 : 1,068,399 / 908,825 / 85.1
2011 : 1,123,744 / 989,829 / 88.0
2012 ; 1,299,692 / 1,088,903 / 83.8
2013 : 1,435,015 / 1,296,908 / 90.4
(平均値はルピア、充足率はパーセント)


適正生活需要の内容は次のようになっている。
2005年に定められた適正生活需要算出のための標準品目は46だったが、2012年に60品目に増やされた。労働界は、勤労者の妥当な暮らしに必要な品目はもっと多いとして、更に品目を増やすよう労相に求めている。品目が増えればその合算値である適正生活需要価額は増加し、結果的に最低賃金を引き上げることになる。

適正生活需要とは男女を問わずひとりの住民がその土地で妥当で人間らしい生活を送るために必要な一ヶ月間の資金額を定めるもので、適正生活需要金額は地元の市場で価格サーベイを行なって算出される。2012年労働大臣規則第13号に定められた60品目の内容は下の通り。

適正生活需要は飲食品・衣料品・住居・教育・保健・交通・レクレーション・貯蓄の8カテゴリーをカバーし、各カテゴリーの中で価格サーベイ対象となる品目が指定されている。適正生活需要というのはひと月間の必要コスト金額なので、月間需要の欄に1/48個などと書かれているのは4年間で1個消費する意味であり、月間需要金額は1個の価格の1/48に相当するということだ。

(1) 飲食品
1.米 (中級グレード) 月間需要10kg
2.蛋白源 a。肉 (中級) 0.75kg
      b。鮮魚 (上級) 1.2kg
      c。鶏卵 (養鶏卵) 1kg
3.豆類 テンペ・豆腐 (上級) 4.5kg
4.粉ミルク (中級) 0.9kg
5.砂糖 (中級) 3kg
6.フライ油 (バラ売り) 2kg
7.野菜 (上級) 7.2kg
8.果実 バナナ・パパヤ相応 (上級) 7.5kg
9.他の炭水化物 小麦粉相応 (中級) 3kg
10.茶またはコーヒー (ティーバッグ・サシェット) 25袋入り2箱=75g
11.調味料 (1〜10金額合計の) 15%
(2) 衣料品
12.長ズボン・スカート・ムスリム服 (コットン・中級) 6/12着
13.短パン (コットン・中級) 2/12着
14.ベルト (合成皮革・装飾なし・非ブランド品) 1/12本
15.半そでシャツ・ブラウス (コットン相応) 6/12着
16.Tシャツ・ブラ (中級) 6/12着
17.下着パンツ・パンティ (中級) 6/12着
18.サルン・カインパンジャン (中級) 1/12着
19.靴 (合成皮革) 2/12足
20.靴下 (コットン・ポリエステル・装飾なし・中級) 4/12足
21.靴手入れ道具 a。靴墨 (中級) 6/12個
          b。靴ブラシ (中級) 1/12個
22.ぞうり (ゴム) 2/12足
23.浴用タオル (100x60cm) 2/12枚
24.礼拝用具 a。サジャダ (中級) 1/12着
        b。ムクナ (中級) 1/12着
        c。ペチ等 (中級) 1/12個
(3) 住居
25.借室家賃 (以下の品目の置ける広さ) 1ヶ月
26.ベッド・寝台 (3号・装飾なし) 1/48脚
27.就寝用具 a。スポンジマットレス (スポンジ) 1/48枚
        b。スポンジ枕 (スポンジ) 2/36個
28.シーツと枕カバー (コットン) 2/12セット
29.机と椅子 (机1椅子4) 1/48セット
30.衣装タンス (木製・中級) 1/48棹
31.ほうき (シュロ・中級) 2/12本
32.食事用具 a。皿 (装飾なし) 3/12枚
        b。ガラスコップ (装飾なし) 3/12個
        c。ナイフとフォーク (中級) 3/12対
33.アルミ製やかん (25cm) 1/24個
34.アルミ製フライパン (32cm) 1/24個
35.アルミ製なべ (32cm) 2/12個
36.料理スプーン (アルミ製) 1/12個
37.電気炊飯器0.5L (350w) 1/48個
38.ガスコンロと付属品 a。単バーナーコンロ (SNI合格品) 1/24個
             b。ホースと調節器 (SNI合格品) 10L
             c。3kg入りガスボンベ (プルタミナ製) 1/60個
39.LPガス (3kgボンベ入り) ボンベ2個分
40.プラバケツ (容量20L) 2/12個
41.プラひしゃく (中級)1/12個
42.電気 (900ワット) 1ヶ月分
43.省エネ電球 (14w) 3/12個
44.上水 (水道会社標準品質) 2立米
45.洗濯洗剤 (クリーム・粉末) 1.5kg
46.食器洗剤 (練り石鹸500g) 1ヶ月分
47.アイロン (250w) 1/48個
48.プラポータブルラック (中級) 1/24個
49.料理包丁 (中級) 1/36本
50.鏡 (30x50cm) 1/36個
(4) 教育
51.読み物・ラジオ (タブロイド・4バンド) 4冊・1/48個
52.ボールペン・鉛筆 (中級) 6/12本
(5) 保健
53.保健用品 a。練り歯磨き (80g) 1本
        b。浴用石鹸 (80g) 2個
        c。歯ブラシ (国産品) 3/12本
        d。シャンプー (国産品) 100ml1瓶
        e。ナプキンあるいはひげそり用具 (10個入り) 1箱/1セット
54.デオドラント (100ml/g) 6/12瓶
55.蚊取り線香 (燃焼式) 3箱
56.散髪 (散髪屋・美容サロン) 6/12回
57.くし (普通タイプ) 2/12本
(5) 交通
58.職場その他への交通費 (公共運送機関) 30日往復
(7) レクレーションと貯蓄
59.レクレーション (周辺地区) 2/12回
60.貯蓄 (上述全項目合計の) 2%