インドネシア保健衛生情報2004〜07年


「アンチョル海岸に魚の屍骸数万匹が浮かぶ」(2004年5月10日)
北ジャカルタ市アンチョルドリームランド(Taman Impian Jaya Ancol)。マリーナから東に続く海岸は、いまでは綺麗に整備されてPantai Carnavalと名付けられ、夜にはダンドゥッをはじめさまざまなショーが演じられたりする。そのパンタイカルナヴァルを洗う海に魚の屍骸数万匹が浮かんだ。
異変が始まったのは7日夕方で、多数の魚やえびかになどが水面に姿を現し、息絶え絶えにのたうっていたが、8日には続々と死んでいった。アンチョルドリームランドの海岸観光ボート運転職員や近くに住むボート業者は、海水が赤っぽく、水温が高く、そして海中から泡が沸騰した湯のように立ち上ってきていた、と証言する。金曜にはまるで酔っ払いのように水中でばたばたしていた魚を狙って漁師が大勢取りにきた。そして土曜の朝にもっと多くの魚が水面に屍骸をさらすと、漁師や市民がもっとたくさんやってきて死んだ魚を集めた。死んだ魚の多くはikan kembung(シガーフィッシュ)やikan kue(ギンガメアジ)で、市民の多くは「持ち帰っておかずにする」と述べていた。アンチョルドリームランド運営会社PTプンバグナンジャヤアンチョル社は8日から9日にかけてパンタイカルナヴァルの海面を清掃したので、9日には海岸近くで魚の屍骸を目にすることはほとんどなくなったが、生臭い海のにおいは他の場所より依然として強く、終日消えなかった。
プンバグナン社はインドネシア科学院オセアノグラフィ研究センターと共同で海水の分析調査を行っているが、赤潮の可能性が高いとしながらも化学汚染の不安もあってまだ原因の特定には至っていない。4年前に近くの工場が流した廃液汚染で、今回の数万匹よりは少なかったにせよ、多くの魚が死ぬという類似の現象が起こっているだけに、今回も同じ原因ではないかとの懸念は消えていない。


「ジャカルタ湾海水汚染は深刻」(2004年5月12日)
アンチョルドリームランドのパンタイカルナヴァル沿岸で起こった数万匹の魚介類変死事件を調査しているジャカルタ都庁は11日、海水サンプルの分析検査結果を公表したが、いずれも非常に高い汚染値を示しており、海で死んだ魚は決して食用に供しないよう都民に呼びかけている。
コサシ・ウィラハディクスマ都庁生活環境管理所長は、海水に含まれているアンモニアは現場海岸の突端にある火力発電所付近で0.57mg、パンタイカルナヴァルで0.60mg、プトリドゥユンコテージでは1.06mg、水銀はアンチョル内マクドナルド裏で0.056mg、火力発電所で0.003mg、モヌメンラグナで0.004mg、フェノールはパンタイカルナヴァルとマクドナルドで0.010mgだがモヌメンラグナ付近では見つからなかった、と説明している。(数字はすべてリッター当たりの含有量)
それらは生活環境担当国務省の決めた基準値を大幅に超えており、魚介類の変死原因として特定できないにせよ、人体にとって危険であることは言うまでもない。ちなみに政府規定のアンモニア許容最大値は0.03mg、水銀0.002mg、フェノール0.002mgとなっている。
またダダッムアラには養魚場があり農民が生簀で海水魚を養殖しているが、その地区でも魚が水面近くでのたうちまわり、そのあと白い腹をさらすというパンタイカルナヴァルと同様の現象が始まっており、海産魚調査院と海洋漁業調査局が共同でその海域の海水とプランクトンの分析調査を行うことにしている。目撃者の話では、そこでも海水に赤みがかかっており、水中から沸騰水のように泡が立ち上っていたとのこと。


「プルタミナが自動車用無鉛ガソリンの販売をプッシュ」(2004年5月17日)
市中のガソリンスタンドで販売されている無鉛ガソリンはPertamaxとPertamax Plusがあり、日製60トンがバロガン精油所で生産されている。政府のブルースカイプロジェクトにのっとって2001年7月から始められたそれら無鉛ガソリンの生産は、しかし販売がいまひとつ伸びていない。同社第6加工ユニットバロガン精油所のエディ・スティアント部長は「弊社の石油燃料製造コストはリッターあたりRp.1,540であり、プルタマックスが平均1リッターRp.2,300で売れるなら、その大きいマージンで経営に貢献することが期待できる。」と述べて、今後の無鉛ガソリン使用推進政策を示唆した。
バロガン精油所は一日当たりプレミウムガソリン7,822キロリットル、軽油5,529キロリットル、灯油1,958キロリットル、プルタマックス1,060キロリットル、プルタマックスプラス265キロリットルなど石油燃料20,313キロリットルを生産している。


「手足口病が首都圏で流行」(2004年5月18日)
激しいデング熱の流行で幕を開けた今年、デング熱がピークを超えたいま、ジャボタベッ地区はあらたな流行病の蔓延におびえている。
「まだ11ヶ月のうちの子が、いきなり普段ないほどよだれを流して、それからちょっとしてもう哺乳瓶も食べ物も口に入れようとしない。なんとか少し口に入れても、呑みこむのがたいへんみたい。そんな状態が続いて数日すると、脚の膝に水疱ができて、最初は小さかったのにだんだん大きくなり、まるで水疱瘡にかかったよう。もうハイハイしていたのがまた寝たままになってしまい、泣いて泣いて、たいへんなんですよ。」
タングランに住む主婦サリ31歳はそう語る。子供を病院に連れて行ったかの女は、シンガポール風邪flu Singapura という医師の診断をもらった。チピナンインダに住むデウィ17歳も、学校から帰ったら口の中が痛く、喉がひりひりしてきた、と語る。口腔内に炎症がいっぱいできて、足の裏には水疱がたくさん。「歩くとひりひりして痛い。」と言う。ブカシに住むダヤンティ28歳も、子供が同じような症状だと言う。「近所の子供たちも大勢がシンガポール風邪にかかってます。」との談。
このシンガポール風邪とは手足口病のこと。2000年9月、三人の子供が死亡したことからシンガポール政府が幼稚園、保育園、ファーストフードレストラン、プール、遊園地等の閉鎖を指導するという事件があり、インドネシアではどうやらそんな名称で定着したようだ。
バンドンでもしばらく前に流行しているとのニュースが流れ、またジャボタベッ地区でも罹患者が増えているようす。衛生管理には重々ご注意を。


「ジャカルタ湾のクランヒジャウ貝は食べないように」(2004年5月26日)
「ジャカルタ湾で取れたkerang hijau(日本名ミドリイガイ)は重金属に汚染されているので、継続的に摂取すると健康に危険をもたらす。」ボゴール農大博士課程学生イスドラジャッ・スティヨブディアンディはそう警告する。「異なる水質におけるクランヒジャウPerna viridis Linnaeusの生体繁殖の諸相」と題する修業論文プレゼンテーションの中でかれはそう述べた。このクランヒジャウはランプン湾、ジャカルタ湾、バンテン、タングラン、ジュパラ、パスルアン、プロボリンゴなどに多く生育しており、成長が早く、繁殖プロセスも一年中行われている。ジャカルタ湾ではムアラカマルとムアラダダップが特に生産の多いところだ。ところがイスドラジャッの研究によれば、重金属は貝の生殖を遅らせる働きをする、とのこと。沿岸部で育った貝と沖合いのものとはもちろん汚染度が異なるが、汚染度が小さいから安全とは言えない。この貝はフィルターフィーダー行動を取り、周辺の海水を一日およそ3百リッター吸い込んであらゆるオーガニズムを体内に取り込むため、周辺の水はかえってきれいになる。ともあれ、ボゴール農大海洋漁業学部教官でもあるイスドラジャッは、ジャカルタ湾のクランヒジャウは避けるようにと、警告している。


「インドネシアの貧困者が喫煙で煙にする金は一日5億ルピア!?」(2004年5月31日)
5月31日は世界禁煙デー。世界保健機構WHOが主導する禁煙デーの今年のテーマは『タバコと貧困』。世界有数の人口を抱え、喫煙者人口も多いインドネシアでは、煙にされるタバコの数量も膨大で、WHOの報告に基づけば年間2,150億本150兆ルピア相当のタバコをインドネシア人は消費している。人口の30%が喫煙常習者とのことで、2億1千5百万人の30%はおよそ7千万人となる。
ジャカルタ・プルサハバタン病院のチャンドラ・ヨガ・アディタマ医師は、7千万人が平均一日一箱の煙草を消費するとすれば、煙になって昇天する金額は一日5千億ルピアに達する、と語る。「一日5千億、年間150兆ルピアの金が貧困対策に使われるなら、どんなに素晴らしいことか。インドネシアの貧困ライン下生活者人口が2千万人で、その30%が喫煙常習者とすれば7百万人だ。かれらが一日タバコ一箱を煙にするなら、貧困者が毎日5億ルピアの金を健康を蝕むもののために無駄にしていることになる。喫煙が招く病気は25種類もある。貧困者が稼いだ金をタバコに使い、そのために不健康を招いてまたそのために医療に金を使う。貧困者の収入の4分の1がタバコに費やされている、とWHOは報告している。ましてや、喫煙者の煙にさらされる受動喫煙被害者への悪影響の方が重度であるとWHOは表明しているのだから。」と同医師は述べている。


「西ジャカルタ市のエンターテイメントスポットを市保健課が調査」(2004年6月15日)
西ジャカルタ市保健課は、不特定多数の客が集まる慰安娯楽スポットやホテルの衛生検査を行った。検査の対象になったのはビリヤード場、カフェ、バー、マッサージパーラー、ディスコ、ナイトクラブなど124ヶ所のエンターテイメントスポットで、保健衛生規準に合格したのはそのうちたった1ヶ所だけ。その栄誉を得たのは、プリクンバガン住宅地内にあるマッサージパーラーのブルシセハッ。
ティニ・スルヤンティ保健課長は「検査項目は、換気、衛生設備(石鹸、タオル、シーツ、ベッド等)、建物と部屋、空気調節、従業員衛生などで、それらの検査結果から、西ジャカルタ市のエンターテイメントスポットは伝染病をもらいやすい場所であると結論付けることができる。中でも一番ひどいのは換気で、閉じられた空間では禁煙にするようにと当局が指導しているというのに、大勢が自由に喫煙している。次に最低60ルクスの照明と45から65dBAという騒音レベルが守られていない。たいていのエンターテイメントスポットでは、耳を覆いたくなるようなズンズン響く音楽を鳴らしており、またわざと薄暗くしているところが多い。それらの場所を訪問する市民は、保健衛生にくれぐれも注意する必要がある。」とコメントしている。
一方ホテルに対する衛生検査は星級ホテルとジャスミン級ホテル合計30軒に対して行われ、5軒だけが合格した。ホテルの検査はエンターテイメントスポットと同じ項目に加えて清掃とメンテナンスも対象とされ、またクリーニングや調理、ごみ処理や従業員の衛生処理もチェックされた。ホテルの中には空気を冷却するだけで換気には無関心なところがあり、そのようなホテルでは大気中の塵埃量が350ppmの基準値を超えていた。保健課は、まだまだ向上させていかなければならないが、これでも昨年の2軒からは改善されている、と緩慢ではあるが進歩があったことを主張している。


「外国人医師の医療活動を公認する法案が国会を通過」(2004年6月17日)
国会第7委員会特別委員会は政府の提出した医療活動法案を検討していたが、その内容について国会は政府との合意に達した。この法案の中には、教育・訓練・研究・保健サービスに関連して一年間有効の登録証書を得た外国人医師・歯科医師の医療行為を公的に認める条項が含まれている。その登録証書は連続してもう一年延長することができる。
外国人医師のインドネシアにおける診療活動については第21条で取り上げられており、その(1)項には、限定登録証書は医療・歯科医療分野の教育・訓練・研究・保健サービス面で期間を定めて活動を行う医師・歯科医師に与えることが出来る、(2)項には、限定登録証書は1年間有効で、登録コミティーの承認を得て次の1年間延長することができる、(3)項には、限定登録証書は規定を満たしたときに与えられる、と記されている。
また第22条では、(1)項で、条件付登録証書はインドネシアで教育訓練プログラムに携わる外国人専門医師・歯科医師に与えられる、(2)項、条件付登録証書は資格認定を得るために教育訓練に従っている医師・歯科医師にも与えられる、(3)項、上の(1)(2)項にある登録証書は医師・歯科医師評議会が発行し、教育機関を通じて交付される、となっている。


「インドネシア人看護婦が世界に羽ばたくのはいつ?」(2004年7月31日)
「世界で90万人の看護婦が求められている。現在インドネシアには6万人の看護婦が職を求めているが、そのレベルを引き上げることで世界市場への供給の扉が開かれる。」と語るのはサレ・アルワイニ、ビナワン財団会長。「インドネシアの看護婦たちは最低でも看護学士(Bachelor of Nursing)あるいは公認正看護婦(Registered Nurse)の資格を持たねばならず、それには費用もかかる。看護婦を求めている国は、オランダ、クエート、台湾、イギリス、サウジアラビアなどで、そのほか、日本とオーストラリアは派遣検討段階に入っている。日本は4万人、オーストラリアは1万5千人の派遣を求めており、この企画が実現すれば海外出稼ぎ事業にとってきわめて効果の高い分野が生まれることになる。海外で看護婦は月給2千ドルを得ることができ、これは技能を持たない家庭ヘルパー13人分に相当する。2千人の看護婦を海外派遣するだけで、月4百万ドルの外貨が獲得でき、2万6千人の家庭ヘルパーを送るのと同じ効果がもたらされる。」との同会長の談。ビナワン保健大学はインドネシア大学看護学部とシドニー工科大学と提携して資格を持つ看護婦教育に努めている。


「豊胸手術で女子大学生が死亡」(2004年8月9日)
オランダの大学の秘書科に留学して二年目のヒルダ・パスマン20歳は休暇でジャカルタの実家に帰っていた。自分の胸が小さいことを以前から気に病んでいたかの女は、今年こそは念願の豊かな乳房を、と決心していたらしい。
7日夕方、友人の家に行くと言ってクマヨランの自宅を出たヒルダは、西ジャカルタ市クブンジュルッのクドヤラヤ通りにある二階建ての店舗住宅に4時半頃現れた。その店はフォトコピーの看板だけが掛かっており、美容整形がそこで行われていることを示すものは何もない。フォトコピー事業のオーナーで無免許の美容整形師でもあるホー・チュンチュー34歳は独学でその技術を学び、ふだんはたいてい客の自宅を訪問して施術を行っており、その店舗住宅で施術することは少ないという。しかし自宅へホーを呼ぶわけにいかないヒルダは既に過去二回、そこで簡単な施術を受けていた。ヒルダがホーを知ったのは友人からの情報で、公然と宣伝できないホーはもっぱら口コミルートでその闇ビジネスを行ってきたのだ。ホーは5年前からその店舗住宅の二階に母親と四人の子供と住んでおり、夫とは往時に離別しているとのこと。夫は麻薬に関係してサレンバ刑務所に服役中だそうだ。
ヒルダは最初、体調が良くないと語り、ホーもヒルダの体温が高いために別の日に出直すよう勧めた。しかしヒルダは、どうしても今日やるのだ、と言って聞かない。客の強い要請に負けてホーはコラーゲンの乳房への注入準備をはじめた。そして夜8時ごろ注入を開始した途端、ヒルダは失神した。パニクったホーは母親や手伝いの者に助けを求め、みんなしてヒルダの全身に薬油を塗って身体をこすったが、冷たくなった身体が熱を取り戻すことはなかった。どうしようもなくなったホーはヒルダの身体を運び出し、タクシーに乗せてグラハメディカ病院へ連れて行ったが、病院に着いたときには既に死亡していた。届を受けた西ジャカルタ市警察クブンジュルッ署はその夜9時ごろホーを逮捕し、ホーの自宅の現場検証を行った。
類似の事件は、スラバヤで2002年6月と2001年3月に、マランで1998年4月に、ソロで1999年9月に、といったように、患者が死亡したものや一命を取り留めたものを含めて何度も発生している。


「美容サロンが薬物を使用するのはご法度」(2004年8月14日)
去る7日夜、豊胸処置のためにコラーゲンの注射を受けて死亡した女子大学生の事件に関連して食品薬品監督庁のサンプルノ長官は、美容サロンにはこれまでも注射等の措置実施を許可したことはなく、注射を行うなどはもってのほかであり、さらにはボディスリミング等のために薬物を人体に与えたり塗布したりすることも一切禁止で、違反すれば制裁を受ける、と語った。「いくら相手が懇請したからといって、それを行ったことの責任を免れることはできない。違反を行えば、店を閉めなければならなくなる以外に告訴されることも起こりうる。サロンの利用客にも特にお願いしたいのは、安易に薬物の注射などを求めないことだ。もしも麻薬などの違法薬品を偽って注射され、常習者にされてその店へ通わなければならなくなっても困る。」と同長官は語っている。
いまインドネシアには美容サロンが数万ある、と言われている。美容師美容サロン協会「ティアラ・クスマ」のジャファル会長は、会員だけで4万あり、非会員ともなると想像を絶する、と語る。「自宅、ビル、借家、ホテルなどで営業している美容サロンは数知れない。一番多いのはジャカルタで、次にスラバヤ、三番目はメダン。サロン一軒で少なくとも5人は人を使っており、この業界では数十万人が糧を得ている。おまけにこの業界への新規参入者も年々増加の一途をたどっている、とのこと。


「シンガポールへの保健医療目的入国者は今年30万人」(2004年8月25日)
医療目的でシンガポールを訪れる人は多い。2003年に保健医療を目的にシンガポールに入国した外国人は20万人に上った。シンガポールはこの分野で定評があり、国際的な評価も高い。香港ベースのリサーチ機関PERC (Politic and Economy Risk Consultancy) が2003年4月に行ったアジア諸国の外国人勤労者を対象にしたサーベイの中でも、シンガポールの保健サービス制度はアメリカ、オーストラリアに次いで世界第三位に位置付けられているし、2002年のWHO報告でもシンガポールはアジアのトップ水準と評価されている。シンガポールではホテル並のサービスレベルを備えた入国外国人向けの病院も作られており、この病院は予約で一杯だとのこと。
そんなシンガポールへの訪問者の中でマジョリティを占めるのがインドネシア人であることは良く知られた事実だ。「シンガポールへメディカルチェックアップに行く」というのは、汚職タイクーンたちの言い訳だけでは決してない。シンガポール観光局の報告によれば、2002年にこの保健医療を目的にシンガポールに入国したインドネシア人は15万人だとのことで、観光客誘致をはかる観光局はこのメディカルツアーも誘致振興のひとつの柱にと目論んでいる。同観光局は2004年の保健医療目的入国者を30万人と見込んでおり、インドネシア人はその60%にあたる18万人と予測している。
このメディカルツアーを実質的に推進しているのはシンガポールとインドネシアの医師たちで、過去から築き上げられたネットワークと協力関係によって、インドネシアからシンガポールにツーリストが送り出されているのが実態とのこと。


「320万人が盲目者」(2004年8月31日)
「インドは0.7%、バングラデシュ1%、タイ0.3%などというようにアジアのほかの国はそんな盲目者比率だが、インドネシアは1.5%ときわめて高いレベルにある。原因のメインは白内障、緑内障、屈折異常症あるいは老齢プロセスに関連するほかの病気などで、白内障は毎年21万人が新たに発症し、そのうち8万人は手術で回復しているが、その差が年々積み重なったために大きな数字を生んでいる。手術を受けられない年間13万人のひとびとは僻地に住んでいたり、あるいは経済的に困難があったりするために、その解決として政府保健省は白内障手術が一般庶民の手の届く料金で、遠隔地ででも行われるように医療体制を充実させていく。」アフマッ・スユディ保健相はそうコメントしている。
アスルル・アスワル保健省国民保健育成総局長は、いまや白内障がインドネシアで盲目原因のトップになっており、対応措置の第一優先項目になっている、と語る。「手術を受けた白内障患者の22%は55歳未満で、これはビタミンA摂取不足と昼間屋外でサングラスを使用していないことがそんな状況を促進していることを示している。今後政府は各市県レベルで住民の手の届く料金で手術が受けられるようにしていくが、昼間外に出る場合はサングラスを使用するよう、国民に対して告知社会化を進めて行く方針だ。」総局長はそう述べている。


「首都の下水道システムは夢のまた夢?」(2004年9月3日)
地下を下水道が走っている地域は都内で微々たるもので、汚わいはいまだに貯蓄方式。ほとんどの家庭がセプティックタンクを使用しているが、人口稠密の首都の生活環境では、地下の浅い位置にセプティックタンクが埋められ、また費用の関係から地下水による給水を浅い位置で行う家庭が多いために、生活用水として取られた水が赤痢菌に汚染されているケースは少なくない。
そんな実態に対して都庁は、都民の衛生改善を目的に、セプティックタンクをマレーシア方式に変更することを検討している。マレーシアではFRP製のセプティックタンクが使用され、汚水のBODレベルを通常の75から85というのを50まで低下させるのに成功しているが、それはそのタンクにプラスチックフォームが備えられてフィルターとして、且つバクテリア分解の温床として機能しているためであるとのこと。またこのタンクは18年以上の寿命を持っているため、経済的でもあるそうだ。
このセプティックタンクはコストが一基250万から300万ルピアで設置できることから、先に検討されていた地下下水道建設に関してオーストラリアのグローバルグリッド社が出していた50兆ルピア予算の大規模プロジェクトよりも現実的であり、首都のいたるところを掘り返して下水管を埋めることをするよりは、との考慮を加えて、都知事はマレーシア方式を推進する方向に傾いている。今後出される家屋やビルあるいは公共施設の建築許可には、このセプティックタンク設置が義務付けられることになりそう。


「有毒化粧品44アイテムが公表される」(2004年9月6日)
食品医薬品監督庁が有害物を含んでいる化粧品を市場で発見した。同庁が有毒違法商品と断定した化粧品は44アイテムで、その中には登録済み商品が3アイテム含まれており、残りは未登録の不法商品。それらの化粧品からは水銀と、ロダミンBを含有する赤色染料K.10が検出されている。
44アイテムの明細は下の通り。
登録済みのもの : 既に許可取り消し処分済み
Cupid Pearl Cream(発売元PT Chrisna Kencana Pratama)、Chiumien Cream(製造元PT Citra Usaha Lamindo)、Chiumien Pearl Cream 
未登録のもの
Yifuli Meibai Quban Huican Su, Yifuli Texiao Zengbai Qubanwang, Dong Lee Pearls Cream, Mark Bich Cream, New Rody Special, QL Cream, QF Cream, Good Cream Kuning, Cream Pemutih QF/AQF/BQF/QL Special, Tartaric Acid Spot Clear Cream, 商標なしの瓶入りクリーム、Cream Malam, Deluxe Case P.15, Reby Lipstic Liplife 300, Sella Lipstick, Thailamei Eye Shadow, blush, Lipstick Aika 89-69/89-70, Tiannuo Lipstic Exploit Lounge tenue et Contort Poids Plume, Thailaimei Color Control Two Wat Cake Eye Shadow 3 in 1, ThailaimeiCrystal Two Way Cake/Multi Color Eye Shadow pot 44 gram, Casandra Colorfix Lipstic with Vitamin E, Lipstick Bamboo Blue No.21, Perona Mata Dily, Lipstick Tokyo 7/11/12, Luoys Eye Colour, Multiple Eye Shadow/Two Way Cake Camco, Cherry Lipstick No.500/No.100/No.400, Cherry Modern No.400
サンプルノ食品医薬品監督庁長官は、それらの商品の生産者、発売者、輸入者は取扱いを即座に中止するよう呼びかけており、また法執行機関に対して適切な措置を取るよう要請している。保健に関する1992年度法令第23号と消費者保護に関する1999年度法令第8号に違反すれば、最長5年の入獄あるいは最大20億ルピアの罰金が科されることになっている。


「治療費未払い患者を病院が拘束」(2004年9月21日)
タングランのシロアン・グレンイーグルス病院で治療を受けた夫レオナルドゥスの容態が回復したのに病院側は帰宅させてくれない、とレオナルドゥスの妻レニー・フランシスカが9月16日、タングラン警察に訴え出た。
運転手を職業にしているレオナルドゥスは8月16日、突然呼吸困難に陥ったため、家族がシロアン・グレンイーグルス病院に運び込んだ。通例の手続きに従って460万ルピアのデポジットを納めて入院したあと、病院側は肝臓にできた腫瘍が破裂したことが原因であるとの診断に基づいて8月25日に手術を行い、手術は成功してレオナルドゥスは快癒したために9月3日には帰宅許可が出された。
ところが、夫の帰宅手続きをする中で病院側が提示した請求書を見てレニーは驚いた。請求金額はなんと4千5百万ルピアで、その中には2千8百万ルピアにのぼる高価な薬品代が含まれている。患者側になんの相談もなくたいへん高価な薬品を使った病院側に怒りと困惑を感じたレニーは支払いの分割払いを要請し、支払能力は月額10万ルピアしかないと申し出たところ、病院側は月百万ルピアでなければ応じられず、患者が支払いに誠意を見せない限り帰宅はさせられない、として帰宅を禁じた。その後13日が経過し、レニーは保健法律援護機関からの助力を得て、9月16日に警察に訴え出たというのがその経緯。
イスカンダル・シトルス保健法律援護機関理事長は、支払い問題は民事事件であり、刑事事件ではないため、関係者の身体拘束は行われるべきでなく、他の方法で解決されるべきである、と病院側の行き過ぎを批判している。一方グレンイーグルス病院ヘルスケア担当ジェシー・クアンテロ理事長は、「その請求金額は手術費用と一ヶ月間の入院費用に対するものであり、過大なものではない。あの患者は運び込まれてきたとき、合併症を起していた。患者側に支払いができるかと尋ねたところ『できる』と答えたので、弊病院で受け入れた。当方も患者への治療義務を実践しているので、患者も支払い義務を守っていただきたい。支払いをしないために帰宅を許さなかったら、こんどは身体拘束をしたと訴えられてはもう立つ瀬がない。」とこの問題に関してコメントしている。


「西ジャカルタの7ホテルが保健衛生条件に合格」(2004年10月1日)
1996年度都知事令第502号では、ホテルとレストランは保健衛生適合証書を、ケータリング事業者は食品衛生許可を保有しなければならないとされている。西ジャカルタ市住民保健課は定期的に、監督下のホテル・レストラン・ケータリング事業者の検査を行い、合格したところには証明書を発行している。
今回は46ホテルと60ケータリング業者の中で7ホテルと3ケータリングが合格の証明書を得た、とティ二・スリヤンティ住民保健課長が明らかにした。合格したのはHotel Ciputra、Hotel Jayakarta、 Hotel Santika、Hotel Travel、Hotel Boutique、Hotel Ibis、Hotel ArwanaとKatering Mawar、Katering Viantini、Katering Agustino Sakti。検査のポイントはロケーション、建物構造、部屋の状態、衛生設備、飲食品取扱い、洗濯、従業員健康管理、ゴミや廃棄物処理などといったところ。西ジャカルタ市の飲食店についてはおよそ1千店ある中で220軒の検査がなされ、35店が合格している。また慰安娯楽スポット5百店中60店が検査済みで、合格したのは8店のみ。
市民がそれらの施設を利用する際には、保健衛生に関連する合格証を得ているかどうかをもっと問題にしていただきたい、とティニ課長は市民に要望している。


「防腐剤を噴霧された生鮮野菜が南スマトラ州に出回っている」(2004年10月4日)
「フォルマリン問題はクルプッ・パレンバンだけではない。野菜がいつまでもフレッシュに見えるようにするために、多くの悪徳野菜販売者がフォルマリンなどの防腐剤を吹き付けてから市場に出荷しているという情報が得られている。当方は調査チームを現場に出して実態をチェックすることにした。調査はすぐに開始される。」トリスバニ・アリフ南スマトラ州食用園芸用植物局長はそう語った。同局長によれば、防腐剤を噴霧するのは収穫後の出荷時点で、運搬中つまりトラックの上で行われるのが多いらしいとのこと。フォルマリンが使われるのは、それがコスト的に一番安いからだそうだ。同局長は消費者に対し、野菜の鮮度がいつまでも落ちないのは疑ってかかる必要があり、その視点から注意するように呼びかけている。
同局は南スマトラ州の園芸農家に、野菜の鮮度を保つためにワックスやプラスチックの使用を指導しているが、コストアップになるためにすべての農家が歓迎しているわけではない。また防腐剤のほかにも残留農薬が極度に高いものが市場で見つかっている。同局長は残留農薬の少ない野菜を見分ける方法として、虫がついていたり虫が食べたあとがあるような野菜は農薬があまりかかっていないものだ、と消費者に指導している。


「ジャカルタの精神病院は患者の洪水」(2004年10月4日)
「ジャカルタの精神病院に、ここ三ヶ月間で1千2百人の患者が訪れた。軽度のものから重度までさまざまだが、それだけの人数が相談から治療までを求めて病院を訪れており、ストレス、抑うつ症、神経症が都民に広がっている。」そう語るのはインドネシア精神病院会のアミヌラ会長。1千2百人の全員が重度とは言えないが、かれらの多くは頭痛、不眠、ストレス、抑鬱などを訴えている。ただし病院を訪れる人数がそれだけということは、それ以外にもっと多くの患者が存在していることは疑いもない。「ストレスを感じたり、眠りに問題があるだけでは、まず病院に来ることはなく、多くの人は医者や精神分析にかかる方が多い。ところが適切に治療されないと、精神不全に至るかもしれない。精神を病む原因は経済的な問題、職業キャリヤーでの失敗以外にも、親が子供を正しく教育しなかったために創造性が薄く依存心の強い人間になり、成長してから精神を病むということもある。起きろ、食事、マンディ、学校、などとなんでも親が命令しないと動こうとしない子供は要注意だ。そんな子供を持つ親は、早めに医者や病院に相談する方がよい。精神病患者の40%は完全に回復するが、30%は通院を継続しなければならない。残る30%は施設に隔離して治療しなければならない。インドネシアでは住民の中に占める精神病比率は18.5%と高く、これが社会の中の創造性を弱いものにしている。家族の中で精神病者が出た場合、世間からキチガイと指弾されるのが嫌さに治療を避けようとする人がいるが、本当はキチガイではないので、恐れずに治療を行わなければならない。」アミヌラ会長はそう語っている。


「インドネシアの医者は独裁者スタイル」(2004年10月11日)
アフマッ・スユディ保健相が、インドネシア国民が海外で医療を受けるのに費やしている金額は年間6億ドルに達し、そのような傾向が生まれるのはインドネシアの医者が患者に対して独裁者スタイルで接するからだ、と全国病院会主催のセミナーのオープニングで語った。
インドネシアの医療需要を吸い取っているのはオーストラリアやヨーロッパもあるが、特にシンガポールとマレーシアが有力で、それらの国の病院が示すサービスは民主的だ、との大臣の言。たとえば一人の患者に5人の医師がつき、患者の訴えを終わりまで聞いた上で何をしなければならないのかを事細かに説明する。それに対してインドネシアの医者は独裁者スタイルで、ただ薬を渡し、治らなかったらまた来なさいと言うだけで、あれこれ質問されるのを喜ばない。世界の潮流はドクターオリエンティッドからペイシャントオリエンティッドに変化しており、インドネシアも早くそれに追い着かなければならない、とのこと。「年間6億ドルの医療費流出は世銀の調査に従ったものだが、最近北スマトラ州民がたくさんマラッカやペナンに医療目的で出国しているというニュースがあるので、今年の金額はもっと膨らむだろう。2億2千万国民の20から30%が高度なレベルの医療を必要としているが、まだ国内でそれを得ることができないのが実情だ。国内の医療現場の状況を国際レベルに近付けるためには、たとえばホテル業界にあるようなフランチャイズシステムを導入してはどうだろうか。外国の有名な病院と提携して、経営面での援助を受け、外国に医療を求める階層へのサービスが国内で行えるようにしては…」と大臣は提案した。また今の病院の医療費徴収に関連して、今は受けた医療サービスに対して患者はあとで支払いをするという方式であるため、病院側はあれもこれもとサービスを増やすことでたくさん収入を得ようとする。そのような方式でなく、保険を使うという前払い方式にしなければならないが、国民全体に行き渡らせるには20年が必要だろう、とも大臣は述べている。


「外国人医師への門戸開放は間近?」(2004年10月12日)
インドネシア教育病院会ウントゥン・スセノ・スタルジョ事務局長は、多くのインドネシア人医師が外国で働いているのに外国人医師がインドネシアで働くことを禁じられているのは片手落ちであり、国内でますます国際レベルの医療技術が必要とされているいま、外国人医師に門戸を開放するべきである、と語った。外国人医師を受け入れるのは国民の健康面から利益があるからというのがその根拠だが、その一方で外国人医師の医療活動への明確な規則と監視統制が行われなければならない。
医療活動に関する新法令は国会で承認されており、大統領がサインして施行されるばかりになっているが、それによれば外国人医師は6ヶ月間の適応期間を経なければ国内で医療活動に従事できないことになっている。事務局長はそれを批判して「すべて一律に6ヶ月というのは長すぎる。その間勉強し、インドネシアの病院に慣れてもらうということが必要な人はそれでよいが、まずテストをして適応期間が必要かどうかを分ければ良いのではないか?その点は柔軟に対応し、知識技能がインドネシアではたいへん優れたレベルであり、人間的に礼節を守れる医師なら、6ヶ月を待たずに医療活動許可を与えても良いと思う。問題は外国人医師に対する監督問題だ。」と述べている。
新法令の内容に関して、インドネシアで医療活動に従事する医師は専門医としてしか受け入れられず、適応試験に合格し、医学部卒で医師資格を持ち、三年以上の実地経験があり、警察容疑者になったことも医療過誤を犯したこともなく、医師倫理に背いたこともなく、医療機関のスポンサーがあり、承認書があることとなっている。またインドネシア医師会は互恵原則から、インドネシア人医師を受け入れている国の医師に対して門戸を開く方向で法令の施行を検討している。


「サテ屋の売上がガタ落ち」(2004年10月28日)
住宅街を屋台を引いて巡回する食べ物売りはたくさんいるが、夜登場する屋台の屈指はサテ屋。注文すると串に刺してある肉を、石炭を置いた長方形のコンロで焼いてくれる。今週わき起こったアントラクスの話題で、そんなサテ屋の販売がガタ落ちになっている。
カラワチのマラバル市場近くで屋台を止めて商売しているサテ屋のひとり、トゥキマン39歳は、「普段だと仕込んだサテは夜中12時前に売り切れて、4万5千から6万ルピアくらいの利益が手元に残るのに、ここ二日ほどは6割程度しか売れず、売れ残りが出て赤字だ。」と語る。アントラクス菌に汚染された山羊を食べて死者が出たニュースが客に影響を与えている、とかれは言う。同業者マルサン32歳も、ここ二日間は25%の赤字だと言う。客はサテアヤムしか注文せず、サテカンビンを買う人はまずいない、とのこと。しかしかれらはあまり悲観的には見えない。「長くてせいぜい一週間だ。そのあとはみんなまた買うようになるよ。」と異口同音に語る。
ヌリマン・ワフユディン、タングラン市保健局長は、アントラクスはタングラン地方の風土病ではないので、地元の山羊肉は心配いらない、と言う。たとえ不安があっても、摂氏百度以上の熱を加えれば菌は死ぬので大丈夫であり、生焼け肉はアントラクス以外にもさまざまな病気の元になる可能性が高いので、食べないように、と住民に呼びかけている。


「豆腐にもフォルマリン?!」(2004年11月5日)
タングラン市保健局の調査で、市内の豆腐生産者のほとんどが防腐剤としてフォルマリンを使用していることが明らかになった。ドクトル・ヌリマン保健局長は、「生産者はまずほとんどが中小事業主で、中にはフォルマリンがどういうものか知っている者もいるが、豆腐製造業で働いた者が独立して事業を始めたような場合は製造過程でそれを使うということを見様見真似で行っているだけ、という者もいる。みんなフォルマリンを使うのは、それが安価でまた手に入りやすいからだ。市保健局は豆腐生産者にフォルマリンの使用をやめるよう指導しているが、代替防腐剤として推薦できるものを探している。有機防腐剤に替わるのが理想的で、その方向で研究を進めており、候補としてシリの葉とサガの葉が上がっている。シリは防腐性を持っているが匂いを消すのが難しい。サガは通常ジャムゥに使われている。」と述べている。
豆腐生産者に対する現場調査を行った保健局栄養部門職員アニ・トレスニアニは、フォルマリン以外に食品への使用が禁止されている黄色の染色剤も使われている、と語る。アニによれば、豆腐生産者は製品の鮮度を三日保たせるために数時間ゆでなければならないが、フォルマリンを使うことでそのプロセスが不要になる。だから、製造コストを下げ、プロセスを短縮するために、成形プロセス後に水に漬けるときフォルマリンが使われる。フォルマリンの濃度によって腐敗は1週間から1ヶ月遅くなる。小規模生産者はたいていその日作ったものはその日にはけるので、本当はそんなことをする必要がないのだが、売れ残りが出るのをおそれて防腐処理をしたがるそうだ。「食品のフォルマリン含有量はゼロでなければなりません。小規模生産者が使うフォルマリン量はまだ小さく、フォルマリンを抜くには豆腐を水に漬けておけば良く、濃度がもう少し濃い場合は豆腐をゆでるのが良いです。フォルマリンを含有している豆腐の見分け方は、一見硬そうに見えるものがそうで、フォルマリンがなければ見た目が柔らかです。黄色い豆腐(tahu kuning)は主に小規模生産者が作っており、白豆腐(tahu putih)や中国豆腐(tahu cina)は主に生産規模の大きいところで作られています。黄色の染色剤はウコンやパンダンに替えるよう指導しています。」とアニは説明している。


「ジャカルタの精神障害者たち」(2004年11月20日)
「あたしはウミ。家はジャカルタのまんなか。ここにマンディしにきたのよ。」日中にしては濃い化粧にサングラスをかけ、鮮やかな紫色のワンピースを着たその女性は、問われもしないのにそう記者に話し掛けてきた。東ジャカルタ市チパユンにある、都庁社会更生精神育成局が運営するハラパンセントサ02適応指導社会更生院には、精神に失調をきたした男女が307人暮らしている。だが精神障害者を専門に収容するこの社会更生院の適正収容能力は二百人。
「部屋の中で排泄したり、素っ裸で走り回ったり、要するにおかしなことをする。しかも振る舞いは往々にして粗暴。だからかれらに接する職員は、人並み以上の忍耐力を要求される。やってきたときはたいてい浮浪者生活をしていたから、汚くて臭くて、皮膚病持ちだ。マンディさせ、髪を短くしてやり、爪を切り、清潔な服を着せてやり、ベッドや食事を与えてやるのがわたしらの仕事。」職員の一人、ゴザリはそうコメントする。院の表で客待ちをしているオジェッ引きは、ぞっとする出来事を体験したことがある、と物語る。あるとき更生院収容者が逃げ出そうとして外へ出てきたことがあった。凶暴さをあらわにして、周りにいる人間に襲い掛かろうとしたそうで、院の表にいた者はかれも含めてみんな逃げまどったという。「毎日、叫び声や悲鳴をあげるのが仕事の収容者もいる。黙っているのは一言もしゃべらないそうだ。あそこに入ってるのはキチガイだから、まあそんなもんだよ。」というオジェッ引きの談。面積883平米のハラパンセントサ02には8棟のバラックが並び、ひと棟に30から40人が暮らしている。食費は一日一人当たり8千5百ルピア。
状態が軽くなった収容者は、やはりチパユンのチェゲルにあるハラパンセントサ03適応指導社会更生院に移される。今そこにいるのは17歳から60歳までの244人で、社会復帰の日に備えて技能訓練を受けている。植物栽培、日干し煉瓦製造、魚の養殖・・・。
健常者に戻る、ということの規準ははっきりしない。社会更生院で行っているのは精神面の指導育成だけで、医薬面の治療はない。そして行われているのは過去の経験の積み重ね。心理学者、特に精神医の助力があればもっと高い効果をあげられるだろうに、とブディマン専従院長は希望を述べる。1986年以来そこで働いているソーシャルワーカーのスハルは、かなり経験を積んだあとで、そこに収容される障害者が最初から浮浪者だったわけでないことに気付いた、と物語る。「元教員や元3C級国家公務員などでも精神に異常をきたす人がいる。なんでそんなことになるのだろう?ジャカルタで暮らすストレスに耐え切れなかったのかもしれない。」
都庁社会更生精神育成局のデータでは、2001年の精神障害患者は2,010人となっているが、2002年にはそれが2,337人に増加している。ところが保護施設の収容能力はすでに不足状態にあり、その一部は行政の手が届かないまま放任状態。かれらはゲペンと呼ばれる浮浪者や乞食に混じって高架橋の下やバスターミナル、バス停やパサルに寝泊りし、道路脇を異様な風体で徘徊している。首都の社会更生問題罹患者は2002年に73,646人おり、そのうち72%は行政側が措置を取った。2003年はその数が54,925人になっているものと推測されている。
親に面倒を見てもらえなくなった子供18,777人、家族縁者に面倒を見てもらえなくなった老人15,814人、ストリートチルドレン8,158人、数は下がって不良少年、違法薬品常用者、前科者、浮浪者、乞食、コマーシャルセックスワーカー、身体障害者、性倒錯者というのが社会更生問題罹患者の内訳だ。都庁社会更生精神育成局は青少年養育院9ヶ所、老人保護院7ヶ所、違法薬品常用者リハビリセンター1ヶ所、身体障害者リハビリセンター10ヶ所、社会障害者リハビリセンター6ヶ所、社会保護院1ヶ所の合計34ヶ所を運営している。民間の社会更生院は200ヶ所あり、14,507人を収容している。社会更生問題罹患者の2割が育成指導措置を受けて社会復帰している、と当局者は語る。だがストレスに満ちたジャカルタは、どうやらそれよりはるかに多い人数の社会不適応者を生み出しているようだ。


「ジャカルタ湾に大量の魚の屍骸」(2004年12月1日)
11月30日朝7時ごろ、アンチョル海岸に大量の魚の屍骸が浮いているのが発見された。都庁地方環境監督庁コサシ・ウィラハディクスマ長官は、ジャカルタはここ数日間、暑熱と雨に交互に襲われたために海中でプランクトンが異常発生し、それが引き起こした赤潮がその原因ではないか、と述べている。同庁はすでにアンチョル・ドリームランド側に対して、パンタイカルナバルからパンタイマリナにかけての海岸から魚の屍骸を早急に除去するよう命じた。これはその魚の屍骸を住民が食用に供しないようにするのが第一の目的で、死亡原因がまだ確定されていないための警戒措置。但し赤潮現象は海岸から3−4百メートル沖あたりまでにしか発生しないので、ジャカルタ湾の更に沖合いは漁師にもなんら問題はないだろう、とも同長官はコメントしている。
しかし11月半ばにはプラウスリブの30の島々の海岸が原油(タールボール)汚染に襲われたばかりでもあり、大量の魚の屍骸は沖合いから海岸に流されてきた可能性もあることから、北ジャカルタ市環境監督庁事務所は更に状況調査を続けている。


「都民にデング熱予防を呼びかけ」(2004年12月8日)
雨季はデング熱の季節。首都各市の保健当局は都民に蚊の撲滅活動を呼びかけている。薬剤噴霧で退治できるのは蚊の成虫だけであり、卵、ボウフラという生殖サイクルを断つのは各家庭でしかできず、3M運動励行がその解決策とのことで、中央ジャカルタ市では毎週金曜に30分間、全市民が3Mを励行するように、とムハヤッ市長が呼びかけた。
3Mとは蚊の生殖サイクルにとって媒体の役目をする水が溜まるものに対してmenguras(水を掻い出す), mengubur(土中に埋める), menutup(ふたをする)を行うというもの。この雨季でも、来年2月3月にはデング熱患者の増加が予測されており、異常発生にならないとも限らない。同市保健課のデータでは、10月のデング熱罹患者31人、11月15人、と報告されている。


「昨年発見された違法化粧品は1%」(2005年1月7日)
食品薬品監督庁が2004年に検査した国内で流通している6千アイテムの化粧品のうち、規定に違反しているものは1%の60アイテムだった。2003年は2千アイテムが検査され、発見された違反アイテムは31だったので、比率としては減少している。違反の内容は、偽造品、無許可、そして有害物質含有などとなっており、違反と判定されたものに対して同庁は、市場からの回収、製品の廃却、生産の一時停止などを命令している。2003年に発見された31の違反アイテムは2004年1月9日に公表されたが、その大半が無許可であると同時にロダミンBやマーキュリーなど有害物質を含んでいた。今年も近いうちに違反判定を受けた60品目が公表される予定になっており、その中にはQL cream botol 18g, Renny Lipstick Lip Life 300, Violentine Ruby Light Moisture Lips, Sella Lipstick, UB Ginsara Pearl Cream, Yifuli meibai quban Huican Su などが含まれている。
それら違法品以外の合法なものについて同庁は、国内280の化粧品生産者のうち8割は定められた基準を十分に満たしており、2008年に予定されているアセアン域内自由化が実施されても域内基準に合格して他国との競合に太刀打ちすることができるだろう、とコメントしている。


「ジャカルタの大気汚染はますます悪化」(2005年1月10日)
2004年首都の大気汚染状態が良好だった日は365日中わずか51日で、残りは都民の健康を蝕む汚染状況の毎日だった。大気汚染状況は良好、普通、劣悪の三段階に判定され、2003年の記録を見ると1月は32%が良好日、68%が普通日と判定されているが、2月になると良好日は18%に減少し、普通日が82%に増加。3月を過ぎると良好日はゼロとなり、劣悪日が現れ始める。雨季は一般的に乾季に比べて大気汚染状況はあまり悪くない。
スティヨソ都知事は首都の大気汚染について、最大の汚染原因は580万台に達する自動車の排気ガスであり、そこから年間4万3千トンの二酸化窒素、3万4千トンの炭化水素、70万6千トンの一酸化炭素、1万2千トンの二酸化炭素が振りまかれていて都民に呼吸器系疾患の脅威を与えている、と語っている。


「タバコ産業はまだまだ伸びる」(2005年1月12日)
政府が2005年のタバコに対するチュカイ(特定品目物品税)税率を据え置く方針であることから、年間のタバコ国内生産は5%増加するのではないかと見られている。ベニー・ワヒユディ工業省林産農産化学産業総局長は、「歳入内のチュカイ収入が30兆ルピアまでなら生産は5%増えるだろうが、その予算が30兆を超えると生産増は霧消する。チュカイ収入と生産量は密接に関連している。5%増加という見込みは、税関総局長が2005年の予算を29.5兆ルピアとしたことからの推論だ。」とコメントする。現行タバコチュカイ税率は2002年の蔵相令第449/KMK.04/2002号で定められており、機械製クレテッタバコと機械製白タバコは生産規模によって28%から40%、手製クレテッタバコは生産規模によって4%から22%という税率になっている。手製白タバコ、ルマックムニャンタバコ、クロボッのカテゴリーは4%から8%、きざみタバコは4%から20%、葉巻やその他のタバコ産品は20%の税率が適用されている。政府がチュカイ収入目標を高めると、それに応じて税率が引き上げられ、市場価格にそれが反映されるために消費が減少し、生産がダウンするという現象は、2001年に起こっている。2000年は歳入目標12.5兆ルピアで2,324.6億本の生産だったが、2001年に歳入目標が17.6兆に引き上げられると、その年の生産は2,270.7億本に減少した。
2004年のチュカイ収入は28.5兆ルピアの実績で、生産は前年比で5%ほどアップし、輸出は3千9百万ドルの外貨を稼いだ。輸出の主力は機械製手製のクレテッタバコで、メイン市場はアセアン諸国となっている。インドネシアのタバコ産業は国内経済を支えるひとつの柱であり、タバコ規制枠組み条約の批准はまだなされていない。この条約では小売販売規制、子供による販売禁止、広告禁止、生産者の行事スポンサー禁止、毎年20%の税収アップなどが定められており、国内でこれが施行されるときわめて大きい影響が生じるために、政府は苦慮している。


「ジャカルタのエイズ患者数は全国の28%」(2005年1月12日)
保健省のデータによれば、全国のエイズ件数4,389のうち1,219件はジャカルタとなっており、ジャカルタのシェアは突出して大きい。西ジャカルタ市赤十字が国連人口基金の支援を得てエイズ撲滅キャンペーンの一環としての罹患者援護活動を計画しているが、それに関連してファジャル・パンジャイタン西ジャカルタ市長は、参加者が積極的にこの運動を推進することを期待している、とスピーチした。「西ジャカルタ市だけの確定データはまだわかっていないが、統計数値よりはるかに多くの罹患者がいるのではないかと推測されている。西ジャカルタは慰安娯楽施設が首都5市中最大だ。都庁が認可したナイトスポット事業所の60%が西ジャカルタ市にある。ただし、すべてのナイトスポットがフリーセックスの場になっていると考えるのは誤りだし、また売春限定地区は西ジャカルタ市にひとつもない。エイズ罹患者についての統計では、20歳から29歳の年齢ブラケットが全体の51%を占め、そして15歳から19歳という年齢ブラケットは7%にのぼっている。中等高等教育カリキュラムの中に性教育を加えることは今や急務になっている。」同市長はそう述べている。


「デング熱3M活動は冷蔵庫も対象に」(2005年1月17日)
首都のデング熱罹患者発生急増が報告されている。昨年1月の最初の2週間に発生した1,629人に比べれば、今年は141人で激減したと言えなくもないが、都庁保健局の警戒姿勢は変わらない。というより今年はより積極的に予防に乗り出している。昨年は罹患者が陽性であることが確定した時点で殺虫剤噴霧を行ったが、ことしは擬似患者が出るとすぐに環境検査と殺虫剤噴霧を実施している。三週間連続して罹患者発生が三人以上あり、あるいは死亡者がでた地区はデング熱警戒態勢に赤ランプがつくが、一人しか出ない場合には黄ランプ地区となる。これは町単位で行われている対応レベル規定だ。都庁保健局は毎週金曜日に各家庭で30分間、デング熱対策として3M活動を励行するようキャンペーンを続けている。
ところで都庁保健局はデング熱対策としてデング熱ビールスを媒介する蚊の幼虫を発見して撲滅する活動を行っているが、ネッタイシマ蚊のぼうふらが思わぬ場所で発見されていることを都民に公表した。ひとつは冷蔵庫の下の、落ちてきた水を受けて溜める容器で、もうひとつは飲料水ディスペンサーの、これも蛇口の下でしずくを受けて溜める容器。毎週金曜日に行っている3M活動でそれらの場所もチェックをお忘れなく、と保健局は都民に呼びかけている。


「肝臓ジストマに要注意」(2005年1月22日)
犠牲祭に供された羊の一割が肝臓ジストマを持っていた、と南ジャカルタで犠牲祭屠殺が行われた場所をモニターしたボゴール農大学生が公表した。南ジャカルタ地区モニター作業を統括したイ・クトゥッ・ムディテ理学士は、レバー以外にジストマは見つからなかったが、十分に焼いたレバーであればひとが食しても健康に害はない、と語った。しかし中まで十分に火が通っていないものを食べた場合は危険であり、ジストマが寄生している可能性のあるレバーをサテにする人は十二分の注意を払わなければならない、とも警告している。ジストマが寄生しているレバーは外見からでもすぐわかる、とのこと。形が崩れてしわがよっていれば、ジストマがいるのは間違いないと思ってよく、そのようなレバーはすぐ捨てるのが一番良い。
ボゴール農大は年々屠殺が行われる場所のチェックも行っており、衛生に配慮するよう実施委員会に提言指導している。去年のモニター結果では、肉の切り分けを地べたでおこなったり、モスクのテラスで行ったりしていた所があったが、ビニールシートを敷くように指導した結果、今年はどこでも改善されていた由。ひどいところはゴミ捨て場の近くで行っていた所もあり、そのようなことは今年は見られなかったが、中には肉と臓物を一緒に混ぜて取り扱っている所があったので、肉と臓物は一緒にすると臓物の細菌が肉を汚染する確率が高いために、そのような事は避けるようにと提言した。


「インドネシア人看護婦の海外就職に進展」(2005年1月26日)
海外派遣有資格看護婦の養成を行っているビナワン保健高等学院財団のサレ・アルワイニ理事長は、看護有資格者の海外就職が数カ国で成功しており、今年はアメリカへの就職実現の可能性が高く、これが成功すれば他の諸国に対しても大きい影響が出るだろう、と語った。同財団が送り出した海外就職者は580人に上っているが、諸外国からの引き合いは数の上では数千人に達している。求められているのは短大レベルと大学レベルの有資格者であり、いま国内にはD3レベルの修業者を養成する教育機関が3百、S1レベル修業者を生み出す教育機関が50存在しているとはいえ、教官ひとりに学生7人という理想配分が実現しておらず、教官ひとりが学生15から20人を受け持っているのが実態で、教育内容が不十分という傾向が強い。能力審査という面でも全国的な単一規準が作られておらず、学校での教育が終了した上で独立機関によって能力検定が行われる必要がある。それに関して労働省国内労働力配備育成総局資格認定標準化局では、いまその規準編成のまっ最中。
サレ・アルワイニ理事長は、オランダやイギリスへの就職者の月給は平均1千5百ドル程度、クエートは1千から1千5百ドルの間、サウジアラビアでは650ドルといった状況だが、アメリカではD3で2千3百ドル、S1だと月給5千ドルという高報酬が得られる、と言う。「言うまでもなく、持っている技能、中でも看護技能と言葉がその報酬に影響を及ぼすのは確実だ。」と同理事長は補足している。


「首都に禁煙令」(2005年2月9日)
メキシコ、バンコックと並んで大気汚染世界三大都市の悪名をほこるジャカルタが、ついに本格的汚染抑制に乗り出すことを表明した。2月4日に都議会が可決した、大気汚染抑制に関する都条例がそれ。屋内屋外の双方にわたって大気汚染を軽減するための新たな規則が、その条例の中に定められている。主汚染源としてこの条例の中に取り上げられたターゲットは、喫煙、自動車の排気ガス、工場排煙の三つだが、ゴミを燃やすことも禁止されることになった。
タバコの煙に関しては、喫煙所以外の公共スペースにおける喫煙が禁止され、公共エリアのオーナーもしくは管理者には、排煙設備を有し規定に則した換気が行われる喫煙所の設置が義務付けられた。ここで言う公共スペースとは、ショッピング施設、空港やバスターミナル、仕事場、教育施設、事務所、礼拝所などを指し、また陸海空の公共交通機関もそれに含まれている。さらに陸上交通機関については、都バス、トランスジャカルタバス、コパジャ・メトロミニなどの中型バス、ミクロレッやアンコッなどの小型乗合バスからカンチルまでが含まれているが、電車はそこに取り上げられておらず、都民の疑問を招いている。
ともあれこの条例では、公共スペースで喫煙した者は最高5千万ルピアの罰金、そして公共スペースのオーナーもしくは管理者に対する喫煙場所設置義務への違反も最高5千万ルピアの罰金とされているが、実質的に喫煙場所を設けることが不可能としか思えない小型乗合バスやカンチルのオーナーは、不合理なその条項に苦情を向けている。建物にしても同様で、喫煙場所を各フロアーに設けるのかどうかについての明確な規定が待ち望まれている。
自動車排気ガスについては、すべての自動車は排気ガス基準値を超えてはならず、また排気ガス検査は少なくとも6ヶ月ごとに行われるように定められた。排気ガス検査は、交通運輸を司る政府機関もしくは条件を満たす整備工場を持つ民間機関が行うことができる。受検した排気ガス検査の結果を示す証明書は自動車税納税条件のひとつとされ、その結果が基準値の枠内でなければ納税が受け付けられないために、その自動車は公道を走ることができなくなる。加えて政府はまた、政府機関公用車および公共交通機関のガス燃料使用を義務付けた。
排気ガス検査を受けない自動車のオーナー・管理者に対する制裁は、最高6ヶ月の禁固刑もしくは最大5千万ルピアの罰金が科される。この罰則規定は、ゴミを焼いたり、それ以外の大気汚染原因をなす行為を行った場合にも適用される。
都庁はこの条例の施行について、一年間を社会化告知期間とし、一年後から厳格な取り締まりを始めることにしている。


「ブカシ県が県下の工業団地にデング熱予防対策実施を要請」(2005年2月11日)
ブカシ県のデング熱発症状況は罹患者がまだ63人で、他地方に比べれば流行しているとは言えないものの、罹患者のうちふたりが死亡したために、県では抑制対策を強める方針を打ち出した。
死亡者のひとりは県下の工業団地にある工場で働いていた勤労者で、仕事中に蚊に刺されたためにデング熱が発症したと報告されており、その報告の真偽はさておいても、県下に広がる工業団地では住宅地区ほど住民の対応行動が行き届かないのは明らかであるため、ソリヒン・サリ副県令は工業団地におけるネッタイシマ蚊撲滅駆除対策を実施するよう、すべての郡長と保健局ならびに工業団地関係者と入居企業に対して要請した。「すべての県民はデング熱抑制対策措置を自宅と職場で徹底して行い、異常発生地区指定を受けないようにしなければならない。また民間病院はデング熱罹患者を率先して収容治療するように協力をお願いしたい。県立病院はまだ建設途上で完成していないので。」と同副県令は述べている。


「ジャカルタの青少年層にエイズ蔓延」(2005年2月15日)
14日にジャカルタで行われたトークショー形式のエイズ予防キャンペーンで、ジャカルタの青少年にエイズHIV罹患者が増加しているとの警鐘が鳴らされた。ジャカルタの学生生徒をターゲットにしたこのトークショーには、ボイク・ディアン・ヌグロホ医師とベビー・ジム・アディティヤがスピーカーとして登場し、「全国のHIVエイズ患者は4,389人にのぼり、その内の最大多数がジャカルタにいて、1,219人を数えている。そして年齢ブラケットを見ると、15歳から19歳と20歳から29歳という青少年年齢層が全体の51%を占めている。」という統計数値を公表した。
「全国で毎年230万人の青少年女性や母親たちが堕胎を行っています。2000年に行われたサーベイでは、フリーセックス実践者は20から25%という数字が示されています。つまりHIVエイズ罹患者数統計は氷山の一角にすぎないということなのです。だからこそ性教育の重要性をわたしたちは認識しなければなりません。性教育は男女のセックスの仕方を教え、フリーセックスを煽るものだ、などという認識はきわめて愚かなこととしか言えません。フリーセックスがこのように拡大し、どんなリスクが高まっているのかということに目を開かなければならないのです。」ボイク医師はそのように訴えた。
南ジャカルタ市で行われた、ゲイ、ホモセクシャル、男性売春者に対するサーベイ結果は、HIVがかれらの間でいかに急速に伝染していくかということを立証するものだった。都庁ジャスミアティ住民保健課長はそのサーベイについて、ハイリスク層に対して初めて行われたサーベイであり、かれらは組織を作っているので血液検査を行うという方法で調査が行われた、と説明している。
もうひとつのハイリスク層は麻薬幻覚剤などの不法薬品使用者で、注射針からの伝染がメインをなしている。この階層はあまりにも広汎に拡散しているため、当局側の予防活動は焦点がしぼれないまま十分な効果を上げ得ていない。HIV罹患者のマジョリティが15歳から24歳という年齢層にあり、行政側は国の将来を背負うべき青少年層への対策を急務としているのだが。


「都内の病院は入院患者が激増」(2005年2月19日)
都庁保健局のデータは、今年のはじめから2月半ばまでの間、病院で治療を受けたデング熱罹患者が2,481人であることを示している。17日にまたひとり犠牲者が出たために、デング熱による死亡者総数は21人となった。バンテン州の罹患者数は199人で、死者は3人。西ジャワ州は患者数1,590人で死亡者は50人。
首都圏のデング熱流行状況はそんなものだが、特に首都ではデング熱患者に加えて大量に発生した下痢患者も病院に押しかけており、病院の中には収容能力をオーバーする患者数を迎えて通路や待合室などが臨時の病室にされているところも出てきている。
中央ジャカルタ市にあるタラカン都立総合病院は、ふたつの病棟を結ぶ連絡通路にも折畳みベッドが置かれて15人の患者を収容している。かれらはほとんどが下痢患者だ。デング熱の入院患者は前週が16人だったのに、17日にはそれが59人まで増加した。入院患者、ましてそれが子供や老齢者の場合は家族が付添うのが普通で、子供患者のベッドに母親が夜一緒に寝たり、あるいは大人患者のベッド周辺の床にござやマットレスを敷いて付き添い者が寝泊りしており、そのために病院内の混雑はまるでパサル並に見える。患者ひとりに付き添い者がひとりとは限らず、中には三四人が起居しているケースも見られるし、おまけに簡便な炊事道具と食材まで持ち込んで食を確保しようとする付き添い者もおり、落ち着きと静謐を求めるのはむつかしい。病院への支払いが不慮の出費であれば、病院の近辺で外食する経済的余裕がかれらにはもはや残されていないということなのだろう。病院側は、患者数より付き添い者の方が多いということが病院内が騒がしい原因だが、患者の家族が付き添うのは必要なことで、特に患者が子供の場合はそうであるため、付き添い者を禁止することはできない、と述べている。
北ジャカルタ市のコジャ都立総合病院には、デング熱入院患者26人、下痢入院患者31人が収容されている。同病院は収容能力にまだ余裕があるため、患者を通路に寝かせることはしていない、と語っている。一方東ジャカルタ市のブディアシ都立総合病院はタラカン病院のように患者の爆発に見舞われている。デング熱患者は54人で、そのうち24人は子供。デング熱と下痢患者の増加傾向が明らかになっているため、同病院は三等病室が一杯になれば二等病室を使用する方針でいる。


「鶏肉牛肉購入にはご用心」(2005年3月14日)
非公認販売業者から鶏肉や牛肉を買う場合、消費者は厳重な注意を払うように、と東ジャカルタ市水産畜産課長が呼びかけている。アルセンティナ・パンガベアン課長によれば、今年2月まで継続的に行なわれた現場検査で、死んだあとで解体された鶏肉が7千羽見つかっているとのこと。屠殺されていない鶏肉は色が赤っぽく生臭いが、正規に処理されたものは白っぽくてつやがあり、生臭みがない。鶏にしろ牛にしろ、食肉として流通されるものは屠殺場でまず健康状態がチェックされ、問題ないものだけが屠殺されてから解体される。牛肉の場合は肉にハンコが押され、また証明書が発行される。正規に処理されなかった鶏肉牛肉は、マトラマンとプロガドン地区の市場をメインに流通しているそうだ。市庁は不法処理食肉の摘発を継続していくが、消費者も不審な食肉の購入は避けるように、と同課長はアドバイスしている。
鳥インフルエンザ問題に関して同課長は、2004年に管区内で発見された鳥フル事件はひとつだけだった、と述べている。それは2004年9月に発見されたもので、ウジュンメンテン地区のある養鶏業者が、西ジャワから鶏を仕入れて養殖していたために発症した。それ以外では管区内でまったく問題ないので、消費者は安心してよい、との説明。
それらとは別に、同課は狂犬病予防のためのワクチン接種を行っており、犬・猫・サルなどの狂犬病にかかる可能性がある動物を対象に業務を進めている。ことしのターゲットは7千匹とのこと。


「都内の全家屋にマレーシア型セプティタンを」(2005年3月21日)
都内の汚水処理に関して都庁は、土地利用許可書保有者と高級住宅地区デベロッパーに対し新式汚水槽設置を義務付ける考えであることを明らかにした。今後交付される許可書には、その義務付けがうたわれることになる。
スティアブディ地区のような地下を下水溝が走っている地区とトイレの排水がそのまま川などに直結されているところは別にして、都内にある大半の家屋ではセプティタン(Septic Tank)と呼ばれる汚水槽が設置され、人間の排泄物はそこに蓄えられる。家庭から出される生活排水はセプティタンには流されず、道路脇に掘られた排水溝に流され、排水溝は流れ流れて川や池などにたどり着くようになっている。都民が一日に出す汚水や生活排水は150万立方メーターにのぼり、都営廃水処理会社の手が着いているのはその2%でしかない。
特にセプティタンは人間の排泄物が蓄えられているために、滲出や漏洩あるいは雨季に頻繁に起こる水害でタンクの内容物が外に出る場合、衛生上悪質な環境汚染を引き起こすことになるという問題をこれまで抱えてきたが、都庁はその解決策としてマレーシアで開発されたFRP製セプティタンを都内の家屋に設置する方針を打ち出した。このマレーシアテクノロジーのセプティタンは、マレーシアのPembinaan Jayabumi Berhadと都営廃水処理会社PD Pengelolaan Air Limbaがブカシのジャバベカ工業団地に合弁で興したPT Kandiyasa Dirgatamaで生産される。
スティヨソ都知事はタマンスロパティに近い公邸の汚水槽をさっそく取り替え、「1基の価格は4百から5百万ルピアの間であり、メンテン地区の住民には率先して新セプティタンに取り替えていただく所存だ。メンテンの住民にとって高い価格であろうはずがない。」とコメントしている。


「クランヒジャウはアブナイ」(2005年4月1日)
広さ285平方キロ、海岸線33キロ、深さ平均8.4メートルのジャカルタ湾汚染が激しさを増している。お粗末なゴミ処理メカニズムとゴミは流せば消えて行くというナイーブな住民の認識から家庭排出ゴミの多くが川に流されて、その行き着く先はジャカルタ湾。都民の40%が直接ゴミを川に捨てており、首都を流れる13本の川のいずれもが河口近くでは真っ黒によどみ、異臭を放っている。1993年の有機廃棄物汚染は1日当たり120トンBOD5だったが、ことしは250トンまで上昇している可能性が高い、とロフミン・ダフリ前海洋漁業相は言う。ジャカルタ湾水域はダイイングエコシステムだ、とのコメント。
そんな重度汚染で生態系に異常が出るのは想像に難くない。ジャカルタ湾の名物クランヒジョーはもう食用に適さない、とユナニ・カルタウィルヤ都庁生活環境管理庁生活環境課長は断言する。クランヒジョーは河口に近い海中でよく取れる貝だが、川水の汚染が激しいため、貝にも大きい影響が出ている。「ムアラアンケ、チュンカレン、ムアラスンテルの汚染はひどい。ムアラカマル、アンチョル、チャクン、ムアラマルンダは中度の汚染で、ムアラグンボンだけがまだ軽い。アンチョル海岸での調査で、クランヒジョーの50%に奇形化が見られ、70%はなんらかの異常が出ていた。ところが貝を産出するそれらのエリアでクランヒジョーの養殖は増加しており、また養殖者漁民の大半はジャカルタ出身者じゃない。かれらの汚染問題への認識は都民より低いので、これは難しい問題をはらんでいる。」との同課長の談だが、魚肉はまだ食べても大丈夫だともかれは言う。ジャカルタ湾で獲れた魚の検査では鰓や肝に異常が見つかっているものの、魚肉の汚染はまだ安全レベルであるため食しても問題ないとの由。ikan cukangなど一部の魚には重金属汚染の徴候が見られ、またプラウスリブでは重油汚染の影響と思われる奇形の亀も発見されている。それとは別に、4月5月の雨季から乾季への移行期にはプランクトンの大量発生による赤潮の害も予測されている。ジャカルタ湾沿岸漁業を営む零細漁民にとって、生計の営みはますます困難を増している。ジャカルタ湾は全長89キロ、そしてDKIジャカルタはその33キロしか占めていない。しかし海はつながっているのだ。


「ジャカルタはデング熱ピークシーズンに突入」(2005年5月10日)
5月6月のピークシーズンに差し掛かっているため、ジャカルタ都民はデング熱に警戒するように、と都庁保健局が警告を発した。ここのところデング熱発症患者数は、2月734件、3月290件、4月354件と下降傾向を見せているが、デング熱を媒介するネッタイシマ蚊の活動が5月6月はピークとなるので、都民は予防と警戒を厳重に行うように、とパリプルナ・ハリムダ・スティヨノ保健局伝染病調査課長が表明した。発病者数は減っているが、都内の主要病院には入院患者がまだ入っている。都庁は今年はじめにデング熱異常発生宣告を出して都民への無料治療措置を実施したが、それがまだ取り消されていないために、多くの入院患者が今でも無料で処置を受けている。タラカン都立総合病院にはスイス人患者が二人収容されており、かれらも無料処置の対象になっている。


「子供へのポリオワクチン投与を怖れる無理解な親」(2005年5月13日)
ポリオ擬似症状の患者が、今度はバンテン州で報告された。バンテン州庁クルディ・マティン広報官によれば、今年1月から5月11日までに、15歳未満の子供26人に麻痺症状が表れたが、そのうち7人はポリオ陰性が確認されており、他はまだ検査中とのこと。発生は州内でタングラン、セラン、パンデグラン、ルバッの各県とタングラン市に渡っているが、ルバッ県が15人もいてマジョリティを占めている。
一方、ポリオ発症の焦点となっている西ジャワ州スカブミ県では、一部の村で子供へのワクチン投与を親たちが依然として拒んでいる。チダフ郡ジャヤバクティ村の第9字第1,2,3隣組には73人のポリオワクチン投与対象者がおり、県保健課は同村のマドラサを実施場所に選んで村民に子供を連れて来るように案内したが、午前中にやってきたのはわずか4人。その結果、担当者は各家庭を回ってワクチン投与を行うように方針を切り替えたものの、関係者たちが村中を回ってもほとんどの家が空家状態。あたかも突然ゴーストタウンになったかのような情況で、村役によれば、ワクチン投与を怖れてどこかへ隠れたのではないか、とのこと。この日ワクチン投与が実施できたのはたった8人しかいなかった。県当局は県民への啓蒙と告知に努めているが、その一方でネガティブな風聞が飛び交っており、村民たちが信用しているのは誰か、という実態が浮き彫りにされている。
その風聞はチロア部落から出たものらしく、ポリオワクチン投与を受けて子供が死んだ、という話が近隣一帯に広まっているらしい。チダフ住民保健センターのマミ・ユニアティ所長は、チロア部落で子供が亡くなったのは事実だが、ポリオワクチン投与が原因ではない、とその間の事情を説明している。


「カルフルにゴミを持って行こう」(2005年6月20日)
毎週水曜日と土曜日の10時から16時までの間に、最寄のハイパーマーケット「カルフル」にゴミを持って行けば、カルフルで使える買物バウチャーがもらえる、というキャンペーンが6月18日から始まった。ただしゴミは前もって、有機性のものと非有機性のものに分別しておかなければならない。
都庁は先に一部モデル地区を指定してゴミ分別キャンペーンを始め、二色に色分けしたゴミ箱を地区内に設置したりしているが、思わしい成果は出ておらず、ゴミ箱の多くはゴミがごちゃ混ぜで詰め込まれているありさま。世界の趨勢であるゴミ対策への都民の意識がほとんど盛り上がっていない状況をなんとかしようと、ジャカルタデルタフィメールインドネシア所属のラジオデルタ、フィメールラジオ、ラジオプランボース、ラジオワンの四つの民間ラジオ局が共同で賛助キャンペーンを始めた。このグリーンシティーズ・グリーンコミュニティズと題するキャンペーンにカルフルとユニレバー社が加わり、分別ゴミをカルフルに持って行くとご褒美がもらえる、というシナリオが出来上がった。
都民は定められた日時に最寄のカルフルに分別ゴミを持参すると、係員がその重さを量って規定に従ったポイントをくれる。そのポイントを貯めれば買物バウチャーがもらえるという仕組み。有機ゴミは都庁清掃局のトラックが運び去り、非有機性のものは廃品回収人がさらに分別してリサイクルプロセスに乗せられることになっている。


「タングラン県でムンタベルが猛威」(2005年6月21日)
タングラン市に隣接するタングラン県パクハジ郡とスパタン郡でムンタベル(嘔吐下痢症)が猛威をふるっており、タングラン県保健局は異常事態宣言を発した。6月8日から20日までの12日間で罹患者は135人に達し、上記ニ郡の各保健所に収容されている。またその間に7人の患者が病死している。
ムンタベルは嘔吐と下痢が同時に起こる症状に対する名称であり、医学的にはコレラやアメーバ赤痢など伝染性病原菌が原因となっているものと、食あたりなど伝染性でないものにも用いられている。


「東ジャカルタの市場にアブナイ食肉が出回る」(2005年6月28日)
東ジャカルタ市に保健上問題がある食肉が出回っているので、市民は注意するようにと東ジャカルタ市家畜水産次局が広報している。27日に同次局が行った検査で、チャクン、クレンデル、ジャティヌガラ、クラマッジャティの各市場で牛・やぎ・鶏の不合格肉が発見された。また販売している肉を長持ちさせるために販売者が使っていたフォルマリン3リットルも発見されている。
不合格肉はジャカルタ外から持ち込まれたもので、正式の食肉生産処理を証明するスタンプもなく書類も添付されていない。それらの肉は正式ルートを経て市場まで来ている新鮮な肉に混ぜ込まれて市場の売り場に並べられており、注意深くない購入者の目を巧みにくらましている。同次局は差し押さえた不合格肉のラボラトリー検査を進めており、問題ありとの証拠固めができれば、販売者に対する法的措置を申請していくことになっている。またフォルマリンの食品使用は禁止されているため、それを使っていた販売者にも同様の措置が取られる予定。


「売春、エイズ、コンドーム」(2005年7月30日)
HIV/AIDSの蔓延が警告されている。国内最大の罹患者数というありがたくないナンバーワンになっているのがパプアで、2004年9月30日現在の公認罹患者数は1,675人。同州保健局はこの拡大防止対策としてコンドームの利用普及を呼びかけているが、進展ははかばかしくない。
PT Freeport Indonesiaを擁するミミカの町は、もともとアムンメ族とカモロ族の領域だったところにできた町。そこにダマル、ダニ、モニ、ンドゥガ、メ別名エカリの近隣5種族も村から町に移住する者が出た。おまけにパプアのもっと大きい種族、アスマッ、ビアッ、ジャヤプラ、ソロンの原住民も、繁栄する町に引かれて住み着いた者がいる。それだけではない。インドネシアの他の州からも、出稼ぎ者は集まってくる。ケイ、アンボン、ブギス、マカッサル、トラジャ、ミナハサ、ジャワ、スンダ、フローレス、ティモール、バタッ、バリ。おまけにフリーポートに勤める外国人までがおり、園町は多種族のるつぼと化している。そんな町に歓楽街が誕生するのに、障害は何もなかったようだ。町中には紅灯街ができ、また別の場所には売春局地化地区が生まれ、近隣の村落住民が収穫を売りに町に降りてくれば、その殷賑のとりこにならないわけがなかった。男は女と遊び、もらったウイルスを村に帰って妻に分け与えた。そんな中にいる売春婦は、病気予防に神経を尖らせている。
東部ジャワ州ポノロゴ出身のリニ35歳は一月で100から150万ルピアを稼ぐが、コンドームを使わない客はお断りだ、と言う。「コンドームを嫌がる客?こっちからお断りよ。たった5万ルピアで病気をもらったら一生ものよ。好い気なもんだわね。あたしゃいやだよ。」この局地化地区には売春婦がおよそ3百人いる。ミミカ保健局のデータによれば、ミミカにいる売春婦112人が罹患者になっている由。局地化地区にいる者だけが売春を行なっているわけではない。それよりもっと多くの女たちがバーやディスコで客を拾う。そちらの方が客は高く支払うから。
売春客にどうすればコンドームを使わせることができるのか?自分で金を払ってまで・・・。コンドームを買うのが恥ずかしい・・・。では売春宿の各部屋のテーブルの上に、説明つきで無料コンドームを置いておけばどうだろうか?そう考えた社会団体クルティプラジャ財団が、局地化地区のすべての部屋に無料コンドームを置き、期待とともに見守った。1994年から2000年まで行なわれたそのキャンペーン結果は、売春客の60%がその無料コンドームを使っていないという事実だった。
中央政府はHIV/AIDSの蔓延阻止の一助に、とコンドーム自動販売機を23台購入し、いくつかの州に贈与した。もらった州の中には、ムスリムにとって罪である妻以外の女との性交を奨めるようなこの措置にはついていけない、といまだに自動販売機がお蔵入りになったままのところもある。


「ロビー・ウイリアムはやっと病院から帰宅した」(2005年8月6日)
北ジャカルタ市チリンチンのある家に同居しているフレデリッ・タナボラ43歳は8年前に失業して以来無職の暮らしが続いている。妻のマリア・レッソイン35歳は去る4月21日に三人目の子供を出産したが、産婆の手違いから子供が中毒症を起こした。3.2キロで生まれてきた健全な赤児に、思いがけない不幸が襲い掛かった。赤児の両親を絶望の淵にたたきおとす災難がやってきたのだ。
生まれ出たその日から、赤児はコジャ総合病院のICUに運び込まれて、死と闘うはめになった。身体は次第に痩せ細り、黄疸症状が出る。病院側は保育器に入った赤児に総力をあげて治療を施した。額に点滴の針をさすことすら行なわれた。その甲斐あって、ロビー・ウイリアムと命名された赤児は一命を取りとめたが、病院は赤児の退院を許さない。
数年前にマリアの親の病気治療のために家まで手放してしまったこの夫婦に、病院側が示す10,081,000ルピアの金をおいそれと支払える能力はなかった。かれらのひと月の収入は不安定で、50万ルピアすらコンスタントに入手できていない。ロビーの治療期間中、二三日おきに子供の薬品代として必要な20万ルピア前後を手に入れることに夫婦は疲れきってしまった。隣近所知り合いにはもう借金だらけ。母親のマリア・レッソインは「もう恥じも外聞も忘れてしまいましたわ。」と語る。人の顔を見れば、「金を貸してください。」の言葉が出るという。病院側はそんな状況に、軽減措置を提案した。請求金額の半額を納めればよい、ただし貧困家庭証明を提出すること。貧困家庭証明は地元RW・RTからの証明書をもとに北ジャカルタ市庁まで行かなければならない。不法徴収金のはびこる市民行政にこの夫婦の顔色は晴れない。
しかし慣れない行政手続きをやり遂げなければ、わが子といっしょに暮らすことができない。こうして夫婦はなんとか都庁保健局からの医療費免除承認をもらえるところまで漕ぎ着けた。そして8月1日、その書類がもらえるとワクワクしてマリアは役所の窓口へ行ったが長蛇の列。残念なことに、マリアの番が来る前に終業時間となってしまった。がっかりしたマリアは、それでも日課になっているロビーの顔を見にコジャ総合病院へ行くと、なんと病院側は「書類は明日でいいから、子供を連れて帰りなさい。」と退院を許可してくれたではないか。こうしてやっとのことで、タナボラ家の苦難は一段落を迎えることになった。


「都庁保健局がデング熱警告」(2005年8月10日)
今年年初から8月4日まででデング熱にかかった都民は10,797人、そして死亡者は57人に達しており、都庁保健局は都民に対し、警戒と対策を怠らないよう警告している。例年だと乾季にはデング熱が沈静化するので、罹患者は百人を切るのだが、今年はウエット乾季のせいで7〜8月のデング熱罹患者数は週あたり3百から4百人も出ている。2004年は年間を通しての罹患者数が20,640人、死亡者数90人で、今年はそれより少ないだろうが、2003年実績は14,071人の罹患者数で、そのうち59人が死亡しており、今年は確実にその数値を上回るだろうと見られている。


「トゥムラワッを飲もう国民運動」(2005年8月20日)
トゥムラワッ(temu lawak)は学名をCurcuma xanthorthizaと言い、ジャワ・バリ・南マルク地方が原産。学名がCurcuma domesticaであるターメリックとは同じ仲間だが別のもの。ターメリックはインドネシアでクニッ(kunyit)と呼ばれる。カレーのあの黄色い色はターメリックが作り出すもので、インドネシア料理でもターメリックは頻繁に使われる。一方、トゥムラワッの方は料理のスパイスではなく、むしろジャムゥとして使われる健康飲料だ。パサルやスーパーマーケットに行けば、缶やビンに入った粉末トゥムラワッが売られており、それを水に溶かして飲む。もちろん、しょうがのような形をした生のトゥムラワッも買えるが、干してから煮るといった手間がかかるので、飲料用に処理された粉末を買うほうが手っ取り早いことは確かだ。
はるか昔から、トゥムラワッはジャムゥとして使われてきた。昔のひとが体験的に見つけ出し、処方し、服用してきたものだが、その効果が現代医学によって再確認されている。トゥムラワッを飲んでいれば、身体の病気に対する抵抗力が増し、また健康を高める働きがあると信じられている。病気にかかりにくくなり、肝臓の機能を回復させ、関節の機能を強め、消化を良くし、食欲を増進させ、血液の凝固を抑制するので動脈血栓が引き起こす諸症状の予防にもなる。
このトゥムラワッを愛用して、国民はみんな健康な身体を持つようにしよう、と政府保健省は今年「トゥムラワッを飲もう国民運動」を提唱した。サンプルノ食品薬品監督庁長官によれば、トゥムラワッには抗炎症、免疫機能を高め、血液の中に現れるコレステロールに似た脂肪のトリグリセリドとコレステロールのレベルの低下に役立つカーキュミンが含まれており、アンティオキシダントとして、また免疫機能高揚と免疫機能調節に有効とのこと。さらに肝炎患者のSGPT値とSGOT値を早く低下させることも実証されている。リューマチなどにも抗炎症機能が効果をもたらす。肝臓、腎臓、消化器系を保護し、機能を高めるので、市販の抗リューマチ薬品の大半が肝臓、腎臓、消化器系の働きを弱めることに比較するなら、トゥムラワッの服用は大いに推奨されてしかるべきものだ、と同長官は語る。コレステロールのレベルを下げ、動脈血栓を予防するはたらきは、心臓動脈の不調が引き起こす諸症状や脳卒中の予防に対して大きな期待を抱かせている。


「違法堕胎医が逮捕される」(2005年8月23日)
ジョクジャカルタの高級ホテル客室で妊娠中絶措置を行おうとしていた男三人が8月20日夜7時ごろ、警察に逮捕された。逮捕されたのはマグラン住民トゥグ・ダルマワン40歳とブディ・ウィジャヤ40歳、ならびにクラテン住民ヘンキ・フェラリ27歳。三人はジョクジャの女子大生ふたりに対する中絶措置を行うためにホテルにやってきてその準備をしていたときに逮捕された。
この三人組みの逮捕は18日にスレマンで、とある下宿屋の裏庭に不審な盛り土があるのを下宿屋の主人が見つけたのがきっかけ。下宿屋の主人が警察に届け出てその盛り土を調べてもらったところ、埋められていたのは三ヶ月の胎児の遺体だったことが判明し、警察はそれを埋めたのが下宿人のひとりでジョクジャの有名大学に通う21歳のアリであることを突き止めた。アリはその胎児がジョクジャの看護学院に通う恋人のリナ21歳との間にできた子供であることを認め、三人の堕胎医の手を借りて中絶したことを自供した。警察はその情報をもとに囮捜査を開始し、その三人に連絡を取ってジョクジャの高級ホテルに呼び出したあと、逮捕した。
その三人の堕胎医は二年前から妊娠中絶ビジネスを始め、若者たちを対象に、メンスが遅れたときにはここへ連絡するように、と連絡先電話番号を口コミで流していた。措置を行う場合はトゥグが医師のふりをし、他のふたりは助手としてそれを手伝った。かれらはひと月に10人ほどの女性に対して妊娠中絶措置を行い、一人あたり1〜2百万ルピアの謝礼を受け取っていた。また客から連絡が来れば、スマランでもジャカルタでも、あるいはマカッサルまでも仕事をしに出張していた。インドネシアでは、母体に危険があるとの医学的判断がなされない限り、妊娠中絶は違法行為となっている。


「ムンタベル」(2005年9月20日)
今年6月後半にタングラン県スパタン、パクハジ、マウクの三郡で異常流行した事件をご存知の読者は多いにちがいない。なんと罹患者は1,176人に達し、19人が死亡した。ムンタベルとは病気の症状に付けられた名称で、病気の原因を特定するものではない。ムンタ(嘔吐)とベラッベラッ(下痢)が続くこの病気の根幹は消化器系の汚染で、常に嘔吐を伴うと限ったものではないが、脱水症状、激しい腹痛、時に便に粘液や血液が含まれるといった症状を見せ、下痢も通常排便の一日最大三回より多い回数となる。言うまでもなく消化器系における細菌感染が原因であり、汚染源はコレラ菌、赤痢アメーバ、赤痢菌、サルモネラ菌、大腸菌などがあげられる。
インドネシアで激しい下痢症状罹患者数は年々減少しているとはいえ、その絶対数はいまだにあまりにも多い。1983年からの20年間で下痢症状異常発生に指定された大流行事件は年平均148件にのぼる。国内地方部、特に農村部はふたつにひとつがその被災地になっている。2000年の年間罹患者は21.9パーミルだったが、2004年には7.5パーミルと劇的に減少した。とはいえ、各地方で一年に数百人が激しい下痢で倒れるという状況は、環境衛生と病気予防がいまだに十分とはいえない段階にあることを証明している。1992年の家庭保健サーベイ、1995年の同じサーベイ、2001年の全国保健サーベイを比べると、インドネシア人の十大死亡原因の一つだった下痢は、当初第5位にいたのに最後には9位にまで下がっている。ところが5歳未満幼児にとっては依然として三大死亡原因のひとつなのだ。
このムンタベル克服に必要なのは住民個々人の衛生観念向上なのだが、庶民の意識に分け入って見るなら、独立闘争後間もない時期にインドネシアに暮らしたアメリカ人ドクターの洩らしたコメントへと回帰していくのである。いわく「インドネシア人は清潔好きだが、衛生観念がない」と。


「生きることのパラドックス」(2005年9月22日)
今年6月後半にタングラン県スパタン、パクハジ、マウクの三郡で異常流行したムンタベル禍が過ぎ去った今、住民たちはそこから何を学んだのだろうか?
いや、その前に、そもそもどうしてそこであれほどの災禍が発生したのか、ということを見なければならないだろう。その地方の各集落は、貧しい農村だ。そして生活用水に関しては、昔ながらの伝統が続けられている。人間の排泄行為は、一定の場所で行われていない。村民にとって、排泄はどこでしてもよいものだ。川、溜池、畑、水田、家の周り。自分の性器を人前にさらすのは罪悪だから、それが守られるなら場所は問わない。集落の近くを流れる川がその用に供されることが多い。男も女も大人も子供も、そこが最大のチョイスになっている。ところが、やはりその場所でみんながマンディ(水浴)し、洗濯する。川の中で排泄をしている人たちから10メートルも離れていない岸辺で、女たちが並んで洗濯する。今年6月のムンタベル異常発生まで、それがその地方の昔ながらの情景だった。そしてムンタベル禍が去ったいま、ふたたび同じ情景が繰り広げられている。
そんな状況は、インドネシア人口全体の35%にも当てはまる。大半の農村部がトイレのない暮らしを営んでいる。生活の中でトイレは枝葉末節の問題だ。自宅内や周辺にトイレを建てるなんて、先祖代代、一度たりともそんな考えが取り上げられたことはない。しかし県当局は、住民に衛生観念を植え付けなければムンタベル禍は再発すると見て、三郡56ヵ村に4百ヶ所のトイレ、2百ヶ所の上水、80ヶ所の水浴・洗濯・トイレ兼用設備を設けることを計画している。不衛生な環境での伝染は容易だ。罹患者の排泄物から水が汚染され、それを使った飲食品で他の者が即座に罹患する。おまけに伝染は、ハエ、人の手、ねずみ、ゴキブリなどによっても拡散されていく。
パクハジ郡の住民のひとりは、過ぎ去ったムンタベル禍をまるで「朝になると日が昇る」という自然現象のひとつとしてしか見ていない。それが罹患者の排泄物と関係しているということが理解できないようだ。病気というものが存在し、人間はそれに罹るときには罹るものだ、とただそれだけのことにしか考えていない。タングランの北岸部では、生活用水を買っている。その水は排泄の用には使われない。海水の混入した井戸水で尻や手を洗う。パクハジの集落民たちは、自分たちはそこまでする必要はない、と言う。「だって、そこに川があるじゃないか。排泄するけど、そこから水を汲んでる。水はきれいだよ。」
パクハジ郡のある集落住民は、自宅にトイレを備えるよう勧める県保健局の話に関して「食っていくだけでもたいへんなのに、トイレを作ることまではとても・・・」と語った。貧困の中で精一杯に生きているかれらの関心事は食うことにあり、生きるために食っているそのことをぶち壊してしまう環境衛生への関心はバランスが欠けているようだ。


「赤児の出生・死亡とも、インドネシアは平均以上」(2005年10月19日)
国連人口基金の報告によれば、インドネシアの出生率は域内で第二位を占めている。15歳から19歳の女性1千人が生んだ赤児の数を国別に比較したこの統計では、東南アジアのトップはラオスの88、二位がインドネシアの54、三位タイ48、四位カンボジャ47となっており、それらが東南アジア平均の40を超えている国。五位フィリピンは36、ミャンマ・ベトナム・マレーシアは19〜18、シンガポールは6となっている。早婚が一般的で、早い時期に母となる女性たちは、生涯のうちに産む子供の数も多くなる傾向にあるのは言うまでもない。
一方、出生した赤児が死亡する比率も、インドネシアは東南アジア平均を上回っている。死産流産でなく生命をもって生まれてきた乳幼児が死亡する比率は東南アジア平均だと1千人中37で、インドネシアはそれよりほんのわずか多い38。東南アジアのトップはカンボジャの91、二位ラオス84、三位ミャンマ71、そしてインドネシアが第四位。
出生率と死亡率を適正レベルにコントロールしていくのが現代国家の基本政策となっているが、家族計画に頼っていた出生率コントロールもどうやら頭打ちのきざしで、このまま死亡率だけが低下していくとインドネシアの人口政策は困難な時期を迎えることになりかねない。しかし晩婚政策、少子化政策は、インドネシア社会の持つ価値観とかなりへだたったものであるため、なんらかの社会変革が必要とされる時期が来るにちがいない。


「アブナイ化粧品が多数流通」(2005年11月15日)
西ジャワ州食品薬品監督所が、州内で流通している人体に有害な物質を含んだ化粧品20種類を発見し、流通禁止措置を取った。そのメインは水銀を含有している美白クリームで、生産者は中国,台湾、タイ、インドネシアなど。「それらのクリームは使い始めてから一週間で肌が白くなる効果はあるものの、長期的レンジでは皮膚細胞にガンが生じたり、重度の炎症が起こったり、また神経系統に障害を受けるなどの副作用がもたらされ、使用者の健康が損なわれる。」と同監督所長は述べている。また有毒染色剤のロダミンB+や赤色K3あるいは繊維用染色剤などを使った中国・台湾・ジャカルタ製口紅も発見されている。有害物質が発見されたものはその他にも、アイシャドウ、ナイトクリーム、ファンデーション、アイカラー、ブラシなどがある。
監督所は西ジャワ州の各地で商店から化粧品をランダムに購入し、ラボでその含有成分検査を実施しているが、中国・台湾・タイなどの製品は合法的輸入ルートを経ないで国内市場に持ち込まれており、その多くが食品薬品監督庁の安全衛生基準に合格したことを示す流通許可番号を取得していない。また国内生産者の中にも、合格審査用サンプルには有害物質を入れないでおき、合格した後で製品に水銀を加えるようなことをしているところがある。


「都内の禁煙推進開始が間近」(2005年11月25日)
2006年2月から、都庁がいよいよ公共スペースでの禁煙を実施する。2005年都知事令第75号で制定され、2005年都条例第2号で規定された大気汚染コントロールに関する法規の実施がこれだ。都庁生活環境管理庁は、今年12月からイニシャルトライアルを実施する予定で、モナス四周地区とタムリン・スディルマン通りにあるビルをパイロットプロジェクト対象地区に指定し、禁煙推進を行うことにしている。対象となるビル89ヶ所のうち60ヶ所は、禁煙実施への協力姿勢を表明しているとのこと。60ヶ所の内訳は、モナス周辺22、タムリン通り沿い13、スディルマン通り沿い27。
ビル管理者側の対応については、喫煙所を設けるところから禁煙と喫煙のスペースを明確に線引きするところまでさまざま。中にはビル内全体を禁煙にする予定をたてている管理者もいる。イニシャルトライアル期間中、スティヨソ都知事は精力的にパイロットプロジェクトエリアを視察訪問する計画にしており、都庁ではそれとは別に、禁煙実施を監視する禁煙タスクフォースを編成して、対象ビルの監督を行うことにしている。


「嗚呼、塩魚」(2005年11月24日)
インドネシアで一般的な庶民の食べ物のひとつがイカンアシン、つまり塩魚。「廉くて豪勢」な食卓には欠かせない。塩魚は各地の漁村で作られる。シラス、マグロ、カイヤン、イカまでさまざまな種類の魚がその素材に使われる。作り方も素朴なもの。臓物などを取って魚をきれいにしたあと、塩水に浸す。ドラム缶ひとつあたり塩の大袋ひとつ。浸す時間は12時間から一日で、そのあと天日に干す。十分乾燥したものを包装してから集荷人に渡す、というのが漁村での塩魚製造シーン。乾燥が不十分だとカビが生える。広い場所に大量の塩魚を並べて干している光景を、地方の海岸沿いを通るとしばしば目にすることができる。雨季になると塩魚の乾燥はたいへんで、曇天下に干し、雨が降るとあわててビニールシートを上にかけるようなことが繰り返される。カビが生えたり、崩れたり、ほぐれたりしたものは売れなくなるので、生産者は歩留まりをよくしようと頭を使う。
もともと魚を保存するために塩が使われていたというのに、製造処理の不十分さを補うためにここ数年フォルマリンの使用が増えている。カビが生えにくく、商品も長持ちするからだ。さらにもうひとつの理由がある。塩魚は重さで取引される。鮮魚を百キロ仕入れても、製品の塩魚の重さは40キロにまで落ちてしまう。ところがフォルマリンを使うと、75キロ程度までしか下がらないで製品にできる。フォルマリンを食品に使ってはいけない、という話を耳にしたことがないわけではないが、生産者たちの本音は「貧困の中でついつい」から始まり、そのうちに「みんながやっているから」へと移っていくようだ。北ジャカルタ市ムアラアンケの塩魚生産者たちは、ここ二三年で9割方がフォルマリンを使うようになっている、とかれらのひとりは語る。仲買人もそうするよう要求してくるのは、消費者に至る流通サイクルでそのほうが利益が大きいからだろう。
ムアラアンケでの塩魚生産は、1984年に4.5Haの加工場と生産者家族用二階建て家屋が建てられたことに端を発する。196世帯が生産に従事し、加工場では衛生管理が行われていた。ところが一世帯あたり5x6メートルの加工場の家賃が、1999年までは月2万6千ルピアだったものが、2000年には5万ルピアに跳ね上がった。その他の関連経費も値上がりを続けている。ここでの一日の生産量は40トン程度。
食品薬品監督庁が行った最近の調査で、都内各所のパサルからフォルマリンを含有した塩魚が発見された。キロ当たりのフォルムアルデヒド含有量は、クバヨランラマ市場で29.2mg、パルメラ市場で108mg、ジャティヌガラ市場で2.4mg、クラマッジャティの商人は48.5mg、そしてハイパーマーケットにも51.2mgを含んだ塩魚が置かれていた。
フォルマリンを使わない塩魚は、硬さがあまりなくて色もくすんで見え、臭いも強烈で、二週間しか日持ちしない。十分に乾燥させると、重量が減少して生産者の収入が小さくなる。おまけに集荷仲買人が、そんな製品を嫌う。そして消費者のほとんどが、見栄えの良い商品を手にとる。そんな状況の中で生産者にフォルマリン使用の責任を問い、かれらを罰したところで問題の解決にはならない。食品薬品監督庁は頭を痛めている。


「豆腐よ、おまえもか」(2005年11月25日)
南ジャカルタ市マンパン地区。小規模家内工業の豆腐生産者が集中している、首都の豆腐生産センターだ。塩魚と同様、食品薬品監督庁の調査でフォルマリン含有する豆腐が発見されている。クバヨランラマ市場で24.7mg、パルメラ市場で19.7mg、ジャティヌガラ市場で16.2mg、巡回野菜売り0.86mg、マンパン地区製造者0.2mg、そしてハイパーマーケットでも0.77mgのフォルムアルデヒドを含んだ豆腐が売られていた。
マンパン地区の豆腐生産者のひとりは、フォルマリンを使うのは長持ちし、崩れにくいためだ、と語る。タフゴレンにすると、フォルマリンを使った豆腐の方が大きくなり、歯ごたえがある。フォルマリンを使っていない豆腐はふにゃふにゃだ。崩れにくいという特徴は販売者にとってありがたい長所となる。買い手はたいてい豆腐を指で突付くから、それで崩れたら他の客は見向きもしなくなる。フォルマリンを使えば商品の歩留まりが上がり、収入が増える。買い手たる仲買人自体がフォルマリンの使用を要求しているので、それに応じなければ仲買人は他の生産者から買おうとする。どうせ生産者の誰かがフォルマリン入り豆腐を市場に流すのなら、自分から買ってもらう方が良いに決まっている・・・・・
ところが奇妙なことに、フォルマリン含有豆腐は商人が売っているものの中にたくさん見つかるものの、生産者の製造場所に置かれている製品の中からはあまりたくさん見つかっていない。マンパンの豆腐職人たちは、一部のワルだけがフォルマリンを使っていて、おかげで自分たちは迷惑している、と語っているのだが・・・・


「ジャカルタの大気汚染は更に悪化」(2005年11月29日)
国内10大都市の大気汚染状況が改善されていないことを加鉛ガソリン廃止コミッションが報告した。調査対象とされた国内10大都市は、メダン、バタム、パレンバン、ジャカルタ、バンドン、スマラン、ジョクジャ、スラバヤ、デンパサル、マカッサルで、大気環境の汚染状況が年間を通じて測定され記録されている。対象都市が全般的に悪化していることの原因は自動車燃料として加鉛ガソリンがまだ使用されている都市があること、ならびに自動車排気ガス汚染抑制政策進展が遅々としてはかどっていないことにあり、コミッションの分析結果は、汚染物質が平均的に基準値をオーバーしていること、汚染物質を最も多く排出しているのが自動車の排気ガスであることが直接的に大気汚染を加速させている原因である、としている。
政府はいくつかの都市で加鉛ガソリン追放を宣言しているが、ここ三年間の汚染状況には目覚しい改善がまだ見られておらず、年間の大気クオリティ良好日数は一定のレベル内で上下しているだけ。たとえばジャカルタは加鉛ガソリンが最初に追放された都市ではあるが、大気クオリティ良好日数は2002年22日、2003年26日、2004年18日となっており、登録自動車台数550万台という実態がジャカルタの悪化傾向を当然のものにしている。バンドン、パレンバン、マカッサルなど加鉛ガソリン未追放都市では、鉛による大気汚染で住民の健康が損なわれるのを軽減するために加鉛ガソリンの流通を早急に抑制する必要があり、たとえばバンドンのように1立方メーターあたり2マイクログラムを超える汚染状況になると、学齢児童の30%に血液中の鉛濃度がデシリッターあたり10マイクログラムの上限値を超える者が現れ、脳の発育が妨げられて自閉症の子供が増加する傾向が発生する可能性が高い。
自動車排ガス清浄化促進のために、すべての自動車に対する規準適合化を車両機能検定の中で行いたいところだが、今行われている商業用自動車の機能検定が検定者側の搾取刈取り場と化していて肝心の適正機能適合化がほとんど見捨てられている状況であるため、自家用車への検定義務付けに反対の声がきわめて強く、その実施がなかなか進まないことも大気汚染が改善されないひとつの要因となっている。


「続いて、生麺も」(2005年12月1日)
塩魚、豆腐に続いて、今度は生麺から多量のフォルマリンが発見された。その事実を報告したのは、ジョクジャ農大農業技術学部の学生チーム。ジョクジャカルタ市内四ヶ所のパサルから集められた標本を分析したところ、パサル1では平均2,263.3ppm、パサル2は平均945.2ppm、パサル3からは平均2,606.5ppm、パサル4は平均2,059ppmのフォルマリン含有量が検知された。フォルマリンだけでは足りず、中にはボラックスまで加えてあるものも見つかっている。
ジョクジャカルタ食品薬品監督所はこの問題について、ジョクジャの生麺生産者は10年前から同監督所が指導を開始し、フォルマリンを使わないという誓約書にサインしているものの、使わなければ損失が大きくなるために違反を犯した、と次のように事情を説明している。「市内のパサルに生麺を供給する仲買者がジョクジャ市外の生産者からフォルマリンを使った生麺を仕入れて卸しており、その競争に負けたくない市内生産者が禁を犯すようになっていった。ともあれ当方は違法行為を行った生麺生産者13社を裁判所へ告訴する手続を進めている。13社中3社はフォルマリンしか使っていないが、残りはフォルマリンとボラックスを両方使っている。」とのこと。


「有害防腐剤の食品添加への対策は?」(2005年12月5日)
インドネシアの海産物加工業界で、保健衛生面から食品への使用がすでに禁止されている防腐剤や着色剤がいまだに使用されていることを、フレディ・ヌンベリ海洋漁業相が認めた。海産物品質開発検査院、首都海産物品質検査実験所、海洋漁業調査庁、食品薬品監督庁などから上がってきた報告で、その事実が明らかにされている。フォルマリンやボラックス、また人体に有害な着色剤などの使用は、ますますおおっぴらに、そして使用が拡大傾向にある、と同相は語った。「その理由は四つある。まず、氷や合法着色剤よりもそれらを使うほうが実用的で、且つ効果も大きいこと。そしてそれら非合法の薬品を手に入れる方が手っ取り早く、コストもかからない。次に、食品に含まれたそれらの薬品の人体に対する悪影響を小規模海産物加工者がはっきり理解していない。三つ目に、加工者の経済問題が挙げられる。合法な薬品を手に入れるにはコストがかかる。一方消費者はむしろ、安くて見栄えのよい商品を選ぼうとし、健康や衛生に関するリスクファクターにあまり意を払わない。このような商品が外国に輸出され、インドネシア商品が危険食品として締め出されるような問題に至ってはたいへん困るので、2006年から政府が品質規準をチェックして証明書を発行するシステムを開始する。加工海産物生産者には、必ずこの証明書を取得するよう、習慣付けなければならない。特に国際市場に商品を輸出する場合はなおさらである。」と述べ、新システムの早急な運用開始を指示したことを明らかにした。


「デング熱がパサルミングで猛威」(2005年12月21日)
南ジャカルタ市のデング熱罹患者数は今年1月から12月14日までで2,962人にのぼり、そのうち20人が死亡している。その発生罹患者数を郡別に並べると、パサルミングが515人でトップに立っている。番付は下の通り。
郡名 / 発生罹患者数 / 死亡者数
パサルミング / 515 / 4
トゥベッ / 461 / 1
クバヨランラマ / 317 / 2
クバヨランバル / 291 / 3
チランダッ / 286 / 0
ジャガカルサ / 276 / 3
マンパンプラパタン / 248 / 4
プサングラハン / 245 / 0
スティアブディ / 170 / 0
パンチョラン / 153 / 3
パサルミング郡役所は、隣組(RT)レベルでふたりのボウフラ監視員を任命し、RT内を巡回監視する制度の推進を再度指令した。二週間前にこの制度を郡長がリマインドして以来、やっと郡内プジャテンバラッ、ジャティパダン、チランダッティムル、ラグナンの各町でRTボウフラ監視員が任命されはじめているが、まだ何も手が付けられていない町もいくつか見られる。デング熱予防運動である3M運動を毎週金曜日に都民が一斉に実施し、ボウフラを全滅させようとの号令が都庁からかかっているが、罹患者数の発生数字を見る限り、都民が本気でそれをやっているようには思えないと行政関係者は述べている。


「違法食肉類が大量に出回る」(2005年12月26日)
東ジャカルタ市畜産課が市場で没収した食肉類が23日、焼却処分にふされた。この処分の対象になったのは鶏246羽、ヤギ14頭、違法牛肉25キロ、臓物50キロ、猪肉350キロ、そしてフォルマリン3.5リッター。これは同課が12月21日から23日までの期間に市内6ヶ所のパサルで行った検問で発見され、現行犯逮捕されたもので、クラマッジャティとチャクンのパサルで見つかったものが量的には最大。
死んだ鶏やヤギを解体処理して販売していたものが多数を占めているが、商品である肉類をフォルマリンに漬けて販売していた者や牛肉に猪肉を混入させて販売していた者も逮捕されている。逮捕された商人は22人で、かれら違法行為者は既に法廷に告訴され、1992年第5号条例違反でひとり当たり5万から10万ルピアの罰金が科されている。クスナン・アブドゥル・ハリム東ジャカルタ市長は、「罰があまりにも軽いものであるため、警察に訴えてもっと重い刑罰を与えなければだめだ。」とコメントしている。


「フォルマリン含有食品が56種」(2005年12月29日)
今年11月から12月にかけて行われた、都内のパサルやモダンマーケットで販売されている食品に対するフォルマリン含有調査結果を、都庁食品薬品監督所が発表した。集められた98点のサンプルの中で、56種の食品からフォルマリンが発見された。メインは塩魚、生麺、豆腐であり、次のような商品がそのリストの中に記載されている。
パサルで入手されたもの: Ikan Asin Sotong, Ikan Asin Sange Belah, Ikan Asin Teri Medan, Ikan Tipis Tawar Kering, Ikan Sepat (Kering), Ikan Teri, Ikan Cumi Kering, Ikan Cumi Tawar, Ikan Jambal Roti, Tahu Kuning, Tahu Basah, Tahu Putih Kecil, Tahu Putih Besar, Tahu Cina, Tahu Telor, Tahu Sutra, Mi Bakmi Super Kriting Telor, Mi Keriting, Mi Basah, Mi Ayam, Mi Gulung, Mi Kwetiau
スーパーマーケットで入手されたもの: Ikan Cucut Daging Super, Mi Basah, Mi, Tahu Basah, Tahu Cina
人体に有毒なフォルマリンを食品に使用するのは違法行為であり、食品に関する1996年法令第7号では5年の入獄もしくは罰金6億ルピア、1999年法令第8号では5年の入獄ならびに20億ルピアの罰金となっている。食品薬品監督所は、それらの違法食品生産者に対し、即座に有害食品の製造をやめ、流通している商品を回収して廃却するよう呼びかけている。


禁煙実施準備は緩慢」(2005年12月29日)
12月27日、スティヨソ都知事は、先に指定された禁煙パイロットプロジェクト地区内のビルを抜き打ち視察し、対応が緩慢であることに不満を表明した。都知事が視察訪問先に選んだのは、ムルデカスラタン通りのテルコム本社ビル、タムリン通りのBIIビルとプラザインドネシア、ムルデカバラッ通りの運通省ビルなど。7階建てのテルコム本社ビルでは、すべてのフロアに喫煙者専用スペースが設けられているのを目の当たりにしたが、BIIビルでは一階通路で従業員がタバコを吸っているのを目撃し、また喫煙者専用スペースの場所を示す矢印サインや、他の場所での禁煙を示すサインが不足していることをビル管理者に注意した。このビルでは、喫煙者専用スペースは27階と地下にしかまだ設けられていない。都知事はBIIビル管理者に対し、対策を1月中に実施するよう要請し、ビル側は1月15日までに実施することを約束した。プラザインドネシアでは、まだ喫煙者専用スペースが設けられていなかったことから、喫煙場所と禁煙場所の明確な区別とそれを示すサインの完備を要請した。運通省ビルでは、喫煙者専用スペースが設けられているのをビル管理者が都知事に示したが、都知事は反対に、他の場所での禁煙表示が不足していることを批判した。今後のフォローは都庁社会保護秩序安寧局が行うことになっている。
都内公共スペースでの禁煙推進は、大気汚染抑制に関する2004年都条例第2号の実施規定として出された2005年都知事令第75号と2004年都知事令第11号の施行にともなって進められる。事務所、教育施設、公共輸送機関など公共スペースでの禁煙は2006年2月4日から全面実施されることになっており、それに違反すれば最大5千万ルピアの罰金あるいは6ヶ月間の入獄という罰が待ち受けている。


「都内の禁煙条例実施は遅れそう」(2006年1月9日)
2005年2月16日に公布された大気汚染抑制に関する都条例2005年第2号は一年間の猶予期間を経て2006年2月4日から施行される。公共エリアでの禁煙に関して、都庁の準備はまだ遅れている印象だ、と都議会議員は語る。「社会告知も徹底しておらず、これでは効果的な法執行はおぼつかない。不十分なものを慌ててやる必要はないので、じっくり準備してからスタートしてもらいたい。」第D委員会のファティ・シディッ議員はそう述べている。都庁住民福祉担当ロハナ・マンガラ補佐官は、禁煙実施に関する執行細則要綱がまだできていない、と明かす。既に出された都知事令は禁煙地区に関する第75号だけ。教育機関、病院等保健衛生機関、公共運送機関、子供が集まる場所などが優先的禁煙ターゲット場所とされていて、基本的にそれらの場所は禁煙とし、喫煙者に対して特別な喫煙場所を用意することが法規で定められたが、公共運送機関だけは例外で、反対に喫煙場所を設けてはならないことになっている。禁煙場所で喫煙者が出た場合、喫煙者だけに罰則が適用されるのでなく、その場所の管理者も連座することになる。罰則は最高5千万ルピアの罰金と6ヶ月の入獄。
ところで、自動車排気ガス規制もその都条例で禁煙と同時に施行されることになっている。コサシ・ウィラハディクスマ都庁生活環境管理庁長官は、自家用の四輪・二輪車に2月4日から排気ガス検定義務付けが適用される、と語る。商業車は車検のさいに同時に排気ガス検定が行われるので、従来通り車検を受けていればよい、とのこと。同庁はこの排気ガス検定を実施する指定業者を115ヶ所用意した、と言う。80ヶ所は認定が終わっており、もう35ヶ所は認定書発行準備にかかっているとのことで、2月4日には都内に検定場所が115ヶ所できることになっている。検定料金については、基本的に市場メカニズムに委ねることにしており、都がタリフを決めることはしないが、5万ルピア以上にはしないように上限を設けている、と同長官は述べている。


「フォルマリン騒動で賢い消費者が増加」(2006年1月12日)
フォルマリン騒動が全国を揺さぶっている中で、地道に倫理を守ってきた生もの生産者に脚光が当たりはじめている。豆腐、生麺、塩魚などの生産者は、消費者がそれを望むからとうそぶいて非合法防腐剤を使用し、製品の歩留まりを違法なやり方で向上させて汚い利益を享受していたが、非合法防腐剤使用が全国問題となったいま、生産者の大半が売上半減というしっぺ返しを受けている。まじめに稼業にいそしんできた生産者は、しっぺ返しどころかとんだ巻き添え、というところだが、中には賢い消費者たちがまともな生産者を求めてごみごみした下町の小規模生産者を探訪するという運動もはじまり、はきだめの鶴よろしく、みめ麗しい中上流の若奥様たちがうす汚れた横丁を出入りしている姿も最近の話題に加わっている。
最近の賢い消費者たちは、見た目きれいで長持ちする食品を敬遠し始めている、とそんな消費者のひとりは語る。デポッ市サワガン地区に住むアーティストのニア・パラミタ27歳は、見た目醜く、崩れやすく、日持ちしない豆腐を選んで買うようにしている、と語る。「信頼の置ける豆腐生産者からいつも買ってますよ。わたしはもうそこのお得意さんになっちゃったもん。わたしの親戚や友人たちもみんな同じようにしてるわ。フォルマリンは嫌でしょ。だから魚もまだ生きてる鮮魚だけを買ってるわ。」
同じ地区の別の消費者は、フォルマリン騒動盛んなおり、豆腐生産者を訪問し、製造工程でフォルマリンが使われていないことを確認した上、そこから買うように変えた、と語る。この主婦はそうやって買った豆腐が長持ちするよう、まず豆腐を水で煮た後、塩水に漬けて冷蔵庫で保存している。三日は持つそうだ。見た目完璧、食欲をそそる色と香り、そしてその姿。そんな要素は食材選択基準から落とされつつある。有機野菜を選んでいる消費者は、虫食いのある葉っぱを目安にしている、と語る。輝くような色艶、完璧な姿は、農薬や化学肥料・ホルモンなどの賜物ではないか、と疑っているのだ。
サワガン地区でタフスメダンを作っている小規模生産者ムサ30歳は、「大勢の人が豆腐作りを見物に来たよ。でもうれしかったなあ。おれはフォルマリンもほかの防腐剤もなにひとつ使ってないから。それがわかったら、みんなおれの豆腐を買ってくれた。豆腐作りの道具も、洗剤で洗ったりしない。たわしでこすって水洗いするだけだ。洗剤を使うと残り香で豆腐の風味がぶち壊しだから。」ムサの作る豆腐は柔らかく、崩れやすい。冷蔵庫に入れなければ、24時間で腐る。そんな豆腐だから、フォルマリン騒動で販売量ががた減りした際、売れ残りを何百個も捨てたり、それはもったいない、と工事人夫に無料で振舞ってやったこともある。ムサは豆腐作りを基本的にすべて自分の手でこなす。豆の選定から水選び、そしてbibit tahu と呼ばれる豆腐凝固剤まで自分で用意している。水は井戸水。豆は市場を輸入大豆が満たしているから仕方ないが、国産大豆のほうがうまみがある、とかれは言う。凝固剤は水と酢をある割合で混ぜ、熱した後一晩放置して熟成させる。それを大豆の絞り汁と3対7の割合で混ぜ、固まるまで静かに攪拌する。固まりの表層に黄色い水が残るが、それはまた次の豆腐を作るときに凝固剤として使用しているそうだ。


「フォルマリン汚染都市はあと6」(2006年1月20日)
フォルマリン含有食品問題で、食品薬品監督庁は全国26都市での市場監視を続けている。各都市では、市場で購入されたサンプルに対して分析テストが実施され、フォルマリン等の有害防腐剤が含まれているかどうかがチェックされている。その26都市とは次の通り。
Ambon, Bengkulu, Banjarmasin, Denpasar, Jambi, Jayapura, Makassar, Manado, Padang, Palangkaraya, Pontianak, Semarang, Samarinda, Yogyakarta, Medan, Banda Aceh, Mataram, Bandung, Palu, Kupang, Surabaya, Jakarta, Pekanbaru, Kendari, Palembang, Bandar Lampung。各都市では、町中の市場から集められた豆腐がすべて衛生規準に合致しているかどうかが検査される。サンプル数は都市によって異なり、検査された中ですべて合格していればグリーン表示がつけられる。たとえばジャカルタはサンプル47個中2個が不合格で、いまだに汚染地区とされている。上のリストでスラバヤ以下の6都市は汚染地区であり、バンダルランプンが汚染率最悪の81%となっている。他の汚染都市は汚染率10%以下。これまでの検査でグリーン表示がつけられた都市でも、この検査は今後も継続していく、と同庁は表明している。


「2月4日から首都で禁煙開始』(2006年2月3日)
大気汚染防止に関する2005年都条例第2号の実施規則として出された都知事令2005年第75号の実施が2月4日からはじまる。禁煙場所として指定されたのは公共ファシリティで、宗教行事の場所や公共交通機関などがそこに含まれている。さらに仕事場はエアコンの有無に関わらず禁煙であり、また学習が行われる学校などの場所も禁煙エリアになっている。
そのため都庁はモナス、タムリン、スディルマン周辺にある89ヶ所のビルを禁煙パイロットプロジェクト地区に指定し、すべてのビルには喫煙場所を設け、喫煙場所以外での喫煙を厳禁するように指導している。喫煙場所としては、閉鎖された場所を用意し、換気装置を設けて空気の清浄化を図らなければならないことになっているが、パイロットプロジェクト地区内のビルオーナーの中には、地代が大変高いために十分なスペースの喫煙場所を設けることができない、と反論しているところも多い。しかしコサシ・ウィラハディクスマ都庁生活環境管理庁長官は、禁煙場所で喫煙者が喫煙するのを放置した場合、その場所の管理者が罰せられ、事業停止措置や事業許可取り消し処分を受けることがありうる、と語っている。また禁止場所で喫煙した者は、最高6ヶ月間の拘留もしくは5千万ルピアの罰金が科されることになる。パイロットプロジェクト地区は都庁職員の監視対象とされ、職員が定期的に見回ることになるが、違反者が発見されても職員は警告や注意を与えるだけで法執行をくだすことはない、とも同長官は述べている。悪質な違反者に対しては警官を呼んで、警官がそれに対応することになっている由。
愛煙家は、「Kawasan Dilarang Merokok」と表示された場所では、よくよくご注意を。


「都内、禁煙実施の状況」(2006年2月7日)
2月4日の禁煙開始から土日を過ぎての週明けも、都民の喫煙情況にさしたる変化は見られない。都内一部地区で都庁行政警官など一部職員が4日からさっそく法の施行を始めたが、広大な都下では大海の一滴。職員たちは、法規で禁止されている場所で喫煙している市民に注意と警告を与えるだけで、すぐに処罰にかかろうという姿勢は見られない。テレビニュース等で取り上げられている話題が、モナス・タムリン・スディルマン地区のオフィスビルに喫煙場所を設けさせるというパイロットプロジェクトであることも影響して、禁煙はその地区だけだと理解している都民も少なくない。都側の言う公共エリアの意味合いがまだはっきり理解されていないため、都民の判断はまちまち。コサシ・ウィラハディクスマ都庁生活環境管理庁長官によれば、禁煙場所は7カテゴリーあり、そのうちの五つは厳重な禁煙対象とされている由。教育の場所、宗教礼拝の場所、子供の活動場所、公共運送機関、保健医療の場所がその五つで、それらの場所では屋内屋外に関わらず、喫煙が禁止されている。他の二つの場所は屋内が禁煙とされているので、屋外に出れば喫煙は可能だ、と同長官は説明している。
しかし都庁広報局の出したプレスリリースによれば、喫煙の禁止された公共スペースとは、
1)役所や民間あるいは個人のオフィスおよびそれらの入っているオフィスビル
2)公共サービスの場、つまり鉄道やバスの停車場やターミナル、空港、ショッピングセンター、モール、デパート、ホテル、レストラン等
3)宗教礼拝の場
4)子供の活動に関連する場、つまり保育所、子供養育場所、子供の遊び場など
5)公共運送機関、つまりタクシー、乗合バス、その他水陸空の交通機関の中
となっており、それらの場所以外では喫煙規制は行われない、と記されている。
レストランの中には分煙を始めたところも出始めている。パイロットプロジェクト地区外のモールなどでも、喫煙場所をあらたに設けた所もある。一方、パイロットプロジェクト地区内のオフィスビルが、スペースがないという理由で喫煙場所設置に着手しないところもある。そのようなオフィスビル運営者の中には、室内禁煙なので、喫煙は室外で行えばよいと理解し、通路やホールでの喫煙を奨めているところもある。
ジャカルタの外から都内に通勤している人々にとって、上のプレスリリースの定義を聞いてもまだ判然としない。ましてや禁煙令を施行したのが首都だけであれば、他州からジャカルタへやってくる長距離バスへの規制実施はどうなるのだろうか?都内バスの運転手や車掌みずからタバコ片手に乗務しているのを、都庁はどこまで本気に規制するのだろうか?銀行へ行ったら、エアコンの効いた空間内にタバコの煙が充満していた、と語る市民もいた。
制度を整え、設備も整備するが、人間に対する規制を一番の苦手としている文化の中で、はたしてこのプロジェクトは公平に実践されるものなのだろうか?


「家庭廃水浄化処理の義務付け」(2006年2月17日)
首都の地下水は大腸菌汚染が進行していることを東ジャカルタ市生活環境管理庁長官が明らかにした。東ジャカルタ市民の上水利用は、50%が地下水を利用しており、残りは都営水道会社からの供給によるものとされているが、地下水汚染はもはや95%近くにまで達しており、大腸菌から免れている水を探す方がむつかしい状況にある。地下水の大腸菌汚染は2002年から顕著になり、水質は悪化の一途をたどっている。その状況について長官は、人間の汚物を含めた家庭生活廃水への対応が取られていない結果であり、中でも汚わいを蓄えるセプティタン(septic tank) の構造問題に加えて、住居が密集しているためにセプティタンと上水用地下水を汲み上げる井戸が接近していることが水質汚染の主要因となっている、と述べている。セプティタンと井戸は10メートル以上離さなければならないが、住宅密集地区でそれは実現不可能だ。長官はそのため、地下水を飲用に供するさいには、必ず事前に100℃で煮沸するよう住民に呼びかけている。
もうひとつの問題は産業廃水問題で、中規模以上の工場には環境汚染対策法規を強制できても、きわめて小規模な家内工業に廃水浄化設備を持たせることは至難の業であり、政府の指導と対策が強く求められている部分でもある。
都内で家庭排水の浄化が行われているのは南ジャカルタ市スディルマン〜クニガン〜トゥベッ地区のみで、スティアブディ地区にある水質浄化場で処理が行われている。しかしそこで処理されている汚水は、都内全体から見ればわずか2%に過ぎない。この家庭廃水処理問題について都庁は2005年都知事令第122号で、排水路に流す前に各家庭が廃水処理を行うことを義務付けている。各家庭やさまざまな施設は、トイレから出る汚水をはじめ、浴室、洗濯、台所、洗面所等からの生活廃水を一旦浄化し、排水基準に合格するクオリティにした上でなければ流してはならない、とされている。それを義務付けられた対象は、一般家庭、住居、アパート等集合住宅、店舗住宅、事務所、病院、モール、スーパーマーケット、レンタルホール、ホテル、産業廃水を生む事業所、学校、畜産飼育場、屠札場で、最新技術を用いた浄化設備を通さなければ廃水は捨てることができない。その設備はIPAL(廃水処理設備)と呼ばれ、トイレ廃水と非トイレ廃水に分別したあと、微生物を用いて廃水を分解させる処理を行うもので、このIPALはある程度のスペースが必要とされているため、都庁は住民共同体単位での設置と使用を進めて行く方針。また新規の建物建設にはIPAL設置条件が既に加味されており、デベロッパーはその対応が建築許可の条件に加えられている。


「コンパス紙への投書から」(2006年2月22日)
拝啓、編集部殿。うちの子供が、チレボンのムカルジャヤの製品であるゼキスナックを買いたいからと言ってお金を求めましたので、お小遣いをあげました。しばらくしてから戻ってきてそれをわたしに見せ、ゼキスナックにはいつもお金が入っていると言うのです。袋を開くと、本当にとても細かく折りたたまれた1千ルピア紙幣が出てきました。でもその紙幣はどろどろに汚れたとてもきたない状態のものなのです。そのお金を手に入れたうちの子供は、またゼキスナックを買いに町内のワルンへ出かけました。妻や子供が言うには、子供たちはみんなそのスナック菓子が大好きで、そればかり買っていると言うのです。ただしそのわけは、それがおいしいからでなく、袋の中にお金が入っていることを期待して買っているのです。そのスナック菓子生産者の行っている商売のやり方は、運がよければ当たるという意味で、まだ年端も行かない子供たちに博打を教えているのと同じです。
そのような販売促進行為は子供たちのモラルを破壊します。そのためにわたしは、そのような行為を行っている生産者に対し、警察、地方自治体、関係当局などが措置を取るよう要請します。ましてや、袋の中に入れられている紙幣が不潔な、まったく妥当性を欠く状態のものなのですから。衛生面から見ても、それは子供に危険を及ぼすものにちがいありません。[ デポッ在住、アフマッ・ジャエラニ ]


「禁煙規則違反者への処罰は4月6日から開始」(2006年4月6日)
都庁が2006年2月6日から実施することにしていた大気汚染防止に関する都条例の二本柱である喫煙場所規制と自動車排ガス規制のうちの喫煙については、実施が二ヶ月間延期されたあと、ついに4月6日から実施されることになった。喫煙してよい場所といけない場所を明確に区分し、いけない場所での喫煙を厳しく排除していこうという趣旨の取締りが6日から開始される。喫煙厳禁場所としてあげられているのは、保健サービスが行われる場所、教育が行われる場所、子供が活動する場所、宗教催事の場所、公共運送機関、更には公共エリアや勤労場所も禁煙場所の中に含まれている。一方オープンスペースは喫煙可能場所とされている。
都庁は既にムルデカ広場周辺からタムリン・スディルマン通り一帯のビルをパイロットプロジェクトに指定し、ビル内禁煙と喫煙者用スペースの用意をビル管理者に命じている。6日以降、都庁文民公務員捜査官がそれらのビルを回り、禁煙規則実施状況を監視すると共に違反者を検問することになる。文民公務員捜査官は24時間勤務でないため、巡回監視は都庁の勤務時間にあわせて行われるようだが、監視者がいないから違反を犯していいことにはならない、とコサシ・ウィラハディクスマ生活環境管理庁長官は述べている。もし規則違反者が捜査官に捕まった場合、違反者への罰則は最高5千万ルピアとなっているものの、個人の場合は調書を取った後違反者の処理は警察に委ねられる。個人に対してはまだ最高金額の罰金を科す段階でないが、ビル管理者に対しては即厳しい対応が与えられる。警告、罰金からはじまり、最後は事業許可取り消しまでの処罰が予定されている。
ところで、公共運送機関の代表である都市バスや小型乗合アンコッなどの運転手は、禁煙などとんでもない、という反応を示している。コアンタスビマ路線番号102の運転手は「運転中にタバコを吸うなと言われても難しいや。集中力がなくなるぜ。」といい、メトロミニやコパジャ、あるいはミクロレッの運転手や車掌たちも類似の発言をしている。「タバコを吸ってるとき窓は全開だから、煙が乗客の方へいくことはない。」と話す者もいる。運転手たちは概して、なるようになれ、といった雰囲気で、「気にしないよ」を連発している。
禁煙についての遵法作戦は都内5市で一斉に開始される。中央ジャカルタ市では、テルコムビル、プラザBII、プラザインドネシア、運通省ビル、都庁地方収入局ビル、プラザスナヤンの6ヶ所を重点監視ターゲットに指定し、係官が監視を始める。遵法作戦で捕まった者は裁判所に届けられて軽犯罪法廷で裁かれることになる。北ジャカルタ市は遵法作戦ターゲットをモールクラパガディンとメガモールプルイッにしぼって実施する。作戦開始は午前10以降になるとのこと。公共スペースで喫煙している市民だけでなく、建物管理者も喫煙場所を用意していなければ摘発されることになる。西ジャカルタ市はモールタマンアングレッとチプトラモールで作戦を実施する。東ジャカルタ市はモールチジャントゥンとチリリタン卸売りセンターで実施する。


「出産適齢女性の二人にひとりが妊娠中?!」(2006年5月10日)
都庁のデータによれば、2004年の首都の人口は7,471,866人で、そのうち女性は3,601,115人となっている。360万女性の中で出産適齢者は150万人おり、今年は71万人の赤児が出産されるだろうと推測されている。
ところがその赤児の母たちのうちで、いまだにお産ドゥクンの手を借りて出産する者が2%いるとファウジ・ボウォ副都知事が明らかにした。つまり1万数千人が正式に医学を修得していない人の手を借りて出産していることを、それは意味している。ジャカルタの新生児出産時死亡率はインドネシアの他の地方に比べて低い。1千分の18というのが現状で2年前の1千分の20から低下したが、それでも他のアジア諸国の1千分の10から12に比べたら、まだまだ高い。
副都知事は、医療に携わる者に対する資格認定制度を進めていくことを表明しているが、その一方で都民に対し、普段から民衆保健センター(Puskesmas)や保健所(Posyandu)を利用し、出産する場合にはできるだけ産婆にかかるように、と呼びかけている。


「タバコの次にされる栄養不良の幼児たち」(2006年5月15日)
全国にいる5歳未満の幼児の中で5,119,935人が栄養不良あるいは栄養不足だと世界保健機構(WHO)が2004年に報告した。栄養不良は貧困だけに起因しているのでなく、民衆の文化の中にある文化的社会的要因が招いている部分も見逃せない、とインドネシア大学政治社会学部人類学科のアフマッ・サイフディン教授が語った。同教授によれば、栄養と栄養問題は単なる保健問題ではなく、たとえば男尊女卑といった社会の中でいまだに保たれている価値観にも影響されている。これは文化の問題であり、社会が持つ価値観の問題だ。たとえば子供の栄養を優先しない考え方のひとつに男親が行う喫煙があげられる。子供が栄養不良になっているのに父親が喫煙をやめないという家庭はインドネシアにいくらでもある。タバコを吸うということはお金をタバコに消費していることであり、子供にたんぱく質を補給したり栄養を与えたりするものの購入にそのお金をあてることが可能であるにもかかわらず、父親はそのお金を灰にしている。アティカの家では、最初の子供がマラスムスを患ったが、回復していま6歳半になっている。ところが1歳7ヶ月の二人目の子供は栄養不良で体重が7キロしかない。アティカの夫は農業労働者で一日の収入は1万ルピア。夫は一日二回喫煙し、3千3百ルピアがタバコ代に消える。田んぼで一日身体を酷使した夫に「タバコをやめてくれ」とはとても言えない、とアティカは苦笑する。
健康・聡明・生産的な次の世代を育成するためには、タバコを子供の栄養より優先するような考え方が続けられてはならない。保健省国民栄養局栄養普及育成次局長は、インドネシア国民にとって大きい栄養問題が四つある、と言う。「たんぱく質、ビタミンA、鉄分、ヨードが不足している。妊婦10人中5人は貧血症であり、出産時のリスクと新生児の体重不足という問題を抱えている。幼児の栄養状態は悪循環に陥り、小学生の10人に4人は貧血症、10人に3人はヨード不足だ。」と同次局長は述べている。このような状況の中で、対症療法的アプローチは解決をもたらさないことを関係者は理解している。問題の抜本的解決なしに栄養不良問題が解決できると期待してはならない。そのために必要とされているのは、民衆社会、中でもマージナルなポジションにいる社会階層に活性化の機会を開くことのできる予防的啓蒙的アプローチの推進なのである。


「世界ナンバーワンの子供喫煙国」(2006年6月2日)
国会第9委員会メンバーのハキム・ソリムダ・ポハン(Hakim Sorimuda Pohan)議員が、インドネシアの子供喫煙者は13.2%もおり、インドネシアは世界トップの子供喫煙国になっている、と語った。若い世代の健康を守るために国会議員204人が国会議長と国会立法院に対して、タバコの害の防止に関する法案の検討を始めるよう働きかけていることを明らかにした。スカワティ・アブバカル(Sukawati Abubakar)国民福祉統括相デピュティは子供と未成年者に対するタバコ害に関するサーベイから、ジャカルタの中学生の34%が喫煙経験を持ち、16.6%は喫煙常習者であると報告した。またブカシでは中学生の33%が経験者で17.1%が常習者、メダンでは34.9%が経験者で20.9%が常習者であり、ジャカルタの中学生は66.8%が家庭内に喫煙者がいるため間接喫煙者になっており、また家の外でも81.6%が間接喫煙者になっている。
ドゥイジョ・スソノ(Dwijo Susono)保健省専門スタッフはインドネシア人の70%近くが喫煙常習者だと言う。そのため中国、アメリカ、ロシア、日本に次いでインドネシアが世界第5の喫煙大国になっているとのこと。喫煙者は家でもタバコを吸っているためにほとんどすべてのインドネシア人が間接喫煙者になっていると指摘した。消費者保護財団のフスナ・ザヒル(Husna Zahir)常勤役員は、政府が本気で禁煙を推進する意思を持っていないと批判した。「タバコ生産から得られるチュカイ収入が27兆ルピアに上っていることから、政府は喫煙習慣を国民から軽減させる努力を真剣に行っていない。しかし煙害による疾病対策に81兆ルピアものコストがかかっていることを政府は認識していない。政府はただちにたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約を批准しなければならない。」同財団役員はそう訴えている。


「劇物含有市販殺虫剤に市場回収命令」(2006年6月8日)
市販家庭用殺虫剤HITが政府の禁止した有機リン系劇物であるジクロロボスを含有していることから、政府農業省が生産者に対し製造を即時停止し、市場から全商品を回収するよう命令した。問題となったのはスプレータイプのHIT2,1Aと容器入り液体のHIT17Lのふたつ。ジクロロボスの一般家庭用流通は2004年4月に政府が禁止したが、HITの生産者であるPT Megasari Makmur 社はその後も同じ成分でそれらの商品を生産していたことが明らかになった。
農業省は6月7日にボゴール県チケアスのメガサリ社を抜き打ち検査し、同社に対していくつかの措置を取るよう命じた。即日出荷を停止すること、二ヶ月以内に市場から商品を回収して廃却すること、当該商品の広告宣伝を停止すること、消費者に対してそれら商品を使用しないよう広告を出すこと等に関してメガサリ社もそれに従うことを約束した。同社は2004年5月から2006年5月までにHIT2,1Aは2,293トン、17Lは489万リッター生産しており、製品在庫はスプレータイプが9.9万個、容器入りが14.9万袋ある。しかし政府は二年間の生産量が少なすぎると感じており、正確なデータを提出するよう生産者に要求している。
メガサリ社総務課長は、従来の成分に取って代わる新しいフォーミュラのライセンスがまだ降りておらず、しかし生産は止めるわけにいかないのでこのような結果になってしまった、と説明している。農業大臣補佐専門スタッフは、事情はどうあれメガサリ社が違反を犯したのは明らかであり、市場からの回収が二ヶ月以内に完了しなければ殺虫剤の生産許可を取り消すことになるだろう、と語っている。事業許可を取り消すのは工業省の管轄なので、そこまでは農業省にできるものでない、とも付け加えている。


「老齢で子供を作るのはよくない」(2006年6月10日)
従来女性に対して言われていた言葉だが、最近では男性にも適用されるようになった。米国国立科学アカデミーに発表された論文によれば、男性のスペルマも年齢とともにDNA断片化が高まって劣化していくので子供を作るのは若いうちがよい、と結論付けられている。そこまで読んでいたかどうかは別にして、インドネシアの家族計画プログラムがうたっている4T撲滅の中にも高齢出産がターゲットにされており、これは女性だけの問題ではないと男性も瞑すべきことがらであるようだ。ちなみに4Tとは下のもの。
Terlalu muda punya anak  若年期の出産
Terlalu tua punya anak 高齢期の出産
Terlalu sering punya anak 高出産回数
Terlalu banyak punya anak 多子出産
KBと略称される家族計画プログラムは家族計画統括庁がそれまでインドネシア社会で一般的だったそれら4T要素を軽減することをモットーに推進し、35年間の間に大きい成功を収めた。プログラム開始時は母親の出産時死亡が一時間あたり5〜6人だったものが今では2人にまで減少したし、胎児の出産時死亡も減少している。特に大きい効果が上がったと言われているのは、インドネシアの人口増加の鈍化に貢献したことで、このプログラムが行われていなければインドネシアはいま3億人を超える人口を抱えていると推定されている。
統計によればインドネシアの2千5百万世帯がいまKBを行っている。避妊を行っている家庭の比率は1987年の44%から2006年には58%まで上昇しており、インドネシアは世界でもトップクラスのKB成功国だと評されている。ちなみに他の発展途上国を見れば、バングラデシュ43%、インド43%、マレーシア30%、フィリピン28%、パキスタン20%、カンボジャ19%などという数字が並んでいるので、インドネシアの比率がダントツであることがわかる。1970年代初期にインドネシア女性はひとり平均6人の子供を持っていたがいまでは2〜3人に減少しており、おまけにKBを行っている2千5百万世帯のうち6割は民間保健機関が行っているプログラムに従い、政府が行っている政府補助によるプログラムに従っているのは15%しかいない。
1990年から2000年までのイ_アの人口増加率は平均1.49%で、これはその前の10年間の数値である1.97%から大きい低下を示している。


「病気しない顧客が優良顧客」(2006年6月16日)
2006年5月11日付けコンパス紙への投書"AXA Life Tidak Adil"から
拝啓、編集部殿。わたしの母はとても不公正な扱いを受けました。母は4年前からAXAライフインドネシアのスマートケア保険証券保有者になっています。2006年3月17日、AXAから母宛に手紙が届きました。それには『あなたのクレーム履歴を分析した結果、あなたのAXAスマートケア健康保険証券の更新をAXAは受け付けません。』と記されています。こんな一方的な話があるでしょうか?わたしはAXAのカスタマーサービスマネージャーに二度も手紙を送りましたが、反応は何もありません。
消費者としてわたしどもは、AXAに賤しめられ、損失を蒙っています。健康保険の顧客になることの最大の目的は保護を得ることであり、そのために安くない保険料を支払っているのです。わたしの母はこれまで自分の義務を忠実に果たしており、言うまでもなく母には保護を得る権利があります。過去四年間で母は二度入院し、AXAの保険を利用しました。二度入院したから一方的に関係を断つというのはフェアなことなのでしょうか?四年間AXAの顧客になってきた母に健康保険契約の更新を認めないというのですから。わたしどもは本当に騙された気持ちです。病気をしない、クレーム履歴のない消費者だけに保護を与えようという保険会社を選択したのがわたしどもの間違いでした。とても残念です。この保険会社は保険料を取ることだけを望み、顧客が保険の保護を必要としているときに放り出すのですから。[ ジャカルタ在住、クルニア・クマラ ]


「受難の赤児たち」(2006年6月29日)
6月26日、東ジャカルタ市パンカランジャティ地区を流れるカリマラン川で赤児の死体が発見された。この赤児は頭と両腕がなく、既に青く膨れ上がった状態で発見されており、警察は検死ラボにその遺体を送って調査を依頼している。殺害されたのかどうかということについては検死結果が出ていない段階で断定できるものではない、と東ジャカルタ市警マカッサル署はコメントしている。赤児の遺体は川の流れに乗って発見場所まで送られてきた可能性が高く、捜査地区の特定は困難なもよう。
また同じ日の早朝、ブカシ市メダンサトリア地区カリバル町に住む主婦二人が捨て子を発見して警察に届けた。ふたりはブカシ市スルタンアグン通りのラジエーター修理業者の店の前の路上に置き去りにされている赤いバッグに興味を引かれ、それを調べたところ中に赤児が入っていたのに驚いたとのこと。警察はその赤児を発見場所からほど近いアナンダ病院に委託した。明るい肌の色をした体重2.8キロのこの赤児は元気で、ひたいにある擦り傷はバッグのファスナーが閉められるときについたのではないかと見られている。委託されたアナンダ病院では赤児の状態を調べたあと介護を行っているが、この赤児はへその緒がまだ取れておらず、またその結び方も丁寧になされているため、二日から四日前に産院あるいは病院で産まれた子ではないかと推測されている。


「サバ缶から釣り針」(2006年8月15日)
2006年7月11日付コンパス紙への投書"Kail dalam Ikan Kaleng"から
拝啓、編集部殿。わたしはタングラン県スルポンのアルファマートでボタンA1印のサバ缶詰を買いました。帰宅してすぐに缶詰を開け、夕食のために用意しました。さて夕食の時間になって食事が始まりましたが、そのときわたしの妻が口の中で何か異物を感じました。思いも寄らないことに、妻の口の中にあったのは2センチくらいのテグス糸がついた釣り針だったのです。尖った針先が舌や口腔に突き刺さらなかったのは幸いでした。わたしたちはみんな驚いてしまい、食事の雰囲気がまずくなりました。特にそのとき友人がひとり同席して同じ食事を摂っていたのです。わたしは釣り針と糸、そして空き缶を保管しました。生産者がこの事件を調査してどうしてこんなことが起こったかを究明できるように、と考えたからです。食べる前には中に釣り針や糸やその他の異物が混じっていないかどうかがわかるように魚肉をよくほぐしてください、といった注意書きが缶詰に表示されるべきではありませんか?しかし缶詰の外側を観察したところでは、材料:サバ、トマトソース、塩、コーンスターチ、生産者:Maya Food Industries Pekalongan-Indonesia、PT Indo Maya Mas, Jakartaのために生産、ライセンス:Mitsui Co. Ltd., Tokyo, Japan と書かれているだけです。
このような缶詰食品に日本にしろどの国にしろ、ライセンスを与えるのは適切でないと思います。それともそのような記載は食品の品質管理規格を反映していないただのお題目なのでしょうか?[ スルポン在住、サソンコ・アディヨノ ]


「上手なヤシ油の選び方」(2006年8月25日)
インドネシアで調理用に使われている植物油はパーム椰子から作られている、いわゆるヤシ油だ。主な調理方法は揚げ物あるいは炒め物でイ_ア語ではそのものずばりminyak goreng と称する。日本語にすれば「揚げ油」。食べ物ビジネスはたいていが揚げ物なので、大規模食品製造業も道端のカキリマも業務用として大量に揚げ油を消費する。使われた油が廃油として再販されることは少なくなく、それが一般家庭用にリサイクルされて戻ってくることは常識論としてはないことになっているが、どれだけ確信を持ってそう言えるかということになるといささかおぼつかなくなる。ましてやここ最近、あるファーストフードチェーンで使われた廃油がバージン油に混ぜられてパサルに出回っているという噂が高まっているのだから。飲食品産業協会役員は、ファーストフードチェーンから廃油が売られているのは確かだが、それが人間の消費用にリサイクルされることはなく、殺虫剤、動物用飼料、バイオディーゼルなどに使われている、とその噂を否定する。ところが、「よしんばあったとしても、ファーストフードチェーンから出される廃油の量は知れており、その中のほんの一部が逆流するだけだからたいした量ではない。」と否定の否定を行い、まるで少量だから構わないのだとでも言いたい発言を行って国民消費者を煙に巻いてくれる。
そのために、パサルでブランドも付けずに小分け売りや量り売りをされている揚げ油を買う中流から下の家庭の主婦はバージン油の選び方を知っている。ということになっているが、それがまた人によって異なっているところがインドネシアというものの真髄のようだ。揚げ油には外見でさまざまな色に分かれている。白っぽい黄色、黄金色、オレンジがかったものや赤みがかったもの。さらに透明度の高いものから濁ったものまで千差万別。消費者が主張する正しい選び方の中にはいくつかの傾向が見られる。透明度が高いほど高品質であると考えるひとたちがいる。また黄色がかったものや黄金色が良いとするひとたちもいる。それに関してSEAFASTの役員は、色は品質基準として使えず、クオリティを測るのは透明度と臭いだと語る。よく澄んでいて饐えた臭いがしなければそれは品質の良い油であるとのこと。色に付いて言うなら、パーム椰子から作られた揚げ油は赤みがかったものの方が良い。パーム椰子にはベータカロチンが含まれているので赤っぽい色になる。ところがイ_アの消費者は黄色でよく澄んだ油を好むために、生産者は何回も濾過を行って赤みを除く。すると天然のプロビタミンAも失われるから、生産者はビタミンAをその油に添加する。その濾過プロセスの違いで品質と価格の差が出現するとのこと。濾過回数を増やせば透明度は高まり、また使われる濾過資材によってコストが決まる。廃油が混ぜられた場合、濾過をどれほど行おうとも廃油に溶け込んだ異物の粒子が残るために完璧な透明度を得ることができない。次に、一度揚げ物に使われた油には食品の臭いが移る。フライドチキンの廃油であれば、必ず鶏の臭いがする。また廃油は、使ったばかりであっても、あるいは普通の温度に熱しただけであっても、煙を発する傾向が高い。もし泡がたくさん出る油であれば、それはもう使い物にならないので捨てた方が良い。健康のためには同じ油の使用が4回までと限定される必要があり、廃油は3回まで既に使われたと見るべきである由。しかしあと1回分の使用に際しても、その油を熱したときに高濃度で黒っぽくまた泡がたくさん生じているなら、その油は諦めて捨てた方が良い。
容器入りで販売されている食用油の中にノンコレステロールと表示してあるものがある。しかしコレステロールとは動物油の中にだけ存在するものであり、その表示は消費者をだまして買わせようとする意図が明白であるため、そのような表示に騙されてはならない。また植物油にはコレステロールはなくとも脂肪酸が含まれており、不飽和脂肪酸の過剰摂取は健康に良くないため、油の摂取は極力控えめにするようにとも同役員は呼びかけている。


「若年女性の不慮の妊娠はまだ多い」(2006年9月15日)
イ_アの女性にとって妊娠出産問題は依然として高いリスクになっていることを、イ_ア家族計画の会生殖保健専門委員会メンバーの医師が公表した。ロイ・チョン医師によれば、2002年度イ_ア保健デモグラフィサーベイで妊婦の出産時死亡は10万件中の307、15〜19歳という若年女性の妊娠も同一年齢人口1千人中53件という結果が示されている。イ_ア家族計画の会が2000年から2003年まで独自に行ったサーベイでは、若年妊娠女性3万7千人中の30%が不慮の妊娠であることを表明しており、その高さが関心を呼んでいる。
オルバ期には世界で称賛されるほどの高い効果をあげたイ_アの家族計画は、地方自治実施後現場段階での運営が地元に一任された形になってしまい、中央と現場の間での情報の疎通が大幅に劣化したため今では現場段階での状況がおぼろげにしかわからない、とチョン医師は語る。そのために現場推進者や地方行政管理者は早急にその改善を進める必要があり、地元住民の妊娠出産に関わる生活の質的向上をはかるためにはそれが不可欠であると述べている。


「タバコの消費はジャワが最大」(2006年9月29日)
イ_アの巨大産業であるタバコはカリマンタンがもっとも小さい市場であり、反対に最大市場はジャワ島であることを業界者が明らかにした。HM Sampoerna社の生産マネージャーは、2005年のタバコ国内総生産量は2,023億本で、そのうち69.2%がジャワ島で消費された、と述べている。スマトラは16.1%、東部イ_ア地方は13.6%、カリマンタンは1.2%である由。
品種別では丁子の入ったクレテッ(kretek)タバコがもっとも愛好されている。機械生産されたフルフレーバーは全体の37.6%、そして機械を使わない手製クレテッタバコも37.5%とほぼ同率で並び、さらにマイルド系(低タール低ニコチン)機械生産クレテッが17.2%のシェアを取っていて、クレテッタバコは全体の9割以上を占めている。白タバコ(rokok putih)と呼ばれる紙巻シガレットは7.7%のシェアしかない。イ_アでタバコ産業は膨大な労働力を吸収しているセクターであることから、機械化による労働力削減は大きな社会問題を招くおそれが高いために政府は各メーカーの製造機械導入とその生産量を厳しくコントロールしている。またチュカイ(cukai)と呼ばれる物品税の税率に差をつけて機械製と手製の生産量を調整する方向に誘導している。チュカイはタバコとアルコール飲料に掛けられる物品税の一種で、社会での流通量コントロールを目的にしている面を持っている。
サンプルナ社はDji Sam Soe とA Mild という二銘柄で手製フルフレーバーと機械製マイルドの二系統クレテッ市場の個々におけるリーディングメーカーとなっており、白タバコもやはり同社系列のPT フィリップモリス社製マールボロが首位を奪っている。機械製フルフレーバー市場でのみサンプルナは他社の後塵を拝しているため、同社は来年そのマーケットに攻勢をかける計画にしているが、タバコ販売者が消費者に直接試飲を勧めるのは法令で禁止されているため、プロモーションの難しさをどう克服するかに同社は頭を悩ませている。


「危険!お脳ブランクの看護婦」(2006年10月5日)
2006年8月16日付けコンパス紙への投書"Suster Teledor Berikan Suntikan"から
拝啓、編集部殿。2006年7月21日午前11時15分、わたしは生後13ヶ月の子供を都内メンテン地区のブンダ病院に連れて行きました。子供は手術を受けなければならないので、担当医は子供のラボテストと肺のX線検査を命じていたのです。わたしはユリヤフリ・ラザッ医師に面会してそれらのテスト結果を報告しました。医師は子供が結核に感染していないかどうかを確認するためにマンツーテストを受けるよう奨めました。そのあと看護婦が子供に注射しました。わたしが保険求償のために医師の診断書を求めたとき看護婦が、医師がわたしに話したいことがあるので呼んでいる、と言いました。医師の話を聞いてわたしはとても驚き、また落胆しました。なんとその看護婦は子供にマンツーテストの注射でなくBCG接種を行ったというのです。そしてその看護婦の言い訳を聞いてわたしはもっとがっかりしました。「すみません、今日の夕方故郷に帰る予定なのでわたしブランクになってたんです。」プロ意識の少しも感じらない、とても受け入れることのできない看護婦の告白でした。結局本人が自分からBCG接種費用を負担すると言い出してわたしは支払をしないことになりましたが、そんなお金の問題でなくこれは看護婦という職業のプロフェッショナリズムに関わることがらです。もし間違えたのがBCG接種でなく、患者にとって危険なほかの種類の注射だったらいったいどうなるのでしょう?「わたし、頭がブランクだったのです」じゃ済まないことです。
看護婦というのは医者をアシストして患者の生命を預かる立場であり、集中力、真剣さ、根気強さなどが求められる職業です。担当医も他の医師も、BCGテストは臨床的に危険はなくマンツーテストと似たり寄ったりのものだ、と解説しましたが、マンツーテストの場合は結果が二三日後にわかるのに、BCGテストだと7〜10日もかかります。そのために、既に予定されていた手術日も変更を余儀なくされてしまいました。おまけにBCGテストは生涯取れない痕を身体に残します。そして数ヶ月先までわたしの子供の腕は赤く腫れて膿が出ることになるのです。[ 都内チピナン在住、ティア・タマラ ]


「有害成分含有化粧品が摘発される」(2006年10月12日)
食品薬品監督庁は、ブンクル、ランプン、デンパサル、クンダリ、パダン、プカンバル、ポンティアナッ、サマリンダ、ジャヤプラで違法化粧品1,002アイテムを市場から回収して廃棄したと公表した。2005年に行われた市場サンプルチェックでは10,896アイテムが検査対象とされ、そのうち124アイテムが問題ありとして市場での流通が禁止された。その問題とは、使用の禁止されている成分が含まれているもの、製品の届け出がなされていないもの、有名ブランドのニセモノなど。使用禁止されている有害成分は水銀、ヒドロキノン、ロダミンB、赤色K3など。2005年と2006年の検査でそれら有害成分を含んでいるのが判明したものはYen Lye YL II Day Cream, Arche Pearl Cream, Leeya Whitening Daily とNight Cream, Qubanyishuang Cream, Hengfang 印口紅など。在来型市場やモールで販売されているそれら違法製品は大部分が中国産。それらの製品の流通はジャワを避けて監視の緩い地方都市をターゲットにしている。
食品薬品監督庁は昨年154件の違反行為を裁判所に告訴したが、裁判所はそれらに対して罰金25万ルピアと3ヶ月の拘留措置といった軽い刑しか与えていない。


「若者を心臓病が狙う」(2006年11月6日)
1995年以来インドネシア国民の死因ナンバーワンとなった心臓病が、若い世代にも牙をむきはじめている。昔は45歳以上にしか見られなかった冠状動脈血栓症患者に27歳から32歳といった若い世代が加わりはじめている、とインドネシア心臓財団第二理事長は語る。これは時代の変転に伴って従来のライフスタイルやカルチャーに変化がもたらされたことに原因があり、経済や文化社会あるいはテクノロジーといった面での進歩はそのポジティブな部分だがときとして国民の健康にネガティブな影響をもたらすこともある、と同理事長は言う。中でも喫煙・麻薬・アルコール飲料の摂取増と身体的運動の減少、そして食事パターンのアンバランスが心臓の健康に悪影響を及ぼしている。2004年全国経済社会サーベイにもそんな状況が反映されており、喫煙者の喫煙開始年令は10歳で15歳から19歳の年令ブラケットでは60%が喫煙常習者となっている。一方15歳以上の国民の中で健康管理のために運動している者は9%しかいない。食事パターンの面からは、繊維、野菜、果実の摂取が不足している国民は99%にのぼる。
最近の子供はモニタースクリーンの前に座ってコンピュータゲームに長時間熱中し、食べるものはコレステロールと塩分の高いファーストフードがお気に入りという生活パターンのために肥満は避けがたく、更にその先に待ち受けているのが心臓疾患だ。そのため同財団は心臓疾患予防のために青少年の生活パターン改善を推進していくことに焦点をあてており、「青少年の健康な心臓」運動キャンペーンを今年11月5日に南ジャカルタ市スナヤンのインドアスタジアムでおよそ8千人の若者を集めて開催している。


「妊娠中絶が増加」(2006年11月13日)
中部ジャワ州インドネシア家族計画の会が妊娠中絶の増加を警告している。同会のハルトノ会長は、いまやイ_アでの中絶は年間2百万件に達するものと見られており、それが母親の出産時死亡率をアジアのトップランクに押し上げているひとつの要因でもある、と述べている。安全な妊娠中絶はきわめて少なく、中部ジャワ州では月60件、ジョクジャ・ジャカルタ・バリではもっと多くてせいぜい100件という数字である由。安全な中絶とは資格と能力を持った医療者によって行われるものであるが、そうでない人間によって行われる安全でない中絶が圧倒的多数を占めている。なぜそうなるのかという問題について同会長は、政府が安全な中絶に関する広報や社会告知を行っていないからだ、と語る。国民の多くは安全な中絶をどこで行ってもらえるのかよくわからず、その状況を利用して悪徳医療関係者が自分にはその資格能力があると言って売り込む。かれらは一件当たり比較的高額の150万から200万ルピアをその代金として徴収するが、手術の処置や投薬などが安全でないために多くの患者が後遺症を得たり死亡したりしているのが実情だ。政府は保健法令を盾にして妊娠中絶そのものをタブー視しており、そのバックには宗教文化的な問題がからんでいるのだが、少なくとも安全な妊娠中絶ということだけに関しても国民に情報を与えようとする姿勢がいまだにない。


「2008年から外国人医師が増加する」(2006年11月17日)
2008年のアセアン域内通商自由化で外国人医師の増加が見込まれており、国内医療制度の中に一般医から専門医への患者紹介システムを早く確立する必要がある、と医師会首都支部長が発言している。2005年のインドネシア医師会データでは、国内の医師総数は46,926人で病院数は1千3百ヶ所であり、専門医は14,261人いて内科医が1,580人、小児科医が1,882人、産婦人科医が1,608人などとなっている。医師の数は国民人口に比べて圧倒的に不足しており、国民5千人に医師ひとりという現状はマレーシアの国民7百人に医師ひとりという情況に比べてはるかに劣っている。一般医はこの先何年かかければ必要な数を満たすことができるだろうが、専門医は大学のコースがまだ少ないために不足状態が続くものと推測されている。もうひとつの問題は地理的な医師の配置がたいへん偏っていることで、大都市に医師や病院が集中しており地方部では医療過疎状態が発生している。中でも専門医は20%が首都圏に集中しており、小児科医は507人、一般外科医は351人、産科医は460人が首都圏に在住している。それらの背景がアセアン諸国から専門医がイ_アの医療活動に参入してくるのを促すことになる。問題は、イ_アの医療代金が他の国に比べて低いためにイ_アに参入してくる医師のクオリティを政府が正しく吟味しなければならないことだ、と同支部長は言う。その面で政府が国民を保護するための規制を実施することが望まれている。
一方国内では、医師の能力を国際規準に高めるためにいくつかの施策が必要とされている。そのひとつは一般医から専門医への紹介システムを確立させることで、患者はまず一般医で診察を受け、必要に応じて一般医は専門医に患者を送るというシステムが確立されなければならない。このシステムが適正に動いていれば外国人専門医のクオリティ判別は容易になる。ところが今は、都会の住民の一部は具合が悪くなると直接専門医のところへ行くのが一般的になっており、一般医の手で治ってしまうようなケースまでも専門医が相手にしているために専門医は繁忙さに追われ、また専門性が高まらず能力が発展しにくい状況になっている。一方の一般医は十分な経験を積み重ねることが困難な状況だ、と医師会首都支部長は解説している。


「インドネシアの失明者は3百万人」(2006年11月21日)
インドネシア国民の1.5%が失明者である、と保健省国民保健育成総局長が語った。この数値はバングラデシュの1%、インドの0.7%、タイの0.3%などよりはるかに大きい。1993〜1996年の知覚健康サーベイによれば、失明原因のトップは白内障(0.78%)次いで緑内障(0.20%)、屈折異常(0.14%)、網膜障害(0.13%)、角膜異常(0.10%)となっており、1.5%というのは3百万人に相当する。イ_アの失明者はほとんどが貧困層にいて保健サービスへのアクセスから遠いひとたちだ。
WHOは今年の世界視覚デーに、世界の失明者や視覚障害者人口は1億2千4百万人あると推定し、2020年に向けて見る権利‐ビジョン2020を国際コミットメントとするよう呼びかけた。これは予防やリハビリで視力を取り戻せる国民に対する援助や指導措置を各国政府に取らせるためのプログラムで、それに応えて保健省は「失明と視力障害対策国民計画」に関する大臣令を制定して視力を損なう四つの病気に対する撲滅運動を企画しており、その四病には白内障、緑内障、屈折異常、眼球乾燥症が取り上げられている。


「含有防腐剤不表示の飲み物」(2006年11月23日)
反防腐剤国民コミティのノヴァ・クルニアワン会長が14日、市販されている容器入り飲料品の中に表示されていない防腐剤が含まれているものが見つかったとの調査内容を記者発表した。含有防腐剤の分析調査については、LP3ES、スコフィンド、M−Brio、ビオファルマカ等の協力を得て行われたとのこと。パサルや道端ワルンあるいはスーパーやミニマーケットなどで販売されている15種のアイソトニック飲料商品をサンプル抽出して分析にかけた結果、多くの商品から防腐剤が発見されたが、それらの内容表示には防腐剤が一言も触れられていない。
ナトリウムベンゾエートが含まれているのに、容器に表示がなされていないものとその含有量は下の通り。
Zporto 376g/l
Freeze Mix 267mg/l
Arinda Sweat 268mg/l
Zhuka Sweat 214mg/l
Kino Sweat 260mg/l
Amazone 433mg/l
Boyzone 280mg/l
Amico Sweat 289mg/l
Pocap 263mg/l
V-Zone 120mg/l
Mizone
カリウムソルベートが含まれているのに、容器に表示がなされていないものとその含有量は下の通り。
Zegar 95mg/l
Mizone 113mg/l
Jungle Jus
市場にある商品は三つのカテゴリーに区分される、と同会長は語る。防腐剤を使っていないもの、防腐剤を使っていてそれを表示しているもの、防腐剤を使っているのに表示をしていないもの。その三番目のものは規則違反であるために関係当局は処罰しなければならない。中には複数種の防腐剤を使いながらそのうちのひとつしか表示しなかったり、読めないほど小さな文字で表示したり、あるいは外国語や学術用語をそのまま使って消費者に意味がわからないようにさせようとする生産者もある。防腐剤は健康を損なうものであるため、防腐剤の入った飲食品を消費者はできるだけ買わないように、と同会長は警告している。


「下痢による子供の死亡は年間10万人」(2006年12月4日)
インドネシアで下痢のために死亡する子供は毎年10万人にのぼる。子供の死亡原因のトップは栄養不良で下痢は第二位に位置しており、栄養不良による死亡も下痢に関連しているケースが多い。下痢に罹患するのは清潔な日常生活が実行されていないことと劣悪な衛生環境にあるせいだが、国民の多くは下痢とそれらの要因をあまり関連付けないで、下痢は食べ物の毒素による食中り、季節的現象、赤児の発育の徴候、超自然的要因などにその原因を帰している。そのために子供が下痢をしたとき、大人たちは下痢症状を止めることを優先する。本来ならまず水分補給が優先されるべきことがらであり、その点に関する啓蒙が浸透していないのも確かである。環境サービスプログラム所属の医師はそのように語った。
人間の生活に必要な清潔な水が得られにくいことが下痢症状患者の多さの根本要因をなしており、都市貧困地区の家庭の子供たちや農村部の子供たちも下痢にかかることは少なくない。最近では2005年に東ヌサトゥンガラ州で異常流行が三回発令され、罹患者2,194人死者28人を生んでいる。下痢発症の高い州は他にバンテンとパプアだが、昨年もっとも死亡率の高かったのは中部スラウェシ州で69人の罹患者のうち13人が死亡している。


「病院の会計窓口以外で大金を渡すのはアブナイ」(2006年12月4日)
2006年9月15日付コンパス紙への投書"Pembayaran di RS Persahabatan"から
拝啓、編集部殿。2006年7月26日、わたしの父は東ジャカルタ市のプルサハバタン病院に公務員用医療保険アスケスを使って入院しました。左大腿骨手術の予定日は7月31日です。ところが手術日は病院側の都合で一日延期されました。
手術の数日前に病院の手術室職員が手術用具や骨折した骨をつないだりするための資材を含む手術費用1千万ルピアを前納するよう求め、その職員は仮領収書を発行してその金を受け取りました。しかしそれには明細が何ひとつ記されていません。最終的に公式領収書が発行されてそこには明細が記載されるだろうと思い、わたしはそれ以上何も尋ねませんでした。一部はアスケスで補償されるだろうし、もし残高が残れば返してくれると思ったからです。
8月9日に治療が終わったので、治療費や手術代金の不足分を決済することになりました。保険では5百万ルピアほどしか補償されないために不足分は720万ルピアの請求となりましたが、その公式請求書にはなんと手術代550万ルピアが含まれているのです。わたしは病院の事務担当者に対し、手術室職員の求めに応じて1千万ルピアを先に渡してあるのに、どうしてまた手術代が請求されているのか、と尋ねたところ、事務担当者は「その1千万ルピアはこちらではまったく判りません。」という返事です。
わたしは手術室職員に何度もコンタクトしましたが、その1千万ルピアが何のためだったのか、ということの説明も責任ある対応もまったくありません。この出来事からわかるように、プルサハバタン病院の会計管理システムは無責任で不透明です。公的手続のほかに患者に大きな損失を与える別のプロセスが動いています。これなら、アスケスに請求される金額を患者への請求書に書き加えている可能性は十分に高いと思われます。プルサハバタン病院経営者とアスケスマネージメントはこの統制の取れていない支払に関して注意を向けてくださるようお願いします。[ 南ジャカルタ在住、ロスラン・ザリス ]


「ヘルスワーカーを日本に」(2006年12月29日)
2005年10月現在、日本の総人口は1億2,776万人おり、6,234万人が男性6,542万人が女性という内訳になっている。14歳以下のブラケットは1,757万人で14%を占め、15歳〜64歳のブラケットは8,459万人で66%、65歳以上が2,553万人で20%を占めている。老人の増加と生産的労働人口の低下で日本はマンパワー需要が飛躍的に高まっており、インドネシアの海外出稼ぎ労働者にとっては黄金の扉が開かれているが残念なことにそのチャンスはフィリピンに先を越されている、とユスフ・アンワル駐日インドネシア大使が発言した。中でも老齢者の世話をする介護者をはじめヘルスワーカーの需要が高まっているにもかかわらず、日本人はその分野に就職しようとする者が減っているためそこに大きな需要が出現しており、イ_アはフィリピンの後塵を拝しているので早急にフィリピンに倣ってこのチャンスを活用しなければならない。日本人は一般的にインドネシア人の親切で情に厚い性質を好んでおり、ほかの民族では代わりがつとまらないと日本人は考えている。ところがイ_ア人海外出稼ぎ者は教育訓練が不足しているために日本の労働市場に入るのがまだ困難な状況だ。同大使はそのように語った。
エルマン・スパルノ労相も駐日インドネシア大使の発言に同調する。これまで研修システムを用いて日本の実業界に外国人労働力の配備が行われており、日本の青年層は工場で汗を流して肉体労働をするよりも事務作業のほうを好んでいるため工場作業者の需要は今後ますます高まっていく、と労相は言う。2006年1月時点で大阪地区に配備されているイ_ア人研修生は1,842人おり、そのうち1,260人は中小企業国際人材育成事業団(IMM Japan) を通してのもので残る582人がその他機関によるもの。日本は老人介護者として働く機会を外国人労働者に開いたが、どんな能力規準が適用されるのかまだ詳しいことはわかっていない。日本側は毎年4万人を必要としているのに対してインドネシアは2万人を送ることができる。3年間で10万人という目標を設定するのはむつかしくない。
研修制度による製造業・農業・漁業などのセクターでの外国人勤労者受け入れもイ_アはもっとたくさんの人数を送リ出すことができる。1992年から開始されたこの労働研修プログラムで2005年までにイ_アは3万6千人の若い技能労働者を育てることができた。かれらの大半はIMM Japan とインドネシア労働省の協力下に日本に送り出された者たちであり、かれらがイ_アに戻った暁には日本で獲得した技能や能力と妥当な資金をもって諸地方で自営ビジネスを開始することが期待されている。2006年9月9日に日本とフィリピンは経済連携協定の一環として看護婦と介護人1千人を段階的に日本で働かせる合意を成立させた。インドネシアもその流れに乗り遅れてはいけない。日本インドネシア経済連携協定の波紋はいまインドネシアで海外出稼ぎ者政策を揺り動かしつつある。


「ジャカルタの大気汚染」(2007年1月8日)
メキシコシティ、バンコックに次いでジャカルタは世界第三位の大気汚染都市であるとの定評はもう何年も変わらない。自動車排気ガスと工場排煙で汚れた大気の中和を図るためには緑地が必要とされているが、理想的には30%の面積を緑地として持たねばならないにもかかわらず、現実に都内の緑地は8%にまで縮小している。
都内の要所要所で大気汚染状況を測定し記録する測定ステーションも1982年に設置されて以来ほとんどメンテナンスがなされておらず十分に機能していないのが実態だ。毎年部品交換が必要とされているというのにそれが行われるのは二三年に一度。測定結果を表示するディスプレーも掃除されないままで正しく機能しなくなっている。ポンドッキンダとグロゴルの自動表示ステーションは誤動作しており、正しいデータが表示されない。都内14ヶ所の測定ステーションのうち9ヶ所はマニュアル計測を行っており、自動計測は5ヶ所だけ。都庁生活環境監督庁は2007年に測定ステーションを25ヶ所に増やし、すべての計測機器を一新したい意向。自動測定ステーション5ヶ所のパフォーマンスが不十分なのはそれらが生活環境担当国務省の備品になっているためで、都側はそれらをすべて都庁に移管してもらい、都の予算でメンテナンスを行って活用できるようにしたいと考えている。また計測データの国民に対する公開も定常的な場がまだ用意されていないため、オンラインアクセス、メディアリリースなどでの情報公開を図る計画が立てられている。
ジャカルタ生活環境コーカスは、都内の重度大気汚染地区は北ジャカルタ市と東ジャカルタ市であり、中度汚染地区は中央ジャカルタや東ジャカルタのアンチョル、イスティクラル、プロガドンなどで、南ジャカルタのトゥベッや農業省近辺はまだ汚染が軽い、と述べている。


「インドネシアは不法医薬品天国」(2007年1月8日)
インドネシアは外国から正規の手続きを踏まないで入ってくる医薬品の天国だ。まず国産医薬品の正価が高すぎる。そして不法輸入される外国産医薬品に対する法的防止措置がほとんど実行されていない。ニセモノブランド医薬品もたくさん流通している。ハイコスト経済によって製造コストに余分な負担を蒙るがために外国産品に対して競争力のある価格がつけられないこと、さらに国民生活のほとんどあらゆる面に影を落としている法治の欠如がそれらの要因の背景にある。それらの特徴は不法輸入品やニセモノブランド品に足元を脅かされている衣料品・家電品など国内産業のすべてに共通するものだ。さらに付け加えるなら、社会に善で有益なるものを供給していこうという思想よりも金になることを優先する強い傾向が流通小売業界にあり、そしてクオリティよりも支出金額が小さいことを優先する傾向を消費者が持っているため、それらの諸要因があいまってそんな現象の出現に追い風を与えているようだ。そのために正規の商品が市場で品薄になれば、全国津々浦々にあっという間に不法輸入品が流通するし、店によっては常日頃からニセモノ商品が店頭をにぎわしているところもある。
首都警察は12月18日に都内で不法医薬品に対する取締りを実施し、買取卸業者のひとりをタングランの自宅で検挙した。首都警察が行ったこの取締りは偽薬、製造流通無許可医薬品などを対象にしたもので、その逮捕者の自宅から50箱の不法医薬品が押収された。首都警察特殊犯罪捜査局通商産業ユニット長は、その容疑者は保健法と消費者保護法に違反しており、不法医薬品をジャカルタ・バンドン・スマラン・スラバヤ・メダン・バタム・バリに流通させていた、と公表している。これは氷山の一角に過ぎず、はるかに大勢の不法医薬品流通業者が偽薬や不法医薬品を売買して巨額の利益をあげ、税金はびた一文も納めていない、と同ユニット長は語る。
偽薬にもいくつかの種類があり、正規商品のニセモノで有効成分の分量を減らし無益無害の粉を混ぜたものからすべてが無益無害の材料で作られたもの、そして有害な材料が混ぜられているものまでさまざま。不法医薬品も、外国産の正規なものだが国内の監督官庁に届出がなされておらずそのため国内での流通販売許可を得ていないが届出をすれば通るものから届出をしても絶対に許可が出ないものまでさまざま。届出をすれば通るものでも届出をしないのはかれらに正規の輸入通関手続きを行う気がないからであり、闇ビジネスを行っている者たちにとって行政許認可手続きなどは無意味な行為以外のなにものでもない。
インドネシアの医薬品小売価格は高すぎる、とインドネシア保健消費者活性化財団理事長はコメントする。ある風邪薬は国内で一錠2千ルピアで小売されているが、パキスタンに行けばそれが322ルピアで買えるという。流通小売業界も当局の取調べをおそれて普段は正規商品の仕入れを励行しているが、何らかのトラブルで正規商品の供給量が減ると容易に不法医薬品に乗り換える。そのために全国に不法医薬品が即時に流れる。そのセンシティブさはおそろしいほどだ、と同財団理事長は述べている。


「人体に危険な化粧品と薬品」(2007年1月10日)
食品薬品監督庁が全国で行っている市販化粧品やジャムゥあるいはトラディショナル薬剤の分析結果をもとに人体に有害な物質が含まれている商品が公表され、生産者・輸入者に生産・販売禁止と市場からの回収が命じられた。危険な化粧品は27種、ジャムゥなどの伝統的薬剤類は93種に上っている。27種の化粧品からは水銀、ヒドロキノン、ロダミンB、K3赤色顔料などが検出され、また93種の伝統的薬剤類にはフェニルベタゾン、メタンピロン、デキサメタゾン、CTM、アロプリノール、クエン酸シルデナフィル、塩酸シブトラミン、パラセタモールなど医師の処方が必要とされている薬品が許可なく混ぜられていた。
食品薬品監督庁が公表した市場流通禁止化粧品と伝統的薬剤品の商品名の一部は下の通り。
化粧品
Yen Lye YL II Day Cream, Yi Fuli Day and Night Cream, Arche Pearl Cream, Cecily Beauty Cream New Formula, Cream Mutiara, CB Special Whitening, Donna Peapis Creme, Krem Kuning dan Putih, Leeya Whitening Daily and Night Use, Leving Pearl Cream
薬品
Xing Shi Jiu Cairan Obat, G-Buck Kapsul, Asam urat Flu Tulang Kapsul, Lion Gold APA Kapsul, Asam Urat dan Flu Tulang Samlin Serbuk, Neo Tasama Kapsul, Masuk Angin Flu Sakit Gigi Serbuk, Gemuk Badan Makkota Dewa Serbuk, Asam Urat Flu Tulang Serbuk, Pegal Linu Encok Rematik Serbuk


「ポンドッキンダ病院の病室内で盗難」(2007年1月11日)
2006年10月13日付けコンパス紙への投書"Pencurian di Rumah Sakit Pondok Indah"から
拝啓、編集部殿。わたしの夫は2006年9月27日夜から南ジャカルタのポンドッキンダ病院に入院しました。5日目の午前9時ごろ、理学療法を終えた夫を看護婦が車椅子を押して部屋に連れて戻りました。部屋に戻ると夫はトイレに行きたいと言いましたので、わたしが夫をトイレに伴いました。そのとき携帯電話は充電中で、わたしのハンドバッグもベッドの脇に置いたままでした。部屋にはそのときわたしたち夫婦以外にその看護婦しかおらず、わたしたちがトイレに入ろうとしているときその看護婦も車椅子を押してドアの方へ行こうとしていました。
トイレの中でわたしは病室のドアが閉まる音を耳にしましたので、その看護婦が部屋から出て行ったのだろうと思いました。2分ほどしてからわたしはトイレから先に出ました。そのときわたしのハンドバッグはベッドの脇にそのままの位置で置かれていましたが、携帯電話はどこにも見当たりません。もしや、と思ってハンドバッグの中を調べると、案の定わたしの財布も姿を消していました。わたしはすぐに部屋からナースステーションに駆けつけて、わたしの病室に誰かが入らなかったかどうかを尋ねました。そしてさっき夫を連れてきた看護婦を同時に探しました。数分後、その看護婦はわたしの病室とは反対の方から現われました。
その看護婦が最後にわたしの病室にいた人間であるためわたしはすぐにその看護婦に容疑を突きつけましたが、その看護婦は否定します。結局わたしはポンドッキンダ病院1階にあるセキュリティ本部にこの盗難事件を届け出ました。同病院のサービスマネージャーとわたしの病室のあるフロアーのナースステーション責任者もやってきました。かれらはこの事件を徹底糾明すると約束し、それどころか夫の入院費用を援助するとも言いました。わたしはこの事件を南ジャカルタ市警クバヨランラマ署にも届け出ました。
取調べを受けた当の看護婦は容疑を否定しましたが、その午後に中央ジャカルタのアトリウムスネンの店員が床にわたしの財布が落ちていたと言って連絡してきました。しかし中にあった15万ルピアは姿を消しており、またわたしの携帯電話も戻ってきません。ポンドッキンダ病院が最高のサービス、セキュリティ、責任を示してくれるという希望はどうやら夢でしかなかったようです。[ タングラン在住、エティ・レッノワティ ]


「モナスの鳩は鳥フル安全」(2006年1月26日)
2003年以来鳥フル死亡者が61人に達して世界のトップを独走しているインドネシアでは、一般家庭で鳥類を飼育することに関する禁令が出された。首都、西ジャワ州、バンテン州は商業用以外で住宅地区で飼育されている鳥を一掃する知事令が出され、ジャカルタでは商業用と特定の目的以外に鳥を飼っている都民に対し、該当する鳥は売るか、監督官庁に提出するか、それとも自分で処分するかのいずれかを選択するよう指導している。2007年都知事令第5号によれば、家庭で飼育してよいのは視覚観賞のためのburung hias、聴覚観賞のためのburung kicau、調査研究や教育のためのものなどだが、すべて認可が必要とされている。個人に飼われている鳥は持ち主が対応するのだが、モナスを賑わしている鳩に対する措置は都庁が行わなければならない。
モナスには850羽の鳩がいる。この鳩は2003年に果樹園がモナスに建設されたとき、モナスに彩りを添えるために鳩の飼育がはじめられた。都庁は鳩小屋を用意し、一日三回餌を与えている。この鳩たちは三日に一回、都庁が消毒処置を行っており、モナスを訪れる観光客は鳥フル感染を心配する必要はない、とファウジ・ボウォ副都知事が表明している。


「産院が新生児を人質に」(2007年1月30日)
スマルニ33歳のお産の日が近付いた。夫のストリスノ36歳はベチャ引きで、毎日1万5千から2万ルピアほどの稼ぎを持って帰るだけ。ふたりの間にはもう8歳になる長女がいるが、貧しさのために学校へあげることができない。長女はクルアン読誦を教えている近所の塾に通っているだけ。この一家はタングラン県ルゴッラヤ通りの借家に住んでいる。隣近所には親兄弟がおり、やはりベチャ引きを稼業にしている。
2006年12月21日、スマルニの陣痛がはじまり、羊水がこぼれ始めた。隣に住んでいるストリスノの兄嫁がスマルニを近所の産婆の家に連れて行った。ところがスマルニの血圧が170と高く、産婆は自分の手に負えないと言う。ムルニアシ産院へ行けば医者もいるから安心だ、と言われて兄嫁はスマルニをおよそ1キロ離れたその産院へ伴った。スマルニの血圧は更に上がって180。産道はもう開いている。そうして深夜12時前、次女が誕生した。
翌日、ストリスノが妻子を連れ帰るために産院へやってきた。退院手続をし、差し出された請求書を目にして、かれは唖然とした。請求金額は175万ルピア、かれが持ってきた現金は90万ルピアしかない。かれは家へ飛んで帰り、父親に金を借りた。話を聞いて兄嫁が14インチのテレビを20万ルピアで質入してくれた。そうやって集めた金はまだ45万ルピア不足している。ともかくその金を産院に払ったが、「全額払わなければ赤ちゃんを連れて帰れませんよ」と産院側は言う。思い余ってストリスノは12月25日に東ランプンにある妻の実家へ借金しに向かった。ところが妻の実家はランプンから南スマトラ州に引っ越していたため、日数を食ってしまった。妻の両親は家財道具を売り、また兄弟から借金して60万ルピアを作ってくれた。「これでやっと妻子がそろって暮らせる」13日後にタングランの自宅に戻ってきたストリスノが勇んでムルニアシ産院へ出向くと、なんということか、430万ルピアという請求書がかれを待ち受けていたではないか。
スマルニは1月2日まで産院にいて赤ちゃんに授乳していたが、自分がいつまでも入院していては請求金額がかさむばかりだと考え、自分ひとりで退院した。折に触れてスマルニは産院へ授乳に行くが、涙がかの女の頬を濡らさないときはない。産院側はストリスノに勧めた。「貧困家庭証明書を持ってくれば医療費が安くなりますよ。」ストリスノはその手続をしようとしたが、隣組長のところですぐにつまづいた。ランプンから移住してきたかれはいまだにタングランのKTP〔住民証明書)を作っていないのだ。住民福祉行政の基盤である地元住民の資格が証明できなければ何の恩典も受けられない。非住民にタングラン県が貧困家庭証明書を交付してくれるわけがない。
この新生児人質事件は児童保護国家コミッション事務局長がムルニアシ産院を訪れて終焉に向かった。事務局長は産院経営者と会見し、子供は親に養育される権利を持っておりその子供を親から引き離すのは人権違反に該当する、と説得した。産院経営者は子供を母親の手に戻すことに同意した。赤児を取り戻したストリスノ一家はひとびとの善意に感謝しながら自宅に戻った。親子四人の新しい暮らしを始めるために。


「都下41町がデング熱重度感染地区」(2007年1月31日)
1月25日現在でデング熱罹患者が1,240人に達した首都ジャカルタでは既に41町に赤ランプが点灯されている。この赤ランプとは、その地区ではデング熱伝染が盛んであるため早急に大がかりな対策を講じる必要があるというステータス表示。その41町とは下の通り。
北ジャカルタ市 :Penjaringan, Tanjung Priok, Kebon Kosong, Kebon Bawang, Sunter Agung, Sunter Jaya, Koja, Lagowa, Rawa Badak, Tugu Selatan, Kelapa Gading Barat, Cilincing, Semper Barat
南ジャカルタ市 :Cilandak Timur, Jatipadang, Kebagusan, Jagakarsa, Ciganjur, Srenseng Sawah, Gandaria Selatan, Cilandak Barat, Lebak Bulus, Pondok Labu, Kebayoran Lama Selatan, Pondok Pinang
東ジャカルタ市 :Utan Kayu Selatan, Cipinang Muara, Bidara Cina, Duren Sawit, Batu Ampar, Ciracas, Klender
西ジャカルタ市 :Cengkareng Barat, Tegal Alur, Tomang, Palmerah, Kemanggisan, Kebun Jeruk
中央ジャカルタ市:Tanah Tinggi, Johar Baru, Menteng
都庁保健局はそれらの地区で蚊とボウフラの撲滅を図るために全学校にアバテ(テメフォス)を配布し、また各町内で殺虫剤噴霧を大規模に行うことにしている。住民にはボウフラの巣を作らないようにと呼びかけている。


「レプトスピロシス」(2007年2月19日)
首都圏大水害が峠を越えた気配を感じさせる2月8日、西ジャカルタ市と中央ジャカルタ市にそれぞれ住んでいる61歳と44歳の男性がレプトスピロシス(Leptospirosis)患者であると判定された。ひとりは真性患者ですでに第三期症状があらわれており、もうひとりは擬似患者として確定検査のプロセス中。そのふたりはいま、中央ジャカルタ市のタラカン病院に入院している。そして更に2月12日タングラン地方総合病院で、26歳と15歳の男性がレプトスピロシス擬似患者であることが判明した。病院ではレプトスピロシス症状を呈する患者の血液を用いてラピッドテストを行い、結果がポジティブであればボゴールとセランにあるラボラトリウムに患者の血液を送って確定検査を行うことになっている。
レプトスピロシスはネズミの尿が人間の体内に入ることで発症するが、ネズミだけでなく犬、猫、豚、水牛、リスに似たツパイなどの排泄物から感染することもある。水害でそれらの汚物を含んだ水に浸かり、病菌が体内に吸収されるとレプトスピロシスに罹患する可能性が高い。レプトスピロシスの症状は三段階で、第一期症状は高熱・筋肉痛・吐き気や嘔吐、第二期症状に進むと腎臓の機能障害に至り、第三期では脳が冒されて回復困難になる。病菌は粘膜からだけでなく皮膚の毛穴からも侵入するので、水害被災者や被災者を支援するボランティアは健康状態に十二分に注意を払い、レプトスピロシスではないかと思われる症状があらわれた場合は即座に抗生物質アモキシシリンを服用して医療機関の診察を受けるように、とタラカン病院は都民に呼びかけている。既に判明した罹患者は居住地区が浸水したあと日常的に水に浸かった生活をしていた。医療関係者は水害の水が引いたあとで必ず流行する下痢、呼吸器系疾患、そして今がシーズンのデング熱およびこのレプトスピロシスが激しい勢いで流行するのではないかとの危惧を抱いている。


「北ジャカルタ市で下痢が大流行」(2007年2月21日)
水害が一段落した都内で下痢患者が激増している。北ジャカルタ市にあるコジャ地方総合病院では水害後2月12日昼の時点で274人の入院患者がおり、47人がデング熱で残りは全員が下痢症状だったが、その数時間後には入院患者数が3百人を超えた。中央ジャカルタ市のタラカン地方総合病院でも148人が下痢で入院しており、そのうち123人は子供。都庁保健局のデータによれば、2月の下痢症状入院患者は12日現在で4,482人と記録されている。そして2月13日にはコジャ病院の入院患者数569人のうち下痢患者が285人に達し、北ジャカルタ市はついに下痢の異常流行を宣言した。1月の下痢患者総数あるいは2006年2月の下痢患者総数にくらべて今年2月の下痢症状患者数は数層倍に達している。
都庁保健局は下痢症の定義を、一日に四回以上の大便排泄と場合によって嘔吐・脱力感・熱・食欲減退・排便に血や粘液が混じるといった症状を伴うもの、としており、下痢の伝染は(1)不潔な哺乳瓶の使用、(2)菌に汚染された水の使用、(3)定められた場所以外での排便、(4)ハエやゴキブリ等の虫や汚い手で汚染された食べ物、によって引き起こされるものであると説明している。


「デング熱患者への輸血判断はポイントを変えるように」(2007年2月21日)
2007年2月1日付けコンパス紙への投書"Transfusi pada Demam Berdarah"から
拝啓、編集部殿。デング熱はインフルエンザ風症状から血小板数の減少による出血まできわめて多彩な現象を呈します。血小板数の減少は患者やその家族に深刻な不安を与える問題ですが、血小板の減少で輸血が必要とされるのはいったいどのレベルなのでしょうか?血小板数の減少は発熱3日後から始まって5〜6日後に底を打ち、7日目からは血小板数が回復に向かいます。血小板数の低下とそれがもたらす出血への懸念から多くの医師は輸血を決断しますが、本当は他の病気と違って血小板の減少で出血が起こることはあまりありません。5万どころか1万でも出血が起こらなかった事例はたくさんあります。だから輸血をするかどうかを判断する要素は単純ではないのです。
血小板輸血を行うかどうかの判断は、血小板の数とは関係なく、出血が起こったときあるいは多量の出血が危惧されるときに限られるべきです。ある医師は血小板が5万を切ったら輸血を行うと述べていますが、この発言は血液バンクにある血小板への需要を過度に高める引き金になる可能性があります。チプトマグンクスモ病院デング熱医療指導アドバイザーは、調査の結果血小板が2万を切るレベルに下がっても出血が必ず引き起こされるわけではなく、出血を予防する鍵は点滴液の潤沢さにある、と述べています。出血を予防するために血小板輸血を行う必要もありません。デング熱患者に血小板輸血を行うことに関する誤解が正されることを期待します。[ 内科専門医師会会長、アル・スドヨ ]


「フォルマリン含有食品がふたたび増加」(2007年2月26日)
防腐剤としてフォルマリンを使用した食品が増加している。コンパス紙R&Dチームが首都圏5地域にある5ヶ所の在来型パサルとハイパーマーケット2店で2007年1月末に収集したサンプルのテスト結果がその事実を物語っている。それどころか、2006年に実施されたラボ検査で判明した含有量よりも2007年テストで明らかにされたもののほうが量が増加しているようだ。
今回のテストサンプル28点のうち60%からフォルマリンが検出された。含有量はキロ当たり2〜18ミリグラム。2006年では60点のサンプルがテストされ、フォルマリンが検出されたのは10%しかなかったし含有量もキロ当たり1〜10ミリグラムだった。フォルマリン含有テストはスコフィンドのラボで2週間にわたって実施された。サンプルとしてピックアップされた食品は、大型豆腐、小型豆腐、塩雑魚、ガブス魚の塩魚で、大型豆腐はすべてからフォルマリンが検出され、西ジャカルタ市スリピ市場で入手された最大含有量のものにはキロ当たり18.24ミリグラムも含まれていた。小型豆腐と塩魚はひとつの在来型パサルで入手されたサンプルだけがフォルマリンを含んでいた。塩雑魚はスリピ市場とスネン市場で入手されたものがフォルマリンを含んでいた。
食品薬品監督庁はその結果について、フォルマリンをはじめとする危険薬品取扱いは監督が進んでおり、公認流通業者と公認小売業者でなければ取り扱えないようになっている、と説明する。しかし食品生産者がフォルマリンを入手して使っている事実は、その監督機能に水漏れが生じているおそれを感じされる。食品薬品監督庁はフォルマリン含有食品が優先監視目標であるのはまだ変わっておらず、その監視責任は地方自治体が負っていると言う。2006年はじめにはフォルマリン入り食品に関する報道がマスメディアをにぎわし、その後違法防腐剤を含んだ食品は市場からほとんど姿を消した。政府はフォルマリンに代わる人体に安全な防腐剤としてチトサン(あるいはキトサン)を開発して食品生産者にその利用を大々的に奨めているものの、ボゴール農大漁業海洋学部教授が今月初旬に指摘したように、食品薬品監督庁からの製造許可がいまだにひとつも出されていないという事実がその一方にある。北ジャカルタ市でチトサンを生産している会社によれば、2006年3月には42社に対してチトサンの供給が行われていたのに、その後2006年12月には供給先が2社にまで減少してしまったとのこと。食品薬品監督庁危険薬品食品安全監視デピュティはチトサンの製造許可申請はいまだにどこからも出されていないと語る。業界はどんどん申請してください、と同デピュティは言うのだが・・・・・・・・・・・・・


「病室はかっこうの稼ぎ場」(2007年3月1日)
一流病院をはじめとして都内の数多くの病院で盗難事件が頻発しており、被害者は一様に病院側の管理姿勢を問題視している。入院患者が被害者になっているそれら盗難事件の多くは病室で携帯電話など貴重品が紛失するというもの。2月23日早朝に南ジャカルタ市メディストラ(Medistra)病院で発生した盗難事件はこんな内容のものだった。ウイリアム・ブントロ57歳が入院している503号室で、同氏が使っている携帯電話3台が盗まれた。そのとき患者は眠っており、付き添っていた奥さんも仮眠中だった。ところが泥棒が病室を出ようとしたとき、患者が目を覚ました。点滴パイプを付けたまま患者は犯人を追いかけ、従業員用リフトに逃げ込んだ犯人を追って下に降りた。犯人は病院の警備員に捕まり警察に引き渡されたが、この犯人フェブリアンシャ28歳は都内のある大学の法科で最近卒論を仕上げたところで、卒業式と卒業証書のために大学に納める金がほしくて犯行を行ったと自供している。フェブリアンシャは病院とは何の関係もない部外者であり、単なる通行人が病棟にまで入ってきたというのがこの事件の本質だ。
類似の被害は2006年10月にポンドッキンダ(Pondok Indah)病院に入院した夫に付き添っていたエティ・レッノワティ54歳も体験しており、かの女は夫がトイレに入るのを世話している隙に携帯電話を盗まれている。病院側は入院患者が盗難被害にあったことに何らの関心をも寄せず、病棟通路に設置されている監視カメラの画像を見たいという被害者の要請にも応じていない。見舞い客でもない外部者が病棟内を自由に往来している状況を放置している病院の保安管理姿勢に被害者たちは苦情を訴えている。


「調味料にも大量の防腐剤」(2007年3月8日)
市場で販売されているケチャップやソースなどの液体調味料に法定限度を超えた量の防腐剤が使われている。特に地方部で製造され地元のパサル等で販売されているケチャップマニスやトマトソース、サンバルなどの内多数が規定に違反していることをジャカルタ消費者保護院が指摘した。ジャカルタ消費者保護院が2007年1月から2月にかけて地方都市で収集したサンプルの内容調査を行ったところ、サンバル9ブランドのうち6件でキロあたり1千mgという許容量を超えるナトリウムベンゾエートが含まれていることが判明した。保健相規定第722/Menkes/PER/IX/1988号によれば、ナトリウムベンゾエートの最大許容量はケチャップがキロ当たり600mg、ソースがキロ当たり1,000mgと定められている。違反していたサンバルはマカッサルのSumber Agung が4,656mg、バタムのCap Cabe Payung が3,114mg、スラバヤのTri Sari が2,165mg、メダンのCap AVE が1,311mg、ジャカルタのSari Nikmat が1,353mg、メダンのCap Captain が1,231mg (含有量はすべてキログラム当たりのもの)。トマトソース(日本ではトマトケチャップに当たる)ではマカッサルのSumber Jaya が1,037mg、スラバヤのCap Tomato が1,601mg。ケチャップマニスでは8サンプル中6件で違反が見つかった。マカッサルのCap Ayam Panggang は802mg、スマランのKOKI は1,276mg、スラバヤのIkan Bawang は1,109mg、パダンのBurung Bangau は1,194mg、メダンのPanah Sinar Langkat は2,103mgという結果が示されている。またカリウムソルベートは液体調味料用防腐剤に指定されていないにもかかわらず、いくつかの製品の中に含まれていることが明らかになっている。
ジャカルタ消費者保護院はそれらの事実に鑑み、食品薬品監督庁と各地方自治体の監督機関が違反している生産者に対して法的措置を取るよう求めている。


「直接飲める水道水がボゴール県で」(2007年3月20日)
ボゴール県営水道会社ティルタカフリパンが、蛇口から直接飲むことのできる品質の上水供給プロジェクトを始める。同社では飲用品質の上水生産が既に可能になっており、次のステップはその上水を各家庭に品質を落さないで供給することであるため、同社はまず三つのパイロットプロジェクトを用意した。コタクンバン住宅地区、チレンシのブキッゴルフ地区、チオマスのチブリアル地区がパイロットプロジェクト地区に選ばれ、このプロジェクトのためにオランダ南部の水道会社DZHホランドとの間で技術協力契約が結ばれた。DZHホランド社は供給開始に先立って各地区への上水供給パイプの清掃を実施することにしている。パイロットプロジェクトが行われる三ヶ所は原水をそれぞれ別の場所から取っており、より幅広いトライアル結果が検証されるように工夫されている。このパイロットプロジェクトでおよそ1万世帯がそのトライアルに参加することになる。水道会社側は、本来もっと早くこのトライアルが実施されてよかったのだが技術的な問題や経費面での問題があってやっと今般実現の運びとなったと前置きし、三つのパイロットプロジェクト地区では近いうちに水道蛇口からの水を煮沸することなしに直接飲めるようになるという全国初のサービスを享受できる、と宣言した。清潔さは保証済みであるとのこと。
三つのパイロットプロジェクトが問題なく進展すれば、同じ方式を他の地区にも拡大して最終的には全顧客が飲用品質の上水を享受できるようになる。DZHホランド社側は3月9日からパイロットプロジェクト地区の給水パイプ調査を進めており、パイプ内の汚れを吸い出してクリーニングを行う予定にしている。このクリーニングプロセスのために各家庭向けに1〜2時間上水供給がストップするが、そのあとは高品質の水の供給が開始される。そのクリーニングと飲用品質上水供給がいつになるのかという質問に対してティルタカフリパン側は、DZHホランド社の調査が完了したところでそれが明らかになると答えている。また水道会社は各家庭に対し、せっかくの飲用品質上水が供給されても家庭の蛇口が汚染されていれば意味がないため、上水利用者は自宅の蛇口の衛生状態に留意してほしい、と呼びかけている。


「東ヌサトゥンガラで魚が大量死」(2007年3月23日)
東ヌサトゥンガラ州アロル県北西アロル郡アロルクチル海岸に何千匹もの魚の死骸が押し寄せている。この現象は毒や爆発物を使った不法漁労のせいではなく純然たる自然現象であるとアロル県海洋漁業局長が解説した。エルナ・ダシルバ局長によれば、このように多くの種類の魚が何千匹も海岸に打ち寄せられる現象はこれまでも毎年起こっているとのこと。毎年雨季と乾季の季節の変わり目になるとアロルクチル村周辺海域の水温は極度に低下し、時には氷点下に達することもある。今は雨季と乾季の変わり目にあたっていることから海水温が極度に低下しており、この現象は3〜5日間継続する。3月第2週に大量の魚の死骸が上がったのは海流に乗って泳いでいた魚がその冷水塊に入ったために起こったことで、そこを横断しようとしていた魚のほとんどがばたばたと身もだえさせながら海岸に向かい、徐々に死んでいった。中には冷水塊に入ったとたんに即死した魚もいる。同局長は透明度の高い海面に突然大量に浮かび上がってきた魚の死骸のメカニズムをそのように説明している。
地元村民はもう5日間、海面を埋める魚の死骸の収集に精を出している。自家消費分以上に獲れた魚は保存食として加工したり、あるいはパサルに持ち込んで販売している。しかし海面を漂いながら海岸に打ち寄せられた魚が多く、村民たちの手に入ったもので完全な姿をしているものは多くない。


「期限切れ点滴液再販者が捕まる」(2007年4月3日)
首都警察は、流通段階で期限の切れた点滴液を集荷して医療機関等に販売していた一味を逮捕した。最初に捕まったのはボゴール県チトゥルッ在住の40歳の男で、捜査官が囮捜査でその正体を突き止めたあとその男がスカブミの買い手に商品を届に行く途中を逮捕した。そしてその男の自供から他の3人の共犯者を3月22日、南ジャカルタ市ルバッブルスで一網打尽にした。そのとき3人は商品を届に行く途中であったため、証拠品とともに現行犯逮捕されている。この3人は西ジャカルタ市トゥバグスアンケ通り在住の47歳の男、タングランのカラワチ在住の41歳の男、東ジャカルタ市チャクン在住の27歳の男で、この一味は点滴液を保管している倉庫や集積場を回っては期限の切れたものを金を払って集めていた。かれらが支払った相場はひとつ1,500ルピアで、「中味を捨てて空き瓶をリサイクル販売するために集めている」と言って相手を信用させていたが、しかし実際には中味を捨てるどころかそのままの形で商品を保管し、安い点滴液を買いたい者には相手がだれであろうと再販していた。
警察は期限切れ点滴液を買い集めている者がいるとの情報を入手し、「中味を捨てて云々」の話には信用を置かずに捜査を開始した。普通の感覚から行けば、わざわざ高い金額を払ってそれを買い求めしかも中味を捨てるような手間をかけたがる人間がいるとは思えない、というのが警察捜査官の考えだった。もしそんなビジネスを行いたいのなら廃品集荷場で中味のない空き瓶をはるかに安い金額で入手することができる。捜査の結果、盗品故買屋であるチトゥルッの男が捜査線上に浮かび上がってきた。この一味は主に東ジャカルタ市の倉庫や集積場から商品を得ていたようだが、盗品故買屋が一味の中にいることから、警察はかれらがメーカーの倉庫やコンテナからも商品を入手していたのではないかと見て捜査を広げている。一味が既に貯えた商品は点滴液の詰められたダンボール箱で3千箱を超えており、トラック3台に分散して積まれている。


「何者?その恐怖の看護婦は!」(2007年4月6日)
2007年3月25日付けコンパス紙への投書"Sikap Perawat RS Atmajaya"から
拝啓、編集部殿。わたしの子供は何度も嘔吐したので脱水症状を起こし、ジャカルタのアッマジャヤカトリック病院に運ばれて1月4日にソカルームに入院しました。1月6日土曜日の早朝に勤務に就いていた若い看護婦の態度はたいへん不愉快なものでした。そのひとはハンドフリー携帯電話でキャッキャ笑いながら電話し(彼氏と?)、そうやってお楽しみしたあと看護婦として果たすべき仕事はほったらかしてまた寝てしまったのです。なんというわがまま勝手で職業にふさわしくない振る舞いでしょうか。
投薬時間が来たとき、若いドクターふたりがかの女を起こさなければならなくなり、それにも関わらずかの女はマットレスを引いた床の上に寝たまま気楽な返事をしているのです。看護婦たちは投薬の時間など知ったことじゃないといった風情であり、それは午前4時半にわたしの子供が39.3度まで熱が上がり、そのあと熱を下げる薬を与えられましたが熱は一向に下がらなかったことがそれを証明しています。そのときわたしは自分から、抗生物質の注射はしたのかと尋ねましたが、年上の看護婦は「午前8時に注射するんです」とひとを小馬鹿にしたような口調で言いました。でも本当は午前5時がその注射の時間になっているのをわたしははっきり聞いています。わたしがしつこく言い張るので、看護婦は午前6時にやっとその注射をしました。結局1月7日早朝、わたしの子供は亡くなりました。わたしは神にそれら一切の出来事を委ねました。
わたしが看護婦たちと言い争っているとき、四人いたインターン医師たちはただ口を閉じて見守っているだけでした。でもかれらは本当は、わたしが言っている投薬時間が正しいことを知っていたのです。それどころかかれら若いドクターたちは、矛先をゆるめるようにわたしに頼むのです。その看護婦たちがまだ必要とされているのだから、と。
病院経営者がサービス向上のために今回の出来事に対してフォローするようにわたしは求めます。[ 西ジャカルタ市在住、アンディ・ガウタマ ]


「無免許医師が数十人」(2007年4月7日)
都内で医療活動を行っている医師の中に無免許者が大勢いることを中央ジャカルタ市医療サービス課長が明らかにした。明確なデータはまだ集められていないが、その人数は中央ジャカルタ市だけで数十人にのぼると見込まれており、国公立病院でもそのような医師が働いているとのこと。医師は2004年第29号法令とその実施規定である2005年保健相令第1419号で医療活動を行う場合に医療活動免許証を持たなければならないことが義務付けられている。医師の免許証はまず医師登録を済ませることからはじまる。そして医療活動を開始する前に資格テストをパスしなければならない。2004年第29号法令では、医師は国内の四ヶ所以上の場所で医療活動を行ってはならないとされている。これは国民に対する医療サービスの質的低下を防ぐのを目的としている。中央ジャカルタ市医療サービス課は無免許医師に対してこの4月29日までに免許を取得するようチャンスを与えているが、もし期限を超えて無免許のまま医療活動を継続している者が見つかった場合は、医療活動を即刻禁止し更に罰金を科すことにしているとのこと。医療設備を持たない医師に対する罰金はひとり1億ルピア、医療設備を持っている医師は罰金3億ルピアが予定されている。中央ジャカルタ市管内ですでに免許を得た医師は専門医が6百人、一般医と歯科医は3千人にのぼっている。


「首都のデング熱対策」(2007年4月19・20日)
4月に入ってデング熱異常発生宣言を発令した都庁はその大流行を抑制するために対策を練っている。そのひとつは各家庭にデング熱対策評価ステッカーを貼るというもの。毎週金曜日に30分だけぼうふら対策を行おうと都民に協力を呼びかけるキャンペーンを昔から行ってきたが、それがほとんど功を奏していないのは異常発生宣言発令が明白に証明している。デング熱ウイルスを媒介する蚊の撲滅を図るのがその対策の本筋であり、そのためにぼうふら発生の機会をつぶすことと成虫に対する薬剤噴霧を行うことでデング熱大流行は抑制できるはずなのだが、住民が自宅の周りのぼうふら退治をしてくれなければそのプログラムは実を結ばない。
そのためにデング熱対策を励行している住民には緑色のステッカーを貼らせて世の中で賞賛を与えてもらい、何もしないでデング熱の被害者になったような家庭には赤色ステッカーを貼らせて恥ずかしい思いをしてもらおうという社会制裁アイデアが都民への動機付けとして持ち込まれてきた。黄色のステッカーもあり、それぞれの定義付けは次のようになっている。
緑色 : デング熱罹患者を出したこともなく、また家庭の周辺にぼうふらもいない。
黄色 : 家庭の周辺にぼうふらがいる。
赤色 : その家庭からデング熱罹患者が出た。
このステッカーキャンペーンは各色6千枚が用意されて4月15日から開始される。ぼうふら監視員と医療関係者1千2百人が都下一斉に家庭訪問してぼうふら調査を行い、ステッカーを貼ってその結果を表示することにしている。
ところでデング熱患者が出るとそのRT(隣組)や隣接するRTでは殺虫剤噴霧を行うのが習慣になっている。しかし民間の噴霧作業請負人の中には殺虫剤購入経費を惜しんで適正分量より少なくしたり、あるいは煙は出るが殺虫剤ではないといったものまで使っており、蚊が死ぬどころか人間が喉をやられるだけで蚊はぴんぴんしている、というものすらある。都庁では、業者を使うさいには十分気をつけるように、と都民に警告している。
都庁保健局データによれば、今年4月12日までのデング熱罹患者数は11,732で、44人が死亡している。都内全267町のうち赤信号が点灯しているのは135、黄色は123、緑は10しかない。緑というのはまだ罹患者がひとりも出ていない町であり、赤は3日間連続して罹患者が発生したかもしくはデング熱による死亡者が出た町だ。地区別では南ジャカルタ市が最大の3,920件で死者2人、赤信号が点いた町は44ある。赤信号が点くと半径1百メートルに渡って薬剤噴霧が行われる。住民の参加意識が月日とともに風化していくのを防止するために、都庁は学校に呼びかけて一週間に一日30分間、生徒が町内各家庭を訪問してぼうふら撲滅を依頼するというプログラムを進めており、効果が上がっていると副知事は語っている。また各RT(隣組)はぼうふら監視員を10軒にひとり指名して担当エリアのぼうふら退治推進を行わせるDasa Wisma プログラムも実施している。ぼうふら監視員が町役場に上げてくる報告では、百軒あたり80軒にぼうふらなしという内容になっており、それを95軒まで引き上げることを目標に据えている。
一方、都庁と都議会はかつてシンガポールで行われたような蚊の撲滅を住民に義務付ける条例の準備にかかっている。この条例が制定されれば都民はぼうふらを家庭の周辺に存在させてはならず、もし家庭のどこかでぼうふら生虫が見つかれば罰則が科されることになる。


「ボゴール植物園でおいしい水」(2007年4月25日)
ボゴール植物園の比較的奥まったところにラン園(Taman Anggrek)がある。このラン園に直接飲用できる水飲み場が設けられている。これはインドネシアに数ある行楽施設の中でもまだ珍しいもので、ボゴール市営水道会社PDAM Tirta Pakuan の協力に負うところが大きい。1918年以来ボゴール市内に上水供給を行ってきたこの会社は、2004年から開始されたUSAIDが支援する住宅地区への直接飲用可上水供給プロジェクトをメダンとマランの上水会社と一緒に行なっている。南ボゴールのパクアンタジュル住宅地で直接飲用可上水供給施設が作られて供給が始まったあと、ティルタパクアン水道会社は公共施設への供給を開始しており、既にボゴール市役所、タジュルの革製品販売エリア、そしてボゴール植物園で直接水道蛇口から飲んでも大丈夫な水が供給されている。


「全国民に医薬品が行き渡るように」(2007年05月18日)
政府が一般国民向けの廉価医薬品を発売させた。偽薬や医薬品規準不適合の薬が大量に出回り、正当な薬はまとめて多めに買わせるようなパッケージにされているものが多く、中低所得層への医薬品普及が浸透しにくくなっていた状況を打破するために保健省が出した新政策がこれだ。市販価格は1パッケージ1千ルピアと定められ、この料金は小売マージン20%、卸マージン10%、そしてPPN(付加価値税)を既に含んだものになっている。発売されるものは家庭用一般薬で、頭痛薬、風邪薬、解熱薬、小児用解熱薬、胃薬、痰咳止め、風邪咳止め、喘息薬など。それらの薬は病院の薬局や一般薬局だけでなく薬屋、ワルン、さらには開業医でも販売される。医者の処方箋は不要で、全国で幅広く自由に販売されることになる。
ここ数年間に家庭用一般薬の国内販売は縮小の一途をたどっており、2006年では前年から17%も減少した。その結果一般薬は総医薬品販売市場のわずか5.5%しか占めていない。国民購買力の減退で低所得層にとって医療はますます高嶺の花となりつつあり、おまけに自己治療を目的に一般薬を買おうにも経済負担は小さくなく、やっと手に入った安い薬は偽薬だったというように国民福祉が置き去りにされている状況が近年市井でありふれた光景になっていた。シティ・ファディラ・スパリ保健相は、市販単価を思い切って廉いものにしたのは、低所得層に手が届くようにとの配慮とは別に、偽薬・不適合薬品生産者が利益を得られないようにしてかれらが市場から消えていくような条件を作るためでもある、とコメントしている。


「KB参加男性はわずか2%」(2007年5月28日)
KBと略称されているインドネシアの家族計画避妊プログラムへの男性参加者がきわめて低率であることを国家家族計画統括庁が指摘した。コンドームにしろバセクトミー(パイプカット)にしろKBプログラムへの男性参加者はきわめて少なくてわずか2.1%しかおらず、しかもその大半はコンドーム使用者であるとのこと。インドネシアのこの数値は、たとえばイランが12%、チュニジア16%、マレーシア10%前後、アメリカ32%などに比べて極端に低い。インドネシア男性のKB参加率が低いのはかれらの大半が理解を示さないことに加えて社会的文化的な要因も作用している。妻たちの多くは夫がバセクトミーを施されるのを好まない。夫たちがその効果を悪用して不倫に走るのを懸念するからだ。一方で妻たちの間には女性向け避妊ツールによる副作用を嘆く声も少なくない。このため政府は男性向け避妊プログラム推進に力を入れて夫エゴを突き崩す目標を立てている。男性KB普及員を増やすのもその手段のひとつだ。
男性の多くは旧態然たるその二つのツールばかりでなく新しいチョイスが増やされることを希望しており、いまスリウィジャヤ大学では男性向け注射避妊法、インドネシア大学では経口ピル避妊法の研究が進められているもののまだ副作用が多くて実用化には時間がかかりそう。パプア住民が古来から利用してきた避妊の効用を持つ薬草ガンダルサ(gandarusa)に関する研究も行われている。KBの成功には住民生活組織に対する働きかけが成否の大きな鍵を握っているため、国家家族計画統括庁はPKK(福祉家族育成活動)と協力して全国各地でKBプログラムの推進を行っている。


「人口の10%が精神障害者」(2007年7月12日)
国民の間で精神障害者が急増している、と保健省医療サービス育成総局長が語った。2007年の統計は総人口の10%が精神の病を患っていることを示している。この急激な増加は明るい希望がなかなか差し込んでこない経済状況に加えてさまざまな自然災害によって生活基盤が揺らいでいる国民が増加しているためだ。
「いま全国の精神病院では収容能力オーバーが起こっている。患者数が多すぎることもあるが、治療期間も長くなる傾向にある。医者の数は5百人未満で、精神病医ひとりが住民3百万人を受け持たなければならない。」総局長はそう述べている。精神病専門医師会会長は罹患者の状況について、もっとも多いのは抑鬱症患者で10%を占め、次いで多いのは不安症であると語っている。不安症患者は全体の3〜5%とのこと。抑鬱症の増加は仕事・財産・家族などを失ったことがメインの理由となっている。


「医療保険求償No.1疾患は下痢」(2007年8月6日)
下痢・デング熱・チフスが医療保険加入者の最多疾患であるとアリアンツ生命が報告した。同社のデータによれば、2006年に同社の受けた医療保険クレームのうちの10%近い133億ルピアがその三疾患の治療を対象にしている。その内訳を見ると、下痢の治療に対するクレームは2,245件総額52.9億ルピア、デング熱1,527件43.6億ルピア、チフス1,356件36.3億ルピアとなっている。ここ数年間、それらが医療保険求償の上位を占めているのは変らないが、治療費は三年間で倍増した。平均的な入院日数は下痢で7〜10日程度で費用も一人当たり190万ルピア程度が普通だが、多くの患者が合併症を併発しているため一人当たり費用は1千〜1千5百万ルピアに増大し入院日数も2週間にのぼっている。巨額の保険求償は心臓病やガンがその典型的ケースではあるものの、トータルで見た場合それら三種類の一般的な疾患が保険クレーム金額の大きい部分を占めているのは予想外である、と同社マネージメントのひとりは語っている。
同社の企業従業員給付部門が2006年に支払った保険金額1千3百億ルピアの6割はジャカルタでのもので、保険加入者もジャカルタが最大になっている。同社はMaxi Violetと命名された低料率の医療保険をオファーしていて年間保険料は最低が30万ルピアから上は2百万ルピアまでとなっており、この保険は通院治療、歯科、産科そして入院時前払い金免除といったメリットを保険加入者に与えている。


「フォルマリン汚染商品一掃処分」(2007年8月16日)
フォルマリンが検出された中国産の食品や生活用品に関して地方部での回収が進んでいない。流通網は農村部や遠隔地まで達しているが、地方の卸商や商店に回収命令が出されているにもかかわらず戻されてくる商品はきわめて少ない。「歯磨きや飴など中国産フォルマリン入り製品を卸商や商店はもっと奥地に流したようだ。かれらは損したくないのだから。」北マルク州の消費者保護活動家はそう語っている。
地方部の消費者はこの種の情報をあまり深刻にとらえておらず、また意識も低い。消費者はたいてい値段が高いか安いかだけを購入時の判断基準にしているだけなので、そのため卸商や商店は消費者のそんな性質を利用して危険な商品の在庫を急いで掃いたようだ。廃棄処分のために地元の役所に危険な商品を提出しに来た商人はほとんどないとのこと。


「国民へのフォルマリン啓蒙」(2007年8月22日)
政府食品薬品監督庁が人体の健康に有害な商品を折に触れて公表しているが、国民の反応は極端から極端に走る傾向が強い。フォルマリン含有商品をはじめとしてさまざまな防腐剤を許容限度を超えて含んでいるものから許容限度を超えているかいないかとは関係なく含有表示が正しくないために流通停止命令が出されるものまでその内容はさまざまであって一概に毒性云々だけが問題にされているわけではないのだが、大多数消費者は「フォルマリン」「防腐剤」などの言葉を見聞きしただけで毒だととらえる傾向が強いようだ。日常の現実生活では白と黒の間に限りない灰色のグラデーションが存在しているものなのだが、ものごとの価値付けを曖昧なまま留めてそれに対応しながら生活する習慣が世の中にあまり育っていないため、ものごとにはすべからくイエス・ノーの価値を明確に与えておいてそれに自分がどう対処するかということだけを考慮しながらそれに対応して暮らすという生活パターンがインドネシア社会の背景にあることとそれは表裏一体をなしているように感じられる。もちろんそんな姿勢を持つひとはどこの国にもいることを否定はしないが、ものごとに対するall or nothing的姿勢はインドネシアでかなり強いように思われる。
そんな消費者の反応が顕著に示された実例が「飲料品業界が社会デマの標的に」(2006年12月22日)で報道されたようなことがらで、食品薬品監督庁が先日公表した中国産の飴や歯磨きなど一部商品に有害物質が含まれているというニュースが今度は一般社会での中国産品がすべて有害という反応を引き出しはじめており、8月はじめに中国政府が取ったインドネシア産飲料品や海産物への輸入禁止措置が引き起こしている両国間の不協和音をさらに悪化させては一大事とばかり食品薬品監督庁は全国の地方自治体に対して国民への啓蒙促進をはかるよう指令を出した。
たとえば西ジャワ州スカブミ市では8月13〜14日にかけて市内およそ1百軒のスーパーマーケットや該当商品を販売している一般商店を集めて市庁保健局保健施設許可育成課がセミナーを行った。政府が定めた含有許容量を超えていなければフォルマリンが入っていても問題なく、化粧品類では0.2%ただしエアゾールは含有不可で、歯磨きは0.1%までが許容されており、許容量以下であれば殺菌や腐敗防止効果があるため有益であるといった説明がそこでなされたとのこと。


「ジャカルタの一酸化炭素」(2007年8月24日)
2004年ジャカルタ都民ひとり当たり排出一酸化炭素量は0.511トンだった。言うまでもなくそれは全国ナンバーワンの量であり、2002年から三年間ジャカルタはその王座を維持している。自動車の排気ガスから出される一酸化炭素量はもちろんたくさんの自動車が使われている場所で最大となる。ジャカルタでは住民10人あたり四輪二輪自動車7台が保有されており、かなりひとり一台というのに近い状況だからひとり0.511トンという表現は文字通りとらえて良いのかもしれない。ジャカルタ首都特別区を追うのはバリ州の0.26トン、そしてジョクジャ特別州、東カリマンタン州と続いている。インドネシア全体では平均ひとり当たり0.09トンという年間排出量だ。この番付の一番下を見ると北マルク州、ゴロンタロ州、東ヌサトゥンガラ州などが登場し、住民人口に対する自動車台数比が極端に小さいことがわかる。
ジャカルタ住民10人あたり7台という自動車の中身は二輪車が大半を占めている。380万台という数字は自家用四輪車台数の三倍、バスの十倍にのぼっており、石油燃料大幅値上げのあと四輪車から二輪車へのシフトさえ起こって二輪車台数は圧倒的な数となった。その二輪車や自家用四輪車が2004年には380万トンの一酸化炭素を吐き出したのである。排気管からもうもうたる黒煙をあげて走っているバスやトラックは台数が比較的少ないおかげで60万トンしか一酸化炭素を出していない。
2004年の国民経済社会サーベイでは、都民の7.5%が三週間以上の咳の病を得ている。バリも7.3%という類似の統計数値が得られている。全国平均は5.9%で、一酸化炭素排出量の大きいところは相関関係を持っている。ただし西スマトラ州やゴロンタロ州では10%を超えているので、直接の因果関係をそこに求めるのも難しい。2001年から2004年までの間に疾患を訴える国民の数が増加した。咳は年々1〜4%の増加、頭痛は年々1〜2%の増加となっている。このサーベイでは肺結核のデータも収められており、住民の1.35%に対する検査で22%が病原菌を持っていることが判明した。一方バリでは住民人口の1.01%に対する検査で57%が保菌者であることが明らかになっている。
一酸化炭素は人間の健康に有害であることが実証されており、大気中の一酸化炭素の7〜8割は自動車の内燃機関が生み出している。そしてインドネシア国民は依然として自家用車の便宜を好むがために、ジャカルタでは膨大な時間とエネルギーのロス、おまけに膨大な量の一酸化炭素が街中を覆っているのである。


「最小限侵襲手術泌尿器外科病院が来年3月にオープン」(2007年8月30日)
サヒッグループが開発しているスーパーブロック・サヒッシティ(Sahid City)は都内スディルマン(Sudirman)通りとマスマンシュル(K.H.Mas Mansyur)通りにはさまれた5.5Haのエリアにホテルサヒッ(Hotel Sahid)やサヒップルダナ(Sahid Perdana)、イスタナサヒッ(Istana Sahid)、サヒッスディルマンレジデンス(Sahid Sudirman Residence)などの高層集合住宅群を集めた住宅商業コンプレックスを形成している。このサヒッシティに最先端技術の粋を集めた泌尿器外科病院が誕生する。
今建設中のサヒッサヒルマンメモリアルホスピタル(Sahid Sahirman Memorial Hospital)は15階建て床面積8千平米の建物に最新鋭の医療機器を完備する最小限侵襲手術技術を用いた国内最高の泌尿器外科病院として2008年3月14日に公式オープンする予定になっている。国外で医療を受けるために出国している年間60万人のインドネシア人に国内で同等レベルの医療を受けてもらうことができるようにこの病院の設立を企画したと語るスカムダニ・サヒッ・ギトサルジョノSukamdani Sahid Gitosardjonoサヒッグループ総帥は、社会活動保健活動を通した同グループの社会貢献のひとつのしるしがこれだ、と述べている。


「医療ミス裁判で病院側に有罪判決」(2007年9月3日)
南ジャカルタ地方裁判所は原告の申し立てを支持し、ポンドッキンダ病院(Rumah Sakit Pondok Indah)経営者PT Binara Guna Mediktama(第一被告人)、同病院勤務医師ヘルマンシュル・カルトウィサストロ(第二被告人)、同イフラムシャ・ラフマン(第三被告人)、同イ・マデ・ナザル(第四被告人)、同エミル・タウフィッ(第五被告人)、同ミズラ・ズビル(第六被告人)、同ビン・ウィジャヤ(第七被告人)、ポンドッキンダ病院医療委員会(連帯被告人)に有罪の判決を下して物質的・精神的損害を賠償するために20億ルピアを連帯責任で原告に支払うよう命じた。
原告の訴えは同病院が患者シタ・デワティ・ダルモコに対して行った医療ミスに関するもので、シタの遺族はシタが罹患していた卵巣腫瘍が悪性であるという診察結果を知らされなかったためにシタを死に至らしめたという内容。判事団は判決文の中で、医師は求められると否とに関わらず患者とその家族に情報を伝達しなければならず、診察結果を知らせることを遅らせたのは不当な行為であり、それは法律に違反するものである、と述べている。しかし原告側が要求した損害賠償200億ルピア、一日当たり1千万ルピアの強制徴収金、ポンドッキンダ病院資産差し押さえ、被告側が上訴する場合の執行保証などについては判事団も了承せず、判決は20億ルピアの損害賠償だけとされた。
シタ・デワティ・ダルモコは卵巣腫瘍のために2005年2月12日ポンドッキンダ病院で手術を受けた。そのあと行われた腫瘍組織サンプルテストでシタの腫瘍は悪性でないと判断された。ところがそのあと医師チームが行った精密なメソードを使った二度目の病理分析で、シタの腫瘍は悪性であるとの報告が出された。その2005年2月16日に作成された報告内容は患者に知らされないまま一年が経過し、2006年2月にはじめて患者に知らされたが患者は2006年5月に死亡した。告訴された医師団の中には二度目の病理分析に関わっていない者がおり、二度目の分析結果を知らなかったのだから告訴は不当であるとの反論が出されている。


「腎臓を寄付するから報酬を払ってくれ!?」(2007年9月21日)
2007年9月10日、西ジャワ州ボゴール市赤十字病院にひとりの中年女性がやってきた。ところがその後をぞろぞろとTVカメラマンや報道員がついてきているのに赤十字病院職員は驚かされた。その女性イマス・スティアシ48歳はまず病院職員に自己紹介し、そこへやってきた理由を表明した。「あのお、わたし、腎臓をひとつ寄付したいんです。実は高利貸しの返済督促が厳しいんですがわたしはお金がありません。それで腎臓をひとつ寄付したら病院側はわたしの行為に報酬を与えてくれるでしょう?その報酬はお金でほしいんです。わたしにできるのはもうこんなことしかないもんだから。」
赤十字病院腎臓科の医師も看護婦もこの主婦の話に最初は呆気にとられた。そしてすぐにイマスに対する説得がはじまった。「奥さん、内臓を売るったってそう簡単なものじゃない。ましてや臓器売買は法律で禁じられてます。」「いえ、わたしは腎臓を売るんじゃないんですよ。これは寄付するんです。売るだなんて、人聞きの悪い・・・・。こんな大切なものを寄付するんだから、病院はきっと大きい報酬で報いてくれるでしょうね?」「いやいや奥さん、そういうものじゃなくて・・・・。いやまあそれはいいや。でもここの病院はね、腎臓移植手術の設備も能力もないんですよ。ここでできるのは血液透析くらいです。血液透析用器具なら5台そろっていますがね。」腎臓科担当医がイマスに状況を説明する。臓器売買は禁止されており、臓器移植手術は状況に応じて人道面での必然性から決断されることであり、それですら法的な規制がかかっているという説明にイマスはがっかりした表情を浮かべた。病院側はイマスに、腎臓ドナーになりたいというのであればジャカルタのチプトマグンクスモ病院に行って相談してごらんなさい、と薦めた。いまインドネシアで腎臓病の最高権威はチプトマグンクスモ病院で、そこは設備も完璧に整っている。また腎臓移植についてもチプトマグンクスモ病院を通して全国腎臓財団にコンタクトすればその詳細な手続き情報を得ることができる。しかしボゴール県スカラジャ郡チルブッバラッ村に住むこの主婦がそこまでする気があるのかどうか、赤十字病院側は半信半疑だった。
「実は・・・」とイマスが打ち明けた。イマスの夫は5ヶ月前に通風と糖尿病で寝込んでしまった。家計の大黒柱が倒れ、おまけにその治療費が必要になったのだ。しかたなくイマスは家の権利書を抵当にして薬代と生活費を高利貸しから借りた。借りたのは2百万ルピアだが今では利子が利子を生んで5百万ルピアの返済を迫られている。子供は8人いて3人がアンコッ運転手の仕事をしているが親に金を渡せるだけの稼ぎはない。ほかのふたりは無職でぶらぶらしており、まだ学校へ行っている子供が3人もいる。この一家はこの先どうなっていくのだろうか?


「機内でゴキブリぞろぞろ」(2007年10月19日)
2007年6月23日付けコンパス紙への投書"Binatang Kecil di Mandala Air"から
拝啓、編集部殿。2007年4月27日金曜日、わたしはバタムからスラバヤへマンダラ航空RI191便で飛びました。15時10分出発予定のこの便は17時に遅れてやっと離陸しました。飛び立ってからしばらくして、多分キャビン内の温度が低下したためでしょう、乗客が座っている座席の頭上のラックからゴキブリの子供のような虫がぞろぞろと這い出してきたではありませんか。虫酸が走り、全身が痒くなりました。これでは配給された軽食を楽しむどころではありません。テーブルにやってこないか、頭の上に落ちてこないか、と乗客は気が気ではありません。キャビンの前方に座っていたスチュワーデスがティシューを使って自分の手の届く範囲で虫を捕まえていました。そのスチュワーデスは気持ちの悪い虫にも動ぜずに落ち着いて手馴れた感じでそれを行っており、驚いた気配も恥ずかしいといった雰囲気も感じられません。
これはいったいどういうことなのでしょうか?保有機数は余裕がなく、一方諸航路はぎゅうぎゅうに設定されて全機が忙しく飛び回っているために機内の清掃すら行う時間がなく、気味悪い小さい密航者がそのままにされているということなのですか?快適さと最善のサービスを乗客に提供するというマンダラ航空のコミットメントはどうなっているのでしょうか?[ マラン在住、メリアナ ]


「仕事に戻りたくない症候群」(2007年10月29日)
ルバラン明けの一週間に中部ジャワ州のバニュマス地方総合病院に入院する患者が急増した。入院患者急増が起こったのは精神科で、ルバラン前の入院患者数80人があれよあれよという間に134人まで増えた。おかげで標準定員85人の精神科病棟は患者でごったがえすありさまとなっている。中でも三等病室は標準が8〜10ベッドであるにもかかわらず25人も収容させなければならなくなってしまった。精神科専門看護士はこの現象について、増えた患者は過去の病歴のない者がほとんどでバニュマスとその周辺地域に帰省してきた出稼ぎ者である、と語っている。症状はストレスから来る抑鬱症が多い。かれらの出稼ぎ先は国内大都市から海外までさまざまで、雇用主とのコンフリクトや生活習慣あるいは文化の違いにうまく適応できていないのが原因だろうと見られている。似たような状況は南スマトラ州パレンバンでも報告されており、インドネシア医師同盟支部によればルバラン前より入院患者数が50%近く増加しているとのこと。
インドネシア医師同盟によれば、インドネシア人の40〜50%は軽度から重度までの抑鬱症にかかっており、国民の精神社会健康度は慢性病の度合いを深めている。インドネシアの人間開発指数や経済自由度に見られるように経済的豊かさと福祉の分配には偏りがあり、それが国民の一部に貧困をもたらし貧困が国民から適正な教育と健康を奪っている。病んだ社会の特徴は犯罪多発や先を考えない行動といった症状に現れる。自分を取り巻く状況を受け入れることができず、不満を抱き、決まりに従おうとしない。
帰省者の一部がルバランが終わったあとの逆流の波に乗って職場に戻らなければならない時期にストレスを抱え込んで身動きが取れなくなってしまうという現象はルバランが示す明暗であると言えるだろう。国家公務員の多くが休暇明けの初日をサボりたがるのも、これに一脈通じているのかもしれない。


「都内で立小便は罰金1万1千ルピア」(2007年11月19日)
2007年11月14日に北ジャカルタ市タンジュンプリウッバスターミナルで市清掃局が行った遵法市内美化取締り作戦で、ゴミを散らかしたり立小便をした者30人が現行犯逮捕された。この取締り作戦は都内の清潔維持を目的にした1988年首都条例第5号と1999年首都条例第3号を実行するためのもので、都民に対して清潔な居住環境意識の向上を図るという目的がうたわれている。
現場における取締り実施チームは北ジャカルタ市清掃局職員を主体に市警察および市庁行政警察ならびに軍が参加していくつかの実施場所に派遣された。バスターミナルで捕まった30人のうち6人は取締りチームがKTP(住民証明書)を取り上げてアイデンティティを控えている間に逃走したが、24人はターミナル事務所に連行されてすぐに簡易裁判が開かれた。捕らえられたひとりはマルンダ住民でボゴールへ行くためバスターミナルに来て、たまたまタバコの吸殻をポイ捨てしたために捕まり、罰金1万1千ルピアを科された。ボゴールへ行くための金が足りなくなったので今日は行くのを止めた、と本人は語っている。普段から畑に積もったゴミをターミナルに捨てていた近所に住んでいる住民も取締りチームに捕まった。かれはほとんど毎日そこへゴミを捨てに来ており、その辺りでゴミを集めている収集人に毎回1千ルピアを渡して処理を頼んでいたそうだ。ひとりの若者はトイレでない場所で立小便していて捕まった。かれも1万1千ルピアの罰金を科されている。北ジャカルタ市清掃局長は、このような軽犯罪行為の罰金は1万〜5万ルピアでもし大量にゴミを捨てた者があれば最高の5万ルピアが科されただろう、と語っている。


「尊大な医者」(2007年11月23日)
2007年8月30日付けコンパス紙への投書"Perlakuan Buruk terhadap Pasien Pengguna Kartu Jamsostek"から
拝啓、編集部殿。2007年8月8日19時ごろ、腕が痒くてかき回っている自分の子供をわたしはブカシのバクティ・カルティニ病院に連れて行きました。一般診療科診察室で順番を待ってから医師に対面しました。医師が病状を尋ねたので、三日前から右腕が痒くなっており赤い斑点ができていることを告げました。すると医師は子供の身体を診察もせず、またそれ以上一言も尋ねようとせずに処方箋を書き始めたのです。わたしはこの医師の振る舞いに当惑してしまいましたので、自分から医師に尋ねてみました。子供の病気は何で、してはいけないことは何ですか、と。すると医師はぶすっとした口調で処方箋をわたしに渡しながら一言だけ言いました。「皮膚病。何もない」
十分な説明もなく、また適当にあしらわれているように感じられたので、わたしはその医師にもっと説明してくださいと頼みました。わたしがもらった返事はただの言い争いでした。「医学用語が使われる説明をもらってあなたは理解できるのかね?云々、云々・・・・」
実際に診察も行わずに患者から症状を聞いただけで診断して処方箋を書くというこの医師の振る舞いがわたしにはまったく納得できません。患者は病気のことを尋ねる権利を持っていないのです。ジャムソステックカードで診察を受ける患者に対するバクティ・カルティニ病院勤務医師の対応規準がこれなのですか?患者の相談に時間すら割かないという、患者によって対応に差をつける医師の姿勢がサービスの悪さをはっきり証明しています。ジャムソステックカード利用者がまともな対応を与えられるようにジャムソステック社は協力病院やクリニックを定期的にチェックするよう要請します。[ ブカシ在住、アンリコ・パサリブ ]


「精神錯乱?トラになる夫は要注意」(2007年12月28日)
デデ・クルニアシ35歳。西ジャワ州チアンジュル生まれのこの女性は西スマトラ州パダンからランタウ(故郷を離れて学業や仕事に就くため別の地方に定住すること)してきたタムリン・タンジュン38歳と結婚して男児をひとりもうけた。ふたりはタングラン市ララガンに住んで縫製業を営み、経済的にも家庭的にも順調な毎日を送っていた。ところが2003年に一人息子がデング熱にかかり、当時6歳のジョニは両親の元から逝った。
2007年12月19日早朝、デデは眠りから覚めた。再び眠りに入ることができない。デデはしかたなく起き上がり、部屋を出ようとした。そして夫のタムリンが寝ているほうに視線を投げたとき、デデの全身を驚愕が貫いた。そこには目をらんらんと輝かせて獲物を見据える一頭のトラがいて、デデに襲い掛かろうと爪を光らせているではないか。デデは即座に裁縫はさみを手にするとトラに向かって行き、そしてはさみをトラの身体に突き立てた。トラは暴れる。「これでもか。これでもか。」デデは何度もトラの身体を突き刺した。
同居しているタムリンの母親、マルヤティ夫人が騒ぎに目を覚まして夫婦の部屋にやってきた。そして部屋の中で展開されている光景に肝をつぶしてデデの手を抑えにかかった。しかし邪魔しに来た姑にデデは刃を向けた。マルヤティ夫人は手首に傷を負ってデデから離れる。その隙に全身血まみれのタムリンが部屋から逃げ出し、家の表へ出て「助けてくれ。助けてくれ。」と叫びながら走ったが、重傷を負った身体では勢いがつかない。そしてタムリンの後ろをはさみと鉄てこを手にしたデデが追いかける。隣人たちはこの騒ぎに気付いて表へ出てきたが、タムリンとデデの間に割って入ろうとする者はひとりもいない。
家からおよそ50メートルほど行ったところでデデは少し深い側溝に落ちた。それを潮時と見た隣人たちがタムリンとデデにそれぞれ駆け寄る。タムリンは南ジャカルタ市のファッマワティ病院に担ぎ込まれたが、はさみの刺し傷と鉄てこの打撲を全身12ヶ所に負っており、みぞおちの刺し傷が命取りとなった。タムリンは12月24日夜、息を引き取った。側溝に落ちたデデを道路上に引き上げた隣人は「デデはそのときまるで夢からさめたかのように自分がしていたことをはじめて自覚したようだ。」と語っている。デデは12月22日からチルドゥッ市警察に拘留されて取調べを受けており、そのあとで精神鑑定が予定されている。
ジョニが亡くなってから夫はデデに対して頻繁に「子供をいつ作ろうか?」という言葉を口にしており、子供ができるようにとデデは夫や姑の勧めるままにパダンまで伝統的な処方を受けに行ったが成果はまだなく、その問題でストレスを抱いていたとデデの親族や隣人たちは話している。