インドネシア保健衛生情報2008〜12年


「清潔トイレ国民運動」(2008年1月28日)
2008年はビジットインドネシアイヤー。観光産業振興と外国人観光客誘致を目的としたこの国家キャンペーンを成功させるために観光文化省はいまや大童の態。その一貫として同省が進めている活動のひとつにクリーントイレ国民運動がある。省内にはクリーントイレ観察チームが結成されて大臣夫人がそのチームを統率している。
実は、このチームの活動は2007年から始められており、最初の仕事として全国国際空港のトイレを改善することから着手された。スカルノハッタ空港をはじめ、全国の国際空港にはこのチームのチェックが入り、問題点が書き出されてその改善勧告が行なわれた。外国人観光客が飛行機から降りて最初に行く場所が到着空港のトイレをいうのはよくあることで、外国人観光客に与えるインドネシアの第一印象はきわめて戦略的に重要な位置を占める。巨額の予算を使って観光促進プロモーションを行なっても、旅行者間の口コミ情報がその足を引っ張るようなことになっては不効率はなはだしい。
同チームは昨年の国際空港トイレから今年は国内観光地トイレへとターゲットを拡大することを決めた。全国の観光スポットや都市の観光施設商業施設等に清潔トイレ運営を働きかけていくというのがその計画。同チームは既にインドネシアトイレット協会と提携してこの国民運動の展開を進めており、トイレット協会は国際スタンダードのトイレ設置とその運営に関する知識を紹介するために指導書を配布して国民に対する知識啓蒙を図ることにしている。インドネシアトイレット協会は世界トイレット協会の定めた国際基準に準拠するトイレ設置を観光文化省が推進するキャンペーンの中に盛り込んでおり、それによれば便器は使用者が排水ボタンを押さなくてもよいセンサー方式のものを設置することを基本に据え、扉は外に開く方式で扉板下端と床は20センチの隙間を開けるといった内容になっている。
観光客のためにトイレを清潔にするということだけがこの国民運動の目的ではなく、それを踏み台にして国民が自分の生活環境をもっと清潔で衛生的なものにするという意識改革が最終目標であり、これは観光文化省という政府の一機関が行うという枠を超えた国民全体のプロジェクトであるととらえてもらわなければならない。トリスナ・ワチ大臣夫人はそう表明している。


「妊娠中絶2百万件」(2008年2月19日)
年間に発生する2億件の妊娠の中の38%は望まれない妊娠であるとWHOが報告したのを受けて女性保健財団会長は、望まれない妊娠の多くは一般的に避妊コントロールの失敗によるものだ、と語った。望まれない子供の妊娠が起こった場合、大半のひとびとはそれが中断することを希望する。だがその理由の58%は社会心理的なことがらから来ている。「子供の数はもう十分」「末っ子がまだ小さすぎる」「家庭内暴力があるので不安」「親や世間から何と言われるか怖い」といったようなもの。ウトモグループが2001年に発表した最新研究によれば、インドネシアの年間妊娠中絶件数は2百万件で総妊娠件数の43%にあたると推測している。女性保健財団が国内9大都市の産科クリニックや病院などを対象に2002年に行なった調査結果では、望まれない妊娠をした婦人1,446人の87.1%は既婚者だった。
WHOによれば望まれない妊娠をした婦人の三分の二は意図的に妊娠を中絶させようと考え、そのうちの40%は安全でない処置を行い、二人に一人が死亡している。妊娠中絶を望む婦人はその処置が医学的なスタンダードを満たしているかどうかに対してあまり関心を払わない。57%は堕胎ジャムウや古来からの伝統的な薬を用い、30%はピルを服用し、3%はマッサージ、そして0.5%はぴょんぴょん飛び跳ねるという方法を用いている。政府は宗教的な観点に従っての妊娠中絶に対する合法非合法の見解を示すだけで、国民の真の福祉実現に踏み込もうとしない。しかし望まれない妊娠をした女性が医学的に危険な処置を取らないようにするための保護や、望まれない妊娠から出生してきた子供たちの発育が不十分になる傾向などに対する対応は政府が国民に対して与えなければならない国民行政の一部である。女性保健財団は政府に対してそのように要請している。


「ブラウィジャヤ婦人小児専門病院」(2008年4月2日)
父親のクルプッ(krupuk)ビジネスにFINNAのブランドを提供したフィンナ・フワンの女性向け医療ビジネスは順調に進展している。2004年8月に南ジャカルタ市クバヨランバルに立ち上げたJakarta Women & Children Clinicに次いでやはり南ジャカルタ市に女性専門病院がお目見えしたのは2006年12月のこと。アンタサリ通りとタマンブラウィジャヤ通りの角地にそびえる瀟洒なビルがBrawijaya Women & Children Hospital。
シンガポールには婦人小児医療専門病院が数多い。シンガポールで豊かな経験を持つそれらの病院と提携してジャカルタにインドネシア女性のための専門病院を根付かせようとしているフィンナの夢はまだその端緒についたところだ。女性の健康問題は男性の5割増と言われているように、女性あるいは母親と子供という女性の暮らしに焦点を当て、女性の身になってその健康問題に対処しようという病院は、インドネシアにいる女性たちの心強い味方になってくれる。
清潔快適な待合室、患者の世話をしてくれるひとはほとんどが女性。子供のためのプレイルームも完備されていて、健康な子供を連れて総合病院を訪れる際に抱く、「子供がかえって病気を移されるのではないかしら」という不安をやわらげてくれる。女性専門病院であるだけに女性の美容を取り扱う部門も備えられており、病気の治療を求める以外のひとも訪れます、と同病院CEOは語っている。入院患者のための病室はまるでホテルのようで、バイオレットと白で統一された室内の雰囲気は日常生活から離れて病を癒す女性たちを優しく包んでくれる。看護婦や職員の中には外国語の堪能なひとが混じっており、インドネシア語に不自由な外国人でも十分なケアを受けることができる。英語・オランダ語・アラビア語・ドイツ語などの会話には困らないそうだ。
やはり女性である同病院CEOは、既に一年以上を経過したこの病院は時と共に利用者が大きい増加を見せている、と語る。毎月の利用者推移は時に4割増という跳躍を示したことがあるとのこと。同病院は女性患者の必要性をできるだけ親身になって世話しようとの考えから、さまざまな副次的サービスも提供している。美容サロン、24時間コールセンター、出産後のホームケアサービス、出生児の証書手続き、ビデオ撮影、ベビーシッター紹介まで百花繚乱だ。


「出産には助産婦が引く手あまた」(2008年4月3日)
都庁のデータによれば、2002年から2006年までの5年間にドゥクン(呪術医)の手を借りて産まれた赤児は5万人を超えている。呪術医とは言ってもこの場合はお産ドゥクンで、産婆さんのイメージに近い。2002年の出産件数は226,173で、そのうちの18,297件がお産ドゥクンにかかったもの。しかし2006年になると、総出産件数129,345のうちでお産ドゥクンに取り上げてもらった赤児は4,203件に減少しており、8.1%から3.3%へと大幅に減少したことがわかる。
都民の出産にもっとも活躍しているのは助産婦だ。2002年出産件数の中で助産婦が取り上げたものは66.9%、病院で生まれたのは29.5%、ところが2006年では助産婦によるもの67.3%、病院での出産30.0%となっており、助産婦の手助けで子供を生むケースは病院での出産の2倍という数値になっている。


「医は仁術それとも錬金術?」(2008年4月3日)
2007年12月10日付けコンパス紙への投書"Pembayaran Tunai untuk Dokter"から
拝啓、編集部殿。病院で専門医にかかったとき、医師が現金を支払うよう要求するのをわたしは何度も体験しています。南ジャカルタ市のポンドッキンダ(Pondok Indah)病院、東ジャカルタ市ジャティヌガラのミトラインターナショナル病院やラワマグン(Rawamangun)のダルマヌグラハ病院などです。クレジットカードでの支払いを受け付けてくれませんので、わたしはパニックになってあたふたとATMを探す破目に陥るのです。病院側は来院者に受付で、どの医師は現金支払なのだということを教えるべきではありませんか?そうそれば患者は十分な金額の現金を最初から用意していくことができるでしょうに。わたしが体験したそれら三つの私立病院で現金支払を求める医師はみんな、名前の知られた専門医で、熟練した医師で、そして大勢の患者を持っているひとです。
クレジットカードを受け付けてくれる医師もたくさんいるというのに、どうして一部の医師は現金だけしか駄目なのでしょうか。どこでもそれが私立病院の方針なのでしょうか?これは病院がそれを欲しているということですか、それともその医師が望んでいることなのでしょうか?専門医の診察料というのはいくらなのでしょうか?あるところは一回の診察料が12万5千ルピア、そしてまた別のところは30万ルピア。どうしてこんなに料金が違っているのですか?[ ブカシ在住、ビマ・スティヤ・ブディ ]


「医を錬金術にする搾取構造」(2008年4月15日)
2007年12月15日付けコンパス紙への投書"Mendapatkan Surat Izin Praktik Dokter Dipersulit Birokrasi"から
拝啓、編集部殿。医科大学学生は教育期間中に膨大なお金を必要とします。そして私立の場合は国立よりもずっとたくさん。たとえば総合医科の学生になるために寄付金は7千万ルピアを下らず、そして各学期ごとにも5百万ルピア以上を納めなければなりません。そのほかにもテキスト代や設備費等々が必要とされ、加えて教育期間内に病院で行われるインターン研修でさえ目に見えない幽霊費用の出費を余儀なくされるのです。
総合医科の学生も専門医科の学生も同じように、インターン先の病院で看護婦や先輩医師たちの食事をスポンサーしなければなりません。それもかれらがお好みの料理を用意するのです。その相手がひとりやふたりでないことは想像にあまりあると思います。かれらは自分の仕事をインターン学生に押し付けてきます。レポートを書かせたり、翻訳させたり。おかげでインターン学生は自分の仕事にはなかなか手が着けられません。このような苦難のはてに卒業して開業許可証を得ようとしても、手続きは煩雑で何ヶ月もの時間をかけなければなりません。
開業許可証なしに診療を始めると犯罪行為を犯したとして逮捕され、拘留された上に結局は金を払って出してもらうという結末が待っています。政府が定めた医療者臨時職員制度でも同じことが起こっています。これは臨時職員というステータスが義務付けられているというのに、その義務を果たすための書類手続きに関連してさまざまな理由で金が徴収されるのです。ブカシ県チカランでは、公的費用が10万ルピアと定められているにもかかわらず、保健局の不良職員は60万ルピアも搾り取ります。
そのようなビューロクラシーと不法徴収金のために新卒医師はみんな臨時職員制度に従うのを忌避しようとします。その結果、開業許可証手続きも、上級学業継続もすべて困難が倍加され、行き着くところは金で処理ということになるのです。24時間診療総合医は公費から10万ルピアを与えられますが、それと引き換えに医療ミスを犯した場合の何億ルピアという損害賠償リスクを抱えなければなりません。10万ルピアという金額はいまやジャカルタで建築工事人夫がもらっている賃金とたいして変わらないではありませんか。かれらは8時間労働で7万5千から8万ルピアを手にしているのですから。[ ブカシ県チカラン在住、ヘリ ]


「インドネシア人看護婦らがもうすぐ日本に」(2008年5月23日)
2008年5月19日ジャカルタで、日本インドネシア経済連携協定の一環として行われるインドネシア人看護師・介護福祉士候補者の日本派遣に関する相互覚書調印式が行われた。その調印はインドネシア政府トランスミグラシ労働省インドネシア労働力保護配備国家庁と日本政府国際厚生事業団との間で交わされた。
計画によれば、インドネシア側は2008年7月から2009年までの間に4百人の看護者と6百人の介護福祉者を日本に派遣することになっており、第一フェーズとしてトランスミグラシ労働省はそれぞれ半数を年内に、残る半数は2009年に派遣するというスケジュールを組んでいる。労働省データによれば、インドネシアにはこの分野の教育機関が770あって年間2万5千人の卒業生が送り出されているとのこと。看護者として日本に派遣されるための資格はインドネシアのD3看護士教育修了者もしくはS1大学看護学科修了者で、さらに2年以上の実習経験が必要とされている。介護福祉者として派遣されるための資格は老人介護分野でのD3レベルあるいはそれ以上の教育修了歴を持ち、介護者能力検定サーティフケートを持っていること。今年7月から送り出されて行く第一陣は既に厳しい選抜をパスしたひとたちであり、一ヵ月半の集中訓練を受けているところである由。看護者は3年契約、介護者は4年契約になっている。
インドネシア人看護者・介護者の報酬についてトランスミグラシ労働省は、看護者が月給20万円以上(1,790万ルピア相当)、介護者は月給17万5千円以上(1,560万ルピア相当)だ、と公表している。月給1千5百万ルピア以上というのは、一概に言えるものではないにせよ、インドネシア国内で専門性の高い業界のアッパーミドル層から上に該当する賃金レベルであり、高学歴者失業率が上昇傾向にあるインドネシアがこの労働力日本派遣プロジェクトから得るメリットは単なる外貨収入にとどまらず、さらに大きな政治的効果をもたらすものであると言える。エルマン・スパルノ労相は、この看護者・介護者派遣を皮切りにして、日本側がインドネシア人労働力の派遣を歓んでくれるなら更にホテル・レストランや観光セクター労働者の派遣も日本側と協議していきたい、と語っている。


「罪悪意識のない看護婦」(2008年5月28日)
2008年2月2日付けコンパス紙への投書"Pasien Golongan Darah O Ditransfusi Golongan B"から
拝啓、編集部殿。わたしの父は2008年1月2日に西ジャカルタ市クブンジュルッ(Kebun Jeruk)のシロアム病院に入院しました。父は4511−2号室に入り、血液型がO型の輸血を受けなければなりません。わたしが父に付き添っていたある晩、輸血用血液バッグの中身が空になったので看護婦に交換するよう頼みました。看護婦が新しいバッグを持ってきて取り替えようとしていたとき、その新しいバッグに書かれているBという表示を目にして驚きました。Oと書かれている空になったバッグをその目で見ているというのに、その看護婦はB型血液をO型患者に輸血しようとしているのです。
わたしは怒ってその看護婦に、患者の血液型はO型であってB型ではない、と言いました。看護婦はすぐにO型の血液バッグを出してきて交換しましたが、父の隣に寝ている患者がB型だったので・・・と言い訳したのです。クブンジュルッのシロアム病院ほどの私立病院であれば業務手順書が整備されており、看護婦が患者を処置する際には高いプロフェッショナリズムでその業務手順書が遂行されるのが当然ではありませんか。
O型患者にB型血液が輸血されたらどうなるのか、とわたしがその病院の医師に尋ねて見たところ医師は、致命的な結果が起こりうる、と答えました。1月13日にわたしは父をその病院から退院させました。患者の生命に致命的な結果をもたらすような処置をされてあんなに高額の治療費を払わせられるのではまったく吊り合いが取れません。わたしはこの病院に本当に落胆してしまいました。この問題についてわたしはシロアム病院経営者に手紙を送りましたが、病院側はただ改善を約束しただけで、この問題に対して誠意も示さず責任を取ろうともしません。病院で輸血が行われるときには、みんな警戒してください。わたしの父が蒙りそうになったことがほかのひとの身の上に起こりませんように。[ ジャカルタ在住、スヘンドラ ]


「傲慢な医者」(2008年6月2日)
2008年1月17日付けコンパス紙への投書"Sikap Dokter di RS Mata Aini"から
拝啓、編集部殿。首都ジャカルタのアイニ眼科専門病院のサービスにとても失望したことをお伝えしたいと思います。2007年12月19日、わたしは友人の治療に付き添ってその眼科病院を訪れ、友人はRRS医師の診察を受けました。しかしその医師は患者を侮蔑する態度を示したのです。患者が所見を尋ねると医師は「完全失明と表示されている診察結果を読むがいい。説明してもあんたは理解できないだろうから、するだけ無駄だ。インターネットで調べりゃいい。」と答えたのです。患者は12万5千ルピアもの診察料を払ったのに、一時間たった4千ルピアのインターネットを見ろという返事はいったい何なのですか。そのあと友人は写真を撮るように言われ、出来上がったものを医師に見せようとしましたが、医師はそれを看護婦に渡して「待合室で説明してやれ。」と言いました。写真料は20万ルピアもします。その医師にとってたいした意味のない写真だったら、どうしてそんなことをさせるのですか。わたしの友人にとって20万ルピアはとても意味を持っている金額なのです。
ほとんど満足できないような結果のためにわたしの友人はそれだけの出費をしてしまいました。そんなことなら、その医師が出した処方箋に記されたビタミン20錠を得るためにそのお金を使ったほうがよっぽどマシでした。そのビタミンは1錠が6万1千ルピアもするのです。友人は現金の持ち合わせが底を衝いたので、もらった処方箋の薬を買うのを後回しにしました。アイニ病院ほどの大きな病院が患者とろくにコミュニケーションもできないような低クオリティの医師をどうして使っているのでしょうか。[ ブカシ在住、アリナ・シアハアン ]


「病人の容態を悪化させる救急車」(2008年6月6日)
2008年2月5日付けコンパス紙への投書"Mobil Ambulans Gawat Darurat Tidak Layak Pakai"から
拝啓、編集部殿。2008年1月8日に南ジャカルタ市トゥベッ(Tebet)病院からデポッ(Depok)の自宅まで母親を運んでもらうため、わたしは都庁保健局の救急車を利用することにして118番に電話しました。料金は片道50万ルピアという結構なお値段です。
ところがその高いお値段に反して、やってきたプレート番号B7082MQの救急車は使用に耐えないような代物でした。患者を乗せて走り出しても涼しい風が来ません。どうしてかと尋ねると、エアコンが壊れている、という返事です。おかげで2時間近い道程で患者も付き添い者も汗びっしょりになり、家に着いたときは患者が元気を失って容態が悪化していました。車内は暑くて空気がよどみ、特に患者が横たわる中央部分がもっともひどいありさまでした。このサービスは安い料金なのだから車のメンテナンスは適当でいいんだ、と人間的な感情も持たずに経営者が考えているように思えてなりません。しかし世間の一般庶民にとってこれはとても必要なサービスなのですから、経営者はもっと人道的な心を持たなければなりません。もしもこのような救急車を使って患者に望まざる結果が引き起こされたなら、経営者は責任を取ってくれるのでしょうか?
とはいえ、うれしいことに、職員はみなさん親切で、患者を優しく扱ってくれました。都庁保健局救急車サービス責任者はもっと小市民へのサービスに関心を持ち、良い状態の車を用意するようわたしは希望します。そうなれば、このサービスを本当に必要としている一般庶民が支出する費用に見合ったサービスを受けることができて、このサービスを利用してよかったと感じることができるのです。[ デポッ市在住、イダ・ティモウル ]


「人体に有害なジャムゥ54種が摘発される」(2008年6月20日)
食品薬品監督庁が54種類のジャムゥ及び伝統医薬品を、劇薬が使われているとして流通禁止にした。食品薬品監督庁は2007年に全国16都市で行ったサンプリングラボ検査から多数の人体に危険なジャムゥ及び伝統医薬商品を発見して流通禁止措置を取った。サンプルが採られた16都市とは、ジョクジャ、バンジャルマシン、クンダリ、メダン、マタラム、ランプン、アチェ、ポンティアナッ、ブンクル、パダン、マカッサル、プカンバル、バンドン、ジャカルタ、クパンなどで、危険な含有成分が見つかった商品の中には次のようなものがある。
商品名 / 生産者・輸入者
含有有害成分 フェニルブタソン
Pacegin Kapsul Alami / Akar Pinang (Kuningan)
Akar Baru Kina Tablet / PJ Bayu Segratama
Jasa Agung 2 Serbuk / PT Jasa Agung
Jawa Dwipa Cap Sambiroto / UD Sambiroto
Pegal Linu Asam Urat / PD Sinar Gelatik
Flu Tulang Karisma Sehat / PJ Candi Guna Jaya
Runrat Tablet / PJ Serbuk Manjur Jaya
Ramuan Shin She kapsul / PJ Alam Tiongkok
Sumber Sehat Perempuan / PJ Sumber Sehat
Asam Urat Pegal Linu Cikungunya / PJ Lestari Alam
含有有害成分 シプロヘプタディン
Neo Gemuk Sehat: S Munir / F Munir (Tangerang)
Ganoderma Capsule / Hangzou Chinese Drug Factory
含有有害成分 シブトラミン
Sela Kapsul / PT Hemacare
含有有害成分 シルデナフィルシトレート
Bima Kudra Tablet / PJ Bima Putra
Ajib Kapsul / PJ Garda Kanoman
Kamasutra Kapsul / PT Putra Jawa
Pria Dewasa Ocema Kapsul / PJ Sumber Makmur Mandiri
Golden Herbal Capsules / Beijing Kowloon Pharmaceutical
Obat Kuat dan Tahan Lama Ratu Madu Plus / PJ Ratu Lebah
含有有害成分 パラセタモール
Asam Urat Flu Tulang Cap Onta / PJ Serambi Super
Ramuan Cina Kapsul / PJ Ramuan Cina
Akar Sakti Asam Urat / PJ Putra Banyutama Sakti
Asam Urat Pegal Linu Cikungunya / PJ Lestari Alam
Asam Urat / PJ Kuda Laut
Sehat Sentosa Gemuk Sehat / PJ Sehat Sempurna
含有有害成分 テオフィリン
Sesak Nafas Serbuk / PT Surya Sehat
含有有害成分 メタンピロン
Serbuk Dewa / PJ Putra Sanjoyo Perkasa
それら危険な成分を含んだジャムゥ伝統医薬品の多くはそれぞれ強精・筋肉痛・通風・痩せ薬・体重増進などを効用としており、チラチャッ(Cilacap)・ソロ・スマラン・バニュマス・タングラン・ジャカルタ・スラバヤなどで生産されていた。食品薬品監督庁によれば、それら54種のうち46種は架空の承認番号を付けているが輸入品1種国産品6種は食品薬品監督庁からの正式承認を得たものであり、その承認は既に取り消されているとのこと。


「外国人留学生誘致は収入とステータスのため」(2008年7月4日)
国立大学医学部は外国人留学生の誘致に一生懸命にならず、自国民学生への対応も忘れないようにしなければならない、とシティ・ファディラ・スパリ保健相が発言した。保健相は国会地方議会第3第4専門委員会作業会議の場で、バリ州デンパサルのサンラ病院を訪れた際にインド人の顔をした学生を大勢目にして驚いた、と語った。「かれらはマレーシアからの留学生で、マレーシアからの学生がインドネシアの国立大学医学部に入れる確率は30%だそうだ。インドネシアの高校生はそれがたったの4%しかない。マカッサルのハサヌディン大学医学部には留学生が3百人もおり、バンドンのパジャジャラン大学、ソロの3月11日大学、その他国立大学でも似たり寄ったりの状況だ。大学側が留学生を採りたいのはワールドクラスだと言われたいためで、わたしが悲しく思うのはかれら留学生が政府から資金の援助を受けている病院でインターン研修を行っていることであり、かれら留学生は修業すればそのままインドネシアで医師になれる。わが国の医師はクーリーになるばかりだ。これはアイロニー以外のなにものでもない。」
保健相のその発言に対して大学界から反論が起こった。ハサヌディン大学学長は、外国人留学生は国際クラスとして定員を別に取っているため、留学生が増えたからといって自国民学生入学者数が影響を受けることはない、と語った。また大学が外国人留学生誘致を奨励していることについても、留学生は入学金1万2千ドル、教育育成寄金年間5〜6千ドルを徴収しているが、自国民学生は入学金150万ルピア、教育育成寄金年間150万ルピアであり、医学部の教育は費用がかかるが自国民学生にかかる費用を留学生からの資金で補填しており、またインターン研修の際に病院に納める寄付金もそこから出していると外国人留学生からの収入運用の一部を明らかにした。ハサヌディン大学医学部は年間50人ほどの留学生を受け入れている。同大学には、医学部の留学生は総数350人で自国民学生は2千人、全学部合計では4百人の留学生がいる。
パジャジャラン大学医学部長は、医学部留学生誘致は大学の国際度を高めるためのものでもある、と認めている。「大学が国際レベルなのかどうかという話になると、たいてい留学生はいるかという質問になる。留学生がいるということは国際的な認知を得ているということになる。」学部長はそう語っている。
世界に二ヶ所しかないNAMRU(Naval Medical Reserch Unit)のひとつがあるジャカルタで、2000年に米国政府との協力契約が期限切れとなっているにもかかわらずナムルはいまだに活動を続けており、リサーチ内容の報告すら保健省に何も届け出ないと発言して民間団体によるスパイ疑惑デモまで招いた保健相は、地方議会専門委員会で受けた「政府系病院が地元自治体に収入の一部を納付しないのはどうしてか?」との質問に対して、政府系病院は国民への奉仕を憲法で義務付けられており、利益を得るのはかまわないが利益を求めて活動するものではない、と答えた。「わたしは以前、すべての病院を株式会社にするという企画に驚いた。そうなれば医療活動は商業活動にされ、国民は廉価な医療を受けることができなくなる。だからわたしは病院が公共サービス機関に分類されるよう努力した。その結果政府はいま政府系病院に補助金を与えている。だから病院が地元自治体に金を納めるようなことはしない。反対に、病気の住民から金を得ようとするのはやめて、県令の方が住民に奉仕しなければならないのだ。」


「外国人薬剤師が増加傾向」(2008年8月1日)
国内の薬剤師は早く英語力を身につけておかなければ既に国内に流れ込んできているタイ・マレーシア・フィリピンの薬剤師たちに太刀打ちできなくなる、とインドネシア医薬学士会役員が警鐘を鳴らした。国内での薬剤師の職をめぐる競争が同じインドネシア人の間でだけ起こるという状況はもはや過去のものになりつつあり、今後さらに進展するアセアン域内自由化にともなって外国人薬剤師が国内の大きな市場に職を求めて入ってくる状況はすでにその端緒についている。今現在はまだインドネシア人と外国人の間の競争が先鋭化しているわけでないものの、外国人は英語をマスターしており、このポイントがいまだに英語の不自由なインドネシア人にとっての弱点を形成している。加えてインドネシアに職を求めてやってくる外国人たちはインドネシア語も流暢にあやつることができるため、インドネシア人が英語力を涵養しておかなければ競争の場できわめて不利になる。現在インドネシア国内で就業している外国人薬剤師の数は医師と同じ3千人程度と見られている。
国内の薬剤師需要は、薬局・保健所・大規模医薬品流通商で薬剤師の雇用が義務付けられているため、膨大な数にのぼる。中部ジャワ州だけでも3千人の薬剤師が公式登録されている。


「インドネシア人看護婦第一陣が日本に向けて出発」(2008年8月8日)
日本インドネシア経済連携協定の一環として行われるインドネシア人看護士・介護福祉士候補者の日本派遣第一陣が2008年8月6日ジャカルタから日本に向けて出発した。この最初のグループは看護者候補104人と介護者候補104人から成っており、日本到着後最初の6ヶ月間に日本語習得と能力検定が実施されることになっている。検定をパスすればそれぞれの資格が与えられて2年間日本で勤務することになるが、もし検定にパスしなければ日本側の費用でインドネシアに送り返される、と労働省は説明している。日本で勤務できるようになれば、看護者は月給1,790万ルピア、介護者は月給1,560万ルピアが与えられ、また無料宿舎や健康保険の恩典も享受できる。
8月5日にジャカルタのトランスミグラシ労働省で行われた日本向け看護者・介護者送り出し式典でエルマン・スパルノ労相は「巨額の月給という印象を受けるだろうが、日本の生活費はたいへん高いので倹約を忘れてはならない」と候補者たちに語りかけた。このプログラムで日本側が割り当てたのは2009年までに看護者4百人介護者6百人の合計1千人という枠だが、国内からのこのプログラムに対する応募熱はきわめて高く、割当枠は2009年末を待たずして一杯になるだろう、と労相は予測を語っている。この第一グループ208人は予備選抜を潜り抜けた305人から絞り込まれたひとたちで、ジャカルタで5日間の研修が出発に先立って与えられている。


「不思議・・・自分が得する間違い請求ばかり」(2008年8月12日)
2008年3月26日付けコンパス紙への投書"Waspadai Biaya Operasi Usus Buntu di Rumah Sakit"から
拝啓、編集部殿。2008年2月16日土曜日深夜から翌日早朝まで、わたしの夫はタングランのビンタロ国際病院で盲腸の手術を受けました。手術前に病院の会計職員がわたしに対し、手術費用は6百万ルピアくらいでありその75%以上を早急に納めるよう求めましたので、わたしは5百万ルピアを払っておきました。
2月18日月曜日お昼ごろ、会計職員が中途請求書だと言って明細の記された請求書を持ってきましたが、その総額はなんと17,381,791.95ルピアと書かれているのです。まだ48時間も経っていないにもかかわらず、1千1百万ルピア以上も増えているのに驚きました。明細を見るとLMA ProSeal 6,220,500ルピアという大きな金額が目につきましたので、二階の入院患者会計窓口で職員のひとりに尋ねました。しかし職員からは何の説明も得られず、「請求内容は手術室からの連絡通りに作っていて、自分たちはその連絡を受け取るだけですから。」という返事しかありません。わたしはともかくその内容を調べるように頼み、その職員は「夕方には返事します」と約束しました。
夕方また会計窓口へ行くとその職員はすぐに新しい請求書をわたしに出してきました。622万5百ルピアという金額は155,512ルピアに変わっています。手術室の説明によると6百数十万ルピアというその医療器材の金額は間違って百パーセントのものを記載したのだが、これは使い捨てでなく何回も使用されるため一回当たりでは0.025%分が患者ひとり当たりの料金なのだそうだ、とその職員は言いました。わたしがインターネットで調べたところ、LMAというのはラリンゲアルマスクという患者のための呼吸補助器具で何回も使用できるものであり、一回で使い捨てされるものではありません。会計職員の説明にわたしはまだ少し引っかかっていましたが、ともあれビックリするような金額が落ち着いたことでわたしはホッとしました。
他にも問題があります。いったい何のためにあれほど多種の薬を患者に与えるのでしょうか?24種類以上もの薬の代金が請求されており、その大半は4日間の入院中に点滴で患者の体内に注入されたようです。一般薬はたったの一種類しかなく、他の薬はみんなかなり高価な特許薬なのです。中には一回の注射に20万5千ルピアかかるものがあり、夫は入院中にその注射を6回受けました。一般薬はVit K−3だけで金額は2,317ルピアでしたが、この注射は後にも先にもたった一回だけ。看護婦に尋ねてみたところ、その数十種類の薬はどれも抗生物質または鎮痛剤のどちらかでした。ビンタロ国際病院は今後もっと注意深く事務を行い、また露骨に金儲けに走らないように願いたいと思います。[ タングラン在住、ファイルス・フサイニ ]
2008年4月2日付けコンパス紙に掲載されたビンタロ国際病院からの回答
拝啓、編集部殿。ファイルス・フサイニさんからの3月26日付けコンパス紙に掲載された投書について説明申し上げます。この問題に関して当方は既に、データ入力間違いを防ぎまた治療費の正確な請求を行うためのさまざまな対策を講じました。患者への投薬が多種にのぼっていることについては、医療サービス基準と指示に即したものです。もし必要であればもっと詳しい説明を得るために当病院医療チームに問い合わせることも可能です。[ ビンタロ国際病院総務経理課長、キャリー・スティーブン ]


「風土病克服への遠い道」(2008年8月19〜21日)
熱帯性風土病はいまだに撲滅されないどころか、21世紀に入ったというのにかえって罹患者数の増加が報告されている。保健省の統計データによれば、象皮病(filariasis)罹患者数推移は次のようになっている。
2000年 4,472人
2001年 6,181人
2002年 6,217人
2003年 6,635人
2004年 6,430人
2005年 10,239人
国民人口と比較して見たい方に参考までに記載しておくと、
2000年 205,843,196人
2001年 208,405,944人
2002年 211,000,598人
2003年 214,374,096人
2004年 217,072,346人
2005年 218,868,791人
2005年に象皮病罹患者が急増しているが、その増加は患者の発見された地区の拡大と軌を一にしている。たとえば西ジャワ州で2000年に象皮病患者が出たのはブカシ県とブカシ市だけだったのが、2008年は6月時点のデータであるものの、413人の新規発見罹患者が州内26県133郡240ヶ村に散らばっている。とはいえブカシ県とブカシ市の数値は圧倒的に高い。
バンテン州タングラン県はオルバ期が幕を閉じるまで罹患者発見はゼロだった。ところが2001年には10人の発症者が見つかり、2007年には発見地区が15郡19ヶ村に広がった。不衛生な環境がフィラリア寄生虫を媒介する蚊の繁殖を活発にしている要因は疑う余地がない、とタングラン県保健局環境衛生疾病予防撲滅課長は語っている。州別に見れば、象皮病の罹患者数がもっとも多いのはナンロアチェダルッサラム、続いて東ヌサトゥンガラ、パプア、リアウ、中部スラウェシ、東カリマンタンという順位になっている。
やはり罹患者数が急増している病気にハンセン病がある。罹患者数推移は次の通りだ。
2000年 14,697人
2001年 14,061人
2002年 16,229人
2003年 15,549人
2004年 16,672人
2005年 19,695人
らい菌に冒されて起こるこの疾病は、栄養摂取が劣悪で、また保菌者と頻繁に接触することで伝染する。栄養状態が良ければ伝染する可能性は低く、そのために貧困が罹患の原因であるとも言われている。州別に見ると東ジャワ州がもっとも多く、次いで西ジャワ、中部ジャワ、南スラウェシ、パプア、ジャカルタ首都特別区と続く。全国ナンバー2の西ジャワ州では2008年6月時点で2,414人の罹患者が発見されており、そのうちの76%は今年発症した新患だ。MB型患者は2,108人おり、大人1,949人子供159人という内訳になっている。現場にいる医療関係者がすべてこの病気を正しく認識しているわけではなく、そのために誤診の発生も避けがたい。通常の疥癬などと間違えられて適切な処置が与えられず、長期にわたって放置されたまま伝染を拡大させる結果を生んでいるケースもある。
国が設けている国民保健行政の国民生活の末端に据えられているのはPuskesmas(国民保健センター)と呼ばれる保健所で、保健所はより完備された普通の保健所とその簡素版とも言える補助保健所に分かれている。保健所設置数はあまり変化しておらず、次のような統計数値が上がっている。
年 / 保健所数 / 補助保健所数
2000年 / 7,237 / 21,267
2001年 / 7,277 / 21,587
2002年 / 7,309 / 21,706
2003年 / 7,413 / 21,762
2004年 / 7,550 / 22,002
2005年 / 7,669 / 22,171
しかし保健所が設置されても、最初の数年間を超えて更に発展しないまでも当初のレベルが維持されるところはまだラッキーだと言えるかもしれない。常勤医師が辞職して交代者がいないままになっているところや、常備薬のストックで常に何かを切らしているというところも少なくなく、全国保健所の半分は計画された機能を果たしていない、という批判が多数のひとびとによって語られている。
熱帯病の代表格のひとつにマラリアがある。象皮病と同じく蚊が媒介するマラリアは、罹患が減少しているとはいえいまだに高いレベルにあり、2005年の罹患率は住民人口1千人中で18.94件となっている。ジャワ〜バリ外のマラリア罹患率の推移は次のようなものだ。(1千人中の発症件数)
2000年 31.09
2001年 26.20
2002年 22.30
2003年 21.80
2004年 21.20
2005年 18.94
州別ランキングでは東ヌサトゥンガラが群を抜いて高く、続いてパプア、マルク、西ヌサトゥンガラ、リアウ島嶼州、中部スラウェシといった順位になっている。一方、ジャワ〜バリにおける罹患状況は2000年が0.81で、その後年々低下の一途をたどり、2004年2005年とも0.15という低い数値に落ち着いている。
昔はヨーロッパでさえコレラ、ペスト、天然痘などの風土病が猛威を振るったものの、経済状況や教育レベルが向上する中でそれらの疾病は克服され撲滅されていった。他の地方でも同じような道程を歩んで保健と環境衛生が確立されていったことは歴史が物語っている。だからインドネシアでも・・・、と対策が明らかな風土病を克服するために何が欠けているのかを指摘するのは容易だが、はたしてだれがその実現に手を貸すことができるのだろうか?


「頭の痛い病院の前金制度」(2008年8月26日)
2008年4月3日付けコンパス紙への投書"Kondisi Pasien Mencemaskan, Rumah Sakit Tidak Toleransi"から
拝啓、編集部殿。2008年3月6日夜半1時ごろ、長い間糖尿病を患っていた母の容態が悪くなったので、東ブカシのミトラクルアルガ病院に緊急移送しました。何度も痙攣を繰り返し、見るのもつらい容態だったのです。病院に着くとすぐに当直医師が迎えてくれ、ICUに患者を入れるのでその手続きをするよう言われました。ところが病院の受付でその手続きをしようとしたとき、たいへんな失望と無念さを味わわされる結果になったのです。病院側はICU入院費としてデポジット7百万ルピアをその場で納めるよう要求して譲らないのです。そのときはまだ深夜だったので、翌朝7時ごろにはそのお金を用意するからそれまで待ってほしいと頼んだのですが、病院側は今すぐにと主張し、頑として聞く耳を持ちません。
結局わたしは容態の悪化している母を連れて別の病院へ移らざるをえませんでした。その病院には前もって電話で条件を尋ねておいたのですが、そこは翌日の正午までにデポジットを納めれば良いという協力的な条件でした。ミトラクルアルガのような大病院が患者との連帯感も持たず、ましてやこれまでに一度も支払のトラブルを起こしたこともなく数十回も通院している患者をそのように扱うのは本当に残念なことです。あのときわたしが求めた猶予はほんの数時間であり、ICUに入れたあとで何日も待ってくれというようなことを言ったわけではありません。
治療費支払に関する病院の方針は各病院に百パーセント委ねられているのでしょうか?容態の悪化している患者の人命よりもビジネス問題のほうが重要だという姿勢は当然のことなのか、保健省に尋ねたいと存じます。[ ブカシ在住、イラワン・マスヴィアント ]
2008年4月15日付けコンパス紙に掲載されたミトラクルアルガ病院からの回答
拝啓、編集部殿。イラワン・マスヴィアントさんからの4月3日付けコンパス紙に掲載された投書について説明申し上げます。東ブカシのミトラクルアルガ病院にイラワンさんの母親が到着されたのは3月6日0時40分で、救急ユニットの医師が費用の問題を後回しにしてすぐに処置を取りました。一連の検査と処置を終えた2時15分ごろ、医師はICUでの治療が必要であると決定し、病院事務局は規定に従って患者家族に費用関連のことがらを説明しました。その中にはデポジットとして7百万ルピアが必要であるということも含まれています。その説明を聞いたあと患者の家族は相談する時間を求めました。そして7百万ルピアは無理で1百万ルピアのデポジットにしてほしいと2時20分ごろ申し出られたので病院事務局はそれを了承し、規定の7百万ルピアに対する不足分について翌日正午までに納める旨の誓約書を出してほしいと依頼しました。すると患者の家族はそれを拒否し、既に行われた救急ユニットの処置やその他の費用の支払をするので他の病院を紹介して欲しいと要請し、請求費用2,443,000ルピアを支払われました。そのお金はデポジットの中に含めることの可能な費用なのです。[ ミトラクルアルガ病院広報担当、ヌルファンティナ・パンディナ ]


「入魂の日が待たれる医療界」(2008年9月5日)
都内スディルマン(Sudirman)通りとマスマンシュル(K.H.Mas Mansyur)通りにはさまれたスーパーブロック・サヒッシティ(Sahid City)にサヒッグループが建設していた15階建てのサヒッサヒルマンメモリアルホスピタル(Sahid Sahirman Memorial Hospital)は「最小限侵襲手術泌尿器外科病院が来年3月にオープン」(2007年08月30日)の記事で報道されていた日程から遅れたものの、ついに2008年8月25日ユスフ・カラ副大統領を招いてオープニング式典が開催された。
インドネシアで最初の本格的泌尿器外科病院として誕生したこのサヒルマン記念病院は、それ以外に女性健康管理とメディカルチェックアップに特化する。同病院CEOはその理由を、それらの分野で自分たちは最高のものが提供できるからだ、と語っている。この病院はこれまで治療のために海外に出ていたアッパーミドルクラスをターゲットに据えており、入院患者用ベッド数は57でその設備は5つ星プラス級ホテルと遜色ないレベルであるとのこと。同病院が擁する医療チームは非常勤医師30名と常勤医10名および専従関係者90名から成り、今年10月に予定されている同病院のフル稼働時には医療従事者が200名に達する計画になっている。この病院はペーパーレスホスピタルとして運営管理される予定で、X線写真や診断書などあらゆる書類がデジタル化されてデータベースに納められる。
しかし多くのインドネシア人がシンガポールやマレーシアに医療目的で渡航している事実が一方にあり、国有事業体担当国務大臣はその現象に関して「インドネシア人専門医の能力が隣国に比べて劣っているわけでもなく、病院の医療設備も隣国とそれほどちがわない。ところが大勢の国民が医療のためにシンガポール・マレーシア・タイなどへ出国している。どうしてか?それは隣国の医療従事者が患者の細かいところにまで気を配っているからで、インドネシアにはそれが不足している。インドネシアの医療従事者も病院運営者も細かいところまであまり意識を用いない傾向があり、それが結果的にそのような差を生んでいる。」と論評している。インドネシアにある最新鋭設備も優秀なドクターたちも、入魂の日が待ち望まれているようだ。


「不法医薬品がいっぱい」(2008年9月12日)
イリーガル医薬品の国内流通量は膨大なシェアを占めているにちがいないとアンチ偽造品インドネシアソサエティが推測している。中国やインドから国内に入ってきた大量の医薬品は政府監督機関の管理を経ないまま国内市場で流通しており、国民の保健衛生に危険をもたらすものであることから同ソサエティは消費者に対する啓蒙活動を高める計画にしている。特にイリーガル医薬品の大半は医薬品販売店を中心に流通しているため、薬局でない医薬品販売店での購入は警戒を強めるよう国民に呼びかけている。
同ソサエティ役員によれば、偽造医薬品には三つの種類があるとのこと。まず医薬品としては正しいものだが著名ブランドのニセモノとして作られているもの。次に薬剤の活性要素が基準値に満たないもので、たとえば必要成分は5mgなのに実際には2mgしか使われていないといったもの。三つ目は食品薬品監督庁への届出がなされていない外国産品で、インドネシアでの疾病治療にそぐわないもの。
2005年にインドネシア大学社会経済調査院が12工業セクターに対して行った調査で医薬品の大半が偽造されていると報告している例もあり、医薬品のニセモノは人命に関わるおそれが強いことからソサエティは国民への啓蒙教化活動が急務であるとしている。従来は取締りの必要性から法執行者への啓蒙普及が重視されてきたが、もっと最終消費者に密着した教育の重要性をソサエティは呼びかけている。


「消費期限超過飲食製品取締り」(2008年9月20日)
飲食製品需要の猛烈に膨張するこのシーズンに時を合わせて、食品薬品監督庁が月初に全国地方自治体の食品薬品監督館に市場監督の強化を発令した。異常に需要が高まるこの時期には販売者側がありとあらゆる商品を取り揃えて消費者に売り渡そうとする。消費期限を過ぎているもの、政府の品質規格をパスしていないもの、登録届出すら行われていないもの、政府の検査を受けていない外国から流れてきた商品、・・・。食品薬品監督館職員は所轄地方で毎日市場に出て忙しく商品のチェックを行っている。
祝祭日の前には違法商品がたくさん市場に出てくるので、食品薬品監督庁は取締りを厳しく行うことにしている、と長官は言う。全国の監督館が摘発した違法商品の報告は今月末にまとめられ、関係のある生産者や流通者に警告が発せられる。地方自治体とその食品薬品監督館は既に所轄州での取締りを開始しており、それぞれ赫々たる戦果をあげつつある。ということは、それだけ違法商品がたくさん出回っていることを意味している。たとえばポンティアナッのショッピングセンターでは、マレーシア産輸入品で食品薬品監督庁の輸入品コードがついていないものが多数摘発されており、またジャカルタでも最大手のハイパーマーケットで消費期限を過ぎたものや未届け輸入品などが発見されている。違法商品の中には、フランスから輸入された鶏肉・牛肉・臓物・ビスケット・ナゲットなどがあった。ジャカルタでは都庁商工局・計量器検定局・食品薬品監督館・消費者保護担当文民捜査官そして首都警察から成る合同調査チームが都内の小売マーケットをしらみつぶしに調査して回っている。
商業大臣はラマダン月の輸入量が15〜20%増加していると表明しており、特にナツメヤシの実、繊維製品、工業製品スペアパーツが目立っているとのこと。大臣は消費者に対し、期限切れや許可コードが表示されていない商品は見つけしだい届け出るようにと呼びかけている。消費者保護財団は政府が行っている取締りについて、特定時期にのみ行うのでなく年間を通して休みなく行わなければ十分な効果は期待できない、と批判している。「シンガポールで市場監督職員は毎日現場を回っているのに、インドネシアの監督職員は特定の時期にしかそれを行わない。おまけにインドネシアの監督職員は人数もクオリティも問題がある。商店はイドゥルフィトリやクリスマス、年末〜新年といったセールス期に大棚ざらえを行うが、商品の有効期限にはほとんど意識を払っていない。消費者保護財団は生産者や流通者に消費期限を守るよう呼びかけていく所存であり、食品薬品監督庁にもその写しを送ることにしている。」消費者保護財団調査部役員はそう語っている。


「メラミン汚染ミルクは本当に来ていないか?」(2008年9月26日)
食品薬品監督庁は中国でのメラミン汚染ミルク問題に関連して国内で流通しているミルクや乳製品に厳しい目を向けている。同庁食品監視承認局長は「中国から輸入されたベビーミルクは国内で流通しておらず、また国産ベビーミルクの原料も中国産ではない。」と表明して国民の関心に応えている。
一方、先に中国産汚染ミルクは国内に流通していないと発表した食品薬品監督庁の発言を訂正して保健相は中国から輸入された乳製品が存在していることを明らかにした。それはGuozhenブランドの全脂粉乳で、一年前に承認番号ML805309001478を与えて国内流通を許可している。食品薬品監督庁は国内市場で流通しているミルク含有製品の一部を再検査することに決め、検査指定商品に対してその結果が明白になるまで市場からの回収を命じた。回収商品は次のようなもの。
1. susu fermentasi rasa jeruk Jinwel Yougoo
2. aneka rasa buah Jinwel Yougoo
3. Jinwel Yougoo tanpa rasa
4. susu bubuk "full cream" Guozhen
5. es krim Meiji Indoeskrim Gold Monas rasa coklat
6. es krim Meiji Indoeskrim Gold Monas rasa vanila
7. wafer batang Oreo
8. kue Oreo coklat jenis sandwich
9. kembang gula coklat susu M&M's
10.coklat susu M&M's
11.biskuit-nougat lapis coklat Snickers
12.kembang gula coklat Dove Choc
13.es batangan rasa yogurt Natural Choice
14.es batangan kacang merah Yili Bean Club
15.Yili Prestige Chocliz
16.es batangan Yili chestnut
17.susu murni UHT Nestle Dairy Farm
18.susu rendah lemak Yili High Calcium
19.susu berkalsium tinggi Yili High Calcium
20.susu murni Yili 1 L
21.susu murni Yili 205 ml
22.susu rasa stroberi Dutch Lady
23.permen krim White Rabbit
24.yogurt beku Yili Choice Dairy
また食品薬品監督庁に届出のなされていない飲食品が各地でたくさん流通している実態は同庁自身も十分に把握しているところであり、そのため各地方州政府の現場機関である食品薬品監督館に対して市場の監視と調査の強化をはかるよう指示が出されている。国民に対して同庁は、同庁の承認番号がついていないミルクやミルクを使った飲食品は発見次第消費者サービスユニット電話番号4263333に通報するよう呼びかけている。


「メラミン含有食品が発見された!」(2008年9月29日)
シティ・ファディラ・スパリ保健省が中国でのメラミン含有ミルク事件に関連して国内で発見された毒性を持つ食品について9月27日に記者発表を行った。それによれば、メラミンが検出された食品は次の12種であるとのこと。
食品薬品監督庁登録品、 ()内は生産者
1.Guozhen Pine Pollen Calcium Milk 粉ミルク (Yantai New Era Health Ind. Co, China)
2.Oreo ウエファースティック2種類 (PT Nabisco Food (Suzhou) Co, China)
4.M&M's Peanuts Chocolate Candies キャンディ2種類 (Effem Foods (Beijing) Co, China)
6.Snickers ビスケット (Mars Food Co, China)
食品薬品監督庁未登録品つまり不法輸入品、()内は生産者
1.White Rabbit飴 青パック (Shanghai Guan Sheng Yuan, China)
2.White Rabbit飴 紅パック (Shanghai Guan Sheng Yuan, China)
3.Soybean Drink with milk 緑パック (Wuzhou Bingguan Industrial Shareholding Co, China)
4.Soybean Drink with milk 黄パック (Wuzhou Bingguan Industrial Shareholding Co, China)
5.Soyspring Instang Milk Cereal (Wuzhou Bingguan Industrial Shareholding Co, China)
6.Soyspring Instang Peanut Milk (Wuzhou Bingguan Industrial Shareholding Co, China)
大臣はこの調査について、食品薬品監督庁に登録されている中国からの輸入品でミルクを含んでいるものは19あるがその中で市場で発見されたのは上の6種類であり、市場で発見されたミルクを含有する中国産のものは未登録品が多数にのぼった、と説明した。「インドネシア産ミルクの中に中国産ミルクを使っているものはなく、輸入ミルクはすべてオーストラリアとニュージーランドから来ている。各家庭の夫人たちは、国内状況を撹乱させようとして飛語流言を流している一派の策謀に乗せられないようにしてほしい。国産ベビーミルクは使っても大丈夫です。」
大臣が上であげたミルクを使っている製品からは8.51〜945.86mg/kgのメラミンが検出されている。それらの商品に加えてシンガポール政府が先に公表している13種の中国産製品も合わせて国民は摂取しないように、と保健相は呼びかけた。
国内流通業界はこのメラミン汚染ミルク問題に関して、政府が確定した12種の商品は業界が率先して市場から回収していくようにしようと小売業者協会会長が呼びかけた。それらの商品は国民が大量に消費しているものでないために回収はあまり困難でないだろうと見られている。一方飲食品事業者連盟は同一商品名で国内生産されているものがこのとばっちりを受けることを懸念している。「国内生産品は中国産ミルクを使っていない。メラミンが検出されたのは中国産のものだけだ。その見分け方は食品薬品監督庁の登録コードを見ればわかる。国産品はMDあるいはSP/PIRTというコードだが、輸入品はMLというコードが付いている。」と連盟会長は述べて、購入時にはそのコードを確認して欲しいと消費者にアドバイスしている。


「ふたたび進行中か?フォルマリン禍」(2008年10月22日)
フォルマリンを消費する最大のセクターだった合板業界が産業植物林から供給される原材料へのアクセスの道を断たれたも同然になって生産コストが激増し、合板業界が尾羽打ち枯らした姿に至ったのに追随して今度はフォルマリン業界が需要激減のために衰退の道をたどりはじめてかつては30社あったフォルマリン業界もいまや16社が事業を閉鎖したため14社しか残っていない。その14社はフォルマリン年産30万トンの能力を持っているものの実生産量は15万トンしかなく、生産能力の50%しか利用されていないのが実情になっている。このまま推移すればフォルマリン製造業界も衰退に向かうのは想像に余りあり、産業論理から言えばいずれの業界も新規需要の開拓と生産上昇による事業発展を求めるのは言うまでもないところ。そのとき、飲食品産業界との間で利害を共通にする接点が生まれる。ファハミ・イドリス工業相は国会第6委員会での答弁でその懸念を表明した。
第6委員会メンバー議員は、他の産業セクターで消費しきれないフォルマリンが飲食品産業に流れているのではないかという不安を表明している。「塗料業界筋からの情報では、100万トンあるフォルマリンで塗料生産に使われているのは50万トンしかなく、ダブついたフォルマリンがどこへ流されているのかは闇の中だ。工業省と商業省は国内のフォルマリン流通に厳しい目を光らせて飲食品業界に吸収されないよう監視を怠らないようにしてほしい。フォルマリンの流れを監視するのは相当な難問だと商業省は言っているが、工業相までがお手上げの姿勢を示されては困る。」
フォルマリンは合板の保存と強化のために用いられているほか、殺菌剤・消毒剤および医療医薬品業界でも使われている。おまけに非合法ではあるものの飲食品防腐剤としても昔から使われてきており、ここ数年来人体への危険を強く訴える一方で飲食品へのフォルマリン使用は犯罪行為であるというキャンペーンが行なわれて市場からフォルマリン使用飲食品は姿を消しているとはいえ、キャンペーンが下火になっているいま、飲食品生産者がふたたびフォルマリンに手を伸ばさない保証はない。
フォルマリンの輸入量は微々たるもので、2007年の輸入実績は653.6トンにすぎず、これは国内総生産量の0.4%でしかない。つまり国内需要のほとんどは国内生産によって満たされているということであり、需要が低下したからといって国内生産をそう簡単に減らせるものでもないのは自明の理だ。フォルマリンを飲食品産業に利用できないようにするため、フォルマリン製造工場で苦味を混入させようというアイデアが出されたもののその行程が追加コストを発生させるのは言うまでもないことであり、生産者側は一様にコストアップの拒否を主張している。需要が日を追って縮小しているいま、あえてコストを高くするのは産業論理に反することであるという道理はだれしも理解できるものの、二律背反傾向の強い産業倫理とどう折り合いをつけていくのかについて政府の指導力が問われている。


「有害化粧品27種に市場回収命令」(2008年12月1日)
食品薬品監督庁が行なった市場で販売されている化粧品に対する監督調査で、人体に有害な成分が含まれているものならびに国内流通承認の得られていないもの27種が見つかった。発見された有害成分は、水銀、レチノイン酸、ロダミンB、赤色K3など。食品薬品監督庁はその27種の製品に国内流通禁止措置を取り、3,555個を市場から回収した。さらに生産者・輸入者・ディストリビュータに対してそれらを早急に市場から回収した上で廃棄処分を行なうよう命じている。その27種とは次の通り。
Doctor Kayama Whitening Day Cream
Doctor Kayama Whitening Night Cream
MRC Putri Salju Cream
MRC PS Crystal Dream
Blossam Day Cream
Blossam Night Cream
Cream Malam
Day Cream Vitamin E Herbal
Locos Anti Fleck Vitamin E Herbal
Night Cream Vitamin E Herbal
Kosmetik Ibu Sari Krim Siang
Krim Malam
Meei Yung (putih)
Meei Yung (Kuning)
New Rody Special (Putih)
New Rody Special (Kuning)
Shee Na Whitening Pearl Cream
Aily Cake 2 in 1 Eye Shadow "01"
Baolishi Eye Shadow
Cameo Make Up Kit 3 in 1 Two Way Cake/Multi Eye Shadow
Cressida Eye Shadow
Kai Eyes Shadow & Blush On
Meixue Yizu Eye Shadow
Nuobeler Blusher
Nuobeler Blush On
Nuobeler Pro-make up Blusher No 5
Sutsyu Eye Shadow
上のリスト中の11種は日本と中国からの輸入品、8種は国産品、残る8種は生産者不明となっている。その多くは食品薬品監督庁に未届けのもので国産化粧品に与えられるCD番号や輸入化粧品に与えられるCL番号を得ておらず、国内流通が承認されていない。しかし中にはドクターカヤマブランド製品のように国内流通承認を得ていたものもあるが、ランダム検査で水銀が含まれていることが明らかになったために同庁は国内流通承認を取り消して市場からの回収を命じた、と食品薬品監督庁側は説明している。
上であげた商品は単価が200万から250万ルピアもする高価なものが多く、そのためにトラディショナルマーケットよりは大都市のモダンマーケットでよりたくさん販売されていた。同庁は市場監督権限しかないため、違法商品の製造者・輸入者・ディストリビュータの裁判所への告訴はできないが、監督政府機関がそれを行なう合意は既にできており、今回発見された上の製品に関連する製造者・輸入者・ディストリビュータは裁判所で裁かれることになる。しかし保健に関する1992年法令や消費者保護に関する1999年法令は違法商品を販売した小売商店に対する罰則を規定していないため、小売店は法的追及から除外される。食品薬品監督庁はこれから全国各州での化粧品市場調査を展開することにしている。


「運動の一番人気はジョギング」(2009年1月22日)
インドネシア人も運動が自分の健康にとって重要なものであることを理解している。そしてまた、集まってコミュニティを形成するのがきわめて得意なので、スポーツを軸にしてすぐに仲間作りが始まり、人間関係の拡大とビジネスの拡大が同時進行する。他の国ではひとりかせいぜい親密なふたりで走るのがほとんどであるジョギングにしても、インドネシア人は仲間で群れて走るのが大半だ。コミュニティのメンバーたちはどうやら走ることよりも連帯行動としての位置付けを優先しているように見受けられる。ジョギングがトップの座を占めているのはそれが自宅周辺で手軽に行なえ、また金がかからないという点も魅力のひとつになっている。しかし金に糸目をつけないでスポーツクラブやフィットネスセンターに通って汗を流し、上流ステータスの旗印を降るひとたちも少なくない。
2008年12月3日4日5日にコンパス紙R&Dがジャカルタ・ジョクジャ・スラバヤ・メダン・パダン・ポンティアナッ・バンジャルマシン・マカッサル・マナド・ジャヤプラの最新版電話帳からランダム抽出して電話インタビューした17歳以上の369人に対する国民の運動実施状況調査で下の内容が明らかになった。
質問1)普段あなたが行なっている運動は何ですか?
ジョギング 45.8%
体操・フィットネス 15.7%
バドミントン 6.2%
サッカー 5.7%
水泳 4.3%
フットサル 4.1%
アスレチック 3.8%
サイクリング 2.2%
質問2)どのような頻度で運動していますか?
週一回 22.6%
週三回 13.0%
毎日 12.7%
週二回 8.1%
不定期 43.6%


「病室が一杯だから救急患者はよそへどうぞ」(2009年1月28日)
2008年6月27日付けコンパス紙への投書"Pelayanan Buruk RSCM"から
拝啓、編集部殿。2008年5月27日、わたしは事故で骨折して骨が皮膚から突き出した友人をチプトマグンクスモ病院(RSCM)に連れていきましたが、そこで二度と忘れることの出来ない不愉快な体験をすることになりました。
友人は18時ごろ救急治療室に入りました。それからレントゲンを5枚撮り、その支払いやら何やらで病院内を行ったり来たりし、次にラボ検査のために病院内を行ったり来たりし、その支払や必要な器具の購入、そして検査結果をもらうためにまた病院内を行ったり来たりし、手術のための薬剤や資材を買いに行ったり来たりしました。そのあと入院のための病室を探して入院患者受付に行ったり来たり。ところが結局病院側は23時30分に別の病院へ行くようわたしたちに言いました。病室が無いというのがその理由です。
その理由を聞いてわたしは友人の治療にあたっていた医師のひとりに苦情しました。その医師はわたしの不満に同情的でしたが、そのそばで別の患者を縫合していた医師がわたしの抗議に対して突然怒り出したのです。「自分たちは最善を尽くしたのだから苦情されるいわれはない」と手にしたはさみを振り回しながら。
6時間もの間、患者の状態を改善させることもせず、レントゲン・薬剤・ラボなどの費用に何百万ルピアも支払わせておいて、患者側に対して医者が取る態度がそれですか?おまけに患者側に用意させた薬剤は、別の病院へ移るときにも患者側に返してくれませんでした。しかたなくわたしたちは別の公立病院へ移りましたが、深夜24時だったにもかかわらず、その病院では親切なサービスを受けることが出来ました。[ ブカシ在住、スイ・シオン・ハサン ]


「有害食品はこれ、と虚偽情報」(2009年2月24日)
市民の間で不審なビラが流されている。食品薬品監督庁が60アイテムの食品と医薬品を有毒で健康を損なう物質を含んでいると断定したという内容のそのビラには、危険とされる商品名が列挙されている。それについて食品薬品監督庁は、そのアジビラの内容は根も葉もない偽りの情報であり、その60種の商品は既に検査が行われて安全性が確認されているため市民はそれを消費しても健康に問題ない、との声明を発表した。その商品名は下の通り。
医薬品: Paramex, Contrex & Contrexin, Inza & Inzana, Nature E, Super Tetra, Bodrex & Bodrexin, Stop Cold
食品: Hemaviton, Hemaviton Action, Hemaviton Energi Drink, Neo Hemaviton, Segar Sari, Pop Ice Blender, Sari Vit C, M150, Aqua Splash of Fruit, Energen Sereal, Mogu-Mogu, Oki Bolo Drink, Inako Jely, Happy Dent White, Naturade Gold, Alloy Jely, Donna Jely, Lotte Juice Fresh, Jas Jus, Disney Segar, Jangle Juice, Zestie, Frutilo, Forti Plus, Hemaviton Jreng, Naturade Bolo, Finto, Fresh Mix, Pop Ice, Nidhi Orange Drink, Oki Bolo Drink, Amazone, Mizone, Zhuka Sweet, Arinda, Copy Pop, Jely Cool Drink, Nutri Sari Hangat, Segar Dingin, Aqua Rasa Buah, Catta Zone, Amico Sweet, Okky Jely Drink, Zporto, Jelly Juice, Extra Joss, Boy Zone, Buah Sari, Mari Teh Instan, Teh Susu, Vidoran Fres, Ice Milk Juice, Marimas
この種のアジビラは2003年と2007年に食品に関して市民の間に流されたが、今回また類似のことが行なわれており、市民に無用の不安を与えている。食品薬品監督庁は警察と協力してこの虚偽情報の出所を探り、ある病院の警備員チーフがその犯人であることを突き止めた。しかしその警備員はもちろん保健や有害物質に関する専門知識など皆無であり、その警備員にその行動を使嗾した犯人を探しているがまだ手がかりがつかめていない。
それとは別に海兵隊内部でも根拠のない有毒物質に関する偽情報アジビラが流れており、そのビラでは有毒物質を含んだ飲料品のリストがあげられ、それらの飲料品を飲むと脳に障害を起こして10歳の子供の顔がまるで60歳の老人のようになる、と書かれている。海兵隊側はそのビラについて、海軍病院研究室とは何の関係もないと否定している。食品薬品監督庁はこのビラに書かれている飲料品も消費して何の問題もないものだ、と表明している。


「診察室も藪の中」(2009年3月11日)
2008年7月27日付けコンパス紙への投書"Berobat, Malah Dihina"から
拝啓、編集部殿。これは2008年7月2日13時半にバンドンのラジャワリ通りにあるラジャワリ病院で治療を受けた際の苦い物語です。わたしは痔が悪化したので家族に連れられて病院へ行き、そこでDという名の医師から非人間的で不愉快な出来事を体験させられることになりました。受付を済ませて診察室へ行くと、D医師が出てきて簡単に患部を見ただけで、それから軽い口調でわたしに麻酔を打つよう看護婦に命じました。わたしは尋ねました。「先生、麻酔って何のために?」
すると医師は甲走った口調でわたしに言いました。「あんた、治療したいんじゃないの?けちけちするな!治りたかったら金を惜しむんじゃない。」
わたしがここへ来たのは治りたいからに決まっています、とわたしが言うと医師はその言葉で更に感情を激昂させ、ここには書けないような言葉を口にしました。「じゃあもういい。あんたは他の医者を探すんだな。バンドンにはわたしみたいな医者が1千2百人いるんだから。」医師はその場から立ち去りながら、男性の助手にわたしが払った受付費用をわたしに返すように言いました。苦痛の中にあって医師の助けをたいへん必要としている一介の市民としては、その医師の態度にたいへん傷つけられたことは言うまでもありません。まるでゴロツキのような性分の医師が患者を追い払ったのです。医者が自分に何をするのかを患者は知る権利がないとでも言うのでしょうか?麻酔を何のためにするのかということを患者にわかりやすく説明するのは医師にとって義務になっているのではありませんか?もしその麻酔が手術のためであるなら、その医師はどうしてわたし本人や家族の承認を得ようとしなかったのでしょうか?[ 東ジャカルタ在住、シャフルル・ダルウィン ]
2008年8月2日付けコンパス紙に掲載された病院側の回答
拝啓、編集部殿。シャフルル・ダルウィンさんからの2008年7月27日付けコンパス紙に掲載された投書について、次の通りお知らせします。その患者は「アドゥ!」と呻きつつ泣きながら診察室に入ってきて、診察台に斜めに寝そべると泣き声を高くしました。その様子から容態がかなり深刻であることを理解した医師はそのまま診察を続けるのが可哀想だと思い、診察の際の痛みをやわらげるために麻酔をしてはどうかと提案しました。それを行なうのはもちろん麻酔専門医です。患者は尋ねました。「麻酔はここでやるのか?」と。「いいえ、手術室で行ないます。」と医師が答えると、患者はまた尋ねました。「じゃあ手術をするのか?」。医師は説明しました。「可能性はあります。診察してどのような状態なのかを見た上で決まります。」
患者と付き添ってきた奥さんは声をそろえました。「血液検査やあれこれの検査をする通常の手術プロセスも踏まないでどうしてすぐに麻酔を打って手術しようとするのか?患者は今日中にジャカルタに戻らなければならないのだ。」
医師はそれに応えて、患者に使用するのは短時間麻酔であり、夕方には帰ることができるので心配はいらない、と言いました。そのあと、この医者は医療倫理を知らず、プロセスをわかっていない素人だ、といった批難の言葉が患者側から投げかけられて口論となりました。医師は「ただ診察をしようとしているだけで、その診察が痛くないように麻酔をかけようと提案しただけなのに、どうしてそんなふうに怒り狂って批難するのか?」と患者に尋ね、「麻酔をかける理由は単に診察時に痛くないようにするためであり、麻酔なしで診察すれば患者はとても痛がってその痛みに耐えられないだろうから診察もできなくなってしまう。だから麻酔が嫌なら他の医者にかかってくれ。」と言って救急治療室にいる急患の処置をしにその場を去りました。医師はその場を去る際に患者に向かって、「他の医者を探してください。申し訳ないが麻酔せずにあなたを診察することはわたしにはできない。」と言い、看護助手に患者が支払った費用を返却するよう言いつけたのです。[ ラジャワリ病院役員、デミン・シェン ]


「中国産食品原料に流通禁止措置」(2009年3月30日)
食品薬品監督庁が中国産ミルク・重炭酸アンモニウム・鶏卵パウダーとそれを使った製品の国内流通を禁止する通達を出した。2009年3月17日付け食品薬品監督庁回状第PO.01.02.51.0499号によれば、中国産のそれら原料あるいはそれを使用した製品は国内流通が認められず、また中国産でないものについても輸入時に原産地証明書の添付を命じている。対象原料が中国産である中国以外で作られた製品についても、中国産と同様にML番号が与えられない。この回状は2009年1月5日付けで出された食品薬品監督庁公示第PO01.02.51.0001a号を補足するものだ。
しかし飲食品事業者連盟は、食品薬品監督庁の通達が具体性を欠いているため業界はどう対処して良いのかよく分からない、と語る。「輸入という局面においては、HSコード番号を示してもらわなければ具体性が伴わず、実際の効果が期待できない。また市場では原料でなく具体的な商品名を言われなければ、販売者も何が対象なのか分からず、ましてや消費者に原料に関するチェックができるはずもない。そしていちばんよくわからないのは、中国産食品原料がどうして国内流通を禁止されるのか、その理由が今回出された回状に説明されていないことだ。」トーマス・ダルマワン連盟会長はそう批判している。


「ジャカルタ糞尿譚」(2009年4月13・14日)
世銀の『水と衛生プログラム』最新リサーチ報告によれば、インドネシアの首都ジャカルタ住民は一日当たり714トンの大便と7千立米の小便を排泄しているとのこと。問題はその処理に対する住民の意識と世の中に設けられたインフラ能力にあり、排泄される糞尿の三分の一に当たるおよそ214トンの大便と2,100立米の小便が妥当な汚物処理の流れに乗っておらず、あるべからざるところに垂れ流しされている。世銀の報告はそのような内容だ。
総面積740平方キロに750万人(2006年データ)が密集して生活しているという環境にそれだけの汚物が流されていることを世銀報告は意味している。その垂れ流し排泄量を1年分溜めると、ブンカルノ陸上競技場4つがその中に埋もれてしまうそうだ。垂れ流しされている糞尿は家庭排水路や住民居住地区の側溝などを通って街中を貫通している川や水路に流れて行く。川や運河が排泄物を流す肥溜めだったのはバタビア時代から変わらない。バタビア時代に建てられた古い建造物を見ればわかるが、コタにあるジャカルタ歴史博物館(Museum Fatahillah)も国立公文書館(Gedung Arsip Nasional)も、古来からある建物の中にはトイレがない。昔のヨーロッパ人は部屋に桶を置いてそこに排泄を行ない、桶の排泄物は下男がどこかご主人様の知らざるところへ持って行って処理したようだ。屋内にトイレが設けられるようになったのはヨーロッパでも19世紀に入ってからのことらしい。
バタビアの街はチリウン川と運河が縦横に流れており、桶の排泄物を捨てる場所には困らなかった。ただ、真昼間からてんでんばらばらに捨てるのはだめで、夜の特定の時間を過ぎてからはじめて捨ててよいという規則をバタビア市行政当局が決めた。おかげで時報がそのときを告げると、バタビアの市中を流れる運河は一斉に下水に変わり、すさまじい臭いがバタビアの街を覆ったようだ。その川や運河の水を大多数のバタビア住民は生活用水にし、水浴し、そして排泄も行なっていた。ヨーロッパの北海沿いならいざしらず、熱帯のバタビアで糞尿の川流しをやられた日には病気にまとわりつかれる人間がどれほど出たことだろう。
昔のバタビア時代はいざしらず、現代ジャカルタの衛生環境はもっと進んでいてもらいたいところだが、どうやらそれは高望みのようだ。現代ジャカルタの糞尿の三分の二は一応妥当な汚物処理の流れに乗っていると世銀は言うのだが、これとて油断は禁物だろう。ジャカルタでは一家にひとつ汚わい溜めであるセプティックタンク(インドネシア人はセプティタンと発音する)を地中に埋めることが義務付けられている。最近建てられた家はモダンな成形品を使うところが増えているが、昔の家は大きな土管を縦にして地中に埋めるだけだった。だから中味が洩れないはずがなく、そしてバンジルの時期になれば流水が中味の一部をさらって行くことさえ起こった。ましてやバンジルは川や運河に流された糞尿をまた陸上まで拡散させてくれるため、バンジル後にさまざまな病気が蔓延するのは疑いなしに当然と言える。
ジャカルタ都民の汚わいを処理するためにブカシ市バンタルグバン(Bantar Gebang)に汚物処理場が作られて各家庭のセプティタンからバキュームカーが糞尿を運び込むことになっているのだが、不心得なバキュームカー運行者は金がもらえるセプティタンからの吸引を行なうものの、汚物処理場まで走るためのガソリン代を惜しみ、汚物処理場で要求される徴収金を惜しむあまり、車のタンクに入った汚わいをどこかに捨てようとする。昔報道された記事の中に、都内クニガン(Kuningan)地区ラスナサィッ(Rasuna Said)通りの雨水排出用側溝にホースを突っ込んでバキュームカーがタンクの中身を捨てていたのが捕まったというものがあった。かれらは再三それを行なっていたというから、ジャカルタというのはどこになにが転がっているかわからないミステリーに包まれた場所だと言うことができる。


「殺虫剤浸けのインドネシア人」(2009年4月15日)
二年前には市場で流通している農業用殺虫剤が450種あったが、いまやそれが1,702種に膨れ上がっている。これは行政認可を得たものだけだから、得ていないものを含めればどれだけの数に上っているのか、想像しただけでも気が遠くなりそうだ。殺虫剤国家コミッションは363種の殺虫成分に農薬として使用許可を与えている。農民が生産した食材に残留してそれらの殺虫成分は消費者の体内に入る。加えて消費者は日常生活の中で蚊・ハエ・ゴキブリなどに向ける殺虫剤を使っている。住居の中で使われたら、それが体内に吸引されないはずがない。中部ジャワ州ソロ市でのサーベイによれば、一家庭で二種類の殺虫剤が使われており、需要のトップは蚊取り線香で第二位が蚊取り噴霧剤だった。加えて最近は町内でデング熱患者が出ると殺虫剤噴霧を行なう方針が徹底してきており、それが行なわれると町内の大気は激しく殺虫剤に汚染される。インスタント性を好む国民性は蚊の退治を日ごろから着実に行なうことよりも人体に有害な殺虫剤をばら撒く方を選択しているようだ。
インドネシアの食用植物で殺虫剤の残留がないものはまずない、とバンドン工大環境技術学教授は語っている。インドネシア人の体内には食物連鎖・呼吸・皮膚から殺虫剤が多量に侵入している。体内に入った薬物は他の要素と反応してガンの発生を促がす。また殺虫成分の中には人間のホルモン・生殖・胎児に障害をもたらすものがある。カリマンタンで1960年代にマラリア撲滅プログラムが進められ、DDTが使われた結果多数の猫の死骸が随所に転がる始末となった。
ソロを中心に農村の支援を行なっている財団は、農民の間では咳・疲れやすい・体液不足・めまいなどの症状が一般的になっており、農作業での殺虫剤多用が原因と考えられる、と報告している。政府はDDT、アルドリン、ディルドリン、マイレックス、エンドリンなど残留性有機汚染物質の使用を禁止しているが、現場での法確立は例によって国民生活のすべての相と同様に弱い。一般家庭もそうだが、殺虫剤が人体に及ぼす影響に関して農民が持っている知識も意識もまったく低いレベルでしかない。


「インドネシア人がもっとも怖れる病気はガン」(2009年4月16日)
コンパス紙R&D部門が2008年3月26〜27日にジャカルタの電話帳からランダム抽出した在住者503人に対して電話インタビュー方式で行ったサーベイで、国民がどんな病気をもっとも心配しているのかが明らかになった。
運動をし、食事の内容に留意し、十分な休息を取ることが健康の維持に欠かせないことだとたいていの国民は理解しているものの、自分ではそれを十分に励行していると思っていても病魔はひそやかに歩み寄ってくる。国民が一番怖れているのは、完治するのが困難なガン、そして突然われわれをあの世に運んで行く心臓疾患だった。インドネシア人が恐怖を抱いている病魔の番付は次のようになっている。
1位 ガン 24.7%
2位 心臓疾患 13.1%
3位 デング熱 11.9%
4位 鳥フル 9.3%
5位 エイズ 8.7%
6位以下の病名集計は19.3%で、ガンが圧倒的強さでトップにいることがわかる。
なお、怖い病気などないという回答は6.4%、わからないという回答が6.6%あった。


「発ガン性物質浸けのインドネシア人」(2009年4月20〜23日)
共和国独立後間もないころインドネシアに来て何年か暮らしたアメリカ人医師の語った「インドネシア人はきれい好きだが、衛生観念がない」という言葉は今も変わっていないようだ。ゴミを路上や河川にポイ捨てするインドネシア人を見て、かれらのどこがきれい好きなのかと疑問を抱くひともいるようだが、それはかれらの持っている公共観念に由来している問題であって、かれらが自分の本領と見なしている自宅やファミリーの環境は整理整頓清掃が行き届いているのが普通である。つまりインドネシア人も見た目のきれいな生活環境を好むのはほかの民族と同じであるものの、かれら大半は強いファミリー主義社会の枠の中で生活しており、ファミリーの枠の外はジャングルなのでそこをきれいにするという必然性を感じないのだとわたしは思う。
それはともあれ、衛生観念について言うならトイレで用足しをしたあと手を洗うインドネシア人が少ないというのもその例証のひとつだろう。道端に屋台を置き、その場で料理して食べさせてくれる食べ物屋台も、使った食器はバケツに溜めた水で洗い、流水は使わない。もっと言うなら、川でマンディし、用足しし、洗濯し、その川の水で歯を磨き口をゆすぎ、水を汲んで飲食に使うという古来からの南方民族の習慣はほんの二三十年前までジャカルタの中でさえ見られた。コタのハヤムルッ(Hayam Wuruk)通りとガジャマダ(Gajah Mada)通りにはさまれた運河で毎朝周辺に住む住民が用足しとマンディに洗濯、子供たちは素っ裸で水遊びというバタビア時代から変わらない情景を目にすることができたのを、最近のひとたちは信じることができるだろうか?
衛生観念というのは人間が健康で長生きをするための保健思想をバックアップするものだとわたしは思う。人間がすこやかに生きることを実現させるためのものごとの価値観や考え方が保健思想であり、それは現代という時間の中でわれわれがどのように堅実な生き方をするのかという人生観と密接に絡み合っている。であるなら、衛生観念がないと言われるひとびとの人生観はわれわれのものとかけ離れているという論理の展開ができるような気がわたしにはするのだが、その点に関してインドネシア人と身近に接している異文化人たちのご意見をうかがいたいものだ。
インドネシア人の日常生活は保健思想から見てネガティブな物質に満ち満ちている。それらの健康に害を及ぼす物質が商品の売行きを良くするというだけの理由で恐れ気もなく使われ、消費者はそのようなことに関心を払わずにそのような商品を消費して体内に摂取している。これは民族の災厄だ、とハンドラワン・ナデスル医師は言う。インドネシア人の実際の寿命は生物学的に妥当な年数よりも短いのだそうだ。アッマジャヤ大学医学部を1970年代に卒業したハンドラワン・ナデスル医師は保健行政畑を歩みつつ国民への保健知識啓蒙に健筆をふるった。かれの著作やマスメディアに掲載された評論の多さとそれがカバーしている領域の広さで、インドネシアでかれの右に出る者はいないというのが世間一般のハンドラワン評だ。インドネシア人の日常生活にあふれている有害物質をわれわれはこんなところでお目にかかる、と医師は書いている。かれの評論を読んでみよう。
保健省が最近報告した家庭保健サーベイは、インドネシアでガン罹患者が2千万人に達したことを伝えている。インドネシア国民が塩魚を常食にし人生の長い期間にわたってそれを摂取していることから、ガン罹患者の増加はきわめてありうることだと思われる。塩魚に含まれているニトロサミンは豆腐・ケチャップマニス(甘ソース)・トラシ(エビ醤)などに使われているフォルマリンに劣らない悪性発ガン物質なのだから。ガンは下痢のように一晩で罹患するものではない。
学童は繊維染料のロダミンBで染められたシロップ・トマトジュース・クルプッ(せんべい)などのおやつを口に入れる。大人になったかれらにガンが発症する可能性は小さくない。繊維染料は造ガン物質のひとつだ。
昔は調味料を扱う際に木の特製スプーンを使った。今バソ(肉団子入りスープ)売りはプラスチック袋からそのままどんぶりに注ぐ。だれがそれを禁止できよう。何十年もグルタメートを過剰に摂取したら、ひとはガンの恐れから免れることができなくなる。家庭で買っているおやつ類に安全でない防腐剤がどれほど含まれていることだろう。歯ごたえのよいクリピッ(チップス類)やべたつかない麺に使われている化学物質。レストランの熱い汁を入れたスタイロフォームから溶け出した物質。いまや珍しいものでなくなったそれらの化学物質が国民の胃腸に押し寄せる。道端の揚げ物屋は、商品がカラッと揚がるように、高温の油の中にビニール袋を放り込む。あるTV局のドキュメンタリー番組でそれが明らかにされた。コストが安いという理由で揚げ物屋はレストランで使い切った廃油を使う。すべて発ガンを促進させるものだ。ミネラルウオーターの空き瓶の再使用は大勢のひとが行なっているのだが、それも同じようにあぶないことだ。
インドネシア産大豆を日本が拒否したことがあった。収穫方法と貯蔵方法が不適切だったために肝癌を発症させるアフラトキシンを生むカビに汚染されていたのが原因だ。アフラトキシンはジャワの家内工業製ジャムゥの原料からも見つかっている。原因はやはりカビだった。いまだに国民の日常食になっているテンペボンクレッ(tempe bongkrek =油を搾った後の大豆で作ったテンペ)にも、さまざまな毒素に加えてアフラトキシンが含まれていることがある。何年もシリ(噛みタバコ)の習慣を続けてタバコ葉を口にふくめば、口内ガンがやってくる。
国民の砂糖消費はうなぎのぼりだ。砂糖の結晶はサトウキビの搾り汁に化学物質を加えて作られる。この物質も実は、おやつに使われている人工甘味料と同様にあぶないガンの芽だ、と批判されている。小麦から小麦粉をつくる際に使われる化学物質も健康によくない。先進国では消費者が白色パンよりも無漂白パンを選択している。
それと自覚されないまま、数百いや数千の化学物質が飲食品産業に浸透して国民の胃腸を押し包んでいる。殺虫剤は野菜や果実と一緒に体内に摂取される。ウジがわかないように塩魚は殺虫剤が噴霧される。輸入果実の皮には防腐剤がへばりついている。家畜や家禽には成長ホルモンが注射され、エビには抗生物質が与えられる。氷の値段が上がればフォルマリンが鮮魚の保存に使われる。
輸入化粧品は村落部にも押し寄せた。化粧品に含まれた水銀はガンの萌芽だ。繊維染料が口紅や頬紅に使われ、安物の練り歯磨きやシャンプーには有害な化学物質が混入されている。
黄金採鉱場近辺の川や海の水銀濃度は許容量を超えている。国民はそんな水の中にいる魚を食べ、飲み水を入手する。カドミウムなどの重金属汚染もある。体内に蓄積される重金属はモニターされない。その中には発ガン物質もあればフリーラジカルもある。フリーラジカルは現代人の敵であり、現代病の大半はその汚染によって引き起こされている。
国民は週に何回燻製や焼いた食品を口にしているだろうか?焦げた魚・肉あるいはサテなどを食べれば発ガンが促進される。燻製食品も変わらない。不正な生産者は売値が高くなるように、食用油に化学物質を混ぜ、米に漂白剤を使い、魚に赤色染料を塗る。安物壁用ペンキにはフォルムアルデヒドが含まれており、健康によくない。子供の玩具に塗られている塗料も同じだ。
発ガン性物質を全身で受け止め、あふれるフリーラジカルの洪水に身をさらしている国民の健康は劣化するばかりだ。おまけに国民全員が生まれながらにして健康の元手を与えられているわけでもない。栄養不足で生まれ、不健康な育て方をされ、それらが蓄積されて大人になったあとの日々の生活は脅威に満ち満ちている。貧困者は豊かな他人が取り上げたあとの産業廃棄物や汚染といった残り物を引き受けた上に自分の弱点も担わなければならない。それに加えて現代的なライフスタイルが農村にまで侵入する。ステーキ・バーガー・ホットドッグなどは人体メカニズムに適合したメニューではないのだ。
栄養不良の母から生まれた子供は糖尿病をもらう。魚や卵を潤沢に食べている子供に比べて、その摂取が足りない同年代の子は脳の働きが弱い。幼児期を過ぎてからミルクを飲まなくなれば、骨の成長は厚みを欠き骨粗鬆症になる。大きくなったらソーダ飲料を飲んでもだれも禁止しない。既に薄い骨はさらにもろくなる。疲労や身体の凝りを自分で治そうとする国民は、骨をもろくし糖尿病や高血圧といった副作用をもたらす化学薬品が混ぜられた悪徳ジャムゥを用いる。
あらゆるものが国民に長命を与えない。これは民族的な災厄だ。本来なら、国民の健康の元手は生まれたときから投資され、老齢になるまで貯蓄されて老後の生活を豊かにするべきものではないか。ところがその元手は生まれて以来減少するばかりで、人生の旅路の中で失われてしまう。わが国民の平均寿命は生物学的に可能な年数より短い。もし国民の体内のブラックボックスを開いて見ることができるなら、国民災厄の元凶のひとつを目にすることができるだろう。生後まだ小さいころからガンの芽が植えつけられているということを。


「インドネシア人看護師の将来はバラ色」(2009年6月2日)
海外での看護師需要は増加の一途であり、インドネシアからは現在4千人がクエート・日本・オランダなどで働いているもののアメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリアなどには大きな需要があるというのにインドネシア人看護師はなかなかそれらの国で職を得るのがむつかしい。それはインドネシアの看護師資格認定が国際的に認められていないのが原因であり、その対策としてそれを管掌する機関を設置し、国際レベルの看護師資格認定制度を早急に整備する必要があるとインドネシア全国看護師ユニオン会長が国会公聴会の場で表明した。国会の法令審議スケジュールに看護師法案が入っており、公聴会はそのために開かれたもの。
看護師資格に関連する諸活動を管掌する機関の設立はそれをバックアップする法令を必要としており、ユニオン会長は国会に対して法案審議から国会承認にいたるプロセスの迅速な展開を要請している。インドネシア人看護師が外国の医療機関に雇用される際の問題点として、外国ではインドネシア人看護師の能力が疑問視されている点を会長は指摘し、国際スタンダードをクリヤーする国立の看護師資格認定機関を設立した上で諸外国との間に相互承認協定を結べばその障壁は取り除かれる、と会長は力説している。会長によれば、現在国内には学士レベルの看護師教育機関が200、ディプロマ3レベルは400あって、毎年3万人の卒業生を送り出している。しかし国内では看護師の職業に明確な給与規準が設けられておらず、実態は千差万別で不公平な状況になっている、と会長は訴えている。会長によれば、看護師は初任給で300万ルピア、第5レベルになれば職歴による勘案が加わるものの1千5百万ルピアのラインが望ましい給与体系であるとのこと。それでも外国で働く場合との給与格差は避けがたく、日本では月給17万円、クエートでは2千2百万ルピア相当、アメリカでは4〜6千万ルピア相当と国によっても大きい開きがある。国内の看護師需要も病院ごとにバランスが取れていないのが実態だそうだ。
労働省海外出稼ぎ者保護配備国家庁海外協力局長は、インドネシア人看護師にとってたいへん大きい市場が海外にある、と発言した。日本はこの先数年間にわたって6万人の外国人看護師受入れを計画しており、インドネシアに対しては2年以上の実地経験者に受入れの機会を開いている。今年はインドネシアから104人を日本に派遣する計画であるとのこと。アメリカは2015年までに100万人の受入れ計画を持っており、また政府は現在イギリスと1千人を送り込む交渉を進めている。


「看護師が全国一斉スト?!」(2009年6月23日)
インドネシア全国看護師ユニオンに所属する5千人の看護師が看護法の年内制定を求めて2009年6月17日、首都ジャカルタで陳情行動を展開した。デモ隊は国会や保健省本庁の前でシュプレヒコールをあげたが、これは2009年5月12日に行われた看護師全国行動に次いで二度目。「保健相もわれわれとともに国会に対して看護法の年内制定をプッシュしてほしい。われわれの要求が通らないなら、全国一斉ストも辞さない所存だ。」保健省へのデモ隊を率いていたユニオンの現場コーディネータはそう述べている。
5月の全国運動で国会はその要求に応じて看護法案を一旦2009年度国家立法プログラムの中に含めたものの、その後の国会指導部と政府間の調整会議で看護法案は年内制定優先対象から外されてしまった。ユニオンの現場コーディネータはそれに関して、「国民はグローバル時代の保健サービスをカバーする適正な法的保護がいつまでたっても享受できず、一方医療現場にいる看護師はますます勢いを増す外国からの看護師進出によって職場を危うくされる傾向を深めていくことになる。早急に看護法案を審議しょうとしない国会は国民寄りでないことを露呈している。」と語っている。
インドネシアの看護師はいま50万人を超えており、これは医療・保健セクター現場従事者全体の6割を占めている。インドネシア政府はアセアン加盟9カ国との間で看護師の相互承認協定を既に結んでいるが、その9カ国中で看護法が制定されていないのはインドネシア・ラオス・ベトナムの三ヶ国だけ。


「有害偽ブランド化粧品に要注意」(2009年6月26日)
食品薬品監督庁が有害化学物質含有化粧品70種の市場回収と流通禁止を命令しその該当品のリストを公表したが、その中にPond'sとOlayというブランド名が入っていたことから、そのブランド所有者がそれらは偽ブランド商品であるとの公式声明を出した。
食品薬品監督庁が有害な化粧品と指定したPond'sブランド製品5種は次のようなもの。
Age Miracle day and night cream
Detox complete beauty care make up kit
Detox eye shadow blusher & lip gloss
Creme powder No.1
Creme powder No.2
Age Miracle day and night cremeはタイとシンガポールから輸入されたもので、生産者はMillot Laboratory Co.Ltdとなっている。ユニリーバインドネシアはその5種の製品について、それらすべてはユニリーバインドネシアの生産品でなく偽ブランド品であり、純正ブランド品には決して人体に有害な物質が含まれていないので商品に付された国内流通承認番号であるCD番号を確かめて購入するようにし、値段の異常に安い商品は避けるようにと消費者に呼びかけた。
同じリストにあったOlayブランド化粧品のブランドオーナーであるP&Gインドネシアも、国内販売しているOlay Total WhiteシリーズにはOlay TW Extra Fair CreamとOlay TW Spot Lightening Creamの二種類しかなく、Olay TW Cremeは一年以上前に販売をやめているのでリスト内の商品はP&Gインドネシア製品ではない、と表明している。


「お寒い保健医療器具市場」(2009年7月27日)
年間25.7兆ルピアという国内保健医療器具市場の99%が輸入品で占められており、国内製品のシェアはわずかに1%でしかないため国内生産者の多くが閉業の危機に直面しており、国内に参入した外資系生産者の中には撤退したところや職種換えを行って生き延びているところがある、とラボ保健医療器具会社連盟事務局長が発言した。
そのわずか1%シェアという状況はもう5年以上続いており、その間この事業セクターへの投資は完璧なゼロが並んでいる。このセクターに参入してきた外資系は再び国外に去っていったところや、国内生産をやめて輸入だけ行なうようになったところがある。この市場は8割を占める政府調達に支えられており、国産品シェアが小さいのは政府が国産品をなおざりにして輸入品を歓迎しているからだ、と同事務局長は政府に批判を向けた。ラボ保健医療器具会社連盟会員1千5百社のうちで自社工場を持っているのは75社しかなく、さらにエレクトロニック技術を用いた製品を作っているのは20社に満たない。
国内市場開拓が困難であるため国内生産者は輸出市場の開発に努めるのだが、海外市場で受け入れられているのは血圧計・聴診器・医療用寝台やマットレスなど非電子技術製品に限られている。今年業界は、保育器・歯科治療ユニット・電動車椅子など簡易テクノロジーを使った製品を世に出そうとしている。インドネシア製血圧計の中にはドイツに輸出されているものがあるが、それはドイツの血圧計メーカーが調達しているもので、そのメーカーの商標がつけられて再輸出されており、インドネシアにも輸入品として入ってきている。
政府は2009年大統領規則第2号を制定して政府調達品に対するローカルコンテンツ条件の規制をかけたために外国製品は政府調達の対象から外される傾向を強めているというのに、このセクター保健省関係者がその規則を無視して輸入品調達を続けており、反外国姿勢の強い保健相もこの点についてはスローガン止まりだ、と事務局長の舌鋒は鋭い。省高官の中には昔から行ってきた逸脱行為を続けている者がおり、かれらは中国製品をグラントだと称して調達ルートに乗せる一方購入支払票が作られて高官のサインがなされているものもざらにあるし、欧米で5年以上使用された中古品の再調整品が国内に輸入されていることを事務局長は指摘している。国内の著名な病院の中で、再調整中古品がひとつも置かれていないところはないそうだ。しかし、シティ・ファリダ・スパリ保健相はそれに対して「調達入札で規則に違反した行為がなされることはありえない。また自分が大臣の責にある過去5年間で中古品輸入を許可したことは一度もない。」と反論している。
ともあれ、国内市場がそんな状況であるため、フランス系1社を含む同連盟会員会社2社がまたこのセクターに見切りをつけたとのこと。そのうちの1社はオートバイビジネスに転業するそうだ。


「医師へのリベート」(2009年7月28日)
製薬業界から医師に支払われているリベートは年間9千億ルピアに達している、とインドネシア医療消費者援護財団理事長が発言した。リベート金額は製薬業界の売上と利益の上昇に伴って増加しているとのこと。このリベートは医師が患者に与える処方箋に特定メーカーの医薬品を記載させるためのもので、医師と製薬業界の癒着は強さを増している、と理事長は述べている。「しかし9千億ルピアという金額は7〜8兆ルピアにのぼる業界の年間利益額に比べて小さく感じられる趣がある。そのバランスはリベートのアップでなく業界利益のダウンという方向ではかられるべきであり、つまり製薬業界がインドネシアで国民から徴収している膨大な利益を引き下げる政策が取られる必要があるという意味だ。医薬品の消費者価格はもっと引き下げられなければならない。
2009年蔵相規則第104/KMK.03/2009号で販売と販促の費用に関する新規則が制定されたが、それは産業界のあまりにも巨大な利益を国庫に一部取り込むことを目的にしたものであり、製薬業界にもそのまま当てはまる。医師と製薬会社の癒着を弱め、医薬品の過剰な宣伝をもっと倫理的なものにするためのものという意見にわたしは賛成しない。企業はこの規定に則して利益の一部を国庫に提出だけであり、リベートを含めた販促行為は従来どおり続けられるだろうし、かれらは利益高を確保するためにあらゆる努力を払って国庫に提出した増税分を取り戻そうとするだけだ。」財団理事長はそのように語っている。


「医薬品小売価格を政府が規制」(2009年7月30日)
ブランド付き一般用医薬品の市場販売価格を政府がこれまで統制していなかったことから世上でさまざまな議論を呼んできたが、この問題は現在国会審議中の保健法案の中に織り込まれており、法制化が確定した暁にはその実施規則によってブランド付き一般用医薬品価格に統制がかけられ、問題の解決に迫ることになるだろう、と保健省医薬品保健機器育成総局長が表明した。
インドネシア医療消費者援護財団と事業競争監視コミッションは、ブランド付き一般用医薬品の消費者向け価格を生産者は何の規制を受けることもなく自由に決めていたため、一般消費者にとって高すぎるものになっていると指摘している。これまで生産者は消費者の利益を考慮することなくあまりにも自由に価格を決めてきており、中には特許薬より高く値付けされているものすらあって、常識の枠を超えた状況すら出現している、と医療消費者援護財団理事長は述べている。事業競争監視コミッションも、市場で生産者がブランド付き一般用医薬品の価格をあまりにも高く決めているケースがあり、異常な姿を示していると表明している。たとえば抗生物質のアモキシシリンは特許薬が1,940ルピアだというのに後発医薬品の中には最高が2,475ルピア、最低は259ルピアとなっている。セフィキシムも同様で、特許薬は13,733ルピアだがブランド付き一般用医薬品の最高は14,500ルピアとなっており、異常な価格体系が形成されている事実が浮かび上がっている。
その対応策として財団もコミッションも、早急にブランド付き一般用医薬品に上限金額の規制をかけて国民一般消費者が高すぎる医薬品から蒙っている経済負担を軽減させるよう政府に要請している。妥当な価格レンジは最高と最低の間がせいぜい3倍であるとのこと。保健省医薬品保健機器育成総局長は、この問題が法制化された暁には現行の消費者価格統制制度である上限小売価格(HET)システムをブランド付き一般用医薬品の価格統制に用いることになるだろう、と語っている。


「どっちが本当の話?」(2009年7月30日)
2008年12月31日付けコンパス紙への投書"Ambulans RS Omni Tak Mau Melayani"から 拝啓、編集部殿。2008年11月4日16時15分、わたしは27歳の息子を東ジャカルタ市プロマスのオムニ病院救急治療室へ連れて行きました。病院側の診断によれば、息子は急性心臓疾患とのことでした。救急治療室で処置がなされたあと医師は、オム二病院の設備が不十分なのでハラパンキタ病院へ移るよう奨めました。わたしの兄はすぐにオムニ病院の診断書を持ってハラパンキタ病院の入院手続をするためにそちらへ向かいました。ハラパンキタ病院はすぐに息子を連れてくるよう言ったのでそうしようとしましたが、オムニ病院の救急車は運転手がいないという理由で使うことができません。オムニ側は20万ルピアの費用で118番救急車を使うよう奨めました。そのときオムニ病院駐車場には病院の車が3台停まっていました。
オムニ病院が息子の移送に協力してくれなかったため118番救急車が来るのに時間を浪費し、息子はハラパンキタ病院への到着が4時間も遅れたために状況が悪化して一命を失いました。オムニ病院は数日後に治療請求書を出してきましたが、その中にはなんと遺体安置室の費用2万5千ルピアが含まれていたのです。実に奇妙なことに、オムニ病院はわたしの息子のために救急車を用意することを惜しんだ一方、使ってもいない遺体安置所の費用を請求してきたのです。[ 北ジャカルタ在住、エディソン・タンブナン ]
2009年1月17日付けコンパス紙に掲載されたオムニ病院からの回答
拝啓、編集部殿。エディソン・タンブナンさんからの2008年12月31日付けコンパス紙に掲載された投書について、次の通り説明申し上げます。患者は急性心臓疾患で救急治療室を訪れたので、ICUで状態を安定させてからハラパンキタ病院に移送しました。救急状態の患者を移送する場合は通常、118番救急車を利用します。状態が安定してからハラパンキタ病院に患者を移送する場合、オムニ病院の医師一名と看護師一名が同乗し、またオムニ病院の業務用車両が一台伴走して、患者はハラパンキタ病院に送り届けられます。遺体安置所の費用2万5千ルピアは遺族とコンタクトして解決しました。[ プロマスオムニ病院広報マネージャー、ヘルディ・ナジル ]


「年間に少女70万人が堕胎」(2009年8月5日)
インドネシアでは年間260万件の妊娠中絶が行なわれており、そのうち70万件は年齢20歳未満少女たちの望まれない妊娠によるもので占められている、と専門家が報告した。
中部ジャワ州ブロラで女性活力化担当国務省・児童保護庁・国家家族計画統括庁が共同で開催した「女性と未成年女子保護対策」に関するセミナーで女性活力化担当国務省女性社会問題担当副デピュティは、全世界で年間1千9百万から2千万件の安全でない妊娠中絶が行なわれており、その97%は発展途上国で占められ、安全でない堕胎手術が原因で6万8千人が死亡している、と述べた。別の発言者は、望まれない妊娠が中絶手術を増加させており、その原因は少女に対する保護の欠如にある、と語った。女性、中でも少女たちは男友達の性的にぶしつけな扱いを受けたり、兄弟・隣人はては実の父親からレープされるといった性的暴力の被害者になることも少なくない。そのような現実が望まれない妊娠を増やし、結果的に妊娠中絶に走るという現象を生み出している。
少女たちに対する保護の欠如は性的問題だけに限定されず、麻薬覚せい剤の常用者になるという面のベースにもなっている。女性活性化国務省データによれば、2007年の麻薬覚せい剤中毒死亡者は1万5千人と記録されている。女性活性化担当国務省は全国135県市に女性保護機関を設立して女性に対する保護活動に従事させている。


「19歳、未婚の親が赤児を埋める」(2009年8月13日)
2009年8月2日午前6時過ぎボゴール市タナバルの公共墓地で、正式な赤児の墓とは思えない形で土中に赤児の死骸が埋まっている、との報告がボゴール市警に入った。ネコが墓地で土をほじくっているうちに土中に埋まっている何かが出てきたのに気付いた住民がその何かを掘り出したところ、プラスチック袋の中に布にくるまれた赤児の死骸があったのに驚いて警察に届け出たもので、赤児は土中50センチもない深さで埋められていた。赤児の死骸はすぐに検死解剖のためボゴール赤十字病院に送られた。
市警犯罪捜査ユニット長は、死産だったのかどうかが赤児殺害かどうかの決め手になる、と語っている。また死産であっても、だれにも知らせずに密かに赤児を埋めるのは不法行為であるとのこと。捜査員はすぐに現場で聞き込み捜査を開始し、午前10時に容疑者を割り出して連行した。警察が重要参考人としたのは北ボゴールのタナバルに住むニナ・アグスティナ19歳とカマルディン19歳の恋するふたりで、ふたりはその赤児の両親であることを認めた。ふたりの自供によれば、臨月近いニナは8月1日の夜自宅にいて、便意を催したので浴室へ行ったところ赤児が出てきたとのこと。生まれた赤児はピクリとも動かなかった、とニナは述べている。たまたまその夜ニナの家は両親がおらず、ニナはひとりきりだったのでカマルディンに電話した。カマルディンはすぐにやって来た。相談の結果赤児を墓地に埋めようということになり、カマルディンはニナの家の隣人から鍬を借りてタナバル公共墓地に赴き、赤児を埋めた。時間は深夜12時ごろだった。


「国有薬局会社がフランチャイズを展開」(2009年10月2日)
国有医薬品会社PTキミアファルマ(Kimia Farma)の子会社PTキミアファルマアポテッ(Kimia Farma Apotek)が全国に薬局店網の拡大を図っており、来年はフランチャイズ方式でネットワーク拡大を展開させる意向。2009年7月のトップブランドアワード表彰で、ドラッグストア部門のトップブランドに輝いたキミアファルマアポテッは年間百店の新店舗開設を目標に据えており、2010年にはその目標推進に向けてフランチャイズ方式を取り入れようとしている。
キミアファルマアポテッが展開するフランチャイズは医薬品小売事業におけるビジネスリスク回避のためと言うよりも妥当な利益のあがる永続的な事業展開ができる薬局ビジネスにいかに投資家を誘致するかというポイントを主眼にしている、と同社代表取締役は述べている。そのような基本コンセプトからは、キミアファルマの名に恥じないフランチャイジーとなる投資家をいかに選別するかというフランチャイザー側の審査が重要な位置を占めるし、赤字フランチャイジーを出さないというコミットメントに関連して店舗ロケーションを含めたさまざまな条件の厳しい検討も欠かせない。
2009年のトップブランド受賞は同社の拡張方針に思いがけない追い風をもたらした、と代表取締役は語る。中下級マネージメントから従業員ひとりひとりに至るまで社内には新たな業務推進意欲が高まっており、そして新規フランチャイジーにはためらいを捨てさせる好機がそこに誕生している。
トップブランドアワードはフロンティアコンサルティンググループが雑誌マーケティングと共同で毎年行なっているブランドコンテストで、ジャカルタ・バンドン・スマラン・スラバヤ・メダン・マカッサルの6都市住民3千人が選択したカテゴリーごとのトップブランドが受賞のベースになっている。


「73歳が平均余命最高値」(2009年10月20日)
2004年に中央統計庁が行なった全国社会経済調査でインドネシア人の平均余命は62歳から73歳という数字が明らかにされた。地方別の調査結果は次のような内容になっている。
南スマトラ州 男65.5歳 女69.5歳
同州オガンコメリン県 男64.4歳 女68.5歳
同州パレンバン市 69.9歳 女73.5歳
西ジャワ州 男63.8歳 女68.0歳
同州クニガン県 男63.4歳 女67.7歳
同州バンドン県 男70.0歳 女73.6歳
東ヌサトゥンガラ州 男62.9歳 女67.2歳
同州東フローレス県 男63.5歳 女67.8歳
同州北中部ティモール県 男62.6歳 女67歳


「公衆トイレを清潔に」(2009年12月4日)
観光文化省は観光地における公衆トイレの規準を2004年に定めたが、トイレに関する苦情は絶えたことがない。スカルノハッタ空港でさえ、空港運営会社からのパッセンジャーサービスチャージ値上げ申請を運通相が却下したとき、トイレがその理由のひとつにされたくらいだ。
「規準を定めたから、みんなこれに従ってやれ」と書き物を与えただけでは何もはじまらないのがインドネシア。会社の中でもその原理はついてまわる。推進担当者が全関係者を呼び集めてその書き物を逐一読んで聞かせ、質疑応答のステップを踏んではじめてみんなはそれを理解するという段階に立ち至る。このプロセスがインドネシアでソシアリサシ(sosialisasi)と呼ばれるものだ。決まったことが実行されない場合、ソシアリサシが足りないというのが実行されないことへの免罪符となる。これは多分にインドネシアにおける情報伝達が古来から口承を基本にしてきたこと、そして人間が人間に関わっていくという依存性文化を強く持っていることなどに由来しているように思われる。だから社内掲示板に何を貼り出したところで、みんなを集めて説明会を催さなければ何もはじまらないのである。
だとすれば、ソシアリサシを済ませれば全員に理解と認識を持たせる段階に入ったと言うことになるのだが、正しい理解をしている者と歪んだ理解をしている者、ほんとうに認識を抱いた人間とそのつもりになっているだけの人間が混在しているから、みんなのやっていることをお任せスタイルで放り出してはならず、やっていることをモニターし評価してかれらにフィードバックするというプロセスも不可避となる。『中学生でもわかることだ・・・』と考えて本人にお任せしたらあとで軌道修正が難しくなるので、モニター・評価・フィードバックのサイクルを回し続けなければならない。
ともあれ、これは公衆トイレの話だから軌道修正しよう。やはり観光文化省はスタンダードを定め、インドネシアトイレット協会の協力を得て国内各地のトイレ管理者にソシアリサシを行なった。それからしばらくは意識の高揚があったようだが、常習的に監督されていなければ盛り上がった意識も時の流れの中に風化していくのが人間世界の常であるらしいのはだれもがご存知のことだろう。レベルが低落したトイレに観光地現場の意識を向けさせようとして観光文化省観光先地開発総局とインドネシアトイレ協会が組んで全国観光地のトイレを質量共にスタンダードまで引き上げる運動をはじめた。この運動によってトイレ施設の向上だけでなく、国民の保健衛生意識も向上するようにと環境衛生界関係者は要望している。


「他人の立場にたってのサービスはみんな苦手」(2010年2月5日)
2009年4月6日付けコンパス紙への投書"RS Siloam Mengecewakan"から
拝啓、編集部殿。2009年3月14日土曜日、わたしは西ジャカルタ市クブンジュルッ(Kebun Jeruk)のシロアム病院の血液腫瘍科専門医に相談するため、申込みを行ないました。専門医は20時から診察を始めるのです。シロアム病院の申込みに関する規則は、午前8時ごろにまず電話で申し込みを行い、18時に病院へ行ってやってきた順に番号札を取って診察の開始を待つのです。しかしこの方法はあまり効果的でありません。というのは、診察希望者の多くは番号札を取るといったん家に帰り、医師がやってきてから病院に戻ってくるのです。 わたしは番号札12番をもらい、19時に病院に戻りました。ところが20時を過ぎたら、専門医が来る前に血液学科の受付係と看護婦はみんな退勤してしまったのです。わたしは22時まで待ちましたが、医師はやってきません。それで警備員のアドバイスに従い、わたしは入院患者受付窓口にその医師について尋ねに行きました。ところがその医師と連絡が取れないということで、その日の診察に関する何の情報も得られません。その医師はときどき22時半ごろ来ることがあると窓口のひとたちは言いましたが、そのときはもう22時半を過ぎています。
その日の診察予定がまるでわからず医師も姿を見せないため、わたしは帰宅することにしました。そして3月16日月曜日になって、あの日その医師は地方に出かけており、携帯電話の電池が切れていたのだ、という情報をやっとわたしは手に入れることができました。
これまでISOサーティフィケートを持ち優れたサービスが国際的に認定されていることを誇りにしてきた大病院のこのようなお粗末な対応は患者の気持ちをたいへん傷つけるものです。病院は医師が来るのか来ないのかを前もって確認し、医師が来れなかったり遅刻する場合は申し込んだ患者に通知するべきではありませんか?クブンジュルッのシロアム病院マネージメントは患者に対してもっと責任感のあるプロとしてのサービスを提供しなければなりません。品質評価機関はその病院に与えた認定を見直すべきです。[ タングラン在住、ラフマッ・チャンドラシャハン ]


「都内の禁煙政策実施は低レベル」(2010年2月10日)
都庁は都条例で定められた大気汚染防止方針に則して都内に喫煙制限地区を設けている。そこでは特別に喫煙場所を設けてそれ以外の場所は禁煙にするよう、建物あるいは施設の管理者が対応を取らなければならない。その規制地区内にある建物あるいは施設の対応実施状況がどうなっているかについて、都庁生活環境運営庁が現場視察を実施して評価と判定を行なった。
その報告によれば、劣悪と判定された施設建物は政府機関のほうが民間のものより比率が高い。今回2週間にわたって行なわれた視察はオフィスビル105軒と病院15軒の合計120ヶ所が対象とされ、政府機関の建物は41軒中17軒が劣悪状態で41%、民間は64軒中21軒の33%が劣悪と判定された。
調査内容には、建物管理者から入居者への喫煙規制に関する通知が出されているかどうか、建物や施設内に禁煙サイン表示がなされているかどうか、などの項目が含まれ、劣悪判定が下された管理者には警告書が与えられた。都庁生活環境運営庁長官は、管理者が警告に従わない場合は施設建物の閉鎖あるいは許可取消もありうる、と述べている。政府機関と民間の評価比率は次の通り。
優秀 政府24% 民間25%
良好 政府24% 民間28%
普通 政府11% 民間14%
劣悪 政府41% 民間33%
都内の規制地区には1,560ヶ所の建物や施設があり、この先2年間にわたってすべての施設建物に対して評価と判定が行なわれる予定。都民の35%は能動的喫煙者であり、煙害撲滅のために喫煙規制は積極的に行われなければならない、と長官はコメントしている。


「看護婦も勤務中に楽しみたいのよっ!」(2010年2月13日)
2009年4月7日付けコンパス紙への投書"Perawat RSIB Family dan Rujak"から
拝啓、編集部殿。2009年3月14日、わたしは生後5ヶ月の赤ちゃんの定期検診のため北ジャカルタ市プルイッ(Pluit)のファミリー病院を訪れました。ドクターの診察を受けたあと、わたしは赤ちゃんに母乳を与えるため、2階の授乳室へ行きました。
室内に入ると看護婦がひとりそこで携帯電話で話中で、その脇の机には果物ルジャッ(rujak=細切りにした果物や野菜をタマリンド・黒砂糖・とうがらしなどで和えたもの)が食べられるのを待つかのように置かれていました。わたしがまっすぐ洗面所に行って手を洗っていると別の看護婦が近寄ってきて、きつい口調で「何してるんですか?」と尋ねるのです。わたしは「授乳です」と答えました。するとその看護婦は依然としてきつい口調で、「どうしてドアの前のベルを押さないんですか?」と尋ねます。わたしが「いいえ」と言うと、「ここで検診を受けてるんですか?」と言いました。
赤ちゃんがお腹を空かせて泣いているので、ぞんざいな待遇をされたためいやな気持ちが生じたのを抑えて、わたしはその看護婦から離れました。授乳を終えたとき、看護婦とルジャッはその部屋からいなくなっていました。わたしがドアの前のベルを押さなかったから、かの女たちは患者に失礼な口を聞いたのでしょうか?
しかしドアにあるのは「看護婦に用があるときはベルを押してください」という貼り紙です。わたしは赤ちゃんに授乳したかっただけで、看護婦に何も用はありませんでした。わたしが間違っていたのでしょうか?その授乳室の使用は入院患者だけに許されていたので、そうでないわたしはその授乳室を使ってはいけなかったのでしょうか?
看護婦が機嫌を悪くしたのは、かの女たちが授乳室を使ってルジャッパーティを開こうとしていたのをわたしが邪魔したからのように思えます。母乳育児を奨励している病院の看護婦があのような態度を示すのは実に皮肉なことではないでしょうか。[ ジャカルタ在住、デウィ・プルナマ ]


「医薬品市場は急成長する」(2010年3月6日)
一般薬市場が今後5年間で2009年の11.2億ドルから7.7億ドル増加して18.9億ドルに成長するとの予測に応じて医薬品店薬局業界が2010年から拡張方針を積極化させる。PTキミアファルマは2010年中にフランチャイズ方式でアウトレットを100店新設するという目標を組んだ。それによって年間売上1.3兆ルピアから2割増という販売計画が立てられている。またK−24薬局は現在の145店を2010年中に500店にするというもっとアグレッシブな目標にしている。
インドネシア製薬会社連盟は2010年の医薬品市場が34.5兆ルピアに15%成長すると予測しており、そのうちの6割は処方箋薬で4割が一般薬とのこと。


「タバコは青少年を狙う」(2010年3月16日)
2009年6月29日付けコンパス紙への投書"Anak dan Remaja Target Merek Rokok"から
拝啓、編集部殿。2009年6月17日にブリティッシュアメリカンタバコ(BAT)がPTブントゥルインターナショナルの株85%を買収しました。世界第2位の大タバコ会社が4.9億ドルも払ってクレテックタバコ会社の株式を買い取ったのは大きなわけがあるのです。
インドネシアは世界第5位のタバコ市場で、そのうち93%はクレテックタバコで占められています。4年ほど前にフィリップモリスインターナショナル(PMI)がPT HMサンプルナを買収したのに続いてBATが今回同じステップを踏襲したのは不思議でも何でもありません。2009年5月5日にニューヨークで開かれたPMIの株主総会における年次報告はインドネシアでの販売量が9.7%増加したことを表明しています。つまりインドネシアは外国勢にとって垂涎のマーケットであるということなのです。
多国籍企業がインドネシアのタバコ会社を所有するという戦略で、BATはインドネシアに天国を見出すことでしょう。その反対にインドネシアはますますタバコ問題の崖下に転落していくのです。最大の被害者はインドネシアの青少年たちでしょう。PMIがサンプルナを買収して以来、このタバコ会社は製品の宣伝やプロモーションを大々的で盛んなものにしました。さらにイベントをオーガナイズしたり、さまざまな催し物のスポンサーになることも頻繁です。
行なわれている宣伝・販促・スポンサーなどの活動が青少年をターゲットにしているのは言うまでもありません。それは宣伝イメージやスポンサーになっている催しの内容が若者スピリットに彩られていることから明らかです。ブントゥルが買収された結果、ブントゥル製品のすべてのブランドが青少年に向けてプロモーションされるのですから、インドネシアの状況はますますひどいものになっていくでしょう。
大規模な製品プロモーションを行なわないという国際合意にBATも加わっていることをわれわれは知っていますが、PMIさえ同じ背景にありながらインドネシアでは頻繁にそれから逸脱している実態を見るかぎり、それが何の保証にもならないことを疑う余地はないということです。
わたしは3歳の子供の母親です。そのうちにこの子はりりしい少年に成長し、弟たちと共にタバコ会社のターゲットに組み込まれることでしょう。でもこの子たちはわが民族建設の将来の担い手なのです。だからわたしは、全国のすべての親御さんたちと同様、インドネシア民族の後継者であるすべての子供たちを保護するために厳格な法規が定められることを希望しています。[ デポッ在住、ユリ・ロヒヤニ ]


「肥溜めの上に乗った首都」(2010年3月18日)
世界のほとんどの都市では、住民の年間平均個人所得が2千〜3千米ドルのブラケットに入るようになれば妥当な下水システムが設けられる。ジャカルタはいまや平均年間個人所得が2千5百米ドルというそのブラケットのど真ん中に差し掛かっているというのに、下水システムには目立った進歩が訪れない。ジャカルタの地下に埋められた下水パイプは都内のほんの一部にあるだけで、都内大部分のエリアでは生活排水垂れ流し、糞尿は肥溜めに貯蔵というスタイルが取られている。
肥溜めは地中に埋められたセプティタン(septic tank)だが、地上の過密にともなってその埋設位置も生活領域の中に入り込んでいるものが多く、構造も水分が周囲の土中に自然に滲出する形を取っているため衛生上の不安は大きい。セプティタンが満杯になれば中の糞尿はタンク車に吸い込まれて糞尿処理施設に運ばれる、という筋書きになっているのだが、都下3百ヶ所に設けられている糞尿処理施設の中でまともに稼動しているのは10ヶ所しかないそうだから、処理しきれない糞尿は人の目の届かないところに温存されているにちがいない。
一方生活用水としての上水を都民の大半は上水道と地下水から入手している。水質がお粗末で水量の小さい上水道だけに頼ることができないために、戸建住宅が井戸を持つのはジャカルタ生活の常識になっていると言えよう。そしてやはり地上の過密にともなって、井戸もセプティタンから距離を持たせるのは不可能に近い。国家開発企画庁飲用水廃水次局長によれば、ジャカルタ全域の85%は地下水が汚染されているとのこと。
ブレーメン海外調査開発協会のデータによれば、人間は年間にひとりあたり50リッターの大便と500リッターの小便を排出し、さらにひとりあたり年間1万5千リッターのトイレ洗浄水と3万5千リッターの水浴廃水を汚水にしている。インドネシアでは首都ジャカルタを含めて下水処理システムがほとんど不在であることから、地下水の70%河川水の75%が人間の作り出す糞尿汚水によって汚染されている。そのため上水道で供給される上水の生産コストは年々顕著な上昇を示し、国民福祉を旗印に掲げた行政が水道料金を超廉価に据え置かせているため水質の抜本改善や給水システムの保全に対する水道会社の投資資金が思うにまかせないまま年月が過ぎ去っていくのが現状になっている。ブレーメン海外調査開発協会はインドネシアの下水システム不備が引き起こしている社会コスト損失は年間で57兆ルピアだと見積もっている。


「病院が用意してくれる飲食品はアブナイ」(2010年3月29日)
2009年6月15日付けコンパス紙への投書"Kinerja RS Gading Pluit Buruk"から 拝啓、編集部殿。わたしの父は2009年5月11日から16日まで、ガディンプルイッ病院三等病室に入院しました。たまたまそこでわたしは、ポットに入れた飲用のお湯を患者に配る厨房係員の行為を目にしたのです。係員は他の病室でポットに残ったお湯を集めて別のポットに入れ、まだ熱いかどうかを確かめるために人差し指をポットの中に突っ込み、そしてリサイクルされたお湯で一杯になったポットを別の病室に配ったのです。患者にお湯を配る方法はそんなやり方なのですか?かれらの手はきれいで、殺菌されているのでしょうか?そんなやり方をするのなら、病院側は患者にお湯を配らないほうがよいのではありませんか? 別の問題は、退院の際に請求された費用清算です。請求書にはなんと1,050万ルピアもの費用が記載されていました。患者に投与された薬品の明細を出してもらったところ、驚いたことに手袋やアルコール容器までが請求の対象になっていました。父は毎日手袋を10セット、アルコール容器を10本も使ったのでしょうか?明細を看護婦と一緒にチェックした結果、病院側が払い戻し伝票を作ることになりました。請求されている、投与されたという薬品の名称を父の日誌と照合したところ、ひとつ388,375ルピアもする点滴液が一致していないことがわかりました。それが何のための点滴液かを調べたところ、父の向かいに寝ている患者のものであることがわかりました。調べてくれた看護婦は露ほどの罪悪感も示さず、ステッカーの貼り間違いでしょうとあっさりと言いました。請求書の中にはそれが3本分含まれており、116万ルピアもの不当請求が大手を振って出されていたのです。調べなければいいツラの皮です。
わたしは抗議し、払い戻し伝票を作るからという言い訳で病院側はわたしの抗議に対抗したわけですが、かれらは終始嫌な顔をわたしに向けてきました。きっとわたしを、余計な仕事をさせる迷惑な人間だと思ったのでしょう。病院のアンケートにもこのことを書きましたが、反応は何もありません。[ ブカシ在住、シムイ ]
2009年7月25日付けコンパス紙に掲載されたガディンプルイッ病院からの回答
拝啓、編集部殿。シムイさんからの2009年6月15日付けコンパス紙に掲載された投書に関してお伝えします。厨房係員は当病院が作っている標準業務手続に違反したので、当方の規定に照らして処罰されました。当病院の規定では、使われなかった薬品や医療具は患者が退院する際に返却できることになっています。当方はシムイさんとお会いして説明を申し上げ、シムイさんは今回の問題を了承してくださいました。[ ガディンプルイッ病院広報担当、ジョイス・LN ]


「子供を狙うタバコ販促手法」(2010年4月13日)
2009年6月3日付けコンパス紙への投書"Kehancuran Anak Lewat Iklan dan Promosi Rokok"から
拝啓、編集部殿。2009年5月24日20時にデポッ(Depok)のデポッジャヤ町のわたしの実家がある地区で、広場で映画鑑賞会が催されました。幼いころの思い出を呼び覚まし、わたしは兄と4歳の甥といっしょにホラー映画をやっているその鑑賞会に行ってみました。そのときわたしがそこで見たものはいったい何だったのでしょうか?
わたしの幼いころの思い出は再現されませんでした。わたしが小さいころのこのような催しのスポンサーは電池やジャムゥでしたが、それに代わってタバコ(LA Lights)がスポンサーだったのです。その結果広場の絶好の位置はLAライツのテントに占領され、映画の上映中ひっきりなしにタバコの宣伝嬢が観客の間をまわってタバコを勧めていました。映画の合間にはバンドの演奏もありました。
その様子を目の当たりにしてわたしは心が痛みました。21時半から翌朝5時までの時間を除いてタバコのテレビ広告禁止という決まりが守られればこそ、広場でのタバコCMは催し物が始まってから続けざまで、観客のメインを占める子供たちをタバコの販促宣伝が襲ったのです。子供たちは映画鑑賞やバンド演奏に溶け込み、スポンサーが提供するおみやげを手にしました。こうして最後には子供たちがタバコを吸うようになったのも不思議ではありません。子供たちの周囲にしつらえられた環境が、喫煙は自然なことだ、という理解をかれらに持たせるのに成功したからです。
とはいえ、タバコは健康に有害なたくさんの成分を含んでおりひとを死にいたらしめるものだ、ということを誰でも知っています。一方、このような販促手法がわれわれの子供たちをターゲットに据えたタバコ会社の戦略であるということを大勢のひとは理解しようとしません。政府は子供の保護を基盤に据え、健全なインドネシア民族の将来を担う世代を形成するために、タバコ会社の広告宣伝スポンサーシップを禁止する政策をより厳しく実施するべきです。[ ジャカルタ在住、チャヒヤ・シマ・デウィ ]


「タバコ宣伝はますます盛ん」(2010年5月18日)
タバコ規制に関する政令案の中でタバコの広告宣伝全面禁止に対して議論が沸騰している中、2010年第1四半期にタバコ会社が行なったメディア広告宣伝は対前年同期比で上昇していることをニールセンインドネシアが報告した。
ニールセンアドバタイジングサービスのデータは、2010年第1四半期タバコ製品のメディア広告宣伝支出が3,770億ルピアにのぼり前年同期実績3,490億ルピアから8%上昇したことを示している。印刷メディア業界にとってタバコ広告宣伝収入はたいした意味を持っていないが、テレビメディアにとってはたいへん大きい収入源になっている。クレテッ(kretek = クローブタバコ)の商品広告はテレビ広告宣伝4大アイテムのひとつで、2010年第1四半期の金額は3,510億ルピアだった。ちなみに前年同期実績は3,130億ルピアとなっている。
タバコ産業界が広告宣伝に力を入れている銘柄商品のトップ4はGudang Garam International, Gudang Garam Merah, L.A. Lights, Djarum Blackで、2009年第1四半期から2010年第1四半期への支出の伸びは次のようになっている。
Gudang Garam International 610億 → 750億 23%↑
Gudang Garam Merah 150億 → 320億 113%↑
L.A. Lights 160億 → 210億 31%↑
Djarum Black 110億 → 210億 91%↑
テレビメディアにおけるタバコ宣伝の活発化について広告会社業界は、夜から朝にかけてのタバコ広告禁止時間外における番組でタバコ宣伝に適した内容のものの視聴率が高まったことが広告放映増加の原因だと述べている。広告会社は制作・イメージ強化・メディア掲載など広告宣伝のフルサービスを行なっており、報酬は総費用の5〜9%とのこと。
タバコ規制政令案に関連してタバコの広告宣伝全面禁止の議論が世間で活発化している昨今、タバコ産業界が広告宣伝を自粛するような気配はまったくないそうだ。広告会社業界は、たとえタバコの広告宣伝が全面禁止になったところでそれほど大きい打撃は蒙らず、最大クライアントの通信業界をはじめとする他のセクターに標的を移すだけだ、と情報筋は語っている。
児童保護国家コミッション長官は、タバコの広告宣伝は新たな消費者開拓に的を絞ったものであり、そのターゲットになっているのは未成年の子供たちだ、と見解を語る。「広告の有無にかかわらず喫煙常習者はタバコを買い続ける。子供を新規開拓市場のターゲットにしているわけではないとタバコ産業界は言うが、それが本当なら巨額の広告宣伝費を支出して広告を出しているのは何のためか?これまでタバコを吸わなかった子供に喫煙を勧誘するためのイメージ作りが広告制作の内容からはっきりと見て取れる。喫煙は人体に有害であり、未来を担う次世代をその害から保護しなければならない。しかし政府はいまだに産業保護を名目にしてタバコ規制枠組み条約を批准しようともせず、これまでのあり方をそのまま継続させようとしている。タバコ産業界は常にタバコ農民・タバコ生産労働者の生活を守るという理由をタバコ産業保護の筆頭項目に掲げているが、わたしはこう反論したい。タバコ農民・タバコ生産労働者の貧しい生活に巨大なタバコ経済がどれほどの福祉向上を与えているのか、と。」


「ネッタイシマカの習性が変化」(2010年5月25日)
デング熱ウイルスを媒介するaedes aegepty(ネッタイシマカ)はこれまで、澄んだ水に棲息し、垂直方向への飛翔能力はせいぜい2メートルで、人を刺す時間帯は午前10時ごろと夕方14時〜18時という習性が常識になっていたが、その習性が変化していることをバンテン州保健局病気予防係長が明らかにした。首都圏ではいまだにデング熱罹患者が続出しており、チプトマグンクスモ病院にはここ二ヶ月毎日1〜3人の罹患者が治療にやってきているとのこと。
係長によれば今では濁り水に棲息しているネッタイシマカがおり、家屋の二階にもネッタイシマカが飛んでくるし、夜中に人を刺すネッタイシマカもいるとのこと。これは環境やその他の要素の変化に対応してして蚊の遺伝子が適応変化を起こしているためで、市民は頭を切り換えてデング熱対策を行わなければならない、と警告している。通風孔にはネットを張り、蚊の生息場所を撲滅し、衣服を吊り下げずカーテンに蚊がとまっていないかどうかを頻繁にチェックするように、と係長はアドバイスしている。


「インドネシアの医薬品は高い」(2010年5月31日)
国内で生産されている医薬品のための原材料は96%が輸入されており、国内で調達されているものは4%しかない。インドネシアの医薬品市場は25億ドルだが、そのうちの5億ドルは輸入原材料に費やされている。その結果アセアン諸国に比べてインドネシアで販売されている医薬品の価格はたいへん高い。インドは反対にほぼ百パーセントの原材料が国内調達されており、国民が購入する医薬品の価格はきわめて廉い。
そんな状況のためにインドネシア産医薬品は原材料の国際価格変動を敏感に反映する体質を持っている。特に需要の小さい医薬品は原材料コストが割高になり、それが販売価格を高いものにしている。保健省は医薬品製造業界に対し、国内に豊富なハーブ類をできるだけ利用して輸入原材料を減らすよう指導することにしている。


「ヒル養殖」(2010年6月5日)
西ジャワ州デポッ(Depok)市でヒルの養殖が盛んに行なわれている。他の動物の生き血を吸うことで知られているヒルはその性質を利用して医療用に使われることもあり、インドネシアでも悪い血を吸わせるためにヒルを患部に置く療法が行なわれている。道端行商人の中にもそんな医療を行う者が、小箱にヒルをたくさん入れて持ち歩いている。
しかしヒルの効用はそればかりでなく、ヒルの体から取れる抽出物は高い経済性を持っている。インド・オーストラリア・マレーシア・シンガポールなどからヒルの抽出物の輸出オーダーが毎月入ってくる、とインドネシア大学自然科学数学部地学科教官は語る。「ヒルの抽出物はインドから毎月5cc入り1千ボトルの注文が来る。それ以外にも生虫や乾燥させたものも注文がくる。だからわたしは個人でヒルの養殖事業を興した。今はデポッ・チレボン・カラワン・ジョクジャ・バンドン・ブカシ・チビノンにも供給者がおり、輸出の注文に応えている。わたしのところは6万匹を養殖しているが、中には1〜2千匹のところもある。ヒルの抽出物は石鹸や化粧品の材料として使えるため、この分野の産業開発が求められているところだ。外国からのオーダーは生虫が増えている。つまり生虫は単価が廉いので、それを輸入して自分で抽出物を採ろうという考えだ。抽出物は国外市場で12ドルになるが、生虫だと高くて1万ルピアなのだから。」
ヒルを使ったセラピーを行なっているデポッ市サワガン(Sawangan)住民は、医療用ヒルは一匹2万ルピアで売っている、と語っている。


「タバコを吸う女性たち」(2010年6月17日)
女性喫煙者が激増していることが、5月31日の世界禁煙デーを協賛してインドネシア癌財団が主催した「女性向け販売をプッシュするジェンダーとタバコ」と題するセミナーの中で報告された。喫煙問題対策院から参加した発言者は、タバコ産業界は女性向けタバコ販売戦略の中で、喫煙は現代的でかっこいい体型作りと性的魅力アップに役立つというイメージを女性に植え付け、女性向け低タール・低ニコチン製品を奨めて喫煙を煽っている、と語った。ジャカルタのプルサハバタン病院呼吸器科専門医はそれに関連して、低タール低ニコチンタバコはより大きい快楽と中毒の進行を求めて喫煙量を増やすメカニズムを持っている、と発言した。
統計によれば1995年の女性喫煙者は1.7%だったが、2007年には三倍の5.1%に激増している。


「5種の薬用植物に脚光」(2010年6月21日)
保健省の医療業界に対するジャムゥ伝統医薬品使用推奨方針が効果をあらわしている。保健省は製薬業界にも、原材料輸入を減らして国内産薬用植物の使用を増やす指導を進めているが、こちらはまだ時間がかかりそうだ。
病院や開業医が患者にジャムゥを奨め、また処方箋に書き込むといった状況が広がりはじめており、ジャムゥ生産者業界はこの事業興隆のモメンタムに意を強くしている。医師の間でもジャムゥの効用に関する勉強会や情報交換が活発化し、特に医師界ではジャムゥを治療薬でなく予防のための保健薬という位置付けに置いて国民にその使用を普及させようとする動きも始まっている。そんな状況を踏まえてジャムゥ伝統医薬事業者連盟は5種の薬用植物を優良ジャムゥ素材に指定し、学術的アプローチを基盤に据えた総合的開発の実施に着手することを決めた。その5種とはtemulawak(ジャワターメリック)・ kencur(バンウコン)・ jahe(ショウガ)・ pegagan(ツボクサ)・ sambiloto(センシンレン)で、連盟はジャムゥ生産者と大学研究部門との橋渡し役を務めることにしている。


「汚染輸入魚が増加」(2010年6月24日)
防腐剤や重金属に汚染されている食用魚の輸入が増加している。鮮魚冷凍魚の輸入がここ数年激増しており、それに伴って汚染されたものが発見されるケースも増えている。ちなみに2007年の年間輸入量42,891トン金額2,757万ドルは2008年83,558トン7,116万ドル、2009年は85,566トン6,582万ドルと推移している。
北スマトラ州議会経済天然資源分野第2委員会議員のひとりは、人体に有害な物質を含んだ鮮魚が外国から国内漁港を通って市場に流されており、輸入通過ポイントでのチェックは何もなされていない、と述べている。おまけに国内市場での販売価格も国内産の安全なものより廉く売られているそうだ。ベラワンガビオン雑魚捕獲業者組合理事長は、メダンのベラワン港経由でタイやベトナムから輸入された雑魚から許容量を超える鉛とカドミウムが検出された、と語る。「4月13日に北スマトラ州海産物品質育成試験所で行なわれたテスト結果から、輸入雑魚は鉛0.228mgカドミウム0.155mgが検出された。国の基準値はそれぞれキロ当たり0.2mgと0.1mgになっている。また市場価格も輸入ものはキロ10,000〜12,000ルピアで国産の14,000〜16,000ルピアより廉い。」
そんな状況は海洋漁業省に報告されているものの、政府からの対応はいまだにない。海洋漁業省外国マーケティング局長はそれに関して、ランプン・ベラワン・バタムから報告が届いていることを認めている。「バタムではマレーシアから輸入されたティラピアからフォルマリンが検出されたため、州庁が今月から輸入を禁止した。輸入魚のフォルマリン汚染はこれまでに何度も発見されており、2008年にはパキスタンからの輸入魚でも見つかっている。海洋漁業省は魚の輸入規則を編成中で、現在最終段階にある。それが制定されれば魚輸入に関して、輸入者資格条件・輸入品品質条件・品質と安全の検査義務・輸入量規制などの事柄に関する統制が行なわれるようになる。魚の輸入港はジャカルタ・マカッサル・スマラン・ベラワン・スラバヤでのみ行なわれるようになる。」局長はそのように政府の方針を説明している。


「ビル内禁煙」(2010年6月29日)
都内の公共スペースでの禁煙を進めている都庁は最初、ビル内に喫煙所を設けさせて喫煙時の非喫煙者からの完全分離をはかろうとしたものの、なかなか素直に従わない市民が多数を占めている実態に音を上げてビル内すべて禁煙という方針転換を行なった。簡単に言えば、タバコを吸いたかったらビルの外に出ろ、ということだ。
さてその方針転換についてコンパス紙R&Dが世論調査を行った。2010年6月16〜18日間に行なわれたサーベイ結果は喫煙者も非喫煙者もビル内禁煙に賛成する声が大多数を占めた。
喫煙者(サンプル数149人)
賛成 87.9%、不賛成 10.7%、わからない 1.4%
非喫煙者(サンプル数553人)
賛成 93.1%、不賛成5.6%、わからない 1.3%
その新方針は成功するだろうと見ている回答者は56%で、うまくいかないのではないかと疑っている回答者は42%にのぼった。


「タングラン市も禁煙条例制定に動く」(2010年7月20日)
タングラン市長が禁煙条例を発議した。タングラン市は市議会に対し、市内特定施設での喫煙を禁止する条例の制定を働きかけて条例案を提出した。その条例案によれば、喫煙が禁止される場所は市行政機関・保健医療機関・教育機関・児童遊戯施設と幼児預託場、宗教施設、その他の公共スペースの6区分で、その他の公共スペースには商店街やモール、レストラン、映画館、市場、駅、観光施設、バスターミナル、水泳プール周辺などが含まれる。
タングラン市庁は条例案を提出すると同時に市の諸行政機関における禁煙キャンペーンを開始している。タングラン市議会は市のその動きを歓迎しており、条例案に検討を加えた上で制定されることになる、と市議会議長はコメントしている。


「医師登録制度」(2010年8月13日)
市中の医療体制を確立させるため、インドネシア医療評議会が医師の資格認定厳格化を推し進めている。インドネシア医療評議会は従来から医師の登録制度確立に努めており、評議会に登録された医師に対して登録証明書が発行されていて、その制度が開始された2005年から2010年5月までの間に一般医・専門医・一般歯科医・専門歯科医に対して発行された登録証明書は110,610枚に達するとのこと。
診療活動を行う医師には医療評議会での登録が義務付けられており、登録しないで医療活動を行えば非合法医療活動として5年以下の入獄刑という罰則まで用意されている。この登録証明書は医療活動だけでなく医療教育を行なう場合にも必要とされており、加えて保健省から医療活動許可書を得るための条件のひとつにもなっているため、登録証明書のない医師は間違いなく、公的機関から許可を得ていない医療活動従事者だと言うことができる。そのため評議会は開業医に対して登録証明書と保健省から得た医療活動許可書を開業場所の表に掲示するよう指導しており、一般国民はそれらを掲示していない開業医があれば届け出てほしい、と要請している。
医療評議会での医師登録は医師としての能力認定証がなければならず、この種の認定証は各職業団体が持っている能力認定機関のテストに合格すれば入手できる。評議会は登録の際にそのような各医師の資格と能力をチェックした上で登録を受け付けており、その審査基準にパスする者だけを医師として公的に認定するという活動を行なっている。
評議会登録医師に問題があった場合、評議会はその医師に指導育成を与えることになるが、医師が医療活動内でミスを犯した場合はインドネシア医療規律名誉審議会に命じてその内容を調査させ、その内容によって警告書・指導・許可取消といった措置を本人に与えることも行なっている。医療規律名誉審議会は2005年から2009年までの間に訴えのあった41件の医療事件を調査し、15人の医師に誤りがあったとの判定を下してレベルによって異なる措置を与えている。今年は17件を調査中。この審議会は職業倫理上の観点から医師の行動を審査するもので、医療過誤のような問題は審議会の取扱い範疇外となっている。


「看護師認定制度」(2010年9月21日)
インドネシアに看護師は50万人おり、毎年2万4千人が教育を終えてその戦力に加わってくる。インドネシアの看護師は各州保健局に登録されて証明書をもらうが、海外ではその証明書が通用せず、かならず外国の看護師の監督下で業務を行なうことになり、能力が評価されないために給与は低く抑えられてしまう。そのため労働関係者はレジスタードナース認定制度を持ち込もうとしているが、インドネシアの看護師教育は国際規定と互換性がないため正看護師資格制度がまだ持てないでいる、と正看護師協会事務局長が明らかにした。
アメリカやオーストラリアなどの病院あるいは教育機関で働いていたときにレジスタードナース資格を取得したひとびとが中心になって作った正看護師協会はレジスタードナース職業認定機関を設け、職業認定国家庁はそのレジスタードナース職業認定機関を公的なものとして承認した。この機関は既に250人以上の看護師に対してレジスタードナース資格を与えている。保健省とインドネシア国民看護師ユニオンはその動きに賛同しているものの、看護法の成立を待っているためこの認定機関に対する積極的な反応はまだ進展していない。
レジスタードナース職業認定機関はフィリピンとの間で2006年12月8日に結ばれた看護サービス相互承認協定に続いてインドネシアの看護師がさらに幅広く世界から認知されるようにするため設けられたものである、とインドネシアレジスタードナース同盟会長は説明している。「看護法はいまだに制定されない。われわれ海外でレジスタードナース資格を得た者が協会を作り、資格認定機関を設けて看護師の資格向上に貢献しようと考えた。2007年に発足した認定機関は、2009年に職業認定国家庁から公認された。」会長はそう自分たちの使命を表明している。


「狂犬病汚染は24州にわたる」(2010年9月24日)
全国の一部特定州で狂犬病汚染が大きい話題になっているが、保健省は全国24州が狂犬病汚染地区を持っており、非汚染地区は次の9州しかないことを表明している。
Bangka Belitung, Jawa Tengah, Daerah Istimewa Yogyakarta, Jawa Timur, Nusa Tenggara Barat, Kalimantan Barat, Irian Jaya, Irian Jaya Barat, Papua
ただし、国境と言い、地理的行政区分と言い、人間が人間のために区切った自然の境界を動物は認知しないため、狂犬病の病原菌を持った動物がいつそれらの州の境界を越えるか知れないから、国境や州境が病原菌に特別なバリヤーを持っているような気持ちにならないことが肝要だ。
保健省の全国データによれば、過去2年間の人間が狂犬に咬まれた事件数はそれまでより大幅に増加している。2008年は20,926件で死者104人、2009年は42,106件死者137人、2010年は8月までで40,180件死者113人。動物と人間の移動が盛んになったことが狂犬病の拡散を促している。インドネシアの狂犬病罹患は98%が犬によるものだそうだ。「人間が犬を他の土地に連れて行くことで、非汚染地区に病禍がもたらせられた。漁師が犬を連れて出漁し、遠隔地に上陸する。島嶼間を回る商人が犬を連れて旅する。食犬の習慣を持っているひとびとのために各地から犬が集められることも病禍の拡大に手を貸し、西ジャワのアドゥバゴン(adu bagong=犬とイノシシを闘わせるゲーム)や西スマトラの犬を使うイノシシ狩りなども狂犬病の広まりに一役買っている。」農業省畜産総局畜産保健局長はそう語っている。
狂犬に咬まれた場合はすぐに傷口を流水と石鹸あるいは洗剤できれいにし、消毒薬か70%のアルコールで傷を消毒してから保健所や医師にかかるように、と局長はアドバイスしている。


「インドネシア人医師は決して競争に負けない。」(2010年10月20日)
2010年9月21日付けコンパス紙への投書"Dokter Jangan Takut Bersaing"から
拝啓、編集部殿。わたしは2010年8月18日付けコンパス紙に掲載された、外国人医師の宣伝広告の増加を嘆いている医師からの投書を読みました。外国人医師と競争しなければならないインドネシア人医師の嘆きはよく理解できます。しかしインドネシア人医師のレベルが期待される線にまだ達していないことをわれわれは認めなければなりません。
1999年のわたしの体験をお伝えしましょう。わたしの背中の病気が三ヶ月たっても治らないのは神経が背骨にはさまれているからだ、とわたしを診察したメダンの医師は診断しました。ところがマレーシアのペナンで診察を受けたところ、医師はわたしの病気が結核性脊椎炎だと即断したのです。診断と治療が的を射ていたおかげで、わたしの病気は二週間で治りました。
病気の診断さえ間違いを犯すインドネシアの医師はどこが悪いのでしょうか?医療機器を見る限り、メダンの病院とペナンの病院にたいした違いがあるとは思えません。だからインドネシアの医師は技能の向上をはかり、職業宣誓に従って働き、そうすることで患者はインドネシアの医療機関でインドネシア人医師の治療を進んで受けるようになるでしょう。
今はグローバル時代であり、あらゆる情報が入ってくるので外国人医師の宣伝広告から逃れることはできません。そんな状況にあっても、インドネシア人医師が優れた技能を持ち患者の満足を得ることのできる医療活動を行うなら、インドネシア人医師が外国人医師との競争に負けることはないはずです。[ メダン在住、テリー・グルトム ]


「職業倫理違反で処分された医師は5年間に9人」(2010年10月28日)
医療規律名誉審議会は2006年から2010年10月までの間に122件の訴えを受領し、9人の医師に対してその違反に応じた処分を与えたことを審議会議長が明らかにした。処分の内容は、戒告、再教育、医師登録証明書の暫定的無効措置など違反の重さに合致したもの。
医師歯科医師が犯した職業倫理に対する違反の訴えは2006年9件、2007年11件、2008年20件、2009年36件そして2010年は10月までで46件とうなぎ登りの増加を見せているが、その内容は医師と患者の揉め事に関するものが多く、職業規律とは関係ないものが多数含まれている。ともあれ、訴えられた医師は外科医がもっとも多く、次いで産婦人科、小児科、眼科、内科、歯科、循環器科、法医学、一般医などに分布している。
医療規律名誉審議会はその中で、9人の医師に対して職業規律に触れる不当行為があったとして制裁措置を下した。1件は戒告処分、4件は再教育、そして4件に戒告と医師登録証明書暫定取消措置が下されている。議長はまた、2009年〜2010年に受領した訴えの中で現在審議が続行中のものも数件あると付け加えている。
医師登録証明書暫定取消措置はその医師が医療行為を行なえなくするもので、登録証明書がなければ地元県市保健局は医師の医療行為従事に対する認可を決して与えない。医師登録証明書は5年の有効期限をつけてインドネシア医療評議会が交付する。それなしに医療行為を行なった者は1億ルピアの罰金、そして登録証明書のない医師に診療をさせた病院の責任者は入獄10年罰金3億ルピアの刑罰が与えられる。


「カップ容器入り飲用水はリスクが高い」(2010年11月8日)
市場で流通している21メーカーのカップ容器詰め飲用水の品質検査を行なった消費者保護財団が、検査サンプルの中に飲用に適さないものがあったことを公表した。また飲用水としての条件は満たしているが、製造工程の改善を行なう必要があるものも指摘されている。
消費者保護財団が行なったこの飲用水品質調査では、市場にある商品自体並びに問題のある販売環境に対する指摘も行なわれた。陳列商品の中に水が滲出しているカップがあるのを放置しているケースや、48カップが入ったカートン内にある商品のレジスター番号がまちまちになっているものも見つかっている。
検査されたサンプルの中では、消費期限が2012年3月となっているにもかかわらずコロニー数が限度を大幅に超えているものが2ブランドあり、確実に限界内にあるブランドはSanqua, Aqua, LeVia, Quary, Fantasi, Indomaret, Giant, Hypermart Air Minum, Carrefour Air Minum, SAPの10ブランドしかなかった。
財団は各ブランド生産者にその検査結果を通知したが、関心を示したところもあればまったく受け付けようとしなかったところもあったとのこと。食品薬品監督庁は、カップ容器入り飲用水は工場生産時点の品質レベルと市場段階のものとでは状態に差がつくのは当然だとそのあたりの事情を説明している。「カップ容器に使われているプラスチックは中味の汚染を発生させうるので、小売段階に至るまでに品質が劣化することは起こりうる」とのこと。


「医者の自己宣伝は職業倫理違反」(2010年12月9日)
2010年10月28日付けコンパス紙への投書"Dokter Indonesia Iklankan Diri?" 拝啓、編集部殿。医師が自分自身を宣伝するために新聞に広告を載せるのは倫理上よろしくない行為であるとこれまで考えられており、医療倫理規定に反するものであるため従来からインドネシアの医師はそれを厳格に守ってきました。皮肉にも、インドネシアで自己宣伝を繰り返しているシンガポールの医師がいます。 たとえば、シンガポールの皮膚病専門医ドクター・ゴーセンヘンはコンパス紙の半ページを使って自分の写真と広告を掲載しています(2010年10月24日付けコンパス紙を参照ください)。
ドクター・ゴーはインドネシアの医療職業倫理を知らないのだと想定してわたしは2010年6月20日かれにEメールを送り、インドネシアの医療倫理に違反するその行為をやめるよう求めたことがあります。
しかしそのメッセージは無視され、コンパス紙への宣伝広告が続けられているのが実情です。
コンパス紙を通してわたしは全国の新聞発行者に対し、医師(外国の医師を含む)が自己宣伝のために広告を掲載することを一貫して拒否することで、インドネシアの医療倫理規準を確立させようとしているインドネシア医師会をバックアップするよう呼びかけたいと存じます。このことは、外国人医師の自己宣伝を放置しながらインドネシア人医師がおなじことをするのを禁止するというダブルスタンダードにインドネシア医師会が陥らないようにするための、たいへん重要なことがらなのです。
わたしはまた全国のインドネシア人医師に対し、その種の行為を真似る者が出ないよう希望していることを伝えたいと思います。国内の医師に自己宣伝を許したなら、医師たちは競って自分の得意分野の病気治療に他の医者より自分のほうがどんなに優れているかということを宣伝し、新聞・テレビ・広告板その他が自己賞賛する医師の写真と宣伝文句で埋め尽くされるであろうことを深く懸念するものです。それが行き過ぎると、患者に外国旅行やBMWが当たる抽選券を与えて来院を誘うようにならないとも限りません。
医師という職業の崇高さが地に落ちて、医療行為が普通の商売と同じようになっては心が痛みます。インドネシア医師会は医師という職業が持っている、医師宣誓の一項目に述べられている「わたしは全力を挙げて医療者としての崇高な威厳と伝統を守ります」という言葉の中の崇高さを維持するべく、大きい努力を払ってきました。
もちろんインドネシア医師会も、フリートレードエリアの施行に伴って外国の医師がインドネシアに医療ビジネスを拡大してくるであろうことに目を閉じているわけではありません。そうではあっても、インドネシアの医師と同じように合意され服されるべき決まりがあるのは当然です。わたしは医師という職業が持っている崇高な伝統を保持することを、金のために行なう自己宣伝より重視しているインドネシア人医師がまだたくさんいることを信じてやみません。[ インドネシア医師会ジャカルタ地区医療倫理名誉評議会議長、リアント・スティアブディ ]


「悪の同盟は盛ん」(2010年12月14日)
製薬会社と医師の癒着は職業倫理に違背しているにもかかわらず繁栄を謳歌しており、その商習慣を清浄化するのは不可能と思われる、と国際製薬団体連合会商慣習サブコミティ委員長が表明した。製薬会社と医師の癒着が盛んに行なわれているのは患者の利益よりも自分の利益を優先させる考え方に由来するもので、ユニバーサルカバレッジが進展してもその悪弊が消滅する見込みはない、とサノフィアベンティスインドネシア社長でもある同委員会委員長は語っている。「職業倫理に背く悪徳医師がいるかぎり、癒着は決してなくならないだろう。この種の癒着はインドネシアで、医療の世界にかぎらずあらゆるビジネスセクターに広まっている文化なのだから。」
インドネシア医師会事務局長は、製薬会社が医師に誘いかけをしてこない限り、癒着は決して発生しない、と例によって水掛け論的発言を出してその発言に反論している。


「罹病は怖いが予防はしない」(2010年12月27日)
病気に罹れば日常生活にさまざまな困苦を招き、時には生命の危険さえ生じるということを十分に知っているというのに、病気に罹るのを事前に防ごうとする病気予防の努力はきわめて乏しいというインドネシア文化の弱点を赤裸々に示すサーベイ結果が発表された。
フィリップスヘルスアンドウエルビーイングインデックス2010は世界30ヶ国でそれぞれ大都市住民1千人ほどを対象に行われた調査で、その統計結果を見るとインドネシア人の保健に関する考え方や姿勢が浮き彫りにされている。自分の現在の健康状態をどう思っているかという質問に対して、「自分は健康であることを確信している」あるいは「今の健康状態に満足している」と答えたひとは46%にのぼり、更に9%のひとは「まったくバリバリの健康!」と答えている。ところがチェックアップを行なったことがないひとは75%もおり、55%が医者にかかったことがないと言っているのだから、かれらの言う「健康」という言葉の意味合いは医学的なニュアンスをあまり帯びていないことが推し量られる。
体の具合が悪くなると最初に相談するのは友人や家族であり、この先5年間に罹患する心配のある病気や症状のトップファイブはハイコレステロール・視力減退・卒中・インフルエンザ・関節痛となっている。国民医療オブザーバーのひとりはこのサーベイ報告を読んで、国民の病気予防に対する意識がきわめて低い、とコメントした。「たとえば将来ハイコレステロールになるのが心配だと言うにもかかわらず、大勢がチェックアップすら行なっていない。不安や心配と自分の行動とがまるで関連付けられていない。」と保健以外の領域でも頻繁に出現する民族的性向をかれは指摘している。
もちろん、医者にかかりたくないひとが多いという現象は、優しく親切に患者に説明し治療する医師が少ないために市民の多くが医者を怖がっている実態を反映しているということもあるだろうし、また経済的な面からドゥクンのほうが医者=病院よりはるかに出費が小さいという現実も関連しているにちがいない。後者の問題は医療保険が行き渡るようになれば様変わりしていくだろうと推測されている。
とはいえ、排泄=トイレ問題、手洗い励行問題、ゴミシステム問題その他さまざまな衛生問題に関して保健関係者はその対策を口を酸っぱくして国民に指導奨励しているものの、トイレの汚さをはじめ調理人やウエイトレスの手洗い怠慢や腐敗ゴミとの同居など基本的な衛生対策が国民の日常生活の中になかなか浸透して行かないのは、どうやら上であげた民族的性向と根を同じくしているように思われる。


「讒言なのだろうか?」(2010年12月28日)
2010年11月2日付けコンパス紙への投書"Prikasih Abaikan Pasien hingga Meninggal Dunia"から
拝啓、編集部殿。1952年生まれのわたしの叔父ルスディン・ザカリアは2010年10月26日早朝呼吸困難に陥りました。わたしのいとこが自宅近くの小病院にかれの父親を連れて行きました。医師は心臓麻痺と診断しましたが、その病院は設備が整っていないので、ポンドッラブのプリカシ病院を照会されました。いとこはそのままプリカシ病院を目指しました。着いたのは午前5時ごろで、医師がすぐに手を差し伸べてくれました。医師は血圧と心臓を調べたあと、いとこに会計に行って手続きするように言いました。ところが会計職員は、ICU室で叔父が診療を受けるためには700万ルピアを支払わなければならない、と言ったのです。しかしそんなお金は手元に持ちあわせがありません。
父親をICUで手当してくれるなら700万ルピアの金はすぐに用意するといとこは断言し保証しましたが、会計職員はICUに入るためにはまずお金が必要だと言っていとこの申し出を拒否しました。叔父の容態はますます悪化しています。会計職員は、もっと費用の廉い病院へ連れて行ったらどうかといとこに奨めました。患者は教員恩給として健康保険を利用できるのだから、と。医師もファッマワティ病院を照会しました。
パニック状態のいとこは叔父を連れてタクシーでファッマワティ病院に向かいました。いとこはタクシーの中で自分の父親が動かなくなっているのに気付きました。病院に着くと、すぐに診察が始まりました。ところが医師は首を横に振り、もう助からない、と言ったのです。それは午前6時半ごろのことでした。瞳孔を調べてから、患者はしばらく前に亡くなった、と医師は言いました。その医師は、プリカシ病院には医師も設備もそろっているのに、どうしてあそこで処置を受けなかったのか、と尋ねました。患者がこんな状態なのにどうして再度照会しなければならなかったのか、と。いとこは、そのとき700万ルピアがなかったからだ、と答えました。[ 南ジャカルタ市パンチョラン在住、ロスミヤティ DK ]
2010年11月12日付けコンパス紙に掲載されたプリカシ病院からの回答
拝啓、編集部殿。ロスミヤティさんからの2010年11月2日付けコンパス紙に掲載された投書にに対する回答は次の通りです。ルスディン・ザカリアさんは突発性の胸の痛みと呼吸困難を訴えて当プリカシ病院にお越しになりました。患者の容態の緊急性に応じてICU当直医師はすぐに対応を取りました。当方は患者を拒否してなどおらず、支払いを要求する前に救急措置を行っています。
患者は即刻特別な措置を取る必要があったために、当方はハイケアユニットに収容することを提案し、ひとりで患者を送ってきたご家族にその費用と前納金に関する諸条件を説明しました。民間の病院でこのような手続は普通に行なわれているものです。
しばらくして患者のご家族(ライハン・アヒヤルさん)はハイケアユニットでの治療に費用の面から難色を示され、治療拒否を表明する文書を作られました。ライハンさんは患者が退職教員でアスケス保険証を持っていることを話されたので、ICU当直医師はその保険が使えるよう配慮し、ライハンさんの同意を得てファッマワティ病院を照会したのです。医師は即座に照会状を作り、オートバイで患者を連れてやってきたライハンさんには救急車か自家用車を使ってファッマワティ病院へ行くよう強く奨めました。ライハンさんはタクシーを使うことを決意されたので、病院側はタクシーの手配を手伝いました。このように当病院は患者に最大限の便宜をはかったのです。
患者とそのご家族がプリカシ病院を去った後、いくつかの印刷メディアに一方的な記事が掲載されているのを目にするまで、その患者の成り行きについて当方は知るすべもありませんでした。ご家族の喪失感や悲嘆を思えば、そのような記事の裏側に潜む心情は理解できます。それに関連して、当方は遺族の側とコミュニケーションを取るように努めています。[ プリカシ病院業務担当理事、アウスヴィン・ゲニウスマン ]


「家族にひとり、マラリア患者」(2010年12月31日)
国民の間にマラリアが拡大している。保健省保健システム政策R&Dセンターが行なっている基礎健康リサーチは家族を一単位として国民の健康状況を調査するもので、国民の健康は家庭に依拠している面がきわめて強く、そのため個人に対する統計調査よりも家庭を対象に採った調査のほうが国民保健の実態がよりはっきり見えてくるという考え方に従っている。
2007年調査では家族にマラリア罹患者がひとりもいない家庭が91.8%あったというのに、2010年サーベイでは71.6%に低下した。2010年調査の中で州別番付を見ると、最良はジョクジャの85.5%、最悪は西パプアで22.8%となっている。最も顕著に増加したのは一家庭にマラリア患者ひとりというセグメントで、前回から12%アップした。R&Dセンターの分析によれば、インドネシアのマラリアはハマダラカの繁殖成育にインドネシアの気候風土が適していることが重大な要因となっているとのこと。罹患者の特徴は、農村部に住む5〜14歳の男子で、学歴は小学校卒、在学中あるいは無職、そして家族構成員ひとり当たりの支出金額は小さい。もうひとつ特徴的なことがらとして、病菌を媒介する蚊の繁殖を防ぐための対策を行なっている家庭はそれをしていない家庭に比べて、より高い比率で罹患者がいない家庭のカテゴリーに入っていることが証明されている。蚊の繁殖を防ぎ、殺虫剤を噴霧し、ボーフラ対策を行い、防虫蚊帳を使うなどの予防行動をしない家庭が増えているというのが今年の結論らしい。
今回のリサーチでは、マラリアだけでなく肺結核の蔓延も目に付いた。肺結核罹患者のいない家庭は2007年の96.6%から2010年には90.4%にダウンした。マラリアや肺結核は国民の保健状況を映すインディケータであり、病気予防を励行することでそれらの罹患は減少する。国民の罹病予防が家庭内で十分行なわれていないことがこの調査から明らかになっている。


「病院にも貧困者差別」(2011年1月5日)
国公立私立を問わず、病院の貧困者に対する差別待遇に、貧困者たちは鋭い批判の目を向けている。インドネシアコラプションウオッチがジャボデタベッ地区19病院で実施したシティズンレポートカード2010調査では、Jamkesmas, Jamkesda, Gakin, SKTMなどの貧困者医療補助カードを持つ患者986人にインタビューが行なわれた。そして病院側のかれらに対する対応や処遇に不満を表明したひとは70%に上った。不満の内容は、事務手続き・看護婦・医師・インフラとスプラフラ・医療費前払い・医薬品・病院費用・病院サービスなどとなっている。
患者の多くは初回診療時の最初から貧困者医療補助カードを提示するのを差し控える傾向が強い。苦情が一番多いのは病院の事務手続きで47.3%、次が医師で18.2%となっている。


「3百万が1千4百万に跳ね上がる」(2011年1月31日)
2010年11月19日付けコンパス紙への投書"Pasien Ekonomi Lemah dan Tarif di RS Swasta"から
拝啓、編集部殿。2010年10月16日、わたしの友人ヘリーさんはチブブル代替路をオートバイで通っているとき事故に遭いました。かれは西ジャワ州メリーチルンシヒジャウ病院の救急治療室に運ばれて手当を受けました。
かれはくるぶしの下の肉が削げ落ちており、医師はすぐに縫合はできないが手術をしなければならない、と言いました。家族が費用について尋ねたところ、三等病室に入院すれば300万ルピア前後だと言われ、家族は手術に同意しました。
ところが手術費800万ルピアという請求が家族に出されたのです。前もっての話はまったくありませんでした。最初の心積もりから費用は急激に膨張し、退院するときには14,077,500ルピアという請求金額になっていました。手術費800万ルピア、四日間の三等病室入院費プラス薬品代で600万ルピアという内容でした。
家族は驚き、巨額の請求に難色を示し、病院側に費用軽減を願い出ましたが、病院側は私立病院であることを理由に費用軽減に応じてくれません。結局、家族はあちらこちらに借金してなんとかその請求を支払いましたが、そんな巨額な支払はわれわれ低所得層の者にとってたいへん重い負担なのです。[ ブカシ在住、アリ・ルッマン ]


「医者になるには金がかかる」(2011年2月10日)
2010年12月14日付けコンパス紙への投書"Kuliah Kedokteran Itu Mahal"から
拝啓、編集部殿。2年前にわたしが医学部入学希望学生にインタビューした経験に従えば、かれらの理想は実に高邁なものです。病人を助けたい・差別のない奉仕をしたい・無料で医療サービスを行いたい。ところが残念なことに、そんな理想はかれらが医師になる前に崩れ去ってしまうのです。
かれらの高邁な理想が崩壊する原因は、医学生になるための費用が高すぎることです。昔わたしがインドネシア大学医学部で学んでいたころ、半期の費用は100万ルピアでした。しばらく前にわたしが読んだニュースによれば、医学生を教育するのに半期にひとり当たり5千万ルピア必要とのことでした。もちろん医学の勉強のための補助具の必要性は高まっていますし、昨今行なわれている能力ベースの医学システムは問題学習討議をメインにしており、小グループ指導がたくさん必要とされています。わたしが昔体験した、大講堂で一方通行の講義を聞くというようなものではありません。
いま私立大学医学部のスメスター費用は1千万から2千5百万まで分かれており、入学費用は1億から2.5億ルピアです。そんな巨額の学資は大金持ちだけにしかふさわしいものではありません。奨学金制度があるとはいえ、医学部学習費用の高さはお金がないけれど頭の良い人間が医者になることを妨げています。ましてや専門医になろうなんて、いくつかの医学部では、入るのに数十億ルピアが必要なのはもはや公然の秘密になってるのです。[ タングラン在住、アンドリ医師 ]


「小学生喫煙者が増加」(2011年2月17日)
インドネシアの喫煙者は総人口の34.7%、つまり8千2百万人いる、と保健省の基礎保健調査は報告している。加えて喫煙者の43.3%は15〜19歳の年齢ブラケットに属していることが明らかにされた。喫煙者のプロフィールは、低学歴・非都市居住者・インフォーマル労働者・低経済ステータス者となっている。
2010年調査報告で目を引いたのは、喫煙開始年齢の低下傾向で、1995年調査では、5〜9歳にタバコを吸い始めたひとのブラケットには0.3%しかいなかったものが、2010年には2.2%に増えた。「15〜19歳という年代は精神的に不安定であり、タバコを含めてあれもこれもやってみたいという願望が強まる時期でもある。しかし5〜9歳でタバコを始めるというのはどういうことなのか?そんな子供たちの環境に関する調査が必要だ。」インドネシア内科専門医ユニオン役員のひとりはそうコメントしている。
インドネシアは喫煙者人口が中国・インドに次ぐ世界第三位、そしてタバコ消費量は中国・アメリカ・ロシア・日本に次いで世界第五位にある。インドネシアの喫煙者は75%が家庭内でも喫煙している。2004年から192カ国で行なわれている調査によれば、子供の40%、大人の30%が受動的喫煙者として被害を蒙っているとのこと。喫煙者のタバコ消費については、一日30本以上吸うヘビースモーカーは2.1%、21〜30本は4.7%、11〜20本20%、1〜10本は52.3%となっている。


「貧富の差は子供の体質にも」(2011年3月11日)
肥満児が増加している。2007年調査では12.2%の存在率だった肥満児は2010年調査で14%に増加した。この統計は身長と体重にもとづいて算出されたもの。地方別に肥満児の存在率が高いのは、まずジャカルタがナンバーワン。他にも北スマトラ、東南スラウェシ、バリ、東ジャワ、南スマトラ、ランプン、アチェ、リアウ、ブンクル、西パプア、西ジャワなどで存在率が高い。
小児科医師会会長は児童の肥満について、子供の活動がテレビ鑑賞やコンピュータゲームに占められる傾向が高く、屋外で仲間と共に遊ぶことが減少しているのに加えて、食品選択や食事パターンの変化が肥満児童を生んでいることを指摘している。特に貧富の格差の深化によって貧困層の児童に栄養障害が増加している一方、富裕層の児童は肥満に向かう傾向が高まっており、状況の改善は親やホームドクターに対する教育が鍵になる、とコメントしている。


「ふたたび糞尿譚」(2011年4月1〜4日)
保健省データによると、国民はひとりあたり年間に30リッターの固形排泄物を出している。2010年の総人口が2億3,760万人であるなら、排泄された固形物は71.3億リッターにのぼるわけだ。それの衛生的な処理システムが正しく運用されなければ、国民保健に大きな問題をもたらすことになる。
保健省が行なった2010年基礎保健調査では、全国の家庭のうち15.8%が排便を、田んぼ・畑・川・池など野天で行なっていることが報告されている。自宅内に便所があるのは69.7%で、ほかは自宅内にそのための施設を持たず、コミュニティが公共用に持っているものを使っている。便所のない家庭が多い州は、ゴロンタロ・西スラウェシ・中部スラウェシで、シェアは4割近い。全国的に見ても、村落部では25.5%、都市部は6.7%が自宅に便所を持っていない。
バンドン工科大学建築工学環境学部教授はそれについて、村落部は野天の排便が問題にならないだけの許容能力を持っている、とコメントした。「ただし排泄物の中に伝染病菌などがいると、地域一円に伝染病が容易に広がるという弱点を持っている。生活環境の美観や快適さを損なうという面もある。」基礎保険調査では、自宅に便所のない家庭は一般的に低支出階層、つまり貧困家庭であることが明らかになっている。
先進国のように、便所から下水溝を通って排泄物最終処理場に流れて行くような家庭は全国に2.9%しかなく、59.3%はセプティックタンクに溜められている。残る7.5%は便所から池・川・湖・海岸・田んぼ・庭・土中の穴などに捨てられている。土地居住者の問題は、土中に埋められるセプティックタンクと生活用水を汲む井戸が10メートル以上離れていなければならないという衛生条件をクリヤーできる住宅がほんのわずかしかないことで、その解決策として下水溝を使う集中回収システムが存在するのだが、政府のこの問題に対するインフラ建設の優先度はきわめて低い。保健省基礎保健調査が報告しているデータのいくつかを紹介しておこう。
自宅にトイレのある家庭の率はリアウ州がもっとも高い。
州: 自宅にある/共同/公衆/ない(数字は%)
リアウ: 84.3/6.1/2.4/7.3
リアウ島嶼: 80.4/7.6/8.0/4.0
ランプン: 79.0/8.2/1.8/11.0
ジャカルタ: 77.0/15.8/6.9/0.3
ジョクジャ: 75.5/17.9/2.1/4.5
セプティックタンクの普及率はジャカルタが最高。
州: 下水管に流れる/セプティックタンク/池・水田/川湖/土中の穴
ジャカルタ: 2.5/90.6/0.5/4.0/0.7
ジョクジャ: 6.8/76.1/0.8/5.5/9.9
リアウ島嶼: 0.9/74.1/0.3/13.9/2.3
北マルク: 1.0/73.2/0.2/10.7/2.7
バリ: 1.9/73.1/0.3/6.0/9.8
糞尿の最終処理として川に流されるというのは、川に入ってマンディしながらついでに用を足すということだけに限らない。セプティックタンクは収容能力に限度があり、一杯になれば汲み出さなければならない。しかし家庭の中には別の穴を掘ってセプティックタンクを埋め、便所につながるパイプをつけかえて、元のタンクは糞尿満タンのまま庭の地下に残すというところもある。これだと庭の下はそのうち糞尿だらけになり、新しいタンクを埋める場所がなくなるのだが、そのあとはどうするのだろうか?もし、そうなれば引っ越すだけという方針なら、そんな家を買ったひとはたいへんなお買い物となるわけだ。
だがたいていの家庭は満タンになると汲み取りトラックを呼んできて中味を吸い取ってもらう。だが汲み取りトラック業者にも悪い奴がいて、半分程度しか汲み取らずに報酬をもらって帰って行くから、汲み取り後の状況確認は必要だろう。
さて汲み取りトラック業者は本来なら各地元行政府が用意している最終処理場に持って行くことが義務付けられているにもかかわらず、別の手近な場所に不法投棄する不良業者があとを絶たない。川や湖などはその良いターゲットだ。
インドネシア第二の都市スラバヤでは、不法か合法かよくわからないが、毎日5トンの糞尿がスラバヤ川に流されているという情報が公表された。スラバヤ川には川沿いにある368工場が毎日75.5トンの工場廃水を流し込んでいるという情報まで伝わっては、スラバヤ市民の腹の底が燃え上がるのも当然。何しろ、スラバヤ市水道会社の原水採取はスラバヤ川が96%を占めているのだから。生活環境保護NGOが手を携えて立ち上がり、州庁や市庁にデモを繰り返しているが、行政側の反応はいまひとつというところ。


「赤ちゃんには母乳」(2011年4月5日)
インドネシアの母親たちは母乳の赤ちゃんへの効用について十分な理解を持っているようだ。生後半年間赤ちゃんに母乳を与えれば、病原菌に対する抵抗力や知的能力が向上することをたいていの母親は知っており、赤ちゃん向け粉ミルクを飲ませて母乳は与えない母親は少数派になっていることがコンパス紙R&Dの調査で判明した。
この調査は2011年3月16〜18日に全国主要都市の住民369人から集めたもの。
質問) 生後6ヶ月間、赤ちゃんに何を与えています/ましたか?
A.現在赤児がいる母親: 母乳だけ41.1%、 粉ミルクだけ14.9%、 母乳と粉ミルク29.8%、 粉ミルクと補助飲食物8.9%、 母乳と粉ミルクと補助飲食物4.8%、 母乳も粉ミルクも与えていない0.5%
B.赤児はおらず、10歳未満の子供がいる母親: 母乳だけ47.4%、 粉ミルクだけ8.4%、 母乳と粉ミルク20.0%、 粉ミルクと補助飲食物15.8%、 母乳と粉ミルクと補助飲食物2.1%、 母乳も粉ミルクも与えていない6.3%
C.赤児はおらず、10歳以上の子供がいる母親: 母乳だけ43.4%、 粉ミルクだけ7.5%、 母乳と粉ミルク19.8%、 粉ミルクと補助飲食物17.0%、 母乳と粉ミルクと補助飲食物0.9%、 母乳も粉ミルクも与えていない6.7%


「外国人漁船乗組員がエイズ蔓延の元凶」(2011年4月21日)
インドネシア船籍を取得し、領海内で操業しているタイ・ビルマ・カンボジャなどの漁船がいる。インドネシア船籍船に乗り組むのはインドネシア国籍海員が原則になっているものの、タイ・ビルマ・カンボジャなどの船にはやはり自国の海員が乗り組む傾向にあるのも自然の理であり、加えてかれら外国人海員はインドネシア人海員より低い賃金で働くから、インドネシア人海員の就労機会が狭められているのが実態だ。
そのため、外国人海員への就労許可を減らすように、とインドネシア海員ユニオン総裁が政府に苦情した。インドネシア船籍を取った外国船のみならずインドネシア資本のインドネシア船籍船であってすら、それら低賃金で働く外国人乗組員がインドネシア人の職場を奪っており、今や国内操業している漁船乗組員の7割が外国人で占められている、と総裁は言う。
「外国人が乗り組んでいるインドネシア船籍漁船はイリーガルフィッシングを行い、漁獲を沖合いで外国船に売り渡すような行為を平気で行なっている。漁船はたいてい5〜10人が乗り組んでいるのだが、インドネシア船に乗り組んでいる外国人海員の詳しいデータがないため確実な数字はわからない。かれらは漁労活動の中で国際規定に違反する行為を行なっている。保護されている魚種もお構いなしであり、また漁獲量の正確な報告もしない。そのような違反行為は沖合いで外国漁船に捕獲魚を売り渡しているから、港の係官には実態がよくわからない。違反行為が多発しているのはマルクとパプアの海域だ。」
海員ユニオンは2012年中に排他的経済水域で操業するインドネシア漁船から外国人乗組員を一掃するよう政府に求めている。その要求は漁労とは関係のない問題にも関わるもので、国民福祉の観点から実現させなければならないものだとユニオンは主張している。それは何かというと、外国人漁船乗組員は頻繁にインドネシア東部地方の海岸町に上陸し、地元女性と性的交渉を持つ。インドネシア東部地方でHIV/エイズ罹患者が爆発的な勢いで増加し、全国的な問題と見られはじめている根底にそれら外国人漁船乗組員がおり、かれらがエイズを蔓延させているのだ、との主張がユニオンから出されている。


「トゥルンガグンのエイズ妊婦」(2011年4月29日)
東ジャワ州トゥルンガグン(Tulungagung)。ブランタス(Brantas)渓谷に沿って100万の人口を擁するこの町はかつてクレテッ煙草の生産地として名を知られた。しかし1980年代にクレテッ煙草産業が衰退してから90年代に衣料品産業が勃興したものの、中国産衣料品の波にもまれて短期間のうちに衰微した。今トゥルンガグンは女性海外出稼ぎ者の産地と化している。ひと月およそ1千人の女性が故郷を離れて外国に向かう。ただし合法的出稼ぎ者はその三分の一にすぎない。
出稼ぎを終えて帰国したかの女たちの中に、HIV/エイズを持ち帰ってくる者がある。トゥルンガグンでエイズは深く静かに潜行している。若くして出稼ぎに出たかの女たちが帰国すると、必ず結婚を奨められる。家庭を持ち子供を産んで次世代を作り出すのがムスリマとしての一生の務めだからだ。その中にエイズ罹患者がいたとしても、かの女はその事実を深く闇の中に秘めたまま新妻となる。しかし懐妊したとき、その事実はかの女ひとりのものではなくなってしまうのである。
病院や出産クリニックでその事実が判明するが、病院側は夫や家族にそのことを知らさないのが普通だ。妊婦を悲惨な状況に追い込んで出産を危険なものにするのが医療関係者の本意ではないためだ。しかしエイズ罹患者に医師が帝王切開方式の出産を勧め、自然分娩を避けるよう主張するのは、新生児が自然出産時にエイズに罹患するのを防止するためであり、生まれた赤児に母乳を与えることも禁止される。それが夫や家族にかの女の秘密を明かしてしまうことになる。
26歳の女性はトゥルンガグンのドクトルイスカッ地方総合病院で2011年4月はじめに3.4キロの男児を出産した。ところが出産後、かの女を続けざまに難問が襲った。授乳を病院側が禁止したこと、そして帝王切開や授乳禁止の原因が何であるのかを夫が知ったことである。夫は態度を硬化してその妻を捨てようとした。トゥルンガグンでエイズ罹患女性の保護に当たっている民間団体が出産前からかの女に対する支援を開始しており、コーディネータが夫を説得した。この夫婦に破局は訪れていないものの、先行きどうなるのかはまだ予断を許さない。
その26歳の女性は海外出稼ぎ者でなく、中部ジャワ州トゥマングン(Temanggung)への出稼ぎ経験を持っていた。トゥマングンなど地方都市のカフェに働きに出る女性はトゥルンガグンに4百人ほどいる。かの女たちはついつい客が約束する金の魅力につられて客に身を委ねるのだ。トゥルンガグンの出稼ぎ女性たちがエイズを持ち帰る道はそのようにいくつもあり、罹患女性保護を行なっているボランティア組織「スルニ」の記録では、罹患女性の出産は13件にのぼっている。


「インドネシア人看護婦は本当にリーガルなのか?」(2011年5月2日)
クエートの病院や医療機関に契約派遣されているインドネシア人看護婦の職業資格にクエート政府が疑念を抱き、外交ルートを通じてインドネシア政府に検証を求めてきたが、保健省・労働省・外務省のコーディネーションがお粗末だったためにクエート政府は態度を硬化し、就労中のインドネシア人看護婦54人に対しては勤務先の医療機関から暫定的に就労禁止措置が取られた。クエート政府はインドネシア人看護婦受入の窓口を閉じ、代わりにインドやフィリピンからの受入を増やしている。
国会は政府の対応のまずさを強く批判し、過去から類似の事件は何度も起こっており、それがまた再発したことに対して保健省は問題の即時解決をはかるために54人の資格認定にすぐ裏書をし、また国内の資格認定制度を整備改善するように求めた。インドネシア人看護婦が持っている看護師資格認定証明は国際的に公認されたものでなく、クエート側はその点を問題にしてかの女たちを無資格者と見なしている。
労働省海外出稼ぎ者配備保護国家庁長官は今回の問題について、政府は早急に保健省と国民教育省からクエートに要員を派遣して看護師資格認定に関する国内事情を説明させる意向だ、と述べている。
看護師公的養成機関は国民教育省の管轄下にあり、養成機関修了証書を持って看護婦という職業に就労した者は保健省が管轄しているため、その二人三脚が必須ということのようだ。


「粉乳志向はオランダ植民地時代の遺物」(2011年5月4日)
インドネシアのミルク消費は偏ったパターンに陥っており、粉ミルク消費が液体ミルクを圧倒的に凌駕している、とインドネシア栄養専門家ユニオンメンバーが表明した。
2010年の国民ひとり当たりミルク消費量は11.84リッターで、東南アジア諸国の中で最低の位置を占めている。マレーシアは50.26リッター、シンガポールは47.35リッター、インドは45.43リッターなどと比較すれば、インドネシア国民のミルク消費はかれらの四分の一以下でしかないことがわかる。ベトナムは14.05リッター、フィリピンは12.35リッターで、まだインドネシアより上だ。インドネシア人のミルク消費量はひとり一日あたりに換算すれば32.44ミリリッターで、毎日大さじ2杯分をなめているという雰囲気だ。
2008年のカナデアンサーベイデータによれば、インドネシアにおけるミルク消費の中で粉乳は82.1%を占め、液体ミルクはわずか17.9%しかないとされている。オランダは液体ミルクのシェア100%、アメリカ99.7%、インド97.8%というように、一般的にたいていの国では液体ミルクのシェアが圧倒的に大きい。インドネシアがそうなっていないのはオランダ植民地時代にオランダ本国が取った政策のあとをいまだに引きずっているからだ、とユニオンメンバーは説明する。
「当時、オランダ本国の液体ミルク生産が過剰になったため粉ミルク需要が限りなくゼロに近付き、過剰になった粉ミルク在庫を植民地で捌かせる政策が取られた。それがインドネシアでいまだに尾をひいている。
インドネシア人にもコンデンスミルク(練乳)を水で溶いて飲む習慣がある。練乳というのは当初、パン・マルタバッ(martabak)・プリンなどに付ける付加食品だった。2007年のユーロモニター報告によれば、インドネシアのミルク諸産品は13億キロリッターで、そのうち60%が粉末状、35%が練乳、液体ミルクは5%となっている。」
ボゴール農大食品科学技術学部教授は、液体ミルクに含有されている栄養素の吸収が人体にもっとも効果的だ、と語る。「粉乳は180℃で2時間過熱されるために天然栄養素が破壊されやすい。その対策として工業界は人工ミネラルやビタミンを添加させる。しかしそれらが完全な形で人体に吸収されるかどうかははっきりしない。それに関する完全な調査研究はまだ報告されていない。粉ミルクが長期間空気に触れると茶色に変色するのは、含まれているたんぱく質と炭水化物が互いに反応するためで、それが体内吸収能力を弱めることになる。」
フレッシュミルクは1歳の幼児から老齢者まで全年齢層が消費できる。毎日コップ2〜3杯のフレッシュミルクを飲むことは、人体に必要な栄養素をバランスよく摂取するのに有効だ。特に子供には味覚添加や甘くしたミルクよりもフレッシュミルクを与えるほうがよい。子供の糖分過剰摂取や肥満を防ぐためにそれは必要だ、と栄養専門家は警告している。


「肥満児が増加」(2011年6月5日)
将来インドネシア人はずんぐりむっくりの体型になるだろう、とインドネシア栄養専門家ユニオンが指摘した。バランスの取れていない食物摂取パターンは子供たちの体型をますます理想のスタイルから遠ざけており、この問題を正しい方向に修正していかなければ将来インドネシアは短躯肥満の人間が満ち溢れることになる、というのがその主旨。「背が低いというのは経済状態に起因する。一方、肥っているというのは本人の食事パターンに由来するものだ。」栄養専門家ユニオン会長はそう述べている。
食糧自給庁2009年データによれば、国民の動物性食物摂取は理想量の6割でしかない。その影響は小柄な体躯という結果をもたらすことになる。一方、肥満は油脂分と穀物の過剰摂取によってもたらされる。2010年保健省R&D庁調査結果から、5歳児の理想身長110cmに対してインドネシアの子供は男児で6.7cm、女児で7.3cm低いことが判明している。動物性食物の摂取不足は他の食物で代替できない児童の身体発育に必要な栄養素が不足することを意味しており、肉類・魚類・鶏卵などの摂取を増やすことの重要性をその調査結果は訴えている。
2010年基礎保健調査によれば、5歳未満児の肥満有病率は全国平均14%で、富裕家庭で14.9%、貧困家庭で12.4%となっている。全国一はジャカルタの19.6%だ。2007年調査では全国平均が12.2%であり、国民の間に肥満が増加していることがわかる。
インドネシア大学医学部栄養学科教官は、腰周りの脂肪蓄積はこれまで大人の専門だったが、今では子供の間にもそれが広がっている、と言う。ミルクと甘いものの過剰摂取という誤った食パターンに加えて、子供の生活パターンも終日ほとんど狭い家の中にいて、テレビを見ることを主体にあまり身体を動かさない暮らしがメインになっている。おまけによく肥っている子供は健康で愉快な子供だという誤った昔からの観念が大人の間に常識化していることも、子供の肥満傾向に手を貸している。肥満が子供に対してさまざまな成人病へのアクセスを押し進める加速要因であるという危機感を、周囲のおとなたちはもっと強く認識しなければならないことを栄養関係者たちは主張している。


「ゴミのポイ捨て取締りがいよいよ始まる」(2011年6月18日)
インドネシアの社会生活が混沌と支離滅裂の態に見えることから法規がきちんとしていないからだと考えるひとを時折お見かけするが、そのロジックは異なる文化の落とし子のもので、インドネシアにはフィットしない。インドネシアには法律規則がありあまるほど作られており、屋上屋を重ね、相互矛盾すら内包しており、法規を遵守して行動しようとすると手足ががんじがらめにされて身動きが取れなくなることも珍しくない。国民が行えないことを義務付け、あるいは国民が生きていくために必然的に行うことを法規で禁止するような国のありかたは国民総犯罪者化の基盤をなすものであり、これは封建制下の権力支配システムが持っていた精神構造で、もちろん植民地政庁もその轍を踏んでいるのだが、インドネシアではいまだにそんな植民地構造=封建遺制の継続している姿を目にする機会が多い。
インドネシア人はどこにでもゴミをポイ捨てする。台所の生ゴミや大型のゴミは空き地に捨てたり川に流す。タバコや菓子の空き箱・ビニール袋などは他人の家の門前であろうとお構いなしだ。法規が作られていないからかれらがそうしているのだと思ったら大間違いで、それらの行為は禁止され罰則まで付けられているのが実態であり、それでもかれらがゴミをポイ捨てするのは、決まりを自主的に守る習慣を持っていないこと、そして法執行がほとんどなされていないこと、のふたつの事情によるとわたしは見ている。
わたしの個人的な体験から言えば、「決まりごとだから守れ」とインドネシア人に迫ってもせいぜい面従腹背されるのがオチで、中には面と向かって「決まりは破られるために存在するのだ」と痛快に反論してくる者もいる。インドネシア人が「決まりごとだから守る」意志を持つのは慣習と宗教に由来することがらだけではないだろうか。
政府が定める法規は、だから、従うのに値しないものであり、会社の決まりは自分の収入に直結しているから損しないために守っているに過ぎないのではあるまいか。まあ、それはいい。
川やドブにゴミを捨てる行為は環境運営に関する2008年法律第18号、首都ジャカルタに限って言えば都内環境衛生に関する1988年都条例第5号や公共秩序に関する2007年都条例第8号で禁止されており、違反者には罰則として10日から60日の禁錮と10万ルピアから2千万ルピアまでの罰金という刑事罰が科されることが定められている。そして都庁地方生活環境運営庁が2011年5月半ばにその取締りを開始すると公表した。それはつまり、法規は存在しているものの定められた法規を実行しようとする者が都行政側にも都民の側にもいなかったということを意味している。これがインドネシアの法運営・法執行の実態なのである。このような体質のために、法規の存在とは無関係に取り締まりという人為的なものにだけ反応し、取り締まりキャンペーンが幕を閉じるとまた違反行為だらけになるという現象は枚挙にいとまがないくらいだ。
これが国民総犯罪者化社会の姿であり、そのような社会にはポリスの必要性が高くなる。なにしろポリスがいなければ為政者が望むことを国民が行わないのだから、高いコストをかけて大勢のポリスを雇うことになる。必然的に社会コストは高いものになっていき、国民はその高いコストを当たり前のものと思い、それをコストダウンする考えは持たずに違反行為・反法規行為(つまり犯罪行為)を励行する。
さて。都庁地方生活環境運営庁が取り締まり実施を決意したのはチリウン川清浄化プロジェクトの一環としてであり、2012年にはチリウン川をゴミのない川にするという目標を掲げてのもの。いまチリウン川は全流域で水質汚染判定が下されており、45観測ポイントのうち水質良好個所はゼロ、軽度汚染9%、中度汚染9%、重度汚染83%という内訳になっている。


「治療より予防、消費者の要求に変化」(2011年6月21日)
デロイテが東南アジアで実施した調査研究によれば、華やかな経済成長・都市化の進展・平均年齢の上昇といった諸要因に伴われて、各国で保健サービスの層がますます厚くなっており、また医療サービスからヘルスケアサービスへの移行も顕著になっていて、一国の経済発展と保健サービス需要との間には顕著な関係が見られるとのこと。
ライフスタイルの変化とその新たなライフスタイルが引き起こす慢性病が医療サービスよりもヘルスケアの要求を高めており、ひとびとは医療より予防を重視する方向に進んでいる。それと同時に消費者はより幅広くより豊かな情報へのアクセスの欲求を深めており、情報の広がりも一層強くなっている。
国民平均年齢の上昇も保健サービス制度と保健コストのアップに影響を与えている。驚いたことに、アジアは65歳超人口比率が世界最大で、2000年は50%、2030年には61%になるだろうと予測されている。
アセアン経済共同体コンセプト下に2015年にサービスセクターの域内自由化がスタートする。それに備えて私立病院は新たな競争相手との競合に敗退しないために、ポートフォリオの拡大を検討するべきであるとデロイテは提唱している。
医療観光は今後もますます大きい伸びを示すことが期待されている。東南アジアでは外科手術費用が西欧諸国に比べてたいへん廉価だという要因がそれをバックアップしている。2007年6月時点のデータだが、手術費用はアメリカで13万米ドルであるのに対し、シンガポールでは18,500米ドル、タイではなんと11,000米ドルだ。2009年にタイはメキシコに次ぐ医療観光国になったと考えられている。シンガポールは第4位。
保健サービス投資における民間のシェアは東南アジア諸国で次のようになっている。
ミャンマー 88.3%
ラオス 81.1%
カンボジャ 71.0
シンガポール 67.4
フィリピン 65.0
ベトナム 60.7
マレーシア 55.6
インドネシア 45.5
タイ 26.8
ブルネイ 18.5
総合 63.1%
数字の大きい国は民間保険事業投資に大きなチャンスを秘めている国だ。デロイテの調査は、東南アジアの消費者が最先端の知識と多くのオプションを持っており、より小さい費用とよりすぐれたサービスを彼らに与える必要性がますます高まっていることを指摘している。そのためにはハイテクを用いプロセスを簡素化した保健サービスの実現が不可欠となる。デロイテはこの業界の将来についてそう指摘している。


「中国に輸出されている砂がウラニウムを含有」(2011年6月24日)
西ジャワ州タシッマラヤ(Tasikmalaya)県チパトジャ(Cipatujah)郡で採掘されている砂鉄採取用の砂は中部ジャワ州チラチャップ(Cilacap)に送られてから、中国向けに輸出されている。その砂から高濃度の放射能が検出された。
国家原子力庁バンドン支所がチパトジャで採取された砂50グラムのサンプルを使って去る4月に行ったX線回折で、ウラニウムが92.19ppm、トリウムが911.05KeV含まれていることが明らかになった。その含有放射能は人体に悪影響を及ぼすレベルであることから、タシッマラヤ県庁はこの問題に対する対策を政府に求めた。
砂の採取許可はタシッマラヤ県工業エネルギー局が9民間企業に与えており、県庁はその9社の操業と県民の保健対策の両立をはかるための方針を中央政府に求めている。懸念されているのは、人家から離れた場所にある採掘場からタシッマラヤの町を抜け、人家と交通往来の繁華な街道を通ってチラチャップの貯砂場までトラックが運搬している砂が、その道程でこぼれたり、また風に飛ばされて住民居住地帯一円にばら撒かれることで、県庁は通常9〜12トンを積載して走っている砂運搬トラックに対し、積載量7トンを上限とすることを定めてその取り締まりを開始した。この制限規則と取り締まりは規定重量を超えて貨物を運搬するのが常識と化しているインドネシアの貨物運送トラックがその規定重量を基準に作られている道路の破損を招いていることへの対策として実施されており、放射能汚染に関しては触れられていない。
また採砂活動は許可を得た業者だけが行っているのでなく、住民もそこに紛れ込んで採取し業者に売り渡すという無許可活動を行っており、県庁は県民に対して非合法採砂活動をすぐにやめるよう呼びかける回状を行政を通じて出しているものの、それに従った県民はまだいないようだ。県庁はまた、砂の採取許可を得ている9社の許可期限がくれば、延長はしないとの方針を立てている。
森林公社プルフタニ西ジャワバンテン第三ユニット森林資源保護局長は、チパトジャ産の砂が含んでいるウラニウムは核兵器や核燃料に比較的容易に加工しうる、と述べている。150ppmがそれらの材料として使える下限であるとのこと。


「日本産イカの密輸入が摘発される」(2011年7月2日)
日本の原発事故による海水汚染のため、各国は日本からの農水産物輸入に制限を加えており、インドネシアも海洋漁業相が日本からインドネシア領土に入る水産物と養殖設備に関する大臣規則第PER.12/MEN/2011号を制定して放射能汚染安全証明書を輸入通関の際に添付することを義務付けた。
ところがその規則を無視して日本から密輸入されたイカがマルクのアンボン港で発見された。コンテナ内で他の貨物の間に隠されていたイカは1.8トン5千万ルピア相当で、放射能安全証明書も検疫証明書も添付されておらず、海洋漁業省水産物加工販売局長は全部廃棄処分にする、と語っている。そのコンテナの輸送に携わった運送業者は、どうしてイカがコンテナの中に入っているのかとの質問に対して養殖えびのえさにするためだと答えたが、えびがそんな大きなイカを食べるはずがない、と一笑にふされたとのこと。


「肝炎罹患者に朗報」(2011年7月7日)
B型C型肝炎罹患者が全国にどのくらいいるのか正確な数字はわからないが、罹患者と認定されているのはせいぜい10%くらいだろう。だがその罹患者と認定された者のうち20%しか治療を受ける経済力がなく、80%は正しい治療を受けないまま病気を放置している、とインドネシア肝臓研究者会会長が発言した。「罹患したことが判明すれば次に行うことは治療だ。ところが一回の治療費はおよそ200万ルピアかかるし、通院を40回以上重ねなければならない。治療しないまま放置すれば肝臓癌に進んで生命にかかわることになる。」インドネシアで肝臓癌のために死んでいるひとは年間に1万4千人にのぼっている。
保健省直接伝染病抑止局長は、肝炎対策が準備されつつある、と公表した。早期発見のための設備と廉価な肝炎セラピーの開発を保健省が進めており、製薬会社にも廉価な治療薬の製造と発売を行うよう指導を与えている、と局長は述べている。ジャカルタで2012年にそのパイロットプロジェクトが開始され、10万人の罹患者に恩恵が施されることがプロジェクトの目標に据えられているとのこと。


「豊かさと健康というライフスタイルの相克」(2011年7月9日)
中進国後進国で国民の所得が向上するのにつれて国民のビヘイビアに変化が生じ、非伝染性慢性病患者が増加して死亡率を高めている、と Partnership to Fight Chronic Disease専務理事のケネス・ソープ医学博士が発言した。2011年6月21日にジャカルタで開かれたセミナーで博士は、国民所得の上昇によって国民は従来から摂取していた繊維質の食物よりも肉・卵・ミルクそしてファーストフードの摂取に急激に傾き、健康な日常生活という概念の理解がまだ薄いことから癌・慢性呼吸器系疾患・心臓病・糖尿病など非伝染性慢性病罹患者を増やしていることを指摘した。2008年にアセアン域内では、270万人がそれら四種の慢性病のために死亡している。喫煙・アルコール摂取・低繊維高脂肪食品の摂取・あまり身体を動かしたがらない、といった日常の生活要因が慢性病にかかりやすい体質をはぐくみ、肥満・高血圧・高血糖・高コレステロールなどの症状を現出させているのだ、と博士は解説する。
その結果は、この先10年後に非伝染性慢性病による死亡が21%上昇し、また国家経済に大きな損失をもたらすことになる。キャメロン・インスティテュートの試算によれば、インドネシアは非伝染性慢性病のために年間372億ドルの損失を蒙っているとのこと。患者への医療コストに加えて国民生産性に低下が起こるためだ。
ソープ博士のその講義のあと心臓動脈専門医師会会長は、アセアン諸国はまだ有病率の高い感染病の撲滅に力を注いでいるときに、非伝染性慢性病が国民の健康をおびやかす新たな脅威として出現したのは各国の保健行政にとってダブルパンチだ、とコメントを語っている。


「デンパサルの7病院でパイロットプロジェクト」(2011年7月26日)
全国の病院で水銀汚染のリスクがきわめて高いことをバリの環境衛生NGO「バリフォーカス」が指摘した。今現在インドネシアのほとんどの病院で使われている体温計や血圧計は水銀柱を使った昔からのもの。これは測定結果が比較的正確であること、そして入手しやすい価格であることなどの理由で使用が続けられているのだが、それらの破損や古くなったものに対する処置が適切さを欠いているため、病院環境内での水銀汚染リスクが高く、医療従事者や患者の健康への悪影響が懸念されている。
特に汚染リスクの高いのは母親と子供の医療を取り扱う部門ならびに歯科部門で、母親と子供の医療の場では体温計が頻繁に用いられるため短期間で壊れる傾向が高く、また歯の虫歯治療に使われるアマルガムも水銀汚染の原因となる。バリッパパンで行われた病院での調査では、水銀汚染が立米あたり1千7百ナノグラム測定され、アメリカの基準値1千ナノグラムや日本の基準値4百ナノグラムを大幅に超えていたことが実証されている。
バリフォーカスとデンパサル市は市内の30ヶ所の病院のうち7病院を誘って2011年6月半ばから水銀汚染を減らすパイロットプロジェクトを開始した。しかし水銀から無縁のデジタル式器具は価格が高いために病院側はなかなか総入れ替えに進めないのが実情だ。水銀式体温計だと一個2万ルピアで購入できるが、デジタル式は一個5万ルピアかかる。水銀式血圧計は一個45万ルピアかかるが、デジタル式だと170万ルピアもする。
デンパサル市はそれら7病院に対し、2012年に予算を取って水銀のない病院にするよう期待をかけている。


「食用油をビタミン強化」(2011年8月16日)
中国・インド・パキスタン・バングラデシュそしてインドネシアでは年齢標準より体躯の小さい子供たちが際立って多い。その原因は栄養不良特に鉄分の不足にあり、インドネシアでは身長が標準値より小さい幼児が38.6%いる。栄養不良は子供の知能発育を弱める結果、高等教育を受ける能力がはぐくまれず、国民の生産性は低いものになる。
その体格の矮小化と反対に、中国・ブラジル・インド・インドネシアは従来の細身の体型から肥満体型へと移行しつつあり、肥満による後天的疾病患者が増加傾向にある。ひとりあたり年間平均所得が2千5百米ドルを超えると、食生活を含むライフスタイルに変化が起こり、特にこれまで貧しい暮らしをしていた階層で豊かさとモダンさをエンジョイしようとする衝動が激しくなって、美味しく・甘く・脂肪の多い飲食品に殺到するようになる。その上の所得階層は概して衝動がそこまで強くなく、健康な生活に関する知識を比較的持っていることから、肥満の増加はカーブがゆるやかだ。
そんな状況を踏まえて政府は市場で販売されるすべての食用油にビタミンA強化を行うことを決めた。この食用油は国内で大量に生産されるパームからしぼられた油を主材料にしており、国民の調理方法もその油を使って食材を揚げたり炒めたりするものが主流になっている。全国にある97の食用油生産者のうちの二社は既に強化済み食用油を販売しているが、容器入り商品のみが対象にされており、パサル等で販売されているバラ売り商品は対象外になっていた。
インドネシア国民は慢性的なビタミンA欠乏問題に直面しており、政府は国民の間でもっとも需要の大きい食用油をとりあげてビタミンAの強化をはかるという方針を決めた。2012年には国内の全食用油生産者が製品に20IUを超えるビタミンAの強化を行わなければならなくなる。ビタミンA強化食用油の市場価格はそのためにキログラム当たり50ルピア上昇することが見込まれている。


「禁煙条例違反」(2011年8月22・23日)
都庁に追随してボゴール市も禁煙条例を制定した。喫煙が禁止されたのは公共施設で、ショッピングセンター・レストラン・公共運送機関・病院・学校・行政機関など。限界線は各施設の雨水が落ちるラインまで。ただし病院と学校は敷地内すべてとなっている。ここでもまた社会告知の問題が出てくるのだが、口承文化を基盤に据えているインドネシアでの一般的な情報伝達は口コミであり、役所が規則を書いた書類を掲示板に貼り出しても、それを読んで自主的に日々の行動に反映させようとする習慣が一般民衆にはない。工場の中でも同じことは起こっており、紙に書いて貼り出すのと平行して職制を通じて従業員を集め、職長に命じてかれらに言って聞かせなければ通達を行き渡らせることはできないだろう。もちろん、自分の収入に直接関わってくることがらに対しては、かれらはきわめてセンシティブであり、関心のウエイトは大きく違っているのだが。
だから法規が出されても、それに関係するひとびとの大半がそれを知らずにいて、法執行がなされたときにかならずかれらの間から社会告知(sosialisasi)が不十分だという苦情が提出される。一方法規を決めた側は、業界団体上層部や関係機関のトップから中堅クラスを集めて決めたことがらの説明会は何度も開いていると反論し、その間のギャップが埋まることはない。
だからボゴール市バラナンシアン(Baranangsiang)バスターミナルでデポッ向けバスの運転席に座って客が乗るのを待ちながら煙草をくゆらせていたアンディ34歳が禁煙条例を知らなかったのも無理はない。そこにボゴール市陸運交通局検問チーム職員が近付いてきたというのに、アンディはのんびりと煙草をふかしていた。職員はバスに乗り込むとアンディに近付き、かれの口から煙草をもぎ取って火を消した。「これは証拠品だ。さあKTP(住民証明書)を出してもらおうか。」
アンディが仕方なく渡したKTPを受け取った職員は、アンディを近くの建物内に連行した。そこには女性判事がおり、臨時の軽犯罪法廷になっていた。罪状を説明した判事は罰金2万5千ルピアの判決をくだす。
「今日は朝から働いてやっと20万ルピア稼いだところだ。ストランの25万ルピアにまだ足りないし、軽油代の17万ルピアもまだ用意できてない。今払えるのはこれだけだよ。なあ判事さん、値引きしてくれや。」アンディはそう言って1万ルピア札1枚を出す。
値引きなんかしたら癖になると思った判事は、2万5千ルピアを繰り返す。アンディは仕方なく法廷を出て仲間を回り、借金して2万5千ルピアを作ってきた。「こうしなきゃKTPは戻ってこないもんな。」
バラナンシアンとチアウィを往復しているバス運転手のドディ27歳も法廷に連行された。ドディの罰金は3万ルピア。「ああ、もうこりごりだぜ。今後はもっと注意深くやろう。役人がいたら煙草を吸わないようにしなきゃ。」
この日の検問では16人が網にかかった。市保健局からこの日の検問に参加したオペレーションコーディネータは、喫煙者のタバコを吸わない者に対する保護の配慮がまったく見られない、とコメントした。「これは市条例の執行であると同時に市民を煙害から保護する活動でもあるのです。喫煙者は喫煙を禁止されているわけだはありませんが、喫煙する場合には適切な場所で喫煙するようにしましょう。」
2010年8月から2011年5月までに行われた電車内での喫煙者検問で166人が軽犯罪の判決を受けた。条例では5万〜10万ルピアの罰金と定められているが、判事はまだそこまでの罰を与えていないそうだ。ボゴール市保健局とNGOのノータバココミュニティが2011年2月から3月にかけて行ったサーベイによれば、レストランでの喫煙者は42.5%、行楽地での喫煙者は50%、役所での喫煙者は29%、ショッピングセンター32.4%、在来パサルはなんと84%もいたと報告されている。


「医師登録手続きは停滞」(2011年8月29日)
医療活動に関する2004年法律第29号で定められた医師・歯科医師登録制度を進めているインドネシア医療評議会を支援しているインドネシア医師同盟が、全国で医療活動を行っている同盟会員医師の再登録が遅々としてはかどっていないことを明らかにした。この登録制度では、医療評議会が資格を審査して登録証を与えることで医師の資格とクオリティが認定されるというコンセプトになっており、保健省はその登録証を根拠にして医師に医療活動許可を与える。開業医は取得した登録証と医療活動許可証を開業場所で掲示しなければならない。そして患者はそれらの証書があることを確認した上で治療を受けること、というのが法律に定められている医療行政管理の内容。
ところが2011年7月11日現在、全国にいる医師・歯科医師の数は63,896人だというのに、再登録を済ませた会員はわずか10,541人しかいない。全国32州365県市支部は医師同盟と歯科医師ユニオン会員に対して再登録の呼びかけや手続きの受付を行っているが、情報が末端までなかなか浸透しないこと、手続きのために支部のある場所まで来るのが困難であること、支部がこの業務のために専従者を置く余裕がないこと、などの要因で再登録はなかなか進展していない。
その実態を踏まえて保健大臣は、医療評議会が与えた登録証に基づいて医療活動許可を出すことになっているものの、医療活動許可延長申請は登録証なしでも交付するよう便宜をはかる意向であると表明している。


「病院向けモダン医療機器市場が急騰」(2011年9月7日)
国内に病院は1,320軒あり、その半分はジャワ島内にある。病院ベッド数は国民1,047人にひとつの割合で、理想とされている500人にひとつからはまだ遠い。そのために病院建設は盛んに行われており、その結果医療機器需要は爆発的に高まっている。
フィリップスインドネシア社ヘルスケア製品担当GMは過去三年間で売り上げが三倍増になったと語る。中でもX線装置、超音波機器、電磁波機器の伸びは著しいものがある。この売り上げ増はジャボデタベッ地区の私立病院がマジョリティを占めているとのこと。病院新設に加えて在来型病院も時代の流れから電子式医療機器購入の必要に迫られており、国民所得の上昇にともなって医療設備モダン化に進む病院も数多いようだ。


「オステオポロシスが女性に拡大」(2011年10月13日)
インドネシア人女性たちは日焼けをおそれて日光を浴びることを嫌い、また不健康なライフスタイルを現代的と思い込んで自分の健康を損なっている。運動や身体を動かすことをあまり喜ばず、カフェインと塩分を過剰摂取し、喫煙し、特定の医薬品を日常的に摂取するようなことをしており、それらの要因のために生産的年代の女性の間で骨粗鬆症が増加している。骨粗鬆症は50歳を超えた世代のものという認識が一般的だが、40歳代で罹患する例が見られるようになってきており、国民は健康的な生活にもっと配慮しなければならない。その予防にはたんぱく質・カルシウム・ビタミンDを中心にして十分な栄養摂取をはかることにあり、毎日10〜15分日光を浴びることは皮膚のビタミンDを活性化させて骨にカルシウムを取り込むのを盛んにさせる効果をもたらすので、女性たちはもっと日光に当たりなさい。インドネシア大学医学部教官はそう研究会で発言した。


「インドネシアは葉タバコのネット輸入国」(2011年10月13日)
オランダ時代から葉タバコの大生産国で、ごく最近まで世界の葉タバコ市場に高級種を供給していたインドネシアが、いつの間にやら葉タバコ輸入国に転落していた。国内の葉タバコ葉栽培面積は1990年の24万Haから2007年は20万Haまで減少している。インドネシアは葉タバコ生産で今世界の第5位におり、この分野の世界一は中国になっている。おまけに中央統計庁データによれば、インドネシアの葉タバコ貿易は輸入超過になっているのが実態だ。
原料の国内生産が減少している一方でタバコ製品の生産は上昇を続け、年間350億本から2008年には2,300億本に7倍近い増加となっている。アメリカへのタバコ製品輸出は2007年の6.04億ドルから2009年には8,362万ドルに激減した。
国内の葉タバコ生産が減少している原因の中に、タバコ製品生産者が行う品質検査に政府機関がまったくタッチしておらず、生産者の恣意的評価と選別がインドネシアの国益を損なっている可能性が懸念される、とタバココントロール国家コミッション長官はコメントしている。
政府はWHOのタバコ規制枠組条約をいつまでも批准しようとせず、国民への煙害に対する保護姿勢はきわめて及び腰で、国内タバコ産業を買収した外資への統制はきわめて軟弱という印象を国内外に示している。たしかに過去の時代から連綿と国内タバコ産業への振興と保護は行われてきているが、当時国内にあったタバコ産業は少数の大規模タバコ製品生産者ときわめて多数の零細タバコ製品生産者という、いずれもがインドネシアの国民資本で構成されており、有力な国民産業として保護するというあり方が主眼になっていた。いまや国民系小規模タバコ製品生産者はガタ減りし、大規模生産者は外資にとって代わられている国内タバコ産業の様相は往時と様変わりしたものだ。外資による寡占状態の強まっているタバコ産業保護と振興という政策は、政府に裏切られているという感情を国民に抱かせてもしかたのないものかもしれない。
タバコの害が国民の保健コストに年間245兆ルピアものロスを与えているのと引き換えに、政府は60兆ルピアしかないタバコのチュカイ国庫収入を懸命に守っているというナンセンスを国家コミッション長官は指摘する。「海外のほとんどの国では、タバコの害を国民に啓蒙告知するためにタバコのパッケージに教育的な画像を掲示するよう義務付けている。それに合わせてインドネシアから輸出されるタバコにも同じような掲示が行われている。ところが自国民に販売されるタバコにはそのような配慮がまったく欠けている。」
国内のタバコ製品生産者は、タバコの販売促進のために喫煙の広告宣伝をますます盛んに行っており、学校・キャンパス・アートシアター・コンサートさらには政党の集会や宗教集会にまで進出して販促活動を行っている。国民男性の三人にふたりは喫煙常習者であり、青年男女そしておとなの女性から少年までもが販促活動のターゲットにされている。
政府は国民へのタバコ販売に規制をかけると、葉タバコ生産農民や零細規模タバコ製品生産者の事業に困難を与えることになり、国民福祉を阻害する元になるという理由をあげてタバコ産業の保護を続けようとしているが、統計データはそのような言い訳を既に覆している、とコミッション長官は語っている。


「病気をするのは贅沢?!」(2011年10月27日)
2011年8月24日付けコンパス紙への投書"Orang Miskin Sakit Masih Dipersulit Saat Berobat"から
拝啓、編集部殿。豊かでないひとが医療を受けるに当たって嘆いているのを、われわれは頻繁に耳にします。それどころか、「貧乏人は病気になるな」とか「貧乏人は病気厳禁」などという言葉すら口にされています。
医療を受けるに当たってわれわれの兄弟たちはKTP(住民証明書)に加えてかれらを貧困者であると認定する隣組長(RT)と字長(RW)の証明書も求められます。
ジャカルタにいる建設労務者・くず拾い・路上物売りたちは上京者だから、かれらがジャカルタのKTPを持っていないのは当然です。生計の資を得るためにジャカルタへ来ているときに病気になったら、KTPの住所を管轄している故郷のRTとRWに証明書を出してもらいに行けるはずがないではありませんか?
わが国の病人に対する医療サービスの中で、差別があってはなりませんし、病人が医療を受けることを望んだときに差別が行われてもならないのです。かれらには緊急な支援が必要です。貧しいわれわれの兄弟たちが人間的な保健サービスを得るためにどうすればよいのかについて、政府はもっと真剣に考えるべきなのです。[ 北ジャカルタ市在住、プデイヤント ]


「アブナイコーヒー」(2011年12月12日)
市場で販売されているパック詰めコーヒーの中に人体に危険を及ぼす薬品が含有されているものを発見した食品薬品監督庁は、その商品を没収するとともに流通認可を与えた地方自治体に実態を調査して対応を取るよう要請した。
それらのコーヒーは強精効果をうたったものがほとんどで、コーヒーにはシルデナフィルやタダラフィルなど強精薬であるバイアグラやシアリスの基本成分になっている薬品が添加されており、食品薬品監督庁は化学薬品含有製品として対処することにし、発見された商品をすべて無許可品として没収した。
食品薬品監督庁が公表したそれらの違法コーヒーは次の22種類。
1. 39 Sa Kao 3 in 1 Kopi Mix Plus Plus Ekstrak Jahe
2. 39 Sa kao Kopi Mix Ginseng Korea 3 in 1
3. Bel-Bel Kopi Susu Extra
4. Black Borneo Platinum Coffee
5. Dream Coffee
6. Dynamic Coffee/Nusantara Dynamic Tribulus Coffee
7. Golden Life
8. Good Coffee Premium/Good Coffee
9. Herba Max Coffee
10. Jahe Mix Barokah SP
11. Jomoon Instan Coffee
12. Joss-Fly Coffee Plus Panax Ginseng
13. Kopi Cleng-Sehat, Nikmat, Berstamina
14. Kopi Kuat/Kopi Perkasa Hebat
15. Kopi Mahabbah
16. Kopi Pasutri
17. Kopi Strong 234
18. Maca-Tekh
19. Matador Coffee
20. Mawaddah Coffee
21. On Coffee
22. Premium Energy Coffee
それらのコーヒーはジャカルタ・タングラン・ボゴール・バンドン・シドアルジョ・グロボガンなどで生産され、スラバヤやバンドンで市場流通していた。これら強精コーヒーの入ったサチェットは一つ2〜3万ルピアで販売され、パサルやワルンでの販売はもとより、インターネットあるいはMLM販売網に流すといった経路も使われている。
家内工業で生産されていると見られるそれら違法コーヒーは一応パッケージにPIRT(pangan industri rumah tangga)登録番号や地元県市保健局の認可番号が記載されているものの、食品薬品監督庁はそれらの表示が虚偽である可能性もあるとして、認可を与えたとされる県市の保健局に対応を取るよう要請した。スラバヤではトラック2台分20億ルピア相当、バンドンでは1.5憶ルピア相当の違法品が没収されている。


「栄養問題は貧困問題にあらず」(2011年12月19〜22日)
肥満がインドネシア民族の将来に暗雲を投げかけている。中でも、国民の保健に関わっているひとびとからの子供たちの肥満を憂える声が高まっている。保健省が行っている基礎保健調査データによれば、2007年女児の肥満は23.8%あったが、2010年には26.9%に増加した。男児の肥満は13.9%から16.6%に上昇している。ボゴール農大栄養学教授は、肥満した幼児の三分の一は肥満した大人になり、肥満した学齢児童の半分は肥満した大人になる、と語っている。つまり肥満した大人になりやすいのは肥満した子供たちであり、しかも年齢が大きい肥満児が肥満した大人になる傾向が高いということをそれは意味している。
保健省は、インドネシアの一般家庭で体重が標準以上に過剰な幼児が増加しているデータを示す。2007年の5歳未満幼児で過剰体重の子は12.2%だったが、2010年にはそれが14%になっている。太り過ぎは糖尿病・心臓疾患・高血圧などの後天性疾患を誘導しがちだ。
肥満は米国や中国でも国家的問題になっているが、マレーシアやティモールでは痩せて背の低い体格が問題になっている。ラオスやカンボジャではビタミンA摂取が国民の課題とされており、タイは鉄分不足問題が国民の関心を集めている。インドネシアは肥満だけなのかと言えば決してそんなことはなく、肥満と両極端の子供の栄養不良問題から、貧血・ビタミンA・ヨード・鉄分など他の国で騒がれている問題がすべてインドネシアでも深刻な問題を形成している、と保健省栄養対策育成次局長は述べている。
子供の肥満は子供の食生活に対する大人のコントロール問題に帰結する。栄養や保健の基礎知識を持たない子供たちは、食べやすい味付けがなされ、口当たりの快適な素材で作られた食品に手を伸ばす傾向が高い。ファーストフード産業が大発展してきた理由がそこにある。そんな子供たちの間に糖尿病が静かに潜入しつつあることをインドネシア小児科医ユニオンが報告した。2009年5月から2011年2月までの間に発見された糖尿病に罹患している20歳未満の患者数は590人あり、その臨床報告からするなら実態はもっとはるかに大きな数字になることをユニオンは強調している。しかし世間一般はまだ子供と糖尿病の結びつけが常識化しておらず、その問題についての関心がきわめて薄いことをユニオンは指摘している。子供が糖尿病や肝炎に罹患した家庭は、月額100〜200万ルピアという通院治療費の出費を余儀なくされる。ロワーミドルクラスから下の所得階層にとってその出費は重い負担になる。糖尿病や肝炎はまだ貧困者向け医療保障の対象に入っていないため、そんな家庭は経済崩壊に直面しかねない。
子供ばかりか、大人の間でも糖尿病はインドネシアの国民病になりかかっており、2003年調査データの13,794,470人という罹患者数は2030年に2,130万人に増加すると予測されている。こうしてインドネシアはインド・中国・米国に続く世界第四位の糖尿病大国という輝かしい地位を確保するのである。
それら子供の日常生活に潜入しつつある後天性疾患を放置すれば、将来を担うインドネシア国民のクオリティは低いものになり、国民生活は世界最悪国の仲間入りをすることになる、とムハマディヤ大学医学保健学部教官が警告した。「政府は疾病に対する医療に没頭するあまり、根本にある問題を見過ごしている。その問題とは国民の栄養問題だ。貧困と国民の食物摂取パターンの変化が栄養問題の背景をなしている。国民の健康生活を統御し、バランスのとれた食生活を普及させれば、栄養の行き届いた国民から疾病はおのずと離れていく。」教官はそう警告している。
2010年基礎保健調査データによれば、国民の炭水化物摂取は61%で、栄養バランス指標の50〜60%をオーバーしている。州別には、全国23州で過剰な炭水化物が摂取されており、そのトップは東ヌサトゥンガラ州の76.9%だ。一方たんぱく質は指標の15%に満たない13.3%で、指標をオーバーしたのは北スマトラ州・バンカブリトゥン州・南スラウェシ州、アチェ州の四つ。脂質は全国平均が25.6%で指標の25%を超えている。脂質摂取のナンバー1はジャカルタの30%、最低は東ヌサトゥンガラ州の12.7%。
炭水化物摂取量が大きいのは貧困層で、かれらの食事メニューでは炭水化物が大きい比率を占める。一方アッパーミドル層から上はむしろ動物性たんぱく質の摂取に傾いている。そこに見られるのは、金持ちは肉を食べるものだという伝統的な観念だ。
炭水化物と脂質の過剰摂取は肥満を招き、後天性疾患を受け入れる下地を整える。こうして糖尿病や心臓疾患がその体を蝕んでいくことになる。脂質の過剰は身体諸器官の老化を早める。
たんぱく質不足は知能活動を不活発にし、筋力を弱いものにし、こうしていくら年齢を重ねても人間としての生育は不十分なものにしかならない。国民の栄養吸収に影響を与えているライフスタイルからの要因もある。昔から用いられてきた、バランスの取れた繊維質の多い食事はいまや時代遅れのものと見られ、ファーストフードやインスタント食品が時代に即したものとして世の中でもてはやされている。おまけに子供の栄養や保健を統御するべき親は共稼ぎで子供の食事の面倒まで見ることができず、女中任せにされた子供の食事が子供の嗜好によって選択されるのは疑いもないところだ。
栄養意識社会運動役員は、政府のファーストフード事業管理政策が国民の保健を疎外している、と批判する。「諸外国ではファーストフードレストラン事業は厳しい監督と制限を受けているというのに、インドネシアでは大繁盛だ。経済の車輪を回転させるというお題目であらゆるビジネスほとんど制限もなく野放しにされているのが実態で、そこにファーストフードは時代の最先端という発想が加えられているため、国民もそのような観念に染められている。しかし国民がそこで食べているのは炭水化物・脂質・砂糖・塩だらけのものだ。この問題を早急に解決しなければ、インドネシアの次世代は、能力の劣った、生産性の低い、そして病気がちの人間ばかりになってしまう。」
貧困による栄養不良問題は、いまやもっと複雑で民族の興廃に関わる問題へと突き進んでいる状況を、栄養意識社会運動役員は指摘している。


「ジャムソステック医療保障に追加」(2011年12月21日)
2011年12月1日からジャムソステックの医療保障で血液透析、心臓手術、ガン治療、HIV/エイズ治療も取扱対象となった。また40歳メディカルチェックアップもジャムソステックが費用を負担する。それらの追加補償を受けられるのは、医療保障に加入してから一年以上経過した会社の加入従業員となっている。言うまでもなく、それらの治療が補償されるのはジャムソステック協力医療機関に限られ、血液透析は補償枠が一回当たり最大60万ルピアまでで、週三回の治療が限度。心臓手術はカレンダー年で年間8千万ルピアまで、ガン治療はカレンダー年で年間2千5百万ルピアまでとなっている。HIV/エイズ治療はカレンダー年で年間1千ルピアまで。
それら以外にも、建設セクター企業に対する労働安全衛生トレーニングと必要な機材の供与が開始された。また現役職員の労災死亡時に遺族に対して2百万ルピアの埋葬補助金が支給される。
PTジャムソステック社最新データでは、ジャムソステック加入者は2,640万人が登録されているものの、会社が掛け金を納めているジャムソステック加入従業員数は1,002万人しかいない。フォーマルセクター勤労者は現在3,300万人と言われており、ジャムソステックで保障されていないフォーマルセクター勤労者は2,298万人いることになる。1992年法律第3号で強制加入が命じられているというのに、現実にその法律に従っているのは3分の1しかいないというのが実情だ。


「伝統的代替医療に人気」(2011年12月23日)
インドネシアで代替医療はたいへん盛んだ。豊かでない庶民にとって、西洋医療を行っているところは高いというイメージが強く、ほとんどのひとがドゥクンを頼りにしている。高名なドゥクンになると、何百キロも離れたところからわざわざ診療を受けに来る人であふれかえっている。そしてドゥクンは定価がない。いくら払えばいいかと尋ねても、あんたが払いたい金額を置いていけ、という返事が返ってくる。
ドゥクンの中には、ミステリアスな治療を行うことで名が知られ、それを高く評価して患者が集まってくるというものもある。インドネシア人の神秘主義にマッチした例のひとつだろう。
最近の世界的な傾向にあわせて、西洋医療を行う病院にも鍼やマッサージ、アロマセラピー、メディテーション、アユルヴェーダ、ハーブ治療などの代替医療導入が増加している。
コンパス紙R&Dが12都市713人から2011年11月30日〜12月2日に集めた回答によれば、代替医療利用者は三人にひとりいた。
質問1.代替医療にかかったことがありますか?
回答1: はい36.2%、いいえ63.8%
質問2.かかったことがあるひとは、その理由を教えてください。
回答2: 
化学物質医薬品を使わない34.1%
病院や開業医より廉価23.6%
早く治る20.2%
家族・親せき・友人から勧められた13.9%
その他8.2%


「医者・看護婦は手洗いをしているか?」(2011年12月26日)
病気の治療に行ったにもかかわらず、院内感染でほかの病気にかかるという例は少なくない。そうなると治療期間は長引き、治療費も膨れ上がる。これではいったい何をしているのかわからない、ということになる。
院内感染でもっとも多いのは医療従事者の手洗い励行がなされていないためらしい。世界中の医療従事者で手洗いを励行しているのは40〜50%しかいないそうだから、インドネシアの状況が特にひどいということでもなさそうだが、病人にしてみれば、悪いスタンダードに従ってもらっても困るということだ。手洗いしていない医療従事者の手から細菌が移されるのは、カテーテル脱着時の尿道感染、手術部位への感染、肺炎、点滴時の血管感染などがメインを占めている。
WHOは医療従事者に対する基準として、患者の身体に触る前には必ず手洗いを行うよう義務付けている。感染症罹患厳禁の患者に対して医療処置を行う場合、前の患者の体液に触れた場合、あるいは伝染性罹患者の身体やその生活環境に触れた場合などは言わずもがなのことだ。
手洗いを行っていない医療従事者の手が身体に触れるのを拒む権利が患者にはあるはずだが、患者を見下す傾向の強いインドネシアの医療従事者たちがその自分の誤りを率直に認めるかどうかは、予断を許さないにちがいない。


「低トラスト社会」(2011年12月27日)
2011年9月14日付けコンパス紙への投書"Keterangan Palsu kepada Pasien Jamkesmas"から
拝啓、編集部殿。去る8月16日、タングランのBSDポンドッジャグン保健所がわたしの友人の子供をタングラン総合病院に紹介しました。16歳のその女児はデング熱のために血小板が減り続けていたからです。BSDからタングランへの移動は、交通渋滞のためにとても長い時間がかかりました。
タングラン総合病院に着いて事務手続きを行ってから救急治療医師の診察を受けました。ところがその医師は、国民健康保障制度利用者のための三等病室は満員だと言って他の病院を紹介したのです。納得できなかったわたしは、チュンパカ病棟の三等病室を見に行き、調べて写真を撮りました。事実は、病室のベッドはいっぱい空いており、共同病室の中には患者がひとりしかいないというところもありました。その写真を医師に示し、これは異常な大ウソじゃないですか、とわたしはかれに言いました。事実を示された医師は不機嫌な顔つきで、病室は自分の領分ではない、と答えました。
わたしは友人一家に、タングラン総合病院が紹介したシンタナラ病院へ行こうと誘いましたが、友人一家は拒みました。仕方なくわたしたちは、タングランのガディンスルポンにあるシンカロルス病院に向かいました。
タングラン総合病院が国民健康保障制度から患者の医療費をすみやかに受け取れないとは、理解に苦しみます。このネオリベラリズム時代に、医は仁術という観念が消え去ってしまっていることはわかりますが、大統領の国民健康保障に関する演説は単なるレトリックでしかないようですね。[ 西ジャカルタ市在住、Gマヌルン ]
2011年9月23日付けコンパス紙に掲載されたタングラン総合病院からの回答
拝啓、編集部殿。マヌルンさんからの2011年9月14日付けコンパス紙に掲載された投書について、説明申し上げます。タングラン県総合病院の病室利用は、等級・疾病・性別・年齢に従って分けられています。チュンパカ病棟は三等患者用で、四つの共同病室があり、各室8ベッドが備えられています。各病室は内科・肺・心臓・神経の大人の罹患者が入ることになっています。
8月16日夕方のチュンパカ病棟の業務記録と入院患者データによれば、三室は満員になっており、一室は下痢の患者がひとりだけ入っていました。ですので、付き添いの方がご覧になったチュンパカ病棟の空きベッドはデング熱患者のためのものではありませんでした。下痢の患者は、デング熱患者はもとより他の患者とも混ぜることができないのです。
そのときの緊急治療室担当医師は、病室が満員なので入院できない状況を説明し、国民健康保障制度を受け付けている最寄りの病院を紹介したのでした。[ タングラン県総合病院理事、MJNママヒッ ]


「爪楊枝からエイズが伝染する」(2012年1月20日)
2011年10月10日付けコンパス紙への投書"Ihwal Penularan HIV/AIDS di SMS"から
拝啓、編集部殿。レストランや公共施設に備えられている爪楊枝からHIV/エイズが伝染するということを語るSMSが世間に流れています。その内容はもちろん間違っており、世間を惑わせるものです。無責任なひとびとがそれを広めていると思います。
HIV/エイズに関心を持つ機関や個人は世の中にHIV/エイズに関する正しい情報を告知し、その世間を惑わし威嚇するようなSMSを世人が鵜呑みにしないよう協力してください。
爪楊枝からHIV/エイズが伝染するというSMSや個人からそんな話を聞いたひとは、ほかのひとにその話を伝達しないようにし、またその話は間違っているということを表明してください。肩を組み力を合わせてHIV/エイズに関する根拠のない情報を矯正するようにしましょう。[ プリアガンスジャティ財団設立者、フランクリン・レイダー ]


「故意それとも偶然の過失?」(2012年2月21日)
2011年11月19日付けコンパス紙への投書"Pasien Rugi Karena Kelalaian Petugas RSAB Harapan Kita"から
拝啓、編集部殿。子供の病気の状態にデング熱の徴候が見られるとして、ジャカルタのハラパンキタ母子病院医師が入院を勧めました。それで11月4日にわたしは救急治療室を通して入院の手続きを取りました。救急治療室の医療スタッフが子供に点滴処置を行っているとき、事務員が入院申請書類を用意し、支払い方法を説明しました。わたしは国家公務員であり、アスケス医療保険に加えて民間保険会社の医療保険も使えることをその事務員に説明しました。
子供は一等病室を与えられ、それ以降は病棟の医療スタッフが子供の処置にあたり、わたしは病院側の求めに応じて前払い金を納めました。
それが予想外に高いものだったとはいえ、わたしは医療措置や投与された医薬品について苦情しているのではありません。請求書に対する支払いをしたあとで判ったことですが、処方箋一枚に記載されている薬品の価格が100万ルピア近いのです。そして病院側が出した処方箋は一枚だけではありませんでした。
11月6日に子供が退院を許可されたとき、わたしは支払いをしようとしましたが、会計事務窓口もアスケス保険の窓口も閉まっていました。結局病棟事務所が出した請求書しか持っていないために、その金額を現金で支払わざるをえなくなったのです。
11月7日、病状検診のために子供を病院へ連れて行ったとき、わたしはアスケス保険のクレーム手続きをしようとしました。ところが会計事務担当者が言うには、わたしの子供は一般患者区分に入れられているため、保険クレームは受け付けられないと言うのです。わたしは救急治療室事務員に最初からアスケス保険が使えることを申し出てあると説明しましたが、受け付けてもらえませんでした。ハラパンキタ母子病院事務員の不正確な仕事のために、わたしは損することになりました。この腹立たしい体験と同じことが他の読者の身にふりかからないことを願ってやみません。[ 西ジャカルタ市クブンジュルッ在住、ドゥイハンシャ・アン ]


「芳香付き殺虫剤で気持ち良く昇天?!」(2012年2月25日)
2011年1月15日付けコンパス紙への投書"Pembasmi Serangga Beraroma Pengharum Ruangan"から
拝啓、編集部殿。室内にスプレーを噴霧したら良い香りが満ちたので、それはどこのブランドの製品なのかを噴霧したひとに尋ねました。それはBブランドの殺虫剤だったのです。
有毒な殺虫剤に良い香りをつけて販売するなんて、その使用者にわざと毒を吸わせているのと同じではありませんか。毒物に良い香りをつけるのは、危険な毒物をひとに気持ち良く吸収させることにほかなりません。子供たちにどんな影響が及ぶか、十分に想像がつきます。子供たちは良い香りの空気を吸って気持ち良くなるのですが、その一方では健康を損ねる有害な毒物を吸収しているわけです。明らかに虫を殺すための有毒物質を販売している会社が利益を追い求めるためにどうしてそんな恐ろしいことを行っているのか、われわれの良識ではとても理解できません。
当局は健康関連商品を厳しく監督し、そのような誉められない行為を規制するようにしてください。[ 西ジャワ州デポッ市在住、ウィルソン・ラジャグッグッ ]


「8歳のチェーンスモーカー」(2012年3月27日)
西ジャワ州スカブミ県に両親と住んでいるハディ・イルハム8歳は、重度の喫煙常習者だ。この子は毎日32本以上のタバコを消費し、インスタントコーヒーを5杯以上飲んでいる。インドネシアのインスタントコーヒーは誰もが知っているたっぷりの砂糖が混ぜられているもので、そのデラックス版はスリーインワンと呼ばれて脂肪たっぷりのクリームがさらにそこに加えられている。
父親のアガン・ウマル35歳はオートバイオジェッ運転手で、一日の稼ぎはせいぜい3万ルピア。しかしかれの使っているオートバイはオーナーが他におり、アガンは毎日ストランとして1万ルピアを自分の稼ぎからオーナーに納めなければならない。
母親のヌナ31歳は息子のハディが毎日2万ルピアの小遣いをねだるのに手を焼いている。その2万ルピアはハディが16本入りタバコ2箱を買って煙にしているのだ。ハディはマイルドタバコを指の間にはさんで精力的に遊びまわっている。
ハディはパンドゥイ国立小学校に一年間だけ通い、ドロップアウトした。ヌナはハディがタバコをやめてまた小学校に通うことを強く願っているが、ハディが言うことを聞かないために諦めの境地だ。「毎日タバコを買うために2万ルピアもねだるんですよ。金を与えないとアモックになって暴れまわるので手がつけられません。」ヌナはそう物語る。
ところがこのハディの話を伝え聞いたスカブミ県保健局長が更生の協力を買って出た。ハディをスカルワギ病院へ連れて行って診察を受けさせ、心理コンサルタントにタバコをやめさせる治療を施させることにした。
「うちには病院代を払う余裕なんか、これっぽっちもありません。」と言うヌナは保健局長がその問題をどう考えているのか知らないが、お役所はそんなことを承知の上でやっていることだと考えて、保健局長の指図に従っている。それでハディの重度の喫煙常習が直れば、ありがたいことだ。


「子供をニコチン中毒にする大人たち」(2012年3月28・29日)
東ジャカルタ市パサルボ(Pasar Rebo)にある児童保護国家コミッションの事務所内で、8歳の子供がひとり観賞魚の水槽に手を突っ込んで中をかき回していたが、苛立ちがその子の脳神経を侵しはじめたようだ。きょろきょろと落ち着かなくなった目から凶暴な光が放射される。その子は何を探しているのだろうか?
子供は別室にいたヌナ31歳に走り寄った。「タバコをくれよ。タバコがほしい。タ・バ・コ・・・!」子供が自分に撲りかかってくるのを予期したヌナはその子から心持ち遠ざかる。ヌナと一緒にいたアガン35歳が子供の機嫌をとろうとした。「何かおかしでも買うかい?・・・おもちゃがいいかな?」しかしアガンの言葉など一顧だにされず、その子の口から出されるのは威嚇的な調子の「タバコ」という言葉だけ。
その子イルハム・ハディ8歳は、両親とスカブミ県カラワンギラン村保健所職員およびスカブミ県保健局長に連れられて、東ジャカルタ市の児童保護国家コミッションにやってきた。ニコチン中毒のリハビリが目的だ。
イルハムは4歳で喫煙を始めた。「大人の真似をしたんだ。」とアガンは物語る。イルハムは叔父たちがほかの村人と集まってコーヒーを飲みながらタバコ片手に四方山話に花を咲かせる場に頻繁に混じった。大人たちがしていることを目にし、自分もそれを真似、そしてニコチンとカフェインの中毒になった。体がニコチンを求めると、イルハムは自分を御すことができなくなる。重度のニコチン中毒に陥ったイルハムは完璧なニコチン依存症を示す。タバコが吸えなくなったとき、イルハムは手当たりしだいに暴力をふるう。人間に撲りかかるばかりか、周囲にある物体を打ち壊そうとする。
ニコチンがイルハムに喫煙を要求すると、イルハムの目がすわってくる。脳は自己を統御する力を失い、いらだちにじっとしていられなくなり、口から罵詈雑言をまきちらしながらうろうろと歩き回る。そしてタバコをくれという要求が拒まれたら、アモックが始まる。そんな状態を鎮めるには、イルハムにタバコを与えるしかない。両親が取れる対応はそれしかなかったようだ。
児童保護国家コミッションは2010年から現在まで、5歳未満幼児喫煙常習者を20人以上発見している。政府保健省は毎年、国民基礎保健調査を行っているが、喫煙に関するデータの中に5歳未満幼児の項目はない。子供関連で採られているデータは10〜14歳の年齢層に関するものだけだ。そのデータだけでも、ひとを驚かすに十分な内容になっている。1995年データは、10〜14歳児童喫煙常習者が7万1千人と報告しているが、2010年の報告では42万6千人が児童喫煙常習者となっている。15年間で6倍アップというのは凄まじい勢いだ。そのデータを見る限り、幼児喫煙常習者の数が数十人ということはありえない、とコミッション側は推測している。
マスメディアにとりあげられた幼児喫煙常習者の例には、南スマトラ州ムシバニュアシン県トゥルックマン村のアルディ2歳半や東ジャワ州マランのサンディ4歳がある。アルディは生後11ヶ月から喫煙を始め、いまでは一日にタバコ4箱を消費している。サンディの消費量も同じだ。喫煙常習児童はニコチンのために食欲が減退する。イルハムは今体重が18キロしかなく、その年齢の国民平均体重28キロに遠く及ばない。喫煙のためにヘモグロビンの量が低下し、血液中の酸素量が不足して脳や身体の発育が障害を受ける。
ニコチン中毒になった子供たちはタバコが吸えないと自分が統御できなくなる。そんな子供たちはタバコ一本のために何でもするようになる。アガンがイルハムに学校へ行くように言うとイルハムは、「タバコ一箱と1万ルピアをくれたら学校へ行ってやる」と返事するそうだ。結局イルハムは学校をドロップアウトし、自宅から2.5キロ離れたミニマーケットまで行って駐車番をした。親がくれないタバコ銭をそうやって自分で稼いだ。しかしそれも毎日やるわけではなく、もっと手っ取り早いことをするようになるのも時間の問題だった。隣近所から物を盗むようになったのだ。
アリス・ムルデカ・シライッ児童保護国家コミッション長官はイルハムのリハビリ計画について、最低一ヶ月の時間が必要だと語り、その間イルハムの面倒を見る意志を明らかにしている。
6千5百万人の喫煙常習者を抱えるインドネシアは世界三大喫煙国のひとつ。政府はタバコ産業界の言いなりになっている、と政府の喫煙抑制政策のあまりの弱さを長官は批判している。


「違法薬品天国」(2012年4月6日)
2011年12月12日付けコンパス紙への投書"Obat Penenang Bebas Diperoleh di Gerobak"から
拝啓、編集部殿。わたしは精神安定薬常用被害者の家族の者です。物質的損害のみならず、精神的な損害をも蒙っています。いまや麻薬や精神安定薬あるいは高濃度アルコール飲料を常用する若者が相当に増加していますが、それは起こりうることだからです。特に精神安定薬を医薬品販売者から自由に入手できることが大きい要因になっており、中央ジャカルタ市ロキシー地区で見られるように、販売者は手押し車で街中を巡回しているのですから。
手押し車の前に毎晩、若者たちがメインになっている大勢の購入者が行列をなして、あたかも生活基幹物資の買出しのような光景が演じられています。その地域にも薬局はたくさん、少なくとも三軒はあるのです。そんな手押し車の薬屋が病人のために薬を販売しているなんて、ありえない話です。
西ジャカルタ市ガジャマダ通り沿いで『精力剤・勃起薬』の仮面をかぶって違法薬品類を販売している販売者たちも同じです。東ジャカルタ市ジャティヌガラにもかれらはいます。かれらの存在はもう何年も前から知られていますが、関係当局による取締りが行われているのかどうかわたしにはわかりません。しかし、行われているような徴候はすこしも感じられません。
食品薬品監督庁や反麻薬国家庁の存在は不明瞭で判然とせず、警察や法曹要員もいったいどこにいるのかわかりません。わたしの住んでいる西ジャカルタ市の住宅地区では、もう9人の若者が麻薬や精神安定薬などのために命を落としました。ほとんど毎年犠牲者が生まれているのです。犠牲者のほとんどは学生で、薬におかされたために羞恥心も消えうせ、違法物品を手に入れるためには何をするのもためらいません。
わが社会には常に民衆の利益を擁護し神聖さを叫ぶ数多くの民間団体や宗教的雰囲気に満ちた政党あるいは国会の代議士たちがいるというのに、若者たちがクスリのとりこになって崩壊していくのは実に皮肉なことです。[ 西ジャカルタ市在住、ブディマン ]


「エイズ罹患者増加のメカニズム」(2012年5月28日)
かつては麻薬の注射針による伝染がもっとも多かったHIVエイズは、今や性行為という伝染経路に取って代わられた。それが伝染経路になっているのは、男が複数の相手と性行為を行い、且つ病気予防のためにコンドームを使うことを毛嫌いしているからである、とエイズ防止国家コミッションセクレタリーが表明した。
今国内で最大の罹患者人口になっているのは主婦であり、出産によって子供にウイルスを伝えていくため一般家庭の母子の間にエイズ罹患者が急増している。新生児のエイズ罹患は倍増しており、母体がエイズに罹患していたことがそのときはじめて明らかになるという寸法だ。母親の多くは自分が夫からエイズをうつされたことを自覚しておらず、妊娠中に抗レトロウイルス剤の投与を受けなかった妊婦から子供が出産時にエイズに罹患する機会は多い。
複数の相手と性行為を行う男性の多くは、売春婦を相手にしている。売春婦相手の場合、普通はほぼ確実に毎回相手が替わる。インドネシア人男性310万人は常習的買春者であるとのこと。ちなみにインドネシア人売春婦は数万人という数が言われているが、それは保健行政と接触のある本職のひとびとであって、アルバイト的に売春をしている人数はその数十倍はいるそうだ。
地方部で建設工事が盛んになると大勢の若い男性が工事現場に集まってくる。経験のある建設労働者が地方ではあまり調達できないためだ。こうして出稼ぎ労働者がある地方で増加すると、その後を追って売春婦もその建設工事現場周辺に集まってくる。
インドネシアでは初婚年齢が低いために、若い男性だから未婚者とはかぎらない。かれらは家庭を持ちながら出稼ぎし、出稼ぎ先で女を買う。かれらはまたコンドームを使うとセックスの快楽が半減すると思っており、コンドームを使う者は少ない。性病やエイズのリスクを知らないわけではないものの、若い娘はまだ性交経験が浅いから病気に冒されていないという誤った観念がかれらの間に流通し、少女売春を盛んにしている原因にもなっている。そうして月に一度生活費を自宅に持ち帰り、久しぶりに妻との性交が行われる。男は出稼ぎ先で売春婦と遊んでいることなどおくびにも出さないから、妻は夫がエイズウイルスを持っていることなど夢にも疑わない。夫自身ですら、自分がエイズ保菌者になっていることなど夢にも考えないだろう。
いずれにせよ、危険なセックスに対して自分はどうするのかという鍵は夫や男たちが握っているのだが、性欲の発散のためにリスクを無視し、コンドームという防御ツールがあってもセックスの快楽のためにそれを打ちやり、自分が病気にかかったかどうかを検査しようともせず、妻を自分と同じリスクの中に引きずり込んでいく。
保健行政側は売春婦にコンドームの使用を教育してはいるものの、男客が頑としてコンドームを拒否したときに客を袖にできる売春婦はいない。結局はさまざまな要因の集大成が現状の姿を露呈させているわけで、その中にはセックスに関する習慣と観念、保健思想、男尊女卑などの諸問題が絡み合っていると言う事ができるだろう。


「著名スーパーで有害食材発見」(2012年8月9日)
東ジャカルタ市畜産漁業課が行っている販売店での食品品質検査で、食用に適さない肉と肉加工品および鮮魚が見つかった。2012年8月3日にチャクン地区のジャイアン(Giant)、スプリンド(Super Indo)、カルフル(Carrefour)で行われた検査から不適正食材が発見された。ブランドの付いた牛肉ソーセージは賞味期限が2012年8月7日となっているものの、食用に供するには問題があるほどの品質劣化が見られた。畜産漁業課は店に対し、賞味期限の2週間前になった商品を販売してはならない、と警告している。スティロフォーム容器に入って透明フィルムで覆われている鶏手羽肉も腐敗しかかっているものが見つかった。またサーモンの切り身、オタコタ(otak-otak)、魚卵にフォルマリン含有の懸念が強いものがあり、詳しい検査が行われることになっている。畜産漁業課は各店の責任者とそれら不適正商品を納入した業者を呼んで取り調べることにしている。
ジャイアン、ウジュンメンテン店マネージャーは今回の検査結果について、その魚肉ソーセージは陳列棚から回収されていなければならなかったものであり、どうして回収されずに陳列棚に置かれたままになっていたのかをスタッフに問い質す所存だ、と述べている。「精肉や鮮魚は鮮度を保つために毎日入れ替えている。ただ店側は、それらの食材がフォルマリンなどの防腐剤に規定値以上汚染されているかどうかについて調べる技術を持っていない。」
カルフル、チャクンティムル店マネージャーは、鶏手羽肉商品の中に食用にできないものが混じっていると言われたのは腑に落ちない、とコメントした。本来あってならないことであるのは確かであり、サプライヤーが納入してくる中で、保管方法あるいは納品プロセスに手違いがあったのではないだろうか、との弁。
スプリンド、チャクンティムル店副マネージャーは、サーモン切り身およそ1キロ、オタコタおよそ1キロ、魚卵0.5キロからフォルマリンが検出されたと聞いており、それらの商品は廃棄処分にする、と述べている。また各店責任者は、それらの商品のサプライヤーを呼んで、厳重に注意する、とも表明している。


「SNI表示のないメラミン食器に警戒を」(2012年8月21日)
ルバランシーズンには食器の需要も高まるのだが、プラスチック食器、いわゆるメラミン製品の中にフォルムアルデヒドを許容限度以上に含んでいるものが多数市場に流通しているので消費者は警戒するように、とインドネシアオレフィンプラスチック産業協会事務局長が表明した。メラミン製の皿や椀あるいはコップなどの中に政府が定めた規定を無視して人体に有害な成分を多量に含んでいるものが国内市場に数多く流通している。それらは輸入されたものもあれば、国内生産者が作っているものも混じっている。
国内製品規格であるSNIのメラミン製品に対する義務付けは2009年から発効したが、それに従ってSNI規格準拠認定を取得した生産者は一部大手に限られており、小規模生産者はSNIを取得する姿勢を示さないどころか規格違反の商品を何の障害も受けずに市場に出荷している。SNI表示のないメラミン製品は人体に有害であるおそれが高いということが消費者に十分啓蒙されていないために起こっていることなのだが、市場に流通している商品の4割はSNI規格を無視したものであり、SNI規格に則した製品を作っている生産者はそうでない生産者に対しておのずとビジネス面で不利な条件を背負い込むことになる。正直者が馬鹿を見る図式がここにも漂っているわけだ。
SNI規格違反メラミン製品は特に東西ヌサトゥンガラ州や北スマトラ州メダンで目に余る勢いだそうで、ジャワ島では多少ともマシな状態であるということが業界には救いとなっているに違いない。


「オレたちゃ余所者じゃねえから、してもいいんだよ」(2012年9月7日)
2012年6月23日付けコンパス紙への投書"Cuci Piring Katering di Danau Taman Cibodas"から
拝啓、編集部殿。2012年5月16日、わたしたち教職員一行は西ジャワ州のタマンチボダスで催し物を実施しました。飲食世話係の一員になったわたしは、タマンチボダスのケータリング業者に昼食をオーダーしました。
昼食がほとんど終わったころ、ケータリング業者従業員が食器や他の食事道具をチボダス湖の岸で洗っているのを、わたしのほかに数人が目撃したのです。どうして湖で皿洗いするのか尋ねると、あっさりとこう返事してきました。「かまわないんですよ。ここはわたしらの土地だから。」
おまけに、この催し物の立会いと監督に当たっているタマンチボダス職員さえ、その皿洗い行為をまるで当たり前のように放置しているのです。つまりタマンチボダス管理者側さえもがその行為を承認しているということなのです。わたしも他の同僚たちも、その言葉に驚いただけでなく、とても残念でまた悲しくなりました。タマンチボダスはインドネシア国民のものなのです。その維持費として政府から巨額の出費がなされているのは間違いないと思われますが、そんな場所を無責任なケータリング業者が汚染し損なっているのですから。
その実態を目撃し、そのままの湖水で洗った食器や器具で食事したのかと思うと、気色悪くなりました。一番基本的なことがらから環境保護に着手しようではありませんか。湖水で皿洗いして環境破壊などしないように・・・・。[ タングラン県チプタッ在住、マルタS ]
2012年6月30日付けコンパス紙に掲載されたタマンチボダス管理者からの回答
拝啓、編集部殿。タマンチボダスの湖水で皿洗いをしたケータリング業者への苦情に関するマルタさんからの投書について、ご不快を経験されたマルタさんご一行にお詫び申し上げます。
当方はそのケータリング業者を呼び、問題の行為を二度と繰り返さず、またよりプロフェッショナルに事業運営を行うよう、文書を添えて強い警告を与えたことをお知らせします。[インドネシア科学院チボダス植物園植物保存館公園管理ユニット課長、ソレフディン ]


「穴あきコンタクトレンズ?」(2012年9月17日)
2012年6月29日付けコンパス紙への投書"Lensa Kontak Impor Berstiker Kemkes RI Berlubang"から
拝啓、編集部殿。去る5月19日にわたしのいとこは西ジャカルタ市プリインダモールのオプティックムラワイで左右の目のために1デイアキュビューモイストのコンタクトレンズを2枚買いました。包装箱にはアメリカ製で輸入者はPTジョンソン&ジョンソンインドネシア、使用期限は2017年2月と表示されています。
いとこは2012年5月末にそのレンズの使用を始めましたが、左目は使い心地が悪く、痛みがあります。それで左目のレンズを外してよく調べたところ、周辺部に直径1ミリほどの穴がふたつ開いているのが見つかったのです。いとこは驚きました。
数日後、いとこはそれを購入したプリインダモールのオプティックムラワイにそれを持っていきました。店側はその苦情を記録し、輸入者から回答が来たら連絡するといとこに約束しました。
いとこはひと月以上待ちましたが、連絡はありません。レンズを着け替えなければならないので、6月第3週に右目のレンズを外したところ、いとこはまた同じできごとに遭遇したのです。右目のレンズにも直径2ミリほどの穴が開いているのが見つかりました。これは欠陥製造品なのでしょうか?コンタクトレンズには、「インドネシア共和国保健省AKL21204702332」と表示されたステッカーが貼られていました。[ 西ジャカルタ市クンバガン在住、ヴェネッサ・アルティカ ]
2012年7月4日付けコンパス紙に掲載されたオプティックムラワイからの回答
拝啓、編集部殿。ヴェネッサ・アルティカさんからの2012年6月29日付けコンパス紙に掲載された投書について、コンタクトレンズのサービスにオプティックムラワイをお選びくださり、たいへんありがとうございます。当方はお客様に直接連絡をとり、そのコンタクトレンズの交換方法に関して説明申し上げました。お客様は当方の説明を了承してくださいました。[ オプティックムラワイカスタマーサービス、メイ ]


「違法医薬品生産者のリスクは8ヶ月の留置場入り」(2012年10月4日)
2012年1〜8月の間に食品薬品監督庁は29銘柄の非合法伝統医薬品を市場で発見した。そのうちの20銘柄は市場流通許可の得られていないもの、9銘柄は許可されているものの届け出られた内容と一致していないもの。それらの非合法品について食品薬品監督庁は既に公報措置を取っている。
伝統医薬品に医薬品用化学物質が混入されてはならないことになっているにもかかわらず、伝統医薬品生産者は利用者に薬効を感じさせようとして化学物質を混入させる者が少なくない。混入させる成分も時代によって特徴があり、2001年から2007年ごろまではリューマチ薬や痛み止め効果のあるものがよく混入されていた。その当時主流を占めていたのはフェニルブタゾン、メタンピロン、パラセタモール、メフェナム酸などだったが、2008年を超えるとシブトラミン、シルデナフィル、タダラフィルなどの痩せ薬や勢力増強のためのものへと移りかわってきた。
食品薬品監督庁は過去二年間に摘発した非合法あるいは違法伝統医薬品生産者に対する起訴手続きを取っており、過去二年間では48件が裁判にかけられている。しかしこのような違反行為に対する判決はせいぜい8ヶ月の拘留と25万から5千万ルピアまでの罰金でしかない。


「ある大気汚染犠牲者の手記」(2012年11月2日)
2012年8月7日付けコンパス紙への投書"Udara Jakarta Bikin Sakit"から
拝啓、編集部殿。2005年からわたしはオートバイを使うようになりました。通勤にも、そして日常の用事にもです。7年間ものあいだ、オートバイの移動性のよさによりかかって毎日公道での渋滞の中に身を置き、生活してきましたが、わたしは自分の身体の中が何か異常になっているように感じはじめたのです。咳をよくするようになり、胸に圧迫感と痛みがあり、呼吸が浅く、頭痛がし、目がひりひりします。
ある夕方、オートバイで自宅に帰る途中、わたしは南ジャカルタ市ファッマワティ三叉路地区で、もうちょっとのところで交通事故を起こしそうになりました。そのときわたしは排気管から真っ黒なガスを噴出しているメトロミニとバジャイのすぐ後ろにいたのです。老朽化したその二台の公共運送車両の排気ガスを浴びたわたしは、突然胸が締め付けられると同時に目に凄まじい痛みを感じました。めくら同然になったわたしはオートバイの運転をコントロールできなくなり、歩行者にもうちょっとで衝突しそうになり、歩道の縁石に乗り上げました。
そのあと、家に着くまでの間、わたしは考えたのです。頻繁な咳、胸の圧迫感、ぜいぜいする呼吸、目のひりつき、頭痛などといった症状は公共運送機関の真っ黒な排気ガスにわたしが頻繁にさらされてきたからではないか、と。その夜、わたしはジャカルタの大気汚染に関するさまざまな情報を集めてみました、その結果、驚くべきことがわかったのです。2005年から2011年まで、ジャカルタはメキシコシティとバンコックに次ぐ世界第三位の大気汚染都市の座に着いていることが報道されていました。
現在、大気汚染はジャカルタできわめて深刻な脅威になっています。WHOは首都の大気のクオリティが安全規準レベルを突破していることを指摘しているのです。[ タングラン県パムラン在住、プロ・シマンジュンタッ ]


「コメ・油・脂肪重視の食事を改善」(2012年11月13日)
2010年の国民基礎保健調査は、国民のエネルギーとたんぱく質の摂取が特に村落部の6〜12歳年齢ブラケット、13〜15歳年齢ブラケット、16〜18歳年齢ブラケット、および妊婦で顕著に不足していることを報告している。全国平均では人口一人当たり62.1グラムで、これは総エネルギー摂取量の13.3%にすぎない。理想値は15%だ。
一方、炭水化物と脂肪の摂取量がそれに反して大きい。全国平均の一人当たり脂肪摂取量は47.2グラムで、総エネルギー摂取量中の25.6%を占めている。炭水化物は61%を占め、インドネシア人のエネルギーの大半がコメに依存していることをそれが示している。特に過剰に体内に蓄えられた脂肪は血管の機能に障害を及ぼしやすい。
一方、たんぱく質の不足が継続的に起こると、特に若年女性から妊婦に至る年代の女性に大きい問題が生じる。中でも体重不足の新生児が生まれる傾向が高まることは重大な問題だと言える。生まれた子供は栄養不良に陥り勝ちになり、発育が劣ってしまう。
胎内で与えられるべき栄養素、特にたんぱく質が不足すれば身体は大きくならず、脳細胞の生成も十分に行われない。また免疫力も弱いものになる。そのような状態で育つ国民が世代交代を重ねていけば悪循環になるのは必至であり、知力体力の劣る民族になっていくのは明らかだ。
インドネシア国民がコメ・油・脂肪の摂り過ぎになっているのは、かれらが普段食べつけているものを見ればわかる。一方、野菜・果実・たんぱく質の摂取が明らかに不足している。その改善をはかるために栄養に関する啓蒙と調理方法を含めた食事内容の改善が行われる必要がある、と栄養学専門家は述べている。