インドネシア詐欺ニセモノ情報2013〜16年


「詐欺師!!」(2013年3月11日)
2012年11月10日付けコンパス紙への投書"Anggota Dewan Menggasak Barang di Yayasan Yatim Piatu"から
拝啓、編集部殿。2012年9月27日、わたしの孤児院の事務所に、孤児特別寄金から寄付金が与えられるという電話をしてきたひとがありました。孤児という境涯とその将来を気にかけてくれるひとがまだいるのだと思って、孤児院運営者であるわたしはその申し出をありがたく受け取りました。
翌日、約束の時間に、ランプン州議会議員と名乗る一行が黒塗りホンダCRVを運転して孤児院事務所に到着しました。男性二人女性一人のその一行と初対面の挨拶と社交辞令を交わしてから、わたしは事務所内にかれらを招じ入れました。孤児院運営会の他のメンバーがちょうど金曜日の礼拝中だったので、全員が揃うのを待ってもらったのです。ふたりの事務員はその一行をまるで国賓でもあるかのように遇しました。賓客が注文した飲み物を事務員ふたりがパントリーで用意しているとき、自動車のエンジン音が響いたのにふたりは驚かされました。まるで予想もしなかったことが起こったのですから。
議員一行は何の挨拶もなく孤児院から去って行ったのです。そして応接室に置かれていた孤児たちの資産もかれらと一緒に姿を消していました。ノートパソコン・携帯電話・商品である携帯電話度数買い足し用バウチャー75万ルピア分まで根こそぎやられました。それらは孤児や身寄りのない者の生計を助ける品だったのです。
ニセ議員一行の皆さん、もし恥をお感じなら、それらを小包みにして返してください。この被害にショックを受けた孤児のひとりは、いまだにバンドンのハサン・サディキン病院に横たわったままで、復帰できるめどが立ちません。この子は携帯電話度数買い足し用バウチャーの商売をこつこつと行なって一年間貯えた成果が一瞬にして失われたのですから。[ 西ジャワ州パダララン在住、ラシッ・ムナンダル ]


「詐欺の手法は限りなし」(2013年4月3日)
2012年12月22日付けコンパス紙への投書"Penipuan Berkedok Penyelenggara Acara"から
拝啓、編集部殿。詐欺の被害者になったのはわたしとわたしの友人です。2012年1月、ロスダ・Wという名の中年女性が自信満々の態度でわたしと友人にPTコマツの社員家族の集いイベントを請け負う仕事を一緒にやらないかと誘いかけてきました。総利益の三割がわたしどもの取り分です。あとからあとからおいしい話を約束するので、わたしどもはその話に乗り、ふたりしてブカシ県チカランバル住宅地のかの女の家まで1千5百万ルピアを届けました。
いざイベント実施当日がやって来たとき、かの女の本性が姿をあらわしはじめました。あれこれと口実をつけ、手練手管で実施の延期を求めたのです。期限など曖昧なままに。あげくのはてに、かの女は一家まるごと、これまで住んでいたブカシのその家から、何のあいさつもなく姿を消しました。携帯電話番号も死んでいました。その家は自分の持ち物でなく、単なる借家だったことがそのとき判明したのです。その家の隣近所に住んでいる住民の話によると、その家には詐欺の被害者が何人も足繁く訪れていたそうです。ロスダ・Wは知らぬ間にそこに住み着いたが隣組に何の届けも出さず、そしてまた知らぬ間に姿を消しており、まるでまぼろしのようだ、と隣組長は語っていました。
噂では、ロスダ・Wはブカシ県チカラン近辺に住んでいるようです。新たな被害者が出ないことを希望します。イベントオーガナイザーの形をとった詐欺のスタイルに、お気をつけください。[ 西ジャワ州ブカシ市在住、タウフィッ・ヒダヤッ ]


「詐欺事件もひとつ間違えば殺人事件」(2013年4月22日)
2012年12月6日付けコンパス紙への投書"Ibu Lanjut Usia Tertipu dengan Ancaman Narkoba"から
拝啓、編集部殿。77歳になる老齢のわたしの姑が詐欺の被害を蒙りました。詐欺師が老齢で病気勝ちなわたしの姑を催眠術で餌食にしたのです。実に悲しむべきできごとです。
前日の夜、ひとりの男が姑に電話をしてきて、あなたの娘がナルコバ(麻薬不法薬品)を所持していたために逮捕されたと言いました。そして娘を釈放してやるから、今すぐにATMから1千5百万ルピアを指定口座に入金せよと要求したのです。老いさらばえている姑は催眠術にかけられ、深夜2時前に銀行に走りました。姑が振り込みに使ったのは、姑の体調が悪化したときに備えて持っていたお金でした。そのとき姑の傍にいたのが女中一人だけだったのは実に残念なことでした。姑は力を失い、催眠術に導かれて家を出、家からおよそ7百メートル離れたBCA銀行ATMにオートバイオジェッに乗って向かいました。
詐欺師が要求した1千5百万ルピアの送金は実行されました。警備員が不審を抱いたために、詐欺師が続けて要求した金額が送金されなかったのは不幸中の幸いでした。警備員は姑が行なおうとしていた送金プロセス操作を禁じたのです。一時間ほどして催眠術に支配されていた姑の意識がやっと平常に戻り、娘(わたしの妻)に電話しました。そして夫や子供たちと一緒に自宅にいてまったく警察沙汰とは無縁な娘の様子を確認したのです。
あまりにもひどいではありませんか!もちろん失われたお金をまた稼ぐことは可能ですが、もう老齢で何度も入院を繰り返している姑の健康を思えば、この詐欺は姑に大きな危険をもたらすものに他ならなかったのですから。[ 中央ジャカルタ市スネン在住、トゥグ・プラスティヨ ]


「SMS広告のオンライン航空券はアブナイ」(2013年5月25日)
2013年1月27日付けコンパス紙への投書"Waspadai Penawaran E-Tiket Via SMS"から
拝啓、編集部殿。わたしの弟は携帯電話に入ったSMSのために、E-Tiket Onlineの詐欺被害を受けたばかりです。SMS発信者はアルマダトラベルで、携帯電話番号082126663xxxのフェルディヤントという名前になっていました。そのSMSには会社のウエッブサイトwww.armada-travel.comが記されていましたが、会社の住所であるジャカルタのタムリン通り25番地というのは虚偽のものです。その住所はアルマダビルだそうですが、そんな名前のビルはタムリン通りにありません。
弟はガルーダ航空ジャカルタ⇒ロンボッの航空券5人分5百万ルピアをカランアニャルが住所のアディ・スタルヨ名義マンディリ銀行口座番号9000010342xxxに振り込みました。また、ガルーダのエージェントを自認するアムリさんという人もいました。電話番号は085222252xxxです。
振り込んだら、それでぷっつりです。ウエッブサイトも消えてなくなり、電話番号もつながりません。マンディリ銀行は上の口座を凍結するようお願いします。ほかの被害者が出る前に。[ 南ジャカルタ市在住、ドリー・スティヨワティ ]


「シンガポールの詐欺ショップ?」(2013年7月20日)
2013年3月23日付けコンパス紙への投書"Pengalaman Pahit Belanja di Lucky Plaza Singapura"から
拝啓、編集部殿。秩序が整って規律正しいことで知られている国シンガポールで数日前にショッピングしたときの体験談を皆さんに聞いていただきたいと思います。わたしはオーチャードロードのラッキープラザにあるDABエレクトロニックで電気製品を購入しました。
1,100Sドルと価格が表示されていたため、その種の電気製品の中ではけっこう廉価だと思い、わたしはそれを購入しました。わたしはその支払いをSt ChとDnmn銀行の二枚のクレジットカードで行ないました。クレジットカード支払い証憑にサインするとき、わたしはあまり警戒していなかったので内容を詳しくチェックすることを怠りました。おまけに、サインするとき店員が執拗に話しかけてきたので、気が散ったことも確かです。
しばらくして、わたしが買ったものと支払い証憑に書かれている品物が異なっているのに気付きました。つまり、わたしがサインした支払い証憑の内容は6,200Sドルもする別の品物だったということです。それが判明したのは、不審なダブルの支払い請求が来ているとStCh銀行がわたしに電話してきたからでした。
わたしが買った商品に関係しないフロードの要素が感じられたので、わたしは銀行側に支払いブロックを要請しました。しかし上述の二銀行はわたしの要請を拒否して詐欺師からの請求を通したのです。
シンガポールで買物するときでも、警戒意識を高めて、緻密にそして注意深くチェックすることを励行しましょう。わたしの体験談が皆さんのお役に立てば幸いです。[ バンドン在中、デミン・テ・ミンシェン ]
2013年4月6日付けコンパス紙に掲載されたシンガポール政府観光局からの回答
拝啓、編集部殿。デミン・テ・ミンシェンさんからの2013年3月23日付けコンパス紙に掲載された投書に関して、次の通りお知らせします。シンガポール政府観光局は消費者の利益を守り消費者保護を強化することにコミットしているシンガポール消費者協会と協力して、シンガポールで買物する観光客の安全感を向上させることに努めています。
当方はデミン・テ・ミンシェンさんに、必要書類を添えて公式に苦情を提出されるようお勧めします。提出先はこちらです。
http://www.yoursingapore.com/content/traveller/en/contact-us/feedback.htmlあるいはstbindonesia@stb.gov.sgに連絡いただき、当方がシンガポール消費者協会とのコミュニケーションを斡旋することも可能です。
シンガポール政府観光局はインドネシアからのシンガポール訪問客の皆さんに明言します。観光地の最前線にあるシンガポールの評判に傷を付けるあらゆる不正行為や事件に対して当方は真剣に対応しております。すべての観光客の皆さんは買物の際に十二分に警戒され、信頼できる販売店だけを買物場所に選んでください。[ シンガポール政府観光局インドネシアカントリーダイレクター、スハイミ・サイニ ]


「警察の名を騙るサイバー詐欺」(2013年8月6日)
2013年5月18日付けコンパス紙への投書"Oknum Polisi Gadungan Menipu Lewat Dunia Maya"から
拝啓、編集部殿。わたしがアイフォンかブラックベリーを買おうと思ってインターネットを探していると、kaskus.co.idの売買サイトにぴったりの広告が見つかりました。売り手側の説明では、国家警察本部に勤務しているメンバー5人から成るチームが国家警察協同組合の物品を販売しているのだということでした。わたしはそれを信じ込んで、2013年3月31日にBCA銀行口座番号5310422675名義人フィフィ宛てに510万ルピアを振り込んだのです。
ところが品物の発送をかれらはずるずると引き延ばし、4月13日を最期にすべての連絡先が閉ざされてしまいました。情報を集めたところ、カスクスのその広告に引っかかった会員は少なくなかったようです。かれらは警察の名前を騙ったのですから。国家警察のサイバー犯罪を担当する部署にこの事件を徹底糾明するようお願いしたいと思います。[ 西ジャワ州カラワン県在住、アディティア・プラユディ ]


「景品当選通知詐欺の手口」(2013年8月13日)
2013年5月2日付けコンパス紙への投書"Penipuan Berkedok Akun Internet"から
拝啓、編集部殿。国家警察長官あるいは通信情報大臣はテルコムセル景品という餌で消費者を詐欺の落とし穴に誘いこむ連中に措置を執ることはできないのでしょうか?今やスマートフォンを介したインターネットが全国津々浦々にまで普及しているおかげで、この手の詐欺に引っかかった消費者はたくさんいると思われます。これは撲滅されなければならないウイルスなのです。
2013年4月11日午前6時半、わたしの携帯電話に+628234465xxxから無記名のSMSが入りました。そのSMSによれば、わたしの携帯電話番号がGebyar Poin TelkomselからPIN番号b89c7h9で賞品が当たったそうで、詳細をwww.semaraktelkomselpoin.blogspot.comで確認するように勧めていました。
Program Undian Telkomsel Poin Edisi Tahun 2013というタイトルのそのページを開くと、わたし宛に届いたPIN番号が当選番号リストの中に入っており、責任者としてPTテルコムセル代表取締役アレックスJシナガ氏の名前と写真、広報部長Hフィルマン・グンチョロ氏の名前と写真も載っています。電話番号085210790099のフィルマン・グンチョロ氏の確認事項によれば、わたしの得たPIN番号は二等当選でトヨタオールニューアヴァンザが一台もらえると言うのです。自動車番号証明書(STNK)と自動車所有者謄本(BPKB)の名義変更費用は当選者が半額負担するという条件がついており、手続きは南ジャカルタ市警本部交通局長のナナン・スカルナイン警察長が責任を持って行なうことになっていました。わたしのコンタクトに対して交通局長は、わたしが負担する費用金額の計算をするので、しばらく待つように、と言いました。しばらく待たされてから、費用総額は578万ルピアであり、その半額を交通局長の会計係りの口座に振り込むよう命じられました。言われた口座はBRI銀行口座番号0028−01−050157−500で、名義人はリリス・スティアワティです。わたしはかれらの手口を確かめるためにそこまでフォローしました。読者のみなさんが詐欺の被害者にならないよう、願っています。[ 北スマトラ州シディカラン在住、ワヒディン C ]


「ナルコバ詐欺」(2013年10月18日)
2013年7月20日付けコンパス紙への投書"Penipuan dengan Dalih Tertangkap Pakai Narkoba"から
拝啓、編集部殿。6月末のある深夜1時半ごろ、夫が「警察だ」と名乗るひとからの電話を受けました。そのひとが言うには、うちの子供がナルコバ(麻薬覚せい剤)を使っていて警察に逮捕されたのだそうです。
「もしその子の釈放をご希望なら、今すぐATMを探して8千万ルピアを振り込んでください。」というのが電話でのオファーでした。 夫は多分理性を失ったのでしょう、その話を少しも疑わずに相手の言いなりになりました。もちろん、わが家にはときどき夜中にどこかへ出かけて行く息子がいるのです。
電話の主の一部のすきもないシチュエーション設定に、わたしどもは完全に乗せられてしまいました。電話の主は「新聞記者が大勢集まってきているから、このことは誰にも知られないようにしなければならない。お宅の息子さんは気の毒だ。」などと語るのです。午前3時ごろに、夫は2千5百万ルピアを振り込みました。
ところが電話の主はわたしどもに、「お宅の息子さんには法的措置が取られる」と言って脅しをかけ、夜が明けてからもつきまとってきたため、結局夫は総額で2億ルピアを相手に支払ってしまいました。
その日の昼ごろ、息子から電話があり、息子は友人のアパートに泊まっていたと連絡してきたのです。ナルコバの事件など、まったく息子には関係のないことでした。そのときになって、わたしと夫は詐欺の被害者になったことにやっと気付いたのでした。[ 南ジャカルタ市クバヨランバル在住、マリア ]


「チェックインカウンターでも詐欺!」(2013年11月06日)
2013年7月28日付けコンパス紙への投書"Tarif Bagasi Tiger Airways"から
拝啓、編集部殿。2013年6月13日午前8時にわたしはスカルノハッタ空港2Dターミナルのマンダラ/タイガー航空チェックインカウンターでシンガポール行きフライトのチェックインをし、60kgのバゲージに対して超過料金を払いました。15kg当たり29Sドルという計算です。チェックインカウンター担当者はわたしに29Sドルx1万ルピア超のレートをかけて291,740ルピアになると言い、それを292,000ルピアに丸めた上で、292,000x4の1,168,000ルピアを支払うよう命じました。
わたしはスカルノハッタ空港タイガー航空職員に騙されたにちがいありません。それはタイガー航空のバゲージ支払い規定に沿っていないのですから。わたしはシンガポール空港のタイガー航空でバゲージ料金システムの説明を求め、正しい詳細な情報を得ました。6月17日にわたしはスカルノハッタ空港タイガー航空職員が行なった不正行為の届出を行いました。[ 東ジャカルタ市ジャティヌガラ在住、ケン・メイラン ]


「新手のインターネット詐欺」(2014年2月13日)
今やだれもがインターネットの社会メディアに自分のアカウントを持つ時代。そしてそんな世の風潮を詐欺師も利用する。国会議員から行政機構の著名人や有力者も、そんな風潮に乗らないひとはいない。
トハリ国民協議会副議長も自己PRや支持者との対話にフェイスブックを使っている。そして、かれに親しいひとびとに詐欺師が罠をかけたのである。トハリ氏は自分の名前が騙られて友人たちが詐欺師に金を詐取されていることをまったく知らなかった。ところがあるとき、ふとした機会にそれが明るみに出たのだ。携帯電話プルサの購入資金に10万ルピアを下の口座に振り込んでくれ、というトハリ氏の名前のついたメッセージが友人たちのフェイスブックアカウントに届いていたのである。調べていくと、全部で180万ルピアを振り込んだというひとや、60万ルピア、50万ルピアなどというひとがごろごろと出てきた。同じメッセージが何回も送りつけられていたことが明らかだ。そのメッセージの出所が本当にわたしのアカウントからかどうか、わたしのアカウントをチェックしてみてください、とかれは詐欺に引っかかった友人たちに忠告した。
一方で、かれはこの詐欺師にお灸をすえてやろうと考え、首都警察に被害届を出した。なにしろ国民協議会副議長の名前を騙った詐欺事件だから、放置しておけば国家の威信にかかわろうというもの。首都警察特殊犯罪捜査局サイバークライム次局は被害者の副議長氏やその友人たちのインターネット通信記録を調べて、北スマトラ州アサハンにあるワルネッから発信されていたことを突き止めた。さっそく8人の捜査員がアサハンに派遣され、容疑者N29歳の所在を確かめて取調べにかかった。本人の住居からラップトップコンピュータ、SIMカード12枚、携帯電話機2個といった証拠品が押収され、Nも取調べに対して自供したため、警察はNの犯行の全貌を暴きだすために捜査を継続している。
フェイスブックだけでなくツイッターからEメールまでハッカーはあらゆるところに侵入してあなたから利益を搾り取ろうとしているので、インターネット利用者は極力警戒するようにと警察は市民に警告している。


「不法コピー品はモールから排除された!?」(2014年2月21日)
2002年法律第19号著作権法は、テナントに対して著作権を侵害する物品の販売を禁止するようショッピングセンターに命じている。ただし、ショッピングセンター側に取締りの権限はなく、法執行を行なうのは官憲だけ。
ショッピングセンターとテナントの関係はあくまでも商業上の枠内に限定されており、ショッピングセンターがテナントの違法行為を発見したら、その事実を官憲に届け出ること並びにテナントとの契約を断ち切ることの二点が求められているだけ。
ショッピングセンター経営者協会役員によれば、ショッピングセンターはこの法律の内容をテナントに詳しく伝えており、今ではどのショッピングセンターでも著作権違反商品は影をひそめているとのこと。「消費者がニセブランド品をつかまされることを防止するこの法律はきわめてポジティブなものと受け止められている。テナントとの契約の中にもこのポイントは織り込まれており、テナントがそれを知らないということはない。もしテナントが著作権違反商品を扱ったなら、ショッピングセンターはテナントに警告書を与え、テナントがそれを無視すれば契約満了期日が来る前に契約を終了させる。昨年からこの規定が完全施行されたため、今や大半のショッピングセンターはニセモノのないクリーンな状態になっている。大型モールは特にクリーンになっているが、中には例外がないわけでもない。」
著作権違反商品のメインはコンピュータソフト、映画、音楽、バッグなどのファッション商品。政府は現行著作権法の改定時期が来たため、その内容検討に入っている。今やコピーライト侵害はもはや単純な著作権の問題を超え、国際通商に影響を与えるものになってきていることから、著作権法の中にその要素を織り込まなければならないと商業省副大臣は語っている。その関連で商業省がこれから取って行く方針は、著作権法の完全施行、何がオリジナルで何が不法コピーかという定義に関する知識を国民の間で常識化させること、オリジナル品生産者に対するインセンティブを用意すること、の三つがポイントである由。


「詐欺に利用される筒抜け個人情報」(2014年4月23日)
2013年10月10日付けコンパス紙への投書"Waspadai SMS Undangan Seminar"から
拝啓、編集部殿。「あなたは2013年8月24〜25日にジャカルタのアルヤドゥタホテルで開かれる教育文化省教育文化総局主催の教育者/教員能力と資格向上のセミナーに招かれています。ムストファ殿(あなたの出席番号は9992277です)。おひとり5百万ルピアの交通費と宿泊費は教育文化省教育文化総局の負担です。」
2013年8月20日11時43分36秒に081242756964番から届いたSMSの内容はそうなっていました。そのSMSはさらに続けて、「その交通費と宿泊費を現金で今受け取るために、セミナー実行委員長である中等教育総局長ハミッ・ムハンマッ理学修士・学術博士に電話番号081296356407までコンタクトしてください。」
そのSMSにはわたしが勤務している学校の校長名と肩書きが完璧に記されていたため、わたしは最初それを信用してしまいました。ところが、わたしがその携帯電話番号に連絡したところ、話の方向がぼやけて行き、最後にはハミッ・ムハンマッ氏の名を騙る悪人の不埒な言葉で会話が終わったので、わたしはそのSMSの信憑性に大いに疑惑を抱きました。
結局、わたしだけにその詐欺SMSが届いたのでないことが判明しました。みんなはそのSMSをほとんど信用していたのです。このようなSMSを受け取ったみなさんに警告します。総局長が自らセミナーの実行委員長になることはありえません。その相手にコンタクトしたあと、最終的にセミナー参加者がお金を振り込むように落とし込まれていくのは確実だろうとわたしは考えます。[ スマラン市在住、ムストファ ]
2013年10月18日付けコンパス紙に掲載された教育文化省からの回答
拝啓、編集部殿。ムストファさんからの2013年10月10日付けコンパス紙に掲載された投書に関して、教育文化省の名前を騙った詐欺SMSを信用しなかったムストファさんの対応に教育文化省は感謝の意を表します。
教育文化省が行なうこのような催事には必ず公式招待状が出され、SMSが使われることはありません。また特別な記載がない限り、その種の催事では国家予算が使われます。もし催事への招待状で、お金を支払うよう求めているものがある場合、その招待状は贋物です。
国民の皆さんにお知らせします。教育文化省に関連することがらで、不審や疑惑を感じられた場合、コールセンター(021)5703303、ファックス(021)5733125、SMS0811976929、Eメールpengaduan@kemdikbud.go.id経由で情報センター広報部にお問い合わせください。[ 教育文化省情報センター広報部長、イブヌ・ハマッ ]


「渡した金は戻らない−その1」(2014年4月28日)
2013年10月27日付けコンパス紙への投書"Penipuan Rumah Berkedok Kluster"から
拝啓、編集部殿。このできごとが起こってもう7ヶ月以上が経過しました。わたしはブカシのポンドッグデ(Pondok Gede)にあるジャティマッムールレジデンスという住宅地の住宅を一軒購入しました。価格は3億2千万ルピアで、わたしは5千万ルピアの手付金を払いました。ところがその住宅を別のひとが再販したため、わたしは購入をキャンセルしました。要するにわたしは手付金の返却を要求したのです。ところがもらったのは言い訳ばかりでした。結局わたしはブカシのポンドッグデ警察にクラスターオーナーのシャリフとマーケティング担当のスリヤディを横領犯として訴え出ました。ところがかれらはドリームランドチクニールという住宅クラスターを新たに売り出していることを耳にしました。実に奇妙です。犯罪者が逮捕されることもなく、いまだに自由に動き回っているなんて。[ ブカシ市在住、サミッ ]


「渡した金は戻らない−その2」(2014年4月29日)
2013年10月27日付けコンパス紙への投書"Uang di Condotel Sentul City"から
拝啓、編集部殿。2013年8月31日、西ジャワ州ボゴール県スントゥルシティのアラナコンドテルの第2回ユニット選びローンチングにブッキングフィー5百万ルピアを納めて参加しました。売買契約に至らなければブッキングフィーは全額返金されるという添え書きが付いていました。わたしの整理番号は142で、売り出されているユニットは105軒だけです。わたしの番号が呼ばれ、ユニットと支払い方法を選ぶために管理担当カウンターへ行くように言われました。ところが、整理番号51番以降は販売価格が引き上げられていたのです。そのことが最初から判っていれば、わたしは142番という整理券を手にすることはなかったでしょう。わたしは3ヶ月の分割払いにするので割引をくれるように、販売担当取締役宛てに要請状を書きました。するとその手紙に「2013年9月2日に返事する」という文章が書かれて戻ってきました。
ところが一週間たっても返事がありません。それでわたしは9月7日にマーケティングスタッフのイルナさんに会い、割引についての話し合いをしましたが、まったく合意できない内容でした。わたしは結局この購入を諦め、ブッキングフィーの払い戻し先口座番号を教えて帰宅しました。ところが、いつまでたっても口座入金がないのです。
販売担当取締役・販売マネージャー・販売スタッフのイルナさんの三者連名でこの問題に関するファックスとeメールを送りましたが、回答がありません。そうこうしているうちに、9月17日にイルナさんからSMSが届き、ユニット選択まで行なってからの取消しなのでブッキングフィーは返却されない、という回答が届きました。各ユニットの広さはまちまちであるため、ユニットを指定しなければ価格がわからないではありませんか。勝手に引き上げた価格からの割引を求めて、それの折り合いがつかなかったから取消したというのが事態の経緯であるというのに、まったくピントの外れた理由を言ってブッキングフィーを返却しないのは納得が行きません。[ 東ジャカルタ市在住、ティアル・イラワディ ]


「渡した金は戻らない−その3」(2014年4月30日)
2013年10月27日付けコンパス紙への投書"Purbalingga Menjadi Probolinggo"から
拝啓、編集部殿。2013年9月5日、わたしの携帯電話に089683242379番からSMSが入りました。内容はサムスンギャラクシーフェームのオファーで、56万5千ルピア、送料込みで60万ルピアというのが代金でした。電話すると、相手は中部ジャワのレンバンの者だと名乗り、わたしがどうしてそんなに廉いのか尋ねると、港で直接受け取ったからだという返事でした。とても信頼できる印象だったので、わたしは翌日60万ルピアをスブール名義のマンディリ銀行口座番号900−00−1695025−6に振り込みました。すると小包み発送レシート番号が送られてきました。その番号をチェックしたところ、4月16日に発送されたことがわかりました。わたしが電話の相手にそのことを確認すると、それは顧客登録番号でありレシート番号ではなく、品物は明日発送されるので大丈夫だ、と言うのです。
ところが、いつまで待っても小包みが送られてこないため、9月7日に問い合わせの電話を入れてみました。すると、「多分クオータが多すぎて時間がかかっているのだろうから、もうちょっと待ってみたら?」と言うのです。わたしはまた待ってみることにしました。するとその翌日、相手からSMSが届きました。「中部ジャワのプルバリンガを東ジャワのプロボリンゴと間違って宛名を書いてしまいました。品物は、結局紛失してしまいました。」
わたしが詐欺の被害者になったことをそのとき悟りました。わたしは60万ルピアのお金を諦めなければならなくなったのです。ところが、089683242379番という番号はいまだに使われているのです。当局はこのような詐欺行為をすぐに取り締まってください。[ プルバリンガ在住、サルヤティ ]


「渡した金は戻らない−その4」(2014年5月2日)
2013年12月30日付けコンパス紙への投書"Uang Pungutan di SMP 4 Kota Tangerang Selatan"から
拝啓、編集部殿。バンテン州南タングラン市当局からの手紙には、生徒の親や父兄からの徴収金をとりやめ、既に集めた資金は返却するようにという南タングラン市国立第4中学校長宛の命令が記載されています。飛び級、優良級、レギュラー級の生徒の親や父兄から徴収した金がその資金の内容です。それを2013年11月7日までに親や父兄に返却するよう、その告諭書は命じています。
ところが、親や父兄が既に納めた金は返却できないと学校側は主張しています。その理由がなんと、11月5日に開かれた会議で、既に納めた金は学校側に進呈するという親が何人かいたから、というものでした。その何人か以外のひとは返却を望んでいるわけで、全員が返さなくてもよいと言っているわけではありません。
資金の徴収を開始したときは生徒の親をひとりひとり面接し、金額をいくら納めるかということの合意を結んだというのに、返却しなければならなくなったら、もうそういう面接をしようともしないのはどういうことですか?南タングラン市教育局長の告諭の手紙の役割はいったい何なのか、明確にしていただきたいと希望します。[ 南タングラン市在住、エディ・マルラン ]


「アブナイ旅行クラブ会員」(2014年8月1日)
2014年5月5日付けコンパス紙への投書"Bali Worldwide Bikin Rugi"から
拝啓、編集部殿。ジャカルタのタムリン通りにあるサリナビルに事務所を持つクラブバリワールドワイドという観光クラブ会社の会員になったわたしと妻は、5州に支店を持つその会社から損害を蒙りました。
2013年7月7日、わたしどもはKBP373という番号の会員契約書にサインしました。わたしどもは、2,640ポイントのダイヤモンド会員を選択し、1億5千9百万ルピアを全額支払いました。
2013年8月、わたしどもはメンバーシップを使ってバリへの家族旅行を計画しましたが、宿泊先に選んだクラブバリスイートジャヤカルタホテルが満室だという理由で実現しませんでした。2013年のクリスマスをバリで過ごそうという計画も、前回と同じような理由をクラブバリワールドワイド側が出してきました。しかしその計画を申し出たのは3ヶ月も前なのです。
クラブバリワールドワイドはわたしどもに損害を与えました。わたしどもは納めたお金を返してもらうよう希望します。そして、もらった無料バウチャーはすべて返却します。[ 東カリマンタン州バリッパパン市在住、ジェニー・ニルワン ]


「投資詐欺はなくなるか?」(2014年8月14日)
未知の人間に電話をかけるなどして金融商品を売り込むテレマーケティング(遠隔販売)に対する規制開始を金融サービスオーソリティが2014年7月24日付けで出された金融商品/サービスの販売における情報伝達に関する金融サービスオーソリティ回状番号第12/SEOJK.07/2014号で業界にリマインドした。金融サービス事業者はその商品販売のためにSMS・電話・eメールなどのツールを使用するに当たって、消費者あるいは民衆が同意したデータを使わなければならないことへの違反に対する取締りが開始される。それは個人が持つプライベートなツールでも、法人が持つものでも違いがなく、また同意は書面でも口頭でもかまわないが、同意が得られてはじめて販売者は相手に商品をオファーすることができる。
このテレマーケティングはこれまでも従業員でなく契約ベースのフリーランスの人間があたかも個人オファーのようにして出すものが少なくなかったが、上の回状にしたがえば、オファー者の立場が何であろうと事業主体のアイデンティティは最初から明確にされなければならず、その上で消費者が同意したときにはじめてオファー行為が可能になる。
また、金融サービス事業者が商品/サービス広告を出す際には、社名とロゴの掲載ならびにその会社が金融サービスオーソリティに登録され、且つ監督下にあることを表明する文言を添えなければならない。従来からも時おり大きな社会問題として投資詐欺が発生していたが、被害者の多くは常識はずれの異常な投資リターンに釣られて大きな被害を受けたケースが一般的であり、オーソリティは決してそのような商品に認可を与えない意向であることを表明している。
金融サービスオーソリティが2013年1月21日に苦情サービス窓口を設けてから2014年7月第一週までに苦情を訴えてきた消費者は1万9千人にのぼり、そのうちの8割近くは金融サービス業界の商品とサービス関連の情報要請だった。残りは苦情の訴えで、苦情された対象は銀行界が4割を占めた。
今回出された回状は、2013年8月6日付けで先に定められた金融サービスセクターの消費者保護に関する金融サービスオーソリティ規則第1/POJK.07/2013号の実施細則であり、2014年8月6日から施行されるその内容のリマインダーでもある。この規則が定められたあと、オーソリティはテレマーケティングの状況に関する市場サーベイを行った。ジャカルタ・スマラン・スラバヤ・メダンの住民6百人から得た感触では、テレマーケティングを通した金融商品のオファーは減少したとの印象が得られている由。


「儲け話で理性が停止する高学歴者」(2014年9月2日)
高学歴者でも投資詐欺に引っかかるので、消費者はもっと警戒心を強めるとともにファイナンシャルリテラシーの向上をはからなければならない、と金融サービスオーソリティ消費者教育保護担当コミッショナー会議メンバーが発言した。
「インドネシア人が投資を決意するとき、周囲の人間・家族・友人などが強い影響を与えている。高学歴であることがファイナンシャルリテラシーのレベルを保証していない。往々にして明晰な判断力は大儲け話への欲望に打倒され、おまけにそれが短期間であればなおさらに欲望が燃えさかる。さまざまなバックグラウンドのひとが『儲かる』投資に手を出し、そして詐欺の被害者になるのも稀でない。高学歴者なら、どんな話は論理的におかしいと感じ、金融サービスオーソリティが認可を与えたり監督しているかどうかを調べる考えを持っていいはずなのに、嘘八百の投資詐欺にひっかかっている。」
金融サービスオーソリティは、国民を投資詐欺の被害者にしないよう、ファイナンシャルリテラシー向上教育を与え、一方詐欺投資の発生に目を光らせることをミッションととらえ、その実現に向けてチャレンジしていく意向であると同メンバーは表明した。オーソリティが全国の20州で8千人を対象に行なったサーベイによると、国民のファイナンシャルリテラシーレベルは21.8%にすぎず、活用レベルは59.7%で、銀行セクターがもっぱらその対象になっていた。
オーソリティは国民へのファイナンシャルリテラシー教育を学校に持ち込む考えで、2014年の目標は24市での活動開始が掲げられている。全国2千6百の金融機関に対しても、消費者へのファイナンシャルリテラシー教育に着手するよう要請している。オーソリティは特にこの教育プロジェクトの対象として主婦に焦点を当てる意向。上述のサーベイでは、女性はリテラシーレベルが2.2%、活用レベルが3.4%しかなかった。しかし家庭の財布のひもを握っている主婦たちへの教育を進めることは将来性という大きな意味合いを持っており、1億1,830万人という女性国民総数のうちの主婦7千4百万人のファイナンシャルリテラシー能力を向上させることは、国民全般の底上げに大きく影響するものになるとオーソリティは考えている。


「バゲージ包装詐欺」(2014年9月10日)
2014年6月7日付けコンパス紙への投書"Bandara Banjarmasin dan Preman"から
拝啓、編集部殿。去る5月28日、わたしの一家はカルスターエアーでバンジャルマシンからソロへ飛ぼうとしていました。12時20分出発なので、11時ごろにチェックインするため、空港に到着しました。車から降りて、わたしはバゲージをトローリーに積んでターミナル内に入りました。
ターミナルのドアから入ったとたん、チェックインカウンターに向かおうとしていたわたしのトローリーから、6人のパッキング係員が問答無用とばかりにバゲージを取り上げてフィルム包装しはじめたのです。わたしはそんなことをまったく依頼していないというのに。
わたしと家族全員が驚いて呆然としている間に、バゲージはどんどんフィルム包装されていきました。わたしはその包装作業場所でかれらに丁重に尋ねました。すると係員は、バゲージを持って行ってかまわないが、料金を払ってからだ、と言います。わたしは金を払う気がありませんから、およそ20分間ほど言い合いが続きました。
かれらはバゲージを渡そうとしないので、わたしは全力を使ってかれらの手からわたしのバゲージをひとつずつ取り戻さなければなりませんでした。シャムスディン・ノール空港のようなレベルの空港で、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?わたしが孤軍奮闘しているとき、空港職員のだれひとりとしてその出来事に関心を抱き、近寄ってきたひとはありません。乗客に無理やりサービスを受けさせて料金を搾り取るようなビジネスを空港管理者は承認しているのですか?あるいは空港管理当局と裏で話がついているのですか?
その出来事はわたしども一家にトラウマを残しました。シャムスディン・ノール空港のクオリティは、ごろつきが徘徊する一般のバスターミナルと同じレベルなのですね。機内でわたしは周囲に座った他の乗客とこの話をしました。ほとんどのひとが、自分も同じような体験をしたがかれらに逆らう勇気がなかった、と言っています。シャムスディン・ノール空港経営者にお願いします。あのようなふるまいをしているパッキングサービス業者を改善させるか、あるいは空港内から排除してください。[ 中部ジャワ州クラテン在住、ウィディヤント ]


「なりすまし社会の恐怖」(2014年9月16日)
2014年6月26日付けコンパス紙への投書"Data Palsu Pinjaman Panin"から
拝啓、編集部殿。2013年11月、パニン銀行からの請求書に驚かされました。わたしはパニン銀行から一度も借入れをしたことがありません。電話とeメールでパニン銀行に問い合わせたところ、わたしの名前マヤ・イマワティ、ムスティカラトゥ社従業員、は確かに借入者として管理されていることがわかりました。ただし、ムスティカラトゥ社協同組合(理事長スゲン・プリバディ)がパニン銀行から借入している資金の被融資者としてです。
わたしはムスティカラトゥ社の従業員ではありません。そしてパニン銀行との取引も一切ありません。わたしはパニン銀行にこの問題を早急に解決するよう依頼しました。これはわたしの名誉と社会的評価に関わる問題であり、わたしとわたしのファミリーの事業運営に障害をもたらすからです。
わたしはパニン銀行に電話とeメールで拒否と不服の表明を行いました。しかし、もう6ヶ月が経過したというのに、進展はまったく見られません。パニン銀行のアテンションをお願いします。[ 東ジャカルタ市在住、マヤ・イマワティ ]


「参詣ツアー詐欺」(2014年9月19日)
2014年6月28日付けコンパス紙への投書"Penipuan Bergaya Ziarah dan Rekreasi"から
拝啓、編集部殿。学生生徒の長期休みを狙う旅行詐欺師が公共施設を巧みに利用しています。クラリッサツアーがあちこちのカソリック教区で告知板にポスターを貼り、チラシを撒いて、中部ジャワ東部ジャワへの参詣と慰安のツアーに参加者を募っています。中央ジャカルタ市テレシア教会告知板に貼られたポスターによれば、2014年5月25〜29日にひとり10万ルピアでツアーが実施されるとなっていました。出発日は2014年5月25日午前6時で、集合場所は南ジャカルタ市ブロックBのセントヨハネス教会前です。
チラシに記されている要項に従って、イイン・ワヒユニ名義のBCA銀行口座番号684−028−2528に送金し、電話番号021−49668062もしくは081585577177に電話しましたが、どちらの電話番号もだれも出ません。そして出発当日、セントヨハネス教会の近くにツアーの乗物は一台もやってきませんでした。
教区管理事務所は参詣慰安ツアーのポスターを誰にでも告知板に貼らせるようなことをしないでください。教徒が詐欺の被害者になるのを防ぐために。[ 西ジャワ州ブカシ在住、ウエンディ・ラジフ・スティッノ ]


「狡猾な詐欺の手口」(2014年12月4日)
2014年9月6日付けコンパス紙への投書"Penipuan Mengatasnamakan Anggota TNI"から
拝啓、編集部殿。国軍兵士を名乗るニセモノが行なう詐欺事件が最近また活発化しています。いくつか異なる場所で行なわれた手口はみんなそっくりのものでした。食べ物ワルンで大量の料理を注文するのです。
店主は急いでその料理を作るために大わらわとなり、また時間もかかります。そのチャンスを詐欺師は待ち構え、仕事に没頭している店主にオートバイを貸してくれと頼むのです。「ちょっと本部に戻ってくるから」という理由を真に受けた店主が承諾すると、そのニセモノはオートバイと一緒にドロンするのです。
この手口はかなり頻繁に使われていますが、いまだに引っかかるひとが絶えません。この詐欺行為は被害者に損害を与えるだけでなく、国軍の名前にも傷がつくのです。
国軍と警察はこのニセモノ軍人詐欺師を早急に逮捕して、民衆が安心して経済活動が行なえるようにしてください。また民衆も、国軍兵士と名乗る人間がオートバイや携帯電話を貸してくれと言っても、すぐに信用してはなりません。軍人や警官を名乗る怪しい人間はすぐに国軍地区司令部や所轄の警察署に届け出ましょう。[ 中部ジャワ州スラカルタ市在住、サンティ ]


「恥知らずな剽窃行為」(2015年2月16日)
2014年9月20日付けコンパス紙への投書"Plagiarisme di Perpustakaan"から
拝啓、編集部殿。大学や自治体あるいは民間の図書館をよく利用する者のひとりであるわたしは、異なる著者が書いた別々の書籍と論文の中味がほとんど違わない事実を前にして愕然としました。活字であれインターネットであれ、頻繁に参考書を当たる読書人であるわたしには、そのふたつの著作のひとつが盗作であるように思われるのです。そのいずれが剽窃者であり、いずれが被害者なのかについて、わたしはまだ十分深い判断に達することができていません。
ガジャマダ大学哲学科修士プログラムの課題としてエレン・クリスティアニ・ヌグロホ氏が書かれた論文は「アーチー・J・バームの哲学」と題するもので、チレボンのシェッヌルヤティ国立イスラム大学教官チェチェップ・スマルナ氏の出版書籍は「本質から価値への哲学」というタイトルですが、エレン氏の論文は2001年に書かれたもので、一方チェチェップ氏の著作は2004年に出版されています。何年に出されたものかということだけ見るなら、前者が被害者なのかも知れませんが、より深い状況調査は不可欠でしょう。
学究の徒としてわたしはこのようなことが起こったのをたいへん遺憾に思います。ましてやその両者が同じ知識人なのですから。教育文化省がこの投書に関心を抱き、愛するわれらが祖国の学術界が持たなければならない威厳を確立させるために、剽窃というインテリ犯罪に措置を取るよう希望します。[ ヨグヤカルタ特別州バントゥル県在住、ググン・エル・グヤニ ]
2014年10月20日付けコンパス紙に掲載された教育文化省からの回答
拝啓、編集部殿。2014年9月20日付けコンパス紙に掲載されたググン・エル・グヤニさんからの投書について、剽窃行為は学術界の規範に違反するものであるため、実行者には罰が与えられなければならないことを教育文化省は表明します。
その罰とは2010年国民教育大臣規則第17号に則したものになります。今回のケースでは、図書館もしくは関係者の大学が調査を行なうことになり、状況を明らかにして剽窃行為を行なった者がだれなのかを特定しなければなりません。
より詳細な情報が入用であれば、教育文化省情報広報センターにお問い合わせください。住所は南ジャカルタ市スナヤンのスディルマン通り、郵便番号10270です。[ 教育文化省情報広報センター長、イブヌ・ハマッ ]


「著作権侵害の巣窟は大学」(2015年4月29日)
インドネシアで出版物に付随する知的財産権を侵害する最大の敵は大学であり、教官や学生がその中心を占めている。学生は出版物のフォトコピー複製を作って書籍を買おうとせず、特に高額書籍は間違いなくそういう処遇がなされることに決まっている。教官の方は、自分の論文や著作の中に他人の文章をコピペするのが得意だ。特に、優秀な学生が書いた論文の中味が、教官の著作物の中にそのまま出てきたりするから、インドネシアの学術界と剽窃行為は切っても切れない間柄になっているにちがいない。
2013年にインドネシア著作再生財団が5大学で3千人の回答者から集めた統計によれば、「知的財産権侵害をしたことがある」と答えた者は100%にのぼった。その内容の詳細は次のようだった。
教官については、海賊行為13.1%、無断複製79%、他人の著作を改作7.9%。学生は、海賊行為34.3%、無断複製54.7%、他人の著作を改作11%。そして書籍の無断複製はありきたりの行為であって、法律を冒すような悪事ではないと教官も学生も思っている。
「出版社と著作者に無断で書籍を複製する行為は従来から普通の行為と見られてきた。インドネシアのすべてのキャンパスでそれが行なわれている。」と著作再生財団理事長はコメントしている。著作権に関する2014年法律第28号では、書籍の無断複製は1部だけ個人用途に限って行なうことが限度とされており、しかも書籍のすべてを複製することは許されていない。その違反行為に対しては、1〜10年の入獄あるいは1〜40億ルピアの罰金刑が科されることになる。インドネシアの社会生活に著作権法の内容に関する啓蒙告知がいかに行なわれていないかということを、現状が示している。
「大学教育のために行なわれていることを法律や裁判の場に持ち出すのは場違いだという感覚がいまだに強い。本来なら、大学こそが学術分野における他人の知的所有権を尊重するのがあるべき姿なのだ。学術界に携わる者が相互に尊重しあうことこそ重要なのである。」と理事長は付け加えている。
著作再生財団は、現在行なわれている書籍の無断複製という違法行為を合法化させるための仕組みを社会化させようと努めている。この財団は出版社と著作者から出版物複製行為の許可を代行する権限を委託してもらい、個々の書籍について一万ルピアを納めることで一年間自由に書籍を複製することの承認を利用者に与えるのである。
著作再生財団顧問のひとりは書籍無断複製の現状について、音楽媒体から水をあけられてしまっている、と語る。「書籍や出版物の無断複製禁止キャンペーンは音楽産業ほど盛大に行なわれたことがなく、完全に差がついてしまった。音楽産業での著作権尊重は書籍よりはるかに進んでいる。ホテル・レストラン・カラオケは作者にロイヤルティを支払うのが普通になった。書籍出版者や著作者も、その作品が使用されたらロイヤルティが支払われるようにしなければならない。」
出版界では、世の中で行なわれている知的財産権侵害を法律の世界に持ち込む意志がことのほか弱いようだ。出版社経営者のひとりは、そんなことに関わる時間がもったないし、そんなことをして出費が大きくなっても困る、と心情を吐露している。


「経済犯罪それとも政治謀略?」(2015年6月5日)
南ジャカルタ市警犯罪捜査ユニットは南ジャカルタ市マンパンプラパタン4通りプルキス小路の一軒の民家を手入れし、そこで10万ルピア紙幣の贋札を作製していた6人を逮捕した。逮捕された男たちは31歳・36歳・50歳・48歳・44歳・24歳という年齢構成になっている。この逮捕劇は例によって市民からの通報が発端で、上記住所で贋札作りが行なわれているという匿名の連絡に従って警察が捜査を開始し、結局そのタレこみが事実であったことが明らかになった。
このグループのリーダー格31歳の供述によれば、かれは何者かに命じられて贋札作りを始めたという。正体が何者かよくわからなくとも毎週3〜4百万ルピアの現金を支給してくれるのだから、かれは雇われ人の感覚で命じられたことに精を出していたということかもしれない。
一味が行なっていた贋札作りの作業は、このような手順になっていたそうだ。
*10万ルピア紙幣の画像をパソコンで作る。
*その画像を白紙にスクリーン印刷する。
*セキュリティスレッドは細く切った包装紙をラミネート機器で貼り付ける。
*ホログラム効果を出すためにピロックスで彩色する。
*完成した贋札を規定のサイズにカットし、世の中に流通させる。
上の種々のテクニックはかれがインターネットから仕入れた情報が駆使されている。
南ジャカルタ市警の手が入ったとき、この一味の仕事は世の中に流通させる一歩手前まで来ていた。つまり、そのままで使える状態になっているストックがその家の中に蓄えられつつあったということだ。警察はその家で、既に使える状態になっているニセモノ10万ルピア紙幣194枚と、未カット状態の2百枚を押収している。またその家には、プリンター9台、ノートパソコン2台、貼り付け用ツール1台、スクリーン印刷ツール種々、インク多数なども置かれていた。
かれらの生産計画は、多分金主の指示に即したものだったのだろうが、一週間に1億ルピア分の10万ルピア紙幣を贋造し、総額50億ルピアができあがればこのプロジェクトは終了するという内容だった。
生産が予定通り完了すれば、かれらはガソリンスタンドやショッピングセンターで買物をしてそれらの贋札を世間に流通させることにしていた由。警察はかれらに贋札作りを命じた男を追跡している。


「高級車に気おされるなっ!」(2015年6月8日)
町中を走っている高級車の中に、車両登録や納税を何もしていないものが増加している。一見、ナンバープレートはちゃんとついているし、BPKBやSTNKも時に持っている者があるが、それらはすべてニセモノ。書類は偽造されたものであり、ナンバープレートは架空の番号か、そうでなければどこかで盗んできたものが使われている。首都警察はその状況を既に感知しており、高級車に対する検問を増加させている。
都民の交通秩序向上を目的に首都警察が行なっている順法作戦の中で、その種の高級車が2台、網にかかった。オレンジ色のロータスとメタリックグレーのメルセデスベンツCLA200だ。それぞれが捕まった場所はクラパガディンとプルイッで、その2台の間に関連性はない。
その2台に関してはSTNKすら持っておらず、またナンバープレートも一台は警察に登録されていないニセモノ、もう一台はある企業が所有名義人になっている2006年製ホンダジャズのものが、どうしたわけか、その高級車に取り付けられていた。さらにご丁寧なことに、警察のシンボルマークがそのプレートに貼り付けられており、ヒラ交通警官を近寄せない御守りに使われていたようだ。


「大学卒業証書偽造事件」(2015年7月15日)
大学あるいは短期の学院などが学業修了生に与える修業証書が売買されている事件が社会問題となった。その事実が摘発されたのはブカシにあるひとつの商業学院だったが、その学院の教育事業認可は取消措置が採られたものの、社会の声は「世の中の学歴詐称ははるかにマッシブなものであり、卒業証書の売買は一学院が例外的に行なったようなことでは決してない」というものだった。
名前は欧米の大学の分校のような印象を与えるものをつけ、教育活動は何もしないか、あるいはせいぜい少人数の塾のようなレベルでしかないが、しかし金をもらって卒業証書を発行してあげます、という非合法活動は昔からインドネシア国内に絶えたことがない。おまけに、今回摘発されたのはれっきとした教育活動を行なっている学院の不良経営陣と管理者が行なったものであり、なまじの似非教育機関に比べてはるかに深刻な問題が存在していることを示している。
そのようなことが行なわれる原因は、努力を嫌がり近道をして目的を達成しようとするジャランピンタス(jalan pintas)思想がインドネシア社会に深く根を張っており、そこに金のためならたいがいのことはしようとする金銭マニアックな民族的価値観が呼応し合って、学歴の根拠となる高等教育機関修業証書の売買という現象につながっていることがひとつ。もうひとつは、子供に大学教育を受けさせるための費用があまりにも高額になっているため、ミドルクラスでも決して楽な経済負担ではなく、ましてやロワーミドル階層にとっては手がかりを得るのがたいへん困難なレベルになっていることがもうひとつ挙げられる。
大学や短期学院などで正規の教育を受ければ2千万から1億ルピアかかるのであれば、何年もキャンパスに通うことなく5百万〜2千万ルピアの金で卒業証書を買うほうがはるかにスマートなやり方だと購入者は考えるにちがいない。ブカシで摘発された学院不良経営者のひとりは、金を払うから卒業証書を作ってくれという世の中の需要は凄まじいものがあり、心理的にその渦中に巻き込まれてしまったというような供述を取調べの際に語ったらしい。
いま、インドネシアの大学教育費用はどのようなレベルにあるのだろうか?もちろん大学により、また学部によって、いろいろと違いがあるが、コンパス紙の調査によれば次のような金額になっていると推定されている。
ガジャマダ大学医学部 1億5百万ルピア
インドネシア大学医学部 1億7百万ルピア
スラバヤ工科大学都市計画土木工学部 4,670万ルピア
ディポヌゴロ大学工学部 4,560万ルピア
卒業証書を金で買いたいひとは何が動機でそのようなことをするのだろうか?
コンパス紙R&Dが2015年5月27〜29日に全国12都市の電話帳からランダム抽出した17歳以上の回答者581に電話インタビューして集めた統計結果は次のような内容を示していた。
1)職業の場でのランクアップ 58.7%
2)社会ステータス・権威・カッコつけ 24.4%
3)面倒くさい・ジャランピンタス 6.5% 
4)偽造証書であることを知らない 2.2%
5)就職のため 1.4%
6)大学の費用が高い 0.7%
7)その他 0.2%
8)不明・無回答 5.9%


「ニセモノ洋酒が流通している」(2015年8月26日)
ホンモノの半額程度で売られているニセモノ輸入洋酒シンジケートをブカシ市警が追っている。一味はブカシ市内の倉庫にAbsolute Vodka, Bacardi, Black Label, Smirnoff Vodka, Gordons, Chivas, Jack Daniels, Martel, Red Labelなどのニセモノをストックし、一瓶20万から35万ルピアで小売販売していた。警察はその倉庫から種々の銘柄のニセモノ洋酒2千2百ボトルを押収し、また種々の銘柄のラベル、大型プラスチック製ドラム缶三本に入った使用済みアルコール、着色料と香料数瓶、ペンチ、ドライバー、ナイフなども押収した。警察が既に逮捕したシンジケートメンバーは販売を行なっていた南ジャカルタ市パサルミングに住む42歳と33歳の男、そして運び人だった56歳の男の三人で、ニセモノの製造場所に関わっている別のふたりを追跡中。
製造場所では、一味が入手したホンモノの空ボトルに応じた色と香りのニセモノを調合し、瓶に詰めてからラベルを貼り、ホンモノの蓋とニセモノのチュカイラベルを添付してから倉庫に送り込んでいた模様。
このシンジケート摘発は住民からの届出が発端で、南ブカシのカユリガン地区でときどき輸入洋酒の取引が行なわれているため取り調べてほしい、という届出を受けたブカシ警察が捜査を行ったところ、倉庫のニセモノ輸入洋酒のオーナーは南ジャカルタ市パサルミングに住むふたりの男であることが判明した。
警察はまず、パサルミングの男の家に品物を届けようとしていた運び人を逮捕し、ニセモノ製造場所の情報を手に入れたが、西ジャカルタ市チュンカレンにある製造場所に関わっているふたりの者は逃亡しており、警察はかれらを追っている。
警察はこの一味を1999年法律第8号「消費者保護法」と2012年法律第18号「食糧法」で送検する意向で、最長5年の入獄刑が適用されることになりそう。


「SMS賞金詐欺」(2015年9月2日)
2015年3月17日付けコンパス紙への投書"Mendapat Hadiah Melalui SMS dan Telepon Tipuan"から
拝啓、編集部殿。「あなたに賞金や賞品が当たりました」という通知をSMSや電話でもらっても、喜んではいけません。その通知内容が本当なのかどうかをまず調べましょう。
2015年3月に、賞金が当たったというSMSが三件、電話が一件、わたしに届きました。最初は+6282243366137からで、「PT M−KIOS公式決定書。あなたは4等当選者に選ばれました。PIN番号(ijih76K79)。あなたのPIN番号をwww.kejutan-pt-mkios-2015.blogspot.comでチェックしてください。」という内容。
ふたつ目は085747708746番からで、「BRI銀行からの2千7百万ルピアのキャッシュチェック(あなたのトリプルチェックコード02599875)があなたの口座に入りましたので、引き出してください。詳細はwww.rejeki-britama-2015.blogspot.comをクリック。」
みっつ目はわたしのXL携帯電話に+62817228946番から入り、わたしが抽選の当選者のひとりになったと連絡してきました。あとでその番号に電話を入れてみましたが、応答はありません。
最初のSMSの発信者にコンタクトしたところ、わたしはPT M−KIOSから1億ルピアの賞金が当たったという話でした。しかしその賞金を手に入れるためには、いろいろな条件を満たさなければなりません。わたしはドクトランドゥス・アフマッ・スダルノ氏の口座に50万ルピアを振り込み、また10万ルピア分のプルサをそのひとに5回送ってあげるというような条件でした。[ 西ジャワ州バンドン在中、スリW ]


「ボン・ジョヴィコンサート詐欺」(2015年9月7日)
2015年9月11日にジャカルタのスナヤンスポーツコンプレックス内ブンカルノスポーツセンター(Gelora Bung Karno)で予定されているボン・ジョヴィのコンサートは前人気もたいへんな盛り上がりようで、客席位置によって入場券は最高350万ルピアから最低50万ルピアまで5種類に分かれている。切符は既に完売されている模様だが、いまだに切符を探すひとが後を絶たず、詐欺師の目を吸い寄せている。
インターネットで切符販売サイトを探してリストの最上段に出てきたところから調べようとしたひとたちは、リストの一番上に出ているサイトwww.t***etbonjovi.comを開いて小躍りした。「切符はまだあるんだ!」
かれらはすぐに購入を申込み、カードで支払いをした。販売者からの連絡では、切符は当日の三日前に入手できます、となっていた。ところがそのサイト、当日の三日前を待たずに姿を消したのである。詐欺にかかったことを確信した何人かがソーシャルメディアで呼びかけた。60人を超える被害者が続々と集まってきた。そのうちの28人が警察に訴えることを合意し、首都警察に訴えを出したのが9月3日。28人の被害金額はさまざまで、最高は1千7百万ルピア、最低でも130万ルピアの被害であり、総額は1億8百万ルピアにのぼる。かれらはそのサイトがダフ屋であることに勘付いていたはずだが、ここまで完璧な詐欺だとは思わなかったに違いない。
プロモータの情報によれば、正式入場券販売者のサイトリストの中にwww.t***etbonjovi.com は存在しない。しかし、インドネシア人の目を欺くために、でたらめな数字の警察認可番号を記載することを詐欺師は忘れていない。首都警察特殊犯罪捜査局サイバークライム次局はこの事件の捜査を開始しており、サイトのIPアドレスを追及して手がかりをつかもうとしている。


「老齢者を狙うPLN詐欺師」(2015年9月30日)
2015年3月10日付けコンパス紙への投書"Diteror Oknum Berseragam PLN"から
拝啓、編集部殿。84歳のわたしの母はボゴールのウィドゥリ通りに住んでいます。3月5日にPLN職員と名乗る男性ひとり女性三人が訪れました。男性の名前はドニーです。
その悪者は、母が電力料金を規律正しく支払っているので、PLNから報償をもらえる、と言いました。その報償とは、古くなっている電力メーターを新品に取り替えることなのだそうです。今あるものは半ば朽ちているので、火事の原因になりかねないと言いました。ところが、そのための保証金に3千万ルピアを要求されました。交換が終われば返却してくれるのだそうです。
母は家にあるだけのお金を集めて4百万ルピアを渡し、その金額の領収書をもらいました。
その翌日、今度はアルディと名乗る、制服を着た別の「PLN職員」がやってきました。かれはジャカルタのPLNブルガン事務所から来たと言い、残金を請求したのです。もうお金がないと母が言うと、かれは定期預金を解約するよう要求し、銀行まで送ってあげると言いました。しかし母は、定期預金は満期になっていない、と言って断りました。
かれは、前日ドニーが置いていった4百万ルピアの領収書を取り上げ、今日中に残金の2千6百万ルピアをマンディリ銀行スリ・ラハユ名義口座番号9000 022 925 755に振り込むよう言い置いて帰りました。パニックになった母は、そのときやっと子供たちに連絡したのです。
その出来事のために、老齢の母は怯え続けてています。容易にパニックに陥り、また威嚇に怯える老齢者へのテロが繰り返されないよう、PLNはこの事件を調査してください。どうか、よろしく。[ 都内パルメラスラタン通り、ラッナ ]
2015年3月19日付けコンパス紙に掲載されたPLNからの回答
拝啓、編集部殿。ラッナさんからの3月10日付けコンパス紙に掲載された投書について、次の通り説明いたします。当方はラッナさんにコンタクトして、PLNの名を騙る詐欺行為に関する情報を提供しました。またラッナさんの御母堂であるスディビヨ夫人にも3月13日にお会いして、PLN職員の標準作業手順を説明し、被害に対して同情申し上げました。スディビヨ夫人がお住まいの地域を管轄しているPLN西ジャワバンテン配電社ボゴール地区支所からの情報によれば、PLNから利用者に報償を与えるようなプログラムは一切行なわれておりません。
PLNのサービス方式では、PLNと利用顧客の間で現金等をその場で授受するようなことはまったく行なわれません。顧客からPLNへの支払いは必ず銀行振り込みであり、振込先が個人名になることもありえません。また、ジャカルタラヤタングラン配電社ブルガン地区事務所には、ラッナさんの投書にあるアルディという名の職員はおりません。
PLNの名を騙る詐欺が多発していることを、消費者は警戒してください。PLNの責任領域は電力メーターまでであり、その先の屋内配線は百パーセント利用者側の責任になります。もし、今回のような事件に遭遇された場合、電話(エリアコード)123、www.pln.co.id、eメールpln123@pln.co.id、フェイスブックPLN123まで、あるいは直接最寄のPLN事務所までご相談ください。[ PLNジャカルタラヤタングラン配電社通信法務管理担当マネージャー 、クスディアント]


「精巧な贋札が出回る」(2015年10月2日)
西ジャカルタ市スマナンのヒプリ市場で精巧な5万ルピアの贋札が出回っており、複数の被害者が西ジャカルタ市警カリドゥルス署に届け出たことから、捜査が開始された。そして雑貨商人やアンコッ運転手が贋札の出元であることが突き止められ、その情報をたどって贋札を製造流通させていたグループ5人をタングランとチルニで逮捕した。5人の年齢は48歳ふたり、45歳、40歳、50歳。
一味は6ヶ月前から贋札作りを開始し、5万ルピア紙幣20枚額面100万ルピアと本物紙幣50万ルピアを購入者との間で交換していた。6ヶ月間にその方式で2億ルピアの収入をかれらは得ている。流通は在来パサルで雑貨商人やアンコッ運転手をターゲットにして行なわれていた。
警察が一味から押収した証拠品は完成品ストックを額面1,600万ルピア相当、ラミネート器具、カッターやインク、スクリーン印刷機材、プラスチック糸、更に仕掛かり品ストック額面2,850万ルピア相当など。
この一味が作っていた贋5万ルピア紙幣は本物とたいへんよく似ており、透かしもセキュリティスレッドも、青色のホログラムも入っていて、仔細にチェックしなければ本物と思い込んでしまう出来だ。しかし完璧に本物と同じであれば贋札でなくなるわけで、弱点がある。文字や数字が本物ほど鮮明でないこと、紙面の手触りが本物よりスムーズであること、そして透かしの形が不正確であり紫外線を当てると本物とかなり隔たった形が出現する。
生産能力は一週間に3百枚(額面1千5百万ルピア相当)あり、既にまとまったオーダーが入っていた、と一味は豪語している。


「中国人骨董品詐欺団員を逮捕」(2015年11月13日)
中国人詐欺師ふたりがスラバヤ市内のモールで警察に逮捕された。このふたりは埋蔵品ハンターを装い、シドアルジョで土中から掘り出したものだと言って黄金装飾品を骨董品収集家に高額で販売したが、かれらが売った品物は真っ赤なニセモノ。
被害者の訴えでスラバヤ市警が捜査を開始し、ほぼひと月間ふたりの挙動をモニターした上で逮捕した。このふたりは被害者らから11億ルピアを詐取している。市警本部によれば、かれらは国際詐欺シンジケートのメンバーである可能性が高く、国際犯罪シンジケートのインドネシア国内侵入が活発化していることを推測させている由。


「なりすまし警察高官の油断」(2015年11月24日)
スカルノハッタ空港2Dターミナル到着エリアのバゲージターンテーブルで、警察高官がひとりバゲージが出てくるのを待っている姿があった。そのターンテーブルはオーストラリアのパースから来る便のバゲージが流れてくることになっている。しかし、乗客の入国手続きが終わっていないからそこは閑散としており、ターンテーブルもまだ動き始めていない。
空港警察捜査官はその状況に不審を抱いた。階級章を見ると警察長補であり、軍隊にたとえれば中佐に匹敵する上級将校だ。そんな高位者が自ら現場捜査を行うのだろうか?捜査活動なら、少なくとも空港警察に何らかの案内があってしかるべきだ。もし私用なら、いまどき公務姿で空港へやってくること自体が常識はずれだ。
空港警察捜査官はその警察長補に挨拶しに近づいた。警察長補が緊張して身構える雰囲気が伝わってきた。捜査官の質問に対する返答がどうもおかしい。警察身分証や警察の制服を着た写真が載っている運転免許証を提示したまではいいが、警察機構内の部署や人脈もはっきりしない。捜査官があれこれと追究していくと、妻子がパースから帰ってくるので、その出迎えに来たのだと最終的に本音を吐いた。そんな私用のために警察高官の姿で空港内制限エリアに入ってくるのですかと突っ込まれたから、警察長補はしどろもどろになり、「おまえはニセ警官だろう?」と見破られてしまった。
空港警察署に連行されて取調べを受けたその男D47歳は、なんと妻子を欺くために警察高官に成りすましていたのだ。警察の制服はネットショップで購入し、自家用車ダイハツルクシオには警察車ナンバープレートのニセモノが取り付けられている。警察はDの自宅を家宅捜査し、名前と写真は同じだが他のデータが異なるKTPを2枚、運転免許証も警察の制服姿と普通の私服姿の写真が写っているもの2枚などDが所持していた公的書類の偽造品を発見した。Dは刑法典第228条違反で送検される見込み。


「インターネット詐欺一味を逮捕」(2016年1月28日)
ブラックベリーメッセンジャー(BBM)利用者のEメールアドレスとパスワードを詐取して本人をよそおい、それを使って通信相手に詐欺を仕掛ける一味が首都警察一般犯罪捜査局強行犯罪次局に逮捕された。逮捕されたのは12人で、年齢別には18歳4人、19歳2人、22歳・23歳・24歳・25歳・26歳・29歳各1人。かれらは現業学生と失業者から成っている。逮捕劇が行われたのは南スラウェシ州パロポ県の三ヶ所。
かれらはジャカルタからたいへん離れた場所で犯罪を行い、ジャカルタ住民が被害者となった。被害者はポルノ・賭博・オンラインショップなどのサイトを開いてメールアドレスとパスワードを要求され、それに応じたために被害者となったもの。首都警察はそのポイントを都民に強くリマインドしており、要求されても絶対それに応じてはならない、と警告している。
一味がメールアドレスとパスワードを詐取する手法は、たとえばポルノサイトをハッキングして情報を知らせなければ動画のダウンロードができないようにし、そうして得た情報でBBMの新しいアカウントを作り、メッセージ交換しえいる相手に電話プルサを分けてくれるよう依頼し、新しいイニシャルカードを購入してそこにプルサを入れ、そのカードを販売するという手法で不当な稼ぎを得ていた。IT専門家を交えた首都警察捜査班はパロポに出向いてから三日間で、一味の全員を逮捕した。
IT通信を利用した詐欺の働きかけは、実に凄まじいものがある。だれの携帯電話にも、その種のSMSは一日に何件も入ってくるだろう。それがあなたやわたしだけではないのだから、この国の中では膨大なエネルギーがそこに注がれているにちがいない。きっとこれも、国民性のひとつに数えることができるだろう。商店や銀行など、顧客誘致に景品をつけることはきわめて一般的だ。そういう景品を当てにして銀行口座を開くひとが大勢いるのだから、これは棚ぼた大王(aji mumpung)信奉という名の国民性であるようにわたしには思えてくる。
コンパス紙R&Dが2015年11月14〜15日に首都圏の17歳以上の住民461人から集めたアンケート調査結果は次のようなものだった。
1.過去ひと月間に届いた詐欺の罠の頻度はどのくらいですか?
SMS・電話 頻繁69.2%、ときどき20.2%、皆無9.8%
BBM・WA・他通信アプリ 頻繁11.1%、ときどき31.7%、皆無47.9%
ネット(Eメール・フェイスブック) 頻繁8.9%、ときどき33.0%、皆無47.7%
2.その詐欺の罠の内容は?
景品当選45.1%、麻薬で逮捕・事故で入院等27.8%、ママミンタプルサ22.3%
15年11月に大々的にSMS詐欺を行っていた一味が摘発され、その供述によれば、一日平均4〜5人が詐欺の罠に引っかかり、ひとり平均5百万ルピアの金が一味に詐取されていたそうだ。かれらが罠を張るのに支出していたコストはどのくらいだったのだろうか?もちろん詐欺団はそのひとつだけではないのだから、全国でどのくらいのエネルギー(と金)が費やされていたのか、興味あるところだ。


「身代金はたったの4百万ルピア」(2016年1月29日)
子供を拉致してさらって行った男たちが要求してきた身代金はわずか4百万ルピアだった。といっても、この事件には裏話が付随している。
5人の大学生がオンラインショップを開業した。あるとき、アジャイと名乗る男が360万ルピアの香水を注文し、銀行振込み証憑のコピーを送ってきた。用心深い出納担当は口座への入金をチェックしたが、金は入ってこない。案の定、その証憑はニセモノだった。『この詐欺野郎に灸をすえてやれ。』
大学生たちはアジャイをおびき出すために、「購入品を手渡したいので、どこかで落ち合いましょう。」と誘い、南ジャカルタ市マンパンプラパタン郡トゥガルパラン町のガソリンスタンドで2015年12月24日午前9時に会うことを約束した。
約束の時間に三人が車でそこへ行くと、アジャイでなく少年Aがそこへやってきた。アジャイに言いつけられて、香水を受け取りに来た、と言う。三人の怒りは燃え上がる。
アジャイに連絡をつけようとしたが、連絡がつかない。三人は少年Aを拉致すると、アジャイに灸をすえるために予定していた仲間の家に少年を連れ込んだ。仲間のふたりがそこで待っており、5人は少年に殴る蹴るの暴行を加えた。アジャイにはもう連絡がつかないため、替わりに少年の親に身代金を要求した、というのがその裏話。
詐欺野郎への怒りと正義感はわれわれにも判らないわけではないが、このようにして第三者にとばっちりが飛んで行くインドネシアのこの体質がわれわれにはよく理解できない。たまたまそこに居合わせたためにとばっちりを食らうという事件は、インドネシアで頻繁に起こっている。他人に対する尊重の問題と、自分の欲求や感情に何らかの回答が与えらるなら相手はだれでもよい、という自己中心性に関わっているのではないかというようにも思えるのだが・・・・
少年Aの母親は要求された身代金をすぐに支払い、大学生たちは少年を翌朝、西ジャカルタ市スレンセンの森の縁で解放した。そして少年が帰宅すると、母と子は警察に事件を届け出た。警察は身代金振込先口座番号を手がかりにして、ジャカルタとボゴールで5人を逮捕した。5人は最長12年の入獄刑を受けることになる。警察は詐欺野郎に灸をすえるため、アジャイをも追跡中。


「無医村を巡回するニセ医者詐欺師」(2016年2月3・4日)
中部スラウェシ州シギ県ピピコロ郡マセウォ村に医師を名乗る中年男性ふたり中年女性ふたりがやってきた。村は四人を大歓迎し、村の長老の家にかれらを泊めて、大いにもてなした。診察は百万ルピアを超える金額を求められた。各家庭を巡回訪問してきた四人に村人たちは快く応じた。
「わしゃあ、妻と子供の診療に120万ルピア払っただよ。」
緑色のカプセルに入った薬と紙切れを一枚示しながら、マセウォ村第一部落の前部落長ユスフさん47歳はそう語る。その紙にはコレステロール値と血糖値、そして避けなければならない食べ物の詳細が書かれている。「おかしなことに、血も採らないし、尿も採らない。あの医者たちゃあ、血圧計を持ってきただけだったよ。」
県下の諸村の開発促進に携わっているNGOコーディネータが、かれらはニセ医者だったと教えると、ユスフさんはたいそう口惜しがった。かれらは県下のあちこちの村に現れたそうだ。ユスフさんの120万ルピアは、カカオの実から得た二か月分の収入に該当する。「わしもちょっと怪しいとは思っただよ。でも、ホンモノの詐欺師とは思わなかった。」
四人がユスフさんの家を訪れたとき、自分たちはピピコロ村に新しく配属された医師だと名乗った。そして、郡長の署名が入った添え状を示したが、それは偽造文書だった。
国軍兵士が村落部に常駐して、治安維持・住民保護・開明化促進をはかる国家プロジェクトが開始されて以降、医者が村を訪れたことは一度もない。多少の不審を抱いても、それよりはるかに大きな期待に負けてしまった。村人は宿泊と食事を無料提供したのだ。
インドネシア共和国が独立して70年が経つ。だが人口136人のマセウォ村には、電気も来なければ、携帯電話の電波も届かない。独立とはいったい何なのだろうか?
この村を訪れるには、南クラウィ郡の中心地ギンプの町から断崖絶壁にはさまれた踏み分け道を徒歩で40キロ歩かなければならない。オートバイオジェッを使えば、6時間のスリル満点のドライブに30万ルピア払わなければならない。雨季はもっと時間がかかり、料金は倍増する。
医者どころか、助産婦さえこの村にはいない。最寄の保健施設は12キロ離れたバナス村にある保健所の分所だけ。そこへ行くにも、起伏の激しい道なき道と川を踏破しなければならない。一年前に自力で出産した22歳の女性は、妊娠4ヶ月のとき助産婦の診察を受けるためにその保健所に行った。歩くしか方法はなく、かの女は半日間歩き詰めだったそうだ。
ユスフさんが第一部落の部落長だったとき、健診のために村の妊婦と母子を集めてバナス村まで送って行ったことがある。そのとき、妊婦は三人、幼児と母親は8組いた。帰りの道中で雨が降り出し、渡渉できる川が水かさを増した。ユスフさんは応急の橋を作り、かれが手を引いてひとりずつ川を渡らせたそうだ。運よく、何も事故は起こらなかった、とかれは当時を回想する。
マセウォ村寄合代表部委員長は、村で生まれる赤児はみんな母親が自力で生んでいる、と語る。かれの子供5人も、すべてかれの妻が自力で産んだ。母親がアッタの葉の茎を尖らせたものでへその緒を自分で切るのだ。
このマセウォ村は奥地の保健医療サービスがどうなっているのかを示す一例だ。その状況はピピコロ郡の19カ村でほとんど差異がない。唯一、カンテウ村に保健所が置かれており、保健所の分所がコジャ村とバナス村にある。マパヒ村には助産所がある。免許を持った助産婦はピピコロ郡に7人いるが、全住民7,962人を7人で管掌できるわけがない。
そのような状況では、母体の出産時死亡の確率は高まる。最近も、マセウォ村に隣接するプレンペア村で、パルの病院へ行くために担架で運ばれていた妊婦が死亡した。類似のことは他の村でも起こっている。
バナス村の保健所にも、ライセンスを持つ医療従事者は7人しかいない。7人のうち正規の国家公務員は3人だけで、他は契約雇用者だ。かれらも公務員採用試験を受けてはいるが、パスしなかった。だから保健所の報酬だけでは食べていくことができず、農業など他の仕事を兼業している。
そんな背景の中で都会から四人の医者がやってきたら、村人たちはどうするだろうか?詐欺師たちは、訪れた家から50〜200万ルピアの金を詐取し、荒稼ぎしてから姿を消した。
部落民のひとりは背骨を患っている子供の治療を四人のニセ医者に求めた。四人は子供の様子を調べただけだった。90万ルピアの費用を請求されたが、貯金は70万ルピアしかない。もしそれ以上の金があれば、いくらでも払うから子供を治してほしいのだが、現実にはその金額しかない。結局四人はその金額で了承し、薬をくれた。しかし子供の状態はまったく変化がなかった。ニセ医者だったと知らされて、かれは深く納得した。金を騙し取られたことの口惜しさだけが残った。
辺鄙な奥地への保健と教育の浸透はまだまだ遠い道のりだ。だが、近隣諸国にくらべてはるかに高い妊婦の出産時死亡率を低下させるという国家目標の実現は、その遠い道のりを踏み越えたところでしか実現しないだろう。


「チャロ詐欺師」(2016年2月5日)
タンジュンプリウッ港コジャターミナルから輸出されようとしていたコンテナ5本に詰められた自然石に税関がストップをかけた。コンテナにレッドシールが貼られ、税関の取調べが行われることになった。
輸出が駄目なら国内で売りさばきたいとビジネスマンならだれしも思うに決まっている。その心理につけこんで、チャロが登場した。「輸出取消しコンテナとして、港から出せるようにしてやるよ。税関のお偉方が相手だから、廉くは済まない。5億ルピアを払ってくれ。」
38歳のビジネスマンはその42歳のチャロの歯切れの良い啖呵と自信満々の態度に乗せられて仕事を依頼した。チャロは税関内部の指示書を自分で偽造し、依頼主を安心させたが、なかなかプロセスが進展しない。既に1億9千万ルピアを振り込んだものの、疑心暗鬼もつのっていく。意を決したビジネスマンは詐欺事件として警察に届け出た。
このチャロは2008年からタンジュンプリウッ港税関書類審査部門とかかわりを持つようになった人間で、類似の詐欺は何度も行っているはずだが、被害者から警察への届出は今回がはじめて。
法を犯す仕事をチャロに依頼する場合、チャロ自身に欺かれるリスクと、官憲の捜査の網に引っかかるリスクのダブルリスクにさらされる。それでも、オルバ期にはそんなリスクを意に介しないビジネスマンであふれていたが、昨今は減少傾向にあるようだ。


「詐欺被害者がまた」(2016年3月23日)
2015年10月23日付けコンパス紙への投書"Penipuan Berkedok Kartu Kredit"から
拝啓、編集部殿。しばらく前、BNI銀行カスタマーサービス職員だと名乗るロシーさんからの電話をわたしは受けました。そのときわたしはBNI銀行のクレジットカードを申請していたので、まったく疑いを抱きませんでした。ましてや、かの女はわたしの個人データをすべて知っていたのですから。
かの女はわたしにビザ=マスターのグローバルエグゼキュティブクラブ会員になるよう奨め、5年間有効な会員カードが292万ルピアで手に入ると勧誘しました。更に景品としてホテル宿泊クーポンが三枚ついてくる、と。
2015年8月11日にグローバルエグゼキュティブクラブ契約ホテル宿泊クーポン三枚、地図、小冊子を持って我が家を訪れたひとがありました。そのひとはきちんとした服装をし、PTグローバルマンディリインターナショナルGECの徽章を着けており、わたしは信用してしまったのです。
そのひとはBCA銀行のカード読取機を持参し、わたしは何の不審も抱かずに、スタンチャート銀行のわたしのクレジットカードで292万ルピアを支払いました。
10月1日、クーポンに記載されているカスタマーサービスの電話番号に電話したとき、だれも出ないことから、疑惑が生じました。同じ番号に何度電話しても、だれも出ないのです。それでわたしはテルコムの情報サービス108番に電話して、その電話番号を問い合わせました。そして、その番号は登録されていないことが明らかになったのです。
クレジットカード請求書が届き、292万ルピアの支払い先がタングランのブルカッオプティックーHoと記されているのを見て、わたしは詐欺にあったことを確信しました。わたしの経験が他の読者のみなさんの身に起こらないことを祈ります。アプリに個人データを記載するよう求められたときは、たとえ銀行であってもよくよく警戒してください。[ 東ジャワ州グルシッ在住、ワヒユニ B ]


「ラマダン〜イドゥルフィトリ期は贋札シーズン」(2016年6月28・29日)
ラマダン月2日目の2016年6月7日昼、インドネシアキリスト教大学の大学病院で贋札を売っている男Mを国家警察犯罪捜査庁捜査員が逮捕した。真札であれば、額面より安い現金と交換するはずがない。
犯罪捜査庁は贋札販売者に関するタレこみをもとに、購入者と見せかけてMに接近し、現行犯逮捕した。Mが持っていたのは10万ルピア紙幣で3千万ルピア分であり、Mはその贋札が近くにいたAのものだと捜査員に告げたことから、Aも一緒に逮捕された。Aは自分の身分を陸軍大佐であると捜査員に語ったため、警察はその身柄をすぐに陸軍憲兵隊に引き渡し、Mだけを拘留して取調べを行った。インドネシア警察は軍人に対する捜査権を持っていない。
贋札の出来がきわめて精巧であること、小人数による犯行にしては量が多いことなどから、警察はかれらがもっと大規模な贋札シンジケートに関わっているのではないかと見て捜査を進めている。
A大佐は国防省潜在性総局退役者管理次局長として5年程前から本省勤務を続けている人物で、国軍は贋札所持容疑でA大佐の取調べを行っている。
警察は押収した贋札の鑑定をインドネシア銀行に求め、本物と容易に見分けられないほど精巧に作られていることが判明した。良質の紙が使われ、高級プリンターで印刷され、スクリーン印刷で透かしが入っているとのこと。この精巧な贋札には西ジャワ・中部ジャワ・ヨグヤカルタ・東ジャワに既に配布された通し番号が使われており、既にかなりの数が市場に流されていると警察は推測している。
Mは通貨に関する2011年法律第7号第36条違反の罪で送検されることになりそう。この罪科の刑罰は最長10年の入獄。
ラマダン〜イドゥルフィトリ期経済とはあまり関係のない贋札事件も起こっている。首都警察一般犯罪捜査局は16年6月2日、都内三か所で米ドル紙幣の贋札を流通させることに関わった8人を逮捕し、額面100米ドル紙幣3,277枚を証拠品として押収したことを公表した。市民からのタレこみで開始された捜査で首都警察が8人を逮捕したのは5月27〜30日。
5月27日の逮捕はサリナタムリンのKFC店内で行われ、38歳と59歳のふたりから996枚の贋札が押収された。警察は更に捜査を詰めて南ジャカルタ市ラグナン動物園入り口前で54歳と46歳の各一人と39歳ふたりの合計4人を逮捕し、1,581枚の贋札を押収。そして最後に南ジャカルタ市ブロッケムプラザ内で56歳の男女各一人を逮捕し、贋札700枚を押収した。かれらは購入希望者と電話でコミュニケートし、待ち合わせ場所で購入希望者が現れるのを待っているときに警察に逮捕されている。
警察の取調べに対して逮捕された8人は一様に、自分は単なる運び屋だと自供し、かれらに贋札を供給した男の名前を挙げた。それによれば、かれらに贋札を供給した男はふたりで、既に逃亡しており、警察はそのふたりの行方を追っている。
押収した贋札を鑑定した警察は、贋札の出来は80%だと評した。一瞥では本物との区別が付けにくいが、本物にあるセキュリティスレッドが贋札にないことが仕上がりレベル80%の理由だとコメントしている。
8人が売りさばいていた贋札の価格は一定しておらず、996枚を5千万ルピア、1,581枚を1億ルピア、700枚を5千万ルピアといった値付けで販売し、売上の一割がかれらの収入となっていた。
この米ドル贋札も大型シンジケートの犯行だろうと警察は推測しており、捜査を更に進めている。贋札は国内で作られた可能性が高く、原版は国内にあると見て警察は原版の発見に注力する意向。なお、逮捕された8人の供述では、購入者はすべて外国人だったそうだ。
中銀データによれば、ここ数年間の贋札流通率は低下しているとのこと。2014年に発見された贋札は百万枚中9枚、2015年は21枚、2016年は5月までで5枚となっている。
他の11か月と異なり、このラマダン〜イドゥルフィトリ期には普段持ち付けないたくさんの現金を手にする下層庶民が大勢いる。持ちなれない紙幣を手にしたかれらがその真贋に気付く確率は小さいだろうという要素も、この時期の贋札増加に関係しているのかもしれない。言うまでもなく、現金需要が激増することがその背景にあるのは言うまでもないのだが。
インドネシアで贋札は民族独立運動と関わりを持つもののひとつだった。植民地化された民族が支配民族の統治をかく乱させるために贋札が使われた歴史が存在しており、贋札というものに対する善悪観がそのような苦難の歴史を持たなかった民族と異なっていてもおかしくない。
そのロジックはどうやらいまだに生き残っているらしく、現政権と対立する勢力、つまり現政権を挫折させ、次期大統領選での強敵に打撃を与えておきたい勢力が、現政権の失政材料を密かに世の中に持ち込んだ上で、失政批判の舌鋒をふるうということが行われているという話だ。贋札もその材料のひとつであり、それ以外にもあの手この手が使われていて、要するに政治闘争の手段にされている。現政権の行政統治を反対勢力がかく乱させるのだから、国民にとっての効率的で秩序だった行政統治はなかなか実現されず、そのツケを背負わされるのは国民自身となる。民主主義とは名ばかりの、国政上部での権力闘争が国民生活のクオリティをズタズタにしている、というのがインドネシアの政治の汚さであるにちがいない。


「詐欺が横溢するラマダン〜イドゥルフィトリ期」(2016年7月1日)
経済が熱を帯びて金が世の中にあふれかえるのだから、まともなビジネス実行者たちもこのシーズンに精出して稼ごうとするのが当然だ。普段よりも金回りに余裕のできた国民に売り込みをかけるのにどうするのかということがビジネス実行者の知恵を絞るところだ。そんな中に詐欺師が忍び込んでくる。
インドネシア人の民族性のひとつに、金儲け志向が強いことがあげられる。金儲け能力の高い者が優秀な人間だという人間観は中国風であり、関西人のものだ。その思想は東南アジアに共通して流れているように、わたしは感じている。だから普通のインドネシア人はたいてい、自分の持ち金に余裕が出るとそれを投資に振り向ける。店を開いて事業を始める者もいれば、売れそうな商品を作ってネット販売する者もいるし、儲かる投資を探し出して金を託す者もある。中には悪事と知りつつ金を投資してハイリターンを手にする者もいるが、そのあたりの善悪観は異文化人になかなか呑み込めない部分だ。ともあれ、儲かる投資を探し出そうとするとき、そこにも詐欺師が忍び込むのである。
常識では成り立ち得ない配当を約束して投資を募る個人や法人がある。たとえば、巨額の投資をすれば、一年で元本が回収できる上に5割の利殖になる、といった類の話だ。インドネシアでは、このような話に金が集まって来る。一面では、これはただの愚かさの証明と見ることができるが、視点を変えれば、ある種の冒険主義であるようにも見える。もちろん、冒険主義が愚かさを含有したものであるのは言うまでもないだろうが・・・・。
投資サービスは金融サービスオーソリティの認可を得てはじめて合法なものとなる。でっちあげ会社の形でネット広告を載せると全国から投資が集まってくるが、オーソリティがでっちあげ会社に認可を与えるはずがない。消費者はそのあたりの合法性を確かめるために、オーソリティに問い合わせをかける。
2016年6月中旬までにオーソリティが受けた問い合わせは430件あり、そのうちの388件が非合法のものだった。オーソリティが調査した430件中の374件は黄金・eマネー・eコマース・外貨投資・メッカ巡礼などの金融投資であり、残る56件は不動産・植物・商品・農園などを投資対象としていた。でっちあげ会社は協同組合やMLMなどに偽装しているものが多く、黄金投資は黄金販売会社を装っていた。
合法な投資は異常なリターンがありえない。オーソリティが内容を審査するのだから当然だ。異常なリターンをネットページに表示しているのは非合法商品だと見て間違いはない。そういう誘いに乗って金を託し、痛い目にあっている消費者は大勢出ているにも関わらず、非合法商品は後から後から出現し、そこへ資金をつぎ込む消費者も後から後から出現する。この状況を改善するために、オーソリティは国民への教育と告知を活発化させる意向。
ただし、非合法案件がすべて詐欺まがいであるとは言えない。でっちあげでない会社が行った投資ビジネスであっても、そのビジネスが金融サービスオーソリティの許可を得ていないということもありうるのだ。
投資調整庁長官は、通商事業許可を得ている外資企業で黄金投資を誘致して資金集めをしているものがあり、無許可活動を行っていたために外国投資認可を取り消した、と語った。そのようなものを含めて、2015年には12,892件の外国・内国投資認可が取り消されている。


「ニセモノOSを摘発」(2016年7月1日)
マイクロソフトウインドウズのニセモノOSが摘発された。首都警察特殊犯罪捜査局商工業担当第3次局長は6月13日、偽造OSを書き込んだCDを廉価に販売していたふたりを逮捕し、ふたりが所有していたCD289枚と偽造防止ステッカーCOAの偽造品30枚を押収したことを明らかにした。
逮捕されたふたりは中央ジャカルタ市の商業センターにコンピュータショップを持っており、ひとりはその店でニセモノを直接販売し、もうひとりはネットショップでニセモノを販売していた。マイクロソフトのオリジナルはCD価格が250万ルピアだが、ニセモノは50〜75万ルピアで販売されていた。ふたりは一年前からこのビジネスを始め、ひと月5千万ルピアの利益をあげていたそうだ。
一方、このニセモノビジネスを発見して警察に訴えたマイクロソフト社は、被害額は10億ルピアにのぼるとしている。
マイクロソフト社によれば、このニセモノOSはインドネシア製でなく外国製であり、ほとんど本物に近いできだそうだ。インドネシアアンチ偽造ソサエティ事務局長は、このニセモノOSがオリジナル品とほとんど見分けがつかない出来であり、包装にホログラムステッカーがないことに購入者が気付くか、あるいはウインドウズアップデートができない事態に直面して、購入者ははじめて事態に気付くことになる、と語っている。
購入者のその苦情でマイクロソフト社が調査し、調査結果を警察に訴えたことで事件の摘発に結び付いた。従来行われていた偽造事件は、海賊版作製、ハードディスクローディング、教育機関向け商品の横流しなどが一般的な手口で、偽造もあるが今回のように精巧なものは珍しいとにこと。
今回のニセモノOSは企業がターゲットにされており、往々にしてウイルスやマルウエアが仕込まれていて使用者の情報が盗まれている。個人使用者はこのような価格の高いものをほとんど買わないそうだ。


「詐欺一味に13億ルピア」(2016年7月13日)
お金持ち有閑女性を狙う詐欺師はあとを絶たない。インターネットが普及したおかげで、ソーシャルメディアなる媒体が詐欺師を有閑女性に容易に引き合わせてくれるようになってしまった。進歩が必ずしも善いことばかりをもたらすというものでもない。
被害者女性イブSは2016年6月8日にマーク・コリンズと名乗る男性とフェイスブックで知り合った。自分はアメリカに住んでいるセントラルテキサスメディカルセンターの外科医だ、とマークは自己紹介した。ふたりは急速に接近し、ワッツアップで親密な会話を交わす間柄に移行し、そして互いの携帯電話番号を交換するに至った。
マークは6月22日にイブSに対し、インドネシアの孤児に寄付したいので、2百万ドルの現金をあなた宛てに送りたい、と連絡して来た。その数日後、マークの友人と名乗る男がイブSに電話して来た。マーク・コリンズからの小包がスカルノハッタ空港に届いており、それを引き取るために1千7百万ルピアの金が必要だから、大至急マンディリ銀行名義人Rの口座に入金してくれという依頼だ。イブSは依頼に従った。
翌日、その男からまた電話が来た。小包の中味が大量の現金なので、関税等の支払いに6千9百万ルピアが必要だと言う。イブSは再びそれに応じた。
次の日、その男は輸送費として9千4百万ルピアをイブSに要求し、マークが送って来た現金はチュイクリンスキー・パウエルというアメリカの外交官が預かっていることをイブSに伝えた。
翌日、イブSはチュイクリンスキー・パウエルがとった都内アルヤドゥタホテルの部屋で会見した。マークが送って来た荷物を一緒にチェックしようというのだ。ふたつのトランクのうちのひとつを、パウエルは開いた。中にはアルミの箱が入っており、箱を開くと百米ドル紙幣が詰まっている。ただ奇妙なことに、米ドル紙幣は本物のデザイン通りだが、紙幣の面には黒い薄膜がかかっている。もうひとつのトランクを開くと、液体の入った容器が出て来た。そして、薄膜がかかっている紙幣をその液体で洗うと、なんと正常な百米ドル紙幣になったのである。
パウエルは、イブSに正常な姿に変わった百米ドル紙幣数枚を渡し、本物かどうかをチェックしてください、と求めた。イブSがそれをCIMBニアガ銀行に持ち込むと、本物であることが確認された。
イブSがパウエルにその結果を電話で報告するとパウエルは、「あの液体は23億ルピアでアメリカ大使館から購入しなければならない」と語った。しかしイブSにとって、そんな大金を即座に用意するのは無理だ。とりあえず、ということで11億ルピアをマンディリ銀行指定口座に振り込んだ。するとパウエルから電話が入り、全額支払わなければ液体は入手できない、と言ってきた。
この段階に至って、イブSの心にやっと疑念がわき起こった。自分は詐欺の餌食になっているのではないだろうか?イブSは首都警察に通報した。
首都警察一般犯罪捜査局暴力犯罪次局第2ユニット捜査班は、既に面の割れているパウエルを探し出すことから取り掛かった。そして16年6月29日午前3時、西ジャカルタ市コサンビのグリーンレイクシティ「クラスターアメリカ」のイーストコースト第1通り1番地の住宅に住んでいたポーランド人チュイクリンスキー・パウエル36歳を逮捕した。
マーク・コリンズはその家におらず、逮捕できなかった。またこの詐欺師一味の他のメンバーも行方をくらましており、警察はかれらを指名手配にかけている。


「容易に作られる偽名パスポート」(2016年7月25〜27日)
香港のヴィクトリアパークは、週末になるとインドネシア女性で満ち溢れる。香港に出稼ぎに来たかの女たちのほとんどは、家庭プンバントゥが職業だ。
最近、かの女たちの中に、刑務所に送られる者が増加している。昔から香港で、インドネシア人メイドの犯罪はあるにはあったが、最近増えている事件というのはかの女たちが意図して行ったものでない行為、つまり虚偽のアイデンティティで入国したという違反行為なのだ。その容疑で逮捕され、16年6月3日の裁判で有罪6ヵ月の入牢が宣告され、刑務所に入ったドゥイさん51歳は、7人目の犠牲者だった。
「アイデンティティ書類に正しくないデータが書かれていたのです。書類を作ったのはインドネシアの海外出稼ぎ者送り出しエージェントなのに、かれらは何のおとがめもなし。取調べさえ受けていません。刑務所に入れられるのはわたしたちなんですよ。」かの女のあとにも、同じ容疑でまだ20人近くが裁判を待っている。
2003年にはじめて香港に働きに来たドゥイさんはヌル・アイニ名義のパスポートで香港に入国した。そのお膳立てはすべてインドネシアのエージェントが行ったことだ。ドゥイさんがエージェントにそんな依頼をしたわけではない。だが、香港の当局も裁判所も、ドゥイさんの証言をまったく信用しなかった。
普通の国ではそうだろう。インドネシア政府からライセンスを受けている法人が、何のためにそんなことをするだろうか?ましてや、データが間違っていたのなら、どうして本人がそれを訂正させなかったのか?そのあたりの世界の(普通の国の)常識が、インドネシアの実態と違っていたというだけの話なのだが・・・・

リアウ島嶼州バタムのパスポート作成仲介者ステファヌス氏は、自分は客のパスポート作成を手伝っただけだ、と語る。出稼ぎ依頼者の顔写真と1千5百万ルピアでパスポートを作成した。顔写真は本人だが、名前の異なるパスポートを。
ステファヌス氏が手伝ったのは2014年に依頼を受けて以来その渡航までいろいろと世話をする関係になったブディ氏。ブディ氏は通常のパスポートでツーリストとしてマレーシアに入国したあと、何年もマレーシアで働いていた不法就労者だ。入国許可期限の切れているパスポートを保管していても意味はない、と考えてブディ氏はパスポートを捨てた。ところが数年後にかれは不法就労者手入れでマレーシア官憲に逮捕された。インドネシア
へ強制送還されるとき、インドネシア側での入国手続きに必要なため、パスポート不所持の者は在ジョホールバル、インドネシア領事館がパスポート代用渡航書類を作った。ブディ氏は後難をおそれて、でたらめのアイデンティティを言った。書類はその通りに作られた。名前はリザルだ。
強制送還者は自分の故郷まで、国が送り返してくれる。だがかれはバタムにとどまるため、失踪した。そしてほとぼりを冷ましてから、再度マレーシアに渡ろうとした。故郷に帰っても、稼げる仕事などない。だからこそ、かれはマレーシアで不法就労をしていたではないか。マレーシアへ行けば仕事はいくらでもあり、そして金が手に入る。
かれはバタムでパスポート作成手続きをした。本名のブディ名義で。そのためにリザルという偽名でインドネシアに戻ったのだ。ところが、それが裏目に出た。政府イミグレーションが持っているデータベースにかれはリザルという名前で、強制送還の前歴と共に登録されていた。かれのパスポート申請は拒否された。しかし、なんとしてもマレーシアへ戻らなければ・・・
あれこれと試行錯誤する中で、かれはステファヌス氏と出会う。ステファヌス氏はリアウ州東海岸のとある町でブディ氏のパスポートを作ることにした。パスポート作成に必要なKTPやKKもそこで作る。バタムでそのようなことをしようとしても、まったく不可能だ。規律が厳しく要求されるようになっており、規則に外れたことをしてくれる人間は滅多にいない。こうして、パスポートを待ち望んでいるブディ氏の手に、まるで知らない人間の名前が書かれたパスポートが手渡された。
形式的要件は整っても、ブディ氏のマレーシア滞在は30日が限度だ。だから30日ごとにかれはジョホールからバタムに船で戻って来る。そのような入出国をするツーリストなどいないのは、イミグレ関係者でなくともわかる。それをあえて強行するためには汚れた手続きを踏まなければならない。ブディ氏との間に友情が生まれたステファヌス氏がかれの人間関係を総動員して、毎回そのフォローをしている。毎月一回ブディ氏から50万ルピアを受け取ると、ステファヌス氏は船の切符から入出国手続き担当官への円滑金を配る手配までを行っている。
それはまた、事情の異なる話だ。前出のドゥイさんのケースはどうだったのだろうか?東ヌサトゥンガラ州で海外出稼ぎ者送り出しビジネスに関わっているヤンセン氏は次のように物語る。
まず海外出稼ぎ希望者が送り出しエージェントにリクルートされる。希望者は田舎の村からやってくるが、公的書類など何一つ持っていない。エージェントが出稼ぎ者を国外に送り出すとき、出稼ぎ者はパスポート・労働省からの出稼ぎ者認定証・仕事先との契約書などを持っていなければならない。それがないから、と言って希望者を閉めだしていれば、エージェントは収入がなくなる。だから必要な?書類を代行作成することになるが、その根拠にするべき書類すら、出稼ぎ希望者は出してくれない。だからエージェントは適当なアイデンティティを書類に書き込むことになる。特に未成年者や住民管理書類を持っていない者は、出稼ぎ者になるための必要書類が作れない。その関門を突破するために、エージェントは他人の名前を借りることまでする。
たとえば?サウジアラビアからの求人の場合、キリスト教系の名前だと雇ってもらえないから、イスラム系の名前に変えなければならない。そうやって形式を整えた上で、海外出稼ぎ者の必要書類を作る。しかし14歳の少女をイミグレーションオフィスに連れて行ってパスポート写真を撮影するとき、20歳というアイデンティティ書類に不審を抱く担当官がひとりもいないわけがない。エージェントの腕はそこで発揮される。郡役場や住民管理局からイミグレーション事務所まで、関連するあらゆる役所にいる?親類縁者や友人知人の人脈に支えられて、海外出稼ぎ者が外国に送り出されて行くのである。
「東ヌサトゥンガラ州フローレス島に生まれ育った人間が本人のまったく知らぬ間にスマトラ生れのムラユ系の名前に変えられ、まだ14歳なのにパスポートでは22歳になっている。それが普通に行われている。
書類作りは辺境の、名前などほとんど知られていない県で行われる。中央や州の上層部がほとんど関心を寄せない、リアウ島嶼州に近いジャンビ州やリアウ州の辺境地域だ。旧ムラユ王国の支配地域だったところが良い。」
イミグレーション総局スポークスマンは、必要書類がそろっている限り、発行禁止が指定されている者でなければ、パスポートを発行せざるをえない、と言う。「必要書類はすべてイミグレーション総局以外の政府機関が発行しているものであり、そこに記載されているデータの真偽を検証する方法はなく、その真偽は書類発行機関が責任を負うべきものだ。必要書類のデータに即して、パスポートに本人のアイデンティティが記される。顔写真は申請に出頭した本人の写真がパスポートにプリントされる。」
また、出国者が海外出稼ぎを目的に出国しようとするのをイミグレーションが禁止することはできない。正規の渡航書類を持っており、出国禁止者リストに載っていなければ、その者の出国を禁止する理由がない。海外出稼ぎ者は出稼ぎ者認定証や雇用者との契約書を持っていなければならないと定められているが、それを持たない人間が出国審査時にわざわざ自分は出稼ぎ者だと名乗り出るはずがない。
バタム島の出国ポイントに置かれているイミグレーションチェックカウンターは監視カメラで全面的な監督がなされており、贈収賄が行われたらすぐにわかるとバタム一級イミグレーション事務所長は述べている。出入国審査はひとり一分以内で行われており、またカウンターは衆人の見える環境にあるため、贈収賄行為などはまず行うことができない、と所長は強調している。


「信用は毒」(2016年8月18日)
2015年12月5日付けコンパス紙への投書"Teknisi Penipu"から
拝啓、編集部殿。15年11月4日、ユダ・アルフィアンという名前のテルコム技術者が訪れ、光ファイバーネットワークに移るよう勧めたので、わたしは同意しました。わたしのスピーディネットワークに問題があると、これまでかれがやってきて対応してくれていたのです。
光ファイバーに移るにはケーブルを家まで引かなければならず、その工事費が電柱1本につき21万ルピアで、3本分あるので63万ルピアを前金で負担しなければならないとわたしに言いました。わたしは63万ルピアをかれに支払い、領収書をもらいました。
ところがあとで判明したのは、テルコムはケーブル引き込み工事を無料サービスしているということでした。147番に電話で確認して、それがわかりました。わたしはすぐにユダ・アルフィアン氏に電話して工事の取り消しを言い渡し、渡した金を返すよう要求しました。
しかしこの投書を書いている現在に至るも、ユダ・アルフィアン氏は誠意をまったく示そうとせず、わたしが払う必要のない金をわたしに返そうとしません。そして電話もSMSも通じなくなり、本人とのコンタクトが不可能になりました。
わたしはこの事件を147番とヨグヤカルタのプラザテルコムに届出ていますが、解決へのアプローチはいまだにありません。同じことが他のテルコム利用者に起こらないことを祈るばかりです。[ ヨグヤカルタ特別州スレマン県在住、アグス・ファジャル ]


「奇妙な詐欺犯罪事件」(2016年8月29〜31日)
法律用語としての詐欺という言葉の意味を広辞苑では、他人をだまして錯誤におとしいれ、財物などをだましとったり、瑕疵ある意思表示をさせたりする行為としている。詐欺という日本語に該当させられているインドネシア語のpenipuanの語根tipuはKBBIで、他人を迷わせ、操り、あるいは自分に利益をもたらせしめるための正直でない嘘偽りの言葉や行為と定義されている。辞書で対応させられていても、語彙の広さや含みがこれほど違うのだということを示す一例がこれだろう。辞書にあるがままに単語を置き換えたとしても、外国人との意思疎通を完璧にしたいなら、はるかに豊かな想像力が不可欠であることを忘れてはなるまい。
インドネシア語でpenipuanと表現されているこの種の事件の中には、日本語では詐欺とされず、さしずめ犯罪幇助という概念に当てはまるものが多々見受けられるが、インドネシア語に引きずられて詐欺という日本語を使うことをお断りしておきたい。
主体的に違反行為を行なおうという意志を持つ者を助けてそれを実現させた事件に関して、意志を持った者を不問に付せ、その実現を強く推進した者を詐欺師と呼んで犯罪者扱いするという形がインドネシア法曹シーンの中に出現する。それが法確立という言葉を自ら貶しているようにわたしには思えてしかたがない。

合法非合法のすべてを呑み込んで、インドネシアに1千万人の中国人労働者がいるという話はすでに巷間の話題になっているものの、それは決して一方通行なのではない。インドネシア人が中国へも海外出稼ぎに出ている。合法的な中国へのインドネシア人海外出稼ぎ者数は年間1千人ほどだが、それに付随してやはり非合法なものが存在し、それは両国間の口入れエージェントが共謀して人間を商うという組織的な人売行為になっている。かつて中国から強制送還されて帰国した非合法海外出稼ぎ者によれば、給料はひと月1千万ルピア前後という話になっていたが、実際にもらえた金額は1百万ルピアしかなかったそうだ。もちろん、人民元が支払われている。
最近も、中国向けの非合法海外出稼ぎ者送り出しエージェントがブカシ市内で摘発され、送られようとしていた17人の女性が保護された。かの女たちの出身地はスカブミ、インドラマユ、スバンなど西ジャワ州がほとんどだった。非合法海外出稼ぎ者たちはおよそ3ヵ月ほど一軒家やアパートに閉じ込められてさまざまな偽造書類が作られるのを待ち、必要書類を手にして飛行機に乗り込む。行った先ではやはり非合法のその国のエージェントがかれらを空港で迎えて、求人先に送り込む。たいていがそんなスタイルであり、目的国潜入方法として海岸や国境へ密入国できるマレーシアほどの多様性はない。
非合法海外出稼ぎ者はみんな、外国へ出て稼ぎを得ることが目的なのであり、合法ルートをたどらずに非合法の道に走るのは、合法ルートを通るための公的書類に問題があるためだ。非合法の道では公的書類をエージェントがすべて偽造してくれるから、出稼ぎ者本人は大船に乗った気でいられる。つまり本人が法規を破ることをエージェントが幇助しているわけで、本人が詐欺行為を受けているわけではない。たいていの場合、本人は一定期間、出稼ぎ先の雇用者からもらう給料の一部をエージェントに渡す約束をしている。本人が最初からそのつもりなのだから、騙されているわけでもない。インドネシア政府や報道機関がそれをpenipuanと呼ぶのは、いったいどういう立場から上の定義付けをそこへ当てはめているのだろうか?それを考えてみるのも面白いのではあるまいか。
やはり類似の非合法行為が、今度はフィリピンで発覚した。インドネシア人メッカ巡礼者がなんと177人もの大集団で、マニラのニノイアキノ空港で同国の官憲に捕らえられたのである。かれらはもちろん、メッカ巡礼のためにサウジアラビアへ向う飛行機に乘ろうとしていた。持っているのはフィリピンのパスポートだ。ところが、タガログ語で話しかけても、だれも理解できない。官憲が不審を抱いたのも当然だ。かれらは全員が拘留され、自分はインドネシア人であると全員が認めたため、在マニラインドネシア大使館に連絡が入った。
カレンダー上で定められた期間に行われるメッカ巡礼は国家事業である。それ以外の時期にもメッカ巡礼を行うことはできるが、それは国家事業でなく、個人の宗教的な旅のひとつでしかない。名称もウムロと呼ばれて定められた期間のハジと区別され、インドネシアではメッカ巡礼を果たした者にウンマーが与える社会的称号のハジすら、その格付けに大ハジ、小ハジという差が設けられている。
定められた時期に行われるメッカ巡礼(大ハジ)では、サウジアラビア政府が各国に割当を与え、各国政府はその割当に従って国民のメッカ巡礼希望者を募り、巡礼の世話をする。2016年のインドネシアに対する割当は155,200人だが、1,151人は現地で巡礼者を世話する者に割り振られるから、巡礼希望者は残りの割当数しか参加できない。現地で世話係が担う仕事は、医療から始まって食事・宿泊の世話、現地で雇う運送機関の世話、巡礼者たちの監督などさまざまあり、各地元自治体の役人から医療関係者や仕事を請負った民間人が派遣される。そしてインドネシア政府はこの集団ツアーのために飛行機をチャーターしてインドネシア国内の12空港とサウジアラビアを往復させる。当然それら一切の費用は、巡礼者が政府に納めるメッカ巡礼費用で負担される。2016年の一人当たり巡礼費用は、アチェ空港出発者が最も廉くRp 31,117,461-、マカッサル空港出発者が一番高いRp 38,905,808-となっている。ジャカルタからの出発者はRp 34,127,046-で、ジャカルタ・西ジャワ・バンテン・ランプン各州の居住者に適用される。
昔は、メッカ巡礼希望者数とサウジからの割当数が拮抗していた。ところが昨今は経済力がついてきたためか、巡礼希望者が激増している。いま巡礼の申し込みをしても、数の上からは19年待たなければ自分の順番が回ってこないそうだ。そういう需要過多が発生すると、詐欺師がそこにからんでくるのがインドネシアなのである。
法規というのは元来、社会秩序の統制を目的とするもので、社会での共同生活を相互尊重相互謙譲原則に従って快適にするための自主的な自己規制だったはずだが、異民族による支配で搾取され続けた社会には建前だけの法規服従しか生まれず、面従腹背が当たり前のものとされ、「決まりは破られるために存在している」と豪語するような法規不服従精神を涵養して来た。社会を個人の上位に置く自主的な自己規制は育たず、社会を構成する個人は自分のエゴを最優先するあり方で生きている。
「今欲しいものは、力ずくでも詐術を弄しても手に入れる」というのがかれらの方針だろうから、そのチャンスさえあれば大枚なげうってでも手に入れようとするにちがいない。19年という辛抱はかれらの辞書に見当たらない。
そんな需要を放っておく手はないわけで、隣国フィリピンのメッカ巡礼者割当を掠め取って、インドネシア人巡礼希望者に高額で売りつけ、お得意の書類偽造でそんな企画を成し遂げようとする詐欺師がインドネシアとフィリピンの両国間で手を結び、国境をまたぐ大仕事を行ったというのが今回の事件だったようだ。インドネシア国家警察は、今回明るみに出たこのメッカ巡礼詐欺事件が過去から行われていたものであり、今年はじめて行われたものではない感触を得ているとのコメントを出している。
こういう事件が起こると、インドネシア政府は177人が本当にインドネシア国籍者かどうかの裏付けをまず取る。またインドネシアからのメッカ巡礼参加と二股をかけた者がいないかという裏も取る。8割がたが間違いなくインドネシア国籍であると既に判明しており、残る者の確認も進められている。また二股をかけた者はいなかったとインドネシア共和国宗教省は報告している。続いてインドネシア政府が出した見解は、この177人は詐欺の被害者であったというもので、このあたりの感覚がわれわれにはなじみにくいポイントになるだろう。
こうして被害者の欲求を助けるために高額非合法な報酬を得てかれらの偽りのメッカ巡礼を世話したエージェントだけが犯罪者にされていく。
国家警察はさっそくエージェント探しに取り掛かった。177人は南スラウェシ州出身者が70人でもっとも多く、次に多かったのは東ジャワ州パスルアン出身者。当然エージェントもそういった巡礼希望者の出身地で仕事をしており、177人をマニラまで送り出したエージェントは全部で7軒あった。
国家事業であるメッカ巡礼を国民の現場で世話するエージェントは宗教省から認定を受けなければならない。宗教省が持っている公認エージェント名簿には269軒が記されているが、それら7軒のエージェントはその中に入っていなかった。つまり非合法エージェントが非合法行為を行ったというわけで、当然すぎるほど当然な論理の帰結である。インドネシアで詐欺犯罪は最長四年の入獄刑となっている。


「新手のクレジットカード詐欺」(2016年8月31日)
BRI銀行クレジットカード保有者を狙った詐欺グループを首都警察特殊犯罪捜査局サイバークライム次局第三課が摘発した。この詐欺グループは7人から成り、4人が既に逮捕され、残る3人も指名手配中。
一味の手口はまず、あたかもBRI銀行職員であるかのように装ってBRI銀行カード保有者に電話でアプローチし、クレジットリミットの引き上げを勧誘する。別のバリエーションは超廉価の旅行パッケージのオファー。ターゲットが同意すると、BRI銀行のEDCを持ったクーリエが送り込まれる。クーリエはあたかも同意されたことがらだけをEDCで処理しているようにターゲットに思わせ、しかし知らぬ間にいくつかの取引をそこで行ってしまう。
クーリエが去ったあと、タイミングはそれぞれバラバラだが、カード保有者は自分の知らない取引にカードが使われたことを知って驚き、BRI銀行に連絡するという成り行き。百人を超えるカード保有者がこの詐欺の被害を受けた。損害金額はひとりあたり9百万から1千8百万ルピアのレベルで、2015年5月から9月まで行なわれたこの犯罪活動で一味は12億ルピアの稼ぎを得ていた。
この一味はバンドンにある取引金額の小さいいくつかの商店が持っているBRI銀行のEDCを使ってこの詐欺犯罪を行っている。それらの商店オーナーたちは、一店当たり100〜200万ルピアの報酬で一味にEDCだけでなく銀行通帳とATMカードを貸し与えていた。これには裏の事情がある。一味のうちの三人はバンドンのPT MSIの元従業員で、同社はBRI銀行へのEDCサプライヤーであり、それらの商店は取引金額が小さすぎるにもかかわらず、かれらのアレンジでBRI銀行クレジットカード受付店になっていたという事情があったのである。
警察は一年がかりでこの事件を追い、PT MSIの線をつかんで4人を逮捕するに至った。一味のボスやクーリエ役ら3人はまだ逮捕されていない。


「奇怪、小銭詐欺か?」(2016年9月9日)
2016年3月24日付けコンパス紙への投書"Kiriman Bodong"から
拝啓、編集部殿。3月20日(日)わたしがバンドンに向っている途上で、家にいる妻から電話がかかってきました。「パピ、ビスクアッを届けるようにゴジェッに頼んだ?」
2千ルピアのビスクアッを買ってわが家へ届ける注文があったとそのゴジェッ運転手は言っており、運賃1万ルピアと菓子代で1万2千ルピアを払うよう、要求されているのだそうです。わたしはゴーマートのアプリを使ったことがまだ一度もありません。なのに突然ゴジェッがこんなことをするとは・・・
アルディという名のゴジェッ運転手が妻に携帯電話機を見せると、たしかにその注文があったのです。わたしは気になって、自分の携帯電話機を開きました。すると注文番号111172648でビスクアッ1個とパンダンボル16グラムをアルファミディで買って来るように、という内容の注文記録が出現しましたが、注文者の電話番号は出ていませんでした。
わたしの家に住んでいるのは、92歳の母と妻とわたし、そして家政婦がひとりおよび猫三匹だけです。ビスクアッが好きな者はひとりもいません。9人の孫はひとりもわが家に住んでおらず、そのうちのふたりは学校からわが家へ戻ってきて親が迎えにくるのを待つだけです。
どう見てもこれはゴジェッのデータを悪用した犯罪であるとしか思えません。犯人はだれなのか?ゴジェッ組織の内部者か、あるいはデータセンターにハッカーが侵入したのか?
わたしが注文者でないことを証明するのは技術的に困難ですが、データ漏えいの可能性を調べることは可能だと思います。わたしはゴジェッカスタマーサービスに届け出ましたが、係員はまったく説明不能でした。係員はわたしのアプリをブロックするよう勧めましたが、そうすればわたしはもうゴジェッを利用できなくなります。[ 西ジャカルタ市在住、モッ・S・ヘンドロウィヨノ ]


「オレオレ詐欺被害は19ジュタ」(2016年9月13日)
2016年9月2日、西ジャワ州ブカシ県チビトゥンの工業団地でオフィス勤めしているムスティナさん21歳に電話がかかってきた。話者の第一声から、かの女はそれがメダンに住んでいる叔父のスウォンドだと思った。
「スウォンド叔父さん、どうしたの?」とかの女は尋ねる。
「いやあ、警察に捕まっちゃったよ。今すぐ60万ルピア必要なんだ。」
かの女はすぐにATMに走り、言われた口座に送金した。
しばらくして、また電話が来た。
「あれじゃ足りないそうだ。1千9百万を19回に分けて送金してくれ。」
叔父の頼みだと信じているムスティナさんは、再びATMに。
そして依頼を果たしてほっとした瞬間、「あれっ?」という不審感がモクモクと湧き上がって来た。
かの女が西チカラン署に届けを出したのは、9月5日の朝だった。届けを出すかどうか、迷いに迷ったにちがいない。


「ニセモノLPG販売」(2016年10月21日)
政府補助金付きの3kg入りLPGボンベに水を詰めて市場に流していた二人組がデポッ市警に逮捕された。
デポッ市住民から数件におよぶニセモノLPGの訴えを受けたデポッ市警は即座に捜査を進め、16年10月15日に24歳と19歳の犯人二人組をデポッ市内チマンギスのそれぞれの自宅で逮捕した。
このふたりは空になったボンベを入手して水を注入し、オートバイにそれを積んで一般家庭やガス販売巡回商人あるいは雑貨店などに一個1万6千ルピアで販売していた。かれらはこの違法ビジネスを2か月間行っていたと供述しており、一日およそボンベ20個を用意して売り歩いていたので、警察はデポッ市内にニセモノ3kg入りLPGが6百個出回ったものと見ている。
通常のものは重量が8kg前後である一方、この水入りLPGは12kgと重く、また揺らすとチャプチャプと水音がする。そしてボンベのガス噴出口を押すと水が滲み出してくる。買ったばかりのニセモノをコンロにつないで火をつけると、ほんのしばらく火が燃えるが、間もなく火は消えて、後は何をどうしようがまったく火はつかない。
警察は犯人ふたりを、刑法典第378条詐欺行為と消費者保護法違犯の罪で送検する予定。
デポッ副市長はLPG小売販売者に対する監督を強化すると表明したが、上の事件の実態は市行政からの事業許認可の外で行われている自由売買の中に紛れ込んだニセモノという趣がきわめて強く、過去からの諸事例を見ても、行政が統制しきれない空間における事件と見ることができるにちがいない。
プルタミナ社西ジャワ地区マネージャーはその要因を踏まえて、消費者も小売者もプルタミナ公認エージェントもしくはプルタミナ社営ガス充填ステーションから購入するよう勧めている。


「税関詐欺」(2016年11月4日)
2016年8月28日付けコンパス紙への投書"Tertipu Komplotan"から
拝啓、編集部殿。最初インターネットとワッツアップで知り合った外国人のアランさんが、友情の印としてプレゼントをわたしの住所宛てに送るということからすべてが始まりました。2016年8月7日(日)、プレゼントを発送したという連絡がアランさんから届きました。そして翌8月8日、税関職員のチトラと名乗るひとからわたし宛てに電話が来たのです。
携帯電話番号081807378646からかかってきたその税関職員の電話は、外国のアランという発送人からわたしの住所宛ての小包がジャカルタに到着しており、その小包をわたしの家まで届けるのに150万ルピアの費用をアグリアニ名義のBNI銀行口座番号0336160407に振り込んでくれという依頼でした。
わたしはその依頼に従ったあと、チトラさんに結果をSMSで連絡しました。およそ2時間後、チトラさんからわたしに電話がかかってきました。小包をスキャンしたところ、小包の中には靴・香水・装飾品・米ドル紙幣が入っているので、もう150万ルピア送金してほしい、という依頼です。送金しないと小包はオーバーステイの違反に引っかかり、現金が入っているから規定違反が公けになる、と言います。
アランさんに小包の内容を確認したところ、その通りで間違いないという返事でしたので、翌日わたしは再度銀行振り込みを行いました。数時間後、わたし宛てにEメールが来ました。ブリティッシュハイコミッションのリチャード・ヘンダーソン(richardhenderson227@gmail.com)という人からのそのメールによれば、小包発送人が保険をかけなかったので、受取人が保険を支払わなければならないのだそうです。そのEメールには、国連反テロリストクリアランスサーティフィケートという証明書が添付されていました。
その費用である1千4百万ルピアをヌル・アジザ名義のBNI銀行口座番号0445109570に振り込むよう、チトラさんとリチャードさんはわたしに迫ったのです。
その数日後、今度はマヤ・アリアンティ名義のBNI銀行口座番号0429653680に1千5百万ルピアを振り込めとまた迫られました。わたしは総額3千2百万ルピアを振り込んでしまいました。
今現在に至っても、小包はわたしの家に届かず、わたしのお金も消滅しました。今になってわたしはやっと、自分が税関の名を騙る詐欺マフィアの餌食になったことを悟ったのです。わたしに電話して来たかれらの電話番号にこちらからコンタクトしてもつながりません。わたしがかれらに振り込んだお金は、ウムロに行くためにたくわえていた母の貯金から借りたものだったというのに。[ パレンバン在住、ユリア ]


「なりすましニセモノ船員が・・?」(2016年11月24日)
首都警察一般犯罪捜査局移動捜査次局が公文書偽造グループを網に掛けた。犯人一味が偽造していたのは海員手帳と海員技能証明書で、警察は33歳・41歳・44歳の男三人を西ジャカルタ市チュンカレンの借家で逮捕した。
警察がその借家で押収したのは、偽造海員手帳190冊、訓練終了証書と海員技能証明書の偽造品多数、複写機1台、コンピュータ1台、シルクスクリーン機材1式。
一味が作った偽造海員手帳は一冊10万ルピア、技能証明書は一部3万5千ルピアで販売されており、これまでに海員手帳は2千冊が売られていた。この一味に偽造文書を注文していた者は運輸省の公務員を自称しており、それが真実かどうかはこれから明らかにされる。
ジョコ・ウィドド大統領が旗を振った行政サービスにおけるプンリ(不法徴収金)撲滅運動が進行しつつあるが、その初期に槍玉にあがったのが運輸省の海員手帳交付の際のプンリ行為であり、不良公務員が法外な金を要求するために手帳の入手をギブアップする船乗りが少なからずいることが判明している。
船乗りには外国の船舶に乗務する機会があるわけで、外国の給与レベルがインドネシア国内の数層倍であることは誰もが知っている。外国へ女中などの仕事に出る海外出稼者も同じであり、そういう高額の給与を得る者に不良公務員がプンリを行うことは古い時代から連綿と続けられてきた。「お前たちは巨額の金を稼げるのだから、その分け前を少しくらいこちらへ回せ。」というのがプンリ公務員のメンタリティなのだろう。
公式発行者からの海員手帳入手がプンリのために困難になっているとき、もっと廉い金額で偽造品をオファーすれば、困っている船乗りは飛びついてくるだろう、というのがこの偽造ビジネスの狙い目だったようだ。
正規の教育を受けてそれなりの実力を身に着けた船乗りが偽造の証明書を持っているケースがすべてであるなら話しは別だろうが、実力も素養もゼロのしろうとが高い給与欲しさになりすましているケースがそこに混じっていることは十二分に想像できる。インドネシア人海員を雇用する側にとって、また頭の痛い事実がひとつ判明したことになる。