インドネシアイスラム情報2004〜13年


「ラマダン開始は10月15日」(2004年9月22日)
イスラム協会はヒジュラ暦1425年のラマダン月1日が2004年10月15日金曜日となり、またシャワル月1日のイドゥルフィトリ祭礼が2004年11月14日日曜日となるというイジュティマ(月替わり)の確定を行った。同協会のキヤイハジ・シディッ・アミヌラ会長は、2004年10月14日にバンダアチェで見えるヒラル(月)は2度39分24秒の高さにあり、またジャヤプラでも1度28分19秒の位置に見えることから、その翌日からラマダン月がはじまることを表明した。またシャワル月については、11月12日21時27分にプラブハンラトゥで観測されるヒラルはマイナス3度58分37秒、ジャヤプラでもマイナス5度23分58秒でいずれもマイナスであり、これは西方水平線に太陽より先に月が沈むことを意味しているためにイドゥルフィトリは一日遅れて11月14日になるとのこと。イスラム協会はヒラルの目視観測でカレンダーを決めることを原則にしており、それと異なるカレンダー計算を行うイスラム団体とは時に異なる結果を示すことがあったが、今年はムハマディヤも同じ結論を出しており、食い違いは起こらない見込み。一方政府は例年のように、10月15日の数日前にラマダン月1日の確定と国民への公表を行う予定。


「今年のルバラン帰省でオートバイの通行に諸規制」(2004年10月4日)
今年もルバランまであとひと月余り。政府運通省はルバラン帰省に関連しての今年の方針を明らかにした。ジョコ・スラクソノ陸運総局広報官が、昨年のルバラン帰省で交通の障害となったものは無法オートバイと路上にあふれ出たパサルであると語り、今年特に二輪車に対して新たに取られる交通整理対策としては、日中点灯走行以外にも、ガソリンスタンドでの休憩禁止、逆走禁止、無許可サイドカーの禁止などが予定されているとのこと。
2003年の国家警察交通局データによれば、全国の登録車両は32,774,929台にのぼり、そのうちの23,312,945は二輪車となっている。四輪乗用車5,133,746台、バス1,270,020台、貨物運搬車3,058,218台に比べて二輪車の比率は圧倒的に高い。


「ラマダン月は30%の売上増、と小売業界」(2004年10月8日)
10月15日から予定されているラマダン月には売上が平常月の3割増になるだろう、と小売業界は推測している。今年9月末時点で全国に922店の販売網を持つインドマレッ・ミニマーケットを運営しているPTインドマルコプリスタマのラウレンシウス・ティルタ・ウィジャヤ社長は、「ラマダン月は消費者の購買行動が他の月より跳ね上がるため、聖なる月に応じた店内デコレーションとともに商品在庫に注意して伸び上がる需要を支えなければならない。またラマダン月にだけ需要が高まるナツメヤシの実やその他の果実、あるいはビン詰めシロップなどの商品もあり、インドマレッの全店ではひと月前から店頭陳列を始めている。」と語った。インドマレッ・ミニマーケットは472店がインドマルコの所有で、450店はフランチャイズ。
モダンマーケット納入者協会のスサント会長は、ラマダン期間中はハイパーやスーパーなどモダンマーケットでの需要が25%は増加するため、協会会員は供給態勢を整えている、と述べている。
一方、全国に222店のへロースーパーマーケット、ジャイアントハイパーマーケット、薬局、スターマートなどの店舗を擁するPTへロースーパーマーケットのイプン・クルニア社長は、同社ネットワークのすべての店舗で顧客からのイスラム喜捨をお預かりする、と語った。このZIS(ザカート・インファク・サダカ)と銘打った顧客からの喜捨募集は、集まった浄財をイドゥルフィトリに貧困層への寄付として分配するためもので、へローグループは10月7日から11月14日まで喜捨を受け付けることにしている。


「ラマダン月、首都、ゲペン」(2004年10月11日)
Gepengは平べったいという意味のジャワ語だが、省略語としてGelandangan(浮浪者)と Pengemis(乞食)を合わせた言葉としても使われる。厳しい生活苦に押し潰されてぺちゃんこになったかれらを指す言葉としてこれほど適切な言葉はないように思えるが、どうだろう?
ラマダン月には神の教えを忠実に守り、神の僕たる人間としての義務を果たさなければならないために、自分の持つ財貨を貧窮者と分かち合うことも励行される。インドネシア全国の半分以上の金が集中していると言われる首都ジャカルタにうなっている財貨を分けてもらおうと地方部から貧窮者が集まってくるのも理の当然。こうしてラマダンの間、ジャカルタはゲペンの街となる。しかし首都の公共の場における秩序安寧の維持をあずかる都庁社会環境秩序安寧局は、薄汚れたかっこうのゲペンたちが都内の交差点、バスターミナル、鉄道駅、モスク、墓地などを我物顔にのし歩く図を放置することはできない。
ゲペンは10月早々から都内への進入を開始しており、タナアバン地区のある交差点では普段10人程度のゲペンが既に二倍に膨れ上がっており、かれらはほかにもプラムカ+マトラマン交差点、ジャティヌガラ市場、ジャティバル交差点、プルマタヒジャウ新道路、クバヨランラマ市場、それどころかホテルインドネシア前ロータリーにすら出没している。人の集まる場所のほかに住宅地の中を、一軒一軒お恵みを求めて回るゲペンもおり、情報ではタングランのチルドゥッや中央ジャカルタのパルメラ地区でかれらの戸別訪問が既に行われているらしい。ゲペンは赤ん坊や幼児から、学齢の子供、青年、中年そして老人までおり、男女を問わない。
ラマダン開始まであと一週間を切った先週末、都内のゲペンは既に三倍増になっているとシャリフ・ムストファ社会福祉メンタル育成副部長が語った。都庁秩安局は9月中旬からゲペン検問を開始しており、今では3千人が都内にいる社会更生問題罹患者に対する補導活動に従事するべく動員されている。社会更生問題罹患者とはゲペンや売春婦など、社会秩序を乱す者を指す行政呼称だ。補導された社会更生問題罹患者はクドヤやチパユンにある更生施設に収容されるが、収容能力と予算の関係から無制限というわけにはいかない。そのため都庁は毎年、ゲペンの供給地である西ジャワ州や中部ジャワ州に協力を求めてゲペン上京を阻む対策を依頼している。ところが、ラマダン月に上京するゲペンたちはもはや季節労働者の趣きが強く、しかもかれらを組織してゲペンたちから上前をはねようとするやくざ者、更にはそれにからむ悪徳役人も少なくない。
秩安局が動員した3千人の補導員は交代で都内各所を回り、連日社会更生問題罹患者の補導にあたる。かれらのターゲットの中にはゲペンだけでなく、娯楽スポットが規則通り営業されているかどうか、アルコール飲料に関わる違法行為、賭博や売春婦の摘発なども含まれている。


「今年のジャカルタからのルバラン帰省者は8%増」(2004年10月20日)
ジャカルタから西方のバンテン、ムラッ、ランプン方面に向けては93,105人、東部・中部・西部ジャワなど東向きには687,288人、ボゴール、チアンジュル、バンドンなど南向きは365,921人、合計1,146,313人が今年のルバラン帰省でジャカルタを離れる。これは昨年の実績である105万人から8%の増加。また四輪二輪の自動車は昨年から5%増加するだろう。二輪車だけ取ってみれば、東向きに318,236台、西向きに38,789台、南向きに70,391台、合計430,936台がジャカルタから散っていく予測だ。昨年の二輪車帰省台数は2002年から40%も増加し、道中の混雑をたいへんなものにしている。今年は昨年の実例を踏まえて、より秩序だった交通管理を行わなければならない。運通省ジョコ・スラクソノ陸運総局広報官はそのように述べている。


「ルバラン帰省交通準備は着々」(2004年10月21日)
今年全国のルバラン帰省者中バスを利用するひとは1,460万人が予想され、定期バス30,569台と政府が用意する予備の3,057台で運送されることになる。空路利用者は昨年に比べて35%も激増するが、陸路利用者の増加は7%の見込みで、また水路を利用するひとは昨年から5%の増加と推測され、河川湖沼渡海は92隻のローロー船と13隻の高速船がその足として用意される、と運通省イスカンダル・アブバカル陸運総局長が語った。今年のルバラン帰省交通実施は雨季の最中であるために、交通渋滞や道路の損壊などが起こりやすく、また最悪地滑りなどの自然災害も発生の可能性が高まるために、帰省者は例年以上の警戒心を忘れないように、と政府は国民に呼びかけている。
一方、ジュダ・シトゥプ国有鉄道会社業務担当取締役は、11月8日から運行便を増やす予定にしており、平常期の長距離列車一日61便はルバラン帰省交通期間中一日73便に増便される予定だ、と語っている。それによって一日の運送座席数は12万5千人分、ピーク時の運搬能力は一日180万人に増やされることになる。こうして帰省交通期間中の列車運行総数は218本となり、総運搬能力は277万人となる計画が組まれている。
空の便は空運オペレータ各社がルバラン帰省交通期間中の増便を予定しており、ジャタユ・エアラインはイドゥルフィトリの前後各7日間12便1千席を追加する予定。ムルパティ航空は110席の収容能力を持つボーイング737−200機を10月に一機、11月に一機導入する計画にしている。ムルパティは10月20日から31日まで、パイオニア航路と共同運航を除く国内のすべての航路で142,500ルピアというラマダン料金をオファーしている。ガルーダ航空も、14路線で46,810席の追加を行うと公表している。


「レストランの売上は断食期間の方が大きい」(2004年10月21日)
ムスリムたちの断食が始まって5日が過ぎた。断食の時期には、レストランはあがったりだろうと思うと大間違いで、平常期よりも売上が大きくなるというパラドックスがある。南ジャカルタ市ウォルテルモギンシディ通りに店を構えるワルンダウン・レストランでは、10月15日以降で昼の来店客は店内2百席の30%程度しか入らないが、夕方のブカプアサ時には満席になり、日によっては席があくまで待つ客も出るありさま、とのこと。会社帰りに同僚が集まったり、一家揃ってのブカプアサを行うひとが多く、グループ客が増えるために店内はすぐ一杯になる。他の都内の中小レストランやホテルレストランも同様で、断食期間中のほうが売上が大きく、店側は平常期より30%くらい増加すれば万々歳だと語っている。


「ルバラン用ビスケットはチラチャスで」(2004年10月27日)
ルバランを前にしたラマダン月は、みんな金回りがよくなり、消費志向の強い文化的背景から消費行動が活発化するため、全国的ににわか商人が急増する。
ボゴール街道を南進してチラチャス地区に至る。そこはまだ東ジャカルタ市だ。見るとそのあたり一帯には、いるわいるわ、ビスケット売りたちが。それもそのはず、インドネシアでは有名なKhong Guanブランドのビスケット工場がそこにある。普段でもビスケット売りは何人かいるが、ラマダン月に入る一週間前にはその人数が四五倍に増加する。
ビスケットを屋台に並べて売っている商人のひとりは、自分の商品は一袋4千から6千ルピアで売っており、一日に上がる利益は15万ルピアになる、と語る。いまやSMSに王座を奪われてしまったルバラングリーティングカードを売るよりはるかに儲かる、とのこと。商店で買えば一袋2万から2万5千ルピアはするビスケットがどうしてそんな値段で売れるのか、との問いにかれは「あそこから、選別で残された残り物を手に入れている。」とコンクアンの工場を指差す。ほかで売られている物と別に変わらないよ、と付け加える。
イドゥルフィトリの一週間くらい前から、商売は最盛期に入るそうだ。その一帯には客が大勢やってきて、パサルなみになる。多くの商店が店を閉め始める時期であり、また一般家庭で大祭のための料理やお菓子の準備に入る時期と重なる。しかも値段が値段だけに、近隣のみならずジャカルタの隅々からもその噂を聞きつけて大勢がやってくる。ルバラン用ビスケットはチラチャスで。


「ルバラン帰省時のガソリン供給は大丈夫」(2004年11月1日)
SBY大統領は10月31日、北ジャカルタ市プルンパンのプルタミナ石油燃料デポを視察し、今年のルバランからクリスマス・新年にかけてのシーズンに燃料欠乏を決して起こさないよう、備蓄と供給に十二分に配慮することをプルモノ・ユスギアントロ鉱業エネルギー相に命じた。鉱エネ相は、現在燃料備蓄は19日分が確保され、近々22日分まで引き上げられる計画であり、ルバラン帰省実施から新年に至るシーズンへの備えは万端整っている、と答えた。
政府予算内で定められている石油燃料備蓄量は5千9百万キロリットルで、一方国内消費需要は一日17万8千キロリットルあり、内訳は軽油7万4千キロリットル、プレミウムガソリン4万4千キロリットル、灯油は3万2千キロリットルといった内容になっている。
チラチャッ製油所のプルタミナ第4加工ユニットは、ルバラン帰省でガソリン消費が膨張することから、それに備えてプレミウムの生産増に拍車をかけている。プレミウムは9月の生産が日製9千5百キロリットルに対し9千8百の需要があったため増産態勢を進め、10月は日製1万5百キロリットルを生産して10,345キロリットルという需要を充足させた。11月は営業部門から一日の需要量が更に増加するとの連絡を受けており、日製12,050キロリットルという生産予定が組まれている。月間で見れば11月は、全国消費需要見込みの310,350キロリットルに対して361,500キロリットルが生産されることになり、供給にまったく不安はない、と同ユニットのムフソン・ハリヤディ部長は述べている。


「ルバラン初日も、どうぞご来店を」(2004年11月12日)
14日のルバラン断食開け大祭初日も、いくつかの首都のショッピング場は店を開く。インドネシアショッピングセンター経営者協会APPBIのアンドレアス・カルタウィナタ会長は、首都のすべてのモール・プラザ・ショッピングセンター運営者はその日営業する予定を表明している、と述べている。ただし従業員にイドゥルフィトリ懇親の行事を行う時間が必要なため、開店時間は正午を過ぎることになる、との説明。
一方、インドネシア小売業者協会Aprindoのハンダカ・サントサ会長は、「モダン小売業界は一部が開店を予定しており、今はっきりしているのはサリナ、ナガスワラヤン、ポジョッブサナ、エースハードウエア、インドマレッが閉店し、へロー、ジャイアン、カルフル、ラマヤナ、アルファスーパーマーケット、アルファマート、ハイパーマート、スペリンド、グヌンアグンが開店する。ただしその店が入っているモールなどがオープンするのが条件だ。開店時間は12時からというところもあるし、13時からというのもある。」と語っている。協会側は、宗教祭事の日に営業するかしないかに関して、特に何らかの指導や規制を行っているわけでなく、すべて会員会社が自らの考えで決めていることだ、と補足している。


「ルバラン帰省運転者は油断禁物」(2004年11月12日)
ルバラン帰省の大きなうねりが流れ始めている。諸方面がこの流れをスムースに進ませようと骨折り、手を尽くしているが、だから違反をして良いということにもならない。チカンペッ有料道路を通って帰省する自家用運転者は、交通事故以外にも警戒しなければならない災難がいろいろある。
チコポ料金所を出た自家用車は、料金所を出てから北岸街道方面に5百メートル行くと三叉路にぶつかる。そこにある交番に油断してはならない。特に交通が順調に流れているときが逢魔の時間で、道路が渋滞していると魔物は遠慮がちになるらしい。そこにいる警官は、渋滞していると交通整理にやっきになるので、違反をとらえてどうこうしようとはしないが、スムースに流れ出すと違反者を見つけ出しては道路脇に停車させる。
一番多い獲物は、安全ベルト不着用。首都から離れれば田舎の警官はとやかく言うまい、とたかをくくる自家用車運転者はピピピピと鳴らされる笛の音と路肩を指差す警官の指図を前にして途方に暮れる仕組み。混み合う有料道路を走って疲れ、休憩したり小用を足したりしたあとまた出発した運転者や助手席同乗者が、ついうっかり安全ベルトの装着を忘れてしまうというのがよくあるパターン。
深夜や早朝のジャワ島北岸街道には、交通警官のおいしい獲物がずらり。夜闇を縫って走ってきて、慣れないことにお疲れの自家用車運転者が、道路脇に車を停めてしばしの休憩。突然出現した警官がコツコツと窓を叩き、近くにあるS字道路標識を指差して、また違反切符が飛び交う。
スクラ近辺の街道に、道路右端ラインに接近して交番が建てられている場所があり、そこには二車線の右側車線を左に合流させるための標識が置かれている。そして警官がそこに立ち、右車線を走ってきた車が左に割り込みをするのを待っている。首都の交通マナーがどうなのかを先刻ご承知のかれらは、危険な運転をすると違反切符の対象となる規則を忠実に適用してくれる。
しかしどうやら、熱心な違反摘発に勇み足も出るらしく、ついついその裏を勘ぐるのは抑圧された小市民の性かもしれない。深夜に比較的空いている街道を調子よく、しかし法定速度内で走っていたキジャンに、オートバイ警官が寄って来て停車を命じた。お定まりの書類拝見で、法規通りの書類を示すと、今度はライトの点検を始める。運転者が「わたしは何か違反をしましたか?」と尋ねると、敬礼し「トゥリマカシ」の言葉を残して去っていった、というストーリーがあったが、運転者は今でも首をかしげている。


「公務員採用申込みに添付されたジルバブ姿の写真をボゴール市職員が拒否」(2005年1月12日)
11月に行われた公務員採用の結果はほぼ確定したようだが、ボゴール市の採用手続きを担当した同市の採用実行委員会が、ジルバブを着用した顔写真を申請書に添付した合格者に対してジルバブ不着用の写真に替えるよう指示していたことが明らかになった。同市に採用が決まった合格者の中で、写真が条件を満たしていないとしてジルバブを着けていない写真を要求された女性は4人。中の一人、小学校教員に採用されたヌルジャンナは「申し込みのときにジルバブを取った写真に替えた方がよい、と言われたけど、そのまま出しました。」と語る。かの女は採用審査合格が決まった際に、写真を取り替えて再登録しないと失格になると言われた。申請書に添付する写真は両耳が見えていなければならないというのが条件だ、と担当職員が語ったとのこと。
ボゴール市議会アニ・スマルニ議員は、ジルバブ着用写真が問題にされている4人の合格者から苦情を受けている、と言う。イスラムで定められている、女性のアウラッを覆うためのジルバブを脱いで耳を見せろ、と命じるのは基本的人権違反だ、と同議員は見る。「そんな過去のパラダイムを受け入れることはできないし、そもそもそれは45年憲法第29条に違反しています。市人事局に確認したところ、採用実行委員会からはそれが条件だという回答をもらったけれど、それは中央政府の全国人事庁の方針で、文書化された規定があるわけではありません。」という同議員のコメント。コサシ、ボゴール市地方人事局長は、公務員試験申請書の顔写真は耳が見えていなければならないという条件を適用している者が職員の中にいることを認めている。「それは昔の規則で、今はその条件がなくなっている。ジルバブ姿の顔写真でも問題ない。」同局長はそう説明している。同局はこの条件変更を市民に対する告知社会化の推進を通して広く通知していこうと計画しており、市民に対する案内の実施を既に始めている。
ヌルジャンナは再登録のための書類をすべてそろえて提出したが、写真は替えなかった。「ジルバブ着用の写真でも、こんどは何も言われなかったわ。」とかの女は述べている。


「ジャボタベッの犠牲祭用動物需要は低調」(2005年1月19日)
ジャボタベッ市場にイドゥルアドハの犠牲祭用動物を供給している都営会社PDダルマジャヤのバスキ・ラント経理担当取締役は、今年の需要は低調だ、と語った。「今年の売れ行きは昨年よりスローだ。今年はアチェやニアスや他の地方部で行われる犠牲祭に浄財を募る機関に資金を委ねる都民が増えているらしい。」との談。それでも、あと数日間に需要が突然上昇しても供給欠乏を起さないよう、同社は牛と山羊をそれぞれ1万2千頭準備している。政府機関や民間企業の需要はダウンしないだろう、と同取締役は見ているのだ。今年の犠牲祭用動物価格は、牛はキロ当たり19,200ルピアもしくは一頭9百万ルピア、山羊は一頭65万から85万ルピアといったところ。供給される動物は衛生検査が行われ、病原菌を持っていないことが確認されている。
一方スラバヤでは、イドゥルアドハが近付いた時期に牛や山羊の価格が急上昇した。特に山羊の価格上昇が激しく、普通サイズの山羊で普段一頭40から50万ルピアだったものが60万を超え、場所によっては1百万ルピアの値が付いている。これは犠牲祭用需要期を当て込んだ値付けのせいらしく、養殖業者からの卸価格が今週初めから跳ね上がっている、と流通業者は訴えている。モジョクルトやジョンバンの養殖業者卸価格は普段一頭40万ルピア程度だが、16日には50万ルピアになったとその流通業者は説明している。


「イスラム守護戦線がバンド『デワ』を告発」(2005年4月26日)
人気ロックバンド「デワ」のリーダー、アフマッ・ダニをイスラム守護戦線(FPI)が首都警察に告訴した。4月25日、FPIに所属する数十人の群衆が首都警察を訪れ、同バンドの最新アルバム「Laskar Cinta」のジャケットに描かれているカリグラフィがムスリムを蔑み、賤しめている、と訴えた。
FPIのウスタズ・アフマッ・ソブリ・ルビス中央指導部議長の説明によれば、かれらはふたつの過ちを犯しているとのこと。ひとつは4月10日にトランスTVで放映されたコンサートで、アラーの文字を星型に描いたカリグラフィーを足で踏んだこと、もうひとつはそのデザインを背教的な場所を含めたあちこちのコンサートでシンボルとして使っていることで、そのためFPIやそのシンパは各地のデワのコンサートで、ムスリム大衆に謝罪し、そのシンボルの使用を止めるように申し入れており、FPIは代案をも提示して、アラーの文字からラムの一字を抜いて「アー」とするなら自由に使ってよい、とも述べている。更にルビス議長は、ダニが早急に謝罪し、アルバムジャケットをすべて取り替えないなら、FPIメンバーはカセット販売場所で検閲を実施することになるだろう、とも語っている。
この訴えを受けたフィルマン・アブドゥルガニ首都警察長官は、FPIが違法行為を行うのは許されない、とルビス議長に水を差した。「報告は受け止めた。しかし法執行が違法なやり方でなされてはならない。この問題は警察に任せていただきたい。」との長官の談。
FPIはこの問題に関連して、カセットのディストリビューターであるPT AquariusとデワコンサートのプロモーターであるPT Djarum Kudusへも4月20日に告発状を送っている。スラバヤ出身のこのバンドがトランスTVに登場し、アラーのカリグラフィが描かれたカーペットの上で跳びはねる姿が放映されて以来、非難の声が一部からおこっていた。


「バービーとラザンヌ、どっちに軍配?」(2005年6月7日)
世界中の少女たちのお友だち、バービー人形はインドネシアでも大人気。インドネシア語ではバルビーと発音されるこのバービーちゃんは、なにしろPTマテルインドネシアが国内で生産し、世界中に輸出しているくらいだから、ジャカルタの道端で物売りがそれを並べて売っていてもなんら不思議ではない。しかし長くすんなりした足やグラマーなボディにミニスカートやらビキニやらを着せ替えさせるのは、性的に厳格なイスラムの教えから見れば、教育上あまりよろしいことではない。セックスアピールで自分の存在を誇示するような下品さを拒み、淑やかで優雅なムスリム娘としてのあり方を教えるには、バービー人形は不向きである、との考えから、ムスリム少女向けの人形が売り出された。その名も『ラザンヌ』(Razanne)。
8年前にこのラザンヌ人形を考案し発売したのはアメリカ在のアンマル・サアデとシェリー・サアデで、ミシガン州リボニアに設立したヌールアート・インクが世界中に販売している。既にアメリカ、カナダ、ドイツ、シンガポール、クエート、アラブ首長国連邦などに代理店を置き、年間3万体を超える販売実績をあげている。インドネシアへはマレーシアのディストリビュータがネットワークを持っているようだ。
ラザンヌ人形は、白い肌にブロンドの髪、浅黒い肌に黒い髪、黒い肌に黒い髪という三種類のバリエーションがあり、ボディはバービーのようなグラマーでなく、胸もあまり突出していない。こちらも着せ替え人形だから衣装もさまざまだが、みんな一様にジルバブを被り、種々のデザインのイスラム衣装は長袖ロングスカートで足首までを覆い、アウラッを見せることはない。価格は最廉価のベーシックバージョンで9.99米ドル、礼拝するラザンヌはムクナを着てアルクルアンの書物を手にしており、価格は14.99ドル。外出と家内のラザンヌは、頭髪を含めて身体のすべてを覆った服装の外出着と家の中でリラックスした姿を見せる服装の二種類がセットになって19.75米ドルなどとさまざまなバージョンが用意されている。


「今日、アチェで鞭打ち刑復活」(2005年6月24日)
グスドゥル大統領時代にアチェ特別州はシャリア(イスラム法)を施行することが法令で定められたが、シャリアにある鞭打ち刑(実際は棒たたきの刑)の実施細則が未制定だったために、この刑の実施が行えないでいた。アチェ州庁はこの6月に州条例代用知事令を発布して鞭打ち刑実施の詳細を規定したため、この刑罰が合法的に遂行される法的背景が整っていた。
鞭打ち刑に使われるのは直径7.5ミリから1センチで長さ1メートルの籐棒で、この棒が受刑者の背中に判決で定められただけの回数振り下ろされるという執行方法。執行人はアチェ州警察から選び出され、証人5人がその執行を見守る。
この受刑者は州内各地のシャリア法廷で既に何人も生み出されており、賭博、婚外性交、売春などの被告にその刑の判決が下されている。
24日、州内の先頭を切って、ビルエン県アグンモスクの広場でこの鞭打ち刑が施行される予定。賭博を行った罪で捕えられている7人の受刑者が、公衆の見守る中で背中に籐棒を受ける。ビルエン県シャリア法廷がかれらに下した判決は、検察側が求めた鞭打ち12回よりも軽い6回。州議会議員など州内の指導的立場にいる人々の多くは、刑執行を目の当たりにした民衆がシャリア倫理に背く行為を避けるようになることを期待しているが、民間人権擁護団体は基本的人権違反を主張して鞭打ち刑反対の声をあげている。


「サリナビルでおかまコンテスト」(2005年6月29日)
都内タムリン通りに面したサリナデパートビルで26日、ミスワリアインドネシアコンテストが開催された。ワリアというのはおかまのこと。このコンテストの優勝者はタイで開かれる大会にインドネシア代表として出場することになっている。
ところがその催しをどこで聞きつけたか、FPI(イスラム守護戦線)が百人以上のデモ隊を編成してサリナビルに押しかけ、反対の叫びをあげて周辺を練り歩いた。ソレ・マフムッFPIスポークスマンは、「イスラムではおかまはアラーに呪われしものだ。このような催しが社会に受け入れられることにわれわれは断固反対する。すぐに解散せよ!」と主張を述べ、デモ隊がビル内に突入しようとしたため、サリナビル管理者は入り口をすべて閉鎖した。険悪化した雰囲気の中でなんとか状況を和らげようと、首都警察メンテン署長やサリナ側の職員が白装束の一団と応対し、代表者10人とコンテスト主催者との対話をはかろうとして招かれざる一隊を中に招じ入れた。白装束の10人が14階のコンテスト会場に入ると舞台上に異変が起こり、参加者のワリアたちは慌てて逃げ、どこかに隠れようとしたため進行が中断され、主催者側がFPIに苦情を向ける一幕もあった。ソレ、スポークスマンは「FPIが来たのは、何が行われているのかを調べるためであり、同時に宗教に背くこのような行為を止めさせるためでもある。」と述べ、その後警察やサリナ側の仲介で21時30分ごろから主催者とFPIとの間で対話が一時間に渡って持たれたが主張は平行線をたどり、一方催しは最後まで続けられて終わった。この催しは既に二回目で、警察の厳重な警戒のもとに行われていた。


「断食月前の石油燃料値上げは消費者価格に影響が出ない」(2005年9月19日)
政府が予定している10月初の石油燃料再値上げに関連して、小売業界には価格値上げを先延ばしする考えが強まっている。
国内最大のリテーラーであるマタハリ社は、特に自社ブランドファッション製品の価格を当面据え置くことを決めた。ルバランを前にして在庫の積み上げは進展しており、通常月の4倍のストックレベルにまで持ち上がっていること、石油燃料再値上げで消費者購買力が低下すること、ファッション製品は燃料コスト値上がりの影響が小さいこと、などがその決定の根拠になっている。マタハリデパートは自社ブランド製品の販売が総売上の35%を占めており、一般的傾向に洩れず、同社も利益高より売上高を重視しているようだ。
トーマス・ダルマワン全国飲食品事業者連盟専務理事は、大規模販売者ほど売上金額重視傾向にあるため、市場での価格値上げは、石油燃料値上げにも関わらず、大半が自重するだろう、と述べている。値上げを行う業者は、石油燃料関連でなく為替レートのためにそれを行う方が圧倒的だろう、とのこと。大規模販売者はまた、倉庫をあちこちに持ち、運送と保管の効率を高める余地を持っているのでコストアップ対応努力ができるが、中小規模だとその余地があまりないため、価格維持は厳しいのではないかと見られている。しかし大規模販売者に納入する中小規模業者の値上がりはせいぜい5〜10%のレンジだろうと予測されている。


「ラマダン月にSMSサービス」(2005年9月20日)
今年は10月の声を聞くとすぐにラマダン月がはじまる。ラマダンは神の恵みの満ち溢れる月であり、ムスリムにとっては一年最大の宗教心発起の時期でもある。生活のすべてに宗教の彩りを添えることを望むムスリムにとっては、宗教の薫り高いSMSを受け取るのもまた愉しからずや。
ということで、レプブリカ紙が宗教メッセージをSMSで送るサービスを行う。コーランやハディスからの知恵と美麗さに満ちた神への賛歌と人間への指針が、希望する時間にあなたの携帯電話に届けられる。選択できる時間はサウル、ズフル、マグリブの三つで、電話番号3033番に「Republika ワンスペース空けて Sahur」と送付しておけば、ラマダン月には毎日サウルの時間にメッセージが携帯電話に飛び込んでくる。ただしこのサービスはSMSプレミアム料金なので、毎日2千ルピア分の度数があなたの携帯電話から削られていくことになる。


「イスラム女性ファッションモデル」(2005年9月22日)
アウラッを他人に見せてはならないとの教えから全身を包み隠してしまうムスリマ(イスラム女性)衣装ではあるが、その大枠を破らないところでやはり美しく装いたいのが女心。ムスリマ衣装の世界にもファッションがあり、流行がある。そうなれば、モデルがいて、脚光を浴びるキャットウオークがあり、カメラのフラッシュがたかれる世界があってもおかしくない。
ところが、ファッションショーでムスリマ衣装に身を包み、キャットウオークをしゃなりしゃなりと歩いて見せたモデルたちが、舞台を降りると衣装を脱ぎ捨ててタンクトップの素敵な身体を惜し気もなく人目にさらす。かの女たちにしてみれば普段示している当たり前の行動なのだが、なにしろ観客が違っている。観客は、舞台上のムスリマは平常の生活内でも秩序を守るムスリマであることを期待しているから、その落差が与えるショックは大きく、ファッションショーオーガナイザーは予想もしなかったクレームに面食らう。
そんなことから、「ムスリマファッションショーのモデルには、本物ムスリマを。」というアイデアに至ったのは当然といえば当然の帰結。モデルスクール経営で著名なインドネシア元スーパーモデルのラティ・サンガルワティがムスリマトップモデルコンテスト2005を開催した。条件は、日常生活の中でムスリマ衣装を着用している人。これは立証するのは難しいが、よく見ていれば、わかる人にはわかるというもの。あとは通常のモデル採用試験と同じような条件だ。人間を外見の美醜で差別してはいけない、という宗教上の教えはあるが、モデリングの世界の基本条件である均整の取れた体形を無視することはできない、とラティは語る。
ジョクジャ、バンドン、スラバヤ、ジャカルタ、パレンバン、プカンバル、マカッサルの各地で行われた予選をパスしてきた17歳から27歳の30人の女性たちがトップモデルの栄冠を競う本選会は、9月22日ジャカルタのクラウンプラザホテルボールルームで開かれる。
果たしてムスリマトップモデルは、イスラム世界のスーパースターになるだろうか?


「金貨銀貨への回帰」(2005年9月28日)
アセアン単一通貨の企画に乗って、さらに中東をも巻き込んだ形での通貨発行のアイデアを、インドネシア造幣公社が提案している。提案されているのはディナールとディルハムの発行で、これは古式豊かな金貨銀貨。
ディナールとは22カラット4.25グラムの金貨であり、ローマ帝国に由来するもので、預言者ムハンマッの時代にはイスラム諸国一円で広く使用されていた。ディルハムはペルシャ帝国に由来する銀貨で、3グラムと5グラムの二種類が流通していた。そのディナール金貨、ディルハム銀貨は、実はインドネシアで作られた実績がある。ムラビトゥングループやテルナーテ・スルタン宮廷などがPT Aneka Tambangに発注し、同社は子会社のPT Logam Muliaにその生産を委託して注文に応じている。それ以外にも、バイトゥルマアルムアマラッやアチェ州庁も、それらを発注する計画を持っているとのこと。ムラビトゥンやテルナーテ宮廷は、その金貨銀貨を取引決済に使用している。
ブレトンウッズ以来潮流の変わってしまった世界の通貨体制からの、この伝統世界への回帰志向は、ひとつの警鐘と見て良いのかもしれない。


「ルバラン帰省の準備がはじまる」(2005年10月3日)
ハリラヤ・イドゥルフィトリはまだ一ヶ月も先だというのに、首都圏からの帰省者は早くも鉄道切符の確保を始めている。勤め先の休日日程がそろそろ確定する頃で、また給料後でもあるので、10月第一週には予約切符が大量に売れるだろう、とジュアンダ鉄道駅切符予約サービスセンター職員はそう述べている。今は10月いっぱいの切符料金が公表されているが、11月の料金は10月第一週に公表される予定。既に出されている10月28日から31日のピークシーズン料金は平常期から大きくアップしており、ジャカルタ〜スラバヤ間アングレッ号は平常料金が18〜22万ルピアのところ、35万ルピアになる。グマラン号だと10万ルピアが12万ルピアになっている。ジョクジャ行きタクサカ号は15万5千〜20万5千ルピアから28万5千ルピアに上がる。 空の足も10月28日から料金が跳ね上がる。ライオンエアーはジャカルタ〜ソロ平常料金22万5千ルピアが42万9千ルピアに、ジャカルタ〜パダンは40万から100万ルピアになる。「『ルバランの時期が来ると料金が高くなる』と消費者は苦情しているけれど、ただ単に割引がなくなっただけなんですがねえ。」と航空会社側は説明している。


「断食開始の政府決定」(2005年10月4日)
ラマダン月の開始を前にして、ナフダトウルウラマ(NU)東ジャワ支部が新月目視観測チームを10月2日、東ジャワ州の10ヶ所に派遣した。目視観測地点に選ばれたのは、パムカサンのアンベッ海岸、バンカランのグバン海岸、スラバヤのナンバガン海岸、グルシッのブキッチョンドロとウジュンパンカ海岸、ラモガンのタンジュンコドッ、ブリタルのセラン海岸、マランのギエッ海岸、グルシッのバウェアン島海岸、バニュワギのプルンクン海岸。各地点では地元NU支部の協力下に数人からなるチームが観測を行うことになっている。
シャバン月29日にはイジュティマ(月が欠けきってから新月に代わるとき)がその日没なのか、それともその翌日になるのかが目視観測(ルキヤッ)されることになっており、そのとき新月(ヒラル)が観測されればシャバン月は29日で終わり、翌日はラマダン月初日となるが、そのとき新月が観測されなければ、翌日はまだシャバン月で、翌々日になってからラマダン月に入る。
10月3日、宗教省はイスバッ会議を開催した。国内有力イスラム諸団体や友好イスラム諸国代表を集めたその会議では、政府としてのラマダン月開始日が決定され、宗教大臣令として公布される。NU東部中部ジャワ州およびジョクジャ特別州で行ったヒラル観測結果が宗教省ヒサブルキヤッ(暦計算と目視観測)庁でまとめられ、その結果がイスバッ会議で報告された。観測結果によれば、シャバン月29日のヒラルは国内の全地点で水平線のマイナス0度30分からマイナス2度30分の間にあり、日没時に新月が水平線上にまだないことが明らかになったので、シャバン月は30日間となることが確定した。そのあと会議では、有力団体が意見を述べ、最後に宗教大臣が決定を下し、その場で2005年度宗教大臣令第495号が作成された。決定内容は、回教暦1426年ラマダン月1日は2005年10月5日になるというもの。
ソレ・ハヤッNU東ジャワ支部副支部長によれば、ヒサブと呼ばれる計算メソッドでの暦算定で、ラマダン月1日は10月5日、イドゥルフィトリは11月3日になるとされており、ムハマディアやほとんどのイスラム団体の主張とNUの意見は同じになるだろう、とのこと。計算によると、ラマダン月開始の10月5日には新月(ヒラル)が4度の位置にあるとの談。
イスラム統一センター指導部はヒサブルキヤッメソッドで、イスラム暦1426年のラマダン月開始は今年10月5日であり、シャワル月1日つまりイドゥルフィトリは11月3日になる、と決定している。シャバン月の終わりであるイジュティマは10月3日17時28分で、一方ラマダン月終わりのイジュティマは11月2日8時25分である、とイスラム統一センター会長はしばらく前に表明している。
ところで、サウジアラビアのメッカでは10月3日の日没時にヒラルが地平線上に目視観測されており、10月4日からラマダン月に入る。こうして、ペルシャ湾以東と以西で一日のずれが生じているがともあれ、イドゥルフィトリ大祭の前にも上と同じプロセスが踏まれることになっている。
すでに数日前から各地でムスリムは親族の墓参を始めており、10月3日4日がそのピークになるだろうと見られている。3日は朝から各地にある公共墓地に大勢が家族連れで訪れ、墓の掃除をして亡き人の霊を弔っていた。次はイドゥルフィトリの日に墓参が行われる。インドネシアムスリムたちは10月4日夜のタラウィからラマダン月の行を始める。


「断食月には書店への来店客が増える」(2005年10月10日)
プアサのはじまった首都ジャカルタで、書店が来店客でにぎわっている。平常からグラメディアやグヌンアグンなどの大手書店は宗教関連書籍売り場を充実させているが、聖なるラマダン月はいやがうえにもそのプロモーションに焦点が向けられる。
南ジャカルタ市ブロッケムのグラメディア書店には、近隣のオフィスに勤める勤労者がズフルの礼拝のあと、眠気や退屈をまぎらすためにやってくる。事務所にいても仕事にならない、とかれらのひとりは言う。ブロッケムプラザにあるグヌンアグン書店でも同じようなもの。書店側ではイスラム関連書籍の在庫を、平常の2〜3倍持つようにしている。宗教関連以外にも、プアサやルバランのための料理の本、ムスリマ衣装の本なども焦点が当たる書籍のひとつ。
ブロッケムのグヌンアグンは5万2千ルピア以上買い物をすると10%の商品券をくれる。その商品券は即使うことも可能だ。グヌンアグンは全店で、マグリブ前に来店客に対し、心ばかりのプアサ明け飲食物を配ることにしている。
レプブリカ書店も宗教関連書籍の在庫は2倍に増やしている。ラマダン期間中のセールとして宗教関連書籍は二割引サービスをしている。この書店では書籍パーセルを用意しており、価格は30万から40万ルピアで販売されている。送り先までの送料も込みになっており、書店側で配達してくれる。グラメディア書店は、グマインサニ出版の書籍を10%引きで販売している。
ほとんどの書店は午後からマグリブに向けて来店客が増えていき、プアサ明けの時間に減少してその後は平常に戻るようだ。


「コーランのインドネシア語訳最新版が出版される」(2005年10月11日)
宗教省がアルクルアン(コーラン)インドネシア語訳を出版した。前回出版されたのは2002年版で、新しい2005年版は前回の1,294ページから926ページに、ほぼ20%薄くなっている。脚注も1,610件から930件に大幅減。内容についても、アラブ語からインドネシア語への翻訳が、より本質に根ざした、適正なインドネシア語の選択に留意されているとのこと。
宗教省でのアルクルアン翻訳活動は1960年代に翻訳委員会が編成されてからスタートし、何度か版が重ねられて今日にいたっている。それとは別にアルクルアンのタフシルも出版されており、1972年から集成されて1980年に30章全編からなる完璧なタフシルが出版された。このタフシル改訂作業は2003年から毎年6章ずつを仕上げる計画になっており、5年後の2007年に総改訂版が出版されることになる。


「ガルーダのルバラン期間増便は128便」(2005年10月11日)
10月28日から11月13日までの国内線全便はもうフルブッキングになっている、とエミルシャ・サタルガルーダ航空社長が明らかにした。ここ一週間の搭乗予約はきわめて旺盛で、国内線1万8千、国際線1万2千、合計3万人がブッキングを入れているとのこと。そのためガルーダ航空はルバラン帰省とルバラン後の逆流の空の足を充実させるため、128便の臨時便を出す計画。料金については、今年4月から7月までの間にすでに26%も値上がりしているため、今年のルバラン運送に対する値上げは行わない考えでいる、とのこと。一方国際線のドル箱である日本航路では20%、オーストラリア航路では5%のキャンセルが出ている由。第二次バリ爆弾テロの影響が徐々にながら進行しており、外国人観光客のバリ訪問が静かに減少を続けることが懸念されている。


「今年のラマダン月は消費者買い控え」(2005年10月28日)
間近に迫ったイドゥルフィトリ祝祭にも関わらず、モダンマーケットの販売が伸び悩んでいる。石油燃料大幅値上げ後の今年は、中流層以下の購買力が大きく後退したため、モールやスーパーマーケットの販売が翳りを見せており、続々と今年の販売ターゲットが下方修正されている。中でもミドルクラスの交通費が所得の中に占める比率が12.5%から17.5%へと40%増加したことで、小売業界はかれらの購買消費が10%あまり低下するだろうと読んでいる。
この断食月のショッピングセンター来店客数は、平日4万人週末7万人と例年並の客足だが、消費者の多くは買い控え傾向を示しているとのこと。スーパーモール・カラワチでは、例年ラマダン月の売上が平常月に比べて三倍にも増加していたというのに、今年は一日の売上が100億から150億ルピア程度しかない、と売上減少を嘆いている。インドネシア小売業者協会のハンダカ・サントサ会長は、75社が今年の売上目標を下げた、と語っている。同協会では今年の小売総マーケットを45.5兆ルピアと計画していたが、この状況では昨年実績の35兆から10〜20%程度しか伸びないのではないか、と悲観的な観測が出されている。


「ルバラン長期休みに首都圏でのショッピングは?」(2005年11月1日)
多くの中小商店は、店主や従業員がルバラン帰省をするために、休みの間閉店するところが多い。中には従業員がみんな帰省するので、店主は家族と一緒に近隣諸国へ息抜きというパターンも少なくない。しかし大規模モダンマーケットやモールはたいてい店開きする。イドゥルフィトリ初日だけは、礼拝とシラトゥラフミを行う従業員のために午前中の営業をせず、お昼頃から開店して通常の営業時間いっぱい業務を行う。イドゥルフィトリ二日目以降は朝から通常の営業時間内でフル営業する。おかげで、ルバラン長期休みの間は行くところがないのではないか、という心配をする必要がない。
フランス系大手ハイパーマーケット『カルフル』は、首都圏・メダン・パレンバン・バンドンの全店舗でイドゥルフィトリ初日の11月3日は13時に開店し、いつものように夜まで営業する。4日以降は平常通りの営業とのこと。
リッポカラワチ・ショッピングセンターは、ルバラン初日は正午にオープンし、閉店は平常通り。二日目からは通常の営業時間で開店する。最近オープンしたチブブル・ジャンクションもまったく同じパターン。リッポチカラン・モールは、ルバラン初日は営業しないが、二日目以降は平常通り開店する。ブロッケムプラザもルバラン初日は正午のオープンで、その後は平常期の営業時間が実施される。


「イドゥルフィトリ日確定は11月2日の夜に」(2005年11月2日)
今年のイドゥルフィトリ、すなわち回教暦1426年シャワル月一日が11月3日になるのか4日になるのかの確定を、政府が今夜発表する。今年10月5日から始まったラマダン月の29日目にあたる11月2日に、政府宗教省は民間団体や関係機関を集めてラマダン月の終りを確定する会議を開く。イスバッ会議と呼ばれるその会議には、イスラム民間団体、ウラマ評議会、ヒサブルキヤッ庁、地学気象庁、全国航空宇宙院、国土測量統括庁、バンドン工科大学ボスカ天文台、プラネタリウム、海軍水力海洋学局、ヒサブルキヤッ専門家などが招集され、新月の開始を衆議一致で決定する。イスラムの暦確定は暦計算と目視が原則とされており、11月2日の日没時における新月の存在を目視することがカレンダー決定の大きい要素とされている。そのため宗教省は全国の70地点を選んで目視観測者を派遣し、その報告を集計してイスバッ会議にかけることになる。ヒラルと呼ばれる新月が日没時に水平線上の1度30分から3度30分の間に目視されれば、それは新しい月が始まったことを意味しているため、シャワル月1日は11月3日となるが、状況がそれを満たしていなければ、ラマダン月は30日間となり、シャワル月1日は11月4日となる。
インドネシアのイスラム二大勢力のひとつであるムハマディヤはイドゥルフィトリ日を11月3日と決めて動かさないが、宗教省がイスバッ会議の結果イドゥルフィトリが11月4日であると確定した場合、インドネシア最大のイスラム勢力であるナフダトウルウラマはその決定に従う可能性が高く、11月2日夜のタクビランは翌日に延期され、断食がもう一日延長される。


「ルバラン帰省者が減少」(2005年11月16日)
今年のイドゥルフィトリ全国帰省者数は昨年実績から2.6%減少したことを運通相が明らかにした。特に公共輸送機関利用者は昨年の1,522万人から今年は1,299万人へと15%近く減少した。中でも大きい変化が起こったのは、自動車を利用する帰省者数が2004年の882万人から今年は647万人と大幅な減少を見せたことで、10月1日の大幅石油燃料値上げの影響を受けた公共交通機関の料金値上げを多くの市民が嫌った結果がそこに現れている。AKAPと呼ばれる州間長距離バスやAKDPと呼ばれる州内長距離バス利用者は20%程度減少した。公共輸送機関利用者の比較は下のようになっている。
輸送モード / 2005年(人) / 2004年(人)
陸上(道路) / 6,474,389 / 8,825,892
渡船(海・河川・湖沼) / 2,097,812 / 2,031,163
鉄道   / 2,702,308 / 2,447,832
海上   /   503,515 /   552,674
航空   / 1,211,787 / 1,361,813
合計   / 12,989,811 / 15,219,374


「ルバラン後の上京者も減少」(2005年11月17日)
イドゥルフィトリ帰省のあと、故郷から年頃になった働き手を首都に連れて戻るのは昔からの習慣。2004年は、ルバラン後の帰省逆流の波に乗ってやってきたそんな新規上京者が19万人いたとされているが、今年はそれが18万人に減少した、と都庁市民登録住民管理局が諸方面から収集したデータに基づいて発表した。かれらの多くは専門技能などまったく持っておらず、学歴は小学校あるいは中学校卒業レベルで、身体ひとつを使っての仕事を求めている、とのこと。中でも家政婦になるために上京してきた者の大半は確実に職にありつけるようで、家政婦希望上京者の多くが既に内定雇い主を持っている。しかし中にはジャカルタで家政婦紹介エージェントもしくは家庭から直接、家政婦になる者を探して来いと依頼され、そんな俄仕立ての人入れブローカーの網にかかり、その口車に乗ってやってくる者もある。うまく行けば家政婦やベビーシッターとして邸宅の中に住み込めるが、ひとつ間違って人身売買シンジケートの網の中に落ちたという話も数限りない。
都庁はそんな上京者の中に混じってテロリストが潜入してくるのを特に警戒しており、11月24〜25日に順法作戦と称して都下の要所要所で一斉に居住者の身分証明書チェックを行う予定。上京者が首都に居住できるための条件として都庁は、居所移転許可、定職があること、居所があること、の三つを定めており、それなしで二週間以上滞在すれば法的措置の対象となる。
ところで、今年ジャカルタからのイドゥルフィトリ帰省と逆流の総決算が運通省から公表されている。
輸送モード / 帰省者数(人) / 逆流者数(人)
陸上運送(道路)/ 3,748,633 / 2,725,756
渡船(海・河川・湖沼)/ 1,324,445 / 755,367
鉄道   / 1,521,911 / 1,180,397
海上運送 /   234,424 /   269,091
航空運送 /   643,530 /   568,257


「バービー人形はムスリマ少女に売れない?」(2005年11月28日)
幼い少女たちのお友達、バービー人形は、インドネシアでバルビーと呼ばれている。そしてインドネシアから大量のバービーちゃんが世界中に輸出されている。インドネシアの少女たちもバービー人形が好きだ。しかし西洋消費文明の落とし子であるバルビーは、ブロンドの髪にセクシーな身体つきで、持っている衣装もそんな女性美を強調するミニスカートやビキニであるため、ムスリマとしての教育上あまりよくない、と考える親も少なくない。ムスリマは思春期に入れば、肌を露出させることなく、アウラッを包み隠し、異性に性的刺激を与えない淑やかな女性にならなければならない。そのためには幼いうちからムスリマ衣装に慣れさせることが教育上求められている。こうしてイスラム諸国には何年も前からバービーの対抗馬がいくつか登場している。
イラン出身のサラが中近東一円で販売され、アメリカではとあるムスリム実業家がラザンヌを売り出した。そして今度はエジプトからフラの登場だ。フラというのは花の名前で、フラの着せ替え衣装は家の中用と家の外用の二つだけ。外用は足まですっぽり覆う衣装にジルバブまで着いて完璧。このフラは、2003年11月から中東諸国のマーケットに流れ始め、域内衛星放送で大々的にコマーシャルが流されるようになってから、サラを完全に駆逐してしまった。おまけに中国で作られているサラは小売価格が安く、たったのUS$10。これはバービー人形の半額だ。中東の幼い少女たちのお友達の座を、今度はフラとバービーが争っているが、娘のために人形を買いに玩具屋へ来たお母さんがジルバブを着けていれば、バービーを買うはずがない、とフラの販売代理店はコメントしている。


「今年のルバランは廉価衣料品で溢れそう」(2006年5月16日)
今年の衣料品市場はかつてなかったほどリスクの高い年だ、と衣料品生産業者が語っている。国内衣料品市場は毎年やってくるイドゥルフィトリ祭礼が販売ピークとなっており、生産流通業界はそれにあわせて年間の製造・仕入れ・販売計画を組んでいるが、労働法改定反対デモや労働者の工場操業妨害の影響で衣料品輸出業界が既に受注していた5月6月の欧米向け輸出予定分に2億ドル相当のキャンセルが出たことから、今年10月のイドゥルフィトリ祭礼に向けて製品ストックを積み上げていく予定にしていた中小の縫製事業者は計画が立たなくなってしまったとして、中には会社倒産を視野に入れながら様子見に移ったところもある。
中央ジャカルタ市パルメラで縫製事業を営んでいるある事業主は、30年間の事業経験の中でこれほど困難な年はかつてなかったと語る。「ルバランに向けて商品ストックを増やしていく度胸はもう持てない。市場はズタズタになっていて、ひとつ間違えれば再起不能の大赤字になる。大手も中小も厳しい状況にいるのは同じだが、高利の融資を求めたり持株を売却して借金を返済するようなことは中小事業者にはできない。われわれにとって唯一のチョイスは、事業を倒産させ、資産を売却して従業員に退職金を渡すことだけだ。」西ジャカルタ市スレンセンにもうひとつムスリム衣装専門縫製工房を持っているかれは、ここ三ヶ月ほど卸業者が仕入れ量を手控えている、と明かす。中国産ムスリム衣装もインドネシアに流れ込んできているのだ。そして同時にこの三ヶ月でかれの商売仲間だったプカロガン出身縫製事業者の多くが倒産している。昔の黄金時代には、空き地があればそこにバラックを建て、ミシンを置いて住民を集めるだけで縫製ビジネスは大儲けした。国民の購買力が大きく低下し、それを狙って超廉価の中国産衣料品が不法に国内に流れ込んでいるいま、そんなことをする人間はもうひとりもいない。繊維業協会によれば、中国産不法輸入衣料品は既に国内市場の50%シェアを奪っているそうだ。輸出向け製品のキャンセルを受けた輸出工場は、それを捌くために国内市場を頼みとする可能性が高い。今年のルバランシーズンが衣料品の投売り合戦の場になれば、中小生産者がそこに加わる余地はなくなるにちがいない。


「今年のプアサは9月24日から」(2006年9月11日)
今年の断食の開始は9月24日であるとムハマディヤ中央指導部タルジ・タジュディ評議会が公表した。同評議会の計算によれば、月と太陽が同一線上に合するのは9月22日金曜日18時45分59秒で、それは日没後であるため9月23日の日中は依然としてシャクバン月30日にあたる。一日が夕方から始まるヒジュラ暦では、ひと月は29日または30日とされており、月の変わり目は月と太陽の同一線上での会合が日没前に起こり、日没後に月が沈むことがその条件となっている。9月22日夕方にはまだその条件が満たされないため、ラマダン月1日は9月24日日曜日となる。
一方ラマダン月からイドゥルフィトリ大祭を行うシャワル月1日への月替わりは全国同時に起こらない。今年イ_アはウジュドゥルヒラルの線を通るためにイ_ア西部南部とイ_ア東部北東部で月替わりが別々に起こる。10月22日に月と太陽の会合は12時15分ちょうどに起こるが、その両地域での月の入りが日没の前後になるため西部地域が一日先にシャワル月に入る。パプア、マルク、ゴロンタロ、北スラウェシ、東カリマンタンの一部では月の入りが日没前になるため翌日はまだラマダン月30日が続き、上記以外の地域では月の入りが日没後になるのでその夜からシャワル月に入る。
イ_アではイスラムカレンダーに関する日付の決定をムハマディヤとナフダトウルウラマの二大機関が個々に行っており、政府宗教省はナフダトウルウラマの観測結果を中心に多数のイスラム団体を集めて合議した結果を政府としての日付決定として公表している。ムハマディヤは計算に基づいて決定を下すために当日のはるか以前にカレンダーが決まるが、ナフダトウルウラマは実際の天体観測結果に基づいてカレンダー決定を行うために当日の直前にならなければ決まらないという特徴を持っている。上記発表は計算に基づくムハマディヤの決定であり、当日直前に宗教省が決めるものと必ずしも一致するとはかぎらない。


「聖なる月、清廉なる月、ラマダン」(2006年9月20日)
9月後半からプアサが始まる。ムハマディヤが既に9月24日からラマダン月が開始されると表明しており、ムスリムはラマダン月1日前夜から断食の勤めを開始することになる。そして例によって、ナイトスポットに対する営業規制が実施される。都庁は今年も、2004年度都条例第10号とその実施規定である2004年都知事令第98号に従って、ラマダン月中およびムハラム月初におけるナイトスポットの営業日と時間帯規制を行うことを都民にリマインドした。
観光産業営業時間に関するその都知事令では、ラマダン月前日、イドゥルフィトリ当日、イドゥルアドハ当日の一切の観光慰安ビジネスは営業が禁止されている。オープンしていけないのはナイトクラブ、ディスコ、スチームバス、マッサージパ−ラー、スピードボールなどの遊技場で、ホテル内にあるカラオケ等の施設は禁止対象外。
そのナイトスポット営業規制に関連して、急進的イスラム団体はナイトスポットの存在自体がピューリタン的イスラム教義から見て罪悪となっているため、行政上の規制はクリヤーしていても敵視され、往々にして排除行動のターゲットにされる事件が従来から発生していた。首都警察はラマダン期間中の首都の治安維持のために警戒態勢を取る計画を組んでおり、民間宗教団体の破壊行為は厳しく取り締まると表明している。
ところでファウジ・ボウォ副都知事は東西南北中央のジャカルタ市長に通達し、ラマダン月からイドゥルフィトリ大祭にかけて首都に押し寄せてくる浮浪者乞食に対する統制を行うよう呼びかけた。この浮浪者乞食は組織だったビジネスで、交差点や道路脇で実際に乞食をしているのは地方で駆集められた貧困者が大半であり、ビジネス組織はかれらに宿を用意したうえ都内のあちこちに出張らせておもらい乞食をさせている。かれらは毎日のあがりを納めて小額の報酬をもらうという不利な約束で上京した者たちで、かれら自身はそのようなメカニズムを理解しておらず、搾取されている認識もほとんどない。各市秩序安寧局は浮浪者乞食を捕らえて保護更生施設に収容し、故郷に送り返すということを毎年行っているが、本来措置が取られるべきはかれら浮浪者乞食でなく、かれらを搾取しているビジネス組織の者たちだ、と副都知事は述べている。


「9月24日から断食開始」(2006年9月25日)
政府宗教省は9月22日夜、ラマダン月一日は9月24日になることを決定し、宗教大臣令2006年第603号を即時発布して制定した。その夜宗教省で開催されたイツバッ会議では、ヒサブルキヤッ庁が全国28の観測ポイントから集めた日没時の新月の出の状況が報告され、列席したイスラム諸団体やイスラム友好国の外交官あるいは宗教関係者の同意を得てその決定が下された。
その日の観測結果によれば、日没時点で新月は水平線下のマイナス2度からマイナス1.5度の範囲に出現しておらず、そのためにヒジュラ暦1427年のシャバン月月末のイジュティマは西暦2006年9月22日18時46分であることが確定され、結果的にラマダン月一日は西暦2006年9月24日に当たることとなった。全国28ポイントでの観測はナフダトウルウラマが行っており、観測者は全員がヒラルを見ていないと証言した。その観測結果がイスラム諸団体に了承されたことからカレンダーの確定が行われ、もしヒラルを見たと言う者が現われてもその意見は却下されることになる。マフトゥ・バシュニ宗教相は、すべてのムスリムはラマダン月に関する政府決定に従うように、と要請している。


「断食月の交通警戒作戦」(2006年9月29日)
首都警察交通局は9月1日から20日まで「首都思いやり作戦」を実施し、路上運転者に対する指導を中心とした交通取り締まりを行った。その間に運転者に出された指導警告は15,775件、悪質な運転者に対して切られた違反切符は15,175件で、記録された違反件数は30,950件。違反切符を切られた運転者は免許証を取り上げられて簡易裁判へ。この作戦はイドゥルフィトリの一週間前にあたる10月17日まで続けられる。その後は「首都クトゥパッ作戦」へと切り換えられ、作戦内容がイドゥルフィトリ時期に則したものに変わる。
「首都思いやり作戦」第2フェーズでは断食月の交通安全を主眼として、都内のお参り場所5ヶ所、ブカプアサ場所47ヶ所、タラウィ礼拝場所7ヶ所、ショッピング場所34ヶ所、ハイスピード走行場所20ヶ所が重点対象となる。ラマダン月はじめの時期は夕方多くの市民が家でブカプアサを行いたいために渋滞が発生するので、渋滞場所77ヶ所、違反多発場所77ヶ所、事故多発場所68ヶ所に重点配備がなされる。断食期間中のハイスピード運転はブカプアサ時間前とスブの時間後が多い。ハイスピード走行警戒場所を警察は、西ジャカルタ市管区はJl Panjang, Jl Tali, Puri Kembangan、北ジャカルタ市はJl Marunda, Pantai Indah Kapuk、南ジャカルタはJl Buncit Raya, Jl Antasari、中央ジャカルタはJl Asia Afrika, Jl Letjen Suprapto, Jl Benyamin Sueb、東ジャカルタはJl Pramuka, Pangkalan Jatiと指定している。タングラン県市ではTerminal Poris Plawat, Jl Suryadarma, Citra Raya, Gading Serpong、ブカシはJl Raya Chairil Anwar, Perum Harapan Indah、デポッ市はJl Ir H Juanda, Jl Kota Kembangがトレトレカンの名所になっている。首都警察はこの作戦に動員している5,006人のうちの308名をハイスピード走行取締りに当たらせるとのこと。
「首都クトゥパッ作戦」の重点警戒場所は、イドゥルフィトリ前夜のタクビラン巡回場所、モスク、イドゥルフィトリ朝の礼拝場所、ルバラン帰省とその逆流の流れの交通整理、群衆の集まるバスターミナル、鉄道駅、空港、レクレーション場所などが予定されている。その期間、都内には103ヶ所の保安ポストが設けられることになっている。


「イスラム女性モデルコンテスト」(2006年10月4日)
ムスリム女性はムスリマと呼ばれる。そのムスリマ向け雑誌、その名もずばり「ムスリマ」がカバーガールコンテストを実施した。ヤングムスリマ層を購読者対象に狙う同誌が行ったこのコンテストは、同誌の読者に受け入れられるモデルの発掘を目的にしており、全身を覆うムスリマ衣裳にジルバブを着用した若い女性たちの間からセンスと知性の輝きを見つけ出そうというもの。
国中から集まってきた応募の中から選抜された決勝戦出場者たちは、本選会前の三日間ホテルに隔離されてさまざまな指導を受けた。主催者の同誌オーナーによれば、イスラム女性モデルを育てるためのこの催しは他の雑誌が行っている類似のものとは異なっている由。イスラムモデルの世界は単なる外見的な美しさだけでなくむしろ一個の人間としての完璧な個性を評価するものであり、モデル活動は親善使節としての意味合いを強く持つものであるとの談。
本選会は9月16日に南ジャカルタ市ブロッケムにあるパサラヤグランデで開催され、ファッションショー、歌、詩の朗読などが審査員の前で繰り広げられた。こうして今年のムスリマカバーガール優勝の栄冠は1988年1月1日スメダン生まれのインバン・カルティカの頭上に輝いた。インバンはバンドンにあるパジャジャラン大学でいま第三スメスターの学業中。インバンは普段の日常生活の中でムスリマ衣裳を着こなしている。軽くトライする気持ちで自分の写真をムスリマ誌に送って応募したらこんな結果に、と本人は驚いた様子。言うまでもなく両親もその応募に応援してくれた、と語る。
二位の栄冠を得たヌルル・ファイザ・ハナフィは1988年4月20日バリッパパン生まれ。ヌルルはバンジャルマシンに住んで地元TV局のプレゼンターや歌手をしており、人前に出るのは慣れている。自分の力を計るために応募したらこの結果だった、と悦びを隠さない。三位のディアン・ワヒユは1991年1月14日パレンバン生まれ。いまはプカロガン国立第1職業高校の生徒だが、プカロガンとジャカルタで広告モデルになった経験を持っている。


「これから中古車販売が盛り上がる」(2006年10月5日)
今年もルバランが近付いており、今年どん底に落ちた四輪車販売、中でも中古車販売が息を吹き返すチャンス到来と業界者は期待している。南ジャカルタ市マンパンプラパタンにあるジャヤアバディモトルは、昨年10月の石油燃料大幅値上げを境としてそれ以前の月間販売台数20台弱は10台強に半減してしまった。店長は、「これでもまだ良い方だ。クラパガディンやクマヨラン、あるいはデポッ市マルゴンダあたりはもっとひどい。」と語る。クリスモンにイ_アが襲われたとき、中古車販売がブームになった。あの頃は良かった、とかれは往時を懐かしむ。しかしルバラン前も例年中古車ブームがやってくる。平常月が10台程度の売上なら、ルバラン前は15台程度にアップする。
ディアンモビルのセールスマンは語る。「ルバラン前にたいていの国民は故郷に戻ってルバランを実家で祝う。帰省に公共交通機関を使うのはいまひとつ快適さに欠けるので、多くはマイカーを使うことを好む。自分の車かもしくは運転手付きレンタカーのチャーターだが、チャーター料金よりも中古車を買う方が普通は安い。中古車を買ってその期間利用する方が、公共交通機関やチャーターより便利で安上がりだ。チャーターが一日50万ルピアなら、10日借りれば5百万ルピアになる。ひと月で1千5百万。ガソリン代は自己負担。もし中古車を買って10日後にまた売り払うなら、その差額は6〜7百万ルピアくらいだ。他の方法とどっちが出費が少ないかが検討ポイントになる。」
マディナモビリンドはルバラン前のセールスシーズンに20台の中古車ストックを持った。ダイハツタルナ(2001年製)の販売価格は7千〜7千5百万ルピア、起亜ヴィスト(2001年製)で5千8百万ルピア、いすゞパンサー(1997年製)だと6千5百万ルピア、トヨタキジャンLGX(2003年製)は1億3千万ルピア、スズキサイドキック(1997年製)は6千万ルピア。キアラモビルはもっとお手ごろ価格の商品を揃えている。ダイハツエスパス1.6(1996年製)は3千6百万ルピア、トヨタキジャンLX(2001年製)は8,750万ルピア、スズキカタナGX(1994年製)3千8百万ルピア、スズキサイドキック(2001年製)7,750万ルピア、コロナ(1996年製)6千万ルピア。日本車は価格が安定しているがヨーロッパ車は中古車になると価格が暴落する。ジャヤアバディモトルではオペルブレーザー(1997年製)3千9百万〜5千万ルピア、BMW318は6千5百万ルピア、ジャガーXタイプ(2003年製)は3.5億ルピア、メルセデスE2000(1996年製)1.15億ルピア、BMW520(1997年製)4千5百万ルピア。ヨーロッパ車中古品は燃料を浪費し、また部品が探しにくく価格も高いために価格の落ち方が激しいと中古車ディーラーはその理由に触れている。


「ラマダン月の乞食商売」(2006年10月11日)
ラマダン月も佳境に入り、首都圏には地方部から上京してきたおもらい乞食の群れがあふれている。都内のほとんどの交差点にはかれらの姿が増えており、それだけでなくモスクや墓地がかれらの稼ぎ場所に選ばれているのは同じムスリムのビヘイビヤを熟知しているからだろう。聖なるラマダン月には恵まれない者や貧者に労わりや優しさを与えることがアラーの御心に叶うものであり、ムスリムは喜捨を多く与えて善根を積むことが奨励されているため財布の紐も緩みがち。
そんなラマダン月にイ_アの土着慣習である亡くなった家族への墓参が融合してイドゥルフィトリ大祭の前に墓地に詣でるという習慣が確立されているため、墓地を縄張りにしたおもらい乞食たちは一日4〜5万ルピアの収入をあげている。モスクを稼ぎ場に選んだ者は、一日数ヶ所のモスクを回ってやってくる礼拝者からお恵みをもらっている。インドラマユで農業労働者の夫と世帯を持っているティニは今年また、まだ小さい幼児を連れてジャカルタにやってきた。今年で二度目になるかの女の季節出稼ぎ労働はモスクでのおもらい乞食で、一日の収入は5万ルピアになるとのこと。わざとボロボロの服を着て幼児を抱えた姿をモスクで見せれば、礼拝者たちの財布の紐もまた緩む。
そのような季節出稼ぎ乞食の上京は当然ながら長年都内に暮らしている定住乞食たちにとってうれしからざる来訪であり、地元組みにはどうしようもないがかれらの間に反感が根を張っていることも確かだ。同業者間の争いは別にして、一般市民にとっても増えすぎたおもらい乞食は迷惑感や不愉快感を煽っている傾向がある。モスクを礼拝に訪れた市民の一人は、ひとりふたりに恵んでやると他の者が大勢寄ってきて強くねだるのでたいへん不愉快だ、と述べている。
都庁秩安局は年中行事となった地方からの俄おもらい乞食の上京について、それはそれで問題だがかれらに混じって俄売春婦が都内にもぐりこんでくるため、売春取締り作戦にも身を入れなければならない、と語る。首都を閉鎖して俄上京者を追い出せば問題は片付くかもしれないが、ここはかれらの祖国であり国民の権利を踏みにじることはできない、と秩安局長は言う。地方と中央の経済格差がそのような現象を生んでいるためその格差がなくなれば首都圏に俄ビジネスをしにやってくる必要はなくなるのだが、それはいつのことなのだろうか。


「ルバランの季節、パルセルの季節」(2006年10月18日)
ルバランの時期にはイドゥルフィトリを祝うムスリムの間で贈答品をやりとりする習慣がイ_アにある。もちろん必ずしもムスリム同士でなければならないという決まりはなく、非ムスリムからムスリムへあるいはムスリムから非ムスリムへという流れも存在しているが、非ムスリム同士でというのはあまり聞いたことがない。ムスリムの大祭を祝ってプレゼントをやりとりするというものなので、その祝いに加わらないひとには無縁のものだろう。
さて、ムスリムのほとんどが贈答品をやりとりするということはそこに巨大な贈答品市場が出現するということだ。パルセル(parsel)と称する箱や籠に入った贈り物は平均的なところで1セット数十万ルピア程度だがひとりが何人にもそれを贈るために膨大な量にのぼる。注文を受けてパルセルを用意し注文された配達先に届けるという事業を行うパルセル業者も多数にのぼり、業界総売上は2百億ルピアに達する。その一方でパルセル業者は使わずにみずからハイパーマーケットで箱や籠と中味を買い、自分でセットにして自分で届ける一般庶民もたくさんいて、ルバラン贈答品経済の規模はいったいどのくらいのサイズになるのか、2百億ルピアなど足元にも及ばないのではないかと思われる。かてて加えて、イドゥルフィトリの日には新しい服を着るのが習慣で、さらにはアッパーミドルクラスに向けてホテルの宿泊パッケージや親睦のためのブカプアサブルサマ企画などがオファーされ、支出は増加し巨大な経済が回転する。そのためラマダン月はイスラム社会にとって最大のビジネスシーズンだと語る事業家は目白押しで、本来厳粛な宗教的雰囲気の中で個人の信仰心を見つめ直すべきものがコンシューマリズムの狂乱に陥っている、と一部イスラム知識人の顰蹙を買っている様相はクリスマスと似たようなものかもしれない。
箱や籠に入るものは飲食品の詰め合わせがメインだが、衣料品、食器や台所用品、家電品などを入れたものもある。悪質なパルセル業者は賞味期限の過ぎた飲食品をこの時期大量に捌くようで、パルセル業者が届けてきたパルセル内の飲食物には気をつける必要がある。
ところで日本でも昔そうであったように、季節の贈答品が官公庁に向かうとKKNの香りが立ち込めるため、腐敗撲滅コミッションが官公庁と高官職者に対してパルセル受取禁止令を出した。するとパルセル商協会がコミッションに泣きついた。それを禁止されると業界売上が3割減になるという。つまりは、間接的にせよ公職者にばらまかれている金が60億にも上るということだ。それに関連してマダニ職業人ソサエティが同コミッションを訪問して官公庁と高官職者へのパルセルに関する実態を報告したが、それによるとなんと、高官職者の子弟がこの時期に俄パルセル業を始めるのだそうだ。一個25万ルピア程度の飲食品が入ったパルセルを扱っている業者がコミッションの禁令を本当に嘆いているかどうかは疑問だ、と同ソサエティは語る。その禁止令の影響はクリスタルの置物やフルセットホームシアターのパルセルあるいは場合によって現ナマ実弾の入ったパルセルを扱うかれら俄業者がもっとも大きく受けるはずだ、とのこと。高官の地位にある自分の親にパルセルを贈りたいのは誰かということはその子弟がいちばんよくつかんでいる。親の役職にバーティカルあるいはホリゾンタルに関係している者、仲間、知り合い、さらには親に接近したいビジネスマン。思惑や隠れた意図などがそこにからみ、公共サービス業務上やビジネス上の利権に手心が加えられることを期待する。それを仲介するのが高官職者の親族であれば、守秘に対する信頼性も高まろうというもの。
公権力を扱う者の親族がその立場を利用して専権的にビジネスを行うというあり方は独立以来連綿と続けられてきたが、オルバ崩壊でそれらが消え去ったと見るのは浅慮というもののようだ。


「イドゥルフィトリ当日も多くの店がオープンする」(2006年10月23日)
イドゥルフィトリ祭日もモダン小売店の大半は店開きする。モダン小売店とはハイパーマーケット、スーパーマーケット、ミニマーケット、そしてモールなどに入っている店舗を指している。一方、トラディショナル小売店に分類されるのはパサルや一般商店。イ_ア小売業者協会(Aprindo)のハンダカ・サントサ会長は、国内の全モダン小売業者に対して消費者への物資供給という面からイドゥルフィトリ当日も店をオープンするよう呼びかける手紙を送ったと表明している。その反応として90%のモダン小売業者はイドゥルフィトリ当日も開店する予定にしているとのこと。トラディショナル小売店にも店を開くよう希望を表明したので、店を開くところがあるかもしれない、との談。
イドゥルフィトリ当日はそれまでと打って変わって客足が落ちることが予想されるため、コスト対売上効果は低下するだろうがそのように計算ずくでビジネスを行っていては顧客に満足してもらうサービス提供は覚束ない、と同会長は協会会員に訴えている。ましてやジャカルタでのルバラン休暇を求めて地方から上京してくる人たちにとって、せっかくジャカルタへ来たのに店は全部閉まっていたのでは失望を土産にしてもらうことになるので、できるだけすべての店が普段と同じように営業するよう希望するとの弁。イドゥルフィトリ初日は、従業員に朝の礼拝と家族親族との間の親睦の機会を与えるため、開店時間は昼頃になるものと見られている。
一方都営パサル管理会社PD Pasar Jaya の代表取締役は今年も昨年と同じパターンが繰り返されるものと見ており、トラディショナルマーケットの商人の70%はルバランとその後の三日間店を閉めるだろう、と語った。30%程度がルバラン当日も営業を続けるのではないかとのこと。都民の多くが帰省するため需要が大幅に減少するので、パサルの商人たちに営業を続けるよう呼びかける必要はないだろう、と同代表取締役は述べている。


「犠牲祭は12月31日」(2006年12月27日)
政府宗教省は12月22日のイツバッ会議で、回教暦1427年イドゥル・アドハの日が2006年12月31日(日曜日)となることを決定した。これで2006年3月22日付共同大臣令である宗教大臣令第MA/10/2006号、労働トランスミグラシ大臣令第KEP-132/MEN/?/2006号、 行政機構効用改善担当国務大臣令第01/M.PAN/3/2006号で定められた回教暦1427年イドゥル・アドハの休日と同じ日に宗教上の祝祭が行われることになる。
イドゥル・アドハの日は犠牲祭とも呼ばれ、イブラヒムの故事にちなんで牛・ヤギ・羊などの動物を神への犠牲に供して祝う日で、世界中のムスリムはイドゥル・アドハを最大の祝祭日として盛大に祝う。ズルヒジャ月10日がイドゥル・アドハと定められているため、ズルカイダ月からズルヒジャ月への移行が確定されればそれから10日目が自動的にイドゥル・アドハとなるので、イドゥル・フィトリのときよりも余裕をもって祝祭の準備ができる。
今年は12月20日がズルカイダ月29日となったためにナフダトウルウラマが全国35ヶ所で日没観測を行い、ルキヤッと呼ばれる月の出の目視観察結果を集めてズルカイダ月からズルヒジャ月への移行を確認した。ルキヤッの結果によれば全国で日没時での月の位置は1度58分27秒にあってまだヒラルが見られなかったことから、ひと月最大30日というイスラム暦の原則が適用されて12月22日がズルヒジャ月1日とされ、ズルヒジャ月10日は2006年12月31日となった。


「クリスチャンも中東へ聖地巡礼」(2006年12月28日)
ムスリム界が毎年行っているメッカ巡礼の向こうを張ったか、クリスチャンもこの時期大挙して聖地巡りのツアーに出発している。ジャカルタのリッツツアーは12月20日から23日までに8グループ2百人をヨーロッパ中東聖地訪問ツアーに送り出した。平常月に同社は定員30人のイェルサレム・ベツレヘム聖地訪問グループツアーを2〜3組出発させているが、この12月のツアーは特にヨーロッパと中東の聖地を旅程に組んでいるために大盛況とのこと。フランスのルルド、ポルトガルのファティマ、ローマやバチカン、イェルサレム・ベツレヘム、カイロやカナンなどが訪問先に含まれており、ベツレヘムでクリスマスを迎えたい参加者が多数を占めている。ミタツアー&トラベルも23日に57人のグループツアーを中東に送り出した。
それらのツアーは8〜12日間の日程で、費用はひとり当たり1千5百から2千5百USドルとなっている。イスラエルは今インドネシアと国交がないためインドネシアにいては入国ビザが取れないが、イ_アの旅行代理店はイスラエルの旅行代理店と提携しているため現地代理店がイ_ア人の入国ビザをイスラエル内務省から取得してくれている。


「ルバラン経済のキャッシュフローは3割増」(2007年9月18日)
インドネシア銀行は2007年イドゥルフィトリ期のキャッシュ需要に備えて平常月よりも52.5兆ルピア余分に現金を準備した。ハルタディ・サルウォノ中央銀行副総裁は、その金額は平常月の5割増であると語った。その予備資金は全国13のインドネシア銀行支店に分配済みであるとのこと。各インドネシア銀行支店は所轄の一般銀行や小額現金両替商からのキャッシュ需要をまかなうためにそれらの予備資金を備蓄する。「過去のデータを見ると、ラマダン月からイドゥルフィトリ大祭期にかけての現金需要は25〜30兆ルピア上昇している。今年のシーズンに52.5兆の準備をしたのは国民購買力が回復基調にあることを斟酌してのもので、たとえば首都ジャカルタで2005年のイドゥルフィトリ期には平常月より15.9兆ルピア需要がオーバーしたが、2006年はそれがさらに24兆にまで増加した。この24兆ルピアというのは平常月の流通通貨量に対して34%に当たる。今年はそれがさらに増えると見て準備高を5割増とした。行政機関での昇給や勤労者賃金アップという要因もキャッシュ需要を引き上げるものと見込まれるため、潤沢な資金準備をこころがけている。実際に市中の流通通貨量は30%程度の増加が予測されており、それ以上の準備資金は各インドネシア銀行支店でキープされる。」副総裁はそう述べている。
ラマダンからイドゥルフィトリにかけての国民の現金需要高騰期には、一般銀行への通貨供給態勢を支えるために中央銀行本店と全国37の支店・地方事務所は営業を続けることになっている。13支店への追加現金供給はラマダン月に入ってから開始され、イドゥルフィトリ当日の2週間前から一週間前にかけて平常から20%増しというピークに達する需要高騰に備えるスケジュールが組まれている。インドネシアで最大のこの季節変動はイドゥルフィトリを過ぎればまた平常レベルに戻るのが例年のパターンであり、2週間前ごろからはじまるルバランボーナス支給で市中に増加した通貨量はさまざまな消費物資購入に使われ、販売者の手に集まってきた現金は過剰流動性のために銀行に納められる。銀行もその過剰流動性を鎮めるために中央銀行に現金が納められる。こうして余分に供給されたキャッシュはシーズンが終わればまたインドネシア銀行に戻ってくるという仕組みになっている。


「パルセルビジネスは不死鳥」(2007年9月27日)
オルバ期後半ごろから活況を呈するようになったルバラン前の贈り物ビジネスはbisnis parselと呼ばれている。季節の贈答品として出発したパルセルビジネスは人間関係を保つためのシンボルとして利用者が激増し、巨大なマーケットが形成された。しかし親しい人間関係がビジネスの出発点になっている社会では、パルセル交換が人間関係を保つためのものでもあるが人間関係を開始するためのものとしても使われる。親しい人間関係を樹立して相手からオーダーをもらいたいひとも、まだよく知り合っていない相手にパルセルを送るようになる。特に役所や民間企業の役職者といった発注のキーパーソンには「お引き立て」を望む業者からのパルセルが山のように集まってくる。そしてみんながルバラン日に使う消費物資をかごやボール箱に入れて届ける中で、みんなと同じようなことをしていては先方に強い印象を与えることができないと考える者が出るのも自然の成り行きだった。こうしてインドネシア型ロジックに従い、パルセルのかごや箱の中に実弾が埋め込まれたものが公職者の家に届くようになった。それは贈賄行為そのものである。政府の中でそんな状況に関する議論が高まり、最終的に腐敗行為撲滅コミッションが公職者のパルセル受け取り禁止を決定したのが今から5年前。
その年も例年のように巨大ビジネスが大回転するものと見て大量の仕入れを行ったパルセル業者たちは、マーケットの突然の変貌に唖然とした。その年、数千万から数億ルピアという赤字を抱えてパルセル業者の多くが倒産し、ルバランパルセルビジネスはやせ細った。だがそんな状況を乗り越えたパルセル業者たちは、かつての黄金時代に向けて少しずつ回復の道を歩んでいる。「KKN(汚職・癒着・縁故主義)防止のために公職者に対する贈り物を禁止した腐敗行為撲滅コミッションは、泥棒が他人に向かって泥棒と叫んだようなものだ。KKNは少しも減っていないかわりに国民だけが悲惨な目に合わされた。」業界者のひとりはそう語る。5年前に倒産したが2年間の空白後事業を再開して徐々に昔の勢いを取り戻しつつある業者は、パルセルの習慣があんな一片の命令でインドネシアから消えてなくなることはありえない、と言う。
熱しやすく冷めやすいひとびと、時間の経過とともに記憶を過去の領域に簡単に流し去ってしまうひとびと、かれらはあのとき大騒ぎした腐敗撲滅プログラムの熱が過ぎ去ったあと違反行為監視の手綱を緩ませ、それに反比例してパルセル贈答市場はふたたび膨らんでいった。キーパーソンの職場には送らないでその自宅に送るというのが、業界者がそこから得た学習行動だ。一時激減した役所や会社関係者向けパルセルの注文はふたたび増加しつつある。
中央ジャカルタ市チキニにあるパルセル業者のひとつは役所・会社関係者向け注文を50件ほど得た。かご・デコレーション・中身・包装一切込みでひとつ25万ルピア。これはすべて送り先者の自宅に届けられることになっている。チキニ駅周辺は昔からパルセル用かごの集散地のひとつだった。商人のひとりは、籐や竹のかごはひとつ4千から1万5千ルピアで、デコレーションをつけて飾り立てたものは最高でも2万5千ルピアだ、と言う。かつての黄金期にはパレンバン・ランプン・スカブミ・ポンティアナッなどに大量に発送し、一回の送り出しで2千5百万ルピアの純益が上がったそうだが、今ではあの公職者パルセル禁止令のためにこのかきいれどきを通してでさえ3〜4百万ルピアの純益にしかならない、とパルセルかご商人はぼやいている。


「ジャカルタからのルバラン帰省バスは減少傾向」(2007年10月5日)
都庁は今年のルバラン帰省者を80万6千人と想定し、ルバランの4日前(H−4)から当日までの間に延べ5,746台の州間長距離バス(AKAP)を手配する。この台数は昨年の実績から68台少ない。13のAKAPバス会社が用意するそれらのバスはルバラン帰省のための四メインターミナルから発車することになる。プロガドン・カンプンランブタン・カリドラス・ルバッブルスがその四バスターミナル。しかし想定人数を上回る帰省者の増加が起こったときのために他の10ターミナルに335台を手配して緊急事態に備えることにしている。その10ターミナルとはグロゴル・ラワブアヤ・ピナンランティ・ラワマグン等。陸運機構会長によれば、近年バスは国民の人気ががた減りしているため、ルバラン帰省輸送手段として既に手配された台数で不足するということはまずないだろう、とのこと。帰省者が選択する輸送手段のトップは飛行機で、今年は昨年から15%増加して84万7千人となることが想定されている。その次が鉄道。
そんな状況とは別に、AKAPは同じバスという輸送手段の中でもまた他の競争相手に直面している。さまざまな企業や組織が無料サービスバスを手配し、あるいはグループが金を出し合って貸し切りバスをチャーターする。ジャムゥ大手生産者シドムンチュル・BNI銀行・ワルテッ(Warteg)事業者組合などもそれぞれビジネス顧客や組合員のために何百台もバスを用意する。紅茶生産者のSariWangiは顧客の中から抽選で150家族に無料で運転手付き自動車を帰省の足に提供する。自動車はバスでなく四輪のセダン車で、乗れるのは4人までという制限を設ける。このセダン車は一家4人を故郷の実家まで送ってくれる。運転手はガソリン代や自動車専用道路料金などの費用をたっぷり持たせるので、乗ったひとは費用の心配をしなくてもよい、とSariWngi側は述べている。


「ラマダン月には宗教関係書籍がよく売れる」(2007年10月9日)
ラマダン月はムスリムにとって神の恵みと赦しの満ち溢れた月だ。この30日間に実践した宗教の教えは、ほかの11ヶ月間に行うよりもはるかに多くのご利益に恵まれる。だからひとびとは熱心に真剣に勤行の作法を実践し、宗教で教えられている背徳的行為をつつしみ、宗教が奨励する善行を行おうと努める。とりわけラマダン月は断食の行が定められている月でもあり、宗教の勤めを熱心に行えばそれで一日の大部分が費やされてしまうということにもなる。社会全体に宗教が教えるDo's and Dont'sへの顕著な傾斜が現れるので、ラマダン月は善い月だと評する非ムスリムが出現するのもむべなるかな、と言えよう。
当のムスリムたちの中にも、社会全体に宗教色が強まる中で自分が教えられてきたイスラムの本質やDo's and Dont's、あるいは勤行作法の意味合いなどに知的な興味を向けるひとが増加する。かれらは金曜日ごとの説教やプガジアン(pengajian)と呼ばれる聖書アルクルアン読誦の集いに参加し、そして宗教関係の書籍をもむさぼる。ラマダン月に書店を訪れると、イスラム関係書籍を置いてある棚の周辺がいつもひとで埋まっているのを目にすることが多い。書店のほうも特集を組み割引を行って集客に努める。そのためにイスラム関係書籍は他の月に比べて20〜30%売上が増加する。
コンパス紙が行ったアンケートによれば、回答者845人中56%がラマダン月には本を読み、50%はイスラムに関する手引き書をメインにイスラム関係書籍を読んでいる。普段から本を買って読んでいるひとは52%いて、残る48%は書物を買って読むという習慣を持たない。毎月書籍を買う予算を設けているひとは12%だけ。イスラムに関する書籍をラマダンとは関係なく買って読んでいるひとは35%だから、ラマダン月に限ってイスラムの知的探求に気持ちが傾くひとは15%ということのようだ。


「イドゥルフィトリ当日も多くの商店がオープン」(2007年10月11日)
都内のモダン小売商店の70%はイドゥルフィトリ休暇を通して店を開き営業を継続するもようだ、とインドネシア小売事業者協会事務局長が発言した。これはつまり、イドゥルフィトリ当日も多くの店が開店することを意味している。イドゥルフィトリ日の営業はむしろ小売商店の意思よりもショッピングセンター運営者の方針で決まるほうが大きい、と事務局長は述べている。これまでもルバラン期の小売商店の営業については、イドゥルフィトリ初日だけ閉めてその翌日からは開店するというパターンが大半を占めていた。
ラマダン月最終週たけなわのいま商店は膨大な需要をさばくのにてんてこまいで、衣料品は平常期の3〜4倍、食品は1.5〜2倍の売れ行きを小売業界は享受している。インドネシアのハイパーマーケット業界ナンバーワンに位置付けられているカルフルは、イドゥルフィトリ初日の10月13日は開店時間を13時に遅らせるものの休みにはしない。そして翌14日からは連日いつもの時間帯で営業を行うことにしている。それどころか10月11日12日の二日間はいつもの閉店時間20時を24時に繰り下げて深夜営業を行う予定。国内小売業界の雄PT Matahari Putra Prima社のHipermarketは10月5日から11日まで閉店時間24時を既に実践している。マタハリデパートのほうはその期間閉店時間を23時としており、10月12日は20時で閉店する。13日のイドゥルフィトリ初日も営業するが開店は13時から。そして14日以降は営業時間を平常通りに戻すことにしている。


「スラバヤでもイドゥルフィトリ日は営業」(2007年10月12日)
ショッピングセンター運営者はルバラン日も営業することで合意した、とインドネシアショッピングセンター運営者協会東部ジャワ支部長が表明した。ただし10月13日はムスリム従業員の礼拝のために開店時間は11時となるものの、14日以降は平常の営業時間が適用される。昨年の実例を見るとイドゥルフィトリ初日はスラバヤ市内は比較的閑散としており、周辺部の町々にひとがたくさん集まる状況になるが、スラバヤ市内の物資流通を確保して住民へのサービスを行うためにも協会員は13日の開業を合意した、と同支部長は述べている。しかしショッピングセンターがテナント商店に開業を強制することはできず、そのため商店が営業するかどうかは商店経営者の意思次第となる。協会側はおよそ20%のテナントが休むのではないかと推測している。営業が確実視されているのは、フードセンター・スーパーマーケット・衣料品店など。
ショッピングセンター外の小売商店についても10月13日は8割がたの店が営業するだろう、とインドネシア小売業者協会東部ジャワ支部事務局長は表明している。事務局長によれば、小さい店で休業する傾向が高いとのこと。大規模小売店ではマタハリとリモが従業員を休ませることにしたが、ジャイアント・ハイパーマーケット・カルフル・アルファマートは開店するとのこと。商店にとってルバランは売上を伸ばす最大のチャンスであり、東部ジャワ州小売業界は今年のルバラン日の売上が平常期の25%増しになるだろうと期待している。2007年第3四半期東部ジャワ州小売販売は80兆ルピア近い全国売上の27%に達しており、これは前年同期に比べて17%のアップになっている。


「ユーチューブへのアクセスが遮断される」(2008年4月10日)
モハンマッ・ヌー情報通信担当国務相が2008年4月2日付けの大臣信書番号第84/M.Kominfo/04/08号で、映画フィッナを掲載しているインターネットサイトやブログへの国民のアクセスをブロックするようインドネシアインターネットエクスチェンジ運営者・オープンインターエクスチェンジポイント運営者・146のISP会社・30のネットワークアクセスポイント運営者に要請した。それに応じてPTエクセルコミンドプラタマ社は早速、You Tube, My Space, Meta Cafe, Rapidshareのサイトへのインターネット利用者からのアクセスを遮断する措置を取った。
情報通信担当国務省は今回のブロック措置について、これは最近制定された電子取引と情報に関する法令にもとづくものでなく、1999年の通信に関する法令第36号第21条にもとづいたものだ、と説明している。「これは、『通信事業運営者は公共利益・倫理道徳・保安ならびに公共秩序を冒す活動を行ってはならない』という禁令に従った措置であり、法的基盤は十分に強いものだ。」と逓信総局広報課長は述べている。映画フィッナがウエッブサイトを通して露出されることは諸宗教信仰者間の関係に障害を及ぼし、世界レベルにおける文明間の調和を乱す結果を引き起こすためであるとの理由を広報課長は表明している。
APJII(インドネシアインターネットサービスプロバイダー協会)はこの国務相要請に対して、問題のコンテンツを国民の目に触れないようにする最善の方法が見つからないため、IP自体へのアクセスを遮断する以外に方法がない、と技術的な方針について明らかにした。同協会は既にYou Tubeサイト運営者に対して抗議を申し入れており、問題のビデオコンテンツをアップロードしないよう求めているが、You Tube側はこの機会に登録メンバーを増やしたい意向であるようで、インドネシアからの抗議に対する反応がまだ感じられないためにIPアクセスの遮断もやむを得ず、これはひとつのショックセラピーになるだろう、と同協会会長は述べている。
エクセルコミンド社は既に迅速な対応を示したが、インドサットとテルコムは大臣書簡オリジナルがまだ届いていないためにその心構えを取る段階にとどまっており、まだ具体的な対応措置は始めていない。
オランダでヘルト・ウィルデルス議員が制作した「フィッナ」と題する映画は過去にニュースなどで公開されたイスラム過激派の暴力行為シーンを集成したものであり、反イスラム宣伝色のきわめて強いもの。イスラム諸国は軒並みこの映画をボイコットし、ムスリム国民の目に触れさせないように配慮している。オランダ政府もこの国際調和を乱すプロパガンダを自国議員が世界に流したことについて、政府の考えとは無関係のものである、との公式説明を出しているが、インドネシアのイスラム指導層はオランダ大使とのこの問題に関する話し合いの中で、オランダ政府は同議員に対して法的措置を取り、同議員がイスラムを侮蔑し誤った行為を行なったということを形にして示せ、と要求している。
ちなみにフィッナとはアラブ語源でインドネシア語にも取り入れられている単語であり、誹謗中傷や讒言といった意味を持っている。ムスリムにとってこの映画は文字通り誹謗中傷に違いないが、制作者がこのタイトルを用いた意図はどうやらイスラム教義が信徒に誤ったことを行わせる讒言として作用していることを主張したかったのではないだろうか。


「断食月がもうすぐに」(2008年8月29日)
2008年は9月1日ごろにムスリムが断食を行うラマダン月がはじまる。「ごろ」と曖昧な表現をしたのはイスラムカレンダーが新月の目視観測をベースにしているためで、イスラム月29日の日の入り時に月の出の観測を行い、そのとき月が見られたなら新しい月に移行する。だからX月からX+1月への移行は瞬間的であり、前もってカレンダー上で予定が立てられないという不便さがある。ともあれ厳密に言えば新月が出現した夕方にX+1月が始まったということになるのだが、普通のひとはその夜眠るから目覚めてから活動を行う翌朝がX+1月ついたち、ということになる。
この古典的なイスラムカレンダー確定プロセスは何世紀にもわたって連綿と続けられており、毎月ついたちが同じように決められるので、イドゥルフィトリ大祭が行われるシャワル月ついたちもその前日に確定するということになる。政府宗教省はこの方式に従ってカレンダーの確定を行っているが、イスラム知識人団体であるムハマディヤは天文学上の計算でカレンダーを確定させる方式を推奨しており、ムハマディヤ方式に従えば断食の始まりやイドゥルフィトリ大祭が直前になって決まるということがなくなって生活に計画性を持たせることが容易になる。このふたつの流派がイスラム社会におけるカレンダー確定の二大勢力を形成しており、結果的にムハマディヤの言う断食開始日やイドゥルフィトリ大祭の日が政府が確定する日と一日ずれることも昔から頻繁に起こっている。
さて断食期間中、ムスリムは宗教の教えを実践しなければならない。終日、厳粛な神聖さの中に自分を置き、淫らなことを行わず考えもせず、行いを慎んで神の御心に沿う振舞いだけを日常生活の中に実践するのである。怒り、憎しみ、侮蔑、騒動、暴力、悪事など他の11ヶ月間自分が身にまとっていた、神のお気に召さないがきわめて人間的な性質はかなぐり捨て、神の僕となって神が示す道を実践するのである。だからラマダン月にはセキュリティと落ち着きの増す住み心地の良いジャカルタが年に一度出現するのだ。
そのように激変する生活環境の中で、夜な夜な輝く電光と嬌声とアルコールとそして音楽に包まれていたナイトスポットは居場所を失ってしまうことになる。ラマダン月の中でそれは公害であり、そしてムスリムへの誘惑なのだ。ムスリムが厳粛な神の道を実践するよう、そのような誘惑は排除されなければならない。
都庁は例によってラマダン月のナイトスポット営業規制を遵守するようナイトスポット業界に呼びかけた。この営業規制は2004年都条例第10号と2004年都知事決定書第87号で定められているもので、内容については「断食期間中のナイトライフ規制の詳細」(2006年09月27日)や「聖なる月、清廉なる月、ラマダン」(2006年09月20日)がご参照いただける。規制内容は営業禁止になる業種や営業時間にさまざまな制限を受ける業種があり、業界者はその営業時間規制(まったく営業してはいけない日もある)のために売上が4割減になるものと見込んでいる。しかしそれは単に規制だけのせいでなく、現実に来店客が激減するという事情も見逃すことはできない。ちなみに首都の慰安遊興業界は4百地区に1,370軒の店舗を擁しており、年間売り上げは3.5兆ルピアに達する。
またこの時期になるとイスラム民間団体がナイトスポットに対する監視の目を厳しくし、中には店内に入ってきて営業を妨害するような行為が展開されることもある。往時のような同胞ムスリムを誘惑する悪事を懲罰しようとの意欲がらみでナイトスポットを襲撃し店内を破壊するようなことは減少してきたとはいえ、「一般市民であるイスラム民間団体がナイトスポットの取締り行為を行なうのはご法度である」との声明を首都警察は既に発している。


「インドネシアのプアサ(断食)について」(2008年9月1・2日)
[インドネシアには断食の習慣があります]
この断食は回教徒が義務として行うもので、同じ時期に世界中の回教徒がこれを行います。
回教徒が宗教上の行として行うこの断食はインドネシアでプアサ(puasa)と呼ばれます。
プアサは一切の欲望を断ち、善なる人間となるためのものですので、飲食・喫煙・セックス・支配・所有などの諸煩悩から離れなければなりません。
回教徒がプアサを行うのは宗教上の5つの義務のうちのひとつを果たすためですが、自己修練・精神修養・空腹な人(貧しい人)の気持ちを思いやるといった人間性涵養、悪念・悪行を慎み他人の悪口を言わず感情的にならないという斎戒の実践、困窮者への喜捨の推奨や欲望に対する自己抑制を修練する場としての効果を持っています。そのために、プアサが終わったあとで迎えるイドゥルフィトリ大祭は勝利の日と呼ばれているのです。

[プアサを行う時期は決まっています。]
回教暦の第9月(ラマダン月)を通して行われます。
ラマダン月が終わると第10月(シャワル月)となり、月初にプアサが終わったことを祝うイドゥルフィトリ大祭が行われます。
ラマダン月やイドゥルフィトリ大祭は毎年カレンダー上で変わります。
回教暦は月の満ち欠けを規準にしており、新月から次の新月までが一ヶ月です。
日没時に新月の光が地平線・水平線上にあればその瞬間に月の第一日が始まりますが、日常生活ではその翌朝を第一日としています。
ひと月は30日もしくは29日なので一年は354日となり、毎年太陽暦よりも11日早くなります。
新月の目視観測で明日が翌月1日になるかならないかというのが決まるあり方は計画性のある行動の妨げとなります。そのため有力なイスラム組織であるムハマディヤは計算に基づいて当日のはるか前に翌月1日を決めていますが、もうひとつの有力組織であるナフダトウルウラマは目視観測方式を取り、インドネシア政府もその方式でカレンダーを決定するため、たまにその両者の日付が異なるケースが出現します。

[病人・生理中や妊娠中の女性、旅行中の人はプアサが免除されます。]
しかし免除された日数はラマダン月が終わったあとで借りを返さなければなりません。
昨日はプアサをしていた人が今日は飲食しているからといって、好い加減な人間だとか意志薄弱な人間だと一方的に決め付けると誤りを犯すことになりかねません。プアサ免除の権利を行使しているのかもしれないからです。
個々人がそれぞれ決意をもって断食をしているというあり方でなく、共同体が宗教上の勤めを果たすようその構成員に奨めているというのがインドネシアにおけるプアサ活動の基本観念なので、個々人の内面的能力を涵養させる場ととらえられているためたとえ挫折してもその人間をネガティブに見るようなことはありません。
われわれ外部者は他の月と同じように、相手に対する尊重心を持ち、またそれを態度で示すことが重要です。
プアサを行っている人に対して過大に気を遣う必要はありませんし、過度に遠慮したり、過保護に扱う必要もありません。

[回教徒は一日5回、神への礼拝が義務付けられています。]
Isya : 日没後の残照が消滅したとき、19時ごろ
Subuh : 日の出前の明るさが始まったとき、日の出は5時半ごろ、スブはその70分ほど前
Lohor/Zhuhur : 太陽が頂点を過ぎたとき、11時40分前後
Ashar : 夕方の始まり、14時50分前後
Maghrib : 日没、17時50分前後
上の頭文字を並べるとISLAMとなります。上の時間帯は地軸の傾きによって変わります。また上で述べた時間はジャカルタ周辺での目安です。

[礼拝の前に毎回ウドゥと呼ばれる身の清めを行います。]
手・口・鼻腔・顔・肘・頭・耳・足を流水で洗ったり拭ったりします。
睡眠、放庇、尿便、嘔吐、出血、失神、射精があるとウドゥをやり直さなければなりません。

[ラマダン月の生活サイクルは一般的にこのようになります。]
Subuh の10分前をImsak と言い、この時間から一日のプアサが始まります。
一日5回の礼拝は普段と同じように行わなければなりません。
Maghrib の時間になると一日のプアサが終り、ブカプアサを行います。
ブカプアサでは水分や糖分を消化しやすい形でまず補給します。
Maghrib の礼拝を行い、食事を摂ります。
Isya の礼拝を行い、人によってはタラウィの礼拝も行います。
そのあと、深夜の2時〜3時ごろもう一度食事を摂ります。これはサウルと呼ばれます。
その時間になると、モスクからサウル、サウルと連呼する声が流れます。
Maghrib からImsak までの時間は、いつ何を飲み食いしようが自由です。当然その合間に睡眠を取らなければなりません。
こうしてImsak の時間が来ると、ふたたびプアサが始まります。睡眠時間は短く、断続的になります。

[プアサ中の従業員に対する注意点]
空腹や渇きで苦しいことに加えて、睡眠が浅く短いという点を理解する必要があります。
暑い土地柄なので発汗が少なくないのに水分補給ができないために血液循環が悪くなっている点を理解する必要があります。
そのために頭脳労働も肉体労働も、午後になると生産性が大幅に劣化するはずです。
一日の後半の業務はレベルを下げ、余裕を持った計画を組む必要があります。

[プアサ中の従業員を追い込んでも、百害あって一利なし]
人間の能力が低下しているときに業務成果を求めてもうまく行かないのはどこの国でも同じです。
そんなときに精神主義を振りかざしても、成果が得られるどころか、感情的なしこりを残しかねません。
プアサは回教徒にとって社会習慣であり、個人の領域を超えるものです。
インドネシアにはインドネシアの社会観人間観があり、その価値観は日本や欧米のものと大きく異なっています。批判は自由ですが、互いに同じ人間であるという共通項をベースにして尊重し合う姿勢を示さなければ、来てほしくない外国人という扱いをされるかもしれません。
インドネシア人は自尊姿勢の強い文化を持っているため、感情的な衝突を防ぎ、大人としての姿勢を持って相手と接することが良い結果をもたらすはずです。


「ルバランには新しい服を着る」(2008年9月16日)
インドネシアアクセサリー衣料品事業者協会(APGAI)はルバラン期の衣料品需要が12兆ルピアになるだろうと推測している。この12兆ルピアというのは平常期の4百パーセント増しだ。インドネシアではルバランに新しい衣服を着るという習慣が大昔から続いてきた。このため衣料品小売需要はルバランの半月ほど前から上昇を開始し、ルバラン日の5日前から3日前あたりでピークを迎える。市場での需給関係が価格にきわめてセンシティブな反応を引き起こすインドネシアでは、需要が供給を上回れば必ず価格暴騰が起こる。ルバラン前の衣料品市場もその例外ではなく、子供服は平常期の7百パーセント増し、大人服は3百パーセント増しまで価格が上昇するだろう、とAPGAI会長は予測している。会長によれば、全国12兆ルピアのビジネスは45パーセントがジャボデタベッ(ジャカルタ・ボゴール・デポッ・タングラン・ブカシ)地区に集中し、残り55パーセントが全国地方部に散らばるとのこと。
9月前半小売市場での販売状況にはまだそれほどの変化がみられないものの、2週間前の支給が義務付けられているルバランボーナスを手にした消費者が買物に走るのはそのあとで、小売市場が活況を呈しはじめるのは14日前から12日前くらいになる。今年は政府が衣料品の不法輸入に対する監視を厳しくしているため、国内衣料品生産者はこの需要の刈り取りを多いに享受できるものと業界筋は見ており、そのため昨年のルバラン期に比べて国内生産は3割増が期待されている。デパートの衣料品販売が今年は9割引きという赤札をつけている状況について、昨年は8割引きが最大だったがデパート業界の売り意欲は昨年をしのぐものがあり、これは販売者の在庫一掃が主目的であって決して消費者購買力の低下を証明するものではない、とAPGAI会長はコメントしている。


「ブカプアサに何を食べる?」(2008年9月18日)
断食月も半ばを超えた。断食するムスリムたちは「インドネシアのプアサ(断食)について」で説明されているように日没時にブカプアサと呼ばれる飲食を行う。さて、そのブカプアサ時にかれらは何を飲食するのを好むのだろうか。モールやショッピングセンターで断食月に日没時間を迎えると、フードコートやファーストフード店、あるいはレストランなど飲食物を供する場所はほとんどすべてがひとでごった返している。だがかれらがそこで飲食しているものは、ふだんかれらが家庭で飲食しているものとは多少異なっている。平常月にはあまりお目にかからないがラマダン月には必ず登場するブカプアサに欠かせない食品に干しナツメヤシのkurma、kolakと呼ばれる果実や芋などをココナツミルクと黒砂糖で煮込んだ甘煮、クッキー類、フルーツポンチやフルーツカクテル(es buah/koktail buah)などがある。プカプアサ飲食品の中で人気のあるのは何だろうか?
コンパス紙R&D部門が2008年9月10〜11日に行ったこのサーベイは国内32都市の電話帳からランダム抽出した17歳以上の回答者769人に対する電話インタビューの形で行われており、国民全階層が網羅されたものである。集計結果を見ると、フルーツカクテル・フルーツポンチが30.6%でナンバーワン、次いで甘煮の28.6%、三位がご飯とおかず8.3%、四位干しナツメヤシ8.1%、五位ケーキ・パン・ビスケット6.0%、六位揚げ物5.3%、七位プリンいろいろ1.1%、残る12%はさまざまに雑多なもので個々には1%に満たない。
バンダアチェ、クンダリ、マカッサルなどではフルーツカクテル・フルーツポンチがもっとも好まれているが、タンジュンピナンやバンダルランプンでは干しナツメヤシが堂々の首位を占めた。ブカプアサにすぐ食事を、というひとたちは各地に少数派として存在しているものの、隠然たる勢力であることも確かだ。


「ムディッ(mudik)」(2008年9月22日)
ルバラン帰省が今週ピークを迎える。今年首都圏からのルバラン帰省者数を都庁は2,485,165人と推定した。これは昨年実績から9%の増加だ。2007年実績は2,184,502人というこれも超具体的な詳細数値になっているが、空路海路といった乗客名簿が原則として作られるものはさておき、いったいだれが道路を通った人数を数えたのだろうか?事実としての正確な数字がつかみようのないことなのにどうしてそこまで細かい数値の形を取ろうとするのかわたしなどは理解に苦しむのだが、現場にある事実と机上の計算が渾然一体と溶け合っているひとびとが持つ感覚はそのようなものであるのかもしれない。事実優先・実証主義的生活姿勢よりもオカルト神秘主義を日常生活に色濃く宿している民族的特徴がここにも投影されているような気がするのはわたしばかりではあるまい。
インドネシア語で「帰省する」という意味にはmudikという言葉が用いられていて、その語源はme+udikではないかと推測される。udikというのは元々川の上流地域を指す言葉であり、mudikは川を遡行することを表していた。古来、都邑は海岸部や川口に栄えるのが普遍的で、川を下って都邑にやってきたひとびとが故郷に帰省するときにmudikという言葉を使ったのが慣用化されたのではないかという気がする。だからいまでは、日本に住んでいるインドネシア人が故郷のスラバヤに飛行機で帰省する場合でもmudikという語が使われている。
さて首都圏からの帰省者たちは道路利用者39%、空路利用者37%、鉄道利用者23%、海路利用者0.5%というのがその推定内訳であり、中でも道路利用者はバス・自家用車・レンタカー・オートバイなどに乗って数珠繋ぎの街道を進む。オートバイはそんな数珠繋ぎの車列を縫って進むことができるのだが、大量のオートバイにそんなことをさせるわけにはいかない。オートバイ利用者は運通省によれば今年全国で250万台にのぼると見込まれており、二輪車大軍団がジャワ島の街道をあちこちで埋めるという珍しい光景が展開されることになるわけで、その走りは団子型で進めなければ大いに危険だ。大量の人間が集まれば社会秩序にひとつの脅威をもたらすというのがインドネシアで過去数世紀にわたって展開されてきた現象であり、警察は交通安全と社会秩序保全のためにそのような二輪車軍団を適宜集結場所に集めて白バイの先導で帰省の途に送り出すことにしている。


「ムディッはレンタカーで」(2008年9月23日)
道路帰省者の中には自家用車族もいるし、会社の業務用車両もルバランムディッのために動員される。上京して故郷に錦を飾ることを念願に掲げていたひとびとは、この機をとらえて成功した晴れ姿を故郷に示そうとする。インドネシア文化における人間の成功というものはその者が自分の身の回りに集めた富で量られる傾向が強い。これは稼げる人間を優れた人間と見なす関西文化に通ずるものではあるが、富を見せびらかして財があることを世間に示すというあり方が伝統文化となっているインドネシアは財を貯えることが難しく、いきおいフローの大きさを誇示する方向に流れるため何らかの要因でフローが縮小すれば没落の坂を転げ落ちるのも早い。この要素にジャランピンタス思想が融合してくるので、どのようにして大きい富を自分の身の回りに集めたかに関心を持つ外部者はおらず、世間の意識は現有財産の見かけの大きさばかりに向けられる。だから借金であろうと汚職であろうと犯罪であろうと、どんな悪事を行おうが大きな富を手中にすればその者は世間から見上げられ、世間にその富の一部を流すことで世の中の有力者の地位を得る。このような文化的要素がインドネシアのコルプシや悪事の撲滅を難しくしているようにわたしには思えるのである。
さてルバランの時期、故郷で誇示する諸財の筆頭は自動車というわけで、この時期中古車需要は大いに高まる。そこまで片意地張って成功した姿を顕示する必要のないひとはレンタカーを借りるが、しかし運転手付きレンタカーが当たり前のインドネシアでは反対にそれを利用して運転手に言い含め、自分は運転手付き社用車に乗れる身分になったのだと故郷で見栄を張る知恵者も出現する。こうしてルバラン日に向かってレンタカー市場は大うけに入り、自分の車をレンタカー業者に貸し出して沸騰する経済のしぶきを身に受けようとする者も出てくるわけだ。
人間でごった返す公共運送機関は時間の見通しが立ちにくくさらに危険も多いため、同行者が多ければ自分の車で動きたくなるのは人情だろう。そして他の人間が運転してくれ、車にどんな損傷を受けようが気にしなくてよいレンタカーは金さえあれば利口な選択であると言える。
貸出し用途が帰省だから、レンタカー業者は数日間のパッケージを組んでいる。今年のレンタカー戦線でエースの座に就いているのはトヨタアバンザで、収容人数が多くて燃費が優れていることをアバンザ選択の理由に挙げるひとは多い。トヨタ系レンタカー会社Tracはアバンザを4日間パッケージで180万ルピア、7日間300万、10日間410万という料金体系にしている。ただし一般客には運転手付きを絶対条件にしており、運転手料金は一日53万9千ルピアの別建てになっている。トヨタ従業員、Auto2000で自己所有車を修理中の客、顧客企業などがレンタルする場合に限って運転手使用は強制されない。Tracは他にもいくつか車種を用意しており、4日間パッケージ料金はイノバが280万ルピア、カムリ580万、アルファード850万などとなっている。
インドモビル系レンタカー会社Indorentも人気車種アバンザやイノバを取り揃えている。こちらは7日間パッケージで、アバンザ140万ルピア、イノバ384万、ニッサンセレナ520万、スズキAPV280万などで、運転手とガソリン代はそこに含まれていない。タングランのスルポンにあるレンタカー業者PT Rejang Maju Mandiriは運転手とガソリン代込みで一日90万ルピアという料金をオファーしており、対象車種はいすゞパンサーとニッサンリビナ。スルポンのA&A Rent Carは運転手とガソリン代別で50万ルピアという料金をパンサー、アバンザ、APVに適用している。
9月第三週からレンタカー予約は急増しており、中部ジャワ・ジョクジャ・西ジャワへの帰省者が大半を占めている。


「ラマダン月のパーティレンタルは活況」(2008年9月25日)
ひとびとが集まって楽しむことを社会生活の上位に置いているbersama民族であればこそ、ブカプアサを大勢が集まって行なうbuka puasa bersamaが会社やモスクなどで盛んに行われる。飲食が行なわれるのだからケータリングの注文が飛び交うのは言わずもがな、更には集まるひとびとを収容できる広間が建物内にない場合は屋外にテントが張られる。インドネシア人はテント(tenda)と呼んでいるが青色の巨大なビニールシートが天蓋に張られるのがふつうだ。このテント貸出しと設営が引く手あまたになっている。
「会社関係でbuka puasa bersama用のケータリング什器の貸出しが多いのはラマダン月の第一週で、個人客の場合はケータリング什器とテント貸出し注文が一緒に来ますね。ラマダン月の満月の夜は会社やモスクでライラトゥルカダルの催しが多く、テント貸出し注文はふだんの4割増になります。うちは従業員を21人使ってますけど、みんなもう夜中まで残業残業で・・・。会社だと翌朝始業時間には張ったテントが片付けられてないといけないでしょう。」クバヨランバルでケータリングとテント貸出しビジネスを行なっている業者のオーナー女性はそう語る。この業者はケータリング什器類やテントだけでなく、エアコン・扇風機・机・椅子・カーペット・ステージ・サウンドシステムまでパーティ会場設営に必要なもののほとんどをレンタルしてくれる。テント貸出しは平米当たり1万5千から3万5千ルピアまでバラエティがある。会社からのルバラン当日のテント設営注文も受けるが、設営は9月29日で解体は10月6日になるとのこと。
別の業者は、buka puasa bersamaの習慣が社会にますます広がってきているので、会社関係も個人客も頻繁に催しを行なうようになっており、必要な設備のレンタル注文は増加の一途だ、と語る。「うちはもう、あまり飲食用什器をメインに置かず、テント・机・椅子・カーペットの貸出しに力を入れてます。テントは一般向けの場合5x8メートルで32万ルピア、セミVIPの場合は5x8メートルで70万ルピアです。ルバラン日用の注文は3割増ですね。ただし設営は5日前で解体は翌日になり、料金は平常の2倍になりますけど。テント貸出しは平米単位でもできます。その場合は平米当たり17,500ルピアになります。うちは従業員を13人使っていて、都内からデポッまでどこでも参上します。」とこちらも女性オーナーの弁。ケータリングビジネス事業はほとんど女性の独壇場だ。


「ルバランシーズンの売れ筋商品」(2008年9月29日)
ラマダン〜イドゥルフィトリシーズンに全国のムスリムは30日の間特定パターンの暮らしを命じられる。膨大な需要が特定の物品消費に向かうため、需給関係が崩れて物価上昇が起こることは「物価暴騰を支えるためのルバランボーナス」(2008年9月10日)で触れられている。売る側も、「多少値上がりしても必ず売れる」と足元を見ているかもしれない。そしてそんな構図を下支えしているのがルバランボーナスという社会慣習であると言えば叱られるだろうか?物価上昇を乗り切るための臨時収入は生産・流通・販売者の利潤の中に取り込まれていくのが当たり前で、つまりルバランボーナスは物価上昇を肯定しそれを支えるためのものになっている、というのが言わんとするところである。
ではいったいどんな商品の需要が膨れ上がっているのだろうか。ニールセンインドネシアの興味深いレポートを見てみよう。ラマダン月4週間とイドゥルフィトリ日のある一週間の合計5週間をレンジとしてその時期ハイパー・スーパー・ミニのモダンマーケットで最も需要が大きくなる商品は23種あり、平常月にくらべて平均20%ほど売上が上昇する。更に2007年同マーケットにおける23種商品の売上高は8千9百億ルピアだったが、今年は1兆ルピアを超えるだろうと見られており、インフレもあるのだろうが国民の購買意欲も上昇しているようだ。ルバランはインドネシア国民にとってのビッグシーズンであり、国民はルバランボーナスを得て平常月に倍する購買力を持ち、それによってハイレベルの購買と贈答を行なう慣習が年々繰り返される、とニールセン報告は述べている。その報告によれば、2007年に平常月に比べてもっとも売上が膨れ上がった商品はシロップで9倍になったそうだ。23種商品はこの時期、下のようにバカ売れをする。
シロップ 9倍
ビスケット 2.3倍
バター 2倍
胃腸薬 2倍
食用油 1.6倍
アイスクリーム 1.6倍
コンデンスミルク 1.4倍
茶 1.35倍
飲用ミルク 1.3倍
キャンディ 1.3倍
チーズ 1.3倍
ヨーグルト 1.2倍
チョコレート 1.18倍
シロップ・ビスケットというルバラン贈答品のエースが遠い過去から連綿とその地位を保っていることがこのデータからもわかる。更に自家製の菓子を焼く習慣も連綿と続いているようで、食用油・バター・ミルク・チーズ・砂糖・小麦粉・諸粉の売行きも顕著だ。加えてインスタント食品も販売が普段よりも伸びており、揚げるだけですぐ食べられるポテト、缶詰の魚や肉、加工済みの冷凍魚や肉などをブカプアサやサウルのために消費者が選んでいる。そして意外なことに、ルバランに新しい衣服を着ることは言わずもがなの常識になっているものの、衣服だけでなく食器類や菓子などを入れる広口容器、さらにはバケツなどまでもが販売増を示していることからわかるように、日常生活用品にまで新しいものに取り替えるという感覚が広がっているようだ。行動においては守旧的先例主義的でありながら、暮らしの中の自分を取り巻く物品は新しいものを好むというインドネシア人の性向はここにも投影されているように思える。そのようにしてマーケット売場内のあらゆる商品を仔細に見ていけば、23種類どころかなんと7百種類の商品がこの時期販売増の恩恵を蒙っていることがわかるのである。


「2008年ルバラン交通事故の総決算」(2008年10月10日)
全国を揺り動かした2008年ルバラン帰省と帰省逆流の波を捌いて国内治安維持と国民社会生活保護を目的に国家警察が総力をあげて実施した2008年ルバランクトゥパッ(Ketupat)作戦は9月24日に始まり10月7日に終わった。その期間中に全国で発生した交通事故1,254件は2,573人という犠牲者を生んだことを10月8日、国家警察広報部長が明らかにした。2,573人という交通事故被害者は、死亡585人、重傷743人、残りは軽傷という内訳。ルバラン帰省と帰省逆流の波の中で発生する交通事故は平常期より多く、そして事故発生の原因が四輪にせよ二輪にせよ、圧倒的にその運転手の振舞いにあることを広報部長は指摘している。
国家警察交通局データでは、クトゥパッ作戦期間中の全国交通違反件数は37,282件にのぼり、そのうちの25,777件は二輪運転者の違反だった。インドネシアの交通事故死亡者数は年間1万5千人を超え、これは住民人口10万人当たり4.54人という数値で先進諸国に比べれば大幅に高い。そしてルバラン帰省がその一翼を担っている、と広報部長は言明している。
ルバラン帰省交通事故の過去の実績を見ると、2006年の事故件数は961件死亡者数437人だったものが、2007年は事故1,875件死亡者数798人とほぼ倍増した。2007年はクトゥパッ作戦期間が16日で、2008年は14日だったから、多少改善されたとはいえ大幅な向上とは言えないようだ。


「中古車価格は下がらない」(2008年10月15日)
2008年ルバランのムディッシーズンにおける中古車販売は昨年にも増して隆盛だったと大手中古車ディーラーが明らかにした。PTアストラインターナショナルの中古車販売部門であるMobil88は今年650台の販売を達成して2007年ルバラン期販売実績月間5百台から30%増となった。今年のその成果は、大量の注残で新車の配達が間に合わないため消費者が中古車市場に購入先を求めているこれまでの状況が変化しておらず、また新車より廉価で手の届きやすい中古車の需要が増加傾向にあることなどいくつかの条件が反映されたものであり、需要の主流はエンジン排気量1千〜2千ccの小型セダンあるいはミニバスに集中していて、車種としてはトヨタのアバンザやヤリス、ダイハツゼニア、スズキスウィフト、ホンダジャズ、ヒュンダイアヴェガ、キアピカントなどが高い人気を得ているとのこと。今年のルバラン期Mobil88販売台数はその前月の月間販売数から10%増加した。
需要がピークに上ったルバランを過ぎれば需要が陰って価格が低下するだろうと思うのは大間違いで、過去1993年以来(1999年は例外として)ルバランを過ぎても中古車価格が下がったことは一度もない、とモビル88の中堅幹部は言う。新車市場の購入意欲は相変わらず強いものがあり、それが中古車需要の牽引力となっているのは疑う余地がない。ルバランを過ぎてビジネスは小休止しているが、再び需要が盛り上がる徴候は十分見受けられており、特に地方部ではスマトラ・スラウェシ・カリマンタンでの農園と鉱業の好景気に支えられて自動車購入が大きく伸び上がるのは間違いなく、ジャワ島への中古車仕入れが首都圏を中心に湧き起こるのは時間の問題であるためモビル88も在庫固めを進めているところだ、とかれは語る。
特に市場を賑わしている自動車関連諸税の引上げで来年には名義変更税が最大で20%アップする見込みであるのに加えて自動車生産者が新車価格を値上げすることも予想されており、新車が2〜8百万ルピアほど高くなった上に名義変更税の上昇を加えれば1千万ルピアを超える可能性も高い。その新車価格アップが中古車価格を引き上げるのは確実で、そのためにも年内の中古車需要は輪をかけた盛り上がりを見せることが予測されている。「それよりなにより、この先2週間以内に中古車価格は市場の状況を反映して上向きになるだろう。中古車を買うのは早ければ早いほどお得だ。」かれはそう奨めている。


「ヒーロー作り演出のピークを飾ったテロリスト処刑」(2008年11月18〜21日)
2002年10月12日にバリ島クタを震撼させた第1次バリ爆弾テロ事件犯人グループの中で死刑を宣告されていたアムロジ、イマム・サムドラ、アリ・グフロンの三人に対する処刑が2008年11月9日午前0時15分に中部ジャワ州チラチャッ県ヌサカンバガンの刑務所から2キロほど離れたニルバヤ谷で執行された。三人は死刑囚に与えられる目隠しを拒否したと伝えられている。
インドネシアの死刑は銃殺によると法規に定められており、深夜に人里離れた野原で執行機関職員、銃殺部隊、証人や監視役など関係者だけが現場に集まり、周辺地区は一般者立入り禁止にして実施される。慣例どおりの手順で三人の処刑がなされたあと、検死解剖を含む一連の死亡確認プロセスが踏まれてから、かれらの遺体は午前4時に刑務所内で祈祷され、午前6時にヘリコプターでそれぞれの遺族のもとに送り届けられた。イマム・サムドラはバンテン州セラン、アムロジとアリ・グフロンの兄弟は東ジャワ州ラモガンの出身だった。その遺体引渡しから埋葬にいたる葬儀のプロセスに、かれら三人のテロリストに共感と同情を寄せるサントリ(イスラム修行者)を中心とした大勢の市民が集まってきたことは、その三人が一部国民の間でどのように受け留められ位置付けられているのかを雄弁に物語る声明であり、それが意味している不気味さに戦慄を感じたひとも多かったにちがいない。
三人の死刑囚に対する減刑の道がすべて閉ざされてから、いつとは公表されないにもかかわらず処刑の日に向けて国内のテンションが高まって行くにつれ、その高まりの中に同情派の意識がかなり濃く混じりこんでいたのを大勢のインドネシア国民が感じている。思想を同じくするテロリストグループからの報復行動を懸念する声明が各国政府からも出されていたが、三人のテロリスト葬儀に集まってきた膨大なサントリの人間の海を見る限り、地下に潜行したひとにぎりの先鋭的なテロリストグループが起こすかもしれないテロ行動よりも、あの中から数え切れないほどのヒットマンが続々と現れて手渡された高性能爆弾を身につけ、壮絶なシュハダとしての死をまっとうするために歓喜に包まれて爆弾に点火するような、桁違いの厚みを持った構造がそこに生じているという思いを抱いたのはわたしだけだっただろうか?
三人のテロリストの死刑執行日に向けて国内各地で爆破予告通知を行なう人間が急増したのは、テロリスト処刑を軸にして国民の感情操作を行なった一部勢力の成功を物語るものでもあるにちがいない。
爆破予告通知は警察もしくはターゲットにした建物に対して行なわれる。処刑前日の11月9日にはスマランのホテル「ノボテル」に正体不明の男から2度も爆破を予告する電話が入ったが、警察の爆発物捜索で虚偽電話だったことが判明している。
また同じ日に東カリマンタンでは都内に住む社会的著名人や政府高官に対して威嚇する内容のSMSを送った26歳の男が逮捕された。国家警察はこの男がどのような経路で著名人や高官の電話番号を入手できたのかについて、テロリストとの関連性も視野に入れながら取調べを進めている。
11月12日には都内のプラザスマンギとプルタミナ本社が爆破予告のターゲットにされた。プラザスマンギの爆破予告は午前9時53分に首都警察に入ったもので、警察からの連絡に従ってプラザスマンギショッピングセンター運営者は館内にそのニュースを流したが、ビル外への退去指示は出さずに首都警察爆発物処理班グガナチームの捜索結果を待った。館内ではとくにテナントも来店客もパニック行動を示さず、また捜索の結果爆発物は発見されなかったので館内は平常に復した。モナスに近い中央ジャカルタ市ムルデカティムール通りのプルタミナ本社は予告通知に対応して従業員を一旦退避させグガナチームが館内を捜索したがこれも虚偽通知だったことが判明している。
中でも11月8日に逮捕された、「ブロッケム(Blok M)モールに爆弾を置いた。」「テロリストは何故死刑になるのか?われわれはムスリムを擁護しているというのに。」といった内容のSMSを首都警察コールセンターに合計5回も送りつけてきたバンテン州在住の25歳の男は警察の取調べに対し、三人のテロリスト死刑囚への共感と同情を表明して「三人を死刑にするな」と訴えた。
首都警察はそのような虚偽情報発信者に対してテロリズム法を適用する方針を決めた。たとえイセン(「SMSでイセン」(2007年03月14日)を参照ください)で行なったことであっても、また爆発が起こらず爆弾すらなかったとしても、それらの行為は一般大衆に向けられた心理テロリズムであり、テロリズムに関する2003年法令第5号第16条に該当すると警察はその理由を説明している。テロリズム法による刑罰は最低4年最高20年の入獄となっており、これまで同じようなケースに用いられてきた刑法典第336条による2年8ヶ月の入獄という刑罰より重い。
バリ州政府は三人のテロリスト処刑が行なわれた翌日、2008年内いっぱい6千人の治安要員を動員して州内の治安確保に当たることを表明した。「処刑は法に従って実施され、正義は行なわれた。バリ州民はいかなる状況を前にしてもこれまでに培った体験と忍耐を維持する能力を失っていないとわたしは信じている。だから必要以上に今の状況を意識して囚われることなく、また不明瞭なイシューに引きずられることのないようにしなければならない。」マデ・マンク・パスティカ州知事はデンパサルでそうスピーチした。これまでのイシューでは、テロリスト処刑に対する報復テロはジャカルタがターゲットにされていると言われているものの、その言葉が正しいという保証はどこにもない。デンパサルのウブンバスターミナルでは、警察・国軍・行政警察・ターミナル職員の混成部隊が11月11日から乗客の手荷物検査を開始した。爆発物や刃物などの凶器が検査対象とされている。
ところで、今回の第一次バリ爆弾テロ事件死刑囚の処刑に関連して国内ムスリム層の間で盛り上がっているかれら三人を英雄視する雰囲気を醸成したのは国内マスメディアだ、とインドネシア大学社会学政治学部メディア倫理学教授が発言した。イセンという精神構造が関与していないわけでは決してないが、それよりもっと強い正義感のようなものが爆破予告行動をバックアップしている、と教授は語る。「死刑執行に向けて国内の関心を盛り上げるのに、特にテレビが一般国民にどのような影響を及ぼすかという知恵を働かせることなく報道内容を特定の情緒で包んだことから、国民大衆にテロリストへのシンパシーを生じさせる結果をもたらした。それはあたかもシンパシーと果てしない怨恨の火種を大衆の深層心理に焼き付ける役割をはたしたわけだ。この処刑をメディアは一連の法的プロセスの結末として視聴者に示すべきであったのだが、そうしないでドラマとして大衆にそれを見せるという誤りを犯した。その結果、国民はこの処刑に対する善悪の価値判断に混乱を生じ、理解のしかたを狂わせることになった。」
特に喉元過ぎればものごとをすぐに忘れ去ってしまうインドネシア人にとって、爆弾テロ勃発から処刑までの6年間という時間はあまりにも長いものだったにちがいない。テロ事件直後の一般国民が抱いた、種族も宗教も超えて悲痛な想いと心の痛みを共有しあった、あの感情は意外なほど大きく姿を変えてテロリスト処刑の日を迎えたように見える。
インドネシア最大の民衆派イスラム組織であるナフダトゥルウラマの人材研究開発機関中央指導部役員も上述のインドネシア大学教授と同じ視点で今回のテロリスト処刑に関わる国内状況を観察している。
ナフダトゥルウラマ人材研究開発機関中央指導部役員の文章を読んでみよう。
アムロジ一派の死刑はインドネシアにおけるテロリズム劇の次の舞台の幕開けなのだ。その新たな舞台とはつまりアムロジ一派の運動に触発された新たなテロリストたちの芽が成長する場ということだ。アムロジ一派の死刑はインドネシアのテロリズム運動を弱める結果をもたらさない。かれらは死刑を受けることに恐怖もおびえも抱かなかった。テロリストが持つイデオロギー辞典の中に降伏という言葉はない。かれらの運動を常に支えるスピリットとなっている宗教ドクトリンは「聖なる死」である。かれらは自分が行なったことがアラーの宗教を打ち立てるためのものであることを確信しており、かれら個人の死の淵に臨んでは、天上の極楽を約束する「聖なる死」が自分に訪れることを信じている。法廷で死刑判決を受けたとき、かれらがどのような反応を示したかを思い出すがよい。拳を空に向かって突き上げながら叫んだ「アラーフアクバル」の声が何度も廷内にこだましたではないか。処刑の日が近付いたときでさえ、かれらは「アラーフアクバル」を叫び続けた。悲哀、後悔、恐怖などを抱いた印象は少しもなく、かれらは自分たちの宗教を守護する闘いを推し進めるという精神を示し続けたのである。かれらが叫び続けたその精神こそが、いま地下に潜行しているかれらの後進たちに軍事戦闘行動の意欲をあおり続けるものとなっている。アムロジ一派がテロ行動から処刑の日までの間に見せたさまざまなシーンがかれらの闘争劇の筋書きなのだ。そしてマスメディア(特にTV)が、アムロジ一派がいかにイスラム運動における英雄であり闘士であり、かつまた精神高揚の源泉とされるにふさわしい者たちだったかということを国民に示して見せたのである。そのチャンスを利用してイスラム硬派がヌサカンバガンにアムロジを訪れ、またその親族と連絡を取るといった演出を行い、あたかもアムロジ一派のテロ行為が支持されているような印象を作り上げていった。
マスメディアが行なったそれらの報道は国民大衆に対して、アムロジ一派が行なったことは正しいことであり、かれらは政府の暴虐によって死刑に処せられるのだという印象を持たせることに一役買ったにちがいない。ましてやテレビが映し出した画像の多くは精神を沸き立たせるようなヒロイックな雰囲気に満ち満ちていたのだから。このようなメディア報道で形成されていった国民の頭の中には、アムロジ一派が国際政治の舞台で人身御供にされた哀れな者たちという逆転した理解を植えつけることになり、このような状況下ではテロリズムを繁茂させるかっこうの土壌が形成される。なぜなら、アムロジ一派は「聖なる死」を約束しているかれらの宗教の守護戦士である、とひとびとは見なすからだ。
マスメディアが見せたアムロジ一派、その親族、警察、最高検察庁、イスラム硬派集団、そして国民大衆らが出演したこの壮大なドラマがもたらすもののなかでもっとも懸念されるのがそれなのである。


「イランの女性ファッションハウスがジャカルタに進出」(2009年7月6日)
1年以上前にマレーシアに進出してきたイランの女性ファッションハウス「House of Zahra」が今度はジャカルタに出店した。イランのムスリマ(女性回教徒)向けファッション商品販売をメイン事業とするハウスオブザフラが世界最大のムスリム人口を擁するインドネシアに出てくるのは時間の問題だったにちがいない。1着60〜90万ルピアの価格帯衣料品を毎月50〜100着販売するというのがハウスオブザフラのインドネシアにおけるビジネスターゲットだ。着やすいカジュアル衣服を好むインドネシア女性向けに商品はイランから直輸入される。当面インドネシアで販売される商品は10種類のデザインで、色は赤・黒・白・茶色・青・紫などのもの。生地はナイロン・ポリエステル・リクラの混紡によるジャージーがベースになっており、そのためにインドネシア国産のムスリマ衣装よりは多少高目の価格設定になっている。
ハウスオブザフラは南ジャカルタ市ブロッケム(Blok M)のパサラヤグランデ(Pasaraya Grande)に開店したが、プジョンポガン(Pejompongan)地区にもMumtaaz Boutiqueをオープンしている。ハウスオブザフラの衣装デザインはベーシックでシンプルなものであり、他の衣装やアクセサリーとマッチさせやすい特徴を持っている。


「ルバラン期の市場監視を商業省が強化」(2009年7月23日)
インドネシア製品規格(SNI)取得義務付けのなされた製品カテゴリーの中で、依然として未取得のものが多数市場で流通している。メダン・パダン・スラバヤ・バリッパパン・タラカンで2009年6月はじめに行なわれた市場調査でSNIを取得していないホワイトセメント・鉄鋼・家電品などが見つかっており、商業省サービス流通物品監督局長は各地元行政府に対し捜査を命じたことを明らかにした。現在ホワイトセメントのSNIを取得しているのはTiga RodaとSemen Gresikしかないが、市場ではさまざまな会社の製品が流通している。また鉄鋼製品では、直径12センチとうたっているものの実際には10センチしかないものや、長さが12メートルなければならないのに11メートルしかないといったものも発見されている。
商業省は市場における流通商品の監督を行なっている一方で、輸入指定港における家電品・飲食品・履物・衣料品・玩具の輸入規制5品目に対する監視も行なっている。それに加えてプアサとルバランの季節が近付いてきたことから、市場での流通物品監視を強める態勢をととのえている。このシーズンには特に生活基幹物資の流通に焦点が当てられ、市場価格の統制とともに国民の消費する物品に対する保安・安全・環境衛生の確保がはかられる。中でも物品の円滑な流通が商業省をあげての焦点となることから、流通量の変動とそれにともなう意図的な価格操作には厳しい監視の目が向けられることになる。


「生活基幹物資は10%値上がりする」(2009年8月5日)
プアサとルバランのシーズンを前に生活基幹物資需要は10〜20%増大し、価格は5〜10%アップするだろうと政府は予測している。マリー・エルカ・パゲストゥ商業大臣はその予測を従来からの経験にもとづくものと説明し、全国の基幹物資ストックは十分な量があるので国民は品不足の発生を心配する必要はない、と明言した。2009年6月末の需要とストックの数値を商業省は次のように報告している。
品目 / ストック(万トン) / 需要(万トン)
米 / 1,026万 / 255万
砂糖 / 136万 / 33万
食用油 / 74万 / 31万
ピーナツ / 27万 / 5万
赤唐辛子 / 19万 / 7万
エシャロット / 16万 / 5万
牛肉 / 3万 / 3万
鶏肉 / 4万 / 4万
鶏卵 / 9万 / 10万
小麦粉 / 34万 / 28万
一方首都ジャカルタの物資ストック状況について都庁商業中小零細事業コペラシ局が公表した数値は次のようになっている。 米1万トン、砂糖25万トン、食用油11万トン、牛肉3万トン、鶏肉0.3万トン、鶏卵5万トン、小麦粉2万トン、野菜類0.7万トン


「都内家電品販売店に都庁が取締り措置」(2009年8月6日)
プアサとルバランの需要高騰期を前にして、都庁は市場で流通している家電品に対する取締りを強化する計画。需要高騰期には増大する需要を狙って関税や国税を納めない不法輸入品が増加するため、都庁は市場での取締りを強めて国内産業保護の一翼を担う意向。
政府は既に消費者保護政策として国内流通家電品にSNI(インドネシア製品規格)準拠を義務付け、またインドネシア語の取扱説明書と保証書を製品に添付して販売するよう定めている。都庁が市場で行なう取締は販売店が店頭販売している商品がそれらの条件を満たしているかどうかがポイントとなり、それらの条件を満たしていない商品はイリーガルとして対応措置が取られる。そのようなものは非常に高い確率で没収されることになるだろう、と都庁商業中小零細事業コペラシ局長は語っている。


「シーシャ」(2009年9月10・11日)
インドネシアでシーシャが流行し始めたのはいまから2年ほど前。5年前くらいからハジ巡礼者の土産物の中に混じるようになり、そして今ではライフスタイルの一部と化した。
中央ジャカルタ市タナアバンで開業している金属品店アルバロカは2007年以来購買客が急増したのでシーシャの卸販売をはじめたそうだ。仕入れ商品のコスト維持をはかって店主のファミリーはアブダビに飛行機で往復し、大量のシーシャを持ち帰ってくる。東ジャカルタ市チョンデッラヤ通りの中東物産販売店ハスラでも似たような話を聞かされた。
シーシャの語源はペルシャ語のシーシェで『ガラス』を意味しており、シーシャのガラス製胴体を指しているものと思われる。シーシャ誕生の地はインド大陸北部のインドとパキスタンの国境地区で、現在のグジャラート、ラジャスタン、シンドなどの諸州一帯だ。ムガール王朝を率いたアクバル大帝(1542−1605)の時代に物理学者アブドゥル・ファタ・ジャエラニがインドを訪れてシーシャを発明した。
シーシャは夕方のミントティーとスナックを楽しむバクラヴァのあとで心身をリラックスさせる嗜好品としてかれらの日常生活の中に定着した。シーシャの風習はインドからイラン、トルコ、イラク、エジプトへと拡がり、さらに中央アジアや北アフリカの一部にまでもたらされた。そしてここ数年、シーシャは世界中に広まっている。
1554年、アレッポのハキムとダマスクスのヘムスがオスマン帝国時代のトルコではじめてシーシャバーを開業した。するとたくさんのカフェの間でシーシャを用意する店が瞬く間に増加した。ムラッ4世の時代(1623−1640)にシーシャブームはピークに達し、トルコ民衆にとってなくてならないものになる。17世紀に入るとソフィスティケートされたライフスタイルの中に組み込まれ、音楽・豪華な食事・ベリーダンスとセットにされて富裕層の優雅な暮らしを彩る小道具のひとつになった。19世紀、サリム3世の時代になってベイコスにガラス工房がオープンすると、シーシャは工芸品となる。
20世紀初のエジプトで、シーシャはコスモポリタン文化の産物として発展を見せる。その時代にシーシャカフェとして一世を風靡したのはカフェジャマルディンアルアフガ二とカフェエルフィシャウィだった。1980年末にエジプトのタバコ商がシーシャタバコに果汁を混ぜたことで、シーシャは一躍世界の注目を浴びるようになる。今や世界のシーシャタバコは三つの流れを形成しており、そのひとつは蜂蜜やシロップを混ぜたマアサル、そして混ぜ物なしのアジャミ、さらに植物の油や汁を混ぜたジュラッという三つのベースの中でさまざまなバリエーションを楽しむことができる。
ジャカルタで目にするシーシャは上で見たように輸入品がほとんどだが、インドネシアにもシーシャの生産工場が存在していることはシーシャの流通販売に携わっているひとびとにもあまり知られていない。中部ジャワ州クンダル県ウレリ村にある工場で作られているシーシャは、たとえば胴枠は輸入品がブリキを使っているのに対してステンレス鋼が使われ、パイプは輸入品が銅を使っているのに反してブロンズが使われているというように、品質面でより優れたものになっている。輸入品が国内市場で一個130万ルピアの価格ラインにあるのに対し、国産シーシャは60〜75万ルピアでほぼ半値だ。加えてこの工場ではさまざまな風味のシーシャタバコからシーシャ用の炭まで生産している。炭は椰子殻から作られる。こうしてシーシャ愛好者の面倒を一手に引き受けているこの工場は毎月100〜150個のシーシャと1,500〜2,000本のシーシャ用ホースをサウジアラビア、ヨルダン、エジプトその他中東諸国に輸出している。もちろん炭やシーシャタバコも欠かせない輸出アイテムだ。月間売上高が3億ルピアで25%の利益をあげているこの工場にとって、国内市場開拓が今後の課題となっている。


「ラマダン月は広告宣伝も激増」(2009年11月27日)
ラマダン月はムスリムが断食を行なう月であり、この断食の行は深夜の食事を義務付けているので平常月には眠っている時間帯に大勢が起きているという生活習慣の変化が起こる。起きているときはたいていみんなTVを見るので、ラマダン月のTV放送はプログラムが豊富であり、それにつれてスポット広告も増大する。断食については「インドネシアのプアサ(断食)について」(2008年09月01・02日)をご参照ください。
特にブカプアサの時間帯とサウルの時間帯はムスリムが一斉に飲食する時間であり、TV視聴率は大きく上昇する。必然的にスポット広告も大活躍する時間帯となる。何の広告が盛んになるのか、ということについてABGニールセンメディアリサーチが調査結果を報告した。
2009年のラマダン月は8月22日から9月19日までで、その期間のTVスポット広告放映は29万5千回にのぼり、前月から15%上昇した。上昇率の一番高かった広告商品は通信機器と通信サービスで二位は食品、中でも即席麺の広告頻度が高かった。通信関連広告は前月から2倍増え、3万回に達した。
時間帯別では、サウルの時間が上昇率がもっとも高くて前月の6倍に跳ね上がり、マクドナルドが1,390回スポット広告を打ってサウル時間最大の広告主となった。次いで通信関連、タバコといった順。またブカプアサの時間帯では通信関連製品とサービスが5,508回で最大ポーションを占め、中でもテルコムセルが1,254回で前月から5倍増と積極的な宣伝姿勢を示した。


「イスラム住宅地が増加傾向」(2010年2月15〜17日)
国民の住宅需要は根強いものがあり、その需要を当て込んで仲介ビジネスに投資する者もたくさん加わってくるためますます需要の見えがかりを大きくしている。それはともあれ、首都圏一円の宅地開発は出水・洪水・堤防決壊などの災害をはびこらせながらも盛大に行なわれているのが実態だ。大手業者の広大な地域開発ばかりか、中小業者も狭いエリアに住宅地区を設けるなどして分譲建売住宅は郊外へ郊外へと広がっている。ジャボデタベッの農地や森林あるいは池などといった自然景観がある日突然様相を一変していたという体験はざらにある。
それほど強い住宅需要の中でデベロッパー間の競争も熾烈をきわめており、その差別化をはかる企画の中で最近とみに消費者の人気が高まっている現象がある。それがイスラム住宅地。イスラムを開発コンセプトの基盤に据えたこの企画は最近デポッ(Depok)市で特に顕著に見られる。イスラムコンセプトの住宅地区とはいったいどのようなものなのだろうか?
家屋のエクステリア・インテリアの設計がイスラム風ニュアンスに包まれているのが最大の特徴だが、壁にアラビア文字のカリグラフィを浮き彫りにさせたりして雰囲気を高め、屋内には礼拝場が必ず備えられて礼拝の際のウドゥの水専用蛇口まで用意され、浴室はメッカの方角を避けるといった配慮までなされている。イスラム教徒が日々実践しなければならない宗教の勤めを行う際の便宜を高めるための家という意味合いがきわめて強い。家屋の外側つまり庭はたいへんオープンにして隣人との接触を容易にするよう配慮されている一方で、家屋はむしろ閉鎖的にしてプライバシーを高めてある。さらに住宅地内あるいは各クラスターには便利な場所にモスクが造られ、まるで幼稚園のようなコーラン学習園が設けられて幼年層がコーラン読唱を学ぶための施設まで用意され、水泳プールは男性用と女性用を完全に切り離し、住民女性にはアウラッを覆い隠すような指導がなされ、また禁煙を指導するなどイスラム教徒としての完璧な生活がそこで送れるような場所を入居者に提供するというのがこのイスラム住宅地のコンセプトなのだ。
要はテーマとされている雰囲気に浸るためのハードウエアにとどまらず、生活実践の場でもそのテーマにどっぷり浸った暮らしを送るための便宜を供給するものであるというのがこのコンセプトであり、これは人間と住居との間のたいへん本質的な関係を実現させることを提案する稀な例であると言うことができる。消費者が住居を選択する際に、自分と家族が望む暮らしのあり方の実現を容易にしてくれるという要素は必ず条件のひとつとして考慮されるわけで、その点でイスラム教徒として送るべき正しい暮らしを望むムスリムたちにとってイスラムコンセプト住宅は願ってもないチョイスを提供するものだと言える。
デポッ市には小規模な宅地開発プロジェクトが20以上も進められている。広大な余地が残されていないデポッ市で住宅地を開発しようとすればそのような帰結になるのは理の当然だろう。2006年以来積極的にイスラム住宅地開発を手がけているデベロッパーのひとつにPTオーキッドレアルティがある。同社のプロジェクトは総面積6千平米から1ヘクタール程度の規模で戸数も限られているが売行きは上々だ。たとえば最初のプロジェクトだったオーキッドタウンハウスは戸数わずか16ユニットで、これは数ヶ月で完売した。続くプロジェクトはグリヤラフマニで、全戸数37ユニットは一ヶ月で完売した。同社が開発した住宅地はすでに9ヶ所に達している。ただしすべてがイスラム住宅地というわけではなく、サーバーテクノロジーをテーマにして全戸にワイファイ設備を設けたものや、エコロジーをテーマにした住宅地なども含まれている。もうひとつデポッ市でイスラム住宅地を積極的に開発しているのはPTイッジーレアルティで、こちらは既に7ヶ所の住宅地を設けている。
イスラムコンセプト住宅地の開発は1995年にタングランで行なわれたものがその嚆矢らしいが、ここ数年ふたたび消費者の高い人気を誘っている。これはシャリア銀行の増加とシャリア銀行が行なう住宅取得ローンの幅が広がっていることがその背景をなしているようだ。イスラム住宅を購入する消費者との売買取引をイスラム風に行ないたいという希望は購入を選択した時点で双方の前提条件になっているに違いない。これは売り手買い手の双方に共通する要素なのである。もうひとつの背景はやはりここ数年イスラム教宣活動が活発化してムスリムの間に宗教教義により則した暮らしへの欲求が高まっている状況が存在していることもあげられるムスリムたちの宗教学習活動や宗教広宣活動も活発化しており、同胞ムスリムに対する啓蒙意欲も一時期にくらべてはるかに高まっている。そんなかれら自身がイスラム者の真の暮らしを実践しようと望むのは当然のことだろう。
そしてどうしてデポッ市でイスラム住宅地が盛んなのかということの秘密は、イスラム政党をバックにしているデポッ市長がイスラム化の進展に強いサポートを与えているためであり、その風は住宅地開発面にも吹き込んでいる。イスラム住宅地コンセプトは首都圏一円に拡大する様相を呈しており、またデポッのデベロッパーもバンドンやジョクジャにそのコンセプトをひっさげて進出する計画を立てている。イスラム住宅地の拡大は時間の問題になりそうだ。


「ムスリマとの婚姻に5億ルピア」(2010年2月22日)
公的に定められたプロセスを踏まず世間に公表もしないが、神の前で互いに誓い合うことで成立するニカシリ(nikah siri)。あるいは契約結婚や第二妻・第三妻・第四妻との婚姻。裁判所で行なわない離婚、不倫行為、夫婦の務めを果たさない、権限がないのに夫婦を娶わせる。それらの行為は違法であり、罰金6百万から1千2百万ルピアと6ヶ月から3年の入獄という刑罰が科される。また異国籍者との混交結婚の場合、外国籍の男性はインドネシア国籍女性にシャリア銀行を通して5億ルピアの保証金を払わなければならない。
それらの条項が婚姻分野宗教裁判実体法案の中に盛り込まれている。これはまだ法案であるため法令として確定しているわけでなく、この法案は国会の2010年国家立法プログラムの中に上がっているので今年中に審議を行なって法令として公布されるよう国会は努めることになる。
この法案は2006年の国籍法改定に関連して議論を呼んだ1974年法令第1号「婚姻法」の改定ではなく、婚姻法とは別個のものとして婚姻法を補完する位置付けのものであり、婚姻法が詳しく規定していないイスラム法の婚姻分野に関する内容を現在の実情に即して規定しようとするものだ。
シャリフ・ヒダヤトゥラ国立イスラム大学のアブドゥル・ガニ・アブドゥラ教授はこの法案がムスリム国民の間で議論を呼ぶものになることを予測している。教授によれば、これまでニカシリは刑法典の不倫行為条項が適用されてしばしば犯罪として扱われてきた。刑法典によれば、男にせよ女にせよ正式婚姻外の相手と行なう性行為は不倫であると規定されている。しかしニカシリは不倫なのだろうか、と教授は問う。「イスラム法はニカシリを認めており、必ず不倫に該当するわけではない。問題はなぜその婚姻を公然のものとして登録機関に届け出ないのかというところにある。原因はだれにあるのか?だがニカシリと違ってイスラム法は契約結婚というものを認知していない。婚姻分野の統制は社会が主体的に行なうべきだという見方がある一方、それは政府が取り締まるべきだという意見もある。この法令は実態と法の間の乖離を狭める使命を帯びている。現行婚姻法はそのあたりの詳細を明確に規定しておらず、それどころか刑罰規定さえ盛り込まれていない。当時法案の中には刑罰規定が用意されていたが、大統領がそれにサインする前にウラマ層の意見を求めた。するとウラマ層は、婚姻は宗教の勤めであるというのに刑罰が科されるようになっている、との意見を述べたために刑罰規定は削除されて管理上の制裁金だけが残ったという経緯がある。」
スルヤダルマ・アリ宗教相は個人的見解として、ニカシリを不倫と同一視するのは宗教上正しくない、とコメントした。「ニカシリという婚姻形態は宗教上で正当なものであり、それは婚姻の公的管理プロセスに対する違反でしかない。宗教法に背きまた公的管理上も違反している不倫とは異なる。」
イスラム団体指導者層は一般的にニカシリが犯罪とされることに異論を唱え、契約結婚は犯罪だと断定している。イスラムの教えに従えば婚姻の目的は平和で互いに愛情と尊敬を与え合う平安温暖幸福なサキナ家庭を形成することにあり、サキナ家庭を作り上げることは数日や数年で行なえるわけがなく長い年月のかかるものであり、その長期の営みの根拠を確定させるために婚姻を世間公然のものとし、且つ婚姻の事実を公的機関に登録するプロセスが踏まれる必要があるのだ、というイスラム的結婚観をかれらは強調している。


「キブラッ」(2009年3月31日)
イスラムの礼拝は神が鎮座するメッカのカアバ神殿に向かって行なわなければならない。その礼拝の際に向くべき方角のことをインドネシアではキブラッ(kiblat)と呼ぶ。イスラムの教義に従うと、カアバに対面して礼拝できる者にとってはカアバがキブラッであり、礼拝のときにカアバが見えない者にとってはカアバのある方角がキブラッとなる。インドネシアでムスリムが礼拝するときカアバは見えないのでカアバの方角にあたる西に向かって礼拝することになり、全国に70万ほどあるモスクや礼拝所はその決まりに則した位置に建てられている。ところがここ数ヶ月、カアバの位置が変わったというイシューがムスリムの間で賑わい始めた。それは地球のプレートが動いているという地学上の事実を根拠にしており、インドネシアのキブラッが30センチも右側に移動したという主張が出されている。
それが本当であるなら、自分たちが毎日行なっている礼拝は誤った方角を向いていることになり、宗教上の勤めが正しく行なわれていないという結論に至る。そんな不安がインドネシアのムスリム層に拡大したため、ウラマ評議会がファッワ(Fatwa)決定を下した。インドネシアのムスリムは地球のプレートが動いていることを気にすることなく、メッカのある西の方角に向かって礼拝にいそしむように、というのがファッワの内容。ウラマ評議会は全国のモスク・礼拝所に対し、西向きに建てられているかぎり、建物の位置を変えたり解体する必要はまったくない、と広報に努めている。一方宗教省は全国のモスク・礼拝所のキブラッが正しい位置になっているかどうかの検証はこれまで行われたことがまったくなかったので、それを徐々に行なっていく、と表明した。宗教省が正しいキブラッとしている方角に一致していなければ、モスク・礼拝所は建物の向きを変更することになるかもしれない。


「大量の密輸衣料品が届く季節」(2010年7月21日)
ムスリム国民が全員新しい服を買うルバランシーズンの膨大な衣料品需要をあてこんで、大量の輸入品が国内に流れ込もうとしている。今年国内市場に正しい通関を経ないで侵入しようとしているのは2万から2万5千トン、金額で2千5百万から3千万ドルに相当する量だと推測されており、40〜50トンが入る40フッターコンテナで5百本ほどになる見込み。これは過去5年間で異例の量であり、そのため業界者は政府税関に対し、5百本ほどの衣料品が満載されたコンテナを厳しく警戒するよう求めている。その衣料品はほとんどが中国産であるとのこと。
中国原産品であることが証明されれば輸入関税が免除されるアセアン=中国自由貿易協定が始まったとはいえ、不法輸入が依然として続いているのは、政府が国内産業保護を目的に協定税率ゼロパーセントの実施を2015年まで遅らせているためだ、と繊維産業リサーチ機関インドテキスタイル専務理事は述べている。特に不法輸入で多用されている手口は、通関申告の際に不法輸入者がHSコードを税率ゼロパーセントの品目として虚偽申告するパターンであるため、業界側は政府税関に対し、税率ゼロパーセントの輸入申告は洩れなくレッドレーン通関、つまり物品検査を行うよう要求している。
2009年は国内総市場75.6億ドル中の不法輸入品市場シェアは16%だったが、今年はそれがフルに倍増するだろうと業界では予測している。


「タングランとボゴールもラマダンの準備」(2010年8月9日)
タングラン市のナイトスポットはラマダン月前日からイドゥルフィトリ大祭翌日まで一斉に休業する。これは市が例年行なっている条例の施行であり、それに違反したナイトスポットは警告書から事業許可取消までのいくつかのレベルの罰則を受けることになる。またプアサ期間中、日中に開店するレストラン・食堂は窓ガラスをすだれなどで覆うようにして、断食の行を行なっているムスリムへの尊敬を示すようにとも市庁は呼びかけている。
一方ボゴール市では街中にいる街娼とストリートチルドレンの取締は開始した。この方針はボゴール市の外から市内にやってきて路上で秩序を乱す行いをしている者に対する取締りであり、市行政警察ユニットがその取締を一手に遂行するとのこと。この取締実施方法は行政警察ユニット職員が私服で自家用の四輪二輪車を使って市内をパトロールし、街娼やストリートチルドレンが捕まると行政警察ユニットのトラックが来て捕まった者を収容し、取調べのあとで東ジャカルタ市パサルボにある社会更生院に送り込まれる。そのような取締方法を採るのは、取締対象者と行政警察との鬼ごっこを避けるためだ、と行政警察ユニット責任者は語っている。
またボゴール市は路上のストリートチルドレンや物乞いに金を恵まないように、と市民に呼びかけた。かれらに直接金を恵むよりは、ザカート(喜捨)機関や貧困者支援組織に寄付をするように、とのこと。


「ナイトスポット営業規制取締り」(2010年8月10日)
ラマダン月の営業規制に違反しているナイトスポットを襲撃したり夜中に街娼狩りを行なうようなことをしている宗教系過激派民間団体に対する封じ込めを都庁は今年も計画しており、都庁行政警察ユニットはそれら民間団体のリンチ行動を抑え込むために行政警察ユニットの取締り体制の中に組み込むことにしている。
観光に関する2004年都条例第10号はナイトスポット営業の取り締まりを行政警察ユニットが行なうよう命じており、民間団体の類似行動は不法行為に該当するので、民間団体はパトロールを行なって違反ナイトスポットを発見するだけにとどめ、行政警察ユニットに報告して措置を求めるというメカニズムにすると都庁行政警察ユニット長が発表した。
取締りのためのパトロール班として体制に組み込まれるのは、イスラム守護戦線・ブタウィ協議フォーラム・ブタウィ人コミュニケーションフォーラムの三つ。行政警察はかれらを連れて都内各所のナイトスポットを回り、ラマダン期間中の取締り体制を紹介することにしている。
イスラム守護戦線議長は、「都庁が規制を正しく実行する限り、われわれが違反者に対して措置を取ることはない。営業してはならないナイトスポットは必ず規則を守るように。規則を守らない店は行政警察ユニットに通報して強制的に閉店させる。行政警察は決してえこひいきをしてはならない。ムスリム民衆のラマダン月の行の遂行を乱す事業者に容赦してはならない。」と述べている。
ラマダン月のナイトスポット営業規制取締りは都庁の法執行の実現であり、民間団体はその執行主管者である都庁行政警察ユニットを支援しまた信頼して委ね、決して自らそれを行なうという不法行為に手を染めてはならない、と都知事は念を押している。


「おもらい乞食季節労働者」(2010年8月11・12日)
ラマダン月になると、都内の主要交差点や歩道橋・モスク・駅やターミナル・商店街から住宅地区にいたるまでありとあらゆる場所におもらい乞食の姿を目にするようになる。かれらはこのシーズンのために地方から上京してくる季節労働者であり、かれらは期間中コーディネータの差配に従って、都内の割り当てられた場所に送られておもらい仕事を行ない、夜になると迎えが来て宿舎に連れて行かれて翌日に備えるという労働活動を行う。都内の秩序安寧を維持する義務を負っている都庁は、かれらおもらい乞食季節労働者を排除しなければならない。
そのためにはおもらい出稼ぎ者の産地をまず封じること、という戦略を都庁が立てたのも不思議はない。ジャカルタにやってくるおもらい出稼ぎ者の主要な産地は西ジャワと中部ジャワの北部海岸地方ならびにジャカルタを取り巻く西ジャカルタとバンテンの諸県。全国地方自治体はパートナーフォーラムのもとに横のつながりを持っており、その関係を利用して都庁はこれまでも該当する県に対して協力を求めてきたが、その対象になった地方自治体が行なってきたのは垂れ幕や看板での住民に対する呼びかけや行政ルートを通じての住民への社会告知などであり、それで上がった効果はどれほどだったのだろうか?今年も都庁は各対象県への要請とより効果を挙げる方策の相談を行なうことにしている。しかしそれだけの他力本願で済むはずもなく、都庁は例年行なっているおもらい乞食狩りを今年も実施する方針だ。
都内でのおもらい乞食労働に欠かせないのが、大人の女性乞食が抱きかかえている赤児と少年少女たち。幼い子供が大好きなインドネシア人はそんな情景に憐憫の情をかきたてられ、財布の紐もゆるむという寸法だ。ところが抱かれてスヤスヤ眠っている赤児はその女乞食自身の子供ではなく他人の赤ん坊であり、おまけに泣いたりぐずったりしないように睡眠薬を与えられているから、女乞食の一日の労働時間中はスヤスヤと眠っている。つまり赤児はそんな危険を与えられて小道具に使われているということであり、赤児を貸す実の親もそれを承知で赤児の貸し賃を手に入れている。更には少年少女たち。この子供たちも激しい日射の交差点で停車中の車の間を歩き回って金をねだることを子供たちの衣食住を世話している大人から命じられる。実の親の場合もあるだろうが、そうでないケースも少なくない。子供たちがそうやって得たなにがしかの小銭はおとなが取り上げてしまう。そこにあるのは現代の奴隷制度であり、そんな非人道的ビジネスをオーガナイズしているのが乞食シンジケートだ。乞食シンジケートはコーディネータと呼ばれる現場実行責任者を通して、そんな悪徳ビジネスを行なっている。
都庁行政警察ユニットはそんな行為を都内から排除するために首都警察と合同で今年も取締りを実施することにしている。首都警察は乞食シンジケートを追い詰める方向、行政警察はシンジケートに使われておもらい行為を行なっている地方からの上京者を保護するという方向だ。おもらい乞食労働を強制されている少年少女たちは保護して社会更生院に収容する。5歳未満の幼年者は東ジャカルタ市チェゲルの幼年者保護院、5歳から12歳の少年少女たちは東ジャカルタ市クレンデルとドゥレンサウィッの児童保護院、12歳から18歳の未成年者は西ジャカルタ市チュンカレンと東ジャカルタ市ドゥレンサウィッのみ青年保護院に送られる。保護された少年少女たちは保健局が健康診断を行なうが、保健衛生のきわめて劣悪な日々の暮らしと濃い大気汚染の中での活動で赤児から未成年の子供までほとんどすべてが何らかの疾患を持っている。同時に弱いかれら少年少女たちが荒くれた大人の性的玩具に使われていることも常識になっており、子供たちは心身ともに深い傷を負っている。
しかし都庁のおもらい乞食取締りはそれなりに成果をあげている。2008年の取締りで都庁は7千人近いおもらい乞食季節労働者を捕らえて強制的に帰省させた。その見せしめ効果はかなりあったようで、2009年の取締りで都庁が捕えた人数は1,465人に激減している。しかしあらゆる違反行為に共通して言えるのは、少しでも取締りの手を緩めるとすぐに大勢がその機に乗じてくるのが実情で、同じことは交通違反取締りにもそっくり当てはまっている。
シンジケートが構築した枠の中に入っておもらい乞食をする季節労働者とは別の勢力もラマダンの時期にジャカルタへ流れ込んでくる。荷車族と呼ばれるかれらは妻子を連れ、荷車を引いて近隣の諸県からジャカルタへやってくる。その数は1千人をはるかに超えているとのこと。かれら荷車族は廃品回収がメインの仕事だが、連れてきた妻子は荷車で寝泊りさせ、暇な時間にはおもらい乞食をさせている。かれらはシンジケートに使われず、個人でそんな稼ぎを行なっている。


「金使いが荒くなるプアサ〜ルバラン期」(2010年8月16日)
2010年8月10日の夜から始まったラマダン月を目前に控えた8月4〜6日、コンパス紙R&Dは全国主要都市住民789人にリサーチをかけた。
ラマダンからイドゥルフィトリ大祭にかけてのインドネシアムスリムにとってきわめて重要なシーズンに大半のムスリムはライフスタイルが大きく変化する。年に一度のこの特別な機会にかれらは、コンパス紙によれば、普段よりも浪費的になる。このシーズンに生活基幹物資はすべて値上がりするが、その一方で金に糸目をつけない行動パターンが強さを増す、という裏腹の関係がその両者の間に築かれるようだ。元々から「金はイージーカムイージーゴー」という金銭感覚を持っている社会だから金を出し惜しみする姿勢は世の中で毛嫌いされているのだが、かと言って潤沢に金を持っていないひとはそれなりに支出を計画的に調整しなければ生活は成り立たない。ところがラマダン〜イドゥルフィトリのシーズンになるとそれすら崩れてしまうということらしい。
もちろんイドゥルフィトリの前にルバランボーナスが支給されるという増収の機会はあるにせよ、一部ムスリム層にとってはイドゥルフィトリ大祭に備えての一年間の資金準備も欠かせないものになっている。加えて、それで足りないとなれば借金を・・・・ということになるのはどこの世界でも変わりない。
コンパス紙R&Dの今回のリサーチはムスリム層に限定されておらず、非ムスリムにとってもラマダン〜イドゥルフィトリの狂乱物価シーズンに対する資金需要の内情を伺い知ることができる。
質問1) ラマダン〜イドゥルフィトリシーズンの資金手当を特別に行なっていますか?
回答) ムスリム: はい 41.1%、 いいえ 58.4%、 不明・無回答 0.5%
非ムスリム: はい28.7%、 いいえ 70.2%、 不明・無回答 1.2%
質問2) これまでに用意した資金以上の支出になって借金をしたことがありますか?
回答) ムスリム: はい 19.1%、 いいえ 79.3%、 不明・無回答 1.6%
非ムスリム: はい 12.9%、 いいえ 83.0%、 不明・無回答 4.1%


「年間最大のセールスシーズンは今」(2010年8月26日)
プアサ〜ルバランシーズンにインドネシア人は糖分をたくさん摂取し、揚げ物を好んで食べている、とニールセンインドネシアが指摘した。この時期に売上が急増する商品はビスケット・シロップ・食用油・練乳・バター・ビタミン・清涼飲料水・果実・食肉。ニールセンは今年のシーズン売上高は2009年度実績の18兆ルピアから12%増加するだろうと予測している。ニールセンのこの調査は飲食品・ボディケア製品・その他家庭用消費物資など64品目を対称にしたもの。
一方繊維衣料品製造業界は2010年のこのシーズンで売上が平常月より10%上昇して4.5兆ルピアに達するものと見ている。家電品業界も10%上昇して2,000億ルピア、飲食品は20〜25%アップして12.5兆ルピアというのが主要業界の予想。


「おもらい乞食を操るシンジケート」(2010年8月27日)
都庁は2010年ラマダン〜イドゥルフィトリシーズンに都内諸地区で乞食・プガメン(pengamen)・浮浪者・路上物売りなどを行なっている社会福祉障害者の整理を7月から開始し、8月前半までの間に1,507人保護した。整理作戦を行ったのは都庁行政警察ユニットで、作戦にはインドネシア児童保護コミッションが協働して障害者たちが連れている赤児や子供に対する対応を実施した。子供を巻き込むことは悪行であると諭す、大人の障害者たちに対する説得がその対応のメインをなしている。
保護された1,507人のうち90%は西ジャワや中部ジャワなど他州からの出稼ぎ者で、都内住民は10%しかいない。保護された者たちは都庁社会局管理下の保護施設に一旦収容されてから、それぞれの出身地に送還される。中部ジャワ出身者の多くはトゥガル(Tegal)・プマラン(Pemalang)・プルブス(Brebes)・スマラン(Semarang)・プカロガン(Pekalongan)など、西ジャワ出身者はチレボン(Cirebon)・インドラマユ(Indramayu)・スバン(Subang)・ボゴール(Bogor)・カラワン(Karawang)・ブカシ(Bekasi)・チアンジュル(Cianjur)・スカブミ(Sukabumi)などで、ほとんどが故郷でも浮浪者や乞食を行なっていた。都内住民151人も施設に収容されて職業訓練が与えられる。
都内にこの時期やってきて社会福祉障害行動を取る他州からの出稼ぎ者は、自覚の有無に関わらず、シンジケート組織に手足として使われていて、上京してきたかれらを収容して宿舎を手配し、また毎日持ち場を決めてそこへ送り迎えする現場コーディネータの差配を受ける。コーディネータは配下の者からひとりあたり一日3万から28万ルピアを徴収してシンジケートの上層部に納めている。
出稼ぎ者たちが上京してくるのは地元でリクルートされたためだが、そのリクルートを行なう口入屋が各地におり、シンジケートのエージェントが声をかけた口入屋が浮浪者乞食を集めてくる。
都庁は首都警察と協力してこのシンジケート撲滅を目指しており、社会福祉障害者を捕えて故郷に送還するのはシンジケートに打撃を与えることになるため、ファウジ・ボウォ都知事はその励行を担当部門に叱咤激励するとともに、都民にはかれらに金を恵まないよう呼びかけている。


「断食は家でテレビを見ながら」(2010年8月28日)
インドネシアでラマダン月の断食を行なうムスリムはテレビの前で時を過ごす傾向が高いことをニールセンインドネシアが指摘した。2009年データによれば、サウルの時間帯にテレビを見ているひとは540万人おり、これは平常月の9倍増になっている。2010年のラマダン月では、深夜から早朝にかけてのテレビ視聴者は更に15%増えて650万人に達するだろうとニールセンは予想している。それはこの時期学校休みになる子供たちがテレビの前に陣取るからで、130万人の子供たちがテレビ視聴時間を増加させるだろうと予想されており、更に15歳以上の男子も240万人、女子は280万人がテレビ視聴人口の増大に大きく貢献するとの見込みをニールセンは立てている。
シーズンがら、テレビ局は宗教関連番組を増やし、視聴者も世の中の傾向に合わせて宗教的な啓蒙番組を見る姿勢を強める。過去のデータでは350万人がテレビの人気ウスタズが出演する説教をはじめ、いろいろな宗教的な内容の番組を見るが、ルバランの日を超えると宗教的番組の視聴者数は急降下している。
テレビ局は午前2時から4時59分までのサウルの時間帯にテレビを見る視聴者の増加に応じて宗教番組やお笑い・歌謡などのバラエティ番組を用意する。2009年にニールセンが十大都市で行なったラマダン月テレビ視聴傾向データを見ると、平常月と比較した時間帯別の増減傾向は次のようになっている。
時間帯 : 増減
05.00−15.59 : +4%
16.00−18.59 : +18%
19.00−20.59 : −7%
21.00−01.59 : +5%
02.00−04.59 : +779%
平常月では大半の視聴者がテレビを点けるのは06.00からであり、視聴率がもっとも高まるプライムタイムは18.00−22.59となっている。上のリストでラマダン月の19.00−20.59に減少が起こっているのはタラウィの時間にバッティングしているためだろうとニールセンは説明している。


「ラマダン月のテレビ広告は盛況」(2010年8月30日)
広告宣伝費支出は年々増加を続けており、特にラマダン〜イドゥルフィトリシーズンは対前年比で20%増しになっていることをニールセンインドネシアが報告した。とりわけ2010年はラマダン月の中に独立記念日が含まれており、昨年並みの20%アップは動かしがたいとのこと。
2006年以降の実績高は次の通り。
年 : 上半期 / 下半期 = 年間合計 (数字は兆ルピア)
2006 : 13.6 / 16.4 = 30.0
2007 : 15.8 / 19.3 = 35.1
2008 : 19.6 / 22.2 = 41.7
2009 : 22.1 / 26.5 = 48.6
2010 : 28.5 / 31.5 = 60.0
(2009年までは実績で、2010年は推測)
2009年のラマダン〜イドゥルフィトリシーズン広告宣伝費支出はTVメディアが最大ポーションを獲得し、宣伝商品は通信関連が最大シェアを占めた。プアサの時期はテレビ視聴者が15%増加し、2010年は650万人になるとニールセンは予想している。
インドネシア広告会社ユニオン広告問題審議会は、外国製メディア広告を規制するよう政府に求めている。国内広告宣伝市場で外国製広告が優勢な現状から国産広告制作者を保護するようにというのがその趣旨で、国内プロダクションハウスは既に高品質の広告を制作する能力を持っているので、外国産に頼る必要はもはやない、というのがその主張。全国商工会議所も国内広宣業界に賛同する発言を行なっている。
現実に政府情報通信省はメディア広告の国産化を定める大臣規則を制定しており、その規則は既に効力を発しているが現場での執行はまだ行なわれていない。


「空港で特別警戒態勢」(2010年9月1日)
スカルノハッタ空港では、ルバラン帰省とその逆流シーズンとなるイドゥルフィトリ祝祭日の前後10日間、空港警察が450人の警察官を動員して特別警戒にあたる。二輪車盗難・催眠術強盗・車上破り・ATM破りなどの犯罪が空港内で発生するのを取り締まるのが警察の主な任務。それに呼応してスカルノハッタ空港運営会社PTアンカサプラ?も、空港内の保安と秩序維持のために警備員850人を配備する。空港内には391ヶ所に監視カメラが設置されており、空港にやってきた人間ひとりひとりの行動や入ってきた自動車の動きがそれでモニターされる。
2010年9月3日から16日までの間の登場客は一日平均13万7千人にのぼり、9月7日の帰省ピークには164,822人、逆流ピークの9月16日は162,543人がスカルノハッタ空港を通過するだろうとアンカサプラ?は予測している。


「ルバナが売れるラマダン月」(2010年9月2日)
ラマダン月に入ってルバナの需要が急騰しており、生産地中部ジャワ州バニュマス県クドゥンバンテン郡クニトゥン村の生産者はうれしい悲鳴をあげている。クニトゥン村の生産者のひとりホムシアトゥン38歳は、ラマダン月に入って以来オーダーが30%増えたと語る。
「ふだんは一日3〜4セットの注文だけど、いまは一日5〜6セットに増えてる。ルバナのセットはグンジュリン4個、ブドッ1個、タンボリン1個で、全部そろえるには3〜5日かかる。注文が増えるのはクルアン読誦グループの活動が盛んになるからじゃないかしら。」
クニトゥン村で生産されているルバナのセットは胴の素材に使われる樹種によって価格が違い、ソノクリンだとセットで90〜140万ルピア、マンゴの木だと75万ルピアとのこと。
ルバナというのはガンブス・カシダ・ハドロなど中東系の音楽や踊りの伴奏に使われる打楽器で、片面だけ皮が張られており、中東で使われているタンブールのような奏法が用いられる。マレーシアやブルネイでもルバナは地元芸能によく用いられている。


「ラマダン月ウムロ巡礼者が激減」(2010年9月3日)
ムスリムの義務のひとつであるメッカ巡礼は一年に一度、定められた巡歴日程に従って行なわれるものをハジと呼び、それ以外の日程で行なわれるものをウムロと呼ぶ。インドネシアでハジは大ハジ、ウムロは小ハジと呼ばれ、ムスリムの多くはそのふたつに異なる格付けを与えている。ラマダン月はインドネシアのムスリムにとって大いに信仰心の高まる月であり、その機に乗じてウムロを行なえば自分の宗教性篤信性はいやが上にも高まるとだれしも考えるようだ。その考えはやはり世界中のムスリムにも共通しているらしく、メッカ周辺ではラマダン月のウムロ巡歴者が激増するとのこと。
昨年のラマダン月ウムロ巡歴者は3万5千人にのぼったというのに、今年は2万人どまりになりそうだ、とハジウムロオーガナイザー会会長が表明した。「この大幅減は6月の学年末休みに大勢がウムロに出たからだ。他の月だと5星級ホテルに泊まって、おまけにエジプト・トルコ・パレスティナのアクサモスクあるいはヨーロッパなどがパッケージにされてひとり1千7百ドル程度の料金で行ける。ところがラマダン月には2千5百ドル程度に値上がりする。イドゥルフィトリ前になるとさらにひとり5〜6千ドルまでアップする。トルコやエジプトその他中東諸国からのラマダン月ウムロはたいへんな盛況になり、ホテルの客室数が不足するようになって料金は急上昇する。そんな要因があって今年のインドネシアからのラマダン月ウムロはかなり減少しそうだ。マレーシアも類似の傾向にある。しかしインドネシアからのウムロ巡歴者数は累計で見ると2009年から大幅に増えている。今年4月から9月までのサウジアラビア政府のウムロビザ発行数は18万人に達しており、2009年同期の11万から激増している。ところで今年のハジ定員は21万1千人だったが1万人増やされた。特別ハジ定員も17,000人から23,500人に増やされている。」
今年のハジは2010年10月13日から開始される予定。


「ブカプアサはだれとどこで?」(2010年9月4日)
ラマダン月第一週は家族でブカプアサを行なうが二週目に入ると同僚や友人と行なうひとが増える。しかしコンパス紙R&Dが2010年8月19〜20日に行った調査では、ふたりにひとりが「自宅で家族と共に〜」を続けていた。
ブカプアサの食べ物は昔ながらのイモやバナナやカボチャなどをココナツミルクと黒砂糖で甘く煮たkolakを31.7%のひとが食べており、人気ナンバーワンに位置している。プアサの目的については、筆頭が自己のクオリティ向上で23.7%、次いで信仰をより深めるが17.8%、三位は神の褒美を得ることが10.7%だった。
質問1)家族以外だと、あなたはだれとブカプアサを行ないますか?
回答: ない・常に家族と 48.2%
     隣近所 14.5%
     会社の同僚 12.5%
     仕事の関係者 10.7%
     学友 9.1%
     恋人 4.2%
     その他 0.8%
質問2)自宅以外だと、あなたがだれかとブカプアサを行なうお気に入りの場所はどこですか?
回答: ない・常に自宅 36.0%
     レストラン・食堂 24.4%
     カキリマワルン 15.3%
     フードコート・モールのレスト 12.1%
     モスク・ムソラ 5.2%
     親戚・友人の家 4.8%
     ホテル・カフェ 2.2%


「アルコール飲料枯れがまた」(2010年9月9・10日)
アルコール飲料は依然として巷から姿を消したままのようだ。PTサリナ一社の独占と化していたアルコール飲料輸入を政府商業省は、アルコール飲料調達・流通・販売・監視・統制に関する2009年大臣規則第43号で民間業者に開放した。2010年4月、これまでサリナのアルコール飲料流通機構に関わっていた民間卸会社8社にアルコール飲料商業事業許可(SIUP−MB)が交付され、アルコール飲料登録輸入者資格を持つ民間会社がはじめて誕生した。8社はさっそく第一回の輸入買付を行い、A類(アルコール濃度5%まで)、B類(アルコール濃度20%まで)、C類(アルコール濃度55%まで)のさまざまな銘柄を船積させて、それらを満載したコンテナ25ボックスが無事にタンジュンプリウッ港に到着したのだが、そのあとで問題が起こったのである。
飲食品・化粧品・薬品等の輸入は食品薬品監督庁が承認したものでなければならず、そのため輸入通関時に輸入承認証(Surat Keterangan Impor)が必要とされる。さらにその輸入品の国内流通が承認されたことを証明するコード番号を食品薬品監督庁は交付する。輸入飲食品の場合はMLという記号が頭につくナンバーがそれである。民間会社が輸入したアルコール飲料の輸入通関で税関がそれらの条件を要求したのだが、これまでサリナが行なっていた輸入では一度も要求されなかったそれらの輸入通関条件が適用されたことに対して民間輸入会社は不満を訴えた。
「1997年から登録制度が開始されたが、これまで国有事業体が行なっていたアルコール飲料輸入に際してそれらの条件が適用されたことはない。食品薬品監督庁は民間が輸入を始めた途端にその制度の適用を始めたのはどういうことか?われわれはアルコール飲料がその適用外だと思っていたから、その条件を満たす準備は何も行なっていない。税関に輸入通関を差し止められてもう4ヶ月近く経っており、輸入者側の損失は1千億ルピアにのぼる。いつまでもこうして差し止めが続けられれば、国庫に入るべきチュカイやその他諸税も納税されず、国益が損なわれる。」輸入飲料品輸入者流通者協会会長はそう不満を表明している。
商業省がこの問題に仲裁の手を差し伸べて輸入者・税関・食品薬品監督庁間の協議が行われ、コンテナ港内保管によってデマレッジ等の費用負担が重いものになっているためその対策としてB類C類に限って輸入者が自社倉庫で保管することが認められたが、物品は封印が施され、MLコードが取得されない限り市場への出荷は禁止される。MLコード交付は5日間で処理すると食品薬品監督庁は約束しているものの、生産者からの製造工程に関する資料などが必要とされており、輸入飲料品輸入者流通者協会会長は遅くとも10月までに取得手続を終えたいと目標を定めている。MLコードの申請が必要なものは155銘柄あり、資料をそろえて申請を出すのは大仕事のようだ。ともあれ、今年10月ごろまで合法輸入されたアルコール飲料は市場に供給されないためそれまでに在庫が切れたものは市場から姿を消すことになる。非合法品がその穴を埋めるのは間違いないことかもしれないのだが・・・・。


「ルバランは新らしい服で」(2010年9月7日)
中国には正月に新しい服を着て新たな年の門出を祝うという風習が昔からあった。その風習が近隣諸国に伝えられて日本でも韓国でもベトナムでも、そして東南アジア一円でも同じような風習が行なわれた。かつて中国に朝貢した国はたいていそうだったようだ。
日本でも昔は多くの家庭で、元日に新しい服を着て家族でお祝いをしたあと初詣、といったプログラムが行なわれていた。日本では旧正月から新正月にプログラムが丸ごと移行したが、しかし世界中の中華人は伝統的な中国正月をいまだに最大の祝祭日として維持している。
さて、ルバランは新年でないのだが、回教正月という別名が与えられているように中国正月との混交でそんな風習が取り入れられたのかというとそうでもなく、イスラムでは断食明けの祝祭を祝うために新しいあるいは一番上等の衣服をその日着て朝の礼拝に行く風習になっていた。過ぎ去った一年間の罪障消滅を断食することで行い、清められた新しい人間になってイドゥルフィトリの日に臨むということだから、新しい衣服を着るというのはコンセプト的に合致している。反対にイスラム歴の正月に当たるムハラム月ついたちは、派手なお祝いをする日ではない。 しかし新しい衣服をどう解釈したのか、消費志向のインドネシア人の中には装身具・履物・家財道具に至るまで新しいものに取り替えるという考えに取り付かれた人間も少なくない。ともあれ現代インドネシアのムスリムたちはjiwa baru baju baruの風習を続けているだろうか、という疑問をコンパス紙R&Dが調査した。2010年8月25〜26日に全国の808人に電話インタビュー調査した結果では、ルバランの日に身の周りのもの一切を新しくして祝う(もちろん財布の中身次第であるにしても)ということを行なっているかどうかに対する回答は次のようになった。
はい 51.5%、いいえ 33.5%、 ルバランを祝わない 12.7%、 不明・無回答 2.3%
非ムスリムが12.7%いたというのは、全国データに対比してプロポーショナルであると言えるだろう。
次に出された質問は、「そのためにどれだけ支出しますか?」という問いで、この質問は412人に投げかけられた。
25万ルピア未満 19.7%
25万〜50万ルピア 40.0%
50万〜100万ルピア 23.1%
100万〜200万ルピア 10.0%
200万〜500万ルピア 5.3%
500万ルピア超 1.9%
身の周り一切を新品に換えるキャパシティのあるひとはやはり少数派のようだ。ところでコンパス紙R&Dのサーベイはたいていジャカルタ・ジョクジャ・スラバヤ・メダン・パダン・ポンティアナッ・バンジャルマシン・マカッサル・マナド・ジャヤプラの10都市最新版電話帳からランダム抽出した番号の17歳以上の相手に対する電話インタビューの形で行なわれている。


「海外出稼ぎ者のルバラン帰省」(2010年9月9日)
イドゥルフィトリに向けて海外出稼ぎ者の本国送金は今年20兆ルピアを超えるだろう、と労働相が語った。2009年の海外出稼ぎ者年間送金額は62.89兆ルピアで、ひとりひと月750万ルピアが故郷に送金されていたことになる。しかし今年はルバランが近付いている昨今、海外出稼ぎ者の故郷への送金はひとり1千万から1千5百万ルピアのレベルにのぼっており、まるでみんなが送金額の競争をしているみたいだ、と大臣は述べている。
ただしそれらの金額は銀行送金されたものだけで、帰省する友人知人に預けて故郷にもたらされる金額は詳細がつかめないものの決して小さい金額ではない。海外出稼ぎ者を多く送り出している地方は毎月送られてくる外貨で潤う。たとえばクディリ県は2010年第2四半期に4,476億ルピアが流れ込んできた。クドゥス県は今年7月に1千億ルピア、スンバワ県は2千億ルピアがもたらされている。労働相は海外出稼ぎ者とその家族に対し、送金されてくる収入はできるだけビジネス資金のような生産的な使い方をし、消費的な支出はなるべく抑えるようにせよ、と呼びかけている。
もちろんイドゥルフィトリのために休暇を取って海外から帰省する出稼ぎ者も多く、自分で現金を持ち帰る者も少なくない。だから帰省する出稼ぎ者は詐欺や搾取のターゲットに昔からされてきた。ともあれ、2009年8月22日から9月22日までの間にスカルノハッタ空港の出稼ぎ者入国ゲートを通った者は27,725人おり、今年もラマダン月帰国出稼ぎ者は同じくらいの人数になる見込み。今年のラマダン月最初の8日間の入国者数は6千6百人で中東から5,507人、アジア太平洋から1,030人その他70人という内訳。今年のルバラン以前の入国者は平均8百から1千人だからまだ急騰は起こっていない。とはいえ、今年の海外出稼ぎ者ルバラン帰省は全国的に50万人にのぼるだろう、と大臣は予想している。


「金を借りるのだけが質屋の利用方法じゃない」(2010年9月9日)
ルバランの近付いている昨今、質公社北ジャカルタ支店を訪れる利用客は増えている。何しろ一年間貯めた金を吐き出させるこのシーズンとあっては、誰もが金に飢えている。おかげで犯罪はうなぎのぼり。大半のムスリムにとって厳粛な宗教的雰囲気に浸ろうとするこの時期であるとはいえ、多様性から免れることはできないようだ。
さて質公社では、利用客が持ち込んできた品物を査定して貸出し上限金額を決める。ところが利用客の中に、その上限金額を目一杯借りず、ほんのわずかな金額を手にして帰っていく客の姿が増えている。
「あゝ、あれはルバラン帰省の間自宅に金目の品を置いておくと危ないので、安全な保管場所を求めてやってきたひとだ。ルバラン期間中、うちは警備員を普段の6人から10人に増やして預かった品物の保安をはかることにしている。オートバイを安全な保管場所に置いておこうとするひとは毎日二三人いるね。貴金属装身具やオートバイなどの貴重品はどんどん質入してくれたらいい。」質公社北ジャカルタ支店その他事業課マネージャーはその奇妙な現象をそう説明した。 一般庶民にとって質屋はセーフティデポジットの機能も持っているようだ。


「ここにも消え残っている植民地構造」(2010年9月27・28日)
4百社以上の非合法ハジ・ウムロツアー催行者がビジネスを行なっている、とハジ・ウムロオーガナイザー会事務局長が発言した。その数は公認されているオーガナイザーとほぼ匹敵している由。
ハジはムスリムに義務付けられた勤行でそれを行なう月日が定められたもの、ウムロはハジと同じ内容の勤行だがハジの期間以外に行なわれるもの。ハジ・ウムロの事業ライセンスを得るためにはまず旅行代理店事業許可を得なければならない。その条件は事務所とファックス機を持っていること、そして地元監督官庁に課金を納めること。その上でハジあるいはウムロの催行許可を求めることになるが、ウムロの場合は1億5千万ルピア、ハジの場合は3億ルピアの保証金を宗教省が指定する銀行に預託しなければならない。
非合法オーガナイザーの多くはハジあるいはウムロの催行許可取得負担が重過ぎるためにその申請をせず、偶発的あるいは季節的にハジやウムロの勤行ツアーを催行している旅行代理店業者だそうで、非合法という言葉がもたらす「いかがわしいモグリ業者」というイメージからは少々かけ離れている。インドネシアで頻繁に用いられている非合法という言葉はたいていそんなもので、他の国で言われているニュアンスと異なっていることをわれわれは理解しておくべきだろう。所詮、非合法という言葉は法規に違背しているという意味でしかなく、そこにつきまとっている倫理的なニュアンスには溺れないほうがよい。なにしろインドネシアは国民総犯罪者化社会の一典型であるのだから。
非合法オーガナイザーも、やっている仕事は合法オーガナイザーとほとんど違わない。ただコスト的な負担の軽重によって非合法オーガナイザーは損益分岐点が低いため、価格競争を行なえば合法オーガナイザーが勝てる見込みはない。
ただ旅行先でトラブルが発生したときに、非合法オーガナイザーはツーリストたちを放り出して姿を消してしまうことが多く、だから無責任な非合法オーガナイザーというラベルが貼られているが、そんなトラブルは必ず政府が乗り出してくる国際問題となるため、その矢面に立とうとする非合法者がいるはずもないという原理に即したものでしかなく、必ずしも責任感の量を比較するのも当たっていないような気がする。
そのようなトラブルが発生すると政府はオーガナイザーの手落ちとして処罰を下すのだが、非合法オーガナイザーは政府が相手を把握しておらず、また非合法者もさっさと行方をくらますために政府はそのトラブル責任に関する処罰の下しようがない。このようなあり方も正直者がバカを見る世の中につながっている。 非合法オーガナイザーは南カリマンタン・東カリマンタン・南スラウェシなどの地方部に多く、政府の統制の手もあまり届いていない。首都圏やバンドンなどの近場ではあまりいないが、皆無でもない、と事務局長は語っている。


「暴力シーンだらけのテレビ放送」(2010年9月28日)
インドネシアウラマ評議会は毎年ラマダン月に全国放送テレビ局が一日中流しているテレビ番組のクオリティチェックを行なっている。そのチェックは言うまでもなく、ラマダンという神聖な月にムスリムとして視聴することが推奨されるもの、という宗教倫理的見地からのもの。
ウラマ評議会ラマダン月テレビ監視チームが行なったそのチェックによれば、今年のテレビ放送は有害シーンがたくさん見られたとのこと。「最近の4年間、テレビ放送は物理的心理的暴力に色濃く覆われている。そのような内容をテレビ放送業界はもっと教育的なものに変えていかなければならない。子供たちも大勢がテレビを見ているのだから。ニュースの中で物理的な暴力衝突シーンが放映されているが、それは将来にわたって暴力連鎖を生むということをテレビ界はもっとよく考えなければならない。政府はテレビ放送界の監督をもっと厳しく行なう必要がある。これはラマダン月にだけ限定される話ではない。」
過去4年間のラマダン月にウラマ評議会が記録した有害シーンの統計データは次のようになっている。
内容: 2007年/2008年/2009年/2010年(数字はシーン件数)
物理的暴力: 143/476/209/499
心理的暴力: 116/190/141/487
性的暴力: 65/96/69/44
神秘志向・ホラー: 16/40/6/222
テレビ局数: 9/11/8/11
教育的見地から見たラマダン月の番組制作は国民を教育するということからまだまだ遠い状況にあり、政府と放送コミッションはラマダン月だけでなく年間を通して放送内容を向上させるようもっと関心を払うように、というのがウラマ評議会のコメント。
それに関連してインドネシア放送コミッション長官は、コミッションの観察内容も似たようなものだった、と次のようにコメントした。「テレビ放送界は放送内容の質的向上意欲を持っているものの、ラマダン月という特別のモメンタムを真剣に利用することがまだうまくできていない。放送倫理規定に抵触した内容の番組には通常通り警告書が与えられる。」


「ハジ特需で村はゴールドラッシュさながら」(2010年10月20日)
ハジ巡礼参加者が身につける名札代わりのモネル製ブレスレット生産オーダーがジュパラの業界に干天の慈雨をもたらしている。2010年10月11日からハジ巡礼の出発が始まったが、ジャカルタ・ソロ・スラバヤ・アチェ・パレンバン・メダンなど14の出発地から合計224,500個のブレスレット生産オーダーが入っていることを中部ジャワ州ジュパラ県カリニャマタン郡バカラン村のモネル生産者が明らかにした。モネルというのはニッケルと銅の合金。その大量注文をさばくためにバカラン村のモネル生産者150軒は総出で作業をこなしている。150の生産者は成型・カット・転写・塗装・仕上げの各工程に分かれ、加えてハジ参加者の名前を入れるために名入れ作業者90人が14出発地に出張って作業を行なっている。おかげで各生産者が使っている職人たちの収入が大幅に増加しており、日給者は2万5千から6万ルピアの手取り増、数量請負い作業者の場合で一日3万から15万ルピアの収入アップ。
そのためバカラン村の金回りは急増し、平常時の週当たり300万ルピアはいまや5千万ルピアという好景気に沸き立っていて、この景気は5〜6週間続くだろうと村役のひとりは語っている。生産者のひとりダフィッ24歳は、去年注文をもらったのはほんの一部の生産者だけだったが、今年は村中総出だ、と言う。「普段だと週30万ルピアの収入が最高だった。いまはそれが50〜60万ルピアに跳ね上がっている。」
メッカ巡礼という年に一度の催しで、しかもこの村にやってくるか来ないかという特需景気に、生産者たちは大忙しの態。


「今年のルバラン経済は2010年から12%アップ」(2011年8月5日)
一年で最大の経済ハイシーズンであるラマダン〜イドゥルフィトリの季節がまたやってきた。インドネシア銀行は国民の現金需要に応えるべく今年の準備高を61.36兆ルピアと決め、現金配給を進めている。昨年のラマダン〜イドゥルフィトリ期の準備高は54.78兆ルピアだったから、12%という伸び率はインフレ率を大きくしのぐものであり、国民が豊かさを実感できる大祭が実現するにちがいない。
インドネシア銀行が用意する現金は、紙幣が61.24兆ルピアで硬貨は1,212億ルピア。その内訳は10万ルピアと5万ルピアの高額紙幣が総額で54.26兆ルピア、5万ルピアより小さい小額紙幣と硬貨は総額7.09兆ルピアとのこと。
地域別分配先でトップのジャカルタは17.87兆ルピアで、紙幣が17.8兆硬貨は589億ルピアという内訳。その配給は7月に開始されて8月中に終える予定になっている。
2011年7月1日の中銀ルピア通貨ストック量は高額紙幣114.45兆ルピア小額紙幣と硬貨17.6兆ルピアの合計132.06兆ルピアで、8月1日の予測は123.39兆ルピア。9月には大量に市場に放出された残りということで82.48兆ルピアに縮小するというのが当面の通貨供給計画。
一方、市中銀行の対応も利用者への出金量が大幅に膨れ上がることを見越し、マンディリ銀行はATMに平常月の3割増し、BCA銀行は4割増しといった現金ストックの増加を計画している。たとえばマンディリ銀行は月間のATM経由出金高が50兆ルピアあるため、ラマダン〜イドゥルフィトリ期には65兆ルピアの出金高を予定するという対応をとる。BCA銀行はATMでの出金高が平常月は6.5兆ルピアなので、それを9兆ルピアに引き上げる計画になっている。
ところで、経済ハイシーズンにはやはり贋札が出回ることが予想されるため、インドネシア銀行は国民に一層の警戒を呼びかける方針。2011年1〜5月間に全国で発見された贋札は57,380枚あり、そのうち22,426枚は東ジャワ州で発見されている。5万7千枚というのは紙幣100万枚あたり6枚という計算になり、これは2010年の100万枚あたり7枚から減少している。額面10万ルピア紙幣が全体の58%を占め、5万ルピア紙幣が35%を占めていることから、小額紙幣がきわめて少ないという特徴がわかる。両替はできるだけ銀行を利用するように、とインドネシア銀行は国民に呼びかけている。


「ルバランボーナス支給は8月23日までに」(2011年8月12日)
ルバランボーナス別名ハリラヤボーナスは、国民の大多数を占めるムスリムにとって最も重要な大祭をつつがなく送るための基盤になるものであることから、政府は雇用主にその支給を義務付け、確実にそれが遂行されるよう厳しい監視を行っている。しかし実態がいちばんはっきり分かるのは、もらえるべきボーナスをまったく、あるいは全額もらえなかった勤労者に訴えさせるのがベストであるため、政府は今年もそれに関する駆け込み訴えを受け付ける場としての窓口を設けることにした。
ムハイミン・イスカンダル労働トランスミグラシ大臣はすべての事業主に対し、従業員へのルバランボーナスはルバランの7日前までに支給しなければならないとリマインドした。「遅滞なくルバランボーナスが支給されれば、労働者とその家族がイドゥルフィトリ大祭を祝うための準備をするのを援助することになる。支給が正しく行われれば、労働者たちは安心して業務に励むことができるので、生産性も向上する。ルバラン準備期間からルバラン当日にかけて労働者は支出の増加に直面し、通常の賃金収入だけではまかなえず、ルバランボーナスがその不足分を補うことになる。だからどの家庭もルバランボーナスを心待ちにしている。ついてはルバランボーナス支給に労使間で考えの不一致があったり、雇用主が決まりを守らないようなことがあれば、訴え窓口に届け出るように。」労働大臣はそう表明している。


「インドネシアをムスリムファッションセンターに」(2011年8月25日)
2011年8月11日から9月11日まで西ジャカルタ市セントラルパークモールでインドネシアイスラミックファッションフェアが開催されている。このフェアではムスリマビューティコンテストも行われて、女体をファッショナブルな衣装で包み込んだ知的なムスリマの美が競われる。detik.comでコンテスト出場者の姿を見ることもできる。
世界最大のムスリム人口を擁するインドネシアで、ムスリム衣装ビジネスはいまや年間1.8兆ルピアの規模。もちろん衣料品というのはファッションと表裏一体の関係にあり、ムスリム衣装デザイナーたちが作り出すファッションは優れたものが多い。「表現力に富み、文化の味わい高く、そしてインドネシアの生活活力が色濃く滲み出ているこのファッションは諸外国よりはるかに優れたものであり、今後優良輸出産品に育ってもらいたいもののひとつだ」と経済統括相商工業担当デピュティは語っている。
インドネシアイスラミックファッションコンソーシアムはこれからのムスリム衣装輸出戦略について、タシッマラヤ(Tasikmalaya)でタシッマラヤエンタープライズ社への指導育成を行っており、ムスリム衣装に刺繍・バティックあるいはアクセサリーを添えた新型ファッションの開発が進められていることを明らかにした。この新機軸を持って世界のイスラム国にオファーし、インドネシアをムスリムファッションの中心地にしようという構想に力が入る。
インドネシアのムスリムは衣装にひとり平均年間10万ルピアを支出しており、1.8兆ルピアという市場は1億8千万人の購買者がいることを意味している。インドネシアでムスリムは5つの機会にムスリム衣装を着用するのが習慣になっている。その5つの機会とは、社会奉仕活動・結婚式・ラマダン月・イドゥルフィトリ・イドゥルアドハ。ムスリムの間により深いイスラムの信仰活動を目指す傾向が強まっている昨今、ムスリム衣料品ファッションビジネスの将来性は高いにちがいない。


「衣料品買物予算はいくら?」(2011年8月26日)
イドゥルフィトリの大祭には新しい衣装を着るというのがインドネシアムスリムの慣習だ。晴れの大祭の日なのだから、晴れの衣装で身を飾るのは当然のこと。そして一年に何度も衣装を買い換えることのできない貧困層もなんとかしてその慣習に従わなければ肩身の狭い思いをするため、ルバランに向けて衣料品・履物は猛烈な売り上げを記録する。
そんな需要の高騰するこの時期、コンパス紙R&Dは全国各地の都市居住者828人に衣料品・履物・バッグの購入出費を質問した。質問はあくまでもこのラマダン月に限定せず、普段はどうかという質問内容になっている。しかし年に一回の購入しかしない回答者にとっては、この時期を想定せずに答えることは難しいだろう。
質問:あなたは衣料品・履物・バッグの買い物をする際に、予算をいくらにしていますか?
回答:
5万〜20万ルピア 58.2%
20万1千〜50万ルピア 32.0%
50万1千〜100万ルピア 6.2%
100万ルピア超 3.6%


「ラマダン景気にわくインドネシア経済」(2011年8月26日)
ことしのラマダンはこれまでに比べて来店客数が大幅に増加しており、売り上げは昨年のラマダンシーズンから倍増しそうだ、と首都圏のショッピングセンターは軒並み連日の大盛況にご満悦の態。
インドネシアショッピングセンター協会会長は、ラマダン月が三週目に入ってから、各ショッピングセンターは来店客であふれかえるようになっており、毎年ラマダン月の来店客増加は言うまでもないことだが、今年は例年を上回る増え方になっている、と語っている。「どのモールへ行っても、駐車場は満杯になっており、そしてレジの行列も驚くほど長い。この状態はイドゥルフィトリ大祭直前まで継続されると思われる。モールにやってくる客は、ラマダンやイドゥルフィトリのための買い物だけでなく、連れ立ってブカプアサをするなど他のアクティビティもしに来ている。昨年までの傾向は、ハリラヤ前日まで来店客の出足は衰えず、イドゥルフィトリ当日になって家族やコミュニティでの親睦を行うために客数がダウンするというパターンだった。そしてイドゥルフィトリ二日目には再び来店客が激増した。今年のラマダン月はミッドナイトセールを行うモールも増えたため、客足を高める効果を挙げている。」ステファヌス・リドワン会長はそう状況を説明している。
一方、インドネシア小売業者協会会長は、イドゥルフィトリの二週間前くらいから、ハリラヤボーナス支給に伴って商品販売が激増するようになると言う。増え方は商品によって異なり、飲食品で20〜25%、衣料品は200〜300%に達する。昔はイドゥルフィトリ大祭期間中、ほとんどの商店は店を閉めてしまうため、各家庭が飲食品の備蓄をする傾向が高かった。しかし今ではその期間中も飲食品を買うことができるようになったために庶民の行動に変化が起こっている。
衣料品については、晴れの大祭に新しい衣装で晴れ姿を、という慣習が依然として生き残っており、衣料品小売業界はラマダン月の仕入れを大人服は平常時の二倍、子供服は八倍というボリュームに変えている。もちろんいきなりそんな発注をしても応じられるわけがないため、ラマダン月の四ヶ月くらい前から生産者は増産対応を開始しているとのこと。


「首都圏から8百万人がいなくなる?!」(2011年8月27日)
いよいよ一年最大のルバラン休暇が始まった。首都圏から地方部へのルバラン帰省者は年々増加しており、この2011年はジャカルタから713万人、ブカシ市9.9万人、タングラン市と新設南タングラン市は16万人、デポッ市3万人、ボゴール市からは80万人が故郷目指して四方八方に散るだろうとコンパス紙は予測した。ピークはこの土日。
念のために上の各市の住民人口も書いておこう。ジャカルタ852万人、ブカシ市230万人、タングラン・南タングラン市310万人、デポッ市164万人、ボゴール市95万人。個別に比較対照すると首をかしげるひとが出るのは疑いない気がする。もちろんコンパス紙は『ジャカルタから』と書いており、『ジャカルタ住民が』と記していないことがその答えになりそうだ。ならば合計で比べてみては・・・?いや、それでもかしいだ首は戻りませんか?
されば、コンパス紙R&Dが2011年8月18〜19日にジャカルタ・ジョクジャ・スラバヤ・メダン・パダン・ポンティアナッ・バンジャルマシン・マカッサル・マナド・ジャヤプラの全国10都市住民742人から集めた「今年のルバラン休暇はどちらへ?」という質問の回答を見ることにしよう。集計結果はこうだった。
1)どこへも行かない 62.0%
2)故郷へ帰省 28.7%
3)地元市内での行楽 4.4%
4)外国旅行 1.1%
5)不明・無回答 3.8%
地方部から出稼ぎ者が集まってきているスラバヤ・スマラン・バンドン・デンパサルなどを加えれば、故郷へ帰省の比率はもっと高まったのではないかと推測され、上で行った合計比較に近付くのではないかという気が個人的にはする。
このような統計数値を比較検証するたびに、「インドネシアにはありとあらゆる統計数値が完備されているが、ひとつだけないものがある。それは正確な統計だ。」という言葉が意識の波間を漂うのである。


「今年のルバラン資金はいくら?」(2011年9月2日)
どこのイスラム国でも断食明けのイドゥルフィトリは祝祭の日になっているが、国をあげての民族大移動と豪華絢爛な祝祭、ニャドランと呼ばれる先祖の墓参り、行き交うひとびとがスマイルと挨拶を交わし、地縁・血縁・職縁が集まって親睦を深めるハラルビハラル、そこで言い交わされる「ミナルアイディン ワルファイジン、モホンマアフ ラヒル&バティン」の言葉を感激の涙声と抱擁で互いに迎え合うといったそれらの振る舞いはムラユ〜ジャワのムスリム特有のものであり、その日そのようなことを全国規模で行っているイスラム文化の国は他にない。
アラブの風習とイスラムの教えを地元文化の中に取り込んで独特のものに発展させたこの地のひとびとの創造性は瞠目に値するものだと言えよう。たとえ個々の行為が何らかの批判を招くものであったとしても、である。
このルバランと呼ばれる風習は、だからインドネシア固有のものであり、アルクルアンに由来するものではない。そもそもルバランというジャワ語の名称からして、イドゥルフィトリとは別物であることを意味している。ルバル(lebar)とはジャワ語で終わりを意味する言葉であり、ルバランは文字通り断食の行を果たす期間が終了したことを意味している。大勢の日本人がムラユ語源のレバル(lebar)と混同してレバランと発音しているが、語源の意味が理解されていないことをわたしは残念に思う。
さて、豪華絢爛なルバランだから、金がかかって当然だ。おまけにムディッ(mudik)と呼ばれる帰省をするよう条件付けられているのだから、交通費にお土産、道中の出費など、プラスプラスにまたまたプラスが追加されるようになる。ルバランボーナスはその出費をサポートするためのものであり、国はそれを雇用主に義務付けて国民の年に一度の大祭の経済的バックアップを確保させようとする。斜に構えた言い方をするなら、国民の実質所得を向上させてより高い福祉を国民生活にもたらすことが目的になっていないことを国が率先指導しているというようにも言えるのだが、それを不満とするかどうかはかれら自身の問題だ。
さて2011年ルバラン経済は、通貨当局の予想を上回る加熱状態に陥っているように見える。インドネシアのムスリム国民は今年のルバランをどういう予算で乗り切ろうとしているのだろうか。例によってコンパス紙R&Dが2011年8月15〜16日に都市部住民579人にインタビュー調査した結果が報告された。
質問1)あなたあるいはあなたの家族のために用意したルバラン資金はいくら?
回答1)
50万ルピア未満 9.0%
50万〜100万ルピア 17.4%
100万〜200万ルピア 26.3%
200万〜500万ルピア 35.1%
500万〜1,000万ルピア 9.7%
1,000万ルピア超 2.6%
質問2)その金額はあなたの平均月収の何パーセント?
50%未満 39.0%
50〜100% 32.5%
100〜150% 7.9%
150〜200% 10.4%
200%超 10.2%


「空き家対策はどうする?」(2011年9月17日)
ルバランホリデーの日数は人によって異なるが、一般的にはイドゥルフィトリの日からその週末までというのが普通だ。そしてひとびとはイドゥルフィトリ前の週末をピークに、ムディッ(mudik)と称する帰省を開始する。だからその間の7日から10日間、あるいは長い人で二週間というもの、ジャカルタやスラバヤなど都市部で生活しているひとの多くが故郷に帰る。そんな長期間、自分の家を空けてしまうことは、言うまでもなく心の片隅に不安の芽をはぐくむことになる。
今年のルバランでは、首都圏からおよそ800万人が帰省した。それはつまり、その首都圏人口が半減したことを意味している。日常的にあの一大交通渋滞を引き起こしているジャカルタ都内が、ルバランホリデーの期間中だけはまるで嘘のようなガラアキの様相を呈していたことがその実態を示していると言えるだろう。
ルバランホリデーで長期間家を空けるのが不安なのは、空き巣・泥棒らの中にホリデーシーズン中も勤勉に稼業を続ける者がいるためだ。盗人や強盗たちもみんな例外なく故郷に帰り、マアフラヒル&バティンをやってくれればどれほど安心できることか。しかし悪人ほど現実主義者できれいごとのおためごかしには乗らないようだから、マアフラヒル&バティンをかれらが本気で信じるかどうかはわからない。
コンパス紙がムディッの波の始まりだした2011年8月24〜26日にムディッを予定している182家庭にインタビューして集めたその不安に関するポイントの回答は次のようになった。
質問1:ムディッ期間中、長期にわたって家を空けることに不安はないですか?
回答1:
心配だ 68.7%
心配しない 30.2%
不明・無回答 1.1%
質問2:ムディッ期間中の犯罪被害予防対策として何をしますか?
回答2:
不在中注意して見てくれるよう隣人に頼む(インドネシア語表現では「家を預ける」と言う) 46.2%
地元地区警備の警備員や民兵に期待する 19.8%
隣組長に不在を届け出ておく 6.6%
兄弟親戚に注意を払うよう頼む 6.0%
戸締りを厳重にする 4.9%
警備員を雇う 3.8%
女中が留守番する 3.3%
電気・ガス・石油コンロなど火元対策を行う 1.1%
高価な資産を警察や国有質公社に預ける 0.5%
特に何もしない 7.7%


「宗教と暴力」(2012年3月3日)
宗教の名を唱えるアナーキズムとテロリズムは21世紀が始まって以来顕著になってきた社会宗教上の現象のひとつだ。世界のあちこち、特にアフガニスタン・イラク・パキスタンそして残念ながらインドネシアでも、その現象は続いている。
わが国では、警察治安部隊がテロリズムを抑え込むことに成功の度合いを高めたときも、宗教の名を唱えるアナーキズムはその存在を維持し、脅威を感じるほどの規模でその姿を折に触れて示している。
ところがその不安を覚える現象はいまや、異なる現象とのコンフリクトに落ち込んでいるように見える。つまり平和を愛するインドネシア社会はもはやそのような暴力行為を受け付けることができなくなっているということだ。それはたとえば、2月11日にイスラム守護戦線(FPI)指導部数人が中部カリマンタン州パランカラヤ市チリッリウッ空港に到着したとき、地元ダヤッ族のひとびとがかれらの訪問に拒否の声をあげたできごとに見ることができる。その不愉快なできごとに激怒したFPI側はその事件を中部カリマンタン州知事と中部カリマンタン州警察長官に届け出るとともに、ダヤッ族コミュニティ指導者を警察に訴えた。
そのパランカラヤ事件はFPIが頻繁に行っているアナーキズムへの拒絶反応の触媒になったようだ。2月14日にジャカルタのホテルインドネシア前ロータリーで催された「FPIのないインドネシア」と題する市民行動、さらにナフダトウルウラマ・ムハマディヤ・アンソール・プムダムハマディヤなど諸団体の指導者たちがFPIのアナーキズムを拒絶する声明を出すといった一連の流れがそれを示している。かれらと共にSBY大統領やジョコ・スヤント政治法曹治安統括相もFPIに対して反省を求めた。
イスラム系社会団体やムスリムである国政高官たちが行った呼びかけをFPI指導者やメンバーはムスリム同士の真実の声だと見なすべきであると筆者は思う。それに対してFPIの採るべき姿勢は、自らの内面を深く探り、頭を冷やして熟考することである。それはイスラム教で強く奨励されていることでもあるのだから。
< 邪悪に見られる宗教 >
どうして宗教の名を唱えて行われる暴力がなければならないのか?FPI指導者が普段から言っているのは、暴力行動はナヒムンカル啓蒙の実践の一部であり、ひとびとを背徳行為から遠ざけるために行われていることで、他のイスラム団体は背徳行為に対して神の教えを実践することを奨励するばかりであまり効果があがっておらず、背徳行為の禁止は『手』つまり力を使うのがより効果的なのだというのがFPIの見解だ。
FPIの主張はさらに、警察が関心を払わずその撲滅を成し遂げようとしないことから賭博や売春などの背徳行為がますます盛んになっているため、かれらは仕方なく『手』を使っている、と言うのである。あるいはまた、FPIの目からは正しいイスラムでないと見られるアフマディヤのような宗教集団を解散させることに政府が厳格な姿勢を取らず、それを放置した問題についても同様で、それゆえに自らの『手』を使ってそのような諸問題を解決する以外にFPIの採るべき道が残されていないからだと言うのである。
FPIのたどりつきたい目標は、特定のイスラム観においては正しい。ところがウラマのほとんどは、実際に暴力行為として発現する『手』の使用を否定している。
一般に権威のあるウラマたちは、宗教実践の啓蒙においては善行を奨励し、背徳行為の防止や撲滅はアルクルアン第16アンナフルの章125節に示されているように、主体的意志、正しき教え、そして英知に立脚する議論にもとづかなければならない、としている。もしその三原理にもとづかず、反対に力により重点が置かれるなら、チャールズ・キンボールの著作「宗教が邪悪になるとき」のコンセプトを借りれば、イスラムの外見は邪悪なものと化し、ムスリム大衆のマジョリティを含めて大勢の人間に恐怖を起こさせるものとなる。ユダイズム・クリスチャニティ・イスラムの歴史を通してキンボールは、信徒に5つの徴候が見られるとき宗教は健全さを失い、恐怖をもたらすものになると指摘している。その5つとは次のものだ。
一、自分(たち)の理解が最高の真理であり、自分(たち)だけが真理に到達することができる、という個人や集団による絶対的真理の主張
ニ、あらゆる背徳行為を消滅させるべく神が自分(たち)に命じたと主張する個人や集団が今こそその時至れり、と決めること
三、宗教実践の決まりや理解、あるいは神の命令への盲目的追従
四、神が命じたと信じて世の中を変えるべく、あらゆる手段を講じてよしとする
五、同じ信徒である個人や集団を背教徒と断じたり、あるいは世の中を背徳行為から清浄化させるとして聖戦を標榜する
上述の三宗教の環境内に出現するそれら五つの徴候は、それぞれの宗教を決して正しく反映するものではない。ところがそれらは各宗教が悪イメージのプリズムを持つのに多少とも貢献しているわけだ。
< 包括的対応 >
宗教の名におけるアナーキズムは独立して存在するものではない。上で見たような宗教理解が明らかに暴力の中に持ち込まれているものの、宗教の名における暴力がより容易に実現し、折に触れてそれがエスカレートするための別の要素が存在する。その根本要素のひとつは、デモクラシー推進に伴って方向性が見失われた国民の自由さの中における法執行の弱さだ。自由の爆発が、法・秩序・文明度の尊重を決然と持続的一貫的に確保させるための警察の能力向上を伴わなかったことは実証されている。国民からの支持を得ようとする高位高官たちの政治的混乱・分裂・論争は往々にしてかれらに国民大衆への間違ったメッセージを出さしめた。それはたとえば、政府高官がアナーキー傾向の強い民間団体に対して許容的寛容的な姿勢を示す度合いが大きいことに表れている。民間団体はそんな姿勢を目の当たりにして自分たちは波に乗っていると感じ、法よりも高い地位を得たように錯覚してしまう。
それらの諸ファクターを考慮して、イスラム理解の再方向付けや大衆がより納得できる宗教啓蒙の実践から始まり、法執行の強化や公職高官のアナーキズムを容赦しない姿勢の厳守に至る包括的な対応が採られる必要がある。そうしなければ、宗教の名におけるアナーキズムがこの先延々と維持されることにならないとは言えないのだから。
ライター: ジャカルタ・シャリフヒダヤトゥラ国立イスラム大学理事、アジュマルディ・アズラ
ソース: 2012年2月25日付けコンパス紙 "Atas Nama Agama"


「金利はなくても、もっと怖ろしいものがある」(2012年5月11日)
2012年1月19日付けコンパス紙への投書"Investasi Kebun Emas"から
拝啓、編集部殿。3ヶ月ほど前、わたしはジョクジャシャリア銀行で「黄金農園」という名前の商品に投資しました。その商品にわたしは3%と97%の投資をしたのです。シャリア銀行は金利を取りませんが、月間1.1〜1.3%のウジュロという費用を日割りで徴収するのです。3ヶ月間のうちに黄金価格はグラムあたり51.5万ルピアから50.4万ルピアに下がりました。その価格差からわたしは大きな損失を蒙っただけでなく、9千万ルピア近い3ヶ月間のウジュロをシャリア銀行に徴収されました。
シャリア銀行は何のリスクも負わず、それどころか利用客の損失もどこふく風と大きな収入を得るのです。シャリア銀行に投資したわたしの財産はたった三ヶ月でほとんどあとかたもなくなりました。その投資を継続するなら、わたしは一日150万ルピアのウジュロを払わなければならないそうです。わたしは怖ろしい金融商品の罠に落ちたのです。[ 北ジャカルタ市在住、サンプルノ ]


「ナイトスポット消灯のひと月」(2012年7月11・12日)
例によってラマダン月が近付いた。予定では2012年のラマダン月は7月19日からとされているが、最終的に日没時の月の位置で決められるイスラムカレンダーでは、その前夜の観測しだいで各月の第一日が変化することもありうる。
イスラムで最大の宗教行事のひとつ、厳粛で聖なるラマダン月の断食の務めを全ムスリムがつつがなく果たせるよう、その業を邪魔する世間にあるさまざまな誘惑の根を絶ってやらなければならない。外にある誘惑に自分が内面でどう対処するのかということよりも、そのような誘惑を根絶やしにしてやることが宗教上の保護と支援を共同体構成員に与え、だれもが命じられている宗教上の務めを果たせることで共同体の秩序が維持され、自分たちの共同体に対する愛情と忠誠心が実感されるメカニズムがそのような姿勢の原理をなしているにちがいない。
宗教が信仰という哲学的な位置づけを超えて、社会共同体の秩序の柱となっている社会の有様をわれわれはそこに見ることができる。その意味で、既成宗教が社会の骨組みをなしていない現代日本人にとって、世間にある誘惑と対抗するのは個人の内面意思の問題であり、強固な意志を鍛え上げていくことこそ純粋な信仰の本質であって、社会がその誘惑をつぶしにかかるのは過保護以外の何者でもなく、その結果生まれるのは軟弱な意志を持つ思い上がった精神だというのが一般的な見方だろうと思うが、それは宗教が持つ社会機能の現われ方の差異が生み出す一種の偏見ではないかという気がわたしにはする。要は、理想とされている人間のあり方に関する観念が異なっているということであり、自分が抱いている価値規準で異文化を断罪する愚を犯さない精神が肝要ということではあるまいか。
今年も都庁観光局はラマダン月の営業要領に関する回状をナイトスポット慰安ビジネス業界に出した。その中にはイスラム系民間団体が宗教上の務めと感じて夜にナイトスポットのパトロールを行い、違反店に実力行使をふるうことを厳しく戒める内容も記されている。都下1,210店のナイトスポット慰安ビジネス業界に2012年6月1日付けで出された回状第15/SE/2012号によれば、ラマダン月初日の前日からラマダン月を通して、さらにイドゥルフィトリ当日とその翌日までの間は営業してならない業種がある。それはナイトクラブ・ディスコ・スチームバス・マッサージパーラー・バー・スピードボール等のゲーム場だ。またそれらの店に併設されているビリヤードも営業禁止になる。ただし空間的に別の場所になっている場合は、10時から24時まで営業できる。また、星級ホテル内にある上の業種には例外措置が与えられる。ナイトクラブは19時から03時まで、ディスコは19時から02時まで、カラオケは14時から02時まで、マッサージパーラーは10時から23時まで営業が許される。
ホテルの外で独立しているカラオケと音楽ライブ演奏は20時30分から01時30分まで営業可。
例年のごとく、首都レクレーション慰安事業者会会長は、その規則は都下67万人のナイトスポット慰安ビジネスセクター就業者のうちで40万人に収入の道を閉ざすものである、と苦情の声を発した。その中には店の駐車整理員や警備員なども含まれている。もちろん時間制限を受けながらも営業してよい業種もあるが、イスラム系民間団体の見回りは言うにおよばず、警察と都庁の合同パトロールにしても必要以上に店の営業や客の素性に関わろうとしないようにしてほしい、と会長は要請している。


「バタムのナイトスポット休業日」(2012年7月23日)
バタム市庁は2012年ラマダン〜イドゥルフィトリ期間のナイトスポット営業を合計9日間停止させる。
2012年7月半ばに開かれた地域指導者会議でバタム市のナイトスポットは営業しない日が次のように合意された。
まず、ラマダン月開始の一日前とラマダン月の1日と2日。そしてラマダン月の17日目にあたるヌズルルクルアンの二日前と一日前および一日後。更にイドゥルフィトリ日の二日前と一日前および一日後。
それに違反した業者にたいする措置は昨年より厳しいものになる、とバタム市長が表明した。昨年は警告書が三枚出されてから措置が取られるようになっていたが、今年は警告書が二枚までで、そのあとすぐに営業停止処分が与えられることになる。
市庁は例年のように統合チームを設けて市内のナイトスポット見回りを行うが、今年は頻度を高めて毎日行うことにしている由。


「ハリラヤボーナスは雇用者の義務」(2012年7月30・31日)
ムハイミン・イスカンダル労働トランスミグラシ大臣が宗教祝祭日の手当て支給と共同帰省の呼びかけに関する大臣回状第SE.05/MEN/VII/2012号を出して、事業主は従業員へのハリラヤボーナス支給を期限日まで待つ必要はなく今から始めてかまわないこと、そして地方自治体首長はそのハリラヤボーナス支給を積極的に監督するように、と呼びかけた。
「ハリラヤボーナスは事業主の従業員に対する義務であり、協調的な労使関係と誘導的な職場環境をはぐくむための義務である。」と労相は語っている。
3ヶ月以上連続して働いている勤労者は全員がハリラヤボーナスをもらう権利を有しており、その期間が12ヶ月以上の者は月給の一か月分、12ヶ月未満の者はその月数に比例した金額をもらうことになる。雇用契約や就業規則あるいは労使協約で政府の規定より良い条件が定められている場合は、それに従わなければならない。そしてハリラヤボーナスはイドゥルフィトリ日の7日前までに支給されなければならない。
アピンドのソフィヤン・ワナンディ会長は、事業主は必ずハリラヤボーナスを支給するので、勤労者は昨今の経済情勢を的確に把握し、平和的協調的な労使関係を育成するようにしてほしい、と発言した。「世界的に経済情勢はきわめて困難な状況に陥っている。インドネシア国内もその影響から無縁ではありえない。国内市場には輸入品があふれ、国内企業は市場を奪われている。だからわれわれは労働平和を強く希求している。落ち着いて生産活動にいそしむ環境が必要なのだ。だから勤労者は威嚇・デモ・スウィーピングなどあらゆる対立的行為を行わないでほしい。」
インドネシア労組同盟会議議長は政府に対し、契約社員にも必ずハリラヤボーナスが支給されるよう政府は企業側を監督し、事業主も契約社員を差別しないで必ずボーナスを支給するようにとの声明を発した。「事業主は契約社員の雇用契約をハリラヤベースで計算し、ハリラヤの直前に解雇してボーナス支給を減らすような操作をしている。そのような不良事業主を政府はもっと厳密に監督し、そんな悪行を無くさなければならない。そのために政府は契約社員へのハリラヤボーナス支給に関する規則を制定することが必要だ。」
インドネシア全労働者機構事務局長は、ハリラヤボーナス支給に関連する事業主の違反は少なくない、と批判する。「支給金額を全額与えなかったり、全然無視して基本賃金だけしか与えない事業主がいる。また一週間前という支給期限への違反もある。3ヶ月以上連続して働いている契約社員が人材派遣エージェントを転々と替わることで契約期間がその都度更新され、支給金額で損をしている。」狡猾に立ち回って労働者の権利を損なっている事業主を労働界はそう批判している。


「ラマダン月の銀行界」(2012年8月1日)
インドネシア銀行ソロ支店は、銀行や市民が持ち込む汚損紙幣の交換業務をラマダン期間中に限ってストップした。ソロ支店長デピュティはその方針について、「窓口担当者は持ち込まれた汚損紙幣の状態を一枚一枚チェックしなければならず、大量に持ち込まれた場合は長時間他の利用客を待たさなければならなくなる。市中の流通資金量が急上昇するラマダン月は各銀行ともその対応にてんてこまいになっているため、そのような非能率が発生して市中の資金流通がおろそかになってはたいへんなので、この期間にかぎって汚損紙幣交換業務はストップする。」との理由を表明している。
またイドゥルフィトリ日のお年玉のために新札の需要が急上昇するのもこの時期であり、正常だが古くなった紙幣を新札と交換したい市民が大勢インドネシア銀行へやってくる。この面でのサービスは例年の通り行われることになっている。支店長デピュティはこのサービスについて、市中一般銀行がもっとこのサービスを行い、市民が最寄の一般銀行で新札を入手するようになれば更に効率がよくなるのだが、とコメントしている。実際に一般銀行は口座保有客の要望に応じて新札を渡してはいるものの、そのために使われる新札の数はあまり多くなく、ましてや新札の交換だけをしに来る口座を持っていない消費者には敷居の高い情況であることも確かだ。
一方ソロ市内の諸銀行はラマダン期間中の営業時間を1時間から1時間半短くしている。BNI銀行スラメッリヤディ支店は7時半〜16時の営業時間を7時半〜15時に短縮した。やはりスラメッリヤディ通りにあるBRI銀行も、8時〜15時の営業時間を7時半〜14時15分に切り替えている。ブコピン銀行ソロ支店は8時〜16時の営業時間を8時〜14時半に縮めた。いずれも本店からの指示に従ったものであり、従業員が自宅でブカプアサを行えるようにするのが目的だと説明している。


「ルバラン帰省の時期も間近」(2012年8月7〜11日)
ムスリムにとって2012年の断食月も半ばを超えた。断食月明け大祭イドゥルフィトリ前の数日間は全国的にルバラン帰省が発生するのが年中行事であり、民族大移動の時期と化す。そのルバラン帰省者のことをインドネシア語でpemudik と称する。
pemudik とは人を表す接頭辞pe-にmudik が付いた言葉であり、mudik とはme+udik を意味している。udik とは川の上流を指す言葉で、mudik となると川の上流に向かうことを意味するから、河口から川の上流に向かって遡行することをその第一義とする。さらに川の上流とは内陸部あるいは奥地と呼ばれる地帯であるため、udik は田舎あるいは村を表す言葉にもなった。だから日本語と同じ意味の田舎者はorang udik と呼ばれている。
昔からどこの国でも物資は海岸伝いに流通し、都会は海岸部に生まれて成育発展した。都会に出て一旗あげようという内陸部の若者が海岸部で経済的に発展している都会に集まってくるという歴史的進化パターンはインドネシアにもあったわけだ。だから仕事を求めて都会に出てきたひとびとが田舎の故郷に帰ることにもmudik という言葉が使われてきた。川を遡行しなくても、である。
ところで、ちなみにイドゥルフィトリ大祭のことをインドネシア語ではlebaran と称するが、その正しい発音はルバランであってレバランではない。イドゥルフィトリ大祭は断食の終わりなのであり、ジャワ語で終わりを意味するlebar (ルバル)という言葉がそのlebaran の元になっている。ムラユ語源のlebar (レバル)は幅の広いことを指す言葉であって、イドゥルフィトリ大祭との関連はルバルのほうがより密接だろうと思われる。
さて、政府運通省が出した2012年ルバラン帰省交通でのプムデイッ予想は、次のようなものだった。
交通モード: 2011年実績⇒2012年予想(単位は万人)
道路運送: 552.5⇒559.7
河川湖沼渡海運送: 324.8⇒338.4
鉄道運送: 190.5⇒221.5
海上運送: 145.6⇒153.0
航空運送: 298.7⇒328.6
その予想をベースにして、各交通モードに十分な運送能力があるのかどうか、公共交通機関については不足があればどう補うか、というのが行政側の課題となる。その中でもっとも増加率が大きいとされたのが鉄道で、国鉄は期間中に列車運行を53便増やすことにしている。そのため2011年はレギュラー列車198便と特別増発便26便が運行したが、2012年はそれぞれ239便と38便となる予定。ただし国鉄側は乗車率を100%以上にはしない方針であるため立ち乗り乗車は認めないようになる。その結果一日6千人が乗車できずに駅に残される可能性が高く、政府は国鉄にバスを用意させるべく協議を進めている。
政府運通省が計画した公共交通機関の動員数は次のようになっている。バス 37,620台、フェリー渡船 123隻、鉄道 1,522両、客船 762隻、飛行機 339機。
プムディッ人口が国内最大の都会はジャカルタだ。その証拠に帰省者たちはルバラン当日を前にして続々と帰省し、いざイドゥルフィトリの当日ともなれば、ふだんあれほど渋滞の激しかった都内の主要道路は終日閑散としてまるで嘘のような状況になる。
都庁運輸局もプムディッ予想を出した。
交通モード: 2011年実績⇒2012年予想(単位は万人)
公共交通機関計: 228.9⇒240.6
  州間長距離バス: 54.4⇒49.4
  無料バス: 7.7⇒7.7
  鉄道運送: 51.6⇒47.7
  海上運送: 1.81⇒0.88
  航空運送: 114.⇒134.9
その予想人数をさばくために、都庁は公共交通機関の動員を次のように計画した。動員といっても相手は民間企業と国有事業体なのだからサービス利用者とサービス提供者間の直接的なビジネス関係が基本になっている。行政はその両者間の需給に齟齬が起こらないよう、取りまとめて調整するという仲介機能を果たしているわけだ。
ルバラン帰省交通期間のジャカルタ発交通モード別便数
交通モード: 2011年実績⇒2012年予想(単位は便数)
バス: 8,294⇒7,292
鉄道: 166⇒130
客船: 23⇒24
飛行機: 285⇒285
一方、自家用車帰省族のほうは、次のような都庁の予測になっている。
自家用車計: 495.7⇒593.5
  四輪: 375.7⇒440.1
  二輪: 119.98⇒153.3
で、自家用車と公共運送機関の双方を合算したプムデイッの数は2011年の724.5万人から2012年は834.1万人になる見込み。これで都内がゴーストタウンの趣を呈さないはずがない。
ジャカルタからの帰省者数比較を見て気が付くのは、航空機以外に軒並み利用者が減少し、自家用の四輪二輪帰省者が激増していることだ。四輪車が64.4万人、二輪車が33.3万人増えている。四輪車の場合は多少の事故でも乗客は比較的安全な場合が少なくないが、二輪車は事故に巻き込まれたが最後、傷害死亡と隣り合わせだ。「二輪車を3時間以上運転し続けたら、集中力はなくなる。おまけに家族を乗せ、お土産の荷物を大量に抱えていて、普段の運転状態とはまったく違うものになる。都民は二輪車の帰省を見合わせて、公共交通機関を利用するようにしてほしい。まず二輪車を自分の故郷まで発送しておき、帰省のときには公共交通機関で帰るように。」都知事も都庁運輸局長もそう声をそろえる。
例年、ルバラン帰省交通期に発生した二輪車がからむ交通事故件数は膨大なものになっている。2009年全国事故件数4,469件中の3,312件、2010年全国総数4,331件中2,747件という具合だ。だから行政側は無料帰省バスを用意したり、また中央政府も、どうしても二輪車を持って故郷に帰りたい都民に無料客船の便宜をはかったりしている。この無料客船というのは政府の費用で国有客船会社Pelniに船を2隻用意させ、ジャカルタから中部ジャワ東部ジャワに帰省する二輪車プムデイッをスマランやスラバヤまで二輪車と一緒に無料で運ばせようという企画。あるいはホンダオートバイ生産者であるアストラホンダモトル(AHM)もホンダオートバイ購入者への顧客サービスとして8月15日にスマランとジョクジャ向けに帰省バスを走らせる計画にしており、このバスを利用する場合は自分の二輪車をAHM側がトラックに積んで一緒に運搬してくれる。利用料金は5万ルピアだそうだ。
ジャワ島横断路はいくつかあり、一番の幹線道路は19世紀初期に第36代東インド総督ヘルマン・ウイレム・ダンデルスが建設させた大郵便道路、今はPantura と呼ばれるジャワ島北岸街道で、これは文字通りジャワ島北岸沿いにスマラン〜スラバヤ〜プロボリンゴ(Probolinggo)〜シトゥボンド(Situbondo)そしてジャワ島東端のバニュワギ(Banyuwangi)と進む道だ。だが、スマランからスラバヤへそのまま東進せずに一旦サラティガ(Salatiga)方面に南下してソロを経由し、モジョクルト(Mojokerto)からスラバヤに向かう中央ルートと呼ばれる道と、ジャカルタからバンドンに出たあと一路東進してチラチャップ(Cilacap)〜ジョクジャ〜ウォノサリ(Wonosari)〜パチタン(Pacitan)〜ブリタル(Blitar)〜ジュンブル(Jember)そしてバニュワギに南から入っていく南ルートと呼ばれる道の三つがある。
その3ルートの中で、首都圏から東ジャワへ向かう帰省者が好むルートは中央ルートだ、とソロ市運輸通信局交通課長が表明した。「スマランまで来たら帰省者の多くはそのままパントゥラを走らず、右折してサラティガからボヨラリ(Boyolali)を抜けてソロに向かう。休憩・買物・食事などをソロで楽しみたいにちがいない。これはお国自慢のでっちあげじゃなくて、通行する車の台数をカウントした上での仮説だ。2012年ルバラン帰省でも、ソロ市内のホテル・モール・レストランそしてソロ市一円の行楽スポットは立ち寄りプムディッであふれかえることが予想される。」
ジャワ島の陸路を往く場合、道路網から見た至便さはジョクジャよりも圧倒的にソロに軍配が上がる。ソロの地理的な優位さは道路を利用する者にしか分からないものなのかもしれないのだが・・・


「中古車の売行きも好調」(2012年8月13日)
毎年ルバラン前にはレンタカービジネスが絶好調に達し、中古車販売も大幅に盛り上がる。2012年の新車販売は年間台数100万台突破のラッパが鳴り響き、業界をあげて売れ売れどんどんのムードが燃え盛っているものの、そのために中古車販売が食われているということでもないようだ。
折りしも、6月15日から開始されたローン頭金最低30%という規定の負担を消費者から軽減させようとして、メーカーはその対策に躍起になっている。最初の3〜4ヶ月はローン金利ゼロパーセントとか、5〜10%の値引きを行って、消費者の新車購入意欲に水をかけないような工夫を各社は行っているが、それで中古車購入客が新車に移るという現象はあまり見られない由。
国内最大の中古車センターWTCマンガドゥアの2012年6月販売実績は2千6百台あり、上半期累計は1万6千台に達した。7月はそれをオーバーして2千7百台に上っており、8月中旬にルバラン帰省者がジャカルタを去るまで好調は持続するだろう、と同センターのシニア販売マネージャーは述べている。
この中古車センターはBCAファイナンスと提携して中古車購入顧客に対するファイナンシングが行われており、普通の中古車販売に比べて5年程度の長期ローンを組むこともできるし、ローン金利率も市場相場より消費者に有利な条件になっている。
この中古車センターでの売行きナンバー1車種はアヴァンザとゼニアで、2004年製だと価格は1台9千万ルピアの値付けがされており、市場相場の9千2〜3百万ルピアより廉い。それに次ぐ人気車種はトヨタフォーチュナーで、2011〜2012年製は3億8千万ルピアの値付けになっていて、これも市場相場の3億9千万ルピアを下回っている。またベンツやBMWもよく売れているとのこと。


「ラマダン〜ルバラン期に増えるもの」(2012年8月13〜18日)
映画人ガリン・ヌグロホ氏によれば、ラマダン月はあらゆるものが上昇するそうだ。あらゆるものの値段が上がるだけでなく、犯罪も増え、路上の乞食も増え、贋札までもが大量に流通するようになる。唯一絶対神と厳粛に向き合い、おのれの内面を見つめなおし、神が命じるよりよきムスリムになるための高尚な精神活動と自己統御を実行するのがこのラマダン月であるはずなのに、商売人は利をむさぼり、他人に食いつこうとする狼精神の持ち主らは躊躇もなく凶悪犯罪を重ね、他人と財を分かち合う理想の姿を実演しようとするひとびとのためにその受け皿になろうとしてにわか乞食が路上にあふれ、一年で最大の現金流通量が国内を怒涛のように流れるのを利して贋札使いがその中に紛れ込もうとする。
どうやらパーソナルな行である神との対峙によって形成される精神と、社会というその精神の発現の場におけるパーソナリティの間に一貫性が構築されておらず、結局は認識されている社会がファミリーイズムを超越し切れていないところにその原因を求めざるをえないような気になるのは、浅薄な見方なのだろうか?
それはともあれ、インドネシアでは一年で最大のムスリムの祭事であるイドゥルフィトリのために、ハリラヤボーナスを支給しなければならない。それは雇い主がムスリムの雇い人に対して行わなければならない義務になっている。雇い人への賃金報酬にボーナスという概念が持たされていない中小商店ですら、年に一度のハリラヤボーナスは必ず与えなければならないのだから、どれだけ巨大な金が国民の手に渡るかは想像に余りある。
そしてハリラヤボーナスをもらった国民は、それをハリラヤ祝祭のために出費する。普段の生活の中でまとまった金を捻出するのが困難なひとびとであっても、いやそうだからこそなおさら、イドゥルフィトリの祝いにからめてその金をぽんとはたいて前から欲しかったものを手に入れようとするのである。こうして集客力の強いモールには買物客が集まり、テナントの売上は平常月の4割増しに上る。
国が発行した現金がそうやって国民の手に渡り、国民は買物に熱狂して商店にある商品とそれを交換し、商店にたまった現金はまた銀行に持ち込まれて国の大元に戻っていく、というサイクルが毎年繰り返されているわけだ。2012年のその怒涛のような現金の流れは64兆ルピアと見積もられている。
この季節的な膨大な現金需要を満たすために中央銀行は市中一般銀行を通して国中に必要な量の現金を流通させなければならない。しかもハリラヤボーナス支給はイドゥルフィトリ当日の二週間くらい前から伸び上がっていくから、市中銀行が現金の減り具合を見ながらインドネシア銀行から現金を引き出すというラリーとなる。2012年にインドネシア銀行がこのラマダン〜ルバランシーズンのために予定した現金供給量は89.4兆ルピアで、2011年の77兆ルピアからは16%アップした。そのうちの81.1兆ルピアは10万・5万・2万ルピア紙幣、8.3兆ルピアは1万・5千・2千・1千ルピア紙幣から成っている。
西ジャワ州バンテン州を所轄地区とするインドネシア銀行第6地区支店は今年のラマダン〜ルバランシーズン現金需要をカバーするため、12.8兆ルピアを用意した。これは昨年の実績である8.7兆ルピアからほとんど5割増しだ。今年はジャカルタを除くジャワ島西部地区を怒涛のように流れる現金量が9.5兆ルピアに達すると予測した結果がそれであり、その読みは昨年の6.8兆ルピアから4割増しになっている。その予測は経済成長・インフレ率・ルピア外為レート・貸付金推移・人口デモグラフィなどさまざまな変数による計算の結果だということで、特になんらかの大きい要因が存在しているということではないそうだ。
もうひとつ、このラマダン〜ルバランシーズンに特徴的なのは、新札需要が猛烈に高まることだ。新年を祝うのに新しいものを取り揃えるという習慣はどこの文化にもあるのだが、イスラム暦新年でないこのイドゥルフィトリの大祭にどうして新しいものを揃える習慣が根付いたのかよくわからないものの、ムスリムたちは新しい衣装に身を包み、屋内の雰囲気もできるかぎり新しいものに取替え、一族の長老や組織の上長の家に集まって祝宴を張る。そのとき、子供たちにお年玉が出る。そのお年玉は新札と相場が決まっているのだ。おかげでルバラン帰省のプムディッたちは、道路脇やバスターミナルにこのシーズンに限って出現する新札交換屋から新札を手に入れる。新札交換屋に汚れた10万ルピア紙幣を一枚渡して5千ルピア紙幣を所望すると、手の切れるような5千ルピア紙幣が18枚戻ってくるという仕組みになっている。
インドネシア銀行は、今年用意した89.4兆ルピアのうちの56.4兆ルピアを印刷されたばかりの新札で用意した。インドネシア銀行の2012年新札印刷計画は総額160兆ルピアになっており、国有造幣会社が製造した現金がインドネシア銀行を通って市中に流されるのだが、その35%が一気にこのピーク需要期にあてられたわけだ。
新札の話は別にして、そうやって巨額な金が国民の手に渡れば、物価が上昇するのは経済学の基本だと言えよう。物価上昇は需給バランスが大きく傾くから起こるので、物資供給が断たれないように生産流通分野を監視せよという声が昔から強く、今回も政府は「国民の需要が跳ね上がり、商人がそのモメンタムを捉えて巨利をむさぼるがゆえに値上がりが起こるため、生活基幹物資を市場に廉価放出して価格抑制をはかるとともに、物品流通を密接に監視していく」と物価上昇抑制対策を述べている。そのせりふは何十年も昔から繰り返されてきたことであり、その方針は確かに実行されているのだが、ラマダン〜ルバランの物価上昇が沈静化した年はない。ちなみに過去5年間の月間インフレ率比較を見ると、次のようになっている。
年: ラマダン月/ルバランの月/その翌月(数字は%)
2007: 0.80/0.79/0.18
2008: 0.97/0.45/0.12
2009: 0.56/1.05/0.19
2010: 0.76/0.44/0.06
2011: 0.67/0.93/0.27
需給バランスと物価の安定に関して明らかなことは、その間に消費者の購買を決定する自由意志が関与している点にあり、インドネシアのルバラン〜ラマダンにそれをあてはめてみると、その要因が完全に欠落していることがわかる。ひとびとはこれまで行ってきた行事を今年も行わなければならないという強迫観念に満ちており、どんなに物価が上がろうとも買えるかぎりは買おうとする。そこには、今値段が高いから買い控えておいて、値段が下がったら買おうというような思考は見当たらない。○月X日の祭事に恥ずかしい思いをしないよう、今調達しなければならないものは金を工面してでも買うのだという欲求に追い立てられているのである。商人たちが巨利をむさぼろうとする付け目がそこにある。
ルバラン経済に関してもうひとつあるのが、贋札の横行だ。上で述べたように、ひとびとはラマダン月の断食の行をつつがなく送らなければならないがために、普段は分散して摂っている食事を夜間に集中的に、しかも栄養価を高くして摂ろうとする。そのための買物と調理の時間は狭くなり、狭まった時間帯に買物者がパサルに集中するため、ふだんとは比較にならないほどごった返す。そのような環境と状況がひとびとから集中力を奪い、観察力や判断力を弱める。
贋札制作者はたいてい、作品を贋札使いにその額面の三分の二程度の価格で売る。贋札使いはごった返している市場に出向いてちょっとした物を買い、大きな額面の贋札を渡しておつりをもらうというのが一般的な手口だ。だから贋札の被害者は市場で物を売っている零細な商人が大半だ。だからと言って、贋札と見破られることなく銀行のリサイクル網に紛れ込み、ATMや銀行のカウンターで読者のお手に渡されることが決してないわけでもないので、ご用心。
インドネシア銀行は2012年上半期に全国で発見された贋札について報告した。総数は41,080枚で、半分以上の21,497枚を10万ルピア紙幣が占め、次いで多かったのは5万ルピア紙幣で17,260枚。その二種で94%のシェアだった。地域別に見るなら、首都圏が11,578枚、西ジャワ州9,879枚、東ジャワ州8,815枚、中部ジャワ州5,452枚、ランプン州1,759枚といった順位で、さすがジャワ高外低の言葉通り、この分野でも同じ傾向が顕著だ。かと言って、他の地方が贋札から免れているということでは決してない。 北スマトラ州とアチェ州を所轄にしているインドネシア銀行第9地区支店はラマダン月に入る直前の7月中旬に、6月に発見された贋札の量を報告した。それによれば額面総額1,317万ルピア相当で、5月の1,101万ルピアから上昇している。贋札の横行率は流通真札量に対比して言われるのが通例で、北スマトラ州アチェ州の市中流通総額は3.6兆ルピアだから、心配するようなレベルではない、と同支店は付け加えている。その伝でいくなら、2012年上半期全国での贋札横行率は、市中で流通している100万枚の紙幣の中に贋札が4枚含まれている程度だという言い方をインドネシア銀行はしているが、真札流通量と発見された贋札をそのように比較するのはくすぐったい思いから免れない。ともあれ、いざルバランが明けた翌月にどのくらい贋札が発見されるのかはふたを開けてのお楽しみというところ。


「ルバランボーナスは社交費に消える」(2012年8月20日)
イドゥルフィトリの一週間前がハリラヤボーナス支給期限であると政府はたびたび表明しているものの、その規定を守らない雇用者がいることを指摘する声があちらこちらに上がるのも例年のことになっている。弱い立場にいるそんな被雇用者はなかなかうまく雇用者と交渉できないため、政府労働監督機関に訴えることになる。ハリラヤボーナスは宗教祭事に関連することであるためにラマダン〜ルバラン期にはムスリムが対象になるという原則になっており、キリスト教徒やヒンドゥ教徒はそれぞれの宗教祭事の時に与えられるのが論理上の帰結だ。全国民に対して一律同時期に行われるものでないため、それを抜け穴に利用しようとする不心得者も現われるようになる。政府労働監督機関にとって統制管理の難しさはそんな点にも由来している。
ところで、2012年ラマダン〜ルバラン期のハリラヤボーナスは全国で32.3兆ルピアが支給されたとコンパス紙R&Dが推測した。平常月の市中流通通貨量は779兆ルピアで、ハリラヤボーナスのために一時的に812兆ルピアに経済規模が膨れ上がる。一方、2012年ルバラン帰省者は2千5百万から2千7百万人と推定されており、それは630〜680万世帯に換算できることから、帰省する一家族当たりの平均支出金額は480〜520万ルピアにのぼると計算される。
コンパス紙R&Dは2012年7月30〜31日にジャカルタ・バンドン・ジョクジャ・ソロ・スマラン・スラバヤなどジャワ島を中心にした12都市の電話帳からランダム抽出した17歳以上の回答者348人にハリラヤボーナスの用途について質問した。集計された回答内容は下の通り。
ルバラン祭事のお供物や贈答品 28%
衣服・衣料品 23%
家族や使用人にバギバギ 11%
貯蓄や投資に回す 10%
帰省の足の費用 8%
喜捨・お恵み 3%
帰省先でお年玉・金一封 2%
その他 15%


「イスラム女性、ビューティコンテスト」(2012年10月22日)
ムスリマビューティ財団が開催しているワールドムスリマビューティと題するコンテストで、22歳のニナ・セプティアニ・ハディプトロさんが2012年の優勝者に選ばれた。254人が参加した第一次選考で100人が残され、次の審査で20人がファイナリストに選ばれ、2012年9月15日に南ジャカルタ市バライサルビニでのコロネーションナイトでムスリマとしてもっとも美しいと評価されたニナさんが最終的に栄冠を獲得した。今年のコンテストにはエジプト、ヨーロッパ諸国、オーストラリアなどからもムスリマが参加している。ファイナリストたちはムスリマ衣装の着こなしや挙措振舞い、そして礼拝の作法や姿勢、クルアン読誦などのポイントが審査された。
ニナさんは身長165センチ体重53キロで、グリーン環境アンバサダー、モデル、プレゼンター、アントレプルヌール、孤児育成などの諸方面で活発な活動を展開している女性であり、このコンテストの審査基準である「しとやかさ、スマート、スタイリッシュ」の3Sをもっとも備えているムスリマであるという評価が与えられたわけだ。
優勝者のニナさんにはヨーロッパ旅行・ウムロ旅行・現金2千5百万ルピア・インドネシア教育職業開発学院での一年間の教育といった賞品と賞金が与えられる。ムスリマビューティ財団HP< http://worldmuslimah.com/beauty/ >で20人のファイナリストのご尊顔を拝すことができる。


「神の名における死刑」(2012年11月5日)
入れ替わり立ち代り、騒ぎが起こるのがこの国だ。最新の大騒ぎのひとつに、死刑廃止に関する論争がある。
イムラン最高裁大判事がナルコバ(麻薬・非合法薬物)製造工場オーナーのヘンキ・グナワンに死刑判決を与えたあと、SBY大統領もイムラン大判事も大物ナルコバ犯罪者デニ・スティアとメイリカ・フラノリアのふたりに同じことをした。イムラン大判事は死刑をたった12年の入獄に変えようとし、大統領は死刑を終身刑に変更する恩赦を決めた。
両者とも、広範な激しい批判を一般大衆から受けた。ナルコバ大物犯罪者に対する死刑がどうやって入獄12年という刑に変えられ得るのか?恩赦の可能性だってまだあるというのに。かれはいったいいくら金を積まれたのか?というのがイムラン大判事への抗議。大統領については、かれ自身がナルコバ(とコルプシ)を重大犯罪と定義したのではなかったか?ところがその厳罰を一般犯罪なみのものに変えるとはどういうことだ?
周知の通り、ナルコバ犯罪者は大勢の人間の生命を奪うだけでなく、心身にわたる苦しみを長期間与えて徐々に被害者を殺して行くのであり、単に自分の物質的利益だけのためにそれを行うのである。
<死刑問題>
死刑はたいへん古い時代から行われてきた刑罰だ。法執行の権限を持っていると自任する人間(支配者)が世に出現して以来のことで、重大犯罪に対する罰として扱われた。物理的にその者の生命を絶たない場合でも、少なくとも社会的にその者を追放したり交際を断絶させて、最後には野獣に食われて死ぬという運命をたどらせる方法も採られた。
古代、頑丈な建物にあらゆるファシリティを備えた監獄というものがあまり作られなかったのは、そんなものを作るのは無駄であり、実際的でなく、金の浪費であり、汚職の巣窟になるだけだと考えられていたからのようだ。死刑、腕を斬りおとす、鞭打ち、罰金等々が実際的で低コストで懲罰効果もあるとされていた。
しかし、死刑というのは大きな問題である。死刑を与え、あとで間違いと判明しても、もう取り返しはつかない。ましてや古代の死刑というのは、世界中のあちこちで支配者が何世紀にも渡って行ってきたように、戦慄を禁じえないような手法が用いられるのが普通だった。たとえば古代中国の支配者は特筆すべき残虐な死刑を行っていた。そんな記録を読むと、即座に吐き気を催し、鳥肌が立つ。
民衆の間に普及していた知恵を取り入れて、諸宗教の聖典はその実践を勧めている。旧約聖書は特定の犯罪に対する罰として死刑を位置付けた。聖アグスティヌスやトーマス・アキナスはパウロのローマ人への手紙を参照し、死刑が犯罪抑止と無辜の民を保護するのに効果があるという観念を教会は何世紀にも渡って信奉してきた。その後、タウラッ(Taurat = 旧約聖書)と中世の教会の伝統を受け継いで、アルクルアンは条件付きで特定犯罪に対する死刑を採用した。ただし、そこには違いがある。
一般世人は死刑を報復論理で見る傾向がある(報復は受けた仕打ちよりも残酷でなければならない)が、聖典は死刑を懲罰と対等(正義)というロジックでとらえる。報復というのは納得できるが、受けた仕打ち以上のものになってはならない。「われ(神)はタウラッの中で定めた。命には命を(死刑)、目には目を、鼻には鼻を、耳には耳を、歯には歯を、そしてあらゆる傷は傷をもって報復するのだと。」
タウラッのこの決まりはユダヤ人が信奉しているだけでなく、キリスト教徒にも影響を与え、ムスリムのアルクルアンにもはっきりと採用されている。これが受けた仕打ちへの最大の罰として同等の報復を与えるという、キサスと呼ばれるものだ。「もし汝が苦痛を望まないのなら、苦痛を与えてはならない。もし打たれることが嫌なら、打ってはならない。殺されたくないのなら、殺してはならない」という教えがそこから汲み取られ、その結果、自分の基本的権利を奪われたくないのなら、他人の基本的権利を奪ってはならないという公理が導かれる。これはユニバーサルな平等原理である。
<正義を超える>
神の目にそして人間の目にも、正義という観念の上にもっと優れて高貴な規範が見えている。すなわち、誤りを犯した者に対してその一部あるいは全部を赦すという形で示される愛だ。ここでの規範は、命には命をもってあがない、目には目をもって報いる、というものにならないのである。神が望み賞賛する別の選択肢がある。アルクルアンのアルマイダの章に言明されているように、賠償あるいは完全な赦しというのがそれだ。「被害者の遺族の誰であっても喜捨(殺害者を死刑にするよう求めず、賠償を要求するか、もしくは完全な赦しを相手に与えること)を行おうとするなら、それが加害者にとっては罪の償いとなる。」一家の家計を支える者の命が奪われた場合は特に、賠償を求めるのは妥当な行為となる。
同等の報復(キサス)・賠償・全面的な赦しなど、殺害者に与えられる罰を決めるのは国でなく被害者の遺族である、ということを聖典が定めている点に注意する必要がある。国は遺族の決定を認定し、その内容での処刑を実施するのである。理由はシンプルで明白だ。事件の負担を精神的社会的に背負うのは国でなく被害者の遺族なのだから。つまり聖書や聖典の中の教えには、死刑を与えることも与えないことも同じように機会が開かれているということなのである。インドネシア人海外出稼ぎ者が外国で体験しているような、襲撃・強盗・長期の虐待などから自分の身を守るためにひとりの人間を殺害したようなケースでは特にそうだろう。
直接にせよ間接にせよ、殺された者がひとりでなく集団であったときには問題が違ってくる。アルクルアンはこの種の犯罪をヒラバあるいはイフサッフィラルドゥルと呼び、社会の破滅をもたらす犯罪としている。最近の言葉で言うなら、人道上の犯罪というものだ。かれらに対する刑罰は、死刑・はりつけ・手足を斬りおとす、といったもの以外にありえない。
ナルコバ組織のボスは言うまでもなく、製造工場オーナーはなおさらのことで、かれらはひとりの人間の生命を奪うのでなく、何世代にもわたって大勢の人間の生命を奪うという人道犯罪者なのだ。この種の犯罪にはコルプシも含まれる。
基本的人権の尊重は、他者の基本的人権尊重の心を一滴でも持っている者に対しては納得できる。他者の基本的人権を歯牙にもかけない人間が世間に対して自分の基本的人権を尊重してくれと要求するのは不合理でしかない。ナルコバやコルプシのように大勢の人間を被害者にする人道犯罪者が目的としていることは、『世の中のできるだけ多くの人間を向こうに回して、かれらから自分が最大限の物質的利益を得る』という一事に尽きることを特記しておかなければならない。
それでもアルクルアンはまだチャンスを残している。もしその人道犯罪者ふたりの刑の執行がなされる前にかれらが心底から罪を悔い改め、すべての犯罪ビジネスから足を洗い、これまで行ってきた犯罪ビジネスで得た穢れた金を全額自主的に返還したことが明らかになった場合、かれらには死刑から免れる権利あるいは罪科赦免の権利が生じるのである。もしそうでなければ、当事者自身あるいは社会と国家にとって、死刑が最善の措置なのである。
ライター: インドネシアモスク評議会副会長、ナフダトゥルウラマ最高役員会顧問、マスダル・ファリッ・マスウディ
ソース: 2012年10月24日付けコンパス紙 "Teologi Hukuman Mati"


「女子割礼禁止に反対するイスラム界」(2013年1月29〜31日)
アルクルアンをイスラム宗教教義の本源とするかぎり、クルアンは女子の割礼についてまったく触れていないため、女子割礼は宗教教義として存在しているものではないと言うことができる。だがクルアンから引き出されたさまざまな見解が一千数百年もの間世の中に流布する中で、クルアンに欠けている内容が宗教教義の一部とみなされてイスラム社会内の生活の場を補完するということも数多く起こっている。女子割礼はイスラム社会の中ですら、見解がふたつに割れている代表的なもののひとつだ。
割礼という行為を意味するキタンというアラブ語はペニスの先端を覆っている皮を切除することを意味しているから、割礼というものは男子のみを対象にするものだという解釈が成り立つものの、では名称についての云々は問わずとも、女子に対する類似行為はどうなのかという質問に対しては、上の知識では答えようがない。もちろん国連までもが女性の権利と保健にからめて女子割礼ゼロトレランス運動を行っているくらいだから、女性にとって有益でないという見方は間違っていないだろう。
しかし宗教というのは奇妙なもので、その宗教の信徒になればそこで重要な価値が置かれている信心深いという人間のあり方の中に、その宗教でだけ称揚されている世間の常識にそぐわない行為がその価値評価のひとつに用いられるということはざらにある。つまり世の中一般では非常識と見られている特定の行為を行なうことでその宗教への帰依の度合いが測られる、というようなケースが少なくないということだ。
ムスリムの間でも、世間一般から篤実な信者であるという評価を受けることが世間から見上げられる元になり、自分へのプライドになるということは普通に起こっている。ここ十年くらいの間、インドネシアの若いムスリムたちの間で、原理主義運動が活発化しているという論評が流れているが、その根底にあるのは人間が一般的に持っている社会的評価への憧れ、つまり自分は善きムスリムとして日常の生活を営みたいという欲求に根ざしたものにすぎない、とわたしは見ている。そのときに問題になるのが、何を自分が行い、またどのような自分であれば、善きムスリムに該当するのかというポイントだ。自分で情報を集め、その内容を分析し、客観的合理的だと思われる結論を出し、その結論に沿って自分の生活を統御するという習慣を持たないひとたちにとって、自分はだれの言うことに従うのかという判断がすべてとなるにちがいない。国政の上層部にいるひとの言うことを採るのか、それとも宗教界のトップが出した判断に従うのか、といったことが個々人が行なう取捨選択作業の内容を占め、言っている内容を突っ込んで分析するようなことは起こらないのが普通だ。封建的な言い方をするなら、社会的に尊崇されている高貴な人物の言うことを信用せず、内容を批判しあげつらうようなことをするのは、その人物を卑しめる不敬の罪を冒して世の中の秩序を乱すことになるのだから。
インドネシアウラマ評議会が2013年1月21日、政府は2010年保健相規則第1636/MENKES/PER/XI/2010号を護持してインドネシアにおける女子割礼の禁止を望む勢力が行なう働きかけに惑わされることのないよう要請するとの表明を行なった。その保健相規則は45年憲法の意図に即したものであり、且つ全ムスリムの総意を反映するものであるとのこと。ウラマ評議会は2010年11月15日に制定されたその保健相規則がインドネシアムスリマへの割礼施術手続きの標準とされることを望んでいるが、割礼施術の有資格者と認められている医療従事者の中に施術プロセスを知らない者が数多く、おまけに女子割礼を行なわない病院まで存在しているのはきわめて遺憾なことである、との声明がそのあとに続いている。2008年にウラマ評議会が出したファッワ(fatwa)には、「男女共に割礼はイスラムの決まりであり誇りである。女性にとって割礼は推奨されるものである。」と表明されている。
女子割礼は女性への基本的人権侵害であるという議論に関してインドネシア児童保護コミッション社会化部長は「女の赤児に対する割礼は信仰の権利を実践する児童の権利を保護しているのであり、割礼禁止はかえって児童の権利を侵害することになる。」との見解を述べている。2002年法律第23号児童保護法では、保護されるべき児童の権利の中に信仰の権利も含まれている。
ウラマ評議会ファッワ委員会副委員長は女子割礼禁止論議について、その禁止はイスラム教義に従おうとするムスリマの権利を侵すものだ、とコメントした。インドネシアの女子割礼はクリトリスを覆っている皮膜を部分的に開く方法であり、スーダンで行われているようにクリトリスを全部切除するようなものではない、と副委員長は強調している。


「インドネシアでビールがバカ売れ」(2013年2月8日)
ハイネケン系列のビンタンビール生産者PT Multi Bintang Indonesiaの2012年第4四半期純売上高は8,489億ルピアで対前年同期比33%増を記録した。そのうちの88%はビールで、12%は他の飲料品というシェア。またフィリピンのサンミゲルの子会社でアンカービール生産者のPT Delta Djakartaも2012年第3四半期の純売上高は5,099億ルピアに上り、対前年同期比28%の成長を示している。
国内ビール販売が好調を示していることの理由をインドネシア飲食品産業連盟会長は、入国外国人観光客の増加と外国系小売店網の拡大がその成果を生んでいる、と説明した。「第一の要因は外国人観光客の増加で、2012年は2011年から5.2%増えて804万人がインドネシアを訪れている。それに次ぐ要因は外国系小売店の販売網拡大で、中でもセブンイレブン、サークルK、ローソンなどのコンビニがアルコール飲料拡売の推進役を担っている。」
インドネシア小売会社協会会長は、「小売業界に対する飲料品需要は絶好調だ。販売高の顕著な上昇がそれを示している。清涼飲料・ソーダ飲料・アルコール飲料のすべてが飛ぶように売れている。地域別で見るなら、バリなど外国人観光客に人気の高い地域が高消費地区になっている。」と最近の販売状況を物語っている。


「神の名のもとに供される隠れ蓑」(2013年6月13日)
2013年2月18日付けコンパス紙への投書"Tentang Cadar di Pengadilan"から
拝啓、編集部殿。重要証人であるネネン・スリ・ワヒユニが病気で出廷できないため、発電所建設汚職疑惑に関わるマレーシア国籍者ふたりに対する汚職犯罪法廷での公判が延期されました。医師がネネンは病気であると表明したのですが、2013年1月16日付けコンパス紙に報道されたように、「(チャダルで)顔を覆っているため、われわれにはかの女の顔色が悪いのかそうでないのかを知りようがない。」と判事団長は述べています。
ずっと以前から被疑者として取り調べられるときはいつも、ネネンはチャダルで顔を覆っています。汚職撲滅コミッションは取調べを受けるすべての者に対して、素顔を見せることを義務付けるべきだと考えます。いかなる方法にせよ、かれらが素顔を覆うことを禁止する規則を作ってください。これは「すべての人間が法の前で同等である」という原理に沿うものであり、上述の判事団長の言葉にあるような困難を避けるためのものでもあります。
どこの国際空港でも、イミグレーションの検査ではチャダルや帽子など、顔や頭を覆っているものを外させるのが普通です。ニュースによれば、チャダルと女性服の下から男性が出てきたという話がかつてありました。チャダルはカモフラージュに使われたのです。裁判所でもそれに倣わなければなりません。ネネンということで法廷に出ている人間が本当はネネンでなかったということが起こり得ないとだれが言えるでしょう。
ましてや、2013年1月17日のメトロTVブレイキングニュースで、クニガン地区のKPKビルが洪水に襲われたとき、そこの拘置所からネネンが避難のために移されるのをカメラがとらえていましたが、写っていたネネンはチャダルを着けていない素顔の状態でした。取調べの場の外では、ネネンはチャダルを着けていないのです。[ バンテン州南タングラン市在住、レンヴィル・アルマツィエル ]