インドネシア住居土地情報2010〜16年


「不動産ブローカー規制がはじまる」(2010年2月6日)
不動産売買の仲介というものは従来インドネシアでひとつの事業セクターという認識が持たれていなかった。それはインドネシアの不動産売買が伝統的に当事者同士の直接取引きを基本にしていたからで、その仲介はビジネスというより情報紹介という意味合いで理解され、仲介者への口銭は当然出るのだが世の中でそれは言葉と裏腹の謝礼という意味合いで扱われるのが普通だった。よしんば仲介者がそんな「売れる」情報を蓄えて紹介してまわっていたとしても、かれらはあくまでも個人ベースの活動を行い、事務所や店舗を構えるようなことは決してしなかった。それはもちろん納税忌避を狙ってのものであったことも言うまでもない。
ところがそんな歴史はいまや昔語りとなり、いまでは海外不動産業者が国内のホテルで外国の物件を展示即売したり、不動産を売りたいひとびとの多くも外国不動産業者の看板を掲げた店舗に販売を委託したりしている。そんな情況にあわせて政府はこれまで無統制だった不動産ブローカー事業に規制の枠をかけるため、2008年に商業大臣決定書第33/M-DAG/PER/8/2008号を制定して一年間の猶予期間を与えた。不動産事業許可は専用のものが用意されるなど制度的な整備も行なわれ、そして2009年10月にその猶予期間が終わったのである。
その結果、外国不動産業者は国内外を問わず不動産物件をインドネシア国内で販売したりプロモーションや展示会を行なうことが禁止された。同時に国内に進出して来ている多数の外国不動産コンサルタントやリサーチ会社も国内での商業活動が禁止され、国内不動産開発業者が開発エリアのフィーシビリティスタディをそれら外国コンサルタント・リサーチ会社にオーダーすることができなくなった。
この外国不動産ブローカーの国内活動規制は、従来野放しだったマレーシア・シンガポール・オーストラリア・香港などの不動産ブローカーが自国の物件をインドネシア国民に紹介販売するのをストップさせること、また合法的な国内不動産ブローカーや外国系ブローカーのフランチャイジーが国内に進出してきた外国業者にビジネス領域を侵食されている実態を回復させて自国企業を保護することなどを目的にしている。特に外国の不動産物件は巨大な市場を形成しているが、外国のブローカーがインドネシア国内で直接販売すれば国庫にはほとんど何も入ってこないということがその規制の強い動機であるようだ。もちろん外国業者が合法的にインドネシア法人を興して事業を行う分には何も問題はない。他のビジネス分野では当たり前のように行なわれていることが不動産ブローカー事業にやっと持ち込まれたというのが今回の不動産ブローカー規制方針であるようだ。


「チャロのほうがベター」(2010年2月8日)
土地権利書手続に関するジャカルタ都民の満足度調査をインドネシア大学戦略開発政策研究センターが行なった。言うまでもなく、満足していると答えたひとは少ない。ところがおかしなことに、自分で手続を行なうと結果は不満だらけだが、チャロを使うと満足度が高まるという現象をこの調査が明らかにした。
インドネシアにはチャロと呼ばれる仲介斡旋業者がいる。当事者と役所あるいは機関との間に立って御用聞きをして報酬を得る人間がそれで、たいていはその当該役所あるいは機関の内部者が関与している。これは明らかに腐敗行為ではあるにせよ、役所や機関の公的窓口も腐敗しているから、チャロを使うほうが多少高くとも、嫌な思いをせずまた時間の浪費も避けることができる。要はパブリックサービスが非能率きわまりなく、おまけに不法徴収金まで取り立てるため、チャロというシステムを繁茂させているのが行政自身であるということが言えるにちがいない。行政機関は国民に、チャロを利用せず行政手続は自身で行なうよう奨励しているものの、国民はより優れているサービスを使うにきまっているわけだ。
しかしこのチャロというのはいわゆる手続代行業の範疇に入るものであり、一般には個人ベースで行なわれるものをチャロ、会社として代行業者の看板を掲げていればチャロでないという規準が用いられ、加えて役所は代行業者の出入りをライセンス制にして金を取るということをしているようだが、それだと友人の手続を代行してあげるのは役所の偏見を招くことになる。
さて土地権利書手続に関する都民の満足度は次のような結果だった。
権利書作成プロセス: 満足45.7% あまり満足でない39.7% まったく不満14.6%
完了までの期間: 満足34.5% あまり満足でない53.5% まったく不満12.0%
手続費用: 満足35.6% あまり満足でない50.1% まったく不満12.3%
代行者のサービス: 満足57.3% あまり満足でない 20.2% まったく不満22.6%
代行者の料金: 満足39.8% あまり満足でない38.1% まったく不満22.2%


「高級アパート内リフトに閉じ込められる」(2010年2月8日)
2009年4月9日付けコンパス紙への投書"Bayi Terjebak di Lift Hampton's Park"から
拝啓、編集部殿。2009年3月3日21時ごろ、ハンプトンズパークタワーAユニットH8の住人であるわたしたち大人5人と生後ひと月半の赤児がおよそ10分間エレベータの中に閉じ込められました。エレベータは停電し、まったく酸素が補給されず、アラームを繰り返し押しましたがアパート管理者側からの救援は何ひとつありません。
エレベータ内が息苦しくなった上に赤児の泣き声でわたしたちはパニックに陥り、精一杯の力でエレベータの扉を押し開こうとしましたができたのはほんのわずかな隙間だけでした。その隙間から外の酸素を交代で吸いながら、わたしたちは友人たちに電話して事情を訴え、救援を求めました。
エレベータの中で10分以上もそんな状態が続き、うだるような暑さと火のついたように泣く赤児の声に堪えながら救援を待ちましたが、救援の手はどこからも差し伸べられません。そうしているうちに友人がアパートにやってきて警備員に急を伝えたので、はじめて事態を知ったアパート管理者側が動き出し、時間をかけて扉を押し開き、わたしたちはエレベータから5階のフロアにやっとのことで救出されたのです。
わたしたちは最終的に救出されたわけですが、酸欠状態のエレベータ内に閉じ込められたときの異常なパニックと、中でも酸欠と暑さを経験したわずかひと月半の赤児の状態にわたしたちはとても不安を感じたのです。これはおとなにとってさえたいへん危険な状況であり、生後2ヶ月に満たない赤児にとってはなおさらのことだと言えるでしょう。
エレベータが停電したのにビル管理部門内の技術担当者が何も知らないというのは何故ですか?停まった原因は何だったのですか?ハンプトンズパーク級のアパート内エレベータに緊急時の通話設備が備えられていないのはどうしてですか?技術コントロール室・警備オフィス・リセプションあるいはそれ以外のところでも、エレベータの異常を感知するシステムが設けられていないのはなぜですか?緊急時の酸素供給がエレベータ内に考慮されていないのはどうしてですか?事故が起こったことをアパート管理者がまったく気付かず、エレベーター内の住人が長時間放っておかれたのはなぜなのですか?
救出が終わったあと集まったひとたちは解散しましたが、その事故の説明をしにきた責任感のあるひとはだれひとりいません。[ 南ジャカルタ市テロゴン在住、プトリ・シマンジュンタッ ]


「それが建築屋のホンネか?!」(2010年2月19日)
2009年4月2日付けコンパス紙への投書"Membangun Tanpa Melihat"から 拝啓、編集部殿。2009年3月18日、わたしはスルポンのポンドッヒジャウゴルフ・アクアマリンクラスターに建築中の自分の家の様子を見に行きました。ところがデベロッパーからの許可書がないと開発エリア内に入れてもらえません。それでわたしはデベロッパーを訪れました。アフターサービス担当者は、家のオーナーが建築状況を見るのは許可されず、例外としてデベロッパーの設計モデルを注文したひとに限って一回だけ特別に許可が与えられる、と言います。わたしはそのケースに該当したので、印紙を貼った紙にその一回だけの日付を記入してサインし、やっと許可書を手に入れました。この規則は新しいもので、以前はこのような制限はなかったのです。
しばらく前にある注文主が自分の家の建築状況を見るため現場を訪れた際にはしごが倒れてその注文主の車にダメージを与え、注文主はデベロッパーのスンマレコンに損害賠償を要求しました。だからこの規則はデベロッパーにとってはそのようなトラブルの発生を避け、また家を見に来た注文主の安全を考慮するために最近作られたものなのです。そのような配慮がわからないわけではありませんが、スンマレコンのような経験豊富な業界大手であればもっと顧客の側に立った対応が取れないのでしょうか?注文主は自分がオーダーした家を受け渡しが終わるまで見ることができない、あるいはデベロッパーの設計モデルを注文した場合は受け渡し以前に一回だけ見せてもらえる。これでは注文主の利益が二の次にされているのではありませんか?このような注文主への待遇は、裏に何かを隠しているのではないかという疑惑を招くものです。[ ジャカルタ在住、エルリアンティ ]


「外国人が狙うのはジャカルタとバリ」(2010年3月6日)
インドネシアの不動産販売を外国人に開放したら、国内不動産価格は暴騰してますます一般国民の手が届きにくくなる。また金持ち外国人に高い利益率で販売できるからデベロッパーはみんな外国人向け高級アパートやコンドミニアムばかり建てるようになり、国民の住居需要を満たすための廉価住宅建設は忘れ去られてしまうだろう。そんな危惧の声が取り沙汰されているのに対して不動産デベロッパー業界者は一様に、外国人に不動産販売を開放しても、それで国民に不利益が起こるようなことにはならない、と否定している。
「土地使用権(hak pakai)の有効期間が延長されたとしても、外国人が購入する高級アパートやコンドミニアムは一等地にあるハイクオリティのものに限られるため数が限られており、中低所得層向けアパートに与える影響はほとんどない。戸建住宅も影響を受けない。購入対象は1ユニット10万ドル以上の物件に制限されるから、その下の層の不動産価格が高騰することはない。デベロッパーがみんな外国人向けコンドミニアムを造るようなことは起こらない。一等地を入手してそこにハイクオリティコンドを建てることがだれにでもできるわけでないからだ。一般国民向け住宅需要は依然として魅力のあるマーケットであることに変化はない。」インドネシア不動産会社組合会長はそう語っている。
PTバクリランドデベロップメント代表取締役は、外国人向け不動産市場は国内全体の中の1%に過ぎない、と言う。「外国人が購入するのはアパートやコンドミニアムだけだ。そんな外国人向け不動産市場が国内の土地価格を高騰させるなど絶対にありえない。外国人がジャカルタで高級アパートを買い漁ったらモジョクルトの土地価格が高騰するか?そんなバカな。せいぜい同じ棟のユニットか、あるいはその周辺にある別のアパートで値上がりが起こるくらいだろう。それどころか、外国人への不動産開放はかえって中低所得層向け住宅建設を促すことになる。政府は税金20%を前納させればよい。その財源で中低所得層向け住宅建設に補助を与えることができる。」
PTリッポカラワチ取締役は、これまででもさまざまな難条件をものともせずに外国人はいろんな手段で住居を手に入れている、と語る。「外国人が住居を持ちたいと狙う場所はジャカルタとバリだ。購入者はデベロッパーとの間で売買契約を交わす。このやり方だと手続はシンプルだから大勢がこの方式を採っている。しかし法的効力はまったく低い。別の方法はインドネシア国籍の親族や友人に名義を借りたり、あるいは自分が勤めている会社の名義を使う。」
ジョーンズラングラサールインドネシアの調査部長は、インドネシアの不動産が廉いからというだけの理由で外国人が買いに来るというようなものではない、と釘を刺した。法規の障害・政治の安定・国のイメージといったことが海外不動産投資の検討条件となるため、政治と経済の安定度が高まることで不動産投資が増加する、と同部長はコメントしている。


「住宅所有補助金制度」(2010年3月11・12日)
860万国民が自分の住居を求めており、政府は低所得層向け積層住宅1千棟建設政策を進めている。昔から行なわれてきた広大な空地に長屋方式簡易住宅を建設する国民住宅政策は、都市部周辺の余地がほとんどなくなってしまったことから平屋住宅をやめて積層住宅に方針転換したわけだ。とはいえ国民の戸建住宅への憧れは依然として強いものがあり、いまはその双方が混在して国民の選択を待っているという状態になっている。しかし住居を作っただけで国民すべてがすぐに自分の家を持てるはずがない。どのようなスタイルの住居であれ、低所得層が購入できるようにしてやるための支援も欠かすことはできない。
政府が国民の住居所有に対して与える補助金は、月収450万ルピア以下の家庭が超簡易住宅で一軒5千5百万ルピア、簡易積層住宅で一ユニット1億4千4百万ルピア以下の価格の物件を購入するケースを対象にしている。対象所得層は更に細分化され、月収350万〜450万ルピアが第?群、月収250万〜350万ルピアが第?群、月収120万〜250万ルピアを第?群として三つに区分し、ローン金利率に補助を与えている。たとえば簡易積層住宅ユニット購入の場合、頭金援助として500万〜700万ルピア、更に金利軽減措置として第?群は年利率9.85%と実金利率との差を4年間、第?群は8.85%と実金利率との差を6年間、第?群は7%と実金利率との差を8年間、政府が負担してくれる。その援助期間が終われば実金利率を購入者が全部負担しなければならない。
ところが2009年度の簡易積層住宅向け国民住宅所有補助金予算を政府は2千ユニット分計上したというのに、年間の補助金支出はわずか62ユニットで終わってしまった。例によって例のごとく、簡易積層住宅が金を持っているひとびとの投資対象とされたのである。かれらは低所得層向けアパートユニットを賃貸するために買い占めたのだ。
ともあれ、政府は従来の補助金制度の内容を変更する方針を立てた。低所得層向け住居建設促進のために低金利率の融資を建設業界に対して用意する金融機関を発足させることになり、その資金は国家予算と住居関連業務を擁している国有事業体に拠出させた資金でまかなわれることを決めた。建設会社はこの超低金利融資と市場で調達した資金を混ぜて低所得層向け住宅開発を行い、資金回収の際の金利率を年間7〜8%のレベルに抑えて販売価格のコスト引き下げを狙うというのがこの政策だ。政府はさらに補助金対象住居の価格上限を廃止することを計画している。これは超簡易住宅や簡易積層住宅の建設コストが土地代を含めるとたいへん大きいバラつきを起こすからで、上限販売価格で売れる家を建てることのできる場所が極度の制限を受けている現状への解決策として出されているようだ。この方針転換によって政府は、月収450万ルピアの国民が価格2億ルピアの住居を購入できるようになるだろうと期待している。
その政府の補助金政策変更に関してインドネシアプロパティウオッチ役員は、補助金対象物件の価格上限撤廃は販売者側の利益を膨らませることになるだけだ、とコメントした。現在でさえ、一部の簡易積層住宅は上限価格に水泳プール、フィットネスセンター、駐車場、ジョギングトラックなど補助ファシリティ費用が上乗せされて販売されており、購入者は法定上限価格を超える金額で購入している。また低所得層にとって住居所有の難関は価格の2〜3割を占める頭金の一括払いであり、頭金援助の内容を政府がもっと考慮することで国民の住居所有は大きく前進するようになるだろう、とも同役員は進言している。


「外国人向け不動産解放政策と国民感情」(2010年3月20日)
首都圏に建てられている豪華コンドミニアムはシンガポールをはじめとする近隣諸国とほとんどひけを取らないクオリティのものが多い。ところがその平均価格は平米当たり1,345米ドルで、シンガポールの10,723米ドルや香港・日本の15,000米ドルの十分の一に過ぎない。この価格差は販売者側にとって強力なセールスアドバンテッジであり、この機会を利用して外国人に売りまくれば大きな利益を手中にすることができる。年間30〜60億ドルの売上がインドネシアに入ってくれば、不動産業界ばかりか国の財政にも大きく貢献することになる。
「住宅購入だけでそれだ。外国人の居住によって日常生活必需品販売ばかりか、外国人がインドネシアで生活するために必要なことがらに対する出費という波及効果が生まれる。たとえば使用人の雇用だ。外国人居住者はインドネシア人を最低ふたり雇用させるようにしてくれと労相が依頼してきた。」スハルソ・モノアルファ国民住宅相はそう語る。歴代の内閣が及び腰だった外国人住居所有問題をSBY第二次団結内閣は積極的な推進政策に転換する意気込みのようだ。
外国人の住居所有を直接的に規制する法規は、外国人の住居所有に関する1996年政令第41号がある。それによって外国人個人の住居所有は積層住宅のみに限定された。しかしもっと遡れば、1960年法令第5号農地基本法が一番の根底にある。民間に供与されるさまざまな土地に対する権利の中で、インドネシアにポジションを持つ外国人個人に与えることのできる権利は土地使用権(hak pakai)のみであることがそこで規定されている。その規定との整合性を持たせるために1996年政令第41号では、インドネシアにポジションを持つ外国人個人が所有できるアパートメントユニットを持つ積層住宅は土地ステータスが土地使用権である国有地に建てられたものとされたが、これは政府が自分で開いた扉を自分で閉めたかっこうになった。土地使用権しか持たない国有地に積層住宅を建てるデベロッパーは現実問題、存在しない。
土地使用権は25年間しか有効でなく、それは更に25年そしてもう一度20年延長できると農地基本法に規定されているが、延長申請が必ず承認される保証などどこにもない。シンガポール・タイ・ベトナム・中国などが与えている100年前後という有効期限に比べてインドネシアの条件は外国人にとってまったく魅力を欠くものであり、外国人の投資を誘致したい不動産業界は土地使用権を現状の細切れから一挙に25年+25年+20年の70年としてその期間の居住を保証せよと何年も前から政府に要請してきた。延長申請という不確定性を排除してやれば、多少とも近隣諸国と肩を並べるイメージを外国人購買層に与えるだろうというのが不動産業界の思惑だ。だが不動産業界が儲かる外国人向け販売を優先するようになれば、豪華コンドの建設ラッシュが起こって中低所得層向け住宅建設は低下し、国民への低価格住居供給はいつまでたっても実現しないのではないかという懸念も生じている。
1996年政令第41号が出された背景には、駐在外国人や子供を留学させている外国人の住居に対する必要性に対処するためという事情があった。しかし今は情勢が大きく変化している。近隣諸国は積極的に外国人の居住に便宜をはかって投資を誘っているというのに、いつまでも外国人を怖がってかれらの居住に規制をかけていてはグローバル競争から取り残されてしまう。「インドサットが、自動車専用道が、銀行が外国人に買われているこの時代に、どうして不動産だけはダメだということにするのか?不動産も外国人に買えるようにしてやれば巨額の資金が国内に入ってくる。おまけに何が起こったところでかれらが不動産を自国に持ち帰るようなことは絶対にできない。かれらが買った不動産はいつまでもインドネシアに残る。パラダイムを変えるときが来ているのだ。外国人に不動産購入をオープンにすることは、外国人に甘い顔を見せ、かれらをえこひいきするというようなことではないのだ。」国民住宅相はそう語ってグローバル経済競争に追随していかなければならない現在の時代背景を強調している。だから1996年政令第41号は2010年中盤には改定される予定だと大臣は語っている。 しかし大臣が言うように、国民感情は依然として違うところにあり、そう簡単に国民がパラダイムを変えてくれるかどうかは疑問だ、と考えているオブザーバーも少なくない。そのひとりはこう語る。「低所得層国民への住宅供給をおざなりにして外国人に住居所有の便宜を図るのはナショナリズムに欠けている、という非難は必ず起こる。これはセンシティブな問題だ。政府はそんな国民の声を論破するために強力な政策解説を用意して国民を説得する必要が出る。更に外国人のアグレッシブな住居購入が始まれば、不動産の値上がりがかならず起こり、今でさえ購買力の落ちている低所得層にとって不動産はますます手の届かないものとなる。住宅所有の扉が狭められることになる。」
不動産業界はそんな声に対する答えを用意していた。外国人が購入できるのはユニットあたり10億ルピア以上のものだけにすればよい。ミドルクラス以下向け積層住宅は100パーセント国民対象のものとし、外国人には売らない。そうすれば外国人による住居購入が相場に与える影響は高級コンドミニアム市場だけに限定される。だがINDEF研究員は、そうはうまく行かないだろう、と業界のアイデアに疑問を投じる。「現在国内には、土地や住宅の値上がりを制御するメカニズムがない。政府はあまりにも市場メカニズムに依存しきっている。その結果土地や建物の値上がりはとどまるところを知らない。所得の伸びが小さい低所得層にとって土地・住宅の価格はますます手の届かないものになっていく。高級コンドミニアム市場で相場が高騰したとき、他のレベルの不動産市場に何の影響も及ぼさない保証はどこにもない。」外国人向け不動産市場の規制緩和政策は、政府が唱導するグローバル経済レベルの話と国民感情のすれ違いを招く惧れが多分にあり、厳しい国民の批判にさらされることになりそうだ。


「賃貸アパート入居率が低下」(2010年3月20日)
2009年の賃貸アパートメント供給は、ケンピンスキープライベートレジデンスの完成、アストンマリーナとプジャテンスイートの賃貸ユニット増加によって18%増加し、総市場は39,715ユニットになった。しかし入居率は0.8%低下して62.9%に落ちた。これは外国人勤労者で短期賃貸契約満了後契約の更新をしなかったケースが多数出たためで、グローバル経済危機の影響が現れたものと考えられている。
カッシュマン&ウェイクフィールドが報告した賃貸アパートメント2009年平均賃貸料は次の通り。数字は月額平米当たりの米ドル金額。
コンドミニアム 14.28、 賃貸専用アパート 14.96、 サービスアパートメント 20.21


「首都圏の宅地価格」(2010年4月8日)
2009年ジャボデタベッ地域における住宅地価格はタングラン市カラワチのリッポビレッジが最高だったとコールドウエルバンカーコマーシャルインドネシアが報告した。一方もっとも廉かったのはバンテン州チレゴンとセランで平米当たり22.5〜90万ルピア。チブブル地区は価格が急騰中で、需要が集中しているのはビンタロ・タングラン市・スルポンなど、また高級住宅用地はクバヨランバルとポンドッキンダ(Pondok Indah)の人気が高い。地区別価格は次のようになっている。
エリア / 平米当たり価格(万ルピア)
Jakarta 160〜320
Cibubur 80〜178
Cileungsi 44〜130
Sentul 65〜150
Depok 90〜240
Bogor kota 45〜250
Serpong 179〜270
Karawaci 170〜500
Tangerang kota 40〜270
Bekasi 35〜150
Serang-Cilegon 22〜90


「今後2年間は廉価アパート建設が増加」(2010年4月12日)
これまでデベロッパーがあまり見向きしなかった中低所得層向けアパートメント建設がこの先2年間はマジョリティを占めるだろう、とプロコンインダが予想している。2010〜2011年新築アパートメントユニット供給は1万1千で、これは過去2年間の実績から倍増。その新規供給の大部分は中低所得層向け廉価ユニットで占められている。
中低所得層向け積層住宅建設は2009年から増加し、これまで高級アパートメント(コンドミニアム)ばかり手がけていたデベロッパーまでが方針を変えて廉価アパートの建設を行い、巨大な需要を持つ中低所得層を狙ったビジネスが急速に回転をはじめた印象が強い。2009年第4四半期に供給された3,454ユニットのアパートは97%が中低所得層向けのものであり、第4四半期の販売も70%がそんな廉価アパートで占められていた。業界は中低所得層向け販売を推進するため購入者に楽な条件をオファーし、分割払い期間の長期化や条件の柔軟性を高め、また頭金割賦も期間を長く取るなどして購入者層の購買力に配慮している。
この状況は政府方針のルスナミ1千棟プロジェクトがほとんど失敗という時点で急速に展開しはじめたもので、そのプロジェクトに加わったジャカルタのデベロッパーは一斉に中低所得層向けアパートメントの建設に乗り出した、とインドネシア不動産会社組合会長は説明している。1ユニット1.44億ルピアという補助金付きで最低限度のクオリティしか持たないルスナミからクオリティをもっと向上させたこの中低所得者層向けアパートメントは、ユニット価格1.8〜2億ルピアの販売価格をターゲットにしている。


「客への無責任情報はここにも」(2010年4月12日)
2009年7月2日付けコンパス紙への投書"SIUP dan NPWP untuk KPA Rusunami"から
拝啓、編集部殿。わたしは低所得者向けアパートのルスナミを購入するため、2008年末にジャカルタのガディンイコンアパートメント販売オフィスを訪れ、二部屋36平米のユニットを買うことにしました。購入契約をした3ヵ月後にわたしは勤務先が変わり、その新しい会社が商業事業許可(SIUP)を持っていなかったことで悲劇がはじまったのです。
わたしはSIUPのことについて住宅取得ローン申請の障害にならないかどうかをマーケティング担当者に尋ねましたが、わたしの上司の納税者基本番号(NPWP)で代用できるという返事でした。それで三回目の頭金分割支払のさいに、ローン申請に必要な書類をそろえて提出したのです。もちろんSIUPの代用としてわたしの上司のNPWPが添えられていました。
五回目の頭金分割払いを行なうまでローン申請が却下されたという知らせがなかったので、わたしはすべて順調に進んでいるものと思っていました。売買契約書にサインするとき、BTN銀行職員からのローン申請に関するインタビューを受け、上司のNPWPでSIUPの代用はできないので、あくまでSIUPを提出するように言われ、わたしは驚いてしまいました。結局わたしのローン申請は却下され、ガディンイコン側はわたしに対して、そのルスナミ購入契約を現金払いで続けるかそれとも最初二回の頭金分割払い分2千1百万ルピアは焦げ付くが契約を破棄するか、どちらかを選ぶよう命じたのです。わたしの月収では現金払いなどできるわけがありません。結局わたしは2千1百万ルピアの頭金をだれかに譲ることにしました。購入希望者を探してくればそのひとは頭金をわたしに払い、ガディンイコンへの頭金はわたしが払ったもので支払済みとなるわけです。ところがガディンイコンはそれに対して2009年6月末までという期限をつけました。わたしは別のルスナミ購入希望者を探しましたが、このルスナミ建設工事はまだ着工されていないため、みんなそれを聞くと二の足を踏みます。結局わたしはわたしの頭金を引き継いでくれるひとを探し出すことができませんでした。
標準的な月収の勤労者にとって2千1百万ルピアというのはとても大きな金額であり、それが失われるのはたいへん心が痛みます。ルスナミは既にこれまであまりにも高くなった戸建住宅を買う能力のない中低所得層向けに作られるものではありませんか。デベロッパーはそんな姿勢で中低所得層を扱うのですか?大儲けするのが目的なら、ルスナミなどという飾り文句はなしにしてアパートを建てたらどうですか?[ ジャカルタ在住、クリスタント・プラスティヤ ]


「外国人の不動産購入意欲は旺盛」(2010年4月24日)
「政府が進めている外国人向け不動産解放プログラムは外国人にきわめて評判がよく、外国の投資家や国内在留外国人から続々と引き合いが来ている。外国人の不動産購入意欲は旺盛で、これまでインドネシアに入ってくる外国からの投資は証券がもっぱらだったが、今後は証券と不動産の二つの流れが形成されるだろう。今年はブルネイ・シンガポール・マレーシアその他各国から投資家がインドネシアを訪れて国内不動産業界者に物件購入の意思を表明している。こんなことはこれまで見られなかったことだ。不動産解放プログラムの基盤となる法規の改定がなされたなら、外貨は滔々とインドネシアに流れ込んでくるだろう。ジャカルタやバリの物件は諸外国のものと比べてクオリティ的に何ら遜色ないのだから。」ジャカルタの不動産業界者のひとりはそう語っている。
スハルソ・モノアルファ国民住宅相も同じ論調で語る。「今年、外国人の不動産購入意欲は前代未聞の盛り上がりようだ。外国人に対する不動産所有規制を定めた法規の改定を求める声は強い。在留外国人も不動産購入に強い関心を示しており、年間20〜30億ドルという外貨が流入してくるのは間違いないだろう。国内の政治情勢は安定しており、また価格が廉いことが絶対的な誘因だ。6万人前後いる国内在留外国人も不動産購入の態勢に入っている。インドネシアにポジションを持つ外国人の住居所有に関する1996年政令第41号の改定案は4月に大統領に提出されて5月に制定されるというのが日程目標だ。国民系か外国系かといった購入時の支払銀行の決定や、国内市場に混乱をもたらさないために外国人が購入してよい物件の条件など、まだ細かい点で確定していないことがらがいくつかあり、それらを早急に決めなければならない。」国民住宅大臣はそう現状を説明している。


「バタムでも外国人の不動産購入意欲は旺盛」(2010年4月24日)
ジャカルタとバリだけでなくバタムも有望な外国人不動産購入マーケットだ。インドネシアリアルエステート会社組合(REI)バタム支部長によれば、およそ6千人いるバタム在留外国人の中で住居を購入しているのは10%程度とのこと。購入者はセキュリティあるいはファシリティの面から高級アパートメントやコンドミニアムを購入している。大半は外国人が個人で購入しており、企業が外国人従業員を住まわせるために購入しているケースは少ない。
「シンガポールやマレーシアの状況と比べると在留外国人で住居を購入している割合はバタムのほうが圧倒的に少ない。シンガポールやマレーシアは90年間の保有を認めているのにインドネシアは25年しかないというのがその最大の原因だろう。政府がそれを75年間に延長すればすぐにでももう10%は在留外国人の住居購入が増加するにちがいない。バタムのデベロッパーが在留外国人に物件を販売する場合、いつもその25年がネックになっているのだから。」REIバタム支部長は外国人不動産購入に関する規制の緩和にそう熱い期待を語っている。


「ジャカルタのコンドミニアム販売は好調」(2010年5月13日)
2010年第1四半期のジャカルタ都内アパートメント・コンドミニアム販売は2009年第4四半期から25%上昇した。第1四半期の販売件数はおよそ1,500ユニットだとジョーンズラングラサールインドネシア役員が報告している。2009年実績は年間を通して2,500件しかなく、今年に入ってからの好転は目覚しいものがある、と同役員は印象を述べている。コンドミニアムだけでも780ユニットあり、残りはアパートメントで低所得層向け積層住宅はそこに含まれていないとのこと。このペースで行けば2010年は4,500ユニットが達成できるのではないか、と期待されている。
一方賃貸アパートメントの入居率はあまり変化しておらず、2010年第1四半期の入居件数は200件しかなかったようだ。


「住宅保有制度が変更される」(2010年5月27日)
国民住宅保有に対する補助金制度のコンセプトを政府は従来のものから大幅に変更した。新コンセプトの運用は2010年7月1日から開始される。これまでの補助金制度では、政府が全国一律に販売価格を定めた家屋をデベロッパーに建てさせ、資格条件をクリヤーする国民に頭金とローン金利の一部を援助するということが行なわれてきたが、物価上昇に対して低所得層の国民所得の伸びが小さく、低所得層に手の届く住宅価格とデベロッパーが建築する住宅コストの折り合いがだんだんとつけられなくなってきた。つまり政府が指定する販売価格の住宅はもう建てられないと建築業界が手を上げたかっこうになったわけだ。
建築業界が家を建てる場合に銀行借入を行なう。当然市場金利率が適用されるため建築コストが上昇する。政府はそこに補助金を使う形にコンセプトを変えてデベロッパーに低コスト住宅を建設させる方針を打ち出してきた。だからこの新制度では補助金の付く住宅価格を政府が規定するということは行なわれない。一方、補助金付き住宅の購入を申請できる国民の条件として月収550万ルピア以下という規定が新たに設けられた。政府の計算によれば、月収550万ルピアの家庭は月額180万ルピアの月賦返済能力を持っているので、それに120ヶ月をかければ2億ルピアとなり、価格2億ルピアまでの住居を購入することができる。購入者が自力で2億ルピアまでの住居を購入できるため、これまで購入者に与えていた頭金や金利への援助はなくなるというしくみだ。
補助金付き住宅購入申請者はNPWP(納税者番号)と国税総局税務サービス事務所が発行したSPT Tahunan(年次納税申告書)の受領証を提示しなければならない。


「コスコサンは人助け」(2010年6月8〜10日)
インドネシアにも昔から下宿屋はあった。昔の日本も同じで、普通の民家の一部屋を大学生などの下宿人に貸すというビジネスが行なわれていた。日本でもそのような、他人でありながら家族扱いをするという美風が存在していたのだが、いまやそんなことは考えにくい時代になってしまった。インドネシアでも同じで、kekeluargaanという言葉が示すように家族的に物事を処理し、他人を遇するというのが今でも美風とされているのだが、下宿については日本と似たような状況になっている。要するに、大家の家庭内に他人を受け入れて家族の一員のように遇することを行なっている下宿はもうほとんど希少価値になっているわけだ。だからいま一般的なのは、互いの私生活の接点を極力減らす構造にして部屋を用意し、それを貸すという貸室スタイルで、見方によってはかなりアパートに近い。いまコス(kos)あるいはコスコサン(kos-kosan)と呼ばれるものはそんな雰囲気が大半を占めている。コスが多いのは大学・繁華街・オフィス街・モールなどの近辺だが、大きな病院の近くにもコスがたくさんある。つまり病院に通う患者がそんなコスの利用者なのだ。
インドネシアは国民所得に比べて医療費が高い。そして国が行なっている健康保険制度も全国民をカバーするものになっていない。だから庶民の多くが今もってドゥクン(魔法医)を利用し、出産もお産ドゥクンかせいぜい産婆で、現代医学との接点はかろうじて社会保健センター(Puskesmasつまり保健所)があるものの一般医すらいないプスケスマスも少なくない。そんな一般庶民がどうしても病院に入院しなければならなくなったとき、かれらは入院を早々に切り上げて病院近くに下宿し、通院治療に切り替える。そうしなければ経済的に立ち行かないからだ。
中央ジャカルタ市チプトマグンクスモ(Cipto Mangunkusumo)病院に近いメンテン地区プガンサアン町キミアウジュン通りのコスにウランはもう2ヶ月も滞在している。脊椎カリエスを病んでいるウランはランプン州に住んでいる。ところがランプン州にその病気の治療が十分に行なえる病院がないため、ジャカルタのチプトマグンクスモ病院に照会されてきた。入院して手術を受けたあと、ウランは2ヶ月間通院しなければならず、ランプンからジャカルタに通うのは経済的にたいへんなためジャカルタでコス住まいすることにしたのだ。
「ランプンからトラベル使ってジャカルタまで片道ひとり20万ルピア。でも家族が付き添って3人でくるから一回病院へ行くだけでもうたいへん。州間長距離バスだともっと廉いけど、病院まで3回乗り換えなきゃいけない。ウランはまだ立ち続けるのがたいへんだから、かわいそう。だからコスを借りることにしました。ひと月65万ルピアで済むから。」ウランの母親はそう語る。ウランたちが借りている部屋は2.5x4メートルで物入れ棚とマットレスが備え付けられており、電気代と水道代は室料に含まれている。マンディ場は2ヶ所あって、コス4室の住人たちが共同で使っている。トイレはおしゃがみスタイルでウランにはきついが、「贅沢は言えない。だってどうしようもないもの。」とウランは諦めている。
その下宿屋の通り向かいにも病院通院者を受け入れてくれるコスがある。イカは自宅の2階の倉庫を改造してコスビジネスを始めた。3x4メートル一部屋だけのビジネスだが、借室人の病状に合わせて簡単な治療補助も行なう。部屋代はひと月60万ルピア。マンディと洗濯のための水や電気代は部屋代に含まれている。そして借室にはマットレスと扇風機が用意されている。
その辺りはチプトマグンクスモ病院のすぐそばで、通院も歩いて行けるし、近所にパサルもあって食事を摂るのも楽だ。しかしもっと部屋代の経済的な借室を望むなら、少し離れた場所にあるコスでも通院患者を受け入れてくれる。クナリ通りにあるコスはアパート風に12室並んでいるが、マンディ場トイレは共同だ。そこは部屋代が最低で35万ルピア最高は60万ルピア。部屋は3x4メートルと2.5x4メートルの二サイズあり、部屋が大きく表に近いと部屋代が高い。そこは通院患者を受け入れるとはいえ、呼吸器系疾患や伝染性の病気を抱えているひとは断られる。他の借室者に迷惑になるといけないから。
チプトマグンクスモ病院周辺でその商機を生かしている民家は多い。もちろん通院者だけでなく、看護婦や病院職員の中にも下宿需要がある。通院者はたいてい家族が付き添って一緒に暮らすから部屋のサイズは大きめ。下宿する看護婦は一人暮らしだから部屋は小さくてよい。それで同じ部屋代ということはありえない。看護婦の部屋代は通院者用の半分程度。
チプトマグンクスモ病院で治療を受けるひとたちのコス需要は大きい。1990年代はコスビジネスを行なう家がまだ少なかったが、いまでは大幅に増加した。たいていのコスが満室になっているのに、新たな通院者がコスを探しにやってくる。病院近辺のコスはかれらの闘病に経済的な支援を与えているのだ。


「外国人に土地付き住居購入を許すな」(2010年6月8日)
政府の外国人向け住宅購入条件緩和方針に対して国会をはじめとする守旧派の抵抗が強いことから、外国人への不動産解放はトーンダウンしている。国土庁長官はバリで開催された国際リアルエステート連盟会議の合間に、国民住宅相の言う解放政策は土地なし住宅に限定されることをまず確認してほしい、と表明した。その次に国民住宅相は外国人が購入してよい積層住宅物件の価格帯を決めることが必要だとのこと。
「外国人に保有が認められる期間を長くするのは出来ない相談だ。不動産業界が問題にしているのも期間に関するものだ。インドネシアの法規では、現行以上の期間を与えることができない。ただし延長と更新のメカニズムは存在している。たとえば70年という期間を与えることはできるものの、国がその内容をチェックするのが前提だ。土地の権利内容に即しているなら延長も更新も自動的にできるが、合致していなければそこで終わりになる。
自国民に25年が与えられているなら、外国人も同じにしなければならない。外国人に自国民以上の期間を与えるわけにはいかない。それとは別に、不動産購入が外国人のマネーロンダリングに利用されることがないよう、それを防止する規則が用意される必要がある。さらに不動産を購入した外国人がそれを売り戻すのにどういう条件にするのか?オーストラリアでは外国人から外国人への転売が禁止されており、外国人は必ず新築物件を買うことになっている。シンガポールでも外国人が買えるフロアが何階以上という規制がある。国民住宅相の言っている方針は大臣レベルの話にとどまっており、関連省間での意見統一がまだ行なわれていない。外国人不動産所有問題は法規が存在しているのだが、整合性が十分取れておらず、そのため外国人にとって違法のチャンスを生み出している。たとえば外国人がインドネシア人の名義を使っていろんな方法で不動産を持っている。そんな抜け穴は塞がなければならない。」ジョヨ・ウィノト国土庁長官はそう述べている。


「クマンビレッジは売行き好調」(2010年6月10日)
PTリッポカラワチが開発しているクマンビレッジレジデンスは既に5つのタワーが完成して分譲実施中。分譲ユニット総数1千1百のうち8百が売れているそうだから、高級アパートメント購入意欲はあいかわらず旺盛だと言えよう。クマンビレッジレジデンスは更にタワーを3つ建設中で、それが今年8月に完成すれば7百ユニットが分譲ユニットに加わる。この高級レジデンスはユニット価格が20〜25億ルピアで支払はBRI銀行のアパート住宅保有ローンが利用でき、頭金15%で残額は三回の分割払い。頭金は30%が通例だが、BRI銀行はこの物件に対してそれを半分に引き下げている。
外国人向け住宅購入条件が緩和されれば販売は一気に25%アップするだろうとリッポカラワチ取締役は述べている。しかしあれほど声が高まった外国人向け住宅販売の規制緩和案も、農地法の土地権利条項改定は決して行なわれないだろうとの守旧派の反撃に水をかけられたかっこうで、その後この話はまるで火が消えたようなありさまに見える。
クマン地区はもともと外国人に人気のある居住地区で、外国人向け住宅販売条件緩和のイシューが高まる前からその地区の30〜45%が外国人の所有になっており、企業の購入形態やインドネシア人の名義を使った購入が一般的に行なわれている。


「賃貸アパート入居外国人が増加」(2010年6月24日)
グローバル経済危機で減っていたエクスパトリエートがまた戻ってきている。南ジャカルタ市メガクニガン(Mega Kuningan)地区の高級賃貸アパート、オークウッドプレミアコスモ(Oakwood Premier Cozmo)では、昨年75%まで低下した入居率が今年は88%にアップしていると同社販売担当取締役が明らかにした。今年上半期の増加はヨーロッパ・アメリカ・オーストラリア・中東からのビジネスマンによるものとのこと。入居者は最低1日、長い人は1〜2年という予約になっている。同アパートの顧客はジャカルタでの快適さ・清潔さ・保安を求めてオークウッドにやってくるそうだ。
2010年1〜4月の入国外国人数は全国216万人で、前年同期実績189万人から大幅に増えている。


「ジョクジャで土地所有権を持てない印華人」(2010年7月28日)
2010年5月30日付けコンパス紙への投書"Hak Milik Tanah WNI Nonpribumi"から
拝啓、編集部殿。わたしはジョクジャの貧困家庭に生まれましたので、たいへん低い学校教育しか受けていません。その低い知的能力を思えば、ジョクジャの頭脳優秀なひとびとと競い合うなど思いもよらず、スマトラで自分の道を切り開こうと数十年前にジョクジャを去りました。わたしの妻は印華系です。
わたしはジョクジャ特別州スレマンに土地を買って質素な家を建てました。そこは今は亡きわたしの祖父がオランダ時代・日本軍政時代・共和国独立時代の三代にわたって町長を務めた場所なのです。
ところが1975年3月5日付けジョクジャ特別州副知事指示書第K.898/I/A/1975号を読んでわたしはまるでいきなり雷に打たれた思いがし、それ以来わたしは不安にさいなまれるようになりました。その内容は要するに、ノンプリインドネシア国籍者に土地所有権ステータスの交付を禁じるものだったのです。 もしわたしが先に世を去ったら、印華系の妻は今あるわたし名義の土地証書を即座に取り消されて土地は国、つまりジョクジャ特別州政府に取り上げられることになるのでしょうか?その不安がわたしの頭から去りません。[ スレマン在住、ハルトノ ]


「高級住宅販売が低下」(2010年8月6日)
2010年上半期ジャボデタベッ地区高級住宅販売は2009年下半期から低下した。価格が一軒あたり2億5千万ルピアを超える物件の2010年上半期販売状況は平均ひと月175.1件で前半期の平均181.8件から減少したことをカッシュマン&ウェイクフィールドインドネシアが報告している。この調査は50Ha以上の開発住宅地でまだプライマリーマーケットにあるものを対象にしたもので、二次マーケットは調査対象外にされている。カッシュマン&ウェイクフィールドはその現象について、デポッ(Depok)・ボゴール・ブカシの住宅販売低下に引きずられたものだとコメントした。物件数が減少したものの、販売総額はひと月平均968億ルピアから1,067億ルピアに上昇しており、開発会社の値上げ方針が市場に受け入れられたことを示している。
需要の活発なのはタングランとジャカルタで、ジャカルタは一軒10億ルピア前後、タングランは一軒6〜7億ルピアの高級住宅需要が好調であり、中級住宅需要はブカシが旺盛で一軒5億ルピア前後、ボゴールは取引最高額が一軒2.5億ルピアというレベルにある。
ジャボデタベッ地区2010年上半期の新規住宅供給は5,574軒で総数は238,715軒となり、入居率は78.5%に達している。


「難しくしてやれば、もっと金が取れる」(2010年8月13日)
2010年6月4日付けコンパス紙への投書"Tidak Terima SPPT PBB"から
拝啓、編集部殿。北ジャカルタ市に対象物件を持っているわたしは毎年期日までに土地建物税を納めているというのに、今年は土地建物税請求書が発行されないため困惑しています。わたしはその対策としてコジャの税務サービス事務所を訪れて納税者拡大業務担当者と面会しました。ところが回答は口頭でしかもらえないのです。
理由をコジャ税務サービス事務所から文書で出して欲しいと求めたところ、それはできないと言われ、反対に納税者が土地建物税請求書の発行を要請する手紙を作って提出するよう要求されました。政府は納税者が正しく遅滞なく納税することを求めている一方で納税者に困難を与えるこのありさまにわたしはとても困っています。[ ジャカルタ在住、ソフィウディン ]
2010年6月23日付けコンパス紙に掲載された税務署からの回答
拝啓、編集部殿。ソフィウディンさんからの2010年6月4日付けコンパス紙に掲載された投書に関して次の通りお知らせします。コジャ税務サービス事務所は2010年4月23日付けで文書番号第S-380/WPJ.21/KP.0406/2010号の手紙を送って問題のフォローを行ないました。土地建物税請求書は主管者の確定作業が行なわれるまで発行できません。ソフィウディンさんが更に説明を必要とされているなら、北ジャカルタ市ラヤプルンプンスンプル通り10A番地のコジャ税務サービス事務所にコンタクトしてください。[ 国税総局北ジャカルタ地方事務所長、ジャリンタル・シジャバッ ]


「外国人の不動産所有問題はタイミング待ち」(2010年8月23日)
不動産開発業界の要望に押されて外国人の積層住宅購入により長い使用期間を与える方向に傾いていた政府は、国民諸階層からの強い反発を受けて2010年5月に法規改定計画を延期すると公表した。しかし外国人購入希望者や不動産開発業界は依然として政府に対し、不動産保有条件の改善を求めている。
政府がそれまでの動きを一旦延期すると決めた2010年5月、それまでコンドミニアム購入を計画していた外国人の多くが計画を取り止めてしまった、とPTリッポカラワチ取締役は語る。「しかしかれらは購入の強い意向を持っており、政府が現在の法規を改定するときを待っている。かれら自身はすぐにでも購入をと考えていたようだが、たいていのケースでは弁護士が様子を見るように奨めたようだ。リッポはクマンビレッジに外国人向けコンドミニアムを5棟建設する予定にしており、外国人の生活様式に合わせてペットの屋内飼育も可能なように作ってある。既に建設済みの3棟の購入者のうち35%は外国人だ。だが不動産売買証書の内容は現行法規に従ったものであり、かれらにとってその証書は法的効力がたいへん弱い。インドネシアに長年滞在しているエクスパットたちはその弱点について納得して購入している。外国人向け不動産イシューは多くの国で報道されており、かれらはインドネシアにやってくるたびにその問題を問い合わせてくる。」
スハルソ・モノアルファ国民住宅相は外国人の不動産保有条件問題に関して、「政府は最初1996年政令第41号の内容を緩和する方向で考えていたが、この問題は住居・住宅に関する1992年法令第4号の法改定を行なう中に盛り込むことに方針を変えた。そのほうが法的パワーは強い。政府は不動産業界の望んでいる形が国民経済に大きい影響をもたらすことを十分に理解している。」と述べている。


「インドネシアの地価はメチャ安」(2010年9月4日)
グローバルプロパティガイド誌が報告した2010年第2四半期アジアの国別住宅用地価格番付でインドネシアの土地はたいへん廉いという結果が出ている。この番付は各国の不動産販売広告から得られたデータを新築販売・中古販売・賃貸など物件ごとに分析された指標を用いて算出された平均価格で、アパートメント・コンドミニアムあるいは工場用地から都市部のオフィス地区などで居住施設が併設されている土地の価格が採られている。それによれば米ドル換算された国別の平米当たり土地価格は次の通り。
香港 16,422、 日本 12、884、 シンガポール 11,324、 インド 10,265、 中国 5,449、 台湾 5,251、 タイ 3,072、 カンボジャ 2,668、 フィリピン 2,033、 マレーシア 1,424、 インドネシア 1,381
カッシュマン&ウェイクフィールドインドネシアが報告しているコンドミニアム用地価格は平米あたり450万ルピアから1,880万ルピアというレンジにあり、グローバルプロパティガイドが報告している数字を裏付けている。コンド用地として見ても、インドネシアは格安という印象が強い。


「土地建物税」(2010年9月14日)
土地建物税(Pajak Bumi dan Bangunan)は居住もしくは商業用途に使われている土地と建物に対して課される税金で、これは基本的に地方自治体の収入になるのだが中央政府国税総局がその税務一切を取り仕切っている。土地建物の課税方法は一定税率を土地と建物の想定販売価額に掛けて算出されるもので、税額計算書の中に対象物件のNJOP(課税対象販売価額)が示される。土地のNJOPはあるブロックで一定だが、建物は千差万別であるため税務署の査定が行なわれて決定される。家屋の広さや使われている素材によってグレードが分けられ、風が吹けば壊れるような掘建て小屋の販売価額が一番廉い。不思議なことに家屋のNJOPは年々上昇して行くので税務署の言う販売価額と市場バリューとの差は広がるばかりだ。土地のNJOPもある期間を過ぎると上昇して行くが、だいたい実際の土地相場より少し低目になっている。商業地の土地相場が近接する住宅地より高いのはいずこも同じで、だから商業施設のあるブロックのNJOPを高く設定すれば税収が増える。中央政府が土地建物税の税務を地方政府に引渡そうとしないのは地方政府が地元収入アップをはかってNJOPを暴走させるのを恐れているからで、国民生活を安定させるためにいつまでも中央政府に握っておいてもらいたいもののひとつだ。
それでも土地建物税の税務に関して国民から苦情のタネは尽きない。バリではヌサドゥア地区の小島に建物がある。国税側はそれに土地建物税をかけたが、住民から苦情が来た。その建物はプラ(ヒンドゥ寺院)であり、ひとは住んでいないので課税対象外である、と。その真偽を判定するために国税側はなんとインターネットのグーグルマップでそのロケーションを調べ、住民の言っていることが正しいと結論付けて課税を取り下げた。国税側は全国の土地建物税税務事務所に対して、グーグルマップを活用して税務の遂行を行なうよう指令しているが、国税オブザーバーのひとりは、課税対象査察を税務職員・独立鑑定人・地元政府職員が出向いて調査するのがあるべき姿だ、と批判している。


「住宅購入に関連する訴えが増加」(2010年9月21日)
インドネシア消費者保護財団に届出のあった消費者からのさまざまな権利侵害に関する訴えの中で、住宅購入に関するものは毎年トップファイブに入っている。2008年は、総件数428件中不動産関連は49件、2009年は総件数501件に対して72件で、対前年比46%のアップとなった。。訴えの対象になっている住宅はロワーミドル向けからアッパーミドル向けまで幅広く分布している。
インドネシアでは購入品が何であれ、総じて売り手が強い立場に立つ。買い手が強い場合はもっぱら価格交渉に焦点が絞られ、売り手の約束履行に関する責任追及は比較的弱い。特に住宅購入の場合は取引が長期間に渡るため、売り手が金を手に入れたなら半年前一年前の約束など履行しないまま買い手を相手にしなくなる。金の切れ目が縁の切れ目というのは男女間でなくともふんだんに起こり、買い手に金を払わせる手段がなくなれば、売り手はその買い手と縁を切って新しい買い手を捜し始める。
さて消費者保護財団のデータによれば、住宅購入の苦情のトップを占めるのは納期遅れで、全体の25〜30%にのぼる。次に多いのは家屋や土地の権利証書がいつまでたってももらえない問題で、契約に従って支払を済ませたというのに売り手は約束した手続を完了させようとしない。消費者とデベロッパー間の売買契約書も内容が露骨な売り手優位になっていて、消費者の権利が踏みにじられている条項が臆面もなく記されている。住宅地を造ったデベロッパーが、パンフレットや口約束で表明している地区内の社会施設や公共施設を作らないケース。そして住宅の建築クオリティが標準以下というもの。
政府は消費者係争調停機関を設立するという方針を10年も前から続けているが、計画された4百ヶ所に対して実現しているのはやっと34ヶ所。不動産分野の法務専門家は政府の消費者保護姿勢がきわめて弱いと批判している。「何が起こっているかと言えば、政府が消費者に関心をほとんど払っていないということがらだ。政府は消費者保護をほとんど行なっていない。不動産消費者はデベロッパーに独力で立ち向かうように仕向けられている。」政府の姿勢を専門家はそう論断している。


「土地関連諸税の免除」(2010年9月28日)
政府は一部国際機関に対し、土地権利取得税(BPHTB)と町村土地建物税(PBB P2)の免除を与える規則を制定した。2010年8月27日付け大蔵大臣規則第147/PMK.07/2010号と第148/PMK.07/2010号がそれ。この措置は地方税地方課金に関する2009年法律第28号に則したもので、そこではそれら地方自治体収入の免除を国際機関に与える権限が大蔵大臣に認められている。
免除が適用される国際機関のインドネシア事務所はその機能と職務外で事業や別の活動を行っていないことが条件となる。大蔵大臣が定めた免除対象機関は次の通り。
1)IMF,UNDP,FAO,ILO,UNHCR,UNIC,Unicef,UNESCO,WHO
2)技術協力協定締結国の代表機関: オランダ・ロシア・西ドイツ・ポーランド・フランス・アメリカ・スイス・イタリー・ベルギア・デンマーク・韓国・フィンランド
3)コロンボブラン合意国の代表機関: オーストラリア・カナダ・インド・日本・ニュージーランド・パキスタン
4)文化交流協定締結国の代表機関: オランダ・日本・エジプト・オーストリア
5)その他公的機関: アセアン・ECC・SEAMEO事務局、日本輸出入銀行、AREMTRC、NORAD、FPP Int.、PCI、デンマーク児童救済機構、IDRC、WWF、人口カウンシル、NLRA、MCC
6)その他民間機関: アジアファウンデーション、ブリティッシュカウンシル、CARE、CCF、OXFAM


「インドネシアへ来るとたいていこうなる!?」(2010年10月5日)
2010年8月7日付けコンパス紙への投書"Nama Besar Pengembang Bukan Jaminan"から
拝啓、編集部殿。シンガポールのケッペルランドとモデルンランドという著名デベロッパーの名前に惹かれて、2008年3月わたしはジャカルタガーデンシティで住宅を一軒買いました。家の引渡しは2009年12月で、保証期間は6ヶ月です。わたしは2010年3月末に入居しました。
ところが二階のトイレで水漏れし、女中部屋に滲水しました。コントラクターが修理しましたが、何ヶ月もかかっているのに完全に直せません。直ったと言われてトイレを使うと、また水漏れです。修理してもしても、水漏れが直りません。水はそれどころか台所からガレージにまで滲出するようになりました。
デベロッパーはカスタマーフォースユニットという専門チームまで編成しましたが、消費者であるわたしが専門チーム事務所にEメール、電話あるいは直接訪問して苦情を訴えても、この専門チームの反応はスローでフォローが弱いように思えます。その結果わたしと夫が直接コントラクターに電話しなければならないありさまなのです。
話では2010年に国際住宅計画連合が世界第二位のランキングを与えたというこの住宅地に住めてわたしはとても誇りに感じているのですが、半分は水が滲みて天井が抜けそうになっているガレージは実に対照的な姿です。
シンガポールで著名なデベロッパーとして大きな看板を掲げているケッペルランドの偉大な名声も、満足できるサービスを保証するものではありませんでした。その一方でデベロッパーは最新の住宅やクラスターの販売に大攻勢をかけており、家を買ってしまった消費者に対するフォローは等閑にふされているのです。[ ジャカルタ在住、イェニー・クスティジャニ ]
2010年8月26日付けコンパス紙に掲載されたジャカルタガーデンシティ運営者からの回答
拝啓、編集部殿。イェニー・クスティジャニさんからの2010年8月7日付けコンパス紙に掲載された投書についてお伝えします。イェニーさんのお宅の修理は2010年7月に完了し、ご本人は満足してくださいました。[ ジャカルタガーデンシティ社長、リム・センビン ]


「シマトゥパン通りのビル建設は抑制方向」(2010年10月26日)
2010年不動産セクターの首都CBD地区投資額は4.75兆ルピアに達する見込みだとインドネシアリアルエステート会社ユニオン(REI)会長が発言した。ジャカルタのスディルマン通り・タムリン通り・クニガン地区・サトリオ通り・ガトッスブロト通りなどCBD地区の住居オフィス用地需要は20万平米に達し、最新の地価は平米当たり1.5〜2千万ルピアであることから、その総額は3〜4兆ルピアにのぼると計算される。またシマトゥパン(TB Simatupang)通りを中心とした南ジャカルタの住居オフィス需要は5万平米と見込まれ、こちらの地価は1.2〜2千万ルピアであるため平均1.5千万として総額7千5百億ルピアと算出され、その金額は2009年実績6千3百億ルピアの2割増という感触にフィットする。その結果ジャカルタのCBD地区における総額は4.75兆ルピアになるだろう、とのこと。
つまり今年は不動産セクターの土地投資が2009年の15〜20%増しになりそうであり、トップエリアは依然としてジャカルタのゴールデントライアングルがオフィスビル建設の一等地としての地位を維持している。一方南ジャカルタのシマトゥパン通り周辺もインフラ向上に伴ってオフィスビルと高層住宅の建設が盛んになっている。このエリアはまだ建物が建てこんでおらず、雨水浸透も良好であるため出水のリスクがジャカルタの他のエリアに比べて比較的小さい。この地区のオフィスビル建設に投資している外資のシェアは50%を超えているようだ。一方高層住宅は国民系デベロッパーが激戦を展開している。シマトゥパン地区でのビル建設ラッシュに南ジャカルタ市庁はその動きを抑える方向に回っており、過密状態を招かないよう注意を払っている。
ジャカルタで今年活発に高層ビルを建設しているデベロッパーは、アグンポドモログループ、リッポグループ、パクウォンジャティ、バクリランドなど。


「外国人の住宅所有に関する法規改定は年内に」(2010年10月27日)
政府が準備しているインドネシアにポジションを持つ外国人の住宅所有に関する1996年政令第41号改定の中に、外国系不動産デベロッパーへの融資を規制する条項を織り込むよう国内不動産デベロッパー業界が求めている。オフィスビル・アパートメント・土地や土地付き住宅などの不動産開発を行なうデベロッパーを国民系と外国系に区別し、外国系への国内金融市場からの融資を禁止して不良債権発生リスクをミニマイズせよというのがその趣旨。
政府は国内不動産業界がこれまで求めていた外国人に対する住宅購入の保証期限延長による振興にいよいよ本腰を入れる構えで、1996年政令第41号をその方向性を持たせて年内に改定する意向。同時に住居住宅に関する1992年法律第42号と積層住宅に関する1985年法律第16号も同時に改定されて、外国人の住居所有条件を緩和させる考え。
住宅住居デベロッパー協会は政府の進もうとしている方向性に賛同を表明する一方、その政令の中に新たな条件をいくつか設定するよう要請した。そのひとつは外国系デベロッパーへの国内資金融資禁止で、また外国系デベロッパーへの不動産関連課税は国民系よりも高いものにせよとも求めている。国民系デベロッパーが外国に進出する場合同じように扱われるのはほとんど例外がなく、インドネシアだけが外国系を優遇する必要はないという主張がそれだが、国内資金の融資を禁止することによって不良債権が発生しても国内金融界への影響は小さいものになるというメリットもある。国内200銀行中の80行は既に外資に支配されているのはさておいても、国有銀行は絶対に外国系に融資することがあってはならない、と副会長は強調している。


「公務員の犯した間違いは国民が訂正をお願いせよ」(2010年10月27日)
2010年9月14日付けコンパス紙への投書"Nama di Surat Pajak Diubah secara Sepihak"から
拝啓、編集部殿。ボゴール県チビノン郡タジュルハラン町ササッパンジャン村カルティカスジャトラ住宅地内の住宅正式所有者であるスヤティの遺産相続者としてわたしは過去10年間その家の土地建物税を欠かさず納めてきました。ところが2010年の土地建物税税額通知書を受取って驚いてしまいました。住所は変わっていませんが、知らない他人の名義になっているのです。これまでの課税対象番号は32.03.191.012.000.9035.7だったのに、スハルソノ名義で番号も32.03.191.012.025.0318.0に変わっていてスヤティの名前はどこにも見当たりません。その家がだれかに売られたわけでは決してありません。
わたしは8月10日にチビノン一級税務サービス事務所を訪れてこの問題を訴えました。サービス事務所のムジさんの話では、2009年末にそのエリアのデータ取り直しが行なわれたためだろうということでした。そのとき、その家は改修工事中だったので、空き家同然になっていました。ムジさんによれば、その家を調査に訪れた係員が隣人からデータを得たのだろうということでしたが、当方の関係者の中にスハルソノという名前の者はおりません。するとムジさんはわたしに、土地建物税税額通知書の名義変更依頼書をチビノン一級税務サービス事務所に出すよう勧めたのです。
これが公務員の仕事のやり方ですか?土地建物税のデータを好き勝手に変更しておいて、わたしが行なったわけでもない間違いを修正するためにわたしがそれを依頼するのですか?職員を監督している当局者にお願いします。わたしが依頼書を出したり、チビノン一級税務サービス事務所に出向いたりすることなしに、その土地建物税のデータを修正してください。2010年8月20日の納税期限日はもう過ぎているのです。[ ジャカルタ在住、ディア・プルナマ・デウィ ]


「外国人への不動産開放は段階的」(2010年11月12日)
政府はいよいよ外国人向け国内住居販売の門戸開放に向かって重い腰をあげた。政府の方針はインドネシアにポジションを持つ外国人の住宅所有に関する1996年政令第41号を一年以内に改定するというものだが、その前に積層住宅法を成立させる動きに入っている。積層住宅法案は現在国会審議中だ。国会は外国人の住居保有を積層住宅だけに限定し、土地付き住宅は決して認めないという姿勢を表明している。
1996年政令第41号改定案として政府は外国人に認める住居保有のステータスを使用権と賃貸権だけに制限し、農地基本法で定められている使用権の認可期間25年+20年+25年を一括70年間与えるように変更する考え。しかしその方針を国土管理庁は1960年法令第5号に違反しているとして反対しており、ましてや農地基本法の改定などもってのほか、という姿勢を示している。国民住宅省デピュティ補佐は、政令第41号改定の第一歩はそこまでとして、一括70年案の国土管理庁に対する説得を行なう構え。
ジョーンズラングラサールインドネシアのリサーチヘッドは、外国人がインドネシアの不動産を購入する場合、最大のポイントになるのは不動産のステータスだと言う。「外国人向け住居のステータスが使用権で認可期間25年しかなく、時に手続がたいへん困難になる延長を強いられるのなら、インドネシアは他のアジア諸国との競争に絶対に勝てない。もし1996年政令第41号の改定内容が使用権25年間という現状のままであれば、すべてが画餅に終わる。ましてや使用権ステータスの不動産を抵当に受け付けるところはないのだから。外国人への土地保有認可期間は中国でさえ99年でマレーシアやシンガポールは70年。カンボジアでさえインドネシアより長い。インドネシアの法規はややこしすぎる。シンガポールではフリーホールド(所有権)とリースホールド(期限付き所有権)のふたつしかなく、たいへんシンプルだ。」
ステータス以外の問題としてあがっているのは、外国人が購入できる物件に最低価格条件を付けることで、外国人が低所得層向けアパートや住宅を購入するのは認められないと行政から業界までが意見を一致させている。国民住宅省は業界を誘って最低金額検討にかかっている。


「受取った金は戻せないとみんな言う」(2010年12月15日)
2010年10月4日付けコンパス紙への投書"Iklan Menyesatkan"から
拝啓、編集部殿。「100万ルピアで家が手に入る」というチネレパークビュー住宅地開発会社の宣伝にわたしは興味を惹かれました。デポッ(Depok)〜チネレ(Cinere)の主要道路のあちこちにその垂れ幕が貼り出されているのですから。
去る8月1日、わたしはそのマーケティング事務所を訪れて直接100万ルピアを支払いました。家が手に入るように・・・
しばらくしてから、開発会社側は頭金2千万ルピアを要求してきました。そして住宅取得ローンの手続が終わったら更に5千8百万ルピアを納めるように、とも。
そんな大金を持っていないのでわたしはこの話を拒否し、既に納めた金を返すよう求めました。最初開発会社側は返金プロセスに一週間の時間がかかると言っていましたがあとで言葉を変え、取締役が市外に出張しているので返金できないと言ってきたのです。消費者を惑わせるあのような宣伝は実に不愉快です。[ 南ジャカルタ市在住、ワディ・アフリアディ ]
2010年0月27日付けコンパス紙に掲載されたチネレパークビューからの回答 拝啓、編集部殿。2010年10月4日付けコンパス紙に掲載されたワディ・アフリアディさんからの投書についてお知らせします。あの宣伝用語に包まれた住宅販売宣伝は頭金なしに住宅を持ちたい消費者に便宜をはかるためのものなのです。
ところが支払プロセスに関しては銀行という第三者が関与するものですから、銀行には提示された顧客データを審査する専門分析員がいて与信の可否や限度を判断します。銀行側がワディ・アフリアディさんのデータを審査したところ、ご本人の経済要因のために、求められた上限金額に対する銀行側の承認が得られませんでした。
返金は一週間という最初に申し上げた期限通りになされました。イドゥルフィトリを迎えるために既に休暇に入っていたにもかかわらず、当方は申し上げた期限を守るために最大限の努力を払いました。[ チネレパークビュー、エファ ]


「不動産価格上昇が5都市で盛ん」(2010年12月29日)
インドネシア銀行の報告によれば、不動産価格インデックス第3四半期上昇率は5都市で第2四半期のそれをオーバーした。その5都市とは次の通り。また数字はパーセンテージ。
都市: 第2四半期上昇率 / 第3四半期上昇率
バンドン: 3.7 / 4.23
ジョクジャ: 1.24 / 1.43
メダン: 1.96 / 2.3
マカッサル: 3.8 / 5.1
スマラン: 0.95 / 1.28


「都内の積層住宅は旭日の勢い」(2010年12月31日)
年末を前にして首都の賃貸アパートメント需要が盛り上がっている。職場やキャンパスに近い賃貸コンドミニアムを中心にしたインドネシア人の需要の増加がその盛り上がりの推進力になっている、と不動産コンサルタントのカッシュマン&ウェイクフィールドが報告している。
2010年の賃貸アパートメント供給は前年から7%アップして39,300ユニットとなった。増加のメインを占めたのは2,500ユニット増えた賃貸コンドだ。一方賃貸アパートメントとサービスアパートメントは供給が52ユニット減少した。プリカサブランカのムナラブディ&レジデンスが賃貸ユニットを売却用に切り換えたのがその原因になっている。インドネシア経済の活況で2011年も多数の外国人勤労者が来訪することが予測されており、かれらのほとんどはインドネシア勤務期間中積層住宅に住む。
2010年末ジャカルタのコンドミニアム供給は、9プロジェクトの完成が予定されているいることからトータルで80.700ユニットに達する見込み。その9プロジェクトとはGandaria Heights, Centro City (Tower A), Tamansari Sudirman, Pakubuwono View, Central Park (Alaina Tower), Green Central, Seasons City, Mansion at Kemang, Gading Nias (Emerald)。また既に分譲販売が始められ、2年以内に工事が完成する予定になっているプロジェクトは50件あり、トータルユニット数は1万9千にのぼる。プレセールスでは早くも56%が売却済みであるとのこと。


「正直さは薮蛇を招くだけ」(2011年1月24日)
2010年11月29日付けコンパス紙への投書"Mengubah Tarif Pajak secara Sepihak dan Diskriminatif"から
拝啓、編集部殿。わたしの今は亡き両親が残した遺産である家屋に対する土地建物税年次通知書の内容をボゴール一級税務サービス事務所は一方的に変更したのです。ところがその家屋は何の手も加えられておらず、建物としてのクオリティに変化はありません。手入れのなされていない単なる陋屋なのです。
ボゴール市クブンプダスのブレンデル通り33番地にあるロムリ・アフマディ名義の土地建物税2010年度納税通知書に記された建物の課税対象価額に対してわたしは不服を表明します。2009年度の納税通知書ではA05級に区分されて平米当たり595,000ルピアが適用されましたが、2010年度の通知書ではA02級として平米当たり968,000ルピアが適用されました。
実は、2009年度の土地建物税納税通知書に記載されていた広さが実際と違っていたため、わたしは善意でその変更を申し出たというのに、その結果がこのありさまで、本来年次納税額53,735ルピアのはずが567,710ルピアにされてしまいました。建物課税対象価額の査定基準はいったい何で、しかもどうして差別的な評価がなされるのでしょうか?その証拠に、その家屋の隣の家は建物のクオリティが似たり寄ったりであるにもかかわらず、A05級に分類されて平米当たり575,000ルピアという金額が適用されているのです。
土地建物税からの収税金額を増やすためには、税務職員と地元行政職員は定期的に現場を見回ってデータの更新を活発化させなければなりません。そうすることで、透明・公正・客観的な課税対象価額の評価基盤が有効になるのです。[ ボゴール在住、ウィウィッ・アンワルディン ]


「不動産市場は微増」(2011年3月1日)
2010年国内不動産市場は32.8兆ルピアと見込まれ、対前年比で5〜6%の成長を示した。コールドウエルバンカーコマーシャルインドネシアの報告によれば、そのうちの20%に当たる6.6兆ルピアは低所得層向け国民福祉住宅販売で、一軒あたり5千5百万ルピアの標準価格から計算するなら12万軒の家屋数に相当している。アッパーミドル層向け高級アパートやコンドミニアム、そしてオフィスと小売スペースは26.3兆ルピアに達した。ジャカルタのオフィススペース賃貸は一等地二等地をあわせて20万8千平米が成契し、平均賃貸料金は平米当たり月額12万ルピアだった。2010年の賃貸オフィススペース年間市場は2,105億ルピアで、売却オフィススペースは61,800平米取引高は9,888億ルピアだった。こちらの平均価格は一等地二等地を混ぜて平米当たり1千6百万ルピア。
賃貸小売スペースは99,300平米で2009年から減少し、金額は年間で7,149.6億ルピアで、平米当たり賃貸料金の平均は月額60万ルピア。2010年の住宅総市場は20.1兆ルピアで、中でも猛烈な伸びを記録したのはコンドミニアム市場。8,950ユニットという実績は2009年の1.5倍に相当している。首都圏でのユニット当たり平均価格は22.5億ルピアだった。コンドのユニット当たり平均床面積は150平米で価格は平米当たり1千5百万ルピア。戸建住宅は一軒当たり価格が4億から20億ルピアの間で、6,671軒が販売された。


「不動産売買費用は東南ア最大」(2011年3月25日)
不動産の再販時に支出しなければならない費用がインドネシアは東南アジアで最大であることをグローバルプロパティガイドが公表した。
シンガポールでは4.7%、マレーシア5.5%、タイ6.9%、カンボジャ8.4%、フィリピン18.2%、そしてインドネシアは26.4%。そんなインドネシアでも勝てない国はスリランカで109%。
このラウンドトリップトランザクションコストというのは、不動産、特に積層住宅、を購入し、その後販売するという行為の中で支出される費用の全体を指し、このコストは売買される物件の価格の中に織り込まれる。購入は二次購入を指し、デベロッパーからの購入は該当しない。この費用は通常、登録・エージェント・公証人・販売と名義変更の四カテゴリーから成っているが、その他サーベイ・滞在許可・会社設立などの関連費用も含められる。
グローバルプロパティガイドには、インドネシアは中古不動産の再販価格から徴収される諸費用が東南アジアで最大であり、おまけに所有権証書を外国人が持つことができない、と記されている。
新規不動産の場合は、インドネシア人が負担する費用は次のようになる。PPN(付加価値税)10%、名義変更税5%、土地建物権利取得税5%、公証人費用0.5〜1%、印紙(書類ごとに)6千ルピア、登記費用2万5千ルピア、土地売買税1%。
賃貸物件でもインドネシアの費用は小さくない。シンガポール15.1%、カンボジャ14%、フィリピン5.1%、タイ3.8%、マレーシア27%で、インドネシアはマレーシアに次ぐ20%となっている。不動産セクターへの課税率もマレーシアに次いで世界第19位だ。


「土地建物権利取得税」(2011年4月16日)
インドネシアでは不動産売買に際して売り手も買い手も納税義務を負わされている。「それは奇妙な・・・?」「いや、インドネシアならやりかねないことだ。」などという揣摩臆測はさておき、インドネシア人が「pajak penjual」「pajak pembeli」と呼んで納得しているその制度を詳しく見てみると、それらが同一の税種でないことがわかる。
売り手は所得を得るので当然所得税がかかるが、古い昔から納税習慣のなかったひとびとでさえマネービルのために不動産投資を盛んに行なっていたのだから、国税当局としては不動産売買の場で徴税しなければもう徴税チャンスはなくなると思うだろう。こうして最終課税方式の不動産売却所得税PPh4という税種が設けられた。税率5%が売買金額にかけられ、経費引き落としは認められない。
一方、買い手も納税が義務付けられており、言うまでもなくこれは所得税ではない。これは土地建物権利取得税(BPHTB)と名付けられたもので、やはり不動産購入者から購入価格の5%を税金として徴収する。
政府は地方自治の精神に鑑み、従来から国税として課税徴収されていた土地建物に関する税金を地方税に移す方針を進め、毎年徴収される不動産税に該当する土地建物税(PBB)に次いでこのBPHTBを地方自治体に移管した。移管は2011年1月1日をもって行ない、各地方自治体は地方条例にもとづいてその課税徴収を行わなければならないとされたのだが、どうしたことか全国492の自治体の中で2011年3月21日までに条例を制定したのは7割にすぎず、147自治体がいまだに条例を制定していない。
条例が定められていないから当然課税徴収も行われない。BPHTBは遡及性を持たないので、納税義務期限を超えれば追徴されることはないが、ならばその間に不動産を買えば丸儲けだ、と考えるのは短慮である。なぜなら不動産名義変更にBPHTB納税証明書添付が義務付けられており、納税しなければ名義変更ができない。
そんな状況は住宅デベロッパーの死命を制する問題であるため、2011年1月に入って不動産業界が抗議の大合唱を叫んだのはまだ記憶になまなましいところだ。1月から状況はかなり改善されてきているようだが、いまだに百を超える自治体がBPHTB徴税に熱意を見せないのは、あれほど貪欲に地元収入を増やすことに努めている普段の姿からはなかなか想像しがたいものがある。


「不動産関連消費者クレームは第三位」(2011年5月6日)
2010年に消費者保護財団が受けた訴えは539件にのぼり、告発対象業種別のトップは通信、二位銀行、三位不動産というのがトップスリーだった。不動産関連は75件で18%を占め、2011年第1四半期でも三位のポジションは維持されている。
不動産関連の訴えの中でもっとも多いのは、住宅建設会社が約束したことを守らなかったという内容のもので、なんとそれが50%にのぼっている。中でも、購入した住居の完成がいつまでたってもなされないことがもっとも一般的。ひどいものは建設会社の倒産で、倒産会社の資産はまず債権者に分配され、残りがあれば消費者に還元されるものの、何も残らなければ消費者は金を払っただけで何も手に入らない、という悲惨な目に遭う。それ以外のものでは、土地証書関連、公共ファシリティ関連、そして建物の引渡しに関連する問題だ。公共ファシリティについては、開発会社がその土地を用意しており、住宅購入者にも公共ファシリティを設けることを公言しているにもかかわらず、実際はその用地を開発会社が異なる用途に使っていることが住宅購入者からの抗議を招いている。


「タンジュンルスンに新規ビラ分譲」(2011年8月13日)
バンテン州タンジュンルスン(Tanjung Lesung)で1千5百Haという広大な敷地にリゾートを運営しているPTバンテンウエストジャヴァがビラ60棟とコンドテルを建設する計画。バクリグループが開発しているタンジュンルスンビーチリゾートは既にビラ40棟の分譲を終えた。1寝室ビラは8〜9億ルピア、2寝室ビラは16億ルピアという価格。そこにさらに60棟を建設して2012年から分譲を開始することにしており、加えて100室のコンドテルもあわせて建設するという計画が今進められている。コンドテルは2011年末から販売を開始する予定。バクリグループがバリに設けたコンドテルも販売好調であることから、同社はこのコンドテルにも大きい期待をかけている。このコンドテルのマネージメント委託相手を同社はいま探しており、外国系業者との提携になりそうだと同社取締役は述べている。


「中所得層のコンドミニアム購入が盛ん」(2011年9月14日)
都内ビジネスセンター地区(CBD)外のエリアでコンドミニアムの建設が増加しており、インドネシア経済の隆盛も影響して、ロワーミドル層の購入が増加傾向にある。コリエールズインターナショナルインドネシアのリサーチ部門マネージャーによれば、過去二年間でCBD外のコンドミニアム購入者はロワーミドル層が主力を占めるようになってきている、とのこと。CBD外は土地価格がまだ低く、且つ建設が広範囲に行われていることから、ロワーミドル層が主力購買層にのし上がっている。その筆頭例はカリバタリージェンシーやシーズンズシティで、メイン道路に近いという特徴が共通している。それは職場への交通の便が他の場所より優れていることを意味してわけだ。コリエールズのデータでは、アパートメント市場の主力はロワーミドル層になっており、比率は39.8%にのぼる。次いで低所得層28.5%、アッパーミドル20.2%、上級階層8.4%、ハイエンドクラスは3.1%とのこと。2011年7月末までの都内コンドミニアム供給は3,899ユニットで、供給総数は90,844ユニットにのぼる。
CBD外コンドミニアムの比率を市別に見ると北ジャカルタ市23.4%、西ジャカルタ市20.5%、中央ジャカルタ市15.8%、南ジャカルタ市13.3%、東ジャカルタ市0.9%で全体では74%にのぼっている。


「経済階層間の断絶」(2011年9月23日)
2011年6月28日付けコンパス紙への投書"Pungutan Saat Bangun Rumah"から
拝啓、編集部殿。北ジャカルタ市プンジャリガン郡プルイッ町字04では、家を建てたり改装する場合、金を徴収し保証を与えるのが決まりになっています。金はプルイッ町字04の出納に住民が納めます。その金を納めることができなければ、建築資材を運ぶ車はプルイッ町字04地区に入ることが許されません。
プルイッ町字04役員によれば、その決まりは字04を構成している17の隣組の合意で作られたもので、納められた金は字04の道路補修費用に当てられるのだそうです。居住歴数十年のわたしの体験では、道路補修はそのつど住民の拠出金が使われています。
その字傘下の隣組が合意したことを根拠に、家を新築したり改修したりする住民から道路保全を目的に字が1千万ルピアの保証金を徴収することを合法化する法律があるのでしょうか?現実に多くの住民がその決まりに反対を表明しています。それに関連してわたしはプルイッ町字04に対して不服状を提出しましたが、字側はそれを却下しました。わたしは北ジャカルタ市プンジャリガン郡とプルイッ町の両役場にその不服状の写しを提出していますが、反応は何もありません。
インドネシアはパンチャシラを原理としています。たまたまアッパーミドル層の環境で暮らすようになった国民は公正さをどこに求めればいいのですか?住居がシロアリに食われてボロボロになり、妥当な暮らしが困難になっているとき、プルイッ町字04のその決まりに追われて住む場所をよそに探さなければならないのですか?[ 北ジャカルタ市プンジャリガン在住、ルスラン ]


「中流層向けアパートの供給が停滞」(2011年9月28日)
ジャカルタのアパートメント市場の最近の供給傾向は高級コンドミニアム志向が大変強く、中流層向け物件はデベロッパーに意欲が乏しい雰囲気だ。それは都内の土地価格が既にあまりにも高いレベルにあり、高価格物件でそのコスト吸収をはかるのがビジネス効率を考えた場合に合理的であるという考え方が根底をなしているためだ。高級アパートメントあるいはコンドミニアムはユニット価格が8億から10億ルピア、中流層向け物件は3億から8億ルピア、下流層は2億から5億ルピアという価格帯がそのクラス分けに使われている。コリエールズインドネシアのデータでは、全国の積層住宅の消費者階層向けシェアは次のようになっている。
ハイエンド 3.1%
上流層向け 8.4%
アッパーミドル層向け 20.2%
ロワーミドル層向け 39.8%
下流層向け 28.5%
しかしジャカルタに限って言うなら、上で見た状況の結果高価格物件の供給は意欲的に行われている一方、CBD地区外で積層住宅需要の過半数を占めている中流層向けアパートメント市場への新規供給が停滞しており、市場のマジョリティを占めるこのセクターがそんな状況になっているのはきわめてもったいない話だと言える。加えてユニット価格が2割ほど上昇してきている事実から、需要は今後ますます活発化するであろうことが予測されるというのに。
より低い所得階層の市場がないわけではないというのにそのマーケットを刈り取ろうとしないという歪をたくみにビジネスに結び付けたいデベロッパーもいないわけではない。たまたまインドネシアの投資リターン率が10%以上あるという事情がジャカルタ市場のそんな歪を生きながらえさせているとも言えそうだが、ミドル層向け市場の再構築はこれから徐々に進められていくにちがいない。ミドル層向けの需要者は新婚カップル、大学生、そして二次住宅市場で利益を稼ごうとする投資家たちで構成されている。


「今年のコンド販売は二倍増」(2011年9月29日)
きわめて好況なサイクルに入ったインドネシア経済は国民所得の大幅増加をもたらし、それに伴って国民需要の強いセクターはバラ色の売れ行きに目を輝かせている。不動産市場もそのひとつ。
2011年上半期のコンドミニアム販売は3千7百ユニットにのぼり、2010年一年間の実績である3千8百ユニットに迫っている。業界はこの調子が年末まで続くことを確信しており、今年の年間販売は7千5百ユニットというのが2011年の予定だ。ジャカルタのコンド建設は着々と進められており、今年の新規供給予定1万7千ユニットというのも前代未聞のボリュームになっている。
不動産業界にとって今年の経済状況は1995〜96年のブーム直前を思わせるものがあり、企業・個人・機関投資家などが一斉に不動産市場を賑わす態勢に入っている。そのため賃貸アパートメント、工業団地・商業用オフィスのマーケットに大きなプロフィットが実現する可能性が高い。次いで小売スペースや住宅も活況を呈するのは疑いなく、外国資本が収穫の一部を手に入れようと参入してくる気配も濃厚で、それが不動産マーケットの活況を一層高める方向に作用するにちがいないと見られている。
一方、不動産マーケットの購入者は最終消費者と中間投資家が混在し、その傾向はコンドミニアム市場でも変わりがなく、需給関係とその要素が価格決定の場における値動きにしばりを加える要素となる可能性が高い。また今後の傾向として、住宅地区にコンドミニアムを建設する方向性が強まっており、デベロッパーは高級住宅地区に売却用高級コンドミニアムを意欲的に建設することになりそうだ、と不動産コンサルタントは一様に見ている。


「ルスナミ値上げ」(2011年12月14日)
国民住宅省が、低所得者向け分譲積層簡易住宅(rusunami)のユニット価格を2012年1月1日から引き上げると発表した。
対象になるルスナミのユニット毎の床面積は21〜36平米で、ユニット分譲価格は1億4千4百万ルピアとなる。
購入資格は月収が450万ルピアを超えない個人で、NPWP(納税者番号)を持っていなければならない。またその購入は当人が保有している最初の居住ユニットとしてでなければならず、当人がそこに住むことが絶対条件で、5年間は第三者への移管が認められない。


「2012年にはコンドが値下がり?」(2012年1月7日)
ジャカルタのコンドミニアム新規供給は1万8千ユニットにのぼっており、また2012年の建設予定分1万2千ユニットも現在前売り中であるため、2012の販売価格は下降するだろうとカッシュマン&ウェイクフィールドインドネシアが予測している。
それら建設の終わったものあるいは建設中のものの多くは南ジャカルタ市にある。しかしその先はメインが北ジャカルタ市に移っていくようだ。
今年既に売り出されたものは9千8百ユニットあり、さまざまにユニークな特徴を持たせたものが多いとのこと。インドネシアで積層住宅は完成前の予約販売が常識で、9千8百ユニットのうち4千ユニットは完成前に売却がなされている。
それら大量のコンドミニアムユニットはミドル層もしくはアッパーミドル層を対象にしており、2012年にはミドル層のコンドミニアム需要が20〜30%増加するものと見られている。過去2年間はアッパーミドル層向けが大半を占めたため、ミドル層向け供給の不足が続いていた。
ユニット価格3〜10億ルピアレベルというミドルクラス向けの物件が2012年のコンド販売で主役の座に着く見込みで、アッパーミドル層もそのレンジまで降りてきて物件を購入する可能性が高い。特にセントラルビジネス地区にある物件に人気が集中する傾向が高いとカッシュマン&ウェイクフィールドは見込んでいる。
2011年の年末にかけて完成するコンドミニアムにはつぎのようなものがある。
Margonda Residence 第2フェーズ ミドル層向け 625ユニット 20〜48平米/ユニット
Casa Grande アッパーミドル層向け 470ユニット 46〜191平米/ユニット
Senopati Suites アッパー層向け 104ユニット 131〜305平米/ユニット
Kalibata Regency ロワーミドル層向け 2,400ユニット 20〜33平米/ユニット
Green Park View ロワーミドル層向け 1,064ユニット 20〜35平米/ユニット
Mutiara Bekasi ロワーミドル層向け 828ユニット 22〜72平米/ユニット


「シンガポールに家を持ちたいインドネシア人」(2012年2月7日)
インドネシア人富裕層は依然としてシンガポールで高級積層住宅を買いまくっているようだ。シンガポールのある不動産会社の販売マネージャーによれば、2011年の不動産購入者は71%がシンガポール人、2%が法人、そして27%が外国人だった由。外国人にはパーマネントレジデントとそうでない外国人が含まれている。外国人を国籍別にみると、インドネシア人、マレーシア人、中国人がトップ3を形成している。2015年には年間所得100万米ドルを超える国民が、インドネシアは200%、中国は175%、インド133%、マレーシア113%、シンガポール102%増加するとのことで、インドネシアの高所得層がシンガポールに高級アパートメントを持つ傾向はこの先も継続するだろうとの見方が一般的。外国人がシンガポールに住みたい理由として、治安がよいこと、清潔でひとに優しい環境、クオリティの高い生活レベル、優れた教育制度、信頼できる医療保健サービスなどがあげられている。
シンガポール政府が定めている外国人の住居保有は、土地付き住宅でないかぎり制限が一切ない。そのため積層住宅ユニットを持っているひとは誰にでも再販でき、住宅取得ローンも金利率1.2〜2.0%という低金利で、おまけに外国人も購入価格の80%までローンを利用することができる。
2010年2月、シンガポール政府はそれまで課税していなかった不動産販売者に課税する政策を開始した。その不動産を所有してから1年以内に売却する場合は課税対象となる。不動産購入者への課税はそれ以前から行われており、変化ない。するとアパートメント販売はたちどころに減少した。ところが2010年4月には、前月の1千1百ユニットが1千8百ユニットに回復した。状況を見定めた政府は、さっそく課税期間を延長したそうだ。そして最終的に2011年12月には、1年目の売却に16%、2年目12%、3年目8%、4年目4%という課税率が定められ、5年目に入ってはじめて税率はゼロとなることとなった。不動産購入者に対する課税は税率3%だったが、これも2011年12月に一気に13%に引き上げられている。このショックで市場はこの先6ヶ月間風邪をひくのではないか、とその販売マネージャー氏は語っている。


「ジャカルタの不動産価格が上昇」(2012年2月22日)
高級住宅や高級コンドミニアムの価格上昇がジャカルタはナイロビ、マイアミに次いで世界第三位になった。ナイトフランクのプライムグローバルシティズインデックスは世界23都市の高級不動産の状況をサーベイしたもの。2011年の価格上昇率はナイロビが25%、マイアミ19.1%、ジャカルタは14.3%となっている。サーベイ対象になったのは一軒当たり50億ルピアを超える物件。
ジャカルタの後に続いている都市は、ロンドン12.1%、モスクワ9.8%、北京8.1%、テルアビブ8.1%、キエフ7.5%、香港4.6%、セントペテルスブルグ4%といった顔ぶれ。上位3都市のうちナイロビとジャカルタは国内経済発展と外国投資流入に支えられて、年間を通して価格上昇が継続した、とサーベイ報告はコメントしている。マイアミはブラジルをはじめとする南米諸国からの需要がマイアミの不動産価格を押し上げているとの分析。
ジャカルタの土地付き高級住宅はパンタイインダカプッ(Pantai Indah Kapuk)やプルイッ(Pluit)あるいはクラパガディン(Kelapa Gading)などを中心にして15〜40%の値上がりが2011年を通して起こっている由。クマン(Kemang)・ポンドッキンダ(Pondok Indah)・メンテン(Menteng)などでは値上がり率が5〜15%程度に抑えられている。
ナイトフランクインドネシアのシニアマネージャーによれば、国内政治経済の安定に伴う高所得層の増加と、高級物件の供給が少ないことから、高値安定が2012年も持続するのはほぼ間違いないとのこと。立地条件のよい高級コンドは2012年も5%以上の値上がりが起こる可能性は大きいが、その反面グローバル不況の影響や5億ルピアを超える国内不動産売買の届出制度の開始などで需要が減少するおそれもあり、状況を流動的にする要素がないわけではない。世界の諸都市でも、自国通貨のレート変動や不動産関連税制の変化で高級物件の売れ行きが影響を受けるのは確実であり、それらのポイントに注意する必要がある、とシニアマネージャーは述べている。


「首都近郊の宅地需要が旺盛」(2012年2月24日)
全国的な好況に押し上げられてミドルクラス人口が急成長しており、ジャカルタ近郊の住宅地では需要が高騰している。住宅売買広告サイトRumah123.com の2011年10月11月の状況はその実態を如実に物語っている、と住宅販売マネージャーは語る。「当方サイトで家を買いたいひとの91%は土地付き住宅を求めている。多分文化ファクターにいまだ強く影響されているのに違いない。かれらは積層住宅に住むことに抵抗があるようだ。ジャカルタの土地はもう余裕がないから、必然的に近郊地区へと家探しは向かうことになる。」
2011年10月の地域的需要はブカシ・スンテル・ビンタロ・ブミスルポンダマイ・デポッが上位を占めた。11月にはビンタロ・ブカシ・デポッ・クラパガディン・ブミスルポンダマイという順位に変わっている。さらに12月には、ポンドッキンダ・南ジャカルタ〜スルポン・クブンジュルッ・トゥブッ・ビンタロと変化した。土地の有無ということだけでなく、地域インフラの発展も特定地域に需要が集まる要因をなしている。
国内の景気好況で国民所得が伸び、ミドルクラスが増加していることが不動産需要を高めており、需要は土地付き住居だけでなく積層住宅にも向かう。2012年はミドルクラス向けアパートメントが需要供給ともに増加すると予測されており、積層住宅販売も盛んになるだろうと同マネージャーは予見している。


「今年の値上がりも10%以上」(2012年2月25日)
2012年ジャカルタのアパートメント価格は2011年のレベルから10〜16%上昇するだろう、とコリエールズインターナショナルインドネシア調査部長補佐が表明した。価格上昇はCBD地区だけでなく南ジャカルタをはじめとする非CBD地区でも同じように起こるとのこと。高級集合積層住宅を購入する富裕層は現金分割払いあるいは現金一括払いを行い、デベロッパーから10〜20%の割引を得ている。
ジャカルタの高級アパートメント価格の推移は次のようになっている。
2010年第4四半期⇒2011年第4四半期⇒2012年予測。(数字は100万ルピア/?)
CBD地区 16.59⇒18.11⇒20.44
南ジャカルタ地区 11.80⇒12.84⇒15.87
非CBD地区 9.40⇒10.11⇒11.04
最近のアパートメント供給はジャカルタとバリが大部分を占めている、と不動産会社協会役員は語る。ジャカルタでの購入目的は自己居住のためが大半で、バリは投資とホリデー時の利用がメインになっている由。


「バリとロンボッは狂乱地価に向かう?!」(2012年3月3日)
2011年にバリ島内の優良ロケーションで地価が平均34%値上がりした。過去10年間でこれほど急激な値上がりは起こったことがない、と不動産コンサルタントのナイトフランクがコメントしている。
ナイトフランクの報告によれば、これまでの年間値上がり率は8〜16%というレンジであったというのに、2011年はレギアン(Legian)、プティトゥグッ(Petitenget)、バトゥブリッ(Batu Belig)などスミニャッ(Seminyak)周辺地区の海沿いクリフやビーチでは50〜87.5%という地価上昇率が見られたとのこと。地価はもちろん土地のロケーション・形状・広さなどでバリエーションがあるとはいえ、それらの地区は平米当たり1千万から1千5百万ルピアに達している。土地ステータスはleasehold がほとんどで、freehold はあまり見られない。しかしその数少ない所有権付き用地価格は、プティトゥグッやスミニャッで理想的なロケーション・広さ・面積を持つ物件でなんと120〜175%の値上がり率を実現させている由。
バリ島内の他の人気エリアの状況は、ウブッ(Ubud)が平均25%、ジンバラン(Jimbaran)45%前後で平米8百万ルピアに達したところもあり、ヌサドゥア(Nusa Dua)とブノア(Benoa)は23%といったところ。ヌサレンボガン(Nusa Lembongan)でも海沿いのクリフやビーチは地価上昇が活発で、平米当たり250〜300万ルピアに達して値上がり率は37.5%になっている。
2011年10月に新空港がオープンしたロンボッ島でも、これまでの観光中心地をなしていたギリの島々を擁する地域や新空港につながる地域で10%ほど地価が上昇している由。新空港関連ではインフラの整備や空港周辺の商業開発が地価を引き上げる大きい要因になっているものの、往々にして観光目的先としてバリとセットにされるロンボッ島での観光開発による地価上昇も今後激しくなることが予想される。中部ロンボッ県プジュッ(Pujut)郡クタ(Kuta)のマンダリカ(Mandalika)観光地区開発は、グローバルランド・ラジャワリグループ・ゴーベルインターナショナルと組んだMNCグループを筆頭にする内資ばかりか、アメリカ・ドイツ・日本・シンガポール・オーストラリアなどの資本もマンダリカ地区の観光開発に参入しようとしており、空港を中心にしたロンボッ島中部の地価上昇は避けられない模様。


「巨額の債務者に仕立てる住宅ローン」(2012年3月28日)
2011年12月2日付けコンパス紙への投書"Kredit Pemilikan Rumah BCA Hanya bagi Orang Kaya?"から
拝啓、編集部殿。低い金利率に惹かれて、わたしと妻はBCA銀行でしばらく前に住宅取得ローンの申し込みをしました。ところがローン最低金額が2.5億ルピアだと聞いて、びっくりしてしまいました。住宅改修ローンも最低金額は同じだそうです。わたしが思うに、その条件は大勢のローン取得希望者にとってあまりにも重い条件だと思います。特に中下層のひとにとって。
2005年からBCA銀行の利用者になっているわたしどもの見るかぎり、BCAはわたしどものような労働者階層の人間に手の届く金利政策を採っている数銀行のひとつであることは確かです。ところが十分に低いレベルまで下がってきた金利率であるにもかかわらず、一部のひとたちしか利用できないのはきわめて残念なことではありませんか。
銀行界統制者であるインドネシア銀行が、貸出金利率を高いものにして社会に負担を与えることのないように常に呼びかけている事実をわたしどもは知っています。ところが、それに応じて貸出金利率を引き下げた銀行がわずかしかないのはとても残念です。貸出金利率が低い銀行が少ししかないにもかかわらず、最低金額という条件が加わってローンを利用できる者が限られてしまうのはとても残念なことではありませんか。
もしもBCA銀行がその条件を債務者審査の一部と考えているのなら、その規準として最低金額を設定するのでなく、人間性や資産保証に関するクオリティといったローン申請者のクオリティにもっと注意を向けてはどうでしょうか?これは銀行界が果たすべき民衆に対するクオリティの高い仲立ち機能を向上させて実質経済の動きを高めることを助けます。そうすることで債務者はお屋敷であろうとタイプ36の寓居であろうと、住居という基礎需要を満たすことができるようになります。その結果、債務者は水漏れしている樋の修理や両親のためにもう一室建て増しすることが可能になるのです。[ 西ジャワ州ブカシ在住、アンドレアス・イスマル ]


「インドネシアの不動産価格は激安!」(2012年4月19・20日)
その用途が何であれ、世界の大金持ちたちは世界中に不動産を持って資産の維持確保のみならず増殖をはかろうとする。いま廉価であり、将来性がある、となると世界中からそんな金が集まってきて当然という時代がこのナウでグローバルな世界なのだ。今インドネシアの不動産は廉く、巨大な人口を擁するインドネシアの将来性を有望視する声も高いというのに、だれもが考える上述のメカニズムが働いているようには見えない、という事実が国際不動産コンサルタント会社ナイトフランクのウエルスレポート2012から読み取られた。
1億米ドル以上の資産を持つアジアパシフィック在住の富裕層から集めたデータで構成されているそのレポートからは、グローバル富裕層の金がインドネシアを目指してやってきていない状況が浮き彫りにされている。インドネシアの不動産価格は国際相場から見て廉価であることは間違いない。2011年第4四半期の高級住宅の平米当たり価格はモナコが世界最高の58,300米ドルで、次いでフランス51,800米ドル、ロンドン48,900米ドル、香港47,500米ドルといったレベルにあり、対するジャカルタはわずか2,900米ドルでしかない。ちなみに近隣諸国を見渡すと、シンガポールは25,600米ドルで世界13位、バンコック6,500米ドルで51位、クアラルンプルはその下で5,000米ドル。ジャカルタは世界60位、バリは61位というレベルにある。
ナイトフランクインドネシア調査課長はそれに関して、インドネシアの土地所有制度が外国人に閉鎖的であることがもっとも基本的な原因だ、と語る。「しかし外国人にとって実際には、地場資本と合弁関係にある限り外国人であってもHGB(建築物利用権)を持つことができる。これはフリーホールドと同じものであり、チャンスがないというわけでは決してない。」
インドネシアプロパティウオッチ専務理事は、インドネシアの不動産に外国から金が流れ込んでこないのは、不動産関連制度や法規がわかりにくいからだ、と指摘している。ともあれ、土地がらみで植民地時代が再現されることを嫌う民族感情は、当面持続するにちがいない。
反対にインドネシア人の外国不動産購入は依然として活発だ。その筆頭はシンガポールで、2012年第1四半期に行われたインドネシア人の不動産購入は137件あり、マレーシア人184件、中国人166件に次ぐ第三位。2011年にインドネシア人は1,714件15兆ルピア相当をシンガポールで購入している。ところが、シンガポールの物価上昇に加えて昨年1月からシンガポール政府が建築後の年数によってその売買にかける税率を逓減システムに変更したため新築住宅が買いにくくなったことなどの理由で、これまでの状況に変化が生じている。シンガポールよりも経済的なマレーシアへの関心が強まっているのだ。また2千5百万ドル超の物件購入はどうやら矛先がロンドンに向いているらしい。2011年にナイトフランクが仲介したロンドンでのインドネシア人不動産購入は倍増したとのこと。ロンドン不動産市場でのアジア人の物件購入番付を見ると、2010年は11位だったインドネシア人は2011年に2ランクアップして9位にベスト10入りした。インドネシア人はロンドンで37万5千ポンド前後の新築物件に食指を動かしている由。
一方、マレーシアの不動産市場の顧客トップはシンガポール人で、シェアの30%を占めている。インドネシア人はそれに次ぐ顧客であり、20%シェアを持っている。残りは中東・中国・イギリス・日本・韓国などが埋めている。
シンガポール離れを起こし始めたいまがインドネシア人顧客を引き寄せる絶好のチャンスとばかり、マレーシアの不動産会社の中にインドネシアへの進出を決めたところもちらほらと出ている。


「外国人の不動産購入はバタム・ビンタン・カリムンで」(2012年5月15・16日)
これまでシンガポールの不動産業界にとって上顧客だったインドネシア人もついに経済的に合わなくなったシンガポールを見限ってマレーシアやロンドンなど他の場所に買物先を移し始めたというニュースが流れているものの、そんなことはない、と最新高級物件マリーナベイスイーツの販売者は言う。
マリーナベイスイーツは66階建て高級アパートメントで、ユニットの床面積は149〜251平米、最上層のフロアには2フロアを使うプールつきペントハウスなどが設けられている。そんな豪華なユニットのお値段は最高で950万Sドルとのこと。そこまでいかない通常のユニットでも350万Sドル。
今売り出されている221ユニットの7割はすでに売却済みで、半分は外国人が購入しており、外国人が買った物件の3割はインドネシア人が購入しているそうだ。
インドネシアもシンガポールのように不動産を外国人に購入してもらいたいという不動産業界と一部政界の希望は、外国人の土地所有にネガティブな国民感情のためになかなか進展が見られないが、シンガポールに近いバタム・ビンタン・カリムン経済特別区の中でだけ外国人の不動産所有条件を緩和してみてはどうか、というアイデアを国民住宅相が打ち出した。インドネシアの不動産販売条件の中で外国人に一番ネックになっているのが所有権問題であるという不動産業界の指摘する問題に対処して、その地区だけは最初の購入時に60年もしくは90年間の権利を与えようというのが大臣のアイデアで、それについて大臣は国土庁長官と協議済みである、と述べている。このアイデアを政策として実現させるためには、国民住宅相は大蔵相・内務相の協力を得なければならない。
まずはシンガポールや周辺諸国に不動産購入を誘いかけ、その波及効果によって他の諸外国からも購入者を誘い込んで第二のシンガポールにしようというのが大臣の戦略だ。「インドネシア人がシンガポールの不動産を買っている。同じようにシンガポール人にインドネシアの不動産を買ってもらわなければならない。シンガポールの街中だと平米2億ルピアもしており、価格は大違いなのだから。」
大臣はこの政策を大臣規則で出そうと考えている。政令で出す場合はプロセスに時間がかかる。経済特別区というステータスを利用して限定的な条件を用いるために、不動産業界にとってもこれまでとは異なる条件にしばられることになる。その条件のひとつは、2011年法律第20号に定められている「建てられる積層住宅の総床面積の20%を中低所得層国民向けにしなければならない」ことだ。ただしこの条件は実際には中低所得層向け売却積層住宅(ルスナミ)を建てる形で充足させるようになる。経済特別区で多数の企業が操業するようになれば、その従業員の住宅需要が大いに期待できるため、建設業者にとっても将来性のある条件となる。
外国人の不動産購入条件は住居と居住地区に関する2011年法律第1号第57条に記されている通り、外国人が定居できるのは賃貸権あるいは使用権を伴う住居に限られている。また外国人の不動産所有期間は1960年法律第5号農地基本法で定められているように、使用権の設定された不動産を25年間占拠でき、延長は一回目が20年、二回目が25年となっている。一時、その70年間を最初の申請時に与えてはどうかという議論が活発化したが、結局は不動産業界を失望させる結果に終わっている。


「ジャカルタのコンドとバリのビラが売れっ子」(2012年5月17・18日)
5百万米ドルを超える資産を持つインドネシア人富裕層が不動産投資を行う場合は、ジャカルタのCBD(ビジネスセンター地区)のコンドミニアムか、バリのビラが第一の選択肢だ、とジョーンズ ラング ラサールインドネシア=プロコンのストラテジックコンサルティングヘッドが語った。
「投資家はたいてい利が利を生む投資を好むので、オフィススペースを買って賃貸したり、更地を買って維持費をミニマイズしたり、というように長期短期の戦略や個人の好みの問題からバリエーションは多々あるものの、昨今はジャカルタCBDのアパートメントやバリのビラが第一チョイスとして人気が高い。有利な利回りを期待する向きは、発売されたばかりのコンドやビラを購入し、値上がりが始まったあたりで売却している。もちろん購入物件を決める際には、売却市場と賃貸市場の両方を天秤にかける。ほかにも南ジャカルタのクマン(Kemang)・チプテ(Cipete)・チランダッ(Cilandak)・ポンドッキンダ(Pondok Indah)で戸建て住宅を、というのも人気の高いチョイスで、それらの地区は外国人駐在員の需要が高く、家族持ち子供持ち駐在員への賃貸が期待できるからだ。」との談。
リアルエステートブローカー協会会長は、5百万米ドル以上の資産を持つ階層の投資先として不動産はもっとも安全だが流動性は低い、と言う。「そのレベルのミドルクラスはアパートメントやコンドテルを選択している。オフィススペースを買って賃貸するよりはリスクが小さい。国内でいま最も人気の高い地方はジャカルタとバリで、他のスラバヤやバンドンなどの都市にくらべて値動きが大きいのが魅力になっている。
シンガポール・オーストラリア・マレーシアなど海外不動産にこの階層はあまり魅力を感じていない。自分の居所から遠すぎるため、メンテナンス状態を見に行くことがやりづらいのが理由だ。メンテンやポンドッキンダなどの一等地で業績のよいデベロッパーがおこなっているプロジェクトを狙うひとびともある。不動産投資はうまく回転させれば大きな利益が手に入る。資産5百万米ドルクラスのひとたちは、アパートやビラを10軒以上持っていると思われる。支払いは分割できるのだし、デベロッパーも金利なしで12ヶ月から36ヶ月の分割というサービスを与えているのだから。」
2012年第1四半期ジャカルタのコンドミニアム販売は新規供給4,273ユニットのうちの半分近い2千ユニットが売れた。金利が下がっているのと値上がり予測が強いことがその売れ行きの原因だ。通勤時間のロスを嫌って、特にジャカルタ都心部のロケーションに人気が集中している。おかげで値上がり率は7%になり、アパートメントの2〜3%との二倍を超えている。平均価格は高級コンドが平米あたり2千3百万ルピア、中級は1千5百万ルピア、サブミドルは9百万ルピアとのこと。
一方賃貸コンドミニアム需要も伸びている。賃貸オフィススペース需要が伸びているのと歩を合わせて、外国人駐在員のためのコンドミニアム賃貸も増加している。2012年第1四半期の入居は164ユニットを数え、ジャカルタの賃貸コンド入居率を82.5%に押し上げてた。需要の増加に伴って賃貸コンドオーナーも値上げを行っており、平均料金は平米あたり月額15.1米ドル、サービスチャージは平米あたり月額3.4米ドルとのこと。


「アメリカからのアクセスが多い」(2012年5月19日)
インドネシアの不動産ポータルサイトrumah123.comに2012年1月から4月までの間、国外からのアクセス数がもっとも多かった国はシンガポールだった。国別上位四傑は次のようになっている。
シンガポール 103,592回
アメリカ 93,601回
マレーシア 92,334回
オーストラリア 18,008回
もちろん国外在留インドネシア人がアクセスしている可能性は否定できないのだが・・・・・。


「インドネシアの賃貸アパートは儲かる」(2012年6月26日)
2012年にナイトフランクが調査したアジアパシフィック地区におけるアパートメント賃貸ビジネスの利回り率はインドネシアがもっとも高いという結果を示している。インドネシアは東南アジアの中で一貫的な料金上昇が見られることから、域内トップスターの地位は揺るぎそうにない。安定的な経済成長・よくコントロールされているインフレ率・住宅需要を膨らませているミドルクラスといったポジティブな要因がその地位を支えている、とのこと。国別比較は次の通り。
香港 2〜3%
インド 2〜3%
北京・上海 3〜4%
シンガポール 3〜4%
オーストラリア 4〜5%
タイ 4〜6%
ベトナム 6〜7%
インドネシア 8〜11%


「スラバヤにアパートメントブーム」(2012年8月10日)
首都圏に後れてはならじとばかり、国内第二の都市スラバヤを擁する東ジャワ州にも、チプトラグループ、バクリグループ、インティランドグループなどの業界大手が不動産開発に乗り出してきている。チプトラグループはスラバヤとグルシッ(Gresik)の間にスラバヤのシンガポールというコンセプトを持たせた2千Haのニュータウンを、バクリグループは東ジャワ州第二の都市マラン(Malang)にIjen Nirwana Residenceと名付けた高級住宅地を開発中。
その一方で、スラバヤ市内の積層住宅プロジェクトも動き始めている。市内から周辺部にかけての交通渋滞も激しさを増しており、職住近接を求めるひとたちの市内アパートメント需要は確実に醸成されているようだ。しかしスラバヤ周辺郊外部の土地価格は市内で建てられるアパートメントの床面積価格と比べると半額で手に入ることから、市内でアパートメントを購入しようという動機はまだ強いものになっていない。ところが過去一年間で市内不動産価格は50%もの値上がりが起こっており、デベロッパーの中に先行ビジネスに入ろうとする会社が出るのも当然の成り行きだと言える。
スラバヤ西部地区のゴルフ場にコンドミニアムを建てたインティランドは、次いで市内ソノクンバン(Sonokembang)通りにアパートメント・オフィスビル・ショッピングセンターを併せた総面積1万1千平米の多用途プロジェクトを計画している。ウィジャヤカルヤは26階建てのアパートメント=コンドテルを計画しており、アパート357ユニット、コンドテル200室という大型積層住宅が作られる。地元デベロッパーのグナワンサもアパートメント=コンドテルの抱き合わせ開発を計画しており、アパート1,150ユニット、コンドテル170室で、コンドテルの運営はサヒッ(Sahid)インターナショナルに委託されることになっている。スーパーブロック、チプトラワールドでもThe ViaとThe Vueの二つのタワーが予定されており、合計413ユニットのアパートメントが供給されることになっている。またトゥンジュガン(Tunjungan)プラザコンプレックスをものしたパクウォングループも111ユニットを持つリージェンシーコンドミニアムのプロジェクトに取り掛かっている。


「ふたたび、島を売る」(2012年9月18・19日)
国民のだれかが、どこかの離れ小島を外国人に売却する。あるいは売却しようとして、外国の不動産販売ネットサイトにアップロードし、売買がなされたとする。そしてそんな購入事実を根拠にして外国人がその離れ小島に居座った場合、国家行政はその外国人の権利を尊重しなければならないのだろうか?
外国人にインドネシアの島を売るというイシューがメディアに出るたびに、そのような販売行為を未然につぶして「わたしがその島を買った」と名乗り出る外国人がないようにしなければならないというニュアンスを報道表現の中に強く感じるのはわたしだけなのだろうか?
もしもインドネシア人のそんな態度をおかしいと感じるひとが多いのであれば、そこにインドネシア人の国際感覚あるいは外交感覚における弱点があるのではないか、という気がわたしにはするのだが、はたしてどうだろう。
国会第1委員会副議長が2012年9月5日に表明したところによると、インドネシア国内にある5つの島が売りにだされていることが確認されたそうだ。
国会第1委員会副議長は「その5つの島のうちのいくつかは個人の所有になっているそうだが、権利証書など存在せず、おまけにひとが居住したこともなく、ただ灯台があるだけだったりするような場所だ。国会は地元行政府に対し、国内の島を売却することはできない、と既に申し入れてある。」と述べている。
インターネットサイトwww.privatesislandonline.comにはジャワのガンバル島やロンボッのギリナング島の販売広告が掲載されており、政府はインドネシア統一国家を維持するために、そのような販売を防止しなければならない、とその報道記事は述べているのだが、もしも防止できなければどんな不都合が国家や政府にふりかかってくるのだろうか?
国会第4委員会副議長は「全国の島はインドネシア共和国の一部であり、インドネシア共和国はたとえ一寸の地であろうとも他者に売却されてはならない。それは政府の責任である。インドネシアへの投資者が島を買うことは認められない。インドネシア統一国家所有の島を売却するのは犯罪行為である。」とコメントしている。さまざまな面に顕著に見られるゼノフォビアという要素や法治の徹底しない権力者の人治が優勢な社会がもたらしている人間の性向などがその現象から感じられるのだが、あまりにもナイーブな印象の強いそれらの言辞は、いったいそれ以外のどんな要素に影響されているのだろうか?


「北ジャカルタの地価が高騰」(2012年9月21日)
都内の不動産価格上昇は北ジャカルタ市がもっとも激しい、とナイトフランクインドネシアが報告した。宅地の余裕があまりないところに大きい需要が押し寄せており、それが北ジャカルタ市の地価を押し上げる最大の要素になっている、とナイトフランクのリサーチヘッドは分析している。「北ジャカルタ市全体ではこの一年間に10〜20%、クラパガディン地区は15〜30%上昇するだろう。」とのコメントをリサーチヘッドは出している。
北ジャカルタ市の住宅兼商業エリアとして最高の地位にあるクラパガディンは長い開発の歴史とよくまとまった商業地区の配置などで定評があるのに加えて、印華系のひとびとの間では風水的に絶好のビジネス立地条件を持っていると見られており、人気が高い。
インドネシア銀行が発表した「ジャカルタの二次市場における住宅不動産市場状況」と題する報告書では、北ジャカルタ市の地価上昇率は4.28%で都下最大であり、クラパガディン地区は7.44%、スンテル地区は5.95%の上昇率で?当たり平均価格は872万ルピアとなっているとの由。中上流層消費者にとって北ジャカルタ市は最高の住宅エリアという理解になっており、それも価格上昇を強める要因のひとつになっている。中上級中古住宅も3.9%上昇して平均価格は22億ルピアに達しているが、南ジャカルタ市の上昇率4.1%、平均価格36億ルピアには及ばない。
西ジャカルタ市は地価上昇率が3.64%で?当たり平均価格は660万ルピア。中古住宅価格の上昇率は3.94%で平均価格は20億ルピアとなっている。中央ジャカルタ市は3.2%の上昇で平均価格38億ルピア。
一方、地価上昇率がもっとも低いのは東ジャカルタ市で3.14%、?当たり平均価格は455万ルピアだが、セントラティムール商業地区が形を整えてくれば、大幅な上昇が起こる可能性が高い。


「海岸沿いのマンションはアブナイ」(2012年9月28日)
北ジャカルタ市の住宅はハイレベルであるという理解が一般に広まっている。昔からプルイッ(Pluit)やクラパガディン(Kelapa Gading)あるいはスンテル(Sunter)などの高級住宅地が存在しており、そして今では海岸部に積層住宅が林立するようになった。ロワーミドル層向けのものもあるが、高級マンションも少なくない。デベロッパーは競ってウオーターフロントに積層住宅を建てているが、それは危険な状況だ、と建築家のひとりが警鐘を鳴らした。
「ジャカルタの土地沈降は依然として続いており、海岸部に積層住宅を建てればその沈降を加速する結果にならないと誰が言えようか?盛り土をすれば大丈夫だと考えている者は自分の用地の裏にある土地まで含めて考えているだろうか?」かれはそう大きいリスクがあることを指摘している。
ジャカルタの地面は年間1〜15センチ程度沈降しているが、激しい場所では20〜28センチにのぼる。ジャカルタウオーターフロントでの居住地区開発をいくつかのデベロッパーがおこなっているが、アグンポドモログループはパンタイインダカプッの2百Haの土地にBukit Golf Mediteraniaを開発中。プンバグナンジャヤアンチョルもリゾート住宅コンセプトのコスタビラを発売しており、そのほかアグンスダヤグループやサリムグループも類似の物件を手がけている。
海岸の積層住宅は海外市場で人気のあるもので、プライムロケーションとしての付加価値がつくため、デベロッパーにとってメリットは大きい。


「激動する不動産価格」(2012年10月10日)
南ジャカルタ市でガンダリアシティを手がけたパクウォングループの総帥エイフェル・テジャは最近アパートのユニット価格を尋ねられると顔をしかめるようになった。「申し訳ないが覚えていないので、後で連絡させるよ。」という返事が増えている。床面積210?のユニットは三年前26億ルピアだったが、今や62億を超えているのだ。70?の小型ユニットは三年前13億ルピアだったが、今では30億に達している。アパートメント価格の異常な上昇ぶりにかれはまともでないありさまへの危惧を感じている。
それはジャカルタのアパートメントに限ったことではない。西スラバヤ地区の戸建て住宅も150?の家屋が5年間で19億ルピアから46億に上昇した。タングランのスルポン地区では土地価格が5年間で平米あたり5百万ルピアから4千万ルピアに跳ね上がっている。もし家を建てようとして3百平米の土地を買うだけで12億ルピアが飛んでいく。土地を手に入れるだけでもうそれだ。
都内の一等地ともなれば、そんなことではおさまらない。平米あたり7千5百万ルピアにまで土地価格は上がっている。そんな不動産価格の激増にもかかわらず、必ず買い手がつくのだから、あたかもこの世の不思議がそこに凝集しているかのように関係者たちは見ている。しかも高額不動産ほどよく売れているというのがインドネシアの不思議というものだろう。
中流層から上のひとびとの懐はまだまだ厚い。さまざまな新製品が売り出されると、ひとびとは争ってそれを購入しようとする。かれらの貪欲な購買意欲は活力の衰える気配がない。アパートメントについて言うなら、かれらは必ずしも自分が居住するために購入しているわけではない。投資目的であるなら、5年以内で相場が伸び上がったときに手放すのがそのやり口だ。たとえば30億ルピアでアパートを買い、60億になったときに売る。一軒だけなら差益はたったの30億だが、かれが30軒を扱っていたらどうなる?この種の不動産売買ビジネスに頭の良さなどほとんど関係ない。不動産価格が激動するとき、金を持つ者が一層大金持ちになり、余裕のない人間は置いてきぼりにされる。経済不均等は一層拡大し、国民間の経済格差は大きくなっていくのである。


「不動産投資のお奨め」(2012年10月24・25日)
インドネシアで人気のある投資のひとつは不動産投資だ。株や投資信託あるいは黄金などへの投資よりもリスクが小さく、そんなに頭がよくなくとも結構な見返りが得られるとインドネシア人自身が言っているのだから、金さえ持っていればそこに資金を流そうとだれもが考える投資対象になっている。不動産は廉く買って高く売ることで得られるキャピタルゲインに加えて、賃貸で短期収入を享受できるメリットを持っている。いま年間でせいぜい7%程度という金利分しか増えない定期預金に比べたら、はるかに実入りが大きいと言える。
インドネシアの不動産は住居・オフィス・小売スペースから工業団地に至るまでアジア太平洋地区で最低レベルにあり、昨今の激しい値上がりによってアジア太平洋地区で上昇率がトップクラスに就いている。だから世界で経済クライシスがどんなに荒れ狂おうとも、インドネシアの不動産価格は基本的に右肩上がりのパイプに入っているようなものなのだ。1998年のグローバルクライシスで外貨市場も証券市場も乱れることを免れなかったが、不動産価格は下がらず、クライシスで儲けたひとびとが競って不動産購入に走ったことがそれを証明している。
しかしインドネシアの不動産投資家の間で合理性のない神話が蔓延していることにインドネシアプロパティウオッチ役員は注意を呼びかける。すべての不動産が大差なく利益の倍々ゲームを享受できるわけでもなく、本当に自己資金なしで不動産投資ができるわけでもない、とかれは言う。「即席の不動産ビジネスは存在しない。不動産投資家が普通に冒しているあやまりは、国内マーケットの知識が付け焼刃であり、盲目的過信に陥っており、人まね志向であり、完ぺき主義であり、そしてベストの機を捉えていない。不動産売買をブローカー相手に行う場合、土地オーナーとの関係、クロス売買、競売地の買取や債務返済の肩代わりなどでの支出が不可欠になるため、本当に自己資金なしでは何一つ実現しない。不動産投資で何倍もの利益を享受できるのは、巧みな交渉術を駆使し、投資家間でのネットワークを構築し、そして好運が作用したときはじめて起こることだ。」
投資対象を戸建て住宅にするかアパートメントにするかということが往々にして投資家の迷いを生む。それぞれの特徴を把握することではじめてその解答が得られるとかれは言う。戸建て住宅であれば、住宅が出来上がったときに売れたら50〜60%のキャピタルゲインが得られるが、賃貸収入だと3〜4%にしかならない。アパートメントの場合、着工前の売出し価格で買っておけば、二次購入者から30〜50%のキャピタルゲインが得られる。しかしそれが完成してしまえば、その後の値上がりは10%程度しかない。一方で賃貸収入は年間8〜10%のレベルが可能だ。
もうひとつのポイントは、とかれは続ける。中低所得層向け不動産よりも中高所得層向け不動産を対象にすることだそうだ。特に政府が補助金をつけているような物件だと、たとえば5年間転売禁止というような条件がついている。おまけに家賃相場も低所得層の購買力にあわせたものになっているから、賃貸収入もしれている。いまのインドネシアの不動産市場は価格が3億から5億ルピアの物件が需要が一番大きく、よく肥えたマーケットを形成している。ところがもっと採算効率のよい高級住宅がまだまだいくらでも売れるため、デベロッパーは高級住宅の建設に意識の大半を裂いており、上の価格帯の物件は供給が細い状況が続いている。デベロッパーにとって儲かる高級住宅は値上がり率がそれほどでもなく、おまけに賃貸収入は在留外国人に頼らざるをえないというデメリットが投資家側に生じる。
そういう不動産市場の環境を理解した上で、遊休資金を不動産にどんどん投資してください、とプロパティウオッチ役員は奨めている。


「その場しのぎの出たとこ勝負」(2012年11月7日)
2012年8月25日付けコンパス紙への投書"Parkir di Gandaria Heights"から
拝啓、編集部殿。ジャカルタの交通渋滞のために、わたしは足だまりとしてアパートメントをセカンドハウスに持つという高価な選択を余儀なくされました。南ジャカルタ市ガンダリアハイツの一ユニットを購入するとき、セールスレディは駐車スペースがひとつ確保されると約束したのです。
ところがそのアパートユニットに入居したところ、わたしは割当駐車スペースがもらえず、一般駐車スペースを使うよう言われました。しかしそこに空きスペースを見つけるのは至難の業だったのです。どうやら居住者の多くが車を複数台持っており、かれらが一般駐車スペースを奪い合っているようでした。建物管理者のリナさんの話では、ガンダリアハイツは居住ユニットが731あるが用意されている駐車スペースは515台分なのだそうです。もし各ユニットの居住者がみんな車を一台持っていたとすれば、216台が駐車スペースのない幽霊になるわけです。それが都庁の規定なのだとリナさんは主張しました。つまり、入居者が駐車スペースの割当をもらえなかったなら、その問題は都庁に言ってください、ということなのでしょう。なぜならアパート建物管理者は都庁の規定を満たしているのだから、と。
それから永い期間が経過し、最終的にP5フロアで101台分の割当駐車スペースが居住者のために用意されたという話を聞きました。年間費用は325万ルピアです。ところがガンダリアハイツの警備員はだれひとりとしてP5フロアがどこにあるのか知りませんでした。ウロウロと探し回ったあげく、P5フロアはモールガンダリアシティのゲートを通らなければ行けない場所だということが判明したのです。ガンダリアハイツ居住者が住居とその駐車スペースの間を往復する場合は常にモールの中を通らなければならず、おまけに車の出し入れはモールの開店時間に合わせなければなりません。
アパートメントのデベロッパーにして管理者であるパクウォングループのPTアルティサンワヒユがガンダリアハイツ居住者に提供するサービスはなんと風変わりなものなのでしょうか?昨今盛り上がっているグリーンコンセプトを採用しているのでしょうか?アパートメント居住者はみんな車を使わないで歩きなさい、とでも・・・・?[ 南ジャカルタ市在住、ボンダン・ウィナルノ ]


「戸建て中古住宅市場で激しい値上がり」(2012年11月16日)
中古住宅市場は過去二年間に猛烈な値上がりが起こっており、低くても25%、物件によっては70%も値上がりしていることを不動産業界者が明らかにした。不動産市場のユーフォリア、極めて根強い需要、地価の上昇傾向があいまって戸建て中古住宅の価格を押し上げ続けている、とインドネシアリアルエステートブローカー協会会長は語る。今や都内で10億ルピア未満の物件を探すのは至難の業で、中古住宅販売者は10億から30億ルピアの範囲で物件を売り渡している。凄まじい値上がりのおかげで中古住宅市場は今年も昨年並の5%成長が達成される見込み。開発住宅地での新築住宅供給が少なければ、今年はもっと大きな成長になったのだが、と会長は述べている。
都内南部地域の中古住宅売買トップ市場はポンドッキンダ(Pondok Indah)〜ルバッブルス(Lebak Bulus)〜ポンドッラブ(Pondok Labu)一帯で、往々にして一軒が20〜30億ルピアで売買されている、とプロパティ業界者が表明した。そのエリアはもう売買される土地が残されておらず、そのために中古住宅売買が盛んになっているとのこと。「そのエリアは自然が豊富に残されており、しかもショッピングセンター・学校・オフィス街などに近いというメリットがあるため、住宅購入希望者はそのエリアに魅力を感じている。いまそのエリアがジャカルタ南部ではもっとも人気の高いエリアだ。総じて、中古住宅購入希望者はアパートよりも戸建てを望んでいる。戸建て中古住宅需要の7割は家族持ちで、3割が新婚カップルだ。そのエリアの中でもポンドッキンダは戸建て住宅購入希望者を磁石のようにひきつけている。ポンドッキンダ地区は古くからのエリート住宅地区として優れた評判を得ており、スディルマン、メンテン、クラパガディンなどと並び称されている。ポンドッキンダ地区は毎年地価が15〜20%上がっており、それが中古住宅価格を押し上げている。価格はオーバーバリューの域に入っているが、売り手も買い手もその価格を受け入れて売買している。売買取引のペースは相変わらずで、ペースが落ちる兆候はまったく見えない。地所が4百平米前後の家で20〜30億ルピアだ。買い手の9割は住宅取得ローンを利用している。」
ポンドッキンダがそのありさまだから、ルバッブルス・チランダッ(Cilandak)・ポンドッラブなどの周辺エリアにドミノ効果が及んでいる。それでも都心部の価格に比べれば、南部地区はまだまだというレベルにある。いま都内で一番高い戸建て中古住宅はスディルマン通り地区にあり、平米当たり6千万ルピアの値がつけられている。メンテン地区は平米当たり3〜5千万ルピアで、ポンドッキンダは1千5百万ルピア、クラパガディンは1千2百万ルピアとのこと。


「大量のコンドが市場投入」(2012年11月27日)
2014年までに2万3千ユニットのコンドミニアムがジャカルタの不動産市場に投入される。コールドウエルバンカーインドネシアによれば、2012年第4四半期に市場に参入する物件は次のようなものがある。(名称 ユニット数 グレード)
Verde Tower 1 137 A
Verde Tower 2 137 A
Royal Springhill Marigold Tower 300 B
Royal Springhill Marigold Tower 300 B
Apartemen Grand Emerald 600 B
West Mark 620 B
Kemang Village Tiffany Tower 205 A
Silkwood Residence Tower A 459 B
Puri Cinere Apartemen 245 B
Kota Kasablanka Montana Tower 260 B
Kota Kasablanka Montana Tower 150 B
St. Moritz Penthouse - The New Royal Suite Tower 227 A
D'Green Pramuka 800 C
合計 5,090ユニット
ロケーションについては、デベロッパーは一等地だが非ビジネスセンター地区を選択しているとのこと。ジャカルタのコンドと賃貸アパートメントの需要は依然として高く、コンドの販売状況と賃貸アパートの入居率の高さがそれを証明している。既存コンドの販売状況は95.7%、建築中コンドのプリセールスは87.2%、そして賃貸アパート入居率は77.9%である由。グローバルクライシスもものかわとインドネシアの不動産市場は依然絶好調の波に乗っており、昨今では新築コンドを数ユニット買うという話はもうだれも驚かず、フロア単位で買うようなことが起こっているそうだ。賃貸コンド需要を支えているのは外国人駐在員であるため、ストラタタイトルを購入した投資家が賃貸コンドに切り替えて賃貸市場に出すことになる。
カッシュマン&ウェイクフィールドインドネシアは、場所によってではあるが2013〜2014年に価格が低下するだろうと予測している。一部エリアは不動産市場が過熱してオーバーバリューになっているところがあり、今後それが修正される可能性は高いようだ。


「海外不動産投資がオーストラリアにシフト」(2012年12月14日)
インドネシア人富裕層のシンガポール・マレーシアへの不動産投資は既に翳り始めており、かれらはオーストラリアを新たな投資対象の位置に据えた、と不動産コンサルタントが明らかにした。
レイホワイトインドネシアのカントリーダイレクターは、シンガポールでの不動産投資はもう魅力を失っている、と語る。「価格は相当高いレベルに達しており、投資者は低い利回りを甘受するか、へたをすると赤字を蒙ることになる。シンガポール政府が2011年1月14日から施行を開始したスタンプデューティ課税制度で購入してから短期間で転売すると巨額の税を課されるようになり、投資としての魅力が色あせてしまっている。それに比べればオーストラリアは、10%の手付けを打って購入しておき、残りは建物完成時に払い込めばよい。」
オーストラリアの不動産デベロッパー、クラウンインターナショナルホールディングスのCEOは、過去四年間でインドネシアからの投資額が30%増加した、と語る。主にはジャカルタ・スラバヤ・マカッサル・メダンなどからの投資だそうだ。インドネシア人がオーストラリアの不動産に関心を持つのは、距離的に近いこともあるがインドネシアの中産階級が激増しており、子供が留学したりあるいは就職するという状況が増加傾向にあるためとのこと。「シドニーでの住宅投資は年間33%という利回りが享受でき、オーストラリアドルの対ルピアレートも強く、そして年間キャピタルゲインも大きいという魅力がある。シドニーはアジア人の留学先ナンバーワンで、留学生の5割はアジア人であり、シドニーでの不動産投資はいまや中国・マレーシア・インドネシアがトップを占めている。」
シドニーの賃貸不動産入居率は99%で、インドネシア人購入者の7割は投資目的であり、ほとんどのひとが家賃を銀行へのローン返済に充てている由。


「西ジャワで不動産バブル?!」(2012年12月26日)
西ジャワ州の不動産向けローン上昇率が30〜43%もあるのは異常な現象であり、2013年の住宅取得ローン貸付に銀行界は特に警戒するように、とインドネシア銀行西ジャワバンテン第4地方事務所長が警告した。「不動産セクターへの銀行貸付は、価格の安定が伴われなければバブルを発生させる可能性がある。当方がバンドン・デポッ・ボゴール・ブカシなどの都市をモニターしたかぎりでは不動産バブル現象が見られ、価格上昇と不動産ローンの焦付きが起こる可能性が高い。今やそれらの都市部で住宅価格を測定するのは困難になってきている。1億ルピアを下回る住宅やアパートメントがまったく見られず、ほとんどが2億ルピアを超える価格付けをしている。住宅建設コストは5千万ルピアを超えないというのに。この状況をそのままにしておくと、必ずやバブルが発生するので、政府は住宅を統制する規則を早急に出さなければならない。その規則が出されるまで、銀行界はローン貸付先を厳選する必要がある。本当に住居を必要としており、しかも経済的な能力がある消費者に絞るべきだ。銀行界は不動産価格が激しく動いているこんな状況にもかかわらずイージーに貸付を与えており、そのためにローン残高上昇が異常になっている。理想的には、不動産セクターのローン上昇は25%を超えるべきでない。西ジャワ州で起こっている異常現象は投機筋の動きと無縁でない。かれらは投資目的で住宅を購入し、特定エリアでの価格高騰にやまを張る。その結果、非現実的な価格高騰が起こり、本当に住宅を必要としている地元民の手が届かない状況が起こっている。」
一方、インドネシアリアルエステートユニオン西ジャワ支部長は、バブルが起こっているのは二次市場であり、住宅を必要としている地元消費者に対する住宅取得ローンを銀行界が制限することのないようにしてほしい、と要請している。


「外国人向け住宅の家賃が高騰」(2013年2月11日) 外国人向け住宅需要が高騰しており、市場では家賃がひと月で15〜30%値上がりするような状況になっている、とコリエールズインターナショナルが報告した。需要の高騰は戸建てとアパートメントの両方で2012年下半期から始まっている由。例年は年末年始休暇の3ヶ月ほど前から外国人の住宅需要は低下するのだが、2012年は反対に需要が増加しており、2013年初からビジネス体制を強化しようとしている外国系企業の姿がありありと感じられる。コリエールズはそれに関して、インドネシアの経済成長に伴って事業コンフィデンスが上昇している外国系企業が体制を強化する中で駐在員の数を増やしているために住宅需要が高騰しているのだとコメントしている。
需要の増加に対して供給はどうかと言えば、ロケーション・サイズ・クオリティ・ファシリティのすべてにわたって不十分であり、高まっている需要を吸収しきるキャパシティはない。外国人が求めている住宅はサイズが2百〜1千5百平米で家賃は2千5百〜1万5千米ドルというレベル。外国人駐在員にとってジャカルタでのお気に入り地区は、月給4千5百米ドルを超える上級マネージメントレベルのひとたちの場合、ポンドッキンダ(Pondok Indah)、クバヨランバル(Kebayoran Baru)内のCBDに近いエリア、クニガン(Kuningan)などで、家賃は年間1万5千米ドルクラスであるとのこと。


「外国人の住宅所有はバタムが嚆矢か」(2013年2月18日)
シンガポール人マレーシア人のホリデーリゾートになっているバタム島で外国人の土地所有が広がっている。外国人に土地所有権が与えられていないのは国法によるものだからバタムでも同じことなのだが、シンガポール人やマレーシア人がインドネシア人を名義人に仕立てて自分の金で土地を買っているのはバリと似たようなものだ。
今や拡大の一途をたどっているそんな歪んだ状況を正すためにバタム不動産業界は、バタムフリーゾーンでの外国人土地所有トライアルを政府に勧めてきた。国際的にもきわめて廉価なインドネシアの土地価格が国際市場で満天の魅力を撒き散らすことは疑いもなく、外貨誘致と税収という政府にとっての魅力も否定できないものがあり、政府は不動産業界からの要請に気をそそられているものの、外国人に土地を持たせれば植民地時代に逆戻りだという一部民族主義的な国民階層の声が障害となって立ちすくみ状態に陥っている。
「バタムの土地を買っている外国人はシンガポール人やマレーシア人がメインだ。かれらは頻繁にバタムに遊びにやってくるから、自分の土地を持つことのメリットを享受できる。方法は地元民と結婚して妻の名義を使ったり、あるいは単に知り合いの地元民名義でというもので、そんな私的な非合法土地所有がどんどん増加している。島内敷地面積のマジョリティはもう外国人のものになっているかもしれない。だから政府は早急に外国人のための住宅所有に関する1996年政令第41号を改定してバタムに明快な規則を施行しなければならない。土地の権利と外国人向け積層住宅の所有方法に関して不動産販売が合法的に行なわれるための基盤が求められているのだ。20年+25年+25年合計70年間の賃貸権を外国人に一度に与えるような形を取る方向で話が進められている。」インドネシアリアルエステート会社ユニオンバタム支部長はそう語っている。


「若くして家を買うインドネシア人」(2013年3月7日)
戸建て住宅購入者の間に若年層が増加しており、かれらの購入目的は居住するためおよび長期投資が並存している。2012年12月から2013年1月にかけて不動産ポータルネットワークに関わっているiプロパティグループがインドネシア・マレーシア・香港・シンガポールで行なったサーベイで、インドネシアでは不動産購入に強い関心を示す20〜35歳という年齢層の増加が顕著に見られたと報告されている。インドネシアでは6千人の回答者が得られたが、そのうち66%が20〜35歳で占められた。戸建て住宅を購入しようとしているひとの76%は年収1億ルピア未満、1億から2億ルピアというひとは15%あった。一年前の調査では、年収1億ルピア未満が83%、1億〜2億ルピアは12%で、かれらの収入の増加が反映されている。経済成長・ミドルクラスの購買力向上・低いインフレ率・安定した金利率などの要因がインドネシア不動産市場の成長を支えている、とサーベイ報告は分析している。
不動産紹介サイトRumah123.comのセールスマネージャーは、過去一ヶ月間のサイト訪問者で戸建て住宅へのアクセスは1億2千9百万回(全体の46%)、アパートメントへのアクセスは110万回(4%)だったと述べている。物件の価格・ロケーションそして今後の価格動向といったところがインドネシアの不動産購入の際の主要検討事項になっているそうだ。


「ジャカルタの土地建物税が下がりそう」(2013年4月5日)
都庁は2013年からPBB(土地建物税)の税率をこれまでの一律から累進制に変更することを決めた。土地や建物を持っている納税者はその不動産のNJOP(課税対象販売価額)の金額によって四つのカテゴリーに分けられる。NJOPが2億ルピア未満の者は第1群、2〜20億が第2群、20〜100億ルピアは第3群、100億ルピア超の者は第4群と区分され、年間課税率は第1群が0.01%、第2群0.1%、第3群0.2%、第4群0.3%が適用される。この保有している土地建物資産評価額に従って高額資産者は税負担額が大きくなり低額者は小さくなるという累進課税システムは社会的な公平感を高めるべく企画されたものであり、これこそが民衆優先の税制と言うものだ、と都庁税務サービス局長は述べている。
この税率変更によって、2012年納税時から第1群は90%ダウン、第2群は27%ダウン、第3群は0.05%ダウンするが、第4群は30%上昇する。すると一見、この税率変更によって都庁のPBB歳入は低下するように思われるが、実は1兆ルピアの増収が期待できるのだとアホッ副都知事は語り、小市民に対する支援と社会公平感の育成、そして都庁税収の上昇という、みんながハッピーな結末を享受出来る政策だとの評価をこの企画に与えている。
一方首都ジャカルタの事業家のひとりは、経済クライシスの影響をあまり蒙らずに気を吐いていた不動産市場で、投資の足を重くする結果を招く政策だ、と都庁の新政策を批判した。「納税額の変更は企業の支払い能力を検討した上で行なわれるべきだ。労賃が高騰し、電力基本料金が値上がりして経営が苦しい最中でのこの税率アップは経済成長に水をかけるものになりかねない。」
都議会副議長はこのPBB累進課税方式について、まだトライアル段階のものであり、今年の現場における納税状況を見た上でどうなるかが決まると語っている。


「バタムでのトライアルは絶望的?」(2013年4月26日)
バタムを外国人向けプロパティ販売開放トライアル地区にしようという中央政府のアイデアは、地元自治体が作り出している困難な諸問題のために実現への期待が消えかかっている、とインドネシアリアルエステート会社ユニオンバタム支部が表明した。
問題の大きな根はバタム市庁とバタム運営庁の間で複雑な許認可錯綜が存在している点にあり、加えて未整備インフラや土地法規が不確定であることなどが問題をさらに厄介なものにしている。プロパティ開発会社は土地開発に関する許可をバタム市庁とバタム運営庁の双方から取得しなければならず、その双方がそろわないかぎり何のアクションも起こせない。バタム市庁は土地運用に関する許可、バタム運営庁はバタム開発計画に合致していることを承認する認可を交付しており、開発業者に重い負担を背負わせている。
その一方で、土地用途に関する法確定がいつまでも確立されないままだ。たとえば開発用地区に指定されたエリアが実は保護林であったことが判明し、開発業者は土地権利証書まで手に入れているにもかかわらず、販売が不可能になっている例も出現している。
バタムに常住している外国人は5千人に達しており、外国人向け住居の需要は十分にある。しかも借家でなく自分の住居が持てることになれば、バタムのプロパティ市場が俄然熱を帯びることは目に見えているというのに、ジャカルタやバリでここ数年起こっているプロパティ市場の拡大と活性化はバタムでまるで無縁のものという印象が強い。2012年にジャカルタは世界第2位の価格上昇率を記録したが、バタムでは地元の購買力と建築資材値上がりに応じた価格上昇しか期待できないありさまだ。
シンガポール政府は国民の住居取得に関する政策を抑制方向に切り替えたため、近隣諸国に対する需要が大きく膨らんだ。ところが、目と鼻の先のバタムはそのモメンタムをとらえようともせず、旧態然たる行政が続けられており、その結果シンガポールからバタムに向けてのプロパティ需要はまったく起こらず、反対にジョホールにその需要の波が押し寄せている。
バタムの土地管理行政の二重構造についてリアウ島嶼州副知事は、バタム市庁とバタム運営庁間の協力姿勢がまったく欠如しているため、さまざまな点で権限領域に関する衝突が起こっていることを認める。「市庁も運営庁も、地域整備に関する土地管理の主体は自分である、と考えている。だから双方が同じ事柄に対して権限を主張し、両者間での協力体制が作られていないために、あらゆるトラブルの根源と化している。投資誘致が魅力的にならないのはそのせいだ。バタム市庁はバタムの土地運営許可を出すが、バタム運営庁も海岸線から4マイルまでの土地に関する運営許可を出す。海岸が埋め立てられると、バタム市庁のサーティフィケートに問題が生じる。所有地を広げようとしても、手続きができないのだ、その両者間のセクターエゴ解消と協力体制の構築がなされないかぎり、バタムはますます複雑にもつれたトラブルの渦の中に入っていくだろう。そこからの再起ができなければ、あとは崩壊を待つばかりだ。」
副州知事はバタムの内情をそう悲観的に物語っている。


「家を買うときにはわからない住環境」(2013年5月8日)
2013年1月26日付けコンパス紙への投書"Tinggal di Ancol Mansion Bikin Stres"から
拝啓、編集部殿。長さ4分間の音楽を午前7時から23時まで延々と繰り返し聞かされることを想像してみてください。一日家で休もうとしても、16時間も同じ音楽を繰り返し聴かされるのです。ストレスにならないほうがおかしいじゃありませんか。
それはつまり、一日に同じ音楽を240回も聴かされているということなのです。そしてそれはある一日だけ、何かのイベントで起こっているのでなく、ひと月中毎日繰り返されているのです。北ジャカルタ市のアンチョルマンションに住んでいるかぎり、わたしはずっとそれを体験しなければなりません。大きな音で繰り返されている音楽はアンチョルドリームランドが流しているものです。
音楽の種類はバリエーションがあります。特別なイベント、たとえば宗教の記念日のような場合だと、宗教に関連した曲が延々と繰り返されます。インドネシア文化をテーマにした催しのときは、一日中ガムラン音楽が繰り返されました。
アンチョルドリームランドのプロパティビジネスで建てられたアンチョルマンション住民の生活クオリティにアンチョルドリームランド経営者がほとんど配慮していないのは、とても残念です。高価なアンチョルマンションを購入した住民にストレスを与えないよう、アンチョルドリームランド経営者はもっと配慮してください。住民は穏やかな海を眺め、風の音を聞きながら平穏で快適な暮らしを楽しむことを期待してそれを買ったのですから。[ 北ジャカルタ市在住、スギアンディ ]


「家を買うのに油断は禁物」(2013年5月14日)
2013年1月16日付けコンパス紙への投書"Menjadi Korban Denda PLN"から
拝啓、編集部殿。以前のオーナーが犯した罪を、中古家屋を買った新オーナーが引き受けさせられるという、宿命的な話がこれです。
わたしの住居は南タングラン市ヴィラパムランマス住宅地にあります。2012年11月9日にPLNタングラン市チプタッ事務所から電力利用取締り係員がチェックに訪れて電力メーターに穴があいているのを発見しました。その結果、新しいオーナーであるわたしに10,128,000ルピアの追徴金が科されたのです。
わたしは電力メーターがいじくられていたことをまったく知らなかったし、気付いてもおらず、ましてやわたしが穴をあけたわけでもないことを主張しました。わたしは自分が使った電力量に応じて請求されている金額を正直に支払ってきています。
この家の隣人たちは、電力メーターをいじくったのは前のオーナーだと証言しています。追徴金のあまりにも大きな金額に関して、わたしは正式な不服書をPLNチプタッ地区責任者宛に既に送りました。その中で、摘発された違反はわたしが行なったものではないことを主張しています。
PLNチプタッ地区責任者からの返信では、その問題を起こした家に住んでいる人間であるわたしがその追徴金に対して責任を負わなければならず、わたしがそれに応じなければ給電を停止するという威嚇が添えられていました。
小市民のための正義というのは、特にPLN電力利用者に関して、まだ存在しているのでしょうか?無罪の人間に罰を強制し、行なってもいない悪事を認めよと無理強いされているのですよ。
こんなことが当たり前になるのであれば、無実の人間が大勢罪に落とされ、盗電はいつまでも続くことでしょう。なぜなら、真の犯人は責任を追及されることがないからです。[ 南タングラン市パムラン在住、ヌラッ・ヌグロホ ]
2013年1月29日付けコンパス紙に掲載されたPLNからの回答
拝啓、編集部殿。2013年1月16日付けコンパス紙に掲載されたヌラッ・ヌグロホさんからの投書について、お答えします。2012年11月9日、南タングラン市パムランのヴィラパムランマスで確かに電力利用取締り係員による検査が行なわれています。検査報告によれば、顧客ID543500046146の家屋で、電力メーター上部に穴があけられているのが発見されました。
PLN取締役会決定書第1486.K/DIR/2011号に従えば、その状況は第2種違反に該当し、罰金が科されます。その家の新たな居住者となったヌラッ・ヌグロホさんにとってはたいへんなご不快を抱かれたことでしょうが、ご容赦ください。類似のことが再発しないよう、市民の皆さんに対して注意を喚起いたします。家を買う前に、電力メーターのチェックをお忘れなく。電力料金支払いで滞納はないかということもチェックしてください。
電力メーターに問題がないかどうかをお調べになりたい場合、コールセンター123に要請くだされば無料検査を実施いたします。[ PLNジャカルタタングラン配電支社広報環境育成マネージャー代理、イルワン・ダルウィン ]


「持ち家の夢を奪う狂奔価格」(2013年5月27日)
家を買いたくてもう三年間探し回っているが、値上がりがひどくて手の届く家がなかなか見つからないし、おまけにひっきりなしに値上がりが続いている、と都内にある調査機関で働くプルワディ30歳は物語る。かれはラワマグン・ビンタラ・チジャントゥンなどジャカルタ東部からブカシそしてデポッ更にボゴール県チタヤムまでの広いエリアで開発住宅地区を片っ端から訪れてみたが、とても自分の資力に叶う金額でないという現実に直面して愕然となった。地所百平米床面積36平米の、いわゆる36/100タイプという小さい家が、4億ルピアを超えている。かつてチタヤムではそんな住宅が一軒1億6千1百万ルピアだったが、ほんの1〜2ヶ月経ってまたそこへ行ったら、既に2億ルピアになっていた。「どんなにがんばって貯金しても、あの値上がりペースには追いつきようがない。値上がりの激しさは手綱の切れた奔馬のようだ。」
プルワディはもうマイホームを持つことを諦めて、借家を借りている。全国的に、ここ数年間の住宅価格上昇は目をみはる勢いで進んでおり、中低所得層国民の間で家が持てないという繰言が広がっている。
住宅開発会社社員ですら、状況は変わらない。毎日商品である住宅の売り込みに努めている社員のひとりは、共稼ぎの妻の収入もあわせて住宅購入の頭金を貯めようとしてきたが、昨今の値上がりにもうその希望を諦めたようだ。今は年間8百万ルピアの借家に住んでいる。首都圏で中低所得層が選択できる住宅の価格は、2億から7億ルピアという価格帯になっている。夫婦と子供一人という三人所帯のこの一家は、夫婦の収入から毎月の生活費3百万ルピアを差し引いた残りの1〜1.5百万ルピアを貯金しているが、住宅購入のための頭金は最低でも5千万ルピアは必要だ。加えてローン契約や管理諸費用に2千万ルピアはかかる。今の貯蓄ペースで7千万ルピアを貯めるには何年もかかる。その何年もの間にまた住宅価格は目をみはるような値上がりを起こすかもしれない。
西ジャカルタ市の女性事業家はこの一ヶ月間、家探しを続けたが、結局価格に手が届かないために当初の意気込みは消え失せてしまった。大きい住宅開発会社の住宅地を探せという親族のアドバイスに従っていたが、そんなところほど価格も高い。「早く買わないと値段はどんどん上がりますよ。」という販売担当者の話をはじめは契約を即決させたいためのセールストークと思っていたかの女は、それが事実であることに驚いたそうだ。
地方部でも状況は変わらない。マカッサル市の会社に勤めているアスキン40歳は隣接するマロス県に家を買おうとしていた。かれが目をつけていた住宅は最初9千万ルピアが売値だった。かれが過去5年間で8百万ルピアを貯えたにもかかわらず、今頭金は1千8百万ルピアで15年間の分割ローン返済は月額90万ルピアになっていた。月給160万ルピアのアスキンが受けられる返済金額ではなくなっていたのだ。月給はローン返済額の三倍なければならないのだから。


「27ヶ月で倍増した住宅価格の謎」(2013年5月28日〜6月3日)
カッシュマン&ウェイクフィールドインドネシアのデータによれば、2013年第1四半期の戸建て住宅平均価格は25.1%アップした。2011年の年間値上がりは27.7%、2012年は27.8%。つまり、過去二年三ヶ月で戸建て住宅価格が倍増したことを上のデータは物語っている。業界者は2013年の値上がり率は28%に達すると見込んでおり、中でもショッピングセンター・大学・ホテル・病院などを域内に持つ高級住宅エリアの戸建て住宅は大きい値上がり率が予想されている。
そんな激しい値上がりにもかかわらず、需要が落ちる気配がないどころか、住宅売買はますます増加傾向にある。それは首都圏のみならず地方都市にまで広がっており、地方都市郊外にニュータウンを建設したデベロッパーはその的中した商戦略に笑みが絶えないようだ。たとえばマカッサルに開発された高級住宅地チトラランドセレベスとチトラガーデンは1千8百軒の物件が過去四年間で売切れてしまった。開発初期には8百軒が8億から24億ルピアの価格で発売され、二年間で売り切れた。二次市場での価格は年率10〜15%で上がっており、2016年にニュータウン機能が完備されれば、30〜40%の値上がりが期待できるというもっぱらの評判だ。だからこの高級住宅地区の物件の一次購入者の中にジャヤプラ・マナド・クンダリ・パルなどから投資目的で購入したひとびとが多数混じっている。
ヨグヤカルタ(Yogyakarta)のチトラガーデンムティアラやスマランのチトラサンガーデンはアッパーミドル層以上の購買者を対象にした一軒9億から35億ルピアという価格レンジの高級住宅地で、購入者は地元企業のマネージャーから上のクラスのひとたちがメインを占めている。またスラバヤで起こっている戸建て住宅の急激な値上がりは、インフラ開発、中でも市内各所がアウターリングロードをはじめとする道路網で結ばれたことが大きな要因のひとつである、と副スラバヤ市長が語っている。グレータースラバヤの中で廉価住宅を求めるひとは、グルシッ(Gresik)・シドアルジョ(Sidoarjjo)・マドゥラあたりを探さなければならなくなっているそうだ。
そのように、特に高い売行きを示しているのは高価な高級住宅で、高所得層に加えて猛烈な勢いで増加した中流層もアッパーミドルクラスの住宅に飛びついている。反対に中下所得層は不動産の急激な値上がりに購買力が引き離されつつあるのが実情のようだ。2012年下半期の価格帯別売行きを比較すると、次のようになっている。
低所得層向け 4億ルピア未満 8%
中下所得層向け 4〜7.9億ルピア 15%
中所得層向け 8〜13.9億ルピア 22%
中上所得層向け 14〜20億ルピア 28%
高所得層向け 20億ルピア超 27%
これを首都圏の地域別で見ると、ジャカルタとタングランがいかに狂乱状態の渦の中にあるかがわかる。
ジャカルタ 
4億ルピア未満 2%
4〜7.9億ルピア 6%
8〜13.9億ルピア 20%
14〜20億ルピア 20%
20億ルピア超 52%
タングラン
4億ルピア未満 3%
4〜7.9億ルピア 6%
8〜13.9億ルピア 22%
14〜20億ルピア 31%
20億ルピア超 39%
ボゴール・デポッ
4億ルピア未満 30%
4〜7.9億ルピア 31%
8〜13.9億ルピア 16%
14〜20億ルピア 12%
20億ルピア超 10%
ブカシ
4億ルピア未満 3%
4〜7.9億ルピア 21%
8〜13.9億ルピア 28%
14〜20億ルピア 36%
20億ルピア超 11%
ジャボデタベック地区の地価上昇率は2011年が27.7%、2012年27.8%。
また、各価格帯での購入者の支払い手段についても、下記しておこう。
4億ルピア未満: 現金一括20%,現金分割2%、住宅取得ローン78%
4〜7.9億ルピア: 現金一括6%,現金分割10%、住宅取得ローン84%
8〜13.9億ルピア: 現金一括19%,現金分割33%、住宅取得ローン49%
14〜20億ルピア: 現金一括19%,現金分割33%、住宅取得ローン47%
20億ルピア超: 現金一括27%,現金分割23%、住宅取得ローン51%
実コストを離れて価値評価が過大な方向に向かっているこの不動産価格上昇傾向について、不動産バブルに至る懸念を表明する経済専門家は多い。しかし業界者のひとりは国内経済の好況がもたらしている現象がそれであり、バブル経済が起こる気配はまだない、と語る。「インドネシア経済はいま順風満帆の状態だ。ミドルクラスの成長が顕著であり、かれらは新しい住居を求めている。弊社のパラマウントスルポン住宅地は、購入者の三割が首都圏外の住民だ。かれらはそこに第二住宅を持とうとしている。」
パラマウントスルポンで販売されている物件は126平米のもので20億ルピアを超える。ところが購入者の四割は一括払いもしくは分割払いの現金支払いであり、住宅取得ローン利用者は6割しかいない。地方の住民でパラマウントスルポンに第二住宅を持っているひとたちは、スマトラ・カリマンタン・スラウェシ・ヌサトゥンガラ出身者がほとんど。そこから地方部の経済が好況であることがわかる、とその業界者は述べている。
ボゴールのスントゥルシティデベロッパーは、高級住宅に住んでいるのは実業家や企業のマネージャークラス以上のひとたちだ、と語る。「スントゥルシティは2ヶ月ごとに10〜30%の値上げを行なっており、価格は7億ルピア以上でオファーされているが、アッパーミドル層から上の階層に属すかれらにとってそんな価格は問題にならない。この住宅地の住民は6割がジャカルタ居住者だ。ここに引っ越してきて住みつく者、週末のビラとして使う者、あるいは投資目的で購入する者もいる。」確かに、この住宅地の中に"Dijual"と貼紙の出された家も少なくない。
売れているのは戸建て住宅だけでない。コリエールズインターナショナルインドネシアによれば、積層住宅も完成した時点で80〜90%が売却済みで、まだ建設中で未完成のアパートメントも6割が売却済みだそうだ。
不動産オブザーバーのパナギアン・シマヌンカリッ氏は、住宅価格の異常な上昇は膨大な需要に対して供給量が追いついていない状況がもたらしている、と分析する。「国内の住宅需要は住居としての需要と、投資対象としてのものが並存している。高所得者は余剰資金の活用先として、低い金利率の銀行預金よりも利回りのよい不動産投資に向かう傾向が強い。今インドネシアは不動産市場の爆発的成長の中で、住宅緊急事態に陥っている。政府は市場の統制能力を持たず、すべての国民に対する住宅供給という責任の遂行に失敗している。政府は、不動産市場の成長、ミドルクラスの増加、外国評価機関のインドネシア経済に対する評価向上などに酔っている場合ではないのだ。住居と住宅地区に関する2012年法律第1号で、地方自治政府が国民への住宅供給の義務を負うことになった。ところが、行政はいまだに住宅開発会社にそれを頼ろうとしており、しかも業界へのインセンティブは弱いものしか用意されない。」2007〜2012年に首都圏に補助金付き積層住宅1千タワーを建設する政策は2010年に停止してしまった。業界はうまみのない廉価積層住宅建設を放り出して、飛ぶように売れている中高所得層向けの高い物件作りに精を出している。
インドネシアリアルエステート会社ユニオン会長は、住宅価格上昇が消費者の購買力を引き離している、と語る。「補助金付廉価住宅プログラムは用地入手が困難なために挫折した。政府が土地とインフラを保証せず、許認可はスムースに動かず、地域レイアウト計画は曖昧で整理されていない。正直に言わせてもらうなら、住宅開発会社は利益をあげるために事業を行なっているのであり、利益のない建設プロジェクトを行なうわけがない。廉価住宅建設政策は、建設会社にインセンティブを与え、政府がそのプロセスにもっと深くかみこんで行われなければならない。」
そしてついに、国内の住宅価格、特に高級住宅価格の過熱は外国人が一役買っているのだ、という論調さえ飛び出してきた。外国人国内居住者は、学校・大学・病院などの施設がそろっている高級住宅地の豪奢な住宅を、金に糸目をつけずに購入しており、おかげでデベロッパーは強気になって価格をつり上げているというのがその論調の主旨だ。
タングランのリッポカラワチでは、年々住宅価格が顕著な伸びを示しているというのに、強い需要が維持されている。それはインターナショナルスクールであるプリタハラパン校があるためであり、子供をそこへ入学させ、在学中の住居としてリッポカラワチに家を買うインドネシア人実業家は多い。かれらは子供が卒業すれば、その家を売却する。
同じようなことをバンテン州チレゴンの工場に勤務する外国人国内居住者がしている、と言うのである。チレゴン近辺に外国人子弟が通える妥当なレベルの学校はない。必然的にかれらはチレゴンに近いリッポカラワチに家を買って、プリタハラパン校に子弟を通わせる。そして親はリッポカラワチからチレゴンへ、1時間半かけて通勤するのである。オーストラリア・シンガポール・韓国・ドイツなどから来た外国人がそのようなことをしているのだそうだ。しかし、そのような論調で首都圏全域の高級住宅価格値上がりを説明できるわけがないし、ましてや地方都市まで敷衍するとなると、ますます説明がつかなくなる。その論調は、植民地時代に定着してからインドネシア社会に生き続けているゼノフォビアを実証する以外のなにものでもないのではないかという気がわたしにはするのだが。
ともあれ、昨今のインドネシア不動産市場に巻き起こっているブームは世界でも有数のものだと折り紙がついている。住宅取得ローンの低金利率、高い経済成長率の安定的持続、ミドルクラスの爆発的増加といった条件が膨大な住宅需要を活発化させている現状に適切な政策が冷却をもたらさないなら、不動産市場が過熱からバブル崩壊に至るシナリオも無視できないことにちがいない。


「アパートメント市場も停滞」(2013年10月30日)
工場やオフィスと同様に、アパートメント市場にも停滞の波が押し寄せている。2012年に都内アパートメント価格は最高で250パーセントもの上昇が起こり、投資家への投資リターンは大盤振る舞いが起こったものの、こちらもオフィススペース同様に値上がりがバブルの様相を呈し、新規成約の足を引っ張る要因となっている。インドネシア銀行が昨年から開始した過熱軽減対策としての頭金比率引上げは10億ルピア未満の住宅市場で熱さまし効果が顕著にあらわれたが、10億ルピア以上の市場での影響はさしたるものが見られない。というのも、住宅取得ローン利用者のマーケットはその前者なのであり、後者はローン利用どころか、昔から現金購入が一般的で、一括払いや数回の分割払いで支払いを済ませるから、逆に言うと不良債権リスクは小さいセグメントだと言うことができる。
コリエールズインターナショナルインドネシアによれば、売却アパートメント市場が停滞状況に入ったいま、これからプライム市場と非プライム市場の区分が新たなラインを形成することになるだろう、とこれからの先行きを占う発言をおこなった。
一方、賃貸アパートメント市場も外国人向け物件への傾きが顕著になってきており、それ以外のマーケットの動きは無風状態に近いものになっている。2013年都内CBD地区の平均賃貸料金は月額平米当たり28.6米ドルで、これは前四半期から1%ダウンした。積層住宅デベロッパーは需要の縮小に鑑みて、賃貸用積層住宅プロジェクトを減らす方向に進みつつある。売却用積層住宅を購入した顧客が賃貸市場にそれを放出する際に起こるバッティングは避けるにこしたことはないだろう。
コリエールズによれば、2013年第3四半期の売却用アパートメント価格が5%上昇して平米当たり2千3百万ルピアになったと報告した。過去二年間に比べて価2013年の格上昇率は明らかにスローダウンしている。2011〜12年の都心CBD地区は61%、南ジャカルタは46%値上がりした。ラスナサイッ通り沿いでは2011年の平米1千8百万ルピアが今や3千7百万ルピアにアップしている。最近の停滞に対してアパートメントデベロッパーは、消費者の負担が増加した頭金の支払いに6〜12ヶ月の分割を与えるようになってきている。


「法規不服従、怖いものなしのインドネシア人」(2014年3月3日)
2013年10月30日付けコンパス紙への投書"Bangunan Disegel Tetap Dibangun"から
拝啓、編集部殿。西ジャカルタ市チュンカレン郡ドゥリコサンビ町タマンスマナンインダのブロックNB第21号のわたしの隣人はいま家を建てています。その建物はわが家に向かって15〜22センチほど傾いて作られており、わが家のスペースが奪われているだけでなく、不安をも引き起こしています。住居であるその建物は建築許可が二階建てにもかかわらず、四階建てになっているのです。
表側も、定められている規則に違反して張り出されており、また基礎も1メートルほどの深さしか掘られていません。隣家の建物に障害を引き起こす可能性が高いのです。建物は既に違法建築として封印がなされていますが、建築職人は相変わらず作業を続けています。
封印された住宅でも、建設工事は続けてよいのですか?チュンカレン郡建物監視統制課あるいは西ジャカルタ市長の注意を喚起します。建築許可に違反した建物への処罰措置を励行しているジョコ・ウィドド都知事とバスキ・チャハヤ・プルナマ副知事の反応はどうなのでしょうか?[ 西ジャカルタ市チュンカレン在住、ルシナ・ラスミンダル ]


「住宅取得ローン改定」(2014年5月13日)
住宅取得ローンに関する規定が改定された。2014年4月24日に出された「福祉住宅所有ローンを通した住宅建設の枠内における住宅融資ファシリティ貸付金利率に関する2014年国民住宅相規則第3号」「住宅融資ファシリティ貸付金利率実施細則に関する2014年国民住宅相規則第4号」「福祉住宅所有ローン融資資金配分に関する2014年国民住宅相規則第5号」で、これまで行なわれてきたシステムの中に定められている規準値の変更が行なわれている。
まず住宅取得ローン対象物件の最高価格は、戸建て住宅がエリアによって8千8百万〜1億4千5百万ルピアだったが、今回の改定で土地と建築の価格レベルによって1億1千3百万〜1億8千5百万ルピアに引き上げられた。またローンを受ける資格についても、戸建て住宅は月収上限350万ルピアから400万ルピアに、積層住宅は550万ルピアから700万ルピアにアップしたが、まだ家を一軒も持っておらず、且つ住宅取得補助金を一度も受けたことが無いという条件が付け加えられた。
ローン金利率は15年返済で7.25%、資金配分は国と銀行70:30という比率が75:25に変化している。
今回の変更とは別に、2015年3月31日から政府は戸建て住宅に対する住宅所有ローンを廃止することを決定している。そのため将来的には、低所得者層向け売却用積層住宅だけが住宅取得ローンの対象となる。


「ジャカルタの値上がりが世界最大」(2014年8月13日)
2014年上半期ジャカルタの高級住宅価格値上がりは一年前との比較で27.3%の上昇を示した。不動産コンサルタントのナイトフランク社によれば、その期間の世界32都市における高級住宅値上がりは平均値が一年前から6.2%となっており、ジャカルタが32都市中で最大の上昇率になったとのこと。トップファイブは、二位がダブリンの23.5%、三位以降はニューヨークが18.4%、ロサンジェルス17.8%、マイアミ17.2%となっている。アメリカの高級住宅価格上昇はヨーロッパやアジアに比べて予想外に早いピッチになっており、他にサンフランシスコも10%を超えるアップを示している。
ジャカルタの激しい値上がりは、ルピアレートの低下・銀行貸付金利率の9%から13%への上昇・建築資材値上がり・土地建物税の課税評価額大幅アップなどが影響を与えており、特に高級住宅建設のための建築資材は輸入品が6〜7割を占めているため、為替レートの軟化は即座にコストアップを引き起こす。
インドネシアリアルエステートセンター役員は不動産業界に対し、住宅占有率を下降させないよう、市場価格に特に注意を払うよう呼びかけている。新規建設は昨年より少なく、市場価格コントロールを注意深く行うことが占有率維持に重大な要因となることを役員は指摘している。
世界全体を見ると、2014年第2四半期の価格上昇は第1四半期にくらべてスローダウンしており、業界者は下半期の価格動向に注目している。


「土建屋精神はいつまで続く?」(2014年8月28日)
インドネシアの積層住宅ライフは歴史的に新しいものであり、低所得層向け積層住宅開発が依然としてスローであることも関連して、中流層の戸建て住宅志向はいまだに根強いものがあり、立法行政のこの分野での秩序付けは近隣諸国に比べて大幅に遅れていると業界オブザーバーが厳しく批判している。
人口稠密な都市部で積層住宅というのはこれからの都市計画の基盤に置かれるべきものであるのが明らかなのに、法制度のベースはやっと2011年に積層住宅に関する法律第20号が作られただけで、その実施規定となる政令などの法規がいまだに作られておらず、法律内容の実行機関である積層住宅監督庁もいまだに設けられていない。現場での実態は法制定以前の状態が続いている、と不動産オブザーバーのパナギアン・シマヌンカリッ氏は語る。
各地方行政の実態は、地元の都市計画の中に低所得層向けや中流・高級といった積層住宅が都市レイアウトの中に効果的に配置され、その建設・消費者への引渡し・集団住宅の運営などが統合的で効果的に行われるような形にいまだに到達しておらず、起こってくる問題の多くはデベロッパーと消費者間の直接問題にされており、デベロッパーに対する監督が弱いために消費者が損害を蒙っているケースが多く、消費者保護の思想がほとんど浸透していない。消費者保護の確定、デベロッパーと消費者間の権利と義務の明確化、不良デベロッパーに関する消費者の訴えを行政機関が取り上げる窓口の開設、低所得層向け補助金付き積層住宅建設を大型デベロッパーに積極的に取り組ませるためのインセンティブなどがこれからの課題であり、新政府はその面に関する腰を据えた取り組みをしてほしい、とかれは強く希望を述べている。
これまで消費者から苦情の多かった問題は、プレ販売で全額支払いを終えたというのに納期が守られないこと、できあがったアパートメントユニットのデザインが約束したものと異なること、アパートメントユニットの所有権を証明する証書がいつまでたってももらえないことなどだ。購入者の支払いも、全額一括や全額分割、あるいは積層住宅取得ローンなど種々の手段が使われているが、ローンを提供している銀行もデベロッパーが実際に行っている消費者への不当行為に対する監視能力がほとんどゼロに近く、消費者が蒙る問題を増幅させている面も見られる。
たとえば、今現在係争が起こっているブカシのチブブルコンフォートアパートメントのケースでは、購入者が支払いを済ませたのに納期が遅れているばかりか権利証書がいつまでもできあがってこないことで、消費者側はデベロッパーとローン銀行に抗議を表明しているというのに、満足できる反応はない。BTN銀行によれば、デベロッパーは普通、元になる土地権利証書から積層住宅の各ユニットの権利証書を作る手続きを行うわけだが、それを一度に行って経費節減をはかるのが普通で、購入者があるたびにそんなことをしないそうだ。チブブルコンフォートのケースについてBTN銀行は、建築工事が遅れているために完成してから権利証書を作る意向ではないかと語っている。すべてにおいてデベロッパー側の独善的な行為が優先されており、消費者保護はまったく見当たらない。


「秘密のないインドネシア社会」(2014年9月3日)
2014年6月2日付けコンパス紙への投書"Terganggu SMS Broker Properti"から
拝啓、編集部殿。わたしは北ジャカルタ市グリーンベイプルイッアパートメントのユニットオーナーです。このアパートメントのユニットを取扱っている複数の不動産ブローカーからのSMSにたいへん困っています。
ブローカーたちはわたしがユニットを売るならいつでも取扱いますというSMSをひっきりなしに送ってきます。今のところ、わたしにそれを手放す考えなど針の先もないというのに。もちろん、かれらの商売がどのようなものかということは、わたしも十分に理解しています。将来、わたしがそれを手放そうという気になったら、もちろんかれらの機能を利用することは確かでしょう。
わたしが不審を抱き、問題だと感じているのは、空室ユニットオーナーが誰で、その電話番号が何番なのかという情報をかれらがいったいどのようにして得ているのかということです。グリーンベイプルイッ管理事務所の中に、ユニットオーナーに関するデータベースを漏洩している者がいるということなのでしょうか?わたしの名前が外部に洩れ、他人がそれを知り、グリーンベイのユニットオーナーのデータベース守秘を管理者がコンフィデンシャル扱いしないのであれば、わたしは管理者に強く抗議します。[ 南ジャカルタ市在住、フェブリリアント ]


「インドネシアのマンションはオクション」(2014年9月15日)
コンパス紙の調査によれば、各島別の積層住宅価格(いわゆるマンションやアパートメント)は次の通り。これは物件のマジョリティがどんな価格帯にあるかというデータであり、その地域にある最低と最高という意味ではない。
地域: ユニット当たり価格(億ルピア単位)
スマトラ: 2.8〜3.6
ジャボデタベッ: 3.0〜3.45
ジャワ: 2.59〜2.85
バリ・ヌサトゥンガラ: 2.66〜2.99
カリマンタン: 3.24〜3.57
スラウェシ: 2.8〜2.97
マルク: 2.73〜3.46
パプア: 3.85〜5.66
地域: 平米当たり価格(万ルピア単位)
スマトラ: 780〜1,000
ジャボデタベッ: 800〜960
ジャワ: 720〜790
バリ・ヌサトゥンガラ: 740〜860
カリマンタン: 940〜990
スラウェシ: 690〜870
マルク: 760〜960
パプア: 1,070〜1,570


「前途多難な国民住宅政策」(2014年9月19日)
都市部でマイホームを求めている低所得勤労者層の住宅所有率を高めることが目下の使命になっている国民住宅省が、積層住宅増加方針の継続強化に努めるため、国民も戸建て住宅よりも積層住宅を選択するようにしてほしい、と呼びかけた。
戸建て住宅を市内で求めるのは低所得層の購買力からかけ離れた金額になっているためなかなか実現させるのが難しく、必然的に市内から遠くへ遠くへと離れていく傾向が出現するのを避けることができない。ところが市内から離れれば離れるほど生活インフラが希薄になり、市内で行えるような生活レベルが維持できなくなる。市内での住宅価格が高いのは地価の暴騰によるものであり、その影響を緩和させるために国有地を低所得層向け賃貸高層住宅建設にあてることを検討していると大臣デピュティが表明した。
低所得層向けの積層住宅はルスナミ(rusunami)と呼ばれる売却住宅とルスナワ(rusunawa)という賃貸住宅の二本立てで進められており、国有地は法律上の適合性が求めやすいために賃貸住宅用に使用したい意向。売却用はこれまで行われてきたように、補助金をつけて建設業者に建てさせるしかない。国民住宅省の予測によれば、低所得層向け住宅はこの先二十年間に3千1百万戸が必要とされ、1,850万戸は都市部、1,250万戸は地方部という内訳。都市部に1,850万戸の住宅を用意するためには17万Haの用地が必要になるという計算になっている。
補助金付きのルスナミは販売価格上限が3.45億ルピアで、戸建て住宅の1.2億ルピアのほ3.ぼ三倍。口では「積層住宅を」と言うものの、していることがそれでは積層住宅による持ち家がメインになることはありえない。ちなみに住宅所得ローン申請時の条件は次のようになっている。
1.雇用者の商業許可書のコピー
2.雇用者の納税者番号のコピー
3.国家公務員あるいは民間企業の正式社員登用証明書のコピー
4.勤続一年以上を証明する雇用者からの証明書
5.KTP(住民証明書)住所に記されている村/町に住宅をまた所有していないことの証明書
6.基本給が月額200万ルピアを超えていることを証明するもの
銀行の審査にパスすれば、1.2億ルピアの戸建て住宅購入者は銀行に頭金1千2百万ルピアを納め、毎月のローン返済額は85万から1,300万ルピアのレンジとなる。返済期間上限は25年間で、言うまでもなく長期の返済になればなるほど毎月の返済額は小さいものになっていく。
2014年9月3〜4日にジャカルタコンベンションセンターで開かれた国民住宅エクスポでは首都圏の補助金付き住宅を77のデベロッパーが売りに出し、戸建て住宅は二日目に全数が売り切れた。そこで契約した勤労者たちは概して若いファミリーが多かったようだ。ある契約者はブカシ市から遠い1億2千万ルピアの戸建て住宅を、頭金5百万ルピア、毎月のローン返済75万ルピアで決めた。職場まで40キロも通うことが問題であり、どのような公共運送機関が使えるのかまだはっきりと判っていないから不安がないわけでもない、とかれは語る。別の契約者で。「毎月70万ルピアの家賃を払うよりは、350万ルピアのローン返済金を払うほうがマシだ」と言った若い父親もあった。
結局は、インフラの希薄で通勤も費用とエネルギーを吸い取る遠隔地の戸建て住宅が低所得層勤労者の持ち家となり、都内の積層住宅は金持ちが購入して他人に賃貸する不動産と化している姿がまだまだ継続するように思われる。


「低所得層向けアパートメントは売れない」(2014年10月15日)
首都圏の積層住宅市場は、アッパーミドル層向けの販売が依然として好調で、低所得層向けは売行きが停滞している。低所得層向けアパートメントの販売価格は床面積1平米当たり900〜1,400万ルピアで、アッパーミドル層向けは2,100〜3,000万ルピアとなっている。供給に対する販売比率はアッパーミドル層向けが84%、低所得層向けは71%で高級アパートメントと同じ比率だ。アッパーミドル層向けの売行きが良いのは、デベロッパーが販売を首都圏からバンドン・スマラン・スラバヤなどジャワの地方都市まで拡大したことが効果をあげているようだ。
低所得層向けアパートメントは、消費者の購買力で手の届く価格をつけなければ売れるはずがない。土地価格の廉いことが絶対条件であり、そういう土地はもはや首都圏中心部からかなりはずれたところにしか残っておらず、必然的に地の利が悪い。職場への距離が遠いとか、公共交通機関が走っていない、などという悪条件が消費者の購買意欲を殺ぐだけでなく、そういう地域には戸建て住宅がアパートメントよりさらに廉価に建設できるため、戸建て住宅という競争相手を持つことになる。さらにアパートメントに住めば、公共ファシリティのためという名目で毎月サービスチャージ支払いの負担が発生する。価格も維持費も高いアパートメントが同じエリアにある戸建て住宅と競争しても負けてしまう確率のほうが高い。だから結局低所得層向けアパートメントは対象階層が直接購入するのでなく、投資目的での購入が多くなる。しかし投資家の多くは、現時点では諸条件が圧倒的に悪いこのクラスのアパートメントを買うよりも、都市中心部に近いアッパーミドル層向けアパートメントの方に食指を動かしているようだ。但し、不良債権抑止政策としてインドネシア銀行がローンの頭金比率を高め、不動産については二軒目の購入の場合の頭金を30%、三軒目の購入では40%と義務付けているため、特に低所得層向け物件の販売に大きい影響が出ている。
一方、アッパーミドル層向けアパートメントはより高い販売価格とより大きい利益のために、デベロッパーがこちらのほうに力を入れていることが前提にある。販売価格が高くできるため、土地コストが高くても首都圏内という絶好の場所を選択することができ、消費者に職住接近を提供できるために需要が高まるのは目に見えている。そしてマーケットを地方都市にまで拡大した結果、需要が一気に膨らんだことが、相変わらず消費者をこのセグメントに招き寄せる結果を生んでいるようだ。


「高くても売れる都内コンドミニアム」(2014年10月31日)
インドネシアでは中上流所得層向けアパートメントをコンドミニウムと呼んでいる。コンドミニウムは交通の便や景観の良さといった地の利と豪華で贅沢な居住環境を備えており、そのコストの高さを十分にまかなえることのできる販売価格がつけられる。購買者はリッチな快適さとプライドおよびステータスシンボルへの欲求に推されて大枚を払うという寸法だ。
2012〜2013年にかけて都内の地価が暴騰し、土地建物税評価額が急上昇して社会問題になった。そんな用地を買収してコンドミニウムを建てるのだから、販売価格は中下流所得層の手の届かないものになるのも明らかだ。少なくとも、都内に建てられるアパートメントはおのずとコンドミニウムになっていくのが自然の勢いであり、おまけに好きなように値付けして利益が取れるコンドミニウムの建設販売にデベロッパーの心理が傾くのも当たり前のことだろう。
カッシュマン&ウェイクフィールドのデータによれば、過去5年間の首都ジャカルタにおけるコンドミニウムの需給関係は次のようになっている。(年:供給(ユニット)/需要(ユニット))
2010年: 77,625/73,595
2011年: 85,713/81,582
2012年: 105,793/101,565
2013年: 119,435/115,692
2014年: 132,472/129,307
2014年は第3四半期まで
また、インドネシア人高所得層とエクスパットに人気の高いエリアについて、地区別平米当たり平均販売価格の対前期および対前年同期の比較は次の通り。
1)CBD地区(スディルマン・クニガン・タムリン・ガトッスブロト・サトリオの各通り)
3,960/3,760/2,920
2)プライマリー地区(クバヨランバル・スナヤン・メンテン・ポンドッキンダ・プルマタヒジャウ・クマンの各地区)
3,540/3,330/2,760
(2014年第3四半期/2014年第2四半期/2013年第3四半期)
数字は万ルピア単位


「国民貧困層の住宅需要は1千万軒超」(2015年2月20日)
ミドルクラスから下の国民階層が自己所有として必要としている住居は1,250万軒あり、都市部に870万軒、村落部に380万軒というのがその内訳である、と大蔵大臣が2015年1月20日にジャカルタで開催されたセミナーの中で表明した。
住居を必要としている国民の中で分割払い能力のある国民が必要としているのは780万軒あり、そのうちの94万1千軒が政府の大衆住宅プログラムでカバーされなければならない部分であるとのこと。大衆住宅プログラムで一軒当たりの建設費用を8千8百万ルピアと仮定すると、82.8兆ルピアが国費でまかなわれなければならないことになる。政府予算の中でこれはたいへん大きい金額であり、2015会計年度で大衆住宅予算としては住宅取得ローンのための補助金が15兆ルピアで34万軒をカバーし、また住宅建設は5.1兆ルピアが5万8千軒の住宅建設に計上されている。残る54万3千軒のためには更に48兆ルピアが必要であり、銀行界・金融機関・証券市場・一般投資家がその資金調達に参加するためのメカニズムが設けられることが期待されている、と蔵相は語っている。
一方ユスフ・カラ副大統領は公共事業省と国民住宅省に対し、価格をもっと下げる方向での大衆住宅建設コスト見直しを行ない、現状の年間金利率7.75%を5%に下げるよう検討してほしい、と要請した。大衆住宅用地問題についても副大統領は、各州政府が用地手配を行うことを励行し、土地が用意されればすぐに住宅建設に取り掛かる体制を構築するようにと指示している。


「ブカシ市が旭日の勢い」(2015年4月15日)
都内の不動産供給の限界による地価高騰で、当然のように不動産需要は周辺のグレータージャカルタドーナツエリアへと拡大している。ジャカルタの東側に位置してるブカシ市もその需要に沸騰している地区のひとつだ。戸建て住宅を詰め込んだ住宅エリアから積層住宅まで、幅広いバラエティが用意されているものの、低所得層に手の届く物件が少ないのも、ジャカルタからのスプロール現象を踏まえているためかもしれない。
ブカシ市北部にある飲食品製造会社の工場作業員スギアントさん30歳は、職場からあまり遠くなく、公共運送機関が通っている大通りに近い場所で、妻子と一緒に暮らせる広さの物件であればマイホームとして十分だ、と持ち家についてあまり高望みはしていない。ところが、月給320万ルピアのかれがマイホームを持つための行動を起すのがいったいいつになるのか、かれ自身にさえわからないのだ。手の届く物件が見つからないのが、その最大の理由なのである。
ブカシ市労働局データによれば、2014年のブカシ市民就職希望者は26,639人いて、普通科高校と職業高校の学歴者が21,564人、大学卒2,930人という内訳になっている。高卒学歴者の多くが出会える求人は工場作業員・セールスマン・販売店員などがほとんどで、必然的に最低賃金からあまり遠くない月収しか得られない。2014年のブカシ市最低賃金は298万ルピアだ。320万ルピア程度の月収では、住宅購入ローンの返済能力が不足しているのである。
スギアントさんの月収は、家賃支払い、交通費、衣料品、日々の食費などでほとんどが消えていく。どんなにがんばって節約しても、ひと月50万ルピアを貯えるのがやっとのことだ。「ひと月50万ルピアのローン返済で買える住居はブカシ市にはないとわたしは思っている。」スギアントさんはそう語る。
かれの意見は決して間違っていない。ブカシ市ジャティアシの戸建て住宅地区のクラスターにある新築平屋建て住宅は土地面積80平米、家屋面積40平米で、4〜6億ルピアの販売価格がついている。4億ルピアの建売住宅を15年返済住宅所有ローンを使って購入する場合、頭金1億2千万ルピアを用意した上で毎月290万ルピアを返済しなければならない。ジャティアシ地区はブカシ市中心部から15キロ、ジャカルタへは32キロの距離がある。ジャカルタやブカシ中心部にもっと近い住宅地区の価格は、もっと高いものになっている。
中低所得層がジャカルタで物件を探すのが難しくなりはじめると、周辺地区で住宅開発が一斉に盛り上がった。1997年から2011年までの間にブカシ市には210の住宅地区が開発され、3,071Haの土地がその用に供された。その勢いは更に強まり、2014年には住宅地区が347ヶ所、そしてブカシ市総面積のおよそ四分の一にあたる5,622Haがそれらの住宅地区で埋められている。在来型住宅街はその計算の中に含まれていないのだ。住宅地区というのは戸建ての建売住宅がほとんどだが、積層住宅があることも忘れられてはいない。2011年以来、アパートメントは23ヶ所設けられた。2013年の統計では、ブカシ市住民は44万世帯にのぼり、住宅数は42万5千ユニットとなっている。持ち家にせよ借家にせよ、一世帯が一軒の住宅に住む状況にまだなっていないということだ。
手が届かないとブカシ市住民が告白している新築住宅が、まるでポップコーンのように売れている。だからこそ、不動産開発業者が続々と住宅地区を設けて住宅を販売しているのである。ブカシ市内中心部に近いコタスンマレコン住宅地に7クラスター全住居数1千7百ユニットが建設され、三年間で完売した。2014年4月にスンマレコンが設けたアパートメントは発売して一日で2,247ユニットの成約があった。東ジャカルタ市との境界に近いエリアに開発されたコタハラパンインダ住宅地は10クラスターに2千3百戸の住宅が作られ、発売して6ヶ月間で8割が売れた。スンマレコン住宅地の住宅は土地面積144平米で価格は20億ルピア、コタハラパンインダ住宅地は土地面積109平米で11.5億ルピア、スンマレコンブカシアパートメントはユニット価格が3〜8億ルピア。
不動産業界者は一様に、ブカシ市の不動産ビジネスは日の出の勢いだと語る。高所得者層の居住、そのライフスタイルに即したモールやショッピングセンター開発、ハイスタンダードな病院や学校の増加・・・。市の経済も2011年ごろから顕著な伸びを示すようになり、都市景観が塗り替えられつつある。ブカシ市長は、この都市は既にメトロポリタンシティの領域に足を踏み入れている、と語っている。
高額不動産とハイクラスファシリティの熱が渦巻いている現在、中低所得層地元民への経済効果は隔靴掻痒のものであるにちがいない。ブタウィ人がジャカルタ中心部から辺縁部へ追いやられたのと同じ運命がかれらを待ち受けている可能性は、決して小さいものではないだろう。


「何でもありのインドネシア」(2015年6月12日)
2015年1月21日付けコンパス紙への投書"Perumahan Rancamaya"から
拝啓、編集部殿。わたしは西ジャワ州ランチャマヤの建売住宅を2013年4月に購入契約しました。ペナルティを回避するために、決められているすべての支払いを、わたしは完璧に履行しました。契約書では建築完了が2014年4月で、3ヶ月の猶予期間が与えられており、2014年8月には引き渡しが行なわれることになっているというのに、2014年8月の第三週に至っても建築工事は7割がたしか済んでいません。現場にいる何人かのひとに尋ねてみたところ、この地区一帯の数軒の家はコントラクターが夜逃げしたので、建築が予定通りに終わらないと言っていました。デベロッパーのマーケティング部門にコンタクトしたところ、契約違反の賠償は一軒につき130万ルピアだと言われました。
2014年12月はじめ、わたしは建築状況を見に現場を訪れましたが、まだ完成していません。わたしは再度マーケティング部門に電話して苦情し、違反賠償金を追加するよう要求しました。すると電話の相手のイフォンさんは、工事遅延の追加賠償は32インチテレビ一台でどうでしょうか、とオファーしてきたのです。
販売するときは当然のようにお金を要求しておきながら、遅延賠償になると相手が必要としているかどうかもわからない品物を出してくるとは、いったいどういうことなのでしょうか?2015年1月現在、その家の引渡しはいまだに行なわれていません。[ 西ジャカルタ市在住、ウィディアワティ・スティアワン ]


「弱みを作ると食い尽くされる」(2015年6月15日)
2015年1月23日付けコンパス紙への投書"Biaya Apartemen Teluk Intan"から
拝啓、編集部殿。わたしは北ジャカルタ市のトゥルッインタンアパートメントに21タイプのユニットを所有しています。最近になって、アパートメントサービスチャージの未払い金額が12,981,780ルピアに膨れ上がっていることを知りました。2012年9月から2014年12月までの未払い額がそれだということになっていますが、規約では21平米ユニットのサービスチャージは月額20万ルピアでしかないのです。
未払い金利に金利を生ませているこのようなやり方をわたしは認めることができません。ユニットオーナーのわたしが地方都市に住んでいることをデベロッパー会社は認識しており、売買契約時にわたしが示してある個人データの住所に請求書を送ってくるのがあるべき姿勢であって、だれも住んでいない空っぽのユニットに請求書を投げ込むようなことをしてはなりません。管理者は悪意を持って故意にそのようなことを行い、ひと月5%の延滞金利率を年間60%に膨らませて暴利をむさぼっているのです。
わたしは滞納していたサービスチャージを全額清算する用意がありますが、金利に金利を生ませているこのようなやり方に応じる気持ちはありません。トゥルッインタンアパートメントのユニットを投資目的に購入しようと考えている投資家に忠告します。デベロッパーの甘い約束に溺れることなく、警戒心を強めてかれらの行動をよく観察するように、と。[ 北スマトラ州メダン在住、スミ ]


「マンションにもRT制度」(2015年9月10・11日)
元々、積層住宅には住民自治会の運営が義務付けられており、RT/RWの制度ははっきりした規定が定められていなかったようだ。積層住宅(rumah susun)に関する1985年法律第16号と積層住宅に関する1988年政令第4号では、積層住宅における共同生活の運営を目的として住民が自治会(Perhimpunan Penghuni Rumah Susun = PPRS)を結成し、自治会が指名する運営機関がそのマネージメントに携わることが定められており、積層住宅プロパティ管理者にそのシステム実施責任が負わされていたはずだ。
しかし、ジャカルタに雨後のたけのこのように林立するようになった積層住宅のすべてがその法規通りのことを行なっているかどうかは、推して知るべしだろう。個人のプライバシーが優先される積層住宅ライフの便利さを愛好するひとにとっては、戸建て住宅地区における社会生活社交生活の煩わしさからの逃避を確保してくれるメリットが強く意識され、アパートメント生活における隣近所との交際には半身で構える住民が少なくない。ましてや、その世話役なんて・・・・
その性向がナルコバや売春あるいはその他の犯罪をアパート内にはびこらせる結果を生み、ここ半年ほどの間に都民からの批判が増加した。こうして世論は、住民自治会でなくRT/RW制度をアパートメント内に持ち込むことを強く要求するようになった。もちろん、その声をリードしたのは都庁であるとも言えるのだが。RTとは Rukun Tetangga, RWとは Rukun Warga のことだ。
どうして法規で定められている内容を推進しようとせず、別のものにすり替えて現実化させようとしているのかというと、インドネシアの社会秩序建設維持システムの中に、上述の法規で定められているアパートメント住民自治会はあまりなじまないものだからだ。1983年以来内務大臣規則第7号で定められたRT/RW制度を社会的にまだ新しい外来の生活パターンであるアパートメントに持ち込むほうが構造的に便利であり、より高い効果が期待できるという判断がそこに加えられたのは言うまでもあるまい。
いや、RT/RW制度が1983年に開始されたとは言っても、それはもっと以前から存在していた仕組みを名称を変えて整備しなおしたということであり、その制度が日本軍政期にインドネシアに持ち込まれた隣組に端を発しているのは、たいていのインドネシア知識人には周知のことだ。軍政監部が日本で行なわれている隣組制度の実施を命じたのは1944年1月11日(異説では8日)のことであり、そこから数えるならインドネシア人にとってその制度は半世紀を越える歴史を持っていることになる。
RT/RWというのは、行政区域割りの末端部分に該当する。インドネシアの地域行政管理システムでは、州を第一級地方自治体とし、その下に県と市が二級自治体として同格で並び、それぞれが郡を従え、郡の下には町もしくは村がある。それらは公的管理ステータスであるため、そこで働く者たちは公務員だ。その下にRTとRWを設け、住民がボランティアで自治を行なう体裁を採り、住民のミクロレベルでの管理を行なわせるようにしたのがこの制度だ。一種の住民自治会であるにはあるが、その言葉から想像されるよりはるかに強く行政管理の尖兵の役割を担っている。自治組織だから住民の間で選ばれた世話役がいて、原則無給で任期の間、この奉仕仕事に尽くさなければならない。
RTの長を隣組長と呼ぶことにすると、たとえば、住民登録の基本であるKTP(住民証明書)やKK(家族登録書)の作成や変更は必ず隣組長が関与するし、土地建物税納税請求書は隣組長がRT内の各戸に配布する。自治体が住民に大掃除や蚊の駆除あるいは美観コンテストを命じる際には隣組長が走り回り、またある家の家宅捜査を警察が行なう場合は隣組長が立会いを命じられ、ある家に24時間以上外来者が滞在する場合はその家の戸主が隣組長に届け出なければならない。隣組長にはそれを所轄警察に届け出るという仕事もある。
村の下部組織であるRTは30戸、町の下部組織であるRTは50戸を最大とし、住民の家庭数が増加すれば分割されることになる。RWは複数のRTを統括する立場にあり、町役場・村役場と住民自治組織を結ぶ機能を担っている。人口密度によって多少の差が出現するが、RWは5〜10のRTを統括するケースが多い。
住民管理行政の上意下達と住民生活の秩序化がこのRT/RW制度を基盤にして作り上げられていることから、アパートメントにも同じようにするほうが管理運営面での効率もよく、必然的に高い効果が期待できるということをだれしも思うはずだ。
ちなみに、日本の隣組は1940年9月11日に出された内務省訓令第17号「部落会町内会等整備要領」の中で、末端住民の組織化をはかるために十戸内外の戸数より成る隣保班(隣組)の編成が命じられたのが発端になる。隣組は常会を開催し、その上位の行政地域単位である村落の部落会、市街地の町内会がそれぞれ常会を持ち、隣保班常会がそこにつながっていくという構想になっていた。この制度は敗戦後の1947年にGHQが解体している。
1944年1月に軍政監部がジャワ島で始めた隣組制度がインドネシアの風土の中に根付き、隣組に対応させてRTという名称が定着した。訓令では隣保班常会の上部機関は部落常会/町内常会となっているのだが、インドネシアではAzzazyokai(字常会)という呼称が用いられ、それが最初はRukun Kampung と訳され、今ではRWという名称に変化している。
都庁は既に、都内にある積層住宅で条件を満たしているところに対してプロパティ管理運営者を巻き込んでRT/RWの編成指導を進めており、この動きの引金役を果たしたカリバタシティアパート群にも19RTと3RWが作られた。その組織化でカバーされたのは住民2千5百人でしかなく、総居住者1万3千人がすべてどこかのRTに所属するまでにはまだまだ長い道のりがありそうだ。
この動きは高級マンションをも包括して行なわれることになっており、ほとんどの住民がエクスパットで占められている高級マンションでも、例外扱いはされない可能性が高い。。1983年内務大臣規則ではインドネシア国籍者で地元居住者がRT/RWの世話役になるという規定になっているものの、それに反して外国人がRTを務めている実例がおよそ20年ほど前のポンドッキンダ高級住宅地内にあった。インドネシア人住民が自宅をエクスパットに貸してよそへ移り住んでいけば、そのRTは外国人だらけになる。RTの機能を維持させようとするなら、外国人であっても世話役をしてもらわざるを得ない、というのが行政側の本音にちがいないだろう。


「都庁が土地建物税を非課税に」(2015年9月15日)
数年前に地価の暴騰に見舞われたジャカルタでは土地建物税の請求金額が跳ね上がり、市民から怨嗟の声を招くようになった。特に中下流所得層ではとても納税できない金額が請求され、都庁も救済措置を採ったが、それで問題が片付いたわけでもない。首都ジャカルタのジニ係数が2013年の0.364から2014年は0.436と貧富の差が拡大する中での土地建物税にかかってくるしわ寄せが、更に貧困層に追い討ちをかけて貧しさを昂進させているありさまだ。
都庁はその状況を是正させるために、土地建物課税対象評価金額が10億ルピアに満たない所有者に納税義務免除を与えることを法制化しようと検討中だ。これは都内貧困者向け福祉対策の一環として検討されているもので、他にもトランスジャカルタバス乗車料金の無料化、ジャカルタピンタルカードを使った義務教育費用援助、積層住宅をメインにした低コスト住居提供などいくつかの政策が施行されることになる。
中央統計庁が発表した2013年の貧困都民は354,200人で人口比3.55%だったが、2014年は393,980人3.92%と増えている。しかしバスキ・チャハヤ・プルナマ都知事は適正生活需要から貧困問題を捉えようとする。適正生活需要(KHL)とは最低賃金検討の際に独身者ひとりが一ヶ月間妥当な生活を送るために必要な支出金額を示すインジケータであり、その定義が示す通り、妥当な生活を送れない程度の収入しかない人間が貧困でないとは言えないという見解にもとづいている。このKHL金額に満たない都民となると、4%どころではなく17%にのぼる。
都庁税務サービス局長によれば、2014年の土地建物税納税義務者は各市別に次のようになっている。
東ジャカルタ市 483,800
西ジャカルタ市 433,328
南ジャカルタ市 404,252
北ジャカルタ市 322,417
中央ジャカルタ市 245,764
プラウスリブ 4,696
土地建物の課税対象評価金額が10億ルピアに満たない納税者は110万で、土地建物税課税対象者総数の57%に達している。ところが、土地建物税総収入1.7兆ルピアのなかで、その57%の納税者に課されている税額は500億ルピアでしかない。
コンパス紙R&Dが2015年6月29〜30日にジャカルタの電話帳からランダム抽出した17歳以上の526人に電話インタビューして集めた土地建物税に関する都民からの声が公表されている。
質問1)都庁が課している土地建物税をあなたは高いと感じますか?
回答1)高い63.7% 廉い27.0%
質問2)今年あるいは昨年、あなたあるいはあなたの家は土地建物税にいくら納めましたか?
回答2)1百万ルピア未満50.6% 1百万〜1千万ルピア23.8% 1千万ルピア超1.9%
質問3)今年あるいは昨年納税した土地建物税は前年からアップしましたか?
回答3)5割以上アップ48.0% 5割未満アップ41.0% 変わらない4.1%
質問4)貧困者・文民公務員老齢退職者・軍人警察退役者を土地建物税非課税者にしようという提案に賛同しますか?
回答4)賛同71.9% 反対26.2%


「国民総マイホームは遠い未来」(2015年9月16〜18日)
2015年上半期の不動産販売は対前年同期比で二〜三割ダウンした。前半期と比較すれば、四割ダウンになっている。その原因を探るなら、世界不況に引きずられた国内経済の悪化、ルピア通貨の対米ドルレート軟化、LTV規定内容の変更、奢侈品税課税規準が土地面積から販売価格に変更されたこと等々があげられる、とインドネシアリアルエステート会社ユニオン会長が表明した。
不動産市場は経済状況を強く反映するものであり、経済が停滞すればたちまち市場には木枯らしが吹くようになる。国内経済建て直しのために政府はインフラプロジェクトの遂行をプッシュし、支出予算を具現化させて経済の車輪をダイナミックに回転させるようにしてほしい。国家予算の支出が活発化すれば国内経済は活性化し、きっと不動産業界にも春の風が吹くようになるだろう・・・
業界者が全国的と言っているとおり、首都圏だけが停滞しているのではない。バタム島を擁するリアウ島嶼州支部長は、バタムでの高級住宅販売が4割低下したと言う。「このセグメントのターゲット顧客は外国人就労者だ。かれらは平均して12億ルピアの年間所得を得ている。中層下層向け市場はそれほどダウンしているわけではなく、せいぜい2割弱の落ち込みというところだ。しかしこちらのセグメントの販売効果は高級住宅に較べてあまりにも小さい。バタム経済の主力は製造加工産業に負っている。そのセクターが活力を失っているのだから、そこで高給を得ていたひとたちに影響が出ないわけがない」。
バリ島では、不況の影響を一番強く受けているのがここ数年間に激増した集合住宅のユニット販売だ。ビラ風の戸建て住宅建設は各所で続けられており、顧客の嗜好は依然として戸建て住宅に向いていると見ることができる。しかしバリの不動産業界にとっての最大の問題は、バリ島南部から始まった土地価格の暴騰が今や島内ほぼ全域を覆っている点にある。地の利と需給関係に従って、デンパサル市とバドゥン県南部の観光中心地区が驚くような価格帯にまでアップしている。
東ジャワ州スラバヤでも、あらゆるセグメントで消費者の買い控えが起こっているため、デベロッパーの中にはプロジェクト工事を一旦休止するところも現われはじめた。作ったものを販売しながら次のプロジェクトに着手していく不動産開発業界の常道が、販売の停滞と建築資材コスト高騰のために回転しなくなっているのだから、借入を増やさないかぎり次のプロジェクトを進めることができない。「集合住宅4百ユニットをひとまとめにして建設から販売に進むというのがオリジナルの構想であり、それがうまくいかなければプランは止まる。戸建て住宅ではそういうリスクが小さい。」デベロッパー経営者のひとりはそう語っている。東ジャワ州支部長によれば、不動産販売がダウンし始めたのは、1米ドル12,500ルピアを切ってからのことだそうだ。
中部ジャワ州ソロでも、旧スラカルタレシデン地区の住宅販売は3億ルピアを超える価格帯で顕著な販売低下が起こっている。もっと低いセグメントでは、政府が補助金をつけている住宅取得ローンによる住宅販売にはほとんど影響が感じられないそうだ。2015年にソロ市で開かれた不動産エキスポでは、成約は2百件に満たなかった。2014年の5百件という実績はまるで夢の中だ、と業界者は述べている。
ヨグヤカルタ特別州支部でも2015年上半期の不動産販売は対前年同期比3割減となった。中でも5億ルピアを超える物件は惨憺たるありさまだそうだ。2014年上半期の販売実績は2,950ユニットを数えたが、2015年同期は1,600ユニットを切っている。業界の中には、この非常事態をカバーしようとして販売条件を緩和するところが増えている。頭金の分割は一般的に3〜6回とされてきたものの、最高10回まで認めるところも出てきた。割引販売も活発化している。
西ジャワ州バンドンでは、上半期のビジネスが前年同期比で四割ダウンした。青息吐息を吐いているのは8億ルピアを超える価格帯。デベロッパーは平均してひと月10件の販売が昨年はあったが、今年は平均6件だそうだ。
実は、不動産業界を襲っている暗雲の一要素に、土地価格の高騰がある。土地価格が上昇すれば住宅価格が値上がりするのは当たり前だし、それによって土地建物税が高くなっていくから、購入者も出足をくじかれることになる。土地価格の上昇は不動産開発業者だけが関与しているものではない。個別の土地オーナー(つまり地主)が別の面から関与して土地価格を増幅させている。2011年に急激な地価上昇が起こったバリ島でも、最初は優良ロケーションでビジネス用途の土地買収が高額をものともせずに行なわれ、それが連鎖反応的に個人地主の販売価格を高騰させて、あれよあれよという間に非優良ロケーションにまで激しい値上がりが押寄せて行った。
その波が続いて首都圏を洗い、更に地方の大型都市にまで波及して行ったのだから、さながら「土一升・金一升」がインドネシアにも起こったということが言えるにちがいない。この土地高騰の中には、あきらかに金額との対比で過剰評価をうかがわせるものが多数混じっており、どうやらこれもかつての鉢植え・最近の貴石といったマネーゲームの趣がそこに混じりこんでいるように思えるのはわたしの色眼鏡のゆえなのだろうか?国をあげてマネーゲームに狂う性向を、どうやら国民性のひとつに加えなければならないのかもしれない。
インドネシアで土地は値下がりしたことがない。一度定着した相場を下げて土地を売ろうとする人間がいないということだ。積層住宅のユニット再販でも同じで、よほど緊急な金銭需要が個人オーナーの側に発生しないかぎり、そのオーナーは必ず購入コストになにがしかの利益を載せて値付けし、コスト割れでの販売は毛嫌いする。
既にマネーゲームの波が各地を洗った昨今の土地価格はどうなっているだろうか?東ジャワ州スラバヤでは、市内の住宅価格は土地建物税課税対象評価金額(NJOP)の三倍に達しているところがある。土地面積90平米建物面積60平米のレベルで一軒5億ルピアを下回る戸建て住宅はもはや市内にはない、と全国住居住宅開発会社協会東ジャワ州支部長は語っている。そういう物件を探したければ、シドアルジョ・グルシッ・モジョクルトあたりに行かなければもう見つからないそうだ。
スラバヤでの地価高騰はアフマディヤニ通りやスカルノハッタ通りなどの新規道路拡張工事が行なわれているエリア周辺から始まった。平米当たり地価はここ一年間に2千5百万ルピアにまで値上がりしている。スラバヤ市財務管理収入局長は、NJOPの規準値算出に当たって土地ブローカーがオファーしている価格を参照しているが、実際の個人地主が値付けしている価格はロジックでも相場感からも理解できないものが出現している、と述べている。
ヨグヤカルタでも、地価上昇は目に余るものがある、と地元不動産業界者は言う。「住宅販売がダウンしているのは不況だけが原因なのでなく、住宅価格がどんどん値上がりしているからだ。地価が高ければそのコストを含んで住宅価格も高くなる。5億ルピアを超える高級住宅の購入者はほとんどが投資目的であり、自分で住もうという人は少ない。こんな時期だから再販も賃貸も難しいのは判りきっており、今買わなくてもよいと誰しも考えるだろう。自分で住もうと考えているひとにしても、地価の上昇で家が高価になっている。それでも構わないと言えるひとは、更に少数になる。一方、ヨグヤカルタ地区で安定的に売れている価格帯は2億から3億ルピアのレベルだ。それに合うコストで妥当なクオリティの住宅を建設することが、地価のせいでどんどん難しくなっている。」
全国住居住宅開発会社協会リアウ島嶼州支部長は、バタム地区の中級住宅建設コストはいまや平米当たり5百万ルピアを超えている、と語る。そこに土地のコストは含まれていない。バタムの土地基本価格は平均70万ルピア/平米だが、往々にして不法占拠者が住み着いているため、かれらを立ち退かせるためのコストがかかる。更に土地整備と基礎インフラ建設のコストが加わり、役所の許認可を得るのに手続きブローカーを使って高いコストをかけざるをえない。形式上は統合許認可サービスセンターで窓口一本化を行なっているが、業者に対するやり口はまた別になっている。「高級住宅はもう60億ルピアを超えている物件がある。いくらなんでも、それはやりすぎだ。そのような異常価格はジャカルタの開発業者がバタムに進出してきてから始まった。2015年初には25億ルピアで発売されたというのに、もう60億ルピアを突破している。」
政府は全国民にマイホームを持たせることを公約している。ということは、世帯数だけ住宅を用意しなければならないということだ。公共事業国民住宅省のデータでは、2014年の住宅需要総数は全国で1,350万軒あり、そして供給不足数は760万軒あることになっている。おまけに需要は一年間に80万軒増加する。供給不足の大部分は中低所得層向けの廉価住宅だ。中高所得層は自力で何とでもしているが、中低所得層は各自の購買力に応じた物件が出てこなければ未来永劫借家住まいになる。行政が対策を講じていかなければならないのはその部分だ。ところが全国的に狂乱地価に見舞われて、通勤圏やインフラなどの条件が整っているエリアでは廉価住宅を建てることが大変困難な状況になっている。
すべての不動産デベロッパーは高級住宅1:中級住宅2:廉価住宅3の比率で住宅建設を行なう義務を負わされているものの、利益の小さい廉価住宅を避ける傾向は歴然として存在しており、また現実問題、地価の上昇のために政府の希望するロケーションと価格をデベロッパーが実現させることをもきわめて困難にしている。その齟齬をデベロッパー側は、政府の地価抑制が無策であるためだと批判しており、民間デベロッパーだけに頼っていては公約の実現が望み薄と決意した政府は、かつて活躍した住宅公社プルムナスの復活を計画している。
だがオルバ期のあらゆる面で抑圧されていた国民生活の中で住宅公社が行なってきたことが、体制が大逆転してしまった現在、同じようにできるのかという疑問が湧いてくる。必然的にプルムナスは地価の廉い山間原野を切り開かざるを得ないだろうし、遠隔地にニュータウンを作れば道路建設や生活インフラ建設が付随して発生する。国民総マイホーム時代がインドネシアに訪れるのは、まだまだ長い道程を覚悟しなければならないのではあるまいか?


「夢の戸建て住宅」(2015年10月1日)
ジャカルタの水害対策の中で、河川敷や堤防地域にある不法占拠住宅や店舗街の撤去は避けて通れない問題だ。それらを撤去すれば、そこに住んでいたり、そこで稼いでいたひとびとに代替場所を用意しなければならない。
都庁の貧困住民向け住宅政策では、2030年までに廉価積層住宅を建設して5万世帯がそこで暮らせるようにする計画になっており、不法居住者もそこに含ませることになっている。更に、廉価積層住宅居住者にはトランスジャカルタバス無料パスを提供して、地の利の問題を緩和させようという方針が既に開始されている。
地方部から上京してきた貧困者がスラム地区を作る場所が得られなくなるのだから、ジャカルタで職と住を廉価に得ようとするなら都庁が建てた積層住宅に住むのがもっとも合理的ということになる。しかし昔から言われているように、インドネシア人の住居のイメージは戸建て住宅であり、戸建て住宅に住むことに執念を燃やしていると言っても過言ではない。
2015年6月29〜30日にコンパス紙R&Dが電話帳からシステマチックに抽出した17歳以上の都民526人に対して、積層住宅vs戸建て住宅というテーマで電話インタビューを行なった。電話帳に名前を載せているひとびとはほとんどが不法占拠住宅やスラム地区といった環境とは無縁であり、たいていは戸建て住宅に住んでいて、都庁の廉価積層住宅に入る入らないといった状況下にはないため、この統計は都民の一般的な意識を示すものというアプローチで見るのが妥当だろう。
質問1)自分の居所として戸建て住宅と積層住宅のいずれかを選択しなければならないとしたら、あなたはどちらを選びますか?
回答1)積層住宅 6.5%、戸建て住宅 92.8%
質問2)政府が積層住宅(アパートメントやコンドを含む)に居住するよう都民に要請したら、あなたはそれに応じますか?
回答2)応じない 64.6%、応じる 33.8%
質問3)積層住宅に住んでもよいと考えているひとがメリットを感じているファクター
*水害から免れる 76.4%
*職住近接 70.8%
*快適な暮らし 60.7%
*上水や電力の確保 58.4%
*健康的な環境 53.9%
質問4)積層住宅が持っているファクターに対する全回答者からの評価
*犯罪から免れる・安全感: イエス 30.2%、ノー 59.5%
*火事から免れる: イエス 22.6%、ノー 68.8%
*水害から免れる: イエス 66.2%、ノー 28.1%
*上水・電力の確保: イエス 52.1%、ノー 35.9%
*快適な暮らし: イエス 45.2%、ノー 42.6%
*職住近接: イエス 60.3%、ノー 26.6%
*健康的な環境: イエス 44.3%、ノー 45.6%


「高くても売れるシマトゥパン地区のアパートメント」(2015年10月22日)
ジャカルタ外環状自動車道が通っている南ジャカルタ市TBシマトゥパン通りの開発によって、オフィス地区としてだけでなく住宅地区としての人気も付随して急上昇しており、このエリアの不動産ビジネスは今やゴールデンエポックの真っ只中。
「この地区でアパートメントを購入する場合、広さ80平米から100平米のユニットは50億ルピアを超えている。弊社の場合、もっと小さいユニットにして現金払いであれば12億ルピア、月額1千2百万ルピアのクレジットを組めば15億ルピアという価格設定をした。このスキームは大好評だ。」そう語るのはアンタサリアパルトメン45の販売担当取締役デピュティ。アンタサリアパルトメン45は第一タワーの建設を開始したところだ。
建設計画では、このアパートメントは二つのタワーから成り、まず990ユニットを擁する第一タワーの工事が進められる。ユニットは、スタジオ、1ルーム、2ルームの三タイプから成り、広さは29平米から65平米までとなっている。プレセールスは2014年11月に開始されて960ユニットが既に売れた。2014年は平米当たり3千万ルピアだったが、今や4千2百万ルピアにアップしている。それでも残る30ユニットが完売されるのは時間の問題だ、とデピュティは強気の構えを示している。
ジャカルタのCBDであるスディルマン〜タムリン通り界隈はほぼ飽和状態に達して価格が合理性を欠く様相を呈し始めており、新たなビジネス・オフィス地区として台頭してきたシマトゥパン通りの人気がいやが上にも高まっている。その状況が住居に対する需要を鋭く押し上げており、作るはしから売れていく現象が不動産業界にゴールデンエポックをもたらしているというわけだ。
コリエールズインドネシアのデータによれば、2015年Q1までのオフィススペース供給は739,343平米で、2018年までに更に28.6万平米が追加される予定になっている。


「首都圏の住宅販売が激減」(2015年10月23日)
2015年Q3のジャボデタベッ地区住宅販売は激しい低下を示している。15年Q2との比較では、数量で53.4%、金額で51.7%ダウンした。対前年同期比でも、金額は19.4%低下している。
販売ダウンは高級・中級・低級のすべてのセグメントで起こっている。セグメント別の状況は次のようなものだ。
高級 金額2,329.9億ルピア 対Q2比40.8%↓ 対前年同期比31.8%↓
中級 金額4,582.6億ルピア 対Q2比57.2%↓ 対前年同期比36.9%↓
低級 金額3,502億ルピア 対Q2比49.4%↓ 対前年同期比56.7%↑
ここで使われているセグメント別のカテゴリーは価格が規準になっていて、高級階層向けは一軒15億ルピア超、中級層向け3億〜15億ルピア、低級層向けは3億ルピア未満。
低級階層向け物件は数量ベースで15年Q2から58.6%低下し、セグメント別での最大の減少となった。言うまでもなく、このセグメントの消費者が持つ住宅需要は圧倒的な数にのぼり、この階層が景気の回復を待って物件購入を先延ばししている様子がそのデータから明らかだ。この現象が経済状況の悪化との心理的相関関係を増幅させている。
販売ダウンによって価格上昇が抑制されているため、消費者には買得な状況であり、もっと売れてもおかしくないのだが・・・、と不動産業界者のひとりはコメントしている。


「ポドモロゴルフビュー発売」(2015年11月11日)
首都圏で中低所得層国民向け住宅は照準が積層住宅にほぼ移ってしまった感がある。そのカテゴリーで新規供給されるもののほとんどが、売却用簡易積層住宅、いわゆるルスナミと、ワンランク上にあるアパルトメンだ。ルスナミは長屋タイプの戸建て簡易住宅よりもコストがかかるため市場価格も高いのだが、広い用地が得られなくなってしまったいま、バーティカルな方向に伸ばすしか選択の余地はないにちがいない。
都内で働くひとびとが自宅を持とうとするとき、より廉価な積層住宅を郊外に求めることになる。住居の規模、販売価格、そして通勤に要する時間、などの条件がかれらを悩ませることになるだろう。
ジャカルタから東に向かうと、ジャカルタからおよそ20kmほどの距離にブカシ市〜ブカシ県チカラン郡といったベッドタウン地区がある。そのエリアのアパルトメンは販売価格が13〜15百万ルピア/平米だ。
反対に西に向かうと、ジャカルタから24キロほどの距離にタングラン市〜BSDといったベッドタウン地区がある。こちらのアパルトメンは販売価格が平米当たり17〜20百万ルピアになっている。
南に向かえば、50km未満の距離にボゴール市があり、物件価格は10〜14百万ルピア/平米。もう少し近場となるとおよそ35キロ離れたスントゥル地区に広大なベッドタウンが開発されている。そのエリアのアパルトメン物件は10〜13百万ルピア/平米だ。
しかし、今インドネシアでトップクラスの不動産開発会社アグンポドモロランドは、ジャカルタから20kmも離れていないチマンギスに、はるかに手の届きやすい積層住宅団地を開発した。80Haの土地に25棟の積層住宅が並び、ユニット総数は3万7千戸になる。
ロケーションはジャゴラウィゴルフ&カントリークラブ、エメラルダゴルフクラブ、ブキッゴルフチブブルという三ゴルフ場に囲まれた場所にあり、そのためこの団地はポドモロゴルフビューと命名されている。
都内中心部のMRTと別に、郊外部と都内を結ぶ軽便鉄道LRTの建設計画を都庁が組んだが、2019年にLRTの稼動が始まれば、ポドモロゴルフビュー敷地内の駅から都内に30分で到達することができる。
物件価格は15年10月末時点で平米当たり9.4百万ルピアという手ごろなもの。ユニット当たりの価格は最廉価版が1.98億ルピアで手に入る。アグンポドモロランドはこの団地の販売をこれから推し進めていく計画だ。


「サモシル島で土地一升金一升」(2016年9月29日)
トバ湖の観光開発が中央政府の肝いりで進められており、ガルーダ航空がジャカルタと北タパヌリ県シラ~ギッ空港間の直行航路を開設して今や2航空会社がたくさんの観光客を運んでいる。過日催されたトバ湖フェスティバルも盛況だったが、フェスティバルに訪れたのはほとんどが国内観光客で、期待していた外国人観光客の姿はあまり見られなかったようだ。
ともあれ、そんな状況が国内観光産業資本を動かしている。トバ湖のサモシル島で2015年から現在までに百件近い土地売買が行われ、貧困生活を続けて来た地元民がかれらにとって夢のような巨額の金に目を奪われて土地を手放すケースが激増している。土地ラッシュが起こっているのはトゥットゥッ(Tuktuk)観光地区からシマニンド(Simanindo)にかけての湖岸部で、土地売買は一件あたり1千平米から2Haという規模。購入者はたいてい、ホテルや観光施設の建設を目的にしている。丘の上の土地は既にほとんど手が付けられたあとだ。
サモシル島の公証人は3人いて、そのうちのひとりは「2015年以来自分が関与した土地売買証書作成は30件を超えている」と語っており、百件前後の土地売買が行われているとの推測が関係者の間で広まっている。
伝統的なマルガ社会であるこの地方では、外部者への土地売買は村長がその外部者を村へ受け入れてマルガ名を与えるプロセスが付随する。1Haの土地に20億ルピアが支払われるなら、村長一同の目の色が変わっても不思議はない。
地元経済界はその状況に対して、すべての土地が外来資本の手に渡ってしまえば、地場観光産業がそこに混じって成長していく機会が閉ざされてしまうから、土地を売却するのでなく、貸すなり、利益分配契約を結んで資本参加するというような方法が取られるべきだ、と提言して懸念を表明しているものの、タイミングを失している感がなくもない。
先祖伝来の土地を外部者に売却することを阻止するべく早急に規則を定めるようにと一年前から県庁に対して提言して来たにもかかわらず、いまだに何のアクションも起こされていない、とサモシル県議会第1コミッションメンバー議員は述べている。
サモシル島の土地はほとんどが先住民支配権による土地であり、マルガがその使用権を持っている。外部者の土地利用に対しては土地耕作権が与えられる。サモシル県観光局長は、シンガポールの投資家が土地を求めてやってきており、一村45億ルピアで買い上げてもよい、と言っている、と洩らしている。


「年内いっぱい、不動産価格は停滞」(2016年11月17日)
インドネシア銀行16年Q3不動産サーベイで、不動産価格インデックスは対前四半期が0.36%、対前年同期比が2.75%のアップと報告された。16年Q2実績はそれぞれが0.64%、3.39%となっており、価格上昇が緩んでいる傾向が示されている。
価格の停滞はすべての住宅カテゴリーで起こっており、中でも大規模住宅がもっとも顕著。都市別には、スラバヤが1.96%で上昇率ナンバーワンになった一方、デンパサルで0.13%、パレンバン0.56%、ポンティアナッ0.12%といった値下がりも見られる。
不動産オブザーバーのパナギアン・シマヌンカリッ氏によれば、不動産価格のその状況は経済成長の影響を受けたものであり、Q2の5.18%からQ3は5.02%に低下したことと軌を一にしている、とのこと。大規模住宅をメインにした価格の停滞は膨らんだ価格を実勢に近付け、投機傾向を弱める働きを市場にもたらすだろう、と同氏は述べている。
2016年いっぱいは停滞が続くが、2017年に回復期に入るとの見方が不動産業界では一般的で、来年は年初からプロジェクトを活発化させる計画のデベロッパーも少なくない。