「ホウクスがインドネシアの弱点(終)」(2017年03月17日) 国家警察犯罪捜査局が2016年に市民から受けたインターネット上のホウクス告訴は4, 426件で以前の5割増しに近い数にのぼった。その内容はSARA感情を刺激すること を目的にしたものがメインを占めている由。 ホウクスがインドネシアの市民生活にあふれはじめたのは2014年の大統領選挙がきっ かけで、特に出自不明の情報に尾ひれがついてソーシャルメディアに流されるようになっ た。そこに情報検証力の弱いオンラインマスメディアが駆動力を付加している面が見受け られている。 そしてそんな事態を悪化させているのが、国民のリテラシー不足という現実だ。インドネ シアの文化は口承文化が強いまま、読み書きの力をつける以前に現在のようなネット社会 になった。インドネシア人は会話なら限度なしに続けられるが、文字情報を読むことは1 分以上もたない、という説がある。書かれた文章を1分以上読み続けられず、ましてや1 分以上も文章を書くことすらできないなら、その1分以内に読まれた内容がその人間にと っての情報のすべてとなる。情報の真偽検証どころではないということだ。その部分的な 情報を鵜呑みにして他人に伝達しようとするから、広まる内容はどんどん食い違ったもの になっていく。 インドネシア人が行うネット内の書込みを見れば想像がつくだろう。会話に使う口語表現 そのままを、速記体のような暗号化した文章で表現する。どうやらそれが、口承文化の中 に元来文字文化の産物だったインターネットソーシャルメディアが入って使われるように なったときのひとつのパターンなのかもしれない。 インドネシアは非識字者が6百万人弱で、人口比では3.6%しかいない。識字率が十分 に高い国になっている。それは政府が国の名誉にかけて努めて来た結果だ。昔の文字とい う文明の産物に関する価値観は、そういうものでしかなかった。ところが、このホウクス という社会現象が起こったことから、文字が読み書きできるだけではダメなのだというこ とが明瞭になって来た。 政府はインターネット利用者のマジョリティを占める若者国民層に対するホウクス対策と してのリテラシー向上教育に着手した。加えて全国民に対する義務教育の中でのリテラシ ー向上にも取り組み始めている。 インドネシアのヘイトスピーチとホウクスの興隆は、ヘイトスピーチによってSARA感 情を煽られ、ホウクスによって軽挙妄動する民衆の存在と表裏一体になっているものだ。 国民のリテラシーを向上させて、ネット情報の真偽を判断させる技能を高めていくことは 決して無意味ではないのだが、SARA感情を抱えて軽挙妄動し勝ちな人間の行動基準を 変えていくことにそれはどれだけの影響力を持つのだろうか?これもまた、興味深いスト ーリーのひとつになりそうだ。[ 完 ]